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糸しい貴方に故意してる(作者 眠る世界史教師
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 時刻は黄昏時、窓から夕陽の差し込むとある教室。
 制服に身を包んだ少女が一人、橙を背にして佇んでいる。その目は閉じられ、両手は祈るように胸元で組まれていた……そしてその左手の小指から伸びるのは、細く短い赤い糸。風も吹いていないのに、清らかな小川の流れのように揺らめいている。
 中空に浮かんだ糸の先端が、次第に伸びて行く。一定の指向性を持つかのように、少女の小指から、小窓を潜り、廊下を進んで──伸びた糸を、たどり着いた先で待っていた赤毛の少女が掴む。笑みを浮かべた彼女はそのまま、糸を辿り始めた。
 その手に、赤い鋏を光らせて──。

   ☆☆☆

「題を付けるのなら、『櫻の都に咲く恋』……そう、今回の目的地はサクラミラージュ、そして恋の物語なんですよ、皆さん!」

 招集を行ったグリモア猟兵、月見里・見月(スウサヰドロマン・f27061)は、興奮したように頬を上気させながら、集まった猟兵たちに向けて語った。
 任務を伝えながらも、その手元は未完の小説に筆を走らせ続けている。

「帝都で恋を叶えるおまじないが流行っているそうです、ロマンですよね!」

 暫くの後、一しきりの内容を伝達し、筆を止め、本を閉じる……それから打って変わったように真剣な目つきになって、再び猟兵たちを見据えた。

「だけど勿論、影朧が関わっています。未だ予知の段階ですが……急に流行り始めたこのおまじないは、影朧自身が広めた可能性が高いのです」

 つまり、関わった人間に害をもたらすということです──月見里はそう続けて、僅かに目を伏せる。恋の想いを台無しにされるか、最悪の場合命を取られるか。
 様々な世界に存在するオブリビオンの中でも、サクラミラージュに存在するもの……影朧と呼ばれるそれらは、明確に姿を現すことが少ない傾向にある。彼らの悪意は大樹を侵す毒のように、見えない所で、しかし確実に伝播してゆくのだ。

「皆さんには初めに、本体を引っ張り出して頂かなくてはなりません。方法は……おまじないでしょうね。詳細なやり方をお伝えします」

 彼女は懐からボビンを取り出すと、そこから赤い糸を引き出して裁ち鋏で切りとった。繋がりを失った片端がふわりと浮かぶ。
 それから、その左手の小指に赤い糸を巻き付けた。一回、二回……しっかりと巻くことはせず、親指と小指で挟む形でその状態を維持する。

「太陽が沈み掛ける時間帯に、こうして赤い糸を指に巻き付けて、暫く目を瞑っているんです……そうすると縁結びの神様、『うららさん』が耳元で囁くので、目を閉じたまま恋に関する願い事を言う、そうすると叶えてもらえるんですって」

 実際には巻いたりせず、ただ持っているだけでも大丈夫だそうですが、と付け加えた。条件は簡単な方が、影朧にとって好都合なのだろう、と。
 説明を終えた少女は、猟兵たちに赤い糸を配って歩く。凡そ五十センチメートル程……事情のある猟兵には長さを調整して。

「それでは転移を始めます。良い感じの、人が居なくて被害が少なそうな廃校……ですね。皆さん、帝都の乙女たちの選択を守るため、よろしくお願いいたします」

 すべきことを終えた少女は、グリモアに手を翳して集中を始める。転移が始まる……直前、何か閃いたように明るい声で付け加えた。

「影朧を確実に呼ぶために、おまじない中はしっかり想い人のことを考えてくださいね! それから終わったら、公文書に残すためにそのお相手のことをしっかり詳しく教え──」

