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異端の騎士と勇気ある村

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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 夕暮れ時、とある地方の村に異端の騎士が大群を率いてやってきた。
 あまりの物々しさに村人たちは恐怖し門戸を固く閉ざす。彼らに出来ることは部屋の片隅で震え、災いが過ぎ去るよう祈るのみ。
 そんな中、騎士の対応に出てきたのは村の代表である村長だ。村長は震える足を鞭打ち騎士の前にひざまづいた。
「こ、この度の来訪は、どのようなご用件でしょうか?」
 村長の言葉に騎士はうむ、と鷹揚に頷く。
「この村を包囲する。夜が明けるのを待ち、朝にここを攻めると伝えに来た」
「お、お待ちください! なにゆえ、そのようなことを!」
 突然の宣戦布告、いや処刑宣告に恐慌寸前となる村長。
 騎士は率いていた大群から一人の戦士を呼び、その鉄兜を脱ぐように命じた。
「お、お前は! 生贄に捧げられたはずでは……!」
 現れた顔に村長は戦慄する。それもそのはず、この男は村から領主に捧げられた生贄であり命を落としているはずなのだ。それが赤錆びれた武具を身に纏い、村に帰ってきたのだから驚かない方が難しい。
 村長の反応を騎士は愉快そうに笑う。
「たしかこの村の者だったな。この男は我が主の贄となる際、勇敢にも抵抗したのだよ。いたく感心した主はこの男に武具を与え、こうして村に帰ることを許されたのだ。よかったな、感動の再会だ」
「な、なんということを……」
 血の気の失せた顔で呆然とする村長に、生贄になるはずだった村の男は何の感情もない亡者の目を向けた。
「絶対に敵わない相手に歯向かう勇気。俺はこの男の勇気を、そしてこの勇敢な男を育てた村に敬意を表する。ゆえに俺は全力でこの村と戦い、滅ぼすことを誓う」
「お許しを! もっと税を納めます! 貢物も差し出します! ですからどうか、どうかご容赦を!」
 ただでさえ重税に喘いでいる村だが、ここで滅ぼされてしまっては未来がない。より重い税を課されることになっても生きる道はそれしかないのだ。
 地に額をこすり付けて許しを乞う村長を見下ろし、騎士と戦士は踵を返した。
「攻撃は明日の朝だ。お前達との戦いを楽しみにしているぞ」


 世界中から猟兵が集まるグリモアベースに一人の女がやってきた。
 グリモア猟兵のグロリア・グルッグは金色の電脳ゴーグルを装着し、これから説明する事件の現場を電脳空間に展開する。
「集まってくださり、本当にありがとうございます。今回の依頼はとても危険な内容です。それでも皆さんのお力をお借りしたいのです」
 電脳空間に表示されたのは一つの村と、それを取り囲むオブリビオンの群れ。
「現場はダークセイヴァーのとある村です。この村から生贄として出された男性が、領主のヴァンパイアに抵抗しました。それが原因となり、この村は滅ぼされようとしています」
 オブリビオンの群れから一体がズームアップされ、暗い朱色に染まった戦士の映像が浮かび上がる。
「これが勇気ある生贄の末路ということらしいです。もちろん、抵抗したことが悪いのではなくて、抵抗するような『活きのいい』生贄だったからこそ、オブリビオンに目を付けられたのでしょう」
 余興や娯楽で村を滅ぼすようなオブリビオンが、勇敢な生贄を出したという理由でその村を攻める。戯れに人を虐げる連中にとって理由など何でもいいのだ。
「この戦士を率いているのは異端の騎士です。領主のヴァンパイアの反応はありませんので、今回はこの戦士と騎士が敵となります」
 それと、とグロリアは説明を続ける。
「どうもこの騎士は形式というものにこだわりがあるようで、夕方に宣戦布告をし、明朝に攻めるつもりのようです。その間は村を包囲するだけで、奇襲をかけたりはしないようですね。何故そんな遠回りなことをするのか理解に困りますが、今回はそこが付け入る隙となります」
 電脳空間の画面が切り替わり、荷造りをしながら避難の準備を進めている村人達の様子が映し出される。この映像は録画か、それともリアルタイムなのかと猟兵が問うた。
「ライブ映像です。私が予知できたのはこれから事件が起きるということだけで、村人達は今、避難準備をしている最中でしょう」
 集まっていた猟兵はざわめき立ち、現場となる村の映像に見入った。
「皆さんにはこれから村へと飛び、村人の避難をサポートして頂きたいのです。着の身着のまま逃げるのであれば、まだ生きる目はあるのでしょうが……ダークセイヴァーで村を失うということは死に直結します。出来る限りの私財を持って逃げたいと思うのは、無理からぬことでしょう」
 家財道具を一式とまでは行かないまでも、当面の食料や衣類等、人間が生きていくのに必要な物資は多い。ましてや村を離れ、この先も生きるのであればなおさらだ。
 逃げなければオブリビオンに攻められ皆殺し。さりとて逃げたら逃げたで物資の不足や敵の追撃、魔獣等の外敵に怯える日々が待っている。その先にあるのは逃れようのない死だ。
 どう足掻いても絶望。それでも映像に映し出される村人達は、必死に荷物をまとめて避難準備を進めていた。彼らはまだ生存を諦めていないのだ。
「時間はまだあります。村人達は夜の闇に乗じて脱出するようですから、包囲しているオブリビオンをどう抜けるかが生死の分かれ目となるでしょう。皆さんにはそれぞれ得意とする方法で村人達の脱出をサポートしてもらい、そのまま連戦となってしまいますが、朝に攻め込んでくるオブリビオンを村で迎え撃ってください」
 敵の数が多いため村に引き込んで戦う方がやりやすいだろう。どの道敵は村に攻め込んでくるのだから建築破壊を食い止める意味でも都合がいい。この際の物的被害は必要経費だと考えよう。
「彼らを救えるのは皆さんだけです。危険な戦いになりますが、どうかよろしくお願いします!」
 そう言ってグロリアは頭を下げ、猟兵達を送り出した。


宝野ありか
 どうも、今回はよろしくお願いしますね。
 内容的にハードなので判定は厳しめにやろうと思います。

 以下、各章の補足等。

 第一章 撤退戦。
 時間は夜、村人が避難をし始める頃からスタート。
 村人の避難が重要なのでボスに向かって突撃する等は採用が難しいと思われます。
 有効そうな技能を活かせばプレイングボーナス適用。通常は2回程ダイスを振ります。

 第二章 集団戦。
 村人達を逃がした後、村に戻ってオブリビオンの群れと戦います。
 早朝なので明かりや足場等の戦闘環境に問題はありません。
 建物への被害等は判定に影響しません。

 第三章 ボス戦。
 異端の騎士との戦いです。ヴァンパイアは出てきません。
 騎士は血が熱くなるような戦いを望んでいるため集団戦には関与しません。

 また、戦闘後に村人へのフォロー等があれば彼らの今後がいくらか救われると思います。
 それではよろしくお願いします。
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第1章 冒険 『【撤退戦】村からの脱出』

POW   :    守りが薄いところを狙って突破。力で敵を足止めしつつ逃げる。

SPD   :    見つからないようにこっそりと脱出。速さを生かして敵を撹乱する。

WIZ   :    敵を罠にはめて時間を稼ぐ。姿を変えたり隠したりして逃げる。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●老爺の灯火
 夜。
 暗黒に閉ざされた夜の道を一組の老夫婦が歩いていた。
 老爺は杖のような物だけを頼りに野道を行き、その背には永年連れ添った老婆を背負っている。老婆はただにこにこと笑い、おじいさん、おじいさんと老爺に語り掛けていた。
「おじいさん、今日は月が綺麗ですねぇ」
 そうだね、と老爺は返す。
「おじいさん、明日はきっといい日になりますよ」
 そうだね、と老爺は返す。
 ――この世にいい日など無いよ。
 にこにこと語り掛けてくる老婆に優しく返事をしながら、老爺は自分達がこれから死ぬのだと覚悟していた。
 領主の兵隊が村を取り囲んだ夜、村人は総意として逃げることを選択した。
 全員で固まると見つかった時に全滅してしまうので、散り散りに逃げようとも話し合った。
 だが老爺は自分が逃げられるとは思わなかった。伴侶である老婆は息子夫婦に続きその孫までも領主に奪われ心を空にして。走るどころか歩くことすら苦しい年寄りが生き残っても村の皆に負担をかけるだけだからだ。
 村の皆はそれでも良いと言ってくれた。だから老爺は身を引き、未来ある彼らために出来ることをしようと決めたのだ。
「……ごめんね、巻き込んでしまって」
 背中に背負った、にこにこと夢を見たままの伴侶に詫びる。
 こうして夫婦二人、村の皆とは別の方向に逃げることで、もし見つかっても迷惑をかけないで済む。兵隊が来たらその分、他の場所が手薄になるかもしれない。そうすれば誰かが生き残れるかもしれない。
 奇跡を祈るようなものだが、それ以外に道がないのだから仕方ない。
 老爺に心残りがあるとすればただひとつ。
「次に生まれ変わることがあったら、また一緒になろうね」
 何も知らぬままの老婆を道連れにしてしまうことだった。
 ここではない場所から何か聞こえてくる。もしかしたら、村の誰かが見つかってしまったのかもしれない。
「……ここまで、かな。うん、ここまでだ。僕達はここまでだよ、おばあさん」
 老爺は懐から火打ち石を取り出すと、かちっかちっと打ち合わせて火の粉を散らす。それは杖の先端に巻かれていた油布に飛び移ると、即席の松明が出来上がる。
 老爺は松明を高々と天に突き出した。
「僕達の孫は勇敢だった。だから僕も勇気を出そう。……本当は怖いけれど」
 暗黒の荒野に火が灯る。それは希望ではなく絶望を呼び込むための光だ。あっという間に領主の兵隊に見つけられ、惨たらしく殺されてしまうだろう。
 だがそれでいいのだ。こうして何人かの兵隊を引き寄せれば、別の場所で誰かの逃げ道ができるかもしれない。だからこれでいいのだ。
 足の震えを必死にこらえ松明を掲げる老爺。予想していた通り、ざっざっざと兵隊の足跡が聞こえてきた。それでも老爺は松明を投げ出さない。
 それが人生の全てを奪われた年老いた男にできる、最後の抵抗だった。
「ずっと一緒ですよ、あなた」
 松明の明かりが領主の兵隊の姿を照らし出し、凶悪な武器が老夫婦へと振り下ろされた。
四軒屋・綴
≪アドリブ改変絡み歓迎≫

 脱出劇、『とくと御覧じろ』だッ!

 あまり策を練るタイプでもない、【POW】で行かせてもらおうッ!

 そうだな……まずはユーベルコードを使用して防御力重視の蒸気機関車系ヒーローに変身ッ!と電脳ゴーグルを使用して大まかな地図を視界に投影、大まかに逃走ルートを確認しつつ戦闘ッ!射撃用装備の【一斉発射】で敵軍を【吹き飛ばし】て足を止める【援護射撃】を展開ッ!同時に射撃には【属性攻撃】で『熱』を付加ッ!適当に草木を燃やせば多少の目晦ましにはなるだろうッ!逃走ルートは防がないように、踏み込んでくる敵は【ダッシュ】で駆け寄り【怪力】で【吹き飛ばす】ッ!ブーストダッシュでセーブだッ!


イサナ・ノーマンズランド
SPDを使用

【目立たない】ように【迷彩】で風景に紛れ込みつつ【忍び足】で移動しながら【暗視】ができるほど優れた【視力】で遠方の敵を索敵し、【スナイパー】らしく狙撃銃で【暗殺】し、包囲網に穴を開け、村人の撤退する【時間稼ぎ】をする。

「まあ、いろいろ思うところはあるよ。 イケニエとか」
「…………イケニエにされた人の気持ちをたまに考えてあげてね」
「そうするための時間は、わたしがかせいでみせるから」

アドリブもろもろ大歓迎です。



 銃声が鳴る。
 放たれた弾丸は正確無比に領主の兵隊の手首を撃ち抜いた。
 人体において関節とは隠しようのない急所である。関節を動かせるように装甲を工夫したとしても、防御力が落ちるのは避けられない。よって、兵隊が武器を落とし、狙われていた老夫婦が一命を取り留めたのも必然と言える。
「な、なにが……!?」
 いきなり兵隊がよろめいたことに戸惑った老爺は松明を右往左往させた。その明かりに照らされた別の兵隊が、目の前の人間を打ち殺すべく武器を振りかぶる。だが。
 銃声が鳴る。
 先ほどとまったく同じように、兵隊は手首を撃ち抜かれて武器を落とした。
 二人の兵隊は手首を抑え、もはや老爺ではなく周囲の何者かを警戒し始める。続々と集まってきた兵隊もまた警戒を強め、闇に潜む狙撃手の影を追った。
 そこへ。
「うおおおッ! 勇・蒸・連・結ッ――ジョウキングッ!! ゆくぞ、悪漢どもめえええッ!」
 怒髪天を衝くかの如くヘルメットから蒸気を噴き上げ四軒屋・綴が飛び込んできた。
 綴は走る勢いを緩めることなく装蒸甲化ジョークアームズを腕に装着。全ての砲門から煙を蒸かすと兵隊に狙いを定め、一斉発射をもって敵を吹き飛ばした。
 ふんっと綴は鼻息を荒くし老夫婦を守るべく陣取った。
「どうやらッ! 間に合ったようだなッ! 危ない目に遭わせてしまってすまないッ! だがここからは俺に任せておけッ! とぅッ!!」
 暴走列車の如く畳みかけた綴は老爺の前でかっこいいポーズを決めた。
「来たれマイボディッ! 蒸ぉぉぉ騎ッ、構築ッ!!」
 シケンヤゴーグルが電脳空間を展開し具現化プログラムを走らせる。綴の全身を強化するように合体用ボディが装着されていき、さらに蒸気機関車を思わせる武装が搭載された。
 綴は変身バンクの最後、尽きぬ勇気と心意気を燃やして自己強化を完了させたッ!
 説明しようッ! シケンヤ・ツヅルは戦闘用プラグラム蒸気構築を防御力重視に寄せることで装甲列車にも勝るほどの硬さを発揮できるのだッ!
「さぁ俺が相手だ悪漢どもッ! 脱出劇、『とくと御覧じろ』だッ!」

