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帝竜戦役②〜ハンター登龍門、風昇る龍魚

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #群竜大陸

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「キュウ!キュルル!」
 頭のはるか上で愛くるしい小動物の鳴き声が下りて来る。
 風通しの良い荒野で野営地を築いていた新米ハンター達が反射的に顔を上げると、鳥のような魚が大空を泳いでいた。
「な、なんだてっきりドラゴンが襲って来たかと驚れぇたべ。」
 身体を強張らせて引き攣った表情は、無害そうに風と戯れる彼らの姿を知ると途端に緩ませる。
 そんなまだまだ経験不足の新米達の姿に、昔の自分を重ねて微笑む熟練ハンターが厳しい教官の表情を作り直すと声を上げた。
「当たり前だ。そんな奴らが出て来るところにお前らを連れて来るわけないだろう。」
 熟練ハンターの言葉にそれもそうかと新米達が笑い合うと、熟練ハンターは少し意地の悪い顔でその声に被せるように大声で一括する。
「お前らでも『死ぬ気』でやれば狩れる獲物がアイツなんだからな!成果が出るまで何日掛かろうと帰れると思うな!」
 熟練ハンターの凄味を利かせた怒声に、新米ハンター達はたちまち震え上がる。
 彼らがここで野営地を組んでいるそもそもの理由。それはこの地域の新米ハンターの登龍門、エアティック・フィッシュ狩りである。
 エアティック・フィッシュは縄張り外へ敵意を向けることもなく危険度の少ないとされ、周到な用意と戦線離脱が可能であるため新人が大物狩する足掛かりとして重宝されているのだ。
 とはいっても、可愛い鳴き声に反して、戦闘となれば空から縦横無尽に群れで襲い掛かって来る彼らは充分に脅威であり新米ハンター達も命の覚悟がいるのだ。

 いつもと同じ準備、いつもと同じ狩り、そうなるはずであった。
 しかし、この日に限ってはおかしな風が流れ込む。
「キュキュキュル!?キュキュゥゥゥ!!!!」
 熟練ハンターも可愛い新米達を犠牲無しで帰すつもりで念入りに準備させていたが、不意に上空の獲物達が聞いたこともない悲鳴を上げていることに気が付く。
 空気もガラリと様変わりした。頬がひりつき身体中の産毛が逆立つ。
 熟練だからこそ感じたことのあるこの感覚、それは『ドラゴン』の気配だ。
「お前ら全員伏せて息を殺せ!ゆっくりと物陰に隠れろ!」
 不穏な風が周囲を包むと、苦しんでいたエアティック・フィッシュの姿が徐々に変化していく。
 爬虫類のように柔らかくキメ細かい表面は堅く分厚い鱗へと変化していき、小動物の耳に似た頭飾りは和龍のように乳白色の枝角に伸びる。
 さらに、陽光の透ける美しいヒレはメキメキと大きく成長しドラゴンの翼膜へと変り果てた。
 力強く羽音を叩き、ギラついた赤色の瞳で血眼に獲物探す様はまごうことなきあの獰猛なドラゴンそのものであった。
「クソッ、不味いことになった。新米どもよく聞け、荷物を全て置いて速やかに撤退するぞ!見た目半分は魚野郎のままとはいえあれは『ドラゴン』だ。俺達にはもう手に負えねぇ!」
 状況を飲み込めずキョトンとしていた新米達は、熟練ハンター達の脂汗が溢れる緊張した表情で事態の深刻さにようやく気が付く。
「いいか覚えて置け、これ以上は専門家の仕事だ。強力なモンスター退治の専門家、『猟兵』たちのな。」
 半龍、龍魚となったエアティック・フィッシュの琴線に触れる前にハンター達が立ち去ると、獲物を探す龍魚の鳴き声が荒野に響き渡った。

「ってことになってるんだって!」
 そういうと、グリモア猟兵の明石・真多子(軟体魔忍マダコ)が動画の停止ボタンを押す。百聞は一見に如かず、拙い説明より動画を見せたほうが楽な現代っ子だ。
「群竜大陸で新米ハンターの登龍門試験していたら大変なことになったみたい!なんとお魚がドラゴンに成ったんだって!!」
 六本の腕をしっちゃかめっちゃか振り回し、なんとか身振り手振りで状況を説明する。
「しかも!元々群れで飛び回るお魚だったから、空にひしめくドラゴン地獄!!これはもぷ一般人には手に負えないよ!!」
 ピコンとアホ毛を伸ばし、名案を閃く。
「あ、でもでも!無理に全部まとめて相手にする必要はないかも!おびき寄せたり、縄張り外からも攻撃できるもんね!それに龍魚といっても半龍だから『空中からの攻撃に対処しつつ、上手く硬いうろこに覆われた「急所」を攻撃』できれば効率良く仕留められるかも!!とはいってもやり方は皆の自由に任せるね!!」
 そういうと、真多子はすぐさまキミ達をグリモアで転送し始めた。


ペプシ派
 GWに合わせてドラゴン盛り沢山な戦争も始まりましたね!
 今回はそんなドラゴンハンターの登龍門なシナリオです。

 【注意点】エアティック・フィッシュは縄張り内で見つかると集団で空から襲ってきます。縄張りは約1kmで、動くものであれば500m以内の者は見つけ出せます。

 【お得情報】真多子ちゃんの言葉通り、『空中からの攻撃に対処しつつ、上手く硬いうろこに覆われた「急所」を攻撃』できれば距離に関係なく対処出来るでしょう。

 【その他】龍魚となったエアティック・フィッシュからは、「竜胆石(りんどうせき)」と呼ばれる財宝が採取できます。金貨40枚(40万円)の価値ですので避難しているハンター達に頼めば取り出してくれるでしょう。
 ※このシナリオで得た金品は、ゲームデータ上の意味は特にありません。
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第1章 集団戦 『エアティック・フィッシュ』

