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貴様らに福はやらねぇ!

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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●幸せを奪われた村
 節分の日が近づいてきた。
 もっとも、サムライエンパイアの一角に位置するとある小さな村にとって、その日は忌むべき日だった。
「くっくっく……豆まきがしたいか? 福が呼びたいか?」
 うず高く積まれた大豆の山を挟んで、巨大な鬼が村人たちに告げる。
 周囲には虚ろな目をして、棍棒を持った鬼の群れがいる。
「かまわんぞ、福を呼んでも。だが、もし福を呼んで幸福になれば、貴様らは皆殺しだ」
 鬼が冷たい声で宣言する。
「貴様らを喰わずにおいたのは、鬼どもに苦しめられて不幸だったからだ。幸せになったなら一人残らず喰ってやる!」
 周りの鬼と同様に虚ろな目をした村人たちは、ぼそぼそとなにかを呟いていた。
「福は外……福は外……」
 呟きながら、彼らは自分たちが丹精込めて作り上げた大豆を、粉々に打ち砕いていた。

●グリモア猟兵の依頼
 猟兵たちに呼びかける声がグリモアベースに響いた。
「サムライエンパイアに潜んでいるオブリビオンの情報が見つかりました。どうかご協力をお願いいたします」
 白金・伶奈(プラチナの先導者・f05249)が集まった者たちに告げる。
「とある村が、鬼に支配されていることがわかったんです」
 その鬼は『幸せなものを喰らう』という特性があるらしい。
「幸い……というのもおかしいですが、村はちょうど鬼の群れに襲撃されて不幸であったため、すぐに鬼に喰われることはありませんでした」
 しかし、生きるために不幸であることを強制され続け、彼らは今やすっかり鬼の言いなりになってしまっている。
 このままでは喰われずともいずれ全滅してしまうことは目に見えている。
「……実は、この村は大豆を生産して生計を立てている方が多いんです。でも、節分が近づいた今の時期、鬼は生産した大豆を破棄させようとしています」
 豆まきをして福を呼べば、幸せになってしまうからだという。
 すでに洗脳状態にある村人たちは、目の前の死を逃れたところで無意味であることすらもはや理解できないのだ。
「この村におもむき、鬼を退治して村人たちを解放してあげて欲しいんです」
 ただ、鬼――『幸せを喰らうモノ』が村のどこに潜んでいるかはわからない。まずは敵が潜んでいる場所を探さなければならない。
 家が20~30軒ほどの小さな村なので、鬼が潜める場所は限られているだろう。
 村を探し回って痕跡を見つけたり、あるいは鬼のもとへ行きそうな村人に当たりをつけて尾行するのも手だろう。
 直接村人から話を聞きだすことも不可能ではないが、洗脳状態の彼らから話を聞きだすならやり方は十分に考えなければならない。
「無事発見できれば後は戦うだけです。ただ、幸せを喰らうモノはもともと村を襲っていた鬼たちも配下に置いているようなのでたやすくは倒せないでしょう」
 大豆の産地だとすれば、節分は本来村人にとって大事な行事のはずだ。
 豆の代わりに鬼を追い払い、福をもたらすことができるのは猟兵たちだけなのだ。


青葉桂都
 おはようございます、青葉桂都(あおば・けいと)です。
 今回はサムライエンパイアで、村人から幸せを奪う鬼を倒していただきます。

●幸せを喰らうモノ
 村を支配している鬼です。
 幸せなモノを喰らうことを好みます。不幸なモノは喰わないこともあるようです。
 現在、村人たちは不幸なのでまだ喰われていません。

●村について
 戸数20~30ほどのそれほど大きくない農村です。
 大豆を生産して生計を立てている者が多い村です。ただ、このまま放っておくと、豆まきで福を呼ばないようにすべての豆を破棄させられてしまいます。

●その他
 いちおう季節もののシナリオになりますので、なるべく早めにリプレイをお返しするよう心がけたいと考えております。
 ただ、完結するころには節分が過ぎている可能性が高いので、あらかじめご了承ください。

 ご参加いただければ幸いです。
 どうぞよろしくお願いいたします。
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第1章 冒険 『支配された村』

POW   :    村を探索して手がかりを探す

SPD   :    尾行して様子を見る

WIZ   :    村人から話を聞く

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

辟田・脩次朗
「(自分の角を撫でながら)あーまあ、鬼は外鬼は外言われてればこういう事したくなんのも、何となくわからんじゃないけどなあ」
村の中に入るときは必要以上に注目されないよう、角は引っ込めとく。
ついでに村に入る前に身体の各部での角の出し入れを試しておく。

猟兵という他所者が訪れりゃ、恐怖で統制されてる村人の中にゃ必ず「御注進」に及ぶ奴が出てくるだろうから、村人が自分や他の猟兵を伺う目に注意しておく。

鬼の元に向かいそうな奴にあたりをつけたら、動向を隠れて伺い、移動したらこれを「追跡」スキルを使用して追跡。必要であればユーベルコード【光霊迷彩】を使用。


ツーユウ・ナン
【POW】
暴力で威圧し、心を挫いて支配する鬼か。真に救うべきは村人の心じゃが、先ずは鬼の支配を取り除く力を見せなくては。徳の高い旅の行者が現れ、忽ちに邪を懲らしめる昔話のようにのう。

◆鬼がどのようにして支配を行っているのか、村を探索して調べる
『幸せを喰らうモノ』の所在を突き止め、また情報を集めて、何か因縁があるのか、或いは弱点はないか探ってみるのもいいかも知れん。

事を起こす前に村人の犠牲が出ないよう避難させたいが、いざとなれば、村人を励まし守ってやらねばなるまい。
大豆は「畑の肉」ともいわれる滋養豊富な作物。
邪を払う豆(魔滅)を作る百姓を、魔に滅ぼさせてなるものか。



●不幸に支配された村へ
 村の近くにテレポートしてきた猟兵たちは、それぞれに探索を開始した。
「暴力で威圧し、心を挫いて支配する鬼か」
 ツーユウ・ナン(粋酔たる女用心棒・f04066)は沈んだ雰囲気をかもしだしている村を軽くながめて、また歩き出した。
「あーまあ、鬼は外鬼は外言われてればこういう事したくなんのも、何となくわからんじゃないけどなあ」
 近くを移動していた少年が言った。
 羅刹である辟田・脩次朗(羅刹のシーフ・f08272)が、自分の細い角を軽く撫でる。
「同情はできんな。真に救うべきは村人の心じゃが、先ずは鬼の支配を取り除く力を見せなくては。徳の高い旅の行者が現れ、忽ちに邪を懲らしめる昔話のようにのう」
 細身の少年の呟きに、ツーユウは首を左右に振る。
 鍛えて身に着けた力は『誰か』のために使うものだと、今のツーユウは知っている。
 鬼に支配されている村に踏み込み、ツーユウは周囲を観察しながら歩き出す。
 脩次朗はなにか狙いがあるのか、少し離れてついてきていた。目立たないようにするためか、いつの間にか角を隠しているようだ。
 ツーユウのほうはドラゴニアンの角をあえて隠そうとはしなかった。
 小さな村の様子を観察し、また小声で会話する村人たちの言葉に聞き耳を立てる。
 村人たちは常に怯えているようだった。
 自分の一挙手一投足が、他人にどのように見えるか気にしている。
 もしも幸せだと、そう判断されれば『幸せを喰らうモノ』に喰われると考えている。そして、そう思ってしまえば鬼がどこにいようともう自由には動けないのだ。
 厄介なことに、村人たちは不幸であることを強要されながらも、鬼に恩を感じている様子もあるのだ。別な鬼の群れに襲われていたところを救われたからだ。
 それに、過去にもこの村は鬼に襲われたことがあり、鬼への恐怖が人々に染みついてしまっているようだった。
(「過去の鬼とやらが『幸せを喰らうモノ』だったのかもしれんな。因縁があるとすればそれくらいか……弱点があればと期待したのじゃが」)
 恐怖を与えている鬼が村に姿を見せることはないらしい。
 知っている者はいるようだが、その居場所が簡単に口に出されることはなかった。もっとも、一家の長は時折呼び出されている様子もある。
「ツーユウ。動き出した奴がいるよ」
 情報収集を続けている彼女に脩次朗が近づいてきて、告げた。
「他所者が来たら村人の中に『ご注進』に行く奴がいると思ってたんだ。こそこそしながら家から出てった奴がいた。追いかけよう」
 無表情に告げてから、彼は走り出す。
 村の中心部へと向かう方向だった。
「鬼の支配は根が深いようじゃな」
 脩次朗を追ってツーユウも動き出した。
「事を起こす前に村人の犠牲が出ないよう避難させたいが、いざとなれば、村人を励まし守ってやらねばなるまい」
 大豆は『畑の肉』ともいわれる滋養豊富な作物だ。邪を払う豆(魔滅)を作る百姓を、魔に滅ぼさせてはならないと、ツーユウは決意を新たにする。
 少し後、『ご注進』に及ぼうとする村人は村長の家であろう大きな家へと、人目を忍んで入り込んでいった。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

