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世紀末アゲイン・アンド・フォーエヴァー

#キマイラフューチャー

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#キマイラフューチャー


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 見渡す限りの、荒野、荒野、また荒野!
 乾いた砂漠を照らす灼熱(マイルド)の太陽、傾いたビルが立ち並ぶ、ここは地の涯、命の獄!
 ――人呼んで、世紀末!
「ヒャッハー! 世紀末はフォーエヴァーだぜええええええ!」
「愛だの恋だのにかかずらっている余裕はないぜええええええ!」
「砂なんかコンコンコンしても何も出てこないぜええええええ!」
「だって世紀末アゲインなんだぜええええええ! ヒャッハアアアアアア!」
 そう言ってショットガンを手にトゲトゲ肩パッドを付けてバギーを駆るキマイラの男たちが次の瞬間バギーを横転させて青空をバックに親指を立ていい笑顔をキメながら流れ行く雲のように消えていった。
 ちゅどーん(笑)。
「いい……いいぞお前ら! いいヒャッハーぶりだ、益荒男だ! 東男だ荒戎だ!」
「「「ヒャッハアアアアアアア!」」」
「それでこそ、男! 漢! OTOKO! 己を誇れ、青空をバックに親指を立ていい笑顔をキメながら流れ行く雲のように消えていったヒャッハーたちよ!」
「「「ヒィャッハアアアアアアアアアア!!!!」」」
 などと変な建物(想像にお任せします)の上からがなりたててコールアンドレスポンスしている怪人は、皆さんもご存知のアレであった。


「――ネットに流れるトンチキ動画を言葉で説明するのは、若干の苦行でもあるな」
 と、スレイマン・コクマー(人間の探索者・f00064)。まあ言いたいことはわかる。
「さて、こんなトンチキ動画の中にも、キマイラフューチャーを脅かしかねない事件の萌芽が見て取れたので、これから皆に説明しよう。
 核心から言うが、犯人は『ハートブレイク・チョコレート怪人』だ。怪人はキマイラフューチャーにある『世紀末を模したリゾート』を嫉妬力制圧、占領し、もてない男たちの一大拠点としたのだ」
 ――なんて?
「嫉妬力制圧だ(武力制圧ではない)。ともあれ、男たちは今の所、リゾート内で怪人の監督のもとでのヒャッハートレーニングに余念がないようだが、いずれ彼らは現実に……もとい、リゾート外部に進出し、ヒャッハートレーニングの成果を見せつけるようになるだろう」
 そうなれば他のキマイラたちのしょうきもあぶない。間違いない。
「そんな事態を未然に防ぐため、そして、嫉妬力にこころをくるわされた男たちを正気に引き戻すためにも、猟兵の力を借りたい。
 だが……だが。ヒャッハートレーニングの成果は、思った以上に男たちのこころをこうはいさせている。単純に怪人を倒すだけでは、ヒャッハーを真の意味で止めることは出来ないだろう。
 故に、まずは男たちを怪人の支配下から取り戻してくれ。手段は問わないが、なるべく穏便に、な」


君島世界
 こんにちは、はじめまして。
 マスターの君島世界です。
 今回は、キマイラフューチャーでも異色のリゾート(と思われる)、世紀末リゾートでのオブリビオン退治をお願いします。
 ヒャッハーはヒャッハーですが貴方の知らないヒャッハーかもしれませんし、もしかしたら私も知らないヒャッハーかもしれません。何を言っているかわからなくなりましたがヒャッハーなのでどうでもいいでしょう。
 補足事項は特にありませんが、ヒャッハーに人語が通じると思うなよ。むしろ貴方をヒャッハー語だ。皆様のプレイングをヒャッハーお待ちしております。ヒャッハー。

 だいじょうぶです。
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第1章 冒険 『世紀末リゾートの冒険!』

POW   :    ヒャッハーしてくるキマイラ達にヒャッハーし返して配下にする

SPD   :    バギーで競走を申し込んでくるキマイラ達に勝利して配下にする

WIZ   :    算数テストとかでキマイラ達に頭の良さを見せつけて配下にする

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 完全閉鎖式環境再現型世紀末リゾート、『世紀末アゲイン・アンド・フォーエヴァー』……その大きな鉄扉の前に、猟兵たちは居た。
 かつて、まともに営業していたころは、来園した客が世紀末救世主となり、世紀末悪漢に扮したエキストラを、世紀末SFX(リアルタイム)で過剰に演出された世紀末神拳でばったばったとなぎ倒すという、まさにやってみた系動画にうってつけのリゾートだったという。
 今ではもはや、華やかなりしそのころの姿を見る影もない。受付カウンターには、制服を着た職員の代わりに、ショットガンとトゲトゲ肩パッド(以下ショットゲ装備)に身を包み、風船ガムを膨らますのに失敗しているヒャッハーがいる。背後の方でチャキチャキ鉄鋏を鳴らしているのは、もぎりのショットゲ装備ヒャッハーだ。
 受付カウンターのヒャッハーが、震える手で大きなボタンを押した。と、鉄扉がごうごうと音を立て開き、中から灼熱(マイルド)の日差しが照りつけてくる――。

「「「女連れで来るとはいい度胸だぜええええええヒャッハーーーーー!」」」
深緋・椿
【WlZ】
嫉妬とは下にも恐ろしいものよ…だが、今回はちとやり過ぎな気もするのぉ

取り敢えず古文、和歌、算術あたりで妾の才を示し、配下になって貰うとするかの


ロースト・チキン
ヒャッハーーー!!
同業者の島(縄張り)を奪えって?
任せろ!!

赤いモヒカン(鶏冠)を愛用のメタルコームで整えるローストは、まさに世紀末の申し子。

◆POW
「群れる世紀末」で召喚されたモヒカン族を率いて、ヒャッハーなキマイラたちの嫉妬の拠り所としているものをヒャッハーして配下にします。

ヒャッハーーー!! 欲しいものは奪えーー!
世紀末に必要なのは、欲望と執念だけだ!!
さぁ、オレについてくれば、もっといい夢見させてやるぜ!!



 地平線の彼方から(比喩)バギーの一団が砂煙を巻き上げ押し寄せてくる――まさにその時!
「ヒャッハーーーーー! 新鮮な同業者だぜえええええ!」
 ロースト・チキン(チキン野郎・f03598)が、押し寄せるヒャッハーに敢然と立ち向かわんとする! ほどほどに熱き砂漠を蹴立てあげ爆走しながらも、懐から取り出したコームで鶏冠(モヒカン)を美麗に立ち上げるなど、己のスタイルの保全に余念がないその勇姿は、まさに世紀末の申し子だ!
「ヒャッハー! 前方からヒャッハーの声がするぜ!?」
「ヒャッハー構わねえ、ヤッチマイナー!」
「ハラニイチモツオアリノヨウデー!」
 ショットゲ装備がそろそろはっきりと見えてくる距離で、ローストは神拳めいたファイティングポーズを取る。半身に構え、軽いステップを踏み……。
「たった3人でオレにかかってくるとはいい度胸だなあヒャッハー! そんな中途半端なヒャッハーとは桁が違う所をオレが見せてやるぜえええぇぇぇ!」
 ……見よ! あれなるはロースト様必殺の構え! レベル×1体の戦闘用アレをアレしてアレするという、力技にも程があるというユーベルコーd――。

(ユーベルコードを使用していません)

「ヒャッハアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!(3+1にんのぜっきょう)」
 ちゅどーん(笑)。
 青空をバックに、サムズアップのいい笑顔を見せるヒャッハー3+1人であった。なおこの辺の演出は世紀末SFXですのでおきゃくさまのせいめいにはえいきょうありません。
 ……などという、唐突で意味不明だがヒャッハーな事態に、しばらく言葉を失う猟兵たち。こういう時にいち早く復帰ができるかどうかで、その人の正気度がどれほど減ったかが試されると思います。
「――し」
 し?
「し、嫉妬とは、げにも恐ろしいものよ……」
 と、深緋・椿(深窓の紅椿・f05123)。おめでとうございます。貴女はこのような事態にもしょうきをうしなわず、理性的に立ち回ることが出来ました。なので、皆の注目を一斉に集めることになりました(ヒャッハー含む)。
「だが、今回のそれはちとやり過ぎな気もするのぉ。その辺どうじゃ? そこな蒼天親指揚げヒャッハーども3+1人よ」
 言われて、さっきの3+1人が青空をバックに顔を見合わせる。
「え? そ、そんな事言われても……ヒャッハ(ええと)」
「教官からこれがヒャッハーって言われたし……ヒャッハ(どうよ)?」
「ヒャッハーベルトで怪我もないから良いと思いますけどね、ヒャッハ(ぼくは)」
「ヒャッハーーー! 細かいことはいいじゃねぇかヒャッハーーーー!」
「ヒャッハアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!(3+1にんのぜっきょう)」
 ……話にならぬわ、と椿は額を抑えた。思うに……いや、深くは考えないことにしよう。そうでなければ巻き込まれ、自分のしょうきもあぶない。
「それよりも、じゃ! この妾と、知恵比べで勝負するものはおらぬか!? 古文、和歌、算術。どれもこの世紀末を生き抜くのに必要な知恵であろう!」
 突っ込まれたら丸め込むつもりで言った暴論であるが、椿の前に一人のキマイラが現れ、自信ありげに手を上げた。
「兵破在(ヒャッハー)。僭越ながら、この私がお相手しましょう」
「ほう……その姿はオランウータン、森の賢人殿か。よかろ、そちから問を出すと良い。なんなりと、たちどころに答えて進ぜよう!」
 いつの間にか、椿とオランウータンの二人の周りには、ギャラリーが集まってきていた。この世紀末では異色とも言える知能の戦いを、物見高いヒャッハーが見逃すわけはない。
「では、第一問から」

【荒野に立つ一軒家の中に、1個の電球がぶら下がっています。この電球を取り替えるのに何人のヒャッハーが必要ですか?】
(読者の皆様も一緒に考えてみてください)

