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餅米防衛戦争

作者：ザムザム

　UDCアースの郊外の精米工場。

　お餅用の需要は収まっていて、今はお赤飯用の餅米が炊き上がる蒸気が上がっていた。
　その工場の正門に、集団で向かってくるのは、赤くつぶらな目に、白いモフモフの体毛を持つ兎。これが一匹ならば、可愛い～とばかりに目を細めるところなのだが。
　問題は。その兎は、集団であること。さらには月を模った丸い岩に座り、杵とも小槌とも見える得物を持っていることであった。
　兎たちは工場を襲撃し、餅や餅米を強奪してゆくではないか！

　さらには商品を守ろうとする工員さんが、包装に携わっているパートさんが、その得物の巻き添えとなる。兎たちが立ち去ったあとには、床には米袋の残骸と、負傷しうめき声をあげる人々と血が後には残されていた。

「皆さん！聴いてください!!」

　パティ・チャン（フェアリーのフォースナイト・f12424）は、自らの羽根で目線が合いそうな高度に浮かぶと、居合わせた猟兵達に向け、あらん限りの声を張り上げた。

「UDCアースの郊外にある精米工場が、兎の姿をした怪物に襲撃されてしまうのです！」

　地図を示しながら、説明を続けるパティ。身体のサイズがサイズなだけに、身体がまるで地図の上に置かれたピンのように見えてしまうのは、ご愛敬。
　今なら工場の入り口で食い止められ、そこまでなら守衛さんや工場の中の方々、道路などの人払いはエージェントの方々で可能だけど、間違って突破され工場内になだれ込まれたら、それは不可能。外見に惑わされる事はないよう、確実に全滅させる事！

「この兎の怪物を束ねるボスは、既に復活してしまった邪神で、工場の先にある荒れ家を根城に、配下の兎達が持ってくる貢ぎ物を待って、完全復活を目論んでいます。」
　その貢ぎ物とは？猟兵達から上がってくる疑問の声に、パティは口を開いた。
「餅米です。事にお餅が好物という邪神です。」
　完全復活を防ぐ為に、先ずは精米工場を襲撃してくる兎たちを先に退治する必要がある。大声と身振り手振りで、猟兵達にそう訴えるパティ。

　任務完了後には、精米工場のオーナーである米穀店が、近所のショッピングモールに持っている和菓子店に猟兵達を招待していただけ、お餅や赤飯等を買ったり、和菓子職人さんの技を見学したり、希望する猟兵は、現在おこなっている店頭でのお餅つきに参加する事も可能だという。

「私は、テレポートさせるまでしか出来ませんが…よろしくお願い致します！」

　パティは、最後に大きくお辞儀をし、猟兵達を見送ったのであった。

第1章 集団戦 『月の兎』

POW   :    満月 【透明化】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【殺戮捕食態】に変化させ、殺傷力を増す。 SPD   :    新月 自身と自身の装備、【騎乗している浮遊岩石】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。 WIZ   :    朔望 【油断や庇護欲】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【仲間】から、高命中力の【装備武器による一撃】を飛ばす。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

「まあ……月の兎なんて私お誂え向きの獲物ではありませんか。」
　月は狂気の象徴ですもの。

　サリア・カーティス（過去を纏い狂う・f02638）は、柔和に、まるで物語の朗読のような穏やかな口調で、そう独話した。
　敵に向けられた双眸はますます血走り、先程までの上品な表情は消え失せ、そこにいるのは、狂気を自覚しつつも戦いに赴く、人狼の姿であった。
「さぁ……一緒に暴れましょお……！」
そしてこれが。戦闘開始の合図であった。
　自らが「子」と呼ぶ屍狼に跨がり、兎の集団へ駆け出す。
　敵に向けられた双眸はますます血走り、と、先程までの上品な表情はとうに失せていた。
「さぁ、狩りの時間よぉ……！」
と、間延びした口調で口にした刹那。屍狼の強力な脚と爪は、容赦なく月の兎の胴や頭を容赦なく踏み潰していく！

　狂騒にかられた敵も、ただ脚任せに逃げるだけでは無い。自らを透明化させて、ひとまずはこの場をやり過ごそうと逃げる。しかし、サリアと「子」の四つの耳に敵うべくもなく、その命を散らしていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

