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帝竜戦役③〜全ての駒は王が為

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #帝竜 #カダスフィア #群竜大陸

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「まさに速攻、まさに急襲、たかが兵と侮ったつもりはなかったが……既に奴らの手は我に利いていたか」
 群竜大陸の白黒に塗り分けられた大地の上、巨大な竜が一人呟く。
「なれど、騎士の一つが取られる程度で王を勝ちに導けるなら何を迷う必要があろう。元より我は王にあらず、ましてや指し手になぞ! ヴァルギリオス様、このカダスフィア、見事捨て駒の役務めてみせましょうぞ!」
 竜の咆哮が白黒の盤に響いた。


「皆様方、日々の戦いお疲れ様にござる」
 シャイニー・デュール(シャイニングサムライ・f00386)がぺこりと頭を下げる。
「皆様のおかげで、帝竜の一体であるカダスフィアを引きずりだすことができました。これより、その討伐に向かっていただきたく思います」
 今回のボス格ともいえる帝竜。その一体ともなれば相当な強敵なのは間違いないだろう。猟兵たちの間に緊張が走る。
「カダスフィアはチェス盤のような白黒の大地におります。その住処に違わず、チェスをモチーフにした能力を使ってくるようでござるな。されど自らを神の如き指し手などと驕ることはなく、王の為に捨てられる駒であることを厭わぬ忠義者でもあります」
 盤遊戯好きにありがちな、自分が全てを操る超越者だなどという思い込みに付け込むような戦法は取りづらい、ということだろう。
「カダスフィアはチェスの駒を召喚しけしかけてくる他、自らも大地と一体化し巨大化、圧倒的な戦闘力を持って攻めてきます。しかもその実力の高さ故、これらの攻撃を必ず先制で行ってきます」
 これまでの戦争でもボス級オブリビオンが行ってきた先制攻撃。帝竜たちもまたその力を持っており、これに対処しないことにはまともに戦うこともできないだろう。
「完璧な能力などありませぬ。必ずや切り返しの手があるはず。その上で敵の棋譜を上回る動きを見せ、盤ごとカダスフィアを叩き切っていただきたい」
 いかに優れた指し手であろうと、それだけで勝てるものではない。今まで何度も無敵にも見える敵を破ってきた猟兵だ、今回も必ず勝ち筋を見つけることができるであろう。
「飛車角より早く、桂より高く、金銀より硬き猟兵の動き、見せつけてきて下され!」
 そう言ってシャイニーは、チェス盤の地へと猟兵を送り出すのであった。


鳴声海矢
 こんにちは、鳴声海矢です。
 今回は大ボスの一体、帝竜カダスフィア戦です。
 今回のプレイングボーナスは以下の通り。

『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』

 今までの大ボスの例に漏れず、カダスフィアは猟兵の使用する能力に対応したユーベルコードで『必ず』先制攻撃してきます。
 これに対処することでボーナスを得られますので、是非狙ってください。
 またこのシナリオは『やや難』となっています。ボーナスを得ただけでなくその後の戦闘もきっちり行わないと勝利することはできないでしょう。
 それでは皆様からの竜へのチェックメイトをお待ちしています。
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第1章 ボス戦 『帝竜カダスフィア』

POW   :    ビルド・カダスフィア
無機物と合体し、自身の身長の2倍のロボに変形する。特に【チェス盤化した、半径100m以上の大地】と合体した時に最大の効果を発揮する。
SPD   :    ミリティア・カダスフィア
【チェス型ゴーレムの大群】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    形成するもの
自身からレベルm半径内の無機物を【チェス盤やチェスの駒を模した怪物】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。

イラスト:あなQ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ギージスレーヴ・メーベルナッハ
将であり駒。前線指揮官としては理想的な在り様だな。
良かろう、余も将として、一猟兵として相対せん!

