20
菖蒲鬼(作者 三味なずな
16


 決してあの廃寺には近づいてはならないよ。
 どれほど幻朧桜が麗しくとも。
 どれほど狂い咲く菖蒲が美しくとも。
 決して、あの廃寺に立ち入ってはならないよ。
 彼の地は逢魔が辻。
 帝都桜學府に見放された人外魔境の地。
 幻朧桜と菖蒲の花が咲き続ける、止まずの雨の地。
 彼の地に巣食うは幾多の影朧。
 大戦期の旧帝都軍が突撃部隊、『敷島組』。彼らは体内に移植された魔力炉で、悪魔(ダイモン)に近しき力をその身に宿した。
 同じく旧帝都軍が突撃部隊、『旭日組』。彼らはその身に怪奇人間の因子を宿し、人外の力を手にした。
 そして最後に、菖蒲鬼。散ることなき幻朧桜を散らしてしまう、花時雨の鬼。
 決して近付いてはならないよ。
 決して立ち入ってはならないよ。
 逢魔が辻の影朧どもは、強さを求め、いつも敵を探している。



「カチコミだよカチコミ! れいど!」
『騒がないでよ、ドリー。あなたは戦えないでしょうが』
 グリモア猟兵のドリー・ビスク(デュエットソング・f18143)が君たちの前できゃいきゃいと話し合う。
「サクラミラージュにある廃寺にね、オウマガツジってところがあるんだって!」
『要するに影朧の巣窟みたいな場所ね。帝都桜學府も匙を投げちゃうぐらい影朧が多いの』
「現地の人たちじゃ倒せないから、それじゃあ猟兵さんたちに頑張ってもらいましょー! ってことになったんだよ! お願いしまーす!」
 廃寺は街から外れた場所にある。
 一年中咲き乱れる幻朧桜と、狂い咲く菖蒲の花。しとしとと降り続ける雨は影朧の影響だと言う。
『まず最初にあなたたちを迎え撃つのは“旧帝都軍突撃隊・敷島組”。悪魔の力を手にした、大戦期の軍人さんたちね』
 悪魔変身。コウモリの翼と獣の身体を手にした隊員たちの戦闘力、そして組織的な連携は強力の一言に尽きるだろう。
 悪魔憑依。悪魔の霊体を身にまとうことで、高速移動と追尾式魔力弾の放射による一撃離脱戦法は厄介極まりない。
 悪魔大隊。ただでさえ多い隊員から、更に多い小悪魔たちが召喚される。数は力を地で行く戦法は、生半な力では押し返すことすら難しい。
「一人一人が強い上に、連携して攻撃してくるから気を付けてね!」
『各個撃破を狙ったり、連携を崩すように立ち回ったり、あとは数には数で対抗すると良いかもしれないわね』
「でもでも、注意してね! この戦いで使った戦術はきっと後に続く増援の影朧たちも観察してるから!」
『あなたたちが何かしらの対策をすれば、まず間違いなく“敷島組”に続く“旭日組”はあなたたちへの対策をして来ることは頭の片隅にでも入れておいて頂戴』
「きっと猟兵さんたちなら勝てるって信じてるよ!」
『どんなに敵が強くても、あなたたちなら平気でしょうよ』

「『それじゃあ行ってらっしゃい、猟兵さん』!」


三味なずな
 お世話になっております、三味なずなです。
 今回は真面目な依頼。サクラミラージュにある、影朧の大量発生地、逢魔が辻となった廃寺へ襲撃をかけます。

●章構成
・1章:集団戦:旧帝都軍突撃隊・敷島組隊員
 体内に移植された魔力炉の力で悪魔(に似ている)能力を手にした軍人たちです。個々の能力に秀でていることはもちろん、連携に優れています。非常に短命です。寿命を使い果たし、自滅していない限りは転生の余地はまだ残っているでしょう。

・2章:集団戦:旧帝都軍突撃隊・旭日組隊員
 体内に移植された因子によって、怪奇人間の力を手にした軍人さんたちです。敷島組との戦いを見て、あなたたちへ何かしらの対策を練ったりあなたたちの戦術を真似て来ることがあります。非常に短命です。寿命を使い果たし、自滅していない限りは転生の余地はまだ残っているでしょう。

