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帝竜戦役③〜カダスフィアフォートの対局

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #帝竜 #カダスフィア #群竜大陸

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「帝竜戦役への参戦に感謝します。リムは戦況を報告します」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、リミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は群竜大陸を表した地図を広げると、淡々とした口調で語りだした。
「緒戦の攻略は順調に進んでいます。皆様の活躍のお陰で、ヴァルギリオスに『再孵化』された帝竜の一体、カダスフィアが支配する地の攻略が可能となりました」
 彼女が指差したのは地図上では③とマークされた箇所。チェス盤のように平坦な白と黒のチェック模様に覆われたこの奇妙な大地に、最初の帝竜が待ち受けているという。

「カダスフィアは戦術眼に優れた帝竜で、猟兵に備えてほぼ自軍の編成を終えていました。あと1日か2日でもこちらの侵攻が遅れていれば、攻略は困難となっていたでしょう」
 単純な力だけでなく大局的な視野も兼ね備えたかの帝竜は、かくなる上は自らを捨て駒としてでも猟兵の攻勢を削ぎ、ヴァルギリオスに勝利の栄光をもたらさんと考えている。
「彼の能力は周囲のあらゆるものをチェス盤や、チェスの駒をモチーフにした眷属に変えるというものです。カダスフィアの支配地『カダスフィアフォート』は、まさにこの能力によって塗り替えられた、彼のための戦場と言ってもいいでしょう」
 大量の兵力を文字通りチェスの駒のように自在に動かし、盤面さえも操作する強大な力にいかに対抗するか。これまでの強敵と同様、その糸口を見つけ出すことがカダスフィア攻略の第一手となるだろう。

「端から大局的な勝利のために我が身を捨てる覚悟のカダスフィアに、慢心や油断はありません。舐めてかかればチェックをかけられるのはこちらの方になるでしょう」
 帝竜戦役は始まったばかり。ここでカダスフィア一体に多くの時間を費やせば、残る帝竜達はその間に猟兵を迎え撃つための軍備を整え、攻略はより厳しいものとなるだろう。
「そうなればまさしく敵の思う壺です。全力を以って、かの盤上の帝竜に終焉を」
 リミティアはそう言って説明を終えると、手のひらにグリモアを浮かべて群竜大陸への道を開く。向かう先はチェス盤に覆われた異形の大地、待ち受けるは帝竜カダスフィア。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 いよいよ最初の帝竜が姿を現しました。今回の依頼はチェス盤の大地を支配する『帝竜カダスフィア』との戦いになります。

 このシナリオでは下記のプレイングボーナスに基づいた行動を取ると判定が有利になります。

 プレイングボーナス……『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』。

 『帝竜カダスフィア』は必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります。
 戦術眼に長けた彼は現状の戦局を理解し、自らが捨て駒になることも覚悟のうえで戦いを挑んでくるので、驕りにつけこむような作戦は成功率が低いでしょう。帝竜の名に恥じぬ強敵ですので、どうか全力で挑んでくだされば幸いです。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『帝竜カダスフィア』

POW   :    ビルド・カダスフィア
無機物と合体し、自身の身長の2倍のロボに変形する。特に【チェス盤化した、半径100m以上の大地】と合体した時に最大の効果を発揮する。
SPD   :    ミリティア・カダスフィア
【チェス型ゴーレムの大群】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    形成するもの
自身からレベルm半径内の無機物を【チェス盤やチェスの駒を模した怪物】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。

イラスト:あなQ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シグルーン・オールステット
※アドリブ絡み歓迎

あれが最初の竜か。竜と戦うのは初めてだけど、大物相手の戦いの経験ならある。恐れずに行こう。

まずはチェスの駒の群れをなんとかしないといけないね。
相手の動きと特性を見たうえ攻撃は行わず回避最優先。「オーラ防御」で身を守りつつ「ジャンプ」や「吹き飛ばし」なんかも駆使して囲まれないようにバイクを走らせよう。

攻撃の機会が回ってきたら一転攻勢。本体目がけて突撃。相手が地上でも空中でも関係ない、ボクの愛馬なら、どこにでもいけるからね。
相手の攻撃を躱したら勢いそのままに轢いて一気に駆け抜ける。


ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎

前座はある程度蹴散らしたし、いよいよ本番ねぇ。
中ボスとはいえドラゴンどもの親玉の一角には変わりないもの。
きっちりと、ブッ潰さないとね?

軍勢の召喚は止められないし、端から潰してったんじゃキリないわねぇ。
ミッドナイトレースに○騎乗して突撃、一気に切り込みかけるわぁ。
囲まれた瞬間に●粛殺を発動。強化された〇範囲攻撃で一気に〇なぎ払うわよぉ。
こいつは戦術眼に優れた竜だって話だし、戦力計算くらい一瞬で終わらせられるはず。
…けど。「計算の終わった相手の戦力値がいきなり三倍になる」なんてことが起きたら、多少は計算狂うでしょ?
こういう状況での〇だまし討ちは、食らうほうが悪いのよぉ?



「あれが最初の竜か」
「前座はある程度蹴散らしたし、いよいよ本番ねぇ」
 チェス盤に覆われた大地「カダスフィアフォート」に踏み込んだシグルーン・オールステット(銀光の乗り手・f23940)とティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)。そこで待ち受けていた茶褐色のドラゴンこそ、彼女らが最初に対峙することになる帝竜・カダスフィアであった。
「来たか猟兵よ。先手は取られたが、我に投了はない。ヴァルギリオス様の御為に、貴様達の勝機、ここで摘み取らせて貰うぞ」
 厳粛さを感じさせる声音でそう宣いながら彼の竜が腕をひと振りすると、大地を埋め尽くすチェス盤が隆起し、チェス型ゴーレムの大群が姿を現す。ここは既に彼のための盤上。圧倒的軍勢を采配する王(キング)に対し、猟兵達は挑戦者であった。

「竜と戦うのは初めてだけど、大物相手の戦いの経験ならある。恐れずに行こう」
「中ボスとはいえドラゴンどもの親玉の一角には変わりないもの。きっちりと、ブッ潰さないとね?」
 敵の強大さと兵力を正しく認識しながらも2人の猟兵に恐れはない。シグルーンは"Pegasus"、ティオレンシアは"ミッドナイトレース"と名付けた宇宙バイクとバイク型UFOに跨り、エンジンを吹かしながらハンドルに手をかける。
「さあ行こう」
「行くわよぉ」
「来るがよい」
 二騎がチェス盤を駆け出すのと同時にゴーレムの兵団も一斉に動き出す。帝竜戦役の趨勢を占うであろう、最初の帝竜との戦いの火蓋は、ここに切って落とされた。

「まずはチェスの駒の群れをなんとかしないといけないね」
 シグルーンは幼い頃から乗りこなしてきた愛機を操り、襲い来る軍勢の中を疾風のように駆ける。まずは相手の動きと特性を見極めるために攻撃は行わず回避に専念。オーラの輝きで身を守りながら、敵に包囲されないようにバイクを走らせる。
「強大なナイトやルークも時にポーンの1兵卒に討ち取られる事もある。我が用兵術の粋を見よ」
 カダスフィアの采配の下でゴーレムは一糸乱れず進軍し、手にした武器や拳で打ち掛かってくる。シグルーンは巧みな操縦技術を駆使して敵兵を飛び越え吹き飛ばしていくが、その動きを読まれているかのように、徐々に逃げ道が狭まっていくのを感じていた。

「軍勢の召喚は止められないし、端から潰してったんじゃキリないわねぇ」
 このまま受け身では勝機は来ないと判断したティオレンシアは、ミッドナイトレースのギアを最大まで上げると敢えて敵の真っ只中へと突撃を仕掛ける。だが敵のゴーレム兵団は彼女が突っ込んでくるのを予期していたように、万全の迎撃体制を取っていた。
「大軍相手にも臆さぬその意気やよし。しかしそう来るであることはお見通しよ」
 この僅かな時間のうちにカダスフィアはもう対戦者の動きやクセを把握しつつあった。こちらがどう来るのかを読んだ上でそれを封じる一手を打つ、熟練のチェスプレーヤーを思わせる采配。決死の突撃も読み切られていたことに、ティオレンシアは歯噛みする――のではなく、静かに微笑んだ。

「こいつは戦術眼に優れた竜だって話だし、戦力計算くらい一瞬で終わらせられるはず。……けど」
 完全に敵に包囲されたかのように見えたティオレンシア。その手に持ったクレインクィン「アンダラ」から1発のグレネードが射出され――直後、凄まじい爆炎と衝撃波が兵団の一角を薙ぎ払った。
「『計算の終わった相手の戦力値がいきなり三倍になる』なんてことが起きたら、多少は計算狂うでしょ?」
「何……?」
 訝しげに目を細めるカダスフィア。今の攻撃は爆発物の一種だと理解できるが、それほどの威力があるとは思えなかった。ティオレンシアはさらに愛銃「オブシディアン」を抜き放つと、動揺したゴーレム兵団を【粛殺】し、包囲網の穴を切り開いた。

「チャンスだ」
 ティオレンシアのユーベルコードが敵の戦術予測に狂いを生んだ。これを反撃の機会とみたシグルーンは一転攻勢の構えを取り、カダスフィア本体への突撃を仕掛けた。
「ぬぅ……!」
 両者の間にはまだゴーレム兵が立ち塞がっている。だがこれしきの守りでは猟兵は止められぬと読んだカダスフィアは、竜の翼を羽ばたかせて空中に退避しようとする。
 だが、それこそが悪手。【ゴッドスピードライド】を発動し、"Pegasus"と一心同体となった戦乙女の追跡から、その程度で逃れられると思ったのが誤りであった。
「相手が地上でも空中でも関係ない、ボクの愛馬なら、どこにでもいけるからね」
 銀光の軌跡を描きながらゴーレム兵の猛攻を躱し、勢いそのままに機首を上空へ。流星のごとく空に舞い上がった宇宙バイクの機体は、それ自体が最強の武器となる。

「我が戦力分析を誤るとは……いや、誤らされたということか」
「こういう状況でのだまし討ちは、食らうほうが悪いのよぉ?」
 悪手を悔やむカダスフィアに投げかけられるティオレンシアの笑み。同時に射程・威力ともに増幅されたオブシディアンの銃弾が、上空のターゲットを過たず撃ち抜く。
「ボク達はまだ止まらない。ここを通してもらうよ」
 その次の刹那、チェス盤から駆け上がってきたシグルーンがカダスフィアと接触する。最高速度に達した"Pegasus"は巨大なる帝竜をも轢き倒して、そのまま一気に駆け抜けていった。

「グォォォ……ッ!」
 己の戦術眼をも上回る猟兵の力を身を以て知った帝竜から苦悶の叫びが上がる。
 だがその兵団は今だ健在。カダスフィアとの戦いはまだ始まったばかりだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シェーラ・ミレディ
なんたる威容……!
流石、帝を冠する竜だけあるな。大軍の指揮にも慣れていると見える。
しかし、僕らも道を急ぐ身だ。早々にご退場願おう!

チェスの駒を模す……ということは、遠距離攻撃の手段がないか、あっても少数と見た。近付けすぎないようにすれば対処できるだろう。
召喚された怪物どもの攻撃から踊るように身を躱し後退。囲まれないよう気を付けながら距離を取り、ロープワークで捕縛。同じようにして遮蔽物を増やし逃げ回りながら、敵本体への反撃のチャンスを窺おう。

カダスフィアへの射線が開けば『片恋の病』。確実に愛憎の弾丸を当ててやる!

