菖蒲鬼(作者 三味なずな
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#サクラミラージュ  #逢魔が辻 


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#逢魔が辻


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 決してあの廃寺には近づいてはならないよ。
 どれほど幻朧桜が麗しくとも。
 どれほど狂い咲く菖蒲が美しくとも。
 決して、あの廃寺に立ち入ってはならないよ。
 彼の地は逢魔が辻。
 帝都桜學府に見放された人外魔境の地。
 幻朧桜と菖蒲の花が咲き続ける、止まずの雨の地。
 彼の地に巣食うは幾多の影朧。
 大戦期の旧帝都軍が突撃部隊、『敷島組』。彼らは体内に移植された魔力炉で、悪魔(ダイモン)に近しき力をその身に宿した。
 同じく旧帝都軍が突撃部隊、『旭日組』。彼らはその身に怪奇人間の因子を宿し、人外の力を手にした。
 そして最後に、菖蒲鬼。散ることなき幻朧桜を散らしてしまう、花時雨の鬼。
 決して近付いてはならないよ。
 決して立ち入ってはならないよ。
 逢魔が辻の影朧どもは、強さを求め、いつも敵を探している。



「カチコミだよカチコミ! れいど!」
『騒がないでよ、ドリー。あなたは戦えないでしょうが』
 グリモア猟兵のドリー・ビスク(デュエットソング・f18143)が君たちの前できゃいきゃいと話し合う。
「サクラミラージュにある廃寺にね、オウマガツジってところがあるんだって!」
『要するに影朧の巣窟みたいな場所ね。帝都桜學府も匙を投げちゃうぐらい影朧が多いの』
「現地の人たちじゃ倒せないから、それじゃあ猟兵さんたちに頑張ってもらいましょー! ってことになったんだよ! お願いしまーす!」
 廃寺は街から外れた場所にある。
 一年中咲き乱れる幻朧桜と、狂い咲く菖蒲の花。しとしとと降り続ける雨は影朧の影響だと言う。
『まず最初にあなたたちを迎え撃つのは“旧帝都軍突撃隊・敷島組”。悪魔の力を手にした、大戦期の軍人さんたちね』
 悪魔変身。コウモリの翼と獣の身体を手にした隊員たちの戦闘力、そして組織的な連携は強力の一言に尽きるだろう。
 悪魔憑依。悪魔の霊体を身にまとうことで、高速移動と追尾式魔力弾の放射による一撃離脱戦法は厄介極まりない。
 悪魔大隊。ただでさえ多い隊員から、更に多い小悪魔たちが召喚される。数は力を地で行く戦法は、生半な力では押し返すことすら難しい。
「一人一人が強い上に、連携して攻撃してくるから気を付けてね!」
『各個撃破を狙ったり、連携を崩すように立ち回ったり、あとは数には数で対抗すると良いかもしれないわね』
「でもでも、注意してね! この戦いで使った戦術はきっと後に続く増援の影朧たちも観察してるから!」
『あなたたちが何かしらの対策をすれば、まず間違いなく“敷島組”に続く“旭日組”はあなたたちへの対策をして来ることは頭の片隅にでも入れておいて頂戴』
「きっと猟兵さんたちなら勝てるって信じてるよ!」
『どんなに敵が強くても、あなたたちなら平気でしょうよ』

「『それじゃあ行ってらっしゃい、猟兵さん』!」


三味なずな
 お世話になっております、三味なずなです。
 今回は真面目な依頼。サクラミラージュにある、影朧の大量発生地、逢魔が辻となった廃寺へ襲撃をかけます。

●章構成
・1章:集団戦:旧帝都軍突撃隊・敷島組隊員
 体内に移植された魔力炉の力で悪魔(に似ている)能力を手にした軍人たちです。個々の能力に秀でていることはもちろん、連携に優れています。非常に短命です。寿命を使い果たし、自滅していない限りは転生の余地はまだ残っているでしょう。

・2章:集団戦:旧帝都軍突撃隊・旭日組隊員
 体内に移植された因子によって、怪奇人間の力を手にした軍人さんたちです。敷島組との戦いを見て、あなたたちへ何かしらの対策を練ったりあなたたちの戦術を真似て来ることがあります。非常に短命です。寿命を使い果たし、自滅していない限りは転生の余地はまだ残っているでしょう。

・3章:ボス戦:花時雨の菖蒲鬼
 妖刀を手にした青年です。噂では呪詛の雨を降らし、幻朧桜さえ散らしてしまうとされています。詳細不明。

 また、なずなのマスターページにアドリブ度などの便利な記号がございます。よろしければご参考下さい。

 あなたは何のために強くなり、何のために戦うのでしょうか。
 皆様のプレイングをお待ちしております!
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第1章 集団戦 『旧帝都軍突撃隊・敷島組隊員』

POW ●悪魔変身(ダイモン・トランスフォーム)
【悪魔(ダイモン)の力】に覚醒して【コウモリの翼と獣の肉体を持った悪魔の姿】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD ●悪魔憑依(ダイモン・ポゼッション)
自身に【悪魔(ダイモン)の姿をした霊体】をまとい、高速移動と【敵を追尾する魔力弾】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ ●悪魔大隊(ダイモン・バタリオン)
自身の【寿命】を代償に、【レベル×1体の小型悪魔達】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【手足の爪や口から吐く炎】で戦う。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 旧帝都軍突撃隊・敷島組。
 かつての大戦で猛威を振るった、悪魔の如き力を宿せし兵(つわもの)ども。
 しかして、明るみに出た非人道的な実験がためにその存在を歴史から抹消させられたオブリビオン。
 彼らは何に命を捧げ、武勇を誇ったのか。
 それはきっと、同じ戦場に身を置く者にしかわからないことだろう。



 猟兵たちが転移すると、戦場となる廃寺には話の通り雨が降っていた。
 穏やかな、しとしとと降る小雨だ。
『敵襲、敵襲ゥ――ッ!』
 つんざくような叫び声は、その穏やかな光景にまったくそぐわない。黒い軍服姿の影朧たちが、軍刀を手に猟兵たちの前へと立ち塞がる。
『我ら帝都軍突撃隊! 我らが命を■■■■に捧げ、武威を示せ!』
 雨の中で振り上げられた軍刀。
 陽の光も浴びず、輝きも放たないそれは、暴力のための凶器として振り下ろされる。
『突撃ィ――ッ!』
 軍人たちは人としての姿を捨て、その異形を次々に発現させ始める。
 ぬかるむ地面を踏み締め、彼らは己が命を擲って突撃を始める。
シャルロット・クリスティア
……その力は、果たして何のためのものだったんでしょうね。
まぁ……良いでしょう。
転生というものが幸福かは私にはわかりかねます。なので、ただ仕留めさせていただく。

速い……ですが、素早く飛び回る相手には、それなりの対策をすればいいものです。
高速で動けども、反応速度には限界がある。移動先の予測は可能です。あとはその予測できた移動先に、相手よりも速く散弾を打ち込めばいい。
散弾の一発一発に破魔の術式を刻んだ特別製です。これ、作るの手間なんですが……まぁ、必要経費と思うことにしましょうか。

腕前の披露は追々に。まだ逢魔が辻の攻略は始まったばかり。楽できるところは楽していきましょう。


 その力は、果たして何のためのものだったのだろうか。
 シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)は突撃して来る影朧たちを見ながら思考する。
 その身を異形にまで変えて、生命力を摩耗してまで敵を撃滅せんとするその覚悟は生半なものではないはずだ。何か、大義のような戦う理由が彼らには必ずあって然るべきだ。
 かつて、仇討ちのために自分が猟兵として力を手にしたのと同じように。
 銃把を握り締める。強く、強く。
「……転生というものが幸福かは、私にはわかりかねます」
 私はこの世界の人ではないから。
 私の世界には、転生というものがなかったから。
「――なので、ただ仕留めさせていただきます」
 左足のホルスターから引き抜かれるのはソードオフショットガン。
 素早く装填し、構えて――
 発砲。
 雨空へと向けられた銃口が、轟音と共に散弾を撒き散らす。
 それはまるで放り投げられた網のように宙を泳ぎ、そこへ吸い込まれるようにして高速飛行する影朧に命中する。
 高速で動けども、敵の反応速度には限度がある。慣性の法則と敵の攻撃するであろうタイミングを計算し、的確に移動先へ“偏差撃ち”をすれば良い。――それがシャルロットの考えた敵への対策だった。
「まずは一体」
 悲鳴と共に影朧の一人が地に墜ちた。身に纏っていた霊体は霧散し、墜落の衝撃で身動きができていない。
 その姿に目もくれず、果敢に影朧たちは魔力弾を放射する。狙いが滅茶苦茶なはずのそれらは、うねるような軌道で回避行動に移るシャルロットへと襲いかかる。
「追尾式……っ!」
 避けきれない。判断するや否や、シャルロットは散弾を撃ち放つ。敵に、ではない。
 魔力弾へだ。
 散弾が壁のように拡散され、魔力弾が嘘のように掻き消える。

 アンチマジック・バレット
「 魔素破却弾 。これ、結構作るの手間なんですけどね……」

 できる限り敵を無力化するのに使いたいが、自分がやられてしまっては元も子もない。必要経費、必要経費、と呟きながら左足から次の散弾を抜き取り、素早く再装填する。そうする間にも、第二波の敵が急速接近して来る。
「序盤は温存と思っていましたが……」
 接近する敵へ散弾を撃ち込む。一機撃墜。続く魔力弾を散弾の壁でやり過ごし、再び再装填。
 想像以上に敵の統率が取れている。消耗戦としてのキルレシオはこちらが上だが――敵の数があまりに多い。
「手数が足りない分は要努力、ですね……」
 長期化すればするほど、この戦いは苦しくなる。
「……死にたくないなら、一体でも多く倒さなきゃ」
 散弾銃を構え、勇ましく突撃してくる隊員の一人へ照準する。
 ふと、男が浮かべる必死の形相がシャルロットの青い瞳に映る。
 なぜ、死ぬとわかっていて彼らは戦いに身を投じるのだろうか。
 疑問に応じる答えはない。
 ただ、シャルロットは引き金を引くだけだった。
成功 🔵🔵🔴

化野・花鵺


「軍人さんんん?」
狐、聞こえた単語に反応しにそっと説明会場に紛れ込んだ

「せぇふくいいよね最高だよねぇ、絶対みんな5割増にカッコ良くなると思うのにぃ。世界はもっとせぇふくで満ちあふれてもいいと思うぅ」
狐、いつもの如く軍人以外の単語をスルーした

「よっしゃぁあ!せぇふく来たぁ!」
狐、敵見て両拳を握り締め叫んだ
「実験部隊だと軍服ないところもあったからぁ…うれしぃぃ」
「剣気招来」使用し敵も悪魔も等しく針山状態に
敵の攻撃は野生の勘で回避し衝撃波で弾きオーラ防御で防ぐ


「ヌシらは好んでそこに居るのだろうが。望んで踏み出せば変われたものを。故に妾が喰ろうてくれる。妾の糧となるのを喜ぶが良い、ホーッホッホッホ」


「よっしゃぁあ! せぇふく来たぁ!」
 化野・花鵺(制服フェチの妖狐・f25740)は制服狂いである。
 幼少期に制服を着た猟兵に助けられてから、とにかく制服というものが好きになった。
「実験部隊だと軍服ないところもあったからぁ……。うれしぃぃ」
 整然と並んで武器を構え、戦闘を開始する軍人の影朧たちを前に、花鵺は悩ましげに吐息を漏らす。
「せぇふくいいよね、最高だよねぇ。絶対みんな5割増にカッコ良くなると思うのにぃ」
 なぜこんなにカッコ良いのに制服はみんなに着られないのだろうか。世界はもっと制服で満ち溢れているぐらいで良いのに――。
 そんな思考を妨げるように飛来したのは、小さな悪魔たちだった。
 けけけ、と癇に障る笑い声を上げながら、小悪魔たちはその口から炎を吹く。炎は未だ夢見心地な花鵺へと襲いかかり――
 防がれた。
 何か壁があるかのように炎の息吹は拡散し、その威力を発揮できないままに霧消する。
 見れば、身悶えする花鵺の手にはほんのりと光る霊符が握られていた。結界、そしてそこから生じる衝撃波による拡散による防御だ。
「さって、それじゃあ――文句を言われぬ内に、頼まれごとをこなさなくてはのう」
 花鵺の雰囲気が変わる。霊符から供給される呪力が練り上げられ、式となって剣と化す。
「剣気招来、急急如律令」
 宙に浮かぶ剣は徐々にその輪郭を曖昧にしたかと思うと、次の瞬間にはまるで複製されたかのように無数の剣が現れる。
 剣はまるで壁のようになって襲い来る小悪魔たちの攻撃を防ぐと、花鵺の合図と共に宙へと飛翔し、散開した。
 無数の剣が宙を飛ぶ。横から、下から、上から、後ろから――縦横無尽に飛んでいく。
『臆するな! 所詮は虚仮威し、悪魔を更に召喚しろ! 数には数で対抗するのだ!』
「ほう。虚仮威しか否か、貴様がその身で試してみるがよかろう」
 花鵺が言葉を紡ぐと、指揮官の兵士たちを鼓舞する声が苦悶の叫びへと変わった。突き刺さる剣は破魔の刃。悪魔の魔力炉を宿した影朧どもにはさぞかしよく効くことだろう。もちろん、あの小悪魔どもにも。
「兵(つわもの)よ。なにゆえにこの地に居座る。軍人とはすなわち戦うもの。このような地に固執したとて、何の意味もなかろうに」
 悲鳴、怒声、金属音。それらが嵐となって響く死地に、花鵺の問いかけは呑まれて消えた。
 嘆息する。
 制服とは、着用者の担う役割の自覚を促す意味もある。だというのに、影朧と化してその自覚を喪ってしまっているのだとしたら――それは、制服がもたらしてくれた物が無へ帰してしまったということだ。
「……ヌシらは好んでそこに居るのだろうが、望んで踏み出せば変われただろうに」
 問いかけよりも小さな呟きは、風に吹かれた灯火のようにすぐに消えてしまった。
「――哀れなヌシらを妾が喰ろうてくれる。妾の糧となり、再び転生の輪へ戻れることを喜ぶが良い」
 幾何学模様を描くように飛翔する剣の嵐の中で、花鵺は霊符を構えるのだった。
成功 🔵🔵🔴

馬県・義透


四人の複合型悪霊。
今回の表出『侵す者』武の天才
一人称:わし/わしら 豪快古風
対応武器:黒燭炎

…今のようになってもここにいる『わしら』がいうのもあれじゃが。憐れだの。
しかし、『わし』も強者との戦いを望む故に、気持ちはわかる!

2回攻撃…なぎ払いからの【それは火のように】、もしくは刺突を主体とする。連携を崩して各個撃破の狙いだの。
相手からの攻撃は見切り、第六感を使用して回避を試みる。受けても激痛耐性で耐えるがの。

…さて、これで『近接主体。一対一が得意』と思わせられたらいいんじゃが。


「憐れだのう」
 馬県・義透(多重人格者の悪霊・f28057)の口から、“侵す者”の言葉が漏れ出る。
「斯様な有様の“わしら”が言えた義理でもなかろうが、実に憐れだのう」
 男は悪霊だった。4つの霊が合わさり、混ざり、一つの身体を得た。複合型悪霊としての身体を。
「しかし、“わし”とてその気持ちはわかる! 強者(つわもの)との戦いを望む、これこそが武人としての誉れにして本懐!」
 なればこそ、武人が戦さ場で逢うてやることはただ一つのみ。
 黒の短槍を手に、悪霊は影朧へ向けて大音声を放つ。
「さあ、死合おうぞ! 立つ処は違えども、我ら此岸へ黄泉帰った死者同士、存分に愉しもうではないかッ!」
 おお、と戦さ場に雄叫びが上がる。
 悪霊が、影朧が、己を鼓舞しながら敵を撃滅せんと衝突する。
「はははっ! まるで物の怪憑き!」
 放つ刺突が獣の肉体を得た隊員の一人の身体を貫くが、引き抜こうにも影朧はその柄を両手で掴んで離さない。自分が敵の得物を封じる間に、仲間に攻撃させようと言うのだ。
「尋常ならざるその膂力、その胆力――実に天晴、実に脅威! なれど!」
 裂帛の気勢と共に短槍を引き抜くのではなく、下へ叩きつけるように振るう。
 みし、とヒビが入るような音の次に、割れるような、砕けるような音が続いた。砂塵が舞うその先には、地が裂けたかのような、小さなクレーターがあった。
 短槍を振るって、貫いた影朧ごと地を割ったのだ。致命打を受けて黒い塵へと還った影朧を振り払うように、義透は短槍を振り回す。
「わしの“侵略”は火の如し。揺らめく火はいかなる場所へも入り込み、あらゆるものを駆逐するッ!」
 短槍を構え直す悪霊の口元に刻まれるのは、愉しむような笑み。
 雄叫びと共に、短槍が薙ぎ払われる。影朧の爪が、牙がその身を引き裂こうとも、武人は敵を一体一体薙ぎ倒す。
「――さあ、わしの火に抗しうる者からかかって来いッ!」
成功 🔵🔵🔴

荒谷・ひかる
数で攻めてくる敵に、この天候。
……わたしたちにとっては、とても戦いやすい環境ですね。
行きましょう、精霊さん。

【水の精霊さん】発動
降っている雨、屋根や樹木に滴る雫、地面に広がる水溜りに泥濘
それら全ての「水」を精霊さんに掌握してもらい、敵群を攻撃
雨は彼らの目や鼻を直接打ち、泥濘はより深く足元を掬い戦いをままならなくさせ
高圧放水で以て悪魔の口腔を穿ち、炎を封じると共に溺れさせてやりましょう
それでも数が減らないのなら、周辺の水を集めてぶつけ、津波の如く押し流して片付けます

その命を棄てる覚悟が、今の平和な時代へと至る一助となったのです。
貴方たちの献身に、感謝を。
そしてどうか、貴方たちの魂に安らぎを。


 しとしと、しとしと。
 啜り泣くように降り続ける雨は、止む気配がまったくしない。
 雨は地をぬかるませ、体温を奪い、集中力を削ぐ。戦場において、雨ほどに厄介なものもない。
「――来て、精霊さん」
 荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)は呟きと共に精霊杖を構える。杖に収められた精霊石の、水の紋章が輝くと同時に出てきたのは、彼女が絆を結んだ水の精霊たちだ。
「水を集めて下さい。ありったけの水を。わたしたちは、それで戦います」
 戦う者たちにとってこの天候は厄介で不都合だ。だからこそ、ひかるはこの天候を利用する。
 ひかるの要請に応じた精霊たちは、周囲を飛び回って水を集め始める。降りしきる雨水、樹木や花に伝う雫、地面に広がる水溜りや泥濘――この戦場のありとあらゆる水へ干渉し、支配下に置いていく。
 だが、その速度は戦場においてはお世辞にも早いとは言えない。ゼロから精霊たちに環境を掌握させるには、それなりの時間がかかる。その間、ひかるの打てる手立ては少ない。
『ケケケケッ!』
 戦場を飛び交う大量の小悪魔たちが爪を突き立て、炎を吐いて襲いかかってくる。
 銃声。ひかりの手に握られた精霊銃が飛来する小悪魔を撃ち落とす。が、まるで手数が足りない。まだ幼いと言って良い彼女の身体能力では敵の攻撃を避け続けるのは難しく、敵を倒し続けるには脆弱過ぎた。
「大丈夫です、大丈夫……。まだ、やれます!」
 それでもひかりは精霊たちを、あるいは自身を鼓舞するように呟き続ける。懸命に銃を撃ち、水の精霊たちのために時を稼ぐ。
 転びそうになりながら小悪魔たちの爪から逃れ、炎を防ごうとして――
 横から飛来した水が、小悪魔の炎を消した。
「精霊さん……!」
 十分な量の水を支配下に置いた水の精霊たちがひかるの周囲に集まっていく。守るように、あるいは励ますように。
「行きましょう。――やりましょう、わたしたちにできることを!」
 ひかるの言葉に応じるように、水の精霊たちは攻撃を始めた。水の壁は小悪魔たちの爪や炎を防ぎきり、高圧の水鉄砲が小悪魔たちを追い払う。
 逃げ惑う小悪魔たちの群れの向こう側に、影朧の姿が見えた。小悪魔たちを呼び寄せた召喚者たちだろう。
 彼らはその寿命を、生命力を犠牲に小悪魔たちを呼び寄せている。他の影朧たちも、その寿命を犠牲にして死力を尽くして戦っている。
「……その命を棄てる覚悟が、今の平和な時代へと至る一助となったのですね」
 猟兵として戦う中で、ひかるも何度となく見てきた光景だ。帝竜戦役で、アルダワ魔王戦争で、アースクライシスで、バトルオブフラワーズで、銀河帝国攻略戦で――多くの戦場で、命を棄てる覚悟を決めた者たちが戦ってきた。そして、世界に平和をもたらした。この一つの国家に統一された、サクラミラージュの世界のように。
「――貴方たちの献身に、感謝を。そしてどうか、貴方たちの魂に安らぎを」
 祈るような言葉の直後に、水の精霊たちが輝きを放つ。
 いくつもの水の奔流が、まるで大きな波のように敵へと放たれる。
 水の向こう側に見えた影朧の姿は、滲んで消えて――
 後に残ったものは、何もなかった。
成功 🔵🔵🔴

スイカ・パッフェルベル

フン。魔力炉か
…良い記憶力は素晴らしいが、忘れる能力は一層偉大である
それを持って尚、滅びた事実に思考を傾けられぬならば
ただ繰り返すのみよ

常に全力魔法だ。加減する理由は無かろう
即席魔杖S1を片手に、M1・I1を周囲に浮かべ操作
I1で敵陣を幻覚に陥れ…

ありふれたユーベルコードと侮ってくれるなよ
かのラーマーヤナに記されしアグネヤストラの如き破壊の光景
猟兵によっては容易に成し得るものだぞ
…体験させてやる

幻覚→ユベコの流れでボロボロにした敵陣にM1を撃ち込んでいく
概ねそのように。合間に魔杖の補充もしておくか
魔力の切れた魔杖は防御に使おう

力求むるならば、決して過去に留まるべからず
時の流れにその身を委ねよ


 降りしきる雨を、大きな三角帽子が受け止めていた。
 帽子の鍔を上げて、スイカ・パッフェルベル(思索する大魔道・f27487)は影朧たちを見やる。人工的な魔力の流れ。魔力炉の存在を、影朧たちの中からかすかにだが感じ取れた。
「……良い記憶力は素晴らしいが、忘れる能力は一層偉大である」
 一体誰の言葉だったか。手垢に塗れたその言葉がふと頭に浮かんできて、スイカは吐息した。忘却はよりよき前進を生む、という言葉もついでに連想した。
「忘れ去ってなお滅びた事実に思考を傾けられぬならば、ただ繰り返すのみよ」
 忘却の名を冠しながら、前進できずにいる彼らの姿はあまりにも皮肉が過ぎていて。彼女の目には憐れに映っただろうか。
『大隊を展開せよ!』
「加減する理由は無いな」
 己の生命力を犠牲に影朧たちが小悪魔の群れを展開する。圧倒的な多勢を前にして、しかしスイカは怯むことなく即席魔杖を展開し、構えた。
 まず最初に使われたのは、彼女が“即席魔杖I1”と呼ぶ幻覚魔法だ。敵陣へと放たれたそれはその効力を遺憾なく発揮し、小悪魔たちを前後不覚に陥れる。
 続けざまに紡がれるのは、ごく基礎的な攻撃魔法“ウィザード・ミサイル”。大量に展開された炎の矢を、スイカは敵陣めがけて一斉射する。
「ありふれたユーベルコードだと侮ってくれるなよ。猟兵にとって、かのラーマーヤナに記されしアグネヤストラの如き破壊の光景を再演することはそう難しいことではない」
 空に浮かぶのは、純粋な魔力を成形した魔法の矢。一つ一つは大した威力を持たないが――
「それを今、身をもって体験させてやろう」
 スイカの有する膨大な魔力を注がれたそれは、主力と呼べるほどの火力に化ける。
 言うなればそれは魔力の奔流。純粋な力の嵐に呑まれた小悪魔たちはなす術なく消滅させられる。
 次なる即席魔杖へと魔力を充填しながら、スイカは次なる魔法の矢を展開する。
「力求むるならば、決して過去に留まるべからず」
 それは“学び直し”の途上にあるスイカが旨とする言葉であり、真理であった。過去に留まる限り、人は前進することができない。
 だからこそ――
「時の流れにその身を委ねよ」
 数多の魔法を修めた彼女の言葉は、あるいは過去の自分を戒めるような響きだったか。
 それとも、これから転生するであろう影朧たちへと贈ったものか。
 それは彼女にしかわからないことだ。
成功 🔵🔵🔴

曾場八野・熊五郎
【犬と仮面と】
さあ始まったでごわす。今世紀一回目の二番煎じ、『ササガセガワナガレオニヤバイ』。実況は我輩がお届けでごわ
(雨に交じって岩や流木の混ざった水柱が落ちてくる)

さあ選手の入場でごわす。1番敷島組悪魔大隊2番悪魔大隊3番……あ、こら待て逃げるなでごわす
よし揃ったからスタートでごわ!
(ティアーにフォローしてもらって激流に流し込む)

むむ、空中の移動はトビウオ以外ルール違反でごわ。スタート(転生)地点からやり直しでごわ!主催者権限、鮭遡上アッパー!
(鮭に乗って遡上し、コースから逃げた敵も『怪力』で殴り倒す)

こんだけ流せば本番のサンズガワジゴクワタリも大丈夫でごわすな
ちゃんと成仏するでごわすよ


ティアー・ロード
◎【犬と仮面と】

「自殺志願者の集会と聞いたが
聞いた通り辛気臭いね」

連携には連携で対抗しよう
激流に乗る曾場八野くんの背中からエントリーだ!
突撃隊や小型悪魔の攻撃を迎撃してレースを支援するよ

使用UCは【刻印「傍目八目」】
睨んだ敵をパラライズさせる刻印さ

「おっと、申告が遅れてすまない
私のポジションはジャマーだ!」

それから激流に乗る曾場八野くんを念動力で支援しよう
攻撃を避けるために動きに緩急をつけるよ
あと激流から逸れても激流に戻るまで空中戦できるようにもね

「命を賭して戦う!素晴らしい覚悟だ」
「で?
君たちは何故ここにいる?」
「私は人々を守る為に戦う、では君たちは」
「一体何の為に戦い、命を捧げたんだい?」


 敵の持つ地の利をいかに打ち消すか。
 これは戦場において非常に重要で、なおかつ頻出する命題だ。
 高所を取る、奇襲を仕掛ける、数の利で攻める、包囲する……。解法は様々だ。
 曾場八野・熊五郎(ロードオブ首輪・f24420)はどれも選ばず、しかしシンプルな答えを実行した。
「さあ始まったでごわす。今世紀一回目の二番煎じ、『ササガセガワナガレオニヤバイ』。実況は我輩がお届けでごわ」
 戦場の地形を塗り替えたのだ。
 地面から高い壁を隆起させ、迷路を形成し、その中に敵を閉じ込める。
 戦場の一画、敵の一部とはいえ、敵を分断して地の利をこちらに付けるという意味では最高の一手と言えよう。
「さあ選手の入場でごわす。一番敷島組悪魔大隊、二番悪魔大隊、三番……」
 迷路の中の影朧たちを見下ろす熊五郎は、天より降り注ぐ滝とも言うべき激流に乗っていた。滝はたちまち迷路の中を満たして、川の如き流れを作り出す。岩、流木混じりの鉄砲水は言うまでもなく凶悪の一言だ。当然、それを目の当たりにした影朧たちは逃げ出そうとする。
「あ、こら待て逃げるなでごわす。レースはまだ始まってないでごわ」
「自殺志願者の集会と聞いたが、聞いた通り辛気臭いね。まあここは任せたまえ」
 激流に乗った熊五郎の背中から飛び出したのは、ティアー・ロード(ヒーローマスクのグールドライバー・f00536)だ。
 念動力でふわりと宙を浮いたティアーが逃げ出す影朧たちの姿を視界に収めると、その赤い瞳を輝かせる。

 コードセレクト   ザ・フリーズ
「 刻印 ――“傍目八目”! 」

 放たれたのは不可視の光線。それを浴びた影朧たちは、ティアーのサイキックエナジーによってその身体を戒められてしまう。
「おっと、申告が遅れてすまない。私のポジションはジャマーだ!」
「よし、揃ったからスタートでごわ!」
 激流が影朧たちを押し流す。瓦礫や流木混じりの質量攻撃は単純でありながら強烈だ。押し流された後に残るのは黒い塵だけだろう。
 無論、敵とてただ手をこまねいて濁流に呑まれるだけではない。己の生命力を代償に、無数の小悪魔たちを召喚する。
 小悪魔の群れはこの迷宮の術士たる熊五郎を直接排除しようと飛翔し、その鉤爪を閃かせるが――
「川の流れが常に一定だと思わないことだ」
 ティアーがそれを看過しない。念動力で急加速をかけ、小悪魔たちの凶手から熊五郎を逃す。ティアーの瞳が再び輝き、小悪魔たちを濁流へと墜とす。
「むむ、空中の移動はトビウオ以外ルール違反でごわ!」
 背負っていた鱒之介に飛び乗ったかと思うと、熊五郎は激流を遡上して小悪魔たちへ前肢の乱舞を見舞った。
「主催者権限、鮭遡上アッパー!」
 熊五郎によるアッパーカットの乱れ打ちが小悪魔たちを宙に放り上げる。衝撃によって身動きが取れない小悪魔たちの墜ちる先は、もちろん濁流しかない。
「さあ、飛び道具を使った選手はやり直しでごわ! スタート地点は赤ん坊よ~」
『ふざけるな! 総員、命擲ってでも奴を仕留めろ!』
 怒声と共に、影朧は再び大量の悪魔を展開する。刺し違えてでも熊五郎を倒そうというのだ。
「命を擲って戦う! 素晴らしい覚悟だ」
 小悪魔たちの大量召喚は生命力の消耗が激しい。だというのに、彼らはそれを使うことにためらいを見せない。
「だが解せないね。君たちはなぜここにいる?」
 ティアーはこのサクラミラージュに住まう人々を守るために今戦っている。
 しかし、敵の目的を彼女は理解しかねていた。
「君たちは一体何のために戦う。何のために命を捧げる?」
 問いかけに対する敵の表情は、敵意と戦意に満ちていた。
『――総員、奮起せよ! ■■■■のために、この命捨てたものと思え!』
 鼓舞する声は、ノイズが走ったかのように聞き取りづらい。
「……悪いけど、聞こえないよ」
 コードセレクト、ザ・フリーズ。
 命を燃やして戦い続けんとする影朧たちをサイキックエナジーで無理矢理に縛り付ける。
 迷宮に残る最後の影朧たちが激流に呑まれる。
「彼ら自身も忘れているのか、それとも在り方を捻じ曲げられているのか……。いずれにせよ、あまり気分の良いものではないな」
 ユーベルコードが解除され、迷宮と激流が消滅する中。ティアーが影朧たちのいた場所を見て呟く。
「大丈夫でごわす。こんだけ流せば本番のサンズガワジゴクワタリもきっと乗り越えられるでごわ」
 熊五郎は激流の流れていた場所を振り返って見つめながら、明るい声で言った。
「ちゃんと成仏するでごわすよ」
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

杜鬼・クロウ
●◎
剣はガイオウガ戦で折れたので無
蛇の目の番傘持参

…何で剣がねェのに此処へ来ちまったンだろうなァ
この雨は
俺の中の何か…要らぬ感情総てを洗い流してくれそうな気がして、か
ハ、感傷に浸る暇はねェわな
しっかりしろよ、俺(首ふるり

一度使った手は対策されるって?
それでも出し惜しみはしねェ
これ迄培った経験と場数で乗り切る

俺も断ち切る為に
路は自らが切り拓く

【贋物の器】で80枚召喚
鏡を操り敵の周囲を囲む
魔力弾を跳ね返す
軌道を読めなくし四方から一斉攻撃(カウンター
敵の攻撃は鏡に乗って空へ回避

ちィ、予想以上に統率が取れてやがるッ…!

