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帝竜戦役⑦〜黒面白竜

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #帝竜 #オアニーヴ #群竜大陸

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●かの世界より
 強烈な蒸気が噴きあがり、機械が唸りをあげて動きつづける。
 群竜大陸の一角には、さながらアルダワ魔法学園を思わせる機械群がひろがっていた。
 そしてその機械群の中に――1体の白竜が潜むように横たわっている。

「テキガクルヨ! テキガクルヨ!」
「黙れ……黙れ『大魔王の仮面』よ!」

 仮面のついた頭を振り、六翼を大きくひろげる白竜。
 だが雄々しく見えるその姿に勇ましさはない。むしろ苦しみに悶えるかのように、白竜は低い声で唸りはじめる。

「群竜大陸に挑む勇者が現れた以上、貴様の呪いに屈する訳にはいかぬ!」
「ムリダヨ! ムリダヨ! ナゼナラバ……汝の願いと希望を、この仮面は糧とするからだ。竜神山脈の長『賢竜オアニーヴ』といえど、逃れる事はできぬ」
「おのれウームー・ダブルートゥ……私は、このような事態を避ける為に自ら命を断ったというのに……グアアア、理性が保てぬ……!」

 穏やかならぬ名を呟いて、白竜――オアニーヴは体を低め、やがて動きを止めた。
 そして今一度その美しき体躯を起こしたとき、もはや賢竜と呼ばれたものはそこにはいなかった。

「センノウカンリョウ! ……さあ挑戦者共よ、汝らの全てを喰らい、我が糧としよう」

●グリモアベースにて
「また1体、帝竜の討伐を頼みたい」
 蒸気に包まれる白竜の姿をグリモアで映しながら、プルート・アイスマインドは猟兵たちへと視線を投げた。
 行く手を遮るは、帝竜オアニーヴ。
 かつてアルダワで人類と共に大魔王と戦ったドラゴン達の長だ、とプルートは告げた。
「『賢竜』と称される程の叡智と優しさを持っていた、とされるが今は完全にヴァルギリオスに従う『帝竜』になってしまっている。その原因はオアニーヴの頭部を覆う仮面だ」
 投影映像の中にある、オアニーヴの黒い仮面を指差すプルート。
「これには大魔王の呪いが効いているようでな。これがオアニーヴの本来の性質を歪め、人類を害する『帝竜』に仕立ててしまっている。この仮面の呪いを解く術は残念ながら判明していない……つまり、もはや倒す以外の道はないということだ」
 たとえ、アルダワで人類の味方となってくれた心優しき竜だとしても。
 ヴァルギリオスを打倒するためには。
 アックス&ウィザーズを救うためには。
「討たねばならんのだ……『帝竜オアニーヴ』をな」
 わずか、声に苦々しさを滲ませて。
 プルートは、猟兵たちを蒸気機械の迷宮へと送り出した。


星垣えん
 というわけで、星垣えんでございます。
 帝竜が1体『オアニーヴ』が今回の相手となります。

 帝竜オアニーヴは必ず先制攻撃をしてくる強敵ですが、ユーベルコードへの対処法を編み出すことでプレイングボーナスを得ることができます。
 どう防御して反撃するか、が重要ですね。

 それでは、皆様からのプレイング、お待ちしております!
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第1章 ボス戦 『帝竜オアニーヴ』

POW   :    竜操の仮面
【頭部を覆う仮面が邪悪な光を放つ状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    賢竜オアニーヴのはばたき
【戦意を弱らせる聖なる光】【光輝く爪による引き裂き攻撃】【六翼の羽ばたきが巻き起こす浄化の風】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    ダンジョンメーカー
戦場全体に、【魔導蒸気機械と金属のパイプ群】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。

イラスト:otomo

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ニコラ・クローディア
かつての誇りを穢された賢竜よ、汝の存在が滅することをこれほど惜しいと思ったことは無い
せめていつか仮面なき貴君と見えんがため、今は討たせてもらおうか!

自動詠唱スタート、シグニチャースペルブック79頁!
さぁ、我が幻惑の術、見破れるものならばその爪届けて見せよ!

龍翼外套を開いての高速空中戦に幻影の多重詠唱を合わせる
数秒おきに自動的に射出されるのは本物同然の存在感を誇る幻影
オレサマの動きを真似して動きまわる素早い幻影たちに、果たして釣られずに済むかなウームー・ダブルートゥ?

理性なく暴れ回る帝竜を幻影で騙し、狙うは諸悪の根源たる仮面だ
適当な所を掴み、引っぺがすつもりの全力で振り回してやる!

アドリブ歓迎


ソラスティベル・グラスラン
賢竜オアニーヴさまの想い、確かに受け取りました
貴方の物語を聞き、貴方が守った世界に生まれた一人の『勇者』として
誰かを傷つけてしまう前に、貴方を討ちます!

【盾受け・オーラ防御】で全力で守りを固めます!
理性を失い攻撃は単調となるはず…ですがまともに受けるは危険!
【怪力】で受け【見切り】受け流すことに努めます!