 転移は完了した。





第2章 集団戦 『女郎蜘蛛』

POW ●操リ人形ノ孤独
見えない【ほどに細い蜘蛛の糸】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD ●毒蜘蛛ノ群レ
レベル×1体の、【腹部】に1と刻印された戦闘用【小蜘蛛の群れ】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ ●女郎蜘蛛ノ巣
戦場全体に、【じわじわと体を蝕む毒を帯びた蜘蛛の糸】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 夕陽の差し込む教室にて、思い思いの恋を描きながら目を瞑った猟兵たち。
 暫く暖かな時間が流れたが……突如、辺りの雰囲気が剣呑なものに変化した。慌てて目を開くと……教室中が、小指に結んでいたはずの赤い糸で覆いつくされていた。壁も、床も、天井も、まるで蜘蛛の巣のように。
 そしてその糸を辿って、何かがやってくる気配がする──現れたのは、人に無理矢理蜘蛛の脚を取り付けたような、歪で醜悪な怪異であった。
天星・雲雀
「恋を叶えてくれる影朧とは、この蜘蛛っぽい方々ですか?見た目で判断しては、いけないとは言いますが、とても恋を応援してくれるとは思えないのですが・・・?」
「その糸で、恋に彷徨える子羊を絡め取っていたのですか?同じ糸使いとして、不快です!」
「ですが、あなた達もまた『未練』という糸に絡め取らて居るのでは?」
「蜘蛛さんの未練の糸の端、ここで断ち切ってあげましょう」
【行動】UC狐火で、糸ごと影朧を焼き払います。迷路は、焼き切れなかった場合『オトモ』達を放って、すべての道を探索して出口まで行きます。
「教室の外の様子も気になりますね」

赤い糸を巻きつけた儘のオトモが数匹居たけど、気づかなかったふりをします。


「この方々が、恋を叶えてくれるって……とてもそうは思えませんね」

 牙を打ち鳴らしてこちらを威嚇する八本脚の怪物を見上げ、天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)は一つため息をついた。とんだ期待外れだ。
 毒蜘蛛たちは糸を吐き、教室を埋め尽くそうとしている。小指に結ばれた糸を辿って辿り着いた彼らにとって、ここは自分だけが身動き出来るホームグラウンドなのだ。

「とっても不快です!」

 ——今までは。
 少女を取り巻く仄明るい火の玉の群れが、突如として勢いを増す。

「その糸で、恋に迷える仔羊を絡めとっていたなんて……同じ糸使いとして、許せません」

 元々、いくつかの糸は初めから火の玉に括り付けられていた。勢い良く燃え盛った火の玉たちを始点、赤い糸を導線として、毒蜘蛛たちが這っていた壁や天井が今までよりも紅く輝く。
 いかに鋼の如き剛性を誇ろうと、糸である性質上、炎には無力だ。

「ですが、あなた達もまた『未練』という糸に絡め取らて居るのなら……その未練の糸の端、ここで断ち切ってあげましょう」

 教室がより一層赤く輝く。夕日がほとんど沈んでしまった帝都で、彼女の怒りを象徴するかのようだった。
大成功 🔵🔵🔵

黒柳・朔良
なるほど、この赤い糸はこの蜘蛛の糸に繋がるためのものだったわけか
私はこれ(おまじない)に『恋』そのものを願ったわけだが、それでも現れたということは『恋』に関するものならば何でもいいらしい
だが、影朧が現れたとなればここからは猟兵(わたし)の仕事だ

UCを使い【目立たない】ように【闇に紛れ】て女郎蜘蛛を一体ずつ確実に処理していく
薄暗い教室内は『影』である私の領分
返し付きワイヤーフックも使いながら、狭い教室内を縦横無尽に移動しつつ殺していこう

ああそうだ、連中が口が聞けるようならば殺す前に聞くことがある
『恋』というものはそんなにもいいものなのか?
生憎私にはわからないのでな
誰か、教えてくれないか?


