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帝竜戦役⑩〜空の偽王、地上の羊を統べる

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #群竜大陸

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●浮遊岩諸島
 帝竜戦役の舞台である郡竜大陸は、ひと目見ただけでは把握しきれぬほどの様々な大地で構成されている。
 その中でも一際目を引くのが、この浮遊岩諸島であろう。
 郡竜大陸の周辺に浮かぶ天空城とは違い、巨岩が密集して浮かぶ地である。しかも、その浮島全てが独立した生態系を持つというのだから驚きである。
「ガア―――!!!」
 そんな浮島の一つにて、龍の咆哮が響き渡る。
 それは、一つの浮島において、「王」と呼ばれる一体のオブリビオン……ワイバーンの咆哮であった。
 この浮遊岩諸島の浮島一つ一つが独立した生態系を持つのと同じように、一つの島につき、一体のオブリビオンが王として支配しているのだ。

 そのワイバーンが咆哮する度に、浮島の草陰や木々の合間にて動き回る奇妙な生物たちがいた。
 彼らはワイバーンの主な食料の一つである。
 名を『夢見羊』。一見普通のもこもこした綿あめのような毛を持つ羊であるが、彼らは羊以上の俊敏性を持ち、王であるワイバーンから逃げ回っているのだ。
 しかも、彼らの毛はその名の通り、顔を埋めれば好きな夢が見れるという謎の特性を持っている。
 それ故に地上にたまたま落下した夢見羊の毛を使った枕や寝具は、心地よい夢の見られる高級品とされているのだ。

 まさか、その夢見羊の群生地が、この郡竜大陸であるとは誰も思わなかったことだろう。
「困っためぇ。困っためぇ。あのでかいそらとぶトカゲ困っためぇ」
 しかも、人語を解し、操るとは更に誰も思わなかったことだろう。
 だが、彼らは「王」たるオブリビオン、ワイバーンにホトホト困り果てていたのだ。
 救世主は何処。
 彼らはシクシク泣きながら、「王」を打倒し、彼らを追い回される悪夢から開放してくれる者たちを待ちわびていたのだった―――。

●帝竜戦役
 グリモアベースへと集まってきた猟兵たちに頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)である。
「お集まり頂きありがとうございます。帝竜戦役、皆さんの活躍のおかげで、順調に推移していっているご様子……本当にありがとうございます」
 再び頭を下げるナイアルテ。
 予知は出来ても彼女自身が戦いに赴くことはできず、他の猟兵たちを戦いに送り出すことしかできないことを心苦しく思っているのだ。
 だが、それでも苦しむ生命があるのだとすれば、彼女は猟兵たちに縋るほかない。

「はい、今回は郡竜大陸の浮遊岩諸島。その一つの浮島における『王』と呼ばれるオブリビオン……ワイバーンを討ち果たして頂きたいのです」
 この浮遊岩諸島の浮島ひとつひとつが、なんと一つの独立した生態系を築き上げているのだ。
 そこに現れたオブリビオンは『王』として、この生態系の頂点になって支配している。このオブリビオンを打倒し、生態系を救ってほしいのだ。
 この浮島に生息する奇妙な生物は『夢見羊』。見た目は普通の羊であるが、非常に俊敏であり、人語を解し話すことができる。

「ですので、まずは、この『夢見羊』の支援を得て、『王』と呼ばれるオブリビオン、ワイバーンを打倒してください」
 ワイバーンはドラゴンの亜種であるが、これがオブリビオン化したものである。
 人語は理解せず、ただただ、捕食対象である夢見羊を狩り立てることしかしない生態系の頂点である。
 といっても、この浮島はもともと、夢見羊たちが草を食む以外、変わった生態系もなく、彼らを絶滅されてしまえば、浮島の生態系は滅んでしまう。

「『夢見羊』たちは人語を理解し、話します。彼らの支援……もこもこした羊毛でワイバーンの攻撃を一度は肩代わりしてくれるでしょう。これを得て、ワイバーンを倒して下さい」
 そう難しいことではないが、夢見羊たちとのコミュニケーションを事前に取り、彼らの支援を受けることがワイバーンとの戦闘に影響が出るということは覚えておいたほうがいいだろう。

「可愛らしい羊さんたち……彼らの羊毛に顔をうずめて見たくなりますね。かわいいです……」
 はっ!とナイアルテはうっとりしそうな顔を引き締めて、取り繕うように顔を赤くしながらわたわたして頭を下げる。
「そ、その!それでは!よろしくお願いいたします!」
 いつも以上に深々と頭を下げて、ナイアルテは猟兵たちを送り出すのだった―――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『帝竜戦役』の戦争シナリオとなります。

 浮遊岩諸島へ進撃し、『王』と呼ばれるオブリビオン、ワイバーンを打倒しましょう。

 ※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。

 プレイングボーナス……奇妙な生物達の支援を得る。

 ※この戦場で手に入れられる財宝について。
 宝物「天空の冠」……「王」が被っている、奇怪な王冠型の宝石です。ひとつ金貨850枚(850万円)の価値がありますが、精神汚染の恐れがあり、売るべきかはわかりません。

 アイテムとして発行するものではありません。ロールプレイのエッセンスとして扱ってください。

 それでは、帝竜戦役を戦い抜く皆さんのキャラクターの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『ワイバーン』

POW   :    ワイバーンダイブ
【急降下からの爪の一撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【毒を帯びた尾による突き刺し】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    飛竜の知恵
【自分の眼下にいる】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    ワイバーンブラスト
【急降下】から【咆哮と共に衝撃波】を放ち、【爆風】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:小日向 マキナ

👑8
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 浮遊岩諸島に存在する一つの浮島。
 その一角にて、怯えるように縮こまっている羊たちの群れ。
「困っためぇ。まじでやばいぱっくんちょされる24時だめぇ」
 いまいち危機感のない声なのは、ご愛嬌である。だが、それでも確かに種の存亡の危機に瀕していることだけは確かである。

 彼らは『夢見羊』。
 この郡竜大陸……それも、浮遊岩諸島のある一つの島にしか存在しない固有種である。

「ガァ―――!!!」

 ひぇ。ぴょいんと飛び上がる夢見羊たち。
 この浮島の『王』であるワイバーンが空をぐるぐると飛び、捕食対象である自分たちを狙っているのである。
 このままでは種の絶滅まで24時間も持たないだろう。絶滅まったなし。

「誰かお助けだめぇ―――!!!!」
 悲痛な羊たちの声が浮島に響き渡った。
フランチェスカ・ヴァレンタイン
あら可愛らしい。せっかくですからモフモフさせていただきつつ…
ええ、たかが空飛ぶトカゲ程度、何のことはありません。どうぞご安心下さいな?

