帝竜戦役⑨〜力のその先にあるモノは……
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そこは広大な沼沢地であった。
ぽこぽこと噴き出る泡と臭気が、そこに生を否定する気配を感じさせる。
その死が渦巻く大地で尚、死を望む声がする。
「誰かがわたしを殺してくれなければ、わたしは世界を殺してしまう」
それは全長何十kmにも及ぶ巨大な存在。
深い深い底なし沼であって尚、その身体を沈みこませることが出来ない巨体。
圧倒的な生命力を感じさせる“それ”は、その存在感に反し己が死を願う。
「わたしを殺してくれる勇士の訪れを、わたしは、待っています……」
巨獣は願う。
誰かわたしを殺してくれと。
わたしが、世界を滅ぼしてしまう前に……。
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「また新たな帝竜が現れたな」
赤毛のグリモア猟兵――テオ・イェラキ(雄々しき蛮族・f00426)は猟兵たちにそう語り掛ける。
テオによれば新たな帝竜の名は帝竜ガルシェン。
全長何十kmにも及ぶ巨大な竜であるガルシェンは、死の気配が漂う毒沼で自らの死を願っているという。
「絶大な生命力を持ち、体内ではありとあらゆる生命の進化と絶滅が絶えず繰り返されているというガルシェン……奴の力は無尽蔵とも言え、増え続けるその破壊の力を止めねば、世界は破壊されてしまうことだろう」
ガルシェン本人もまた、己が力が暴走することを危惧している。
故に、自身の死を願っているというのだ。
「デカい的を狙い撃ちにすれば良いなどと、話はそう簡単では無い……創世巨獣の名を持つガルシェンから生み出されるエネルギーにより絶えず魔物が生み出され、奴を守っているのだ」
その取り巻きの数から、先手を取り押し切ることは不可能。
ガルシェンに近づく為にも、まずは敵の攻撃に対する対応が必要だろう。
「気を付けて行ってくれ……そして、奴の望みをかなえてやってくれ」
グリモア猟兵は猟兵たちを送り出す――皆の安全を、そして巨獣の望みが叶うことを祈りながら。
きみはる
●ご挨拶
お世話になります、きみはるです。
今回の戦争参加一発目はこちらになりました。
ボス戦ですので、これまでと同じく敵UCへの対応が必須となります。
毒沼自体への対応は必須ではありません。
●プレイングボーナス……『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』。
(敵は必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります)
●プレイングについて
プレイングは順次募集させて頂きます。
申し訳御座いませんが、採用数は絞らせて頂くかもしれません。
それでは、勝利目指して皆で頑張りましょう。
第1章 ボス戦
『帝竜ガルシェン』
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POW : 創世巨獣ガルシェン
【獣の因子】を使用する事で、【巨大な薔薇】を生やした、自身の身長の3倍の【創世巨獣形態】に変身する。
SPD : アンチイェーガー・ギガンティス
いま戦っている対象に有効な【猟兵を殺す毒を宿した『新種の巨大生物』】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : 防衛捕食細胞の創造
召喚したレベル×1体の【外敵を飲み込み自爆する『巨大スライム』】に【虫を思わせる薄羽】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
イラスト:桜木バンビ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
死之宮・謡
アドリブ歓迎
世界の滅びを厭って自らの滅びを願うオブリビオンとはこれまた珍しいモノを…珍獣だな
それにしても、巨獣といっても限度と言うものが無いかい?
抑如何やって生命を維持しているのかも解らん…アレか?魔力で云々という話なのか?
