帝竜戦役⑭〜Buff,The Magic Dragon
●骸をまといし者たち
群竜大陸、古竜平原。
そこに狂信者たちが集結しつつあった。
彼らは空を仰ぎ、熱狂的に叫ぶ。
「預言のときは来ませり!」
「来ませり!」
法衣の上に重厚な鎧の武具を身にまとい、彼らは昂揚に満ちていた。
神龍教団。
帝竜を神の遣いと崇める異教徒たちだ。
彼らが武装する理由、それは勿論神に仇なす愚か者たちに刃を向けるためだ。
神竜がおわすこの大陸に、高慢にも猟兵達が侵犯してきた。
彼らはそれをくい止めるため「お告げ」によって蜂起しようとしていたのであった。
「見よ、大陸の鳴動を! 神竜の咆哮を! 神は我々と共におられる! 我らの信仰と古竜の武具によって、今こそ我々は聖地を守護するときなのだ!」
「おおおおおーーーーっ!」
かつて帝竜と古竜たちが争った、生命なき平原。
そこで再び戦が始まろうとしていた。
●グリモアベースにて
「みなさま、群竜大陸にての戦役、まことにお疲れのことと思います。新たな戦場の次第が判明しました」
ここはグリモアベース。
ライラ・カフラマーンは居並ぶ猟兵たちに深々と頭を下げていた。
「帝竜の深部へと着々と攻略を続けている我々ですが、ここ古竜平原を攻略する必要が出てきました」
ライラの説明によれば、そこに帝竜の配下、神龍教団の一派が猟兵達を相手取ろうと待ち構えているのだという。
個々の戦力では猟兵の力に及ばない。
そこで彼らは戦力増強に一手をうっていたのであった。
「古竜平原ではかつて、帝竜と戦った古竜の亡骸がそのままに朽ちて置かれています。かれらはそれを加工し、武具としました」
帝竜には及ばずとも竜の力は生命を失っても強固、その骨の鎧をまとった彼らは魔法の類いなどはじき返してしまうそうだ。
「ユーベルコードもその例に漏れません。策も無しにただ敵に当たれば苦戦を強いられるでしょう。鎧の隙間を通すなど、工夫が必要です」
ライラが杖の先で地面を軽く叩くと、霧が変化し姿を形どる。
それは平原を進軍する神竜教の軍団。
相手を威圧するような骨の鎧、重厚な鎧に身を包んでいる。
しかしやはり、完全な加工は難しいのか所々隙間、裂け目が見え隠れしている。
つけいる隙はありそうだった。
「彼らが身につけている鎧は古竜の骨で出来た物。戦利品として得るも良し、貴重品として売却するも良し、かつての栄誉ある種族に敬意を表し、埋葬するのも良いかもしれませんね。それは各々の判断に任せます」
しかし、とライラはつけくわえる。
「彼らを撃破出来なければそれも絵に描いた餅に過ぎません。みなさまにおきましては神竜教団を撃破し、この戦役の勝利にむけての助力をお願いします」
そう言ってライラは、深々とまた頭を下げたのであった。
妄想筆
こんにちは、妄想筆です。
この依頼は戦争フラグメントで一章のみの構成となっています。
立ち塞がる神龍教派の信徒集団を撃破してください。
オープニングに記載があるように、敵は古竜の骨をまとっています。
それに対抗する手段があればプレイングボーナスがつきます。
力押しでもボーナスがつかないだけで、失敗になる訳ではありません。
皆さんのひらめきを文章に出来るよう頑張ります。
なお、戦利品の古竜の骨ですが、実際にアイテムとして獲得出来るわけではありません。
フレーバー的な物としてお楽しみください。
プレイングに記載がなければ戦利品に興味が無かったと判断致します。
オープニングを読んで興味が出た方、参加してくださると嬉しいです。
よろしくお願いします。
第1章 集団戦
『神龍教派のクレリック』
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POW : 信仰心の証明
自身の【神龍教への信仰心】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD : 神罰の吐息
【天から降り注ぐ聖属性の突風】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に神龍教徒のみに及ぼす加護が満ち溢れ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ : 神龍降臨の儀
無敵の【神龍】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
イラスト:善治郎
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
古竜平原。
そこは死の大地。
かつて帝竜と争った古竜たちの亡骸がそのままに、いにしえの激戦がそのままに、誰も通わぬ静かな場所と化していた。
信じるべき偉大な神に刃向かった愚か者どもの骸を、侮蔑の目で眺めながら神竜教団の一派は決戦をするべく歩を進めていた。
彼らが身につけているのは骨の鎧。
古竜たちの亡骸で作られた魔法の鎧だ。
かつて刃向かった者達が、今刃向かう者達を防ぐ手段となる。
「彼らも神に奉仕することが出来て、真に喜ばしく思っていることだろう」
神に仕える殉教。
それで叛逆の罪はいささか減じられたのかもしれない。
だが、これからむかってくる愚か者たちは、神竜の畏怖を知らぬ。
我ら神竜教団を知らぬ。
この身にまとう竜の力を知らぬ。
「神の加護を身につけし我らに、負ける道理無し!」
「愚か者に死を! 猟兵に死を!」
「我ら、神に代わって神罰を成さん!」
ウオオオオオオオーーーーッッッ!
狂信者たちの壁。
猟兵達はこれを乗り越えなければ、帝竜へと辿りつくことは難しそうであった。
ノイシュ・ユコスティア
武器はロングボウ。
ユーベルコードで流花を召喚し、その背に騎乗する。
上空から敵の進軍の様子を観察しつつ、戦法を練る。
…鎧の隙間、接合部を狙い、1体ずつ撃破するのが良さそうだ。
よしっ、行こう!
気付かれないように集団の後方から近づく。
先制攻撃を仕掛けよう。
隙間が見えた瞬間に矢を番え、そこを狙って放つ。
う~ん、どうかな?うまくいった?
ダメならダガーで攻撃するしかない。
敵集団とはできる限り距離を取る。
なるべく短時間で多くの敵を仕留めるために集中しよう。
無敵の敵を呼び出されたら厄介だ。
古竜の骨…
その竜はどのくらい強かったのか
すぐそこまで迫っている戦いに複雑な思いを抱きつつ埋葬。
ソロ希望。
古竜平原に風が吹く。
それは頭上に浮かぶ雲を動かし、猟兵と大鷲を神竜教の集団から身を隠すのに一役買っていた。
戦友、流花とともにノイシュ・ユコスティアは上空より敵を眺めていた。
敵は大勢、こちらは無勢。
まともに相手をしてはこちらが不利だ。
奇襲。
それこそが最も効果的な戦法だとノイシュは判断していた。
穏やかな眼の先に、外骨格に包んだ敵の姿が映る。
前情報の言う通り、あの鎧は強固そうだ。
しかし結合部から法衣が見える。
あそこを狙えれば勝機は見えそうだ。
ロングボウを握る手に、思わず力が入る。
「よしっ、行こう!」
ノイシュの声を聞き、大鷲は雲の海へと身を沈ませていった。
戦歌を口ずさみながら、神竜教の信者たちは行進を続ける。
預言のときは来ませり。
神に仕えるべき時がきたという昂揚感に打ちひしがれながら、彼らは進む。
その表情は皆一様に笑顔につつまれていた。
だが、集団の後方を歩いていた一人の笑顔。
それが異様に引きつった。
「おい、どうし……」
異常に気づいた別の者が声をかけようとした。
だが相手はそのまま身体を傾け、どうと倒れてしまう。
その首筋に、しっかりと矢が突き刺さっていた。
「なん……」
言葉は続かない。
今度はそいつが喉元に矢を受けて、絶命することとなった。
同胞の死体。二つの矢。
周りにいた者は警告の叫びを上げた。
「敵襲ーーーーーーっ!」
ガチャガチャと鎧の音を響かせ、神竜教団は辺りを警戒し始める。
前後左右に武器をむける円陣。密宗陣形。
だがその包囲も頭上からは無意味だ。
ノイシュは再び弓矢を引き絞って放ち、犠牲者をもう一人増やすことに成功した。
「上だ! 空にいるぞ!」
クレリックの一人がこちらを指さしてくる。
どうやら気づかれてしまったようだ。
だがそれは予測の範囲。
こうやって距離を取れば、こちらに攻撃する手段は限られてくる。
高所の利を生かし、ノイシュは次々と矢を放つ。
それらは寸分違わず狙った場所、鎧の隙間に突き刺さっていった。
「おのれ、神に仇なすものよ! たかが一騎にやられるか!」
神龍教徒の怒号が、天にまで響く。
それはたちまち天候を一変させ、吹きすさぶ突風を生み出した。
だがノイシュの腕は微動だにせず、目標に照準を合わせていた。
荒天に負けず空を飛ぶ大鷲。
戦友流花がこの程度で自分を振り落とすはずがない。
その信頼が彼の揺らぎを、動揺をピタリと止めていた。
そしてまた、弓矢が雷光のように教徒へと降り注ぐのであった。
戦いは猟兵に傾く。
あらかたの兵を蹴散らし、彼と大鷲は地へと降り立つ。
敵が身につけていた古竜の骨を手に取り、ノイシュは思う。
かつて帝竜と戦った古竜たち。
彼らはどのくらい強かったのであろうか。
おそらく強大な力を持っていたに違いない。
しかし、それでも彼らは暴虐の前に屈してしまった。
その骨を懐では無く、地へと下ろすノイシュ。
まだまだこの戦争は続く。
古竜の力があれば役に立つに違いない。
だが、それは彼らと同じではないだろうか。
様々な思いが去来する。
その思いを馳せながら、ノイシュは古代の種族をこの地に、彼らの骨を埋めること決めるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィクトリア・アイニッヒ
神竜教派。この世界を滅ぼす帝竜を神の御使いと崇めし者達。
信仰は、自由です。ですがその自由によって世界の滅びを推し進める事は、許されません。
主よ。歪んだ信仰者を正す、威光の光を…!