羊さん達の協力を得られましたら、空中戦闘機動で仕掛けると致しましょう
砲撃と爆撃を浴びせながら牽制し、急加速でドッグファイトに持ち込んでの斧槍の一撃などを
羊さんに攻撃を防いでいただいた際には的確にカウンターを叩き込んでおきましょうか

締めは、機動のついでに張り巡らせておいたUCの不可視の爆導索で一気に巻き絞めまして
「ソラを翔けるのでしたら、ええ。華がありませんとね? アナタに足りないものを添えて差し上げます…!」
一斉起爆で盛大に、大きな花火を咲かせると致しましょう



 帝竜戦役。それはアックス&ウィザーズ世界の存亡を賭けた戦いである。それと同時に郡竜大陸の一角、浮遊岩諸島に連なる一つの浮島の生態系の存続の危機を救う戦いでもあった。
 この浮遊岩諸島の浮島の一つ。名は未だないのだが、そこに生息する『夢見羊』。あまり知られてはいないが、彼らは人語を解し、話す奇妙な生物である。
 羊の姿をしているが、俊敏性に優れ、その羊毛は心地よい夢を見られる寝具になるのだ。その羊毛は顔を埋めるだけで幸せな気持ちになることであろう。
 そんな彼らを『王』として支配し、捕食し、絶滅するまで狩り続けようとしているのが、オブリビオンであるワイバーンである。
 空を飛び、得物である夢見羊たちを追いかけ回しているのだ。
「ひえぇ!お助け!お助けだめぇー!!」
 そんな夢見羊たちの群れからはぐれた一匹が、ワイバーンから追いかけ回され、あわや大顎の餌食にならんとしたその時、一陣の風が舞い荒ぶ。

「あら可愛らしい。せっかくだからもふもふさせて頂きつつ……」
 もう諦めかけていた夢見羊をワイバーンの牙から救ったのは、フランチェスカ・ヴァレンタイン(九天華めき舞い穿つもの・f04189)である。
 彼女は空を舞い、ワイバーンの得物となっていた夢見羊を抱え、その窮地を救ったのである。せっかくだから、と羊毛に顔をうずめてもふもふすれば、なんとも心地の良い感触である。
 思わずうっとりしそうになってしまうも、フランチェスカは気を取り直す。
「めぇー!?食べられてないめぇー!?あれ!?」
 夢見羊はてっきり、ばりぼりやられてると思ったら、いつのまにか美女に抱えられているのだから、驚愕に慌てふためいている。
「あら、そんなに慌てずとも。ええ、たかが空飛ぶトカゲ程度、何のことはありません。どうぞご安心くださいな?」

 フランチェスカは夢見羊を安心させるように微笑む。それは救世主というよりも女神のように夢見羊のつぶらな瞳に映ったことだろう。
「めぇー!神様仏様女神様ー!どうかお助けくださいめぇー!なんでもしますめぇー!」
 ええ、とフランチェスカは微笑む。
 それは誇張なしで女神のようなほほえみだったと、夢見羊は後に述懐する。

 ならば、とフランチェスカは、その大きな白き翼を広げる。背面に展開されるスラスターであるアウトレイジ・ブラスターが火を噴く。
 夢見羊を抱えたまま、フランチェスカは飛ぶ。目指すは空の偽王たるワイバーン!
 急加速の空中戦機動は、彼女の本分である。
「ガァ―――!!!」
 空の王は己であると言わんばかりにワイバーンは急降下からの爪による一撃をフランチェスカへと見舞う。
 だが、そんな攻撃、彼女に通用するわけもない。華麗に空を舞い、フランチェスカはひらりと躱す。
 巨躯と交錯する際にプロム・イスキュアスと呼ばれるマイクロミサイルの内蔵された重雷装ユニットが展開し、次々と追尾するミサイルがワイバーンへと放たれる。
 それはまさに空爆と言うべき攻撃であった。それに夢見羊は歓声をあげる。
「さあ、この程度で終わりではありませんよね?行きますよ!」
 彼女の白き翼が羽撃く。
 一気に距離を詰め、斧槍たるヴァルフレイア・ハルバードが一閃される。龍鱗に覆われた外皮を、その一撃が砕いて切り裂く。だが、その大ぶりの一撃の隙を付かれ、爪の一撃が放たれる。

「お守りするんだめぇー!女神様を傷つけさせないめぇー!」
 その一瞬の間隙を突いた攻撃を夢見羊の羊毛が柔らかく受け止め、無効化する。ぽふん!と気の抜けた音がして、ワイバーンの一撃は防がれる。
「ひつじさん、とてもナイスアシストですね?助かりました」
 カウンターの斧槍の一撃が強かにワイバーンを打ちのめし、失墜させる。

 だが、それで終わりになるわけではない。
「ソラを翔けるのでしたら、ええ。華がありませんとね?アナタに足りない物を添えて差し上げます……!」
 そう彼女の言葉は事実であった。ワイバーンにないもの。フランチェスカにあるもの。それは華やかさである。

 虚空に踊り 繰り爆ぜるもの(ブラスティング・サイコビット)。それは彼女のユーベルコードである。不可視である念動式ワイヤーアンカーをすでにワイバーンを失墜させた場所へ張り巡らせていたのだ。
「制御は少々手間ですけれど、と……すでにアンカービットは射出ずみです。出来る女は抜かり無く準備を惜しまぬものです」
 すでにその一撃を放つ準備はできていた。彼女の手が宣告するように掲げられた瞬間、ワイヤーアンカーに接続された爆導索がワイバーンの体を締め付ける。
 轟音が響き、一斉に起爆した爆薬が、まるで華のようにワイバーンを浮島の空に咲く。
 丸焦げになって今度こそ、浮島の大地に落ちていくワイバーンを流し見ながら、フランチェスカは優雅に一礼するのだ。

「爆薬の華、ご覧になられまして?それでは、ごきげんよう?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

緋神・美麗
絡み・アドリブ歓迎

こんなモフモフな羊を狩り尽くそうなんて放っておけないわね。相手がオブリビオンな以上、容赦なく叩き潰すわよ。

夢見羊と言葉を解し会話が出来るのはありがたいわね。コミュ力・礼儀作法・動物使いを駆使して支援をお願いするわ。
「あれは私達が潰すからあなたたちも力を貸して。お願いよ。」

上空からの急降下攻撃が得意みたいね。それならそれを利用させてもらうわよ。
急降下攻撃に合わせて超巨大電磁砲でカウンターを仕掛ける
先制攻撃・クイックドロウ・見切りで後の先を取り、誘導弾で確実に当て、鎧無視攻撃・二回攻撃・属性攻撃・衝撃波で確実に潰す

