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帝竜戦役⑨〜ガルシェン・ザ・ドラゴニック・ビーイング

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「はーい! 皆さんお疲れ様ですー! 三体目の帝竜が現れましたよー!」
 シーカー・ワンダーはクマの耳をピコピコと動かしながら、顔のモニタを切り替えた。

 群竜大陸に横たわる広大な毒の沼地から、超巨大な帝竜の一体が出現したのだ。
 帝竜の名はガルシェン。『創世巨獣』の異名と莫大な生命力を持つドラゴンで、その体内ではあらゆる生命が絶えず進化と絶滅を繰り返している。もはや生命の枠組みを越え、ひとつの環境・星の在り方とすら言える恐るべき巨竜だ。

「ガルシェン自体は大人しいんですけど、体の中から植物とかスライムとか召喚して攻撃をしかけてくるようですー。それにガルシェン自体が大きすぎて、倒すのも一苦労な感じです」

 巨体と生命力は純粋な強さに直結する。数十キロの体躯を誇るガルシェンの前では、猟兵などノミかダニ程度のサイズでしかない。さらに沼地は毒ガスで満ちているので、長居は危険であろう。

「それじゃあどうやって倒すのかって言ったら……そう、一寸法師です! ガルシェンの口から体の中に入って、内側からやっつければいいんですよー!」

 シーカーは簡単に言うが、もちろんそう簡単には行かない。
 ガルシェンの周りには、彼の能力で呼び出された猟兵を殺す毒を宿した『新種の巨大生物』が跋扈しており、ガルシェンを猟兵からガードしている。体内に潜り込むには、この対猟兵特化の巨大生物を倒す必要がある。
 加えて、ガルシェンの体内にも様々な生物が存在し、容赦なく猟兵たちに襲いかかってくる。これらを退け、ガルシェンの身体を内側から破壊する。これが今回の作戦なのだ。

「ガルシェンは、どういうわけか自分を倒してくれる人を待っているようです。猟兵への攻撃も不本意みたいで……なんとか解放してあげてくださいね!」


鹿崎シーカー
●解説
 毒ガスの蔓延する広大な沼沢地に眠り、生と死を繰り返す帝竜。その招待は数十キロにも及ぶ巨躯を誇る帝竜『ガルシェン』であった!
 体内に数多の生命を宿した巨獣は、自身の落とし仔たちに守られながら君臨している。その前には猟兵ですら虫に等しい。故に体内へ侵攻し、内側から攻撃すべし! 生きたダンジョン『竜種生命態ガルシェン』への突入作戦が幕を開く!

「わたしを殺してくれる勇士の訪れを、わたしは、待っています……」

●ボス戦・『帝竜ガルシェン』
 『創世巨獣』の異名を持つ何十kmにも及ぶ巨体の帝竜です。絶大な生命力を持ち、体内ではありとあらゆる生命の進化と絶滅が絶えず繰り返されています。必ずSPDのユーベルコードで先制攻撃をしてくるので、これに対処してください。
 プレイングボーナス:『敵のユーベルコード(SPD)への対処法を編みだす』。

 アドリブ・連携を私の裁量に任せるという方は、『一人称・二人称・三人称・名前の呼び方(例:苗字にさん付けする)』等を明記しておいてもらえると助かります。ただし、これは強制ではなく、これの有る無しで判定に補正かけるとかそういうことはありません。

(ユーベルコードの高まりを感じる……!)
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第1章 ボス戦 『帝竜ガルシェン』

POW   :    創世巨獣ガルシェン
【獣の因子】を使用する事で、【巨大な薔薇】を生やした、自身の身長の3倍の【創世巨獣形態】に変身する。
SPD   :    アンチイェーガー・ギガンティス
いま戦っている対象に有効な【猟兵を殺す毒を宿した『新種の巨大生物』】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    防衛捕食細胞の創造
召喚したレベル×1体の【外敵を飲み込み自爆する『巨大スライム』】に【虫を思わせる薄羽】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。

イラスト:桜木バンビ

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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

死之宮・謡
アドリブ歓迎

ふむ…討たれることを望むか…その割には此方に敵対行動をとるのは本能か暴走か…或いは、この程度も超えられぬものに討たれる気は無い、と?
答えを知りたくはあるがまぁ良い…
私のやることは変わらない…

さぁ、戦を始めようか!

奪命の「呪詛」を籠めた黒雷(属性攻撃・全力魔法)と纏わせたストライフで先ずは緒戦
【殺戮感染】で抹殺した巨大生物の魂を糧に強化

体内侵入後は侵蝕の「呪詛」を籠めた猛毒(毒使い)をばら撒きながら暴れ回る
要所を抑えるのは周りに任せてUCと合わせて注意を引きながら蹂躙しよう


ニィナ・アンエノン
うわぁ、でっかいなぁ!
まぁ召喚してくる毒持ってるのが巨大生物で良かったかも。
小さな虫だったら逆に面倒だもんね。

そんな訳で、とりあえずバイクを【操縦】して、【ダッシュ】で毒沼を抜けるね。
巨大生物は見つけ次第ユーベルコードでミサイルを撃って【範囲攻撃】で牽制!
相手の動きをよーく見て【情報収集】して、【見切り】ながら回避して行かないと、にぃなちゃん死んじゃうかも☆
【毒耐性】が役に立つかも知れないから、かわし切れなくても【オーラ防御】で頑張るね。
ボスの口の中には【ジャンプ】で侵入。
体の中にも敵がいるらしいから、どんどこミサイルばら撒いて行こう☆
ボス自体も攻撃出来て一石二鳥、かも!


雷田・龍子
アドリブ・連携OK
SPD

●対策
敵のユーベルコード「アンチイェーガー・ギガンティス」は召喚技。すぐにこちらへ悪影響は無い。ならば後出しジャンケンで勝ちましょう。

●行動
人派ドラゴニアンの龍子は飛びながら『新種の巨大生物』の攻撃を【見切り】でかわしつつ、ユーベルコード「ガジェットドロー」を発動。敵に有効なガジェットを召喚して対処を試みる。

「さあ、運試しです」


神羅・アマミ
成仏を願うというのならば、それが元より猟兵の責務よ!

さて、敵は皆目見当がつかぬ所見殺しを放つときたか…さすれば考えるより先に身体の反応へ全てを委ねるべき!
ここは【野生の勘】に基づき、これまでの知識・経験を紐付け巨大生物の外観・特徴から傾向を瞬時に判断!
組み付きにてねじ伏せられるならば【怪力】、回避が必要ならば【ダッシュ】!
向こうが大地の力ならこっちはゴリラパワーだよぉ!

無事体内に到着できたならばUC『特機』を発動!
一寸法師を演じろというのならば、こちらには70を超える数の針が用意されておる!
完全に野生の本能に還ってガンギまった妾、目につくもの全てをグチャミソに切り刻んでくれるわーッ!


黒玻璃・ミコ
※スライム形態

◆行動
ははは、遂に相見えましたね
此が創世巨獣ガルシェン……否、帝竜ガルシェン
オブリビオン化してもなお容易く屈せぬ気高き魂
その全てが我が糧として喰らうのに最高です

強い耐性を持ち不定形である特性を活かして毒の沼地に潜み
そもそも攻撃の対象として存在を気取られぬよう
決して逸る事無く暗殺の機会を伺いましょう

仮に見付かろうとも重要な臓器はその位置をずらし
致命的な状態だけは避けます
既に脳内麻薬を過剰分泌させ痛覚を麻痺させてます
身体の欠片でも残れば十分
後は如何なる巨体でも斬り裂く竜殺しの力
【黄衣の審判】で空間の断裂を操り
細切れになるまで延々と斬り裂けば良いのですから

※他猟兵との連携、アドリブ歓迎


灘杜・ころな
巨大スライムに羽を生やされるんは止められんけど……それがうちに到達する前に、《降神・天照》の発動は間に合わせてみせるで!

――妾(天照)への変化が間に合えば、飛翔するスライム共は、より高空から降臨させた灼熱の大光球で自爆前に焼き尽くしてくれる。
空を飛ぶ者は、より高い場所からの攻撃には無防備なものじゃからのう。

ガルシェンは……体内に入るなら、耳を探してそこから入るのじゃ。
耳は脳に直結しておるはずじゃからのう。
生き物の急所中の急所たる脳に入って、そこを大光球で焼き尽くしてやれば、流石に倒れるじゃろ?

一人称:うち→妾 二人称:~くん、~ちゃん→お主 三人称:関西風→~じゃ、~のう、~かえ?


アリシア・マクリントック
先手を取ってこちらに有効な相手を召喚する……それは弱点でもあるはずです。
私を対象とした巨大生物の出現を確認したら反撃開始です。変身!『マジカル・マリア』!

通常のフォームチェンジでは対抗できないでしょうが、この姿なら全てが別物。敵の優位性は無効化できるはず。マリア、外は任せましたよ。体内へは私が。私を風の結界に包み、弾丸のように打ち出して体内へと送り込んくださいす。

外のマリアは機動力を生かして防御重視、帝竜を倒すまでしのげればいいです。巨大生物を無理に倒す必要はありません。

私は……小さくなった分移動は大変ですが、隠れながらチクチク攻めましょう。同行者がいればサポートに回るのもいいかもしれません。


須藤・莉亜
「デカ過ぎない?お腹ぱんぱんになるレベルだよ…。」
まあ、血の味は気になるから味見はするけどね。

巨大生物はデカい分、動きは見切りやすそうだね。躱しながらゴール目指すとするかねぇ。
僕がゴールにたどり着くまでは、悪魔の見えざる手にLadyと奇剣で巨大生物の目を狙って攻撃させて手助けしてもらっとくかな。
イケそうなら悪魔の見えざる手に、敵さんの口目掛けて投げてもらうのもあり。

敵さん内に侵入出来たら、UCで吸血鬼化してここまでのダメージを回復。更に敵さんの生命力を吸って強化し戦う。敵さんやスライムの生命力を吸いまくって回復と強化をし続け、中を荒らし回る事にしようか。
もちろん、血を味見するのも忘れずに。


ブレイブ・ブレイド
※アドリブ歓迎、共闘可

POW判定

・敵(SPD)UC対策
召喚された巨大生物に対して
『天空王、大地王、海洋王』の三体の幻獣型サポートメカと
合体、変形を繰り返して常に自分の適正(陸海空)、属性(火地海)
を変化させつづけ
その能力を発揮させないようにする
(他UC参照【スカイブレイバー、ランドブレイバー、マリンブレイバー】)

・攻撃
全ての合体をパージして本体のみで特攻
敵内部の重要器官めがけてブレイブソードでUCを発動する

・セリフ
天空王、大地王、海洋王
お前たちの力を貸してくれ!
私たち全員の力で敵の攻撃を突破するんだ!

(全ての装甲をパージしてUC発動)
うぉおおおっ!ファイナルスラーッシュッッ!!


