帝竜戦役⑥〜アストラム・アサシネイト
●司令官アストラム
群竜大陸の東南は、生死分かつ激闘の戦場。
腐汁と共に地上に降り注ぐ蘇生モンスター群。タイプも大きさも様々なモンスター達は、よく視ると一定数ごとに軍団を成してある程度統率が取れた動きを見せている。力ある一頭は、遠目にも明らか。
戦場上空では太陽の周りに虹色の光の輪が輝いている。
司令官である一頭は、アストラムという名を持つ。されど、今はその名を呼ばれることもない。
「司令官さま」
竜が一頭どすどすと大地を揺らしながら進み出て、報告をしてくる。配下竜は、アストラムの名も知らないのかもしれなかった。湧いてきたばかりの蘇りし過去達である。仲間の傷も背景もそれほど把握はしていない――ゆるりと頷き促せば竜語にて戦況を語り、胸を反らす。『サバイバル戦』は竜軍団が未だ優勢にて案ずるに及ばず、というのである。
アストラムは、願いを叶える流れ星を操るドラゴン。かつては人々の願いを叶える吉兆の存在と呼ばれたものだ。だが、冒険者はやってきて刃を向け、アストラムの鱗や爪、血液や肉――ついには生命をも――奪ったのだった。
腐臭満ちる戦図にアストラムは目蓋を降ろす。ひどく、眠かった。
吉兆と呼んだ己を狩り、厄災の予兆として蘇った己に狩られる……そんな冒険者の夢を観ようか。それともそれとも、アストラムをかつて吉兆と呼び、願いを語り目を輝かせた人間の子供たちの夢にしようか。
微睡みながら、竜は緩く笑むのであった。
●希うより先に
「皆様のご活躍により、戦場が拓けましたね」
流石でございますな、と頭を下げるのはルベル・ノウフィル(星守の杖・f05873)。少年は時を惜しむように本題に入る。
「暗殺依頼。転移先は地獄の古戦場。ターゲットは『願いを叶える流れ星を操るドラゴン』、司令官アストラム」
「先手が取れるかどうかは皆様次第。場所は戦場です。周囲は司令官を守る配下が固まっております。乱戦を潜り抜け、司令官に素早く接近する事が肝要となりましょう」
司令官アストラムの情報が共有される。ユーベルコードは三種。猟兵がPOWのユーベルコードを使用すれば敵もPOWのユーベルコードで対抗してくる。SPDであればSPD、WIZであればWIZ。
『ヴォーテクス・サテライト』は、軍団の数を味方につけられる状況だけに、使われれば厄介かもしれない。
『星辰集中』は、配下に守らせて妨げられることなく集中を完了すれば、強烈な一撃を放ってくると思われる。
『ダスク・ティアーズ』は、アストラムの夢が展開される。夢の内容は果たしてどのようなものだろうか。
戦術を練る猟兵に頼もしそうな視線を向けて、ルベルは転移の準備を進めていた。
「そういえば、かの戦場にも財宝がございます。地獄の古戦場の腐汁の中でのみ育つ『蓬莱の実』。人間の頭部ほどもある、脈打つブドウのような果実です。食べた箇所が再生するという驚異的な特性から、1個金貨650枚(650万円)の価値があるのだとか」
現地で見付けた財宝の扱いはご自由に――そう告げる背で、グリモアが転移の輝きを放った。
「どうぞ、お気をつけて」
転移直後の鼻腔を満たすのは腐臭、血臭、獣臭。何かが焦げる匂い。
聴覚を塗り潰すのは、戦いの音。
硬く冷たい金属同士が凌ぎを削る音を運ぶ、澱んだ風。
青空に君臨する太陽は儚く幻想的な虹の暈を佩きながら、戦場に閃く鋼線や魔力光を明るく照らしている。
remo
おはようございます。remoです。
初めましての方も、そうでない方もどうぞよろしくお願いいたします。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「帝竜戦役」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。時間帯は昼。「戦争サバイバル」の舞台での司令官暗殺作戦です。
●プレイングボーナス
このシナリオフレームには、下記の特別な「プレイングボーナス」があります。これに基づく行動をすると有利になります。
プレイングボーナス……乱戦を潜り抜け、司令官に素早く接近する。
※この戦場で手に入れられる財宝
宝物「蓬莱の実」……地獄の古戦場の腐汁の中でのみ育つ、人間の頭部ほどもある、脈打つブドウのような果実です。食べた箇所が再生するという驚異的な特性から、1個金貨650枚(650万円)の価値があります。
⑥のシナリオは完結した数ごとに🏅5000が加算されます。今回は受付期間短く採用人数少なめで、完結数を足して🏅を加算することを目的として運営・執筆させて頂きます。シナリオへの参加人数が5人以上になっていたら、このシナリオではなく、人数が足りていない別の⑥シナリオに回って頂くのも、お勧めです。
それでは、よろしくお願いいたします。
第1章 ボス戦
『アストラム』
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POW : ヴォーテクス・サテライト
【オブリビオンの願いを叶えたい】という願いを【自身を利用するオブリビオン】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
SPD : 星辰集中
【睡眠】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。
WIZ : ダスク・ティアーズ
【流れ星の群れ】を降らせる事で、戦場全体が【夢か悪夢】と同じ環境に変化する。[夢か悪夢]に適応した者の行動成功率が上昇する。
イラスト:音七香
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ピウ・アーヌストイト」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
叢雲・黄泉
「オブリビオン司令官の暗殺……
ヴァンパイアハンターの私に適任ですね……」
敵の数が多い以上、出し惜しみはしません。
【血統覚醒】でヴァンパイア因子を活性化させ極限までヴァンパイア化します。吸血鬼化した両腕を振るい、オブリビオンたちを引き裂いて、敵陣に穴を開けましょう。
さらに【妖剣解放】で召喚した妖刀の怨念を身にまとい、斬撃による衝撃波を放ちながら、高速移動でオブリビオンの守りを突破します。
司令官の元にたどり着いたら【ブラッド・ガイスト】で生成した血の剣で斬りつけます。
「ゆっくりと寝ている時間など与えません……」
願いを叶える流れ星ですか。
そのような力になど頼る気はありません。
目的は自分で果たします。
●『黄泉』
漆黒が駆けていく。14歳の少女である。
「オブリビオン司令官の暗殺……」
少女は、叢雲・黄泉(ヴァンパイアハンター・f27086)。右手に携えるのは妖かしの気を佩く刀だ。
「ヴァンパイアハンターの私に適任ですね……」
靡く漆黒は、艶のある長い髪。
(敵の数が多い以上、出し惜しみはしません)
黄泉が薄い花弁めいたくちびるの隙間から熱を伴う吐息を零す。
「……っ、ふ」
眉根が微かに寄るのは、ヴァンパイア因子を活性化させているから。神経が沸騰するような違和感に耐え、奥歯をぐっと噛む。ヴァンパイアハンターである黄泉は、半吸血鬼の身でもある。元からではない――自分を半吸血鬼にした邪神を思い出して双眸に闘志が満ちる。
極限までヴァンパイア化した腕がしなやかに伸びる。
仲間を待つ必要は、ない。
赤い瞳は敵だけを視ていた。
前方から押し寄せるのは少女の何倍もあろうかという巨体モンスターの群れ。肉厚の身体で地響き立て、圧し潰してやろうと丸太のような腕が正面上部から降ってくる。響く轟音、重い一撃。衝撃は大地を破壊し、地面の腐汁と土くれをどしゃりと巻き上げて――、
「う゛?」
モンスターがきょとんとする。手応えは皆無。土煙が晴れた時、少女は視界の何処にもいなかった。不思議に瞬きをひとつした頃、周囲に断末魔の合唱が満ちる。腕を振り下ろした巨体モンスターは驚き、そして自らも地に伏した。いつ斬られたのか、深い傷口から真っ赤な血飛沫をシャワーのようにぶちまけながら。
「ブラッド・ガイスト」
呟く声は年相応の可憐さ。だが短く淡々としていた。敵陣に穴を開け進む黄泉は血をさらに暴れさせて刀を一層禍々しく変容させる。赤黒い血のような刀。握る手が肘のあたりまで同色の異形籠手で覆われて、黒が赤に変わっていくよう。人が化け物に染まるよう――瞳には気高い意志が煌めいて。
司令官が視える。微睡む巨体を守ろうと配下が集まって敵意と殺意だけで息が詰まりそうだ。
「ゆっくりと寝ている時間など与えません……」
囁く声は熱を捨てるように。
駆ける。
殺意と腐臭が絶えず全身を浸すようだった。明るい視界を埋めるように鋭いなにかが突っ込んでくる。牙か、爪か、武器か。見定める暇もなければ意味もなかった。黄泉はただ、右手を振り上げた。
がつりと大きな衝撃と音が響く。
一瞬。息を詰めて顔を歪ませ、「くぅ」と漏れた声は小さな獣めいて、止まってはいけないと思った。ぐっと力を振り絞るように大地を踏みしめてバネになったように上に跳ぶ。足の下を幾つかの凶刃凶爪が通り過ぎていく。敵がいっぱいだ――跳んだ勢いに流れるように腕があがり、宙で刀の柄を確りと両手持ちにする。風が全身の動きを助けているようで、耳元で鳴るのが心地よい――振り下ろす刃は赤い流星に似た。
想う。
この赤き刃が流星ならば。
刃が黄金の煙を裂き、その奥の分厚い肉に命中する。竜種ならではの手応え――鱗が刃と火花と散らして堅い音を立て、けれど体重と勢いを乗せて強引に持っていく――押切る感触、肉を蹂躙する刃。溢れる液体は生臭く脂でべとりぬらりと刃が濡れる。
すたりと着地した時、片膝が地について両腕は胸のあたりで止まっていた。素早く引き抜けば敵の出血が勢いを増す。
周囲は包囲されつつある。だが、味方もまた駆けつけるようだった。猟兵達の白昼堂々たる暗殺劇が幕を開けたのである。
「願いを叶える流れ星――、
そのような力になど頼る気はありません。
目的は自分で果たします」
油断なく刀を構えて取り巻く配下と敵を牽制する声は矢張り可憐な少女の響き。膝上丈のスカートがひらりと揺れる――陽光の下。
濁った血液がしとどに地を濡らす。
誰よりも疾く一刀届けしは、14歳の少女であった。
大成功
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ギージスレーヴ・メーベルナッハ
血と屍の臭い、金属の打音。余のよく知る戦場とは少々趣異なるが…
満ち満ちる殺気と死の気配は、この世界でも変わらぬな。
…ハハハ!まこと愉快な有様よ!
