帝竜戦役②〜小さきもの~
●
アックス&ウィザーズの一角、群龍大陸。
その広大な大地に蘇生させられた幾つもの帝竜。
彼らを打倒するためにも、いち早い侵攻が求められるのだと前置いて、グリモア猟兵は手にしたメモをちらりと見ては一度閉じた。
「わりと馴染みのあるやつも居るかも知んねーけど、先ずは『皆殺しの平野』を抜けなきゃなんねーんだわ」
それはオブリビオンをドラゴン化する魔力を帯びた風が吹く荒野。
ドラゴン化した敵群はみな『ドラゴンの翼・うろこ・角』を生やし、空から襲いかかってくる『ドラゴン』となるのだ。
それはオブリビオンであるなら等しく齎される効果であり、その力や、ましてやサイズなどは関係ない。
「今回ドラゴン化してあんたらを足止めしようとしてるのはこれくらいのフェアリーの群れだ」
両手で作った15センチ程度の幅。大きくても20センチ程度となる妖精達も、漏れなくドラゴン化の恩恵を受けている存在だ。
そのうろこは小さな体躯を多い、頑丈にしていることだろう。
ふわりと舞うような蝶々の羽と同時に生えた蝙蝠のような翼は緩急のある移動を可能にしているだろう。
ただ全身で突撃するだけでも、頭部に生えた角を突き立てるようにすれば、あるいみナイフのような攻撃となるだろう。
「ドラゴン化だけでもまぁまぁ面倒だけど、それ以前にこいつらは『毒』と『鱗粉』を扱ってくる。効果は単純だよ」
浴びせる毒は命中率を重視して振りまかれ、酸のように外側を傷つける。
放出される毒は何処までも広がり人体の隙間から入り込んでは内側を傷つける。
舞い散る鱗粉は、触れた妖精たちの傷を癒やす。
「毒はあんたらの不利に、鱗粉はあいつらの有利になるってところかね」
上手く立ち回ってくれと告げてから、改めてメモを開く。上から下まで目を通し、ちら、と猟兵達を見た。
ドラゴン化している影響で、この妖精達はひどく頑丈だ。けれど硬いうろこにも急所が存在する。そこを上手く突くことが出来れば、有利に戦うことが出来るだろう。
「急所は羽の付け根。翼の方じゃなくて、羽の方な。まぁ、サイズがサイズだからそこをピンポイントにってのも難しいかもだけど、意識して攻撃できりゃ、得なのは間違いねーよ」
ついでに、このドラゴン化したオブリビオンは竜胆石と呼ばれる美しい宝石を落とすのだそう。
その価格は世界の通貨にして金貨40枚。およそ40万円相当だと言う。
「まぁ、欲しいやつは適当に集めといたら良いと思う。何度も言うがサイズがサイズだから、多少一個あたりの値段が割安にはなるだろうけど」
そう言ったものを獲得するのも冒険者の嗜みというやつだろうと頷いて。
これは余談だけど、と閉じたメモをしまいながら、告げる。
「あいつらは、元々でかい生き物が嫌いだ。オブリビオンになる過程で、でかい奴らに余程嫌な目に遭わされた、被害者でもある。けどまぁ……いまは、加害者だからな」
大きな生き物を嫌悪して恨みつらみを吐き出し続けるばかりの彼らを、暫し黙らせてやると良いだろう。
頼まれてくれるかと、グリモア猟兵は猟兵達を見渡した。
里音
戦争です。張り切ってまいりましょう。
今回のシナリオでは空中からの攻撃に対処し、硬いうろこに覆われた「急所」を攻撃することでプレイングボーナスを得られます。
敵は小さな龍の群れ。急所は易々とは攻撃しにくいでしょうが、狙ってみてください。
小さな彼らは大きな方々が大嫌いですが、同族に友好的というわけでもありません。
ドラゴン化の影響もあり、とても好戦的でしょう。
妖精そのものの攻撃に加え、空中移動の精度が若干上がり、毒以外にも角で突く攻撃を可能としておりますのでご注意を。
皆様のプレイングお待ちしております。
第1章 集団戦
『病をばらまく妖精』
|
POW : あなたをむしばむ毒
【毒液】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : あなたをこわす香
【甘い毒の芳香】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : わたしたちをいやす薬
【鱗粉】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
イラスト:エル
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
泉・星流
結構敵も多いうえに…相手は固いと来たか…
空を舞う妖精達を見ながら呟く…
初手はあえて普通の魔力弾を放って様子見&相手の油断を誘う(あえて食らうものもいるだろう)
じゃあ…今度はどうかな?