オアニーヴさまの仮面、そこにいるのですね!大魔王!
受け流しつつも前進、【勇気】を出してその豊かな毛に飛びつきます!
ゆっくりと、しかし着実に登り頭部へ

賢竜よ、ご覧あれ
大魔王を打倒し、これから貴方を救う…

『勇者』として磨いた、わたしの力です

【我が名は神鳴るが如く】――――ッ!!!!


黒城・魅夜
希望を弄ぶ愚劣なる大魔王の残滓よ
幾度でも滅ぼしましょう、希望を繋ぐものの名にかけて

相手の攻撃を防ぎきることはできないでしょう
しかし対処はできます
私の衣服は任意に姿を変えるもの
早業でマントへと形を変え、帆のように、あるいは凧のように風を受けて
あえて空へと舞いましょう
周囲の蒸気機械に打ち込んだ鎖を命綱としてね
ふふ、風も光も「私のマント」に浴びせられたもの
「私自身」に命中したものではありませんから、UCの効果は発動しませんよ

舞い上がった高度は今度は私の武器になります
弾丸のように急降下しつつ、鎖を放ち
爪への攻勢防御としながら敵を穿ち抜きます

仇は討ちます、哀れな龍よ
忌まわしい大魔王の仮面ごと貫くことで


勘解由小路・津雲
この竜はかつて乗っ取られぬよう自ら命を絶ったと聞いた。ならば、その手を汚さぬよう打つことが、せめてもの手向けとなると信じよう。

【作戦】
WIZを想定。先制攻撃なので、先に迷宮を作られたものとする。
だが魔導蒸気機械と金属のパイプ群なら打つ手はある。金属パイプに【属性攻撃】で冷気を送り、冷却する。さすれば蒸気は水になり、やがて凍り、膨張し、パイプをいたるところで破裂させるだろう。
そうしたほころびを縫って【符術・鳥葬】を使用。小柄な鳥たちなら、隙間を通って行くことが出来るだろう。
竜のところに辿り着いたら仮面を集中して狙うとしよう。邪悪な力を持つようだから、鳥たちに【破魔】の力を持たせれば効果的か?


リネットヒロコ・マギアウィゼルーク
倒す以外の道はない……ですか。
それがオアニーヴさんにとっての救いであると思いたいです~……。

アイテム『魔導式駆動装甲・蒸機くん』に
搭乗した状態で挑みます
※全身絵有

UC発動まではアイテム「スケープシープちゃん」で凌ぎ
【アルケミカル・ミスト】を発動します~!

状態異常をもたらす魔法の霧を吐きつつ、
強化された機体の運動性でしばらくは回避に専念しましょう~
今回は【麻痺】の効果を霧に付与します~

麻痺の効果で動きが鈍ったら
にっくき仮面目掛けてアイテム「ガトリングレネード」と
アイテム「まじかるランチャー」の連射を叩き込んで勝負を決めます~!


ベム・クラーク
アドリブ連携歓迎です!

無機質なカメラアイでドラゴンを観察します。
「人間の戦友に対する戦いの強制、許せません。必ず開放して差し上げましょう。」

重装甲に任せて仲間の盾になりながら剛撃、マシンガンでけん制し、ミサイルで吹き飛ばして敵の攻撃を妨害します。
【頭部を覆う仮面が邪悪な光を放つ状態】になったらこちらも【ベルセルクトリガー】で対抗、鎧装騎兵として総攻撃をかけます。

「ドラゴン討伐、このまま戦乱を戦い抜けば『勇者』という人間に会えるかもしれませんね。」
ドラゴンがいるのだから、やはり勇者もいるのだろうと思うベムでした。


緑川・小夜
[WIZ]

なるほど、アルダワの魔王絡みの竜なのね。いいわよ、優しく殺してあげる

敵UCで発生した迷路を【第六感】を頼りに【ダッシュ】で迷路を駆け抜けるわ

敵からの攻撃は、【見切り】と【残像】でかわして、UC発動迄の時間を稼ぐ

選択UCが発動可能になったら、即座に発動。死の女神の姿に変わり、現実を夢の世界が侵食する力で迷路を侵食、夢の支配者であるわたくしの思うがままに迷路を作り替えて、竜への攻撃と側への移動に使わせてもらうわね(【地形の利用】)

さて…加減はなしよ

わたくしは腕を更に二本生やし、額に第三の目を開眼した、より死の女神の力を引き出した状態で、帝竜を【串刺し】にするわ

[アドリブ連携歓迎です]


ニィエン・バハムート
先制対策にオーラで強化された発電能力を使用。周囲に電気【属性・マヒ・範囲攻撃】をばら撒くことで引き裂き攻撃に来た帝竜を怯ませます。光は電光で軽減…できる気がすると信じ、風には電気と同時に身体中のメガリスから【衝撃波】を放つことで防ぎます。
そして反撃にUC発動。発電能力を更にパワーアップさせた電撃で帝竜の体内を【蹂躙】しながら【空中浮遊】し【空中戦】に移行。
スピードは軽減されてないはずなので全速で帝竜の頭部まで飛び、仮面を【部位破壊】するつもりで電撃を纏った拳を【怪力】まかせに叩きこみます。

アルダワのドラゴンの長と戦えると思って期待して来ましたのに!
さっさと目を覚ましなさいな寝坊助ドラゴン!!