UC【神威の光剣】を使用。
厄介なのは、古龍の骨。ユーベルコードを減衰させる、その力。
…ならば、ここは。
主への祈りを捧げ、光剣を具現化。
この剣は、主の威光が具現化した物。その剣を、敵の本体に向けて間断なく撃ち放ちます。
呼び出せる数に制限は無し。無尽蔵に生成し、四方八方から撃ち込み続けます。
…十や百を防がれようと気にはしません。万の内の一が通れば、私の勝ちなのです。
その歪んだ想い、この剣で正します。主よ、我に力を…!
セルマ・エンフィールド
帝竜ヴァルギリオスが神の遣いだというなら……また少し、撃つ理由が増えましたね。神にいい覚えなんてないもので。
無敵の神龍といえどユーベルコード、であればこの地の古竜の骨はそれにも相応に効くでしょう。
神龍の攻撃を避けつつ足元の古竜の骨を拾い、ナイフ投げの要領で目や口内を狙い『投擲』し、弱らせていきます。
ここの古竜はかつてベルセルクドラゴンには敗北したらしいですが……あなた方の信じる神はその古竜の骨にすら勝てないようですね?
神龍が弱体化したなら【ブライニクル】を使用。神龍を凍てつかせ、増強された身体能力や反応速度を活かしフィンブルヴェトの銃剣と零距離射撃でクレリックの鎧の隙間を狙い倒していきます。
土埃とともに進軍を続ける神竜派の信者たち。
その群衆をヴィクトリア・アイニッヒとセルマ・エンフィールドの両名は見据えていた。
ヴィクトリアも神官の出だ。信仰は否定しない。
だが神竜派、彼らは世界を滅ぼす帝竜を神の御使いと崇めている。
彼らの信仰の行きつく先、それは世界の滅びを推し進める事に他ならない。
脳裏に、オビリビオンが故国へと襲来してきた日々がよぎる。
侵攻を許してしまっては、同じようなことが起こってしまうのであろう。
「そのような事、断じて許されるはずがありません……」
敵を見つめながら、思わずヴィクトリアは紋章に手を伸ばし、力強く握りしめていた。
セルマも狂信者の群れを冷ややかに眺めていた。
帝竜ヴァルギリオス。
自分たちが滅ぼすべき、オブリビオン。
彼らはそんな存在を神の遣いだとぬかしているそうだ。
思わず引金をひきたくなる衝動に駆られてしまうが、まだ早い。
ちらりと、そばにいるヴィクトリアを横目で見つめ、セルマは誰にも聞かれないような小さな声で呟くのだった。
「神にいい覚えなんてないのに、どうしてみんな信じるのかな」
神を信じる者。嫌悪する者。
正反対の二人が、狂信者の群れに対して攻撃を仕掛けるのであった。
教団の足が止まる。
集団の前に立ちはだかるはヴィクトリア。
信者たちが身につける骨の鎧とは違う、白銀の騎士鎧が陽の光をはね返し、光り輝いていた。
「主よ。歪んだ信仰者を正す、威光の光を…!」
祈り、斧槍を高々と掲げ上げる。
それもまた太陽を浴び、煌めいて彼女の姿を凜々しく照らす。
彼らが信じるのは帝竜。
しかし自分が信じるのは地を照らす太陽。
己が信じる物にむかって、彼女は声高らかに叫ぶのであった。
『主の威光よ、悪意を祓い給え! ──『神威の光剣』よ!』
ヴィクトリアの訴えに応え、日輪は輝き仇なす邪教の徒にむかって威を放つ。
それは天から敵を穿つ、無数の光剣であった。
多くの光が神竜派へと降り注ぐ。
だが、剣は分厚い鎧に阻まれた。
飛来する剣の雨は、敵集団に致命を与えることは出来ず、その場へと留めるだけであった。
「馬鹿め。我らを襲おうとしたようだが一人で来るとは愚かな。この鎧のことを知らなかったようだな!」
相手の奇襲は不発に終わったようだ。
神竜教のクレリック達は盾で剣を塞ぎながら、嘲り笑う。
だが、ヴィクトリアはそんなことはお構いなしに、祈りを捧げて剣を振らせ続ける。
自分が祈り続ける限り、剣は降り注ぎ続ける。
致命傷を与えずとも、動きを止めるだけでも良い。
相手の集団にむかって撃ち続ける。
そこに勝機があるのだ。
信者たちが祝詞を捧げる。
すると天より稲光が落ち、巨大な龍が姿を現す。
それは神々しく、おもわずヴィクトリアもため息をつくほどであった。
グリモアベースで見た暴竜、ヴァルギリオスとは似ても似つかない。
信仰が彼らを歪ませ、ありもしない物を出現させているようであった。
グルルルルル……。
龍が唸りを上げる。
剣の雨によって動けずにいる信者達に代わって、ヴィクトリアを噛み砕こうというのだ。
鎌首をもたげる龍の顔に、コツンと何かが当たる。
顔をそちらにむける竜。
奴が見たのは骨の欠片を手で遊ぶ、セルマの姿であった。
「あなたの相手はこの私ですよ」
冷ややかに龍を挑発するセルマ。
セルマの目から見ても、頭上の龍は輝いて見える。
だがそれはまやかしだ。
神々しい姿で人を欺き、軽蔑しているのだ。
「本物を相手取る前の予行練習です。偽物さん、倒されてくださいね」
ナイフを投げるように、小骨を竜にむかって投げつけた。
それは急所には当たらずにいたが、激昂がヴィクトリアではなく自分に襲いかかってくる。
ここまでは予定通り。
セルマは体術を駆使しながら自分と竜を、ヴィクトリアと神竜教徒たちから距離を離していくのだった。
彼女が信者たちを押さえこんでいる間に、あの龍を撃破する。
信仰の集まりを砕けば、信者たちに激震が走るに違いない。
浮き足だった集団を仕留めるのは造作もないことであろう。
「さて、どこまでもたせられるか……」
手に汗握り、抱える小骨が滑り落ちそうになる。
この地に眠る古竜の骨。それは類い希なる力を持っているのは間違いない。
それはヴィクトリアの攻撃を防いだことでも証明済みだ。
猛り来る神龍の姿。
あれがユーベルコードで出来た物だとすれば。
「効果的なのは間違いないですね」
自分を呑み込まんとする巨龍。
その大口目がけて、セルマは尖り切った古竜の骨を投げつけた。
グルオゥアアアッ!
龍が雄叫びを上げ、セルマの方向から身体を逸らす。
痛みにのたうつその姿。
効果は覿面のようであった。
そしてその無様な、無防備な姿を晒す敵を外す、セルマでは無い。
「所詮、神なんてそんなものですよ」
二つの飛刀を続けざまに放つ。
神龍の双眸に、骨片が深々と突き刺さり、赤い斑点を造り出したのであった。
空の海でのたうつ巨龍。
それは龍というより蛇であった。
セルマは神竜派にむかって冷ややかに言い放つ。
「ここの古竜はかつてベルセルクドラゴンには敗北したらしいですが……あなた方の信じる神はその古竜の骨にすら勝てないようですね?」
見せつけるかのように、骨を相手方にむかって放り投げる。
彼らの中で動揺が起こったのは間違いなかった。
頭上の威が、弱まっていくのを感じる。
彼らの信仰が揺らいでいるだ。
この機を逃さじ。
セルマが力を開放し、瞬時に空気が凍てつき始める。
その冷気はすさまじく、戦場を覆うほどであった。
龍が氷の彫像と化していく。
信者達の呼気が白くなる。
攻撃は防げても、寒気そのものは防げない。
身体がこわばり、動きが鈍くなっていく。
「歪んだ想い、この剣で正します。主よ、我に力を…!」
そんな彼らにむかって、間断なく降り注いでいた光の剣が、とうとう刺し貫いたのであった。
寒威に震える彼らを、日輪の剣が貫く。
なんという皮肉であろうか。
十や百を防がれようとどうと言うことは無し、万の内の一が通れば勝ち。
そう信じて放ち続けていたヴィクトリアの攻撃が、神竜派の教団たちを穿ち始めた。
彼女の信仰が、彼らを上回っていたからであろうか。
否。
信仰の象徴である龍を討たれたとき、勝負は決まっていたのである。
応戦しようと動く者もいた。
それも予想の範疇。
冷気の霧からセルマが姿を現し、敵を討つ。
頭上を気にし寒さで満足に動けない敵など、止まった的以下に過ぎない。
易々と銃剣を鎧の隙間に突き刺し、倒れた相手に銃弾でとどめをさす。
「さあ、存分に神に祈ってくださいね」
すでに勝敗は、決しつつあった。
次にセルマが目を覚ました時、彼女はヴィクトリアの膝の上にいた。
「気がつかれましたか?」
ヴィクトリアが優しく微笑みかける。
どうやら意識を失っていたらしい。
セルマが彼らを相手取るに使用した力、ブライニクルは非常に強力な能力だ。
だがその代償に、発動後に無防備な姿を晒してしまう。
だからこそ、彼女に敵集団を押さえ込んで貰う必要性があったわけだが。
頭をヴィクトリアに預けながらセルマは横を向く。
どうやら無事、一段落ついたらしい。
「しばらく休んでていても大丈夫ですよ?」
ヴィクトリアの声は暖かい。それはまるで春の日差しのように。
セルマは神に対してあまり良い感情を持ってはいない。
だが仲間。
この膝枕に対しては心を許しても良いのではないだろうか。
そんな気の迷いがよぎってしまう。
一戦終えたヴィクトリアは、セルマを見下ろしながら考える。
彼女は相変わらず飄然としている。先ほどの騒乱が嘘のようであった。
きっとまだまだ戦役は続く。
二人の猟兵は、しばしの休憩に甘んじるのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
一郷・亞衿
信仰心が具現化した無敵の神龍、ね。なら、その信心を揺るがすとしますか。
まずは『ザ・シング』で敵の偽物を召喚。敵群の中に偽物を紛れ込ませよう。
神龍が召喚されたら、その攻撃を敢えて一発だけ受ける──どんなに強力な攻撃でも、一発だけなら装備してる[ブードゥー人形]で無効化できるはず。
“無敵であるはずの神の攻撃が効いていない”というのを示したら(敵の勘違いなんだけどね)、偽物に「神が下した神罰が通用しないだと!?」とか叫ばせて駄目押し。
神に綻びが生じ次第<ダッシュ>で接近。同時に、偽物に擬態を解かせて<だまし討ち>!
