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インベイジョン・フロム・ラビリンス

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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●迷宮・或る階層にて
「……うるさい」
 固く閉じられた重厚な扉。何か重要なものがこの奥にあるのだろうと思わせるようなその扉の前で、桃色の髪を揺らした少女がぎりりと歯を鳴らした。
 呼応するように、少女に並んだ山羊が鳴く。
「ここ最近うるさくって仕方ないね。財宝目当ての生徒が潜り込んでるにしては派手な音だけど」
 実際、少女がそう不安げに囁く間にも、頭上からはずしんと鈍い音が断続的に響き、その振動のせいか、天井からぱらぱらと石屑が落ちてくる始末である。
「このままじゃ、もしかしてここに誰か来るんじゃ……」

 そうなったら、どうする?
 いや、どうするもこうするもない――決まっている。この奥へは何人たりとも通すわけにはいかない。それが少女の役目なのだから。

 でも、一気に大勢に攻め込まれたら?
 自分と、隣にいる相棒だけで守り切れるだろうか。

 視線を落とした少女を安心させるように身を寄せた山羊が、慮るように小さく鳴く。
「わ、ごめんね大丈夫。そうだね、一人じゃないもんね。一人じゃ……」
 慌てて山羊の背を撫でた少女は、はっと顔を上げた。そうだ、何も一人で立ち向かうことはない。
 一人と一匹で不安なら、太刀打ちできるだけの数を用意すればいいだけだ。それに……。

「それに、攻め込まれる前にやっつけちゃえばいいだけじゃない」

 少女は大きく両手を広げると、何事かを囁いて高らかに二度、その手を打ち鳴らす。
 間もなく、遠くから迷宮を踏みしめ進む足音が少女の耳に届き、彼女はその瞳を不敵に輝かせたのであった。

●グリモアベース・或る場所にて
「皆様、大変、大変です!」

 そう叫んだ小さな黒猫は、必死に脚立をよじ登っている真っ最中だった。
 なんだなんだ、と、やって来た近くの猟兵が見かねてその体を抱え上げてやると、脚立の上に無事着地。
 ほっと一息ついて、その小さな黒猫――レネ・イニティウム(現刻・f02634)は集まった猟兵達に向き直り、ぺこりと頭を下げる。
「お集まりいただき、感謝いたします。この度、アルダワ魔法学園での事件発生が予知されました。皆様のお力を是非お借りしたく」
 そう切り出したレネは、手元の大きな書類を捲って続ける。
 なんでも、学園の地下に広がる迷宮に潜んでいた者が、突如として地上への侵攻を開始したらしい。
「その者はどうやらどこかの階層のボスのようなのですが、最近、学園の生徒や猟兵達が迷宮深くまで潜ってきていることに、大層不安を抱いたようでして……」
 要は攻め込まれる前にやってしまえ、と、配下を引き連れて侵攻を始めたというのだ。
 しかしこのまま上へ上へと侵攻を許せば、いつか敵集団は学園へと辿り着いてしまうだろう。
 非戦闘員も多数暮らしている学園だ。そうなってしまえば甚大な被害は免れない。
「そうなってしまう前に、皆様に敵の侵攻を阻止していただきたいのです」

 敵集団は現在、迷宮内を上層階を目指して進んでいるらしい。
「ですので迷宮内で、まずは先行部隊の殲滅をお願いいたします」
 転送地点は迷宮の入り口。そこから敵集団が侵攻中の階層までは、学園の生徒達の協力もあり、罠や仕掛けが全て解除され、真っ直ぐに進めるようになっている。
「ただし先行部隊がいる階層については、協力してくれた生徒達の身の安全を守るため、罠や仕掛けの解除は行われていません。しかし、だからこそそれを逆手に取って、こちらが利用することもできます」
 上手く利用すれば敵の殲滅に役立つ罠もあるだろう。レネは幾つか例を挙げつつ、手元の書類を捲った。
「先行部隊を退けた後、此度の侵攻の元凶であるボスを倒していただき、今回の任務は終了です」
 頷く猟兵達。彼らを送り出そうと腰元の細剣に手をやったところで、レネは大切な伝達を忘れていたことを思い出す。
「そうそう、侵攻を阻止していただいた後は、学園で皆様を慰労するお茶会が開かれるようですよ」
 季節の果物がふんだんに使われたフルーツタルトや、土産に丁度良い焼き菓子、それらに合う紅茶などが用意されるようだ。
 是非顔を出してみてはどうか。そう微笑むと、レネは今度こそ細剣を抜く。
 柄に飾られた石が煌めき、細剣を掲げた先へと光を放つと、現地への門が開かれた。

「さあ、送りましょう。無事のお戻りをお待ちしております。皆様どうぞ、御武運を」

 そう言って、小さな黒猫は猟兵達の背を見送り、深く頭を垂れた。


雨玉
 はじめまして。お目に留めていただきありがとうございます。
 雨玉(あめだま)と申します。
 今作が初めてのシナリオです。みなさまの冒険の日々の1ページに携わらせていただけましたら嬉しいです。よろしくお願いいたします。

●依頼の流れ
 今回は『アルダワ魔法学園』が舞台です。

 オープニングのとおり、第一章は迷宮での配下との戦闘、第二章はボスとの戦闘になります。
 戦闘の舞台は仕掛けだらけの迷宮です。
 例えば落とし穴や火が出る罠など、様々な罠が仕掛けられていますので、敵の進行を阻害できそうな罠を思いつかれましたら、是非活用してみてください。

 第三章では、それまでの戦闘の疲れを癒やすお茶の時間を、ごゆるりと自由にお楽しみいただければ幸いです。

●章進行と執筆ペースについて
 基本は週末を中心に執筆しようと考えておりますが、執筆ペースを掴んでいる最中ですので、進行状況は都度雑記などでご案内をする予定です。
 お手数ですが、そちらも御確認いただけましたら幸甚です。

 それでは、みなさまのプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『ラビリンスセンチネル』

POW   :    アクセルブースト
【脚部に内蔵した推進器で急接近し】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    マジックバーレッジ
【腕部に内蔵された魔術機関】から【多量の魔力の弾丸】を放ち、【弾幕を張ること】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    コアスーサイド
【魔力炉を自壊させ暴走した魔力】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●迷宮迎撃部隊
 遠く、階下から鈍く響く足音が、転送された猟兵達の耳に届く。
 学園の生徒達の応援の声を背に受け、彼らが解除した罠を、仕掛けを踏み越えて、猟兵達は下へ、下へとひた走る。

 遠く鈍く響いていた侵攻の足音は、いつしかはっきりとその輪郭を現していた。それが迎撃地点へ辿り着いたことの証左であると気づいた猟兵達は、速やかにそれぞれの目標を定め散開する。
 斯くして、迷宮内での戦いは幕を開けたのであった。
トレイシー・ノックス
【SPD】
迷宮の奥で大人しくしてればいいのに、わざわざ攻め込んでくるなんて……はぁ、本当に面倒くさいことしてくれるわね。

幸いにも迷宮内の罠は利用可能みたいだし、上手く使いたいわね。
罠使いとしての知識を活かして罠の場所や種類を看破。
罠の発動時に自分が効果範囲にいないよう注意しながら敵を罠へ誘導して戦力を削るわ。

敵は魔力弾での攻撃もしてくるようだけど、それに対しては迷宮内の地形を利用しましょう。
壁や障害物の陰に隠れて攻撃をやり過ごしながら、敵の居場所を把握。
その場所に向かう軌道を描くよう綿密に計算して【神算曲射】を撃つわ。
複雑な軌道を描く私の矢なら、障害物の陰からでも敵を射抜けるもの。


シャルロット・クリスティア
まさか、こちら側が迷宮の構造を駆使して防衛を行うことになろうとは……。
普段は攻略側ですし、なんだか新鮮です……などと言ってる場合ではないですね。
落とし穴や足元にスイッチがあるような罠……上手いこと利用するには、踏んでもらう必要があります。
推進器でホバーでもされたら困りますので、ワイヤートラップを張りましょう。
手持ちのアンカーショットで、【目立たなく】かつ引っかかりやすい位置に。
【罠使い】【ロープワーク】の見せどころですね。
私自身は別の場所に隠れて、【スナイパー】として攻撃。
数を減らしつつ、進攻ルートを変えさせて罠に誘導させていきましょう。



●2人の射手
「……はぁ、本当に面倒くさいことしてくれるわね」
 わざわざ攻め込んで来ずに、迷宮の奥で大人しくしていればいいものを。

 編んだ赤髪を揺らして迷宮内を駆けていたトレイシー・ノックス(インドア狩人・f06024)は、曲がり角の先でずしりと響いた足音に、ため息混じりに独りごちてその歩を止めた。
 壁を盾に慎重にその先を覗けば、魔力炉から青の炎を零して動く、頭のない機械兵の姿が――1、2。
「いよいよお出ましね。2体か」
 さすがに1人では分が悪い。彼我の距離を測りつつも、トレイシーはこれまで自らが進んできた道を振り返る。
 その道中には、罠らしい仕掛けのようなものが幾つかあった。勿論、彼女自身はそれを回避して進んできたので、他の誰かが発動したのでなければ、まだそこに何らかの仕掛けが残っているはずだ。

 罠も、迷宮そのものも、利用可能なものは上手く使う。彼女はそう決めていた。

 即座に現在地と仕掛けの位置、そして敵の位置関係を脳裏に浮かべ整理すると、矢を愛用の弓に番え、きりきりと引き絞る。
 トレイシーは、狩人だ。
 本人にとっては些か不本意なことではあるのだが、その才は類稀なるものであり、彼女が射る弓はその軌道を調整することで、物陰からでも視認した範囲の敵を捉えることができる。
 だが、それでも敵の力を侮ることはない。引き絞った弓を放つと、矢は美しいカーブを描いて角を越え、歩く機械の胴に深々と突き立たった。同時にこちらに気づいたらしい機械兵の両腕から迸った魔力弾を壁を犠牲にして防ぐと、トレイシーは飛び散る破片の中を駆けていく。

 一方その頃。

「まさかこちら側が迷宮の構造を駆使して防衛を行うことになろうとは……」
 普段は迷宮を攻略する側であった少女――シャルロット・クリスティア(マージガンナー・f00330)は、迷宮の床に埋め込まれたスイッチらしき仕掛けとその周辺を、丁寧に検分していた。
 攻略時なら即座に解除するか回避して進んでしまう類のものだ。こうして検分するのはどこか新鮮な気持ちにはなるが、そうも言っていられないと、気を引き締める。
「周囲は通路も狭く遮蔽ばかりなのに、このスイッチの傍はやけに広々としていますね。範囲を対象とするような罠なのかもしれません」
 上手く作動させられれば、複数の敵を巻き込むことができるかもしれない。問題はその方法だ。
 敵は魔力炉を有する機械兵。基本は歩いて侵攻しているようだが、推進器で浮き上がらないとも限らない。確実に踏んでもらうためにはどうすれば良いか。
 一時の思案の後、すっと天井を見上げてその高さを確認したシャルロットは、自分の頭の天辺程の高さから正面の壁へと、手元のアンカーショットでワイヤーを射出する。
 ワイヤーはスイッチの上を真っ直ぐに駆け、ワイヤーの先端に結わえられた銛が壁に突き立つと、ぴん、と張って静止した。
 この高さなら、例え浮き上がっても天井に当たらないようにすれば足を取られ、下を潜るろうにも今度は低すぎて上部が引っかかる。
 天井との位置関係を見ながら絶妙な高さにワイヤーを張ったシャルロットは、そのまま手近な遮蔽にアンカーショットの本体を固定し、スイッチを踏ませるためのワイヤートラップを完成させる。
 あとは敵をここへ誘導するのみ。少女がライフルを手に通路に目を遣った、その時。
 通路の奥、角を曲がって、弓を手にした赤髪の女が駆けて来る。
 トレイシーだ。
 シャルロットがやって来る数分前にここを通っていた彼女は、自分が回避したスイッチを確かに覚えていて、それを作動させ2体の機械兵を罠に嵌めるべく、ここまで引き連れて来たのであった。
 トレイシーの後ろで弾ける青い閃光と轟音。現状を即座に察したシャルロットは、通路の遮蔽で魔力弾をやり過ごしたトレイシーへ叫ぶ。
「そのまま避けて、奥へ!」
 首肯を返した彼女を確認するや否や、シャルロットは機械兵に見つかる前にと、スイッチから少し離れた遮蔽に飛び込んだ。いつでも機械兵を迎撃できるよう、手にしたライフルを構え直して機を伺う。
 一方のトレイシーも、魔力弾が瓦礫にした壁や遮蔽の破片で細かな傷を作りながらも、シャルロットが作ったワイヤートラップを潜り、床のスイッチを跨いで避け、奥側の通路へ駆け込むと魔力弾の追撃を避けるべく角を曲がった。
(これまで通りなら、きっとあたしを追ってくるわ)
 そうなれば、自分へ注意を促してくれた少女が張ったのであろうあのワイヤーにかかり、機械兵達がスイッチを踏む可能性は高いだろう。トレイシーは再び矢を番え、今しがた駆け抜けた道を覗き込む。
 焦茶色と青、2つの視線が見据えるその場所へ、遂に機械兵達が差し掛かった。
 2体の機械兵達は浮上しようとするものの、シャルロットの思惑通り、脚部の根元をワイヤーに絡め取られ崩れるようにスイッチの上へと落ちる。
 瞬間。
 スイッチを中心に、周囲の床を埋め尽くすように円形の魔法陣が青白く浮かび上がる。
 魔法陣は、まるで雪が逆さまに降るようにはらはらと崩れ宙へと舞い上がった。そして、その崩れたひとつひとつの破片が巨大な氷柱となって2体の機械兵へ襲いかかり、その身体を幾重にも地に縫い止めていく。
 逃れようと藻掻く機械兵達。だが、2人の射手はこの機を逃さない。
 遮蔽の影から銃が吠え、刻まれたルーンにより強化された銃弾が1体をぶち抜き。
 奥の通路からまるで生きているかのように複雑な軌道で飛来した矢が、1体に深々と突き立つ。
 2人の射手が放った一撃は、それぞれ魔力炉の核を正確無比に捉え穿っていた。機械兵達は氷柱の檻の中で、魔力炉で燃え盛っていた青の炎を見る間に弱らせると、やがてその灯火を消し、完全に停止した。


