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この世界には赤が足りない

#UDCアース

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#UDCアース


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●トマトワールドなど(多分)ない
 とあるコンビニで、おっさんがレジにケチャップ2本とトマトジュース1リットルをレジにおいた。
「あと肉まん2つ」
 そしてちゃんとお金を払ったおっさんは、近くの公園のベンチに腰掛け、まずトマトジュースの蓋を開けて、ゴキュっと一口――。
「うっすーい!! トマト感うっす! 水かよ!!」
 力いっぱい、投げ捨てた。
 気を取り直したおっさんは、ケチャップの封を2本とも解いて肉まんにかけて食べ始める。ケチャップ2本を肉まん2つで使い切って、おっさんは悲しげに空を見上げた。
「足りねぇ……これでも足りねぇよ……」
 はぁ、と悲しげなため息も漏れる。
「ケチャップでもこんなにトマトの薄い世界なんか、やっぱり俺の生まれた世界じゃねぇんだ……。帰せ……誰か俺をトマトワールドに帰してくれぇぇぇぇぇぇ!」
 そしておっさんは、公園の花壇を踏み荒らしてどこかへ去っていった。

「とまあ、こんな感じで味覚がトマトでどうかしちゃった人達が、UDCアースのとある街で増殖中らしくてね?」
 ルシル・フューラー(エルフのマジックナイト・f03676)がグリモアベースに集まった猟兵達に、そう話を切り出していた。
「さて、早速本題だ。この件、邪神絡みだと判明したよ」
 そしてグリモアベースに映し出されたのは、赤い果実。
「トマト型のUDC怪物だ」
 トマト型って言うか、どっからどう見てもトマトだった。
「これでも目にした人の正気を奪うと云われているらしい。そいつが復活しつつある影響を受けた人々が、ああなっている――そしてこれからも増えると予知出来たんだよ」
 最初は、とにかくトマト味大好き。トマトジュース常飲し、何でもケチャップ味で食べようとする。だがこの状態でいられる時間は短い。
 程なく、トマトジュースでもケチャップでも満足できなくなり、世界の境界すら見失って訳の判らないことを言い出すようになる。
「UDCアースでは、こう言う人達をケチャラーと呼ぶんだって?」
 ちょっと違うのではなかろうか。
「まあ、それはさておき、彼らはどこかでUDCトマト復活の影響を受けた筈だ。彼らの事を調べれば、必ずどこか『共通の場所』が見つかる筈だよ」
 幸い、影響を受けている人々の数はまだ少ない。
 加えて、見つけ易いのだ。大体ケチャップかトマトジュース持ってるから。
「後はその場所を突き止めれば、不完全に復活してきたUDCトマトと対決して、倒せば良いと言う事だよ」
 なお見た目は完全にトマトだが、サイズが全然違うので見間違う心配はないようだ。
「トマトだからね。自分で動けないから逃げられる心配はないよ。その分、激しく攻撃してくるから、気をつけてね」


泰月
 泰月(たいげつ)です。
 目を通して頂き、ありがとうございます。

 オムライスはケチャップライス派。
 と言うわけでもありません。すまん。
 バターライスも美味しいよね。

 というわけで、トマトにしか見えないUDC怪物が復活しかかっており、その討伐依頼となります。
 正式名称は『正気を奪う赤い果実』らしいです。
 トマトが正気を奪うんですって。
 すげえなトマト……。
 で、トマトに正気を奪われるとどうなるべきだろうと考えたのですよ。
 結論がこれです。
 ケチャラーとは違うよな……って書いてて思ったけど、まぁ、うん。

 話を戻します。
 まずはおかしくなった人々から話を聞くなり、足取りを遡ってみるなり、色々推理してみるなりしてください。
 おかしくなった人は、OPのおっさんでもいいですし、こんな人がいいと指定(捏造)して来て貰っても良いです。
 おっさんは嫌じゃ、美少女が良い!とかくらいでも良いです。
 とにかく、1章で『彼らが共通して訪れた場所』が明らかになる予定です。
 2章も詳細はまだ伏せますが、探索になります。
 と言う事で、今回の敵はUDCトマトオンリーです。

 ではでは、よろしければご参加下さい。
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第1章 冒険 『コズミックトラベラーシンドローム』

POW   :    暴れる民間人を力ずくで拘束する

SPD   :    事件の中心を追って捜査する

WIZ   :    事件の真相について推理する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ナハト・ダァト
【WIZ】重視
全ク、一時の健康ブームというのハ厄介だネ。
本当に体を大事にしたいなラ、病院を頼ってほしいものだヨ
…ン?違うのかイ?まア、いいカ。
早く解決しないト、誤った知識というのハそれだけで面白くないものだヨ

[世界知識][医術][情報収集]
これらデ、事件の真相を探ってみよウ

健康食品ブーム…無農薬ポスター…そのような広告デ、人心を操っているのではないだろうカ?
出所、発信者を突き止めたいものだネ。

健康を害している者、精神の汚染が治癒できるならUCでなんとかしておこウ
正しい知識を教えるのモ、医者の務めだからネ



●医者として
「全ク、一時の健康ブームというのハ厄介だネ」
 ちょっぴり怪しげな白ローブ。
 そう評されそうな風貌のナハト・ダァト(聖泥・f01760)は、路地や建物の壁、電柱などを注視しながら街中を歩いていた。
「本当に体を大事にしたいなラ、病院を頼ってほしいものだヨ」
 ナハトが不平を溢しながらも探しているのは、人ではない。
 どこの街にもよくあるポスターだ。
 昨今の健康食品ブームに乗ったもの。
 例えば無農薬野菜のポスターのような――そんな類のトマトの広告で人心を操っているのではないかと考えたからだ。
「……ン? トマトにハ、体に良い成分があるからネ」
 だが、見つかるポスターはナハトが予想していたものとは、少し違った。
「健康な体ハ、健全な芸術カラ?」
 そんな謳い文句とトマトが描かれた苫都ミュージアムのポスターである。
 他にもミカンやイチゴ、桃やリンゴのもあった。何れも健全な芸術云々と書かれている苫都ミュージアムのもので、無農薬とかは謳っていない。
「――そこのキミ。私、この辺りに来たのハ初めてなのだガ、これハ何だイ?」
 少々困惑したナハトは、通りがかりの主婦に訊ねることにした。
「ああ、それ? 最近出来たばかりのミュージアムよ!」
 ナハトを警戒するでもなく、主婦はあっさり口を開いてくれた。
「なんでもね? 果物や野菜の、すごいリアルな彫刻がたくさんあるって話よ? アタシは行ってないけど、お正月に入館無料だったから結構行った人いたみたいよ。あと、お土産に売ってる野菜が凄く美味しいって評判で――」
「野菜が美味しいカ。ありがとう、行ってみるヨ」
 まだ続きそうな主婦の話を遮って、ナハトは踵を返す。
(「展示品を使っているのカ? 出所だと良いのだがネ。早く解決しないト、誤った知識というのハそれだけで面白くないものだヨ」)
 そして、胸中で盛大な溜息を吐いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒木・摩那
★信者から聞きこんでトマトUDCの居場所を探す

