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赤薔薇少女と庭園迷路

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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 ――ねえ、貴女は知っているかしら。廃城の庭にひっそりと咲く、それは美しい深紅の薔薇のお話を。
 村外れの森をずっと進んでいくと、廃庭園に辿り着くの。其処は生け垣が迷路を作っていて、足を踏み入れたが最後――迷子になって帰れない、なんて言われているけれど。
 ――ああ、心配しないで。小夜啼鳥の囀りが、貴女を導いてくれるから。それでも不安で足が竦んでしまったのなら、庭園に咲く薔薇にみちしるべになって貰うと良いわ。
 深紅の薔薇では無いけれど、廃庭園のあちこちに白薔薇が咲いていてね――彼女たちは、乙女の血と引き替えに、そっと正しい道を教えてくれるのよ。
 ――そうして庭園迷路を抜けた先には、静かな霊廟が聳えているの。深紅の薔薇は、その何処かに咲いているから、見つけて御覧なさいな。
 嗚呼、どんな女の子がやって来るのか、薔薇も――私も、凄くすごく楽しみに待っているわ!

 ――その村の少女たちは、ある時ふとそんな噂話を聞きつけ、何かに誘われるようにして村外れの森へと向かうのだと言う。
 森へ呼ばれた少女は、二度と返って来ない――それなのに今宵もまたひとり、少女が森へと足を踏み入れる。
 ――小夜啼鳥の囀りが、酷く美しい夜だった。

「秘密の話と言うのは、心そそられるものがあるが……その想いにつけ込んで、無辜の民を誑かす輩が居るとなっては、見過ごす訳にはいくまい」
 そう、それが骸の海から蘇った、オビリビオンであるなら尚のこと――難しい貌で考え込む、シーヴァルド・リンドブロム(廻蛇の瞳・f01209)は、吸血鬼の毒牙に掛かろうとしている少女を、どうか助けて欲しいと猟兵たちに懇願した。
「場所は、暗黒の世界……ダークセイヴァーにある小村になる。その村では、少女の間に『深紅の薔薇』に纏わる噂話が流布している」
 ――村外れの森の先、廃城の庭にひっそりと咲く、世にも美しい深紅の薔薇。夢心地のまま、ある夜ふらりと少女は薔薇を探しに森へ向かうのだが、それきり帰ってきた者は居ないのだとか。
「そして、今回も……オデットと言う村の少女が、森へ向かったまま行方が分からなくなった」
 しかし、今ならオデットに追いつき、彼女を保護することも出来るのだとシーヴァルドは言う。彼女が居るのは、廃城の庭へ向かう途中に広がる、廃墟と化した庭園迷路――上手く迷路を攻略することが、オデットとの素早い合流にも繋がるだろう。
「どうやら、噂話に助言が含まれているようだから、順に説明しておこう……先ずひとつ。小夜啼鳥の囀りが、貴女を導く、と言うもの」
 ――恐らくは、オデットは鳥の鳴き声を頼りに廃庭園を抜けようとしている筈。しかし、この鳥はヴァンパイアの眷属だろうから、逆に此方を惑わしてくる可能性も考えられる。
「それでも、オデットを導くことを優先するだろうし、余り複雑な行動は行えないだろうから、上手くやれば逆に利用してやることも出来そうだな」
 そして二つ目、庭園に咲く薔薇にみちしるべになって貰う、と言う話なのだが――。
「……庭園迷路のあちこちに、白い薔薇が咲いているようだ。乙女の血と引き替えに、正しい道を教えてくれる……つまり薔薇に血を与えれば、迷路を通り抜けるよう近道を作ってくれるのだと思うが」
 問題は、乙女の血――つまり、少女の血液にしか反応しないであろうことか。それでも、オデットが白薔薇に助けを乞うたのなら、その痕跡を辿ると言う方法もある。
「まあ、難しいことを考えずに、体力任せで突っ切るのも有りかと思う。……が、庭園の破壊は控えた方が良いだろう。オブリビオンの力の影響下にあるかも知れないし、最悪オデットが巻き添えを喰らってしまう」
 先ずは、彼女の救出が第一目標だ。しかし最終的には、廃城に潜伏しているオブリビオンを討伐し、少女が消えていく夜を終わらせなければならない。
「厄介なことに、このオブリビオンは……少女を誘うこと自体を楽しみつつ、その肉体を己のものにしようとしているのだ」
 ――その本体は、女吸血鬼の遺髪によって編まれた黒衣。少女に憑依し、その自我を己のもので塗り潰して永遠に生きる呪われしもの。廃城の庭には、彼女に肉体を奪われ亡くなった少女たちの魂が、今なお彷徨っているらしい。
「……ゼラの死髪黒衣。どうか、新たな犠牲者を生まない為にも、死を齎す囀りを止めて欲しい」


柚烏
 柚烏と申します。秘密の花園とか、庭園迷路なんて響きにときめいてしまう所為もあり、こんな感じのシナリオを考えてみました。
 今回の舞台は、絶望の世界であるダークセイヴァー。薔薇の檻に誘われた少女を救出し、廃城に潜伏するオブリビオンを討伐してください。第1章、第2章は廃庭園での冒険となり、第3章で黒幕オブリビオンとの決着をつける流れです。

 なお、冒険での判定はダイス目を基準にしますが、シンプルに「正解探し」を行うよりも、「行動が面白い」「そのPCさんならではのアプローチをしている」などの方がボーナスは大きいと思います。是非、思いっきり個性をアピールして頂ければと思います。
 探索や調査と言った要素が多めとなることもあり、コンパクトな感じに纏まるかなと思います。スケジュールの都合で執筆はゆっくりになりそうですが、この世界ならではのダークで、ちょっぴり背徳的な雰囲気が出せればいいなと思っています。

 シナリオに出てくるのは薔薇ですが、百合って良いですよね……いや、何でもありません。それではよろしくお願いします。
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第1章 冒険 『薔薇の檻』

POW   :    気合とパワーで追跡する

SPD   :    スピード重視で追跡する

WIZ   :    賢く効率的に追跡する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

楠瀬・亜夜
小夜啼鳥が誘う薔薇の迷宮……!なんだか心がざわつく……!
おっと……ふふ、まるで童話のようなお話ですね
ですがこれは吸血鬼の死の戯曲、その幕、下してさしあげましょう。

鳥の鳴き声が道しるべ、ですが情報の通りであれば
恐らくこちらで聞ける声は罠。
となれば注目すべきはオデットさんを先導する声
遠くで聞こえる音を追いかけましょう【聞き耳】

白薔薇があればナイフを使って自分の血を与えてみましょう
私は少女なのでセーフな筈、きっとセーフ、ギリギリセーフ
少なくとも心は少女なのでセーフです。

一応念のため【shadow hearts】で影蝙蝠のシャーちゃんを呼び出し
上空から地形の確認、それを頼りに迷宮の突破を試みます。


ヘンリエッタ・モリアーティ
【WIZ】
……効率的に、追跡しましょう。
『親愛なる右腕』でモランに手伝ってもらいます。この子の頭胴長は20cmほど。
けれど、私が動くよりもずっと早くこの庭園を這いずるわ。飛竜に見えて、飛ぶよりも這うほうが、この子は得意なんです。
――オデットを追跡するなら、モランが彼女の痕跡をくまなく捜してくれるはず。
できれば、どなたかと協力してオデットの情報を共有したほうがいいかしら……。

小夜啼鳥、ね。モラン、決して両目を奪われないように気を付けて。『夜うぐいすとめくらとかげ』になってはいけないの。あなたが今からこの庭園を支配するのよ。――これ以上、悪趣味な女に捧げてやるものですか。


ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
秘め事はいつでも楽しいものだが、事件になるのではいただけないなァ。
他愛ない噂で体を奪われたのではたまったものではない。早いところ見つけてやらねばな。

とはいえ迷路は得意でない。私では薔薇に教えは乞えんし……。
……うむ。よし、蛇竜。お前にも手伝ってもらう!
少しでも良い、何か痕跡を見つけたら戻ってこい。お前ならば、鳥の鳴き声にも騙されるまい?
なに、お前がいずとも、私はそれなりに戦える。安心して存分に探索して来い!

私は私で痕跡を探そう。ま、大半は蛇竜頼りだがな。
……ところで、この白い薔薇、手折っても問題はないのだろうか。
いや、なに、少しは何かの役に立つのではないかと思ってな。


海月・びいどろ
WIZ

白い薔薇、赤い薔薇……
きれいだけど、棘があるんだね
オデットのゆびが怪我してしまうのはよくないけれど
ボクだと花に道を訊けないもの

硝子海月のジェリーを喚び出して情報収集してみようか
白の中の赤い薔薇を、いっしょに探してもらおう
他に探索をしている猟兵がいれば情報共有しようかな

小夜啼鳥の囀りは、本当と嘘の半分で聴いておくね
違うところにご案内されてしまわないように
赤いあしあとを辿っていくよ
…なんだか、童話みたい

もしも、彼女の姿が見えるか
赤薔薇のあしあとを見つけたなら
静かにそっと迷彩を纏って追跡するね

足元ご注意、穴とか開いてないかな
オデット、危ない目に合わないと良いのだけど
次は何が待っているんだろう



 美しき赤薔薇の物語に惹かれて、森の奥の庭園迷路へ足を踏み入れた少女が居た。さあいらっしゃいと手招くように、小夜啼鳥の囀りが夜のしじまを震わせる中――仄かに甘い花の香りが時折、廃墟と化した庭園にふわりと漂う。
「小夜啼鳥が誘う薔薇の迷宮……! なんだか心がざわつく……!」
 それはまるで、童話のようなお話であったから――楠瀬・亜夜(追憶の断片・f03907)は、凍てつく月の輝きを秘めた瞳を、面白そうに細めて溜息を零した。半魔の美貌を持つその乙女は、銀の髪を夜風に躍らせると、庭園迷路の入り口へと足を踏み入れる。
「……ですが、これは吸血鬼の死の戯曲。ならばその幕、下してさしあげましょう」
 ――仰々しいまでの言葉選びも、亜夜の唇から零れると、舞台の一場面が蘇ったかのよう。内心では、こうした方がカッコいいからと思う故なのだが――敢えて本音をぶちまける必要もあるまい。
「秘め事はいつでも楽しいものだが、事件になるのではいただけないなァ。……それに、他愛ない噂で体を奪われたのでは、たまったものではない」
 廃城に巣食うヴァンパイアに、肉体を狙われている少女の安否を気遣うのは、ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(世界竜・f01811)。恐らく彼女は、期待と不安に心を揺らしながら、廃園を彷徨っている筈――早いところ見つけてやらねばなと呟き、ニルズヘッグは目の前に広がる翠の迷宮を見つめて思案する。
「……とはいえ迷路は得意でない。私では薔薇に教えは乞えんし……」
「乙女の血と引き替え、ですからね……」
 ――正しい道を教えてくれる標について、亜夜も少々思う所はある様子だ。しかし、闇雲に迷路に挑むのでは分が悪いだろうと、ヘンリエッタ・モリアーティ(獣の夢・f07026)は頷き、親愛なる右腕を起動――飛竜のモランを召喚した。
「……ここは効率的に、追跡しましょう。モラン――私に、すべて教えなさい」
 黒鱗を持つ小型竜は、まるで蛇のようにしなやかな動きで庭園を這い、消えた少女――オデットの痕跡を探しに行く。そんなヘンリエッタの様子を目にしたニルズヘッグも、己の蛇竜を用いて探索を行おうと決めたらしい。
「……うむ。よし、お前にも手伝ってもらう! 少しでも良い、何か痕跡を見つけたら戻ってこい」
 と、有事の際に黒槍へ変わる蛇竜は、主人の元を離れることに不安を覚えた様子であったが、其処は大丈夫だとばかりにニルズヘッグは胸を叩く。
「なに、お前がいずとも、私はそれなりに戦える。安心して存分に探索して来い!」
 ――それに、お前ならば、鳥の鳴き声にも騙されるまい、と。空を羽搏くヴァンパイアの眷属、小夜啼鳥にも注意を払いつつ、一行は庭園迷路の探索を開始した。
「鳥の鳴き声が道しるべ……ですが、情報の通りであれば、恐らくこちらで聞ける声は罠。となれば、注目すべきはオデットさんを先導する声でしょうね」
 聞き耳を立てて囀りを聞き分ける亜夜は、近くで鳴いている小夜啼鳥の声に惑わされず、恐らくオデットを導いているであろう声――遠くの方で聞こえてくる音に集中して、進む方角の助けにする。
「……小夜啼鳥、ね。モラン、決して両目を奪われないように気を付けて」
 そう、残酷な童話のように小夜啼鳥に瞳を奪われ、高い高いと鳴く鳥を地べたで恨むことにならぬよう。モランと五感を共有するヘンリエッタは、小夜啼鳥の誘惑にも誘われること無く、したたかに対象を追跡していった。
「あなたが今からこの庭園を支配するのよ。――これ以上、悪趣味な女に捧げてやるものですか」
 更に、茂みや踏みしめられた地面の痕跡を辿り、最近誰かが通ったであろう道を確認していくと――生け垣の一角に咲く白薔薇が、不自然な紅に染まっていることに一行は気づく。
「白い薔薇、赤い薔薇……きれいだけど、棘があるんだね」
 ――オデットのゆびが、怪我してしまうのはよくないけれど、ボクだと花に道を訊けないもの。
 まるで歌うように、そっと秘密を囁くようにして、辺りの薔薇を見渡すのは、海月・びいどろ(ほしづくよ・f11200)。
「白の中の赤い薔薇を、いっしょに探してもらったけど……オデットはここを、通っていったみたい?」
 硝子細工の海月たちを伴い、赤く染まる薔薇を目印に探索をしていた少年は、どうやら一足先にオデットの手掛かりを見つけていたようで――其処で合流したヘンリエッタ達と、今まで集めた情報の共有を図る。
「……小夜啼鳥の囀りは、本当と嘘の半分で聴いて。違うところにご案内されてしまわないように」
 今までの冒険を語るびいどろは、そうして赤いあしあとを辿るように、此処までやって来たのだと言った。硝子海月と一緒に、薔薇の赤を頼りに廃庭園の迷宮を進むなんて、なんだか童話の一場面のよう――思わずそんなことを考えてしまった亜夜だったが、辺りに咲く白薔薇を見て、ふと自分の血を与えてみることを思いつく。
「……どんな反応をするのでしょうね。……私は少女なのでセーフな筈、きっとセーフ、ギリギリセーフ」
 ――そんな訳で指先にナイフを滑らせ、ぷくりと滲む血の雫を白薔薇に落とす亜夜。しかし、特に白薔薇が反応を示すことは無く、彼女はがくりと肩を落とした。
「少なくとも、心は少女なのでセーフ……の筈、が」
「……心のことは、よく分からないけど。多分、ヴァンパイアが憑依する少女の肉体を、上手く誘うようにしてるの、かも」
 項垂れる亜夜にびいどろが、今まで見て来た廃庭園の様子を思い出しながら告げる。最終的には、赤薔薇の元に辿り着くように仕向けているだろうから、そう厄介な罠の類は無いであろうことも付け加えつつ。
「……ところで、この白い薔薇、手折っても問題はないのだろうか」
 そう呟くニルズヘッグが、白薔薇の一輪に手を伸ばした時――薔薇の棘が突然牙を剥き、彼は慌てて指を遠ざけた。嫌われたのでしょうね、とその様子を見つめるヘンリエッタが、何処か面白そうなのは気のせいだろうか。
「……赤薔薇の、あしあと」
 ――やがてびいどろは、血に染まる薔薇の茂みが、人ひとり通れる位に形を変え続いているのを発見する。上空からは亜夜の使役する影蝙蝠のシャーちゃんが、地形の確認に当たってくれる中――一行は少女の追跡を再開することにしたのだった。
(「オデット、危ない目に合わないと良いのだけど。……次は何が待っているんだろう」)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ソナタ・アーティライエ
既に何人もが帰らぬ人になってしまっている事に胸を痛めます
それゆえにオデット様が新たな犠牲になるのを防ぎたい、という思いは強いです

白薔薇に血をあげてでも先を急ぎたかったのですけれど、普通の人ならざるこの身ではそれも叶わず……小夜啼鳥の囀りを頼りにさせて頂きます
幸いと言って良いのか迷いますけれど、わたしの見た目なら新しい犠牲者が増えた程度に思って頂ける可能性は低くないと思いますので、振る舞いに気をつけ怪しまれないようにすれば行けるはず……
念のため他の方への囀りにも耳をすませ(聞き耳)、自分が惑わされていないか注意を払うようにします
惑わされていると感じたら、囀りの逆を行くなど、強引な突破も辞しません


神元・眞白
薔薇の迷路。言葉だけだと綺麗。白も赤もあるなら、他の色も?
急がないと。でも庭園は庭園で見ていかないと。

【WIZ】
飛威(人形)はそのままに、符雨(人形)と私の役柄を入れ替わり。変装。
私は目立たない様にして、主に見立てた符雨をサポート程度に。

飛威は別々で動けるし、分かれ道だったりは少しだけ分かれて先の様子見。
十字路だったりはオブリビオンを一旦放ったり、数は力。戦いは数。

魂が彷徨ってるなら、話せそう?迷路の話だったり聞ければいいけど。
その時は符雨に話を経由してもらう。


ニコラス・エスクード
いつの世に於いても花に惑わされるは女の性か。
理解に至らぬのは男の身を授かった故か、
将又、元が人ではないが故か。
……答えが出る問答でもなさそうだな。

が、惑う先が死に至るのであれば話は別だ。
早く、追いつかねば。護れぬは盾の名折れだ。
この程度の迷宮など――力押しは駄目か。
さて……。

この身に乙女の血は流れていない。
ならば鳥の囀りを辿ってやろう。
此方を惑わす者であれば好都合だ。
その数を減らしてやれば正しい道を知らす者だけになる。

この見目であるが、鈍重ではないのでな。
近くで喚けば一息に距離を詰め咎力封じにて捕まえてやろう。
捕えた鳥には正しい道を教えるように脅してみるか。
恐怖を与えるのは得意なのでな。



 ――既に、何人もの少女が薔薇の檻に囚われ、帰らぬ人となってしまっている。その残酷な事実に胸を痛めていた、ソナタ・アーティライエ(ミレナリィドールのシンフォニア・f00340)だったが、今回はまだ間に合うのだと自身に言い聞かせ、闇夜の庭園迷路へ挑むことになった。
(「オデット様が、新たな犠牲者になるのを防ぎたい……いいえ、防いでみせます……」)
 とは言え、己は魔法蒸気文明の叡智の結晶――機械人形たるミレナリィドールだ。出来ることなら、白薔薇に血を捧げてでも先を急ぎたかったのだけど、常人ならざるこの身ではそれも叶うまい。
「なら……小夜啼鳥の囀りを頼りにさせて頂きますね」
 幸い、と言っても良いのかは迷う所だが、ソナタの見目は愛らしい少女。獲物を導く眷属たちが、新しい犠牲者が増えたと思ってくれる――その可能性に賭けてみよう。
(「覚悟を決めないと……。振る舞いに気をつけて、怪しまれないようにすれば行けるはず……」)
 気弱になりそうな心を必死に奮い立たせ、ソナタは澄んだ蒼玉の瞳で夜空に舞う小夜啼鳥たちを一瞥すると――此方を呑み込もうと口を開ける、翠の迷宮をゆっくり進んでいく。
(「……囀りが、わたしを呼んでいる?」)
 ――さあ、娘さん。深紅の薔薇の元へご案内しましょう。ああ、帰り道など気にせずに。小夜啼鳥の甘い歌声がソナタを誘っていく中、周囲の囀りに耳を澄ませていた彼女は、自分に向けられるものとは違う――僅かな悪意を孕んだ鳴き声を聞き取った。
(「この声……何だか、不安を掻き立てられて……」)
 もしかしたら、他の誰かが惑わされているのか。或いは自分の方が――?
 戻るべきか、強引に突破するべきかとソナタが思案していると、其処で曲がり角から従者を伴った令嬢が姿を見せる。余りに整い過ぎたその美貌は、まるで人形のよう――と言うか。
「お人形……さん?」
「そう、この子は『符雨』」
 その時、令嬢に扮した絡繰り人形の後ろから、彼女を操る者の声が響いた。従者に扮したその主――神元・眞白(真白のキャンパス・f00949)もまた、よく見ればソナタと同じ魔法人形であり。茫洋としたまなざしで眞白は、咄嗟の事態に備えているのだと簡単に説明をする。
「薔薇の迷路。言葉だけだと綺麗。でも、急がないと。でも庭園は庭園で見ていかないと」
「ふふ……そうですね」
 ――偶然、庭園迷路で出会った同族の女性。だからだろうか、ソナタは普段よりも緊張せずに彼女と話すことが出来た。独特の雰囲気を持ち、他の色の薔薇もないだろうかと辺りを見渡す眞白だったが――不意に、もう一体の従者人形の飛威を先行させ、自身は死霊召喚の準備に取り掛かる。
「この先、厭な気配。眷属が沢山居る」
 そんな眞白の言葉通り、少し開けた場所では黒鉄の鎧を纏った騎士――ニコラス・エスクード(黒獅士・f02286)が小夜啼鳥の群れを前に、一触即発の状態にあったのだった。
(「いつの世に於いても、花に惑わされるは女の性か。理解に至らぬのは、男の身を授かった故か――将又、元が人ではないが故か」)
 ――答えが出る問答でもなさそうだな、と独り言ちる彼は、或る守護者が携えていた盾が魂を宿したヤドリガミだ。
 しかし、惑う先が死に至るのであれば話は別。早く追いつかねばと迷宮を進んだニコラスだったが、力押しではままならぬと判断し、迷い人を誘う存在の力を借りることに決めた。
(「護れぬは盾の名折れだ。だが、この身に乙女の血は流れていない……ならば」)
 鳥の囀りを辿ってやろう、と小夜啼鳥に目を付けたまでは良かったのだが――此方を惑わす者であれば好都合だと、その数を減らしてやろうとしたのが拙かったのかも知れない。
「この見目であるが、鈍重ではないのでな。貴様等を斃せば、後は正しい道を知らす者だけになるだろう」
 近くで喚けば一息に捕まえるべく、咎力封じの力を解き放つニコラスだったが、庭園迷宮に巣食う眷属たちは余りにも儚かった。
 捕らえた先から霧のように掻き消えてしまい、恫喝を行う暇も無い――そればかりか、斃したと思った矢先にまた何処からか新手が現れ、その数は増えはしないが減ることも無いのだ。
「囀る以外に、此方に干渉する術は持たないようだが……厄介な相手だな」
 しかし、己に注意を引き付けたことで、他の者の探索の邪魔をする余裕も無くなった筈。後に続く猟兵たちの助けとなれたのだとしたら、そう悪い話でもない――赤き双眸を揺らめかせて、ニコラスはそう思ったのだった。