POW   :    キュウ!
【憎悪】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD   :    キュルルー!!
【瞳を黒くする】事で【緊急撃退モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    キュゥーン
【尻尾】から【竜巻】を放ち、【風圧】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:白狼印けい

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

播州・クロリア
縄張りなど敵の生態の情報はありがたいですね
戦いを有利に進めることができます

(タップダンスのように小刻みに足を動かしながら{烈風の旋律}で『ダンス』を始める)

良い風です。リアですね。

では、明石さんの助言に従って縄張りの外から
遠距離攻撃をして1匹ずつおびき寄せましょう

(踊りながらUC【蠱の腕】で{錆色の腕}の一部を球形に変化させ、切り離した後、敵に向けて蹴り飛ばす)

これで敵が釣れたら{錆色の腕}の腕を鎖に変えて『念動力』で
敵に絡ませ、地上に落としたのち、急所が見つかるまで手当たり次第に攻撃します



 不可解な風が満ち、穏やかであった空を舞う魚達も、今では荒れ狂う嵐のように暴れる龍魚となっていた。
 その空に渦巻く薄黒い影が遠くに見える避難地へ、コツコツと音の通る靴音が近付いて来る。
「(お……おいあれ見れ、でっけぇけどもえらい別嬪が来てんど。)」
 音に気が付いた新米ハンターが同僚に肘打ちして、こっそりと見知らぬ訪問者を伺う。
 話を振られた同僚もまずその背丈に驚きはしたものの、すぐに鼻の下を伸ばし始め龍魚への恐怖を忘れていた。
「こちらが龍化現象目撃者さんのいる避難所でしょうか?」
 長い金髪を風に撫でられ、社交場にでも来たのかという鎧の一切も纏わない、この場ではかなり異様な出で立ちで播州・クロリア(リアを充足せし者・f23522)が笑みを作って尋ねる。
「おうそうだ。あんた見たところ『猟兵』だな。俺の後ろでコソコソしてる鼻タレ共とは覇気が違う。本当に頼もしいぜ。」
 熟練ハンターが満面の笑顔でクロリアに返すと、後半棘のある声を後ろに向けて送った。
 鼻の下を伸ばし赤らめていた新米達は、今度は恥ずかしさでより一層赤く染める。

 双方が挨拶を済ませると、クロリアは依頼内容と現場状況の情報を確認し整理した。
「なるほど。縄張りなどの敵の生態情報は確かなようですね。この状況はとてもリアです。」
「リア?いやまぁそういう訳でな、ここからもう少し近付けばもう奴らの縄張りなんで安全地帯はここまでだ。これだけ離れていても打てる手は何かあるんですかい?」
 ほとほとお手上げだと肩をすくめる熟練ハンターの言葉に、クロリアが口元に人差し指を当てて沈黙のジェスチャーで応える。
「……?」
 ハンター達が首を傾げるが、気にせず彼女が縄張りへ踏み入り靴音を鳴らしていく。
 止める間もなく呆気に取られていたハンター達だが、彼女の凛とした後ろ姿に不思議と期待感と高揚感が湧き出てきた。
 例えるならば、年に一度彼らの故郷に巡回してくる大人気のショーが始まる開幕の時のそれである。

「良い風です。リアですね。」
 龍魚達からギリギリ500m。ハンター達から聞き出した情報通りここまではまだ敵に見つかってはいない。
 目の前の上空で荒れ狂う薄黒い龍魚の渦が、彼女の金髪を吹き上げ後ろ髪を引いていた。
 クロリアの眼には今、怒りを現す黒い風と、空を叩き激しく連続する羽音が広がっている。
 『色』と『リズム』、彼女は目前の敵をこの二つへ脳内で置き換えると、それをアウトプットするように脚を動かし、その爪先で、その踵で巧みに音を鳴らし表現し始めた。
 吹き荒れる風のように激しく、そして怒涛のビートの連続は、名付けるならば『烈風の旋律』。
 時折髪をかき上げ汗を散らすその美しいクロリアのダンスに、ハンター達は言葉も無く感嘆の息を漏らしていた。

 クロリアの奏でるリズムが馴染み、いわゆるゾーンと呼ばれる集中状態に突入すると、彼女の右手が錆色に変色していき形状を変えていく。
 それはまるで龍魚達が変化したかのように異質な変異であり、人間離れした形状は膨らみやがて球状のおおよそボーリング球大になって切り離れた。
 錆色の大玉が地に着く前に彼女がカッと蹴り上げると、砲丸のように跳び出し龍魚達の群れの中心へ入り込む。
 血眼に獲物を探していた龍魚達は、撒かれた餌にまんまとすぐさま飛びつき黒い魚群が丸まっていった。
「オーディエンスは湧いていますね。リアです。」
 フィナーレを飾る節を奏で切ると、クロリアの意識は切り離した大玉へと向けられる。
 すると、魚群の中心で突かれていた大玉は突如爆発するように錆色の鎖が弾けだし、漁網のように彼らを筒みながら縮んでいく。
「キュウゥゥゥ!?」
 空を叩けなければ自慢の機動力も、水を奪われた魚も同然の無力と化して、虚しく声ばかりが荒野に鳴き響いた。
 弾けた鎖の一本がクロリアの元へ飛んで来ると、彼女が残った左手で掴み思いっきり引き寄せ、反対方向へと振り下ろしてまとめて地に叩きつける。
「これで大人しくなりましたね。あとはゆっくりと調理するだけです。さぁ最後はみなさんもご一緒に!」