 蒸騎ヒーローと化したシケンヤが大立ち回りを演じて村人の老夫婦を守っている光景を暗がりから見つめる猟兵がいた。
 小柄な身体を目立たないように隠し、迷彩技術を駆使して敵の目をだましているイサナ・ノーマンズランドだ。イサナはスナイパーライフルに装着したスコープを覗き込みながら無垢な感想をこぼした。
「なにあれ」
 短く呟いたイサナの口がさらに動き、今度は別の感想を述べ始める。
「あれじゃね、変身ヒーローとか言うやつ。とにかく叫んでうるせぇわ暑苦しいわで俺の趣味じゃあないが、奴さん相当やると見た。ちょうどいい、囮になってもらおうぜ」
 ぺらぺらしゃべる言葉にイサナはふーんと適当な相槌を返す。自分でしゃべって自分で相槌を打つのは一見すると奇妙に思えるが、これはイサナの身体を間借りするレイゲンと呼ばれる別人格との会話だった。
 イサナが引き金を引く。銃声が鳴る。遠くの兵隊の手首を撃ち抜いた。
 熟練の手つきでリロードしながらイサナは忍び足で位置取りを変更。ずっと同じポジションから狙撃するのは自殺行為に等しいからだ。
 スナイパーは自分の位置を敵に知られてはならない。
「そろそろ土地勘も取れてきたか? ならさくさく殺していこうぜ」
 煽ってくるレイゲンにイサナはそうだねぇと軽い口調で応答した。ポジショニングを変えて狙撃手の勘でライフルを構える。スコープを覗いた時にはもう兵隊の顔が見えていた。
 引き金を引く。銃声が鳴る。兵隊の頭が吹き飛んだ。
「かぶとっていうの? 目のところがせまいよね」
「鉄兜ってのはそういうモンだよ。狙って撃って当たるなら意味ねーけどな。だがいい感じだ、ちゃんと一発で殺せる。弾は大丈夫か? この状況で弾切れなんて笑い話にもなんねーぞイサナ」
「まだまだいっぱいあるよ。ちゃんと準備してきたもん」
 リロードして撃つ。敵が死ぬ。イサナは村人が逃げるためのルートを確保するついでに兵隊の数を減らしていた。
(イケニエ、かぁ……よく分かんないや。でも、その人はどんな気持ちだったんだろうね。それを考える時間くらいは、わたしが何とかするよ)
 引き金を引く。銃声が鳴る。人々に犠牲を強いてきた領主の尖兵が斃された。

 思わぬ援護射撃に胸を熱くしながらシケンヤこと綴は老夫婦を守り逃がしていた。
「何たる幸運ッ! 俺にも仲間が居たのだッ! ならば俺はッ! 全身全霊で脱出劇を完遂してみせようッ!」
 綴は追いすがる兵隊を射撃と熱による攻撃で退け、同時に火を起こすことで自らが目立つように仕向けた。電脳ゴーグルに表示される大まかなマップと逃走経路を確認しながら老夫婦を先へと逃がす。そこへ立ちふさがるように新手がやってきた。
「させるものかッ!」
 綴はダッシュで敵に駆け寄り怪力で殴り飛ばす。宙を舞った敵に銃声が鳴ると、それきり立ち上がってはこなかった。
 やがて包囲網を抜けると綴は老夫婦を送り出し、自らは再び戦場へと踵を返した。その背中に老爺が声をかける。
「た、助けてくれて本当にありがとう! 出来れば他の皆も助けてほしい! それと、君はいったい、何者なんだい!」
 老爺の問いかけに綴は振り返り決めポーズを見せた。
「俺は、俺達はッ! 悪を許さぬイェーガーだッ!!」
 そうして猟兵は暗黒の荒野に舞い戻る。
 世界に絶望を振りまくオブリビオンを狩るために。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

楠瀬・亜夜
最後まで運命に抗った彼、絶望の淵でさえ諦めない村人達
オブリビオンに同意するのは癪ですが
確かに敬意に値しますね……必ず守ってみせます

【shadow hearts】を展開し、影蝙蝠に上空から周囲を確認してもらい
敵の位置を確認します。
位置を確認次第、先行して避難する村人より先に敵の位置へ向かい
闇夜に乗じて音を立てないように身を隠しながら【先制攻撃】【暗殺】で
敵を一人一人ナイフで始末していきましょう。
この際は【聞き耳】で周囲の状況にも気を配っておかないとですね。

敵に気づかれない間にどれだけ避難を進められるかが重要ですね
一つ一つの行動を迅速に行いましょう。【SPD】



 にわかにざわめき出した闇夜の戦場に臨む楠瀬・亜夜。
「――来たれ我が眷属、具現せよ我が心」
 亜夜は『shadow hearts』を展開して自らの眷属たる影の蝙蝠を召喚した。
 影蝙蝠は闇に溶け込むように夜空を舞うと、上空から村の周辺を確認して回る。
 亜夜が欲した情報は敵の位置。村人の避難ルートはある程度まで絞り込めるため、不確定要素である敵の動きが重要となる。その全てを把握するのは難しくても、避難ルート上に配置されている敵が分かれば重畳だ。
「最後まで運命に抗った彼、絶望の淵でさえ諦めない村人達。オブリビオンに同意するのは癪ですが、確かに敬意に値しますね……必ず守ってみせます」
 浅く身を抱くように両手を回し亜夜は影蝙蝠の報告を待つ。兵は拙速を尊ぶとはよく聞く言葉だが、情報収集する時間くらいは待ってもいいだろう。
 一陣の夜風が吹いた。
 亜夜は影蝙蝠から報告された敵の位置と予想避難ルートを頭の中で照合する。
 導き出された戦闘エリアまでの効率的なルートをも計算し終え、亜夜はよし、と小さく気合を入れてナイフを握った。
 夜を駆ける。
 まるで影が地を滑るかのように亜夜は走り敵の警戒網をするりと抜けた。
 鋭敏化された第六感が敵の視線を感じ取り、専門的な訓練を積んだかのような聞き耳は戦場のわずかな物音をも拾う。それを脳内で処理しつつ戦闘知識と合わせると、夜だとは思えないほど戦場の様子がクリアになった。
 亜夜は目標としたエリアまで敵に発見されることなく到達。まだ村人は来ていないが、その未来を塞ぐように領主の兵隊が配置されていた。
(一つ一つの行動を迅速に)
 音もなく敵に忍び寄り、ナイフを握る手に力を込めた。ここからは速度と効率が全てに優先される。効率とはこれ即ち殺害手順。いかに迅く殺し、いかに速く身を隠すか。敵に自分の位置はおろか存在すら気づかれずに処理していけるのがベストだ。
 すうっと敵の背後に回り込むと、亜夜はナイフを心臓に滑り込ませた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アンジェリカ・クリエムヒルト
「お逃げなさい、ここは私が引き受けます。後で生きて再開しましょう。」
そう撤退する村人に呼びかけ、オブリビオンの前に立ちはだかります。
誰かが戦う勇気を、そして村人たちに味方する者がいるということを知らせなければなりません。
ユーベルコード「トリニティ・エンハンス」で防御力を上げ、拠点防御、武器受け、時間稼ぎを駆使してオブリビオン達を足止めし、村人の逃げる時間を稼ぎます。
できれば戦場を細道などの狭隘な場所を選び、多数の敵に囲まれないように注意しながらルーンブレイドと魔法を用いて、多彩な技で敵を翻弄しますわ。
・・・どうかご無事で。



 明かりを持たず夜の闇を逃げる村人がいた。光があれば逃げやすくはなるが、敵を引き寄せてしまうので都合が悪い。
 闇は足元を隠し敵の姿を隠すが、逆に村人の姿も隠してくれる。逃げる者にとっては悪いだけの条件ではないだろう。
 だが村人は多くの荷物を抱えていた。どれだけ必要最低限に絞っても、これだけは手放せない物というのもあるのだ。そうして膨らんでしまった荷物がこの村人の運命を決定づける。
「う、うわっ!」
 恐怖や焦りから足をもつれさせ、村人は荷物を抱え転倒した。物音を立てず逃げることが絶対条件であった逃避行はそこで終了。村人は慌てて立ち上がり、地面に転がった荷物をどうするべきか迷う。
 村人は断腸の思いで荷物を手放し逃げるが、行く手を阻むように領主の兵隊が現れた。言葉を無くして後ずさる村人を、兵隊は亡者のような生気のない目で追い詰める。凶悪な武器を振りかざし、無力な村人に一撃を見舞おうとする。
「お待ちなさい! これ以上の狼藉は私が許しません!」
 ばっと飛び出してきたアンジェリカ・クリエムヒルトがルーンブレイドを構えると、そちらが敵だと認識した兵隊が矛先を変えた。
 間一髪で難を逃れた村人が腰を抜かしてへたり込む。だがいまはそんな悠長な場面ではない。アンジェリカは村人に立ち上がるよう促した。
「お逃げなさい、ここは私が引き受けます。後で生きて再会しましょう」
「あ、あんたは、いったい……」
「私は味方です。さぁ、行ってください。今度は転ばず、しっかりと」
「あ、ああ。すまない、恩に着るよ!」
 村人を逃がしながらアンジェリカは敵と相対する。目的は村人が逃げるための時間を稼ぐこと。トリニティ・エンハンスで防御力を高めることでその目的を果たす。
 アンジェリカは油断なく敵の出方を見極め、その攻撃をルーンブレイドで受け止めた。加えられる力をそのまま押し返して敵の体勢を崩し、大振りの一撃を放つことで深手を与えることに成功した。
 だがアンジェリカが追撃するより早く別の兵隊が現れる。敵の数を減らす格好の機会ではあったがここで無理をしては元も子もない。
 アンジェリカは攻撃から位置取りに切り替え、より迎撃しやすい地形へと戦場を移す。すでに敵の狙いは村人になくアンジェリカにあるようだ。
「くっ、さすがに数が多いですね」
 村人を逃がすという作戦目的は達成した。あとはこのまま戦い他の村人が逃げる時間も稼ぐのみ。たとえ多勢に無勢であったとしても後れを取るわけにはいかない。
 誰かが戦う勇気を見せねばならないという強い想いがアンジェリカを支えていた。絶望に抗った村人達と同じく、巨大な悪と戦う者がここにも居るのだと。
 アンジェリカはルーンブレイドに魔力を注いだ。その剣は夜の闇に負けぬ輝きを放ち、ここに勇気があると世界に示す。
(……どうかご無事で。私も負けませんから)
 村人達の無事を祈り、アンジェリカは光り輝くルーンブレイドを振り抜いた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

パルマ・ヴィーゲンリート
相変わらず、この世界の領主様は変わった趣味をお持ちですこと。
猟兵になることが出来て、本当に良かったですわ。
あの胸糞悪い連中をボコボコにして、さらにお給料までもらえるなんて!