【WIZ】
うわ、トマト型UDCって怖いわー。
トマトとか食べられないとか、かわいそうです。
世の中、こんなに色々な食べ物があるというのに
早くトマトの呪縛から解放してあげないとね。
(といいつつ、唐辛子マシマシのホットドック食べる絶望的辛党の人)。

トマト邪神の居場所を探します。

最近目覚めたトマト信者でおいしいトマト探してます、
という設定でトマト信者からお話を聞きます(情報収集)。
最近立ち寄った場所、特に食事処など。

トマト絡みで、パスタ屋あたりに邪神のいるのではないかと推理してます。



●一撃
「世の中、こんなに色々な食べ物があると言うのに。早くトマトの呪縛から解放してあげないとね。かわいそう」
 そう言いながら、黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は赤いソースがたっぷりかかったホットドックをパクリと食べる。
 摩那もまた、トマトに味覚が染まってしまった1人のフリをして、ケチャラーとなった信者(?)から情報を集めるつもりであった。
「そ、それは……ケチャップか!」
 早速、1人青年が釣れる。妙に色彩々のズボン――いや、絵の具か。
「ええ。私も最近、トマトの味に目覚めて……おいしいトマト探してます」
「うむ。美味いトマトは良いが……その、そのソースは!」
 ケチャラーの青年、摩那の話を聞いてそうで聞いてないようだった。赤いソースに目が行っている。
「最近行った所を教えて貰えるなら、分けてあげますよ? 特に、何処か食事処。……それと、美術館の類でお勧めは?」
 摩那は当初、パスタ屋なんかにUDCトマトがいるのではと考えていた。だが、青年のズボンを見て質問を追加していた。
「食事? もう並みのケチャップじゃ何を食べても駄目なんだよ。美術館の類なら苫都ミュージアム一択だろ頂きます!」
 殆ど一息で摩那の問いに答えると、青年は赤いソースをたっぷり皿にぶちまける。
 そして、それをペロッと――舐めてぶっ倒れた。
 摩那は絶望的な辛党であり、かけていたのは唐辛子マシマシの特製ソース。
 どうやら、UDCトマトでは唐辛子耐性はつかないようだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

江戸川・律
SPD使用
トマトなぁ、屋上に畑作ってた奴ら潰した報告聞いてたけど…
他にも作ってるグループが居たのか
うーむ…とりあえず出処を探るかな?
感じ的に被害者に共通項があるみたいだから、巷で美味いと噂のトマトお土産に突撃取材と洒落込みますか。
面白い話聞けたら良いけどなぁ。
コミュ力、情報収集使用
取材の基本は足なので駆け回ります。



●トマト需要
「トマトなぁ、屋上に畑作ってた奴ら潰した報告聞いてたけど……」
 他にもいたのか、と少し困惑しながら江戸川・律(摩天楼の探求者・f03475)はペンで額を掻きながら歩いていた。
「とりあえず……出所を探るかな?」
 律は記者の遺品の『万年筆』のヤドリガミであり、彼自身、猟兵だがフリージャーナリストでもある。
 取材の基本は足だ。
 律はまず、巷で美味しいトマトの噂を調べた。
 特に美味しいトマトを土産に、突撃取材。と言う予定だったのだが――。
「え? 売り切れ?」
 律が訪れた八百屋で聞かされたのは、そんな予想外の言葉だった。巷で美味しいトマトを探してしまった故か。
「ああ。ついさっき、トマトを大量買いしてった客がいてよ。悪いなぁ」
「まだ遠くに行ってないかも! そのお客さん、どっちに行ったか聞いていいか?」
 当てが外れたくらいでめげるようでは、ジャーナリストはやってられない。律は八百屋の主に聞いた方向へ走っていく。
 幸いにして、すぐに聞いた人相と一致する人物を近くの公園で見つける事が出来た。
「うめー、うめー」
 何故か、彫刻刀を楊枝代わりにトマト貪ってる人を。
「えーと……UBジャーナルってトコの記者なんだけどさ。ちょっと話聞かせて貰って良いかな?」
 律も流石にちょっと近寄り難いものを感じながら、声をかける。
「うめー、うめー、う……もう、ない。……なんだ?」
 あ、話聞いてないようで聞いてた。
「この街のトマトって、そんなに美味いのか?」
「……君もアレを見てみれば判る。あの本物よりも本物らしい一品を、な」
 律の問いにそう悲しげに返し、男はトマトの空き袋をポケットにしまうと公園を去っていった。
「本物よりも本物らしい……って事は、どっかにダミーでもあるのか?」

成功 🔵​🔵​🔴​

霧島・ニュイ
八百屋で買ってきたトマト三個入りビニール袋手にうろうろ
ケチャラーに成り済まして信者を探し話しかけ情報を引き出す【コミュ力】
別に誰でもいいんだけど、どうせならボンッキュッボンのお姉さんがいい!とびきり美人なの!(真剣)
君もケチャラー?それともトマヤン?(造語)

最近トマト成分が足りなぁぁい!
でも君の方が深刻そう(トマト御裾分け)
今からトマトツアーに乗り出そうよ。君の好みはどんなの?君のオススメどこ?トマト推しメイド喫茶とかかなー?(適当)
一緒に行くのもよし、場所を聞き出すのもよし。
皆で行こうねー

ちなみに、トマト本体を食べるなんて!って言われなき風評被害受けたら【逃げ足】で逃げるからヨロシク♪



●お姉さん
(「別に誰でもいいんだけど、どうせならボンッキュッボンのお姉さんがいい! とびきり美人なの!」)
 そんな思春期少年らしい事を胸中で呟きながら、霧島・ニュイ(霧雲・f12029)はトマトの入ったビニール袋を片手に街をぶらぶらと歩いていた。
「あの……それ、トマトですよね。食べないのですか?」
 後ろから聞こえてきた、その声だけで判る美人の気配。
 振り向けばそこにいたのは、ニュイより少し年上そうな優しげなお姉さんだった。ストレートロングの黒髪が、ゆるい風に微かに揺れている。
 そして冬なのでコートを着ているのだが、コートの上からでもスタイルが良い、と判るボディラインの持ち主でもあった。
(「っしゃっ!」)
 ニュイ、心の中でガッツポーズ。
「君もケチャラー? それともトマヤン?」
「ト、トマヤン? トマトは、好きです」
「僕もだよ。最近トマト成分が足りなぁぁい!」
「そうなんですよぉ!」
 トマヤンなるニュイの造語に戸惑いも見せたが、意外と話せてる。
「でも君の方が深刻そう。どうぞ?」
 ニュイが差し出したトマトは、ものの数秒で女性の中に消えた。
「中々良いトマト……でも足りないです」
「じゃあさ、今からトマトツアーに乗り出そうよ」
 全てのトマトを食い尽くしても足りない女性に、ニュイがそう提案する。
「君の好みはどんなの? 君のオススメどこ? トマト推しメイド喫茶かなー?」
「メイド喫茶……? ケチャップで絵を描くなんてまどろっこしい事をする所に、なんで行かなければならないんです! ケチャップは飲み物じゃないですか!」
 ニュイは1つ思い知らされる。
 正気を失ってると、どんな美人もただの残念美人に成りかねないと。
「どうやら貴方はまだあれを観てないようですね。これで、観てくると良いですよ?」
 そして再び柔らかな笑顔に戻った女性が胸元から取り出したのは、苫都ミュージアムのチケットだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ナイツ・ディン
【SPD】
『食い物で正気を失うとは人間はよほど飢えているのか。』「……多分そういう意味ではないぞ。」思考がズレている脳筋な竜槍『ディロ』(好きな色は赤)とその主人の妖精ナイツ。