菱川・彌三八
なンでェ、きな粉でもつくってんのか
餅に混ぜらなんでもうめェぜ
ンな事も忘れっちまってるようなら
成る程、そりゃア不幸だな

まず農家でねェ奴に話かけてみるか
己ァ今、旅の道中“不幸にも”道に迷った旅人っち事でひとつ
余所モンがぐだゝと歩き回りゃあ怪しかろう
「ちィと尋ねてェんだが、ここいらで一泊さしてくれる家はねぇもんか
生憎、道に迷っちまってね」
少しばかしデケェ家もわかりゃエエが

次は農家に【草】つける
育てた大豆をどっかに運んだりしめェかと思ってな

泊めてもらえンならエエが、そうでねェなら勝手に納屋なり借りちまおう
落ち着いた処で草の視覚を覗く

見つけたら、一旦【草】を引く
こりゃ己だけで何ともなンねェ
一度に叩かにゃ


藏重・力子
不幸の強制に、豆の破棄!?
怒り心頭に発する、である!奪還すべく、いざ参る!

【WIZ】
一旦落ち着き、溜息を吐いて脱力
我には似合わぬ暗い顔と声色で「福は外……」と呟きながら村人に接触するぞ
「我は君達の新たな仲間なのである」と告げ、
なるべく人目につきにくそうな所へ連れて、聞き出してみるとしよう
不都合が生じそうであれば、その前に【催眠術】を使って押し通す!
「鬼の大将殿に直接会って伝えねばならぬ事があるのだ。今はどこへ、居るであろうか……」

村人殿よ、暫し待たれよ。もう少々の辛抱であるゆえな

我が「福は外」などと口にするのも今のうちだけであるぞ
節分は我にとっても貴重な行事。楽しく豆まき、したいであるからな!




 藏重・力子(里の箱入りお狐さん・f05257)は怒っていた。
「不幸の強制に、豆の破棄!? 怒り心頭に発する、である! 奪還すべく、いざ参る!」
 普段は人が近寄りがたい雰囲気に憧れているだけの少女だが、今は実際そんな雰囲気をまとっているかもしれない。
 もっとも、力子が憧れているのとは逆方向の雰囲気だったけれど。
「まぁまぁ。そう怒るなよ、お嬢ちゃん。気持ちはわかるがね。大豆を必死に砕くなんて、きな粉でも作ってんのかねぇ」
 声をかけてきたのは菱川・彌三八(旭日堂三八・f12195)だ。
「きな粉にしてンなら、餅に混ぜりゃあうめェんだがな。ンなことも忘れちまってんだったら、そりゃア不幸だよな」
 細い目をさらに細めて、青年が言った。
「わかっておる。……案ずるな、我ももう落ち着いたのである」
 大きく息を吐いて、ピンクの髪を持つ少女は体から力を抜く。
「福は外、福は外……」
 呟きながら、力子は村の中を進んでいく。おそらくは、村人の振りをして情報を聞き出すつもりなのだろう。もっとも、この小さな村では紛れ込むのは少しばかり難しいかもしれないが……。
 彌三八は『不幸にも』道に迷った旅人の振りをして、近くの家に向かった。
 もっとも、戸を叩いても村人はすぐには顔を見せてはくれない。
 何軒めかで、ようやく顔を見せた男に話しかける。
「ちィと尋ねてェんだが、ここいらで一泊さしてくれる家はねぇもんか。生憎、道に迷っちまってね」
「それなら……いや、今は無理だな。そんな余裕はこの村にはねえ。悪いが、早く出てったほうがあんたのためだ」
 目を合わせようともしない村人は、彌三八の問いにそう答える。
「いや、この家に止めてくれって言ってるわけじゃアねェんだ。どっか、旅人を泊められるようなでかい家はねェもンかな」
「……でかいと言えば村長の家だが、冬仕度で忙しいかんなあ。今は近づかんほうがええ」
 なおも村人は首を振る。
「そう言わずに、教えてやってはどうかのう。この方も困っておるようではないか」
 横から口を出してきたのは、力子だった。
「なんだい、あんたは」
「我はこの村の新しい仲間なのである。聞いておらなんだか?」
 力子はまっすぐに彼を見て言った。
 真偽を確かめようとしているのか、村人は力子のほうをじっと見ている。
 さらにしばし言葉を交わし、男はようやく力子が新しい村人だと納得した。いや、力子が会話の中で暗示をかけて納得させたのだ。
 これまで警戒されてうまく催眠術をかけられなかったが、うまくいったのはより警戒すべき相手……彌三八がそばにいたからか。
 あるいは、内心騙されたいと思ったのかもしれない。催眠術はユーベルコードではない。望まぬ言葉を口にさせるほどの効果はないはずだ。
「まあ、お前さんがそう言うなら……村長の家に行くといい。けど、近づくと怒られるから進められんがのう」
「そのときァ謝ってさっさと退散するさ。あんがとよ」
 彌三八が礼を述べる。
「それと、鬼の大将殿に直接会って伝えねばならぬ事があるのだ。今はどこへ、居るであろうか……」
 さりげなく、力子はさらに村人に問いかけた。
「なら、一緒に村長のところに行きな。あの人の案内がなきゃいけねえからよ」
 礼を言って、2人は家を出た。
「さて、村長の家とやらに行かねばなるまいな」
「いンや、まだだ。あの男、大豆をどっか運ぶ準備をしてた。『草』をつけときゃア、きっと鬼ンとこに連れてってもらえらァな」
 彌三八は力子に答えて、隠密を召喚する。
 どこかの納屋で、彼は動きを待つつもりだった。
「なれば我も待つのである。村人殿よ、暫し待たれよ。もう少々の辛抱であるゆえな」
 閉まった戸に向かって、力子が告げる。
「我が『福は外』などと口にするのも今のうちだけであるぞ。節分は我にとっても貴重な行事。楽しく豆まき、したいであるからな!」
 決意を込めて少女が呟く。
 それからしばらくして、村長の家の倉に大豆が運び込まれるのを、『草』を通して彌三八は確認した。
 内部を確かめて、彼は『草』を退かせる。
「こりゃ己だけで何ともなンねェ。一度に叩かにゃ」
 そして、彌三八はそう呟いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

四王天・燦
WIZで行動

大豆ない→油揚げが作れない→妖狐死ぬ。
鬼のような所業だ!