苦戦 🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。吸血鬼の趣向じゃなかったら、私も真紅の薔薇を探したくなったかもしれない…
でも今はオデットを探すのが先決…
…白薔薇、呪われたダンピールの血でも大丈夫?
別に気にしてないけど、これで反応が無かったら乙女的に……ん。何でもない

第六感を駆使して迷路を攻略し、白薔薇の存在感を見切り、見逃さないように探す
……多分大丈夫だと思うけど【限定解放・血の聖杯】を使用
増幅した生命力を吸収し力を溜めた血を一滴、白薔薇に垂らす

※反応はお任せ


…オデットの血が着いた白薔薇を見つけたら、
白薔薇に呪詛をかけて少女を追跡する誘導弾にして跡をつける
…最初から、こうすれば良かった?
…ん。もちろん、そのつもりだった


フィリア・セイアッド
WIZを選択
赤いバラはわたしも好きだけど… このお話のバラはちょっと怖いのね
オデットさんはどうしてこのバラが見たいと思ったのかしら
ううん まずは彼女を見つけないと

綺麗なお庭なのに…悲しい想いが沢山
囚われた女の子たちの魂も解放できますように
オデットさんを無事に見つけられますようにと指を組んで「祈る」
オデットさんもバラの道しるべを辿ったかしら?
白バラの中 赤く染まった花があればそこを辿る
なければ自分の指を少し切り 血を垂らして
さあ オデットさんの所へつれていって
道しるべを追いかける
「第六感」も使い惑わされることのないように
わかったことは仲間にも周知


ウインド・ノーワルド
『深紅の薔薇』とはまた、白薔薇が血を吸うというのも興味が沸きますね
普段はグリモワばっか弄ってますが、たまにはこういうのも悪くねーですねってことで……まずは庭園散歩としゃれこみますかぁ

私の場合は少女の血というには少々汚れてますんで、あまり試すにはいきませんが
邪神の血を含んだ血でも喜ぶならぜひ、ですがね?

ともあれ彼女を追うべきでしょうかね、【影の追跡者の召喚】を行い、多方面から調査と行きましょう
探すべきは既にオデットさんが残しているであろう痕跡
既に赤い薔薇となっている物から『医術』の知識を元に血の香りを追っていきますか

ただ赤と白。シーツに染みる鮮血を思い出すんで、あまり気のいいもんじゃないですがね


ティア・レインフィール
美しいものに惹かれるのは
少女なら自然の事なのでしょうけれど
それを利用して、彼女達の命を奪うとは……

これ以上犠牲者を出さない為にも
先ずはこの迷路を攻略し、オデット様と合流しましょう

神よ、どうか私達を見守りください
【祈り】を捧げ、攻略の為の決意を固めます

白い薔薇に、乙女の血
……とても不本意ですけれど
ダンピールは血の匂いには少々敏感ですから
それを辿れば彼女に追い付く事が出来るかもしれません
血の乾き具合も判断材料になるでしょうか

血の付いた白い薔薇を見付けたら
ナイフで指先を少し傷付け、血を捧げて後を追いましょう



 庭園に咲く白薔薇はみちしるべ。彼女たちは乙女の血と引き替えに、そっと正しい道を教えてくれる――囁かれた秘密の一節を口ずさみながら、フィリア・セイアッド(白花の翼・f05316)はそろりと慎重に、闇に沈む庭園迷路を進んでいく。
「赤い薔薇はわたしも好きだけど……このお話の薔薇はちょっと怖いのね。……オデットさんはどうして、この薔薇が見たいと思ったのかしら」
 いつもなら翠の森はフィリアにとって、心安らぐ場所である筈なのに――この廃庭園は何処か彼女の不安を掻き立てて、魂ごと引きずり込んでしまうような恐ろしさがあった。
「……ん。吸血鬼の趣向じゃなかったら、私も真紅の薔薇を探したくなったかもしれない……」
 表情に然程変化は見られないものの、紫の瞳を瞬きさせたリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、お伽噺のような冒険に少女たちは惹かれたのかもしれないと思う。
 そっと囁かれる甘美な秘密――その果てに、奇跡のように美しいものと巡り合えたのなら、流した血さえも愛おしいと言うもの。
「まぁ……実際に待ち受けているのは、吸血鬼の遺志を宿した黒衣で、肉体を奪われるとあっては堪ったもんじゃねーですが。にしても、深紅の薔薇ですか」
 其処に至るまでに待ち受ける、白薔薇共々興味深い――眼鏡を押し上げて頷く、ウインド・ノーワルド(自称ドクター・f09121)は、好奇心に満ちたまなざしで周囲を観察していて。普段はグリモアを弄ることの方が多い彼女だが、たまには庭園散歩と洒落込むのも悪くないだろうと自分に言い聞かせる。
「美しいものに惹かれるのは、少女なら自然な事なのでしょうけれど。それを利用して、彼女達の命を奪うとは……」
 その瞳に宿した、悲哀のいろの所為だろうか――ティア・レインフィール(誓銀の乙女・f01661)の佇まいからは、オブリビオンの非道に憤るよりも、犠牲となった少女たちを悼む想いが伝わってきた。
「これ以上犠牲者を出さない為にも……神よ、どうか私達をお守りください」
 そうして、清らかな月光を思わせる輝きを宿したティアは、静かに祈りを捧げて庭園迷路を攻略する決意を固める。そう――今は廃庭園を彷徨うオデットを見つけることが先決で、それは此処に集った乙女たち皆の願いなのだ。
「確か……オデットさんの残した痕跡、赤く染まった薔薇がありましたね?」
 先ずはウインドが、その薔薇に付着したオデットの血液を、医術を元に分析――その香りを、召喚した影の追跡者に辿らせることにした。
「……ん。これなら、使えそう」
 更にリーヴァルディは白薔薇に呪詛をかけ、血を介して感染者たるオデットを捉えることが出来ないか、第六感も駆使してその行方を追う。
「白い薔薇に、乙女の血……とても不本意ですけれど、ダンピールは血の匂いには少々敏感ですから」
 ――仄かに憂いを含んだ表情で、赤く染まった薔薇に触れるのはティア。その血の乾き具合を見て、そう時間は経っていないことを確認した後、感覚を研ぎ澄ませた彼女は、少女の血の匂いを道標にして廃庭園の迷宮を進んでいった。
(「忌まわしくも甘美な、この芳香……いえ、追跡者が獣になるようなことは、断じて許されません」)
 慌ててかぶりを振り、己を厳しく律するティアを案じつつ、フィリアはそっと手を組んでオデットの無事を祈る。此処は綺麗な庭なのに、悲しい想いが沢山で――どうか、囚われた女の子たちの魂も解放できますようにと願いながら。
「オデットさんも、薔薇の道しるべを辿った……なら」
 ――きっと、その行く先にも白薔薇が待っている筈。そのフィリアの予感通り、通路を進んだ先には白薔薇の咲く一角があった。どうやらこの薔薇にオデットは触れなかったらしく、薔薇は清らかな白を保ったまま――しかし、血を与えることで近道が可能になるかもしれない。
「まぁ、私の場合は少女の血というには少々汚れてますんで、あまり試すにはいきませんが」
 白衣をひらひらさせて肩を竦めるウインドは、UDCを宿すエージェントだ。邪神の血を含んだ血でも喜ぶなら、是非――と言いたいところだが、此処は他のお嬢さんに任せるとしよう。白に散る鮮血には、余り良い思い出が無いことだし。
「……白薔薇、呪われたダンピールの血でも大丈夫?」
 小首を傾げるリーヴァルディに、曖昧な様子でティアが頷くが、それよりもヴァンパイアの求める少女の肉体に合致するかどうかの方が、重要なのかも知れない。
「別に気にしてないけど、これで反応が無かったら乙女的に……ん。何でもない」
「少女の定義が何歳までかによりますよねー。成人しているとアウトなのかも」
 興味深いとばかりに白薔薇を観察するウインドが、怪我したら直ぐに治療するからと色々薬を取り出す中――結局リーヴァルディとフィリアのふたりが、白薔薇に血を与えてみることになった。
「……限定解放。傷ついた者に救いを……血の聖杯」
「さあ オデットさんの所へつれていって」
 瞬間――吸血鬼の姿に変じたリーヴァルディが、生命力を凝縮した血の一滴を薔薇に落とす。更にフィリアも己の指先から滲む血を注ぎ込めば、少女の血を啜った白薔薇は鮮やかな紅へと色彩を変え、みるみる内に庭園迷路の造りを変化させていった。
「……この道を進めば、いいのね?」
 ――新たに生み出された道は、無駄な分かれ道を塗り潰して、更に奥へと続いている。元凶の元へ確実に誘われているのだと、フィリアはそっと己の身を掻き抱くが――薔薇の檻に囚われたオデットを、一刻も早く見つけなければならない。
(「世界に光を、大地に花を……呪われた庭園に、どうか救いがあらんことを」)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

イア・エエングラ
夜を歩いて、行くのなら
どこまでだって行けそうなの、何故かしら
すぐに朝に追いつかれてしまうのに
けれども今宵ばかりは僕も、追いつかなければね
ひばりの子が鳴いて、彼女が扉を開く、前に

足跡ひとつも見つからないなら、花の多い路選びましょうな
折角咲いているのだもの、綺麗な方が、良いでしょう
小夜鳴のおうたはどちらだろ、諳んじるのは彼らの詩を
白い山査子野に咲く薔薇と葉に埋もれ褪せた花、
聞こえるなら追い掛けましょな

――薔薇の下には、秘密があるの
内緒の路を教えてくださる?
白い子に呉れてやれるものがないのは、残念だけど
通った路には迷わないよに青い火ひとつ、おいときましょうな
摘んでしまうのは、かわいそだから


マリス・ステラ
【WIZ】状況や手がかりを元に追跡します

「小夜啼鳥、ナハティガル……美しい鳴き声だと聞いています」
私自身はまだ耳にしたことはないので少し楽しみにしています
導かれるままに、いえ「第六感」を働かせて歩みます

「白薔薇が道標ならば、今は紅く染まっているでしょう」
オデットはロサ・ギガンティアに血を捧げた……
カーミラ(女吸血鬼の意)は趣向を凝らしているようです

「星の導きを」
迷うなら袋から金平糖を出してその数で左右を決めるなどします
金平糖はおいしくいただきます

星枢の力でこの地の情報を得ることも試みて可能なら活用します
過去に亡くなった少女たちの悲鳴が聞こえるようなら、
「安らかなる眠りを」
「祈り」を捧げましょう


萌庭・優樹
SPD!
おれの自慢の足の速さで追ってきますっ

オデットさんが白薔薇の咲く道を辿ったなら
薔薇の花が咲き続いて見える方に行ってみよう

もしや、おれ達とオデットさんの合流を
邪魔してるかもしれないなら
鳥さんの声は知らんぷり
きこえませんよーだ!

分かれ道で迷ったら自分の【見切り】頼り
んー、あっちは行き止まりですッ
たぶん!
こういう時は考えてたって仕方ありません!

お花とおんなじように、きれいな、命
奪わせはしない

見つけてあげられたその時には
手をつないであげたい
ぜーッたい離しませんからね、って
安心させてあげるんだ
そンだけ考えて、おれは走ります

もし、おれのほかにもおんなのこがいたら
はぐれちゃわないよに、注意しますねっ



 急げ、急げ――翠が形づくる迷路を抜けて、薔薇に誘われた少女に追いつく為に。
 自慢の足の速さを活かして庭園迷路を進む、萌庭・優樹(はるごころ・f00028)の姿は軽やかで、色褪せた世界に鮮やかな風が吹き抜けていくかのよう。
「オデットさんは、白薔薇の咲く道を辿ったって聞いたから……薔薇の花が咲き続いて見える方に行ってみようかな」
 他の猟兵たちから聞いた情報を頼りに、優樹が目印にするのは、時折庭園の生け垣に咲く白い薔薇。闇夜の中でも薄らと輝いて見える、薔薇が群生している一帯を目指して駆けていくと、頭上から小夜啼鳥の囀りが響いて来た。
(「もしや、おれ達とオデットさんの合流を、邪魔してるのかも……?」)
 或いは、快活なエルフの娘である優樹を獲物と判断し、主の根城まで導こうとしているのか――判断が付きかねたものの、君子危うきに近寄らずと言う言葉もある。
「よし、鳥さんの声は知らんぷり。きこえませんよーだ!」
 そんな訳で、ぷいとそっぽを向いて耳を押さえる優樹であったが、その時別の路からゆっくりと、儚げな美貌を持つ乙女が姿を現した。
「小夜啼鳥、ナハティガル……美しい鳴き声だと聞いていましたが、少々魔性の音色が感じられますね」
 ――その呟きはまるで、星の転がるような音がして。幻想の世界から抜け出してきたかのような彼女――マリス・ステラ(星を宿す者・f03202)は、未だ聴いたことの無い音を楽しみにしながら、導かれるようにして此処までやって来たのだと告げる。
「あら、その星をひとつ、僕にもくださるかしら」
 と――本当に、何かの導きがあったのか。もう一方からは美しく透き通る宝石の煌めきを宿す、クリスタリアンの青年が姿を現した。イア・エエングラ(フラクチュア・f01543)と名乗った彼は、まるで詩人が歌を紡ぐがごとくうっとりと、今迄の冒険譚を語り始める。
「……夜を歩いて、行くのなら。どこまでだって行けそうなの、何故かしら。……すぐに朝に追いつかれてしまうのに」
 ――嗚呼、確か小夜啼鳥は、夜明け前にも鳴き声を響かせると言うけれど。今宵ばかりは僕も、追いつかなければね――そう呟いたイアは優樹と同じく、花の多い路を選んで此処までやって来たらしい。
「折角咲いているのだもの、綺麗な方が、良いでしょう」
「ええ、ですが……白薔薇が道標ならば、今は紅く染まっている筈です」
 蒼海を思わせるマリスの瞳が見つめるその先には、血を浴びて赤く染まった薔薇が、艶やかに咲き誇っており――その先に広がる路はきっと、オデットの元へ続いているであろうと確信出来た。
「少女はロサ・ギガンティアに血を捧げた……カーミラは趣向を凝らしているようです」
 秘密めいた薔薇の導きで、少女を誘う女吸血鬼とは――随分と手の込んだ、耽美で背徳的な遊戯を思いついたものだ。薔薇の下には秘密があると言うけれど、こうして内緒の近道を隠しているなんて。
「……白い子に呉れてやれるものがないのは、残念だけど」
 その上で摘んでしまうのは、かわいそだからとイアは言って、迷わないよう目印に青い火をひとつ、置いていくことも忘れない。
「さあ、真っ直ぐ進みましょ。ひばりの子が鳴いて、彼女が扉を開く、その前に」
 ――小夜鳴のおうたはどちらだろ。白い山査子野に咲く薔薇と、葉に埋もれ褪せた花と。詩を諳んじながらイアは進むが、此方を惑わす鳥の囀りは思ったほど聞こえて来なかった。
「あ……分かれ道」
 そして近道を通って先へ進むと、其処からは再び迷路が広がっていて。早速現れた分岐点を前に、優樹が勘を働かせて行く先を決めようとした所――おもむろにマリスは袋から金平糖を取り出し、両の手其々に握りしめた数で進む方向を決めたようだ。
「星の導きを……あ、この金平糖はおいしくいただきますよ」
「じゃあ、おれも一つ貰っていいですかっ?」
「きらきら甘い星を、夜を歩くお供に、なんて。とても素敵なのね」
 ――と、占いに使った金平糖を三人で美味しく頂いたりもして。甘いもので疲れを癒した一行は、優樹を先頭に颯爽と、分かれ道でも素早く判断を下して庭園迷路の攻略を進めていった。
「んー、あっちは行き止まりですッ、たぶん! こういう時は考えてたって仕方ありません!」
 お花とおんなじように、きれいな、命――それを奪わせはしないと固く誓い、優樹はオデットの背中を追いかけ懸命に走る。
(「見つけてあげられたその時には、手をつないであげたい。ぜーッたい離しませんからねって、安心させてあげるんだ」)
 今はそれだけを考えて――ついでに、何処か浮世離れしたマリスとイアがはぐれちゃわないように、こっそり注意しながら。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

東雲・咲夜
御伽噺なら素敵な伝奇や思いますけれど
現実に起こるんは放っておけないお話やね
…とはいえ、うちホラーは大好きやし本もゲームも漁って見ますけど
いざお化け屋敷に入ったりすると怖くなってしまうんよ
き、気張らなあきまへんな……(ぷるぷる)

白薔薇に血を与えると…?
試しにやってみまひょ
痛みには弱い方なんやけど【激痛耐性】のおかげで僅かな傷をつくるくらいなら平気
袂をめくり白腕に牙を立て
ぷつりと穴を開ければ滴る紅の雫
綺麗な白薔薇はん、うちの血と引替えに道を開いておくれやす

ほんまにこの世界は物語の中にいるみたい
見慣れた血も、なんやいつもと違って見えます
不思議な気分…
さぁ、オデッドちゃんを助けに行きましょう


フレズローゼ・クォレクロニカ
🍓櫻宵(f02768)と
アドリブ等歓迎

薔薇の庭園なんて綺麗だね櫻宵!
ボクお絵描きしたくなっちゃう
薔薇はママを思い出して大好き
お茶会をして櫻宵のチョコを食べたらきっと楽しそう

こんな綺麗なところが檻だなんて

櫻宵と手を繋いで野生の感を活かし、追跡を用いて進む
血?乙女の血がいるの?
…櫻宵はお姉さんだけど乙女じゃなく乙男だから…
女は度胸と自分の鼻にパンチ

櫻宵、ここに丁度よく鼻血を垂らしたボクがいる!
ほじってないと言いつつ白薔薇へ

あっちだって櫻宵!
ボクは色を塗り替えるのは得意なの
次も任せて!
抱っこが嬉しくて抱きついて
櫻宵がいれば大丈夫

白薔薇を赤に塗り替えて
絶望を希望に塗り替えて

花に惑った君を迎えに行くよ


誘名・櫻宵
🌸フレズローゼ(f01174)と
アドリブ等歓迎

美しい白薔薇の庭園
薔薇の檻に囚われるだなんて
ロマンスね

第六感を駆使し人が通った痕跡を辿るわ
あらいやだわ
道を探るのに乙女の血が必要だなんて…
あたし、貧血で倒れたらどうしましょう?
けど、迷子になったらフレズが泣いちゃうもの
仕方ないわ
(軽く指を切り、薔薇へ