動きの鈍った教徒の鎧の隙間を<見切り>、<呪詛>塗れのカッターの刺突をブチ込んでやる!
信仰の声を上げながら行進をつづける狂信者達。
鰯の頭も信心から。
彼らにはカタストロフを標榜する帝竜が神々しい神に見えるようであった。
「なら、その信心を揺るがすとしますか。信じるも信じないもあなた次第、ってね」
マスクの下で一郷はほくそ笑む。
その時彼らはどんな顔をするのであろうか。
その光景を想像し、彼女は秘策を実行に移すのであった。
神竜派教団の前に、飄々と一郷は姿を現す。
気さくに彼らにむかって話しかけるのだ。
「ねーねー、あんたら神竜って奴を呼び出せるんでしょ? ちょっとあたしにみせてくれないかな」
いきなりの登場に、砕けた物言い。
あきらかに不審な人物であることは間違いない。
「見れば異教の輩だが、神竜様のお姿を見たいと申すか」
「さては改宗かそれとも狂人の類いか?」
訝しがる彼らの声。それは当然だ。
オカルト好きの一郷にとって、ドラゴンの姿は見たいに決まっている。
そしてそれが作戦に必要なのだということも。
半分興味、半分挑発の体裁で、彼女は信者の群れに呼びかけるのだ。
「それとも呼び出せないのかな? なあんだ、あんたらの信仰もたいしたことないんだね」
「貴様……」
それが信者の怒りに油を注いだ。
クレリックたちが拳を振り上げる。
天が割れ稲光が落ち、神々しい巨龍が一郷の前へと姿を現した。
神を軽んじる愚か者にむかって、龍は咆哮とともにブレスを吐いた。
一郷は炎に包まれ消し炭と――はならなかった。
「馬鹿な! 神が下した神罰が通用しないだと!?」
信者の一人が驚いて叫ぶ。
目の前の少女はドラゴンの炎をまともに受けたのにも関わらず、ピンピンとしていたからだ。
神の怒り。それが通じなかった。
その事実が周りへと波及し、動揺が広がっていった。
信仰が揺らぎ、巨龍の姿も薄れ出していく。
そして一郷はゆっくりと、彼らにむかって歩を進めるのであった。
「うわわわ……もう駄目だぁ! 悪魔の使いだ!」
信者の一人がまた叫んだ。
うろたえるその姿で、周りの信者にむかって斬りつける。
「おまえ、何をする?」
「もう駄目だ、おしまいだ! 俺はあの方につくぞ!」
もみ合い、へし合う声。
どこで誰が争っているのか、この大勢ではわからない。
しかし、誰かが裏切ろうとしているのは確かであった。
「ほらほらほら、余所見していると危ないよ~っ!」
混乱している敵集団にむかって、一郷はカッターナイフを突き刺した。
突き刺された信者はうめき声をあげ、異形の姿へと変貌する。
そして唸りをあげて、他の信者たちへと襲いかかるのであった。
「悪魔だ! 悪魔がいるぞ!」
「仲間を、悪魔へと変えやがった!」
「神竜様もかなわない……奴は、とんでもない悪魔だーーーっ!」
味方を扇動するかのように、あちこちから怯えた声が聞こえ始める。
こうなっては統率もあったものではない。
信者達が、異形の者達が、相争う地獄絵図。
その中でのほほんと一郷はカッターナイフを易々と突き刺していくのであった。
古竜平原から一人、また一人と神竜教徒は逃げ出していった。
大半が去ったあとで、一郷は安堵の息を漏らす。
まさかこんなにうまく行くとは。
彼らの中に偽物を紛れ込ませたのだ。
あれだけの人数だ。数人くらい知らない者がいても気づかれはしない。
そう算段した一郷の策は見事当たり、彼らの信仰を揺らがせることができた。
あとはご覧の有様である。
ボロボロになったブードゥー人形。
そしてこれが身代わりとなってくれなければ、作戦は失敗していたかもしれない。
欺きは真実となり、敵を撤退させることに成功した。
「あんたが一番の殊勲賞だよ」
そう言って一郷は人形の頭を撫でるのであった。
成功
🔵🔵🔴
伊美砂・アクアノート
【POW 羅漢銭・無影撃】
信心は否定しないがな。コッチは竜狩りが仕事でね…。
狂信っつーのは、思ってるより足を止めるのが難しいモンだ。命惜しまず突っ込んで来られると怖いからなー。若干距離をとった中距離戦を試みるよ。数に任せて接敵されて囲まれるのだけは避けたい。
ロープダートを振り回し、先端のナイフを投擲。骨防具の隙間を狙えそうなら、『無影撃、スナイパー、投擲、早業、視力』でコインを狙い撃つぜ。 接敵されたら、敵足元の地面めがけてグレネードランチャーを発射。タロットカードを投げつけて牽制、距離を取る。それでも近寄られたら、ショットガンリボルバーを抜いて一発撃ち、怯んだ隙にガラスナイフで隙間を刺すよ。
戦場外院・晶
「神罰……で、御座いますか。もしもあるならば速く下して欲しいものです、戦場外院・晶で御座います。はじめまして」
信仰も故郷も捨てて久しく、この身に罰が下るは正に道理
「……ですが」
向かってくる、クレリックの皆様方を見遣って
「私に下る罰にしては……貴女様方……」
【手をつなぐ】
手を組んで祈るため、不利を承知でその良の手を覆わなかったのは見上げた信仰心ですが……この見下げ果てた尼僧相手ではあまりにも無用心
「質も!量も!固さも!恐ろしさも!」
秘技・概念投げ
どれ程来ようとも、その身に纏った骨同士、大いに投げてぶつけ合わせて……中の柔い肉体が保つものでしょうや?