「ふぅ、仕留めましたね」
「ええ、協力ありがとう」
「こちらこそ!」
 機械兵の停止を確認した2人がそれぞれの健闘を称え合っていると、その横を炎を纏った精霊がとことこと駆けていく。
「あれは――」
「……どうかした?」
 どこかでその姿を。精霊を目で追ったシャルロットに、トレイシーが怪訝そうに問う。
「あ、いいえ、何でもありません! さあ、次も気を引き締めていきましょう!」
 精霊とは反対の方向へと、2人は駆け出す。新たな敵を迎え撃つために。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ユア・アラマート
それでは、がらくた整理を始めようか
少し手伝ってもらうよ、「お前たちにも」

【SPD】
敵の攻撃を被弾しないよう、「ダッシュ」で常に動き回って的を絞らせない工夫を
魔術回路を起動し、自分と一緒に行動してくれる焔と雷の精霊を召喚
敵の撹乱を手伝ってもらう傍ら、付近に有用そうな罠(落とし穴などの行動阻害系を主に)を探してもらい
それが発動する位置まで敵を誘導させる
「属性攻撃」で性能を上昇させ、敵が隙を見せた所で「暗殺」の経験を利用して死角に回り込み
装備しているダガーで急所を突く

人でも機械でも、弱点というものはあるんだよ
私の刃はよく効くだろう?
たっぷり味わったら、大人しく元在った場所にお還り



●花香る風
 小さな足音と共に、焔纏った精霊が迷宮内を探索するユア・アラマート(セルフケージ・f00261)の元へと戻ってくる。
「そちらには何もいなかったかな?」
 彼女の言を肯定するように、精霊は跳ねた。その背を撫でてやり、ではあちらへ行ってみようと、ユアは再び軽やかに駆け出す。
 花の香を共に、まるで一陣の風のように地を疾走する女に遅れることなく付き従う焔の精霊は、知己から授かった力だ。

 ――少し手伝ってもらうよ、「お前たちにも」。
 遡ること暫し。今回の戦場へと降り立ったユアは有用な罠を、そして迎え撃つべき敵を探すために2体の精霊を喚んだ。
 それぞれ焔と雷を纏った精霊はユアの命に速やかに散開すると、主の期待に応えるべく、このだだっ広い迷宮内をあちらへこちらへと飛び回っていたのだ。

 もう一方の精霊は、何か見つけられただろうか。
 刹那そう思いを馳せたユアの足元へと飛び込んできたのは、青く燃える閃光と床石が砕け散る音。
 即座にバックステップで跳べば、追いかけるように2射目、3射目の魔の弾幕が飛来する。敵の出現を察知したユアは焔の精霊と示し合わせたようにそれぞれが通路を縦横無尽に駆け、現れた機械兵を撹乱させた。
「がらくた整理を始めようか」
 距離を詰め、あとは一突きに。
 魔弾を最小限の動きで躱しながら、冷静に敵と己とを、そしてその機を測る。その視界に、ユアにとっては幸運な、機械兵にとっては不運なものが舞い込んだ。
 機械兵の背中側で紫電をぱちりと鳴らして立つ、雷の精霊だ。
 問うようなユアの視線に一声鳴いた精霊は、その場で数度飛び跳ねる。
 目を細め伺えば、精霊の足元に、仕掛けを作動させるためのものであろう古びたレバーが鎮座していた。
「見つけたんだな」
 直ぐ様機械兵との距離を保ちながら視線を巡らせると、ユアは床の模様が一部歪んでいる場所を見つける。恐らくはそこが何らかの罠の作動範囲なのだろう。
頼んだよ。
 主の一言で意を汲んだ焔の精霊は、機械兵に飛びかかりその腕部に噛みついた。振り払おうと機械兵が暴れても離さず、業を煮やしたように機械兵が大きく腕を振ったのに合わせて、吹き飛ばされるように罠の作動範囲を飛び越えて着地する。その姿を追った機械兵が、罠の作動範囲へと踏み込んだ瞬間。

 ――やれ。
 命に応えた雷の精霊が、レバーを蹴って倒した。
 
 閃光、轟音、焼け焦げたような香り。
 
 作動範囲へと真っ直ぐに落ちた小さな雷は当然、自然に発生するそれとは比べ物にならない程威力は低い。だがそれでも機械兵の動作を一時的に止めるには十分な効力だった。
 そして、ユアにはその一時があれば十分だ。
 手に馴染んだ刃に風を纏わせ、彼我の距離を瞬時に詰める。ユアがその一撃を繰り出す寸前、悪あがきのように振り向き、魔弾を撃ち込むべく機械兵が腕を掲げた。それを表情ひとつ変えず蹴りとばしたその勢いで跳ね、銀の尾が空を舞う。
 そのまま宙で一回転。着地地点は、機械兵の背後。
 人でも機械でも、弱点というものはある。
 小回りの利かない機械兵のその身体は、ユアが磨き上げた暗殺術の射程の中では無力に等しかった。
 魔力炉を狙い、突き出した刃。刃が炉を裂くと同時、風が魔力炉を掻き乱すように流れ込んで荒れ狂い、その全てを破壊する。
「私の刃はよく効くだろう?」
 引き抜いた腕を払い、ユアは緩やかに笑みを浮かべた。
 たっぷり味わったら、大人しくお還り。
 一撃で物言わぬがらくたとなった機械兵に告げると、女は精霊達と共に再び風のように駆けていく。
 花の香だけをそこに残して。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルフトゥ・カメリア
不安に駆られて攻め込んで来るオブリビオンとは、また随分人間味溢れる疑心暗鬼なこって。
余計なことしなきゃ目立たなかったろうによ。

ゴーレムだろうが、溶かし斬っちまえばただのガラクタだ。
両手首の古傷を掻っ捌いて地獄の炎を展開。バスターソードにまで纏わせて、熱して溶かしながらぶった斬る!【怪力】【鎧砕き】【2回攻撃】
背面からの奇襲は【第六感】で察知し、翼の付け根からもブースターのように炎を噴き出して【オーラ防御】兼【カウンター】を狙う。
生憎と怪我には慣れてんだよ、ちょっとやそっとで誰が怯むか!【激痛耐性】

近くで襲われる者がいれば悪態を吐きながらも【武器受け】【かばう】【オーラ防御】せずいられない。


ポケッティ・パフカニアン
まったくもー、毎度毎度!
なんでこの学園の奴ら、すぐ地下の敵を刺激すんの!?
お宝探しもいいけど、身の丈ぐらい弁えなさいよね!
…まぁ、おバカなのは一部だけかもしれないし…別に、助けないとは言ってないけど。

最初は…ゴーレムかぁ。
ふん、あんたみたいなデカブツに、あたしが捉えられるかしら?

周りにアタッカーがいるなら、あたしは補助中心。
敵集団の隙間をサッと飛ぶ!ノロマにタッチ!最後に…触ったヤツら、全員にストップ!
あとよろしくね!

周りに人がいないなら…そーねぇ。
こういう所なら…あったあった、お約束の鉄球罠。
敵を発動地点まで誘導してー…
はい、ストップ!ざんねーん、罠の回避なんて許しません!
じゃ、バイバーイ!



●時盗みと獄呼ぶ花
 一体、身の丈の何倍程になるのだろうか。
 機械兵が振るった腕の風圧だけで吹き飛んでしまいそうなその小さな身体で巧みに周囲を飛び回り、ポケッティ・パフカニアン(宝石喰い・f00314)は機械兵を翻弄する。
「あんたみたいなデカブツに、あたしは捉えられないでしょ」
 ふん、と鼻を鳴らし得意気に。淡く輝く羽持つ妖精は、機械兵の攻撃を避けているだけのように見せながら、少しずつ少しずつ向きを変え、進行方向を調整して進んでいく。
 既に行く先の目星はつけてあった。
 じりじりと位置を調整し、時に浮上して追ってくる敵の脚の下をくぐり抜けて進みながら、ポケッティは通路の奥を見遣る。ここだ。
 緩く傾斜をつけられた通路の奥には、あからさまに罠と言わんばかりに設置された巨大な鉄球。
 これだけわかりやすく設置されていれば、本来なら誰もこんな罠にはかからないだろう。だが、少女は敵をその罠にかけるための手段を持ち合わせていた。
 傾斜の終点、一番鉄球の速度が出て衝突時の威力が上がる壁際へと機械兵を導いたポケッティは、機械の身体の死角へ飛び込み、素早くそれに触れる。
 『時刻む怪盗』――ポケッティが使う時間魔法の1つだ。
 彼女に時間を盗まれた対象は、一時的にその場に縛られ封じられ、身動きを取ることは許されない。
「ざんねーん、罠の回避なんて許しません!」
 にんまりと笑って急ぎ鉄球近くへ向かうと、向かった勢いもそのままに壁のスイッチに体当たり。
 カチリ。押し込まれたスイッチが拘束を解き、鉄球は緩やかな傾斜を下って速度を上げながら動きを封じられた機械兵へと真っ直ぐに向かって――。
 その身体に衝突、それでも勢いは止まらず機械の身体を轢き潰し、迷宮全体が揺れるような衝撃を壁に与えながら激突して止まる。
 元より鉄球が激突することを想定してあったからだろう。特段崩れる様子もない壁と、ひしゃげて動く様子もないまま鉄球の下敷きになっている機械兵を遠目に確認して、バイバーイ! と軽やかに手を振ったところで、ポケッティは新たに迫る影に気づく。
 直接殴りかかられたのなら、逃げ切れるだけの距離は十分にあった。けれど敵が、新たに現れた機械兵が取った手は、魔力炉を暴発させることだった。気づいたところで、それをやり過ごせる程は離れていない。
「ちょっと、嘘でしょ!」
 彼らの心臓に当たる部分で青の炎が勢いを増して溢れ出す。遮蔽になりそうなものは見当たらない。ならば、少しでも距離を取るしかない。
 全力で飛ぶポケッティの背後で、青く閃光が迸る。少女は咄嗟に目を瞑って襲いかかる衝撃に身を固く――したが、いつまで立ってもその衝撃はやっては来ない。
「……あぁ、ったくなんで俺が」
 吐かれる悪態。振り返った赤の瞳に映ったのは、大きな黒翼と瑠璃唐草色の炎を持つ少年。
 前方へ集中させ展開した炎を収束させ、敵の炎に焼かれてはらりと落ちた瑠璃唐草の花弁に鼻を鳴らした彼――ルフトゥ・カメリア(Cry for the moon.・f12649)は今しがたその背にかばった妖精へと声をかける。
「おいお前、怪我は」
「おかげさまでないわ、ありがと」
「そうかよ」
 短く返すと、ルフトゥは油断なくバスターソードを構え直し、敵へと向き直る。炉を暴走させた1体の後ろに、ぞろぞろと2体の機械兵達が続いていた。
「お前、まだいけるだろ。手伝えよ」
「お前ってあんたねぇ。……まぁいいわ、助けてもらったし。補助は任せて!」
 ポケッティがルフトゥに並ぶと同時、機械兵の1体が脚部から青の炎を噴出させ、ルフトゥの眼前に迫る。
「さっきの攻撃もらった俺からってか。生憎と怪我には慣れてんだよ、ちょっとやそっとで誰が怯むか!」
 振り下ろされる腕部を躱し、次いで繰り出される蹴撃をバスターソードで受け流すと、弾くようにして距離を取る。
 ゴーレムだろうが、溶かして斬ればただのガラクタだ。
 両手首の古傷を勢いよく掻き切れば、そこから猛然と溢れ出す瑠璃唐草色の地獄。流れ込むようにバスターソードにその地獄を纏わせ、先程の機械兵へとその一撃を叩き込む!
 いくら内部に燃え盛る魔力炉を抱く機械と言えど、外部装甲までが全ての炎に耐えられるわけではない。少年に押し斬られた魔力炉を守る胸部の断面はどろりと溶けて崩れ、機械兵はその場でガラクタと化して落ちる。
 その隙にも、もう一度炉を暴走させようとしていた機械兵には、ポケッティが迫っていた。死角へと潜り込み、素早くタッチ。流れるように飛んで残る1体にも触れれば、準備完了。
「あとよろしくね!」
 無言で頷いたルフトゥが、力強く踏み込んで真っ直ぐに床を蹴る。
 ポケッティが機を逸さずに時を盗んだことで硬直した1体へと、大上段に振り上げた剣で、足元まで叩き切る一撃を浴びせる。
 空の色にも似た炎がその軌跡を描き、中心からいびつに分かたれた機械兵は、金属の落ちるけたたましい音を最期にその動きを止めた。
 残るは1体。しかし、黒翼の少年が向き直る前に、盗まれた時間を取り戻した機械兵は再び動き出し、少年の背に一撃を食らわせるべく腕部を振り上げる。ポケッティが再度盗もうと飛ぶが、間に合わない。
 重量のある一撃は、果たしてルフトゥの背の骨を砕き彼を地に叩き込むかと思われた。
 だが、振り下ろされる一撃が彼に触れるその直前、黒翼の付け根から炎が噴射される。
 その炎は先程腕から溢れた炎とは比にならない勢いで機械兵を包み込むと、その装甲をどろりどろりと溶かしていく。
 振り返ったルフトゥが、火達磨になって暴れる機械の中心にずぶりとバスターソードを突き立てれば、半分以上が溶け落ちた機械兵は、その場にずるずると崩れていった。
「……不安に駆られて攻め込んで来るオブリビオンとは、また随分人間味溢れる疑心暗鬼なこって。余計なことしなきゃ目立たなかったろうによ」
「それもこれも毎度毎度この学園の奴らが、すぐ地下の敵を刺激するせいもあるけどね!」
 剣を抜き取り、原形を留めていない機械兵を見下ろしたルフトゥの元に、まったくもー、などとぼやいて唇を尖らせながらポケッティが飛んでくる。
「お宝探しもいいけど、身の丈ぐらい弁えればいいのに!……まぁ、別に、助けないとは言ってないけど」
「お前、天の邪鬼だな」
「なんですって!?」
 素知らぬ顔で走り出したルフトゥの隣を、きいきいと文句の嵐を浴びせながらポケッティが着いて行く。

 行く先は勿論、次なる敵の元。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リチア・スィール
平賀・廣葉(f11925)と

平賀、力貸して!
オレも学園生だからさ、学園のみんな守りたいんだ
しょーらい大海賊になるんだから仲間は守んないとね!