……

ちょっと!あたしじゃダメっていうの!?
(鼻血を垂らしたフレズに悲鳴
やだこの子ったら!
レディは鼻ほじったらダメって言ったじゃないの(白薔薇で拭く

あら
フレズなら大丈夫なの
差別だわ

でも道が分かれば好都合
フレズの鼻にティッシュを詰め抱っこして
先へ進むわ
次の白薔薇にはあたしを認めさせるんだから!と意気込んで



 足を踏み入れたものを時に惑わし、時に導く庭園迷路。夜も深まった廃庭園は不吉な気配を滲ませて、迷い人の足を竦ませる――かに見えたのだけど。
「薔薇の庭園なんて綺麗だね櫻宵! ボクお絵描きしたくなっちゃう」
「本当、美しい白薔薇の庭園……。薔薇の檻に囚われるだなんて、ロマンスね」
 きゃぁ、と無邪気な声を上げて繋いだ手を揺らす、フレズローゼ・クォレクロニカ(夜明けの国のクォレジーナ・f01174)に頷き、うっとり頬を染めるのは誘名・櫻宵(誘七屠桜・f02768)。
「でも、こんな綺麗なところが檻だなんて。薔薇はママを思い出すから、ボクは大好きなのに」
 兎の耳をへたり、フレズローゼはちょっぴりしんみりしてしまうけれど――ここでお茶会が出来たら楽しそうと思い直し、苺月の瞳を煌めかせた。
「その時は、櫻宵の作ったチョコが食べたいな」
「真夜中のお茶会ね、ショコラティエの腕が鳴るわ」
 そんな取りとめのない話をしながらも、ふたりは人の通った痕跡を確認し、第六感を頼りに迷路を進んでいく。勘頼み、と言うのも侮れないもので――オブリビオンの不可思議な力が働くこの場所では、感覚を研ぎ澄ませて何かがある、と思った方へ向かうのも効果的なようだ。
「あ……見て、櫻宵!」
 ――そうしてその勘が当たり、やがてふたりの前には、白薔薇の群生する生け垣が姿を現したのだった。確か、庭園迷路に咲く薔薇は、乙女の血と引き替えに道を教えてくれるのだとか――噂話の一節を思い出した櫻宵は、精緻な美貌を苦悶のいろに染めて、薔薇色の吐息を零す。
「道を探るのに乙女の血が必要だなんて……あたし、貧血で倒れたらどうしましょう?」
 ――けれど、此処で迷子になったりしたらフレズローゼが泣いてしまうもの。仕方ないわ、と覚悟を決めた櫻宵は早速己の指を切って、溢れる血を白薔薇へと注いだのだが――肝心の薔薇は、うんともすんとも言わなかったのだった。
「……櫻宵はお姉さんだけど、乙女じゃなく乙男だから……」
「ちょっとー! あたしじゃダメっていうの!?」
 ――そう。言い忘れていたが、艶やかな美貌を持つ櫻宵は、れっきとした男性だ。現に今の絶叫はちょっぴり地が覗いていて、ややトーンの低い声は紛うこと無きオネェのものだった。
(「御伽噺なら素敵な伝奇や思いますけれど、現実に起こるんは放っておけないお話やね」)
 一方――果敢に庭園迷路へ挑む、東雲・咲夜(桜歌の巫女・f00865)は、少女を助けるべく粛々と歩みを進めていて。その清楚で淑やかな見目に反し、ホラーは大好きだし本もゲームも漁って見ていたりと、それなりの耐性はあるつもりなのだが――。
「……とはいえ、いざお化け屋敷に入ったりすると怖くなってしまうんよ……」
 ぷるぷると、震える銀糸の髪が月光に煌めく中で、気張らなあきまへん――と咲夜は気合を入れる。しかしその直後、彼女の前方から凄まじいオネェの絶叫が響いてきたのだった。
「ひ……っ、女の子だけやないの? オネェさんも犠牲になってはるの?!」
 しぃんと静まり返った廃庭園に響くオネェの悲鳴は、下手なお化け屋敷よりもよっぽどホラーだ。回れ右をしたくなる足を懸命に動かして、咲夜が悲鳴の元へと向かうと――其処ではキマイラの少女の手当てをする、ドラゴニアンの麗人が居たのだった。――多分彼女がオネェなのだろう。
「櫻宵、ここに丁度よく鼻血を垂らしたボクがいる!」
「やだこの子ったら! レディは鼻ほじったらダメって言ったじゃないの!」
 ほじってない――と抗議するフレズローゼは、女は度胸とばかりに自分の鼻にパンチをして、鼻血を出したらしい。近くの白薔薇で血を拭おうとする櫻宵だが、中々上手くいかず、だらだら垂れる鼻血が痛々しい。
「あ、白薔薇に血を与えようと……? うちも試しにやってみまひょ」
 痛みに対しては敏感な咲夜だが、それに耐える術は持ち合わせている。巫女装束の袂をめくり、露わになった白腕に牙を立てると――ぷつりと開いた穴からは、紅の雫が白薔薇に吸い込まれていった。
「……綺麗な白薔薇はん、うちの血と引替えに道を開いておくれやす」
 その彼女の声に従うように、白薔薇咲く一角は見る間にかたちを変え、迷路の出口へ続く秘密の近道を造り出していく。
「わ、凄い! あっちだって櫻宵!」
 と、フレズローゼの血を啜り終えた白薔薇も、それに続くかのように道を造っていき――差別だわ、と呟く櫻宵だが、その表情はとても優しいものだった。
「道が分かれば好都合、有難うね。さ、先へ進むわよ」
 咲夜にそっと御礼を言ってから、櫻宵はフレズローゼの鼻にティッシュを詰め抱っこして。彼女もそんな櫻宵が頼もしいようで、ぎゅっと抱きついて頷いた。
「ほんまにこの世界は物語の中にいるみたい……見慣れた血も、なんやいつもと違って見えます」
 不思議な気分、と呟く咲夜――やはり、ダンピールの乙女たる彼女に白薔薇が応えたのだろうが、次こそはあたしを認めさせてやると櫻宵は意気込む。
 ――ああ、微かに響く絢爛の歌声は、フレズローゼのものか。
(「白薔薇を赤に塗り替えて、絶望を希望に塗り替えて――花に惑った君を迎えに行くよ」)

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ユート・エルスフォード
【POW】で判定。

少女疾走事件…か。
ダークセイヴァーでは日常だが放置はできない。

少女の現在位置や誘導している道順がわかればいいが、
本命とフェイクの鳴き声を判別できるだけでも上出来だ。


大雑把な方向、距離にあたりをつけたら……
迷路の攻略の雑な回答…ひらすら 壁に沿って 進む。
流石に庭園破壊はできないからな。

脳筋作戦だというのはわかっているが、
オデッドの痕跡を見つけるまでは虱つぶしだ。
音を抑えつつも庭園を駆け抜けるぞ。


血に染まった白薔薇や人の足跡を見つけたら、
そこからは痕跡を辿る作戦に切り替える。

小夜啼鳥の誘導が理解できていれば、
それと照らし合わせてオデッドまでの距離を詰めよう。


四王天・燦
瑠碧(f04280)と探偵業だ

屋外も得意なつもり。
足跡が増えねーうちに足跡チェック。少女の痕跡は消さないよう配慮。
更に御狐イヤーで定期的に聞き耳で気配を探る。
「エルフイヤーしねーの?」
瑠碧の耳を凝視。
「声こそ違えど鵺みたいに不気味だな…って絶対音感?!」
小夜啼鳥には従うが、一度騙されたらもう宛てにしない。自分の第六感の方が信用できる!

白薔薇があったら足跡追跡…ギミックを解くより早いはず。
「薔薇も眷属かもな…普通は血で反応するわけねーし」
足跡がなければ瑠碧にお任せ

オデットの気配が感じられる範囲まで来たら
符術『力場の生成』で跳んで上昇…上から見下ろすぜ。
発見したら壁を越えて確保。
「獲ったどー!」


泉宮・瑠碧
燦(f04448)と探索

僕は屋外探索は通り一遍だが…燦の方が得意だろう
道順や生垣の様子を覚えるのは得意だから
記憶とマッピングをするか
念の為
色付きの小石を複雑な場所には目印で置いておく

…僕の耳は、通常の人間の耳よりは多少良く聞こえる位だぞ
音階等の判別は付くが

…ああ、小夜啼鳥の声は分かるな
自分も第六感と合わせて考えよう
惑わすなら違う方向から鳴くだろうが
オデットの件がある
より美しく、より多く聞こえる方向か…
たまに数回聞こえる程度の方向は違いそうだな

白薔薇への血は僕がやろう
本来の植物の育成には良くない気はするが…
野営用のナイフで軽く手を切る

燦が飛び越えて行った場合は
位置自体は分かるので地道に合流しよう


クレム・クラウベル
【WIZ】
庭園に誂えた迷路に、小夜啼鳥と薔薇……吸血鬼共の好みそうな趣味だな
生憎少女でもなければ偽装出来る背丈でもない
痕跡を辿り潜り抜けよう

小夜啼鳥の声は己が少女に該当しないので、騙そうとしてくるものと構えて使う
特に赤い薔薇を見つけた場合、そこに出来た近道と小夜啼鳥のズレに気を付け真偽をはかる

道進む他の猟犬の痕跡も使えるものは使おう
血で道を開くものいれば近道借り
強行突破の跡も危険なさそうなら通り抜ける
時に第六感なども頼りに先を急ごう
神頼みではないさ、勘というものだ
途中で猟犬同士鉢合わせたら同行も
情報すり合わせたりお互い得意な分野で道を探す
オデットに追いつくことが重要だ
お互い上手く利用していこう



 ――ある日少女が、ふつりと行方をくらませる。絶望が支配するこの世界では、あくまで日常に過ぎないとユート・エルスフォード(亡霊甲冑・f07769)は分かっているが、これを放置することも出来ないだろう。
「……脳筋作戦だというのはわかっているが、オデットの痕跡を見つけるまでは虱つぶしだ」
 迷路を攻略する確実な方法――即ち、ひたすら壁に沿って進むことを辛抱強く続け、ユートは確実に出口を目指して進んでいく。
「しかし思った程、鳥の声が聞こえないな……」
 どうやら危惧していた小夜啼鳥の声は、他の誰かが引き付けてくれたらしい。此方を惑わしてくるような素振りも無く、ユートが路を進むことに集中していると――その先で、地面に残る痕跡を調べている猟兵と出くわした。
「……生憎、俺は少女でもなければ、偽装出来る背丈でもないものでな」
 そう言って、淡々と今までの経緯を語るクレム・クラウベル(paidir・f03413)は、他の猟兵たちの力も借り、彼らが造り出した白薔薇の通路を辿りつつ此処までやって来たらしい。
「使えるものは使う、が――小夜啼鳥の声は別だ。少女に該当しないのなら、騙そうとしてくるものと判断するのが妥当だろう」
 そうして身を起こしたクレムの胸元では、銀の十字架が月光を受けて輝いている。聖職者か、とその時ユートの貌が翳りを帯びたものの――クレムからは、気休めの救済を口にする態度は見られなかった。
(「むしろ、彼は僕と……」)
 ――それは、どうしたって光に手は届かないと、一度絶望を味わった者のような。しかし、既に達観したユートとは違い、彼からは己の力で生き抜いていく逞しさを感じて眩しくなる。
「庭園に誂えた迷路に、小夜啼鳥と薔薇……吸血鬼共の好みそうな趣味だな」
「あ、ああ……流石に庭園破壊はできないし、このまま進むしかなさそうだ、けど」
 と、クレムの声で思考の海から浮上したユートは、其処で生け垣からひょっこり覗く狐耳を見つけて、思わず瞬きを繰り返した。
「うーん、声こそ違えど鵺みたいに不気味だな……って、瑠碧はエルフイヤーしねーの?」
「……僕の耳は、通常の人間の耳よりは多少良く聞こえる位だぞ。音階等の判別は付くが」
「……って絶対音感?!」
 そんな賑やかなやり取りと共に、がさがさと茂みを掻き分け姿を現したのは、ふたりの少女――勝気な妖狐の娘は四王天・燦(月夜の翼・f04448)と名乗り、相棒の泉宮・瑠碧(月白・f04280)と一緒に庭園迷路に挑んでいたのだと説明をする。
「これでもアタシはシーフだからな、屋外の探索も得意なつもり。……で、こっちの瑠碧が頭脳労働担当だ」
「まあ、道順や生垣の様子を覚えて地図に書き起こしたり、目印を置いて来たりはしているが」
 そう言って瑠碧が取り出したのは、色付きの小石であり――彼女はこれを、迷いやすい場所に設置しつつ進んで来たのだと言った。
「大分迷路も攻略されているみたいで、血に染まった白薔薇も時折見かけたなー」
 その先を進んでみた所、出口へ向かう近道になっていたのだと燦は続け、恐らくオデットに追いつくのもそろそろだろうと胸を張る。
「なら、その赤く染まった薔薇は、オデットの……?」
 生け垣に沿って歩みを進めていったユートが、指差した先――其処には、未だ鮮やかな朱が滲む白薔薇が咲き誇っていて。そう遠くはない場所からは小夜啼鳥の囀りが、誰かを誘うようにうっとりと響いてきた。
「惑わすなら、違う方向から鳴くだろうから……これは当たり、だろうな」
 耳を澄ませて呟く瑠碧に、続く路と鳴き声の方角が同じだと判断したクレムも同意して――ここから先は一緒に行動した方が良いだろうと、一行は其々の得意な分野を担当して、オデットの足取りを追うことになった。
「……オデットに追いつくことが重要だ、お互い上手く利用していこう」
 ――そうして彼女の残した痕跡を辿り、時に分かれ道に行き当たれば、迷うこと無く進む道を決めて。
「神頼みではないさ、勘というものだ」
 そんな呟きと共に、クレムが第六感を頼りに進んでいくと、やがて廃庭園をふらふらと進む、少女の後ろ姿が視界を過ぎる。
「……よし!」
 後は一気に跳躍して、彼女を確保すべし。符術を行使して力場を生成した燦は、ふわりと宙を駆け――そのまま一気に生け垣の壁を越えて、オデットと思しき村娘の元へ降り立った。
「獲ったどー!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

三嶋・友
薔薇の庭園から漂う百合の香り…
これは萌えの予感がするね…!(ぐ)

なんて、ふざけてる場合じゃないか
これは現実、好きにさせとく訳にはいかないよね
ついでに言うと私の好みは妖しい誘惑のお姉様よりは、守ってあげたくなるピュアキャラで…って、だから今は二次元妄想してる場合じゃなかった!三次元三次元!

鳥の声やオデットさんが通った痕跡を頼りに彼女を追うよ
必要なら自分で白薔薇に血も与える

幻影の蝶の召喚も試してみよう
空から迷路を見るのは難しいかもだけど、先行させればオデットさんに近づいた時に鳥に邪魔されにくいかもしれない
出口に近づいたらわざと蝶の姿を気付かせて興味を惹き、オデットさんを足止め、その間に追い付くよ!



(「薔薇の庭園から漂う百合の香り……これは萌えの予感がするね……!」)
 ぐっと拳を固めて己を奮い立たせ、庭園迷路に挑むのは三嶋・友(孤蝶ノ騎士・f00546)。しかし、ふざけている場合ではない――これはあくまでも現実の物語、好きにさせる訳にはいかないと、友は薔薇の痕跡を頼りに闇の廃園を駆けていく。
「で、ついでに言うと私の好みは妖しい誘惑のお姉様よりは、守ってあげたくなるピュアキャラで……って、だから今は二次元妄想してる場合じゃなかった!」
 三次元三次元――と呪文のように繰り返し、翠の通路を進んでいくこと暫し。やがて友の行く先には、猟兵の姿に驚いて飛び出そうとする少女が見えてきて――其処で彼女は、幻影の蝶を召喚して少女の気を惹くことを試みたのだった。
「……さあ、おいで!」
 ――廃庭園をまぼろしのように舞う、仄かに光輝く蝶の群れ。その幻想的な光景に少女の足が止まり、その隙に友は、ふらつく彼女をそっと抱きしめる。
「あなたが、オデットさん?」
「は、はい……」
 此処まで必死になって進んで来たのだろう――少女、オデットの身体は震えていて、擦り傷をこしらえた手足が痛々しい。白薔薇へ助けを乞うた証である血は、ほっそりした指先から今も滴り落ちていた。
「私たちは、あなたを連れ戻しに来たの。この先は危険だから、村へ戻ろう?」
「……う……っ、ごめんなさい……!」
 大粒の涙を零しながら、オデットは心配を掛けていたことに気づいて何度も頭を下げる。深紅の薔薇の噂――その話を聞いてから、薔薇に呼ばれているような気がして、気が付けばふらふらと村を飛び出してしまったこと。
「きっと、深紅の薔薇を見つけると幸せになれるって……そう思ってしまって」
 ――今まで行方をくらました少女たちも、皆、薔薇を見つけて幸せになって、村へ戻って来なかったのだろうと思ったこと。
「それ、に……わたしのお姉ちゃんも、薔薇を探しに行ったまま帰ってこなかった、から」
 もしかしたら、深紅の薔薇が咲く場所で姉に再会出来るかも知れない――そう語り終えたオデットの頭を、友はよしよしと労わるように撫でる。
「……うん、分かった。ここから先は、私たち猟兵の出番だよ。お姉さんの行方も、きっと探してみせるから、オデットさんは村へ戻ってゆっくり休んでいて」
 そう言って、迷路の出口へと足を向ける友へ向かって、オデットは恐る恐る問う。どうして、見ず知らずの自分にここまでしてくれるのか、と。
「だって、その、守ってあげたくなるピュアキャラだし……じゃなかった! 困っている人は放っておけない性分だしね」
 ――それに、さ。この目に届く優しい人達くらいは守りたいって、そう思うんだよ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『彷徨う魂』

POW   :    持ち前のタフネスや生命力で呪詛に耐え、命の力を見せつける。

SPD   :    魂を縛り付けている何かを見つけ出し、それを示したり破壊することで魂を解き放つ。

WIZ   :    魂の精神に寄り添い、祈りや聖句などで浄化する。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 深紅の薔薇に誘われた少女――オデットを無事保護し、村へと送り届けた後。猟兵たちは庭園迷路を抜けた先、其処に聳える朽ちた霊廟へと足を踏み入れた。
 確か、噂ではこの何処かに深紅の薔薇が咲いている、とのことだが――。
『あ、あああ……』
 直後、蔦の絡まる柱の陰から、苔むした石段の隅から――次々と半透明の人影が姿を現し、此方へ向かって手を伸ばしてくる。この彷徨う魂たちは恐らく、オブリビオンに肉体を奪われ、無残にも亡くなった少女たちの成れの果てか。
『さむい、くるしい、たすけて、たすけてたすけて』
 ――既に自我も消えかけ、只々死の間際に抱いた無念と苦しみを訴え続ける魂たち。その想いは容易く生者への憎しみに変わり、溺れるものが必死に縋りつくようにして、此方を死の世界へと引き摺り込んでいく。

 ――力任せで、彼女たちを排除出来るものでも無い。生命の力で呪詛に耐えるか。もしくは魂に寄り添い、浄化を行うか。彼女らを縛り付けているものを見つけられたのなら、その魂を解き放つことも可能だろう。
 嗚呼、この地の何処かに咲くと言う、深紅の薔薇があると言うのなら、或いは――。
楠瀬・亜夜
(……チッ!これはまた随分と惨い事で!)

