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帝竜戦役⑫〜郷愁のリカージョン

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #群竜大陸

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 降り注ぐ流れ星。

 三回祈れば願いが叶う、と幼少の頃に教えて貰った者もいるだろう。

 子供の頃に戻れたら。

 あの頃に戻れたら。

 求めるものはなんだろう。

 あそぶ?

 勉強をする?

 さぁ君は、何をする?


「皆様帝竜戦役への対応お疲れ様です」
 礼を述べるのはいつも通りサングラスとコートを身に付けた陰陽師、芦屋・晴久。手短な挨拶を終わらせて説明に入る。
「皆様は時蜘蛛、という言葉を御存知でしょうか」
 時蜘蛛、聞き覚えの無い言葉だろう。この地特有のオブリビオンの特徴なのである。手足が増え、糸を吐き出す姿は蜘蛛の様だ、という名の通りの特徴を持っている。
「依頼の内容は道を塞ぐオブリビオンの討伐なのですが、一つ厄介な特徴を持っておりましてね」
 幼児化、仕組みや原理は不明だがそのオブリビオンが吐く糸に触れると思考、身体どちらも幼少時の姿となってしまうらしいのだ。
「オブリビオンを倒せば元に戻るとの事ですが、ここまで培った経験さえも忘却してしまうと情報が入ってきております」
 対抗策は一つ。
「元々かのオブリビオンは願いを具現化させる力を持つ存在、皆さんの深層……戻りたいという決意の力を強く持てばオブリビオンも己の力に対抗しぶつかり合って自壊するでしょう」
 時蜘蛛の糸はオブリビオンが消えても残るとの事。事態終了後の糸の扱いは自由にして良いらしい。
 簡単に言ってしまえば強く戻りたい意志を思い浮かべれば良いのだ。身体も思考も変化してしまったとしても貴方としての存在は、深層は、想いは消える事は無い。
「過去の己に惑わされないでくださいな、此処で未来の為に戦うのはあの時の自分達ではない筈。楽しかったとしても、苦しかったのだとしても、ここに立つのは今の貴方達なのです」
 ゲートを開く晴久は一言、それではまたお会い致しましょうと語りかける。
 彼等が戻ってくる事を信じて。


グラサンマン
 どうもグラサンマンです。
 てーりゅーせんえき第二弾となります。ギミックは此方。

『プレイングボーナス……幼児化への対抗策を考える』

 流れとしては皆様には先ず幼児となってもらいます。
 オブリビオンは当時の思い出を想起させる夢を見せるので、その中で現実に帰りたいと強く思える何かをプレイングに盛り込んでくださいませ。
 戦闘要素は無く、皆様が現実に帰ってくるほどオブリビオンは弱り、自壊していきます。終わりには皆様に以下の財宝が手に入ることでしょう。
 それでは皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。

「時の蜘蛛糸」……若返りの効果が若干残った、時蜘蛛の紡いだ蜘蛛糸です。一巻きで金貨950枚(950万円)の価値があります。
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第1章 ボス戦 『アストラム』

POW   :    ヴォーテクス・サテライト
【オブリビオンの願いを叶えたい】という願いを【自身を利用するオブリビオン】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
SPD   :    星辰集中
【睡眠】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。
WIZ   :    ダスク・ティアーズ
【流れ星の群れ】を降らせる事で、戦場全体が【夢か悪夢】と同じ環境に変化する。[夢か悪夢]に適応した者の行動成功率が上昇する。
👑8
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はピウ・アーヌストイトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


記載漏れ申し訳ありません
プレイング募集中となります
☆───────────☆
カーバンクル・スカルン
まだ幼なかったころ、現実を思い知らされる前のこと、私はお兄ちゃんお姉ちゃんのようになりたくて、必死に練習をしていた。

でも、私には才能が無かった。超えるどころか同じようにもなれなかった。だから私は違う道を選ばされた。

でも、諦めなかった。その道を極めて、未熟な腕をそれでカバー出来るようにして、絶対に見返してやると誓った。

今、この夢に浸り続けることはその決断を自分から否定することになる。……だから、ふざけんなよ。

私は今の私に後悔しない。でも、昔の私も否定しない。

だから昔と今の技を組み合わせたこの技で仕留めさせてもらう。逃げようと受けようと、絶対にあなたの首はいただいていくわ。




「お兄ちゃん、お姉ちゃん……」
 夢を見ていた。
 視界に映るのは同じく幼い姿となっている兄と姉。
 手を伸ばせば此方を微笑み手を取ってくれる。ツンとくる絵の具の臭いもカーバンクルにとっては慣れた物。彼女にとってそれは嫌いな物では無かったし朧気ながらも何時か自身も同じ香りを纏わせる事になるのだろうと思っていた。