・3章:ボス戦:花時雨の菖蒲鬼
 妖刀を手にした青年です。噂では呪詛の雨を降らし、幻朧桜さえ散らしてしまうとされています。詳細不明。

 また、なずなのマスターページにアドリブ度などの便利な記号がございます。よろしければご参考下さい。

 あなたは何のために強くなり、何のために戦うのでしょうか。
 皆様のプレイングをお待ちしております!
213




第1章 集団戦 『旧帝都軍突撃隊・敷島組隊員』

POW ●悪魔変身(ダイモン・トランスフォーム)
【悪魔(ダイモン)の力】に覚醒して【コウモリの翼と獣の肉体を持った悪魔の姿】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD ●悪魔憑依(ダイモン・ポゼッション)
自身に【悪魔(ダイモン)の姿をした霊体】をまとい、高速移動と【敵を追尾する魔力弾】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ ●悪魔大隊(ダイモン・バタリオン)
自身の【寿命】を代償に、【レベル×1体の小型悪魔達】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【手足の爪や口から吐く炎】で戦う。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 旧帝都軍突撃隊・敷島組。
 かつての大戦で猛威を振るった、悪魔の如き力を宿せし兵(つわもの)ども。
 しかして、明るみに出た非人道的な実験がためにその存在を歴史から抹消させられたオブリビオン。
 彼らは何に命を捧げ、武勇を誇ったのか。
 それはきっと、同じ戦場に身を置く者にしかわからないことだろう。



 猟兵たちが転移すると、戦場となる廃寺には話の通り雨が降っていた。
 穏やかな、しとしとと降る小雨だ。
『敵襲、敵襲ゥ――ッ!』
 つんざくような叫び声は、その穏やかな光景にまったくそぐわない。黒い軍服姿の影朧たちが、軍刀を手に猟兵たちの前へと立ち塞がる。
『我ら帝都軍突撃隊! 我らが命を■■■■に捧げ、武威を示せ!』
 雨の中で振り上げられた軍刀。
 陽の光も浴びず、輝きも放たないそれは、暴力のための凶器として振り下ろされる。
『突撃ィ――ッ!』
 軍人たちは人としての姿を捨て、その異形を次々に発現させ始める。
 ぬかるむ地面を踏み締め、彼らは己が命を擲って突撃を始める。
シャルロット・クリスティア
……その力は、果たして何のためのものだったんでしょうね。
まぁ……良いでしょう。
転生というものが幸福かは私にはわかりかねます。なので、ただ仕留めさせていただく。

速い……ですが、素早く飛び回る相手には、それなりの対策をすればいいものです。
高速で動けども、反応速度には限界がある。移動先の予測は可能です。あとはその予測できた移動先に、相手よりも速く散弾を打ち込めばいい。
散弾の一発一発に破魔の術式を刻んだ特別製です。これ、作るの手間なんですが……まぁ、必要経費と思うことにしましょうか。

腕前の披露は追々に。まだ逢魔が辻の攻略は始まったばかり。楽できるところは楽していきましょう。


 その力は、果たして何のためのものだったのだろうか。
 シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)は突撃して来る影朧たちを見ながら思考する。
 その身を異形にまで変えて、生命力を摩耗してまで敵を撃滅せんとするその覚悟は生半なものではないはずだ。何か、大義のような戦う理由が彼らには必ずあって然るべきだ。
 かつて、仇討ちのために自分が猟兵として力を手にしたのと同じように。
 銃把を握り締める。強く、強く。
「……転生というものが幸福かは、私にはわかりかねます」
 私はこの世界の人ではないから。
 私の世界には、転生というものがなかったから。
「――なので、ただ仕留めさせていただきます」
 左足のホルスターから引き抜かれるのはソードオフショットガン。
 素早く装填し、構えて――
 発砲。
 雨空へと向けられた銃口が、轟音と共に散弾を撒き散らす。
 それはまるで放り投げられた網のように宙を泳ぎ、そこへ吸い込まれるようにして高速飛行する影朧に命中する。
 高速で動けども、敵の反応速度には限度がある。慣性の法則と敵の攻撃するであろうタイミングを計算し、的確に移動先へ“偏差撃ち”をすれば良い。――それがシャルロットの考えた敵への対策だった。
「まずは一体」
 悲鳴と共に影朧の一人が地に墜ちた。身に纏っていた霊体は霧散し、墜落の衝撃で身動きができていない。
 その姿に目もくれず、果敢に影朧たちは魔力弾を放射する。狙いが滅茶苦茶なはずのそれらは、うねるような軌道で回避行動に移るシャルロットへと襲いかかる。
「追尾式……っ!」
 避けきれない。判断するや否や、シャルロットは散弾を撃ち放つ。敵に、ではない。
 魔力弾へだ。
 散弾が壁のように拡散され、魔力弾が嘘のように掻き消える。

