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海上ドライビン・ゴー!

#グリードオーシャン

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#グリードオーシャン


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 速さとは命だ。
 なぜなら速さとは効率であり効率とは戦術であるからだ。

 速さが足りずシャークどもからエスケープできない脳足りんどもはシャークの餌になってもおかしくはない。
 速さが足りずストームからエスケープできない弱者どもは嵐に飲まれてクラッシュしてもおかしくはない。
 速さが足りずオーシャン・カレント(※海流)を渡れたないオットコドッコイどもはオーシャン・カレントにドボンしてズダダンとされても文句言えないわけだ。

 つまりここでは、速さが全てだ。
 つまりここでは、速さの足りぬものは、死んでも良いということだ。

 なので我々海賊が支配してこうしてレースしてやると言うのは割に理に適っていると行ってイーコール・慈善・事業、のはずだ。

 だがブラザー、プリーズ・リッスン。

 あんまり速くて抜かれるとハラ立つよね?

 特になんて言うの、普通の住民(パンピー)にそれされっとマジ頭に来んじゃん?
 しかもよ?我々最速のためにここまでしたのによ?
 と言うわけで沈めます。

 でも手加減されてもハラ立つじゃん?
 なんでこれも沈めるわけ。

「理不尽…ッ…理不尽だよお…!」
 島民たちは涙ながらに準備をすることしかできない。
 主人の涙を察してイルカが鼻を鳴らした。
 かくして今日も、海上レースの幕が開く。

●めざせ海上ッ!最速ッ!
「ヘイ猟兵、海上最速目指してみない?」
 夏に全くふさわしくない革の全身鎧、イージー・ブロークンハートはそう言った。
 彼が乗るのは公園によくあるスプリング遊具である。ちなみにイルカさんだ。
 子供用であるがゆえに足が非常に余ってヤンキー座りの様相であった。
 一体どうやって持ってきたんだろう。
 サングラスもかけている。

「俺思うんだけど、海賊てどっか海ヤクザか海モヒカンみたいなトコあるよな」
 暴論である。
「今回は一味違うぜ」サングラスに手をかけ唇を歪める。本人としてはニヒルなつもりだろうが素地がモブなのでただの柄の悪いにーちゃんである。

「海上暴走族」
 一緒じゃね?

「海と聞けばきっとお察し、今回の舞台はグリード・オーシャン。最速求める海賊をカンッペキに叩きのめす話だ」
 イージーはサングラスを外しきみたちを見る。

「舞台は団扇島(うちわじま)。スペースシップワールドのコロニーかなんかのアンテナが島にぶっ刺さってて、それがでっかい団扇に見えるからそう呼ばれる、そーいう島」
 外したサングラスをカチューシャのように頭にさす。
「アンテナのせいか知らんけど、周囲を激しい海流に囲まれた島でさ。島の人は誰でもその海流を超えられるような技能を持つわけ」
 イージーはイルカのハンドルに両手をかけた。
「で、そこにオブリビオン…コンキスタドールどもが目をつけた、と」
 体を揺らしキコキコとゆっくりスプリング遊具を揺らし始める。
「島はコンキスタドールどもに支配され、選民まがいのレースが毎日開かれてる。――ところがどっこい、こいつが理不尽でさ」
 前に体重をかけ、ぎゅわと前のめりになる。
「コンキスタ・ドールの海賊団のボスを追い抜いても死、手加減しても死、なのよ」
 あんまりである。
「おまけに妨害付き」
 あんまりである!!

「というわけで依頼の流れはこうだ」
 ハンドルから両手を離し、バランスよくイルカに乗ったまま立ち上がる。

「レースに参加し、妨害も吹っ飛ばしながらボスに追いついてブン殴って沈めて島を救おう!」
 クイズに正解して海外に行こうみたいな軽いノリである。

「今回はしんどい思いは一切なし」
 残酷ではない予知のおかげか、いつになく朗らかだ。ウインクなどしてくる。
「まずは先駆け、レースでぶっ飛ばそう。乗り物は向こうの用意に従うか、向こうが提示する条件に合うものを使ってな」
 器用にもそのまま立ち乗りでキコキコとイルカを揺らす。
「あんたらがレースをぶっちぎれば当然、敵さんは妨害してくる。そしたら集団戦だ。スピードを落としてもいけない、かと言って沈められてもいけない。ドライブしてるまんまだってことを忘れずにな」
 立ち乗りしながらふざけたシャドウ・ボクシングの真似事などしてみせる。
 イージーは調子に乗ってきたらしい。イルカを止めて今度は片足立ちになった。
「妨害を潜り抜けたらいよいよ敵さんの船に接敵だ。海賊船に乗り込んでボスを叩きのめすとしよう。甲板だから思う存分戦えるはずだぜ?」
 ほっ。
 一息吐き出してジャンプする。どうやらイルカの背に立ち乗りしようとし、

 あっ。

 足ィ滑らせた。

 ……。

 …イージーの顛末を語るなかれ。
 一言添えるならイルカの鼻は長いと言うことだ。公園にあるスプリング遊具とは子供が遊ぶことを考えておりかなり丈夫に作られている。
 男性ならばヒュッ…と口から思わず息が飛び出したに違いない。
「……うん、あの…気軽、に…行って、きてよ…気をつけて、な…マジ濡れるから…かぜ、引かないように…ね…」
 イルカから落ちた男は文字通り這うようなポーズでギリギリからさらに捻り出される歯磨き粉みたいな声を絞り出してくる。
 なぜだろう。今まで調子に乗りまくった彼を見たからか、あまり慰める気が湧かない。

「じゃ、よろしく…」
 転送が始まった。


いのと
 こんにちは、あるいは初めまして。いのと と申します。
 好きな海洋生物はマンボウです。

 今回ははじめてのグリード・オーシャンのレースシナリオになります。
 とても明るいシナリオです。ギャグです。

 今回はしんどい思いも辛い敵も一切ありません。本当にありません。
 どこから参加しても大丈夫です。

 乗りたい海洋生物があればプレイングにご明記ください。

 受付期間はマスターページをご覧ください。
 勢いに任せるため、今回は少数採用となります。ご了承ください。

 第一章・ご機嫌レースです。ギャグです。
 第二章・海賊船を追っかけながらの集団戦、モッフモフです。
 第三章・海賊船に乗り込んでのボス戦です。
 海は広いな大きいな。
 海の方が陸より落ちた際の危険性は高そうですよね。
 ご参加、お待ちしております。
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第1章 冒険 『駆け抜けろ!海上レース!』

POW   :    全速前進突っ走るッ!

SPD   :    操縦テクニックで駆け抜けるッ!

WIZ   :    海流や風を見極め走り抜けるッ!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●海上・ハイパー・レース!●
 強い潮の匂いがする。スタート位置だと言うのに波が打ちよせる。
 きみがレース参加の意を示すと、島民と思しき受付は大きく頷いた。
「お話は伺っています。こちらへ」
 レースで君たちの命綱となるマシンを案内しようと言うのだろう。
 まず見えるのは競馬でも見かけるような発馬機の海上版だ。
 そしてそこに並ぶのは
 
 イルカ・シャチ・サメ・ノコギリザメ・マグロ・巨大ウツボ・マンボウ・ペンギン。

 そしてカニ。
 などなど。

 待って。

「どの子も乗り手の言うことをきちんと聞く良い子です」

 待って。

「こちら鞍です」
 どうして待ってくれないの。
「レースまで時間がありません」
 巨大ウツボとはなんなのか。カニってあれ海上を走ると言うのだろうか。
 マンボウは不向きではないのか。ペンギンに乗るてどないするねん。
「数名のお客様にはこちらも」
 す、と示されるのは二人乗り用の鞍と、おそらく馬のように海洋生物に牽引させるというのだろう、箱型の小舟である。
 魚(一部疑問形)たちはきみたちが知るものより随分と大きく、きみたちが乗る分には苦労しないだろう。
 もちろんきみが海上小型船や水上バイクほか、海を走れる小型の乗り物を持つならばそれを利用しても構わない。命かかった海上レースだ。自分に良くなじんだ乗り物のが良いに違いない。
 
 そう、そしてレーンの向こうに今回のオブリビオンの配下だろう海賊団がいる。
 誰も彼もヒューマノイド・あるいはロボットであることが見て取れる。
 突っ込みたくないけどモヒカンついてる。

 彼らが乗るのは水上バイク そして船。
 差!!!!なあ!!!文明差!!!!

「あれしきの鉄クズやバイクに遅れをとるニャン太郎号たちではありませんッ!!」

 魚しかおらんやんけ!!!!!!!!

 螺貝が鳴る。

 何はともあれレースである。参加せねば話が始まらない。
 海上での妨害は予想されうるし、意外と海流がヤバげである。

 では猟兵、海上・ドライビン・ゴーッ!!
『さてそれでは本日も始まりましたレース、実況は島民代表として・やっぱりシャークが好き、オーヒラと』

『(コフー)(コシュー)(電子合成音声:冷徹冷静明解なる解説は海賊団代表フカヒレがお送りする)』
エスタシュ・ロックドア
イージー、無茶しやがって……。

俺ぁ跨るのはシンディ―ちゃんだけって決めてんだ
決して海洋生物に乗れっつー胡乱に気後れしたとかじゃねぇ
シャチとサメに若干惹かれたが心に決めた愛機がいるからな
な!

シンディーちゃんに【騎乗】
『ゴッドスピードライド』発動
【メカニック】【武器改造】も乗せて、
高速水上形態に変形させて【運転】
【ダッシュ】で海上を一直線に突っ走るぜ
本来安定巡行向きのシンディーちゃんだが、
卑劣な海賊連中に後れを取るわけにゃいかねぇ
ブルーフレアドレス点火
一気に差をつけてやらぁ

何かしらの妨害はライディングテクで回避か、
フリントを【怪力】でぶんまわして弾く
いいマシンだな、そっちは狙わねぇでおいてやる



●海上レディ・マッハゴー!

 発馬機ならぬ発魚機でスタンバイするイルカと目があった。
 思わずエスタシュ・ロックドア(碧眼の大鴉・f01818)は天を仰ぐ。
「イージー、無茶しやがって……」
 蒼天に今は(股間が)亡き(※なくなっていません)猟兵の笑顔を浮かべる。
 漢の誇りを賭けられては(※自業自得です)漢としては応えてやる他ない。
 …と言うわけで訪れた海上レースだったが、エスタは胡乱の香りをひしひしと感じていた。
 島の側面にはところどころモニター付き観客席が備え付けられており、レースを最初から最後まで満喫できるようだ。満員御礼。島民とサイボーグがちょうど半々。
 ……。
 硝子剣士の話ではだいぶ世紀末じみたレースのようだと思われたがどう考えても娯楽である。
 おせんにたこ焼きビールにスナック、イカ焼き綿飴サイボーグの皆さんには上質オイルに非合法ギリギリシャブ・チップ〜スパークリングジャンク〜とか聞こえてくる。
 お前ら実は仲良かったりしねえか。

「あ、ご注文はンギョンボローですか?」
 イルカのそばで立ち止まっていたエスタに気付いて受付が声をかけてくる。
 ねえそれイルカの名前なの?
 突っ込みはさておきエスタは首を左右に振る。 
「悪いが、俺ぁ跨るのはシンディーちゃんだけって決めてんだ」
 決して海洋生物に乗れという胡乱に尻込みしたわけではない。決してない。
 今回の戦いは予想以上の胡乱海流が予想される。油断すれば胡乱の民待ったなしに違いなかった。思い浮かべといてなんだが胡乱海流とか胡乱の民ってなんだろう。
「シンディー?」受付はピンと来なかったらしく一度エスタの愛機の名前を繰り返した、が「ああ!」ピンときたらしい。尊敬の輝きを込めた笑顔を見せる。

「スズキ亜目ハダカスズキ科ゼンラスズキマッパー!!」
「バイクです」
 思わず敬語で突っ込む。

「すごい、乗りこなしが難しいけれど重量ボディに見合うだけのパワーが素晴らしい個体ですよね、黒く塗っても透けるメタリックボディが魅力的でかっこいい!」
「おう、前提が魚であることを除けばその通りだ」
 むしろそれが魚の説明であることにびっくりである。魚を黒く塗ってどうするのだろう。「サメ海流も大丈夫じゃないですか!」サメ海流って何。

「やだもう!最高!それじゃあうちの子たちをお勧めするのは失礼ですよね〜!」
 シンディーちゃんがスズキ亜目ハダカスズキ科ゼンラスズキマッパーである誤解のまま話が進んでしまう。人の話は聞いてほしい。バイクだっつってんだろうが。
「つーわけだから、空いてるレーンに案内してくれや」
 エスタシュとしては非常に不本意だが多分これこの誤解を訂正するだけで日が暮れそうなのでもう突っ込まない。漢の誇りに誓って受けたのはレースをぶっちぎってオブリビオンを殴って沈めるとことでありスズキ亜目ハダカスズキ科ゼンラスズキマッパーの誤解を解くことではないのである。非常に不本意だが。「かしこまりました!」
 愛機があって本当に良かった。レースが始まる前から大惨事である。
 スタート位置へ案内されながらスタンバイする海洋生物を眺める。ヒトデとかペンギンとかトドとかいる。これに乗る自分を想像すると大変に胡乱だ。こちらですと案内されたレーンの両脇にはそれぞれシャチとサメがいる。
 いやでもサメ…サメかっこいい…シャチなんかエスタシュに向かってレーンに乗り上げている。尾で水面をパシパシ叩いて…
「あ、えびせん丸にします?」
 はっ!
 エスタシュは我に返る。
 気付いたらシャチのレーンで足を止めて両手でシャチの(受付曰くえびせん丸である)の顔をむにむにしていた。
 何も知らないシャチが子猫に似た鳴き声でエスタシュに向かって甘えている。
 ……。
 パァン!
 エスタシュは両手で思い切り自分の頬を叩いた。
「乗らない」「いいんですか?」「ああ」立ち上がる。
 もはや一刻の猶予もない。ピープルオブザ胡乱へのロードがそこまで迫って来ている。 
 であれば呼ぶしかなかった。
「俺には心に決めた愛機がいるからな」
 一度口にしたのと同じ言葉を再び。
 エスタシュに応えて天より一条の輝き。
 水しぶきと共にシンディーちゃんレーンへと降臨ッ!!!
 もちろんそのままでは可愛いシンディーちゃんが海にドボンである!
 よってコード発動。
 ゴッドスピードライド。
 宇宙バイクが変形する。タイヤは収納され、シャチにも負けぬ緩やかなカーブを描く船底が現れる。開かれるのは海流を取り込むスコープゲート。排気のためのエキゾーストパイプは加速のためのジェットポンプへ。
 そう、マリンジェット――高速水上高速形態である!
「な!!!!」
 飛び乗る。

「バイクじゃないですか!!」
「そういってんだろうが」



 全ての胡乱と杞憂はスピードが解決してくれる。
 ど晴天の好天候、限りない海と空の青の真ん中を突き抜けて疾るのは気持ちが良いと言う他なく。
 先行車と先行魚が振り上げた水しぶきが太陽光を反射して描く幾重もの虹を突き抜けながら疾るなどなかなかできる経験ではない!
「海いいな海!」胡乱に飲まれかけたのもどこへやら。すっかり晴れやかな気持ちで駆け抜ける。
 暑い日差しに空気を割いて起こる冷えた風が心地よい。
「やっぱ最高だぜシンディちゃん!!」
 エスタシュの賞賛に応えてかおん!とエンジンが一際大きく鳴る。
 シャチにのまれなくてほんとによかった!!
 海は一見平坦に見えるが、その実水上走行とは陸とは大きく質を異としている。
 ひとつには海流。何十匹とうねる巨大な蝮か蛇の背を渡るかのようだ。海洋生物に乗るとは胡乱極まりないしちょっと納得していいのか疑問が残るがまあ納得いかないでもない。油断すれば前輪と後輪を別の海流に取られて派手に転倒しかねないことが愛機から伝わってくる振動でありありと感じられる。海洋生物どもはこれを読み、補佐するのだろう。だがエスタシュが乗るのは愛機だ。補佐はない。
 海に浮かぶ細かな波から快路を選んで走る、エスタシュの腕が試されているといってよかった。
 ヘッ。鼻を鳴らす。「望むところだぜ」
 油断すればタイヤが取られると言うのなら。
 ハンドルのグリップを握り込み、ひねる。

 超加速。
 タイヤが取られる暇もない速度で疾れば良いだけのこと!

『文明〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!!!なんと言うことでしょう!海洋生物に乗らずにこの団扇の海流を渡る男が現れましたッ!!』
 実況のシャウトにエスタシュは笑って親指を立ててやる。
 でも文明ってシャウトはどうなんだろう。
『(カシュー・コフー)(電子合成音声:人類にしては“やる”速度であるといっていいだろう。とうとう我々に追いつく輩が現れたといっていい)』
 解説の音声がそれに続く。
『(ピポー)(電子合成音声:だが、いつまでそんな顔をしていられるかな?)』
 もう解説っていうかただの悪役である。

 解説が言わなくてもエスタシュとてわかっている。
 後ろからクソ喧しいエンジンジェットの音はもちろんパラリラパラリラというもうちょっとUDCでももう聞かないような暴走族のアレな音がする。後続機(プラス後続魚)から投げつけられているのは次々にグレネードなどが投げつけられている。転倒狙い?まさか。
 ここはレースのトラック上だ。転倒などすれば後続機(プラス後続魚)に轢かれることは想像にたやすい。
 加えてエスタシュのシンディは本来安定巡行向きの機体である。より長くそして確実に走るためのものだ。よって、複数のバイク(と魚)に挟まれての戦闘はあまり得意とするところではない。
「卑劣な海賊連中に遅れなんか取ってたまるかよ」
 スイッチボックスに付けられた青のボタンを押す。
 シンディのためのとっておき――ジェットエンジンのためのスイッチ。
 ハンドルをさらにもう一捻り。
 着火。

「一気に差をつけてやらァ!」
 Faster than faster, higher than higher.
機体が一瞬、宙へと踊る。

 いつもならば吹き上がるはエンジン名のどおりドレスが如きブルー・フレアだ。
 しかし此度は会場・海水。そして高速海上形態(お色直し)ともなれば。
 水しぶきの白に七色のプリズム弾ける海上魅惑のマーメイド!
 後続車(後続魚)を引き剥がし先頭集団へ、追いつく!
 モヒカンから火を噴いているサイボーグども。
 どいつもこいつもスペースシップワールドばりのごついマリンジェットだ。あとサイボーグなのにシャチに乗っている奴がいる。気持ちはわかる、わかるぞ。
 そのほとんどがレースだというのに二人乗りだ。
 エスタシュに気づいたとみえ、横一列に並びなどする。――嫌な予感がする。
 的中。
 振り返った手には一様にビームガン!
「てめぇ!」
 水しぶきの隙間から細かく放たれるレーザービーム。狙いはエスタシュではない。シンディだ!
 細かいリーンイン・アウトを駆使して紙一重で回避し続ける。
「狙うならライダー狙えや!それでもバイカーか!!」
『(ブブーッ)』至極わかりやすい返答が解説から返ってくる。『(ブブブー
ッ)(電子合成音声:否、我々は海賊団である!)』「解説てめえ覚えてろよ!!」
 レーザービームに当たったトビウオが海面で跳ねてエスタシュの顔に当たる。「うぉッ」『おっとエスタシュ選手余裕の駄洒落です!』「不慮の事故だ!!」
 トビウオを顔からひっぺがしサングラスをかけなおしながら正面を睨みつける。
「ああそうかいそうかい、んなら俺はこうだ!」
 右手にフリント。「横並列に並んじゃってまあ、覚悟はいいな!?」
 エスタシュの狙いを気づいたのか加速し隊列を変更しようとする。
 なんの。
 逃しはしない。
 ちょうど一台、滑り込める隙間ができた瞬間に加速――追いつく。
「いいマシンだな」あとシャチ。

 エスタシュはサングラスに太陽を映しながら笑い
「そっちは狙わねぇでおいてやる」
 フリントを一閃!
 叩き落として青へと沈める!

成功 🔵​🔵​🔴​

ルベル・ノウフィル
僕はやるぜ僕はやるぜ

いっけー王弟ペンギン1号!ドライビンッ
早業念動力で僕はペンギンを猛加速
ついでにUCで自分自身も水になるッ
ぁーっははは!お甘いのでございます!
このルベル!水中戦技能は持っておりませぬっ!

ですが僕自身が水となれば溺れる事も無く周囲の水に働きかけ共にうねり流れてゆける

海を揺蕩う死霊に呼びかけ、ライバルの足を引っ張ります
大人げない?
当然っ!僕はキッズでございますぅ!

途中共にうねる海水とフレンズになったり
異性の海水(謎)相手に甘酸っぱい恋物語を展開しつつ(無茶ぶり!)

最後はワンコ姿で華麗な犬かきをお魅せしましょうルベワン太郎号と呼ぶがよい
ご覧なさい、僕の、あっぷあっぷ
僕、あっ足がつっ



●ワンス・ロマンス・わわんわん!

「いっけー王弟ペンギン一号ッ!ドライビンッ!!!」
 螺貝とともにルベル・ノウフィル(星守の杖・f05873)は真っ先に海原へと飛び出した。
 乗るは腹を下に羽を広げて進む海に生きるまさに鳥――ペンギンッ!

『おっと飛び出しましたペンギンッ!ルベル・ノウフィル選手選んだのはペンギン!王弟ペンギン一号号〜〜〜〜〜〜〜!!!』
 解説と共に飛行型ドローンが飛び出したルベルを画面に大写しにするべく迫ってくる。
「号がお一つ多いのです!」
 ルベルは突っ込みしつつファンサも忘れない。スマイル・アンド・ウィンク!
『(ピーホロロロツッピー)(電子合成音声:ペンギンといえば腹を下にして翼を広げるため初心者にも非常に乗りやすい生物だ。着実な手と言える)』
 解説がルベルの選択に華を添える。
 ちなみにこのレースでは死者も出るためいざという時の遺影も兼ねレース中にここぞという時はドローンによって写真が撮られ、売られている。このルベルの写真はそのてのお兄さんお姉さんサイボーグさんたちにバカ売れするのだがそれはルベルの預かり知らぬ話である。さすがブラック・レース。肖像権の侵害待ったなしである。

 マグロや海上一輪車と共に飛び出したルベルの王弟ペンギン一号だが、しかし飛び出した勢いは続かない。
 徐々に後続車(プラス後続魚)との距離が詰まってくる。
「王弟ペンギン一号ッ!?」ルベルは鞍に乗ったまま相棒に声をかける。
“すまねえ坊ちゃん、やはり俺はッ…ペンギンッ!水鳥…魚のようには…行かないッ!"
「なんと…!」

『あーっとルベル選手王弟ペンギン一号、やはりというか初心者特有のペンギン・トラップにかかっています!』
『(プークスクス)(電子合成音声:ペンギンは主に陸生、魚を取る際の飛び込みから海上に上がるまでの短距離こそ本懐。乗りやすさと時速に騙されたようだな)』
 実況と解説による残酷な現実が通告される。

 …ルベルとて人狼、動物と話すことはできる。事前にこの王弟ペンギンと相談はしていた。スタートダッシュから最高速度を維持できる時間も聞いていた。聞いていたのだが、少々、早い…!
「まさかスタートまで待つ間屋台で頂いたアイスクリームが…!」
 ルベルは自分の選択を後悔する。だってスペシャルサツマイモとか聞いたらなんかこの海でレースなのにサツマイモみたいなチグハグな感じが試してみたくなるではありませんか!
“馬鹿いっちゃいけねえぜ、俺たちと違ってそう早く脂肪になるもんかよ…!”
 王弟ペンギン一号は笑って己の腹を叩く。
“すまねえ、ちと早いが頼むぜ、坊ちゃん…!”
「もちろんです」
 ぎら、とルベルは瞳に熱い炎を輝かせる。「ポージングはそのまま!」“Yesッ!”

「僕はやるぜ僕はやるぜ」
 灼熱の如き輝きは、さながら犬橇を牽引する若きシベリアン・ハスキーのようであった。
 なおルベル・ノウフィルは人狼であるッ!
 水泳によるものではない水滴がふ、と浮く。
「気持ち悪くならないようにだけご注意くださいませ、王弟ペンギン一号」
 心に渦巻く力を動員し――集中させる。

「レッツゴー・ドライビンッ!」
 念・動・力ッ!  
 ルベルの力に支えられ、ペンギンは今、己の最高時速を超えるッ!
 壁のような水しぶきを上げ、爆走!
“うおおおおおおお!!!!ペンペーン!!”
 ペンギンはそんなふうに鳴かない。
『何ィーーーーーーーーーーーーーッ!!!なんと一旦落ちたかに見えたルベル選手の速度が維持、いえ、加速!加速です!加速の様相ーーーーッ!!!』
 眼前で起こった光景に実況が身を乗り出す。
「あーっはははははははは!!!」
 高笑いをたてるルベル。
「お甘いのでございますッ!ここで落ちる僕ではありませぬッ!」
 熱くなるルベルと実況に対して、しかし解説は冷静そのもので告げる。
『(リーロロロロ)(電子合成音声:しかし所詮ペンギンの肺活量的に長く海中に潜ることは難しい、所詮浅知恵よ)』
「そのようなことは承知千万!」
 そうとも知っている。
 知っているからこそ、対策などとっくに講じている。
 ルベルは鞍の安全ベルトを外し、そのまま鞍の足置きに足を置いたまま立ち上がる!
『おっとルベル選手おもむろです!おもむろに立ち上がりました!これは脱衣の予感ーーーーーッ!』
 客席の特定のお兄さんお姉さんロボットさんたちが立ち上がってカメラでズームアップする。
 ルベルはしかし不敵な笑みを崩さない。
「このルベル!水中技能は持っておりませぬッ!」
 それはそれとして海でびしょ濡れである。とりあえずカメラが捗っている。
『ならなんで立ったーーーーーーーー!!!?』
『(ピッポー)(電子合成音声:海洋生物の負担を減らすための立ち乗りであると予測される。少しでも負担を減らそうと言う愚かな足掻きに違いない』
 あくまでも冷徹に言い続ける解説。
「水中技能は持っておりませぬ、しかし――目にものをご覧に入れて見せましょうッ!」
 ジャンプッ!
 どこかのだれかのように股間は打たない!
 そも、打つことすらできない――いや、ないとかあるとかそう言う意味ではなく(ルベルは健全な13歳の男の子である)――ルベルの体が、変質するのだ!
 ユーベルコード『黒水』。
 黒い水へと変質し、王弟ペンギンへ降り注ぐ――否!
 王弟ペンギンの下敷きとなって、海とペンギンの腹の間に入り――支える!
 ここにッ!王弟ペンギン一号はッ!
 おそらくペンギン史上に残るであろ偉業――海上を腹で滑るペンギンとなったのである!!!
『何という弱点のカバーでしょう!素晴らしい!ペンギンの速度と体勢を無理なく維持ーーーーーーーーーーーーッッ!!!』
『(ポピーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!)(電子合成音声:ルール違反!ルール違反ッ!)』解説が頭から湯気を吹きながら吠える。
『いえ、マグロを乗せてバタフライで参加した男の例もあります!これはアリでしょう!』
 何それ
 
 ルベルは人狼である。ルベルには騎乗が分からぬ。ついでに水中技能もない。
 しかし海流とおしゃべりすることに関しては人一倍高い技能を持っていた。
 特に
「ヘイ、ハロー!ご機嫌ようでございます!」
 水流となり超加速のペンギンを運びながら水面の下に呼びかける。なんか声かけがハイテンションだがそこは気にしてはいけない。夏とは理性が蒸発するものである。暑いから。

「海賊団に復讐したい死霊(ひと)この指…は、今ないのでこの海流にお集まりくださいませでございま〜〜〜〜〜〜〜〜〜す!!!」
 特に死霊に呼びかけるのは大得意というか本業というかサブ・ジョブである!!!!
「ヒャッハアアアアアアアア!!!」「イエスヒーーーーハーーーーーーーー〜!!!」「たま子の仇ィイイイイイイイイイイ!!!」
 亡霊とは思えぬハイテンションである。
 そう。この海流。
 ギャグでわかりにくいがレースのお陰で割と人が死んでいる。
 あと海洋生物も割と死んでいる。
 呼べば答えるどころかこれを待ってた節すらあった。
 ルベルの呼びかけに応えて語るもおぞましい亡霊どもの手が次々にモヒカン・ロボ・バイクへと伸びる。
 相手が魚ならば手のうちようもあったろう。相手が生物ならやりようもあったろう。
 しかし、相手は亡霊漂う、海そのもの!
 海賊団を海へ引きずりこむ水柱が次々に立ち上がる!
「あーーーーーーっはっはっはっは海の恨みを知るが良いのでございますッ!!」
 ペンギンを乗せながらルベルは高笑いする。
『大人げない!大人げないですルベル選手!妨害するならもっと広い範囲でということでしょうお前の血は何色いえ今黒ですね〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!』
「大人げなくて結構!」ルベルは万感のドヤで返す。「僕はキッズにございます!」
『(ペペポピ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!)(電子合成音声:悪辣非道!悪辣非道!!)』
「なんとでもおっしゃってくださいませ!恨むなら罪なき人々と魚々(うおうお)を無作為に殺めた己を恨むのでございます!!」
 …どう考えてもルベルの方が正論であるにもかかわらず漂うこの世紀末感はどうしたことだろう。まあどうにかなっているのだろう。夏だし。

 いくつも沈むバイクやボートの間を悠々高速海上腹滑りを決める王弟ペンギン!
「イェーイ3機沈めたぜ!!」「アタイはおっきめのボートよ!」
「ご助力、感謝でございます!」
 嬉々としてハイタッチならぬ波タッチを交わす。もはやすっかり海流フレンズであった。
“さすがだぜ坊ちゃん、死んだ息子も浮かばれらァ”王弟ペンギン一号がしみじみという。
「ふふ、であれば僕も嬉しく思います」
 ルベルは微笑む。そう、ルベルと死霊の関係は、多くは悲劇を語る側と聞く側だった。こんなふうに笑って波(※手)をたたけるとは思ってもみなかった。
 なんて素敵な、海水フレンズ――…

「わたしからもお礼を言わせて」
 ふっ、と。黒水ルベルの向かい側に少女の海流が現れる。
「ハッ」ルベルは思わず目を見開く。
 海流同士なのできっとこの現象がわかるのは海そのものか水の精霊のほかにいないだろう。
"どうしたんだ坊ちゃん?"あまりにも大自然の存在すぎて王弟ペンギン一号も気付いていない。
 例えるならばうつ伏せで泳ぐその真向かいに仰向けの少女が現れた状態だ。全部海流なので人間に例えるしかないのだがふんわりウェーブヘアーにたれ目が可愛い女の子である。ぬるい温水が優しい。
「いつも寂しくて悲しかったの、たくさんの命が、死んでいって…」「海流殿…」
 激しい海流でうねるこの団扇島周辺の中において数少ない緩やかな流れだった。おそらくたくさんの小魚を生かし、守り、また海に迷った子供を押し返してきた優しい海流なのだろう。
「とても、かっこいいわ」
 華やぐように微笑む海流。
 十三歳青黒水年の胸をときめかすには十分な威力を持って余りあった。
「わたしも力になる――勝ってね」
 ルベルの向かいから隣へ、ルベルをさらに押し出そうというのだろう。海流が並ぶ。
 それの意味するところはわかっている。緩やかな流れが激しく変わるということは、すなわちそれまでの海流ではない、成長か、あるいは死を意味する。断ろうと思った。一瞬だけ。
 しかしその真剣な海差しに、ルベルはうなずくことしかできなかった。
「はい、僕は絶対に――」
 波(手代理)を伸ばす。せめて波を絡めて、一緒に行こうと――…。
 ドゥンッ!!「きゃあッ!」
 投げ込まれたのは手榴弾だった。外れるのなら海を滑るルベルにも王弟ペンギンにも効果はない。しかし、しかしだ!
 ああ、海流の彼女は、あっけなく、あっけなく…!「そんな」
 一瞬だけルベルの速度が緩む。
 そして卑劣かな!卑劣な海賊はそれを見逃さず、道路を鉄パイプでこすりながら現れる暴走族よろしく海流にとどめをさしつつ棒でルベルとペンギンを引っ叩くのである!
「海流殿ーーーーーーッ!!」“グワーーーーーーーッ!!”
『妨害炸裂ーーーーーーーーーーー!!!ルベル選手と王弟ペンギン一号、吹き飛びます!』
 黒水は弾かれ空中に弾ける「クッ!!」
 思わず宙で回転し、黒水を保てず狼、というかどっからどう見てもわんこである。
 可愛らしく宙返り!
 ルベルの登場を期待していたのとはまた別のお兄さんお姉さんロボットが思わず席から立ち上がってカメラを構える。
「な、なんのっ」
 着水!
 ルベルは頭を出す。

「こ、これしきのことで怯む僕ではありませぬっ!」
 完璧に海で溺れかけのわんわんである。

『可愛い』
『(ピンポーン)(電子合成音声:可愛い)』
 これには実況解説もカメラのシャッターを連打。

 ルベルの人形態と犬かき形態の写真が販売されることが爆速で決まった瞬間であった。
「お魅せしましょう、か、華麗な!犬かき!」
 写真を撮られるとなれば底意地でカッコつけるのが男の子である。
 ルベルは白鳥のごとく水面下の努力を必死でしながら(しかしカメラさんからは丸見えだったのだが)全力ドヤを決める。

「ルベルワン太郎号と呼ぶが良い!」
 人狼。

「ご覧なさい、僕の、この、あぷ」
 ちゃぷちゃぷ、ハフハフ。
 よく考えると泳ぐのは久しぶりである。
「あう、この、あぷ、」
 そしてあれ、もしかして、わんこ形態で泳ぐのは、はじ、めて、では…?
 ピキッ。足に電気が走った。「僕の、あっ、足――」
“坊ちゃーーーーーーーーーーーんッ!!!”
 吹き飛ばされた王弟ペンギンが追いついた。
「王弟ペンギン一号っ!」“これに掴まんなッ!”
 投げられたのはそう、最初にルベルが座っていた鞍である。
 手綱をペンギンがくわえることにより、鞍はペンギンの後ろに浮かぶ。
 これを浮き輪がわりに――ルベルが足さえばたつかせればジェットの代わりに!
 彼らは真の意味で相棒となったのである。

“さあ行こうぜ、坊ちゃん…!”
「ッええ!海上・ドライビン・ゴーッ」

 かくして。
 後々まで語られるベスト商品。
 犬かきルベルワン太郎号を牽引する王弟ペンギンというアニマルなビデオ誕生したのだった。

 めっちゃ売れた。

成功 🔵​🔵​🔴​

浅沼・灯人
よぉしレース行くぞォ!!
浅沼灯人22歳独身ッ!!現在彼女募集中!!!
赤銅(f01007)と一緒に参加だオラァ!!!

あ?じゃあお前このレースの間は彼女な!!おっしゃあ!!
彼女持ちになった俺はもう負けねぇわ残念だったなぁ!!

え、何乗るかって?ウツボ
なんかこのウツボいい顔してっからこいつにするわ
泳ぐ速さとかどうかわかんねぇけどこいつは殺れる顔してる
赤銅前と後ろどっち乗る?
そっかぁ、しっかり捕まってなよっしゃ

レース開始したらウツボに泳ぐことを任せる
お前なら……この海流を制すことができる。そうだろう、なぁ!!
敵の妨害は俺と赤銅でぶったぎり撃ちまくって止めるから
お前の往くべき路を泳ぎきれ!!!


多々羅・赤銅
はーーい灯人f00902とエントリーしぁーーす!♡♡
私彼女なる〜〜!一陣の風のようなラブかっ飛ばそうぜ〜〜!

ということで
多々羅赤銅24歳、彼ピとご機嫌1000%かっ飛ばしてくぜ!
ヒューーッバイクで培ったドライビングテクで最速まで連れてってー!

そこでウツボ選ぶとこめちゃくちゃ好き
おだてたらめっちゃ頑張ってくれるタイプしょウツボ 可愛い顔してるもん
後ろ乗る♡♡

さあさあ本気出してこうぜ!
あ、向こうに見えるの水上バイク。よおし
羅刹旋風、斬圧にて海を!ぶった斬る!
水の壁や海流遮断して妨害くらいはできるだろ、ヒュー!

泳ぐために生まれた流線形ボディ……お前が最強のウツボだ……私達でテッペン、とろうな……!



●本日限定・ボニーアンドクライド

「浅沼灯人22歳独身ッ!!現在彼女募集中!!!赤銅と一緒に参加だオラァ!!」
 チンピラ一名(※ 浅沼・灯人(ささくれ・f00902))様ご案内だった。
「はーーい灯人とエントリーしぁーーす!♡♡」
 パリピ一名(多々羅・赤銅(ヒヒイロカネ・f01007))様ご案内だった。
 受付は困惑していた。
 こういうわざわざ彼女募集中と言われてしまうパターン、身に覚えがある。
「ソロですか?カップルですか?」ついうっかり思わず聞いてしまう。受付の普段の仕事はラブホの受付である。
「え、何彼女募集中なん?」赤銅はカウンターに肘をつき、サインをする灯人の横顔を見る。「おー」ちなみに灯人は意図して横を見ないようにしている。
「じゃ私彼女なる〜〜!」
「あ?」灯人は思わず隣を見る。
 彼女?
 赤銅が返すのはウインク、そして投げキッスである。「一陣の風のようなラブかっ飛ばそうぜ〜〜!」
 そして灯人の答えを聞く前に彼の手からペンを取り
「多々羅赤銅24歳、彼ピとご機嫌1000%かっ飛ばしてくぜ!」
 満面の笑みで灯人の名前の隣に自身の名前を書く。
「じゃあお前このレースの間は彼女な!!」なぜかコンビの字を消してカップルと書く灯人。「おっしゃあ!!」効果が抜群だった。
 受付はもう突っ込まない。幸せに走れるのが一番だ。
「彼女持ちになった俺はもう負けねぇわ残念だったなぁ!!」
 いや、我々島民はヘルプを頼んだ側なので負けないのでいいのだが、なぜ負けないとガンつけられているのだろうか。わからない。
「ヒューーッバイクで培ったドライビングテクで最速まで連れてってー!」
 だが突っ込まない。楽しそうだ。幸せに走れるのが一番だ。いやほんとに。
「はい、ご健闘を〜〜〜!」
 もういろんな意味で。
 


「んで何乗るの?」
 レーンでスタンバイする海洋生物をためすがめつしながら赤銅は灯人に尋ねる。
 魚の顔はあんまりピンとこない。
「ウツボ」灯人の解答は早かった。「ウツボ?マジで」「おう来てみ」手招きして赤銅を呼ぶ。「そこでウツボ選ぶとこめちゃくちゃ好き〜〜〜〜〜!」半ばスキップで駆け寄る。
 確かにあるレーンにウツボがいた。水族館で見るのより何十倍も大きい。
 それが灯人に向かって大きく口を開けている。
「うっわデカ」赤銅が素直な感想を口にしながら近づくと、ウツボはやや赤銅をじっと見たあと同じように口を大きく開く。「な」灯人がそれに頷く。
「なんかこのウツボいい顔してっからこいつにするわ」
「ウツボって速いんかね?」赤銅は最もな疑問を口にする。「わっかんね」灯人は素直に答え「わっかんねえの〜〜?」赤銅がそれにケタケタ笑う。
「泳ぐ速さとかどうかわかんねぇけどこいつは殺れる顔してる」
 灯人はよくわからない確信と共に頷く。
 なんてったって今も口を大きく開いて灯人と赤銅を交互に見ている。
 いける、これは殺れる。
 きっとお前ら乗り手とは言え丸呑みしちまうぞというアピールに違いなかった。「えっこれおだてたらめっちゃ頑張ってくれるタイプしょウツボ」手を伸ばすと口は開けたままだが意外と素直にも頭を下げてくる。「可愛い顔してるもん」魚肌が意外としっかり張っていてツルツルである。
「かわ〜〜い〜〜がんばろ〜な〜」赤銅がニコニコするので灯人も手を伸ばして撫でてみる。
「お〜可愛いぞ〜」
 いや可愛いのは隣の女なんですけどね。今日限定彼女に浮かれている灯人であった。

 さて。
 かくして本日限定ボニー・アンド・クライドはウツボに乗ることになったのだが。
 彼らは一つ勘違いをしていた。
 おそらく受付がいたなら気づいて教えてくれたに違いない。しかしこの受付はカップルの邪魔はしない方の受付だったので、彼らに付き添って選ぶ手伝いをしたりもしなかった。よってこれはもしもだ。

 ウツボの大口オープンとは、求婚である。
 ちなみにこのウツボのメメちゃん、オスである。

 メメちゃんは数ある恋に敗れてもはやウツボに恋はすまいと思っていた。
 そしてレース魚に甘んじていた。風ならぬ波になっている瞬間だけがハピネスである。
 きっと波になれなくなった瞬間蒲焼か唐揚げになるのだ。それもいい。この荒波をかき分けてナイスなボディはきっと食べ応えがある。美味しく食べて欲しい。
 そんな怠惰な日々だった。
 それがどうだ。
 本日この!!!

「赤銅前と後ろどっちに乗る?」

 この状況ッ!!!

「後ろ乗る♡♡」

 どタイプの生命体が!!!!2匹も!!!!
 鞍の重みが心地良いッ!
 うち一体がオスで一体がメスであることはメメちゃんわからないことなのでさておき!!!
 そうメメちゃん(オス)面食いである。

 これはもはや頑張るしかない。
 メメちゃんは本気を出すことにした。
 …受付がいたらおそらくこう言った。

「たぶんすごい速度でますけど大丈夫ですか?」

 かくして、螺貝は鳴るのである。

 
 「アーーーーーーハッハッハッハッハアハハハハ無理無理無理無理クッッッッッッッッッッソ速〜〜〜〜〜〜〜〜い!!!」
 いやほんと速い。
 予想外の速度にしっかりと灯人に掴まりながら赤銅は大爆笑する。
「おっしゃいいぞいけウツボーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
 速度に笑っているのかこの密着びしょ濡れ状態に笑っていいのかわからない灯人も両手を上げる。正直生き物とバイクは違うのでウツボ任せなのだがめちゃくちゃ愉快な速度を出してくれている。スピードメーターが欲しい。

『驚異の速度!なんと言うことでしょうレースでは常に下位のウツボのメメちゃん!!本日最速タイム更新です!!!』
『(ゴゴー、ゴオー)(電子合成音声:島民よりも早くあのウツボを操る、今回のライダーはなかなかのセンスを持っていると言っていいだろう)』
『その通りですね、ウツボは体をくねらせて泳ぐため、今まで搭乗者が何人も振り落とされてきたのですが、今回のカップルはそう言ったこともありませんッ!お前たちが会場のボニーアンドクライドだーーーーーーーーーッ!!」

 ウツボのメメちゃん(オス)の真意を誰も知らない。たぶん一生誰も知らなくていい。
 ある現実はただ爆速ウツボが誕生したと言うことだ。
 螺貝直後、ウツボのメメちゃん(オス)としては大丈夫な二匹がどんな感じで乗っていてどう動いていいのかわからなかったので速度が出せなかったが、自分に任せてくれるとわかればもはや本気を出すだけだ。応援してくれているらしい声が誇らしい。もう今日蒲焼になってもいい。

「さあさあまだイケんだろウツボォ!本気出して行こうぜェ!」
 赤銅のハッパにウツボは尾で水面を叩いて答え
「お前なら……この海流を制すことができる。そうだろう、なぁ!!」
 灯人の声に応えてウツボは鼻から水しぶきを出す。
「よっしゃあそのまま風になれ!」「ウツボ海だから波だぞ!」「波になれ!!」
 スタートの遅れをぐいぐいと取り戻し、集団へ、迫る! 
「あ、見えた、あれじゃね?」灯人に片腕は回したまま手で傘を作り、目標を見やる。
 水上バイクと、小型船!
「よおし」水しぶきに濡れた唇をぺろり舐め、その片手を刀の柄に掛け、灯人の体に回した手を外す。
 実況と解説によって既に先行車(プラス先行魚)には状況が伝わっている。…おそらくだが、
“そう言う”狙いもあっての実況解説なのだろう。せこいことだ。
 ここからでも見える。
 放たれる投網と、そこに走ったスパーク!「投網ってローテクだよなあ」赤銅は思わず笑ってしまう。「まー続くだけある技術なんだよ」灯人が誰へにかわからないフォローを入れる。
「腕、借りんぜ、ダーリン♡」
「なんだったら持ってってもいいぜ」満更でもないように灯人は笑う。
「考えとく♡」
 続いてサイボーグモヒカンが何名か現れる。装備はなんとまあトンプソン・マシンガン!「スペシ出身なんだったらもっといーもん出してこいよ」「全くだ」二人獰猛悪辣極まりなく笑う。全くなんともまあ、今まで楽しい楽しいレースだったことが見て取れる。そんなら本当のデス・レースを教えてやらなくてはなるまい。

「いーかウツボ」
 灯人はウツボに話しかける。「敵の妨害は俺と赤銅で止める――見てろ」
 しゃり、と鋼を心地よく鳴らし、赤銅は刀を抜く。ゆっくり鞍の足掛けから左足を外し、体を少しだけ上げて鞍の上に載せる。安全ベルト?とうに外している。
 水しぶきを一身に浴びながら、ゆっくりと静かに、長く息を吸う。

「いくぜダーリン」刃のように甘い合図。
 灯人が右腕を上げる。
「いけよハニー」弾丸のような甘い肯定。
 
 赤銅は左手で灯人の右手を左手で思い切り掴んで支えとし、ウツボ右舷、右足を軸にほぼ水面に並行までに身を傾ける。
 そしてその鮮やかな刃を振り回す――羅刹旋風!
 剣圧に、海が、開く!
 どこまで?
 目の前を楽しそうに走ってやがった小型船の下までだ!
 チャチな投網が微塵切りになり、モータースクリューまでがようく見える。
 立ち上がった水しぶきがトンプソンの銃弾をことごとく防ぐ、わずかに残った弾丸も、赤銅の剣に打ち砕かれて意味もない!
「良くやった!」灯人が右手を引く。「うぉらッ!」赤銅を再び引き上げて後部座席に戻し――
「あとは頼んだぜ、ダーリン」赤銅が唇をとんがらせ、リップ・ノイズを鳴らす。
「任せろよ、ハニー」灯人は笑って、噛みつくような仕草で答え
 ――変わり、自分が今度は左舷へ大きく、転がり落ちかねないほど身を倒す。
 切り裂かれた海水が、縦に大きく壁となっているのなら、つまりその下はがら空きだ。
 モータスクリューと船体目がけ、指を伸ばす。
「バーン!」
 二発、大穴を開ける! 
 海が閉じるのと、船が爆発しながら沈むのは同時であった。
「イエーイ大成功!」今度は軽く赤銅が引っ張って「おうともよ!」戻りがてらにハイタッチ。

「見たなウツボォ!!!」振り切れたテンションで灯人は叫ぶ。「お前はお前の往くべき路を泳ぎきれ!!!」
「そうだぞウツボォ!!」言いながら赤銅はウツボの胴をペチペチと叩く。「泳ぐために生まれた流線形ボディ……お前が最強のウツボだ」どんどんウツボのメメちゃん(オス)を調子に載せる。「……私達でテッペン、とろうな……!」
 
「あ、そいや赤銅」さてお次の妨害へ、と身構えたところで、灯人はふと思い出す。
「受付さんサービス品くれなかった?」今体を横に傾げた時に気づいたのだ。
「あ、そいやくれたな」赤銅も同じく身を傾げたので思い出していた。「鞍の横につけてくれたやつね、ちょい待ち説明書見っから」
 口紅ほどの小さいコントローラーと海水でベシャベシャに濡れたメモ。よくわからない。「(ピー)かね?」「ばっかお前そんなマニアックなプレイするかよ!」
 ああしかし、一番大きい文字は読めた。
「魚用ジェット」
「は?」

「えーい♡」

 カチッ。

 のちに二人は語る。
 おそらくあんな体験もう二度とできない♡

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

エリオス・ダンヴィクトル
あのグリモア猟兵大丈夫だったのかな…?

んー…ともあれ海。
やべぇ、人生初・海なんだよな。海の生き物とか全然知らねぇし。
乗れそうなやつで、なるべく速そうなやつ…ってどれだ?
出来れば黒いのがいいな…っつってもやっぱりあんまり絞れねぇや。よっしゃ、ここは面倒くさいこと抜きで島民チョイスに任せるぜ!

あ、銃は使いたいから水にどっぷり浸かっちまう系はナシな。
え、ペンギンかシャチ引きの箱? どれでもいいよ。手が空いてりゃそれで俺はご機嫌。

…待て、おま今ギルマンって言った?
この世界ギルマンいんの?
いやいや、それって乗り回せるやつか。嘘だろ。いや、見てはみてぇけどそれで出るやついんの馬鹿じゃない
俺はやだよ?!



●ワンダー・オブ・ザ・シー

「あのグリモア猟兵大丈夫だったのかな…?」
 エリオス・ダンヴィクトル(陽はまた沈む・f27010)は手袋を脱いだ片手で波をチャプチャプ弄びながら思い返す。
 というのもエリオスに近寄ってきた生き物が、自分を転送した猟兵が乗ってたオモチャによく似ていたからだ。受付に教えてもらったがイルカというのだそうだ。
 見たことのない生き物で、寄ってきてぴいぴい鳴いている。
 ファースト・コンタクトとすぎてどう接触していいかわからずに、恐る恐る、手のひらを差し出すと濡れた鼻先てつついてきた。ぶほ、と息を吹いた時は驚いた。
 
 アポカリプスヘル出身のエリオスとしては、グリード・オーシャンは本当に眩いものだった。
 晴れた天気に浮かぶ雲はアポカリプスヘルでも見たが、湿り気と様々な匂いを含んだ風が新鮮だった。建物はどれも無事で、人々は呑気に歩いている。海水は乾くとどこかベタつく。
 色あせた絵本や残っていた資料から海の存在を知らなかったわけではない。
 しかしアポカリプスヘルでは湖すら貴重だ。全く想像がつかないものだった。
 未知との遭遇。レースより島を見て回りたい気持ちも強い。軽い依頼だと言うし、他にも参加している猟兵もいる。バックレちゃおっかな、そんな気持ちもすらしてくる。
 屋台からいくつもいい匂いがした。レースが終わったら時間あるかな。意識はどうしてもレース以外に逸れていく。
 とはいえエントリーに名前は書いてしまった。
 海が初めてなら海の生き物の知識もないので、乗りたい生き物もお任せで投げてしまった。知らないものを選ぶなんてめんどくさい。

 エリオスの武器は銃だ。両手は空いている方がいい。
 それからこの容姿で乗るならやっぱり黒い生き物がいい。
 それだけ。
「お待たせしました〜〜〜〜」
 気の抜けた軽い声で受付が駆け寄ってきた。
「いくつか引き船ご用意できるんですけど、ご相談と確認があって」
「ほいほい」立ち上がり、興味本位で受付が持っているリストを覗き見る。並ぶ名前はどれも馴染みがない。
「銃、使われるんですよね〜?」
「そうそう、だから水にどっぷり系はナシな」「ですよね〜〜〜」
 んーと受付は悩ましげに唇をすぼめる。
「一応ペンギンかシャチの引きかなって思ったんですけど、どうしても跳ねる子なんで水しぶきかかっちゃうんですよね〜〜〜〜」
「どれでもいいよ?」
 エリオスは自慢の容姿で優しく微笑む。こうするとだいたいの子はイチコロでうまいことやってくれるのだ。「手が空いてりゃそれで俺はご機嫌」軽く両手を上げてひらひら振る。

「じゃあギルマンのタツミ姐さんですね」
「待て」

 なんて?

