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帝竜戦役③〜竜の鼓動

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #帝竜 #カダスフィア #群竜大陸

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●ドラゴンアタック
 畢竟するに、『再孵化』の各帝竜からの魔力断たれぬ限りは、世界樹イルミンスールに座すオブリビオン・フォーミュラ『帝竜ヴァルギリオス』の安泰は揺るがぬのである。
 だが、現状。
 群竜大陸を進撃する猟兵の疾さの前には、強大たる軍団を形成し完璧なる陣敷くに帝竜最速たる『帝竜カダスフィア』を以ってしても後塵を拝する事態を迎えるに到る。

 ――我を含む『再孵化』した帝竜に、それ以前の記憶は無い。
 ――だが、
 ――我が脳裏には、苦い敗北の悪夢が刻まれている。
 ――敵の喉元に喰らいついておきながら敗北を喫した、苦い記憶が……。

 されど……否、なればこそ。
 どのような盤面からでも勝利は手繰り寄せ得るのだとその帝竜は確信する。
 悔やまれるたった数日、僅か一手の遅れ。だが、帝竜たる己すら捨て駒となす不退転で臨めば勝機は掴めよう、必ずや――。

『――勝利の栄光をヴァルギリオス様の御元に捧げん!』

●二色の陥穽
 『帝竜戦役』における最初の帝竜との決戦ルートが切り拓かれ、グリモア猟兵のひとりである巳六・荊(枯涙骨・f14646)も早速その攻略の為の戦力をここに募る。

「敵は強大。そのクセ、何だかこー、全然コッチを侮ってはくれないワケ。とりわけこの帝竜カダスフィアはね」
 敵方の焦燥や猟兵に寄せる過剰な警戒心は、どうやら、喪われた『再孵化』前の記憶に起因するものであるらしいのだが……。
「敵本丸へ必至の王手掛けたつもりでいたら土壇場で詰めろ逃れの詰めろで大逆転されて終局とかそんなカンジなコトでもあったのかもねー。ま、しらないけど!」
 クスクスと冗談めかして笑いながらも、荊は、逸れようとしていた話を戻し帝竜カダスフィアの力について語り始める。
「一言で言えば……最強駒も兼ねてる指し手、ってトコロかな? 周囲のあらゆるものをチェス盤やチェスの駒をモチーフにした眷属に変えて操る能力に加えて、優れた戦術眼。既にほぼ自軍の編成も終えちゃってるみたい」
 かの帝竜の力によって古代城砦カダスフィアフォートを中心に周辺一帯は地形そのものが巨大なチェス盤と化してしまっているのだという。
「敵の掌中も同然の、その盤上での戦いを強いられるんだもん。帝竜カダスフィアもその眷属達も常に先んじてくるだろーね」
 圧倒的不利な状況下での戦闘開始を示唆しながらもグリモア猟兵の笑みは揺るがない。
 それはここまで幾多もの『カタストロフ』打ち砕いて来た猟兵達への信頼の揺るぎなさを物語る……のだろう、多分。

「とりあえず転送先はいきなり帝竜カダスフィアの目の前一択ってコトでヨロシク! ……だって隔てた地点に降り立たせたって結局は先手はアッチにあって、大軍勢やら帝竜と合体した地面やらが一方的に襲い掛かってくるチェス盤上だからねー」
 それはこのグリモア猟兵なりの最善手という事であるらしい。
 承諾した猟兵をグリモアの力が包み込む、遥か遠き天空の大陸への路は開かれてゆく。
「とはいえ、指し手はボクじゃないしキミ達も駒なんかじゃない。だから――ゲーム盤やルールなんかじゃ縛れない『埒外』なキミ達の闘い、帝竜に見せつけてきちゃってよ♪」


銀條彦
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「帝竜戦役」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

●プレイングボーナス
 『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』です。
 帝竜カダスフィアは必ず先制攻撃をしてくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります。

 ちなみにチェス駒の眷属はいずれもモチーフとなった駒の性質や戦闘力を色濃く反映するようです。

 御武運を。
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第1章 ボス戦 『帝竜カダスフィア』

POW   :    ビルド・カダスフィア
無機物と合体し、自身の身長の2倍のロボに変形する。特に【チェス盤化した、半径100m以上の大地】と合体した時に最大の効果を発揮する。
SPD   :    ミリティア・カダスフィア
【チェス型ゴーレムの大群】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    形成するもの
自身からレベルm半径内の無機物を【チェス盤やチェスの駒を模した怪物】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。

イラスト:あなQ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リオネル・エコーズ
再孵化ってつまり前世の記憶的な?
手強いひとが余計手強い感じに…
でも俺のやることは変わんないから…うん、別にいっか!

怪物での先手攻撃受けても動き続けられるよう
オーラ防御で自分を守りながら
空中戦の要領で怪物の進行方向と同じ方=後ろへ飛ぶ
正面からぶつかるよりいいと思うし
痛い時は勇気と覚悟でアレをソレ
つまり我慢と火事場の何とか!