　精米工場前に待機する、ティル・ライハ（好奇心の末・f04613）の興味は２つ。
　月の兎の可愛いい姿と、初めて見る「モチ」なる食物だ。
「旅団とかで飼いたい位だぜ。持っている武器が、見た目に釣り合わねぇけどさ。」
　そう一つ軽口を叩くと、まだ食したことの無い「モチ」なる食べ物がどんなものか。まだ知らぬその味覚に、軽くつばを飲み、そして月の兎の一団へ身を躍らせる。
「あの、デケェ武器が当たらねぇように倒すには？」
　ティルの作戦は。気配と足音を消して背後に回り込んで、背後を取る。
　ナイフは的確に、月の兎の急所に深々と突き刺さる！そして仲間の悲鳴に気が付いて他の兎が得物を振り上げても、もう遅い。得物を振りかぶったことにより、がら空きになったその喉笛は、ティルのナイフの格好の餌食となり、地に倒れていくのであった。

　シーフ故の鋭敏な感覚と過去の教訓からか。危険が及んだときの用心を怠たることはない。が、ティルの脚力は月の兎のそれの敵では無い。確実かつ着実に、月の兎はその数を減じていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「可愛いナリして物騒なもん振り回してるんじゃねぇよ！」
　数宮・多喜（疾走サイキックライダー・f03004）は、「宇宙カブJD-1725」の走行音を響かせる。その後ろには、別の猟兵、火狸・さつま（タヌキツネ・f03797）が座っていた。
「振り落とされないようには気を付けろよー！」
「分解しないかどうかが心配なんだが、本当に大丈夫なのかーっ？」
　普段ののんびりした口調からは程遠い、声をあげる火狸。
　少なくとも外見上は、原付と見まがうほどのぼろい宇宙バイク。兎たちの移動に勝つ前に、バイクの部品が震動に勝てるのか？火狸の心に軽い不安がよぎるが、数宮はまるで意に介せずに運転しているではないか。ああ、これは索敵や調査で違和感を与えさせすぎないように、あえて偽装をおこなっただけ、だよな？うん！と、自らを無理矢理納得させる火狸であった。
「ウサギ狩り、狐の得意とする領分。よもや勝てるとは思うなよ。」
　可愛い。けれども迷惑な兎なれば、狩らねばならぬ。これでオフリビオン対猟兵、という構図を差し引けば、兎対狐。ならば相手は被食者、有利なのは妖狐たる俺だ。眼光を鋭く輝かせるのであった。

　あとは工場前広場のどこにどれだけ月の兎が生き延びているか？
　ここまでは、精米工場にたどり着いた月の兎はいないが、工場への侵入を許したら、今までの戦果が水の泡になる。とにかく工場への侵入は許さない。これがふたりの意見だった。
「合図をしたら、あまり派手じゃ無くていいから、車体を傾けてくれないか？俺が地面に軽く足を付けるくらいに。」
「ん？ということは、何か策がある、てのかぃ？ま、考えてみれば、それなしにバイクに乗せてくれ、等と言うわけはないか。よし。アタシも暴れまくるから、片っ端にやってやろうぜ！」
　兎の一団が前方にいることを認めた数宮は、宇宙カブJD-1725のアクセルを思いっきり開ける！風がより激しく自らのメットのバイザーにぶち当たる音とともに、一筋の光が見えたような気がした。
「ルートが見えた…！食らいなっ、サイキック・ブレイカー！」
　高威力かつ高命中のサイキックエナジーが、集団に対して放たれる！それは月の兎の一団にさらなる損害と、混乱を引き起こす。
「まだまだ…ん？」

　調子良く次の相当対象を見付けようとしたその時、左脇腹のスーツが引っ張られる感覚。火狸からの合図だ。アクセルをやや緩め、大きめの弧を描くように走らせる。
軽く傾いた車体から足を離し、地面を軽く足で踏むと「それ」は現れた。
「ちょいと遊ぼうか。」
　トン、と踏みならす音と共に…その実、爆音で殆ど聞こえなかったが…愛らしい仔狐の形を成した狐火が、数宮のバイクの死角にいた殺戮捕食態と化した兎を捕らえる！それはまるで野生の狐が野兎を狩るかの如き動きだ。数宮と火狸の両名どころか、宇宙カブJD-1725に爪痕を残すことも無く地に横たわる。

　キリの無いと思われた月の兎の襲撃にも、いよいよ終わりが見えてきたのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