先行部隊が居るとこについたら罠の場所を確認。
ガジェットショータイム、攻撃貰ったら設定した方向に飛んでく小さい盾みたいなの!
銃でちょっと小突いて弾幕が来たらその盾で罠のスイッチに向かってシュート

「罠が来るから気を付けてねー!!」
上から黒い泥みたいなのがどどっとブロックに降り注ぐ。
探索中だったら泥だらけで嫌だー!ってだけだけどさ、戦闘中だったらその泥は重くて動きづらいぜ……!

動きが鈍くなったら近接もやりやすくなるだろうし、いっちゃえー!
ごめんね、泥だらけにして


平賀・廣葉
初依頼です。緊張しますね
リチア・スィール(f09595)さんと同行
不安なので傍にいたリチアさんに同行させて頂きます

仲間を守る、尊い思いですね
是非、お手伝いしたいです

●WIZで挑戦
無差別攻撃をしてくるそうなので【巫覡載霊の舞】でダメージを軽減しつつ
機を待って一気に仕掛けましょう
チャンスはリチアさんが作ってくれるようです

泥まみれになるのも、変身していれば気になりません!
……多分。



●未来の英雄と羅刹の姫君
「オレも学園生だからさ、学園のみんな守りたいんだ。しょーらい大海賊になるんだから仲間は守んないとね!」
 だから平賀、力貸して!

 将来英雄――大海賊にならんとその道を突っ走るリチア・スィール(無限に描く航海図・f09595)にそう頼まれた平賀・廣葉(亡国の羅刹姫・f11925)はゆっくりとひとつ頷いた。
「仲間を守る、尊い思い……是非、お手伝いしたいです」
 その想いで緊張する心を奮い立たせ、リチアの傍を離れないように廣葉は迷宮を走る。なにせこれが猟兵としての初めての仕事だ。緊張しないわけがない。

 一方のリチアは学園生であるためか、迷宮の内部にも多少精通していた。
 罠や仕掛けが解除されていることもあるが、先行して突入していった猟兵達がいる階層まで迷いなくすいすいと進み、あっという間に追いつく。
 そこは既に、あちらで轟音、こちらで地鳴り。かと思えば剣戟の音、何かが焼け焦げる匂い……と、迎撃戦が繰り広げられている戦場。
 それでも怯むことなく前へ前へと通路を進む2人は、開けた広間に出た瞬間、その足を止めた。
 目前には1体の機械兵が佇んでいる。
 リチアと廣葉は顔を見合わせて頷く。
 やるしかない。そのためにここへ来たのだ。
 
 敵が動き出す前に、リチアは広間の壁を、床を、天井を素早く確認する。通路が多い迷宮内のこういった広間には、罠が設置されていることが多いからだ。
 その見立ては正しく、壁面にそれらしい紋様を見つけると銃を構え直す。
「オレが罠を作動させるから、平賀はその隙にアイツをやっつけちゃって!」
「わかりました、やってみます」
 深呼吸ひとつ、それから首肯を返した廣葉ににかっと笑みを向け、リチアが機械兵へと熱線銃での一撃を放つ。
 それを合図に、魔の力で作り上げられた弾丸が次々と機械兵から撃ち出される。1体とはいえそれなりの連射だ。弾幕を張られ近づきがたくなったが、それも全て計算のうち。2人は魔弾を必死に避け、時に舞い上がる床石で細かな傷を作りながらも時間を稼ぐ。
 ――ガジェットショータイム!
 魔弾が床石を砕き、もうもうと土煙が上がって視界が妨げられた頃、そのタイミングをしっかりと見計らっていたリチアは小さな盾を召喚した。衝撃を受けると設定した方向へと進んでいく盾だ。これがあれば、この位置からでも罠を作動させることは容易い。
 その間に、廣葉は戦巫女達に伝わる舞を美しく舞い、次の一手に備える。
 『巫覡載霊の舞』――彼女が神霊体へと変貌を遂げ、弾幕に向かって行ったことを確認すると、少年は弾幕が上げる音に紛れて盾を自身の銃で撃ち抜く。
 衝撃を受けた盾は、流星のように弾幕を裂いて空を駆け、リチアが先程見つけていた壁面の紋様へと激突した。
「罠が来るから気を付けてねー!!」
「はい!」
 リチアのその呼びかけの直後、向かってくる廣葉の気配に魔弾を止め、その胸部に抱く魔力炉から青の炎をふつふつと沸騰させるように零し始めていた機械兵と、そこへ飛び込んでいく廣葉の上に、黒い泥のような物体が滝のように降り注ぐ!
「うわ、泥かー!」
 距離を保っていたリチアは泥の範囲から逃れていたが、あれを浴びては廣葉は動きづらいだろう。
 だが、それは敵も同じこと。
 暴発させようとしていた魔力炉にも泥が流れ込んだか、敵の動きがあからさまに鈍る。炉の青い炎が小さな爆発を起こすも、神霊体と成り、他者からの攻撃に耐性を得ていた廣葉にとって、それは防ぎきれるだけの一撃であった。
「今だ! いっちゃえー!」
 リチアの声を追い風に、廣葉はしっかりと握りしめた薙刀を中空に振るう。
 斬り裂くだけでなく、神霊体としての力を行使することでその一振りに衝撃の波を加えた廣葉は、それで自身が腕に被った泥を周囲に撥ね飛ばした。腕の自由を得てもう一撃、今度は動きの鈍った機械兵へ向けて袈裟懸けに振り下ろす!
 刃が泥を裂き、顕になった機械の身体が、刃に載せられた衝撃波の力で斜めに斬り飛ばされると、その威力で上半分が奥の壁へと飛び、激突してがらりと音を立てて落ちる。
 残された下半分の身体も、魔力炉の灯火がゆらりと揺らぐと、やがて小さく消えてその生に終焉を迎えた。

「やったー! すごいよ平賀!」
「リチアさんがチャンスを作ってくれたからです、ありがとうございます」
 喜ぶ少年に笑みで応えた少女は、しかし少年がばつが悪そうに頬を掻いているのを見て、小首を傾げた。
「どうかしましたか?」
「あ、いやー……ごめんね、泥だらけにして」
 罠を作動させ好機を作る都合上致し方なくはあったのだが、自分は泥を被らず眼の前の少女を泥だらけにしてしまったのは、少年としては心苦しいことであり。
 その様に変身しているから大丈夫ですよ、とくすくす笑って告げた少女は、はたと思い出す。
 この姿でいると、自身の寿命が削られていくのだ。短時間であるためかまだ影響は出ていないが、ずっとこのままというわけにもいかない。
「大丈夫、気になりませんよ! ……多分」

 結果、最後に付け加えられた一言に、少年は慌てて謝り倒したのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴォルフガング・ディーツェ
【SPD重視】

主には同情するよ、そりゃ大人数にずかずか入り込まれたら迎撃するね
けれど売られた喧嘩にはにっこり笑顔で死をお届けに上がろう

道中は罠の位置を確認しつつ【ブラックドッグ】を召喚して戦闘に備えるよ

わんこなら臭いで罠が…分からない、そっか。ご飯抜き。きゅんきゅん哀れっぽく鳴かない!

戦闘ではわんこと連携し【範囲攻撃】、雷の【属性攻撃】で罠まで追い込もう
接近されたら鉤爪ガジェットで【傷口を抉る】【二回攻撃】で迎撃

相手を翻弄するよう死角や遮蔽、高低も積極的に活用し被弾を抑えつつ攻撃だ

罠は…ああ、酸の池に溶解巨大スライム落下か。なーむー(合掌)
隙が出来たのなら見逃さず、畳み掛けて刈り取るとしよう



●死運ぶ吠え声
 ヴォルフガング・ディーツェ(咎狼・f09192)は同情していた。
 誰にって、今回の侵攻を企てたこの迷宮のどこかのボスに、だ。
 大人数でずかずかと遠慮なく入り込めば、迎撃もするというもの。
 けれど、それはそれとして。
「売られた喧嘩にはにっこり笑顔で死をお届けに上がろう」

「おいで、わんこ。お散歩だ」
 上へ上へと攻め込もうとする機械兵達がうろついているフロアだ。ヴォルフガングは戦闘に備え行動を共にする黒犬を喚ぶ。その背に跨がり罠の位置を確認しながら迷宮を進んでいく彼は、ふと思い立ったように日頃『わんこ』と呼ぶ黒犬の顔を覗き込んだ。
「わんこなら臭いで罠がわかったりするんじゃないの?」
 果たしてどうなのだろうか。問われた黒犬は床石へ鼻を近づけ、すんすんと嗅ぎながら進みだすと、幾つかの角を曲がって顔を上げた。
 そこに罠が――あればよかったのだが、ありはしない。最初にヴォルフガングが問うたその場所だ。
「成程、分からない、そっか」
 見守っていたヴォルフガングは肩を竦め、無情にも告げた。
「ご飯抜きね」
 途端にきゅぅんきゅぅんと哀しげな声を上げるわんこに、哀れっぽく鳴かない! とその背から返しながら、1人と1匹は再び罠を、敵を探り迷宮内を歩き出す。

 やがてひとつの通路に差し掛かった時、ふと、ぴたりとわんこがその歩みを止め、耳をそばだてた。
 頷いたヴォルフガングが鞭を手に、近くの遮蔽の上へと軽やかに跳び上がる。
 罠の場所はわからずとも、黒犬はしっかりと敵の接近を捉えていた。そして、ヴォルフガングもまた、わんこのその感覚に疑いはない。
通路を曲がり姿を現した機械兵の装甲を抉り取るようにわんこが噛み付くと、ヴォルフガングも遮蔽の上から雷纏わせた鞭で迎撃する。奇襲を受けた形になった機械兵も負けじと魔の弾を連射し追い立てるが、ヴォルフガングは遮蔽から飛び降りて、わんこは機械兵の背側へとすり抜けて、それぞれにその魔弾をやり過ごすと再び攻勢に転じた。
 一見ばらばらに見えても連携が取られた1人と1匹の動きに的を絞りきれず翻弄される機械兵は、滅茶苦茶に魔弾を放ち、壁だったものの礫を降らせながら、視認できる場所にいた黒犬へと狙いを定めその姿を追っていく。
「進め!」
 降ってくる礫を鞭で落としつつ、時折機械兵を追い立てるように紫電を放つ鞭で打ち据えるヴォルフガングは、その先に、あからさまに何かありますと言わんばかりに中央に水が張られた広間を見つけ、後方から叫んだ。
 ざぶざぶと水を掻き分け奥の通路へと抜けていった黒犬に続き、機械兵がその水のエリアに入ったところで、部屋の入り口にあった硝子のスイッチを鞭で叩き割る。
 ずん、と地が鳴り、浅く水が張られていた部分の床が大きく沈みこむ。
 それに合わせて天井からその水の上に降ってきたのは――巨大な、巨大なスライムだ。
 一見可愛らしいそれは、しかしその水が張られていた床とほぼ同等の大きさで、つるりとした身体で上から機械兵を押しつぶすとその水の中へと沈め、更には蓋代わりにすっぽりと床に嵌ってしまう。
 これでは機械兵は上へ出ようもない。そればかりか、水が罠の起動により変質したのか、機械の身体から泡が立ち上り、徐々に溶け出していた。
「ああ、これは」
 最早刈り取る必要もないだろう。
 スライムを踏まないようにその床の縁から水の中を覗き込んだヴォルフガングは、両手を合わせると、彼の元へと戻ってきた黒犬に跨る。
「よし、わんこ。散歩の続きだ」
 元気に一声吠えたその背を撫でると、1人と1匹は黒い風になって再び迷宮内へと消えていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アウレリア・ウィスタリア
先行部隊という割に隙の少ない敵ですね
真正面からの戦いではボクの方が不利になりそうです
なので、ボクはボクなりに小細工をしますよ

底にトゲの設置された落とし穴とかありそうですよね
【血の傀儡兵団】を使用
血人形を囮に敵部隊をトラップに誘導
トラップを回避しそうだったり故障していたりすれば
血人形でトラップを起動
無理矢理にでも穴に叩き落とします

それと落とし穴とセットが定番と聞いてる
転がる巨石とかないでしょうか?
ボクは空中に回避できるので見つければ起動しましょう

動きが止まれば
魔銃ヴィスカムで滅多撃ちに

自爆攻撃を第六感で感じれば血人形を盾に回避
ボクは打たれ弱いので危ないと感じれば逃げますよ

アドリブ歓迎


芥辺・有
罠ね。面倒なこときわまりないことで。……ま、こっちが利用できるんなら話は別だけど。
せいぜい利用できるものは利用させてもらおう。

第六感を駆使しつつ、罠の位置なんかを探りながら戦うよ。
こういうのには詳しくないんだけど。定番は落とし穴か?誘導して落とせたら頭数が減らしやすいな。
フェイントも織り混ぜた手数重視の攻撃をしつつ、敵を罠の方へ誘導する。蹴っ飛ばして罠の方へ吹っ飛ばしたり、杭の鎖でそっちへ引っ張ってもいいか。
もちろん私は落ちないように気を付けるがね。……まあ万が一に備えて羽出して飛べる準備くらいはしとくか。