「最後にお願いがあるんだけど、少しの間もふらせてくれないかしら。」



 郡竜大陸の一角、浮遊岩諸島。それは一つ一つの島に独立した生態系を持つ、驚異なる島々である。
 その一つの島において、一体の『王』と呼ばれるオブリビオンが存在していることは、すでにグリモア猟兵から齎された情報によってわかっている。
 ワイバーン。それはアックス&ウィザーズ世界において、竜の亜種である。人の言葉を解さず、荒ぶる本能のままに生きる暴君そのものである。
 そんなワイバーンが捕食対象としているのが『夢見羊』である。
 その触り心地は夢のような手触りである。さらには、この羊毛によって生み出された寝具は良い夢ばかり見ることのできる高級品である。
「ガァ―――!!!」
 そんな夢見羊たちへとワイバーンが襲いかかっている光景に出くわせば、思わず駆け出してしまうのが猟兵という存在である。
 庇うようにワイバーンからの爪から身を挺して守ったのは、緋神・美麗(白翼極光砲・f01866)である。

 彼女は庇った夢見羊と共に茂みへと転がり込んで難を逃れた。彼女の抱えた夢見羊の羊毛のふわふわもこもこな感触は、美麗を夢中にさせてしまったかもしれない。
「こんなモフモフな羊を駆り尽くそうなんて放っておけないわね」
 夢見羊を腕から開放してあげると、夢見羊は、めぇー!?と、驚愕に鳴くのだ。もうすでにワイバーンの胃袋の中だと思っていたのだろう。
 こんなに可愛いのに食べてしまうなんて本当に信じられないと美麗は、決意を新たにする。
 相手がオブリビオンである以上、容赦はいらない。叩き潰してやるのだ。

「めぇー!?あれー!?あの空飛ぶトカゲにぱっくりされてぽっくり逝っているとばかり思っていたのにめぇー!?」
 夢見羊はすっかり混乱している。それもそうだろう。自力では逃げられなかったのだから。それに目の前にいる猟兵である美麗の姿にも驚きを隠せなかった。
「落ち着いて?ね?あれは私達が潰すから、貴方達も力を貸して。お願いよ」
 それは美麗にとっては打算のない言葉だった。
 真摯に。言葉を尽くせば、同じ言葉を解し、使う者同士である。わかりあえないことなんて一つもないはずだ。
 美麗の言葉はしっかりと夢見羊へと届いたのだろう。彼女の言葉につぶらな瞳を輝かせて、こっくりと頷くのだ。
「めぇー!任せてくれめぇー!心強いんだめぇー!」
 よし、と美麗は頷きを返す。お互いに笑い合ってから、茂みから飛び出す美麗。

 それを目掛けて美麗へと急降下を仕掛けてくるワイバーン。先程、得物である夢見羊を横取りされたことが余程腹に据えかねているのだろう。
 美麗のことを己の得物を横取りした相手と見て、憤怒の咆哮を上げて、襲いかかるのだ。
「上空からの急降下攻撃が得意みたいね!それならそれを利用させてもらうわよ!」
 初撃を躱す暇はない。
 だから、美麗は奇妙な動物である夢見羊に願ったのだ。初撃をどうか防いでほしいと。
 それに夢見羊も応える。彼女が全力で自分たちを守ろうとしてくれているのであれば、自分たちもそれに答えなければならない。
 だからこそ夢見羊は急降下し、美麗を狙う爪の前に飛び込んだのだ。ぽふん!と気の抜けた音がして、ワイバーンの爪が夢見羊の羊毛に阻まれる。
 たった一度だけの防御。
 だが、美麗にはそれだけでよかったのだ。

「チャージ、セット!」
 彼女のユーベルコード、超巨大電磁砲(ハイパーメガレールキャノン)が発動する。彼女の持つ超小型極光砲増幅器が唸りを上げる。
 それはサイキックエナジーを増幅し、雷へと変換していく。彼女のユーベルコードによって生み出された巨大な鉄塊。それを打ち出すための溜めが必要だったのだ。
 それに、夢見羊の決死の防御でワイバーンは急降下の勢いを殺され、空中で態勢を崩している。
 ならば、それはさらなる致命を以て、ワイバーンを貫くだろう。
「いっせーのっ!!」
 放たれた巨大な鉄塊が空気の壁を突き破る音を響かせ、ワイバーンの体を諸共に吹き飛ばす。
 それは彼女のカウンター攻撃である。龍鱗に覆われていようとも意味をなさぬ巨大質量による一撃は、さらに追撃の二射目を以てワイバーンの体を遥か彼方まで吹き飛ばしてしまったのだ。

「やっためぇー!」
 わー!と夢見羊がその光景に歓声を上げる。ぴょんこぴょんこと跳ねる様は可愛らしく、美麗も思わず。
「最期にお願いがあるんだけど、少しの間もふらせてくれないかしら」
 え、そんなのでいいめぇー?と見上げる夢見羊。どぞ、という風に体を預けられれば、遠慮なく、と美麗は魅惑のもふもふへと顔をうずめるのだ。
 なんたる触り心地。柔らかくて、すべすべで、なのに軽く押し返してくるし、それが全然嫌ではない。
 ああ、このまま寝ちゃいたい。そんな誘惑に美麗はしばらく葛藤するのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルテネス・エストレア
泣かないで羊さん達
わたしがあなた達の物語を此処で終わらせはしないから
あなた達をその先の物語へと導く為に、此処へ来たのだから

羊さん達が安心出来るようにぎゅっと抱き締めて優しく撫でて
あらあら、なんて素敵なもこもこなの
ふわふわの羊毛、可愛らしいまぁるいフォルム、なんて至福な時間なの……!
……こほん、さあ『王』の退治に行くわ

羊さん達の支援はとても嬉しい
けれどあの子達に無理をしてほしくないから
事前に羊さん達に持続型の回復魔法をかけておきましょう

王よ、わたしがあなたの物語を終焉へと導くわ
おいで、夜色の水晶剣
星の加護を宿し、流星となりて王を討て
これは彼の者の願いを叶える星の魔法
悪夢を解き放つ星を、今此処に



 夢見羊。それはアックス&ウィザーズにおいて長らく、その存在を疑問視されていた奇妙な生物である。
 姿形は普通の羊そのものである。だが、彼らは人語を解し、話す。彼らは空の上から落ちてきたといい、その空というのがどこでるのか長らく謎であったのだ。
 だが、今回、帝竜戦役が勃発し、群竜大陸での戦いが始まって漸く、彼らの実態が判明する。
 彼らは郡竜大陸の一角、浮遊岩諸島の浮島の一つにしか存在しない生物なのだ。彼らの羊毛はどんな高級品にも勝る品質であり、その羊毛で作られた寝具で眠ることで悪夢を見ることはありえないとされるほどであった。

 そんな彼らも一体の『王』と呼ばれるオブリビオン、ワイバーンによって絶滅の憂き目を見ていた。
 地上の世界では貴重な羊毛であっても、ここ郡竜大陸にあっては唯の捕食対象でしかないのだ。