 クロリアの反対側、つまりハンター達の目の前へ網の包まれた魚群がドンと鎮座している。
 クロリアの言葉で見惚れていたハンター達もようやく正気に戻ると、彼女の元へ駆けつけ文字通り袋叩きで龍魚を攻撃して瞬く間に退治していったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐田・忌猿
「狩人の訓練は大変だべなぁ。我の村の狩人一家も、独り立ちの前は大変そうだったべ」
とっぽい仮面の兄ちゃんの風情で、遠い昔を思い出して和む
ハンターの兄さん達と茶を飲みながら、田舎トークで一しきり話をして仲良くなった後にキャンプ地を後にする
気のいい者達だ。オブリビオンの餌にする訳にはいかない
「悪竜……滅すべし」

方針は前転の連打から【属性攻撃】で火車となって荒野を疾走
派手な動きで奴等を誘き寄せる

「風遁・巻風!」
複雑な印を結び、地面に掌を当て【竜巻】を召喚
後は竜巻に乗って忍者【グラップル】で奴等の「急所」を手刀で攻撃
仕上げのニードロップに繋げたい

「さて。後はお茶代として、狩人さん達に剥ぎ取り任せるべな」



 不可解な風が満ち、穏やかであった空を舞う魚達も、今では荒れ狂う嵐のように暴れる龍魚となっていた。
 その空に渦巻く薄黒い影が遠くに見える避難地へ、怪しげな仮面で素顔を覆う影の者が音も無く忍び寄る。
 しかし、その気配を読み切る影に精通した者はこの場におらず、新米ハンター達は熟練の目を盗み物陰で縮こまって小声で雑談していた。
「(なぁお前ぇ、本当に『猟兵』とかいう奴が来ると思うけ?あの熟練連中さも青ざめて尻尾巻く化物を退治出来る奴がいるなんて俺は信じらんねぇよ。)」
「(んだどもよぉ、そいつらさ来てくれんと村のために俺らが行かねばいけんど。神でも仏でも来てくれるってんなら何でもえぇから、俺は早く村さけぇりてぇよ。)」
 簡単ではないとはいえ、熟練と共にやれば危険度は少ない登龍門試験のはずが、今では自分たちが決死の覚悟で挑みにいくか行かないかという瀬戸際。
 事の顛末も見えていない状態ながらも、既にこの世の終わりだと言わんばかりに悲壮感に打ちひしがれており、新米達の士気は絶望的であった。
「(んだな、狩人の訓練は大変だべなぁ。我の村の狩人一家も、独り立ちの前は大変そうだったべ。)」
「(お前さも分かるべk……)って誰だあんた!?」
 端に腰を下ろしていた新米が、ふいに居るはずのない隣から声が聞こえて素頓狂な大声を上げる。
 いつの間にそこにいたのか件の仮面をつけた怪しい仮面の男、佐田・忌猿(鬼面忍者・f10152)が新米達に違和感なく混じり会話に参加していたらしい。
「なぁに驚くことねぇべ。我があんたらの話してた『猟兵』だべさ。」
 彼が軽く身分を明かすと、先ほどの新米の叫び声を聞いて慌てて駆け付けた熟練ハンター達も集まり出す。
 最初はだれも彼の存在に気が付かず避難地へ侵入されていたことに警戒していたようだが、忌猿の柔らかい物腰と田舎者同士特有の臭いで簡単に打ち解けてしまった。

 しばらくすると彼はあまりにも馴染み過ぎて、今では茶まで振舞われて暖を囲み談笑していた。
「なるほどだべなぁ。つまりアイツらに近付き過ぎると一斉に襲われるんだべか。」
 茶の上澄みを啜り風味を味わい、湯飲みを軽く回し撹拌すると渋みと共に飲み干し息をつく。
「んだんだ。うちの熟練さも絶対ぇに近付くなっていつも口酸っぱく言って来るでよ。」
「まぁそういうことだ。あんたがいくら『猟兵』だからといって一人で突っ込もうなんて考えてはいかん。奴らの近くに放棄してきた野営地に武器がある。すぐに取って来るから、あんたがそれを使えば……。」
 口の減らない新米を小突きつつも、熟練ハンターは忌猿を心配そうに提案しながら、茶のお代わりを注ごうと手を伸ばす。
 しかし、忌猿は手を振り遠慮なく断ると立ち上がった。
「そこは考えがあるから心配いらねぇだ。お主らはここで待っていてほしいべ。」
 いくらか話して通じ合うと情が湧く。それは影の者としてはおかしなことだが、元来の彼の成り立ちから言えば不思議なことではない。
「(気のいい者達だ。無理をさせてオブリビオンの餌にする訳にもいかないべな。)」

 荒野へと一人立つ忌猿が、手の甲をガチガチと火打石のように叩くと、ゴウと淡く妖光を放つ面妖な鬼火が彼を包み込む。
 そのまま、あえて目立つように大きく前転を繰り返し人間車輪となって龍魚の群れに転がり進んだ。
 情報通りであれば、奴らは縄張り内の獲物を警戒することなく襲い来るはず。
 虫程の単純な思考ならば、誘蛾灯のように忌猿へと飛びつくはずだ。
 案の定、やたら目立つ火車を捕捉すると、龍魚達は一直線に下降してきたではないか。

「鴨や兎の方がよっぽど賢いな、風遁・巻風!」
 先ほどまでとは異なり、真剣な口調と鬼のような形相で印を結び地に押し付けると、回転の勢いのまま跳び上がり地から巻き起こる竜巻と共に龍魚達を迎え撃つ。
 風を支配されれば呆気ないもので、たちまち龍魚達はあたふたと墜落しない様にあわわてふためき隙を見せた。
 忌猿がその内の一頭の首に組み付くと、粗く生え揃った鱗の継ぎ目に貫手を突き刺し、脈動するモツを鷲掴んで修羅の眼光を光らせる。
「悪竜……滅すべし!!」
 貫いた手刀に膝を載せて体重をかけると、もう一丁の手刀を振るって風切羽を切断する。
 風を叩く翼を失った龍魚はたちまち錐揉み状態で墜落し地に刺さった。
 その瞬間、忌猿の体重と落下の衝撃がモツを握る手刀を押し、龍魚を真っ二つに引き裂く。
 血に染まる忌猿はそれでも止まらず立ち上がり、手刀の血を振るって血糊を捨てると、次の獲物へと飛び掛かった。