「嬉しい〜〜〜タツミ姐さぁ〜〜〜〜んご指名です〜〜〜〜〜!!!」

 あろうことか片手に持っていた拡声器でシャウトしやがった。

「待て待て待て待て待て待って!!!!」
 受付の手首を掴む
「やだ、強引…」頬を染める受付。
「…そういうの、あなたなら、その、嫌いじゃない、ですけど…!」「そうじゃなくて」そうじゃなくて。
 エリオスは思わず受付の両肩を掴む。「いけません猟兵様、イルカさんが見てます」「そうじゃなくて!」
 本当にそうじゃなくて!!!
「おま今ギルマンって言った…?」 
 大いなる深き海のものども的なものの予感がする。

「はい!」

 満面の笑みッ!!

「この世界てギルマンいんの!?」
「いますよお〜海中に都市があるとも言われていますよ〜」「トップページの案内みたいなこと言わないで!」たぶんそのお知らせはもうそろそろ下げられている。後からこの戦いの記録を確認したところで皆一様に首を傾げるようなグリモア猟兵的ツッコミをかます。
「いやいや、それって乗り回せるやつか」受付の肩から離した片手を立ててブンブん横に振る。
「乗り回せないに決まってるじゃないですか」心配そうな顔をされてしまう。「なんで提案した!?」「猟兵様でしたので!」
「嘘だろ…」
 思わず顔を覆って俯く。
「いや見てはみてぇけどそれで出るやついんの…?」「過去数回いらっしゃったそうです」
「いるんだあ…」
 わあ…いるんだあ。
 いてしまうんだあ…。
「馬鹿じゃないの…」
「滅多にないので記録に残りますよ!やりましたね!」グッと拳を握って力強く後押しする受付。
「何もやってねえよ!?」そんなリストイン、まっぴらごめんである。「俺はやだよ!?」

「黙って聞いてりゃボウヤ、言ってくれるじゃないのさ」
 
 エリオスの後ろで深みのある艶かしい声がした。
 ちなみに人間では男性と言われるだろう声帯である。
「タツミ姐さん!」
 受付のはしゃいだ声だ。
「陸上にいらしてよろしいんですか?」
「そりゃ来もするさ、いつまで待っても来ないんだもの」
――きちゃった…!
 膝から崩れ落ちたい。いや崩れ落ちたところで何にもならない。
 絶対に振り返りたくない。エリオスは床を見つめたまま逃走の算段をする。足音は後方だ。「
それにね」しかもギルマンは受付と悠長におしゃべりしている。
 であれば。
 前方に行けば! 

「アタイ“ら”が運ぶオトコの顔ぐらいきちんと見たいじゃないか?」
 ギルマンと思しき影がいくつもさす。ピタピタという濡れた足音は1体2体ではない。
 だめだこれ――…!
「タツミ姐さん厳しいですもんね」エリオスの絶望をよそに会話が進んでいる。
「どうしたんですか猟兵様?」
 どうしよう。
 いつまでも俯いていては行けないので視線は下のままゆっくりと顔をあげる。
「いや、その」どう言い訳すればいいのだろう。
「俺、体調が悪くなってきちゃったなーって…」
「まあ!」おそらく前方にいるギルマンが嬉しそうな顔をあげた「やだタッちゃん、いい
オトコよぉ〜〜〜〜」ちなみにこちらの声帯も人間で言うなら男性である。「馬鹿、はしゃがないでよミチヨちゃん」タツミ姐さんとやらの声が叱責する。

「あんただって聞いたでしょ?このオトコ、馬鹿、俺は嫌だよと抜かしたのよ」
 希望ッ!これはキャンセルの流れッ!
 藁をもすがる思いでエリオスは思わず振り返る。

「そうだ、俺は嫌だ!」
 ホワイトパールなギルマンが立っていた。太陽光を受けて七色に煌めいている。
 ちなみにその後ろにも何体かギルマンが立っており、こちらは緑や青など色とりどりである。

「そこまで言われてオメオメ断っちゃアタイらの矜恃に関わる」

 だめだこれ――…!(※本日二度目)

 エリオスは目元に手を当て天を仰ぐ。
 青空に股間を打ってのたうっていたあの猟兵が爽やかに微笑んで親指を立てている気がする。ファイトじゃねえよファイトじゃ。テメエ。
「体調だって悪いし…」だめ押しをしてみる。
 が、鼻で笑われた。
「アタイらの運搬技術をイルカやシャチと一緒にしないでもらいたいね」
 ペチペチと足音が近づいてくる。
「安心しな、陸で座ってるより安心安全安定な乗り心地を約束してやるよ」
 天を仰いでいた手を掴まれた。
 わあ ちからが つよい 。
「そんでレース終了の暁にはアンタはその頑ななお口でもう一回お願いしますって言うのさ」
「乗らないで済むなら今言うわ!」
 わからないなりにちょっとはテメエ考えて選べばよかった…!
 しかし後悔しても遅い。 
「おだまりッ!アンタに拒否権はないんだ、行くよ皆!」
「大丈夫!姐さんたちの技術は最高ですから」
 受付が見送ってくれる笑顔が悪魔に見えたエリオスであった。

「オラァ百年ぶりのギルマン神輿だよいいね皆ァ!!」
「神輿って何!!嫌だーーーーーッ!」

〜以下ダイジェストをお送りします〜

『ご覧ください皆様あれに見えるはギルマン神輿ッ!この団扇島が団扇島になる前の記録にもあった!あの!伝説の!奇跡の!ギルマン神輿です!!!』
『(ゴボボボボボ)(電子合成音声:我々の強制でもってしても動かなかったあのギルマンどもを動かすとは相当の手練れに違いない)』
『非常に濃い疲れが見て取れますね、やはり一筋縄ではいかなかったと言うことなのでしょう』
「行くよ皆ァ!」「「おおーーーーーッ」」
「ソイヤッソイヤッソイヤッソイヤッ」「「「ソイヤッソイヤッソイヤッソイヤッ」」」
「オラオラオラ」「「「オラオラオラオラッ!!」」」

「どきなポンコツサビ臭やろうどもギルマン神輿がお通りだよォーーーーーーーー!!!」

 ……このギルマンが本気出せば猟兵要らなかったんじゃないだろうか。
 怒涛の神輿に担がれながら、エリオスはただ、そう思った。

 彼がドローンでしっかり写真も撮られ、おそらくこの海上レースがなくなるまで飾られることに気づいたのは、また別の話である。

 乗り心地はよかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

宇宙空間対応型・普通乗用車
水上バイクに船だぁ…?
旧式のオンボロ水上機が幅利かせてんじゃねぇぞオラァ!
スペシの技術の粋を集めて作られたこの宇宙空間対応型・普通乗用車様が、
本物の文明格差ってやつを見せつけてやらぁ!

ということで【水上走行モード】行くぜオラァ!
ホバー特有の滑らかな水上走行で、観客の目線をかっさらってやんぜぇ!
圧縮空気を吹かしてのジャンプすりゃ、多少の荒波や妨害もなんのそのだ!
むしろ近寄った奴らは風圧でよろけて大変かもしれねぇなぁ!
ヒャハハ!ひっくり返りたくなければ道を開けろ旧世代機どもが!
開けようが開けまいが関係なく突っ切らせてもらうがなぁ!

あ、乗りたいヤツがいたら乗せてくぜ。
シートベルトは忘れずにつけろよ。



●プライド・オブ・スペースセダン

「バイクに船だァ…?」
 きっとこれを、血のたぎりというのだろう。

 怒髪天を突く、というやつだ。メリメリとフレームから音がして今にも後部座席を天へと打ち上げてしまいそうだ。納期前になってシートの生地替えを要求された開発者が後部座席にロケットをつけて打ち上げていたように。

 宇宙空間対応型・普通乗用車(f27614)はスペース・セダンである。
 宇宙空間に対応した普通乗用車である。
 スペースに対応したセダンである。
 宇宙空間対応型・普通乗用車は自他共に認めるイケメン車両だ。
 時に生まれた子供を抱きしめた妻を後部座席に乗せ夫を運転席に乗せて自宅に運んだこともあるし、濡れ衣で追われる正義の新聞記者と組んで無事隠れ家まで届けたこともある。恋人たちの些細なすれ違いを本人たちの決めることと口出しせずに見届け、しかし出て行った彼女を追えと若者の背をクラクションで押したこともある。人格の発生を抱えたアンドロイドに、システムなんぞ糞食らえ、お前の魂で主人を選んでいいんだと諭したこともある。
 微笑みを多く乗せた。それ以外の表情もたくさん運んだ。
 常に安心安全、快適な乗り心地を提供してきた。
 それは、宇宙空間対応型・普通乗用車の誇りだ。
 自分は人々の人生に寄り添い、良き友であり、あり続けているハードボイルド・スペースセダンなのだ。
 真のイケメン車両とは十トントラックの荷台にも負けぬ心の広さと、常時冷静・沈着・ビークールであるべきなのだろう。

 本来は。

 だが。

 だが、だ。

 怒れるべき時を逃さぬこともまた、イケメン車両の誇り高き条件であるはずだ。

 依頼を聞いた時はさぞやと思った。一体どんな最新型が幅をきかせているのか?
 そしてどうだこの光景は。
 見よ、あの水上バイクを。なんだあのモデルは?ポヨタのペリウスか?何年前の?
 そして何だあの改造は?PMWなのに何であんなとこにメクダスのダクトなんかつけてやがるんだ?
 人類を支配?何年前のAIで?何あの片言でクソ古いSFみたいな電子合成音声喋ってる解説。

「旧式のオンボロ水上機が幅利かせてんじゃねぇぞオラァ!」
 宇宙空間対応型・普通乗用車、スペースセダンは激怒した。
 クラクションを鳴らし一直線に突っ込む!

「なァにが文明だデカイ顔してんじゃねえぞ!!」
 フォームチェンジ・水上走行モードッ!
 怒りのままにエンジンをふかし

「てめえの変形可動域と最大車幅と最大車高を言ってみろォ!!!!!!」

 搭乗者不在というくそ忌々しいレッテルで開かない発魚機の柵を突き破ってレースに強制参加する!!!

『な、なんだあれはーーーーーーーーーーーー!!!??』
 これには実況もびっくりである。驚きっぱなしのような気もしないでもないがそれはそれ余計な情報なので置いておく。
『(ピピピッ・ポッペーロロロ)(電子合成音声:あれは、セダン!?)』
 無論解説のデータにも最新モデルである宇宙空間対応型・普通乗用車のデータなどない。
『いませんッ!搭乗者なし!自動走行!前代未聞です!』
「バッキャロウ真の宇宙空間対応型・普通乗用車は自動走行対応搭乗者に負担をかけねえのが真の普通乗用車だろうがてめえの知識は紀元前か!」
 たしかに紀元前には搭乗者という概念すらない。
『(ギャリギャリギャリギャリ)(電子合成音声:クッソ何者だ名を名乗れ!!)』
 もう解説が解説してない。

「宇宙空間対応型・普通乗用車、スペースセダンだ覚えて帰れサビまみれのドクソ旧式鉄屑どもがッ!!!!!!」
 普通乗用車は高らかにセキリュティアラームを鳴らしながら応える。

「スペシの技術の粋を集めて作られたこの宇宙空間対応型・普通乗用車様が、本物の文明格差ってやつを見せつけてやらぁ!」

〜それでは本日は、クソ旧式どもには真似できない、宇宙空間対応型・普通乗用車、スペースセダンのご案内をお届けします〜
 この解説がどこから流れてるかとか考えてはいけない。
 誰もの心の目に現れるなんかミラクルな字幕・あるいは心の耳に現れる洗練されたナレーションによる音声である。

 バイクや船の登場こそすれ、さすがに普通乗用車の登場は誰しもが想像していなかった。
 誰もが呆気にとられて突如参加してきた普通乗用車をガン見する。
 まったくもって、マーケティングに絶好であった。
 会話ができないほどのエンジン音!海洋の平和を乱す荒々しい排気!
 スペースセダンはそれらを排気バルブで笑う。
 どう考えてもバイクなどを水上用に無理やり改造したのが見て取れる。陸で最速だから海でも最速を出せるに違いないって?愚かの極みだ。
 搭乗者への心配りと貴重な生命環境への対応がなってねえ!

〜環境に合わせて幾多の車を所持するのは、もはや旧世代の話。
 こちら真の宇宙空間対応型普通乗用車とは、宇宙環境はもちろん、陸上・水上・水中までのあらゆる環境においての走行モードを搭載しております。
 いつもの安心・安全な乗車体験を、どこでもお届けすることが可能でしょう〜
 
 おお、人々よ、見よこの水上ホバーによる上質で滑らかな走行を。

 ドリンクホルダーに置かれたコーヒー(※近くに搭乗者がいるのかもと思って受付が無理やり置いて行ったものである。スペースワゴンはコーヒーを嗜まない。あとでどかせてもらおう)の表面には一切の波紋がない様がドローンによる撮影で画面に大写しになる。車下に流れる海流の荒々しさなど一切感じさせぬ安定がそこにある。
 観客の一人、船に乗るといつも振動で吐いてしまう男から、ひえ、という声が漏れる。
 激しいターンではさすがに波が立つが…どうだ、あの波の美しさは。スピードを緩めれば歩道の歩行者に水を思い切りかけて失礼することなどないのも一目瞭然である。

〜車と言えば最高速度が注目されがちです。
 しかし速さの体験を求めるというのであれば、注目するべきは加速性能。
 スペースセダンは普通乗用車のため、平時は安全用の加速域のみとなっています。
 しかし、緊急時にはスイッチの切り替えにより、スポーツ車にも劣らぬ加速性能で、お客様の緊急時にお応えすることでしょう。〜

 見る間に迫ってきた普通乗用車にマリンジェットに騎乗したロボットどもが我に帰る。
 観客と一緒に見惚れてる場合ではない。
 手榴弾?いいや、型に担いだのは対戦車砲――ロケットランチャー、RPG。
 普通乗用車の倍以上ある車を沈める砲撃がまっすぐ向かってくる。

「そういうとこがてめえらが旧式と言われる所以だ!」
 だが真のハードボイルド普通乗用車はそんなことでは動じない。
 モード・チェンジ!

「ウオッシャー液補充してワイパーゴムを切り替えてから出直してくるんだなァ!!」
 ホバーから圧縮空気を放ち――ジャンプ!

〜また、ホバーには緊急時に備え、圧縮空気の射出機能が備わっています。
 未開の星を訪れ、ティラノ・サウルスに遭遇した、宇宙空間走行中にスペース・デブリが急接近した、お隣のあさみちゃんがまないたと包丁を持って追っかけてきた、などの緊急時に速やかな脱出をお助けします。〜

 陸上用普通乗用車(ノーマルセダン)の重量は平均で2トン弱。
 しかし宇宙空間対応型・普通乗用車(スペース・セダン)はそれよりもはるかに重い。
(もちろんその重量を感じさせない走行も宇宙空間対応型・普通乗用車は誇る)
 それを上方へ打ち上げるほどの空気だ。

 少々離れていたとは言え、周囲の走行車(プラス走行魚)はたまったものではない。
 普通乗用車を中心に、円形に吹き飛ばされる!

「ヒャーーーーハハハハ!!!」
 普通乗用車はそれらを文字通り見下ろしながら、インジェクターを高回転させてエンジンへとガソリンを回し続ける。「時代は常に進化を遂げてんだよォ!!」
 再び着水!
「オラオラオラオラオラオラァ!!!ひっくり返りたくなきゃ道をあけろ旧世代機どもが!」
 エンジン・フルスロットル。
 火を吹きかねない猛加熱はしかし、冷却水はもちろん吹きかかかる海水によって快適そのもの!
「ま」

 着水した目前にバイクに乗ったサイボーグ?

〜たとえ暴漢や暴走族に追われ、囲まれたとしても、ご安心ください。
 搭乗者たるあなたが行うべきは一つ〜

「開けようが開けまいが関係なく突っ切らせてもらうがなぁ!」

 かまわん、行く。

〜アクセルを踏み抜くだけです〜
 
 ゴシャッ!

〜是非、ご検討くださいませ〜

 旧世代を海の藻屑にし、真の文明差を叩きつけながら宇宙空間対応型・普通乗用車(スペースワゴン)は先頭集団を引き裂いて行く!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロク・ザイオン
⭐レグルス

(曇りなき眼)
ジャック。
(期待に満ち満ちた濁り声)
…こいつは、きっと、すごく、速い。
(森番が選んだのは、ヒトデでした――)

だって、星は、速いから
(モチモチ這っている)
ひゅって、飛ぶから
(ぬたぬた這っている)
…できる、やつだから…!

(―√Vv―その時ヒトデに電流走る―√Vv―)

(五本の腕に管足をゾワゾワ蠕かせ
機敏に動く!光る!音が出る!
超エキサイティングな海の星が爆誕し)
おれたちはー!まだー!
この海の果てをーー!!
(テンションの上がった森番が「啀呵」をがなり更にヒトデを煽る
光って唸って海辺の視線を独り占め
その姿まさにスタア!!)
やっぱり星は速い、
なあ!!ジャック!!!


ジャガーノート・ジャック
🌟レグルス

(――ヒトデである。)
(どこからどう見てもヒトデである。)

(――ザザッ)
ロク。
(曇りなき眼だった。)
……ロク。
……………。
(相棒の星形に対する根拠レスな信望と熱い期待に根負けする豹鎧)

良いだろう。
このヒトデを海の流星にして見せよう。

("FLASH"。電気信号をぶつけた対象をどちゃくそ早くするUCである。
しびびと電気を流す。よい子は真似しちゃだめだぞ)

――――
――


(元気にモヒカンをちぎっては投げ海を征くヒトデ。
ついでに七色に光る。効果音も出すし超廻る。ツ●ッターで流行ってそうな回転力だ。)

そうだな。
星だからな。

(思考が宇宙に飛ぶ。
宇宙コン頼んどけばよかったな……)
(ザザぁん……)



⭐️パーリーなんたら・なんたらフィッシュにスペースジャガーを添えて⭐️

「ジャック」

 オワタ
\(^o^)/

 いまだかつてないきらきらしたくもりなきまなこのロク・ザイオン(蒼天、一条・f01377)はジャガーノート・ジャック(JOKER・f02381)の脳裏にひと昔どころかふた昔では済まない昔のネットスラングを走らせた。

 オワタ。
 これは梃子でもうごかんやつや。

 ジャックは別にこんな胡乱レースでテッペン取りたいわけではない。
 海洋生物に乗るとかいうトンチキはさておき(しかしサメとシャチはちょっと楽しそうではあった。特に調査結果によればシャチは海のギャング。まるっこい見た目に反し時に白熊すら食うという荒くれ者である。冒険ハートがわくわくしないといえば嘘になる)今回の目的は付かず離れずレースを駆け抜けて敵船乗り込んで敵を沈めて支配された哀れな人々を解放することだ。
 であるからしてほんとに別にテッペン取りたい訳ではない、訳ではないのだが。

 でもそのチョイスがまずいのは分かる。

「“ロク”」
 どこから説得しようこれ。
 ジャックは必死で考える。

 ロクの蒼い眼差しはペットショップで動かなくなった子供と同じ熱と希望と確信に満ち満ちていた。
「…こいつは、きっと、すごく速い」
 忌避されるからと気をつけているはずの濁り声がいつもより大きく震えているのは込められた熱い期待のせいだ。
 ロクは手を伸ばす。いじらしくもレーンの中のそいつが腕を絡めてくる。

 腕。

 そう、腕である。
 タコ?イカ?クラゲ?

 いいえ。

 レグルスの片割れが、選んだのは――

「だって、星は、速いから」

 ――ヒトデ。

「“……ロク”」

 それはない。
 それはないんだよ相棒――!

「ひゅって、飛ぶから」

 ヒトデは飛びません。

 どうして星形にそんな確信があるんだ。どうしてそんな盲目的な信頼があるんだ。もはや信望の域じゃないかそれ。バトピンか?バトピンで降り注いだからなのか?あれかわいいですよね。

 ぬたぬたと這ってレーンから腕を出してロクの肩にぐるりと回し、その内側の管足で同時にポンとロクの肩を紳士的に叩くヒトデ。「やる気が、あるのか…!」通じ合わないで欲しい。ちなみに管足とはヒトデが歩行や運動に使う腕に生えたいわゆる触手のようなものである。
「ジャック」
 ヒトデの腕から伸びた管足をしっかり握りロクは相棒を見つめる。ヒトデの管足もしっかりロクの手を握っていた。言葉は不要。もはや確信は速度のみにあらず。勝利すら確信していた。
「“……ロク”」
「これで、かつる」
 どこで覚えてきたそんなネットスラング。
「こいつはできる、やつだから…!」
 ジャックは瞳を閉じて天を仰ぐ。素人は黙っとれ――と言いたいがしかしジャックも素人である。
「あっヒトデのスターリーくんにします〜?」
 空気を読んでか読まずか登場する受付。
「ジャック…!」
「“………………”」
 呼吸を止めて1秒どころか20秒以上真剣な目で見つめ合い
「“……それで”」ジャックが根負けした。「それで!」
「かしこまりました!」
 止めもしない受付。
「じゃあ専用の鞍があるのでお持ちしますね!」
「“…専用の鞍?”」
 嫌な予感がジャックを襲う。
 専用と聞けば特別と繋がるロクの期待がジャックの予感と比例するように膨れ上がる。
「スターリーくんはヒトデなので五本の腕を駆使して移動しますからね〜」
 ニコニコしながら受付が持ってきた、鞍。
 鞍というか、それは。
 鞍はUDCアースレベルから上の文明でかつ一般的な子供時代を送っている誰もが分かる形をしていた。円形の座席。

 鞍の名は
 
 コーヒーカップ。

 遊園地で回ってるアレである。ちゃんと真ん中に回すアレ(※ハンドル)もある。

 回すのか。
 回すのか、回せというのか、ヒトデを。

 しかも、ジェットコースターに負けずとも劣らぬガチ目の安全バー付き――…!



 固定電話が欲しい。
 ジャックは思った。
 ガッチリと安全バーで固定され(ちなみに座席は六つあり、ジャックとロクはひと席間に開けて並んで座っている。
 固定電話が欲しい。今すぐ受話器をとって工事現場の猫ならぬ現場豹として「ドウシテ」って聞きたい。豹だって猫科だからワンチャンあるはずだ。
「…ジャック」
 ロクは心配になって身を乗り出した。「大丈夫か」
「“…あまり大丈夫ではない”」
 だってレース始まってない。始まってないのにこの大惨事である。他のツッコミ属性の猟兵は大丈夫だろうか。あらぬ心配をする。
「…そうか」
 ロクは肯く。ロクは森番だ。野生の狩に慣れている。猪に飛び乗って首に刃を入れたり熊の一撃をくぐりかわして背中から登ったりもした。ジャックはどちらかと言えば遠距離タイプだ。生き物の背中は慣れていないのかもしれない。(受付が教えてくれたがヒトデは口が下にあって自分たちを乗せているのが背なのだそうだ。顔に乗っていたらかわいそうだと思ったがこれで一安心である)
(※何も安心ではない)

「大丈夫だ」
 何が?

 であればロクがリードしよう。レグルスは対等だ。支え合うものだ。
 ロクはしっかりとこの丸い形の座席の中央の円盤を握る。これをぎゅーんと回すとヒトデがぎゅーんと回るのだそうだ。それはいい。すごくいい。つよいコマは速くて敵を弾くのだ。

「テッペン、とろう」
 ロクよ、だからそんな単語どこで覚えてきたんだ。

「“ああ”」
 ジャックは肯く。
 こうなればヤケだ。「“ロク、ハンドルから手を離してくれ”」「ン゜!」ジャックのただならぬ本気(ヤケクソ)を感じ取りロクは嬉しくなって手を離す。星を信じてくれるのだ。

「“良いだろう。

――このヒトデを海の流星にして見せよう”」

 螺貝の音とともに。
 ジャックはコードを発動する。

「"FLASH"」

―√Vv―ヒトデに電流走る。―√Vv―

 5本の腕がうねり管足がさざめく。
 ヒトデの腕からゆっくりと輝き始める――…!
「ジャック…!」
 やっぱりおれの相棒はすごい。
 思わず安全バーを外しヒトデを覗き込んだロクは紅潮した頬でどこまでも賞賛の眼差しをジャックに向けた。ジャックとしてはもうちょっと違う時違うタイミングでほしい眼差しだった。

「“ロク、席に戻って安全バーをしっかり下ろしなさい”」「ン゜!」
 ゆっくりとしかし確かにヒトデの輝きが高まる。ぱちぱちぱち…静かに雷が疾りわたる音だけが響く。
 この沈黙をどこかで味わったことがある。ジャックはふと思う。
 どこだったか。

―√Vv―海で電気とかマ🌟ジ🌟シャレにならん🌟から良い子は真似しちゃダメだ🌟ぞ🌟―√Vv―
 
 ああ、あれだ。
 ジェットコースターの坂だ。

 Flash,Splash,(ぱちぱちひかる、水しぶき上がる)

 ――and(そして)

「“ ――エンチャント成功。後は任せた”」
 
 SMAAAAAAAASH!!!!!(ドーーーーーーーーーーーーーーン↑↑)

 ヒトデ射出ッッッッッッッッ!!!!!

『誰だッ誰だッ誰だーーーーーーーッ!!水面の上を疾る影ッ!流星🌟一条ッ!』

 ヒトデです。

 海に飛び込みたくなるような真夏の風を切り裂くまさに星ッ!
 突如発生したまばゆいシャイニングに誰もが釘付けになる。
『今回はUFOもミラーボールも登録はないはずですッ!!』登録あった回があんの?『あれはッ、あれは一体なんだと言うのですか!?どう言うことでしょうか解説、お願いします!』『(ピプー)(電子合成音声:あれは)』『あれは?』

  一足早くレンズを切り替えてスコープでズームインしていた解説が排気口からうっすら煙を吐き出す。

 祭りの屋台で手に入る七色に発光するコマをそのまま巨大化させたような物体エックス。

『(ぺー)(電子合成音声:ヒトデだ)』
『what's?』

 その音をどう例えよう。

 み゛に゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛とかぎに゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛が、妥当だろうか?
 いやそれではあるまい。それでは足るまい。
 ロクの全力ハイテンションシャウトだった。
 ちなみに悲鳴ではない、歓声だった。スピード狂の才能があった。ちなみにあくまで回転しているのはヒトデでありコーヒーカップは超高速に振動しこそすれ回転は一切なかった。すげーなコーヒーカップ。
 高速大回転するヒトデが海を切るかのように波の上を滑っていく。
 輝きはレインボー、コーヒーカップ型の鞍かと思ったがマジモンのコーヒーカップだったらしい。ジャックのコードを受けて何かの電源が入ってしまったらしくエレクトリカルにパレードな爆音まで流れていた。すげーなコーヒーカップ(※二度目)

「おれたちはーーーーーーーーーッ!!!!まだあああああああああああああああああああぁあああああ!!!」
 振り切れたロクが水平線に向かって全力の啀呵を叫んでいる。
 青春映画みたいな一幕だが乗ってるのは七色に光って高速回転するHITODEだと言うことを忘れてはいけない。
 そしてロクの叫びはもはやヒトデの叫びであった。

「このおおおおおおおおおおおおおおおおお海の果てをおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
 
 もうどっちが暴走族かわっかんねーよ。

 なんかよく分かんないひかる触手を射出して所構わずモヒカンをちぎっては投げちぎっては投げ時々間違って口に入れながら海上シューティングスターをキメるヒトデの上のコーヒーカップの中、ジャックは呆然とスペースキャットならぬスペースジャガーと化していたのだが。
 しかし彼もまたロクばりに事件を混沌へ加速させる選択をしていたのだが、それは彼の預かり知らぬところである。

 なぜなら事件はヒトデの上ではなく。

『機敏に動きッ光るッ!超🌟ッエキサイティン!――あれを我々の知るヒトデと呼んで良いのでしょうか!?!?!?』
『No good』
『!?!?!!!?』

 解説席で起こっていたからである。

『解説のフカヒレ氏!?!?』
『Yokunai』『いったいどうしたと言うのでしょうこちらレースではなく実況・解説席の実況をお送りすることをお許しください!!』
 ジャックの放ったFLASHは海を渡りあろうことか実況・解説席に届いていたのである。巨大ヒトデをしびしびさせるのだからそりゃそうもなる。
『Yokunai』『解説ッ!!解説ーーーーーッ!!』『HITODE jya Nai』
 この微弱な電磁汚染は実況・解説席の解説を七色に光らせ縦回転を始めさせてしまったのである。
 そしてあろうことかこの解説、海賊団で実は偉い部類だったらしい。

 具体的に言うとこのシナリオを開けたヘッダー画像にいるアイツに似ている。
 いやあそんなまさかハハハ。

 ……。

 …代表ってそういう?

 ともかくッ!
「Hi sensei HITODE ja nai Nara. Bandesu ka?」
 偉い部類だったために「Ebisen」電子感染はッ「Ikayaki」観客席のロボットや「Takosu」サイボーグたちにも広がりッ!!『Zenin Chigau 』

『Seikai Ha

Party Nigth!!!!!!!』

\\\ヒューーーーーッ!!!!///

 こうして胡散臭い英語に聞こえるような胡乱な言語を発しながら回転するもう何を言ってるのかよくわからないなんかこないだまで青い鳥か青地に白い鳥のソーシャルネットワーキングサービスで良くみたやつに似ている己の正気を疑うような光景が完成してしまったのであったッッ!!!!

 海上はもはや真昼にも関わらずパーリナイッ!!!


 海上で光って唸って音とか出て周りも踊らす、ヒトデはまさにレグルスを輝かせるスタアだった!!!

「やっぱり星は速い…ッ!」

 ロクは感極まってひときわ大きい啀呵をあげる。完全に野生に返っていた。

「なあ!!ジャック!!」
 ロクはすっかり安全バーを外しジャックの隣に座って彼と半ば無理矢理肩を組んだ。

「“そうだな”」
 何が起こってるんだろうな。

「“星だからな”」
 もう全部星のせいだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

セラ・ネヴィーリオ
【くれいろ】

分かった、トップスピードでびゅーんだね!おっけー!!(全てをノリで理解)

僕のターン!
『ゆりかご/蜜灯』を発動、この海からランダムな霊を特殊召喚!
ああ、声が聴こえる――
おいで、古き霊…アノマロさん!
(壮大なBGMと共に現れる巨大なゴーステッドアノマロカリス)
行こう、僕らの相棒!
あ、ユキさーん僕この浮き輪座席にしたい。括って括ってー
乗り込んだらどらいびーん!

あでもバイク強い、追いつかれる
そんな時は【春添歌】~!(ご機嫌なSE)
ユキさんの歌にハモらせて、アーくんさんに新たなる力を!
…わお。翼生えちゃった
そっか、きみの未練は空をも駆けること…!
その願い請け負った!限界までアクセル…ごー!!


ユキ・パンザマスト
【くれいろ】
アロマロカリス先輩ってクールじゃねっすか??
(年代的に後輩っツラ)

古代最強生物!なら速度も最強!トップスピード出ますって絶対~!
セラ、お呼び出し頼みます!(浮き輪をガシガシ膨らせ)
やった、ゴーストタイプのアノマロ先輩ゲットすね!
おっけー前のお座席どぞい!(柔らかい根できゅっと括る)
さぁさ
デッパツですよ!

お、奴さんもなかなかですね?
よしセラ、先輩をガンガンアゲていきましょ!
大声歌唱の【黎鳴音】!
ハモりも調子上々、勝ち確BGM!

先輩に……ひこうタイプが?メガな感じの進化?
成程、海だけでなく空も統べんとするとはマジリスペクト!
輪廻の先までブッ込みかけましょう!!
(捨て身の一撃ダッシュ!)



●どんどしんく・ふぃーっしゅ

 ゼッケンくれいろ、セラ・ネヴィーリオ(セントエルモの火・f02012)とユキ・パンザマスト(夕映の咲・f02035)は並んで腕を組んで考えていた。

 海上最速の生き物といえば何だろうか?

 海洋生物並ぶレーンの前で試しに「一番早い魚(うお)〜〜〜〜〜〜!!」と呼びかけたらレーン全部から自己主張の水がバッシバッシ飛んできてくれいろが濡れ色になってしまった。
「トップスピードでビューンのレースがドーンだもんね」顔に張り付いた昆布を剥がしながらセラは頷く。「そりゃそうだ。みんな自信があるのはいいことだよ」
「っすねえ」ユキも答えつつカツラのように頭にかぶさってしまったワカメを外して身震いで水滴を払う。
「そんなことしないと思うけど…こう叫んでおいてここから一匹選んだらなんか後々喧嘩になりそうだね…」
 なおも重なる自己主張によってラッコが投げてきたあさりの貝殻をユキが展開した藪椿ガードに一緒に隠れながら避けながらセラはしみじみとしてしまう。選んでくれの供物のつもりなのかワカメや昆布のほかにひじきも飛んでくる。
 レース魚とは誇り高い生き物なのだなあ。
 カニもラッコも魚じゃないけど。
「伝説の魚でもいたらなあ…」セラとしてはスピードバビューンは体験したいところだが余計な諍いは避けたい。
「でん、せつ…」セラの呟きを聞いたユキの脳裏にどこぞの推理ものばりの音を立てながら閃きがきらめいた。
「セラ!!!!!それっす!!!!!」セラの肩を掴む。「なになに、どゆこと?」
 ユキは輝きの主張で浮き輪を取り出す。

「呼びましょう!!!伝説!!!」

 ティロリン!
 さすがにセラも閃いた――そうか。

「現在から最速が選べないなら、過去の最速パイセンを招べばいいんだね!!!!!!!」 
 なんて?
 
 善は急げスープは冷める前に鉄は熱いうちにギャグは我に返るな。

 過去の最速パイセンと言った瞬間静まり返ったレーンの魚たちがセラとユキの閃きを肯定している。

 ところで誰ですか墨吐き出してセラとユキの周りに大きくハートを描いた海洋生物は。そういうお節介しないでください。このゼッケンくれいろはカップル登録してませんよ(※そもそもカップル登録したのは一部というかただひと組である上にコンビというのを自分で消してカップルと書いたパワープレイでありカップル登録はこのレースにない)
「まっかせて!僕のターンッ!」無駄に顎をひしゃげて美少年にあるまじき変顔を披露し、
 セラは素早く杖先に鐘のついた死者を導く杖、ゆりかごを取り出し、続き降霊の触媒となる金の指輪、蜜灯をはめる。
 そんなノリでそんな大事なもん出していいのだろうか。
 変顔は一瞬のことであり今は再び花も恥じらう美少年は鐘を鳴らし、指輪を掲げる。
 騒ぎ狂っていた海洋生物は皆沈黙し、都市の喧騒すら、かなた。

 セラは両腕を広げまぶたを閉じて――耳をすます。

「ああ、声が聴こえる――」
 魚って一部除いて声なくねえか。

 海辺は一時清廉なる降霊の場となる。
 海より浮かび上がった霊魂が集まり、輝き、輪となってセラの周りを回転している。
 霊魂のあかりに照らされ、少年とも少女とも見て取れるセラの、ああ、教会に置かれた慰めの天使像にも似た美しさよ。
 墓守、ねえ、ねえ墓守、そういうのに使っていいんですかそのなんかすごい美しい降霊技術ッ!

 セラと乗る浮き輪を全力でガシガシふくらませながらユキは再び閃く。
 この演出、見たことがある。
 触媒になる気がする。今なら無料十連でマックスレア弾ける気がする。ちょうど夏イベやっている。限定レアが!限定レアが!ああ〜〜〜〜〜〜ガチャの血がうずく〜〜〜〜〜〜〜〜!!!でも今は浮き輪が優先〜〜〜〜〜〜〜〜!!!「にっじかいてんっ!にっじかいてんっ!!」コールしながら浮き輪をガシガシ膨らませることしかできない。みんな課金はほどほどにね!もやし生活ダメ・絶対!
 しかし返ってきたのはセラの困り顔だった。

「ユキさんやっぱみんな自分が一番速いって言ってる〜〜〜〜〜」
 でしょうね。

「どうしよ〜〜〜」
 焦れたのか虹回転が黒回転に変わり始めている。
 それはそれでレアだがそれはまずい。
「古代最強生物でどうっすか!!」
 今すぐ助けてあげたいユキだが浮き輪の白鳥さんの首が立ち始めている。割とおっきい浮き輪持ってきちゃって足踏みで空気を入れるのが大変で足がガクガク言い始めててちょっと助けに行けない。今ここで足を止めると浮き輪がチョロ輪になって海に入った瞬間ドボンが決定してしまう。
「ティラノさん?」海なのにそんなん来てんの!?
「んんんそれは即死ぬ〜〜〜〜〜!!」蘇った瞬間の溺死はさすがに可哀想である。
 魂たちがそれぞれ形を取り始めている。ユキは焦る。えーとえーと。選ばねばならない。さすがに御幽界フレンズ全員召喚はぶっちゃけセラの心身がやばい。シリアスにやばくなってしまう。ギャグでシリアスは洒落にならない。えーとえーと古代生物古代生物…

 ユキとそいつの目があった。
「アロマロカリス!!!」
 ユキは叫ぶ。
 正しくはアノマロカリスである。

「アノマロカリス先輩ってクールじゃねっすか!?」
 ちょうど白鳥さんもしっぽが膨らみきるところである。「セラ、お呼び出し頼みます!」
「オッケ〜〜〜〜〜〜〜」決まれば速い。セラはゆっくりと目を開く。如来が如き三昧。クルクル回る霊魂の中でその子と目を合わせる。
「おいで、古き霊…かーもんべいびー…」そんなUSAとか呼ぶノリでいいのか。

「アノマロさんッ!!!」

 降臨ッ!
 ゴーステッドビッグアノマロカリスッ!!!!
 ユキのスマホからたまらずうっかり回した無料十連でSSRが出た荘厳かつ華やかなファンファーレに祝福され、現われたのだった!!!

「やった、ゴーストタイプのアノマロ先輩ゲットすね!」
 浮き輪の栓をしたユキは駆け寄ってハイタッチを交わす。「ユキさんのおかげだよー」下手するとなんかいろんな生物をくっつけたヤバいのが来るところだった。全員SANチェックはレースどころではない。
 アノマロ・パイセンは古代より変わった海にびっくりしているが、それでもここが懐かしの地であることに気づいたらしい。嬉しそうに櫂を思わず脇腹のひれをくねらせ、乗れとばかりに尾をレーンの端から出してくれた。「わあ〜〜〜〜いアノマロさんありがとう〜〜〜!」セラが足をかけると意外としっかりした甲に覆われており、安定感がある。「ユキさんすごいよすごいよ〜!!」たまらずユキもそれに続く「うひょ〜〜これ論文出したら金一封なのでは?」どころじゃないと思いますよ。こんなものに乗ることはないので二人はしゃぎまわりぴょんぴょんジャンプする。浅く水がはじけてきらめき今日も相手が可愛い。ありがとうサンシャイン。
「あ、ユキさーん僕浮き輪座席にしたい!」鞍をおこうと思ったが広すぎて逆におけなかった。「括って括ってー」「はいはーい」ユキは根を出してキュッと結ぶ。これで大丈夫。
「おっけー前のお座席どぞい!」「わあい!」
 これはあれですよ、と隣のレーンのイカは思う。少女としてはこれでこう少年にくっつけるという、そういうあれが、あったりなかったりしてるんじゃないんですかどうなんですかガール!!!下心、アンダーピュアハートあるんですかあったんですかガール!
 ユキだけの秘密である。

 完成ッ!
 くれいろ白鳥号・オン・ゴーステッドビッグアロマノカリス!(※アノマロカリス)

 ネタの過積載ッ!

 奇しくもタイミングはちょうどよく。
 発魚機は開かれ、螺貝を待つばかり。
「さぁさ」ニヤ、とユキが笑う。少女の笑みじゃない。暴走族のような笑みだった。

「デッパツですよ!」
 暴走族だこれ!!!!!

「うん――さあ行こう、僕らの相棒!」セラはアノマロさんに微笑みかける。

「レッツゴー・ドライビン!」


 
 客席の一部の客が発狂していた。
 だってアノマロかリスである。古代種である。学会が狂うどころの登場ではない。
 UDCアースの最近でさえ1メートルだと言われていたのが実は20センチ強でしたとかガリガリが書き変わるようなデリケートなジャンルである。
『アノアノアノアノアノアノアノマロカリスゥッ!!!エンシャント・シーモンスターーーーーーーーーーッ!!!見てますか見てますか古代生物研究学会イイイイイ!!!』
 もちろん運命の導きで見ていた。
 この映像は学会に買い取られ新たな論文が吹き荒れ古代生物研究学が一大ブームを巻き起こしくれいろショックと語られ古代生物研究史に思わぬ一名を残すのだが、それはしばしあとの話である。
『(ゼヒュー…ガヒュー…)(電子合成音声:ゼヒュー…ガヒュー)』
『七色回転より正気の世界へお帰りなさいませ解説・フカヒレ氏!』
 ここが正気の世界かどうかは若干どころでなく疑問が残るところである。残ると言うか疑問がざぶざぶである。
『いかがですか古代生物!その手があったという感じですね!』
『(ツツーツーツンツクツツー)(電子合成音声:これはデータも少なく手が非常に打ちにくくある、なかなかに妙手と評することができるだろう…だが)』
 ギラリ、と解説はアイライトを輝かせる。

『(ピポーヒョロロロロ)
 (電子合成音声:速度は所詮一般海洋生物レベルッ!体が大きいということは狙いやすいということだッ!我が海賊団がッ海の藻屑にしてくれようッ!!)』

 あんまり正体を隠す気がなくなってきた解説であった。
 まだあと1章あるのに。

 風を切り水面を跳ねさすがは節足動物、体を上下にくねらせ海流も何のその。
 真っ直ぐ進み――進み続ける、が。
「あでもやっぱバイク強いね」「奴さんもなかなかですね?」「うん」
 腐っても文明。味方が古代なら相手は(グリードオーシャンの)現在以上の文明だ。
「追いつかれる」
 セラは冷静な判断をする。
 アノマロカリスは拙速動物特有の胴に13対の鰭を持っておりこれが水をかいている。
 解説の言うように、どうしても大きく幅を取る。――追っ手としては狙いやすい!
 射程に入ればまず負傷は免れない。
 アノマロカリスは胴が長い。その鰭全てを守るとなれば…到底、手が足りない。
「バトルキャラクターズ、出します?」ユキが提案を送る。
「ううん」「水上ですもんね」
 かと言って水上レース。何かしがの支援を出しても振り落とされてしまう可能性もある。
 八方塞がり?こんなに海も空も広いのに?
「よぉし、やっちゃうぞ〜」セラは水をたっぷり吸って重くなった袖をまくる。
「イェイイェイ、広さ万歳、っすね」ユキはあたりを見てきちんと安全を確認する。
 二人の顔に、焦りは一切ない。
 追いつかれるなら。
「よしセラ、先輩をガンガンアゲていきましょ!」
「いぇ〜〜〜〜〜い!!ユキさんやっちゃって〜〜!!」
 歓声を上げながらセラは耐水仕様になったラジカセ†漆黒の讃美歌†を取り出す。
 ユキが立ち上がる。良い子は真似しないでね!!!

 カチッ!
 ラジカセ、オンッ!!
 流れる爆音の伴奏。
 なぜか開くアノマロカリスパイセンの背中ッ!!出てくるマイク!!!ナンデッ!

 そこまでやられちゃあ答えぬは失礼ってもんです!!

 マイクに駆け寄りユキは歌う。
 大声黎鳴音(スプリント)――黎明っていうかもはやサンシャイン、スペシャルサマーシーバージョン!!!

 まだ梅雨明けてないとかいう子はたべちゃうぞ🌟

 UDCアースジャパンのサマーヒットソング。
 そう!!!!夏の勝ち確BGMッッ!!!
 
 突然のアノマロカリスライブである!!!!

 あっちではヒトデがエレクトリカルでパレードしてるしなんかどっかでは叩っ斬られた海飛沫が上がってもう何これ?フェス?フェスである。レースだっつってんだろうが。
「ユキさんかっこいーーーーーーーファンサしてーーーーーーー」
 団扇島なのでちゃんとアイドル仕様うちわとサイリウムを持ってきたセラとユキに死角はなかった。だからレースだっつってんだろうが。

 何してんだお前ら。

 もちろんユキはバッチリファンサを決めつつセラを招く。
 しらたまさん曰く、招かれれば乗らぬは漢の恥である。(だが後でしらたまさんにはお説教しよう)
 断る理由などどこにもないッ!!!
 奏でろ魂のビートッ!!
 重ねろハルモニカッ!!
 …春添歌(ハルモニカッ)というか夏疾歌(サマーニカッ)って感じである。

 かくして大声合唱・黎鳴音・ウィズ・春添歌・サンシャインスペシャル・サマーシーバージョン・ライブ・オン・くれいろ白鳥号・オン・ゴーステッドビッグアロアロアロマノカリスッ!!!!!

 過積載ーーーーーーーーーーッッ!!!!

 サマフェスである。
 みんな待ってたサマフェスである!!!!
 もう銃とか撃ってる場合じゃねえ。
 会場はフェス一色となるッ!
 サイリウムがないのでめいめい飲み物とかタオルとかタチウオとか振り回すしかない。

 アノマロカリス先輩はセラとユキの声に支えられて猛加速、そしてアノマロマロマロカリスマ先輩へと進化する。

「…わお」気づいたのはセラだった。
「どしました?」大声を出したらきちんと水分補給。ペットボトルに口をつけ――「ありゃ」間も無く気づいた。

「翼、生えちゃった」

 もちろん本来アノマロカリスパイセンに備わっていない装備である。(ちなみにゴリゴリの余談だがこれが古代生物研究会にくれいろ「ショック」と語られた所以である)
「先輩…」
 十三対の鰭が輝く羽根へ、海を泳ぐ櫂は、空を得ようとしている―…!

 どうしたらいいこれ。
 
「……ひこうタイプが?メガな感じの進化?」「うん」セラはうなずき、手を伸ばしてアノマロカリスマパイセンの背を撫でる。
「きみの未練は空をも駆けること…!」
 うんゆっくり上昇してる。
 ユキの顔が虚無からだんだんと輝いてくる。
「成程ッ!!」
 むべなるかな。

「海だけでなく空も統べんとするとはマジリスペクト〜〜〜〜!!!」

 ここにツッコミは!いなかったのである!!!!

「その願い請け負った!」セラはユキと再びのハイタッチを交わし天を仰ぐ。間違いなくゴールはそっちにない。「ええ行きましょう!!」行っちゃダメである。

「輪廻の先までブッ込みかけましょう!!」
 ブッ込んじゃ!!!!!!!
 ダメである!!!!!!

 だが!!!
 ここに!!!
 ツッコミは!!!
 いなかったのであるッ!!!!
 
「限界までアクセル…ごー!!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

御園・桜花
「人への試練と考えるなら。水中も空中も同じではないかと思いましたの」

ペンギン選択
「貴方は水面をちゃぽちゃぽ泳ぎ回るより、水中を泳ぐスピードの方が何倍も早いじゃないですか。行きましょう、水中潜航。貴方に合わせると私が窒息してプカプカ浮く羽目になるので、1分水中20秒水面をずっと繰り返して下さいね?あと、私が貴方の背中をめったやたらに叩いた時は溺れかけている時ですので、その後はまた水中潜航をお願いするまでは暫く海上を泳いで下さい…」

UC「精霊覚醒・桜」使用
多少なりとも水中での抵抗が軽減される可能性を期待
ついでに息継ぎしないで空気確保できないかも期待した
体力の限界まで潜行+海上泳法でトップ目指す(笑



●トップを奪え〜イワシの腹には火を通そう〜

「動物に乗るレースとは、乗せる側と乗られる側の共同作業だと思うのです」

 御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)はレーン内側に畳柄の浮きマットを用意してもらい、そこに正座して向き合っていた。

 鳥綱ペンギン目ペンギン科トンチキトンデモオウサマペンギン属オレハモノスゴクペンギンの、
 
 トドくん(メス)と。

 せっかくの綺麗なお着物が。受付はそう気遣ってくれたが、どうせ濡れるのだ。
 それに、今回のレースでは車やバイクに乗るのではなく、泳いでくれる相棒がいる。
 だったらまず向き合わねばならなかった。
 残念ながら動物の言葉を理解するスキルは持っていない。
 しかし、桜花は桜の精。
 歌と同じだ。心を察し、繋がる。
 そこに言葉の壁はないはずだった。むしろ言葉があればある分余計なすれ違いを生む可能性があった。
 現にこのペンギンは桜花が上に正座するとわざわざ向かいに乗り正座…を、しようとして足の問題でできなくて困っていたので座布団を持ってきてもらったところ正座してくれた。…えっ正座できてるやん???
 ちなみに桜花を載せられるペンギンなので大きさとしてはかなりある。成人男性ぐらいある。

「目指しましょう、トップを」
 桜花は告げる。
 もう、それがすべてだった。

 しばし、沈黙。
 全てを聴き終えたペンギンは座布団から立ち上がる。
 だめだったろうか。桜花の気持ちは沈む。

 やはり、今日あったばかりの精霊からレースでトップを狙う作戦など、おこがましかっただろうか。

 トドくん(※ペンギン)は立ち上がるとペチペチ、と桜花のほうに寄ってきて、その翼で正座する桜花の足を軽く突いたのである。
「私の心配を…?」
「ぺん」
 ペンギンはそんなふうに鳴かない。
 だが桜花には彼女の言うことがわかった。
「ユキエさん(※トドくん:メス)(※ペンギン)…!」
 もう注釈が多すぎてなにが起きてるのかわからない。
 しかし注釈など現実の前には些事。
 桜花の思いが通じたのだ。
「ありがとうございます、お気遣い、嬉しく思います」
 その優しい翼の先を握る。

「ですがやはり互いにベストを尽くすのはこれしかないかと」
 
 ややあって。
 ペンギンはゆっくりと縦にかぶりを振った。
 そしてペチペチと再び歩き。
 
 桜花の前にイワシを置いた。
 桜花は顔を上げ、まじまじとペンギンと見つめ合う。
 何をすべきか――自ずとわかった。

 だが

「すみません、お腹に火だけ通してよろしいですか?」

 アニキサスはちょっと。



「はい?」

 桜花が水面から顔を出すと、そこはフェスでパーリーでした。

 七色に光って回転するエレクトリカル巨大ヒトデが絶叫を響かせる傍で巨大アノマロカリスがあらぬ方向へ浮かびながらライブを放映し普通自動車は美しいカーブを描きながら謎のナレーションと共に水上バイクを曳き散らかし水上を爆走。

 口からイワシを離し呼吸を確保しつつ確認した惨状の一部はおおよそこんな感じである――…!

