2
帝竜戦役⑧〜わー猟兵さんだ! 面白いことしてください!

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #群竜大陸

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アックス&ウィザーズ
🔒
#戦争
🔒
#帝竜戦役
🔒
#群竜大陸


0




 通りすがる人も少ない、グリモアベースの片隅。そんな静かな場所にて、ネルウェザ・イェルドット(彼の娘・f21838)は大きめのスケッチブックを持って猟兵の到着を待っていた。
 彼女は猟兵にぺこりと無言で一礼すると、スケッチブックをぺらりと捲る。
『集まってくれてありがとう。皆には帝竜戦役の場へ向かって貰いたいのだけれど、今回は少し特殊な任務となりそうなんだ。やってもらいたいのは……』
 ――と、文字のみで。
 声ひとつ出さぬまま、ネルウェザはまたスケッチブックを捲った。
『サイレント芸』
 どういう意味か。そんな質問が飛ぶ前に、彼女は更にページを進める。
「……と、ここからは普通に説明するね。今回の戦場はアックス&ウィザーズ『不死蟹海岸』。その名の通り、不死身の巨大蟹が群れで生息する海岸だ。彼等は本来温厚な生物で、刺激しなければこちらを襲ってくることはない。皆には彼等を刺激せず、ここに現れたオブリビオンを退治してもらいたいんだ」
 そう言って指差すのは蟹――おそらく蟹だろう。明らかに周囲の岩や人らしき影に対して大きさがおかしい何かをとんとんと指で突きつつ、ネルウェザは話を続けた。
「この蟹達は『大きな音、振動、そして匂いがあるとその発生源を踏み潰しにかかる』。通常であればそれに気をつけてオブリビオンを倒せば良いのだけれど、厄介なのは蟹とオブリビオンの生態の組み合わせ、なんだよねぇ」
 彼女は絵の隅の隅、小さく描かれたスライムに指を動かして。
「ここに現れたオブリビオン『ポポゥリン』は、怒らせると膨らみパワーアップして襲いかかってくる。敵意を見せたり、つまらないと感じるととすぐ怒るようだから――」
 ぺら、ぺら、とネルウェザはスケッチブックのページを戻して言った。
「やってもらいたいのは……サイレント芸だよ」

 ――要は、蟹達を刺激せず、オブリビオンを楽しませ、危険のないまま退治することが出来れば良い。
 その条件を合わせて考えた結果が、それなのだという。
「……まあ、大きな音や匂いさえ出さなければ多少声は出しても良いけれど……蟹に気づかれたら終わりだ。最初にも言ったけれど、蟹は巨大で不死身。かなり厄介だから、極力刺激しないよう気をつけてくれ」

 話を終えると、ネルウェザはふわりとグリモアを出現させる。
「それでは早速、アックス&ウィザーズに送るよ。……ああそうそう、もし余裕があれば不死蟹の子供の抜け殻『生命の書片』を採ってくるといい。名前の由来は知らないけれど、かなり美味しい出汁がいつまでも出続けるという代物だそうだ。価値は金貨七百五十枚分にもなるそうだから、それを狙うのもおすすめだよ」
 くるくると光を纏わせ、転送の準備を整えて。健闘を祈る、と告げた彼女は、猟兵を戦争の舞台へと送り出した。



 アックス&ウィザーズの海岸へ降り立った猟兵達。その視界へ真っ先に入るのは、恐ろしく巨大な蟹の群れであった。
 数百メートルはあろうかという蟹がじっと丸まったまま、綺麗に並んで陽の光を浴びている。
 ――そして、その足元。

 ぽにょん、ぽにょぽにょん、と沢山のスライムが跳ねていく。気配からオブリビオン――出発前に聞いた『ポポゥリン』であると分かるそれらは、猟兵の姿に気付いても襲いかかってくる様子は無かった。
 敵意こそないものの、ポポゥリン達は身体の方向を変えて猟兵に近寄ってくる。
 彼等の瞳は――『あそんで』『おもしろいことして』『なにかみせて』と言わんばかりに、期待に満ちた輝きを帯びていた。

 とはいえ、大きな音や振動、匂いは蟹達を刺激してしまう。
 それらを発さず、ポポゥリン達を楽しませることが出来れば、穏便に任務を遂行できるだろう。

 ――猟兵達の手腕が、いま試される。


みかろっと
 こんにちは、みかろっとと申します。
 今回はアックス&ウィザーズ『不死蟹海岸』での戦いです。
 こちらは集団戦一章のみの戦争シナリオとなります。

 敵はスライムの群れ。やっていただくことはタイトルの通りです。
 巨大で不死身の厄介な蟹達を刺激しないよう『音や匂いを発さない』こと、そしてスライム達を強化させないよう『敵意を見せず楽しませる』ことが重要となります。