「さて。始末した獲物はお茶代として置いてくべな。剥ぎ取りはいい勉強になるべ、お主らも獲物の弱点はしっかり学んでいくといいべよ。」
 口をあんぐりと開けて唖然とする新米ハンターの肩を叩くと、音も無く彼は去っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アネット・レインフォール
▼心情
ああ、スカイフィッシュか(違う)
この地は以前も調査で訪れた事がある。

しかし変異したとは言え、結構な数がいるようだ。
あの時は大した成果を上げられなかった事もある。

面白い――リベンジだ。
今度こそ勇者もドン引きする程の爆釣記録にな!

▼POW
先ずは範囲外から敵を双眼鏡で確認。
葬剣を釣り竿にして、先端もルアー付きに。

悟られぬよう遠距離からこっそり群れに投げ入れ
小刻みにルアーを動かしフェイント。

さて、ここまでは前と同じだ。

ヒットしたら糸を伝って【夢想流天】を流し込むが、
先端に闘気を集中。
範囲攻撃で複数の魚群を巻き込み、
これを繰り返す事で大漁を狙おう。

味は…まあ、うん。

0匹、苦戦上等
連携、アドリブ歓迎



 不可解な風が満ち、穏やかであった空を舞う魚達も、今では荒れ狂う嵐のように暴れる龍魚となっていた。
 その空に渦巻く薄黒い影が遠くに見える荒野へ、美しい金細工の施された鞘に納める一振りの西洋剣を腰に下げた旅人が足を踏み入れる。
 決して心地良いとは言いにくいが、旅人の長いマフラーを巻き上げ吹き抜ける風が彼を迎えると、旅路の汗を乾かし体温が落ち着いていく。
「この地は以前にも調査で訪れた事がある……が、どうも様子がおかしいな。」
 そう呟くアネット・レインフォール(剣の異邦人・f01254)が前方の上空に渦巻く薄黒い異様な光景を見つめ首を傾げる。
 彼はかねてよりの心残りをこの地で遂げるために勇み足で参戦したわけであるが、肝心の目的がどうにも見当たらない。
 唯一彼の眼に映るのは見知らぬ龍魚の群れであった。
「確かにスカイフィッシュがいたはずだが……?」

 そうこうしていると、後方より声を上げて駆け付ける男がアネットに追い付いた。
「ぜぇ、はぁ、あんた、もしかして『猟兵』か!?まさか一人でアイツらに突っ込む気じゃないだろうな!」
 この地に滞在していたという熟練ハンターを名乗る男がアネットに問いかけると、彼はきょとんとした表情で首を横に振る。
「まさか、俺は目的はスカイフィッシュだ。ここにいたのなら何処に流れていった知っていないか?」
「スカイフィッシュ?あぁエアティック・フィッシュのことかい。それなら諦めるんだな、なにせ今あそこに見えるアイツらがそのスカイフィッシュだからよ。」
 アインの答えに残念そうに肩を叩き指差す先は、先ほど眺めていた見知らぬ龍魚達であった。
 聞けば、この不穏な風が立ち込めたと同時に彼らが龍化して凶暴になってしまったのだという。
 だからこそ、以前までのアイツらを想定した装備なら一度出直せと言うのだ。
 しかし、心配そうな熟練ハンターの表情に反し、アネットの表情は夏休みの少年のように輝きやる気に満ちていく。
「なるほど、俺も腕を上げたが向こうも手強くなったということか。面白い――リベンジだ。今度こそ勇者もドン引きする程の爆釣記録にな!」
 彼の眼には既に獲物しか映っておらず、呆れた熟練ハンターを置いてアネットは決戦場(釣り場)へと脚を動かした。

 男子、三日会わざれば刮目して見よとは昔からよく言われたもので、かつての強敵である元スカイフィッシュ達も相応に強くなっているのだろう。
 そこでアネットは縄張りに入らないギリギリの岩陰に身をひそめると、双眼鏡で空に舞う魚群を観察する。
「なるほどな。確かによく見ればスカイフィッシュの面影がある。それに変異したとは言え、結構な数がいるようだ。あの時は大した成果を上げられなかった事もある。念には念を入れるとするか。」
 そう呟くと、彼は腰に下げていた金装飾の煌びやかな鞘から剣を引き抜くと、美しく鏡面のように磨かれた刀身に自信の瞳を対面させて手をかざす。
 すると、両刃の西洋剣はみるみる鋼糸状に解けて対竿のような形へと変形していった。
 大物を釣るならば生半可な竿では太刀打ちできない。そこで彼が用意してきた秘策とも言うべき愛刀の姿である。
 さらに、鋼糸の先端には美しく光り目を引く金のルアーが存在を主張していた。
 光ものの仕掛けは釣りの鉄板である。
「さて、ここまでは前と同じだ。」
 敵が成長しているならば、前回と同じ仕掛けでは五分どころかむしろ戦況は不利。
 しかし、彼の本当の秘策はまだここからである。
 暑い夏に飛び出す少年のような瞳が燃えると、アネットは勢いよく竿をスナップしながら仕掛けを飛ばした。