※アドリブ&絡み歓迎


ルネ・プロスト
転移直後に『安寧』介して幻術行使、光学迷彩代わりの幻纏って身を隠しつつ『安寧』の魔力で空中浮遊
不可視の状態で空中飛び回って敵の先制攻撃を凌ぐ
いきなり姿消えたらバレるだろうから地上にはルネの姿模した幻を投影・逃げ回らせて時間稼ぎ

上手く敵を欺けたらバレる前に帝竜がUCの射程圏内に入るまで空中浮遊したまま近づいてUC発動
地上の駒群ごと帝竜を糸の結界で切り裂く
その後は『慟哭』から呪詛を込めた誘導弾撃ち込みつつ後退、遠距離かつ空中からの狙撃で味方の援護に専念

同じチェス駒使いとしては駒盤遊戯達を使って相手してあげたくはあるのだけどね
多対多の乱戦中にこれ使うと、うっかりルネの人形達巻き込みかねないし



「流石に尋常な兵ではないか。しかし我が兵も今だ盤石である」
 猟兵の攻勢により負傷したカダスフィアではあったが、対局を見据える彼にそれしきのことで動揺はない。どっしりと落ち着いた振る舞いのまま即座に兵団を再編する姿に、シェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)は敵ながら感嘆を隠せなかった。
「なんたる威容……! 流石、帝を冠する竜だけあるな。大軍の指揮にも慣れていると見える」
 ドラゴンとしての力に胡座をかくだけではない、確かな戦術眼と指揮官としての能力。ただのモンスターなどとは一線を画す実力を、はっきりと彼は感じ取っていた。
「手強そうな相手だね。チェスの駒を使うなんて少し親近感もわくけど」
 ふわり、と空中からチェス盤の大地に降り立ったルネ・プロスト(人形王国・f21741)も油断なく敵を注視する。駒盤遊戯になぞらえた人形を操る技に長ける彼女は、同じプレーヤーとして眼の前の相手が尋常ならざる指し手であることを察していた。

「しかし、僕らも道を急ぐ身だ。早々にご退場願おう!」
「そうはいかぬ。汝らの行く手を寸刻でも阻むのが我が使命よ」
 シェーラが精霊銃の銃口を突きつけると、カダスフィアもまた配下の眷属を進軍させる。チェス盤の大地から次々と生み出される怪物とゴーレムの大群は、たった2人の猟兵を呑み込み押し潰すには余りある兵力だ。
「ここは一度退がるのが賢明だよ」
「そのようだな」
 くい、とシェーラの裾を引いてルネがくるりと踵を返す。それに同意したシェーラも躍るような身のこなしで怪物どもの攻撃から身を躱し、距離を取るように後退していく。

(チェスの駒を模す……ということは、遠距離攻撃の手段がないか、あっても少数と見た。近付けすぎないようにすれば対処できるだろう)
 ポーン・ルーク・ナイト・ビショップ――チェスで使用される駒の動きは様々だが"近付いて取る"のが原則の遊戯だ。読みどおりに白兵戦を挑んでくる敵に囲まれぬよう気を付けながら、シェーラはあらかじめ用意しておいたロープを鞭のように振るう。
「動きを止めさせて貰うぞ!」
 近付いてきた敵の1体がロープに絡まって動けなくなる。進軍が止まった隙に距離を取り、追いつかれれば同じように捕縛。捕らえた敵を遮蔽物としても利用しながら、シェーラはチェス盤の大地を逃げ回る。

「我が盤面の上でいつまでも逃げられると思うな」
 だが、帝竜の名を冠したこの"カダスフィアフォート"の地は、彼が最も力を発揮できる戦場だ。盤面の構造を自在に変化させ、思わぬところから新たな眷属を呼び出すカダスフィアの戦術を前に、猟兵達は次第に逃げ道を失って追い詰められていく。
(――妙だな)
 戦局を有利に運ぶカダスフィアは、しかし同時に違和感を覚えてもいた。それはあの黒髪の少年と一緒に逃げている銀髪の娘――後退しつつも応戦している少年とは異なり、あの娘は本当にただ逃げ回っているだけで戦意が感じられない。
「戦意だけではないな。あの気配の希薄さはまるで影法師――欺かれたか」
 カダスフィアが翼を打つと、激しい風とともに砂塵が周囲に舞い上がる。その中から炙り出されるように、小柄な少女のシルエットが空中に浮かび上がった。

「バレちゃったか」
 砂塵を払いながら姿を現したのは、月長石を飾った魔杖『安寧』を手にしたルネ。同時に、シェーラと共に地上を逃げていたほうのルネの姿は陽炎のようにかき消える。
 彼女は戦場に転移した直後から幻術を使ってニセの自分の姿を見せ、本人は光学迷彩のように幻で身を隠しながらずっと空中に退避していたのだ。
「二重の幻術とは見事だが、いつまでも我の目は欺けぬ」
「そうみたいだね。だけど――一手遅かったね」
 牙を剥く帝竜の前でルネはふっと微笑を浮かべる。ここは既に彼女のユーベルコードの射程圏内。ここまでの距離を詰めるために、彼女は今まで隠密に徹してきたのだ。

「邪魔だよ」
 【十糸鏖殺・斬弦結界】。人形遣いの少女の指先から放たれたのは、細く研ぎ澄まされた十の糸。本来は人形を操るためのそれは鋭利なる結界となって触れたモノ全てを切り刻む。
「グ……ッ!!」
 斬弦に触れたカダスフィアの鱗が切り裂かれ、周囲にいた眷属達がバラバラになる。刃と化した十糸は傷つける標的を選べないが、それゆえに切れ味においては比類ない。
「同じチェス駒使いとしては駒盤遊戯達を使って相手してあげたくはあるのだけどね。多対多の乱戦中にこれ使うと、うっかりルネの人形達巻き込みかねないし」
 ふわりと空中に浮かぶルネの眼下で、細切れになったチェスの駒がモノトーンの大地に散らばる。この惨状を見れば、彼女が自分の人形の投入を躊躇ったのも納得だろう。

「上手くいったようだな。お陰でこちらも射線が開けた」
 ルネの斬弦結界が炸裂したのを見て、これまで逃げに徹していたシェーラも反撃に転ずる。敵の目を引きつけながら、糸に巻き込まれないよう退避する仕事もここまでだ。
『この思いのひとかけでも、あなたが感じてくれたなら。それだけでわたしは報われるのです』
 演劇のような一節の詠唱で発動するのは【戯作再演・片恋の病】。銃口をカダスフィアに向け、弾倉に込めるのは愛憎の弾丸。狂おしいまでの乙女の恋慕のように、その弾はいかなる距離と障害をものともしない。

「援護するよ」
 射撃体勢に入ったシェーラを見たルネは純白の狙撃銃『慟哭』に武器を持ち替え、上空から呪詛を込めた誘導弾を放つ。斬弦ほどの威力はなくとも牽制としては十分だ。
「やってくれる、ッ」
 歯噛みするカダスフィアに魔弾を打ち込みながら、後退していく少女。
 それと入れ替わるように、精霊銃を構えた少年がトリガーを引き絞る。
「確実に当ててやる!」
 放たれた愛憎の弾丸は狙い過たずに帝竜カダスフィアの急所を捉え――その堅固なる鱗を突き破り、肉を裂き、骨を砕き、臓腑にまで達した。

「グオォォォォォォッ!!!!」
 苦痛に満ちた帝竜の絶叫がカダスフィアフォートの盤上に木霊する。威容を誇るその巨体には、十糸に刻まれた傷と胸を穿たれた弾痕が、生々しく残されていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

国栖ヶ谷・鈴鹿
【SPD】

⚫︎先制対策
まぁ、ここはあれだね。
【目潰し】煙幕や【運転や操縦】で紅路夢を操って逃げるんだよ!
あとは逃げるフリをして、相手を誘って行こう。

⚫︎反撃
まぁ、逃げるのは相手を分散させることが目的さ。
あとは各個追撃してきたゴーレムをUCで改変してこっちの手駒に変えて行こう。
手勢が集まったら反撃開始!チェスに相手の駒を奪うルールはないけど、盤面勝負なら、こっちの方が面白いよね。

あとは、迂闊なクイーンはナイトで狩って、ルークの守りとビショップの奇襲で有利に進めて行こう!
ぼくも制圧射撃やポーンを上手に攻め込ませて、一気に詰みまで持って行くよ!ルールは変則だけど、面白い一戦になりそうだ!


グラナト・ラガルティハ
ほう、チェス盤か。
チェス…あれはなかなか面白い。
それを模すと言うことはやはり戦術に詳しくもあるのだろう。敵でなければそれなりに楽しいやり取りもできたのではとも思うがこれは戦争。
盤上のそれではないものだ。
ならば戦を司るものとしてそれ相応の対応をしよう。

(敵先制攻撃を神獣の毛皮で受ける)
UC【害は我が敵へ】
敵UCをコピーして使用。
その後は【オーラの防御】で防御。
【戦闘知識】で戦況を把握。

まるでチェスをしているようだな。



「ほう、チェス盤か。チェス……あれはなかなか面白い」
 モノトーンのチェック模様に覆われた大地を、物珍しげに見回すのはグラナト・ラガルティハ(火炎纏う蠍の神・f16720)。炎と戦を司る神である彼は、戦争を模した盤上遊戯であるチェスについても造詣があるようだ。
「それを模すと言うことはやはり戦術に詳しくもあるのだろう。敵でなければそれなりに楽しいやり取りもできたのではとも思うがこれは戦争。盤上のそれではないものだ」
「然り。我等が残るか、汝等が残るか。これは互いの命を賭けた対局である」
 紅蓮を纏いて堂々と立つ戦神に、帝竜カダスフィアも悠然と応え、盤上より新たな眷属を作り出す。このチェス盤の大地にいる限り、彼の兵力が尽きることはなかった。

「ならば戦を司るものとしてそれ相応の対応をしよう」
「うーん、頼もしいけどここは一旦退いたほうが良くない?」
 真っ向から敵軍を迎え撃つ構えのグラナトに対し、国栖ヶ谷・鈴鹿(未来派芸術家&天才パテシエイル・f23254)は弱気な発言。【ミリティア・カダスフィア】と名付けられた敵のチェス型ゴーレムの大群は圧倒的で、正面から戦うのは分が悪く見える。
「まぁ、ここはあれだね。逃げるんだよ!」
「好きにするといい。それも計の内だからな」
 自ら発明した相棒のフロヲトバイ「百弐拾伍式・紅路夢」の後方から煙幕を噴射し、文字通り敵を煙に巻きながら遁走する鈴鹿。それとは対照的にグラナトは一歩も退かず、神獣の毛皮を翻して防御の構えを取る。

「猟兵とは測り難い駒だ。1つ1つの個性が強く、代えがたい強者の集団だ」
 ゆえに油断はせぬ――と、カダスフィアは自軍を逃げる鈴鹿を追うものとグラナトを攻撃するものに分け、淀みのない采配でそれぞれの隊を動かしていく。それが恐らくは猟兵達の狙いであることも承知の上で。
(やっぱり駒を分散させてきたね)
 鈴鹿は紅路夢を操りながら後ろを振り返って笑みを浮かべる。彼女が逃げると言ったのはもちろんフリで、目的は相手を誘い出すことだ。あれだけの数に一丸となって襲われたら勝ち目は無かったかもしれないが、各個に迎え撃てればやりようはある。

「ようこそ! これがぼくの理想郷、夢見た世界さ!」
 追ってきた敵が本隊から突出してきたところで、鈴鹿は高らかに【新世界ユウトピア】の発動を宣言した。その身から放たれるハイカラさんの後光が、彼女が思い描く理想――花咲き乱れ、うららかなる陽光と文明の薫りが戦ぐ幻想に世界を再構築する。
『ギ、ギギギ……』
 その理想の輝きに呑まれたゴーレムは、カダスフィアの手駒から鈴鹿の手駒に改変される。デザインもどこかレトロな印象に変化した兵士たちは、本来の主であるはずの帝竜に反旗を翻した。

「我に向ける害ある攻撃全てを我が敵へ」
 一方のグラナトに視点を移せば、こちらは押し寄せるゴーレムの大群相手に傷を負いながらも耐え凌いでいた。彼が発動するのは【害は我が敵へ】。神獣の毛皮にて受け止めたユーベルコードを、一時的に我がものと再現するユーベルコードだ。
「戦はここからが本番だ」
 ばさりと翻した毛皮の中から新たに現れるチェス型ゴーレムの大群。違うところと言えば、カダスフィアの手駒がモノトーンなのに対し、グラナトの手駒は燃えるような赤色であった。

「チェスに相手の駒を奪うルールはないけど、盤面勝負なら、こっちの方が面白いよね。反撃開始!」
 グラナトが自らの軍を展開したのと時を同じくして、手勢を集めた鈴鹿も転身して前線に舞い戻ってきた。2人の軍団を合わせれば、帝竜との兵力差は互角以上となる。
「まるでチェスをしているようだな」
「ルールは変則だけど、面白い一戦になりそうだ!」
 愉しげに口の端を歪めるグラナトに、天真爛漫な笑顔を見せる鈴鹿。カダスフィアフォートのチェス盤を戦場に、ふたつの勢力に分かれたチェス駒のゴーレムが激突する。

「よもやこのような対局となるとは。だがこれも一興か!」
 チェス勝負とあらばカダスフィアにもプライドがあるのだろう。帝竜の中でも優れた戦術眼と用兵術を駆使して、まるで手足の延長線のごとく大量の兵を操ってみせる。
 だが猟兵達も負けてはいない。戦神たるグラナトの豊富な戦闘知識に基づいた戦況把握と、天才たる鈴鹿のひらめきと独創性に満ちた戦略が、帝竜の軍団を迎え撃つ。
「そのクイーンは迂闊だよ!」
 突出してきた敵の大駒を、鈴鹿操るナイトの駒が狩る。敵歩兵の進軍はルークが受け止め、足が止まったところをビショップが奇襲。帝竜の兵力を少しずつ削いでいく。
「こちらには将が2人いる。本来のチェスならあり得ないが、活かさない手はない」
 グラナトはゴーレム兵と共に最前線に立ち、オーラの防壁を張って戦線を保ちながら前線指揮を執る。その堅固な守備陣を打ち崩すことは、いかな大軍にも容易ではない。

「この調子で一気に詰みまで持って行くよ!」
「なかなかに楽しめる戦だった。悪くない」
 紅路夢に乗って二挺機関銃の銃弾をばらまき、敵を制圧しながらポーンを巧みに攻め込ませる鈴鹿。守りを固めながら野火のごとく前線を押し上げるグラナト。2人の連携は徐々にカダスフィアのゴーレム軍団を壊滅へと追いやっていく。
「この我が、チェスの戦いで遅れを取るとは……!」
 最も自信のある対決にて苦杯を舐めることになった帝竜カダスフィアの衝撃と屈辱はいかばかりか。カダスフィアフォートの戦いは猟兵達の優位へと傾きつつあった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ニィエン・バハムート
敵は軍勢…時間をかけるほど不利になりますわね。

敵の先制UCには襲ってきた敵の頭を【踏みつけ】て勢いをつけてのジャンプから【空中浮遊】で高くまで飛ぶことで躱して対処します。ゴーレムがすぐに飛んでこれるとは考えにくいですし、逃げ先としては間違ってないはずですの。
そしてすぐに翼を使っての【空中戦】に移行し、敵の先制攻撃に対する【カウンター】の如く即座に私もUCを発動。このUCの射程ならば大軍を突破せずともカダスフィアまで届くはずです。
電気【属性攻撃】【マヒ攻撃】【範囲攻撃】の電撃でカダスフィアを攻撃し、倒しきるまで【限界突破】して電撃を続けます。

文字通りの電撃戦ですの…!
あなたには何もさせませんわ!