曾場八野・熊五郎
おほーデッカイ主でごわすな
この主の心臓食べたらきっと強くなるでごわ

我輩が不利な相手なら戦わなくていい
新種には珍種をぶつけるでごわ
『ダッシュ、ジャンプ、野生の勘』で回避に専念して一旦敵から距離を取ったら岡持から出汁殻を呼び出して、盾にしながら連係して倒すでごわ

体内に入ったら他の猟兵を連れて音や勘で心臓を探すでごわす。こんな大きいのいちいち攻撃してらんないでごわ『追跡、野生の勘、第六感』
面倒な敵を見つけたり最短ルートが行けそうなら壁をブチ抜くでごわ『トンネル掘り、怪力、傷口をえぐる』

心臓についたら出し殻と突撃でごわす
ハツ、いただきごわす『捕食、大食い』

一人称;我輩
呼び方;その人の特徴(メガネなど)


火霧・塔子
一つの世界の如き存在への反逆! 叛逆者(わたし)の魂(ほのお)が燃えています!

敵が環境級なら、そこに立つ私たちはちっぽけな民衆のようなもの!
なればこそ! UC『ライオット!』で突撃です!

共に戦う同志たちには炎の加護で【鼓舞】を!
私の火炎瓶の炎は"神から簒奪した炎"! 浄炎の力で毒性を【焼却】します!
ゲバ・ロッドの【なぎ払い】で突破を図りましょう!

巨大生物の皆さん、皆さんの父であり母であるガルシェンさんは己の存在ごと勇ある退位を望んでいます!
あの方の心意気を叶えるために、私たちと共に反逆の戦列に轡を並べませんか!?
煽動器で呼びかけます!

体内では火炎瓶と追い重油の【一斉発射】で【破壊工作】です!


ティオレンシア・シーディア
『あたし・あなた・あいつ・○○クンorちゃんorさん』

あ―…オアニーヴもそうだったみたいだけど、まとめて無理矢理蘇らせてるから「蘇りたくなかった奴」もいるのねぇ。
まあ、どうあれ蘇っちゃった以上はブッ潰さなくちゃいけないんだけど。
…にしても、いくらなんでも大きすぎない?

デカいだけでも割と面倒なのに、毒かぁ…
…逆に言えば、毒さえなければただの見覚えないデカい生物、なのよねぇ?
なら、●酖殺で戦域全体に浄化の聖域を展開。有害なものはまとめて祓っちゃいましょ。
デカいだけの相手なら、これまで色々相手してきたもの。多少面倒ではあるけれど、随分やりやすくなるでしょ。


アウル・トールフォレスト
(※好きにお任せします)
きっと、最初に言われた通りに内側からのほうが良いんだろうね
でもね、ごめんね
わたしは、やりたい方法があるから

先制攻撃はただ耐える
毒が身体を蝕むだろうけど、大丈夫。それがいいの
命の危機に瀕すれば、それがトリガーになるのだから

【開花の時は来たれり、我は天地囲う世界樹なり】
「神体」になれば、毒も新種生物も取るに足らなくなる
取り込んで糧としつつ、相手にも、更に巨大化した姿にも負けない大きさへと

世界には世界を。けれどわたしは終わりを告げる世界樹
嵐の如き爪で、天地を引き裂きましょう

辱めたりはしないから
わたしもずっとは泣き続けないから
だから眠って
いつかわたしが成るようなカタチのあなた


イリス・ローゼンベルグ
毒の沼地に薔薇の竜……ふふっ、私の戦場にはピッタリね

手足の擬態を解き、半人状態で行動
【茨の触手】を伸ばし、ガルシェンの体を登って体内を目指す
毒の攻撃は避けない、こんな貴重な毒を受けるなんてまたとない機会ですもの
【毒耐性・環境耐性】で毒に耐え、【薔薇は散らず】を発動して毒素を分解、吸収する事で我が物とする
アア……流石ニ痛いわネ……

毒を吸収できたらもう取り巻きの生き物に興味はないわ
【茨の盾】で攻撃を【盾受け】、更に触手による【串刺し】攻撃と【致死の体液】による毒攻撃で迎撃
周囲の敵を追い払ってガルシェンの口に潜り込み、体内に攻撃を行いそこへ猛毒を流し込む
蟻のひと噛みが巨象を殺す事もあるのよ


フォーリー・セビキウス
仮プレ

真冬(f09320)と参加
アドリブ歓迎
一人称:私
二人称:呼び捨て・お前、貴様

最早生命体というより島や陸地と呼ぶべき大きさだな。
核でも無ければ難しそうだが。

然し何故メタ能力を…いや逆説的に産み出した…?
生命体を生み出せる以上あり得なくないか。

倒すか…奴を倒す事に興味は無い。多少興味があるしな。
だが、その巨体が本格的に動き始めるとなれば厄介だ。
面倒だが仕方ない、
奴を止めるぞ。
これだけ働くんだ。その時は、全額お前に払ってもらうがな。

真冬の電脳迷路に敵を閉じ込め
遠巻きから迷彩や移動を利用しつつスタン効果のある矢でスナイピング、敵を弱らせつつ袋小路まで誘導
到着次第武器の一斉投影・一斉射撃で片付ける


伽宝・真冬
フォーリー(f02471)と参加
アドリブ歓迎
一人称:わたし
二人称:名前を呼び捨て、キミ

ホント……島並みだね。
どうせならバカンスできる島に行きたかったぁ
んー……顔どこ!?

ガルシェ――ン!待っていて~!
キミを倒しにいく勇士ならココにいるからねー!
フォーリーを指差しながらどこかに向って叫ぶ

さて、今は目の前のこっちをどうにかしなくちゃね
フォーリーの尊い犠牲を忘れないよ……いってらっしゃい
生きてたらバカンスに行こうね

攻撃に向うフォーリーを見送り私はトラップ担当
毒耐性や迷彩で攻撃を警戒しながら、ドーピングで神経を研ぎ澄まし、電脳魔術で迷路を展開
毒使いの力と催眠術なども駆使して迷路内では敵の弱体化を狙う


玉ノ井・狐狛
🛡️
新種の巨大生物……コレも含めて“環境”と看做すべきだろうな
毒の性質を▻見切り、それに応じて対処
行動阻害系は優先度低め、強酸や致死毒なら優先的に回避
生物の体をとってるなら、►麗で嗅覚を潰す案もある


毒の影響を▻無酸素詠唱▻環境耐性で緩和しつつ◈UC攻撃
帝竜サマ自体が環境で、その一部たる巨大生物がオーダーメイドの毒をご持参だから、“殺意”の定義に不足はない
絶滅を繰り返してるってんなら、キルマークも十二分だろ
針の代わりに成るハズさ

鬼退治には金銀財宝がつきものだが、竜退治だとどんなもんかね?