「まるで全然、足りていないので御座います」
帝竜を信仰する狂信者の群れ。
そしてそれを守る外骨格。
一筋縄ではいかない集団に対し、離れた場所から伊美砂・アクアノートと戦場外院・晶は機をうかがっていた。
「狂信っつーのは、思ってるより足を止めるのが難しいモンだ。命惜しまず突っ込んで来られると怖いからなー」
怖いと言いながらも、伊美砂の顔に怯えはない。
これから切られるであろう戦いの火蓋に、うずうずしているのだ。
一方の晶は静かに手を合わせて遙か前方の敵集団を見つめていた。
生まれは違えども、信仰の道をそれぞれ歩む者。
なにか感じる処があるのであろうか。
「神罰……で、御座いますか」
すでに信仰は捨てた身と、信仰に殉じる身。
はたして神はどちらに微笑むのであろうか。
うすら笑みを浮かべる晶。
そんな彼女に伊美砂は問いかける。
「数が多いからね、囲まれるのは避けたい。離れて戦おうと思うんだけど」
リボルバーやロケットランチャーを晶に見せる。
良かったら使え、ということであろう。
晶は好意はありがたいのですが、と首を振り漆黒の和装から両腕をまろび出す。
「堕落した身で武器を帯びたるは分不相応。私は素手にてお相手しようと思います」
微笑みを絶やさない晶の姿。
彼女はマジだ。
やれやれと、伊美砂は被りを振った。
「アンタの信心も相当だよ。ま、仕事といきますか」
見つめ合い、うなずき、二人の猟兵は戦場へと駆けるのであった。
「なんだアレは?」
集団の先頭を歩いていた神竜教徒が、前方に佇む人物に気づいた。
その人物は両手をあわせて深々とお辞儀をし、教団にむかって挨拶をする。
「戦場外院・晶で御座います。はじめまして」
たおやかな笑み。落ち着いた物腰。
街で会ったのならば、何処かで会いましたでしょうかと挨拶を交わす所だ。
だがここはすでに戦場。
帝竜の信徒でないものは排除するのみだ。
鎧擦れの音を震わせ、一人の信徒が前へと出る。
神竜様のための聖戦。
その戦勝祈願の生け贄にするに丁度良い。
誰だか知らんが、この地に来たことを後悔するがいい。
口の端をつり上げて、信徒が剣を振るう。
その刃は目の前の女性を容易く切り伏せる。
――はずであった。
「……足りませぬ」
「!?」
女性……晶は微笑みを崩さず信徒に話しかける。
「この身に罰を下そうとするのならば、貴女……足りませぬ」
みしり、と音を響かせ、晶は信徒と握手を交わした。
「あああああああーーーーっっっ!?」
悲鳴。
叫び。
驚愕の目。
晶の手によって握りつぶされた手先は、甲を突き破って骨が飛び出していた。
手を押さえ、激痛に呻いて下がる教徒。
その姿に、神竜派教徒はようやく目の前の人物が敵だということを理解した。
「貴様!」
「ぶっ殺してやる!」
全身を睨めつける殺意。
それが晶にとっては心地よかった。
信仰も故郷も捨ててすでに久しい。
もしここで斃れるとしたらそれが架せられた罰というものなのであろう。
なれば本望。
「神罰をくだされるのですか……ささ、存分に参られませ」
むかってくる信者を前にして、今だ晶は微笑むことを止めなかった。
晶へとむかう信者達。
その側面より縄鏢が飛びかかり信者へと。
それは足へと絡み、バランスを崩させ転倒させる、
突然の転倒により、後続も急には止まれず将棋倒しが起こった。
「よし、動きがとまったね」
クルクルとロープダートを軽やかに巻き取り、伊美砂はもう片方の手でコインを弾き上げた。
ピン、ピン、ピン。
片手で器用に幾つもの硬貨を弾き上げる。
その数は丁度、倒れた人数と同じ。
頭上に舞い上がったコインの群れが落下を始めた。
ロープダートをしまい込んだ伊美砂は両手の親指を軽く人差し指へと引っかける。
視線はその先、神竜派のクレリック達。
ピン、ピン、ピン。
再び指先でコインを弾く。
勢いは縦から横へと。
そしてそれは、寸分違わずに鎧の隙間へとめり込んでいったのであった。
不意をつかれた教徒たち。
しかし痛みはすぐに怒りに変わる。
「相手は二人だ! 案ずるな!」
「すぐに叩きのめせ!」
関節部、肘や膝に痛みが走る。
だがそれを物ともせず、信者の一人は晶へと接近してきた。
すでに節を破壊されたのであろう。
その手に武器は持っていない。
怒りか信仰か。
クレリックもまた、素手で晶に襲いかかってきたのであった。
その姿に晶は笑みを崩さない。
「不利を承知、見上げた信仰心です……が」
殴りかかってきた相手の拳。
その手首を捻り上げ、そのまま頭上へと持ち上げる。
なんという豪腕。膂力。
この漆黒の尼姿にどれほどの力が秘められているのであろうか。
「私に下る罰にしては……貴女様……足りていないので御座います」
片手で相手を掴み上げたまま、呻きくずれる一人をもう片手で掴み上げる。
それは歪んだ組み体操のように、クレリック二人を逆立ちで持ち上げるのだった。
「質も! 量も! 固さも! 恐ろしさも! まるで全然、足りていないので御座います」
そのまま勢いを増し、砲丸投げのように投げ捨てる晶。
哀れ相手は、受け身も取れないまま人型の重弾と化して味方を押しつぶしていった。
「凄いね」
伊美砂は相方の行動に感嘆の声をあげた。
なるほど、鎧は確かに攻撃を防ぐ。
だから自分はその露出した部分、隙間を狙った。
だがあのように放り投げられては鎧はともかく、中の人間は衝撃に耐えられないであろう。
鎧が頑丈な分、ぶつけ合えられればやわらげることも出来ずにまともに受けてしまうことであろう。
自分には真似の出来ない技巧に、ただただ伊美砂は感心した。
「っと、呆けてる場合じゃないな」
見ればこちらにも何人かむかってくるのが分かる。
晶であれば逆にへし折れるだろうが、この乙女の細腕では無理というもの。
距離を取りながら伊美砂はランチャーに弾を込める。
そして足下、彼らと自分の中間地点にむかってそれを放った。
炸裂音。
しかし対してダメージを与えられないことは、あの鎧で分かっている。
これは煙幕だ。
爆音と土煙で相手に距離を近づかせないための。
砂埃のシルエットと咳き込む声。
それを頼りに、すらりとタロットカードを取り出しそこへと投げつける。
ただのカードでは無い。
縁を鋭利な刃物へと代えた特製だ。
呻き声が悲鳴へと変わるのが、はっきりとわかった。
「今日の運勢は最悪のようだったね」
倒れる気配に立っている気配。
敵さんはまだまだいるようだ。
その中の一人が、とうとう伊美砂の前へと姿を現した。
「死ね!」
「やだね」
邂逅を拒否し、狙い澄ました伊美砂のリボルバーがまたもや敵を射貫く。
鎧の接合部、膝頭。
それは強制的に相手を跪かせ、地に片足をつかせることとなる。
「コッチは竜狩りが仕事でね……」
だから雑魚には構ってはいられぬと、首筋へとナイフを深々と突き刺した。
二人の猟兵に、神竜派教団の群れは跡形もなく蹴散らされた。
鎧の力が発揮できなければ、数で勝ろうとも猟兵を押さえ込むことは出来ない。
肩で息をしていた伊美砂は、他に相手がいないことを確認すると、ようやく深々と息をつく。
かたや晶は平穏だ。
距離をとるためにあっちこっちと奔走した伊美砂に対し、晶は自ら敵の中へと赴いていた。
その違いであろう。
「まだ召される時ではありませんでしたか」
手を合わせる晶。
それはまるで相手の成仏を祈るかのようであった。
「これからデカい獲物が待ってるんだ。こんな所で死にたくはないね」
事が終わってほっとしたように、伊美砂は腰を落ちつける。
まだまだ戦は続く。
こんな処で手間取っている訳にはいかないのだ。
「そうですね。敵首魁はまだ残っております」
晶が握手をしようと手を差し伸べる。
その手を掴もうとして、しばし逡巡して伊美砂は自分で立ち上がった。
「ああ、竜退治といきますか」
古竜平原のその先、かの向こうに帝竜はいる。
そのことに二人は、思いをはせるのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
テイラー・フィードラ
敵を殺し殉教など笑えん冗談であるな……!
フォルティに騎乗し戦場を疾走、長剣を抜き放ち骨鎧の隙間を狙い振り下ろさん。
戦場を駆ける馬上では狙いがつけれん?俺と友の連携を馬鹿にするな!この程度造作もない!手綱と俺の声による合図で急停止や飛び掛かり転倒させた上で討つ事など容易いわ!
で、奴らの言う神龍とはこのような脆弱な存在か?それこそ神に対しての不敬である!
背負っていた杖より赤き光を放たせ、彼は誰時の罪人を召喚……無駄口はいらんからとっとと詠唱ぐらいしろ。
汝らの呼び出しし其の龍、此度の帝竜に比肩するモノ等無し!俺の口に疑念を抱くような信仰で挑むなど笑止千万!罪人よ、秘術を以って龍を堕落させよ!