さて早速参ろうか。
ヤークト・ドラッヘに【騎乗】し出撃。
機甲武装・高速殲闘を発動、【戦闘知識】をもとに敵の布陣から敵将の所在位置を推測し疾走。
行く手を阻む敵は【空中浮遊】で飛び越えるか、或いは機銃の【制圧射撃】で足止め。乃至は電磁砲の【砲撃】で吹き飛ばすか、ミサイル(【誘導弾】)で追い散らして道を切り開く。
敵将確認次第、先述の火器を駆使し攻撃を加える。寝ておったろうから暫く攻撃はうまく当たらぬだろうが、弾幕切らさぬよう地道に攻撃を続ける。
●ミサイルとは愛であれかし
「血と屍の臭い、金属の打音。余のよく知る戦場とは少々趣異なるが……満ち満ちる殺気と死の気配は、この世界でも変わらぬな」
ギージスレーヴ・メーベルナッハ(AlleineBataillon・f21866)は戦場を俯瞰し肩を聳やかす。哄笑は忍ばぬ刃に似た。
「……ハハハ! まこと愉快な有様よ!」
迫る敵軍は鳴動する山の如し。ギージスレーヴは傍目には余りに細く小柄で――胸元はコケティッシュに金釦を盛り上げて豊かさを誇っているけれど――、幼いかんばせ彩るは不遜なる笑みの華。眼帯の内側に篭るは自負。義眼は虫ケラを見やるが如く軍勢を見つめていた。
さてこの時、竜の軍勢は魚鱗の陣より鶴翼に移ろう途中に視えた。
「さて早速参ろうか」
ギージスレーヴは長い髪を靡かせてバイクに騎乗し、出撃する。敵将の所在位置は知れたもの。長い髪は背で月涙に濡れるように艶波立ち流れる。日の目が照らす道に銃声鳴れば世界が鉛と硝煙で塗りつぶされるよう。重機甲戦闘車「ヤークト・ドラッヘ」は気付けば幾多の砲門を剥いていた。電磁砲が進路を穿ち、速射の反動すら推進力機動力に変換して吐くは無骨な見た目のミサイル――引き金は無慈悲に引くものだ。排出される弾には愛がある。狙い定めし熱源へと特殊燃料が尽きるまで追尾するのだ、特殊燃料とは弾頭に組み込んだ超微細システムが重力を変換して得るエネルギーであるからして、愛籠めし弾とはすなわち疲れを知らぬヤンデレストーカーのようであった。噴煙を撒き尻を振る乙女ミサイルはぶっとい頭を竜の首にねじ込ませて可憐に過激に爆発した。嗚――熱烈な愛が受け入れられたのだ。高速殲闘形態は伊達じゃない。愛機はその間もサービス過剰なほどに弾を放っていた。爆ぜる風も後に遠く、大粒小粒、漏れなく死を齎す焔の烟雨をプレゼントしながらギージスレーヴは進軍する。群れぬ猟兵団は自由なる風を味方につけて、奔放に至るところで悲鳴を産んでいるようだった。臭い戦場だが、伸びやかな蒼穹だ。誰も縛られず、縛らぬ。只各々が死を振り撒き、暴れている。
火砲煌めく麗しの戦場をヤークト・ドラッヘが奔る――加速、累加速、重加速、超加速。惑星上の物質には中心部核に向けての重力が加わる。反重力式推進機構を備えるバイクはスプロケットが超回転しメーターに恐るべき速度を刻んでいた。黄昏大隊の意匠を誇り、戦旗が靡く。
到達せし本陣は足並み乱れていた。練度が低い――、ギージスレーヴは一瞬で敵将に肉薄する。
伴う白銀は清冽にして、凄烈なるは敵将の眠り妨げし目覚めの銃撃。成程、仲間が先に一刀を入れていた――道理。
ギージスレーヴの瞳が傲岸に笑む。後輪が直進から旋回へ軌跡を変えれば前輪も後輪の軌跡に添うように角度を付けた。
「寝ておったろう」
鈍い動きを嘲笑い嬲るように竜の肉に乗り上げたギージスレーヴは滑らかに車輪を滑らせてプライドごと踏み躙るようにヘッドライトを点灯した。脇から銃身が突き出せば、銃声がまた響く。
「ん」
ふと影が差す。斑に地を染めるよう、幾つも。
司令官は苦悶の聲を零して身を捩り、羽搏いた。黄金の煙が周囲に満ちる。蒼穹からぼたりぼたりと生暖かい臭気と液体が降り、ギージスレーヴは眉間を歪めた。
「雑魚は無限湧きであるか」
高速機動で回避すれば、降ってきたのは新たに染み出したモンスターだった。軍団を形成する雑魚敵が補充されるように増えて、練度は低いながらも陣形らしきものが整えられていく。
切り込み拓いた道が閉じて逃げ場が塞がれる。ギージスレーヴはハンドルを握る手に力を籠め、近く共に敵の群れが囲む中に閉じ込められた少女猟兵の手を引き乗せてやるとヤークト・ドラッヘを浮上させた。
敵もまた、蒼穹に逃れていく。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
この古戦場を突破されれば帝竜を打ち倒そうと戦役勝利は叶いません
戦局を有利に傾けなければ…
手段は選びません
装着したUCで戦場を飛行
センサーでの●情報収集で航空戦力や対空攻撃を●見切り、慣性制御を活かした急停止、鋭い方向転換を駆使し戦場を潜り抜けます
将とお見受けしました
A&Wで『今』を生きる人々の為、討ち取らせて頂きます
槍型対艦ビーム砲を●ハッキングし●限界突破
光剣状となったビーム連続掃射による●なぎ払いで周囲のオブリビオン一掃
その願い、叶えさせるわけには…!
呼び掛け妨害の為●怪力で槍型対艦ビーム砲を●投擲し喉を●串刺し
…あの竜は何を願って…
いえ、それを阻んだ私に知る権利はないかもしれません
●百天鳴矢の槍放て
時は少し遡る。
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は戦場の隅にて日差しに装甲を晒して陣容を望んでいた。
「この古戦場を突破されれば帝竜を打ち倒そうと戦役勝利は叶いません。戦局を有利に傾けなければ……」
ウォーマシンのトリテレイアは、元々銀河帝国の式典・要人警護機体である。堂々たる佇まいは騎士然としている。否――彼は騎士なのだ。左手に盾、右手に剣を携えて垂直に浮いた体が一秒に満たぬ溜めの後、斜に飛翔する。高技術が実現せしめた高機動飛翔騎士。センサーが検知するは敵性反応――想定通り。敵頤がくわり開く。騎士物語を愛するが故、接敵前から予想していたブレスの予感が背筋を奔り、演算分析を越えて体が動く。炎が渦巻き奔るは直線也。即座に慣性制御にて急停止した騎士は鋭い方向転換にて不規則な軌道を描く。右方にカクリと折れれば熱気撒く焔撃が左肩装甲を掠む。上から圧殺せんと竜の尾が襲来。完全に読み切り、加速。自在に駆ける蒼穹の下では銃声轟き味方猟兵と思われる生体反応を確認。鋭敏に捉えた声――「はーじまーるよー」地上戦支援は不要と判じたトリテレイアは将を視る。翼で風を生み出すような竜が群れ。
焔吐く蒼穹に雨が降る。染み出たモンスターの雨だ。
司令官が天翔し、太陽を背に巨体を反る。
――咆哮。
竜語は判ぜぬがこの時軍勢は立て直される様だった。敵陣が補充モンスターを迎えて一度閉じてから東西に分かれていく。
騎士トリテレイアが懸念するは『ヴォーテクス・サテライト』の発動であった。
「将とお見受けしました……!」
間合いを満たさんと疾風の如く直進し、声量最大にて聲放つ――妨害の意図含む戦術面と騎士の礼に添わんとする浪漫入り混じる朗々とした口上。
「我が名はトリテレイア・ゼロナイン。世界を巡り過去を破りて人々に安寧齎す騎士たらん」
槍型対艦ビーム砲を正眼に構えれば籠手の表層に亀裂が生まれて何かが飛び出した。白い手袋だ。敵は、「そんなもの」といった顔で手袋を見つめた。勿論、ただの手袋ではない――、ぺしりと敵に命中した手袋は刹那小爆発をした。威力は軽微、騎士としての演出である。
爆風晴れし空を敵将が牙を剥き猛進する。
「問わず! 問わず! 『今』を生きる人々の為、討ち取らせて頂きます」
対するトリテレイアは狙い通りと距離を詰め、間合いにて槍よりビームを発する。常より出力を上げた光剣状ビームは取り巻き竜を薙ぎ払い。小型スラスタが吹き、降る新手を掻い潜り。高度からのブレスを読み重力任せに落ちる。頭上をブレスが征く。
「丁度好ましいところに」
下方に居た竜の背を足場に着地し屈伸するように膝を折れば重量でぐんと高度が落ちる。バネのようにジャンプしてから再び飛翔すれば怒りが周囲に満ち満ちた。敵は寄せ集めながら、竜種同士仲間意識めいたものが在るのかも――トリテレイアは推察する。
敵将が眼を釣り上げて口を開ける。よくも配下を、と言葉ならぬ意志が感じられるよう。休息に高まる魔力にトリテレイアの脳が警鐘を鳴らす――発動されてしまう!
「その願い、叶えさせるわけには……!」
焦燥が胸から競り上がる。咄嗟に投擲したのは、槍型対艦ビーム砲だった。怪力により稲妻の如く空を割り飛んだ凶槍が一瞬で敵将の喉に突き刺さる。収束しつつあった魔力が霧散。周囲の配下が悲痛な聲を漏らす――案じている?
敵将は喉を串刺しにされて苦悶の貌でのたうちながら落ち。将を救わんと周囲の竜が追い、共に地上へと降りてゆく。
「……あの竜は何を願って……」
呟きは理の外で揺れる。彼は精緻にて強靭、堅牢なりて論理的演算に長けた機械騎士にして新緑の如くこころ揺らめく一人の青年でもあった。
「いえ、」
静動空白は其れでも秒に足らず、騎士は首を横に振り降下する。仕草は何処か不器用なあたたかみを感じさせ、聲は自らの前に線を引いて向こう側を切々と見やるよう。
「それを阻んだ私に知る権利はないかもしれません」
大成功
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プリンセラ・プリンセス
連携、アドリブ可
人格をジョゼットに変更。
乱戦を抜けることこそ騎馬隊の真髄。
ネクロ・インペリアルで騎兵を召喚。乱戦を【蹂躙】し【吹き飛ばし】て、機動力で抜ける。
抜ければそのまま本陣へと【騎乗】したまま【ランスチャージ】による騎兵突撃をかける。
「夢か。夢というなら今の私の存在こそ夢のようなもの。胡蝶の夢というのだったか」
果たして自分はプリンセラの生み出した人格なのか、それとも死人となって霊となって憑いたのか本人にもわからない。
それは夢のようなもの。終わったはずの人生の続き。
ならば現世が夢か現かなど関係ない。
考えるのは自分には向いていない。騎兵は前へ進むのみ!