「…これはもしや」
 前髪から水を滴らせ肩に張り付いたタコをひっぺがし、だがスピードは維持しつつ冷静に呟く。熱く速きレースで決して失っていけないのは冷静さである。

「スピードを出しすぎて世界を一巡してしまった…?」

 正気はしらん。

 桜花は思わず相棒のペンギンの背を叩く。
 思わずレースの実在を疑う。そこで繰り広げられているのは予想以上の混沌だった。

 どうやらこのレース第一章、待ちに待ったツッコミが満を持して登場――

「ユキエさん(※トドくん:メス)…何か、様子が――」
 言いかけて眼を見開く。「ッ」
 瞳にハートを浮かべた爆速ウツボがカップルを乗せて桜花の真横を駆け抜けるッ!
「いいえッ!!」
 ウツボの水圧に吹き飛ばされないよう身を前のめりに屈めてしっかりペンギンのユキエさん(トドくん:オス)にしがみつき

 桜花はイワシを咥えたッ!
 ちなみにイワシの腹をッ!

「ふひへはん、へーふほっほうへふ!!!
 (訳:ユキエさん、レース続行です!!!)」

 ―― 満を持して登場じゃないッ!!!!

 ツッコミ登場してないッ!

 これは

「ふぉいふひまぽう!!!!!
 (訳:追い抜きましょうッ!!!!!」

 これはボケッ!!!!!!!!!

 そも出だしからイワシを咥えている時点でわかり切っていることではあったがッ!

「ふぁらひらりらら――ふぇひまふっ!!
 (訳:私たちなら、できますっ!!)」

 本日のパーラーメイドさんはツッコミのお取り扱いが終了しているッ!!!!
 
 かくして桜花の姿は水面に消えるッ!
 そう!!!!
 水面に消えちゃうのである!!!!

「貴方は水面をちゃぽちゃぽ泳ぎ回るより、水中を泳ぐスピードの方が何倍も早いじゃないですか」

 …レース前のこと。
 桜花は真剣な眼差しでトドくん(※ペンギン)(※メス)――ことユキエさんに語っていた。
 桜花の佇まいは真剣そのものであった。
 着物の袖はたすき掛けしてまとめ、長い髪は頭の後ろ、高い位置でお団子からのポニーテイル。
 薙刀か刀の一つ本や二本、三本か百本でも背負ったような剣呑である。

 そしてハチマキの額には、トップ!の筆文字。
 
「行きましょう、水中潜航」
 マジか。

 ひとりと一匹の間に広げた水に濡れても大丈夫なホワイトボード(※お借りしました)に桜花はすらすらと絵を描いていく。

「貴方に合わせると私が窒息してプカプカ浮く羽目になるので」

 プカプカ浮くっつーかそれは溺死である。

「1分水中、20秒水面をずっと繰り返して下さい」

 ?

 トドくん(※メス)(※ペンギン)は首をかしげた。

 トップ・アスリートばりのスパルタ発言がふんわりパーラーメイドさん(討ち入り仕様)から飛び出しているこのギャップ芸をなんと言おう。いや芸じゃない。桜花は本気だ。本気なのか。
 確かにペンギンの本領は海中である。この団扇島では小柄な一般的コウテイペンギンでも9〜10kmは出る。ならば鳥綱ペンギン目ペンギン科トンチキトンデモオウサマペンギン属オレハモノスゴクペンギンはその何十倍もの速度は出る。出るが。
 トドくん(メス)だって陸の生き物をたびたび載せたレース魚、レースペンギンである。

 そんなことしたらライダーの桜花がこんにゃくになってしまう。
 
 真剣なメイドさんには申し訳ないけれどペンギンのスピード深さを甘く見て今まで何人かライダーが死んでいくこともあった。水中潜航と言うけれど彼女がすぐ息をしやすいように浅めに…とペンギンのトドくんは考えた「あと」

「私が貴方の背中をめったやたらに叩いた時は溺れかけている時ですので、その後はまた水中潜航をお願いするまでは暫く海上を泳いで下さい」

 ガチや。
 これはガチや。

 トドくん(ペンギン)は実感する――桜花の瞳に宿る、熱い意志を。

「動物に乗るレースとは、乗せる側と乗られる側の共同作業だと思うのです」

 何が彼女をそこまでさせるのだろう。
 …それはトドくんの預かり知らぬところだ。
 しかし。

「目指しましょう、トップを」

 桜花によって、トドくん(ペンギン)の胸に熱い炎が灯る。

 渡される友情の杯――イワシ。
 向かい合ってそれぞれイワシをくわえたひとりと一匹。

 こうして水上結義…水上の誓いは交わされたのであるッ!!

 意外なことにここまでまっっっっっっっっっっっっっっっっっっったく実況と解説が桜花に触れていないことに分かる通り、この作戦は結構な有効打であった。
 
 水中ならばサメ海流間を潜り抜けることも可能なら、バイク共に気づかれることもない。桜花以外の後続魚を狙って放たれたトラップも簡単に見分けることができる。(桜花はちゃんと水中眼鏡もつけている)
 さながら乗馬の騎手がごとき低姿勢を保てば海流の抵抗も少ない。

 灯台下暗し――ガッバガバトンチキレースギャグシナリオの判定のザルさは伊達ではない!!!

 …とはいえやはり1分水中、20秒水面のリミット走行は体力に響く。水中と水上ではかかるGが違うのだ。ペンギンのユキエさん(トドくん:メス)も桜花の消耗に気づき始めている。
 
 ここまでだというのか。
 いく度目かのギブタッチにより海上に現れた桜花は肩で息をしながら考える。
 結構な速度だがこれではトップには程遠い。
 ユキエさん(※トドくん:メス)は優しいペンギンだ。諦めても許してくれるかもしれない。そんな声すら脳裏に響く。
「いいえ」
 桜花はぜいぜいと喘ぎながら胸元を抑える。
 思わずイワシも口から落ちる。
 …このイワシのせいでは?
 ……。
 本当ならこのかわいいかわいい大正パーラーメイドさん討ち入り仕様がびしょ濡れであるという素晴らしいナイスセクシー状況について言及したいのだが今回は何分スポ根もので作画が違う。各位脳内で補正して欲しい。閑話休題ッ!
 
「なんのッ!」
 桜花はハチマキを締め直し再び友情のイワシを咥えるッ!

「人への試練と考えるならッ!水中も空中も同じことッ!!!」

 それでいいのか人への試練。
 それでいいのか人への試練ッッッッッ!!!
 これでッ!人の道がッ!!開けてしまっていいのかッッッ!!!

「“我は精霊、桜花精――”」

 詠唱始まってしまった。

 海上だというのにはらはら桜の花びらが現れ始め、桜花もやわく光を纏い始める。

「“――呼び覚まされし力もて、我らが敵を討ち滅ぼさんッ!”」
 滅ぼさないで!!!!!

「発動」
 発動!?!?!
 ユーベル・コード。

「“精霊覚醒・桜”――!!!」
 おはようございまーーーーーーーーーす!!!!
 
 かくしてユキエさん(トドくん:メス)(ペンギン)をとりかこむ桜の花弁渦ッ!

「参りましょうユキエさんトドくん:メス)(ペンギン)ッ!!!」

 極限まで精霊として覚醒した桜花に、もはや空気など些事。イワシをくわえてのおしゃべりもご覧のとおりである。
 これならば目論見通り水中抵抗の軽減も呼吸の確保もクリアでき――
 
 
『最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る』

――飛行。
 飛行である。
 更に具体的に言うと最高速度8200km/hに達する飛翔能力である。

 ちなみにマッハ1は1,224km/hだ。
 突然浮き始めた桜花とユキエさん(トドくん:メス)(ペンギン)
 だが強いイワシの絆で結ばれた二人は何も驚きはしなかった。

 むしろ桜花は確信の笑みを浮かべる。

 桜の精として覚醒しているとはいえ水中眼鏡していて本当によかった。眼球は一番危ない。
 
「行ける」
 どこに???

 オン。
 ひとつ音を残し。

 ジェット・ペンギン空を征くッ!!!!

 奇しくもレース会場は歌とシャイニングのサマーフェス。

 吹き飛ぶ花びらはライブ会場のコンフェティ…紙吹雪ならぬ花吹雪効果を添えたのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『コンゴウさま』

POW   :    オウムじゃねぇ。インコだ
【嘴】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    回転尾羽斬り
【ふさっと伸びた尾羽】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    鮮烈なる絶叫
【耳を劈く叫び】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ツッコミだ!!!ツッコミが来たぞ!!!!

 晴天晴れ渡りレースは順調!

 きみたち猟兵は無事レースでよくわからないパーリー旋風を巻き起こしたりライブしたりギルマン神輿で団扇島の歴史に名を残したり肖像権を無断で侵害されたりアニマルがビデオだったりウツボに求愛されたりシャチの誘惑に勝ったりフライングペンギン花吹雪マッハゴーしながら
 無事高速度でレースをぶっちぎることに成功した。

 ……。

 …それ、無事っていっていいのかなあ。

 ぐいぐいと飛ばし見えてくるのは丸い船尾――あれに海賊団が乗っているのだろう。
 今は誰もいないが船尾は横一線に窓がついており「実況」「解説」っていう名札が置いてあってすっげー気になる。
 まあそっか…そうだよね先頭からなら…後ろ…よく見えるもんね…。

 オープニング公開されたあとこっそり取ってつけたように追加されていた実況と解説にそんな意味があったなんてきっと誰も気付いていなかったに違いない!残念ッ後付けです!!

「よく来たなトンチキども…」
 晴天に影さす。
 敵は一体どこから来るのか?
 右か?左か?下か?

「こっちだレディスアンドジェントルメンども」
 いや上だーーーーーーーーッ!!

 雲だと思ったのは殺戮サイボーグ化された燕隼雀鳩烏インコオウムカカポウサギ――ウサギ!?!?!ッ以下省略ッ!!

 その中央にひときわ赤く大きいどう考えてもボスって感じの鳥が飛んでいる。

 あれはきっとオウム――

「オウムじゃねえ、インコだ」
 アッハイ。

 どこかで聞いたことがありそうな渋めのイケボでオウムは「オウムじゃねえ、インコだ」嘴をシュッシュと突き出しては引っ込める。
 これはツッコミの構えッ!
 ――インコは胸毛から葉巻を出して羽で火を起こし吸う。
「出番だと言うから来てみりゃあまァ御大層な面々だなァおい…」
 ぱふ、ぱふ、ぱふ、と輪になった煙を吐き出し輪の中へ次々入れていく姿は堂に入ったものだ。
「いいぜ、久々にちったァ羽がありそうじゃねえか」
 骨じゃなくて?

 オウム「インコだっつってんだろ」インコは葉巻を投げ捨て、フッサフサの尾で一閃。煙草はチリも残らない。環境への配慮までできる、相当の手練れだった。
 これもツッコミの構えッ!!

「全員かかって来いよ――チャプチャプ泳いだり途中でようやく飛ぶことを覚えた雛どもに空の王者が空の掟を叩き込んでやる」

 ここはグリードオーシャンで海の掟なんだが?

「無論そいつを理解する頃にゃてめえらはそのかわいい相棒と一緒に魚のエサだろうがな」
 めちゃくちゃカッコいい台詞だが言ってるのはまんまるのオウ「インコだ」…。
 …インコである。フッカフカである。大きさとしては2メートルほどある。成人男性が飛び込んでも大丈夫である。飛び込んでもふもふしたい。

 海を行く側のきみたちは気づく。
 錆臭い魚影――サイボーグシャークシャチタチウオカニウツボその他以下省略ッ!!きみたちがいると思った奴がだいたいいるッ!

「ここまで追いついて来たからには一匹も返さねえ…全員レースどころか人生魚生鳥生その他からドロップアウトだ。覚悟はいいな?」
 気づけば撮影ドローンも解説実況の声も聞こえない。

 そう、ここからはマッド・レース。
 海上ドライビン・サドンデス。
 きみたちを徹底的に落とすつもりだ。

「てめえが落ちるか俺らが落ちるか…実にイージーだろ?」
 台詞だけ聴くと本当に渋いのだがオープニングの都合上どうしても股間を打たないか心配になる台詞である。
 

「我が名はコンゴウ!トップスピード海賊団のツッコミ特攻隊長だ!」

 あっ今ツッコミ!!ツッコミって言ったぞ!!
 待ちに待ったツッコミの登場だッ!

 名乗りと共にコンゴウ「コンゴウさまと呼べッッ!!!」地の文までツッコンでくるぞこいつ!!!コンゴウさまはサイボーグバードどもを従えきみたちに襲いかかってくるッ!

「どいつもこいつも揃いも揃ってびしょ濡れで海洋生物に乗るなんてトンチキ恥ずかしくねえのかーーーーーーーーッ!!!」
 これもシャウトによる範囲ツッコミの構え――――――!!!!

 お前もウサギ飛んどるがーーーーー!?!?

 何はともあれ集団戦である!
 ここを超えねば海賊船には乗り込めぬッ!
 更なる速度を!敵を討てッ!
 それでは猟兵、海上ドライビン・ゴーッ!

■敵■

・コンゴウさまx1体
・モッフモフサイボーグバードxとてもたくさん体
・ピッチピチサイボーグ海洋生物xわりとたくさん体

■状況■

・海洋生物に乗って海上(一部飛行中)を移動しながらの戦闘となります。足元ご注意下さい。
・ライブ映像は放映されていません。
・海洋生物の乗り換えも可能です。
エリオス・ダンヴィクトル
うげー(うげー)帰りてぇ(帰りてぇ)

……えっ、すっげー面倒くせぇ(すべて本音)

でも落ちたくねぇしなー。海だもんな(そこじゃない)、水着まだだしな(そこじゃない)。
落ちたくなけりゃ落とすまで、か。しゃーない、ここまで来たんだし、やることはきっちりやらせてもらおう。

あのお喋りなトリは他に任せて、こまくて多いのを減らすとするかね。ありがたいことに、海上の割には足場が意外と悪くねぇからな!(半ばヤケ)

っつーかオウムだかインコだか分かんねぇトンチキ生物にトンチキって言われたくねぇよ! ヤキトリにすんぞ畜生が!!
こっちだって好きでトンチキやってんじゃねぇんだぞトンチキサイボーグどもめ!!(八つ当たり)



●トンチキを止めないで〜止めて、いや割とマジで〜

 うげー。
 天のバード(一部例外あり)トルネード・海のフィッシュ(一部例外あり)トルネードを前にして、ギルマン神輿の天辺玉座に座るエリオス・ダンヴィクトルはそう思った。至極ごもっともである。
「うげー…」
 本音が口を開けて寝た日のよだれみたいにつるつる垂れ流れる。
「帰りてぇ…」
 帰りてぇ。その一念がエリオスの心にみちみちる。ほんと今すぐ帰りてぇ。文字通りいろんな意味でツッコむバードトルネードを眺める。ヒヨコって飛べるんだあー…飛べねーよ。

「オラァコンゴウデカイ顔するじゃないかアタイらの海で!!!」
「七色とかいう海流ステルスに失敗した魚類は黙ってな!お前らは所詮馬代理なんだよ!どいつもこいつもピチピチした色味で化粧やがってるようだが臭うぜ干物臭がよォーーーーーッ!」

 しかも目の前でオウムと「インコだロン毛」…インコとギルマンの喧嘩が始まっている。
 ギルマンたちのカラーリングが化粧だったことも知ってしまった。レースが終わったら殺されまそうである。なにこれ。

「えっ…すっげー面倒くせぇ」

 見ないフリして回れ右して帰りたい。
 …悔しいことに神輿の座り心地は悪くない。
 海の王者みたいなデザインには五百以上文句をつけたいが移動の揺れなさは無論、備え付けの薄布の天幕がいい感じに陽光を外の眩しさに苦痛を覚えぬ程度に和らげ、少し暑いかなくらいの熱えをほどよい風量の海風が涼めてくれる。爽やかで過ごしやすい晴れ渡る初夏体験。しかもなんとこの玉座リクライニング機能がある。いい感じの角度つけてまぶた閉じたらぶっちゃけ3秒で寝れると思う。
 すごいギルマン神輿。ギルマン神輿であることを除けば日常的な海上移動手段としてはほんとすごいおすすめ。ギルマン神輿であることを除けば。前提が全部間違ってる。

 ギルマン神輿のレビューしてる場合じゃねぇ。
 どうしようこれ。

 青少年が読んでもいいようにすると全部黒塗りになりそうなオネェマン(※オネェのギルマン)とオウ「インコだ、これで二度目だぞロン毛」すごいこのインコ思考読んでくる。オネェマンとインコマンの罵倒をBGMにエリオスは頬杖ついて考え込む。
「…でも落ちたくねぇしなー」
 ちなみに突っ込んでくる雑魚バードどもは今のところギルマン姐さんたちがシンクロナイズド・スイミングの大技もかくやのダイナミック・アクションで(これも見応えあるのでホントおすすめ。ギルマン神輿であることを除けばほんと何もかもがおすすめだ)なんとか防いでくれているが押されているのも感じている。何せ海にはあちらさんのサイボーグ魚類がうよいよいるのだ。多勢に無勢だろう。
「海だもんなー…」悩ましいため息をつく。
「ベタつきそう」
 おそらく気にするべきはそこではない。
 ねえサイボーグ魚類に食われる心配は?

「水着もまだだしなー…」

 拝啓猟兵の皆様受理状況いかがですか?
 2020年度の締め切りは7月13日朝までです。落ちても全力で祝福しような。
 …ねえだからサイボーグ魚類に食われる心配は?

「落ちたくなければ落とすまで、か」
 オネェマンによるサイボーグ魚類捕食の残酷な光景から目を逸らしながらエリオスは決意する。
「しゃーない」
 ギルマン神輿はもう乗っちゃったし。
「ここまで来たんだし」
 恥ずかしくないのかとかオウ「インコだロン毛、次やったらそのヘアーをヘルメットにカットにすんぞ」…インコにツッコまれたわけだし。「やることはやらせてもら…」
 ……。
 エリオスは思わず真顔になる。
 恥ずかしくねえのか、だって?

「やることはやらせてもらおうか」
 ドスのきいた声が出てしまった。

 銃を抜く。

 恥ずかしいわ無茶苦茶。

 ホルスターから銃を抜く。
「くるのが遅いんだよツッコミがァ…」
 第一章で来て欲しかった。できればギルマン神輿に乗ることになる前に来て欲しかった。
 もうギルマン神輿の乗り心地を知る前には戻れないのだ。どうしてくれるんだこのやろう。

「タツミ姐さん」
「何だいボウヤ」

 ツッコミによって蘇った正気がエリオスの中でのたうつ。
 
「そのままスピードを出してくれ」

 恥ずかしいに決まってるやろがレースで神輿やぞ。オネェのギルマン神輿やぞ。唐揚げにパフェをトッピング並みの逆立ちだわ。パフェに唐揚げトッピングされても困るわ。

「あのおしゃべりなトリは後回しだ――まずはこまくて多いのを減らす」
 エリオスから放たれているのは間違いなく殺意の波動であった。
 タツミ姐さんはサイボーグシシャモを噛みちぎりながら笑う。
「ようやく本気ってことかい?随分遅かったねえ」
「いやー、能ある鷹は何とやらっていうでしょ?」
 会話だけ切り取ればスタイリッシュなのにかわす相手はオネェギルマンである。
「相手がトリだけにトリに出るって訳だァね」「違います」そういうつもりでは。「なかなか駄洒落た子だ」「違うんです」#団扇島民 #人の話 #聞かない #なぜ で検索をかけたい。

「ならアタイらもあんたに応えないとねぇ…」
「えっまだなんかあんの」

 もうやめてほしい。

「あるに決まってるだろあんたが乗ってんのは何だいッ!」

 トンチキギルマン神輿である。

「いくよみんなッ」「待って」「タッちゃん!本気ィ!?」「待って待って」「アタイに二言を言わす気かいッ!」
 エリオスを置いてギルマンたちが何かしようとしている。
 唐揚げにパフェをトッピングしてその上に何をかけようというのだ。
「本気に決まってんだろ何のために百年間何のために毎日毎日神輿メンテを続けてたと思ってんだい!」
「待って待って待って待って!」
 エリオスは必死に声を荒げる。
 バージョンアップか。バージョンアップなのか。何のバージョンをアップするというのだ。
 ギルマン神輿でエリオスの世界はもう十分新世界がオープンワールドしているのに。きらめく星がダイヤモンドどころか隕石のホールニューワールドなのに。
「安心しなッ!」タツミ姐さんが吠える。
「できねえよ!」どこに連れて行かれるというのか。
「あんたはそこに堂々座ってそのご立派な逸物で片っ端から撃ち抜いてくれりゃいいのさッ!」「セクハラッ!」ギルマンからセクハラうけるなんてそんなこと普通ある?

 カチッ。

 このシナリオのリプレイから聞こえる度にろくでもねえことが起きる音がした。
 よく見るとギルマン神輿でギルマンたちが握っている柄がバイクのようなハンドルになっている。
 オネェギルマンたちがそいつを一斉に回転させた、ように見えた。

 まず。

 エリオスの座る玉座の土台四隅からスモークが出た。

「ラッセーラッラッセーラ!」「「「ラッセーラッセーラッセーラ!!」」」
 タツミ姐さんとその一派が発破をかけている。

 エリオスは銃を持ったまま両手で顔を覆う。
 何が起きるかわかってしまった。

 スモークと共に台座が七色に回転しながらせり上がる。
 鳴り響く音楽はホスト・クラブでシャンパンコールにかかりそうなアゲアゲ↑のやつである。
 パーティーじゃないし止めてほしい。いらんやろ音楽。
 しかもギルマン姐さんたちが合いの手を入れてくれている。

「ハッ、あいつらがここまでするか…よっぽどの手練れだな猟兵ッ!」
「そんなんじゃないです…」笑うコンゴウさまにエリオスは蚊の鳴くような声で敬語まで使った必死の抗議するがもちろん音楽にかき消されてしまう。
 
 天幕を支えていた四本の柱は四方へと倒れ、華やかな花火の柱を吹き上げる。
 ライブ設備でいうところのジャーブ効果、というやつである。
 ねえ、ユーベルコード欄見て?『自分に気づいていない敵を【銃】で攻撃する際、ほぼ必ず狙った部位に命中する』ってあるでしょ?目立っちゃ駄目でしょ?ドウシテ?

「ッああそうだよ畜生ッ!!!!」
 エリオスは開き直った。
 玉座の上に立ち上がり肘置きに足を乗せる。
 耳まで真っ赤なのが花火のおかげで誰にもわからないのが唯一の幸いである。
「覚悟しろトンチキ生物どもッ!!!」
 もうヤケだ。
 半ばヤケがガチのヤケになった。
 ついでにコンゴウにも数発ぶっ放すが「甘いッ」これは尾(ツッコミ)で叩っ斬られてしまう。
「期待の新星トンチキがぬかすんじゃねえッ!」
「誰が期待の新星トンチキだッ!!」

 二章一発目のリプレイなのでほかがどうあれこの瞬間今一番トンチキなのはしょうがないですね。

「っつーかオウムだかインコだか分かんねぇトンチキ生物にトンチキって言われたくねぇよ!」コンゴウさまに反撃の隙も与えぬ連射をお見舞いする。「ヤキトリにすんぞ畜生が!!」 
「ッこっちだってなぁ!!!」
 条件はいい。めちゃくちゃいい。迫り上がったおかげで撃ちやすいことこの上ない。
 足場は海上だって信じられない安定具合なのだ。
 こんなに叫んでも楽曲に入ってるシャンパンコールでエリオスのシャウトがトリに気づかれない。
「こっちだって好きでトンチキやってんじゃねえんだぞトンチキサイボーグどもめ!!!」
 しかもせり上がりきったあとも回転しているので撃ち放題である。
 さらに言うなら花火が目眩しになっていてコンゴウさま以外には次々あたる。
 当たってしまうのであるッ!!
 効果的すぎて悲しいなんてことがあるなんて知らなかった。辛い。
 あと大切なことに気づいてしまう。
 このサイボーグバードども、目にカメラが仕込んである。

 多分電波で本部に共有してされている。

「いいか覚悟しろマジで一匹も帰さねえからなッ!!!」

成功 🔵​🔵​🔴​

ジャガーノート・ジャック
★レグルス

(ザーザー ガチャッ)
どうして。

(万感の籠もった声だった。一体なんでこんな事に。誰のせいだ?エア受話器は何も答えてくれない……)

(でもなんかツッコミが来たらしいし思考を放り投げてもいいのかもしれない。嗚呼 空が綺麗だ。海日和、天気は晴れ時々フグ――――)

(🐡?????)

(相棒のフグがびちびち跳ねる。より一層宇宙と交信する。
きっとあれだ。これあれだわ。)

(ソラも飛べるわ。(※思考がプッツンする))
ちょっと宇宙飛んでくるわ。(ザザッ)

(ふわーーっと空に吸い込まれるように浮かんでく。その後ふりそそぐ沢山の星っぽい何か)
(本日の天気:晴時々フグ時々星、更に時々宇宙豹)(ザザッ)


ロク・ザイオン
⭐レグルス

ふんにゃかにゃんにゃんふんにゃかにゃかにゃか
ふんにゃかにゃかにゃかふにゃふにゃふふふふ
(鼻歌うろ覚え爆音パレード)
(テンのアガり過ぎた森番、もう何も怖くない)

(ところでひゅどらは激怒した)
(幼き水精はレースが解らぬ
しかし調子に乗っている飼い主のウザさには魚一倍敏感であったし
更に輪をかけ空がうるさいのもムカついた)

(反抗期である!)
(弾力に任せボヨンと打ち上がるフグ
インコを突き抜けflyaway
体中に広がるトゲトゲ)

…育った…
(見上げる森番
インコ巻き込み落ちる巨大フグ)
えっ
(フグを追って飛ぶ相棒)
えっ
(星と降る巨大フグ)
ぎぁぁああアアア!!!
(一人ヒトデを駆り右へ左へ必死に逃げる)



●ジャック、ツッコミやめるってよ

 限界だった。

「“どうして”」
 
 ジャガーノート・ジャック(JOKER・f02381)は受話器を握り現場豹としての権利を行使した。
 回るコーヒーカップ・オン・ヒトデで呆然と真っ白に燃え尽きながら問う。

 ドウシテ。

 万感を込めた問いだった。

 どうしてこんなことに。
 一体何でこんなことに。

 聞いてた話と合ってるけどだいぶ違う。
 第一章終わったばっかりなのに疲労感がすごい。これまだ二章冒頭?嘘でしょ?

 エア受話器はジャックに何も教えてはくれない。
 壊れかけのラジオだって何も聞こえないのにエアならそりゃそうである。

 遊園地に引っ張り出された休日のお父さんよろしく両足を大きく広げ受話器キープしたまま前傾姿勢で座る限界ジャックを乗せてコーヒーカップが回っている。

 そう。
 ヒトデではない。
 ヒトデではなくヒトデの上に乗るコーヒーカップが回っている。
 いやコーヒーカップの性質上コーヒーカップが回るのは正当なのだが今日日今回この場合ジャックが乗るコーヒーカップが回転すると言うのは由々しき自体であった。

「ふんにゃかにゃんにゃんふんにゃかにゃかにゃか」
 回しているのは対するロク・ザイオン(蒼天、一条・f01377)。
 どこまでもご機嫌だった。
 テンのションが上がりすぎて帰ってこれていなかった。
 エレクトリカル爆音パレードはスピーカーの限界によってとっくに鳴りやんでいたのだが、ロクとしてはいつまでもなっているような気がして、ご機嫌のままうろ覚えでニャンニャコ歌い続けている。
「ふんにゃかにゃかにゃかふにゃふにゃふふふふ」
 コーヒーカップのハンドルに乗せたひゅどら(水精霊属サメ科フグ)を時々カスタネットがわりにムニムニしながらるんるんに前後左右へ揺れる。はねた髪の毛やおさげが合わせて揺れる。足もプラプラさせて完全に(メンタルが)ロリ・ザイオンと化していた。
 酒もないのにクライマックス・ハイ。爆音ミュージックとスピードはロクの脳内でアルコールを生成したのだった。
 
 人、それを狂気状態と言う。

 (メンタルが)ロリ・ザイオンは今ならほんとに海の果てまでいける。見に行こう、なっ!という気持ちでいっぱいだった。
 その気持ちのまま(メンタルが)ロリ・ザイオンLv79―言及しておくがこの時点の猟兵のマックスレベルは83、マックスではないがかなりのハイレベル猟兵である―はPOW 302…ハイテンションで補正値プラス168を利かせ、えーと何、470くらいのパワーでコーヒーカップのハンドルをギャルンギャルン回している訳である。ちなみにレベル1で最低POW、作ろうと思えば0は作れる。どれだけのゴリ・ザイオン、暴力かお分かりいただけるだろうか。
 もちろんエア受話器を耳に当てたまま微動だにしない燃えつきた相棒すらもはや目に入ってない。
 本来ならばこれでゼッケンレグルスが乗るヒトデのスターリーくんが回転して前に進むのだが…今スターリーくんは未曽有の危機であった。

 空腹。
 
 お腹が

 お腹が空いたのである!!!!!

 ヒトデのスターリーくんは電気を浴び七色に発行し回転してぶっ飛ばすと言ういまだかつてない活動を行ってエネルギー切れを起こしていた。
 そこへ――海賊団が海へ放ったサイボーグ魚類である。
 回ってる場合じゃなかった。
 スターリーくんは無数に放たれ自身の周りで渦巻くサイボーグ魚類を片っ端からから菅足と腕で絡め取り掴み取り口へ運んでいた。
 全ての魚類はだいたい止まると死ぬのでスターリーくんの周りを渦を描き攻撃の隙を狙い続けておりスターリーくんはその魚類を全ての足で渦を捕らえて食っているつまり渦と共に回転しており、するとゴリいや、ロリ――もう足してゴロリ・ザイオンが回しているハンドルの回転エネルギーは自然とコーヒーカップを回すのである!!!!!!!!何が書いてあるのか分からねーと思うが自然エネルギーとか運動エネルギーとかそう言うチャチなもんじゃねーミラクルでともかくコーヒーカップがトラだったら秒殺バターになる速度で回っていたのである!!!!
「チッ!!」
 これに舌打ちしたのはコンゴウ様である。「やめろお前らッ!!」配下の鳥に指示を出す。「手を出すんじゃねえ――
 手を出すなと言うコンゴウさまの指示に焦れたハトが目からビームを放ってコーヒーカップを攻撃する。「おいお前ッ!」彼は今ヒトデのスターリーくんによって食われた魚類サイボーグ、金魚のミエコちゃんに片思いしていたのだ。金魚は淡水生物のはずである。
 チュインッ!
 コーヒーカップの豪速がビームを弾きハトの脳天を逆に撃ち抜く。「クソッ」
 …信じられないと思うが信じて欲しい。ロクがもたらした超回転によってコーヒーカップは手出し無用の要塞と化していた。回転が早すぎて運転手を狙おうにも狙えない。ロクがハンドルを回すために身を前に出していたのも、ジャックが前傾姿勢で頭が低い位置にあったのも非常に幸いした――なんと言うことだ。
 発狂しててもレグルスはレグルスなのである!!!
 それでいいのかな!!!!
「イカレトンチキを舐めるな!!あいつらのパワーはリプレイ1章につき登場モブ秒殺だッ!」
 コンゴウの指示に従い、サイボーグバードたちはコーヒーカップの上をぎゃあぎゃあ喚きながら飛ぶことしか出来なかったのであるッ!
 
「すごいだろう、ひゅどら、なあ」ムニムニ「星ははやくて、すごいんだ」ムニムニ。
 そんなことを微塵も感じずロクは相変わらずハンドルを豪速で回していた。
 感覚が完全に麻痺して前進していないことに気付いていない。
 …ロクとしてはこのヒトデの偉業を同じ海洋生物であるひゅどら(水精霊属サメ科フグ)に是非教えてやらねばならないという熱き使命感に基づく親心でもっての行動だった。
 のだが、当のひゅどら(水精霊属サメ科フグ)としてはンなこと知ったこっちゃなかった。
 ひゅどらは水精生物である。
 幼き水精にはレースがわからぬ。
 しかし飼い主の調子でサーフィンしているこのウザさには魚一倍敏感であったし
 更に輪をかけ空がうるさいのもムカついた。
 よくわからんが超回転していて気持ち悪かった。
 そうでなくてもデリケートな思春期ハートに親心はカンに触るのにこのハイテンションと騒々しさがばちばちきたのである。
 ひゅどら(水精霊属サメ科フグ)は身を震わせた。
「ん?」
 ひゅどらがぷるぷるしているのでロクはひゅどらを覗き込んだ。
 感動しているのかと思った。そうだろうそうだろう。すごかろう。
 そう思い――「ぶみゃ!!!」膨れ上がったフグに顔面パンチを喰らった。派手に後頭部を座席にぶつけてしまう。ちなみにジャックは前傾姿勢なので無事だった。

 何が起きたか。
 そう。
 フ グ の 反 抗 期 で あ る !

「ッまずいッ!!!てめえら、解――」
 普段のコンゴウならば、フグの異常にもっと早く気付いただろう。
 しかし豪速回転するコーヒーカップの中ではそうは気づけない。哀れ膨らんだひゅどらのボディ・アタックをくらって吹っ飛ぶ。
 そんなことでひゅどらは止まらない。
 膨らんだボディの弾力で弾けるように空へFly away。
 浮き上がり文字通り烏合の衆へとブッ込んで散らす。それだけでは飽きたらぬ。逃しはしない。怒りのままに身体より派手にとげを出す。
「ひゅどら…」
 その姿がなんだか星のように思われ―頭を打ったのでロクの視界に星が散っていることも不味かっただろう―思わず惚れ惚れと見つめる。
「育った、のか…」
 反抗期のコードとか覚えてくるフグだったけど、とうとう分かり合えたのか。もう何も怖くない――…。

「ブヘッ」
 ジャックは隣に何かが落ちてきた音でゆるゆると動き出した。「“…ガチャッ”」とうとう返事のなかったエア受話器をそっと置いて眺める。「よう猟兵」弾かれたコンゴウさまが落ちてきていた。「“……”」普段なら理知と皮肉に満ちた台詞の一つも言えるのだが、思考が限界だし散々大回転していて頭は酩酊、もうなんもいえねー状態であったので、ジャックはそいつをまじまじと見つめる。
「おう大丈夫か、互いにひでぇ目にあったようだな」
 ……敵からとはいえ思わぬ優しさにジャックは天を仰ぐ。
 思わぬ海日和。嗚呼、空がきれ

 フグ
🐡

 ――?????????

 ジャックの思考が宇宙と交信する。
 ツッコミ的理性がボケの濁流に飲まれる。
 現場豹は再びスペース・ジャガーとなる。
「やりあう前に名乗りくらいしようや、俺ァトップスピード海賊団のツッコミ特攻隊長コンゴウだ」
「“…そうか、ツッコミか…”」「おん?」

 そっか。

 ジャックはボケの濁流の中、穏やかに微笑んだ。

 ツッコミもきたんならもう、いっかあ――…。

 プッツン。

 思考の切れた音がした。

 ひゅどらはフグである。正確に言うなら水精霊属サメ科フグである。
 鳥ではない。

 故に浮遊は一瞬。

 空へ昇ったら

「えっ」
 ロクの顔色がさっと青白く変わる。
 テンションが吹っ飛ぶ。
 正気が帰ってくる。

 落ちるしかない。

 巨大フグが、ロクたちを目掛けておちて――…。
 
 走馬灯がジャックの胸をよぎる。
 君とであった季節がこの胸になんとやらである。ところで君って誰ですか。
 でも、これでもう突っ込まなくていい。
 晴れやかな胸で思う。なんだろうこの清々しい気持ち。
 そうあれだ。これはあれだわ。
 きっと今なら、自由に

「“ちょっと宇宙飛んでくるわ”」

 ソラも飛べるわ――…。

 ユーベルコード、発動☆彡

「えっ」
 空へと吸い込まれるように輝きながら浮かび始めたジャックへロクは目を向く「ジャック、待」
 まるでどこからともなく天使のお迎えが来そうな光景である。
「“現時刻より友軍に合流――”」
 ロクは腐っても発狂してもレグルスである。
 ジャックのいつになく朗らかなアナウンスに何が起こるか察し。
「マ゛ッ」間に合わなかった。ジャックはコーヒーカップから離れる。
 コンゴウさまも慌てて退避するが

 そんなものが、レグルスの速度に間に合うものか。

「“これより、掃討を開始しゅる――”」「ジャックッ!!かんでる!!!」

 フグの上に浮かんだジャック周囲に、バグが星形エネルギーとなって浮かび上がる。
「み゛ッ」ロクでも見たことのない現象だがアレはヤバいと本能が告げている。

「ぎぁぁああアアア!!!」 
 かくしてロク・ザイオン限定地獄絵図。
 降り注ぐ星と巨大フグ。
 ロクは正気に戻ったことPOW 302に必死さで補正値プラス168を利かせ、やっぱり変わらぬ470くらいの力でハンドルを切りまくる。スターリーくんのお食事は終わっており、今度はきちんと前進することが何よりの幸いか。
 巻き込まれて星に撃ち抜かれたサイボーグ鳥も降ってきて視界は最悪である。
 ついでに着水したフグが追ってくるし相棒はフグの上でまだ星を放っている。
 降り注ぐれぐるすは2人ピンじゃないのかジャックッ!!!!!
「ジャックッ!!!!!!ジャックッッッッ!!!!」
 フグと星の雨の中必死に叫ぶロク・ザイオン。だがジャックには届かないらしく反応は一向に帰ってこない。「ジャックッ!!!しっかりしろ!」ハイカラさんでもないのに後光がさしているジャックはどこか晴れやかに見えた。「くっ」ハンドルで回転をきかせ右へ左へとかわしながらロクは歯を食いしばる。「ジャックッ!!」届かないッ「しょうきに、戻れッ!!」―おめーが言うなや―ああこんなにも届かないッ!!!
 いや。
 ロクは気付く。
 これなら届くかもしれない――かけらのような希望にすがりッ

「ガチャッ!!」

 見様見真似で効果音を上げ、エア受話器ッ!!
 鳥の攻撃を防ぐために身は伏せ、両手でキープッ。
「モシモシッ!!」レグルス、応答、願う――…。

「“ガチャッ”」
 ジャックは厳かに、自らのエア受話器を取っていた。
 繋がった。ああ、繋がったのだ――ロクの閃きは正しかった。
 ロクは切られる前にと速攻で疑問を叩きつける。

「ドウシテッ!!!」

「“知るかッ!!!!”」

 ――本日の天気:晴時々フグ時々星、更に時々宇宙豹。オーバー。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

エスタシュ・ロックドア
海洋生物じゃねぇ俺が跨るのはシンディーちゃんただ一機っつってんだろ!
コッチを見るな着いてきたのかよえびせん丸速ぇなおい
いや、丁度いいや
【動物と話す】
ちょっとシンディーちゃん水面に浮かせててくんねぇ?
違うユベコ使いたくてな
大丈夫だ自動バランス機能ついてっからよ
後でお礼に魚やるからさ

出番だぜ、野郎ども
『金剛嘴烏』発動
いい気になって飛んでる連中に折檻してやれ
あとコンゴウさまと遊んでもらえ
俺ぁ【怪力】でフリント振るって下から攻撃してくる奴を【カウンター】【なぎ払い】【吹き飛ばし】
サイボーグじゃ流石にえびせん丸も食えねぇだろーしなぁ
コンゴウさまが子分どもにかかり切りになったら、フリント投げつけるぜ



●黒の巨塔、建立

「何がスズキ亜目ハダカスズキ科ゼンラスズキマッパーだッッッッッッッ!!!!」

 エスタシュ・ロックドア(碧眼の大鴉・f01818)の咆哮があたりに響いた。
「うるせえ突然スズキ亜目ハダカスズキ科ゼンラスズキマッパーを叫ぶんじゃねえクソガキがッ!!!」
 コンゴウが吼え返す。「ちょっとドキッとするじゃねえかこれは全年齢シナリオだぞ!!!!!」
 もはや鮮烈なる絶叫(ツッコミ)寸前の声量に空気は震え突風は突き抜けエスタシュのジャケットの裾がバタバタとはためく。
 恐るべき勢いだったが今ここで少しでも怯んではならず、エスタシュはさらなる加速をしながらコンゴウさま目掛けて突っ込む。
「俺のシンディーちゃんはバイクだ!!!」
「そう!!!!!!だな!!!!!!!」

 エスタシュの拳とコンゴウさまの翼が互いに向けて突き出され

「いい女だ。ウチのポンコツどもにも見習わせてやりてぇぐれェによ…」
「へっ、ありがとよ」

 優しく触れ合う。

 ―和解―

「つーわけで海洋生物じゃねェ俺が跨るのはシンディーちゃんただ一機っつってんだろう誰がトンチキだ!!!!!」
 コンゴウさまと交差し海上ドリフトをキメながらエスタシュはコンゴウさまへ続けて叫ぶ。
 何今さっきの茶番。
「馬鹿野郎サングラスかけてご機嫌ノリノリでレースに出てきた時点でもはやトンチキ入門編だ声出して笑っちゃっただろうがてめえ!!!」笑顔が素敵ないいアイコンですね!!!
 コンゴウさまはエスタシュを逃すまいとバードトルネードを差し向ける。
 エスタシュはこれにフリントを振り回し襲いくるサイボーグバードどもによるトリビーム・トリドリル・ロードトリローラーをいなすが全て防ぎ切るとはいかない。ロードトリローラーってなんだろう。ここは海上であり奴らは宙である。ロードはない。
「海にはサングラスだろうが!!!!!」
 なぜか執拗にサングラスを狙うトリビームを集中して叩くがそうするとトリドリルが腕をかすめる。
「はん」コンゴウさまはエスタシュの苦戦を上空から余裕で眺めて笑う。「トンチキじゃねぇ…なあ?」胸毛から煙草を出し嘴を擦って火をつけてたっぷりと吸って見せる。
「豪快なお口じゃお元気にそう言うが果たして本当にそうかな?」
「ああ?」エスタシュは不快感もあらわに額に皺を寄せた。「…聞こえなかったんなら何度でも言ってやるぜ」
 胡乱に尻込みしているわけではない。
 決してない。
「海洋生物じゃねぇ俺が跨るのはシンディーちゃんただ一機っつってんだろ!」
 みぃっ!!!
 派手な水しぶきが上がる!
「何ッ」すわ敵襲かと身構えたエスタシュの瞳がまず見えたのは白に黒で丸文字の看板『・海洋生物の乗り換えも可能です』なぜか見覚えがある。そのアナウンスは魚がしてたんですか。
 一匹のシャチがエスタシュの隣へ現れた。
その顔は、君の名は――
「えびせん丸!?」
 絶句。
「クックック…」コンゴウさまは嘴をかりかり鳴らして笑う。
 何も知らぬえびせん丸はみいみい!可愛らしい鳴き声を上げながらぐるぐるとエスタシュの周りを回っている。
「果たしててめえェはこのクソボケトンチキの中でボケずに耐えられるのかな…?」
 さらにエスタシュたちを――一人と一機と一匹をトリトルネードが囲んでいる。
「んの野郎ォ…!」
「勘違いするんじゃねえぞ?そいつが勝手に来たんだ。悔やむならテメェの色男っぷりを恨むんだなァ…」
 もはや乗らねば解放せぬという渦だった。
 よくわかんないんだけどなんでツッコミ(コンゴウさま)にツッコミ(エスタシュ)がボケを強要されてんの?

「3分時間をやろう」
 もうなんなんこれ。

 えびせん丸はあろうことかエスタシュの足を鼻先でつついたりズボン引っ張ったりしてくる。Oh…So cute…。
「コッチを見るな着いて来たのかよ」目を合わせると流石にまずいので身をかがめてえびせん丸の頭を片手でむにむにしながら言い聞かせる。『乗り換え可能と聞いてさっき!』芸達者にも字を書いて答えてくるえびせん丸、健気である。「速ぇなおい」あと丸文字かわいいなオイ。「あと俺話わかるから字書かなくていいぜ」そういうとこだぞ色男ォ!
 どうしたものか――エスタシュは奥歯を噛み締める。前も後ろも右も下もトンチキである。あとさりげなくレースなのに停止させられていることも痛い。
 えびせん丸に乗らねば脱出できないというのか。しかしそうするとシンディーちゃんがドボ――
「いや待てよ」
 閃きッ!
 このシナリオにおける「カチッ」の次に混沌をもたらしているのが閃きなのだがまあそんなこと知ってるわけがない。閃きがエスタシュに降りてくる。
「なあえびせん丸」
 目は油断なく煙草を吸うコンゴウさまを捉えつつ、エスタシュは動物に通じる話術によってえびせん丸にひそひそと語りかける。

「ちょっとシンディーちゃん水面に浮かしてくんねえ?」

 what's?

「違うユベコ使いたくてな」な、とエスタシュは目だけを動かし、えびせん丸の潤んだ瞳と目があってしまった。乗ってくれないの…?「ん゛ッ」慌てて目を離しえびせん丸の頭を倍ぐらいむにむにする。「大丈夫だ。自動バランス機能ついてっからよ」そしてこの三角関係に見事なピリオドをもたらす回答となるはずだ。別にどこも三角ではない。
「後でお礼に魚やるからさ」
 最後のダメ押しをすると、えびせん丸は了解とばかり水をしぶく。

「3分経ったぜ、答えを聞こうか」
 コンゴウが煙草を投げ捨て尾で微塵切りする。
 はらはらと灰が舞う中エスタシュは堂々と胸を張ってにやりと口の端を吊り上げ、指を鳴らす。
「コード解除だ」
「ほお」
 マリンジェットの装甲が解除される。
 どんな悪路もしっかりと走れる分厚いタイヤの嵌まったホイール。ボーディングフラットは開き現れる後輪、ジェットはマフラーへ切り替わり――…。
「お望み通り乗ってやらあ」
「やはりそうか――ここは海上舞台はレース」コンゴウさまはふすふすと鼻のから息を出す。勝利宣言だった。
「そうさ結局どう取りつこうと愛機だろうと舞台が変わりゃ乗り換えを余儀なくされるトンチキに乗るトンチキ猟兵――」
「ただしッ!!!!」
 ざ、と水面が泡立つ。
 エスタシュの指示通りえびせん丸が―待って待って予想以上にえびせん丸が!ああ!えびせん丸が!!
 シャチ、水面より屹立。
 唇に宇宙バイクの腹を乗せて。

―誰もそこまでやれとは言ってねえ―

 エスタシュの脳裏にツッコミが疾るがしかしもうここまでくると腹をくくるしかない。
 ちなみに普通のシャチはオスなら6m〜8m、メスなら5〜7メートル。えびせん丸はレース魚なので10メートルほどッ!10メートルはおおよそ鉄筋コンクリートのマンション四階建てに匹敵する!!!
 
「シャチの口先にシンディーちゃんでなッッッッッ!!!」

 エスタシュ・オン・シンディーちゃん・オン・えびせん丸ッッッッッ!!!!

 よ う こ そ 胡 乱 の 世 界 へ 。
 
 黒い巨塔・建立ッ!
 あってよかった自動バランス装置ッ!

「アホか!!!」無論エスタシュによるこのファースト・トンチキにコンゴウさまが耐えられるはずもないッ!!「人はともかくバイク乗せんなッ」それに関してはエスタシュだってびっくりしている。
「動物愛護団体に代わってッ!お仕置きよォーーーーーーーッ!!!」
 すかさずコンゴウさまがサイボーグバードでバードを作りながらエスタシュへと回転尾羽斬り(ツッコミ)せんと迫る。
 その勢いはこれまでで一番激しい。和解したツッコミがボケにまわったことによる悲しみ…うんまあそうね悲しみにしとこっか…悲しみもあったのかもしれない。
 エスタシュはもはや開き直りの笑みで再び指を鳴らす。
「出番だぜ、野郎ども」
 
 コード『金剛嘴烏』、発動。

「てめぇらの方こそ今まで沈めた人間とバイクと魚とシャチとシャチの罪を償ってもらおうか」

 ボケにまわったかに見えたエスタシュは、やはりツッコミだった。
 でもだいぶシャチでやられていた。

 飛び出す烏は三十七羽。ただの烏と侮るなかれ。

「いい気になって飛んでる連中に折檻してやれ」

 地獄の獄卒が配

\からあげ!/\からあげッ!/\たつたあげッ!/\ニシン!/

 ご褒美の要求ッ!!!

「…おーおー、終わったらな」どうも今日は微妙に格好がつかない日なのかもしれない。ちなみに最後のニシンはえびせん丸の要求である。すっかり配下のつもりらしい。「あとコンゴウさまと遊んでもらえ」
 烏どもは意気揚々、サイボーグバードの首を折り羽を貫き叩き落しにかかる。
 地獄で罪人を苛むものどもだ。サイボーグとはいえ鳥の相手など容易い!

「おうおう、トンチキからの突然のシリアスたァやるじゃねえか?ええ?」
 配下を落とされまた自身も烏の攻撃をさばきながらコンゴウさまは体を膨らませる。
 巨大とはいえ所詮鳥の威嚇。エスタシュはせせら笑う。
「空の王者だったか?一丁ご教授願うぜ」
「任せろや、全員落とされても泣くんじゃねえぞクソガキが」
 フワッフワのインコとするにはあまりに惜しいハードボイルドやりとりである。
 コンゴウさまへ烏が何匹か襲いかかっていく。
「おうやれるもんならやってみろや」
「てめェこそせいぜいそこでサメのエサにならねえように気をつけるんだなァ!!!」
「…サメ?」

 突然のサメッ!
 エスタシュの背後へ水面から10メートルジャンプをキメた突然のサメッ!!「うおっ!?」すかさずフリントで応戦する。「ハーハハハッ!!第一章から同じネタの天丼を決めるとはお里が知れるなァ!!」「不慮の事故だっつってんだろがッ」コンゴウさまの嘲笑をやり返しながらカウンターッもう一匹のサメ諸共ぶッ叩き、薙ぎ払うッ!
 胡乱すぎて今一実感が持てないが高度10メートル戦。吹き飛ばしたサイボーグシャークはサイボーグニワトリを巻き込みながら海面へ叩きつけられ水しぶきをあげるッ!
「えびせん丸お前サイボーグ魚類は流石に食わねーよなー?」
「ンンンンンンンン」(※口先にエスタシュたちを乗せているため意訳:食べますけど)「食うの!?!?」団扇島恐るべし。
「ンンンンーンーフン」(※口先にエス以下略:ご褒美なんで生がいいです)「だよなあ」
 烏がバードトルネードを次々食い散らかしボロボロに崩していく。
 出番にめちゃくちゃはしゃいでいる。あとアレはご褒美もらえる気でいる。
「からあげからあげたつたあげなー…」
 3匹目のサメをホームランしながらエスタシュはため息をついた。「俺だって今食いてえわ」
 次第にコンゴウさまへ襲いかかる烏が増えていっている。
 しかしコンゴウさまとて特攻隊長だけあり…烏たちは素早く回転尾羽斬りに苦戦していると見え、なかなか近寄れないようであった。

「しゃあねえ」
 であれば大将が手を出してやるのが一番だろう。
 
 サメアタックの切れどきを得、にっと歯を剥き出して笑う。
 よおく狙って

「早よ片付けて帰えっか!!!」

 フリント、大投擲!!
 無論コンゴウさまに避ける暇などなく、命中ッ!

