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戦国猟兵譚~父と娘~

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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 サムライエンパイアのとある藩にあるなんてことはない長屋。そこで今日も父と娘の怒号が飛び交う。
「お父さん!お酒も賭け事もやめてって言ってるじゃない!」
「うるせぇ!元は俺の稼いだ金だ!俺が使って何が悪い!」
 昔は優しかった父も仕える家のお家騒動に巻き込まれ職を失い、母も失っていつからか酒と賭博にのめり込んでいった。だが娘は信じている。父はきっと元の優しかった父に戻ってくれるはずだと。
 そんな娘の健気な静止も虚しく男は空になった徳利を片手に家を出ていった。
 そしてその後男の姿を見たものはいない。

「どうやらサムライエンパイアのある藩で最近行方不明者が多発している、と当機の予知に出ました」
 グリモアベースで猟兵たちを待っていたのはピクリとも表情筋が動かないメイド人形アマータ・プリムス(人形遣いの人形・f03768)だった。
「行方不明なった方々はどうやらオビリビオンの金山に連れてかれているようです。幸いなことに犠牲者はまだ出ていません。今ならまだ助け出すことができるでしょう」
 しかし行方不明になった者の共通項は今のところ分からない。いなくなった時間も場所も様々だ。
「皆様にはまず一番最近行方不明者が出た賭場に行っていただきます。そこで暴れるなりわざと負けるなりすれば金山の場所が分かるはずです。場所を特定して連れていかれた方々を救出してください。どんな理由があろうと父と娘を引き離すなんてことは許されません。皆様のお力でどうか父娘をお救いください」
 そう言って頭を下げたアマータだったが直後なにかを思い出したのかのように呟く。
「この行方不明事件、もしかしたら意外と根深いものかもしれません。皆様お気をつけて」
 メイド人形に見送られ猟兵たちは依頼へと向かっていく。


灰色幽霊
 どうも初めましての方は初めまして灰色幽霊です。
 賭け事は嫌いですがガチャは好きです。

 早速2つ目のOPを公開させていただきました。
 今回はサムライエンパイアのとある藩で巻き起こる行方不明事件の解決が目的です。
 行方不明になった人々を救いましょう。アマータの言う通り一筋縄ではいかないかもしれませんが頑張ってください。

 それでは皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『父と娘と金と幸せ』

POW   :    賭場に乗り込みひと暴れ

SPD   :    賭場でわざと負けて金山送りになる

WIZ   :    父親を全うに働かせるために説得する

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

宇冠・由
お母様(f00173)と参加しますの

私はヒーローマスクなので、仮面のままお母様と一緒に賭博場に潜入、お母様の視線を他者に悟られないようにします

仮面をつけた女賭博師。注目を浴びるはずですので、私とお母様で目を引き付けている間、【可愛いは正義】で賭博場内の調査を別途行いますわ

ハムスター数匹を放ち情報収集、賭場なら元締めや親元がいるはず
金山の情報を得るにしても、その目的や後ろで糸を引く者の情報も必要ですわ
そして何より金山は砒素などの毒性物質が噴き出すことが多いので、事前の場所も知っていれば他の猟兵の方々にも有効ですもの

もしハムスターが見つかっても、ただの鼠と思われるか最悪能力で情報を聞き出します


宇冠・龍
由(f01211)と共に参加します

(賭け事は得てして親元が儲けるようになっているもの、そして問題は、ここが違法賭博なのかどうか)
とても一般の賭博場とは思えません。イカサマ前提だと考えます

視線を由で悟られないようにしながら、少し大げさに立ち振る舞います
「もしもこの仮面を剥がしたいのなら、私に勝つことですね」
目立った方が、他の調査にも有利ですから
【魚質竜文】で丁半などの結果を有利に操作。不可視なので一般人には気づかれませんし、幽霊なので自由に物体のすり抜けもできます

もしイカサマを指摘されても証拠がないとしらを切り、タネがばれてるようであれば、それは「ユーべルコードを知っている」ということですしね



 毎夜毎夜男たちの怒号が飛び交うサムライエンパイアのとある賭場。今夜はそこに仮面をつけた一人の女賭博師が現れた。それは宇冠・龍(過去に生きる未亡人・f00173)と宇冠・由(宙に浮く焔盾・f01211)の親子猟兵。由のヒーローマスクとしての特性を生かし龍の素顔と視線を隠し注目を集めるための頭脳プレイだ。
 仮面の隙間からでも窺えるその美貌に賭場の男共は釘づけになる。

(えれぇ別嬪さんじゃねぇか)
(いい女だ来たぜ、けひひ)
(……ゴクリ)

「女、ここはそんな珍妙なもんつけてていい場所じゃねぇぞ?」
 賭場の一番奥に座る男が龍へと声をかける。発言の真意はともかく仮面を外せと言っている。
「もしもこの仮面を剥がしたいのなら、私に勝つことですね」
 しかし龍はそんな言葉に耳を貸さず丁半博打の末席に座る。
「オレが勝ったら剥がすのは仮面だけじゃねぇぞ」
 ―――席が埋まり博打が始まる。


 時を同じくして由はハムスターを数匹賭場へと放っていた。人よりも小さくどんな場所でも入りこめる彼らは賭場の奥、通常は関係者以外入ることができない親元の元へ辿り着いていた。
「今日はなんだかうるせぇな」
「へぇ、それが仮面をつけた変な女が来ているようで……」
 部屋にいたのは親元だと思われる少々恰幅のいい男と前歯の欠けた細長い柳の様な男だった。
「変な女?センセイの言ってた猟兵ってやつじゃねぇだろうな?」
「あっしにはわかりやせん。見に行かれやすか?」
「面倒だ、放っておけ。どうせここもそろそろ店じまいだ」
「へぇ、わかりやした」
 なんかめっちゃ重要そうな話を聞いたハムスター達は急いでこの情報を伝えるべく由の元へと戻っていった。


「……ピンゾロの丁!」
 壺振りの女の戸惑いが混じった声が響く。自分は間違いなく半を出したはずだった。賽を振る腕だけでここまで来た自分がこんなつまらないミスをするはずがない。しかし結果はどうだ6回連続でピンゾロだ。あり得ない、こんなことは絶対にあり得ない。が、実際に起こっている。
(少々やり過ぎましたかね?)
 魚質竜文により現れた魚の幽霊のおかげで龍の手元には既に木札が山のように積み重なっている。他の席の男たちは既に着ていた服すらない褌一丁、完璧に身包みを剥がされていた。
「これでピンゾロ6回目だ!このアマ、イカサマしてんだろ!」
「イカサマというなら証拠を出して欲しいですね」
 猟兵の存在を知ってはいても見たことなどない男たちには龍のイカサマを特定できるはずがなかった。これ以上めぼしい情報も得られそうにないと感じた龍は席を立つ。それとほぼ同時に由の元にハムスター達が帰ってきた。由はハムスター達の報告からこの賭場の背後にはセンセイと呼ばれる存在がいることを知り、龍へもそれを伝える。
(お母様、やっぱり背後にまだ誰かいるみたいですの)
(猟兵を知っているセンセイと言う存在。気になりますがあとは他の方に任せましょう)
 センセイと呼ばれる者の存在という情報と積み重なった木札を換金して得た儲けを持って猟兵親子は賭場を後にする。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フロッシュ・フェローチェス
此処はわざと負けておくか。
……とはいえ、余りに不自然だとそも目的までたどり着けないだろうね。
かと言ってアタシが持てる手段は――一つ。
速さだ。
【早業】で逆イカサマを目視させないようにしよう。
あとは負け所の見極めかな――【見切り】きれればよいけど、最悪【野生の勘】に頼る事になりそうだ。

――演技はどうするかな。
嘘だ……的な感じで、片手で頭でも抱えてみるか。
震えて瞳でも見開けば行けるか?
逃げも隠れもしないよ?
連れていかれるふりして……案内して貰おうか。

根が深いらしい一見だけど、まずは金山の元へ行かないとね。


蜂蜜院・紫髪
心情:ふーむ賭場をどうこういうほど出来た人柄はしておらぬが…人浚いの懸念があるのは放ってはおけん。斯様な娘御を世に独り放り出すのは忍びないしのぅ。

行動:賭場へ参加しほどほどに負けて金なんぞないのじゃーとか言いながら【存在感】を放ち【誘惑】【挑発】して気を引きます
金山送りになるならそのまま居場所の特定し【陽炎の術】で撤退
もしも黒幕に興味を引かれた場合は速めに逃げるつもりで近づきます。
黒幕から逃げるときには大騒ぎしながら【時間稼ぎ】しつつ【陽炎の術】で撤退



 猟兵親子が丁半博打の賭場を荒らしていたその裏で勝負に挑む二人の猟兵がいた。フロッシュ・フェローチェス(疾咬の神速者・f04767)と蜂蜜院・紫髪(怠惰な蜂蜜屋・f00356)の二人は花札を使った賭博『八八』の卓に座っていた。
「嘘だ……」
「だめじゃぁ、もう次勝負に負けたら素寒貧じゃー」
 豊満な身体のラインがよくわかる薄手服に身を包み震える瞳を見開きながら左手で頭を抱えるフロッシュ、肩を大きく露出させた着物に身を包み扇情的な雰囲気を醸して自身の手札を握りしめ祈るように天を仰ぐ紫髪。魅力的な二人の女性を相手にする親は自然と口元がつり上がる。
「へへっ、お二人さん次が12回戦。そこで巻き返せなけりゃ貰うもんは貰うぜ?払えないってんならわかってるよな?」
 多少のイカサマをしているとはいえ本来であればここまで親が大勝ちすることはない。この状況は通常の人間には目視不可能な速度で繰り出されるフロッシュの神速の早業による札操作が作りだしたものだと親は気がつかない。そんなことより目の前の二人に借金を背負わせた後の事の方が男にとっては重要なのだ。
「つ、次こそは勝てるはずじゃ!……たぶん」
 フロッシュも口を開かず紫髪の言葉にこくこくと頷く。ここまでは二人の想定通り。このまま負けて金山へと案内してもらおう。
「そうかい、それじゃあ最後の勝負を始めるぜ」


 ―――この日、二人の美女が賭場から姿を消した。



「ま、場所さえ分かればあとは付き合う必要はないからの。他の皆と合流じゃ。フロッシュ殿は先に行ってこの場所を皆に伝えておいてほしいのじゃわしより断然速いからのう」
「……了解」
 金山へと連れてこられたフロッシュと紫髪だったが見張りの隙をつき紫髪の陽炎の術で二人は姿を眩ました。場所の特定さえ出来てしまえば他の猟兵を連れてきた方がスムーズに事が運ぶ。フロッシュは紫髪の書いた金山への地図を片手に速度を生かし来た道を戻っていく。
 その背を見ながら移送途中でちらりと見えた金山の中の様子を思い出し紫髪はぽつりと呟く。
「金山の男たちはどうも浪人が多いように見えたのう。これも関係ありそうじゃ」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

モルツクルス・ゼーレヴェックス
【WIZ】
「おっと、ちょっと待つっすそこな御仁」

賭場に入ろうとする父親の説得を試みるっす!

【存在感】と【礼儀作法】をもってすれば、主導権とるなど容易!
しかし高圧的にはならず、むしろ情報吐き出させるっす!

「どんな賭けをするか」
「負けたらどうなるか」
「おかしいと思うこと」

など【情報収集】しながら【世界知識】と【学習力】に照らして違和感を探るっす!

一方【コミュ力】でちゃんとケアもするっす!

「あんたも分かってるはずっすよ」

あんたにとって、一番大切なものが何なのか
何をしたくて、何ができるのか

そこから逃げてる自分を見ることから、逃げているだけなのでは?

「目ぇ覚ますっす。……ここで退かなきゃ後悔するっすよ」


ゲンジロウ・ヨハンソン
【猟兵商業組合連合】に協力して参加じゃ。

犯罪都市出身じゃからこういうのは慣れとるつもりじゃ。

POW:賭場に乗り込みひと暴れ で行こうかの。

使用装備:超未来変形屋台バイク【IZAKAYA:げんちゃん】

神宮寺を先頭にして超未来変形屋台バイクで乗り込むぞ、ぶぉぉぉん。
バイクを変形させて居酒屋屋台を展開、神宮寺の勢いに呑まれとる連中

を【コミュ力】使いつつ【挑発】して強い酒を呑ませよう。
ほれ、おとこーならいっきいっきいっき!

