帝竜戦役⑦〜白妙の賢竜
●賢竜の嘆き
群竜大陸の一角。
魔導蒸気機械が大地を覆い尽くさんばかりに広がるその領域で、一頭の真っ白な帝竜が苦しんでいた。
『テキガクルヨ! テキガクルヨ!』
「黙れ……黙れ『大魔王の仮面』よ! 群竜大陸に挑む勇者が現れた以上、貴様の呪いに屈する訳にはいかぬ!」
苦しむ白竜は名をオアニーヴという。かつてアルダワで大魔王と戦っていた竜達の長であった竜は、大魔王の仮面による洗脳に必死に抗っているよう。
『ムリダヨ! ムリダヨ! ナゼナラバ……汝の願いと希望を、この仮面は糧とするからだ。竜神山脈の長『賢竜オアニーヴ』といえど、逃れる事はできぬ』
仮面の無機質な声が威厳を持った邪悪な響きに変わる。苦しむオアニーヴが一つ高く叫び、そして静かになる。
――さあ挑戦者共よ、汝らの全てを喰らい、我が糧としよう。
かつてアルダワに封印された『大魔王ウームー・ダブルートゥ』、仮面の邪悪な声はそれに酷く酷似していた。
「さて、群竜大陸の攻略も進んでいよいよ帝竜達との決戦だね」
クーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)が羽付き帽子を被り直しながら猟兵達に話しかける。
「状況としては猟兵の侵攻が早い。おかげで帝竜達が準備を整える前に戦いに挑むことができる。そのアドバンテージを活かしてきっちり倒したい所だね」
明るく微笑みそういったクーナだが、表情を真剣なものに切り替える。
「それで私の得た予知なんだけど、相手は『帝竜オアニーヴ』。……もしかしたらアルダワの方の人で名前は知っている人がいるかもしれないけども、アルダワにある竜神山脈、そこのドラゴン達の長であり大魔王と戦った『賢竜オアニーヴ』にそっくりなんだ。『賢竜』と称される程の叡智と優しさを持っていたんだけども、どうやらその顔の仮面に完全に洗脳されちゃってるみたいで容赦なく此方に襲い掛かってくる」
だから、倒すしかないのだとケットシーの騎士は残酷に告げる。
「攻撃方法は頭部の黒い仮面が邪悪に輝いて能力を強化、ただしその間は理性がなくなってしまうからそこは狙い目かな。そしてその背中の翼をはばたかせれば聖なる光と浄化の風が放出されて相手の戦意を削いでさらに浄化、そこに光り輝く爪で引き裂いてきて、それら全部まともに受けるとユーベルコードが封印されてしまうから注意。あとは……ダンジョンメーカー。戦場全体の魔導蒸気機械群とパイプ群をより複雑化させて迷宮を作り上げて来る。いずれも非常に強力な能力だけども皆なら何とか対処はできると思う」
そこまで説明したクーナは猟兵達を見、そして付け加える。
「ああ、最後に。その仮面なんだけど『大魔王の仮面』というらしいよ。この世界にオアニーヴがオブリビオンとして出現した事に関係あるかは分からないけど……どういう事情があったとしても、本来の賢竜はこの状況を良しとはしていないはずだ。だから何とかしてここで倒し切って欲しい」
それじゃ、頼んだよ。そう締め括り、クーナは猟兵達を魔導蒸気機械群の領域へと転送したのであった。
寅杜柳
オープニングをお読み頂き有難うございます。
まさかの洗脳、まさかの大魔王。
このシナリオは魔導蒸気機械群に覆われた大地で『帝竜オアニーヴ』と戦うシナリオとなります。
また、下記の特別なプレイングボーナスがある為、それに基づく行動があると判定が有利になりますので狙ってみるのもいいかもしれません。
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プレイングボーナス……『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』。
(敵は必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります)
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それではご武運を。
皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 ボス戦
『帝竜オアニーヴ』
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POW : 竜操の仮面
【頭部を覆う仮面が邪悪な光を放つ状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD : 賢竜オアニーヴのはばたき
【戦意を弱らせる聖なる光】【光輝く爪による引き裂き攻撃】【六翼の羽ばたきが巻き起こす浄化の風】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : ダンジョンメーカー
戦場全体に、【魔導蒸気機械と金属のパイプ群】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
イラスト:otomo
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ミラリア・レリクストゥラ
洗脳だなどと、なんて卑劣な!!
【WIZ】
尊厳を踏みにじる行為!断じて許せる物ではありません!
しかも大魔王絡みですか!!魔王戦争で消滅した筈でしょう!
往生際という物を教えでっ!?(ごちん)
あ、あれ?さっきまでこんな壁……
あっ!?オアニーヴ、聞き覚えのある名前だと思ってましたが、あのお話の!?
…ますます許せませんね!!!互いの因縁を考えると、屈辱は比になりません!!
帝竜である以上、オアニーヴさんも斃す他ありませんが!仮面にも相応の報いを受けて貰いましょう!!
迷宮構成が金属なのは僥倖です!【過去は過去たる地へ沈む】で、私の土にして操作します!
捕縛をし、引き摺り下ろしてから仮面に痛打を見舞いましょう!
