帝竜戦役⑨〜創世巨獣、望む
●渇望せしは
それは何十kmにも及ぶ巨体。
その体内では、ありとあらゆる生命の進化と絶滅が絶えず繰り返されていた。
なんのために?
「わたしに、『再孵化』以前の記憶はありません」
問いに答える解はない。それは当然と帝竜ガルシェンの疑問となって返ってくることだろう。
「わたしは本当に、かつて界を渡るものだったのでしょうか。そして本当に、このように逞しく、美しい姿をしていたのでしょうか」
明確な答えはなく、解を求めても問いで返されるばかりである。
その巨獣というには、それ以外の言葉が見つからず、その名もまた正しくガルシェンの姿を形容できてはいなかった。
それほどの威容である。
「いずれにしろ、今のわたしが『存在してはならないこと』は分かります。意思だけではとても抑えきれない破壊の力が、肉体にみなぎっています。誰かがわたしを殺してくれなければ、わたしは世界を殺してしまう」
それは単なる事実であった。
存在してはならない。それはガルシェンにとっても、またそれと対峙する猟兵にとっても望むものではない。
だからこそ、創生巨獣ガルシェンは望む。渇望する。
「わたしを殺してくれる勇士の訪れを、わたしは、待っています……」
●帝竜戦役
すでに猟兵たちの前にあられた帝竜は3体目を迎えていた。
カダスフィア、オアニーヴ……そして、ガルシェン。そのどれもが巨躯であったが、この帝竜ガルシェンは桁が違った。
数十kmにも及ぶ巨躯は、その内部で生命の進化と絶滅が繰り返されるほどの言わば、創生の輪廻を内包せし巨獣なのである。
グリモアベースに集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えたのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)である。
「お集まり頂きありがとうございます。3体目の帝竜、ガルシェンが座す生々流転沼への道が開けました」
生々流転沼……そこは毒ガスの蔓延する広大な沼沢地。そこに座しながら、延々と生と死を繰り返す帝竜ガルシェン。
その底しれぬ巨躯は数十kmに及ぶ、さらには獣の因子を使用することで巨大な薔薇をはやした自身の新潮の3倍へと至る創生巨獣である。
「はい、とても強大で巨大な帝竜です。もはや竜と呼んでいいものかどうかも……そして、さらには猟兵を殺す毒を宿した新種の巨大生物を生み出し、戦わせます。それは、対峙する猟兵ごとに姿を変え、その猟兵に特化した毒を扱うのです」
まさに猟兵殺しである。
巨躯に加え、猟兵を狙い撃ちしたかのような毒性を持つというのは厄介極まりないだろう。
さらに防衛捕食細胞と呼ばれる巨大スライムに薄羽が生えた飛翔する細胞生命体を生み出し、自爆攻撃まで仕掛けてくるというのだ。
「これまでの帝竜も強大な敵ばかりでした……ですが、今回の帝竜ガルシェンは、あまりにも猟兵を狙い撃ちしたような力を持っています。いえ、ガルシェンがそれを意識しているということではないのでしょう。己の体内で進化と絶滅を繰り返すほどの生命力が、意図せずして猟兵というオブリビオンであるガルシェンの身を守ろうとしているのかもしれません」
数十kmに及ぶ巨躯である。まともに戦っていては、戦うことすら覚束ないだろう。
さらには帝竜は猟兵に対して必ず先制攻撃を与えてくる。そのどれもが猟兵にとって脅威そのものである以上、これに対策を打ち出し、防御し、反撃しなくてはならない。
「敵の先制攻撃、強力な能力、巨躯……どれをとっても難敵以上の帝竜であることは間違いありません。ですが、皆さんであれば、これを討ち果たし、創生巨獣たるガルシェンが望む死を与えることができると私は信じています」
ナイアルテは再び頭を下げる。
これまで幾度となく帝竜と戦い、これを打ち破ってきた猟兵たちを信じる。今はそれしかできないけれど、それでも彼女は猟兵たちを、世界の危機を救わんと駆けつける彼らを戦いの場へと送り出すのだった―――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『帝竜戦役』の戦争シナリオとなります。
生々流転沼へ進撃し、帝竜ガルシェンを打倒しましょう。