まぁ良い…狩りの時間だ…
・SPD
相手の巨大生物はいなしながら
【天魔解放】で適当な位置に飛ぶ…広義の意味ではこの戦域は全域猟兵の元だろう?できれば背に乗りたいが高望みはせんさ…
(解放する姿は焔の神。燃え盛る焔の身体を持つ煉獄の化身)
後は只管焼き尽くす。
侵蝕の「呪詛」を籠めた焔(全力魔法・属性攻撃)と共に侵攻
ティアルム・アヴァターラ
「ひょえ〜。大きいねぇ」
山のような大きさの竜とも遭遇したが、その比ではない
だが、創世と破壊の力なんて言われては、奪いに来ざるを得ない。かつて狙って、奪えなかったモノ、『海』に等しき権能を
「今回はマジだよ…?」
ギャル口調も封じてカトラスを構える、襲いくる巨大スライムに対しては要は飲み込まれなければいい
「その羽さえ消せば、ただのスライムだよね」
左腕の義手から出した銃器で羽を狙いつつ、【ジャンプ】【衝撃波】を駆使して近づけさせない
その後UCを使い、呼び出したペットのレヴィに乗って攻める
「さぁ、殺して欲しいんだよね。なら、大人しく命を差し出してもらおうかっ…!」
※アドリブ歓迎です
●
「世界の滅びを厭って自らの滅びを願うオブリビオンとはこれまた珍しいモノを……珍獣だな」
死之宮・謡(狂魔王・f13193)は今回のターゲット――帝竜ガルシェンを見つめ、小さく呟く。
世界の破壊を防ぐ為、謡とて幾度となくオブリビオンを狩ってきた。
種々様々な敵を屠ってきた彼女であって尚、己が死を願う存在は珍しく、まるで動物園で珍獣でも眺めているかのような気分になってくる。
「それにしても、巨獣といっても限度と言うものが無いかい?」
それは彼女がそう嘆息したくなるほどの巨体。
全長何十kmにも及ぶその巨獣は遠目に見ても視認でき、そしてその全てを視界に収めることが出来ないほどに巨大であった。
「抑如何やって生命を維持しているのかも解らん……アレか?魔力で云々という話なのか?」
その存在はまさしく常識の埒外。
殺戮と破壊のみを希求する謡であってもそう余計なことを考えずにはいられないほどに、その巨獣の素材は衝撃的であった。
「まぁ良い、狩りの時間だ……」
散らばる思考を切り捨て、謡は気を取り直す――余計な思考など不要とばかりに。
魔王は踊る――狂い、戦い、殺す為に。
「ひょえ~。大きいねぇ」
記憶の中で最も巨大であった敵――山のような大きさの竜と比べても圧倒的に巨大であるガルシェンの上で、ティアルム・アヴァターラ(其ノ罪ハ、母ナル『嫉妬』・f26285)は驚きを隠せない。
普段通りの明るく軽い口調で呟くティアルム。
しかし彼女が浮かべていた笑顔は、直ぐに引き締められる。
「今回はマジだよ…?」
創世と破壊の力などと言われては、奪わねばなるまい、請わなくてはなるまい、願わなくてはなるまいか……その力を。
故に彼女は用意にその身を危険へと投げ出す。
全ては彼女の願いの為に。
「もー……邪魔すぎ」
最早大地と見分けることすら難しいガルシェンの背に立つティアルム。
そんな彼女を囲むのは、外敵を迎え撃たんと現れた防衛捕食細胞――貪欲に外敵を飲み込まんとする羽付きスライムだ。
「でも、その羽さえ消せば、ただのスライムだよね」
数えるほど難しい羽付きスライムに囲われて尚、ティアルムは焦らない。
彼女がスライムたちへと向けるのは己が左手へと仕込まれているメガリス――カルバリン=シニストラ。
銃器へと姿を変えたそのメガリスにより、一体、また一体と羽付きスライムの羽へと正確に狙いを付け、撃ち落としていく。
天を覆いつくし逃げ場を防がんと迫るそれらも、地に落としてしまえば単なるスライムなのだから。
地に落ちたスライムたちはそれでも尚、外敵を飲み込まんと這い続ける。
しかしその異形たちはティアルムへと辿り着くことは出来ない。
何故ならばその前に――全てが燃え尽きてしまったからだ。
「さて、邪魔をさせてもらうよ」
その場に現れたのは、燃え盛る焔の身体を持つ煉獄の化身。
それは天魔解放によりテレポートと共に真の姿へと姿を変えた破壊の権化――謡だ。
彼女が腕を振るえば炎が燃え上がり、ティアルムを囲うスライムたちを根こそぎ燃やし尽くす。
それはまさしく魔王の名が相応しい所業。
彼女が放つ呪われし炎は留まることを知らず、延々と燃え続ける。