 めそめそと彼らは己たちが滅びるしかない運命にさめざめと泣いていたのだ。
「めぇー……もうダメだめぇー……あの空飛ぶトカゲのせいで、ぱくぱくぼりぼりされてしまうめぇー」
 運命を受け入れるしかないのか。戦うすべを持たぬ生物は淘汰され、捕食されるしかないのか。
 だが、そんな彼らの前に現れたのは、ルテネス・エストレア(Estrellita・f16335)である。
「泣かないで羊さん達。わたしがあなた達の物語を此処で終わらせはしないから。あなた達をその先の物語へと導く為に、此処へ来たのだから」
 ふわふわと風に揺れる柔らかな髪の毛に見上げる夢見羊たち。珊瑚の色をした瞳が優しげに細められ、柔和に微笑む姿は夢見羊たちに一時の安息を与えたことだろう。
 ルテネスの姿は10代の少女そのものであったが、彼女の優しげな雰囲気は夢見羊たちにとっては、女神のように思えたことだろう。

 そっと膝を折って、ルテネスは夢見羊たちを抱きしめ、羊毛を柔らかく撫でるのだ。少しでも安心してほしい。ワイバーンから受ける恐怖を和らげてほしい。そんな一心だった。
「あらあら、なんて素敵なもこもこなの。ふわふわの羊毛、可愛らしいまぁるいフォルム、なんて至福な時間なの……!」
 それはルテネスの思っていた以上の感触であった。これがアックス&ウィザーズ世界で高級品として出回るのも無理なからぬことである。
 こんなに……!とさすがの彼女も驚愕してしまった。
「めぇー!あ、あのー、助けてもらえるなら、がんばるめぇー!どうか役立ててめぇー!」
 わりと長い時間ルテネスは彼らを抱きとめていたものだから、ちょっと空気読んだ夢見羊が鳴いた。優しく抱きしめられているのはとても嬉しいのだけれど、ワイバーンの翼の羽撃きを聞けば、体が強張ってしまうのだ。

「……こほん、さあ『王』の退治に行くわ」
 気を取り直してルテネスが歩みをすすめる。そんな彼女にトテトテ付いてくる夢見羊。彼らは一撃であれば、オブリビオンの攻撃を無効化し耐えることができる。
 彼らを助けてくれるルテネスに出来ることはこれくらいだと申し出てくれたのだ。
「……とてもありがたいし、嬉しい。でも、あんまり無理もしてほしくないの。だから、ちょっとだけ、ね?」
 そういって夢見羊に持続型の回復魔法を掛ける。それは彼女の持つ優しさであった。その優しさを受けて夢見羊たちの羊毛はさらなる艶やかさを放つ。
 優しくされたら、誰だって優しくしたくなる。そういうものだ。
 だから、その優しさを知らぬワイバーンに、これだけの力となるのだと見せつけてやらねばならぬ。

「王よ、わたしがあなたの物語を終焉へと導くわ」
 見据える先にいるのは、上空にて翼を広げ得物であるルテネスと夢見羊をねめつけるワイバーン。急降下し、ルテネスに向かって放つ咆哮の一撃は、衝撃波と爆風となって彼女たちを襲う。
 だが、その爆風はルテネスに届くことはなかった。飛び出した夢見羊が、その衝撃波と爆風を一身に受け止め防いだのだ。
 しびび、としびれたようにルテネスの前に落ちる夢見羊。彼女のかけた魔法がなければ危なかったかも知れない。
 何も無駄になることはない。優しさに無駄なものなんてないのだから。
「おいで、夜色の水晶剣。これは綴る星の魔法……」
 彼女のユーベルコード、星綴(メテオール)が発動する。彼女の周囲に召喚されしは、夜色水晶剣。数多の剣が現れては宙に浮かぶ。
 静かにルテネスの声が紡がれる。それは星の加護を紡ぎし言葉。力ある言葉が、水晶剣に力を与え、さらなる飛翔能力を与えるのだ。

「星の加護を宿し、流星となりて王を討て。これは彼の者の願いを叶える星の魔法」
 珊瑚の瞳が決意にきらめく。
 もう決めたことだ。ルテネスは守る。あの愛らしくも慎まやかで、それでいて誰かを守ろうと身を挺することのできる生命を。
 彼女はそんな彼らを救う。守る。彼らの願いを叶える。これこそが、流星の魔法である。
 宙に浮かぶ水晶剣は星の煌き。空を飛び、ワイバーンへと突き立てられる姿はまさに流星雨。穿たれる一撃一撃は、その堅き龍鱗を粉々に打ち砕いていく。

「悪夢を解き放つ星を、今此処に」
 ルテネスの言葉は、まさに夢見羊たちの悪夢を打ち砕き、終わらぬ悪夢から彼らを開放する宣言そのものとなって、『王』たるワイバーンの体を散り散りに打ち砕くのだった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

シーザー・ゴールドマン
夢見羊か、人並みの知恵があるという事だし、生え変わりの時期の毛を売るなど繁栄する余地は多分にあるね。まあ、彼等が望めばだが。
ともあれ、それも安全を確認してからの話だ。

君達を苦しめるワイバーンを討伐に来た。
利害は一致している。協力してくれないかね?

『ウルクの黎明』を発動して超音速の高速機動戦闘でオーラセイバーを振るって戦います。
大技は最大速度で衝撃波を発しながらのすれ違いざまの横薙ぎ。
(先制攻撃×怪力×なぎ払い×衝撃波)

終了後、余裕があれば羊を枕に午睡を楽しみたいものだね。



 夢見羊の寝具。それはアックス&ウィザーズ世界においては、高級品であり尚且、希少品である。
 それは夢見羊の群生地が判明していなかったからである。彼らは人語を解し話す。だが、自身がどこよりやってきたのかと問えば、空から落っこちちゃっためぇ、とかそんな曖昧な絵空事のような事を言うものだから、学者たちは頭を抱えていた。
 今回、帝竜戦役が勃発し、郡竜大陸へと至らなければ、いつまでたっても夢見羊の種としての研究は進まなかったことだろう。
 さらに言えば、この浮遊岩諸島……その一つの浮島にしか存在しない奇妙な生物、夢見羊は絶滅の憂き目を見ていた。
 『王』と呼ばれるオブリビオン、ワイバーンが夢見羊を食料とみなし、捕食しているからである。
 オブリビオンは過去の化身である。だからこそ、生命維持のための食料は必要ない。だが、それでも一方的に夢見羊を狩り続けるのは、その嗜虐心と暴力的なまでの衝動を満たすためであった。

「ひぇ。お助けめぇ~!」
 俊敏な動きではあるが、空から追いかけるワイバーンにとって、開けた平野は格好の狩場である。逃げる夢見羊など一瞬で、その爪によって鷲掴みにしてずたずたに引き裂くことができる。
 だからこそ、わざと追い立て遊んでいるのだ。

