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帝竜戦役⑧〜歌声のちに蟹鍋

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #群竜大陸

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●歌声は響かない
「いやー、ここは平和よね。帝竜様様って感じ」
「これでいい男に宝石貰って悲しい恋の一つもできれば言うことないんだけどねー」
「悲恋前提? いや私も好きだけどさ」
「ここ蟹しかいないもんねー。流石にいくら同じ水生生物でも選ぶ権利があるっての」
「まあ、昔は私たちの肉が不老不死の薬になるとかいう大嘘信じた連中に狙われたけど、ここにはそんなバカ来ないし、それだけでもありがたい話じゃん」
「あ、でも、なんか猟兵だかいうやつらが攻めてくるって話よ?」
「げ、めんどくさー。パスできない?」
「イケメン多いらしいけど?」
「よっしゃ捕まえよう」
「美人も多いらしいけど?」
「身ぐるみ剥いで沈める方向で」
 ぐだぐだとそんな話を続ける下半身が魚の女たち。その傍らには、数百メートルもありそうな山……もとい蟹が聳え立っていた。その全く動かない蟹に触れないようにしながら、女たちはだらだらとお喋りを続けるのであった。

●鍋はまだ煮えない
「皆さん……今日も戦争お疲れ様です……」
 アレクサンドラ・ヒュンディン(狗孤鈍狼・f25572)が集まった猟兵たちにぺこりと頭を下げる。
「皆さんのおかげで群竜大陸の先へと進むことができています……今回はまた新たな戦場の、『不死蟹海岸』という所へ行っていただきたいのです……」
 その不死蟹とやらを相手取るのか、という質問に、アレクサンドラは少し考えて首を横に振る。
「直接の敵は、『魅惑のマーメイド』という、人魚の集団です。彼女たちは槍で突っついたり、水流に乗って攻撃してきたり、同士討ちを誘う歌を歌ってきたりします……いい男と宝石類に目がないみたいなので、お金持ちやイケメンの方は特にご注意ください……」
 恐らく大真面目に言っているのだろう、アレクサンドラの表情は変わらない。
「基本は彼女たちの相手をすればいいのですが、ここには『不死蟹』という体高数百メートルの超巨大蟹がたくさんいます。彼らは普段は温厚でじっと動かないのですが、騒音や衝撃や臭いにとても敏感で、そう言ったものを感じるとその巨体で発生源を潰しにかかってきます……戦っても勝てる相手ではないので、何とか刺激しないようにしてください……」
 さすがにどんな僅かなものでも、とまではいかないが、人がちょっとうるさい、臭いと感じる程度のものだと十分危険だと思っていい。もちろん蟹を攻撃するなどもっての外だ。
「人魚たちは蟹を刺激しない音域の声を出せるよう改造を受けています。水の扱いにも長けているので、彼女たちの自爆を待つ、ということはできないでしょう。幸い普通に武器を振り回せる程度には蟹は間隔をあけているので、全く動けない、ということはありません」
 動きに制限がかかる中、自由に動いてくる敵と戦えということらしい。普段とは違う戦い方を考える必要がありそうだ。
「あと、脱皮した子蟹の殻が海岸に落ちているのですが、これは『生命の書片』と呼ばれ、芳醇な出汁が無限に出てくる極上品です。何でこんな名前なのかは分かりませんが、価格はなんと金貨750枚……売っても家に置いてもおいしいです……戦いが終わったら、持って帰っちゃってください……硬くて重いので、蟹になりたい人は被って防具にしてもいいかも……加工費は、ご自分持ちですが……あ、人魚は食べられませんし不老不死とかもありませんので、そこは気を付けてください……」
 アレクサンドラはそう言ってグリモアを起動し、猟兵を送り出す。
「それでは皆さん……お気をつけて……」


鳴声海矢
 こんにちは、鳴声海矢です。
 今回は群竜大陸で蟹を掻い潜り人魚の討伐です。
 今回のプレイングボーナスはこちら。

『プレイングボーナス……大きな音や振動、匂いを発さずに戦う』

 不死蟹たちは音や振動、匂いを感じるとその発生源を踏み潰そうとしてきます。体高数百メートルなので、踏まれたら猟兵でも無事では済まないでしょう。刺激しなければ襲ってはこないので、いかに刺激せずに戦うかがポイントとなります。
 敵の人魚たちは蟹を刺激せず戦えるよう改造を受けているので、気にせず歌声や水流をガンガン使ってきます。自爆待ちの戦法は使えません。
 また戦闘後には『生命の書片』と呼ばれる不死蟹の殻が拾えます。極上の蟹出汁で、価格は金貨750枚。当然ながら脱いだ殻に蟹は興味を持ちませんので、持って帰り放題です(やっぱりアイテムとしては発行されません)。
 それでは、プレイングお待ちしております。
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第1章 集団戦 『魅惑のマーメイド』

POW   :    人魚の槍
【トライデント 】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    水を得た魚
【水の中に入る。または大量の水を召還し 】【自由自在に泳ぎまわり奇襲をかける。】【水の中で活性化されること】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    魅了する歌声
【同士討ちを誘発させる歌声 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。