防衛捕食細胞が駆逐されたガルシェンの身体が生み出すのは、外敵――猟兵を駆逐する為だけに生み出された新種の巨大生物、アンチイェーガー・ギガンティス。
翼を持った竜を形どるそれは、猟兵を殺す為に生み出された存在。
その為だけに生み出された毒を宿し、対抗すべき脅威――謡を狙いその巨大な飛竜は炎を避けるように宙へと羽ばたく。
全ては己が母であるガルシェンを守る為。
そこにはガルシェンの想いなど関係が無い。
これも全て、ガルシェンが持つ創造の力が持つ自己防衛本能が無意識のうちに働いた結果なのだから。
「殺して欲しいんだよね。なら、大人しく命を差し出してもらおうかっ……!」
突然現れた謡と彼女によって放たれた炎に驚くティアルムも、その存在が味方である猟兵であることを確認した後は素早い動きで連携を取る。
咄嗟に彼女が呼び出したのはペットであるレヴィ――そう彼女が呼ぶダイオウグソクムシである。
メガリスを喰らったダイオウグソクムシであるレヴィ。
強靭な腕と巨大な翼を生やしたその異形はアンチイェーガー・ギガンティスへと立ち向かう。
ガルシェン程では無いとはいえその身体は巨大。
しかしその差を補うのは――数の暴力だ。
「行けっ、レヴィッ!」
数は五十すら超えようとしているのか――その異形の蟲たちは、アンチイェーガー・ギガンティスへと群がっていく。
相手が猟兵へと効く毒を持っているのならば話は簡単……猟兵でない者で動きを封じれば良いだけだ。
羽を狙い牙を立て、そして身体を巻き付かせるレヴィたち。
炎を避ける為に生み出された羽を封じられし翼竜に出来るのは、たった一つ。
「さぁ……征こうか」
全てを焼き尽くす炎――その身を喰らわんとその顎を広げる地獄の業火へと、唯々身を委ねることだけだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
シキ・ジルモント
◆SPD
召喚された巨大生物を先に撃破する
毒を使うなら一撃でも致命的だ、全て躱す
防戦に徹してでも相手を観察、攻撃に使う部位を特定したい
特定したらその部位の動きに注目、攻撃の瞬間をユーベルコードの効果と併せて察知し回避を試みる
回避の後、攻撃の合間を突き反撃する
焦らず慎重に、確実に
失敗すればあの帝竜の望みを叶える事ができなくなるからな
巨大生物を倒したら、別の生物が召喚される前にガルシェンへの攻撃に移る
倒した生物が毒沼を渡る足場になるなら使わせてもらおう
ガルシェンを射程範囲に収め、射撃での攻撃を行う
どんなに相手が厄介でも、今回ばかりは退いてやるつもりはない
…安心しろ、あんたに世界を滅ぼさせたりはしない
●
「必ず果たすぞ、お前の願いをな」
シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は確固たる意思を持ち、その戦場を駆ける。
彼が走るのは帝竜ガルシェンの背の上。
全長が何十kmにも及ぶガルシェン。
その身体の上は大地と何ら遜色が無く、もはやそこが戦場であった。
「……安心しろ、あんたに世界を滅ぼさせたりはしない」
これは決して、正式に本人から受けた依頼というわけでは無い。
だが己が死を以ってしても尚、世界の存続を望むその願いを……シキは果たさずにはいられなかった。
「来たか」
シキがその瞳に捉えたのは、どこか狼を思わせる巨大な獣。
その身体からぼとり、ぼとりと黒い何かがこぼれ落ちる。
距離があって尚、シキの鋭い嗅覚はその匂いを捉える。
思わず顔を顰める類の臭気――鼻を刺すような刺激臭……自信の経験からシキは直観する。それが己を殺す為に生み出された牙――毒であることを。
(焦らず慎重に、確実に……)
己が五感を研ぎ澄まし、シキは巨獣と相対する。
敵が牙を剥く度、その爪を振るう度に、シキは全力を以ってその攻撃を躱す。
カウンターのように放たれる銃撃。
しかしその攻撃に割く意識など少量で良い……何故ならば眼前の黒き巨獣から外れて大地に刺さる弾であっても尚、倒すべきガルシェンへの攻撃となるのだから。
故にシキは、慎重に回避へと意識を割く。
その巨体から生み出される攻撃は強力。
そして攻撃が振るわれる度に飛び散る毒こそが……最も注意をすべき必殺の一撃であるのだから。
全ては世界の破壊を防ぐ為……それは即ち、この帝竜の願いを叶える為なのだ。