「いよっしゃ!」
 ガッツポーズをとり――「あっ」

 あっ。

 フリントは無事コンゴウさまに当たり。
 ここは高度10メートル戦。

 そしてこのシナリオのタイトルは、海上ドライビン・ゴー。

 そう

 フリントが飛んでいくその先は、青い青い、海――…!

「うおああああああああああ!?!?!?オイオイオイオイオイオイおいちょっ」
 エスタシュの悲鳴虚しく。
 水柱、建立。

 なんとかした。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルベル・ノウフィル
よろしい、ならば戦争でございます

なんといってもこのルベル、オブリビ絶対許さないマン
召喚する超ふりーだむシャーク団
乗るはマイフレ王弟ペンギン一号!
Iつも
Tシャツ
海のIT革命でございます、兄を倒して王になれ弟よ!
そしてこれは海流乙女殿の分!(仇討ちわんぱんち)愛の重さを知るが良い

王弟ペンギン!あそこにインド人が視えますね?
あれを上にぶんなげるのです、そして僕達はサメに喰われる
サメがどっぱーんと敵に向かって跳ねるので腹から飛び出てコンニチワ
妖刀墨染をお見せしましょう

しゅぱっとかっちょよく
僕の召喚したサメさんはこれくらいできる(逞しい妄想力)

モフバードよ
僕のモフ力は53万でございます
しかもぴちぴちだぞ



●Tシャツ一枚あればいい、もふもふだからHAPPYだ

「ぶ、ぶえ、ぶええ…」
 ルベル・ノウフィル(星守の杖・f05873)はようやっとの勢いで王弟ペンギン一号の背中に鞍を置き、なんとかそこに登った。「れ、レースが長いことを失念していたのでございます…」犬かきのしすぎで腕と手が笑っている。
「ハッハァ!」コンゴウさまは笑い、人の姿を取ったルベルへ正面からすかさず突っ込んでくる。
「海上レースでペンギン乗せてだけでもトンチキだってのにッ」300字ぴったりのトンチキお疲れ様ですッ!
「キュートアピールなんぞ盛り込むからだッ!!!!」
 ――素早い回転尾羽斬り(ツッコミ)がルベルの服のみを無残に切り捨てるッ!

「くっ…!」
 哀れナイスセクシー。海上ドライビン・ゴーは健全なシナリオなので一切の描写は避けるが充分ドキドキしてほしい。語らない方がドキドキなことってあるよね。ちなみにルベルの体をカメラさんから隠してくれるのは謎の光ではなく波しぶきさんである。海だから。
「あのキュートアピールはアドリブだったはず…ッ!」
 はい。
 つい。
「大人はな、中途半端を許さねえんだ――やるんならここまでやるんだな、ボーイ?」
 尾羽を振り、ルベルの衣類をはらりと捨てながらコンゴウさまは不敵に笑う。
 その背後には瞳を光らせたサイボーグ・バードども。
 …並みの少年ライダーならここで尻込みしてしまうのだろう。

「よろしいッ!!」
 だがルベルとて数多くの死線を潜り抜けた猟兵――これしきのことでは、動じないッ!
「ならば戦争でございます」
 ズボンッ!!!!と素早くTシャツ一枚を頭から引っ被って即着衣ッ!!

 ちなみに白地に墨で「しばいぬ」の字が眩しいクソTである。

 おい人狼。

「なんといってもこのルベル、オブリビ絶対許さないマン」
 ガクガクの足もなんのその、王弟ペンギン一号の背の鞍へと堂々仁王立ちを決めるのである。
 バシャン!と水面が突如荒ぶり、コンゴウさまの眼が細められる。

「素敵なご友海産物をお持ちのようですが」

 ご友海産物。

「スーパーな大人であるコンゴウさまはまさかそれが自分だけだとは思われてはいらっしゃいませんよね?」
 ルベルの周りのさざなみの正体。
 それは、ユーベルコード・鮫牙により召喚された――鮫。
 目には目を、歯には歯を、シャークには、シャークをッ!!!
 シャーク以外も割といるんだがそれはッ!!!

「鮫如き――」「最後まできちんと見てくださいませッ!!」
 コンゴウさまの言葉を遮ってでもルベルは宣言する。
 サイボーグイカをくわえて海から飛び出し孤を描いて着水する鮫は――

「わが超ふりーだむフリーダムシャーク団をッ!!」

 Tシャツを纏っていた。

「は?」

 ちなみに柄は白地に「鮫」の一文字ッ!!!

 ?

 コンゴウさまは思わず首を傾げる。
 そうしていると本当にただのオウ「インコだゴルァ」ツッコむとこもっとほかにあるでしょお!?!?

「Iつも(いつも) Tシャツ――これぞ海のIT革命でございますッ」

 坊ちゃんITとはinformátion technòlogy(情報通信技術)です――…と王弟ペンギン一号は思ったが水に浸かっているので何もいえない。
 あとルベルはいつもTシャツじゃないはずである。これからですかこれからなんですかこれからTシャツ一枚を依頼するんですかッ!!!

「よいか王弟ペンギン一号…よく見ておくのです…」
 ルベルは再びしばい…子いn…子狼形態をとる。絶対人間形態の方が便利だと思う。

「今から見せるは下克上ッ!!!この栄光を背に兄を倒して王になれ弟よ!」

 しばいぬジャン(プ)ッ!!!!
 ちなみに王弟ペンギン一号とは鳥綱ペンギン目ペンギン科トンチキトンデモトベソウデトベナインダヨネオレペンギン属オウテイペンギンという種族名から取られており王弟ペンギン一号はバリバリの長男3児の父であるッ!反抗する先がないッ!

 所詮しばいぬジャンプである。到底届かない。
「ははッ!意気だけは認めてやらァ」
 我に返ったコンゴウさまはルベルの足掻きを一笑に伏す。
「言いましたでしょう…最後までご覧くださいとッ!!」ルベルの余裕は崩れない。

「見よッ!!!キッズのたくましい妄想力ッ!!!!」
 
 カッ!!!!

 ルベルの鮫牙によって喚び出される鮫は――ルベルの妄想によって強く進化していくのである。
 
 サメ進化ッ!!!

 昨今溢れるサメ映画から得たトンチキ知識により、サメはここにサメ・エア・ジェットとなる。

 …具体的に言うとジェット機の胴の部分がサメである。ちなみにサイズもサメである。

「サメが飛ぶ映画ちゃんと見てこいやクソガキがァーーーーーーー!!!!!!!」

 コンゴウさまによる尾羽(ツッコミ)一閃サメのお造り一丁あがりッ!!!
 ちなみにサメは唐揚げも美味しいそうですッ!!!
 たといキッズの妄想力であろうともコンゴウさまはボケを切るツッコミッ!!!!!お刺身が次々仕上がりサイボーグ魚類がバチャバチャと水しぶきをあげる地獄絵図ッ!!
「ヌッ見ておりますとも!!!」
 フライングシャークの背でルベルは吠える。キッズのシャークはエアシャーク以外にも船シャークドリルシャークと非常にフリーダムに変化させサイボーグバードや魚類を食っているが、しかしコンゴウさまの刃にはなす術なく斬られてしまう。噛みつきに口を広げたところをパックリ斬ら(ツッコま)れるのだ。たまったものではない。

 ならば、キッズは妄想たくましく生きるだけである。

「サメージョンアップ!!!」
 説明しようッ!サメージョンアップとはサメ・バージョンアップの意であり、キッズの妄想力によりサメがパワーアップされるのである!!!!!!!
 
 サメが更なる変形――…!

「どうやらコンゴウさま殿の尾羽はサメを唯一斬るチェーンソーであるとお見受けします」「ちげえわ」「ならばこちらもチェーンソーをつけるだけのことッ!!!!」

 サメの口に――チェーンソー――…!

 ……。
 ……、…どゆこと?

「クソキッズがァアアァアアァアアア!!!!!!!」

 歯をギッチリとチェーンソーに替えたTシャツのジェットサメ。

 歯をギッチリとチェーンソーに替えたTシャツのジェットサメ!!!!!!

 略して!!!
 チェーンソージェットTシャーク!!!!

「ッそこまで盛ったらもうサメじゃなくていいじゃん!!!!!!」
 コンゴウさまのキャラがブレてしまう。

「ダメなのです!!!!!!」
「そっちもクリーチャーこっちもクリーチャーッ!!そこに違いはないだろうがッ!!!」
「違うのです!!!!」
 
 キッズの!!!!!妄想力が!!!!!
 世に新たなクリーチャーを解き放っている!!!!!!!

「そしてこれは海流乙女殿のぶんッ!!!」
 INABA ウサギのワニドライブのごとくチェーンソージェットTシャークの背を渡ってきたルベルは仇討ちの一撃がためコンゴウさまへ飛びかかる。「愛の重さを知るが良い」澄ました、殺意。
 よぎるのは海流乙女の顔(?)である――ああ海流乙女殿…さっきお見かけしましたけど海流熟女殿まで一気に進化してらした…まあ熟女も全然悪くないと言うか是非優しくお膝に乗せて撫でていただきたい。
 ささみもわすれないでね―

 ぺふこん。

 邪念によりニクキュウパンチが曇ったッ!!!!!

「海流乙女って誰やねんッッ!!!!」
 ツッコミッ!!!「あぶべっ!!!」吹っ飛ぶルベルッ!!「海はてめえの何倍
もお年上じゃボケッッッ!!!」追撃ッ!ギリギリでかわせたが頭の毛がちょっと斬られたッ!
 ルベルは衝撃により反射で再び人へ戻り全裸から再びTシャツイン!!よぉし全年齢対応ッ!!!しかしあわや着水…と思いきや王弟ペンギンがそれを救う。

「ぐっ…なんと言う手練れ…」

 いやパンチが効かなかったのは明らかたくましいルベルの妄想力のせいである。

「王弟ペンギン一号、ここはあれです」
 襲うサイボーグバードアタックとかサイボーグカニのハサミとかからチェーンソージェットTシャークで自身を庇いつつ相談する。

「あそこにインド人が視えますね?」

 えっ?

 あっ…

 …ほんとだあ…。

 ほんとだあと思ったらやっぱりルベルのコードによる妄想インド人ジョーズであった。もうなんでもありだなもう。

「あれを上にぶんなげるのです」
 インド人ジョーズはジョーズからインド人に成り立てである。鰓呼吸から肺呼吸の切り替えがうまくいかなくて陸上溺死がキマりかけている。
「そして僕達はサメに喰われる」
 まあ突然インド人ジョーズもそんなことされたらびっくりでインド人からジョーズへ戻ってしまう。言っていることはわかる。言っていることはわかるのだが

 今ルベルのサメはお口がチェーンソーなんだが????

「サメがどっぱーんと敵に向かって跳ねるので」おう。
「腹から飛び出てコンニチワ」
 ???????

 ?

 ???????

「妖刀墨染をお見せしましょう」
 ルベルはとっておき★ミみたいなウィンクを投げるが王弟ペンギン一号には何もわからない。
 絵面はわかる。絵面はわかるのだ。
 絵面はわかるがそれはインド人ジョーズがただただ可哀想なのでは――…。

「しゅぱっとかっちょよく」
 いったいこの妄想の何に自信があるのかわからないルベルの力強い微笑み。

「僕の召喚したサメさんはこれくらいできます…!」
 あっちでインド人ジョーズがほぼ瀕死なんだが???

 ルベルの言っていることはさっぱりわからないが王弟ペンギン一号とて王弟と蔑ろにされる身、インド人ジョーズがかわいそうであった。
 了解の意を投げて一路向かう――。
 王弟ペンギン一号は指示通りインド人ジョーズを空高くへThrow Away、そしてJunp。
 衝撃によりインド人ジョーズがチェーンソージェットTシャークへと変化しサイボーグバードと共に宙へ飛び上がったルベルと王弟ペンギン一号を――

「あっ」

 あっ。

 ――無事飲み込む。
「おおおおおおおおおいチェーンソーーーーーーッ!!!」あまりの惨事に思わずツッコむコンゴウさまの一撃がジョーズの腹を狙うが残念、慌てたコンゴウさまは狙いを外してしまう。
 そう、ここで誰か、誰か賢い第三者が見ていたら、きっとルベルの大誤算に気付いて指摘してやったろうに。
 今宵のギャグはツッコミ不足。
 目覚めたボケは走り出して未来を目指して止まらないのである。
 本来。
 ルベルの作戦ならば海面に叩きつけられるとともに飛び出す作戦だった。

 しかしそれより早く、ジョーズの腹に一閃、光疾る。

「サメの胃酸ッッッッッッッ!!!!!!」

「でしょうねッッッッッッッ!!!!!」

 耐えきれずに飛び出したしわしわの顔をしたビチャビチャのルベルが飛び出す。
 そう。
 キッズの妄想力でいかにサメを強化しようとも――ルベル本人は一緒に強化されないのである!!!!!!!!!

 チェーンソージェットTシャークに食われちゃっちゃ!!!!!ヤバいので!!!ある!!!!!!!

 まあでも結果はぼちぼちオーライであった。

「モフバードよ」
 ルベルは妖刀・墨染を構える。
 妖刀の輝きは本日ばかりは世の不条理以外のなにかでぴかぴかゲーミングライトしていた。フゥ七色ッ!「インコだコラ」
「僕のモフ力(もふぱわー)は53万でございます」
 モフカウター(モフ力計算計器)がなくてよかったですね。
 強くたくましく笑い

「しかもぴちぴちだぞ」胃酸で余計にな。

 剣勢で溶け掛けのTシャツがはじけとばしながら、

 全裸にて鮮やかに一刀、切り入れたッ!!

成功 🔵​🔵​🔴​

御園・桜花
「なんて可愛らしい…ダルマさん」
「丸くて赤くて髭があって片目…どこからどう見てもダルマさんじゃありませんか」

「ユキエさんはトップを目指す心友で、彼は家に置きたい可愛いクッション。心に飾る神棚の位置が全然違います」

「…確かにユキエさんの仰る通りです。彼はレースを阻む敵。欲しいならば…あの羽毟って自分で可愛いダルマを作りましょう」

UC「精霊覚醒・桜」使用
ユキエさんごと飛行しコンゴウへ吶喊
間の敵は銀盆構え全て質量で弾き飛ばす
「その・羽・寄越せぇぇぇ!」
激突の瞬間に桜鋼扇フルスイング
コンゴウを海面に叩きつけようとする

「彼は動物じゃありませんから虐待には当たらないかと」
目を剃らし鎮魂歌歌いつつレース続行


幽遠・那桜
WIZ
はわぁ! あれはえっと、オウムさんですよね! わぁー♪ とってももふもふしてそうなのです!
風さん風さん、オウムさんの所に連れて行ってくださいなのです!(空中浮遊)
そんなことよりあーそびーましょうーですー! 負けじと声を張り上げて、風に乗せて響かせちゃうのです♪

(全力魔法・『風』『水』属性攻撃・限界突破)

もふもふさせてくださいなのですー♪ きっと一緒にお昼寝したら気持ちいいのですよー♪
(風による束縛、叫びは嘴周りだけ真空化、更に自身の周りにオーラ防御を施して最終的に海に落とそうとする)

はぅ? さくし? お菓子の仲間、でしょうか?
って、風さん!? オウムさんと一緒に海に落とさないでですー!?



●「私たちも元は影朧だったのかもしれない…そう思われた事はございませんか?」「…このタイミングでそんな大事そうなシリアス発言しちゃうのです?」

 トゥンク…ッ!
 御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)の胸が高鳴り口からイワシが落ち。

「はわぁっ」
 イルカの上の幽遠・那桜(微睡みの桜・f27078)の瞳は輝いた。

「…あん?」
 二人の熱視線の先には、コンゴウさまがいた。
「何だァ猟兵ども」
 コンゴウさまとて立派なオス。
 そして桜花も那桜もドブ濡れだが美少女と美女である。グッドセクシー。
 海上ドライビン・ゴーは全年齢シナリオとはいえ何ですかカップルもカップル未満も出てますし夏ですし海ですしロマンスの一つや二つやぶさかではないわけですよトンチキですがワンチャンあってもいいんじゃないですかねロマンスとメモリーの一つやふた

「なんて可愛らしい…ダルマさん…ッ」

 ト ン チ キ ロ マ ン ス。

「インコだコラァーーーーーーーーーーーーッ!!」
 無論嘴による一撃(ツッコミ)を叩き込むべくコンゴウさまが超加速ッ!!
 ィォンッ!
 文字通りの異音を立てて桜花が消える。「何ッ!」
 コンゴウさまのスピード虚しく嘴が捉えたのは桜の花びらだけだ。
 そう。桜花はユーベルコード・桜花精霊覚醒・桜を使用し続けており、最高速度はいつのまにかレベルが1上がっておめでとうございます!8300km/h、マッハ換算だいたい7に達する飛翔能力は尚も健在なのであるッ!
「そんな」
 そして桜花の手はコンゴウの背後から伸びてきた。優しい手つきでコンゴウの頬…頬どこだこれ…頬っぽいところをさらって桜花へと向けさせる。
 桜花といえばずぶ濡れで頬を染めているあたりが純情性に文字通りの濡れた艶を加えこれにはセクシーに色々うるさいどこかの団体も思わず黙って反論できない偶然の色っぽさかぎりなしである。桜の花びらが舞っているのも効果として非常に美を添えている。
「クソッこの女、顔がいい…ッ!」ナイスセクシー!

「丸くて赤くて髭があって片目…どこからどう見てもダルマさんじゃありませんか」

 聞いちゃいねえ。

 もはやというか最初から物理――桜花とコンゴウさまの距離は30cm以内。これはツッコめるとコンゴウさまは攻勢に出ようとし
「そーうーなーのーでーすーよー!!」
 ぷうぷう!
 イルカの上で那桜がむくれた。「ダルマさんではないのです!」
 思わぬ助け舟にコンゴウは眼下の少女を見る。パステル色調のワンピースが海水に濡れてしっとりと肌についておりうーん非常にいけないことをしている感満載である。グッドルッキングロリ。「嬢ちゃん…」那桜はにっこりと純粋な笑みを浮かべる。
「とってももふもふしてそうな――

 ――オウムさんですよね!」
 頭がッ!!!

 この桜の精ッ、頭が微睡んでいらっしゃるッ!!!

「インコじゃゆうとろうがこのアホンダラァーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」
 コンゴウさま全力の鮮烈なる絶叫(ツッコミ)――…!!

 「ぴわっ!」思わず両耳を押さえた那桜を風の精霊がさりげなくカバー。「きゃっ」ほぼ眼前で繰り出された攻撃をモロに受け桜花は吹っ飛び着水ッ!
「どうなっとんねんサクラ・ミラァジューーーーーーーーーーーーッ!!!」
 コンゴウさまがとうとう世界へキレ始めた。オブリビオンとしては正しくはある。
 でも多分というか絶対サクラミラージュは悪くない。
 そもそもここはグリードオーシャンである。虚無。

「ちっ、違うんですユキエ(※トドくん:メス:ペンギン)さんッ!そういう意味では!!」
 水面では今先ほどの桜花の発言を受けて桜花とユキエさん(※トドくん:メス:ペンギン)の修羅場が始まってしまった。「誤解ですっ!」ペンギンと桜の精の百合展開なんて異類婚姻譚の卵かけご飯納豆入りみたいな混沌の様相である。書いといてなんだが意外と美味しそうだ。鰹節も足しておこう。お好みでネギを散らして欲しい。不快に思われたら申し訳ないが何しろ絵面がかわいい。こいつで白米を食べよう。キマシでタワーも建てられる。
「ユキエさんはトップを目指す心友でッ!」
 仰向けへ体勢を変えたユキエさん(※トドくん:メス:ペンギン)から桜花は両手でビンタを受けてしまう。ぺちぺちぺちぺち。
 いや白米を食べるのにはまだ速い。百合と書いても女性同士の恋愛だけでなく恋愛に近い友愛や広く友情を含んだ作品も百合と言うことも多い。今回は無論友情の方である。判断を誤れば解釈違いと言うご迷惑がかかってしまう。箸をおこう。ぺちぺちぺちぺち。
「彼は家に置きたい可愛いクッション」
 桜花はお盆を取り出してユキエさん(※トドくん:メス:ペンギン)からのドメスティックなバイオレンスを防ぐ。ぺちぺちがドラムロールに変わる。ダラララララララ。
 いやユキエさん(もういちいち訂正するのが面倒になったのでトドくん:メス:ペンギンと読み取って欲しい。ところでユキエさんという呼称はどこからきたのか)と桜花は家庭内ではない。ドメスティック外バイオレ
「心に飾る神棚の位置が全然違いますッ!」
 …やっぱりこいつで白米を食べよう。そうでなくても可愛らしいやりとりである。そしてキマシでタワー建てとくか。キマシタワー。
「やっぱりもふもふだったのです!?」
 ぱっと身を起こして那桜は桜花へ声をかける。「はい」素直に応える桜花。
「それはもうふわふわのふわっふ」
 べちいん!
 桜花の顔をサンマが叩いた。「あっ」ユキエさんはとうとうイワシではなくサンマをくわえてしまったのである!!友情の証の!!イワシではなく!!サンマを!!
サンマをくわえたペンギンのヘドバンによるサンマ往復ビンタウィズ往復ビンタ!!「ユキエさんッ落ち着いてッ!!落ち着いて!!ビークールッ!!」

「おーうーむーさーん!」
 修羅場を尻目に那桜はイルカの上に立ち上がって呼びかけた。
 もふもふと聞いてはじっとしていられない。善は急げである。
 風の精霊に声を運ばせればロリの声でもなんとかなるのである。

「オンドゥレこのどロリがワシァインコじゃあて何度言わせたら気が済むんかの!?おお!?!?!?」
 もう一人称すらブレッブレじゃねーか。

「そんなことより」「そんなこと!?」コンゴウさまが片目を血走らせる。黒目なのでわからない。「そんなこと言うやんかオンドゥルじゃあ何かオミャアはハァケェワレ(※カイワレ)の精でもええんか!?おお!?」
 コンゴウさまは怒り狂いながらちょいちょいシャウトを飛ばしているのだが、これを必死に風の精霊がいなしている、
「あーそびーましょうーですー!」
 しかし気づかない!那桜、驚くべきことに全く気づかない!!
 ピュアハートはコンゴウさまのモッフモフに釘付けだったのである。
 ちなみに合間合間でやってくるサイボーグシャークは水の精霊さんが必死こいて避けてくれている。
「風さん風さん、オウム「インコじゃボケェ!!」さんの所に連れて行ってくださいなのです!」
 きちんと入るツッコミもなんのその!
 風の精霊に誘われ那桜は宙へ踊る。
 あわやパンツが大公開――と思いきや那桜のスカートがしっかり足に張り付いていて見えないッ!ご安心下さいッ!海上ドライビン・ゴーは全年齢対応の安心安全胡乱シナリオですッ!

「もふもふさせてくださいなのですー♪」
 ――
 ことわる、と。
 コンゴウさまは言うつもりだった。
 しかし。
 しかし、声が出ないッ!!
 何事が起きたのか――自身を省みる。
 風の精霊ッ!
 なんと嘴の部分だけ真空化して声をふさいでいるのであるッ!!!
 ついでに身動きも取れない!!同じく風の精霊さんによる拘束である。
 ……。

 風の精霊さん働きすぎでは!?!?!?
 時々那桜にいたずらすることで有名な風の精だがぶっちゃけいたずらじゃなくてやってられんわアタックなのでは!?!?!?

「きっと一緒にお昼寝したら気持ちいいのですよー♪」

 …桜の精ェ…。

 桜色の悪魔はニコニコと微笑み、コンゴウさまに飛びつこうとし――

「…確かにユキエさんの仰る通りです」
 下で修羅場にケリがついていた。
 互いに傷は少なくなく。しかし感情のぶつかり合いからなる諍いは決して無駄ではなかった。
「確かに彼はレースを阻む敵」
 桜花は新たな絆のサンマを咥える。
 やはりアニキサスとか気にした時点でダメだったのだ。食中毒の可能性に関しては祈るしかない。

「欲しいならば…あの羽毟って自分で可愛いダルマを作りましょう」
 眼 が 捕 食 者 で あ る。
 
 桜花は改めて精霊覚醒・桜となりコードは変わらないけれど気持ちはバージョンアップサンマ仕様で再び花弁を纏う。なんかだんだん心なし花びらがイワシに見えてきた。

「まいりましょう、どこまでも…」
 トップは?????

 かくして再びマッハだいたい7が水面からコンゴウさま目掛けて飛び上がる。
 ただでさえ天使のような悪魔の笑顔を浮かべた那桜で手一杯のコンゴウさまを守るべくサイボーグシジュウカラからがコンゴウさまと桜花の間に割り込む。剣山のように並ぶクチバシッ!
「甘いッ!!!」桜花は銀盆を構える。「ユキエさんの両手ビンタで根性叩き直されたお盆をご賞味くださいッ!!!」ユキエさんのビンタなんなん??????
 桜花の盆はしかし確かに鋭い嘴を防ぎ。
 ペンギン桜吹雪――吶喊!

 ――これが那桜が飛びつくコンマ何秒前のこと。

「ほわ?」
 この騒ぎに気取られ、一瞬だけ、那桜の動きが鈍り
「ックショウこのクソガキ!ポワポワしてるくせにこう言うことかッ策士どもがッ!!!」
 コンゴウさまの悔し紛れの罵倒が響く。
 彼にはしっかりと眼下から迫る桜花が見えていた。
「はぅ?」が、下から何がくるのかを確認する前にコンゴウさまに叫ばれた那桜はそうではない。
 きょとん、と小首を傾げる。「さくし?」んーと宙停止で考える。
「お菓子の仲間、でしょうか?」
 考えてもコンゴウさまは答えてくれない。
 まあいっかと飛びつ――

「そ の ・ 羽 ・  寄 越 せ ぇ ぇ ぇ ! 」
 これは下からマッハ大体7で突っ込んできた桜花ッ!!!! 
 般 若 の 顔 ッ!

 かくして桜の精による偶然にも意気ぴったりなコンボがきまって!!!きまってしまう!!!
 コンゴウさまとしては非常に納得いかないが!!!!
 きまって!!!!しまうのである!!!!!!

 広げた桜鋼扇を下からフルスイング!!!!
 ゾリッ!!!!

 ふふ、と二人の桜の精は同時に可愛らしい笑顔を浮かべた。

 一名は前から飛びつき。
 一名は後ろ半分の刈り取った羽を抱きしめて。

 どこまでもどこまでもソーキュートであった。

 そして。

「…あんまりもふっとしないのです」
 ちょむ、と那桜が顔を曇らせたのと。
「さぁ、あと半分」
 ぎらり、と桜花が桜の精にあるまじき顔をしたのもまた同時。

 桜の精ェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!

「って風さん!?」そして風の精がやってられんわと大暴風を上から下へと巻き起こし
「オウムさんと一緒に海に落とさないでですー!?」
 那桜ごと水面へ急降下するコンゴウさま。
 その急降下の風を追い風とし、羽を狙ってもはや光の速さでブッ込む桜花――。

 ――水しぶき――…。

 ――…。

 桜の精って、なんなんだろうな…。

「お、オウムさんが大きくハゲてしまったのです…これはもしや……」
 イルカの上で喘ぐ那桜に、桜花は桜鋼扇で口元を隠し「おほほほほほ」と普段はしない全力から笑いをしながら目を彼方へと逸らす。ユキエさんの後ろにたんまりと羽を乗せているので言い逃れが効かない。
「そそそそその、彼は、動物じゃありませんから、虐待には当たらないかと…」
 ……。
 口ずさむ鎮魂歌はだいぶ動揺でリズムがめちゃくちゃだったそうな…。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

スキアファール・イリャルギ
……あー……(遠い目)
もうのんびり行きませんかジンベエさん(※レース中)
ザリガニ釣りしたいな……(※此処は海)
したことあったっけ……(※知らん)

……もう穏やかに生きたい
だって29年、もう少しで30年、辛いことがありすぎた
あと何年寿命が残ってるんでしょう
それなのに自分からガリガリ削ってますからね……
偶には何も考えずに過ごしたっていいじゃないですか……

あぁ海は広いな大きいな……
月がのぼるし……
(【晦のヴィヒンサー】発動)
(※こんな状況で使うUCではない)(※しかも晦の夜)

こんな胡乱の中でツッコミなんて疲れるだけです……
あなたたちも狂気(という名のボケ空間)に飲まれてしまえばいいんじゃないですかもう



●俺はオブリビオンなんだが今レースで来た猟兵の顔が死んでいる

「いや信じてもらえないと思うんですけど」
 スキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)は真顔でそう言った。


「そうですね〜、ちょっとこの鞍見てジンベエザメ乗るっていう精神はちょっと信じられないです〜」
 受付はそう言って笑いながらスキアファールをくくりつける。
「いやだってジンベエザメですよ、サメなのに動きは緩慢で温厚で臆病そしてデカいのに主食はプランクトン小魚海藻ですよギャップ萌えですよやっぱり選べと言われたらジンベエザメですよこれは」
「サメちゃんは結構性格大人しいんですよ〜実は怖いのはシャチです。シロクマさんもクジラさんにも喧嘩仕掛けるんですよ〜〜〜〜太陽眩しいと思うんでサングラスお貸ししますね〜」
 早口のスキアファールの発言こなしながら受付はしっかりと安全ベルトを確認している。
「それで、信じてもらえないと思うけどなんですか〜?」
 ニコニコしながらスキアファールの顔にどのサングラスを合わせるかを選びながらの受付に話を繋がれ、スキアファールは頷く。ああ。
「…ああ、それでですね」両手あげてくださーいと言われるのであげる。あっはーいちゃんと動きますね〜大丈夫です〜。
「私俊敏さに自信無いんですよ」データに基づく申告が行われる。そう。スキアファールのSPDは素晴らしき最低値である。「そうなんですね〜」受付きいちゃいねえ。「前方確認用ミラーつけま〜す」
「は〜い…海での有効な技能も持ってません」
 受付に言われる通り顔を動かしてミラーを確認する。

「なんで此処にいるんですかね?」
 硝子剣士が股間を打ってのたうってるところを目撃して近寄ったらこのザマである。ちゃんと話を聞いた猟兵か確認してから転送してほしい。本当に。

「今回は拉致られてませんよ?」
「まあ限りなく拉致に近い乗り方ですけどねジンベエザメくんはね〜」スキアファールにサングラスを掛けながら受付は相変わらずニコニコしている。「…まああの、子供の頃の嫌な記憶がちょっとフラッシュバックする乗り方ですねこれ」
 ストレッチャー的な。
「いざというときはその脇のスイッチ押してくださいね、射出で脱出できますから」
「射出で」どうなってんだろう、このレース。
「ちなみにレースのご参加は初めてですか?」
「あ、はい…いや、いえ、いいえ、なんですかね…?」
 クソレースからなる事件の流れでバイクの後ろに乗って爆走したことはあります。
 そう言うと、受付は得心いったとばかり微笑んだ。
「あーそれはアレですねーー!癖になってるんですよ!」
「いやいやいやいや」「いやいやいやいやいや!」
 ネッ。
 受付が朗らかに後押しする。
「ジンベエザメの乗り心地は優雅で楽しいですよ!よい旅を〜〜!!」

 旅しちゃダメでは?



 前略、先生。
 あなたはジンベエザメと聞いてどんな乗り方を想像しますか?

「……あー……」
 スキアファールの唇から半生のスルメみたいな声が出る。
 サングラス越しに彼はどこまでもどこまでも遠い目をしていた。
 太陽が眩しい。これは確かにサングラスがいる。かんかんの日差しは少し痛いがジンベエザメのしょーちゃんのおこす水しぶきがさらさら頬を叩くし水上を爆速で進むお陰で非常に涼しい。快適だ。

 ジンベエザメは平たく紡錘形と言って他の魚のように口先は尖らず少し横平ったい形をしています。横幅はおおよそ通常のもので1,5m、今日私が乗っているのはレース用とかで2m弱あるそうです。
 ……。
 …私は
 私は
 私はッ

 そして空。
 スキアファールの視界いっぱいの、青空。

 私はッ、その上に乗せられた寝台に括り付けられて運ばれています――…。

―なんでや―

「もうのんびり行きませんかジンベエさん」
 残念ながら久々のレースではしゃいでいるジンベエザメのしょーちゃんにスキアファールの言葉は一切届かない。ふっ、可愛い奴めという愛着が湧いてしまう。

 スキアファールといえば海に対して仰向けに設置されているせいでもうなんかここに来るまでに見た七色で爆速するヒトデの裏側とかいきなり飛んでいくアノマロカリスの裏っかわとか桜吹雪のペンギンの腹とか空飛ぶジェットTシャークとかよくわからない謎裏側を見まくってやる気が壊滅していた。ジェットTシャークにおかれましてはみんなTシャツの胸に「鮫」って書いてあってもう一生分の鮫の字を見た気がする。
 …いやそもそもやる気自体があったかと言われれば巻き込まれたので別にって感じなので…あれ…?いつも通りだあ…。

「ザリガニ釣りしたいな……」
 スキアファールさん此処は海です。
「したことあったっけ……」
 いや知らねっす。
 誰も応えてくれない中一人日焼けサロンか焼き魚状態でスキアファールはジンベエザメに運ばれていく。
 
 …見たといえば今さっきヒトデによる捕食もダイレクト間近に見た。
 幸い手は自由なので顔に降りかかった血は拭った。こんなことで怪奇に食われる人間の気持ちをちょっと知っちゃうなんて不本意だ。もっとシリアスでお願いしたかった。当分魚は食べたくない。

「……もう穏やかに生きたい」
 至極ごもっともな呟きを漏らす。

 ちなみに視界の端でさっき少女も浮いてたけど礼儀として目を閉じておいた。本人が気づかないとしてもそういう事故は避けてあげたい。
 そしてなんということかこのジンベエキャリー、魚介ボーグからは攻撃しようにもスキアファールの頭の位置が低すぎて攻撃がちっとも出来ずトリボーグからも太陽の反射が無理すぎて攻撃ができないという絶妙なファインプレーを決めていた。喜べない。

「…大丈夫か猟兵…」
 コンゴウさまの貴重な真顔をご覧ください。

 来たばっかりの猟兵(のメンタルが)死んでいる。
 これには攻撃が通らないという報告を受けて来たコンゴウさまもビックリである。
「乗り心地悪いか…?大丈夫か…?」
 スキアファールの上を飛びながら思わず気遣ってしまう。「乗り心地は大丈夫ですが人生の乗り心地がダメですね…」「猟兵ェッ」
「だって、ですよ…」
 スキアファールは憂鬱に曇った儚げなため息をつく。
「だって29年、もう少しで30年…辛いことがありすぎたんですよ…いいじゃないですかそろそろ…」
「おお…」
「…もういいですよね…」
「いやよくねえと思うぞ…」

 そういえば先生、通常のジンベエザメは全長20m、今日私が乗っているのはレース用とかで25mほどあるそうです。…もうこんな乗せ方しないで小舟か屋敷のせろよ、そこに座らせてくれよ座敷でもいいよ正座でもなんでもするよなんなら茶ァ立てようよここで。
 
「偶には何も考えずに過ごしたっていいじゃないですか……あと何年寿命が残ってるんでしょう…」
 なんかもうちょっと乗り方あるだろとかいきなり人の意見も聞かずにレースにエントリーて団扇島民どうなっとんねんとかツッコむ気はジンベエザメが泳ぎ出した瞬間に失せてしまった。
「それなのにここに来るまでに自分からガリガリ削って使いましたからね……一周回って凄くないですか私…」
 完全厭世モードである。引き篭もりたい引き篭もりたい。
「…なんつーか…大変だな…」
「いやあ…もう流れに身を任せればあとは運ばれるだけですよ…」
 余談だがミラー付いてるんでちゃんと進行方向は確認できるし手元に手綱があるのである程度調整がつくがもうそんなことする気さらさらない。

「こんな胡乱の中でツッコミなんて疲れるだけです……」

 数少ないツッコミのうち一人はギルマン神輿に担がれて七色シャイニング爆音シャンパンコールと花火をつけて回転しながら祭り上げられてるし、もう一人のツッコミはシャチとバイクで塔建ててた。
 何もしていないスキアファールすらジンベエザメに括り付けられて強制キャリーだ。安全な地などクソレースに於いてどこにもない。いや海だから元々ない。

「あなたたちも狂気(ボケ)に飲まれてしまえばいいんじゃないですかもう…」
 暴挙きた。
「良くねえ」
 コンゴウさまのツッコミにスキアファールはゆるゆる頭左右に振る。

「いやいいですよほんと…」
 何度目のため息だろうか。彼方を見遣りながらスキアファーるは口を開く。

「いやほんとに凄くいいんです…正直もうなんというか何もかもほんと空の広さと青の深さ前にはみんな一緒ですよ海は空の色を写して青いとも言いますし広大な青の前にはツッコミとか環境がおかしいとか突然のクソレースとかシャンパンコールとかどーでもいいっていうかそもそもその空の向こうに何が広がってるか知ってますか宇宙です宇宙ですよつまりスペースそうギャラクシー星が煌めいてヒトデが七色に大回転で隕石はフグであとはスペースアノマロカリスにブラックホールで全ては虚無であり卵かけご飯ですよところで卵かけご飯はご飯が先か卵が先かって論争はご存じですかつまり卵を先に混ぜてから御飯にかけるのか御飯の上に卵を乗せてから混ぜるのかってことなんですがこれは割と味を分けるポ」
「猟兵ーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!」
 コンゴウさまが耐えられなくなった。
 鮮烈なる絶叫(ツッコミ)がびりびりと響く。
「ダメージが深刻だぞしっかりしろ気を確かに持てェーーーーーーーーッ!!!!!」
「あぁ…」絶叫を素で受けながらもスキアファールの表情は微動だにしない。

「海は広いな大きいな……」

 歌 い 出 し ち ゃ っ た 。

「猟兵ェーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」コンゴウさまにここまで心配で叫ばせるものなどレース史上初に違いなかった。

「つーきーがのぼるーし…」
 スキアファールの体がくゆる。
 発動するユーベルコードは晦のヴィヒンサー。
 立ち上るは瘴気。
 彼より広がるは夜。全ての生き物の五感を騒がし世界を過剰に受け取らせ苛む狂気に踊る晦い夜。ほらご覧、ばけものの目が夜いっぱいに星のよ――ねえこれトンチキで使うコードじゃないよお!!!!!!!!!あと晦の夜だから月は昇ってないよお!!!!!!!

「いいんですよもう」
 スキアファールは諦め切った真顔で全てを狂わせながらどこまでもまっすぐにジンベエザメのしょーちゃんに運ばれていく。「もう楽になりましょう」「バッッお前諦めんな!!諦めんなよお前はできるやつだよしっかりしろッ!!!」
 …ひとつスキアファールの誤算があるとすれば。
 ジンベエザメのしょーちゃんがひたすら泳いでいることである。
 つまり――風。

 瘴気がぜえんぶ、風に乗ってコンゴウさまには届かず―まあ雑魚はだいたい狂気状態に叩き込んでいたので仕事をしているかしていないかで言えばしている―

「いやほんと思いません?何ボケって。ボケっていうのも恐ろしい海じゃなですかもう。濁流じゃないですかあんなの。闘うだけ無駄ですよ、聴いてくれないんですよ。暴力ですよ」
「おまッおまアホ!!!俺たちがいないと世界が滅びるんだよ!!!」
「滅びろ」
「猟兵ーーーーーーーーーーッ!!!猟兵冷静になるんだお前らがそれ言っちゃダメだしっかりーーーーーーーーッ!!!」

 太陽が如く励まし続けてもらってしまったことである――…。

成功 🔵​🔵​🔴​

浅沼・灯人
赤銅(f01007)と
ジェットで彼方まで飛んでいっていたがなんとか戻ってきた

へー、ツッコミねぇ
よくわかんねぇけどあれじゃね?
ブッ込んで叩いておけばよくね?

はぁ?恥ずかしいはずがねぇだろうがよぉ
つかなんだ、おれらとメメちゃんのランデブーにいちゃもんつけんのか、ああ?
いいぜ、その喧嘩言い値の倍で買って倍にして返してやるよ

え、なに赤銅
あのインコもふるの?
そっかー、よかったな焼き鳥回避だ
え、なんだよメメちゃん焼き鳥好きかよぉ
なら焼くわ、残念だったなインコ

つか俺こう見えて竜だからよ
飛べんだわ、空
普通に追い付けるな、お疲れさん

……なんか音がすr
(飛んできたハニーとウツボ時々ジェット)
(空中キャッチ&ハグ)


多々羅・赤銅
●灯人(f00902)と

ツッコミかあ
タチってことかなあ

取り敢えず
あんなこと言われちゃ
黙っちゃおれねえなあ?
びしょ濡れ楽しいデートドライブを恥ずかしいだなんて
勝手な事言ってくれるぜ
うちのウツボのメメちゃんに
恥ずかしいところなんて何ひとつ無えーーー!!!!!

灯人!
あのインコ落とそ!
んでモフるでしょ
あっでも焼き鳥もいいな〜メメちゃん鳥肉好き〜?♡
好きだってさ(確定ロール)

んじゃ上はダーリンに任せ……
あっ待てよ?
メメ
もしかしてさ
このジェットさ
下に向けてブッパしたら
飛べるんじゃ?

(フライングジェットメメちゃん)
(宙で灯人とフライハグ)
(そこに理由はいらない)
(天にも届くテンションがアガったからだーー)



●カップル流星打ち上げ花火

「「誰が恥ずかしいかクソがーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」」

 コンゴウさまに向かって背後からウツボが突っ込んできた。

「グワーーーーーッ!!!」
 ウツボの鼻先タックルを受けやや吹き飛んだ後コンゴウさまは宙返りをして攻撃方向を見る。
「何…、この俺が、後ろからだとッ!?」
「おうともよ」
 まず切り返したのは浅沼・灯人(ささくれ・f00902)である。

「ジェットで彼方までいっちまったから戻って来んのに随分かかったぜ」
 何せ団扇島は現在(2020.06.29)時点でシナリオが完結していないので島の位置はマップ開いてもわからないのである。ぶっちゃけ帰ってこれないかと思った。笑いあり涙ありの道中を語るとリプレイが倍以上になってしまうので語れないが完結の暁には地図をご覧になってウツボニー・クライドをお好きな位置まで飛ばして道中を想像してして楽しんで欲しい。
 優しくしてね。

「恥ずかしいはずがねぇだろうがよぉ」
 灯人は道中でゲットしたキンキンのビール缶からビールを一口飲んで「あ?」ガンをくれる。
「おれらとメメちゃんのランデブーにいちゃもんつけんのか、ああ?」
 完璧に仕上がった夏の浮かれポンチがキレる時、そこにいるのは夏のヤンキーである――…!

「そうだそうだー」
 灯人の後ろから顔を出すのは多々羅・赤銅(ヒヒイロカネ・f01007)。こちらも完璧に仕上がっている。
「びしょ濡れ楽しいデートドライブを」ねえこれレースシナリオ。「恥ずかしいだなんて」同じく道中で買ったイカ焼きを一口を喰い、灯人の手からビールをとって煽る。ねえこれレースシナリオ!!!
「勝手な事言ってくれるぜ」
 飲み終えたビール缶をメメちゃん備え付けのゴミ袋にイン!ゴミを投げ捨てたりなどしないお行儀のよくできたパリピッ!!

 ちなみに二人はきちんとドライブスルー形式の売店を選んだ。スピードを下ろして降りるなどというヘマはしない。注文から商品のお渡しまで最速タイムをキメてくれた店員さんありがとう。
「灯人ぉところでツッコミって何?」
 これはご機嫌酔っ払いで「タチってこと?」気になったのでお問い合わせする多々羅さんちの赤銅ちゃん。

 …彼女もまさか自分が灯人ともどもウツボのメメちゃん(オス)にネコ判定くらってるとは思いもすまい。

「よくわかんねぇけどあれじゃね?」
 これはハイテンションに仕上がったご機嫌な浅沼さんちの灯人くん。「どれ?」「ブッ込んで叩いておけばよくね?」「それ〜〜〜!!」すごい、理性が残り2!
「ハワイから帰ってきたような顔しやがってイカレトンチキどもが…!」
 まあだいたい合ってる。
「んだと…」
 ゆらり、と浮かれポ…灯人が立ち上がる。眼鏡が真夏の太陽を反射して修羅の顔であった。
「つかなんだ、さっきから聞いてりゃ… いいぜ、その喧嘩言い値の倍で買って倍にして返してやるよ…!」
 右手に太めの棍棒、左手にはカウボーイのような投げ縄を用意している。
「片っ端から焼き鳥だ」
 なるほど鳥殺(トリコロ)キット。鳥をシメるときはまず殴り首を切って逆さに吊って血抜きをする流儀にきちんと則るらしい。流石料理人…料理、人…?ッラーメン屋バイト!!!ラーメン屋バイトの意地である。どこから出したとか聞いちゃダメだぞ、男にも秘密がたくさんあるのだ。
「おーよ」赤銅もまた立ち上がる。
「そんなこと言われちゃあ黙っちゃおけねえなあ」
 咥えていたイカ焼きの棒をペッと吐き出しこれも見事ゴミ袋イン。

「うちのウツボのメメちゃんに」

 赤銅、抜刀ッ!!

「恥ずかしいところなんて何ひとつ無えーーー!!!!!」

 ▶︎おめでとう !

  ヤンキー と パリピ が 

  モンペ へ 進化 した!

〜こいつらみんな俺のメス顔でドヤるウツボのメメちゃん(オス)を添えて〜

「恥ずかしいのはメメちゃんじゃなくてお前らじゃボケーーーーーーーーッッッッッ!!!」

 コンゴウさまの咆哮と共に、空から鳥、海から魚介類その他プラスアルファが襲いかかる!!!

 灯人も赤銅も勢いよく啖呵を切ったものの足場は最悪だった。
 なんせウツボのメメちゃん(オス)はウツボである。レース魚で巨大とはいえウツボなのである。ウツボの形態をシンプルにご説明すると細くて長い。ゴボウみたいな説明だが細くて長いのである。尾に向けてさらに薄くなっていく。加えてその背には鰭が一枚すらっと生えておりこれが尾まで生えているのだ。これで身体をくねらせて泳ぐのでそりゃあ揺れる。もちろん鞍を置く場所だけは鰭カットされているが――それはつまり、鞍しか足場がないということである。
 そしてトリッ!!!嵐のようなトリッ!
 鳥の間から魚ッ!!
「あーーーーーーーーッうっぜえもう全部まとめて炙っちまうか!」
 めら、と灯人の口から炎がちらつく。
「おうおうおうおう!やれるもんならやってみな猟兵ェ!」
 コンゴウさまがその隙間から現れては繰り出す――
「そんな食い方で焼き鳥食うんか随分野蛮じゃねえかッ!」
 尾羽の一撃(ツッコミ)ッ!
「うるせえッ!」灯人は一歩下がってこれをかわし、とっ捕まえようと手を伸ばすも捉えたのはサイボーグガチョウッ!!コンゴウさまは鳥の間に雲隠れする!あんなにでかいのにッ!!「クッソ」首をシメ突っ込んで来た雀を額でノックアウトしつつ羽をむしる。

「ねー灯人!」
 海から飛び出してきたサイボーグアジ五月雨打ちを掻っ捌きながら赤銅が声を上げる。「え、なに赤銅ォ!」
「こっちは私に任せてくれよ」刀慣らしにもならないサイボーグイセエビの頭を落として殻を切り
「これキリねーからあのインコ落とそ!」サイボーグアマエビの頭も落としてこれまた殻を切る。
「だな」灯人は短く頷く。「そんで?」
「そんでさ」赤銅はそのまま続いてサイボーグマグロを三枚に下ろしてトロをきれいに切りわけながらににっこり笑い
「そんでモフるでしょ」続いて赤身を捌いていく。

 …。

 …あの、赤銅さん。

 非常に言いづらいのですが
 暇つぶしで美味しく食べられる魚だけ切りわけてはいませんか。
 海上ドライビン・ゴーはレースシ「え、あのインコモフんの?」…。
 …灯人はこの発言が少々意外だった。
 なぜなら――

「後ろ半分ハゲてたぞ」

 ええはい。まるで何かに狙われたかのようにごっそりでしたね。

「マジ?」赤銅はこの新情報に目を瞬く。「後ろハゲてんのに尾羽無事だったん?必死に頑張ったじゃん」まああの、おなくなりするとコードが使えませんので。
「つーこと焼き鳥回避か、よかったなァコンゴウ!!!」「さまをつけろやツノ助野郎ッ!」
「あっでも焼き鳥もいいな〜」
 赤銅がニヘニヘ相好を崩す。「ビールあるもんね〜〜〜」
「おーどうする、どっちでもいいぜ」
 尽くす男浅沼灯人、彼女の要望をしっかり拾う。
「ん〜〜〜〜〜〜」
 まるで今日の夕飯のようだが決めるのはボスの処遇であることを忘れてはいけない。
 考え込むこと数分。

「メメちゃんどぉ〜〜〜〜〜〜〜〜????」
 ここでまさかのメメちゃん採用。いや冷静に考えれば今ここにいるのはウツボのメメちゃん(オス)のモンペである。割と妥当…妥当…。
 …妥…当…?
「メメちゃん鳥肉好き〜〜〜〜?♡」
 赤銅が呼び掛ければ呼ばれたメメちゃん(オス)としては少し背を伸ばして首を曲げ愛しの人外ならぬウツボ外の方を見るしかない。そして大口オープン。
「好きだってさ♡」モンペ1号赤銅は満面の笑みで彼ピに教えてやる。
 ウツボのメメちゃん(オス)もちろん鳥肉、好きである。
 しかしウツボのメメちゃん(オス)は鳥肉より赤銅と灯人が好きである。
「え、なんだよメメちゃん焼き鳥好きかよぉ」モンペ2号灯人も思わずゆるく顔を崩す。

「なら焼くわ」灯人の手にはめられる軍手(羽むしり用)

 何度でもいうが

「残念だったなインコ」凶悪な笑み。

 ウツボの大口オープンは求婚である。
 
「この俺様を焼き鳥だとはいうじゃねえか」
 この激しいすれ違いを誰も知ることなく話が進んでしまう。
 コンゴウさまはカップルどもよりはるか高所で八の字飛行をして見せた。
「一度たりとも捕まえられてねえくせによお」
「捕まえりゃいいんだな?」
 灯人は肩を回しながらこともなげに言う。「今行くわ」「おん」
 だん、と鞍が一度激しく踏み鳴らされる。
「俺こう見えて竜だからよ」
 追いつくのに、一瞬もいらない。
 瞬き一つでいい。
「飛べんだわ、空」
「は、竜かよ」「おお。空の王者とかいうからどんなもんかと思ったが――普通に追い付けるな」
 コンゴウさまを捕らえるべく投げ縄をグルングルンに振り回しながら言ってやる。
「お疲れさん」
「は、竜かよ」灯人を前にしてハゲた背中に一筋冷や汗を流しながらもコンゴウさまは嘴を鳴らす。「こいつはとんでもねえダークホースだ」
「そいつはどーも。…言いたいことはそれで終わりか?」「ああ。あとはてめえにこの一言を贈ってやるよ」

「飛べんなら飛んでこいやーーーーーーーーーーーッ!!!!!!」

 コンゴウが吠え。

 灯人は眼鏡を光らせる。

「海上ドライビン・ゴーは海上レースシナリオだろうがァーーーーーーーーーッ!!!!」
 嗚呼。
 何ということだろう。
 第二章始まって最初の快挙。
 ボケによる逆ツッコミが、決まる―…!