ルシル・フューラー
嘗ての賢竜のダンジョンメーカーか
これ程の迷路を作るとは凄まじい
けれど魔導蒸気機械も金属も『無機物』だ
私にとっては鮫の材料に過ぎないのだよ
と言うわけで対処法は
鮫魔術:鮫創造で
ダンジョンメーカーの迷路を構成する無機物を鮫に変える
あとは直進あるのみ
迷路の最も楽な攻略法は壁など無くしてしまう事さ
私が進めば鮫創造の範囲もずれて
後ろは鮫から迷路に戻ってしまうだろうけど
半径41mあれば前に進む分には問題ない筈だ
オアニーヴに鮫が届くまで進めたら鮫で攻撃
迷路を解除する?
うん、それで鮫は消えてしまうかもしれない
でもそれは他の猟兵が迷路から解放されると言う事だよ
鮫に食われるか、猟兵に食われるか
好きな方を選ぶが良い
●迷宮の白竜
猟兵達が降り立ったのは蒸気機械の迷宮。アルダワのようなその景色と、そして恐ろしい威圧感を持つ仮面の白竜。
白竜は意思があるのかないのか、緩やかに翼をはばたかせ猟兵達を見ていた。
「洗脳だなどと、なんて卑劣な!!」
尖晶石の赤い体を戦慄かせ憤るクリスタリアンはミラリア・レリクストゥラ(目覚めの唄の尖晶石・f21929)。かつて監禁された事のある彼女にとって、意志を奪いその尊厳を踏みにじる行為は断じて許せるものではない。
ましてやその洗脳を行っているのが彼女の故郷世界であるアルダワの大魔王絡みであるならば猶更だ。
「第一、魔王戦争で消滅した筈でしょう! 往生際という物を教えでっ!?」
義憤に駆られ飛び出したミラリアが壁に頭をぶつけ、ごちんといい音が響く。見ればいつのまにか彼女の正面どころか周囲に迷宮の壁が展開されている。
「あ、あれ? さっきまでこんな壁……あっ!?」
そこでミラリアは思い出す。
「オアニーヴ、聞き覚えのある名前だと思ってましたが、あのお話の!?」
大魔王を封印する為人類と共に戦ったドラゴン達の長、かつて聞いたそのお話を。
(「嘗ての賢竜のダンジョンメーカーか」)
構築された立体的なダンジョンの凄まじさにルシル・フューラー(ノーザンエルフ・f03676)は内心驚きながらも、冷静に周囲の状況を観察する。瞬間的に構築された壁や天井、恐らくはその上にも階層のある立体迷宮。魔導蒸気機械のような構造もあるが迂闊に触れるのはやめておいたほうがいいだろう。
「…ますます許せませんね!!!」
ミラリアの憤りはさらに加速する。魔王と竜の長、その関係性においても竜の長が大魔王に洗脳されるなど屈辱以外の何物でもない。
帝竜である以上オアニーヴも斃す他ない。だが、
「仮面にも相応の報いを受けて貰いましょう!!」
オパールの瞳に闘志を燃やし、ミラリアが白竜を探す為歩みを進めようとする。
しかし、その前に。
「――鮫は何処でも出現するものさ。何故なら鮫だからね」
ルシルの呟きと共に鮫魔術が展開される。それは同じ無機物を何かに変化させるユーベルコード、そしてルシルはそれを鮫へと変換する。
迷宮を構成する物質が金属、つまりは無機物である事は僥倖であった。エルフを中心にダンジョンを構成する無機物が獰猛な鮫の大群へと変換される。ダンジョンの最も楽な攻略法、それは壁を無くしてしまう事だ。
賢竜によって構築された壁は魔術的にも強固なのか、変換により生じる鮫の数が普段よりも少なく、効果範囲も狭まっているようだが、それでも前に進む分には十分。脱出を目指し歩き出そうとしたその瞬間、風が吹いた。
それと同時、迷宮の壁から蒸気が噴き出し何らかの導蒸気機械が作動、迷宮の壁――隔壁がスライドし、その向こうから白き帝竜が翼を広げ襲い掛かってきた。
しかしまだ距離はある。
「♪ 未来を夢見た あの日の幻 とこしえに 底へと 眠りなさい……」
その間にミラリアの発動した【過去は過去たる地へ沈む】は無機物を現存しないはずのものを捕縛する土塊に変換して操作するユーベルコード。構築された迷宮を土塊に変換しながらオアイーヴ、つまりこの世界に在る筈のないオブリビオンへと絡みつかせる。
帝竜はその翼をはばたかせ土塊の捕縛を解こうとするも土塊の捕縛は頑丈。だが、引きずり下ろすには帝竜の力が強すぎ止める事が精一杯。
しかしそこにルシルは周囲の鮫の大群をオアニーヴにけしかける。喰らいついた傷と同時に帝竜の痛みに堪える唸り声、柔らかな白き毛並に朱が滲む。
さらにミラリアは土塊を操作しオアニーヴの顔までの道を作り、駆けあがる。そして至近距離からシンフォニックデバイスで増幅した魔力の籠った歌声を仮面に叩きつけた。
迷宮を展開している間は他の直接的な攻撃力を持つユーベルコードを起動できない。膂力でどうにかするという手段もあるかもしれないが、この状況から逃れるには無機物を変換するユーベルコード、それらの由来となる迷宮が消失させ土塊も鮫も消してしまうのが早いだろう。
だが、猟兵達を分断する迷路を解除する必要がある。鮫に喰われるか猟兵に喰われるか――
帝竜は後者を選んだ。迷宮を解除し消失しようとする土塊を弾き飛ばし、大きく羽搏き二人の猟兵を吹き飛ばした。
だが、最初の一撃としては十分。大きく吼える白竜からそのまま距離を取り、二人は元々の地形である迷宮へと飛び込んだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ソラスティベル・グラスラン
オアニーヴさま……くっ、貴方と戦うのは、辛いですね
【盾受け・オーラ防御】で守りを固め、【怪力】で受け【見切り】受け流し!
