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帝竜戦役⑰〜遠ざかるものたちへ

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #群竜大陸

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 風にそよぐ草木、咲き誇る花々、穏やかな日差し。
 遠巻きにこの草原を眺める者は、誰もが楽園だと思うだろう。
 この一帯が『約束の地』と呼ばれていることにも、疑問を覚えるはずがない。
 だが、一歩でもこの地に足を踏み入れてしまったならば。
 その者は知るだろう。
 ここが何故、群竜大陸最悪の地のひとつに数えられるのかを。

「私は、人である以前に騎士であった」
 漆黒の鎧を身に纏った女騎士が、草原の只中で一輪の花を手折った。
 ただの人間がこの約束の地にいるはずがない。彼女もまた既に滅びた過去の残滓。
 騎士は冷徹な表情を崩さないまま、まるで自分に言い聞かせるように呟いた。
「故に、この私の中に『恐怖』など――在ろうはずもない」
 何かを否定した彼女の体に、尋常ならざる力が宿る。

 ☆ ☆ ☆

「皆、よく戦ってくれているようだな。改めて労わせてくれ」
 ツェリスカ・ディートリッヒ(熔熱界の主・f06873)は愛用の豪奢な椅子に深く腰掛けたまま、グリモアベースを訪れた猟兵達を鷹揚な微笑みと共に迎え入れた。
「さて、余が汝らを次なる目的地へと案内しよう」
 ツェリスカが指を弾くと独りでに魔導書が開き、映像が空中へと投映される。
 まるでこの世の楽園というべき美しい風景に、誰かが思わず息を呑んだ。

「ここが『約束の地』……群竜大陸で最も美しく、最も危険とされる場所のひとつだ。
 その理由は、この地の植物が放つ、抗いようのない強烈な『恐怖』の感情にある」
 約束の地の草花は全て、この地を訪れた者の内に秘めた恐怖を掻き立て、それに負けた者や恐怖の存在を認めなかった者に寄生して『力ある苗床』とする生態を持つ。
「この地を守るオブリビオンは『十字騎士シュラウディア』。かつて存在した古代帝国において最強と称された女騎士だ。経緯は不明だが、既に『苗床化』してしまっている」
 寄生によって能力が増幅された状態にあるシュラウディアを、『恐怖』に囚われた状態で戦うのは困難だ。倒すには、己の内に存在する恐怖を乗り越えなければならない。
「己の内に存在する『恐怖』を認め、そして克服する。このふたつが肝要なのだ。
 恐怖を否定したい気持ちも分かるが、受け入れなければ苗床化の定めは免れん」

 なお植物が放つ恐怖は、その土地によって特有の事柄に対するものであるという。
「汝らに向かってもらう地では、『別離への恐怖』と戦ってもらうことになる。
 人との別れ、あるいは物、場所、時間……別れたくないものは人によって異なろう。
 約束の地の草花は、その者が最も強く恐れる別離への感情を増幅するようだ」
 自分が何と別れるのを恐れるのかを自覚し、その上でその恐怖を乗り越える。
 強敵を打ち破り、その先へと足を進められるのは、己の心と向き合った者だけだ。
「苦しい思いをさせることになると思うが、汝らならば乗り越えられると信じよう」
 ツェリスカは信頼に満ちた表情を浮かべ、ふと思い出したように付け足した。
「そういえば、この戦場では『約束の花』という希少植物が採取できるようだ。
 価値にして金貨1200枚……危険極まる『感情汚染植物』ゆえ、悪用してくれるなよ」
 冗談めかして微笑み、ツェリスカは改めて猟兵達を約束の地へ送り出した。


滝戸ジョウイチ
 こんにちは、滝戸ジョウイチです。
 郡竜戦役も佳境に差し掛かってきましたね。
 今回も特殊ルールがありますので、確認の上で挑戦してください。

●特殊ルール
 今回のシナリオでは、下記の特別なプレイングボーナスがあります。
 =============================
 プレイングボーナス……「恐怖」を認め、それを克服する。
 =============================

●恐怖について
 今回のシナリオにおいては、猟兵達に『別離への恐怖』が付与されます。
 これは文字通り別れることへの恐怖ですが、具体的な対象は人それぞれです。
 人、物、場所、時間、それ以外の何か。その猟兵が恐れる別れを考えてみてください。

●宝物『約束の花』
 金貨1200枚(約1200万円)の価値がある、恐るべき『感情汚染植物』です。
 手にした者の感情を吸収して増幅する性質を持ち、この花を受け取った人にもその増幅された感情を植え付けてしまうという、洗脳にすら使える危険な代物です。
 実際にアイテムとして配布されるわけではありませんが、ロールプレイに使いたい方は探してみてください。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしています。
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第1章 ボス戦 『十字騎士シュラウディア』