指定UCを使用…妖精達を粘着弾で捕縛して撃ち落とし…身動き出来なくなったところで…
【全力魔法・範囲攻撃・制圧射撃・乱れ撃ち・捕縛】
少々気はひけるんだけどね…(見た目の容姿に加え…拘束魔力弾のより身動きできない)
弱点の羽根の付け根を武器『BBR』攻撃
指定UCを使用後、全弾を攻撃に使わずに幾つかは自分の周囲を旋回させて、角での突撃に対応させる【拠点防御】
また毒液を浴びせかけてきたら、【オーラ防御】で対応する
●
「結構敵も多いうえに…相手は固いと来たか……」
数も多くて硬い敵。なるほど、と呟いて、泉・星流(人間のマジックナイト・f11303)は小さく飛び回る彼らに銃口を向ける。
放つ弾は小手調べ。繰り返し放つ魔力の弾は威力も乏しく速度も狙いも特別何も考えては居ない。
「流石に当たらないか」
それならば、次は少し狙いをつけてみよう。非力な身体に頑強なうろこを得た彼らならば、もしかしたらあえて食らうものもいるかも知れない。
可能性を思案しつつも、さして期待はせずに。確かめるように放った弾は、やはりと言うべきか、蝶の羽と竜の翼が齎す緩急によってするりと回避されてしまう。
そうして躱しながら、突撃する隙を狙うような妖精達をぐるりと見渡し。星流はなるほどねと呟いた。
おおよその動き方は見られただろう。こちらの実力を過小に評価して油断してくれれば何よりだが……そもそも大きな生き物への『嫌悪』を持っている彼らは、人間の星流への警戒を決して解こうとはしない。
それならばそれで、構うことではないのだけれど。
「じゃあ……今度はどうかな?」
先程同様、狙いを定めて。込める魔力は少しばかり、特殊なもの。
「壊したり傷つけたりするばかりじゃ無い……こういうのも使えないと駄目だっていうのを教えてあげる」
放たれたのは、300を超える魔力弾。突然膨れ上がった物量に、妖精達は先程までの単調な射撃と異なる気配を感じるも、躱しきれずに被弾する。
「きゃっ……!?」
そうして、それは。小さな身体に命中すると同時に、強烈な粘着物質へと変化したではないか。
ベタつく液体に塗れ、二対の羽も上手く羽ばたけないようで、次々と地に落ちていく妖精達。
そんな仲間達を見て、キッ、と星流を睨み据えた一体が、荒野に吹き荒れる風の力で得た角を雄牛のごとく振りかざし、突撃してくる。
だが、それは星流には届かない。真っ直ぐに突っ込んでくるだけなら、なおのこと。
見越して残しておいた魔力弾が旋回しては捕らえて地に落としていく。
自身の足元近くでじたばたとしている小さな妖精を、見下ろして。ほんの少し気の引ける心地にはなるけれど、その背に向けて、銃口を突きつけた。
「この距離では、ずるいかな」
もっと遠くだって狙えるアサルトライフル『BroomBattleRifle』は、その威力で以て妖精の急所を貫き、そのまま吹き飛ばした。
――同時に、ちくりとした痛みが星流を襲う。
「っと……死角から来るとは、やるね」
精度の上がった飛行能力と小さな体。活かせば、星流の周囲を旋回するだけの魔力弾を掻い潜ることも、可能なようだ。
とは言え、掻い潜った末の攻撃には真っ直ぐに突進するほどの威力はなく、ほんのささやかな反抗程度のもの。
「気が引けている場合じゃないか」
見上げれば、まだ残っている妖精達が、自身の蝶々の羽を震わせて、鱗粉を振りまいている。
ただでさえ頑丈で数の多いな彼らが際限なく癒やされては、厄介なことになろう。
すぅ、と一つ深呼吸をして改めて気を引き締めて。星流はより多くの妖精達を捕え、落とすべく、再び拘束弾を展開させるのであった。
成功
🔵🔵🔴
パルピ・ペルポル
彼らの気持ちは理解できなくはないのだけれど。
でも敵となった以上はやりあうしかないわね。
まずは念動力で雨紡ぎの風糸を自らの周囲に張り巡らせておいて、敵の行動を阻兼盾として使用するわ。