今までの冒険の中で編み出した戦法です
戦いつつ前進!勇者に後退はあり得ませんから!
大魔王の呪いに蝕まれ、貴方が一番辛いのでしたね
守りながらも一歩一歩前進
そうしなければわたしの刃は届かない
此処に誓うは不退転の意思
勇者とは誰より、前に立つ者!
これがわたしの【勇者理論】!!(防御重視)
誰も傷つけたくないから呪いを受けた時、自ら命を絶った
ならばわたしも努力します、貴方が誰も奪わぬように!
ただ只管に前へ、前へ!
此処がわたしの間合い、そう思った瞬間【ダッシュ】し渾身の一撃を叩き込みます!
迷宮を解除し猟兵達への追撃にかかろうとした白竜は、殺気を感じ翼をはばたかせ後退する。
現れたのは一人の橙の髪の少女。
「オアニーヴさま……くっ、貴方と戦うのは、辛いですね」
竜を祖に持つ部族の一人であるドラゴニアンのソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)は白竜の顔を覆う黒い仮面を注視していた。
その瞳が妖しく光り帝竜が咆哮する。同時、恐ろしい加速でソラスティベルへとその爪を突き立てんと突撃する。
黒翼の盾を構え、オーラを全力で展開。理性を代償にした恐ろしい力による衝撃は受け流す事すら難しいが、それを彼女持ち前の腕力で強引にねじ伏せ受け流す。さらに重ねられる爪撃を冒険の中での経験と感覚で直撃を避けながら一歩ずつ前に出る。
勇者に後退はあり得ないのだから。それに、何よりも辛いのは大魔王の呪いに蝕まれたオアニーヴ、そう思いながらソラスティベルはその胴、その仮面に刃を届かせるために前進する。
「此処に誓うは不退転の意思。――勇者とは誰より、前に立つ者!」
竜の少女は彼女のユーベルコードを起動する。誰も傷つけぬ為に呪いを受けた時に自身の命を絶った、そのオアニーヴの勇気。
それに応える為に、誰も奪わせぬ為に勇者の努力、そして心意気は真価を発揮する。
勇気で攻め、根性で進み、そして気合いで守る。
ここが、間合い。
見切ったソラスティベルは竜爪の一閃をその持ち前の気合で耐えきると、その次の動作に映る前にダッシュで竜の眼前に飛び込み、輝く黒き仮面にその霹靂の斧を渾身の力を込めて叩きつけた。
成功
🔵🔵🔴
泉・星流
まったく…よその世界にまで厄介事を持ち込むな…(アルダワ学園出身)
もっともこの分だと、『最低でもこの魔王』はアルダワの外の世界から来た可能性も否めない
先制攻撃
ゆっくりとした動作で指定UC(属性:破魔)を発動【全力魔法・念動力】
【目立たない】も活用できるなら使用
創造した箒をオアニーヴの周囲で旋回させて、その意識?を箒に向けさせる
その間に【魔力溜め】を使用…限界まで溜めたら【スナイパー・視力・制圧射撃・破魔・掃除】でオアニーヴの仮面へ向けて魔力砲撃
更に【二回攻撃・クイックドロウ・継戦能力】で再度【魔力溜め】して魔力砲撃
【破魔・掃除】は一瞬でもオアニーヴの意識を取り戻させ、討伐に協力して貰う事が狙い
リア・ファル
大魔王の仮面…か
今を生きる誰かと、尊き賢竜の尊厳の為に
その仮面、破壊する!
無差別攻撃なら凌ぎようもあるさ
周囲の蒸気機械をハッキングし、電脳魔術で重力制御を付加
無数に相手の周辺を高速飛行させる
(ハッキング、地形の利用)
自身への攻撃は『ファイアワークス』と『ヌァザ』で防ぐ
(盾受け、武器受け、オーラ防御)
無事に凌げたらこっちの番だ
「多元干渉デバイス『ヌァザ』よ、次元を開き、我が主砲を此処へ!」
魔剣状態の『ヌァザ』を掲げ、
ボクの真の姿である機動戦艦の主砲を顕現させる
UC【魔眼殺しの超電磁砲】!
目標、大魔王の仮面! 発射!