眷属と帝竜の動きをしっかりと見て…
うわ改めて見ると迫力パない
両方をしっかり捉えたそこで属性攻撃と全力魔法マシマシのUC
帝竜も眷族も堅そうだから
1本ずつより複数本纏めてそれぞれに降らせる
特に眷属はモチーフによっては防御力高そうだし

世界を諦めるなんて出来ないから
遠慮なく浴びてってね


尭海・有珠
ドラゴンという種自体が嫌いなんだ
特に人に害を為そうとするやつは特にな
悪夢を再び与えてやる

チェス盤はともかく、駒から変換されたものは
元となった駒の動きに似ることを念頭に
追い詰められないよう、動き回りつつ杖や剣で弾けるものは弾いていく
突進力のあるものは引きつけての回避を優先
足下から来た場合は、空中浮遊の一歩を踏んで避けられるくらいに迄は
ギリギリまで引きつけてから対処

反撃は濃縮した光による≪剥片の戯≫にて
致命傷になり得て、かつ弾けるか攻撃を逸らせる敵の攻撃に一部を当てつつ
大半はカダスフィアへ向かわせる
複数個所に当て、攻撃が通り易いと見た場所へ集中攻撃
まるで悪夢の片隅にある光のシャワーのようだろう?



 切り立つ崖も、其処から生えるようにして建つ城砦も、今はすっかりと途方もなく巨大なチェス盤へと変貌を遂げていた。
 そして盤の所有者たる帝竜が座すのは差し手としての盤外からではなく、その盤上――王(キング)の位置。

「んー……再孵化ってつまり前世の記憶的な?」
 青きネモフィラの髪花揺らしリオネル・エコーズ(燦歌・f04185)は首をかしげる。
 手強いひとが余計に手強い感じになっちゃったのがその所為だとしたら……仮にも帝竜となったこのドラゴンにいったい何が起きたというのだろうと想い馳せたくなったのだ。
 一方、ドラゴンという種自体を憎む尭海・有珠(殲蒼・f06286)にとって、カタストロフという人に害為すの最たるものを齎す帝竜の記憶内容それ自体に興味は無い。
「それが何であれ悪夢であるというのなら、再び与えてやるまで」
 蒼海の色映す双眸は何ひとつ諦める気の無いダンピールの静かな闘志を湛える。
 我ながら他愛ないとも思える問いに、思いがけず明快かつ建設的な答えが投げ返された小気味よさにオラトリオの青年の顔に咲いた笑顔。
「俺のやることも変わんないから……うん、そうだね。別にいっか!」

 先手番たる帝竜はチェス駒の怪物達を次々に生み出し、軍団の操作を開始した。
 どうやら防衛側であるカダスフィアが序盤から動かすのは軽装の兵士型のみ。
 しかしその数は多い。
 対するはうつろう暁光の翼はためかせて纏う魔力を護りの力へと変えて臨むリオネル。
 殺到する兵士らの突撃に立ち塞がった彼の体は、しかし、猛攻受け止め切れずふわりと羽のようにたやすく後ろに吹き飛ばされてしまった。
(いや、違う。わざとか……)
 翼持つ麗しきその外見の通りに、空中戦の巧者であるらしいこの青年は、あえて兵士型の進行方向に逆らわず自ら飛んだのである。
「すっごく痛い!! でも勇気と覚悟で我慢、アーンド、唸れ俺の火事場のなんとか!」
 にぎやかに騒ぎたてるばかりの様でいてその実、敵の先制攻撃による痛手を最小限へと抑え得ている味方の姿を頼もしく感じながら、有珠自身はそれとは真逆の前進。
 敵列へと果敢に切り込んだ有珠は、蒼の宝珠戴く杖の真鍮で躍りかかる兵士型を弾いて捌き、続けざま、散らすように蒼を薙ぐ。
 全方位に黙と向けたその集中で、逃げ場塞ぐ包囲もいまだ後方控える大駒からの横槍も、決して彼女は許さない。
 そして――王、射抜かんとする殺気は猟兵両者の内で眈眈と。
(うわ改めて見ると迫力パない)
 巨大にして強大な帝竜カダスフィアの威容。
 だが差し手にして最強駒は、盤上の眷属達と猟兵達を注視するばかりで自ら動こうとはしない。兵士型たちの動きは直線的かつ単純で、リオネルにとって迂回スルーそれ自体は容易だったがチェスにおけるポーンの性能を思い浮かべれば、まるっきり放置というのも彼には躊躇われた。
(盤は、動かさないつもりか……?)
 現在まで攻防繰り広げながら踏んだこの足下すら、帝竜がその気になればチェス盤型の巨体怪物と化して意のままに動かせる事こそ、有珠にとって最も警戒すべき要素。
 だが、現在までの処、それが実行される気配は無い。
 あるいは、チェス駒の軍団に対してそのルールに則った応戦を行う敵に対してはあくまでチェスの定跡に添った戦いを指揮するつもりなのかもしれないが……彼女たち猟兵は、チェスゲームではなく帝竜討伐の為に、今ここに立つのだ。

「さあご覧、宙(そら)の使者のお通りだ!」
 しばしの二面指しから一転、討って出たリオネルから迸るような流星群が白黒の世界へと零れて鮮やかに七色の尾を引く。
 我が身に残る全魔力を注がれ光いっそう煌めく【極光の星(メテオール・ライン)】。
「だって世界を諦めるなんて出来ないから……遠慮なく浴びてってね!」
 リオネルが流星束ねて盤上の布陣に幾つもの穴穿ち、帝竜へと到る射線抉じ開けた後、
 追って放たれた【剥片の戯(プリュイ・フォリー)】に有珠が込めた呪いもまた、光。
 幾百と撒かれた薄刃は、その鋭利さで直近の大駒らを守備へと専念させたがその大半が降り注いだ先は、王たる帝竜の喉元だ。
「まるで悪夢の片隅にある光のシャワーのようだろう?」