そこからさらに蜘蛛の巣状に風糸を展開して、急襲されないように警戒しつつ進んで、敵に糸を絡めて切り裂いてあげるわ。
お互い小さいからまだ狙いやすいけど、偶然の不運なる遭遇を使って隙を作って羽の付け根を狙っていくわ。
回復する余裕は与えるつもりはないけれど、回復使用による疲労を蓄積させれば狙いやすくなるでしょうし。
翼も両方切り落としておけば回復されても復帰は難しいかしらね。
竜胆石は小さくてもきっちり頂いて帰るわよ。
●
小さな者達の前に、彼らと同じか、少しばかり大きいくらいの女が立つ。
――正確には、同じ目線を『飛んで』いるのだけれど。
パルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)は恨みがましい目をしている妖精達を見渡し、ほんの少しだけ眉を寄せ、肩をすくめた。
(彼らの気持ちは理解できなくはないのだけれど)
彼らと同じフェアリーであるパルピには、大きいものを恐れる気持ちが全く理解できないわけではない。
子供が大人をその大きさだけで恐れるのと同じようで、それよりもずっと命に直結する場合が多いのだから。
だが、理解が出来ようとも、敵対してしまった以上、看過する気もない。
やりあうしかないのだ。腹を決めて、パルピは蜘蛛の糸よりもずっと細い鋼の糸を伸ばす。
念動力で蠢くその糸は、素早くパルピの周囲に張り巡らされ、即席の盾となる。
さらに糸を広げて蜘蛛の巣状に伸ばしていくパルピの布陣が整う前にと、妖精の一体が突撃してきた。
だが、その糸は蜘蛛のそれとは異なる、鋼の紬糸。不用意に突っ込めばその勢いが加えられ、糸の切れ味は、増すというもの。
ざん、と。鋭利な刃物に刈り取られたように、角や翼を失って地に落ちていく妖精へ、さらに鋼糸を絡めて切り裂いたパペルは、挑むような目で妖精達を見渡す。
「さぁ、どっからでもかかってきなさい!」
その突進は効かないと言うように告げて一歩分進み出れば、ぐ、とかすかに身を引く素振り。
「こないのならこっちからいくわよ」
お互い小さいサイズなのだから、その背の急所を狙うのは難しくないのよと不敵に笑ってみせ、じりとさらに詰め寄るパルピ。
――ふと、何かに気がついたようなはっとした視線を一瞬だけ中空へと向ける。
「――あ」
そうして、まるで見つけた何かが向かってきているのだと言わんばかりの声を上げて、妖精達を見つめた。
その意味ありげな眼差しに、彼らが身構えるより早く。得体の知れない『何か』が、何処からともなく現れ、超高速で妖精達を跳ね飛ばしていったのだ。
それはパルピのユーベルコードが齎したもの。一瞬だけ見えたその姿は、竜そのもののようにも見えたけれど、それは確かめるまもなく、再び空へと消えていくのであった。
突然の強襲にあわを食ったのは妖精達ばかり。その隙を突くように、一気に距離を詰めたパルピは蝶の羽の付け根を素早く切り落としていく。
いち早く持ち直した一体が毒液の入った瓶をぎゅうと掻き抱いて、パルピの勢いに負けじと羽から鱗粉を飛ばし、仲間を癒やしていくが、パルピがそれを積極的に妨げることはない。
むしろ、鱗粉が届く前にとどめを刺すことで、ただ無為に疲労を蓄積させていくのだ。
「お生憎様。回復させる余裕をあげるつもりはないの」
ぜぇぜぇと息の上がった妖精へと肉薄して、きらきらとした鱗粉を撒き散らした羽と共に、自由に飛び交うその身を落とす。
その刹那に、悔しそうな顔と目が合って。ほんの少しだけ眉を下げて、苦笑した。
気がつけば小さな竜胆石が足元でキラキラと幾つも光っている。
群れを蹴散らしたパルピはふわりとそのきらめきの傍に降り立って、やや小ぶりな石を拾い上げた。
仕留めた命の数の分だけ、取りこぼすことなく、きっちりと。
大成功
🔵🔵🔵
ライラック・エアルオウルズ
弱く、儚く、小さなかたちを、
嘗て踏み躙られた身であるから
