●タマネギ(?)だって飛んでみたい
帝竜ヴァルギリオスの拠点である群竜大陸の一部、『皆殺しの平野』。その一角に、なんか各地でやべー戦いが発生しているはずなのにいまいち迫力も緊張感もない様子の、スライムの集団がぽよんぽよんしていた。友達同士で気ままに遊んでいる彼(?)らであったが、風は、そんな彼らにも争いの種を運んでくる。
彼らが風に吹かれていると、そのぷるぷるぷにぷにした身体は鱗に覆われ始め、タマネギ状だった身体の頭頂部(?)は鋭い角となり、背からは小さくも力強い翼が生えてくる。自らの身体に起こった異変に戸惑う彼らだったが、恐る恐る空を飛び、飛べることにはしゃぐ。そして、他の友達にも見てもらおうと思ったのか、集団で移動を開始しようとしていた。
●喋る段ボールの終焉
今日もグリモアベースに蠢く段ボール。グリモア猟兵のフレア・ウェスタ(段ボールと共に・f24636)が、猟兵たちを前に話し始めた。
「大騒ぎになってるから、もう言うまでもないかもしれないけど、一応伝えておく。アックス&ウィザーズで、帝竜ヴェル……じゃない。ヴォルギリ……違う。ヴァル……ヴァルなんとかが動き出した」
要約すると、ここまでのんびりしていた帝竜ヴァルギリオスさんだったが、拠点である群竜大陸に、猟兵たちが「ヴァルギリオスぶっ飛ばすぞー!」とものすごい勢いで乗り込んできたため、「やっべ、手遅れになる前に動かないと」と慌ててアックス&ウィザーズを滅ぼすために行動開始したのである。
「そういうわけで、群竜大陸……『皆殺しの平野』の一角に現れたスライムみたいなやつの集団を、『皆殺しの平野』の名の通り、皆殺しにしてほしい」
若干物騒な表現を交え、フレアの解説は続く。
「この場所には、オブリビオンをドラゴン化する、特殊な風が吹いてる。私もオブリビオンだったらドラゴン娘になってその筋の人に狙われてしまってたかも。危険」
どの筋だよというツッコミが猟兵たちから上がった気がしたが、この段ボール、意に介さない。
「スライムというと厄介そうなイメージを持つ人もいると思う。けど、こいつらはタマネギ型だから大丈夫。タマネギ型のスライムはそこまで厄介な存在じゃないって何かの本で読んだ」
というかそもそも、ドラゴン化の風の影響でスライムには角や翼が生え、身体は鱗に覆われ、もはや軟体生物としての特徴は失われているような状態なのである。その分、戦闘力は向上しているのだが……。
「飛び回って空から攻撃してくるから、そこは気を付けて。それと、身体を覆う鱗はそれなりに硬いけれど、一ヶ所だけ急所があるみたい。そこを突けばたぶん簡単。突ければ。普通に戦うか、急所を探って急所狙いで行くかは自由」
一通りの説明を終えた後、段ボールが立ち上がり……段ボールを脱ぎ捨てた。中から、長い紫の髪の少女が姿を現す。
「仮にもオブリビオン・フォーミュラの住まう地に皆を送り出す以上、それなりに危険な戦いになる。私も、いつまでも隠れてるわけにはいかない。私なりの、誠意のつもり。それじゃ皆……よろしくお願いします」
段ボール改めフレアが、ぺこりと頭を下げた。
タブンヌさん
初めましての方は初めまして、そうでない方も纏めて初めまして。第六猟兵の隅っこでひっそり暮らす駆け出しMS、タブンヌさんです。三作目のシナリオは、記念すべき初戦争シナリオとなります。戦争シナリオなので、今回は1章だけで完結ですね。
帝竜とか言われると、7体くらいいそうな気がします。そして、だいたい最初に倒すのは赤くて手負いの帝竜。
と、まあそれは置いておきまして、このシナリオでは「空中からの攻撃に対処し、硬い鱗に覆われた「急所」を攻撃する」というプレイングボーナスが存在します。
いい感じに対処できていると、判定で有利になりますね。お得!また、フレアは触れていませんが、このシナリオではドラゴン化した敵の体内から1匹につき1個取れる美しい宝石・竜胆石(りんどうせき)が手に入ります。金貨40枚(40万円)の価値だそうです。私も欲しいです。アイテムとしての配布にはなりませんが、プレイングで何かしら竜胆石について触れておくと、リプレイ内でもちょろっと描写があるかもしれないです。
第1章 集団戦
『ドロゥプス』
|
POW : ダンス
【ダンス】を給仕している間、戦場にいるダンスを楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