連携崩す様に鏡の破片使い目か足狙う
敷島組隊員の中で全うな志を遺す者がいれば転生を望む


「……なンで、得物もねェのに来ちまったンだろうなァ」
 蛇の目模様の番傘から覗く雨雲を見上げながら、杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)は呟く。
 いつも頼みとしていた玄夜叉は帝竜戦役で折れてしまった。代わりになる物を握る気にもなれず、彼は無手同然で戦場に立っていた。
「やっぱ、雨か……」
 雨。
 そうだ。雨に、惹かれたのだ。
 名前もなく、ただ複雑に絡まった感情を持て余してしまって。自分に纏わり付いてしまったそれを、すべて洗い流してくれそうな気がしたのだ。
 降りしきる雨の向こう側から、霊体を纏った影朧たちが見えた。
「……ハ、感傷に浸る暇なンてねェわな」
 ここは戦場。血と硝煙の流れる場所。今はともかく、眼前の敵に対処すべきだ。
「――出し惜しみはしねェ」
 彼の周囲にふわりと現れるのは、大量の黄金鏡。複製されたクロウの本体だ。それらはまるで意思を持つかのように宙を舞う。
 誰が見ていて、どう対策されようが関係ない。仮に対策が取られたとして、これまで踏んできた場数と経験の量で真正面から押し切るだけだ。
 鏃型の編隊を組んだ影朧から魔力弾が射出される。魔力弾はその弾道を捻じ曲げ、クロウの元へと迫り――
「俺も断ち切るために――路は自らが切り拓く」
 ――クロウの黄金鏡によって阻まれた。
 鏡面が陽光のように輝き、魔力弾が弾き返される。再びクロウへと軌道を変えようとする矢先に、先回りしていた別の鏡がそれを受ける。
 反射に反射を重ねた魔力弾の誘導。ばらばらに飛び交っていたはずの鏡は、いつの間にかに影朧たちを取り囲み、“檻”を作っていた。
「お前らの弾、返すぜ」
 収縮する鏡の檻の中。乱反射する魔力弾が影朧たちの身体を貫く。
 高音。鏡の割れる音がした。
 別の影朧たちが魔力弾を鏡の檻へと撃ち込んだのだろう。鏡面で反射できなかった魔力弾が命中した鏡は割れ砕けて地に墜ちる。
「チッ、敵も馬鹿じゃねェか……」
 鏡の数を減らす方針に切り替えて来たらしい。魔力弾の一斉射でこちらに対応を強制し、対応して動かす鏡を第二射にて撃ち落とす。こちらが鏡への第二射を警戒すれば、標的はクロウ自身にまた戻る。
「予想以上に統率が取れてやがる……ッ!」
 宙を舞う鏡を足場に、自身もまた空を飛びながら魔力弾を回避する。
 じわじわと追い詰められていくような感覚。
「追い詰めれっぱなしだと、思うなよッ!」
 鏡を盾に、魔力弾を弾きながらの肉薄。腕を振り、鏡の隙間から放つのは――割れた鏡の破片だ。
 破片が刺さった隊員から悲鳴が上がる。致命傷には遠いが、隙としては十分だ。編隊から外れた影朧へ、クロウを追尾し続ける魔力弾を誘導する。
「ああ、まったく。なんで玄夜叉もねェのにこんなところに来ちまったンだろうな!」
 それでも、戦いたいと思う理由がここにあったんだ。
 持つべきはずの刃もなく、ただ戦う理由のためだけに。
 彼は、戦う。
成功 🔵🔵🔴

ヴィクティム・ウィンターミュート


さて、復帰から一発目…久方ぶりの仕事だ
ウォームアップは十分、サイバーデッキのメンテナンスは抜かり無い

…必死こいて戦ったのに、記録には残らず、記憶には留まらない
実に虚しいもんだな
アイツらだってそうだった
言ってしまえば犯罪者でしかないけれど、自由の為に走り回ってたのさ
英雄と悪魔なんて、紙一重の差なのかもな

さ、ランを始めよう
一応、転生が出来るように最善を尽くすさ
寿命を消費してそのままドロップアウトはダセェからな、『Nighty night』で先に眠らせる
放置すりゃ戦えない奴が出来上がりだ

気の毒だとは思うぜ
だがその誇りは、こんな形で現在を脅かすもんじゃねぇだろ
…次の人生は、穏やかに過ごしてみなよ


寧宮・澪

ええと、せっかくの命……無理に使うのも、貴方方の自由、ですが……
何を守りたいのか、守った先を思い出せましたら、いいのに……
ただ削られる、命は寂しいですから……

Call:ElectroLegion、起動……
たくさんのレギオンで、数には数を
個別に囲むよう、戦術統制取りまして……集めた情報は処理して、レギオンに共有
個別撃破かつ数での防衛ラインを敷きましょね……
私はレギオンの統制と情報処理を……一応、防御も意識しましょか……
火炎耐性とオーラ防御で自分を守りますので……レギオンには容赦なく攻撃に回ってもらいましょー……

あまり多くは見せないよう……程よいくらいに、隠しましょね……


 リソースを使い果たして自滅するのは三流の仕事だ。
 ヴィクティム・ウィンターミュート(End of Winter・f01172)はそう信じている。特に“ランナー”はそうだ。結果として生きようが死のうが、リソースが尽きた時点でもう終わりだ。再起の芽が潰えている。
 そしてそれはどうやら今回の影朧たちにも言えることらしい。寿命――つまり生命力を消耗し尽くすと、転生できないままに骸の海に還ってしまう。
「必死こいて戦ったのに、記録に残らず、記憶にも留まらないなんて……虚しいもんだな」
 ヴィクティムの目は憐れむようでいて、どこか共感を覚えたような色をしていた。
 あの影朧たちは、かつての自分の仲間たちと同じだと思っていた。革命軍の構成員。彼らは記録にも残らず、もう記憶にも留まっていやしないだろう。
 言ってしまえば最下層の犯罪者集団だ。けれど、抑圧された格差社会の中でなんとか自由をその手に収めようと、みんな走り回っていた。
 与えられるはずの名誉も得られずに命を散らした者たちが、こうして再び影朧としてその命を燃やし尽くそうとするのは――あまりにも皮肉で、残酷な話だ。
「――目を瞑れ、心を鎮めろ。今はゆっくり、おやすみ」
 射出されたプログラムは“Nighty night”。敵を眠らせるプログラムが周囲へと効果を発揮し、ヴィクティムの周囲にいた影朧たちを眠らせる。そして時間が経つにつれて力を喪っていき、やがては戦えない無力な存在になる。命を燃やすことが、なくなる。
 戦えども戦えども本来得られるべき名誉が得られないならば、いっそのこと戦えなければいい。かつて名誉は得られずとも、その胸に抱いた誇りは“今”を脅かすものではないはずなのだから。
 なのに――
『我らは、負けない……! 戦い続ける……!』
 影朧たちは、それでも戦うことを選んだ。己の身体に刃を突き立て、無理矢理に自分の身体を覚醒させた。
「……ま、そうだよな」
 穏やかな眠りを拒む影朧たちと、かつての仲間たちがどうしても重なって見えてしまって、ヴィクティムは吐息する。自分が眠っている間に全てが終わってしまうことを何よりも嫌ったのだろうと、何となく理解できてしまった。
「少し、寂しいですねー……」
 プログラムの影響も受けていないのに眠たげな瞳を影朧に向ける女が隣にいた。寧宮・澪(澪標・f04690)だ。
「そうか?」
 寂しいという言葉が今ひとつ理解できずに、ヴィクティムが問う。澪は「ええと」としばし時間を置いてからようやく言語化できたのか、口を開いた。
「命を無理に使うのも、彼らの自由ですがー……きっと彼らは、何かを守りたくて戦っているんだと、思うんですよねー」
 なんとなくですけどー、と呟く彼女の目は、どこか遠くを見つめているかのようだった。
「ただ削られるだけの命は、寂しいですから……。せめて、何を守るためだったのか、思い出せましたら、いいのですけどー……」
「……さあ、な」
 影朧たちに同情こそすれ、あくまでも他人であるはずのヴィクティムの心が、少しだけずきりと痛んだ。
 影朧たちが小悪魔を召喚し始める。自分たちは戦えないがゆえに、己の命を燃やしてでも小悪魔たちを戦わせようと言うのだろう。
「……早いところ終わらせてやろう。あいつらが燃やし尽くすよりも早く」
「わかりましたー……。お仕事ですよー……れぎおーん……」
 澪が呼び出したのは、大量の琥珀金の機械兵器たちだ。澪の戦術統制の下で、機械のレギオンたちは何体かのグループになって小悪魔を取り囲み、各個撃破していく。
 とはいえ、この機械兵器たちは数こそ多いものの、個々の戦闘力はそこそこ止まりで耐久力は低い。生命を代償に力を得た小悪魔とは雲泥の差がある。
 だが、単純なスペック差を覆すのが彼ら電脳魔術師だ。
「多分、今召喚された小悪魔が最後かとー……」
 機械兵器から収集したデータから、影朧たちが小悪魔を放出し終えたのを確認すると、澪が合図を送る。
 それを受け取ったヴィクティムが――再び、睡魔のプログラムを放出する。今度は、あの小悪魔の群れをも巻き込んで。
 雨の下を飛ぶのは、機械の兵器たちばかりになって。この戦いの趨勢は決まった。
「……次の人生は、穏やかに過ごしてみなよ」
「来世は良い人生になりますようにー……」
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

霑国・永一
【花の涯B】
お~これは蜂の巣をつついたようなお祭り騒ぎ。愉しまなきゃ損損ってねぇ。
でも些かお祭りの運営の数が多すぎてバランス悪い。客を増やしてあげようじゃあないか。それじゃ遊ぼう、《俺達》
『ヒャッホーゥ!血祭万歳だぜ!』『肉片撒き散らす花火大会もあるぞ!』

狂気の分身を発動。ひたすら無尽蔵に自爆分身を生み出し続け、数の暴力で四方八方から敵に突貫、ダガーや銃撃で襲い掛かる。
時に相手諸共自爆していく。特に禄郎が動きを鈍らせた敵は優先的に自爆心中対象に。
本体の自身は分身の中に紛れつつ隙を出した個体を的確に銃撃する

『やっべー!俺様死ぬわ!』『ウケる!おい、てめぇも一緒に死のうや!』
セルフ神風は楽しいなぁ


ルーナ・ユーディコット

【花の涯A】
エリ姉のお兄さんか
どんな人だろう
気になるけど
今私にできる事は目の前の敵を倒す事
涙の様な雨にさえ心奪われる暇はない

志高く気炎万丈なところ悪いけど
押し通らせてもらうよ

金桂の香りに包みてその意識、陶酔境に沈めよう
感じたモノに抵抗する必要はない
陶酔境に身を任せるのはきっと気持ちいいから
せめてもの介錯、残る意識もぼうっとしている間に私が終わらせよう
最も陶酔感を楽しんでいる間に別の誘惑や魅了が強く深く浸透するかもしれないけど
それはそれで夢の様な時間を過ごせると思う

エリ姉の桜に夕辺さんの梅に私の金桂
春と秋の花が揃って随分豪華な花宴になった

魅蓮の引き連れた死霊におもてなしを任せて
これで決まりだね


皐月・灯

【花の涯C】

……別に、あの女のためとかじゃねー。
あいつの兄貴がどうとか、オレにゃ関係ねー話だ。
そもそも、出会ったばっかの女だからな。
ただ、……ふん。

目障りな連中が多いよな、此処は……片付けるぞ。
敵陣に【切り込】むぜ。
数が多いのは厄介だがな。《轟ク雷眼》なら、まとめて雷撃で飲み込んでやれるだろ。
後は、オレへの攻撃を【見切り】、【カウンター】で叩きのめす。シンプルな手だ。

仕留めきれなくても、動きを止めりゃ十分……だろ、アンタら。
ぞろぞろ戦場に出てきたのは、伊達や酔狂じゃねーってとこを見せてもらうぜ。

そういうわけだ。退きな、蝙蝠擬きども。
――オレのアザレア・プロトコルは、悪魔だろうがブチ砕く。


佐々・夕辺
【花の涯A】


悪魔に魂を売った勇気だけは評価してあげる
それほどの事をして、一体何を為したかったのかは聞かないわ
私は女将の…エリシャさんの剣として戦うのみ
この雨が誰かの涙だというなら、晴らしてみせる

――ふるべ、ふるべ
どうか精霊よ、私たちに加護を!
お任せ下さいエリシャさん、貴方の期待を裏切る事はしません!

自らの体を梅と氷に変えて
魅了された敵の体力を削るわ
相手が悪魔の力に覚醒しても問題はないでしょう

ルーナさんの金桂と共に、遠く遠くまで酔夢を広げる
そうして魅蓮さんの悪霊と共に、敵を切り刻む

貴方たちは幸せよ? 苦痛なく死の淵へゆけるのだから
ゆっくりと足を踏み出しなさい 迷いなく


千桜・エリシャ
◎【花の涯A】

雨…誰かの涙みたいね…
お兄様…あなたのことを思い出せて
やっと見つけたと思ったら影朧になっていたなんて…
不安を振り払うように頭を振って
あなたがこうなってしまったのも謂わば私のため
ならば、今度は私があなたのために
成すべきことを致しましょう
今日は皆さんだって付いてくれていますもの
頼りにしていますからね?

数が多いならばそれを逆手に取りましょう
あなた達にも成すべきことがあるのでしょうが…ごめんなさい
夕辺さんの花弁を隠すように桜を吹雪かせて
召喚した悪魔を魅了してこちらの手駒として利用してあげる
ルーナさんと香りを強めて
役者は揃ったかしら?
魅蓮さんの死霊と共に踊らせて
同士討ちさせてしまいましょう


白寂・魅蓮
◎【花の涯A】
今日の雨は酷く冷たい…雨は嫌いじゃあないけど、こうも心が冷えそうな雨は何時以来だっけ
誰かの涙なのか、あるいは…どちらにせよ僕が深く考える事じゃないか
僕はただ彼女の為に…エリシャさんが満足できる舞台を用意する、それだけだ
此度の大舞台は彼女の為にあるのだから

悪魔に認められた兵達、ですか。
その力があれば僕達の歩みは止められると思ったら大間違いだよ。
敵の攻撃を踊るように回避しつつ、ルーナが敵の意識を向けてる間に一連の舞の動作をしてUCを発動
エリシャさんと夕辺さんが魅了させた敵に自分の分身霊を向かわせ攻撃を開始する

僕達はこの陰気な雨を駆ける
この桜の行軍――止められるものなら止めてみなよ…!


ミネルバ・レストー

レイドバトルができるですって? 腕が鳴るわね
でも、元々短命なところに寿命を削らせるのは
わたしの方が非人道的に思われそう

その命が燃え尽きる前に膝を折ることができたらどうかしら?
【全ては静寂の白へ】で喚んだ氷の竜への交渉は
『かつてのように敵を蹴散らすバトルをさせてあげる』と「言いくるめ」
凍てつくブレスで小型悪魔たちをやっつけて頂戴、なるはやでね

術者に転生の余地があるのなら
こんな冷たい雨に打たれて、泥に顔を突っ込んで死ぬだなんて
軍人の本懐とは程遠いんじゃなくて?
悪あがきで斬りかかってくるならぬかるんだ地面を蹴って
「地形の利用」、泥をはね上げて目くらましを

何にせよ、その誇りは来世に持って行きなさいな


燈乃上・鬼利丸

【花の涯C】
女将の兄貴なあ
俺ァ兄弟とかいねーから、その、なんつーの
もどかしさとかわかんねーんだけどさ
家族だった?んだもんなあ
…しんどいわなあ……

…にしても、だ。
まぁ~~~数が多いな!!!怖いな!!
ケッ……あーー震えてきた、怖、
でも女将に限らねえけどさ、あんな風に頼られてさ
断るっつーのは男でもヒーローなんでもねえ
しゃーねー、頑張ろ

……ダァ゛ー!畜生!!こっちくんな!
嘘!!!!
燃えたいヤツだけ掛かってこい!!
お前等にゃあ贅沢過ぎるほどのインクブチ撒いてやらぁ!!
畜生、震えて手元が狂いそ……ぁ、皆ナイス!!
…そうか、今回は皆居るんだもんな……ッシ、腹ァ括るぜ
ほうら、綺麗だろ?


斬崎・霞架

【花の涯C】

エリシャさんのお兄さん、ですか
どんな方なのか、何があったのか…
…今は、彼の元まで辿り着く事ですね

では、僕らはこちらの敵を相手しましょう
皆さん、よろしくお願いしますね

『梅花』を抜き放ち敵の只中に飛び込む
敵、そして味方の動きに合わせて動きましょう
危機があればそれを防ぎ、隙があればそれを討つ
敵が集まって来た頃合いを見て、UCを放つ
(無数の斬撃が敵だけを斬り裂く)
この様な技も出来るのです。中々のモノでしょう?存分に味わって下さい
…尤も、味方への気遣いは無用だったかも知れませんが
何せ、あのエリシャさんを助けようと集まった人たちですから。ふふ

――さぁ、さっさと道を作りましょうか


氷雫森・レイン

【花の涯B】
雨音は好きでも濡れるのは嫌いよ
この雨合羽をくれたのがエリシャだから仕方なく出てきてあげたの
「ふぅん、敵対勢力も雨あられって訳」
いいわ、雨比べと行きましょう
シズルの生み出す盾の影を転々と移動しながら魔法に良い発動位置へ
禄郎はともかく、永一のは何か色々酷いわね…どちらも戦場を共にするのは初めてなのだけれど
「汚い花火状態…」
もうっ、それなら花火の様に咲き降る一射は私が見せてあげる
ブレスレットから光の弓を展開、氷魔法の一矢を空へ打ち上げてUC発動
「アンタ達は春の先へ行けないのよ、黙ってて頂戴!」
氷漬けという入棺の儀を以て今一度骸の海に還してやるわ
私の春と生きていいのは今に生を持つ者だけよ


奇鳥・カイト

いつの頃も群れるのは臆病な奴のすること──ってとこか
さて、誰の言葉だったか……どうでもいい、記憶する必要もない過去だな

ツワモノだかなんだかしらねーが、どれ程のもんか見ておかねーとな
…この世界、観光しかロクにしてねーし、肩慣らしにゃ丁度いいかもな

ま、油断はしねぇけど

●戦闘
人形を使い戦う
白い髪の少年人形を用いて、その手に持つ双剣を振わせる
基本は俺が動きつつ、人形が【騙し討ち】する戦法
指の先さえ動かせりゃ、戦いながらでも出来るってな

俺は不良のように素手で喧嘩殺法、ラフなファイトスタイルを混ぜていく
時折【カウンター】なんかもまじえて、な


そこのけそこのけ、俺が通るぜ
邪魔な奴らは、はっ倒すだけだ


兎乃・零時

【花の涯C】

エリシャの兄ちゃんか
どんな奴かは知らねぇけど…会いに行きたくて、そして一人じゃ心許ないってんなら答えは一つさ
エリシャの望みに全力で応えるとも!

(怖いけど…此処で…)
俺様達が、とまる訳にゃいかねぇからな…!!
おぅ、こっち側は俺様達で頑張って倒そう!
皆よろしく!
数も多いし連携も考えるなら…これかな!
パル!
(「紙兎パル」から薬を貰いUC発動!)

パルは【援護射撃×制圧射撃】で皆の援護

俺様自身は【ダッシュ×逃げ足】で攻撃よけつつ
皆の邪魔にならない様に
時に【薙ぎ払い、串刺し】ように光【属性攻撃】な魔力砲をどば―ッと放つ!

…ってかなんだよその力!悪魔系の術とか何処で覚えたんだ!(気になる男の子


氏家・禄郎

【花の涯B】

なるほど、抜刀突撃
そして、ここでの戦いを見ている後詰めがいる
なら、派手に行こうか
『戦術』によるトレンチガンの【クイックドロウ】
散弾による【範囲攻撃】の餌食になってくれ
たとえ、君たちが霊体を纏い速くなったとしても幅広く飛ぶ散弾は捕らえるだろう
一発の威力は弱くとも、君たちの動きを止めることが出来る
そうさ【マヒ攻撃】ってやつだ

「さて、あとは任せていいかい」
残念だが、私一人じゃないんだ、牙を磨いているものが居る
相手になってくれ


それにしても
厄介な仕事だな
女将は覚悟を持っているが……ああ、野暮な話だ
そうだろう?
なら、私達は道を作るべきさ
童話の小人というのはそんな役柄だろ? みんな?


シズル・ゴッズフォート
【花の涯B】
その闘志と覚悟に、まずは敬意を
ですが向ける相手と動機を間違えれば、それは徒な暴虐と変わりがないのです
……己の獣に飲まれ、エリシャ殿に刃を向けたかつての私のように

防御に重点を置き、この後の戦いの為に自身と味方の消耗を抑えることを第一に
UCでの召喚分を含めた楯での●武器/楯受けでの、迎撃防御と楯の壁での行動阻害がメイン

召喚した大楯65枚の内、3割を周辺防御に
3割はシールドスパイクを槍代わりに、周辺防御用の楯と合わせて疑似ファランクスを形成
更に3割を味方の防御用に配し、残り1割を自身の直接防御用に

―――この守り、抜くこと能わず
我が前が「戦場」であるならば、私より後ろへは通行止めです


龍之・彌冶久


呵々、さぁて……一宿一飯の恩など云う言葉がある。

宿に寄る度に酒を摘んだ、とあれば……一飯では済まぬよなぁ。
仮はそれなりにあると言うわけで。うむ、つまり――俺が刃を抜く理由があると云う事だ。

すまんなあ小僧ども、少し先に通してやりたい娘がおるでな。
此処で散っておくれ。

此度紡ぐは"天"と"陽"の脈。
それを束ねて捻り集め――いざ、「十束」を腰溜めに構えん。

魔の力なぞ何を恐れる事があろうか。蝙蝠の化怪に化け果てた、その瞬間――さあ目に焼き付けよ、「那由多」の一閃。

この居合抜き、光の疾さで主らに届くぞ。
(属性攻撃:光×聖=破邪属性/命中率(斬撃範囲)特化)

――露払い程度にはなったか喃、呵々。


 しとしとと降りしきる雨の中。
 雨雲を見上げて、燈乃上・鬼利丸(ないたあかおに・f22314)はマスクの内側で溜息を漏らした。
「女将の兄貴なあ」
 脳裏に浮かべるのは、旅館でよく世話になるの女将の姿だ。
「身内がオブリビオンになるなんて、俺にゃちっと想像できねえけど……」
 鬼利丸には兄弟がいない。だから、「兄が影朧としてこの世界に現れた」と聞かされた時の女将の複雑な心境を、ただ推し量ることしかできない。
「きっと、しんどいわなあ……」
「戦場で感傷とは余裕だね」
 トレンチガンを肩に担ぎながら、口元に笑みを浮かべて話しかけて来たのは氏家・禄郎(探偵屋・f22632)だ。んなわけあるかよ、と鬼利丸は首を横に振る。
「ただ、どうしても考えちまうだけだ」
「相変わらずキミは優しいね。けれど、ちゃんと目の前のことも見据えなくてはならないよ」
 わかってるよ、と鬼利丸は呟く。ここは戦場で、自分たちは“第一陣”だ。後続のためにも奮戦しなくてはならない。
 深呼吸して、敵の陣容を見やる。
「……まぁ~~~~数が多いな!! 怖いな!!!!」
「そりゃあね。影朧の大量発生地だから当然だよ」
「だからってこんなに数揃えなくても良いだろ。ケッ……あぁ~震えて来た、怖っ」
「なら、尻尾を巻いて逃げるかい?」
「冗談キツいぜ」
 震える手で、鬼利丸は自分のベルトに手を伸ばす。
「あんな風に頼られて、断るっつーのは俺のヒーロー像に反する」
「君も難儀だねえ」
 はは、と笑いながら禄郎はトレンチガンを構える。
 雄叫びが聞こえて来た。霊体を纏い、あるいは異形と化した影朧どもが軍刀を手に突撃する姿を視界に捉える。
「敵にはここでの戦いを見ている後詰がいるらしい。――派手にいこう」
 こんな風にね。言葉の直後に銃声が轟いた。トレンチガンから放たれる散弾が、コウモリの翼で空を飛ぶ影朧目掛けて飛んでいく。
「散弾銃は近距離用――」
 軍人の常識だ。散弾銃はライフルと比べて有効射程距離が短く、命中率は良いものの、オブリビオンを相手取るには拡散による火力の減衰が著しい。
 ゆえに影朧たちは最低限の回避行動のみに抑えた、最短距離での敵への肉薄を選択した。
「――なんて、キミたちも考えているんだろうけどね」
 飛行中の影朧の動きがぴたりと止まり、地面へと墜落していく。
 即効性の麻痺毒が充填された、麻痺弾。
 命中率の高さを利用した、敵を一時的にしろ無力化する搦手だ。かつて軍に所属していた彼ならではの敵の思考を読み取った戦術である。
「さて、地上の方は任せるよ」
「任せるったってダァ゙――!? 畜生!! こっちくんな!!」
 こちら目掛けて突撃して来る異形の影朧たちを前に、ひぃ、と鬼利丸は悲鳴を上げる。喝を入れるかのように、パン、と平手で震える脚を打った。
「嘘!!!! 燃えたいヤツだけ掛かってこい!!」
 畜生、畜生。マスクの中で奥歯を小刻みに鳴らしながら、彼は腰のベルトからインクボトルを手に取って――
「お前等にゃあ贅沢過ぎるほどのインクブチ撒いてやらぁ!!」
 投げた。
 インクボトルは弧を描いて地面に落ちるや割れ砕けて、その瞬間に着火した。
 着火した火は地面に広がる色とりどりのインクに沿って燃え広がり、炎の壁を形成する。
「ほら、綺麗だろ!! ああ、ったくもう、いい加減腹ァ括ったぜ俺は!!」



 散弾が飛び、炎が燃え上がり、怒声と悲鳴の入り混じる戦場。
 その光景を一歩引いた場所で眺める男がいた。
「お~これは蜂の巣をつついたようなお祭り騒ぎ。愉しまなきゃ損損ってねぇ」
 霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)だ。彼はまるで、祭りの会場を遠目に見ているような――それでいて、懐の緩そうなカモを見定めるような――目をしていた。
「でも、いささかお祭りの運営の数が多すぎてバランス悪い。ここは一つ、客を増やして盛り上げてあげようじゃあないか」
 敵の数はどこからか湧き出ているのではないかと思うほどにいまだ多く、状況は予断を許さない。
「それじゃ遊ぼう、《俺達》」
 軽薄な笑みを浮かべた永一から、次々と人影が現れる。彼と同じ顔形で、しかしどれも凶悪で粗暴な雰囲気を纏った男たち。
『ヒャッホーゥ! 血祭万歳だぜ!』『肉片撒き散らす花火大会もあるぞ!』
 彼らは手に手に銃器を、刃物を持って敵陣へと突撃を始めた。
『殺せ殺せ!』『囲んで切り刻め!』『手足を撃って弱らせろ!』
 永一の分身体たちは獲物を見つけた肉食獣のように凶暴に襲いかかり、狡猾に包囲していく。
「銃は使わずにダガー使ってよ。弾代も安くないんだし」
『無茶言うぜ』『祭りに来てまで貧乏根性かよ!』『シケてやがる』
 分身たちは本体への非難を口にしながら、弱った敵へと取り付いて――
『ヒィャッハァー! カミカゼアタックだぜー!』
 自爆。爆裂と共に赤い血肉の花が咲き、影朧を黒い塵へと変える。
『やっべー! 俺様死ぬわ!』『ウケる! おい、てめぇも一緒に死のうや!』
「やあ、盛況盛況。宴もたけなわってね。やっぱりお祭りには花火大会だ」
 自爆特攻する分身体を次々に生み出しながら、永一は上空へと視線を向ける。
「しかしこうも飛ばれると、戦闘機を竹槍で攻撃するようなものだね。禄郎、もっと撃ち落とせたりしないかな?」
「簡単に言ってくれるねえ。悪いけど、私は魔法使いじゃないんだ」
 敵へと散弾を撃ち放ちながら、禄郎が返事をする。口調こそいつも通りだが、その表情からは余裕がだいぶ減っていた。敵が麻痺弾に対応して、連携や回避行動を混じえるようになったせいだろう。
「それじゃ、もっと魔法使いっぽい適任者に頼むとしようか」
 ねえ、と永一が視線を向けた先にいたのは、レインコートを羽織った青いフェアリーだった。氷雫森・レイン(雨垂れ雫の氷王冠・f10073)だ。
 彼女の周囲には冷気を帯びた一本の光の矢が展開されている。
「こっちの準備はできたけど、別にあなたに協力する気はないから。勝手にやって頂戴」
「残念だ。せっかく花火大会に来てくれたのに」
「勘違いしないで」
 レインが睨むように一瞥すると、矢の冷気がかすかに永一にまで届いた気がした。
「この雨合羽をくれたエリシャのお願いだったから、私は仕方なく出てきてあげたの。あなたの汚い花火を見に来たわけじゃないわ」
「《俺達》の花火を汚いだなんて酷いなあ。尊い命が犠牲になっているのに」
「心にもないことを言わないで」
 怖い怖い、と肩をそびやかして見せる永一。沼に杭を打ち込むようなものだとばかりにレインが溜息をついた。
 ロザリオが付いた金色のブレスレットへ手をかざすと、輝きと共にそれは光の弓へとその姿を変えてレインの掌中に収まる。
「花火のように咲き降る一射――私が見せてあげる」
 冷気帯びる一矢をつがえる。狙いは上空に展開する影朧たち。弓を引き、そして矢を放つ。
 人間の弓矢と比べれば小さく、とてもではないが遠くへ飛ぶようには見えないが、魔法の矢は驚くほどぐんぐんと高度を上げていき――
 弾けた。
 それはまるで青白い花火のように、あるいは砕ける氷のように四散し、無数の光の矢へと変化。矢雨となって影朧たちの頭上に降り注ぐ。
「アンタ達は一生冬で停滞したまま。春の先へ行けないのよ、黙ってて頂戴!」
 影朧の身体が氷の雨を受けた箇所から凍結していく。
 氷の棺と化した敵が地面に落ちると、泥水と共に氷の破片が飛び散る。レインはフードを目深に被って、背を向けた。
「雨音は好きでも、濡れるのは嫌いよ」
 