イラスト:chole

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

月凪・ハルマ
……此処の人魚、なんかやたら俗っぽいなオイ

けどまぁ、宝石の類が好きって情報は使えそうかな

◆SPD

さて、まずは蟹への対処だな
周囲の砂を身体や衣服に擦り付けて、匂いを誤魔化そう

それから【迷彩】で姿を消し、【忍び足】で
【目立たない】様に戦場を移動

撃破対象の人魚を発見したら【錬成カミヤドリ】を発動
複製した宝珠を人魚が気付くかどうか、くらいの距離に置いておく
一応キラキラしてるし、宝石っぽく見えなくもない筈だ
尚、実際どの程度の金銭的価値があるかは知らん

人魚が複製宝玉に気を取られたら、【武器改造】で
魔導蒸気式旋棍を刀剣状に変形させて、【早業】で
急所を狙い攻撃(【暗殺】)


『生命の書片』は余裕があればという事で



「……此処の人魚、なんかやたら俗っぽいなオイ」
 月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)は事前に聞いた人魚たちの会話からそんな感想を抱く。確かにあの会話からは、伝承にあるような儚く美しいマーメイドのイメージなどこれっぽっちも感じられない。だがその性格は利用できるとハルマは踏んでいた。
 まずは砂を自分の体や衣服に擦り付け、匂いを消し、そのまま目立たないよう忍び足で人魚たちへ近づいていく。さらに【錬成カミヤドリ】を使い、自身の本体である宝珠を複製。その一つを人魚たちがギリギリ気づきそうな場所まで転がした。

「そうそう、でさー……」
 相変わらずとりとめのないお喋りに興じる人魚たち。しかしそのうちの一体が目の端に光るものを捕らえる。
「ん……?」
 目を凝らしてよく見ると、どうもそれは宝石っぽい。しかも他の仲間はそれに気づいていないようだ。これはチャンス!
「あ、ちょっと急用思い出したからー」
 そう言ってその人魚は仲間たちのもとを離れていく。仲間たちも何かくだらない事でもしに行くのだろうと、特に引き留めもしない。
 やがて浜へと上がった人魚は、転がっている光る弾を見て歓喜の表情を浮かべた。
「あ、やっぱ宝石じゃん! どこから転がってきたんだろ……まあいいか、いっただきー!」
 やはり宝石の類だと確信し、飛びつく人魚。その姿を、ハルマは物陰に隠れ監視していた。
(実際どの程度の金銭的価値があるかは知らないけどな)
 ハルマは心の中でそう言いながら、人魚の動向を見守る。そして人魚が完全に宝珠に気を取られていると確信した瞬間、トンファー型ガジェット『魔導蒸気式旋棍』を即興で刀剣に組み替え、音もなく突き出した。
「きゃっ!?」
 その刃は人魚の手を掠め、宝珠を取り落とさせる。人魚は一瞬その行方に目をやるが、すぐに刃が来た方に目を向け、そちらへ水流を発生させた。
 水は器用に蟹を避けながら、見えない敵がいると思しき方向へ流れていく。
 ハルマはその水を素早く飛び越え、忍者の眼前に迫った。
「誰か……!」
 人魚が助けを呼ぶ、その一瞬前に、暗殺者の如き早業で人魚の胸を貫き、とどめを刺した。
 人魚が倒れ込み消滅したのを確認し、『生命の書片』を探すハルマ。幸い他の人魚には気づかれなさそうな場所に打ち捨てられているのを発見、入手に成功する。
 こうして静かに、人魚と猟兵の戦いの幕は上がったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
アドリブ・連携OK

(んー、静かにしてないと危ないねえ。)
(で、相手は水を召喚して泳ぎ回れる。)
(まあ、何とかなるかな。)

まずはできるだけ忍び足で蟹を刺激しないよう静かに動いて敵を探そう。
向こうもあたしを見つけたら大量の水を召喚してくると思うけど、
泳ぐのはあたしもそれなりに出来るからねえ。
息を止めて水面に出なければ、泳いでもあんまり音は出ないしね。
【瞬迅斬鰭】で泳いで加速して、敵を切り裂いていくよ。

(イケメンでも金持ちでもない変な生き物が相手で悪いけど。)
(さっさと倒させてもらうよ。)



(んー、静かにしてないと危ないねえ。で、相手は水を召喚して泳ぎ回れる)
 ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)は、心の中で今回の依頼において注意すべきことを整理する。
(まあ、何とかなるかな)
 ある程度の逡巡の末そう判断し、ペトニアロトゥシカは忍び足で蟹の間を縫いながら進み始める。
 程なくして、砂浜の向こう、遠浅の海で何体かの人魚が集まりお喋りしているのが見えた。