　ノア・コンティネント（方舟のツークフォーゲル・f03704）は、工場の塀にもたれかかっていた。門扉前で待ち伏せしていたが、ついに動くときが来た！
　彼のAI搭載型戦術ドローンからの空中目線での情報では、月の兎は既に大きくその数を減じており、残る兎も無傷の者が殆どいない。
　傍らにいる滝舘・穂刈（炊きたてご飯ヒーロー・スイハンジャー・f06740）と目配せをする。あとは、工場の門扉前で掃討して、確実に全滅させよう。
　滝舘は、炊きあがりタイマーを光らせて同意した。

「餅米であっても米は米。米に無体を働く者は、誰が許してもこのスイハンジャーが許さん！炊きたてごはんヒーロー・スイハンジャー、炊参！」
　決めポーズとともに名乗り！それが彼の戦闘開始の合図だ！戦え！スイハンジャー！

　姿なき月の兎や奇襲は、ノアとノアのドローンが五感と駆使してこれに備える。

　先に動いたのは、滝舘だった。
「ゴハンガタキアガリマシタ」
　戦場としても工場としても場にそぐわない合成音声が、響きわたる！と、炊飯器のフタが開き、炊きたてご飯が蒸気と薫りとともに現れる。もっとも、上からのぞき込めんで、炊きたてご飯の炊き上がり具合を目で確かめられる者は、そうそういまいが。
　それを食べたらまさに百人力！愛用の杓文字を使い、兎達を、ていやー！と攻撃！　月の兎は次々と動かぬ骸となっていく。

　姿を消し、脇を駆け抜けようと試みる月の兎には、ノアの耳とドローンのカメラがそれを許さない！
「お餅のために人を襲うなら、仕方ないね。」
　バトル・インテリジェンスで強化された、ノアの得物はこれを逃がさない。確実に兎たちにトドメを与えていった。
「お餅で傷つくのは、喉に詰まらせた時と、間違って杵で叩かれた時だけだよ」

　最後の力を振り絞って杵を振り上げる兎が、滝舘の右手がわから襲ってくる！が、しゃもじを頭上から叩きつけて、これを倒す！
「米に仇なす者よ、天誅を受けよ！」

　これが最後の敵だった。精米工場と餅米は守られ、邪神の完全復活は、猟兵達の頑張りで潰えたのであった、

「ちょっと、かわいそう。」
　ノアがそうつぶやいたが、それは、猟兵達の偽らざる感想かも知れない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

第2章 ボス戦 『四六七『デビルズナンバーかかし』』

POW   :    悪魔の変身(デビルバリエーション) 【巨大デビルかかし】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。 SPD   :    悪魔の竜巻(デビルトルネード) 【鋤】による素早い一撃を放つ。また、【高速回転により宙に浮く】等で身軽になれば、更に加速する。 WIZ   :    悪魔の案山子(デビルスケアクロウ) 戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【かかし】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

■貢ぎ物を待つ邪神
　工場からそう遠くない廃屋
「邪神」は、月の兎の貢ぎ物である餅米と餅を得て完全復活を果たす、はずだった。
　ところが。そこになだれ込んできたのは、意に反して猟兵達であった。

「兎は？オラのしもべの可愛い兎たちは？」
　猟兵の姿を認めるなり、上半身は屈強な体躯をした邪神が言う。

「うう…そうか。おめぇさん達が全滅させただか！」
　嘆くのは、自らの完全復活の失敗か、それとも配下の兎たちの全滅か。悲観の声をあげる邪神。

「だけんどオラは、このまんまでお終い（おしめぇ）にする気はねぇ！おめぇさん達をやっつけられる位の力くれぇは…！」
　それが戦闘開始の合図だった。

　さぁ、猟兵の皆さん。邪神を倒して世界を、餅米と餅を守るときは、今この時をおいてない！

※戦場説明※
　戦場は廃屋となった日本家屋です。
　平屋で天井の高さは標準的なもの（約2.5m）とします。

　また、床ですが一部畳や板の間の板に腐食はありますが、戦闘に支障はありません。


「これが、邪神？おもしろい形、してる。」
　ノア・コンティネント（方舟のツークフォーゲル・f03704）は、初めて見る邪神を前にそうつぶやいた。その表情は普段と変わることはない。邪神を前にしても落ち着き払っている。そう感じる者もいるであろう。実際のところは、ノア自身に聴いてみる他無いが。