「何だ。旅館でツラ見せねえと思ったら、結局アンタもいたのかよ」
 雨を弾くフードをずらして、皐月・灯(喪失のヴァナルガンド・f00069)は目の前の少年を見る。
 少年――奇鳥・カイト(自分殺しの半血鬼・f03912)は彼を一瞥すると、帽子を目深に被って顔を逸らした。
「……いちゃ悪いかよ」
「別に。ただ、一言“行く”って言ってやれば、アイツも喜んだと思っただけだ」
「俺のはただの観光前の肩慣らしだ。誰のためでもねー」
「……そうだな」
 頷き、灯はカイトから視線を外す。自分も同じだ。会ったばかりの女の関係ない話に首を突っ込むわけではなく、ただ勝手に敵を蹴散らすためだけに来た。
「敵前で談笑とは余裕がありますね、お二人とも」
 二人の間に、長躯の男が歩いて来る。斬崎・霞架(ブランクウィード・f08226)だ。
「しかし“第一陣”もそろそろ辛くなって来た頃合いでしょう。そろそろ僕たちも向かわなくてはなりません」
 ああ、と灯は頷きを返しながら、前線へと一歩前へ進む。
「……ここから先は独り言だ。オレたちは第一陣が形成した戦線へ切り込んで、敵陣を引っ掻き回す。死なねえ程度に連携を乱して、できるだけ敵を始末する」
 それだけだ、と灯は言い残して再び歩を進める。苦笑したような表情の霞架もそれに続いた。
「青春ですねえ」
「うるせ。さっさとアイツら始末すんぞ」
 そうしましょうか。薄い笑顔を浮かべながら、霞架は刀を抜き放つ。
「それでは、“皆さん”よろしくお願いしますね」
 その言葉を合図にしたように、二人は駆け出した。前線を通過し、敵の只中へと飛び込んでいく。
 先行するのは灯だ。対する迎撃する敵は、異形化した影朧。彼は拳に装填した術式を起動しながら、敵手の動きを瞬時に見切ってその爪を躱し、敵へ拳を当てる。

               トラロック・ドライブ
「アザレア・プロトコル3番――《 轟ク雷眼 》!!」

 雷と雨の神、トラロックの名に相応しく雨中を雷が轟く。放射状に迸った紫電が、上空に浮かぶ敵の飛行能力を感電によって一時的に機能停止させる。
「仕留めきれなくても、動きを止めりゃ十分だろ?」
 灯の言葉に直後、地に墜ちた影朧が切り裂かれた。倒れ伏す敵の向こう側にいたのは、カイトだ。
「……独り言がデカいんだよ、いちいち」
 呟きながら彼が拳を握って鋼糸を引くと、人形もそれに応じて双剣を構える。
 後ろからの殺気。振り下ろされる軍刀。感電からいち早く復帰した影朧だ。
 咄嗟に鋼糸を両手で張って、それを受け止める。異形の力でもって押し込もうとする影朧。
 しかしその力はふっと抜けて、影朧は黒い塵と化してしまった。カイトの操る人形が、その双剣で切り払ったのだ。
「そら。そこのけそこのけ、俺が通るぜ!」
「ぞろぞろ戦場に出て来たのは、伊達でも酔狂でもねーってことだ。退きな、コウモリモドキども」
 カイトは人形とのコンビネーションで敵を翻弄し、灯は地上に墜ちた敵との格闘戦で更に多くの影朧たちを放電で行動不能にしていく。
「――邪魔な奴らは、はっ倒す!」
「――オレのアザレア・プロトコルは、悪魔だろうがブチ砕く!」
 奮戦する二人によって上空の敵は次第に数を減らしていき、統率を乱し始める。
 その二人の様子を横目に見るのは、霞架だ。
「さて、さて。危なくなったら助けよう、なんて思ってましたが。どうやら杞憂だったようですね。……ま、それも当然と言えば当然ですか」
 自分も彼らも、この戦場に赴いた理由は共通しているのだから。
 戦場の中にあって、思わず霞架の口元に微笑が浮かぶ。
「二人が頑張ってくれていますから、僕も年長者として気合を入れませんとね」
 呟きながら彼が見やる先は、灯が放つ紫電の範囲外。つまり、態勢を立て直そうと集結する敵のいる場所だ。
 そこの上空に展開されているのは大量の小悪魔たち。
「一旦引いて態勢を立て直して、改めて物量戦に持ち込む――というのは冷静な判断ですが……。警戒されて然るべき動きですよ、それ」
 刀を構える。雨の中、曇天の下にあってなお、霞架の刃は白い輝きを放つ。
「風を刈り、音を刈り、その悉くを刈り尽くす――」
 白刃、一閃。
 無数の斬撃が、周囲一帯を幾重にも切り刻む。それはまるで刃の嵐、刃の舞踏。嵐の唸り語のように、あるいは舞踏のための楽曲のように、影朧たちが悲鳴を上げる。
「――こんな剣技があったら、その時点で詰んでしまいますからね」
 惨劇の後に立つのは彼のみ。
 影朧だった黒い塵が雨に濡れ、泥中で眠る。

「さあ、さっさと“道”を作りましょうか」

 ――“彼女”を兄のもとへと辿り着かせるための、その道を。



 撹乱された敵陣は、徐々に後退と態勢の立て直しが図られていた。
 無論、それをみすみす見逃す猟兵たちではない。押し上げられた前線へと、“橋頭堡”が設けられる。

「――来たれ我が楯、我が証。万難を排す陣を此処に」

 声と共に現れた何十枚もの大盾が次々に集まり、要塞を形成していく。
 盾の要塞の前に立つのは、騎士然とした女。シズル・ゴッズフォート(騎士たらんとするCirsium・f05505)だ。
 剣と盾を手に彼女が見上げる上空には、数体の影朧が旋回していた。
「様子見……いえ、威力偵察ですか」
 突如として旋回をやめた影朧たちが、一斉に急降下と共に魔力弾を射出する。シズルの形成した盾の要塞の強度を測るためだろう。
 だが、魔力弾は要塞に辿り着くよりも早く弾かれてしまった。シズルが操る大盾が横合いからシールドバッシュの要領で弾き飛ばしたのだ。
「――我が盾こそ金剛不壊。この守り、抜くこと能わず」
 地上にあって、シズルは上空を飛ぶ敵を決然とした視線で見上げる。気高き騎士にして、猛々しき戦士の表情。彼女の前にあるものこそが、“戦場”だった。
「お相手しましょう。ですが、私よりも後ろへ通ること叶わぬものと心得て下さい」
 何枚もの大盾が宙に浮く。表面に施された鋭利なスパイクが、敵を迎え討たんと待ち構える。
 上空から魔力弾が一斉に射撃される。どれもが追尾性を持った重い一発。だが、シズルが、彼女の大盾がそれらを防ぐ。まさしく城塞が如き堅牢さ。
「貴殿らの闘志と覚悟に、私は敬意を表しましょう」
 ですが、と彼女は上空の影朧たちを睨め付ける。
「向ける相手と動機を間違えれば、それはいたずらな暴虐と変わりがないのです。――かつては高潔であったであろう貴殿らであれば、それも理解していたはずですが」
 魔力弾を大盾が叩き落とし、シズルのサーベルが魔力弾を切り払う。
 軍人と騎士。立場は違えども、どちらも何者かのために武力を担う者同士だ。同じ武を捧げる者であれば、暴力の境目というものを当然心得ていて然るべきはずなのに。恐らくは、影朧となって、オブリビオンとなって、歪められてしまったのだろう。
 ふと、頭上に小さな暗雲が広がった。
 否、雨雲にしては黒すぎる。
「確かに、攻城戦には3倍の兵力が必要と言うが……これは予想以上ですね」
 ざわざわと蠢くそれは、盾の枚数を遥かに上回るほどに大量の小悪魔たちだった。
 さしものシズルとて、あの量を防ぎ切るには手数が足りない。召喚者を撃滅するにも火力が足りない。
 だが、それはシズル一人だけの時の話だ。

「一太刀、仕る」

 光が走った。
 晴天よりも明るくて、陽光よりも温かい光。上空へと立ち昇るそれらに呑まれた小悪魔たちが次々と浄滅されていく。
 光源は、一本の刀。それを握るのは和装に身を包んだ長躯の青年。
「――これで露払い程度にはなったか喃(のう)」
 光り輝く日本刀、“十束”を鞘に収めながら、男は上空を見上げる。
 空に広がる“天”の脈。遍くを照らす“陽”の脈。
 常人には決して見ることかなわぬそれらを束ねて捻り、刃へと集めて放つ。
 彼こそは“龍脈”を司るとされる神の一柱、龍之・彌冶久(斬刃・f17363)だ。
「すまんなあ小僧ども。少し先に通してやりたい娘がおるでな。彼岸で存分に恨んでくれて構わんよ。もっとも、この身が魔の力に屈してやることはできぬが」
 小悪魔の群れと何人かの影朧がいた宙空を見上げながら、彼は呟く。恐らく、彼には常人には見えざる“魄脈”が見えているのだろう。
 足音がした。振り向くと、そこには大盾とサーベルを手にしたシズルがいた。
「見事な一太刀だった。貴殿の助力に感謝する」
 礼儀正しく深々と頭を下げるシズルへと、彌冶久はゆるゆると首を横に振る。
「なに、気にすることはなかろうて。あの一太刀は恩を返すためのものであったがゆえ」
「恩を? もしや、あなたもエリシャ殿のお知り合いで――」
「客分……と自称するのはいささか厚顔が過ぎるか。なに、宿に寄るたびに酒を摘んだだけだ。一宿一飯の恩義をそろそろ返し始めておこうかと思って喃」
 言うなれば軒先で餌付けしていた野良猫が、今更になって恩返しにでも来たものとでも思ってくれ――などと言われたところで、彼の飄々とした独特な雰囲気の前では彼女も本気なのか冗談なのか判別しづらい。
 どう反応するべきか迷っている内に、彌冶久は唐突に「ふむ」と何かを見つけたかのような表情をして、後方――シズルの形成していた盾の要塞へと視線を向ける。“脈”から何かを感じ取ったのだろう。
「整ったか」
 彼の言葉の直後に、要塞は内側からこじ開けられた。
 開いた穴から現れたのは――青白いドラゴンだった。



「レイドバトルよ。かつてのように、あなたに敵を蹴散らす機会を与えてあげる」
 盾で形成された要塞の中。勾玉へと語りかけるのは、ミネルバ・レストー(桜隠し・f23814)だ。呼応するように、勾玉は鈍い光を放つ。
 ひゅう、と。外界からの風が防がれているはずの要塞の中に凍りつくかのような風が吹く。風は渦を巻き、徐々に形を形成させて――
「なるはやで蹴散らして頂戴。――アイストルネードドラゴン!」
 内側から盾の天井を突き破った。
 青白い竜、アイストルネードドラゴンが翼を広げて羽ばたき、飛び立つ。
 咆哮と共にドラゴンから息吹が放たれる。凍てつくブレスが影朧たちを凍らせて、次々に地面へと墜としていく。
「レイドバトルだ、なんて意気込んでいたけど……」
 ミネルバは盾の隙間から前線を覗く。視界には、凍らされた影朧が地に伏せ、何とか立ち上がろうと藻掻く姿が見えた。
 やはり、バーチャルと現実(リアル)は違う。バーチャルでは戦闘不能になればフィールド上に倒れ伏して、ベースへリスポーンされるのが精々だ。けれど、現実はどうだろうか。凍らされた身体で足掻き続け、泥にまみれながら冷たい雨に打たれ続ける。きっと、誰かがとどめを刺すまでもなく、捨て置いたとしても生命力が枯渇して彼らは死んでしまうだろう。
「その死に様は、軍人の本懐とは程遠いんじゃなくて?」
 小さく、呟くように問いかける。
 己の命惜しさに逃げるなりしてくれれば話は簡単だった。リアルであれバーチャルであれ、PvP(対人戦)の基本は“相手の心を折る”ことにある。実力差を示し、勝てないと思わせることが肝要だ。
 だというのに、戦闘不能に陥ってなお影朧たちの表情からは戦意が失われない。恨むでもなく、怒るでもなく、ただ戦う意思だけがそこにある。
「禄郎なら、知ってるのかな……」
 聞いてみれば、なぜ彼らがああまでして戦い続けるのかを教えてくれるかもしれない。
 目の前の前線で戦う恋人へと思いを馳せていると、ミネルバは後ろから魔力の奔流を感じた。



 戦うのはいつだって怖い。
 兎乃・零時(其は断崖を駆けあがるもの・f00283)もそれなり以上に場数を踏んで来たが、それは変わらなかった。
 特に、統率の取れた軍勢の如き敵を見れば尚更に恐怖が煽られる。非道を前にすれば怒ることができるし、一体の強大な敵と対峙すればどこまで自分の力が通用するのか試してみたくなる。だが、純粋な戦意の塊を前にした時に、彼の胸中にそれらは無い。
 それでも彼がこの戦場に赴き、前線の橋頭堡たるこの盾の要塞にいるのは――
「エリシャに頼まれたんだ。俺様たちが、ここで止まるわけにゃいかねぇ!!」
 覚悟を決める。
 怒りは無い。挑戦も無い。
 だが、戦う理由がある。仲間がいる。だからこそ、立ち向かえる。
 式神の紙兎パルからカプセルを受け取り、それを飲み下す。敵は悪魔の力を有している。ならば、こちらもそれに対抗しなくてはならない。
「うっ、ぐっ……!!」
 めきめきと、クリスタリアンの身体が軋みを上げて変化していく。手足が変形し、尻尾が、長い耳が生えて来た。それは外傷とはまったく別の、耐え難い“変化”の痛みだった。彼は絶叫を歯を食いしばって喉奥に飲み込む。
 変化にかかった時間は激痛によって引き伸ばされて、永遠のように長く感じられた。
「痛、くねえ……!! 敵はもっとデカいモンを代償にしてるんだ、痛みぐらい、どうってことねえ!!」
 変化が終わった頃には、零時は肩で息をするほどに消耗していた。それでも彼は折れぬ戦意を胸に、杖を握り締める。
「いつもみたいにぶっ放すだけじゃダメだ。みんなを巻き込む……。だったら!」
 ゆえにこそ、彼が選ぶ戦術は機動戦だった。
 宝石兎獣人と化した彼は、盾の要塞から飛び出すと跳躍した。人間の持つそれに数倍する脚力であれば、彼らの滞空する高度まで到達しうる。
「みんなのいない上空まで来て、ぶっ放ーすッ!!」
 精密射撃は最初から期待しない。持ち前の膨大な魔力を頼りに、全力で出力したそれらを横一閃に撃ち放つ。
 放射状に光が放たれ、回避行動の遅れた影朧たちが飲み込まれる。



 ひどく冷たい雨だった。
 雨は嫌いではない。けれど心の温もりすらも奪ってしまうような、こんな冷たい雨を感じたのは、いつ以来だったか。
 まるで、誰かが泣いているかのような――
「……僕が深く考えることではありませんね」
 白寂・魅蓮(蓮華・f00605)はゆるりと首を横に振って、雨雲を見上げるのをやめた。舞の前に考えすぎれば雑念を生む。雑念はそのまま舞の良し悪しに関わる。
 今、自分にできることは舞うことだけ。舞って、舞台を整えるだけだ。
 扇を開くと、蒼と紫の入り混じった煙が立ち昇る。
「さあ、どうか――」
 観客は新たに敵から召喚された小悪魔たちの群れ。
 舞は幽鬼の如く怪しくも、見る者を引きつけるかのように流麗で。まるで急流を泳ぐ魚のように敵の間を掻い潜り、襲い来るいくつもの爪や炎を躱してしまう。
 一種幻想的とすら言えるその光景の中で、気付けば舞人は一人から二人、二人から四人へと次第に数を増やしていく。
 幻惑かと思えばさにあらず。彼らはみな魅蓮の顔形をしていながらも、手に持つ“武器”がそれぞれ違う。

「――最期までお楽しみください、"僕達"の芸を」

 太刀が閃き、舞扇が踊り、槍が貫き、双剣が舞い、鋼糸が鳴った。
 陰雨の下で、幻朧桜が舞い散る中。舞い踊る死霊どもが小悪魔たちを次々に討ち倒す。
 だが、いくら手数を用意して対抗しようとも敵に数の利があることには変わらず、拮抗状態に持ち込むに留まる。
 躱せども躱せども襲い来る凶手。倒せども倒せども現れる小悪魔。次第次第に、魅蓮の顔に疲労の色が浮かび始める。
 この状態をあとどれほど続けられるか――彼が頭の中で考え始めた時だった。小悪魔よりもずっと大きくて、凶悪な鉤爪が襲いかかって来た。異形化した影朧だ。 
 この拮抗状態の盤面を傾けに来たのだろう。敵は小悪魔たちを指揮下に入れると、魅蓮の召喚した死霊たちを分断するように配下で壁を作らせた。各個撃破。基本的な戦術が己への警告として魅蓮の脳裏によぎる。
「っ……!」
 負傷を覚悟で敵の壁を強引に突破し、一旦引くか。
 否。引いた後、自分が相手していたこの小悪魔たちが他の戦線に雪崩込んでしまう。そうなれば、戦場全体に混乱が生じる。
 時間を稼ぐ他に無い。敵の数を減らしながら、多くの敵を相手取り、他の戦線が少しでも有利に動けるようにする。当初と変わらず、それが自分の担うべき役割だろう。変わったのは、いささか予想よりも危機的な未来が待ち受けていることだろうが。
 覚悟を決めて、襲い来る小悪魔たちを薙ぎ払おうと魅蓮が舞扇を構え――
 匂いを感じた。
 金木犀の匂い。
「踊り子には触れちゃいけないって、言われなかった?」
 声の直後、橙色の花弁が嵐となって小悪魔を押し流した。
 一陣の金桂の風が過ぎ去った後に立っていたのは、一人の少女。ルーナ・ユーディコット(桂花狼娘・f01373)だ。



「遅くなった」
 魅蓮を一瞥しながら呟きながらも、ルーナは金桂の嵐を操り続ける。花の嵐は統制された小悪魔たちの壁を次々に打ち破り、縦横無尽に戦場を駆け巡っていく。
 ルーナは涙のように冷たい雨に打たれながら吐息する。本当に、この雨に心奪われる暇もない。目の前の敵を一刻も早く倒さなくてはならなかった。
「志高く気炎万丈なところ悪いけど、押し通らせてもらうよ」
 一頭の龍のように戦場を駆っていた金桂の嵐が、ルーナの合図と共に四散した。花弁と共に、金木犀の香りが戦場へと飛散していく。
 ぐらり、と影朧たちの身体が傾いだ。一人ではない。何人もの影朧が、小悪魔たちが飛行状態にぎこちなさが表れ始めている。
「見たモノ。嗅いだモノ。――感じたモノに抵抗する必要はない」
 だから、酔ってしまえばいい。
 花弁の舞う美しさに魅了され、金木犀の香りに酔い痴れて。戦意も殺意も全て忘れて、陶酔境に浸ってしまえばいい。
『ッ――我ら、帝都軍突撃隊!』
 怒声が上がった。
 陶酔感に支配されながら、影朧の一人が大音声を戦場に轟かせる。
『酔いを醒ませ、刃を脚に突き立てろ! 敵は我らが眼前にあり!』
 言うや否や、その影朧は己の脚に軍刀を突き刺す。赤黒い血が散り、雨と共に泥と混じる。
 ルーナを見下ろす影朧の瞳は、鬼気迫る戦意があった。
「……抵抗する必要はないって言ったのに」
 戦うためにただでさえ短い命を削って。戦い続けるために、今にも絶えそうな生命力を更に削って――
 一体何が彼らをそこまで駆り立てているのだろうか。自分の命は惜しくはないのだろうか。
 せめて苦しまずに死にたいとは、思わないのだろうか。
「痛いのは、誰でも嫌だと思ってたんだけどな」
 人狼としてその身を獣へと変じる時、彼女は耐え難い苦痛に襲われる。
 きっと命を削って戦う彼らも同じだろう。だから、彼女なりの慈悲心として、陶酔境に浸る中で彼らを終わらせてやろうと思っていた。けれど、それは真正面から拒まれて、彼らは戦うことを選んだ。
 唇を引き結ぶ。彼らの戦う理由がどうであれ、こうして戦場に立つ以上は、討ち倒すべき敵であることに変わりない。
「――――っ」
 背筋が冷えるような予感を感じた方向へ振り返る。獣の爪。いつの間にかに、敵がすぐそこまで迫っていた。
 香りを拡散させるために花の嵐は四散させていて、自衛に回すには遅すぎる。間に合うか間に合わないか、腰の匕首へと手を伸ばして――

「悪魔に魂を売ってでも戦おうって勇気だけは評価してあげる」

 散った。梅の花と氷の花が、眼前で。
 伸ばされていた獣の鉤爪は切り落とされて、敵は氷で身動きが取れなくなっていた。
「――けれど、仲間に手を出すのは見過ごせないわ」
 肉体を梅の花と氷の欠片に変異させた少女。佐々・夕辺(凍梅・f00514)がルーナの前に立っていた。
 ふと、桂花と梅花に混じって、桜花が舞う。
「ええ、その通りですわ。この方々はお宿の大事なお客様。傷付けるわけにはいきませんもの」
 雨の下、和傘を差して現れたのは一人の羅刹。千桜・エリシャ(春宵・f02565)だ。
「あなたたちにも成すべきことがあるのでしょうけれど……。ごめんなさい」
 抜き放たれる大太刀。黒々とした刃が、ほどけるように桜花に変わる。
 舞い散る桜花は次々と陶酔状態の小悪魔を魅了し、同士討ちを始めさせる。
 桂花が酔わせ、梅花が切り裂き、桜花が狂わせる。
 春秋の花々と共に戦場を死霊が舞い踊り、戦場を彩る。
「お兄様に会うために。――あなたたちはここで討ち倒します」
 戦う意思が一つ、また一つと消えていく。
 雨と共に血が、花が泥濘へと落ちていく。
 戦場にひとときの静寂が訪れて。周囲にはただ雨音だけが響いていた。

「……空知らぬ雨」

 傘越しに雨雲を見上げる。空にある明るい太陽なんて忘れてしまったかのような暗雲は、誰かの涙を想起させられた。



 敷島組との戦闘を終えて。戦場は束の間の休息期間に入っていた。
 花の涯でエリシャの要請に応じて来た者たちも、ひとまず集合して周囲の警戒と休憩を始める。
 そんな中で、肝心のエリシャは一人ぽつんと廃寺の雨雲を見上げていた。
「大丈夫ですか」
 気遣わしげに夕辺が問いかけると、一拍遅れて「ええ」と反応があった。
 言うべきか言わざるべきか、迷うような表情をしながら、夕辺は口を開く。
「やっぱり、無理をしているんじゃ……」
「大丈夫ですよ、夕辺さん」
 振り返ったエリシャの顔は、少し困ったような、弱々しいような微笑みをしていた。
 その表情が、夕辺の心に爪を立てる。
「でもっ、せっかく思い出したお兄さんが影朧になっていたなんて、いくらエリシャさんでも……」
 ショックだろう。不安だろう。動揺もしているだろう。肉親が討たれなければならないオブリビオンになってしまったのだ。心の整理をする時間が必要だろう。
 エリシャは旅館の女将で、強靭な羅刹で――けれど、まだ年若い乙女なのだから。
「心配して下さるのね。ありがとう、夕辺さん」
 傘が差し出されて、夕辺に降りしきる雨が遮られた。
「実は、一度お兄様とはお会いしたのです。一度は討って、彼とは再会を誓いました」
「再会って……」
 それは、輪廻転生の先での再会を意味した約束ではないのか。
 夕辺の予想に応じるように、エリシャは頷きを返す。
「このように影朧としてのお兄様と再会するのは、少し不本意ではありますけど……旅館のみなさんのことを紹介し忘れていましたから」
 もちろん、あなたのことも。そう言って笑いかけてみせる彼女の微笑みはいつも通りで。冗談なのか本気なのか、判断しかねた夕辺には何も言い返せなかった。
「大丈夫ですよ。みなさんが付いています。――もちろん、夕辺さんも。頼りにさせて貰いますね」
「――――」
 一瞬、虚を突かれたように目を丸くして、それから夕辺は強く頷きを返した。
「お任せ下さい、エリシャさん。私はあなたの剣として、期待を裏切りませんから」
 それはきっと、今ここにエリシャのために集った者たちも似たような気持ちだろう。
 彼女は、みなに慕われている女将なのだから。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵


第2章 集団戦 『旧帝都軍突撃隊・旭日組隊員』

POW ●怪奇「豹人間」の力
【怪奇「豹人間」の力】に覚醒して【豹の如き外見と俊敏性を持った姿】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD ●怪奇「猛毒人間」三重奏
【怪奇「ヘドロ人間」の力】【怪奇「疫病人間」の力】【怪奇「硫酸人間」の力】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ ●怪奇「砂塵人間」の力
対象の攻撃を軽減する【砂状の肉体】に変身しつつ、【猛烈な砂嵐を伴う衝撃波】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 旧帝都軍突撃隊・旭日組。
 人工的に怪奇人間の因子を移植された“元人間”。
 人の身に反発する怪奇の因子によって極めて短命な彼らは、その怪奇の力でもって人ならざる力を用いて敵を打ち倒した。
 しかし大戦後、彼らに施された非人道的な実験が明るみに出たがためにその存在は記録から抹消され、名誉を得られぬままに彼らはその短命を終えた。同じく突撃隊の、敷島組と共に。

『それで良いのだ』
『たとえ後世に我らの名が残らずとも』
『真の栄誉は我らの胸にある』
『“帝都臣民”を守護するために捧げられし我らが命。我らが武勇』
『ここなる戦地にて、外敵を討ち倒さんがために今一度燃やしてくれよう』



 幻朧桜が舞い散り、菖蒲の花が咲き乱れる廃寺。
 そこに降る雨は、当初の小雨よりも強くなっていた。
『諸君、我らが同志“敷島組”はその挺身によって華々しく玉砕した!』
 雨音の中、男の大音声が響き渡る。
『敵は強大、なれど我らは負けぬ! この怪奇の力を用いて、各個撃破に努めよ!』
 白の軍服を身に纏った軍人たちが、その身を次々に人ならざるものへと変貌させる。
『敵の強みはその連携と見たり! 包囲し、分断し、殲滅せよ!!』

■□■□■□■□■□

・第二章:対『旧帝都軍突撃隊・旭日組隊員』戦
 敵は怪奇の力を宿した元人間のオブリビオンです。彼らはこの廃寺が戦地であり、猟兵たちを外敵と見なして、“臣民”を守ろうとしています。
 非常に短命であり、いずれのユーベルコードを使っても彼らは寿命(生命力)を消耗します。寿命を消耗し尽くした者に転生の余地は無いでしょう。
 転生は桜の精によって行われますが、参加者に桜の精がいない場合は、この廃寺の幻朧桜の精が行ってくれることでしょう。ただし、彼らには戦う力も、意思もありません。

 敵は猟兵たちの強みは「連携力」にあると考え、包囲分断による各個撃破を狙って来ます。猟兵たちは包囲され、分断された状態で戦闘を行うことになります。
 一人の場合はいかに敵の攻勢をしのぎ、包囲を突破するか。
 複数人の場合はいかに分断された仲間と合流するか。
 これらが勝利の鍵を握っていることでしょう。

 窮地の中で、あなたたちはどのようにして敵に打ち勝つでしょうか?
 プレイングをお待ちしております。
馬県・義透

引き続き豪快古風な『侵す者』。

なるほど、各個撃破!このような戦場(いくさば)にて、数有る相手がとるには最もな手段。
これは、身におる三人を呼べども分断されるか。
なればこそ、こちらもこれを使おうぞ。
――雨に雷は付き物であろ?

【それは雷のように】。弱き雷といえど、痺れまではどうにもできまいに。
少しでも隙間を開けてみよ。この速さに、お前たち豹はついてこられるか?