(砲撃)
「今ひとたびの眠りには、仮面が無いことを祈るよ」
竜の少女が真っ向からの攻撃を凌いでいるタイミング、迷宮の陰から泉・星流(人間のマジックナイト・f11303)はその様子を窺っていた。
(「まったく……よその世界にまで厄介事を持ち込むな……」)
彼もアルダワ出身、だからこそアックス&ウィザーズに災厄として現れた帝竜には苛立っている。
特に魔王、最低でもこの『大魔王の仮面』はアルダワ以外の世界から来た可能性すら否定できない。
「大魔王の仮面……か」
リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)は死を選んで尚大魔王に操られるオアニーヴの境遇に憐みを感じていた。
しかし、今を生きる誰かと尊き賢竜の尊厳の為、それを破壊してしまうだろう帝竜はここで討ち果たさねばならない。
「その仮面、破壊する!」
高速で動くものに対する無差別攻撃であるならば凌ぎようはある。彼女は魔剣型の干渉デバイスとヘッドセットを起動、周囲の蒸気機械へのハッキングに取り掛かる。
「想像より僕の魔力を得て形を成せ……」
そして星流もゆっくりと気取られぬようにユーベルコードを起動する。橙色の髪の少女が派手に動いているからか、此方の二人には気づいていない。
無数の破魔の属性を付与された空飛ぶ箒を想像より星流は創造する。
「駆け巡れ、僕の変幻自在の箒達」
その言葉と共に箒の群は箒星のように弧を描きながら斧の一撃を喰らった直後のオアニーヴへと殺到させる。
早く動く物を無差別に攻撃する状態の帝竜は咆哮をあげながら煩げに翼を羽ばたかせ箒を砕く。
数は多いがいずれは全て砕かれる、けれどその間に星流はその魔力を愛用の魔導式スナイパーライフルに限界まで溜める、溜める、溜める。
狙いは遠く、けれどその視力はしっかりと標的を見定めている。
さらに魔導蒸気機械が唸りを上げ突然奇妙な動作を始める。
機構を構成する部品が外ればらばらに浮遊。そして高速でオアニーヴの周囲を箒と同じように飛び回る。
電脳魔術によるそれらの重力制御はリアの業、それらを高速で帝竜の周りを旋回させて理性を失くした帝竜の攻撃を惹きつける。
爪を振るった衝撃波の余波がリアと星流の元までやってくるが、リアが掌より展開したエネルギーシールドがそれを防ぐ。
「多元干渉デバイス『ヌァザ』よ、次元を開き、我が主砲を此処へ!」
余波だけでこれ程、と思う程の衝撃を流しながら魔剣状態の『ヌァザ』を掲げ、次元に裂け目を生じさせる。
現れるのは彼女の本体である機動戦艦ティル・ナ・ノーグ、その主砲が光を湛え暴れ狂う帝竜へと照準を合わせていた。
「目標、大魔王の仮面! 発射!」
号令と共に閃光、質量を持つ超電磁砲の一撃が仮面目掛け放たれ、さらに星流が蓄えに蓄えた魔力を解き放つ。
場を制圧するような強大な二つの光は帝竜の顔に黒く輝く仮面を真っすぐに狙う。
しかし仮面を守るように帝竜は爪を振るう。炸裂する光――それは爪を融かし貫通するも、せめぎ合った一瞬の隙に仮面は射線から逃れてしまう。
その直後、砲撃がもう一つ続く。
一発必中一撃必殺、それを矜持とする星流の二射目。
全速で魔力を溜め直し放出されたその一撃は逸らされてしまい仮面を掠めるに留まった。
だが、その邪を祓う一撃によりほんの一瞬だけ仮面の瞳に叡智が戻ったように、星流の目に映る。
だが仮面の支配力はすぐさまそのオアニーヴを狂気へと堕とす。
しかしほんの一瞬生まれたその隙に猟兵が刃を携え飛び込んでいくのを二人は見た。
(「今ひとたびの眠りには、仮面が無いことを祈るよ」)
いまだ荒れ狂うの姿に、追撃の準備を整えるリアはそう祈らずにはいられなかった。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
エルザ・メレディウス
*絡み大歓迎
気高く美しいあなたのその姿...きっとあなたの魂も白く美しいはずです
後悔は残りますが...その仮面と共に、あなたの穢れを払わせて頂きます
■POWを使用します
・相手の攻撃に対しては【残像】を使用。【残像】へと攻撃を【誘惑】するように心がけます。【地形の活用】なども活かして、地形の起伏や建物の陰に隠れながら敵へ近づきます。 余裕がある場合は【医術】で応急処置も心がけます。
・接近後は、【戦術指揮】を活用して仲間との連携の質を向上。質と量に優れた連携攻撃を試みます。 ここぞというタイミングで【捨て身の一撃】と共に白王煉獄を、賢竜様の仮面を狙って繰り出します
・・・せめて安らかな最後を
黒玻璃・ミコ
※スライム形態
◆行動
ふーむ、アルダワ世界の賢竜が異なる世界に現れるとは……