SPD : 留まらせる
【瞳】から【ウインク】を放ち、【「可愛い」と感じさせる事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 眠らせる
【スマイル】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
イラスト:透人
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
パルピ・ペルポル
スライムもピンキリよねぇ…やばいのはやばいし。
まぁ飛べるし空中戦といきましょうか。
まずは念動力で雨紡ぎの風糸を自らの周囲に張り巡らせておいて、敵の行動を阻害兼盾として使用するわ。
そこからさらに蜘蛛の巣状に風糸を展開して、急襲されないように警戒しつつ進んで、敵に糸を絡めて火事場のなんとやらで締め上げて切り裂いてあげるわ。
弱点は見て判別できそうならそこ狙うし、無理そうなら…糸でぐる巻きにしてぐっと引いてみじん切りにすれば問題ないわよね。
あるいはドラゴンの翼を切り落とせば落下するでしょうからそこ狙いもありね。
ウインクされてももふもふじゃないから….。
あ、竜胆石はきちんと回収するわよ。
「スライムもピンキリよねぇ…やばいのはやばいし」
呟きながら皆殺しの平野に降り立っ……いや降りていない。飛んでる。呟きながら皆殺しの平野の一角を飛ぶのはパルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)。ドラゴンとなったスライムみたいなやつ、もといドロゥプスの群れは飛んでいる。じゃあフェアリーだから飛べるし私も飛べばいいよねというわけだ。ドロゥプスの群れもパルピに気づいたらしく、進行方向を変え、パルピに向かって飛んできた……のだが、途中で何かに引っかかる。
「お、早速引っかかったわね」
よく目を凝らして見ると何とかわかるのだが、周囲には既に、パルピによって糸が蜘蛛の巣状に張り巡らされていた。しかしドロゥプスくんたち、よく見ないので面白いように引っかかるのである。パルピがじたばたするドロゥプスの一体に近付くと、暴れるものだからすっかり糸が絡まってしまっていた。
「まあ、可哀想だから、糸から出してあげましょ。ちょっと痛いけど」
自らが張り巡らせた糸の一部を掴み……なんとパルピさん、力任せに思いっきり、糸を左右に引っ張ってしまう。どこにそんな力があるのか、ドロゥプスの身体はどんどん締め付けられ……せっかくの翼が、とうとう切断されてしまう。糸に絡みまくっていた翼が切断されたドロゥプスは、糸から解放されたはいいもののそのまま落下。べしょっとなって消えてしまった。そこに残るのは、美しい宝石――竜胆石のみ。
「よし、次」
パルピが他のドロゥプスを見ると……愛想を振りまいて命乞いのつもりなのか、それとも単に状況が理解できてないというか緊張感がないだけなのか、ウィンクしてくるドロゥプスくんたち。しかしそんなドロゥプスくんたちに、パルピさんは冷たく言い放つ。
「いや、ウィンクされても、あなたたちもふもふじゃないから……」
何とパルピさん、もふもふ大好きもふりすとだったのだ!ぷるぷるドロゥプスくんたちはお気に召さない様子で、今度は短剣――リュンクスを手にドロゥプスに近寄る。
「あぁ、よく見てみたら鱗が薄い所があるわね。これが急所かしら?」
などと言いつつ急所らしき箇所にリュンクスを突き立てると、またもやドロゥプスくんが消滅。竜胆石が落ちていく。
「ここが急所であってたみたいね。じゃあ、あとはサクサク行きましょ」
動けないドロゥプスたちの急所にサクサクとリュンクスを突き立て、だいぶ数が減ってきたところで、竜胆石を回収し始めた。
「なかなか綺麗な石ね……お金にもなりそうだし、加工してもらってアクセサリーとかにもできそうだし、まあ回収しない理由もないわよね」
竜胆石を粗方回収し、荷物がいっぱいになったところで一時撤収だ。敵はちゃんと大勢倒しているし、特に問題はないだろう。いったん引いて戻ってきて、まだ倒す必要があるようならもうひと働きしてみてもいいだろうか。
大成功
🔵🔵🔵
フロース・ウェスペルティリオ
……「可愛い」というより、「美味しそう」と思ってしまう不思議。
以前食べたドラゴンは、所々ピリッとした刺激があって美味しかったけど、あのスライム竜?も美味しいのかなぁ?