まあ、できうる限り、相手の寿命が尽きる前に何とかしたいのが心情よ。
…何せ、この世界では許されておるのだろう。『転生』が。
なれば、そうしたいというのが『わしら』の総意でな。
同じ黄泉帰りをした者たちの、な。


 四面楚歌とはこのような戦況を指すのだろう。
 馬県・義透(多重人格者の悪霊・f28057)は己を取り囲む影朧たちを睥睨する。
「なるほど、各個撃破! 斯様な戦さ場にて、数に勝る陣営が取るには妥当な戦術だ」
 生前を思い出したのか、血が騒ぐ様子で悪霊“侵す者”は攻撃的な笑みを浮かべる。
 とはいえ、さして余裕があるわけでもない。仮に“侵す者”以外の悪霊をこの場に呼び出せども、畢竟再び分断されて包囲殲滅されてしまうだろう。
「だが、やりようが無いわけでも無し」
 彼とて生前は死線を幾度も越えて来た歴戦の猛将。兵はおらねど、その身には悪霊の力が宿っている。
 言うなればそれは鬼に金棒、弁慶に薙刀。

「我らの怒りを」

 あるいは――“虎に翼”。
 禍々しい呪力と共に、義透の身体は有翼の虎へと変貌する。
 咆哮。大翼を広げ、有翼の虎は空へと羽ばたく。
『逃がすな! 総員、かかれ――ッ!!』
 虎の威圧的な雄叫びにも怯まず、影朧たちは己に宿された怪奇の因子を呼び覚ますことで“豹人間”へと変身を遂げる。
 飛翔せんとする義透を地面に引きずり降ろさんと、人間を遥かに超えた跳躍力で追い縋るが――
「――雨に雷は付き物であろ?」
 義透から放たれた雷撃がそれを接近を許さない。無防備な状態で飛びかかろうとする影朧たちを、雷がことごとく灼いて撃ち落とす。
「弱き雷といえど、痺れまではいかようにもできまい」
 雷を放ち続けながら、虎は下界の豹人間どもを見下ろす。すでに包囲に意味はなく、このまま灼き続ければ敵は壊滅するだろう。
 だが、彼らはそうしない。義透は翼を羽ばたかせ、虎の爪と牙でもって影朧たちを打ち倒していく。
「さあ、少しでも隙間を開けてみよ! お前たち豹はこの虎の速さについてこられるか?」
 慢心ではない。矜持でもない。
 義透らが敵を弱らせるままに倒すのを選ばなかったのは、その人情がゆえにだった。影朧どもは寿命が尽きてしまえば転生の余地がなくなる。
 ゆえにこそ、手ずから討ち倒すことで転生の輪に加えてやろうと言うのが義透“たち”の総意であった。
「なに、同じ黄泉帰り者のよしみだ。遠慮はしてくれるなよ!」
成功 🔵🔵🔴

化野・花鵺


「せぇふくおかわり来たぁ!」
狐、手を叩いて喜んだ

「砂になっちゃったぁ。せっかくのせぇふくがもったいないぃ」
狐、指をくわえて悲しんだ

「砂だって高温で燃やせるしぃ、ガラス質になっちゃえば動けないし倒せるよねぇ」
敵が固まっている所にまとめて「フォックスファイア」
青白い高温の狐火で焼き尽くす
敵の攻撃は野生の勘で避け衝撃波で弾きオーラ防御で受ける

「ヌシらは護国のために戦って死ねれば満足なのであろ?妾がその最後の望みを叶えてくりょう。満足していくが良いわ」
狐、憮然とした表情で吐き捨てた

「最後も軍人さんが来るんだよねぇ。どんな人かなぁ。最後までせぇふくの人だといいなぁ」
狐、戦場の先を眺めて目を細めた


 予知通りの、旭日組の参戦。
 先の戦闘からの連戦で消耗した猟兵たちにとっては、頭の痛くなる問題だ。しかも、包囲されての多対一を強要されるともなれば尚更だろう。誰の顔にも焦りや不安、疲労の色が見え隠れしている。
「せぇふくおかわり来たぁ!!」
 そんな中で、一人だけ手を叩いて喜色を示す者がいた。化野・花鵺(制服フェチの妖狐・f25740)だ。
「黒せぇふくはビシッとしてて大人っぽくてカッコよかったけど、白せぇふくも清潔感と気品高さがあって捨てがたいなぁ」
 旭日組の隊員たちに包囲されてなお、彼女は危機感など一切抱かずに、むしろ360度どちらを振り向いても制服姿の軍人しかいない状況に恍惚としていた。包囲しているはずの影朧どもも何か怪しいたくらみでもあるのではないかと訝しんでいるが、単に彼女が制服フェチなだけである。
『護国のために、臣民のために! 総員、かかれッ!』
 号令と共に、影朧たちの身体が砂へと変貌すると同時に砂嵐を巻き起こす。さすがの花鵺もこれには喜色満面だった表情を一変させる。
「せっかくのせぇふくが砂になっちゃったぁ! もったいないぃ!」
 失意と悲哀の叫びまでもが、どこまでも制服主体の女だった。
 そんな花鵺の叫びとは別に、影朧たちは砂の嵐から衝撃波を飛ばして攻撃をしてくる。それに対して彼女が翳したのは数枚の霊符。呪力による衝撃波で敵の攻撃を相殺し、飛んでくる砂礫を結界で防ぐ。
「もう少しせぇふく堪能したかったけど――頼まれごとはしっかりとこなしてやらねばのう」
 結界の外に生じるのはいくつもの青白い炎。それらは砂嵐の中で揺らめきながらも次々に結集していき、一つの大きな焔となる。
「ヌシらは護国のために戦って死ねれば満足なのであろう?」
 ほとほと呆れ果てた。憮然とした表情で花鵺は砂塵を見やる。なぜこの地に留まり、一歩を踏み出さないのか不思議でならなかった。それがまさか、“臣民を守る”ことだったなんて。
 民を守るはずの者たちが、民を害するオブリビオンに成り果てる。あまりにも皮肉が過ぎた。
「妾がその最期の望み、叶えてくれよう。満足して逝くが良いわ」
 巨大な焔が砂嵐へと投げ込まれる。破魔の炎が“怪奇”を破り、砂から生身へと戻された影朧たちは炎の中へと呑まれていく――。
「砂をガラスに――とするには少しばかり熱が足りなんだか。まあよい」
 一瞥が、砂嵐へと向けられる。
「安んじよ。ヌシらや妾がおらぬとて、臣民は安泰であろうよ」
 守ろうとする者は、一人ではないのだから。
 砂嵐にぽっかりと空いた火球の跡の先を見つめながら、花鵺は吐息した。
「……この次に来るのも、制服着た軍人さんだといいなぁ」
成功 🔵🔵🔴

杜鬼・クロウ
◎●
雨で濡れ前髪下ろし

窮地に陥るだけで無く
死をも覚悟したコトだってあった
例え敵が多勢に無勢で来ようと変わらねェ
俺は進むのみ
゛誰か゛の礎となるのなら其れも良し
今日は゛そんな気分゛だ

上見上げ目瞑る
刮目後、一歩踏み込む

何かを振り払う
包囲されても冷静

【煉獄の魂呼び】召喚
禍鬼は威嚇含め開幕に霆攻撃
複数敵を一気に蹴散らす
体制崩した所を禍鬼が棍棒で殴る

敵が持つ武器を強奪
砂塵に片眼瞑り距離取る
雨で敵には不利と予想
長期戦へ
刀か剣で2回攻撃
ジャンプし一突き
敵の数を出来る限り減らす
敵の攻撃は廃寺の建物利用し回避

敵サンの真っ直ぐな矜持
悪くねェ戦況分析とその知性
ならば
テメェらの全力を俺が今持ちうる全力で捩じ伏せてヤる迄


 窮地に陥ることは数多く。
 死をも覚悟した経験すらあった。
 無数、巨大、多様、狡猾――様々な敵を相手取った。
「多勢に無勢だろうが関係ねェし変わらねェ」
 ただ、“前”に進むのみだ。
 杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)は天を見上げ、瞑目する。彼を中心に、何か禍々しい気配が広がった。警戒するように影朧たちはそれぞれ“砂塵人間”の因子によって、その身を砂嵐へと変える。
「――杜鬼クロウの名を以て命ずる。拓かれし黄泉の門から顕現せよ!」
 気配だったものは、壮絶な紫電となって辺りに散る。砂の嵐に包囲され、雨の降りしきるその場はまるで雷雲が渦中の如く。さりとてクロウは怯む様子も恐れる様子もなく、一歩前へと踏み込んだ。

        リベルタ ・ オムニス
「罪の呪器……混 淆 解 放──血肉となりて我に応えろ!」

 クロウの叫びと共に、禍鬼の霊が現れる。赤錆色の棍棒を振るわれて、雷霆が辺りに放射される。
 砂塵人間に対して雷撃はいかにも無力だと、誰もが思うだろう。砂、つまり珪砂は珪素の割合が多いほど絶縁性となり、電気を通さない。砂塵に電流は十分には放射しきれず、雷撃は無為に帰す。
 ――それは、もしも今日が雨ではなかったらの話だ。
 雨粒によって固まった砂は、電流を通してしまう。高温の雷霆が通った後にできるのは、灼かれたことで不細工に成形された“砂の塊”。それを禍鬼は棍棒で薙ぎ払う。
「その真っ直ぐな矜持に悪くねェ戦況分析と知性。敵サンとしちゃ悪くねェ、上等だ」
 影朧は禍鬼を脅威と判別するや否や、クロウへと襲いかかる。召喚されたものであれば、術者であるクロウを排除すれば禍鬼を同時に無力化できると考えるのは自然な思考であるし、何より術者の周囲には禍鬼の雷は放射されない。
 砂塵に紛れて影朧がサーベルで斬りかかってくる。回避。敵の腕を掴んで曲げて、体重をかけたまま地面に叩き付ける。
「ならば――テメェらの全力を俺が今持ちうる全力でねじ伏せてヤるまでだ」
 強奪したサーベルでトドメを刺して、即座に跳躍。新手の攻撃を避ける。持ち前の跳躍力を使って、禍鬼とお互いにカバーできる範囲に入る。
 かつての敵だった禍鬼と背中合わせに、周囲を取り巻く敵へと刃を向ける。
「“誰か”の礎となれるのならばそれも良し。――今日は“そんな気分”だ!」
成功 🔵🔵🔴

ヴィクティム・ウィンターミュート


──ケッ、短い命を態々無駄にする神経、わからねーな
一応やれるだけはやってやる
『転生』なんざ生温くて面倒だが、知り合いが良い顔をしないんでね

お前らはこれを知らない、いや…むしろよく知ってると言うべきか
Void Link Start
仕事の時間だ、骸の海──切り拓け、『Lost Eden』
テメェらが俺を独りのままで殺るつもりなら、手駒を出すまでだ
集団対集団、条件は同じだが…"頭"が違う
俺という司令塔が致命的に作用するぜ
長引けば長引くほど、お前らは敗ける

さて、転生の予知残さねえと
こいつらの武器は『過去を削ぐ』
ユーベルコードを発動したという過去さえな
これで寿命の消費は、無かったことになるはずだ


 とにかく気に入らなかった。
「──ケッ、短い命をわざわざ無駄にする神経、わからねーな」
 ヴィクティム・ウィンターミュート(End of Winter・f01172)は砂塵人間と化した影朧たちを睨めつけて舌打ちする。
 彼が脳裏に思い浮かべるのは、かつての故郷。掃き溜めのようなスラム街で、明日も知れぬ身でありながら懸命に生き延びようとする下層民たちの姿だ。
「栄誉だのなんだの、くだらねえ」
 そんなもの、腹の足しにもなりゃしない。そんなもの、命を削ってまで得るものでもない。やつらが嬉々として浪費しようとしているのは、誰かが心の底から欲していた命だ。
 敷島組とかつての仲間たちがダブついて見えていた分、余計に腹立たしく感じてしまう。
 影朧どもは名誉を求め、戦友たちは自由を求めた。たったそれだけの違いなのに、まるで大きな地裂が広がっているかのように影朧たちのことが理解できない。
「だが、一応やれるだけはやってやる。……放っておいたら、知り合いが良い顔をしないんでね」
 輪廻転生と呼ばれるこの世界のシステムは、自分の生きていた世界に比べて生温い“救い”だ。
 虚無であるはずの“死”が、救済となってしまっている。

「――Void Link Start」

 プログラムの起動と同時に、戦場に漆黒の塔が建った。
「お前らはこれを知らない――いや、逆だな。むしろ“よく知ってる”」
 漆黒の塔が揺れる――否、塔からいくつもの人影が出撃しているのだ。黒い武器を携えた人影たちが。
「仕事の時間だ、骸の海──切り拓け、“Lost Eden”」
 塔から降り立った人影たちは、武器を手に影朧たちと干戈を交える。
 数の上では同等だ。人影たちは漆黒の武器を振るい、影朧たちは砂塵人間となって攻撃を避ける。
 勝負は互角――ではない。
「継戦能力が違う。武装が違う。そして何より――司令塔のデキが違う」
 長引けば長引くほど、勝負はヴィクティムの側に傾く。
 ヴィクティムの采配に従い、人影が漆黒の武器を振るう。影朧は砂塵となってそれをやり過ごそうとして――血が舞った。
 影朧たちの砂塵化が、いつの間にかに解除されたいたのだ。
「こいつらの武器は“過去を削ぐ”。――お前たちがユーベルコードを発動したついさっきなんて、すぐに削ぎ取れちまうよ」
 黒く、黒く、過去を塗り潰して……虚無へと還す。寿命を費やすことさえ許さない。砂塵化という回避手段を奪われた影朧たちは、なすすべもない。
「――ああ、まったく。気に入らねえ」
成功 🔵🔵🔴

寧宮・澪
ざらざら、砂嵐ですねー……

今度はおやすみなさいー……ですよ
世界へちょっぴり干渉しましてー……降る雨を、まとめて……砂塵を集めて一所に固めましょー……
固めてまとめて、眠らせたら、合流しやすい、ですしね……
砂山のようにまとめたら、揺り籠の謳……傷を癒やして、おやすみなさい……

ここはもう、戦の終わった場所です……臣民皆、貴方方の奮闘により、幸いにも無事ですよ……
外敵はもう、貴方方の勲しに討たれました……
まさしく旭の如き、ご活躍……末永く語り継がれましょうや……

ゆったりと、催眠で心安らになるように歌いあげー……眠りを誘う、甘い香りの蜜も大盤振る舞いー……
さあ、おやすみなさい、なー……


 敷島組は空を中心に数と連携で攻撃するという、いわば王道の戦術だった。
 対して旭日組の戦術は怪奇人間の因子を活用した包囲と各個撃破、つまり搦手が基本だ。敵を陥れて勝ち筋を潰す。
 取れる手立てが少ない者ほど相手しづらい敵だろう。少ない勝ち筋が潰されれば即ち詰みだ。
 だが、手段も勝ち筋も多く持つ者にとっては、そう対処に難しい相手ではない。
「ざらざら、砂嵐ですねー……」
 寧宮・澪(澪標・f04690)は砂嵐の中にいた。砂塵人間の力を使った影朧たちによる包囲。窮地と言って良いはずのこの状況にあって、澪は常と変わらず眠たげな眼を周囲に向ける。
「きっと、あなたたちの心もー……こんな風、だったんでしょうねー……」
 雨が降りしきり、砂嵐が吹き荒れる。閉じかけたまぶたの裏にそんな情景を想像しながら、澪は手指を動かす。
「残念ですがー……この雨を、晴らすことは、できませんけどー……」
 けれど、自分にもできることはある。自分にも、彼らにしてあげたいことがある。
 彼女が手指を動かすたびに、降り続けているはずの雨が、横へと移動し、集まり始める。
「集めて、固めて、まとめて――」
 集まった水の塊は、砂嵐の中へと入り込んで砂を受け止め――そうして出来上がったのは、一つの砂山。
 おもむろに手を止めた澪は、小さな瓶を取り出す。夜色の液体で満たされた、夜糖蜜の小瓶。
「ここはもう、戦の終わった場所です……臣民のみなさんは、あなたがたの奮闘により、幸いにも無事ですよ……」
 きゅぽんとコルクが抜けると同時に、微かに甘い蜜の香りが広がる。
「外敵はもう、貴方方の勲しに討たれました……。まさしく旭の如き、ご活躍……末永く語り継がれましょうや……」
 小瓶を振って、蜜を放つ。それと同時に、澪の喉から歌が響いた。
 行進曲のような勇ましさはない。軍歌のように壮大でもない。
 けれど、それは心に平穏と安心を与えてくれるような子守唄だった。
「ゆらゆら、眠れ。安らかに――♪」
 子守唄は夜糖蜜の甘い香りと共に、影朧たちを眠りへと誘う。
 彼らは守るために命を費やした。それは立派な働きだっただろう。
 けれど、守るべきものはもう守られている。外敵はもういない。だから――
「せめて、安らかに、眠って下さいなー……」
 雨の下、戦場の中。
 子守唄は、最も似つかわしくない。
 けれど――安らかに眠る影朧たちには、きっと最も相応しく必要だったものに違いないだろう。
「さあ、おやすみなさい、なー……」
成功 🔵🔵🔴

ティアー・ロード
◎【犬と仮面と】

「囲まれたか
どうも各個撃破したいようだね
――折角だ、乗ってあげようか?」

私は曾場八野くんの背にいるから分断も難しいだろう?

「私はこの先に用事があってね、
一足先に飛んでいくとするよ」

浮遊し彼らが守ろうとしている方向へ飛んでいくよ
”挑発”もしていくね
「はーっはっは!
さらばだ!このまま乙女、
いやさ臣民の所まで一直線でいかせてもらおう!」

追いつかれたら
刻印「金剛不壊」を使用し攻撃を耐えるよ

「そうだ、忘れてた
ポジションチェンジでね、私は今回Dfなんだよ」

「だからね、私に構ってていいのかい?
そら、死が迫って来たぞ」

「臣民守りたい……なら、このまま転生するといい
その役目は私たちが引き継ぐさ」


曾場八野・熊五郎
◎【犬と仮面と】
番犬適性の高い奴らでごわすな、シンパシー感じるでごわ。

囲まれたでごわすか、ならばここは大昔に侍が使った策で行くでごわす

まずは廃寺フェイスオープンでお面を逃がすでごわす。まあ正確には逃がすふりでごわすな
敵は当然手ごわい我輩よりムカつくお面を追っていくでごわすが、速さにバラつきが生じるから自然速い順に一列に追う形になるでごわす

そこを切られる寸前で廃寺マスクチェンジセカンドで合体させて力ずくで薙ぎ払うでごわす
(『怪力』で【キョダイマックス】させた『破魔』鮭をティアー目掛けてぶん投げるの意)

若い命を燃やし尽くしたでごわすか。名誉はわからんでごわすが、汚名がつく前に成仏させてやるでごわ。


 窮地の打開策は、思いがけないところに転がっていることがある。
 それは書物の片隅で語られた戦術であったり、細々と語り継がれた歴史がヒントになることすらある。
「ここは大昔に侍が使った策で行くでごわす」
 曾場八野・熊五郎(ロードオブ首輪・f24420)は影朧たちに囲まれた状況にあって、古に伝えられる――と漫画で紹介されていた――戦法を思い出した。
「ほう、その策とは?」
 それに応えるのは、熊五郎のヘルメットに貼り付いた仮面、ティアー・ロード(ヒーローマスクのグールドライバー・f00536)だ。ティアーが熊五郎に貼り付いていたおかげで、このチームは唯一分断されずに済んでいた。
「幕末の頃、数で劣る維新志士たちが使った常套手段でごわす」
「成程、それなら乗ってあげようじゃないか」
「では合図と一緒に行くでごわすよ。――廃寺フェェェーイス……オープン!」
 一瞬の目配せの直後、熊五郎が遠吠えを上げた。それを合図に、ティアーが念動力で浮かび上がって、影朧の頭上を飛び越えて行く。
「はーっはっは! さらばだ! このまま乙女――いやさ臣民の所まで一直線でいかせてもらおう!」
 高笑いと共に宙を駆るティアーの言葉に、影朧たちは気色ばんで怪奇人間の因子を起動する。
『させるな! 隊を二分し、奴を追う! 我に続け!』
 変身した豹人間たちが駆け出し、跳躍する。最も近く、最も速い者がティアーを射程圏内に捉えた。
 豹人間がサーベルを振り下ろす。それをティアーは――動かずに受け止めた。

「――そうだ、宣言を忘れてた。ポジションチェンジでね、私は今回ディフェンダーなんだよ」

 刻印“金剛不壊”。ティアーの白い仮面の身体は、いつの間にかに黒い光沢を帯びたダイヤの身体へと変化していた。
「だからね、私に構ってていいのかい? ――そら、死が迫って来たぞ」

「――今でごわす! 速攻魔法発動! 《廃寺マスクチェンジセカンド》!」 

 水飛沫を散らしながら、雨の中を何かが駆ける――否、“飛んだ”。
 それは熊五郎の手によって巨大化した鮭、石狩鱒之助刻有午杉だ。破魔の輝きを帯びたそれは、薄くなった包囲網をブチ破って豹人間たちへと直撃する。
 包囲網が崩れてしまえば後は為す術もない。奇策に陥れられた影朧たちが、二人の手によって次々となぎ倒される。
 黒い塵へと化す影朧たちへと熊五郎は前肢を合わせ、ティアーは空を見上げた。
「若い命を燃やし尽くしたでごわすか。名誉はわからんでごわすが、汚名がつく前に成仏させてやるでごわ」
「臣民守りたい……なら、このまま転生するといい。その役目は私たちが引き継ぐさ」
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

龍之・彌冶久
……儚い命ぞなあ。
戦い散るを潔しとするか。
否やはない、それも一つの美徳やもしれん。
……が、俺はさして気に入らぬなぁ。
そしてお主らも止まる気はあるまい、小僧共。
うむ、では勝負だ。
お主らの矜恃と力、持てる全てをかけて来るが善い。

紡ぐ脈は"地"と"陽"と"魄"。
幻朧桜の精や、ちょいとその"脈"を借りるぞ。
そして――

"阿頼耶の構え"。
刃一閃、刹那の間も莫し。
力を使う為の力み、身の強張りを見切り
まともに寿命を使う前にその身を斬り鎮める。
【(属性攻撃:地×陽×魄→"桜の精の癒しが乗った刃")×(早業×クイックドロウ×カウンター→神速居合抜き)】

――次は善きものとして生まれ出ずると良いな。
いつかまた逢おう。


ルーナ・ユーディコット
◎【花の涯】
捨身で各個撃破が狙いかな
なるほど分が悪い
けど貴方達の骸を幾つ積み重ねることになろうと押し通る
この程度の逆境で諦めて退くほど甘い覚悟で戦場に立ってはいない

飛行できる敵は居ないみたい
なら活路を見出すなら、上
剣狼の全速で目指すは上空

同じように上に舞い上がった人は?
或いはこの輝きを見つけて向かって来る人は?
探して合流する

地上に高速で強襲をかけて敵の包囲を突き崩す
この赤き炎は私が生きる意思を絶やさぬ限り尽きはしない
狼と豹
どちらの速さが勝つか

生への執念と死を厭わぬ捨身
どちらが鋭く土壇場で折れない刃か
身を以て知るといい

決着がついたとき
もし貴方たちの命が尽きていないのなら
――私が願う事じゃないか


安河内・誓吾

雨の降る中知った顔の戦果を見に来たら
囲まれたな
忍んで来ただけに居ることを知られたくなかったから好都合
いや
これでは奴らの様子も満足に見られないか

で、敵は
ヘドロに病毒に酸
人のカタチをしてるが癖があるな
案外生命力を刈り取りつつ楽しむのも手か

が、気に食わない
どういう背景があれど
人間として強くなったわけじゃない
すぐ壊れる大量生産の玩具になったのは
個の才を蔑ろにし過ぎだ

真向から相手すんのはやめ
知った顔に見つかるのも致し方ない

雨もあってか醒めちまった
纏めて始末をつける
不可視の灼熱で酸も病もヘドロも
脆い命も
等しく蹂躙してくれる

もし幾人か息があるなら
散るか転ずるか
精々苦しみながら考えろ
俺はその結論に興味ないが


皐月・灯
◎【花の涯】

ふうん……分断してきたか。
解ってやがる。元軍人部隊ってのは、どうやら伊達じゃねーらしい。

だが、一人は慣れてる。この程度で揺らぐほどヤワじゃねー。

連中の陣形は包囲、目的は分断と各個撃破。
だが、オレ1人に全力が割かれてるわけじゃねー。
おまけにそう遠くねー場所で、他のヤツが暴れてるときた。
付け入る隙は、ある。

【全力魔法】からの《大戦神ノ槍》だ。
コイツの大火力で【切り込み】、焼き尽しながら一点突破する。
オレは飛べねーからな、そのまま地上にいるヤツと合流するぜ。

あとは単純、手当たり次第にブッ飛ばす。
何せ終わるまで消耗し続けるんでな。道、開けて貰うぜ。



その道は……救いのある別れへ、繋がるんだ。


千桜・エリシャ
◎【花の涯】

分断とは考えましたわね
捨て身のところ悪いですが
私には会わなければならない方がいらっしゃいますから
ここは通してもらいますわよ

この身を桜に変えて
敵の隙間をするり抜けて
そのまま空中に舞い上がり花時雨を開いて浮遊
空中にいる仲間と合流しましょう

最低でも二人、合流できたなら
その方々と連携し突破していきましょうか

花嵐のごとく吹雪いて敵の目を撹乱
仲間の援護をして
いくら疾くとも当たらなければ意味はありませんわ
攻撃を見切ったなら桜に変じて避けて
そのまま死角へ現れたなら
呪詛を籠めた刃で斬り結びましょう
なるべくなら一太刀で寿命を使い尽くす前に
…あなたたちが転生できるかはわかりませんが
可能性があるならば――


燈乃上・鬼利丸
◎【花の涯】
はえー、分断されちまったかぁ
ちゃっちゃと合流してえ所だけども……
如何せん空を飛べたりもしねえしな
悪ィが正面突破させて貰うぜ。

奴さん等がこんだけ居りゃあどこにインクぶち撒いても当たんだろ!ま、当たらんくても俺がソコに立てりゃあいい訳だ。 

オラオラァ!
そこ退けそこ退け鬼利丸様のお通りだァ!

まあ皆の事だ、心配するまでもねーんだろうけどさ
早めに合流出来るに越したこたぁねえ。
……つーか、一人て、めっちゃ心細いっつーんだ!!さっさと皆んトコ行かせてもらうぜ!!!


佐々・夕辺
◎【花の涯】

分断された…!
これでは数の利は意味をなさないわね
でもね、私の辞書には「酸っぱい葡萄」なんて言葉はないの
とにかく誰かと合流しなければ

ステップで宙に、高高度まで蹴り上る
其処から敵味方の位置を視認、管狐で援護する
氷の呪詛を纏った管狐をばらまいて
空にいる仲間のところへ合流しましょう

おおまかな敵味方の位置を共有して
あとは管狐に任せましょう
舞いなさい、踊りなさい
そうして勝手に広がる氷を相手に植え付けてやりなさい
それ等はヘドロも硫酸も凍らせる
疫病でさえ死ぬる極寒

――恨みはないけど、これが私の仕事なの
貴方たちが“挺身”をこの地に捧ぐというなら
…鬼とでも何とでも呼びなさい


白寂・魅蓮
【花の涯】
僕達を分断して数で押し切ろうってわけですか
向こうも軍隊なだけあってただやみくもに突っ込むだけの馬鹿じゃない、か

とはいえ流石に一人だけで突破というのは難しいから、まずは誰でもいいから合流するとしよう
地上は敵の手が広がっているし、敵の頭上を飛び越えるように障害物を飛び移って勢いがついたら紫陽涙を開いて上空へ逃げるよ
空中を浮きつつ、空にいる仲間達と合流しよう

誰かと合流出来たら反撃開始
此の戦場に残る人魂の残り香を集め、青紫の炎を一気に敵に叩き込む
味方の動きに合わせて炎の動きも操作していこう

僕達にも引けない理由はある
だからせめて君達の未練ごと…喰らいつくしてあげるよ


兎乃・零時
◎【花の涯】

ぇぇ…一人じゃん!
いやパルもいるけども!

でも、ここで退いたら男が廃る!
助け求められてんだ!
なら!応えるのが道理だろうよ!
だから!
お前らが捨て身だろうと!
俺様は勝って!生き延び先へ行く!
後お前らにUCは使う暇も与えねぇ!!

行くぞ!!
跳べ、パル!
【ジャンプ】!
UC起動!
【覚悟×気合×勇気×元気】

どうにか二人以上合流できるよう頑張る!

乗ったまま【空中浮遊×空中戦】なパルへ【魔力溜め】
味方がいるなら傍による!
連携大事だからな!

ぶっとばせ、ぱるー!味方は巻き込むなよ!
パルの前に魔法陣が展開され光【属性攻撃×リミッター解除×ブレス攻撃×制圧射撃×範囲攻撃】!

沢山いるんなら
全部纏めてぶっとばせ!


斬崎・霞架
◎【花の涯】

数で攻めるのは戦いの基本ですね
しかし、そう簡単にやれると思わない事です
僕も…他の皆も、ね

さて、どうやって合流しましょうか
空を飛ぶ事は出来ませんし…
近くに誰か居れば良いのですが
居なければ…いっそ、派手に目印と場所を作りましょうか

刻死を吼で展開
限界まで力を溜めてから呪詛の砲撃を放つ
味方に当たる心配がないなら、そのまま力尽くで薙ぎ払う
これで、多少は合流し易くなりましたか

他の方と合流出来たら、突破を目指しましょうか
動きの素早い相手ならそれを阻害するように呪詛弾を撃ちます
仕留めきれずとも、味方の助けにはなるでしょう

貴方たちに理由があるように、こちらにも理由があるので
…其処を、退いて頂こう


シズル・ゴッズフォート
◎【花の涯】

……此方の強みを見抜き、即座に対処を実行する。実にお見事です

UCを発動し、大楯6枚を防御用に周囲に展開
残り62枚は上空に複製
包囲している敵に向け、スパイクを槍代わりに落下の勢いと重量も乗せて突撃させる
上手く包囲を破り、その先に猟兵が居れば合流を優先
以後、同じように防御主体の突破と合流を繰り返し
分断された猟兵の合流と損耗を抑えることに注力する「動く前線基地」

私が戦場に立つ理由が違えば、闘争の熱と欲望のままに貴方達と刃を交えていたのでしょう
……正直に言えば、今でもその誘惑は払い難い
しかし、今の私は主のために道を拓く1人のニンゲンです
目的と手段を違える事無く、ただ成すべきを成すのみッ!


リーオ・ヘクスマキナ
んー。コッソリ行って協力するつもりで準備してたら出遅れたか
しかも包囲もキッチリしてるし、参ったなぁ
……仕方ないや。赤頭巾さん、「6番」で行こう
派手になるから、旅館の人達には見つかっちゃうかもだけど……
相手の思惑を戦場丸ごと引っくり返すには、良いUCだしね

即座にUC「化身のロク:笛吹の子供達」を起動
構築された「街」に乗って、戦場の上に陣取ろうか
入れ替わりで、地上には分霊兵350体を降下
ついでに縁の辺りで、ライフルでの地上への援護射撃準備、っと

統率は赤頭巾さんにお任せ
猟兵を包囲してる彼らを、数で逆に局所的に包囲。各個撃破って感じで

一宿一飯の恩、って言うしさ
普段良くしてもらってる分のお返し位はねェ!