「ぬぅぅ……この局面を打開するのは苦しいか。だが我が軍勢は不滅なり!」
 自軍を壊滅させられた帝竜カダスフィアは、大地を埋め尽くすチェス盤から新たな眷属を形成し、またたく間に戦力の再編を図る。劣勢に立たされようとも彼の戦意は今だ萎えず、彼が健在である限り【ミリティア・カダスフィア】は無尽蔵であった。

「敵は軍勢……時間をかけるほど不利になりますわね」
 恐るべき帝竜の力を目の当たりにしたニィエン・バハムート(竜王のドラゴニアン(自称)・f26511)は、長期戦に利がないことを実感する。戦いが長引くほど向こうは戦力を整えていく一方で、こちらの体力や人数には自ずと限界があるのだから。
「それなら、短期決着を狙うまでですわよ」
 鋭い眼差しでカダスフィアを睨みつけると、少女はチェス盤の地面を蹴って走り出す。向かってくるのはチェスの駒を模したゴーレムの大群。まともにやり合っていれば日が暮れても終わらない――狙うのは大将首ただひとつ。

「失礼しますわ!」
 ニィエンは敵軍の先頭にいたゴーレムの頭を踏みつけると、勢いよく跳び上がった。
 深海人が持つ生来の浮遊能力を、背中に移植した竜翼型メガリス「バハムート・ウイング」で補助し、そのまま一気に上空へ。
(ゴーレムがすぐに飛んでこれるとは考えにくいですし、逃げ先としては間違ってないはずですの)
 彼女の読みは正しく、チェス型ゴーレムの装備はほとんどが地上での白兵戦仕様で、高空にいる相手を撃ち落とす手段には乏しい。回避と同時に空中戦に移行したニィエンは、敵が次の一手を打ってくる前にカウンターを仕掛けた。

「このユーベルコードの射程ならば大軍を突破せずともカダスフィアまで届くはずです」
 ゴーレムの大群を挟んで空と地上で向かい合うニィエンとカダスフィア。相互の距離はゆうにまだ数百メートルはあるが問題はない。この瞬間、この一撃に全てを賭ける覚悟で、竜に焦がれた娘は高らかに咆哮する。

「雷霆万鈞! バハムート・サンダー!」

 放たれたのは【デンキナマズのビリビリ電撃】。ニィエンの体表を包むように発達した発電器官が一斉に発光し、目も眩むほどの雷光と衝撃がカダスフィアを襲った。
「グオォォォォォォッ!!?!」
 その電圧、実に10億V超。竜王のドラゴニアンを自称するニィエンだが、本来の種族は深海人であり、淡水魚を含めたナマズ目全般の特徴を持っている。幾つかはメガリスボーグとなる際に切り捨ててしまったが、その中で残されたものがこの発電能力だ。

「竜王バハムートの名にかけて! 絶対に負けませんわ帝竜とやら!」
 移植されたメガリスのひとつ「バハムート・オーラ」が、デンキナマズの発電能力をさらに増幅する。もはや直視できないほどの雷光に包まれたニィエンは、己の限界を超えた発電量の全てをカダスフィアただ1体に叩きつける。
「グ……この、雷は……我をこのまま封殺するが狙いか……!!」
「文字通りの電撃戦ですの……! あなたには何もさせませんわ!」
 本来の意味とは若干異なるが――猛烈な電撃はカダスフィアの身体をマヒさせ、ダメージを与えるのと同時に動きを封じている。さしもの帝竜と言えどこれほどの電力を浴びせられ続ければ、ただで済むはずもなかった。

「く……まだ、倒れるわけには……!!」
 超高電圧の檻に囚われたカダスフィアは、苦悶しながらも配下のゴーレムを操る。
 創造主の危機に応えた眷属らはその周囲に立ち、我が身を電撃を防ぐ鎧や壁とする。
「危うい……ところであった……」
 大量の眷属の犠牲と引き換えに、カダスフィア自身は辛くも電撃地獄から抜け出す。
 だが、それでも全身からプスプスと焦げくさい臭いと煙が上がっている様子から、彼が負ったダメージは相当のもののようだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

カビパン・カピパン
「帝都軍少尉カビパンがカダスフィアに問う!」
丘の上の高台から、帝竜に対し疑問をぶつける。

「なぜ、帝竜カダスフィアという名なのだ、呼びづらい名前だと思う。ヴァルギリオスも自称か!であれば、帝竜(自称)それは大変恥ずかしいと私は思う!」

一度、後ろを見回すと他の猟兵たちがズッコケている。

「そこでカダスフィアを『帝カトウ』と呼ぶことにした。
響きも良いし、力強さの残る中々の名前だと自負している。
ちなみにヴァルギリオスは『帝タナカ』と呼ぶことに決めた!」

挑発。敵が捨て駒であることは承知の上。
相手が先に使ったUC、それを全て含めギャグにしてしまえば良い。
舞台は整った、帝カトウとその兵よ。私の世界へようこそ。



「帝都軍少尉カビパンがカダスフィアに問う!」
「何だ……?」
 深手を負った帝竜にぶつけられる疑問の声。何者かと振り返れば、戦場を見渡せる丘の上の高台にカビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)が立っている。
 サクラミラージュの帝都軍所属であることを示す瀟洒な将校服を身に纏い、凛とした表情で敵を睨みつけ。そして手にはなぜだかハリセンを持っている。真面目なのかツッコむべきなのか判断に迷うよそおいで、彼女は堂々と疑問を言い放つ。

「なぜ、帝竜カダスフィアという名なのだ、呼びづらい名前だと思う。ヴァルギリオスも自称か! であれば、帝竜(自称)それは大変恥ずかしいと私は思う!」

 ――一度、後ろを見回してみると、そこには様々な反応を見せる猟兵達がいた。
 大方は呆れたり困惑したり。流石にズッコケたりする者まではいなかったが「急に何言ってんのコイツ」というニュアンスの感想を抱くのは無理からぬことだろう。
「……それは我ら帝竜に対する侮辱か。それとも汝はバカなのか?」
 困惑しているのは当のカダスフィアも同じだった。普通に考えればバカにされているのだが、大真面目な顔でバカみたいなことを言われると、さしもの帝竜も反応に困る。
 しかしカビパンは大マジだった。より正確に言うなら、大マジのマジでボケていた。

「そこでカダスフィアを『帝カトウ』と呼ぶことにした。響きも良いし、力強さの残る中々の名前だと自負している。ちなみにヴァルギリオスは『帝タナカ』と呼ぶことに決めた!」

「もう分かった、黙って死ぬがよい」
 帝カトウ――ではなくカダスフィアは苛立ちの混ざる低い声で告げ、チェスの盤上から生み出した眷属をカビパンに差し向ける。付き合うだけ無駄だと判断したか、道化には道化らしい惨たらしい死が似合いだと判断したか。
 しかし、どのみちカビパンの挑発に乗った時点で、彼はもう術中に嵌っていたのだ。

「舞台は整った、帝カトウとその兵よ。私の世界へようこそ」
 猛然と襲い掛かってくる眷属を、カビパンはぺしーん、と女神のハリセンで張り倒す。本来であれば大したダメージにもならないはずが、何故かその一撃で敵は彼方まで吹っ飛んでいく。
「何っ!?」
 ここはもう【ハリセンで叩かずにはいられない女】の作り出したギャグの世界。困惑する帝竜やその配下のように、彼女のギャグを解さない者には適応できない世界。
 相手が先にユーベルコードを使って先制攻撃してくるなら、それすらも全て含めてギャグにしてしまえば良いというわけだ。

「ナウなヤングにバカウケな私のギャグセンスに付いてこれないとは、やはり過去の存在だな帝カトウ」
「そういう問題なのか……これは……?!」
 突然のギャグ時空に引きずり込まれたカダスフィアの混乱は増すばかり。交通事故的な瞬間風速で理不尽ワールドを押し付けるカビパンの攻撃(ツッコミ)は止まらない。
 あれよあれよと言う間に、彼女に襲い掛かった眷属は全てシバき倒されてしまい。そして帝カトウの心にも、なんとも言えない精神的ダメージが刻まれたのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルカ・ウェンズ
チェスなのに帝が…私もエセ騎士だし何も問題ないわね!

巨大ロボになっちゃった。ロボになった敵の攻撃に当たっても死なないように【オーラ防御】で身を守り【残像】の見えるよう速さで逃げ回りながら、一撃離脱を心掛けて敵の足を狙い縁切りを使ったり【怪力】任せに攻撃、足を破壊して動きを止めるのを狙うわ。

空を飛ぶロボだっら宇宙昆虫に【騎乗】して【空中戦】よ。同じように縁切りを使ったり怪力任せに翼を攻撃して叩き落さないと、ロボの弱点はどこかわからないから動きが鈍ったら、とりあえず頭に攻撃して破壊よ!破壊!



「チェスなのに帝が……私もエセ騎士だし何も問題ないわね!」
 オーラの刀を抜きながら自問自答するのはルカ・ウェンズ(風変わりな仕事人・f03582)。なぜに王(キング)ではなく帝なのかと彼女は言いたいらしいが、実のところ本人にとってそこは拘る点では無いのだろう。
「『再孵化』する以前の記憶を持たぬ我に帝や王などといった称号など無意味。今の我はただヴァルギリオス様の勝利のために、この身を捧げるまでのこと」
 繰り出す軍団をことごとく猟兵に打ち破られ、もはや劣勢を覆すことは困難と認めざるを得なくなったカダスフィアは、これまで使ってこなかった新たなユーベルコードで猟兵達の行く手を阻まんとしていた。

「猟兵の打つ手は、我の想像を超えてくる……よく分かった。ならば次は戦術ではなく、純然たる力をもってこの盤面を変えてみせようぞ!」
 カダスフィアフォートのチェス盤化した大地と、帝竜カダスフィアが融合していく。その力の名は【ビルド・カダスフィア】。千の軍勢を作り出すのではなく、帝竜自身を一騎当千の存在へと強化変形させるユーベルコード。
「巨大ロボになっちゃった」
 あらまあと目を丸くするルカの前で、ただでさえ巨大だったカダスフィアの全長は2倍ほどに。チェス盤の装甲を纏ったその威容は、彼女の言葉通り機械のようであった。

「受けよ、我が一撃!!」
 轟、と唸りを上げて振り下ろされる巨大カダスフィアの機械爪。無防備に直撃すれば死は免れぬであろうその一撃を凌ぐため、ルカはオーラの鎧で身を守りながら残像が見えるほどのスピードで逃げ回る。
(正面から当たるのは危なそうだし、ここは一撃離脱を心掛けていきましょ)
 デカブツ相手にスピード勝負で翻弄するのは常套手段だ。黒髪と漆黒のオーラをなびかせて疾走するルカの動きは影法師のようにとらえどころがなく、僅かな隙を見て足元に飛び込んでは、変形式オーラ刀による【縁切り】の一撃を力任せに叩き込む。

「グッ……なんの、この程度ッ!!」
 脚部を破損したカダスフィアは、ならばと翼を広げて空に舞い上がった。
 鈍重とも取れそうな巨体でありながら、その飛行速度は決して遅くはない。
「だったらこっちも空中戦よ」
 ルカはすぐさま愛騎である「宇宙昆虫」を呼び寄せ、その背に飛び乗ってカダスフィアを追う。地上では宇宙空間ほどの速度は出せないが、そこは操縦技術でカバーだ。
「墜ちよ!」
 鉄柱のごときカダスフィアの尾がルカを襲う。宇宙昆虫はその一撃を紙一重で躱しながら帝竜に接近し、ギリギリまで迫ったところでルカは再び漆黒のオーラ刀を一閃。
「そっちこそ叩き落としてやるわ!」
 装甲に守られた帝竜の身体を一撃で断つことは叶わなかったが、縁切りの刃はカダスフィアの翼を切り裂き、その飛行能力を低下させることには成功した。

「ロボの弱点はどこかわからないから、とりあえず頭に!」
 敵の動きが鈍ったのを見逃さず、ルカは宇宙昆虫と共に急上昇。近付けばもはや小山のようなサイズの頭部目掛けて、がむしゃらに力任せに攻撃を叩きつけていく。
「破壊よ! 破壊!」
「グ、オォォッ!! やって、くれる……ッ!!」
 兜のように頭を覆っていたチェス盤の装甲がバラバラに刻まれ、カダスフィアの喉から苦悶の声が漏れる――個と個の戦いにおいても、猟兵は決して帝竜に劣りはしないことを、ルカは自らの勇戦をもって示したのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

春乃・結希
すごいっ、合体ロボやないですか!浪漫だ!カッコいい…っ
大きいものには大きいものをぶつけますっ
『with』──私と一緒に戦って!
UC発動
想いの力で巨大な大剣を召喚
帝竜と私の間に割り込むように落とします
…来てくれた!頑張ろうね!大好きっ

私と『with』は一心同体
言葉は交わさなくても心で相手の動きを感じとり
フォローし合う事で駒達を蹴散らし
チャンスを切り開き帝竜に攻撃を加えます
私が帝竜と向き合うときは『with』が駒達の相手を
『with』が帝竜と戦うときは私が駒達を足止めします

貴方に背中を任せられるなんて、私はもう、嬉しくて嬉しくて…
負ける気なんて全然しません!
どんな巨大ロボでも叩き潰してあげます!