もし敵が落ちたんなら上から止めを刺すも良し、他のをいくつか同じように落としてもいいかな。



●緋色
「我が血は力、敵を切り裂く無数の兵団。進め、そして道を切り開け!」
 詠唱と共に、アウレリア・ウィスタリア(瑠璃蝶々・f00068)の周囲に次々とその血から生まれた傀儡兵団が立ち上がる。
 先行部隊というには接近戦も遠隔戦もこなす、隙の少ない機械兵を警戒したアウレリアは、真正面からの戦いを避ける道を選んだ。
(こういう所なら、底にトゲの設置された落とし穴とかありそうです)
 傀儡軍団を先行させ迷宮内を探索していたアウレリアは、こつり、と響くように変化した足音に、その歩を止めて床に手を伸ばした。
 近くの床を叩き、硬い音が返るのを確認すると、今度は先程自分が踏んだ床をノックする。
 奥に空洞でもあるかのように響いたその音に、アウレリアはここに落とし穴があることを確信した。
 それならば、どこかにその作動スイッチがある筈。
 立ち上がり視線を周囲の壁に向けたアウレリアの耳に、抑揚のない女の声が届く。
「探してんのは、これ?」
 黒猫の面を手で確かめてから声の方へとその視線を遣れば、煙草の煙をくゆらせた女――芥辺・有(ストレイキャット・f00133)が、コツコツ、と手近な壁を叩いていた。
 その壁には、確かにこの迷宮内に相応しくない、美しい絵画がかけられている。
「どうやら、これそのものがスイッチになっていると見たね」
 勘だけど、と添えた有の方へと歩み寄ったアウレリアも、隣に並んでその絵画を確認する。
 壁にぴったりと設置されたその絵画の横の壁には小さな溝が掘られており、どうやら絵画をその溝の方へと動かすことができるようだ。
「確かにスイッチのようです。けれど、本当にあの罠のスイッチでしょうか?」
 最もなアウレリアの疑問に対し、勘だって言ったろ、と肩を竦めた有は、煙草を落とすとその火を踏んでもみ消した。
「違ったらその時に考えればいいさ。お前も罠を探してたんだろう? お互い、せいぜい利用できるものは利用させてもらおう」
「それもそうですね」
 
「これであとは、この罠まで敵を誘導すればいいわけだ」
 さて、ではどうやって、と顎に手を当てて思案する有に、アウレリアはボクが、と小さく手を挙げて主張した。
「お前が?」
「ボクがと言っても、ボクではなく……あの血人形達を」
 有は思わず小さく眉根を寄せたものの、アウレリアが指し示した100体にも及ぶ血の傀儡軍団を見て、合点がいったように頷く。
「私達への被害も少なく済むし、それがよさそうだね」
「はい、では早速」
 アウレリアの命を受け、傀儡軍団は列を成し、行軍を開始する。
 最後尾の血人形が通路の奥へと消えたのを見て、2人は手近な遮蔽へと身を隠した。

 それから数分。
 気配を殺し遮蔽の向こう側の様子に耳をそばだてていた2人の元に、爆発音が断続的に届いた。そしてその音とともに、徐々に機械の兵士が床を踏みしめる足音がくっきりと現れ近づいてくる。
「いよいよお出ましか?」
「恐らく。行きましょう」
 視線を合わせた2人は同時に遮蔽から飛び出した。行軍を開始した方とは反対側から、数を減らした傀儡軍団と共に、機械兵が隊列を成してこちらへと向かってくる。
 その数、7。
「おい、誘導してくれたはいいがちょっと多くないか」
 声色は変えず、ただわずかに片眉を上げた有に、アウレリアは首を横に振った。
「連れてくる数までは命じられませんし、アレに機械兵を倒す程の力はありませんから」
「……まあ贅沢ばかりも言ってらんないな」
 ため息をひとつ。再び煙草を咥えると、万一に備え翼を出した有が絵画へと手を伸ばす。
 機械兵を引き連れた傀儡軍団が真っ直ぐ落とし穴がある場所の上を通ったところで、アウレリアがそちらへと手を差し向けた。
 言のないその令を的確に受け取った傀儡軍団は、くるりと機械兵達に向き直ると、一斉にそれぞれが機械の身体にしがみつくようにしてその場に押し止める。
 無論、機械兵達もされるままになるわけではない。1体が炉の青い炎を沸き立たせると、そのまま勢いよく爆ぜさせ、血人形を吹き飛ばしにかかる。仲間諸共巻き込んだその攻撃で何体かの機械兵も吹き飛ぶが、その倍以上の数の血人形が消し飛んでいく。
 しかし、その攻撃も血人形に全て吸収され、アウレリアと有までは届かない。
「今です!」
 アウレリアの声に、有の手が勢いよく絵画を溝へと押し込んだ。
 同時に巨大な扉が開くような音を立て、アウレリアが落とし穴と踏んでいた場所に大穴が口を開ける。
 その上に押し止められていた機械兵3体が血人形共々その穴へと吸い込まれ、残りを叩き落とそうと2人が動いたその時。
 再び上がった扉が開くような音に、アウレリアと有は音の方へと振り返った。
 絵画がかけてあった壁の隣に、先程まではなかった空洞が出来ている。そして。
「……っ!」
「まずい」
 その空洞から聞こえてきた轟音に、2人は咄嗟に手近な壁を蹴って勢いをつけ、それぞれの翼で天井付近まで飛び上がった。直後、轟音を立てて通路へと転がり出てきた巨石が2人の真下をすれすれで転がり抜ける。そのまま先程の味方の魔力炉爆発で飛ばされ、落とし穴の手前へと進み出ていた機械兵を轢き飛ばして巻き込むと、口を開けていた落とし穴へと雪崩れるように落ちていく。
 これでは中を確認するまでもなく、不運な機械兵達は全てあの巨石の下敷きになって圧殺された後だろう。
 いや一体、不運だったのはどちらであろうか。
 炉の爆発で穴の上から脱し、巨石に巻き込まれる位置にもおらず残された2体の機械兵は、宙を舞う2人へと狙いを定め、魔弾を繰り出す。
 しかし、その魔弾が2人に届くことはなかった。
 その機械の身体のひとつは、アウレリアが放つ魔銃ヴィスカムの銃撃に魔力炉ごと余すところなく穿たれ、粉々になって砕け散り。
 もうひとつは、有が放つ無数の赤い杭を撃ち込まれると、それらに繋がった鎖を力強く引いた有の手により、大口を開けた穴の底へと叩き込まれたからだ。

「ちょっとした予定外はあったけど上々だね」
「はい。今のうちに先に進みましょう」

 2人が去ったその後には、壊れた機械が埋まった大穴だけが残されていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

壥・灰色
「壊鍵、起動」
蒼いスパークが四肢に走り、「衝撃」が装填される

罠、地形の利用、その手の小細工はおれには不要だ
通りかかる道にいる一切全てを粉砕し、推し通る

通路で会敵次第、天井、壁、床を問わず乱反射するように接近
至近にまで距離を寄せ、拳打を叩き込む
一撃一撃に「衝撃」が重なるそれは、擬似的な「2回攻撃」のようなもの
打撃と同時に衝撃波が発生し、ラビリンスセンチネルの一体を粉砕する

退屈させてくれるなよ
肩が温まるくらいまでは、壊れてくれるな

吶喊
敵が何体だろうと構わない
攻撃を、通路を縦横無尽に「衝撃」を装填した脚により跳ね、相対した全ての敵が大破し行動不能になるまで暴れ狂う



●灰の弾丸
 迷宮へと突入し機械兵の迎撃にあたった多くの猟兵が、迷宮の罠を用いて次々と機械兵達を無力化していく中、彼、壥・灰色(ゴーストノート・f00067)の方針は最初からはっきりとしていた。

 罠も、地形の利用も――その手の小細工は一切不要。
 只、強敵へと向かうその道にいる一切全てを粉砕し、推し通るのみ。

「壊鍵、起動」
 駆け抜け進む通路の先、鈍く光った金の身体と青の光を視界の隅に捕えた灰色が囁く。
 四肢に走る蒼の火花。その光は、その手足に『衝撃』が装填されたことの証左だ。
 その脚が、床を蹴る。
 その衝撃で抉るように床石を砕きながら、次いで天井を、次いで壁を――場所を問わず、脚が着いたその場を蹴って乱反射するように進んでいく。
常人とは比べ物にならないその速度は、さながら通路を不規則に跳ねゆく跳弾のようでもあり。
 瞬きの間に機械兵を至近に捉えた灰色は、その拳を器めいた兵の胸部目掛けて叩き込んだ。
 息つく間もなくもう一撃、更にもう一撃。
 その一撃一撃には、先に装填された衝撃が重ねられている。強力な拳打と共に発生する衝撃波は、機械兵の身体を一撃の度に揺らし、砕いて。機械兵がその胸の青い灯火を途絶えさせた頃には、その身体はまるで砲弾により撃ち砕かれたかのように粉砕され、跡形もなくなっていた。

 一部塵芥と化して床に積もるそれを、灰色はその鋭い眼光で静かに見下ろす。
「……退屈させてくれるなよ」
 これではまだ足りない。退屈せずに済むには、もっと、もっと。
「肩が温まるくらいまでは、壊れてくれるな」
 告げて上げた視線の先には、既に新たな標的を捉えている。

 残像を残すかのような速度で跳び、穿ち、時に叩きつけた壁ごと粉砕し、殴打し。それを繰り返して、視界に入った全てを屠り倒すように、壥・灰色は際限なく現れる敵を砕き散らす。
 だが敵も黙って屠られ、数を減らしていくわけではない。
 主が上階へ侵攻せよと命を下した。そのためにはこの男を排除しなければ先へは進めないと認識されたのであろう。複数の機械兵が彼を中心に、一斉に魔力炉を煮え立たせ暴発させようとする。
 輝きを増し閃光へと移り変わっていく青い炎を見もせず、手近な一体へと飛びかかった灰色は、その脚を拳で打ち据えひしゃげさせ、器ごと炉を粉砕して暴発を止めると、盾代わりに自分の前面へと固定した。
 残った機械兵が起こした魔力炉の爆発が、彼が盾代わりにした機械兵諸共灰色を吹き飛ばすが、それを追い風に変えて、宙で一転。
 背後の壁を蹴った勢いごと拳に乗せ、そのまま一体の機械兵を壁にめり込ませる。
 勢いを殺さず、身を低く疾駆して蹴撃。脚を掬われ派手な音を立てて倒れた機械の身体に跨ると、上部から一撃。周辺の床が、灰色が放つ衝撃で円形に穿たれる。
 最も遠くにいた残された1体との距離も、灰色にとっては一歩でしかない。なぜならば、脚に装填された『衝撃』により床を蹴り跳ねれば、その機械の体はもう灰色の拳の射程に収められており、次の瞬間には物言わぬ塊と化しているからだ。

 吶喊の声を揚げ、灰色は再び跳ねる、跳ねる。
 敵が何体だろうと、相対したものは全て打ち砕いていくのみ。

 暫しの時を経て、ようやく肩が温まった灰色が、ぐるりとその腕を回した。
 迷宮内には、最早駆動可能な機械兵は1体たりとも残されていない。
灰の弾丸が突き進んだその跡には、その軌道を示すかの如く、夥しい数の機械兵で合ったものの残骸だけが山と積まれていた。
 その数は幾つであっただろう。答えは、誰も知らない。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ライブラリーマスター・シャルロット』

POW   :    おしおきディクショナリー
単純で重い【鋼で強化された分厚い辞典の角】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    ふたりの夢の王子様
自身が戦闘で瀕死になると【白馬に乗った王子様】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
WIZ   :    やぎさんゆうびん
【大量の子ヤギ】の霊を召喚する。これは【噛みつき】や【タックル】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はミモザ・クルセイルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●再び迎え撃つ者達
「どうして……嘘でしょ……」
 だって、あれ程沢山の尖兵を喚び出して。
 順調に上へ上へと進んでいた筈だったのに。
 攻め込まれる前にやっつけちゃえば、後はまた静かにあの扉の前で役目を果たすだけだった筈なのに。

 桃色の髪を揺らした少女は、半分涙目になりながら、目の前に降りてきた猟兵達を睨みつける。
 睨んだところで何が変わるわけでもない。そんなことはわかっている!