※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。
プレイングボーナス……『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』
(敵は必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります)
それでは、帝竜戦役を戦い抜く皆さんのキャラクターの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『帝竜ガルシェン』
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POW : 創世巨獣ガルシェン
【獣の因子】を使用する事で、【巨大な薔薇】を生やした、自身の身長の3倍の【創世巨獣形態】に変身する。
SPD : アンチイェーガー・ギガンティス
いま戦っている対象に有効な【猟兵を殺す毒を宿した『新種の巨大生物』】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : 防衛捕食細胞の創造
召喚したレベル×1体の【外敵を飲み込み自爆する『巨大スライム』】に【虫を思わせる薄羽】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
イラスト:桜木バンビ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
死之宮・謡
アドリブ歓迎
四体目はもっと大きくなるとかそう言うことは無いだろうな…
まぁそれは置いておいて、望まれた死をくれてやるというのは気に喰わん話ではあるが…致し方あるまい
望み通り殺してやるよ…
先ずは停滞の「呪詛」でスライムを止め、「全力魔法」で高速飛行して距離を取りながら【不条理の腕】でスライム共を奪い取りガルシェンに突っ込ませる
その後、空中位置で離れたまま侵蝕の「呪詛」と猛毒(毒使い)を籠めた黒矢をクレイアスターで連射して削る
その間に「生命力吸収」で吸い取った命も魔力に変換して攻撃に回す
攻撃は貰えないので回避メイン
生々流転沼において、毒ガスが蔓延り先を見通せぬほどの光景。
その光景に会って尚、帝竜ガルシェンの威容は、はっきりと認識出るほどの巨大さであった。
元来、竜とは巨躯であるもの。これまで戦ってきた帝竜たちもまた、その巨躯を誇っていた。だが、この帝竜ガルシェンは次元が違う。
数十kmにも及ぶ巨山とも言うべき姿は、その身の内に内包した生命たちの進化と絶滅を繰り返すサイクルが最早抑えられないことを示していた。
「わたしは望む……わたしが理性で抑えられぬ力を……それを乗り越え、わたしを殺す勇士が現れることを……わたしが世界を殺してしまう、その前に」
その巨山の如し威容を前にして萎縮しないのは、恐らくどんな世界を探したとしても猟兵ぐらいなものであろう。
気に入らないものを見るように、死之宮・謡(狂魔王・f13193)は、帝竜ガルシェンの威容を見上げる。
「四体目はもっとおっきくなるとか、そういうことは無いだろうな……」
一概にそう言えないような気がしてくるのは、気のせいなどではないだろう。これ以上の何か、脅威が訪れると言われても何ら不思議ではない。
それほどまでに帝竜戦役における郡竜大陸は不可思議な大地であるのだ。
「まぁ、それは置いといて、望まれた死をくれてやるというのは気に食わん話ではあるが……致し方あるまい」
謡は嘆息する。
彼女にとっての死とは、齎されるものでもなければ、望まれるものでもない。己が望むからこそ齎すものであり、与えるものである。
だが、それでも彼女は間違えない。
「望み通り殺してやるよ……」
彼女の視線の先には、帝竜ガルシェンの腹より飛び出したる、進化と絶滅を繰り返してきた防衛捕食細胞とも言うべき巨大なるスライム。
その姿は並のオブリビオンほどの大きさを誇り、さらには飛行能力を得たのか、薄羽を羽撃かせて謡をめがけて飛翔する。
なるほど、と謡は理解する。それはもっとも効率的な防衛行動であったのだろう。
死を望むガルシェンといえど、かの帝竜に内包されし生命は、それを是としない。ならば、その飛び出したる飛翔するスライムは、防衛本能と言うに相応しい。