「すごいっ、合体ロボやないですか! 浪漫だ! カッコいい……っ」
 【ビルド・カダスフィア】を発動した帝竜の勇姿を見上げ、キラキラと熱い視線を送るのは春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)。アニメやコミックのような光景に心躍らせる彼女の手には、漆黒の大剣『with』がしっかりと握り締められている。
「この姿に焦がれるか、娘よ。だが竜の前に立つ者には――死あるのみ!」
 帝竜カダスフィアは手負いなれども勇壮なる態度で宣言すると、爪牙の狙いを結希に向ける。自身を遥かに超える巨大なる存在に殺気を向けられ、しかし結希は怯むことなく――愛しき相棒への想いを胸に、正面から立ち向かう構えを見せた。

「大きいものには大きいものをぶつけますっ。『with』──私と一緒に戦って!」
 結希が空に向かってさっと手をかざすと、その小指の先に小さな焔が灯る。それはまるで糸のように空の彼方へと伸びていき――その果てから雲を切り裂いて、巨大な漆黒の物体が凄まじい速度で落下してくる。
「何だッ!?」
 思わず足を止めたカダスフィアの目前で、結希との間を遮るように大地に突き刺さったのは、まるで巨人が振るうような巨大な剣。焔の糸によって結希と結ばれたその剣は、結希が持つ『with』をそのままスケールアップしたような造りをしていた。

「……来てくれた! 頑張ろうね! 大好きっ」
 相棒にして恋人たる剣への想いがユーベルコードとなり呼び寄せた、もう一振りの『with』。それは大剣を携える影へと変身し、喜色を満面に浮かべた結希と共に、巨大ロボと化した帝竜カダスフィアと対峙する。
「それが汝の依り所ということか。ならばその剣と共に砕いてくれよう!」
 カダスフィアが大きく身体を震わせると、その装甲のあちこちからパラパラとチェスの駒が剥がれ落ちて新たな眷属に変化する。それはまたたく間に大群を成すと、帝竜と共に敵を包囲殲滅せんと一斉に襲い掛かる。

(行くよ、『with』)
 圧倒的多勢を前にして、少女と黒剣の化身は互いの死角を守るよう背中合わせとなる。
 結希と『with』は一心同体。言葉を交わさなくとも心で相手の動きを感じ取り、危ないときはフォローしあう。相手が何十何百の大群だろうとも恐れるには値しない。
「貴方に背中を任せられるなんて、私はもう、嬉しくて嬉しくて……負ける気なんて全然しません!」
 両手と背中に愛しいひとの存在を感じながら、チェスの駒をなぎ払う結希。
 彼女と『with』の一糸乱れぬ連携は、何者も立ち入れない漆黒の旋風となる。

「どんな巨大ロボでも叩き潰してあげます!」
「なんと……っ!」
 周囲にいた眷属を蹴散らした結希は、その勢いのまま驚嘆するカダスフィアに攻撃を加えた。渾身の膂力で振り下ろされる超重量の刃が、チェス盤の装甲を叩き斬る。
 背後から他の敵に襲われる心配などは微塵もしていない。自身が帝竜と対峙している間は『with』が駒達の相手をしてくれる。それは言葉にするまでもない信頼だった。
「重い……ただの人間の想いが、これほどの力を持つとはな……!」
 感嘆を禁じえぬ、と呟きながら反撃を仕掛けるカダスフィア。叩きつけられる衝撃を結希は大剣を盾として受け流し、後ろにいる『with』と立ち位置をスイッチする。
 今度は自分が駒達を足止めする番。赤い焔の糸で結ばれた相棒はすかさず帝竜に斬り掛かり、叩き斬られた装甲の隙間にさらなる一撃を加えた。

「グ、オォォッ!!!!」
 帝竜の巨体から噴き出した鮮血が、白と黒のチェス盤の大地を真っ赤に染めていく。
 『withと共に在る』限り、どんな相手にも自分は負けない――我が身諸共に全てを焦がす焔のように、結希の想いと恋情と執着が、カダスフィアを追い詰めてゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
一手の重要性…騎士(ナイト)として、発展に縁深い人工知能の末裔としてチェスのそれは存じています

自らを捨て駒とするその覚悟に敬意を表しますが
ドローもステールメイトも許しません
A&Wの安寧の為、駒を進ませていただきます
(この口ぶりだが実は専用ソフトを起動しないとチェスは劇弱)

攻撃を●怪力での●盾受けで受け流しと同時に後退
●防具改造で装着したスモーク装置の●目潰しで追撃阻止

装着UCの起動準備完了と同時に飛翔し●だまし討ち
慣性制御による急停止、方向転換で接近
対艦ビーム砲を●ハッキング限界突破
巨大光剣の●なぎ払い掃射で溶断

ナイトは障害を飛び越える駒
定石破りは失礼いたします!



「一手の重要性…騎士(ナイト)として、発展に縁深い人工知能の末裔としてチェスのそれは存じています」
 白黒のチェス盤によって埋め尽くされた大地に足を踏み入れながら、ウォーマシンのナイトことトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)はそう語る。
 眼前に立ちはだかるのは【ビルド・カダスフィア】により巨大ロボと化した帝竜。この大地そのものと合体した王(キング)として、猟兵の行く手を阻まんとする大駒。
「自らを捨て駒とするその覚悟に敬意を表しますが、ドローもステールメイトも許しません。アックス&ウィザーズの安寧の為、駒を進ませていただきます」
 力強く宣言しながら、まるで演劇の一幕のように機械騎士は巨竜と対峙する――この口ぶりだが実は、専用ソフトを起動しないとチェスは劇弱なのは秘密である。

「その意気や良し。我もまたヴァルギリオス様の栄光の為、全てを擲つまでよ!!」
 帝竜カダスフィアはチェス盤の装甲を纏った身体を奮い立たせ、牙を剥き出しにして咆哮する。3m近い身長のトリテレイアがまるで小人のように見えるほど、今の帝竜の体格は並外れている。
 その巨体にふさわしい膂力を込めた一撃が、轟と唸りを上げて叩きつけられる。機械仕掛けの騎士は重質量大型シールドを掲げ、あらん限りの力を以ってこれに抗する。
「流石に重い……ですが!」
 ミシミシと頑丈なはずの大盾が軋むのを感じながら、辛うじて衝撃を受け流して後退。同時に装甲に装着してあったスモーク装置が作動し、白い煙幕が敵の目を眩ませた。

「煙幕か。だがまさか、ここで退くわけではなかろう?」
 トリテレイアの姿を見失ったことで帝竜は追撃の機会を逸するが、動じることなく体勢を整えなおす。これまでの猟兵との対局から、相手が常に自身の予測を超えた手を打ってくることは、彼もすでに学習済みであった。
「全機能チェック正常。システムオールグリーン。起動準備完了」
 果たして彼の予測通り――スモークの中でトリテレイアが装着するのは【戦機猟兵用全環境機動型大型標的攻撃試作装備】。スペースシップワールドのテクノロジーの粋をもって開発された試作兵装にして、彼がテスターを任せられた武装のひとつ。
 準備完了と共に飛び出した彼の機体には、直前までには無かった背部大型ブースターポッドと各部小型スラスター、そして馬上槍型対艦ビーム砲が装備されていた。

「お待たせいたしました。ここからが本番です」
「それが汝の本気か。その力、見せて貰おう!」
 出力全開で空を翔ける機械騎士。其を撃墜せんとカダスフィアは再び巨躯の一撃を見舞う。どれだけ速かろうとそれが直線的な機動なら、この帝竜は容易く見切るだろう。
 だが、トリテレイアは背部のブースターと各部のスラスターを併用し、慣性制御による変則的な機動を見せる。そのスピードではあり得ないような方向転換や急停止で攻撃をかいくぐり、帝竜へと接近していく姿はまるで無重力の世界を翔けるかのようだ。

「動きが読めぬ……このような飛び方は鳥にも、竜にすら不可能である!!」
「ナイトは障害を飛び越える駒。定石破りは失礼いたします!」
 驚愕と感嘆を込めて叫ぶカダスフィア、その懐に飛び込んだトリテレイアは、手にしているビーム砲のシステムにハッキングし、出力のリミッターを一時的に突破する。
 馬上槍を模した砲身から目も眩むばかりの閃光がほとばしり、巨大な光の剣を形作る。持てる全出力を費やしたこの一撃を以って、彼は帝竜カダスフィアをなぎ払う。
「グ、オォォォォォォッ!!!!!!!」
 眩き光刃が装甲と肉体をもろともに溶断し、絶大な熱量は血飛沫さえも即座に蒸発させる。大地を震わす絶叫が響き渡る中、カダスフィアの巨体はどうと地面に崩れ落ちた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソラスティベル・グラスラン
ナイくん(f05727)と

はい!作戦通りにいきましょう、ナイくん!
勝つのはわたしたち『勇者』です!

先行したナイくんが大群に呑み込まれる…
大丈夫…大丈夫、心配要りません

わたしがすべきことは…彼を信じて、前へ飛ぶ!【空中戦・ダッシュ】

眷属の群れを飛び越え一直線に帝竜へ!
ナイくんの攻撃で隙が出来た巨体へ【怪力・鎧砕き】の大斧を叩き込み、放電!
吼えて、雷の大斧よ!来て、プレリエルデ!
駆けつけた蒼空の騎竜に乗って、動きを止めた帝竜の眼前へ!
合わせてナイくん、集中攻撃ですよ!

プレリエルデの雷撃の息吹に、
竜たるわたしの炎の息吹が絡まり、
ナイくんの光が纏めた、一本の大光条が
外殻を突き抜け、本体を討つ―――!!


ナイ・デス
ソラ(f05892)と
眷属の大群を前に、2倍に大きくなった敵を見据えて

ソラ、作戦はいいです?私がチェックして、ソラがチェックメイトですよ
では……まず私が、隙をつくります!

【覚悟と勇気】を胸に
【念動力】で自身【吹き飛ばし】大群へ突撃!【存在感】で、気を引いて
【激痛耐性、継戦能力】傷を負いながらも、前へ、前へ!
確り、巨体を見据え
『今はあなたの後ろにいる』発動

王手(チェック)!

【暗殺、鎧無視攻撃】黒剣鎧からの刃刺して切り裂き【生命力吸収】しながら、落とされないよう体表を【ダッシュ】!
不意打ちと虚脱感で指揮を乱したとこへソラが

これで、詰み(チェックメイト)です!

合体UC
私も光放っての、三位一体!