彼の竜の洗脳を解き解放するには妥当が必須、全力で挑みますよ
此度の戦場は蒸気の迷宮
不定形なブラックタールの特性を活かして迷宮の構造物や影に擬態して潜み
そもそも攻撃の対象として私の存在を気取られないように
決して逸る事無く着実に距離を詰めて暗殺の機会を伺いましょう
仮に見付かろうとも重要な臓器は体内でその位置をずらし致命的な一撃は避けます
既に脳内麻薬を過剰分泌させ痛覚は麻痺させました
身体の半分でも残れば十分
後は屠竜の魔女に相応しい力
【黄衣の審判】で細切れになるまでその仮面と呪いも斬り裂けば良いのです
※他猟兵との連携、アドリブ歓迎
蒸気機械の陰に隠れながら二人の猟兵がこの場に近づいていた。
「ふーむ、アルダワ世界の賢竜が異なる世界に現れるとは……」
思慮深げに呟く真っ黒なぷにぷにとしたスライムは黒玻璃・ミコ(屠竜の魔女・f00148)。普段はリソースを食う人型に擬態しているが、この帝竜を相手取るにはこちらの方が都合がいいと判断。
「気高く美しいあなたのその姿……きっとその魂も白く美しいはずです」
エルザ・メレディウス(復讐者・f19492)は白き帝竜を見、そんな事を呟く。洗脳されていないオアニーヴ、確かにその魂は気高く美しいものなのだろう。
「……彼の竜の洗脳を解き解放するには打倒が必須です」
だが、ミコは冷静に事実を告げる。多くの竜を見、蒐集してきた彼女の見立て通り、このオブリビオンの洗脳を解く手段はそれしかない。
二人が小声で話す間に、二つの砲撃、そしてそれに続く一射が白竜の動きを止める。
「後悔は残りますが……その仮面と共に、あなたの穢れを払わせて頂きます」
戦術指揮に優れるエルザはここが攻め時と判断、エルザとミコは同時に駆け出した。
残像を残しながら走るエルザ、その深紅のマントの残像が帝竜の嵐のような爪の連撃に切り裂かれていく。余波に体が弾き飛ばされてしまいそうになりながらも、エルザの身に傷はない。
だが、帝竜の暴威は飛び込むには厳しい。狙う仮面までの距離を測りながら、エルザは帝竜の攻撃を只管かわしながら機会を窺っていた。
一方、ミコは迷宮の構造物に紛れながらゆっくりと気取られる事の無いよう慎重に帝竜へと忍び寄っていた。
彼女の狙いは暗殺、不定形を活かし複雑な迷宮の構造を利用して忍び寄る作戦は、エルザをはじめ他の猟兵達との戦いで暴れ回る帝竜には全く気付かれていなかった。
特に、理性を代償に戦闘能力を強化している状態ではそんな余裕もない。
仮に気付かれて攻撃を受けたとしても致命傷を避け痛覚を麻痺させて、体が半分になろうともその仮面と呪いを切り裂いてやる覚悟は決めていたのだが。
しかしその前に、ミコはそのユーベルコードの射程にまで近づいていた。
「いあいあはすたあ…………あいあいはすたあ!」
そしてミコが九つの蛇腹剣型黒剣を取り出しユーベルコードを起動、屠竜の魔女たる彼女に相応しい力――竜に纏わるものを鏖殺する無数の空間の断裂がオアニーヴの周囲に展開される。
断裂に刻まれ、それでも理性を代償に強化された耐久力はそれに耐えきった。空間の断裂が収まった後には血まみれの白竜。その眼光は未だ鋭く猟兵達を睨もうとするが、その瞬間オアニーヴの眼前に飛び込んだのはエルザ。
回避は考えない、ここで仮面を断ち割る為の一撃の準備は既にできている。
「――その刃は罪を断ち切り、その炎は魂を浄化する」
炎を纏った刀の一閃が大魔王の仮面に深々と太刀傷を刻み込む。
洗脳の主体を傷つけられたからか、苦し気に賢竜は咆哮。その翼を羽ばたかせ二人を弾き飛ばす。
そして即座に迷宮が展開され、オアニーヴと猟兵達の間を別つ壁が出現する。
だが、確実に致命に繋がる一撃は刻み込んだ。
(「……せめて安らかな最後を」)
止血しながら願うエルザ。その願いが叶うには、もう少しだけ時間が必要だ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
別府・トモエ
「テニスプレイヤー、別府・トモエです!よろしくね!……とう!」
高く、高く【ジャンプ】する【空中戦】だよテニスプレイヤー飛べるのだ
俯瞰するのは地表から此方へ構築される迷宮構造
【視力】で出来るだけ【見切って】頭に叩き込むんだぜ
「テニスは!」
「「「「「偏在するよ!」」」」」
増えるテニスを見たことあるか?
覚えた構造をヒントに人海戦術で出口を探す!総員【ダッシュ】
「見つけたぞ!」
「「「「「テニスしろオラァ!」」」」」
放たれる【サーブ先制攻撃】は数十倍
【ショット誘導弾】も数十回
【スナイパー】で放たれる大魔王仮面への数十倍のテニスよ!