さて、空を飛んでるということなので、大弓でしっかり狙うことにするねぇ。
急所の場所の情報収集も忘れずに。
鱗が硬い…… 串刺しできるかなぁ?
夜であれば、暗闇に紛れつつ暗視で捉えることもできるのだけど、
まぁ、昼でも木の影とかに隠れながら枝葉の間から狙えば、多少隠れられはするかと。
んー、液状になって草に隠れながら動けば、こっそり追えそうかな?
ほうほう。
竜胆石は美しい宝石らしいし、もし落ちたら拾っておこう。
これでも視力は良い方なのです。
皆殺しの平野などと物騒な名前が付いているこの地ではあるが、生い茂っているというほどではないものの草や木は生えているので、生命の痕跡が全くないわけではない。結構な大きさの岩が転がっていたり、草木も枯れたものが多かったりと殺風景ではあるが、確かに生命はまだ皆殺しにはなっていないのだ。岩陰や木陰、辛うじて生えている草などに隠れながらスライムみたいなやつ、もといドロゥプスの様子を探る黒い液状生命体だって、ここに生きている。
「『可愛い』というより、『美味しそう』と思ってしまう不思議」
呟く液状生命体ブラックタールの名は、フロース・ウェスペルティリオ(蝙蝠花・f00244)。ドロゥプスは、翼さえ生えていなければタマネギのようなフォルムをしているのだ。ちょっと美味しそうに見えても無理はないだろう。
「以前食べたドラゴンは、所々ピリッとした刺激があって美味しかったけど……」
翼が生えてても特に問題なさそうなコメントをしつつ傍らの大弓を見遣り、またすぐに視線を戻しドロゥプスの観察を続ける。それなりに硬いらしい鱗を貫いて串刺しにできる保証がない以上、可能であれば弱点を狙いたい。そう考えるのは当然のことだろう。一方のドロゥプスは、そんなフロースには気づかず、呑気に飛んでいる。
「うん?あれは……」
それなりに距離が離れているのではっきりとは見えないが、そこは視力には割と自信があるフロースさん。まだドラゴン化が完全ではないのか、ドロゥプスたちの背、翼の付け根の辺りに、鱗の薄い箇所があることに気付く。
「いかにもって感じだねぇ……早速、狙ってみるかなぁ」
さすがに液状のままでは大弓を引き絞るのは困難なため人型を取り、大弓を構え狙いを定めるフロース。しばしの集中の後に放たれた矢は、ドロゥプスのうちの1体の弱点(仮)を正確に射抜いた。墜落し、ぺしょっとなって消滅するドロゥプスを見たフロースの中で、弱点(仮)の(仮)の部分が外され、突如仲間がやられて慌てるドロゥプスたちを、次々と正確な射撃で射抜いていく。さすがに呑気なドロゥプスたちもやがて矢が飛んできた方向に気付くが、その頃には既にだいぶ数を減らしている。
「身体はドラゴンになっても、中身は変わってないんだねぇ」
見た目以外もいまいち緊張感がないドロゥプスたちに若干呆れつつ、向かってくるドロゥプスを迎撃する。完全に倒し切ることはできずごく少数の体当たりを受けてしまうが、その程度で倒れるほどやわなフロースではない。向かってきたドロゥプスの1体の弱点に、直接矢を突き刺す。そして。
「いただきまぁす」
ぱくっといってしまった。さて、お味の方は……?