「……来たのか? こいつらが、恋に関する何某かなのだろうか……」

 教室中を埋め尽くさんばかりの数の蜘蛛達を見上げて、黒柳・朔良(「影の一族」の末裔・f27206)は呟いた。
 自分に恋を教えてくれる存在を期待していたが、これでは望み薄だ……思わずため息をつきそうになる。その前に、天井を這う蜘蛛のうち一体が毒を染み込ませた糸を彼女に向かって吐き出した。その命はいとも容易く奪われる……筈だった。しかし、先ほどまで朔良が立っていたはずの場所に、何もない。ただ夕陽に照らされた糸の影だけが虚しく揺れている。
 知性のない影朧達も、その異常事態は理解することができた。奇妙な呻き声をあげ、贄の姿を教室のどこかに探す……より先に、甲高い悲鳴が鳴り響いて、蜘蛛の一体が地面に落ちる。
 そこに何かが居るはずだが、何も居ない。また一匹が斃れる。風を切るような音がするが、何も居ない。また一匹が斃れる。
 そう、薄暗がりこそ彼女の領分であった。あちこちに貼り付いた糸にワイヤーを掛け、狭い教室を音もなく縦横無尽に移動する、一人の影がある。その姿は誰にも捉えられない。
 また一匹……の前に、ふと思い立った彼女はそれに囁いて見せた。

「『恋』とは……そんなに良いものか?」

 返答は甲高い鳴き声。少し残念そうな顔で武器を振るうと、彼女はまた暗がりに消えた。
 また一匹が斃れる……
大成功 🔵🔵🔵

蒼月・暦(サポート)
 デッドマンの闇医者×グールドライバー、女の子です。

 普段の口調は「無邪気(私、アナタ、なの、よ、なのね、なのよね?)」
 嘘をつく時は「分かりやすい(ワタシ、アナタ、です、ます、でしょう、でしょうか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

無邪気で明るい性格をしていて、一般人や他猟兵に対しても友好的。
可愛い動物とか、珍しい植物が好き。
戦闘では、改造ナノブレード(医療ノコギリ)を使う事が多い。

 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


「恋のおまじないって言うから、少しは素敵なものが見られるかと思ったら……」
 夕陽の差し込む教室。強く吹く風が白いカーテンを揺らして、幻想的な橙色を
 このまま誰かが愛の告白でも始めそうなくらい、雰囲気だけはロマンチックな舞台にて。
「こんなの、全っ然違うじゃないの!」
 青い瞳の少女が、一人不満を叫んでいた。その声に反応して、天井や壁を這い回っていた存在の"視線"が一斉に少女の方を向く。
 身体は蜘蛛。その頭部は無理矢理人の頭に挿げ替えられたようであり、闇に覆われて顔を判別することは出来ない……が、その異様な出で立ちはただ居るだけで辺りの雰囲気を淀んだものにしていた。
 可愛い生き物が好きな少女──暦としては、そんな存在に囲まれるという状況は非常に頂けないものなのだ。
「折角素敵なイベントになるところだったのに、こんな悪趣味な改造人間もどきなんて……」
 暦の心中など意に介すこともなく、影朧たちは猟兵たる彼女に敵意をむき出しにする。
 どこからか現れた大量の子蜘蛛が、まるで一匹の巨大な怪物のように、一斉にその小さな身体に襲い掛かった。
 嫌な物を見たくない、とでも言いたげに閉じられていた少女の眼が……
「さっさと解決して、おまじないを元に戻す!」
 青く輝く。
 暦が両腕を振りぬくと、子蜘蛛の群れが真っ二つに切り払われる。突然の反撃に、文字通り蜘蛛の子を散らすように混乱し始める影朧たち。
 それを成したのは、少女の腕の倍ほどもあろうかという大きなノコギリだった。
「これが本物の改造! 恐れおののくがいいよ!」
 身軽に飛び上がって、親蜘蛛の一匹をその巣ごと切り落として見せる。悪意と怨念で編まれた赤い糸は、少女の振るう刃によって容易く断ち切られていくのだった。
成功 🔵🔵🔴