リザレクト・オブリビオンで、死霊騎士と死霊蛇竜を召喚。
騎士には持てるだけ、村人の荷物を持っていただきましょう。
蛇竜は包囲を突破するときに、陽動として動いてもらいます。
うまく敵を惹きつけて、包囲の隙間を作れればいいのですけれど。
騎士は今回荷物持ちですが、万が一の場合は、
荷物を放り出してでも、村人を守るようにいたします。

私自信は、村人を安心させるよう話しかけます。
領主や騎士に対する愚痴でも言えれば奮い立つでしょうか。



 包囲された村から逃げると決めた村人の全てが勇敢だったわけではない。中には状況に流されるがまま、訳も分からず逃げざるを得なかった者もいた。
 いま暗がりに伏せて身体を震わせる村娘もその一人だ。
 周りには誰もいない。村娘にはもう身寄りが無いのだ。家族などとっくの昔に殺されていて、村でひっそり生かされていただけのか弱き者。
 それでも必死に声を抑え恐怖に抗っているのは立派だと言えるだろうか。見つかるのは時間の問題だとしても、たしかに村娘は自分を助けようとしていた。
 だが。
 多くの足音が接近してきた。領主の兵隊に見つかったのだろうか。
 沈黙すべきか、走るべきか。村娘が命がけの決断を迫られた時、まるで貴婦人がそうするような上品な声が響いた。
「ごきげんよう、皆様。今宵も月が綺麗ですね」
 それは誰に向けられた言葉だっただろうか。
 首狩りパルマの異名を持つボーパルバニーのパルマ・ヴィーゲンリートは軽やかに夜の闇へと踏み出すと死霊騎士と死霊蛇竜を召喚した。
 暗がりに伏せていた村娘が、突然現れた死霊にひっと小さく悲鳴をもらす。無理もない、その騎士と蛇竜は人ならざるモノだったのだから。
「どうかご安心を。彼らは味方ですので。私もそうです、あなた方を助けに参りました」
「たす、け……?」
 呆然と呟いた村娘の声にはい、と短く返したパルマは近づいてきた領主の兵隊に死霊達をけしかける。
 蛇竜が地を這い兵隊の足を止め、その間隙を突いた騎士の剣が首をはねる。『首狩り』と呼ばれ恐れられた技の冴えをまざまざと見せつけ、パルマは村娘に手を差し出した。
「さぁお立ちなさい。ここは既に戦場となりました。私がお供します、一緒にここを離れましょう」
「たすけて、くれるの……?」
「そう申しました」
 さぁ、とパルマはもう一度手を伸ばす。戦場と化した場所でもたつくのは非常に危ういのだ。多少の強引さは必要だろう。
 村娘は恐る恐るパルマの手を取り立ち上がる。パルマは村娘の荷物の一部を受け持つとそのまま歩き出した。
「あ、あのっ、わたし、ぐずで、のろまで、いつも皆に、迷惑ばかりかけて……!」
 泣きながらついて来る村娘の泣き言にそうですか、と返すパルマ。戦闘は死霊達に任せておき、空いた包囲網の隙間から村人を逃がす作戦だ。
 別の場所でも戦いが起きており敵の注意は分散している。そういう時こそ狙い目なのだとパルマの経験が告げていた。
 戦果は上々、これといった問題もなく村人を逃がせるだろう。だからこれは作戦とは関係のないリップサービスだ。
「私、猟兵になることが出来て本当に良かったですわ。あの胸糞悪い連中をボコボコにして、さらにお給料までもらえるなんて!」
「ぼ、ボコボコ?」
「そうです、ボコボコですわ。あの騎士も、いつかは変わった趣味の領主様も。皆まとめてボコボコにして差し上げますわ」
「そ、そんなことが、本当に……」
 ダークセイヴァーにおいて恐怖と支配の象徴である領主達。それらをボコボコにするというパルマの言葉は、村娘にどう響いたのか。
 握り返される手にぎゅっと力が込められ、泣き言はもう出なかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

木目・一葉
怖気づいてる場合ではない
必ず成し遂げる

【SPD】速さを生かして敵を撹乱する

まず民の詳細な避難ルートを【情報収集】して仲間と共有
民が捕捉されずに脱出するには、敵の監視の目を潰すか誘導するかの二つだ
僕は二つとも実践する

脱出開始時、ルートの障害となる敵陣へ【目立たない】よう先行
敵陣と一定の距離を保った所で、『妖刀解放』の衝撃波で、民の動向を監視し、尚且つ敵全体の目となる監視者を狙う
それを潰し続けたら、敵も僕を無視できず【おびき寄せ】に掛かるだろう
そのまま【地形の利用】を駆使して囮となり、敵を民から遠ざける
敵が自分に近づいたら『グラウンドクラッシャー』で多くの敵の足元を地形破壊し、移動を困難にさせる



 闇に臨む一人の猟兵がいる。
 夜の戦場はそこかしこで戦いが起きており、自身もまたその戦いに飛び込んで行くのだ。
 いくつもの戦いを越えてきた。だが、戦いとは怖いものだ。それでも怖気づいている場合ではないと、木目・一葉は灰の仮面の奥で決意を固めた。
 ――必ず成し遂げる。
 踏み出した一歩は軽く、駆け出した二歩は力強く。
 戦場を駆ける。
 一葉は頭の中で周辺の地形と自分の現在地を描きながら、そこに村人の避難ルートを重ね合わせた。村人が分散して逃げるという手を打ったので、それに対応するにはこちらも分散するのが合理的だろう。
 速度を上げた一葉が向かう先は敵中真っただ中。敵の監視の目を潰してしまえば村人が逃げるチャンスも増える。さらに引っ掻き回してやればこっちを優先せざるを得なくなる。
 まさに暴れ得だ。
 眼前に大き目の兵隊の一団が見えた。位置的に村人の避難ルートとかち合う可能性が高い。早急に排除してしまうべきだろう。
 兵隊はしきりに周囲を見回しているようだ。警戒を強めている相手に奇襲を仕掛けるべく、一葉はさらに加速し真正面から突撃した。
 妖剣解放。闇に閃いた妖の小太刀より斬撃の衝撃波が放たれ兵隊の一団を叩き付けた。思わぬ不意打ちを受けた兵隊がリアクションを起こすより早く一葉は追撃する。
「吼えろグリューアンクル!」
 一葉は振りかぶった柄の長い巨大戦斧で兵隊を一網打尽にせんと打撃した。
 超重なる一撃は兵隊の一人を圧壊するに留まらず、破壊の余波で周囲の地形をクレーターにしてみせる。
 地形すら変えてしまう一葉の攻撃に兵隊は足を竦ませたようだ。
 こうして敵を潰して回れば村人も逃げやすくなるだろう。
 ロングコートを翻し、一葉は次の破壊目標へと駆け出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

結城・蓮
フラウロス(f08151)と。
またキミと戦場に立つ事になろうとはね。
ま、よろしく頼むよ、血風姫。

生贄に出した人のせいで…等と恨めしく思うかもしれないが、彼だって死にたくはなかったはずだ。
精一杯の抵抗がこんな事になろうとは思わなかっただろうけどね。
彼を悪く思っちゃいけない。悪いのは異端の騎士なんだ。

さて、村人をきっちりと逃がさないとね。
血風姫が注意を引いている間に誘導して皆を逃がそう。
見つかりそうになったら《幻影の姫君》で手を取って、二人分隠す。
子供を中心に。彼らは未来への希望だ。
手が回らないようなら、負担は増えるけど《泡沫の鏡像》で分身して二人で《幻影の姫君》だ。
「まずいな…ちょっと失礼!」


フラウロス・ハウレス
蓮(f10083)と共に
待ち侘びたぞトリッカー
庶民の相手は妾には向かぬ、貴様の手練に期待しているぞ

にしてもだ
趣味の悪い意趣返しというわけか、面白い
彼奴が吸血鬼でないのは残念だがな

さて、妾が出来る事などそう多くはあるまい
事前に逃げる方向を決めてもらおう
妾は包囲している敵の群れに殴り込みに行こう
逃げる道を塞ぐ敵の注意を引くくらい派手に行こうではないか

【アースシェイカー】で地面ごと抉ろう
音と振動で注意を引ければ僥倖だ
受けた傷は敵への吸血と生命力吸収で補い、流れた血は【ブラッド・ガイスト】で黒爪にくれてやろう
「遠慮は要らんぞ、黒爪!存分に喰らいつくせ!」

適度な頃合いで離脱する
命を賭ける場ではないのでな



 地響きのような重い音が夜の戦場を震わせた。
 その爆心地とでも呼ぶべき場所には一人の幼い猟兵が拳を地面に突き立てている。ロリータ風の可愛らしい服装に反し、その貌に浮かんでいるのは血に飢えたケモノを思わせる獰猛さだ。
 フラウロス・ハウレスは今しがた肉片と変えた敵の残りかすを振り捨てながらゆるりと立ち上がる。破壊された地形の中心に立つその姿は、一種の畏怖さえも敵に与えるだろう。
「ふん、脆い脆い。妾を幼子と侮ったか? 吸血鬼の手駒風情が笑わせてくれるではないか!」
 八重歯を剥き出しにして笑うフラウロス。周囲を取り囲もうとする兵隊など微塵も脅威だとは思っていないようだ。
 事実、兵隊などフラウロスの敵ではなかった。吸血鬼狩りを生業とする彼女にとってその配下の配下など、雑魚と呼ぶより他にない非力さだ。
 だが今回の作戦はその配下よりもか弱い村人達を逃がすこと。歯応えのない敵を相手にすることに一抹の不満がないとは言わないが、庶民を導いて逃がすよりはこうして暴れている方が向いている。
 ――そういうものはトリッカーの領分であるしな。あやつめの手練に任せるとしようではないか。
 フラウロスは後方で動く相棒に村人の救助を任せ、己の得意とする暴力を行使し兵隊の群れへと殴り込んだ。

 血風姫が派手に暴れているエリアを避けるよう、結城・蓮はいくつかの家族を連れて誘導していた。
 マジシャンである蓮は戦場というステージにあっても冷静さを失わない。事前に共有された地形、敵の包囲網、村人の避難ルートといった情報から、華麗なる脱出マジックを組み上げてみせた。
「さぁ、彼女が暴れている間にこっちへ」
「焦らなくていいよ、ゆっくりね」
 二人の蓮が村人達の家族を守るように誘導していく。同じ人間が二人という光景に初めこそ戸惑っていた村人達だが、蓮は持ち前の人心掌握術であっと言う間に彼らの心を掴んでいた。
 敵の気配がすれば村人達を伏せさせ幻影の姫君にて触れた子供らを隠す。我が子の安全が保障された親は自分の身を守ることに集中できるため、家族連れの避難はスムーズに進んだ。
 ある程度まで包囲網を抜けた先で蓮が村人達に声をかけた。
「生贄に出した人のせいで……等と恨めしく思うかもしれないが、彼だって死にたくはなかったはずだ。精一杯の抵抗がこんな事になろうとは思わなかっただろうけどね。彼を悪く思っちゃいけない。悪いのは異端の騎士なんだ」
 死者を想った蓮の言葉に、一人の父親が苦しげな顔で返した。
「恨むだなんて、そんなこと……。あいつ、死ぬなら独り身の俺だろうって、自分で手ぇ上げて。俺は所帯持っちまったし、何も言えなくて……」
 それは己の罪を告解するような、苦渋に満ちた吐露だった。
 生贄の選定という非人道的な残虐行為に晒された村人達。彼らの心境に寄り添い、蓮はそっか、と小さく呟いた。
「勇気があったんだね、その人は」
 自己犠牲にも等しい勇気。その勇気を踏みにじり、あろうことか彼が守ろうとした村を攻める口実にしたのだ。
 異端の騎士と領主は。
 静かな怒りを胸に秘め、蓮は村人達を安全圏へと脱出させた。

 なおも戦いは続く。
 フラウロスは敵の胸を素手で貫き、漏れ出た血液を吸血することで己の生命力を補充した。
 最後の一滴まで吸い尽くし、無造作に打ち捨てる。
「ふん、数だけは立派であるな。有象無象とて群れをなせばそれなりの歯応えにはなるか」
 不満そうに独り言つと、フラウロスは流れ出た自らの血液を黒爪に注ぎ込む。術者の血液を代償に黒爪は形態を変化させ、より狂暴な姿へと姿を変えた。
「遠慮は要らんぞ、黒爪! 存分に喰らいつくせ!」
 血風姫が黒き風となって舞い踊り、多くの兵隊が絶命した。
 一しきり暴れたフラウロスの元へ村人の避難を終えた蓮が合流する。
「随分と派手にやったようだね血風姫」
「待ち侘びたぞトリッカー。して、首尾は?」
「ボクがしくじるとでも? 稀代の天才マジシャンRENの脱出マジックは見事に成功したよ」
「で、あるか。庶民の相手は妾には向かぬゆえ、貴様に任せて正解だったな」
 軽妙に言葉を交わすフラウロスと蓮。そこには戦場を共にする仲間への確かな信頼があった。
 二人は互いにカバーし合い戦場を駆け抜ける。
 夜明けはすぐそこまで迫っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シン・ドレッドノート
【狐の宿】で連携します。
敵の包囲が薄い所を探し、味方が足止めしている間に村人を素早く逃がします。

まずは【漆黒の追跡者】で召喚した鴉(チェイサー)を放ち、包囲が薄い所を探索。
味方に連絡、突破口ができたら、[逃げ足]を活かして村人を連れて逃げます。
怪我人や老人、子供など、足の遅い人は[救助活動]で『ノーブル・スカーレット』に乗せて移動。

「大丈夫、私達がついています」
鴉で[情報収集]して逃げる道を確認しつつ、村人を[鼓舞]で励まし、[聞き耳]を立て[忍び足]でできるだけ静かに[目立たない]よう移動します。

追撃してくる敵がいたら、[狙撃]して足止め。
「貴方達の相手は、後でゆっくりしてさしあげます。」


護堂・結城
【狐の宿】と連携

大物狩りだけが俺達の仕事じゃないってな
それじゃ救助、張り切っていきますか!