「1人か、多くても2人じゃろ? 肩車でもなんでも……って、もしや」
 見るとオランウータンの彼の眼鏡がずり下がり、信じられないものでも見たような顔をしていた。椿の言う通り、もしや――。
「もしや賢人殿、『電球を支えるのに二人、家を回すのにたくさん』などと答えるつもりだったのではなかろうな? いくらヒャッハーとは言え、ネジの回し方くらい」
「……て」
「て?」
「天才だああああああ! まさか、そんな、そんな! そんな方法がこの世にあるなんて! コペルニクス的転回! エウレーカ! コギト・エルゴ・スム! どあああああああ!」
 と喚きながら、泡を吹いて卒倒してしまうのだった。
 ――そう。実際にはこのオランウータン、インテリ系動画配信者として名を馳せた一廉の人物であったのだが、怪人のヒャッハートレーニングによりちのうがほうかい。このような醜態を晒す羽目になってしまっていたのだ。
「怪人恐るべし――じゃな。妾いろいろ心配になってきたぞ」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

エーカ・ライスフェルト
SPD
・登場
宇宙バイクに【騎乗】してパッシングしながら追いつくか、何故かある崖の上から呼びかけて「何者だ!」とか言われたい

「あら、私が賭けるのはそんなものでいいの?」
「貴方たちの欲しいのは……これではなくて?」(徹夜で10人分造ったトリュフチョコ(可愛らしいリボン付)を取り出す)

・勝負
徹夜明けなので【騎乗】スキルは0に近く、しかもドレスを来たままなので速度が出ませんというか出したら事故るので安全運転
バギー乗り同士が醜い争いをしたら勝てるのじゃないかしら
私に勝つか私の軍門に降ったヒャッハーには「○○さんへ」というカードもつけてチョコをプレゼント

ユーベルコードを使うのはショットガンを使われた時のみ


ユーイ・コスモナッツ
情けない!
それでも男児ですかっ
私が鉄槌で目を覚ましてあげます

……え、なんですか?
競争?
あなた達と私で?
するの?

良く分からないけれど良いですよ、
受けて立ちましょう!

騎乗技能とダッシュ技能、
空飛ぶ盾こと反重力シールド
そしてユーベルコード「流星の運動方程式」!
単純な競争なら遅れはとりません

妨害とかしてくるのかな?
だけど私は、あくまで正々堂々と!

勝っても負けても、
最後は握手とにっこり笑顔
これで分かり合えないかなあ?



 ぱぱらぱらぱらぱらぱらぱー。ぱぱらぱらぱらぱらぱらぱー。
 陰気なバギーのクラクションが砂に染み入る、ここは場末の世紀末。
「――情けない! あなたたち、それでも男児ですかっ!?」
 ユーイ・コスモナッツ(宇宙騎士・f06690)の周囲には、正座するヒャッハーが100人から存在していた。いやはや、そんなにヒャッハーがいるとはびっくりだね。
「そこのあなたも! 人の話を聞くときはクラクションを鳴らすのを止めてバギーから降りなさいっ!」
「ひゃ、ひゃっはー……」
 なんとも所在なさげにバギーから降りるヒャッハー。そのひょうじょうはちんつうだ。そしてBGM効果がなくなったことで、ヒャッハーにデバフが掛かっていく(気分的に)。
「いいですか? あなたたちの何が情けないのか、あなたたちは理解していますか?」
「ヒャッハー……いえ、そんなことを言われましても……」
「女性にモテたことがないのは、社会が悪いと怪人さんは仰ってヒャッハー……」
「だからここでヒャッハートレーニングを重ねて、いずれ体勢転覆を……」
「その姿勢が後ろ向きだというのです! 社会ではなく自分を変えようと、どうして思わないのですか!」
「「「ひゃっはー……」」」
 ヒャッハーどもの弱々しい主張に、強めの正論をぶつけることで、そのこころをくじくさくせんだ。いや、ユーイにそんなつもりはないのだが。人としての道を説いているつもりであって。
「まったく……あなたたちには、その姿勢を矯正する機会が必要ですね。いいでしょう、この私が、鉄槌で目を覚ましてあげます!」
「ぼ、ぼうりょくヒャッハ……じゃなくて反対……」
「……いえ、ここはチャンスです。この鬼教官をヒャッハーで教導し、ヒャッハー道に引き込むのです! 起死回生、災い転じて福となす!」
「生きていたのかオランウータンヒャッハー! 良かったなあ!」
「そ、そうと決まれば教官! レースで鉄槌おねがいしゃっす!」
「……え、なんですか?」
 なんかそういう流れになりつつあるので、ユーイは念のために確認を入れる。
「競争? あなた達と私で? するの?」

「競争と言いましたわね!?」

 その時!
 なぜかある崖の上に、一人の女の姿が現れる! エーカ・ライスフェルト(電脳ウィザード・f06511)だ!
 世紀末めいたドレスを身にまとい、凶悪なシルエットのバイクに跨るその世紀末スタイルに、一瞬にしてヒャッハーの心が奪われた!
 繰り返す! 一瞬にして、ヒャッハーの心が奪われた!
 もうユーイのことなんか誰も見てないぞ!
「競争とあれば、ぜひ私もまぜて欲しいですわね♪」
「お……女」
「おんな」
「な、何者ですかっ! 同じ猟兵ですよね!? なんかすごく馴染んでますけど」
「女性……それも、とびきりのBONG・Q・BONGですぞ……」
「それを……よこせ。ぜんぶだ!」
「あら、私が賭けるのはそんなものでいいの?」
 などと意味深に笑いながら、エーカが胸元から取り出したのは……。
「貴方たちの欲しいのは……これではなくて?」
 かわいらしいリボンでラッピングされた、トリュフチョコ(人肌)(お胸で溶けず口で溶ける)であった。それも10人分。

 その時の大音声を、文字で正確に表現することは出来なかった。
 なんかこう『ホアアーッ! ホアーッ!』とか、そんな感じ。

 さて。
 あれよあれよとレースがセッティングされて、エーカも、もちろんユーイも横並びの集団の中にいる。エンジンの爆音が、そこかしこから聞こえていた。
「ヒャッハー! レディスエンドヒャッハルメン!
 10、9、8――ヒャアがまんできねぇスタートだ! ゴールはピリオドの向こう側だぜヒャッハーアバーッ!」
 と言うヒャッハーが轢き倒され(もちろん無傷です)、レースがなし崩し的に始まった。即座に横転爆発が多発して青空に笑顔の行列が出来ていく中、猟兵の二人は順調に先頭集団に躍り出る。
「横転した人達はいろんな意味で心配ですが、一緒に頑張りましょうね、エーカさん。レースに勝つことで、この人達を変な思想から開放しましょう!」
「……うっぷ」
「はい?」
 ウープスの聞き間違いだろうかと思って、ユーイは並走するエーカの表情を伺う。するとその濃いめの化粧の下には、明らかに寝不足の顔色が見えていた。
「エーカさん? あの、大丈夫なんですか?」
「あー大丈夫大丈夫。ちょっと徹夜しただけよ。……チョコ作るのに」
 と、エーカは物憂げな表情を作り、自嘲げに笑った。
「慣れないことをすると、いつもこうね……ふふ、でも、誰かのことを思って作るのって、ちょっと楽しかったわ」
 もちろん演技である。が、その様子はリゾート内の配信用設備を用いてブロードキャストされて、全ヒャッハーたちのこころをいとめた。ヒャッハーたちはあいにうえている。
 またもや『ホアアーッ! ホアーッ!』的な絶叫がリゾート内に響き渡り、脱落したヒャッハーも青空から戻ってきて、猛デッドレースが始まった。要は足の引っ張り合いである。
「あのチョコはオレのものだヒャッハー!」
「いやオレのものだヒャッハー!」
「ヒャッハーいただきだぁー!」
「もう我慢できねぇヒャッハー!」
「「「「アバーッ!」」」」
 続々と、続々と再脱落していくヒャッハーたち。100人からいたヒャッハーは、一時その倍くらいにまで人数を増やしていたが、瞬く間に一桁まで減っていく。みにくいあらそいであった。
「男って、はかないものね……」
「ああもう、見ていられません!」
「あら」
 ユーイは反重力シールドを反転させ、爆発するヒャッハーたちの救護に向かう。砂の上で絶望にあえぐ哀れなヒャッハーを、ひとり、またひとりと掬い上げていった。
「大丈夫ですか? 助けに来ました! ほら、掴まってください!」
「ヒャッハー……教官、教官……!」
 救われ、感涙にむせぶヒャッハーたち。ユーイが担当していたヒャッハーたちは、このようにしてなんかこういい感じにオチがついたのであった。

 一方。
「安全運転――無難こそ、最速。それが解っておられるのですな」
「オランウータン君。あら、ほかのヒャッハーたちは?」
「ええ、みな砂の餌食に。追って教官の沙汰が降りるでしょう」
「そう。ところで……ゴールはピリオドの向こう側でしたかしら?」
「いいえ、いいえ。ブレーキを踏む理由があれば、そこがゴールでしょう」
「なら――」
 エーカはペンを取り出し、カードに『最速のヒャッハーさんへ』と記した。
「――これは理由になるかしら?」
「兵破在(ヒャッハー)、ありがたく。貴女にも、速度と安眠を」
「速度と安眠を。……いやほんと、はやく帰って寝たいわ」
 バギーを止めたオランウータンを彼方に、エーカは砂漠を行く。
 鳥歌い花咲き誇るオアシスを求めて――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

城ヶ崎・遊奈
【グッドナイス・ブレイヴァー】で生放送するよ!ただし許可を得ていない猟兵達やあるかどうかわからないけど撮影禁止区域とかは写さないように配慮。
「はい!視聴者のみんなー!おはよう、こんにちは、こんばんはー!遊奈だよ!今日は世紀末リゾートからの生放送だよー!」

D・バイクに『騎乗』してヒャッハー共の前に颯爽と登場。そのままヒャッハー共に競争を挑むよ!
「おい、ボクと決闘(デュエル)してよ!ボクが勝ったらキミ達には…、…なにして貰おうかな?」

競争に勝ったら「キングは一人!このボクだー!」等とカメラ目線で決め台詞
「それじゃみんな!怪人には気を付けよう!」と注意喚起しつつ動画配信を終了するよ!