「……あんまり美味しくないねぇ」
ぺっ、と美しい宝石――竜胆石を吐き出し、気を取り直して残るドロゥプスを退治していく。ドロゥプスが遺した竜胆石が持ちきれなくなってきたところで、今日の仕事は終了だ。
成功
🔵🔵🔴
ソラスティベル・グラスラン
か、かわいいですね……橙色で、竜の翼と角、何やら親近感を感じますっ
ふふふ、実はわたしも貴方たちと似たお友達を知っているんですよ!
遠きアルダワ迷宮より来たれ!【勇気】あるわたしの友、【蜜ぷに召喚!】
ぷにー!!と現れた大勢のスライム、花蜜でできた蜜ぷにさんたちで積み重なって、
空から来るドロゥプスさんキャッチ!【怪力】
躍らせちゃダメですよ!踊りながらでもかこめかこめー!それーっ!
蜜ぷにさんに群がらせて身動き取れなくしたところを、
蜜ぷにさんたちごと、急所の鱗に【怪力・鎧砕き】の大斧をえーい!!
今回のMVPは蜜ぷにさんですから、この竜胆石は彼らの甘いおやつ代にしちゃいましょうねっ
「か、かわいいですね……橙色で、竜の翼と角、何やら親近感を感じますっ」
空飛ぶタマネギ、じゃなかったスライム、もといドロゥプスの群れを見て目を輝かせるのはソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)。ソラスティベルの髪も、(少数他の色が混じってはいるが)ドロゥプスと同じ橙。そしてソラスティベルはドラゴニアン、角や翼が生えている。つまり、橙で翼で角で、ドロゥプスとお揃いなのだ。ドロゥプスがオブリビオンでなければ、もしかしたらお友達になれたかもしれない。だが残念ながらオブリビオンである。つまりやっつけなければいけないのだ。かわいそうだが、仕方がない。一方ドロゥプスたちもソラスティベルに気付き、外敵を排除するためなのかそれとも一緒に遊ぼうと思っているだけなのか、こちらへ向かってくる。
「ふふふ、実はわたしも貴方たちと似たお友達を知っているんですよ!」
近づいてくるドロゥプスの群れに対し、ソラスティベルは拳を空に掲げ――。
「遠きアルダワ迷宮より来たれ!勇気あるわたしの友、蜜ぷに召喚!」
『『『プニー!!!』』』
呼びかけに応じ現れたのは、花蜜から産まれたスライムこと蜜ぷにさん軍団。なんだかちょっといい香りがする蜜ぷにさん軍団は彩りもカラフル。いまいち緊張感がないドロゥプス軍団と合わせて、ついうっかりここが『皆殺しの平野』などと物騒な名で呼ばれていることを忘れそうになる、一見ファンシーな空間の出来上がりだ。
「はぁ……かわいい……」
蜜ぷに軍団を呼び出した張本人ソラスティベル、ご満悦。とはいえ一応戦場なので、(当人たちにそのつもりがあるのかはともかく)集団で体当たりをかましてくるドロゥプス軍団を、蜜ぷに軍団がそのぷにっとボディと見た目からは想像もつかない力でもって受け止める。何やら踊っているらしいドロゥプスも、同様にぷにっとダンスをしながら接近した蜜ぷにが抑え込んだ。もうなんかスライムたちが戯れているだけにしか見えないが、とにかくドロゥプスたちの動きを止めることには成功したのである。さて、ソラスティベルの次なる手は……?