情報収集、変装、目立たない、追跡、ダッシュ、忍び足。サブシーフの能力駆使しまくっておかしくなった人を尾行してみる。【エアライド・ディロ】を使って空から見るのも手か。(騎乗、視力)
怪しい場所があったら封印を解くとか、動物と話すで情報収集したり。

いっそトマトがでん、と居座っていたら見つけやすいものを。ただ俺のサイズ的に潰されたらアウトだよなあ、多分。色々と見た目グロテクスなことになりそう。真っ赤に染まってさ。


御堂・茜
【POW】
こらー!そこの赤いバイク止まりなさい
トマト警察です!

わたくしは正義の使者御堂茜!
本日はトマトに精神を支配された暴走族
『徒命党(とめいとう)』を追っております!
赤い特攻服に緑の刺繍はまさにトマト
徒命党の通った後は鮮血で染まるのだとか…
いえ、これは…ケチャップ!?
(※色々MS様にお任せ)

好き嫌いは悪ですが偏食も悪ッ!
食べ物を粗末にするのは無論悪!
暴走も悪です!
御堂には聞こえます、助けを呼ぶリコピン酸の声が!
UC【ゴッドスピードライド】と【騎乗/操縦】を駆使し
悪の手先をお縄にして参りましょう

何ゆえそんなお姿に…
トマト農家のお母様も泣いておりますわ!
捕まえたら熱血教師的に更生させ情報を得ます


亜儀流野・珠
トマトか…そりゃ正気も失うよな。わけわからんもんな!

まあとりあえずは調査だ。足を使おう。その辺歩いて調査&人間観察だ。

トマった奴らが来る方向、多く居る場所を探してみよう。赤いから多分見つかるだろう。
まあいざとなったらトマト買って弄びながら歩いてればあっちから来るだろう!
来なかったら俺が食う!昔はよくおやつ代わりに食ったもんだ!

そいつらに会ったらトマトの素晴らしさに気付いた切っ掛けや場所を聞いてみようか。
あとトマトは実のままそのままが最高だと思うんだがどうだ?
混ざりもの無し!歯ごたえ有り!オリジナルにして100%だ!
ケチャップ直は体に悪いからトマト食っておけ!



●徒命党
「赤いの持ってるから、多分簡単に見つかるだろうと思ったが……トマった奴ら、結構あちこちで見るな」
 亜儀流野・珠(狐の恩返し・f01686)は、街のケチャラー率にちょっと戦慄を感じずにはいられなかった。
 街中にいると言うほどではないにせよ、探す気になれば労せずに見つけられるくらいにはケチャラーが増えている。
 ちょっとおかしい。
「トマト売り切れてる八百屋が増えてるのもなー」
 昔や良くおやつ代わりに食ったもんなのに、と胸中で溢して、珠は何とか買えたトマトを片手に街を歩き回っていた。
 1人2人に聞くよりも、大勢が集まっているところを探しだし、そこに話を聞いた方が良いと珠は考えているのだ。
(「お。いたいた」)
 やがて、見つかった。空き地に輪になって何かをしている5人の青年達。
 彼らの足元にはケチャップの容器が散乱し、今もケチャップ片手に作業している。間違いないだろう。
「おーい! ちょっと良いか?」
 だが、珠がそう声をかけると彼らは弾かれた様に顔を上げ――たった今まで何かをしていた赤い上着を羽織ると慌てて逃げ出していく。
「あ、おい! ちょっと待て! なんなんだ!」
 珠がそう言ったとて、素直に待つ筈もない。
 彼らは停めていた原付バイクに跨り、走り出してしまった。

 パッパー!
 パーッ!
「はて。何でしょう?」
 後ろから聞こえてくる喧しいクラクションの音に、御堂・茜(ジャスティスモンスター・f05315)が振り向こうとする。
「暴走は悪です! 行きますよ、サンセットジャスティス!」
 丁度その横を、赤い特攻服を着た5人組みがバイクで走り去って行くのを見た茜のピンクの瞳に、正義の炎が燃え上がった。
 そして愛馬である馬型ロボ――名馬サンセットジャスティスに跨り、茜はバイクの後を追っていく。
「こらー! そこの赤いバイク止まりなさい!」
 止まれと言われて止まる筈もない。
「あの赤い特攻服に緑の刺繍は、まさにトマトでございますね。……と言うか、何か書かれて……徒……命……党……と、めい、とう……徒命党(とめいとう)!」
 トマトって、国によってはとめいとうって聞こえるよね。
「おらおらぁー! どかねぇと、お前らの車ケチャップ塗れだぞぉ!」
「俺達は俺達のトマトワールドに帰るんだ。邪魔すんじゃねぇぇぇぇ!」
「成程。彼らはトマトに精神を支配された暴走族でございましたか。ならば御堂は今この一時のみ、トマト警察です!」
 ツッコミが誰もいない。
「ポリだぁ!? これでも喰らえ!」
 ぶしゅっと、徒命党の1人が茜の愛馬にケチャップをぶっ掛けた。
「これは……間違いなくケチャップでございますね」
 だが、そんなもんで怯む茜ではなかった。
「好き嫌いは悪ですが偏食も悪ッ! 食べ物を粗末にするのは無論悪! 御堂には聞こえます、助けを呼ぶリコピン酸の声が!」
 ぺろりと味を確かめ、むしろ正義の炎を燃え上がらせる。
「悪の手先は、お縄にさせて頂きます!」

「またケチャップか。トマトかケチャップを買い漁って食べてるだけだな」
 尾行した人がケチャップをトマトにかけて食べるのを物陰から眺めながら、ナイツ・ディン(竜呼びの針・f00509)がぽつりと呟いた。
『食い物で正気を失うとは。人間はよほど飢えているのか』
「……多分そういう意味ではないぞ」
 脳筋な竜槍『ディロ』のズレてる思考を一応ツッコんで、ナイツはトマトを食べ終え黄昏る人から視線を外す。また、その内気を取り直して次のトマトを探すのだろう。
「動物達に話を聞いても、何か新しい建物が出来たって事しか知らなかったしなぁ……ディロ、いいか?」
 少々手詰まりを感じたナイツは、視点を変える事を思いつく。
『ん? 空か』
「ああ。俯瞰したい――大空を駆けよ!」
『竜の背に乗ること、誇りに思え!』
 竜槍『ディロ』が翼持つ紅竜となり、その上にナイツが跨る。1人と1体は、ふわりと空に舞い上がっていった。
 フェアリーであるナイツが騎乗可能な大きさの竜だ。人々も気に止めない。
「いっそ、トマトがでんっと居座ってたら見つけ易いんだがな」
(「ただ俺のサイズ的に潰されたらアウトだよなあ、多分。真赤に染まって、見た目がグロテスクと言うかスプラッタと言うか、な事になりそ――ん?」)
 ふと聞こえた音に視線を落とすと、バイクが3台、そしてそれを追って機械の馬が走っていった。
「あれは……一緒に来た猟兵の1人だな」
『おい、なんか赤いの通ったぞ! 追うか?』
「頼む」
 好きな赤が通ったと言うところに反応したディロの声に、ナイツはすぐに頷いた。1人と1体は急降下して行った。