 自らの手でもって状況を覆す以外の道を失った少女は、瞳の端に浮かべた涙を拭うと決意を固め、隣に立つ相棒と共に猟兵へと襲いかかる――!
芥辺・有
攻め込まれる不安だとかは、そっちの都合だしね。仕掛けた以上、責任を取る覚悟は勿論あるんだろ?……無くても関係ないけどね。

出来れば一気に片つけられらいいけどさ。
ゆらゆら、背後に靄が集うように形作られた影を身に纏う。
……ああ、ほんと、煩い。

影人形を発動した上で一気に奴のもとへ駆けよう。
自分の掌から腕を切り裂いて、流れる血を炎へと変える。
飛び散る血は炎の弾丸として放射して。
ブーツに流れ落ちる血は炎纏う蹴りを叩き込むために利用しよう。
奴に攻撃を許さないような速度で畳み掛けられたなら上出来だけど。
攻撃がきそうなら第六感で見切って避けるよ。



●黒き焔は揺蕩い嗤う
 桃の髪を揺らし向かい来る少女――シャルロットとその相棒らしい山羊に、芥辺・有(ストレイキャット・f00133)は煙草を咥えたまま肩を竦める。
「仕掛けた以上、責任を取る覚悟はありそうだね。……無くても関係ないけど」
 攻め込まれて不安だとか、そんなものはあちらの都合だ。こちらにはこちらの都合がある。
 短くなった煙草を落とし揉み消すと、同時にゆうらりゆらゆら、背後に集うように寄り合った靄が長躯の影を模り、嗤った。
 
 ……ああ、ほんと、煩い。
 
 けたりけたけた、識別の出来ない言葉で嗤うその影に眉を顰めたのは瞬刻のこと。
 床を蹴り、一人と一匹を迎えるように一人と嗤う影が駆ける。
 夜が滴り落ちたかのような杭を手にした有がその掌から腕を杭の先で切り裂けば、傷から溢れた血は揺れるように黒く燃え上がり炎を成し、駆ける勢いのままに散った血は燃え盛る弾丸となる。
 弾丸は身体を喰い破らんと有より先にシャルロットに襲いかかるが、その軌道に一声鳴いた山羊が割り込むと、その角を一部黒炎の弾丸に吹き飛ばされながらも軌道を次々変えていく。
「やるじゃん」
 その言とは裏腹に、散った弾丸と山羊に構いもせずその横をすり抜けるようにしてシャルロットの背後へと躍り出た有の脚へと、腕から滴った血が流れ、黒く黒く燃え上がった。
「こっちに来ないで!」
 その炎ごと蹴撃を叩き込もうとした有を睨み据えながら震える叫び声を上げたシャルロットは、両手に余る程の大きな辞典を、有の頭部目掛けて振りかぶる。
 その角に鈍く光ったのは、鋼。
 それを認めた有が迷わず引き戻した脚で地を蹴って距離を取ると、先程まで有が立っていた床石に叩きつけられた辞典が、床石を抉るように捲り上げた。
「……馬鹿力」
 見かけによらない腕力を見せつけたシャルロットに、有の口から思わず声が漏れる。けれど、それは脚を止める理由になどなりはしない。
 そしてそれだけの一撃を放つために辞典を振りかぶる必要のあるシャルロットの隙を、見逃す理由は何一つなかった。
 距離を詰め、今度は顳顬へと標準を定め繰り出された辞典の一撃を、有は予見していたかのように身を低く躱す。
 狼狽えるように揺れたシャルロットの空色の視線が咄嗟にその動きを追うが、辞典を振りかぶった直後では体勢を立て直しようもなく。
 下から跳ね上げるように繰り出された黒炎纏う有の右脚がその横腹に喰らいつくように蹴り飛ばすと、小さな体は宙を舞い、床石に叩きつけられたのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

トレイシー・ノックス
【SPD】
あれが今回の面倒ごとを引き起こした元凶。
こんな真似をしたんだから、当然覚悟は……あの様子だとできているみたいね。
なら、こちらも油断はしないわ。
追い詰められた獣の怖さは、嫌というほどわかっているもの。

【地形の利用】で迷宮内の障害物に身を隠しつつ、【神算曲射】で物陰から矢を放つわ。
あんな見た目でも親玉なら、私一人の力で仕留められるほど甘い相手ではない筈……他に挑む猟兵がいれば、そちらへの【援護射撃】となるように意識して攻撃するとしましょう。
軌道が障害物だけではなく、味方にも当たらないように、尚且つ敵の動きも妨害できるように……さっきよりさらに面倒な計算だけど、やるしかないわね。


ヴォルフガング・ディーツェ
ふうん、キミがここのマスターか
思ったよりも年若…ええ、そんな涙目で見られると遣り辛い…
こほん。侵入者が正しいとは言わない、けれど殺す心算できたのならこちらも応じるだけさ

【戦闘知識】を活用、遮蔽や高低差を活用しながら死角からの攻撃を狙おう
指を鳴らし爪へと戻したガジェットで接近戦を仕掛け、炎か光の【属性攻撃】を上乗せした【2回攻撃】で削って行こう

辞典の一撃は【武器受け】でいなし、白馬の王子や子ヤギの霊を召喚したら爪と同様のスキルを上乗せした鞭の【範囲攻撃】で薙ぎ払い

持参品の透視鏡も活用しシャルロットの隙を伺う
僅かな好機でも見出せたなら【薔薇の鞭戟】

キミの秘密までも暴きやしないさ、この業に掛けて、ね


シャルロット・クリスティア
そちらにも思うところはあるのでしょうが……。
こちらとて、為すべきことがあります。学園に被害が出るのを黙って見過ごすわけにはいきません。
相容れないのならば、致し方ありません。迎撃させていただきますよ……!

今までで、罠の位置や構造はほぼ把握しました。おそらく、敵味方共に、自然と引っかかることはほぼ無いと見ていいでしょう。
なので、遠距離からのスナイピングで、『任意のタイミングで』作動させます!
直接罠でダメージを与えることは難しくとも、立ち回りを制限させることはできる筈。
味方が戦いやすいよう、敵の動きを封じるよう、罠と地形をフル活用して皆さんの援護です!

勿論、当たりそうなら直接狙い撃たせて頂きますが!



●影より襲い来る者達
 強かに床石に叩きつけられた桃の髪の少女が、むくりとその身を起こす。
「ふうん、思ったよりも年若いけど、やっぱりフロアマスターだね……って」
 負った傷に動じる様子もなくこちらを睨み据えてくる少女に、ヴォルフガング・ディーツェ(咎狼・f09192)は感心したように呟くが、よく見れば少女は再び涙目になっているではないか。そんな涙目で見られては遣り辛いことこの上ない。
 だがしかし、それでも相手は力を有するフロアマスターだ。咳払い一つで気を引き締め直したヴォルフガングは、ぱちりと指を鳴らし、その手へ魔爪「這い穿つ終焉」を纏わせる。
「侵入者が正しいとは言わない、けれど殺す心算できたのならこちらも応じるだけさ」
「望むところ。こっちだって、もう後には引けないんだから!」
 迎え撃つように辞典を構え直した少女へと、ヴォルフガングは地を蹴り駆ける。

 その二人の様子を伺う影が、二つ。
 トレイシー・ノックス(インドア狩人・f06024)とシャルロット・クリスティア(マージガンナー・f00330)だ。

(あれが今回の面倒ごとを引き起こした元凶。覚悟は……あの様子だとできているみたいね)
(あの子にも思うところはあるのでしょうが……こちらとて、学園に被害が出るのを黙って見過ごすわけにはいきません)

 先程息を合わせて機械兵を屠った二人は、ヴォルフガングを援護すべく息を潜めて遮蔽に身を隠していたのだ。
 遮蔽の内から周囲の様子をくまなく伺っていたシャルロットは、ヴォルフガングが少女へと向かったのを見て取るとライフルを構え直す。
 迷宮内の罠の種類や作動スイッチ、そして発動範囲。
 先程までの機械兵との度重なる戦いの中でその何通りもの組み合わせを記録し、そこからパターンを見出していたシャルロットは、壁の一点へとライフルを向けた。
 シャルロットが狙い定めた壁に描かれている複雑な紋様は、罠の作動スイッチの一つだ。そして同じ紋様は部屋の円形の床全体に描かれており、それが発動範囲を示していると思われた。
(恐らくは、地形を変えるタイプの罠の筈)
 引金に、指をかける。
 ちらりとヴォルフガングの方へ視線を遣れば、飛びかかってくる山羊を炎纏う爪で鋭く薙ぎ払う様子が目に入った。彼を狙い辞典を振りかぶる少女へは、トレイシーがトリッキーな軌道を描く矢を放ち牽制しているが、開けた視界の中では少女の足を確実に止めるには至っていないようだ。
(これなら直接ダメージを与えることは難しくとも、立ち回りを制限させることはできます)
 そうすれば、トレイシーが放つ矢による阻害効果は上がり、ヴォルフガングに好機を作り出すことができるかもしれない。
 深呼吸を一つ。慎重に定めたその一点へと、シャルロットのライフルが吠えた。
 真っ直ぐに飛び出した弾丸が壁の紋様を撃ち抜くと、床に描かれていた紋様が淡く輝き、脈動するように床が蠢く。

「! やだ、罠!」
 突如として輝いた床に狼狽える少女をよそに、素早く周囲に視線を走らせたヴォルフガングは、せり上がり始めた床へと跳び乗り、そこを足場に更に高くせり上がる床へと跳び上がると、少女と山羊から身を隠す。
 咄嗟に彼を見失わないようにと追う少女の足を狙い、その死角から矢が次々と飛来した。
「――!」
 飛び出した山羊に突き飛ばされる形でかろうじてその矢を避けるも、息つく間もなく次の矢、その次の矢が少女を襲う。

「おかげでかなり狙いやすくなったわ」
 シャルロットが隠れる遮蔽の方へと囁いたトレイシーは矢を番え、少女と山羊を狙い間断なく放っていく。
 追い詰められた獣の怖さは、嫌というほど識っている。一人で仕留められるほど甘い相手ではないと考えるからこそ、トレイシーは他の猟兵の助けとなる手を選んだのだ。
 そして、どれ程複雑な地形の中であっても、少女と山羊の足をそこに縫い止めるだけの矢を放つ自信があるトレイシーにとって、矢の飛来を気づかせにくくするこの地形の変化は大層好都合だった。
 少女と山羊が避けようとも隠れようとも、瞬時に軌道を計算しトレイシーの矢は追い縋る。

「めえちゃん、上に逃げよう!」
 焦りを帯びた少女の声に、一声鳴き応えた山羊が床を蹴り、上段に位置する床へと跳ねる。しかし山羊が着地したその瞬間、まるでそちらに進むことを予知していたかのように狙いすました一本の矢が、的確にその足を捉えた。
「めえちゃん!」
 叫ぶように鳴く山羊に、後を追って床を登っていた少女が悲鳴を上げる。
 その悲鳴を飲み込むように響き渡る、銃の吠え声。
 ルーンが刻まれた弾が山羊の胴を抉り貫くと、山羊の身体を塵に還す――シャルロットが放った銃撃だ。
「当たりそうなら直接狙い撃つのみです!」
 真っ直ぐ狙える位置へと姿を現した者を逃すシャルロットではない。
 磨き上げられた狙撃術で撃ち落とすべく、遮蔽を渡り身を隠しながら少女を狙いやすい位置へと、シャルロットは更に駆ける。
「やだ、やだやだめえちゃん!」
 縋るように叫びながら、それでも銃口から逃れるように登りかけた床から手を離し、低く下がった床が作り出した溝へ隠れようとする少女の足へ、トレイシーの矢が容赦なく襲いかかった。その矢がさながら狩りの仕上げのように、少女をせり上がった床が囲む袋小路へと追い込んでいく。
 そして遂に逃げる先を失った少女が見せた瞬時の狼狽を、もう一人の猟兵は――ヴォルフガングは見逃さなかった。
 魔の力が込められた透視鏡の力も使い、高くせり上がった床を渡って死角から少女を追っていたヴォルフガングは、長い尾を揺らし一息に少女の眼前へと飛び降りると、着地の反動を利用し勢いを乗せた爪を、少女の喉元へと突き立てるように振り抜く。
 咄嗟に辞典を突き出し爪を弾いた少女は、炎の軌跡描く爪を折るように辞典を振るうが、今度はヴォルフガングが辞典の紙の部分を爪で捉えると、横薙ぎに辞典ごと振り抜くことで鋼の直撃を防いでみせる。
「キミの秘密までも暴きやしないさ、この業に掛けて、ね」
 振り抜かれた辞典に腕を引かれ体勢を崩した少女の耳に届く、優しい声。
 ああ、だが、声の主のその手は止まらない。止まるはずもない。
 ――舞えよ、忌まわしき薔薇。
 同じ声で告げたヴォルフガングの身へ、不可視の力が降りる。それは、呪い。課せられた宿命。
 それすらも力に変え、ぱちり、指を鳴らして魔爪を腕輪へと変じさせたヴォルフガングは、代わりに手にした鞭を少女へ向けて猛然と振り抜いた。
 薔薇宿る棘鞭は少女の白い肌を切り裂き、抉るように傷を増やしながら、その小さな体を袋小路の一角へと弾き飛ばす。

 壁に打ち据えられた少女は数多の傷に苦鳴を漏らし、空色の瞳を滲ませる。
 だが、未だ、その瞳には鋭い抗いが宿っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



 守らなければならないものを守るために、一人と一匹では不安だった。
 だから守るために沢山を喚んだ。こちらからやっつけてしまえばいい、と攻め込んだ。
 結果、相棒の山羊までも失ってたった一人になってしまった。

「それでも、今更逃げたってどうにもならないもん。めえちゃんの分まで私がやるんだ」
 シャルロットは、空色の瞳を潤ませながらも何事かを囁くとその両手を大きく広げた。
ポケッティ・パフカニアン
…なんか、目赤くない?大丈夫?
別に、手加減とかする気は無いんだけど…いじめみたいで後味悪いって言うかー…
どーせ敵なら、もっとわかりやすく、強い!悪党!って感じになってくれない?

ふふん、なーんてねー。うまいこと冷静さを失くしてくれたら、戦う前から勝ったも同然でしょ?
…とか思ってたら、何よこれ!ヤギ!?あたしはエサじゃないわよ!
ヤギなら食べるのは紙でしょ!そこの本の山でも食ってなさいよ!