●カーバンクル・スカルン(クリスタリアンのスクラップビルダー?・f12355)

 夢は移り。
「どうして?」
 それは唐突過ぎる事であった。
 日課としていた画材を持って兄と姉の元に教えて貰おうと約束していた日。普段より強く引き止められ渋々と部屋のソファーに座る。幼きカーバンクルはそわそわとドアの方を向き早く兄達の元へ行きたいと無言の催促を送る。その様子を静かな眼で見ていた『誰か』は口を開き告げるのだ。

 お前は兄や姉の様にはなれない。

「どうして……?」
 突然の否定、ましてや幼少の彼女にとって到底納得できる物では無かった。
 時には指導を貰い、一人で部屋に戻った後も寝る時間も惜しんで練習に勤しんだ。
 スクラップビルダーとしての実力を押し上げる為の芸術性、才ある二人は年齢に比してその才覚を表している。自分も数年後、二人と同じ年齢になった時同じ土俵に入ってみせると息巻いていたのはつい昨日の事だ。

 なんで何事も無いように私に別の道を示すの?
 なんでわたしをあきらめるの?
 なんで……なんで……

 その日から私の練習の時間が別の事に変わっていた。まるっきりなりたい事とは別の勉強。
 握った手が、身体が震える、悔しさで涙を止められない。このまま諦める? それはとても楽になる。今から別の道を歩み、そこから対等となれば良い。
「いやだ……ぜったいに、いや……」
 誓うのは己を諦めた者全てを見返す力。
『カタリナの車輪』と謳われる少女が誕生する切っ掛け。

 ──ふざけんなよ。
「私は今の私に後悔しない。でも、昔の私も否定しない。あれがあったからこそ今があると私は胸を張って言える」
 夢に縋るだけではその決断を自分から否定することになる。

 棘だらけの車輪が空を割る。掴み取ったカーバンクルは醒めた夢の先、立ち向かう現実へと帰還を果たす。

成功 🔵​🔵​🔴​

ステラ・エヴァンズ
子供の姿に戻るとは…戦場では厄介な力ですね

夢…地下王国で道具として育てられ、利用され、幽閉されていた時代でしょうか?
浴びせられる罵詈雑言に、人権も尊厳もない…まさに悪夢
助けてくれる人はいない…いや、助けようとしても見つかっては殺された
私もまたそんな人達を助けられなかった
小さな窓から訪れる小鳥だけが私の………いえ、いえ
違う、私にはもっと温かいものがあった
手に入れた筈の温もりがある
可愛い子供達に、何より心から愛する人
左手の薬指、今ははめるには大きい大切な人に貰った婚約指輪を少し撫で
帰らなくちゃ…必ず帰ると約束しているのです

えぇ、帰りましょう
私はもう鳥籠の鳥ではなく、自由な空を羽ばたく鳥ですから



 アックス&ウィザードに存在していた地下世界。少女は牢の中で光を夢見る。

●ステラ・エヴァンズ(泡沫の星巫女・f01935)