「なんか帰ってくるの遅くない?」
「ていうか、そもそもこの蟹しかいないとこでどんな急用があるってのよ」
「ねぇなんか……変なのいない?」
 仲間が戻ってこないことをようやく不審に思い始めたのだろう。人魚たちは浜の方に目を凝らし、そこに動く人影を見つける。
「あ、ほんとだ、何あれ。まさか……」
「とりあえず……沈めてから考えよう!」
 オブリビオンとしての性か、あるいは根も葉もない噂で肉を狙われ続けた記憶故か、見慣れぬ存在が敵であることを前提にし、水流に乗って浜へと素早く移動する人魚たち。
 その動きから発見されたのを察したペトニアロトゥシカは、自分からも水の中に飛び込んで人魚たちを迎え撃った。高い水泳能力を持つペトニアロトゥシカは、人魚にも負けぬ早く精密な動きで水中を進み、その群れの中へ飛び込んでいく。
「やっぱり敵だ、こいつが猟兵ってやつだよ!」
 迫るペトニアロトゥシカを敵と断じ、人魚たちは手に持った槍や、尾びれの一撃で彼女を迎え撃つ。それは十分な破壊力を持つ一撃であったが、それに反して全く音や着弾点以外への衝撃はなく、彼女たちが不死蟹を刺激しないよう動けると言うのが嘘ではないことの証明ともなっていた。
 ペトニアロトゥシカはその攻撃をより深く潜って躱し、水面へは近づかない。
(息を止めて水面に出なければ、泳いでもあんまり音は出ないしね)
 心の中でそう呟き、このまま水中で勝負を決めてしまおう、そう考え両腕と体の側面に鋭いヒレを生やした。
「なんであんなとこにヒレ生えてんのよこいつ!」
 自分たちとは違う水中適応の形態に、人魚たちが毒づく。
(速く鋭く、いってみようか)
 それには答えず、ペトニアロトゥシカは人魚すら避け切れないほどの高速で泳ぎ、一気に彼女たちへと接近した。そしてそのまままるでただすれ違うかのように、何の抵抗もなく彼女たちの横を通り抜ける。
 一瞬のち、残された人魚の体がゆらりと揺れる。そのまま丁度人と魚の境目の部分から体が二つに分断され、水に溶けるよう消滅した。
(イケメンでも金持ちでもない変な生き物が相手で悪いけど。さっさと倒させてもらうよ)
 ペトニアロトゥシカは水上に上がらず転回しながらそう心の中で呟き、人魚たちに再度の突進をかけ、切り刻んでいくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メーティオル・スター
蟹出汁…!無限の蟹出汁…!売却用と自宅用で二つ欲しいけど、持って帰れるか…

不死蟹を刺激しないようにってなると、取れる戦い方も限られるね。
発砲なんかしたらえらいことになりそう。
足音も不安だから、マグネボードに騎乗して地面から少し浮いた状態で戦おうかな。

音を立てないためには、極力動かないこと。最小限の動きでカウンターを狙おう。
マーメイドが水の中に入ったらダガーを構えて待機。
局所的近未来予測システムで奇襲の軌道を予知して、突っ込んでくるところにダガーを突き立てる!
多少傷が浅くても、水に落ちてもがく音や血の匂いが刺激になって、蟹がマーメイドを攻撃してくれるんじゃないかな。