●蒼天に馳駆の旗を立て
「敵は中央突破を狙い疾き突撃竜を戦闘に鏃陣を形成」
侯騎の知らせ受け、戦槍高らかに掲げて馬上の姫が三歩様からの号令放つ。脚で意志送るは嘗て熊癖持ちを宥めし愛馬であった。脚に不安と云わるるを笑い鼻っ面に頬寄せて髪食む吐息を愛らしく思ふたもの。
戦姫ランスを陽光に突き上げ聲放つ。
「敵もまた亡霊!」
張りのある若い女の聲。率いるは六百六十もの近衛騎兵、何れも忠義厚き霊である。
「死して尚の忠義、必ず報いましょう」
「ジョゼット様に勝利を!」
駆けるか。
駆けよ。
襲歩より躍動弥増して人馬一体、風を切る。ど、ど、どう。びゅ、びゅう。聴覚満ちれば士気上がる。馬上に大地と風を感ずれば力湧く。其れが騎兵という生き物であった。
腐汁溢るる大地を愛馬を脚で奔らせプリンセラ・プリンセス(Fly Baby Fly・f01272)の五番目の人格ジョゼットは太陽を背負う。より熱きは霊達の眼差。躍動する騎馬波は現実世界で腐汁溜まりに飛沫をあげ、土煙をあげ。鬣が恵の稲穂めいている。戞々堂々たる道道。舌鼓一つ、ランス構え馬ごと体当たりするように敵最前列に突っ込めば、敵も散り味方も散る。騎馬の恐ろしさは脚任せの集団突撃、人の歩兵ならば圧のみで震え逃げ惑うほど。されど竜は分厚い壁に似て馬を待り、並みの馬なら進むまい――鎧兜の内で眉間を厳しく眼光鋭くしてジョゼット――プリンセラは愛馬に呟く。
「蹴散らせ」
戦い終わりし折には緑撫に遊ばせてやろう、そう思っていた。腹をへこませ頭をおかしな角度に曲げながら蹴り飛ばされた竜が小気味好い。
「人馬投槍、我らこそ竜喰いの矛である」
驀進する戦姫の軍団は敵味方の悲鳴の連続を抜けて征く。体は焦熱に突き動かされ、高揚が脳に突き抜ける。敵の骨肉がまた堅いのだ。痺れる持ち手を無我夢中で維持する姫を近衛が守り壁となり竜に喰われ、数を減らしながら味方は進む。竜の厚き陣に細く食い込む針の陣となりながら帝国の姫は愛馬を前へ前へと奔らせ続けた。
遮二無二揮うランスで切り裂かれた竜の喉笛から、ブレスが噴出し爆発する。衝撃。横倒しになる馬とプリンセラ。
「――姫!」
盾となるは嘗てジョゼットの腕に息を引き取りし騎士。幾度でも守り死にましょう、と笑うを背に――、
「すすめ」
幼子のような聲が出て歯を食いしばり、腹に力を入れる。
「 進 め い ! 」
愛馬は爆風に晒されて尚奔る意志を見せ、起き上がる。
ああ、もう普通の馬ではないのだもの。そうだな――周りを視れば熱き魂達が煌々と瞳を燃やして敵を蹴散らし、なんて勇ましくなんて愛しいことだろう。
周囲に観るは竜の夢。
「夢か。夢というなら今の私の存在こそ夢のようなもの。胡蝶の夢というのだったか」
――乱戦を抜けることこそ騎馬隊の真髄。
騎兵が土煙を濛々と上げ駆けて遂に其の槍は敵将に届く。
敵将との邂逅は荒々しく、誇り高き騎兵突撃は竜をも吹き飛ばす。鼓動が耳を騒がせて、汗が頬に髪を貼りつかせている。騎兵とは止まらぬものである。東西に裂いた陣を突き抜け駆け抜け、攪乱するように角度を変えてまた穿つべく馬頭を巡らせれば、練度高く士気高き近衛がぴたり付き従い帝国への忠義を唱える声が波涛となり竜の巨体を圧倒するよう。
(果たして自分はプリンセラの生み出した人格なのか、それとも死人となって霊となって憑いたのか)
それは夢のようなもの。
終わったはずの人生の続き。
――ならば現世が夢か現かなど関係ない。
(考えるのは自分には向いていない)
ジョゼットは強い眼差しで前を視る。愛馬が嘶く。止まる事を忘れたように昂る汝を如何せん? 口の端が吊り上がる。
「ああ」
止まらなければよい。
「騎兵は前へ進むのみ!」
熱を吐くように吠えれば猪突猛進な突撃は戦地を揺らがして、本陣に黄金の煙旗上がる。
引き倒して我らの旗を掲げよう、と哂う近衛の声。彼の説教は耳に痛く、死に際は見事であった――記憶は鮮明に過去と今を結ぶのだ。
大成功
🔵🔵🔵
コノハ・ライゼ
要は届けばイイのよネ
素早く*情報収集
軍団の挙動*見切り司令まで最も効率よく届く道筋導き出し
進路上の敵へ向け【彩雨】降らせる
細く長く形成した針へは*マヒ攻撃と*呪詛を乗せ
深々と地に縫い付けるヨ
全部終わらせてあげるから、ゆっくりオヤスミ
戦場が夢に包まれるならお付き合いしましょ
悪夢ならより苛む敵として
輝く夢なら彩りを添え
ケドね……嘗てナンであったにしろ今は今、ヨ
針が足らねば*2回攻撃で更に
他の誰かを届かせる道であればイイわ
隙見て彼方から針のひとつでも飛ばして
誰かの刻んだ*傷口を抉って*生命力吸収すれば
ちょいと怪我したってへーきだし
さっさと終えて
アンタ達には醒めない眠りを
アタシには魅惑の果実を、ってネ
●雨
視線の先、味方騎士が高速で飛翔し、視えなくなる。
――要は届けばイイのよネ。
後世の歴史家によると、この時、コノハ・ライゼ(空々・f03130)には敵陣が中央部を突き出す形で前進するのが視えていたという。
ちょいと怪我したってへーきだし。
ふわふわとした綿菓子になったみたいに歩き出す青年の目は清冽で凄烈なアイス・ブルー。
コノハは軍勢に片手で目の上に傘を作り、絲めいた水晶を生む。先が鋭く尖る水晶は、奔れば敵の鱗穿ち肉に食い込んで――針であったと理解する頃には勢いや増して豪雨のよう。生臭な微風に揺れるは染め色の髪。ひんやりと涼気撒く水晶の針は、地面に並行な直線を奔らせて美しく空間を斬る。雨天にぶらり散歩するような足取りのコノハはとっておきの秘密を打ち明けるように思い馳せに囁く――あやあめ。ソウ名付けたノ――雨に游ぐ青年に向け雪崩の如く突進する地上の竜達は、しかしコノハの歩みを妨げる事なく悉く地に斃れた。伏した竜眼を覗き込めば敵意は漲り憤然としていたけれど、コノハは口元に笑み浮かべゆるりと竜の道を往く。アノネ、と言の葉を置いて。詩人が視れば薄寂朝露を詠みたくなったことだろう、整った鼻梁は美しく頬は滑らか、繊細に目元にかかる髪の下睫震える眼は冷然とした次の瞬間には幼子のように揺らぎを見せて唇から真っ赤な舌覗く。
秘密でも、なんでもナイカラ。
真なる心はわからねど、針は気まぐれに軌道を変えて上と下に曲がり敵群を閉じ込める籠を編む。針には禍々しい呪詛と甘露毒が乗せられて、穿たれ深々と地に縫い付けられし竜は神経を麻痺毒に冒されて「標本みたいネ」と哂われた。
華やぐ気配。
眦に赫を帯び婀娜たる青年は告げるのだ。
「全部終わらせてあげるから、ゆっくりオヤスミ」
青年の聲のなんと優しき響きだろう。揺籃の内、氷の刃を首筋に押し付けられたかのよう。歯車が狂っている事に気付いた竜は恐れを抱く。見るものを誘惑するような色香と共に縫い留められた竜を襲うは己が採集されし虫になり果てた感覚。膚を粟立たせる得体の知れぬstrangeness。
天から染み降る腐汁腐体に静寂を振り撒き、隙間を縫うように進む中、煌めく雨に夢映る。戦場に朧に撼ぐ光景に青年の笑みが消ゆる。奇麗、と呟く唇は笑まず。悪夢と輝きの狭間に目を伏せ、零れる音は奇麗に舌の上で転がして。
「ケドね……嘗てナンであったにしろ今は今、ヨ」
――他の誰かを届かせる道であればイイわ。
変わる陣形、天翔ける敵が遠くなる。夢を映す雨を地表から昇らせれば、気付いてくれる? 思い出してくれる? 哀しい記憶と愛らしい子どもを虹色に混ぜて彩雨が敵を追う――司令官がちいさく啼くのが判る。当たった、と思った。目が地上を視た――目が合って、コノハはふわりと笑む。また届けるワネ、そう呟けば愉しさが足元から少しずつ、湧いて感情の花を綻ばせるみたい。
影が差す。
「あ……」
ぽっかりと口を開けて子供のように声が零れる。空からお代わりめいて新兵が降り、真上から降りた勢いのまま前脚の爪を豪と唸らせていた。不思議な衝動に弾むようなステップを踏んでばしゃりと腐汁の水溜まりを跳ねて。
「煌めくアメを、ドウゾ」
――来てくれたから、おもてなし。
冷えた水晶針を差し出せば、シャワーに竜躰が穿たれて横向きに倒れる。丁寧に縫い留めて、子猫のように着地をする。ホントの足元はぐしゃぐしゃの腐汁に溢れているのだ。まるで泥遊び――生命力は喰い放題の戦場は負傷を怖れず戦える、と頬を拭う眼には先刻までとはまた違う色が覗いていた。
「さっさと終えて
アンタ達には醒めない眠りを
アタシには魅惑の果実を、ってネ」
――戦場は餌場で狩場なのだとその眼は語りき。
大成功
🔵🔵🔵
ナァト・イガル
【連携・アドリブ歓迎】
雑魚は無視。となると、飛んでいくのが一番でしょうね。
【破魔】の【祈り】を捧げUCを起動
……神降ろし、の一種かしら。誰かに暖かく包まれるようなこの感覚はまだ慣れないけれど──悪くないわ
巨大化した白鴉の巴さんの背を借りて、一気に飛翔。
【第六感・情報収集・偵察・見切り・盾受け・騎乗】を駆使し、アストラムまで駆け抜けるわ
迎撃システム<ステラ>(浮遊する星型正多面体からのビーム)と、魔法(光の矢)で
流れ星の群れもなるべく破壊して、できるだけ戦場の環境を食い止めつつ
隙を見て【多重詠唱】を束ねた一点突破で竜を狙うわ
ごめんなさいね、星の竜。
可能ならば、お伽話のように出会いたかったわ。
メンカル・プルモーサ
…さて、やることは単純……誰にも気付かれず……仕留めれば良い…
幸い乱戦状態…であるならば、こちらに注目する人間も少ない…
…飛行術式箒【リンドブルム】に乗って機動力を確保…
…まずは乱戦を観察して情報収集アストラムまでの最短経路道を確認…
…心理隠密術式【シュレディンガー】を起動して身を隠し…
【竜屠る英雄の詩】にて武器に竜殺しの概念を宿していざ突撃…
アストラムの展開する夢…つまり『竜』の悪夢そのものを黎明剣【アウローラ】で斬って殺し…
…そのままアストラムへと接近…術式銃【アヌエヌエ】による銃弾の連射を浴びせるとするよ
…悪いけどまどろんでいるのであれば…そのまま眠って貰うよ…
シズホ・トヒソズマ
UCでクノイチ姿に変身
◆目立たないよう◆忍び足で◆迷彩した全身や人形で乱戦の隙間を潜り抜けます
クロスリベルの効果で移動力を上げ
流れ弾や気づいた敵の攻撃は六六六の71体の殺人亡霊による策敵と自動迎撃で防ぎ司令官へ向かいます
近くまで来たら別UC『幻影装身』でダークポイントの力を使用
六六六の銃口を配下の間を抜い司令官に向け
自殺衝動を呼び起こしダメージを与えます
貴方の悲劇を思い起こさせてごめんなさい
でも貴方を殺したような方ばかりの世界ではないんです
その為なら私は…どんな手段も取ります
暴れて配下らも混乱した所で六六六に掴まり空中から一気に接近しクロスリベルの爪と六六六の砲撃や刃翼で攻撃
一気に離脱します
ザンマ・ヒュージエイト
同情はある。憐憫もある
しかしその行いを許せば、何れは罪のない人の子らまでもが嘆きに蝕まれ、哀惜に涙を流すじゃろうて
それは見過ごせぬのだ。恨めよ、異界の甞ての同胞よ……!