敵の軍勢に対し黄昏大隊・蹂躙巨艦を発動。
艦からの【砲撃】と余自身の掃射で敵を牽制し、その間に降下部隊を降下させ展開。
その後は【砲撃】を敵の後方へ向けさせ敵の援護を阻害しつつ、兵達に射撃攻撃を行わせる。
牽制を織り交ぜ前進を阻害する部隊、敵を狙い撃ち仕留めにかかる部隊に分け【集団戦術】にて制圧。
兵の攻撃で止まらぬ敵は余自ら魔導小銃にて【呪殺弾】を撃ち込み仕留めてくれよう。

残るカダスフィアには、残存戦力の最大火力を叩き込むと共に余も【スナイパー】で頭部などの急所を攻撃する。



「将であり駒。前線指揮官としては理想的な在り様だな。良かろう、余も将として、一猟兵として相対せん!」

 ギージスレーヴ・メーベルナッハ(AlleineBataillon・f21866)はカダスフィアの姿勢をそう表する。傭兵組織『黄昏大隊(アーベントロート・バタイロン)』の首領を名乗る彼女にとって、使う将であり使われる駒であると称するカダスフィアの在り方は自身にも重ねられるものであり、それを誇るような態度は好ましく感じられるものであった。
「そうか。ならばこれが遊戯でないことは分かっていよう。形成せよ、もの共よ!」
 カダスフィアの声と共に、白黒の大地が浮き上がり形を変える。それは兵や騎士、城塞などチェスの駒の特徴を用いた怪物へと変化。さらにはチェス盤そのものを模したような、平たい版さえも現れ、一斉にギージスレーヴへと襲い掛かった。
 遊戯ではない、その言葉通りに怪物たちは一体ずつではなく一斉に進軍し、その牙を剥く。
「ゴットリヒター出撃! 領域内の敵勢力を徹底的に蹂躙し殲滅せよ! 降下兵団、総員降下開始!」
 後手となるギージスレーヴは、相手の向こうを張るように自らの率いる軍団を召喚。それらは砲を備えた空飛ぶ戦艦の大群であった。
 戦艦たちは砲撃を開始、後の先を取るかたちで砲撃をチェスの怪物たちへと当て、その歩みを鈍らせた。
 そこに艦から飛び降りた効果部隊が即座に展開、射撃戦を仕掛け敵の戦線を崩す。近代兵器と戦術によるその反撃は、チェスをモチーフにしたカダスフィアの能力の弱点を突く強力なものであった。
「跳ねよ騎兵!」
 カダスフィアの指示と共に騎士の駒が大きく跳躍、銃撃を飛び越え兵へと迫る。航空艦に撃ち落とされる者もいるが、それを免れた者は個の強さによって兵士をとり、一方的な盤展開を許さない。しかし高跳びしたその騎兵は、すぐに他の兵に群がられ倒されていく。
「余も動くぞ!」
 さらに将であるギージスレーヴ自らも銃を取り、兵で打ち倒せぬ城砦や僧正を呪殺の弾で仕留める。王が積極的に打って出られる、これも遊戯とは違う展開であった。
「双方に同じ駒があるわけではない……分かってはいたがな!」
 同じようにカダスフィアも前に出る。振り下ろされたその剛腕は一撃で多くの兵士をなぎ倒し、盤上を一気に塗り替えた。
「狙うはあれだ! 全軍、放て!」
 そのカダスフィアに総攻撃の指示を出すギージスレーヴ。兵たちは王を詰ませるという目的のため攻めかかり、その弾幕で足止めする後方でギージスレーヴが最後の1手を放つ。
「この一局……余が貰った!」
 放たれた狙撃の一撃は、カダスフィアの頭部を強かに捉えぐらつかせる。
 このチェックにて、盤上の異種格闘技戦は近代兵器を持つギージスレーヴに軍配が上がった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

檻神・百々女
どんなにか大きくなったって、どんなに強大であっても、日輪に勝ることはできないのよー。なぁんて。体がおっきくなった分、熱への影響も大きくなってるでしょ?神様の力で、焼き尽くしてあげちゃう!
SCRIPT ON!