 自身にとって幼少の頃とは幸福と言えたのだろうか。微睡みから醒めるステラは回帰する。
 最低限の環境すら無いこの牢で過ごす事も慣れた物だ。誰かが来たかと思えば早口で何かを捲し立てて来る。何を言っているのか、その意味も分からないがなんとなく怒られているんだろうなとぼんやりと眺める。
「ごめんなさい……」
 目を逸らせば長くなる、それだけを理解していたステラはただ目を見て謝る事しか出来なかったのだ。少しでも早く、独りになる為に。
『大丈夫かい……? これ、急いで食べちゃいなさい』
 永い悪夢の中でも光が射し込む事があった。
「あ、あの……ありがとう、ございます……」
『私は戻る、見張りもそう長い事は誤魔化せないのでね』
 彼女の身を案じる者の存在は絶望しか無い幽閉生活のステラにとっては明るい希望となる。
「あまい……」
『美味い甘味だろ? 森で採取した特別品だ』
「そんな……わたしがもらってよかったのですか……?」
『……こんな処遇は間違っている。あんたは子供だ、ただの子供。どうか希望を捨てないでくれ』
 助けるから。
 その言葉がどれだけ彼女の助けになっただろうか。しかして望みは砕かれる。
「こない、な……」
 名前も知らない誰かさん。時間の感覚など等に失って久しいが待つ事がこんなにも大変だとはステラも思わなかった。
 やがて足音が聞こえ、はっと其方を向けば現れるのは何時も何を言ってるか分からない怒る人。今日も怒られるのかと諦念の気持ちを抱き目を見れば平時とは違う喜色籠った目に気味悪さを感じ。
 聞きたくない言葉を聞いてしまった。
『隠れてお前と会っていた異端は処分した。わかるか? お前が追い返していればこんな事にはならな──』
 後は何も耳に入ってこない。得たのはまた永き時を孤独に過ごす虚無と助けられなかった嘆き。
 小さな窓から訪れる小鳥だけが──

 本当に?

 違う。

 それは違う。

 知るはずの無い記憶、少女の未来の話なのだから。だがこの夢を見ているのは?
 二人の子供達、愛する人。護るべき、護ってくれる人が居るのだ。
 忘れるな、己の歩いてきた道は決して無かった事にはならないのだから。

 ──帰らなくちゃ、必ず帰ると約束しているのです。

 左手に嵌められた指輪が輝き、周囲を包む。
 牢の中、先程までぶかぶかだった婚約指輪がぴったりと収まっている事を自覚する。
「えぇ、帰りましょう。私はもう鳥籠の鳥ではなく、自由な空を羽ばたく鳥ですから」

 ありがとう、あの時言えなかった名も知れぬ誰かに礼を述べ、溶けた夢の先、生きるべき現実へ帰還を果たす。

成功 🔵​🔵​🔴​

アリス・セカンドカラー
『あの子』がいてセレナちゃんがいて、義兄様もいて、シスターズもいる。なるほどなるほど……悪夢だわ。『あの子』は既に私と一つになって常に傍らにいて共に歩んでいる。
私(猟兵)が『あの子』(吸血姫)を討たなかったifなんていらないわ。だって『オトモダチ』(シャーマンの能力で使役するオブリビオン)だっていっぱいできたのよ?
……だから、人の『大事なモノ』に土足で踏み込んだ覚悟はよろしくて?
B.I.G EXP、消滅なんて生ぬるいことは許さない。あなたも『オトモダチ』にしてお仕置きしてあげるわ。永遠に私の中で『あの子』の玩具になりなさい。



 『あの子』がいてセレナちゃんがいて義兄様も、シスターズもいる。
「なるほどなるほど……悪夢だわ」
 微睡む意識の中、そっと呟いた少女は苦笑を浮かべながら身を任せていく。

●アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の魔少女・f05202)

「ねぇ、ねぇ……」
 目を開けた先に見えるのは自身と同じ姿をした誰か。
 誰か……そう、あの子だ。
「なぁに……? まだ眠いのだけれど」
 目を擦りなんとか身体を起き上がらせるが、ふらふらと揺れる姿は覚醒には遠い様だ。
「何処か行きましょうよ」
 服を引っ張りながら微笑む少女はアリスの手に自身の手を重ねて歩き出す。
「何処によ、他の誰かと行きなさいな」
 まだ眠いのに……と呟きながらもそのまま引っ張られたまま着いていく。


 あぁ……なんて悪夢なのでしょう。
 誰も傷ついていない世界。
 傷つく予定の無い世界。
 もし、アリス・セカンドカラーが『あの子』を討たなかったら。
 もし、アリス・セカンドカラーが『あの子』の手を取っていたら。

「ねぇ」
「なぁに?」
 アリスが『あの子』に話しかける。
「貴女は今どこにいるの?」
「変な事聞いてどうしたの? ここにいるじゃない」
 アリスはただじっと前を見続けている。
「…………」
「誰も居ない、貴女と私の箱庭……満足出来なかったかしら」
 くすりと微笑む『あの子』は観念したかのように歩いていた足を止めて振り返る。
 セレナも義兄もシスターズも居ない、二人だけの箱庭。
「私が貴女を討たなかったIFなんて要らないわ。分かっているでしょう。あの現在があったから私にはこんなにも素敵な『オトモダチ』が出来た……」
 笑いながらそうね、と返すと『あの子』はアリスの中へと還っていく。常に傍らに、彼女は存在している。