 アンチマジック・バレット
「 魔素破却弾 。これ、結構作るの手間なんですけどね……」

 できる限り敵を無力化するのに使いたいが、自分がやられてしまっては元も子もない。必要経費、必要経費、と呟きながら左足から次の散弾を抜き取り、素早く再装填する。そうする間にも、第二波の敵が急速接近して来る。
「序盤は温存と思っていましたが……」
 接近する敵へ散弾を撃ち込む。一機撃墜。続く魔力弾を散弾の壁でやり過ごし、再び再装填。
 想像以上に敵の統率が取れている。消耗戦としてのキルレシオはこちらが上だが――敵の数があまりに多い。
「手数が足りない分は要努力、ですね……」
 長期化すればするほど、この戦いは苦しくなる。
「……死にたくないなら、一体でも多く倒さなきゃ」
 散弾銃を構え、勇ましく突撃してくる隊員の一人へ照準する。
 ふと、男が浮かべる必死の形相がシャルロットの青い瞳に映る。
 なぜ、死ぬとわかっていて彼らは戦いに身を投じるのだろうか。
 疑問に応じる答えはない。
 ただ、シャルロットは引き金を引くだけだった。
成功 🔵🔵🔴

化野・花鵺


「軍人さんんん?」
狐、聞こえた単語に反応しにそっと説明会場に紛れ込んだ

「せぇふくいいよね最高だよねぇ、絶対みんな5割増にカッコ良くなると思うのにぃ。世界はもっとせぇふくで満ちあふれてもいいと思うぅ」
狐、いつもの如く軍人以外の単語をスルーした

「よっしゃぁあ!せぇふく来たぁ!」
狐、敵見て両拳を握り締め叫んだ
「実験部隊だと軍服ないところもあったからぁ…うれしぃぃ」
「剣気招来」使用し敵も悪魔も等しく針山状態に
敵の攻撃は野生の勘で回避し衝撃波で弾きオーラ防御で防ぐ