POW   :    堕天十字斬
【手にした双剣】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    凶乱と殺戮のダンスマカブル
自身の【真紅に変じた瞳】が輝く間、【手にした武器】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    滅龍ヌア・ティティム顕現
自身が【危機感】を感じると、レベル×1体の【滅龍ヌア・ティティム】が召喚される。滅龍ヌア・ティティムは危機感を与えた対象を追跡し、攻撃する。

イラスト:モメ

👑8
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠白石・明日香です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

トール・テスカコアトル
「みんなが……いなくなる?」
いやだ
いやだ
いやだいやだいやだぁ
「トールは、もう戻れないよ。弱くなっちゃった。昔は平気だったのに当たり前だったのに」
みんながいたから頑張れたんだよ
みんなが一緒だったから戦えた
「どうして……また、独り」

「……でも」
今じゃない
今にはさせない
分かってるよホントは分かってる
お別れは……いつか来る
けど此処で頑張れないなら、そのいつかが、今に追い付く
「そうは、させるか」
それにここで頑張れたら、少しは胸を張って、さよなら出来るよね
「貴女はどうかなシュラウディアさん……ちゃんとさよなら出来たかな?」
怖がることを怖がったら……トールよりも怖がりだね
「そんな子に、負けないよ……変身!」



 別離とは、まず出会うことから始まる。
 得るものがなければ失うものもなく、孤独であれば誰とも別れる必要はない。
 ひとりではないと知ってしまうから、知る前は怖くなかったことが怖いのだ。

「みんなが……いなくなる?」
 臆病な自分を支えてくれる「みんな」と出会ったがゆえに、トール・テスカコアトル(ブレイブトール・f13707)は恐怖に苛まれる。これまで何度も励ましてもらった、孤独ではないと信じさせてくれた。その存在が大きいほど、別離が恐ろしくてたまらない。
 きっと故郷の里でひっそりと暮らしていた頃なら、こんな恐怖を感じることはなかっただろう。一度手に入れてしまったから、もう手放したくないと思ってしまう。
「もう戻れないよ。弱くなっちゃった。昔は平気だったのに当たり前だったのに」
 いずれ失うことになるのなら、最初から出会わなければよかったのだろうか?
「どうして……また、独り」
 膝を折って俯いたトールの表情から、その答えを窺い知ることは出来ない。

 戦意を失ったとしか思えないトールの姿に、十字騎士シュラウディアは顔を顰めた。
「なんと臆病な。他人などに執着するから別離を恐れることになるのだ」
 まるで自分はそうではないとでも言うかのようにシュラウディアは手にした双剣の一方を振り上げ、その時気付く。トールの震えが止まり、その膝に力が戻っていることに。
「……でも、今じゃない。そのお別れを、今にはさせない」
 本当は分かってると自分の中で繰り返しながら、それでもトールは再び立ち上がる。
「お別れは……いつか来る。けど此処で頑張れないなら、そのいつかが、今に追い付く」
 そうはさせるか。ここで来たる未来に屈したら、その別れは今この時になってしまう。
 いつか胸を張ってさよならするために、この瞬間だけは立って、前を向いて。
「馬鹿な……貴殿ごとき臆病者が、虚勢を張ったところで私は倒せんぞ」
 信じられないものを見るような目のシュラウディアを、トールは真っ直ぐ見つめ返す。
「貴女はどうかなシュラウディアさん……ちゃんとさよなら出来たかな?」
 無意識に唇を噛み締める女騎士とは対照的に、トールはもはや揺らぐことはない。
「怖がることを怖がったら……トールよりも怖がりだね。そんな子に、負けないよ」
 何故なら彼女は勇気が胸に灯る限り決して折れることのない、不屈の戦士なのだから。
「――変身!」
 十字騎士は思い知ることになる。勇気とは、恐れを知る者にこそ宿るものだと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

プリンセラ・プリンセス
連携・アレンジ可

人格をエルマに変更。

別れたくないのは今はもうひとつだけ、可愛い可愛い妹のプリンセラだけ。
人格である以上プリンセラの死が自分の死でもあるが共に死ぬのならまだいい。
だが人格だけ消えてしまうことはある。それはとても恐ろしい。
「でも、それがプリちゃんの為になるというなら構いません」
すでに一度死んだ身。もう一度死ぬなど恐れることはない。
妹の為になるなら喜んで死のう。