凄惨な風景は何度か目にした事はありますが
何度見たところで慣れる事は……いや、慣れたくもありません
どんな物語も終わりは訪れる、この悲劇もまた然り……
終わらせましょう

【SPD】
【shadow hearts】で影蝙蝠のシャーちゃんに霊廟の空中から
深紅の薔薇を探して貰い、私はその空中から見えない
物陰などを【第六感】【世界知識】を駆使して探索します

……待って、この彼女達の行動原理が元々、死の間際に抱いた無念で
あるならば本質は変わらない筈……
自我が少しでも残っているなら生前と同じく、死しても尚
深紅の薔薇に縋る者もいるのでは?
彼女らの動きにも注目してみましょうか。


フィリア・セイアッド
【WIZ】を選択
オデットさんが無事だったことに一安心
でも 霊廟で現れた人影に口元に手を当てて
ーこんなに沢山の人たちが犠牲に?
もっと早く気づけていたら もっと早くこの場所に来ていたら
そんな思いを首を振って追い払い 僅かに瞳を伏せる
悲しむのは後 今はできることをしなければ

伸ばされる少女の手を包むようにそっと取って
どうか安らかにと願いと祈りをこめて「シンフォニック・キュア」を歌う
苦しかったね 寂しかったね
もう辛い想いはしなくてもいい
子守歌を歌ってあげる
天の花園で今度こそ 綺麗な花を見つけて欲しい
彼女たちを縛る何かがあるのなら わたしの歌で少しでもそれを消せたら
「破魔」の力も歌に乗せて


リーヴァルディ・カーライル
…ん。彼女達の呪詛に耐えて消耗する事は非効率なんて思う者が、
祈りで彼女達を救える訳がない
…だから私は、私なりの流儀で魂の安息を得られるようにやってみる

【吸血鬼狩りの業】を応用し踏破した迷宮の趣向から、
真紅の薔薇が咲いている場所を予測し探索

…ここまで趣向を凝らして真紅の薔薇が無いなんて片手落ち、
この吸血鬼がするはずがない


事前に防具を改造
生命力を微弱に吸収し、魔力を溜め第六感を強化し、
些細な存在感も見逃さない見切りの呪詛を付与

…礼装選択、探索者
待っていて。今、貴女達が求めた花を持ってくるから…

薔薇を見つけたら、礼儀作法に則り、少女達に弔いの言葉を送る
…もう苦しむ必要はない。眠りなさい、安らかに…



 小夜啼鳥と白薔薇が誘う庭園迷路を、必死の想いでくぐり抜けた先――其処に聳えていたのは、朽ち果てて廃墟と化した霊廟だった。
 ――少女たちは、絶望しただろうか。それとも深紅の薔薇を求めて、懸命に足掻いただろうか。けれど、この地に自分たちもまた葬られることになろうとは、夢にも思わなかった筈だ。
「オデットさんが無事だったのは良かったけど……こんなに沢山の人たちが犠牲に?」
 暗がりのあちこちから姿を浮かび上がらせる、彷徨える魂――少女たちの成れの果てを目にしたフィリア・セイアッド(白花の翼・f05316)は、思わず口元に手を当てて息を呑んだ。
(「……チッ! これはまた随分と惨い事で!」)
 震えるフィリアを庇うようにして立つ楠瀬・亜夜(追憶の断片・f03907)もまた、目の前の凄惨な光景に胸を痛めており、無理はするなと彼女に目配せする。
 ――亜夜とて、太古の邪神が暗躍する世界で、狂気じみた光景は何度も目にしてきた。が、何度見たところで慣れる事は――否、慣れたくもないとかぶりを振る。
(「もっと早く気づけていたら……ううん、もっと早くこの場所に来ていたら……」)
 それでもフィリアは、非情な現実から目を背けることをしなかった。微かに抱いた後悔を振り払い、そっと瞳を伏せた後で、オラトリオの少女は毅然と死の気配に立ち向かう。
「悲しむのは後。……今はできることをしなければ」
「……ん。私は、私なりの流儀で魂の安息を得られるようにやってみる」
 聖なる光を纏うフィリアに向けて、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はこくりとちいさく頷くと、此方へ手を伸ばしてくる亡霊を躱して一気に駆けだした。
(「彼女達の呪詛に耐えて、消耗する事は非効率なんて思う者が、祈りで彼女達を救える訳がない」)
 ――そう、リーヴァルディに出来るのは、吸血鬼狩りの業を駆使して敵の動向を予測、少女たちの魂を解き放つ術を見つけることだ。
「どんな物語も終わりは訪れる、この悲劇もまた然り……終わらせましょう」
 そして亜夜もまた、その鍵である深紅の薔薇を探し出すべく、影蝙蝠のシャーちゃんを召喚して空へ解き放った。霊廟の上空から、少しでも手がかりを得られれば――勿論、物陰など目につきにくい場所は、亜夜自身が探索を行おうと決めている。
「……それに、ここまで趣向を凝らして真紅の薔薇が無いなんて片手落ち、この吸血鬼がするはずがない」
 ――微かな月明りのみが、砕け散った硝子窓から静かに差し込む、モノクロームの海に沈んだ霊廟。其処に散らばる瓦礫の山や、横倒しになった柱を一息に飛び越えて、リーヴァルディが求めるのは鮮血の如く鮮やかな薔薇の花だ。
(「……礼装選択、探索者。待っていて。今、貴女達が求めた花を持ってくるから……」)
 ――纏う礼装に刻まれたのは、夜と闇を終わらせる黎明の誓い。第六感を研ぎ澄ませ、些細な存在感も見逃すまいとするリーヴァルディだったが――彷徨える魂たちの怨嗟の聲が、ノイズのように空間を過ぎる。
(「集中、が……!」)
 その干渉は亜夜にも及び、眷属の使役が途切れそうになっていて。しかし其処で、春の陽だまりのような歌声が、凍てつく霊廟に響き渡った。
「苦しかったね、寂しかったね。もう辛い想いはしなくてもいい、子守歌を歌ってあげる――」
 癒しの歌を懸命に紡ぐフィリアは、どうか安らかにとの願いと祈りをこめて、縋りつく亡霊たちの浄化を試みている。彼女たちを縛る何かがあるのなら、わたしの歌で少しでもそれを消せたら――此方へ伸ばされる死者の手も笑顔で受け止めて、逆にその手を包むようにして。
「天の花園で今度こそ、綺麗な花を見つけて欲しい、から……」
 例えその身が呪詛で苛まれようと、フィリアは笑顔を絶やさずに――その射干玉の髪を飾る、白い茉莉花がうつくしく咲き誇る。
「この彼女達の行動原理が元々、死の間際に抱いた無念であるならば、本質は変わらない筈……」
 歌に込められた破魔の力もあってか、彷徨える魂の干渉が和らいだ瞬間、亜夜は霊廟の奥――柩が並ぶ空間へと駆け出した。
「もし、自我が少しでも残っているなら生前と同じく、死しても尚、深紅の薔薇に縋る者もいるのでは?」
 ――亡霊たちが行きたがっている場所は、其処なのだろうと何となく思ったのだ。しかし彼女たちの視界は闇に閉ざされ、ただ闇雲に辺りを彷徨っているだけ。
(「目を閉じてしか見えないものも、あるのかも知れない……でも」)
 きっと少女たちは縋りたいのに、薔薇を見つけられない――見えないのだ。そうして、柩の上にぽつんと咲く深紅の薔薇を見つけたリーヴァルディは、礼儀作法に則り少女達に弔いの言葉を送る。
「……もう苦しむ必要はない。眠りなさい、安らかに……」
 彼女の指先が、薔薇の花弁に触れたその時――彷徨える魂がひとつ、永遠の苦しみから解き放たれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

萌庭・優樹
みんなもオデットさんと同じよに
"幸せになれると思った"んだろうか
おれが、今のたましい達に
大丈夫です、幸せになれますよ、と言ってみたって
救えた気がしない
おれにはお祈りはできないし、ごまかすのもヘタだから

それに、無理やり"たましい"というヤツを
壊したくはありません

深紅の薔薇を見つけることで
彼女達が少しでも報われるなら
探します!


真の姿、解いてみるのは初めて
……でも、おれは、いつだっておれだ
この形でなら、もっとお役に立てるはず!
ぐ、ぐ、と手を結んで開いたら
もう違和感とはさよなら

無さそうなとこは潔く諦める【見切り】と
こっちに咲いてるかも、って【世界知識】は役に立つかなぁ
見つけられたら持ってってあげよう


フレズローゼ・クォレクロニカ
🍓櫻宵(f02768)と
アドリブ等歓迎

おばけぇぇ(櫻宵にしがみつく

怖がっちゃだめ
ボク!
ボクは彼女達を救うんだ
寒くて苦しくて寂しいのは嫌だよね
ママやパパや大好きな人のところに帰りたいよね
ボクもママやパパに会いたいし櫻宵と離れ離れになったら嫌だもの

聖なる力なんてボクにはないけど
憐憫でも同情でもなく彼女達の魂によりそって、黎明を与えられる夜明けの歌を歌うよ(シンフォニックキュア
櫻宵が破魔を宿してくれたなら百人力
浄化されて帰りたい場所に帰っておくれ

ミコトに乗って深紅の薔薇を探すんだ
吸血鬼の嘘?罠かもしれないけれど
深紅の薔薇の絵ならばいくらでも描いたげる!

ボクが描きたいのは笑顔、薔薇のように美しい、ね


誘名・櫻宵
🌸フレズローゼ(f01174)と
アドリブ等歓迎

可愛い子達がこんな姿になって…お肌も髪もボロボロじゃない
可哀想に
お姉さんで良ければ話し相手にはなってあげられるけれど、とにかく苦しみから解放しなきゃいけないわね
術は不得手といえどあたしは陰陽師、破魔の力で祓うことはできるけれど
あら、フレズが癒しの歌を?
いいわね!あたしも手伝うわ!
あなたの歌に破魔をのせて響かせて
それが癒しとなればいいのだけど

彼女達を縛る何か
そうね深紅の薔薇かしら
【妖猫招来】でミコトを召喚し2人で乗って勘を働かせて場所を探しだすわ
近くに敵もいそうね
見つけたなら願うのは

彼女達を解放してあげて頂戴

この子達には呪詛より笑顔が1番似合うもの



「おばけぇぇ!!」
 しぃんと静まり返った真夜中の霊廟に、フレズローゼ・クォレクロニカ(夜明けの国のクォレジーナ・f01174)の悲鳴が響き渡った。色彩豊かなその声は、冷たく色褪せた霊廟に光を齎すようであったけれど――半透明の亡霊に迫られたフレズローゼは、咄嗟に誘名・櫻宵(誘七屠桜・f02768)へしがみ付きぷるぷる震えている。
「あらあら、可愛い子達がこんな姿になって……お肌も髪もボロボロじゃない、可哀想に」
 と、一方の櫻宵と言えば、微妙にずれた心配をしているようで。お姉さんで良ければ、話し相手にはなってあげられるけれど――等と呟いて、頬に手を当てる仕草は大変艶っぽいのだが、彼はれっきとした男性、所謂オネェなのだった。
「でもまぁ、とにかく苦しみから解放しなきゃいけないわね」
「う、うん……怖がっちゃだめ、ボク! ボクは彼女達を救うんだ!」
 自身を奮い立たせ、櫻宵の肩越しに彷徨う魂を見つめるフレズローゼは、やっぱり寒くて苦しくて寂しいのは嫌だよね、と頷く。
「……ママやパパや、大好きな人のところに帰りたいよね。ボクもママやパパに会いたいし、櫻宵と離れ離れになったら嫌だもの」
 そんな彼女の愛らしさにきゅんとなって、思わず抱きしめ返してしまう櫻宵だったが――いざ亡霊に対処するとなると、どうするべきかと考え込んだ。
「術は不得手といえどあたしは陰陽師、破魔の力で祓うことはできるけれど……うーん」
「……みんなも、オデットさんと同じよに『幸せになれると思った』んだろうか」
 そんな中、ぽつりと波紋のように疑問を投げ掛けたのは、萌庭・優樹(はるごころ・f00028)。何処までも真っ直ぐな瞳で彷徨う魂を見つめる彼女は、真剣に考えたからこそ、気休めを口には出来ないと結論づけたようだった。
「おれが、今のたましい達に……大丈夫です、幸せになれますよ、と言ってみたって、救えた気がしない」
 ――おれにはお祈りはできないし、ごまかすのもヘタだから。それに、無理やり『たましい』というヤツを壊したくはないのだ、と優樹は言う。
「だから、深紅の薔薇を見つけることで彼女達が少しでも報われるなら……探してみようと思います!」
「そうね……あたし達も一緒に探してみましょうか」
 そうして、手分けして霊廟の中を探すことにした一行は先ず、迫る亡霊を止める必要があると判断した。聖なる力はないけれど、憐憫でも同情でもなく彼女達の魂に寄り添いたいと願うフレズローゼが、歌を響かせ癒しを齎せば――櫻宵は破魔の力を乗せて、浄化の助けになればと追従する。
(「どうか、帰りたい場所に帰れるように……もう少し待ってて」)
 黎明を呼ぶ夜明けの歌が辺りに響いた後、亡霊たちは心なしか穏やかな様子を取り戻したように見えて。そのまま櫻宵は、妖猫招来で有翼の虎猫――ミコトを召喚すると、フレズローゼと共に騎乗し、軽やかに霊廟を駆けて行った。
「深紅の薔薇……吸血鬼の嘘、じゃないよね? 罠かもしれないけれど」
 それでも薔薇の絵なら幾らでも描いてあげると言って、フレズローゼの魔法の絵具がきらきらと宙を舞う。彼女が描きたいのは笑顔――それも、薔薇のように美しい笑顔だから。見る間に鮮やかな色彩で彩られていく霊廟を目にしつつ、優樹は真の姿を解いてみることを決意していた。
(「初めてのこと、だけど……でも、おれは、いつだっておれだ」)
 この形でなら、もっと役に立てる筈――ぐ、ぐ、と手を結んで開いたら、もう違和感とはさよならだ。冴え渡る五感で捉える世界は、さっきまでの様子とはまるで違って見える。
(「灰色の世界で、鮮やかに咲く深紅……その存在を、息づかいまでも、感じ取れるように」)
 森の中を何処までも駆けていく、そんな気持ちで優樹は霊廟内部を風のように踏破していき――やがて瓦礫の隙間から覗く、ちいさな薔薇を見つけて合図を送った。
「あった、これ……!」
 ――奇跡のようなその一輪を目の前に、櫻宵は彷徨う少女たちを解放してあげて、と願いを口にする。
(「だってこの子達には、呪詛より笑顔が一番似合うもの」)

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

桜雨・カイ
似た光景を知っています。
…あの人(主)が家族の亡骸を前に独り叫ぶ姿を見ていました

あの時自分は人形で、苦しんでいる彼に何もしてやれなかった
だからヤドリガミとして体と声を持つ、今ならば。

聞こえますか?私はここにいますよ
今まで辛かったですでしょう、迎えにきたので一緒に帰りましょう
優しく声をかけてそっと触れます。同時にすがりつく彼女達からの呪詛をこらえる
ここで引きずり込まれたら彼女たちを助けられない

たすけて、ですか。どうしたら助けられますか?
何か縛り付けてるものがあるのなら教えて下さい
教わった方法を行い、彼女達の魂を解放します


ウインド・ノーワルド
寒い、苦しい、助けて……嗚呼、そう言われたら助けねーわけにはいかねぇんですよ
悪いですが、一旦先を探るのは皆さんに任せます。私は彼女達を救います
私の生き方と癒し手の意地にかけて

とはいえ、医術は霊を救う力を持ちえない
だからその心だけでも救いましょう
命へ縋りたいならばこちらへ、苦しいでしょう、恨めしいでしょう。その恨みは全て私が引き受けます
ここからは意地です。そんな彼女達の手から耐えながら、それでも苦しむ顔は向けずに、笑顔を作って歌いましょう
【シンフォニック・キュア】。歌唱の心得を合わせて、即興で作った彼女達へ向ける歌を
世界は違えど、子守歌を…ええ、だから苦しまず
笑ってゆっくり、眠ってください…ね?


三嶋・友
深紅の薔薇を見つけると幸せになれる…そんな噂話でも、この常闇の世界では縋りたくなるような希望、なんだろうね
そんな純粋な少女達の想いを、利用し弄ぶなんて

彼女にはああ言ったけど、黒衣の性質を考えればもうお姉さんの肉体は奪われてしまっているのかな

オデットを知ってる子はいる?

探すって、約束をしたから
もしもお姉さんの魂もいるのなら、せめて言葉を聞いておきたい
いないなら、希望をもって尚更先へ進まなくちゃね!

深紅の薔薇を探してみよう
幸せどころか、見つけた末に体を奪われてしまったのだろうけど
貴女達がそれを求めるのなら、私が代わりに見つけてあげる
それが魂を縛るなら、きっと散らしてみせるから
――どうか、安らかに


東雲・咲夜
ああ…聴こえる、痛くて哀しい魂の叫び
うちとおんなじくらい…もしくはそれよりも若い少女たち
愛する人、愛してくれはる人たちがいた
明日が当然のように続くと思うとったはずやのに…
あかん……涙を堪えきれへん

深紅の薔薇を探すんはおまかせして
うちは神使の白狐を召喚しましょう
お願い…この子たちを安らぎに導く為、力を貸して

指を組み浄化への【祈り】を歌に乗せ
デバイスの蝶たちもつこてね
うちの高音と白狐の低音をのびやかに調和させ響かせます
苦しかった、悔しかったね
黒く染まる心を抑えきれない自分すら拒んで…
せやけどもう大丈夫
来世はもっと、幸せになろな
―そんな想いを籠めた曲

浄化後かいらしい被布姿の眷属を撫で褒めてあげましょ



(「ああ……聴こえる、痛くて哀しい魂の叫び」)
 哀しいまでに透き通り、輪郭すら朧な亡霊たちと向き合った東雲・咲夜(桜歌の巫女・f00865)は、彼女たちが今なお抱く想いに心を痛めていた。
 ――くるしくて、かなしくて。さみしくて、つめたくて。だれかにたすけてほしい、このくるしみをわかってほしい。
(「あかん……うちも、涙が」)
 そう訴えながら必死に手を伸ばす魂たちは、恐らく咲夜と同じくらい――もしくは、それよりも若い少女たちだったのだろう。
「愛する人、愛してくれはる人たちがいた。明日が当然のように続くと、そう思うとったはずやのに……」
 そんな、闇の中で咲く花のように慎ましく生きていた少女の命が、無残に手折られたことを思えば、咲夜の双眸からはとめどなく涙が溢れた。
「深紅の薔薇を見つけると幸せになれる……そんな噂話でも、この常闇の世界では縋りたくなるような希望、なんだろうね……」
 ――けれど、その希望すらも新たな絶望を生み出す糧となる。絶望の世界とはよく言ったものだと、三嶋・友(孤蝶ノ騎士・f00546)は溜息を吐いた。
「ましてや、そんな純粋な少女達の想いを、利用し弄ぶなんて」
 自分たちに任せて、とオデットには約束したけれど、この様子では彼女の姉は――吸血鬼の黒衣の性質を考えると、既に肉体を奪われていてもおかしくはない。それでも、ウインド・ノーワルド(自称ドクター・f09121)は笑顔を忘れることをしなかった。眼鏡をくいっと押し上げると白衣を翻して、彼女は彷徨える魂たちを真っ直ぐに見据える。
「寒い、苦しい、助けて……嗚呼、そう言われたら助けねーわけにはいかねぇんですよ」
「ええ、……私は、似た光景を知っています」
 己と瓜二つの人形を操りながら、ぽつりと呟いたのは桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)。彼は嘗て、己の主が家族の亡骸を前に独り、叫ぶ姿を見ていた――見ていることしか、出来なかった。あの時、カイは只の人形で、苦しんでいる彼に何もしてやれなかった、けれど。
(「ヤドリガミとして体と声を持つ、今ならば」)
 ――決意と共に一歩を踏み出すカイに、静かに続くのはウインドだった。自身の生き方と癒し手の意地にかけて、彷徨う魂をこのままにしてはおけなかったから。
「……悪いですが、一旦先を探るのは皆さんに任せます。私は彼女達を救います」
「うん、うちも……友ちゃんに任せるんよ」
 神使の白狐――狐耳を持つ愛らしい幼女を召喚した咲夜も、深紅の薔薇を見つけることを仲間に託し、魂に寄り添うことを決めて。責任重大だねと苦笑する友は、生命のぬくもりが奪われた霊廟を、希望を持って進むべく駆け出していった。
(「探すって、約束をしたから。……もしもお姉さんの魂もいるのなら、せめて言葉を聞いておきたい」)
 ――けれど、少女の亡霊は余りにも儚く、生前の姿を其処へ見出すには難しい。呻き、啜り泣き、時に怨嗟の聲を上げる彼女たちへ、先ずはカイが丁寧な口調で言葉を投げかける。
「たすけて、ですか。どうしたら助けられますか?」
 何か縛り付けているものがあるのなら教えて下さい、と乞う彼だったが、亡霊から返ってくるのは意味を成さない聲ばかりだ。元々、肉体をオブリビオンに乗っ取られ、自我も奪われた成れの果てだ――言葉による対話は望めないのかも知れない。
「……聞こえますか? 私はここにいますよ」
 ならば、自身の想いを――彼女たちを救いたいと言う祈りを、懸命に伝える他ないのだろう。優しく声を掛けて手を伸ばすカイの元へ、亡霊の腕が呪詛を纏って縋りついてくるものの、ここで引きずり込まれたら彼女たちを助けられないのだ。
「今まで辛かったでしょう、迎えにきたので一緒に帰りましょうね」
 ――人の為に己は在るのだと頷く、ヤドリガミの青年が魂に寄り添う中で、ウインドもここからは意地だとばかりに笑顔を作り、歌をうたう。
(「……医術は霊を救う力を持ちえない。だからその心だけでも、救いましょう」)
(「お願い……この子たちを安らぎに導く為、力を貸して」)
 指を組み、浄化の祈りを清冽な歌声に乗せる咲夜は、白狐と共にのびやかに。彼女の操る機械仕掛けの蝶たちが、その調和する歌を――其処に込められた想いごと、風に乗せて空へと羽ばたかせていった。
「命へ縋りたいならば、こちらへ。苦しいでしょう、恨めしいでしょう……その恨みは全て私が引き受けます」
 そう――呪詛に蝕まれても、苦しむ顔を向けはすまい。少女たちへ向けた即興歌、それは世界は違えども、心からの安寧を願うウインドの子守歌だ。咲夜もまた魂の苦しみを少しでも癒そうと、大丈夫だと言い聞かせるように歌い続ける。
「苦しかった、悔しかったね。黒く染まる心を抑えきれない自分すら拒んで……せやけどもう大丈夫」
「……ええ、苦しまず笑ってゆっくり、眠ってください……ね?」
 ――ああ、死者が涙を流していた。長い長い孤独と苦しみの果てに、魂に寄り添うものが現れたのだ。その想いが、この地に縛る鎖から彼女たちを解き放ち――安らぎを得た魂は、静かに天へと昇っていく。
「深紅の薔薇……貴女達がそれを求めるのなら、私が代わりに見つけてあげる。それが魂を縛るなら、きっと散らしてみせるから」
 どうか安らかに、と友が窓枠に揺れる薔薇の花に触れた時、亡霊の啜り泣く声が不意に止んだ。ねぇ、と――彼女たちを見送る咲夜は、空に向かって花のように微笑んで囁く。
(「来世はもっと、幸せになろな」)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
黒鳥に姿を奪われた白鳥か……全く哀れなことよ。
その恨みも、悲嘆も、私は否定しない。
来い。貴様らの呪詛の全て、私が受け止めてやる。

亡霊どもには手を差し伸べる。この身も、死霊術士としての力も、こういうのを受け止めるためにあるものであろう。
生者も死者も、互いに見えねば、余計に苦むこともなかったろうになァ。
呪わば呪え。恨まば恨め。その思い、全てこの身に宿してやろう。
貴様らの憎しみの全て――私が持っていく。貴様らの呪いで怨敵を討ってやる。
……だからもう、穏やかに眠るが良い。恨みと絶望しかない終わりは、苦しいであろう?