 また、子蟹の殻が滅茶苦茶美味しくて価値があるそうです。是非探してみてください。

 それではご参加お待ちしております!
42




第1章 集団戦 『ポポゥリン』

POW   :    笑顔
レベル分の1秒で【スマイル】を発射できる。
SPD   :    怒り
【怒り】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
WIZ   :    お前の顔は覚えたぞ
【体当たり】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【顔】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。

イラスト:透人

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

小宮・あき
すずちゃん(f02317)と。

蟹を回避する必要があるのね。
ここは私に任せて!

UC【助けてウサギさん】
(ウサギさん、お願い、一番遠くの蟹さんを攻撃してくださいっ)
小声でお願い。

レベル76×5体、380体の狂暴ウサギを召喚!
私達から最も遠くの蟹を狙って、全力ダッシュ!
どうです、走る音、重量、動物の匂い。囮には完璧ではありませんか?
一撃で倒されるとはいえ、この数。時間はそれなりに掛かるでしょう。

その間にポポゥリンへ。
ポポゥリンに笑顔を見せながら、袖に触って。
わ、すごい、お庭だぁ~~っ。
少し楽しんだら袖から出て「凄いでしょ~~!」

油断した隙に、ごめんね。
【早業】の【暗殺】でサクっと聖【属性攻撃】で。


コイスル・スズリズム
オーナーさん(f03848)と同行!

オーナーさんの出すうさぎの数に驚きつつ
その騒音の間に、すずたちはポポゥリンへ

まずはポポゥリンの前でくるくる回りながら
自分の大きな袖口をあげて注意を惹く。見て!とジェスチャー
『物を隠す』でUC発動、オーナーさんを自ら衣服袖の中へご招待。

(どう?面白いマジックでしょ)と空いた袖口をひらひらさせてウインク。
(もっとよく見てごらん?どうなってるか知りたいよねっ?)
充分に範囲内のポポゥリンを近づけたら、
袖口をふらり、と傾け、中からオーナーさんを文字通り取り出す
笑顔で気持ちじゃじゃーんと両手を上げたら

(次に会うときはまた違う形で。すずのマジック楽しんで。)

アドリブ大歓迎



 ずらりと並ぶ巨大蟹の前、小宮・あき(人間の聖者・f03848)はとんと胸に手を当てて頷く。
「ここは私に任せて!」
 一歩前に踏み出し、早速発動したのは彼女のユーベルコード。召喚術の形をもった力は、三百八十羽ものウサギをその場へ出現させた。
 愛らしいふわふわ達はその見た目に反し、シャドウボクシングの要領でしゅんしゅんと小さな手で空を殴り、ウォーミングアップを始める。
 あきは準備万端と言わんばかりの彼等にこそっと近づき、ごく小さな声で囁いた。
「(ウサギさん、お願い、一番遠くの蟹さんを攻撃してくださいっ)」
 そのお願いに、ウサギ達は揃ってこくりと頷く。そしてあきの指先――連なる山のような群れの端、のんびりと日向ぼっこで微睡む蟹の方を見ると、一目散に走り出した。

 一羽一羽は小さな身体。しかしその数と全力の勢いはどどどどどっ!!! と激しい音と土煙を上げ、周囲に獣の匂いを撒き散らす。
 そうなれば、当然――。
「――」
 丸まっていた巨大蟹が動き出す。
 苛立ったように大きな鋏を振り上げ、蟹はその小さな目玉で走るウサギ達を睨んだ。

「……す、すごい数」
 思わずそう零すのはコイスル・スズリズム(人間のシンフォニア・f02317)。彼女はあきの喚び出したウサギの数に目を丸くしながらも、彼等が作った時間を無駄にしない為にと急ぎ足でポポゥリン達の元へ向かった。
 蟹がウサギ達に気を取られている今なら、多少派手なパフォーマンスも許される筈だ。