アドリブ・連携お任せ
一人称:アタシ
他猟兵呼称:嬢ちゃん、兄サン、お前さん 等
敵呼称:アンタ、帝竜サマ、アレ



 大陸めいた巨体が遠い。
 空の向こうは黒い影に侵食されて狭くなり、地平線すら遥か彼方に封じ込める。
 広大な毒沼に食い込むのは空色の爪。神話に伝わる神の橋が如し威容。数多の命、ひとつの世界をその身に宿した竜のカタチ。
 創世巨獣ガルシェン。その謎めいた目は前方十数キロ離れた地点をじっとみつめていた。毒沼に広がる、街ひとつを飲み込むほど巨大な波紋を! ガルシェンがカッと目を見開いた、直後!
 ZGGGGGGGGGGWOOOOOOOOOOOOOOOOOSH! 毒の汚水が空高くに吹き上がった! さらにその左右に二本、四本、八本、十本、十二本! 雲まで汚した水が大瀑布めいて落下する中、巨大な影が現れる!
『GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAARRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRGGGGGGGGGGGGGHHHHHHHHHHHHHHHHH!』
 咆哮する十二の巨大生命体!
 マッシブな上半身と極太の両腕、頭の代わりに首から無数の触手を生やした巨人。凄まじく分厚い甲殻のハサミを備えた化け蟹、筒状の身体と白い海綿状の肌に巨大な口だけを開く生命体!
 三対六つの眼球を輝かせる白い大蜘蛛、顔と足の無い人型の樹木、平たく広がった頭頂部に無数の花を咲かせる岩のような目無しの存在、炎のようなタテガミを生やすラプトル型恐竜、緑に光る背骨と頭蓋骨を露出した二足歩行トカゲ。
 鹿めいたスケルトン、チェーンソーめいた刃をヒレに並べたエイ、二本角を持ち燃える毛を全身にまとった二足獣、翼の無いオウム。全高数キロの怪物たち!
(我が子らよ、訪れたのか)
 自らに背を向ける巨獣たちが矢尻陣形で歩き出すのを見ながら、ガルシェンは目を細めた。彼らの出現は戦端を開く合図! そして実際、十二の巨獣たちの正面からは虫めいて小さな影が進軍してきていた! ガルシェンは目を閉じる。
(ならば荒れ狂うが良い。この心に巣食う衝動、尽き果てるまで)
『GGGYARRRRRRRRRROOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOONNNNNNNNNNNGGGGGGGGGGGGGG!』
 THOOOOOOOOOOM! 凄まじい咆哮! 巨獣たちが一歩を踏み出すために大地が揺らぐ。その真正面、翼を広げて飛行する見雷田・龍子(人派ドラゴニアンの全力お姉さん・f14251)は下方に向かって声を張る!
「敵を確認! 動きます!」
「応ッ!」
 沼地の水面を走るパトカーのボンネットに腕組み仁王立ちした神羅・アマミ(凡テ一太刀ニテ征ク・f00889)が叫び返した! その真横を狼と共に駆け抜けたアリシア・マクリントック(旅するお嬢様・f01607)は、助走をつけた勢いのまま低空ジャンプ! 一人と一匹が青白い光に包まれる!
「今こそ好機! 行くよマリア! 変身! 『マジカル・マリア』!」
「WONG!」
 FLASH! 一瞬強まった光が消えたそこには、灰色の髪に狼耳を生やした魔法少女と小さな妖精に変身したアリシア! アリシアは小さな羽をパタパタと動かしながら仲間たちを振り返った!
「ここはマリアに任せます! 私はガルシェンの体内へ!」
「待ったアリシア。僕も行く」
 白い対物ライフルとガラスめいた剣を手にした須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)が告げる。その時、彼を追い越した火霧・塔子(火炎瓶のヤドリガミ・f16991)は火を噴く火炎瓶を聖火リレーじみて掲げながら声を張った!
「一つの世界の如き存在への反逆! 私の炎が燃えています! 敵が環境級ならば、そこに立つ私たちはちっぽけな民衆のようなもの! なればこそ!」
 塔子が火炎瓶を真上に突き上げた直後、噴きこぼれていた炎が高く火柱を上げ、傘状に広がった! 流星群めいて猟兵たちに降り注いだ炎は彼らを優しく包み込み、毒沼を蒸発させていく!
「行きましょう皆さん! 目指すは帝を名乗る竜への叛逆! その手始めに、あの尖兵たちをなぎ倒して押し通る!」
『いぇ―――っ!』
 灘杜・ころな(鉄壁スカートのひもろぎJK・f04167)と蒸気バイクにまたがったニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)が拳を突き上げ歓声を上げる! 同時に、触手首の巨人が右肘を後方上空へ引き絞った。攻撃態勢! 猟兵たちからは遥かに遠いが、彼にとっては射程距離!
 死之宮・謡(狂魔王・f13193)は担いだ大剣を握る手に力を込め、立ち並ぶ超獣たちを見上げて呟いた。
「ふむ……討たれることを望む割には、敵対する。本能か暴走か……或いは、この程度も超えられぬものに討たれる気は無い、と? 答えを知りたくはあるがまぁ良い。私のやることは変わらない。さぁ、戦を始めようか!」
『GRRRROOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOORRRRRRRRRRRRRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAARRRRRRRRRRRRRRRRGGGGGGGGGGGHHHHHHHHHHHH!』
 世界を吹き飛ばすような巨獣たちの鬨の声を合図に、猟兵たちは急加速! 巨人が手の平を撃ち下ろす! BLOWWWWWWWWWWWW! 凄まじい風切り音を放つ掌打を、猟兵たちはとっさに散開! 残る影はただ一つ!
 掌底が沼地へ、SPLAAAAAAAAAASH! 巨人の手の周りに泥水が吹き上がる! 街ひとつを押し潰しかねない巨大な手は―――しかし、真下から押し返され出した! 毒沼と手の平の隙間には、巨大化するアウル・トールフォレスト(高き森の怪物・f16860)!
『………………?』
 巨人は一瞬怪訝そうに硬直するも、すぐに右腕に力を込めてアウルを押し潰さんとする! だがアウルはそれに反してぐんぐん巨大化していき、たちまち巨人の腰ほどの高さに! アウルは眼下の仲間たちを見送りながら囁いた。
「きっと、最初に言われた通りに内側からのほうが良いんだろうね。……でもね、ごめんね。わたしは、やりたい方法があるから……!」
 アウルは巨人の手の平を支える両腕に力を注ぎ―――跳ねのけた! 巨人が緩慢に半歩下がる! THOOOOOOOOOM! ややのけ反った姿勢を取る巨人の前で、アウルの身体は既に巨人と肩を並べるほどに!
『………………!』
 首の触手を激しく振り回した巨人は左手のチョップ突きをアウルに繰り出す! 象牙色の枯れ木めいた肌が濃紫色に変色し、対猟兵毒を溜めた毒手に! うつむいたまま動かぬアウルの胸を、ZGGGGWAAAAAAASH!
「ごふっ……!」
 アウルが吐血し、巨大な滝めいた漆黒の血が落ちた! だらんと下がったアウルの両手が黒く変色し、二本角めいて生えた巨大な樹木がいくつにも枝分かれして黒に染まる。金の長髪から色味が抜けた。巨人は満足気に左腕を引く。だが!
『………………!?』
 黒く巨大な手が巨人の左腕をつかむ! 巨人のそれよりもなお巨大な、金色のかぎ爪を備えた手! 握られた前腕部がミシミシと音を立てる。腕が抜けぬ! グラップルを払えぬ! 戸惑う巨人の前で、アウルはゆっくりと顔を上げた。
「世界には世界を。けれどわたしは終わりを告げる世界樹。嵐の如きこの爪で、天地を二つに引き裂きましょう」
 ぶつぶつと呟きながら上がったアウルの両目が、物憂げな金の瞳が巨人を映した。巨人は逃れようとさらに腕を引くが、アウルは逃さぬ。その目から血の涙が頬を伝う!
「……アヌンナキ・ウブシュウキンナ……」
 詠唱を終えたアウルの瞳孔が急速に縮まり、理性の光が消え失せる! 腰から下を巨大な樹の根に変えた彼女は、天に向かって甲高い絶叫を張り上げた!
「iya―――AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
 天を揺さぶる声に巨人がたじろぐ! 彼は首から生えた複数の触手をくねらせ、尖った先端をラウルの喉笛へ突き刺した! ラウルは構わず、両手で巨人の肩をつかみ左右に引き裂く! SQUAAASH! チーズめいて裂ける巨体!
「AAAAAAAAAAAAAAA―――ッ!」
 恐ろしくも優美な歌声が戦場に響く! 背後の大音声を聞き、出前蕎麦用スクーターにまたがった曾場八野・熊五郎(ロードオブ首輪・f24420)は首を縮めた。
「前も後ろも圧がすごいごわ。まるで怪獣大決戦でごわすな」
「まるで、じゃなくてまさしく、じゃないかしら?」
 熊五郎のスクーターと並走しながらティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)が苦笑気味に言う。そんな二人の前では、緑に光る背骨と頭蓋骨を露出した二足歩行の巨大トカゲが大口を開いて息を吸い込む! 骨と両目の光を強め、トカゲは緑のブレスを吐き出した!
「SHAAAAAAAAAAAAAAAA!」
 頭上から振りかかってくる翡翠色の炎! ティオレンシアは腰に下げた三本の瓶を素早く頭上に放り上げる! 瓶のラベルに描かれたルーン文字が青く輝き、爆発した! 広範囲に吹き出した冷たい霧がトカゲの炎を打ち払う!
「毒さえなければただの見覚えが無いデカい生物。そしてデカいだけの相手なら、これまで色々相手してきたもの。ねえ、熊五郎さん!」
「で、ごわすな!」
 熊五郎はティオレンシアの真横をウィリー走行で突っ切り、尻尾の先で後ろにのせた岡持のフタを跳ね上げた。BOMF! 岡持から吹き上がる白い煙がティオレンシアの霧雨範囲を押し広げる! トカゲは霧を嫌ってバックジャンプ!
「出汁殻! 行くでごわす!」
 霧雨の奥から熊五郎の声! 刹那、霧雨を突き破って飛び出した巨大ゴリラがトカゲに殴りかかった! 剛腕が横面を殴打! SMAAAAAAASH!
「GYAAAARRRRRRGGGGHHHHHH!」
「GOOOOOOOOOOOOOO!」
 鹿の角を生やし、ヒュドラの八本尾を生やした巨大ゴリラはたたらを踏むトカゲの腹にアッパー! 緑のブレスを吐いて吹き飛び、毒沼に倒れ込んだ! SPLAAASH! 水飛沫があがった直後、ゴリラの首が斬り飛ばされる!
「出汁殻―――っ!?」
 熊五郎がぎょっと目を剥き、一歩後ろによろめいたゴリラを見上げる。そのまま仰向けに倒れかかるゴリラの背の下で、ティオレンシアはとっさに連続バク転! 熊五郎はアクセルを全開にしてかっ飛ばし、ゴリラの股下を抜ける!