霑国・永一
◎【花の涯】
おぉ、自らの命を歯牙にもかけず戦うとは、ご立派ご立派。
まぁそんな誇りに付き合って素直に「はいそうですか」と死ぬ気はないんだけどねぇ。
では俺は誇りを貶して盗むとするかなぁ

狂気の爆弾を使用。敵が集まってる所へ無差別に毒爆弾を投げて回りながら仲間を散策していく。
命を消耗しながら毒により同士討ちまで始めて混乱してる敵の合間を潜り抜けていく。ついでに余裕あれば敵は帯刀してるっぽいので盗んでおく。そしてその剣で斬り付けながら進む

「いやぁ、醜い姿になって命を削ってまで仲間と殺し合いするだなんて、一時の玩具としては最高だったよ。さて、他の皆は何処へ行ったやら」


奇鳥・カイト

…いつの間にか誰もいねェな、ハグレたか
まあ、別にいいか

1人の方が──何かとやりやすい

戦闘)
粗暴な不良の喧嘩ような戦い方に糸による[だまし討ち]や[カウンター]、[罠を使]い組み合わせる
殴る蹴る、その辺にあるものもなんでも使って戦うラフなスタイル
糸は捕縛や罠として仕掛けての反撃や妙手として

周りを巻き込む戦い方の為。人形主体か、よっぽどの事がなければ誰かと共闘する事は無い
だから、思い切りやれる

逃げつつも罠を張り仕留め、糸の微細操作で敵の目標をズラし同士討ちを狙う、迫った相手には糸のカウンターと素手で戦う


ともあれ、自殺集団
面倒だし、最初は逃げの一手にしておくかね
勝手に倒れてくれりゃ御の字なんだがな


 ついさっきまで、そこは戦場らしくもなく、花が舞い散り芳しき香りの漂う場所だった。
 しかし、今は打って変わって辺りに悪臭が立ち籠めている。雨の湿った空気の中に充満する異臭に、佐々・夕辺(凍梅・f00514)は顔をしかめた。
「分断された……!」
 一瞬のことだった。急襲して来た影朧たちによって仲間たちから分断され、夕辺は孤立状態で包囲されてしまった。純粋な数の暴力と言うべきか。連携力で埋めていた頭数の差を無理矢理に離されてしまったのは大きな痛手だった。
『仲間から分断してしまえばこちらのものだ! 総員、ぬかるなよ!』
 夕辺を取り巻く影朧たちはじりじりと包囲を狭めつつある。彼らはそれぞれ怪奇人間の因子によって、ヘドロや疫病、硫酸人間へと変身していた。鼻につく刺激臭だけで気分が悪くなって、夕辺の狐の耳が萎えたようにへたる。
 数体の相手であれば夕辺とて対処できないでもない敵だが、かなりの数で包囲された状態ともなるとさすがに分が悪い。さらに頼みの綱の仲間たちとは離れ離れだ。
「今じゃなければ、きっと『味方なんていなくてもやってやる』ぐらいのことは言ったでしょうけど――」
 敵から放たれたヘドロを、疫病の瘴気を、硫酸を、夕辺は空中を跳躍して回避する。一回、二回、三回! 

「――でもね、私の辞書には“酸っぱい葡萄”なんて言葉はないの!」

 負け惜しみの言葉はいらない。樹上の葡萄ぐらい、飛び跳ねてでも掴み取ってやる。
 敵も対応して放射攻撃を夕辺に合わせて来るが、そのたびに夕辺は宙を蹴って空を跳ぶ。まるで、見えない階段を駆け登るかのように。
「舞いなさい、踊りなさい!」
 夕辺が隠し持っていた竹筒から、冷気を帯びた管狐たちが飛び出していく。彼らは舞い落ちる木の葉のような掴みどころのない機動で影朧たちへと襲いかかると、強酸や疫病を宿したその身体へと氷を植え付け、凍らせていく。
 ヘドロはもちろん、硫酸は凝固させられる。疫病が細菌やウィルスの類であれば、低温度下ではその活動が鈍りやすい。敵の攻撃は極寒によって封じられる。
「恨みはないけど、これが私の仕事なの。あなたたちが“挺身”をこの地に捧ぐというのなら――私を鬼とでも呼びなさい」



 分が悪い。
 ルーナ・ユーディコット(桂花狼娘・f01373)は包囲してくる敵を睥睨しながらそう思った。皮肉なことに、彼女の身に付ける白い指輪“Conium”が力を与えてくれているという事実が、自分が今間違いなく窮地に立たされていることを教えてくれている。
 だが、それはルーナが諦めず、戦いに臨もうとしていることも同時に意味していた。
「私は、あなたたちの骸を幾つ積み重ねることになろうと押し通る!」
 いかなる困難が待ち受けていたとしても、生きると誓ったから。

「――この程度の逆境で諦めて退くほど、甘い覚悟で戦場に立ってはいない!」

 叫びと共に、ルーナの身体はまるで太陽のごとく赤い炎を纏って輝く。
 跳躍。輝ける飛翔体となって、ルーナは上空へと急上昇を始めた。
 一時は怯んだ影朧たちも、その身に宿した因子で豹人間へと変身するや跳躍して追い縋るが――届かない。影朧の対応速度よりも速く、ルーナは空へと上昇していく。
「届きはしない。私の生きる意思が絶えて、この赤き炎が燃え尽きぬ限り」
 敷島組とは違い、旭日組は飛行能力を持たない。ひとまずの安全は確保できたと考えたルーナは、そのまま上空をぐるりと見渡した。自分の予想が正しければ、何人かは同じく上空へと突破できているはずだ。
「ルーナさん!」
 戦場を照らさんばかりの輝きが目印になったのだろうか。空中を蹴って夕辺が来た。
「無事にここまで突破できたようで何よりよ。今はひとまず、ここから戦場の状況を把握しながら味方との合流を目指しているところだけど――」
「なら、戦況の把握をお願い。情報を共有してくれれば、みんなを援護できる」
「わかった。なら、まずは――」
 誰に援護が必要だろうか。夕辺が下界へと視線を移そうとした瞬間だった。
 地上から黒い柱が立ち昇った。
 過剰なまでに濃縮された、呪詛による砲撃だ。



「……さて、これで気付いて貰えれば良いのですが」
 黒い柱の根本、呪詛砲撃の主である斬崎・霞架(ブランクウィード・f08226)は、真上へ向けていた右腕を下ろして吐息する。過剰な呪詛砲撃で、銃型に変形した手甲“エングレイヴ”が蒸気めいて余剰呪力を放出した。

 バーストレイ
  “極光”。

 呪詛をビームとして放射するこの砲撃は、原理が単純であるがゆえに強烈な火力を発揮する一方で、力加減が効かないという欠点がある。
「さすがにこれを水平に撃ったら……まあ、味方を巻き添えにしてしまいかねませんからねえ」
 味方がどこにいるのかもわからないこの状況で撃ち放つには、巻き込みのリスクの高すぎる大技だ。それゆえに霞架は上空へと撃ち放つことで目印としたのだが――影朧どもに包囲された状態であることに変わりはない。
「……いえ、ちゃんと見てくれていたようですね」
 霞架がふっと口元に笑みを浮かべた直後に、疾風と熱が来た。
 赤き炎が一閃を描くと同時に、包囲網の一画が崩れ去る。
 ルーナだ。彼女はそのまま大太刀を手に、飛翔しながら豹人間の影朧たちへと急襲を続ける。
「そっちも無事みたいね」
 太刀筋に見入っていると、夕辺がすぐ近くまで降りて来た。ここが戦場であることを思い出して、我に返った霞架は「失敬」と振り返る。
「ええ、お陰様で。助太刀に感謝しなくてはなりませんね。それで、僕はどちらに撃てばよろしいので?」
「2時の方角よ。そっちなら味方がいなかったわ」
 承りました。言葉と共に、言われた通りの方角へと右腕を向ける。
 砲撃。呪詛の奔流が敵の形成した包囲網を食い破る。豹人間たちは俊敏にそれを避けようとするが、避けた先をルーナの大太刀が待ち構える。
「狼の速さは、豹にも負けない」
 せめて一撃。影朧が放つ決死の爪撃は、しかし大太刀によって切り払われる。
「生への執念と、死を厭わぬ捨身。どちらが鋭く折れない刃か――身をもって知るがいい」
 返す太刀が閃いて、豹人間は黒い塵と化した。
 最早包囲は瓦解してしまった影朧たちは完全に態勢を崩していた。浮足立つ彼らの隙を、霞架が見過ごすわけがない。エングレイヴを構えて、呪詛弾を放射する。呪詛弾は極光と比べて威力は高くないが、連射性が高く小回りがきく。それゆえに、彼は敵の移動経路を予測して、敵の機動力を削ぐ形で呪詛弾を弾幕として展開した。
 呪詛の嵐の中で、影朧の一人が叫ぶ。
『刺し違えてでも敵を倒せ! ここから先を通してはならん!』
「あなたたちに理由があるように、こちらにも理由がありますので」
 弾幕の中、白い一閃が豹人間の頸を飛ばした。
 左手で“梅花”を血振るいしながら、振り向きもせずに霞架は呟く。
「……そこを、退いて頂こう」



 包囲戦は次第にその綻びを見せ始めた。
 猟兵たちは合流を始め、影朧たちへの反撃へと乗り出す。
 その一方で、合流せずに他者の力に頼らない者もいた。
「囲まれたな」
 片刃の大剣を肩に担ぎながら、安河内・誓吾(渇鬼・f05967)は頭を掻く。せっかく雨の中まで知り合いの戦果を確認しに来たというのに、随分な歓迎のされようだった。
 とはいえ、今回の“見物”はお忍びだ。知人に知られてしまうのはあまり面白くない。そういう意味では、こうして影朧たちを隠れ蓑代わりに使うのは悪くない。
「……いや、これでは奴らの様子も満足に見られないか」
 ならばやることは一つだろう。誓吾は肩に担いでいた片刃大剣を構える。
 見物料代わりに影朧をいくつか片付けて、観戦席を確保する。――仮にそれで見つかってしまったら、その時はその時だ。
 放射されたヘドロを大剣で受け止めて跳躍。硫酸を避けると、さっきまでいた地面がじゅうと煙を上げて溶けてしまう。誓吾の着地点に待ち受けているのは、疫病の瘴気だ。大剣を振り回し、旋風を巻き起こすことで瘴気を散らす。
「癖がある……が、気に食わないな」
 ヘドロ、病毒、酸。人のカタチを取っているものの、彼らは人間として強くなったわけではない。誓吾の目にはそう見える。彼らは人ではなく、兵器として強くあれと定められたのだろう。
「すぐ壊れる大量生産の玩具になったのは、個の才覚を蔑ろにし過ぎだ」
 仮にここに立つ影朧たちが兵器としてではなく人として強くあれと定められ、練武に励み、各々の才覚を開花できていたとしたら――己の渇望を多少は癒やす糧となっていてくれたかもしれないのに。
 惜しいことをしてくれる。呟きと共に、雨の冷たさで誓吾の中の高揚が急速に醒めてしまった。
「テメェらじゃ満足できないな。纏めて始末をつけてやる」
 言葉の直後に、水が蒸発する音がした。
 雨の冷たさを上回る高温が周囲に広がり、拡散する。
 陽もなく、火もなく、その中心にいるのはただ一人の羅刹のみ。

 不可視の灼熱。

 誓吾から放たれる超高温のガスが雨を蒸発させ、地を溶かし、影朧どもを融解させる。
 水蒸気による煙の中で、羅刹は地に倒れ伏す影朧たちを睥睨する。
「散るか、転ずるか。精々苦しいながら考えろ」
 最後に一瞥をくれてやって、彼はそれで興味も尽きたとばかりに背を向けた。


 
 包囲されるのはあまり気分が良いものではない。
 特に霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)にとってはそうだ。こうして軍服姿の影朧に囲まれると、下手を打って警備員たちに取り囲まれるような気分になってしまう。
「まだ何も盗んでないんだけどねぇ」
 何も悪いことはしていない、と永一は肩を竦める。少し“花火大会”で楽しんだだけだ。
『帝都臣民のために、命を捧げよ!』
 影朧の一人が叫ぶと同時に、永一を取り囲む敵が怪奇人間の因子が起動する。その姿はあるいはヘドロにまみれ、あるいは疫病の瘴気に覆われ、あるいは硫酸によって焼け爛れていた。
「おぉ、自らの命を歯牙にもかけず戦うとは、ご立派ご立派」
 ぱちぱちぱち、と永一はやる気のない拍手を影朧たちへと送る。実際、彼らの保有する因子はそれなり以上の代償を強いるものだ。刺し違えてでも殺すという闘志の表れと言って良いだろう。
「……まぁ、そんな誇りに付き合って素直に“はいそうですか”と死ぬ気はないんだけどねぇ」
 懐へと伸ばした手を振り抜き、影朧へと投げつける。
 浅い放物線を描いて飛んだのは、爆弾だ。
「では、俺は誇りを貶して盗むとするかな」
 爆発。爆風と共に拡散されるのは毒の瘴気だ。
 雨の中にあってなお、爆風に乗って広範囲に広がるそれは短期決戦でしか戦えない自分たちへ不利に働く――と影朧たちは判断したのだろう。
『怯むな、一斉に攻撃せよ!』
 攻撃の号令。影朧たちからヘドロが、疫病の瘴気が、硫酸が放たれる。
 ――隣にいる、仲間へと。

「最大の敵は味方なり……ってね。さぁ狂気の宴の始まりだ」

 同士討ちを始める影朧たちの横を通り抜けながら、永一は追加の爆弾を放り込む。
 理性と判断力を奪い取る。それが彼の使った爆弾の毒が持つ効果だった。規律を重んじて誇りを胸に抱く軍隊には、まさしくうってつけだろう。
『やめろ、俺が誰だかわからないのか!?』『殺せ!』『共に抱いた誇りを忘れたのか!』『無駄だ、攻撃して来る者は全て倒せ! 大義のためだ!』
 怒号、喧騒。秩序のある軍隊が、混沌とした烏合の衆と化す。
 その中を永一は通り抜けながら、道すがら影朧の帯刀するサーベルを盗み取っては喧騒から退避しようとする敵を背中から斬りつける。
「いやぁ、醜い姿になって命を削ってまで仲間と殺し合いするだなんて、一時の玩具としては最高だったよ」
 薄ら笑いすら浮かべながら、永一はヘドロにまみれ、硫酸で溶かされたサーベルを泥まみれの地へと放り捨てた。盗んだ誇りに、もう使い道は無い。
 興味も失せたとばかりに喧騒から背を向けて、彼は戦場を歩いて行く。
「さて、他の皆はどこへ行ったやら」



 仲間がいるというのは心強いものだ。
 しかし、それは裏を返せば“仲間がいないのは心細い”ことでもある。
「ぇぇ……一人じゃん!」
 きょろきょろと自分を包囲する影朧たちを見渡しながら兎乃・零時(其は断崖を駆けあがるもの・f00283)は呟く。してやられた、というよりも勘弁してくれと嘆く感情の方が強い。
 ぺしぺしと自己主張するように式神のパルが零時の頬を叩く。
「いや、パルもいるけども! うぅぅぅぅ……!!」
 どうすれば良いんだとか、どうしようもないだろとか、色々な言葉が頭の中を駆け巡っていく。頼りになる仲間がいない。詰んでいる。
「――でも、ここで退いたら男が廃る!」
 それは、きっと他の猟兵たちも同じことを考えているだろう。
「きっとみんなも助けを求めているはずなんだ! なら、応えるのが道理だろうよ!」
 だから――
「俺様は勝って! 生き延びて! “先”へ行く! ――跳べ、パル!!」
 合図と同時に、パルと共に零時は跳躍する。
 奔流する膨大な魔力。それらは式神へと全て注がれていき、片手ほどの大きさだったパルは一瞬で見上げるほどの大きさへと変貌を遂げた。
 巨大化したパルの伸ばした腕が零時をキャッチして、ぽんと背中へと乗せる。
「――まずはどうにか誰かと合流できるように頑張る! 行くぞ、パル!」
 空中を浮遊するパルはそれに応えるかのように、影朧の頭上を緩やかに旋回する。零時が呪文を唱えると、パルの鼻先に魔法陣が展開されて光を収束し始める。
 この詠唱時間を確保するのがパルの務めだった。豹人間と化した影朧たちが跳躍し、術者たる零時を止めようと巨体へと取り付くが、パルがそれを許さない。身震いして振り払い、跳躍して来たところを叩き落とす。
「パル、狙い任せた! 味方は巻き込まないように――」
 詠唱完了と同時にパルは空中を蹴って空高く跳躍し、その鼻先を地に向ける。光が収束しきった魔法陣の矛先は、こちらを見上げる影朧たち。

「――全部まとめてぶっとばせ!」

 魔法陣の光が弾けると同時に、光の弾が雨あられと地に降り注いだ。



 腹はもうくくってある。
 だから燈乃上・鬼利丸(ないたあかおに・f22314)の目に涙は浮かんではいない。
「はえー、分断されちまったかぁ」
 見渡す限りの影朧たちを見て、鬼利丸は途方に暮れるように溜息をついた。
 包囲網を突破するほどの火力もなければ、周囲の敵を溶かしてしまうほどの殲滅力もない。味方と合流しようにも、身を隠したり空を飛ぶ力も持っていない。
「状況は絶望的……ってか?」
 口にしながらも、彼に諦めた様子はない。
 味方がいなければ何もできずに、いつも泣きついてばかりで。
 頼られているのに最善も尽くさずに途中で諦めてしまう。
 ――そんなのは、彼の持つヒーロー像に反していた。

「悪ィけど、バッドもビターも描くつもりはさらさらねェぞ。真っ向勝負の正面突破、俺が描くのはいつだってハッピーエンドだ!!」

 自分を奮い立たせるような大音声と共に、彼はインクボトルを投げつける。
 影朧たちは因子を起動して砂塵人間へと変身するが、インクは塗料であり液体だ。インクによって砂塵は固まり、色が付いてダメージを与える。
「オラオラァ! そこ退けそこ退け鬼利丸様のお通りだァ!」
 インクボトルをばら撒きながら、彼は突進した。インクで敵を、地を染め上げて、鬼利丸はただ直進する。
 無論、影朧たちもそれをただ見過ごすわけがない。鬼利丸の進路を阻み、死角から攻撃しようとするが――
「あっ――ぶねェッ!!」
 鬼利丸はそれを跳躍して回避する。普段ではできない身のこなしは、地面に広げられた塗料が彼に力を貸してくれているからだ。
「さっさと皆んトコ行かせてもらうぜ!!! ……一人ってめっちゃ心細いっつーんだ!!!」



 一人でいることには慣れているし、一人でいる方が気楽だ。
 奇鳥・カイト(自分殺しの半血鬼・f03912)にとって、隣に誰かがいないことの方が当たり前なのだ。
「……いつの間にか、誰もいねェな」
 呟きながら自分を取り囲む影朧たちへと一瞥をくれてやって、彼は拳を構えた。
「構わねェ。一人の方が――何かとやりやすい」
 特に、カイトのような戦闘スタイルの者であれば尚更に。
 影朧の一人が怪奇人間の因子を起動し、その身から硫酸を射出。サイドステップでカイトが躱すと、着地点を刈り取るようにヘドロが襲いかかってくる。
「チッ、気持ち悪ィんだよッ!」
 ひゅぱ、と幾重もの鋭い音がしたかと思うと、ヘドロが宙から撃ち落とされた。鈍色に輝く鋼糸の束が盾となったのだ。
 硫酸に溶かされる地面を一瞥する。自分や人形はもちろん、鋼糸とてあの硫酸を直に受けることはできないだろう。であれば選ぶべきは逃げの一手。
 だが、この狭い包囲網の中でどれだけ逃げ回っていられるだろうか。ヘドロや硫酸でできた影朧たちは鋼糸で刈り取ることすらできやしない。相性の悪い相手だ。
 敵の攻撃を避けながら、最善手を考え続け――その途中に、轟音が来た。

  オーディン
「《大戦神ノ槍》!」

 魔力の奔流と迸るプラズマ。
 それらは雨を蒸発させ、地を削り、影朧たちを撃滅する。
 包囲網の崩れた一画、もうもうと立ち昇る水蒸気と紫電の中に立つのは一人の少年。
「……なんだよ、また合流できたと思ったら次はアンタか」
 皐月・灯(喪失のヴァナルガンド・f00069)がぶっきらぼうに呟いた。
 彼は雷電迸る腕に新たな術式を装填しながら、影朧たちへと向き直る。
「ま、無事な内に合流できてよかったか。明らかにアンタのスタイルじゃ苦戦するだろうしな」
「余計なお世話だ。……誰も来なくたって、一人でどうにかなっていた」
 そーかい。素っ気ない返事をして、灯はカイトへと背を向ける。
「いいか、よく聞け。ヘドロだの硫酸だの、コイツらは厄介な性質に化けるが全身が硫酸だとかヘドロになるわけじゃねー。必ずある、生身の部分を狙え」
「……勝手なこと言いやがる」
「単純な役割分担だ。オレも大技を連射できるわけじゃねーし、何より長く続かねー。だから、オレは道を作る担当で、アンタが敵をブチのめす担当。それで――」
 灯が続けるはずの言葉の前に、何かが宙を切るように飛来する。二人を覆うように展開されたのは、いくつもの大盾。
「――この私が道すがらの防衛担当です」
 剣と盾を携えて現れたのは、シズル・ゴッズフォート(騎士たらんとするCirsium・f05505)だ。
「戦いは攻めてばかりではありませんからね。私が皆さんの防御を担います」
 こんな風に。言葉と共にシズルの大盾が滑り込むように影朧が二人へと放った硫酸を防ぐ。大盾の表層が酸によって溶かされるが、破られはしない。これが生身の人間に命中したら、致命傷になりうるだろう。
「さあ、向かいましょう。一刻も早く皆と合流しなければ」
「ああ。――道を拓くぞ、合わせろ!」
 幻想融烈。臨界点まで膨張した魔力が解き放たれ、灯の眼前に破壊の嵐が巻き起こる。全てを薙ぎ払うプラズマ砲の跡をすかさずシズルが大盾を割り入れて安全な空間を確保する。
          レミング
「夜道に注意しろよ、集団自殺野郎」

 広がった闇が盾の向こう側にいる影朧たちを呑み込んでしまう。
 か細く鋭い、鋼糸が空を切る音。暗闇が晴れた後に、影朧は黒い塵と化していた。
『逃すな! 臣民の危難を通してはならない! ここで我らが刺し違えてでも食い止めるのだ!』
「させませんよ、そんなことは」
 阻まれながらも影朧どもは大盾を硫酸で溶かし、あるいは隙間から疫病の瘴気を噴射する。だが、シズルがそれらを許さない。大盾のスパイクで挟み込んで敵を圧し潰し、大盾を回転させることで瘴気を散らす。
 正直に言えば、シズルとて戦場に立つ理由が違えば影朧どもと尋常に刃を混じえたいと思っていた。闘争の熱に浮かされ、高揚感に包まれながら欲望のままに戦いたかった。今でもその誘惑は振り切れたとは言いがたい。だが――

「私は騎士。主のために、道を拓く一人のニンゲン。――目的と手段を違える事無く、ただ成すべきを成すのみッ!」
 
 雄叫びを上げながら、彼女は大盾を操る。剣でもって敵と闘争に明け暮れるためではなく、盾でもって仲間を守り道を作るために。
「駆け抜けるぞ、こっちだ!」
 次のプラズマを放射して道を作りながら灯が叫ぶ。彼のこの幻想融烈状態もまた、影朧たちと同じく維持するだけで消耗し続けてしまう。制限時間を設けなければ帯びている魔力が暴走してしまい、大怪我程度では済まないだろう。
 それでも灯はこの切り札とも言うべき魔法を使った。必要に駆られて、あるいは――
「――この道を、オレが繋げる!」
 仲間のもとへ。そして、救いのある別れへ。
 繋げるために、彼は命をも懸ける。



「……儚い命ぞなあ」
 神という種族は不老にして不死であり、最も不滅に近い種族だ。
 だからこそ、人間たち定命の種族たちが儚い存在であると龍之・彌冶久(斬刃・f17363)は感じざるを得ない。特に、今自分を取り囲んで殺気を放つ影朧たちであれば尚更に。
「戦い散るを潔しとするか……。否やはない、それも一つの美徳やもしれん」
 何が相手であろうとも、戦って死ぬことこそを誉れとするのは普遍的に見られるものだ。
 彌冶久はそれを否定こそしないが、良しともしなかった。
「――いやしかし、やはり俺はさして気に入らぬな」
 そのように造られたものであるがゆえに短命であることは認めよう。
 だが、その短命を嬉々として投げ出すように戦おうとするのは許しがたい。彼らは名誉の光に目を奪われて、命の尊さを忘れてしまっている。
「うむ、では勝負だ」
 彌冶久は刀の柄へと手をかける。
「俺はお主らを輪廻へ加えようと思う。お主らはこのまま止まる気が無い。であらば、勝負しかあるまい。お主らの矜持、力、持てる全てを賭して挑むがいい」
 大地が、雲の向こうにある太陽が、そして狂い咲く幻朧桜が――脈動の気配を見せた。
 それら全てが、一柱の神へと集約されていく。
 定命の者らから放たれた硫酸が、瘴気が、汚穢が彼へと降りかかろうとして――
 その前に、彌冶久の持つ十束の鯉口が金音を鳴らした。
「お主らの負けだ」
 彌冶久の呟きの直後、旋風が巻き起こった。彼へと襲いかかる攻撃が、彼の周囲にいた影朧どもが四散する。まるで、幾重もの斬撃によって細切れにされたかのように――否、実際に切り裂かれたのだろう。
 神域と呼ぶ他にない、神速の居合抜きによって。

「――次は善きものとして生まれ出ずると良いな」

 そのときには、いつかまた逢おう。
 永劫を生き続ける神なれば、いずれ出会うこともあるだろうから。
 戦場の桜花はひらりひらりと舞い踊り、輪廻の輪へと散っていった。



 純粋な火力だけで包囲網を一点突破するのは簡単なことではない。
「向こうも軍隊なだけあって、ただやみくもに突っ込むだけの馬鹿じゃない、か……」
 自身の周囲に広がる砂塵の嵐を見回して、白寂・魅蓮(蓮華・f00605)は呟く。影朧の持つ砂塵人間の能力だ。
 地上は不利だ。砂嵐の中に拘束されている以上、火力で突破するのにはそれなりの条件か代償が伴う。敵の数が多い以上は、単体でまともに戦っても勝てない。
「……となれば、まずは味方と合流だね」
 武器を構えるでもなく、舞いの型を取るでもなく、魅蓮がぱっと開いたのは紫色の和傘だ。不思議なことに、ただそれだけのことで揚力を得たかのように魅蓮の身体がふわりと浮き上がる。
「僕は芸妓だから。――空の上でだって踊って魅せよう」
 傘を中心に、空の上で舞い踊る。恨めしく、おどろおどろしいその舞いに呼応するように地上から集まるのは、この地で果てた者の魂たちだ。
 ここは死者の魂が集まりやすいかつての寺にして、死せる者どもの群れる逢魔が辻。人魂を集めるのには事欠かない。
 魂たちは青紫色に燃え上がり、一つの大きな火球と化す。

「君たちの未練ごと――僕が燃やして喰らいつくしてあげるよ」

 大火球を地上へと叩き付けた。
 ごう、と青紫の炎が地に広がった。雨の中にあって、湿った砂塵人間たちを燃やす焔は勢いを失わない。怨恨の炎は、涙のような雨がいくら流れようとも冷めやらぬ。
 燃える炎の熱気を感じながら、魅蓮は冷たい雨を受け続ける。
「僕達にも、引けない理由があるんだ」



「これはちょっと失敗したなあ」
 リーオ・ヘクスマキナ(魅入られた約束履行者・f04190)は黒い三角帽子を目深に被りながら溜息をついた。
 最初は旅館の人たちがどこかに行く様子を見て、好奇心ついでにこっそりと付いて行くつもりだった。そのために少し準備をしてから後を追ってみたら、あれよあれよという間に敵に包囲されてしまったではないか。
 砂塵渦巻く周囲を見渡す。このまま包囲され続けるわけにもいかないが、抜け出すためには派手な大技が必要だ。
 溜息一つ。みんなにバレるリスクを覚悟するにはそれで充分だ。
「……仕方ないや。赤頭巾さん、“6番”で行こう」
 まるで陰が伸びるかのようにリーオの隣に現れたのは、赤い頭巾を被った人影。赤頭巾と呼ばれたそれがどこか楽しげに左右に身を揺らし始めると、どこからともなく笛の音が響いて来た。

「さあ、町からネズミが消える時だ」

 言葉の直後、地が揺れてリーオが浮いた。彼が乗るのは――小さな“町”。
 ミニチュアサイズの町へとリーオが視線を下ろすと、足元の広場に灰色が広がっていた。武装したネズミたちと、灰色のバンダナを巻いた小さな赤頭巾の分霊たちだ。
「統率は任せたよ、赤頭巾さん。――それじゃ、行こうか」
 開いたギターケースから飛び出したのは黒塗りのマークスマンライフル。スコープを覗き込んで、トリガーを引く。
 銃火を合図に、ネズミの兵隊は地上へと降下する。すばしっこい動きで地上に展開したネズミたちは、浮足立った影朧たちを局所的に包囲し、その手に持った散弾銃で攻撃を始めた。
「一宿一飯の恩、って言うしさ。普段良くしてもらってる分のお返しぐらいはしないとねェ!」



 戦場に桜が舞っていた。
 幻朧桜の花だけではない。戦場を生き物の如く縦横無尽に通り抜けるそれは、千年桜の花嵐。
 空中に集まった花弁から現れるのは、千桜・エリシャ(春宵・f02565)だ。
 紫紺色の和傘がぱっと開くと、彼女は上空から戦場を見渡す。

 飛び回る管狐たちの姿が見えた。
 太陽の如く輝ける人狼の姿が見えた。
 無数の呪詛弾が飛んでいくのが見えた。
 高温で地も雨も溶かされた地に立つ者が見えた。
 爆発と混乱の狂騒の只中にあって闊歩する盗人が見えた。
 巨大な式神の上から魔法を放つ魔法使いが見えた。
 泥臭い戦場の中でなお、色鮮やかなインクが散るのが見えた。
 プラズマが放たれ、大盾が飛び、闇が広がってできる道が見えた。
 神速と言う他ない一太刀で多くの影朧たちを斬り伏せる様が見えた。
 戦場の空で舞い踊り、地上の炎を燃やし続ける芸妓が見えた。
 空の上に浮いた小さな町に立って、地上を狙撃する射手が見えた。