「あ、これですね急所!」
ドロゥプスたちの身体を観察していると、他より明らかに鱗の薄い場所を発見。
「よーし、行きますよー……」
ゆっくりと、蒼空の如き澄んだ色の大斧を持ち上げ。
「えーいっ!」
蜜ぷにさんたちごと一気にえーい!哀れドロゥプスさんは真っ二つになり、綺麗な宝石を残して消えていった。もう急所とか関係なしに両断できそうな攻撃を急所に受けたのだ、耐えられるはずがない。さすがに緊張感のないドロゥプスたちもちょっと怖くなったのか、何やらじたばたしているようだったが、すっかり蜜ぷにたちに群がられて動けない。そうなると、つまり。
「もう一度、えーい!」
ソラスティベルに両断されるしかないわけで。辺りがソラスティベルだけになると、残されたソラスティベルが、ドロゥプスたちの遺した宝石――竜胆石を拾い上げ、呟く。
「今回のMVPは蜜ぷにさんですから、この石は彼らの甘いおやつ代にしちゃいましょうねっ」
蜜ぷにさんたちに何を買ってあげるか考えながら、竜胆石を拾い集めていった。
大成功
🔵🔵🔵
シン・ドレッドノート
趣味と実益のため、その竜胆石を頂戴します!
表面が固くなったオレンジ色のスライム。
…まるまる竜胆石だったらいいのに。
(竜胆石としか見えてない)
まずは飛行している敵に対しては長射程の銃で迎撃。
翼を狙って飛行能力を阻害しましょう。
併せて回避する時の反応から、急所がどこか見極めるとしましょう。
敵も攻撃をするためには接近してくるでしょうし、そのタイミングで【乱舞する弾丸の嵐】を発動。真紅銃・精霊石の銃・4対のライフルビットをそれぞれ限界まで複製召喚します。
「ターゲット・マルチロック。目標を制圧する!」
降りてくる敵に向けて各個にロックオンからの一斉射撃…フェイントを織り交ぜつつ、急所を狙って狙撃します。
「表面が固くなったオレンジ色のスライム…」
飛んでいるドロゥプスを見ながら、シン・ドレッドノート(真紅の奇術師・f05130)が悔しそうな顔をする。
「…まるまる竜胆石だったらいいのに」
竜胆石とは、ドラゴン化したオブリビオンから手に入る美しい宝石である。働き者のシン氏は、ここにいるドロゥプス以外にもこの皆殺しの平野でオブリビオンを倒し、この竜胆石を回収してきた。あちこち飛び回ってたいへん忙しいが、趣味と実益を兼ねて今日もまた竜胆石狩りだ。最近結婚したので、結婚生活にかかる諸費用を考えると、お金はいくらあっても困るものではない。
「まあ、無い物ねだりをしても仕方がありません。竜胆石を頂けるだけありがたいもの……その竜胆石を頂戴します!」
まずはこちらに気付く前に一発、翼を狙って銃を発砲。翼をやられて落下したドロゥプスだが、まだ生きている。竜化する前のようにぴょんぴょん飛び跳ねながら、上空の仲間たちと共に辺りを見回してて機影を探しているようだ。その間にもう一発、二発と銃弾が撃ち込まれ、翼をやられるだけでなくシンご所望の竜胆石を残して消滅していく個体もいた。しかしながら、犠牲者を出しながらもようやく、ドロゥプスたちもシンを発見。仲間の敵を討つため……なのだろうが、いまいち迫力のない顔で突撃してきた。
「ふむ……」
一方のシンは、銃撃を繰り返しながらもドロゥプスの様子を観察。翼を撃ち抜かれればドロゥプスたちは落ちていくが、鱗に覆われた胴体に当たっただけでは動きを止めるには至らず、接近を続けてくる。
「回避を試みる様子もあまりない……鱗の防御力を信用してか、こちらに突っ込んできますね。こちらからは特に様子の違う部位も見受けられない……急所は背面ですか」
などとやっているうちにドロゥプスたちは更に接近し、このままでは銃一丁で押し留められるものではなくなってくる。