 だが、その得物を横からかっ攫う存在があった。
 それはこの地において、『王』である自身の存在を脅かす者。猟兵である。
 追い立てられていた夢見羊を小脇に抱えて立つ、高級感溢れる真紅のシーツに身を包んだ男性……シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)は、ふむ、と一息ついて空に舞うワイバーンを見上げる。
 そして、己が小脇に抱えた夢見羊を見比べる。
「夢見羊か、人並みの知恵があるということであるが……」
「ひぇぇ。お助けめぇー!た、食べても多分、そんなに美味しくないめぇー!……あれ?」
 すっかりもうワイバーンに食べられた感で鳴いていた夢見羊であるが、自身が抱えられているのはワイバーンでないと気がついて、つぶらな瞳が輝く。
「ふむ。生え変わりの時期の毛を売るなど繁栄する余地は多分にあるね。で、どうだね」
 へ?とよくわかってないのか、とりあえず自身がワイバーンの爪から逃れられたということだけは理解している夢見羊を見ながらシーザーは考える。
 いや、今はそうではないな、と彼は頷き、空舞うワイバーンからの強烈な敵意に不敵に笑む。

「君達を苦しめるワイバーンを討伐に来た。利害は一致している。協力してくれないかね?」
 シーザーの言葉に小脇に抱えた夢見羊の体が、ぴょんこと跳ねる。それは願ってもない救世主の訪れであった。
 正に渡りに船。浮島に猟兵である。
「勿論だめぇー!もっちのろん、だめぇー!」
 毛を売る算段は、彼らの安全を確認してからの話しであったな、と時期尚早であったとほほえみながらシーザーは、急降下してくるワイバーンの姿をその金色の瞳で捉えていた。
 遅い。遅すぎる。

「楽しませて貰おう……そう思っていたのだが」
 彼のユーベルコード、ウルクの黎明(デウス・ポテスタース)がきらめく。輝く真紅のオーラが彼の体を包み込む。
 それは彼の持つ強大なる魔力に比例した戦闘力を跳ね上げさせるユーベルコードである。その状態になった彼にとって、ワイバーンの急降下攻撃など、獲るに足らぬものであった。

「我が身、器は人の身ではあれど……貴様には十分すぎるものであるな」
 急降下し爪を振るうワイバーンがシーザーへと突っ込む。だが、それは浅慮なる行いであったと言うべきだろう。
 超音速とも言える彼のスピードに誰もついていけるわけがないのだ。彼の手にはすでに魔力で形成された光の剣が手にあり、かのワイバーンの尾を撫で斬りにしていた。
 一拍遅れて地面に重い音を立てて落ちるワイバーンの尾。

「ガアアアアア―――!?!?」
 ワイバーンは何が起こったかもわからぬままに己の尾を喪った事実に混乱しながら、空を飛ぶ。
 他愛のないことだ、とその姿を見送りながら彼が此処にいる以上、この周辺にワイバーンが再び訪れることはないだろうと判断する。
 それは当然であったかもしれない。
 シーザーの圧倒的な戦闘力。魔力。そのどれもが一級品であり、それを敵に回すということがわからぬ知能すらないわけではないのだ。
 彼の金色の眼光は、その逃げ去るワイバーンを見えなくなるまで見続けていた。

「めぇー……お手伝いする暇もなかっためぇー……」
 夢見羊があまりの圧倒的な戦闘に、ぽかーんと半口開けてほうけていた。協力してくれと乞われたがやることがなかったのだ。
 ふ、とシーザーは笑う。何、気にするな、と。

「そうだ。せっかくであるから、君を枕に午睡でも楽しみたいのだが……いいかね?」
 実にスマートにシーザーは夢見羊の羊毛を枕に午睡を楽しむ。微睡むような、心地の良い感触。
 それは帝竜戦役という慌ただしくも厳しい戦いの最中において、シーザーに一時の安らぎを与えてくれるのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シン・ドレッドノート
つまり、夢見羊を困らせている空飛ぶトカゲを退治すれば良いのですね。
大丈夫、この私にお任せください。
あの天空の冠はしっかり頂戴してみせましょう(本音)。

まずは羊さんから情報を入手しがてら、ブラッシングでモフモフを綺麗にしてさしあげます。
どこか痒いところがあったら、言ってくださいね。

ワイバーンに対しては死角からの狙撃を行います。
飛んでくる敵から見えない場所で、出来れば少し高い場所が良いですね。
羊さんに手頃な隠れ場所を教えていただき、敵の視界に入らないよう援護をお願いします。

動きを止め、息を潜めて必殺の一撃を撃ち込むタイミングを見極め。
射程に入り、照準に捉えた瞬間に狙撃。鱗の薄い喉元を撃ち抜きます!



 帝竜戦役が勃発し、アックス&ウィザーズ世界において郡竜大陸は様々なオブリビオンが跋扈する魔境と化していた。
 それ以上に郡竜大陸は様々な光景を猟兵たちに見せつけていた。本当にこれが、一つの大陸であるのかと思うほどに特色ある大地が寄せ集められていた。
 その一角である浮遊岩諸島。その数々の浮島が連なる大地は、その中でもさらなる異色を放っていたのかも知れない。

 浮遊岩諸島の浮島一つ一つは、独立した生態系を築き上げているのだ。その島一つ取っても固有種のような奇妙な生物が生息しており、今回猟兵たちが向かった島も夢見羊と呼ばれる奇妙な生物の群生地であった。
 そんな平和と言っても良い島において、『王』として君臨するオブリビオン、ワイバーンがあった。
 オブリビオンは食事を必要としない。だからこそ、夢見羊たちは捕食される必要はないのだ。だが、ワイバーンは己の欲求、破壊衝動を満たすためだけに徒に夢見羊たちを狩りたてる。
 そして、ただの遊戯のように彼らを絶滅させんとしていた。

「つまり、夢見羊を困らせている空飛ぶトカゲを退治すればいいのですね」
 なるほど、と頷くのはシン・ドレッドノート(真紅の奇術師・f05130)である。彼は、早速現地へと向かい、夢見羊たちと接触し、彼らから『王』として浮島を支配しているワイバーンの情報を得ていた。
 彼らは一様に困ったような涙目でシンに訴えるのだ。
「そうだめぇー!あいつ、わけわかんないくらいぼーりょくてきなんだめぇー!仲間もいっぱいやられたんだめぇー!」
 このままでは自分たちは滅んでしまう。そんな種族存亡の危機に彼らは戦う術を持たず、途方に暮れていたのだ。
 そんな彼らをブラッシングしながらモフモフ綺麗にしているのがシンである。
「どこか痒いところがあったら、いってくださいね。なに、大丈夫、この私におまかせください」
 どん、と頼もしいシンの言葉に夢見羊たちは喝采を上げる。
 やっためぇー!とこれであの横暴たる『王』であるワイバーンから開放されると喜んだのだ。