 鷹揚と、チェス駒生える巨翼を盾にしてその全てを受け止めた帝竜に対して刻み得た傷はいまだ微小。
 だが拡げられた翼と翼の合間に、確かに。
 ふたつの輝き厭い、大きく顰められた帝竜の貌を猟兵達は垣間見たのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

オズ・ケストナー
リュカ(f02586)と

無機物を変化させる姿を見たら
ミレナリオ・リフレクション
UCを使うところを見たもの
返せるはず

あとはリュカが道をひらいてくれる
そしたら斧で切り込むだけっ

駒が出たら
リュカっ

リュカが立ててくれた作戦
リュカと警戒を半分こ
わたしがルールを覚えたのはルーク、ビショップ、クイーン
その駒が出たらリュカに動きを伝えるよ
ちょくせん方向、くるよっ
右だねっ
斧で応戦

特にクイーンが出たら気をつけるね
チェスでさいきょうの駒なんでしょう?

もしよけるのが間に合わないなら
リュカとクイーンの間にいれば
クイーンはリュカにとどかない
そうだよね
その時は武器受けとオーラ防御でカバー

リュカっ
次はわたしが道をひらくからね


リュカ・エンキアンサス
オズお兄さん(f01136)と

相手が変化させそうな無機物は、可能な限り潰しておく
で、お兄さんが技を打ち消してくれたら、あとは地道に削って進んでいくしかない
お兄さんが怪我しないように、早めに数を減らしたい

駒は、チェスの通りにしか動けないのなら
ある程度行動は絞れるだろう
俺は、キング、ポーン、ナイトの監視を担当
駒の動きを予想して、回避と攻撃に努める
…直線だね、了解
ごめん、ちょっとだけ右の止めていてほしいです

特にクイーンと、ほかの駒を追い越せるナイト優先的に撃破
チェス以外の動きをするのにも気をつける
あとは路が開いたらその隙に、ヴァルギリオスに銃弾を撃ち込んでいく
お兄さんがくれた機会、無駄にはしないよ



 戦場、ばら撒かれた銃弾が大地を城壁を古代の遺構を粉々に砕いてゆき、後に残されたのは無数の破片。
 出鱈目な手当たり次第とも映るリュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)の乱射は、敵ユーベルコードの材料となる無機物を潰しておく為の布石だった。
 しかし潰しただけではその形状が変化しただけで依然として効果範囲内に無機物が同量存在するという状況に違いは無く、結局はチェス駒の軍勢の再出現を許してしまう。
 オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)のキトゥンブルーの瞳は既に他の猟兵に向けて【形成するもの】たるその帝竜のユーベルコードを目撃していたがそれでも帝竜ならぬ身で全く同じユーベルコードを再現・相殺させるには至らなかったのだ。
「リュカっ!」
「……地道に削って進んでいくしかないか」
 できるはず返せるはずとオズが信じていた【ミレナリオ・リフレクション】の魔法は、残念ながら効かなかったけれど彼にはリュカが考えてくれた作戦がある。
「わかった、半分こだね!」
 それは、チェス駒の軍団に対する警戒を兵種別にふたりで手分けして行うというものであった。
 オズがルークとビショップとクイーン、リュカはポーンとナイトと、そしてキング――帝竜カダスフィア。
 他にそれらしき怪物駒が見当たらぬ以上、イコールと考えて大丈夫なのだろう。
 キング駒が絶対の最強駒と化している事実が示すように、敵駒はぴたりとチェスルール通りにしか動けない訳ではなかった。
 だがそれでも、その動きや役割はモチーフとなった駒に添ったものとなっておりそれらは大いに回避や攻撃の助けとなっている。
(お兄さんが怪我しないように……その為にも早めに数を減らしておきたい)
 クイーン型は帝竜の守りを引き受けたまま動かないが、機動性に優れ敵影からの奇襲を得意とするナイト型の脅威を重く見たリュカは最優先でその撃破を急いだ。
「ちょくせん方向、くるよっ」
「……直線だね、了解」
 飛ぶ声に反応しフォアグリップを握る手が素早く照準を取り、自動掃射。
 まるで城砦の一部をそのまま切り取ったかのような重厚な円塔が彼らめがけて驀進して来たが弾幕をもって速度を殺いだ後、対戦車狙撃の要領をもってその粉砕に成功するのであった。その間リュカはルーク型にかかりきりとなっていたが敵の攻勢は止まらない。
 そんな時は勇ましく前衛務めるオズの出番なのである。
「ごめん、ちょっとだけ右の止めていてほしいです」
「右だねっ! よーし、それっ!」
 先からの集中砲火で既に満身創痍だったナイト型が最後の足掻きにと嘶いたが、蒸気いっそう噴きあげて振るわれた大斧ガジェットが斬馬刀よろしく豪快に自慢のその脚を刈って迎え撃てば機動性は失われ程無く討ち取られるのであった。

 堅実な手筋と阿吽の連携で彼らは帝竜待つ陣奥へと迫るも、控えるクイーン駒がそれ以上の入城を許さない。
 人間の女性を模したとおぼしき優美な造形のこの怪物は戦士としても魔術師としても破格の戦闘力を誇って斬りかかったオズを一蹴して白黒の床へと叩きつけ、リュカもろとも殲滅すべく詠唱を開始する。
 おそらくは、範囲魔法。それに気づいたオズは再び立ち上がる。
 ここまでこの青年ミレナリィドールは、常にリュカとクイーンの間に位置取って闘う事で体を張ってリュカを守り続けて来たがもはやそれでは少年を守り切れない。
(間に合わない? ううん……)