 ちゃららちゃっちゃっちゃっちゃらー(ジングル)。
 ユウナァー、チャンネルゥー(渋い声)。どどーん(SE)。
「はい! 視聴者のみんなー! おはよう、こんにちは、こんばんはー! 遊奈だよ! 今日はなんと! 世紀末リゾートからの生放送だよー!」
 どんどんどんどんぱふぱふー(SE)。
 ――というイントロだったかどうかは実際に放送を見てみないとわからないが。ともあれ、城ヶ崎・遊奈(バーチャルキャラクターの決闘者・f12997)の生放送が始まるのだった。初見さんへのわこつ返しもほどほどに、遊奈は動画撮影ドローンに手を振って、行動を開始する。
 今日の放送のタイトルは『バイクでヒャッハーをヒャッハーしてみた!』らしいともっぱらの噂だ。愛機D・バイクを駆る遊奈は、瞬く間に1カメを置き去りに地平線へと去っていった。
 ……ちなみにこのリゾート内は、一部プライベートエリアを除く全域が生放送可能ゾーンであり、入場者も全員それに同意している(という体で運営されていた)。なので、さっきから遊奈が発動しているユーベルコード、グッドナイス・ブレイヴァーは、めっちゃくちゃこの作戦に刺さっている。すごいことになるぞー。

 さてカメラは、遊奈の背後を三人称視点で追うドローンカメラへと移る。延々と続く砂漠、砂漠、何かの畑、砂漠を抜き去り、するとようやく前方にヒャッハーが現れた。
 にい、と笑う遊奈。アクセルをさらに絞る。気づいたヒャッハーがこちらを向くより速く、遊奈はドリフトでヒャッハーたちを通り過ぎた。
「ヒャ――速えぇええええ!?」
「ヒャッハーすら言わせてくれねぇぜええええええ!」
「速い女は嫌われるぜヒャッハアアアアア!」
「ヒャッハー! いや、もちょっと紳士的にヒャッハーしようぜ」
 ということで遠巻きに取り囲んでくるヒャッハーたち。遊奈は砂よけのバイザーを上げ、不敵に言い放った。
「おい、ボクと決闘(デュエル)してよ! ボクが勝ったらキミ達には……なにして貰おうかな?」
『決闘(デュエル)してよいただきましたあああああ!』
 とネットの向こうで騒ぐ視聴者の声援が、文字どおり彼女の力となっていく。そんなこととはつゆ知らず、ヒャッハーたちはヒャッハーとヒャッハー顔になった。
「オレたちが勝ったらヒャッハータイムだぜえええええええええええ!」
「よっし乗った! ……で、ヒャッハータイムって、なに?」
「「「しゃあああぁヒャッハーーーーーーーーーー!」」」
 という遊奈の言葉の後半をまるで無視して、気合のこもった円陣を組むヒャッハーたち。嫌な予感がするが、ともあれ。
『ヒャ、ヒャ、ヒャ、ヒャッハーーーーーーーーーー!』
「いっけーーーーーーー!」
「ヒャッハーーーーーー!」
 カウントダウンと共にレースが始まった。引き続き爆走を続けるD・バイクに対するは、ヒャッハーたちの制式装備バギー『横転くん』だ。どんなにソリッドなコースでも安定した横転ちからを見せつけるこの車体は、悪路でこそ本領を発揮する。適当にチンタラ走り、ここぞという所で横転するという、二重の意味ですばらしいパフォーマンスを見せつけていた(現在進行形)。
「フッ……あのスピードに追いつけるヒャッハーは一人しか居ないぜ……」
「ならば我ら、ヒャッハーとしての散りざまを見せつけるのみよ……」
「うぃっとねすみー……誰かがそう言えって教えてくれた……」
「……ヒャッハー……」
 ちゅどーん(笑)。
 4人分の台詞を拾うくらいたっぷりと宙を舞ったバギーは、偶然そこにあった巨岩に激突し、爆発四散した。青空笑顔をやはり振り切って、遊奈はカメラ目線で視聴者たちに勝ち誇る。
「っというわけで、今回もボクの勝ち! キングは一人! このボクだー!」
『うおおおおおぉぉぉぉぉ?』
『え、これすごいの?』
『できれ? できれ?』
『それよりも揺れたから良し』
『『『良し!』』』
「いや、何が良しなのかなあ……」
 ちょっと過剰になってきた弾幕を一旦非表示にし、画面写りを整える遊奈。いつもの台詞で、今回の放送も締めるつもりだ。

「それじゃみんな! 怪人には気を付けよう!」

 ばちーん、と視聴者たちにウィンクを送って、生放送を終了する遊奈。放送後のアンケートも結果は順調で(5は貧乳好きってどういう意味だろう)、遊奈は満足してバトルフィールドを去るのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

月凪・ハルマ
揃いも揃ってテンション高いなオイ

◆SPD判定

え、競争?スピード勝負?あ、ハイ成程了解
じゃちょっと待って下さいね
(【メカニック】技能で自分の乗るバギーを弄り始める)

いやまぁ、そっちは乗り慣れてるんですしハンデという事で
俺そもそもバギー初心者ですし(ガチャガチャ)

あと俺の運転技術はともかく、此処のバギーはどれも
まともに整備して無さそうだし、途中でトラブルが起きても困る

―—はい、完了、と。それじゃ始めましょうか

まぁ現在の俺の運転技術自体は大したこと無いんで
途中まではどうしても追い付けないと思う

とはいえ機械に故障は付きもの
あのヒャッハー達が今までバギーの整備をしていなければ、
どの道、勝手に自滅する筈だ



「あー……」
 ありとあらゆる物陰から、これまでの様子をつぶさに見続けてきた忍者、月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)。その口からこぼれるのは、万感の思いを込めた感嘆だ。
「……揃いも揃ってテンション高いなオイ」
 それに尽きる。
 ともあれ、作戦の運びとしては順調だ。猟兵たちに教化されたり絆されたりしたヒャッハーたちは、続々とこちらの軍門に降っている。あとひと押しだ。
 そのひと押しを、背後から近づくヒャッハーに押し付けよう――。
「ヒャッハアアアァァァ! こんなところに一人でいやがるぜえええ!」
「ちょっとオレたちに付き合えよお前ヒャッハアアアァァァアァ!」
「さもなくばもおおおっと寂しい目にあうぜええええ?」
 いやマジにテンション高いな。イキってると言ってもいいかも。
 ハルマはスリーマンセルのヒャッハーたちに向き直り、最低限の空気を合わせる。
「いやあ、俺はちょっと見に来ただけで、別に何も――」
「見てるだけはMOTTAINAIぜヒャッハー!」
「少年! ショットゲをやろう! そして共にヒャッハーしようぜヒャッハー!」
「具体的にはレースして目覚めれば良いんじゃないかなヒャッハー!」
 よしよし、釣れた。ショットゲは丁重にお断りして、と。
「競争? スピード勝負? あ、ハイ成程了解」
「「「ヒャッハー!」」」
 そういうことになった。
 バギーはヒャッハーのを貸してくれるということだが、例によってあの『横転くん』である。走行前のメンテナンスとして自分のバギーをいじり始めるハルマを、ヒャッハーたちは興味深く眺める。
「ヒャッハ(ほうほう)……」
「あ、気になりますか? いやまぁ、そっちは乗り慣れてるんですし、これはハンデという事で。俺そもそもバギー初心者ですし……」
「いや、メンテナンスってそうやるんだなヒャッハー!」
「これはいい勉強になるぜえええぇぇぇ!」
「だけど何やってるのか全然わからねえぜええええええ!」
「あははは……」
 言質が取れた、とハルマは表情を隠す。ヒャッハーたちのバギーは、自分のをいじっててもよく分かることだが、まともにメンテされていない。
 そんな車を走らせれば、途中でどんなトラブルが起こってもおかしくはない。
 例えば、走行の続行が不可能になるような、都合のいいトラブルが――。
「――はい、完了、と。それじゃ始めましょうか」
「「「ヒャッハー!」」」
 とびきりの笑顔で盛り上がるヒャッハーたちであった。

『10、9、8――ヒャアがまんできねぇスタートだ!』
 どこからか流れてくる録音音声でスタートを切る一同。ある程度は『乗り慣れて』いるヒャッハーたちに対し、メンテナンスはしたが大層な運転技術を持たないハルマでは、レースは不利よりの互角で進行する。
 ぶおんぶおん、ぶおおおおおおおお!
 見応えのなくはない、つまり『横転くん』の本領を発揮しないレースがしばらく続く。突き出した岩を駆け上がり、なかなかのジャンプを見せるヒャッハーたち。ハルマは岩を回避し、砂にタイヤを取られつつも追いすがっていく。
 だが――そろそろか。
「(そろそろ、『トラブル』が起こるはずだ)」
 ハルマはハンドルをとんとんと叩く。それに合わせたかのように、バギーが一気にスピードを落とした。エンジンブローだ。
「ヒャッハー! 何事だぜえええぇぇぇ!?」
「ななな何かわからんが煙が出てるぜヒャッハー!」
「掴まれお前ら! 突っ込むぞおおおおおおお!」
「「「ヒャッハー!!!!!!!!!」」」
 ちゅどーん(笑)。
 青空に並ぶ三人の笑顔を、なんとはなしに見上げて、ハルマはブレーキを踏んだ。勝敗が決した今、これ以上リスクを背負う必要はない。
「どの道、勝手に自滅する筈だとは思っていた。あとはそれが、遅いか早いかだけだ――」
 ――忍者は勝算のない戦いを仕掛けない。つまりそういうことなのだろう。
 ハルマはバギーを降りると、また次の監視ポイントに向けて歩き始めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『敵アジト攻略戦』

POW   :    正面から殴り込み、戦闘員を力技で叩き伏せて制圧する。

SPD   :    密かにアジトへ潜入し、重要個所の爆破や敵の分断といった内部からの撹乱を行う。

WIZ   :    外部からアジトのコンピュータをハッキングし、施設の制御を奪ったり、偽の指令を出して自滅させたりする。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 かくして、リゾートでヒャッハートレーニングにいそしむヒャッハーたちの大半を勢力下に置いた猟兵たち。これで怪人の企みのほとんどを潰すことが出来たかと思われた。
 しかし! ヒャッハーたちから情報収集を続けるにつれ、リゾートのどこかにある『地下監視塔』の存在が明らかになる!
 そこでは怪人による直々の指導の元、エリートヒャッハーが特別な訓練(ヒャッハーしてヒャッハーする今までのアレではなく)を受けているという!
 これを見逃すことはできない! 猟兵たちは地下監視塔に赴き、武力介入を行うのであった!