「そうそう。それでこの大地の地形について教えて頂きたいのですが……」
 そんな彼が彼らから協力を取り付け、得た情報。それは……そう、それは狙撃ポイントである。手頃な場所でいいのだと、夢見羊に教えてもらったのだが、彼らが提供してくれた情報は、彼にとっては有益以上に絶好の狙撃ポイントであった。
 できれば少し高い場所がいいというリクエストにもばっちりと答えてくれた。
 これで準備は全て整った。
 後は引き金を引くだけである。

 このポイントであれば、空を飛ぶワイバーンであっても気が付かれることはない。彼のユーベルコードを最大限に活かしつつ、空を飛び、対象を眼下に捉えなければ効果を発することができなワイバーンのユーベルコードをも封じることが出来る。
「……流石、夢見羊さん。良い場所をご存知で」
 純白のロングバレルの銃を手に、彼は待ち構える。
 恐らく、彼だけでなく他の猟兵達もワイバーンを討つためにやってきているだろう。彼らの攻撃にさらされたワイバーンは、傷つき、その傷を癒やすために必ず自身の巣である此処……夢見羊たちが教えてくれたポイントにやってくる。
 己の巣は安心するだろう。
 それこそが、彼が突くべき最大の好機。

「必中…この弾丸は外れない!」
 シンのユーベルコード、緋色の弾丸(スカーレット・バレット)が巣へと戻ろうとするワイバーンの姿を捉えて輝く。
 その精霊石の銃から放たれた弾丸は、過たず必中一射、かの『王』たるワイバーンの龍鱗薄き喉元へと吸い込まれるようにして命中し、その体を打ち貫く。
 絶叫じみた砲口がシンまで届くことはなかった。
 彼は撃った次の瞬間には、即座にポイントを捨て移動を開始していた。優れた狩り人は、見極めも優れている。

「これ以上の追撃は必要ないですね。ふふ、あの天空の冠。あれはしっかり頂戴しましょう」
 シンにとってそちらの方が重要であったのだろう。
 落ちていくワイバーンの巨躯を視界に捉えながら、彼は彼の追い求める宝物目掛けて浮島を駆け抜けるのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

モルツクルス・ゼーレヴェックス
「いるっすよ!ここに一人!」
ま、自分がヒーロー名乗るのもどうかと思うっすけどここは堂々と!
「羊諸君!この島を愛して住まう羊諸君!」
大きく声を張って、彼等を勇気づける努力をば
「あれなるワイバーンは確かに怖い!大きい!強い!しかしながら!逃げてるだけでいいんすか?助けられるのを待って、食われるがままでいいとでも!?」
ネゴシエーションの基本は偉くなったつもりの演技
正答だと信じる心を押し出して
「戦いましょう!自分は部外者に過ぎない!ひ弱な魔術師にしか過ぎない!しかし!」
デモンストレーションで魔術を見せて
「もし貴殿方がその羊毛で護ってくださるならば、必ずやあれなる羽根つき蜥蜴を焼き落としてみせるっす!」



 郡竜大陸、それはこの帝竜戦役が勃発し、戦場となっている大地の名である。
 その大地は様々な光景を猟兵たちに見せつけていた。ありとあらゆる想像も付かぬような大地が広がり、その姿は様々な世界を渡り歩く猟兵達出会っても尚、驚愕に満ちたものであったことだろう。
 その一角にあるは、浮遊岩諸島。その地はいくつもの浮島が連なる大地であり、その浮島ひとつひとつに独自の生態系が成り立つ、驚異なる大地なのである。
 浮島に存在するは『王』と呼ばれるオブリビオン。
 彼らは様々な支配を、その島へと強いる暴君そのものである。此処、夢見羊たちの群生地である浮島にもまた『王』たるオブリビオンが存在していた。

 その名はワイバーン。
 アックス&ウィザーズにおいて竜の亜種である。人語を解さない。逆に夢見羊たちは人語を解し、話す。
 その差は如何に。だが、そんな夢見羊たちも絶滅の憂き目を見ていた。ワイバーンに、ただただ、溢れる破壊衝動を満たすためだけの玩具として狩りたてられているのだ。
 夢見羊たちに戦う術はない。ただ滅びゆくことしかできない。
 彼らを救う者は未だ現れず、救世主と呼べる者は現れないのか。
「ガァァ―――!!!!」
 ワイバーンの咆哮が嘲笑う。それはこれまで幾多の猟兵が攻撃を加えてきた痕があった。だが、それを癒そうと夢見羊たちを捕食するために、彼ら最期の安息の地を蹂躙しようと飛来したのだ。
 慌てふためく夢見羊たち。混乱の最中、逃げ惑うしかできない。ああ、自分たちを救ってくれる者は現れないのか―――。

「いるっすよ!ここに一人!」
 その声は高らかに響いた。
 モルツクルス・ゼーレヴェックス(素敵魔術師・f10673)は、オラトリオの翼を広げ、夢見羊たちとワイバーンとの間に割って入ったのだ。
 自分がヒーローを名乗るのもどうかと思うと、彼は自嘲したが、これも彼ら夢見羊たちを救うためである。
 己を鼓舞する。それは自身を救うことと同じでも在る。彼がここで立ち上がらなければ、夢見羊たちは無残にもワイバーンの牙と爪の餌食と成ってしまうだろう。
 それは絶対に許してはならないことだ!

「羊諸君!この島を愛して住まう羊諸君!」
 故にモルツクルスの言葉は大きく響く。声を張る。胸を張る。彼らを勇気づけなければ、またこのようなことが起きた時、自身を助けることもできない。
 だからこそ、彼は努力するのだ。
「あれなるワイバーンは確かに怖い!大きい!強い!しかしながら!逃げてるだけでいいんすか?助けられるのを待って、食われるがままでいいとでも!?」
 彼の言葉は真理であった。
 オブリビオン、それも『王』として浮島に君臨するワイバーンは恐ろしい。それは事実である。そして、助けを待って、ただ食われるままにあったことも。
 だからこそ、夢見羊たちは足を止める。逃げ惑うことをやめる。
 モルツクルスの言葉に耳を傾ける。
 彼の自身は正しいという信念。それが言葉となって彼らの心に響いていく。彼らが人語を解するのであれば、彼の言うこともまた解するであろう。

「戦いましょう!自分は部外者に過ぎない!ひ弱な魔術師にしかすぎない!しかし!」
 ワイバーンが飛翔するのが見えた。急降下し、その衝撃波と咆哮でもってモルツクルスを打倒しようというのだろう。
 だが、モルツクルスは退かない。退けるわけがない。一歩も下がってはならない。何故なら、彼の心には信念があり、彼は猟兵であるからだ。
「全ての始原、全ての終焉……其は炎、其は光……汝が力を此処に乞う!」
 彼のユーベルコード、自在太陽(アート・オブ・ザ・サン)が輝く。それは己の心に宿りし太陽である。己の心に太陽が燃え上がるかぎり、彼の放つ炎は消えることはない。
 衝撃波は、モルツクルスへと迫る。彼の生み出した炎では相殺できないだろう。だから、彼は歯を食いしばる。痛みに耐え、前を向くからこそ人々の心に勇気を灯すことができるのだ。