その攻撃の前に並のものであれば、為すすべもなく自爆攻撃を受けるしか無かったことだろう。
だが、彼女は違う。
「んー…中々面白い力だね……貰うよ?」
彼女のユーベルコード、不条理の腕(マオウノカイナ)が発動する。伸ばされた手は、スライムの巨躯にふれる。自爆寸前で触れた腕が、一瞬でスライムをかき消す。
自爆する寸前、不自然にスライムの動きが止まったのは、彼女の放つ呪詛。
停滞を込めた呪詛は、スライムの自爆攻撃を寸前で止めたのだ。
彼女は空に舞う。
「人間の体の免疫と似たようなものか……面白い。幾多もの生命を内包し、一つの世界のような体なのだな」
彼女のユーベルコードは、発動された敵の能力をかき消し、代わりに自身がその能力を放つことができる。
それは即ち簒奪に他ならない。
彼女の掌から放たれたスライムたちは、本来であれば謳たち猟兵たちに向けられる攻撃。だが、それを彼女はガルシェンへと解き放つ。
スライムたちが次々とガルシェンの体の上で自爆し、爆発が起こる。
「望むのが死であれば、加減はいらぬよな……?」
凝縮された穢れの織りなす大弓、クレイアスターから放たれる黒矢は、侵食の呪詛と、この沼地に負けぬ毒を以て空よりガルシェンを打ち穿ち続ける。
絶大なる生命力を誇るガルシェンからも生命力を奪いながら、止まぬ黒矢の雨を降り注がせ続ける。
それはかの帝竜ガルシェンの生命が尽きるその時まで続くことだろう。
止まぬ雨はない。
だが、謡の放つクレイアスターの黒矢は、生命の循環とも言うべきサイクルにて、ガルシェンが力尽きるその時まで放たれ続けるのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
ニィエン・バハムート
先制対策で召喚生物の攻撃に対して【カウンター】で(首飾りで3倍の効果になったオーラで強化された発電能力による)電気【属性・マヒ・範囲攻撃】を放ち敵を麻痺、まではできずとも怯ませて隙を作ります。生物であれば電気は効くはず。それでも毒攻撃がくるようならそちらは【衝撃波】を放つことで防ぎ、ある程度軽減しながら【激痛耐性】で耐えます。
召喚生物に隙ができたらUC発動。世界魚端末の【封印を解く】。世界というスケール違いの存在を支える【怪力】という言葉には収まりきらない膂力で召喚生物も帝竜も【蹂躙】します。
理性なんてないケダモノの振る舞いで【踏みつけ】て踏みつけて踏みつけます。
あれ…私…今まで、何を……?
巨大なる郡竜大陸にあって、さらなる巨躯を誇るのは帝竜である。
通常の竜種などお呼びも付かぬ帝竜は、その巨躯が自身の絶対強者たらんとする姿を見せつけるのだ。
だが、その巨躯ですら及びの付かぬ帝竜が存在する。
それは帝竜ガルシェン。数十kmにも及ぶ巨躯と呼ぶには、あまりにも言葉の足らぬ威容は、まさに山脈そのものであったのかもしれない。
その体に秘められし生命は、その体内において進化と絶滅というサイクルを無限とも言うべき時間の中で繰り返してきていた。
ならば、その生命とは、対するものへの強大なるカウンターとなる。対峙する生命に対応できぬ生命はおらず、それは対峙するものが猟兵であっても変わらない。
むしろ、猟兵であるが故に、ガルシェンより生み出された生物は、アンチイェーガーとでも言うべき存在となって彼らに襲いかかるのだ。
それはまるで世界を喰らうような巨象であった。
猟兵を殺す猛毒を持ち、四足であるがゆえに、その巨躯を容易には突き崩せない。対する猟兵であるニィエン・バハムート(竜王のドラゴニアン(自称)・f26511)もまた、その先制攻撃とも言うべき、生物の召喚に苦戦を強いられていた。
「ッ、グ―――!」
巨象から放たれる踏みつけ攻撃は、ニィエンのバハームート・オーラの防御をきしませる。
彼女のメガリスの力を大幅に増強させる、アンドヴァリの首飾りによって、彼女の発電機能は一気に跳ね上がる。
持ち主の死後、その魂を地獄に送ると呼ばれるメガリスであるが、その力は絶大である。
オーラ防御から放たれる電撃は、巨象の肉体を麻痺させる。だが、それでもなお、猟兵を狙い撃ちにした猛毒の体液が彼女を襲う。
「如何に私達に対策を講じようとも―――!」