鬼も生物。人を喰わねど腹は減る。高楊枝はしねーだろ。
米俵や獣肉・備蓄の食糧…そういうのを不自然なほど運んでいる人を見つけたら口を塞いで物影に連れ去るぜ。
最悪第六感任せで連れ去る人を選ぶ

―助けに来たこと、助けが来たら不幸は維持できない、排除の必要あり、だが村人は無力、鬼の所に行かせて戦わせるしかない、場所か知る人物を教てくれ、鬼が返討にすればさらに不幸だ

こんな感じで言いくるめ。
繰り返して囁きかけ…本命の催眠術に落とす。
洗脳には洗脳を、だぜ。
当り外れに関わらず縛って猿轡噛ませ納屋に監禁。
「用心深くてな。鬼の打ち首まで辛抱してくれ」



●妖狐、絶滅の危機?
 大豆がないということは、油揚げが作れない。
 油揚げが作れないと、妖狐が死ぬ。
「なんと……鬼のような所行だ!」
 妖狐である四王天・燦(月夜の翼・f04448)は嘆きの声を上げた。
 そんな燦が考えたのは、妖狐と同様に鬼も食べ物を必要とするだろうと言うことだ。
「鬼も生物。人を喰わねど腹は減る。高楊枝はしねーだろ」
 オブリビオンが相手となれば理屈が通じるとは限らないが、少なくとも人を喰うことができることはわかっている。
 当てもなく探すよりはいいはずだ。
 さすがにあからさまに大荷物を運んでいるものは見つからなかったが、第六感を当てに燦は村人に近づき、口をふさいで物陰に連れ込んだ。
「そっちの事情は知ってる。アタシは助けに来たんだ」
 怯えた目で見る村人に燦は語りかける。
「助けられたら、アンタたちは不幸じゃないってことになるよな。鬼に食われちまうから、排除しなくちゃならない」
 こちらから目をそらさせないように顔を近づけ、声に集中させるためになるべく小さな声で。
「でも、戦う力がない以上、鬼と戦わせるしかない……そうだろ?」
 語りかけながら、しかし燦は別に道理を説いて説得するつもりなどなかった。
 生き延びるには質問に答えるしかない、そう暗示をかけるのが目的だ。
(「洗脳には洗脳を、だぜ」)
 心の中で呟きながら、彼女は暗示をかけていく。
「さあ、鬼の居場所か、居場所を知ってる奴を教えろよ」
「そ……村長だ。居場所は村長が知ってる……」
 怯えた声で村人は答えた。
「なるほどね。ありがとよ」
 答えを得た後、燦は相手を縛り上げ、猿轡をかませた。
「思ったより時間がかかったぜ。催眠術ってのもそこまで便利なものじゃないみたいだな」
 納屋の中に捕縛した村人を放り込む。そこにはうまく催眠をかけられなかった犠牲者が数人転がっている。
 催眠術は魔法ではない。かかりやすさには個人差があるし、なんでも言うことを聞かせられるわけではない。
 数人に試したところで当たりを引けたのは、第六感がうまく働いたというところだろうか。
 その全員を監禁して、燦は納屋の入り口を固定した。
「用心深くてな。鬼の打ち首まで辛抱してくれ」
 打算的な妖狐は、村人たちに告げると首の後ろでまとめた灰色の髪を揺らして、村長の家へと駆け出した。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ルーナ・ユーディコット
【POW】村を探索して手掛かりを探す

人に不幸を強いる鬼
人を支配し虐げるヴァンパイアを思い出すようで
……倒したくなるね

鬼の居場所は足で探すよ
自分を脅かすものが居ないと思っているだろうから……
村人に紛れている線は無視して、探そうと思う
だから、誰かが生活している感じが出ているところは除外かな

見つけたいのは……他より大きい建物、もしくは部下の鬼も出入りしているなら棍棒を置いた跡や人の者ではない足跡が多いところ

大きい建物は、村長の家かもしれないけどそれを乗っ取ってる可能性がありそうだからみておきたい
鬼の痕跡は……そのまま、多いほどその辺りは鬼がよく行き来してるってことだろうから……むしろ本命


花盛・乙女
己が愉悦の為、人心を恐怖で縛る鬼。
まるで御伽噺に聞く悪鬼そのものではないか。
であればかの名高き四天王に劣らず鬼退治に挑ませてもらう。

私に出来るのは愚直な手がかりの捜索だな。
住まいを一軒一軒を見て回る。
戸を叩く訳にもいくまい。家に近付き、覗き、回る。コレを繰り返そう。

鬼が住まうとはいえ、見てわかる差異があるとも思えん。
…建物の傷や、劣化を気にかけて回るとしよう。
不幸であることを求める鬼という話だからな。
住みよい生活は奴に反することになるだろう。
まぁ第六感と痕跡があれば私の追跡能力次第、か。

斯様な悪辣な鬼のせいで、誇りある羅刹も同列に見られることは気に入らん。
必ずや討ち滅ぼし、村に福を呼んでやる。



●地道な探索
 白い髪から、同じ色の毛に覆われた狼の耳を覗かせた少女が村を歩いていた。
「人に不幸を強いる鬼。人を支配し虐げるヴァンパイアを思い出すようで、……倒したくなるね」
 ルーナ・ユーディコット(Basilico・f01373)は小さな声で呟く。
 彼女が村の風景に重ねているのは、ダークセイヴァーの風景なのだろう。もしかすると故郷の風景なのかもしれない。
「どこの世界にも悪しき者はいるものだな」
 彼女に話しかけたのは女剣士だった。右の側頭部に異様な形の角を持った、羅刹の剣士だ。
 もっとも、恐ろしい角を生やしていようと、オブリビオンでないことは所作から察することができるだろう。
「己が愉悦の為、人心を恐怖で縛る鬼。まるで御伽噺に聞く悪鬼そのものではないか。であればかの名高き四天王に劣らず鬼退治に挑ませてもらおう」
 花盛・乙女(誇り咲き舞う乙女花・f00399)は凛とした表情で決意を告げる。
 軽く名乗ってから彼女は本題に入った。
「……して、そちらの探索の成果はあったかな?」
「足跡を何ヵ所かで見つけたよ。ただ、頻繁に出入りしてるわけじゃないみたいで、なかなか追いきれないね。地道に足で探すしかなさそう」
 鬼は今のところ、自分を脅かす者はいないと思っているはずだ。だから、村人に紛れ込んでいる線は、おそらくない。
 だから、生活感がある場所は除外してルーナは探していた。
「なるほど。私も愚直に探すより手はない類いでな。似たようなものだ」
 乙女のほうは、建物の傷や劣化を気にかけていた。
 不幸であることを鬼が求めるならば、住みよい生活を送ることは許すまい。
「村の中央に近づくほど、鬼の痕跡は増えている……ここにもあるな」
 話ながら近くにあった建物を観察し、乙女は告げた。
 なにか重たいもので壊された軒先がそのままになっている。
「村の中央か。足跡もそちらに向かっている気がするな。鬼が潜んでいそうな大きな建物があるといいんだが」
 痕跡を追いながら移動した2人は、やがて大きな建物を見つけた。
 壊された垣根に囲まれた家は、おそらく村長のものだろう。
「いちおう確かめていこう。乗っ取られてる可能性もあるし」
 頷きあい、足音を潜めて近づく。
 どうやら他の猟兵たちの中にも、ここに近づいてきている者がいるようだった。
「怪しげな連中が入り込んでるって? 倉には……うちの倉には近づかせんようにしないと……」
 村長らしき初老の男と、村人が話している。
「わかっとるじゃろ。わしが子供の頃、村を襲った鬼に殺された連中が……生き残ったわしらを恨んで鬼を呼び込んどる」
「もちろんだ。鬼に誰かを殺されるくらいなら、こうして我慢するほうがいいんだ……余計なことはさせないようにしないと」
 聞き耳をたてていたルーナと乙女は、家の裏にあるもう1つの大きな建物に目をやった。
 鬼が潜んでいる……そう考えると、古びた倉が禍々しい気配を放っているように思えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神薙・沁
鬼に対して「人を助けることが自分の幸せです、喰えるものなら喰ってみろ」
と内心では思っているが、忍者ですので基本隠れて不意打ちばかりです