「でも、それは今じゃないです」
双剣には双剣で。【早業】【武器受け】【見切り】で攻撃を防ぎつつ、【目立たない】よう【クイックドロウ】の【だまし討ち】で指を向けてジャッジメントクルセイドを放つ。命中したら十文字斬りでとどめよ。



 別離は恐ろしいもの。それが最後に残った唯一の存在との別れであれば、尚のこと。
 プリンセラ・プリンセス(Fly Baby Fly・f01272)……正確には多重人格者である彼女が持つ人格のひとり、17番目の「エルマ」にとって、滅亡した王家ただひとりの生き残りにして兄弟姉妹最後の一人――末妹プリンセラとの別れこそ恐怖に他ならない。
 エルマを含む兄弟姉妹の人格は、全て主人格プリンセラの肉体に宿っているもの。故にプリンセラが肉体的な死を迎えれば、それは多重人格すべてにとっての死でもある。
「だけど共に消えるだけ救いがあります。本当に怖いのは離れ離れになってしまうこと」
 例えばエルマの人格だけが、プリンセラの肉体から消えてしまうとしたら。それは自分だけにとっての死であり、可愛い可愛いプリンセラとの一方的な別れ。大事な末妹がこの先歩んで行くであろう道を、自分は隣で見届けることが出来ないだろうということ。
「でも、それがあの子のためになるのなら――」
 エルマは顔を上げた。人格変貌対応剣ヒュポスサシスが、双剣へとその姿を変える。

「私に対して双剣で挑むとは。死ぬ覚悟が出来ているようだな!」
 十字騎士シュラウディアの鋭い斬撃をエルマは俊敏な身のこなしで躱し、双剣で受けていなしていく。その躊躇いの無い動きは彼女の才覚、そして努力が結実したものだ。
「死ぬ覚悟? 既に一度死んだ身、もう一度死ぬなど恐れることはありません」
 エルマの言葉は強がりなどではない。恐ろしいのは死ではないのだ。肉体の死だけではなく、あれほど恐れる人格の消滅すら、それが妹の為になるなら喜んで受け入れよう。
「それがプリちゃんの為になるというなら構いません。でも、それは今じゃないです」
 己に潜む恐怖を自覚してそれを乗り越えたエルマの太刀筋にもはや一切の迷いはなく、古代帝国最強と謳われた十字騎士の双剣にも巧みに食らいついていく。
「面白い! その双剣でこのシュラウディアを越えられるか――」
「生憎ですが、手段は選んでいられませんので」
 剣の柄を握ったまま人差し指を伸ばしたエルマがその指先をシュラウディアに向けた瞬間、天からの光――抜き撃ちのジャッジメント・クルセイドが敵の不意を打った。
「騙し討ち、だと……!?」
「言ったでしょう? 私が死ぬのは今じゃない、と」
 熟練の騎士といえども、追撃の十文字斬りを受け切ることなど出来なかった。 

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
多くの『過去』との戦いの中、護るべき人々を全て護れた訳では有りません
手遅れだった人々、『過去』の起こした災害の中で多くの命を救う為に『命の選別』を行ったこともありました

…その度に私の電子頭脳が恐れ慄くのです
戦い続ける限り不可避であるこの無力への後悔と責念を味わい続けるのかと

ええ、恐れましょう
この恐れこそが彼らの犠牲を私が忘れていない証左なれば
騎士としての志を保ち、『これ以上は』と叫ぶために!

UCで敵の動きを誘導して●見切り、最小限の動きで●武器受け●盾受けからの剣による●武器落とし狙いの攻撃で隙を作り、本命の●怪力大盾殴打

喪失の恐怖を認めぬ貴女は、喪失する物の価値すら否定しているのです



 別れとは、親しい人間に対してのみ起こりうる出来事ではない。
 誰もが日々新たな人間と出会い、別れる。それを殊更意識したりはしないだけだ。
 だがそれが命の喪失を伴う別離だとしたら。忘れることなど出来るのだろうか。
 機械の騎士として力無き者のために戦い続けてきたトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)にとって、これまでの遍歴は望まぬ別れの連続だった。
 お伽噺の騎士ならば、颯爽と現れては弱き人々を華麗に救っていくのだろう。だが現実はお伽噺とは違い、護るべき命は容易に手から零れ落ちる。それどころか、災害の中では救うべき命に優先順位をつけ、いわば選別することすら行わざるを得なかった。
(……その度に私の電子頭脳が恐れ慄くのです。護るべき者を護れなかった、己の無力への避けようがない後悔と責念。この先も戦い続ける限り、これを味わい続けるのかと)
 機械の心が確かに感じている、これは無辜の人々との別れに対する紛れもない恐れ。
 その葛藤こそが、トリテレイアが騎士たる所以に他ならない。

