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帝竜戦役⑤〜『騎士』と『魔女』の話

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『よもや、この地まで踏み込まれようとは』

 地に深く大きく穿たれた竪穴の縁に、一人の女が佇んでいた。
 髪は黒、赤い瞳に浅黒い肌には不気味な入れ墨。纏う衣服は粗末な布で、その体付きは華奢で小柄。
 だが、その身に漂う力は尋常ではない。圧倒的な霊力と邪気を、その身に纏っていた。

『猟兵め。あの地で討てなかったのは、やはり我が最大の失態と言っていいでしょう』

 女はかつて、猟兵達と戦った事がある。
 あれは、辺境のとある開拓村を巡る戦い。張り巡らせた策略を破られた末の決戦。その果てに女は破れ、その身を滅ぼされた。
 あの時受けた傷の痛み。灼ける様な毒の味。そして何より、魂に刻まれる様なあの屈辱。
 ……忘れる事など出来ようはずもない。

『……ですが、ふふっ。この地でまた巡り会えるとは。これも宿縁という物でしょうか』

 ──ねぇ、愚かなる『騎士』よ。呟く女のその声に、応える者はいない。
 それは女の方も承知の上だ。

『どうせその場に繋がれているのでしょう? ならば、黙って見ていると良いでしょう。貴方達に続く愚者達が、死に行く様を』

 女は笑う。自分を追い詰め、この地に乗り込み、その果てに命を散らしたとある勇者の姿を思いながら、嘲笑う。
 ……この地に乗り込んできた、新たな希望。それを勇者の前で摘み取れると思えば。

『此度は、あの時のようにはいきません。我が全力で以て、絶望と災厄の結末を……!』

 哄笑する、オブリビオンの女。『黄泉帰る災厄』と呼ばれるその女が、嗤う。
 その姿を、その場に繋ぎ止められたとある『意識』が静かに見つめていた。



「お集まり頂きまして、ありがとうございます」

 集まる猟兵達を、銀糸の髪を持つグリモア猟兵が迎え入れる。
 穏やかな笑みを絶やさぬはずのヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)のその表情は、固いまま。
 大戦の流れは、悪くない。既に数体の帝竜と交戦を始め、大陸の踏破行も順調だ。
 なのに、何故彼女の表情は固いのか?

「……今回皆さんに赴いて頂く地は、こちらです」

 予知で得られた『群竜大陸』の地図。ヴィクトリアの指が指し示したのは、『勇者の墓標』と呼ばれる地であった。
 この地は、かつて『群竜大陸』に渡った『勇者』達が、かつてのヴァルギリオスと死闘を演じ、相打ちになった地なのだという。
 その戦いは凄まじく、大地に刻まれた深く大きな竪穴はその戦いの余波による物。かつての戦いの激しさの程が窺い知れようと言うものだ。

「その地の一角に現れた、強力なオブリビオン。その撃破が、今回の皆さんの任務となります」

 そのオブリビオンは、『『黄泉帰る災厄』プレアデス』と呼ばれる女オブリビオン。竜の奴隷として最期を迎えた悲劇の蛮族の呪術師であり、今もなお従属の呪いにより竜に忠誠を尽くす、呪われた死霊術師である。
 既に何度かを現している敵であり、過去に戦った事がある者もいるかもしれない。
 しかし、今回の敵は普通とは違う敵であるらしい。

「今回、皆さんが対峙する事になるこの敵は……過去、私達と戦った記憶を持つ個体のようなのです」

 今からおよそ一年前。辺境の開拓村の防衛戦から長く続いた一連の事件。
 様々な事件の裏で糸を引いたその女を、猟兵達は激戦の果てに討ち果たし、開拓村を救い、平和を齎した。
 そんな事件の黒幕が、この女。その敗北の記憶を持ったまま、再び蘇り現れたのだという。

「ただでさえ強力な力を持っていた敵です。そこにかつての記憶が加われば……対処能力の方も加わり、更に強敵となっているはずです」

 かつての戦いでは、10人以上の猟兵が束になってようやく撃破出来た難敵だ。そんな敵が、猟兵との戦いに対する対処能力を得て立ち塞がるのだという。
 更に言えば、『群竜大陸』は敵にとっての本拠地だ。地の利もまた敵にある訳で……厳しい戦いとなるのは、避けられないだろう。

「……真正面から戦えば、苦戦は免れません。ですが一つだけ、勝利を掴む手立てがあります」

 それは、『勇者の墓標』と呼ばれる地の特殊性だ。
 この地は、かつて『群竜大陸』に渡った『勇者』達が散った場所。その肉体は激しい戦いに溶け消え、その魂も多くが無へと還ったが……極一部、この地に縛り付けられた『勇者の残留思念』が残っているらしい。
 その『残留思念』と心を通じ合わせ、その助力を得られたのならば……勝利への道が拓けるはずだ、と。ヴィクトリアは語る。