「どんなに相手が厄介でも、今回ばかりは退いてやるつもりはない……」
自身を追い込むように、己が決意をそう口にする。
優しき竜の、願いを叶える為に。
成功
🔵🔵🔴
榛・琴莉
毒沼は飛べば良いとして…
先制攻撃は【武器改造】で分散させたHaroldで【武器受け】
大きさ的に飲まれるでしょうけど、自爆されても貴方なら元に戻れるでしょう
消化されたら多少は減りますが、数だけはいますし支障ありません
Haroldを飲み込んだ個体からは距離を取り、巻き込まれないように
第1波を凌いだら【白姫ヶ淵】で領域を極寒に変えます
滅茶苦茶に寒いですが、私にはその程度
冷えるのはいつもの事ですし、彼女の神気は私を苛みませんから
貴方達はどうでしょう
【全力魔法】の氷の【属性攻撃】をガルシェンに撃ち込みます
可能であれば零距離で
この神域に春は訪れない
これ以上、貴方の命が芽吹かぬよう
冷たく静かな冬に還します
●
「これで……どうですか?」
視界を覆いつくすほどの空を飛ぶ羽付きスライムの群れを眺め、榛・琴莉(ブライニクル・f01205)は言葉を零す。
琴莉が放つは歪なUDC群――Harold。
彼女のコートの裏に潜んでいたそれらは、小鳥のような形状を取る異形。
眼前のスライムのように蠢く不定形のそれは、水銀のように揺蕩いながら日の光を照り返す。
稚拙な粘土細工のような羽を羽ばたかせると、琴莉を飲み込まんと浮遊するスライムたち目掛け、自ら飛び込んでいった。
「自爆されても貴方なら元に戻れるでしょう?」
白銀色の小鳥たちを飲み込んだスライムは次々と爆発していく。
それこそが外敵を滅ぼす為にガルシェンから生み出された防衛捕食細胞の自動的な免疫反応であるが故に。
しかしその爆発を受けて飛び散る粘液の中から、一人でに集まる何かがあった。
鈍く光るそれこそが琴莉が放ったHaroldの残骸。
不定形生物である彼らに明確な死の概念など無く、独りでに集まると再び元の形状を取り戻すのであった。
「掛けまくも畏き 白雪の御方に 恐み恐みも白す」
しかし無限なのではと思わせるほどに湧き続けるスライムたちもまた、終わりが無いという意味では同じ。
彼らを止めるべく……そしてこの死を願う巨獣に終わりを与えるべく、琴莉が天へと放つは凍てついた弾丸。
空から舞い散る氷の魔力はガルシェンから生み出され続け、そして再び空へと飛び立とうとするスライムたちを凍らせ、固まらせるのだ。
「滅茶苦茶に寒いですが、私にとってはその程度……でも、貴方達はどうでしょう?」
全身を防寒具に羽織って尚、肌を突き刺すような冷気がその身を蝕む。
それでも琴莉は、彼女の全身全霊を以って氷の魔力を放ち続ける。
そうして広がる冷気が全てのスライムを凍らせ打ち砕き、そして大地のように巨大な帝竜――ガルシェンのその身すら凍り付かせてゆく。
寒さが通り越し痛みとなっても、彼女はその力を止めることは無い。
「これ以上、貴方の命が芽吹かぬよう……冷たく静かな冬に還します」
全ては世界の破壊を防ぐ為。
そして、優しき者に……静寂を与える為に。
大成功
🔵🔵🔵
鬼桐・相馬
それだけ大きければ、3倍でも一緒の気がするな。
【POW】
[軍用鞄]から[ヘキサドラゴン]を呼び出し[騎乗]する。
速度を出し飛ばせ、常に周囲を[視力と野性の勘・第六感]で警戒。敵の顔付近に降り立った後は黒竜を退避させる。
戦闘は敵の口の中で。[冥府の槍]で口腔を[なぎ払い・串刺し]し、牙等の突起物の陰を[傷口を抉り]槍の炎で[焼却]し固め窪みを作ることで退避場所を確保。攻撃がきた場合はそこへ[ダッシュやジャンプ]で入り込み凌ぐ。
殺してやるから、動くな。
体内で進化と絶滅が繰り返されているなら、繋がるここを破壊することも意味があるんじゃないか。
UC発動し[怪力]で可能な限り広範囲を[部位破壊]する。
●
巨大という言葉すら生ぬるい巨獣――帝竜ガルシェン。
その身を討ち滅ぼさんと続けられる攻撃に、本人の意思に反して働くのは生存本能。
その身体から生み出されるのは巨大な薔薇。
ぐんぐんと広がるその薔薇は、大地と見紛うガルシェンのその身体を、数倍ほどに見せるほどに成長していく。
それはもはや畏怖すら感じさせるほどに、圧倒的な存在感を放っていた。
「それだけ大きければ、もはや一緒の気がするな」
しかしその姿を見て尚、冷静に判断できる者がいた。