「ならば、手数を増やせばいい。ターゲット、マルチロック…目標を乱れ撃つ!」
シンが持ち歩いていた銃が即座に複製され、シンの手足となりドロゥプスたちに対して射撃を開始。何体かを消滅させ、一斉射撃に耐えた個体もシンに近付けなる。
「一発で倒れた個体もいる。背面の弱点にうまく当たったのでしょうが、正確な部位までは……」
と、シンが呟いたその時、シンの足にちくりと何かが刺さる感触があった。
「つっ……空を気にし過ぎましたか」
足元にちらりと視線を移すと、そこにいたのは、翼を負傷して飛べなくなり地上を移動してきていたドロゥプス……上から見下ろすと、翼の付け根の辺りに鱗が薄い部位があるのがよく見えた。
「なるほど、急所を教えにきてくれましたか……なかなかいい子です」
素早く短剣を取り出し急所を一突き、足元にいた個体は消滅した。すぐに空に視線を戻す。射撃が止んだことで、またドロゥプスたちがシンに向けて降下しようとしてきていた。
「正確な位置さえわかってしまえば……」
もう一度、一斉射撃し弾幕を張る。怯んだドロゥプスの背――急所に、次々と蒼い刃が突き刺さった。ある者は落ちて地面にぶつかり消滅。またある者は落下中に消滅し、竜胆石だけが落ちてくる。
「ありがたく頂戴していきますよ」
散らばった竜胆石を拾い集めていくシン。美しい宝石だ。見て楽しむだけでもいいし加工して装飾品にしてもいい。当然売って金にしてもいい。
「さて、まだまだ足りませんね……もう一稼ぎ、させていただきましょう」
すっかり竜胆石コレクターと化したシンは、次の得物を探していた。
成功
🔵🔵🔴
芥生・秋日子
スライムというと、ぷるぷるぽよぽよしているイメージなのだけど、ドラゴン(?)になってしまうと全くの別物ですね。
硬いタマネギ…硬タマネギ?
とにかく、急所を突いて倒してしまいましょう。…とはいえ、急所ってどう探せばいいものか…。
んー、普通に殴っちゃいましょうか!
空を飛ばれると厄介ですから、銃で落とします。
翼を狙って、退魔銃で撃ちますよ!
落ちてきたら【鎧砕き】の要領で鱗をはがし、祓魔刀で斬ります。
「さあ、お覚悟を!」
本当のタマネギであれば、普通に美味しくいただきたいところですけれど…タマネギっぽくてもタマネギではないから普通に食べられないんですよね。残念です。
「スライムというと、ぷるぷるぽよぽよしているイメージなのだけど、ドラゴンになってしまうと全くの別物ですね」
のんびり飛んでいるドロゥプスを観察しながら、芥生・秋日子(普通の人・f22915)が呟く。鱗に覆われたドロゥプスの身体は、少なくとも触り心地がぷるぷるぽよぽよしているようには見えなかった。
「タマネギ型……硬い鱗……硬タマネギ?皮というか鱗を剥いたら、中は普通のタマネギ……じゃない、スライムだったりするんでしょうか?」
タマネギの皮を剥く自分の姿を想像しながらぶつぶつ。ドロゥプスもまだこちらには気づいていないので、安心安全だ。今のうちに作戦を練ることにする。
「とにかく、急所を突いて……とはいえ、急所ってどうやって探せばいいものか……んー、普通に殴っちゃいましょうか!」
小難しい作戦を考えることをやめた秋日子はまず、一丁の拳銃を取り出した。秋日子は普通の人だが、こちらの銃は退魔の力を宿した、ちょっと普通ではない銃である。普通の人が戦うためには、普通ではない装備を持っていないとお話にならないので当然と言えよう。ちょっと普通ではないとはいえ拳銃なのでスナイパーライフル等には射程は及ばず、秋日子自身も普通の人であり別に凄腕スナイパーなどではないので、まずは当てるために接近しなければならない。慎重に近づいていく秋日子だったが、うっかり気づかれてしまったらしく、数体のドロゥプスが秋日子の方へ向かってくる。何とか、普通の人でも対処できそうな数だ。