そういえば…ええい、使うの初めてだけど!冬の初音!
ふふん、あんたが召喚するなら、あたしも召喚よ!目には目をってやつね!
ところで、あんた(春告鳥)って…どうやって戦うの?
えっ、氷のブレス?案外えげつない攻撃するわね…


アウレリア・ウィスタリア
自業自得というやつです
アナタは自ら破滅を引き寄せた
ボクたち猟兵を呼び寄せたんです

【蒼く凍てつく復讐の火焔】を発動
子やぎは凍てつく炎で焼き尽くす
遺跡内を駆け抜け、宙を舞い
炎を宿した拷問具の鞭剣で斬りつける

こんな言い方は悪人のようですが
暴れだしたりしなければ、こんなにはやくやられることはなかったのに
アナタの思い上がりが招いた結果、しっかりとその身に受け止めなさい

斬りつけた傷口に炎が触れていれば
そこから絶対零度の炎によって氷付けにして足止めもしましょう
足止めができれば総攻撃のチャンスです
一気に攻め落としましょう

アドリブ歓迎



●燃え盛るは氷の吐息
 相対した少女の目が、どう見ても赤い。
「ちょっと……なんか、目赤くない? 大丈夫?」
 覗き込むように少女の周りを飛ぶポケッティ・パフカニアン(宝石喰い・f00314)の言に、シャルロットは何も返さず、じっとりとポケッティを睨みつけた。
「別に、だからって手加減とかする気は無いんだけど……」
 これではどうにもこちらがいじめたみたいで後味が悪い。攻め込んできたのは向こうだっていうのに。
「どーせ敵なら、もっとわかりやすく、強い! 悪党! って感じになってくれない?」
 肩を竦めながら目の前でそう提案した妖精に、シャルロットは何も言わずに辞典を開き、ポケッティをその中に挟み込まんと勢いよく辞典を閉じた。
 溢れんばかりの殺気に慌てて上に飛び上がって避けていなければ、今頃小さな身体は辞典の栞になっていたかもしれない。危機一髪で逃げ出して距離を取ったポケッティに、シャルロットが地団駄を踏む。
「うるさいうるさい! 迷宮の奥まで侵入してくる人さえいなければ、こんなことせずに静かに本を守ってるだけだったんだのよ! 悪党らしくなくて悪かったわね! 攻めたくて攻めたわけじゃないんだから当たり前でしょ! 私にしてみればそっちの方がよっぽど悪党よ!」
 我を忘れて叫ぶ少女の大音声に思わず耳を塞ぐも、これもポケッティの作戦通りだ。
 こうして挑発に乗って冷静さを無くしてくれたなら、戦いも有利に運ぶというもの。

 隙をついて攻撃に転じようと様子を伺うポケッティの前で、叫びきって肩で息をする少女が、二度、大きくその手を打ち鳴らす。
 次の瞬間、何事かと身構えたポケッティの前に現れたのは――山羊の群れ。
 先程倒れた少女の相棒よりは一回り小さいものの、山羊が空中からぽんぽんぽんぽん、際限なく現れては、餌を見つけたとばかりにポケッティに飛びかかってくる。
「何よこれ! あたしはエサじゃないわよ! 山羊なら食べるのは紙でしょ! あいつの本でも食ってなさいよ!」
 ひらひらと襲い来る山羊の口を躱しながらシャルロットを指差すも、山羊たちが聞き入れる訳もなく。
 めええ、と一声鳴いて襲い来るその群れに青ざめたポケッティは、咄嗟に先程のシャルロットを思い出し手を打った。
「目には目を、あんたが召喚するなら、あたしも召喚を! ……使うの初めてだけど!」
 妖精の喚び声に応え、訝しげに伺うようなシャルロットの視線を遮りながら、飛来したのは一匹の春告鳥。その背にふわりと跨ると、ポケッティは山羊の群れを掻い潜って飛ぶ。

 その妖精と春告鳥を追う山羊の群れに、突如飛来する、蒼の炎。
 避けきれず、その胴に炎を受けた山羊の身体は、めえ、と鳴く間もなく、さながら炎が燃え上がるように氷に包まれ、その場で氷像と化す。
「自業自得というやつです」
 冷ややかに山羊の群れの奥の少女に言い放ったのは、アウレリア・ウィスタリア(瑠璃蝶々・f00068)だ。
「先程から聞いていればアナタはこちらのせいだとばかり言いますが、アナタは自ら破滅を引き寄せたんです。アナタが暴れだしたりしなければ、ボクたち猟兵を呼び寄せることもなかった」
 歯噛みするシャルロットへと駆けるアウレリアの前と、山羊の群れが押し寄せその道を塞ぎにかかる。
 それら全てを屠るように、アウレリアは鞭剣「ソード・グレイプニル」を手に、舞うように旋回する。
 鞭剣が裂いた傷には次々とそれが纏っていた炎が灯り、灯った炎は瞬く間に燃え広がって、山羊の氷像を増やしていく。
 宙から飛来した次の群れが襲い来ても同じこと。鮮やかな鞭捌きを見せるアウレリアの周囲に氷像の群れが作り出される。
「アナタの思い上がりが招いた結果、しっかりとその身に受け止めなさい」
 大半が氷像と化した山羊の背を足場に、アウレリアが軽やかに宙を舞う。琥珀色の瞳とシャルロットの空色の瞳が瞬時交錯し、アウレリアは少女の身体を打ち据えるべく鞭剣を振り上げ、シャルロットは目を瞑ると再び手を二度打ち鳴らした。
 アウレリアの鞭剣がシャルロットに届くかと思われたその時、二人の間へと新たなる山羊の群れが駆け込み、鞭の軌道が山羊の群れに飲み込まれていく。
「――これは、先にこちらに対処した方がよさそうです」
 鞭剣を手元に引き寄せながら着地したアウレリアは、主を襲われ怒り狂ったように向かい来る山羊の群れの足を掬うように、身を低く低く保ち一息に鞭剣を横薙ぎに振るった。
 次々と足元を掬われ倒れる山羊の身体が、その傷から燃え広がる氷に包まれていく。ほんの小さな傷でも逃しはせず、足だけでも地に縫い留めんと、傷に灯った炎がその足を氷漬けにする。
「これはもしかしてチャンスってやつ?」
 不敵な声と共に、山羊の群れを翻弄するように飛んでいた春告鳥とポケッティがアウレリアの元へと舞い降りた。
「はい、一気に攻め落としましょう」
 首肯したアウレリアが鞭剣を再び襲い来る群れへと向ければ、その背を守るように「いけー!」と令を出すポケッティに応え、春告鳥が氷の吐息で藻掻く山羊の上半身を氷像へと変えていく。
「初めて喚んだけど、あんた案外えげつない攻撃するわね……」
 その様子を見たポケッティの呆然とした声に思わず吹き出しながらも容赦なく振るわれるアウレリアの鞭剣と春告鳥の氷の吐息により、山羊の数は見る間に減っていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リチア・スィール
平賀(f11925)と続けて一緒に

「泥はだいじょーぶ?終わったら洗濯でもなんでも手伝うから言ってね!」
と、その前にまずは依頼を片付けなきゃね!

ボス相対したら銃を用意
ごめんね、このまま行かせたら学園のみんなが大変だからさ
もともとボスならちょーどいいし、勝負しようぜ、勝負!
行くぜ平賀、アイツを倒しに!

【クイックドロウ】で王子様を打ち抜く
遅い、遅いぜー!そんな遅さじゃその身体、全部打ち抜いちゃうぜ!
基本は後ろに陣取りながら平賀のサポート。
ヤギや王子様で数が多くなると思うから【第六感】で平賀に危なそうな攻撃が来たら伝える

倒せたらお茶会待ってるし、サクっとやっちゃおうぜー!


平賀・廣葉
リチア・スィール(f09595)さんと同行

「え、いや……洗濯はちょっと……」
自分で、やります

●戦闘
「はい、お任せ下さい。支援致します」
巫覡載霊の舞で行きましょう
寿命を削るなど、気にすることではありません
戦いとはそういうものです

後ろのリチアさんの方へは一匹も抜かせませんよ
防御力を活かして身体を張ってガード
離れて迂回する相手がいるならナギナタからの衝撃波で落とします
ヤギは可愛いですが、容赦無しです



●未来の英雄と羅刹の姫君~2nd Attack~
「平賀、泥はだいじょーぶ?終わったら洗濯でもなんでも手伝うから言ってね!」
「え、いや……洗濯はちょっと……」
 気遣うリチア・スィール(無限に描く航海図・f09595)の気持ちだけ受け取り、それは自分でやります、と丁寧に固辞する平賀・廣葉(亡国の羅刹姫・f11925)は、初仕事に緊張していた先程までと比べ、幾分か平時の表情を取り戻していた。

 けれど、それもシャルロットと、シャルロットを守るように阻む山羊の群れと対峙するまで。

 ポケッティとアウレリアの手により大半の山羊は氷像と化していたが、山羊の群れはとどまることを知らず、宙から主を守るべく次々と飛び出してくる。
 容姿は少女とは言え、シャルロットはこの迷宮の一階層の支配者だ。これだけの数を召喚するためにはかなりの力を必要とするであろうが、それでもそれは未だ尽きないらしい。
 だがそれだって、いつかは終わりが来るはず。そしてそれは間違いなく猟兵にとって好機のはずだ。

「行くぜ平賀、アイツを倒しに!」
「はい、お任せ下さい。支援致します」
 告げた廣葉が美しく舞えば、その姿が、纏う空気が変貌していく。
 再び神霊体となった彼女は、速やかに向かい来る山羊の群れを押し止めるべく飛び出した。
 それを見てとったリチアは、手元の銃をくるりと回しシャルロットへとその銃口を突きつける。
「ごめんね、このまま行かせたら学園のみんなが大変だからさ。オレと勝負しようぜ、勝負!」
「やれるものならやってみなさいよ!」
 リチアが一秒以下、コンマ秒数の速度で熱線をシャルロットに向け放つが、それにすらも山羊はついてくる。熱線に割り込み主への攻撃を身体を張って遮るとその身体を塵と散らせて消えていくが、瞬刻後には新たな山羊がリチアに向かって襲いかかろうと猛進する。
「一筋縄ではいかないか。まずはアイツを狙いやすくなるように、山羊をやっつけちゃおう!」
 首肯を返した廣葉は、リチアの元へと向かう山羊の群れに真っ直ぐ突っ込んだ。
 その華奢な身体に山羊が次々と激突していくが、神霊体となったことで守護の力を高めた廣葉にとって、それは耐えきれない衝撃ではない。
 ただ、一人で防ぐにはあまりに山羊の数が多い。
 押し止める廣葉の脇をすり抜けるように山羊が溢れ、熱線銃で廣葉が抑え込んでいる山羊を焼き払っていたリチアへと、その影が迫っていく。
「させません!」
 凛とした気合の一声。山羊を抑え込んでいた手を一瞬振り払うと素早く薙刀を構え、踏み込んで一閃。
 薙刀が纏っていた衝撃の波が、廣葉が放つ斬撃と共に彼女とリチアを結ぶ直線上へと襲いかかり、山羊を吹き飛ばし、壁へ床へと叩きつけていく。
 この姿が寿命を削るその事実すら、今の廣葉は気にもかけない。
 どれだけ山羊が可愛くとも、容赦はしない。
 戦いとはそういうものと心得てきりりと唇を引き結び、今度は反対側から迫っていた山羊の群れへと、大きく払うように薙刀を振り抜いた。放たれる衝撃の波は猛然と向かっていた山羊の群れを吹き飛ばすだけでなく、あちらこちらで氷像と化していた山羊達をも、巻き込み飲んで塵と成す。
 猛然と向かい来る山羊を払い飛ばしていく廣葉を支えるように、リチアも負けじと熱線銃の速射を繰り返す。
「遅い、遅いぜー! そんな遅さじゃその身体、全部打ち抜いちゃうぜ!」
 彼女に最も害をなす山羊に狙いを定め、速やかにその熱線の餌食とすれば、残りの山羊は廣葉が斬り飛ばし、払い飛ばして。気づけば二人で多くの山羊を屠り、気づけば――溢れるように現れる増援の山羊の勢いは随分と衰えて、全体の数がかなり減っている。
 変化に気づいたリチアが、熱線銃で新たな山羊を穿ちシャルロットへと視線を遣れば、ぜえぜえと肩で息をし、床に膝をついている姿が目に写り。
「平賀、もう少しだ! アイツだいぶ弱ってる!」
「はい!」
 その声に、手に馴染んだ薙刀をぐっと握り直した廣葉が、これまで以上に大きく薙刀を振りかぶり、三百六十度、見える範囲を力強く一掃する。
 斬撃の後、その軌跡の全てを追いかけるように飲み込む衝撃の大波が山羊達へと襲いかかった。山羊達は廣葉を中心とした円状に吹き飛ぶと、その身体を壁や遮蔽に叩きつけられ物言わぬ躯となり、塵となっていく。
 残るはその波に飲まれなかった数匹のみ。増援は遂に断たれ、新たな山羊が来る様子はない。

 今が、好機。

 今度こそ射線にシャルロットを捉え、撃ち抜こうとしたリチアはしかし、流れる空気の変化に息を飲む。
「平賀、避けて!」
「え」
 じりじりと体力を削られゆく中大きな一撃を放ったことで、薙刀に寄りかかるようにして立っていた廣葉の背後に迫る、巨大な馬に乗った男の影。
 彼女に向かって振りかぶられる、大剣。
 それが振り下ろされる直前、即座に標的を捉え直したリチアの熱線銃が、男の手を焼き焦がしてその一撃を妨げる。

「助けてよ、王子様」
 熱線銃の速射で男の足を止めながら、転がるように男から離れた廣葉を救わんと駆け寄ったリチアはその囁き声に顔を上げると――確かにシャルロットが微笑んだのを、見た。
 
「全部全部、やっつけちゃって」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ユア・アラマート
…さて、彼女が過去でなかった頃にどんな振る舞いをしていたかはわからないが、今こうして人に害を成すというなら、やるべき事は限られる
大人しくしていれば、というのも無理な話だろうな
さ、お休みの時間だ。せめて盛大にぐずってくれて構わないよ

基本戦術はヒットアンドアウェイ
花片で召喚した薄刃の花吹雪で敵を覆い、攻撃をすると同時に視界から自分の姿を隠し
その間に「暗殺」「ダッシュ」を用いて死角から一気に接近
ダガーでの一撃を加えてその場から即時離脱
敵の意識をこちらに引き寄せながら、後続に続く他の猟兵達のアシストを行う