 ぽにょぽにょと揺れるポポゥリン達の前で、コイスルはくるくる楽しげに回る。
 見て! と呼びかけるように彼女が大きめの袖を振り上げれば、ポポゥリン達は何だ何だと興味津々の様子で身を寄せ、集まってきた。
「(オーナーさん、こっちこっち)」
 小さくあきにそう呼びかけ、くるり、くるり、ふわり。
 コイスルが一瞬背に隠した袖口へ、あきが微笑んで手を触れる。
 その瞬間――コイスルのユーベルコード『“That that that”』が発動した。

 あきの視界はふっと切り替わる。
 いつの間にかそこにポポゥリン達の姿はなく、代わりに静かで暖かな庭が広がっていた。
「わ、すごい、お庭だぁ~~っ」
 転移魔法にもにたそれにあきは目を輝かせ、小さな広場を回ってみる。
 先程までの海岸の穏やかさとはまた違った、和やかな風の香り。
 とんとんと弾むように靴を鳴らし、暫くそこを楽しんだ後――あきは『外』の気配にふっと顔を上げた。

 ――庭の『外』。
 ユーベルコードであきを隠したコイスルは、目をぱちくりと瞬くポポゥリン達の前で袖口をひらひらと揺らす。
「(どう? 面白いマジックでしょ)」
 ウインクを添え、そう声を掛けて。
「(もっとよく見てごらん? どうなってるか知りたいよねっ?)」
 知りたい! と反応するようにぎゅうっと近づくポポゥリン達。
 その注目が充分に集まったタイミングで、コイスルはふらり、と大きな袖口を傾けた。

 同時にコイスルがユーベルコードを解けば――文字通り、あきが袖口から『取り出される』。
 ぽにょ!? と驚くポポゥリン達の前に飛び出し、あきはコイスルと共にじゃじゃーん! と両手を上げて笑顔を浮かべた。
「凄いでしょ~~!」

 ポポゥリン達はぴょんぴょん飛び跳ね、割れんばかりの拍手――手は無いが――を音で表す。最早そこに怒りの感情など一切なく、彼等はまるで絵本を読み終わった子供のような無邪気な笑顔であきとコイスルを讃えていた。

 しかし――彼等は、オブリビオンだ。
 退治するなら、今が絶好のチャンスだろう。
「(次に会うときはまた違う形で。すずのマジック楽しんで)」
 そう呟くコイスルの隣、あきがふと目を合わせて。
「……ごめんね」
 ――ひゅっ、とあきの身体がポポゥリン達の間を縫う。
 マジックを楽しみ油断していたポポゥリン達は、その一瞬の『攻撃』に貫かれてでろりと溶けてしまった。

 そんな中、巨大な蟹が遠くでどぉん! とひとつ大きく動き、もぞもぞと日向ぼっこへ戻っていく。
 再び静かになった海岸にて、ポポゥリン達は骸の海へ還る最期の一瞬まで、あきとコイスルに笑顔を向けて消えていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

髪塚・鍬丸
任務了解、だ。御下命如何にしても果たすべし

忍装束に身を包み、消臭剤や消音の細工を施した上で戦場に転移して貰う
【忍び足】で物音を潜めスライムを迎え撃つ

「忍者八門」が一門、芸術の法。相手を楽しませるのも任務の手管
【飯綱の術】発動
「斬影手裏剣」の術。影が地面から剥離し、起き上がる。更に影が無数に分裂。数十の影絵の様な人形の群れと化す
人形劇の始まりだ。手を繋ぎあい踊り回れ
サーカスの軽業師の様に宙を舞い、ピエロの様にスライム達の周りを転げまわってお道化てみせる
質量は持たない疑似二次元の存在故に、物音も振動も伴わない

楽しませつつ【暗殺】
全身が厚みを持たない刃の人型手裏剣
踊るように敵達を静かに切り刻んでいく



 並ぶ不死身の巨大蟹、現れた敵『ポポゥリン』。
 すべきこと、倒すものを頭で一度繰り返し、髪塚・鍬丸(一介の猟兵・f10718)はその身に纏う忍装束をそっと整える。
「任務了解、だ。御下命如何にしても果たすべし」
 呟き、彼はポポゥリン達の方へ。
 彼が転送の前に施した細工は、蟹達の嫌う音や匂い――それどころか、ポポゥリン達が気づくことのできる物音すらも一切上げずに動くことを可能としていた。