「見つかっちゃったのは仕方ないので、まずは群れから離れましょう」
すぐ隣でドンパチして群れの本体に気付かれて一気に襲われてはたまらない。まずは秋日子に気付いた個体のみを、離れたところに誘い出すことにした。ドロゥプスたちもあまり難しいことは考えないタイプなのか、そのまま秋日子についてくる。そして、ある程度離れたところで、ついに秋日子が向かってきたドロゥプスに対して発砲した。
「飛ばれちゃうのは厄介なので!せっかく飛べるようになったのにごめんなさい!」
翼に数発。上手く飛べなくなり、ドロゥプスたちがぽてぽて落っこちてくる。しかし完全には捌き切れなかったため、ごく少数の体当たりも受けてしまう。
「痛い!普通の女の子なのに何するんですか!せめてぷるぷるぽよぽよになってから来てください!」
などと文句を言いつつ、再度飛ばれても困るので翼をえいやっと撃ち抜く。動きづらくなったドロゥプスを掴み、タマネギの皮……じゃない、ドロゥプスの鱗を剥こうと、翼の付け根の辺りにあった鱗の薄い箇所に、銃と同じく普通じゃない祓魔刀をあてがう。
「本当のタマネギであれば、普通に美味しくいただきたいところですけれど…タマネギっぽくてもタマネギではないから普通に食べられないんですよね。残念です」
などと呟きつつ、ドロゥプスに切れ目が入ったところで、鱗を一気にべりっと剥がしてしまった。中はやっぱりちょっとぷるぷるした感じになっている。
「これでちゃんと斬れますね!さあ、お覚悟を!」
今度は明らかにぶった切るつもりで振り下ろされたようにも見えた祓魔刀はしかし、それ以上ドロゥプスを傷つけることはなかった。何か悪いものでも落ちたかのような満足そうな顔で、ドロゥプスが消滅していく。浄化された、とでも言うべきであろうか。同様に他のドロゥプスの鱗も剥がしては切り剥がしては切りして、寄ってきたすべてのドロゥプスを倒し終えたところで、ふと秋日子が何かに気付く。
「もしかして…さっきの鱗が薄かったところが急所だったんじゃ…」
まあもう消えてしまったし、ちょっと疲れたので新しいドロゥプスにちょっかい出す気も起らなかったので、これ以上は気にしないことにした。
成功
🔵🔵🔴
コイスル・スズリズム
オーナーさん(f03848)と同行!
リズムに乗って『ダンス』しながら戦場へ。
タマネギ型だ~!
ねえねえ、オニオンの匂いって、ファンタジーの物語っぽくない?
日本のアース育ちのすずからすると、あの、いためたときの甘く煙る感じ!ファンタジーの夜の街角を感じるんだよね
アメリカの大地で育ったオーナーさんからすると、自然の匂いだったりするのかな?
踊りながら発動するは、飴配るUC
ほら、楽しまなきゃ動きを止めちゃうよ~?
袖から取り出す棒付きキャンディ。
アメリカの夢みたいなカラフルなロリポップ。
少女らしくカラフルな世界観で『ダンス』しつつ、相手の動きを止め、
『全力魔法』と『スナイパー』で、弱点を探る
アドリブ大歓迎
小宮・あき
すずちゃん(f02317)と。
ダンスしながら登場、あはは、じゃあ私は歌唱で歌いますね!
剣と魔法のファンタジー、この世界に相応しい冒険譚で参りましょう~。
私の可愛いドロゥプス。
ドラゴン化しているけど、やっぱりあなたは可愛いですね。
オニオンの匂い? 私はオニオンフライの印象が強いなぁ。
すずちゃんはUDCアースの日本育ち、私はアメリカ育ち、印象が違うのかな。
あはは、色的にオレンジの匂いもするかもしれませんよ?