「……やはり猟兵とは尋常ならざる強者。だが、我もまだ倒れるわけにはいかぬ」
 己の戦術眼さえも軽々と超えてくる猟兵の力に、敬意を抱きながら帝竜カダスフィアは立ち上がった。その命が尽きる瞬間まで猟兵の進軍を阻み続けるために――負傷した身体を補うようにチェス盤化した大地と融合し、次々と新たな眷属を召喚する。

「ソラ、作戦はいいです? 私がチェックして、ソラがチェックメイトですよ」
「はい! 作戦通りにいきましょう、ナイくん! 勝つのはわたしたち『勇者』です!」
 眷属の大群を前に、2倍に大きくなった敵を見据えて、冷静に作戦の確認をするのはナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)。その相棒であるソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)は勇ましい笑顔を見せ、大斧をぐっと握る。
 これまでにも幾度もの激戦を共に乗り越えてきた勇者のコンビ。迷宮の大魔王すら打倒した彼らの信頼と絆の前では、たとえ帝竜であろうとも恐れるには値しない。

「では……まず私が、隙をつくります!」
 覚悟と勇気を胸に、先行するのはナイ。器物を動かす念動力のパワーを己に作用させて、自分自身を吹き飛ばすように、押し寄せるチェス型ゴーレムの大群に突撃する。
 身体からあふれ出す聖なる光は、まるで彼の気高き意志の証のように。その存在感に引きつけられた眷属の攻撃は、必然的に彼1人に集中することになる。
「なるほど勇敢な少年よ。だが無策にて挑めばそれは蛮勇にしかならぬぞ」
 帝竜カダスフィアは容赦なく駒を動かし、ナイを包囲したうえで苛烈に攻め立てる。自らは動かずに指揮に徹するのは、言葉とは裏腹に彼の行動が決して"蛮勇"ではなく、勝算あってのことであると確信しているからだ。

「ナイくん……っ」
 先行した相棒が大群に呑み込まれる様子を、ソラスティベルは食い入るような眼差しで見つめていた。たった1人で大軍団の攻勢を受けることになったナイの身体は傷にまみれ、血を流し、ボロボロになりながら、それでも前へ、前へと進み続けている。
「もう少し……もう少し……っ」
 痛みに耐え、致命傷だけは辛うじて免れながら、その目線は確りと帝竜の巨体を見据え。彼我の間にある絶望的な大群の壁を前にしながら、彼は一歩も引き下がらない。

「大丈夫……大丈夫、心配要りません」
 かけがえのない相棒の勇姿を瞳に焼き付けて、ソラスティベルはぎゅっと拳を握る。
 彼は作戦通りにやってくれている。ここで要らぬ不安に揺らげば、それこそ彼の覚悟に泥を塗ることになる。自分のすべきことを心に刻み、彼女はじっとその時を待つ。
「何が狙いかは読めぬが……この駒は取らせて貰うぞ!」
 対して帝竜率いる軍団の勢いはさらに増し、ついに抗しきれなくなったナイはがくりと戦場に膝をつく。誰の目にも明らかなほどの瀕死の重態、そこにトドメを刺そうと迫ってくる眷属――絶体絶命の窮地において、彼はこう唱えた。

「王手(チェック)!」

 ――その瞬間、大群の只中からナイの姿が消え。同時に帝竜の足元に鋭い痛みが走る。
「なに……汝、いつの間にそこに!!」
 見下ろせば、そこには傷一つない格好のナイが、手足に装着した黒剣鎧から刃を突き刺している。先ほどまでの彼は幻術だったのかと当惑するカダスフィアだが、さっきまでのナイも、ここにいるナイも、どちらも紛れもなく本物である。
「私はここにいて、ここにはいない」
 ヤドリガミであるナイにとってヒトとしての肉体は仮初のもの。瀕死に陥った肉体と魂の繋がりを断ち、新たな肉体を敵の死角で生成することで、擬似的に長距離を瞬時に移動する――それが彼の隠し札【今はあなたの後ろにいる】だった。

「ようやく、届きました」
「やってくれる……っ!」
 失策に震えるカダスフィアから振り落とされぬよう、ナイは山のようなドラゴンの体表を駆け上がりながら切り裂いていく。黒剣鎧の刃には標的の生命力を吸収する力もあり、思わぬ不意打ちに重ねて急激な虚脱感までもが帝竜に襲いかかる。
「ぐぅ、ッ」
 カダスフィアの表情が苦悶に歪み、手駒の指揮に乱れが生じる。まさしくこの瞬間こそがナイの作りたかった"隙"であり、ソラスティベルの動くべきタイミングだった。

「わたしがすべきことは……彼を信じて、前へ飛ぶ!」
 竜族の証たる翼を広げ、暁の勇者が空を舞う。動揺する眷属の群れを飛び越えて、向かうは帝竜へと一直線。またたく間に距離を詰めた彼女は蒼空色に煌めく大戦斧『サンダラー』を振りかぶり、全速全力を以って隙の生じた巨体へと叩きつけた。
「吼えて、雷の大斧よ! 来て、プレリエルデ!」
「ぐ、ごおぉぉあぁぁぁぁぁぁッ!!!!?!」
 装甲に食い込んだ大斧から凄まじい雷撃がほとばしり、帝竜の肉体を感電させる。そこに駆けつけるのは蒼空色の騎竜プレリエルデ。友たる竜の背に乗ったソラスティベルは動きの止まった帝竜の周りをぐるりと旋回しながら手を伸ばし。
「ナイくん!」
「ソラ!」
 駆け上がってきたナイの手をしっかりと握り、騎竜の背に引っ張り上げる。
 互いを信じあった勇者達はここに再び並んで、帝竜カダスフィアの眼前に。

「合わせてナイくん、集中攻撃ですよ!」
「はい! これで、詰み(チェックメイト)です!」

 ふたりの勇者の想いを受けて、騎竜プレリエルデが放つは蒼白なる稲妻の息吹。そこに竜たるソラスティベルの放った炎の息吹が絡まりあい、ナイの放つ聖なる光がひとつに束ね――ここに完成するのは全ての敵を打ち破る、三位一体の大光条。
「見事なり……ッ、グアアアァァァァァァァァァッ!!!!!!」
 太陽さえも眩むほどの勇気の輝きが、カダスフィアの外殻を突き抜け、本体を討つ。
 大地へと叩きつけられた巨躯からチェス盤が剥がれ落ち、本来のサイズへと戻っていく――ここに作戦成功をみた2人の勇者は、笑顔でパンッと手を打ち合わせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アイン・セラフィナイト
(真の姿に変身)
凄まじい覚悟だな。自分が捨て駒なんて。
……だけど、ここで負ければ世界は破滅へと一歩近づく。そこを通らせてもらおうか、カダスフィア!

【対策】
『神羅の鴉羽』で『空中戦』、『暁ノ鴉羽』で飛び道具や魔法を『オーラ防御』しておく。

【反撃】
UC発動、【魂魄転換】。怪物を生み出し続けても良い。それは全て俺の糧になる。何もかも吸収し、自身の魔力へ転換。いくら喚び出し続けても無駄だ。全部俺の力になる。
……頃合いだな。『魔力溜め・全力魔法・属性攻撃・リミッター解除』。
杖の先に今まで溜め込んだ魔力を込めて、全身全霊の巨大な魔弾でカダスフィアを攻撃する。怪物も纏めて塵に帰ってもらおう!



「もはや……我の戦術で、この盤面を支えることは困難か……」
 巨大化の解けたカダスフィアは己の劣勢を噛み締めながら、傷だらけの身体を起こす。帝竜の中でも戦術眼に秀でるゆえに、彼は自らの勝利が遠いことを悟っていた。
「だが、我が敗れようともヴァルギリオス様が勝利すれば、それで良い」
「凄まじい覚悟だな。自分が捨て駒なんて」
 そこに現れたのは、真の姿に変身したアイン・セラフィナイト(精霊の愛し子・f15171)。まだ幼さのある少年から青年へと成長した彼は、あくまで大局的勝利のために我が身を擲たんとする帝竜の不退転の決意に、敵ながらも感嘆を抱く。

「……だけど、ここで負ければ世界は破滅へと一歩近づく。そこを通らせてもらおうか、カダスフィア!」
 堂々たる宣言とともに魔力を漲らせれば、その背中に現れるのは「黒翼・神羅の鴉羽」。空に舞い上がったアインは白翼の杖を構え、敵の攻勢を迎え撃つ構えを取る。
 対する帝竜カダスフィアは【形成するもの】を発動し、創造する眷属やチェス盤の大地そのものを武器として、空の標的を撃ち落とさんと集中砲火を浴びせる。
「全てはヴァルギリオス様の御為に。ここを安々と通れると思うな、猟兵!」
 決死の覚悟で繰り出される猛攻は凄まじく、しかしアインもまた全力を以ってこれを凌ぐ。「境界顕現:暁ノ鴉羽」によって溢れ出した鴉羽の嵐が極光の如き輝きと共にチェス駒の攻撃を弾き返し、戦場には壊れた駒と羽の雨が降り注いだ。

「聖霊封呪……解除。総ては……俺の力になる」
 アインはそのまま暁ノ鴉羽の嵐を維持しながら、反撃のユーベルコードの詠唱を紡ぐ。
 【聖霊封呪・解:魂魄転換】。普段はその身に封じられている、無限にも等しい莫大な魔力が解き放たれ、眩い光のオーラとなって彼を包みこむ。
「まだ、これほどの力を……!」
 明らかに力の増大したアインを見て、カダスフィアはさらなる眷属を差し向けようとするが――襲い掛かったチェス駒の怪物はオーラの輝きに触れた瞬間、光の粒子となって消え去ってしまう。

「いくら喚び出し続けても無駄だ。全部俺の力になる」
 解放されたアインの魔力は周囲に存在するあらゆるモノを魔力に変換し、アインと同調させる性質を持つ。ともすれば彼自身が世界のバランスを崩しかねない強大な力――平時は封印されているのも頷けようと言うもの。
 カダスフィアの作り出したユーベルコードの手駒を喰らえば喰らうほど、それに比例して彼の力も増強されていく。支配地の性質を利用した無尽蔵の兵力は、こと彼に対しては最悪手であった。

「……頃合いだな」
 十分な糧を我がモノとしたところで、アインは白翼の杖をカダスフィアに向ける。
 今まで溜め込んだ全魔力を杖の先に集中。出力のリミッターを解除したうえで放つのは全身全霊の一撃。
「怪物も纏めて塵に帰ってもらおう!」
 力強い一喝と共に杖を振り下ろし――撃ち出された巨大な魔弾は、大地に着弾した瞬間に凄まじい爆発と閃光を巻き起こし、周囲にいた何もかもを呑み込んでいく。
「ぐ、ガアアァァァァァァァッ!!!!!!」
 捲れ上がるチェス盤、塵と砕け散るチェスの駒、そして帝竜の絶叫――その後には大地を抉る巨大なクレーターが残され、満身創痍のカダスフィアが無惨な姿を晒していた。

成功 🔵​🔵​🔴​

フレミア・レイブラッド
UCで合体する隙を突いて爆裂魔法【属性攻撃、高速・多重詠唱、全力魔法、誘導弾】でチェス盤等地形を纏めて爆砕。
合体阻止または効力低下を試み、続けて顔面(主に目)に凍結及び爆裂、閃光魔法を放ち、牽制と視界を潰してUCの時間稼ぎ。

【ブラッド・オブリビオン】で「終焉を呼ぶ黒皇竜」の「黒皇竜ディオバルス」を召喚。
黒皇竜の【黒皇竜の一撃】や【インフェルノ】と連携して爆裂魔法や魔槍で攻撃。
【カタストロフィ・ノヴァ】に併せて全魔力を集束した魔槍の一撃を叩き込むわ。

久しぶりね、ディオバルス。
今度の相手は…見ての通りよ。
勇者と帝竜に挑むなんて、生前には無かったでしょう?相手に不足も無いと思うのだけど、どうかしら?



「グ、ゥ……まだだ……まだ、我は斃れるわけにはいかぬ……!」
 深手を負った帝竜カダスフィアは、再び支配地たるカダスフィアフォートの大地と融合し体勢を立て直そうとする。いかな劣勢であろうとも決して屈しようとしない旺盛なる生命力と闘志は、帝竜の名を冠するのに相応しいだろう――しかし。
「そうはさせないわ」
 凛とした一声と共に火炎弾が飛来し、チェス盤の上で爆発を起こす。それを放ったのはフレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)。彼女もまた帝竜打倒のためにこの地に集った猟兵のひとりである。

「そのユーベルコードは強力だけど弱点もあるわね」
 合体を行う際に僅かながら帝竜に隙が生まれることをフレミアは見抜いていた。その瞬間を突いて高速多重詠唱された爆裂魔法の術式は、帝竜本体を攻撃するものではなく、このカダスフィアフォートの地形そのものを破壊するためのもの。
「やってくれるな……ッ!!」
 爆撃によって砕かれていくチェス盤の大地を見て、フレミアの狙いを悟ったカダスフィアは歯ぎしりする。自己強化のユーベルコード【ビルド・カダスフィア】が最大の効果を発揮するためには、一定以上の面積のチェス盤化した大地が必要なのだ。

「素材が足りなければ、合体の効力も低下するでしょう」
 フレミアはふっと笑みを浮かべながら、続けさまに呪文を唱え、爆裂・凍結・閃光の魔法を連続して放つ。今度はカダスフィアの顔面――特に目を狙った牽制攻撃だ。
「狙いは時間を稼ぐことか……!」
 こうも執拗に殺意の低い攻撃を受ければカダスフィアもその意図に気付く。だがフレミアにとってはほんの少し動きを止められればそれで良く、目の眩んだ敵が立ち直るまでの間に、本命のユーベルコードの発動準備は整っていた。