すまぬが小兵に構う暇は無い、退け。退かぬならば食ろうてしまうぞ!
……と、脅しつつ【義拳・神龍幻想】で飛翔しながら、全速力でアストラムのもとへ向かうのじゃ
到達し次第、奇襲・速攻じゃ
かの高名な「无二打」とまでは言わんが、これでも「拳如槍(その拳、槍の如し)」と称された……ような気もするしのぅ
奴が周囲の敵の願いを叶え戦場が混沌と化する前に、最大威力でのラッシュを叩き込むのじゃ
奇襲の混乱から建て直されたら、勝利は厳しいでのぅ
緋神・美麗
絡み・アドリブ歓迎
敵将の暗殺ねぇ。正直、潜伏隠密はそんなに得意じゃないのよね。やるなら相手に反応されない速度で肉薄して一撃必殺を叩き込んで離脱するヒット&アウェイの方ね。それじゃ親玉狩りと行きましょうか。
雷閃天翔でマッハ6で飛翔し出力可変式極光砲で敵陣に穴を開けて一気に駆け抜けアストラムに肉薄し、全身全霊乾坤一擲の超巨大電磁砲を叩き込む
もてる技能は全て駆使する
アストラムが完全沈黙したら速攻で離脱する
エドゥアルト・ルーデル
竜討伐RTAはーじまーるよー
はいという訳で始まりましたアストラム戦
戦場はサバイバルの真っ最中、それはつまり味方も多いってことでござるね時間短縮に竜の近くに居る味方の元へ【ファストトラベル】ですぞ!
これで道中をすっ飛ばせるでござる
近くまで行けば直掩についてる敵以外は少なくなってくるので持ち込んだ爆弾を満載した【UAV】を複数、竜を目標に自律行動で飛ぶようにセットしておきますぞ
飛ぶまでには時間があるのでこの間に接敵でござる
時々竜を狙いながら適当に配下を引きつけるように戦闘し、UAVを迎撃できそうな配下をできるだけ遠ざける
後は竜が寝てる間に到着したUAVが自爆攻撃するのでそのスキにFTで撤退でござる
ラモート・レーパー
「別にあの大群を倒してもいいんだよね?」
UCで震度6弱以上の局地的地震と巨大隕石の落下を起こす。この震度なら人は立て無くなるしそのうえで隕石降ってきたら回避できないでしょ。
この状況敵にとって想定外の悪夢そのものだよね
アドリブ・連携歓迎
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
雑魚に構わず指揮官(アタマ)を潰せ、ねぇ…
乱戦の真っただ中で随分と無茶言ってくれるじゃないの。
…できないとは言わないけど、ね。
ミッドナイトレースに○騎乗してテイクオフ。〇目立たないように索敵範囲外からVTOLで上昇して、敵頭上高高度から●射殺とグレネードで急降下○爆撃仕掛けるわぁ。
敵陣のど真ん中でちんたらしてたら袋叩き確定だし、速度を殺さず○逃げ足全開で一撃離脱かけるわねぇ。
攻撃まで見つからなければ、最終的にはどんなに派手に目立っても問題ないもの。正面切ってやり合うんじゃなければ、それは立派な〇暗殺よぉ?
鏡島・嵐
うーん、こっそり敵の大将をやっちまうってわけか。
見つかるかもしれねえ、なんて考えると怖ぇし、正直ちょっとずりぃ気もすっけど、この際仕方無え、か……!
動きが極力〈目立たない〉ように〈忍び足〉も組み合わせつつ、敵の数が少ねえとこを選んでこっそり進んでいく。見つかりそうになった場合は〈逃げ足〉を活かしてさっさとトンズラ。
どうしても見つかりたくねえとこを通るときは《いと麗しき災禍の指環》で姿を消して移動。あんまりもたもたしてっと無駄に疲れるから、素早く行動する。
無事に辿り着けたら、すぐに見つからねえところを陣取りつつ〈スナイパー〉で狙撃。
先行してる他の仲間が居るなら〈援護射撃〉も織り交ぜて支援する。
●一説によると
――『サバイバル』。
全員の🏅合計が、5/15の16時までに80万、5/25の16時までに160万に到達しなければ、モンスター軍団は腐汁と共にアックス&ウィザーズの大地に降り注ぎ、世界に大災害を巻き起こしてしまう――、
A&W世界ではサバイバル戦場で、敵と味方が日夜激戦を繰り広げていた。
2020年5月の某日。
群竜大陸の某所に猟兵達が集まっていた。
平均年齢●歳の猟兵集団。目的は一つ――『司令官の、暗殺』。
これは、そんな彼らが一部協力したり一部フリーダムだったりしながら紆余曲折を経て、司令官暗殺を果たすという、一発逆転のドラマである。
この物語は「竜討伐RTAはーじまーるよー」皆で遊ぼう。
エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)がアナウンスを遮り、パチンとウインクをして作戦を開始した。
「はいという訳で始まりましたアストラム戦。戦場はサバイバルの真っ最中、それはつまり味方も多いってことでござるねエーックス!!」
手にはマイクが握られている。
「せんせー、RTAってなんですかあ」
鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)が学生らしさをよくわかっている声で挙手した。つまり棒読みだ。
「R( )
T( )
A( )」
回答欄を自由な発想で埋めるのでござる」
エドゥアルト先生が宿題を出して、彼らの暗殺劇が始まった。
「攻撃まで見つからなければ、最終的にはどんなに派手に目立っても問題ないもの。正面切ってやり合うんじゃなければ、それは立派な暗殺よぉ?」
とてもぽえぽえとした声が響く――至言であった。
●急がないと遅刻しちゃう!
「別にあの大群を倒してもいいんだよね?」
ラモート・レーパー(生きた概念・f03606)は一言で言うとょうじょって感じの可愛い女の子の姿をしていた。けれど、瞳にはちっちゃい夜が宿る。
さて、そんなラモートが書いた答案は簡潔であった。
「Rじ
Tし
Aん!」
とても無邪気で元気いっぱいだった。じしん。わかりやすく哲学的で、ある意味芸術的でもある。なによりかわいい。白い髪を揺らしてラモートはちょっと俯きがちに微笑んだ。眉はきゅっとなって、ちょっとやる気になってるようにも見える。実はラモートは、見た目通りのょうじょちゃんではなかった。なんかすごい概念だった。その証拠に今。
「エドゥアルトさんが宿題ならぼくは試練を与える♪」
ユーベルコードをどーんっと使い、地面がぐらぐらぐらーっと揺れ始めたのだ。
「きゃっ、わわわっ」
THE・ヒロインといった正統派美少女の緋神・美麗(白翼極光砲・f01866)が目を丸くして雷を全身に纏い宙に浮いた。『雷閃天翔(モード・ライトニングスピード)』というユーベルコードだ。
「揺れるどころじゃない、わねぇ」
甘ロリボイスでつっこみが入る。有難いつっこみ役は、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)。目が細い美人さんだ。黒髪は光に透かすとわずか青く見える夜色の髪と讃えられていて、裏路地にあるBar『黒曜宮』のマスターでもある彼女、実はファンが多い。揺れる大地の上で平然と佇んでいる姿はミステリアス。只者ではあるまい。
「敵陣だけにするね」
ラモートが頭をこっつんこしてペロっと舌を出す。お茶目さんだ。その隣では楽しいエデュアルトおじさんがおんなじポーズと顔をしていて、まるで親戚のおじさんと姪っ子的な微笑ましさが出ていた。
「こやつめハハハ!」
「隕石どーん」
この和やかな2行の間に敵陣が結構しゅごい被害を出している。お代わりもいっぱい降ってきて、蒼なんとかフロンティアとかやってた人なら「戦場って混沌としてて楽しいね」と言い出しそうな混沌ぶりであった。やったね。
「この状況敵にとって想定外の悪夢そのものだよね」
「おじさんともっと遊ぶでござるよ」
「いいよ?」
と、こんなわけで。「疑似親戚コンビ」、別名「テレポート組」がができちゃったのである。
●このリプレイの事は、みんなの秘密にしよう
さて、猟兵の一団が戦場の隅に集まっていた。プロジェクトアサシネイトXである。
「雑魚は無視。となると、飛んでいくのが一番でしょうね」
ブラックタールの黒い膚も艶めかしく、おっとりとした瞳に若干人見知りの気配を窺わせて布を深く被るのはナァト・イガル(さまよえる小夜啼鳥・f26029)。旅に生きる吟遊詩人だ。肩で愛らしく鳴くのは白いカラス。円らな瞳が瞬けば星に似て神秘的。羽毛は艶があり、可愛がられているのが窺える穏やかな空気を纏っていた。
「巴さん、よ」
「ん……白いカラス。巴さん、……までが名前? よろしくね……」
箒を手にしたメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)が眠たげな表情の中に好奇心を覗かせていた。メンカル無口な少女である。眼鏡の奥の瞳がよく晴れた青空のような色を見せ、カラスに手を伸ばして挨拶のように頭を撫でる。手付きは淀みなく、優しい。が、じーーっとカラスを見つめる眼鏡は、実は『アルゴスの眼』といってセンサ付き。しっかり調べている……!?