別府・トモエ
「はじめまして帝竜オアニーヴ。久しぶりだな大魔王ウームー・ダブルートゥ」
変則ダブルスにシングルスで挑む

降り注ぐ光を避けるために全力【ダッシュ】
「なんの!」
爪の攻撃に【カウンター】で合わせて【ラケット武器受け】で防御
吹き飛ばされる勢いで【ジャンプ】で高く【空中戦】で風を回避して【オーラ防御】で余波を防ぐ

「……なんか、ギクシャクしてんな」
信じ合わない同士のダブルスの隙を【仰観俯察の極み】は見逃さないぜ
あらゆる攻撃を回避して縫うような【サーブ先制攻撃】返ってくるテニスボールを【ショット誘導弾】
「君が弱点だろう、スケスケだぜ!」
ウームー・ダブルートゥ仮面を【スナイパー】
「パートナーを尊重しろ。おバカ」


才堂・紅葉
「うちの賢竜様に、なんて事をしてくれるのかしら。あのクソ仮面」
賢竜様は叡智の関係で、親しい錬金科に密かな信奉者が多い
自然、何となくの親しみを覚える存在だ

防御は、聖なる光は回避不能。棒に額を打ち付け、【気合】で闘志を再点火する
爪は六尺棒を下から跳ね上げ、いなしを狙う【怪力、見切り、野生の勘】
浄化の風は機構靴の跳躍機能で直撃を避け、紋章版で障壁を張って凌ぐ【メカニック、オーラ防御】

反撃は、削られた攻撃力をUC発動の3倍パワーでカバー。三つの装備が青い光を帯びる
「コード・ハイペリア」
更に真の姿の【封印を解き】、クソ仮面を割りに行こう【重量攻撃、重力属性攻撃、グラップル】

「これがあの連中の分よ!!」


中村・裕美
「……異世界の竜……ということかしら?」
話を聞きたいところだけど、倒すしか無いのよね

敵の攻撃はホログラムなどの【残像】を作って囮にし、こちらは電脳魔術でオアニーヴに【早業】で電脳魔術による【ハッキング】【精神攻撃】を仕掛け、洗脳されて封じられてしまったオアニーヴの意識の【封印を解く】
「……悪いけどもう一度……死を覚悟してもらう」
理性を取り戻させれば、敵の攻撃の手も緩まるかもしれない

「……本当はもっと……スマートな救済方法があれば……よかったけど」
攻撃は【ドラゴニックエンド】でドラゴンランスを投げ、【串刺し】後に召喚した黒竜で攻撃を加える
「……もしまた出会えるなら……色々教えてほしいわね」


ニーグラート・ジズ
ふむふむ、賢竜という名前のドラゴンさん。食べたら私の賢さも上がるかな?

あっちから向かってくるみたいだし、ここは待ちの姿勢になろうかな。
『完食するまで止まらぬ顎』を発動したら、両手をドラゴンさんに向けて、トラバサミみたいにガシガシ開閉するよ。向こうから突っ込んで来たところに、がっちり牙を食い込ませて引きずり込む!

あなたも私も、同じドラゴン。だからしっかりと、丁寧に味わうね。
──その仮面も、一つ残さず。


エルザ・メレディウス
...討たなければならないなら、せめて全力で。。。

■POWを使用いたします
・先制攻撃に対しては、【残像】を使用して、相手の攻撃の的をそちらに【誘惑】いたします。可能なら、UC:影の追跡者も使用しながら敵をしっかりと監視して、【地形の利用】を活用して、敵の死角を選んでゆっくりと接近します。
・敵に接近したら、数で攻めます。UC:ローマンレギオンで多くの兵士を召喚して敵へ攻撃。【集団戦術】を使いながら、効率の良い攻撃を行えるように指揮します。相手の攻撃がレギオンへ向いたら、私はそこで攻撃へ。白王煉獄を使用します。

*他の猟兵の方と行動する場合は攻撃のタイミングを合わせて全員で連携してダメージを高めます


ルエリラ・ルエラ
【アドリブ改変・連携歓迎】
洗脳前に片言っぽかったり普通に喋ったりどっちが素なんだろう仮面
どうにかしてあげたいとこだけど、方法がないんじゃ仕方ないね。ごめんね

服に魔力を込め『オーラ防御』的な障壁を張りつつ、ハンティングナイフで『武器受け』して防御と回避専念
合間合間に、芋煮ハンドグレネードで煙幕を張りつつ、『第六感』で致命的な攻撃は受けないように逃げ回るよ
煙幕で何も見えなくなったら、メカ・シャーク号発進!設定を自動操縦にセットして、私は煙幕を抜けて敵の前に囮として飛び出すね
私が飛び出したタイミングでシャーク号の【リミッター解除】!気が私に逸れてる間に頭部仮面におもいっきり体当たりを食らわせるよ!