 箱庭が崩れる、もしもの世界にヒビが入り割れていく。
 崩壊する夢を眺めアリスは己を取り戻す。
「B.I.G EXP、消滅なんて生ぬるいことは許さない。人の大事なモノに土足で踏み込んだ覚悟はよろしくて?」
 共に在る者はアリスの首に手を回し微笑む。
「待っていなさい、あなたにも『オトモダチ』を紹介してあげるわ」

 有り得たかもしれない、有り得ないかもしれない、その可能性が実現する事は無い。
 夢は醒め、現実へと帰還する。

成功 🔵​🔵​🔴​

火土金水・明
「時蜘蛛が吐く糸に触れると幼児化ですか、これは厄介ですね。」

思い出(雨の日、拾ってくださいと書かれたダンボール箱にいた黒猫。それが使い魔のクロとの出会い。)

あの日、偶然出会った黒猫。一緒に散歩したり、一緒に食事をしたり、一緒に眠ったり、楽しい思い出がいっぱい。

そして、気付けば大事な相棒となって一緒に依頼で戦った。

この大事な思い出を忘却したくない。クロと繋いだ絆を失くしたくない。

だから、私は戻る。クロの居る、今の時間に!

明「ただいま、クロ。」クロ「おかえりにゃ。」

アドリブ等は自由にお任せします。



「幼児化ですか……私の幼少の頃……」
 身を包む様に伸びる糸がウィザードを夢の中へと誘っていく。

●火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)

 先程から降り始めた雨、夜には止むらしいが段々と強まる雨音にその兆しは見られない。
「(外の濡れた匂いってどうしてこんなに鼻につくのかな……)」
 買い物帰り、赤い傘をクルクルと回しながら明は歩道を歩いていた。まだ伸びきっていない黒髪を後ろで束ねたポニーテールを小さく揺らしながら早足で家に向かう。
 慣れた道、特に迷う事も無く曲がれば何時もの光景が続く筈であった。
「あれ……?」
 視界の中の違和感、何時もと違う何か。道の端に置かれた濡れたダンボールに黒い影が見えたのだ。
「ねこちゃん……?」
 もぞもぞと動く影はか細い鳴き声を発しながら当たる雨を嫌がるように身を縮こませている。
「こんな所に居たらかぜひいちゃいますよ」
 ダンボールから剥がれそうになっている濡れた紙を取って見てみれば、滲んだ文字で拾ってくださいと書いてある。
「あなた、ひとりなのね……」
 袋を漁ってみるが、持っているのは頼まれた魔術関係の物と人間用のお菓子。弱った猫に与えてしまったらお腹を壊してしまうかもしれない。
 顎に指を当てて暫く悩む明。細めた瞼がやがて仕方なしと開いて。
「ごはんくらいなら、良いよね」
 持っていたタオルに包んで抱えてあげると、身体は丸めたままだが嬉しそうに鳴き声があがる。

 その日から黒猫、クロは明にとって大切な友達であり家族となっていった。散歩に外に出れば隣を歩き、食事の時はクロもご飯を求める。家で寛いで入れば膝に乗って丸まってくる。
「来たばかりの時はお風呂嫌いだったのに、いつからそんなせがむようになったんだっけ」

「え? 着いてくるの? あぶないから家でおるすばんしてて……」

「い、いつの間に……しかたないなぁ、私から離れちゃだめだよ?」

「ありがとうクロ、クロのおかげで助かっちゃった!」
 楽しい、優しい思い出、クロと一緒に過ごした時間は明にとってかけがえのない宝物。
 ずっとここに、またここからクロと一緒に過ごすのも悪くは無い。
『また?』
 またとはなんだろうか、ここは現実、現実の筈。
『明……明……』
 この声はなんだろう、聞き覚えのある、毎日聞いていた声。
『起きて! 明!』
 繋いだ絆は決して切れない、クロと過ごした道はこの時だけではない、今も続いているのだ。
「……クロ、そうだね。思い出に浸るのも良いけれど、私達は今を生きているんです」
 短く束ねられた黒髪はいつの間にか腰まで長い長髪に、ラフな私服はウィザードの仕事着に。
「戻ろう、クロが待っている今の時間に」
 硝子の砕ける音と共に空がひび割れる。

 ──ただいま、クロ。

 ────おかえりにゃ!