「血の隷属を用いて命ずる……。フレミア・レイブラッドの名の下に、嘗ての力を以て骸の海より戻り、わたしに力を貸しなさい」
 過去に吸血したオブリビオンを己の眷属として一時的に蘇らせる【ブラッド・オブリビオン】。その力で吸血姫がここに喚び寄せるのは、威風堂々たる漆黒のドラゴン。
「久しぶりね、ディオバルス」
「久しいな勇者よ。此度の我の闘争の相手は――成程」
 かつてこの世界で猛威を振るいし魔竜、黒皇竜ディオバルスは己が喚び出された理由を探し――眼の前に立ちはだかる帝竜カダスフィアを見て、口から炎の吐息を漏らした。

「今度の相手は……見ての通りよ」
 ビリビリと大気を震わせる闘争心を肌で感じながら、フレミアは真紅の魔槍「ドラグ・グングニル」を構える。かつて敵として戦った黒皇竜と並んで、数あるドラゴンの中でも最上位であろう1体、帝竜カダスフィアと対峙して。
「勇者と帝竜に挑むなんて、生前には無かったでしょう? 相手に不足も無いと思うのだけど、どうかしら?」
「人が悪いぞ、貴様も。我がどう応えるかなど、分かったうえで喚んだのだろう」
 ディオバルスが求むるものは血沸き肉滾る闘争。かつて勇者一行との戦いで敗れた身に、死してなおこのような数奇な機会が巡ってくるとは――まさに望外の歓喜である。

「征くぞ勇者よ、遅れを取るな!」
「あら、それはこちらの台詞よ!」
 轟と咆哮を上げて飛翔するディオバルスに、真紅の魔槍を手に疾走するフレミア。思わぬタッグと対峙することになったカダスフィアは、驚きを隠せない様子で迎撃する。
「よもや人と竜が斯様に手を取り合うとはな……!」
「手を取るのとは、少し違うかもしれないけれど」
 突き出される魔槍の穂先と共に、漆黒の爪が帝竜を引き裂く。妨害により不完全な合体しかできていない帝竜の急所、装甲の露出した部位を的確にふたりは攻め立てていく。

「一気に押し込むわよ!」
「よかろう……!」
 カダスフィアの体勢が崩れたのを見逃さず、フレミアは再び爆裂魔法を、同時にディオバルスは地獄の炎を放ち、半壊したロボのボディを容赦なく灼き焦がしていく。
「ぐ、おぉぉ……ッ!」
 ボロボロと崩れ落ちた装甲の中から帝竜の本体が姿を現す。その瞬間ディオバルスは全身の結晶状の器官を発光させて【カタストロフィ・ノヴァ】の構えを取り、フレミアは持てる全ての魔力を魔槍へと集束させる。

「これで――!」
「――爆ぜよ!」

「ぐ、が、あ、アアァァァァァァァァァァッ!!!!!」
 全てを滅ぼす超威力のグングニルと、全てを焼き尽くす紅蓮の大爆発がカダスフィアを直撃する。吸血姫と黒皇竜の全力をその身で受ければさしもの帝竜もひとたまりもなく――カダスフィアフォートの大地に、耳をつんざくような絶叫が響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

フン…油断なくゲームを進めてくるか
極めて厄介だが、奴らを追い詰めつつあると言う事だな

敵UCが発動し、大量のゴーレムがこちらに殺到したら装備銃器とデゼス・ポアで攻撃
雪崩れ込んでくる先頭集団を制圧射撃と斬撃で潰していき、後退して敵から素早く距離を取り、即座にUCを発動する

さて…お前達のターンは終わりだな
今度はこちらが蹂躙してやろう

高速移動で敵集団に突撃し、念動力による一点突破で蹴散らす
群がる敵を吹き飛ばし、躱し、時には足場にしながらカダスフィアまで肉薄し、そのまま念動力を乗せたナガクニを叩き込む

捨て身の覚悟だと言うのなら、此方も正面から食い破ろう
チェックメイトは近いぞ、カダスフィア



「グ、ォ、ォ……まだ、だ。どのような盤面にも、勝利の光明はあり……!」
 猟兵らの猛攻によってただならぬ重傷を負ったカダスフィアであったが、彼はまだこの戦いを諦めてはいなかった。敗色濃厚であればこそ、彼は冷静に戦局を見極め、最終的な勝利のために為すべきことを成さんとする。
「フン……油断なくゲームを進めてくるか。極めて厄介だが、奴らを追い詰めつつあると言う事だな」
 キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)の言葉通り、それは敵が猟兵の力に脅威を覚えている証である。ならばこちらも油断なく手を進め、勝利を掴み取るまでだ。

「その通り、我は追い詰められている……だが"我ら"の勝利は譲らぬぞ!」
 カダスフィアの咆哮と共にチェス盤から新たな眷属が召喚される。チェスの駒を模したゴーレムの大群は、帝竜の指揮下で一糸乱れぬ統率を見せてキリカに殺到した。
「よく統率されているな。それでも、やりようはある」
 キリカは右手に自動小銃"シルコン・シジョン"、左手に機関拳銃"シガールQ1210"を構え、ありったけの銃弾で応戦する。狙いは雪崩込んでくる先頭集団のゴーレム、これを潰せば敵の進軍ペースは落ちる。
「切り裂け、デゼス・ポア」
 さらに降りしきる弾幕の中を呪いの人形"デゼス・ポア"が飛びまわり、全身を飾る錆びた刃でゴーレムを切り裂く。敵軍の足並みが乱れたうちに、キリカは素早くその場から後退した。

「さて……お前達のターンは終わりだな。今度はこちらが蹂躙してやろう」
 無事にゴーレム兵団から距離を取ったキリカは、身に纏った特注バトルスーツ「ヴェートマ・ノクテルト」に搭載されたユーベルコードを発動し、即座に反撃に転じる。
「コード【épique:La Chanson de Roland】承認。リミッター全解除……起動しろ! 【デュランダル】!」
 保護のために課せられた制限が外れ、「闇夜の衣服」と名付けられたスーツは着用者の行動を支援するものから、着用者に限界を超えた力を引き出すものに役割を変えた。
 だん、と地を蹴ったキリカはたった1歩で人間の速度を超え、一陣の風となって敵集団に突撃する。

「捨て身の覚悟だと言うのなら、此方も正面から食い破ろう」
 すっとキリカが前方に手をかざすと、見えない巨人に蹴り飛ばされたように、その一方向の敵だけが吹き飛んでいく。スーツに搭載されたセンサーが彼女の脳に負荷をかけ、限界を超えた念動力の使用を可能としているのだ。
 切り開いた道を駆け抜けていく超スピードも、同様のアシストプロテクターによる補助あってのもの。言うまでもなくその心身にかかる代償は尋常のものではない。
「貴様もまた捨て身ということか!!」
 驚嘆とともにカダスフィアはさらなる手駒を差し向けるが、キリカは群がるすべてを吹き飛ばし、躱し、時には足場にしながら、その最奥にいる帝竜だけを見据えて突き進む。

「チェックメイトは近いぞ、カダスフィア」
 そして、ついに帝竜に肉薄した彼女は過負荷により眼から血涙を流しながらも、表情には苦痛を一切見せること無く、黒革拵えの鞘から短刀「ナガクニ」を抜き放つ。
 龍の骨粉と特殊鋼鉄によって鍛え上げられた名刀。そこに【デュランダル】の高速移動によるスピードと念動力による強化を乗せれば、その一太刀に断てぬものは無し。
「グガァッ!!?」
 ばっさりと斬り裂かれた帝竜の巨体から、真っ赤な血飛沫が噴水のように飛び散る。
 その身はもはや満身創痍。彼女の言葉通り、チェックメイトの時は確実に迫っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ニオ・リュードベリ
相手が全力ならこっちも全力
負けてられないね、頑張ろう!

相手は必ず怪物を召喚してくるんだね
それならそれを迎え撃てるようにしよう
強大な敵に挑むのはいつだって怖い
けどその気持ちだって糧に出来る
恐怖を【勇気】に
出てきて、デモゴルゴン!

デモゴルゴンは影で出来た巨大な魔人
怪物の迎撃はデモゴルゴンに任せるよ
緻密な作戦を打ち破ったりとか、あたしそういうの得意じゃないから
デモゴルゴンには正面突破を任せよう
殴って蹴って派手に暴れて!

あたし自身は【目立たない】ように戦場を移動
デモゴルゴンが注目を集めている隙に【ダッシュ】で駆けて
タイミングを見計らい敵本体に【ランスチャージ】!
柔らかそうな部分を狙って【串刺し】だよ!



「相手が全力ならこっちも全力。負けてられないね、頑張ろう!」
 立ちはだかる巨大な竜とその軍勢を前にして、ぐっと気合いを入れるニオ・リュードベリ(空明の嬉遊曲・f19590)。普段はなるべく見せないようにしている、内に潜む恐れや不安も全てさらけ出して。偽りのない想いのままに戦場へと足を踏み入れる。

「ここは……通さぬ……!!」
 【形成するもの】によって次々と新たな眷属を作り出し、猟兵の行く手を阻まんとする帝竜カダスフィア。彼自身は既に満身創痍だが、軍勢を指揮する能力に衰えはない。
(相手は必ず怪物を召喚してくるんだね。それならそれを迎え撃てるようにしよう)
 押し寄せる大群を見つめてから、ニオはそっと胸に手を当てて目を閉じる。向き合うのは己の感情――強大な敵に挑むのはいつだって怖い。けどその気持ちだって糧に出来る。

「出てきて、デモゴルゴン!」

 恐怖を勇気に。高らかな呼びかけと共に発動するのは【創造召喚デモゴルゴン】。
 ニオの影の中からぬうっと巨大な魔人が現れ、身の毛もよだつような咆哮を上げる。
 其は死と破壊を司る悪魔。ただ純粋なる破壊力を以って殺戮を実行する暴力の化身。
「緻密な作戦を打ち破ったりとか、あたしそういうの得意じゃないから」
 帝竜の眷属を迎撃するために、ニオがこの魔人に任せるのは正面突破。
 相手が多勢だろうと悪魔は恐れないし怯まない。特攻役にはうってつけ。
「殴って蹴って派手に暴れて!」
 極めてシンプルなその命令に、デモゴルゴンは歓喜と殺意に満ちた咆哮で応えた。

「たかだか悪魔一匹に、我が軍勢を阻めると思うてくれるな!」
 帝竜の号令を受けて殺到する怪物達に、真っ向から挑みかかる魔人デモゴルゴン。その拳がひと振りされるたびに十の敵が砕け散り、その足が蹴り上げられるたびに二十の敵が宙を舞う。モノトーンの戦場はまたたく間に壊れたチェス駒でいっぱいになる。
 だが、魔人が三十の敵を倒せば四十の敵が。四十倒せば五十が。際限なく創造される眷属の群れは絶え間なくデモゴルゴンに殺到し、次第にソレを追い詰めていく。

 ――しかしニオにとっては、魔人が敵の注目を集めてくれさえすれば十分だった。
「今だっ!」
 眷属のほとんどがデモゴルゴンに引きつけられるのを待って、目立たないように息を潜めていたニオは全速力で駆け出す。その手には白銀に輝くアリスランス、狙うのは勿論、敵の本体である帝竜カダスフィアだ。
「やはり来たか!」
 帝竜もこの奇襲は想定の範疇だったのだろう。兵の多くをデモゴルゴンに裂きながらも自身は防御の構えを取っている。だがひとつ、彼にとって予想外のものがあったとすれば、それはアリス適合者であるニオが持つ想像力の力。

「もっと速く、鋭く、全力で!」
 ありったけの内なる情念を吐き出すように叫ぶ少女に応え、アリスランスは進化を遂げる。彼女の瞳にはもはや敵しか見えておらず、燃えるような眼差しは狂戦士の如し。
 恐怖を勇気に。ネガティブな想いさえも力に変わる、そんな戦いを彼女は好んでいた。
「なんと……ッ、ガアッ!!」
 燦然と輝いた白銀の槍が、傷ついたカダスフィアの柔らかな部位を串刺しにする。
 確かな手応えを得たニオは、敵の眷属が戻ってくる前に素早く離脱するのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

雛菊・璃奈
黒桜の呪力解放【呪詛、衝撃波、なぎ払い】で敵の駒を吹き飛ばしつつ、黒桜の呪力で周囲を侵食させ、同時に目晦ましを掛けて
【魔剣の媛神】封印解放…。

終焉の魔剣を無限に展開し、敵の駒の群れに対して連続一斉斉射…。
同時に黒桜の呪力解放も行い、味方を支援しつつ、敵の能力を封殺…。
そのまま敵本体にも終焉の魔剣の連続斉射を叩き込み、隙を突いて神速で接近…。
魔剣の斉射を掛けつつ、【呪詛、衝撃波】を纏ったバルムンクの渾身の一撃【力溜め、早業】を叩き込むよ…。

貴方の駒には変化させられる無機物の量に限りがある…。対してわたしの魔剣は無限…物量戦では貴方に勝ち目は無いよ…。

終わらせるよ…帝竜カダスフィア…!