 真っ直ぐ飛ばせば怪しまれと、あえて弧を描いて魚群のさらに上空からルアーを落とすように調整する。
 陽光を反射し煌めく金の仕掛けは、すぐに龍魚達に見つかり一瞬の内に手応えが竿に伝わって来た。
「まずはヒット!そしてここから……グッ、急に引きが強くなったな!」
 手元に落としていた目線を獲物に向けると、なんと龍魚が急にぶくぶくと膨張して巨大化していくではないか。
「クソッ、このままじゃ俺の方が釣り出される……!!」
 既に竿は半月状に歪み悲鳴を上げており、圧倒的質量差にはさしものアネットも踏ん張りが効かなくなっている。
「上等だ!大物になってくれればかえって都合が良い!漆式・夢想流天!!」
 アネットが全身の意識を握っている竿に寄せると、闘気を流し込んで龍魚の芯の部分へと当てて包み込む。
 すると、あれほど暴れくるっていた巨大化龍魚が急に沈黙し、巻き取られたリールに従いアネットの元に呆気なく釣られてしまった。
「勝ったぞ!今度こそ!」
 一度要領を得てしまえば身体がスイスイと動き、次々と龍魚の山が築かれていく。

「さて、遂に勝利の味を確かめる時が来たな。しかし海腹川背とはいうが、こいつ等はどちちらか分からないしコレで良かったのだろうか?」
 パチパチと爆ぜる焚火で焼き上がった龍魚の身をほぐすと、ふっくらした白身に口を付ける。
「……味は……まあ、うん。……うん。」
 巨大化の弊害か、ただでさえ淡泊な白身の味がさらにぼやけてもはや無味。
 温かい麩菓子を食べているような虚無感が襲うが、勝利の高揚感で満ちた心がなんとか埋め合わせてくれたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

インディゴ・クロワッサン
………んー。
「これ…僕自身を囮に急所を大きくしつつ、遠距離から狙撃した方が楽そうだね?」
【POW】
ま、物は試しって事で、UC:紫薔薇の毒棘 で縄張りの外(約4.5kmぐらい先)から【先制攻撃】として狙撃してみようかな
確りと鱗も砕ける様に【串刺し/鎧砕き/鎧無視攻撃/部位破壊】も併用しておこーっと
「んー…遠すぎたかなぁ…」
とりあえず縄張りに入る寸前まで徐々に近付きながらUCを連発して、倒れた龍魚は【怪力/目立たない/迷彩/忍び足/第六感】を駆使して、ハンターさん達の所に持ってってあげよーっと!
「僕も一個くらいは欲しいからねー」
それ以外の石はご自由にどーぞ☆



 不可解な風が満ち、穏やかであった空を舞う魚達も、今では荒れ狂う嵐のように暴れる龍魚となっていた。
 その空に渦巻く薄黒い影が遠くに見える避難地へ、陽の光を遮るように上から下まで黒で統一された藍髪の青年が足を運ぶ。
 荒れ地に吹く風が巻き上げる砂埃を避けるためか、内に着ている真新しい服とは対照的にボロボロに使い古した外套を羽織り、なるたけ岩陰などを経由しながら進んでいるようであった。
 幾度目かの日陰に入ると、旅路の青年インディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)の耳に微かな話し声が入り込んで来た。
「(なぁ本当に『猟兵』なんかチンタラ待ってて平気なんだべか。今からでも野営地に組んでた連弩を完成させて俺達でやった方がいいんじゃねぇだか?)」
「(ばっかお前ぇ、近付けねぇから熟練先生らも逃げたんでねぇか。村さ心配なのは分かっけども命がいくつあっても足りんど。)」
 経験の浅さ故か、相手の力量も分からず無謀な算段を計画する新米ハンター達が、肩を組んで頭を円に突き合わせていたようだ。
「へぇ、面白そうな話してるね。僕も混ぜてよ。」
 四方に尻を向けた格好になっていた新米ハンター達は、突如見知らぬ声が上がったことに驚きバタバタと尻もちを着きながら声にならない声でヒッと叫ぶ。
「ゆゆゆ、幽霊だか!?」
 物陰からチラリと覗くボロボロの外套が風にはためき揺れる様は、不意に目に入ればそう見えたのかもしれない。
 青ざめた新米ハンター達を見下ろしインディゴがクスリと笑うと、勿体付けたように物陰から顔をばぁと出して舌を見せる。
「んー……残念。お化けじゃなくてダンピールの『猟兵』だよ。そういうキミ達はここの人?」
 飄々とした顔を確認すると少なくとも幽霊ではないと安堵し、深く息を吐きながら新米達は頷いた。
 すると、新米の姿が見当たらず探していた熟練ハンターも集まって来て、『猟兵』と分かるやインディゴはすぐに迎え入れられた。

「わざわざご足労感謝する。」
 インディゴの外套から覗く直剣に刻印された紋章を貴族の家紋だと勘違いしたのだろうか、やや堅い対応の熟練ハンター彼の前に対面して座していた。
「んー……そんなにかしこまらなくていいよ。僕は別に偉い人とかじゃなくて一介のしがない『猟兵』だしさ。」
 掴みどころのない態度でインディゴが断りを入れると、話を本題に戻す。
「それで確認なんだけど、アイツらは元から『縄張りの外』には出てこないんだね?」
「あぁ間違いない。そうでなければ俺達は既に全滅しているさ。逆に言えば、縄張りに入れば数の暴力に対しまず勝ち目はないだろう。間違っても剣の一振りでどうにかなる相手ではないぞ。」
 インディゴの下げた直剣を一瞬目配せして忠告する。
「んー……その辺も大丈夫、かな。さっきの話でいいこと思いついたんだよね。それじゃ。」
 必要な情報は貰ったしと、怪訝そうな熟練ハンターの話を切り上げインディゴはスッと立ち上がって避難地を後にした。