「雑魚に構わず指揮官(アタマ)を潰せ、ねぇ……乱戦の真っただ中で随分と無茶言ってくれるじゃないの。……できないとは言わないけど、ね」
ティオレンシアは先ほどまでのあれこれがなかったかのように落ち着き払っていた。その背ではどーん、とかずずーん、とかなんかすっごい音が鳴り響いたりしていたけれど、お姉さんは動じない。踏んできた場数はいかほどか。やはり只者ではない……。
そんな美女ティオレンシアが騎乗するのはバイク型UFO。異世界の戦争でGETしたのだ。名前は、ミッドナイトレース。甘ロリボイスで囁けば男衆は蕩けるような眼を見せて陥落するとの噂がまことしやかに囁かれている。
「もう大丈夫? えっと、行くのよね?」
美麗は仲間たちにちょっと心配そうな顔をしていた。
「敵将の暗殺ねぇ。正直、潜伏隠密はそんなに得意じゃないのよね」
少し困ったように眉をさげ、けれど微笑む。きっとどんなに味方が混沌としても、美麗は「もう帰る」なんて言わずに頑張ってくれるだろう。そんな予感を皆に覚えさせる、向日葵のような笑顔だった。
(やるなら相手に反応されない速度で肉薄して一撃必殺を叩き込んで離脱するヒット&アウェイの方ね)
心の中ではしっかりと戦術を練っている。依頼慣れした猟兵なのだ。
(賑やかね)
ナァトが微笑む。その瞳は繊麗な睫に彩られ、青き宝石めいて優しく煌く。人見知りではあるけれど、賑やかなのは好きなのだ。
そんな猟兵達の声を微笑ましく思い、少し距離の離れた場所で風に髪を靡かせて。
(同情はある。憐憫もある)
ザンマ・ヒュージエイト(自称:太極の大龍神の端末・f16646)は透徹な瞳で敵を視ていた。ザンマは、傷つき眠りに付いた、古く旧い善なる神竜から分かたれ生まれた神。神様歴は100年少々の新米なれど、情深く面倒見がよく義に篤い一柱なのだ。
(しかしその行いを許せば、何れは罪のない人の子らまでもが嘆きに蝕まれ、哀惜に涙を流すじゃろうて。それは見過ごせぬのだ。恨めよ、異界の甞ての同胞よ……!)
そんなザンマの背後にエドゥアルトがラモートを抱っこして出現した。
「なっ、事案じゃと!??」
「RTAですぞ! Rakuraku T-shirt Aha!」
一言とTシャツを置き土産に2人が消える。RTAの謎が解けた瞬間だった。アハ体験が余韻を残し、2人はユーベルコード『ファストトラベル』で次なる味方のもとにテレポートしていく。
「これで道中をすっ飛ばせるでござる」
「便利だね!」
後世の歴史家曰く、その時ザンマは「今のは一体」としばらく呆然としていたという。
次はドコに出るかな? ひゅーん(テレポートの音)。
●夢は無限だから
テレポート組はさておき、猟兵達が出発する時が来た。
「それじゃ親玉狩りと行きましょうか」
美麗がにこりと微笑み、仲間を促す。
「私も空から」
メンカルが箒に乗ってふわふわと浮いてみせる。
「飛行術式箒【リンドブルム】……」
無口なメンカルがそう言って、箒を紹介する。もしかするとカラスを見せてくれたお礼なのかもしれなかった。
「情報収集……アストラムまでの最最短経路道を確認……」
仲間に情報を共有してからメンカルは心理隠密術式【シュレディンガー】を起動する。心理隠密術式【シュレディンガー】は、対象が存在を認識され辛くなる術式。相手に「メンカルがいる」と確信を持たれない限り見つからないのだ。
さらり、海が揺蕩うように幻想的に旅装の布が揺れる。お気に入りの布地。素敵な布は、少しずつ集めたナァトの宝物。ナァトが祈りの言葉を唱える。次の瞬間、その姿は自動迎撃型使徒〈ステラ〉を従える聖者の姿へと変じていた。
『──〈いまぞ時なり〉〈愛しき子、汝をわれに解放せよ〉』
聲は、身に降ろした〈存在〉によるもの。中身はナァトのままだ。
「中身は、変わっていないわ」
「……神降ろし、の一種かしら」
(誰かに暖かく包まれるようなこの感覚はまだ慣れないけれど──悪くないわ)
巴さんはいつの間にか大きな体になっていた。ナァトは首元を優しく撫でて、ふわりと巴さんの背に身を任せる。陽気な聲を放って巴さんがばさりと羽搏き、一気に高度をあげて飛翔する。
ティオレンシアは長い三つ編みを優美に靡かせてミッドナイトレースを駆り、索敵範囲外からVTOLで上昇を続ける。途中で楽しいおじさんとょうじょがが一瞬湧いたが、後世の歴史(略)ティオレンシアは全く動じなかった。
ザンマの姿もまた宙にあり。
「全てを飲み生んだ、海にして泥たる大龍神……全にして善、豊穣司るル・ガブルの加護ぞ在る」
その全身が龍の如し白と黒の闘気で覆われて神気が増している。
「貴女は?」
上空でザンマに気付いた猟兵達。この時、RPGゲームで良くある仲間が増えた効果音が流れたのであった。ちゃらららら~♪ という音が。
「猟兵名鑑で読んだことがある」
メンカルが呟いた。猟兵名鑑とは、猟兵の情報がいーっぱい載っている謎の闇サイトである(本もあるという噂)。
「義憤の心×満腹度に比例して……強くなる」
猟兵達がザンマに手持ちの食糧を提供した。味方猟兵は強い方がいい。だって、協力作戦だもん。
「拙者も飴ちゃんをプレゼントですぞ!」
ラモートをおんぶしたエドゥアルトがパッと現れてペロペロキャンディを渡して消える。
「ほしい」
テレポートの旅の中、ラモートが無邪気な声で微笑する。エドゥアルトは紳士的な手付きで棒アイスを差し出した。
「パプコでござる。これがあると棒回しが捗りますぞ」
「わー」
にこにことテレポートを繰り返すエドゥアルトは「そろそろ」と爆弾満載のUAV(無線操縦/自律行動する無人航空機。べんり)を竜を目標に自律行動で飛ぶようにセットした。大人の夢を乗せてUAVが飛んでいく。途中何機か隕石と衝突して空に大きな夢の華を咲かせたのは、御愛嬌。
「拙者の夢は飛び続ける、そうでござろう……」
言いながら配下を引きつけるエドゥアルトは実は物凄く有能な仕事人であったと、後世の歴史家は語る。
「かたじけないのう」
もぐもぐタイムを経てパワーアップしたザンマは戦闘力をぐんと上げ、先陣を切る頼もしい存在となった。
「すまぬが小兵に構う暇は無い、退け。退かぬならば食ろうてしまうぞ!」
全速力での空行。
マッハ6で隕石(まだ降ってた)を掻い潜る美麗は、「別働の猟兵達のリプレイで隕石降ってなかったのよね」と不思議そうに呟く。即興ならではの粗であった。きっと世界線が歪んでいるに違いない。
そんな美麗がもぐもぐタイムを邪魔しようとする敵群目掛けて放つのは、極光砲。
「出力は出し惜しみなく最大ね」
金髪が陽光にきらきらと輝く。空は、青かった。
「食事はおーけー? 一気に行くわよ!」
空組が団結し、青空を超スピードで飛んでいく。びゅんびゅんと。白い雲と隕石と腐汁撒き散らす敵の空の中、並んで飛ぶ仲間の目を見れば、きっと同じ未来を見つめて――。
「きっと、うまくいくわね」
ナァトが星の煌めきめいた笑みの花を咲かせる。声はやさしくあたたかだ。
無口なメンカルはこくりと頷く。口元にははにかむ春のつぼみのような淡い微笑みを浮かべて。
「もっちろんよ!」
美麗は溌溂と破顔する。金色の瞳は明るく仲間達を視て、「この仲間達と一緒に目的を果たして、皆で帰るんだから」と使命感と義志を厚く固くしていた。
そんな仲間達にザンマは柔らかに微笑んだ。
「案ずるでない。わしがザンマじゃ……」
何かとても凄い人(神)っぽい言い方である。自信タップリなザンマは本来ちょっとアホっぽいところがあるのだが、シリアスな局面すぎてもしかすると仲間達に「凄い神様!」として覚えられるだけで作戦を終えてしまうかもしれなかった。
●地上には隠密組がいまぁす!
「賑やかな暗殺行ですねー」
飛翔する仲間達を頭上に見送り、シズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)はクノイチ姿で地上を往く。地上の揺れは治まっていたが、爪痕は大きく地には大きな亀裂が走り、敵が眼を回していたり大きな敵に小さな敵がうっかり潰されてしまっていたりと被害は甚大であった。雑魚的は空からどんどんお代わりが降ってきて無限湧きにより軍勢は立て直しの途中。
(今なら)
そう思った時、シズホの目に岩陰に身を隠す嵐少年が映る。
「うーん、こっそり敵の大将をやっちまうってわけか。
見つかるかもしれねえ、なんて考えると怖ぇし、正直ちょっとずりぃ気もすっけど、この際仕方無え、か……!」
よく視ると少年の体は震えていた。戦うのが怖いのだ。シズホは少年に音もなく忍び寄る。
岩陰で「よし、行くか」と言い拳を握り、今まさに飛び出そうとする嵐少年。声は優しくかけられた。
「少年よ、マツノデス」
「ビクッ」
シズホが肩にぽむっと手を置く。嵐はめちゃくちゃビビった顔をして振り向いた。ちょっとばかり敵だと思って怖かったらしい。
「この迷彩を纏っていきなされ……」
シズホはそんな少年に菩薩のような顔で差し入れをして、お手本のような隠行を披露する。
「サ、サンキュ!」
こうして嵐少年は隠密度をアップさせ、シズホお姉さんと共に地上を駆けたのである!
「フフフ。お姉さんについてこれますか?」
シズホお姉さんが速度を上げる。サイドテールの愛らしい強襲人形『クロスリベル』の力である。
「なあ。それ、おれの速度はアップできねえのか?」
「今度改良しておきましょう――『六六六』、策敵と自動迎撃を」
微笑みながらシズホは武装人形に自分と嵐が進むサポートをさせる。
「さっきすげぇ揺れてたよな」
「あのおかげで楽に進めますよ」
「隠れてた岩は隕石でさ」
「恵みの隕石ですね」
少年とお姉さんは声を弾ませ、道を征く。未だちょっぴり嵐の指先は震えていたけれど、シズホは「頼りにしていますよ」とあたたかに声をかけた。これはリップサービスではなく、実は嵐少年は震えながらも猟兵仲間のサポートを的確にこなす事で知られているのだ。
●所変わってこちら空の上!