 さて。暴走していた徒命党達だったが、結局のところあっさりと捕まった。
 まあ、所詮原付バイクだ。実は宇宙バイクでもある馬型ロボの足に敵う筈もない。
「何ゆえそんなお姿に……トマト農家のお母様も泣いておりますわ!」
「いや、俺らのかーちゃん、農家じゃな――」
「お黙りなさい!」
 茜の熱血講師もかくやと言う剣幕に、正座させられた徒命党達はしどろもどろで、なんだか毒気も抜かれた様子だった。走ってすっきりしたんだろうか。
「んじゃ、トマトの素晴らしさに気付いた切っ掛けや場所を教えて貰おうか?」
 何とか追いついた珠が、茜を宥めながら徒命党達にそう問いかける。
「切欠?」
「場所? だったら、あそこしか――」
「苫都ミュージアムか?」
 バイクを調べていたナイツが、彼らの言葉を遮って告げる。
「バイクに書いてあったぞ?」
「そうそう、そこっす! バイクもそこで貸してもらったっす」
 どうやら、次の行き先は決まった様だ。
「じゃ、そこに行ってみるとして。トマトは実そのままが最高だと思うんだが、どうだ? 混ざりもの無し! 歯ごたえ有り! オリジナルにして100%だ! てか、ケチャップ直は体に悪いからトマト食っておけ!」
「そうでございます。過ぎたるは及ばざるが如しと言うでしょう。何でも食べ過ぎてはいけませんよ」
 珠と茜の説教に、徒命党達は神妙に頷く。そこに、本物のサイレンが聞こえてきた。
「長居は無用だな」
 ナイツの言葉に頷いて、3人は徒命党達を残しその場を後にした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 冒険 『美の謎を追え』

POW   :    美術品の搬入作業員として入り込み、直接確かめる

SPD   :    閉館後のギャラリーに忍び込み、調査する

WIZ   :    聞き込みなどで、彫刻の出所などの情報を集める

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●苫都ミュージアム
 ――苫都ミュージアム。
 つい最近、去年の暮れに新設されたばかりらしい。
 ミュージアムと言っても、アートギャラリーのようなものだろうか。
 
 『温度や質感も感じられるような、呼吸すら感じられるような。今にも動き出しそうなリアルな果実の彫刻をお楽しみ下さい』

 そんな看板が出ている。あと入館料500円だって。金とるんかい。
 猟兵達が街でそれぞれに調査した結果、それら全てをつき合わせると、導かれるのはここしかなかった。
 ここにUDCトマトがいるのかは、調べてみないとわからない。
 だが、無関係と言う事はないだろう。
亜儀流野・珠
リアルな果実は動かんだろうがなあ…(看板読みつつ)
まあ邪神なら動くんだろうな!

ここは素直に入場して見て回ってみるか。
大人しくするのは苦手だがな…まあ少しの我慢だ。
客やミュージアムの奴に聞いてみるか。
トマト好きなら一度は見とけな何かがあるって聞いたんだが、と。
さっき最高なバイク見かけたがあれ乗れるか?と。
何か情報が得られればそれを調べる。
もし怪しいトマトが見つかったら…すぐには突撃せず仲間に知らせようか。

それにしても何の為にバイクまで貸し出してるんだ。
…あとトマト手に持ったまま入ってしまったが大丈夫だよな?


霧島・ニュイ
※絡み歓迎

たとえ残念でもいいッ、お姉さんチケットありがとう!
善は急げ!
堂々と美術館に客として入って一通り見る

水も滴る良いトマト様…!(うっ…とやられたふりして内心冷静)
【視力】で彫刻に何かおかしいところがないかチェック
周りを観察して見た人の変化を見る
トマト、えげつなー……

【コミュ力】使って、客や警備員、美術員さんから聞き出す
ねえねえ、凄いね見事だね!
どうなってるのー?
どうやって彫ってるんだろ…
どこから来たのー?有名な彫刻家さんの作品かな?
有益な情報は仲間と共有

仲間が別の場所で行動を起こしてたら、無垢な客のふりして職員さん足止めしたり、客がパニック起こしてたら出口まで丁寧に誘導するねー


ナイツ・ディン
【SPD】
「子供料金、……だめ?」『なんてケチくさい……』
こぶし大サイズの500円玉を抱えて入場。

閉館時間ギリギリまで構造を調べつつ潜み、閉館したら本格的に探索開始。
隠れるだけなら〈目立たない〉や〈変装〉、〈物を隠す〉でどうにか。いざとなったらスリーピードラゴンでディロの中に隠れれば良い。
『貴様、埃っぽいから喰いたくないんだが』「つべこべ言うな」

〈第六感〉、〈暗視〉で夜の美術館。施錠とかも〈鍵開け〉で。竜槍でガチャガチャ。
動きそうなトマトの彫像とかあれば〈封印を解く〉で無理やり解除してしまってもいいけど。しかし、トマト食べたくなってきた。ディロなんか彫像にかじり付きそうだし。(感化一歩手前)


ナハト・ダァト
【WIZ】で行動

ふム…展覧会カ
広め方も、色々あるんだネ
邪教徒のプロパガンダにこのような場所を利用するなんテ
勿体無い事をしてくれたものだヨ

【バウンドボディ】で体から触手を小さく、細く伸ばして情報収集にあたるヨ
人々の会話なんカ聞いてみようかナ
展覧会にしては不自然な言動、異様に多く聞こえてきたワード
それらに注意してみよウ

出所カ、持ち出してきた人物の名前、特徴位は掴ませてもらうヨ

使用技能
[世界知識][情報収集]


黒木・摩那
★トマト展示物が邪神か探る
【WIZ】

どうやらトマト邪神は苫都ミュージアムにいるようです。
これだけの信者がいるからには、展示物のひとつだと考えます。
ミュージアム自身が『リアルな果実』と言ってることですし。

かと言って、展示物のトマトにいきなり傷をつけたりすると怒られそうです。
確証はつかまないといけません。

まずは展示物の(情報収集)。電脳ゴーグルで作品の検索をして。
その上で作者について、ミュージアムの学芸員に聞きこみます。

「このトマトの赤みと言い、果肉の曲線といい、素晴らしい作品ですね。
まるで生きているようです。 是非とも作者のことを詳しく教えてください」(言いくるめ)

作者不明とか?