 灯人のコードの発動が入る。

「大切なものはここにある――ッ!!」

 本日限定の家庭です。
 ちなみに子供はレース用の5メートル巨大ウツボです。

 何言ってるかわからないと思うがそうなのである。
 家庭。
 22歳独身彼女なしにとってのこの言葉の重みを語るにはどんな言葉なら叶おうか。はしゃいじゃってもしょうがないのだ、大目に見てあげてほしい。 

 何度でもいうが君はメメちゃん(オス)に多々羅赤銅もろとも求婚されてるんだぞ浅沼灯人ォーーーーー!!! 

 灯人は本気の調理に入る。

 ユーベルコード:麝香撫子。

 彼の調理を何十倍もの技能へと昇華させる、その技。
 美味しいものを食べてほしいという純愛の技である。インコが美味しいのかはわからない。サイボーグがおいしいかと言われると美味しくないと思う。

 調理。

 そう。

 調理である。

 レースをランデブーに変えたこのカップルは、もやボス戦も調理に変えようとしていた。

 ねえ、

 これ

 レースシナリオ。

――時を少し巻き戻し、一方、赤銅はというと。
「んくくくく」
 鞍より飛び立った灯人を見上げ赤銅は満足げな笑いをもらした。
 楽しくて何よりである。
 灯人に任せておけば美味しい美味しいツマミも作ってくれるに違いない。
 何というか自分のために調理してくれるとはこれ愛の行いである。
 しかも食い手は今自分だけである。愛注がれまくってる。イェーイ。 
 そして買い込んだビールはメメちゃんからぶら下がって海水でキンキンに冷えている。
 海上ドライブで酒盛りとはこれまったく夏の始まりの贅沢としてはなかなかのものだ。
「んじゃ上はダーリンに任せ……」
 こっちはサイボーグ刺身でも、と思ったがなかなかウツボのメメちゃん(オス)の上は狭いので刺身を確保する場所も皿もない。かろうじて取れるのはウツボのメメちゃん(オス)に備え付けのジェッ…。


「あっ」
 電球がついたかのような思いつきが走る。

 多々羅赤銅、閃きました――…。

 このシナリオにおける閃きは碌なもんじゃないと何度でも主張していくスタイルを撮りたい。
 禄なもんじゃない。
 禄なもんじゃないというかタイトルが。
 タイトルでオチが。
 これから何が起きるかを語っているんですがそれは――…。

「待てよ?」
 赤銅はいそいそ鞍に着席する。
 楽しいことを思いついちゃって堪えきれないニヤニヤである。

 事件が淡々と進行している。
 しかし彼ピがここにいたところでその閃きを止めれくれるかというと疑問だ。
 もうタイトルからしてドライビン・ゴーですからね。
 ゴー推奨ですからね。しょうがないです。

「メメ」
 声をかけられ上半身を持ち上げて赤銅を向き、すかさず求愛に勤しむウツボのメメちゃん(オス)。
 腹減ってんのかなぐらいの気分よしよしと撫でる赤銅。
「もしかしてさ」
 ポケットから口紅ほどのそれを取り出す。ジェットのコントローラーである。コントローラーつってもオンしかない。押したら一度落ちるまで駆け抜ける不良品寸前爆ジェットである。

「このジェットさ」
 瞳がワクワクでキラキラし始めている。

「下に向けてブッパしたら」
 いそいそとジェットの向きを変える。

「飛べるんじゃ」

 おいバカやめろッ!

「ね?」

 カチッ。

 あっ。

 ドゥンッ!!

「……なんか音がすr」
 振り返った灯人が見たものは

 ウツボ・フライングジェット――…!

「マ?」
 
 水平線に対し並行にブッパされカップルを水上流星に変えたジェットは。
 水平線に対し垂直にブッパされ。

「ヒャッハーーーーーーーーーーーー!!!!!ダーリンホールミーターーーーーーイッ!!!!!」
 自分に向かって両腕を広げてこの上ない満面の笑顔でウツボごとぶっ込んでくる多々羅赤銅。

 水面ですら爆速を出すジェットである。
 空中なら言わんや上昇ならその推力をや。
 飛べんなら飛んでこいやと言われた瞬間に彼女に飛んでこられるとは思わなかった。

「ッおっしゃ来い!!!!!!!」
 しかし浅沼灯人22歳独身ッ!!
 ここで退けば漢が廃るッ!!

 最悪マジでデッドリーなダイナマイトを退かず恐れずそして臆さずッ!

 両手を広げ――赤銅を空中キャッチ&ハグッ!!!
 そして二人と一匹の体重をものともしないジェット。

 もはやそこに理由はいらない。

「ちょっと月まで行こうぜ、ダーリン」
「しゃーねえハニーだな」くすぐったそうな笑み。「おー、どこまでも付き合ってやるよ」
 互いの耳に柔らかくささやく。
 まあ、ジェットと空気抵抗の音が凄くてそうしないと何も聞こえないからなのだが。

 天にも届くテン・ションのアガりと共に、
 
 空に消えてった打ち上げ花火――――…!
 
「お前ら二章勝利条件ーーーーーーーーーーーッッ!!!!」
 叫ぶコンゴウさまをジェットの炎がきっちり焼いた。

 …その後の彼らの行方?

 三章の都合もあるから今はまだ語らないでおこう。

 今ここで語れる確かなことはただ一つ。
 団扇島の夜空に星座が一つ増えたということだ。

 ウツボニー・アンド・クライド座が。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ユキ・パンザマスト
【くれいろ】
ほほう?(マイク格納)
アノマロカリスマパイセン、ツッコミ鳥がああ言ってますけど~?
セラもさ、晴らさんとする未練の前に
立ち塞がる輩が居たらどうします?
意気やよし!
アツい再演奏になりそうじゃないっすか!

空の掟つうなら
くれいろ with アノマロカリスマパイセン
掟破りの派手なパーティーにしようじゃありませんの!
【彼岸越境】
飛翔能力を先輩の推力を上げるブースターに
なぎ払い、目くらましを敵達へ
セラ、本星は任せ──

(ほーん?)

その合図に
衝撃波をホロ椿からぶっ放って二段階目の加速!
そのままコンゴウを轢いて突破!
(女の子かあ
複雑さはありますが格好いい姿見れましたゆえ)
最果て越えてぶっちぎりゴー!!


セラ・ネヴィーリオ
【くれいろ】

お、オウムさんも言うねー
彼らが悪いことしてないなら迂回するんだけど
先輩はどう?楽しい?
…そっか
うん!アンコール、もう一翔けいっちゃおー!

出てきたねーお邪魔鳥さん!
でも僕らKUREIRO with カリス先輩は止まらないよー!…って煽って
おいで【残桜】ちゃん
島の人たちを守りに行こうか

――目標、コンゴウさま。障害、機械鳥の群れ
高速で迫る怪鳥は(遅い、よ)一刀の元に斬り払い
絶叫が耳を裂くなら、届く前に空を断つ――!

鉄の羽搏きを抜けたら遠間の斬撃で牽制…ユキさん!
呼んで、頷く。言葉はいらない、と思うけど
…あれ何かちょっと怒ってる?
(気のせい、かな…んー)

一先ず(物理的に)ブッ込めー!!



●お寿司
 
 カチッ、ウィーン。
 フライングアノマロカリスの背中が開きマイクが格納される。

「ほほう?」
 ユキ・パンザマスト(夕映の咲・f02035)は向けられるツッコミに極めて邪悪な嘲笑で唇と眉を歪めた。
 
「どちらがトンチキですと?」
「いや今そちらがだわ」
 今!今足元ッ!
 フライングするタイガーみたいなノリでフライングアノマロカリスとか言っているがアノマロカリスは空を飛ばないし背中にマイクは収納されていないのである。

 カチッ、ミーン。 
 ラジカセ†漆黒の讃美歌†の停止ボタンが押されカセットテープの巻き戻しが行われる。
「お、オウムさんも言うねー」
 セラ・ネヴィーリオ(セントエルモの火・f02012)はラジカセ†漆黒の讃美歌†の傍にスイッチを押したままの姿勢で蹲み込んだまま向けられるツッコミにいつもどおりの朗らかさで答えた。
 ドライビン・ゴーをお読みの健全なる良い子のみんなはどれだけ知ってるかな昔音楽を聴くのはカセットテープと言って巻物のように巻いたテープであり一回聞いたら同じ曲を聴きたい時は巻き戻しを押してちょっと待つかか裏面と言ってカセットテープを取り出してひっくり返して入れて反対側に記録されている曲を聞かないといけなかったんだぞ。いい時代になりました。

「アノマロカリスマパイセ〜〜〜〜ン♡」
 ユキはちょっとわざとらしいステップで座席である白鳥浮き輪座席の縁から席へと降り、足で踏んでいなかった方の縁にしなだれかかって足を伸ばし手を伸ばし、浮き輪からはみ出してパイセンの背中を人差し指でツルツル撫でる。
「ツッコミ鳥がぁ、ああ言ってますけどぉ〜〜〜???」
 仕草としては幼い遊女のような色気があるのだがノリが完全に暴走族(ゾク)のレディースないいしはパリピのJKである。

〜ここから先あんま真剣に読まなくてもいいトンチキアナウンス〜
 …いや、14歳は中学二年生なのでこの場合はパリピのJCである。JC。女子中学生。小学生を卒業し高校生になる前の柔らかい幼性と大人になり行く階段に足をかけた全年齢シナリオの規制警戒を一気に跳ね上がりそうな禁断魅惑のお年頃だ。セラもどちらかといえば18歳だがDC、いやJC味が十分にある素晴らしいアンバランスさである。二人並んでいるとどこまでもアンビエントでデンジャラス、アノマロカリスパイセンが大きくて水しぶきが届きづらかったのとレース第一章早い段階で空飛んでたからほぼ濡れてない奇跡のチームで本当によかった。海上レースシナリオなのに一章から空飛ぶってある?ナイストンチキ。今この瞬間この仕草で水濡れが加わってたらナイスデンジャラスセクシーと叫んで海上ドライビン・ゴーが全年齢対応シナリオだという健全アピールアナウンスを行って放映自粛要請発令を回避せねばならないところであった。まだ捕まりたくない。ここまで書いてる時点でほぼ全部やっちゃったような気がする。水濡れてナイスデンジャラスセクシーと叫べる瞬間をお待ちしております。
〜あんまり真剣に読まなくてもいいトンチキ文章完了〜

「セラもさ」
 ユキは白鳥座席の縁を枕に頭を置いて両足を伸ばしコロリと仰向けに横になって隣を見る。
 降り注ぐ太陽の光が白い肌を、胸元を、足を、眩しく輝かせている。
 うーん無防備。ナイスセクシー。
「晴らさんとする未練の前に立ち塞がる輩が居たらどうしますぅ〜〜〜?」
「そうだなあ〜」
 セラは防水仕様とはいえひと世代も二世代も前のラジカセである†漆黒の讃美歌†をそっと白鳥の座席の首元、一番濡れたり倒れなさそうなところに置き、顔を上げる。

「彼らが悪いことしてないなら迂回するんだけど」
 その優しい瞳の先には、

 ―というか空飛んでる前座席に座ってるからトリボーグどもとコンゴウさまと白鳥浮き輪の首とかいろんな猟兵のトンチキドライブとかちょっとした島以外には……意外と瞳の先に映るもん多いな―

「先輩はどう?楽しい?」

 アノマロカリスパイセンだけが映っている。

 少年ふりかえれ、ナイス無防備セクシー見逃してるぞ。
 ひと夏のきらめきが後ろにあるぞ少年ッッッッッッッ!!!

「…そっか」
 セラは彼にしか聞こえぬ返事に優しく頷き

「それじゃあこのままブッコむしかないなあ」
 ユキと同じ凶悪な悪戯っ子の笑みをした。

「その意気や良しッ!」ユキが跳ね起きる。「アツい再演奏になりそうじゃないっすか!」さらばナイス無防備セクシー。
「アンコール、もう一翔けいっちゃおー!」ユキに合わせセラも立ち上がる。
「えいえい、おー!」
 二人で拳を掲げた。

「オイオイオイオイ…黙って聞いてりゃべらべら随分というじゃねえか」
 コンゴウさまは胸毛から取り出したささみジャーキーをかじりながら笑う。えっ…共食い…?
「お前ら所詮自分らが借りもんの生きモンの背中でくっちゃべってるっつーのを忘れてやしねえかい」
 つるり、とジャーキーの最後のひとかけが嘴の奥に消える。
「おしりハゲてるの大丈夫?」「うるせえ白いのお前の後頭部を刈り上げてやろうか」「頭ちょっと焦げてませんか」「うるせえ黒いの脳味噌が真っ黒にこげてるてめえらに言われてたまるかよ」
 コンゴウさまは優雅に羽ばたき

「飛べもしねえ泳げもしねえ陸ハイハイちゃんども――てめえらがどこで戦いを挑まれているか教えてやらァッ!!!!」
 鮮烈なる絶叫、宣戦布告が投げつけられる!

「ぶわたたたた」「おわっと」
 二人とっさに身をかがめて避けるが、この叫びは範囲無差別!
 ど、どどん!とアノマロカリスが大きく揺れる。『右舷第1、8、9、12羽、左舷第1、2、5羽損傷』アノマロカリスパイセンから響く電子アナウンス――電子アナウンス!?
 アノマロカリスパイセンてっきり空の夢を見ていると思ったらこれ宇宙の夢を見ていたタイプのアノマロカリスパイセンであった。
「ぐうう、無差別はやっばいなあ」大音量に耳を押さえながらセラは苦笑する。「ですねえ」ユキも真剣な顔で頷く。「パイセンもですが――セラ」「うん」
 トリボーグどもとコンゴウさまと白鳥浮き輪の首とかいろんな猟兵のトンチキドライブとかちょっとした島。
「これ、うっかりすると島にも届いちゃうよね」「ええ」「止まらずマッハゴーだ」ふふ、とユキが笑う。

「もとよりそのつもりですよ。空の掟つうなら――くれいろ with アノマロカリスマパイセン。掟破りの派手なパーティーにしようじゃありませんの!」
「うん!」
 微笑みをかわし。

「ヘイカモン!」
 セラが立ち上がる。
 その後ろ、ユキがコードを展開する。
 彼岸越境。背の蝙蝠翼をぐんぐんと肥大させる。
 アノマロカリスにも並ぶほどの、力強い翼。
 そして溢れる椿の花吹雪。

 コンゴウさまの咆哮に続き、残りのバードどもが突っ込んでくるところであった。

 さあここからはいつものような打ち合わせは一切なし。
 ぶっつけライブに突入する!

「僕らKUREIRO with カリス先輩は止まらないよー!」
 こちらも明々朗々高らかな、宣戦布告を叩きつける。
 
 ユキの翼はアノマロカリスの負傷を補う翼と変わり。
 花吹雪は鳥たちの目を眩ませる。
 そうなれば広がる黒と赤の中、浮かぶ白――セラがどうしても目印となる。

「さあセラ」ユキは合図を送る。「うん」「本星は任せ――」

「――おいで【残桜】ちゃん」
 はてさて。
 そいつは一体何の奇跡か悪戯か。ホロの気まぐれ波のプリズム。
「島の人たちを守りに行こうか」親身に語りかけるセラの声を聞きながら。
 ユキの瞳にそれが映った。

 優しい仕草で招くように片手を伸ばしたセラに向かい、するり空から降りてくるワンピースの少女。
 日常生活で着るにはやや華やかでスカート丈が際どいデザインだ。すらりとのびた足、くるり指で作った輪で掴めそうな細い足首に、赤い靴。緩やかな長い髪をそっけなく低い位置でまとめているのがアンバランスだ。衣装を合わせてこれから髪を結い飾るところだったのではないだろうか。
 セラの掲げた導きの手にそっと名残の桜色に塗った爪が小さく乗った細い指先が人差し指、中指、薬指、三つ指揃えて置かれる。
 少し高いところからゆっくり降りてきた少女を迎え入れる、エスコート。
 ええ。
 エスコートですね、あれは。
 顔は見えない。二人ともユキに背を向けているからだ。
 
(ほーん?)

 少女は緩やかに降りてくる。セラの手に招かれてふうわりと、セラの後ろに。
 彼の背、白い羽のあたりに到達した部分がふっと消えていく。
 憑依、そういうことなんだろう。
 そういうことなんだろう。
 そういうこと。
 そういう〜〜〜〜〜〜〜〜こと〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜なんでしょうけどお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

(ほ、ほほ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん????)

 そういう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ことなんでしょおけどお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜背後から抱きつく〜〜〜〜〜〜ようにも〜〜〜〜〜見えるんですがそれは〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜????

 落ち着かない。
 ユキは思わず両手をわきわき動かしてそれでは全く落ち着かなくておててのしわとしわを合わせて両手の指先をわきわきしてしまう。
 
 ああ〜〜〜〜〜〜〜別にいい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜必要なことですのでえ〜〜〜〜〜〜気にしているとかそういうわけではなくう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜?????

 波線で海ができている。

「大丈夫か黒いの眼がやばいぞッ!!!!!」

 思わずコンゴウさまがツッコむ。
「うおああああああああああコンゴウさまこのタイミングでこないでいただけますセラあああああああああああ今ですううううううううううううううう!!!!!!!!!」

「ありがと」
 優しい応答。
 残桜(セラ)の、見たことのない顔、聞いたことのない声。
 淡く輝く、霊刀構え。
 そいつがユキの胸をキュッと締める。
 ときめいていいのかゴニョゴニョなのかわからない。
 どっちでもあるのかもしれない。

「バッカお前今鏡持って行ってやらァ顔見てみろオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
「お断りですうううううううううううううううううううううううううう!!!!!」
  
 セラはちらっと後ろを見る。あまりに激しすぎるユキの動揺が気になった。
 鳥でよく見えない、が、あれは。
「あれ、なんかちょっとユキさん、怒ってる…?」刹那の間、誰にも聞こえない呟きをセラはこぼす。いや、一人いた。その一人がクスクス笑う。「…残桜ちゃん?」『可愛いひとね』「ユキさんのこと?」支配者に関しては苛烈な残桜ではあるが、割と年齢が近いというか、お友達として本当に話しやすい彼女。ある意味では、しらたま以上かもしれない。『うん』「ふふ、でしょ?」『うん』見た目こそ幼いけれど、普段こそ同い年くらいの感覚だけれど、後悔に焼かれてそのままの彼女は、セラよりうんと年上だ。ちょっとしたおねえさんみたいなものだ。
『大事にしてあげてね』

『――目標、コンゴウさま。障害、機械鳥の群れ』
 残桜色した冷たい殺意が、口からでる。
「行かせないよ」
 これは、セラの意図。
「色男お前バッカお前俺邪魔してる場合か!!!!!!!」
 コンゴウさまが一体何を見て何にそんな大興奮しているのかちょっとわからないが興奮状態であるのならこれ以上ない。
 サイボーグとやら、怪鳥の群れは一刀の元に切り捨てる。
『遅い、よ』
 切り開かれた鳥の肉が、羽が、嵐に一層の彩を寄せる。

「いいから後ろーーーーーーッ後ろ見てみろ青春ンンンンンンンンンンンン!!!!!」
 再び巻き起こる大絶叫に、踊らされなどしない。

 いや見たんだけどはっきり分かんなかったしユキさんいやそうだし。
 でもちょっとあの耳まで真っ赤なわちゃわちゃの顔は覚えておこう。

 放たれた絶叫が渡るより速く。
 絶叫が耳を裂くなら、届く前に空を断つ――!
 
 いん、
 
 ちょっと別のことを考えた分、セラも無傷ではなかった。
 しかし、無音。
 セラは振り返る。
 残桜と共に切り開いた鳥の羽が刺さりまくっていて、ふわふわ真夏に、輝いているようなユキ。
 無音故合図は頷き一つ。

 それで通じる。
 
 コンゴウさまはああシャウトしましたけど、とユキは思う。
 かっこいいとこ見れました故。そんな。
 そんなそんなまあ別に、大丈夫ですしそんなそんなことよりかっこいいとこ見れてますしおすし全く損なんてしてませんしお寿司大丈夫かと言われればユキはまっっっっっっっっったく大丈夫ですしお寿司。本当に。

 行き場のない複雑な心で踊る手がいつの間にか飛んできた羽と他の猟兵の魚カットによって飛んできた刺身でお寿司を握っている。あと羽と椿ホロの花弁でもお寿司握っていた。これ何貫目?3貫目。シャリがないので羽が代理である。

 大丈夫?
 と、セラの瞳が聞いてきてくれていた。「ええ…ええ」ユキは唇を動かす。

 安心してください。ほんと嫉妬じゃないんです。かっこいいとこ見れてすっごい役得で、かっこいいセラが素敵で、ユキはまっっっっっっっっっっっっっったく何にも全然少しも無問題(モウマンタイ)で、だから、だからあ

「だから大丈夫ですしお寿司ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」

 少女、真夏の衝撃波(シャウト)がホロ椿から容赦なく放たれるッ!!!!

「オブフッ」
 セラを抜けることだけに注目していたコンゴウさまとバードどもはあえなくそのシャウトを喰らい、いっとき、飛ぶことが叶わなくなる。
 
「ラッセイ!!!!!!!」ユキのやけくそシャウトが続けて放たれる。
 翼は大きく羽ばたき――二段階目の加速!
「うわった」ちょっと予想だにしない加速でセラの足がもつれる。残桜は離れていた。いつもはもっとそのままいて補佐をしてくれるのだが、今日はどうしてかもう離れていた。きっとセラの負荷を気にしてだろう。気にしてだろう。気にしてだよね、ネッ?
 「と、と、と」そのまま倒れまいと足で後退し、ころり、セラはついに後ろへ転がり倒れそうになる。そこにはなんというか、ええ、どういうことですかね。ユキがいる。
 普段のユキなら一緒にすってんころりだが、本日は力強い羽があり、支えられる。
 られてしまった。
 転んだらいけないと思って反射で両腕を腰に回してしまっていた。
 セラをぎゅっとしてやけくそのまま、どう眼を合わせていいかわからず思わずぎゅっとつぶって。
「ッヘイお待ちィ!!!!!!」
 やけくそが停まらなかった。

 アノマロカリスの巨体が、

「くれいろ一丁ーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!」

 コンゴウさまに迫る。

「一先ず(物理的に)ブッ込めー!!」
 セラは笑いながら両腕を上げる。
「イエスッ!!!!最果て越えてぶっちぎりゴー!!」

 くれいろ白鳥号・オン・ゴーステッドビッグアロマノカリスの上。
 セラとユキはひと昔前、貧しい青年と上流階級の娘の悲恋が有名な、豪華客船が沈没する映画の有名なワンシーンのようなポーズを決めながら、コンゴウさまを、轢いたのであった。
 ちなみに男役と女役の立場が逆だったことを尾行としてここに添えておく。お寿司。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ミルラ・フラン
【海上極道】
アドリブ歓迎
サングラスに赤い口紅、華美なサマードレスでキメて
さっき居なかったって?なんのこと?

そうさ、ツッコミ隊長はそこのクロウさ(言いくるめ)
びしょ濡れの身体で海洋生物に乗って何が悪いのさ
水も滴るイイ女っていうだろう?そこのクロウだってイイ男じゃないかい
はは、ぶちかましてやろうじゃないか!
今日のあたしはいつもよりファビュラスだよ!

巨大海蛇に騎乗
海蛇を走らせながら、存在感と誘惑で視線をコッチに集めながら魔力溜め
何羽も魅了されたところでAttraente Cremisi
叫びを放ちそうな仕草を感じたらオーラ防御で音を遮る防壁を展開

ふふふ、あたしもなかなかのもんだろ?
さ、どんどん行くよ!


杜鬼・クロウ
【海上極道】
アドリブ歓迎
グラサンにヤクザっぽい格好
一章から居た体で

オイオイ待てや
真のツッコミ隊長はこの俺だァ!!(張り合うとこそこ?
海蛇乗って何が悪ィ
浪漫があるだろうが!
ミルラ、ココは一発かましてやろうぜ
言い忘れてたが今日のミルラは特にふぁびゅる…(噛んだ)とにかく決まってるぜ(巨乳好きなので胸がん見

巨大海蛇でブイブイいわせ楽しみながら戦闘
敵を罵り不快にした所でUC使用
羽根を上空から五月雨飛ばし(部位破壊
波乗りジャンプし海賊共へ必殺海蛇アタック!
蹴落としKO
第六感・見切りで敵の攻撃回避

あァ、敵すらも魅了しちまう姐御…?流石だわ
(やっぱ女って怖…)
おう、そっちこそ最後まで気ィ抜いてンじゃねェぞ!



●海上極道の掟

「――一体誰と誰が2章からだって?」
 仁義の戦いが始まっちゃいそうなテーマが爆音で流れてきた。

 海を割るかのような水しぶきが上がり、5匹のウミヘビがコンゴウさまの前に放射線状に飛び出す。
 それぞれ首…うんまあ首…蛇の…首…首輪がしっかりと嵌りその先にはチェーン!!!
 そしてその先には高さ4メートルにもなる畳雛壇ッ!!
 海にッ!畳はッ!!御法度です!!!!!!
 華々しい雛壇の上には椅子とどうやって固定したのか金の屏風。
 屏風は少々珍しい柄だ。杜若の上に、真っ赤な実をいくつもならせて枝のたわんだイチイが描かれている。
 そしてその上に昼間なのに眩すぎるネオンで「極道」って看板出てる。

 極道って!!!看板!!!でてる!!!!

 雛壇の上には漆塗りの椅子がある。
 そこに――それこそ陽に透かしたイチイか深い傷から出た血液かと思わせる真っ赤な髪の女が座っている。
 纏うドレスは金散らす黒。
 深いスリットはもちろん、挑発的に豊満な肉体を惜しげもなく晒す華美なサマードレス。
 そしてサングラス。街中で見かけたのならそのしたを誰もが見たいと喉を鳴らすような、とびっきりの美人。

「一体なんのこと?いい度胸じゃないか――あたしらにそいつを言うなんて」
「言ってねえ」
 
 髪と同じぐらいに真っ赤な唇がゆるりと歪む。「こちとら一章からプレイング送信してたんだよ」再度お付き合いありがとうございます。いらっしゃいませトンチキへ。
「受付行ったらこれ案内されて一章トンチキ見ながら運ばれたあたしらの気持ちも察して欲しいもんだね」サイドテーブルに日本酒とツマミがセットで置いてある。
 赤く赤い長い爪が印象的な指先がサングラスを掴み、外す。

「生きて返しゃしないのはこっちの台詞だ。覚悟しな」
 今ここにある何より赤い、瞳。

 女の名はミルラ・フラン(Bombshell Rose・f01082)――職業、グリモア猟兵。
 そう。
 極道(ヤクザ)じゃない。

「オウオウオウ、てめえの台詞は一々聞き捨てならねェんだよ」
 ミルラの傍らに控えていた男が立ち上がった。
 黒のダブルスーツに紫のシャツ、黒に金で杜若の描かれたネクタイ。
「どの台詞だ?」
 コンゴウさまは空中でゆらゆらと揺れながら男に近づく。
「どいつもこいつもトンチキぬかしやがるのを片っ端からツッコんでるんでさっぱりわかりゃしねぇなァ…」
 もふ…とヤクザの流儀で近寄ったコンゴウさまの胸毛が男に当たる。
「おォ、知らんぷりって訳かよ、いい機会だ、じゃあ言ってやる」 
 苛立たしげにサングラスを指でずらせば、夕赤と浅葱の眼が現れてコンゴウさまを睨み付ける。

「真のツッコミ隊長はこの俺だ」

「そっち?」

 ご申告いただいたところ誠に遺憾ながら男のボケが決定した瞬間であった。

 男の名は杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)――職業、同じくグリモア猟兵。
 そう。
 極道(ヤクザ)じゃない。

 …お気づきいただいただろうか。

 どっちも!!!!!

 どっちも極道(ヤクザ)じゃないのである!!!!!!

「なんだァ…文句あんのかよ」
 クロウはさらに一歩前に出る。
 フワッフワの毛がさらに押し付けられ嘴の先がクロウの唇までもはや数ミリである。
「何がそっちだ一体どっちだ言ってみやがれ!右か左か真ん中かァ!!!」
「お前今の自分の発言大丈夫かッ!!」
「大丈夫に決まってんだろうが俺が真のツッコミ特攻隊長だコラァ!!!」
 ふー…。
長いため息を着いたのは見かねたミルラだった。
「何ぐだぐだやってんだい」「おっp…ミルラ」おい今この男なんか違うこと言いかけたぞ。

 ミルラは男たちの超至近距離の争いに呆れ返りながら

「そうさ、ツッコミ隊長はそこのクロウさ」

 ボケをミルフィーユする。

「だァアアアアアアアアアアアアアからァああアアアアアアアア」
 あっコンゴウさまがキレた。

 コンゴウさまはバッと素早くミルラとクロウから離れ
 
「お前がツッコミ隊長になるとお前が俺らの一員になるっつーー話になるんだがァアアアアァアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

 全身全霊、鮮烈なる絶叫(ツッコミ)を放つ。
 この叫びに屏風は吹っ飛びネオンサインは破れ畳はちぎれて吹き飛ぶ。

「誰がてめェらオブリビオンに下るかゴルァアアアアア!!!!!!!!」
 海へと落下しながらもクロウは言い返す。
 ミルラの張ったオーラ防御で共に無事である。
「でしょうねボケェ!!!良かったちょっとほっとしたわクソがァアアアアアアアア!!!!!!!!」
 届かぬと分かっていながら追撃の咆哮をあげつつコンゴウさまは上へと飛び上がる。
「こンの――」「クロウ」
 ミルラが再びため息をつく。「おっp…ミルラ」ねえそれ毎回言いかけるつもりなの?

「せめて確認ぐらいしな」 
 落ちていると言うのにミルラの笑みは余裕を崩さない。
 胸元へと手をやり「おっぱ…」谷間からサングラスを取り出して、
「滑ってドボンなんてつまらないことするつもりないだろう?」
 かける。
 ――。
「ああ、そうだな」
 ミルラに釣られてクロウもまた笑い、サングラスをかけ直す。
 
 二人の下、ぬッと盛り上がる水面。
 水しぶきを上げながら、飛び出したのは先ほど畳雛壇を引っ張っていた2頭の海蛇。
 二人は海蛇の首元から伸びたチェーンをそれぞれ片手に掴む。
 海蛇の背に鞍はない。
 あるのは、そう、それぞれ一枚――ボードが海蛇の胴に交差するように置いてあり――

「まったく――びしょ濡れの身体で海洋生物に乗って何が悪いのさ」

 ――二人はその上に、仁王立ちするッ!!!! 

「おうよ浪漫があるじゃねえか!!!!!」
 
 今鏡見てそれ言える?

 海蛇の上に横に板渡してチェーン引っ張って乗ってんだけどそれ言える今?????

「お、っ… ミルラ、ココは一発かましてやろうぜ」
 おっとクロウ選手だいぶ抑えた。
 たとえ胡乱シナリオであろうともカッコつけどころを分かっているさすがレベル78猟兵。

「ああ。水も滴るイイ女っていうだろう?」
 クロウの言にミルラは頷く。
 今しがた思いっきり被った水しぶきで濡れた前髪をかきあげながらミルラは腕を組んで胸を強調する。赤い髪は水によってしっとりと色に深みをもち、頸に、開いた肩に、胸元に張り付いている。濡れたドレスはぴったりと体のラインを強調しその上を水滴がいくつもいくつも滴り流れ――いけませんいけません姐さんッ!

「クロウだってイイ男だ――鳥類と魚介類にはもったいないくらいの艶(いろ)ってのを見せてやるとしようか」
 苛烈な毒のように微笑んだ。
 
 さて。
 目には目をと、誰もが知っている慣用句がある。
 目には目を。
 サイボーグ魚類には、すでに残りの海蛇三匹が向かい、戦いを挑んでいる。
 海蛇で特筆すべきはその属。一説にはコブラ科に分類すべきとの声もある。
 ――彼らは神経毒を持っているのだ。基本的には穏やかな海蛇であるが中には自分と同じぐらいのウツボを食うと言う強欲なものもいる。
 故に、魚類はそこに任せておけば良い。
 たまに踊り上がったサイボーグカニを蹴り落とし、はたまた海蛇を駆って体当たりさせて沈めてしまえば良い。結局サイボーグとて魚であり鳥なのだ。であれば頭をぶん殴れば――あとは簡単である。海賊どもを沈めるのに使った手だが、何、今とて使えない手ではない。
「オラオラオラオラいつまで高みの見物決めてんだコンゴウ!」 
「さまを付けろや口ピ野郎ッ!」
 歯には歯を。
 オブリビオンには、猟兵を――クロウは右腕を掲げ、コードを発動する。
 
 見た目はヤクザ。
 戦闘中の口調はインテリヤクザ。

 しかして猟兵クロウの、その実態はヤドリガミ。

――聖獣の呼応。

 霊力で作られた形持たぬ朱の鳥がいくつも宙へと踊り上がる。
 残念ながら不快感を与えられたのははっきりと猟兵とやり取りできたコンゴウだ「さまを付けろやクソ地文ッ」…コンゴウさまだけだ。朱の鳥は一斉にコンゴウさまへむけて羽を飛ばす。
 ここまでのダメージで負傷しているコンゴウさまではあるが、全ては当たらない。
 それでいい。
 やつが避けただけ、雑魚が散らすことができる。
 そして雑魚が落ちただけこちらに敵意が向き――芋づる式だ!
「ま、相手がトリとか魚だから芋づるってのもおかしいか?」
 独りごちながら哀れなサイボーグどもを笑ってやる。
 サイボーグバードが撃墜される水しぶきがいくつも水柱を立てる。
 その隙間からよく見えるミルラに、やはり、とクロウは確信を得、決意し呼びかけるべく口を開く――

「おっp…ミルラァ!!!!!」
 これは。
 これはッ!!!これはやっぱりダメでついそこに目が行っちゃう杜鬼・クロウッ!
 どこに目が行ってるかは!!!!察してね!!!!!!!
 水しぶきの間からミルラへと声をかける。
「何だいッ!!」

「言い忘れてたが今日のミルラは特にふぁびゅる」
 OH…噛んだ。

「クロウ?」ミルラはけげんな顔をする。「ふぁ」「ファ」
「…ふぁぼら」おう。
「ふぁふにら…」うん。
「…ふぁーび…」頑張って。
「ふァーふ」ッ頑張ってッ!!!!!!
「……ファブ…」風雲児頑張ってッ!!!!

「とにかく決まってるぜ!」

 ダメだったーーーーーーーーーーーー!!!!!!

 言いたい言葉を諦めたーーーーーーーーーーーーー!!!!!!

 …意外なことに「はは」これに対するミルラの返しはどこまでも鮮やかな笑いだった。「そうとも」

「今日のあたしはいつもよりファビュラスだよ!」
 コード:Attraente Cremisi。

 海蛇を乗りこなしながら鮮やかな薔薇をいくつも咲かす。
 鳥は鮮やかな華にこそ惹かるる。
「ふふふ――あたしもなかなかのもんだろ?」
 一面の青の中の、鮮やかな赤よ。
「トリと魚ってのがちと不満だけどね」
 コンビ同士、まさか同じような言葉を呟いているなどとは露知らず。
 ミルラは新たな薔薇を咲かせ
「まあいいや――あたしに惚れたんだったらもれなく海蛇どもの餌になってもらうよ!!」
 いつもより多めに真紅の花弁を飛ばし、魚類鳥類を撃ち沈めていく――!

「あァ」同じ赤い閃光でもこうも違う。クロウは目を細めた。
「敵すらも魅了しちまう姐御…?流石だわ」
 やっぱ女ってこわい。
 クロウはさっきまでおっp…どことは言えないけれどどこかをガン身し続けてしまった自分に喝を入れて背を伸ばす。うっかり見入ったらコードの効果内に入ってサイボーグどもと同じ末路を辿ってしまう。
「クロウ!」
 噂をすればなんとやら。ミルラは半口を開けていたクロウを一喝する。「うぉいッ!なんだよッ」

「ボサッとしてんじゃない――さあどんどん行くよ!」
 女のどこまでもどこまでも美しくて鮮やかな笑みに。
 此度の相棒として男は改めてジャケットの襟を正し、サングラスをかけなおし。
「おう、そっちこそ最後まで気ィ抜いてンじゃねェぞ!」
 女の語った、イイ男という一言がまさにぴったりな剛と笑みを返したのであった。

 多勢に無勢だったはずの勢力は傾ぎ。
 海賊船が、すぐそこにに迫りつつあった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

宇宙空間対応型・普通乗用車
空の王者だぁ…?
空を飛ぶしか能のない鳥の分際で、
陸海空宙全環境対応型のオレを見下してんじゃねぇぞテメェ!
そんなに羽に自信があんのなら、
【空中走行モード】でその鼻っ柱へし折ってやんぜ!
質量×スピードの圧倒的暴力に慄けオラァ!

え?飛行機はレギュレーション違反?マジで?
がーんだな…出鼻をくじかれた
どうやら本当に恥ずかしいトンチキ野郎は、
周囲のノリに合わせず一人で暴走したオレだったようだな…

だがオレはオレの信念に則って全力で暴走した!
そこに何ら恥じることはありはしねぇ!
何が言いたいかわかるか?オレにもわからん!
わからんまま死に晒せこのオウム野郎が!
おっと失礼、言い直すぜ。
死に晒せこのウンコ野郎が!



●〜ご覧の海上ドライビン・ゴーは海上レースシナリオです。〜

「空の王者だぁ…?」

 宇宙空間対応型・普通乗用車(スペースセダン・f27614)は激怒し続けていた。

 宇宙空間対応型・普通乗用車(スペースセダン)は宇宙空間対応型の普通乗用車である。
 宇宙空間対応型・普通乗用車としての使命を果たし続けてきた。
 たくさんの笑顔を運び悲しみを運び人生を運び、かけがえのない平穏平和な日常を生きる光の住人を運び哀れでどうしようもないが愛おしい闇の住人を運び…バードボイルド・スペースセダンとして、時にその愚かさにマフラーから水滴をこぼし時にその真なる勇気にテールランプを右だけ点けて密かな賛美を送るなどしながら…それでも人類その他に寄り添って稼働し続けていた。

 そのスペース・セダン、宇宙空間対応型・普通乗用車は、今回のレースで激怒していた。
 初めて宇宙空間対応型・普通乗用車「一台」として激怒していた。

 ――個体として激怒する。やはりこれがそうなのだろう。
 研究開発チームでヘッドライトの位置を変えようという話が出た際、チーム内でたった一人突然セダンを真っ黒く塗ってボンネットで目玉焼きを焼こうとしていたあの男の気持ちが、今ならわからないでもない。ちなみに当然ながら目玉焼きは焼けない。そんな旧時代の母星じゃあるまいしに。
 普通乗用車としても自身の怒りがどこか不思議であった。
 エンジンの冷却液が足りないのではと計器で5・6回は確認するほど激怒し続けていた。
 別にそんなに怒る必要はないのではないかと――何度でも思ったが止められなかった。
 
 団扇島という島はその島よりも優れた文明に支配されていると聞いて飛び込んだら旧式のペンペコペンであることに激怒した。
 これしきの性能で人類その他に寄り添うことを諦めて人類の支配に乗り出すというAIの浅さに激怒した。
 それを実行していることに激怒していた。
 激怒して激怒して搭乗者不在程度でレースに参加できないことからキレ散らかして海賊をギャリギャリに轢き潰しながら、バードボイルド・スペースセダンはどこかで思っていた。
 怒りなど、じき、消えてしまうに違いない。
 だってそうだろう。オーバーヒートすれば動かなくなるのが車の定めだ。
 
 そして今。
 宇宙空間対応型・普通乗用車は、怒りと言う感情を真に理解した。
 ああ、怒りとは――

「よりによって最後に立ち塞がるのがてめェか…」
 そいつは宇宙空間対応型・普通乗用車のはるか上を浮いている。
「宇宙300、にナンバー76−14…」
 そいつは静かにタバコに火を点けて吸う。
「…いや、こう呼ぶのがいいのか?宇宙空間対応型・普通乗用車それともスペース・セダンか?」
 …普段の普通乗用車なら、まず、答えない。
 相手は敵だ――テメェに名乗る呼ばれる名前などないと吐き捨ててやる。
 だが今回は違った。
「他車のナンバーを軽々しく口にするんじゃねえ」
 普通乗用車のエンジンが震え必要もないのに点火プラグが花火を散らす。

「俺様を呼ぶなら――宇宙空間対応型・普通乗用車だ。てめェらにそれ以外は許可しねえ」

 そのAIだかロボットだか知らない奢り昂った旧式どものボスが選んだツッコミ特攻隊長とやら。
 そいつは

 そいつは

「きっちり呼びやがれ、このクソインコ」
 
 巨大な、インコだったのだ。

 ――ああ、怒りとは、ガソリンだ。

 未来を気取ったクソ旧式が特攻隊長として選んだものが、まさか部品代替も効かぬ、一羽の巨大なインコだなどと――論理が狂っているにも程がある。

 特攻隊長連れてくんならまず生体じゃなくせめて宇宙空間対応型鉄球クレーン連れてこいやクソが――…!

 そしてスペース・セダンは容赦なく加減なく激怒することを選択する。

「空を飛ぶしか能のない鳥の分際でッ」
 マフラーから怒気を排出しエンジンのベアリングが唸る。
「陸海空宙全環境対応型のオレを見下してんじゃねぇぞテメェ!!!!!」
 普通乗用車は吼える。 
「そんなに羽に自信があんなら」
 普通乗用車はハザードランプを点灯する。
 推進装置展開完了――慣性制御装置、起動。
 車内インストメントパネルに表示が光る。

【空中走行モード】
 ホバーではない。そんなお遊びではない。
 本気の空中走行モード。
 推進装置を展開――On Your Mark.

「今行っててめえのその鼻っ柱へし折ってやらァ!!!!」

 Flight
 走行ッ!!!! 

 陸海空宙全環境対応型としての誇りでもって、空を征く鳥にすら、追いつく――…!

「ッるせェ飛んだぐらいでガタガタぬかすな普通乗用車程度がッ!!!!」
 インコは煙草を咥えたまま叫ぶ。

「こちとらギルマン神輿が迫り上がったと思ったらシャチとバイクで塔が立ってヒトデが飛んで巨大フグが星と共に降って来てアノマロカリスが飛んでお寿司でマッハだいたい7でペンギンバーサーカが飛行してイルカ幼女が寄り添って来てサメがTシャツ着てジェットになってウツボが打ち上がってジンベイザメがつかれた男をキャリーして海蛇が10m雛壇ひいてきてんのを目にしてんだよッ

 ――その程度で勝ったようなフロントガラスすんじゃねえッ!!!!!」

―ひどい戦いでした―
―ところで雛壇実際のリプレイより高くなってないですか―

「てめえは現実と現状と個体差もできねえクソインコらしいなッ!!!」
 普通乗用車はグリルからチョコレートも溶かしかねない高温を排熱しながら突撃する。
 今のは聞き捨てならない。
 ホイールをベアリングが擦り切れて無くならんばかりに回転させ、スピードメーターを振り切らんと速度を出す。

 空中走行モードは地上で使えば車体の寿命を容赦なく消費する禁断の技術だ。
 しかし海上である今――その制約は無意味ッ!!!!!!!!!たぶんッッッ!!!!!
 よって叩き出される質量とスピードによる圧倒的暴力をインコへ差し向けるッ!!

「みんな頭がおかしいみてーなこと言いやがってッ!!!
 どいつもこいつもレースに参加したからそうなっちゃった被害者だろうがッ!!!!!」

 そうですね。
 そう…いや…そうで…。
 …そうか…?
 
 いや、車体寿命を消費しても構わぬ。

「俺様はなァッ!!!!!!!!
 そんなあらゆる猟兵がトンチキから逃れられないクソレースにも車体一貫で搭乗者ナシでも最初から通常参加できるッ!!誇り高きッ!!ハイ世代の宇宙空間対応型・普通乗用車、スペースセダン様なんだよォオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!」

 AIと個体差と舞台差すら認識できないこのインコは。
 ここで轢かねばならぬ。
 
 たとえこれがハードボイルド・スペースセダンならぬ禁忌の煽り運転であろうとも。
 たとえそれがハードボイルド・スペースセダンの神聖な車体に消えぬ傷を残そうとも。

 決意は硬

「飛行機はレギュレーション違反じゃクソが第一章断章読んできたんかワレェッ!!!!!!!!!」

 あっ。

 インコのくちばしから普通乗用車の鼻先まで数ミリで停止する。

「…マジで?」サイドミラーをパカパカさせる。
「マジだ」
「えっレギュレーション違反?」「レギュレーション違反」「えっマジか?」「マジだが?」

 〜ご覧の海上ドライビン・ゴーは海上レースシナリオです。〜

「あー…」普通乗用車はハザードランプを点滅させた。「がーんだな…」
 パカパカしていたサイドミラーをそっと畳む。「出鼻をくじかれた」
 あんなにも轟音を立てていたエンジンがそっと静かになっていく。
「…どうやら、本当に恥ずかしいトンチキ野郎は…」
 普通乗用車は誇りの静音モードでバックする。
「周囲のノリに合わせず一人で暴走した俺だったようだな…」
 ハザードランプが消える。
「気にすんなよ」インコは――コンゴウさまは羽を竦めた。
「海上レースシナリオだっつってんのに普通乗用車が殴り込みかけて走ってるって聞いた時は驚いたが」
 普通乗用車が突っ込んできた時に火が消えてしまったタバコに再び火を灯そうとする。
 嘴から離したタバコを再び嘴に擦り付ける。
「てめえはそうしたかったからそうした、そうなんだろう?」
 一度、二度――。

「ああ」

 普通乗用車はエンジンのギアをチェンジする。

「オレはオレの信念に則って全力で暴走したッ!!!」

 エンジン加速モードマックス・オンッ!!!!

「そこに何ら恥じることは無えッ!!!!!!」

 着火ッ!
「何が言いたいかわかるか――俺にも分からん」

 レギュレーション違反?
 そんな程度で、この怒りが消えるものか。

「コラァ最新式ッ!!!!!!」
「ヒャーーーーーーーーーハハハハハハハ油断したなクソインコがッ!!!」

 すごい、最新式なのに昔ながらの騙し討ち!

 どんなに時代が変わっても、変わらないものがあるのかもしれない。
 セダンの基本フォームのように。

「何がわからんまま死に晒せこのオウム野郎が!」

 トップスピード・ファイアッ!!!!

 海上ドライビン・ゴーッ!!!

 赤い羽が、宙に散る――…!

「てめえのことは何もかもわかりきってるなんてのが、一番の傲りなのよ、クソ野郎」
 スペースセダンはそのまま駆け抜ける。「おっと失礼」カムシャフトを鳴らして笑う。そうそう。忘れてはいけない。自分はハードボイルド・スペース・セダン。ならばハードボイルドらしく。「言い直すぜ」

「死に晒せこの【ピーッ】野郎が」

 ―インコです―

〜ご覧の海上ドライビン・ゴーは健全な青少年のためのクソトンチキ胡乱海上レースシナリオでお送りしています〜

 かくしてコンゴウさま破れたりッ!!
 スペースシップ・ワールドの技術の粋を集めて作られたことを自負する宇宙空間対応・普通乗用車、スペースセダンが、

 セダンが
 海賊船の後ろ
 実況・解説席に突き刺さったのであった――…!!

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『マシン・キャプテン』

POW   :    機械仕掛けの悪魔
自身からレベルm半径内の無機物を【対象との戦闘に最適化した巨大ロボット】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
SPD   :    効率的殺戮術
自身の【胸部のジョリー・ロジャー】が輝く間、【ビームカトラス】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    宇宙から来た略奪者
【スペースシップワールド製の高性能兵器】で武装した【ウォーマシンやサイボーグの宇宙海賊】の幽霊をレベル×5体乗せた【強襲揚陸型宇宙船】を召喚する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠エルシー・ナインです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●〜海上ドライビン・ゴーは海上レースシナリオでした〜

 きみたちはとうとう海賊船へと乗り込んだ。
 レースはとうに半分を過ぎ、残りはおおよそ、ゴールが彼方に見えて来る。
 元は宇宙船であったのかもしれない船の甲板は広い。団扇島周辺の激しい海流を走っているというのに通常の船よりもはるかに安定していた。
 デザインこそグリード・オーシャンの船を真似ているが、しかし例えばマストに張られた帆はエネルギー体であったりと…見るだけでもわかる。技術力は1章で見たのとは比べものにならない。
 ここが海賊団の本船だ!
 不思議なことに甲板には誰の姿もなく静まり返っている。
 さて入り口はどこかと首を巡らせ――

「ピーヒョロロロロロロツッピーガガガガガ」

 ――FAXでも受信してそうな突然の電子音。

「(電子合成音声:とうとう)――いや、そのフリはもう要らんな」
 低く安定した男性の声と共に、甲板の床に正方形の切れ込みがあらわれ、開く。

 その下から迫り上がって現れる、青き鎧の海賊。
 胸に輝くジョリー・ロジャー。

「我らがトップスピードの世界へよく来たな、猟兵。まずは我々に追いついたその速度を称えよう」
 きみたちは彼の顔を見たことがある。

 シナリオどうしよっかなって迷ってた時に視界に入ったヘッダー、もとい。

 レースに登録して待つ間。第一章断章こと、実況・解説席でだ。

「どうした?解説が電子合成音声で喋っていないのがそんなに意外か?」
 解説席の――解説:フカヒレ氏。「あんなものただの偽装に決まっていようが」
 まあ1章のでもう所々散見されてたけどね。

「ここまで来た貴様らならばわかるだろう」
 解説のフカヒレ氏、いや、この海賊団の船長であるマシン・キャプテンは赤きアイライトより閃光を放つ。

「速さとは、命だ」

 船が大きく揺れる――変形しているッ!
 横へ縦へそして上へ。

「速さとは効率であり効率とは戦術であるからだ」

 動く床・上下する床・電撃トラップ・レーザートラップ。
 催涙ガス・丸ごと海の上に渡るための鉄棒――左右から飛んでくるチェーンソーと鉄球ッ!!
 そして床のあちこちから水が噴き出す。
 海から海水を引き上げての床前面ッ!!
 ウォータースライダーッ!!!