「ヌシらは好んでそこに居るのだろうが。望んで踏み出せば変われたものを。故に妾が喰ろうてくれる。妾の糧となるのを喜ぶが良い、ホーッホッホッホ」


「よっしゃぁあ! せぇふく来たぁ!」
 化野・花鵺(制服フェチの妖狐・f25740)は制服狂いである。
 幼少期に制服を着た猟兵に助けられてから、とにかく制服というものが好きになった。
「実験部隊だと軍服ないところもあったからぁ……。うれしぃぃ」
 整然と並んで武器を構え、戦闘を開始する軍人の影朧たちを前に、花鵺は悩ましげに吐息を漏らす。
「せぇふくいいよね、最高だよねぇ。絶対みんな5割増にカッコ良くなると思うのにぃ」
 なぜこんなにカッコ良いのに制服はみんなに着られないのだろうか。世界はもっと制服で満ち溢れているぐらいで良いのに――。
 そんな思考を妨げるように飛来したのは、小さな悪魔たちだった。
 けけけ、と癇に障る笑い声を上げながら、小悪魔たちはその口から炎を吹く。炎は未だ夢見心地な花鵺へと襲いかかり――
 防がれた。
 何か壁があるかのように炎の息吹は拡散し、その威力を発揮できないままに霧消する。
 見れば、身悶えする花鵺の手にはほんのりと光る霊符が握られていた。結界、そしてそこから生じる衝撃波による拡散による防御だ。
「さって、それじゃあ――文句を言われぬ内に、頼まれごとをこなさなくてはのう」
 花鵺の雰囲気が変わる。霊符から供給される呪力が練り上げられ、式となって剣と化す。
「剣気招来、急急如律令」
 宙に浮かぶ剣は徐々にその輪郭を曖昧にしたかと思うと、次の瞬間にはまるで複製されたかのように無数の剣が現れる。
 剣はまるで壁のようになって襲い来る小悪魔たちの攻撃を防ぐと、花鵺の合図と共に宙へと飛翔し、散開した。
 無数の剣が宙を飛ぶ。横から、下から、上から、後ろから――縦横無尽に飛んでいく。
『臆するな! 所詮は虚仮威し、悪魔を更に召喚しろ! 数には数で対抗するのだ!』
「ほう。虚仮威しか否か、貴様がその身で試してみるがよかろう」
 花鵺が言葉を紡ぐと、指揮官の兵士たちを鼓舞する声が苦悶の叫びへと変わった。突き刺さる剣は破魔の刃。悪魔の魔力炉を宿した影朧どもにはさぞかしよく効くことだろう。もちろん、あの小悪魔どもにも。
「兵(つわもの)よ。なにゆえにこの地に居座る。軍人とはすなわち戦うもの。このような地に固執したとて、何の意味もなかろうに」
 悲鳴、怒声、金属音。それらが嵐となって響く死地に、花鵺の問いかけは呑まれて消えた。
 嘆息する。
 制服とは、着用者の担う役割の自覚を促す意味もある。だというのに、影朧と化してその自覚を喪ってしまっているのだとしたら――それは、制服がもたらしてくれた物が無へ帰してしまったということだ。
「……ヌシらは好んでそこに居るのだろうが、望んで踏み出せば変われただろうに」
 問いかけよりも小さな呟きは、風に吹かれた灯火のようにすぐに消えてしまった。
「――哀れなヌシらを妾が喰ろうてくれる。妾の糧となり、再び転生の輪へ戻れることを喜ぶが良い」
 幾何学模様を描くように飛翔する剣の嵐の中で、花鵺は霊符を構えるのだった。
成功 🔵🔵🔴

馬県・義透


四人の複合型悪霊。
今回の表出『侵す者』武の天才
一人称:わし/わしら 豪快古風
対応武器:黒燭炎

…今のようになってもここにいる『わしら』がいうのもあれじゃが。憐れだの。
しかし、『わし』も強者との戦いを望む故に、気持ちはわかる!

2回攻撃…なぎ払いからの【それは火のように】、もしくは刺突を主体とする。連携を崩して各個撃破の狙いだの。
相手からの攻撃は見切り、第六感を使用して回避を試みる。受けても激痛耐性で耐えるがの。

…さて、これで『近接主体。一対一が得意』と思わせられたらいいんじゃが。


「憐れだのう」
 馬県・義透(多重人格者の悪霊・f28057)の口から、“侵す者”の言葉が漏れ出る。
「斯様な有様の“わしら”が言えた義理でもなかろうが、実に憐れだのう」
 男は悪霊だった。4つの霊が合わさり、混ざり、一つの身体を得た。複合型悪霊としての身体を。
「しかし、“わし”とてその気持ちはわかる! 強者(つわもの)との戦いを望む、これこそが武人としての誉れにして本懐!」
 なればこそ、武人が戦さ場で逢うてやることはただ一つのみ。
 黒の短槍を手に、悪霊は影朧へ向けて大音声を放つ。
「さあ、死合おうぞ! 立つ処は違えども、我ら此岸へ黄泉帰った死者同士、存分に愉しもうではないかッ!」
 おお、と戦さ場に雄叫びが上がる。
 悪霊が、影朧が、己を鼓舞しながら敵を撃滅せんと衝突する。
「はははっ! まるで物の怪憑き!」
 放つ刺突が獣の肉体を得た隊員の一人の身体を貫くが、引き抜こうにも影朧はその柄を両手で掴んで離さない。自分が敵の得物を封じる間に、仲間に攻撃させようと言うのだ。
「尋常ならざるその膂力、その胆力――実に天晴、実に脅威! なれど!」
 裂帛の気勢と共に短槍を引き抜くのではなく、下へ叩きつけるように振るう。
 みし、とヒビが入るような音の次に、割れるような、砕けるような音が続いた。砂塵が舞うその先には、地が裂けたかのような、小さなクレーターがあった。
 短槍を振るって、貫いた影朧ごと地を割ったのだ。致命打を受けて黒い塵へと還った影朧を振り払うように、義透は短槍を振り回す。
「わしの“侵略”は火の如し。揺らめく火はいかなる場所へも入り込み、あらゆるものを駆逐するッ!」
 短槍を構え直す悪霊の口元に刻まれるのは、愉しむような笑み。
 雄叫びと共に、短槍が薙ぎ払われる。影朧の爪が、牙がその身を引き裂こうとも、武人は敵を一体一体薙ぎ倒す。
「――さあ、わしの火に抗しうる者からかかって来いッ!」
成功 🔵🔵🔴