その眼は、邪神の脚に向けられた。
「脚、一本だけだし、重点的に攻撃した方が良いよね。」

「なぁに、ぶつくさ言っ（ゆぅ）てるだぁ？」
　邪神は自らの姿を、巨大デビルかかしへと変化させ、上半身をノアに突き出すように迫る！
「ここで倒さないと、またお餅のあるところ、襲われる。」
　AI搭載型戦術ドローンの自立操作は、巨大デビルかかしと化した邪神の攻撃をかいくぐる。理性を失っている敵攻撃を、正確に回避し近づくことに成功した。
「おいしい食べ物は、守らないと！」
　マイナスドライバー型のクランケヴァッフェで、脚にダメージを与えられるように攻撃！が、より屈強に変化した上半身に阻まれ、そこへのダメージは与えてはいるが、真のねらいである。下半身への攻撃はなかなか届かない。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

「かかし…だと…!?」
　滝舘・穂刈（炊きたてご飯ヒーロー・スイハンジャー・f06740）もまた、邪神の姿に困惑していた一人、であった。
　お米を作る際の盟友ともいうべき存在……！
　収穫間近の稲穂を食い荒らされぬよう、物言わずたたずむその姿を、滝舘は想う。ヒーローマスクたるスイハンジャーそのものは、どこまで想っていたかまでは、操作パネルを模した顔から窺い知ることは難しかったが。

「くっ、だがしかし、愛があろうとも独占し奪うという行為を許すことはできない！」
　そうだ！餅米を、お餅を我が物としようとする、邪神を許す訳にはいかない！
　ゆけ！スイハンジャー!!頑張れ！スイハンジャー!!

　なおも邪神は、無差別攻撃を繰り返している。滝舘、もとい、スイハンジャーは、杓文字でそれを受け止める！
「米を無碍にする邪神に、そのような攻撃が通じると思ったか!!!?」
　邪神の攻撃は、滝舘に届くことはない！米への気持ちを砕くことは、決して出来えないのだ。
「おかわりいかがですかー！」
　反撃、とばかりに超高速で振るわれた、スイハンジャーの杓文字は、邪神の身を砕く！その衝撃は廃屋が震え、天井の所々からホコリまで降ってくる程であった。
「せめてこの技で、米に満たされながら散れ……！」
　
　ホコリが晴れた。
　邪神の屈強な左腕は、この一撃でへし折られていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「こんな邪神もいるもんなんだねぇ？」
　数宮・多喜（疾走サイキックライダー・f03004）は、ようやく収まったホコリの向こうにいる、邪神の姿を見て、そうつぶやいた。これで、完全復活でもしていたら、どんな姿になっていたことか。

　室内では、愛車＝宇宙カブJD-1725が使えないのが痛い。ならば？
　数宮は傍らにいる、ティル・ライハ（好奇心の末・f04613）に目配せをした。
「アタシは牽制とバックアップに回るとするよ！どうだ？協力するぜ。」
「お姉さん、それは、有難いぜ。んー、どうやらスピードバトルになりそうだな。」
　そういいつつタガーナイフを２振り、示した。

「ナイフで邪神を攻撃する。」
　そう目で数宮に訴える。
　これで、アタシのする事は決まった。
「これでキマリ、だな。じゃアタシは、足止めをするから、そのかわり…。」　
　確実に、邪神を倒してくれよな。数宮もまた、目で訴え返した。

「これきしの事で、オラがへこたれる、とでも思っただかぁ！おめぇさん達が来ないのなら、オラの方から行くど!!」
　邪神は理性を取り戻し、今度は鋤を素早く振るってくる。
「オラだって、このぐらい動けるだぁ！」
さらに、鋤を振るう速度が上がる！自らを宙に浮かせ、フットワークを使おうというのか。

「ガタイいいのに宙に浮くとかスゲェな！」
　ティルが素直に感嘆の声をあげている間、数宮は、邪神の足元が入るであろう床に、電撃の巡らせた、その場所に入る時を待っていた。
　今だ！邪神の足の先が、狙いとする場所を踏み入れたその瞬間、詠唱を始める
「ashes to ashes,dust to dust,past to past...収束せよ、サイキネティック・プリズン！」
　電撃の檻は完成し、邪神はがっちりと囚われた。
「な、何だこれは、雀よけ網でねぇか？オラ、鳥でねぇだ！」
　思わず狼狽の声をあげる邪神。
「さあさ、後はしっかりやってくんな！」