 THOOOOOOOOOM! ノックアウトされ水飛沫を上げるゴリラ! それを後方に残し、チェーンソーの如き刃を持つエイは斜めに上昇! その先には太陽めいた炎球に包まれたころなが浮遊していた!
「のわッ!?」
「FSHSHSHSHSH!」
 エイが羽ばたき、ヒレの刃がチェーンソーめいて高速回転! 毒液の飛沫を撒き散らしながら一気に肉迫するその腹へ、翼を広げた龍子が戦闘機じみて一直線に飛翔していく! 胸の谷間に指を差し入れ、丸縁眼鏡を光らせる!
「さあ、運試しです。ドロー!」
 腕を真横に振り抜いた龍子の指先に灯った光が急速膨張! 三角錐の形を作り、ねじれて弾ける! 光の粒をキラキラ反射するそれは、龍子の数十倍はあるサイズの巨大ドリルだ! 龍子はそちらを一瞥して眦を逆立てる!
「私の勝ちです!」
 龍子の全身を稲妻が包み、VANISH! 閃光と共に龍子が消え、エイの背後で電光が爆発! 光が晴れたそこにはドリルの後端を抱きかかえる龍子! ワープを決めた彼女は背中を全力で反らし、エイの背にドリルを叩き込んだ!
「どっせぇぇぇぇぇいッ!」
 ZGAAAAAAAAM! エイの背中に直撃したドリルは高速回転し、背中から腹までを一瞬でぶち抜く! ヒレを真上に反らし、両目を明滅させるエイ! 龍子は帯電する拳を振りかぶり、ドリルの底に殴りかかる!
「イィィィィィィヤァァァァァアアアアアアアアアアアッ!」
 SMAAAAASH! ドリルはエイごと斜めに撃ち下ろされ、毒沼の水面に突き刺さる! 炎球の奥から薄っすら映る像を見ていたころなはやや気圧されていたが、我に返ると首を振った!
「あ、あかんあかん! 見とれとる場合やなかった! 龍子ちゃんおおきに!」
 ぐっと身を反らしたころなの髪に炎の帯がまとわりつき、瞳が緑から橙色に変色! ころなは大きく息を吸いながら顔の前で交叉した両腕を、引き絞る!
「はァッ!」
 BOOOOOOOOM! 炎球が破裂し、火の粉が飛び散った! 赤く燃える空を背後に、片手をボンネットについたアマミを乗せて一台のパトカーがジグザグデッドヒート走行! 立ちはだかるのは人型樹木! 下半身は無い!
「はッ! 巨人の二番煎じとは、創世巨獣とやらも大したことなさそうじゃのう!」
 人型樹木が沼地についていた左拳を振りかぶる! パトカー―――否、車両形態のブレイブ・ブレイド(異世界勇者ブレイバー・f26959)は高速回転する後輪で泥を跳ね飛ばして加速する!
「正面から突っ込むぜ! 振り落とされんなよ!」
「派手に行けい! あの手の手合いは単調な攻撃しか繰り出せんからの! ゴリラパワーで押し通るぞ!」
「OKだ! 行くぜえええええええええッ!」
 DRRRRRRRRR! エンジン音をいななかせたブレイブが二段階の加速を決めた瞬間、人型樹木が拳を繰り出す! ブレイブを叩き潰さんとする樹木のパンチめがけてアマミはハイジャンプ! 右足を真横に上げて高速回転!
「道を開けんか! 枯れ木風情がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
 アマミは目の前まで迫った木の巨拳に回し蹴りを叩き込む! SMASH! 軌道がそれた樹木の腕がブレイブの真上を掠めて沼地にダイブ! 斜めにジャンプしたブレイブはスクリュー回転して人型に変形! 右手を突き上げて叫んだ!
「ウィッカーマンにしてやるぜ! 来いッ! 天・空・王―――ッ!」
 直後、空高くから赤い流星じみて鷹型のロボットが飛来! 鷹からパージした両翼がブレイブの背中に、胴体が右前腕部に、両足が鷹頭部の左右に弓型を形成する形でドッキング! ブレイブは右腕を人型樹木の胸に向ける!
「完成ッ! 天の勇者スカイブレイバーッ! そしてこれがッ!」
 鷹のクチバシが開き、喉奥が真紅の閃光を放つ! 鷹の両目が輝いた!
「スカイブレイブ・プロミネンスシュートだァ―――ッ!」
 CABOOOOOOOOOOM! 鷹のクチバシから炎の矢が撃ち出され、人型樹木の胸部に命中・爆発! 大きく後ろに上体を倒す樹木の顔面部分に、アマミが急降下飛び蹴り!
「んどりゃアアアアアアアアアアアアッ!」
 CRAAAAASH! 樹木の頭が弾け飛び、琥珀色の樹液を散らす! 足から沼地にハードランディングしたブレイブは機械鷹のパーツを全パージ! 彼の後方から黒いユニコーン型ロボが疾走してくる!
「こいつで仕上げだ! 大地王―――ッ!」
 両膝を曲げた前傾姿勢から再跳躍するブレイブ! 一拍遅れて同じく跳躍したユニコーン型ロボは翼をパージして顎を引き、前足を折り曲げて後ろ脚をひとまとめに! 翼はブレイブの背中に、一本の機械槍と化した胴体は右手に!
「地の勇者、ランドブレイバーッ! 行くぞッ!」
 黒鉄の翼を広げて斜めに飛翔したブレイブが、焦げてひび割れた樹木の胸に急速で迫り―――右手に構えた槍を繰り出す!
「ランドブレェェェェェイブ! グランドスラストォォォォォォォォォッ!」
 ブレイブと人型樹木のシルエットがすれ違い、CRAAAAAASH! 突き破られた人型樹木の背中が鮮血めいて樹液を吹いた! キックの反動をつけて二段ジャンプを決めていたアマミが、真下のブレイブにサムズアップ! だが!
「……む?」
「……ん?」
 二人の動きが空中でピタリと止まる。アマミの下駄裏、そしてブレイブの背中にべっとりとついた樹液が白煙を吹き上げながら―――ALAS! 人型樹木に繋がっている! 人型樹木はのけ反った上体で半弧を描き二人をぶん回した!
「ぬわあああああああああああッ!」
「うおおおおおおおおおおおおッ!?」
 ハンマー投げのハンマーじみて振り回された二人を、人型樹木は蝿のように叩き落とす! 毒沼に叩きつけられるアマミとブレイブ! しかし樹液は全く離れぬどころか二人を接着してしまっている! 吹き上がる煙と焼ける音!
「ぐわああああああああああッ! こ、これはッ! 強酸かッ!」
「あっつぁッ! ねばねばしとる上に熱い! なんじゃこれ!」
 樹液によりまとめられ、ばたばたと足掻く二人に人型樹木がハンマーパンチを振り上げ、振り下ろす! SMAAAAAAASH! 巨大間欠泉めいて汚水が吹き上がるのを横目に、塔子をタンデムさせたニィナは走る!
「ひゃー、どっちもこっちもすんごいねー! 大変なことになってそう!」
「大変ですね……これはいけません!」
 険しい表情をした塔子は腰に吊った拡声器を手に構えた! ニィナのバイクから落ちないようにしつつ、大音声を張り上げる!
「巨大生物の皆さ―――ん! 皆さんの父であり母であるガルシェンさんは己の存在ごと勇ある退位を望んでいます! あの方の心意気を叶えるために、私たちとともに叛逆の戦列に轡を並べませんか!?」
 その時、二人の前方に巨大カニが滑り込むようにしてインターラプト! 口から深い青色の泡をボコボコと零しつつ、ニィナと塔子を睨み下ろした。
「BKBKBKBKBKBK……!」
「轡を並べるつもりは…………なさそうですね…………?」
「うわぁ、やっぱり近くで見るとでっかいなぁ!」
 次の瞬間、カニは右のハサミをスイングする! ニィナは車体をほぼ倒すようにしてこれを回避! 肌スレスレを巨大質量が突き抜ける感覚に塔子の全身が総毛立つ! ニィナはバイクを戻して笑う!
「あっはははー! あっぶなー! にぃなちゃん死んじゃうかも!」
「死ぬわけにはいきません! 交渉決裂なら仕方ありません! あとはそう、拳で語り合うのみです! ニィナさん、レッツ叛逆ですッ!」
「叛逆ぅーっ!」
 楽しそうな声を上げたニィナはバイクのハンドルをひねって加速! 両のハサミを組み合わせ、空高く持ち上げるカニへ、バイクのそこかしこから生えた蒸気機関が先端を向けマイクロミサイルを連続発射!
「そーれどっかーんっ!」
 無数のマイクロミサイルはハサミを振り下ろさんとするカニの眼前で連鎖爆発! BBBBBBBBBBOOOOOOOOM! いくつもの爆炎がカニの視界を塗り潰すと同時、ニィナはバイクハンドルのボタンを押し込む!
「塔子ちゃん、ぴょーんっていくよーっ!」
「ぴょーんってまさか……きゃあっ!?」
 BAMF! 車体がガクンと揺れ思わずニィナの肩にしがみつく塔子! ニィナの蒸気バイクは下部から圧縮蒸気を断続的に噴射し、多段ジャンプで空を駆ける! カニ腕のアーチを突っ切ってカニの頭上を飛び越えた!
「ひゃっほーう!」
「ほわわわわわわわわわわわっ!」
 ニィナのバイクはカニの背中に着地し、数秒走行してから再度のジャンプ! 後方から蒸気をジェット噴射してすっ飛ぶ車体の真後ろ、カニが振り返りざまに振りかぶったハサミを横薙ぎに繰り出す! その軌道はバイクを捉える!
「BSHHHHHHHH!」
 カニが上げる裂帛の気勢に塔子は振り返る! バイクシートにとって一本足で立ち、背負った角材を野球選手めいて構えた! 燃え上がる角材!
「ニィナさんそのままお願いします!」
「かっとばせー! とーこちゃーんっ!」
 ニィナの声援を背に受け、塔子は限界までひねった全身を解き放った! 炎の角材フルスイングがカニのハサミを打ち返す! SMASH! カニは逆のハサミを突き出した! 塔子はぐらつく足を強いて支え、角材を構え直す!
「BSHHHHHHHHHHHH!」
「第二球はストレート! てぇぇぇぇぇぇやぁぁぁぁぁあああああッ!」
 BOOOOOOOOM! フルスイングされた角材が後ろから爆炎を吹き出して加速! カニのハサミと正面衝突して張り合う! 放物線を描きながら進むニィナのバイク! それを追いながらハサミを突き出し続ける巨大ガニ!
「あちちちちち! とーこちゃん! にぃなちゃんの髪チリチリしちゃう!」
「もうちょっと……耐えてくださいッ!」
 くわっと両目をかっ開いた塔子は両腕に爆炎を燃やして全霊を込める! 押し返し、押し返し―――SMAAAAAAAASH! カニはハサミを撃ち返されて一瞬たたらを踏んだ! ニィナのバイクが沼に着水!
「やったよとーこちゃん!」
「速度を緩めないでください! 第三球、来ますッ!」
 一本足を維持しながら塔子はカニを睨み続ける! 然り、六本足で踏んじばったカニの口に深い青色の泡がゴボゴボと吹き上がっていた! アンタイ・イェーガー・ポイズンバブルだ! ALAS!
「BKBKBKBKBKBKBUUUAAAAASHHHHHHHHHH!」
 鉄砲水じみたパワーで撃ち出される猛毒の泡々! 塔子の腕は二度ハサミを撃ち返した衝撃でビリビリとしびれている。ともすれば角材を握っていられないほどに! だが彼女の瞳は闘志をくべた炎に燃える!
「逆境! 望むところですッ! ホームラン決めてやりますッ!」
 角材から真上に火柱! 塔子は上体を限界まで捩じり、上げた片膝を胸元まで引き寄せる! 猛毒の泡はすぐ目の前まで迫ってきていた!
「はああああああああああああああああああああああッ!」