自分で出した花弁に自分で突っ込むことになるが、こればっかりは仕方ない
多少痛いくらいが性に合ってるよ


壥・灰色
壊鍵、『撃殺式』
起動

悪いが――
退く気が無いのなら、ここで死んで貰う

会話は通じそうだけど、積極的に説得をする気はないな
魔法学園にはうまい店やいい温泉があるんだ。壊されると困る

脚に「衝撃」を装填
破裂させながらステップ
攻撃に当たるまいと、小刻みに動きながらチャンスを見て接近
『撃殺式』を右腕に集中
連射は効かないが、当たりさえすれば戦艦用レールガンを上回る威力で対象を粉砕する

王子様や子ヤギは左手のジャブの連射であしらう
狙いは本体、シャルロットだ

――金輪際地表へ出ず、地下奥で隠棲するのなら、その一撃を彼女に叩きつけるのはやめてもいいが、期待薄だな
そのまま粉砕するか、王子を粉砕するか
彼女次第で決めるとしよう



●吹き荒れる衝撃に、花弁は舞う
「大人しくしていれば、というのもこうなっては無理な話だろうな」
「そうだろうね。会話は通じそうな相手ではあったけど」

 「王子」と呼んだ騎兵を侍らし、肩で息をしながらもこちらを睨み据える眼光は衰えることがない桃の髪の少女を、並び立ったユア・アラマート(セルフケージ・f00261)と壥・灰色(ゴーストノート・f00067)はそう検分した。
 魔法学園にある美味しい店やいい温泉を壊されては困るし、今こうして人に害を成すというなら、やるべき事は限られる。
「ユア、行ける?」
「誰に訊いてるんだ――勿論」
 視線だけでその先の結論を交わした二人は軽口を叩くと、即座に散開する。

「お休みの時間だ。せめて盛大にぐずってくれて構わないよ」
 艶やかな笑みを浮かべたユアの細い指先が、その肢体に刻み込まれた神象術式回路を辿るようになぞった。
 回路を巡る魔の奔流。その性能を存分に引き出した彼女の手から、薄刃の花吹雪が吹き荒れ、たちまちにシャルロットと王子を包み込む。
「! どこへ」
 その視界を刃の花弁に遮られ、周囲へと素早く視線を走らせたシャルロットを制するように、王子が彼女へと飛来する刃吹雪を打ち払う。
 その背に迫る、銀の花吹雪に溶け込んだ、銀の影。
 命脈を絶つために調整されてきた、鮮やかな牙であり一振りのダガー「咲姫」で、まず王子が騎乗する馬の脚を一閃。その一撃だけで馬の腱を的確に裂くと、嘶き倒れ込んだ馬から王子を引きずり落とす。
「そこっ」
 鮮やかな一撃に息を飲んだシャルロットが反撃の辞典を振りかぶるが、重量がある分振りかぶるのに時を要するその一撃では、ユアの影は捉えようもない。そうしている間にユアの姿は再び花吹雪に紛れ、ユアの肌を削った薄刃についた血だけが、彼女がその中に潜むことを知らせる。
 だが、その程度で怯む彼女ではない。多少痛いぐらいが性に合う、と彼女は何度でも花吹雪へと身を潜ませる。
 王子の脚の腱を、次いで王子の鎧の隙間を。都度一寸のぶれもなく的確に繰り出される一撃が、少女と王子を追い詰め、二人の視線と注意を銀の影へと釘付けにしていく。

「壊鍵、『撃殺式』」
 ――起動。
 その間に両の脚に「衝撃」を装填した灰色は、細かにそれを操り時に破裂させながら、蒼の火花を散らし、床石を抉り、襲い来る山羊の突撃を最低限の動きで躱し、捌いていく。
 左手一本で重ねた打撃で山羊を壁際へと吹き飛ばし、床へと叩きつけ、角を掴んで後続の山羊ごと投げ飛ばす。後を追って現れることが無くなった山羊達は、灰色があしらうように振るうその左手により、次々と塵に還されその姿を減らしていく。
 灰色は、一切右手を使いはしなかった。
 眼前へ迫る山羊を左手で迎撃する今も、灰色の魔術回路には魔の力が滞ることなく循環し、増幅して――その右手へと、集積し続けているからだ。
 その力を使うことができるのは、一度きり。
 一度きりの「撃殺式」。
 当たりさえすれば戦艦用レールガンを上回る威力で対象を粉砕するそれを誰に叩きつけるかなど、決まりきった話であった。

 花吹雪の中で繰り出された、膝裏への一撃。
 遂に鎧のありとあらゆる隙をついた斬撃により地に膝をついた王子を見たユアは、速やかに床を蹴り花吹雪の中から飛び出すと、灰色へと視線を遣った。
 二人の間に、返事などは無用だ。共に駆け抜けた幾多の戦場が、そんなものの必要性をとうの昔に無くさせていた。

「――金輪際地表へ出ず、地下奥で隠棲するのなら、叩きつけるのはやめてもいいが」
 吹雪く刃の向こうから届く男の声。視界を遮られ、どこからの声かも捉えられないまま、シャルロットはびくりと肩を揺らし、隈なく視線を走らせる。
「どうする?」
 向けられた問い。それは彼女が元より望んでいたことだ。誰も攻めてこないのなら、そんな危険を感じることがなかったのなら、ずっとそうしていたかった。

 けれど。

「私が隠れていたって、いつかまたあなた達みたいな人がやって来るかもしれないじゃない! だからここまで出てきたのよ! そのためにこんなにも沢山なくして……今更一人、帰ったりなんてできない! しない!」
「……そう」
 彼女の叫びに対し、灰色が告げた返答は、吐息のように短かった。その右手の最適化は、既に終えている。
「それなら悪いが――」
 脚に込められた衝撃が、今一度床を抉りその跡を残し、灰色の身体を舞い上がらせた。
 同図にユアの掌へと収束していく花弁の吹雪。
「ここで死んで貰う」
 勢いを弱めた花吹雪を喰い破るように、灰色の拳が少女へと迫る。
 その瞬間、灰の瞳は確かに少女の前へと倒れるように割り込んだ鎧の姿を見た。
 それならば、構わない。共に眠ってしまえばいい。
 激突、轟音。
 全てを粉砕するためのその一度きりの拳が、少女を庇った王子の鎧ごとその腹を貫通し、王子を一瞬で塵に還し。
 少女へと向かった有り余る一撃は、少女の身体を壁まで吹き飛ばすと、壁一面に罅を入れ、そのすさまじいまでの衝撃の跡を残した。

 ぐらり、少女の身体が崩れ落ち、床へと落ちる。
 灰の緑の瞳は、ただ静かにその姿を見下ろした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



 その姿を見た全ての者は思った。
 流石に、命果てたであろう。これで終わりだ、と。
 踵を返し地上へと向かう猟兵たちの背に、ごぽり、と何かが零れるような咳の音が呼びかける。
 
 まだ、と。
 まだ、終わりではない、と。
ルフトゥ・カメリア
はッ、被害者ヅラしてんじゃねぇよ。自分から攻め込んで来たんじゃねぇか。
どの道、オブリビオンは敵だ。過去の亡霊だ。死に怯える前からテメェは終わってんだよ。
亡霊は亡霊らしく、永遠に夢でも見てるんだな。

子ヤギも王子も関係ねぇよ、叩っ斬る。鋼?溶かせそんなもん。辞書なんざ紙だ。
こちとら、炎は体内に常備なんでな。

傷口から漏れでる地獄の炎をバスターソードに伝わせ、【鎧砕き】【怪力】【2回攻撃】【フェイント】【だまし討ち】。

念の為に子ヤギや王子の奇襲も警戒し、周囲に他者がいた場合込みで【第六感】【カウンター】【武器受け】【かばう】【オーラ防御】。



●追想終焉
 血を零し咳をした少女が立ち上がる姿に、一人の猟兵が歩み出る。
 ルフトゥ・カメリア(Cry for the moon.・f12649)だ。

 まさに奇跡。彼女が喚び出した王子が執念で繋いだと言っても過言ではない程に、ひゅう、と今にも途切れそうな息を漏らすシャルロットの、それでも鋭さを失わない眼光に、ルフトゥは吐き捨てるように嗤う。
「はッ、さっきから被害者ヅラしてくれてるけどよ、んな顔してんじゃねぇよ。自分から攻め込んで来たんじゃねぇか」
 一歩、距離を詰め。両の手首の古傷を引っ掻き捌き。
 更に一歩、距離を詰め。溢れ滴る獄の焔――瑠璃唐草色の地獄の炎を、十字架を模した幅広の刃へと伝わせ。

「どの道、テメェらオブリビオンは敵だ。過去の亡霊だ。死に怯える前から、とっくの昔にテメェは終わってんだよ」
「……うるさい。なんとでも、言いなさいよ」
 語るだけの力もなく、ただ、口から流れる血と共に零れ落とすように言葉を落としたシャルロットへと鼻を鳴らしたルフトゥは、そうだな、と小さく返し。
 今や見るも無残にあちらこちらが砕けた床を蹴ると、シャルロットへと一直線に向かう。
 一方のシャルロットも、最後に渾身の力を振り絞るかのように、両の脚で地面を踏みしめた。
 もう、辞典を振り回すだけの力はない。山羊を喚ぶだけの魔力も残されていなければ、頼みの綱であった王子の姿もない。
 最後に一矢報いんとする、ただその一撃のためだけに、血を吐き散らしながらもその華奢な身体で辞典を持ち上げ、震える腕で頭上へと掲げ持つ。

 だがその一撃すらも、ルフトゥにとって阻害になりはしない。
 元よりルフトゥの身の内に流れ、その身から溢れるは地獄の炎。
 角が鋼の辞典? そんなものは溶かせ。溶かしちまえば、残った部分なんざただの紙切れだ。
 燃やして燃やして、灰にすればいい。

 シャルロットを燃え盛る焔纏った剣の射程へと収めたルフトゥは、彼女が彼の頭上へ当てんと振り下ろした辞典をバックステップで軽やかに避けると、避けた分の一歩を踏み込み、大上段から真っ直ぐに、その頭の先から爪先まで叩き切った。
 炎がその斬撃を辿るように駆け抜け、じわり、じわりと燃え広がると、シャルロットの躯を少しずつ灰に、塵に変えていく。

「亡霊は亡霊らしく、永遠に夢でも見てるんだな」
 灰と塵の舞う中、ルフトゥは背を向け、地上に続く道へと一歩踏み出す。
 最後に彼女が持っていた辞典が瑠璃唐草色に飲まれ消えると、跡には何も、残らなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『お茶のひと時』

POW   :    ケーキと紅茶を楽しむ。

SPD   :    ケーキ以外のお菓子と飲み物を。

WIZ   :    お持ち帰りのお菓子をお買い求め。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●魔法学園・甘味と紅茶香る広間にて
 地上へと戻ってきた猟兵達を、学園の生徒達の喝采の声が迎える。
 向かい来る脅威は一先ず去り、どうぞ疲れを癒して欲しい、と誘う生徒達についていけば、広間にはケーキや焼き菓子、それに沢山の種類の紅茶が用意されていた。

 一番人気は生徒達イチオシの季節のフルーツを使ったタルトだそう。
 それ以外にも様々なケーキが並んでいる。ゆっくりと好きなものを選ぶのも楽しそうだ。
 焼き菓子は土産にも持ち帰れるようで、菓子の近くには小さな紙袋と簡単なラッピングキットが置かれていた。

 迷宮を駆け回った疲れを癒すべく、猟兵達はめいめいに気を引かれる方へと足を向ける。
平賀・廣葉
リチア・スィール(f09595)さんと同行

「まずは、お疲れ様です。ありがとうございました」
とご挨拶
いるもの、ですか……
「すいません、まだあまりこちらに詳しくなく……おススメがありましたら、お願いいたします」
と、イチゴケーキがとてもおススメなのですね、楽しみです

「お姉様がいらっしゃるのですね、いつか、お会いしたいですね」
きっと優しい方なのでしょう
ちょっと、失われた家族を想いますが、今はお祝い、相応しくないと振り払います
無事に戦えました、と心の中で報告だけ

「私も、自信をつけさせて頂きました。微力ながら力添え致しますので呼んで下さいね」
と返事。また、ともに戦いましょう


リチア・スィール
平賀(f11925)と祝勝に!

終わったねー!ケーキケーキ、平賀いるものある?取ってくるぜー!
おすすめ、まっかせてー!タルトにいちごのケーキにいちごのケーキにいちごのケーキにいちごのケーキ!
いちごばっかりって?へへ、好きなんだもん!