ヘンリエッタ・モリアーティ
【WIZ】
彼らに――【第六感】で共感します。少し、精神的には削られるかもしれないけど……。【呪詛耐性】がある、私なら、聞き届けてあげられるかもしれない。
【親愛なる右腕】で、モランには引き続き出てもらうけど――あなたはどうか深紅の薔薇を探してきて。私で使えないときは、誰かに渡してもいい。
怖かった、ですよね、寒い、よね。助けてあげられなくて、ごめんなさい。でも、教えて。どうして、こんなことになったのか、何に縛られているのか。『気が済むまで』私に、聞かせて。それで、――あなたたちを救いたい。


クレム・クラウベル
【WIZ】
……一体どれだけの少女を犠牲にしたのか
彷徨い続けてもう疲れただろう
眠りへ導こう
神へは祈らずとも、他者の為に祈るのなら得意だ

灯火よ、どうか導きを
あたたかな光の下
二度と凍える事のない様に
安息の地にて安らかなる眠りのあらんことを

信仰は伴わずとも、読み上げた祈祷文は事実となる
半端であるとしても捧ぐ事にきっと意味がある
灯す火は焼き払う為ではなく、標の為に

嘆きは、憎しみは聞き遂げよう
……その身体を奪った元凶は必ず絶つ
憂いは全て此処に置いていけば良い
往く道に迷わぬ様に

触れられぬ手に手を重ねて
一つ一つ魂を見送り、全てが消えるまで見届ける
……おやすみ
どうか永遠に、穏やかな眠りを


イア・エエングラ
冬の寒空に一人きりでは、きっと凍えてしまうもの
誰も呼んでくれないのはさみしかろうな
誰も手を取ってくれないのはかなしいね
もう、帰る場所さえ、忘れてしまったかしら

そんなら僕が、あなたを呼ぶよ
その手を取るからこちらにおいで
ゆきたい場所は、思い出せそうかしら
探していたものは、まだ憶えて、いるかしら
いつもの子らを招くよに、僕で良ければお傍にあろうな

そこへおちても、良いけれど
それでは助けて、あげられないね
どうかどうかもう泣かないで
冬の夢は終わりにしましょう
手を伸べるのはどちらの、ためだろな
先ほどいただいた星さま、さしあげましょな
本当は薔薇が欲しかったんだろからごめんなさいね



 生命の鼓動もとうに絶えて、ただ屍を晒しているかのような――大獣の骸じみた霊廟へ、クレム・クラウベル(paidir・f03413)達は足を踏み入れる。
「……一体どれだけの少女を犠牲にしたのか」
 啜り泣く亡霊の聲は、凍てついた北風を思わせて――彼女たちもきっと、死の間際に神へ助けを乞うたのだろうと、クレムには確信出来た。そして恐らくは、救いを得られぬままに命を手折られたであろうことも。
「黒鳥に姿を奪われた白鳥か……全く哀れなことよ」
 呪詛による穢れが、足元からじわじわと忍び寄ってくる様子にも眉一つ動かさず、ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(世界竜・f01811)は静かに吐息を零す。
 ――死の間際に白鳥は、最もうつくしい歌声を響かせるのだと言うが。斯くも憎悪と絶望に満ちた絶唱が、至高の歌であろう筈がない。
「……冬の寒空に一人きりでは、きっと凍えてしまうもの。誰も呼んでくれないのはさみしかろうな」
 蒼褪めた星が尾を曳く夜の裾を揺らし、美しく透き通る手を伸ばすのは、イア・エエングラ(フラクチュア・f01543)。誰も手を取ってくれないのは、かなしいね――水底から浮かび上がる泡沫の声が、死者の魂に寄り添おうとする中で、ヘンリエッタ・モリアーティ(獣の夢・f07026)も深呼吸をひとつして決意を固めた。
「彼女たちと、共感を――少し、精神的には削られるかもしれないけど……」
 親愛なる右腕によって呼び出したモランに、深紅の薔薇を探してくれるよう託しつつ、ヘンリエッタは呪詛を撒き散らす魂たちの元へ飛び込んでいく。
(「怖かった、ですよね、寒い、よね。助けてあげられなくて、ごめんなさい……でも」)
 ぶわり、と――彼女の目の前に溢れ出したのは、質量すら感じさせる昏く淀んだ闇の胞衣。その身に備わった呪詛の耐性で必死に自我を保とうとするけれど、次々に押し寄せる死の間際の絶叫は、ヘンリエッタの人格までもずたずたに引き裂こうと反響した。
(「……教えて。どうして、こんなことになったのか、何に縛られているのか」)
 ――少女たちの想いを、聞き届けてあげたい。それこそ『気が済むまで』自分に、聞かせて欲しかった。しかし――。
「……それ以上は危険だ、下がれ!」
 直後、すべてが闇に閉ざされそうになったヘンリエッタの背を、ニルズヘッグが強引に掴んで此岸へと引き戻す。水際で自我を保ったヘンリエッタは、ぼさぼさになったくせっ毛を掻き回しながら、ただ『わからなかった』とだけ呟いた。
「死の間際に抱いた感情が、余りに強すぎて……ただ、それだけしか伝わって来ませんでした」
「そう……もう、帰る場所さえ、忘れてしまったかしら」
 肌をも焦がすような激情を受け止めようと、死霊使いの禁呪を紡ぐイアは、それなら――と微睡むようにうたを響かせる。
「そんなら僕が、あなたを呼ぶよ。……その手を取るからこちらにおいで」
「ああ……その恨みも、悲嘆も、私は否定しない。来い。貴様らの呪詛の全て、私が受け止めてやる」
 そしてニルズヘッグもまた、縋りつこうとする亡霊たちに手を伸ばし、呪詛に耐えるべく命の灯を燃やした。きっとこの身も、死霊術士としての力も――こういうものを受け止めるために在るのだと思ったから。
「……生者も死者も、互いに見えねば、余計に苦むこともなかったろうになァ。呪わば呪え。恨まば恨め。その思い、全てこの身に宿してやろう」
 そんな彼の想いに唱和するかのように、淀んだ霊廟へ清らかな聖句が響き渡っていく。神へは祈らずとも、他者の為に祈るのなら得意だ――呟くクレムが心を傾けるのは、犠牲となった少女たちと、身を挺してでも彼女らを救おうとする仲間たちの為に。
(「灯火よ、どうか導きを。あたたかな光の下、二度と凍える事のない様に。安息の地にて、安らかなる眠りのあらんことを――」)
 ――信仰は伴わずとも、読み上げた祈祷文は事実となる。半端であるとしても、捧ぐ事にきっと意味があるのだとクレムは信じている。
「……灯す火は焼き払う為ではなく、標の為に」
「ふむ、心強いことよ。そうだ、貴様らの憎しみの全て――私が持っていく。貴様らの呪いで怨敵を討ってやる」
 だからもう穏やかに眠るが良いと、呪いの忌み子と呼ばれ続けた青年は続けた。恨みと絶望しかない終わりは、苦しいだろう――自分が代わりに、愛する世界の姿を見せてやるから、と。
「嘆きは、憎しみは聞き遂げよう。……その身体を奪った元凶は必ず絶つ。憂いは全て此処に置いていけば良い」
 往く道に迷わぬ様に、触れられぬ手に手を重ねて彷徨う魂を見送るクレムの元へ、ゆらゆらと揺れる揺り籠のようなイアの囁きが祈りとなって降り注ぐ。
(「ゆきたい場所は、思い出せそうかしら。探していたものは、まだ憶えて、いるかしら」)
 いつもの子らを招くよに、僕で良ければお傍にあろうなと、死霊にすらふんわりとした微笑みを返してイアは唇を開いた。
(「どうかどうかもう泣かないで、冬の夢は終わりにしましょう」)
 ――手を伸べるのは、どちらのため? 開いた手の平の中で煌めくのは、庭園迷路で仲間から分けて貰った、金平糖のお星さま。
「彷徨い続けてもう疲れただろう。眠りへ導こう」
 あなたたちを救いたいと願うヘンリエッタと共に、クレムは浄化されていく魂を――全てが消えゆくまで、一つ一つ見届けていった。
(「……おやすみ。どうか永遠に、穏やかな眠りを」)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ノエマ・アーベント
【SPD】

深紅の薔薇は血の色の薔薇
純真な白い乙女心を誑かし、悪意で穢して命を奪うというのは重罪ね

薔薇に魅了され、命を落とした哀れな娘の魂たちは、その犠牲者というわけね
死んでも死に切れず、留まり続ける想いは醜く歪み、生ある者に憎悪を向ける
そんな彼女たちを縛り付けているものを、【第六感】と【失せ物探し】で調べてみるわ
死の世界に誘われるがまま、深紅の薔薇を追い求め、血の痕に沿って辿り着いた先
ギロチンで血染めの薔薇を刈り取って、【封印を解く】のを試みる

罪を断ち切る刃にて、せめて魂だけでも安らかなれと――
少女たちが視た深紅の薔薇の幻想は、これにてもうお終い
後は諸悪の根源を討ち取ることで、彼女たちへの餞に


海月・びいどろ
SPD

オデット、無事だったんだね
…よかった

こころに寄り添う、には
今のボクでは足りないから…
キミたちが、さむくないように
絡んだイバラを解かなくちゃ

硝子海月たちといっしょに情報収集を続けるよ
また、あかい薔薇を探しに行こう
見つけたら、教えてね
それから…オデットの、お姉さん
女の子を、いっしょに探すの
前にも誰かが通ったなら、あしあとは…?

うつくしい薔薇で誘い込むなら
たいせつなものは、奥の奥?
隠れるように咲いていたり?
失せ物探しで念入りに、彼女たちの失くしものを見つけよう
他の猟兵たちに情報を共有、協力するよ

あかい薔薇を見つけたら、硝子海月のジェリーにお願い
だれの指も傷付かないように、その子は摘んでしまって


ニコラス・エスクード
無念が故に生者を憎むか。
嗚呼、致し方ない話だろう。
間に合わなかったのだから。
誘われる前に、捉えられる前に。
無念をも、苦しみをも、抱かせる前に。

故に受け止めねばならん。
この魂達は我が手から零れ落ちた者達だ。
彼女達の守護者たり得なかった証を、
この身にて受けねばならぬ。
それが俺の有り様なのだから。

そして此の痛みを、無念を、苦しみを。
全てを報復へと変えてやろう。
全てを復讐へと転じてやろう。
受け止めた全てを、必ずだ。

我が覚悟に一片の迷いもなく。
故に彼女らの呪詛をこの身にて受け入れよう。
生命に陰り無く、思いは新たに。
さぁ、いざ報復へ。



 深紅の薔薇は、血の色の薔薇――黄昏色の瞳に死者の姿を映し、嘗て幾多の咎人を葬ってきたノエマ・アーベント(黄昏刻のカーネリア・f00927)は、感情を窺わせない声でぽつりと呟く。
「……純真な白い乙女心を誑かし、悪意で穢して命を奪うというのは重罪ね」
 この地に彷徨う魂たちは、薔薇に魅了され命を落とした哀れな娘の成れの果て。死んでも死に切れぬ犠牲者――その留まり続ける想いは醜く歪み、生ある者に憎悪を向けることとなる。
 ――成程、絶望を生み出す世界として良く考えられていると、刑具の鎖を握りしめてノエマは思う。けれど、命を絶つ道具として造られた自分が、彼女たちを縛り付けるものを断つことが出来るのであれば。
「無念が故に生者を憎むか。嗚呼、致し方ない話だろう」
 そして、ヤドリガミたる乙女の隣、黒鉄の具足を鳴らして死霊と対峙するのもまた、守護者の誇りが魂を宿した存在――ニコラス・エスクード(黒獅士・f02286)であった。
(「我らは、間に合わなかったのだから」)
 ――少女たちが誘われる前に、捕らえられる前に。彼女らに無念をも、苦しみをも、抱かせる前に。恐らくニコラスは、贖罪に生きる己の生涯を其処に重ねているのかも知れない。
「それでも、オデットは無事だったんだよね? ……それは、よかったって、思う」
 薔薇の檻に誘い込まれた少女をひとり、救うことが出来たから――海月・びいどろ(ほしづくよ・f11200)はそう言うと、ももいろの硝子海月を指先で操りながら、悲痛な叫びを響かせる亡霊たちをじぃっと見つめる。
「こころに寄り添う、には。今のボクでは足りないから……」
 だから、またあかい薔薇を探しに行くよと、びいどろはふわりと霊廟に降り立ち――硝子細工の海月と共に、深い死の底に沈んだ回廊を駆けだした。
(「キミたちが、さむくないように……絡んだイバラを解かなくちゃ」)
 嗚呼、ならば――己は受け止めねばならないだろう。誓いと共にニコラスは、追い縋ろうとする亡霊たちの前に立ちはだかり、傍らのノエマにも先へ行くように目配せをした。
「……この魂達は、我が手から零れ落ちた者達だ。彼女達の守護者たり得なかった証を、この身にて受けねばならぬ」
「それが、あなたの生きる理由なのね――」
 何処か空虚な雰囲気を漂わせるノエマは、そんな同胞の姿に目を細めると、やがて死の世界に誘われるがままに――灰色の髪を靡かせて、深紅の薔薇を追い求めるべく疾駆する。
(「そうだ、それが俺の有り様なのだ」)
 絶命の瞬間を何度も味わい、意味を成さない聲を上げながら、彷徨える魂はただ救いを求めるようにニコラスへと群がっていって。荒波の如く呪詛に揉まれ、蹂躙されていく彼はしかし、その苦痛を糧とするべく赤き双眸を燃え上がらせた。
(「此の痛みを、無念を、苦しみを――全てを報復へと変えてやろう。全てを復讐へと転じてやろう」)
 ――そう、己が受け止めた全てを、必ず。その覚悟には一片の迷いも無く、溢れる呪詛を呑み込んだニコラスは、魂を引き裂く死者の叫びを受けて咆哮を轟かせる。
「……うつくしい薔薇で誘い込むなら、たいせつなものは、奥の奥? 隠れるように咲いていたりする?」
 霊廟に吹き荒れる負の感情に、びいどろは微かに身を震わせつつも失せ物探しに集中し――合間に、オデットの姉に繋がる手がかりにも気を配るが、亡霊以外の少女の気配は無いようだった。
「血の痕……死体を引きずったような跡もある」
 ――そんなノエマの感覚に従い、通路の奥を進んで行けば。無造作に盛り土がされた地面から、鮮やかな深紅の薔薇が顔を覗かせているのを、ふたりは目にすることになる。
「お願い、ジェリー。だれの指も傷付かないように、その子は摘んでしまって」
 その土の中に何が埋められているかは、多分知らない方が良いのだろう。硝子海月に指示を行うびいどろが、薔薇を摘み取った所で、すかさずノエマがその花目掛けて断罪のギロチンを振り下ろす。
「……少女たちが視た深紅の薔薇の幻想は、これにてもうお終い」
 封印を解く力を刃に乗せたノエマの本体は、鮮やかに薔薇の花を散らしていき――せめて魂だけでも安らかなれと、彼女は祈らずにはいられなかった。
(「後は諸悪の根源を討ち取ることで、彼女たちへの餞になれば良いのだけど」)
 ――深紅の薔薇に囚われた魂が、静かに解き放たれていく中で、その無念を受け入れたニコラスはゆっくりと天を仰ぐ。
「生命に陰り無く、思いは新たに。――さぁ、いざ報復へ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティア・レインフィール
こんなにも迷える魂……犠牲者が居たのです、ね
……なんて、酷い事を

遅くなって、申し訳ありませんでした
皆様の無念は、必ず私達が晴らします
ですから、今はどうか……

神よ、どうか彼女達の魂をお導きください
【祈り】を込めて、彼女達の為に
シンフォニック・キュアによる聖歌を【歌唱】を致します
――どうか彼女達の苦しみや悲しみが、少しでも和らぎますように

伸ばされた手を握り、微笑みかけて
凍える身体を、優しく抱き留めます

私にはこうして歌って、抱き締める事しか出来ませんが……
皆様がとても苦しい思いをした事は、理解出来ます
よく、今まで耐えてきましたね
悲しい事も、怖い事もこれで終わりです
もう、安らかに眠って良いのですよ


マリス・ステラ
ユート・エルスフォード(f07769)と行動

【WIZ】彼女たちに寄り添い、魂の救済を

「ユート、力を貸してください」

彼には彷徨う彼女たちの悲鳴を受け止めて耐えるように促します
同時に私は彼女たちに呼びかける
「破魔」の力を宿した星の転がるような声音で浄化に導きましょう
半透明の手に手を重ねて「手をつないで」「祈り」ます

「主よ、憐みたまえ」

呪いが及ぶなら「呪詛耐性」で受け止めて微笑みます

「ユートも苦しいと思いますが、彼女たちには最早『それ』しかないのです」

「大丈夫です。最後まで一緒ですから」

抱き締めて、苦しむ彼女たちを「鼓舞」して最後を見届ける
全員送り出せたら、

「ユートのお蔭です」

彼にも微笑んで労います


ソナタ・アーティライエ
犠牲となってしまった皆様の魂の叫びを耳にして、あまりの悲しさに胸がつぶれてしまいそうな苦しみを感じてしまいます
どうしようもなかったのだとしても、それが感傷でしかないとしても……助けられなくてごめんなさい、と謝らずにはいられません

苦しみも恨みも全て受け止める覚悟で受け入れて
ここであった事、これからすべき事をしっかりと理解して、胸に刻んでおきたいです
そうしてその凍える魂を温めてあげたくて……安らぎへといざなう灯火になってくれれば、と祈りながら【生まれながらの光】を使用します