賭け事も荒事も頭働かんと成立せんじゃろ、特別につんよい純米酒を用意したからな、二杯も呑めばへろへろじゃろ。

後が怖いから神宮寺分の酒は残しとくか…


神宮寺・絵里香
【POW】【猟兵商業組合連合】で参加〈心情〉絵里香様向け案件です。ってこういうことか。まあ、期待通りに暴れてやるさ。オイ、馬鹿共!怪我したい奴はどこのどいつだ!ゲンジロウはオレの分の酒とっとけよ。〈情報収集〉殴り倒した馬鹿共の相手は2人に任せる。【戦闘知識】と【世界知識】を基にならず者連中が習得できるだろう武術を理解。的確に攻撃を【見切り】大立ち回りをする。【グラップル】技能を使い、素手で馬鹿共を気絶させていく。投げ、足払い、金的、当身、関節技等なんでも使う。一通り叩きのめしたら一番偉そうな奴の関節を極め【恐怖を与える】と【情報収集】で金山の場所を聞き出す「腕折られたくなかったらさっさと吐け」


タンケイ・オスマンサス
【WIZ】【猟兵商業組合連合】で参加

(ふふ、皆さん存分に暴れてらっしゃいますね…私もお仕事お仕事っと)
皆にボコられ、お酒に溺れるおじ様たちを介抱します。重症の方には【救助活動・歌唱】の力を使って優しく歌を歌い、回復を。
「もう大丈夫ですからね、安心してください?」
【優しさ】と【礼儀作法】を心掛けながら、信頼を得られたら聞き込みをします。
「ところで、最近ここら辺で行方不明になった者がいると聞きました。些細な事でも構いません、何かご存じないですか?」


トリテレイア・ゼロナイン
賭け事で身を持ち崩す方をお救いするのは騎や士の身には難しい話ですが、行方不明ともなれば話は別です。人々をお救いしなければ…

「さがしびと」とでかでかと書かれた木札片手に賭場の入り口に居座り、騎士道物語から模倣した友を想う「優しさ」をにじませ、賭場に行ったきり行方知れずの友人を探していると偽り道行く人々に大声で尋ねましょう

賭場にしてみれば営業妨害ですので声を掛けてくるはず、オブリビオンと繋がっていそうなら「礼儀作法」で従うフリをして物陰や屋内で「だまし討ち」、「怪力」で「手をつない」で情報を供出させましょう

…騎士道精神から大いに外れた行いですが、これも人々を救うため、粛々とこなしましょう


嶋野・輝彦
【POW】賭場に乗り込みひと暴れ
有り金全部使ってスッた所でイカサマやってんだろって難癖付けて大暴れ

【恫喝】【存在感】で
「ふざけんな!イカサマだろイカサマ!!こんなに負けるわけねーだろ!客バカにしてんのか」
で派手に目立って暴れる
その辺の椅子やら机やらあるもんなんでも投げて
掛かってきた奴は殴り飛ばして
兎に角、力の限り暴れる
攻撃されて…最悪切られたり刺されたりしても
【覚悟】【激痛耐性】で耐える
「しゃらくせぇ、この程度きくわきゃねぇだろ、責任者出てこい責任者ぁ!!」
最初から攻撃される方向に持って行って捕まる
どうせだから賭場が運営不能になるまで暴れる
最後っ屁で賭場の柱に【捨て身の一撃】倒壊しねぇかな?



 褌姿の男たちが家路につき二人の美女が行方をくらませた賭場の入口に 「さがしびと」とでかでかと書かれた木札片手に居座るのはトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)優しさをにじませ行き交う人に大声で声をかけ続けるが誰ひとりとして脚を止めてくれる者はいない。皆足早に立ち去っていく。その理由は如何せんトリテレイアの容姿が悪かった。3m近いトリテレイアの身長はサムライエンパイアでは少々浮いていた。
「そこの貴方、この賭場で行方不明になった方のことを知りませんか?」
「はぁ?なんだよ……ってうわデケェ!」
 トリテレイアが声をかけたのは空の徳利を左手に下げた男、予知に出ていた父親だった。
「……しらねぇよ。俺はなんにもしらねぇ」
 父親ははトリテレイアの制止を振り切り賭場へと入ろうとする。
「おっと、ちょっと待つっすそこな御仁」
 声をかけたのはモルツクルス・ゼーレヴェックス(近眼の鷹・f10673)だ。モルツクルスの凛とした佇まいに父親は一瞬たじろぐが害意がないことを察し警戒を緩める。
「なんだよ兄ちゃん。あんたにゃ関係ねーだろ」
「確かに自分には関係ないっす。でも関係ある人はいるはずっすよ」
 父親の表情が一瞬歪む。この男も理解はしているのだこのままでは何も事態は好転しないことを。だが男にはどうすればいいかわからなかった。そして酒と博打に逃げてそのまま抜け出せなくなった。娘にもこんな自分の姿は見られたくないから家からも足が遠のいた。
「あんたも分かってるはずっすよ」
「そうです、貴方にも守るべき人がいるはずです」
 モルツクルスの言葉にトリテレイアが同意する。
「俺の…守るべき人……」
 父親の脳裏に浮かぶのは母を失いながらも健気に家の仕事をしてくれる娘の顔だった。あの娘はこんな父親のことをまだ信じてくれている。
「目ぇ覚ますっす。……ここで退かなきゃ後悔するっすよ」
「俺は…俺は……」
 男の左手から徳利が零れ落ち地面に叩きつけられ割れる。俯き、震える両の手を男は握りしめ意を決したように男は顔を上げる。
「なぁあんたら聞いてくれ。俺、気がついちまったんだ」
「!?なにをっすか!」
「この賭場で消える奴らは―――」

 ガッシャーーーーーン

 割と核心を突くはずだった父親の発言は賭場の中から入口を突き破り襲来した空の徳利が頭部にクリーンヒットしたことによりインターセプトされた。
「うおぉぉぉぉ!お父上大丈夫っすか!?」
 急いで駆け寄るモルツクルスだったが既に父親の意識は彼方へ飛んで行った後だった。
「ふざけんな!イカサマだろイカサマ!!こんなに負けるわけねーだろ!客バカにしてんのか!!!」
「なんだこいつやべぇぞ!逃げろ!」
「金が!俺の金が!」
 賭場の中から外まで響き渡る怒号の主は嶋野・輝彦(人間の戦場傭兵・f04223)だった。イカサマのカモにされ有り金全部巻き上げられた輝彦は怒りのままに派手に暴れまわる。周囲の人間を殴る、蹴るは当たり前。目につくものは投げ飛ばす。兎にも角にも暴れ続けるその姿はさながら暴力の嵐。暴れまわる輝彦を止めるために裏から増援が続々と来るが誰も輝彦を止めることはできない。遂にはドスまで持ちだされ輝彦の身体を斬りつけ刺されるがその程度ではこの嵐は止まらない。
「しゃらくせぇ、この程度きくわきゃねぇだろ、責任者出てこい責任者ぁ!!」
 留まること知らぬ暴力の嵐はその体力が続く限り暴れ続ける。しかしその叫びも虚しく親元は姿を現さない。下っ端たちが嵐に巻き込まれ吹き飛ばされていく。


 そんな中下っ端たちの新たな絶望を告げる音が聞こえる。

 ぶぉぉぉぉぉんとけたたましいエンジン音と共に現れたのは超未来変形屋台バイク【IZAKAYA:げんちゃん】に乗り込みハンドルを握るゲンジロウ・ヨハンソン(腕白青二才・f06844)とその後ろに乗るタンケイ・オスマンサス(魅惑のシンフォニア・f08051)そしてバイクのハンドルの上で風を切りながら腕を組み仁王立ちするのは神宮寺・絵里香(雨冠乃巫女・f03667)だ。
「かっちゃま!大丈夫か?」
「問題ない。そのまま突っ込んでいいぞ」
 よくない。
「えぇぇっ!?大丈夫なんですか!?」
 タンケイの至極まともな疑問を余所にゲンジロウはバイクのアクセルをさらに吹かす。目前に賭場の入口が迫るが先程の輝彦の暴れっぷりのおかげで戸は既にぶっ飛ばされている。問題しかなくゲンジロウはバイクのまま突っ込んだ。
 「「「「「な、なんだぁぁぁぁぁぁ!?」」」」」
 突然の未知の来訪者に戸惑う下っ端たち。初めて見た鉄の馬に対して驚きを隠せないがそれでも職務は全うしなければならないのが下っ端のかなしみ。輝彦に投げ飛ばされ殴られ蹴飛ばされても新たな侵入者に立ち向かわなければならない。
「よっ、と」
 賭場へと突っ込んだバイクから飛び降りた絵里香は大きく息を吸いこみ。
「オイ、馬鹿共!怪我したい奴はどこのどいつだ!」
 と一喝した。既に怪我をしている下っ端たちはできれば前へ出たくはなかったが輝彦と絵里香。見た目で判断するなら絵里香にやられる方がいい、そう思った下っ端たちは我先にと絵里香の元へ殺到する。真に恐ろしいのがどちらか知らずに……。
 次々と迫りくる下っ端たちを絵里香は片っ端からぶん殴る大立ち周り。先程までの暴力とは違い理に従い術理を行使する武術は的確に下っ端たちの身体を痛めつける。流石に武器は持ちださないが下っ端相手では素手で十二分に事足りる。絵里香の身体を掴みに来る下っ端の腕を取り、関節を決め、投げ飛ばす。技をかけるのが面倒な時は股下を蹴りあげ金的で意識を奪う。男に対する悪魔がここに降臨した。

 下っ端たちが絵里香にボコされている間にゲンジロウはバイクを変形させ居酒屋屋台を展開、絵里香にボコられた下っ端たちに声をかけ酒を勧める。
「おーいどしたどした。こんなところでへばってちゃいかんぞ?ほれ、これでも飲め」
 そう言ってゲンジロウが差し出したのは特別につんよい純米酒。
「ほれ、おとこーならいっきいっきいっき!」
 居酒屋のおっちゃんのよくわからないコールになんだか乗せられ下っ端はそのまま一気に酒を飲み干す。サムライエンパイアのこの時代にはまだ存在しない精米歩合95%の純米酒。味わったことのない飲みやすさに下っ端は勢いよく飲んでいくが……。
「ごはっ!」
「ぶーっ!」
「ガクッ」
 この時代の酒とは根本的に度数が違う。水で割られていない純粋な純米酒は次々と絵里香の手から生き残った下っ端たちをノックダウンさせていく。
「ゲンジロウはオレの分の酒とっとけよ」
 こちらを見ていないはずの絵里香からゲンジロウへと注文が飛ぶ。
(後が怖いから神宮寺分の酒は残しとくか…)



(ふふ、皆さん存分に暴れてらっしゃいますね…私もお仕事お仕事っと)
 バイクのタンデムシートから降りたタンケイは絵里香にボコられ、ゲンジロウの魔の手によってお酒に溺れる下っ端たちを介抱して回る。
「もう大丈夫ですからね、安心してください?」
 そう、微笑みかけながら自身のシンフォニアとしての力を使うため優しい歌声で歌い始める。
「て、天使だ……」
「女神様……」
 今まで女性に優しくされたことなど母親以外にない下っ端たちには先の絵里香の一件もありタンケイがまるで救いの神のように見えてきた。実際には天使(オラトリオ)なのだが。下っ端たちの心をとんでもねーマッチポンプで掴んだタンケイは聞き込みを開始する。
「ところで、最近ここら辺で行方不明になった者がいると聞きました。些細な事でも構いません、何かご存じないですか?」
「行方不明者……お前知ってっか?」
「親元がなんかやってるあれのことだろ」
「ああ、なんとか藩の関係者を捕まえろってやつか」
「悪いが俺たちはそれくらいしか知らねぇな」
「いえ、十分です。ありがとうございました」
 タンケイがお礼を言いながらにこっと微笑むと下っ端どもの頬がだらしなく緩む。営業スマイルと知らず憐れな男たちである。
(藩の関係者……ですか)
 興味深い証言が聞けたタンケイが発言の真意を思案している彼女を呼ぶ聞き慣れた声が。
「タンケイ殿!」


「ここか?」
 そう言って賭場の奥へと繋がる扉を蹴破る絵里香。下っ端どもを十分に痛めつけた絵里香は情報を聞き出すため親元を探していた。
「賭場から奥に繋がる扉……まぁ十中八九そうじゃろ。逃げ出す準備をしとるかもしれんから急いだ方がいいぞ」
「わかってる」