 つよくてさいきょうの駒のクイーン。
 けれど……解る。クイーンがたたかうのは、つくられたのは、キングをまもるため。
 これだったら。わたしは、知ってる。だったら――使えるんだ。

「リュカっ、次はわたしが道をひらくからね!」
 唐突な【ミレナリオ・リフレクション】の天啓が今こそオズに【形成するもの】を完璧にトレースさせてその効力を完全に打ち消した。
 猟兵を圧倒していた筈のクイーン駒はその援護に入ろうとしていたビショップ駒諸共、唐突に、ただの赤土の山へとその姿を変える。

 ――ッ!? ……成程、人形を遣う人形か――。

 もはやこの人形の前では帝竜カダスフィアは【形成するもの】たりえぬ。
 瞬時にそう理解した差し手は最強たる自らを手駒として動かす事を決意した。
 既に消耗深いこの猟兵らがそれに打ち克つなど万にひとつも不可能であろう事は自明の理。此処までの戦果を手にふたりが逃げ帰ろうとも誰も責めまい――それでも。

「お兄さんがくれた機会、無駄にはしないよ」

 凶星よ砕け墜ちよと放たれた銃声。
 世界襲う悲劇乗り越える為のふたりの戦いは、あとしばし続けられるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

幻武・極
へえ、チェスのドラゴンか、チェスでの勝負と行きたいところだけどそうも言ってられないよね。
キングが一番強いチェスはそもそもおかしいからね。

さて、力勝負と行こうか。
この広いチェス盤と合体してロボになるってことはメカカダスフィアってことかな。
合体の為に吸い寄せられるチェス盤に飛び乗り、クライミングで振り落とされないように気を付けるよ。

さて、このチェス盤と合体してメカカダスフィアになったみたいだけど
実際は『メカ』ではないよね。
このチェス盤はどう見たって金属製じゃなくて石材だよね。
石材はね結構衝撃に弱いんだよね。
しかも、こんなに的が大きくなればボクの攻撃を躱すのは難しいよね。


グァーネッツォ・リトゥルスムィス
強いロボに変形するUCを防げないなら
激痛耐性で耐えながらわざとオレ自身に傷を作って
オレの赤い流血でチェス盤を汚してチェス盤という認識を阻害させて
敵ロボの最大効果の発揮を邪魔してやる
大好きな故郷の未来が掛かってるんだ、これ位の覚悟が無きゃ勝てないぜ!

ロボに変形後の敵には気合で経戦しながら
オレの小さい体躯を活用して敵の巨体をクライミングし
敵の背中から竜骨斧を『茨竜の戯れ』で茨に変換させて
茨を使って翼や沢山の腕に関節技を決めてやる
ぐ、オレ自身にも茨が食い込んで痛いし血が更に流れるが
逆に血を敵の目にぶっかけて視界を遮ったり
茨にオレを運んで貰って敵の反撃を躱すぞ
オレとお前、どっちが先に倒れるか勝負だぜ!


護堂・結城
チェス盤と合体…チェスの意味…
いや、まぁいい、それも利用するまでだ
貴様には沈んでもらうぞ

【POW】

・先制対策
【魔力溜め・全力魔法】で威力を上げ
【無酸素詠唱・多重詠唱・高速詠唱・早業】による無数の【呪詛・誘導弾・一斉発射】
炎と風の【属性攻撃】も使って【爆撃・衝撃波・範囲攻撃】で先制攻撃への【カウンター】相殺を狙うぞ

・攻撃
先制攻撃を凌ぎ切ったら指定UCを発動
海竜装を纏って地中潜行、合体した大地の部分を移動
喉や関節などの弱点を狙って海竜の顎で【怪力・生命力吸収・捕食】の噛み砕きを仕掛ける
牙の傷から【毒使い】の毒で【蹂躙・継続ダメージ】の追撃だ