これらの想いは胸の内に秘め、今回はいかなる歌も言葉も口から出る事はなく
その澄んだ浄眼から涙となって零れるのみです

アドリブ可です


ユート・エルスフォード
【POW】で判定

マリス・ステラ(f03202)と同行
近所に住むお姉さん、もしくは教師と生徒みたいな間柄

同じ目的でここにいるのは明白なので、
細かい説明は省いて先生(マリス)と共に進みます。

「……ゴースト、東洋風にいえば地縛霊、か」

自分には彼女らを天に還す力も精神性もない。
だがこの程度の呪いで崩れるほど柔でもない。

「…ああ、こういう防戦は得意だよ。
何とかするのは任せる、先生」

拳を構えて精神を統一し、【呪詛耐性】
で対抗しながら霊と対話する先生をガードします。

「全部先生が導いた結果だ。俺一人だったら、
周辺を纏めて吹き飛ばすしかなかった」

と先生の労いには静かに応じます。
…そう、俺は魂を救えないから。



 霊廟を彷徨う、犠牲者たちの魂――それらは着実に天へと解き放たれた一方で、今なお還れずにいる者も居り、闇は未だこの地にわだかまっている。
「こんなにも迷える魂……犠牲者が居たのです、ね。……なんて、酷い事を」
 ――死後の安寧を祈る場所は、廃墟と化して久しい。記憶もまた色褪せて忘れられてゆくことを思えば、ティア・レインフィール(誓銀の乙女・f01661)の瞳は物憂げに伏せられて、隠し切れない悲哀が満ちていった。
「……遅くなって、申し訳ありませんでした。皆様の無念は、必ず私達が晴らします」
 ですから、今はどうか――月光の光を纏うティアは、それでも涙を流すことはせずに、神の加護があるようにと聖句を紡ぐ。
(「……助けられなくてごめんなさい」)
 そして、虚ろに木霊する亡霊たちの慟哭に、ソナタ・アーティライエ(未完成オルゴール・f00340)は白磁の手をぎゅっと――ぬくもりが失われる程に強く握りしめて、その苦しみを受け止めていた。
(「どうしようもなかったことだとしても、それが感傷でしかないとしても……それでも、わたしは」)
 ごめんなさい――ソナタの唇はただ許しを請い、犠牲者の魂が抱く余りにも深い悲しみに、胸がつぶれてしまいそうになる。
 ――けれど、此処で悲嘆に暮れているだけでは、何も為せないだろうことも彼女には分かっていて。魂たちの抱えた苦しみも恨みも、ソナタは全て受け止める覚悟で彼女たちと向き合った。
(「ここであった事、これからすべき事をしっかりと理解して、胸に刻んでおきたい」)
 そうして、その凍える魂を温めてあげたい――音楽人形の少女が、そぅっと手を差し伸べる中で、花器の宿神であるマリス・ステラ(星を宿す者・f03202)は、隣に立つ少年に目配せをする。
「ユート、力を貸してください」
「……ゴースト、東洋風にいえば地縛霊、か。分かったよ、先生」
 教師のような、姉貴分に頷くユート・エルスフォード(亡霊甲冑・f07769)は、細かい説明は後だとばかりにマリスの前に立った。同じ目的で此処に居るのは明白で、だからこそ己のやるべきことは分かっている。
「……ああ、こういう防戦は得意だよ。何とかするのは先生たちに任せる」
 ――自分には彼女らを天に還す力も、精神性もない。だが、この程度の呪いで崩れるほど柔でもないつもりだ。拳を構えて精神を統一したユートは、呪詛への耐性を引き上げて、亡霊の呪いからマリス達を護ろうと己の身を盾にした。
「主よ、憐みたまえ――」
 星が転がるようなマリスの声には、破魔の力が込められていて。彷徨う魂の浄化を試みる彼女は、亡霊の伸ばした手に自身の手を重ねて、苦しむ魂の為に祈りを捧げる。
「……っ」
 しかし――触れた先からは否応なく、死者の抱える負の感情が注ぎ込まれ、マリスの心を蝕んでいった。しかし彼女は気丈にも微笑みを浮かべ、同じく呪詛に晒されているユートにも耐えるように言い聞かせる。
「ユートも苦しいと思いますが、彼女たちには最早『それ』しかないのです。……大丈夫です。最後まで一緒ですから」
 ――神よ、どうか彼女達の魂をお導きください。マリスの祈りに続くように、霊廟に響き渡る聖歌はティアのもの。癒しの歌を紡ぎながら、彼女は伸ばされた死者の手を握り、微笑みかけて――その凍える身体を、優しく抱き留めていった。
(「――どうか彼女達の苦しみや悲しみが、少しでも和らぎますように」)
 自分にはこうして歌って、抱き締める事しか出来ないけれど。少女たちがとても苦しい思いをした事は、理解出来るから。
「……よく、今まで耐えてきましたね。悲しい事も、怖い事もこれで終わりです」
 己の身を厭わず、魂に寄り添うティアの隣では、ソナタがひたむきに祈りを捧げている。溢れる想いは胸に秘め、いかなる歌も言葉も口から出る事はなく――その澄んだ浄眼から、涙となって零れるのみ。
(「……安らぎへといざなう、灯火になってくれれば」)
 ――歌う為の少女人形は、その声を響かせること無くただ静かに涙を流す。生まれながらに宿す光が亡霊たちを浄化していく中で、ティアはそっと消えゆく魂に囁きかけた。
「もう、安らかに眠って良いのですよ――」
 やがて一行を取り巻いていた亡霊は、すべて束縛から解放されて――今までの苦労を労うマリスに向けて、ユートは自嘲気味に言葉を返す。
「全部、先生たちが導いた結果だ。俺は……そう」
 ――魂を救うことなど、出来はしないから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

四王天・燦
瑠碧(f04280)と供養業だ。
アタシだって巫女の端くれ、見過ごせねーよ

SPD探索。
先ずは燭台や篝火を灯す。
寒い&暗いと亡者も辛いだろーし捜索もしにくいし。
「ほれ。使いな」
背中に貼っていたカイロを幽霊に進呈。持てないけど包み込んだりできるだろ

「瑠碧の言うこと聞いてりらっくすしていてくれよ」
怪しい邪悪な物はデストローイ!
暗視・第六感・失せ物探し…どこに『物を隠す』か考えて呪いの元を探す。
怪しいのは薔薇が関与したものだけど…亡者が恐れるなら破壊、求めるなら捧げるぜ

見つからないなら発想転換。
柱の蔦の根元を掘ってみる。
「ここ掘れコンコン」

「これだけ身体を盗られたんだ。全然間に合ってなかったなアタシら」


泉宮・瑠碧
燦(f04448)と
燦が元凶を探す間
僕は彼女達へ

森の気や精霊の守りで呪詛耐性はあるにはあるが
僕は聖句は知らないからな…
風の精霊を呼び、その姿をリラへと変え
祈りを込めて楽器演奏と歌唱

暖かな春の日の唄を
木漏れ日の中で川のせせらぎに小鳥が囀り
野の花がそこかしこに咲く…

彼女達が手を伸ばすのなら
掴まれるより先に
透けてしまっても両手で包む様に手を取り
持っていたポプリから花を少しずつ

そんな所へ
君達が行けます様に
無念や辛さから解放されて、穏やかになれます様に…
願いと祈りを込めて

話が訊けるなら深紅の薔薇の在処を訊く
彼女達の恐怖が蘇りそうなら訊かない

…そうだな
事前に聞き、覚悟はしていたが…
…間に合う以前の問題だな



 今回は供養業だ、と意気込む四王天・燦(月夜の翼・f04448)の手には、あかあかと燃える篝火があった。探索に便利だと言うこともあるが――寒くて暗いのはきっと、彷徨える魂だって辛いだろう。
(「アタシだって巫女の端くれ、見過ごせねーよ」)
 揺らめく灯りが冷たい闇を照らし出すと、啜り泣く亡霊の群れが、泉宮・瑠碧(月白・f04280)の方へも手を伸ばしてくる。
「森の気や精霊の守りで呪詛耐性はあるにはあるが、僕は聖句は知らないからな……」
 見れば燦が、背中に貼っていた懐炉を亡霊たちに進呈しようとしていたが、実体の無い彼女たちの間をすり抜ける結果に終わったようだ。残念そうに項垂れる燦であったが、直ぐに気を取り直して失せ物探しへと向かっていく。
「瑠碧の言うこと聞いて、りらっくすしていてくれよ」
 そんな相棒の言葉に、責任重大だなと瑠碧は深呼吸をして。風の精霊を召喚した彼女は、その姿をリラへと変じさせた後、魂たちへ祈りを届けようと旋律と歌声を辺りへと響かせた。
(「木漏れ日の中で、川のせせらぎに小鳥が囀り、野の花がそこかしこに咲くような……」)
 ――紡ぐのは、暖かな春の日の唄。まるであたたかな光に手を伸ばすようにして、死霊たちは瑠碧の元へ群がっていくが、彼女はそれを疎むこと無くその手を包み込んで受け止める。
「……大丈夫、だから」
 忽ち辺りへ満ちていく呪詛に、瑠碧の懐にあったポプリの花が黒ずみ、灰となって散っていくが――その程度で、死者の為に祈ることを止めたりなどしない。
(「暖かな春の日のような所に、君達が行けます様に。無念や辛さから解放されて、穏やかになれます様に……」)
 次第に安らぎを得ていく魂たちに、話が訊けるのならと瑠碧は考えていたが、自我が希薄な存在にそれを望むのは難しそうだった。
(「後は燦が、魂を縛り付けていた元凶を探してくれることを願うしかないか……」)
 ――そんな燦の方はと言えば、薔薇が関与したものが怪しいとあちこちを探し回っていたが、呪いの元らしきものはなかなか見つけられずにいて。
「ここ掘れコンコン……っと」
 一周回って発想の転換を図った彼女が、入り口付近の柱の蔦の根元を掘ってみると――其処からは深紅の薔薇が艶々と、月の光を受けて顔を覗かせたのだった。
「……これだけ身体を盗られてたんだ。全然間に合ってなかったな、アタシら」
 隠された薔薇の発見により、呪縛を解かれた魂が空に還っていくのを見届けながら燦が呟くと、瑠碧もやるせない様子でちいさく吐息を零して、それに同意する。
「……そうだな。事前に聞き、覚悟はしていたが……間に合う以前の問題だな」

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『ゼラの死髪黒衣』

POW   :    囚われの慟哭
【憑依された少女の悲痛な慟哭】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    小さな十字架(ベル・クロス)
【呪われた大鎌】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ   :    眷族召喚
レベル×5体の、小型の戦闘用【眷族】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は吾唐木・貫二です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 死者の想いに寄り添いつつ、霊廟に隠された深紅の薔薇を見つけ――彷徨う少女たちの魂は、其処でようやく安息を得ることが出来た。
「――ふうん? 新しい身体になってくれる子も帰ってしまったし、つまらない物語になるかと思ったけれど。……最後の最後で面白くなりそうね」
 黒衣を翻すあどけない少女は、そう呟いてくすくす嗤うと、身の丈もある大鎌を手にゆっくりと立ち上がる。遠くから聞こえてくるのは、小夜啼鳥の囀りだろうか――うつくしきその歌声も墓場鳥の異名を知れば、死を告げる不吉なものへと容易く変じてしまう。
「私も同じよ――夜明けを告げる希望の歌を、緩やかに死を齎す絶望の歌に変えてあげる」
 彼女の名はゼラ。死髪黒衣に魂を宿し、少女の肉体を得て永遠を生きるヴァンパイア。今の身体は、そう――今回薔薇の元へ誘った、オデットとか言う娘の姉のものだった筈だ。
「……ああ、可哀想に。貴女が此処に来てくれたら、肉体に乗り移るほんの僅かな間、お姉さんと再会できたでしょうに」
 ――本当に可哀想。だってこの身体はもう、限界が近づいているもの。私が斃れればきっと、貴女のお姉さんは骨も残さず塵に変わるでしょう。
「ふ、ふふ……絶望や憎悪、そんなありきたりな感情はもう飽き飽きなのよ。そう、私も――私だけの薔薇が欲しいの」
 ――ねえ、もうじき此処へやって来るお客様なら、私に見せてくれるかしら。
 甘い吐息が闇の中に溶けた後、廃城の扉がゆっくりと開いていって――やがて、赤薔薇少女と庭園迷路を巡る物語の、最後の頁が綴られる。
フィリア・セイアッド
【WIZ】を選択
ううん 諦めない
ほんの僅かな時間でも 元の彼女を取り戻したい
解いた指を胸の前で組み 翼を開く
この悲しい夜が終わるよう 祈りを

「雪雫の円舞曲」で仲間を鼓舞
あなただけの薔薇が欲しいのなら 苗を植えて育てればいい
花開くのを指折り数えて 
そうして咲いた花なら どんな花でも特別だわ
ー沢山の命を犠牲にした花が 綺麗に咲けるはずがないでしょう?
相手をまっすぐに見つめ 内側にある少女に微笑
…遅くなってごめんなさい
もう少しだけ頑張って 必ず解放してあげるから
歌声に破魔の力をのせ 周りを浄化
傷ついた仲間はシンフォニック・キュアで回復 
敵の攻撃は宙に舞って回避 
傷の重い仲間がいればオーラ防御で盾に


ソナタ・アーティライエ
「どんなにつらい時にも、希望の歌を紡いでみせましょう」

この悲しい物語は、ここで必ず止めてみせます
そしてオデット様の姉君のお身体を吸血鬼の軛から解放して、安らかな眠りにつけるよう尽力させて頂きます

貴女が絶望を齎す歌を歌うというのなら、わたしは全てを癒す歌を歌いましょう
【幻想小夜曲第140番『夢絃の琴』】を歌い、害をなそうとする全てをなだめて鎮めてみせます

この暗い世界に希望を齎す光、【幻獣交響曲第126番『神鎗』】によってこの地に導いた友の力を借りて、貴女の罪を浄化させて頂きます
ここまでの間に感じた悲しみ・痛みを胸に、この悲劇の幕引きをラヴェルに願います


萌庭・優樹
あなたの――
いいえ
おまえの、思い通りになんか、させません

SPD
シーブズ・ギャンビットで攻撃
邪魔な上着は脱ぎ去って
身軽になったら負ける気はしません

素早さ勝負で相手の懐を狙って近づきます
不意を取れたなら、その一瞬を奪って『盗み攻撃』
刃が迅速に風を薙いだら
風を味方に『属性攻撃』となれるでしょうか

敵の攻撃はできる限り、回避や相殺をしたいけど
あいつの大きな鎌は
おれのダガーじゃ受けきれないだろうし
回避には『見切り』も活用を

この風に
目の前が滲みそうな涙も拭ってもらったから
おれはもう、おまえを見据えるだけだ
ゆるしちゃおけない

みんな、みんな、もうかえらなきゃ
だからその体も――返してください
還して、あげたいんだ



 ――其処はまるで、お伽噺で語られる悪い魔女の棲む城のよう。全てを拒む、鋼のような茨に覆われた扉がゆっくり開かれると、黒衣を纏った少女が悠然と一行を出迎えた。
(「ゼラの死髪黒衣――それに囚われた、あの子が」)
 彼女こそが今回の事件の発端となった、深紅の薔薇を求めて行方をくらませた少女――オデットの姉であるのだ、と。姉妹を共に毒牙に掛けようとするヴァンパイアを睨みつけて、萌庭・優樹(はるごころ・f00028)はきっぱりと、有無を言わせぬ口調で告げる。
「あなたの――いいえ。おまえの、思い通りになんか、させません」
 陽の色をした彼女の瞳が鮮やかに燃え上がる中で、フィリア・セイアッド(白花の翼・f05316)も、未だ諦める訳にはいかないのだと己に言い聞かせた。
「ええ……ほんの僅かな時間でも、元の彼女を取り戻したい。この悲しい夜が終わるよう、私は祈り続ける」
 優樹と対を為すかのような、春空の瞳を静かに瞬かせると――フィリアは解いた指を胸の前で組んで、天の御使いたる証の白翼を広げる。
「なら、わたしは……どんなにつらい時にも、希望の歌を紡いでみせましょう」
 ――少女たちの魂と向き合った時、ソナタ・アーティライエ(未完成オルゴール・f00340)は溢れる想いを胸に、透き通った涙を流し続けていた。しかし、今は違う――この悲しい物語は、此処で必ず止めてみせるのだと強く誓う。
(「オデット様の姉君のお身体を、吸血鬼の軛から解放して……どうか、安らかな眠りにつけるように」)
 誰かの為に歌うことを定められた音楽人形は、自分の意志で歌うことを選び、絶望の世界へ立ち向かうべく青貴石の薔薇飾りを共鳴させた。
「面白いわ、貴女は一体どんな歌を聴かせてくれるの?」
 先ずは小手調べとでも言うように、ゼラの眷属――小夜啼鳥の群れがソナタに襲い掛かるが、其処で慰撫するような、全てをなだめる優しい歌声が辺りに響く。
(「静謐の帳を下ろしましょう……害を為すものよ、鎮まって」)
 ――貴女が絶望を齎す歌を歌うというのなら、わたしは全てを癒す歌を。紡がれる、幻想小夜曲第140番『夢絃の琴』は薔薇の花弁を震わせると、華やかに彩られたソナタの歌声が眷属の群れを相殺し、次々に消滅させていった。
「あなただけの薔薇が欲しいのなら、苗を植えて育てればいい――」
 ――ああ、世界は光に満ち、陽は輝きて鳥は歌う。一方のフィリアは高らかに雪雫の円舞曲を響かせて、仲間たちを鼓舞していく。花開くのを指折り数えて、そうして咲いた花なら、どんな花でも特別だから――歌う彼女の声を背に受けて、邪魔な上着を脱ぎ去った優樹は、ダガーを手にゼラの懐目掛けて斬り込んでいった。
「身軽になったら、負ける気はしません……!」
 風薙ぐ刃が標的の黒衣を捉え、ゼラの相貌に鬼気迫るものが浮かぶ。直後呪われた大鎌が、優樹目掛けて勢い良く振り下ろされるが――強化された身体能力を駆使した彼女は、間一髪の所で奪命の一撃を見切って躱した。
「……沢山の命を犠牲にした花が、綺麗に咲けるはずがないでしょう?」
 そんな中、歌声に破魔の力を乗せたフィリアは、そのまま真っ直ぐに相手――ゼラを見つめ、彼女の内側に在る少女に微笑んで語り掛ける。
「……遅くなってごめんなさい。もう少しだけ頑張って……必ず解放してあげるから」
 辺りを浄化していくフィリアに、追従するのはソナタの幻獣交響曲。『神鎗』の名が冠された楽曲によって、この地に導いた友は、浄化の光を宿す一角獣だ。
(「貴女の罪を浄化させて頂きます。この悲劇の幕引きを……どうか」)
 ――仲間たちに支えられ、そして薙いだ風に、目の前が滲みそうな涙も拭ってもらったから。後はもう、おまえを見据えるだけだと、優樹はゼラと再度刃を交差させた。
「ゆるしちゃおけない。みんな、みんな、もうかえらなきゃ」
 暗黒の廃城に幾度となく火花が散り、浄化の光と歌声が、瞬く星々のように深い闇を照らし出す中――血を吐くような想いで、優樹は声を絞り出す。
「だからその体も――返してください」
 ――還して、あげたいんだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
全く悪趣味なオブリビオンであることよ。
小夜啼鳥の鳴き声の先が墓場では、それは救われんだろうなァ。

憎悪も絶望も見飽きたか?ならば呪いをくれてやろう。
狙うのはなるべく黒衣としたい。扱うのは槍ではなく、鎌の方である。
……依り代の少女に傷は残したくない。たとえ、助からないのやも知れなくともな。

では、約束を果たそう。もらった怨みを借りるぞ、死したお嬢さん方。
【嵐海の毒霜】で強化を図り、そのまま黒衣を切り裂いてやろう。
毒も流血も今更だ。呪縛は振り払えば良いだけのこと。
所詮この身は死に損ないだ、全てくれてやる。
さァ、とくと味わえ。これが憎悪も絶望も凌駕した、呪いというものだ!