「幸い、皆さんが降り立ち敵と交戦するその場所は、『勇者の残留思念』が遺された場所です」

 その『残留思念』の元の人となりは予知によって掴めていると、ヴィクトリアが言葉を紡ぐ。
 名は、『フィリオ』。人間の男性で、国に仕える騎士であり、とある魔女の討伐から名を挙げて『勇者』として『群竜大陸』に乗り込んだらしい。
 その戦い方は、勇猛果敢。弱者を護る盾にして、災厄を払う剣。既に故国は滅びているが、その地方では今も御伽噺として語り継がれる人物なのだとか。
 ……その様な人物に認められ助力を得るには、やはり『困難に真正面から向き合う勇気を示す』事が必要だろう。

「戦場は、竪穴の縁。大穴の側の、遮る物の無い平地です」

 今回、猟兵達は現地に直接転送される。敵となる女オブリビオンは猟兵達の即座に転送に気付く為、事前に何か準備をしたりする必要はない。
 気を引き締め、戦闘に臨み……それぞれの勇気を、示して欲しい。

「……苦しい戦いとなるのは、間違い有りません。しかし、『騎士フィリオの残留思念』にその勇気を示す事が出来れば……」

 皆さんのお力を、お貸し下さい。
 丁寧に頭を下げる礼をして、ヴィクトリアは猟兵達を現地に転送する準備を進めるのだった。



 ……世界を渡り、近寄りつつある力の数々。その存在を、漂う『彼』は察知していた。
 かつて『フィリオ』と呼ばれた彼は、今ではその場に漂う『残留思念』でしか無い存在だ。
 自ら望み、目の前で嗤う邪悪を討つことなど叶わぬ。そんな身であった。

 ──だが。近づきつつある、彼らなら。

 感じる力は、かつての勇者と伍する程。きっと歴戦を越えて来た猛者達なのだろう。
 だがそれでも、魔女の力は更に上。このままでは、対等に渡り合う事も難しいだろう。

 ──ならば、だ。もし彼らが、私の力を託すに値する物であるならば。

 彼は、騎士だ。騎士とは民を守り、忠を尽くし、災厄を打ち破る力ある者だ。
 これから見える者達の、その戦いが。この心に響くのであれば。
 例えこの身が消えようと、この力を差し出すことに否は無い。

 ──だが、逆に。そうでないならば……。

 いや。今はその事は考えずにいよう。大事なのは、来訪者達の力を見極める事だ。
 『騎士フィリオ』。その残留思念は、その場に静かに揺蕩う。
 ……戦いの時は、すぐそこに迫っていた。


月城祐一
 黄金週間が! 終わってしまうぅ!!
 どうも、月城祐一です。いや、あんまり関係ないんですけどねGW(シフト制並感)

 『帝竜戦役』、月城からの四本目です。
 以下、補足となります。

 このシナリオは、『⑤勇者の墓標』の攻略シナリオとなります。
 OPで触れられています通り、この地には『勇者の残留思念』が漂っており、心を通じ合わせる事で助力を得られます。
 この地の勇者は、『騎士フィリオ』。勇猛果敢で騎士道を重んじる、典型的な男性騎士です。
 本分の通り、勇気を示すような行動を取る事で彼の助力を得られるでしょう。
(=納得出来る行動には、プレイングボーナスが与えられます)

 敵は、『『黄泉帰る災厄』プレアデス』。ボス戦です。
 数々の強力な呪術と死霊術を操る、強敵となります。

 今回の敵は、過去の拙作に登場した個体の記憶を持つ個体として設定してあります。
 その為、猟兵の行動等に対する対処能力が高く、その戦闘力は通常よりも強大です。
 素の状態での力押しは、危険です。勇者の助力を得られて初めて、勝機が見える。それ程の強敵であるとお考え下さい。

 参考までに、以前の『開拓村』関連の事件は ↓こちら↓ になります。
( https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=8705 )
( https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=5394 )
( https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=7142 )
( https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=8703 )
 読まずにご参加いただいても問題はありませんが、宜しければ是非ご一読下さい。

 戦場は、竪穴の側の平地。遮る物などは無い、敵にとっても味方にとっても戦いやすい環境です。
 猟兵達の転送直後に、敵の方から接触して戦闘となります。気を引き締めて臨ん下さい。

 また今回は、プレイングの採用数を若干絞る形になるかと思います。
 有力な物から採用致しますので、ご了承下さい。

 猟兵とかつて死闘を演じた強敵との再戦。
 それを静かに見つめる『勇者の残留思念』の選択や如何に。
 皆様の熱いプレイング、お待ちしております!
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第1章 ボス戦 『『黄泉帰る災厄』プレアデス』