「大地を取り込んだのが貴様の命取りだ」



 彼の名を冠した地に轟きわたるカダスフィアの咆哮。
 その大いなる力の前に、猟兵らを取り巻く風景は揺らぎ崩れ……そして顕れ出でた、【ビルド・カダスフィア】の震撼。

「チェス盤と合体……チェスの意味……」
 これはもはや最強駒でも差し手でも無いだろうと護堂・結城(雪見九尾・f00944)は眼前繰り広げられる荒唐無稽にすっかりとツッコミが追いつかない様子であった。
 とはいえ只でさえ強大な帝竜が更なるパワーアップを遂げたのは事実で、対外道用戦闘特化狐であるところの彼はもてる妖力の全てをもって自らの周りに攻防一体の炎嵐を展開する事で、巨大合体カダスフィアが振り下ろした拳に抗い、その天災の如き威力を大きく減じて今まだこの大地にと在る。
 一方でグァーネッツォ・リトゥルスムィス(超極の肉弾戦竜・f05124)は既に満身創痍であった。
 帝竜が相手とはいえ彼女もまた優れた天性のパワーファイター。
 この短時間でここまでやられる一方だったのには理由があった。
 激痛に耐えて自ら流血を続ける事でチェス盤を汚してこの大地がチェス盤であるという帝竜の認識それ自体を阻害してユーベルコードを封じようとしているのである。
「大好きな故郷の未来が掛かってるんだ、これ位の覚悟が無きゃ勝てないぜ!」
 ドワーフ少女はそう気丈に笑ってみせた。
「だが合体ロボになる地面を指してこれはチェス盤だと思い込める奴相手に、ちっちゃなその体でこさえた血溜まり程度ではたして認識をどーこー出来るのか??」
「……ぐっ!」
 しかし結城のツッコミが今度は味方へと向けられる。
 確かにそんな大雑把な認識で使われるユーベルコードが定義するところの『チェス盤』は多少汚れてようが割れてようがOKで通されてしまいそうである。
「そもそもチェス盤ってルール上は特に黒と白2色のみって決められてる訳じゃないし。紅いチェス盤とか普通に存在するよね?」
「まじか。 ……というか、誰だっ!?」
 ゲームなら任せろ、幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)である。
 魔法拳とゲーム武術の使い手である彼女は合体時カダスフィアに吸い寄せられたチェス盤の大地にしがみついた事で巨大合体カダスフィアからの猛攻回避と射程内肉薄を同時に果たしていたのだ!
 こうして敵首魁の喉元まで迫る難事にいきなり成功した極だったが、しかし、彼女にも誤算があった。
「チェス盤と合体してメカカダスフィアになったみたいだけど実際は『メカ』ではないよね。どう見たって金属製じゃなくて石材だよね。石材はね結構衝撃に弱いんだよね」
 ゲーム武術家は怒涛のツッコミとともにぐるぐるとその拳を廻し続けた後、こんな大きな的なら外す方が難しいとばかり手近なチェス盤装甲へ【羅刹旋風】を叩きつけた……のだが。
「合体した以上は石でも金属でもなく、帝竜……最上級のドラゴン属性であった、と」
「チェスのドラゴンと聞いてワクワクしたしどうせならチェスでの勝負と行きたいところだけどそうも言ってられないよね。というかキングが一番強いチェスはそもそもおかしいからね」
「なんでだ? いちばん強いヤツがキングで間違いないだろ??」
 いちばん慣れ親しんでるルールは大自然の掟なグァーネッツォが不思議そうに首をかしげたが、まあ、ここでチェスゲームのレクチャーを始めても仕方が無い。
 もはや気合いのみで立つグァーネッツォはそれでも不屈に、極の後へ続けとばかりに、カダスフィアの脚へと取り付き、短躯に物を言わせて身を潜ませながら帝竜登りを着々とこなしてゆく。
 膝とおぼしき箇所へと辿り着いた少女が背負った竜骨ナチュラルアックスへ悪戯を誘いかければ【茨竜の戯れ(エンチャント・ドラゴンソーン)】が始まり、長く頑丈な茨が幾重にもロボの関節部分に巻き付いてその自由を固く縛め始めた。
 度が過ぎる遊びたかりなこの茨竜の力は時にグァーネッツォ自身にまで及ぶこともしばしばあったが、今この場に限っては、帝竜という大物相手に好き勝手じゃれつくのが余程楽しいらしく概ね協力的であった。
「カダスフィア! オレとお前、どっちが先に倒れるか勝負だぜ!」
「なるほどね……そんな力勝負としゃれこむのも悪くないかな」
 極もまた同様に。
 喉元から背面へと移動した彼女は、チェス盤装甲に守られないまま巨大化した翼へ覇気のせた旋風を再び叩き込み、先よりは格段に上の手応えを得る事に成功する。
 そして。
「大雑把に過ぎる外道チート……だが、まぁいい、それも利用するまでだ。貴様には沈んでもらうぞ」
 結城はチェス盤となり遂にはロボ装甲となった大地それそのものを我が物とした。
「――此よりは我が領域。全てを喰らう大海の顎」
 海竜装を纏って帝竜への『地中』潜行を開始した彼は、その顎をもって拘束された関節部を悠々と狙いすまして打ち砕き……そして。

 ――……これは、竜毒か――。

「大地を取り込んだのが貴様の命取りだ」
 その牙から装甲伝いに猛毒すら流し込んでみせたのである。
 かくして、敵が用意した遊戯盤上のルールに乗るまいとした『埒外』達の闘いは帝竜に浅くない消耗を強いることとなる。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

鳴宮・匡
◆兄さん(f00472)と


見上げるほどの巨体が合体で更にでかくなるなら
気を付けるのは射程距離と一撃の威力かな
特に大地との融合を果たしてるなら
足場なんかにも気を遣う必要があるだろう

先んじて手を打たれるのは覚悟の上
大きい分、距離があっても挙動を見切ることは容易のはず
目線、動き、周囲環境などあらゆる情報から
相手の狙いを読み取り回避を試みる

初撃回避が成ればすぐに行動を開始
相手と距離を取り目立たぬよう動きつつ
派手に動く兄さんに目を取られた隙を縫って狙撃
【虚の黒星】の初撃を確実に当てる

続いた二撃目が鬱陶しい合体を剥がしたら
あとは兄さんに任せるよ
仕損じる、とは思ってないが
援護射撃も忘れず行うさ


クロト・ラトキエ
匡(f01612)と。

どんな方々への敗北か知りやしませんが…
戦場で心は他所とは、また余裕な事。

合体は。
威力、間合い、一手の範囲を拡げよう。
匡へ手を出されるより疾く距離を詰め。
視るは、視線に可視範囲、速さ。
如何動き、何を攻撃に用い、
先制に用いて尚、場を操れるか…
見切り、来たる一撃を躱す――
それのみに注力を。
彼が共に在るなら、出来ぬ筈は無い。

カウンターの鋼糸を腕へと放ち。
伸びたその体躯に、中空に…足場に不足無し。
裏へ表へ鬱陶しく駆け、狙うは心乱す事。
…匡の一射へ、確実に繋ぐ事。

魔弾が発動したら、
落下の加速も加え本体へ肉薄してのUC
――肆式

チェックメイトは此処では告げぬ。
…王は、君では無いでしょう?