「からくり仕掛けの騎士が恐れを抱くとは。私は違う、失うものなど何も恐れない」
 十字騎士シュラウディアが自らの恐怖を否定するたび、力の強化を伴って苗床化が進行していく。対するトリテレイアは仙術モードを切り替え、儀礼剣とシールドとを構えた。
「ええ、恐れましょう。この恐れこそが、彼らの犠牲を私が忘れていない証左なれば」
「戯れ言を! 貴殿も騎士ならば、犠牲など受け入れてみせろ!」
 十字騎士が自らを納得させるように叫ぶ。その苛烈な双剣に対し、トリテレイアは敢えて受けに回った。『機械騎士の戦闘舞踏(マシンナイツ・バトルワルツ)』――戦場全体に対して連続予測を行い、敵の攻撃を誘導することで自身に有利な戦況を作り出す。
「騎士ゆえに恐れるのです! 騎士としての志を保ち、『これ以上は』と叫ぶために!」
 シュラウディアが目を見開いたその一瞬、『戦闘舞踏』によって誘導された双剣の一方が儀礼剣の一撃によって叩き落とされた。敵が体勢を立て直すべく振り下ろしたもう一方の剣による斬撃、だがそれよりも速くトリテレイアは大型シールドを構えて踏み込む。
「喪失の恐怖を認めぬ貴女は、喪失する物の価値すら否定しているのです!」
 渾身のシールドバッシュががら空きの胴へと叩き込まれる。鎧でさえも防ぎようのない爆発的な衝撃を受け、十字騎士は約束の地の草花を巻き上げながら吹き飛んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
4歳の時、両親が行方不明になり、おれは祖母ちゃんに引き取られた。
祖母ちゃんはおれにとっては師であり、親であり、家族の一員だ。
……考えたことは、勿論ある。
よほどのことが無い限り、おれより先に祖母ちゃんは死ぬだろう。
世界で独りぼっちになるような心細さ、失う痛み、恐怖。
“その日”が現実のものになった時を考えると、寂しくて、怖ぇ。

でも、祖母ちゃんはこうも言っていた。
「生命はいつか終わるもの。瞬きのように短いその中で数え切れないほどの出会いと別れを繰り返す。だからこそ当たり前の日々というものは尊いんだよ」
うん……そう思えるようになりてえよな。

さて、別れの恐怖は乗り越えた。
次は戦う恐怖を乗り越えねえとな!



 遠からず、避けようもなく訪れる別れというものもある。
 何事もなく平穏に暮らしたとしても、いずれ年老いた者から順にこの世を去る……それは寿命を持つ種族にとって不変の真理で、自然のそうあるべき流れの一部といえる。
 だが残される者がそれを納得できるかどうかは、きっと別の話だ。
(……よほどのことが無い限り、おれより先に祖母ちゃんは死ぬだろう)
 幼い頃に両親と離れ離れになった鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)にとって、占星術師の祖母は師でもあり育ての親でもあった。いつか来る彼女との別離について考えたことは勿論ある。掛け替えのない家族を失うその孤独、心細さ、そして痛み……。
「……“その日”が現実のものになった時を考えると、寂しくて、怖ぇ」
 約束の地の草花によって増幅された恐怖は、“その日”を否応なしに嵐へ突きつける。

 十字騎士シュラウディアにとって、そんな嵐の姿は隙だらけに移ったのだろう。
「足が震えているぞ。覚悟がないまま出てくれば死ぬことになる!」
 彼女の危機感に呼応して周囲に出現していた『滅龍ヌア・ティティム』達が、一斉に嵐を標的として認識した。龍達は獲物を喰らうべく、翼を羽ばたかせて殺到する。
(分かってんだよそんなの! そう簡単に覚悟なんてできるか!)
 内心でそう叫ぶ。嵐にとって臆病さは変えようのない本質だ。だが、そんな臆病な自分を祖母は我が子同然に育ててくれた。だからこそ必死で足掻いて戦ってこれた。
『生命はいつか終わるもの。瞬きのように短いその中で、数え切れないほどの出会いと別れを繰り返す。だからこそ、当たり前の日々というものは尊いんだよ』
 祖母の言葉が胸に蘇る。
「うん……そう思えるようになりてえよな」
 いつか来る“その日”への恐怖を、その言葉で乗り越える。そして、戦いへの恐怖も。
 滅龍達が嵐目掛けて急襲を掛けてくる。自分を奮い立たせ、立ち向かうしかない。
 ありったけの勇気を振り絞り、召喚するのは龍の群れを映す巨大な鏡。
「『逆転結界・魔鏡幻像』――幻遊びはお終いだ!来い、『滅龍ヌア・ティティム』!」
 魔鏡から現れる、鏡写しの滅龍の群れ。鏡像の龍達は互いに引き寄せ合うかのようにオリジナルへと向かって飛び、その牙と爪とを激しく突き立て合った。
「震えていながら、何故そこまでの芸当を……!?」
 そして、嵐の本質を見抜けず狼狽を隠せない十字騎士へと、更なる召喚術が放たれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メアリー・ベスレム
お別れの恐怖?
大切な人も帰りたい場所もないメアリに
あるわけないわ、そんなもの