御堂・茜
【SPD】
潜入捜査ならばお任せ下さい!
閉館後に裏口なり従業員口なり探して
奥義…ジャスティスミドウ【鍵開け】!
ええ、これは立派な犯罪ですが
正義のためのピッキングは正義でございます!!
問題ありませんとも!!!

入館できたら彫刻を調査致します
サイバーアイを起動しながら鑑賞して
【情報収集】致しましょう
芸術に親しむこともまた正義です!

こ、これは…なんと立派な!
これで入館料500円はお得では!?
はっ、危うく御堂も洗脳される所でした!

我がジャスティスミドウ・アイは
見たものの正義量を調べることができます
正義量が低い場所、すなわち悪の気配!
そこに何かが隠されている気が致します!
お仲間とも協力し正義を執行します!!



●苫都ミュージアムへ
「ふム……広め方も、色々あるんだネ」
 真新しいアートギャラリ――苫都ミュージアムを見上げ、ナハト・ダァトは感心半分呆れ半分と言った様子で呟いた。
「邪教徒のプロパガンダに、このような場所を利用するなんテ。勿体無い事をしてくれたものだヨ」
 声の呆れの色を強くして、ナハトは自身の肉体の伸縮性と弾力性を高めておく。
「どうやらトマト邪神は、このミュージアムにいるようですね」
 黒木・摩那は、それはほぼ間違いないだろうと確信していた。
「あれだけ信者――と言って良いのか判りませんが、トマトとケチャップ狂いの方がいたのですから、展示物の1つでしょう。『リアルな果実』と謳っていることですし」
「リアルな果実は動かんだろうからなあ……まあ、邪神なら動きかねんだろうな!」
 看板に視線をやりつつ、亜儀流野・珠が頷き同意を示す。
 とは言え、現状ではどれも状況証拠に過ぎないと、摩那自身も良く判っていた。
 確証を掴まなければならない。
 そのためには、入場しなければならない。
「子供料金、……だめ?」
「ごめんねぇ。子供料金はないのよ」
 500円玉を抱えたナイツ・ディンに、眼鏡のお姉さんが申し訳なさそうに返す。
『なんてケチくさい……』
 愚痴をこぼす竜槍『ディロ』を、ナイツが窘める。
 まあ500円だ――別に払ったって良いんだろうけど。
(「使わせて貰うよ、お姉さん!」)
 霧島・ニュイには黒髪お姉さんから貰ったチケットと言う切り札があった。
「あら? このチケット――」
「ん? どしたの?」
 ニュイの出したチケットを見て、受付の眼鏡お姉さんが首を傾げる。期限が切れてない事は確かめたと思ったが。
「アンバサダーチケットね。当ギャラリーでは来館した人に、知り合いを誘ってね、と渡しているものよ」
 アンバサダー。元来は大使とかそう言う意味だが、近頃のUDCアースでは広告役という意味合いで使われる事もあるとか。
「1枚で、10人まで入れるわよ」
(「お姉さんチケットありがとう!」)
 ニュイ、再び心の中でガッツポーズ。残念でもいいッ!

●トマトが導くトマト
 こうして、タダ入りに事に成功した猟兵達がまず出会ったのは、なんとも瑞々しいリアルなトマトの彫像だった。
「こ、これは……なんと立派な!」
 その質感に、御堂・茜が感嘆する。
 だが、トマトはそれで終わりではなかった。こうした展示に付き物な順路を示しているプレートの上に、必ずと言っていいほどトマトの彫像があるのだ。
 トマトに導かれて進むと、桃やリンゴの大きな彫像と出会う様になっている。
「なるほど、トマトを隠すならトマトの中ってわけか」
 珠は何処を見てもあるくらいの勢いで並ぶトマトに、小さく溜息を溢した。
 これだけあると、どれが怪しいトマトなのか。どれも怪しくも思える。
(「素直に見て回るか。大人しくするのは苦手だがな……まあ少しの我慢だ」)
 トマト、トマト、ミカン。
 トマト、トマト、カボチャ。
 トマト、トマト、イチゴ。
(「……少しの我慢で、すむのか?」)
 済まないかもしれないなんて若干の不安を感じて、珠はきょろきょろと辺りを見回し係員の1人に近寄って行った。
「トマト好きなら一度は見とけ、な何かがあるって聞いたんだけど、どれ?」
「ああ。それなら順路の最後にある『黄昏トマト』でしょう」
 にこりと笑顔で珠に答える係員。
 どうやら、順路を進むしかなさそうだ。
「あの。順路のトマトには製作者の名前が入っていないみたいですが、他の彫刻と同じ製作者ですか?」
「ええ。本ギャラリーの主催であります、苫都魔人(とまとまと)です」
(「ああ、そう読むんですか。まじん、とは穏やかではないと思ったら」)
 胸中で呟きながら、摩那はスマートグラス『ガリレオ』にその名前を入力してみた。すぐに眼鏡のレンズに結果が投影されるが、該当無し。
 まだ一切公開されていないのか、徹底的に隠しているか。
 ――或いは、そもそも存在しない、か。
 それを確かめるべく、摩那はもう少し係員を突いてみる事にした。
「このトマトの赤みと言い、果肉の曲線と言い、素晴らしい作品ですね。まるで生きているようです。是非とも製作者のことを詳しく教えて頂きたいのですが」
「凄いね見事だね! どうなってるのー? どうやって彫ってるんだろ……」
 摩那に合わせてニュイも矢継ぎ早に係りに尋ねてみるが、係員は苫都魔人に会った事がないのだと首を横に振った。
(「隠しているか、存在しない。そのどちらかそうですね」)
「どの彫刻も、このギャラリーが出来た時から展示されてるんですよ。あ、ところでそのトマト食べないなら頂いても?」
「え? ああ、これ? いいけど」
 胸中で呟く摩那の前で、係員は珠がうっかり持ち込んじゃってたトマトに唐突に目をむけていた。この人も大分ケチャラー寸前ではなかろうか。

 順路の最後。
 半2階のホールの真ん中に真っ白なトマトの大きな彫像が鎮座していた。
 そしてそのでかくて真っ白なトマトの半面は、夕陽を浴びてなんとも言えない絶妙な紅に染まっていた。
「水も滴る眩いトマト様……!」
 うっ、とやられたようにニュイが顔に手をやりよろめくが、実際眩しくはあった。
 ホールの西側ほぼ全てと天井がガラス張りになっているので、夕陽が良く入ってきているのだ。このための構造だろう。赤みを強める偏光でもしているのかもしれない。
「これだけ見れて、入館料500円はお得では!? ……はっ!?」
 危うく洗脳されそうになった茜が頭を振って自力で戻って来たが、一般の人々はそうは行かなかった。
「ケチャップが飲みたくなってきた……」
「くそ、何でこの世界はケチャップが水道から出ないんだ!」
「トマト、えげつなー……」
 中には急速にケチャラーが進む人もいて、その変化にニュイが思わず呻く。
(「ここなら何か聞けそうだネ。色々と聞かせてもらうヨ」)
 そんな周囲の様子と紅に染まるトマト彫刻を見ながら、ナハトは己の体の一部を細く小さく変えて、立入禁止のエリアまで伸ばしていった。
 『トマト……』とか『ケチャーップ』とか時折聞こえる声は無視して、もっと核心に迫る何かを聞けないかと、ナハトは体をどんどん伸ばす。
 すると、どこかで電話の音が鳴ったのを聞き取った。そちらに伸ばしていく。
『もうすぐです……はい、はい。もう数日で! 10万と10を越えます』
「ふム。何となく判った気がするガ……人が多いネ。出直そうカ」
 電話に向けた声を聞いたナハトは、他の猟兵達を促し出口へ向かった。
「俺は残っとく。ディロ。俺を食え」
『貴様、埃っぽいから喰いたくないんだが』
「つべこべ言うな」
 ただ1人、紅竜の夢見た世界(スリーピードラゴン)の中に入って物陰に落ちた槍の中に残ったナイツを除いては。