 賭場から繋がる扉の一番奥、親元はまだそこにいた。子分と共に浅ましくも今までの儲けをかき集めていたせいで今の今まで逃げられなかったようだ。
「お前が一番ここで偉そうだな」
「ひっ」
 賭場での騒動は聞こえていたのだろう絵里香の声を聞いた瞬間、腰が抜けたのかみじめに這いずり回る親元の腕を絵里香が掴む。
「腕折られたくなかったらさっさと吐け」
 親元の腕の関節を極め捻りあげる。
「いだっいでででで!言う!言うからやめてくれ!」
「駄目だ、情報が先だ。お前らが何が目的で誰を狙っているのか全部吐け」
 そう言ってさらに折れないギリギリまで関節を極める。
「センセイ!センセイに言われたんだ!海坂藩の関係者を狙えって!」
「センセイってのは?」
 締めあげられた親元の腕がギチギチと鳴る。
「この近くの村にある寺に出入りしてる虚無僧の格好した人だ!名前も顔も知らねぇよ!金くれるからやっただけだ!」
「他は?」
「ひぎぃっ!ねぇよもうなんもねぇ!俺はもうこれ以上なんもしらねぇよ!」
 その言葉を聞いた絵里香は親元の関節を決めていた親元の腕を離す。
「ひぃぃぃ」
 腕を抑えながら裏口から逃げていく親元だったが絵里香は追おうとはしなかった。猟兵の存在を知りここまで痛めつけられたのだ。当分は懲りて悪さはしないだろう。そんなことより。
(センセイを名乗る虚無僧か……臭いな)
 先程親元の口から出た『センセイ』という存在。おそらく事件に深く関わる重要人物だろう。出入りしている寺とやらを調べてみる必要がありそうだ。



「タンケイ殿!お助けっす!」
 タンケイを呼びとめたのはモルツクルスだった。先程までの騒動に巻き込まれぬよう父親と一緒に避難していた。しかし知己の声を聞き助けを求めるべく現れた。
「どうしました?モルツクルスさん」
「この人を助けて欲しいっす」
 そう言ってモルツクルスは頭部へ衝撃を受けて意識を失った父親をタンケイに見せた。
「うーん、脳震盪かなにかで意識を失ってしまっている様ですね……」
 特に命に別状はないと判断したタンケイは歌を一節口ずさみ父親の傷を癒す。タンケイの歌を聞いた父親はほどなくして目を覚ます。
「あんたらが助けてくれたのか?」
「自分じゃなくてタンケイ殿っす!」
 ニコニコとタンケイの名を挙げるモルツクルス、先程までの荒事から父親を守ったのはモルツクルスに他ならないしタンケイを見つけたのもモルツクルスだ。しかし彼はそれを誇らない。自分よりもっと凄い人がいるんだとそう誇る。
「病み上がりの所申し訳ありませんが一つお訪ねしたいことが。あなたは昔どこかの藩に仕えていませんでしたか?」
 タンケイのその言葉を聞いた父親は衝撃を受ける。なぜそれを知っているのか、驚きを隠せない。そしてそれは意識を失う直前モルツクルスとトリテレイアに伝えようとしてた行方不明者の共通点だった。そう、この父親が仕えていた藩こそが―――。
「ああ、俺は海坂藩に仕えていた。と言っても昔の話だが」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『お家騒動』

POW   :    用心棒として武士の護衛

SPD   :    寺に忍び込んで虚無僧の正体を調べる

WIZ   :    世継ぎの出生や国家老との関係を調べる

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 無事に父親を確保し金山の場所も特定した猟兵たち。これはただの借金返済のための労働で金山へ送られたいたのではなくもっと別の問題が発端だと発覚した。
 父親が言うには海坂藩は少し前に世継ぎ問題で家臣が二分されその余波で藩を去ることになったのだと言う。狙われる理由はまだ分からないがおそらくまだ父親は狙われている。襲撃があるかもしれないので護衛の人員を割いた方がいいかもしれない。
 そして行方不明者が集められている金山だがその場所から管理者は国家老だと断定された。多少の警備はいるようだが猟兵であれば問題なく行方不明者を助け出せるだろう。
 そして『センセイ』と呼ばれる虚無僧の存在。彼の目的は一体何なのか。
 国家老と『センセイ』と海坂藩が絡むこの行方不明事件行き着く先はどこなのか……。
宇冠・由
お母様(f00173)とは一旦別行動

私はお城に忍び込んで、お家騒動やセンセイとやらが絡んでないか調べます

ビーストマスターの力で烏に私を被せて空から侵入
【可愛いは正義】でハムスターを数匹放ち、場内で変な噂がないか、不審者が出入りしてないか調査

同時に私は屋根裏伝いで城をあちこち散策しますわ、マスクで浮いてますので足音しないし安心です
目指すは偉い人の部屋、もしくは御用部屋(会議室)
場所なら城住まいの虫や鼠が知っているでしょうし、ついでにお家騒動について知ってないか聞きます
(さてさて、小金色のお菓子などはありまして……?)

それと重要そうな書物か板書を持ち帰らなければ
鼠の群れをけしかけた隙に拝借します


モルツクルス・ゼーレヴェックス
【WIZ】
世継ぎの出生や国家老との関係を調べるっすかねえ

……具体的には
【世界知識】と【情報収集】と【学習力】で国家老と世継ぎについて市井で聞ける情報を頭に叩き込んでから

「御免、この屋敷の主人に目通り願いたいのだが」

国家老に会いに行くっすよ!

【礼儀作法】に【存在感】に【天下自在符】をもってすれば門前払いは無いっすよね!

本人でも、代理の上役でも、直接顔を合わせたらしめたもんっす!

この身に培った【コミュ力】全開にして情報聞き出してやるっす

軽いジャブから初めて、なんなら食事や酒の席まで優しく、時に強引にしけこんで、これでもかと接待!誠意!交渉!おべっか!

あ、でもヤバくなったら【光翼】でトンズラっす!


望月・鼎
むむー、何やら陰謀の予感がしますよー!
こう言う時は大胆に探ってみましょう!

先ずは国家老のお屋敷へ。
旅の巫女を装い【コミュ力】【情報収集】【誘惑】を駆使して門兵さんと世間話。
注意を引きつつ影の追跡者の召喚で作り出した影を向かわせ証拠となりそうな書類を探したり、土間で交わされる女中達の噂話なんかを探ってみます。
門兵さんとも色々話して情報を聞き出し、怪しまれない内にさっさか退散です。
去り際に私の神社のお守りを差し上げて布教もしますかねー。

情報が得られればそれに従い、何も得られなければ夜にもう一度影を出して潜入ですねぇ♪

※アドリブ歓迎です!自由に動かしちゃってくださいな!



 ●父親として

「鼎殿、どうっすか?」
「だめですねー、さっぱりです」
 国家老のお屋敷へ向かう前に市井で情報収集をするモルツクルス・ゼーレヴェックス(近眼の鷹・f10673)と望月・鼎(宵闇の寵児・f02401)の二人、しかし思ったほど国家老の情報は集まらず捜査は難航していた。それというのも国家老の話を聞くと誰もが「民のことを考えてくれる素晴らしいお人」「困ったときはあの人に頼めばなんとかしてくれる」「あの人がいたからこの村は平和なった」「すき」など誰の口からも国家老を称賛する声しか上がらない。最後のは微妙なところだが。
「やっぱり直接行くしかないみたいですねー」
「そうなるっすか」
「であれば私は鳥にお願いして空から参りましょう」
 鼎とモルツクルスの後ろに浮く仮面の正体は宇冠・由(宙に浮く焔盾・f01211)。ヒーローマスクにしてビーストマスターである彼女であれば潜入もお手の物だろう。
「では私は陽動もかねて旅の巫女を装い堂々と正面から行ってみます」
「自分もお付としてお供するっす!鼎殿!」
 由と反対に鼎とモルツクルスは堂々と正面から旅の巫女を装い屋敷へ侵入する腹積もりだ。いざとなれば天下自在符を振りかざす。そうすれば門前払いはされないだろう。
「ではお二人ともご武運を」
「由殿もご武運をっす!」
「がんばりましょー!」
 二手に分かれてそれぞれ屋敷を目指す二組の猟兵たち。国家老の屋敷ではなにが待ち受けているのだろう……。



「止まれ!何奴だ。ここは国家老様のお屋敷であるぞ。それを知っての狼藉か」
 堂々と正門に現れた鼎とモルツクルスの二人。旅の巫女とそのお付を装った二人だったが門番もそう簡単には通してくれない。
「はい、もちろん知っています。私は旅を生業とし各地を回る巫女。国家老様の管轄であるこの地を訪れたからには国家老様に挨拶の一つでもしなければならないと思い参上した次第です」
(え?これホントに鼎殿っすか???)
 当社比3割増しでできる巫女オーラを放つ鼎。日頃はニコニコと笑っている彼女だがやろうと思えばこれくらいはできる子なのだ。
「……御免、我が主はこう仰っている。この屋敷の主人に目通り願いたいのだが」
 鼎のあまりの変貌ぶりに虚を突かれたモルツクルスだったが即座に立て直し鼎のフォローに入る。
門番も目の前の二人の存在感に圧倒され通してもいいかと考えるが自分の職務はあくまで門番。それを決めるのは自分ではない。
「……駄目だ、駄目だ駄目だ。いかに巫女とはいえいきなり来たものをおいそれと通すわけにはいかん。挨拶をしたいのであれば了承を得てから来るがいい。貴殿らなら問題なく通るであろう」
(ちゃんとお仕事してる偉い人ですねー)
 この門番は何を言ってもこのままでは通してくれない、そう感じ取った鼎はモルツクルスに目配せ一つ。
(了解っす!)
「失礼」
 モルツクルスは懐から天下自在符をちらりと門番に見せる。江戸幕府から猟兵たちに与えられたそれは鼎とモルツクルスの身分を証明し門番がこの二人を通さざるを得ない状況を作る出す鬼札だった。
「そ、それは!?……そういうことでしたか。お通りください」
 ここでも理由は聞かない門番。彼に通る理由は関係ない。目の前の人物がこの門を通るべき人物であれば彼は何も言わず門を開く。
「貴方はいい門番ですね。尊敬しますよー♪」
 こうして鼎とモルツクルスは門をくぐることに成功した。


 一方その頃、由は燕と共に空を舞っていた。
(この辺りでいいですよ。ありがとうございました)
 由は屋敷の屋根裏へとたどり着くとここまで運んでくれた燕と別れ、ハムスターたちを数匹放つ。彼らへの指令は二つ「近頃変な噂が流れていないか」「普信者の出入りの有無」だ。
(お二人は上手くやっているようですね)
 鼎とモルツクルスが注意を引き付けてくれているおかげで由はスムーズに行動することができた。由はそのまま屋根裏を伝い屋敷を散策する。道中すれ違う虫や鼠たちに聞き込みもしてみるが彼らは国家老の部屋には近づけないようだ。代わりに場所だけ聞くことができた。

(さてさて、小金色のお菓子などはありまして……?)
 国家老の部屋の天井裏へとたどり着いた由。そこから下を覗くが国家老の姿はそこにはなく、すでに蛻の殻だった。
(空振り……いえ、あれは……)
 由が部屋で見つけたのは一枚の絵。それは幼児が描いた絵のようで墨で描かれたそれは形もぐちゃぐちゃだった。そんな絵がこの場にあるのは似つかわしくない。由は近くにいた鼠たちにお願いしてそれを回収してもらった。
(これはお母様に見てもらいましょう)
 由は窓の外の木にいた烏に頼み母の元へとその絵を運ばせた。


(なにか面白い話はしてませんかねー)
 屋敷の中へと潜り込んだ鼎は女中たちを追っていた。噂話を聞くのなら彼女たちは最適な相手だろう。
(むむー!)
 土間へと向かう曲がり角の先、女中たちの話声が聞こえてきた。
「お館様は今日も外出?」
「そうみたい、ここのところ毎日ね」
「賭場があちこちに立っているって噂だからそれを調べてるんじゃない?」
 姦しく土間でお茶を片手に会話に花を咲かせる女中たち。どうやら彼女たちから聞きたかった情報が聞きだせそうだ。
(ごーごー影ちゃん!)
 鼎は影の追跡者の召喚で作り出した影をより正確な情報を得るため女中たちの元へと向かわせる。それに気づかず会話を続ける女中たちだったがしばらくして鼎の求めていたものを語りだした。
「昔からお仕事大好きだったけどさ。最近のお館様は見てらんないよ」
「お嬢様の一件からだね……」
「よしなよ、その話はもう」
(お嬢様ですかー。これは重要そうな情報ゲットです♪)
 これ以上の深追いは無用だろう。鼎はこそこそと屋敷を抜け出しあらかじめ決めておいた合流地点へと向かった。