竜で覆う姿を幸いと思う、だろうが
――何処か歪で、痛ましく見えるな
然れど、嫌う者の感傷は不快かな
灯る燈籠を揺らし、影の友を喚ぶ
《全力魔法》で友に力添えて、
刃と炎が鱗を通す様に放って
角は《見切り》で回避しつつ、
刃で断ち《武器落とし》を試みる
鱗粉舞えば魔導書の詞唱え、
《属性攻撃:風》で塵と散らして
風に煽られ揺らぐ隙を突き、
友に羽の付け根を狙わせよう
妖精の部位を傷付けるのは、
追い打ちめいて胸も痛むけれど
苦しい過去も断つように
躊躇わずと、夜の刃で、終を
地に落ちた竜胆石を、ひとつ
陽透かす煌めきは毒瓶にも似て
ごめんね、の呟きは、弱く、儚く
●
例えば彼らが猟兵のように埒外の存在で、幾らかの攻撃では決して斃れることがなかったならば。
そんな例え話を叶えたかのようなドラゴン化。
頑丈になった。強くなった。嘗てのように踏み躙られることなんて、ちょっとやそっとじゃありはしない、だろう。
それを、妖精の彼らは幸いに思っているのかも知れない。飛び回る軽やかさは、そんな風に思えるけれど。
ライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)は微か、瞳を細める。
二対の羽は、繊細で、硬質で。竜の翼に追いつけない蝶々が、背中にしがみついているだけのようで。
(――何処か歪で、痛ましく見えるな)
けれど、ライラックが思案を馳せるのはほんのひと時。どう足掻いても『大きな生き物』でしかないライラックの感傷など、彼らにとっては不快だろう。
今はただ、対峙した者として、討ち果たすだけ。
手にした燈籠をゆらりと揺らせば、応じて、ライラックの足元に伸びる影も揺れる。
「夜が訪れ、貴方は訪ねる」
おいでと招くような優しい声で呼び寄せたのは影で具現化する友人。
再開を喜び合うように軽く触れて、彼の力になるようにと、全力魔法を捧げた。
その力添えに影の君がはしゃぐように揺れたのは、燈籠の揺らめきゆえか。
ともあれ宵色のナイフを閃かせ、カンテラの炎を迸らせる友人が鱗の隙間を縫うようにして攻撃を仕掛けていくのを見守る傍ら、ライラックは一歩足を引き、戦場を見渡す。
見えたのは、飛び回る妖精達を追う友人と、彼に立ち向かう妖精の姿。
――それから、傷を癒そうと羽根を震わせる妖精も。
「させないよ」
魔導書を開き、風を呼ぶ。一度はふわりと穏やかに、けれどすぐに、小さな体を巻き上げるほどの突風へ。
さらさらと細かな鱗粉諸共妖精達が風に煽られ揺らいだ所へ、ナイフと炎が蝶の羽を切り落とした。
竜の角に、鱗に、翼。唯一妖精だった部分を攻撃して無くしてしまうのは、小さき彼らへの追い打ちのようにも感じられて。
胸が傷まないわけでは、なかったけれど。
「……大丈夫、躊躇わないよ」
光の具合で影が揺らぐのは当たり前で、だからきっと、友人はそんな心配なんてしていないのだけれど。
己が言いたくて、言い聞かせたくて。
窺うような揺らめきに、応えるように呟いた。
一矢報いようと角を振りかざして突撃してくる妖精にも、自ら手にしたナイフをかざして角を叩き折ってやる。
苦しい過去も、全て断つことができるならと願いを込めて。
一太刀、また一太刀。刃と炎が戦場に閃く度に、小さな影が姿を消していく。
やがて吹きすさぶ風ばかりがやかましくなった頃、足元でパキリと音を立てたのは、彼らが落とした毒瓶か。
同時に、踏みつけても割れない感触を靴底に感じて、ぱ、と足元を見る。
荒野の砂に埋れてしまった宝石――竜胆石を、ライラックは丁寧に取り上げて、光に翳した。
陽を透かす煌めきに、眩しげに細めた瞳。
「――ごめんね」
弱く、儚く、簡単に潰えてしまう小さな呟き。
それと同じような彼らの声は、一つも聞こえなかった。
大成功
🔵🔵🔵
亜儀流野・珠
妖精か。
小さな奴の小さな弱点を狙うのは俺には難しそうだ。
弱点は狙わん方向で行くか!