年齢あって小柄な体格をいかして身うを隠しながら怪しいひとを捜索、及び尾行
千里眼を使って相手を見逃さないようにする(矢は撃たない)
目標発見時は矢文で他の猟兵に通達


御剣・刀也
さて、こういうこそこそするのはあんまり得意じゃねぇが今はやるっきゃねぇな。なるべく目立たない格好をして情報収集をしましょうか

「は、腹減った………」
腹が減って迷い込んだ旅人のふりをしてどこかで食べ物を恵んでもらえないか?と歩き回りつつ情報を収集する
(あー、こんなことしてたら本当に腹減ってきた)
大豆と言えば豆腐に油揚げとか色々なものが作れるよなぁ。これが終わったら此処の名産の大豆で作った油揚げを使って五目ずし作るのもいいかもなぁ。と考えつつ、本当に減ってきた腹にがっかりしつつ、取り合えず情報収集。ある程度集まったら相手のボスの場所を予想し、仲間と襲撃して一網打尽にする



●鬼の住み処
「さて、こういうこそこそするのはあんまり得意じゃねぇが今はやるっきゃねぇな」
 御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)が気合いを入れて村の中へと足を踏み入れたのは、しばし前のことだった。
「は、腹減った……」
 空腹な振りをして村をうろつき回り、たまに戸口を叩く。
「すまない……空腹で倒れそうなんだ。なにか食べ物を恵んでくれないか……」
「悪ぃが、今は人にわけてやる余裕なんてないんだ……それに、運が巡ってきたらあんたもあいつに……いや、なんでもねえ」
 たいていの相手にはまず無視されるし、反応があってもこんな調子だ。
(「あー、こんなことしてたら本当に腹減ってきた」)
 立ち木に寄りかかる。
 長身で体格もいい刀也の体重を支えて、木がきしむ音を立てた。
「大豆と言えば豆腐に油揚げとか色々なものが作れるよなぁ」
 腹が減ってきたせいか、食べ物のことが頭に浮かぶ。
「これが終わったら此処の名産の大豆で作った油揚げを使って五目ずし作るのもいいかもなぁ」
 想像したら、腹がぐうと鳴った。
 このままでは余計に腹が減ると考えて、刀也はまた歩き出した。
 人々は皆、よそ者を追い返そうとする。だが、排他的なのではなく、巻き込むまいとしているのだろう。
 巻き込まれに行くのが猟兵の仕事だ。
 拒絶からでもわかることはある。どうやら、村の中心部に近づかせまいとしているらしい。
 それに、刀也の行動による影響は他の者にとって有利に働くこともあった。
 刀也に声をかけられた村人の1人が、人目を忍んで家を出ていく。
 怪しげな者がいないか探していた少年は、その姿を見逃さなかった。
 神薙・沁(人間の化身忍者・f06362)は足音を忍ばせて村人を追った。
 鬼に対して思うところはあるが、忍者である彼は胸に秘めたまま、隠密行動を続ける。
 小柄な体を生かして追った先にあったのは、大きな家だった、
「……あの家に入りましたね」
 誰にも聞こえない声で沁は呟く。
 調査のため、さらに近づこうとしたところで、彼は初老の別の男が慌てた様子で出てきたのに気づく。
 大きな家の裏手にある、大きな倉へと、老人は走っていく。
 倉の中で、なにかたくさんの生き物がいるのがわかった。
 あそこに鬼がいるのだ。
(「人を助けることが自分の幸せです。喰えるものなら喰ってみろ」)
 そう考えながらも、沁は冷静に他の猟兵たちへ敵の居場所を伝えることを考える。
 文を用意し、刀也をはじめまだここにたどり着いていない者たちへと矢でそれを飛ばした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『棍棒鬼』

POW   :    鬼の金棒
単純で重い【金棒】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    怨念疾駆
自身の肉体を【怨念の塊】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ   :    死武者の助太刀
【落ち武者】の霊を召喚する。これは【刀】や【弓矢】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●蘇った鬼
 村で探索を行っていた猟兵たちは、皆最終的には鬼が潜む場所……村長の家の倉にたどり着いた。
 中から多数の生き物がうごめく音が聞こえる。
「やめてくれ! ここには入っちゃならねえんじゃ!」
 ただ、猟兵たちの動きは小さな村の村長にも伝わっていた。
 初老の男は倉に近づかせるまいとする……が、猟兵の誰かが見せた天下自在符を見て平伏し、道を開ける。
「ダメなんじゃ……この倉の中にいる鬼は、大昔わしらの村で死んだ者たちなんじゃ……」
 平伏しながら、村長は言葉を続ける。
「わしらの供養が不十分で鬼になったのに、わしらは毎年豆を撒いてこいつらを傷つけとったんじゃ。だから、報いを受けとるんじゃよ……」
 おそらく『幸せを喰らうモノ』が村人を洗脳するために語った言葉なのだろう。
 村長に罪悪感を植え付け、不幸を受け入れさせる一助としたのだ。
 重たい金棒を持った鬼たちが群れをなしている。
 その中には、自身を怨霊と化して体を伸縮させたり、あるいは武者の怨霊を呼び出している者もいる。
 あるいは彼らが元は死者だったことは事実なのかもしれない。
 だが、今は鬼だ。
 棍棒鬼の向こうで、一際大きな鬼が猟兵たちを見て舌なめずりをする。
 間にいる鬼たちのせいで攻撃は届きそうもないが、それは『幸せを喰らうモノ』も同じだ。
 倉の出口からあふれだしてくる棍棒鬼を押し戻し、殲滅するべく猟兵たちは動き出した。
御剣・刀也
さて、鬼共の退治か
下手な芝居もしてみるもんだな。その溜まった鬱憤、ぶつけさせてもらうぜ

鬼が金棒を振りかざして来たらそのスピードが乗り切る前に鍔迫り合いに持ち込んで一撃を封じつつ、重心を崩して斬る
怨念疾駆で高速移動しようとしたら移動先を読んで後を追って、元に戻ったところを斬り捨てる
死武者の霊を呼ばれたら、刀で妨害するならそいつは潰し、弓矢で遠目から射撃してくるのは、特に邪魔に感じないなら無視して鬼を攻撃する
「雑魚に用はねぇよ。とっととボスを出しな。てめぇらじゃくいたりねぇ。もっと骨のあるやつを連れてきな!」


藏重・力子
出おったな、村に仇なす鬼よ
元が死者であったという話が仮に真実だったとて、このままにしてはおけぬ
幸と福と、村に豆、それと、ええと……諸々の為!我は戦う!

こちらの武器は薙刀
常時【破魔】の気を込め、【2回攻撃】を併用するぞ

それでは我は、主に、鬼から召喚される落ち武者の霊の対処をしよう
刀相手には【なぎ払い】
弓相手には『巫覡載霊の舞』の衝撃波を放ち攻撃である!
「道を空けよ!」

その他の敵の攻撃は【見切り】、
仲間の邪魔にならぬよう動いて立ち回る

また、棍棒鬼自体には『巫覡載霊の舞』で、
機を逃さずに薙刀の衝撃波を叩き込む!
「魔を祓う!てやあっ!」

節分まで、あと少し!
さあ我よ、発奮せよ!福はもうすぐそこ、である!