「おう！逃しはしないぜ。」
　後を託されたティルは、２振りのナイフを、狙いを付けて投げる。と、それは正確に邪神の足と頭に突き刺さる。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

「うさぎさんが好きな邪神さんなのかな？」
　おっとりとした声で、シュガー・ラビット（白くて小さなふわふわ💓・f02321）は、そうつぶやいた。

　うさぎ好きには悪い人はいないけれど…。自分自身も兎の姿持つキマイラ。その内心にモヤモヤしたものが残っているのは、隠しきれていない。名は体を表すとはいうが、その名前どころか、ロップイヤーを思わせる兎の耳と、脚を持つだけあって、どうしても月の兎に対して同情的になってしまっているのは、仕方無い事なのかも知れない。

　うさぎ好きには悪い人はいないけれど、今回はちょっとやり方が良くなかったねぇ、と。

　それでも、猟兵としてのなすべき事を思い直す。
「戦うのはあんまり得意じゃないけれど…。」
　くらえーっ！にくきゅうぱーんち！
　もふもふパワーで、既に蓄積された邪神のダメージが癒やされる、なんてことはなく、｢にくきゅうぱんち！｣は、邪神の顎を的確に捉える！もんどり打って転んでしまった。

　邪神は何とか再び立ち上がるも、もはやその眼光から生気はかなり失われている。その身を立ち上がらせているのは、倒された配下である、月の兎への想いか？餅米や餅への執念か？

　いずれにしても、猟兵達よ！邪神の凶行を止めるまであと僅か。

成功 🔵​🔵​🔴​

「辻斬り猟兵、参上だよっ！あとはあたい“たち”に任せてっ！」
　辻斬り、と周りを吃驚させるに充分な、そして「たち」とは？意味深なセリフとともに、蛇塚・レモン（叛逆する蛇神の器の娘・f05152）は、邪神の前に姿を現した。
　
「蛇神様の実力、思い知らせちゃうんだからっ！　やっちゃえ、蛇神様っ！！」
　蛇塚は身に宿し、己と心を通わせた「蛇神様」と呼ぶ存在を呼び出した。

　白い姿をした「蛇神様」は、天井にその頭をぶつける勢いで顕現し、邪神を眼下に見下し、睨み付ける。
「う、動けない。オラはカエルじゃないだ！」
　蛇に睨まれた蛙、とはよく言ったものである。
　さらには蛇の冷たい皮膚が自らの身に絡みつき、しまいには目の前で鎌首をもたげて来られては、邪神にも本来なら自らにはあり得ない感情が、その心に湧いてきた。
　それは「恐怖」というのだが。

　ところで、蛇塚自身は？これがガラガラヘビなら、彼女がどこにいるかを認めることは出来たであろうが、赤外線を視ることは出来ぬ身では、それは無理な話であった。
　邪神の視線が、完全に「蛇神様」の頭に集中している機会を、その身を光学迷彩で消し物陰で待つ。
「今だっ！」
　超霊力オーラガンの弾丸とその衝撃派は、邪神の頭を撃ち砕いた。
「も、もはや、これまでだかぁ～。せ、せめて餅を目の敵に…。」
　今際の際に、邪神が言おうとしたのは何だったのか。その機会は永久に失われた。もっとも知り得たとしても、たぶんロクな事ではなさそうだが。
「敵の残骸は薪にしよっか！」
　言うやいなや、邪神の骸へ向けられた弾丸は、その対象を燃やし尽くすのであった。
「ちょっとこれは拙くないか？」

　その炎は廃屋にまで類焼したがエージェントの暗躍により、地元新聞の一地方面のベタ記事で「火の不始末が原因か。廃屋全焼」と報じられるに留まった…のは、この時点ではまだ誰も知るよしもない。
「下手に邪神の事が世間に知られるよりかは、まぁ…ね。」
　今は勝利を祝い、労う猟兵達がそこには、いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

第3章 日常 『ショッピングモール』

POW   :    買い物を満喫する SPD   :    ウィンドウショッピング WIZ   :    イベントに参加する 👑5 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　一旦工場へ戻る猟兵達。

　先程の月の兎の骸は、既に片付けられていた。
　そして、工場の正門には、工場長とおぼしき人物が立っていた。

　どうやら、猟兵達は和菓子の視察団と言うことで、エージェントと話が付いているらしい。

　工場の近所のショッピングモールへ、会社のマイクロバスで移動しようというのだ。
　
※補足説明※　
　その場所は正門の掲示板にも広告として貼られているので、あとから追いかけて参加（第３章だけ参加）でも場所が解らないということはありません。　