 全身のバネを解放して角材を打ち振る! CABOOOOOOOOOOM! 吹き荒れた真っ赤な熱風が巨大カニの泡を打ち据え、押し留める! 泡の塊は沼地に落下し、ニィナのバイクを追うのをやめた! 塔子はニィナを振り返る!
「今です! 一気に本丸まで攻め込みましょう!」
「さっすがとーこちゃーん!」
 DRRRRRNNNGGG! スチームエンジンを全開にしたニィナのバイクがガルシェンを目指す! だが―――彼女たちの左斜め後方から拘束で追いすがる白い筋! 巨大クモが吐き出す毒糸塊が彼女たちを捕らえんとす!
「はーいちょっと待ったーッ!」
 次の瞬間、蜘蛛糸塊の進行方向を沼地から伸びた01の障壁が阻害する! べしゃりと糸の塊をへばりつかせた障壁は白い巨大蜘蛛を円形に囲い込み、超巨大なドームを形成! 沼の水も全て01分解されて蒸発した!
「KYURRRRRRRRRR……?」
 怪訝そうに周囲を見回す白い蜘蛛。周囲には緑格子グリッド模様の床から迫り出した壁が迷宮めいて巨体を囲む。実際それは電子の迷宮! 壁の影から白い巨躯を盗み見た伽宝・真冬(404 Not Found・f09320)が舌なめずりをする。
「はい巨大生物お一人様ごあんなーい! あの蜘蛛もそうだけど、ガルシェンってホント……島並みだよね」
「全くだ。もはや生命体というより島や陸地と呼ぶべき大きさだな」
 真冬の傍で前髪をかき上げたフォーリー・セビキウス(過日に哭く・f02471)が黒い弓を片手に呟く。
「だが、その巨体が動き出すとなれば厄介だ。例えユーベルコードから生まれたものだとしても、今この場に出た連中だけで地上を滅茶苦茶にしかねない。面倒だが仕方ない。奴を止めるぞ」
「さっすがフォーリー! よっ、猟兵の鑑! ひゅーひゅー!」
 フォーリーは片手に長い刃状の矢を作り出し、無邪気な笑顔で気楽な野次を飛ばす真冬をじろりと睨んだ。
「言っておくがな、真冬。これだけ働くんだ。その時は、お前に全額払ってもらうからな」
「あっはははー……それはお高くなりそうだね。……ガルシェ―――ン! 待っていてー! キミを倒しに行く勇士ならここにいるからねー!」
 自分を指差して叫ぶ真冬に、フォーリーは呆れたように溜め息を吐く。あきらめて身を沈め、疾走体勢!
「援護は頼むぞ」
 一言告げ、風めいて走り出すフォーリー! その背を見送った真冬はハンカチを目元に当てながらわざとらしいすすり泣きをし始めた。
「フォーリー……キミの尊い犠牲は忘れないよ。いってらっしゃい。生きてたらバカンスに行こうね……。さて!」
 ハンカチを投げ捨て、猫耳ヘッドホンを装着! 右耳部分から目元へ伸びた横長のホロウィンドウを覗き込むと、右手で虚空を凪いで三日月型のキーボードを召喚。ボードの上に現れるいくつものウィンドウを見つめながら打鍵を始める!
「ゲームスタート! ぽちっとな!」
 真冬がエンターキーを押した直後、右往左往するクモの眼球ひとつに垂直落下レーザーが直撃! ZQUUUUUUUUM!
「FSHAAAAAAAAAAAAARGH!?」
 頭を左右に振って激しく狼狽する巨大蜘蛛! その外周を疾走するフォーリーは空中浮遊する刃のひとつをつかんで黒弓に番えた!
(さて。奴は石化毒を含んだ糸を吐く。糸は長距離まで伸び、空中浮遊する猟兵さえも捕まえる速度……)
 ギリギリと弦を引きながら、フォーリーは金色の瞳を剣呑に輝かせる。動揺から立ち直った蜘蛛が身を沈めて後方へジャンプするのを目で追いつつ、くるりと前後反転!
(しかし何故メタ能力を……いや、逆説的に生み出したのか? 生命体を生み出せる以上ありえないことではないか)
「いずれにしろ、石膏像になるのは御免だ。確実に仕留めさせてもらう!」
 SHOOOOOT! 矢を放つフォーリー! 地鳴りを響かせて着地した白蜘蛛は自らに飛来する矢を目視し、片足で顔面を庇いこれをガード! 刹那、ガードした足の反対側から電子レーザーが飛来! 蜘蛛の目に命中した!
「ARRRRRRRRRRRRRRRRRGH!」
 のけ反って苦しんだ蜘蛛へ、フォーリーが矢を番えながら突進していく! 蜘蛛はこれに対し砲弾じみた糸塊を連射する! フォーリーはジグザグダッシュで掻い潜り、矢の狙撃でひとつ撃ち落として連続バク転! 蜘蛛のボディプレス!
「FSHAAAAAARRRRRRGHHHHHH!」
 THOOOOOOOOM! 巨体の着地により電子迷宮全体が揺らぐ! ギリギリで押し潰されるのを回避したフォーリーを、蜘蛛は前足で押し潰しにかかった! だがフォーリーは命中寸前で無数の01に分解され消滅! 真冬の工作!
「ふふふーん! 蜘蛛の巣にかかったのがどっちなのか……教えてあげるよ!」
 ホロキーボードの上で指を躍らせるた直後、円形だった電子迷宮の壁が一直線に変形! さらに蜘蛛の前方上空に細かな板状の足場がいくつも召喚され、そのうち一つにステルス解除したフォーリーが飛び乗り弓を引く!
「狩りの時間だ。逃げ惑え!」
 一度に番えた五本の刃を撃つフォーリー! 蜘蛛は流星めいて落下してくる矢に糸を吐き出した! 白い奔流は刃矢を飲み込んでフォーリーを捕らえんとす! フォーリーは跳び下がり、一段下の足場に移ってさらに撃つ!
 SHOOOOOT! 糸の合間を狙って放たれた矢に、蜘蛛は思い切り頭を振り下ろして糸を叩きつけて撃ち落とした! 直後、蜘蛛正面の虚空に01が凝固して複数の浮遊電子銃を生成! 真冬の視界に蜘蛛の目を狙うマーカー表示!
「ばんばんばーん!」
 エンター連打すると同時に電子銃が一斉にビームを照射! 大蜘蛛は八本足をすぼめてハイジャンプ! 電子銃撃をかわして足場ごとフォーリーを押し潰さんとする! フォーリーは無数の01をまといステルス!
「FSHSHSHSHSHSHSHSH!」
 CRAAAAAAASH! 浮遊足場と電子銃を全て押し潰した蜘蛛の真後ろにフォーリーが再出現! ブレーキをかけながら振り返り、低姿勢ダッシュで蜘蛛へと接近! 窮屈そうに八本足を動かす蜘蛛の上にジャンプ、サマーソルト!
「いかにメタ能力を持っていようが、当たらなければどうということはない」
 フォーリーは頭を真下に向け、左手五指に呼び出した刃を挟んで弓に番える! 蜘蛛の複眼は彼を捕らえているが、そこは射程距離の外! フォーリーの刃に赤黒い稲妻が走った!
「追い立てろ! ヘルハウンド!」
 SHOOOOOOT! 撃ち下ろされた矢を嫌って蜘蛛はバックジャンプで矢をかわす! くるくると錐揉み回転しながら着地したフォーリーは蜘蛛に背を向けて走り始めた! 蜘蛛は八本足を素早く動かして彼を追う!
「FSHAAAAAAAAAAAAARGH!」
「そうだ、それでいい。追って来い!」
 肩越しに蜘蛛を睨んだフォーリーは小ジャンプから振り向き速射! 蜘蛛は前足を持ち上げ、矢を足の先端で弾き飛ばす! 反撃の糸砲弾を、フォーリーは着地からのバク宙で回避! 蜘蛛の斜め後方に複数の浮遊電子銃が現れた!
「ゴーゴー! にっくきフォーリーをやっつけるためにガンバロー!」
 真冬の声に応じて極彩色のビームが放たれた! オーロラめいた光をまといながら襲い来るそれらを蜘蛛の目は捕らえている! 後ろ脚で地面を蹴りつけるように鋭いジャンプ! ビームを避けつつフォーリーの頭上を取った!
「FSHHHHHHHHHHHH!」
「読めているぞ。ワンパターンだ!」
 フォーリーは落ちてくる蜘蛛の底面に刃矢を向けて射出! 蜘蛛の下顎から腹にかけて銀の刃が無数に突き刺さったのを見届け、フォーリーは足元に片手を叩きつける!
「真冬!」
『フォーリー、ボッシュートです!』
 真冬の声が響き、フォーリーの足元に開いた穴が彼を吸い込む! 一拍遅れて、THOOOOOOOOOM! 着陸した白い蜘蛛の眼球を何本のレーザーが射抜いた! わずかに尻を後ろに突き出し頭を引く蜘蛛。その動きは鈍い!
「FSH―――……!」
 蜘蛛の両足がガクガクと痙攣する中、後方の床に開いた穴からフォーリーが飛び出した! フォーリーは肩越しに蜘蛛を一瞥し、腕を真横に引き伸ばした!
「チェックメイトだ。貴様はもう動けまい」
 フォーリーが指を鳴らした瞬間、蜘蛛の頭上に巨大な刃が氷柱めいていくつも垂れ下がる! 蜘蛛は目を光に焼かれ、フォーリーの矢から流れ込む赤黒い電光に縛られ動けない。フォーリーは前に向き直った。
「まずは一匹。だいぶ高くつくぞ、真冬」
 呟いて歩き出すフォーリーの背後で巨大な刃が蜘蛛に落下し、巨体をズタズタに引き裂いていく! 切断された足が倒壊するビルめいて横に倒れ、白く粘っこい血が弾け飛ぶ。それを鳥瞰風景の映像で見た真冬はぶるりと身を震わせた。
「うひゃっ! ショッキング映像見ちゃった! こんなの小さな子には見せられまーせんっ!」
 ホロウィンドウをスワイプして映像を消去! その時である! 真冬は真下から響いてくる震動に目を丸くした。
「……ん? 何この震動。地震?」
 辺りを見回すが異常なし。キーボードを叩いていくつかホロウィンドウを呼び出し、じっと見つめる。電子迷宮のスキャン結果に穴が開くほど目を凝らした―――直後! 真冬は真上に吹き飛んだ!
「へ?」
 空中で仰向けになり、ぽかんと目を丸くする真冬。彼女の下方では迷宮の地面を突き破りドリルめいて回転する巨大な白い物体あり! 回転を止めたそれは、翼の無い対猟兵用オウム! オウムは全身を総毛立たせ、全方位に吹雪を放つ!
「KRRRRRRRKKUUUUUUUUUU!」
 銀色の吹雪が電子迷宮を内側から爆散させ、元の沼地へ引き戻す! オウムは自由落下を始める真冬を見上げ、全身をぞわりと総毛立たせた。鉛筆サイズの羽トゲが真冬を照準! 分解毒を込めた恐るべき生体機関銃!
「真冬!」
 異変に気づいたフォーリーがオウムめがけて全力疾走! しかし彼が番えた矢を放つより早く、羽トゲの一部がフォーリーへと撃ち出された! 弾速が速い! フォーリーは舌打ちとともに弓を下ろして真横にダッシュ! 回避行動を取る!
「クソッ!」
 ZBABABABABABABABABABABABABABABABA! フォーリーの軌跡を追うようにして沼地に突き刺さるトゲ状の羽! オウムはもはやフォーリーに構わず首回りから頭部のトゲを真冬へ放った!
「真冬―――ッ!」
 フォーリーが叫ぶも虚しく、トゲ羽が唖然としたままの真冬の背中へと殺到していく! だがその寸前、真冬に空中タックルを仕掛ける小柄な人影! トゲ羽の射線に割り込んだイリス・ローゼンベルグ(悪を喰らう蠱惑の薔薇・f18867)は両腕を広げ全身に毒のトゲを受け入れた!
「んッ! んんんんんんんんんんんんんッ!」
 ZBABABABABABABABABABABABABABABABA! 黒いゴシックドレスにしつけ針じみて無数のトゲ羽が突き刺さる! オーバーキル量の毒針を全身に受け、しかしイリスは恍惚とした表情を浮かべた。