黒鱗の翼竜、ヘキサドラゴンの背に跨った青年――鬼桐・相馬(一角鬼の黒騎士・f23529)は空すらも覆わんと伸び往く薔薇の花を眺め、小さく呟く。
その尾すら見えない巨大な獣から、花弁すら眺めることが出来ないほどの花が咲いただけ。
ならば己がやるべきことに変わりなど無いと、愛竜の腹を蹴りその身を投げ出すのであった。
「ここまで巨大であるなら……狙うは一点」
ヘキサドラゴンから相馬が下り立ったのはまさしく虎穴――ガルシェンの口内だ。
あの巨大な敵を外から致命傷を与えるのは困難……であれば、そのまま飲み込まれる危険があろうとも、攻撃すべきは内側だ。
「その命脈の火、落としてやろう」
相馬が振るうは禍々しい炎を放つ槍――冥府の槍。
青黒く揺らめく冥府の炎を纏ったその槍は、彼の殺意と共に猛々しく燃え上がる。
相馬は己が相棒を構え貫き、振るい、穿ち、焼き尽くす。
圧倒的殺意を、禍々しい悪意を、己が心中で燻る焔の中へ、薪のようにくべていく。
それで己を見失う必要などない……その怒りは全てこの槍が燃やし尽くしてくれるのだから。
「殺してやるから、動くな」
反射的に蠢く肉塊を、抉り、焼き固める。
そこには淡々と己が仕事を果たす鬼が居たのであった。
成功
🔵🔵🔴
アウル・トールフォレスト
(※好きにお任せします)
殺してほしいんだ
…
そうだね。うん。何となく、わかったよ
殺してあげる
全力を出し切って、無理を通して、限界を超えて、
わたしは世界を囲う世界樹になる
終わりを告げる、産声を上げる
【開花の時は来たれり、我は天地囲う世界樹なり】
拡大し続ける「神体」は、毒沼さえも侵しきれず、有象無象の命でさえ留めることは出来ない
ただただ、力だけで
嵐のような、津波のような、地震のような、噴火のような力で破壊する
今は一瞬だけれども
わたしもいつかは、あなたみたいになると思うの
それでも、わたしはまだ生きていたいから
ずるいかな?ずるいよね
でもやっぱり、私もこの世界が好きだから
今は先に、あなたを止めてあげる
●
「殺してほしいんだ……」
簡単にその言葉を口にしてはならないと、アウル・トールフォレスト(高き森の怪物・f16860)はそう感じる。
外観はうら若き少女。
しかしその身体は人間の身体をはるかに超える巨体を持つバイオモンスターであるアウル。
外観は全然違う。
大きいと言ってもその身体の大きさも比較にはならない。
それでも尚、こう言わずにはいられない。
「そうだね。うん。何となく、わかったよ……殺してあげる」
世界の破壊を憂い、己が死を願う巨獣の。
死の沼にその身を浸しても尚死ねない化け物の心を。
“わかる”と、そう口にせずにはいられない。
理由など、言葉では説明できない。
それでも尚、アウルは己が心の底から……この生を憂い死を願う獣に対し、“わたしならわかる”と、そう伝えずにはいられなかった。
「――あ――ぁ――a――A――iyA――AAAAAAAAAA!!!」
それは化物――まごうこと無き化物だ。
空すら覆いつくさんと、その花弁を覗き込むことすら不可能なほど巨大な薔薇を咲かせるガルシェン。
その巨獣よりも大きく、より大きい存在へと、アウルはその身を造り変えていく。
開花の時は来たれり、我は天地囲う世界樹なり。
それはもはや見るものに神格すら感じさせるほどの、圧倒的存在感であった。
人々は嵐に、津波に、地震に、雷に、噴火に――そう、自然に、そして天災に神を感じる。
アウルが振るうその“破壊”もまた、天災のように唯々無機質に、無感情に力を振るう。
それは純粋なる力。
如何なる思考も含まない、圧倒的な破壊の権化。
(今は一瞬だけれども。わたしもいつかは、あなたみたいになると思うの……それでも、わたしはまだ生きていたいから)
最早アウルは、まともな言葉も放つことは出来ない。
失われた理性は、唯々力を振るう。
(ずるいかな? ずるいよね……でもやっぱり、私もこの世界が好きだから)
それでもアウルは、想わずにはいられない。
この優しき竜の願いに、共感せずにはいられない。
この悲しき巨獣の死を、嘆かずには居られない。
(今は先に、あなたを止めてあげる)
それでも、その願いを叶えずにはいられないのだ。
辺りに静寂が戻った時。
そこにはただ涙する少女と、悲しき骸の存在だけが残った。
大成功
🔵🔵🔵