 帝竜は、その眼にやや離れた平地を視界に収めるとそこに広がる別のチェス盤状大地に対して【ビルド・カダスフィア】追加合体を実行する。侵蝕する毒を薄める為だろう。

「更にでかくなったのか……気を付けるべきは射程距離と一撃の威力かな」
 聳える山を見上げる様に巨大合体化を終えた敵を測る鳴宮・匡(凪の海・f01612)。
「加えて、一手毎の影響範囲もでしょうね」
 必ずや先んじる相手に対しクロト・ラトキエ(TTX・f00472)は駆け出していた。
 グリモア猟兵に曰く、敵の掌中も同然の盤上での戦い……どころか、盤そのものとさえ戦えというのだから、まぁ、スケールが大きいというよりも最早莫迦げてすらいる状況。
 されど何でも御座れの売り文句を今後もぶら提げる為にも、此れにさえ対抗し攻略せねばなるまい。
 巨大化はメリットばかりでなくデメリットも産む。
 物理法則を悠々と超えてくる敵相手に速度低下や機動低下は望めずとも増大化した可視情報を余さず読み解けば回避は可能と両者ともに考えている。
 ――互いが共に在るならば、と。
「そう、挑む者達は決して君から眼を離すことは無いでしょう。それに比べ……どんな方々への敗北か知りやしませんが……戦場で心は他所とは、また余裕な事」
 明るく気安くも揶揄の影濃いクロトの微笑。より多くを自らが引き受ける為に、青年の眼鏡顔は殊更に是見よがし語り掛ける。
 白と黒に鎧われた竜尾が無造作に戦場ごとクロトを、そして遥か後方に散開中の匡をも蹴散らそうと薙ぎ払われる。
 地を浚う衝撃、そして崩落が彼らを襲ったが大きく跳ねる事で匡は回避に成功する。
 今の一撃の狙い先はあくまでも兄さんが本命、故にこそ。
 彼はそのまま大きく距離を取り、舞い起つ大量の土塵の向こうへと己の身を潜めた。
 一方でギリギリを見定めようとしたクロトは全くの無傷という訳にはいかず。
 その一挙手一投足が遠距離攻撃であり範囲攻撃。呆れ返る程の巨体との闘い。
 されど迫られるは細小への集中と瞬きの判断、その連続。響音の内に鋼糸放つ両の腕。
 うねり伸びる、幾筋もの鉄条が宙を貫き飛んで巨竜の可視範囲を探り入れる。
 避けもせぬ重厚な装甲の上に生えたチェス駒の一つにと絡んだ鋼糸がそれすら断ち切ることかなわぬまま擦り合い、金属音を鳴り響かせる。ビショップ駒らしきそれ自体は只の装飾で特にこれと機能備わる武装では無いと確認。
 観測と、そして撹乱と。目障りで在り続ける点にこそクロトは心砕く……結果、来たる一撃躱す集中すらも割く形となろうとも。

 ――此の時の為の、サクリファイスだったと言う訳か……――。

 敢えて鋼糸を受けるがままにしていた帝竜が、その怪力にまかせて逆にクロトを手繰り寄せ痛打を浴びせたのと。
 生じた隙と縫うような射線の先で機を伺い続けた匡が【虚の黒星(アナイアレイト)】の一射目を見事、装甲に覆われぬ竜翼の一角に穿たれた痕へと命中させた『此の時』は、ほぼ同時。
 次いで顔色ひとつ変えず撃たれた二射目は、他の多肢と比べ明らかに精彩を欠く左脚、装甲の継ぎ目へと吸い込まれ。
 かくて『虚無』を被弾した帝竜は巨大合体化という力そのものを射殺され元のサイズへとみるみる縮んでいく。とは言え巨躯であるに違いは無いのだが。

「捨て駒では無いですよ……君と違って、ね」
「あとは兄さんに任せるよ」

 匡の一射へと確実に繋ぐ代償に帝竜の拳撃にと曝され、その鋼糸の殆どを千切られ失いながら吹き飛んだかと思われたクロト。
 だが彼は、落下速度さえ逆利用して敵の懐へと肉薄し、間髪入れぬ追撃を叩き込む。
 親愛たる戦友からの援護射撃を背に。
「――肆式(フィーア)」
 勢いを加重へ変えて閃いた其れは、十三の業、内の四。
 剣刃に仕込みの短矢に更なる鋼糸束を滑り込ませてと波状の理超えた同時多重の強襲が遂には帝竜たるものの理すら捩じ切り、三肢並ぶ左腕の二つ迄もが地に落とされる。

 だが、王手も王手詰めも今はまだ告げられない。
「……王は、君では無いでしょう?」
 傭兵達が臨むチェス盤はカダスフィアフォートに留まらず、遥か広く、
 群竜大陸そのものであるが故に。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

玉ノ井・狐狛
※アドリブ連携などお任せ

🛡️
見るに、モチーフにあやかった性能なのか
いたずらに対処してもしょうがねぇな
無闇にポーンを削った隙間からルークがこんにちは、なんてのは面倒が過ぎる
だから倒さずに防御・後退を重視
攻撃力にしても、駒兵隊のなかじゃ一番マシだろうし