「あ、こんなところにあったのかあのバイク」
 一巡して外にでたところで真赤な原付バイクを発見し、珠の耳がぴこりと動く。
「何々……3日以内に返却しに来て頂ければ、特に料金はかかりません? 御用の際は係りの者まで――ああ、これそう言う……リピーター増やす為か」
 腑に落ちた感じで頷くと、珠は先に行った猟兵達を追いかけて行く。
 苫都ミュージアムから離れた公園が、話し合いの場となった。
「もう数日デ10万と10を越えるそうだヨ。越えるト、あの彫像ニ何かガ起きル。それハ間違いないだろうネ」
 体を伸ばして得た情報を、ナハトが他の猟兵達と共有する。
「御堂も同感でございます。我がジャスティスミドウ・アイは、あの彫像に正義量を見出せなんだのです。何かが隠されている気が致します!」
 神妙な顔で、茜がそれに頷いた。
 説明しよう!
 茜のジャスティスミドウ・アイは、それで見たものの正義量(ジャスティスエナジー)を調べる事が出来るのだ。洗脳されかかっていただけではない。茜はちゃんと、正義量も測っていたのだ。
 一体どんなエナジーなのか謎だし、意味はないかも知れないんだけどね。
 さておき、10万と10にどんな意味があるのだろう。
「数字かな? 100010……わけわかんないね?」
「あ! 漢数字ではどうでしょうか!」
 ニュイが頬をかいたところに、茜が『十、万、十』と書く。
「とお、まん、とお……え。もしかしてとまと、か?」
 それに思い当たって、珠がなんとも言えない顔で溜息を吐いた。
「だとすると……時間か人数でしょうか? 料金だと、10は出ませんよね」
 と摩那がレンズに写った『ガリレオ』の計算結果を眺めて告げる。
 その答えを確かめるべく、猟兵達は閉館時間後に再びギャラリーを訪れる事にした。

 そして――閉館時間後の苫都ミュージアム。
 幾つもある案内トマトの陰に落ちていた槍の中から、ナイツが姿を現した。
「よし。行くぞ」
『一応言っておくが、我を針金代わりに使うなよ』
「仕方ないだろ」
 抗議の声は無視して、ナイツはディロを使ってガチャガチャと鍵を開けて回る。何処に鍵がかけられそうか、昼間の内に観察しておいたので開けていく順番にも迷いがない。
「まだ来てな――こいつは……」
 順調に、ホールに飛び込んだナイツが、思わず言葉を失った。
 夕陽を浴びて紅に染まっていた黄昏トマトは、この夜の中で赤々としていた。
 もうとっくに日も沈んで月が上がっているのに、白かった筈なのに。
『随分美味そうになってるじゃねえか! 喰わせろ!』
「封印を解いてからな?」
 感化されつつあるのか、今にも齧り付きそうな竜槍を押さえながら、ナイツが封印を解けるか否か、一先ず試みようとした時だった。
 トマトの彫像が、ドクンと蠢いた。

 一方その頃。
 カチャカチャ――ガチャッ。
「これぞ奥義――ジャスティスミドウ・ヒラケゴマでございます!!!」
 茜が針金片手にイイ笑顔で、裏口の扉の鍵を何とか開けていた。
「本来ならば、勝手に鍵を開けるのは立派な犯罪ですが。正義のためのピッキングは正義でございます!! 問題ありませんとも!!!」
 誰かに突っ込まれる前に、このお姫様、力強く言い切ったよ。
 とは言え、道は開けた。
「正義を執行しに参りましょう!!!」
 茜の言葉に頷いて。
 猟兵達は、黄昏トマトの元へ駆け出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『正気を奪う赤い果実』

POW   :    硬化する赤い果実
全身を【硬質の物質】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    振動する赤い果実
【高速で振動することで衝撃波】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    空腹を満たす赤い果実
【空腹】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【無数のトマトの塊】から、高命中力の【トマト弾】を飛ばす。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠赤城・傀です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●トマト復活
「ば、馬鹿な……早すぎる!」
 夜の苫都ミュージアム。彫像の鳴動に気づいたのか、トマト色のスーツの男がそこに現れた。
「十万十時間ほど、黄昏の陽を浴びせれば復活と聞いていたが……まだ数時間残っていた筈。何故、こんなに早――」
 そして、その目がとろんと光を失い――。
「まあいいか。ケチャップ飲んで寝よう。せめて故郷の世界の夢を見よう」
 あっと言う間に正気を失い、ケチャラーになった。
 しかし、トマトスーツ男はケチャップを持っていなかった。
「しまった! ケチャップは部屋か……え?」
 ケチャップを飲みたいのに飲めない。そんな空腹感を覚えた男へ、真赤なトマト弾が容赦なく発射された。
「な……何故……」
 ガクリ、と倒れるトマトスーツ男。ひょっとしたらこれが苫都魔人だったのかもしれないが、それを確かめるよりも先に、猟兵達にはやるべきことがある。
 こんなトマトを止められる存在は、猟兵達しかいないのだから。
ナイツ・ディン
「トマト魔神、惜しいやつを…………いや惜しくもねーか。」
『そんなことよりアレを喰ってもーーッ!』
『ディロ』に飛んでくるトマトを盾(カード)で受ける。槍状態にしても飛んでくると面倒だな。さっさと満腹にさせるか。

とりあえず槍で貫けばディロも満足するだろうか。
衝撃波は物陰に潜んでやり過ごせるならよし、無理ならマントとかで頑張って凌いで見るか。小柄とはいえ、避けるのは厳しそうだしな。
フラッシュニードルの威力を上げるために、ダッシュしてから羽ばたいて、スピード付けて穿つぞ。
「ディロ、満足するまで喰らいな!」
『トマト、深紅になるまで喰らうてやろう!』
…………うちの紅竜、狂気落ちしてねぇだろうな?