……なんて、そう思っていたけれど
メアリにもあったみたい、失いたくないもの
誰よりも身近で、ずっと一緒にいたのだもの
恐ろしい獣の病と人は蔑むけれど
悲しき感染者と人は憐れむけれど
メアリに力を、自由を与えてくれたのは人じゃない
この病よ
治療なんて必要ないわ
無力なだけのアリスなんてまっぴらごめん!

メアリと踊りたいの? なら、捕まえてごらんなさい
狂月の徴で【ヴォーパルの獣】に変身
敵の手数に呑まれないよう【逃げ足】で翻弄しながら
【野生の勘】【継戦能力】で致命傷を避けて隙を待つ
僅かにでも隙を見せたなら、その喉笛を噛み千切る!【部位破壊】



 別れたくないものとは、形ある何かとは限らない。
「お別れの恐怖? メアリにはあるわけないわ、そんなもの」
 メアリー・ベスレム(Rabid Rabbit・f24749)はそう嘯く。自分には大切な人も、帰りたい場所もない。自分以外に何もないのであれば、別れなんて起こりようがないと。
「……なんて、そう思っていたけれど。メアリにもあったみたい、失いたくないもの」
 何故なら、本当に別れたくないものは、他ならぬ自分の中にいるのだから。
 誰よりも身近でずっと一緒にいた、今となってはメアリー自身と不可分の存在。
 ダークセイヴァーにて悪名高き、寿命を喰らうその病の名こそ『人狼病』。
 恐ろしい獣の病と人は蔑むけれど。悲しき感染者と人は憐れむけれど。
「メアリに力を、自由を与えてくれたのは人じゃない、この病よ。
 治療なんて必要ないわ、無力なだけのアリスなんてまっぴらごめん!」
 今感じている『別離への恐怖』は、この大切な病が引き剥がされることへの恐怖。
 それをあえて認めることで、病が自分と一体であることをより一層強く感じる。

「メアリと踊りたいの? なら、捕まえてごらんなさい!」
 人狼病患者に満月の狂気をもたらす『狂月の徴』が、メアリーの中に眠る獣の血を呼び起こした。半人半獣のこの姿こそ、メアリーが病と共にあるからこそのもの。
「自ら望んで異形でありたいとは! 理解しがたい感性だな!」
 シュラウディアの瞳が輝き、両手の双剣が煌めく。そして放たれる怒濤の連続斬撃。
 それをメアリーは野生の勘で見切り、巧みな足捌きで躱し、たとえ切っ先が当たったとしても致命的な一撃だけを避けて、人狼の血が赴くままに戦い続ける。
 そして時を待つ。狼にとって忍耐こそが優れた狩人たる素質。待つべき時は待ち、そして襲うべき時に襲う……その瞬間だけは、何があろうと絶対に逃さない。
「理解できなくて結構よ! あなたじゃメアリになれないわ!」
 シュラウディアの連続攻撃が途絶えたその時、メアリーの牙は瞬きひとつの間に騎士の首元を引き裂いていた。彼女自身が紛れもない狼であることを、証明するかのように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

弦月・宵
悲しくない別れは、ないと思うな。
悲しくない別れの方が、…ちょっと違うかな。別れを悲しいと思えなくなるのが、怖いよ。

消えていくオブリビオンだって、過去の世界には正常な命として存在していたんだ
ここにいる、十字騎士さんも…
今までに会った全部…

そうしないと、別れたくないと思ったヒトたちとも、別れなくちゃいけなくなるから…っ
でもオレは、その別れに慣れるのが怖い。
苦しいし、悲しい。けどそれは、出会った奇跡の証だから
逃げない!捨てないっ
君(十字騎士)のことも…!

攻撃は【UC:ブレイズフレイム】を纏わせた剣で!
オレのは技よりも、力任せに叩き斬る戦法だけど
炎の熱と陽炎で相手の隙を作って攻めるよ
目を逸らさない!