「いや～、よく燃えたね～っ。あはは……、やりすぎちゃったよ……。」
「ま、被害がそれだけで済んだと割り切った方がいいか。」
　両手で顔を抑えてうずくまる、蛇塚・レモン（叛逆する蛇神の器の娘・f05152）と、工場には被害がなかったっぽいし、ね！と、話を繋げ慰める、数宮・多喜（疾走サイキックライダー・f03004）の二人。
　ノア・コンティネント（方舟のツークフォーゲル・f03704）と、ティル・ライハ（好奇心の末・f04613）の二人からやや遅れて、工場に到着したのだった。

「それでは、出発します！」
　マイクロバスのエンジン始動音とともに、ショッピングモールへ向けて出発だ。
　兎との激戦の後も、跡形もなくなって…若干の血の跡は残っているものの、「間違って狸でも轢いてしまった跡」、とでも説明できるぐらいに片付けられている。幸いエージェントによる記憶処理は、工場の受付や守衛さん等極々限られた人数で事足りた。

　所変わって、ここはショッピングモール。
　イベントスペースには、臼が据えられていて、さぁこれから餅つき開始という案配だった。
「餅つきの実演をおこないます。餅つきに参加希望される方は、１階和菓子店……の店員にお申し付けください。」
　程なくして若い女性の声で店内放送があり、蛇塚、数宮、ノアの３人が申し込みを済ませる。ティルは、美味しそうな和菓子を眺めてから見にいくぜ、と仲間に告げた。

「お餅つきだぁ～っ！」
　蛇塚は、職人さんとの息をあわせることが大事、とばかりに、コミュ力生かして早くも仲良くなっていた。
「よーしっ、気合を入れてゆくよっ！」
　ぺったん！　ぺったん！　ぺったんっ！
　リズミカルな餅をつく音が、賑やかなショッピングモールの中でも響き渡る。コツを掴んだか、そのリズムがどんどんと上がっていく。
「はい、お疲れ様でした。それでは次の方どうぞ～。」
　数宮が、蛇塚に代わって杵を握った。
「こういうのは力任せもダメだってわかっているから、テンポよくついてって…って奴さね。」
　先の蛇塚の餅つきの様をしっかと観察していたのも役立ったか、餅つく音が先程と同様に小気味良く店内に響いていった。
　次は、ノアの番だ。
「おもち、作ってみたかった。」
　口調がゆるゆるで、表情からは内心を窺い知ることは難しかった、が。
　その目は、餅つきそのものと、この後のつきたてのお餅への好奇心に、輝いていた。
「よーし、いくぞー。」
　明らかに力んでいた。杵を思いっきり臼に叩きつけようと、大きく振りかぶった所を、職人さんに止められる。
「……え、力は入れなくていい？」
　先程までとは、少しテンポこそ落ちたものの、徐々に餅をつく音はこなれたものになっていった。
「見るのと実際にやるの、やっぱり少し違うんだね。」
　先程まで和菓子を眺めていたティルは、手に小ぶりの和菓子の菓子折の入ったビニール袋を持って、餅をつく様を眺めていた。
「面白いもんが多いから飽きねぇぜ…！」
　
　発泡スチロールのトレーに、先程のお餅が、角餅の半分くらいの大きさになって振るまわれる。
「いただきまぁ～す！う～ん、やっぱり出来立ては美味しいねっ！」
「ところで、これ売ってるのあるかい？旅だ…じゃない、えーと仲間にも持って帰って喰わしてやりたいんだが。」
と、蛇塚と数宮の二人が口々に語り、
「～！おいしい…！」
と、表情はあまり変わってはいないけど、目は明らかに楽しんでいる、ノア。
「ただ食い、ってワケにゃいかねーか。」
「いえいえ。試食もできますよ。なにかお付けしましょうか？」
　ティルはきな粉餅にして貰った小ぶりのお餅をパクリ！きな粉の甘さが口に広がり、その口角は思わず上がっていた。

　猟兵達はしばし楽しい時間を過ごし、精米工場を守り切った安堵と満足感。邪神とその手下の兎退治の成功。それからお餅と、数宮とティルは、それぞれ仲間への手土産としてお餅と和菓子を土産に、ベースに帰還していったのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年01月31日 宿敵 『四六七『デビルズナンバーかかし』』 を撃破！