中途半端につけたそれ、きっと熱をいっぱい蓄えて伝えてくれると思うのよ。天の光は時にやさしく、苛烈に地を燃やすものなのよー。
おっきなおっきなトカゲさんは、BBQにしちゃうわ!
ドラゴン肉はロマンって偉い人も言ってた!



 まずは一手、打撃を与えることに成功した猟兵たち。次にカダスフィアに挑むのは、檻神・百々女(最新の退魔少女・f26051)だ。
「単騎か……盤上遊戯をやりに来たわけではない、とでも言ったところか?」
 だがたとえ相手が一見して単騎で、しかも非武装のように見える姿でも油断はない。白黒の大地が盛り上がり、カダスフィアを取り囲んだ。それはカダスフィアの太い脚、多数の腕、巨大な翼と次々融合し、元々巨大な体をさらに大きく彩っていく。やがて白黒の装甲を纏った天を覆う程の巨大な竜が、百々女の前に立ちふさがった。
 カダスフィアはその巨大な足を振り上げ、どんなにか大きくなったって、どんなに強大であっても、百々女を踏みつける。それは兵の駒の一進み程度のものかもしれないが、その質量によってただ潰されるだけで致命傷は免れぬ必殺の一手。百々女はすんでのところで身をかわすが、その衝撃だけで足元はぐらつき転倒してしまう。
 その状況でも、百々女は笑顔を崩さず、カダスフィアを見上げた。
「どんなにか大きくなったって、どんなに強大であっても、日輪に勝ることはできないのよー。なぁんて」
 お前より大きいものなんていくらでもいるぞ、それは負け惜しみの強がりか。しかしカダスフィアはそうは思わなかった。
「そうだな。しかしお前は我より小さい……いかに覆すか?」
 そう言いながらもカダスフィアは再度足を上げる。何かをされる前に踏み潰してくれよう、そのつもりであった。
「体がおっきくなった分、熱への影響も大きくなってるでしょ? 神様の力で、焼き尽くしてあげちゃう! SCRIPT ON!」
 百々女は素早く手のデバイスを操作する。それと共に太陽の光が一点に収束、巨大なカダスフィアの上から、その身を焼くように降り注いだ。
「ぬおぉぉぉぉぉぉ!?」
 軽口がただの強がりでないことは分かっていた。だが本当に上を取ってくるとは。油断など全くしたつもりはなかったが、それでもカダスフィアは、猟兵の力を読み切ることは出来なかった。
「中途半端につけたそれ、きっと熱をいっぱい蓄えて伝えてくれると思うのよ。天の光は時にやさしく、苛烈に地を燃やすものなのよー。おっきなおっきなトカゲさんは、BBQにしちゃうわ!」
 そう言って百々女はデバイスを操作しさらに出力を上げる。この誰でもできるデバイス操作が、伝説そのものともいえる竜を焼き尽くすことができれば。それは百々女の理想の一つの形でもあった。
 やがて熱線はやみ、体から煙を上げるカダスフィアの姿が現れる。
「……効いたぞ、猟兵」
「うそ、あれ耐える!?」
 熱線で全身を焼かれたカダスフィアは、ダメージを負いながらもまだ倒れるには遠かった。慌てて次の術式を入力する百々女だが、それを待つカダスフィアではない。
「たとえ良手でも一手頼みはそれそのものが悪手……高跳びが過ぎたな!」
 そう言ってカダスフィアは巨大な腕を百々女に叩きつけた。百々女はそれにより大きく吹き飛ばされ、デバイスもその衝撃でダウンする。しかしカダスフィアもその場で膝を突き、追撃には至らなかった。
 先手、後手、ともに深手を負う形でこの局は終了した。

成功 🔵​🔵​🔴​

御倉・ウカノ
*アドリブ歓迎
判定:WIZ

天晴な忠義心だが、あたしらも負けてやるわけにはいかんのでな。さっさと切り捨てさせてもらうよ。

敵が盤上で戦うってんなら、盤上をこっちのモンにしちまおう。先の先がとれないから敵が増えるのを止めることは出来ないけど、UCで結界を張りまくれば、雑魚どもを足止めできるはずだ。
上手く足止め出来たら『ダッシュ』で敵の群れを抜けてカダスフィアに速攻を仕掛けよう。護符も投げつつ『ジャンプ』で飛び上がり、顔面…目か口を狙えばダメージを与えられるだろう。