バハムート・ウィングによって放たれた衝撃波が猛毒の体液を吹き飛ばす。そのまま有り余る膂力で持って巨象の体をひっくり返すように押し返し、その巨体を押し倒すのだ。
そのまま彼女のユーベルコード、真なる世界魚(ニィエン・バハムート)が発動する。
それは世界を自らの体で支え続ける圧倒的な膂力を、さらに強化し、彼女の内に潜む端末の封印が解かれる。
その意志は彼女の内なる力を開放する。世界というスケールの違う存在を支える怪力という言葉の枠組みに入り切らないほどの膂力でもって、ニィエンは巨象を瞬く間に蹂躙する。
それはあまりにも一瞬の出来事であり、彼女が何をしたのかすらもわからぬほどであった。
「―――」
それは声なき声であった。
もはや、それはニィエンの声ですらない。理性無きケダモノ。世界を支える力は今、創生巨獣とまで言われた帝竜ガルシェンへと向けられる。
その巨躯とニィエンの体にどれほどの大きさの違いがあっても関係がない。
己の持てる総ての力、渾身の力を込めてガルシェンの背へと取り付くと一心不乱に踏みつけ続ける。
その攻撃は原始的であるがゆえに、圧倒的な力の受け皿となってガルシェンへと放たれ続ける。
背の骨が俺、肉がくぼみ、それでもなお止まらない。外皮を突き破り、そのまま背から腹まで体内に納める生命達をも蹂躙しながら、ニィエンは理性無き獣となって突き破り、突き破った先にて漸く意識を灯り戻すのだ。
「あれ……私……今まで、何を……?」
頭上には帝竜ガルシェンの腹を突き破ってきたような痕。
己が誰であるかはわかる。だが、己が何を為したのかまでは思い出せない。しかし、その理性無き力によって帝竜ガルシェンの巨躯の一部を打ち破ることはできたのだ。
それは生と死とを繰り返す圧倒的な生命力を誇る帝竜ガルシェンへと、打ち貫く一矢を放ったのと同義であった―――。
大成功
🔵🔵🔵
アウル・トールフォレスト
(※好きにお任せします)
そうなんだね
わかった、殺してあげるよ。大きなあなた
もう、どうしようもないのでしょう?
先制攻撃には防御を取って
オーラを纏って衝撃を出来る限り軽減しながら、兎に角耐えるよ
大切なのは、その後なのだから
そうして、耐えて
わたしは
彼に終わりを告げるの
【開花の時は来たれり、我は天地囲う世界樹なり】
果て無く拡がり続ける「神体」に変貌して、負傷も毒も何もかもを押し返す
世界には世界を。けれどわたしは終わらせるもの。終末に立つ破滅の大樹
世界を、天地を引き裂きましょう
それ以上は、望まない
わたしは終わらせるだけ。同じようなあなたを楽にしてあげたいだけ
だって、めでたしの後は、穏やかであるべきだもの
かつて創生巨獣とまで呼ばれた巨山の如き威容が群竜大陸にあって、蠢くように体を身じろがせた。
それは猟兵達の攻撃を受けての行動であっただろうが、その巨躯が身じろぎするだけで山が揺れるような凄まじい振動を郡竜大陸へと響かせていた。
絶え間なく漏れ出る毒ガスの瘴気が当たりを曇らせ、視界を悪くしていたとしても、帝竜ガルシェンの姿は、はっきりと視認ができる。
それほどまでの威容であったのだ。
「わたしは望む。わたしを殺せる勇士を。私は望まない……世界を殺すことを……」
その声は悲痛でもなければ、悲哀でもなかった。
ただの事実を述べただけの言葉であったことだろう。帝竜ガルシェンの言葉は真実である。ガルシェンを放置すれば、いずれその体内で溢れんばかりの破壊後からは溢れ出て、このアックス&ウィザーズの世界を破壊するだろう。
それは帝竜ヴァルギリオスが行うものと同じものである。ならばこそ、世界を殺す力を止める前哨戦であるのだ。
「そうなんだね。わかった、殺してあげるよ。大きなあなた」
その巨山の如し巨躯を見上げるのは、アウル・トールフォレスト(高き森の怪物・f16860)であった。
彼女の視線の先には、巨大な薔薇を生やした、己の巨躯をさらなる創生巨獣形態へと変じた帝竜ガルシェンの姿であった。
それは、本来のガルシェンの姿であったのかも知れないが、元より数十kmに及ぶ体躯のさらに3倍はあろうかという創生巨獣形態は、少しでも動くだけで、あらゆる物を吹き飛ばす衝撃波となってアウルを襲う。
先手を必ず取ってくる帝竜の攻撃は、アウルにとって脅威そのものであったが、彼女は足を踏ん張り、オーラを纏って防御することに専念した。