シャルロッテ・ヴェイロン
まぁ、どんな事情があって異世界に飛ばされて、そのうえ大魔王に洗脳されたか、この際どうでもいいことでしょう。
私たちの邪魔をするというなら、撃破すればいいだけですから。

迷宮形成を待ってから【Hacker's Sense】を発動。システムを【ハッキング】して【情報収集】、出てくるであろう蒸気機械兵器やトラップを無力化しつつ、最短ルートで脱出しましょう(万が一のダメージは【激痛耐性】【オーラ防御】でしのぐ)。
で、ボスに遭遇後は攻撃を【見切り】つつ、【指定UC(属性は「竜殺し」)】で攻撃していきましょう(【誘導弾・2回攻撃・一斉発射・乱れ撃ち・制圧射撃・鎧無視攻撃】)。

※アドリブ・連携歓迎



「囚われるがいい。小さき者共よ」
 猟兵たちが転移して現れるや否や、オアニーヴの力が戦場に染みわたる。周囲の蒸気機械群は生物のようにうねり、瞬く間に巨大な迷宮へと形を変えた。
 しかし、その身を金属の獄中に置いても、勘解由小路・津雲は涼しい表情を崩さない。
「迷宮形成のユーベルコードか。だが魔導蒸気機械と金属のパイプ群なら打つ手はある」
 入り組んで壁となっている金属パイプに、錫杖の石突を打ちつける津雲。
 すると波紋がひろがるかのように、パイプが氷結してゆく。
 錫杖から与えたのは冷気だ。
 急速に冷やされたパイプは、ばき、びきと不規則な音をあげて破裂を始めた。内部を通る蒸気が冷やされて水へ、氷へ転じることで膨張したのだ。
「これだけの隙間があれば、十分だろう」
 指で中空に五芒星を描いた津雲から、無数の紙片が飛んでゆく。紙片は破裂したパイプの隙間をすり抜けて外へと脱出し、鳥の形となって飛翔した。
 そして、一直線。
 空から悠々と巨大迷宮を見下ろしていたオアニーヴに突っこんだ。
「すり抜けるとは、小賢しい真似をする」
「あんたはかつて乗っ取られぬよう自ら命を絶ったと聞いた。ならば、その手を汚さぬよう打つことが、せめてもの手向けとなると信じよう」
 津雲が迷宮の内より操る式神が、オアニーヴの仮面に殺到し、破魔の力を送りこんだ。

「まぁ、どんな事情があって異世界に飛ばされて、そのうえ大魔王に洗脳されたか、この際どうでもいいことでしょう」
 自分を取り囲む蒸気機械の壁を電脳ゴーグル越しに見やりながら、シャルロッテ・ヴェイロンはゲーミングノートPCをひらいた。
 その指が、さながら鍵盤を弾くように踊り出す。
「私たちの邪魔をするというなら、撃破すればいいだけですから」
 ノートPCを操作しつつ走り出すシャルロッテ。
 途端、蒸気機械の壁から巨大なピストンがせり出してきた。シャルロッテの動きを感知して、行く手を遮ろうとしているのだ。
 だが通路の半分ほど塞いだところで、唐突にピストンは止まった。
「回り道してる余裕はないですから。最短で攻略させてもらいます」
 狭まった路をするりと通過して、駆けつづけるシャルロッテ。その間もその眼はゴーグルに投影される情報を読み取り、その指はノートPCのキーボードを――ハッキングした迷宮のシステム操作を続けている。
 まさに裏技、という手法でシャルロッテは易々と迷宮を踏破。ものの数十秒で外界へ脱出すると、自身に群がる紙の鳥を振り払う白竜の姿を捉えた。
「先に攻略していた人がいましたか」
 バララッ、とキーボードを打つシャルロッテ。
 そうして即座に周囲に現れたのは、実体を得た攻撃用プログラムの群れだ。
「さぁ、今日のメインクエスト。竜殺しといきましょう」
「ぬうッ……!」
 号令を受けたプログラムが跳躍し、刃をオアニーヴに突き立てた。その刃にこめられた『竜殺し』の毒がしみこむと、オアニーヴは中空で小さく身じろぐのだった。

「悪あがきを……汝らに希望はないとわからぬか!」
 オアニーヴの圧するような咆哮が、式神を払い落とし、実体プログラムたちを霧消させる。
「我が迷宮に囚われ、無力を噛みしめていればいいものを」
「アルダワの魔王絡みの竜と聞きましたが、意地が悪いんですのね」
 くすりと笑うような柔らかい声。
 その主は、機械群とパイプの迷宮を駆け抜けてきた緑川・小夜である。
 自身の視界にその身を晒した少女へ、オアニーヴは嘲弄した。
「汝の小さき身で何ができるのだ。我に喰らわれに来たのか?」
 翼を翻し、小夜の体を切り裂かんと急降下するオアニーヴ。
 しかし――。
「喰らわれるのはどちらかしら……ね?」
 呟きと同時に、小夜の雰囲気が一変する。嫋やかな良家の子女といった出で立ちが妖しく艶やかな羽衣姿に転じ、その肌も人ならざる灰青色へと塗り替わる。
「優しく殺してあげるわ」
「これ、は……!」
 小夜の金色の瞳が光るとともに、背後にそびえていた蒸気機械群が蠢きだす。巨大な触手のように変形したそれは接近するオアニーヴを巨大パイプで打ち据え、同時に小夜が地上から駆けあがるための道を作る。
 夢の世界を現実へと投影する。
 その力でもってオアニーヴを迎撃した小夜の額に、第三の眼がひらく。
「さて……加減はなしよ」
「ぐあああッ……!」
 パイプの坂道を駆けあがった小夜が、オアニーヴの体に小さな刃『剣鉈』を突きこんだ。さらに夢の力で新たな腕を生やし、4本の腕でより深く、帝竜の肉に剣鉈を押し入れる。
「やっぱり、喰われるのはあなたみたいね?」
「おのれ……己を弁えぬ糧共めが……!」