ナハト・ダァト
使用技能
[世界知識][情報収集][だまし討ち][残像]
[早業][カウンター][かばう][オーラ防御][激痛耐性]

無差別攻撃、厄介ダ
タイミングは【三ノ叡智】で計り
その間【バウンドボディ】【一ノ叡智】で弾力性・俊敏性・状態異常力・防御力を上げておこウ

特にWIZだネ
空腹を与えるなラ、私ハ満腹を与えよウ
【六ノ叡智】の応用ダ
心理的なものなのデ、味方の依存心によって効果は変わるがネ

危険な味方は守っておくヨ
[呪詛耐性]もあるのデ、どうにかなるだろウ


…アー、ツッコミは苦手だけド
するに堪えない状況であれバやってしまうだろうネ

※アドリブ歓迎


御堂・茜
何故…刀を持つ手が震えます
気づいてしまいました、トマトの赤は正義のレッド!!
そう、この世界には正義の赤が足りないのです!!
正気ですか?狂気ですか?いいえ、正義ですッ!!

硬質化に対抗できるのは力!パワーです!
正気を失った御堂はUCで【超合体大将軍ジャスティスミドウカイザー】と化します!

無抵抗のトマトを持ち上げ
戦場が狭い場合は皆様の戦い易い場所へ
投げたり踏んだり等試してみます
最後は巨大化した馬ロボに【騎乗】し突進
【捨て身の一撃】にて防御を破る試みを

正気は失っても武士です
味方の盾となりトマトを浴びます
世界平和のためこの身を正義の赤で染めましょうッ!

…あら、御堂は何を?
今晩の夕食はトマトにしましょう!


黒木・摩那
★復活トマトを焼きトマトにする

彫像トマトが動くなんて、正気かどうか疑われるところね。

栄養十分で活動を開始したからには、
被害がこれからますます増えそうです。今の内に食い止めないと。
トマトしか食べられない世界とか御免だから!

UDCがトマトを模しているならば、土や水が得意そうですが、
反対に火には弱そうです。

UC「トリニティ・エンハンス」で【火の精】をルーンソードに宿して、
攻撃力UPを図ります。

ルーンソードで薄切りスライスからの焼きトマトを狙います
(破魔/属性攻撃/鎧無視攻撃)。

正直、焼きトマトは好きじゃないです。


亜儀流野・珠
会う奴皆してトマトトマト…
目に入る物もトマトトマト…
そして行き着いた先がこの元気なUDCトマトか!
食った訳でもないのにもう腹いっぱいだぞ!

まあとりあえず…「千珠魂」、俺たち召喚だ!
数を利用して囲む!そして一斉に薙刀、「狐の爪」で斬る!
もしトマト撃ち出しでもしてきたら…【見切】って薙刀で【串刺し】て…食ってみるか?
俺も俺たちも狐火使えるから焼きトマトもできるしな。
本体もトマトだし食べ放題だな!

…んん、俺正気失ってないよな?


霧島・ニュイ
苫都魔人…実在したんだねー…

【POW】
【真の姿】蝙蝠の大きな翼を生やした吸血鬼

攻撃は避けるよ頑張る!特にSPDの無差別攻撃
ある程度距離を取り、【スナイパー】で高命中を狙う
リサちゃん(人形)も攻撃するよ、一緒にね【2回攻撃】
一緒に【だまし討ち】【フェイント】
「お腹すいた!トマトトマトー!!」とか言いながらしっかり攻撃するよー

僕はトマトはまあ好きー。
(でも僕が正気を奪われるのは血なんだよね…
ダンピールの血は争えないって奴かなあ…誰か恵んでほしいな)

【血統覚醒】トマトが硬化した&攻撃がほぼ効かないときのみ使用

トマトじゃさあ、満足できないの。
血が欲しいの。トマトじゃ出るのはトマトジュースじゃんかー!!