足が軋む。踏ん張ったはずの大地ですら、衝撃波によってひび割れていく。
オーラのちからは強靭そのものであったが、ガルシェンがただ動いただけで発生した衝撃波にひび割れていこうとしていた。
だが、それでも兎に角耐える。
「もう、どうしようもないのでしょう?」
だから、そんな姿になってしまうのだとアウルは衝撃波を放つ先にあるガルシェンを見やる。
その瞳に映る感情は如何なるものであったであろうか。哀切、哀悼、悲哀。どれもこれもが正しいようで正しくない。その答えがあるのはアウルの中にだけである。
ぎし、とアウルの体が悲鳴を上げる。あちらこちらからオーラ防御では防げぬ衝撃が彼女の体を傷つける。
だが、それでも耐える。耐えて、耐えて、耐えて……何も辛くはない。なぜなら―――。
「大切なのは、その後だから」
衝撃波が弱まる。耐えた後にあるもの。それは宣告である。
彼に終わりを告げる。その宣告者が己である。
開花の時は来たれり、我は天地囲う世界樹なり(アヌンナキ・ウブシュウキンナ)。
それは星を侵食し、限界のない拡張を持つ『神体』である。
巨獣と神体。
その性質は似通って入るが、真逆の存在である。その内に生命の進化を内包し、絶滅と再生を繰り返す巨獣。だが、神体は違う。ただ終わらせるものである。再生はない。
破壊のあとの再生なき終わり。それがアウルの神体である。
そして、歌が響く。
「――あ――ぁ――a――A――iyA――AAAAAAAAAA!!!」
それはユーベルコードの絶叫であった。
果てなき広がりを見せる神体は、彼女の受けた傷も毒も何もかもを押し返す。
世界を創生する獣がガルシェンというのであれば、彼女は世界を終わらせる世界そのものである。
終末に立つ破滅の大樹。巨獣との間に在りて、その終末の大樹は静かに己の役目を全うせんと進む。
「世界を、天地を引き裂きましょう」
彼女の言葉はそれ以上を求めない。
創生巨獣と終末の大樹は、ここに在り。互いの世界がぶつかりあい、そして、引き裂かれていく。
いかなる巨躯であろうとも無限に広がっていく大樹の根の前では絡め取られ、引き裂かれ、その巨躯を霧散させていく。
「わたしは終わらせるだけ。同じ用にあなたを楽にしてあげたいだけ。だって―――」
アウルは微笑むように、泣くように言葉を紡ぐ。
「―――だって、めでたしの後は穏やかであるべきだもの」
だから、あなたも私も―――。
轟音がして、創生巨獣たるガルシェンの外殻が引き裂かれていった―――!
大成功
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セルマ・エンフィールド
望まぬうちに甦らされ、望まぬ破壊をさせられる……思うところはありますが、私にできるのは倒して止めることのみです。
足場が悪いですし、鳥の形の氷晶ゴーレムに乗り空中戦を。
フィンブルヴェトを手にスナイパーの技術を以って氷の弾丸で敵を狙い、飲み込めるまで近づかれるより前に、最低限を倒しながら突破します。スライム部分に当たれば凍てつかせ砕けますし、薄羽に当たり羽が凍てつけば墜ちる。相性は悪くありません。
接近出来たならガルシェンの背に降り立ち【ブライニクル】を。増強された冷気でスライムが寄ってくるのを防ぎつつ、完全にガルシェンが凍り付くか私が限界を迎えるまで氷の弾丸を撃ち込みます。
帝竜戦役において、再再孵化を受けた帝竜は望むと望まざるとに関わらず、その力を振るう。
それは止めようのない破壊の力。
巨山のごとき巨躯を誇る帝竜ガルシェン。その姿は生々流転沼の毒ガスに曇る視界であっても、その威容がわかるほどの巨躯であった。
体長数十kmにも及ぶとされるガルシェンの巨躯は今や、猟兵達の攻撃によって、その威容を減じていた。だが、生と死を繰り返す帝竜であるガルシェンにとって、再び傷を癒やしてしまうことは容易に想像できた。
その体に内包せし、生命の進化と絶滅を繰り返すサイクルこそが、かの帝竜の力そのものである。
「わたしは望む……わたしを殺せる勇士を。その力を……わたしの力が世界を殺してしまう前に……」
その言葉は、帝竜としての言葉か。それとも創生巨獣と呼ばれたガルシェンとしての言葉か。