「不死蟹を刺激しないようにってなると、取れる戦い方も限られるね。発砲なんかしたらえらいことになりそう」
 メーティオル・スター(屑鉄漁りの見習い冒険者・f05168)は傍らに聳え立つ不死蟹を見上げて小声で呟く。この程度の声ならばまだ反応しないが、戦いに伴うような音は危険だろう。さらに少しでも音を立てぬようにするべく、ボード型の宇宙バイク『マグネボード』に乗り、地面から浮き上がる。
 メーティオルはそのまま海岸ギリギリへ向かい、人魚たちの群れに近づいていく。
「また何か来た……あれ、割とイケメン?」
「えー、あたし年下はパス」
「その前にあいつも猟兵でしょ! やっつけるわよ!」
 メーティオルの姿を見つけた人魚は、やはり水流を呼びそれに乗って攻撃を仕掛けた。人魚のその動きに対し、メーティオルはあえて水流の前に身を曝し、ダガーを構えたまま動かない。その目は水の流れとその中での敵の動きを観察、ここからどう動いてくるのかをじっと見定める。
 水流の中真っすぐ直進。3メートルまで近づいたところで急潜行。下を警戒させた上で浮上、同時に大量の水を召喚して相手を囲み、その頂上から飛び出して上から襲い掛かる。相手を捕まえたら水の中に沈めて抑えつけ、槍で喉を突いて仕留める。
「……! 視えた、その手は喰わない!」
 ユーベルコード【局所的近未来予測システム】、自分が攻撃を受けるという最悪の未来を見て、その対策を立てることで回避する技だ。それによってメーティオルの目は、これから自身が人魚にどう倒され、水の中に沈んでいくかをはっきり見た。
 そうして目を前に向けると、そこには大量の水が物理法則を無視し壁のようにそそり立っている。そして間髪入れず上から飛び出し自身に襲い掛かってくる人魚の姿が。
 メーティオルは余計な音を立てぬよう、無言でダガーを上に向けて突き出した。相手の軌道の上に突き出された刃は、敵の飛び掛かりの勢いも併せて深々とその体に突き刺さる。
「がっ……」
 声にならない声を上げ、血を噴き出す人魚。刃の短さからか致命傷には至っていないのを感じると、メーティオルは人魚の体をつかみ、あえて乱暴に、蟹がいる方の水辺へと放り投げた。
 ばしゃん! と大きな水音を立てて着水する人魚。
「ばはっ! くそ……え?」
 いかに音を立てず動けようと、他からの力が加わればその限りではない。その音と衝撃は間近にいた蟹を刺激し、蟹は怒りに燃えその発生源を踏み潰さんと足を上げた。
 慌てて逃げ出そうとする人魚だが、流れ出た血が体力を失わせ、がくりと体勢を崩す。
 その瞬間、その巨躯に相応しい太さの蟹脚が、人魚のいた場所を踏み潰した。
 それを確認し、これ以上蟹が興奮しないうちにと音を立てず浜の奥へ戻るメーティオル。ちょうどよく、そこには『生命の書片』が転がっていた。
「蟹出汁……! 無限の蟹出汁……! 売却用と自宅用で二つ欲しいけど、持って帰れるか……」
 とんでもない重さを誇るこの殻をメーティオルが無事に二つ持って帰れたかは、定かではない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ケイティ・ネクスト
 まー、音も振動も匂いもNGとなると暗殺者の出番だよにゃ。猫の跳躍で射程ギリギリから飛び掛かり奇襲。猫の爪でさっくり仕留める。
「丁度サシミが食べたいと思っていた所にゃん」
 マーメイド自身を足場にして次々と跳躍からの爪で仕留める。音と振動は猫の体躯と戦法なら全く問題無いけど、匂いだけはするにゃ。まー、暗殺者御用達の匂い消しクリームを使っておくにゃ。
「ほぉれ、くれてやるにゃ」
 乱戦になったら無造作に、身に着けている宝石類を投げて視線を引くにゃ。まー、高収入なお仕事でこの類の貢ぎ物には困らないからにゃ。
「お代はお前の命だ」
 小さく早い暗殺猫の本領発揮と行きますかにゃ。



「まー、音も振動も匂いもNGとなると暗殺者の出番だよにゃ」
 ケイティ・ネクスト(蠱惑の仔猫・f26817)はその言葉通り、足音一つ立てることなく静かに浜を進んでいく。さらにその体には特性のクリームが塗られており、匂い対策も万全だ。ケイティは傍らの蟹が単なる岩と変わらないかのように、何ら刺激を与えることもなく自然に進んでいった。
 海岸では、既に何人かの仲間を失った人魚たちが周囲を警戒し槍を構えていた。それを発見したケイティは、手足を地面に着け、尻尾をぴんと立てる。測るまでもない。そこは既に、自分の射程距離だ。
「丁度サシミが食べたいと思っていた所にゃん」
 本気とも冗談ともつかない軽い言葉と共に、ケイティ一足飛びに人魚の一体へと飛び掛かった。海岸に最も近かった人魚の一体。その背中に、ケイティは音もなく着地した。
「な……!」
 突然のことに人魚たちは色めき立つ。すぐに乗られた一人を囲むように人を整えるが、その動きが完了する前に、ケイティはその背を蹴り、再び跳躍し、別の人魚へ飛び移った。
 ケイティが飛び去ると同時に、その人魚の背中から大量の赤い飛沫が上がる。それから一瞬遅れて、人魚はぐらりと水面に倒れ込んだ。その背中には、急所まで届くほどの深い切り傷が残されている。
 その姿に次に飛び掛かられた人魚は恐怖の表情で自分の後ろを見ようとするが、それよりも一瞬早くケイティは飛び去り、そして同じように、足場にされた人魚は血の噴水を上げ倒れ込んだ。
「にゃん、にゃん、にゃんっ♪」
「く、来るな、来るなっ!」
 そのまま暗殺者の動きで飛び掛かっていくケイティに、水流を巻き起こし抵抗する人魚たち。さらに一部は水に潜って逃げようとするが、ケイティはその動きを見せたものから優先的に飛び掛かり仕留めていく。
 こうなれば、とばかりに、人魚はやけを起こしたように一斉にケイティに襲い掛かった。
 しかしそうされることも、ケイティの予想の内であった。
「ほぉれ、くれてやるにゃ」
 ケイティは身に着けていた宝石を無造作に遠くに放り投げる。どうせこの手の貢ぎ物には困らない仕事だし、今回の戦役自体が一戦で何十万、何百万と稼げるぼろ儲けの場なのだ。
 案の定、戦中であるにもかかわらずそちらに目を奪われ、ケイティから目を逸らす人魚。その一瞬は、暗殺者にとって宝石一つで買うに十分値する時間。
「お代はお前の命だ」
 重く、冷たい声と共に、その人魚の命が刈り取られる。小さく早い暗殺猫の本領発揮とばかりに、一跳びごとに魚が猫の獲物になっていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エレン・マールバラ
【SPD】※アドリブ・連携歓迎

Mermaid…、私の国だと不吉の象徴なんすよね…。さっきからやけに転んで砂まみれになってるのもそのせいっすかね?