 生きることは、多くのものと別れ続けるということ。
 それを自覚しているか、そうでないかの違いはあっても、その事実は変わらない。
「悲しくない別れは、ないと思うな。悲しくない別れの方が……」
 途中まで口にしてから、弦月・宵(マヨイゴ・f05409)はすぐに言い直す。
「……ちょっと違うかな。別れを悲しいと思えなくなるのが、怖いよ」
 朴訥とした口調で、それでもはっきりと。宵は別れに慣れることこそ怖いと言う。
 ただでさえ生きることは別れることの連続で、猟兵として生きるのであれば体験する別れは常人の比ではないだろう。それは生きる人々との別れ、あるいはそれ以外との。
「消えていくオブリビオンだって、過去の世界には正常な命として存在していたんだ。
 でも倒さないと、別れたくないヒトたちとも、別れなくちゃいけなくなるから……」
 失われた帝国の騎士、過去の残滓そのものである十字騎士シュラウディアに向かって、宵は告げる。彼女のような『過去』との別れにすら、自分が慣れるのは恐ろしいと。

 シュラウディアにとってもその言葉は意外だったのだろう、僅かに表情を崩す。
「私ならば、斬った者のことなど覚えてはおかん。貴殿は奇妙な猟兵だ」
「そうかもね。だからこそ苦しいし、悲しい。けどそれは、出会った奇跡の証だから」
 宵は真っ直ぐに相対する敵を見つめ、鞘から太刀『-幻鵺-』を引き抜いた。
「逃げない! 捨てないっ! 君のことも……!」
「つくづく変わった戦士だ。いいだろう、だが貴殿が死ねば出会いも全て無に帰る!」
 シュラウディアは双剣を構えた。放たれるのは、破壊力に重きを置いた痛烈な斬撃の連続。『-幻鵺-』に地獄の炎を纏わせて、宵は真っ向から怒濤の剣戟を受け止める。
 技巧を凝らす剣法ではない。宵の剣は、ただ力任せに正面から打ち破るための剣だ。
 地獄の炎は、熱と陽炎とで相手を惑わすことで力押しの隙を埋めるためでもある。
 だが一方で、力の剣には想いが宿る。例えば、躊躇いの無い太刀筋という形で。
「大したものだ! 敵に心を動かしながらも剣に迷いがない!」
「当然だ……オレだってそのために来た! 悲しい別れから逃げず、立ち向かうため!」
 渾身の力をもって、宵は灼熱の刃を振り下ろす。その一撃は双剣を弾き飛ばし――。
「――目を逸らさない!」
 覚悟と決意の全てを乗せて、シュラウディアの体を袈裟懸けに斬り裂いた。 

大成功 🔵​🔵​🔵​

宮落・ライア
別れ…ボクってそんな大切な物、なんか持ってたっけ。
確かに友達も居るけれど………うーん?
それだって、別になくなっても仕方ないよねって感じ。
うーん。
でも、そうだね。将来そんな信じられる人ができたらきっと怖いね。
昔、裏切られたからこんなのなだけで、信じていたしその怖さも知ってる。
だからその恐怖を実感するのは未来に取って置くよ。

さぁ、やろう。

相手の攻撃に対して捨て身の一撃で怪力でもって大剣を振り下ろす。
避けるか受けるか分からないけれど、その隙を見て
刀で剣刃一閃



 出会っていないからこそ、恐ろしく思える別れもあるだろう。
「ボクってそんな大切な物、なんか持ってたっけ。確かに友達も居るけれど……。
 うーん? それだって、別になくなっても仕方ないよねって感じだし」
 宮落・ライア(ノゾム者・f05053)は、自分が持っているものに何の執着もないかのようにそう呟く。より正確に言うならば、何の執着も持てずにいるように、か。
 普段明るく振る舞っている彼女にも、周囲のものとの間に一線を引いてしまうだけの理由があり、そうするだけの過去がある。それだけのものを背負って生きてきた。
 だからこそ、この現在に恐れるべき別離はなく、あるとすればそれは未来だ。
「うーん、そうだね。将来そんな信じられる人ができたら、きっと怖いね」
 一度信じて、裏切られた。だからこそ、信じることの意味も失う怖さも知っている。
 そんなライアがもう一度、そこまで信じられる相手に出会えるだろうか。
 それはまだ分からない。それでも、その恐怖はその未来で巡り会うものだ。