 猟兵らに巨大迷宮を突破されたオアニーヴが、ひときわ高く飛翔する。
「そうまで死に急ぐならば、このオアニーヴの力を存分に味わうがいい!」
 仮面の眼光が輝き、オアニーヴの六翼がひろがる。
 その身でもって猟兵の排除に動こうとしている白竜を見上げて、別府・トモエはテニスラケットを握りこんだ。
「はじめまして帝竜オアニーヴ。久しぶりだな大魔王ウームー・ダブルートゥ」
「その名を知るか。だが我を知りながらなお挑むとは、愚かしい」
 オアニーヴの白き体が、神々しい光を放ちはじめる。まるで見るだけでも心が静まるような光が降りそそぐと、トモエは弾かれるように地を蹴っていた。
「なんの!」
「素早いな。だが予測は簡単だ」
 巨体を翻し、迎え撃つようにトモエの進行方向に降下するオアニーヴ。
 繰り出される光爪。
「おっと危ない!」
 構えたラケットが爪を受け止め、トモエの体を宙高く打ち上げる。
 一見、無防備だ。
 だがその実は違う。高く跳躍することでトモエはオアニーヴの翼が生み出す暴風をかわしていた。
 そして空高くにいるトモエの眼が捉えるのは、オアニーヴのがら空きの頭部。
 白竜の素顔を覆い隠す、大魔王の仮面だ。
「君が弱点だろう、スケスケだぜ!」
 中空を浮遊しながらにして、持ち前のテニスセンスで強烈サーブを打ち下ろすトモエ。
 弾丸じみた速度で空を切り裂くテニスボールは、しかしうねり狂うような軌道でオアニーヴの防御をすり抜けて着弾。仮面に凹みを作った帝竜はぐらりと揺らいだ。
「ぐっ……!」
「パートナーを尊重しろ。おバカ」

「うちの賢竜様に、なんて事をしてくれるのかしら。あのクソ仮面」
 今まさに顔面をボールに強打されたオアニーヴを視認して、才堂・紅葉は苛立ちも隠さず言い捨てた。
 UCDアース出身ながらアルダワ魔法学園に所属している紅葉にとって、オアニーヴは知らぬ存在ではなかった。むしろなぜか身近には(密かな)信奉者が多く、何となく親しみを覚えるとさえ言っていい。
 だからこそ、賢竜を弄ぶ悪意に、腹の底が煮えたぎる。
「ぶち割ってやるしか……ないわね!」
「割る? 汝にそれができるか?」
 紅葉の怒気を感じ取ったオアニーヴが、聖なる光を投射する。
 その瞬間、紅葉は得物の六尺棒に己の額を打ちつけた。アルダワ特殊鋼と頭骨のせめぎあいは随分と分が悪く、芯まで響く痛みが頭を揺らす。
 ――おかげで、闘志は萎えそうもない。
「あんたにもくらわせてやるわ、クソ仮面!」
 ズキズキと痛む額をひとなでした紅葉が、オアニーヴに吶喊する。振り下ろされる爪を六尺棒で受け流し、ガジェットブーツで踏みこんで空高く跳躍したとき、紅葉の目の前には『クソ仮面』が待っていた。
「コード・ハイペリア」
 唱えた言葉に呼応して、紅葉の手の甲に青い紋章が浮かぶ。
 同時に、六尺棒が、ガジェットブーツが、手首に括りつけた紋章板が青い光を帯びてゆく。
「これがあの連中の分よ!!」
 振り下ろした六尺棒の一撃が、大魔王の仮面を捉える。
 わずか砕けた仮面の破片とともに、オアニーヴは押しつぶされるように地面に叩きつけられていた。