 荒野に戻ると、目を凝らせば遠くの空に薄黒く渦巻く魚群らしきものが目に入る。
距離にすれば目測で約4~5kmといったところだろうか。
「ま、物は試しって事で。」
 先ほど新米ハンター達の言っていた連弩。普段はそれを使って狩りをしているということならば、同じことが出来るのではいないかと考えたのだ。
 インディゴが掌を地に着け、掌の先から根を張るようなイメージを描いて手を離すと、宮廷にで整えられたような見事な薔薇垣が四畳ほど生えてきた。
 出来映えに満足したインディゴが右手をピストルを模して人差し指を魚群の方へ指すと、バンと口で音を出して銃の真似事をする。
 すると、薔薇垣から無数の棘が弾け飛び、指向性をもってインディゴが指した方角へと放たれたのだ。
「んー……ここは流石に遠すぎたかなぁ……。」
 手庇で日光を遮りながら目を凝らしていたが、命中までは確認できたものの撃ち落とせた獲物はいなかったようだ。

 それから徐々に縄張りへと近づきながら何度も棘弾を放っていると、距離を縮める毎に精度は上がっていき龍魚が幾匹か墜落していくのを目撃している。
 しかし、仲間を討たれた龍魚は怒り狂い、今まで以上の速さで飛び回るようになってしまった。
 遂に動きを追いきれず、丁度今放った棘弾では成果0となってしまう。
「………んー。これはもういっそのこと……僕自身を囮に動きを読みやすくした方が楽そうだね?」
 インディゴが縄張りギリギリだった範囲から一歩足を踏み入れると、待っていたと言わんばかりに龍魚達は一直線に彼へ向けて降下してくる。
 大口開けた中にびっしりと生え揃う凶悪な牙は、彼を噛み千切ろうとガチガチ噛み鳴らされていた。
 だが相変わらず飄々として焦りを見せない彼は、再び手を銃に模して構え撃ち放つ。
 目前の一直線に並んで降りて来る龍魚の群れは、ここまでの道程で直線状に並べて生やして来た薔薇垣の良い的であり、一斉に弾け飛び時間差で飛んで来る棘の雨が綺麗に龍魚を貫き撃ち落とした。

「よ……っと。とりあえずこれくらいでいいよね。僕はこの変な魚を捌いたことないからお願いしてもいいかな?」
 ハンター達の避難地に堆く重ねられた龍魚の山に、彼らは目を白黒させて驚愕している。
「せっかくだし竜胆石っていう宝石を僕も一個くらいは欲しいからねー。それじゃよろしく。」
 あまりの作業量に熟練ハンターも泣き言を零したらしいが、大粒の透き通る宝石を陽光に透かし、インディゴは機嫌良く帰ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナイツ・ディン
「あぁ、エアティック・フィッシュ。素材としては悪くないんだっけ?」
『それよりもアレは喰えるのか?』
食い意地の張ってる紅竜が張り切ってるから何も言うまい。

空中戦で勝負だな。自前の翅で自力飛行だ。
見切り、盾受け、武器受け、第六感で攻撃をしのぎつつ、射線を逸して敵を盾にしたり。
あっちが本気を出すなら俺も本気を出そうじゃないか。
【竜の血】でスピードと反応速度を上げる。竜になれるのはお前だけじゃないんだぜ?それに、こっちは本物だ!
囲まれたら薙ぎ払い、仕留めるときはダッシュ(飛行)+鎧無視攻撃+ランスチャージで一気に。
「串刺しだ!ディロ、遠慮なく喰らいな!」
ディロの力でそのまま焼いてしまおう。



 不可解な風が満ち、穏やかであった空を舞う魚達も、今では荒れ狂う嵐のように暴れる龍魚となっていた。
 その空に渦巻く薄黒い影が遠くに見える避難地へ、小さな影を作る羽音が近付いていく。
 影は荒れ地の砂塵を防ぐように薄くとも風通し良く身体を包む外套の青年によるもので、その背に生える透き通った美しい二対の翅で残像を残すほど細かに羽ばたき風に切っていた。
 また、彼の携えた大槍は照り付ける陽光で赤熱したかのように真紅に映えており、間違いなく業物であろうそれを手にする彼は名うて槍使いであることが伺える。
 砂埃を防ぐゴーグルと口元まで覆う外套の襟から表情は読み取れないが、一切ブレ無く慣れた様子の翅の動きから、この過酷な荒れ地を飛び続けるのは苦でも無いのだろう。
 しばらくすると、旅慣れているのか彼は体力を消耗する前に日陰となっていた岩陰へと進路を変えた。
 するとぼそぼそとした小声が彼の耳大きく響いてくる。
「(もうずっと荒野を見てっけども、『猟兵』なんてちっとも見当たらねぇべ。本当に俺達を助けに来てくれるんだべか?)」
「(んだなぁ、土埃の一っつも上がらんだで。あの龍になっちまったエアティック・フィッシュは恐ろしかっただもんなぁ、もしかすっともう誰も来ねぇやもしれんど。)」
 どうやら交代制で荒野を見ていた待機要員の新米ハンター達が、肩を並べて愚痴をこぼしているようであった。
「なんだ俺を探してたのか?その『猟兵』なら今着いたぜ。」
 不意に聞こえた青年の声に、二人の新米ハンターはビクリと肩を跳ねて反応するが、彼らの視界には声の主がさっぱり見当たらない。
「こっちだこっち、ちょいと小休憩で影に邪魔させてもらってるぜ。」
 再び聞こえたあの青年の声に従い、自分たちの影、足元へと視線を落とすとそこには小さな声の主ナイツ・ディン(竜呼びの針・f00509)が座り込んで楽にしていた。
「へぁ!?あ、あんたが『猟兵』さんだか?思っていたよりも随分とその……。」
「はは、小さいって言いたいんだろ。これでも腕に自信のある竜騎士だ。安心してくれていいぜ、コイツにかけて誓っていい。」
 新米達に配備された粗悪品とは異なり、彼の掲げた竜槍の輝きと自信を見せつけられるとその説得力に飲まれた。
 彼らはすぐに恥ずかしそうに失礼を詫びて会釈をすると、熟練を呼びつけナイツを歓迎する。