「ガハ、ッ……まだだ……我が手駒よ、最後の一兵となるまで戦い抜け……!」
 カダスフィアフォートを染め上げる帝竜カダスフィアの血。真っ赤になった大地から生まれ出る怪物の群れ。もはや逆転は不可能かと思われる戦局においても、猟兵の行く手を阻むチェスの軍勢は止まらない。
「執念だね……どうして貴方がそこまでするのかは分からないけど……」
 雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)は満身創痍の帝竜をじっと見つめながら、その手に呪槍・黒桜を握る。敵がこれほどの覚悟で臨んでいるのなら、自身も相応の意気で挑まねばなるまい。

「呪力解放……吹き荒れて、黒桜……」
 殺到するチェスの駒のような怪物の群れに向かって、璃奈は呪槍をさっとひと振り。黒く染まった穂先から放たれる呪力は漆黒の桜吹雪となって、彼女に近付く敵を吹き飛ばした。
「全てを黒に……」
 舞い散る黒桜の花びらはそのまま周囲に残留し、地面に落ちたものはチェス盤を侵食する呪詛に、宙を舞うものは敵の目を眩ませる暗幕となる。迂闊に踏み込めば生者でさえ侵されかねないその領域は、後続の怪物たちに突撃を躊躇わせる要因となった。

「我が眼前に立ち塞がる全ての敵に悉く滅びと終焉を……封印解放……!」

 その、僅かな躊躇の時間が、璃奈にユーベルコードを発動するための猶予を与える。
 ざぁっと内側から吹き飛ばされる呪力の桜吹雪。その中からこれまで以上の莫大な呪力のオーラを纏った九尾の妖狐が、数多の妖刀・魔剣の現身達を伴って現れた。
 【九尾化・魔剣の媛神】――これが魔剣の巫女たる彼女が真価を発揮する姿である。

「それが汝の真の力か。だが、たった1人で我が軍勢を凌ぎ切れるか!」
「1人じゃないよ……」
 魔剣・妖刀を祀り、鎮め、心を通わせる璃奈は、いつでも魔剣達と共に戦っている。
 彼女は押し寄せる駒の大群にすっと黒桜の穂先を突きつけると、展開した魔剣を連続一斉斉射。万物に滅びをもたらす"終焉"の刃が、チェスの怪物共を薙ぎ払っていく。
「なかなかやる……ッ」
 カダスフィアはすぐに新たな眷属をチェス盤から創造するが、璃奈も負けじと新たな魔剣を顕現。戦いは双方の"軍"による激しい消耗戦の様相を呈することとなった。

「貴方の駒には変化させられる無機物の量に限りがある……。対してわたしの魔剣は無限……物量戦では貴方に勝ち目は無いよ……」
 自らも黒桜の呪力解放で駒をなぎ倒しながら、涼しげな表情で淡々と璃奈は告げる。
 広大なカダスフィアフォートの大地そのものを兵力の供給源とし、これまでにも大量の眷属を創造してきたカダスフィア。しかし今、その表情には焦りが浮かんでいた。
「形成するものであるこの我が……兵力の差で遅れを取る、とは……!!」
 長期化した猟兵との戦いは、戦場の地形そのものを変えるほど激しいものだった。
 大地は抉れ、チェス盤は砕け――その結果カダスフィアの周囲からは、眷属の素材となる無機物が枯渇し始めていたのだ。

「このまま押し切らせてもらう……」
 無尽蔵と文字通りの"無限"は違う。次第にカダスフィアの眷属創造は璃奈の魔剣顕現に追いつかなくなり、終わらない魔剣の掃射によって実質的に能力を封殺される。
 そのまま璃奈は本体たるカダスフィアにも終焉の魔剣の連続斉射を叩き込み、敵が怯んだ隙を突いて一気に接近を仕掛けた。
「クッ、速い……!!」
 魔剣の媛神となった璃奈の能力は顕現のみにあらず。神速の域に達した歩法はまたたく間に彼我の距離を埋め、今度は至近距離からの魔剣の斉射が帝竜に襲い掛かる。

「グ、があぁぁ……ッ、まだ……この程度でッ」
 全身を終焉の刃に穿たれながらも、なお膝を屈さぬカダスフィア。この勇壮なる帝竜を討つために、璃奈はある魔剣を抜き放つ。その名は――竜殺しの魔剣バルムンク。
「終わらせるよ……帝竜カダスフィア……!」
 莫大なる媛神の呪力と衝撃波を刃に纏わせ、上段の構えより大きく振りかぶり。叩き込まれた渾身の一撃は鱗を破り、肉を裂き、骨を砕き――巨大なる帝竜の肉体を深々と断ち斬った。

「グアアァアァァァァァァッ!!!!!!」
 どさり、と血塗れのチェス盤の上に落ちたのは、切断された帝竜の腕のひとつ。
 戦場に満ちる絶叫と膨大な血潮は、彼に迫りくる終焉の刻を如実に示していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フェルト・ユメノアール
キミがどれだけ強くても、気持ちの強さではボクも負けないよ!

『トリックスターを投擲』して敵を牽制
相手の動きを止め、走り回りながら少しでも多くの敵を引き付ける
そして、十分敵を引き付けた所で『ワンダースモーク』を使用
煙幕の中、体を低く、敵の合間を縫うように突破

そして、煙から飛び出し帝竜を攻撃
混沌を纏いし勝利の化身よ!数多の想いを胸に、煌めく舞台へ駆け上がれ!
カモン!【SPクラウンジョーカー】!

クラウンジョーカーの効果発動!
このカードの攻撃時、キミが傷付けてきた人たちの怒りを戦闘力に変換して自分の戦闘力に加える事ができる!
過去の英雄のみんな、ボクたちに力を貸して!
遠距離から必殺の斬撃を喰らわせるよ!



「キミがどれだけ強くても、気持ちの強さではボクも負けないよ!」
 立ちはだかる帝竜カダスフィアにびしりと指を突きつけ、高らかに叫ぶフェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)。たとえ世界の命運をかけた戦いでも彼女はいつものように自信たっぷりに笑い、エンターテイナーとして戦場に立つ。
「……強き想いこそが、汝らの力か。だが、我とて劣るつもりは無いぞ!」
 己を捨て駒としてでもヴァルギリオスに勝利を捧げんとする、カダスフィアの意志もまた強固。失われた腕の断面から滝のように血を流しながらも、気力を振り絞って新たな眷属を創造し、猟兵の行く手を阻まんとする。

「さあ、ショータイムだよ!」
 チェスの駒を模したゴーレムの大群に向かって、フェルトは「トリックスター」を投げ放つ。曲芸用に派手に装飾された道化師のダガーは、煌めく軌跡を描きながら敵の足元に突き刺さり、進軍を鈍らせる。
「怯むな、行け!」
 そのまま後退していく少女を追うようにカダスフィアは号令を下す。正面からぶつかっても勝機は薄いと分かっているフェルトは、矢継ぎ早にトリックスターを投擲して敵を牽制しつつ、色鮮やかな道化の衣装を翻して戦場を走り回る。
 その様子は単に逃げているというよりも、相手を挑発して誘っているようにも見える。その目論見の通り、ゴーレム軍団の多くは彼女の元に引きつけられていた。

「そろそろ頃合いかな」
 やがて、大きなチェス盤の上でフェルトは立ち止まる。辺りを見回せば360度全てが敵。完全に包囲された絶体絶命の状況にして、道化師としては注目を浴びる最高のシチュエーション。
「追い詰めたぞ」
「ううん、ここからが本番だよ!」
 帝竜が止めのひと押しを命じようとした刹那、道化師が足元に叩きつけたのは「ワンダースモーク」。弾ける小さな球体から噴き出した煙は、周囲にいるゴーレム兵の視界を色とりどりに染め上げた。

「奇妙な術を使うものだ! 奴を逃がすな、探し出せッ!」
 身を隠した道化師を捕まえようと、煙幕の中を右往左往するゴーレム兵。フェルトはその動揺の隙を突いて、姿勢を低く、敵の合間を縫うようにして包囲網を突破する。
 そのままダッシュで煙から飛び出した彼女は、帝竜カダスフィアの前に。このタイミングであれば眷属に邪魔されることなく、敵の本体に攻撃を仕掛けることができる。

「混沌を纏いし勝利の化身よ! 数多の想いを胸に、煌めく舞台へ駆け上がれ!」
 左腕に装着したソリッドディスクにユニットカードをセット。そこに封じられた魔物はフェルトの魔力とデバイスの機能により具現化され、高らかな口上と共に召喚される。
「カモン! 【SPクラウンジョーカー】!」
 現れたのは大鎌を携えた黒衣の道化師。まるで死神のようにも見えるそれは、広大な白と黒のチェス盤のステージの中央で、ビシッと大見得を切ってみせた。

「クラウンジョーカーの効果発動! このカードの攻撃時、キミが傷付けてきた人たちの怒りを戦闘力に変換して自分の戦闘力に加える事ができる!」
「何だと……!?」
 驚くカダスフィアの目の前で、キラキラと光る粒子が黒衣の道化師に流れ込んでくる。それはこの戦場だけでなくカダスフィアフォートの全域から集まっているようだった。
「過去の英雄のみんな、ボクたちに力を貸して!」
 かつて群竜大陸にて散っていった数多の勇者達。竜の猛威に苦しめられた名もなき人々。彼らが抱いた怒りの全てが帝竜を討つための力となって、ここに結集する。

「ボクのターン! SPクラウンジョーカーで、帝竜カダスフィアに攻撃!」
 フェルトが力強く宣言すると、黒衣の道化師が颯爽と飛び出す。振りかぶられた大鎌は人々の怒りのパワーによって、巨人の首をも刈り取れそうな程に巨大化し――。
「断罪の一撃!」
「ぐ、があぁッ!!!」
 振り下ろされた乾坤一擲の刃は、帝竜カダスフィアの巨体を深々と斬り裂いた。
 戦場に轟く絶叫と広がる鮮血の海。帝竜の首が地に落ちる瞬間は、またひとつ近付いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

佐伯・晶
敵ながら見事な覚悟だね
こちらも油断せず
仲間と協力して戦うよ

チェス型ゴーレムなら
駒の種類と数や能力に相関があるのかな

知っている通りのチェスなら
単純に前に出るしかできない
ポーンが一番多いはずだから
空中浮遊で距離を置き
数の少ない他の駒の攻撃に集中すれば凌げないかな

届く攻撃は回避を試みつつ
直撃しそうなら神気で時間を停めて防ごう
これは僕なりのオーラ防御だよ

攻撃を凌いだら邪神の繰り糸を使い
ゴーレムを人形に変えて操ろう
僕の故郷では将棋というゲームがあって
取った駒を使えるんだよ
敵じゃなければ将棋でも勝負してみたいんだけどね
たぶん負けるけど

状況に適応される前に
射撃でダメージを与えて離脱
こっちには味方がいるからね


玉ノ井・狐狛
※アドリブ/連携などお任せ

さすが帝竜サマ
盤遊戯には慣れてるか
ボロを出さない相手ってのァ、面倒でいけねぇや

🛡️
相手が脳筋じゃないなら、手駒の動かし方には戦術が介在するよな
千里眼で盤上を俯瞰、意図を探る
▻見切り▻読心術

どんな手にも、「相手がこう動くだろう」って読みや「こう思わせたい」っていう誘導があるモンだ
その読み合い・騙し合いに勝って、対応が必要な駒の数を最小限に
近くにいれば他猟兵にも共有

少数相手の短期決戦なら、術で身体能力を▻ドーピング
十分しのげるだろう


帝竜サマがわざわざ陣に選んだくらいだ、霊脈の強い土地だろう?
◈UCでそれを暴走させ、地面ごと盤をぶっ壊して兵站を潰す

計画はご破産だ



「グ、ガハッ、ゴホッ……この盤面……詰みを回避する術はなし、か」
 自らが作った血の海の上に立つ、満身創痍のカダスフィア。死期迫る身で己の敗北を悟りながらも、眼から闘志は失われていない。それは決して自暴自棄になった者の玉砕の覚悟ではなく、冷静に残された時間を大局的勝利に費やさんとする者の眼だ。
「一刻一秒、一刹那の我が抵抗が、ヴァルギリオス様の勝利に繋がると信じよう」
「敵ながら見事な覚悟だね」
「さすが帝竜サマ、盤遊戯には慣れてるか」
 捨て駒となることを怖じぬ帝竜の決意に、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)と玉ノ井・狐狛(代理賭博師・f20972)は感嘆を口にする。ヘボ将棋、王より飛車をかわいがり――などといった言葉があるが、この竜は死守すべき駒を誤りはしないようだ。