 鼎と別れたモルツクルスは国家老に会うべく屋敷の中を進んでいた。怪しまれては天下自在符を懐からチラ見せさせて屋敷の奥へと進んでいく。
「ここっすね!」
 目当ての国家老の部屋を見つけたモルツクルス。だがそこは由も見た通り蛻の殻だった。
「残念だがお館様はすでにこの屋敷を出て行かれた。残念だったな猟兵の男」
 国家老の代わりに現れたのは国家老の側近だった。
「そうでもないっすよ。あんたに会えたっす」
 情報を聞き出すだけなら国家老でなくともよい。手っ取り早いから国家老の部屋に来ただけのこと。モルツクルスの目的を叶えるだけなら目の前の男で十分だった。
「いいんすか?このまま放っておいて」
「お館様が決めたことだ。我らに口を出せる問題ではない」
「問題っすよ。駄目な時は駄目という。それが正しい部下って奴っす」
「私は正しくなくともいい。お館様が満足されるのであれば……」
 この短い問答でモルツクルスは持ち前のコミュ力で察したことがいくつかある。お館様と呼ばれる国家老は少なくとも部下に慕われる善良な人間だった。その国家老の身になにか不幸が起きた。そしてその不幸を帳消しにする何かを今行っている。
(これはどう考えても金山とセンセイが関係してるっすよね)
「お孫様を守りきれなかった我らのせいなのだ……」
 ぽつりと男が溢した言葉でモルツクルスの中で今までの情報がつながった。お館様に起こった不幸は孫に関係するもの。海坂藩の跡目争い。金山に送られた男たち。そう、これは―――。
「復讐っすか」
 そこまでわかればもうここには用はない。国家老がここにいないということはしばしば目撃されるという村の寺だろう。そこで何かが行われているはずだ。この情報を伝えるためにモルツクルスは光翼を翻し合流地点へと翔んだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

宇冠・龍
さて、沢山の家族を不幸にさせる元凶を許すわけにはいきませんね

お家騒動で負けた側が金山送りにされている
センセイ(虚無僧)は恐らくオブリビオン

ではなぜ態々「海坂藩」を特別に狙う理由があるのか

「賭け事はほどほどにしてください、悲しむ方がきっといますから」
賭場で巻きあげたお金を金山送りにされた方々に返しながら、情報収集
特に対立側だった家老や上士などの立場が上の人について、お家騒動に不可解な点はなかったか

(凡そ誰かに唆されて財政圧迫したか、件の僧に弱みを握られているか)
念のため、今の藩中枢から何か得られないか確認
由(f01211)が持ち帰ったものに【枯木竜吟】を使用し、城で何があったか調べます


蜂蜜院・紫髪
心情:政治が絡んでおったとはのぅ…しかしそうなるとあの娘御、変な裏が無ければ良いが…ここは金山に連れ去られた者達を探しつつ奴らについて探りを入れるかの。多少暗いが目はいい方じゃ(【視力】【暗視】)なんとかなろぅ。
まずはどこからいこうかのぅ(【第六感】【野生の勘)こっちに決めたのじゃ。

行動:優先度①金山に連れ去られた行方不明者の探索・【救助活動】を行います。
②道中に見かけた浪人の所属や彼らと連絡を取っている存在がいないかを探ります。
おそらく人が居ても先に見つけられるとは思うけれど…【勘】に従ってすぐ【陽炎の術】を使う準備はしておきます。


フロッシュ・フェローチェス
さて、金山の場所は突き止めたけれど……今度は『センセイ』なる虚無僧の登場か。十中八九「中心」にいる――俄然気になるね。
ただスピード関連でもないなら、何も無いうちから突っ込むのは主義じゃない。
【地形の利用】で目を欺きつつ、必要なら【だまし討ち】で警備を絞め落とし……金山から数人を助け、その後【情報収集】出来ないかな?
特急も追い越せるアタシの【ダッシュ】なら集めた後でも充分、寺には迎えるし。

――事前に情報が入っているなら、虚無僧と繋がっているだろう人物を【追跡】するのも悪くないかな。
【野生の勘】が怪しいかどうかを知らせてくれるなんて、それに頼るなんてただの楽観視だしね。


神宮寺・絵里香
【POW】【猟兵商業組合連合】として参加〈心情〉 細々とした調べ物も嫌いじゃねーが、こういう警備とかそっちのがオレ向きな案件だろう。やって来た奴を締め上げて情報奪っていけば、首謀者の位置が分かる筈だ戦闘前に酒はなぁ…後で飲めばいいか〈対応〉宴会では酒を飲んだふり。騒ぐのは苦手だから少し離れて水を飲んでいる。棒と叢雲を両方用意。オブリビオンなら叢雲を使った白兵とUCを解禁しての全力戦闘を行う。ただの人間なら棒術で追い返す。 基本的には戦闘知識で相手の術理を解析して見切り、薙ぎ払いでまとめて倒し、敵の攻撃は見切り武器受けUCについては高速詠唱+麻痺+範囲攻撃。一通り倒して情報を得たら酒を飲み直す。


トリテレイア・ゼロナイン
【POW】
【猟兵商業組合連合】として参加

襲撃を座して待つのも非効率、策を練って刺客を誘い込みましょう。
父親の博打断ちを記念した宴会を開き、どんちゃん騒ぎの末に皆酔いつぶれたと思わせ、刺客の襲撃を誘い迎撃します。
父親へは「礼儀作法」「優しさ」を尽くして協力を仰ぎ必ずお守りすると誓いましょう

襲撃がきたら「暗視」で敵を把握しつつ父親を「かばい」「武器受け」「盾受け」でお守りします。「怪力」での大盾殴打で反撃しましょう。

宴会を真に迫らせるため「トリテレイア、ドジョウ掬いやります!」とか演技してみるのもいいですね。食事は飲食できないので頭部格納スペースに入れておきましょう。

…騎士の戦法ではありませんね…


タンケイ・オスマンサス
【WIZ】【猟兵商業組合連合】で参加
(モルツクルスさんのおかげで親父さんに信用してもらえてそうですね…)
ダイアウルフと共に親父さんの傍で護衛します。宴会が始まったらお酒を飲んだふりをして酔いつぶれる演技(お酒飲んだことないからバレバレの演技になるかも)
迎撃のメインは周りの猟兵さんにお任せして、親父さんに向かって来た刺客だけ対応します。

もし、迎え撃たれた刺客の中に金山へ逃げ帰るものがいれば【小さなお友達の御使い】を発動して追跡・情報を得ようとします。
「こっそりしっかりおねがいね…」


ゲンジロウ・ヨハンソン
【POW】【猟兵商業組合連合】で参加じゃ。
トリテレイアくんが何ぞ策があるようなんでな、ここはいっちょノッテみようかの。

酒にオツマミ用意して、まさに宴会じゃな。宇宙バイクの屋台装置で焼き鳥やら、すき焼きやら【料理】してもってこうかね。
宴会の音頭は任せておきな、伊達に居酒屋の看板背負ってねーよ。
【コミュ力】で親父さんの心もつかみ、皆もノリにのらせて素人演技がバレんようにしちゃろうか。

刺客の襲来にゃ【クイックドロウ】の素早さで武士様に【盾受け】と【かばう】、攻撃を受けても【覚悟】と【激痛耐性】で凌ごう。
「曲者じゃーであえーであえー!」と大声を張りつつ【怪力】の【手をつなぐ】で刺客を取り押さえるぞ。



 ●父親の真実

 一度合流し金山へ赴く面子を選定した猟兵たち。まずは場所を知っている蜂蜜院・紫髪(怠惰な蜂蜜屋・f00356)とフロッシュ・フェローチェス(疾咬の神速者・f04767)が選ばれ、そこに宇冠・龍(過去に生きる未亡人・f00173)が立候補した形だ。三人は紫髪の案内の元、金山へと辿り着いていた。
「アタシが先行して警備を締め落とす」
「それでわしと龍殿で」
「彼らを助けだす。ですね」
 行動指針が決まった三人はニ手に分かれて動き出す。フロッシュはその速度を生かし金山へと突貫する。
 木々に囲まれた山の中で木の陰に姿を隠しながらフロッシュは金山の中へと入っていく。金山の坑道の中はうす暗く入り組んでいて視界が悪い。そんな中で多少は鍛えていると言っても常人である警備にフロッシュの速度を視認しろと言うのが無理な話だ。フロッシュは一人、また一人と警備の背後にまわり悲鳴すら上げさせず締め落としていく。
「……次」
 ―――フロッシュのその姿はまるで蛇のようだった。


「ここら辺かのう?」
 紫髪の陽炎の術で龍と共に姿を隠しながら自身の第六勘と野生の勘に頼り薄暗い坑道を進んでいく紫髪。理論など全くない当てずっぽうだが行き先自体は間違っていなかった。ぐーたら美女の女の勘恐るべし。

 歩みを進める二人の前に現れたのは桶に水を入れそれを外へと運び出す男たち。おそらく標高の低いこの金山では孔が海水面より低くなると水が湧き出てしまうのだろう。それを掻きださねば皆溺れてしまう。しかしサムライエンパイアに未だ機械などはなくこの作業を人海戦術で行わなければならなかった。この作業を男たちは休むことなく夜昼関係なく続けねばならないそうしなければ皆に明日はないのだ。
「……惨い」
「これはしんどそうじゃ。さっさと助けてやるとするかのう」
 よく見ると男たちの足元には鎖が繋がれていた。強制労働から逃げ出さないようにとの配慮だろうがそんな物は猟兵であるこの二人には関係なかった。龍は自身の氷風の槍で男たちの足を繋ぐ鎖を破壊していく。
「な、なんだ、あんたたちは」
「助けに…きたのか?」
 男たちは思いがけない来訪者にどよめき立つ。
「海坂藩、という藩の関係者の方を御助けに参りました。ここにいらっしゃいますか?」
「海坂藩……ああ、あの一番奥に入れられてる連中か」
「ここにはいねぇよ。あいつらはもっと奥も奥だ」
 ここには海坂藩の関係者はいなかった。男たちの話ではたまに連れてこられる武士の様な男たちはもっと奥につれていかれているらしい。態々そんなことをするということはそれ相応の理由があるのだろう。その理由こそが今回の件の核心に迫る一手だと龍は直感した。
「少ないですがこれをもってご家族の元へお帰り下さい。きっと帰りを待っています」
 先の賭博で儲けた金子を配りながら男たちを解放していく龍。自身の境遇からも離れ離れの家族というものが我慢できなかったのだろう。男たちは感涙の涙を浮かべながら金子を受け取り龍と紫髪が来た道を辿って外へと逃げて行った。

「そんなことをしてもあ奴らはまた博打でスルかもしれんぞ?」
 逃げる男たちの背中を呆れるように見つめながら紫髪は呟いた。
「それならそれで構いません。家族の元に帰るのが大事なのです」
「そんなものかのう」
「海坂藩の方々は奥にいるとのことでした。先を急ぎましょう」


(……警備はあらかた倒したかな?)
 周囲には既に人の気配はない。警備の人間は倒し切ったようだ。奥から逃げ出す男たちが来る前に倒し切れてフロッシュは安堵する。速度に自信があるとはいえ気づかれることなく音もたてず無傷で相手を無力化するのは骨が折れたようだ。
「さて、紫髪と龍に合流しよう」