【POW】

俺は囮と足止めだな
大暴れするから先に行ってくれ

『雪見九尾の闘気の尾』を発動、炎雷の巨人を召喚。
暗闇に乗じて逃げるなら明るくて目立つ囮がいたほうがいいだろ

氷牙を巨大なハンマーに変形
雷の【属性攻撃+生命力吸収】を載せた【衝撃波+範囲攻撃+マヒ攻撃】の【2回攻撃】を巨人と共に【怪力】で大地に叩きつける
各種揃えた耐性にもたまには役に立ってもらわねーとな

ある程度住民の避難が終われば自分も撤退
先に行った猟兵を【追跡】して追いかけた敵を背後から襲撃して仲間と合流を目指すぜ


クロウ・タツガミ
【狐の宿】と連携

身は1つ腕は2本、零れるは止めれずとも届くものは在るか

【POW】

まずは逃げる道筋を作る

【先制攻撃】でサカホコ(ハルバート)を用い【怪力】と【2回攻撃】で突破口の作成を試みる

ここは自分が食い止める、先に行け

【戦闘知識】を用い、【地形を利用】し幅の狭く少人数で敵を防げる場所で敵の足止めを試みる。猟兵や人への攻撃はガントレッドの【盾受け】で【かばう】つもりだ。【激痛耐性】の出番だな 

抜けた敵はレプリカを【力を溜め】【投擲】し少しでも時間を稼ぐつもりだ

怪我人には【救助活動】として気付け代わりの【霊酒】を渡そう

最後の足止めとして【黒帝九相】で無数の磔の柱を放ち、翼を出し空を飛び撤退だ



 旅団【狐の宿】から参戦した三人組はそれぞれに役割を振ることで連携の精度を高めていた。
 多数の敵を相手に村人を逃がすべく彼らの取った作戦は、二方面で敵を食い止めその中央を突破する王道にしてパワフルな戦術だ。

「大物狩りだけが俺達の仕事じゃないってな。それじゃ救助、張り切っていきますか!」
 護堂・結城は避難ルートの右舷を抑えるべく『雪見九尾の闘気の尾』を発動し、炎雷の巨人を召喚した。
 暗闇に乗じて逃げるなら明るくて目立つ囮がいたほうがいい。結城の思惑通りに炎雷の巨人を見上げた兵隊は地面への注意が薄くなり、意識の大半を巨人に奪われた。
 ――大暴れするから先に行ってくれよ。
 内心で村人達が逃げられることを祈り、結城はお供竜の氷牙を巨大なハンマーへと変形させた。すると巨人も同じように、炎と雷を変化させては超大なハンマーを握りしめる。
 炎雷の巨人は術者である結城が持つ武器を巨大化させた物を持ち、同じ動きで戦ってくれるのだ。一人で多数の敵と広範囲のエリアを受け持つには心強い味方である。
「準備はできたぜ! 死にたい奴からかかってきな!」
 とは言ったものの別段敵を待ってやる必要はない。結城は鍛え上げた怪力でハンマーを大上段に構えると、多数の兵隊がいる方向の地面に叩き付けた。
 着弾地点から雷撃を伴う衝撃波が放たれ兵隊を薙ぎ払う。感電した兵隊がわずかに動きを止めた頭上から、炎と雷からなる巨人の鉄槌が振り落とされた。
「もういっちょ!」
 結城は間髪入れずハンマーを振り上げ地面を叩く。雷の衝撃波が兵隊を一撫でし、その上から巨人が叩き潰した。

 右舷側が派手に暴れ出し、左舷側を担当するクロウ・タツガミも静かに戦意を高める。
「身は一つ腕は二本。零れるは止めれずとも届くものは在るか」
 いかな強者とて身一つでは出来ることに限りがある。それでもクロウは守れるものがあると信じ長斧槍のサカホコを構えて兵隊を迎え撃った。
 怪力をもって振るわれたサカホコは兵隊の首をへし折り、返す刀でもう一人を弾き飛ばす。弾かれた兵隊が別の兵隊にぶつかり、動きを止めた所を無慈悲な槍刃が諸共に貫いた。
 サカホコを引き抜き穂先を振るう。先端に重心が乗る斧と、柄の長い槍を組み合わせた独特な武器であるが、クロウはそれを難なく使いこなしてみせた。
 一説には最強の白兵武器とも称されるハルバートは、繰り出せる技が多いだけに習熟の難易度が極めて高い。刹那の判断が必要となる戦闘において的確な攻撃方法を選択し、それを即座に実行できたならば。
 白兵戦でクロウに敵う者は存在しないだろう。
 サカホコの攻撃圏内を見極めようとした兵隊に、クロウは投げナイフのレプリカを投擲し絶命させる。中距離をカバーするための暗器ではあったが、怪力を溜めて撃ち出されるナイフはもはや銃弾だ。
 近寄ればサカホコが、近寄らなければレプリカが飛んでくる。どう転んでも痛手を負う状況が兵隊の足を鈍らせ、クロウはその目的を果たしていた。
 ――ここは自分が食い止める、先に行け。
 クロウは己に任された足止めの役割に徹し、村人達が逃げられるよう突破口を開く。神無き地にて押し寄せる絶望を薙ぎ払い、人々に明日を届けるために。

 村人達の避難を誘導するシン・ドレッドノートは、進路の左右両舷で戦う仲間達を信じて中央突破を進行させる。
 周囲の戦況は召喚した漆黒の鴉の目を通して確認し敵のいないルートを通るのだ。情報を得ているシンとは違い、後に続く村人達は暗闇の恐怖に耐えながら足を前に出していた。
「大丈夫、私達がついています」
 その不安をいくらかでも和らげようとシンは声をかけ村人達を鼓舞した。励ましの言葉がどこまで届いたかは分からないが、村人達は無言でシンを見ると首を縦に振った。
 心が強い。そう思った。
 暗黒の闇の中、敵が来るかもしれないという恐怖に怯えながら、誰一人として泣き叫びも取り乱しもしていない。ぐっと歯を食いしばって恐怖に耐え、助け船を出したシン達を信じてついて来るのだ。
 その決断は生半可なことではなかっただろう。選択を誤れば自分も家族も皆殺しにされるのだから。
 それでも村人達は信じた。シン達に命を預けた。
 彼らの信頼と決断を生還へと導くため、シンは耳を澄まして戦場の音を聞き分ける。上空では鴉が飛び交い、見下ろしの俯瞰図を教えてくれた。広い視野と研ぎ澄まされた聞き耳を駆使することで、おのずと正しい道筋が浮かび上がってくる。
 シンは忍び足で先行し、村人共々目立たないように激戦区を少しずつ渡っていった。地道で気の遠くなるような時間が続いていたが、通り抜けた後方で兵隊の足音が鳴る。
 敵が何かをするより速く、シンは純白に紅いラインの入った粒子砲スカーレット・ブラスターを抜いて撃つ。放たれた熱線が音もなく敵に吸い込まれ、撃ち抜かれた敵は悲鳴を発する間もなく倒された。
「……少し、急ぎましょうか。ここからはあなた達が先に進んでください。私は殿を務め、敵の追撃阻止と露払いを平行します。出来ますね?」
 深刻さを深めたシンの言葉に力強い首肯で返す村人達。その目に恐怖がないわけではなかったが、生きようとする意志も宿っていた。

 状況の変化をシンの使役する鴉から受け取った結城とクロウは、作戦を次の段階へと進めて戦場を変化させた。
 なおも威力的に戦いながら、徐々に立ち位置を下げて中央にいるシンと合流。ここに狐の宿の三人組は集い、お互いに夜通し戦ったひどい顔を笑い合う。
「避難の方はどうよ? あらかた終わったんなら俺達も撤退しようぜ」
「怪我人には自分の霊酒を渡してくれたか? ……そうか、ならいい」
 結城とクロウはシンに避難状況を聞きながらも戦う手を止めない。なにせ二戦場分の敵と追いすがる敵も合流しているのだ、数を数えだしたらそれこそ夜が明ける。
 シンもまた粒子銃で敵を撃ち抜きながら冷徹な目で敵に告げた。
「貴方達の相手は、後でゆっくりしてさしあげます」
 しばらく三人で戦ったことで、村人達が安全な場所まで逃げる時間は十分に稼げただろう。あとは自分達がこの囲みを突破するのみ。
 やるか、と誰かが短く発し、全員が同時に頷いた。
「――滅べば皆、九相に至る」
 先陣を切ったクロウが武器を構えて『黒帝九相』を展開。放たれた無数の拷問具が広範囲の敵を薙ぎ倒す。
「これが今夜最後の一発だ! 遠慮なくもらってくれ!」
 結城と炎雷の巨人がハンマーを同じ方面に叩き付けて活路をこじ開けた。
 敵の包囲が崩れ、守りが薄くなった場所に狙いを定めたシンは宇宙バイクのノーブル・スカーレットのアクセルを吹かせる。
「乗りなさい! 突っ込みますよ!」
 はいよっと軽く答えた結城は巨人を解除してバイクの後ろに飛び乗った。
 黄金のラインを黎明に刻んでノーブル・スカーレットが駆け抜ける。その疾駆と呼ぶに相応しい速さを、クロウは背より出した竜の翼で空を飛びながら追いかけた。
 こうして狐の宿の三人は村人の避難と敵陣からの離脱を両立させ、来るべく戦いの朝に向かって駆けるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『朱殷の隷属戦士』

POW   :    慟哭のフレイル
【闇の力と血が染付いたフレイル】が命中した対象に対し、高威力高命中の【血から滲み出る、心に直接響く犠牲者の慟哭】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    血濡れの盾刃
【表面に棘を備えた盾を前面に構えての突進】による素早い一撃を放つ。また、【盾以外の武器を捨てる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    裏切りの弾丸
【マスケット銃より放った魔を封じる銀の弾丸】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 朝が来た。
 戦いの朝が。

 誰よりもこの夜明けを待ち望んでいた異端の騎士は、自らが召喚した巨大な黒き騎馬にまたがり深いため息をついた。
 鉄兜の隙間から漏れ出た白い息が朝焼けの空に溶けていく。
「……これほど朝が来るのを待ったのは何時ぶりだろうな。この地に蘇って幾星霜、手慰みに殺して回ったが……やはり、殺すなら活きの良い人間に限る。お前もそう思うだろう? 勇気ある村人だった男よ」
 馬上より見下ろし、無言で傍に控える朱殷の隷属戦士に語り掛ける。だが自我を持たぬ亡者にすぎぬ戦士は何も応答せず、目の間に在る辺鄙な村を見据えていた。
 かつて自分が生まれ育った村を。
 自らが犠牲になってでも守りたかった村を。
 救われて欲しい誰かが居た村を。
 ――これから、破壊するために。
「昨夜は何か起きていたようだが、ククク、さぁ何があったのだろうな? 案の定逃げ出した村人共が決死の覚悟で暴れたか? それとも何者かが救いに来たか? 分からんなぁ、これだから人間狩りは止められん」
 鉄兜の奥で異端の騎士が邪悪に嗤う。
 夜間、何かが起きていたことは当然のように察知していた。だが、それを確認しては朝の楽しみが減るというもの。
 逃げ出した村人が殺戮されたのなら、その骸を見つけ出そう。もし逃げ延びた者がいるなら狩りに出よう。あるいは予期せぬ何かが起きていたら、それを確かめに行こう。
 何が起きたか分からないという状況をこそ、異端の騎士は楽しんでいた。
 刺激のない退屈な日々に飽きていたのだ。たまさか巡り合えた勇気ある村を、存分に味わい尽くさねば損である。
「では約束通り、戦いを始めるとしようか。盾を鳴らせ! 進むのだ! あの村へ向かえ! あの村を狙え! 誰一人として生かすな!」
 号令を発した異端の騎士が騎馬を歩かせた。それに続くように朱殷の隷属戦士が盾を打ち鳴らすと、その隣の戦士も盾を打ち、またその隣の戦士も盾を打つ。
 波のように広がる盾の大合唱。それが怒涛となりて村の周囲を駆け巡った。
 戦士の群れが盾を鳴らして歩を進める。あの村へと向かって、あの村を狙って。
 騎士の命ずるがままに一切殺戮せんと武器を握りしめ。
 守りたかったはずの村を滅ぼすために戦士が征く。



夜通し戦ったことで猟兵達は『土地勘』『地の利』を得ました。
これにより村での戦闘が有利になります(全ての猟兵のダイスが1つ追加)
フラウロス・ハウレス
蓮(f10083)と征くぞ。
やれやれ、数だけは褒めてやろうか。
ぬかせ。肩慣らしにもならん奴らに本気など出せるか。
楽しみはここからよ。

「ふん、邪魔をするなよ雑兵!」
遠慮なく突撃して、黒爪で敵陣を薙ぎ払っていくぞ。
背後はヤツに任せてあるからな。振り返る事なく前だけを見て進み続けようぞ。
だがな。
「おい、トリッカー。妾の獲物までくれてやった覚えはないぞ?」

意趣返しの戦士を見たら、躊躇うことなく【ブラッディ・インパクト】だ。
「くくっ……!見つけたぞ、愚かなる勇者よ。
貴様のその意気やよし。だが……死して肉体を奪われたのは残念だ。
貴様のその意志に免じて、村人に手を出す前に引導を渡してやろう。ありがたく思え」


結城・蓮
引き続きフラウロス(f08151)と。
思ったより数が多いな。
随分と残してくれたみたいじゃないか。
遠慮するなんてらしくないな、血風姫?