ウインド・ノーワルド
ようやくたどり着きましたよ、紅薔薇の主。しかし憎悪や絶望はお飽きのようで
ですが貴女に贈る愛の言葉も無し、ならどうしましょうか。殺し愛でもしましょうか?
猟兵とオブリビオン。敵として認識し合う世界じゃなければ、どうにかして救う事も考えたでしょう
出来ないならばせめて、その感情を正面から受け止めて…笑顔のまま眠ってもらうしかできねーですね

正面から純粋な格闘戦、薔薇の花園での立ち回りでは少々無粋ですが、貴方に向けるのは患者を救う時と同じ思い
寂しいのでしょう?今だけは共に寄り添い、殺し合いましょう
奥の手は【黒滅の風】を伴った拳で、鎧砕きと属性攻撃による炎の風の一撃で
全て炎で包んで終わらせましょう


ヘンリエッタ・モリアーティ
【WIZ】
――小夜啼鳥の主ね。
身勝手に『薔薇にされた』少女たちの声は、聞こえない、のでしょうね。
目を見れば、わかります、考えていること。
私にだって、あるような、気持ちでしょう。
【恐怖の谷】を発動します。マダム、私に教えて。どう、「うまくやればいい」?
「――ふむ、少女をあんな少女が手にかけたのだから、思ったよりもわがままな子ではないかな。君が彼女ならどうやって君たちを殺す?」
……私、なら。まず、数を減らそうとするわ。
【パラサイト・フレンド】で、攻撃を防いで、【怪力】を使って――。
「彼女はどうやら少女が好きらしい。美しいものは?」
その手で壊したくて、たまらない。
私も、同じよ。だって、好きだものね。


ニコラス・エスクード
コイツと相対すると否が応でも考えさせられる。
守るべきものなのか。
斬るべきものなのか。

故に、思い直させてくれる。
我が刃に一欠片の揺らぎすら許されていない事を。
その慟哭が誰のものであろうとも。
その身にいまだ赤き血潮が流れていようとも。
我が覚悟に淀みはない。

全てを呉れてやろう。
己が身に宿った憎悪を、無念を、怨嗟を。
人間たちが貴様らに遺す、ありきたりな感情を。
何より強き感情を。

踏み込むは力強く、深く、捨て身の一撃にて。
その悲痛なる叫びをも受け止め、
その黒衣を、鎧を砕くが如く。
振るい放つは『報復の刃』。

「さぁ、報いを受けろ。」



 ――ようやくたどり着きましたよ、紅薔薇の主。ゼラの死髪黒衣に向けて、仰々しく一礼をしたウインド・ノーワルド(自称ドクター・f09121)は、はてさてと口の端を上げて意味深に微笑む。
「しかし、憎悪や絶望はお飽きのようで。ですが貴女に贈る愛の言葉も無し……なら、どうしましょうか」
 深紅の瞳が剣呑な輝きを帯びた直後、彼女の手刀がゼラの急所目掛けて突き出され――その一撃を寸前で払いのけた相手に向かい、凄絶な笑みを浮かべながらウインドは囁いた。
「――殺し愛でもしましょうか?」
「ふふ、素敵! こう言う物語を、私は待ち望んでいたの……!」
 己に向けられた殺意を、恍惚とした表情で受け止めるゼラ。全く悪趣味なオブリビオンであることよ、と吐き捨てたニルズヘッグ・ニヴルヘイム(世界竜・f01811)は、救済の名を冠した大鎌の先端をゼラへと向ける。
「小夜啼鳥の鳴き声の先が墓場では、それは救われんだろうなァ。……憎悪も絶望も見飽きたか?」
 ならば呪いをくれてやろう――それに、人の絶望を喰らう死神には、速やかなる死を齎す大鎌こそがうってつけだろう、と。そんなニルズヘッグからの刃を突き付けられてもなお、薄い笑みを絶やさないヴァンパイアへ、ヘンリエッタ・モリアーティ(獣の夢・f07026)は淡々と言葉を投げかけていた。
「――小夜啼鳥の主ね。身勝手に『薔薇にされた』少女たちの声は、聞こえない、のでしょうね」
 目を見れば、わかります、考えていること。そう続けるヘンリエッタは、私にだって――『私たち』にだって、あるような気持ちでしょう、と呟いて胸を押さえる。
(「……マダム、私に教えて。どう、『うまくやればいい』?」)
 ――教えを乞うのは、ヘンリエッタの真人格であるマダム・モリアーティ。恐怖の谷、と銘打たれたプロファイリングによって、マダムは確実な殺害計画を導き出してヘンリエッタに伝えていく。
『――ふむ、少女をあんな少女が手にかけたのだから、思ったよりもわがままな子ではないかな。君が彼女ならどうやって君たちを殺す?』
(「……私、なら。まず、数を減らそうとするわ」)
 その様子はまるで、事件を背後から操る黒幕――悪の教授の姿そのものであり。最適解を受け取ったヘンリエッタはゆらりと立ち上がると、体内より呼び出したUDCを手甲のように腕へと纏った。
(「コイツと相対すると、否が応でも考えさせられる」)
 ヘンリエッタが獣の牙を研ぎ澄ませる中で、己の在り様について考えを巡らせているのは、ニコラス・エスクード(黒獅士・f02286)。果たして、目の前の存在は守るべきものなのか――或いは、斬るべきものなのか、と。
(「故に、思い直させてくれる。……我が刃に、一欠片の揺らぎすら許されていない事を」)
 ――救えなかった命が、彼の手から零れ落ちた魂があった。守護者たり得なかった証として、彼女たちの嘆きの聲をニコラスは全て受け止めて、此処までやって来たのだ。
(「その慟哭が誰のものであろうとも。その身にいまだ赤き血潮が流れていようとも。……我が覚悟に淀みはない」)
 猟兵とオブリビオン――双方が、敵として認識し合う世界でなかったのならば、どうにかして救う事も考えたかもしれない、とウインドは思う。けれどそれは、望むべくもないことだ――ならば。
「出来ないならばせめて、その感情を正面から受け止めて……笑顔のまま、眠ってもらうしかできねーですね」
 ――挑むのは、正面からの純粋な格闘戦。薔薇の花園での立ち回りとしては、少々無粋なのかも知れないが――ゼラに、彼女に憑依された少女に向けるのは、患者を救う時と同じ思いだ。
「……寂しいのでしょう? 今だけは共に寄り添い、殺し合いましょう」
 黒き風が廃城に吹き荒れ、眩い金糸の髪を舞い上がらせていく中で――ゼラに肉薄したウインドの拳が、黒滅の風を纏って燃え上がる。全てを炎で包んで終わらせると言う決意の元、少女の慟哭が辺りに満ちていくが、それに引きずられることも無く。
『彼女はどうやら少女が好きらしい。……美しいものは?』
(「その手で壊したくて、たまらない。私も、同じよ」)
 だって、好きだものね――其処で、更にヘンリエッタが踏み込むと、怪力を活かした異形の一撃を振るってゼラを壁へ叩きつけた。
「――っ、……ぁ、」
「さて……では、私も約束を果たそう。もらった怨みを借りるぞ、死したお嬢さん方」
 苦悶するゼラの黒衣から、ゆらゆらと炎が立ち上るのを見たニルズヘッグは、なるべくなら其方を狙おうと嵐海の毒霜を発動させる。
(「……依り代の少女に傷は残したくない。たとえ、助からないのやも知れなくともな」)
 死の痛みや悲嘆、辛苦から編み上げた呪いを纏い、己の力に転化させたニルズヘッグは、大鎌を振り上げて一気に黒衣を切り裂いた。代償として己の肉体が血を流そうとも、今更だ――所詮この身は死に損ないだと一笑に付した彼は、全てくれてやるとばかりに鎌を持つ手に力を籠める。
「さァ、とくと味わえ。これが憎悪も絶望も凌駕した、呪いというものだ!」
 ――全てを呉れてやろう、と厳かなニコラスの声が虚ろな城内に反響した。己が身に宿った憎悪を、無念を、怨嗟を、それはつまり。
「人間たちが貴様らに遺す、ありきたりな感情を。……何より強き感情を」
「……くっ、……!」
 未だ壁に縫い付けられたままのゼラ目掛けて、踏み込むニコラスは、力強く、深く――捨て身の一撃を仕掛けようと首落としの大剣を振りかぶった。
 ――その悲痛なる叫びをも受け止め、その黒衣を、鎧を砕くが如く断ち切ってみせようと。振るい放つ報復の刃は、断罪の嵐となって辺りを蹂躙していく。
「――さぁ、報いを受けろ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マリス・ステラ
ユート・エルスフォード(f07769)と連携
他の猟兵も援護します

【WIZ】冷静に回復と援護に努めます

弓で援護射撃
負傷した味方やユートに【生まれながらの光】
特に重傷者を優先、緊急性が高いなら複数同時も実行

「ユート、私が時間を稼ぎます」

彼が変身する時間を稼ぎます
ゼラに呼びかけておびき寄せて、彼女に祈りを捧げます

「あなたはここで終わります。だから祈るのです」

オーラ防御やカウンターの投げで対応
覚悟をもって疲労や負傷にも踏みとどまります

「薔薇は"そこ"にあるのに、あなたは気付いていない」

彼女の"命"こそが赤い薔薇、ロサ・キネンシス

「美しいあなただけの薔薇です」

それが咲いた時、あなたは気付くでしょうか?


ユート・エルスフォード
マリス・ステラ(f03202)と連携

【POW】で判定。
近寄って殴ることしかできない、だから全力で。

「生憎だが…僕らは貴様にとって最高に面白くない結末を届けに来た」

合理的に、機械的に。淡々と拳による攻撃を行い、
ダメージは激痛耐性で耐え、距離が開けば衝撃波による
牽制を使い再び突っ込みます。

敵を弱らせたらユーベルコード
【機鎧装着】を発動して一気呵成に。
鎧を纏って「攻撃力」を強化し左右から連打を放ちます。

「ありがとう、先生…あとは、任せてくれ」

支援と体力についてはマリスさんに完全依存。
背後を気にすることなく正面から敵を捉えます。

「……せめて、弔いくらいは」

戦闘後は、犠牲者達に対して黙祷を捧げます。


楠瀬・亜夜
貴女がこの物語の作者……いや、策者という訳ですか。
貴方が紡いだ悪意に満ちたこの幻想は遂に終焉を迎えます
そのお祝いに貴女が望む紅い薔薇、送ってさしあげましょう。

ゼラが攻撃に移る前に【shadow hearts】で影蝙蝠(シャーちゃん)を
召喚し、ゼラの呼び出した眷属の相手をして貰います。
そして素早く【クイックドロウ】で【先制攻撃】を狙います。

少女の悲痛な慟哭……その哀しみも痛みも受け取りましょう
それがこの物語での私が唯一つ、彼女達の為にできる事です。

味方への【援護射撃】を行いつつ、隙があれば接近しナイフで一撃を加えます。
そしてゼラ、これが貴女への贈り物、この弾丸で貴女の胸に紅い薔薇が咲きますように



 からん、と乾いた音を立てて転がっていた鎌を支えにして、ゆっくりと――未だ此処で終わるのは面白くないとばかりに、ゼラの死髪黒衣が立ち上がる。
「貴女がこの物語の作者……いや、策者という訳ですか」
 そんな彼女の元へ、慇懃なまでの態度で接する楠瀬・亜夜(追憶の断片・f03907)は、護身用の拳銃を突き付けると冷ややかに告げた。
「……貴方が紡いだ悪意に満ちたこの幻想は、遂に終焉を迎えます」
 その藍色の瞳が、魔性の輝きを宿した直後――ゼラが召喚した眷属の群れに先んじて、亜夜の喚んだ影蝙蝠のシャーちゃんが羽ばたくと、一気に小夜啼鳥を屠っていく。
「そのお祝いに貴女が望む紅い薔薇、贈ってさしあげましょう――」
 ――数発、立て続けに銃声が鳴り響いた、その後。至近距離で刃を操り亜夜の弾丸を防いだゼラが、一転して反撃へと移った。
「小さな十字架、ベル・クロス……祈るのは、貴女よ」
 超高速で振るわれた大鎌が、亜夜の首を落とそうと迫る中、予期せぬ方向から繰り出された拳の一撃が、その軌跡を強引に逸らす。
「生憎だが……僕らは貴様にとって、最高に面白くない結末を届けに来た」
 蒸気機械の篭手――カドゥケウス・プロトを構える、ユート・エルスフォード(亡霊甲冑・f07769)の後方では、マリス・ステラ(星を宿す者・f03202)が星屑の弓を手に、何時でも援護を行えるよう身構えていて。
「ユート、私が時間を稼ぎます」
 立て続けに矢を放つマリスは、同時にゼラへ呼びかけ――彼女の為、そっと祈りを捧げるように瞳を伏せた。
「……あなたはここで終わります。だから祈るのです」
「ふぅん? 聖職者さまのお説教と言うものかしら。虫唾が走るわ」
 ふたりが言葉を交わす間にも、ユートは合理的に機械的に、淡々と拳による攻撃を行っている。近寄って殴ることしか出来ない、だから全力で行くのだと言わんばかりに――囚われの慟哭がその身に襲い掛かっても、彼は激痛に耐えながら再度飛び込んでいった。
「……ユート、余り無理はしないで下さい」
「ありがとう、先生……でも。あとは、任せてくれ」
 生まれながらに持つマリスの聖なる光が、傷ついた肉体を癒していく中で、機鎧装着を発動させたユートは正面からゼラに向き合い、強化した拳で一気に追い打ちをかけていく。
 ――マリスが援護してくれるから、と背後を気にすることも無く。せめて全てが終わった後に、弔いくらいはと願いながら。止まぬ慟哭が、辺りへ無差別に吹き荒れても、一歩も退く気が無いのは亜夜も同じだ。
「少女の悲痛な慟哭……その哀しみも痛みも、受け取りましょう」
 それがこの物語での私が唯一つ、彼女達の為に出来る事だから――呟いた彼女はナイフを手にゼラへと距離を詰め、逆手に構えた刃を一息に振り下ろす。
(「薔薇は『そこ』にあるのに、あなたは気付いていない」)
 星の海の如く揺れるマリスの瞳に映るのは、亜夜の刃が突き立てられたゼラの胸元。其処に咲き誇る紅い薔薇――溢れる血潮、彼女の『命』こそが、艶やかなロサ・キネンシスとなる。
「そしてゼラ、これが貴女への贈り物」
「……美しいあなただけの、薔薇です」
 ――それが咲いた時、あなたは気付くでしょうか?

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

三嶋・友
はぁい、悪趣味なヴァンパイアさん
随分盛大に楽しんでくれたようだけど、そろそろフィナーレと行かない?
薔薇は散るからこそ美しい、なんてね
貴女もそろそろ散り時だよ!

少女の慟哭は、防御で耐えながらも全て忘れず聞き届ける
痛かったよね、辛かったよね、こんな筈じゃなかったよね
どれだけ悲痛な叫びでも、それが貴女の心の声なら全部受け止めるから

その身体を返して、って言っても無理なんだよね?
ならせめて、これ以上の貴女の悪趣味に、その子を付き合わせたくはないから

宝石に込めた魔力を開放
晶花に集中
持てる全ての魔力を込めた激光雷斬を放つよ

どうか、安らかに
…どう告げて良いかは、まだ解らないけど
後で、村へ報告に行かなくちゃね


泉宮・瑠碧
燦(f04448)と

限界が近い、なら
まだ可能性はあるな

僕は基本的に援護射撃
少女まで射抜かない様に射線に気を付ける

精霊祈眼も併用
氷の精霊へ
黒衣だけを害して
地に着く部分の黒衣を凍らせて地に縫い止めたり
垂れている袖を凍凍らせて大鎌を振り辛くしたりなど
ゼラの本体なら、無理に切り離したりはし難いだろう

小さな十字架は撃つ瞬間に
柄の下の方を撃ったり、風の精霊からの突風を当てて
刃の方向を逸らす

眷属は
撃った水の矢を宙で分散させて範囲攻撃

慟哭には…
君が戻らなければオデット…
君の妹は、どれだけ悲しむだろう
さっきも心配して探しに来ていた程だ
…僕達も頑張るから、どうか君も負けないで

終えた後
必要ならオデットの姉に優緑治癒


四王天・燦
瑠碧(f04280)と退魔業

「身体を返せ!」
間に合わねーのは嫌だ

出し惜しまず真の姿解放。
神鳴の間合いで30cm圏に入らず黒衣を斬る。
小競り合いで見切る

「援護は任せたぜ、相棒」
瑠碧に呟き妖魔解放でハーピーの魂を纏う

「あなたの鳥の声汚いし、憑代の身体を粗末に使うし、嫌い。骸の海に堕ちろ」

高速移動は隠しアークウィンドで斬撃と音の衝撃波で黒衣を削る

頃合を見て衝撃波を鎌に当て、ゼラの間合いに突撃!
牽制から必殺…はフェイント。
ギリギリで見切りと瑠碧の援護、初見の高速移動で回避。
振り抜いた所を、胸倉掴んで黒衣の内に刃を入れ一気に裂く!

憑代の治癒を頼み鼓舞だけでもする。
「家に帰ろうぜ!癒しが効くまで後少しだ」



「はぁい、悪趣味なヴァンパイアさん。随分盛大に楽しんでくれたようだけど、そろそろフィナーレと行かない?」
 水晶の刀身を持つ長剣を月光に翳しながら、三嶋・友(孤蝶ノ騎士・f00546)が廃城の階を駆け上がっていく。薔薇は散るからこそ美しい、なんて――ぽつりと零す友の行く手には、胸元を深紅に染めたゼラが苦悶の表情で立ちはだかっていて。
「――……ッ!!」
 直後――憑依された少女の唇から放たれる、悲痛な慟哭が衝撃を伴って友へと襲い掛かったが、彼女はそれに耐えつつも、耳を塞ぐことはしなかった。
(「痛かったよね、辛かったよね……こんな筈じゃ、なかったよね」)
 ――例え、どれだけ悲痛な叫びでも、それが貴女の心の声なら全部受け止めるから。少女の慟哭を、全て忘れず聞き届けようと誓う友の、噛みしめた唇から血が滲んでいく中で――決断を下さねばならない、と彼女は、最後の問いをゼラへと投げかける。
「……その身体を返して、って言っても無理なんだよね?」
 青ざめた美貌の、ほんの少し吊り上がった口元の笑みがゼラの答えなのだろう。覚悟を決めた友は宝石に秘められた魔力を解放すると、徐々に色彩を変えていく晶花を握る手に力を込めた。
「ならせめて……これ以上の貴女の悪趣味に、その子を付き合わせたくはないから」
「否……限界が近い、なら。まだ可能性はあるな」
 と――其処へ涼やかな風を思わせる声が響くと同時、精霊の弓から放たれた水矢がゼラの動きを牽制する。精霊祈眼により、氷の精霊に働きかける泉宮・瑠碧(月白・f04280)の援護を受けて、ゼラの纏う黒衣に飛び掛かっていったのは、四王天・燦(月夜の翼・f04448)だった。
「この……、身体を返せ!」
 間に合わないのは嫌だとばかりに、燦は出し惜しみをすること無く真の姿を解放――狐の尾を増やし、何処となく妖艶な雰囲気を纏った彼女は、神鳴の間合いで踏み込んで黒衣を切り裂いていく。
「……援護は任せたぜ、相棒」
 任せておけ、とちいさく頷いた瑠碧もまた黒衣に狙いを定め――彼女の意志を汲み取った氷の精霊が、地に着いた部分の黒衣を凍らせ、敵の動きを封じた。
(「あれがゼラの本体なら、無理に切り離したりはし難いだろう」)
 そうして援護射撃に専念する瑠碧の元へ、ゼラの召喚した小夜啼鳥の群れが襲い掛かるが、それにも彼女は動じない。撃ち出した水の矢を宙で分散させ、範囲攻撃によって眷属を仕留めると、燦の間合いを調整するべく突風を起こす。
(「あなたの鳥の声汚いし、憑代の身体を粗末に使うし、嫌い。……骸の海に堕ちろ」)
 妖魔解放――嘗て精気を喰らった魔物娘の魂を、その身に宿していくのは燦。風の短剣を振りかざして、黒衣を削っていく身軽さはハーピーの力によるものか。
 頃合いを見て衝撃波を撃ち出した後、それを弾く鎌の動きに合わせて突撃――牽制を行ってからの必殺の一撃、もフェイントだ。
「残念、罠は得意なんだ!」
 突き出された鎌の刃を掻い潜り、一気に加速をした燦は次の瞬間、ゼラの胸倉を掴んでその懐に忍ばせたナイフを勢いよく滑らせる。
「君が戻らなければ、オデット……君の妹は、どれだけ悲しむだろう」
 慟哭に負けじと声を張り上げる瑠碧は、囚われの少女に向けて言葉を掛け続けていた。さっきも心配して探しに来ていた程で――僕達も頑張るから、どうか君も負けないで、と。
「家に帰ろうぜ! 癒しが効くまで後少しだ」
 仲間の治癒が間に合うことを信じて、燦も少女を励ましていく中で、友はどんな言葉を告げることになるだろうかと案じながらも、持てる全ての力を刃に乗せて雷の一撃を放つ。
「貴女もそろそろ散り時だよ! 天より下る輝ける鉄槌――我が剣に宿りて、裂いて喰らいて暴れて狂え!!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

イア・エエングラ
散りゆく、花はお嫌いかしら
おしまいがあるのも、僕はきれいだと思うけれど

どうしてお前は、赤い薔薇が欲しかったのだろ
どうしてあの子らは探して迷っていただろう
きれいなものはきれいだけども、白に赤と違いも分からないもの
惹かれて歩く彼女らの、気持ちにはきっと届かないねぇ
……だから僕は為せるだけ、討ちましょう
迷わず僕のとこまでおいでね
リザレクト・オブリビオンでお招きしましょ
一つずつ散らして差し上げましょう