●迫り来る鬼の群れ
 倉の入り口から溢れ出した鬼たちを恐れることなく、猟兵たちは前進する。
「さて、鬼共の退治か。下手な芝居もしてみるもんだな。その溜まった鬱憤、ぶつけさせてもらうぜ」
 腕を一度大きく振り回してから、刀也は勢いよく刀を抜いた。
 獅子丸の名を持ち、不屈の獅子のように煌めく日本刀は、いつも通り見る者を魅了するほどに美しい。
 もっとも、その美を鬼たちが解するとは思えなかったが。
「出おったな、村に仇なす鬼よ。元が死者であったという話が仮に真実だったとて、このままにしてはおけぬ」
 力子も薙刀を隙のない姿勢で構えている。
「幸と福と、村に豆、それと、ええと……諸々の為! 我は戦う!」
 多少締まらない部分はあれど、少女の気概ははっきりと伝わってきた。
.鬼の一体がまず、金棒を振りかざして突っ込んでくる。
 その金棒に、刀也は獅子丸をぶつけた。
 刀の鍔と金棒がぶつかり合い、火花を散らす。
 スピードが十分に乗る前にしかけたはずだったが、それでも鬼は力任せに押し込んでくる。
 獅子丸の峰が頬に触れようとする瞬間、四肢に力を込めて刀也は力の向きをずらした。
 重心が崩れたのを認識したときには、もう彼は刃を一閃していた。
 両断した敵の向こうから別の敵が身体を怨念に変えて伸ばしてくるが、それは予測の範囲内。
 攻撃の軌道を読んで身をひねり、ギリギリの距離で攻撃をいなす。
 戻る腕を追いかけて、また1体を断ち切る。
 鬼たちの数体が、落武者の霊を呼び出して繰り出してくる。
「怨霊どもは我に任せよ!」
 後方から声が聞こえた。
 おうと答えて跳躍し、刀也は声の主に道を開けてやる。
「破魔の力を込めた薙刀である。払われたくなくば、道を開けよ!」
 力子が得物を振るうと、まずは刀を持って近づいてきた落武者が倒れた。
 刀也の下をくぐり抜けた時、少女はすでに神霊体に変じていた。
「魔を祓う! てやあっ!」
 返す刃でもう一閃すると、怨霊を呼んだ鬼たちを衝撃波が吹き飛ばした。
「なかなかやるじゃねえか」
「お主もな」
 着地した刀也と力子は短く言葉を交わすと、またそれぞれ敵中に飛び込んでいく。
「雑魚に用はねぇよ。とっととボスを出しな。てめぇらじゃくいたりねぇ。もっと骨のあるやつを連れてきな!」
 鬼の群れの中でも目立つ長身を躍動させて、刀也がさらに敵と切り結ぶ。
「節分まで、あと少し! さあ我よ、発奮せよ!福はもうすぐそこ、である!」
 鬼の攻撃を見切り、あるいは無効化しながら力子は幾度も薙刀を振るう。
 だが、鬼たちの群れはまだまだ数を残していた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

神薙・沁
猟兵とはいえ自分が非力な子供だという認識があるため
他者の足を引っ張らないように隠れ潜んで
敵の手足を矢や手裏剣で攻撃
敵の正面にいる味方から注意をそらすように死角から攻撃などをする
時折捕縛風印を使って敵の足止めをする、風に砂などを一緒に乗せて目つぶしなども狙う、味方を巻き込まないよう細心の注意を払う

本当にかつてのこの村の死者ならば
故郷に迷惑などかけず
死者らしく眠っていてください


辟田・脩次朗
「で、仮に本当に村で死んだ者が鬼になって祟ってるとしてだ、アンタらはこの厄介事を孫子の代まで受け継ごうってのか。子孫はさぞいい迷惑だろうよ。」
「まあつっても、ここは空気の読めねえ猟兵が只のバケモンを退治したって事で終わらせちまうのが一番なんだろなあ(頭を掻きながら)」

てな訳で赤鰯とカトラス引っさげて戦闘だ。
基本的には「戦闘知識」と「見切り」、「早業」あたりを駆使してユーベルコード【横踏】をメインに回避重視で。

攻撃は「2回攻撃」と「鎧無視攻撃」を使用。四連斬を決めたり、目鼻口、喉や脇腹、膝裏から爪先アキレス腱まで防御の薄そうな場所を攻撃したり。

全部倒したら取り敢えず角かなんか貰っとく。



●次代の村人のために
 戦いを始めた猟兵たちへと、村長は地に伏してなおもなにかを訴えようとしていた。無論、聞く耳を持つ者がいるはずはない。
 逆に鬼たちへ向かう前に村長に声をかけていく猟兵も少なからずいる。
 脩次朗もそのうちの1人だ。
「で、仮に本当に村で死んだ者が鬼になって祟ってるとしてだ、アンタらはこの厄介事を孫子の代まで受け継ごうってのか。子孫はさぞいい迷惑だろうよ」
 赤鰯とカトラス、2本の刀を両手に下げて村長にわずかの間立ち止まる。
 初老の男は体を微かに震えさせた。
「まあつっても、ここは空気の読めねえ猟兵が只のバケモンを退治したって事で終わらせちまうのが一番なんだろなあ」
 その反応を見て、彼はカトラスを地面に刺し、拳を頭に軽くこすりつけた。
 両手に刃を構え直し、脩次朗は無数の鬼たちへと飛び込んでいく。
 何体かの鬼は近づいてくる羅刹の少年に気づいて反応してきた。
 怨霊と化した鬼の腕が棍棒を手に高速で何本も迫ってくる。
 だが、その早い攻撃が放たれるよりさらに早く、脩次朗は攻撃に気づいていた。
「オレに当てたけりゃ、死角から狙うんだな!」
 ユーベルコードによる予想そのままの軌道で飛んできた腕を、頭を下げて回避する。
 腕の下を駆け抜けて鬼の懐まで飛び込むと、両手の刃を高速で繰り出した。
 赤鰯が2度、カトラスが2度、計4回振るった武器は、すべて鬼の弱い部分を的確に捉えていた。関節を断たれ、目を貫かれた鬼がそのまま消えていく。
 一方はゴミ捨て場で拾った代物で、刃毀れすらしているがもう一方の刃と切れ味は変わらない。いや、妖刀であるそれのほうがむしろ鋭いのかもしれない。
 いずれにしても、それらが鬼をたやすく断ち切り、打ち倒したのは間違いない。
(「戦いが終わったら、角がたくさん回収できそうだ」)
 考えながら脩次朗は次の敵に向かう。
 1体だけではなくさらに敵を切り倒していくうちに、脩次朗は何者かが援護してくれていることに気づいた。
 足を矢で射抜いて回避を妨げ、あるいは金棒を持つ腕に手裏剣を当てて攻撃をずらす。
「後ろから来ている敵がいますよ」
 声が風に乗って届いた。
 とっさに攻撃を防ごうと身をひねるが、視界に入ったのは全身に糸とロープを絡みつかせ、猿轡までかまされた鬼だった。
 脩次朗よりもさらに幼い少年の姿も見える。
 沁は目立たぬように脩次朗や、他の猟兵たちを支援していたようだった。
「助かった。その調子でよろしく頼む」
「いえ、猟兵とはいえ非力な子供の自分にできることは、このくらいですから。それに、目立つのは苦手なんです」
 猟兵として十分な能力は持っているようだが、沁は地味な普通の少年に見える。黒い髪と黒い服から赤い色のヘッドホンだけがわずかに自己主張をしていた。
 忍者らしい身のこなしで沁がまた身を隠す。
 だが彼が支援を続けてくれているのは、風に乗って流れてくる目つぶしの砂でわかる。
「本当にかつてのこの村の死者ならば、故郷に迷惑などかけず、死者らしく眠っていてください」
 鬼たちに語りかけながら行われる沁の支援を受けて、脩次朗は両手の刃で棍棒の鬼たちを次々に眠らせていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

花盛・乙女
弱りきった人の心を侵食する程の恐怖による統治。
この地に寄生している鬼は相当な下衆だな。
この花盛乙女、修羅となりて鬼を切り捨ててくれよう。

先ずは露払い、という訳だな。
体がいくら伸びようが膂力を誇っていようが、所詮は雑兵。
十把一絡げに我が刀の錆にしてくれよう。

【黒椿】を構え鬼共の足を狙う。万が一にも村に被害があってはならん。
だからこそ、足をおとして動きを封じる。
数が多くてうざったるいようであれば、我が鬼吹雪にて文字通りの露払いといこうか。
怪力自慢の木偶の坊。面白い、私と力比べでもしてみるか?