クレア・フォースフェンサー
おぬし達がうららさん……という訳ではなさそうじゃな。
第一、恋の成就を願う女学生の前におぬし達のような者が現れては、おまじないをする者などいなくなるというものじゃ。
おまじないを広めたいのであれば、もう少し女学生受けする姿を勉強するのじゃな。

もっとも、今回は追試は無しじゃ。
疾く、骸の海に還ってもらうぞ。

周囲に光珠を展開し、敵の位置や動きを把握。
敵の攻撃は体術で躱し、又は光剣で捌こうぞ。
敵の位置を見切ったならば、UCの力を込めた光剣と光弓で斬り伏せ、射貫いてゆこう。

さきほどわしが誰を思い浮かべたのか、おぬし達は知っておる可能性があるわけじゃな?
ならば、一匹たりとも逃がすわけにはゆかぬのう。


「これは何とも……個性的な見た目の輩じゃのう」
 教室に降り立った女性……夕陽を浴びて妖しく輝く人造の身体を持つ兵器、クレア・フォースフェンサーは、そこら中に網を張った蜘蛛の姿を見て、苦々しい顔をした。
 人造人間とはいえ、かつて生きていた人間の魂が備えられた彼女は、相応の感情も持ち合わせている。蠢く影朧の多脚はそれだけで生理的嫌悪を催す見た目だ。その上、先ほどまで依頼を聞いた彼女が期待していたのは——
「おぬし達がうららさん……という訳ではあるまい。全く、恋の成就を願う女学生に現れるのなら、もっと相応しい姿でおらなんだか」
 軽口を叩く彼女に気がついたのか、部屋の四隅に散らばった蜘蛛が泣き声とも呻き声ともつかない音を発する。
 クレアは呆れたように一つため息をつくと目を閉じ、両の手を大きく広げて精神統一を始める。その身体から浮き出た光の球が、緩やかな動きで周遊を始めた。その明かりに怯えた蜘蛛が、歪な唸り声を強くする。
 光は見る見るうちに強くなる。それに耐えきれなくなったのか、一匹の蜘蛛が無防備に目を閉じたクレアに飛びかかった。血とも糸ともつかない赤色が絡んだ牙が、そのか細い喉を切り裂く……
「最も、おぬし達はこれが最後の機会じゃ」
 ことはなかった。クレアは薄く笑うと、首を少しだけ右に傾ける。たったそれだけで、必殺の牙は空を切ることになった。
 そして、攻撃が外れて無防備になったその身体を彼女が見逃すはずもない。
「疾く、骸の海に還ってもらう故に」
 どこからともなく現れ右手に握られていた、光を束ねた剣を薙ぐ。悲鳴を上げる暇もなく、醜悪な怪物はその『核』を断たれ、影朧としての存在を保てなくなるのだった。
 仲間の末路を目にした影朧たちは、自棄になったのか今度は数匹一斉に飛び掛かる。有利な戦場で、その上数的有利をも確保した挟撃……普通の状況ならば負ける道理も無いのだが。
「さて……一つ言っておかねばならんことがあるのじゃが」
 全ての攻撃は容易く躱される。更に振り向きざまの一太刀で、三匹の蜘蛛が還った。
 影朧にとって誤算だったのは、巣を張り巡らせたこの教室ですら、もはや『有利な戦場』とは呼べなかったということ。壁と床、天井という『面』を支配した彼らに対し、彼女が支配していたのは教室全体の『空間』そのもの。光球がそれを成したことは、想像に難くない。
 そして、周囲から流れ込む圧倒的な量の情報を処理しながら、クレアは尚も笑って話し続ける。
「おぬし達……先ほどの呪いでわしが『誰を』思い浮かべたのか、知っておる可能性があるのじゃろう?」
 そう言うと、今度は身の丈ほどもあろうかという巨大な弓に輝く矢をつがえる。
「であれば、おぬし達は一匹たりとも……逃すわけにはいかんの」
 冗談とも本気ともつかない言葉と共に、引き絞った弓を放つのだった。
大成功 🔵🔵🔵