 ぽよぽよと呑気に跳ねるポポゥリンの背後、鍬丸はユーベルコードを発動させる。
 不意を打ったそれは直接的な武術、ではなく――汎ゆる忍が基礎とする『忍者八門』が一門、芸術の法。
 不必要な騒ぎや戦闘を避ける為、相手を楽しませるのも任務の手管。少なくとも今回の状況に於いては、その選択が最善であった。
「霊……宿……動!」
 ――飯綱の術。
 鍬丸がその手に携えていた斬影手裏剣に力を伝わせると、彼の足元が微かに震える。
 途端、地面に貼り付いていた鍬丸の影がべりと起き上がり、分裂した。

「!?」
「????」
 突如周囲を回り始めた影に、ポポゥリン達はびくりと揺れて縮こまる。
 彼等はそのまま警戒心を露わに膨らみ始め――るかと思いきや、演劇を見る幼子の如く興味津々の様子で目を輝かせていた。

 ――彼等のその視線の先、増えた影達が楽しげに手を繋ぎ、踊り始めたのだ。
「……人形劇の始まりだ」
 ふ、と小さく笑んだ鍬丸が、七十二もの影を同時に操り出した。

 連なった人影が軽々と宙を舞い、サーカスの軽業師のように見事な演技を魅せていく。
 陽の眩しさにポポゥリンが下に視線を移せば、戯けて転がり回る道化の姿。
 しかしその賑やかさに反し、質量を持たない影達の動きに音や振動は無い。
 故に、無声映画のような人形劇がポポゥリン達の気を惹く中――巨大蟹達はぴくりとも動かず、ただ穏やかに日向ぼっこを続けていた。

 もっともっととせがむように揺れるポポゥリン達。彼等に怒り膨らむ気配はまるでなく、影の動きに夢中の様子だ。
 そして――その、最中。
 ぽよぽよと揺れるポポゥリンが、一体、また一体とでろり溶けていく。

 そう、人形劇を演じていた彼等は――鍬丸の、武器だ。
「――?」
 ポポゥリンが不思議そうに身を傾けた頃には、もう遅い。
 彼等を楽しませながらも、踊るように、静かに。
 ふらりと自然に近づいた人形手裏剣は瞬時にポポゥリンを切り刻むと、音もなく彼等を骸の海へと還していくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
アドリブ・連携OK

えー……面白い事ねえ。
そういうのはあんまり得意じゃないんだけど。
ちょっと反則な気がするけど、ユーベルコード使って何とかしよう。

見せる芸は百面相。
まずは普通の人間の姿で登場して、布で顔を隠したら【多頭咬牙】を発動。
布から顔を出すと同時に顔を瞬時に別人の顔に変形させて、
一瞬で別人の顔になったように見せかけるよ。
まあ、実際に顔を変えてるだけなんだけど。
それからも次々と布で顔を隠すたびに別人や動物の顔に変えて、
たまに頭の大きさや頭の数も変えてバリエーションをつけようか。

とりあえずあたしに出来る芸はこんな所だけど、満足してくれるかねえ。



「えー……面白い事ねえ。そういうのはあんまり得意じゃないんだけど」
 頤に触れて考え込む、ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)。キマイラの特徴を隠した彼女の姿は、人間と何ら変わらない見た目をしていた。

 得意でないと言いながらもその気質故か、依頼を断ることなくこの戦場を訪れたペト。
 ふと彼女が顔を上げれば、『なにするの』『なんかみせて』と言わんばかりに集まってくるポポゥリン達の姿が見える。
 期待と注目が集まる中、彼女は悩んだ末にひらりと一枚の布を取り出した。
「ちょっと反則な気がするけど」
 布に覆われ、ペトの顔が隠れる。
 ポポゥリン達が何だ何だと視線を向けた瞬間、彼女はユーベルコード『多頭咬牙』を発動し――ばっ、と布を取り払った。
「!?」
 ざわっ、とポポゥリン達が揺れ、目を瞬く。『いないいないばあ』の如く飛び出したペトの顔は、先程とは全くの別人に変わっていた。
「まだまだ変わるよー」
 その声はペトのまま。
 ポポゥリン達が不思議そうに、しかし興味津々に見つめる中、彼女は再び布で顔を隠す。
 銀や黒、赤の髪に変わってみたり、猫耳や角を生やしてみたり、更には頭の数を増やしてみたり。ほんの一瞬で次々に別人や動物の顔に変わって見える――実際顔を変えているのだが――ペトの百面相に、ポポゥリン達は釘付けになっていった。