 なお、ヒャッハーたちは勝手についてくるので、振り切ったり手駒としてうまく使ったりしよう!
城ヶ崎・遊奈
原則全域放送可(拡大解釈)らしいから今回は【グッドナイス・ブレイヴァー】でヒャッハーリゾートの裏側を生放送するよ!

『第六感』『メンテナンス』知識辺りを活かして『ハッキング』をしてまずは『情報収集』!
で、『罠使い』『暗号作成』『時間稼ぎ』辺りの知識を生かして施設に『ハッキング』を仕掛けるよ!とりあえずヒャッハーリゾートから決闘(デュエル)リゾートに書き換えでもしようかな。
「決闘で皆に笑顔を…、ボクの力で世界に…みんなの未来に、笑顔を…」
などと意味不明の供述をしつつ決闘リゾート化計画を進行

施設の無効化に成功したらカメラ目線で決め台詞「ボク達の満足はこれからだ!」等と言いつつ動画配信を終了するよ!


深緋・椿
【POW】
ここが敵の根城かぇ?
なれば、他の者達が動きやすいように正面突破をして、敵を引きつけるかの…準備体操位になれば良いがな

戦闘
普通攻撃が主体、様子を見つつ、ユーベルコードを使用するのじゃ



「ふむ、ここが敵の根城かぇ?」
 深緋・椿(深窓の紅椿・f05123)が立つのは、ハリボテと廃屋だらけのこのリゾートの中で、唯一電源が生きているビルのエントランスホールだ。
 ガラスと照明を割り、砂は吹き込むに任せ、調度品はそもそも設置しない――など、それなりに偽装されてはいるようだが、ところどころに足跡や、何かを引きずったような痕が見えたりしている。
 元は運営側の施設だったのだろうと、椿は検討をつけた。
「となれば……そう、こういう所に」
 とん、と壁の一部を叩く椿。一回。その衝撃が壁面を走り、間に合わせの偽装を崩壊させていった。
「只人に、床に仕掛けた秘密通路は難しかろう。であれば、やはり壁の隠し扉じゃ」
「ヒャッハー! さすが椿の姉御! 理論派だぜえええええええええええ!」
「それではこれから正面突破! 腕がなるぜヒャッハー!」
「お主たちはいつも五月蝿いのう」
「「それだけが取り柄ですんで!」」
 いつの間にか付いてきた上に舎弟を気取り始めたヒャッハーを適当にあしらい、椿は偽装の裏に隠されたドアを開ける。
 その時の事だ。
「ゆうなーっ、ちゃんねるーっ♪(本人の声)」
 最後に1枚だけ残っていたガラスを突き破り、例のバイクに騎乗した城ヶ崎・遊奈(バーチャルキャラクターの決闘者・f12997)が颯爽と飛び込んできた。
 その遥か後方には、根性ダッシュで爆走するヒャッハーたちのシルエット。先の決闘でバギーを失った彼らは、ある種の刷り込みに従い遊奈を追ってきているのだ。
 追いつけないが。
「視聴者のみんな、おはゆうな! 今回は、世紀末リゾート『世紀末アゲイン・アンド・フォーエヴァー』の裏側を、じっくりたっぷりレポートするよっ!
 なにせこのリゾート、原則全域放送可だからね……! ルールを逆手に取った、掟破りの大スクープ! 視聴者のみんな、どんどん拡散しちゃってね♪」
 きょろきょろと、カメラ片手に周囲を見回す遊奈。すぐに先客に気づいた。
「で、えっと……あっ! あの子はコラボ生主じゃなくて――」
「――これ、妾の放送権は高いぞ。あまりそうあからさまに写すでないわ」
 手にした霊符を扇に見立て、口元を隠す椿。おお、高貴ムーブ……と、椿以外の全員が感動した。生放送の視聴者も含め。
「妾の名は深緋・椿と云う。さて、お主もお仲間と見えるが、如何か」
「あっ、ボクは城ヶ崎・遊奈だよ。キミはここに何をしに?」
「正面突破じゃな」
「正面突破だ!」
「そこをガツンだ!」
「ヒャッハーは黙っておれ」
 ぺんぺん、とヒャッハーの頭を霊符扇で叩く椿。やはり高貴ムーブだ……と、以下略。
「正面突破……そっか、ボクと同じだね。じゃ、途中まで一緒に行こうよ!」
「抜け駆けする気満々じゃのう。まあよかろ、共に参ろうぞ!」
 そういうことになった。

「吹けよ花々、我等が守護となれ――風花の陣!」
 椿はユーベルコードを発動させ、廊下を巡回していたエリートヒャッハーたちに突っ込んでいく。エリートヒャッハーはすぐさま通信空手の構えを取り、果敢なチョップで襲いかかってくるが。
「ウワーッ、花びらが眼鏡に張り付いて前が見えません!」
「壁を殴ってしまいました! 殴ったチョップが痛いです!」
 椿が(一応舎弟ヒャッハーも)まとう花の壁に遮られ、ことごとく失敗する。
 その物音に気づいた新手のエリートヒャッハーが押し寄せてくるも、当然、結果は同じだ。続々と、なんかいい感じに戦闘不能になっていく。
「なんてことだ……椿の姉御、エリート様をものともしねえ!」
「七三分けに厚底眼鏡、あれだけの装備に身を固めたエリート様を……!」
「ああ、だからエリート――いやちょっと待て。ヒャッハー分はどこへ行ったのじゃ?」
 押し寄せてくるエリートヒャッハーの足音から察するに、陽動としての働きは十二分に果たせているようだ。椿は優雅に身を回し、迎えうつ。
「準備体操くらいになれば良いがな。で、ヒャッハー分は」

「さあ、ショータイムだよ! カードさばきだけじゃなくて、キーボードさばきもすごいって所を見せてあげる!」
 遊奈は、椿の陽動と、己自身の第六感もあって、秘密裏の内にリゾート内の管理室らしき部屋への侵入を成功させていた。暗く寒い中に、大量のサーバーが明滅を繰り返していることから見て、かなり重要な施設であることは間違いない。
「当然ここも放送可ゾーンだからね。安心安心!」
 インターフェースを叩くと、スリープ状態だったモニターが立ち上がる。数世代前の――それこそ『世紀末的な』認証を突破し、遊奈は瞬く間に施設内各所の制御を掌握した。
 そして。
「ふふ、ふふふふ……」
 ヒャッハートレーニングの中止命令だけではない。恐るべきシステムの改ざんを、遊奈はよどんだひとみで淀み無く開始した。
 例のバギー『横転くん』の名称を『決闘くん』に変更、走りながら決闘的行為ができるように基礎設計を書き換え。
 リゾート内各所にジャッジスタッフを配置するためのジャッジ基礎トレーニングを、ヒャッハートレーニングに代わり義務化。
 購買からはショットゲを撤去し、ゲームカードの販売を超拡大。中古カードの販売・買い取りを開始し、長机とパイプ椅子を新たに設置。
「決闘で皆に笑顔を……ボクの力で世界に……みんなの未来に、笑顔を……!」
 遊奈のようすがおかしい。
 ともあれ、これで施設としての世紀末アゲイン・アンド・フォーエヴァーは、大部分が遊奈の手に落ちた。怪人もこの部分には手を回していなかったらしい。
「……次回のゆうなちゃんねるは! 決闘(デュエル)リゾートからの放送だよ!
 ヒャッハーにルールを教え、ヒャッハーにフェアプレイを教え、ヒャッハーにマナーを叩き込む! そんな内容になればいいな!」
 おお、なんと恐るべき野望! 遊奈は興奮冷めやらぬといった表情で、カメラに笑いかける。
「それじゃ、今日はここまで……ボク達の満足はこれからだ!」
 そう、遊奈達の満足はこれからだ――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

響納・リズ
こういうのは初めてですが、できる限り頑張りますわね。
ハッキングはできませんけど、こっそり潜入して偽の指令を出して自滅を狙いましょう。

「皆様の心を癒やすために参りました。まずは演奏をお聴きくださいね」
得意のフルートを披露して、ヒャッハーさん達を引きつけましょう。
「皆様、今までのトレーニングでお疲れではありませんか? 私が癒やしますので今日はこの辺でお帰りしませんか。最寄り駅まで私がお見送りしますので」
生まれながらの光で相手を癒やし、信頼を得た所で帰っていただきましょう。そうすれば、無用な戦いもなく、敵戦力を減らすことができることでしょう。
オイタをする方には鉄槌をしますが、それ以外は寄り添います。



 ステージに立つ響納・リズ(オラトリオの聖者・f13175)を、惜しみない大喝采が出迎えた。いずれ喝采は止み、優しい注目が彼女に注がれる。
「――皆様の心を癒やすために参りました。まずは演奏をお聴きくださいね」
 リズは行儀よく一礼すると、エリート指揮者ヒャッハーのタクトに合わせ、フルートにそっと口づけた。
 しん……と、場内を静寂が打つ。
 リズの柔らかな吐息は、そのまま天上の音楽となった。
 奏でるは至福の瞬間。福音の刻。何もかもを許すような、暖かな浄化の波。
 観客席に座るエリートヒャッハーたちは、静かに、その訪れを楽しんでいた。
「(ああ、眠っている方も……。本当に皆様、トレーニングでお疲れなのですね)」
 演奏にも熱が灯る。いたずらに技巧に走らず、ゆるやかな小川の流れを内観し。
 そこにリズは、春の野のやわらかな日差しを再現する。
 生まれながらの光――。
 あるエリートヒャッハーが、その癒しに気がついた。
 輝きに手をかざす。
「(わ、わたしの肩が……。久しぶりにソフトボールを遠投したら力の加減ができなずに痛めてしまったはずなのに、嗚呼、こんなにも軽い!)」
「(僕の肘もです! 靴を履こうとして靴べらがなかったのでしょうがなく指でガイドしたらグキッとやってしまった肘が、全く痛みません!)」
「(こ、腰ぃ……! 特にエピソードもなく自然に壊れた腰が治りました!)」
 続々と、奇跡を訴えるエリートヒャッハーたち。リズの額に汗が浮くのに気づき、エリート指揮者ヒャッハーが心配そうな視線を向けた。
 リズはただ、微笑む。この位の疲れなんて、と。