荒谷・ひかる
数で攻めてくる敵に、この天候。
……わたしたちにとっては、とても戦いやすい環境ですね。
行きましょう、精霊さん。

【水の精霊さん】発動
降っている雨、屋根や樹木に滴る雫、地面に広がる水溜りに泥濘
それら全ての「水」を精霊さんに掌握してもらい、敵群を攻撃
雨は彼らの目や鼻を直接打ち、泥濘はより深く足元を掬い戦いをままならなくさせ
高圧放水で以て悪魔の口腔を穿ち、炎を封じると共に溺れさせてやりましょう
それでも数が減らないのなら、周辺の水を集めてぶつけ、津波の如く押し流して片付けます

その命を棄てる覚悟が、今の平和な時代へと至る一助となったのです。
貴方たちの献身に、感謝を。
そしてどうか、貴方たちの魂に安らぎを。


 しとしと、しとしと。
 啜り泣くように降り続ける雨は、止む気配がまったくしない。
 雨は地をぬかるませ、体温を奪い、集中力を削ぐ。戦場において、雨ほどに厄介なものもない。
「――来て、精霊さん」
 荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)は呟きと共に精霊杖を構える。杖に収められた精霊石の、水の紋章が輝くと同時に出てきたのは、彼女が絆を結んだ水の精霊たちだ。
「水を集めて下さい。ありったけの水を。わたしたちは、それで戦います」
 戦う者たちにとってこの天候は厄介で不都合だ。だからこそ、ひかるはこの天候を利用する。
 ひかるの要請に応じた精霊たちは、周囲を飛び回って水を集め始める。降りしきる雨水、樹木や花に伝う雫、地面に広がる水溜りや泥濘――この戦場のありとあらゆる水へ干渉し、支配下に置いていく。
 だが、その速度は戦場においてはお世辞にも早いとは言えない。ゼロから精霊たちに環境を掌握させるには、それなりの時間がかかる。その間、ひかるの打てる手立ては少ない。
『ケケケケッ!』
 戦場を飛び交う大量の小悪魔たちが爪を突き立て、炎を吐いて襲いかかってくる。
 銃声。ひかりの手に握られた精霊銃が飛来する小悪魔を撃ち落とす。が、まるで手数が足りない。まだ幼いと言って良い彼女の身体能力では敵の攻撃を避け続けるのは難しく、敵を倒し続けるには脆弱過ぎた。
「大丈夫です、大丈夫……。まだ、やれます!」
 それでもひかりは精霊たちを、あるいは自身を鼓舞するように呟き続ける。懸命に銃を撃ち、水の精霊たちのために時を稼ぐ。
 転びそうになりながら小悪魔たちの爪から逃れ、炎を防ごうとして――
 横から飛来した水が、小悪魔の炎を消した。
「精霊さん……!」
 十分な量の水を支配下に置いた水の精霊たちがひかるの周囲に集まっていく。守るように、あるいは励ますように。
「行きましょう。――やりましょう、わたしたちにできることを!」
 ひかるの言葉に応じるように、水の精霊たちは攻撃を始めた。水の壁は小悪魔たちの爪や炎を防ぎきり、高圧の水鉄砲が小悪魔たちを追い払う。
 逃げ惑う小悪魔たちの群れの向こう側に、影朧の姿が見えた。小悪魔たちを呼び寄せた召喚者たちだろう。
 彼らはその寿命を、生命力を犠牲に小悪魔たちを呼び寄せている。他の影朧たちも、その寿命を犠牲にして死力を尽くして戦っている。
「……その命を棄てる覚悟が、今の平和な時代へと至る一助となったのですね」
 猟兵として戦う中で、ひかるも何度となく見てきた光景だ。帝竜戦役で、アルダワ魔王戦争で、アースクライシスで、バトルオブフラワーズで、銀河帝国攻略戦で――多くの戦場で、命を棄てる覚悟を決めた者たちが戦ってきた。そして、世界に平和をもたらした。この一つの国家に統一された、サクラミラージュの世界のように。
「――貴方たちの献身に、感謝を。そしてどうか、貴方たちの魂に安らぎを」
 祈るような言葉の直後に、水の精霊たちが輝きを放つ。
 いくつもの水の奔流が、まるで大きな波のように敵へと放たれる。
 水の向こう側に見えた影朧の姿は、滲んで消えて――
 後に残ったものは、何もなかった。
成功 🔵🔵🔴