 男たちを解放しながら三人が辿り着いたのは坑道の最奥。そこには粗末な道具で金を掘り続ける男たちがいた。否、刃先の欠けたツルハシではもう既に道具とは呼べない。それでも男たちはそれを使って金を掘り続けていた。
「おっしゃぁ!俺の金が一番でけぇ!」
「はぁ?こっちの金の方がでけぇからぁ!」
 男たちは意外と元気そうだった。というかめっちゃ元気だった。なんならツルハシ使わずに素手で金を掘ったりしてた。
「「「……」」」
 三人は絶句した。さもありなん。
「あれ?お嬢さんたちどなた?」
「お客様だぜぇぇぇぇい!!」
 坑道に鳴り響く男たちの声。ぶっちゃけうるさい。
「え、えーっと……貴方達は海坂藩の方々ですか?」
 意を決して口を開いたのは龍だった。この三人の中で最も対人経験値が高いからこそできた行いだろう。
「元、だけどな。俺たちはもう海坂の人間じゃないんだ。色々あってな」
「バラバラになっちまったけどこうしてまた会えるとは思わなかったぜ。こんな場所だけど」
 元、とはどういうことだ。センセイと呼ばれていた虚無僧は海坂の人間を探していたのではないのか?
「ちょっとその辺り詳しく聞かせて欲しいのじゃ」
「助けてくれるってんならもちろん構わねぇよ?俺たちは用済みになったから放逐された人間なんだよ、海坂から」
「いろいろとヤバい案件を扱っててな。ご当主が変わって厄介払いされたわけだ」
(?…厄介払いされている奴らをなんで態々……!?逆か!厄介払いされる理由に答えがあるんだ)
 フロッシュの閃きは的を射ていた。今回のこの一件の答えはそこにある。
「あんたたちが最後にした仕事は?」
「……現ご当主の弟君の暗殺だよ。直接手を下したのは御頭だけどな」
 この男たちは海坂家の元暗部。影に隠れることを生業とした者たち。しかし仕え続けてきた家に裏切られた憐れな男たちでもある。
「弟君は国家老様のお孫さんだった。ご当主が当主になるには後ろ盾が強すぎて殺すしかなかった」
 点と点が繋がった。これは孫を殺された国家老の復讐だったのだ。だから今海坂藩の者たちではなく直接手を下した元暗部の者たちが狙われた。しかし男たちの言葉には気になる点が一つ。
「ん?ここに御頭とやらはおらんのか?」
「いねぇよ。あの人はここにはいねぇ。俺たちと違って所帯持ちのあの人はいちゃいけねぇんだ」
「……申し訳ありませんが御頭様のお名前を伺っても?」
「ああ、―――だよ」
 それはあの父親の名前。そう、彼こそが復讐の本命だったのだ。この金山は彼を見つける過程で捕まえた元暗部の人間を収容し過酷な労働により責め苦を与えるための場所だった。
「ヤバいねこれは」
「すぐに戻りましょう!」
「お前さんたちも逃げるのじゃ!」
 既に男たちを繋いでいた鎖は破壊してある。だが男たちを逃がしている時間はない。すぐにあの父親の元へ急がねば。三人は身を翻し来た道を全速力で駆け戻る。
「―――先に行く」
 その中でもとりわけ速度に秀でたフロッシュが速度を上げようとしたところで静止の声がかかる。
「待ってください!あれは」
 龍の元に飛来する一羽の烏。その口には墨で書かれた一枚の絵が咥えられていた。
「なんじゃ?あれ」
「おそらく由からのメッセージでしょう。視てみます。『眠りし記憶に宿りし霊よ、今こそ蘇り我が前に現れいでよ』」
 烏から絵を受け取り龍は【枯木竜吟】を発動させる。浮かび上がってきたのは一人の男児とその母親、そしてその祖父らしき男性。しかし次の瞬間男児と母親の姿は消えひとり悲しむ祖父だけが残った。そして祖父の顔は鬼の形相へと変わりどこかの寺へと入っていった。
「どういうことじゃ?これは」
「おそらくあの男性が国家老、母親がその娘で男児が孫だったのでしょう。そして娘と孫を殺され国家老は復讐を誓った」
「なるほど、それなら辻褄が合うね。じゃあ寺に直接行った方がよさそうだ」
「ええ、私たちもすぐに行きます。フロッシュさんは先行してください」
 フロッシュは龍のその言葉の最後が耳に届く前に音を置き去りにした。
(今の話だとセンセイとやらの存在が分からぬ。件の虚無僧は何者なのじゃ?)
 紫髪の脳裏に浮かぶ一つの疑問。確かにそうだ。これまでの推察にセンセイと呼ばれる虚無僧の存在はない。もしかしたら虚無僧とは変装した国家老かもしれないがもしかしたら……。
(嫌な予感がするのう)
 脳裏によぎった不安を余所に紫髪は龍と共に坑道を駆ける。国家老が出没すると言う寺へと向かって。


●時は来たりて

 一方その頃件の父親は猟兵商業組合連合の面々に護衛されなぜだか親子の家の庭先で宴会の真っ最中だった。本当に何故だ。
 父親の賭博断ちを祝して開催されたとの宴はその実、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)により仕掛けられた罠だった。襲撃を待つのではなくわざと隙を作り襲撃させるというトリテレイアの作に他の面子も賛同した結果このような形になった。ゲンジロウ・ヨハンソン(腕白青二才・f06844)の手により作れた数々の料理と宇宙バイクの屋台装置から出てきた様々な酒。居酒屋の店主として培われたトークスキルとコミュ力でゲンジロウは場を盛り上げる。哀しいかな庭のど真ん中でドジョウ掬いを行っているトリテレイアを見てくれているのは娘だけだった。
「凄い凄い!騎士様おっきーい!」
「これがトリテレイア流騎士のドジョウ掬いです」
 ワイワイ騒ぐ男性陣とは対照的に神宮寺・絵里香(雨冠乃巫女・f03667)は少し離れた所で酒と偽装した水を飲み、何かあれば即座に取れる位置に棒と叢雲を配置する。程よい緊張感でリラックスしている絵里香と違いやや緊張した面持ちで相棒のダイヤウルフと共に父親の傍で護衛をするのはタンケイ・オスマンサス(魅惑のシンフォニア・f08051)。この世界では成人している年齢とは言え未だ酒を飲んだことがない彼女の飲酒演技は傍から見れば少々怪しいがそれくらいであれば場の雰囲気が流してくれるだろう。
「で、さっきの話は本当か?」
「嘘なんてつかねぇよ。俺は海坂藩暗部の頭目だった。そしてご当主の弟君を暗殺した。全部事実だ」
 ここにいる面々も父親自身の口から海坂藩を去ることになった理由を聞いていた。
「まさか親父さんにそんな過去があるなんてのう」
「過去は過去だ、もう関係ねぇよ」
 そうぶっきらぼうに言い放ちゲンジロウから差し出された酒を一気に飲み干す父親。しかしその目は以前とは違いしっかりと娘の方に向けられていた。大事なものを慈しむそんな目だ。口こそ悪いが父親は猟兵たちに感謝しているのだ。あのままだったらどうなっていたのかわからない。一つ分かることは今この場にはいなかったであろうことだけだ。

 宴も長引き父親は酔い潰れて寝てしまった。本来であれば縁起という予定だったのだが疲れも溜まっていたのだろう。本当に寝てしまっていた。
「もう、お父さんったらしょうがないんだから」
 そう言って布団をかける娘の顔はにっこりと笑っていた。宴会の途中でも言っていたが以前の様な父が戻ってきてくれて嬉しくて仕方がないらしい。
「嫌ではないのですか?父親が人の命を奪っていたということが」
 自身の中の騎士道物語ではそれは悪とされる行為断罪されるべき行いである。しかしウォーマシンとしての自分はそれを肯定している。この二律背反に悩むトリテレイアは堪らず娘へと問いかけてしまった。
「嫌じゃないですよ。だってお父さんだもん。お母さんは言ってました「お父さんは私たちのために大変な思いをしてるんだよ」って。私もそう思います。だって私だったらできないですもん。家族のためだからってそこまでは絶対できません」
 娘のこの言葉にトリテレイアは感銘を受けた。行動の基準とは自身だけで決めるものではなく他者によっても決まるものなのだと痛感した。もっと理想の騎士に近づきたい。そう思った。
「……来たぞ、奴さん」
 何者かの気配を察知した絵里香は傍に置いてある棒を取ろうとするがその先の叢雲に手を伸ばす。この気配は人間ではない。オブリビオンのものだと直感した。
 絵里香が叢雲を握った次の瞬間、兵を飛び越え現れたのは虚無僧。誰に言われなくても分かる。こいつがセンセイだ。
「曲者じゃーであえーであえー!」
 いち早く動き出したのは絵里香とゲンジロウの二人。二人は虚無僧に向けてほぼ同時に動きだす。事前の取り決め通りタンケイは父親をトリテレイアは娘を守ろうとしたため一瞬遅れて父親の元へと向かう。
 「……」
 虚無僧は一言たりとも声を発しない。それどころか呼吸をしているかどうかすら怪しいほどだ。しかしその動きは超人染みており歴戦の猟兵である絵里香とゲンジロウですら捉えきれない。
(こいつ……素人か?)
 絵里香の培ってきた戦闘知識から導き出された結論はそれだった。そう、この目の前の相手の動きからは武術として洗練された何かを感じない。まるで子供が癇癪で暴れているかのようだ。スペックにだけモノを言わせた超人機動。
「そーれ捕まえたぞっと…うぉお!」
 手を繋ぐ要領で虚無僧の着物の袖を掴んだゲンジロウだったがその怪力も虚しく気づいた虚無僧の圧倒的膂力の前に振りまわされてしまう。ゲンジロウほどの体躯をいとも簡単に振りまわす見た目からは想像できないその膂力。しかしやはりそこから術理は感じられない。
(もしかしてこいつ……)
 二人の考えは一致していた。絵里香とゲンジロウの経験が目の前の虚無僧の真実を探り当てる。
「ひぃっ!」
 目の前に広がる異様な光景。薙刀・叢雲を所狭しと振りまわす絵里香とその肉体を武器として虚無僧を拘束せんとするゲンジロウ。そしてその二人をあざ笑うかのように逃げ続け避け続ける虚無僧。こんな物を見れば腰を抜かすのも仕方がない。
 しかし虚無僧はこの瞬間を見逃さなかった。父親を守るべく動いたタンケイとトリテレイア、そして自身を狙うべく追ってくる絵里香とゲンジロウ。この二組の距離が最も離れ、娘の傍に誰もいない状況を虚無僧は見逃さなかった。虚無僧は急に動きを変え娘の元へと差し迫る。
「チッ、『神々の王の裁きよここに!魔を滅ぼせ因達羅の矢よ!!』」
 絵里香もその動きに対応し虚無僧に向け印を切り【因達羅乃矢】を発動させる。それに伴い天から蒼い稲妻が降り注ぐ。詠唱こそ短縮し高速化させたが威力は十二分にある。雷光は周囲を照らし虚無僧をも飲み込み命中。
「これやり過ぎじゃねぇか!?」
「死なない程度には威力は抑えた。しばらく身体が痺れて動けない程度だ」
 稲妻による煙が張れるとそこにはぐったりと庭に横たわる虚無僧の姿が。
「やりましたね。ご苦労さまですお二人とも」
 父親を守護していたトリテレイアが労いの言葉を投げかける。しかしこの状況に違和感を覚えるものが一匹。タンケイの相棒ダイヤウルフだ。しきりに周囲の匂いを嗅ぐ知らぬ臭いが一つ増え先程まであった匂いが一つ足りない。
「どうしたの?そんなに臭いをかいで」
「……おい、娘はどこだ」
 最初に気がついたのは絵里香だった。そう、娘の姿が見当たらない。雷光による眩しさも煙も消えたにもかかわらずその姿がどこにもない。
『娘は妾が預かった。そこで寝こけている男の今最も大事なものをな』
 身体が痺れて口も動かないはずの虚無僧の元から聞こえてくる女の声。そう、この虚無僧は真の黒幕であるこの声の主に操られていたに過ぎない憐れな男に過ぎなかった。
『お主らが妾の傀儡と戯れている間に浚わせてもらった』
 おそらくこの虚無僧もまた陽動。雷光に目がくらんだ隙に別の傀儡を使い娘を浚ったのだろう。だからダイヤウルフの知らぬ臭いが一つ増えていたのだ。
「こっそりしっかりお願いね…」
 そのことに気づいたタンケイは自身の【小さなお友達の御使い】を使い臭いの後を追う。これで娘がさらわれた先が分かるはずだ。
『その男が目覚めたら伝えておけ。お前は娘を失うのだと。娘だけでも助けて欲しくば妾の元に来てみよ、と』
 その言葉を最後に虚無僧からナニカが抜ける。おそらく操っていた女の支配が終わったのだろう。声ももう聞こえなくなった。
「どうだ?タンケイ」
「はい、しっかり追えています。臭いはちゃんと覚えていますから」
「これは気張る理由が増えたのう」
「……守ります。親子共々」


 タンケイの【小さなお友達の御使い】が行き着いた先は国家老がよく訪れると言うお寺だった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『怨霊姫』

POW   :    怨霊乱舞
【無数の怨霊の群れ】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    怨霊傀儡
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【怨霊を憑依させることで、自らの傀儡】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
WIZ   :    怨霊家臣団
【レベル×1体の、怨霊武者】の霊を召喚する。これは【刀や槍】や【弓矢】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠天御鏡・百々です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 この一件の黒幕は国家老だけではなかった。幼い我が子と共にその命を奪われた母親が怨霊達の姫となり黄泉帰っていた。
 寺へと集まった猟兵たちを待ちかまえるのは怨霊姫と国家老。
 国家老は戦闘には参加できないがこの復讐劇を最後まで見届けるつもりだ。父として。
 それに相対するは猟兵たちと元頭目。戦えぬことなど分かっている。だがお願いしますと猟兵たちに頼んで終わりではすまないのだ。だからこそここに来た。一度は手放しかけた大事なものを守るために。父として。