思い切り殴れば衝撃は弱点含めた全身を砕く……
と思いたいな!
武器は木槌「砕」だ!
奴等が届かない高さに居るならジャンプを、
もっと高いなら貼った所から壁を生やせる「金璧符」を地面に貼り、壁の飛び出る勢いを使い空中へ飛び出す!
で、接近したら全力で殴り付け、距離を取る。
あとはひたすら接近、攻撃を繰り返す。
余り近くに留まると毒を食らうからな。
敵の数が多い、毒が充満してきた等で苦戦気味になったら
敵集団に飛び込み、奥義「大薙ぎ」だ!
敵も毒も鱗粉も纏めて吹き飛ばしてやる!
万一ダメージ入らなくても戦闘の手助けにはなるだろう!
●
亜儀流野・珠(狐の恩返し・f01686)は考えた。
相手は小さい。そして弱点たる急所はその小ささの内のごく一部で更に小さい。
狙うのは難しそうだ。ならば――。
「弱点は狙わん方向で行くか!」
ぺかっと天啓を受けたような明るい顔で一人頷く珠。
思い切り殴ればその衝撃が弱点を含めた全身を砕く……可能性だってあるだろう!
試してみねばわかるまい! うんうんとやはり一人頷いて、珠は巨大な木槌を構えた。
『砕』の名を持つ巨大な槌は、見た目に反して軽やかに振り回される。
大きな生き物の大きな武器に、嫌悪するような眼差しが向けられるけれど、ここは戦場。敵意や悪意は向けられて当然。
あえて全てを受け止めて、珠は素早く妖精達との距離を詰める。
大きく振るった一発目は空振りだった。ふむと呟き、二発目は気持ち深く踏み込んで。
「――ッ!」
いかな竜のうろこと言えど、全身を叩き潰してくるような攻撃を完全に防げるものではなく。
地面に叩きつけられれば、華奢な羽はぐしゃりと潰れてそのまま倒れ伏してしまう。
ああ、恐ろしい、怖ろしい。ひそひそと囁きあうような声と共に、妖精達は手にした毒瓶を開け放つ。
振りまくように飛び回れば、甘い甘い毒の香りが辺りに広がっていく、けれど。
「そうはさせん!」
届かぬ位置で毒を振りまく妖精へ、足元にぺたりと貼り付けた護符から飛び出た壁を蹴って中空へと躍り出た珠は木槌を振り下ろした。
びたん、と地面に落ちると共に、かしゃん、と硝子の割れる小さな音。
「それ、もう一体!」
手の届く距離にもう一体。叩き落される仲間達に短く息を呑んだ妖精は、珠へと浴びせるように毒をまく。
「喰らいなさい!」
甘い香りが、広がる。
それは液体のようにすぐさま傷を負うようなものではないけれど、思わず吸い込んだほんの僅かが、じくりと体内を蝕むのを感じた。
バッと口元を抑え大地に戻った珠は、既に幾つもの妖精が次々と瓶を開けて辺り一帯に香りを充満させようとしているのを見た。
「はは……それは、無差別だろう」
妖精同士で効かないわけでもないだろうに。あぁ、それほどまでに怖ろしいのかと、憐れむように瞳を細めて。
喉の奥に感じたような苦味を飲み下して、珠は再び足元に護符を貼る。
ぺたりと貼ったその場所から、せり上がった壁を、再び蹴って。躍り出たのは、充満する毒の香りのど真ん中。
「吹き飛べ!」
唱えた瞬間、巨大な木槌が更に巨大化する。
大きく振りかぶった木槌を、全身を使って振り抜けば、竜巻にも似た突風が吹き荒れて、吹き抜けて。
毒も、鱗粉も、小さな体も全部纏めて一緒くたに。
周囲の全てを、ことごとく吹き飛ばした。
ぎゅるりと大きく回転した身体を、器用に立て直して着地をした珠は、ふぅ、と息を吐く。
途端、ごほりと咳き込んだ口の中に、血の味に似た苦味。
「流石に食らうか」
吐き捨て、再び木槌を構えて珠は中空を振り仰ぐ。
こちらが毒に斃れるか、そちらが全て打ち落されるか。
さぁ、根比べといこうじゃないか!