 ――やがて、ポポゥリン達がぽよぽよと揺れ、称賛と感謝を体全体で表し始めた頃。
 楽しんでくれているとはいえ、彼等はオブリビオン。倒さなければならない敵だ。
 ペトは少し長めに布で顔を隠すと、ユーベルコードの力を溜める。
 爛々と輝く瞳が見つめる中、彼女はその頭を大きく、大きく変化させた。
「――!?」
 巨大化したペトの顔が、集まっていたポポゥリン達に噛み付く。そのまま力を奪い、しゅうっと顔を戻せば――ポポゥリン達は目を見開いたまま、でろりんと溶けてしまった。

 ふう、とペトが息をつき、布を仕舞う。彼女が溶けたポポゥリン達に視線を落とすと、彼等は満足したように笑顔を浮かべ、骸の海へと還っていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アウグスト・アルトナー
「それでは、鶏の物真似を」(小声)

幼い頃、鶏を眺めた記憶を頼りに、真似します

両腕は胴体に添えて固定
まず、首を前後に振りつつ、抜き足差し足のように歩きます

ぐっと上半身を前に傾け、首を下げて、餌をついばむ真似

自前の翼をぱたぱた羽ばたかせ、ぐっと背を伸ばして
コケコッコーと鳴くかのように、大きく口を開けます

終始、無表情で大真面目にやります
楽しんでいただけたのなら、幸いですよ

さて、敵意は向けずに、かつ退治はしないといけないんですよね
難しいですが……【神の奇跡】を起こしましょう
あなた方に救いを、と心の中で【祈り】を込めて、遠距離から燃やします

帰る前に、生命の書片を回収します
後で売らせていただくとしましょう



 ぽよん、ぽよんとポポゥリン達が集まってくる。アウグスト・アルトナー(永久凍土・f23918)は期待の込もった眼差しを向けてくる彼等に、無表情のままで口を開いた。

「それでは、鶏の物真似を」
「!?」
 ――ざわ、とポポゥリン達は電流が走ったように目を見開き、固まる。
 彼等にもある程度の知能はあるらしく、彼が顔色ひとつ変えずに発したその言葉には驚きを隠せないようであった。
 静かにざわつくポポゥリン達の前で、アウグストは自らの記憶を辿る。
 幼い頃それを眺めた記憶。
 真っ赤な鶏冠を凛と立たせ、威勢良く鳴いていたあの鳥の姿。

 すっ、と両腕を胴体に添え、しっかりと固定して。
 そのまま首を前後に振りつつ、抜き足差し足のように歩き出して。
 そんな中でも彼は表情を変えぬまま、見事に――見事過ぎる程に綺麗な動きで、記憶の中の鶏の動作を再現していった。
 蟹を刺激しないよう無音でそれを行うアウグストに、ポポゥリン達はごくりと息を呑む。
 しかし彼等は得も言われぬ期待を膨らませ、ただ静かにアウグストを見つめていた。

 突如、ぐっとアウグストが上半身を前に傾ける。
 顔を地面に近づけ、ちょんちょんと首を上下させる様は――鶏が餌を啄むそれだ。
「……!」
 ポポゥリン達は止めない。彼の全力の物真似を、嘲笑することも制止することもない。
 いつの間にか真剣な眼差しが集まる中、アウグストは数度その動きを繰り返して。

 ――すぅっ、と深く息を吸う。
 下げていた首を天高く上げ、上半身を起こし、凛と胸を張る。
 アウグストは自らの身体がもつ翼をばたばたと羽撃かせると、ぐっと背を伸ばし、大きく口を開けた。
 ――そう、あの時見た鶏のように。
「!!!!!!!」

 その鶏は鳴かなかった。鳴けばどうなるかを知っていたからだ。
 オブリビオンは嘲笑わなかった。嘲笑ってはいけないと感じたからだ。
 しかし――その無音の空間にて、嘶くような鳥の声と割れんばかりの拍手が聞こえたような気がした。

 終始無表情のままそれを大真面目でやりきったアウグストは、静かに姿勢を戻し息をつく。
「楽しんでいただけたのなら、幸いですよ」
 そう呟けば、ポポゥリン達は一体、また一体と彼を讃えるように揺れる。

 彼等が怒る様子はまるでない。斃すならば――今だ。
 とはいえ、彼等は直接猟兵やこの世界に害を為そうとはしていない。アウグストはそっとポポゥリン達に十字架を向け、祈りながらユーベルコードを発動した。
「(……あなた方に救いを)」
 その瞬間、『神の奇跡』がポポゥリン達の足下を焦がす。
 噴き出した炎は一瞬にして彼等を灼くと、そのまま骸の海へ還してしまった。