自らの信じるもののために戦う。
それ自体は素晴らしいことだ。
しかし、それが世の破滅を導くということならば。
「笑えん冗談であるな」
颯爽と馬をかりて平原を進みながら、テイラー・フィードラは剣を抜いた。
行く先は神竜派の異教徒ども。
彼らの好きにさせるわけにはいかなかった。
自然と、手綱と剣を握る手に力がはいる。
相手は鎧を身にまとっている。
しかし、戦場で武具をまとうのは当然のこと。
ならば、自分と友フォルティの連携によってそれを打ち破る。
テイラーの眼に迷いはなかった。
その鋭い眼光の先に、平原を歩く敵集団の姿を捕らえた。
「よし、ゆくぞフォルティ!」
テイラーはかけ声をあげ、馬を全力で走らせるのであった。
騎兵と歩兵。
その歩みは比べるべくもない。
クレリックが警告の叫びをあげるまえに、テイラーは敵集団に果敢に踏み入った。
硬い音を放って骨鎧が長剣を阻む。
業物であるそれを防ぐとは、なるほどたいした品である。
敵の包囲がせばまる前に、愛馬は駆けて囲みを突破した。
じっと剣をみるテイラー。
刃こぼれこそないにせよ、鎧は剣を防いだ。
しかもここにいる全員がその鎧を身にまとっているときている。
「難儀な仕事になりそうだ」
手綱を操り馬を駆る。
斬撃が無理なら衝撃はどうか。
巨馬の体当たりに、さしもの僧兵も防げず吹っ飛ばされる。
身体が震え、喀血するのが見えた。
差し出された首筋、鎧兜の隙間へと長剣を差し入れ、テイラーは介錯をしてやった。
「所詮は借り物。戦場の経験が無い輩の首を刎ねるは容易い」
ましてやフォルティがここにある。
機動と頭上の優位を借りて、テイラーは一進一退の攻防を続けるのだ。
あるときは急停止し、あるときは敵を飛び越し、敵に動きを捕えられないように集団の中を駆け巡った。
やがて囲みが広がっていく。
相手は恐れをなしたのあろうか。
否。
居並ぶ集団が、天に祈って龍を呼び出すのを、テイラーは見た。
「来たか……」
神々しい龍の姿。それらを仰ぎ見る人々。
なぜだかその光景に、テイラーは苛立ちを覚えた。
欺瞞に激情を抑えきれなかったのであった。
自分も負けじと杖を取り出し、地へと突き刺す。
「枷囚われし懐旧の記憶抱くモノよ。未だ消えぬ事なき知を以て打ち消せ」
テイラーの呼びかけに、哄笑とともに悪魔が呼び出された。
かたや神龍、こちらは悪魔。
どちらが悪かと世の人は言うだろう。
「キャハハ! 大将、相変わらず無茶してやがな! フレンドいないのかぁ~い☆ミ」
「無駄口はいらんからとっとと詠唱ぐらいしろ!」
「きたよ、呼び出したいといてこれDAZE? あ、悪魔だから『人権』はないってか? アヒャヒャヒャヒャ、座布団一枚プリィィ~~~ズ!」
現れた途端に口げんかを始める二人。
そんな彼らに容赦なく龍は顎を開く。
神に逆らう者達にドラゴンのブレスが容赦なく降り注ぐ。
だがそれは身に降る前に雲散霧消していった。
動揺する信者達。
その狼狽を悪魔が嬉しそうに、逆撫でしていく。
「HAHAHA、どーよ俺サマ? 見たかいユーたち? しょせん神さまなんてなそんなもの☆ ケツ拭くカミのほうが凄えってな、HAHAHA☆ミ」
高笑いする悪魔。
それを使役しながら、堕落騎士が信者達を駆らんと悪鬼の形相でむかってくる。
その異様さに、クレリックたちは恐れを抱いた。
「汝らの呼び出しし其の龍、此度の帝竜に比肩するモノ等無し!」
棒立ちのままの僧兵を、たやすくテイラーは切り伏せる。
「どうした? むかってこないのか? 俺の口に疑念を抱くような信仰で挑むなど笑止千万!」
自らの信仰の象徴を撃ち砕かれた信者達。
その混乱を利用して、テイラーは相手を蹂躙していった。
もちろん己を奮い立たせ、刃向かう者もいた。
だがその攻撃はむなしく、悪魔によって阻まれる。
「あ、悪魔め……」
忌々しい眼を浴びながら、テイラーの背に跨る悪魔は、この惨状を愉しく見つめていたのであった。
成功
🔵🔵🔴
クロス・シュバルツ
アドリブ、連携可
ドラゴンは力の象徴として信仰される事もある……と聞いたことはありますが、これは如何なものかと
すみませんが、越えさせていただきます
黒剣は短剣状態に、鎖と短剣の連携による『フェイント』を交えながら『暗殺』技術を応用した『だまし討ち』『鎧無視攻撃』で隙間を縫って攻撃
敵の攻撃は敢えて受けた上で、UC【白の銷魂】のダメージ軽減効果や『激痛耐性』などで耐え、攻撃の隙を逃さないようにする
創造された神龍には、闇の波動で弱体化させ、「無敵と言う割には大したことないですね」とか煽ってみる
戦闘後、古龍の骨が貴重品である事には間違いなし。売却するかは兎も角、幾つか持って帰る事にしましょう
ガルディエ・ワールレイド
信じるもののために戦うことを否定はしない
俺は、俺が信じる平和を齎すために戦うとしよう
◆戦闘
武装は《怪力/2回攻撃》を活かす魔槍斧ジレイザと魔剣レギアの二刀流
骨の隙間を狙う刺突を軸とした近接戦で立ち回る
倒した敵から《念動力》で古竜の骨の一部を剥ぎ取る
敵の【神龍降臨の儀】が来れば先ずは【魔剣】で《武器受け》してコピーし、使用可能状態にしておく
その後に、倒した敵から奪った古竜の骨を【神龍】にぶつける
こいつもユーベルコードなんだから、骨に当たれば損害を受ける筈だし、そんな状況になれば疑念を招く筈
最後は【魔剣】で神龍召喚
俺は神竜に疑念を持っているから強くはない
動揺を誘う事が主目的で神龍を囮に近接戦で攻略
「ドラゴンは力の象徴として信仰される事もある……と聞いたことはありますが、これは如何なものかと」
嫌悪感をあらわに、クロス・シュバルツは死体を眺める。
神竜派の斥候であった者だ。
その身は骨で出来た鎧がある。
死は安らぎにはならないということか。
それとも、帝竜に逆らう者達はこうなるという見せしめか。
「信じるもののために戦う、それは否定はしないがな」
ガルディエ・ワールレイドは死体を漁り、ようやく骨の欠片を剥ぎ取ることに成功する。
死してこれほどの魔力を残すドラゴン。
それを滅ぼした帝竜の力とはいかほどか。
「死人に口なし、如何と問われても力が無ければ利用されるだけさ。俺が、俺たちが信じる平和を齎すために戦うとしようぜ」
ガルディエが立ち上がる。
斥候は倒したがいずれ気づかれるであろう。
その前に、敵を討つ。
「ええ、乗り越えねばなりませんね」
世界が終わるなど、そんなのはもうあってはならない。
二人のダンピールは、この世界を護るために神竜派教団をくい止めようとするのであった。
遙か遠くに、人影が見える。
それは先を調べようとしていた斥候の姿であった。
教団の進軍が止まる。
報告を受けようと待ち構えるのだが、斥候は動く気配はない。
信者達があれを死体と気づく前に、二人の猟兵は側面より踊りでた。
稚拙な奇襲。
だが猟兵の能力ならば、その片時さえあれば十分だ。
クロスとガルディエの両名は、武器を煌めかせながら居並ぶ教徒達に挑む。
腕を振れば誰かに当たる、そんな人の波。
ただ厄介なのは小賢しい防具を身につけていること。
急所を狙おうと、二人の技がその威を魅せる。
クロスが居並ぶ信者に相対する。
これほどの数なら、長剣はかえって取り回しに不利になる。
そう考えたクロスは得物を短剣に変えて、隙をうかがい攻める。
腕輪から鎖が伸びて足下に垂れ、とぐろを巻いた。
その輪の中へと敵が踏み入ってくる。
気配を察知し、振り向いてクロスは斬りつけた。
しかし、それは鎧によって阻まれる。
逆に敵の刃が襲いかかってきた。
クロスは避けない。
白く発光した彼の身体が、その攻撃を防いだのであった。
敵に注意力があれば気づいたであろう。
受け止めた腕に短剣の姿はなかったことを。
退くと同時に、腕輪に鎖が追従する。
それは敵の足下に絡みついており、体勢を崩して倒させた。
倒れた方向、そこには鎖で起こされた短剣が、喉元を待って鎮座していた。
吸い込まれるように、鎧の隙間へとそれは深々と突き刺さる。
悲鳴と血しぶき。
それらをあとに、クロスは腕を振るう。
鎖が地を叩き、手元に短剣が戻ってくる。
一人は始末した。だがまだ多い。
じゃらじゃらと鎖を腕に巻きつけ、クロスは雲霞のごとく押し寄せる信者達を相手取るのであった。
ガルディエも負けてはいない。
二つの相反する武器を手に、狂信者相手に大立ち回りを演じるのだった。
剣で深々と相手を刺し貫くと、そのまま相手を持ち上げる。
放り捨てて敵陣へと、そのせいで相手方はガルディエへと踏み込めない。
向こうは離れた間合いなのかもしれないが、そこはハルバードの間合いだ。
猛烈な突きが、こちらを睨む信者の視界を貫いた。
そしてまたもや、相手を持ち上げ放り投げる。
こうなっては密集陣形はあだとなる。
投げつけられた荷重によって、味方はふらつきぶつかり合う。
その隙に斧槍と剣が差しつらぬいてくるのであった。
すでに何人を屠ったであろうか。
しかしガルディエの顔は晴れない。
この乱戦に乗じ、念動力によって鎧を崩そうとしているのだが、強固なドラゴンの魔力は、そう易々と骨を折ってくれそうにはなかった。
「やはり、さっき剥ぎ取って良かったぜ」
時間をかければ取れるだろうが、今は少々無理そうだ。
ガルディエは、目の前の敵を倒すことに専念するのであった。
二人の猟兵に、神竜派の軍勢は崩れそうになる。
このままいけば勝利は猟兵に傾いたことであろう。
そうはさせじと信者達は天に、己の信じる神にへと祈った。
祈りは通じ、奇跡がその姿を現す。
神々しい龍の姿。
だがそれはまやかしだということにクロスとガルディエは気づいていた。
「出やがったな」
ガルディエが進み出る。信者達が離れる。
好都合だ。
これから行うことは是非彼らにも見て欲しい。
ひしめきあっていてはそれは満足に出来ないからだ。
ガルディエが持つ剣が紅く揺らめき、刻まれたルーンが輝く。
「気合い入れろよ、俺」
不敵な笑みを浮かべ、龍を見上げるのであった。
クロスにも、天に浮かぶ龍の姿が見える。
その下で構えるガルディエの姿も。
「いけませんね」
クロスが纏う闇が輝く。
その光の渦を集中させ、手を伸ばす。
伸ばす先は無論、龍。
クロスは味方を援護するために、闇の光を放ったのだ。
神龍のブレスがガルディエに降り注いだのは、そのすぐあとであった。
白き閃光が地に降り注ぐ。
神の怒り。いまだかつてこの天罰を耐えられた者などいない。
刑は執行され、勝利が神竜派に転がり込んでくるはずであった。
だがそうはならない。
彼らが見たのは、その場に紅い焔を焚きつかせながら、悠然と再び武器を構える漆黒の騎士の姿であったから。
「馬鹿な……」
信者たちが声を漏らす。
その声に重ねるように、クロスが呟く。
「無敵と言う割には大したことないですね」
何を馬鹿な、と神竜派教徒は言いたかった。
だが目の前の光景は、疑う余地などありはしなかった。
信者たちの信仰に楔が打ち込まれる。
「おお、いてえ。ちょっとやばかったのかもしれんね」
軽口を叩きながら、懐から何かを取り出すガルディエ。
それは古竜の骨であった。
元から相手の攻撃を受けるつもりであったが、小骨がブレスを軽減するのをはっきりと感じた。
やはりこれには力がある。
そして相手がユーベルコードの賜物であるなら、これからすることも必ずや。
「ドラゴンさんよ、偽物で悪いが相手は帝竜。鬱憤晴らしてくださいよ!」
力強く、古竜の骨を神龍にむかって投げつけたのであった。
グルオオオオオーーーーッ!