POW   :    死霊魔術【怨霊憑依】
【僅かに残された良心】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【最悪の怨霊に憑依された状態】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    死霊魔術【致死邪眼】
【生前の大切な記憶を代償にすること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【生命力を奪い死霊へと変化させる邪眼】で攻撃する。
WIZ   :    死霊魔術【死霊兵団】
【レベル×100体の歴戦の死霊騎士】の霊を召喚する。これは【一糸乱れぬ連携による槍術】や【暗黒魔術と火炎魔術の合成魔術】で攻撃する能力を持つ。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は黒玻璃・ミコです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 グリモア猟兵の転送を受け猟兵達が降り立った地は、乾いた風が吹き抜ける荒野だった。
 直ぐ側に見える漆黒の大穴は、かつての『勇者』達とヴァルギリオスの戦いの爪痕。あれが『勇者の墓標』なのであろう。
 ……周囲を見渡す、猟兵達。そんな彼らに向けて。

『……来ましたか』

 ──ゾワリ。

 身の毛もよだつとは、まさにこの事か。女の声に潜む強烈な殺意と邪気が、猟兵達に突き刺さる。
 その視線を声の方へ向ければ、そこにいたのは一人の女。黒の髪、浅黒い肌、禍々しい入れ墨……見覚えのある者もいるかもしれない。

『我が宿願を阻んだ、その恨み、あの屈辱……『躯の海』にあっても、忘れた事はありませんでしたよ』

 呪われた大地の力を受けて力を増しているというのか。その身に纏う圧倒的な邪気と悪意は、まさに桁違い。
 見ただけで魂を凍らせる様な、その覇気は……まさに、『死の具現化』だ。

『その血肉、その魂。そしてこの世界の、希望。摘み取り、弄び……我が主への贄としましょう』

 居並ぶ猟兵達へ向けて、再び現れた『黄泉帰る災厄』が牙を剥く。
 猟兵と災厄。その因縁の戦いを、見守る『勇者の残留思念』。
 勝敗の鍵を握るその力を、果たして猟兵達は得られるだろうか?
ミフェット・マザーグース
勇気を示すって、どうすればいいんだろう?
思い浮かんだのは最初の一歩
村を守るために立ち上がった普通の人達がしぼりだした勇気

ティエル(f01244)と一緒に戦うね
「歌唱」と「楽器演奏」でティエルを「鼓舞」するよ!

UC【楽器のオバケの演奏隊】
楽器のオバケ達に、戦場ぜんぶに届くような高い音でラッパを鳴らして、突撃!
飛び出したティエルを追いかけて、音の衝撃波で援護してもらうよ!
もちろんミフェットも一緒に、オバケ達を指揮してティエルを助けるんだ!
「盾受け・かばう・激痛耐性」で歌を決して止めないよ!


ごうごうと風が鳴り 雷がまたたく 嵐の中
立ち上がる騎士 その胸には 絶えぬ勇気の炎と 闇を照らす希望の輝き!


ティエル・ティエリエル
WIZで判定
友達のミフェット(f09867)と一緒だよ!

むむむー、開拓村を襲ったのと同じヤツだな!
放っておいたらまた開拓村みたいに罪のない人達を襲うんだろ!そんなことさせないぞ☆

辺り一面を埋め尽くすような死霊騎士の霊にも怯えずに立ち向かうよ!
だってボク達が退いたら罪のない人達が犠牲になるかもしれないんだもん!

【お姫様ペネトレイト】でお姫様オーラを纏ってプレアデスに向かって突貫
負けないぞーと「勇気」を振り絞ってミフェットの呼び出した楽器のオバケさん達を引き連れて突撃だー☆
途中で何度勢いを削られて止められてもあきらめずに何度も突撃するよ!

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です





 猟兵達へ向けられた、『災厄』の害意。その悪意がこの大陸の呪われた力と結びつき、無数の死霊騎士を喚ぶ。
 列を組み、まるで津波の様に迫りくる死霊の軍勢。その光景は、ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)がかつて見た光景と同じものだ。
 度重なる謀略と戦い。その影で糸を引いていたのがあの『災厄』だ。もしこの戦いで猟兵達が敗れれば……奴はまた、罪のない人々を襲おうと動くだろう。

「そんなこと、させないぞっ☆」

 だから、ティエルは敢然と立ち向かう。地の一面を埋め尽くすかのような大軍勢に、怯えること無く勇気を示す。
 ……ティエルが退けば、多くの罪のない人達が犠牲になるかもしれない。ティエルを心配してくれる母が、大好きな故郷が。そして、今も背でティエルの姿を見守っている親友が。毒牙に掛けられ、魂を弄ばれてしまうかもしれない。

「やあっ! とおっ!!」

 宙を舞い死霊の魔の手を躱して、細剣を振るう。
 強い決意と覚悟を示す、その姿。勇猛かつ可憐、凛々しい小さなお姫様のその姿は……ミフェット・マザーグース(沼の歌声・f09867)に、ある戦いの記憶を呼び起こさせた。

(……自警団の、ヒト達)