「ああ、良かった……」
 何人か見知った顔も新しく見えて少し驚きもしたが、皆の無事が見て取れてエリシャは胸を撫で下ろした。
 これでみんなが揃う。
 これで、反撃に出られる。
「――参りましょう」
 一陣の風と共に、エリシャは花嵐となった。雨の中、敵の中を駆け抜けて、人の形へと戻るなり敵の素っ首を一太刀でもって斬り落とす。
 敵も砂塵に紛れてサーベルを振り下ろすも――花と散ったエリシャへ刃を届かせることすらあたわない。
「捨て身のところ申し訳ありませんが、ここは通して頂きますわ」
 彼らは戦う。
「私には会わなければならない方がいらっしゃいますから」
 エリシャたちは“道を切り拓く”ために。
「ですが、僭越ながら私から一つだけ――」
 影朧たちは“守る”ために。

「――あなたがたに守られる方々は、あなたがたが考えているよりもきっと強い人たちかと思いますわ」

 守られるはずだったかつての少女は、呪われし大太刀を振るう。
 刎ねられた御首が、黒い塵へと化して――影朧たちの砂塵が止む。

「――さあ、旅館の皆々様。これより反撃と参りましょう!」

 数々の猟兵たちから応えがあって。
 多くの猟兵たちが集まって来て。
 そして、彼らは再び団結する。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ジン・エラー
◎●

さァ~~~~~てェ?
寄ってたかってなンの用だよ。
オレを囲ンで仕留める算段か?
悪くねェ~~~悪かァ~~~~ねェ~~~~~が
"悪くない"だけだ。

御神酒を一口、いや三口ほど一気に飲み下して
そンな小せェ輪っか作ってオレを止められると思ってンのかよ
天をブチ抜いてやる
降臨だ。

アイツらは一人の女を助けよォ~と躍起になってるみてェ~~だが
生憎と、オレは全てを救う聖者サマなンでな
目の前の"人間共"を、
見捨てるつもりも、見過ごすつもりもねェ~~~~ンだ

黒、涅、射干玉。
邪竜同然の躰から聖なる光を溢れさせて

憤怒も慈悲も、祈りも、
この光と咆哮に乗せて
全てに平等に、無差別に。浴びせてやる。


 戦場に、藍色の長髪がなびいた。
「さァ~~~~~てェ? 寄ってたかってなンの用だよ。オレを囲ンで仕留める算段か?」
 取り囲む影朧たちを、虹彩異色の瞳で睨め付けるのは泥のような肌の男、ジン・エラー(我済和泥・f08098)だ。
 彼は臆した様子もなく、むしろがえんじない子どもを相手にするかのような態度で肩を竦めてみせる。
「悪くねェ~~~~なァ~~~~! 悪かァ~~~~ねェ~~~~~……」
 だが――
「そいつァ“悪くない”だけだ」
 マスクのジッパーを引き下げて、小綺麗な瓢箪へと口を付ける。嚥下すること三度。かすかに酒精が周囲に広がる。
 ああ、うまい。口元が歪む。勝手に拝借したものでも、御神酒ともなると格別だ。
「そンな小せェ輪っか作ってオレを止められると思ってンのかよ」
 バカバカしい、とジンはせせら笑う。こんなものではまるで不十分だと言わんばかりに、彼は大きく手を広げて――

「“聖者”サマが今から天をブチ抜いてやるよ。――降臨だ」

 太陽よりも明るく輝いた。
 戦場を遍く包み込んだ光の直後にそこにいたのは、一体の竜。
 色は黒く、鱗は涅のようで、その模様は射干玉のようだった。
 その竜は邪竜のように黒く禍々しい外見をしていながらも、神々しく聖なる存在であることを示す後光を纏っていた。
「――――」
 竜はその巨躯で戦場を見下ろす。多くの敵がいて、多くの猟兵たちがいた。
 その中に一人の女とその周囲で戦う猟兵たちを認めて、“彼”は影朧たちへと向き直る。
 彼らは一人の女を助けようと奮戦している。道を作るべく、影朧たちを打ち倒している。
 だが生憎と、この聖者に女一人を助けようとする意思は微塵もない。
 彼が救うのは、“全て”だ。
 目の前にいる影朧を――“人間”たちを、彼は見捨てるつもりも見過ごすつもりもなかった。
「――――――――」
 竜が吼えた。
 禍々しきその巨躯から、聖なる光を解き放つ。
 短命と戦いを宿命付けられた悲しき影朧たちの過去への悲哀も。
 命を嬉々として擲って戦おうとする影朧たちへの憤怒も。
 そして、彼らに救いがあることを願う祈りも。
 全て、全て――この咆哮に、この光に乗せて。

 戦場は、救いの光に包まれた。
大成功 🔵🔵🔵


第3章 ボス戦 『花時雨の菖蒲鬼』

POW ●桜散らしの雨
【呪詛の雨】と【己の剣技を補助する大鬼の手】の霊を召喚する。これは【戦場全体に降る生命力を奪い己へ還元する雨】や【対象の攻撃を予測し弾き返す引っ掻き】で攻撃する能力を持つ。
SPD ●遣らずの雨
自身に【攻撃した対象に狂気が伝播する妖刀の呪詛】をまとい、高速移動と【対象の攻撃よりも先に繰り出す無数の斬撃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ ●身を知る雨
【周囲を漂う死霊の怨念】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【対象の悲しみを想起させる雨降る花菖蒲の沼】に変化させ、殺傷力を増す。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は千桜・エリシャです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 長く続いていた雨は、いつの間にやら篠突くような雨になっていた。
 雨を横に薙ぐかのような一陣の風が吹く。それだけで、咲き続けて散ることのないはずの幻朧桜の花が散る。
『今日は千客万来ですね。こんなに寂れた場所なのに』
 廃寺から出てきたのは、女と見紛うばかりの青年だった。ぱっと開いた和傘を差して、強雨の中を歩いて来る。
 女顔で可愛らしい顔立ちだというのに、周囲にふわりと漂うこの廃寺の霊魂が、腰に佩く太刀の気配が、彼こそ禍々しくも強大な影朧であることを示していた。
『死者の集う地へようこそ。ここは何かを守ろうとして強さを求め、世を儚んで死んだ者たちの行き着く場所です。帝都軍の彼らや、この私のように』
 闘争と狂騒の残滓のある地にあって、自分を示すように胸に手を当てて彼は微笑んだ。
『さて、世間話もここいらで切り上げましょうか。――あなたがたも、私と話をするために来たわけではないでしょうから』
 鞘からすらりと抜き放たれるのは、美しい黒さを持ちながらも禍々しい呪詛を帯びた妖刀だ。薄ら寒ささえ覚えるほどの膨大な呪詛が周囲に漂い、君たちを圧倒することだろう。
『名乗り上げたいところですが、力欲しさに妖刀の呪詛に呑まれた私に名乗れるほどの名前もなし……。そうですね、ではこうしましょうか』
 刀を構えると同時に、彼の表情から微笑みが消える。

『――“花時雨の菖蒲鬼”。さあ、刃を交えましょう』
馬県・義透

『侵す者』としての真の姿解放。橙色髪の武者。

義透を構成する一人、『侵す者』である。
他三人には無理を言い、今は眠ってもらっておる。故の今の姿よ。
まあ、力ある者と正面から打ち合いたい。
そのような望み、武人ならば、持って当然であろう?

雨は、できだけオーラ防御で弾く。
なにやら、攻撃を予測するようじゃが。わしの武器は『黒燭炎』一つだけにあらず。
『四天霊障』は不可視である。たまに制御も外れる故、予測困難であろ?

さて、ここまでに聞いたが。なにやら、因縁持ちし猟兵がいるようでな。
なれば、『わしら』は途中で引くが道理であろうて。
そう、討ち果たすは『わしら』に非ず。その者であろうて。


 強雨の中にあって、その男は炎のように烈(はげ)しかった。
「――義透が一、“侵す者”」
 馬県・義透(多重人格者の悪霊・f28057)は黒槍を下段に構える。強風で靡く橙色の髪は、義透の中で特に“侵す者”が外に表れていることを示していた。
 対面する菖蒲鬼が興味深そうに目を細める。
『あなた、人ではありませんね? それも“一人ではない”』
「然り。“わしら”は複数から成る悪霊。他三人に無理を言って、今は眠って貰っておる」
『雨の効き目がないのも道理でしたか』
「火に雨を垂らすならばともかく、水に雨を注いだところで変わらんよ。呪詛で悪霊を呪うことがどうしてできようか」
『まったくですね。……しかし、一人だけでよろしいのですか?』
 菖蒲鬼の口元に浮かぶ微笑み。
 あれは嘲笑ではないと“侵す者”は理解していた。あれは激戦を予感した時の武人の顔だ。
 その証拠に、今の自分は彼と同じ表情をしている。
「力ある者と正面から打ち合いたい。――武人なれば抱いて当然の望みであろう?」
『失礼、愚問でした』
 両者の表情から笑みが消える。降りしきる雨が、一陣の風で横薙ぎになった。
『――全力にて、お相手します』
「――推して参る」
 最初に動いたのは“侵すもの”だった。黒い槍、黒燭炎がまるで滝を登るかのように下段から天へと向けて振り上げられる。
 素早く、しかし直線的な動きを見て取った菖蒲鬼はそれを横へと回避。躱した先へと“侵す者”は振り下ろしによる追撃を加える。
 回避運動の直後には避けにくい間髪入れぬ重い連撃。仮に受けたところで、到底受けきれる威力ではないはずだ。だが――
『そちらが“一人ではない”ように、こちらも私だけではありませんから』
 相当な破壊力を有するはずの一撃は、何かによって弾かれた。
「この妖気、さては鬼の手か……!」
 濃密な呪詛の中からぬらりと現れた忌まわしくも巨大な手を認めて、“侵す者”は痺れる手で槍を構え直す。
 武器の握りが緩まるのは明確な隙だ。菖蒲鬼がそれを逃すはずもなく、刀を片手で脇に構え肉迫。
 槍の間合いから刀の間合いへと距離が詰められる。その前に“侵す者”は苦し紛れに得物を薙いで牽制するが、敢え無くそれは大鬼の手によって防がれる。
『――お覚悟』
 前面に出された傘。その陰から菖蒲鬼の顔と、黒い刀身が現れる。
 絶体絶命の状況。その中にあって、しかし“侵す者”の口元は歪んでいた。

「――何か勘違いしておるようだが、わしは“一人ではない”」

 不可視の何かが菖蒲鬼を阻み、そして押し返した。
 四天霊障。複合悪霊ゆえの、四人の無念が集まって形成された霊障だ。
 霊障によって阻まれた菖蒲鬼の刃は制御を大きく外れ、侵す者の右肩を浅く斬り付けるだけに留まる。
 一歩、踏み込む。槍や刀の間合いから大きく縮めた、大鬼の手すらも届かないような拳の間合い。槍さえ手にせず、“侵す者”は左拳を振り抜く。
「――これにて、一矢」
『……互いに一撃を入れて、もう満足ですか?』
「はは、どちらかが倒れるまでの飽くなき戦というのも悪くはない」
 だが、と傷付いた右肩を庇いながら、“侵す者”は左手で槍を拾い上げる。
「因縁ある猟兵がいるようでな。であらば、討ち果たすは“わしら”にあらず。ここで手を引くのが道理であろう」
 敵はただ倒せれば良いというものではない。誰が倒したかも、また重要な意味合いを持つ。そこに因縁があるのならば、尚更に。
『……感謝を』
 菖蒲鬼は傘の内で一礼し、背を向けてこの場を後にする義透を見送る。
 強雨が、二人の間を隔てる壁のようにただ降り続いていた。
成功 🔵🔵🔴

霑国・永一
女将さんらとははぐれてしまったけど、まぁ単身嫌がらせにでも。
いつも通り誰が為でもなく、敵が居たから盗む摂理に従うのみ。実に結構。
じゃあ始めようか、知人に似ただけの菖蒲鬼。

狂気の桜鬼を発動
俺の左腕の血肉を啜って良いから、君とも似たアレを刻んできてよ。
行っておいで桜鬼(エリ)。
エリが戦ってる間、俺は沼とか避けながら接近して右手でダガー使っての盗み攻撃、刀奪うか弾き飛ばすとしよう。
盗めるにしろ失敗にしろそのままエリと同時に斬りかかってやらなきゃなぁ

このまま命を盗んでやるのも一興だけど、欲しいものじゃないからなぁ。愉しめたし盗人は引き際が肝心。帰るよ、エリ【逃げ足】

あの鬼の行く末も視えたことだしねぇ


「やあ、どうも。生憎の天気だね」
 雨の中、フードを被った霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)は気安い調子で薄い笑みを浮かべていた。大きな切り傷が刻まれた彼の左腕から血が流れ落ちる。
『……何をしに来たんだ』
 対する菖蒲鬼の表情は険しかった。殺気を隠そうともせず、永一を睨め付ける。
「何をって、“単身”嫌がらせにかな。ねえ、桜鬼(エリ)」
『……趣味の悪いお方ですこと』
 視線を横に向ければ、永一の隣には一人の鬼がいた。菖蒲鬼によく似た容姿。それを見て、菖蒲鬼はより一層身に纏う殺気を濃密なものとする。
『紛い物と知れていても、不愉快なことに変わりはないな』
「イミテーションはお気に召さないか。盗人にはなれても、詐欺師には向いてないとは残念だ」
『本人を前にしてイミテーションだなんて仰るんですのね』
「おっと、藪蛇だった」
 二人の鬼の視線を受けて、永一は肩を竦めてみせる。
『茶番は結構。――纏めて沈めてやる』
 言葉の直後、地面が波打った。おっと、と声を上げて永一がサイドステップを踏むと、今まで自分のいた場所にぽっかりと沼地が形成されている。
「怖い怖い。それじゃあ桜鬼(エリ)、左腕の血肉で手を打たない?」
『こういう状況になるとわかっていて巻き込みましたわね? ええ、いいでしょう。乗せられてあげます』
「交渉成立だ」
 その言葉の直後に、二人の鬼は駆けた。桜鬼と菖蒲鬼、二振りの墨に染められたが如く黒い大太刀が振るわれて火花を散らす。
「いやあ、面白いな。女将さんに似た二人が戦う様なんて滅多に見られるものじゃない」
『そろそろっ、見ているだけではなくて手伝って頂けませんこと!?』
 激しく打ち合う二人。いずれも致命打には至らず、しかし戦況は菖蒲鬼の方が僅かに優勢だ。代償を惜しんだのがいけなかったのか、桜鬼も分が悪いと見える。
『あっ――!?』
『――隙あり』
 じりじりと押されていた桜鬼が、ぬかるんだ地面で足元を滑らせる。それを好機と見た菖蒲鬼が上段からの唐竹割りを放つ。
 金属音。片膝を地につけた無理な体勢ながら、桜鬼は菖蒲鬼の斬撃を刀でなんとか受け止める。このままでは押し切られる、その時だった。
「横槍失礼」
 文字通り横から、永一が右手を突き出す。彼がその手に握り締めるのは、まるでソードブレイカーのような片刃のダガーだ。櫛状の背で刀を絡め取ると、永一は腕を振って無理やり菖蒲鬼から武器を奪い取ってしまう。
『なっ……!?』
「あなたの刀、頂戴します――なんてね」
 誰のためでもなく、敵がいるから盗み取る。それが彼の、盗人としての摂理だ。
 ダガーで刀を絡め取ったまま、バックステップで距離を取る。
「さてさて、影朧の使う刀はいかほどのものかな、っと――」
 手に取って見てみようかと黒い刀を手にしようとして――永一の背筋に悪寒が走った。
 反射的に手を引くと、ゆらりと揺れた刀が宙に浮き、まるで己の意思があるかのように菖蒲鬼の掌中へと帰る。
「……帰るよ、桜鬼(エリ)。一目散だ」
『何も盗まなくってよろしいんですの?』
「俺もそうしたいんだけどね。盗むにしても命は欲しくはないし――」
 何より、あの刀に“自分を盗まれる”のは死んでもごめんだ。永一は胸中で呟く。
 盗むものがないとわかれば長居は無用だ。引き際を見誤った盗人の末路など想像もしたくない。
 沼地を飛び越え、二人は菖蒲鬼へと背を向けて逃げる。
 早く失せろとばかりに殺気を放ちながら見送る敵の姿を、永一は振り返って見やる。
「……あの鬼の行く末も視えたことだしねぇ」
成功 🔵🔵🔴

曾場八野・熊五郎
【犬と仮面と鮭】

「いいでごわ、その血腥い刃ごとキレイキレイしてやるでごわす」
(真の姿と同時に鮭が十手の神器に変身)

「いざ尋常に、ウヴーッ……グルルルルッ!」
【霊験神咒】で真の姿を強化し、『破魔』の力を全開にして戦う
呪詛の雨は纏った『破魔と正義の炎』で触れる前に浄化する
強化された身体能力と『怪力・ダッシュ・ジャンプ・野生の勘』で予測を上回る

敵の斬撃に合わせて十手の鉤で受け、鮭の力で十手を閉じて抑え込んで刀をへし折る。『部位破壊』


十手を突き刺して『破魔』をありったけ流し込んでトドメ
「フーッ、フーッ……お主呪いに頼らない方が有利だったのでは?次は正々堂々戦うでごわす。主はそっちの方が強かったはず」


ティアー・ロード
【犬と仮面と鮭】

「む、美少年か」

曾場八野くんの背中から菖蒲鬼を観察しつつ参戦するよ

「どうも冷たい雨は口に合わなくてね
花時雨ならさっと止めてくれても?」

「なら仕方ない
少し暖でも取らせてもらおうか!」

使用UCは【刻印「真正真銘」】!
私の力を代償に対象を真の姿へと変える刻印だ!
曾場八野くんにサイキックエナジーを付与して……?
(あのカード、どこか見たような……?)

っと、この刻印は維持しかできないから暇でね
折角だし菖蒲鬼に話しかけるよ

「そうだ、別に戦いながらでも話くらいできるだろう?」
「ちょっと聞きたいことがあってね」
「さっきの口ぶりだと君も守りたいものがあったようだけど――
"それ"で、守れたのかい?」


 敵を眼前にして、全身の毛が逆立つ。
 菖蒲鬼の持つ黒い刀に渦巻く呪詛。そして、曾場八野・熊五郎(ロードオブ首輪・f24420)だからこそ嗅ぎ取れる濃密な“血腥さ”。どれもが彼の本能に警告を発させるには充分な危険性を予感させている。
『犬に……空飛ぶ仮面ですか』
 睥睨する菖蒲鬼の瞳は鋭い。そこにある感情は失望や侮りなどではなく、純然たる闘志と警戒だ。
「美少年とはなんとも惜しいね。今回はどうにも野郎ばかりでむさ苦しい」
 ティアー・ロード(ヒーローマスクのグールドライバー・f00536)が軽口を叩くが、その口調は強敵を前にしているからか少し硬質だ。
「しかも雨が降り続けていると来たものだ。花時雨というなら、止んでくれてもいいのではないかね?」
『降り止みませんよ。私がいる限りこの雨は降り続けて、あなたがたを決して帰さない』
「遣らずの雨、というわけか。野郎相手ではまったく嬉しくない話だね」
 ティアーの赤い瞳が雨の中でちらりと光り、熊五郎と視線を交わす。
「なら仕方ない、少し暖でも取らせてもらおうか! 曾場八野くん!」
「行くでごわ! あの血腥い刃ごとキレイキレイしてやるでごわす!」
 ティアーの表面に描かれた黒い紋様が脈動するように輝く。本来は不可視であるはずのサイキックエナジーが、エネルギーの気配として熊五郎へと流れ込み、注がれる。

   コード セレクト  ザ・ワン
「―― 刻 印 “真正真銘”!」

「ウヴーッ……グルルルルッ! アオォォォォォンッ!!」

 次の瞬間、熊五郎は遠吠えと共に赤い炎に包まれた。
 ひらりと何枚もの御札と共に、一人の男が描かれた一枚のカードが宙を舞う。
 逆巻く炎が晴れた後にいるのは、カードに描かれていた男と同じ羽織とマフラーを身に着けた、真の姿になった熊五郎だった。
「いざ尋常に、勝負でごわッ!」
 十手の神器を口に咥え、熊五郎は駆けた。まるで地を這う稲妻のように軌道を読ませない高速移動から、人と比較して異様に低い下段からの跳び上がるような斬撃。
『低い、速い……ッ!』
 熊五郎の高速機動は間合いが読みづらいが、犬の咥えた十手は単純にリーチが短い。
 届くなと祈るようなバックステップ。菖蒲鬼の眼前を十手が掠めて、周囲に漂っていた霊魂が破魔の炎で焼け落ちる。
 いくら武道に秀でた人間を相手にしても、いくら凶悪な野生の動物を相手にしても、戦術を解した上で高い身体能力を有した獣と戦った経験にはならない。菖蒲鬼の表情が険しいものへと変わるが、口元だけは武に飢えるような笑みが刻まれていた。
「何が面白いでごわすか」
『いえ、失礼。どうにもあなたのような方と戦ったことがなかったもので。――少し、高揚しているようです』
「高揚……?」
 度し難いとばかりに熊五郎は訝しげな表情を浮かべる。賢くとも彼はあくまで獣に過ぎない。戦いそのものを楽しむという発想が欠けた熊五郎には、いかにも理解しがたい感情だろう。
『この身に流れる羅刹の血が、この手に握った墨染の刃が訴えるのです。“より多く、より烈しく戦え”と』
 高まる戦意と戦いの高揚感を表情から隠そうともせず、菖蒲鬼は半身を引いて刀を脇へと構え直す。
「……君は軍服の彼らとはだいぶ毛色が違うようだね。彼らは臣民を守ろうとしていたが、君は戦いを楽しんでいるように見える」
 ふと、熊五郎にサイキックエナジーを注ぎ続けるティアーが声を上げた。
「君たちは守る者としてこの場所に行き着いた。ならば、彼らと同じく君にも守りたいものがあったはずだ」
『ええ、そうですね。守りたいと思ったから力を欲して、そしてこの地に私たちは行き着いてしまった』
「君の欲した力とは、その呪詛にまみれた妖刀か。そんな力で、君は守りたいものを守れたのかい?」
 ざあざあと雨の降る中で、菖蒲鬼の浮かべる笑みの色が僅かに変わった。
『私がここにいる時点で、それは愚問ですよ』
 踏み込み。脇に構えた菖蒲鬼の刀が逆さ袈裟斬りに閃く。
 横にも縦にも対応し、なおかつ振り上げた刃はそのまま返して二撃目に繋がりやすい。避けづらい一手を、熊五郎は十手で受け止める。
「捕らえたでごわす!」
 受け止めた刃が十手の鈎によって捉える。熊五郎が宙で身を捩る。鈎を使ったテコの原理によるソードブレイク。だが――
『そう簡単に折らせはしませんよ』
 くるり、と。
 熊五郎が一度は捕らえたと思った刀がひねりに合わせて回転する。
 回転する視界の中、菖蒲鬼は刀から手を離していた。自由落下と共に鈎から刀が零れ落ちる。
「隙ありでごわ――ッ!」
 着地、跳躍。まるでバネのような飛びかかりで熊五郎は追撃を加える。無手の敵にこれを防ぐ手段は――ある。
 不吉な気配と共に現れたのは、闇色をした大きな鬼の手。それはまるで熊五郎を待ち受けていたかのように十手の一撃と破魔の炎を受け止める。
『……これは酷い手傷を負ってしまいましたね。大鬼の手といえども、破魔の力にはいかにも弱い』
「フーッ、フーッ……お主にはその剣技があるでごわす。なのに、なぜそんな呪詛の力に手を染めたでごわすか? そんな力を使わずとも、正々堂々と技量を尽くせばお主の方に分があったはず……」
『かもしれませんね。ですが、私はもうこの妖刀の呪詛に呑まれた身ですから』
 菖蒲鬼が天に手を翳せば、一度は地に落ちたはずの墨染の刀が一人でにその手へ戻る。
『――呪われていないあなたには、理解できないことでしょう』
「ならばその呪詛、打ち破るまでで……っ!」
 言葉の途中で、熊五郎を覆っていた破魔の炎が消失する。
「時間切れだ、曾場八野くん。これ以上は私のサイキックエナジーがもたない」
「ここまででごわすか……」
 最後に一度菖蒲鬼へと一瞥を向けて、熊五郎はティアーの元へと後方跳躍して戻る。
「この勝負、後続の猟兵たちに託すでごわす」
『いいでしょう。ですが、あなたとはまたいずれ刃を再び交わしてみたいものです』
「その時があったら、今度こそその刀を折ってやるでごわ」
 雨の中で燃え盛っていた正義の炎が御札とともに消えて、一枚のカードへと収束した。
 ティアーは、そのカードに描かれた男性にどこか既視感を覚えながらも、熊五郎を乗せて戦場を後にするのだった。
 雨は、まだ止まない。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

杜鬼・クロウ
●◎
強奪したサーベル所持

敵の顔を見て驚く
愛慾を抱く女の貌に酷似
だが其れは違う

この雨を降らしてた張本人か?
…あァ、何故俺が此処に来たのか理解したわ
執着を終着する為かね

(姿は見えず
声も聞こえず
けれどきっと彼女は居るのだろう)

何の因果があるかは知らねェが
俺の路は誰であろうと阻めやしねェよ

(どうか悔い無きよう)

【蜜約の血桜】使用
花弁で大鬼を斬り裂く
攻撃予測してようが花弁は沸いて出る
数で圧倒
桜吹雪で埋め尽くし敵の動き封殺

この桜に見覚えは?
見通せねェモンだってあるだろ

(呪詛にこの体が全部蝕まれる迄僅か
俺の本体なら跳ね返せるが割れる可能性を考慮すると)

サーベルで敵本体に付与する戦力を削る
誰かの為の桜路を作る


 不思議だった。
 なぜ自分は得物を失った状態で戦場に足を運んだのか。
 なぜ自分は雨に惹かれて来てしまったのか。
 戦いの中で幾度となく繰り返した自問は、敵の姿を見てようやく答えを得た。
「お前は……」
 菖蒲鬼を前に、クロウは危うく手にしていた強奪品のサーベルを取り落しそうになった。
 似ていたのだ。今相対している敵の顔が、愛欲を抱く女のそれに。
 ――違う。
 刃を握り直す。あの影朧は近しい存在だろうが、彼女自身ではない。
「……お前が、この雨を降らせていた黒幕か?」
『ご想像の通りです。私がいる限り、この雨は降り続ける』
 ざあざあと音を立てて降り続ける、呪詛の雨。
 最初は、この雨がすべてを洗い流してくれるような“予感”があった。腹の底でわだかまり続けるいらない感情を、すべて洗い流してくれるような――そんな気がした。
「――そうかよ」
 今は違う。この雨に惹かれた理由がはっきりとした。

 終わらせに来たのだ。
 この胸の内で渦巻く“執着”に、終止符を打つために来たのだ。

「何の因果なんだろうな。俺はお前に似た女を知ってるぜ」
『……あの子も、随分と知り合いを増やしたようですね。嬉しくもありますが、いささか寂しくもあり、少しだけ心配でもあります』
「ああ、大勢いる。アイツには、本当にな」
 少し寂しげな菖蒲鬼の表情が、どうしても想い人のそれと重なる。口から出る言葉は、無意識に自分へと言い聞かせるような語調になる。
 彼女を慕う者は多い。その事実が、彼女が我が手に収まるほどの小ささではないことと、彼女を収めるほどに我が手が大きくないことを暗示しているように感じられて仕方がなかった。
「素直に会っちゃァどうだ?」
『あの子と会うのは最後です。会えば、必ず刃を交えることになる。その前に、私はやるべきことをやらなくてはなりません』
 形だけだった菖蒲鬼の構えに闘気が宿る。雨天の下で、墨染の黒い刃が鈍く反射される。
『強くあれと、私は己に課しました。であれば、あなたがたを退けられなければあの子に合わせる顔が無いというものです』
「……ハッ、俺がお前の路ってわけかよ」
 サーベルの刃を己の左腕に突き立てる。冷え切った腕から、温かい血が溢れ出す。

「お前を倒す俺の路。
 俺を倒すお前の路。
 重なり合った路であろうと――俺の路は誰にも阻ませやしねェ」

 ふわりと香る、桜花の香り。
 流れる血が、溢れた肉が――戦場に漂う錆びた鉄と泥のような臭いを上書きするように桜の花へと姿を変える。
『この桜は――』
「アイツの桜だ。見覚えあるだろ」
 無数の花弁は桃色の壁となって、嵐を巻き起こす。
 一振り、菖蒲鬼が斬撃波で薙ぐ。続いて二振り、鬼の巨腕が花びらを叩き落とす。
 しかし無駄だ。圧倒的な物量差によって、斬撃の花びらは菖蒲鬼へと押し寄せる。
 一見して圧倒的に有利な状態だ。だが――
「さすがに、苦しいな……」
 連戦に次ぐ連戦。降りしきる雨によって体力を奪われ、雨中の呪詛によって身体が蝕まれている。いつ倒れてもおかしくないような消耗状態では、攻勢も長続きはさせられない。
 ヤドリガミとしての本体を用いれば、あるいはこの呪詛とて跳ね返せるやもしれないが、おそらく己もただでは済まないだろう。
「――やれるだけ、やってやろうじゃねェか!」
 サーベルを手に、勢いを失いつつある桜の嵐の中へと吶喊する。
 彼女の姿は見えない。
 彼女の声は聞こえない。
 けれど、きっと彼女はこの戦場にいる。
 だから――

「アイツのための桜路が、俺の作る路だ!!」
成功 🔵🔵🔴

リーオ・ヘクスマキナ
●◎

アナタは守るために。私は取り戻すために
人の身には過ぎた力を求めてしまった……似た者同士のようなモノよ
けど、アナタは此処の桜で生まれ変われば今よりは大分「マシ」な事になれるって聞いたし……誰かさん達が上手くやれるように、盛大に消耗していって貰うわね?