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
「妖精が舞う野と言えば幻想的ではあるけど。
今回はそうも言ってられない様だね。」
妖精の接近に警戒し
生命を喰らう漆黒の息吹を発動。
花びらを自分の周囲に展開し妖精からの攻撃を防ぐと同時に
突進してきた妖精を花びらで捕らえ生命力を
花びらで喰らわせて弱体化させ。
弱ったところで羽の付け根の急所を花びらで狙う。
背後の守りを固められたり狙い難い時は
花びらを周囲に展開、守りを固めると同時に
狙い易い前面に花びらを集中
徹底的に弱らせて背後を狙えるようになるまでの持久戦を行い。
近くの妖精を観察し弱ったものから倒す。
「オブリビオンになるまでにあった事。
同情しない訳じゃないが、ここは戦場。
甘い事は言っていられないんでね。」
●
あちらこちらで戦端が開かれている最中でも、空を仰げば妖精が、飛んでいる。
舞うというような表現が似つかわしくない速度は、竜の翼が齎したものだろう。
「妖精が舞う野と言えば幻想的ではあるけど。今回はそうも言ってられない様だね」
言葉にすれば綺麗に思えるのに。現実はこれだ。
敵意むき出しで睨みつけてくる眼差しを受け流すようにフードを被り直し、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は手のひらを翳す。
「よく見ておけ。これが、お前の命を刈り取る手向けの花だ」
唱える声に呼応するように、ふわり、赤色の花弁が舞う。
それは一片一片と溢れるようにこぼれだしては中空へと漂って。瞬く間に、フォルクの周囲を赤で覆う。
幻想的で、美しい花弁の舞い。けれど妖精達が見惚れることはない。
警戒するように旋回し、あるいは距離を取り、やがて互いに顔を見合わせては、何体かがフォルクに向かって角を突き立てんと突進してくる。
鋭利なナイフのように鋭い角は、赤い赤い鳳仙花の花弁をも刺し貫き、そのままフォルクへ届くかと思われた、けれど。
「甘いな」
触れた、赤は。フォルクが告げたように、命を刈り取る手向けの花。
生命力を吸い上げるその花弁に纏わりつかれれば、突進の勢いは命諸共急速に奪われ、ひらりと簡単に躱せてしまう。
それでも負けじと挑もうとする妖精達だが、花弁は無数。弱りきった所で背中の羽を狙われれば、ひとたまりもないのだ。
と、花弁に囚われた仲間を救おうとしてか、何体かの妖精が鱗粉を振りまいている。
花弁の隙間を縫うようにして降り注いだ鱗粉による回復を受けた妖精が突き立ててくる角に晒され、ダメージを受けるフォルク。
しかし、それも花弁の展開範囲を狭めれば容易く防げてしまうもので。攻め口を見失ってまごまごと旋回している妖精達を、ついと見上げる。
「その鱗粉は疲れるのだろう? 持久戦をと言うならこちらもそのつもりで行こう」
纏う花弁はそのままに、距離を詰めて近い範囲で攻撃を仕掛けていくフォルク。
生命力を奪い、切り刻めば、その分回復を行う妖精が現れて、繰り返し。
それでも数で勝り回復も行えるはずの妖精が押しきれないのは、フォルクが完全に守りを固めて挑んでいるがゆえ。
徹底的に弱らせてから急所を狙う気構えを初めから持っていたがゆえだ。
「オブリビオンになるまでにあった事。同情しない訳じゃないが」
それでも、ここは戦場だ。ましてや今は帝竜との戦争の最中。
「甘い事は言っていられないんでね」
気を抜いたものから死んでいく、そんな場所だ。
薄らと細められた瞳をかすかに覗かせ、覚悟は良いかと問いかける。
気圧されたように見えたのは、彼らが疲弊しているからだろう。
長く苦しむようなものだというのに、それでも癒やすことをやめようとしないのは、退けぬという意志の現れか。
「覚悟があるなら、いいだろう」
心意気に応えるように、花が、広がる。
傷を負いすぎて、癒やしすぎて、疲弊しきった者達を、纏めて刈り取る花弁が。
荒れ狂うように吹き抜けた風が、最後の一片を吹き飛ばした頃。辺りには、無数の竜胆石が散らばるばかりとなるのであった。
成功
🔵🔵🔴