「常に変わる現状に対していかに冷静な知能を持とうと
 ――現状に応える“速さ”がなければ、いくら理路整然たる思考とて無意味」
 
 君たちは思うに違いない。
 これはもはや船とは呼べない。

「分かるなブラザー。速さが全てだ」

 海上アスレチックやんけ、と。

「つまりここでは、速さの足りぬものは、死んでも良いということだ」

 誰だOPで足元安定してるとか言ったやつッ!!!!!!!!
 あんの!!!!硝子剣士ッ!!!!
 あっでもマスター挨拶に海賊船に乗り込むとしかッ!!書いてないッ!!!

 空があるのではないか?きみたちのうち数名は思うだろう。
 見るがいい。
 マストで帆の形をしていたエネルギー体がいくつもの球体と化して宙を浮いている。
 あれは、くるぞ、あのミラーボール、ビーム打ってくる、絶対。容赦なくくるぞ、ビーッて。
 
 床を見た数名の君たちは気づくだろう。
 船の変形によりあちこち海へ容赦なく突き落とすためか、海へ繋がっている穴が空いている。
 ならば、乗ってきた海洋生物たちを呼ぶ事もできるだろう。
 ……呼んで何すんの…?

 かくして海上ドライビン・ゴー。
 レースをドライビンしオウ…インコをドライビンし、
 そして海賊船に今ドライブインし、レースはゴールを目前。
 再び観客の真ん前へ、君たちは現れたこととなる。
 海賊船を沈めてやるならこれ以上ない好条件だ!
 えっこの衆人環視の前でトンチキアスレチックしながらバトルすんの?

「レースにも世界にもいつだって思わぬ難関があるものだ」

 いやこれは反則でしょ。
 絶対あとで思いついたでしょこれは。
 だいたいOPの暴走族設定どこいったん。

「それでは始めよう」
 ばらばらとマシン兵どもが飛び出してくる。
 パリ、とマシン・キャプテンが一瞬七色に光った気がした。
 ゆめゆめ油断なされぬよう。

「ラスト・レースだ」

 それでは猟兵、海上アスレチック・ドライビンッ・ゴーッ!!!

■敵■
・『マシン・キャプテン』x1体
・いろんなタイプのモブマシン海賊どもxまあ海賊船だからかなりいるよ体 
■環境■
・常時アスレチック変形する水上海賊船WithB(ビームミラーボール)

 また、ここまで乗ってきた海洋生物の力を借りることも可能です。 

▲!Caution!▲
〜ハイパー虹回転モードのお知らせ〜

 第一章・マシン・キャプテンはちょっと詳しく語る事を避けるべきちょっとした不幸な事故により七色発光回転していたようです。
 この影響でマシン・キャプテン内に何かしがのバグがあり、何かをきっかけで発動するようです。
 というわけで

 マシン・キャプテンが虹発光し時々回転しながら速度を上げ電撃を纏って襲いくる、
 ちょっと胡乱と難易度に刺激を求めるあなたのためのモードがあります。…なんで?

 このモードで乗ってきた海産物を使用すると調理される可能性がございます。
 もちろんマシン・キャプテンは冷静で理知的なマシンですので通常の戦闘では発生しません。ご安心ください。
 また、このモードが使用されなくともシナリオクリアにはなんの問題もありません。
 なんの問題もありません。

 ご希望される場合はお手数ですがプレイング冒頭に『▲』を記載いただけますようお願いします。
御園・桜花
「これ…パスして抜き去るだけで、最速の誇りが消えて弱体化するのでは?」

ユキエさんは海上待機
海中没シュート時に拾っていただく

UC「精霊覚醒・桜」使用
ビームもボールも第六感や見切りで躱す
躱せないと思った攻撃は盾受け又はカウンターからのシールドバッシュ
飛行してるけど
足場踏んでるフリ
ウォータースライダー滑ってるフリ
エンターテイメントには乗っかっておく
因みに羽は袋に仕舞った
桜鋼扇でぶん殴りたいが没シュートされたらユキエさんと合流
水中潜航して海賊船の下を掻い潜り水中潜航+飛行で一路ゴール目指す

「これで貴方はこの海の最速ではなくなりました。心置きなく皆に撃破されて下さいね」
振り返り勝利の鎮魂歌?高らかに歌う



●海上ドライビン・ゴーはレースシナリオなのかもしれません

 御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)の印象を訊ねれば、人々の口元に浮かぶのは笑みだ。
 あのふんわりした。のんびり屋さんの。ほんわかした。

「ふひえはん」
(ユキエさん)

 ペンギンのトドくん(メス)に優しく語りかける桜花はまさに人々が思う通りの優しい表情をしている。サンマ咥えてっけど。

「ひりろほほれはらへまひょう」
(一度ここで別れましょう)

 トドくん(ペンギン:メス)は桜花のただならぬ様子にサンマをくわえたまま首をもたげる。すごい、このサンマ泳ぐのに絶対邪魔なのに傷ひとつない。友情とはかくも奇跡をなすものである。
 桜花は動物と語ることはできない。

「はふはひりろほろーほほれはひひはふ」
 (万が一のフォローをお願いします)

 あと今生サンマ咥えてる。通常の一般人との会話も成り立つかどうか怪しい。
 しかしユキエさん(※トドくん:ペンギン:メス)はもはや心友だった。フレンドオブハートだった。言葉なくとも、心が通じるのには十分であった。

「ひゃらひ、ほろっはんへふ」
  (私、思ったんです)

 …長く水に浸かり冷えたせいで桜花の顔色は良くない。肌は青白く唇もちょっと青くなりかけている。プールや海水浴でも50分〜1時間に10分の休憩が推奨されているのには理由があるのだ――水は空気よりも体温を奪い重力からもある程度解放されるがゆえに体力の消耗も激しい。桜花に至ってはマッハだいたい7で空も飛んでいる。着物のはしが若干凍っていた。
 しかし瞳の火は消えていない。サンマがちょっとカメラワーク的にすごい邪魔、いやすごい邪魔っていうか映像を台無しにしてくるんだけど、恥じらいも諦め一つなかった。なくていいんだろうか。
 
 いい子だよ、と皆が語る。例外は大家のやり手婆ぁくらいだろうか。その婆とていかな辛辣な物言いをせど、彼女を誰より理解し、知っているに違いなかった。

 桜花はこの長く激しいちょっとどころでなくかなりどうかしてる戦いを駆け抜けてきた相棒に真摯に告げる。
 ちょっと言葉が長くて字幕よろしく仮名を振ってると大変なことになってしまうのでちょっと略させていただくが心の目でふがふが振って萌えて欲しい。

 御園桜花は。

 ひたむきで、優しく、慈しみ深――

「これ…パスして抜き去るだけで、最速の誇りが消えて弱体化するのでは、と」

 ――Where is 深い 慈しみ。

 さらっと敵のメンタルをブチ折ってくるという実にアクティブな暴走族(ゾク)みたいな提案であった。

「ちょっと追い抜いてきます」
 ちょっとお豆腐買いにみたいなノリでとんでもないことを言っている。
 何てったって船上は戦場にして戦場ウォーターアスレチックである。どうしてそうなっちゃったのか全然まったく何にもわからないけどそうなのである。

 はらはらとどこからともなく桜の花びらが桜花の周りへ現れ始める。
 浮かび上がり、渦を描く。
 これまで何度も使ってきたコード、その予兆であった。

 精霊覚醒・桜。

 桜の精霊としての本領を――あの、ほんと、なんでこんなところで発揮しちゃうんですか――…とりあえずこれでサンマを咥えようともテレパシーで誰にでも言葉が伝わるので便利っちゃ便利である――…発揮する。

 闘志のままマッハ7で飛行し闘うパーラーメイドさん完成ッ!

「ダルマさん、預かっておいてください」二章ボスから刈り取った毛の入った防水袋の口を改めて確認し、しっかりとユキエさん(ペンギンのトドくん;メス)にくくりつける。インコです。
 …毛刈りといいメンタルブチ折り宣言といい今日のメイドさんは実に蛮族であった。
 ユキエさん(ペンギンのトドくん:メス)は何度も荷を見、船を見、桜花を見る。くわえたサンマがぺっちゃぺっちゃ揺れる。
「心配しないでください」
 ユキエさん(ペンギンのトドくん:メス)の動揺に感じ取られた心配が嬉しくて、少しおかしくて桜花はサンマをくわえたままクスクスと笑う―どうやってんのそれ??―レース前の関係には思いもしなかったことだ。
 鞍から立ち上がらんとしているところであり、ちょうどユキエさん(ペンギンのトドくん:メス)の咥えていたサンマの尾と、桜花のくわえていたサンマの尾が軽くぶつかり、水滴が飛ぶ。

「ユキエさんに掲げた誓いを忘れてなど居ません」

 もし没シュートされたら、ちゃんと受け止めてくださいね。
 美しく微笑み。

「いってきます」

 マッハ7ペンギンの鞍から発射ッ!!!

「来たなお魚くわえた猟兵ッ、御園桜花ッ!」
 マシン・キャプテンが真っ先にビームミラーボールの高さまで飛び上がった桜花をロックオンする。
「時速8300km/h、秒速換算――2305コンマ以下切り上げて2306m/s(秒)マッハで約7
 ――その速度や良しッ!!!!」
 マシン・キャプテンはすぐさま右手の鉤爪を掲げて自身の周囲の船半分を巨大ロボットへと変形させる。
「ならば見せみるがいいッ!貴様の戦術、状況判断――知力体力対応力以下略ッ!」
 ロボットの形は――ペンギンの天敵、あざらしッ!!!!それどうやって闘うのッ!!と思ったら腹が開いてびっしり銃口が並び――そこから徹甲弾が放たれる!!あざらしの形をとった意味がない気がするッ!!
 降り注ぐ砲弾を「愚かッ!!!」桜花は宙で体を捻ってかわし前進する。「巨大でマッハ七に追いつくとでもお思いですかッ!!」ウォータースライダーの波に乗り、ギリギリでジャンプをして粘着榴弾をかわす。
 海賊船は再び客席を備えた方に回っており、観客はこのアクションに息を飲む。
 息を飲む、のだが。

 ……。

 …あの、…お姉さん……飛んでませんでしたっけ?
 非常に言いづらいんですが、その…マッハ7の飛行能力じゃありませんでしたっけ?
 ……、…(コード文確認)あっ、ですよね。

『飛んでいる〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!』
 解説席では見えなかった胴から下がロープで固定され「捕りょ」って書かれた檻に入れられた実況が叫ぶ。どうでもいいけどその中途半端に漢字と平仮名が入り混じった名札どうにかならなかったのだろうか。再び飛行し始めた撮影用ドローンが(これはビーム他が当たらないようになっている)桜花の足元を大写しにする。

 浮いている。

 床についてるようで、足ッ、ついてないッ!!!!!

『なんということでしょうッ!!!今までのアクション全てッ!!!完全なフリ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!』

「まあ」
 桜花は口、はサンマを咥えていて押さえられないので咥えたサンマごと口元を抑える。「フリだなんて、そんな」
「エンターテイメントには乗らないと、と思いまして」
 お茶目に笑う。サンマくわえて。「団扇島のレースに参加しているんですもの」

 そうか。
 人々は思う。
 思い出す。

 そうだ。
 海賊団にあれこれされてしまったが、これはもともと我々の祭だと。

 ……。
 ………。

 えっ?
 
 我々の、祭り???

 一章の時点でそんな気ちょっとしてたけど。
 一章の時点でちょっとそんな気してたけど海賊団に強要されて開かれたんじゃなくてやっぱりもともと行事だったのである!!強要されてレースが魔改造されてただけでやっぱ行事だったのであるこのクソトンチキレース!!!どうでもいい事実がまた一つ明かされてしまったッ!!

 桜花の笑みに団扇島民の胸に誇りが蘇る――「危ないっ!!」客席の一人が立ち上がる。
 ビッグあざらし目指して走(飛ぶ)る桜花の前に鉄球が迫っているッ!!
 押し潰さんという超重量ッ!
「なんのっ」桜花はお盆を出す『えっお盆?』これは困惑の実況。

 その行為は。
 一般的に、シールドバッシュ、と呼ばれる。

 強き闘志による、盾殴り。
 普段であれば難しいことだろう。
 しかし精霊として覚醒し、意志に伴う強さが宿った身に、不可能などなく。

 粉々に砕け散る鉄球。

 ――団扇島でウェイトレスさんに失礼なことをすると、吹き飛ばされるという伝説が生まれた瞬間であった。

「隙ありッ!!!!」
 鉄球の隙間からビッグ・ロボ・あざらしの腹から放たれたビームが降り注いでくる。
 それは一見、かわせる攻撃であった。
 事実桜花は交わした。マッハだいたい7には全てが遅く――見切れるものだった。
 だが一発。
「ッ!!」体を捻り、肩に受けたッ!『ああっと負傷ッ、これは痛いッ!!』
 ビッグ・ロボ・あざらしの運転席(鼻)でマシン・キャプテンは笑う。「今速度が鈍った…最も優先すべき速度が鈍ったぞ、猟兵…?」

「その咥えたサンマなど庇うからだッ!!!!」
 マジで?????

 桜花は肩口を押さえながら唸る。「これはユキエさんとのサンマ

「傷つけさせはしません」

 いやこれは流石に敵の方が正しくないか???

 サンマより庇うべきもんがあるんじゃないか??????

「そしてこれを狙ったあなたの卑劣により――敗北が決まるのですッ!!」
 桜花は宣言しながら飛び出す床を踏む(フリをし床に合わせて飛行)。
 上昇してビッグ・ロボ・あざらしの鼻へと踊り出る。

 口にサンマ。
 左手にお盆。
 右手に、桜鋼扇を広げる。

「ごめんあそばせ」
 ビッグ・ロボ・あざらしの鼻ッ面に一撃を叩き込むッ!!!!
「ぐあッ」
 桜花の強き意志の込められた衝撃はビッグ・ロボ・あざらしのコクピットガラスを叩き割り、マシン・キャプテンまでにも届き、大きく叩き、揺らす。
「何、何のこれしき」
 体勢を立て直そうと操縦桿を握り直したマシン・キャプテンが見たものは。

 桜の花びらを纏いながら優雅に、ロボットの向こうへと飛びゆく桜花だった。

「何――貴様追加攻撃をしないだと!?」

「ええ、しません」

 桜花は堂にいった仕草で桜鋼扇で優雅に己を仰ぐ。
 ご覧くださいこの見事に勝ち誇ったサンマ咥えフェイス。

「これで貴方はこの海の最速ではなくなりました」

 ちなみにこの時撮られた画像は今年の団扇島民100人のどMが選んだ!見下されたいフェイスとして雑誌に載ってしまった。これまた本当にどうでもいいけどサンマ咥えフェイスってサンマフェイスって略せばいいのだろうか。もう団扇島民の性癖が良くわからない。まあ人の性癖なんて賛同を示しこそすれ否定や理解するもんではないのかもしれない。

「心置きなく撃破されて下さいね」

 桜花の目指すはただ一つ。
 海賊船の先で待つ、心の友――ペンギン。

「私は、ユキエさんとトップを取るのが大命題ですので」

 ユキエさん(※トドくん:メス)。

 掲げた誓い。
 トップを取る、ただそれだけを果たすべく。
 桜花は直前に交わした約束の通り、ユキエさん(ペンギンのトドくん:メス)に受け止められ乗り込み、一度、水中潜航、勢いを殺し――再び浮上、加速ッ!!

「では、ごきげんよう」
 華やかに高らかに勝利の凱違うこれ鎮魂歌だ!鎮魂歌こんな高らかでいいのこれ!?
 まいっか!!!

 鎮魂歌を響かせ、ゴールを目指すのであった!

大成功 🔵​🔵​🔵​

エリオス・ダンヴィクトル
オーケィ、冷静になろう。帰りてぇとか言ってる場合じゃない。逆に考えようぜ、『これが終われば帰れる』。

よし。俺は正気に戻った。
わざわざ相手の土俵に上がってやるこたねぇ(ああ、文字通りな)んだよ。こっちの得物は銃だっつってんだろ。何もちまちま船上で戦う必要はない。奴らの海賊船を狙えばいいんだ。機関部にでも当たりゃラッキーだがそこまで高望みはしねぇ。
マーキングした部分が増えりゃそれでいい。あとはドローンがやってくれる。

今さら「出来るか?」なんて訊かねぇぞ。『付かず離れず』だ、頼んだぜお宅(配慮の二人称)ら。

なぁ、おい。逃げきれるもんなら逃げてみろよお前。こちとら伊達に死にかけた世界から来てねぇ──!



●メンテナンスは定期的に〜苦手でもたまには自分でやろう;改造し尽くされた神輿を添えて〜

「…オーケィ、冷静になろう」
 ばちん!
 エリオス・ダンヴィクトル(陽はまた沈む・f27010)はわざといつもより派手な音を立ててリロードを終えた。
 シューガッコンという音と共にようやく元どおりの高さへと落ち着いたギルマン神輿の玉座の上。姿勢は先ほどの戦闘のまま、玉座の座席と肘掛けにそれぞれ左足と右足を乗せて立っていた。転がる薬莢の数が止まらなかったパーティの激しさを物語ってる。

「帰りてぇとか言ってる場合じゃない」
 度重なるトンチキ――目の前でアスレチック変形しやがった宇宙海賊船。
 乗ってこいとか言われているこの状況。
「いいか俺、逆だ…逆に考えようぜ」
 何度か呼吸を繰り返し、整える。
 ゆっくりと瞳を閉じる。

「『これが終われば帰れる』」 
 揺るがぬ事実が今は太陽よりも眩しい。

「これが終われば帰れる、トンチキレースとギルマン神輿と大爆走団扇島からおさらばできる…」
 団扇島とギルマン共の方は百年ぶりのギルマン神輿野郎としてエリオスのことを歴史レベルで記念記録しておさらばしても絶対忘れてくれなんかしないだが、むべなるかな、彼はそのことを知らない。縁とはかくも難しいものである。 
「…よし」
 エリオスは現在自分が置かれているトンチキ状況の濃さとかツッコミしだしたら過労死になってしまう状況への反応他あらゆるちょっとアレな全て思考から削ぎ落とす。
 額から銃身を離しまぶたを開けた。

 先ほどまでとち狂ったように八つ当たりしていたのが嘘のような冷静さで満ちていた。

「俺は正気に戻った」

 果たして本当にそうでしょうか??

 そしてたといエリオスが正気に戻っていてもエリオスの周りが正気じゃないのだがそれは。
 エリオスは玉座の手すりに乗せていた足を座席へ下ろし、玉座の背もたれに軽く座る。
「ふん」揺れにエリオスが何を決めたのかを感じたらしいギルマンのタツミ姐さんが鼻から水をしぶく。 
「覚悟ができたようだね」「まーね」相手がオネェのギルマン、オネェマンという溢れて止まらない突っ込みどころを無視し、エリオスは務めて冷静に返事をする。
 大丈夫だ、いける。
 
「じゃあ打ち上げスイッチを入れようか」
「入れんなお願いほんとマジで頼むから」

 打ち上げてどうしようというのだ。

 花火も打ち上がるんだろうことがエリオスには簡単に想像がついてしまう。
 打ち上がったカップル猟兵が2章にいたのに3章で今度はこっちが打ち上がってどうするのか。確かに戦場からログアウトしたいがそういう方法は望んでない。
 トンチキが止まらない。
 ちょっとシリアスできたと思ったらこれである。油断も隙もなかった。 
 というかスイッチはさっきのパーティせりあがりだけではなかったのか。 
「あとどんくらいあるんだよ隠し技能」「108」「煩悩かよ」欲張りさんか。「メンテを繰り返すうちに増えちゃってねェ…」
 
「なんだいなんだい…これが終わったら帰れると言ったら打ち上げるなだなんて…」
 タツミ姐さんがギルマン神輿を担いだまま呆れ返ったような水鉄砲を吐く。
「アタイらが担ぐ男は随分小さい男だったようだねえ…こんなクソ厄介な神輿ひっくり返して、久しぶりに若い男の生き血でもすすろうかねえ…」
 …神輿、やっぱ厄介なんだぁ…。
 そんな文化やめちまえと思わなくもないエリオスだがそれを言ったら確実に何かが拗れるので黙っておくことにする。

「まーまー」エリオスは笑う。
 そういう脅しなら慣れている。世紀末世界出身の自分が割と世紀末な乗り物に乗っていたとは随分奇妙なめぐりあわせだ。でもこれを運命と呼びたくない。意外と相性いいなんてそんなこと逆立ちしても認めたくない。

「誰も戦わないとは言ってない」
 薄い唇を歪めて笑い、素早く海賊船へ向けて、発砲!
 チィンッ!
 アスレチック変形といえ相手は元宇宙海賊船だ。
 エリオスの技術がいかに優れていようとも起こるのはせいぜい小さな火花くらい。
「あのねえボウヤ…」
 タツミ姐さんの声に不快もあらわなざらつきが混ざる。「そんなチンケな攻撃――尻子玉抜かれたいのかい?」それカッパじゃない?
「チンケ?」
 エリオスの笑みは揺らがない。「まー、発ならチンケだろうな」

 エリオスの周りに――ドローンが現れる。

「じゃあそれが十倍、百倍と重なったら、どうだ?」

 種類は2種。

 監視・観察用のCamera/そして攻撃用のShooting。
 ドローンたちは飛び上がり、今先ほどエリオスが打ち込んだ弾、埋め込まれた発信器を追って攻撃を開始する。操作はいらない。フルオートだ。
 そしてフルオートであるが故に一切の加減がない。

 ユーベルコード、連鎖継続砲火。

 付き纏う死神にも似た破壊の影が、海賊船へとまとわりつく。

 機関部とはいかないだろう。
 しかし変形するというのなら関節が存在するはずだ。その付近を狙えば良い。幸い相手はこれ以上なく巨大だ。他の猟兵で手一杯でこまいドローンなど相手にしていられないことだろう。
 足をすくってひっくり返してやる。

 船上の誰かに反応して変形を始めた部分目掛けて二発、三発!
「わざわざ相手の土俵に上がってやるこたねぇ」
 ああ、今回は“文字通り”。
 だってなんか船のあちこちから七色のスパークがちらついていた。ぶっちゃけ嫌な予感しかない。さっきビッグあざらしも見えた。
 きっとこれこのまま乗り込んだら絶対銃身は濡れてたしナイスセクシーとか言われてたし七色回転なんか指定した日にはギルマンの女体盛りとか披露されてた流れだ。絶対のぼりたくない。悲しいぐらいにトンチキに詳しくなってしまった。これ以上詳しくなって巻き込まれてたまるか。ところで女体盛りって料理カウントでいいの?

「こっちの得物は銃だっつってんだろ?」 エリオスは玉座の上で不遜にふんぞりかえる。

「何もちまちま船上で戦う必要はない」
 笑いながら再びリロード。「奴らの海賊船を狙えばいいんだ」ついでに二章の止まらないパーティクソデータとともに海に沈んでくれ。
「今さら「出来るか?」なんて訊かねぇぞ」
 ギルマン神輿の担ぎ手どもへ、まったくもって涼しげで故にどこまでも敵への底意地の悪さが透ける笑みを披露する。

 カメラが捉え次から次へと銃弾が浴びせられる。
 船への攻撃を察知して、スペースシップワールド製と思しきサイボーグやウォーマシンの群れが現れるがエリオスの余裕は崩れない。
 トンチキ度はともかくギルマンどもの技術はこれまでの道のりではっきりと理解している。
「『付かず離れず』だ、頼んだぜお」
 お前ら、と言おうとして
「――お宅ら」
 …それはいけないと配慮を利かせた。いやそんなことを気にする乙魚(おとめ)どもではないと思うが念のため。尻子玉に臆したわけじゃなくて。決して。
 進行はギルマンどもに、攻撃はドローンに任せ。
 エリオスはただ玉座にふさわしいものであるかのように――余裕をもって攻撃していればいい。
「任せなァ!!!」タツミ姐さんが世にも恐ろしいシャウトを挙げる。「幽霊にはこいつだよッ!!!!」

 カチッ。

「なんでそういう余計なことすんだよ!!!!!!!!!!!!!!」

 ……。

 七色レーザービーム。

 玉座の台座正面から前方に向かって。

 もちろん本当のビームではない。七色だけど回転もしていない。目眩しのライトである。ついでにミュージックも爆音で始まってしまう。水しぶき巻き上げてフォッグとか焚かれてしまう。このネタ大好きか。
「悪霊退散ッ悪霊退散ッ!!!!」その合いの手もうちょいどうにかならん?
「安心しな」「何に????」
 安心しなって毎章一回ずつ言われてるけど全然ダメなんだが??

「アンタのドローンだっていい輝きしてるよ」

「は?」

 出てる。
 いつのまにかCameraから七色レーザービームライト出てる。

「聞いてない」
 思わず本日二度目の天を仰ぐ。
 これを整備した友人の顔を浮かべる。サムズアップを目撃。親指たてんな。なんでそんなもん盛った。整備なんて任せっきりにした方がいいだろ。整備代踏み倒したりしてないだろ。
 なんで黙ってそんな機能つけんだお前ッッッ!!!!!

「そういう機能聞いてねぇーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!」

 友人への恨みを叫び。

「もういい」

 海賊船を見るエリオスの眼は透き通りそうなほどに冷え切っていた。
 そのまま連射して海賊船に新たなマーキングを打ち込む。
 従うドローンが海賊船に次々と穴を開けていく。
「…逃げられると思うなよ」
 ウォータースモッグに硝煙が入り混じる。
「…こんなトンチキに俺が屈すると思うな…」
 ヤケクソとは比例がきかぬ殺意に火が着いていた。
 ギルマン神輿と爆音ミュージックを意識の彼方に追いやりながらエリオスは海賊船を睨み付けて発砲を続ける。
「なぁ、おい」
 速度を上げた海賊船をつかず離れず、ギルマン神輿が追い立てる。
 エリオスは攻撃を追加、ドローンをさらに投入。Shootingがラメとか巻き出した気がするけどちゃんと発砲しているのでこれも無視。

 帰る。

 『これが終わったら帰れる』じゃない。

 もう帰る。

「それで逃げてるつもりかよ」

 絶対終わらせて帰る。

「逃げきれるもんなら逃げてみろよお前」

 一刻も早く終わらせて帰る。

 ど、どん!
 ドローンの攻撃に耐えきれず変形していた側面が火を噴き、もがれ落ちる。
 エリオスはこれにかけらの喜色も見せず「次は右舷だ」冷徹にギルマンどもへ指示を飛ばす。

 丁寧に、着実に。

「こちとら伊達に死にかけた世界から来てねぇ──!」

 陽すら沈める攻撃が、船を滅びへと追い立てていくのであった!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルベル・ノウフィル
あ、この局面は!
最近覚えたばかりのUC:隣のべとべとさんの出番ではないでしょうか?

早業による念動力でべとべとさんのメダルを敵に貼りまくるわけです、全力魔法ですね
メダルを貼り付けた後は、王弟ペンギン1号の後ろへどうぞ
王弟ペンギン1号には海にどばーんってして頂いて、海水浴タイムを満喫していただきましょう

ちなみにビームは夕闇というマントをひらひらっとさせてオーラ防御です

いやー、このマント、光に強いんですね
相性が良い気がしますね、解説のいのとさんはどう思われますか?

最後はですね
やはり別れのシーンですね
ここまで苦難を共にした王弟ペンギン1号
彼には感謝の言葉を告げますね
いやー、友情ですね

現場からは以上です



●「それでは現場のルベルさ〜ん!」

 崩れゆくビッグ・ロボ・あざらし。

『くっ…』実況が歯がみする。
『世紀に一度のアスレチック大決戦だというのにこの体たらく…』
 団扇島民代表実況・オーヒラこと団扇島レースだいすきヤングマンクラブ会長(そう、例に漏れずオーヒラという名でありながらヒラ会員ではない)は捕虜である。ちょっとあからさまな牢に入れられ位置はマシン・キャプテンの後ろ。せっかく今際の際の際のキワッキワまで実況しようと思って大事にマイク隠し持ってきたのにビッグロボあざらしとかやられると何も見えない。
『ッ現場はッ!!現場はどうなっているのでしょうか…!』
 もはや実況しながら死にたいという希望すら叶わないのか。諦めと絶望が実況を襲う。
 と。

「は〜〜いこちら現場です!!」
 声が応えた。

『はい!?』
 
「現場のルベルで〜〜〜〜す!!!!」

 無事全裸から着衣そして水着姿へ復帰したルベル・ノウフィル(星守の杖・f05873)がいつものBE★少年の姿で撮影ドローンに向かって全力スマイルとスウィングハンドで答えていた。ナイス水着!!鎖骨、鎖骨ッ!SA⭐️K O⭐️ TU⭐️!!!MO・E・SO・DE!フゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!

『げ、現場??』
 思わぬアクシデントに応え続けた実況だが実況の座ごと取られるというのは初経験だった。困惑。
「ご機嫌よう〜〜団扇島の皆様におかれましては夏真っ盛りをいかがお過ごしですか〜〜?」
 ルベルは困惑をまっっっったく鼻にもかけず、ウォータースライドする王弟ペンギン一号の上で全レポーターのお姉さんが嫉妬しそうなサンシャイン・スマイルを明るく振りまく。

「本日はですね先行して叩き折りを受けたマシン・キャプテンの誇りをさらに叩き折ろうと思うのでございます!!」

 美少年の口から鬼の所行が出てきてる。

「この局面、覚えたばかりのユーベルコード:隣のべとべとさんの出番と見ました」
 ウォータースライド回転円盤の上で逆走することで一定の位置を保つ王弟ペンギンの上、ルベルはカメラの向こう観客席にいるだろう一億人のルベルファンに向かって投げキッスを飛ばす。
 
『どどどどどういうことでしょうか私実況、現場のカメラなど依頼しておりません!?何故どうしてホワイここでこんな思わぬ助っ人が入るのでしょうかーーーーーーッ!!』
 動揺の実況にルベルは瞳を閉じて不敵に笑う。

「無論、タイトルで頼まれたからに決まっております」

 すげえメタぶっ込んできた。

『タイトルッ!?』
 団扇島民代表実況・団扇島レースだいすきヤングマンクラブ会長オーヒラといえどセーフかアウトか問われるとギリッギリアウトみのあるアウトよりのアウトっぽいセーフと言えるかは人それぞれ広い心で許していただけたら嬉しいこのネタを理解できるわけもない。
「ご安心くださいこのルベル、おつとめはきちんと果たす所存!安心して救出までお待ち下さい!
 ――多分どなたかのリプレイでちゃんと救出されますので!」
『リプレイ!?!?どういう!?!?どういうことなんですか!?!?』
 よく見るとルベルが持っている間に合わせのマイクはきゅうりである。
 カメラドローンさんについていた音声用マイクをもぎ取ってきゅうりを土台兼電池代わりに使用しているのだ。どうやって?
「ではしばしカメラと音声を独占させていただきます。あでゅー!」
『ちょっ、どうい』
 ブツッ。

「誇りなど傷ついている筈もなし…」
 
 ビッグ・ロボ・あざらしの変形が終わり再びアスレチック海賊船の中央にマシン・キャプテンがアスレチックへ舞い戻る。
「いえいえいいんですよもっと悔しがっていいんですよぜひ見せていただけると僕としましても視聴率が稼げるかなーと思うのでございます」
「団扇島の団扇レースの視聴率はいつでも100パーセントだ」
 団扇レース…。
 もうちょっとなんか…もうちょいまともな…なんか名前…なかったんですか…?
 マシン・キャプテンが握る柄にビームカトラスが現れる。
 マシン・キャプテンは足ジェットで若干動いているためウォータースライド回転円盤に巻き込まれることはないッ!ずるいッ!
「それはそれは」
 ルベルはにっこりと笑いながら念動力でメダルを浮かべる。
 
「マシン・キャプテンよさらばを皆さまが見逃さずに済むと言うことでございますね――何よりです」
 情景こそギャグなれど。
 早業による全力魔法――メダルは金の煌く線を引きマシン・キャプテンへと打ち込まれる。
 そしてこれに対抗するかのようにマシン・キャプテンの胸、ジョリー・ロジャーが輝き

「笑止千万ッ」
 シャベッタッ!!!!!!!

 オアアアアアシャベッタジョリーロジャーシャベッタナンデッ!!!?

 次から次へと叩き込まれようとするメダルをビームカトラスで切り捨てながらマシン・キャプテンがルベルの方へと向かってくるッ!!
 この光景にさすがのルベルにも動揺が走る。「なんと」しかし放ち続ける。
「こちらが2なら向こうも2、と言うことでございますね」
 おそらくマシンキャプテンを補佐するAI――「ガンバレガンバレファイトッ!!」――違うね。めっちゃ応援歌歌ってんね。そういうのじゃないね。
「いやーこれはあれです」ルベルは全力魔法を維持しつつも少しずつ後退する。逃げることはしない。近づかれるというのは彼にとっても非常に都合が良かった。ひらり、と取り出したるは一枚のマント。「夕闇の出番でございますね」
「いやー、このマント、光に強いんですね」ルベルとて緊急に承ったとはいえ現在実況。カメラさんへの使用アイテムのアピールは忘れない。
 団扇島サンシャインを受けてなおくらく沈む、闇。「相性が良い気がしますね」

「解説のいのとさんはどう思われますか?」

  !?

「いのとさん解説!解説!!!」
 えっあっハイ「お願いしますッ!」こちら長くお待たせしました解説のいのとです正直まさかプレイングで解説によってこちらにいのと召喚されるとは全く思っていませんでしたがとりあえずこのネタは大丈夫なんでしょうか本当に大丈夫なんでしょうかまな板の上の解体ショーのマグロの気分です非常に不安なんですけれどもまず言わなくてはならないのはナイス足首ナイス水着ナイス芝犬グッジョブありがとうナイスサマールベルさん人狼だって時々主張しないとマジでわんこになりそうですがルベルさん大丈夫ですか解説は非常に心配ですがそれはさておきマント夕闇の使用が有効か否かですねこれでも実況の端くれとして申し上げさせていただきますとこちら使用されるのはオーラー防御ですので――

「遅いッ」「やーいやーいバーカバーカ!!!」
 ルベルの眼前に躍り出たマシン・キャプテン。ジョリーロジャーの罵倒付きッ!
 くっここまでのルベルさんの速度には一切非がないんですよいまこの一瞬の遅れはいのとの責任でってところでどうしていのと召喚しようと思ったんですか解説は最後まで聞くのが解説と実況への礼儀だと思いませんアーーーーーーーーーーーーッ!!!かわせないッ!!!ルベルさんがかわせず
 
 ビーム・カトラスの一撃を夕闇が受け止める。
 剣圧に踊る、水しぶき。

「なるほどビームにオーラ防御は有効…ただし海上ドライビン・ゴーに限る。他シナリオの場合は随時マスターの判定であることご了承ください、ということでございますね」
 ルベルはマントの向こうで不敵に笑う。

「つ・か・ま・え・た――で、ございます」
 
 ビーム・カトラスを受け止められたことによる一瞬の隙をつき。
 ルベルの魔法がマシン・キャプテンへ叩き込まれる。
 ジョリー・ロジャーの輝きは消え、踊った水しぶきが晴れる。
「何…?」
 マシン・キャプテンにダメージはない。
「ふふ、かかりましたね…!」
 ルベルは笑いながら、王弟ペンギン一号にもメダルを貼り付ける。
 このメダルは人の後ろをついて行きたくなるようにする、というものだ。
 本来ならばここで王弟ペンギン1号に海にどばーんしていただいて海水浴と共にマシン・キャプテンを押し流す予定だった。
 しかしルベルは気付いてしまった。

 コード文にはこうある。

“ 妖怪【べとべとさん】の描かれたメダルを対象に貼り付けている間、対象に【人の後ろを歩きたくなる】効果を与え続ける。”

 人。

 人類。

 ヒューマン。

 そう。


 ペンギン、人じゃない。

 
 ルベルは人狼だ。人か人じゃないかと言われれば、人である。

「ほーーーーーほほほほ、捕まえてごらんなさ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜いでございます!!」 

「クソがァあああああああああああああアアアアアアア!!!!!!!!」

 かくして終わらない海上鬼ごっこがここに成立したッ!!!
 やだあ…水しぶきのプリズムが、綺麗…。

『なんでッ!!!坊ちゃんなんでッ!!!!』
 そして困惑の王弟ペンギンッ!!!
 列的には先頭から順に、ルベル・王弟ペンギン一号・マシンキャプテンである。小中大でかわいいね。

「それは無論、王弟ペンギン一号にこれから僕の代わりをしていただくからでございます」
 トランポリンでマシン・キャプテンを強制同行させつつ楽しく跳ねながらルベルは次の策に取り掛かっていた。
『坊ちゃん俺は人じゃねえッ』「お前ええええええええええええええ」
「それはもちろん僕も十分に把握しております」「このメダルを外せええええええ」
 ルベルはとっておきのアイテムを出す。

 夏。

 夏といえばフェス、フェスといえばTシャツ。

「言いましたでしょう――夏のいっつもTシャツ革命」

 ルベルの片手に握られているのは、どこにでもありそうな白いTシャツに見える。
『ま、まさか』王弟ペンギンが意図を察する。
 そう。一見どこにでもありそうなTシャツの中央には、筆で一文字。
 
 人。
 
「これが海のIT革命でございますーーーーーーーーーーーッ!!!!」
 ズボンッ!!!!
 王弟ペンギン1号に被せたのはTシャツッ!!!!!

 かくして王弟ペンギン1号のメダルは取れ、べとべとさんメダルの『人』定義の対象に王弟ペンギンも含まれることに…ええ、なんでえ…なんでか!!なんでかなってしまうのである!!!!

「王弟ペンギン、後は任せましたよ…」
 ルベルはこの海域を戦ってきたペンギンへの別れの切なさに若干瞳を曇らせつつも相棒へと最後の依頼を行う。「貴様アアアどう考えてもどう分析してもTシャツをかぶせたけでペンギンが人になれるはずもなかろうがァアアアアア!!!」

『坊ちゃん』
 王弟ペンギン一号もまた理解していた。己がすべきことを。「おのえれえええ貴様はどう分析してもは鳥綱ペンギン目ペンギン科トンチキトンデモトベソウデトベナインダヨネオレペンギン属オウテイペンギンであろうがあああああなぜだアアア」
 これではマシン・キャプテンを撃退することはできないだろう。
 しかし致命的なダメージを与えるその一撃を、最後の行動を、相棒に託すその意味を。
 
 ルベルは再びマイク(材料・きゅうり)を取る。

 そう、ルベルには果たすべき実況という役割があった。

「皆さま、ご覧いただけておりますでしょうか」
 しっかりとカメラ目線を確保しつつトランポリンで跳ね続ける王弟ペンギン一号とマシン・キャプテンをきちんと映す。「最後はですね、やはり別れのシーンです」

「ここまで苦難を共にした王弟ペンギン一号」
 念動力を操り、しっかりと王弟ペンギン一号を固定する。『…坊ちゃん?』
「本当にありがとう」
 全力をそそぎ、集中する。「心からの感謝を送ります」
 
 よーく狙う。

「どうかお元気で」

 水平線の彼方を。『坊ちゃん!?坊ちゃん!!!?』

「頑張って帰ってきてくださいませ――僕は王弟ペンギン一号を、いつまでだって応援しております」

 発射。

 べとべとさんの効果で、マシン・キャプテンごと。

「…いやー、友情ですね」
 水平線の星が輝いたことを見送り、ルベルはそっと涙を拭った。
 そしてこのレースにおいて彼一番の輝かしい笑顔をカメラに向けた。

「現場からは以上です」

成功 🔵​🔵​🔴​

エスタシュ・ロックドア
お別れだえびせん丸
こっから先は船上戦
いくらその巨体でも甲板に出りゃまな板の
なに飛んでんねん
いつメガリス食いやがった

さっさと終わらしてぇから全力
真の姿解放
【空中浮遊】【空中戦】でこの胡乱とトンチキをもたらした諸悪の根源に突っ込むぜ
シンディーちゃんはどうしたって?
これ(足の下の輪っか)
ちょっと概念的サムシングになってもらった
気にするな、害はねぇ
ビームは『鋭晶黒羽』発動で阻害
フリントを【怪力】で振るって【なぎ払い】【吹き飛ばし】
敵が変換したロボもろともぶっ飛ばす
えびせん丸!
パス!
……そういえば、アレか
シャチって、海のギャングか
いま理解したわ
ああ、ご褒美な
腹いっぱいニシン食わせてやるからな



●昆布ストラップ

「お別れだ、えびせん丸」
 エスタシュ・ロックドア(碧眼の大鴉・f01818)は乱暴に濡れた前髪をかき上げた。
 エスタシュの豪腕投擲により時速Xで海に落下して移動もとい沈没する定点Pと化したフリントを拾いに移動する定点Sしてたら相当遅れてしまった。――今、ようやく海賊船の船尾が見えた!
 そしてえびせん丸から飛んできた昆布を避ける。
「いやいい」右「だからいい」左「昆布はいらねえから!」正面横なぎを身をかがめ、計3本の昆布をかわす!
 お別れ発言の抗議ではない。

「落とさねえからもう」

 えびせん丸からエスタシュへのフリントを落とさないようストラップにどうぞという主張である。

 こんぶを。

 昆布を、ストラップに。

 ちなみに昆布は濡れた状態であれば長さはおよそ0.5〜1.5m、団扇島仕様なのでまあ大体2.5メートル、幅は基本5〜15cm:団扇島仕様で10〜20cmなのでならないかと言えば濡れた状態ならならないでもないと言えなくもない。昆布じゃストラップにならねえと見せてやろうと千切ろうとしたらわりと大変だった。どうなっとんねん団扇島。
 ひと睨みするがえびせん丸は全く反省した様子もなく、昆布をくわえて見せてくる。曰くだってエスタさんうっかりさんだから…。「誰がうっかりさんだ」あと何そのさりげない愛称呼び。
 エスタシュはスピードを緩めず意識の切り替えも兼ねて息を細く長く吐く。
「いいか、こっから先は船上戦だ」
 えびせん丸とはちょっと予想と違う形とはいえ助けられ、さらには同じフリントをわりとガチで追っかけた仲だ。もう第二章始めの頃のような追っかけてきた健気なファンとライダーの関係ではない。
 分かっている。
 頼りになるかならないかといえば海中のフリントを尾鰭で叩きあげてきたあたりからしても分かっている。団扇島ほんとわりとヤバくない?いろんなトンチキを横目に見ているが横目に見ているのとガチで体験するのはまた別の話である。
 エスタシュはあえてえびせん丸を見ない。
 実力はわかっている。
「いくらその巨体でも甲板に出りゃまな板の――」
 だからこそ決して超えられないのは海と陸の壁があることをしっかりと教えてやらねばならない。
 だからこその離別のこ――

 \わあいおそらだ〜/

「なに飛んでんねん」

 ――シャチ飛んどるがね。

 \エスタさ〜〜ん敵地すごいですよお〜/

「なんで?」
 シャチ!!!!!!飛んどるがねッ!!!!!

 見ればいつのまにやらえびせん丸の額にきらりと光る結晶。「おま」嬉しそうにエスタシュの上に戻ってきてくるんくるんと空中を旋回する10メートルのシャチ。
「いつメガリス食いやがった…」
 唖然の一言がポロリしてしまう。
 一章でむにむにした時はそんなものなかった。二章でもなかった。あるとすれば二章から三章開始までのわずかな時間だがフリントを追っかけている間にそんな暇はなかったしそのあとも大体隣を泳いで――

\はい昆布/

 あっ。

「昆布」

 昆布。
 こんぶ。英語だとケルプ。
 昆布の根本か葉に刺さってたか。おそらくはそんなところだ。そういうところだ。なんでそないなところにあるねん。
\使い方わからないんですか?こんぶのこっちをフリントのこっちにむすんで〜、こっちをエスタさんの手首に〜/
 果てしないボケの向こうから現実的なボケが襲いかかってくる。
「いらねえ巻かねえつけたりしねえしフリント絶対無くさねえッ!」
 もう帰ろう。早く帰ろう。すぐ帰ろう。ちゃっちゃと帰ろう。
 エスタシュは心の底から決意する。
 こんなことしてたらライダーズモーテルにシャチコーナーができてしまう。ライダーはライダーでもシャチライダーってなんやねん。誰が面倒見ると思とんねん。俺だ。もはやエスタシュの語尾もやばい。何飛んどんねんとかいうつもりなかったのに。溢れるボケにより自動的にボケさせられた2章もヤバかったがこのまま謎の関西弁マスターも非常にヤバイ。
 若干の不吉な予感と共に加速――と、ハンドルを握り直したその時

「オラァアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
 エスタシュの後ろから更なる水しぶきが立ち上がった。

「速さとは正義ッ!速さとは真理ッ!!これしき、これしきのことでェエエエエ!!!!!!」

 ねえ、見て。
 シナリオボスが隣をクロールで泳いでる――…。

「なんでやねん」
 
 ゴシュゥッ!!!!!
 シナリオボスことマシン・キャプテンはエスタシュに気づいていなかったらしい。ツッコミと同時に水柱が立ち昇る。幸か不幸かはわからないが間違いなくボケだ。足裏ジェットで直立飛行だった。「逃すかッ」船上にもどらんとする背を追う。あれを戻らせるとなんというか海上アスレチックゴーゴーが待っている。誰かのノリと勢いと性癖と胡乱で出来た混沌が。
 
 や っ て ら れ る か。 
 
 このシナリオで:side・T(ツッコミ)の要素を少なからず持つ皆が思った誓いがエスタシュの蒼い瞳にみなぎる。股間を犠牲にした男に応えたというにはあまりにもトンチキだった。

「さっさと終わらしてぇから全力だ」
 ゆら、とエスタシュと愛機に海と空とも異なる青が吹き上がり、飲み込む。
 ブルー・フレア・ドレスの発火に似ているが、それより遥かに澄んだ青――炎は海上だというのに水の一滴も蒸発はおろか巻きあげもしない。現世の炎では、ないかのように。

 そしてエスタシュ・ロックドアが真の姿にて顕るる。

 難路語る黒の遍路笠。黒一重は武のたたずまい。笠より突き出した黒い角が、金砕棒へと姿を変えた燧石が、人ならぬ腕が、足が、そして何より、如何なる鳥にも真似できぬ、青潜ませた黒の大翼が彼が何かを如実に語る。
 そうとも青の炎は現世のものならぬ、地獄の色。

 此処にありしは大鴉。
 地獄の獄卒なり。 

――…イラスト、おめでとうございます。もしかしてアイコン、このシナリオが初お目見えじゃないでしょうか。よかったんですかここで――

\\エスタシュさあん!//
「おう」
 いかんな獄卒と言え笠の下、えびせん丸に応えた男はいつもと変わらぬ表情をしている。「ブッ込んで落とすぞ」\\バイクは!?//
 すごい、シンディーちゃんがスズキ亜目ハダカスズキ科ゼンラスズキマッパーと言うか言われる前にバイクだと指摘されたのはこのシナリオで今が初めてである。エスタシュはしみじみと思い入ってしまう。団扇島民はシャチに叱られて欲しい。「おうこの足元の輪っかだ」りん、と輪が鳴らす。
「概念的サムシングってやつだ」
 マシン・キャプテンを追って飛翔しながら教えてやる。「気にすんな、害はねぇ」
\\落とさない!?//
「落とさねーわ」
 えびせん丸はあとでムニムニつねることにして。

 ざ、とエスタシュは翼を波立たせる。
 羽の一枚一枚が逆立ち、翼より離れる。
 ユーベルコード:鋭晶黒羽。
 目標を過たず切り捨てる羽根。

「おら諸悪の根源――覚悟しやがれッ!」
 エスタシュはマシン・キャプテンのガラ空きの背中目掛けて空中戦を挑む!「てめえがこんなことしなけりゃあいつの股間もシンディちゃんのあらぬ疑いもなかった…なんなんだスズキ亜目ハダカスズキ科ゼンラスズキマッパーはッ」
 しかし――背からブースト・キャノンが現れエスタシュの一振りを掻い潜る。
 チ、と小さな舌打ちがエスタシュの口から漏れた。キャプテンを語られただけある――速い!
「ぬかせ鈍足。…ちなみにスズキ亜目ハダカスズキ科ゼンラスズキマッパーが知りたければ団扇島人気飲食店トップ2の『ゆっちゃんイカ』に行くがいい。スズキ亜目ハダカスズキ科ゼンラスズキマッパーはその体質から捕漁・調理とも非常に難しいがその分絶妙な珍味である。ムニエルがうまいとのことだ」「まじでなんなんだよスズキ亜目ハダカスズキ科ゼンラスズキマッパーは」あとその店名なんなん?
 空中で身をひねりエスタシュの方を向きながらもマシン・キャプテンはせせら笑う。
「追われながら攻撃されるなど最速たる我らにとって慣れたものよ、その程度の攻撃、気づかないでか」
 言葉の間から差し込んでくるミラーボールレーザービーム。
 エスタシュもまたこれらを躱しつつ、羽根をミラーボールへ差し向け、マストごと切り落とす。
「いやてめえさっき俺に気づかねえで隣でクロールしてたじゃねえか」「黙れ昆布」
 空中浮遊するマシン・キャプテンは鉤爪を掲げる。
 船は再び変形を始める。

「我が船は敵対存在にとって最も最適化された巨大ロボットを創造する」
 堂々とマシン・キャプテンは宣言する…のだがエスタシュとしては船上展開されているトンチキアスレチックが見えてしまって全く耳に入ってこない。何あれローションの長い橋?ねえウォーターアスレチックの定義がどうにかなってない?