 アウグストは帰路につく前に、ふっと巨大蟹を見上げる。確かあれの子蟹の殻に、かなりの価値があるという話だった筈だ。
 彼が少し辺りを見渡せば、もぞもぞと動く巨大蟹――周囲のものより一回りほど小さな個体が、『邪魔』と言わんばかりに何かを退かすのが見える。
 それは蟹の殻、この地の宝『生命の書片』であった。
 ひとつ、それを回収して。アウグストは宝の売却先を考えつつ、海岸を後にするのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
関節に駆動音を軽減する処置、足裏にクッション素材を装着し足音軽減
(●防具改造)

まさか音を出さずに敵を楽しませることが必要とは

●世界知識のジャグリングの知識を解凍
自己●ハッキングでジャグラーの動きを解析し自己モーションに反映

●礼儀作法で一礼
物資収納スペースの大量のUCの予備を用いたジャグリングで楽しませましょう
投げた短剣の向きや落下運動をセンサーでの●情報収集で●見切り適宜動きを修正しミスせず3本、4本、5、6、7…

終わったら再度一礼
そして短剣をスライム達に●投擲●だまし討ち

A&Wの人々の安寧の為とはいえ、騙す様な真似をして申し訳ございません
せめて、眠るように骸の海にお還りください



 巨大な蟹達がごごごと動く。日向ぼっこの合間に伸びをして、彼等は再びきゅうと丸まった。
 あれが怒り、襲いかかって来ようものなら――かなり厄介なことになるのは目に見えている。その上、ぽよんぽよんと集まってくるオブリビオン『ポポゥリン』達は、『面白いこと』を求めて猟兵に期待の眼差しを向けていた。
「まさか音を出さずに敵を楽しませることが必要とは」
 特殊な任務の状況に、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)はそう零しつつ作戦を練る。
 この場に相応しい行動、それを実行するための知識。トリテレイアは自身に蓄積されたデータの内からひとつの知識を抽出すると、瞬時に解凍を始めた。
 展開された『ジャグラー』のデータを解析し、彼は自己モーションにその動きを反映する。
 準備を終えたトリテレイアは、こちらを見つめるポポゥリン達に綺麗な所作で一礼した。

 わくわくとポポゥリン達が目を輝かせる中、トリテレイアの両手に短剣が握られる。
 彼が同時に短剣を宙へ投げ放てば――ジャグリングのようにくるりと左右入れ替わったそれらが、見事トリテレイアの手に収まった。
「〜〜!!」
 ポポゥリンがぽよぽよと喜ぶように跳ねる。
 トリテレイアはデータ通りの動きを続けつつ、宙を舞う短剣の動きを読み取っては適宜モーションを修正していき――ひゅん、と短剣の数を増やしていった。
 彼が幾ら動こうと、立ち位置を修正しようと、周囲の巨大蟹が怒り出す様子はない。
 事前に駆動音を軽減する処置、及び足裏にクッションを付けることによる足音軽減処置は、見事無音での芸を可能にしていたのだ。
 そのままトリテレイアは物資収納スペースから短剣を次々に取り出して、ジャグリングに加える。ミスもなく二本から三本へ、更に四本、五、六、七――

 いつの間にか短剣は十数本に増え、ジャグリングの高さも見上げる程になっていた。
 ポポゥリン達はジャグリングに心奪われたまま、無邪気に跳ねては目を輝かせている。
 十分すぎるほどに彼等の気を惹いたトリテレイアは一度高く短剣を投げ、一斉に納めた。

 ぽよぽよ、ぽよぽよぽよ。ポポゥリン達が『面白かった!』と言わんばかりに揺れる中、トリテレイアは再び丁寧に一礼する。
 そして――手の中の短剣、ユーベルコード『慈悲の短剣』をポポゥリン達に向けて投げ放った。
「……騙すような真似をして申し訳ございません」
「!?」
 完全に油断していたポポゥリン達は、容易くそれに貫かれてでろりと溶けてしまう。
 トリテレイアはしゅうしゅうと蒸発していく彼等を見下ろし、祈るように告げた。
「せめて、眠るように骸の海にお還りください」

 ポポゥリン達は笑顔で、満足した様子で消えていく。
 最後の一滴が静かに空へ消え行けば、海岸には穏やかな風が吹き抜けるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月10日


挿絵イラスト