スイカ・パッフェルベル

フン。魔力炉か
…良い記憶力は素晴らしいが、忘れる能力は一層偉大である
それを持って尚、滅びた事実に思考を傾けられぬならば
ただ繰り返すのみよ

常に全力魔法だ。加減する理由は無かろう
即席魔杖S1を片手に、M1・I1を周囲に浮かべ操作
I1で敵陣を幻覚に陥れ…

ありふれたユーベルコードと侮ってくれるなよ
かのラーマーヤナに記されしアグネヤストラの如き破壊の光景
猟兵によっては容易に成し得るものだぞ
…体験させてやる

幻覚→ユベコの流れでボロボロにした敵陣にM1を撃ち込んでいく
概ねそのように。合間に魔杖の補充もしておくか
魔力の切れた魔杖は防御に使おう

力求むるならば、決して過去に留まるべからず
時の流れにその身を委ねよ


 降りしきる雨を、大きな三角帽子が受け止めていた。
 帽子の鍔を上げて、スイカ・パッフェルベル(思索する大魔道・f27487)は影朧たちを見やる。人工的な魔力の流れ。魔力炉の存在を、影朧たちの中からかすかにだが感じ取れた。
「……良い記憶力は素晴らしいが、忘れる能力は一層偉大である」
 一体誰の言葉だったか。手垢に塗れたその言葉がふと頭に浮かんできて、スイカは吐息した。忘却はよりよき前進を生む、という言葉もついでに連想した。
「忘れ去ってなお滅びた事実に思考を傾けられぬならば、ただ繰り返すのみよ」
 忘却の名を冠しながら、前進できずにいる彼らの姿はあまりにも皮肉が過ぎていて。彼女の目には憐れに映っただろうか。
『大隊を展開せよ!』
「加減する理由は無いな」
 己の生命力を犠牲に影朧たちが小悪魔の群れを展開する。圧倒的な多勢を前にして、しかしスイカは怯むことなく即席魔杖を展開し、構えた。
 まず最初に使われたのは、彼女が“即席魔杖I1”と呼ぶ幻覚魔法だ。敵陣へと放たれたそれはその効力を遺憾なく発揮し、小悪魔たちを前後不覚に陥れる。
 続けざまに紡がれるのは、ごく基礎的な攻撃魔法“ウィザード・ミサイル”。大量に展開された炎の矢を、スイカは敵陣めがけて一斉射する。
「ありふれたユーベルコードだと侮ってくれるなよ。猟兵にとって、かのラーマーヤナに記されしアグネヤストラの如き破壊の光景を再演することはそう難しいことではない」
 空に浮かぶのは、純粋な魔力を成形した魔法の矢。一つ一つは大した威力を持たないが――
「それを今、身をもって体験させてやろう」
 スイカの有する膨大な魔力を注がれたそれは、主力と呼べるほどの火力に化ける。
 言うなればそれは魔力の奔流。純粋な力の嵐に呑まれた小悪魔たちはなす術なく消滅させられる。
 次なる即席魔杖へと魔力を充填しながら、スイカは次なる魔法の矢を展開する。
「力求むるならば、決して過去に留まるべからず」
 それは“学び直し”の途上にあるスイカが旨とする言葉であり、真理であった。過去に留まる限り、人は前進することができない。
 だからこそ――
「時の流れにその身を委ねよ」
 数多の魔法を修めた彼女の言葉は、あるいは過去の自分を戒めるような響きだったか。
 それとも、これから転生するであろう影朧たちへと贈ったものか。
 それは彼女にしかわからないことだ。
成功 🔵🔵🔴