 これは一組の父と娘による復讐劇。その相手もまた父と娘。
 ―――猟兵たちよこの『父と娘』を救うのだ。
 怨霊姫と猟兵たちが対峙する寺で言葉と刃を交える二人の父親。片や娘を、孫を失い復讐を誓う国家老。片や汚れきった手で大事なもの守るために再起した元頭目。一振りの日本刀と一対の忍者刀が幾度となく交わりながらその口から言葉が止まらない。
「あんたは本当に娘や孫が大事ならあの姫さんの我儘なんて聞かずに大事に守ってやればよかったんだ……つ」
「それを君が言うのかね。我が娘と孫の命を奪った張本人である君が」
「そうさ、その俺だから言うんだ。あんたという後ろ盾さえなければあの姫さんだって跡目争いなんて馬鹿なことは考えなかった。順当に当主は決まりあんたの孫はそこそこ自由に暮らせたはずだ。でもあんたはそうしなかった。息子を当主にしたいという姫さんの我儘に乗っかったあんたのせいで俺たちは弟君を殺すしかできなかったんだッ!」
 元頭目の叫びと共に放たれた一閃が国家老の身体を後退させる。責任転嫁、そういわれればそうかもしれない。しかし元頭目の言ったことも事実だった。国家老が手を引けば跡目争いなど起こらなかった。だからこそ国家老は後悔した。
「娘が馬鹿言ったら叱ってやるのが親だろう……」
「―――ッ!」
 後退した国家老が一足を持って元頭目へと刀を振りおろし。両手の忍者刀を交差させなんとか防いだ元頭目だったが下からくる腹を狙った蹴りには対応しきれずその身体を蹴り飛ばされる。
「理屈ではそうだろう。確かに私が愚かだった。私のせいで娘と孫の命は失われたのかもしれない。だがもうそんなことは関係ない。娘が黄泉帰り私に復讐という生きる理由をくれた。それだけで私は十分だ」
「ゲホッ、やっぱり大馬鹿野郎だぜ……あんた」


 ―――父の戦いはまだ始まったばかり。
宇冠・龍
由(f01211)と共に戦います

怨霊姫、貴女は私と似ています。似すぎている程に
目の前で夫を失った、お腹にいた子を失った。私も一歩違えば貴女側だったのかもしれない
同じ復讐者でありながら唯一異なるのは、未来への渇望も同時に見出したこと
貴女が行おうとしているのは、自分と同じ過去を増やすだけの行為、絶対に止めさせて貰います

【竜逢比干】で亡き夫の霊を召喚
氷属性のブレスによって怨霊の群れや怨霊武者を全て悉く凍てつかせます

貴女の呪詛(おもい)と私達の呪詛(おもい)、どちらが上か勝負をしましょう

由が持ってきた一枚の絵、ここにも、きっと大事な想いが沢山残っているはず
お孫さんが力を貸してくれるかもしれません


宇冠・由
お母様(f00173)と共に戦いますの

私も宇冠の名字を頂いた家族。怨霊姫の境遇は、とても他人事とは思えません
だからこそ、ここで悲しみの連鎖を終わらせないといけないのです

【七草仏ノ座】を使用、その巨躯を以て相手の注意を引き、他の方が攻撃しやすいようにします

この身は他者をかばう為の盾
今日の私は心も身体も燃えています【七草芹】にて更なる力を、そして攻撃されても【七草繁縷】で妨害

他の方々への攻撃を私にひきつけ、かつ戦っている父親二人が意識を失う前に、遠くに放り投げ戦場から遠ざけることで怨霊傀儡を回避
「荒っぽいですが我慢してくださいませっ」

もし寺の中や娘さんに被害が及ぶならオーラ防御で防ぎます


蜂蜜院・紫髪
心情:殺し殺され因果は巡る…やはり政治に関わるのは良い事がないの。儂は娘御の奪還と保護に向かうとしよう。
しかし国家老殿は見事に誑かされておるのぅ。姫君に見えるオブリビオン…まぁ仕方ない事かの。親はいつでも子に甘い。
あの物の怪が復讐だけで終わるような物に見えておるならよほど演技がうまいのじゃろうな。

行動:【陽炎の術】でタンケイ殿(f08051)と連携して娘の奪還と保護を行います。
向かってくる攻撃には人形での【かばう】【武器受け】【オーラ防御】で対応します。
必要な時があればタンケイ殿のUC【誘惑の芳香】を【厄受人形】で借用し【呪詛返し】で発動する。


神宮寺・絵里香
【猟兵商業組合連合】で参加

〈心情〉娘を攫われたのはこっちのミスだ。その分は槍働きで返させてもらう。余所見をしてると、オレの破魔の雷に焼かれて死ぬぞ馬鹿姫!生臭さだが神宮寺は巫にて尼僧。成仏させて骸の海に返してやる。

〈戦闘〉タンケイ達の娘の救出を支援するために派手に立ち回る。薙刀に【電気属性】【破魔】を付与した【麻痺攻撃】をメインに戦闘。【破魔】の雷は怨霊たる身には天敵だろう。怨霊の群れには【薙ぎ払い】怨霊の武器攻撃には【戦闘知識】を基に【見切り】【武器受け】して受け流す。救出組にちょっかいを出そうとする時は短槍を【槍投げ】したり【高速詠唱】したUCを【フェイント】を交えて打ち込み邪魔をする


タンケイ・オスマンサス
【猟兵商業組合連合】で参加
「復讐なんてしてはダメです!あなたはまだやり直せる!やり直すべき人間です!」
(皆からの国家老の評判を耳にして、悪に落ちるには惜しい人だと思う一心で親父さんとやり合う国家老に声を掛けます。)
これ以上誰も…死なせはしない。
行動としては、ダイ"ア"ウルフに跨り捉われた娘さんの救出を蜂蜜院さんと連携して行います。蜂蜜院さんの【陽炎の術】の効果に加え、自身でも【オラトリオヴェール】の魔力で【目立たない】ように。他の方が派手に怨霊姫とやり合っている隙を狙います。無事救出出来るか、もしくはピンチになったら【誘惑の芳香】を発動し追手の動きを止めて何が何でも娘さんを守ります。


モルツクルス・ゼーレヴェックス
【猟兵商業組合】

……生き返ってまでする事が、復讐っすか

「一番!モルツクルス・ゼーレヴェックス!華麗に舞うっすよ!」

デッカイ声で宣言して【光翼】を展開して夜空を舞う

【高速詠唱】で瞬時に展開、維持【存在感】でヘイト稼ぎ変な挙動で飛ぶ

【空中戦】で避ける【オーラ防御】も展開して弓矢を弾く

「やーい!権力欲しさに子供を殺しちゃったお馬鹿さん!やーい!やーい!」

今までの情報と【世界知識】から気に障るようなこと言ってみる

【コミュ力】は対人にて最強

「……間違ったこと言ったっすかねえ?」

自分に気を向けたなら光線を飛ばす

「さあ反論してみるっす!何を思って黄泉帰ったか」

……傾聴の用意あり
思い残しのないよう暴れてもらう


ゲンジロウ・ヨハンソン
【猟兵商業組合連合】で参加

元頭目が自分で決めた道じゃ、国家老は自分でどうにかするじゃろ。
わしらは猟兵、英雄じゃねーからな。自分の仕事するだけじゃ。

○戦闘

敵を【なぎ払い】で【挑発】し怨霊へ対応。
【盾受け】【激痛耐性】で攻撃を凌ぎつつ、【生命力吸収】や【鎧砕き】で
相手の戦力を徐々に削いでいく。
敵の注意が自分から逸れそうなら銃の【クイックドロウ】で再び【挑発】するぞ

救出された娘さんが元頭目の決闘に口出ししようとするなら、【コミュ力】と【手をつなぐ】で引き止める。
親父さんの【覚悟】を無下にするんじゃねぇよと。
つっても、死なれちゃ明日の酒が不味くなる。元頭目の命が危なけりゃ【捨て身の一撃】で【かばう】ぜ


トリテレイア・ゼロナイン
【猟兵商業組合連合】で参加

娘を攫われた不覚、この身に替えても救出し挽回しなければ。
機械馬に「騎乗」し怨霊の群れに真正面から突撃、娘を救出する仲間を支援する陽動を行います。
「怪力」で振るう槍と盾、馬の「踏みつけ」で怨霊を突破し姫に迫ります。攻撃は「武器受け」「盾受け」で対処。

姫に何故子を失う悲しみを知っている貴女が同じ非道を行うのかと挑発を兼ねた質問を「礼儀作法」に気を付けて発し、注意を惹きつけましょう。
娘の救出に成功したら全力で娘と仲間を「かばい」ます。
私の被害は顧みません。

子を失い鬼神と化した姫の怨嗟、騎士として無辜の娘にぶつけさせるわけには参りません。この身で受け止めさせていただきます


月代・十六夜
「皆いろいろやってっからなぁ、俺の仕事は前線の援護っと。嫌な予感は…当たんねぇと良いなぁ面倒くさいし」

【猟兵商業組合連合】で参加だな。基本は【第六感】で察知して、【パターン化】で怨霊の攻撃を回避、他の面子に行く攻撃を少しでも減らしつつ【回避盾】で挑発、時間を稼いで連合にダメージを稼いで貰う。
傀儡化した野良侍とか怨霊家臣団相手なら一時的でも武器を【盗ん】で無力化しておくのもアリだな。

あ、元頭目と国家老の戦いが怨霊との戦いの前に終わったら、【韋駄天足】で急行して、【鍵のかかった箱チェック】で気絶か死んでる方を収納するぜ、傀儡化されても面倒だしな。



●母として娘として

 背後で父親たちの戦いが始まった時、猟兵たちの戦いもまた始まる。

『どうして貴様たちは妾の邪魔をする!妾はあの男に殺された!これは正当な復讐であろう!』
「復讐に正当とか言ってる時点でお前は間違ってんだ」
 そう言って槍を担ぎながら一歩前に出たのは神宮寺・絵里香(雨冠乃巫女・f03667)先の娘の誘拐は怨霊姫が一枚上手であり猟兵たちに落ち度はないのだが絵里香はミスだと自身を叱責する。だからこそ、その分はここでの活躍で返上する。まだ終わっていない。否、始まってすらいないのだから。
「怨霊姫、貴女は私と似ています。似すぎている程に」
 そう呟くのは宇冠・龍(過去に生きる未亡人・f00173)。怨霊姫と同じく目の前で大切な人を失った彼女は怨霊姫の感情も理解できてしまう。一歩踏み間違えた自身の姿が今目の前にいる怨霊姫に他ならないのだから。
(私と貴女で違うのは未来への渇望を見出せたかどうか)
「貴女が行おうとしているのは、自分と同じ過去を増やすだけの行為、絶対に止めさせて貰います」
(私も宇冠の名字を頂いた家族。怨霊姫の境遇は、とても他人事とは思えません。だからこそ、ここで悲しみの連鎖を終わらせないといけないのです)
 そう決意を新たにするのは宇冠・由(宙に浮く焔盾・f01211)。自身が何者かも知らぬ彼女は独りぼっちで封印されていた所を 宇冠夫妻に発見され姓を貰い家族になった。しかし龍と同時に由もまた大切な人たちを失っている。だからこそ決めた。もう誰も傷つけさせない。この場の仲間は自分が必ず守ると。
「出だしから間違ってんだよあんたは。なんで自分の息子を跡取りにしようと思ったわけ?そこがまず意味わかんねぇわ」
 至極面倒そうに思ったことを口にするのは月代・十六夜(韋駄天足・f10620)だった。彼の疑問は至極的を射ていた。この悲劇の始まりは結局のところそれなのだ。何故、生前の怨霊姫は息子を跡取りにしようとしたのか。
『子の幸せを母が願って何が悪い!』
「悪くはないがそれはお節介って奴だ。子どもってのは勝手にでかくなって勝手に自分の幸せって奴を見つける」
 絵里香の経験則から導き出されたこの答え。親は子どもに選択肢を与えるだけでいいのだ。レールを敷きさえすれば決めるのは子どもたち自身。あとは転んで泣いたときにでも話を聞いてあげればいい。
 二人の母親からの言葉を聞いた怨霊姫の顔はみるみるうちに紅潮していく。同じ母親であれば同情くらいはしてもらえると思っていた怨霊姫の淡い期待は見るも無残に打ち砕かれた。
『何故じゃ!何故理解されない!我が子を想う子の心が何故理解されぬのじゃあ!!!』
「それはその心が貴女のエゴだからです。子を想う自分を想うのが貴女」
 そう怨霊姫の心を見透かし言葉の剣を突き立てるのはトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)。紛い物とは言え騎士を自称するトリテレイアも先の一件を不覚に感じこの場での挽回を心に決めていた。だからこそ【機械人形は守護騎士たらんと希う】のだ。
『うるさい煩い五月蠅ぁぁぁぁぁぁあああい!!!』
 舌戦では勝てぬだろう。怨霊姫は16の若さでこの世を去り先日この世に黄泉帰った怨霊姫では圧倒的なまでに人生の経験が足りない。唯でさえ幼少期から国家老の手により蝶よ花よと育てられ何一つ不自由などしたことがないのだから。

 ―――我慢ができなくなればその感情は爆発する。

 怨霊姫の叫びに呼応し寺を埋め尽くすほど召喚されるかつて戦場を駆け主君に仕えた侍たちの成れの果て。生前の獲物を手にして黄泉帰ったのは怨霊姫のためではない。既に彼らに意思はなく、ただ怨霊姫に操られる傀儡に過ぎない。空洞となり果てたその瞳からは真っ黒な暗がりだけが覗いていた。