「さぁ、やろう」
 片手に刀、もう一方の手には骨肉の剣。左右の重量が明らかに異なる異質な二刀流。
 双剣使いのシュラウディアにとってもライアの剣術は見慣れないものなのだろう。
「面白い技を使うな。恐れとやらで太刀筋を鈍らせるなよ」
「大丈夫。ボクの恐怖はまだ先だから」
 未来への恐れはあっても、それは今ではない。ならば、その時が来るまでは戦える。
 刀と大剣の二刀流が、恐れによってその切れ味を落とすことなどない。
 ライアは片手で軽々と大剣を振るい、十字騎士の双剣とも互角に打ち合い続ける。
「多少は変則的であるようだが、それで我が剣術をどう破ると――」
「……こうやってだっ!」
 シュラウディアの攻撃に合わせてライアは一歩踏み込んだ。そのまま勢いを乗せ、あらん限りの力を込めて大剣を振り下ろす。当たれば、間違いなく致命的な一撃だ。
「だがこの程度、私に見切れないはずが……」
「見切ったのはボクの方だ」
 剣刃一閃。大剣の一撃を紙一重で避けようとした、その一瞬の隙をライアは見逃さなかった。逆の手に構えていた刀が虚空に閃き、一瞬遅れて十字騎士から飛沫が散った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

別離への恐怖、か
…もう、とっくに味わっているさ

里が壊滅した時に家族と離ればなれになって
それ以来、家族が生存している希望を胸にずっと探していた
…言い換えれば、家族との離別に恐怖を感じていた

しかし、現実は非情で残酷
家族は里壊滅時に全員吸血鬼化していた
優しかった両親も、可愛かった妹も、もう戻ってこない
…だから、探し出して永遠に眠らせる
そのために、家族をこの手にかける「覚悟」はある

貴様が凶乱と殺戮でその剣を振るうなら
俺は憎悪と闘争でこの剣を振るう
「早業、2回攻撃、リミッター解除、鎧砕き」+【憎悪と闘争のダンス・マカブル】で真っ向勝負だ
斬り刻まれる恐怖と共に、この地に沈め!!



「別離への恐怖、か……もう、とっくに味わっているさ」
 改めて自分に言い聞かせるように呟いて、館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)は己の黒剣を握り締めた。それは敬輔にとって、あまりにも身近にありすぎた感情だったから。
 そしてもしかしたら、もう二度と味わうことがないかもしれない恐怖。
 こうして約束の地の草花によって増幅された感情も、言ってしまえば過去のものだ。
 敬輔が本当に別れたくなかった人達との別れは、とっくに終わってしまっている。
 生まれ故郷が吸血鬼に襲われ、滅ぼされたあの日から、生き別れになった両親と妹が生きているという希望と、それが打ち砕かれる離別への恐怖と共に生きてきた。
 だが、実際は生き別れですらなかったのだ。全てはあの日、愛する家族が吸血鬼と化した日に終わっていた。取り戻したかった全ては遠ざかる過去の中にしかなく、救いたかった人達は吸血鬼という過去の残滓に成り果てた。もう何一つ戻っては来ない。
 だから、自分の手で眠らせる。その覚悟を胸にここまで来た。
 だが、そうやって過去に置き去りにしたはずの恐れが、未だ自分の中にあったのか。
 いずれにしても、過去はもはや滅ぼすものでしかない。

 赤と青の瞳に静かな怒りを滾らせ、敬輔は十字騎士シュラウディアと相対する。
「貴様が生前どれほどの英雄だろうと、オブリビオンである限り俺の敵だ」
「大口を叩くなよ。貴殿ごときに倒される私では――」
「逆だろう。それだけの傷を負って、俺に勝てるとでも思うのか」
 シュラウディアが歯を食いしばった。連戦に次ぐ連戦。度重なる負傷を受けながら彼女が未だ立ち続けているのは、ひとえに約束の地の『力ある苗床化』の作用によるもの。
 皮肉にも、頑なに恐怖を認めなかったことが、彼女をここまで生き長らえさせた。
「だが、それも終わりだ。せいぜい最期まで自分自身から目を逸らしていろ!」
「私を……私を愚弄するな!」
 シュラウディアの赤い瞳が煌めいた。凶乱と殺戮のダンスマカブル――満身創痍でありながらなお、その剣は通常の猟兵を容易く凌駕するほどに速く、そして鋭い。
 しかし敬輔はシュラウディアの剣に、己の意志を籠めた剣で真っ向から立ち向かう。
「貴様が凶乱と殺戮でその剣を振るうなら、俺は憎悪と闘争でこの剣を振るう!」
 敢えて呼ぶなら、憎悪と闘争のダンス・マカブル。敬輔の青い瞳、かつて猟兵ではなかった頃の色をした瞳が輝き、握る黒剣は自身の憎悪と闘争心のごとく荒れ狂う。
 二つのダンスマカブルの威力は互角。いや、大剣一本で双剣と互角に斬り結ぶ敬輔のほうが速度で、そして剣に込められた意志で勝っている。その差は徐々に開き、そして。
「終わりだ!! 斬り刻まれる恐怖と共に、この地に沈め!!」
 それは、今度こそとどめの一撃。人の執念が『過去』を打ち倒した瞬間だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノネ・ェメ
連携、アレンジ歓迎