あんまりほっとくと昇格とかするのか?
そういう兆候を▻見切り倒そう
動力=魔力を消散させるカードを▻投擲して対処
▻破魔
こっちは規格にある駒じゃないからな、飛び道具もアリだぜ


攻め手が途切れる隙に◈UC
帝竜サマの“悪夢”とやらを触媒にして、英霊を召喚
昔に何があったかは知らねぇが、なにせご本人の“敗北”に由来するんだ。きっと効果的だろうぜ
▻傷口をえぐる


クーナ・セラフィン
油断もない強敵って厄介だね。
色々生えてるけどもこう見えて頭脳派なんてびっくり。
先に進む為に王をきっちり潰していこう。

さて相手はチェスモチーフ。
確実に追い詰めてくるだろうけど只管走ったり敵を踏み台に飛び帝竜との距離を詰めていく。
巨大なゴーレムの足元とか体格差から生じる隙を上手く突いてUC発動まで時間稼ぎ。
大群で連携完璧、だからこそ同士討ちになる攻撃はやり辛い。
チェス的に味方と同じマスには…王が帝竜なら入れ替わりもないだろうしね。
UC準備できたら大きなゴーレムを足場に跳躍して発動。
空を跳ねてゴーレム達の手の届かない高さを通り帝竜に奇襲、突撃槍を真上から背中に突き刺してやろう。

※アドリブ絡み等お任せ



 戦場へと到達した猫と狐の行く手に待ち構えるは既に布陣終えたチェス駒の大軍団。
 見れば、差し手たる帝竜カダスフィアの傷すでに深く。正規兵たる怪物群に加えて民兵(ミリティア)のゴーレムまでもと、まさにまさに大盤振る舞い。

「油断もない強敵って厄介だね」
「見るに、モチーフにあやかった性能なのか。つーかこんなモンいちいちいたずらに対処してもしょうがねぇな」
 全力疾駆の姿にも何処か優雅さが伴うクーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)は八艘飛びで前を目指し、
 眇めた琥珀眼から盤上読む玉ノ井・狐狛(代理賭博師・f20972)は引きつけた最弱のポーン兵の幾つかをあえて倒さぬまま盾代わりに様子見の後退策。
 華麗な猫足捌きは白銀の雪百合一振り携えて、盤上、颯爽と。
 巨大怪物の足元を、時に空中すらも掻い潜る麗しきケットシーの男装騎士はナイト駒を上回る跳駆で敵ディフェンスラインの突破を果たす。
(王が帝竜なら入れ替わり(キャスリング)ぐらい仕掛けてくる? ううん、それは戦術として意味が無い……)
 どれほどの多勢であろうと帝竜という差し手擁するこの軍団に撹乱の同士討ちを仕掛ける事は難しい。
 ならば……自身という駒を運ぶ方向こそ違え、クーナもまた狐狛同様に出した結論は「いたずらに対処してても仕方ない」であった。

 一方、クーナが他駒を引き受け撹乱してくれた恩恵も有り、しばしポーン兵らと鍔迫り合いに興じていた狐狛だったが勝負師たる彼女はむろん昇格(プロモーション)ルールについても熟知している。
 実際、後ずさる彼女に追い縋る程に彼らから漏れる邪まな魔力は膨れあがる一方と巫狐の霊感が警鐘を鳴らし出しいる。
 このあたりが潮と見切った狐狛は、魔力消散に破魔をも重ねた霊符を手札として切り、速やかに敵群を一掃してのける。
「こちらは駒としては規格外。チートイカサマなんでもアリ、飛び道具もアリだぜ」
 笑う妖狐は、だが、盤の後方と前方を同時に掻き乱された敵方から攻め手が途切れた、その瞬間を逃さず二の矢を射つ。

「何が出るかはお楽しみ、帝竜サマの『悪夢』とやらを触媒にピックアップガチャ大開催――【日雇い勇者(イリーガル・ブレイヴ)】さ!」

 『埒外』窮まるユーベルコードは無駄に華々しき閃光に高らかなファンファーレ音楽とともに、一人の『勇者』を帝竜の前へと召喚した。
 かの帝竜が帝竜として『再孵化』される以前に打ち破ったとされるその力が再現されるとワクワク胸躍らせる狐狛だったが……。
 呼び出された『勇者』はこのアックス&ウィザーズでも各地で出会ったいかにも冒険者然とした人間で、猟兵としての力など皆無なのは当然としても冒険者として見てもむしろかなりの低レベルの部類。
「まさかのハズレ!?」
 なんなら先まで彼女がじゃれ合っていた昇格前ポーンの方が個体戦闘力は上だろう。
(――輝く何らかの加護的なものは感じないでも無い、が……むしろこいつぁ『枷』じゃねェのか……?)
 流石の狐狛でさえこのユニットを使っての勝ち筋など見えず、程無く、その『勇者』はビショップ駒の1体にあっさりと倒されてしまう。
 だが……そんな名も無き弱兵の出現は、帝竜カダスフィアから最大限の動揺を引き出したのだ。

 ――ば、莫迦な……『冒険者』だとっっ!?――。

 そして差し手の動揺は最大限の空隙と同義。
 堅守の頭越し、天高くを翔けて降り立ったクーナの『ヴァン・フルール』は突撃槍としての破壊力をあまさず帝竜の背中へと打ちつけ片翼を奪う奇襲を成し遂げる。

「先に進む為きっちり潰させていただこう、王よ!」

 華麗なる白銀の衝撃を前に、堪えきれぬ帝竜の口から轟き渡ったのは苦悶の咆哮。
 狐狛もまたその心身の傷をより深く抉るべく、改めて戦闘態勢に入る。
「昔に何があったかは知らねぇが、ご本人の『敗北』由来の『悪夢』がここまで効果的だとはなぁ……!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ナイ・デス
最善手だと、打たれた駒
では、その手が間違いではなかったと、証明を
こういうの、気合入る、ですね!