 それは、猟兵達が最初に開拓地と交わったあの戦いの出来事。滅びの運命に直面しながら、最期まで抗い、猟兵に救われた男達の姿。
 当然、ティエルと彼らは似ていない。姿形もそうだし、その強さだって段違い。何よりティエルはあんなにも可愛らしい。
 けれど、その魂の輝きは。圧倒的多数の敵にもめげず、困難に抗い、燃え上がるその心の在り方は、良く似ている。
 ……その眩しさを見れば、ミフェットも頭でなく、心で理解するだろう。

「これが、『勇気』!」

 内気で、臆病で。戦う事が得意では無いミフェットだ。『勇気』の示し方と言われても、良く分からなかった。
 でも、今なら良く分かる。勇気とは……困難に、怯まないこと。恐怖に抗い、絶望を乗り越える。その心の輝きであるという事を。
 ……そうしてその言葉の意味を理解すれば。ティエルと一緒に、大事な親友と共に、と。ミフェットの心にも、静かに燃える炎が宿る。

「……偉大な演奏家のみんな、力を貸して!」

 イメージするのは、緩やかに奏でられる音の波。駆け上がる音階は時に優しく、時に激しく。金管のその高鳴りは雷鳴の如く、高く遠い空へと吸い込まれる。
 顕れ出たのは、無数の楽器達の亡霊だ。吹き荒れる管楽器達が戦場に満ちる亡霊を追い払おうと、その管をけたたましく吹き鳴らす。

「ミフェット! ……よーし、このまま体当たりで貫いちゃうぞーっ☆」

 高らかに鳴り響く亡霊たちを引き連れて、ティエルが翔ぶ。
 身体に纏うは高貴なオーラ。レイピアを構え、尾を引くような速度で死霊の群れへと突撃を敢行する。
 一度、二度、三度。突き抜ける度に死霊は弾けて空気へ還る。だがそれ以上に、敵の数が多すぎる。
 突撃の勢いは次第に殺され、遂には完全に止められてしまうが……。

「──あきらめる、もんかぁーっ!」

 その度に、ティエルが吠える。楽器の亡霊が打ち砕かれ、鳴り響く音が少しずつ減じてく。
 だがそれでも諦めずに、愚直なまでに。ティエルは死霊の軍勢に、立ち向かう。

 ──ごうごうと風が鳴り 雷がまたたく 嵐の中
 ──立ち上がる騎士 その胸には 絶えぬ勇気の炎と 闇を照らす希望の輝き!

 そんなティエルを支えようとするかのように、戦場に響く少女のソプラノボイス。
 嵐という困難に立ち向かう騎士を称えるミフェットが歌うその歌は、過去幾度と無くティエルに勇気を与えてきた思い出の歌だ。
 そんな歌を背に受ければ……ティエルのその『勇気』が、今日一番の輝きを放つ!

「やぁぁぁぁぁぁああああ!!」

 飛び上がり、吶喊、突入。勇気に燃えるお姫様オーラは激しく瞬き、聖なる力となって死霊の邪気を焼き払う。
 その勢いは凄まじく、一直線に死霊の波を突き抜けて……。

「これがボクの……全力全開だぁぁーッ!」
『何ッ!?』

 遂にその切っ先を、『黄泉帰る災厄』の張る呪術防壁に突き立てた。
 全力全開のティエルの一撃に、防壁を張る『災厄』。その姿は、まさにあの時の再現だ。
 ……だが全てが全て、あの時と同じでは無い。

『──この、力!? まさか、目覚めて……えぇい!』

 障壁に突き立てられた切っ先から感じる、『何か』の力。その力に不穏な物を覚え、『災厄』が舌を打つ。
 そのまま手を振って、魔力の流れに変化を起こせば……。

 ──カッ!!

「わぁっ!?」
「てぃ、ティエルっ!!」

 爆発し、生じる白光。その光が生んだ風に飛ばされて、ティエルの身体が宙を舞う。小さなその身体は運良くミフェットに回収されて、何とか傷を負うことは避けられた。
 ……だが、その爆発の威力は凄まじかった。周囲にあれだけいた死霊騎士は影も遺さず消え失せて、この戦場に立つのは猟兵と『災厄』のみとなっていた。

『──忌々しい、愚かな『騎士』め。猟兵に助力すると、そういうのですか』

 そんな戦場に、『災厄』の声が響く。その声に含まれているのは……先程よりも一層強い、憎悪の色だ。

『ならば、その妄執。諦めの悪さごと捻じ伏せてくれましょう!』

 憎悪に瞳を燃え上がらせて、『災厄』が吠える。
 戦いは、増々激しさを増すだろう。そんな予感に、猟兵達の戦意も高まるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ベール・ヌイ
接敵するまでの間、『無音鈴』を使った「ダンス」の舞を奉納します
勇敢なる騎士へ語りかけるように、あるいは味方を「鼓舞」するように
小さなか身体で、力もないけど、ボクは立ち向かう
この戦争を終わらせたいから…皆に眠ってほしいから
これを勇気と読んでくれるなら、どうか力を貸してほしい

『鬼殺』を構え、まっすぐに相手へ向かいます
攻撃は「野生の勘」で避けるか、「激痛耐性」で耐えて
防御はしない、ヌイの身体だとあまり意味はないから
だから、まっすぐに【不動明王・倶利伽羅】を詠唱しながら鬼殺を突き立てます
突き立てれば、UCを発動
炎の竜王がプレアデスに巻き付こうとするだろう

アドリブなど歓迎です


ソラスティベル・グラスラン
一度に10人以上を相手取った強敵ですか……尋常ではない強敵ですね
ふふ、立ち向かうことに迷いはありませんよ
なぜならわたしは、『勇者』なのだから!