さて、ここからはコンビネーションと行こうか。
あの子は相も変わらず突撃するんだろうから、サポートしてあげなきゃね。
突っ込んで囲まれたその背後から、彼女の後背を突こうとする輩を《虚実の山札》で切り刻もう。
「おっと。お姫様には手出し無用だよ?」
顰蹙は買いそうだけどね。困ったお姫様だよ。

生贄に捧げられた戦士と相見えても、手加減も容赦もするつもりはない。
ただ……村人達の悔い位はつたえてあげたいな。
「誰もキミのことを恨んではいなかったよ」
安心して、村のために土に還っておくれ。



 盾を打ち鳴らし村へと押し寄せるオブリビオンの大群を前に二人の少女猟兵が立ち塞がる。
 フラウロス・ハウレスと結城・蓮だ。二人はもっとも敵が多そうな村の正面付近に陣取っており、しかし恐れなど感じさせない態度でいた。 
「やれやれ、数だけは褒めてやろうか」
「思ったより数が多いな。随分と残してくれたみたいじゃないか。遠慮するなんてらしくないな、血風姫?」
「ぬかせ。肩慣らしにもならん奴らに本気など出せるか。楽しみはここからよ」
 ちょっとした運動の前に軽口を叩き合うような気楽さである。
 フラウロスと蓮は戦闘態勢を取ると目線を交わして作戦会議を終了した。
 二人の採るコンビネーションは突撃役のフォワードと、その背後を守るバックアップとで攻守を分担する王道にしてタフな戦術だ。互いの実力を認めるだけでなく、戦場で背中を預けられるだけの信頼関係が無ければ出来ないこと。
 程なくして敵の前線が村に到達し、先陣を切ったフラウロスが隷属戦士に襲い掛かる。その速度は速く、一足飛びで彼我の距離を殺した。
「ふん、邪魔をするなよ雑兵!」
 黒き風となったフラウロスが黒爪を振るう。異端の血を啜るという呪われた剣爪の切っ先はバターでも切るかのように戦士の鎧を切り裂いた。
 そこでようやく反応できた戦士がフレイルを握る手に力を入れるが、フラウロスの二撃目が叩き込まれたことで絶命する。
 つまらなさそうにフラウロスは鼻を鳴らした。
 何のことはない。少しばかり闇の力と血が染み込んだ呪われた武具のようだが、フラウロスの振るう黒爪ほどではなかったのだ。いくら武具を揃えても使い手が亡者であれば宝の持ち腐れである。
 戦士のフレイルは当たればそれなりの威力になるのだろう。当たれば。戦士より速く、駆け抜ける風のようなフラウロスを捕捉するのは至難の業だろうが。
 フラウロスは倒した戦士に目もくれず突撃した。背後のことなど気にも留めぬ、ある種の無謀とも言える突撃だ。それも全ては背中を任せた相棒を信じてのことであり、振り返らずに剣風姫は敵陣へと切り込んだ。
 ここまでは蓮の予想通りの展開だった。フラウロスは相も変わらず突撃するし、自分はそれをサポートする。
 実に手慣れたものだ。命と死のやり取りをする戦場において、これが強いと思える戦術があるのはそれだけで心強い。おまけに相棒が凄腕と来れば百人力を越えて千人力の味方を得たに等しいだろう。
 もっとも、それだけで勝てるほど戦争というものは甘くない。
 前方に対して無類の強さを発揮するフラウロスの後ろに回り込み、その後背を突こうとした戦士が蓮の目に映った。
「おっと。お姫様には手出し無用だよ?」
 蓮は愛用のトランプカードを束ごと複製し、その一枚一枚を念力で操った。宙を切るように舞った紙吹雪ならぬ札吹雪がフラウロスの背後を取ろうとした戦士に殺到する。
 まるで瀑布の如き札吹雪が戦士を切り刻むと、抵抗すら許さず絶命させた。
 蓮はそのまま『虚実の山札』を操り前衛として戦うフラウロスを援護すべく周囲の敵を細切れにしてやる。
「おい、トリッカー。妾の獲物までくれてやった覚えはないぞ?」
「顰蹙は買いそうだと思ったけど、本当に君は困ったお姫様だよ」
 ちゃんと援護したのにむすっとされた。これには蓮もやれやれと肩を竦めるが、その間にも虚実の山札は乱舞し辺り一面を薙ぎ払う。
 そこへ一体の戦士が盾以外の武器を捨て猛烈な勢いで突っ込んできた。半ば自動的にターゲットを切り替えた虚実の山札に全身を削られるのも意に介さぬ全力突進だ。
 戦士の盾から生えた棘が届くのが先か、それとも虚実の山札が削り殺すのが先か。軍配は蓮に上がり戦士は倒れるたが、捨て身になられると少々困るような気もする。
 そういう悪い予感は得てして当たるもので、蓮の対応を見た他の戦士も盾以外の武器を捨てた。分の悪いフラウロスより、数で押せば何とかなりそうだと判断したのだろう。
 何人かの戦士が一斉に蓮に向かって駆け出した。その中にはこの村から出された生贄の男もいるようだ。視界の隅でその男を認識したフラウロスは超人的な反応で接近すると、有無を言わさぬ速度で血風を纏った真紅の拳を放つ。
 超高速かつ大威力な拳撃が戦士の胸に打ち込まれ、鎧の守りなど無視して心臓を破壊した。フラウロスは動きを止めた戦士から腕を引き抜きその最期を看取る。
「くくっ……! 見つけたぞ、愚かなる勇者よ。貴様のその意気やよし。だが……死して肉体を奪われたのは残念だ。貴様のその意志に免じて、村人に手を出す前に引導を渡してやった。ありがたく思え」
 フラウロスが餞別の言葉をくれてやるより早く戦士は地に倒れ伏した。その他の蓮に向かった戦士は虚実の山札に切り刻まれて消滅したようだ。
 悪い予感をそのままにしておく蓮ではない。咄嗟に散開させたカードを収束させ、高密度な軌道をもって戦士を切り裂いたのだ。
 ふぅ、と蓮は呼気を吐き出し、フラウロスの前に倒れた戦士を見た。
 フラウロスの見立てを信ずるに、この戦士が村の男なのだろう。オブリビオンとして敵対した時点で情けをかけるつもりはない。
 ――ただ……村人達の悔い位はつたえてあげたいな。
 その想いが届くかは分からない。それでも、蓮は避難させた村人が零した彼らの無念を紡いだ。
「誰も、キミのことを恨んではいなかったよ」
 その言葉が届いたかは分からない。敵は過去の亡霊と化したオブリビオン。自我はおろか生前の記憶があるかどうかも一切不明。

 倒れた戦士は一度、顔を上げて村を見た。その澄んだ瞳に何が映ったのかは余人の知るところではないだろう。勇敢だった村の男はそのまま眠るように目を閉じると、跡形もなく消滅した。

 ――安心して、村のために土に還っておくれ。
 戦士の最期を見届けた蓮は短く祈りカードを操る意志を強めた。相棒の眼光が鋭くなったことに満足したフラウロスは高らかに笑い、黒爪と共に突撃を再開する。
 戦いはまだ始まったばかりだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

イサナ・ノーマンズランド
POW

拷問具で捕まえた【敵を盾にする】ことでフレイルを凌ぎ、ついでに犠牲者の慟哭も一緒に味わってもらう。返し様の散弾銃の【クイックドロウ】から繰り出す【零距離射撃】やユーべルコードで容赦なく敵の【鎧を砕き】【吹き飛ばす】。

「とりあえず、こっちを狙ってくれるって言うんなら寧ろありがたいくらいだよ」
「守りながらの戦いって、ほんとは苦手なんだ。 思いっきり、自由にさせてもらうからね」

アドリブ・共闘大歓迎です


木目・一葉
村の為にと抵抗した男に、惨い仕打ちだ
この集団には彼のような者達が他にもいただろう
彼らを止めてあげよう

・戦闘
避難ルート確認の際に村の詳細も確認はしている
まず【地形の利用】と【忍び足】で【目立たない】ように敵集団の斥候を『妖刀解放』の衝撃波で奇襲
発見されたら敵集団をなるべく狭い路地へ【おびき寄せ】、自分は建物の上から再び『妖刀解放』で攻撃する
もし敵が盾を構えたら、足元へと放った影の追跡者による『影の蹂躙舞踏』で攻めよう
あと足元の建物を破壊されない為に、銀の銃弾に捕捉されないように、【第六感】で警戒しながら別の建物の上に飛び移りながら、この攻撃を繰り返す

この戦法で仲間と連携可能なら、協力したい


四軒屋・綴
《アドリブ改変絡み改変》

……せめての土産だ、見せてやろうッ!
君達の村は一歩たりとも踏み荒らさせないッ!

戦場は……裏を攻める類いでもないか、正面からぶつかるッ!

【一斉発射】と同時に突撃ッ!【吹き飛ばし】て敵の動きを封じながら【オーラ防御】と【ダッシュ】で敵の狙いを撹乱しつつ被弾を抑えて行くッ!

後の仕込みのために大きく円を描くように旋回し敵を集めるように弾幕を張っていくぞッ!

適当に敵の勢いを削げたらユーベルコード発動ッ!【ダッシュ】で大きく回り込んでから急接近ッ!密集陣形だと回避も困難だろうッ!一気に切り崩すッ!

「……ご老人も、若い衆も、ちゃんと生きてる、大丈夫だ。」
「……行くぞッ!」



 村を守るための戦いが始まった。
 次々に侵入してくるオブリビオンの戦士達を、木目・一葉は物陰に潜みながら確認する。
 敵の第一陣は少人数の班に分かれて別行動を取り出した。どうやら家を回って村人の所在を確かめようとしているようだ。
 好機である。
 一葉は巧みに物陰を移動しながら接近し、まったく気づかれることなく敵の背後を取ることに成功した。
 これより先はノンストップのジェットコースターだ。どんなに危険でも怖くても立ち止まることは許されない。足を止めたが最後、数の暴力に呑み込まれてしまうだろう。殺るか殺られるか、文字通りの修羅場である。
 覚悟を決め、一葉は武器を構えた。
 ――彼らを止めてあげよう。
 一葉は目に映る戦士達を止めたいと思っていた。村の為にと抵抗した男に与えられた惨い仕打ち。この集団には彼のような者達が他にもいただろう。
 そんな彼らが守ろうとしたモノを、彼ら自身から守ってやらなければ。そうでなければあまりにも報われないではないか。
 勇気は決して咎められるものではない。一葉の脳裏には数々のヒーローや名優達が魅せた名シーンが浮かび上がり、勇気を出す後押しをしてくれた。
 一葉は『妖刀開放』にて己を強化し音も無く飛び出した。振り抜かれた小太刀から斬撃の衝撃波が放たれ、家に侵入しようとしていた戦士達をまとめて叩く。
 不意打ちを受けた戦士の何人かが膝を折り、傷が浅かった者が振り向いてきた。それを相手にせず一葉は場所を移すと、別の家に入ろうとしていた集団に衝撃波を浴びせかける。
 今度は上手く行きまとめて膝を折らせることが出来たようだ。完全に消滅させずとも、敵の足を奪うのは非常に効果が高い。
 一葉は追ってくる戦士をおびき寄せながら、ラルマニケテにて打ち出したワイヤーのフックを家の屋根に引っ掛けて固定。巻き取る力に合わせて跳躍すると、妖刀開放にて強化された脚力が一葉を屋根の上へと導いた。
 身を伏せて追っ手の動向を探る。標的を見失った戦士は用心深く盾を構えた。
 一葉は『影の蹂躙舞踏』にて呼び出した影の追跡者を戦士へと這わせ、到着。忍び寄った影から次々と生じた剣山が戦士を串刺しにした。
 手応えあり。しかし喜んでばかりはいられない。一葉を見つけた別の戦士がマスケット銃を撃ってきた。それた弾丸は屋根を削るが、じっとしていてはいずれ当たってしまうだろう。
 それに家を利用させてもらうが壊されるのは本望ではない。一葉は別の家にワイヤーを打ち出し、固定してから跳躍する。移動がてらに衝撃波を放って戦士を叩いておいた。
 高所から村を見下ろすと戦士達がどう展開しているかよく分かる。一葉は戦いやすいエリアを分析すると、屋根を飛び移りながら戦場を駆け抜けた。

 村での戦いは乱戦の様相を呈してきた。少数の猟兵を追い回すようにオブリビオンの戦士達が動いているのだ。本来であれば多勢の有利を活かして押しつぶすはずが、手練れ揃いの猟兵が相手では分が悪いと見える。
 こういう状況をイサナ・ノーマンズランドは歓迎していた。
 イサナは家の壁にぴたりと張り付いて息を殺し、近くを走っていた戦士の一人を拷問具バートリ・エルジェーベトで捕縛する。鉄の乙女の胸へと抱き入れられた戦士は内部の棘に鎧ごと刺されて苦悶の声を上げた。
 仲間の声を聞いた他の戦士が反応するより早く、イサナはハンドガンを引き抜き銃撃する。銃弾は戦士の兜の隙間から叩き込まれその頭部を破壊した。
 別の戦士がフレイルでイサナを攻撃する。闇の力と血が染み込んだ慟哭のフレイルは、しかしイサナが自身と入れ替わるように突き出した拷問具に阻まれた。
 鉄の乙女に命中したフレイルから犠牲者の慟哭が上がる。それは拷問具の内部にいた戦士へと伝わると精神を破壊し死に至らしめた。
 イサナは返し様にショットガンを抜き、硬直している戦士の顔に銃口を突き付ける。
 発砲。
 零距離で放たれた散弾は戦士の頭部に収束。膨大なエネルギーが戦士の頭を吹き飛ばした。
 頭を失った戦士が倒れ、消滅していくのを見ながらイサナはリロードを欠かさない。ちょうど拷問具にも空きが出来たようだ。
「守りながらの戦いって、ほんとは苦手なんだ。思いっきり、自由にさせてもらうからね」
「野郎の血なんていらねぇよ、もっと可憐で儚げな乙女にしてくれ」
「そういう自由じゃないから。つぎ行くからこれ消して」
「へいへい、吸血鬼使いの荒いこって」
 イサナの要望を受けてレイゲンが拷問具を異空間に収納する。身軽になったイサナは銃を手に次なる獲物を求めて走り出した。
「とりあえず、こっちを狙ってくれるって言うんなら寧ろありがたいくらいだよね」
「護衛だの防衛だの面倒だしな。手あたり次第に殺して回る方がよっぽど楽だぜ」
 そうそうと相槌を打ちながらイサナは見かけた戦士を銃撃する。敵の武装は近接に偏っており、唯一の遠距離攻撃は旧式のマスケット銃のみ。それも命中精度に難があると見え、射線に気を付けながら移動してやればまず当たらない。
 銃の扱いと銃との戦いにおいて、ダークセイヴァーの住人である戦士達がイサナに及ぶはずもなかった。