龍の咆哮。
それは威嚇でも無く、痛みであるとこの場に居る者が誰でも理解した。
打込まれた楔に亀裂が入り、さらに信者の心を動揺させる。
駄目押しとばかりに、ガルディエは更に一手を打つ。
剣を高々とあげると再び天が割れ、龍が降臨する。
それは信者たちが呼び出した物と一寸違わない、漆黒の龍であった。
亀裂はさらに大きくなり、信者達はパニックとなった。
恐慌に駆られた集団など、歴戦を生き抜いてきた猟兵の相手ではない。
頼みの神龍ももう一人の龍と相争っている。
信者たちはこの場をどう切り抜けて良いか、もうわからなかった。
信者達に信仰が、神を信じる力があればこの場を凌げたかもしれない。
だがそうはならなかった。
脱兎の如く逃げる信者の脚に鎖が絡む。
まるで戦旗のように高々と、斧槍で身体を刺し上げられる。
平原を闊歩していた神竜派の教団たちは、二人の猟兵によって完膚なきまでに叩きのめされたのであった。
一戦終わり、平原に屍の塚が出来上がる。
クロスの手には数本の小骨が握られていた。
「戦利品だ、クロスの好きにしな。売れば結構な金になるぜ」
ガルディエに言われて手中を眺め、いえ、とクロスは口にする。
売却するつもりはさらさら無い。しかし貴重なのも事実。
そしてなにより、この場に放置していく気もなかった。
「幾つか持って帰る事にします」
そうかい、とガルディエは頷いた。
効果は先の一戦で実践ずみだ。
たとえ使えこなせなくても、何かしらの価値はあるだろう。
手に余ればそれこそ売ればいいだけだ。
「ガルディエさんは持ち帰らないので」
これを加工できれば、剣士にとって垂涎の業物が出来上がるに違いない。
だがガルディエは首を横に振って、そんな物はいらないと突っ返した。
「俺にはこれがあるからな」
己が武器、ジレイザとレギアをクロスに見せつけて、漆黒の騎士は軽快に笑うのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ナミル・タグイール
骨にゃ?おしゃれそうにゃ!金ぴか装飾されてるやつ探してもらってくデスにゃー!(宝の話ししか聞いてなかった猫)
敵いっぱいにゃお宝いっぱいにゃ!
全部ナミルのものデスにゃ!
欲望だけで【捨て身】で突撃して【略奪】にゃー!
斧でざっくりして骨だけいただきー…って硬いにゃ!
こんな硬いならちょっとくらい骨殴っても大丈夫そうにゃ
【呪詛】纏わせて斧でフルスイングしてくにゃ!
骨は耐えれても隙間から呪詛が入り込むはずにゃ。
中身だけ消し飛べデスにゃー!残った骨はナミルのだからにゃ!
金ぴかの大当たり骨さがして突撃蹂躙デスにゃー!
「骨にゃ?おしゃれそうにゃ!金ぴか装飾されてるやつ探してもらってくデスにゃー!」
ナミル・タグイールはウキウキだった。
古竜の骨は価値がある、そう聞いて彼女の足は浮き足立っていたのである。
だからこそ手強く、注意せよというグリモア猟兵の忠告部分は抜け落ちている。
他の者に奪われては大変と、ナミルはお宝を目指して一目散に群竜大陸へとむかったのであった。
行き先は古竜平原。お宝の地へと。
既に彼女の頭の中には、倒したあとで奪うお宝の勘定しか無かったのである。
「おおう、敵がいっぱいニャ! お宝いっぱいにゃ!」
敵集団が進軍する砂埃。
それよりさらに大きい土煙をあげながら、ナミルは爆走する。
単騎で突っ込む無法者に、神竜派の信者は迎撃態勢をとった。
相手は一人、無謀に突っ込んでくる。
矢と槍で応戦すれば向きを変えるか逃げるはず。
そうクレリック達は楽観視していた。
ナミルが戦斧を振り上げ、叩きつける。
避けるまで無く、信者はそれを防いだ。
「にゃにゃ!? 思ったより硬いデスにゃー!」
吃驚するナミル。笑う信者達。
四方から迫り来る攻撃をすばしっこくよけながら、ナミルは考える。
常人ならば、その防御力に舌を巻くところだ。
しかしナミルは違った。
「……と、いうことは多少乱暴にしても大丈夫そうデスにゃーーー!」
ナミルが満面の笑みで武器を構える。
そしてもう一度振りかぶって叩きつけてきた。
「馬鹿のひとつ覚えが!」
盾を構えて信者がそれを防ごうと待ち構える。
先ほどと同じく押し返してやろう。
そう笑みを浮かべる信者であったが、次の瞬間身体ごと遙か彼方へと吹っ飛ばされた。
まるでゴミ箱に入れ損なった紙くずのように地面を跳ねて、ぴくりとも動かずに信者が命を落とした。
ナミルが喜び叫ぶ。
「おおう? さすがお宝にゃ、フルでぶっ叩いても何ともないデスにゃー!」
喜びとは別に、信者達の心に亀裂が走る。
人があんなに高く、そしてそれを実行できる奴がこの世に存在するとは。
「な、何をしている! 相手は一人だぞ!」
誰かが叫んだ。
そうだ、相手は一人だ。
いかな強者と言えども、これほどの大勢を相手取るは無謀というもの。
その事に落ち着きを取り戻し、神竜教徒は武器を構えてナミルへと。
だがそれは、無謀というもの。
彼らは神に祈るだけではなくて、世間を知るべきだったのだ。
そうすれば猟兵というものを、ナミルという存在を知ることができたであろう。
バッティングセンターで打ちごろの玉が飛んできたような、そんな待ち構え方で、ナミルはキラキラとした眼でまとめて敵を蹴散らすのであった。
先ほどは彗星。
しかして今度は大空に、流星群が出来上がる。
術士がいれば感嘆の声をあげたであろう、古竜の骨鎧のその頑丈さに。
しかし、中身はその勢いには耐えられなかった。
無傷の鎧とは裏腹に、信者達の骨や内臓が悲鳴を訴えた。
大半の者は打ち所が悪く、地面に激突した衝撃で息絶えた。
彼らは幸福であったろう。
痛みを覚える前に死ねたのだから。
不幸にも生き残ってしまった者たちに、更なる脅威が襲いかかる。
欲望丸出しのナミルの一撃。
欲は呪いを生み出し、対象を蝕む。
通常であればその呪いを受けた者は、跡形も無くなるはずであった。
だが古竜の魔力は、その呪いを軽減した。
完全に打ち消したわけでもなく、真綿を締めるように、虫の息の信徒たちを苦しめていく。
それは、かつて帝竜に滅ぼされた古竜たちが配下に利用されたくないという、古代の呪いであったのだろうか。
鎧を着なければ苦しめられることもなかったろう。
信仰が、彼らを誤らせたのだ。
「たかが一人、ここで引いてなるものか!」
「愚か者に死を! 猟兵に死を!」
神竜教徒は逃げるわけにはいかない。
もちろんナミルも逃すわけは無い。
相手を叩きのめし、お宝を独り占めしたいからだ。
「にゃははは! 金ぴかの大当たり骨さがして蹂躙デスにゃー!」
彼女の言葉通り、教団は叩きのめされることになる。
そうしてナミルは無駄骨をおることになる。
古竜の骨に金は含まれてないことを。
剥ぎ取った鎧の数々を抱えこみ、ナミルは大当たりを探し続けるのであった。
成功
🔵🔵🔴
四王天・燦
勿体ない。
可愛いお顔が無骨な―骨製ですけど―兜で隠れてる。
「ひん剥いちゃおう♪」
ぽいっと参式の火球を戦場ド真ん中に投入。
ごく当たり前に放火さ
神龍を陽炎や物陰に隠れてやり過ごす…敵が発見できなきゃ能力に疑念も沸くっしょ。
ついでにデストラップを設置してお邪魔な神龍捕獲だよ
こそこそと。
兜で視界を狭めているクレリックにバックアタック。
「ぶれいんしぇいかー」
頭を両手で抱えて無理矢理シェイクして気絶攻撃。朦朧としたら普通に鎧を剥いで、下着…はやめとく。
「精気と魂戴くぜ。御霊はヴァルギリオス様に届けるからよ」
唇を重ねて生命力吸収で吸精と魂喰いを行うよ
遺った鎧はお持ち帰り。
(闇市で金貨……枚くらいになるかな)
平原を闊歩する骨鎧の信徒たち。
「勿体ない」
四王天・燦の第一印象はそれだった。
せっかくの器量なのに、隠してしまっては台無しだ。
神様とやらも酷なことをする。
どうやらここは自分が一肌脱ぐべきなのであろう。
もっとも、剥かせるのは彼女たちなのであるのだが。
「それじゃあ行きますかね」
邪な、悪戯な笑み。
これは決してやましいことではない。
相手を無力化するための、正当な作戦なのであった。
行軍する敵集団にむかって、火球を投げ入れる。
花火のような炸裂弾が中央で炸裂する。
それを遠目で確認し、燦は驚いた。
「げっ、効いてなさそう?」
炎の絨毯と化した地を、信者達は足早に行軍していた。
どうやらあの鎧の耐久性は噂に違わない物らしい。
多少は狼狽えてくれるかと思ったが、どうやらそうはいかないらしい。
速やかに火勢から逃れようとする神竜派教徒たちが、辺りを警戒し始めていった。
熱さで鎧を脱いでくれればと思ったが、事は容易く運んではくれないらしい。
「じゃあ、プランBへと変更致しますかね」
火勢による煙と陽炎、その中へと燦は身体を潜り込ませていく。
この生み出した炎は、敵にとって害威となるが自分にとっては吉兆。
盗賊は火あぶりになるのは中世の話。
今は火の中に盗賊は潜むのだ。
「どこだ?」
「いないぞ?」
敵の襲撃に、辺りを剣や槍でつつきながら教徒たちは警戒を続けていた。
しかし、中々見つからず、業を煮やした彼女たちは、神へと祈る。
天が割れ、神々しい龍の姿が信徒の前に現す。
その慧眼ならば、不届き者を探し出してくれるであろう。
だが信者たちは知らなかった。
燦はすでに移動していたことを。
木を隠すなら森。脅威を隠すは炎。
先ほど脱出した炎の海に、猟兵が潜んでいるとは思いもしない。
その盲点をつき、燦は燎原の火の広がりにあわせ、次の行動に移るの。
骨の鎧は下火になった炎を物ともしない。
教徒たちはそのため、火勢に包まれても無事であったが、同時に死角を生み出すこととなる。
背後より襲いかかり、両手でがっちりと兜を挟む。
「ぶれいんしぇいかー」
ガクガクと頭を揺さぶり、脳に打撃を与える燦。
魔法の類いは耐えられても、衝撃そのものは耐えられないであろう。
予感は的中。
脳震盪を起こした信者を抱きかかえ、再び燦は炎の中へと姿を消す。
炎の一点をドームへと変化させ、周りからは炎上しているように見せかけた。
その中で、燦は鎧を剥いで無力化する。
意識を失う信者の唇へ、そっと己の口を近づける。
「精気と魂戴くぜ。御霊はヴァルギリオス様に届けるからよ」
息を吸い込むように、身体の中へ相手の生命が流れてくるのが感じる。
吸精によって力を回復させた燦は、再び炎を活性化させる。
たとえどんな敵であろうとも、見えやしなければそれはいないも同然だ。
信者たちがいなくなれば、あの偶像も捕らえやすくなるに違いない。
「龍って高く売れるのかな? いやいや、それともあれは実体か?」
盗賊の欲がむらむらと鎌首をもたげるが焦るのはよそう。
今はこうやって信者たちを確実に刈るだけだ。
骨の鎧を眺めながら、燦の顔がほくそ笑む。
(闇市で金貨80枚くらいになるかな?)