 演奏の余韻がホールに響き、消えると、割れんばかりの拍手がリズを讃えた。

「――ご清聴、ありがとうございました。あの、なんだか意外なのですけれど、私も気持ちよく演奏ができまして、とても素敵な体験となりましたわ」
 どうしてもとせがまれ、インタビューを受けるリズ。彼女の言葉に、エリートインタビュアーヒャッハーが返す。
「ありがとうございます。さてリズさん、なんでも貴女には、私たちにお願いしたことがあるとか?」
「お願いというよりは……いえ、おっしゃるとおり、これはお願いですね。
 今日は皆さん、本当にありがとうございました。それで、どうでしょうか。
 この心地よい気持ちのままで、今日はひとつ、お家に帰られてみては?」
 わずかにざわつくエリートヒャッハーたち。が、それもすぐに収まった。
「よろしければ、最寄り駅までお見送りさせていただきますわ。お家で一晩ぐっすり寝て、気持ちよく目覚めて、それで――」
「――わかっています。わかっていますとも」
 エリートインタビュアーヒャッハーが、彼らを代表して答えた。
「夢は終わる。いえ、今度こそ夢が始まるのですね。
 見果てぬ夢……なんだったかなあ、僕は……true love……」
 ――彼らヒャッハーたちがヒャッハーなのは、元からヒャッハーな真正ヒャッハーを除けば、執拗に行われたヒャッハートレーニングによる心的ヒャッハー外傷によるところが大きい。
 その傷さえ癒えれば、もう彼らはヒャッハーではない。
 普通の……バレンタインのチョコが欲しいだけの、ちょっと被害妄想強め系陰キャの群れなのだ。

 あのホールにいたエリートヒャッハーたちは、みな最寄り駅である『世紀末駅』から帰っていた。見送ったリズは、入場口に振り返り、世紀末アゲイン・アンド・フォーエヴァーを見る。
 変わらぬ荒野が、扉の向こうに広がっていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エーカ・ライスフェルト
久しぶりの気がするけど気のせいね
【電脳ゴーグル】で基地にアクセスして【ハッキング】で通信回線を乗っ取るわ

「おはようヒャッハーの皆さん。重大なお知らせがあるの」
「もう夏真っ盛り。ぐずぐずしてると女の水着を見ることなく1年が終わってしまうわ」
「その鍛えた体を見せびらかしたいと思わない? 夏の海なら大手を振って筋肉を誇示できて」(一拍おいて真剣な顔になる)「もてるわよ」

必要以上にがっつかないとか甲斐性をみせるとか色々条件はあるけどね

ヒャッハーが迷う様ならちょっとだけ私の水着姿を見せて煽るわ
【下着】と違って水着には慣性制御機能がないから、心底自分の胸が鬱陶しいけど

〆はバイクで夕日に向かってゴー、かしら



 ッターッンンンン………………。
 エーカ・ライスフェルト(電脳ウィザード・f06511)の右小指が、仮想キーボード上のエンターキーを華麗に弾いた音だ。余韻が静寂の中に消え、無音のアクセススクリーンが、代わりに多数立ち上がる。
 ここは『地下監視塔』の内部向けサーバールーム。外部のインターネットからは切り離された、狭義でのLAN、ローカルエリアネットワークを統括する物理拠点である。つまりエーカに先立って別の猟兵が同じようにハッキングを行っていた所とは別のネットだということだ。覚えておこう。
 さて。
 モニターに表示されるプログレスバーが、一斉に100%を表示した。完了サイン。
「フフッ……」
 その快に、笑う。
 この建物の情報通信は、いまや全て彼女のものだ。
 黒幕のオブリビオンでさえ、そうやすやすと手出しはできないッ!
「じゃあ、監視カメラ乗っ取って――done。あら、エリートさんたちがいるのは、トレーニングルームかしら。大きなモニターもあって……うん、好都合ね」
 エーカは【電脳ゴーグル】を机に置くと、そこからの映像をストリーミングで例のモニターに表示させる。ノイズを多めにするのは、これがハッキング映像であることを分かりやすくするための、お決まりの演出だ――。

 一方、エリートヒャッハートレーニングルーム。
 ビジネススーツ空手の正拳突きドリルを行っていた彼らの元に、場違いなほどに明るい女の声が届いた。
『――ハァイ♪ 元気してる?』
「アッ女性です!」
「女性がモニターに写っています!」
「ハートブレイク・チョコレート怪人さんの演説が流れていたはずでは?」
 エリートヒャッハーの七三分けに動揺が走る。数人が分け目からアホ毛を立てた。
「静粛に! これは欺瞞情報です!」
 ブラックベルトのエリートヒャッハーが、突発的な事態を収集せんと声を上げる。が、それ以上に音量の大きなBGMが流れ、それを打ち消した。
『おはよう、ヒャッハーの皆さん。私は通りすがりのおねえさん。突然だけど、貴方達に重大なお知らせがあるの』
「お知らせ……アッ!」
『ほら。こっちを見て頂戴ね?』
 モニターに表示される『夏到来のお知らせ』という蠱惑的なレタリングが、否応なしにエリートヒャッハーの目を引いた。その背後にグラマラスな女性のシルエットも表示されているとなれば、どんな成人男性にも抗いようはないだろう。
「な、夏ですか……? 私たちは、確かバレンタインという商業主義イベントの開催を鉄拳粉砕断固阻止すべく、こうしてビジネススーツ空手に勤しんでいたのでは?」
「アッ確かに今は8月です! 8月の……中旬! モニターにそう書いてあります!」
「モニターに書いてあるなら間違いはありませんね! さっきまで1月下旬だった気もしますが、気のせいでしょう!」
「あなたの時間間隔に齟齬が生じているのではないでしょうか?」
「いやトラブルが」
「他の案件に気を取られ」
「放置状態がなんか面白くなってきちゃって」
「喧々諤々」
「やいのやいの」
「わーわー」
 順調にエリートヒャッハーたちのちのうが低下していく。それを仕掛け時と見たか、モニターの女(もちろんエーカである)は更に言葉を重ねた。
『そう、そうなのよ、もう夏真っ盛り、サマーシーズン到来済よ。ヒャッハーの皆さんも、ぐずぐずしてると女の水着を見ることなく1年を終えてしまうかも』
「「「「それはいけません!!!!!」」」」
 即答であった。
「女性の水着を見逃すとはエリートの名折れ、いや、人としても不出来でしょう!」
「一人でも多く、一瞬でも長く! それこそが、我々の生きる道!」
「ああ、見える……私にも見えます! モニターの女性の水着姿が!」
「(聞き取れないくらい早口でエーカの水着姿(妄想)をたたえるこえ)」
『フフフ……』
 エーカはほくそ笑んだ。
 コンピューターも男も、手玉に取ることは、こんなにも楽しい。
 思いのままに、目の前の現実を歪めていく愉悦と非情――!
 そしてひと思いに、止めの一言を振り下ろす!
『ヒャッハーの皆さんは、その鍛えた体を見せびらかしたいと思わない?
 夏の海なら、ええ、大手を振って筋肉を誇示できて』

『もてるわよ』

『もてるわよ』『もてるわよ』

『もてるわよ』『もてるわよ』『もてるわよ』

『もてるわ――もてる――もて――もて――も――――(残業音含む)』

「ひゃ」
 ――ひゃ?
「ひゃ……ひゃ、ひゃ…………ひゃひゃひゃ」
「い、いけません! 鍛錬を重ねてようやく封じ込めることのできた我々の獣性、いわばヒャッハー分が、表に出ようとしています!」
「ええ、これは拙い! なんと言っても、私自身その誘惑に抗えそうにないのですからねヒャッハーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
「「「「ヒャッハーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」」」」
 そういうことになった。
 エリートヒャッハーたちの七三分けは七三モヒカンとなり、ビジネススーツの袖と裾はなんかトゲトゲに引きちぎられる。ポストアポカリプスのサラリーマンのようになったエリートヒャッハーたちは、一斉にトレーニングルームを出た。
 あとに残るのは、ズタボロになったビジネススーツの袖と裾のみ。
 エーカは、その寂びた光景を前に、ストリーミングを終了させた。
 目を閉じ、軽く頭を振るエーカ。
「……ダメね、あれじゃあ。
 本当にもてるためには、必要以上にがっつかないとか甲斐性をみせるとか、そういうメンタルの鍛え方が大事なんだけど」

「そういうのを先に言っておいたほうがよかったかしら?」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ハートブレイク・チョコレート怪人』

POW   :    ジェラシックフレイム
【チョコレートの頭部から噴き出す嫉妬の炎 】が命中した対象を燃やす。放たれた【嫉妬の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    センチメンタル・ギリチョコワールド
戦闘中に食べた【義理チョコ 】の量と質に応じて【過去の悲しみを糧として】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    ジェラシック・ラブイーター
【嫉妬 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【とろけるチョコの塊】から、高命中力の【愛を食らう触手】を飛ばす。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠滝舘・穂刈です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

エーカ・ライスフェルト
私がバイクから降りて相対することになるか、怪奇嫉妬チョコレート男……じゃなくてオブリビオンが格好良く登場して相対することになるのかは分からないけど、強敵に対する敬意を以て接するわ

「貴方はオブリビオンらしく欲望に忠実だけど、大量の死を撒き散らした訳でも人間を社会的に殺した訳でもない。猟兵になる前の私に見習わせたいくらいよ」(かつての己を思い出して苦い顔になる)
「でも貴方はオブリビオンで私は猟兵」(UCで小型【機械兵器】をずらりと召喚する)
「決着をつけましょう」