「お前さんは見上げたもんだが、ここで手こずるわけにはいかんのでな。いくぞ、あたし謹製の護符を大盤振る舞いだ…!」



 次にカダスフィアとの対局に臨むのは、御倉・ウカノ(酔いどれ剣豪狐・f01251)だ。
「天晴な忠義心だが、あたしらも負けてやるわけにはいかんのでな。さっさと切り捨てさせてもらうよ」
 そう言うウカノに対し、カダスフィアは口の端を歪めて笑う。
「それはこちらも同じよ。我とて捨て駒となることは厭わぬが、無為に負ける気はないのでな」
 カダスフィアはそう言って、地に散らばる無機物をチェスの駒と盤に変えて操りだす。兵士の形をした駒が最初の移動とばかりに大きく動きウカノに迫り、その手に持った剣を振るった。
「先の先は取れないのは分かっていたが……やはり早いな!」
 ウカノはその剣を受け止め、踏み込みながら返す刀で切り捨てた。しかしその一体を倒してなお、後続はすぐ近くまで迫っている。
「切り返しの剣か、まるでアンパッサンだな。しかしそれは盤に深く攻め込まれたということだ」
 カダスフィアの言う通り、切り捨てた兵の後ろからより強力な駒が次々と迫ってくる。それらはチェスのように一体ずつ進んでくるなどということはなく、全てが一つの軍団となって迫っていた。
「なら盤上をこっちのモンにしちまおう。空界蓮來 おおいなるかな、けんなるかな……とまあ、とりあえず喰らいな! 御倉流巫女神楽『野狐神鏡』!」
 厳かな祝詞と、それに続く勢いある声。それと共に放たれた護符が駒の軍団を襲った。しかしその護符はほとんどが駒に命中することなく、白黒の大地に落ちる。
「外れた……とは思えぬな、この数!」
「その通り! 出てこい結界、雑魚どもを足止めだ!」
 その言葉通り、地に落ちた護符は結界を広げ、駒たちを押しのける。結界に阻まれお互いにぶつかり合い、足並みを乱す駒たち。カダスフィアは駒を操作し軍勢を整えようとするが、その瞬間をウカノは逃さなかった。
「お前さんは見上げたもんだが、ここで手こずるわけにはいかんのでな。いくぞ、あたし謹製の護符を大盤振る舞いだ……!」
 護符を撒き散らしながら駒の間を一気に駆け抜けカダスフィアに迫る。敵を妨害する結界はウカノには力を与え、瞬く間にカダスフィアに詰め寄ることに成功した。そしてそのまま跳躍、遥か高みにあるカダスフィアの眼前へと舞い上がった。
「駒全無視の王手だ!」
 ブレスのような攻撃のないカダスフィアの顔には、噛みつきくらいしか恐れるものはない。ウカノは顔の中でもとりわけ弱点と言えそうな目に護符をぶつけ、口元を切り裂いた。
「ぐおぉぉぉぉぉぉ!!」
 カダスフィアの絶叫が響き渡り、駒たちは動きを止める。盤上を全て相手にくれてやる代わりに、ウカノは盤そのものを制したのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナイ・デス
とられることで、勝ちに導けると思っているのです、ね
けれど、そうはいきません
私達は、あなたを手始めに、勝利を掴むのですから

先手は敵
だから【覚悟】して見据え
【見切り、念動力で自身吹き飛ばし】避け
腕を犠牲に【かばい】受け
【激痛耐性、継戦能力】私の、ヤドリガミの肉体的負傷は、致命傷でも生命の危険に、繋がらないと
嫌というほど実感しているから、欠損しても動き、耐えて
UC発動可能になったら