「迷って出たのが運の尽きよ大魔王!オアニーヴさんは安心して!私達は勝つ!」
全身を刻まれ仮面に深い傷を刻まれた帝竜は状況を立て直すために迷宮を構築した。
ダンジョンメーカー、それは出口が一つの魔導蒸気機械の頑丈な迷宮を創り出す能力。
アルダワで大魔王が撃破され、封印装置としての役割を終えた同名の最初の魔法装置は強大な災魔一体を召喚し、その周囲に迷宮を構築する機能を持っていた。
そのこととの因果関係は分からない。だが、今帝竜オアニーヴの前には一人の少女が少々奇妙な装いで立っていた。
彼女、別府・トモエ(ミステニス・f16217)はこの戦場にテニスウェアでやってきていた。
「テニスプレイヤー、別府・トモエです! よろし……」
言い終わる前に黒き大魔王の仮面は迷宮の隔壁を閉じ、何も見なかったことにした。
だがトモエはその程度はものともしない。とう! と人間技とは思えない高さにまで跳躍する。テニスプレイヤーの技、である。
即興で創り出された迷宮は最初のものほど複雑ではない単層構造、真上から見ればその構造を確認できる。
それを彼女はしっかりと頭に叩き込み下降、そしてユーベルコードを起動した。
そして、トモエに即座に対応した大魔王の仮面は構築した迷宮の一際広い領域で賢竜の肉体を治癒させようと、抵抗するオアニーヴの意識を掌握しようとしていた。
しかし声が聞こえる。ダンジョンに響き渡る声、それは先程の少女の声、響いているのか複数聞こえる。
「……テニスは!」
迷宮を抜けてトモエが帝竜の元へと現れる。
「「「「「「偏在するよ!」」」」」
さらに、沢山現れた。目を疑ったように大魔王の仮面は奇妙に瞳の光を瞬かせる。
これはトモエのユーベルコード、分身テニス。数十人のテニス愛に溢れる自分自身を召喚し、飛翔能力と戦闘能力を与えるそれにより、迷宮を人海戦術で突破してきたのだ。
「見つけたぞ!」
「「「「「テニスしろオラァ!」」」」」
本体のトモエがサーブ、それに続き分身達も同時にサーブを放つ。狙いは大魔王の仮面唯一つ。
偶然その場に転がっていた蒸気機械をラケット状にして帝竜がその前脚で構え、顔面に殺到するボールの群をを打ち返す。
だがトモエ達は其々の放った球へと即座に反応、スマッシュで一斉に返した。
狙いは変わらず大魔王仮面、その恐ろしい数と勢いの暴力に、蒸気機械の仮ラケットは耐え切れずへし折れてしまう。
そして体を逃がそうにもオアニーヴの抵抗が急に強まり金縛りにあったように動かない。
大魔王の仮面に殺到するボールの群、その嵐が止んだ頃には仮面はボコボコに歪んでしまっていた。
「迷って出たのが運の尽きよ大魔王! オアニーヴさんは安心して! 私達は勝つ!」
後方から迷宮を突破してくる猟兵達の気配を感じながら、トモエはそう力強く宣言した。
成功
🔵🔵🔴
ニコラ・クローディア
仮面に意志を塗りつぶされ、帝竜と化したか…
幾度も幾度も、骸の海より蘇る度、僅かに自我を取り戻しては洗脳されるのは辛かろう
せめて安らかに眠れるよう、討たせてもらうぞ
光、爪、風か
全てが同時に来るか、あるいは僅かにズレてか…ともかくどれか1つでも躱せばユーベルコードは封印されん
であれば最も見切りやすい『爪』が狙い目か
オアニーヴの爪に合わせUC発動
転移目標は自分自身
転移開始~終了の間は世界から消えるのを利用して空振り誘発
追撃は光盾で、爪より前は龍翼外套を盾としオーラ防御で防ぐ
カウンターは銃にて
魔力、極大集中
「オレサマの全力だ、受け取れ!」
ドラグハウザーが自壊する程の全力で仮面を穿つ
アドリブ歓迎
セルマ・エンフィールド
あなたはどうか知りませんが私はあなたを知っています、ウームー・ダブルートゥ。その能力も……あるいはヴァルギリオス以上に生かしてはいけないことも。
まずはこの迷宮を突破しなければ相見えることもできませんか。
鳥の形の氷晶ゴーレムに乗り迷宮を進みます。
高速で飛行すると噴き出る蒸気に当たりそうですが、『視力』で蒸気の噴出口を見逃さず隠れた噴出口も『第六感』で察知、デリンジャーによる氷の弾丸の『クイックドロウ』で噴出口を一時的に凍らせて防ぎます。
会敵できたら【シェイプ・オブ・フリーズ】。敵が環境に適応する前に攻撃を『見切り』避けつつ接近、フィンブルヴェトの銃剣で『串刺し』にし、氷の弾丸の『零距離射撃』を。
蒸気の迷宮を四人の猟兵が行く。噴き出してくる蒸気がその未知を妨げんとするが、鳥の形の氷晶ゴーレムに乗ったセルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)がその視力で噴出口を見切り、デリンジャーから氷の弾丸を放ち凍結させる。
氷が融ける前に四人はその道を抜けていく。突如構築された迷宮だが、最初に構築されたものよりはルートがシンプルになっている。それでも油断せずに猟兵達は迷宮を確実に進んでいき、そして傷だらけの帝竜の居る広い出口の領域へと辿り着いた。