(元頭目が自分で決めた道じゃ、国家老は自分でどうにかするじゃろ。)
 背後で行われる二人の父親の戦いに割いていた意識を目の前に現れた怨霊家臣団へと切り替えるのはゲンジロウ・ヨハンソン(腕白青二才・f06844)。ゲンジロウは持てる技術を寄せ集め作り上げた己が兜を装着する。これで不必要な情報は入らない。たった一つ、元頭目を監視するセンサー以外は。
 他の割り切った猟兵と違い怨霊姫の行動に疑問を抱き続けるのはモルツクルス・ゼーレヴェックス(近眼の鷹・f10673)モルツクルスは思う。なぜ生き返ったにも拘らずわざわざまた不幸な道を進もうとするのか。それが分からない、だから止める。全力で。
「一番!モルツクルス・ゼーレヴェックス!華麗に舞うっすよ!」
 怨霊家臣団を目の前にして先陣を切ったのはモルツクルス。その身に宿るオラトリオの象徴たる純白の翼に加え、魔術により形成された光の翼によりモルツクルスの飛行速度は爆発的に上昇する。

 空を翔ける一羽の鷹の叫び声が戦いの始まりの鐘を鳴らす。



●子として娘として

 怨霊姫と猟兵、国家老と元頭目の戦いの裏で密かに行動する者たちがいた。蜂蜜院・紫髪(怠惰な蜂蜜屋・f00356)とタンケイ・オスマンサス(魅惑のシンフォニア・f08051)は怨霊姫の目を掻い潜り寺の中へと侵入することに成功していた。タンケイの相棒のダイアウルフに二人で跨り紫髪の陽炎の術で姿を消し怨霊姫の目を欺いていた。娘を誘拐した時と同じ手を相手に使われているにも関わらず気づくことすらできないのは怨霊姫自身が戦闘に関して秀でていないことに助けられていた。オブリビオンとして黄泉帰ったとは言え怨霊姫自身はただの姫。戦ごとに関する教えなど何も受けていなかった。
(殺し殺され因果は巡る…やはり政治に関わるのは良い事がないの)
「あ、いましたよ!紫髪さん!」
 娘を発見したのはタンケイだった。娘はお堂の柱に縄で括りつけられ眠っていた。
「息はしておるの。眠っているだけの様じゃ」
「よかったです…皆さんはまだ戦っていますし早く娘さんを解放して私たちも合流しましょう」
 娘を縛る縄を切り、自由になった身体を紫髪が受け止めた所で娘は目を覚ます。
「……ここは?」
「目が覚めたようじゃな」
「大丈夫ですか?どこか具合が悪い所などはありませんか?」
 タンケイが娘の様子を探るが別段おかしな所はない。何故だか分らぬが傀儡にして操るつもりもなかったらしい。そして娘は気になる言葉を続ける。
「変なお爺さんが怪我をしないようにって緩めに縄を締めてくれたから大丈夫だと思う」
(国家老の奴かのう。……でもなんでじゃ?)
 紫髪の脳裏に疑問符が浮かぶ。怨霊姫はともかく国家老であればこの娘の有用性を理解していないはずがない。それにも拘らず放置し剰え怪我をしないように配慮する。……何故だ。
「怪我がなくてよかったです。お父さんも心配していましたよ?」
「お父さんが?本当ですか?心配かけちゃったな……」
(確かこの事件はまだ行方不明者止まり…つまりまだ犠牲者は出ておらんはずじゃ。その行方不明者もわしらが救いだした)
 紫髪は気づいてしまった。そう、この事件には未だ犠牲者が出ていないのだ。これが偶然か意図的な物かわからないが未だ犠牲者は出ていないと言うことだけは純然たる事実だった。
「少々気になることができた。タンケイ殿すぐに絵里香殿達と合流するのじゃ」
「え?あ、はい!ダイア!」
 タンケイは相棒のダイアウルフを再度呼び三人でその背に跨り寺をあとにする。

 紫髪が気づいてしまった事実に不安を覚えながら。



●元頭目と国家老

 二人の父親はただの人間だ。猟兵とは違い超常の力など使えない。だからこそ泥くさく足掻き続ける。
「オラァ!」
「ふっ――」
 もう数えることすら忘れるほど繰り返された剣戟が再び交わされる。二人の身体は既にすり傷切り傷痣だらけ。それでも二人は止まらない。傷だらけ二人を支えるのは共に娘の顔。
「いい加減諦めろ!猟兵さん達に勝てっと思ってんのか!」
「先程も言っただろう、関係ないと。私は復讐さえできればいい」
「あったま固ぇなお偉いさんッ!」
 鍔迫り合いが終わり二人は距離を取る。二人の父親の戦いの決着も未だつかず。



●怨霊の姫

「やーい!権力欲しさに子供を殺しちゃったお馬鹿さん!やーい!やーい!」
 光翼を展開し空を自由に飛びまわるモルツクルス。武者である怨霊武者たちができ得る攻撃手段でモルツクルスに当てることができるのは弓矢による射撃のみ。しかし雑兵の放つ矢じり程度ではモルツクルスの放つ光の壁に阻まれその身体へと届くことはない。一方でモルツクルスの言葉は怨霊姫に響く。
『ややこを殺したのは妾ではない……っ。殺したのは奴らじゃ!!!』
「……でもその原因を作ったのはあんたっすよね。あんたが息子さんを跡取りにしようと思わなければ起こらなかった跡目争い。それに父親である国家老まで巻き込んでどうだったっすか?父親にも迷惑かけて自分の息子は跡目争いに負けました。残念だったっすねえほんと」
『違う、違う違う違う違う違う……ちがぁぁぁぁぁう!!!』
「……間違ったこと言ったっすかねえ?」


 空のモルツクルスが怨霊姫の注目を集める中、他の猟兵たちは怨霊武者軍団の相手を続けていた。愛馬ロシナンテⅡに跨り槍を振るうトリテレイア。騎兵が歩兵に負ける通りはなく。ロシナンテⅡの蹂躙により怨霊武者たちは蹴散らされていく。トリテレイアとロシナンテⅡの通った後には怨霊武者の残骸が転がるのみ。そしてその後ろに続くのはゲンジロウと由だった。
「そんなもんかよっと」
 右手に携えた巨人の百刃束で迫る怨霊武者たちを薙ぎ払っていくゲンジロウ。力任せに振りまわされる剣の暴風は留まる事を知らず怨霊武者たちの鎧を砕き、兜を割り、首を撥ねる。それに伴いわらわらと怨霊武者たちが集まってくるがそれこそゲンジロウと由の狙い。
「嬢ちゃん!やっちまえぃ!」
「分かりました。上手く避けてくださいね!」
 本来であればヒーローマスクである由は単体では戦闘を行うことはできない。しかし由には炎がある。そう、ブレイズキャリバーたる証。地獄の炎が由にはあった。仮面から溢れ出る地獄の炎は瞬く間に少女の身体を形作りその上から地獄の炎でできた深紅のドレスで身を包む。その両手には1対の火炎剣。地獄の炎により伸縮自在な刀身を持つそれは怨霊武者の群れを前にしてその刀身を伸ばしていく。そして目の前の怨霊武者の群れを薙ぎ払えるまでの長さに伸びた所で由は2本の火炎剣を束ね一刀にして振り下ろす。

 振り下ろされた地獄の炎の一閃により怨霊武者たちは焼き払われ怨霊姫の束縛から離れ本来の居場所へと還っていく。

「皆いろいろやってっからなぁ、俺の仕事は前線の援護っと。嫌な予感は…当たんねぇと良いなぁ面倒くさいし」
 そんなことをぼやきながらも十六夜は怨霊家臣団を相手取りながら獲物を盗み無効化していく。武器を奪うだけでは倒すことはできないがそんなことは百も承知である。敵を倒すのは十六夜自身でなくていいのだ。適任者がいるならそちらに任せた方が効率がいい。
「準備はどうだ?お二人さん」
「こっちも準備完了だ」
「こちらも大丈夫です」
 十六夜の援護を受け準備を進めいてたのは絵里香と龍。
『ナウマク・サマンダ・ボダナン・インダラヤ・ソワカ!神々の王の裁きよここに!魔を滅ぼせ因達羅の矢よ!!』
『強き猛き尊き者、共に歩みてその威を示せ』
 龍の詠唱に呼応して現れるのは今は亡き夫。武装した竜型ドラゴニアンであるその夫の霊は息を大きく吸い込む。それに合わせ絵里香のニ指が怨霊武者たちを指し示す。
「因達羅乃矢!」
「竜逢比干!」
 天より鳴り響く雷鳴と万物を凍てつかせる吹雪が周囲を覆い尽くす。獲物も持たぬ怨霊武者たちに抗う術はなく、氷結し凍結し鳴り響く落雷で粉々に砕かれる。
「おーおー、派手だね」

 こうして寺の庭を埋め尽くすほどいた怨霊家臣団は猟兵たちの手により殲滅された。元より自分の意思などなくただ操られていただけの傀儡。そんな彼らが猟兵たちに倒されることにより怨霊姫の手から解放され天へと還っていく。

「あとは本命だけだな」
「ええ、早く終わらせましょう」


 モルツクルスはまだ空を舞いながら怨霊姫と舌戦を繰り広げていた。
「さあ反論してみるっす!何を思って黄泉帰ったか」
『知れたことを!妾自身と子の無念を晴らすため!』
 怨霊姫の口から出るのはこの言葉のみ。それはそうだろう彼女はもはや生前の彼女とは似て非なるもの。復讐という感情に支配された祟りの姫。本当であればもっと別の理由があったかもしれない。しかしそれはもう分からない。怨霊姫をつき動かすのは怨讐の感情のみ。
「貴女の呪詛(おもい)と私達の呪詛(おもい)、どちらが上か勝負をしましょう、怨霊の姫。貴女には誰の命も奪わせません」
「自らの子を奪われた貴女がなぜその哀しみを広げようとするのか。其れをお教え願いたい」
 怨霊家臣団を超えた猟兵たちが怨霊姫の元に再びあつまる。残す所はもはや姫のみ。終わりは近い。

『どいつもこいつも理由理由理由理由理由!そんなもの最初から言っておろう!復讐じゃ!こちらの命を奪っておきながらのうのうと生きる奴らが許せぬから妾はこうしてここにいる!復讐に正当などないと言ったな!それならそれで構わぬ、妾はこの身に燻ぶる怨嗟の炎が消えさえすれば他は何もいらぬ!』
「そうか、じゃあお前の身体ごとその炎とやらを消してやろう。生臭さだが神宮寺は巫にて尼僧。成仏させて骸の海に返してやる」
「わしらは猟兵なんでな。あんたの理由がどうであれ止めさせてもらう」
「わりぃが俺もあんたのご大層な理由にさほど興味はない。だけどこれも仕事だ。止めさせてもらう」
「もういいでしょう。怨霊姫。貴女は休まれるべきです」
 各々の想いを口にする猟兵。あるものは猟兵の仕事として、またあるものは同じ母として、守るべきものがある者は守る者のために怨霊姫を止める。

 戦いの第二幕の火蓋が切って落とされる。



●国家老という男

「見えました!まだお二人とも戦っています!」
「そうか、ではタンケイ殿は娘を安全な場所へ頼むのじゃ」
 救出した娘を連れ他の猟兵たちと合流すべくダイアウルフに跨り現れたのはタンケイと紫髪。娘を下手に一人で家に帰すよりも目の届く所で守った方が安全だろう。そう考え連れてきたが戦う父親を目の前にした時の娘の感情を考慮していなかった。
「なんで?なんでお父さんがお爺さんと戦ってるの?二人ともボロボロになってまで。お父さ―――」
 傷だらけの父を見て思わず駆けだしそうになる娘を止める大きく優しい手。それは父親の覚悟を尊重するゲンジロウの物だった。
「ちょいと待ちな。これは親父さんが決めたことだ。娘のあんたでも口をだしちゃ駄目だろう」
「でもお父さんが!あんなに血を出してたら死んじゃうよぉ!」
 娘の瞳から大粒の涙がぽろぽろと零れ落ちてくる。娘は父に生きていて欲しかった。例え怠けていても一緒にいたかった。娘の願いはただそれだけだった。
「絶対勝つから安心しろなんてことはわしの口からは言えん。でもお前さんは信じてやれ親父さんが勝って帰って来るのを」
(つっても、死なれちゃ明日の酒が不味くなる。恨まれるのは百も承知だがいざとなったら間に入らせてもらうぜ)
 ゲンジロウの言葉を聞いた娘は袖で涙を拭いとる。赤く腫れたその瞳にもう涙は浮かばない。次に泣くのは父と一緒に家に帰ってからだ。