やつらが本当に蘇った死者であったとしても、私は斬る。
弔いをした生者を悔いの心で縛るなど、あってはならんのだ。


菱川・彌三八
ヘェ、あいつが親玉かい
雑魚侍らして高見の見物たァええ御身分じゃねェか
「鬼に横道はねェ」なんてタマじゃなさそうだ
引き倒しちまおう
こいつら全部、ブッ倒して

とっときのでけェ筆で、悪ぃがここいら一帯彩らせてもらうぜ
多勢の鬼に悪霊まで召喚されちゃあたまんねェが、大振りでも当たるならそれで善し
刀筋、矢の雨の隙間
刹那ァ逃さねェぜ
我武者羅に見えるか知れねぇが、見切って返すが喧嘩のやり方よ
その汚ェあか、丹に染めてやる

己が数受けて削っちやる
端から消すぞ

報いたァとんだ逆恨みだ
おめぇが死んだら鬼ンなっててめぇの村襲うかどうか
いっぺんよっく考えな

床に残るは歪な小槌の画
喧嘩の途中でも「アート」は意識
富の神の幸があるように



●見据える先にいる敵
 棍棒を手にした鬼の数は徐々に減っていき、その向こうにいる『幸せを喰らうモノ』の姿が見えてきた。
「ヘェ、あいつが親玉かい。雑魚侍らして高見の見物たァええ御身分じゃねェか。『鬼に横道はねェ』なんてタマじゃなさそうだ」
 彌三八は指先に挟んだ筆を油断なく構えた。
 かの鬼が邪な真似をしていることは、村の惨状を見ればわかることだ。
「弱りきった人の心を侵食する程の恐怖による統治。この地に寄生している鬼は相当な下衆だな。この花盛乙女、修羅となりて鬼を切り捨ててくれよう」
 家に伝わる刀を振りかざし、乙女も宣言した。
「ああ、引き倒しちまおう。こいつら全部、ブッ倒して」
 たまたま近くにいた互いの声が聞こえ、彌三八が言った。
 絵師にはとても見えない絵師のほうを乙女がちらりと見やる。
 どうやら男は苦手なタイプらしく、一泊おいてから羅刹の女剣士も頷いた。
「体がいくら伸びようが膂力を誇っていようが、所詮は雑兵。十把一絡げに我が刀の錆にしてくれよう」
 彼女が手にしていた刀は、重そうで、脆そうで、さらには醜い造りをしていた。
 だがそんな悪刀でも乙女が手にしていると様になる。
「そんじゃ己が数受けて削っちやる。端から消すぞ」
 残った鬼たちが猛然と襲いかかってきた。
 とっときの筆を大きく振り回し、彌三八は塗料を敵に向かってばらまいた。
 召喚された落ち武者にいくらかは阻まれるが、塗料はその隙間から敵まで届く。
 さらに外れた塗料によって塗りつぶされた土地が彼の力を与えてくれる。召喚された敵の刀や弓を、かわし、あるいは防いでみせる。
「我武者羅に見えるか知れねぇが、見切って返すが喧嘩のやり方よ。その汚ェあか、丹に染めてやる」
 彌三八が見栄を切る。
 彼が開いた道を、黒髪をなびかせ女剣士が走った。
「まだ数がいるようじゃな。ならば、文字通り露払いと行こう。鬼の吹雪で乱れ散れ!」
 乙女は黒椿を構えると、残った敵の間を舞う。
 無数の斬撃が乙女を中心に飛ぶ。
 その一撃一撃が、必殺の一閃となって鬼たちの足を切り裂いていく。
 眼前まで近づいていた鬼が金棒を振り上げる。
「怪力自慢の木偶の坊。面白い、私と力比べでもしてみるか?」
 だが、力比べをするまでもなく、小突いただけで鬼は崩れ落ちる。
「やつらが本当に蘇った死者であったとしても、私は斬る。弔いをした生者を悔いの心で縛るなど、あってはならんのだ」
 力を込めて、乙女は告げる。
 その足元に広がるのは、彌三八が描いた歪な小槌。富の神の幸があるようにと願った絵が、倉の前にいつの間にか広がっていた。
「報いたァとんだ逆恨みだ。おめぇが死んだら鬼ンなっててめぇの村襲うかどうか、いっぺんよっく考えな」
 その絵に込めた願いが村長や村人たちに伝わることを、彼は願う。
 他の猟兵たちも次々に敵を減らしていっている。
 棍棒の鬼の全滅するのは時間の問題だった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『幸せを喰らうモノ』

POW   :    破断掌
【掌底】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    鬼神一閃
【斬馬刀】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    魂食呪体
対象の攻撃を軽減する【喰らってきたモノの怨念を身に纏った状態】に変身しつつ、【呪詛が込められた斬馬刀】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はベール・ヌイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幸せを喰らうモノ
 ほどなく、立っている鬼はいなくなった。
 倒れている棍棒の鬼を乗り越えて、猟兵たちが進む。
 座して戦いをながめていた、ひときわ大きな鬼が立ち上がった。
「美味そうな匂いをさせている者がいるな。幸福の匂いだ」
 猟兵たちをながめて鬼が言う。
 この鬼にとっては、村を解放されることや、配下の鬼どもを倒されたことよりも、食欲のほうが大事なのだろうか。
「お前らが不幸だから助けてやったと言ったら、この村の連中が我先に不幸自慢をし始めたのはなかなか見物だったが、そろそろ腹も減った」
 太い腕を持ち上げると、斬馬刀の巨大な刃が禍々しく光る。
 誰かが、棍棒鬼たちが村の死者の霊だったのが事実かを問う。鬼は事も無げに『知るか』と答えた。
 どうやら村にはもうさして興味はなさそうだ。
 むしろ、猟兵たちの幸福を喰らおうと考えている。もっとも、その食欲は戦うために利用できるかもしれない。
「貴様らを喰って退散させてもらうとしよう。おっと……救われて幸福になった者どもも喰っていかねばならんなあ」
 これまで喰ってきた者たちの怨念らしきものが、鬼の体からゆらりと立ち上る。
 鬼が一歩を踏み出すと、石造りの床にヒビが入った。
 だが、鬼を恐れる猟兵など、1人もいはしなかった。
御剣・刀也
は。上等
食えるもんなら食ってみやがれ
俺らが逆にくらってやるよ。お前の命をな

破断掌は食らわないように間合いには入らないように気を付ける
もし入ってしまったら第六感で回避。避けられないならサムライブレイドを突き刺して攻撃を食らおうと逆に攻撃を入れてやろうとする
鬼神一閃は自分のサムライブレイドよりリーチが長いが一発の隙が大きいので空振りを誘ってその隙に飛び込んで攻撃する
魂食呪体を使われたら、攻撃を軽減されようが、武器に呪詛が込められようが恐れることなく飛び込んで攻撃する
「不幸ね。何をもって幸せか不幸か決めるのは個人だ。お前が決めていい事じゃない。ま、俺にはどうでもいい。お前を倒す。それだけだ」


藏重・力子
大将のお出ましであるな!
たった今からお主が喰らうのは、我等が磨いた技の方よ!