売れば一財産は築けそうだ。
しかも分捕り放題ときている。
心配なのは、猟兵仲間が持ち寄って相場を崩してしまわないかというこtとだ。
「やはり……神龍さまも見世物小屋に並ばせるのが慈悲ですかね」
欲深な笑みをたたえながら、燦は鋼糸を縦横無尽に炎の海へと張り巡らせ、ついでに女の子をつまみ食いするのであった。
成功
🔵🔵🔴
龍・雨豪
これだから狂信者という生き物は嫌いなのよ。敵に体を利用されて喜ぶ奴がそうそう居るわけないじゃない。
何より、敵対関係とはいえヒト族如きが竜の気持ちを代弁しようだなんて烏滸がましい!
一人残らず殲滅してあげるから覚悟なさい!
鎧でUCの効果が減衰するといっても攻撃自体が無効化されるわけでもないのだから、UCで素早く動いて翻弄しつつ、投げ飛ばしたり、足払いや尻尾で薙ぎ払って転倒させましょ。
その上で鎧の隙間を貫き手で攻撃して止めを刺すわ。
竜の骨はヒトにとっては宝や武具の素材かもしれないけど、遺骨には変わりないのだから埋葬してあげないと可哀そうよね。
安心なさい。あなた達の分まで帝竜をぶん殴っておいてやるわ。
リミティア・スカイクラッド
帝竜の活動に呼応して、この教徒達の動きも活発化しているようですね
世界の滅びに加担する信仰を見過ごす訳にはいきません
そも神罰とは文字通り神が人に下す裁き
それを人の身で代行しようとは傲慢では?
風神の靴による「空中戦」や「オーラ防御」を駆使して
神龍の攻撃を凌ぎながら、まずは「情報収集」に徹します
信徒達が纏う骨鎧の隙間を確認できれば
「高速詠唱」でUC発動、反撃に転じます
無敵の龍にダメージは通らずとも動きを封じることは可能なはず
無数の茨で神龍を拘束し、その隙に薔薇の花弁で信徒を攻撃します
小さくて数の多い花弁なら、鎧の隙間にも当てやすいでしょう
古竜の骨は拾っていきましょう
いにしえの種族の鎮魂と供養のために
龍・雨豪は怒っていた。
必ずや、神竜派の連中を叩き潰さねばならないと。
雨豪は龍人であった。
それゆえ竜の亡骸を言いように扱う奴ら、神竜派教団に良い気分はしなかった。
古竜と自分にはなんの関係も無い。
だが、故人を尊重しなければいけないのは分かる。
彼らにその報いを味合わせてやろう。
雨豪の身体は震え、鱗が逆立つのであった。
リミティア・スカイクラッドも同じように、教団に対してあまり良い感情を抱いてはいなかった。
帝竜の活動に呼応して動き出した彼らをいいようにすれば、猟兵達の背後を突かれる危険性も出てくる。
ここで叩いておく必要があるのだ。
世界の滅び。
それを見過ごせるような強心臓は、リミティアは持ちあわせてはいない。
そして敵集団に乗り込む気迫も。
「まずは、様子を掴むことが大事ですね」
敵方がどう動くか、それをリミティアは知りたかった。
しかし雨豪が不平の声をあげる。
「ええ? なんでそんな回りくどいことするの? 真っ直ぐ行ってぶっ飛ばすのが早くて簡単よね?」
言うが早いか、彼女はリミティアの静止を振り切って駆けていく。
その後ろ姿をしばし見送っていたリミティアであったが、こうしてはいけないと軽やかに空を駆けてあとを追うのであった。
古竜平原を行軍する神竜派の一団に、隕石が落下した。
それは高所から跳び蹴りをかました雨豪であった。
光輝く闘気に包まれた彼女の、挨拶代わりの一撃は、その場にいた信者の一人を踏みつけにした。
鎧には傷一つない。
だが足蹴にされたその者はぴくりとも動かなかった。
「うわ、噂通りに随分頑丈ね。でも勢い自体は止められないみたいね」
だったら勝機はある。
「なんだ貴様!」
「異教徒め!」
すぐさま襲いかかってくるクレリック。
「異教徒はどっちよ」
迫る攻撃をしゃがんで躱しながら、その足を掬う。
転倒した一人を片手で持ち上げ、攻撃を防ぐ。
同士討ちでたじろいたその隙に、盾となった信者に貫き手を放つ。
鍛え抜かれた手刀は易々と装甲の継ぎ目を裂き、命を奪う。
抜くと同時に身体を回し、尾の一撃を薙いで辺りをはらう。
一体一なら何とかなりそうなら、いかんせん数が多い。
イー、アル、たくさん。
これほどの数を相手するには、突き指しそうであった。
だがこんな雑魚に捕まるのを待つほど、雨豪はのろくない。
剣が、槍が、弓矢が迫るたび、誰かの背に廻って壁とする。
鎧が攻撃をはじく。
だが味方を攻撃してしまった動揺は、慣れないものだ。
「隙だらけよ!」
硬直してしまった敵の腕に絡みつき、体を崩して地に落とす。
今度は本当に動かなくなってしまった。
一陣の龍旋風が、神竜派教徒をかき乱していく。
「始まっちゃいましたねぇ……」
空を飛びながら、リミティアは眼下の戦いを眺めていた。
援護してあげたいと思うのは山々だが、自分はあのように早くは動けない。
魔法の才はあるのだが、あの中に突っ込めば返って足手まといになりそうだった。
しかし、離れているからこそ見えるものがある。
雨豪が相手取っている集団から離れた場所、そこで信者たちが一心不乱に祈りを捧げている。
天から雷が落ち、巨龍が姿を現す。
「なるほど、これが神龍ですか」
神々しいその姿は、人がみれば畏怖を覚えるに違いない。
だが自分は猟兵である。
リミティアにとって、それは倒すべき存在にしか見えなかった。
雨豪は地で奮闘している。
「ならリムはあれを相手取るべきですね」
空を駆ける龍へと、リミティアは急行する。
それは相手を知るためと同時に、仲間を護るためであった。
雄叫びとともにドラゴンの炎が襲いかかってくる。
そのブレスの勢いは、魔法のオーラを張っていなければ深い傷を負っていたことであろう。
「魔女がちょこまかと逃げ惑っているぞ!」
「神竜様! そいつを焼き払ってください」
地上で叫ぶ信者達の声が、はるか上空のリミティアのもとまで届いてくる。
いい気なものだ。
しかし、それはこの神龍に絶対の自信があってのことだろう。
ならば、神龍を防げば勝機が見える。
「エリクシルよ咲き誇れ」
剣がきらめき茨と化した。
そしてそれは花咲いて、はるかに大きい巨龍を縛りつけようと動く。
絡みつき、食い込む茨の縄。
相手がその身を揺するたび、リミティアの柳眉に皺がよる。
傷を与えずとも良い。
ただ、この戦いに持ちこたえてくれれば。
「汝の敵はここにいる」
この敵を雨豪の元へといかせるわけにはいかない。
あえて巨龍の眼前へとリミティアは身体を移し、全魔力を込めて拘束を試みるのであった。
一方、下で戦っていた雨豪も神龍の存在に気づく。
自分よりはるかに大きい龍を押さえ込もうとしているリミティアの姿に、雨豪は敬意を覚えた。
「やるじゃない、あの子」
茨が巨龍にへと絡みついているのも見える。
そして龍が牙を剥き、ブレスを吐こうとしているのも。
先ほどまで戦いに夢中であった雨豪は気づいてはなかったが、リミティアは何度もこうやって拘束を続けながら咆哮を回避していた。
猊下にある雨豪を、その範囲に含めないようにとである。
だがそんなことは雨豪は知らない。気づく由もない。
だから純粋に、仲間を助けようと行動に出た。
がしりと、その場にいた信者の一人を掴む。
「どっせーーーい、飛んでけーーーーっ!」
そして龍の顎にむかって、ハンマー投げのようにブンブンと振り回し、放り投げたのであった。
龍が勢いよくブレスを吐く瞬間、人間砲弾がアッパーカットで勢いよくその口を叩いて塞ぐ。