「なるほど、エアティック・フィッシュを討伐するためにその翼で飛んできてくれたと言うわけか。道理で見つからなかったわけだ。歓迎が遅れてすまない。」
 机の上に革袋を敷いて座すナイツと目線を合わせた熟練ハンターが頭を下げる。
「気にするなって。それよりもそのエアティック・フィッシュは素材として悪くないだっけ?」
 嫌味なく快活に笑うナイツが答えると、ほっとした顔で熟練が面を上げる。
 それと同時にナイツの竜槍からナイツへ言葉を送った。
『それよりもソイツは喰えるのか?』
「ディロはいつでも食い気優先なんだな。あ、何でもない続けてくれ。」
 竜槍の声は持ち主のナイツにしか聞こえないため、話を折られ不思議そうな熟練に続きを促す。
「ごほん、そうだな……元の奴らは皮をなめして加工くらいしか、しかし龍化した今となっては堅牢な龍鱗と角があるから相当な交易利が見込めるだろう。まぁそれと、白身魚に似た味がするから喰えないことも無いぞ、一応は。」
 気を遣ったのか補足情報を添えて熟練が答えると、竜槍ディロは眼の色を変えて興奮しだす。
「了解だ。食い意地の張ってるのが張り切ってるし、俺も全力で行くから任せてくれ!」
 士気の高まる情報を得たこともあり、竜騎士ナイツと竜槍ディロは勢いよく避難地を飛び立ち獲物へと向かった。

 竜騎士たるナイツは遠距離から獲物を狙うことをせず、騎士道精神からか正々堂々と真正面から龍魚達の群れへと翅を羽ばたかせる。
 しかし、彼が小さい体躯だからと見逃されるわけもなく、縄張りに入り込んだ瞬間に龍魚達は赤く目をギラつかせてナイツへ襲い掛かって来た。
「俺に空中戦で挑むのは浅はかだぜ!動きが直線的すぎて風に飲まれてるのが丸分かりだ!」
 数で襲い来るとはいっても地上とは違い風に乗って身体を動かす空中戦、冷静に流れを読めば軌道は素直で当たりようもない。
 すれ違いざまに相手の勢いを利用し、粗く生え揃った龍鱗の継ぎ目に沿って引き裂いていく。

 しかし、仲間達が地に堕ちていくと、龍魚は眼をドス黒く染めて動きが変わる。
 翼は風を撫でるのではなく強く叩いて飛翔し、彼らの不規則な動きにより場を満たす風は乱気流のように荒れ始めたのだ。
「へぇ、そっちが本気を出すなら俺達も本気を出そうじゃないか。奥の手だディロ!」
 そう叫ぶと、ナイツは手にした竜槍をクルリと半回転させて持ち変える。
 その切っ先は彼の激しく脈打つ心臓の周辺。迷いなく突き立て真紅の血飛沫が爆ぜるも、その鮮血が彼を包み姿を変えていく。
『血の盟約、しかとその身で受け止めよ!』
 竜槍ディロの言葉がナイツの頭にこだまし目を開けると、彼もまた敵と同じように龍化し真紅の鱗で身を染めていた。
「竜になれるのはお前らだけじゃないんだぜ?それに半龍のお前らと違ってこっちは本物の竜だ!」
 引き抜いた竜槍ディロの柄尻を掴み、大きく肩を回して振り薙ぐと、その小柄な体躯からは考えられない竜の剛力による突風が荒れて龍魚達を吹き散らす。
 敵は数が多いことが災いし、突風に押されて仲間同士身体を打って悶え苦しむ。
 さらに下手に藻掻くために翼は絡み合い団子状に塊りだした。
「丁度いいぜディロ!このまま串刺しで遠慮なく喰らい尽くしな!」
 ナイツの翅がバンと力強く空を叩き一飛びで団子の上へ躍り出ると、竜槍ディロで深々と貫き傷口から獄炎が舌を伸ばして溢れ出す。
 そして地上へ向けて全力で羽ばたき火達磨となった団子を叩きつけると、地鳴りと共にクレーターを作り龍魚達を一網打尽に狩り尽くしたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ハロ・シエラ
なるほど、集団でかかってくるとは厄介ですね。
多くの敵の小さな急所を狙わなければならないとなると……的を大きくしましょうか。

まずはこちらがユーベルコードでダガーを槍に変え、長く伸ばしてちょっかいを出します。
その際に急所の位置を【見切り】覚えておきたいですね。
縄張りを侵された上につつかれては、痛くなくともこちらを憎むでしょう。
その感情によって急所ごと大きくなった敵を一体ずつ、長さを調節した槍で【早業】の突きで仕留めていきます。
その穂先は【毒使い】によって【継続ダメージ】を与えられる様になっていますから、一撃で倒せなくても時を待ちます。
敵も互いが邪魔で一気には襲って来れないでしょうから。