「見つけたわぁ」
空を往く猟兵達は、アストラムを発見していた。何かに喉を突かれ、今まさに落ちていく瞬間の接敵。上からティオレンシア、下からメンカル、美麗、ナアト、ザンマ。落下途中の敵に対しての瞬間挟撃。
「仕掛けるわぁ」
敵頭上高高度からティオレンシアが甘く声を響かせ、爆撃を開始した。
「全員で仕掛けて、一撃離脱をおすすめするわねぇ」
爆撃は凄まじいし言ってる内容も慣れてる感がバリバリなのだが、その声はなんだかのーんびり、ぽえぽえとしていた。こんなところもバーの常連に人気の理由なのかもしれぬ。
「司令官だけあって彼奴は強力な回復力を持ち、配下には治癒力を持つ者もおるじゃろう。少しでも傷を深めるのじゃ」
ザンマが最大威力でのラッシュを叩きこむ。
「かの高名な「无二打」とまでは言わんが、これでも「拳如槍(その拳、槍の如し)」と称された……ような気もするのじゃ」
と、本当か冗談かわからないような事を言いながら。
巴さん(ナァト)の周囲に星型正多面体が浮遊して、ビームを放っている。同時にナァト本人が撃つのは魔法の光矢だ。魔法の詠唱は複数を重ねて同時に行われている。所謂、多重詠唱。器用に紡ぐ音の流れは歌唱を得意とする吟遊詩人らしく美しく、風に流れればそれだけで世界を浄化できそうな清らかさ。
『厄討つ譚歌よ、応じよ、宿れ。汝は鏖殺、汝は屠龍。魔女が望むは災厄断ち切る英傑の業』
並んで飛ぶメンカルがナァトの聲に添わせるように竜屠る英雄の詩を紡ぎ、武器に竜にまつわるものを殺す竜殺しの概念術式を宿していた。
低空から上を臨むメンバーは気付いたのだが、ティオレンシアは器用にも仲間に当たらぬよう爆撃をしてくれていた。実に細やかでさりげなく優しい気遣いである。
「ありがとう……こっちも、当たらないように、する」
メンカルが剣を奮って竜の悪夢を斬っている。魔力により夜明けの如く東雲色を経て白色に輝く剣は、名をアウローラという。
そうね、と頷きアストラムに肉薄するのは、美麗。
「全身全霊乾坤一擲ッ!!」
超巨大な電磁砲が落ちるアストラムに叩き込まれる。一瞬のうちに叩き込まれた全員の攻撃に串刺しの喉が血を吐いて――同時に刺さっていた槍のようなものが抜けて――大きな悲鳴があがった。
「どぉーん」
幼い声がはしゃいでいる。
どさくさに紛れてエドゥアルトの例の夢が美しく爆発していた。見て、とラモートはエドゥアルトの袖を引き、「きれいだね!」と呟いた。
「もう、終わっちゃうのかな」
「引きあげる時間でござるな」
紳士に笑む「おじさん」に夜の瞳がぽっかりと向いて。
「 」
あどけない声は、花火みたいにパァッと閃く光の色を共有しながらエドゥアルトだけに聴こえるように何かを囁いて――ちいさな花のように可愛らしく笑ったのだった。
●後世の歴史家いわく
「うわ、落ちて来た」
「では、やりますか」
その頃の嵐とシズホはというと、本陣の混戦に紛れていた。嵐は『いと麗しき災禍の指環』により姿を消して。シズホはからくり人形の力(ユーベルコード)によりダークポイントの力を使っていた。
「ダーク・アポトーシス」
『六六六』の銃口が向く先は、司令官。突然の自殺衝動。俄かに司令官が自傷を始める。
嵐はシズホの背を狙っていた配下竜に射撃を放ち、傍に駆け寄って姿を顕した。
「援護してくださったんですね」
ありがとうございます、と笑むシズホに嵐はしっかりと頷いた。
「敵将はすぐに立ち直るかもしれねえ」
「ありそうですねえ。でも、長居は禁物です。引き上げ時は間違えないようにしましょうね」
シズホは視線を合わせて――少年の震えが止まっている事に気付いた。そして、「怪我がなくてよかった」と思ったのだった。
会話するうち、他の仲間達が降りてくる。合流だ。敵はひどく弱弱しく地に横たわっていたが、集まる猟兵達を静かな目で視た。とても静かな目だった。
「ごめんなさいね、星の竜。
可能ならば、お伽話のように出会いたかったわ」
流れる星を砕きながら司令官に向け魔法を繰り出し、ナァトが優艶に呟く。
……ん、と頷いて。メンカルは剣から術式銃に得物を変えて銃弾を放つ。
「……悪いけどまどろんでいるのであれば……そのまま眠って貰うよ……」
シズホがクロスリベルの爪で攻撃を加え、一瞬で離脱する。
「貴方の悲劇を思い起こさせてごめんなさい。
でも貴方を殺したような方ばかりの世界ではないんです。
その為なら私は……どんな手段も取ります」
嵐は隣に並び、神妙な顔でその光景を視ていた。
作戦を終えて、猟兵たちが帰還する。
後世の歴史家いわく――戦いは一度、終わった。
歴史書は綴る者により内容が異なっていて、そこで完全に司令官は討たれたのだと解釈する書と、司令官は猟兵去りしのち、すぐに蘇ったのだという説がある。
もし司令官が蘇ったのならば、その司令官は誰がどのようにして討ったのか。
それはまた、別の話。
大成功
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※⑥のサバイバルボーナスにつきまして、修正のご連絡がありました。
このシナリオによる🏅の加算数は正しくは、10000となります。
アウレリア・ウィスタリア
【空想音盤:希望】を発動
上空から急降下して強襲します
はやく、速く、より速く
敵に気付かれるより速く敵の懐に飛び込む
いえ、気付かれたとしても流星より速く
限界を超えて速く
例え流星に追い越されても
流星が効果を及ぼすよりも早く
敵を射程圏内へ
魔銃のリミッターを解除
魔を打ち砕く弾丸を
破魔の呪殺弾の一撃にすべての力を込めて
敵を撃ち抜く
先のことを考えるのは弾丸を放ってから
地面に衝突してしまうなら
オーラ防御を全開に
空を駆け抜けられるからそのまま一撃離脱で
一度だけのチャンス
それをものにしてみせましょう
アドリブ歓迎
ガルディエ・ワールレイド
俺にとって願いとは切り開くもの。
たとえ望みを叶える流星が相手であろうと、世界に平和を齎し人々を守るという願いを譲れはしない。
◆行動
武装は《怪力/2回攻撃》を活かす魔槍斧ジレイザと魔剣レギアの二刀流
移動を重視して鎧無し。耐水性のボディースーツ着用。
数日で何百戦もした戦場だ。その知識を活かして敵に見つかりにそうなルートを選択。
戦場で爆音が響くなど、注目を集める状況が有れば、その機に乗じて一気に進むぜ。
【砕魂の咆哮】と近接戦を織り交ぜて戦闘。
魂を攻撃する事で、願いに賛同しようという周辺敵の心の動きを砕く。
敵の攻撃には《見切り/武器受け》による受け流しや弾き返しで防御。
天翳・緋雨
微睡みの境地から流星召還を成し遂げる竜……なのかな?
空から敵を避けつつ急襲するのもありだけれど
真の最速を目指すならば……!
UCは【宙船】を
大気圏内で発動する事は殆ど無いけれど
此度は戦場を駆ける流星と成ろう
バンダナを解いて第三の瞳を顕現
戦闘知識と周囲の戦況観察で竜の位置を推測
自己暗示にて宙駆ける超人と化す
破魔の瞳で弱体化を図り
第六感による未来予測
この五体こそが培った全てが
竜を討つ武器となる様に念ずる
彼の竜が生きた軌跡をボクは知らない
取り巻く軍勢が抱える哀しみも空しさも図り様が無い
けれど過去の負債をイマ生きる人にだけ背負わせたりは出来ないから
猟兵の一人として打ち破ろう
己が全てを賭けて一筋の閃光へと
この時、戦場には相反する竜語情報が混在した。司令官が討たれたという情報と、未だ健在という情報である。
太陽を冠に広がる空軍鶴翼陣、暈の下を斜行する火竜隊、低空にて遊撃のため縦行する疾竜隊。その下の地上は激戦に地形を変えつつ東西に裂かれた軍勢が蘇り降る味方を慌ただしく組み込み中央の亀裂を埋めようと動いていた。
●伯仲、蒼天路
風歌奏樹に瑠璃踊る。
――はやく、速く、より速く。
上唇は2裂、下唇は3裂。蝶めいて揺れる花を竜鱗が掠めて一息で遠くなる。アウレリア・ウィスタリア(憂愛ラピス・ラズリ・f00068)が純白のヴェール翻し崩壊妖精の痛痛しい叫びを耳に天翔ける。
高き蒼天路。
低空から昇る仔竜の群れを察知した歌姫は、気付かれるより速く直線を駆けてすれ違い、地上付近を過ぎる流星に息を呑む。
流星は、少年の姿をしていた。依頼を受ける時に見かけた気がする、とアウレリアは記憶を探る。名は天翳・緋雨(時の迷い人・f12072)、味方だ。純粋な速度はアウレリアよりも。
(疾い、けれど)
アウレリアは加速した。聊か危うい、と膚に感じたのは少年に振るわれる竜尾の勢いの為か、或いは少年のユーベルコードの不安定な気配を感じ取ったのかもしれなかった。アウレリアは、所謂『第六感』の鋭き歌姫である。
(支援を……!)
戦場の竜尾は風を唸らせ豪と奔る。回避できるうちは良いが、当たればひと堪りもあるまい。仲間の援護をせんと鞭剣を嫋やかな手が揮う。目にも止まらぬ早業で放つ魔法の枷は常より長く伸び、竜の尾を抑止した。秒を待たず、伸びきった尾に少年の掌打が打ち込まれる。流れるように蹴撃が続く――何かが弾ける音立てて。
(雷?)