No Sounds、No Vibration and No Smells…。OK Mermaids、ちょっと質問っすけど、『私とこのActor、どっちが価値があるっすかね?』(バインダーに挟まっていた俳優の写真を見せながら、小声で【選択UC】を発動、気持ち小さめの尋問官を出現させる)
…答えはわかりきってるんすけどね。Inquisitor=サン、HeadphoneでDeathmetalを聴かせてやるっす、Max Volumeで。きっと気に入るはずっす。



 エレン・マールバラ(不運と幸運は紙一重・f22565)は全身を砂にまみれさせ、海岸を進んでいた。先に人魚たちに挑んだ猟兵がそうしたように、自身の匂いを消すための工夫だろうか。
「Mermaid……私の国だと不吉の象徴なんすよね……さっきからやけに転んで砂まみれになってるのもそのせいっすかね?」
 違った。ただ転んで砂まみれなだけだった。だがたとえ意図しない所でも、海の香りの砂にまみれれば人の匂いは消せる。こういった偶然の幸運こそが彼女の持ち味であり、無意識の力でもあった。
 一方人魚たちは、集団でいたところをやられたためか、分散して周囲の警戒に当たろうと、一人ずつ分かれて別々の方向を哨戒し始めた。そのうちの一体が、エレンのいる浜の方へやってくる。
「No Sounds、No Vibration and No Smells……」
 その姿を見ながら、今回の戦いでの注意事項を自らに言い聞かせるよう復唱するエレン。やがてその一体がすぐ近くまで近寄ってくると、手に持ったバインダーから一枚の写真を取り出しながら声をかけた。
「OK Mermaids、ちょっと質問っすけど、『私とこのActor、どっちが価値があるっすかね?』」
 突然の質問に、人魚は槍を向けるエレンの方へ槍を向ける。流石にここまで何度も戦闘してきたのだ、いくら能天気な人魚たちと言えど警戒心は持っていた。
 いつでも水に乗って攻撃、あるいは撤退できるよう構えを取りながら、人魚は写真を見る。そこに移っているのはUDCアースでは世界的に有名なスパイ映画で主演を務めた俳優。もちろん男前だ。
「そりゃこの男に決まってるけど……何のつもり!?」
 先に宝石につられて命を落とした仲間のことを思い出しながら、人魚は相手を値踏みしながら答える。だが、その答えるという行為そのものが、エレンの策の内であった。
「……答えはわかりきってるんすけどね。Inquisitor=サン、HeadphoneでDeathmetalを聴かせてやるっす、Max Volumeで」
 それは予想していた答え。それ故ユーベルコードの効果は小さくなり、召喚された拷問感も小型で、行う拷問も音責めと効果の程はともかく、残虐性はやや低い。しかし、今回はそれでよかった。
 人魚の頭に取り付けられたヘッドホンから大音量のデスメタルが鳴り響く。それは近くにいた不死蟹を刺激し、彼は人魚を踏み潰すべく動き出した……近くにいるエレン諸共に。
 数百メートルの巨体を持つ不死蟹にとって、写真を見せられる距離など無いに等しい誤差。自身も蟹の射程内に入っていることに気づいたエレンは即座に踵を返して走りだし、人魚もヘッドホンをかなぐり捨て、水流に乗って反対側へ逃げだす。そしてすぐに、蟹の足が砂浜に着地し猛烈な砂煙が巻き起こった。
「こりゃ、運が悪かった……いや、良かったんすかね……」
 砂煙の後、そこには間一髪で逃れたエレンの姿が。しかし今蟹が動いたことで、敵の警戒は強まったようだ、何体かの人魚がこちらへ向かってくるのが見える。こうなってしまってはもう質問攻撃は使えないだろう。
 反対側から人魚が逃げないのを見ると、どうやらあちらは逃げきれなかったらしい。とりあえずその一体を戦果として、エレンはこの場を立ち去るのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
成程、厄介ですねぇ
何とかやってみましょう。

『FBS』を四肢に嵌めて飛行すれば「足音」と「震動」は消せますぅ。
「匂い」の方は「消臭剤」で何とか?

到着出来ましたら、『FRS』『FSS』を『光の結界』のエネルギー供給に使用し【耀衣舞】、『光速の突撃』で吹き飛ばしましょう。
相手を「蟹」に激突させることが出来れば、後は仕留めてくれるのではないかとぉ。
激突の際の「音」や「震動」で狙われそうなら、そのまま『光速の突撃』を移動手段に使い、「蟹の届かない上空」へ退避しますねぇ。
此方が飛行していれば「槍」は届きませんし、繰返して順に仕留めますぅ。