 わたしの信条は戦わず、戦わせない。ただ現実はあまりに難しく。もうわたしらしさとも思えてきてるこの心が、もし折れてしまったら。考えるだけでも、わたしがわたしでなくなってしまいそうで……。

 でも。それでも。嫌だから。戦いが次の戦いを生んで、終らなくて。終わらないんだもん。わたしが何も出来なくても、変わらない。なら、まだ行動し続けてた方が、いい。乗り越えられてなんてないよ。そのまま止まってられないだけ。でもなければ、こうしてこんな所まで来てないよ。

 決別しないまま、弱い自分とさよならもしないままなら、ずっと一緒なんだし恐怖も感覚麻痺起こせないかな?

 戦いを止めてと、歌い続ける為。



 歌が聞こえる。戦いを止めるようにと願う、切なる歌が。

 十字騎士シュラウディアのオブリビオンとしての命は、今にも潰えようとしていた。
 猟兵達の攻撃は自慢の双剣を凌ぎ、無敵の鎧をも打ち破った。
 もはや助かる見込みなどはない。倒れるのが今か、少し先かの違いだけだ。
 それでも彼女が剣を捨てず彷徨い歩く理由は、最強の騎士であることへの執着だけ。
 そしてシュラウディアは辿り着く。戦いを止めるべく歌い続けた少女の元へと。

 この戦いも、止めることは出来なかった。
 ノネ・ェメ(ο・f15208)は遣り切れない想いを抱えながら、歌い続ける。
 誰にも戦ってほしくない、戦わせたくはない。その信条を貫くため、これまで誰も傷つけることなく戦場で歌い続けてきた。それでも現実は、理想を吹き飛ばすほどに厳しく。
 最後に残ったこの信条さえも折れてしまえば、自分には何も残らない気がして。
 ノネにとっての『別離への恐怖』とは、自分らしさを喪うことへの恐れ。
 現実に屈して、自分が自分では無くなってしまうことへの恐怖だった。

「……まだ、こんなところにいたのか。まさか私に討たれるために残っていたのか」
 はっと顔を上げたノネの前に、瀕死の体で剣を引きずるシュラウディアの姿があった。
「歌など止めてさっさと消えろ。そうでなければ、騎士の誇りのためにここで死ね」
 ぼろぼろの体でシュラウディアが剣を振り上げた。次の瞬間には、きっと斬られる。
 歌うことを止めて、自分らしさを捨てて、そうして逃げればきっと命だけは助かる。
「でも。それでも。嫌だから」
 ノネは逃げなかった。歌おうという意志を捨てないまま、十字騎士を見据えた。
「戦いが次の戦いを生んで、終わらなくて。終わらないんだもん。わたしが何も出来なくても、変わらない。それなら、まだ行動し続けてた方が、何もせずに終わるより、いい」
 ずっと押し留め続けていた言葉が溢れ出す。
「誰かが傷つけ合うのは嫌。自分が自分で無くなるのも怖い。乗り越えられてなんてないよ。そのまま止まってられないだけ。でもなければ、こうしてこんな所まで来てないよ」
 少女は歌う。『〝音楔〟(プロプヮ・スティカード)』――戦わず戦わせない、その信条を聞く者の心へと楔のように打ち込む歌。ノネ・ェメの喪いたくない生の証を。
 振り上げられた刃は、最後までノネを斬ることはなかった。いつの間にかその剣が地面に捨てられていることにノネが気付いたのは、一曲を歌い終わった頃になってだった。
「それが貴殿の信念か。……私もかつては、失いたくないものがあったはずなのにな」
 何処か吹っ切れた表情のシュラウディアは、剣を拾うことなくノネに背を向けた。
「気が変わった。貴殿は殺さん。最期くらい、自分の恐怖と向き合って死ぬさ」
 足を引きずりながら立ち去るその背中に、ノネは最後の歌を贈る。
 戦うことを止めた彼女が、せめて安らかにあるようにと。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月17日
宿敵 『十字騎士シュラウディア』 を撃破!


挿絵イラスト