 不可解な風が満ち、穏やかであった空を舞う魚達も、今では荒れ狂う嵐のように暴れる龍魚となっていた。
 その空に渦巻く薄黒い影が遠くに見える避難地へ、黒い軍服に身を包み荒れ地を渡る旅人が近付いていた。
 歩兵用に仕立てられたそれの機能性は間違いないようで、乾いて固まった大地を踏み締めることへの負担が少なく息が整っている。
 照り付ける日差しを避けるように大きめのツバ付き軍帽を目深に被る彼女は、ふと視線を上げるといつの間にか目的地へ辿りついていたことに気が付き岩場を縫って日陰へ入った。
 すると、現地人らしき人物達の話し声が彼女の耳に届き、旅路の間に人恋しくなっていたせいかほっと息をつく。
「そんでお前ぇ、来てくれるっていう『猟兵』様はどんなお方だべなぁ。あの熟練さらも頼りにしてるらしんども。」
「そりゃぁなんてったって俺達の倍ぇくらいでっけくて、筋肉で身体が出来てるくれぇ屈強な男だべや。きっと鬼みてぇな面してっから、お前ぇは見ただけでちびっちまうでよ。」
 がははと、先ほどまで龍魚に怯えていたことを忘れたいのか、希望を含めた冗談で無理に笑おうとする新米ハンター達のようであった。
 彼女は会話を耳にしてどうしたものかと一瞬ためらうが、岩陰からおずおずと頭を覗かせ声を掛けることにする。
「あの、すいませんその『猟兵』が参りました……。」
 申し訳なさそうに、明らかに未成年の小柄な少女ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)が姿を現すすると、新米ハンター達はその見た目とのギャップに言葉を疑い驚愕の声を上げる。
 しかし、すぐに駆け付けた熟練ハンターが彼女の纏う歴戦の臭いを嗅ぎとるとすぐに歓迎された。

「いやはや、うちの鼻タレ共が失礼した。まずは少ないが避難地でかき集めた菓子を食べてくれ。」
 まだ十三歳のハロは見た目も年相応に華奢であり、それが加護欲を湧き立てるのか熟練ハンター達にやたらと気に入られていた。
 出された菓子は、本来は緊張感を維持するために満腹感を満たさず栄養を補給する目的の携行食だったが、ハチミツなどで甘い味付けなのもあり甘露にされてしまったようだ。
「はむ、美味しいです。それと、私では不安を感じられたかもしれませんが、もぐ、これでも少年兵だったので経験なら、もぐ、問題ないかと。」
 それは凄いと相槌を打ち、すかさず次のお菓子をハロに餌付けして様子は完全に孫に対するノロケたムードそのものであった。
 溢れ出た彼女の魅力のなせる業なのか、過保護な熟練達はお節介にあれこれと龍魚達の情報をハロに話してくれる。
「なるほど、はむ、あの二ツ岩辺りが縄張り境界の、もぐ、目印なんですね。」
 口の周りを甘い香りでべとべとにしながら小さい舌でペロリと舐めとると、お腹いっぱいに餌付けされたハロは立ち上がって向かってみることに。
 ちなみに避難地を出ると背中の方から、『ハロちゃん頑張れよ~』という野太い男たちの声が響いていたという。

 男たちの大きな期待を小さな身体に背負って、少女が二ツ岩の影を脚で踏む。
 既にこちらを見つけて気にしている様子の龍魚達だが、情報通りここを越えるまでは手出しする気はないようだ。
「なるほど、確かにあれほどの集団から一度に襲われたら少々厄介ですね。」
 ハロが軍帽のツバをクイと上げて前方上空を見上げると、薄黒い魚群の渦は途方も無く大きくそして吹き荒れている。
「まずは相手のお手並み拝見といきましょうか。」
 小さい体躯でも携行しやすい魔銀の短刀を静かに抜くと、怪しく陽光を反射する刀身が陽炎のように揺れて、まるで生き物のように動き出す。
 やがて彼女の手にする呪いの短刀『サーペントベイン』は三又に穂先を分けた身の丈三倍ほどの大槍へと変化していた。
「まずは釣り出します!っせーの!」
 流石にそのリーチでは振り回すのに苦労するのか、かなり大振りな横薙ぎが二ツ岩を越えて通過する。
 すると、鈍く光るその切っ先へ食らいつくように龍魚達の幾匹かが飛んで来た。
 三叉槍に噛みつきハロごと引きずり出そうという魂胆なのだろう、大きく開かれた龍魚の牙がガチンと噛み合わさるが、虚しく空を食んでいた。
「残念ですが私の槍は伸縮自在、お行儀良くじっとしてはいませんよ!」
 一瞬にして扱いやすい身の丈半の長さに縮め、恨めしそうに空を旋回する龍魚へ再び伸ばし龍鱗を引っ掻く。
 そして爪痕のように残るその龍魚の側面から、傷の抉れ具合いで鱗の継ぎ目が一番損傷が激しかったのを目聡く確認する。
「なるほど、そこが狙い目というわけですね!」

 しかし、龍魚達も縄張り外からチクチクと刺激してくるハロに怒りを抱いたのか、その気持ちへ比例するように身体を大きく膨張させて、小さなハロとの質量差をさらに離していく。
 分厚い鱗はさらに分厚く、もう簡単には貫けなくなっただろう。
「ですが弱点まで大きくなって狙いやすくなりましたね!ここからは打って出ます!」
 棒高跳びのように穂先を突き立て一気に伸ばすと、ハロは勢いよく縄張りの中へと飛び込んだ。
 向こうからすれば飛んで火にいる夏の虫。一斉に少女へ襲いかかるが、伸縮自在の三叉槍を巧みに操るハロを中々捉えることが出来ない。
 小さい身体に合わせた動きやすい短刀ほどの短さで躱し、それを伸ばして跳び退くために、蛇のようにまるで掴みどころがない。
 そしてすれ違いざま彼女が鱗の継ぎ目に切先を浅く突き立てていくと、傷は深くないはずなのに龍魚達は次々堕ちていく。
 また時には傷付けられた個体は狂ったように暴れまわり、周囲の龍魚達を巻き込んで道連れにしているのだ。
「毒がしっかりと効いているようですね。互いが邪魔になってきているようですし、もはやこの戦線は崩壊しました!」
 数で勝る者達の同士討ち、毒によって引き起こされるそれがハロの大きな追い風となって瞬く間に制圧していったのであった。

「ふぅ……食べた分は働けましたね。剥ぎ取りと回収は彼らに任せましょう。」
 その後、報告に戻ったハロを熟練達がベタ褒めして可愛がったのは言うまでもない。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月07日


挿絵イラスト