 盾を構えたオブリビオンの戦士達が村へと侵攻するルート上に陣取った四軒屋・綴はかっと目を見開いた。
「……せめての土産だ、見せてやろうッ!」
 綴は拳を固く握りしめると、ジョークアームズの砲門を開いて一斉発射。打ち出された弾丸は戦士達の群れに着弾し、狼煙のような白煙が空に昇った。
「君達の村は一歩たりとも踏み荒らさせないッ! いくぞッ!」
 単身敵中へと突撃する。
 迎え撃つように戦士がマスケット銃を綴に向けて発砲。打ち出された弾丸が命中する直前、綴は迸るオーラを強めて弾丸を弾き落した。
 勢いのまま殴り込む。
 綴の拳打が戦士の盾を殴り飛ばし、二打目がその身体を吹き飛ばした。
 戦士達が取り囲もうとするより早く離脱し、綴は敵の陣形の外側から弾幕を形成。後の大技への布石を打ちながら敵の動きをコントロールし始める。
 装着した電脳ゴーグル・シケンヤゴーグルが拡大マップを表示し、近くの敵がどこにいるかを教えてくれた。綴は敵を内側へと押し込めるように戦い、やがて粗方の敵をまとめることに成功する。
 これぞ絶好のチャンス。
「捨・礼・列・車ッ!」
 綴はユーベルコード『捨礼列車(ストレイトレイン)』を発動させた。
 ジョークアームズが次々に変形しては合体していく。それは一振りの剣の形を作り出し、長大な光の刃を纏う巨大な剣となった。
 綴は発振する剣を肩に担ぎ、密集陣形にさせた戦士達を見る。
「……ご老人も、若い衆も、ちゃんと生きてる、大丈夫だ」
 戦場で敵に情けをかけるのは禁物である。それでも言わずにはいられなかった。
 老夫婦の想いを聞いた。村人達の想いを汲み取った。この世界に生きる人々は、抗いようのない暴力に虐げられている。ここは邪悪が勝利した正義なき地なのだ。
 綴のやるせない想いが光の刃を強く震わせる。
 いまから刃を振り下ろそうとしている戦士達も、元はこの世界の住人なのだろう。道を誤ったのか、魂を歪められのかは分からない。それでもきっと、望んでオブリビオンになどなりたくはなかっただろう。
 彼らもまた犠牲者なのだ。ヒーローとして助けたくも、助けられなかった力無き人々の成れの果て。それを自らの手で斬る。斬らねばならない。
 四軒屋・綴は猟兵であるがゆえに。
「……行くぞッ!」
 綴は奥歯を噛みしめ突撃する。
 巨大な剣が振るわれ、光の刃が朱殷の隷属戦士達を薙ぎ払った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クロウ・タツガミ
【狐の宿】と連携

【POW】

さて、十分に時間は稼いだ。これからは反撃の時間だ

【戦闘知識】を用い周囲を【情報収集】し【地形の利用】が可能な場所で待ち受けよう。主武器はサカホコ(ハルバート)、【怪力】を用いた【2回攻撃】で戦っていくつもりだ。戦闘前に【三位龍装】を用い、攻撃力を強化しよう

まずは、レプリカを用いた【力溜め】を行った【投擲】で【先制攻撃】後に突っ込み、近接で戦うつもりだ

援護は任せた、自分は突っ込む

物理攻撃はガントレットによる【盾受け】をしつつ、可能なら他猟兵への攻撃を【かばう】つもりだ。多少の攻撃なら【激痛耐性】もあるしな。一つずつ確実に減らしていきたい所か

まずは、数を減らすところからだ


シン・ドレッドノート
【狐の宿】で連携します。
数が多いですし、敵の連携を乱すように援護射撃しますね。
「ハンドレット・ガンズ…」
【乱舞する弾丸の嵐】で、両手のスカーレット・ブラスターと精霊石の銃を複製。
「ターゲット・マルチロック、目標を乱れ撃つ!」
怪盗の単眼鏡で捉えた敵集団に対し、個別にスナイパーで狙撃します。
「左側、弾幕張ります!」
味方が攻撃をしかけている際、他の敵が接近できないように銃を一斉発射。
「援護が目的ですが…別に倒してしまってもかまわないでしょう?」
突出した敵がいたら、集中砲火します。
敵が接近してきたらビームシールドで受け流し、手に持ったオリジナルのブラスターでカウンターの零距離射撃を叩き込みましょう。


護堂・結城
【狐の宿】と連携

勝てずとも挑んだ勇気の一矢
その死後まで弄ぶ外道は滅ぼさねばならん
反撃の時間だ

【POW】

クロウと情報共有して待ち…待つのも面倒だ、呼び込め

『雪見九尾の騎乗突撃』の巨大狐(ユキ)に乗りながら
生命力吸収、破魔を載せた歌唱でわざと場所を知らせる

我を見よ、我等を見よ
貴様らを喰い滅ぼす雪見九尾はここにいるぞ

群れが射程に入れば騎乗したまま『雪見九尾の落涙葬送』を発動
氷牙を捕食形態の雷槍に変える

詠唱は皮肉気に
せいぜい「安らかに」骸の海で溺れてろ

シンとクロウが前・後方だから俺は中距離の群れを狙う
『天駆』で空中へ飛び上がり
複製した雷槍を属性攻撃、怪力を載せて投擲、範囲攻撃だ

「喰い殺すぞ外道が」



 戦いが始まり、旅団【狐の宿】から出撃した三人の猟兵は村の中央に布陣する。
 仲間の猟兵が二方面を防いでおり、また遊撃的に移動しながら戦っている者もいた。中央を抑えることができれば彼らの背後を守りつつ、自分達も後ろを気にせず戦えるだろう。
 敵の数はいまだ多いが、迎撃陣形を組んでしまえばこちらのものだ。
「さて、十分に時間は稼いだ。これからは反撃の時間だ」
 周囲を見渡しながら戦局を読んだクロウ・タツガミが『三位龍装』にて自己強化を図る。サカホコとマガホコに霊酒を与え、大群を打ち倒せるほどの攻撃力を求めた。
 クロウは力の滾りを確かめるべくサカホコを一振りする。風切り音が豪と鳴り、生み出されたつむじ風が空に舞った。
「勝てずとも挑んだ勇気の一矢。その死後まで弄ぶ外道は滅ぼさねばならん。反撃の時間だ」
 護堂・結城はクロウの隣に立ちながら『雪見九尾の騎乗突撃』を展開する。呼び出された巨大狐ユキの背に飛び乗ると、あえて目立つべく歌唱した。
 ――我を見よ、我等を見よ。
 ――貴様らを喰い滅ぼす雪見九尾はここにいるぞ。
 破魔の力と悪しきものから命を吸い取らんとする意思が乗せられた歌声は、村の隅々まで響き渡った。猟兵の歌声に反応したオブリビオンの戦士達は、家屋の捜索を中断して村の中央へと殺到する。
「……待つのも面倒だ、呼び込んだぜ」
「いいですね。私が援護しますが……別に倒してしまってもかまわないでしょう?」
 次々にやってくる戦士達の群れに目を光らせたシン・ドレッドノートは『乱舞する弾丸の嵐』にて両手のスカーレット・ブラスターと精霊石の銃を複製した。
 念力によってシンの周囲に浮かべられた数十を越える銃が、その銃口を戦士達に定める。
「ターゲット・マルチロック、目標を乱れ撃つ!」
 シン自身も二挺拳銃の構えとなりトリガーを引いた。連動した銃達からも弾丸の雨が打ち出され、押し寄せてくる戦士をばたばたと倒していく。
 怪盗の単眼鏡が盾以外の武器を投げ捨てた戦士の姿を捉える。それが猛烈な勢いで駆け出そうとするより早く、シンのブラスターが鉄兜の隙間から眉間を打ち抜いた。
「左側、弾幕張ります!」
 敵の陣形のうち数の多い所へ牽制弾幕を叩き込むシン。
「援護は任せた、自分は突っ込む」
 シンの弾幕が抑えている一角とは別の敵集団に向き合ったクロウはレプリカを取り出すと、三位龍装で引き上げた破壊力を乗せて打ち出した。豪速で放たれる投げナイフは視認不可能な槍となりて敵集団の連携を穿ち崩した。
 サカホコを構えたクロウが突撃する。
 攻撃圏内ぎりぎりから放たれた横薙ぎの一閃が前列にいた戦士をまとめて薙ぎ払った。空いたスペースにさらに踏み込むと、クロウは斧の部分を手近な戦士の肩に叩き込む。強化された攻撃力は鎧ごと戦士を両断した。
 死角から飛び出した戦士がフレイルを振るう。反応したクロウはガントレットを前に突き出して敵の攻撃を受け止めた。
 命中した瞬間、クロウの精神に犠牲者の慟哭が木霊する。それは怨嗟の嘆きを伴った強烈な叫びだ。刹那、クロウは幻視を得た。
 ――勇気ある生贄が闇の武具を持たされ、生まれ育った村を滅ぼした地獄。
 ――両親を家族を友人を知人を老人を子供を闇のフレイルで殴り殺した地獄。
 ――その一部始終が勇気ある魂に刻まれる地獄。
 痛みすら感じさせる幻視を振り払い、クロウはフレイルを弾き返した。
 咆哮。
 クロウは渾身の一振りで戦士の首を跳ね飛ばした。
 消滅する戦士の前で呼吸を整える。一時の激情は過ぎ去り、サカホコを握る手には無機質な怒りだけが宿った。
 前衛で戦うクロウから少し離れた中距離に敵の集団が現れた。接近戦は不利と判断したのか、敵はマスケット銃を構えている。
 結城は群れが射程に入ったことを確認し、巨大狐ユキに騎乗したまま『雪見九尾の落涙葬送』を発動した。
「死は君の名を呼んでいる。せいぜい『安らかに』骸の海で溺れてろ」
 皮肉気な詠唱と目の前の敵の殲滅を誓い、結城はお供竜の氷牙を塵すら残さぬ範囲殲滅捕食形態の雷槍に変えた。
「行くぜ! ユキ、氷牙!」
 結城は巨大狐ユキと雷槍氷牙と共に『天駆』で空を駆ける。瞬く間に上空へと駆け上がった結城は同性能の雷槍を複製し、天の裁きを下すように地上に群れた戦士の集団に投擲した。
 怪力による投槍は紫電となりて着弾する。その速度は人の領域を越えた神速に到達し、防御はおろか回避すら許さない。辺り一面を巻き込むように炸裂した雷の嵐が戦士達を飲み込むと、一人の例外もなく消滅させた。
 ちっ、と苛立たし気に舌を打つ結城。
「喰い殺すぞ、外道が」
 その矛先にいるのは戦士か、騎士か。結城は空を駆け巡りながら雷槍を投擲し、地上で戦うクロウやシンを援護した。
 徐々に戦いが収束していく気配を感じ取ったシンは、偶然にも抜けてきた戦士を相手取る。どうやら倒れた別の戦士を隠れ蓑にして近づいていたようだ。
 遠距離攻撃を得意とするシンを狙うには有効な作戦かと思われた。
 戦士のフレイルがシンを打つ。しかしシンの展開したビームシールドがフレイルの打撃を受け止めると、力の流れを変えて受け流した。
 この隙を見逃してやるほどシンは甘くない。これぞ真の早撃ちといった超反応でシンはスカーレット・ブラスターを構え、零距離で戦士を撃ち抜いた。
 熱線に心臓を貫かれた戦士は苦悶を上げることなく倒れるとそのまま消滅した。
 ふぅと一息をつきながらシンは怪盗の単眼鏡で戦場の様子を確かめる。
 自分は弾幕を張りながら多くの敵を倒し、クロウや結城も相当な数を討ち取ったようだ。他のエリアで戦っている猟兵達も奮闘したようで、戦いの音が小さくなっている。まだ完全に殲滅したわけではないだろうが、それも時間の問題だろう。
 誰かが大きな負傷をしたような様子でもない。連戦続きで疲労は溜まっていると思うが、そこは気力で乗り越えよう。
 目の前ではクロウが最後の戦士を消滅させ、村の上空を一回りしてきた結城が地面に降りてきた。その雰囲気から察せられることは、もはや語るまでもないだろう。
「どうやら、我々の勝利のようですね」
 村での戦いは猟兵達が勝利した。隷属戦士は全て消滅し、残る敵はあと一人。
 シンは狙撃手の眼で遠方にいる異端の騎士を見る。その視界の中、異端の騎士が騎乗する馬を動かし始めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『異端の騎士』