「いい娘だな」
「惚れた女の忘れ形見だからなァ!自慢の娘だぜ!」
 元頭目の足刀が国家老のこめかみに迫る。身を屈め前傾姿勢で回避した国家老はすかさず返す刀で元頭目を下から斬り上げる。その太刀を足刀の勢いそのままに身体を宙で一捻り、身を掠めながらも刃を避けた元頭目はしばし国家老と距離を取る。
「大分勢いが落ちてきたな。歳か」
「そうだな、もう身体の自由も利かぬ。だからこそこの復讐の幕引きは近い」
「復讐なんてしてはダメです!あなたはまだやり直せる!やり直すべき人間です!」
 それはこれまでに聞いていた国家老の評判からタンケイが感じた嘘偽りのない言葉。誰の命も失われて欲しくない彼女の悲痛な叫び。しかしその言葉も国家老には届かない。二人の剣戟は止まらない。
 刀を握り直す国家老と元頭目。しかし幕引きが近いとはどういうことだろうか。浮かんだ疑問符を頭の片隅に追いやろうとしたその瞬間、元頭目の身に無数の怨霊の群れが差し迫る。他でもない怨霊姫の最後の足掻きだろう。

 ―――幕引きは近い。


●怨嗟のおわり

 元頭目に怨霊の群れが迫る少し前、怨霊姫と猟兵たちの戦いは終始猟兵たちの優勢に進んでいた。元より武芸に秀でてはいない怨霊姫、頼みの綱の家臣団も既になくその身でこの人数の猟兵たち相手取るには些か役者不足であった。
「覚悟!」
『チィ!』
 トリテレイアの馬上からの槍の突撃を避けるため上空へと飛ぶ怨霊姫。しかしそれは悪手に他ならない。飛んだ先に待ちうけるのは紅い蛇の目の仕込み傘を構え今にも振り下ろさんとする絵里香の姿。
「無暗に飛ぶな、たわけ」
 振り下ろされた傘は怨霊姫を地面へと叩きつける。その隙を見逃す猟兵ではない。モルツクルスは杖を振るい詠唱を開始する。
『変形せよ変身せよ変転せよ変換せよ我が示す真実を現したまえ』
「さぁ喰らうっすよ!【物質変換】」
 モルツクルスの杖より放たれた物質変換術式が怨霊姫へと迫るがそれを怨霊姫は配下の怨霊を放つことで相殺する。しかしこの攻撃の真の目的はダメージを与えることではない。むしろ副次効果こそが本命だった。砕け散った術式の欠片が怨霊姫の周囲に降り注ぎ大地を操る。隆起した大地はそこに立つ怨霊姫を拘束せんと差し迫る。手に持つ扇で大地を削るが猟兵たちの攻撃はまだ終わらない。
 ゲンジロウの大口径回転式マグナム拳銃・トラキュレンスライノによる抜き撃ちが隙を埋めその間に宇冠親子の追撃が怨霊姫を襲う。地獄の炎の熱量を持って怨霊姫を焼ききらんとする由、風を纏いし槍を構え突貫するのは召喚されし亡き夫。龍自身もまたシャーマンとしての力で怨霊の腕を召喚し怨霊姫を拘束する。
「これで終わりです!」
 槍の連続突きを叩きこまれ振り下ろされた業火の剣。数多の攻撃に晒され続けた怨霊姫の身体は限界が近づいていた。しかしその心は未だ折れず反撃の機会を虎視眈々と窺っていた。猟兵たちが自身の周囲に集まりなおかつ元頭目への射線が開くその瞬間を。

 その瞬間はタンケイと紫髪が娘を連れて合流しに来たことで成立した。

『妾の命などくれてやる。元より一度亡くなったモノ。だがあ奴の命も貰っていくぞ猟兵どもッ!!!』
 怨霊姫の周囲全方角へと放たれる無数の怨霊の群れ。猟兵たちすら呑み込む怨霊の津波はもちろんこの場にいる猟兵以外の者にも及ぶ。一人の男を除いて。
「娘さんと他のお二人は私が!」
 トリテレイアは愛馬と共に駆け抜ける。
「これはまじぃんじゃねぇか?」
 ゲンジロウはその身をもって盾にすべく怨霊姫と元頭目の間に身体を滑り込ませる。
「皆さん!私の後ろに!」
 由は他の猟兵たちを怨霊の津波から守るため【七草仏ノ座】によりその体躯を巨大化させ後方の仲間を守る盾となる。その身は他者をかばう為の盾であるのだから。

 三者とも庇い立ち広がる怨霊の津波をその身で受け止める。その献身により他の者へのダメージは皆無だが三人へのダメージが深刻だった。鬼の姿へと変貌した由の身体は所々炎が揺らぎ、ゲンジロウは膝をつく。トリテレイアの外部装甲もまた被害が甚大であった。
「―――盗ったっ!!」
 攻撃直後の怨霊姫の背後から右手を伸ばす十六夜。怨霊姫の行動をパターン化し導き出された最適解がこの一撃。
『甘いわ!』
 しかし寸前の所で宙へ逃げられたことにより怨霊姫の手にある扇を狙った一撃は虚しく空をきる。だがこれこそが十六夜の真の狙い。真に導き出された幕引きへの最高の一手だった。
「さっきおっかない人に言われただろ?無暗に飛ぶなって」
 怨霊の津波による視界不良。そして壁となった者が視線を遮る。そうなってしまえば怨霊姫に他の猟兵たちの姿は目視できない。そう、例え反撃のための詠唱を行っていたとしてもそれに気づくことはない。
「―――やれっ!」
 十六夜の合図により詠唱を終えていた面々のユーベルコードが怨霊姫へと放たれる。
 龍の今は亡き大切な者から吹雪の吐息が、モルツクルスの光輝く翼から無数の束縛術式からなる光線が、絵里香の白蛇の神の楔となるべく放たれた槍が、タンケイの百にも届きかねない木の根の槍が、紫髪の数多の狐火を束ねし火球が同時に怨霊姫の身体を呑み込んでいく。

「いつつ……なんだ今のは……っておい!アンタ大丈夫か!?」
「気にすんな。かすり傷だわい」
 元頭目もゲンジロウの手によって無傷だった。その代償として傷を負ったゲンジロウの傷から紫苑色の炎が溢れ出る。
「わしのことよりあんたの相手はあっちだろ?」
そう言ってゲンジロウが指を刺す先には猟兵たちの集中砲火を浴びる怨霊姫をただただ見つめる国家老の姿があった。
「そうだな、ちょっくら終わらせてくるわ。ぜーんぶ終わったらまたあんたの美味い酒、飲ませてくれよな」
 先程の攻撃の余波で地面に転がっていた自身の忍刀を拾い上げる元頭目。それを片手に彼は幾度目かわからない国家老への突貫を試みる。

 その突貫に気づいた国家老が迎撃すべく刀を振りあげるがそれが振るわれることはなく元頭目の凶刃が国家老の腹部を貫いた。
「やっぱり死ぬ気だったか」
「これで私の復讐は完遂だ。娘も孫も守れなかった愚かな男はこれで死ぬ。黄泉帰りなどさせてしまった娘の後始末を猟兵に任せてしまったのは心苦しいがな」
 そう、国家老の真の目的は黄泉帰った娘を止めることと自身の命を終えること。自分で起こしてしまった跡目争いの後始末を自分の手でつけるつもりだったのだ。そして娘の罪を少しでも軽くするために犠牲者は出させなかった。



●父と娘
 
 ドサリ、と怨霊姫の身体が国家老の傍へと落下する。猟兵たちは一瞬焦りを見せるがすぐに警戒を解いた。なぜなら怨霊姫の足が既に塵となって消え始めていたからだ。もう長くはない。誰が見ても怨霊姫の第二の生の残りの時間はあとわずかだった。
 国家老は口元から血を垂らしながら怨霊姫に語りかける。
「不甲斐ない父ですまなかったな、豊」
『いえ、父上は悪くありません。豊が馬鹿だったのです。周りに唆されあの子を当主にしようなどと考えてしまった』
 怨霊姫―――否、死の間際に憑き物の落ちた豊姫は自身の行いを嘲笑する。
「姫さんには悪いが俺の命はやれねぇ。あいつ、栄の嫁の貰い手が見つかるまでは死ぬわけにはいかねぇんだ」
『それでいいと思います。善蔵さんにもご迷惑をおかけしました』
「昔から迷惑はかけられるのは慣れてる。安心して逝きな、姫さん」
『父上を…頼みます……』
 ―――豊姫の身体が塵となり風に流され消えて行った。
「私ももうすぐそちらに行く。待っていてくれ豊」
「そうは問屋がおろさねぇ。あんたには生きて大変な思いをしてもらうぜ?」
 そう、善蔵の刃は国家老を貫きこそしたが致命傷には至らない。数多の命を奪ってきた善蔵だからこそできる最高の手加減だった。
「痛ぇだろうが猟兵さんたちもいる。なんとかなるだろ。あー!疲れたぜ!!!」
 これで終わりとばかりに大の字に寝そべる善蔵。そこへ戦闘を終え負傷者を回収した猟兵たちがやって来る。
「傷の手当てぐらいならしてやるが後始末は管轄外だ。せいぜい頑張れ」
 負傷したゲンジロウに肩を貸しながら寺を去ろうとする絵里香。オブリビオンたる怨霊姫は既に倒され猟兵の仕事は終わった。あとはこの世界の人間の仕事だろう。
「国家老様、これを」
 龍が差し出したのは由が国家老の部屋で回収した一枚の絵。それは国家老の孫が描いた国家老のたからもの。大事な想いが沢山つまったその絵に龍は【枯木竜吟】を使用する。そこで浮かび上がるのは満面の笑みを浮かべる赤子と其れを抱く豊姫。二人は国家老へと手を振りながら消えていく。その口を『ありがとう』と動かしながら。
「これは……」
「貴方の娘とお孫さんからの想いです。恨んでなどいないようですね」
「あんたは自分が思っているよりいい父親だったちゅうことじゃな」
 絵里香に支えられながらゲンジロウはからからと笑う。
「そうか…あの子たちは私を怨んでなどいなかったのか……。ではもう少しばかり生き恥を晒してから怒られに行くとしよう」
 腹から流れ出る血を絵里香に応急処置をされながら国家老は呟く。これで彼の憑き物も落ちただろう。


「守ってくれてありがとう!騎士様!」
「当然のことをしたまでです、栄さん」
「誰も死なせずに済んでよかったです。豊姫さんのことは残念ですが…」
「オブリビオンが関わらない問題はわしたちにも手が出せぬからのう。もう終わったことじゃ」
 三人を庇い守り着た代償としてボロボロになったトリテレイアを両端から支えるタンケイと紫髪。
「両手に花じゃな。騎士様よ」
「そうですね、私のような紛い物には勿体ないお二人です。重くはないですか?」
「大丈夫です!トリテレイア様は頑張られましたからゆっくり休んでくださいね!」
 二輪の花に支えられ、奮闘した機械騎士はその場を去る。

「お疲れ様でした、由」
「お母様もお疲れ様です」
 流石に先の戦闘でのダメージが堪えたのか由は仮面に戻り龍の懐に収まっていた。
「この一件、止めることができてよかったです」
「悲しみの連鎖はこれでとまりましたね」
 今回の一件の終着点に満足した母娘も寺を去る。

「復讐ってなんなんすかね……」
「さぁ?当人しかわからんだろ」
 一仕事を終えたモルツクルスと十六夜もその足を帰路へと向ける。しかしモルツクルスの疑念は晴れない。十六夜もまたその問いに納得させられるだけの言葉を持っていなかった。それも仕方ないだろう。復讐など当事者にならなければ分からぬことがほとんどだ。
「俺らは猟兵としての仕事はきっちりこなした。それで今回の話はおわり、としか俺からは言えないな」
「そうっすね……」
 二人の青年は片や仕事終わりで気だるげに、片や悩ましげに歩を進める。その疑問が晴れる時もいつかきっと来るだろう。

「猟兵さんたちありがとうな!あんたらのおかげで俺はこうしてここにいる。今度何かあった時は俺を頼ってくれ!」

 最後に善蔵のその言葉を聞き届け、猟兵たちは帰還した。



●それから

 こうして一連の行方不明者事件は幕を閉じた。肝心の後始末だが国家老自身が罪を認めたが彼自身が行ったのはただの金山送りであり犠牲者といえる者もいなかった。それ故国家老自身へのこれといった罰はなく、減俸が数ヶ月分と言った所だった。
 そしてこの一件の以後国家老のお屋敷では一人の少女が奉公に来るようになったようだ。その少女は勤勉で明るくすぐに皆の人気者になった。時折酔っ払いの浪人がやってきてその子に怒られている光景が見受けられたが。
「お父さん!」
「悪ぃ悪ぃ」




 ―――父と娘を巡る復讐記。戦国猟兵譚~父と娘~これにて閉幕。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月26日


挿絵イラスト