「んんー……今までに受けたことがないほど強い毒……! 身体がバラバラになってしまいそう……! でも……」
 イリスは両腕に生えた、薔薇を咲かせる太い触手をうねらせた。オウムは今だ生きているイリスを見上げて小首を傾げ、トゲの掃射をさらに続行! イリスの手足を構成する触手が激しくうごめく!
「アア……流石ニ痛イワネ……」
 白いまつ毛に縁どられたイリスの両目がオウムを射抜く! 次の瞬間、イリスは両手足をオウムめがけて振り下ろした! 垂直に伸長した触手は複数本のイバラにばらけ、羽トゲの弾幕を泳ぐようにして突破! オウムの首を締め上げる!
「KUKYUUUUUUUUUU……ッ!」
 苦しげな声を上げるオウムを見下ろし、イリスは凶暴な笑みを湛えて手足のイバラに自身を引っ張らせて加速! 抵抗の羽トゲにその身を穿たれ、貫かれ、掠められながらも表情ひとつ変えずにダイブアタック!
「ふふ……ごめんなさいね。その毒、頂いてしまったわ。凄く強い毒だったけど……もう効かないの」
 口を三日月型に釣り上げるイリス! そんな彼女を、横から土の匂いをはらんだ熱い風が撫でた。そちらに目をやれば、岩盤めいた皮膚と平たい頭頂部に花畑を頂く巨大生物が大口を開けてイリスに捕食をしかけてくる!
「GRRRRRRRRRRRRRR!」
 奈落めいた巨大な口腔がイリスを捕らえ、噛み潰す直前! 巨大生物の脳天に漆黒の雷が落ちた! ZGRAAAAAAAAK! ガクンと頭を下げる巨大生物の頭に黒い大剣を突き立てた謡は剣を90度ねじる!
「余所見は困る。お前にはこの剣の糧となってもらわねばならないのでな!」
 謡は剣の柄を握る両手から黒い雷を全力解放した! ZGRAAAAAAAAAAAK! 巨大生物の花畑に黒雷が荒れ狂い、蜘蛛の巣状の亀裂が走る! 頭を振り上げて悲鳴を上げた巨大生物は大きく息を吸い込み、息を止めた。刹那!
「む……!」
 異変を察知した謡は大剣を引き抜いてロケットスタート! 花畑を一気に横切って端から跳躍する彼女の背後で、黄色い竜巻が吹き上がった! BLOWWWWWWW! 花粉の大竜巻を背にした謡は急降下の途中でイリスをキャッチ!
「まぁ!」
「動クナ」
 イリスを横抱きにしたままオウムの頭上を通過し、沼地に着水からの二段ジャンプ! 謡が居た場所を無数の羽トゲが穿ち、サボテンめいた針山に変える! イリスはオウムの首を絞めたままのイバラ触手に力を込めた!
「千客万来ね。悪いのだけれど、あなたにはお引き取り願うわ」
 メキメキと音を立てながらイバラ触手が膨らんでいき、オウムの首を締め上げる! 身を反らし、クチバシを開いて苦しげな呼気を漏らすオウムの骨が―――CRASH! イバラ触手に握り潰されて破砕! 謡はそちらを一瞥して着地!
「美シクモ残酷、トイッタトコロカ……クククククク!」
「褒め言葉と受け取っておくわ?」
 沼地に降ろされたイリスは四肢の触手を引き戻して沼地に立った。そこへ地鳴りじみた足音を響かせながら花畑を乗せた巨大生物が迫りくる! 謡は大剣を下段に構え、黒雷をまとって急加速! イリスは両の触手をしならせた!
「GRRRAAAAAAAAAAARGH!」
 花畑の怪物は大口を開き、巨大な舌を射出する! 謡は回転跳躍して乾いた舌の上に飛び乗り一気に駆け上がっていく! イリスは左腕の触手を螺旋状に丸めて円盾を形成! 舌先をガードするも後方へ押し流され始める!
「あらあら。レディ二人を舐めようなんて、品が無いわね?」
 イリスは微笑み、踏ん張る両足の触手で螺旋を描いた。バネ状にした両足のスプリングを使ってミサイルめいたジャンプ! 舌の攻撃を逃れて怪物の顔面へ飛翔し、引き絞った右腕の触手を撃ち出し一気に伸ばす! 眉間を穿つ触手槍!
「GUOOOOOOOOOOOOO!」
 やや顎を引いて叫ぶ怪物の顔に亀裂が入り、崩壊! 分解毒だ! さらに上顎を、下から黒雷が引き裂く! 垂直ジャンプの斬り上げを繰り出した謡は振り上げた大剣を両手でつかみ、車輪めいて高速回転しながら花畑へ突っ込んでいく!
「ハァァァァァァァァァァァァッ!」
 謡は漆黒の流れ星のように花畑へと吸い込まれ、CRAAAAAAAAAASH! 顔面側の一部を粉砕し、ガラガラと崩壊させる! 悲鳴を上げる怪物の皮膚の下、秘されていた灰色の脳が露出した! 脳に立った謡は大剣を掲げる!
「ソノ命、モライ受ケル!」
 一閃! 黒く輝く肉厚の刃が怪物の脳を叩き割り、稲妻で脳細胞を蹂躙しつくす! 表面を激しく沸騰させ、ボコボコと泡立たせた怪物は断末魔を張り上げた!
「GYAAAARRRRRRGGGGHHHHHH!」
「案ズルナ! 貴様ノ魂、貴様ノ母ニ呪イトシテ還シテクレル! ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
 謡は狂気的な熱狂に任せて哄笑! 彼女の周囲で脳細胞が次々と破裂し、緑色の血液を連続して吹き出した! 怪物が横に倒れるのを遥か後方に、莉亜はテールスイングを跳躍回避! 炎のようなタテガミを持つラプトルを見据える!
「っと。デカい割りにすばしっこいな……」
「さっきからずっと前を塞がれていますからね……」
 莉亜の左肩にしがみついた妖精サイズのアリシアが呟く。巨大ラプトルはジグザグステップを踏んで沼地の水面すれすれまで下げた頭で莉亜と魔法少女マリアに噛みつきを繰り出した! 莉亜とマリアは斜めにスプリントして掻い潜る!
「SHAAAAAAA!」
 二人を食らい損ねたラプトルはバックジャンプ! 再び二人の前に立ちふさがって蹴り上げを放った! 二人は左右に跳び分かれてこれも回避! ジリジリ進めているが、ガルシェンまでは今だ届かず! アリシアが声を張る!
「莉亜さん! 目を!」
「そうするかな」
 莉亜は両手に持っていた狙撃銃と透明な剣を真上に放り上げた! 不可視の両腕がそれをキャッチし、狙撃銃をラプトルの片目に向ける! BLAMN! ラプトルはとっさに頭を引いて銃弾回避して反撃のテールスイング!
「アリシア、しっかり捕まってて」
 頭を下げて加速した莉亜はスライディングで泥を跳ね飛ばしながら尻尾の真下を滑り抜ける! ラプトルは大きく後方へ跳ぶと、両腕を限界まで広げ、地を舐めるような低姿勢で突撃していく! 暴走ブルドーザーの如き攻撃!
「莉亜さん、ギリギリまで引きつけて跳んでください! ガルシェンに突貫します!」
「わかった」
 回転ジャンプでスライディングを解除した莉亜はラプトルめがけて全力疾走! 空中浮遊する狙撃銃の援護射撃を背にして距離を詰めていく! ラプトルは頭の角度を細かく変えて銃弾をかわしつつ、真っ向から迫って来る猟兵をにらむ!
「SHYAAAAARRRRRRGGGGGHHHHHHHH!」
 威嚇するように吠え、地を這う爪撃で莉亜を狙う! 赤く鋭い爪には猛毒! 莉亜はアリシアを肩にくっつけたままギリギリでハイジャンプ! ラプトルの頭とすれ違うように飛翔した! アリシアは莉亜にしがみつきつつ指笛を吹く!
「マリア―――っ!」
 BLOW! 一陣の風と共に魔法少女のマリアが現れ、ステッキの先を莉亜の背中に押し当てた! 莉亜がアリシアごと風の球に包まれ、砲弾めいてふっ飛ばされる! BOOOOOOOM! ガルシェンの口をめがけて一直線!
「マリア! 外は任せましたよ!」
 振り返りながら声を飛ばすアリシアに、マリアは力強く頷いた。彼女の背後、振り向きながら頭を跳ね上げマリアに噛みかかったラプトルの右目を無色透明な剣が貫く! 爆ぜる粘ばついた血液!
「ARRRRRRRRRRGH!」
 苦悶の叫びを上げてのけ反るラプトルに、マリアが振り返りざまにステッキを突き出す! 杖先から放たれる空気砲! BOOOOOOOM! 大型の空気砲弾ががら空きになったラプトルの下顎を撃ち抜いた! ガルシェンの目が動く!
『BFOOOOOOOOOOO……』
 巨大な瞳が間近まで迫ってくるコバエよりも小さな猟兵たちを視認! 鈍重な右手が沼地から引き上げられ、空色の爪が陽光を反射する。接近者を叩き落とす構え! だが爪が振り下ろされる寸前、ガルシェンの右目下の水面が爆ぜた!
 SLAAAAAAAAASH! 頬から眼球を真上に一閃する黒い輝き! バックリと割れたガルシェンの眼球から洪水めいた血が吹き出した! 爪が明後日の方に振り下ろされ地を揺する!
『GOAAAAAAAAAAAAARRRRRRRRRRGGGGGGGGGGHHHHHHHHHHHHHH!』
 木霊するガルシェンの声! その頭上に跳び上がった黒いホイールソーが溶けて黒いスライムの塊に―――黒玻璃・ミコ(屠竜の魔女・f00148)の姿に変化した! 汚泥に紛れて機会をうかがっていたのだ!
「ははははは。遂に相まみえましたね。これが創世巨獣……否、帝竜ガルシェン。オブリビオン化してもなお容易く屈せぬ気高き魂。その全てが我が糧として食らうに最高です」
 ぷるぷると震えたミコがオレンジ色の輝きを放ち、その体が超自然の黄衣に包まれる!
「塵になるまで細切れにして差し上げましょう! いあいあはすたあ! あいあいはすたあ!」
 SMACK! ミコの黄衣が瞬き、無数の超時空斬撃がガルシェンの全身に襲いかかった! ZBAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAM! ガルシェンは亀めいて四肢と頭引っ込め防御体勢を取った!
「無駄なこと。この刃の前にはあらゆる装甲が無力!」
 虚空に浮き続けながらミコが言い放つ。一方、彼女の眼下では凄まじい速度で弾き出された莉亜とアリシアは数秒と経たずガルシェンの目の前まで到達! 風球の中で巨大な竜の威容を見上げ、莉亜がぼやいた。
「今更だけどさ、アリシア」
「はい、なんでしょう」
「デカすぎない? お腹パンパンになるレベルだよ……」
「……絶対パンパンじゃ済まないと思います」
 アリシアがこほんと咳払いをし、表情を引き締める。二人はガルシェンの口内に飛び込んだ! そこは―――ALAS! 肉壁を覆うヒカリゴケの豊かな明かりに照らされた、毒々しい緑色のジャングルじみた空間である!
「なるほど……まさしく環境そのもの! 莉亜さん、注意を!」
「ん」
 莉亜が頷くと同時、風の球がほどけて二人を解放する。下草の生えた地面に着地した、その時である! ジャングルのそこかしこがガサガサと揺れ、翼の生えたスライムが無数に飛び出した!
「おっと、白血球のお出ましかな?」
「そのようですね。サポートします! 捕食されないように気を付けて!」
「了解」
 莉亜の瞳が妖しい紫色に瞬き、全身を濃紫色のオーラが包む! 蟲めいた翅を生やしたスライムたちは構わず殺到! オーラごと全方位から彼を飲み込み、次の瞬間にSLAAASH! 紫色の剣閃によって弾き飛ばされた!
「さてと……」