「相手が何者であるのかを純粋に語れば語るほど――我々にとって効果が高い。
 安易に真の姿を晒したこと、後悔するがいい」

 かくして作られるは、獄卒にとって最も戦ってはならぬ相手を象る。

 ビッグロボ上司。

 改め。
 
 巨大閻魔ロボ。

「……んな」
 エスタシュはポカンと口を開けた。
 おそらく滅多に見ることのできない顔――心配したえびせん丸がエスタシュの元へと戻ってくる。

「恐怖するが」

「おっしゃ」
 エスタシュがこの上なく獰猛に嗤った。

「褒めてやるよポンコツロボット。ああ、的確だ最適だ」
 再び鋭晶の羽根を浮かべ、それはそれはの喜色満面。「いやあ俺はたしかに獄卒だ、勤めてるしそいつとやり合えと言われたらまあ困る」大きくフリントを振り回し肩の温めも至極万全。「逃げた負い目みたいなのもまあ、ないわけでもねぇ」
 エスタシュの気合に合わせえびせん丸が嬉しそうに宙で跳ねる。
「でもまあ、俺としては受け入れているとは言え、食らってる裁定に不満と怒りと納得いかねえ気持ちがないわけじゃねぇわけだ」
 吊り上げて笑った唇の奥、犬歯がギラリとひかる。
「いやあ獄卒が前にて閻魔を語るとはこいつは不敬不敬」
 軽い口調で飄々語り。「こいつは壊さなけりゃなんねぇよな」

「――敵が変身してんだからしょうがねぇよな?」

 そして暴力が躍り狂う。
 吹き荒れるビームと砲撃を黒羽がさばき、切り裂き、混ぜ返す。
 伸びてくるアームや振り下ろされた鉄塊は怪力にて振るうフリントでもって打ち砕く。
 巨体はたしかに一撃ずつが重く、強力だ。
 しかしその分、命中し易いという利点もある――横一閃、ぶん殴る。
 いつもどころかいつも以上ではきかない驚異のフルパワーで吹き飛ばす!
「えびせん丸!」
 この上ないストレスフリーの笑顔でエスタシュはロボットの腕を吹き飛ばしてえびせん丸へと放る。
 不敬か不敬でないかと言われれば間違いなく不敬なのだがだってほら敵が化けてますしお寿司。「パス!」
 …こんなにスッキリした笑顔のエスタシュもまた、なかなかレアかもしれない。
 ごぎゃ!というおおよそ工事現場でもなかなか聞くことのないような音が響く。
「……あー」
 エスタシュは笠の端を軽く持ち上げ、えびせん丸を眺める。「そう言えば、アレか」
「シャチって、海のギャングか」
 楽しそうに鉄腕をむさぼり、吐き捨てている。
 シャチ――英語ではオルカ、ないしはキラー・ホエール…鯨殺しとすら呼ばれている。
「今理解したわ」
 二本目の腕を槌ごと吹き飛ばして次のおもちゃを投げてやれば、

 口からビーム出た。

 見なかったことにした。

 エスタシュさんご褒美ご褒美!と尾っぽを楽しそうに揺らしているところだけ見たことにした。「ああ、ご褒美な」頷く。「腹いっぱいニシン食わせてやるからな」

 そしてエスタシュは両腕をもがれ胸をへこませた巨大閻魔像へと向き合う。「つーわけだ」
 頭部…コクピットを残しているのは間違いなくわざとである。

「相手が悪かったな」

 何もかもを込めた一撃は、ロボットを意味なきガラクタへと還したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

宇宙空間対応型・普通乗用車
確かに速さには命を掛けるだけの価値がある…
だがなぁ、命は速さだけで完結するもんじゃぁ断じてねぇ!
徐行運転でゆっくり街を流し、道端に停止して景観を楽しむ!
そうした遅さも含めて命ってのはできてるんだ!
効率や速さが全てだってなら、誰も▲なんて書くわけねぇだろうが!
見ろこの▲の数を!てめぇもこうなることぐらいわかってたんだろ!?

…ん?オレは書かねぇのかって?
敵が強くなるとわかってて書くわけねぇだろ頭沸いてんのか。
別にオレが最速最短を目指さないとは言ってねぇしなぁ!
最先端のAIで最短ルートを解析してトップを独走してやるぜぇ!
スピードが足りない?
だったら【瞬速展開カタパルト】で更に加速だヒャッホー!



●SPEED OF

 ガォンッ!!!!
 アスレチックの後ろ半分が吹き飛んだ。
 ここまでの4リプレイでアスレチックが登場したのは前半2プレイでしかない状態だというのにアスレチックの前半が吹き飛んだ。この後どうしよう。まあなんとかなる。
 しかもアスレチックはただ吹き飛んだのではない。
 船の下から、突き上げるように吹き飛んだ。

「てめぇの言うことには一理あるぜ…」
 煙の中から、おそらくこのレースで何よりも忘れられない姿が現れる。

 滑らかな流線を持つボディ、発魚機を叩き壊し、数多くのサイボーグを轢きまくり、オウ…インコを轢き、さらにこの海賊船の船尾にカチコミをかけたと言うのに汚れが目立たない白の輝きは、彼の誇りを思わせる。

 宇宙空間対応型・普通乗用車(スペースセダン・f27614)。

 ここまでキレ散らかしながら走り海賊船の船尾の解説席に特攻(ブッコみ)かました後、船内を荒らしに荒らして轢きまくりながら暴走族(ゾク)並みの爆走をキめていた彼が、とうとう船上へとたどり着いたのだった。

「宇宙空間対応型・普通乗用車か…」
 マシン・キャプテンは普通乗用車の登場にいささかも驚いた様子はなかった。
 むしろ待っていた節すらある。
 高エネルギー体の移動、そして破壊活動はキャプテンのセンサーにありありと残っていた。
 何より実況としてしっかりとその存在を認識していた。己の検索エンジンに該当しない存在であることも含めて。
 マシン・キャプテンよりも新世代、実在する(マジモン)の高次元存在(ヤバモン)である宇宙空間対応型・普通乗用車のことを、意識しないわけがなかった。
 
「確かに速さには命を掛けるだけの価値がある…」

 低くスーパーチャージャーに排気を溜めながら、普通乗用車はマシン・キャプテンの言葉をしっかりと受け入れる。真のハードボイルド・スペースセダンとは理解できるものはできるといわねばならない。
 それに、普通乗用車とて経験がないわけではないのだ。
 あと1分、あと1秒、あとコンマ000001以下――速さへの渇望。
 間に合えば。
「だが、なぁ」
 ヘッドライトを入れ普通乗用車はマシン・キャプテンをこうこうと照らす。

「命は速さだけで完結するもんじゃぁ断じてねぇ!」

 セキリュティ・アラームを盛大に鳴らして警告する。

「見てみろ馬鹿サーキットを」

 ――ウマシカサーキット。スペースシップ・ワールドのどこかにサーキット搭載巨大宇宙船である。その歴史は母星時代からとも言われれかなり古く規模も縮小されているが以前どこかの誰かの口に昇る船である。バカサーキットではない。念のため――

「レース兼家族向け遊戯施設も搭載したの旧型施設型宇宙船のことか」
「知っててくれて嬉しいぜ」普通乗用車はマフラーから静かに排気を行う。「知ってんならわかるよな?」いん、と音を立てフロントボイラー脇につけられた投影装置から馬鹿サーキットの地図を展開する。
「…我々が知るものとそう変わらんな」マシン・キャプテンは照合結果を紹介する。
「だったらなおさら話が速ぇ」
 マップの一部を拡大する。家族向け遊戯施設の改装履歴を提示する。
「サーキット自体は滅多に変わらねえ。変わるのはこっちばっかりだ、わかるか、この意味が?」
「目新しさで人間を引きつけようと言う作戦だ、愚かしい」
「いいや、違うぜ」
 普通乗用車は前輪を回転させ、ほんの少しだけ前に出る。「それだけ必要なんだ。人間にとって。その部分の技術が」

「速さにこだわることは、むしろ手遅れだ」
 普通乗用車がこれまで人類と共に走ってきて得た、その答えを告げる。
 おそらくわかり合う事はできない。この後殺し合いへと発展するのだろう。
 しかし、それでも普通乗用車はマシン・キャプテンへと語る。

「時に徐行運転でゆっくり街を流し」

 語らねばならなかった。未来にいるものとして。
 決定的に過ぎ去った過去のもの、オブリビオンへと。

「時に道端に停止して景観を楽しむ!」

 ただ最速を求めると言うのなら、

「そうした遅さも含めて命ってのはできてるんだ!」

 宇宙空間対応型・普通乗用車など存在していなかったに違いなかったと言う、その真実を。

 ……。
 マシン・キャプテンは応えない。
「…だからてめぇは時代遅れなんだよ、マシン・キャプテン」
 普通乗用車の想いと共にエンジン内、トルクコンバーターのタービンランナーが回り始める。
 
「効率や速さが全てなら誰も▲なんて書くわけねぇだろうが!」

 こ こ で 突 然 の メ タ 。

「…▲?」
 マシン・キャプテンはその言葉の意味するところを知らない。
「そもそも敵も胡乱も強くなる虹回転モードがノリで追加されたりしねぇ!」
 だが普通乗用車には分かっている。
 そしてそれこそが速さが全てではないのだという証明であるがゆえに告げる。
 ハードボイルドは時に、足掻き、足掻き、足掻き続ける――。
 マシン・キャプテンは新手のコードかと分析を始め… 胸のジョリー・ロジャーが七色にピカッとした。

「デモ ブッチャケ ニジカイテン トテモ ハヤイ」
 ジョリーロジャー、シャベッタ――…。

「速いどころかそいつはいつもより余計に回ってますってことだろうが」
 普通乗用車のタービンランナーが回り始めたことで、トルクコンバーターもまた暖まり始める。
「見ろこの後続く▲の数を!てめぇもこうなることぐらいわかってたんだろ!?」
 マフラーとフロントボイラーから熱気を吐き出す。
「スイッチがあったら押す、レバーがあったら引く、赤と青の線があったらどっちも切る!」
 最後のは一番やっちゃダメなやつである。
「虹回転があったら回す――命は、生きるってのは、そう言うことだ」

「…HEY SEDAR 、シツモン デス」
 しばらくの時間を置いた後、マシンキャプテンの胸元のまだ話が通じる状態のジョリー・ロジャーが口を開く。「なんだ、言ってみな」

「SPACE SEDAR ドウシテ ニジカイテン カカナカタ」
 
 うんそうね。

 ここまで余裕とか命とかスピードじゃないとか虹回転があったらまわすとか話しておいてこの宇宙空間対応型・普通乗用車、なんと▲書いてない。

 虹回転の指定が入っていないのである。

「?」
 普通乗用車は心から不思議そうにハザードランプをチカチカさせた。

「敵が強くなるとわかってて書くわけねぇだろ頭沸いてんのか」

 おっ、そうだな?
 至極ごもっともすぎる回答ではある。

「E?」
 マシン・キャプテンはこてんと首を傾げ――胸元のジョリー・ロジャーの七色発光が消える。
「ぐ、なんだ…今…何がッ」「ちょっとしたバグだ、旧式」普通乗用車は車体を軽く揺らしながらワイパーを動かしフロントガラスの水しぶきを拭った。

「要するに貴様…今までの話はなんだったんだ…」
 マシン・キャプテンも至極もっともな問い掛けをする。
 御大層でなんかめっちゃ大事そうなナレーションまでつけて。

「そりゃてめぇあれだよ」ととととと、とエンジンを振動させながら普通乗用車はギアを変える。
「どれだ」

「時間稼ぎ」
 温め切った普通乗用車のエンジンによるギアチェンジそしてアクセル全開ッ!!!!!

 ちなみにトルク・コンバーターは変速機。タービンランナーはそのコンバーターの中で回るでっかい羽のことだぞ🌟まあだいたい加速準備ってことだNE⭐️

「何ィッ!!!」
 突撃される。
 マシン・キャプテンはとっさにそう判断し、防壁を作成――したその横を普通乗用車が駆け抜けるッ!!!!!!

「何!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
 ほんまそれな。
 船上にタイヤ痕を残しながら全速前進マッハゴーで船首目掛けて走り出してしまう。

 そう、何を隠そう何も隠してないどころか隠しようもない。
 ここまで!!!!ここまで長々語りながらッ!!!!!
 全部!!!!!!ダッシュ決めるための準備だったのである!!!!

「じゃあなマシン・キャプテン!オレはお先にゴールに向かわせてもらうぜ!」

 そう!!!!
 普通乗用車はッ!!!!
 レースしに!!!!!!
 レースしに来てるのである!!!!!
 まあ確かに「海上ドライビン・ゴーはレースシナリオです」から「レースシナリオでした」ときて「レースシナリオなのかもしれません」と来ているのでまあレースシナリオです。レースシナリオ、なんなんですけれども!!!!

 でも!!!!!
 でもですね!!!!

 迫る悪路をホバリングで避けながら普通乗用車は最先端AIを展開し最善のルートを検索する。

「別にオレが最速最短を目指さないとは言ってねぇしなぁ!」
 普通乗用車さんッ!!!!
「こっから巻き返してとってやるぜ、トップをなァッ!!!!!」
 待って普通乗用車さん硝子剣士の依頼は敵を沈めて島を救うことです!!!!

 せめてッ!!!
 せめて一撃入れてって!!!!

 ログインボーナスをボスに押してって!!!!

 まって、待ってくださいお待ちになってッ、猟兵ーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!
 
「おっと」
 キキッ。
 鮮やかなブレーキ音を立てて、普通乗用車が一時停止した。
 ガシコン!最先端AIの計算通りの勢いでそこにつっこむ。

「よう」

 普通乗用車は朗らかに挨拶をし、運転席のドアを開いた。

 どこに?
 船内を荒らしながらきっちりと彼は確認していた。
 この船に乗る猟兵以外で唯一の人類を。
 捕りょ、の名札をつけた――実況、団扇島代表、オーヒラの元へ。

「乗ってくかい?」
 
 抱いて(乗せて)――…!

「ええい貴様ガチで何しに来たァアアアアアアアア!!!!!!!」
 そして背後からビームカトラスをぶん回しながら迫るマシン・キャプテン。
「言ってんだろ、トップ取り来た」
 シャウトしているキャプテンには届かない程度の音量で普通乗用車は答える。
「せせせせせ迫ってますよ迫っておりますよバックに!!!」
「慌てなさんな、安心しな。オレはスペースセダンだぜ?」
 そして普通乗用車はオーヒラがきちんとシートベルトを閉めたのを確認し

「【瞬速展開カタパルト】」

 助けたことで足りない速度をコードで補う。

「えっ」
 
 即ち。

「滑走路展開車体固定射角調整風力測定磁力充填重力演算その他諸々影響確認射角補正」

 瞬速展開の名にふさわしき、0.1秒以下の世界にてカタパルトを展開。
 カタパルトってなあに。
 それはね。

「車体解放」

 射出装置❤️

「射出開始」

 発射ァッ!!!!!

「ヒャッホーーーーーーーーーーーーウ!!!」

 普通乗用車は風どころか光になった。
 
 …トップが取れたのかは取り急ぎさておき。
 トップスピード海賊団が作成していたゴールを普通乗用車がぶっ壊したことだけは、今この場で明記してしておこう。

成功 🔵​🔵​🔴​

ミルラ・フラン
▲【海上極道】
アドリブ◎
海蛇からワニへ乗り換え

(虹回転する海賊を見て)
ゲーミング海賊かい?

あたしらを邪魔できるものがあると思ったかい?ないよ
あっても粉砕するからね!!
(ここで高笑い)
アンタも真面目が戻ってきたじゃないかい

存在感と誘惑で惹きつけつつ、ダンスのステップで敵へハイキックや回し蹴り
オーラ防御で守りを固める
姿を変える拷問具、Signorina Torturaを鋭いピンヒールにしてるからね!グサッと殺るよ
ワニ共も行きな!!行かないとバッグにしちゃうよ!
La Tempesta di Rosaでモブ賊を殲滅
アトラクションを掻い潜りつつ、クロウと同時にキックを放つ

100日後…いや、何でもない


杜鬼・クロウ
▲【海上極道】
アドリブ◎
海蛇からワニへ乗換え

俺達を阻めるものなど何も無ェ
路は自ら切り拓く、其れが俺
速さ…そいつで勝負するか(剣が折れてなきゃァ【沸血の業火】の合わせ技で魅せてヤれたンだが
今回は我流を通す(破天荒
さァて、ミルラ。真面目にカチコミに行こうぜ(ネクタイ緩め悪人顔
最後良ければ全て良し(フラグ

船に乗り込み敵に恫喝・威圧
【贋物の器】で神鏡を78枚召喚
光線系は全て跳ね返す(カウンター
ジグザグに反射させ他の罠を悉く部位破壊
敵の攻撃は鏡重ねて攻撃緩和
ワニで援護攻撃

ウォータースライダー利用
空中でジャンプし格好良く敵の心臓部を回し蹴り(2回攻撃
ゴール目指す(鏡に乗り移動でも可

…ワニの肉って美味ェの?



▲! OPPAIとワニ !▲

 どんな大事件も最初は些細なことである。
 どんな高速大回転でも滑り出しはゆっくりである。
 いきなりパワフルにやると首もげちゃうからね。

「見えたぞミルラァッ!!!準備ァいいかッ」
「誰に言ってんのさあんたこそヘマこくんじゃないよクロウッ」

 海上ドライビン・ゴーの場合は、あるひと組の猟兵が海上アスレチック船上(※半壊済み)を訪れたことだった。
 何が訪れようともマシン・キャプテンのやることは変わらない。
 サーチ・アンド・デストロイ。

 戦場を訪れた新手を素早く察知しサー

「▲OPPAI▲」

 おっぱい。

 マシン・キャプテンが七色に光った。



 海に巨大な水柱が二本立った。

「野郎ッ!!!!!」
 水柱1号にしてなんちゃって極道2号、杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)は水から顔を出して吠える。「いきなり七色フラッシュしやがってこンのご機嫌野郎か!!!!」
 水も滴るどころか海に浸かった濡れ男と化したが顔の良さは健在である。イケメンってすごい。
「あとミルラはおっぱいじゃねえッ!!」お前2章の台詞はセーフなの?

「まさか初手海ドボンとはね」
 続いて水から顔を出したのは水柱2号にしてなんちゃって極道1号、ミルラ・フラン(Bombshell Rose・f01082)だ。「戦争シナリオだってここまでの横暴はないんじゃないのかい」ごめんね。
 濡れてもなお熱を錯覚させる鮮明な赤が眩しい。化粧も一切乱れていないのはさすがとしか言いようがない。ナイスアダルトセクシーッ!

 そんな二人を嘲笑うかのように船べりへマシン・キャプテンが現れクロウたち二人を見下ろす。両手に二人が乗ってきた海蛇を握って。
 …いや、あれを今までと同じマシン・キャプテンと考えていいのだろうか。
 否。
 呼んでいいわけがない。

「▲ GOKI GEN CHIGAU ▲」
 だって七色に光ってるして手首が猛回転してて本来軟体生物である海蛇が棒みたいに見える。
 小学校の頃鉛筆ぶんぶん揺らしてわあい曲がってる〜とかやんなかった?あの逆みたいな感じ。
 ああーいけませんキャプテンお待ちくださいキャプテンキャプテンッ手首の!手首のベアリングが!ベアリングが粉になってしまいますキャプテンッ!

「ちッ、さすが難易度アップだ。台詞が読み辛いねえ」
 そうだね。

 ミルラは船上に上がるべく海蛇が奪還できないかと一瞬考えるが、マシンキャプテンはHAHAHAHAというもうねえこれコミックス?みたいな笑い声を上げながら海蛇を放り蒲焼にして炭火焼してタレをつけて団扇で匂いを煽ってくる。効率的炊飯器による効率的炊飯が行われ今キャプテンの隣で白いご飯が炊けた。ところで2020年の土用の丑の日は7月21日でした。皆さんうなぎはお召し上がりになられましたか?食べ損ねても大丈夫、8月2日も二の丑と呼ばれる土用の丑の日です。今年も酷暑が予想されますのでもし余裕がありましたら縁起を担いで食べてみてくださいね、かしこ。
「どこまでもバカにしやがって…山椒も用意しやがれクソがッ!!!!」
「▲ ARU ▲」「なら良しッ!!」 何も良くない。

「▲これで 貴様らは船の上に上がること CAN NOT…▲」
 マシン・キャプテンはいままさに白いご飯の上に海蛇の蒲焼を載せて見せつけるように食べ、えっマシン・キャプテン有機物食べれんの…?…食べ、うん…深く考えない…食べる…海蛇、たぶん蒲焼は美味しくない。毒があるから素人料理もおすすめしないぞ。ジャペンのOKI NA WA あたりに郷土料理で薫製とか汁物があるそうなので気になったらそちらをどうぞ。台詞が読みづらい聞き取りづらい書きづらいという三段つらいに応えて若干口調が流暢になった。

「▲ そこ で 海の ナイス・アダルト・ファビュラス・セクシーを団扇島民に披露し続けるがいい。やーいやーいファビュラスー▲」
 ほめてんだが貶してんだか良くわからない。
 寄ってきた部下にも海蛇の蒲焼丼を振る舞いながらマシン・キャプテンは海上の猟兵へ勝利宣言を突きつける。ちなみに蒲焼丼を食べた部下も七色に光ってどこぞのトレインばりの縦回転をしてくる。「…ゲーミング海賊かい?」そうかもしれない。

 完全不利?

「これであたしらを阻んだつもりか、舐めてくれるね」

 いや、ミルラの顔は以前極道雛壇から変わりなき傲岸不遜、自身に満ちた笑みを浮かべているッ!「クロウッ!」「おうともよ!」ミルラに応えてクロウは指笛を鳴らす。

「蛇が駄目だってんなら――こいつはどうだァ?」
 ざ、とそいつは再びクロウとミルラの足元に潜り、二人を支えて押し上げる。

「俺達を阻めるものなど何も無ェ」
 くつくつ笑う二人の足元の生き物。
 鱗に覆われた体、四肢に生えそろう爪は鋭く。口にはぎっちり牙が並ぶ。主竜類に属し恐竜の直系とも語られる。
 その名は

 ワニ。

 ニシキヘビと共に川の生態系ピラミッドの頂点に座する王者。
 
 ……。

 ここ、海――…。

 まあそこは団扇島クオリティ。正鰐亜目アリゲーター科カノジョニコイシテウミマデキチャッタケナゲナワニが主の咆哮と共に魚ジェットで戦場たる船上へ猟兵ッ⭐️お届けッ!!
 
「路は自ら切り拓く、其れが俺」
 クロウはトップスピード海賊団による楽しい楽しい蒲焼丼団欒が始まっていたちゃぶ台をひっくり返し
「あたしらを邪魔できるものがあると思ったかい?」
 続いて現れたミルラがワニから飛び降りモブ海賊をその鋭いピンヒールで踏みつける。アリガトウゴザイマスッ!!!
「ないよ」
 クロウが拓いた道を前に、ミルラは挑発的な笑みを見せつける。
「あっても粉砕するからね――こんなふうにッ!!」
 ドレスから伸びる長い足を美しく振り上げ、振り下ろし、頭部を砕く。
「あっはははははは!」高らかな笑いを甲板に響かせる。「なんだいなんだいどいつもこいつもピカピカ光ってるだけでこんなもんか、見かけ倒しじゃないか、ええ!?」。

「速さ、だったか七色キャプテン」
 七色発光する敵の群れ。
 剣が折れてなきゃァな。ひとつの思いがクロウの胸を横切る。沸血の業火と合わせて一纏めに魅せる技にて始末できたものを。
 …ないものをねだっても仕方がない。「そいつで勝負するか」
 であれば邪魔になるのはあのWithB(ビームミラーボール)だ。
「今回は我流を通す」
 ユーベルコード、贋物の器、発動。
 78枚の神鏡が浮かび上がり、二人の周りを踊る。
 鏡は敵とビームとの七色の光を反射して、さながら海上全体がミラーボールの様相だ。
「そりゃ敵さんに合わせてやるってことかい?」乱れた髪を直しながらミルラはクロウへ笑いかける。「アンタも真面目が戻ってきたじゃないかい」「おお?そうか?」

「さァて、ミルラ。真面目にカチコミに行くとするか」
 クロウはポケットを探しサングラス――ない。じゃあ煙草。これもなし。海ドボンですべて持っていかれてしまったらしい。サングラスせっかく買ったのにとちょっと寂しい。思わず口をすぼめると、その背をミルラが軽く叩いた。「そんなもんなくたってキマってるって言ったろ」「…おう」

「終わり良ければすべてよし」
 クロウさん、それフラグです。

 ワニが口からラジカセを取り出してスイッチをオンする。
 再び流れる仁義がない感じの戦いが始まってしまいそうなテーマソング。さすが正鰐亜目アリゲーター科カノジョニコイシテウミマデキチャッタケナゲナワニ、略してケナゲワニである。名前の通り健気にも主人の活躍を盛り立てるための一興を忘れていなかった。

「素人さんにヤクザの領域(シマ)で悪事(わるさ)かますとどうなるか教えてやらァ」

 前言撤回。なんちゃって極道とした表記を改めねばならない。
 豪奢な高笑いをし嗜虐するミルラは。片唇を吊り上げてにたりと極悪に笑うクロウは。
 その筋の方として語ろうと遜色ない凶悪さでもって輝いていた。

 おかしいな、やってることは何も間違ってない、島を救いにきた、はずなのになァーーーーーーーーーーーーッ!!!

「「「「「「OPPAI!!!!!!!!」」」」
 まあなんか原因をしっかり語ることは避けるがミルラへモブ海賊が殺到する。存在感と魅了がバッチリ刺さっている。なんてったって今ボスが七色回転しているので子分も七色発光回転している。
「どいつもこいつもおっぱいおっぱい言いやがって」あっ姐さん言っちゃった。
 ミルラは忌々しさをたっぷり込めた舌打ちしながらモブサイボーグ海賊Aのアイアンクローをかわす。足取りはドレスにぴったりの優雅なダンスのステップ。
「中学生のガキじゃないんだよ」後ろでクロウがちょっと申し訳なさそうな顔をしていることにあえて言及しておく。
「女の価値はおっぱいだけじゃないだろうがッ!」
 武器であるSignorina Tortura――拷問嬢の名の通り姿を変える拷問具は今、ミルラのヒールとなっている。突き出す前蹴り、えぐられる股間…部、ひえッ…「アリガトウゴザイマスッ!!!」爆発するモブ海賊Aッ!
「スイマッセン今日のパンツは何色ですかッ!」
 今度は海賊Bが背後からセクハラとターボジェットキックをミルラへと同時にかましてくるッ!
「小学生以下」ターボジェットキックが叩き込まれる寸前で敵の顔面に左足のかかとを叩き込み、そのまま容赦なく顔面を踏みつけて軸足とし、右足で見事な円を描く、回し蹴り武器じゃなくてカメラを構えていたモブ海賊Cのカメラとその心臓部を一直線に貫きながら側転し、アスレチックの側転を跳び渡り
「見れるもんなら見てご覧」
 着地。
 頂点以外から酸を噴き出すピラミッドの上に立つ。
 海ドボンによりミルラもまたはやずぶ濡れであり、艶かしいボディラインがはっきりとみて取れる。足にレースがまとわりつくように張り付いているのがむせ返りそうな色気を漂わせている。
 いや色気だけではない。
 事実、漂っている。
 落ち着いて甘い――ダマスクと没薬の香り。
 ピンヒールからはらはらと深い緋色の薔薇の花びらが舞い始めてる。

「特別に教えてやるよ(ピー)ども…」
 本当は伏せ字も開けたいんだけどね、海上ドライビン・ゴーは青少年シナリオだからね。
 読者諸君におかれましてはお好きな罵倒をはめ込んで胸のドキドキとワクワクを満たしてほしい。見えない方が正義の時もある。
「女をエスコートしたりゃお手柔らかに」
 ミルラはゆるりしなを作り、胸を、腰を、尻を、脚を、腕を
「そして優雅にダンスすんのさ」
 甘い甘い女の躰を見せつける。
 うーん逆にこれで飯が食える。

「こんな風にね」
 ユーベルコード“La Tempesta di Rosa”
 薔薇の花弁が酸を纏った嵐となって集まったモブどもを斬り、溶かし、そして切り裂く!
「ハッハァ!」
 酸を浴び、あるいは溶かされて地面を這うモブ海賊の上を優雅に歩きながらミルラは哄笑する。
一歩歩くたびにアリガトウゴザイマスッ!!というよくわからない叫びが上がる。「ようやく自分が何だったかを理解したようだねクソ海賊ども!」うーん極道というか女王である。
「カーペットまでなってゲーミングにキラキラすんじゃないよ」
 モブの一体にかかと落としッ!!
「こんなチャチな色があたしに似合うと思ってんのかい?」
 ピンヒールをぐりぐりと押し込みながらモブ海賊X(何せバラバラのぐちゃぐちゃでよくわからない)に問えば、低いうめき声ののち、ミルラの足元から一斉に、ある一色へと発光色が変わる。

 深い深い緋色。
「よろしい」
 押し込んだピンヒールを抜き、そしてトドメの一撃を差し込む。「わかってるじゃないか」

「…女って怖ぇー…」
 一部始終を目撃していたクロウとしては2章と同じセリフを言うしかない。
 逆らわんとこという誓いを密かに更新するしかない。ケナゲワニどもが端っこで震えている。ちなみにケナゲワニの体長は8メートル。頭の先しか隠せてない。全く隠れられていない。
 踊るミルラの対になるかのように、クロウは極道(ヤクザ)らしくゆったりとビームミラーボールを捌いていた。びしょ濡れとはいえイケメン。歩いているだけで本当に絵になる。やーいお前の股下2メートルー!光線をジグザグに跳ね返せば、別に大きな得物をぶん回す必要もなく船を破壊できる。
「オイオイオイオイ、そこまでかよお前らの虹回転はッ!!!てめーらのレインボースピンはその程度かッ!」
 幾度目かの威圧と恫喝でもってモブ海賊どもを圧倒する。
「せっかく▲モードとか作ったのにその程度か!前半のよくわかんねえ蒲焼の勢いはどうしたァ!!」
 うーん本職。
 くく、という低い笑い声を耳にしたのはその時である。
 見ればモブ海賊のうちの一人が笑っていた。
「…あ?」
「馬鹿め…効率を求め虹回転する我々のボスが…どうして船を攻撃されているのに何も手を出してこねえと思う…?」
 クロウはうつ伏せだったそいつを爪先で蹴り転がし仰向けにさせると鳩尾を踏む。
「どーいう意味だコラ…」
「お前らが一番わかってんだろうが猟兵…」モブはオイルを吹きながら
ドヤ顔を晒す。
「お前らがコードを使う時」

「まさかッ!」
 真意に気づいたクロウは天を仰ぐ。

 見れば。
 マシン・キャプテンはゆっくりと浮遊するところであった。
 何故?

 二人の上にさした影が物語る。

「我々のボスもまたコードを使うのだ…!」
 マシン・キャプテンのコード:宇宙から来た略奪者――強襲揚陸型宇宙船である。
 搭乗するのは電磁ナイフやレールガン、分解電磁網になどで武装した

 うん、

 ゲーミングロボット幽霊。

 敵もボケが過積載――…。 

「ミルラッ!」
 クロウは鏡の一枚をミルラへと送る「乗れッ!あいつ船を乗り換えるつもりでいやがるッ」
「まあ合格点」ミルラはクロウが差し向けた鏡に乗りながら頷く。エスコート入門としてはまあよし。最低限でもこうでなくては。「あんたはどうすんだい?」
「俺もすぐに追いつくッ!」
 ここで鏡に乗ってもいいが若干速度に不安がある。一気に駆け出し、目指すはウォータースライダー。
「させるかイケメンッ!!」「いいおっぱい連れていやがって!!」「乳尻太腿ッ!!!!」
 残っていたモブ海賊がそうはさせじとクロウへ迫る。回転する跳びわたりローラーを飛び越えながら振り向き様に追手へと蹴りを入れて叩き落とす。「ラブおっぱい!」浮いていた鏡をひっ捕まえてぶん殴る。「うるせえ!」いや鏡を操ればいいのだがそれどころではないのである。速攻倒さないといけないのである。まじでほんとに。2章あれだけおっ…て耐えたのに。
「大きいおっぱいはいいおっぱいッ!」「黙れッ!胸は大きさじゃねえッ!」見てるから!!!ミルラ見てるから!!!ミルラの視界に入っちゃうから!
「邪魔すんな同志ッ!!!」うっかり口から同志という言葉を出しつつクロウは前方から迫ってきたモブ海賊を飛び蹴りで沈める。「おっぱい、いいよね!!」「おう!!!!!」足技で沈めるが次から次である。
 ここで発破をかけたのはミルラだ。「オラァッ何ぼさっとしてんだい」
 クロウに、ではない。

「ワニども行きな!!行かないとバッグにしちゃうよ!!」

 ワニに、である。

 すかさず飛び出すケナゲワニ。性格は名前の通りケナゲである。
 しかしその顎の力はUDCアースでは最強であるとすら言われている。
 ましてや団扇島仕様。2匹でそれぞれ数人の頭を噛みちぎるッ!

「よくやったワニッ!」
 クロウ、ウォータースライダー頂点に到達。

 鏡の一枚をサーフボード代わりに足元に敷き、スライド・アンド・ダイブッ!!!

 浮遊する鏡である。滑ると言う加速を得、クロウを宙へ弾き飛ばせば――そのパワーは浮かんだマシン・キャプテンへ揚と到達させる!
 鏡で太陽光を反射「▲MABUSHI I」マシン・キャプテンの目眩しに成功する。

 クロウは宙で腰を捻りその長い足を振りかざす。

「教えてやるよ、真の極道蹴り(ヤクザキック)を」
 
 ミルラもまたクロウに合わせ鏡から飛び上がっていた。

「とくと味わいな。スペースシップ・ワールドじゃ極道(ヤクザ)なんてそう会えなかったろ?」


 二人の猟兵は太陽を背景とし――必殺のヤクザクロスキックをマシン・キャプテンへと打ち込んだ。

 蹴りをたたき込み海賊船を越え、海原へと放りだされるふたりの元に、ケナゲワニはやってこない。

 ただ、そう。
『ワニ殺(と)ッたどー!!!』と言う叫びが二人のもとへ聞こえる。
 ミルラの唇が開く。
「100日…」「ミルラ、それ以上はいけねェ」「ああ」うん止そう。
「終わり良ければ全て良し、だ。俺たちは今はただ…走るしかねェ」「そうだね、本当に」
 割とレアないい感じのワニ皮になりそうだったことも、ミルラはかぶりを振って思考から追いやる。
「…ワニの肉って美味ェの?」
 高タンパク低脂質で唐揚げに向いてるそうです。「そっかァ…」「クロウ誰と話してんだい?」「ミルラ、この後ワニ食いに行ってみねェ?」

 そして着水。
 ワニは死んだ。もういない。
 故にここで乗り物になるのはクロウの鏡である。
 強襲揚陸型宇宙船から放たれるビームをかわしながら、ただただ、前進。

「悪いが海上ドライビン・ゴーはレースシナリオでね」

 ミルラは無事だったサングラスをかける。

「俺たちはゴールに向かわせてもらうぜ」

 クロウは小洒落た仕草で落ちた前髪をオールバックへと直した。

 かくしてまたひと組ッ!!!!!
 花の香りを水面に残し。
 ボスをぶん殴るだけ殴りゴールへと爆走キメるのであった!!!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ユキ・パンザマスト
▲【くれいろ】
成程、人の心も海の深さ
であればソウル響かすにゃやっぱこれ!
(ヒューマンビートボックス
呼応、先輩の背からレコード盤)
リベレイション!(スクラッチ開始)

御機嫌フロアに【堂廻目眩】
虹光ファイバー的タッカシャントリエリを掲げるフロアDJへ!
実体ホロ化術で一同
アゲアゲゲーミングコーデチェンジ
さぁさ渾身でお楽しみを!
端末百舌からアスレチックを偵察ハック
弄るチートはしませんが道案内はお任せ!

(終止符的な意味を
勝手に)
ふふ、なぁんでも
キャップはガチに朝日を拝めなくしますが!

電撃にオーラ防御
メカリスマパイセンが帯電を!?
なら逆襲の時!
捨て身の一撃
くれいろだけに三倍速い
エレクトロミサイリウムビーム!


セラ・ネヴィーリオ
▲【くれいろ】

アノマロメカリス先輩魂の声
ソラすら雲や星の海?
きみは真摯に海を制覇しようと…!
僕らの心も?ひゅー!
リベレイション!(掛け声そして【うぇーい(略)】展開!)
へいユキさんマイクぱーす!

呼ばれるは、この瞬間を全霊で過ごしたいみんな
未練に繋がれ先の見えない明日を待つのは苦しいもん
「安心して。きみたちに、もう(そんな)明日はやってこない」と柔らかに
(海賊的には挑発?気づかずに)
今日は未練全部吐き出してブチ上げてパリピってこーねいぇーーー!

ライドオン!(先輩)
光線類はクラブのミラボで反射!
アスレチックに大興奮なパリピ霊さんたちで会場は混乱のるつぼ!
今だよ先輩!サイリウム、装填!ふぁいやー!!


ケース・バイケース


んぱ (突然ですが、鯉です)

びち!びち! (鯉も二章頑張って泳いでた。ほんとほんと。淡水魚だけど頑張ってたんですよ。ほんとほんと)

びたーん! (そんな訳で!いまここ!!)

びっちびっち (そして罠へと流されていく鯉!!無力!なぜ来た!!)

びっちびっち! (なんか面白そうだった!!!)

びったんびったん (鯉は頑張って跳ねている!しかしなにも起こらない!)

ジュッ (南無三!鯉は死んだ!)

ぴちぴち (だがしかしキャプテンが目を離した隙に【記録】で生き返っている)

びっちびっち (さぁ!鯉が囮になっている今のうちに!レッツ!破壊!)

(*このプレイングはMSや他猟兵様方への愛と無茶振りで出来ています)



▲! くれいろ回転サマー鯉バージョン !▲

 強襲揚陸型宇宙船 VS ゴーステッド・ビッグ・メカ・アロマノカリス。

 何言ってっか分からねえと思うが怪獣大決戦みたいな光景が海賊船の上で繰り広げられていた。
 もう一度言う。
 幽霊船員を乗せた物理宇宙戦艦と実体化幽霊巨大アロマノカリスがバトっていた。
 何度書いても意味がわからない。

「アノマロメカリスせんぱーーーーーーーーーーーいッ!!」
 激しく揺れるゴーステッド・ビッグ・メカアロマノカリスの首のすぐ後ろに乗っかった白鳥浮き輪(二人乗り用)の上でユキ・パンザマスト(夕映の咲・f02035)は思わず叫ぶ。白鳥の首にしっかりとしがみ付いて。そうせねば攻撃の激しさに吹き飛んでしまいそうだった。
「ご無理を!!崩壊してしまいます!」
『敵対船への攻撃を続行・より激しい負傷が予測されます。搭乗員は速やかに脱出し、身の安全を確保してください』
 帰ってくるのは無情なアナウンスのみだ。
「だから、攻撃を止めれば良いんです!」
 白鳥号のすぐ脇には脱出ボタンが作成されている。おそらくこれを押せばゴーステッドビッグアロマノカリスがボッシュートばりの速やかな脱出を行ってくれるだろう。
 しかしユキにそれを押す気はなかった。
 それを押すと言うことはこの場にゴーステッドビッグアロマノカリスを置いていくと言うことだ。
 そしてこの場にゴーステッドビッグアロマノカリスを置いていくと言うことは。
 ゴーステッドビッグアロマノカリスの沈没を意味する。

「なぜそんなに戦うのですか!ユキたちは、ユキたちは戦えるんですッ!攻撃をやめて、後はユキたちに任せてくださいッ」
『右腹部よりマシンガンを構成、攻撃を続行します』
「アロマノメカリス先輩ッ!!!!!」
 何を言ってるか分からねえ話が続くのだがこの巨大アロマノカリスは宇宙の夢を見ており猟兵のコードの影響を受けてメカ属性を得ており、先の戦いから敵のコードによって召喚されていた強襲揚陸型宇宙船に戦いを挑んでいた。力量差ははっきりしていた。所詮古代生物が見た宇宙の夢はむべなるかな現実にはるか及ばない。必死に武器を作成し攻撃するも一方的な攻撃を受けていた。
 しかしそれでも諦めずゴーステッド・ビッグ・メカアロマノカリスは攻撃をやめず、今に至っている。
「ユキさん、おそらく止めても無駄なんだよ」 
 セラ・ネヴィーリオ(セントエルモの火・f02012)は同じく白鳥の首にしがみつきながら真剣な声でユキに語りかける。少年の眼差しは真摯に霊へと向き合った墓守の輝きをしていた。
「先輩の声をちゃんと聞いた」「先輩は、何と?」
 ゴーステッドビッグアロマノカリスの尾が敵船攻撃を受けて弾け飛ぶ。
 炎を散らしながらバラバラと…夢は所詮幻だと言うかのように。
「先輩が見たソラっていうのは宇宙だったんだ」
 セラはしがみ付いているユキの手に手を重ね、彼女としっかりと瞳を合わせる。
 真剣な面差しにユキの心音が少々早くなる。
「先輩は真摯に雲や星の海を夢見て…真っ当な形で制覇しようとしている」
 ユキはゴーステッドビッグアロマノカリスの背を見つめる。

「だから立ち塞がる敵は、真っ当に落とさねばならない、と?」
「そう」

 さすが古代生物、魂が蛮族である。

「そして僕らの心も」
「え?」

 欲張りすぎひん?

 ゴーステッドビッグアロマノカリスの羽はもはや半数以上失われ、高度は下がりつつある。
 
「夢を見る心を、楽しかった飛行の思い出を…強く眩しいものであり続けるために」

 あと生きて帰れたらこの後待ってる古代生物研究学会をド混乱の渦にたたき込むために。

「…そのためには、戦って敗れることはあっても、逃げたり、任せたりは絶対させたく、ないって…」

 語ったわけではない。セラは動物と話すというスキルを持っていない。―いやアロマノカリスは古代節足生物なので持っててもどうなんだろって思うかもしれない。まあ当MSだったら動いてる物だからいいよって裁定がだいたい出る。ちなみに動かない貝やサンゴでもゴーが出る―故に伝わったのはあくまでアロマノカリスから伝わったイメージだ。
 だが、言葉でないイメージだからこそ、アロマノカリスの真意はセラにはっきりと伝わった。

「ユキさん」
「セラ…」

 二人は頷き。

 脱出ボタンを蹴り飛ばす。

「ヒューーーーーーーーーーーッ!!!!!!」
「いえ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い!!!!」

 いつかのシナリオのために買ったおそろのサングラスをポッケから取り出し装着ッ!!!
 
「そ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んな侠気のあるアロマノカリス先輩をッ!!!!支えないわけにはいかないよね〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
「ええ無論勿論大正論ッ!!助けられた亀だってお礼をしますのに!ユキたちがしない謂れはございませんッ!」
 足がもつれそうな振動もなんのそのッ!
『内部損傷、内部損傷、脱出決定装置の破壊を確認、脱出決定装置の破壊を確認――…』
 困惑のアロマノカリスアナウンスへセラは朗らか答える。「まあまあ僕らに任せてよ」
 
  こ れ ぞ 天 啓
「いっつリベレイションッ!!!」
 
 コード発動――セラの手元にマイクが現れる。
 そしてアロマノカリスセンパイの上、立つ二人のそばに突然フロアライト穴が開く。
 今度はアロマノカリスセンパイの助太刀ではない。

「きゃ〜〜〜〜〜〜〜セラ〜〜〜〜〜〜!!!」一章でファン団扇を振ったのがセラなら今度はユキが振る。「新コードお披露目してくださ〜〜〜〜〜〜い!!!!」

 セラのコードによるものである。 
 さらに舞台、そして無数の巨大スピーカーが競り上がる。
 競り上がる舞台の上にセラは飛び上がり。

『ウェイウェイウェーーーイ!!!』
 コード名を高らかに叫…えっそれコード名???コード名なの????
 あっ、コード名だあ…。

 ユーベルコード『ごーいんぐまいうぇーーーい!』
 効果は2つ。

 1つ目は

『これよりここをッ!!!!!!!!防音対策もへったくれもないクラブとするッ!!!!!!!』

 高らかな宣言と共に、ラメとリボンが打ち上がる。

 そう。防音対策もへったくれもないクラブの召喚である。

 そしてもう1つ。

「セラ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」ユキが膝でサイリウムを折りながら高らかにテンションの上がりを煽る。「ここって〜〜〜〜〜〜〜〜ど〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜こ〜〜〜〜〜〜〜〜!?」
「「「「どーーーーーこーーーーーーー!!!!!!????」」」
 ユキの声に続くコーリングがあちこちから、そう、主に強襲揚陸型宇宙船や海賊船の上からしてくる。

【強靭な自己肯定力とその場のノリ】で武装した【老若男女入り乱れるパリピ】の幽霊をレベル✕5体召喚する…ッ!!!!

 レベルx5体…!
 セラ・ネヴィーリオのレベルは…63ッ!!!

 63x5=315ッ!!!!!

 315人のッ!!!!!老若男女パリピッ!!!!!

 300人っていうとだいたい地方のホールや都会でも小ホールを埋められる。
 ライブハウスなら大に換算される人数である。

 そしてマシン・キャプテンたち海賊団の物差しで言うならば。
 300人はッ!!!軍隊で言うところの大隊であるッ!!!

 それがいきなり海賊船の甲板と強襲揚陸型宇宙船にブッこまれるのだからブッこまれた側はたまったものではない。ヤバイ、音量とノリと熱量が。

『ねえねえどうしたの〜〜〜〜?みんな声小さくな〜〜〜〜〜〜〜〜い!?』

 それは海賊船からアノマロカリスパイセンまでちょっとした距離があるからである。

『元気な〜〜〜〜〜い?そんな時はこれこれー!ほらーみんなのカッコイイとこ見てみたいーセイホー!』

 セイホーーーーウッ!!!

 セラはサングラスをあげてこの上ないときめきウィンクを投げる。
『オーケーグッジョブ!』

 ウェエエエエエエエエエエイ!!!!!の大絶叫が吹き荒れる。

『オーケーブラザーッ!じゃあおつぎはユキさんに代わるよ〜〜〜〜〜!!』
 ウェエエエエエエエイ!!!!
 会場にして海上のノリに当てられてセラは頬を紅潮させてユキへマイクを投げる。「へいユキさんマイクぱーす!」
 その頬の紅潮が、二人でただ盛り上げることができるというこの状況が。
 ユキの胸をきゅっと柔らかく締める。
 楽しさと喜びと、信頼に応えたいちょっとした緊張が太陽光に合わせて胸の奥にきらめく。
「お任せあれっ」
 セラに応えるべく、ユキはマイクを取る。
 全力の笑みで、応えながら。
『成程、人の心も海の深さ――であればソウル響かすにゃやっぱこれ!』
 ユキのそばに、アロマノカリスの背からレコード盤が出てくる。

 ――突然ですがここで突然の鯉です。

 んぱ。と鯉は口を鳴らしました。
 なんだか海面が騒がしいですね。
 正しくはケース・バイケース(それはそれ・f03188)の変身した鯉なのですがコードによって今のケース・バイケースは本当に鯉なので実質鯉です。宇宙のきらめく鯉、150cmの立派な鯉です。こわっ。
 団扇島の厳しい海流攻略は鯉にとって難易度の非常に高いものでした。激しすぎて5〜8回は軽く死んだと思います。そう、鯉も2章頑張って泳いでいたんですよ、ほんとほんと。
 でも周りがサイボーグ魚類とか主に空中戦でしたのでね、全く目立てなかったのです。
 え?鯉は淡水魚じゃないのか?
 ごもっともな質問ですね。
 鯉はたしかに淡水魚ですが、昔全ての生き物は海に暮らしていたと言われています。
 今でもその習慣が残り、海と川を行き来するサケやウナギ、ご存知でしょうか?
 その習慣か名残なのか、ある程度海に繋がる川の魚は体の大きさとある程度の生命力があれば、餌を求めて海にでることもある例が散見されています。つまりある一定の厳しい環境にいた鯉は海にいてもおかしくないのです。厳しい環境といえば猟兵!つまりケース・バイケースもまた川から海へ出れる鯉であってもおかしくないと言うことです。
 ほらご覧ください。鯉は今日も一生懸命です。
 びち!びち!と今必死に海賊船のすぐそばで跳ねて、戦場へ上がろうとしています。
 でもやっぱり高度が足りませんね。
 この鯉は一体どうなってしまうのでしょうか――

 こ れ ぞ 天 啓
『イッツリベレイション!』
 
 マイクに向かってユキがシャウトすればセラが温めていたフロアが応える。
 放たれるはユキお得意のヒューマンビートボックス!
 いわゆる音声やブレスのみでスクラッチ音やドラムサウンド・ビートのような音楽を奏でる手法である。
 曲は勿論フロアにぴったりのご機嫌・エレクトロニカ・ダンスミュージック。
 リズム・ビートに合わせ、跳ねて踊る、幽霊。
 あふれるような笑みで持ちうる技能を余すところなく発揮しているユキに、セラは目を細める。
 これ以上ないご機嫌ミュージックにジャンプで乗りながら、きっと自身にあふれるこの音楽へを身を任せる心地良さは、その原因は、選曲が良いのだけではなく、歌い手がユキだからではないか問いことを、少しだけ考えながら。
 セラはユキへ大きく手を振り――

――そしてここで再び突然の鯉です。
 
 びたーん!
 鯉は海賊船の内部機構へと体を叩きつけました。いまここ!
 海賊船へ向かってひたすら海面から跳ねていた鯉ですが、格好の侵入経路を発見しました。 
 海賊船のアスレチックには多く海水が流れている部分があります。
 つまり、何処かから海水を入れている部分があるんですね。
 鯉はなんと幸運かそれなりに考えた結果か、そこにたどり着くことに成功しました。
 あとは流されていくだけです。
 それだけでなんか楽しそうな船上にたどり着けるに違いありません。
 しかし鯉は大事なことを失念していました。鯉だからしょうがありませんね。
 ご覧いただけますでしょうか。
 船上に行きたい鯉のみならず、迷える魚がこの吸水口に巻き込まれることはままあるようです。
 その魚対策に、なんと言うことでしょう。
 ミートミンサーってやつですね。
 鋸山のよりも細かくてヤバイ刃がびっしりと回転しています。
 鯉はびっちびっちと跳ねます。しかし罠は待ってくれず、鯉は流されていきます。びっちびっち。
 無力ッ!なぜ来たのか!
 びったんびったん!鯉はなおも跳ねます。
 なんかよくわかんないけど絶大な信頼と安心と胡乱の香りがすごく楽しそうだったのです。

 でも今そこにミンサーあっけど。

 果たしてこの鯉はどうなってしまうのでしょうか――
 
 幽霊の厄介な点は、一定の方法でしか倒すことができないと言うことである。
 そして幽霊という存在は、スペースシップ・ワールドに置いて最も遠い存在であった。
 よって計器異常・視覚混乱・そして邪魔というこの状況に少々後手に回ることになる。
 そして大混乱のハイテンション・フロアの中、ユキは己のコードを発動する。

 堂廻目眩・トラツグミ。
 フロアにある投影装置が一斉に一点へと向けられ――ユキの体をライトアップする。
 実像は虚像の巨像へ変身(メイクアップ)
 セラが300人用意するならユキは3倍大きくなる。
 ――現れるは虹色ファイバー装備のタッカ・シャントリエリ――ブラック・キャットと呼ばれる南国の花で身を飾った4メーター強の巨大DJッがアロマノカリスパイセンの上に降臨する!!