此処に誓うは不退転の意思…これがわたしの【勇者理論】!!(防御重視)
【更に盾受け・オーラ防御】で全力で守りを固め、
攻撃を【見切り】、【怪力】を以て受け流す!
只管に今は仲間の盾になり、守りに徹します!

負けられない、負けられません!
わたしが負けて傷つくのは無辜の民、そして世界の未来です!
英雄譚の勇者たちは、どんな逆境でも諦めなかった…
ならば彼らに並び立つ為にも、ここに【勇気】の御旗を立てるのです!!
『勇者フィリオ』よ!勇猛なる騎士よ、わたしに力を!!


鈴木・志乃
早業で呪詛耐性のオーラ防御展開
第六感で攻撃を見切り破魔の塊であるUCで早業武器受け、そのまま念動力で鎖を操作し足払いを狙う。隙が出来ればそのまま捕縛……したいけど無理だろうな、分かってる。

たとえそうだとしても諦める理由にはならない。
……違うな、諦めるって選択肢はそもそもない。
アレが人の幸せを壊すから、私はそれを阻む。

私はヒトの祈りから生まれた。
明日の希望を、ささやかな平和を、皆と過ごす未来を望む声の集まりから生まれた存在。祈りの権化。
私自身もヒトが好きだ。彼らの笑顔を、私は守る!!

フィリオ、力を貸してくれ!
捕縛出来たら全力魔法で一切合切をなぎ払い攻撃する!!


棒・人間
敵は呪術を使うか。例えこの身が呪いに蝕まれ、精神が永久に彷徨い続ける苦痛に囚われたとしても俺はこの剣を世界のために振い続けてみせよう!
まずは盾を用いて敵の攻撃を受けて見せよう!呪いも苦痛も盾が防いでくれるハズだ。勇者よ、俺一人の力ではやつに勝つのは難しい。だがお前達の力と共にあれば呪いを押し切って我が歩みを進められる。さぁ勝利への一歩を、未来への希望を俺に与えてくれ!
呪いに対する抵抗が出来たならあとはそのまま押し切る。岩壁にそのまま押されてしまうがいい!


ウィルフレッド・ラグナイト
この世界の希望を摘み取る…と言いましたか?
そんなことはさせません
私は騎士として、この身を剣に、そして盾として希望を守ります

敵からの攻撃は【武器受け】や【残像】【ダッシュ】などで避ける
もし当たってしまうなら【呪詛耐性】や【オーラ防御】で耐える

この身はまだ未熟な騎士なれど、人々を守りたい想いに偽りはありません
希望という光を消させはしない
もし希望を見失った人がいるのなら、再び光を灯せるようにしたい
そのためにはまずは魔女を超えてみせます

誓剣エルピスの【封印を解き】、『夜明けの閃刃』を使用
攻撃の隙や間を抜けて攻撃する
プレアデス…貴女に希望は摘み取らせない!
何度、黄泉より帰ろうと私たちがそれを阻止する!





 先に動いた猟兵が見せた、強烈な力。そして『災厄』の、その口振り。
 どうやらこの地には『勇者の残留思念』が確かに漂い、勇気を示す者にその加護を与えてくれるのは間違いないようだ。
 グリモア猟兵が語った、勝利への道筋。そこに繋がる確かな可能性を見たことで、猟兵達の戦意も高まりを見せる。
 ……だが。

『──ハァッ!』
「ぐぅ、おおっ!?」

 目にも留まらぬ疾さで振るわれた『災厄』の杖。その一撃を盾で受けた棒・人間(真の勇者・f18805)の身体が吹き飛ばされる。

「この……っ!」
『遅いッ!』

 杖を振り切り出来た一瞬の隙を狙った、鈴木・志乃(代行者・f12101)の鎖。確実に当てられるタイミングを狙ったはずの無敵の鎖も、『災厄』には止まって見えたか。鎖は軽やかに躱されて、虚空に伸びるのみだ。