 手の中で黒い大鎌をくるくると回す莉亜の衣装は、ラフなボーダー柄のシャツから深い紫色の貴族服に変化していた! 両肩部分に黒薔薇の衣装をあしらったマントに、アリシアがしがみつく!
「心臓めざして、少し運動するとしようか。真っ直ぐ進んでいいのかな?」
「はい! まずはこのまま直進を!」
 小さなゴーグルを被ったアリシアのナビに従い、莉亜はガルシェンの体内ジャングルを風めいて走り始めた! 全方位から水泡のように湧き出すスライムがこれを追う! 莉亜は大鎌に紫のオーラを集中させて跳躍回転斬撃!
「それっ」
 SLALALALALALALALASH! 幾条もの剣閃が走り、スライムたちが四散していく! アリシアが後ろを振り返り警鐘!
「背後から三、下から四、上から十! 敵影なおも増加中!」
「そう簡単には通してくれないか」
 莉亜は振り向き斬撃で勢いをつけ、くるくる回転しながら斜めに落下! 着地と共に全力スプリントする彼の目前にスライムの壁がそびえ立つ! これを大鎌の縦一閃で叩き割り突破! 左右から挟撃してきた二体を一回転で斬り捨てる!
「上から多数!」
 アリシアの声を聞き、オーラ残像を引きながら加速する莉亜! 彼の後方に流星群めいて墜落したスライムたちが地面をバウンドし、体勢復帰して追い回す! さらに莉亜の前方両斜めから四体のスライム!
「アリシア。僕のポケットに入ってるかい。そこ、危ないだろ」
「大丈夫です! それよりも前っ!」
 莉亜はサマーソルトジャンプで行く手を塞ぐスライムを飛び越える! 彼とすれ違ったスライムたちは空中で急ブレーキをかけ、跳ね返るようにして莉亜に襲いかかった! 莉亜は大鎌のひと振りで蹴散らす!
「後ろッ!」
「!」
 莉亜が首を巡らせて背後を確認! そこには―――ALAS! 肉の大地からせり上がるスライムの山が膨らみつつある! 合体した巨大スライム集合体は莉亜めがけて体躯を伸ばした!
「満漢全席だね……。けど、そろそろスライムは食べ飽きてきたかな」
 莉亜は振り返りながらオーラ斬撃を繰り出した! 巨大な紫色の三日月が飛び、スライムの体躯を分断! しかしスライムは二手に分かれて莉亜の左右を抜け、アリシアごとを挟み飲み込む! 粘液が橙色に変色して急速沸騰!
「自爆します……! 脱出を!」
「出来たら……いいんだけどねえ」
 莉亜は大鎌持つ腕を動かすが、緩慢! 粘液の中では満足に動けないのだ! スライムが眩く光り輝き、自爆への秒読みを開始する! そこへ飛来する無数のマイクロミサイル! 伸びたスライムの真ん中に突入した弾頭が先に爆発した!
 CABOOOOOOOOOM! スライムが四散し、爆風が莉亜たちから自爆粘液を引きはがす! 爆風に煽られながらも拘束を脱した莉亜が後方に着地した真横をニィナのバイクが走り抜ける!
「大・成・功っ! さっすがにぃなちゃん!」
「首尾よくガルシェンの体内に飛び込めましたし完璧です! では行きますよ、フォーメーション2!」
 タンデムした塔子がニィナの両肩に手を当ててシート上に立つ! 前方には爆破を取りやめ急速再生する巨大スライム! ニィナは前傾姿勢でアクセル全開で突進し、不意にブレーキをかけ後部を跳ね上げる! 塔子を射出!
「とーこちゃん爆弾! れっつご―――っ!」
「巨大! 莫大! 規格外! しかしガルシェン、括目すべし! 一寸の虫にも五分の魂! いわんや猟兵をや!」
 斜めに飛翔しながら塔子は交叉した両腕に火炎瓶をつかみ、下方のスライムへ振りかぶる!
「これが! 私たちの! 叛逆魂ですッ! せりゃああああああああッ!」
 火炎瓶を投げおろし、さらにマシンガンじみた速度で大量の瓶を次々投擲! 塔子の瓶は再生しかかっていたスライムの体内に飛び込み、火を噴きながら爆発! 爆発! 爆発! CABOOOOOOOOOOOOOM!
「さらに追加で追い重油! 汚物は消毒ですッ!」
 バスケットボールサイズの褐色瓶を、炎上するスライム山にダンクシュート! 炎上し、激しく沸騰しながら波打つスライムに叩き込まれた褐色瓶は熱を浴びて砕け、KRA-TOOOOOOOOOOM! スライム山を消し飛ばした!
「……派手にやるなぁ」
「おかげで助かりましたね……。続きましょう!」
 アリシアに促され、再度走り出した莉亜はたちまちミサイルを全方位にばらまくニィナバイクに追い付き並走! その後部座席に後方回転してきた塔子がストンと収まる。塔子は莉亜とアリシアにサムズアップ!
「一番乗り、お見事でした! しかしここからは私たちも一緒です!」
「えーっと、にぃなちゃん、とりあえずこのままボカボカしながら真っ直ぐ行けばいい?」
「はい!」
 ニィナに頷くアリシア。でたらめにばら撒かれたミサイルがガルシェン体内を火の海に変え、飛び立つスライムを出現した傍から爆発四散させていく! ニィナはハンドルを握りながら胸を張った。
「二人とも、にぃなちゃんととーこちゃんがついてるからね! 泥舟に乗った気分でどーんとついて来て!」
「大量の爆薬を乗せた最強の泥舟です! 露払いは任せてください!」
「沈まないようにね」
 小さく首をすくめる莉亜。突如、四人の背後から激しい震動が響き渡る! 走りながら四人が振り向くと、そこには超巨大チョココロネめいた形状の寄生虫! 丸い穴状の口から唾液を滴らせ、凄まじい速度で追いかけてくる!
「MYAAAAAAAAAAAAAAA!」
「アンチイェーガー・ギガンティス! まさか体内にまで……!?」
 驚愕するアリシア! ニィナがバイクハンドルについたボタンを押し、マイクロミサイル全てを後方の寄生虫へ一斉発射する! 連続着弾! BBBBBBBBOOOOOOM! だが立ち込める煙を突き破った寄生虫は無傷!
「あ、効いてないっぽい! これちょっとにぃなちゃんお手上げっぽい?」
「困りましたね。正直戻って迎え撃つ時間は惜しいのですが、迎撃しなければ追い付かれます!」
 塔子が言い、火炎瓶を取り出した。寄生虫は蠕動もせずキャタピラ走行めいた滑らかな動きで追随してくる! 一瞬目配せをした四人がウィンクや頷いて同意をしめした、次の瞬間! 寄生虫の背後にさらに巨大なゴリラの影!
「ウオオオオオオオオオオオオオオッ!」
 ゴリラの鉄拳撃ち下ろしが寄生虫の背中に命中! 弓なり身を反らせる寄生虫の脇をすり抜けたのは熊五郎を乗せた出前用スクーター!
「おーい! 紫! 炎眼鏡! ハートマークほっぺ! ようやく追いついたでごわす!」
 熊五郎はパタパタと尻尾を振りながらスクーターを加速させ、先行する四人に追いすがる! その後ろでは両手で寄生虫を持ち上げたゴリラが、チョココロネめいた体躯を左右に引き千切っていた!
「いやはや、どうやら危ないところだったようでごわす。良い時に追いつけたごわ」
「ありがと熊五郎ちゃん!」
 ニィナがビシリとサムズアップ! 同時に五人の行く手を無数に湧き出したスライムが塞ぎにかかる! 熊五郎はエンジンをキックすると、前に出ていた四人のやや後方についた。
「吾輩、ちょっと最短ルートを探ってみるでごわ。時間稼ぎを頼むでごわす」
「ここ掘れわんわんですね! 了解しました!」
 塔子がニィナの背後でサーファーめいて立つ! 無言で大鎌を下段に据える莉亜。蟲の翅を生やしたスライムたちは彼らを排除するべき大挙として押し寄せた!
 一方その頃、ガルシェン体外の毒沼! 濁った水を跳ね散らして現れたブレイブが左腕を振りかぶる! 前腕部に着いた青い機械亀甲を、ぶん投げる!
「ぬおりゃあああああッ!」
 THROWWWWWWWWW! 手裏剣の如く飛翔した機械亀甲は人型樹木の腹部に命中! お辞儀めいた姿勢を取る樹木の真上に飛び出したアマミが、ドリルじみて回転しながら垂直落下した!
「砕けぇぇぇぇぇぇぇぇぇいッ!」
 CRAAAAASH! 粉々に粉砕された人型樹木の身体から強酸毒樹液が飛び散る! が、琥珀色の液体は外に出るなり白くなって地に落ちた! 着地したアマミは汗をぬぐう! 周囲には白い霧雨が満ちる!
「ふう! ようやっと片付いたわ!」
「急ぐぞ! もう既に何人かガルシェンに突入している!」
 猛ダッシュで走って来たブレイブがアマミを担ぎ上げてガルシェンまで突っ走る! それに追いすがる、赤い体毛を全身に生やした巨獣の頭上を龍子が飛び越え、胸元に指を差し入れた。
「追わせません。私が相手になります!」
 引き抜いた指先にわだかまった光が膨らんで弾け、巨大な長銃型のガジェットを召喚! 真下に向けられた銃口に赤い稲妻が収束し、ZGRAAAAAAAAAAAK! 落雷めいて巨獣に降り注ぐ!
「GRRRAAAAAAAAAARGH!」
 電撃を浴びた巨獣が全身をぶん回して荒れ狂う! その足元をすり抜けた玉ノ井・狐狛(代理賭博師・f20972)は止めていた息を吐き出した。
「ぷはっ! ふいー、やっと綺麗な空気が吸えたぜ。ティオ姉さん様々ってな」
「油断しないの」
 狐狛の背後から駆け出して前方に回ったティオレンシアが前方跳躍! 眼前で緑色に発光する二足歩行のトカゲを前に、腕を横薙ぎに打ち振り虚空に青いラインを描く。ラインはいくつものルーン文字となり、霧雨の結界を展開!
「SHIIIIIIIAAAAAAAAAAAARGH!」
 吐き出された緑色のブレスが霧雨の結界に阻まれて拡散していく! 清浄なるルーンの結界を張ったティオレンシアは着地。憎々しげなうなり声を上げるトカゲの鼻面に、狐狛は一枚のカードを投げ放った!
「ほらよ、もらっちゃいないがお返しだ!」
 飛翔したジョーカーのカードはトカゲの目と鼻の先で黒い霧を吹き出した! トカゲは頭部を呪詛の霧に包まれ苦悶しながらたたらを踏む! その巨体をカニのハサミが吹き飛ばした! 青い巨大ガニは二本のハサミで狐狛を狙う!
「うおおおおっ!?」
「そこまでーッ!」
 反射的に飛び退きかけた狐狛の目前に無数の01で出来たバリアが出現! カニのハサミ刺突をガードする! 刹那、01はカニの腕を這い上って胴体に到達、巨体をあっという間に飲み込み巨大なドームと化す! 真冬の電脳迷宮!
「はいつかまえた! ゴー! フォーリーゴー!」
「構わないが、本当に支払いは覚悟しろよ……!」
 気楽に拳を突き上げる真冬に鋭い一瞥をくれ、フォーリーは電子迷宮へ飛び込んでいく! 空の彼方から響く甲高い歌声!
『i―――yaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!』
 汚泥から顔を出した蓮が咲き乱れ、無数に増殖しながら毒沼全体を覆い尽くす! 超巨大な世界樹と化したアウルは既に雲の高さを越え、周囲を蓮が咲く聖域へと作り替えていた。真冬は手でひさしを作ってアウルを見上げた。
「うひー。敵も味方もでっかいでっかい!」
「圧がすごい戦場だよなァ……帝竜サマといいアウルの嬢ちゃんといい」