 時蜘蛛の脚が、また一つ自壊する。

成功 🔵​🔵​🔴​

リダン・ムグルエギ
「んっとねー、アタシ、バズりたい!
おじーちゃんみたいにどーんってさいせーされる
ステキなどーが、つくる!

承認欲求の塊で動画好きなキマフュ脳
それが小さな頃のアタシ…今と同じ気もするわね
色々撮ってはお祖父ちゃんに見せてた気がするわ

「自分の知らない『何か』を沢山探して見に行くといい
それが、リダンの『素敵』を育ててくれるよ

アタシの原動力
それはお祖父ちゃんの言葉と頭を撫でてくれる大きな手
だから…夢の中でも、会いに行きたかったの

この言葉があったから
アタシは猟兵を知った時に躊躇なく異世界へ飛び込めたのだもの

新しい『何か』を知るためにアタシは歩みを止めないわ
まずはこの糸でどんな衣装を作れるか
それを知る所から、ね



「んっとねー、アタシ、バズりたい! おじーちゃんみたいにどーんってさいせーされる ステキなどーが、つくる!」
「(承認欲求の塊で動画好き……小さな頃と今、変わってないわね)」
 薄れる意識の中、かつての自分を思い出しては苦笑するのであった。

●リダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)

「みてみて! これ、さっきとったの!めずらしいとり!」
 どれどれ、と動画ファイルを見る祖父。どんな時でも楽しそうに自分が撮った動画を見てくれる彼がリダンはとても好きだった。
「良いじゃないか、飛び回る鳥をこんなに綺麗に撮れるなんてリダンは凄いな」
 良い所は褒め。
「上手いな、そうしたら今度はこうしてみたらもっと良いんじゃないか?」
 褒めた中で提案もしてくれる。肯定しながらも意見を言ってくれる、自分を見てくれている。それはリダンにとってとても嬉しく、幼き頃、動画にハマっていた理由の一端でもある。

「おじーちゃん、だいじょうぶ?」
「あぁ、ちょっと風邪引いてしまっただけだよ」
 ベッドに横になっていた祖父が起き上がり、今日はどんな物を撮ったんだいと聞いてくるものだから。
「きょ、きょうはいいよー、ちゃんとやすんでて!」
 撮ってきたデータを後ろ手に隠し、祖父を寝かそうと腕に片手を添えて。
「リダン」
 優しく、落ち着いた声音で呼ぶ声にリダンは顔を上げて。
「今日は何を撮ったんだい?」
 お見通しか、と何処か居心地悪そうに目を逸らして。
「きょうはいつもよりとおくでめずらしいはながさいてるってきいたからそれを……」
 見せてごらんと言われ観念するように動画を見せると、何時もと同じ穏やかな笑顔で返してくれる。
「綺麗だね、これは水滴が垂れるまで待っていたのかな」
「そーなの! はなびらからおちるしゅんかん! きれいだよね!」
 微笑む祖父はリダンの頭に手を置いてゆっくりと撫でる。
「おじーちゃん?」
 己を撫でる大きな手に身を任せながら。
「自分の知らない『何か』を沢山探して見に行くといい。それが、リダンの『素敵』を育ててくれるよ」

 ──そうね、この言葉があったから。
 ──アタシは知らない世界を往く猟兵を知った時に。
 ──躊躇無く異世界へ飛び込めた。

 空が割れる。祖父は崩れた世界と共にリダンの目の前から消えていく。
「新しい『何か』を知る為にアタシは歩みを止めないわ」
 あの時も、これからも彼女は彼の言葉を忘れずに生きている。そしてそれを知るというなれば。
「夢見てるだけじゃ何も見つからないでしょ?」
 見覚えのある山道、対峙する時蜘蛛を眺め。
「先ずはこの糸でどんな衣装を作れるか。それを知る所から、ね」

 夢は、醒めるものなのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年05月14日


挿絵イラスト