アウレリアは高度を下げながら距離を詰める。地上から悲鳴が生まれたのは、その時だった。
地上にも味方がいるのだ。
(それにしても、疾い)
限界を超えて速度を上げる――緋雨の集中力を研いだ眼が超然とアウレリアを振り返り、軽く目礼した。少年は、ベースで見かけた時とは纏う空気を変えていた。バンダナが解かれて額に赤い瞳が覗くせいだろうか、と思考したところで脳が警鐘を鳴らす。
敵だ。
飛竜が斜に群れを成し突っ込んでくる。
「司令官がこの先にいるのは間違いないようです」
2人が駆ける進行方向を塞ぐように飛翔した薄卵色の竜がまず一頭、翼で空気を叩き口を開ける。喉奥に光球閃き「ブレス!」と警告放つのは同時だった。斜め左後ろに敵が連なり、隊列を変えながら射程に入った竜より順に光撃放つ様は、スローモーションのよう。
回避しながらも前に進む速度は緩めず、飛んでいく。
「斜線状に配置した陣形の先頭。サバイバル戦に参加している猟兵の中で機動力高く低練度のチームを狙う戦術だね」
「攪乱しつつ抜けましょう」
アウレリアの剣は、軽い。花びらの軽さも拷問具の刃の軽さも全ては敵を切り裂く速さを出す為。
幻想蛺蝶が夜を舞うように、飛翔は静謐かつ優美だった。螺旋に光の尾を引いて滑らかな回避と斬弧の軌跡を描く。拷問具――鞭剣は刃を伸ばし置き土産めいて敵を切り裂き。時には切っ先から光条伸ばし、光剣を魅せながら敵と景色を後ろに流しゆく。
共に駆ける緋雨はシューズ躍らせ短距離の瞬間移動を織り交ぜて。時に鋭く大胆な角度を抉る不規則機動の稲妻となったかと思えば、瞬く様に掻き消え輪郭ぶらして現れる。空や敵を蹴り雷光閃かせながら跳ね、抜けるような蒼穹を背景にくるり、蜻蛉返り。シューズの底でウィールが風を巻きフレーム・シャフトが陽光を反射して煌いた。
「司令官のもとへ」
アウレリアが彩異なる翼を強く羽搏かせれば、緋雨は頷く。
『空想と共に歩み、理想を奏でよう。魂の奥底に眠る希望の光、その輝きを信じて』――淡紫青色のロベリアの花が揺れている。忌み子に視線を突き刺す石投げ人もいない青空に雨が降る。
矢張り、敵だ。
●『その身は希望であらねばならぬ』
頭上を二筋の星が流れる。
地上のガルディエ・ワールレイド・ノルワーズ(黒竜の騎士・f11085)はボディースーツに身を包み敵陣を駆けていた。帰還した先駆け猟兵により裂かれた道。パーティで数日で何百戦もした戦場でもある。
(ここまでは楽だったんだが)
竜の軍勢が道を閉じようと潮の如く押し寄せ始めていた。ドラゴニック・センスが敵の間合いに入るとき特有の危機の気配をビンビンと告げている。司令官に刃を届けるより前に東西挟撃の爪牙が己に届いてしまう。ガルディエは眉根を寄せた。配下はアストラムの大いなる力となるだろう。
――司令官は、蘇ったのだという。
理屈は理解るが数刻で蘇るとは、とガルディエは天を突くよう魔槍斧ジレイザを振り上げる。肩口から手首までしなやかに赤光が直線を昇り、刃に至れば雷と為る。肘を柔らかく曲げクロスするようにする逆手には魔剣レギアがぎらりと耀く。左脚が大きく前に踏み出される。先制を取る確信があった。悉く。
「――来い」
(始めようぜ)
いつものように。
「勝ちに行くとしよう」尊大な少年の笑み、「やった」と笑む2人のクレリックを思い出し――今日は一人。
風が吹く。
地揺らがし殺意高く軍勢の波至る。
足音羽音咆哮。
ヒポグリフ。エレメンタルバット。棘蜥蜴。
パストール、アトランティクス、黄金龍。グラドラゴ、アシド。
(竜騎士の技、とくと見ていけ)
シュヴァルト、毒牙虫、ワイバーン、氷皇竜、双頭鎧竜。
マギステル、ミラベル、シュラウ・ドン、ランナーズイーター……、『何体斬ったことだろう』、仲間と共に。
アックス&ウィザーズを初めて訪れた時、思ったものだ。
故郷に近い文明の世界。
――……良いところだ。と。
「ふっ!」
裂帛。
上体を低く肩を押し出すような気合一閃は予備動作から放たれるまでに秒を要さず、尋常ならざる膂力と竜気を爆発させるようにユーベルコードの発動を導く。
耐水性のボディスーツに腐汁が拒まれて、視界の隅で紫の飛沫を上げている。腕は豪と振られ、走る双魔鋼線は遠心力と魔力雷が上乗せされた最大威力。左右に切り分けるように2種の斬線が走り抜ける。
「――、」
ガルディエは腿に力入れ、腹から胸を経て駆けあがる熱を『砕魂の咆哮』として放つ。強力極まる魔剣と魔槍斧を持つ彼の最大の武器は強き意思。過去を討ち得る意志である。
古き神の意は威となる――神話の残滓が今此処に。
(上々ってところだ!)
物理的な斬撃・雷撃と魂砕きの怒涛。会心の一撃である。爪を振り上げ牙を剥いていた敵の巨体が次々揺らぎ、横にぐらりと流れ伏す。ドミノのような連続。破鐘めいた悲鳴、断末魔。死屍累々の腐汁溜まりに腥い紅が混じり濁りを増す光景は、『凄惨』の一言。
地を蹴り、再び駆ける全身に満ちるは竜の活力。生ある者は見えずとも感じるだろう――ガルディエこそが強大なる竜であるのだ。
竜魂の適合者、生命体の埒外にある其の身は仮宿に非ず、黒竜也。
「てめぇに賛同する敵は悉く俺が斬るぜ」
ひた走る先には、翼のうちに星座頂く美しき竜。
敵だ。
●野良パーティー
先に司令官のもとに辿り着いたのは、空からの2者であった。
(一度だけのチャンス。それをものにしてみせましょう)
上空から急降下して強襲する歌姫アウレリア。魔銃のリミッターは解除される。装填されているのは魔を打ち砕く弾丸。只一発の弾に全ての力が籠められるのを視た緋雨は味方の渾身撃を命中に導かんとサード・アイを敵将に向ける。敵の動きを抑制しようとしながら、数秒先の未来が脳裏に閃く。ビジョンに焦燥が胸を突く――名を呼ぼうとして知らない事に気付いて。
「っ、上!」
咄嗟に出たのは素に近い声。上、と示して短距離を瞬間移動しながら「あれ」と思う。暗示を自分にかけていたはずなのに。疲労の影が足もとから這い寄ってくる。宇宙空間移動用のサイキックは大気圏内で運用する際の計測や演算が負担大きくのしかかる。そのせいだろうか。
ビジョンでは――鼓動が跳ねる。
「新手!」
天から降り爆炎を吐くのは、新たに染み出した配下敵。体のすぐ傍を舐める炎熱、炎の幕を突き破り敵将の太い脚が暴れる。黄金爪を陽光に輝かせる姿は、目を惹く美しさ。
飛翔する猟兵を搗ち落とさんと縦横無尽に奮われる凶爪。辛うじて掻い潜り、仮面の姫が魅せる飛翔は円月を描く。避けた先に配下の爪牙が鋭く待ち構えるも、命中する寸前で緋雨のサード・アイがその動きを止めた。増大する負荷に笑み、集中。躊躇なく出力を増して味方追う巨体を轢き、少年が差す陰に視る未来は数秒先の黒き咆哮。際どく連続する回避は華麗にして過酷、失敗即死に繋がりかねない緊迫感。アウレリアのヴェールの端が配下の牙にかかろうとした時、剛暴に斬撃が割り込んで牙を跳ねのけ、味方が現れた。
ガルディエである。
に、と釣り上げた口に牙を覗かせて息を吸い。
「スーッ」
魂砕きが、もう一度。
「ッら、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
鼓膜を食い破るかのような吠声、大音塊。
滾滾と湧く配下が魂撼がし、動きを止めた。ここぞと肉薄したガルディエが魔剣魔槍斧を流れるように見舞えば、アストラムの巨体に朱線走る。耳を劈く悲痛な聲が咆哮の余韻を塗り替え、血を噴く背で敵将の翼が上下する。巨体が浮く――砂塵腐汁を巻き上げて。
「フッ!」
逃がすまいとガルディエが跳躍し、浮く敵の足を蹴る。バネのように伸びる両腕の魔刃は下から上へと斬り入れ、腹を断つ。強靭な外皮の下の手応えに思う――『司令官は肉厚だ』。斬れるが、タフだ。斬られた敵将は苦痛に身を捩り、蒼蠅払う様に脚を暴れさせた。攻撃直後、両足を地に着け腐汁飛沫あげた瞬間のガルディエに迫る剛撃。
「駄目!」
上空のアウレリアがハッとして鞭剣の切っ先を振る。虹色に輝く光が直線に走り仲間に迫る脚の勢いを弱める。更に弱体化させるよう放たれしは緋雨のサード・アイ。
(3人パーティか)
味方戦力を把握しながら、ガルディエは横に転がり追撃の尾から逃れた。回転の勢いをつけて起き上がり、踵を軸に敵を正面を捉えるよう体を廻せば飛沫を生む。敵の追撃の爪は、大きく威力を削がれながらも常人なら戦意を喪失して震えあがる程の勢いで迫る。だが、ガルディエは常人では無い。魔剣魔槍斧が合わさり、爪を確りと受け止めれば硬い物質同士が戦う高く澄んだ衝突音が青空に響いた。
キン!
その時響いた音は場違いなほどに清涼にして、戦場の光景は地獄絵図のようであったと後世の歴史家は語る。
ガルディエはぎり、と奥歯を噛み締める。上からのしかかる超重量。足元が押し込まれて地面が陥没する。奥歯をぎり、と噛み耐える刹那、弾丸めいて横合いから一気に肉薄した緋雨が敵の下顎にぶつかる。引き手がそのまま矢と化したように突き出す拳、スパークする雷、粉砕音。秒待たず光筋が円を描くように周囲を眩く照らしあげる。アウレリアが高き蒼穹に戦場を支配する女王の如く飛翔して光枷と光剣を伸ばし、援軍配下を牽制しているのだ。
(どれくらい、)
湧いた疑問。
何が? ――考えて思い至る。
時間だ。
焦燥が背を走る。戦場に溢れる敵、道中置き去りに駆けて来た『彼らの存在を知り、追ってきている敵』。新たに降る敵。司令官を救おうと纏った数の配下が馳せるまでのタイムリミットはもうすぐだとアウレリアの第六感が警鐘を鳴らす。
(柔い戦場敵じゃ、ない)
仮面に手がかかる。そっと、外して。
直前の討伐は十分な人数だったはず。思いながらアウレリアは汚泥に裾を汚れて尚清らかな純白の花嫁衣裳を揺らし、歌紡ぐ。
(でも)
優しく幻想的な旋律が歌い手の心乗せ、仲間の傷を癒していく。
(一人では難しくても、皆さんで力を合わせれば……!)