UCを発動。最初から私が出るわ
リーオ? 戦場からちょっと離した所で寝かせてるわよ

耐性と障壁術式をリーオから引っ張ってきて、雨の中も構わず飛行
……正直、技量面は私が不利ね
速度と三次元機動で翻弄しつつ、兎に角攻め立てる

間に合わず大鬼の腕で防ごうとした時がチャンスかしら
石化の魔眼を瞬間的に最大出力で叩きつけて動きを阻害
その間隙に、強烈な一撃を叩き込む!


 誰しもが強大な力を欲する。憧れ、求め、手を伸ばす。
「アナタは守るために。そして私は取り戻すために――」
 眠るリーオ・ヘクスマキナ(魅入られた約束履行者・f04190)の頬を撫で、金髪の少女は立ち上がった。
「人の身には過ぎた力を求めてしまった。私たち、似た者同士のようなモノよ」
『……その禍々しさで“人の身”を語りますか』
 菖蒲鬼が大太刀を構える。彼の言葉の通り、金髪の少女――邪神“赤頭巾さん”からは忌まわしいまでの魔力が放たれていた。
「あら、それを言ったらアナタだって今は影朧よ?」
『詭弁も御託も結構。お前を討つ――それだけです』
「敵意剥き出しね」
 赤頭巾は肩を竦める。予想できなかったことではないが、ここまで取りつく島もないとは思わなかったようだ。
「まあいいわ。――始めましょう?」
 言葉と共に、赤頭巾がふわりと浮いて空高く飛翔し、急降下。振るわれた血塗れの大鎌が雨粒を裂いて菖蒲鬼の脳天へと迫る。
 金属音。重力と遠心力が加わっているにも関わらず、大鎌の刃は大太刀によって弾かれてしまう。
 鎌を弾かれた赤頭巾は体勢を整えるべく再浮上しようとする。菖蒲鬼がそれを見逃すはずもなく、彼が振るった二の太刀は、しかし途中で何かを斬ったかのように大きく減速して彼女の身へと至らない。
『……障壁まで広げていますか』
「少しリーオから返して貰っただけよ。これがなきゃ、アナタの厄介な雨の中で飛べないもの」
『叩き落として差し上げますよ』
 跳躍と共に放たれる一閃を、すんでのところで空中で身体をねじって回避する。空中の機動性と速度では勝っている――が、技量面で赤頭巾は大きく劣っていた。
 互いに決定打が出せない場面――そのはずなのに、赤頭巾は果敢に再急降下と共に大鎌を振るう。
『同じ手が通用するとは思わないことです!』
 振るわれた大鎌が、虚空より現れた大鬼の手が弾く。石を叩くような音――
「――そんな退屈なことしないわよ」
 石化の魔眼。
 赤頭巾の向けたそれが、大鬼の手を石へと変える。
 動きを阻害された手を掻い潜るように赤頭巾の大鎌が菖蒲鬼を襲った。

「さあ、誰かさん達が上手くやれるように、盛大に消耗していって貰うわ」
大成功 🔵🔵🔵

皐月・灯
◎【花の涯】

オレから言うことは何もねー。
話を聞いてやれだとか、口に出す必要もねーだろう。
言葉は要らねー。エリシャ、あいつの以外はな。
……失くす痛みはオレも知ってる。
その痛みに、どんな形でも決着をつけられるんなら──少しくらいは手ぇ貸してやる。
死んでも口にゃ出さねーけどな。

さて…「妖刀」とはよくいったもんだ、とんでもねー魔力を感じる。
触れたら呪詛、そうでなくても先制攻撃──だがよ。
このオレを相手にするにゃ、そう良い手じゃあねーぜ。
《雷剛神ノ鉄槌》を発動しておく。九回分、ぜんぶくれてやる。
敵の一撃を【見切り】、そこに【カウンター】を合わせるんだ。

……お膳立てはここまでだ。あとは、勝手にしろ。


斬崎・霞架
◎【花の涯】

こんにちは、お兄様
しかし本当によく似ていますね
兄妹揃って見目麗しくいらっしゃる
…いえ、今は自分の役目を果たしましょう

と言う訳で、お手伝いを致しましょうか
大鬼の手はこちらで引き受けます

大鬼の手に攻撃を仕掛け、注意をこちらに引きましょう
攻撃を予測し弾くとしても、弾かれる前提でいれば問題ありません
使える手は使い、攻撃を途切れさせない
呪詛でも、痛みでも、僕はそう簡単に止まりません
それに相手の生命力を奪う力も、そちらの専売特許ではありませんよ

鬼さんこちら、手の鳴る方へ
とは言えこの手は少々危険ですが
邪魔物は、隅で大人しくしていましょう

――この語らいで、この戦いで
せめて少しでも、救われますように


ヴィクティム・ウィンターミュート


ハッ、無念が眠る地ってか
そっくりだな、俺の"コレ"と
──さて、どうやら主役さまが居るようだし
俺は端役らしく、"ギフト"でもくれてやるか

ハッ、いいぜ…俺は"避けない"
【覚悟】を決めて受け切ってやる
どれだけ無数の斬撃を放とうと、身体に沈み込んだ刀を掴んでしまえば、それ以上振れやしねえ

──狂気が流れこんでくる
一つ言っておくよ
『俺はとっくにイカれてる』

この身に虚無を取り込んだ日から、四六時中『過去』がうるせえんだ
後悔と無念の集積、故に呪詛が荒れ狂う
狂気に侵されてるからこそ、【狂気耐性】がある
流し返してやる──狂気を狂気で、【蹂躙】だ

じゃ、約束のギフトだ
『Heroes』
礼は要らんよ
俺は『居なかった』


安河内・誓吾

大群を超えて目指したのが彼の羅刹と
会って何を為すのか俺は知らんが
あれは腕が立ちそうだ
事情を知らないから帰るって言うにはどうも
――勿体ない
忍んだ甲斐なく姿を晒したんだ、多少ちょっかい出しても罰は当たるまい
故に

一合相手願おうか、菖蒲鬼
怪異の手も刃の冴えも実にいい
呪詛塗れなのは翳りを感じてちと残念なくらいか?
まあいい
一頻り打ち合ったらユーベルコードで勝負を掛けようか!

狙うは飛ぶ鬼の腕、一太刀で貰い受ける!

もし転生したあんたと縁が重なるなら
この続きを心行くまでやりたいものだ
あんた自身を俺の刃で捕らえるのはその時に
今は鬼の腕一つで結構

多少は趨勢に貢献出来てたか
まあ後は奴らの舞台だ
顛末を見届けるとしよう


燈乃上・鬼利丸
◎【花の涯】

はーん、あれが女将の兄貴?
綺麗な顔してんなあ、さすが兄妹。

しっかしこの雨どうにかなんねーもんかね、
足元の悪い中、兄妹の話し合いにご列席頂きましてありがとうございます、位言って貰いてえもんだぜ。

ってもガチで足元悪いのはどーにかしてえ。
………ほー、炎で水を、なるほど
それなら俺にも出来そうだぜ!
感動?の再開だ、どうせなら彩ってやんねーとな!
ほうら、綺麗だろ?

守りたかったもんなんだろ
泣かせて、悲しませてどーすんだよ
笑顔にさせてやんなきゃどうするんだよ
それでも兄貴って言えんのかよ
兄貴なら兄貴らしく妹の成長を誉める一言でも言ってみろっつーの。


シズル・ゴッズフォート
◎【花の涯】

以前一度お会いした時にも似ていると思いましたが
……ご兄弟ならばそれも道理ですね

しかし呪詛ですか。ふむ……
では、黒染桜の呪印の励起にて対抗を
エリシャ殿からの頂き物ですが、コレもまた呪詛
別の呪詛を防ぐ殻と使うことも出来ましょう

大楯と呪詛の殻を頼りに、味方の防御に専念
背の呪印の効果で逸る気持ちを宥めつつ
冷静に攻撃を受け、UC用のエネルギーに

足を止めたならば好機
シールドバッシュの要領で全力接近
UCを叩き込み、敵のUCを封じて隙を作る

……私自身は貴方に送れる言葉は有りません
ですが、エリシャ殿には御恩があります
あの人と貴方が話せる状況を作るためでしたら、雨に濡れることを躊躇いはしないのですよ


ジン・エラー


雁首並べて揃いも揃って
姫サマっつゥ〜〜のはなンでこう、周りが囲みたがるモンなンかね
ま、お前が皆が皆に愛されて護られて救われてンのは悪い気はしねェが
オレの救いと並べたら全員霞んじまうな
そうだろ、エリシャ

ほら、
来たぜ。

ハロゥ何処の誰だか知らねェ野郎
お前こそって顔だな、そりゃァそうだ!ハジメマシテェ〜〜エッヒッヒャラハ!!!
お前を救いに来た聖者、ジン・エラー。
ヨロシクな、おニイサマァ〜〜〜〜ァ

カァ〜〜ワイ〜イ妹泣かせてやるなよ、なァ
こォ〜〜ンなにカワイイ〜〜〜ィ女をよ

ビャハハ!嫉妬か?兄妹揃ってカァワイ〜〜ィねェ〜〜〜!!

エリシャ、言いたいことがあンだろ
オレが救うまでの、前座ぐらいにはしてやるよ


氷雫森・レイン
【花の涯】
少し休ませて貰ったしもう行けるわ
「夕辺、肩借りるわよ」
半ば全身でしがみつく形、これが一番夕辺が私を気にせず済む
この子に何かあるなら私も諸共に受けましょう
覚悟は出来てる


私にもずっと付き纏ってきたもの
だけど呪わしいだけじゃないと友や私の春が教えてくれたの
「楔の雨よ、来たれ!」(全力魔法+地形破壊)
敵に当たれば最良だけど最大の目的は出来た沼を、悲しみを押し流すこと
後は手首のブレスレットから弓を展開、炎属性を載せた魔力矢を広範囲に放って夕辺の管狐と一緒に足場を乾かして固める手伝いを(属性攻撃+範囲攻撃)
援護射撃、恵みの雨を降らせるの

「さ、あなたもお願い」
水鏡蝶をエリシャの許へ
何か役に立てば


千桜・エリシャ
◎【花の涯】

あなたはあのとき見送ったお兄様…?
それとも想いの残滓かしら
あなたは優しいから
彼らに引き寄せられてしまってもおかしくないもの
…何にせよ、まだ現世に縛られているというのなら
解き放つのが役目というもの

だから果たし合いましょう
あなたの中で私は弱い子どものままでしょうから
どれだけ強くなったか知って欲しいの
それに今日は紹介したい方々がいますから
私に力を貸してくれる方々よ
私達が勝ったら
今度こそ、ちゃんと見送らせてくださいまし

繰り出される斬撃は見切って避けて
花弁を目眩ましに衝撃波を放ちましょう
元より狂気に侵された身
雨如きで散るほど私の桜は柔ではないの
それに今日は皆さんがいますもの
だから負けないわ!


佐々・夕辺
◎【花の涯】
私は父母を
故郷の村を救えなかった
その償いと面影をエリシャさんに見ている
否定はしないわ
だけど後悔もしない
だって私は、エリシャさんに笑って欲しいから…!

UCで仲間を援護、管狐を守りにつかせる
広がる氷の呪詛を仕込んでおいて、カウンターを仕掛けるわ
その禍々しい刃を凍らせてあげましょう

レインが降らせた雨の跡に、炎属性を抱いた管狐を放つ
火は水を解き放ち、泥に変える

どんなに激しくとも…雨はあがるのよ
そうして晴れ間が訪れる
ねえ、お兄さん
貴方の目の前に、貴方の春がいるわ
ちゃんと見て


兎乃・零時
◎【花の涯】

そうか…あれがエリシャの兄ちゃん…やっぱ似てんな

雨が随分酷いけど…
…まぁいい
俺様がやる事はエリシャを手助けする事!
味方の援護もあるしこれなら大丈夫!

全開で行くぜ!
UC!
いっくぞー!

斬撃はUCで底上げした速度で無理やり避けたり
全身に纏った魔力のオーラ防御やパルの援護射撃とかでうまい事対応するし味方のカバーできるようごく!
痛かろうが、狂気が来ようと
気合で耐えりゃ問題ねぇ!
俺様は!何があろうと!折れず曲がらず挫けねぇ!

相手が高速で移動するなら俺様は―――早く!駆けて!
杖を武器改造しⅡ型の銃形態へ変え!
光(属性攻撃×全力魔法×限界突破)の極光弾道をぶっぱなす!

ほら、最後はエリシャ!
お前が!


フォーリー・セビキウス


ようやく大将首のお出ましか。
随分取り巻きが多いんだな、お姫様気取りか?
ウチの姫様は先陣切って突っ込んで行くがな。
性懲りも無く蘇りやがって。
今一度息の根を止めてやる…と行きたい所だが、今日くらい花を持たせてやるか。

廃寺の外の樹や高台に陣取り、UCによる遠距離射撃、特に味方の援護射撃を主体に
援護対象は主にあの女と御一行(花の涯の人)で、悟られない程度にさりげなく
勿論他の猟兵の援護も行うがな
敵に場所を特定されないよう、迷彩で隠れ移動しながら矢を放つ

矢音は雨が打ち消し、暗闇に紛れるにも丁度いい。殺すには良い日だ。
蛇は今鷹となる。
鷹の目に恥じない、弓の力を見せてやる。
地を這え。

まったく、手のかかる。


ルーナ・ユーディコット
◎【花の涯】
懐き慕う事を受け入れてくれたエリ姉が本懐を遂げる為に
私が出来る事を

篠突く雨の音に彼女の言の葉が掻き消されては意味が無いから
雨よ弱まれと、呪詛よ綻べと
願いながら全力で金桂の刃を振るう

斬撃はいなすか舞うように避け進もう
直撃するとしても怯まずに
痛みと呪詛を耐える覚悟はある
目指すは接近戦に持ち込める間合
繰り出すはエリ姉直伝の剣技
振る程により疾く鋭く
限界を超えて
貴方に打ち勝つ!

私は頭がいいわけじゃないから、
援護しようにも本当にこうして真向から打ち合い
力を使わせ、削ぐくらいしか出来ないけど
これが少しでも彼女の声が貴方に届くきっかけに
願わくば貴方を呑む呪詛が綻ぶ切っ掛けになったなら
悪くないよね


龍之・彌冶久
さて、さて。
お前さんと斬り合うのも
それはそれで心躍りそうではあるのだが――呵々。

此度 俺がすなるは最初から露払いと決めておってなぁ。お前さんそのものを斬るのは別の誰かに任せるとしようとも。
――では一仕事、老骨に鞭打つとしようか。

【戦場全体に降る雨】。
うむ。
些か無粋ぞな。桜を散らすならば尚そうだろう。

紡ぐは空の明るさより「陽」の脈、吹きすさぶ風より「颯」の脈、日の光より「天」の脈。

織り混ぜ束ね、降り注ぐ呪いの雨を斬り祓う刃と為そう。
(属性攻撃:天×陽×風→「晴」属性)

――では、いざや一太刀、「那由多」の一閃。
狙い斬り裂くはこの地に降り命奪う雨のみ。

――露払い、ならぬ雨祓いにはなったろう、呵々。


白寂・魅蓮
◎【花の涯】
こんなにも禍々しい気配を放っているのに…どうしてかな、貴方はどこか悲しんでいるようにも僕は思うんだ
まるでこの雨自体が貴方の後悔や未練を残す涙のようで
…でも、僕もやるべきことをやるんだ。恩返しの為にもね

敵の攻撃は踊るようにステップを踏んで回避して距離を詰める
多少なり怪我は負うかもしれないけど呪詛は耐性で切り抜ける
適正距離まで来たら四葩扇を振って妖の煙で幻惑の空間へと包む

さ、話し合いの舞台は整えたんだから。言えなかった事も含めてとっとと伝えてきなよ、エリシャさん
…僕は家から見放された身ではあったけどさ、せめて大切な人の家族の繋がりくらいは…守ってあげないと、ね


 恩を返したいと思った。
 ほんの一部であったとしても、受けた大恩に報いたいと思った。
 特段頭が良いわけでもないし、特別なことができるわけでもないけれど。ルーナ・ユーディコット(桂花狼娘・f01373)は少ないできることをやろうと決めた。
「…………」
 篠突く雨の音はか細い声など掻き消してしまいそうなほどに強い。
 ルーナと相対するのは菖蒲鬼だ。お互い特に言葉を交わすこともなく、大太刀の切っ先を相手に向ける。
 言うべきことはない。自分の立場と頭で考えたことを言ったところで、きっとそこに意味はあまりないだろう。
 特別なことはできない。
 ただ、自分にできるのは――彼と真っ向から打ち合うことのみだ。
『――参ります』
 最初に動いたのは菖蒲鬼だった。
 一呼吸。たったそれだけの時間で、彼我の距離は羅刹の恐るべき脚力によって埋められた。
 上段から放たれる叩き付けるような唐竹割り。体格と筋力の差で受け切ることの難しいそれを、ルーナはサイドステップで避ける。機敏でありながら流麗な動き。以前一度“見た”太刀捌きであれば、多少は避けやすい。すぐ真横を、無数の斬撃が通っていった。
「相変わらず速い……っ」
 だが、大太刀のような大振りな武器は攻撃の直後に隙ができる。横へ向く慣性を利用して、回転しながら大太刀を半ば振り回す形で横薙ぎに振るう。
 ――金属音。
 目を見張る。ルーナの金桂の刃は、菖蒲鬼の墨染によって受け止められていた。
 常人であれば持ち上げることすら困難な重量を有する大太刀。それを下に振り抜いた直後に防御へと構え直すなど、俄には信じられなかった。恐るべきは羅刹の膂力ということか。
 防がれた金桂の刃が反動で返って来る。その勢いを逆に利用し、ステップと共に身を捻り、大太刀を振るう。
 擦過音。ルーナの斬撃へと刃を合わせ、その行き先を変える受け流し。
 フロントステップ。とっさに相手の懐に飛び込んで敵の間合いを潰そうとするが――
『失礼』
 蹴撃。衝撃。相手との距離が開くも、地面を踏みしめて転倒を防ぐ。
 咳を吐きながら、ルーナは敵を睨め付ける。
 強大な影朧を相手に先鋒を担うことが、どれほど危険なのかはわかりきったことだ。
 息が詰まるほどの痛みがあった。近寄るだけで身体を呪詛に蝕まれた。
 だが、怯まないと決めていた。耐えきると決めていた。
「戦い方は、教えてもらった。だから――」
 舞うは桜のように、斬るは鬼の如く。
 敵の放った追撃へと、己の斬撃を打ち合わせる。膂力の差で押し負けるも、僅かにズレた敵の斬撃をひらりとステップで避ける。
 ステップの勢いに乗せて返す刀での横薙ぎ。続く上段からの振り下ろし。
「私は自分を超え続ける! そして――」
 防がれようとも大太刀を振るうほどに、より疾く、より鋭く!
 雨よ弱まれ、呪詛よ綻べと――祈るような渾身の斬撃を放つ!

「――あなたに打ち勝つ!!」

 ルーナの逆袈裟斬りが菖蒲鬼の大太刀に打ち合わさって――
 ――高音。
 菖蒲鬼の大太刀から、微かにひび割れるような音がした。
「……っ、はぁっ……はぁっ……」
 地に膝をつき、喘鳴を漏らすルーナの耳に菖蒲鬼の声が届く。
『見事。その体躯でその太刀捌き、実に素晴らしい。良い師から教わりましたね。しかし、ここで限界のようですね』
 その通りだった。苛烈な攻撃を繰り返した手は痺れ、華麗なステップを踏んでいた足にはもう力が入らない。呪詛の雨が、時間を追うごとにルーナの身体を蝕んでいたのだ。
 刃が空気を裂く音が聞こえた。
 自分は何かを成し得ただろうか――そう思考する彼女の耳に、甲高い金属音が響いた。

「――ここから先は、私がお相手しましょう」

 女性の声。
 身体を蝕む呪詛の雨が自分に届いていないことに、ルーナは気付いた。



「――ここから先は、私がお相手しましょう」
 カイトシールドを傘にして、菖蒲鬼の斬撃からシズル・ゴッズフォート(騎士たらんとするCirsium・f05505)はルーナを守る。
 擦過音と共に盾が振られて、菖蒲鬼が後退した。
「……ありがとう、助かった」
「先鋒、お疲れさまでした。立てますか?」
 大丈夫、と呟きながらルーナはよろけながらも太刀を杖にして立ち上がる。
「ここから先は、私が引き受けます」
「後は任せる。……必ず、繋げよう」
「無論です」
 シズルが前へ出て、ルーナは後ろへと下がる。
 奇しくも、ルーナとシズルには共通点が多い。同じ人物に救われ、己の内に眠る獣と向き合い、そして受けた恩義を返さんと今戦いに身を投じている。
 だからだろうか。二人の間に、後続へ任せる不安感が無かったのは。
 大盾を構え直しながら、シズルは視線を菖蒲鬼へと再び向ける。
「こうしてもう一度会ってみると、成程。ご兄弟ともなれば似ているのも道理ですね……」
『それを確認するために、再びあなたも私の庭に立ち入ったのですか?』
 身体が、微かに緊張で強張った。
「まさか、覚えて……」
『さて。どうでしょうね』
 雨の中、傘の内では相手の顔はうかがい知れない。ただ、黒い刃がこちらを向いていた。
『首を置いていけ、などとは申しません。――ただし今度はその盾、超えさせて貰います!』
「――その挑戦、受けて立ちましょう!」 
 言葉の直後に、刃が来た。
 疾く、鋭く、重い一撃。それをシズルは盾で受け止めた。
 盾越しに菖蒲鬼と目が合う。
『――おや、呪詛の効き目が悪いようですね』
「あの時と同じとは思わないことです!」
 盾を振れば菖蒲鬼がそれに合わせるように後退し、距離が開く。
 シズルが纏うのは、目に見えない呪詛の殻だ。
 ルーナが戦い方を教わったように、シズルは呪印を刻まれた。それが今、彼女を雨の呪詛から守ってくれている。
『では――こんなのはいかがでしょう?』
 疾駆。高速で肉迫する菖蒲鬼を見て取って、シズルが盾を握る手に力を込める。
 しかし、盾に衝撃は来ない。菖蒲鬼はまるですり抜けるかのように横を通り、シズルの側面から振り向きざまに太刀を薙ぐ。機動力を活かして取り回しづらい大盾を避けた一撃。
「――――っ」
 一閃。それに続く数多の斬撃。
 咄嗟に大盾を半ば振り回すようにして防ぐが、無理な姿勢で重い攻撃を受けた盾は僅かに浮いて隙を作り出してしまう。
 そして、菖蒲鬼は生み出した隙を見逃さない。
『私も同じですよ。――あの時と同じと思わないで頂きたい』
 大盾の守りを崩し、呪詛の殻を破り、墨染の刃がシズルを襲う――
 ――直前。空を引き裂くような音が響いた。
 菖蒲鬼の刃が何かを弾き飛ばす。地に落ちたそれは、一本の矢だった。



『“今度”はかくれんぼですか? それとも、ロビンフッドごっこだったでしょうか』
 シズルから距離を取った菖蒲鬼が、視線を横へと向けて何者かへと言葉を投げかける。
 林の中で、何かが動く気配があった。
「性懲りもなく蘇りやがって」
 ゆらりと迷彩を解いて樹上に現れたのは、フォーリー・セビキウス(過日に哭く・f02471)だ。
「しかもうざったい雨まで降らせるなんて、いかにも陰気な性格が表れてやがる」
『以前は正面切って投げ物で戦っていたのに、今度は遠くで弓のお稽古をしているあなたの陰険さには負けますよ』
「狡賢いぐらいは言えよ。語彙の貧弱さが露呈したな」
『弓にしろ口にしろ、“遠距離戦”ではあなたに分があるのは確かですね』
 くすりと微笑んで肩を竦める菖蒲鬼とは対称的に、フォーリーは憮然とした表情を浮かべている。常ならば蛇のように虎視眈々と隙をうかがうその目は、鷹のように鋭い眼光を放っていた。
「助太刀、感謝する」
 態勢を立て直したシズルが感謝の言葉を口にすると、フォーリーはふんと鼻を鳴らした。
「無策じゃないだろうな? こっちは予定を変えてツラまで出してやったんだ」
 時間を稼いでいる。
 ルーナ、シズルと順々に戦う戦術を見て、フォーリーはそう推察した。
「勝算はある。じきに頃合いだ」
 純粋にただ倒すだけならば飽和攻撃してやればそれで良いだろう。それをしないのは、ただ倒すだけでは意味がないということだ。
「……まったく、手のかかる」
 矢を放つ。雨音に紛れて甲高い矢音が響き、刃によって弾かれる。
 その頃にはもう、樹上にいたはずのフォーリーは姿を消していた。再び迷彩で林の中に身を潜めたのだ。
『硬い盾に、どこにいるとも知れない弓兵……。やれやれ、これは骨が折れそうです』
 フォーリーの援護を得たシズルの相手はいかにも難しい。さりとてフォーリーを見つけようにも、手間がかかる。いずれにしても、後続の猟兵たちが準備を整える時間が稼がれてしまうであろうことは、菖蒲鬼も察していた。
 見えざる敵として必殺の好機をうかがうよりも、一度は見えた敵として確実に敵の意識を割かせて時間稼ぎの援護に徹する。それがこの状況に最も即しているとフォーリーは判断して、予定を変えた。
「“無理だ”とは仰らないのですね」
『ええ、もちろん。骨は折れますが――このまま押し通ります』
 シズルの目の前から菖蒲鬼の姿が消えた。背筋を走る悪寒に従い、自分の背へと薙ぐようにして大盾を向ける。
 果たして、つい先程を再現するかのように大盾は斬撃を受けた。シズルとて同じ手はそう何度も食わない。今度は体勢を崩さず、身を捻って身体の向きを変える。
 だが、そこにいるはずの菖蒲鬼はいなかった。
 背筋を再び伝う悪寒。
「速っ――!?」
 背面から斬撃を放った直後に、また正面へと回り込まれた。
 しかし、今や大盾だけがシズルの守りではない。甲高い音と共に、フォーリーの放った矢が飛来する。
 援護射撃はしかし、予期されていたかのように菖蒲鬼は身を捻って躱す。虚々実々の刃が雨を散らし、空を裂く――はずだった。
 一度は躱されたはずの矢が、まるで意思を持った猟犬のように自ら向きを変えて菖蒲鬼に食らいついたのだ。
『くっ、追尾矢ですか……』
 命中した矢が衝撃を放ち、菖蒲鬼の身体を震わせた。震える手で突き刺さった矢を引き抜く。どこかで、狡知に満ちた蛇の瞳が嘲笑っている気配がした。
「今が好機です!」
 シズルが高らかに声を上げる。
 直後、光の奔流が場を支配した。



 何度飛び出そうと思ったことかわからない。
 遠くで仲間が危機にさらされているのを見て、兎乃・零時(其は断崖を駆けあがるもの・f00283)は勝手に走り出しそうになる衝動を堪えるのに苦労した。
「大丈夫だ、きっとうまくやれる……」
 自分に言い聞かせるように呟き、緊張で微かに震える手を落ち着かせる。
 銃型に変形した杖には魔法陣が展開され、発射されるのを今か今かと待ち侘びるように光輝を湛えている。
 ルーナが、シズルが、そしてフォーリーがたっぷりと稼いでくれた時間で、彼は最大まで魔力を練り上げることができていた。
 あとは、チャンスを待つだけ――

「今が好機です!」

 シズルの声が聞こえた。杖を握る手に力が籠もる。
 二度目は無い、一発限りの大勝負。失敗はできない。
 今までの時間稼ぎに報いて、そして手助けをしてやりたい。
 だから、誰でも良い。力を貸してくれ。

「――全開で行くぜ!」

 己を鼓舞するように叫ぶ。
 一雫の煌めき。それが零時の姿を見る間に成人にまで成長させる。
 トリガー。銃口から解き放たれる、全身全霊の最大火力。
 光。
 太陽よりもなお明るい光が目の前に広がった。
 光の嵐にして光の波濤。何もかもを呑み込むようなそれが、菖蒲鬼を飲み込む。
「やった……!」
 全身に纏うオーラを維持する魔力も残さず、今持てる全てを出し切った。泥濘の上にへたり込む。
 魔力切れで霞む視界の中で、黒い何かが動いているのが見えた。
『時間を稼いでいたのは、こういうわけでしたか……』
 喘鳴混じりの苦しげな男の声。
 菖蒲鬼だ。遠くからでも伝わる呪詛の力が弱くなっているものの、菖蒲鬼は確かに生きていた。
『危ういところでした……。あるいは、あなたが仲間諸共に私を葬り去ろうとしていたら、私は骸の海に還されていたでしょう』
 ためらった。
 最後まで敵を引き付けてくれていた、シズルを巻き込んで攻撃することをためらって、彼女を巻き込まず、菖蒲鬼だけを攻撃できるように砲火の軸をズラしていた。
「……良いんだよ、それで」
 弱々しく、しかし不敵に唇を歪ませる。
 味方を犠牲にしてまで敵の撃破を優先するのは、最強の魔法使いのすることではない。
 それに――
「……今ここで倒しちまったら、話せないからな」
 菖蒲鬼とは話すべき人がいる。話すべき人と会わせるために、彼は戦っていた。
 追憶の雫は弱々しくも輝きを湛えている。過去であれ、今であれ、そして未来であってもブレない零時の優しさがそこにはあった。

「よくやったわ。……今回は褒めてあげる」

 霞む視界の中で、白い何かが寄り添った。温かい、精霊の気配。それは狐の姿をしていて、零時に僅かながらだがオーラを維持するための力を分けてくれた。

「あとは私たちに任せて。ただし、退避は自力でして頂戴」

 二人分の女の声。そこには、一人の妖狐と一体のフェアリーがいた。
 安堵感と共に、まだ震える足で立ち上がり、零時はシズルと共に戦場から背を向ける。
「……後は任せたぜ」