多分シリアスなのはここまで
ダイエット中なのでチョコを避けづらかったり、威力はあっても雑な【念動力】で兵器を吹き飛ばしちゃったりすると思うわ



 灼熱の太陽は、既に地平線の彼方。
 予熱がおぼろげに、冷たい砂より立ち昇る。
 今、ある女と、ある男が、影絵の蜃気楼に囲まれて相対していた。
 世紀末アゲイン・アンド・フォーエヴァー……。
 怪人の支配を抜け出したそのリゾートは、本来の形を取り戻しつつある。
 アフターマス、或いはポストアポカリプスの夜は、何処よりも涼しく静かだ。
 動くものは、もはや観測者しか無いゆえに――。

「敬意を表するわ、貴方に」
 女、エーカ・ライスフェルト(電脳ウィザード・f06511)は、言う。
「……フン。こんな惨めな男を憐れむか、猟兵!」
 男、ハートブレイク・チョコレート怪人は、応える。
 両者の間に涼風が流れた。首を横に振るエーカの髪とドレスの裾が、はためく。
 怪人はローアングルに構えた。
「貴方は、オブリビオンらしく欲望に忠実だけど、大量の死を撒き散らした訳でも、人間を社会的に殺した訳でもない。
 己の主張。ただそれのみで、世界を変えてみせた。
 自己を世界に押し付ける者として、それは最低限あるべき礼儀よ」
「単に、単に世界がそれを望んでいただけだ。
 そして世界は! 今も! それを望んでいる!
 あいつらのザマを見たか、見たよなァ!? あの青空に浮かんだ生き生きとした笑顔、あの魂の底から吐き出されるような断末魔の快声、どれを取っても――」
 怪人の言葉に引かれ、数時間前の記憶が、鮮やかに蘇る。あの男たちのことだ。
 エーカは瞑目し、呟く。
「――ええ。ええ、その通りだわ、その通り……。
 ……猟兵になる前の私に見習わせたいくらいよ……」
 頭頂を地面に付け、執拗に隙とシャッターチャンス(精神)を狙っていた怪人の。

 ――頬が、歪む。

「ぎ、ギヒ、ギヒヒヒヒ……!」
 ゴゴゴゴゴゴゴ……!
 大地の底から響くような重低音が、気づくと周囲の砂を跳ね踊らせている。
「……」
「猟兵。貴様この俺に嫉妬(ジェラス)したな……ナンデ? つか正直理解できん。
 理解はできんが、だからといってむざむざ見過ごすのも怪人がすたる!」
 怪人はブリッジの姿勢を取ると、頭部の両目に当たる部分を激しく発光させた。
 全身タイツのアーチが、より美しい曲線を描く。
 と、砂を割って、巨大で真っ黒なカタマリが姿を表した。
「…………」
 溶岩のようにどろどろと流れ、それでいて総体を失わないそれは、そう、【とろけるチョコの塊】である!
「まーさか使えるとは思ってなかったが使えるなら使うぜェ、猟兵!
 この【ジェラシック・ラブイーター】○○、貴様で破棄させてもらう!」
「………………お断りよ」
 ズン!
 地面に落着したカタマリが、エーカに触手を伸ばそうとする、その直前!
 エーカは必殺のユーベルコード【エレクトロレギオン】を発動させた!
「そう、貴方はオブリビオンで、私は猟兵。そうね?」
「おうよ! 貴様は猟兵で俺はオブリビオン! 過去より蘇り過去を布く過去の尖兵! 具体的にはバレンタインデーとかいう概念死ねばいいと思います」
「そうね。だから――決着をつけましょう」

 どかーん。
 怪人は吹っ飛んだ。
 ユーベルコード(笑)。

「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――は?」
 吹っ飛ばされる時に、怪人はそれを見た気がした。
 自分のカタマリどころか、猟兵の召喚した【機械兵器】までもが、女の念動力一発で根こそぎ吹っ飛んだところを。さすがにそれは現実の解釈違いだと信じたいが。
「(……待て待て、何かがおかしい。おかしいな。機械兵器とチョコ触手とのシリアスでそうぜつなくうちゅうせんが始まって、そうなれば命中力に勝るこちらの触手が勝つのは運命的必然だから、つまり両手両足縛り付けてからのお楽しみシーン確定だったのでは? 描写担当がいればウッキウキで長文垂れ流していたのでは?)」
 インパクトからここまで約0.8秒。
「(待て待て待て待て、考えてみれば何もかもがおかしい。蹶起したのはバレンタインだよな、だったよな? バレンタインってのは冬のイベントだよな。毎年クッソ寒かったのを憶えている。だのに暑いってナンデ? え、夏? 今夏なの?)」
 ずぼし。
「へあう」
 怪人は頭から砂漠に突っ込んだ。奥の方は潜熱で暑い。ってか熱い。マジ灼熱い。
「んん――――――――――!」
 じたばたと足掻く怪人を前に、そしてエーカはこう言い放つのであった。
 巻くわよ、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​


 すると天井の夜空スクリーンに、このような表示が現れる。

「 巻けます
 →巻けません」

 ……どうやら、まだ青い星の数が足りていないようだ。
 猟兵たちは、それぞれになんかこう、気合を入れ直したり入れ直さなかったりした。
エーカ・ライスフェルト
巻きたいけどノルマがまだ…

「さっきはぎりぎりの戦いだったわ。さすがね」(一般作だから健全です、と墨書された九尾扇で口元を隠す)

「ところでいつまで間抜けなふりをしているの? 私が不用意に近づく様な馬鹿だと思っているのかしら」(砂漠でじたばたするオブリビオンを警戒し過ぎて追撃の好機を逃がしています)

「同じ技が通用するとは思わないから…」(なんとなく凶悪そうなワイヤーを【念動力】で浮かばせる)「今度はスライスチョコレートにしてあげる」

今回のUCは【バトル・インテリジェンス】

でもチョコが切れて飛び散るでしょ?
ダイエットで我慢しているから無意識に目で追うでしょ?
AIでもサポートしきれないんじゃないかなー



 どこかの世界の、どこかの日本の、どこかの地獄に、ああいう目に合う責め苦があるという。地熱か何かで猛烈に熱せられた穴の中に、手足を縛られ、上下逆さまに突っ込まれるのだとか。
 エーカは想像する。
 一つ手順を間違えれば、そこに自分が突っ込まれることになっていたのだろう。機械兵器とチョコ触手とのシリアスでそうぜつなくうちゅうせんの果て、防御を突破された自分の両手両足が、がんじがらめに拘束されて、そして。
「さっきはぎりぎりの戦いだったわ。さすがね」
 彼女は、心底からの嘆息を、九尾扇で隠す――。

(……これは余談になるのだが、その扇には『一般作だから健全です』という、とある古典文学からの警句が墨書されていた。
 温故知新、現代にこそ通じる叡智を惜しげもなく披露する彼女の振る舞いは、そのちのうのたかさをまざまざと見せつけるものであったのだが、本筋には残念ながら、あまり関係しない……)

 ――そして、エーカは動かない。いや、動けない。
 不気味なのだ。あの、砂漠に頭から突っ込んだ状態に甘んじている怪人が。
 V字にぴーんと脚を伸ばしたりM字に膝を曲げたりしている様子は、一見すればこの上なくBUZAMAに思える。いかに怪人とて、そんなBUZAMAを一秒でも長く続けることは、精神と社会的立場におおきな瑕疵を残すことになろう。しかも全身タイツだ。
 エーカは、警戒を怠らずに話しかける。古代書道の扇をぱちんと閉じた。
「ところで、いつまで間抜けなふりをしているの? 私が不用意に近づく様な馬鹿だと思っているのかしら」
 しーん……。
 答えはない。
 怪人のBUZAMAポイントが順調に貯まっていく。
 それは、エーカの『不安』と、ほぼ同義であった。
「…………………………!」
 気づき、エーカは自身の念動力を再度出力する。あの戦いを制するほどの力を持つそれを、怪人の周囲にある砂を吹き飛ばすことに集中させた!
 果たして、怪人は……!
「な……!」
 エーカの目が満月に見開く。驚愕する。
 怪人の異形頭は、物理的に膨らんでいた!
「――ふぃぶいふぁふぁ、ゔぁーかへ!(くちゃくちゃ)(ごっくん)」
 わざとらしい咀嚼音、粘着質な嚥下音。
 そして怪人の口の端から溢れる、黒色の粘液を見よ!
 ああ、あれなるは――義理チョコのすがた!
 義理故に配給品で、故にとっても美味しくて、故に只々悲しいだけの甘味!
 万人に呪いあれと涙の海に破棄された、義理チョコの成れの果てである!
「ふぁゔぁああああああああああああああああああああ!」

 ……そして砂漠は、チョコ漠へと姿を変えた。
 一瞬の出来事である。

「――バトル・インテリジェンス!」
 エーカの召喚した【AI搭載型戦術ドローン】が、即座に彼女を操作した。周囲に荒れ狂う義理チョコ(配給品)の波、そのリップの崩壊から先を完全にシミュレートするには、もはや電脳の力を借りる他にないッ!
 比喩でなく針の道を、その並行する多重高速思考で、エーカに迷いなく駆け抜けさせるドローンAI。おかげでエーカ本人は、出力を上げることに専念できた。
 狙うは……そう。都合のいいことに、砂漠の中に隠されていた。
「バーブドワイヤー(有刺鉄線)!」
 念動力の掌で端を拾い上げ、続けて次々と別の掌に握らせる。見えざる百の拳に握られたワイヤーは、チェーンソーじみて空中を走る!
 ズパパパパパパパン!
 火花と小気味よい音とを立てて、エーカに落ちてくる義理チョコはそれぞれ欠片に、そして粉粒にまで切り刻まれていく。ところで夜とは言え今は夏なので、それなりに暑くはあり、つまりチョコレートは気温で溶ける。
 切り刻まれたチョコレートが溶けている。
 ――まさしく、手作りチョコを作る過程のように。

(♪回想BGMはじまり)

 前にチョコを食べたのはいつだったかしら。
 ついこの間のようで、でももう思い出せないくらいの昔ね、きっと。
 ダイエット――。
 乙女に厳しい禁欲を強いるそれは、しかしながら乙女の生まれ持つ業。
 それを、ほんとうに、私、がんばってるじゃない?
 今だってそう。ほんとよ。我慢してる。我慢の子。
 だから、つい……。
 ……めくるめくチョコの波に魅せられてしまっても、仕方ないと思わない?