氷晶のゴーレムから飛び降りたセルマが帝竜に相対する。
「あなたはどうか知りませんが私はあなたを知っています、ウームー・ダブルートゥ」
彼女は平静な口調を崩さず、帝竜――の仮面に語りかける。しかし仮面は何も返さない。そんな余裕もないのか、情報を何も与えないためか。
「その能力も……あるいはヴァルギリオス以上に生かしてはいけないことも」
強い決意と共に、セルマはマスケット銃を構えた。
「仮面に意志を塗りつぶされ、帝竜と化したか……」
迷宮を突破してきた四人の猟兵、その一人であるニコラ・クローディア(龍師範・f00091)は呟いた。
幾度も幾度も。骸の海より蘇る度、僅かに自我を取り戻しては洗脳されてしまう、その境遇は賢竜オアニーヴにとって、どれほど辛いのだろう。
「せめて安らかに眠れるよう、討たせてもらうぞ」
その言葉と共にニコラは駆け出した。
同時にセルマが周囲の構造へと視線を巡らせる。見た限り蒸気の噴出口は見当たらない。
「ここは、私の領域です」
だから彼女は攻撃へと移る為にユーベルコードを起動。
雨が降る。触れた物を凍り付かせる氷雨が迷宮に降り注ぐ。蒸気により暑く感じる程であった迷宮の気温が氷雨により一気に氷点下へと下がる。
それを無視するかのように再度肉体の支配を奪われた帝竜オアニーヴがその血まみれの体から戦意を削ぐ聖なる輝きが漏れ出す。緩やかな羽ばたきが引き起こす浄化の風、
(「僅かにズラしてくるか」)
すべて受ければユーベルコードが封印されてしまう、けれどどれか一つでも回避出来ればその最悪の事態は防ぐことができる。
まず、光が二コラの体を通り過ぎ、そして浄化の風が柔らかく吹き過ぎていく。外套に擬態した彼女の竜の翼にオーラを纏わせ直撃を防ぐが、それでもなぜ戦っているのかが分からなくなってしまいそうになる。が、血まみれの白竜の姿を見、自身の心を奮い立たせた。
そして眼前に迫る光り輝く爪、砲撃を防いだことにより一部欠けているが、動きが僅かに遅い。氷点下環境により鈍っているからか、それを二コラはしっかり見切ってユーベルコードを起動する。
ほんの一瞬、二コラの姿が消失し、爪が通り過ぎたすぐ傍に再び光の盾と共に出現する。任意の味方の元へ出現するユーベルコード、その消失から再出現のラグで爪を回避したのだ。
そしてその空振りの隙を見てセルマが帝竜へと飛び込む。急激な環境の変化、それより鈍らされた動きが適応して戻る前に。
マスケット銃の先の銃剣を白竜の腕に突き立て、さらに氷の弾丸を至近距離から撃ち込み凍結させた。
奪われていく感覚を恐れるように帝竜がその竜爪を振るうが、セルマは冷静に見切りそれを後退し回避。
そして二コラは追撃の爪を光の盾で防ぎながら大型拳銃を構えている。心臓より供給される無限に等しい魔力をエネルギーに変換、自壊寸前まで極大集中させ、
「オレサマの全力だ、受け取れ!」
そして眼前の仮面へと放った。
破裂音が響き、仮面に刻まれていた太刀傷がばきんと音を立て、さらに広がる。しかし、もう一押しが足りない。
――だが、この場にはもう二人の猟兵がいる。
大成功
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中村・裕美
「……人に味方する賢竜……この世界にもいれば……歴史は変わったのかしら?」
UC対策
「……迷宮のデータスキャン……封印検索術式……開放」
電脳魔術で自分を封じ込めた迷宮を【ハッキング】【情報収集】し、【封印を解く】ことで出口までの最短ルートを創り上げる
「……そして……魔王による封印も……解くわ」
似た要領で今度はオアニーヴに【ハッキング】【精神攻撃】を仕掛け、封じられた賢竜の意識の【封印を解く】。完全開放といかなくとも動きが弱まればそれよし
「……オブリビオンとなっても高潔さを保つ貴方に敬意を抱くわ。……だから……すぐ終わらせる」
【現象改竄】で光や風に負けないような氷の津波を起こし、仕留める。
リネットヒロコ・マギアウィゼルーク
敵先制はアイテム「スケープシープちゃん」で凌ぎます~
爪だけでも防げれば……!
賢竜オアニーヴのはばたき……非常に強力です~……
不本意ですが~『なんでもあり』を使わせてもらいますよ~!
【パルプ・メカニクション】を発動
呼び出す都合の良いガジェットは~
『ダンジョンメーカーもどきくん』ですっ!
迷宮を造り出す「ダンジョンメーカー」の模倣品ですが~
これで迷宮に閉じ込めれば“光”も“風”も“爪”も届きませんっ!
ただし『もどき』ですので欠陥がありして~
「閉じ込められるのはあなただけ」
「出口はありません」
あとは迷宮内部のトラップ群に任せます~
あなたが利用しようとした智慧の恐ろしさ、
その身で体感してくださいっ!