口中でスパークが奔り、耳と鼻から閃光が迸った。
オオオオオオオ……。
神龍がのたうつ。
龍と雨豪を交互に眺め、クレリックたちが呆けた顔をする。
信者たちの絶対が揺らいだ。
神龍の力が弱まったこの時を、リミティアは逃さなかった。
茨が増殖し、龍を巻き取って行く。
暴れる力が弱くなり、完全に四肢を縛られていく。
信者達の信仰が揺らいだ時、この龍は力を失ったのだ。
「そも神罰とは文字通り神が人に下す裁き。それを人の身で代行しようとは傲慢では?」
完全に動きを封じ込めたのを確信し、リミティアは龍に向けていた両腕を、眼下にむかって振り下ろした。
紅い薔薇の花びらが、狂信者にむかって降り注ぐ。
「雨豪さん、龍は押さえつけました。今度は教徒たちを押さえます!」
彼女の言葉通りに、赤い斑点が鎧の各所に咲き乱れる。
「目印とはありがたいね!」
その目標に向かって貫き手を放つ。
引き抜けば、薔薇より赤い花が、狂信者の身体から咲くのだった。
雨豪とリミティアの連携によって、教団は討ち倒された。
平原に大きな塚が出来上がる。
それは雨豪が造ったものであった。
彼女にとって古竜の骨は戦利品ではない、同胞の遺骨であった。
だから死体から剥ぎ、塚を築いたのだ。
偉大な古き種族を埋葬するために。
手を合わせる雨豪の背を、リミティアは見守る。
彼女の腕に、古竜の骨々が抱えられていた。
リミティアもまた、古竜たちを供養する気でいた。
売却する気など思うはずがない。
この死の平原に捨て置くには可愛そうだと、リミティアは提案した。
だから折衷を取り、大半は塚を築いてそこに埋め、残りは分骨で持ち帰ることにしたのであった。
「まあ、貴女の風習で埋葬してくれるっていうなら異論は無いわ」
あなた達の分まで帝竜をぶん殴っておいてやる。
そう願を捧げて振り返る雨豪の顔は明るい。
「ええ、安心してください。古竜たちを利用することはしませんので」
リミティアも鎮魂のための祈りを捧げる。
戦争はまだまだ続く。
どうか加護をと、二人は古代に思いをはせ、祈りを捧げるのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
月宮・ユイ
アドリブ◎
※ヤドリガミ
狂信、か
何を信じるかはその人次第ではあるのだけれど…
「敵対するのなら討ちます
◇竜騎士団
地にもUC阻害の骨がある為、空飛ぶ船を母艦に召喚。
○呪詛製呪殺弾生成、加え○念動付与し誘導弾化。
スナイパーライフル型『ステラ』
高い○情報収集・処理能力活かし、母艦より敵動き見切り
関節部の隙間等狙い弾撃ち込み○捕食:生命力吸収
竜騎士も銃撃中心。
騎竜に○属性風付与、風操らせ空中戦での飛翔力向上と
周囲に風纏い護りとしブレスにも風のせる。
風と弾は非UC製
骨の減衰効果は敵も同様のはず、
地に散らばる骨を風で舞わせ
風に込めた○破魔の力と併せ【神龍】を阻害、想像揺るがせ砕く。
最後、風に舞う欠けら位は所得
古竜平原を進軍する神竜派教団。
騒乱を予感させるように風は強かった。
雲の動きは速く、流れるように教団の進む方向へと。
それは狂信者の群れから逃げるようにと。
その雲の先から、空飛ぶ船が姿を現した。
「おい……なんだあれは」
「浮き島? 違う、船だ」
どよめく集団。そのざわめきは風に乗り、上空の月宮・ユイにも届く。
月宮の後ろには竜騎士たちが整列し、彼女の命令を待っていた。
艦上に居並ぶその人数は、狂信者たちの優に三倍は超える。
圧倒的兵力。だが月宮の顔に慢心はない。
「狂信、か」
人という存在は、信じる物のため常人以上の力を出せるのだという。
そして彼らが身につけている鎧は、ユーベルコードを阻害する。
油断ならない大敵だ。
「何を信じるかはその人次第ではあるのだけれど……敵対するのなら討ちます」
竜に騎乗し降下する月宮の後から、竜騎士たちが付き従い降下作戦を開始した。
空に散らばるドラゴンの影は、竜を信仰するクレリック達に昏い闇を落とす。
「竜だ! あんなに大勢!」
「何故だ! 古竜が復活したとでもいうのか!」
ここは古竜平原。血迷った過去の亡霊が出てきてもおかしくは無い。
隊列を組み直し、弓矢で応戦する教徒たち。
だが高所への攻撃は、重力と風に弱められ、騎士達へと届く前に力尽きてしまう。
疾風のように空を駆け回り、筒を捧げる竜騎士の群れ。
編隊を分けながら、彼らの前後左右へと展開し、異教徒を包囲していくのだった。
四方からライフルを構え、並列射撃を開始する。
空に稲妻音が響くたびに、クレリック達は地に倒れる。
こちらの攻撃が届かない位置からの射撃に、神竜派は防戦一方になってしまう。
このまま散ってしまうのであろうか。
否。
神は助けてくださる。
信者達の祈りが天に届くと、稲妻とともに龍が姿を現した。
それは月宮たちの母艦に劣らぬ、巨大な姿であった。
「ターゲット確認。転身、排除します」
攻撃対象を神龍へと変更し、騎竜の向きを変える月宮。
目標は巨大だ。外す方が難しい。
まずは様子見と、相手の頭部へと狙撃を狙う。
それは当然命中するが、さしたる傷を与えたようには確認できなかった。
母艦より警告を受信し、回避行動を迅速に行う。
月宮がいた位置にドラゴンのブレスが白炎のカーテンを敷いた。
「敵情報更新、危険度上昇。少なくとも人体を炭化させる長距離射程能力有り」
灼けた横髪の焦げ臭さを認識しながら、月宮は相手の脅威を確認する。
これほどの脅威なら間合いは無意味だ。
返って母艦をも狙われかねない。
だから月宮は、あえて神竜へと接近を試みるのだった。
敵の視線を感じる。
月宮が見つめるは神龍の双眸。
そこには何の感情もくみ取れない。
人が生んだ創造の怪物。
彼もまた百年もすれば心が生まれるのであろうか。
感傷を振り払うように錐揉み旋回し、ブレスを回避する。
神龍が巨体を動かす。月宮も相対するように位置を変える。
月宮のはるか後ろに見えるのは、釘付けとなった神竜派の群れ。
神龍に、苛立ちの反応が確認できた。
お構いなしに信者達を焼き払うようなことは出来ないらしい。
その逡巡が、月宮に次なる手を打たせてしまう。
いつの間にか竜騎士軍は、神竜を中心に旋回を始めていた。
旋回は風を生み、風は気流となって小竜巻を発生させた。
神竜に砂嵐が襲いかかる。
嵐は地に散らばっていた骨を空まで運び、神竜の躯を叩く。
それは古竜たちの無念の、声なき叫びであったろうか。
古竜の骨はユーベルコードを阻害する。
この神竜がユーベルコードの賜物というならば。
嵐の中の巨龍にむかって、月宮と竜騎士たちは一斉に狙い撃つ。
銃撃よりもはるかに大きい雄叫びをあげて、龍は地へと墜ちていった。
「そんな……」
「嘘だろ……そんなことが」
信者達はへたり込む。
目の前で、神龍が討たれてしまったのであったから。
そして神を討ち果たした者共は、向きを変えてこちらにやってくる。
信仰を撃ち砕かれた彼らには、もうどうしていいかわからなかった。
戦力差は歴然、唯一の絶対も撃ち砕かれた。
神竜派の敗北は、誰の目にでも明らかであったのだ。
神竜派教団を掃滅させたことを確認し、母艦へと月宮は帰還する。
ふと肩を見やれば、骨の欠片が付着していた。
神竜を倒した時、風に煽られ衣服についてしまったのであろう。
それをポケットにしまい、月宮は艦を新たな場所へと向かわせる。
新たな戦場へ、この戦争の終わりへと。
成功
🔵🔵🔴