●トマトVS猟兵
「苫都魔人……実在したんだねー……」
 赤々としたUDCトマトが佇むホールに飛び込んだ霧島・ニュイの背中には、巨大な蝙蝠の翼が広がっていた。ニュイの中に半分流れる吸血鬼の力を全開にした、真の姿。
「惜しいやつを…………いや惜しくもねーか」
『そんなことよりアレを喰ってもーーッ!』
 すっかりトマト食べたくなってる紅の竜槍を押さえつつ、ナイツ・ディンはトマト色に身を包んだ体に胸中で手を合わせる。
 その横を黒木・摩那が横切った。
「彫像だったトマトが動くなんて、正気かどうか疑われるところですが――薄切りにして焼きトマトにしてあげましょう」
 黒髪を揺らし、摩那が炎を纏わせた剣で先制の一撃を叩き込む。
 ザクリと焼き切られたUDCトマトは、その全身を小刻みに震わせだした。
 ヴヴヴゥゥゥゥンッ!
「IHVH ALHIM――ふム。無差別攻撃カ。厄介なのが来るヨ」
 三ノ叡智・理知(セフィラ・ビナー)――世界知識から計算した敵の攻撃までの時間を計り、ナハト・ダァトは警告を声に出して告げた。
『――!』
 グォンッ!
 UDCトマトの全身から、強力な衝撃波が放たれたのは、僅か数秒後。
 ピシッ――ピシッ――!
 ホールの半面を覆っていたガラスがその衝撃に耐え切れず、カシャンパリンと乾いた音を立ててあっさりと砕け散る中、ナハトは自身の体を伸ばして案内トマトや壁や天井に引っ付ける事でその衝撃を耐えていた。
「俺たち召喚だ!」
 亜儀流野・珠は召喚した小型の己の分身を盾にやり過ごす。目の前で分身体が消えていくが、持ち応える事は出来そうだ。
「このくらいなら、避けられるよー」
 可憐な少女羅刹の人形を抱え、ニュイはその翼で羽ばたいていた。舞う様に衝撃波を掻い潜るついでに、人形の腕がだまし討ちポカンッ。
「ちっ。避けきるのは厳しいな――いくぞ、ディロ。喰らってこい!」
 一方、ナイツは避けきるのは厳しいと判断した。故に、ガラスの破片を避けるのに使ったマントを払い、竜槍ディロを構え直して一気に羽ばたき、飛び出す。
『やっと喰えるーーッ!』
 ナイツが狂気落ちしてないか不安になる事を言いながら、しかしその素早い一突きはUDCトマトの衝撃を突き破った。
 衝撃で威力を殺されながらも、赤いボディの一部を喰い破る。
『――!? ……っ!』
 え!? あ、やばい、こいつら強いっ!
 どうもこのUDCトマトは声を出さないようだが、その時の心境を代弁するのならばこんなところだっただろうか。
 ともかく、衝撃波を破られたトマトの判断は素早かった。
 振動をやめたその全身が、見る見る内に硬質化していく。
「もっかい、千珠魂! 俺たち召喚――からの狐火!」
「硬くなる前に、焼きトマトにしてあげましょう」
 再び小型の自分の分身を召喚した珠が、分身と共に炎を放ち、摩那も再び炎の魔力をルーンソードに宿して切りつける。
 だが――僅かに早く、UDCトマトが硬質化を完了していた。炎が中まで届かない。
「何故……刀を持つ手が震えるのか。その姿を見て、漸く合点がいききました」
 構えた大太刀で衝撃波を凌ぎ斬った御堂・茜が、硬質化してメタリックになったトマトの真紅の煌きを見ながら口を開いていた。その瞳に怪しい輝きが灯る。
「ええ。御堂は気づいてしまいました! このトマトの赤い輝き――これは紛れもなく正義のレッド!! そう、この世界には正義の赤が足りないのです!!」
「待っテ、なに言い出してるんだイ?」
 思わずツッコんだナハトの声は届いていたのか。茜は一見普通に見える大太刀、ジャスティスミドウセイバーを鞘ごと掲げた。
「世界に足りない正義を、身を以って示していたのですね。ならば御堂が応えましょう。起動せよ、ジャスティスミドウカイザー!!」
 ガシャン、ガシャンとジャスティスミドウセイバーが分解され、変形していく。ついでに案内トマトの残骸なんかも取り込んで、合体完了した茜の姿は巨大ロボ『超合体大将軍ジャスティスミドウカイザー』へと変形した。
 うん、姫要素どこいった?
「硬質化に対抗できるのは力! パワーです! せいっ!」
 3mちょっとにまで巨大化した茜――もといジャスティスミドウカイザーは、硬質化中のUDCトマトをひょいと持ち上げて、お外にぶん投げた。
 自力で動かない敵だからって、動かせない訳ではない。
 そしてそこに、パカラパカラと近づいてくる蹄の音。
「これが、ジャスティスミドウカイザーの正義の拳です!」
 馬ロボ――サンセットジャスティスに騎乗した、防御を捨てた茜の一撃がUDCトマトを夜空高くまで吹っ飛ばした。
『!?!?』
「あはっ、おっもしろい」
 困惑するトマトを上空で待ち受けるのは、翼を広げたニュイだ。その瞳は既に真紅に輝いている。今この瞬間、ニュイはヴァンパイアだった。
「僕も少しはがんばらないとかな? 一緒にやるよ、リサちゃん」
 ニュイの力が傍らの椿の君にも流れ込む。1人と1体が同時に拳を握り――UDCトマトに振り下ろした箇所からメギョッと音がした。
 上空で一撃喰らったUDCトマトが、地面に叩きつけられる。
『~~ッ!!!』
 その衝撃で、硬質化を砕かれたトマトは再びその全身を震わせる。すると、ミュージアムの中からトマトの塊がふよふよ飛んできた。
 同じものがUDCトマトの中からも現れる。そして、一体を赤い光が包み込んだ。
 これこそ『空腹』の感情を敵に与えるトマトの光。
 だが――。
「空腹を与えるなラ、私ハ満腹を与えよウ――IHVH ALVH VDOTh」
 対してナハトが放つのは、六ノ叡智・美麗(セフィラ・ティファレト)の光。周りに与える希望は即ち、満腹だ。
「「今日はな、会う奴皆してトマトトマト……目に入る物もトマトトマト……そして行き着いた先が、お前だ! この元気なUDCトマト!」」
 その光を浴びて、珠と小型の珠たちが一斉に声を上げた。
「食った訳でもないのに、もう腹いっぱいだぞ! 纏めて串刺しにして、後で焼きトマトにでもしてやる!」
 珠が狐の爪のような鋭い薙刀を振るってトマトの塊を切り裂く。
 続く分身たちは、数を活かしトマト塊を取り囲んでいた。珠のそれよりも小さな狐の爪が幾つも閃くと、トマトの塊が滅多ぎりにされる。
 小さくとも百に近い数の斬撃、例えトマトでなくても避けきれる筈もない。
 別の所で、ヒュボッと炎が閃いた。
「やはり火には弱いみたいですね」
 トマトの塊を斬り捨てた摩那の指が、刀身を撫でるようになぞる。
「私、正直焼きトマトは好きじゃないです――だって辛くないから」
 火の精を剣に足しながら、摩那は一言、言葉でもトマトを斬り捨てた。
「せめてハバネロくらい辛かったら、考えるのですけれど」
『……』
 摩那の剣が火力を増していくよりも、その絶望的な辛党の一言にUDCトマトが無言で絶望に打ち震えていた。そんなことトマトに言われてもどーしろと。
「まあそう言う事で、トマトしか食べられない世界とか御免です!」
 摩那の放つ炎の斬撃が、トマト塊をスライス焼きトマトに変えていった。
「お腹すいた! トマトトマトー!! ――なーんてね」
 空を飛び回りながら、ニュイもトマトの塊を叩き落としていた。
「トマトはまあ好きだけどねぇ。僕、トマトじゃさあ、満足できないの。血が欲しいの。トマトじゃ出るのは、トマトジュースじゃんかー!!」
 吸血鬼化してる反動だろうか。
 ニュイはトマト塊を次々とトマトジュースに変えていく。
(「ダンピールの血は争えないって奴かなあ……誰か恵んで欲しいな」)
 ちょっと物騒な衝動は、ひとまず胸にしまっておいて。
 兎にも角にも、トマトの光は猟兵達には空腹の感情を与える事は、出来なかった。
 ――そう、猟兵達には。
 ナイツの周りに、トマト塊が集まっていく。
『もっとだ! 我にもっとアレを喰わせろーーッ!』
「うちの紅竜、やっぱり狂気落ちしてねぇか!?」
 狙われたのはナイツではない。ディロの方だった。
「いヤ、すまなイ。竜槍までハ効かなかったみたいだネ」
 ナハトがちょっとバツが悪そうに告げる。
 そして放たれるトマト弾。そこに割り込む正義の機体。
「正気? 狂気? 空腹? いいえ、御堂は正義ですッ!! 平和のため、この身を正義の赤で染めましょうッ!」
 合体してなかったらお目目ぐるぐるになってそうな茜は、しかし武士と正義の魂を失わなう事無く、その身を仲間の盾とする。
「コイツで終わりだ! トマト食べ放題だな!」
 そして残るトマト塊が、珠の狐の爪に切り裂かれた。
「……ん? 俺、正気失ってないよな?」
「正気ヲ疑う事ガ正気の証じゃないかナ」
 首を傾げる珠に言いながら、ナハトはティファレトの光を強める。
「今度こそ見せてやる――見ることすらできん一撃だ」
 その光を浴びながら、ナイツは駆け出した。地を蹴ると同時に翅を羽ばたかせ、トマト色に染まった機体の頭上まで舞い上がる。
 背の翅を羽ばたかせたまま反転すると、ナイツは紅の槍を構えて落下した。
「ディロ、今度こそ満足するまで喰らいな!」
『おお! トマト、深紅になるまで喰らうてやろう!』
 もう遮る衝撃波はなく、先以上の加速に落下の勢いを加えたフラッシュニードル。正に閃光の一刺しは、UDCトマトの中心を穿ち抜き――。
 力尽きたUDCトマトは、ぱんっと破裂した。
「……あら、御堂は何を?」
 一帯がトマト塗れになった只中で、茜が我に返った顔をしていたそうな。

 少しだけ、後の話をしておこう。
 UDCトマトの残骸は、程なく消滅していった。
 掃除とか諸々は、UDC組織の皆さんが頑張ってくれた。
 トマト以外は全てただの彫像だと判明したが、崩壊したミュージアムは謎のガス爆発による急な閉館と言う事で片付けたらしい。
 そしてトマトにやられたトマトスーツの人物だが――苫都・魔人であると言う確たる証拠は、結局見つからなかったそうである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月26日


挿絵イラスト