少し時を遡り。
再出現した魔導蒸気機械とパイプの迷宮を氷晶の鳥型ゴーレムに乗る猟兵と人派の竜人、そして二人の瓶底眼鏡の女が出口、或いは帝竜を捜索していた。
魔導蒸気の迷宮は所々に隔壁やトラップが仕掛けられているが、実際的な対処の多くはゴーレムに乗った猟兵がその凍結弾で行っていた。
「うふふ~この迷宮は楽しいですね、面白いですね~」
魔法と科学、その二つの組み合わせをこよなく愛し立証する為に日々努めている瓶底眼鏡のエルフ、リネットヒロコ・マギアウィゼルーク(【魔導科学者】マギア=ウィゼルーク・リネット・博子・f01528)の瓶底眼鏡も高性能な多機能デバイス。透視スキャナや熱源探知、レーダーやスコープ機能を内蔵しており、迷宮の細かな仕掛けも作動前にいくつか発見していた。
ぽややんとした雰囲気ではあるが、抜け目はないのである。
一方で、中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)は周囲に構築された迷宮をハッキングしながらその最短ルートを演算していた。
彼女の瓶底眼鏡に映し出されるのは電脳魔術デバイスにより投射された周囲のデータ、翼型のセンサーで拾い集めたデータを元にした演算は、賢竜と呼ばれたオアニーヴの力量もあってか中々時間を食っている。
(「……人に味方する賢竜……この世界にもいれば……歴史は変わったのかしら?」)
ふと頭を過ぎった考え、あり得たかもしれない可能性。
けれどこの場にいるのは人類に敵対する竜達だ。ささやかな可能性を振り切るように、コンソールを操作する指を早める。
「……迷宮のデータスキャン……封印検索術式……開放」
裕美が端末を操作すれば、閉じられていた隔壁が音を立てて開いた。魔導蒸気機関というアナログのようにも見える形態だが、彼女の電脳魔術は問題なく作用している。
道中、何故か抵抗が弱まったような感覚があったが、先行した猟兵の誰かが交戦したのだろうか。ハッカーの少女は内心首を捻るも簡単に事が済むならそれに越したことはない。
感知した熱源反応、奇妙な戦闘? 音を手掛かりに、進路を塞ぐ迷宮の構造にクラッキングをかけ、そして進行を妨害する罠も無力化しながら猟兵達は最短ルートを突き進み、とうとう帝竜オアニーヴの元へと辿り着いた。
戦場の気温が氷点下に落ち、そして帝竜の一撃が竜人の女を切り裂かんと振るわれる。
それらの攻撃を躱し、二人が反撃の銃弾を撃ち込めば帝竜はその紅と白の身体を大きく仰け反らせる。
その瞬間、リネットヒロコと裕美が動く。
「……魔王による封印も……解くわ」
裕美は抑揚のない声で呟きデバイスを操作する。迷宮構造に対しハッキングをかけていたのと同じ要領、大魔王の仮面による洗脳を賢竜の意識に対する封印とみなし、その解除にかかる。
素早く動く帝竜を捕らえるのは困難。だが、氷点下の環境で飛び込んだ猟兵の凍結弾により鈍った瞬間ならまだやれる。
不快感を感じているからか苛立ったようにオアニーヴはその翼を羽ばたかせ猟兵達を吹き飛ばし、光と共に緑髪のエルフをその爪で引き裂かんと高速で飛び込んでくる。
それを予測していたリネットヒロコは可愛い羊のぬいぐるみを眼前に出現させる。魔法製のそれは光は防ぎきれなかったが、羽ばたきの浄化の風をもふっとガード。
爪の一撃も氷点下と精神に対するクラッキングによる作用で鈍っていて、ふかふかこそは引き裂かれたものの何とか回避する事に成功した。
(「賢竜オアニーヴのはばたき……非常に強力です~……」)
まともに受けていればユーベルコードの封印どころか意識自体刈り取られてしまっていただろう。ぶるりと震えるけれども、いま彼女は間違いなく立っていて、そして帝竜に対抗する手段の準備も出来ている。
「……不本意ですが~、『なんでもあり』を使わせてもらいますよ~! はい、こんなこともあろうかと~!」
そしてリネットヒロコはいつもの雰囲気を崩さず、"ものすご~く都合のいい"ガジェットを召喚する。
それはスイッチとつまみが表面にいくつか並ぶ正六面体の匣。くるりと回せばそこに周囲の地形が表示されたモニターが浮かび上がっている。
このガジェットの性質を理解したリネットヒロコはつまみとスイッチを操作し領域を指定、そして仕上げに真っ赤なスイッチを押し込む。
すると帝竜オアニーブを中心としていくつもの壁と機構が出現する。一回り小さなその構造物は帝竜のダンジョンメイカーによく似ていて。
「ダンジョンメーカーもどきくんですっ!」
そのガジェットはアルダワに存在する迷宮を作り出す装置の模倣品、これで閉じ込めてしまえば羽ばたきも光も爪も、何も届かない。
だが、あくまで『もどき』、構築された迷宮の大きさもそうだがダンジョンとして致命的な欠陥がある。
それは、
「閉じ込められるのはあなただけ。そして出口はありません!」
「……それは迷宮じゃなくて牢獄じゃ……」
訝しむ裕美にえへんと胸を張り欠陥を語るリネットヒロコ。
「さあ、あなたが利用しようとした智慧の恐ろしさ、その身で体感してくださいっ!」
迷宮もどきの内側からトラップの作動する歯車の回る音や強烈な放電の恐ろしい音が響く。
どんな風な惨劇が起こっているのかは分からない。けれども裕美にとってはこの状況はうってつけであった。
「……オブリビオンとなっても高潔さを保つ貴方に敬意を抱くわ」
だから、すぐ終わらせる、そう呟いた裕美は空間のハッキングに取り掛かる。限定された空間の現象をパラメータ化し、その値を操作するユーベルコードにより生ずるは全てを凍て付かせる氷の津波。
それはダンジョンもどきの壁を越えるように高く高く、そしてダンジョンもどきごと中の帝竜を飲み込むように崩れてその場の全てを凍て付かせた。
凍てついた迷宮もどきの壁が凍り砕け、そして中から帝竜の姿が浮かび上がる。
まだ戦うのか、そう身構えた猟兵達だが、その顔面に取りついていた黒き仮面が音を立てて割れ、地面に落ち硝子のように粉々に砕け散った。
竜の体も限界を迎えていたのか翼や脚、体がぼろぼろと形を崩れさせていく。
けれど、賢竜オアニーヴの瞳には叡智の色が戻っていた。穏やかに何事かを口にした賢竜は、どこか安心したようにそのまま崩れ去った。
その穏やかな言葉に、猟兵達は己を止めた勇者達を激励するようなそんな響きを感じ取った。
大成功
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