POW   :    ブラッドサッカー
【自らが他者に流させた血液】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【殺戮喰血態】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    ブラックキャバリア
自身の身長の2倍の【漆黒の軍馬】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    フォーリングローゼス
自身の装備武器を無数の【血の色をした薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●異端の騎士
 ――戦いの音が止んだ。
 早朝より村を攻囲していた隷属戦士達が全滅したようだ。
 手駒を失った異端の騎士は、自らの予想を上回る結果に好戦的な笑みを深めた。
「なるほど、これが猟兵か。何と勇ましき者共よ」
 空を飛ぶ者がいた。マスケット銃よりも大きな銃声を鳴らす者がいた。大群でもって攻めさせた戦士達を、ことごとく撃滅できるだけの力を持つ者達。
「素晴らしい。本当に素晴らしい。その強さこそ、俺が求めた強敵だ」
 異端の騎士は強き敵を求めていた。
 逃げ惑う弱者ではなく、飼い慣らされたエサではなく。
 剣を執り己を殺しに来る強敵を。そこから生まれる戦いという名の快楽を。
 邪悪が勝った後の世界に蘇った黒き騎士は、血が沸き立つような闘争に飢えていたのだ。
 それが今、目の前に現れた。猟兵と言う愛しき猛者共がやってきたのだ。
「征くぞ、猟兵――俺を殺してみろ! 俺も貴様を殺してやる!」
 異端の騎士は獰猛に笑い、巨大な黒馬に騎乗したまま突撃を開始した。
イサナ・ノーマンズランド
POW
【スナイパー】として、遠距離から他の猟兵たちの【援護射撃】に回る。射撃技術を生かした【2回攻撃】で執拗に騎士の【鎧を砕き】【傷口をえぐり】【恐怖を与える】。敵のユーベルコードの発動を確認したらすかさず手元を狙い【武器を落とす】。

「ずるいとかいわないよね。 もともとはきみたちのほうがたくさんいたんだし」
「わたしはおくびょうだから、かくじつに相手をたおせそうなら、えんりょとかしないし、なさけとかかけないから」
「とりあえず、いっぽうてきにぶんなぐられるいたみときょうふをおしえてやる」

アドリブ 改変 絡み なんでも歓迎いたします。


木目・一葉
「戦士達を止められたが、その哀しみからは救えなかった
だから最後の仕事、村を守りきることだけは果たそう」

・戦闘
真の姿を解放
敵と一定の距離を保ち『妖剣解放』の衝撃波で戦う
敵が他の仲間の行動に目をとられるなど、こちらに意識が向いてない隙に『影の追跡者の召喚』で、気付かれぬようにそれを接触させる
軍馬に騎乗しようとしたら、影の追跡者から軍馬に『影人の涙雨』を放って騎乗妨害を、騎士には『影人の縫い針』を放ってUC封印を狙う

・もし消滅を免れた隷属戦士の遺体等がある場合
守りたいという意識が残されてるなら、『操り糸の影』で協力をお願いする
「これは冒涜だ
人から恨まれる行為だ
でも貴方のその想いは、必ず果たさせる!」


フラウロス・ハウレス
蓮(f10083)と。
見つけたぞ、異端の騎士。
吸血鬼では無いのだけが残念だ。
もはや言葉は不要、ただ狩るのみよ!

【黒風鎧装】で黒風を纏い、自らの血を【ブラッド・ガイスト】で黒爪に食わせながら、蓮が隙を産むのを待つ。
「くくく……どうした。動きが鈍いのでは無いか?」
隙あらば黒爪での一撃を食らわせ、『吸血』と『生命力吸収』で戻した体力と血を更に黒爪に食わせよう。

渾身の一撃を放てる機会を得たら、蓄えた力を一気に解き放ち、右手で【ブラッディ・インパクト】を叩き込む。
しっかり決めろだと?愚問だな!
「覚悟せよ!ここが貴様の死に場所だ!!」
そのまま左で【アースシェイカー】を顔面に叩き込みトドメだ!!


結城・蓮
フラウロス(f08151)と。
さぁて。ようやく親玉に辿り着いたわけだけど。
何か言うことある?
無いね。それじゃあ終幕へと赴こうか!

《泡沫の鏡像》で鏡像を生み出し、常に一対の攻撃を仕掛ける。
「「さぁ、ショウタイムだ!」」
片方がフェイントしている間にだまし討ちを仕掛けたり、《無明の弦》で絡め取りながら死角から攻撃を加えたりと、なるべく派手に、注意を引きながら仕掛ける。

もちろん、ボクは『囮』で本命はフラウロスだけど。ボクの一撃は軽いからね。
とはいえ、囮だからと言ってこちらから注意を背けたらいつでも首を取りに行くからね。
「おっと。こちらを見てもらわないと困るなっ!」

さぁ、お姫様。
キッチリ決めてくれよ?




 異端の騎士が黒馬を駆りて突撃してくる。
 時代錯誤な騎馬突撃――いや、このダークセイヴァー世界においては驚異的な破壊力を誇るであろう騎士の突撃を冷めた目で見ている猟兵がいた。
 イサナ・ノーマンズランドは家屋の屋根に寝そべりながらスナイパーライフルを構える。敵よりも高い場所を取るのは基本的な戦術であり、敵が反撃できない超遠距離から一方的に撃つのが狙撃手だ。
 イサナはスコープを覗き込むと軽く銃口を揺らして照準を合わせた。
 敵は全身鎧で身を固めており、まともに撃っては銃弾が弾かれる可能性がある。だが鎧の構造上、関節部分が脆いのは確認済み。隷属戦士と異端の騎士では装甲の強度が異なると予想されるが、関節が弱点には変わりないだろう。
「……ずるいとかいわないよね。もともとはきみたちのほうがたくさんいたんだし」
「何言ってんだ。戦場で狡いは誉め言葉だぞ? 数の暴力もそうさ。大群を率いていた野郎も正義だし、そいつを集中砲火で殺るのも正義だぜ」
 イサナの口を借りたレイゲンが冷徹なる戦場の掟を語る。
 正式な手順を踏んだ決闘ならいざ知らず、こと戦いにおいて正々堂々という言葉は存在しない。いかなる手段であれ、勝って生き残った者が正しいのだ。
 そうだよね、とイサナは頷き引き金を引いた。
 銃声が鳴る。
 放たれた銃弾が異端の騎士に命中し、その鎧を僅かに砕いてみせた。
「お、効いてる効いてる。野郎の兜が邪魔だな、どうせなら恐怖に歪んだツラでも拝みたいもんだが」
「わたしはおくびょうだから、かくじつに相手をたおせそうなら、えんりょとかしないし、なさけとかかけないから」
 イサナが引き金を引く。銃声が鳴る。引き金を引く。銃声が鳴った。
 異端の騎士は剣を構えて襲い来る銃弾を凌ごうとするが意味がない。 
「とりあえず、いっぽうてきにぶんなぐられるいたみときょうふをおしえてやる」
 狙撃手の目からは逃れられない。騎士は戦いの場である村に辿り着く前に相当数の銃弾を浴びせられることになった。


 銃声が鳴り響き異端の騎士との戦いが始まった。
 村の一角で準備をしていた木目・一葉は、晴れない顔で迷っていた。一葉の前には集められた死体――先ほどまで戦っていたオブリビオンの戦士の亡骸が横たわっている。
 多くの戦士は倒されると死体を残さず消滅した。しかし数体だけ、時間が経っても消えないものがあったのだ。
 それを一葉は一ヶ所にまとめておき、後の戦いに活かそうと作戦を立て、しかし本当にそれをしても良いのかと迷っていた。
 ――これは冒涜だ。
「……死者には安寧の権利がある。それを冒すのは、許されざることだ」
 たとえそれがオブリビオンと化した村人であったとしても、斃された後は速やかに骸の海へと還すべきだろう。
 弔いの言葉は無くとも、せめて安らかであれと一葉は想う。だが。
「僕の行いは人から恨まれる行為だ。でも、それでも、貴方達に守りたいという意識が残されているのなら」
 意を決した一葉が手をかざす。五指の先から糸のような細い影が生まれると、地面に横たえられた戦士達の亡骸に絡みついた。
「その想いは、必ず果たさせる!」
 一葉は『操り糸の影』を使い、戦場で死亡した戦士達を残留思念を宿す実体をもった影へと変化させた。
 次々に戦士の影が立ち上がる。彼らが装備していた闇の武具はすでに無く、戦うための力は残されていないだろう。
 交わす言葉は無く、思いの丈を零すこともなく。物言わぬ戦士の影は、残された想いだけをよすがに戦場へと舞い戻った。
「……行こう。仲間が、待ってる」
 戦士の影を引き連れ、一葉は異端の騎士との戦いに赴いた。


 「……来たか」
 土煙を上げて突撃してくる異端の騎士を見たフラウロス・ハウレスが呟いた。
 フラウロスは腕を組んで立ち、堂々とした威風で騎士を迎え撃つ。
「見つけたぞ、異端の騎士。貴様が吸血鬼では無いのだけが残念だ。もはや言葉は不要、ただ狩るのみよ!」
 黒風鎧装にて巻き起こした漆黒の旋風を身に纏い、前哨戦で流れた血液を黒爪に与えて殺傷力をさらに高めた。
 吸血鬼狩りを生業とするフラウロスにとって異端の騎士は吸血鬼の手下に過ぎない。慈悲も情けも容赦も不要。ただ殺めるのみよ、と酷薄な笑みを浮かべている。
 前衛に立つフラウロスの元に一人の猟兵が軽やかに歩み寄った。
「さぁて。ようやく親玉に辿り着いたわけだけど。何か言うことある?」
 結城・蓮は緊張した素振りもなく、自然体のままフラウロスに声をかけた。
「あるものか。たかが吸血鬼の手下風情、有無を言わさず滅ぼしてくれようぞ」
「それでこそ血風姫だ。それじゃあ、終幕へと赴こうか!」
 蓮は『泡沫の鏡像』で虚空に鏡を具現化させると、そこから鏡写しのもう一人の自分を創り出した。
「「さぁ、ショウタイムだ!」」
 二人の蓮がカードの束を宙に浮かべ、異端の騎士を牽制すべく撃ち出した。
 卓越した技術を持つ蓮の投げるカードの切れ味は鋭く、生半可な甲冑であれば容易く切り裂いてしまうだろう。それが二人分、自由自在に狙いを付けながら騎士へと殺到する。
 そのうちの一枚が騎士の鎧の隙間へと滑り込み、内部の本体を切り付けた。
「何だとッ!? たかが紙札が俺を傷付けたというのか!」
 ずぱっと裂かれた傷口から血を吹き出しながら叫ぶ異端の騎士。その傷口を抉るかのようにイサナの銃弾が叩き込まれ、騎士に苦悶の声を上げさせた。
「そんなに驚くことかい? 林檎をすぱっと切る方が難しいと思うけどね?」
 これ見よがしに蓮はカードを指に挟み、ゆっくりとした動作で上下に振る。
 虚仮にされた異端の騎士は怒気を強めて剣の封印を解き放った。
「騎士を笑うか道化! その罪や万死に値するぞ!」
 ブラッドサッカーにて殺戮喰血態へと変形した禍々しい剣が蓮を襲う。
 当たれば無事では済まない強撃だが、蓮はくるりと宙返りを打って華麗に避けた。
「おっと危ない危ない。いけないよ、そんな危ないモノを人に向けちゃ」
「こっちも忘れてもらっては困るなっ! 本業ほどではないけれど、これが見えるかい!」
 挑発的に煽る蓮の逆側に移ったもう一人の蓮が、十指の指先から非常に細い強固な糸を打ち出し騎士を拘束していた。
 『無明の絃』はぎちぎちと拘束を強め、異端の騎士の身動きを封じにかかる。
 騎士は拘束されまいと遮二無二剣を振り回しながら暴れている。一振りごとに風が巻き起こるが、蓮の無明の絃は獲物を縛って逃がさない。
「くくく……どうした。動きが鈍いのでは無いか?」
 哀れな獲物へと飛び掛かったフラウロスが黒爪を振るう。切り裂いた傷から吸血しては生命力を奪い、自らの体力へと還元した。
 フラウロスは反撃が来る前に騎士から距離を取る。
 狩りとは焦って進めるものではなく、ゆるりと構えながら臨むものだ。機が来れば一気呵成に畳みかけるのも乙ではあるが、今はまだ追い込みをかけている途中。
 であればじわじわと獲物を衰弱させ、その体力気力をへし折ってやるのが良い。
 蓮とフラウロスは巧みに連携しながら異端の騎士を追い詰めた。