「グッ……オオオオオ!!!」
 空気を震わせる、低い咆哮。
 自らに気合を入れるように唸りながら、オアニーヴは勢いよくその身を起こした。
「伏すのは我ではない……汝らが平伏するのだ!」
 激しく六翼を動かし、暴風と聖光をまき散らす帝竜。
 猛烈な攻撃に目を細め、脚を踏ん張り、ニィエン・バハムートは大声を張り上げた。
「まったく! どこが賢竜なんですの!」
「大魔王の仮面に囚われたオアニーヴには、破壊しか見えていないようですね……」
 風に煽られ暴れる黒髪を押さえる黒城・魅夜。
「やはり、討つしかありませんか」
「困った竜ですわ、もう!」
 魅夜が衣服をマントに変えてその身を覆い、ニィエンが体から生み出した電気を周囲に放つ。マントと電光でオアニーヴの光をやり過ごした2人は前へと駆けだした。
 当然、迎え撃つオアニーヴは猛然と爪を繰り出そうとする。だがその爪が振り下ろされる前にニィエンがまき散らす電撃が爆ぜ、オアニーヴを一瞬、怯ませる。
 その隙に、魅夜はマントを展開。帆のようにひろげた生地で六翼の風を受け、高々と空へと舞った。
 そして上昇が止まったところで、マントを脱ぎ去り、急降下を開始する魅夜。
「風も光も私の『マント』が浴びたもの……あなたの術中には嵌まりませんよ」
「ならば、我が爪で引き裂いてくれる!」
 一直線に降りてくる魅夜へと爪を振り上げるオアニーヴ。対する魅夜は迫りくる爪へ鎖を投じ、軌道を紙一重で逸らす。
 さらに、その鎖はオアニーヴに向かって加速した。
「希望を弄ぶ愚劣なる大魔王の残滓よ。幾度でも滅ぼしましょう、希望を繋ぐものの名にかけて」
「ググッ!?」
 自在にうねる鎖が仮面を打ち据え、オアニーヴの上体がのけ反る。
 それを見て取るや、地上にいるニィエンはユーベルコードを発動した。
「雷霆万鈞! バハムート・サンダー!」
 体表を覆う器官が発電し、ニィエンの全身が閃光に包まれる。その超強烈な電撃をオアニーヴのがら空きの胴に撃ちこみながらニィエンは空へ浮きあがった。
 握りこんだ拳に、ヂヂッ、と電気が集約する。
「アルダワのドラゴンの長と戦えると思って期待して来ましたのに! さっさと目を覚ましなさいな寝坊助ドラゴン!!」
「ガアアッ!?」
 力任せの拳撃が大魔王の仮面を穿ち、稲光に似た衝撃が奔る。
 オアニーヴの体が重々しく地に落ちたのを見て、猟兵たちはさらに攻勢を強めてゆく。

「『賢竜オアニーヴ』とはこの程度か……そうではないだろう。汝の全てでもって猟兵共を退けてみせよ……!」
 腹で地を擦る竜から聞こえる声は――大魔王の囁き。
 途端、仮面が妖しい光を放ちはじめる。
 オアニーヴ本来の聖なる光とは程遠い、凶悪な光を。
「グオオオオオオッ!!!!」
 強く爪を地に突き立て、起き上がるオアニーヴ。獣のように吼えた白竜は翼を振るって空へ浮上すると、狂ったように旋回を始めた。
 様子を観察していた中村・裕美は、帝竜浮上の余波でズレた眼鏡をくいっと直す。
「……異世界の竜……話を聞きたいところだけど、倒すしか無いのよね」
「賢竜という名前のドラゴンさん。食べたら私の賢さも上がるかな?」
 ぽけーっと開いた口に人差し指を添えて、首を傾げるニーグラート・ジズ。
 なんでも食っちゃう雑食娘は、明らかに狙っていた。
「……賢くなるかは、わからない……」
「そっかぁ」
 呑気に笑うニーグラート。
 そこへ、影が落ちる。
「ガアアアアッ!!」
 空中を飛んでいたオアニーヴだ。理性を失い狂暴化した白竜はまるで落ちるかのようにニーグラートと裕美のところへ降下してきていた。
「……あの状態の相手は、遠慮したい」
「ふむふむ。じゃあ任せて!」
 すすーっスムーズに後ずさりする裕美ににぱっと笑い、振り返ってオアニーヴの突撃を受け止めようとするニーグラート。
 しかし、速い。
「あぁーっ!?」
 豪速に吹き飛ばされ、ニーグラートが機械群の壁に強かに背を打つ。
 が、彼女のおかげで裕美には時間ができた。素早く電脳魔術を展開した裕美はオアニーヴの精神にハッキングを仕掛け、封じられた意識を揺り起こそうとする。
 仮面の呪いを破れるとは思っていない。
 だが敵の攻撃を緩めることはできるかもしれない、と裕美は考えていた。
「グァァ……ワ、私、は……!!!」
 苦しげに呻くオアニーヴが、体をよろめかせて動きを止める。大魔王の呪いが賢竜を封じこめて再び狂暴化するのに数秒とかからなかったが、しかしそれだけ時間が稼げれば裕美には十分だった。
「……本当はもっと……スマートな救済方法があれば……よかったけど」
 物憂げに顔を伏せながら、裕美がドラゴンランス『覇空竜スカイフォール』を投擲する。穂先が竜の体に突き立てられると、さらにすかさず召喚された黒竜が爪牙でもってオアニーヴを攻め立てた。
「グ……オオオオオオオオオッ!!!」
 喰らいつく黒竜を振りほどこうとするオアニーヴ。全身を地面にこすりつけながら白竜は暴れまわり、辺りの機械群が打ち壊されてゆく。
 だが突如、その暴走がぴたりと止まった。
「グァァァ!! ガアアァァァ!!!」
「あんまりゴロゴロしちゃだめだよー!」
 ニーグラートが、両の手でオアニーヴの体を食い止めていた。
 しかしその手は平時の彼女のそれではない。
 右手は恐ろしい牙を備えた、竜の上顎に。
 左手は巧みに食物を食いちぎる、人の下顎に。
 巨大に変異し、何をも喰らう顎と化したその両手で、ニーグラートはオアニーヴに噛みついていたのだ。トラバサミのように開閉する牙が肉に喰いこむと、オアニーヴは悲鳴に似た恐ろしい叫びをあげた。
「あなたも私も、同じドラゴン。だからしっかりと、丁寧に味わうね」