次は、私の手番、ですね

と【存在感】放ちながら言い……けれどそれで力尽きたかのように、倒れこむ
その瞬間

王手(チェック)です

『今はあなたの後ろにいる』
【暗殺、鎧無視攻撃】鎧の刃さして【生命力吸収】
力を奪い、次が、楽になるように



「とられることで、勝ちに導けると思っているのです、ね。けれど、そうはいきません。私達は、あなたを手始めに、勝利を掴むのですから」
 ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)は戦前のカダスフィアの叫びにそう返す。その目はカダスフィアを、さらにその先にいるヴァルギリオスを……そして、それら全てを打ち倒しての勝利を見据えていた。
「我を捨て駒にすらさせぬと言うか」
 カダスフィアがそう言って手を振ると、周囲からはチェス型ゴーレムの大群が出現、白黒の大地の上を、まさにチェスの駒の如く進撃しはじめた。
 距離制限を持つ技ではあるが、カダスフィアの圧倒的力量の前ではそれはあって無きも同然のもの。それだけの力のあるものが相手だと、ナイは最初から覚悟していた。
 故に敵の行動を見据え、兵士の剣を見切って回避する。そこに上空から騎士が襲い掛かるが、念動力を自分に叩きつけ、その身を盤のより深くへと吹き飛ばすことでかわした。
 しかしそこには僧正が尖った先端を向け、鋭く差し込んでくる。ナイはその切っ先に向けて腕を伸ばすと、自身の腕を刺し貫かせて威力を減衰、体への直撃を防いだ。血が溢れ、腕が明らかに危険な場所まで抉られたのが分かる。
 さらにそこへ左右から、城塔が戦車の如き勢いで突っ込んできてナイを挟み潰した。全身に強烈なダメージを負うが、それでも駒の間から這い出し、カダスフィアへと近づいていく。戦いを続ける力は、まだ尽きていないと言わんばかりに。
「凄まじい……だがこれで、チェックメイトだ」
 カダスフィアはナイのその姿にある種の敬意すら覚えつつも、女王の駒をけしかける。女王はその杖をナイの胸に向け、無慈悲にそこを貫いた。
 明らかな致命傷を負い、ナイは前に倒れていく。しかし、その口が動き、カダスフィアにも聞こえる声ではっきりと言った。
「次は、私の手番、ですね」
 そのあまりの存在感に目を離せずにいたカダスフィアの眼前で、しかしナイは力尽きたように崩れ落ちた。
 カダスフィアが敵の死を確認しようとした、その解き。
「王手(チェック)です」
 その声は今ここで力尽きているはずのナイ。いや、違う。
「今はあなたの後ろにいる」
 その声は、カダスフィアの後ろ、首元から聞こえた。
 ヤドリガミであるナイにとって、仮の肉体がいくら傷つこうと直接の命の危険はない。嫌という程実感していることであった。そして仮の肉体が崩壊することが、このユーベルコードの発動条件でもある。
 あの進撃はナイにとっては仮初の肉体を捨て駒にしたもの。そして、この攻撃も。
(次が、楽になるように)
 ナイにとってこの一撃さえ入れられれば、例えこの後叩き潰されようと構わなかった。
 強靭な鱗をすり抜け命を啜る一撃が、盤の王の首に突き立てられた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒城・魅夜
ゴーレムたちが盤面上をいかに自在に動き回るとしても、逆に言えばそれだけのこと。
早業・範囲攻撃・ロープワークで鎖を縦横に舞わせ、盤面たる地面そのものを撃ち砕きます。
目的の一つはゴーレムたちの行動を阻害すること、そしてもう一つは瓦礫と砂塵を舞い上がらせること。

駒たちが転倒を始めたら、それが更なるほかの駒の転倒の引き金となり、盤上は大混乱をきたすでしょうね。
その隙に私は舞い上がった砂塵を利用し、闇に紛れるように我が姿を隠しましょう。

機に乗じて間合いを一気に詰めます。
帝竜からの攻撃を見切りと残像・第六感でかわし、多少の被弾は覚悟と激痛耐性・オーラ防御で凌ぎつつ、108本の鎖を帝竜へ叩きつけましょう。