 異端の騎士は左右から蓮の無明の絃に拘束されて思うように動けないでいる。
 それでも力任せに剣を振り回し、黒馬を暴れさせてはフラウロスの猛攻に対抗しているのは腐っても騎士ということだろうか。
「おのれ、小癪な真似をッ!」
 フラウロスの黒爪と騎士の剣が噛み合い火花を散らした。騎士が手綱を操り黒馬の上体を反らすと、超重量の踏み付けがフラウロスへと襲い掛かる。
 だがそこへ銃声が飛び込んだ。
 黒馬が啼く。突然暴れだした馬を辛くも御した騎士は、痛みを共有することで銃弾が命中した部位を知る。
 前脚の蹄だ。
 後方から仲間を援護したイサナの狙撃が、正確無比に蹄を撃ち抜き黒馬を怯ませたのだ。
 騎士は忌々し気に屋根の上に陣取るイサナを見上げた。状況的に一切手出しが出来ない位置から延々と撃たれ続けているのだから堪ったものではない。
 イサナの銃弾は騎士の全身鎧の関節部を執拗に狙うだけでなく、恐るべき威力をもって装甲を砕いてくるのだ。
 命中率も異常に高く、避けるのも防ぐのも不可能に近い。ここでようやく異端の騎士は、マスケット銃を上回る圧倒的な銃火器の真価を知り戦慄した。
「ちィッ、かくなる上は……フォーリングローゼス!」
 圧倒的な形勢不利を打破すべく、異端の騎士は装備の一部を無数の血の色をした薔薇の花びらへと変化させた。その一枚一枚が鋭い刃と化した危険な花吹雪が、周囲の猟兵を無差別に攻撃しようと吹き乱れる。
「そうはさせない! 行け、影の戦士達よ!」
 血の花吹雪に飛び込むよう躍り出た一葉は、妖剣解放による衝撃波で敵の攻撃を相殺しにかかる。同時に複数の影の戦士達が前進し、血の花びらを身体で受け止めながら騎士へと群がった。
「な、何だ貴様らはぁーッ! ええい、近寄るんじゃあないッ!!」
 全身をずたずたに切り裂かれ、倒れた仲間の屍をも踏み越えて群がってくる異形の影を必死に切り捨てる異端の騎士。そこにはもう余裕はなく、奇しくも騎士は自らが望んで止まなかった戦いを繰り広げていた。
「僕は哀しみから彼らを救えなかった。だから最後の仕事、村を守りきることだけは果たそう、彼らと共に!」
 一葉は影の戦士達を盾にしながら血の花吹雪の中を駆け抜ける。
 真の姿を解放した一葉は体中の所々に火炎の文様が刻まれており、焼け焦げた色の角が額から生えていた。闇よりもさらに深い黒となった影を持つその姿は、人ならざる鬼を彷彿とさせる威容であった。
 火の尾を引いて異端の騎士に肉薄した一葉はすれ違いざまに一太刀を浴びせた。
 その離れ際、並走させていた影の追跡者を異端の騎士に接触させる。
「影よ、仇なす業を縫いつけよ!」
 一葉は影の追跡者から影縫いの針を打ち出すと『影人の縫い針』にて異端の騎士のフォーリングローゼスを封じることに成功した。
「お見事! ボク達も負けていられないねっ! そらそらっ、どんどんキツく縛っていくよ!」
 追い詰められた異端の騎士を二人の蓮がさらに縛り上げていく。
 二人の蓮は騎士を挟むように動き、十指の指先から幾重もの糸を編み出しては騎士を絡め取っていた。
 一本が切れれば二本を重ね、二本を切られれば三本を重ねる。無明の闇にて敵を暗黒の淵へと誘うように、蓮は騎士の活路を断っていく。それは人形遣いの指先を思わせるほど繊細で、騎士の運命をも操っているかのようだった。
「さぁ、お姫様! キッチリ決めてくれよ?」
 ぎりぎりと異端の騎士を縛り上げながら蓮はお姫様、フラウロスを焚き付ける。
「しっかり決めろだと? 愚問だな!」
 渾身の一撃を放てる機会を得たフラウロスは、蓄えた力を一気に解き放ち右手に血風を纏わせた。
 真紅の拳を握り固めたフラウロスが鋭く踏み込む。
 至近距離で放たれた『ブラッディ・インパクト』が騎士の駆る黒馬に強烈なダメージを与えた。その衝撃は生命力を共有する騎士をも揺るがし、ついに騎士はブラックキャバリアを維持できず黒馬を消滅させた。
 フラウロスはさらなる攻撃を見舞うべく左手に力を収束させる。
「覚悟せよ! ここが貴様の死に場所だ!!」
 小さく跳び、落馬する騎士の顔面に『アースシェイカー』を叩き込んだ。
 直撃地点の周辺地形すら変えてしまうほどの重い一撃が、邪悪なる異端の騎士を地に叩き落とした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

護堂・結城
【狐の宿】と連携
アドリブ歓迎

さて、今回の件ももう一暴れだな
吹雪、氷牙、ユキもあと少し付き合ってくれ
ようやくメインディッシュだぜ
……外道、殺すべし

【POW】

引き続きユキに騎乗したまま戦う、目には目を、強化には強化だ

生命力吸収を載せた歌唱で戦場の感情を吸収し『雪見九尾の劫火剣乱』を発動
剣群を纏いクロウと共に『天駆』を駆使した空中戦を仕掛ける

敵の攻撃は見切り・武器受け・オーラ防御からの歌唱にのせた衝撃波でカウンターを狙う

大きく隙ができれば全ての劫火剣を氷牙の薙刀に集結
ユキの突進と共に力を溜めた怪力・属性攻撃で捨て身の一撃だ

「劫火の味はどうだ、お望み通り血が沸く程熱かったろ?」


クロウ・タツガミ
【狐の宿】と連携、アドリブ歓迎だ

【POW】

本命の登場といったところか、シン、護堂、もうひと暴れと行くか

【戦闘知識】を元に戦闘する予定だ。まずは【先制攻撃】としてレプリカの【投擲】をした後に接敵だな

まずは、小手調べ

【龍騎乱舞】で、マガホコに騎乗し、空中という【地形を利用】しながら巨大サカホコ(ハルバート)を使い【怪力】による【2回攻撃】で戦うつもりだ。敵の攻撃はガンドレットによる【盾受け】で防ぎ、可能ならば他の猟兵を【かばう】つもりだな

サカホコ、マガホコ、武威を示せ

最後にサカホコを槍に変化させ騎乗の勢いのまま、【力を溜め】た【投擲】を行い敵を【串刺し】を狙うつもりだ

力技の極地、耐え切れるかな


シン・ドレッドノート
【狐の宿】で連携します。アドリブOK!
容赦する必要はありませんね。己の罪を数えながら逝きなさい。

「目標を狙い撃ちます。皆さんは遠慮なく暴れてください!」
真紅銃にアタッチメントを装着、怪盗の単眼鏡で視力を強化しつつ目標をロックオン。狙撃のため距離を取って、物陰から『異次元の狙撃手』による味方への援護射撃を行います。撃つ度に目立たないよう忍び足で速やかに場所を移動。敵に位置を気取られないようにします。

「そして次にこう動く…チェックメイト」
『紅影の予告状』、怪盗の単眼鏡の高速演算結果から敵の攻撃を未来予測。回避すると同時にカウンターの射撃を撃ち込み、次の敵の行動を阻害、味方の反撃につなげます。



 痛烈な攻撃を受けた異端の騎士が地に這いつくばり、しかし倒されることなく立ち上がってきた。満身創痍でぼろぼろだが、それは死にかけの騎士ではなく手負いの獣だと思ってかかるべきだろう。


 油断なく異端の騎士を洞察するのは右目を通る傷を持った男、クロウ・タツガミだ。
 クロウは戦場を共に駆け抜けた旅団【狐の宿】の仲間達と呼吸を合わせて動き出す。
「本命の登場といったところか。ここからが勝負所だな。シン、護堂、もうひと暴れと行くか」
 蓄積された戦闘知識と現在の状況を照らし合わせたクロウは、軽々に攻め込まず威力偵察を兼ねた小手調べを優先した。
 懐から投げナイフのレプリカを取り出し投擲の構えを取る。ナイフの刃を指で挟むようにして持ち、怪力を込めて投射した。
 弾丸の如き速度で放たれたレプリカは一瞬で異端の騎士へと着弾する。だがその刃が騎士に刺さることはなく、高速で振られた剣によって弾かれた。
 ――剣に驕りが消えたか。
 先ほどまで力任せに振られていた剣に鋭さが増していることから、クロウは異端の騎士が未だ強力であると判断。地上での立ち会いは危険と見て巨大化させた翼持つ黒き龍マガホコに騎乗した。
「サカホコ、マガホコ、武威を示せ」
 クロウは空飛ぶ黒龍マガホコを駆り異端の騎士に肉薄する。彼我の制空圏を正確に見極め、一方的に攻撃できる間合いから巨大な長斧槍サカホコを振った。
 打ち返してくる異端の騎士の剣とサカホコが激突し火花を散らす。クロウは自らの優位を活かして猛攻をしかけ、重量級の連続攻撃で畳みかけていく。
 その連撃を辛くも凌いだ異端の騎士は一瞬の間隙を突くように踏み込むと上空にいるクロウを斬撃した。だがその剣はクロウのガントレットに受け流され、逆に態勢を崩した騎士にサカホコの一撃が浴びせられることになった。


 雪見九尾のユキに騎乗したまま上空に陣取っていた護堂・結城は、地上で繰り広げられるクロウと異端の騎士の戦いを見る。
「ようやくメインディッシュだぜ。吹雪、氷牙、ユキもあと少し付き合ってくれな」
 大事なお供達に声をかけ、異端の騎士を睨み付ける結城。
 ――外道、殺すべし。
 異端の騎士は戦う術を持たない村人達を皆殺しにしようとした。それだけでも罪深いが、こことは別の土地でも暴虐の限りを尽くしていたのだ。猟兵が現れなかった村の末路を思うと、結城の胸に暗い復讐の炎が灯る。
 悪鬼外道を生かしておいてはならない。
 結城は歌う。
 戦場に渦巻いていた数々の感情を食んだ『雪見九尾の劫火剣乱』が起動し、結城の周囲に復讐の劫火の剣群を召喚した。
 その数は大群と呼んでも過言ではない。多くの剣群を伴った結城は誇るでもなく不機嫌そうだ。
 この剣は復讐を望む誰かの声なのだ。それがこんなにも多い。戦力が増えたと手放しで喜ぶには、あまりにも犠牲が多すぎた。
「ちっ、仕方ねぇ。行くぞてめぇら。劫火をあの野郎にぶち込んでやれ!」
 剣群を伴った結城は『天駆』で空を駆け異端の騎士とクロウの戦いに飛び込んだ。
 攻撃は剣群に行わせ結城は敵の間合いの外から歌唱に乗せた衝撃波で敵を打つ。不可視かつ見切りも困難な衝撃を受けた異端の騎士がよろめくと、追い打つように剣群が殺到した。
 鎧ごと一刺しは出来ずとも何度も何度も異端の騎士を切りつけては装甲を削っていく剣群。それを振り払おうとした騎士の大振りには、クロウが合わせることで更なるダメージを与える。
 結城とクロウの連携攻撃は異端の騎士を圧倒した。


 極限まで追い詰められた異端の騎士は残る死力を振り絞ってブラックキャバリアを展開し、被弾覚悟で再び大きな黒馬に騎乗した。
「おっと、そうはさせませんよ!」
 真紅銃にアタッチメントの怪盗の単眼鏡を装着させたシン・ドレッドノートが躍り出る。
 シンは怪盗の単眼鏡による高速演算で異端の騎士の駆る黒馬をロックオン。
 敵の弱っている部分を算出したロックオン・マーカーが数多く表示され、シンの『異次元の狙撃手』が放たれた。
 正確無比な弾丸の嵐が黒馬へと吸い込まれるように命中し、敵の攻撃を前段階で潰していく。ろくに動けない黒馬が暴れだし、異端の騎士はその制御に苦心して結城やクロウの追撃まで手が回っていない。
「目標を狙い撃ちます! 皆さんは遠慮なく暴れてください!」
 その言葉に偽りなく。シンの援護射撃は次々と敵の攻撃を撃ち落とし、仲間への攻撃を防いでいった。
 同時に展開していた『紅影の予告状』がシンに数手先の未来を示す。
 超高精度な状況観測及び高速演算により導き出された未来。それは殺戮喰血態となった騎士の剣が猛威を振るう光景だった。
 選択肢は多数。決断は一瞬。
「その未来、いただきました!」
 シンは真紅銃で異端の騎士の手元を撃ち抜きブラッドサッカーの発動を未然に防いだ。
 未来予知じみた先読みで反撃を封じられた異端の騎士が血走った眼でシンを睨み付ける。呪詛の如き視線を真っ向から受け止めたシンは不敵に笑うと、真紅銃の銃口を突き出すことで返事とした。
「容赦する必要はありませんね。己の罪を数えながら逝きなさい!」
 真紅銃から放たれた一条の光が異端の騎士を撃ち抜いた。


 致命的なヘッドショットで異端の騎士が大きくのけぞった。
 怪盗の如き鮮やかな手並みで勝機を盗み取ったシンが前衛達に声を飛ばす。
「チェックメイトです! 結城君、クロウ君! トドメをお願いしますよ!」
 そう言って仲間に最後の一押しを任せ、シンは真紅銃で黒馬の心臓を撃ち抜き消滅させた。
 落馬した異端の騎士が大きな隙を見せる。
 結城は全ての劫火剣を氷牙の薙刀へと集結させ力を溜めた。
 もはや防御のことなど考えず、結城は捨て身となりてユキを駆る。
 劫火の剣槍と化したユキと共に天を駆けた結城の突撃が異端の騎士を粉砕した。
「劫火の味はどうだ、お望み通り血が沸く程熱かったろ?」
 邪悪な敵が望んでいたモノを与えてやり、結城は皮肉げに笑った。
 よろめく異端の騎士を骸の海へと還すべくクロウがサカホコを槍に変化させる。
「――力技の極致、耐え切れるかな」
 速度を得るためにマガホコを走らせると、その勢いを破壊力へと変換して槍を投擲した。
 恐るべき膂力をもって投げられた槍は異端の騎士を直撃し、その身を貫通しては地に縫い付けるよう串刺しにした。
 サカホコに貫かれた異端の騎士は槍を抜こうと手を伸ばし、力尽きた様子で腕を下した。
 残す言葉もなく異端の騎士は消滅。
 オブリビオンの消滅をもって勇気ある村を巡る攻防戦は終結した。
 猟兵達の勝利である。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月24日


挿絵イラスト