歌唱をし、ダンスで踊り、武器を構え。
すずちゃんから甘いキャンディを受け取って、スナイパーと鎧無視攻撃を載せたUC。
弱点はどこかしら。あなたの事はよく知っているのよ。鎧の薄いところを狙いましょう。
「タマネギ型だ~!」
何やら楽しそうに、踊りながらやってきたのは、コイスル・スズリズム(人間のシンフォニア・f02317)と。
「剣と魔法のファンタジー、この世界に相応しい冒険譚で参りましょう~」
こちらは歌いながらやってきた、小宮・あき(人間の聖者・f03848)。同じ旅団で働いている二人組だ。
「ねえねえ、オニオンの匂いって、ファンタジーの物語っぽくない?」
「ファンタジー?」
コイスルの問いかけに、首を傾げるあき。
「アースの日本育ちのすずからすると、あの、いためたときの甘く煙る感じ!ファンタジーの夜の街角を感じるんだよね。アメリカの大地で育ったオーナーさんからすると、自然の匂いだったりするのかな?」
続くコイスルの言葉に、少し思案するあき。
「私はオニオンフライの印象が強いなぁ」
コイスルにそう答えた後、視線をドロゥプスに向けるあき。
「色的にオレンジの匂いもするかもしれませんよ?」
「おいしそう!」
などと二人が会話していると、何やら賑やかだけど何だろう、とドロゥプスたちがやってくるのが見えた。二人も他愛ない会話を止め、ドロゥプスに向き直る。二人は再び踊り始め、あきの美しい歌声が響き始める。タマネギ型の可愛らしいギャラリーも相まって、ここだけ見ればこの地が「皆殺しの平野」と呼ばれていることを忘れさせる光景が広がっていた。
「ほら、楽しまなきゃ動きを止めちゃうよ~?」
そう言いながら、踊りながら。コイスルが袖から色とりどりのキャンディを取り出し、くるくると回りながらあきにキャンディを手渡す。笑みを浮かべながらあきがキャンディを受け取ったのを確認すると、続いてドロゥプスたちにも。
「ほらほら、あなたたちも楽しみましょ」
美味しそうにキャンディを頬張る個体もいれば、受け取らない個体もいる。しかし、楽しい時間に水を差す無粋な者たちは、急に身体が重くなったような錯覚を覚え、動きが鈍っていく。
「ふふ、すずちゃん、ありがとう」
コイスルのサポートに感謝しつつ、あきが優しげな微笑みをドロゥプスに向ける。
(私の可愛いドロゥプス。ドラゴン化しているけど、やっぱりあなたは可愛いですね)
さながら、遊ぶ子供たちを見守る母親のような優しい笑み――けれど、ドロゥプスはオブリビオン。コイスルもあきも、猟兵。敵同士なのである。
(弱点はどこかしら。あなたの事はよく知っているのよ。鎧の薄いところを狙いましょう)
そんなあきの思考を察してか、キャンディをドロゥプスに配り、キャンディを受け取らなかった個体の体当たりを踊りながら躱しつつ、優れたスナイパーの眼をもってドロゥプスを観察するコイスル。どの個体も、背面、翼の付け根の辺りに鱗の薄い箇所があることに気付いた。引き続き攻撃を躱しながら、あきの隣へ戻ってきて、耳元で囁いた。
「背中。翼の付け根だよ、オーナーさん」
コイスルの言葉に、小さく頷いて返すあき。コイスルは続いて、襲ってくる個体があきに背を向けるよう、誘導を始める。マスケット銃を構え、機を待つあき。それから少しして、一発の銃声が響いた。一瞬の静寂の後、立て続けに銃声が鳴り始める。銃声が鳴るたびドロゥプスの姿が消え、跡には美しい宝石――竜胆石だけが残った。楽しい時間は終わり、やがてドロゥプスはいなくなる。
「おやすみなさい……私の可愛いドロゥプス」
あきの呟きは、先程までの楽しげな雰囲気とは違い、どこか寂しそうでもあった。今この場に似合う歌を挙げるとするなら、死者の安寧を願う鎮魂歌であろうか。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