(♪回想BGMおわり)

 ざっばーん。
 エーカは巻き込まれた。
 チョコレート(笑)。

「ア――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!」
 エーカの細腕が、かろうじてチョコレートの波間から虚空に突き出していた。
 掴むカルネアデスの板はない。
 怪人は黒い月となって、四方八方から寄せる異常な波の中心特異点、その上方にゆらりと突き立っている。
「フフ、フフフフフ……ごばァ!」
 月が吐血した。真っ赤な飛沫が飛ぶ。
 環境をここまで激変させる技に、そう、代償と反動が存在していたのだ。
 糧にしきれないほどの巨大な悲しみが、怪人を傷つけながら溢れている。
 あるいは……一筋のワイヤーがその胸を衝いているのも、理由かもしれなかった。

 ――月が、悲しみの海に落ちる。
 エーカの腕も、そして波濤に消えた――。

成功 🔵​🔵​🔴​

エーカ・ライスフェルト
「さすがね」
表情は取り繕っていますが、ドレスや髪のあちこちにチョコがついています
チョコから抜け出すために【念動力】を酷使して息も荒いです

「貴方を甘く見ていたつもりはないけれど……いえ、力を温存したまま勝とうなんてした私が馬鹿だったわ」
チョコレート大好き
義理だろうが売れ残りだろうがチョコはチョコ
(食欲的な意味で)食べちゃいたいという思いを抑え込むため苦労しています

「これで終わりよ。魔法で再現した【わたしのかんがえたさいこうのましんがん】じゃなくて【魔力弾】!」
命中優先だから威力は控えめ

後は、とろ火の【属性攻撃】で柔らかくして、斬撃の【属性攻撃】でチョコを切って回収……じゃなくて削ろうとします



「――――――――はあッ!」
 その小さな絶叫は、数回チョコ漠の海に響いた。
 続くのは地鳴り。聞き違いのように幽かに始まったそれは、かたかたというチョコレートの振動を前兆に、ある瞬間、一気に拡大する。
 エーカが、ついにやった。
 砂漠の砂が例えられたチョコ漠のチョコを、全て、全て把握したのだ。
 人工天頂に輝く真の嘘の月に向けて――逆流する!

 ……ウオオオオオォォォォォォン!

 漠が、泣きの涙に浸っている。
 そのうねりは、お互いに擦れ合い削れ合い、故に加熱して、チョコレート・アモルファスとでも呼ぶべき巨大な新物質と生まれ変わっていった。
 原始新チョコレート世界の創造――。
 ――そんなことができるくらい、つまりエーカはチョコが大好きだったのだ。
 ダイエット中なのにね。

「さすが、ね」
 息も荒く、エーカは言う。眼前には通信空手の構えを取る怪人。
 両手チョップに内股でぷるぷる震えるその怪人を、なんら侮ることはなく。
「ほ、褒めたってなんもでないぞー? うう、打ち止めだってホントに!」
「いいから。大人しく受け取っておきなさい」
「ぬう……」
 ダブルチョップのエックス字が、エーカと怪人、双方の視線を遮る。
「貴方を甘く見ていたつもりはないけれど……いえ、力を温存したまま勝とうなんてした私が、馬鹿だったわ」
「……フン、笑止。あの程度のサイキックでこの俺を倒そうなどと――え、なんだって!? アレで本気じゃなかったって本当?」
「お礼に、というのも失礼かもしれないけど。私の本気を、見せてあげるわ」
「ハッ! どうやら本当らしいな! ならばせいぜい、足掻いてみせる!」
 怪人は内股のまま姿勢を低くすると、そこから目のさめるようなバックステップを披露した。射角32度の跳躍。十分に高度を取った所で、ば、と両手両足を開く。
 エーカは、幾度か手を握り開きすると、意外なことにチョコレート・アモルファスの制御を手放した。怪人もそれを目ざとく見届ける。
「正気か?」
「おかげさまで」
「ならば、ならば!」
 怪人は自らの飛行にひねりを加えた。
 ぐるぐると、強風にあおられた凧のように回る。と。
「お前に立てたフラグを折るフラグは立ててないはずだよなぁ!」
 その背後から【愛を食らう触手】が、群れをなして飛び出してきた!
 エーカは冷静に、しかしある激情を抱えたまま、それらに【ウィザードロッド】を向ける。ロッドにはめられた玉石が魔力光にきらめいた。
「魔力注入完了。銃身展開完了。
 これで、終わりよ――発射」
 ……ッ。
 息を呑むような静寂が、一瞬。光に弾けて、かき消される。
「これが、魔法で再現した【わたしのかんがえたさいこうのましんがん】じゃなくって【魔力弾】! 否定できるものならしてみなさい!」
「なにおー! 俺の触手は最強なんだ! 今度こそそうぜつなくうちゅうせんを制し、お前と俺でサービスタイムだ! 心躍るな!」
 ゴォオオオオ!
 魔力弾と触手とが、中間地点でせめぎあえば、やはり対消滅――し切らない!
 打ち破り、突き抜けるはすべて、エーカの魔力弾の方だ!
 両者の相克点は次第に、怪人の方へと近づいていく。

「心躍る……そう、そうかもしれないね。
 この戦いを終えたら私、殻を破るわ。
 ちょっともう、我慢しきれそうにないし」
 エーカは、頬に留まるチョコレート・アモルファスの残骸を、指先の熱で溶かし、そのまま唇に、舌先に乗せた。
「ン……、ふふ」
 久しぶりの、必要以上の糖分が脳内に駆け巡る。
 と、そこに閃きが生まれた。悪い悪い、悪の閃きだ。
 曰く――ここで前もって脂肪を燃やし尽くしておけばいいじゃない、と。

「そんな考えではダイエットに失敗するぞア――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!」
 魔力弾の奔流に飲み込まれた怪人が、なぜか的確なアドバイスを叫びながら打ち上げられていく。
 その行き着く果ては、ここからでは見えない。多分リゾート内のどこかではあるはずだが、そんなことよりもまず、エーカにはすべきことがあった。
 この事件の何もかもは、その後でも十分に間に合う。
 エーカは再び、チョコレート・アモルファスの制御を取り戻した。
 その庇を見上げて、うっとりと微笑む。
「義理だろうが売れ残りだろうが、チョコはチョコ。……ええ、有効活用させてもらうわ、怪人さん。
 ――私が、この遺産を引き継ぐ」
 エーカはロッドを手放すと、左手に【とろ火】属性、右手はちょっと迷って【切削】属性を宿した。
 うやうやしく、長年の従僕のように頭を垂れるチョコレート・アモルファスに、エーカは取り掛かるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

響納・リズ
ヒャッハーさん達を見送った途中で、偶然、洋菓子店を見つけましたわ。
これならば、多少は見栄えするのではないでしょうか。ついでにボスさんの心も少し癒しておきましょう。

「まあ、まだいらしたんですのね?」
WIZを使って相手の攻撃をかわしながら。
「あなたの行為は褒められたものではありませんが……けれど、その心は分かるつもりです。ですから」
自愛を込めた微笑みを浮かべながら【礼儀作法】も使いつつ。
「私、持ってまいりましたわ。あなたの分」
自愛の微笑みで買ってきたチョコを取り出し、お渡し。
食べ終わったのを見届けてから。
「ですが、他の方を巻き込むオイタはいけませんわね」
UCでしっかりととどめをさしておきます。



「静かな夜のお散歩も、なかなか楽しいですわね……」
 と、響納・リズ(オラトリオの聖者・f13175)。例のエリートヒャッハーを送り出した後、こうして世紀末アゲイン・アンド・フォーエヴァーに再入場していたのだ。
 周囲の様子は、……キマイラフューチャーだと思えば、うん普通普通。砂漠がチョコ漠になっていたのは想定外だけど。見上げると夜空を模した天球スクリーンに、何かのポイントがどんどん加算されているのはなんだろうか。あ、5桁行った。
「……おや?」
 満点の星々の輝きの中に、ふと、大雑把に人の形をした空白を見つけた。目を凝らして調べれば、黒の全身タイツと茶色のヘッドという、夜空の暗黒に対し若干のカモフラージュ能力を持つ、つまり怪人の姿であると知れた。
 立ち止まる。
 ずどーん。
 爪先を揃えて行儀よくたたずむリズの目の前に、それは着弾したのであった。
「…………」
「――――」
「…………」
「――――」
 ひゅぅうううううう……。
「……まあ」
 たっぷり三呼吸ほどの間をおいて、リズは感嘆の声を上げた。
「新記録、ですわね?」
「うれしくは、ない」
 という彼らの頭上に燦然と輝く、『BUZAMA:World New Record!』の表示。
 この怪人が、どういうことをしてどういう目にあったのか、詳細は不明だが明らかであった。
「うらやましいか?」
「いいえ、ちっとも」
「デスヨネー」
 ぽひゅう、と、どこかで気の抜けたようなユーベルコード発動失敗音が鳴った。あのー、これそもそもの設計に問題ないですかね? ない? ならよし。
「でも、まだいらしてくれて良かったですわ。あなたに渡したいものがありまして」
「引導か?」
「うふふ……」
 曖昧にはぐらかしながら、リズは頭から地面に突き刺さったままの怪人に近寄る。
 引っこ抜いて、とりあえず膝枕のポジションで拘束した。
 怪人の目(にあたる部分)が、驚愕に見開く。
「これは……な、なんだ!? この甘美な感覚! まさか、臨終の瞬間に脳が見せるという、臨死体験、なのか……」
「現実ですわ。リラックスして、私の話を聞いてくださいまし」
 ぽんぽんと、落ち着かせるように軽く叩く。と、怪人の抵抗感が消失した。
「お話は、エリートヒャッハーさんたちから伺いました。
 異性からの好意が足りず、寂しい思いをしている殿方に、……救いを、与えようとしたのですね?」
「……それは」
 本当は、本当に、それは違うのだろう。
 そのつもりであれば、もっと穏便な手を用いるはずだ。
 リゾート施設を占拠しての蹶起など、常識で考えれば暴挙としか言えない。
 ――それでも。それでもリズは、分かっていた。
「あなたの行為は褒められたものではありませんが……けれど、その心は分かるつもりです。ですから」