――♪
『さあ、この戦場はもうボクたちのものです』一気にかかりましょう……心に訴えかけ、励ますように戦場に響く歌声のなんと可憐で美しいことだろう。
歌紡ぐ彼女がふと睫を伏せる。
記憶の奥底、揺らめくのは切なき温もり。
睫が震える。
――過去と向き合い、現在を未来へと繋ぐ……、
「♪蒼穹に耀く虹こそ希望であれかし」。アウレリアの背で翼が昼と夜を共に抱くように優しく羽搏いた。髪が風に梳かれてさらさらと揺れれば、仲間達は汗ばむ額に不思議と涼気を感じた。玲瓏たる飛翔歌は艶美にして優美。地上の腐臭血臭、悪意憎悪殺意害悪を鍋で煮込んでぐつぐつさせたような澱んだ風すら清らかに変えて戦場の空気そのものを安らぎと希望の色で染めかえるよう。
優しく励ますような歌を受け、
疲弊負傷が癒えていく。
(ボクはもっと速く、より粘り強く、集中して動ける……!)
ガルディエと背合わせに呼吸を整える緋雨は己に言い聞かせてた。幼少期に姉が優しくかけてくれた『おまじない』とは違う。地に凛として立つのは己自身の足で。空駆ける為に自立の羽根は自ら生やすのだ。「人類の守護者」であろうと念じる心は、いつも、本当は。
――必要な局面で力を奮えぬなら、何の為に日々基礎能力を培おうと重ねた修練だというのか!
(この五体こそが。培った全てが、竜を討つ武器!)
そんな気配を察してか触れ合う肩が軽く揺れる。ガルディエが笑む気配が場違いに温かだった。耳朶を擽るは、名も知らぬ『仲間』の声。
「行けるだろ」
「もちろん!」
背合わせに交わす言葉は短く、
出会って数分の即興パーティが動き出す。
嗚、また一つ竜が啼く。
切々と嘆き、不満を訴えるような聲。願う力の波涛である。
(来ねぇよ)
ガルディエが想うのは、かの司令官を守ろうとした配下。もう『砕いちまった』。
(来ても、砕く。魂を)
口の端に牙を見せてガルディエは息を吐く。嘗て、彼を命がけで愛した人々がいた。彼を希望だと信じて、人々は死んでいった。
ならば、たとえ身の程知らずであろうとその身は希望であらねばならない。彼らが愛し育み希望を託したその身は、過去を討ち得ると証明せねばならない。
彼らが愛し育み希望を託したその身は、過去を討ち得ると証明せねばならないのだ。
●『アストラム・アサシネイト』
聴覚を埋める戦いの音。
周囲には配下の骸が山と築かれ、中心で竜が暴れている。
爪を誘うようにひらりと舞う歌姫アウレリア。光の軌跡引き幾重にも輪を描けば空に満開の花が咲く。
虚空を過ぎて降りる最中の竜の前脚に打たれるは演者緋雨の雷佩く打撃。
(より力強く、そして速く、もう一撃!)
と、視界が敵の全身運動が齎す振動で揺れる。くわりと赤い口腔見せ迫る獰猛な牙。少年を竜の牙が捉え、無残に食い殺す――と思われた直後、輪郭はぶれて消える。残像だ。短い間に見慣れた光景、味方は動じる事なく竜の両頬を挟むように攻撃を合わせて首の傷を深めている。半端に深めた傷の数は両手に足りぬ。何れもトップクラスの実力者揃いの猟兵パーティが重ねる傷に対して竜のしぶとさは驚嘆に値した。
(数手ずつ手を加えれば、落ちるだろうか)
(一気に首を落とすのは厳しい……?)
交差する視線と死線。
一瞬の意思疎通。
(首よりも)
風がびゅうと吹く。腐汁と血飛沫の地上を見守る空は果てしない青を見せている。色が混ざり過ぎて取り返しがつかない澱黒の泥濘戦地に呼吸合わせて駆け跳ね飛翔する人影は竜と比べてなんと小さき姿だろう。
重力制御で空に踏み込み緋雨が妥協を放り投げた精度の蹴り放つ。命中した部位は、牙。ビリリと鼓膜を刺激する雷撃音。高速かつ巧妙に衝突したウィールが火花と爽快な滑走音をあげたかと思えばその姿は背面にて翼の付け根を蹴り垂直に跳び、一拍置いてへし折った牙が漸く地に飛んでいく。癒し手による疲労回復ありてこそ叶う全速。昇る直線と交代する様に下へ奔る天雷は黒き騎士ガルディエが放つ技。アウレリアの放つ光条は降る雷と十字線を魅せるように真っ直ぐ翼に走る。
敵将は、回避しようとした。だが、回避の動きが高空からの赤き視線に妨げられて動きが鈍る。光が体表を灼き、斬る。その光の筋を辿るようにガルディエの魔刃が加わり、翼がずたずたに裂かれれば敵将の巨体は大きくバランスを崩した。
無言の連携、上と下で絡み合う視線、情意投合。どれほどの隙を誰がどのように生み出せるのかも僅かながら掴みかける頃合い。
「そおら!」
ガルディエが地が爆ぜるほど苛烈に踏み込み跳躍する。まだ好きに動けまい、と嬲るように怪力に勢いを上乗せ勢い付く刃、鬼気迫る一撃。振り上げ、全力で振り下ろす。背に片膝を付き押し込む様な渾身撃。軋む敵将の背の強靭な骨は、右翼に繋がり飛翔支える生命線。この傷も何手も重ねたものだ――抉るように螺旋に力加えるは魔槍斧。熟練の腕と経験をフルに発揮して魔剣が肉に埋もれし切っ先から魔力を暴れさせる。肉の内側で爆発する赤い雷。眼が眩むような光の中で緋雨は地面に押し倒す力を加えるように蜻蛉返りめいた蹴りで竜の首を打ち据え、ガルディエに合わせたように瞬間的な雷撃放つ。色は、果てしない空の青。斃れまいと爪と尾を振り身を捩る敵、近距離でもつれ合うような敵味方。
――♪
ワンフレーズ、優しき歌声が余韻たっぷりに木霊する。敵を癒す者はいないが、猟兵の傷は癒えるのだ。
赤と青の雷光爆ぜ咲く視界。雪花石膏めいて滑らかな頬から耳にかけてが上気して薔薇色に染まっている。「そろそろキミの呪殺弾で削り切れるはず」と仲間から声あがる。アウレリアは敵の残りの生命力を削り取る勝算を抱き、舞台の終幕を彩るべく舞い降りた。
(空に逃れても、何もない)
歌姫は歌い終えて再び仮面をつけ、透徹な眼をした。己が猟兵となる時に目標としたことを思い出していた。
(何を得るものはないっていうのもわかっていても)
苦しんでいる。痛みを抱えている。飛ぼうとしている……!
黄金の煙が渦巻き、敵将は抗うようだった。涙雫めいて潤む光の尾を引き、流星が降る。哀しき夢――アウレリアが望むのは、星よりも疾く勝利を決定的なものにする事である。
『空を飛びたいのだ』、そう訴えるようにアストラムが地団太する。羽搏く翼は破れ折れ、それでも上へ逃れようと。
『生きたいのだ、叫ぶように吠えて。
「行かせない」
サード・アイは強く敵を縛する。この時、敵は悲痛な聲を響かせ、鳴いていた。懸命に悪夢から逃れようと藻掻き、救いを探すように。『叶えよう、願いを。誰か、誰か』――しかし、賛同する配下の声は無い。過去も現実も、アストラムに救いの手を差し伸べ微笑む気配は全く無かった。
「竜よ!」
ガルディエが吠えていた。気高き騎士の咆哮である――嗚、その魂こそが敵を芯より打砕く熱源なのだ。アストラムは動かぬ体に呻き、啼泣をあげた。
その戦場に。
オォ、オォ、クゥ、クルル。ォーウ、オゥ。
生暖かく。
(この竜が生きた軌跡をボクは知らない。
取り巻く軍勢が抱える哀しみも空しさも図り様が無い)
黄金が煌いていた。
儚く空気に溶け染む煙。そして、金属の光。
(――けれど過去の負債をイマ生きる人にだけ背負わせたりは出来ないから猟兵の一人として打ち破ろう)
仲間と共に、と緋雨が見つめる先でスローモーションのように決着が導かれようとしていた。
「俺にとって願いとは切り開くもの。
たとえ望みを叶える流星が相手であろうと、世界に平和を齎し人々を守るという願いを譲れはしない」
そろそろ終わりだ、とガルディエが二刀を苛烈に斬り入れる。
雷光と想いが交差する。
光満ちる中、燦然とした日光に凛然と煌めくのは金属の輝きである。銃把にかけられし指先の嫋やかなる事、花の如し。花の爪色は汗に艶めきしっとりとして、魔銃ヴィスカムの銃口が敵を捉える。
(悲しみが続くのは、とても辛い)
上下する華奢な肩。
銃口から敵まで己が腕を伸ばすような感覚を覚える――届く。中たる。この銃は、牙だ。神さえ穿つ力だ。
「狙うのは」
頭、胸、首――、幾多の傷を見やり、引き金を絞る。すべての力を込めて。
(ボクは、悲劇を止めたいと強く願う一人の戦士)
「赤ッ!!」
(ボクは咎人殺し。人々に害を与えるアナタに裁きを与えるものです)
弔辞に代え頭に赫く煌めく竜眼へと弾が吸い込まれ、一際大きな悲鳴があがる。ガルディエはその瞬間、気高く咆哮をあげて敵の魂を砕いたのだった。
『空を飛びたいのだ』、魂を砕かれ身を滅ぼされながら、敵竜はもう一度翼を持ち上げる。力なく空を掻く翼が再び身体を浮上させることは無かった。ずしん、と地を震わせて竜は横倒しに倒れ伏し、やがて沈黙した。起き上がる気配は、無い。
零命の雫がひたひたと腐汁混じりに地面を浸し、遠くからは遠き前線から引き返した配下の群れが駆け付けようと地煙をあげるのが視えた。竜への助けは、全く無かったわけではない。無限湧き状態の戦場にて、幾度も配下は駆けつけ、都度無力化されたのだ――、
地に向けられた魔剣と魔槍斧の先端から血が滴る。
「また蘇る可能性は否めないが」
「今出来る事は成し遂げた、かな」
「うん」
即席のパーティは周囲を油断無く警戒し、軈て頷きを交わした。帰還の時である。
あえかに花揺らし、仮面の下で歌姫が眼を伏せる。
ふわり、風が最後に花揺らし、
落日は円かであったと記録されている。
司令官は、かく討たれき。
●獲得報告
作戦に参加する全猟兵は、財宝『蓬莱の実』を獲得しました。
大成功
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