『生命の書片』は出来るだけ回収したいですぅ。



「成程、厄介ですねぇ。何とかやってみましょう」
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)はそう呟きながら、不死蟹の対策を取るべく浮遊兵装を操作し始めた。
 戦輪『FBS』を四肢にはめて浮くことで、足音と歩行に伴う衝撃を消す。さらには全身に消臭剤をかけることで、匂いにも対策だ。
「蟹が動いた……こっちに敵がいるよ!」
 二体の人魚が槍を構え、るこるのいる方へやってきた。先刻の蟹の踏みつけを確認しに来たのだろう。
 るこるは音もなく飛行し、人魚たちの側面へと大回りで移動した。人魚たちは蟹に気を取られているようで、そちらには気づかない。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その衣を纏いて舞を捧げましょう」
 そして蟹との間に人魚を挟んだ所で、るこるは【豊乳女神の加護・耀衣舞】を発動した。
 突如後方から発生したまばゆい光に、人魚は驚いて振り返る。
「な、なに、これ!?」
 光は蟹を刺激しない。自由に動きづらいこの戦場では、数少ない好きに出せる効果であった。さらに残る浮遊兵器『FRS』と『FSS』からエネルギーを供給され、その力をさらに高める。
 そうして一筋の光の矢になり、るこるは人魚の一体に体当たりをした。
「ぐっ……!」
 うめき声を上げて吹き飛ぶ人魚。そのぶつかる先は、決して触れてはならない不死蟹。
「あ、あああ……」
 それに気づいたときはもう遅い。不死蟹の足が振り上げられ、ぶつかった人魚と、さらにはるこるともう一体の人魚を纏めて踏み潰さんとしていた。
「ひぃぃっ!」
 悲鳴を上げたのはどちらの人魚か。山のような足が振り下ろされ、もうもうと砂煙が立つ。そしてそれが晴れた時、そこにはへたり込む人魚が一体だけいた。
「は、ははは……」
 仲間は失ったが、あの猟兵は自爆した。あとは戻って、残る仲間に報告しよう。
 そう思い人魚が体を起こした、その時。
「もう一度、ですよぉ」
 上空から降り注ぐ光の矢。るこるは不死蟹に踏み潰されたのではなく、人魚にぶつかった後体当たりそのものを移動手段として離脱していたのだ。数百メートルの高さも光になれば大した距離ではない。
 人魚は上に向かって闇雲に槍を何度も突き出し、るこるを叩き落とさんとする。それは偶然にも僅かにるこるの頬を掠めはしたが、致命打にはなり得なかった。
 体当たりの勢いで人魚が浜に叩きつけられ、蟹に強烈な振動がまたも加わる。そして蟹は苛立ったように足を振り上げ、浜に埋もれた人魚に仲間の後を追わせるのであった。
 そしてるこるは体当たりの勢いのまま浜すれすれを飛行、そのまま戦線を離脱する。その軌道上にあった生命の書片が一つ、光に巻き込まれるようにして消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジェイク・リー
正座して精神統一と共にシャーマンとして語りかける。
「この世界を護る精霊達よ、邪悪なる意志を討ち滅ぼす霊力を貸したまえ」
迷彩と忍び足による移動。
ドゥームを赤い光刃の短剣に形成したら地形の利用で裂け目等に引き込み突き立てる。
離れている相手にはルー・モナークによる狙い射ちをする。
矢には属性攻撃による電撃の魔力を帯びさせておく。
どこから攻撃するか分からない事は相手にとって恐怖を与えるには十分とも言える。

アドリブOK


トリテレイア・ゼロナイン
御伽噺の人魚とは大違いの言動ですが…オブリビオンとはいえ彼女らも今を生きる存在
幻想を持ち込んではいけないと自戒しなければ
さて、戦役の勝利の為こちらも現実に即した対処をしましょう

事前に関節に駆動音を軽減する処置、足裏にクッション素材を装着し足音軽減、装甲も消臭しておきます
(●防具改造)

相手は近接攻撃を選択したようですね
トライデントを盾や剣で防御すれば最悪、不死蟹を起こしかねません

ならば回避一択
センサーでの●情報収集で敵の挙動や位置、攻撃タイミングを把握しUC
派手に動かなくとも予測演算で●見切ってしまえば歩く程度の回避運動で相手の攻撃を失敗させ、すかさず●怪力の剣を繰り出し倒して行けるはずです


エルザ・メレディウス
相手に隠れながら...得意かは分かりませんが楽しそうですね。全力で挑ませて頂きます

■匂い対策について:海水を衣服や体に染みこませて、匂いを上手く消せるように配慮いたします
■不死蟹対策:【忍び足】を使用して、ゆっくりと移動するように、気を付けます。【地形の活用】も活かして、岩場の影を移動しながら、不死蟹にも魅惑のマーメイドにも気づかれないように、ゆっくりと動きます。