 ――始まりの一歩は、純粋なものであったはずだ、と。

「ほんとうに、長くお待たせしてしまいました。
 私、持ってまいりましたわ。あなたの分」
「俺の……分?」
「ええ。急ぎでしたので、途中の洋菓子店で選ばせていただいたものですが。
 正真正銘、【あなた】というあなたにお渡しする、バレンタインのチョコレート」
「お、おお……あぁ……ッ!」
 怪人に座るよう促し、自分も対面の近くに座るリズ。紙袋から丁寧に包みを取り出すと、ハート型のシールを相手に向けて、それを差し出した。
「受け取っていただけますか?」
 乙女は微笑む。慈愛の微笑み。慈しみ、愛すという至難のわざを、ただそれだけで表現するという、人間存在における究極のスキルのひとつ。
 いかにオブリビオンに堕したとはいえ、その温かさ、暖かさは、生前追い求めていたであろう怪人の心に、深く深く、染み込んでいったに違いない。
「ああ、ああ、嗚呼……!」
 怪人は、その包みを掻き抱く。そしてうやうやしくほどき、ひとかけずつのチョコレートを、泣きながら口に運んでいった。
 その光景を、見届けると――。

「分かっている。今度こそ、引導か」
「ええ。他の方を巻き込むオイタはいけませんわ」
「後悔など在るものか。未練も、こうして晴らせた……が、しかし」
「しかし、なんですの?」
「しかし――しかし、だ!
 我こそは恐怖のオブリビオンにして漆黒の怪人! 『ハートブレイク・チョコレート怪人』であることに依然変わりは無い! あろうはずもなかろうよ!
 一度この俺を倒した所で、第二第三の俺がきっと現れる! 貴様らは知らぬだろうが、さるお方がこの世界におられる以上――あ、もう死んでる? はい。
 じゃあ残党の皆さんよろしくお願いしまア――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!」

成功 🔵​🔵​🔴​

城ヶ崎・遊奈
「さあ!決闘(デュエル)開始の宣言をして!!」
と取り巻きのヒャッハーに生放送開始の指示を飛ばしつつ颯爽とD・バイクに騎乗して登場
いつの間にか半年以上経ってるけどそこはそれ!半年間みっちりデュエルトレーニングして洗の(ry …ゲフンゲフン、もとい教育したヒャッハー達を観客に【グッドナイス・ブレイヴァー】を発動!

【召喚:2対の翼】【召喚:進軍する機械の中隊】などのカード決闘で攻撃していくよ!
教育済みのヒャッハー共との絆パワーを見せつけて怪人が築いてきたヒャッハーランド崩壊した様を見せつけていくスタイルで心理フェイズを仕掛けるよ

場合によっては『グラップル』を駆使したリアルファイトも辞さない構え



『――キミは彼女の名を、覚えているか!
 運命が告げられたあの日、綺羅星のごとく現れた、
 あの決闘者の名を――!』

『かつて天は砕かれ陸は裂かれ、人の心からは愛と希望が失われた……。
 この地に集いしヒャッハーたちは、虚ろな瞳でただ絶望を謳うのみ……。
 しかし! 風雲急を告げる砂漠の大地に、ある決闘者が流れ着く!
 その日のことを、キミは覚えているか!
 端的に言うと7ヶ月くらい前のことなんだけど!』

 壁についた手の跡は、チョコレート色をしていた。
「――クソッ、そういえば施設の、アクセス権はァ、奪われたままだった……ッ!」
 世紀末アゲイン・アンド・フォーエヴァー内、某所。
 怪人は足を引きずりながら、隠し通路であるそこを進んでいた。
 狭いコリドーだ。駆け抜ける余力も残っていない。時折聞こえてくる、外部スピーカーからの洗脳音源は、頭を振って逃れる。
「確かに、オレは破れた……負けを認め、女の微笑みに絆されもしたさ。だが!」
 それでも……この出口を出た先に……!
「オレの希望は、はるかな夢は残っているはず!」
 水密扉のハンドルを三回転。錆びつきを予感して強く引いた鉄扉は、意外にもあっさり開いた。
 そこに――。

 バイクに乗る一人の少女と、ステージと、それらを囲む大きな観客席が見えた。

「――はい!
 視聴者のみんなー! おはよう、こんにちは、こんばんはー! 社長の遊奈だよ!
 今日は前々からの予告通り、世紀末リゾート改め決闘リゾートからの生放送!」
「「「ヒャッハーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
「は?」
 怪人は、素で声を上げた。
 理解可能、意味不明。え、ここはリゾートのひみつ地図に載ってた、ひみつ脱出通路じゃなかったっけ? 避難訓練もしたよな、あいつらと。ヒャッハーと。
「ヒャッハー! おいお前ら、元ボスのあの間抜け面を見ろよォ!」
「元ボスのあの間抜け面をよォ! ヒャッハー愉快だぜェ!」
「さすが社長! 愉快痛快は遊奈社長が一番だぜェ! 元ボスじゃなくてなァ!」
 ブォオオオオオオン!!
「「「ヒャッハーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
 いななくバイクのエンジン音に合わせて超絶盛り上がるヒャッハーたちに、ライドンしている少女が軽く片手を挙げる。
 と、水を打ったような静けさが、周囲に訪れた。
 城ヶ崎・遊奈(バーチャルキャラクターの決闘者・f12997)。今や名実ともにこのリゾートの支配人となった、決闘者である。社長と呼ぶと喜ぶ。
「ねえ」
「!?」
 身構える怪人を前に、遊奈は余裕の声色で語り始める。
「決闘者が生まれ変わるのに、キミはどのくらいの時間が必要だと思う?
 1年? 1月? 1日それとも1時間? ……いいえ。
 ――1ターン、1ドローさえあれば、それでEnough!」
「「「ヒィイヤッハーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
 観客席に居るヒャッハーたちが、総員スタンディングオベーションで声援を贈る。そのたびに、遊奈の装備しているデッキは煌きを増していった。
「だから! 傷ついたキミの力に、ボクは間違いなく敬意を表したい!
 確かにキミは『破れ』、『負けを認め、女の微笑みに絆されもした』よね。ボクはそれをずっと見ていた。あはは、正直言えばざまあみろって思ったりもしたよ。
 ――それでも、立ち上がる強さを持つキミを、ボクは――」
「待てッ!」
 怪人は遊奈の言葉を止めようとした。
「待て……それ以上は言うな!」
「言うさ。キミのその言動は、この先を言うに値するから」
 パチィイイイン!
 遊奈のフィンガースナップが、ようやくの始まりを告げた。

「さあ! 決闘(デュエル)開始の宣言をしてよ、ヒャッハーくんたち!
 ボクは、キミのその心の強さに『嫉妬している』ッ!」

「「「「~~~~~~~~~~!!!!!!!!!」」」」
 もはやヒャッハーとも聞こえない大音声が、しかし、怪人の頭上に現れたチョコレート塊からの触手によって打ち砕かれる。怪人の表情は影になって見えない。
「こいつらに、こいつらに何をした! 猟兵ッ!」
「何って、せんの……ゲフンゲフン、一緒に楽しくデュエルをしていただけだよ?」
「ヒャッハー……楽しい、デュエル?」
「デュエルって楽しかったっけ? たのしくて、たのしいけど」
「ハイ! デュエル楽しいデス! ハイ! デュエル楽しいデス! ハイ! デュエル楽しいデス! ハイ! デュエル楽しいデス! ハイ」
「……わかった、もういい! もう……ッ」
 憎悪のこもった怪人の視線に、遊奈はゾクゾクとしたものを感じた。
「(その顔だよ……。ずっとその顔を見たかった。その強い心を真っ二つに折るこの心理フェイズを、ボクはずっと待っていた! 7ヶ月くらい? だっけ?)」
 果たしてどちらが悪役なのかよく分からなくなってきた所で、遊奈が仕掛けた。
「先攻、ドローフェイズスキップ! 速攻スキル【グラップル】発動するよ!」
「く……撃墜しろチョコ触手!」
 両者、相剋し相対す。
 ――しかし、戦力差は明らかであった。
 最前からグッドナイス・ブレイヴァーで武器を強化し続けていた遊奈と。
 不意打ちのような告白で発動したジェラシック・ラブイーターと。
 なにより、怪人の脳裏にふと湧き上がった、『一般作だから健全です』の警句。
「グハッ!」
 難なく怪人の懐に入り込んだ遊奈が、体勢を崩して怪人に馬乗りになり、その胸に1枚のカードを置いた。
「ワンターンキル成立だね。サレンダーは無いよ、悪いけど」
 ――ビシィッ!
 怪人の横たわるコンクリートに、蜘蛛の巣状のひび割れが走る。怪人本人への衝撃は、言わずもがな。
 ビクン、と身を揺らし、口元に濃いチョコレート液をこぼす怪人が、ふと笑った。
「ふ、ふふふ、ふふ……」
「ナイスデュエル……だったけど、どうしたのさ、笑っちゃったりして。
 あ、もしかして楽しんでくれた? なら嬉しいな。どう?」
「ふふふ……カードゲームで洗脳とは、よくやる……」
「?」
 顔を覗き込んでくる遊奈に、怪人は笑みを濃くして応える。
「最期に、一矢報いる最高のやり方を思いついた。それが愉快でな」
 遊奈にしか聞こえない声だった。
「なあ……やけにあいつらとカードゲームの相性がいいとは思わなかったか?
 当然さ。なぜなら、カードゲームは結局、非モテ連中の趣味だからな。
 そして、それは当然、オレも……」
「!!」

「ああ、嘘さ。それでそんな顔をさせられたのならオレの勝ちだ。ざまあ。
 せいぜい非モテの人生を謳歌していろ、キマイラども。……ぐふっ」

 怪人が、躯の海に還っていく。
 見上げる遊奈に。
 熱狂するヒャッハーたちは、答えなかった。

『ヒャッハアアアアアアア!』

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年09月04日


挿絵イラスト