 だが、衝撃波は彼を襲わなかった。彼を護るように夢見羊たちの羊毛のクッションが衝撃波を防いでくれたのだ。
「めぇー!護るめぇー!」
 夢見羊たちの気の抜けた声が響く。だが、それはモルツクルスにとっては違う響きに聞こえた。
 確かに、そう聞こえたのだ。

「ならば!必ずやあれなる羽根つき蜥蜴を焼き落としてみせるっす!」
 ごう、と彼の放つ太陽に等しい熱量を秘めた炎が空を走る。
 それは生み出された炎全てを複合合体させて放つ、最大の一撃。モルツクルスの言葉を違えず、火球がワイバーンの体を包み、燃え盛る炎のまま大地へと失墜させるのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ネージュ・ローラン
もこもこで可愛い……。
っと、まずは協力をお願いしに行かないとですね。

言葉が通じるのなら単刀直入にいきましょう。
もし群れの中のトップらしき方がいるのなら探して説明します。
「あのワイバーンを倒しに来ました。一緒に貴方達の居場所を取り戻しませんか?」

協力してもらえたら無理のない範囲でワイバーンの気を引いてもらい、その隙に【天翔ける軌跡】でワイバーンの頭上を目指します。
地上の相手との戦闘は得意なようですが、自分が上を取られるとは考えもしなかったようですね。
そのまま降下の勢いをつけて蹴りを入れてやりましょう。



 浮遊岩諸島の一角、ある一つの浮島において、『王』と呼ばれるオブリビオンが存在していた。
 浮島は、その一つ一つにおいて独自の生態系を形成する。他の島へと影響を与えず、己たちだけで進化を遂げてきた奇妙な生物たちが存在するのだ。
 今回猟兵が向かったのは、その浮島の一つ……夢見羊と呼ばれるもこもこふわふわな羊そのものな奇妙な生物である。
 どこが奇妙なのか。普通の羊そのものであるのだが、彼らは人語を解する。さらに人の言葉まで喋るのだから、これは驚異的なことであろう。
 いや、確かに猟兵の中には賢い動物もいる。だが、彼らのように猟兵でもないのに人語を解する動物というのは、確かに奇妙であった。

 そんな彼らであっても、絶滅の憂き目を見ている。
 それは言うまでもなく、この浮島を支配している『王』たるオブリビオン、ワイバーンの存在である。
 オブリビオンは食事を必要としない。それは過去の化身であるが故であるが、この浮島において、ワイバーンは捕食のためではなく、己の身にある破壊衝動を満たすためだけに夢見羊たちを襲い、爪と牙とで襲い続けているのだ。

 そんな彼らを救わんと現れたのが猟兵達である。
 その一人であるネージュ・ローラン(氷雪の綺羅星・f01285)は、夢見羊たちの群れを探し出し、彼らと接触を図っていた。
「もこもこで可愛い……」
 思わずそんな言葉が漏れてしまうほどの愛嬌が、夢見羊たちにはあった。彼女は思わず己の目的を見失いそうに成ったが、なんとか持ち直す。
 彼女は夢見羊たちに協力を求めにきたのだ。人語を解するというのであれば、単刀直入に告げた方が良いだろう。
「何このきれいな毛並みの人が、長に用事なんだってめぇー」
 一匹の夢見羊に案内されて、この群れの年長者であろう、もこもこもこってした夢見羊の前にやってくるネージュ。
 トップの夢見羊を探していたとはいえ、こんな簡単でいいのだろうか。というか、夢見羊たちの、ほんわかした雰囲気に流されているが、彼らは警戒心がうすすぎる。だからこそ、ワイバーンに良いように狩られてしまったというべきなのだが……。

 だが、それでもネージュは思う。これが彼らの長所なのだ。のんびりほんわか。あの羊毛の豊かさは、心の豊かさだ。
 他者を信じて、他者を思う。そんな奇妙な動物たちを救いたい。そんな心から出た言葉は、ネージュの真なる言葉であったことだろう。
「あのワイバーンを倒しに来ました。一緒にあなた達の居場所を取り戻しませんか?」
 その真なる言葉は、異種族であっても変わらず響くことだろう。夢見羊たちと鳥わした約束は、ネージュの心に暖かなものを齎したことだろう。

 早速彼らは、ネージュの提案に乗ってワイバーンを引きつけるように平野を走る。
 元より俊敏な彼らは、ワイバーンの気を引きつつ、走り抜けている。
「もっと苦戦するかと思いましたが……」
 これまでに幾多もの猟兵たちの攻撃を受けているのだろう、ワイバーンもまた相当消耗しているようだった。
 これならば、夢見羊たちも追いつかれる心配はないだろう。それに完全にワイバーンは気を取られている。
 眼下にいる夢見羊にばかり見ているせいで、身を潜めるネージュの姿に気がつけないでる。
「大空に描け、星の軌跡……!行きます!」

 彼女のユーベルコード、天翔ける軌跡(シエルロクス)が発動する。それは彼女の力量に応じて、空を蹴って飛ぶことの出来るユーベルコードだ。
 彼女の力量であるのならば、それは自在に空を蹴って飛ぶ空の申し子となることだろう。
 ワイバーンは、己以外の存在が空を飛ぶということに、終ぞ想像することなどなかったのだろう。
 ネージュの美しい銀髪が太陽を受けて輝いた時、その青い瞳がワイバーンの姿を捉えた時、呆然と見つめることしかできなかった。
 彼女の空を舞い踊るようなユーベルコードは、まさに空に舞う綺羅星そのものであった。

「地上の相手との戦闘は得意なようですが、自分が上を取られるとは考えもしなかったようですね!」
 ネージュの舞は完全に空においてワイバーンの上を行く。
 己より高く飛ぶものを知らぬワイバーンは、直上を取られた瞬間、己の失墜を予感したかもしれない。
「これで―――!」
 彼女のダンスドレスが、綺羅びやかに広がる。瞬間、ワイバーンの脳天に叩きつけられるは、彼女の踵落とし。勢い付けられたその一撃は、ワイバーンの頭蓋を陥没させ、その巨躯を地面へと叩きつける。
 轟音がして、ワイバーンが地面へと失墜する。その上空からネージュは舞い踊るように優雅に降り立つ。