「大丈夫ですか!?」
「あ、あぁ。何とか、な……」

 駆け寄るウィルフレッド・ラグナイト(希望の西風と共に・f17025)のその手を取って身体を起こしながら、人間は頭を振る。
 ……始まった猟兵と『災厄』の本格的なぶつかり合いは、猟兵の側が不利な状況で推移していた。
 『群竜大陸』という呪われた大地の力を受けて、『災厄』のその力は増している。攻防ともに隙は無く、その判断力も的確。圧倒的な力で以て、『災厄』は猟兵達を翻弄していたのだ。
 ここまでの実力差。『勇者の残留思念』の加護を得たとして、その溝はどこまで埋まるのか……。

「でも、それが諦める理由にはならない……違うな。諦めるって選択肢は、そもそもない」
「そうです! わたし達が負ければ、傷つくのは無辜の民。そして世界の未来なのですから!」

 一瞬漂う、不安。だがそれを打ち消す様に志乃の呟きに、ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)の決意に満ちた声が応える。
 振るわれる、『災厄』のその力。それを受けた者達は、一様に感じていた。『この力は、今と未来を生きる人々の幸せを壊す物だ』、と。
 だからこそ、負けられない。どれだけ実力に開きがあろうと、諦めてはならない。
 英雄譚に謳われた者達の様に。かつてこの地に降り立ち、その生命散らす最後の瞬間まで戦い続けた、『勇者』達の様に。

 ──シャァン。

 その強い決意が、ベール・ヌイ(桃から産まれぬ狐姫・f07989)が持つ音の鳴らぬ鈴を鳴らす。
 少女は、踊る。共に戦う仲間達を鼓舞するように。そしてこの地に眠る勇敢なる騎士の魂に語りかけるように。

(……小さな身体で、力も無い。けど、ボクは立ち向かうよ)

 戦争を終わらせたい。この世界に生きる全ての人が、憂うこと無く眠れる様に。
 ベールの優しいその心が、猟兵達の覚悟と決意を結合して。

 ──シャァン。

 再び、鳴るはずの無い鈴が鳴る。眠れる騎士に、請い願うかの様に。
 どうか、力を貸して欲しい。その加護で、共に悪意を討って欲しい、と。

『──なんですか、この音は……不愉快な!』

 だが聴こえるはずの無いその音を聴いていたのは、猟兵と眠れる騎士の魂だけでは無かった。『災厄』のその耳にも鈴の音は響き、その意識を強く惹き付けた。
 苛立ちを隠さぬ、『災厄』のその表情。地を蹴り、杖を振り翳す。呪いの力が込められたその一撃が、ベールの身体を打たんと振り下ろされて……。

「やらせは、しませんッ!」

 ガギィッ!! 甲高い音を立て、呪われた杖を黒翼の盾が受け止めた。
 間一髪、間に入ったのはソラスティベルだった。持ち前の怪力と盾受けの技術、そして身体に纏う竜の覇気を全開にして何とか受け流そうと試みるが……。

『舐めるな、猟兵っ!!』

 『災厄』の裂帛の気勢に盾が罅割れ、杖が纏う呪力は竜の覇気を貫いて、ソラスティベルの身体を冒す。
 何という、圧力。脚の踏ん張りが限界を迎え、崩れ落ちる片膝。堪えられる時間は、もう長くない。
 だが、それでも──!

「──負けられない、負けられません!!」

 その魂の火を燃やし、ソラスティベルは抗う。
 かつての『勇者』も、そして以前にこの『災厄』と戦った者達も。立ち向かい、諦めなかったはずだ。
 ならば、自分も迷わない。何故ならば……それが、『勇者』足る者の矜持であるからだ。

「『勇者フィリオ』よ! 勇猛なる騎士よ!」

 ──私に、力を!!
 吠えるソラスティベルのその魂に、力が宿る。激する様に燃え上がり、しかし慈しむように温かい。そんな力が、宿る。
 抑えつける杖を、盾で押し戻す。崩れた膝を再び起こし、ゆっくりと立ち上がる。その姿は、まるでソラスティベル自身が『勇気の御旗』であるかのようだ。

『これは、また……っ!?』

 目を見開く『災厄』。直後、襲い掛かる一人の影。

「ノウマク サンマンダ バサラダン……」

 詠われる真言と共に振るわれた、鬼を殺す刃。ベールの振るうその白刃が、『災厄』の張る障壁を穿ち……。

「不動明王へ願い奉る。御身の力をここに!」

 その刀身を炎の竜と化し、『災厄』のその身体を襲う。振るわれる杖、爆ぜる結界。白光に呑まれながら、『災厄』が飛び退き距離を取る。

「今度こそ、捕まえる!」

 だがその脚を、今度こそ志乃の鎖が捉えた。
 明日の希望を、ささやかな平和を。皆と過ごす、ありふれた未来を望む声。その集まりから生まれた、祈りの権化。
 そんな力が作りあげた光の鎖だ。更にその力の上に……。

「フィリオ、その力を貸してくれ!」

 志乃のその求めに応えた『勇者の加護』で、鎖の強度が更に増せば。悪意の権化である『災厄』が、逃れる事など出来はしないだろう。
 だが、『災厄』のその力は圧倒的だ。敵の行動を縛り付けるだけで、精一杯。少しでも気を緩めれば、形成はひっくり返されかねない。
 ならば、ここは鎖の制御に専念。攻撃は……。