 狐狛がトランプの束を弄びながらぼやく。彼女と真冬、龍子、ティオレンシアとアウルの間には、ガルシェンに向かう猟兵を止めるべく突き進んで来る巨大生物たち! ティオレンシアは指で空中にルーンを描く。
「それじゃ、もうひと頑張りしましょうか。私とアウルちゃんのコレで毒は浄化できてるし。あとはでかくて見覚えが無いだけの生物たちよ」
 巨大な鹿のスケルトン、赤いタテガミの巨獣! 起き上がった二足歩行トカゲは骨を光らせ、カニは電脳迷宮の中! ティオレンシアは残る一体を睨みつける。白い海綿状の肌に口だけの怪物が、展開した霧雨を吸い込んでいる!
「とりあえず、なんとかするかね」
 狐狛は首をゴキゴキと鳴らし、不敵な笑みを浮かべる。龍子が長銃型ガジェットを構え、真冬はそろそろと下がりながらホロウィンドウに目線をくれる。彼女の頭上をジャンプで飛び越えたラプトルをマリアが追撃!
 他方で、ガルシェン側へ加勢に向かう猟兵はブレイブとアマミ、イリス、謡、ころなの五人! 亀のように甲羅にこもってミコの次元斬撃に耐え続ける巨体へ、真っ直ぐに突っ込んでいく! イリスは蓮の花畑を振り返った。
「もう、毒消しの結界なって張っちゃって……。戻りづらくなってしまったわ」
「問題ないぜ!」
 マラソンフォームで走りながらブレイブ!
「私たちは後退できない! この世界に住む人々のためにッ! 急がねばッ!」
「そういうことではないのだけれど」
 イリスは苦笑気味に嘆息する。宙を滑るように飛ぶころなは、金と橙の十二単をはためかせながら鼻を鳴らした。
「ふん。どのような意味でもよい。いずれにせよ、あの亀風情を焼き払わねばどうにもならぬが故な! 先に行くぞ!」
 プロミネンスじみた炎の尾を引き、ガルシェンの顔へ飛翔するころな! アマミは助走をつけて軽く跳び、足元の水面から浮上したブレードユニットにサーフボードめいて騎乗! 水面を斬って突き進む!
「急ぐぞ! 盛大に出遅れてしまったからの!」
「ククッ……先ニ決メラレルノハ、本意デハナイ!」
 謡が瞳をぎらつかせ、黒雷と共に急加速! 地を走る一条の稲妻と化した彼女は、水面をジグザグにバウンドしながらガルシェンに迫り、漏斗状の口へ飛び込んだ! レーザーめいて直進する彼女に四方八方からスライムが殺到!
「サア、行クゾ……! パンデミックノ、始マリダ!」
 謡は帯電する大剣を振り上げ、ZGRAAAAAAAAAAAK! 全方位に漆黒の稲妻が飛び散り、スライムをまとめて炭化殺! 雷を食らったヒカリゴケが黒く枯死し、体内のジャングルが焼き尽くされていく! 謡は狂笑!
「ハハハハハハ……ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
 ZGRAAAAAAAAK! 徐々に激しさを増す黒雷! 謡が大剣を振り下ろすと無数の稲妻剣閃が体の奥へ向かって行き、CABOOOOOOOM! 黒炎の爆発を引き起こす! 大量のスライムが生み出され謡に襲うが、返り討ち!
「モットダ! モット、モット来イ! 殺サレニ! 呪ワレニ! 骸ヲ晒シニ! クハハハハハハハハハハハハ!」
 荒ぶる雷の地帯が範囲を押し広げる中を掻い潜り、アマミ、ブレイブ、イリスの三人は複雑軌道を描いて走りながら突き進んでいく! 多くのスライムたちが謡に群がり、僅かに流れて来た個体を斬り捨て、貫きながら奥深くへ特攻!
 そして奥! 肉の横壁をブチ抜いて飛び出した熊五郎に続き、ニィナと莉亜、巨大ゴリラの出汁殻が走って続く! 胎内に響く巨大な心拍の音!
「近いでごわす!」
「うん、聞こえる。ていうか、見えて来た」
 莉亜が左掌にべっとりとついた血を舐め取りながら答える。先ほど突き破った壁から出たガルシェンの血だ。コーヒーめいた芳醇な苦み。腹の底から熱が湧き出してくる感覚!
「いい血だ。もっと吸いたいかも」
「これからたらふく飲めるでごわ」
 二人の会話を余所に、ニィナが身を乗り出して遠くを見る。無数の管に繋がれて拍動する超巨大な物体―――ガルシェンの心臓を!
「ひょえー! 心臓もでっかいねえ!」
「ガルシェンが巨大ですからね。そしてそれだけに……」
 塔子が眼鏡を押し上げ、目を凝らす。心臓のある空間から押し寄せてくる緑の大洪水、否! 防衛スライムの大群だ!
「さっきまでとはくらべものにならない守りの厚さです! これを突破しなければ!」
「おっけい! どーんといっちゃおーっ!」
 ニィナがバイクハンドルのボタンの押し込み、蒸気バイクから無数のマイクロミサイルを発射! BBBBOOOM! ジェット噴射した弾頭たちはスライムたちに命中して連鎖爆発を引き起こすも、煙を押しのけた後続が接近してくる!
「道を……開けてもらいますッ!」
 塔子が火炎瓶を連続投擲! スライムの洪水前に続々と投げ込まれた炎は一気に燃え上がるも、スライムたちはそれらを押し潰して無理矢理鎮火! 塔子は連投を続けるが、多少の発火では相手にならぬ!
「くぅっ、止まりませんか……!」
「んー、不味い? アリシア」
 莉亜に問われたアリシアは、厳しい眼差しでゴーグルを覗き込み続ける。通り道を塞ぐようにして襲いかかるスライム集団! 奥に見えるのは紛れもなく心臓だが、通り抜ける穴が無い! アリシアはゴーグルを下ろす!
「よくないですね……。ただ、これをなんとかして越えられさえすれば……」
「トドメ、でごわすな?」
 熊五郎が二の句を引き継ぐ。徐々に距離を縮めてくるスライムの軍勢を前に、巨大ゴリラの出汁殻が前に出て威嚇の咆哮を上げる! しかしスライムたちは意に介さない! このままでは心臓に辿り着けないまま圧死だ! その時である!
「ヒャッハ―――ッ! 追い付いたぜえええええええええッ!」
 五人と一体が通って来た穴から、戦闘機のように飛来する無数の影! 大量のソードビットを引き連れたアマミは獰猛な笑みを浮かべ、速度を上げる! 驚いて振り返る先駆者五人の頭上を越え、スライムの壁を指差した!
「なんだかよくわからんがグチャミソに斬り刻め! ていうか死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」
 アマミの命令に従った70のソードビットが円盤状に高速回転しながらスライムの壁に押し寄せる! 直撃したビットたちは粘液を撒き散らしながらスライムの壁をズタズタに引き裂き、突破口を開かんとする! そこへ一条の炎の矢!
「見つけたぞ仲間たち! その先に心臓があるのだな!?」
「毒も無いスライムなんていらないのだけど……どうしてこんなにいるのかしら」
 アマミからやや遅れて飛行してきたブレイブが、右前腕部にドッキングさせた機械鷹から炎の矢を連射する! 彼の下方、つまらなそうな表情をしたイリスは左腕の触手を編んで即席の槍を形成! 塔子は前を向き直った!
「ピンチに援軍! これは燃えてきました! ニィナさん! ぶちぬきましょう!」
「いえっさー! いけいけーっ!」
 ニィナがバイクハンドルのボタンを連打し凄まじい勢いでミサイルを乱射する! 塔子は両腕を振り回して力の限り火炎瓶を連投! 連投! 連投! BOOOMBOOOMBOOOOOM! 連続の爆発がスライムを蹴散らす!
「出汁殻! こじ開けるでごわす!」
「ARRRRRRRRRRGH!」
 熊五郎に指示された出汁殻が剛腕の右ストレートを繰り出した! SPLAAAAAASH! 弾け飛ぶスライム壁! 風穴があいた! アリシアが合図を飛ばす!
「今です! 急いでください!」
 前を行く猟兵たちが跳躍して穴を潜り、後から来た三人もまたスライム壁を突破! 空いた大穴をすぐに縮小させたスライムたちに、塔子は重油の瓶を投げつける!
「てやあッ!」
 放り投げられた瓶は空中で破裂し、中身を盛大にぶちまける! 追加で二個、三個、四個! 次々とまき散らされる重油にニィナのマイクロ弾頭が命中し、CABOOOOOOOOM! 爆炎を吹き上げた! イリスが足の触手を解く!
「あんまり追い回されると面倒ね。ここで死滅してもらうわ」
 イリスの足からいくつものイバラが伸び、スライムに突き刺さっていく。スライムたちはイバラが突き刺さった場所から放射状に黒く変色し、石くれのように風化崩壊! それはスライム全体に伝播する! 出汁殻がスライムを粉微塵に蹴散らしながら心臓に肉迫!
「ARRRRRRRRRRGH!」
 剛腕のダッシュストレートがガルシェンの巨大心臓を打つ! 拍動が一拍吹き飛び、心臓全体を覆う毛細血管がそこかしこで千切れてどす黒い血を噴き出した! 熊五郎はスクーターからジャンプし、大口を開く!
「ハツ、いただきごわす!」
「ここまで長かったんだ。満腹になるまで吸わせてもらおう」
 莉亜が振りかぶった大鎌に紫のオーラを充填! 一方で機械翼と鷹をパージしたブレイブは、右手は真上に突き上げて叫んだ!
「天空王! 大地王! 海洋王! お前たちの力を貸してくれ! 私たち全員の力で敵の攻撃を突破するんだ―――ッ!」
 赤い鷹、黒い一角獣、青い海ガメがパーツをバラバラに分解しながらブレイブの頭上に収束し、一本の機械大剣を形作る! その柄を握ったブレイブは力の限り高く跳び、ガルシェンの心臓に斬りかかった!
「うぉおおおっ! ファイナルスラ―――ッシュッ!」
 振り下ろされた刃と、斬り上げられた莉亜のオーラ刃が心筋を引き裂く! さらにアマミのソードビットが心臓の表面を縦横無尽に飛び回り、ズタズタする!
「デカい心臓しやがって! それが一体何するものぞ! 死ね―――ッ!」
 アマミもまたビットの一本を手に高速斬撃を叩き込んだ! 地を這うように迫るイリスがイバラで編んだ槍を突き上げ、力尽くで押し込む! 心臓の赤がまだら模様の紫に! ガルシェンの胎内に凄まじいサウンドが響き渡った!
「痛いかしら? ええ、あなたの子が作った毒は痛いでしょうね。蟻のひと噛みが巨象を殺す事もあるということ、骨の髄まで教えてあげるわ」
 酷薄な笑みを浮かべて槍を押し込むイリス! その後方でニィナと塔子が火炎瓶とミサイルをばら撒いて心臓を爆撃! 絶叫めいた声がさらに大きく、激しくなっていく!
 そして、ガルシェンの絶叫を頭蓋の中で聞くのはころな! 巨大な脳を前にした彼女は、頭上に全力で育て上げた光球を掲げてニヤリと笑った。
「随分な声を出すな、亀が。さては心臓の者共がはしゃいでおるな? さぞかし痛かろうなぁ……。しかし安心せよ。妾が今、ここで介錯してくれる。脳を潰せば、もはや痛みも感じまい!」
 ころなは橙色に変色した目をカッと見開き、光球を脳に叩きつける! CABOOOOOOOOOM! ガルシェンは激しく身を揺すり、潰れた目の奥から閃光を放って血反吐を吐き出す! 外の猟兵たちと怪物たちが驚いて見守る中、帝竜は頭部を爆発四散させ、こと切れて動かなくなった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月11日


挿絵イラスト