 全長4mの駆動装甲が、白い蒸気を噴き上げる。
 自前のパワードアーマー『魔導式駆動装甲・蒸機くん』に搭乗したリネットヒロコ・マギアウィゼルークは、猛る白竜へと疾走していた。
「倒すことがオアニーヴさんにとっての救い……であると思いたいです~」
「グォオオオオオオオ!!!」
 噛み裂かれた体を強引に引き起こし、オアニーヴが動く。
 低空飛行で迫る白竜の進路から離れるよう、リネットヒロコは横へ跳び、同時に逆方向へ羊のぬいぐるみ『スケープシープちゃん』を投げた。
「グァアアア!!」
「かかってくれましたね~。ではでは……」
 オアニーヴの爪で八つ裂きにされるぬいぐるみに手を合わせながら、リネットヒロコは蒸機くんの機関を活性化。もうもうと蒸気をまき散らしながら速度を上げてゆく。
 当然、走り出した瞬間にオアニーヴが向かってくる。だが出力を向上させた蒸機くんの進路を左右に振り、見事に空を切らせた。
 数十秒もする頃には――。
「ヌ……ウッ……!?」
 オアニーヴのほうが、四本の脚を地面にべたりとつけて蹲っていた。
「麻痺属性をこめた霧が効いてきたみたですね~」
 してやったり、と微笑むリネットヒロコ。
 蒸機くんが排出していたのはただの蒸気ではなかった。状態異常をもたらす魔法の霧を、走りながら周囲に散布していたのだ。
「さて、仕上げです~」
 がしょん、とガトリング砲とミサイルランチャーを構える蒸機くん。
 躊躇なくぶっ放したグレネード弾(連射)とミサイル(六連装)が轟音をあげたとき、オアニーヴはずどどどど~んと爆炎に包みこまれるのだった。

 立ち昇る炎から、飛翔体が飛び出して空中で止まる。
 猟兵たちの攻撃に晒された体は多くの傷を作っているが、白竜は未だ健在だった。
「オオオオォォォォォ!!!」
「オアニーヴさま……」
 ソラスティベル・グラスランが大戦斧『サンダラー』を取る手に力をこめる。
 荒々しく咆哮するオアニーヴは、ソラスティベルの知る『賢竜』の姿とはあまりにも遠かった。
「貴方の物語を聞き、貴方が守った世界に生まれた一人の『勇者』として、誰かを傷つけてしまう前に貴方を討ちます!」
「ガアアアアァァァァァ!!!!」
 ソラスティベルを蹴散らさんと、オアニーヴが飛んでくる。
 放たれる爪撃。ソラスティベルのスチームシールドが受ける。骨ごと持っていかれそうな重みが腕を襲うが、その瞬間、シールドから蒸気が噴出した。
 その推進力で爪を逸らし、ソラスティベルは滑るように懐に潜る。
「そこにいるのですね! 大魔王!」
「グァアアアアアア!!!」
 射竦めるような竜の咆哮をものともせず、ソラスティベルが跳躍した。
 オアニーヴの柔らかな白毛を掴み、その体にしがみつく。暴れるオアニーヴに振りほどかれそうになりつつもソラスティベルは登りつづけ、ついには黒き仮面を間合いに捕らえた。
 振りかざすのは、空より蒼き大戦斧。
「賢竜よ、ご覧あれ。大魔王を打倒し、これから貴方を救う……『勇者』として磨いた、わたしの力です」
 蒼雷を纏った超重量が、仮面に叩き落とされる。
 ぴきり、と。
 その形相にヒビを走らせて、オアニーヴは背中から地面に倒れこんだ。

「かつての誇りを穢された賢竜よ、汝の存在が滅することをこれほど惜しいと思ったことは無い。せめていつか仮面なき貴君と見えんがため、今は討たせてもらおうか!」
 勇者の一撃でもんどりうったオアニーヴへ駆けるのは、ニコラ・クローディアだ。
 身を起こす白竜の姿を捉えながら、二コラは呪文書『シグニチャー・スペルブック』をひらき、目当ての79ページで指を止めた。
「さぁ、我が幻惑の術、見破れるものならばその爪届けて見せよ!」
 言下。二コラの黒い龍翼が大きくひろげられ、体を宙へ舞わせる。
 しかもそれだけではない。
 空を飛ぶ二コラが、二体、三体とその数を増してゆく。
「オレサマの動きを真似して動きまわる素早い幻影たちに、果たして釣られずに済むかなウームー・ダブルートゥ?」
「グオオオオオオオオオオオオオ!!!」
 仮面を光らせたオアニーヴが上昇。
 爪と翼を振り回して目につく二コラを次々と攻撃するが、そのたびに手応えなく幻影が霧消する。ただでさえ理性を失い思考力が落ちているオアニーヴには、本物そっくりの存在感を放つ幻影を看破するなど到底不可能だった。
「悪いな。オレサマはこっちだ!」
 気づいたときには、二コラの声は背後に回っていた。
 オアニーヴの肌と仮面の隙間に指を入れる二コラ。そうして掴んだ仮面に全力をこめて、二コラは空中で回転を始める。
「諸悪の根源たる仮面、引っぺがしてやる!!」
「グォォォ……ヤメロ、ヤメロ……!!」
 オアニーヴとはまた違う声が呻くが、二コラは笑う。
 ぐるんぐるんと、竜の巨体が振り回される。そのままオアニーヴが脳天から地面に投げつけられると、猟兵たちはいよいよ帝竜を仕留めるべく動き出した。