「……後は、頼んだ!」
「任された!」

 この場に共に挑む、仲間に任せれば良い。
 志乃の言葉に応じたのは、人間だった。構えるのは剣では無く、盾。一見頑健そうに見えるその盾は、よくよく見ればチープな作りの玩具の盾だ。
 だが、しかし。そんな盾であっても、頼もしい力に変えるのがユーベルコードだ。後を押す仲間のその声を、幻覚などではないその信頼を。

「……勇者よ! 未来への希望を、俺に与えてくれ!」

 そして、平和な未来を望んだであろう勇者へ捧げる勇気があれば。
 一人では勝つことも……いや、抗う事すら難しい難敵であっても。通じる力を示す事は、出来るのだ。

「このまま一気に、押し切ってくれる!」
『巫山戯た事を! この程度の力で……!』

 押し込む勇者の盾、抗う『災厄』の杖。その力比べは、まさに互角。押し込み、押し返される、一進一退の状況だ。
 度重なる猟兵の猛攻があっても、まだこれだけの余力を残すとは。『黄泉帰る災厄』のその力の、なんと凄まじき事か。
 ……だからと言って、諦める訳にはいかないと。猟兵達は、誓っている!

「心に灯った希望の光は決して消えない……!」

 希望を紡ぐ、聖なる刃。その封印が、解かれる。
 ウィルフレッドのその剣の名は、【誓剣エルピス】。常に希望を心にと、誓いと共に継承した聖なる剣だ。

(『この世界の希望を摘み取る』。そんな事は、させはしない……!)

 ウィルフレッドは、まだ未熟な騎士である。その事を、彼自身も良く自覚している。
 だが、彼の魂に宿る想いは。絶望を祓う剣にして、希望を護る盾であるという、騎士としてのその矜持は、本物だ。
 希望という灯を、消させはしない。その為には……眼の前の『魔女』を。
 『黄泉帰る災厄』を、超えねばならない!

「プレアデス! 貴女に希望は、摘み取らせない!」

 上段に構えた刃。鋭く踏み込み、刃が振り下ろされる。その一閃は、絶望を祓う銀の輝き。
 人々の希望を護る。清廉な意思に満ちたその斬撃を。消耗し、鎖で、盾で動きを封じられた『災厄』が躱せる道理など、無い!

 ──斬ッ!

『グッ、ァァァァァアア!!?』

 上段からの、袈裟斬り。その一閃に、戦場に響く断末魔。
 ……その一閃は、この世界の人々の希望を乗せた物。その光の意思に宿す悪意を灼かれて、『災厄』の身体が限界を迎える。

『お、のれぇ……! 一度ならず、二度までも! ですが、私は何度でも……!』

 崩れ行くその身体。だが『災厄』その眼に輝くのは、強烈な悪意の輝きだ。
 ……また、黄泉帰るのだろうか。そうしてまた、猟兵達を干戈を交える事になるのだろうか。
 猟兵達の胸に、不吉な予感が過ぎる。

「──いいえ。貴女にはもう、『次』はありませんよ」

 だがその予感は、響いたその声に消える事になるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

黒玻璃・ミコ
※美少女形態

◆行動
あぁ、王の使徒たる『魔女』にして『騎士』は今此処に
奴隷に堕とされ
勇者としての運命を狂わされた乙女プレアデス
星辰は正しき位置に、遂に終焉の時です
そして騎士フィレオ、何を臆して居るのです
彼女は魔女ではありません
微かな良心を奥底に秘め
今もなお助けを待つ囚われの姫君
理解したなら力を貸しなさい

そう告げ【黒竜の騎……いいえ、騎士フィレオの戦装束を纏い挑みます
大地に漂う魔力と生命力はこの身に
脳内麻薬を過剰分泌させて神経加速&筋力増強して斬り込みましょう
彼女の下に辿り着いたなら
【黒竜の道楽】を解放し悪しき存在のみを打ち砕きましょう



貴女達二人が共に帝竜に挑む可能性だってあったのですよ(ボソッ)





 そこにいたのは、黒玻璃・ミコ(屠竜の魔女・f00148)。ブラックタールの身体をヒトの形に組み上げて、崩れ逝こうとする『災厄』のその姿を見下ろしていた。

『私に、『次』が無い? 可笑しな事を……』

 嘲笑する、『黄泉帰る災厄』。
 彼女は、オブリビオン。過去より這い出て、現在と未来を喰らう者。世界の敵の一人である。
 そんな彼女であるが、仮にこの場で討たれても大きな意味は無い。この場で討たれたとしても、彼女の魂は『躯の海』に戻るだけ。
 そして時が来れば、今回の様に再び黄泉帰るのだ。世界を侵し、破滅に導くその日まで。