「ボロを出さない相手ってのァ、面倒でいけねぇや」
「こちらも油断せずにいこう」
 悪手を打てば道連れにされるのは自分たち。敵の能力と覚悟に強く警戒を抱いた晶と狐狛は、共闘して帝竜ヴァルギリオスとその眷属に立ち向かう。迫るはチェスの駒を模したゴーレムと怪物の大群。残された戦力をここで一気に出し尽くす構えだ。
「相手が脳筋じゃないなら、手駒の動かし方には戦術が介在するよな」
「チェス型ゴーレムなら、駒の種類と数や能力に相関があるのかな」
 こちらを遥かに上回る大群に対して、狐狛が考えるのは指し手の思考、晶が見極めるのは駒の性質。この戦場を巨大なチェス勝負になぞらえれば、相手の一挙一動には全て意味がある。それを解き明かすことがチェックメイトに繋がる活路だ。

「どんな手にも、『相手がこう動くだろう』って読みや『こう思わせたい』っていう誘導があるモンだ」
 狐狛が狗瞳"白"を発動すると、その瞳が白銀色に変化し視点が切り替わる。使い手に千里眼をもたらすこの瞳術をもって彼女は盤上を俯瞰し、敵軍の意図を探りだす。
 あの数とまともにやり合いたくはない――と、こちらが思うであろうことを、相手も読んでいる。その読み合い・騙し合いに勝って、有利な局面に相手を陥れるのだ。
「化かし合いで狐が負けるワケにはいかねぇよなァ」
 こっちだ、と晶を手招きながら狐狛はチェスの盤上を駆ける。敵も尋常の指し手ではないが、だからこそ面白いとばかりに、その口元には笑みが浮かんでいた。

「知っている通りのチェスなら、単純に前に出るしかできないポーンが一番多いはずだから」
 一方の晶は融合した邪神の力で空中を浮遊して、押し寄せる敵から距離を取りつつ観察に徹していた。チェスの駒を模した帝竜の眷属は外見も能力も一様ではなく、文字通りの雑兵の群れの中にそれなりの力を持った特別な駒があることに彼は気付いた。
 ポーンに相当する雑兵は数こそ多いものの動きは単調だ。それを巧みに指揮するカダスフィアの力はやはり侮れないが、うまく裏をかけば交戦を回避できるかもしれない。

「数の少ない他の駒の攻撃に集中すれば凌げないかな」
「少数相手の短期決戦なら、術でドーピングすりゃ十分しのげるだろう」
 晶からの提案に狐狛も賛同し、それぞれの視点から敵状を把握した2人は互いの情報を共有して攻略に乗り出した。指し手の意図を含めたポーンの動向を読みきり、攻めをいなして敵軍の死角へ。対応が必要な駒の数を最小限にして、全力で凌ぎ切る。
「この我が……詰み切れぬとは……!」
 たった2人の猟兵を相手に、カダスフィアはどうしても勝利を掴めずにいた。ポーンによる包囲はすり抜けられ、ルークやビショップの攻撃は時間停止の神気を纏った晶に防がれるか、術で一時的に身体能力を底上げした狐狛に躱される。こうも打つ手を読まれることなど、彼の生涯においても滅多にない事だったろう。

「こっからは第二ステージ、雰囲気変えていこうじゃねぇかい」
 読みと騙し合いを制して敵軍の攻撃を凌ぎきった狐狛は、反撃とばかりに取り出した霊符を全方位に投射する。チェス盤のあちこちに張り付いたそれは込められた霊力を以って、土地の地形や天候、そして霊脈に強制的に鑑賞する。
「帝竜サマがわざわざ陣に選んだくらいだ、霊脈の強い土地だろう?」
 本来なら自分にとって有利な陣の構築のために使う【手びねり天球儀】。
 彼女はそれを今回は敢えて、土地の霊脈を暴走させるために発動させた。

「な―――ッ!!!!」
 地響きを立てて大地が裂け、荒れ狂う霊脈のエネルギーが噴き上がる。鳴動する地面と共にチェス盤は砕け、カダスフィアフォートの風景そのものが激変していく。それは【形成するもの】にとって、眷属を創造するための兵站を潰されたも同然であった。
「計画はご破産だ」
 文字通りに"盤面をひっくり返し"て、狐狛はニヤリと愉しそうな笑みを浮かべる。
 地形の変化はカダスフィアにも、それが率いる軍団にも大きな動揺をもたらし、その機を突いてもうひとりの猟兵――晶が【邪神の繰り糸】を放った。

「僕の故郷では将棋というゲームがあって、取った駒を使えるんだよ」
 それは邪神がもたらす呪いと魔法。晶の周囲にいたゴーレム兵達は一瞬にして彼の人形と化し、発動時に先行入力されていた命令に従ってかつての主君に襲い掛かった。
「グ……我が眷属に、牙を剥かれるとは……ッ!」
 体勢を立て直す間もなく、人形の迎撃に忙殺されるカダスフィア。目まぐるしく変化する状況に敵が対応する前に、晶はさらに携行型ガトリングガンのトリガーを引く。
「ガハァ……ッ!!」
 ダダダダダダッ、と唸りを上げて放たれる銃弾の嵐が、標的の肉体を穿っていく。血塗れの帝竜の口からは苦悶の声が漏れ、その身はぐったりと砕けたチェス盤の上に崩れ落ちた。

「敵じゃなければ将棋でも勝負してみたいんだけどね。たぶん負けるけど」
 今回の対局は2人1組だったが、もしこれが命のやり取りでなければどんな勝負ができただろう。そんなことを考えながら晶は銃身を下ろし、戦場から離脱していく。
「こっちには味方がいるからね」
「祭りの締めは他のヤツに任せるぜぃ」
 狐狛もまた、鮮やかな着物の袖をひらりと振ってその場を離れる。砕けた盤面、バラバラの手駒、満身創痍の指し手。これだけ舞台を整えれば、最後の"詰み"まであと一手だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
◆アマラ(f03823)と


アマラ、竜退治の経験は?
得意なんだ、そりゃ頼もしい
生憎、俺はデカブツの相手はさほど得意じゃなくてさ
今日は頼りにさせてもらうよ

【NV-03】から弾丸を生成
A&W金貨を餌に、精製するのは徹甲弾
極限まで貫通力を高めてある特別製
駒用と本体用、二発で十分

援護は任せてこっちは前に出る
攻撃予兆や予備動作を見切り
最小限の動きで回避しつつ立ち回るよ
アマラの射撃にも対応する分、相手の意識は散漫になるだろう
怪物の動きが止まった瞬間を狙って頭を貫通するように一射

続けざま駒を失った帝竜へ接敵
悪い、あとちょっとだけ援護頼むぜ
ぎりぎりまで接敵して
喉笛を裂いて眼まで貫通するように、真下から撃ち込む


アマラ・ミュー
◆匡(f01612)と

あるさ。それなりに得意だよ、竜退治
キョウほどじゃあないだろうけどね。……ま、なるようになるさ

こっちの仕事はキョウの為に道を作ることだ
残りの弾丸は、『木枯らし』の中の8発と『風上』が一つだから……15発か

1発だけ残すよう、14発使って【種を蒔く】
竜の作り出す怪物の足元に、或いは怪物自身に撃ち込んで発芽させよう
地面や怪物同士と繋ぎ合わせて動きを止めてやればさ。後は簡単でしょ?

安心して行きなよ、意地悪はしないさ
残した一発は竜に向けて
竜を含めた周囲の残敵の動きに注意して、回避優先で距離を取る
キョウが竜と接敵するタイミングで、振るわれる手足にでも撃ち込んで絡め取ってやろうか



「アマラ、竜退治の経験は?」
「あるさ。それなりに得意だよ、竜退治」
 戦いの爪痕によって風景の一変したカダスフィアフォートに降り立つ、2人の猟兵。
 砕けたチェス盤を踏みしめながら鳴宮・匡(凪の海・f01612)が問うと、アマラ・ミュー(天のカミサマを射るように・f03823)は手持ちの弾丸をチェックしながら答えた。
「得意なんだ、そりゃ頼もしい」
「キョウほどじゃあないだろうけどね」
「生憎、俺はデカブツの相手はさほど得意じゃなくてさ」
 今日は頼りにさせてもらうよ、と青年が笑いかけると、赤髪のエルフはすうと目を細め。「……ま、なるようになるさ」と呟きながら、この地を支配する帝竜と対峙する。

「帝竜カダスフィアの名にかけて……ここは通さぬぞ、猟兵達よ……!!」
 もはや敗戦は間近であることを承知の上で、満身創痍の竜は敢えてそう宣言する。
 前進するのは彼に残された最後の兵力。チェスの駒を模した怪物達が咆哮を上げる。
 その覚悟を感じ取った猟兵達もまた、表情を引き締め。それぞれの手に馴染んだ銃を構え、決着をつけるべく行動を開始した。

「残りの弾丸は、『木枯らし』の中の8発と『風上』が一つだから……15発か」
 アマラは押し寄せる怪物の群れに、銀色の拳銃の照準を合わせてトリガーを引く。
 彼女の仕事は相方である匡の為に道を作ること。1匹ずつ撃ち抜いていてはとても弾が足りないが、やりようなんて他に幾らでもある。
「芽吹け」
 怪物に撃ち込まれた弾丸の痕から植物状のUDCが発芽し、みるみるうちに蔓を伸ばしていく。その植物めいた触手は地面や他の仲間に絡みついて、怪物達を縛り上げた。

「こうして繋ぎ合わせて動きを止めてやればさ。後は簡単でしょ?」
「ああ。その調子で頼んだ」
 装填済みの8発が切れれば素早く予備弾倉と交換し、なるべく多くの敵を巻き込めるポイントを狙って【種を蒔く】アマラ。匡は彼女に援護を任せて前に出ると、金食い虫の悪魔【NV-03:Metal Manipulator】を召喚する。
《――コインを入れてください》
 ニィ、と笑う口にアックス&ウィザーズ製の金貨を放り込むと、餌を貰った悪魔は体内で弾丸を精製する。匡が望むのは徹甲弾、それも極限まで貫通力を高めてある特別製。
《弾数は?》
「駒用と本体用、二発で十分」
 錬成された弾を受け取って、愛銃BR-646C [Resonance]に装填。1発目を薬室へと押し込みながら、凪いだ水面のような静かな面持ちでチェスの怪物達に向かっていく。

「阻むのだ……何としても!」
 帝竜の号令の下で進撃する眷属の群れ。しかし繁茂する蔓植物の妨害を受けてその足並みは乱れ、多勢の利を活かしきれていない。意識の散漫になった相手なら対処も容易。
「こっちだ、こっち」
 思うように動けない敵の攻撃動作や予備動作を見切り、匡は最小限の動きで回避しつつ銃を構えた。後方から再びアマラの援護射撃が飛び、発芽した触手が敵群の動きを止める――その瞬間を狙って、頭部に照準を合わせて1射目を放つ。
「穿け」
 音速を超えて飛翔する弾丸は先頭にいた怪物の頭を貫通し、そのまま速度を落とすことなく後方の敵まで纏めて射抜いていく。たった1発の弾丸で彼の射線上にいた怪物の群れは全滅し、まるで戦場に線を引いたように帝竜へと続く道が出来上がった。

「なんと――!!」
 悪魔的とも言えるその威力に驚愕するカダスフィア。続けさま匡は次弾を装填しながら、駒を失った帝竜へ接敵すべく、魔弾が貫いた道をまっすぐに駆け抜けていく。
「悪い、あとちょっとだけ援護頼むぜ」
「安心して行きなよ、意地悪はしないさ」
 前進する匡と対照的に、アマラは距離を取りつつ戦場を俯瞰する。ここまでの援護に使った弾は14発、最後に残った1発は帝竜に向けるもの。周囲の残敵の動きにも警戒して、その瞬間が来るまでは回避優先の立ち回りで機を窺っていた。

「終わりにしようか、デカブツ」
「我が滅びようとも、"帝竜"は敗れぬ!」
 荒れ果てた戦場を駆け抜け、ついに標的を目前に捉えた匡。静かに凪いだ眼差しで見上げる彼に対し、カダスフィアは燃えるような気魄と共に豪腕を叩きつけようと――。
「……やらせないさ」
 刹那、撃ち込まれたアマラの最後の1発。過たず的中した弾丸は即座に蔓草の縛鎖を生じさせてカダスフィアの腕を絡め取り、その巨体を大地と結びつけた。

「ありがとな」
 最高のタイミングでの援護に感謝を告げて、匡はさらに一歩、ギリギリまで接敵。敵の頭を仰ぎ見るように真下から銃口を持ち上げて――悪魔が錬成した2発目を撃つ。
「じゃあな」
  [Resonance]より放たれた徹甲弾は帝竜の鱗を破り、喉笛を裂いても勢いを弱めず。一直線に眼まで貫通し頭蓋を突き破って、蒼穹の彼方まで飛んでいった。

「―――見事だ、猟兵よ。申し訳ありません、ヴァルギリオス様―――」

 眼窩から血の涙を流しながら、どうと大地に倒れ伏すドラゴンの巨体。
 それが盤上の支配者、帝竜カダスフィアが遺した最期の言葉であった。


 ――かくして帝竜の一角を打ち破った猟兵達は、次なる戦場へと駒を進める。
 群竜大陸の果てで帝竜を束ねしもの、ヴァルギリオスとの決戦の地を目指して。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月09日


挿絵イラスト