 それぞれの手、それぞれの打ち筋でカダスフィアの盤を破壊してきた猟兵たち。対局も終盤、詰めの一手を打つべく、黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)がカダスフィアの前に立つ。
「来るか猟兵。さあ、終局を始めるぞ。行け、ミリティア・カダスフィアよ!」
 こうしてカダスフィアが駒たちを呼び出すのも何度目か。先手を取って襲い来る軍団に、魅夜は向かっていこうとはしなかった。
 魅夜は自身が立っていた場所の周囲を高速で動き回る。その速さは簡単に捉えられるものではなく、何をしているかはカダスフィアの目をもってしても判然とはしなかった。しかし、先に呼ばれたゴーレムたちは既に魅夜の元へと辿り着いており、先鋒を務める兵の駒が剣を振り上げ魅夜に襲い掛かった。
 振り下ろされる剣が魅夜を掠め、傷を負わせる。それに構わず、魅夜は後ろに飛び退り、手に持っていたものを思い切り持ち上げた。
 それは、魅夜が足元に縦横に張り巡らせた多数の鎖であった。鎖は生き物のように跳ね、駒たちの足元を掬っていく。小型の兵や僧正は絡めとられ転倒し、騎士はそれに躓いては飛び損ね、転げた駒が城砦にぶち当たり、揺らいだそれが女王の行く道を塞ぐ。足元から巻き起こる鎖の波に、盤上は一瞬にして混乱の渦へと叩き込まれていた。
 そしてもう一つ、白黒に塗り分けられた得意な見た目とはいってもアックス&ウィザーズの自然豊かな地表であることに変わりはない。幾度となく大地に叩きつけられる鎖は、その大地を抉り、もうもうと砂塵を立ち上らせていた。
「盤返し……禁じ手中の禁じ手か……!」
 盤をひっくり返し駒を壊すなど癇癪を起こした子どもがやること。しかしこれはチェスではない。あらゆる手を用いるべき実戦であり、殺し合いなのだ。そこにそもそも禁じ手と言うものなど存在しない。それが分かっているからこそカダスフィアは自ら巨大な尾を振るい、砂塵の中を漁って敵の姿を探した。中の駒がぶつかり砕けるが、生きたものを潰した感触はない。二度、三度と往復させるが、余計に砂塵が巻き上がるだけ、確かな手ごたえは得られなかった。
 突如その尾の根本に軽い衝撃が走る。尾を見切りと勘で躱し砂塵を抜けた魅夜が、その尾を踏み台にカダスフィアの体を駆けあがったのだ。
「おのれっ!」
 王手をかけられたこの状態でなお、カダスフィアはあきらめず爪を振るう。それは魅夜の片腕に当たり、オーラである程度軽減してなお浅くない傷を負わせるが、魅夜もそれを歯を食いしばり絶える。そしてその腕をかけあがり、魅夜は血の流れる手をカダスフィアの首元へとむけた。
「愚か者の骸を糧に咲き誇れ鋼の血華」
 ユーベルコード【緋色の弔花は悪夢の深淵に狂い咲く】の、108本の鎖がカダスフィアの首に突き刺さった。それは中の肉と骨を破壊して逆側から突き出し、さらに首全体へと巻き付く。
 勝負あり……誰が見てもそう確信するこの状況でなお、カダスフィアは手を動かそうとする。
「リザインはない……王が盤から消える、その時まで……!」
 その王とはカダスフィアか、ヴァルギリオスか。魅夜はそれに、冷たい声で答えた。
「――チェックメイト」
 鎖が強く引かれ、カダスフィアの首を切り落とした。

 こうして白黒の大地での命がけの対局は、猟兵の勝利に終わった。
 しかしこれは帝竜戦役という長い戦いの中の、ほんの一局に過ぎない。
 すべての王、そして帝を討ち取るまで、まだ先は長い。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月09日


挿絵イラスト