我の武器は【破魔】の護符。まずは【先制攻撃】だ!
敵の近接の間合いに入らぬよう距離を取る事を心掛け、
近付かれたら敵攻撃を【見切り】離れて、遠距離から【2回攻撃】で護符を飛ばし続ける
こちらの攻撃を軽減するのであれば、数で押すまで!
「魔を滅する札である、とくと味わえい!」

また、味方が居ればその攻撃前に、護符命中後の『七星七縛符』を発動
敵のユーべルコードを使われる前に封じるぞ
「時は来たれり!」
気兼ねなく戦ってもらえたら、我も幸いなのである

必ずや村に幸福を招き、そして豆まきをするのである
今こそ唱えよう、声高らかに「福は内!」と!



●怨念を打ち破れ
 悠然と足を踏み出す『幸せを喰らうモノ』に対し、猟兵たちの動きは素早かった。
 力子が破魔の力を込めた護符を構えて叫ぶ。
「大将のお出ましであるな! たった今からお主が喰らうのは、我等が磨いた技の方よ! 魔を滅する札である、とくと味わえい!」
 攻撃を受けぬよう距離を取り、彼女は素早く符を飛ばす。
 斬馬刀が素早く閃き、その符を切り裂いた――だが、その陰から2枚目の符が鬼へと命中する。破魔の力が鬼の肌に焼け焦げに似た傷を残した。
「ふん……そんな攻撃が効くものか!」
 怨念を身にまとった鬼に、符の一撃は十分な傷を与えたとは言えないようだ。
「ならば数で押すまでよ!」
 気を『端午』の護符に込めて、力子はさらに攻撃を続ける。
「数で押す前に、貴様を喰らってやろう!」
 連続して符を飛ばす力子に、鬼が接近してきた。
 だが、その前に立ちふさがる者がいた。
 鬼の巨体と比べても遜色ない長身が、煌く刀を手に鬼と対峙する。
「は。上等。食えるもんなら食ってみやがれ」
「よかろう! 貴様から喰らってやる!」
 踏み込んでくる敵に対し、獅子丸で牽制して間合いに踏み込まれることを防ぐ。
「俺らが逆にくらってやるよ。お前の命をな」
 牽制からの一閃を放とうとするが、しかしその刃は空を切った。馬をも断つ刃の間合いは、刀也の刃よりも長い。
 掌底による攻撃を猟兵たちがたやすく喰らうことはないと察したのだろう。斬馬刀のリーチを利用して、刀也や他の猟兵たちを寄せ付けぬように戦い始めた。
(「だが、得物が長い分、隙が大きい。空振りしたところに踏み込んでやるぜ!」)
 幾度か刃がぶつかる音が響いた後、鬼が大きな動きで斬馬刀を薙ぎ払った。
 刀也は素早く一歩退いて空振りさせようとする。だが、刃が触れていないにもかかわらず、身体に痛みが走った。込められた呪詛だけは彼に届いたのだ。
 それでも刃そのものが直撃したわけではない。
 獅子丸を構えながら鬼へと接近する。
「時は来たれり!」
 力子の声が倉の中に響いた。瞬間、彼女が放っていた符が光を放って鬼を縛り、体を守っていた怨念の気を霧散させる。
 隙を逃さずに一閃した獅子丸が深々と鬼を切り裂く。
「必ずや村に幸福を招き、そして豆まきをするのである。今こそ唱えよう、声高らかに『福は内!』と!」
「小娘が! やってくれたな!」
 少女が宣言し、鬼が怒りの声を放つ。
「何をもって幸せか不幸か決めるのは個人だ。お前が決めていい事じゃない。ま、俺にはどうでもいい。お前を倒す。それだけだ」
 捕縛から逃れようと身体に力を込めているうちに、刀也は、そして他の猟兵たちは『幸せを喰らうモノ』へとさらなる攻撃をしかけ続けた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

辟田・脩次朗
「…(ぼーっとした表情で)棍棒鬼の角だけじゃ、ちっと物足りねえかな」
幸せを喰らうモノに、カトラスと赤鰯を抜いて立ち向かう。
「戦闘知識」で敵の間合いを掴み、「早業」でその間合いを掻い潜り、敵のユーベルコードは「見切り」、ユーベルコード【横踏】で半歩よけてかわす。
攻撃はリーチの長い斬馬刀による攻撃の死角を「戦闘知識」で見抜き、「盗み攻撃」で距離を盗んで接敵、カトラスと赤鰯に「呪詛」と「生命力吸収」を使って「2回攻撃」。
幸せを喰らうモノの生命力を奪えたら
「殺気」を込めて
「鬼は内…ってな。オレがお前を残さず喰らってやるぞ」
と「挑発」。


神薙・沁
隠れ潜み敵の手足などを死角から狙い射撃
捕縛風印で敵の攻撃を阻害、風をつかった目つぶしなども行う
戦闘中に前線で戦ってる猟兵達に2章の戦闘中描写のように罠を張ることを事前通達した上で
ヒビが入ってる床に手裏剣を刺して捕縛風印と組み合わせて足元にワイヤーを張って転ばせるようなトラップを幸せを喰らうモノの周囲に仕掛ける
転ぶか動きが止まるかしたら一斉攻撃のチャンス

一人では不可能でも多数の猟兵ならば、この鬼を逃さず追い詰められる
自分はそんな猟兵の手助けをするだけだ



●鬼を縛る風
 符で力を封じられた鬼に対し、猟兵たちは連続で攻撃をしかけていた。
 二刀を構えた脩次朗もその攻撃に加わっていた。
「……棍棒鬼の角だけじゃ、ちっと物足りねえかな」
 ぼうっとしているように見えて、その視線は鬼のほうを確かに捉えている。
 赤鰯とカトラス、2つの刃を構えて羅刹の少年は、素早い動きで『幸せを喰らうモノ』へと斬りかかる。
 だが、鬼の動きも遅くはない。その身を護る怨念は失われたものの、斬馬刀で猟兵たちの攻撃を防ぎ、巨大な刃を振り回して反撃をしてくる。
「必死だな。だが、オレに当てたけりゃ、死角から狙うんだな!」
 脩次朗は『幸せを喰らうモノ』の反撃を見切り、半歩だけ身をずらして回避した。
 もっとも回避できるのは、当然のことだった。
 視線を一瞬だけ側面に向ける。
 ヘッドホンをつけたまま、隠れて支援を続けている少年の姿が見えた。
 沁が風と共に飛ばした極細の糸が絡みついた状態での攻撃など、脩次朗の『横踏』が予想できないはずがない。
 そのまま素早い動きで鬼との間合いを盗み、脩次朗は赤鰯とカトラスを連続で薙ぐ。
 ゴミ捨て場で見つけた代物で、刃は錆びついているとはいえ、手にした武器は妖刀だ。それに呪詛を込めて切り裂き、生命力を奪い取る。
「鬼は内……ってな。オレがお前を残さず喰らってやるぞ」
「貴様っ! この俺を『喰らい』やがったな!」
 怒りの声を上げた鬼が、ようやく符の呪縛を振り切って掌底を構える。
 その時、倉の入り口から、風が吹いてきた。
 風に混ざった砂が鬼の目をつぶした。猛然と放たれた掌が、脩次朗の顔のそばを通り過ぎる。少年の頬が切れて、血が一筋流れた。
 戦いが始まる前に沁が猟兵たちに告げて回っていた言葉を彼は思い出していた。
(「戦いながら罠をしかけます。うまく敵がかかったら、一斉に攻撃してください」)
 隠れて仲間たちを支援しながら、沁は宣言通り罠をはっているようだ。
「喰らわれたのが不満ならば、取り戻してみたらどうだ?」
 なおも挑発すると、『幸せを喰らうモノ』が斬馬刀を振り上げて駆けてくる。
 その瞬間、足元に隠されていたロープがピンと張られて、鬼の足へと絡みつく。
 走ろうとしていたところで脚を取られて、『幸せを喰らうモノ』がつんのめった。
 さすがに強力な妖怪変化だけあって転倒はまぬがれたものの、動きが止まってしまうことまでは避けようがない。
 少年の言葉を聞いていたすべての猟兵が一斉に攻撃をしかける。脩次朗もその1人だ。
(「1人では不可能でも多数の猟兵ならば、この鬼を必ず追い詰められます。自分はそんな猟兵の皆さんを手助けするだけです」)
 沁の台詞を思い出しながら、脩次朗は赤鰯とカトラスを振り下ろし、深々と突き刺してまた敵の生命力を奪った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