 そんな彼女の周りに夢見羊たちが一斉に集まってきて、もこもこな喝采を浴びせるのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レナーテ・フレンベルク
◎アドリブ連携歓迎
なに、この可愛らしい生き物……
私、改めて旅に出て良かったって思えるわ、ヒルデ(なでなで)
大丈夫よ、弱者を守るのも貴族の義務
絶対に守って見せるわ(もふもふ)

■戦闘
こうも空を飛び回られると攻撃すら難しいし
ここは待ち構える作戦でいきましょうか

心苦しいけど、まずはヒルデに羊達を抱えさせて即席の盾にするわね
背骨部分を地面に突き刺して固定させ、私自身もあくまで
吹き飛ばされない為に抱えた羊の盾にしがみつくわ(もふもふ)
そして、爆風を持ち堪えた後に続く攻撃を羊の盾でガード

その隙に【UC】で呼び出した死霊達を纏わりつかせて
動きを封じ、渾身の【呪詛】と私の怒りを籠めさせた
ヒルデの拳で叩き伏せるわ



 世界は一つではない。様々な世界があり、その世界は一つとして同じ世界などないのだ。
 そんな様々な世界を見てみたい。その願いを叶えた者にとって、アックス&ウィザーズ世界の郡竜大陸は、あまりにも目まぐるしい光景であったのかもしれない。
 その大地は、ありとあらゆる世界の縮図のように、知らぬ大地の姿を見せつけていた。
 その刺激は彼女―――レナーテ・フレンベルク(幽玄のフロイライン・f25873)にとっては、あまりに強かったのかも知れない。
 帝竜戦役がなければ、この大地へと向かうこともなかった。だかからこそ、今、彼女の目の前に広がる光景に心を奪われてしまった。
「なに、この可愛らしい生き物……」
 彼女の声は震えていた。初めて見る生き物。彼女の出身世界では見たことのない生物。その姿は羊そのものであったが、そのもこもこさ加減は寝具にすれば高級であり且つ希少の品となるものである。
 さらに人語を解し、話すことができるとなれば、レナーテの心を高ぶらせるには十分過ぎるものであったのかもしれない。
 彼女は手をのばす。夢見羊と呼ばれる奇妙な生物は、「めぇー?」と小首をかしげる。
 特に抵抗なくレナーテはその手にもふもふを手にしたのだ。

「私、改めて旅に出てよかったって思えるわ、ヒルデ……」
 ああ、なんて甘美な感触。レナーテは震える。なでなでと抱えた夢見羊の羊毛の滑らかさに感激していた。従者たる巨骸のヒルデに語りかけるも、視線はもうずっと夢見羊に注がれ続けている。
「ここにはひどい空飛ぶトカゲが幅をきかせてるめぇー!危ないので、早く逃げたほうがいいめぇー!」
 そんな彼女に夢見羊は警告する。そう、この大地は今、『王』と呼ばれるオブリビオン、ワイバーンによって支配されている。
 そのワイバーンは夢見羊たちは蹂躙し、己の破壊衝動を満たすためだけに捕食する必要のない夢見羊たちを爪と牙でもって虐げているのだ。

「大丈夫よ、弱者を護るのも貴族の義務。絶対に守ってみせるわ」
 それでも尚、レナーテは手を止めない。余程気に入ったのか、夢見羊を中々離さずにもふもふし続けているのだ。
 こうなる困ってしまうのは夢見羊である。あの空飛ぶトカゲ、めっちゃくちゃ怖いのである。こうやって好意的に接してくれているレナーテが傷ついてしまうのは本意ではない。どうにかしてこの場から離さないと……と考えた矢先にワイバーンの砲口が聞こえる。
「ガァァァァァ―――!!!」
 ぴょんこ。レナーテの腕の中で夢見羊が飛び跳ねる。あの声、ワイバーンだ、とすぐに気がつく。
 そして、その威容たるワイバーンの姿が空へと舞い上がる。
 だが、その姿はすでに多くの猟兵達の攻撃によって傷ついていた。鱗は砕け、喉元は銃弾を打ち込まれたのだろう流血で朱く染まっている。さらに頭蓋は陥没しかけ、尾は断ち切られている。

「なるほど。他の猟兵たちも貴方の仲間を守ってくれているようね。なら、私もここでかの暴君を討ち果たして、貴方に出会えたことを感謝のままに終わらせましょう―――ヒルデ」
 巨骸ヒルデの体が主の言葉に応えて動く。彼の背骨が大地へと突き刺さる。心苦しいけれど、ちょっと協力してね?とレナーテが言うと、一にもニにもなく夢見羊は快諾してくれた。めぇー!と気合十分にヒルデと共にレナーテを護る盾となるのだ。

「こうも空を飛び回られると攻撃すら難しいし……ここは待ち構える作戦でいきましょうか」
 未だ健在である両翼を勢いよくはためかせ、ワイバーンは急降下と共に衝撃波を伴う咆哮をレナーテたちに放つ。それは爆風となって彼女たちを襲う。
 だが、レナーテは何も心配していなかった。
 何故なら、彼女には巨骸ヒルデだけではなく、夢見羊たちの協力もある。かの暴君たるワイバーンの放つ爆風が何するものぞ。
 ぎゅ、とレナーテは夢見羊の羊毛にしがみついて、爆風に吹き飛ばされぬように耐える。もふもふとしているせいで、一瞬眠りに落ちそうになったのだが、それは言わぬが華である。

「……さぁ、行きなさい」
 彼女のユーベルコード、迫り来る死霊の嵐(ヴィルデ・ヤークト)が発動する。彼女の指先が指し示すのは、空舞うワイバーン。その王冠掲げし偽りの王を地に引きずり落とさんと、死霊たちが空を舞う。
 ワイバーンは、死霊達の存在に戸惑ったように混乱するも、足を捕まれ、翼を抑えられ、まとわりつき続ける死霊達の前に束縛の呪詛へと墜ちるのだ。

 失墜し、ワイバーンは大地で藻掻く。その姿は、かつて己が理不尽にも蹂躙した夢見羊たちの姿と同じであった。
 だからこそ、レナーテの瞳は怒りに燃える。この呪詛の力は、彼女の怒りである。たおやかに指が掲げられる。
「これが、私と……この子達の怒りと知りなさい、偽王。貴方を失墜させるは、己の弄んだ生命の一撃」
 ヒルデの拳に呪詛が集まる。それは渾身の呪詛である。レナーテの怒りの感情のままにヒルデの拳が振るわれる。
 巨骸の一撃は、過たず大地に失墜せし偽王の体を叩き潰し、完膚なきまでに粉砕して骸の海へと還すのだ。

 地響きがするほどの一撃で持って、偽王との戦いは決着を迎えた。
 だが、レナーテはしばらく、夢見羊たちに囲まれて心安らかなる時を過ごすことだろう。
 巨骸ヒルデは、微睡みのレナーテの影となりて、主人の眠りを妨げる者なき浮島の一時を主の気が済むまで、見届けるのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月09日


挿絵イラスト