迷路のはては寂しかったろ
あなたはまだ、帰れるかしら
それともこのまま、散るのかな、花の散るよに還るの、かな
待っている子に伝えるために、きっと逸らさずおこうね


リーヴァルディ・カーライル
…ん。宿主の少女が限界だとしても、私のすべき事は変わらない
私は私の誓いを果たす。ただ、それだけ…

敵の前に立ち攻撃を引き付ける
事前に強化した第六感を頼りに敵の殺意の存在感を見切り、
力を溜めた大鎌を怪力任せになぎ払い武器で受ける

敵が隙を見せたら“防具を改造する呪詛”を宿した短剣で
傷口を抉るように黒衣のみを引き裂いた後、
黒衣の生命力を宿主が吸収して治癒する呪いを付与する

…限界が近いなら、別の場所から持ってくれば良い
お前達には、これ以上何一つ奪わせない

…それが私の誓い。滅びるのはお前だけよ、女吸血鬼ゼラ

戦闘後【限定解放・血の聖杯】を多重発動(2回攻撃)
少女の容態が安定するか死亡するまで能力を使い続ける


海月・びいどろ
ふわふわ、ゆらゆら。
探し物は見つかった、けど

…もう、そこにはいないんだね

硝子の海月たちは、たたかう準備をして
迷彩を纏わせたなら、フェイントを仕掛けながら
マヒ攻撃で動きを鈍くしてみるよ
あんまり動かないでね、その身体にひどくしたくないもの

女の子の方が狙われるなら、かばうよ
攻撃は得意じゃないから、他の猟兵たちに任せて時間を稼ぐね

あかい薔薇は、きれいだけど
そんなに欲しいもの?
絶望や憎悪は、うつくしいの?
…そのきもちは、ボクにはよく解らないみたい

永い間を生きて、退屈したのかな
物語の幕引きだって肝心なのだって

ゼラ、キミにはさいごのお別れを
オデットのお姉さんには、さよならを
…おやすみなさい



 ――それは小夜啼鳥と薔薇に導かれた、或る少女を巡る物語だった。
 赤いあしあとを道標に、庭園迷路を進んでいき――辿り着いた霊廟では、彷徨える少女たちの魂を解き放って。最後に待ち受ける廃城で、ゼラの死髪黒衣と対峙したイア・エエングラ(フラクチュア・f01543)は、今迄の道程を思い出しながら死霊を手招く。
「散りゆく、花はお嫌いかしら。おしまいがあるのも、僕はきれいだと思うけれど」
 御免だわ、と吐き捨てるゼラを、茫洋としたまなざしで見つめるのは、海月・びいどろ(ほしづくよ・f11200)。硝子の海月たちと共に世界を漂う彼もまた、導かれるようにしてこの地へ辿り着いたひとり、だったけれど。
「ふわふわ、ゆらゆら。探し物は見つかった、けど。……もう、そこにはいないんだね」
 その肉体を、精神を奪われた少女の姿を、青硝子の瞳に映したびいどろは、指先から伸ばした糸でゆっくりと硝子海月を操り始めた。
(「どうしてお前は、赤い薔薇が欲しかったのだろ。どうしてあの子らは、探して迷っていただろう」)
 私だけの薔薇が欲しい――そう囁いて小夜啼鳥の群れを召喚するゼラに、イアは死霊騎士を喚んで立ち向かう。彼の一薙ぎで鳥の羽ばたきが掻き消され、悲痛な残響となって木霊していく中で、イアの死霊術は尚も無慈悲に獲物を屠り続けていった。
「きれいなものはきれいだけども、白に赤と違いも分からないもの。惹かれて歩く彼女らの、気持ちにはきっと届かないねぇ」
 ――だから僕は、為せるだけ討ちましょう、と。迷わず僕のとこまでおいでね、そう言って微笑むイアの傍でまた一羽、哀れな眷属が塵となって消えていった。
「……ん。宿主の少女が限界だとしても、私のすべき事は変わらない」
 一方で、狩るべき獲物を前にしてもリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)の相貌には微塵の揺らぎも無く。吸血鬼狩りの少女はゼラの前に立ちはだかると、振り下ろされた大鎌を受け止め――そのまま持ち前の怪力を活かして、一気に薙ぎ払う。
「私は私の誓いを果たす。ただ、それだけ……」
 自身に向けられた殺意を察知し、見切りへと繋げていくリーヴァルディがゼラを引き付けている間、びいどろは迷彩を纏わせた海月を忍ばせて、死角から麻痺の一撃を叩き込んだ。
「あんまり動かないでね、その身体にひどくしたくないもの」
 ――目に見えてゼラの動きが鈍くなったその隙を、リーヴァルディは見逃さない。呪詛を宿した短剣を振りかぶり、彼女が狙いを定めたのはゼラの纏う黒衣。傷口を抉るように刃を奔らせると、忽ちの内に凝縮された呪いが黒衣に染み渡っていく。
「あかい薔薇は、きれいだけど。そんなに欲しいもの? 絶望や憎悪は、うつくしいの?」
 甲高い悲鳴を上げるゼラへ向けて、静かに問いかけるびいどろは――そのきもちは、ボクにはよく解らないみたいだと首を傾げつつも、言葉を続けた。
「……永い間を生きて、退屈したのかな。物語の幕引きだって、肝心なのだって」
 ゆらりと剣を掲げる死霊騎士の背後に立つイアもまた、終わりが近づきつつあることを知る。ああ、迷路のはては寂しかったろと囁いて――彼は静かに、廃城から覗く月を仰ぎ見た。
「あなたはまだ、帰れるかしら。それともこのまま、散るのかな――花の散るよに還るの、かな」
 ――結末がどうあれ、待っている子に伝えるためにも、目を逸らさずにいよう。けれど、リーヴァルディは天に運命を委ねることを良しとせず、血の聖杯を発動させてゼラの肉体を治癒することを選んだ。
「……限界が近いなら、別の場所から持ってくれば良い。お前達には、これ以上何一つ奪わせない」
 生命力を凝縮した血液が、みるみる少女の肉体に注ぎ込まれていくが――リーヴァルディは尚も己の体力と引き替えに、秘技を発動し続ける。ただそれだけだったのなら、一か八かの賭けになっただろう。
 しかし――彼女が黒衣にかけた呪いは、『黒衣の生命力を宿主が吸収して治癒する』と言うものだった。この具体性を伴った呪詛が発動したのは、リーヴァルディの持つ技術の高さか――或いは、彼女の意志の強さあってのことか。
「……それが私の誓い。滅びるのはお前だけよ、女吸血鬼ゼラ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

桜雨・カイ
絶望の歌に変えると言うのなら、今度は鎮魂歌に変えましょう
失った命は戻らなくても…死んでしまった後も苦しんでほしくありません
だから止めにきました

眷属が数でくるのなら、こちらも数で対抗します
「錬成カミヤドリ」と「なぎ払い」で戦います。

残りの錬成体は、大鎌を振るわれないように彼女の動きを封じにかかります
動けないのは辛いですよね、先ほどの彼女達もそう言ってました
これで終わりにしましょう
オデットさんのお姉さん、そしてあなたもにも静かな眠りがくるように。


東雲・咲夜
嗚呼、貴方は身体があらへんさかいこないなことしはったんやね
儘なりまへんな…
せやけどこのまま誰かの命を奪わせ続ける訳にもいきまへん
此処で終わらせます

渦巻く水柱の【属性攻撃】
桜吹雪の【範囲攻撃】を使い分け
あちらからの攻撃は桜色の光の【オーラ防御】や【見切り】で対応します

せやけど一進一退…
【激痛耐性】があるさかい重くなさそうな一撃ならわざと受けて
その隙を狙い【カウンター】で反撃
眩い光で生成された弓を構え
神様の命をも貫いた一閃の矢
ありったけの霊力を注ぎ込み威力を高め、放ちます
その黒衣ごとーー

全てが終われば穏やかな眠りを祈ります
ゼラさんにも、少女達にも…
還る魂の前では敵も味方もあらへんもの

🌸アレンジ可


フレズローゼ・クォレクロニカ
🍓櫻宵(f02768)と一緒
アドリブ等歓迎

希望を絶望に塗り替えるなんてダメ
オデットのお姉ちゃんの身体も返してもらう
お姉ちゃんの魂だけでもお家に帰れるように!
その身体で悪さなんてさせないんだ

わかった
ボクは後ろからキミの手助けをしよう
けれどお願いだから無茶はしないでね
楽しげな櫻宵に唇を尖らせ鼓舞
ボクは聖属性の白い魔法絵の具で攻撃してくよ!たくさん白薔薇を描いて全力魔法でばーん!
勘と空中戦を駆使し躱してく
『黄金色の昼下がり』で動きを止めるから

櫻宵
哀しみを塗り替えるように
その首をはねておしまい!

キミに贈る赤い薔薇きっと咲かせてくれるから
祈ろう
魂の安寧を
どうか笑って逝けるよう

ボクはそんな笑顔を描きたい


誘名・櫻宵
🌸フレズローゼ(f01174)と
アドリブ歓迎

あら、この子が元凶なのね
嫌ね醜いわーーその心が
せっかくフレズが歌った希望の夜明けの歌をまた絶望に塗り替えようだなんて……いけない子
その身体も、オデットのお姉さんの魂も…あなたから解放したげなきゃね

大丈夫
フレズはあたしが守るわ
破魔を刀に宿らせて
範囲攻撃や2回攻撃で眷属を斬り殺す
衝撃波と共にゼラをなぎ払い斬りこんでいくわね
第六感で攻撃を察知して特に間合いには要注意
見切りや残像で躱すわ
フレズが動きを止めてくれたなら
ダッシュで一気に踏み込んで【絶華】を
あなただけの薔薇を咲かせてあげる
真っ赤な死色の美しい華よ

絶望に飽きたあなたに死をあげる
帰りなさい?
骸の海へ



 ――もしあなたが絶望の歌に変えると言うのなら、今度は鎮魂歌に変えましょう。桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)はそう告げると、己の本体である人形を操る。
「失った命は戻らなくても……死んでしまった後も、苦しんでほしくありません。だから止めにきました」
 向こうが数でくるのならば、此方も数で――ヤドリガミの秘術で本体を次々に複製したカイは、念力で以ってそれらを操り、ゼラの召喚した眷属に対抗していった。十指に絡む糸が翻る度に人形たちは踊り、小夜啼鳥の群れが薙ぎ払われていく中で、フレズローゼ・クォレクロニカ(夜明けの国のクォレジーナ・f01174)も薔薇色の頬をぷいと膨らませて叫ぶ。
「希望を絶望に塗り替えるなんてダメ! オデットのお姉ちゃんの身体も返してもらう」
「あら、この子が元凶なのね。嫌ね、醜いわ――その心が」
 そんなフレズローゼを護るようにして立つ、誘名・櫻宵(誘七屠桜・f02768)の口ぶりはあくまで優雅なものだが――目の前のオブリビオンを見つめる、そのまなざしは刃の如く研ぎ澄まされ、剣呑な輝きを帯びていた。
「せっかくフレズが歌った希望の夜明けの歌を、また絶望に塗り替えようだなんて……いけない子。その身体も、オデットのお姉さんの魂も……あなたから解放したげなきゃね」
「うん、お姉ちゃんの魂だけでもお家に帰れるように! その身体で悪さなんてさせないんだ」
 意気込みを見せるフレズローゼに、櫻宵は微笑んで頷くと、破魔の力を血桜の刀に纏う。嗚呼――それでも囚われの慟哭を止めないゼラに、東雲・咲夜(桜歌の巫女・f00865)は桜銀の髪を月夜に靡かせながら、震える声を絞り出した。
「……貴方は身体があらへんさかい、こないなことしはったんやね。儘なりまへんな……」
 せやけど、と――顔を上げた咲夜には最早、微塵の惑いも無い。このまま、誰かの命を奪わせ続ける訳にもいかないと告げて、氷華と神籠――二振りの神器を構える彼女は、渦巻く水柱と桜吹雪を呼びゼラの無差別攻撃に立ち向かっていった。
「大丈夫、フレズはあたしが守るわ」
 軌道を変えて襲い掛かる眷属へは、櫻宵の振るう刀が衝撃波を伴って迎撃に当たり、後方からフレズローゼが援護を行う。
「わかった。けれどお願いだから、無茶はしないでね」
 何処か楽しげな素振りの櫻宵に唇を尖らせつつも、フレズローゼは辺りに白い魔法の絵具を振りまいて、沢山の白薔薇を描いていった。
「……動けないのは辛いですよね、先ほどの彼女達もそう言ってました」
 ――聖属性の魔法が次々に弾け飛び、ゼラの動きが一瞬鈍ったその隙を突いて、カイの錬成体が彼女を捕らえにかかる。呪われた大鎌の一撃を封じる為――しかし、ゼラは素早く戒めから抜け出すと、その勢いのままに鎌を振るって反撃に出た。
「一進一退……せやけど、これなら……!」
 桜色の光を護りとして、辛うじてその一撃に耐えたのは咲夜。身を引き裂くような激痛にも負けぬ、彼女の手に握られていたのは、眩い光で生成された弓矢だった。
「此処で終わらせます、神様の命をも貫いた一閃の矢……」
 ――ありったけの霊力を注ぎ込み、威力を増した天羽々矢が狙いを定めるのは、ゼラの纏う邪悪な黒衣。けれど、膂力に勝る敵が相手では分が悪そうだと、フレズローゼは素早く黄金色の昼下がりを発動させて、ゼラの動きを一時的に封じる。
「櫻宵! 哀しみを塗り替えるように、その首をはねておしまい!」
 繰り広げられる永遠のお茶会――其処に響く女王陛下の非情な命令に、忠実な配下は直ぐに従った。残像を纏う櫻宵が一気に踏み込むと、そのまま絶華の一撃を――空間ごと断ち斬る不可視の斬撃を、ゼラ目掛けて繰り出していく。
「あなただけの薔薇を咲かせてあげる。……真っ赤な死色の美しい華よ」
(「キミに贈る赤い薔薇。きっと咲かせてくれるから、祈ろう。……魂の安寧を」)
 ――櫻宵とフレズローゼの想いが混じり合う中で、咲夜とカイは穏やかな眠りがあるようにと、静かに祈っていた。犠牲者の少女たちと、加害者たるゼラにも――還る魂の前では、敵も味方もないと思ったから。
「……絶望に飽きたあなたに死をあげる。帰りなさい? 骸の海へ」
 引き裂かれ散っていく黒衣は、滴る紅に染まり――ああ、まるで桜の花びらのよう。その光景を苺月の瞳に焼き付けるフレズローゼは、廃城に舞う幻の如きそれへ手を伸ばしながら、ただ一途に願っていた。
(「どうか笑って逝けるよう――ボクはそんな笑顔を描きたい」)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クレム・クラウベル
面白いかどうかなど、どうでもいい
この物語はもう終いだ

祈りの火よ、灯れ
過去は過去へ。潰えたものは灰へ、あるべき元の姿へ
少女の身体への攻撃は避け黒衣を狙い焼き祓う
例えゼラの言葉通りになるのだとしても
罪のない身体を無用に傷付ける理由もない

それに僅かでも可能性があるなら
その身体だけでもオデットの元へ連れ帰りたい
……ただ危険から遠ざけただけで救ったなど、言えるものか
為せる事も為さぬ内に救いなど口にしたくない
信仰などではなくただの矜持、…否、意地なのだろう
身体を移り渡り生き長らえるお前と
どちらの諦めが悪いか測ってみようか

燃えて尽きよ、過去の残滓よ
此処は生者の世界。今を生きる者の世界
お前たちの居場所ではない


ティア・レインフィール
……遺体どころか、骨すら残らないなんて
あまりの所業に眩暈を覚えて
そして、自身にもヴァンパイアの血が流れている事への
言葉にならない感情で、震えを隠せず

少女の慟哭に胸を痛めながら
それでも猟兵となった理由を思い出せば
此処で躊躇い、足を止めるわけにはいかないと
神に短く【祈り】を捧げ
家族を大切に想う気持ちを込めて
【シンフォニック・キュア】による聖歌を【歌唱】します

もしこの歌が、オデット様のお姉様の心に届けば
敵の動きが僅かでも鈍るでしょうか

隙を見て、彼女の身体から出て行くよう
洗礼された儀礼用短剣で光の【属性攻撃】を行います

戦闘後、何か遺品になる物を探します
小さくても良い、何かオデット様の、支えになる物を



(「……遺体どころか、骨すら残らないなんて」)
 ぼろぼろと崩れていく、ゼラの死髪黒衣――彼女が憑依した少女が、なおも狂気に満ちた笑みを浮かべている姿を見て、ティア・レインフィール(誓銀の乙女・f01661)はその余りの所業に眩暈を覚えていた。
 ――ひとを道具のようにしか扱わぬ、悪逆非道のヴァンパイア。しかし、ティア自身にも、そのヴァンパイアの血が流れていることを思えば――言葉にならない感情が胸に溢れ、彼女は震えを隠すことが出来ないでいる。
「面白いかどうかなど、どうでもいい。……この物語はもう終いだ」
 そんなティアの葛藤と、ゼラの哄笑を断ち斬ったのは、断頭台の刃を思わせるクレム・クラウベル(paidir・f03413)の声だった。
「祈りの火よ、灯れ――過去は過去へ。潰えたものは灰へ、あるべき元の姿へ」
 厳かな祈祷文が読み上げられると同時、燃え上がる白い浄化の炎がゼラの黒衣を呑み込んでいき、苛烈な火刑の裁きを下す。
(「例えゼラの言葉通りになるのだとしても、罪のない身体を無用に傷付ける理由もない、か……」)
 ――それに、僅かでも可能性があるなら、その身体だけでもオデットの元へ連れ帰ってやりたかったのだ。そうだ――ただ危険から遠ざけただけで救ったなどと、決して言えるものか。
「為せる事も為さぬ内に、救いなど口にしたくない。これは、信仰などではなくただの矜持……否、意地なのだろうな」
 炎の中、必死に足掻くゼラと対峙するクレムは、白炎を操る手に力を込めて――ほんの微かに、口の端を上げてみせた。
「さあ……身体を移り渡り生き長らえるお前と、どちらの諦めが悪いか測ってみようか」
 ――少女の慟哭を耳にすれば、正直未だに胸は痛む。けれど、自分が猟兵になった理由を思い出せば、ティアは此処で躊躇い、足を止めるわけにはいかないと強く思った。
(「神よ……どうか、我等に加護を」)
 短く祈りを捧げた後、彼女が紡ぐのは穏やかな聖歌。家族を大切に想う気持ちを込めたこの歌が、もしゼラに支配された、オデットの姉の心に僅かでも届くのであれば――。
「燃えて尽きよ、過去の残滓よ。此処は生者の世界。今を生きる者の世界……お前たちの居場所ではない」
 彼岸と此岸の存在が火花を散らし――両者の住む境界を隔てるように、クレムの生み出す白き炎は鮮やかに燃え上がる。徐々に灰と化していく黒衣、そのいのちが尽きる瞬間を狙って、ティアの構える儀礼用の短剣が閃光となって飛来した。
「ゼラ……。彼女の肉体から、出ていきなさい……!」
「あ、ああ――また、消えるの……肉体を失って、魂さえも砕かれて!」
 ――最後の拠り所とした、オデットの姉の肉体を連れて行こうとゼラは足掻くが、彼女を救おうと奔走した猟兵たちの行動によってそれも阻まれる。
(「――還して、あげたいんだ」)
(「僕達も頑張るから、どうか君も負けないで」)
(「家に帰ろうぜ! 癒しが効くまで後少しだ」)
 少女の肉体に注ぎ込まれた癒しの力と、支配した筈の心へ何度も投げかけられた声。そして――。
(「お前達には、これ以上何一つ奪わせない。滅びるのはお前だけよ、女吸血鬼ゼラ」)
 ――黒衣にかけられた呪詛によって、黒衣本体に宿る生命力がじわじわと宿主に奪われていく中、ゼラに残されたものはもう何も残ってはいない。
「あ、私……の、薔薇……」
 彼方から聞こえてくる小夜啼鳥の囀りが告げるのは、常闇の世界の夜明けか――或いは、ゼラの死髪黒衣が迎える再びの死か。空へと響くその声は、酷く美しいものだった。

 ――何か遺品になる物があれば、とティアは思っていた。小さくても良い、何かオデットの支えになる物があれば、と。
「……ですが、本当にオデット様の支えになる存在が、此処には残っていたのですね」
 そんな彼女が視線を向けた先――其処には、外套に包まれて静かに寝息を立てる、ゼラに憑依されていた少女――オデットの姉の姿があった。
(「灯火よ、どうか導きを。あたたかな光の下、二度と凍える事のない様に」)
 少女を見守るクレムは、そっと唇の中で祈りを繰り返すと、彼女を助けることが出来たと言う事実にくしゃりと銀の髪をかき上げる。
 ――嗚呼、相変わらず自分は、神など信じていないけれど。誰かを助けようと足掻く者たちが居るこの世界は、やはり捨てたものではないのかも知れないと、クレムは思ったのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月05日


挿絵イラスト