「──あぁ、王の使徒たる『魔女』にして『騎士』は、今此処に!」

 だが、しかし。その存在の根本と縁深い物が向き合えば、その宿命は変わる。
 ……『黄泉帰る災厄』。彼女のその二つ名は、竜の奴隷としてその存在を捻じ曲げられてから得た物だ。
 だが、本来の彼女のその役割を。彼女と宿縁を持つミコは、識っている。

「──『勇者』としての運命を狂わされた乙女、プレアデス」

 そう。彼女は本来、『勇者』となるべき存在であった。その呪術の力で仲間を支え、邪竜を討つべき存在であった。
 そんな彼女の魂を、竜は卑劣にも捻じ曲げ悪意に染めたのだ。
 ……だが、その歪められた宿命は今日を以て正される。
 星辰は正しき位置を示し、その存在の終焉の時が来たのだ。

『なに、を……私は、『災厄』! 偉大なる竜に、その身を捧げた存在!』

 朗々と語るミコのその言葉に、声を荒げる『災厄』……いや、プレアデス。
 その声は、震えていた。歪んだ存在を正道に戻す、そんなミコの紡ぐ呪に魂を蝕まれ、いや修繕され。ただただ、慄いてた。
 だが、臆する『魔女』を正道に引き戻すには何かが足りない。その足りない力を補う為には……本来彼女とあるべきであった、もう一つの力が必要だ。

「──『騎士フィリオ』。何を臆しているのです」

 それは、この場に縛り付けられた魂。かつての『勇者』の、その魂。
 『騎士』として『魔女』と向き合った、『フィリオ』と呼ばれた男の意思だ。

「聴いていたでしょう。彼女は、『魔女』ではありません」

 『魔女』となり、竜の下僕となったプレアデス。だがその心が芯から悪に染まっていれば、『騎士』はこの地に足を踏み入れずに命を散らしていただろう。
 ……プレアデスの心の奥底には、僅かに残る良心が眠っている。その良心は、今もなお囚われの姫君の如く助けを待っているのだ。

「『騎士』であるならば、救いなさい。理解したなら……その力を、貸しなさい!」

 吠えるミコ。その叫びに応じるかのように、ミコの魂に力が宿る。

 ──承知した。『騎士』の本懐、御身に託そう……!

 大地に漂う、魔力が蠢く。『魔女』の呪力と『騎士』の闘志が絡み合い、ミコの身体を覆い、銀の甲冑へと変わっていく。
 ……その鎧は、かつて『騎士フィリオ』が纏ったそれ。彼の力が具現化したその鎧を纏えば、ミコの力はプレアデスを蝕む邪竜の力を上回る。

「……行きます!」
『来るなっ! 来るなァッ!?』

 地を蹴るミコ。その接近を拒む様に振るわれたプレアデスの杖が、遺された『災厄』の力を呪いの弾丸に変えて撃ち出す。
 だが、その力はミコが纏う騎士の鎧に軽々と弾かれる。鎧は、無傷だ。
 囚われの姫君を救う、そんな騎士としての本懐に滾る闘志。脳内麻薬を過剰分泌させたミコの心にも伝わるようだ。

 ──あと、三歩。騎士が腰に佩いていた名剣を引き抜く。
 ──あと、ニ歩。剣の白刃を構えた。
 ──あと、一歩。その刃を、姫の魂を蝕む悪意を貫くように。

「──黒き混沌より目覚めなさい、第零の竜よ!」

 その胸の中心へと、剣を突き立てた。吹き出す血潮は紅く、熱い。悲鳴は無い。
 ……だが、ミコの耳には。プレアデスの身体を蝕んでいた『竜の呪い』が上げる断末魔が、確かに聞こえていた。

『……ありがとう、救ってくれて』

 その断末魔が消えゆけば、響いたのはプレアデスの声。その表情は、先程までの悪意に満ちたそれとはまるで違う……穏やかな笑顔。
 だがその表情を浮かべられたのは、ほんの一瞬。遂にその身体は限界を迎え、塵となって瞬く間に消えていく。

 ──どうか、私達の代わりに。
 ──この世界を、頼む。

 吹き抜ける、乾いた風。その風に乗って、猟兵達は一組の男女の声を聞いた気がした。
 ……その声は、もう聞こえない。力を使い果たし、未練を遺さず。その存在を、天に還したのだ。

「……そうですね。帝竜に挑む可能性があった、貴女達二人の分も……」

 ポツリと呟くミコが、立ち上がる。
 竜を蒐集し、糧とし、喰らう。『屠竜の魔女』のその瞳に、強い決意が浮かぶのだった。

 ……こうして、『勇者の墓標』の戦いは終わりを告げた。
 『黄泉帰る災厄』プレアデス。その魂を捻じ曲げられた存在を、猟兵達は見事に救い出したのだった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月09日
宿敵 『『黄泉帰る災厄』プレアデス』 を撃破!


挿絵イラスト