 巨大化したユキを見てセラがはしゃいでいることにちょっとした恥ずかしさを覚えながら。
 更なるかく乱を起こすべく――実態ホロ、普段は椿の、此度はタッカ・シャントリエリホロをぶちまける。
 そいつらがあちこちでネオン・サインにも負けぬ発光を起こし、幽霊たちをサマフェスアゲアゲのギラッギラ状態へとメーキャップする。

『さぁさ渾身でお楽しみを!』

 あーもー眩しいなこれもう船上ピッカピカでわけがわからねえ。
 だれが敵だか味方だかもわからねえ状態である。
 まあ、たった一人は、どうなっていても絶対わかる。
 それがわかればユキにとっても十分だ。
 そのたった一人に向けて、満面の笑みと、サムズアップを送り――

――そして度々割り込んでくる鯉です。

 鯉はあのあと残念ながら想像通りミンサーで細切れになりました。
 しかしケース・バイケース。
 場合に寄る生き物です。死のうとミンサーになってちょっとブラックタールになって海水と混じろうとも再び健康体にて蘇ったのでした。
 見てくださいこの見事な鯉!

「了解した」

 そしてなんということでしょう。
 鯉はシナリオボスであるマシン・キャプテンのすぐそこまで流れてきていました。
 マシンキャプテンはいま、突然現れた巨大少女と大量幽霊に対応するためのパッチを作成していたところでした。
「先手を打ち想像しうる対抗ワクチンプログラムを転送する。速やかにアップデートせよ」
 まだ七色に光っていません。いえ正しく言うならつい先程まで七色発光していたのですが謎のウィルスバグが解除されたところでした。
 目の前の光景が由々しき事態であると言うことに気づき――そして今巨大アロマノカリスの上でご機嫌ミュージックを大演奏しているホログラム・ガールの目的に気づき速攻で対抗策をしあげていたのです。情報屋と情報屋が戦う時、速さが全てだと言う信条は確かです。

 そして鯉と目が合います。
 鯉としては跳ねるしかないので跳ねます。

 マシン・キャプテンとしてもちょっと不思議ですが鯉がこんなところにいるなんて…

「▲ KOI JYA NAI ▲ 」
 七色大発光回転――…!

「キャプテンッ!!?キャプテンッ!!!?」通信機の向こうで部下が動揺していますがマシン・キャプテンはそれどころではありません。発狂モードでうっかり正しく目の前の鯉が鯉ではないことに気付いたのでビーム・カトラスで細切れにするので忙しいのです。
 
 鯉ですか?
 びったんびったんと頑張って跳ねました。いじらしいですね。
 しかし何も起こりません。
 鯉がいかに巨大と言えど虹色回転番のマシン・キャプテンの攻撃の前にはほとんど無力です。
 ジュッッッ!!!
 もはや蒸発と行っていいでしょう!鯉は死んだ!南無三ッ!!――

――セラは眼下の幽霊たちを眺める。
 招いたのはこの夏、この瞬間を全霊で過ごしたいみんなだ。
 団扇島民が多いように見受けられる。一足早いお盆だ。
 一章で呼ばれたけど選ばれなかったティラノさんあたりが走り回って阿鼻叫喚である。

『みんな〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!楽しんでるぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!?』
 海賊船から撃ち込まれるビームミラボールライトを同じくミラーボールで跳ね返しレーザービームライトでかく乱しながら呼び掛ければ、フロアから上がる全力のWAAAAAAAY!!!
「よかった」ユキが手伝ってくれるのだ、招いておいて楽しませることができない…と言うことはないと思ったが、事実こうして楽しんでくれているのだと思えば顔も綻ぶ。特にユキが施してくれたあのメイクアップがセラにとってはとても嬉しい。幽霊とはいつだってその時点で止まってしまった魂だ。いくら望んでも、おしゃれなんてできないはずの人たち。

「ありがとね、ユキさん」
 眼下の盛り上がりからいっとき目を離し、セラはユキを見つめる。
 大きいとよく見えていいな、と言うのがひとつ。
 みんなユキさんを見ているのか、という、何か、不思議なもやがかかるような気持ちがひとつ。
 二つの矛盾を抱えながら見る彼女は、びっくりするほど可愛い。

「いえいえ」
 ユキはまた別なことを考えていた。ばらまいた花々にいくつか紛れ込ませた端末百舌からアスレチックを偵察ハックしているが――驚くほどなんの対策もない。
 一体どうしたのだろう。何か大事なものを見逃している気がすると偵察し続るがどうにも引っかからない。妙である。マシンキャプテンの情報は正確に取り込んでいる。まさかそんな例えば虹回転するとかそんな変質でもしない限りユキの目は必ず発見できるはずなのだが

『ヘイヘーイ!海賊の皆さんも楽しんでらっしゃいますか〜〜〜〜〜〜!?』

 ――まあいっか!!!

 とりあえず海賊の皆さんを煽ればブーイングサインが返ってくる。
『楽しまなきゃソンですよ〜〜〜〜〜〜!?』
 ユキとしては面白くなっていたずらっぽく返せばさらにブーイング。

『安心して。きみたちに、もう(そんな)明日はやってこないから』
 ぶは
 ユキは思わず笑ってしまう。
 それは死んでるひとからすればもうこんな日は二度とないと言う祭りの日宣言なのだが。
 生きているものからすればみんなぶっ殺すと言う終止符宣言である。「な、なあにユキさん?」あんまり動じないセラが彼にとってはなんでもないところでユキが笑ったことに驚いたらしい。「僕、変なこと言った?」ちょっと自信がなさそうな、普通の少年のような顔。
「ふふ」ユキは笑い、かぶりを振る。
「なあんでも」「ほんとに?」「ほんとです。 キャップはガチに朝日を拝めなくしますが!」グッと拳を握って力説する。「ささ、続きをどうぞ」
 ユキに促されてセラは再び眼下を眺める。
 海賊船はもはや混乱の坩堝。
 セラはそこへ何度でも呼びかける。
 
『みんなあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜今日は未練全部吐き出してブチ上げてパリピってこーねいぇーーー!!!!』
 ウェーイッ!!
 もはやどうにもならない幽霊に痺れを切らせたのか強襲揚陸型宇宙船から電磁砲が放たれる。
「うおわっ」ユキはこれをすかさずオーラを展開し防ぐが――全てとはいかない。
 ゴーステッドビッグアロマノカリスに大きく雷電が走り。

『学習完了』
 あ、うん。
 そのまま帯電を完了する。

「え?」セラはパチクリと瞬きする。
「やりました、セラ」逆にユキはもはや何の躊躇いも迷いもない明るい顔をして彼を向く。「メカリスマパイセンが帯電を」「どゆこと?」

「逆襲の時!」
 本日三倍大きいユキ・パンザマストに寄る三倍邪悪な笑みをご覧ください。

 セラは二度、三度と瞬きをしてから、
「ブッパしていいってこと?」
 うーんこれは悪の顔!
「はい!!!!!」
 そこ即答していいの!?

「じゃあユキさん降りてきて降りてきて!一緒に撃と!!!」
 待って少年何を撃つのか理解してる?

「はあい!今行きまーす!」
 三倍少女はいつもの彼女に戻り、いつもの通り彼のそばに降りる。

 何も言わずに、自然と手を繋いで。

『みんなァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!フェスといえば〜〜〜〜〜〜〜!?』
 花火〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!! 
『オッケーそれじゃあ参りますよ!』
 繋いだ手を掲げる。
 シリアスな話をすればアロマノカリスも限界だ。
 この一撃は、もしかしたら先輩に致命的なダメージを与えてしまうのかもしれない。

『サイリウム装填』 
 それでも彼は準備ができたとセラとユキに告げ。
『くれいろだけに三倍速い』
 それに付き合うのだとセラとユキは最初に結論付けている。
 
 反対側の手も繋ぎ、二人はダンスでも踊るかのような輪になって。
 先に繋いだ、繋ぎ、掲げた手を、振り下ろす。

『発射ッ――エレクトロミサイリウムビーム!』

 ビーム・ゴーッ!
 なんと美しき、一夏の橋――…。

――そしておしまいに鯉です。

 ふと気づくと鯉は真っ黒に焼けただれた瓦礫の上にで目が覚めました。
 また死んで生き返ったようです。
 うん!元気いっぱい!
 今日もいい日になりそうです。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

浅沼・灯人
真の姿(完全竜化状態※初披露)で赤銅(f01007)とメメちゃん抱えて飛んで戻ってきた

なんだこのイカれたアスレチックは!!めちゃくちゃ楽しそうじゃねぇか俺も遊ぶわ!!
と、元の姿に戻る瞬間に気付く
や べ ぇ 全 裸 だ

バックダンサアアアァァァ!!!カモン!!!
青少年の教育によろしくないであろうモノは全力で隠す
カメラから全方位守ってくれダンサー
メメちゃんもありがとな……よし隠すもの探すか
赤銅ォ!しばらくそっち頼むわ!!!

この際隠せればなんでもいいわ
とりあえず近くの宇宙船にでも乗り込んで幽霊を気合いでボコりつつ探すわ
あ、海賊旗とかある?あるならそれ使うわ

よぉし、待たせたなぁ!……え、なにこの修羅場?


多々羅・赤銅
ドラゴン灯人(f00902)とメメちゃんと抱えられ戻りしカップルご帰還花火
私のカレピカッコイイだろドヤァァァ……

こうゆうバラエティ見たことあるー!
よっしゃ灯人メメちゃん、気合入れて完全攻略してこ!
ドラ灯人から離陸し、振り返って

フワーーーオ新鮮なヌーディスト

〜メメちゃんも灯人のレーティングを守ろうとしています〜
まあ待てよ海賊達
お前らも
あのメロディには抗えねえ
一緒に踊ろうぜ
パーリナイ

と唆して数多いる海賊をダンサーに吸収させ
灯人のマッパどう隠してあげよかな〜〜あっこれとかどうだろ
催涙ガス装置を
ぶったぎり
中のガスを超噴射

みんな泣いて見えなけりゃ問題無いよね!!!!

あ、なに?隠せるのあったの?てへ



●守らねばならない戦い

 真昼の空に星の煌めきがあった。

「おらあああああああああああああああああああああああああグリードオーシャン由来の新世界垣間見ちゃったかと思ったぞどうしてくれるグリードオーシャンの戦争は絶対まだまだ先だろうがァアアアアアアアアアアア!!!!!!」

 空気を揺らし窓が有れば軽く割りかねないような絶叫シャウトをあげながら高速落下してくるのは浅沼・灯人(ささくれ・f00902)である。

 しかしその姿はいつもの彼のそれではない。

 爬虫類を思わすがそれよりはるかに猛々しい面に、今ちょっとハイテンションで見えねーけど優しさと知性の光残る瞳、瞳孔は縦。全身をびっしりと覆う鱗。鋭い爪はどう考えても捕食者のそrであり、人間と異なる関節を持つ脚。そしてきっと他にいかような生物も得ることが叶わなぬ剛翼――そこに在るのは完全な竜だ。彼の面影を探すならああ、きっと角くらいなものだろう。
 
 全世界そして浅沼灯人がこれまで参加してきた39シナリオ中当シナリオにおいてまさかまさかの本邦初公開――真の姿。

 ドウシテッッ!!!!!!!
 ドウシテココで開けちゃったのそんな大事な情報ッ!!!!!!!!!!!

 ちなみに新世界云々は完璧に胡乱なので無視してほしい。どんなふうに見つかるんだろうね。宇宙想定で書いてしまったが水中かもしれない。その時は笑って許してほしい。

 ドラゴン灯人は首にメメちゃん(※ウツボ:オス)をマフラーのように巻き本日限定彼女を抱えていた。

 カップル流星打ち上げ花火がカップルドラゴン豪速隕石になってご帰還した。

 まあ多分ここで取り乱しているのは筆者だけだ。
 見て欲しい。
 この多々羅・赤銅(ヒヒイロカネ・f01007)の全力ドヤ顔。
 これはあれである、私のカレピカッコイイだろドヤァァァ……って顔である。
 誇りをかんじこそすれ恥じらいなど一片もないってかんじの顔である。
 なんか似たセリフ2章でも見た。
 ちなみにウツボのメメちゃんはもちろん相手がドラゴンになった灯人がド好みの人外ならぬウツボ外なのは変わりないので灯人と赤銅に対する大口オープン求愛を15分おきに交互にすることを忘れていない。

「やべえなんだこのイカれたアスレチックは!!!!」
「こうゆうバラエティ見たことあるーーー!!!」
 おかえりカップルは眼下に広がるアスレチックに歓声をあげる。
 
 ッめちゃくちゃはしゃいでるとこ悪いけどカップルさんこれボス戦!!!!!
 信じてもらえないかもしれないけどボス戦の第3章なの!!!!!!!
 夏のお祭り日常フラグメントじゃないの!!!!!!!!

「めちゃくちゃ楽しそうじゃねえか俺も遊ぶわ!!!!」
 童心に返りまくったハートで灯人は変身を解く。
 ねえ確かに赤丸たまったら真の姿に変身できるけどこんな真の姿の使われ方ってされたことある??????開幕解除ってどゆこと????

「よっしゃ」赤銅は一足早く灯人の腕から離脱する。着陸しやすそうな位置にあたりをつけ
「灯人、メメちゃん、気合入れて完全攻略して」
 こ、と。
 あと一言たった一文字、こ、ということが叶わなかった。
 違う言いたかったのと違う「こ」がつくあれが大公開されていた。
 こちらも全世界そして浅沼灯人がこれまで参加してきた39シナリオ中当シナリオにおいてまさかまさかの本邦初公開――…。

「や べ え 全 裸 だ 」

「フワーーーオ新鮮なヌーディスト」

 奇しくも灯人の向こうにまだ無事な海賊船のマストがありミラーボールが輝いている。肝心な部分はカメラさんからはちょうど赤銅の束ねた髪の毛で見えないがもうなんかフワーオって感じである。
「やべえやべえやべえやべえちょっとまってまじで待って俺さっき飛んでるアロマノカリス見かけたんだけど巨大化してたあいつってあれってあれ乗ってたあいつらってあいつらってあいつらじゃんやべえやべえやべえやべえやべえ」
 こんな形で死を覚悟する日がくるとは思わなかった。冷や汗が滝で出てくる。
 件のアノマロカリスはもう灯人たちよりだいぶ上であり身を乗り出して見下ろさなければ見えないと信じたい。
「灯人深呼吸大丈夫大丈夫見えねえ今なら見えねえ見えねえ見えてねえから!!!」
 奇しくもドラゴン形態の灯人はウツボのメメちゃんを首に巻くかのように抱えていた、それが幸いした。
 灯人が戻ったことでメメちゃんは解け全裸ウツボライダーは爆誕してしまったが大事な部分は全部隠せた。メメちゃんの尾鰭が意味深にプラプラしている。 
「あああああやべえでもメメちゃんに乗ったままんまアスレチック攻略できねえじゃん衣類探せないじゃん!!」
「もういっそメメちゃん纏って行くのどーよ」
「メメちゃん纏うとしてもなんか着ねえとポロリの危険と隣合わせになっちゃうだろうが海上ドライビン・ゴーは青少年の教育に全力で優しい健全シナリオだぞ!!!」
 どうするべきか――迷った灯人の耳に届いたのはダンス・ミュージック。
「この手があった」
 灯人は眼鏡を光らせる。「どの手?」ハニーもちょっとわからない。
「今俺はまさに人生の瀬戸際の大苦戦中だ――その時にこそッ!輝くコードがあるッ!」
「マジで?いつ取ったん?」
「今」
 ユーベルコードってそうやって取るものなのお!?!?!?
 
 灯人は大きく息を吸う。
 
 灯人のターンッ!
 今ひらめいたカードをオープンッ!コード発動ッ!!!

 コンパルション
   繁縷

「バックダンサアアアァァァ!!!カモンッ!!!」

 空から降ってくるバックダンサーチーム。
 流れてくるクラブ・ミュージックに合わせてインド映画顔負けのキレッキレダンスを披露する。

 これにより青少年の教育によろしくないであろうモノをカメラさんから全力で隠すッ!!!

 ………。

 これで隠すの???????????
 マジで?????????

「俺一人のためにレーティングを上げさせてたまるかよ」
 灯人は落下がてらマシン・キャプテンによりすでに召喚されていた強襲揚陸型宇宙船の船べりを掴むことに成功ッ!ちょっと一瞬ヒヤリハットするがたくましい太ももで大丈夫だった。筋肉は裏切らない。
「ありがとな、メメちゃん…俺はもう大丈夫だ」
 全然大丈夫ではないし何ならこれから大丈夫になりに行くところだが本日限定パパとして娘(※ウツボのメメちゃんはオスである)を安心させるのは任務である。
「赤銅ォ!しばらくそっち頼むわ!!!」
 船べりから落ちて行く赤銅に向かって灯人は大声を張り上げる。カメラさんは灯人の後ろから赤銅の表情が映る位置にいるが気を使って灯人の尻の割れ始めくらいから下はきちんとフレームアウトしている。
 
「まーかせて!」赤銅はいつもの通り軽い調子で親指を立てて答えた。
 ダンサーすげえな、ほんとにちゃんと隠してる。



「衣類寄越せオラァ!!!!」
 隠してモンペが強奪の鬼となるッ!!!!
 ウツボニー・クライドの名は伊達じゃないッ!!!
 何せ相手は幽霊なのでスケスケであり全然隠す役目になってくれないしボコると消えてしまう。やはり信じられるものはエネミーではなくバックダンサー。見てあの腰の動き、あれ絶対外腹斜筋をしっかり鍛えてないとできないやつ。
 
 そうじゃなくて。

「んー」
 一方の赤銅は無事アスレチックに到着したところであった。
 新手の登場に海賊どもが一斉に武器を構えられ、やや思案。
 一緒に攻略しようと言った手前このままアスレチックを一人エンジョイするのは気がひける。
 カレピッピだってピンチだし、本日限定彼女としては何かしてやりたい気持ちがないでもない。
 そうなるとはやり強奪、ウツボニークライドするしかないのだが…どう見たってスペースシップ・ワールド由来のエネミーどもなので鉄ばっかりである。灯人にお盆ダンスさせたいわけじゃないのだ。あと地味にメメちゃんが巻き込まれる可能性がありそうで怖い。ところで何でそこに炊飯器転がってんの?

「まあ待てよ海賊たち」
 やはりここでできることは一つ。
 赤銅は珍しく刀の柄に手をかけずに両手をあげる。

「私は流れのダンサーだ」

 うんまあストリートならそれっぽいかな??????????
 空々しいオブザ空々しい嘘をつく。

「今上空の強襲揚陸型宇宙船で強奪してる男に召喚されたが船に乗り損ねた哀れな戦闘力のないバックダンサーチームの一人…」

 うんまあ体から隙のなさと剣鬼の匂いがぷんぷんするが???????
「お前らもあのメロディーには逆らえねえ…そうだろ?」
 小洒落たステップを踏んで接近してみせる。やだ…ちょっとエッチ。
 赤銅がただならぬ人物ではあるのはわかるが――しかし、判断に迷う、と言ったところか。

『行くぜお前らァ!!!!!!バイブス上げて行こうぜェ!!!!!!』
 ここで上空で戦っている灯人によるバックダンサーおかわりが入る。
 戦闘力がないが故に強襲揚陸型宇宙船に乗り損ねたメンツがぱらぱらと降ってくる。あまりに人命が軽い。
 ナイスタイミング。離れていても彼ピ。運命が通じ合っていると言っていい素晴らしいタイミングだった。
「わかったろ?」
 これはちょっとすけべなウィンクを飛ばす多々羅・赤銅。
「一緒に踊ろうぜ――パーリナイッ!!!」
 フゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜イ!!!

 ダンサーさんが増えた。
 
「あッッッッッッッッッッッッたァ!!!!!!!」
 カメラを戻してこちらは灯人。
 彼は今ようやく悲願たる布を得ていた。
 ここまで一糸纏わぬ生まれたままの姿で派手な格闘シーンをお見舞いし続けてきた苦労を思い出してしまう。なまじスペースシップ・ワールド由来のエネミーであるがゆえにフェイントや遠距離攻撃あるいは高所からの奇襲など知略を求められる相手ばかりであり何がとは言わないがなにかがプラプラしてしまうアクションを求められると言う悪路が不幸なことに幸いしてバックダンサーにより強化され続け今の彼は幽霊をワンパンでノせるまでになっていた。何が起きてるんだろうな。運命って難しい。
 そしてスペースシップ・ワールド由来であるからこその問題――休眠不要のサイボーグたちで毛布がない、宇宙船なのでビニールシートなどもない、布らしい布がないという苦難に今、ようやくケリをつけていた。
 海賊船ならばあるべきもの――海賊旗。丁寧に折りたたみ腰へ横巻きにする。

 ……。
 うん。
 筆者的にはちょっと結構ギリギリだと思う。
 角度によってはチラリすると思う。( ˘ω゜)

「おっしゃあこれで問題なしッ!」
 しかし安心した灯人の表情だけがすべてだ。
 
 そして彼は全速力で駆け抜け強襲揚陸型宇宙船より飛び降りる。
 先に行かせた赤銅の元へ――…!

 …今更だけどもっかい竜になればよかったんじゃ?

「ん〜〜〜灯人のマッパどう隠してあげよかな〜〜〜」
 そしてカメラを再び変えてこちらダンサーを語ったからにはダンサーの振りをしないといけないがゆえにダンシングしながら考える赤銅。
 ちなみにコサックなダンスである。だって今水上鉄球の上走ってるんだもん。
 ウツボのメメちゃん(オス)はその隣で泳いでいるので全く問題はない。
 スペースシップ・ワールド由来であるがゆえに利用できる布がない可能性に赤銅は思い当たってい――

「あ」
 鋭い方はきっとこの「あ」ですべてを察するだろう。
 海上ドライビン・ゴー、このウツボニー・クライドに何かが起こる時は必ず赤銅が何か閃いたり発見したり押していたことを。
 一度あることは二度ある。
 二度あることは三度ある。
 よってまあ、うん、2章も言ったけど3章でもこう言わざるを得ない。

 多々羅・赤銅、閃きました――…!

 コサックを止めて素早く刀を抜く。
 目がけるは鉄球の先。
 定期的に煙むせぶ、催涙エリア――。

「これとかどうだろ」
 剣刃一閃ッ!
 
 素早く壁を断ち斬る――リズムとリズムの間の、ほんの一瞬の一撃とは思えぬ一撃。
 赤銅は自らが開けた切断面に手を突っ込むと『それ』を掴んで引きずりだす。

「催涙スプレ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 ポケットから秘密道具出すみたいな声だした。

 そして再びメメちゃんに騎乗する赤銅。引きずり出してきた壁の中の催涙ガス装置をたっぷりと乗せて。
 愛に満ちたメメちゃんに取って何の重みでもない。

「いやあ水上アスレチックでよかったわ。あっちこっちびしょ濡れだもんな」
 もはや家族のような愛着すら湧いたウツボの背を優しく叩く。
 メメちゃんは大口を開けている。何度でもいうがウツボの大口は求婚である。

「はいはい、あとちょっとだけ頑張ってな、灯人帰ってきたら飯食い行こーな❤️」
 うん最後まで伝わることはなかった。
「行くぞメメ」
 たった一人でもウツボニー・クライド。
 赤銅は非常に意地悪く楽しそうな笑みを浮かべ――メメの出発と同時に催涙ガスを超噴射する。

「ヒャッハァーーーーーーーーーーッ!!!!」

 やっぱりレースといえばこのシャウトですよね。
 催涙ガスをぶん巻きながら海上アスレチックを爆走するウツボッ!!!!!
 ちなみにメメちゃんの安全を考えて赤銅共々そこらへんからもぎ取ってきたゴーグル付きッ!!

「みぃ〜〜〜〜〜んな泣いて見えなけりゃ問題無いよね!!!!」

 悪 辣 ッ !

「赤銅ォーーーーーーーー!!!」
 そしてここに灯人が間に合う。
 空から降る限りなく全裸に近い彼ピ。
「おかえりィ!!!」
「おう待たせたなァ!」  
 着陸ッ!!!
 見えないッ!!!セーフッ!!!

「……え?何この修羅場?」
 下手こけば涙が止まらない鬼アスレチック。
「あ、何、隠せるのあったん?」
 スイッチを切りながら赤銅はまじまじと灯人を眺める。「おう、なんとかな」かなりギリギリだけどな。
「で、これどしたん?なんかやべーのでもいたん?」
 灯人があんまり不思議そうに周りを見回すので。
 アイコンのほっぺに私がやりましたって書いてあって言い逃れのしようもないので。
 赤銅は。

「てへ♡」

 とりま笑ってごまかしておいた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

幽遠・那桜

もふもふさんは終わりなのです?
もっともふもふしたかったです……

じゃあ、墨染で行ってみよー♪
(空中浮遊、全力魔法、限界突破)
墨染で来ると思わなかった?
だって、虹発光して時々回転しながら速度を上げ電撃を纏って襲いくるって怖いんだもん♪怖くないけどね!
止められるかなー♪止められるといいなーってことでUC発動するね。
イルカさんは、頑張って調理されないでね♪(にっこり墨染スマイルの圧☆)
UCはきっと、限界突破したらビームくらいなんとでもなると思うんだ。きっとそうだよ!
で、接近してー、マシンだから鎖で絡めてボッコボコにしちゃえ♪



▲!ロリについてのある考察!▲

 幽遠・那桜(微睡みの桜・f27078)はイルカの上で肩を落とした。
「もふもふさんは終わりなのです?」
 はい、車に轢かれて死にました。
「もっともふもふしたかったです…」
 2章は気がついたら始まって気がついたら終わってると思ったら3章も気がついたら終盤である。トンチキの濁流がすごすぎて今までマシン・キャプテンすらあんまり登場しているようでしていないちょっとモブみたいな扱いになっているしアスレチックがほぼほぼ崩壊している。
「なんだか、ちょっと寂しいのです…」
 イルカの上で膝を抱える。風の精霊さんに頼めば空中浮遊して船上へ行くことは容易いのだが、ちょっとばかり昇る勇気が出ない。
 びしょ濡れの12歳幼女。
 趣しかない。胸の奥のロリコンハートがワクワクしてしまう。
 
 カッ――「ふえ?」視界にありえない七色の光がチラついたので見上げれば船べりに七色にひかるマシンキャプテンが立っていた。

  ロリ コン ジャナイ
「▲RORI KON JYA NAI ▲」
 
 これ、那桜ちゃん何も悪くないやんけ――…!

 なんとナレーションに対するツッコミという形で七色虹回転が始まってしまう。

「ふえ…ふええ!?」
 もう完全に巻き込まれたとしか言いようのない那桜は後ろに下がりたいが下がれない。

「▲ロリコンとはロリータ・コンプレックス 、元はロシア語であり綴りは Лоликон -英字で綴るならば Lolikon, Loliconとなるが、幼女・少女への性的嗜好や恋愛感情のことを意味しこれを略したものをロリコンという。ロリコンと略す場合は、幼女・少女への性的嗜好や恋愛感情を持つ者のことも指すことがある▲」

「な、何を言ってるのですか!?」
 だいたいネットで検索すると出てきそうなあたりの情報です。
 動揺する那桜の目の前で七色発光虹回転マシン・キャプテンは強襲揚陸型宇宙船を召喚する。
「…つまり?」
「▲つまり――ロリコンがワクワクするという表記は全体的に間違っている▲」
「それ私ぜっっっっっっっっったい関係ないのです!!!!」
 ごめんね。

 もはや半泣きの抗議を叫ぶ那桜の雰囲気が、そこで、変わる――…

「あなたがそうくるのなら、墨染で行っくよー♪」
 今までのおびえをどこへやら、悠然と少女が笑う。
 体は宙へと浮かび、普段抑えられているはずの魔法は限界を超えてなおいつでも全力が注げる状態へ。
 
「こういう時、どうするのか知ってるよ♪」
 墨染と化した那桜は躊躇いもなくマシン・キャプテンの眼前に移動する。

「あなたの言う通り、速さ――先手必勝、なんだよね♪」
 やはりナイスロリ、浮かべた黒い笑みが少女にあるまじき暗闇とナイスセクシーさを匂わせる。今でも素敵だけど5年後が楽しみですね!

「▲ザッツライ▲」
 虹回転マシン・キャプテンは那桜の言葉を酷くあっさりと肯定した。
 きらり、宙に光が走る。
 ミラーボールではない。そんなものはだいたい折られてしまった。
 マシン・キャプテンが召喚した強襲揚陸型宇宙船から放たれたレール・ガンである――!

 そう、このモードは曲がりなりにも一応なんだ高難易度――胡乱の上を行く胡乱ッ!!
 正論でくると怪我するのである!!!!
 別に可愛い少女がちょっと傷つく様をみてみたいとか言う希望ではなくて!!!なくてね!!!!?

「きゃあっ!?」
 那桜はとっさに防御を張って防ぐもやはり高難易度、那桜は一度弾かれて海へと投げ込まれてしまう。
 ヘイびしょ濡れロリ一丁ッ!!
 と思いきや水ドボン寸前で耐えるッ宙で一回転!パンツ見えないッ!ナイスキュートセクシーッ!!!ちょっと惜しいッ!!

「あなたの実力はわかったよ」
 水面ギリギリで浮く那桜の笑みが、未だない形で引きつる。
 墨染の那桜といえば、負の感情を爆発させる際には感情が剥がれ落ちたかのごとき無表情が特徴的である。 
 しかし今――浮かぶ那桜の笑みには。
 明らかに青筋マークが見えた。
「虹発光して時々回転しながら速度を上げ電撃を纏って襲いくるって怖いなあって思ってたんだ♪」怖くないけどね、と付け足して。

「でも、そうじゃなかった」
 那桜が取り出すはネックレス。灰簾石の短杖へと組み替える。

「イルカさん、頑張って調理されないでね♪」
 この少女、可愛い顔して女王様気質である――…!
 イルカは思わず震えてしまう。あの少女の一体どこにこんな顔が。
 一体どんな思いを抱えればこんなことになるのか。わからない。それを掘ったらシリアスになってしまうので今はまだそこを語る時ではないとしか言いようがない。とりあえず可愛い。

「止められるかなー♪止められるといいなー」
 那桜は遊ぶように振るい、杖の先に現れるは12の数字が記された正しき文字盤。

「十二の時が刻むとき。それはあなたの時間が止まる時――」

 さらり、詠唱を口ずさむ。
 ……。
 
 うん、これガチのやつや――…!

「あなたは“むかつく”んだ」

 ユーベルコード“時の術・刻みし時の断片”。

 強力なコードを察知した強襲揚陸型宇宙船から一斉射撃が放たれる。
「邪魔しないでよ」
 時計から伸びた鎖が強襲揚陸型宇宙船を絡めとる。
 …鎖は、船の動きを止めるにはあまりに短いように思われるかもしれない。
 しかし、那桜のそれはただの鎖ではない。
 時の術。
 その現れであるからして――これに触れたもの、その部分の時を止めるのである。
 総勢12本、今は一本使っているから、残り11本か。
 ちなみに今は割りとキレモードなので本船ほどのサイズではない強襲揚陸型宇宙船船一つ、止めることに成功するッ!!!!!!

「わかったかな?自分の力量が」

 す ご い 悪 役 み た い な セ リ フ 出 て き た 。

 桜の精はッ!!!怒らせてはいけないッ!!!!
「▲YES▲」
 マシン・キャプテンのアイサイトがフラッシュした。
「きゃ」那桜は思わず目を瞬く。
「▲――それで勝った気になってはいけない、ロリータ▲」
 マシンキャプテンが回転し始める。
「▲ここは胡乱の世界――パワープレイと速度で挑むと言うのなら▲」
 今胡乱の世界って言った?

「さらなる胡乱で迎えよう――▲」
 カッ!!!!!!
 マシン・キャプテンは七色に回転を始める。

「▲貴様のッ!鎖がッ!尽きるまでッ!!!!▲」

 その背後から次々現れる、強襲揚陸型宇宙船。

「強襲揚陸型宇宙船を召喚し続けることをッやめないッ!!!」
 
 ……。
 キャプテン、12歳の少女にあまりにも容赦がなさすぎやしませんか――…!

「いいよ…そうする前に鎖で絡めてボッコボコにしてあげる♪」

 那桜は袖をまくる。

 えっ????????

 ボッコボコって素手?????????????

 ――…。

 …たしかにこのあと紆余曲折の激闘の末。
 那桜のスカート丈マイナス5センチを引き換えにマシン・キャプテンは那桜にボコられることになるのだが。
 それが素手だったかどうかと言うのは。
 一体どんな処刑方法だったのかと言うのは。
 那桜の名誉のために、伏せさせていただく所存である――…!

成功 🔵​🔵​🔴​

スキアファール・イリャルギ

なんか騒がしいですねジンベエさん……
海賊船?
あぁ……
ところでなんで名前しょーちゃんなんですか……(やる気が無い!)

だってまだ強制キャリー中ですよ私
この状態からどうやって……
あ、そうか射出スイッチ(ポチッ
でもこれ向きとか速さって制御でk

――あぁ、先生……
私、本当に生きてていいんですかね……
(普段から死んでる目がさらに死んだ)

もうやだ……
なんで自分から辛い目に合ってんだ……(隅っこ体育座りの気持ち)
もういい、全部海に沈んでしまえ……
(霊障で片っ端から壊す)
(んでさらに大量の影手で沈ませようと)

あぁ、私も沈もうかな……
きみとの約束が案外早く果たせそう……
(「まだ生きて!?」って感じに瞬くひかり)



▲ 射出 #とは ▲

 長い長い長い長い長いため息がスキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)の口から漏れた。
「なんか…騒がしいですねジンベエさん…」
 スキアファールは今ジンベエザメのしょーちゃんの背中に強制キャリーというストレッチャーに拘束的な本人のトラウマを隙間なく刺激する状態でレースに参加している。
 参加している、と言うか…なすがまな…流れるままってやつである、これ……。

「ああそっか、2章終わって…3章入ったんでしたっけ…?」
 ふう、とまた一つ息をする。
 なんせ断章では戦場になっている船上の宣言が公開されているがスキアファール自身はずっとこの海上キャリー状態で水平線と水平をキープしたまま並行して移動だったのでなにもわからない。
「海賊船…でしたっけ…」
 スキアファールのやる気がどこまでも壊滅している。
 途切れ途切れに聞こえたやりとりや先行して入った猟兵たちの騒ぎと硝子剣士かの依頼のノリからしておそらく船上に上がってボスを殴って沈めるあたりだろうと予想される、…予想されるが「イカレたアスレチック」とか言うシャウト聞こえた。嫌だ。行きたくない。本当に行きたくない。SPD最低値だし運動技能に自信は全くないのに本当に一体なんでこんなことに。
「ところで、なんで名前しょーちゃんなんですか?」
 ざぶ、と一度大きく揺れる。
 …なんらかの返事をしたのだろうが、生憎スキアファールには動物と通じるスキルはないのでわからない。
 ちなみに本当になぜしょーちゃんかと言うと照ちゃんと書くのだがしょーちゃんに乗ると太陽照りってりでクソ眩しいからである。閑話休題。

「あぁ…」
 でもこのまま何もせずゴールインするのも嫌である。
 まずこのトラウマをガリガリやられる状態から脱出したいというのもあったし、
 なんだかんだ猟兵の依頼を果たす手伝いを少しでもしたいというのもあった。
 …この猟兵、なんだかんだ真面目である。

「でもまだ強制キャリー中ですよ私…」
 ところで誰と会話してんの?私?「ええ、まあ…」
 そっかあ…。
 ………。
 そっかあ!?
 えっ、とりあえず脱出とか試みたらいかがでしょうか…。
「いやいや見てくださいよこのホールド状態。この状態からどうやって…」
 スキアファールはゆっくりと両腕を動かし――それの存在を思い出した。

「あ、そうか」
 射出スイッチ。

 カチッ。
 
 お、押したーーーーーーーーーーッ!!!
 ノータイムでッ!!!!押したッ!!!
 
「あれ」

 スキアファールは押してから気づく。

 そういうとこである。
 だから硝子剣士が股間打ってるところに近寄ってってうっかり転送とかそういう目に合うのである。
 胡乱お兄さんならぬ迂闊お兄さんは押してしまってからスイッチの奇妙な点に気づく。

 射出スイッチ。

 ボタンしかなかった。

「でもこれ向きとか速さって制御でk」
 
 ドゥンッッ!!!!
 
 ……。
 何が起きたかをご説明しよう。
 
 布団が吹っ飛んだ。

 今までの運動が水平なら。
 このスイッチがもたらした運動は垂直。

 おそら、ちかい。

 キャリーする台の裏に付けられたジェットによる打ち上げにより垂直に打ち上がった布団ことジンベエザメのしょーちゃんの鞍ことストレッチャーのベルトはこの爆発の勢いで弾け飛びスキアファールは3章大体千字くらいの時点でようやく自由をゲットした。ゲットのしかたが思ってたのとだいぶ違う。
 打ち上げの高度は12メートルほど。割と高い。

―あぁ、先生……。

 思わず2章のお手紙に追伸を添えてしまう。
 普段から死んでる目がさらに死んでしまう。
 
 私、本当に生きてていいんですかね……。

 あとなんとなく薄々感じていたけど肌がピリピリする。こんな直射日光をこんなに浴びることなかったからたぶん日焼けが発生している可能性がある。そしておそらくずっとサングラスしていたのでパンダのようにサングラス焼けが発生している可能性が大いにある。

「もうやだ……」
 宙に浮かび上がってそして落ちていく。
 スキアファールの耳はきちんと海賊船の騒ぎを聞き取っている。
 キャプテン空から布団が。
「布団じゃないです…」
 落下しながら届かぬ抗議をする。
 しかし姿勢だけでいえばスキアファールは長方形のマットに真っ直ぐ仰向けに横になっている姿勢であり両手は腹の上。まあ布団っぽいと言われれば否定はあんまりできない。
「もうやだ…本当にいやだ…」
 そしてこの不慮の事故によって打ち上がってしまった物体Xこそスキアファールに向かって宇宙船が銃で狙いをつけてる。違うんです。待ってください。これには訳が。
 もう今すぐ隅っこが欲しい。体育座りしていたい。

「私、なんで射出スイッチ押しちゃったんだろう…」
 わからない。
 それはそこにスイッチがあったからとしか言いようがない。

「なんで自分から辛い目に合ってんだ……」
 
 ず、ぞぞ。
 スキアファールの影がうねる。
 溢れ出すのは無数の歪な影なる手。
 細くて歪な腕には朱殷の蓮華が刻まれており、放たれた攻撃を次から次へと飲み込んでいる。

「もう、いい…」
 おそらく当シナリオにおいて一番投げやりな声音だった。
 
「全部海に沈んでしまえ……」
 スキアファールのあまりにもなんかもうどうしようもないけどたぶんみんな聞いたら納得してくれる爽やかな絶望により攻撃を飲み込んだ手は止まることを知らず、次から次へとモブ海賊どもを海へ海へと引き摺り込んでいく。

 おそら…ほんとにきれい…。

「あぁ…もう私も沈もうかな…」

 突 然 の 自 殺 願 望 フ ル バ ー ス ト 。 

 スキアファールはただただ美しく思える空に、美しく胸の奥に輝く光を重ねて見る。
 光の彼女、取り乱してる。
 取り乱してるよスキアファールさんッ!!!!!

「ね、きみとの約束が案外早く果たせそうだよ」

 聞 い て ッ ! ! ! ! 
 ま だ 生 き て ッ!!!!!

「きっとさ、私たちの命を吸って咲く蓮は、きれいだよ

 スキアファールはどこまでも柔らかく微笑んで、まぶたを閉じた。

 まあこの後コーヒーカップパーティーにブッ込まれてそれどころではなくなるのは、別の話。

成功 🔵​🔵​🔴​

ロク・ザイオン
📞😿⭐レグルス⭐😿📞

どうして。
(フグの家庭内暴力も収まり相棒も隣に帰ってきて
けれど心の溝が埋まった気がしません
このエア電話も何処に繋がっているのだろう)

(万華鏡の如く増えてゆく自分たち
回転は攻撃であり防御、既に証明されている
アスレチックを虹色のバズソウで根本から薙ぎ倒す!)
ジャック
キミには今何が見えているんだ…?
れあえんしゅつ?
そう。
真ん中から、シュッて。
そうか…
(つまりキミはこう言いたいのか
虹色は、強いと)

わかった。
(やっと、キミと繋がった気がした)

(「生まれながらの光」を七色に纏い
虹回転バズソウに紛れ、最接近した瞬間に【ジャンプ】
【早業】でその首を狙う)


ジャガーノート・ジャック
🌀☕️▲🌟レグルス🌟▲☕️🌀

流れで察して頂きたい。(ザザッ)

(賢明な諸君は既にお気付きであろう。プレイング一行目で既にダメな感じの🐆である事を)

(頭の悪いアスレチックと化した戦場が見える。もう帰ってゲームしてぇな。今年のF●Oの夏イベ何かな……水着……コーヒーカップ……回転……)


――そうか。

(豹が選んだのは)

ゴールデンサークル
"黄金回転"だ。
("回転力"でした。)

("Tempest"で性懲りもなく電気と砂嵐を流す。
するとどうなる?知らんのか。)

(☕️が増える。🐆🐈ごと。)

(増えた☕️と⚡️で巻き起こる小宇宙的回転――!!)

――見える物?
  ユメ
"レア演出"……かな。(ザザッ)



▲ きみのことを絶絶絶ッッ対に倒しに増えた百組のレグルス▲

 限界だった。

「どうして」
 
 ロク・ザイオン(月と花束・f01377)はエア受話器を片手でキープしたまま身動きできずにいた。
 ロクはヒトデオンコーヒーカップの上で大人しく座っている。なんなら空いている片手で膝も抱えている。
 フグの家庭内暴力も収まり、相棒もとなりに帰ってきました。
 レグルス復活だと思います。そのはずです。
 けれども

「“流れで察して頂きたい”」
 相棒、ジャガーノート・ジャック(JOKER・f02381)との、心の溝が埋まった気がしません。

 そもジャックがしていたからロクは真似したけれど、このエア電話も何処に繋がっているんだろう。わからない。ひとの世界はまだまだ難しい。
 なにがいけなかったんだろう。なんだか寂しい気持ちがして思わず鼻をすすってしまう。

 限界だった。
 ロク・ザイオンが限界ならジャガーノート・ジャックは2章から限界だった。
 賢明な諸君はお気づきだろうがこれはもうどうにもならないぐらいダメになったジャガーノート・ジャック。すごいレア。いやどうだろう。

 ロクが今となりで膝を抱えているなら、ジャックの場合はジャックの内側の彼が膝を抱えるどころかうつ伏せに倒れ伏している。
 燃え尽きて燃えカスも残ってねえよもう。

 眼下では頭の悪いアスレチックと化した戦場が見える。
 いろんなものが見えた。極道大虐殺とかシャチと昆布とかマッハ7のペンギンバーサーカーアスレチックなんちゃって仕様とか突然七色に発光するドローンとか普通乗用車が横切ってったとかウツボとか布団が吹っ飛んだとかお盆パーリナイとか幼女VS大量の宇宙戦艦とか鯉とかなんかいろいろ見えた。
 今からあそこに行かなきゃいけないらしい。
 マジで?
 しかもたぶんこの流れはトリだ。オオトトリだ。
 今までずっとトンチキ見て来ててさらにトンチキすんの?まじで????知恵熱出そう。
 ヒーローでありたいハートに拒否反応の蕁麻疹しか起こらない。
 これに飛び込まずにボスとか戦わずに七色虹回転とか見ずに帰りたい。
 いやここから見えてるしあの戦場に飛び込むと間違いなく遭遇する。絶対いやだ。
 だって1章で付与したかったのはヒトデであってボスじゃなかった。あれは完璧にアドリブだった。エレクトリカルがバレードするなんて思っても見ないじゃん。

 もう帰ってゲームしてぇな。
 ジャガーノート・ジャックとは今ちょっと呼べないすり下ろしたとろろ芋みたいになってしまったメンタルで彼はぐだぐだ考える。
 今年のソシャゲは夏イベ何が来んのかな、猟兵は水着コンテストが終わったけどナイス足今年の水着は何が来るのかなナイス足な感じなのが来るといいな。
 水着、足…ソシャゲのガチャ演出を思い浮かべる。
 そういや1章あたりで激レア演出音聞いたけど誰か回してたのかな…コーヒーカップもそうだけどガチャはやっぱり回転数が全てだよ、回転…コーヒーカップ…回転…。

「――そうか」
 その瞬間、彼は“ジャガーノート・ジャック”へと舞い戻った。
「ジャック?」
 ロクは受話器をキープしながら突如立ち上がった相棒を見つめた。
 ロクとジャックの目が合う。
 なんだか約一ヶ月ぶりぐらいに合うような気がした。リプレイの提出時期的な意味で。ごめんね。
「“…ロク、それは?”」「受話器」「“置きなさい”」ロクはそろそろとエア受話器をそっと置く。いやエア受話器であってつまりエア、手元になんもねえのだがまあそんな野暮言うなよ。
「…ジャック、どうかしたのか?」
 ロクは今のジャックに先ほどまでの彼には無かった力強い意志を感じた。

「“ああ。ロク――任務を急速に終わらせる手を思いついた”」
 ジャックの脳裏にあるのは一つの閃きだった。
 悪魔的思いつきであった。
 エレクトリカルなパレード――両手の人差し指と親指を立てて、窓を作ってみせる。
 黄金長方形を。
 
 ジャガーノート・ジャックの選択、それは。

 ゴールデンサークル
「"黄金回転"だ」

 回転力。

 運命がこないなら来るまで回せばいいのである。

 ?
 ロクは首を傾げる。
 ちょっと何言ってるかよくわからないですね。

 わからないロクを置いて、ジャックはそのままコードを発動する。

 "Tempest"――自身の存在定義を崩し、飽きもせず懲りもせず、電気と砂嵐を巻き起こす。

 回転する。

 複製の電磁砂嵐。

 範囲は、このコーヒーカップだ。

「ジャック」
 ロクちょっと久々に相棒がよくわからない。
 突然回転し始めててほんとにちょっとよくわからない。説明が欲しい。
 しかしわからないことをわかるロクがここにいた。
 故に問う。

「キミには、今何が見えているんだ?」
「“見えるもの、か”」

 そうするとどうなるか?
 知らんのか。

   ユメ
「"レア演出"……かな」

 どうして推しって出ないんだろうね。
 もう出るまで回すしかないじゃんね。

 コーヒカップが増える。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 複製しているジャガーノート・ジャックと困惑しているロク・ザイオンごと。

 ヒトデは複製しない。
 複製されたコーヒーカップはどこにペーストされるか?

 知らんのか。

 すぐそこのクソアスレチックだ。

「“ロク。今度遊園地を調べるといい”」
 そしてコーヒーカップを。

 回転しよう。
 コーヒーカップはコーヒーカップらしく。
 遊園地にあるコーヒーカップは、本来テーブルを模した回転床に乗っているものなのだ。
 かくしてクソアスレチックは、増えに増えたコーヒカップWith レグルスで、いっぱいになる―…!
 これコーヒーカップつかベーゴマじゃね?
 つまり、クソアスレチックともう顔も見たくないエネミーを電磁波と物理で弾き潰そうと言う、あの、そう言う、怠惰極まりない夢でしかない「なんかもーなんもしねえで敵死んでくれねえかな」、の実現。絶対的戦略である――!

 もうこれでいい。
 回ってるだけで後はもうどうにでもなる。
 冷静になると回ってるだけのヒーローってどうなのってちょっと辛くなるので絶対考えてはいけない。
 電気と電気は反応し合いいつしかアスレチック自体が高速回転を始める。
 その中でコーヒーカップはぶつかりしかし増えもうなんかよくわかんねーけど船とかモブとか関係なく微塵にすりおろし始めてしまうのであるッ!!!

「れあえんしゅつ?」
 ジャックの言葉をロクは正しく受け止める。
 とても楽しそうに見せてくれた、ゲームの、えんしゅつ。

 真ん中から、シュッ、ドーン…!

「そう」
 
 ほら、こいつはすごく強いんだよ。
 七色の光。
 虹色は、すごく強い。

「そうか…」
 ロクは微笑む。
 なんだか今回の依頼は、すれ違いばっかりだった気がするけれど―― やっと、キミと繋がった気がしたと、ロクは確信に近い何かを得る。

 エア受話器なんていらなかった。

 やはりレグルス。
 和解が、疎通が成立する。 
 いやこれを疎通としてカウントしていいのかと言われると若干疑問が残らないでもないが。
 もうロクの笑みが爽やかなのでそれでいいだろう。

「わかった」

 そして相棒に応え、ロクもまたコードを使用する。
 生まれながらの光――七色大発光。
 ゲーミング森番というにはその輝きはあまりに清らかだ。
 本来回復の用途に使うものだ。
 だが幸いかな。
 なんとジャガーノート・ジャックは疲労していこそすれ、負傷していない。
 よって生まれながらの光は、今ここに使用無制限限定目眩しとなる。
 ファースト・ロクが発光すればセカンド・ロクも発光し全てのロクが発光する。
 何言ってるかわかんねえどころか理屈はわかるけどちょっと考えたくない光景が広がる。

 そして森番は飛び立った。
 運命の回転はロクを然るべきその時へ運び――そして、嵐に回されるままに跳躍。
 マシン・キャプテンの首を早業にて狩り、落としたのである――ッ!!!!



 かくして、トップスピード海賊団は海の藻屑、どころか砂塵と変わる。
 一体トップが誰だったのか。
 誰の写真がどれくらいのお値段で売れてしまったのか。
 そう言った些細な出来事は語るまい。
 このもう初めっから最後までよくわかんねー物語の締めにはこの光景がふさわしい。
 平和な光景である。
 君たちはこのクソトンチキ胡乱レースで海賊団をぶちのめし、確かにそれをもたらしたのだから。

 あれからどれくらい後か――少なくとも、そう遠くない未来の光景だ。
 キミは縁あって団扇島を訪れた。
 笑顔や希望や期待で輝くたくさんの人々の顔がキミを待っている。

 キミは。
 キミは。

 キミは発魚機に並んだイルカ・シャチ・サメ・ノコギリザメ・マグロ・巨大ウツボ・マンボウ・ペンギンの中から好きな海洋生物を選んで乗るようにと言われる。
 もしあるのなら、キミ自身の小型の船でも構わない、と。

 そう。毎月恒例団扇島文化の大レースである。
 うん。
 文化なんだ。
 人も魚もほとんど死ななくなった。
 でもパイ投げとか死なない分トンチキな妨害が増えた。
 螺貝が鳴る。
 威勢の良い声が、渋々海洋生物に乗ったキミの背中を押すだろう。

 海上・ドライビン・ゴーッ!!! 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月25日


挿絵イラスト