お茶ももってくるぜー!
前で頑張ってくれたからさ、この分くらいはさせてよ
平賀や一緒に戦ってくれたみんなのおかげで学園のみんな助けられたんだしさ!
ねーちゃんにもお土産持って帰らないとなー、っと

今日はほんとにありがとね、また今度どっかに遊びいこーぜ!
この銃がいるときはいつでも呼んでよね、っと!
銃を撃つ手の動きをしながらおつかれさま!ってしよう



●未来の英雄と羅刹の姫君~一時の休息~
 学園生達の喝采の声にほっと胸を撫で下ろした平賀・廣葉(亡国の羅刹姫・f11925)は、隣でその声に手を振って得意気に笑うリチア・スィール(無限に描く航海図・f09595)へと淑やかに頭を垂れる。
「まずは、お疲れ様です。ありがとうございました」
「終わったねー、こちらこそありがと! さ、祝勝のケーキ食べようぜ! 平賀いるものある?」
 いるもの。問われてしばし考え込んだ廣葉は広間に並んだ沢山のケーキを遠目に眺め、困ったように首をこてりと傾げた。
「すいません、まだあまりこちらに詳しくなく……おススメがありましたら、お願いいたします」
 その言葉に、リチアはどんと胸を叩いて大きく頷く。
「まっかせてー! やっぱり外せないのは季節のタルトでしょ、それからいちごのケーキにいちごのケーキにいちごのケーキ……」
 繰り返して指折り数えるリチアに、廣葉も思わずくすりと笑みを零した。
「いちごのケーキ、とてもおススメなのですね。楽しみです」
「へへ、オレが好きなんだ! そしたら平賀はあっちで待ってて、お茶ももってくるぜー!」
 言うが早いか、人々が集まるケーキの方へと皿を手に駆けていくリチアの背に礼を言って、廣葉はそわそわと広間の一角に用意されたテーブル席へと向かう。

「お待たせー!」
 程なくして廣葉の元へ戻ってきたリチアが手にした大きな皿には、色とりどりのケーキが並んでいた。
 薄く切られた林檎が花開くように飾られたタルト、真っ赤な苺が天辺に座するショートケーキ、苺がぎっしり敷き詰められたタルト、ピンクと白に分かれた層が美しい苺とヨーグルトのムースケーキ……と、どれも視線を釘付けにするような様々な種類のケーキに、廣葉の目がきらきら輝く。
「まあ、沢山ありがとうございます」
「前で頑張ってくれたからさ、この分くらいはさせてよ」
 二人分のティーカップに香り立つお茶を注いだリチアが屈託なく笑えば、二人の祝勝会の始まりだ。
 これが美味しい、こっちも、と二人で分け合って、リチアが選んだ全ての味を互いに楽しみながら、その甘さに眦を下げた廣葉は、ふと、彼の手元に置かれたリボンのかかった紙袋に目を留める。
「どなたかへのお土産ですか?」
「これ? そうそう、ねーちゃんへのお土産だよ! あっちで焼き菓子ラッピングしてくれるんだー」
 焼き菓子のコーナーでせっせと紙袋を可愛らしくラッピングしている生徒を指差すリチアに、いつかお姉様にお会いしてみたい、と微笑んだ廣葉の胸によぎるのは――あの日に失った家族のこと。
 けれど、楽しそうに話す広間の人々を、笑い合う学園生を、口を大きく開けて美味しそうにいちごのケーキを頬張るリチアを見て、想いをそっと振り払う。
(……無事に、戦えました)
 今は、その報告だけ心の中で囁いて。

 最後の一口は、二人同時だった。
 美味しかったと微笑む廣葉に、広間をゆったりと眺めていたリチアはにかりと笑みを向ける。
「今日はほんとにありがとね、平賀や一緒に戦ってくれたみんなのおかげで学園のみんな助けられたよ!」
 だからこの銃がいるときはいつでも呼んでよね、と愛用の熱線銃を撃つ真似をして銃口に息を吹きかければ、廣葉もしっかりと頷きを返して。
「私も、自信をつけさせて頂きました。微力ながら力添え致しますので、また呼んで下さいね」
「もちろん!」
 また、共に。
 笑顔と共にした約束の元に、二人分の笑い声が重なった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

芥辺・有
紅茶か。普段はあんまり飲まないんだけど。
折角だからご相伴に与らせてもらうとしようか。

……こう種類があるとどうしていいかわかんないな。
適当に生徒達にでも声をかけて紅茶や菓子なんかを選んでもらおうかな。
……たまには、こういう風に過ごすのも有りなのかもね。

気に入った紅茶があれば、どうだろう。持ち帰れる茶葉とかはあるのかな。聞いてみるよ。
ここじゃできないだろうけど、酒に合わせる飲み方もあるみたいだからね。



●休息の香り
 山と並んだ焼き菓子と紅茶を前に、芥辺・有(ストレイキャット・f00133)は小さく唸った。
 日頃から紅茶を嗜むわけではない。労いに、と誘う生徒たちの声に折角だから、と広間まで来てはみたものの、選びきれない程の焼き菓子と紅茶を前にして、どうしたらいいものかと途方に暮れていたのだ。
「……ちょっとそこの二人、悪いんだけど」
 そこに丁度通りがかった学園生二人を呼び止めれば、迷宮で先程まで戦っていた猟兵だとすぐに気づいた二人が、愛想よくそれに応じて振り返った。
「普段あんまり紅茶飲まないから、どれを選んでいいかわからなくて。紅茶と……それから、菓子も。幾つか選んでくれる?」
「私達でよければ。何がいいかな、お好みはありますか? 甘い香りや果物の香りとかもありますよ」
「お菓子は、季節的にチョコレートやココアを使った焼き菓子が人気ですね。これとか、あとはこれとか――」
 水を得た魚のようにあれやこれやと詳しく説明を始める二人に少々気圧されつつ、有は差し出された茶葉の香りを幾つか比べ、選んでもらった焼き菓子を味見していく。
(たまには、こういう風に過ごすのも有りなのかもしれない)
 普段は静かな場所を好む有だが、有のためにと紅茶と菓子を真剣に語る生徒達の話ぶりに悪い気はせず、勧められた中から気に入ったものを選ぶと、生徒達が嬉しそうにいそいそと用意を始めた。
「そういえば、この紅茶葉は持ち帰れるのかな。ここじゃできないだろうけど、酒に合わせる飲み方もあるみたいだから、試してみたいんだ」
「大丈夫ですよ、気に入っていただけて嬉しいです。お茶を飲まれている間にお土産用に包んでおきますね」
「よろしく頼むよ」
 ぺこりと一礼して駆けていった生徒と入れ違いに、紅茶と焼き菓子を載せたトレイを持った生徒が有の元へと戻ってくる。
 透き通ったティーカップから、ゆうらり、湯気とやわらかな休息の香りが立ち上った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

壥・灰色
ユア(f00261)に声を掛けられたので
甘いものは嫌いじゃないし、折角だからゆっくりしようか

チョコレートケーキを大量に皿の上に積み上げる
一口一つのペースで平らげながら、熱々の紅茶をグイグイと干す
ユアもいとも、細いのに気にしすぎだよ
もっと気軽に食べればいいのに

いとの好きなケーキか
いちごがたくさん乗ってればそれだけで気に入りそうな気がするけど
あのいちごカスタードタルトとかいいんじゃないか
ホールで持って帰ったら嬉しい悲鳴を上げそうだ
全部なんて持って帰ったら尚更だろうけど

荷物持ちくらいは務めるけど、その場合きみももう一回食べるんだからね
最低でも三分の一はさ

からかうようにいうと、ケーキをおかわりしにいく


ユア・アラマート
カイ(f00067)に声をかけて、一緒にお茶を
これはこれは、仕事の後にもらえるご褒美としては最上級だね

とりあえずおすすめだって言うタルトを貰おうかな?
うん、おいしい。これだけあると全種類制覇したくなるが
お前はいいな、そんなに食べても体重が変わった様子がない
女は色々と大変なんだよ

そうだ、カイ。イトの好きなケーキは分かるか?
どうせならケーキもお土産に包ませてもらおう。きっとこの話をしたら食べたがるだろうから
それじゃあ、このカスタードタルトをホールでお願いしよう
荷物持ちはよろしく

…お前だって、三分の一を食べるんじゃないか。まったく
帰りに紅茶を買っていこうかと声をかけながら、自分もおかわりを貰いにいく



●甘い土産は三人で
「これはこれは、仕事の後にもらえるご褒美としては最上級だね」
 広間にずらりと並んだ様々な甘い香りに、ユア・アラマート(セルフケージ・f00261)の瞳がきらりと輝いた。彼女に声を掛けられ共にやってきた壥・灰色(ゴーストノート・f00067)も小さく首肯を返す。
「甘いものは嫌いじゃないし、折角だからゆっくりしようか」

 そうしてそれぞれにケーキを載せた皿を手にして案内された席につくと、ユアはヨーグルトムースの上にネーブルオレンジやブラッドオレンジが色鮮やかに飾られたタルトをぱくり。
 爽やかな酸味とヨーグルトムースのほのかな甘味に頬を緩ませ、ユアは目の前の灰の少年にちらりと視線を向けた。
 ガトーショコラ、ブラウニー、オペラ、ザッハトルテ、ガラシュケーキ……と、皿の上に絶妙なバランスで積まれたチョコレートケーキ達が灰色の口の中へと次々一口で消えていき、その間にも隣に置かれたティーカップが満たされては空になりを繰り返している。
「……お前はいいな、そんなに食べても体重が変わった様子がない」
 少々呆れながらも手元のケーキを大事に味わって食べるユアに、灰色はきょとんとした視線を返す。
「ユアもいとも、細いのに気にしすぎだよ。もっと気軽に食べればいいのに」
「女は色々と大変なんだよ」
 おすすめだという季節のタルトだけでも、他にも数種類用意されていた。できるものなら全種類制覇したいのは山々だが、後々のことを考えるとそうもいかない。
「そうだ、カイ。イトの好きなケーキは分かるか?」
 ここにいたのならきっとそれに同意したであろう少女の顔を思い浮かべたユアは、灰色に尋ねる。だって彼女にこの話をしたら、「いいなー! 私も食べたかったー!」なんて頬をぷっくり膨らませるに違いないのだ。土産に持ち帰れるのなら、持ち帰ってやりたいところである。
「いちごがたくさん乗ってればそれだけで気に入りそうな気がするけど――」
 また一つチョコレートケーキを吸い込むように口に運んだ灰色はそう返すと振り返って、綺麗に飾られ皿に並べられたケーキへと目を遣った。そこにちょうど、ホールのケーキを運ぶ学園生達が通り掛かる。
「ああ、あれなんていいんじゃない?」
「どれ?」
 灰色が指差す先には、苺がぎっしりと敷き詰められたケーキを持った生徒がいる。切り分けている様子を見るに、どうやらタルト生地の上にカスタードクリームを重ね、その上に苺を並べたケーキのようだ。
「ホールで持って帰ったら嬉しい悲鳴を上げそうだ」
「それじゃあ、あのタルトをホールでお願いしてみよう」
 淡紫の瞳を煌めかせ満面の笑みを浮かべ、両手を挙げて子供のように喜ぶ少女――きっと同時に同じ姿を思い浮かべた二人の口から、どちらからともなく小さな笑い声が零れた。
「荷物持ちはよろしく、カイ」
 最後の一口を頬張りそう言うユアに、山とチョコレートケーキが積まれていた皿を綺麗に平らげた灰色が肩を竦めて立ち上がる。
「荷物持ちくらいは務めるけど、その場合きみももう一回食べるんだからね。最低でも三分の一はさ」
 さっきあれだけ気にしていたのに、とからかうように告げて皿を手にチョコレートケーキの並びへと向かっていく灰色に、今度はユアが肩を竦めた。
「……その場合はお前だって、三分の一を食べるんじゃないか。まったく」
 あれだけ食べてよくまだ食べれるな、と呆れ半分に呟きながら、銀の尾が灰色の背を追って立ち上がる。

 そうだ、帰りに紅茶も買っていこうか、なんて話す二人の皿には、それからまた何度か、色とりどりのケーキが並んだのだとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴォルフガング・ディーツェ
【WIZ】
【アドリブ歓迎】

…嗚呼、終わったんだね
後悔はしていない、命の遣り取りは残酷なもの
ただ、無為に忘れる必要もないだろう?

団員達へのお土産の焼き菓子を買い求めつつ、自分用に買ったものも味見を
…うん、美味しい。これならば

それとは別にもう一つ焼き菓子の包みを買っておこう

向かう場所は彼の迷宮、あの子がいた場所
もし無理なら見晴らしの良いところに簡単でも墓標を立てて
そっとお菓子を置いて、暫し彼女を想う

…叡智を語り継ぐ本は確かに大事だ。迷宮の奥に進ませない事だって
けれど、それはキミの命に比べたら些末な事だっただろうに

躰は地の苗床に、魂は輪廻の階へ
キミと友達の次の生が幸福であるよう、此処に祈りを捧げよう



●守り抜いた者への鎮魂歌
 ……嗚呼、終わったんだね。

「――あの、あの、お兄さん……? お口に合わなかったでしょうか」
 少々不安げに問うてきた学園生の少女の声に、賑やかな広間を見渡していたヴォルフガング・ディーツェ(咎狼・f09192)は我に返り、慌てて首を横に振った。
「いやごめん、そんなことない。この焼き菓子とても美味しいよ。今のこれと……それからそうだな、キミのお勧めをいくつか一緒に包んでくれる?」
「はい、喜んで!」
 焼き菓子を褒められた少女は花咲くように笑みを零すと、てきぱきと焼き菓子を紙袋へと包んでいく。
 そうしてヴォルフガングの腕の中に収められたのは、彼が過ごす屋敷へと集った者達への土産と、それに、もう一つ。

 こつり、こつり。床石に靴音が響く。
 先程まで猟兵達が駆け抜けていた迷宮は、一部の壁が崩壊していたり、罠が作動したままになっていたりで危険だから、と封鎖されてはいたが、猟兵であることを告げれば、封鎖の番をしていた学園生は、何も言わずにその中へと通してくれた。
 こつり、こつり。靴音を鳴らして辿り着いたのは、最後に『あの子』が立っていた場所。
 戦闘の痕もそのままに乱れきったその場所へと、ヴォルフガングは手にしていた焼き菓子の包みの一つをそっと置く。
 見た目は、先程菓子を包んでくれた生徒程であっただろうか。
 力量に比べ幼く見えたそれに反するように最後まで強く意志が宿っていたあの空色の瞳は、彼女が背負っていた使命が故だったのだろう。
(……叡智を語り継ぐ本は確かに大事だ。迷宮の奥に進ませない事だって)
 けれど。
(それは、キミの命に比べたら些末な事だっただろうに)
 己の行動を後悔はしていない、命の遣り取りは残酷なもの。
 ただ、無為に忘れる必要もないだろう?

 消えていった躰は地の苗床に、魂は輪廻の階へ。
 次は、次の生はきっと、幸福であるように。瞳を閉じたヴォルフガングは、静かに祈りを捧げる。

 どこか遠く、少女と山羊が戯れる声が、聞こえた気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月10日


挿絵イラスト