真偽は解らない。けれど、その言葉は正しく世界を殺す。帝竜ヴァルギリオスの手にかかること無く、ガルシェンを放置していれば、必ずアックス&ウィザーズ世界は滅亡してしまう。
それを阻まねばならないと立ち塞がるのは、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)である。
彼女の青い瞳が見据えるのは、毒ガス蔓延る沼地においてもがくガルシェンである。
「望まぬうちに蘇らされ、望まぬ破壊をさせられる……思うところはありますが、私にできるのは倒して止めることのみです」
彼女は足場にするべく沼の大地をみやったが、どれも彼女の求めるものは得られそうになかった。
氷晶ゴーレムを鳥の形へと変え、それに乗り銀髪をなびかせながら、空を征くのだ。
「……先手を取られる……」
それはわかっていたことだった。あらかじめグリモア猟兵から齎された帝竜の先制攻撃能力を知らされていなかったら、対策を講じる時間もなかったかもしれない。
帝竜ガルシェンの体内から溢れるようにして巨大スライムたちがこぼれ出る。
空を征くセルマにとって、巨大スライムは良い的だった。だが、そのスライムたちがブルブルと震えると薄羽が生え、飛翔能力を得て、セルマへと向かってくるのだ。
「しかも、自爆特攻……効率的な攻撃。さながら異物を排除しようとする免疫能力のようなものでしょうか」
彼女は鳥型の氷晶ゴーレムの背でマスケット銃を構える。フィンブルヴェト―――彼女の愛用の改造マスケット銃のトリガーを引く。
空を飛ぶ巨大スライムに近づかれる前に撃ち落とす。それが彼女の対策だった。引き金を引く。凍てつく冷気と共に放たれる弾丸は、スライムの体を凍りつかせ失墜させる。
素早くまた引き金を引く。
考えるよりも体が動く。こればかりは本能よりも、己の得てきた経験……何度も繰り返してきた反復によって覚え込まされた体が動く。
薄羽に当たり、冷気が巨大スライムの飛行能力を奪う。一撃一射で巨大スライムを倒す必要はない。
ただ、己の道を拓ければいいのだ。
「凍てつけば墜ちる。相性は悪くありません」
そのままセルマは氷晶ゴーレムと共にガルシェンの背に取り付く。
一気にセルマは勝負を決めるべく、ガルシェンの背に飛び乗るのだ。彼女の体がガルシェンの背に取り付いた瞬間、彼女のユーベルコードが輝く。
「さて、どこまでもたせられるか……」
それはある意味で賭けであった。
彼女のユーベルコード、ブライニクル。それは彼女の操ることのできる冷気の規模を一時的に増強し、総ての能力を絶大なまでに飛躍させるユーベルコードである。
彼女の手が触れたガルシェンの背から、数十kmもある体長の外殻が凍結していく。
それは一瞬の出来事であった。外殻が氷漬けになり、セルマの放った氷の弾丸がヒビを入れ、何度も引き金を引く内に外殻全てが崩れ去っていく。
それに身じろぎするように痛みに悶えるガルシェン。
時間はあまり賭けられない。ユーベルコード、ブライニクル。それは絶大なる能力を引き出す代わりに、77秒後に彼女は完全なる無防備たる昏睡状態へと陥ってしまう。そうなってしまえば、彼女の生命はない。
だからこそ、彼女は賭けにでた。
己の生命が尽きるが先か、ガルシェンの生命が尽きるが先か。
「―――死ぬつもりは毛頭ありませんが」
外殻を喪ったガルシェンの体を再び冷気が襲おう。限界を超えた能力の行使はセルマの体をも凍てつかせる。
だが、それでもこの巨獣を制するには、足りない。
彼女の青い瞳は輝く。それはユーベルコードの輝き。
倒すと決めた。彼女が決めたのは、望まぬ破壊を行わされる者への手向け。
だからこそ、彼女は全身全霊を込める。
エルマ・エンフィールドの冷気は今や、天に座す太陽すらも凍てつかせる。
それは創生巨獣と呼ばれた帝竜ガルシェンをも例外でなはい。生命の大敵は炎。そして―――暗黒の如き絶対零度。
今、彼女の放つ冷気は、超絶なる生命力全てを凍てつかせ、彼女の手にしたマスケット銃の名の通りに。
―――その名を、フィンブルヴェト。終焉たる先駆け。
帝竜ガルシェンの生命全てを凍りつかせ、砕くのだった―――。
大成功
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