四王天・燦
外道が馬鹿力+狡猾とか鬼かよ。
出し惜しまず真の姿解放して挑むぜ

神鳴とアークウィンドで二刀流、二回攻撃で攻撃。
右と見せかけて左、その逆も。フェイントも交え、電撃属性のマヒ攻撃も追加。
勝負に出て痛打貰うのは拙いので残像で翻弄しつつ魂食呪体の怨念を削っていく

パターン化してきた時点や、他の猟兵に向いた隙に符術『魔封じの儀』で馬鹿力を封じる。
見切りを交えて油断はしないけど、此処からは一歩踏み込んで傷口を抉るなどより攻撃的に行くぜ。
「勝ちが見えてくるのが幸福…喰いに来いよ!」
挑発して狙えるなら首チョンパだ。晒し首って言ったからな

「これで油揚げは守られて幸せだー」
…いや納屋に叩き込んだ村人が怒る前に逃げよう


花盛・乙女
さぁ、鬼退治といこうか。
貴様が幸福を喰らう鬼なら、私は邪鬼の命を喰らう鬼だ。
黒椿も貴様の命を喰らいたいと唸っているぞ。
この花盛乙女の一閃を冥土の土産に喰らっていけ。
豆を撒かれていた方がマシだと後悔させてやろう!

黒椿と乙女の二振りを構え、身を低くし斬りかかる。
先の動きを見れば斬馬刀を振るのも力任せ。
貴様との剣戟は少しも心がときめかん。つまらん。
愚か者め。刀というのは正しき心と鍛錬を持って初めて得物としての価値を生むのだ。
児戯にも満たぬ剣筋など私には届かん。

大振りの隙があれば刀で切りかかり『グラップル』で転がし優位をとる。
掌底が自慢だったか?
ならば喰らえ。我が必殺の【雀蜂】、怒りの羅刹の拳をな!



●鬼は外
 罠にかかってバランスを崩した鬼へ、猟兵たちの攻撃は容赦なく突き刺さっていた。
「出し惜しみはなしで行くぜ。ったく、外道が馬鹿力+狡猾とか鬼かよ」
 鬼だよ、と突っ込む余裕は、無論『幸せを喰らうモノ』にはない。
 出し惜しみなしという言葉通り、燦の姿は今や灰色髪の妖狐から真の姿へと変化していた。
 無論、体勢を崩しているからと油断せず、フェイントや残像をこれまで通りに交えて攻撃することは忘れない。
 赤い雷光をまとう刀と、風属性を持つ短剣が、連続して鬼の体を切り裂く。
「さぁ、鬼退治といこうか。貴様が幸福を喰らう鬼なら、私は邪鬼の命を喰らう鬼だ。黒椿も貴様の命を喰らいたいと唸っているぞ」
 乙女は鬼と見まごうばかりの迫力ある表情で、得物を振るう。
「この花盛乙女の一閃を冥土の土産に喰らっていけ。豆を撒かれていた方がマシだと後悔させてやろう!」
 片手には悪刀・黒椿、もう片手には己が名を刻んだ小太刀を持って、乙女は激しく鬼を断つ。
 他の猟兵たちの刀や、あるいは手裏剣や符も、次々に鬼へと命中していた。
「おのれ……このようなところでやられてなるものか!」
 ようやく体勢を立て直した鬼が、乙女へと斬馬刀を振り下ろす。
 触れたものをたやすく断ち切る威力を秘めて、しかし切り裂いたのは倉の床石だけだった。
「先の動きを見れば斬馬刀を振るのも力任せ。貴様との剣戟は少しも心がときめかん。つまらん」
 刃のみでなく、言葉すらも切り捨てるように投げかける。
「愚か者め。刀というのは正しき心と鍛錬を持って初めて得物としての価値を生むのだ。児戯にも満たぬ剣筋など私には届かん」
「なめるなぁっ!」
 避けた乙女へと力任せに斬馬刀を叩きつける……が、黒椿はそれをたやすく受け流す。
 受け流せる程度の威力しか、斬馬刀にはこもっていなかった。
「御狐・燦が命ず。符よ、我が敵を夢へと落とさん。符よ、我が敵を石とせよ。符よ、我が敵の呪力を断ち切らん。これをもって魔封じを為せ!」
 魔封じの儀を発動させる呪を燦が唱えている。
 その肩と背には3枚の符が貼り付いている。夢見と、石化と、魔断の符が鬼の力を封じたのだ。
 乙女が一歩踏み込み、黒椿を薙いだ。鈴の音と共に敵を深々と断つと、その勢いのままに鬼へと組みつく。
「掌底が自慢だったか?」
 問いかけながら、鬼の足を取り、床に転がす。
 同時に利き手の拳をしっかりと固める。
「ならば喰らえ。我が必殺の『雀蜂』、怒りの羅刹の拳をな!」
 振り下ろした拳が鬼の顔にめり込む。頭骨が割れる感触があった。
 もはや死を待つばかりの『幸せを喰らうモノ』に燦が近づく。
「勝ちが見えてくるのが幸福……喰いに来いよ!」
 燦の挑発に、鬼がもう意味のわからぬ叫びをあげて、無為に最期の力を消耗する。
 半身だけどうにか起こしたが、むしろそれはちょうどいい場所に首を差し出すようなものだった。
「晒し首って言ったんでな。その首、取らせてもらうぜ」
 神鳴が一閃し、瀕死だった鬼の首が宙へ舞った。

 戦いを終えた猟兵たちが振り向くと、遠巻きに戦場を見ている村人たちが見えた。
「終わったぞ。後は存分に福を招くがいい」
 乙女が言った。
 他の猟兵たちの何人かも、鬼がもういないことを告げる。安心させるように、あるいは凛とした言葉で。
 恐怖に縛られていた人たちのうち1人が感きわまった声をあげる。それを皮切りに、1人また1人と気力を取り戻していく。
 やがて、すべての村人たちが歓声をあげていた。
 いつの間にか鬼から角が切り取られていたが、気にするものは誰もいない。
 彼らは感謝の言葉を口々に述べ、『鬼は外』と合唱した。もっともそのあと、猟兵たちの中に混ざっていた羅刹にあわてて謝る者もいたが。
「これで油揚げは守られて幸せだー」
 燦が呟く。
 村人たちは感謝して、猟兵たちを歓待したいと申し出た。望めばそこに参加できただろう。
 ただし、少なくともそこに燦は含まれていなかった。納屋に叩き込んだ村人が感謝の輪に加わろうとしていることに気づいたからだ。
 平和と活気を取り戻した村から、ある者は悠然と、ある者は笑顔で、ある者は音もなく静かに……そしてある者はこそこそと、猟兵たちは去っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月04日
宿敵 『幸せを喰らうモノ』 を撃破!


挿絵イラスト