 竜が墜落した土煙を見つめる、三人の猟兵。
 そのうちの一人、浮遊するサメ型機『メカ・シャーク号』に跨るルエリラ・ルエラは前を向いたまま二人に言った。
「頭からべしゃーんと落ちたね。畳みかけるなら今かな」
「はい。人間の戦友に対する戦いの強制、許せません。必ず開放して差し上げましょう」
 ひときわ大きな一人、ウォーマシンのベム・クラークがカメラアイを動かしながら肯定すると、隣に立つ女――エルザ・メレディウスも頷いてセミロングの黒髪を揺らす。
「……討たなければならないなら、せめて全力で……」
「うん。どうにかしてあげたいとこだけど、方法がないんじゃ仕方ないね」
 ごめんね、と零してメカ・シャーク号を発進させるルエリラ。それを追ってエルザとベムも接近すると、よろよろと起き上がっていた最中のオアニーヴが鋭く吼える。
「グガアアアアアアアアアッ!!!」
「やっぱり倒れてくれたままじゃ、いないよね」
「しかし、もう一度眠ってもらわなければなりません。オアニーヴ」
 交錯するオアニーヴとルエリラwithメカ・シャーク号――の間に、ベムが全速で割って入った。振りぬかれる竜爪を重装甲で受け止めるウォーマシンの背中を見て、ルエリラは防御用に構えていたハンティングナイフを収めた。
「安心安全。竜退治のお供にはウォーマシンだね」
「お言葉は嬉しいのですが、そう長くは持ちません。早急に決着はつけるべきです」
「それはもちろん」
 両腕のマシンガンを掃射してオアニーヴを牽制するベムに合わせて、ルエリラが手榴弾『芋煮ハンドグレネード』を放る。けたたましい銃声と食欲をそそる芋煮の香り、それと吹きあがる煙幕に包まれてオアニーヴの視界が塞がれる。
 そこへ、エルザは突っこんだ。
「オアニーヴ、こちらです」
「グォオオオオオオオ!!!」
 耳朶を打つエルザの声に振り向き、煙越しに動く影を爪で切り裂くオアニーヴ。しかし攻撃したエルザの体は二つに両断されるや否や綺麗さっぱり消失する。
 実体でなく残像――とオアニーヴが認識したときには。
 すでにエルザはオアニーヴへの接近を済ませ、ユーベルコードを放っていた。
「ケントゥリオのもとに……ここに」
 エルザの手が『鷲の軍団旗』を掲げると、どこからともなく地鳴りのような音が響く。
 何百という戦士の声だ。召喚によって現れた小さき古代の戦士たちはエルザの一声で隊列を成し、一斉にオアニーヴに斬りかかった。
「グァァアアアアア!!!」
 群がる三百超の戦士たちと戦いはじめるオアニーヴ。エルザの指揮する兵団が竜の気を引いている隙に、ベムはモードチェンジを図る。
「私もひとつ、箍を外してみましょうか」
 理性と引き換えの超戦闘力――最終武装モードへ変化したベムが、背面に備えたミサイルランチャーを開放。さらに自身も吶喊することで二十発のミサイルとともにオアニーヴへと襲いかかった。
「目標、排除」
「ガアアアアアアアアアアア!!!」
 ベムの剛撃とオアニーヴの爪撃が、真っ向から衝突する。同時に着弾したミサイル群が古代戦士たちごと爆裂を繰り返して、戦場は右も左もわからぬ混沌に突き落とされた。
 ――が、そこへひらりと、唐突に宙に現れたのがルエリラだ。
「「!!」」
 二体の狂戦士が、頭上を軽やかに跳ぶエルフを揃って見上げる。
 しかし次の瞬間、オアニーヴのほうは顔面を横から殴りつけられたかのように、大きくその身をよじっていた。
 メカ・シャーク号が、その茶目っ気ある顔ごと大魔王の仮面に体当たりしていたからだ。
「メカ・シャーク号は自動操縦も設定できる優れもの。そして全速でぶつかる体当たりはたぶんひとたまりもない威力。メカ・シャーク・アタックと名付けよう」
 うんうん、と呑気に頷いたルエリラが、横に視線を流す。
 エルザの手で、炎逆巻くサムライブレイドを、ただ静かに構えていた。
「エルザ、ズバッとね」
「ええ。この一太刀で、終わらせます」
 炎が揺らめく――と思ったときには剣閃が放たれていた。煉獄の一撃は体勢を崩していたオアニーヴを完璧に捉え、白き体を容赦なく切り裂いていた。
 顔を覆う、黒い仮面ごと。
「我は……私、は……あぁ……」
 二つに分かれた仮面が地に落ち、それを追うようにオアニーヴの体も崩れ落ちる。
 その最期の声音がどこか安心したようにも聞こえたが、果たして真実か、それとも自分たちの望みがそう聞かせたか。
 わからぬまま、猟兵たちは賢竜の亡骸を見つめていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月11日


挿絵イラスト