*集団で行動する場合は【集団戦術】を心がけて、上手く連携をとりながら、動きに無駄が無いように気を付けます

〇魅惑のマーメイドに近づけたら戦闘へ、【残像】を使って、そちらへ注意をひきながらUC:剣刃一閃で、一体づつ確実に倒していきます。



「御伽噺の人魚とは大違いの言動ですが……オブリビオンとはいえ彼女らも今を生きる存在、幻想を持ち込んではいけないと自戒しなければ」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)はグリモア猟兵より聞いた人魚たちの会話を思い出し、そう考える。御伽噺のような存在を理想とし現実との違いに苦悩しながらも、決してそれで現実を見間違えることはない……そんな在り方を持つ彼に、この人魚の存在は様々な意味で無視してはいられないものであった。
 相手が現実的な思考を持つならば、こちらも現実に即した対処をするまで。ウォーマシンである彼は自身の足裏にクッション素材を装着、装甲も消臭し、蟹を刺激しないよう自らの体を整えるのであった。

 そしてそこから離れた場所。そこでは一人の男が正座して瞑目していた。
「この世界を護る精霊達よ、邪悪なる意志を討ち滅ぼす霊力を貸したまえ」
 ジェイク・リー(影の護り手・f24231)はシャーマンとしての力を使い、この地の精霊に語り掛ける。オブリビオンフォーミュラたる帝竜、そしてその走狗である魅惑のマーメイドたち。それらはこの地、この世界にとっても好ましくない存在であろう。その世界の守り手と意思を通わせることで、ジェイクは世界を守るものの一つとならんとした。
 そして対話が済んだら、次は戦士としての力の出番。素早く迷彩を纏い、忍び足で進んでいく。それは戦いの中鍛え上げられた一部の無駄もない動きであり、彼がこういった任務にいかに慣れているかを雄弁に物語っていた。

 それとは逆側にもまた、身を潜めて動く人影が一つ。
「相手に隠れながら……得意かは分かりませんが楽しそうですね。全力で挑ませて頂きます」
 エルザ・メレディウス(復讐者・f19492)は全身に海水を染み込ませ、濡れた体で忍び足をしながらゆっくりと人魚たちに回り込みをかけていた。
 岩場や砂の隆起、時には気づかれないよう細心の注意を払いながら不死蟹そのものを遮蔽物とし、少しずつ人魚たちに近づいていく。
 同じ戦場に仲間がいることを確認しているエルザは、その仲間たちの動きに合わせて動いていくことで邪魔にならないよう、うまく連携を取る方法を考えながら進んでいった。

「集まってもダメ、離れてもダメ……どうすりゃいいのよ……!」
 どのような方法をとっても猟兵たちはそれを切り替えしてくるし、散らばった仲間を再集合させれば数が減っている。人魚たちは再び頭を突き合わせて会議を始めるが、泣き言が出てくるばかりで何も具体的な案は浮かばなかった。
 その人魚たちの前に姿を現す白い装甲。正面からの接敵を選んだトリテレイアであった。
「操り糸はありませんが、鋼の人形劇を披露させて頂きに参りました」
 トリテレイアの堂々とした言葉に、一斉に槍を構える人魚たち。
「わけわかんない事言って! 馬鹿にしないでよね!」
 最早自分たちに近づいてくるものなど敵でしかない。そう判断した人魚たちは一斉に槍を突き出した。その鋭い攻撃を、トリテレイアはごくわずかな動きだけで躱していく。
「トライデントを盾や剣で防御すれば最悪、不死蟹を起こしかねませんので」
 トリテレイアの持つ武人としての見切り術に、ウォーマシンとしての高い情報処理能力。そしてユーベルコード【機械騎士の傀儡舞】の力。それを総動員したトリテレイアは歩く程度の動きで人魚の全ての動きを躱し、たった一度、その怪力で剣を振り下ろして人魚の一体を両断した。
「なめないでっ!」
 その振り下ろしきった一瞬の隙。そこを命中力を強化したトライデントの一撃が狙った。
 しかしその穂先は、トリテレイアに刺さる前に小刻みに震え、取り落とされる。その向こうには岩の裂け目から顔を出し、霊弓『ルー・モナーク』を構えたジェイクの姿があった。
「前を張ってくれる奴がいるならやりやすいぜ」
 そう呟くジェイクの姿を、撃たれた人魚が睨みつける。
「イケメンっぽいけど……ちゃんと顔見せてもらおうかな!」
 それは本気か、威圧か、ともあれ人魚は水流に乗り、ジェイクに向かって突っ込んでいった。その水流はジェイクを直撃するが、直後に彼の潜んでいた岩に叩きつけられる。飛沫によって岩は一瞬見えなくなり、まるで裂け目に吸い込まれたかのように人魚の姿が消えた。そして一瞬後、その岩の後ろから、胸に大きな穴の穿たれた人魚が投げられたように飛び出し、水となって消えた。
「な……!」
 誘き寄せられたのか、他の人魚がそう思った瞬間、岩とは別方向から雷の矢が人魚を襲う。ジェイクは一体を仕留めるとともに場所を移動、多方向から攻撃することで相手に恐怖と動揺を与え、ユーベルコード【シャドウショット】の力を最大限発揮する戦い方を選択していた。
 そしてその隠れた攻撃に合わせるように、全く違う方向から襲う次なる刃。
「こちらです……!」
 それはエルザの振るうサムライブレイドの刃。また新手か、と人魚はそちらに向けて槍を突き出すが、それは刃と打ち合うことなく空を切る。
「本当は、こちらです」
 残像を囮としたエルザは、槍の軌道から半周ずれた場所にいた。そして振るわれる、今度は本物の刃。
「きゃああああっ!」
 トライデントを突き出しがら空きになった体を、サムライブレイドが一閃した。
 エルザの目は敵だけでなく仲間にも向けられ、その動きを把握する。集団で動く中で、最も自分を活かせる瞬間……それを見極めた斬撃は、他の仲間からちょうど狙いにくい場所にいた人魚を見事に切り捨てた。
 切られた人魚が倒れ、消滅していくのを見ながらエルザは素早く後退り姿を消そうとする。
 残る人魚が彼女を追おうとするが、その道は白き甲冑騎士によって塞がれた。
「レディ、できれば私ともう一舞い」
 その巨体と剣は、無視するには余りに圧倒的。そしてトリテレイアに向かって槍を振るえば死角からジェイクのシャドウショットが襲い、出所を探すうちにエルザが現れ切り捨てられる。
 在り続ける者、見えぬ者、現れては消える者。三者三様の戦法は混ざり合って人魚たちを混乱させ、その数を瞬く間に減らしていった。
 人魚たちの俗な御伽の時間は、もう間もなく終わる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アノルルイ・ブラエニオン
ふっ……吟遊詩人(サウンドソルジャー)の耳を馬鹿にしてはいけないな