帝竜目の前
変換範囲内でも、私の体も武装も、全て真の姿と同じ、聖者の光が形を成したもの、変換されませんが

持ち駒置いたら相手の番、ですよね!

襲いくる怪物から【ダッシュ】で
【念動力】で自身【吹き飛ばし】緊急回避に
黒剣鎧の鋭い【鎧無視】の刃に【怪力】のせて斬るなどして
【覚悟、激痛耐性、継戦能力】それでも終わったと思えるぐらい、やられ

『いつか壊れるその日まで』

再生。自壊も厭わず王を目指す
そうして輝きを強めていき
【範囲攻撃生命力吸収】光に触れた敵が、次の瞬間もその場にいる為に必要な力、時間を奪い、消滅させていく



 ――瞬間、混濁した記憶の中で漏れた叫びの意味は帝竜自身にすら解らない。
 あのような、眷属にすら遅れを取る者に何故畏れを覚えたのか……『悪夢』の理由は『帝竜』の内には存在し得ない。
 一つ云えるのは、先に猟兵の1人が忠告したように――差し手ではなく駒として自らを戦場に置いた以上、心を余所に向けるなど致命の失着であるという事だ。

「私達は、最善手だと、打たれた駒。では、その手が間違いではなかったと、証明を」
 勝利(チェックメイト)という戦果を以って。
 チェス駒姿の怪物蠢く戦場へと降り立った時、ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)は、ひどく愛らしい、笑みの表情を浮かべる自らを抑える事が出来なかった。
「こういうの、気合入る、ですね!」

 多勢に無勢。もはやチェスもゲームも関係なしに全駒が大挙して襲いかかるその様は、先行した猟兵達が帝竜を追い詰めた何よりの証であろう。
「持ち駒置いたら相手(コチラ)の番、ですよね!」
 けれど特にルール違反を咎めるでもなく、ただルール確認の台詞だけを口にして。
 実に晴れ晴れと、ナイは、その只中へと吶喊する。
 纏う黒剣鎧は防具に非ず。前へと、王の喉元へと、突きつける匕首の刃だ。
 切り結び、切り返し。掻き分けるようにして敵列を突き抜ける。
 持てるその念動だけが、ギリギリの処でかろうじてこのヤドリガミの少年の肉体を完全損壊から遠ざけていたがその様な闘い方が長続きする筈も無かった。
 殊にルーク型2体による連携砲撃は苛烈の一言であり、脇腹を刺し貫く灼熱にまず耐えてもなお時間差で迫る挟撃に対して、ナイは自らの華奢な体を捻り思い切り念動力を叩きつける事で緊急脱出を果たす。

 ――陽動、か? いや、この猟兵が単騎なのは間違いない。ならば単なる蛮勇か――。

 差し手としての平静を取り戻したからこそ帝竜カダスフィアは困惑する。
 しかし駒を差配するその手が止まる事は、もはや無く。
 自ら頓死を求めて来たとしか思えぬこの猟兵に速やかな死をと、帝竜が差し向けた最後にして真なる最強の怪物は駒にあらず――足元に広がる盤そのもの。
「――ッ」
 低い姿勢を保ちここまで疾駆して来た白黒のマス目の1つ1つから白と黒の光線が一斉に放たれ、射線に立つ帝竜の眷属達すら巻き込んでナイの全身を灼き尽くす。

 ――そも、お前たち猟兵を此処へと寄越すは最善手では無い。我を討つ、其れ自体が、いまや手損なのだから――。

 灰すら残さぬその最後すら踏み躙るかのように、静かに傲然と帝竜は言い放つ。
 勝利を確信したが故に。しかし。

『……ワタシ、ハ、シナナイ』
『私は、死ねない』
『――【いつか壊れるその日まで】』

 聖なる光迸り、取り戻されたナイ・デスと名付けられた器。
 半拍の驚愕の後に再び撃ち込まれた幾筋もの輝きすらも、ナイから溢れ出す聖者の光は、繰り返し繰り返し途絶えなく癒す。他壊自壊の区別なく。痛覚はそのままに。
 そっと屈んで触れた輝く手は、まず、チェス盤の姿をした巨大怪物を消去させる。
 それを存在させる『時間』が喰い尽くされたのだ。そして、怪物から受けた傷を己が力と換えて怪物そのものすら己へと取り込んで。
 ――いや増すばかりのその輝きの全てで、帝竜カダスフィアすらも覆い包んでゆく。
 あるいは万全でさえあればそれすらもこの帝竜は千日手へと持ち込んだかもしれない。
 しかし此処までに幾多もの猟兵が心身へ重ね穿って来た帝竜の深き疵はもはや『埒外』との力戦選ぶ余力を与えはしなかったのだ。

『王手詰み、です、ね?』

 もはや光そのものと化してほほ笑むその貌はひどく幼くて……薄れゆく意識の中カダスフィアは猟兵という『埒外』達が帝竜としての己の中へ新たに刻んだ『悪夢』の存在を、確かに認め、そして――。
 それら脅威を相手に、帝竜の王たるものの為の捨て駒として役目を全う出来た事に安堵しながら骸の海へと没してゆくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年05月10日


挿絵イラスト