「レイン、行けるわね?」
 何体もの管狐を従えた佐々・夕辺(凍梅・f00514)が退避していく零時を一瞥してから、フェアリーへと声をかける。
「ええ。少し休ませて貰ったし、もう行けるわ」
 夕辺の肩に半ばしがみつく形で留まりながら、氷雫森・レイン(雨垂れ雫の氷王冠・f10073)は応えた。
 最も連携を取りやすく、しかし敵の攻撃が来れば諸共に被害を受けるこの一蓮托生の状態は二人の戦う覚悟を表していた。
『良いでしょう。何人でもかかって来ればよろしい』
 身に纏う呪詛の力を大幅に削がれて尚、菖蒲鬼は挑戦的に言い放つ。
 彼は周囲を漂う怨念をおもむろに大太刀で一裂きすると、その刃を泥濘の中へと突き刺した。怨念が大地へと伝わり、見る間に目の前で沼地が形成されていく。
『ただし、この沼を超えられるならの話ですが』
「……夕辺、気を付けて。ただの沼じゃないわ」
「わかってる。……大丈夫だから」
 花菖蒲の浮かぶ沼から夕辺は目を逸らす。あの水面を見つめていると、どうしてか故郷の村と今は亡き父母の顔を思い浮かべてしまう。けれど、今は悲嘆に暮れてなんかいられない。
 苛むように想起される悲しみを振り払うように、夕辺は管狐たちを放つ。
『無駄なことです』
 一閃。菖蒲鬼が大太刀を振るうと、管狐たちを切り捨てて煙として霧散させてしまう。
 呪詛の雨、悲嘆の沼。それらの精神を苛む環境的な不利を差し引いてなお、二者の間には歴然とした火力の差があった。
「まだまだ……!」
『いいえ。すぐに終わらせます』
 展開した次の管狐たちを差し向けるその直前、菖蒲鬼が肉迫した。瞬きほどの間も置かない接近。雨を切り裂き、刃が迫る。管狐たちが盾となるように身を挺する。
 反撃などできようはずもない。呪詛の雨と悲嘆の沼によって精神を侵されながらカウンターを決めるのはいかにも難しいことだ。
 防御などできようはずもない。大太刀の刃は鋭く、差し向けられた何匹もの管狐を一刀のもとに斬り捨てていた。
 ゆえに刃は止まらない。――そのはずだった。

「――やらせないわ」

 何匹もの管狐たちが集まって形成された盾の前で、大太刀が止まっていた。
 刃が凍っているのだ。呪詛の雨に濡れ、斬り捨てた管狐たちが運んできた冷気が原因だろう。本来の鋭利さを失った大太刀はなまくら刀同然となってしまっていた。

「――楔の雨よ、来たれ!」

 レインの声と共に魔法陣が広がる。直後、頭上の雨雲が渦巻き、滝のような集中豪雨が流れ始めた。不意に来た強烈な水圧によって、菖蒲鬼の動きが止まる。
 雨。それは菖蒲鬼と同様に、レインにもずっと付き纏っていたものだ。
「呪わしい雨。けれど、ただ呪わしいだけじゃないと、友と私の春が教えてくれた」
 恵みからは程遠い、暴力的なそれはあらゆるものを押し流す。
 それは、菖蒲鬼の形成した悲嘆の沼とて例外ではない。
『沼の呪詛を雨の魔法で希釈しましたか……!』
「最初からまともにやり合おうだなんて考えてないわ。夕辺!」
「合わせる! さあ、行って!」
 豪雨の直後。ブレスレットを弓へと変えたレインが火を載せた魔法の矢を放ち、炎を抱かせた管狐たちを夕辺が差し向ける。それらの向かう先は、悲嘆の沼。
 呪詛の希釈された水面は火によって蒸発させられ、その姿を泥へと変えてしまう。
「“雨勝負”で私に勝とうだなんて思わないことね」
「どんなに激しい雨でも、いつかはやんで晴れ間が訪れる。そういうものよ」



 氷に亀裂が入り、そして砕けた。
 一振り。氷に覆われていた黒い刃が再び雨の下に姿を現す。刀身に宿る呪詛は、今までの比にならないほどに増していた。
『見事。しかし、こちらの優位が一つ潰えただけのこと。この雨をそう簡単に晴らせるとは思わないことです』
「いいえ、晴れるわ。雨女の私がいても、今日は必ず晴れる」
 断言するレインの瞳には、確信と信頼が映っていた。
 片や雨男、片や雨女。暗がりに慣れた目を眩しさに慣らすように、菖蒲鬼は目をすがめる。
『……何を企んでいるのかは存じません。ですがその企て、ここで阻ませて頂きましょう』
 菖蒲鬼が大太刀を構えて一歩を踏み出す――その瞬間。
 幾重もの雷霆が鳴り響いた。
「やらせねーよ。アンタの相手はこの俺だ」
 稲妻が如き閃光。咄嗟の防御に回された大太刀の向こう側にいたのは、皐月・灯(喪失のヴァナルガンド・f00069)だ。
 バックステップ。距離を取って新たな術式を拳へと装填しながら灯は二人を一瞥する。
「後は任せろ。アンタらはアンタらのやることをやってくれ」
 レインと夕辺の二人へとそう言い残すと、灯は再び菖蒲鬼と対峙する。
『……次の相手はあなたですか』
「入れ代わり立ち代わりで悪ぃとは思うが――」
 雷電迸る右拳に、左拳を打ち付けると、灯に刻まれた魔術刻印が臨界を超えて煌々とした輝きを放ち始めた。
 灯の両拳から迸る雷電はさながら大きな翼の如く。弾けるような音と共に、雨の中を紫電が舞い散る。
「アザレア・プロトコル・ユニゾン。――その代わり、飽きさせねーからよ」
『そのようですね。――お相手、仕ります』
 動いたのは同時。黒と白が衝突する。
 黒は呪詛。墨染の刃が振り下ろされ、それに続いて鉤爪のように無数の斬撃がそれに追随する。
 白は雷光。灯の両拳が雷速を超えて無数の拳打でもって剣戟を迎え撃つ。
 空気が震え、遅れて轟音が響き渡った。
 衝撃波に飛ばされ、二人の距離が大きく開く。
「“妖刀”とはよくいったもんだ。とんでもねー魔力を感じる……」
『そちらこそ、張り詰めた魔法を使いながらよくもそれだけ乱打できるものですね。誰かから補助でも受けているのでしょうか?』
「……さてな」
 脂汗を垂らしながら灯は構えを解かない。これまでの戦闘でかなり消耗していた上、臨界を超えた魔術刻印の励起は身体にかなりの負担をかける。それこそ、何かしらの代償で補填しなければ己の寿命を削るほどに。
「…………」
 なぜここまでするのだろうか。灯は自分で自分の選択が少し不思議だった。本来であれば命を削るような義理などない。なのに、今自分はこうして戦っている。
 強敵が相手だから。仲間たちに感化されたから。あるいは、この戦いにだったら惜しくはないと思ったか。どれもそうだと言えて、どれも違うと言えた。
『何か物言いたげな目をしてらっしゃいますね』
「……別に。オレから言うことは何もねーよ。話を聞いてやれだとか、オレが言うまでもねーだろ」
『ええ、そうですね』
 菖蒲鬼が頷きを返す。こうして言葉を交わしていると、彼がオブリビオンであることを忘れそうになってしまう。
 そう、彼はオブリビオン。すでに過去の中で喪われた存在だ。
 肉親を喪う痛みは灯もまた知っている。
 だから、どのような形であれ、それに決着を付けられるなら、手を貸してやりたいのだ。
「――来いよ。アンタの剣速とオレの雷速、どっちが勝つか勝負だ」
『――良いでしょう。その勝負、受けて立ちます』
 言葉の直後、菖蒲鬼は大太刀を、灯は拳を振り被った。
 無数の斬撃と無数の拳打がせめぎ合う。
 僅かに呪詛が雷撃の勢いに押されて――弾けた。再び吹き飛ばされる両者の身体。しかし、灯の魔術刻印の光はすでに弱々しく、菖蒲鬼の呪詛は明らかに弱まってしまっていた。
「やっぱりな。呪詛だって無限じゃねー。……いつかは底をつく」
『……大した豪胆さです。このせめぎ合いで負けていれば、あなたも無事では済まなかったでしょうに』
 灯の魔力が先に尽きるか、菖蒲鬼の呪詛が枯渇するか。大博打とも言えるその勝負に、灯は引き分けることで“勝ち”を拾っていた。
『確かにこれでは、私の“手数”も減ってしまいます』
 ひゅん、と振るわれた大太刀が虚空を裂く。さっきまでのように呪詛の斬撃が刃に追随しなくなっていた。
『ですが、呪詛ばかりの鬼ではないことをお忘れなく』
 裂かれた虚空から、黒々とした大鬼の両手が現れる。
 地に膝をつきながら、それを見上げる灯が浮かべるのは――不敵な笑みだ。
「アンタこそ……猟兵の戦い方ってのを忘れてるんじゃねーか?」
 灯の言葉の直後、菖蒲鬼の背後から二つの影が襲いかかった。



 剣戟、二対。
 大鬼の手が弾き飛ばした二つの影へと菖蒲鬼は振り返る。そこに立つのは二人の長駆の男だ。
「こんにちは、お兄様」
 戦場にあって丁寧な会釈をするのは斬崎・霞架(ブランクウィード・f08226)だ。
「ご兄妹なだけあって、本当によく似て見目麗しくいらっしゃる」
『うちのがお世話になっているようで。……いつだったかは今のように千客万来でしたから、おちおち挨拶もできませんでしたからね』
「……ほんの少し刃を交えただけだというのに、覚えておられましたか」
 驚嘆したように呟く霞架へ、菖蒲鬼は「さて、どうでしょうね」と肩をすくめてみせる。
「へえ、知り合いだったのか? それならちょうどいい、一戦やり合ったことがあるなら、俺に譲ってくれよ」
 無骨な大剣を担ぎながら一歩前に出たのは、安河内・誓吾(渇鬼・f05967)だ。
 彼は爛々と光る青い瞳を菖蒲鬼へと向けている。
「その怪異の手も、今しがたの刃の冴えも実にいい。是が非でも一戦お相手願いたい」
 二本の刃を向けられながら、菖蒲鬼は大太刀を構え直す。その口元には期待するような笑みが薄っすらと浮かんでいた。
『先程も別の方々に言いましたが。――何人でもかかって来ればよろしい。いっぺんにお相手しましょう』
 微笑みと共に挑発的な手招きをする菖蒲鬼を前にして、誓吾と霞架は一瞥でもって視線を交わす。
「ならばよし、共に乱れよう!」
 最初に動いたのは誓吾だった。跳躍と共に肉薄し、担いでいた片刃大剣が振り下ろされる。まるで飢えた肉食獣の如き猛々しくも荒々しい一撃。
 擦れ合う金属音。
 それを菖蒲鬼は大太刀の峰を使って受け流す。
「――そこです!」
 絶妙なタイミングで霞架が続き、雪のように白い刃を振るう。一撃の重い誓吾が囮となり、小回りの効く霞架が隙きを突く即席の連携。
 本来であれば必殺であるはずのそれは、しかし大鬼の手によって弾かれてしまう。
『そうやすやすと攻撃を通すとは思わぬことです』
 墨染が誓吾の眼前を横切り、攻撃を弾かれて隙きのできた霞架へと振り下ろされる。
「兄妹揃って容赦が無い……!」
 何か膜状のものが菖蒲鬼の放った斬撃の速度を落とし、手甲に覆われた右腕を横薙ぎに振るって大太刀の峰を弾く。間一髪、霞架の真横を黒い刃が通り過ぎて行った。
 衝撃。大鬼の手が横薙ぎに振るわれて、二人の身体が吹き飛ばされる。
『……無粋ですね。戦場にあって戦わないとは、観客気取りですか?』
 不機嫌そうな表情で菖蒲鬼が注視する先は、誓吾と霞架の二人ではなく、林の中だ。
「……そういうわけじゃねえさ。ただ、端役は端役らしく舞台の裾で大人しくしてただけのことだ」
 観念したように現れたのは黒のマントに身を包んだ青年、ヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)だ。
『あなたですか。拳打を増やしたり、妙な結界で私の斬撃を防いでいたのは』
「なに、ちょっとしたお手伝いってやつだ。サブを固めなきゃ、主役が引き立たねえだろ?」
 大したことはしてねえだろ、とヴィクティムが肩をすくめてみせる。対する菖蒲鬼の表情は不愉快そうに歪んでいた。
『自ら矢面に立たずに済ませようとするその卑しさ、気に入りませんね』
「生まれが卑しいもんでね。どうするってんだよ?」
『――言うまでもなく、こうします』
 疾走。墨染の刃が横薙ぎに振るわれる。
 接近から斬撃までの神速の一撃。それをヴィクティムはブースターで強化された反射神経でもって捉え、生体機械ナイフで受ける。
「ハッ、いいぜ。俺は“避けない”」
 受け止めた生体機械ナイフが一瞬だけ拮抗し――断ち切られた。勢いを減じてなお止まらない漆黒の刃がヴィクティムの脇腹へと沈み込む。ヴィクティムの口から呻き声が漏れた。
『狂気の渦に呑まれなさい』
 脈動するかのように墨染の刃から呪詛が流れ出し、ヴィクティムの身体へと染み込んで行く。精神を苛むはずのそれを受けて――しかし青年は不敵な笑みを浮かべていた。

「一つ言っておくが――俺はとっくにイカれてるんだ」

 サイバネ義肢でヴィクティムは墨染の刃を握りしめる。精神を苛むはずの呪詛は、しかし“虚無”を取り込んだヴィクティムにとって“狂気”のほんの一部でしかなかったのだ。
『狂してなお己が身を犠牲としますか……っ!』
 ヴィクティムの脇腹深くまで達し、両手で掴まれた大太刀では押すことも引くこともできない。
 そして、その千載一遇の好機を見逃す者などいない。

「――この一太刀にて、貰い受けるッ!」

「――その鬼の手、今ここで終わらせます!」

 誓吾が片刃大剣を振り下ろし、霞架が手甲に覆われた右手を前へ伸ばした。
 大鬼の手がそれらを迎え撃つ。
 受け止め、弾き返そうとして――叶わなかった。
 誓吾の大剣によって両断され、霞架の死の呪いによって呪殺されたのだ。
「ハッ……ざまぁ、ねぇぜ……」
 サイバネ義肢の握る力が弱まり、大太刀の刃がヴィクティムの脇腹から抜ける。
 大鬼の両手は、黒い塵となって消えていた。



 雨を見上げる者がいた。
「さて、さて。この雨もいささか無粋が過ぎて来た頃だ」
 和装の彼、龍之・彌冶久(斬刃・f17363)は菖蒲鬼を一瞥する。
「斬り合いも心躍りそうではあるが。俺がすなるは始めから“露払い”と決めておってなぁ。戦場の華は若い衆らに任せるとしよう」
 腰を深く落とす。雨雲を睨めつけながら腰に佩いた刀に手を伸ばし、鯉口を切る。
「――では今一度、老骨に鞭打つとしようか」
 龍脈を司りし神は瞳を閉じて、感覚を研ぎ澄ます。
 雨の中を吹きすさぶ風より「颯」の脈を。
 立ち昇った風が雨雲を突き抜けた先にある、「天」の脈を。
 そして天に座して遍くを照らす「陽」の脈を。
 集め、束ね、混淆し、そして紡ぎ出す。

「いざや一太刀、“那由多”が一閃を仕る」

 十束の刃が、脈動と共に抜き放たれる。
 明るくも荒々しい風を纏った斬撃は、天へ昇って――雨雲を切り払う。
 雲間より一筋、陽光が溢れたかと思うと雲の裂け目は見る間に広がり、陽の光で地を満たす。
「呵々……古来より邪なるを祓い、日照り乞いに応うるは神の所業と相場が決まっておるでな」
 司る権能はいささか違えども、不自然に歪められた空の“脈”を正すのは彌冶久の役目だ。
 十束を鞘へと収め、彌冶久は晴れ上がった戦場から背を向ける。
「これで“露払い”ならぬ“雨祓い”にはなっただろうさ。呵々……」



 今の今まで不自然に降り続いていた呪わしい雨が上がった。
「は、晴れた……!?」
 晴れ渡った空を見上げながら、燈乃上・鬼利丸(ないたあかおに・f22314)は驚愕しながらも笑っていた。
「晴れた晴れた、晴れやがった! ははっ、お天道様が顔出してらぁ!」
 空に浮かぶ太陽を見上げ、陽光を一身に浴びながら鬼利丸は飛び上がる。インクを押し流す長雨がやみ、気分が塞ぐような雨雲が去ったことは彼にとってこの上なく喜ばしいことだった。
「喜んでる場合じゃないでしょうが」
 半目になったレインの一言が突き刺さり、鬼利丸の動きがぴしりと止まる。ここは戦場、雨雲が散って喜んでいる場合ではないのだ。
 目の前を炎を抱いた管狐が横切っていく。目で追えば、その先には夕辺がいた。
「こんな時こそあなたのインクの出番でしょ。その力、貸して頂戴」
「――応よ! 全力全開でやってやろうじゃねえか!」
 夕辺が何十匹もの管狐を展開し、鬼利丸がインクボトルを両手に握る。

「感動の再会だ、どうせなら思い切り彩ってやんねーとな!」

 鬼利丸がボトルを放り投げると、可燃性のインクが飛び散って泥濘の中で燃え始める。夕辺の放つ管狐たちが抱いていた炎を落とし、泥を土へと乾かしていく。
 ぬかるんだ泥が乾くと、そこにはちらりほらりと散った幻朧桜の花びらが埋まっていた。
「ほうら、綺麗だろ?」
「ま、悪くはないわね」
 どんなもんだと腰に手を当てて胸を張る鬼利丸をよそに、素っ気なく一蹴したレインは手のひらから一匹の蝶を飛び立たせる。
 揺蕩うように羽ばたきながら、晴れ上がった空を蝶は飛んでいく。
「頼むぜ、女将の兄貴……」
 どうか彼女が泣かぬよう、悲しまぬよう。そして、菖蒲鬼が一言でも妹を認める言葉を口にするように。
「お願い……」
 どうか目の前にいる“春”をちゃんと見るように。
 鬼利丸と夕辺は空を舞う蝶へとそれぞれの思いを託す。



 雨は涙の暗喩としてよく用いられる。
 だからだろうか。白寂・魅蓮(蓮華・f00605)の目には、あの禍々しき長雨から菖蒲鬼の後悔や未練を感じていた。
「……そうか、雨は上がったんだね」
 晴れ上がった空を見上げて、魅蓮は安心したように薄っすらとした微笑みを浮かべる。あの雨は兄妹の再会に似つかわしくない。
 鬼利丸のインクと夕辺の管狐によって乾かし固められた地を確かめるように蹴って、彼は正面を向いた。
「芸妓には芸妓の“露払い”がある」
 四葩扇を広げると、魅蓮はステップを踏んで踊り始める。
 ふわり、ふわり。
 踊るたびに、黒い蓮の意匠された舞踊装束が揺れる。紫陽花が描かれた扇が振られるたびに、蒼と紫の妖しくも甘く香る煙が漂う。
「……さ、舞台は整ったよ」
 家から見放された身ではあれど、せめて大切な人の家族の繋がりくらいは守ってやりたい。
 そんな魅蓮の真心を込めた舞いは、煙と共に漂う妖気が周囲の景色を歪め――千年桜の咲く、サムライエンパイアの屋敷を映し出した。
 幻惑の空間だ。

「言えなかった事も含めてとっとと伝えてきなよ、エリシャさん」



 千桜・エリシャ(春宵・f02565)の胸中は複雑だった。
 またいつか必ず逢えるように約束した兄が、こうして再び影朧として現れた意味を推し量りかねていた。
 骸の海から偶然にも染み出したと言えばそこまでだろう。だが、それ以上の何かがある気がしてならなかった。
 妖刀の呪縛が解けていないのだろうか。それとも、まだ何か未練があるのだろうか。一体どういう事情でこの世にまた姿を現したのか。彼が自ら望んでのことなのだろうか――
 考えれば考えるほどわからなくなった。不安になった。何体ものオブリビオンを屠ってきた自分が、こんなにも弱いものだったのかと驚くほどに臆病になっていた。

「迷ってンなァ、エリシャ~~~~」

 どすん、と重量のある音がした。大きな棺桶のような箱の前に立っていたのは褐色の青年、ジン・エラー(我済和泥・f08098)だ。
「ほら、来たぜ」
「ジンさん……!? なぜここに……」
「ゲヒハハハッ! ナゼもナニもねェ~~~~だろォ? オレがいることはお前だって気付いてたンだ」
 その通りだ。戦いの中、黒い竜が眩いほどの光を放っている光景を目にして、あれはきっとジンのものに違いないとエリシャは確信していた。
「救いに来てやったンだ、自家中毒引き起こしてグ~~~~ルグル迷いまくってるお前をよォ」
 見てみろよ、と顎をしゃくられて示された方をエリシャは見る。一見して完全に幻惑によって覆われて作られた庭園は、よくよく目を凝らせばその向こう側にこちらを見守る仲間たちの姿が見えた。
「そんなところで足踏みしてたら、あいつらに笑われちまうなァ? せっかくここまで来たってェ~~のに弱虫毛虫エリシャ虫~~~~ってよォ、ギャホハハハッ!」
「わ、笑わないでくださいまし!」
 エリシャが怒ったように声を上げると、奇怪な笑い声を上げながらジンは強い光を放った。暴力的なほどに明るく、けれど温かい光。それらがエリシャのこれまでに受けた傷を癒やしていく。
「ようやく決心がついたようじゃねェ~~の。思い出したンだろ? 一人で来ずに、あいつらと一緒に仲良しこよしでここまで来た理由をよォ~~」
「……ええ、ちゃんと思い出しましたわ」
 不安になって、臆病になって――だから、親しい人たちと共に会いに行こうと決めたのだ。
 仲間たちがそばにいてくれれば、きっとこの不安に打ち克てる。そして、二度目の再会を果たせる。そう思って、彼らと共にここに来たのだ。
「一緒に行ってやろうか? ドーモヨロシクおニイサマァ~~~~、お前のカァワイ~イ妹と話して満足したら、オレが問答無用で救ってやるよォ~~~~! ――なァんて芸当も、オレがいたらしてやれるぜ?」
 甘い囁きのような言葉。確かにジンが隣にいてくれれば、この上なく心強いだろう。しかし――
「……いいえ、ご遠慮しますわ。あなたに救われたら、きっと意味がないですもの」
「…………ひひッ、ブッヒャフハハヒハッ!」
 耐え切れなくなったようにジンが腹を抱えて笑い声を上げる。
「あァ、まったくその通ォ~~~~りだなァ。オレが全部救っちまったらぜェ~んぶ無意味だ。オレァ機械仕掛けの神サマじゃねェ、聖者サマなんだからよォ」
 ホラヨ、とジンの手がエリシャの背を押す。一歩、エリシャの足が前へ出る。
「行って来いよ、エリシャ。最後にオレが救うまでの前座ぐらいまでにはしてやる」
「……ええ。会いに行って来ますわ」
 頷きを返し、エリシャは再び歩を進める。今度は誰かに背中を押されてではなく、自らの意思で。

「――お兄様っ!」

 エリシャの呼び声に、菖蒲鬼は振り返る。
『……エリシャ。よく来てくれましたね』
 微笑みと共に菖蒲鬼が振り返った。それだけで目頭に熱いものがこみ上げてくるのを感じてしまう。
 再会を誓って、けれどまたすぐに会いたくなって。叶わぬものだと諦めていた願いが、目の前にいる。今すぐにでも泣き出して抱擁を交わしたくなる衝動を、エリシャはぐっと堪えた。
 みんなが見ている前で、そして兄の前で子供のような振る舞いはしたくなかった。
『お前が来るのを待っていましたよ』
 まだ幼い頃、兄のもとに遊びに行った時に彼が浮かべていたあの柔らかな笑みと重なる。
 一抹の安心を胸に抱いたエリシャの口から出てきたのは、不安の疑問だった。
「どうして……どうしてまた現世に現れてしまったのですか?」
『さて、どうしてでしょうね。旧帝軍の彼らが以前の私と重なって見えたからかもしれませんし、己の持つ武をより高めたくなったからかもしれません』
 菖蒲鬼はエリシャの持つ妖刀に酷似した墨染を一瞥してから廃寺を見やる。
「相変わらず、あなたはお優しい方ですね」
『そうでしょうか? 実のところ、単にエリシャに会いたくなっただけかもしれませんよ』
 一瞬、胸を打たれたようにどきりとして。それから兄のこちらの反応を見て楽しむような表情に気付いた。
「嘘ばっかり。ひどい人」
 非難がましい視線を向けると兄は笑い、それに釣られて自分まで笑んでしまう。
『また会いたかったのは嘘ではありませんよ。ですが、本当にどうして“染み出して”しまったのかはわからないのです』
 とはいえ、と菖蒲鬼は視線をエリシャから離して仲間たちへと投げかけた。
『原因はわかりませんが、意義はありました。よき人々と巡り会えたようですね』
「ええ。私が女将をしている旅館で出会った方々ですわ。こうして、あなたに会うために力を貸してくださったんです」
『強く、そして心優しい方たちですね。刃を交えて感じていましたよ』
 助け合うことで苦境を乗り越え、一つの目標を達するために力を合わせる。その団結力は強大な菖蒲鬼を窮地に追いやるほどの成果を出した。
『あの方たちにならばお前を託しても良い――と言えればよかったのですが。私にも兄としての矜持がありますので』
 妖刀に心を侵されようとも、影朧に成り果てようとも、彼には譲れない思いがあった。
『偶然とはいえ、こうして現世に染み出したのも何かの縁』
 ゆえに兄は過去の大太刀、墨染を構える。
『――今一度切り結びましょう、エリシャ。今度はひと思いに討てなどとは言いません。泣いてしまわないほどにお前が強くなれたか、見せて下さい』
「……やっぱり、あなたの中で私はまだ弱い子どものままなのですね」
 応えるように、妹もまた己の大太刀を抜き放つ。
「もう一度あなたを超えて見せます、お兄様。勝って、もう守られてばかりの子どもでないことを証明して差し上げますわ」
 二振りの大太刀から呪詛が溢れ出し、二人の全身に纏わり付く。
 斬撃、ニ閃。呪わしい黒の一閃と、美しい桜の一閃がぶつかり合う。
 実力伯仲。互いに己の刀と纏った呪詛に依って切り結ぶ。
『ああ、こうして真剣で斬り合えるなんて。もし、私が影朧に身をやつすことなく生き永らえていたならば、今のようにお前と刃を交えられたかもしれませんね』
 晴天の下、大鬼の手も悲しみの沼もないこの戦い。
 兄が生きていて、そして彼から独り立ちしなくてはならない――そんな“もしも”があったとしたら、きっと今のような戦いだったかもしれない。白昼夢のような想像が一瞬だけ脳裏をかすめる。
 心の間隙を縫うように、菖蒲鬼が斬りかかる。咄嗟に刃の直後に来た体当たりを受け切り、鍔迫り合いにもつれ込む
『こうして影朧に堕ちた身で叶う話というのも皮肉ではありますが。それでも楽しいものですね、エリシャ』
 鍔迫り合いの中。二振りの刃の向こう側に、兄の笑みが見えた。さっきまでの優しい雰囲気はそこにはなく、悪鬼羅刹が如き獰猛な笑みだ。
「楽しくなど――」
『嘘はよくありませんよ。だってほら、お前も笑っているではありませんか』
 鬼の囁き声で、自分の口元が歪んでいることに気付く。
 狂気に侵されしこの身は羅刹。相手が誰であろうとも、身体は高揚してしまう。
『それで良いのです、エリシャ。刃を振るう時に迷いは必要ありません』
「お兄様……」
 昂ぶる身体が心の迷いを打ち払う。それで良いのだと兄は言う。

 “本当に?”

 最後に残った躊躇が自分自身に問いかける。それはきっと、エリシャの中でいまだに残る泣き虫な少女の部分。
 身体を昂ぶらせる羅刹の血が泣き虫な少女をねじ伏せ、「切って捨てろ」と自分に告げる。
 刃を手にしておきながら、エリシャは己の一部を切り捨てることができなかった。
『……やはり、お前はまだ弱い』
 失望したような、諦めたような兄の一言が胸に突き刺さる。
 黒の衝撃波が飛んで来る。羅刹の血が反応し、辛うじて大太刀で受けられたが、己の心の“弱さ”が悲鳴を上げて即座に反撃へと移れない。
『墨染の呪詛が、羅刹の血がそうさせているだけ。エリシャ、お前はまだ弱いままですよ』
「……っ」
 弱くない。そう叫ぼうとして、言葉が出なかった。
 菖蒲鬼が大太刀を構える。
 斬撃が来る。頭で理解していても、身体が動かない。泣き虫な少女が縋り付いて離れない。
 羅刹の血が心の中で絶叫する。“まだ間に合う、切り捨てろ!”
 その叫び声を遮るように――エリシャの視界に、水のような蝶が入って来た。
「――――――」
 レインの水鏡蝶だ。ふわりと羽ばたくそれは、エリシャの躊躇を――縋り付く泣き虫な少女を慰め、そして眠りにつかせる。今まで共に戦って来た仲間たちの思いが、蝶を介してエリシャの中に広がっていく。
 腕に力が戻る。
 一歩、前へ。踏み込みと同時に大太刀が振るわれる。受けるのではなく、立ち向かうために。

 破砕音。

 羅刹の手にあった過去の墨染が、柄を残して割れ砕けていた。
 菖蒲鬼の喉元へ、エリシャは今の墨染を突きつける。
「――勝負あり、ですわね」
『……ええ、負けました。どうやら私がお前のことを見誤っていたようですね、エリシャ』
 いいえ、とエリシャは大太刀を鞘に収めながら首を横に振る。
「確かに私は弱いままでした。お兄様をこの手にかけたくないと、戦いたくないと思っていました。けれど、皆様の思いがあったからこそ、私は少しだけ強くなれただけですわ」
『……本当に、いい人たちと巡り会えたのですね』
 砕けた過去の墨染が黒い塵となって消えていく。それを見送る菖蒲鬼の脳裏には、あの大太刀使いの人狼の少女が映っていた。彼女の一撃が、この大太刀に亀裂を入れていたのだろう。
 幻朧桜がざわざわと揺れる音がした。
『……どうやらここまでのようですね』
 行ってしまうのですか、とは言わなかった。涙も流れては来なかった。
「“迎えに来て”とは言いませんわ」
 代わりに、エリシャは微笑みを返す。
「待っております。またいつか逢える、その時まで」
『存外、その時は近いかもしれませんよ』
 慰めにも聞こえる兄の言葉に、くすりと笑う。根拠もないのに、どうしてか本当に近いかもしれないと思えてしまった。
『待っていてくださいね、エリシャ』
「ええ。またお逢いしましょう、お兄様」
 舞い散る幻朧桜の花弁が旋風となって菖蒲鬼の身体を覆い、聖者の光が照らして――救いがもたらされる。

 何のために戦い、何のために強くなるのか。
 その答えは、それぞれの胸の中にある。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2020年11月04日
宿敵 『花時雨の菖蒲鬼』を撃破!
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