単独で歩き回り複数を相手にする
物陰に向けてアイコンタクト、手での合図、小声で呼びかけるふりをして、仲間がいると見せかけるぞ
『同士討ちを狙う歌声』を誘発させ、『その音域を記憶する』
そして、まったく同じ歌を自分で【歌唱】し、UCを使用する
それそのものが彼女達を語る物語になる。効果も再現されるだろう

一方的に振られるのも『悲恋』だろ?



 数多くいた人魚たちも、残るは後わずかばかり。その残った人魚の前に、アノルルイ・ブラエニオン(変なエルフの吟遊詩人・f05107)は姿を隠すこともなく、悠然と歩いて現れた。
「ふっ……吟遊詩人(サウンドソルジャー)の耳を馬鹿にしてはいけないな」
 そういいながらアノルルイは奏でこそしないが、手にした楽器をなでる。その優雅な所作は光を反射する水面や抜けるような青空と相まって、芸術のごとく美しい。
「わぁ、すっごいイケメン……もうちょっと早く会いたかったよ、ほんとに」
 人魚たちは、その美しい相手が自らの命を取りに来た敵だと嫌というほど分かっている。だからこそ油断なく、槍を構え、その美しい男を睨みつけた。
「私もだよ。君たちのような綺麗な人とは、平和な時に二人きりで会いたかった」
 小さな声でそう言いながら、アノルルイは人魚の周りをゆっくりあるく。それは攻めかかる様子もなく、まるで何かの時間を稼いでいるかのよう。
 彼は一瞬目を人魚から外し遠方にある大きな岩をちらりとだけ見てから、すぐに人魚に視線を戻す。
「まったく、あの馬鹿でかい蟹の存在が恨めしくてならない。あれさえなければこんな小声じゃなく、君たちに高らかと愛を歌えたのに……ね」
 芝居がかって大げさな動作をとるが、その指先は何かを招くように、不自然に動く。最後の一音も、そこだけは人魚ではなく他の何かに向けているような声音だ。
「あっそ。じゃあさ……ほんとに一人になっちゃいなよ!」
 いうが早いか、人魚たちはいっせいに胸に手を当て、声を上げて歌い始めた。それは魅惑的で、それでいて悲しい恋の歌。それは明らかに蟹を刺激するような音量であったが、彼女たちの声は決して蟹を刺激しない音域で放たれる。
 その歌はかなわぬ恋の果て、思い人を手にかける悲しい歌。その歌は心を侵し、アノルルイもまた、志を共にする同朋さえ手にかけたくなる衝動にかられた。
 もし、それが本当にいたのならば。
「いい歌をありがとう。お礼に私も一曲ささげよう。我は語らん! 汝、好敵手ゆえに!」
 衝動を耐えきったアノルルイの口から放たれるのは、ユーベルコードの域にまで高められた歌声。その内容は今人魚たちが歌ったのと同じ歌。それは歌詞のみならず、不死蟹に響かぬその音域までも。
 アノルルイの今までの所作はすべて仲間がいると思わせるフェイク。敵の歌が同士討ちを誘うものであるがゆえに、彼は単独での戦いを選んだのだ。
 宝石。いい男。平穏な生活。それを無邪気に求めた俗な人魚たちに訪れた、仲間と殺し殺される結末。それが与えられたのは、求めてやまなかった美男の声によって。
 人魚たちは自分の歌った歌に導かれるように槍を構え、お互いを刺し貫いた。
「こんな悲しい歌でしか君たちを鎮められない私を許しておくれ。だって私は吟遊詩人なのだから」
 水に消えていく最後の人魚たちに、アノルルイは恭しく一礼した。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月12日


挿絵イラスト