帝竜戦役②〜ふらいど・ちきちきどらごん
「ドラゴンと鳥のミックス……って、美味しいのだろうか……」
アックス&ウィザーズにて戦争が勃発――している中、グリモアベースにて呑気な言葉を呟くネルウェザ・イェルドット(彼の娘・f21838)。彼女は集まった猟兵の姿に気がつくと、軽く首を振って姿勢を正した。
「集まってくれてありがとう。皆は『帝竜戦役』のことは把握しているかな」
そう言ってネルウェザは少し大きめのモニターにある風景を映す。
見えるのは広大な荒野、映像越しでも分かる異様な風。そして――空から飛来する、もっちりとした『何か』。
「はいここ」
ピッ、とネルウェザが映像を止め、その『何か』を拡大する。
それはまるまると太った鳥に見えるものの、どういうわけか竜に似た角とうろこを生やした生き物。更には鳥としての翼の後ろ、無駄にも思えるその位置に――竜の翼を広げていた。
一体どういうわけかと質問が飛ぶ前に、ネルウェザはその生き物について説明を始める。
「これはオブリビオン『ケキリターキー』……なのだけれど。今皆に見てもらった荒野は『オブリビオンをドラゴンに変える』という不思議な風が吹いていてね。その影響でこんな姿になっているようなんだ」
そして彼女はケキリターキーを指して続ける。
「可愛らしい見た目ではあるけれど、ドラゴン化したことでその飛行能力とうろこの防御力が厄介なことになっている。空中からの攻撃に注意して、的確にうろこの隙間……もちもちの本体に攻撃を叩き込めば有利に戦える筈だよ」
そこまでを語るとネルウェザはグリモアを浮かべ、転送の準備を始める。
くるくると回るグリモアが光を帯び始める中、彼女は少し声のボリュームを落として話を続けた。
「ドラゴン化したオブリビオンの体内には『竜胆石』という綺麗な宝石が眠っているとか何とか。価値は金貨四十枚にもなるそうだし、それを狙うのもアリなのだけれど……皆、ドラゴン化したチキンやターキーの味、気にならないかい……?」
わりと真剣な顔でそう問いつつ、彼女は準備の整ったグリモアに視線を戻す。そしてこほんと一度咳払いをすると、モニターを仕舞って猟兵の方へ向き直った。
「さて、それでは転送するよ。皆、気をつけてね」
その言葉とともにグリモアの光が強まり、猟兵を包む。
眩しい視界と不思議な浮遊感の中、ぐぅと腹の虫のような音が聞こえた気がした。
●
猟兵が降り立ったのは『皆殺しの平野』。辺り一面に広がる荒野と吹き荒れる風は、出発前に見た映像と同じものであった。
――そして。
「ケッコーーーーーー!!!!!」
真上だ。
真上から――竜のコスプレみたいな鳥が現れた。
もっちりした体を包む硬いうろこ、頭部には見事な竜の角。飛行に使っているのは竜の翼のほうのようで、鳥の翼は美味しそうな香りを纏うチキンやターキー――仲間の肉だろうか――を握りしめている。
彼等は猟兵に狙いを定め、物凄い勢いで襲いかかってきていた。
みかろっと
こんにちは、みかろっとと申します。
今回はアックス&ウィザーズの戦争、『皆殺しの平野』での戦いです。こちらは集団戦一章のみの戦争シナリオとなります。
敵はドラゴン化した『ケキリターキー』の群れです。OP通り、角やうろこ、竜の翼を生やした姿で襲いかかってきます。
空からの先制攻撃への対処、防御力の高いうろこへの対処が含まれたプレイングが有利となります。是非作戦を練ってご参加ください。
それではご参加お待ちしております!
第1章 集団戦
『ケキリキターキー』
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POW : フェニックス・リボーン
自身が戦闘で瀕死になると【別のケキリキターキー】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD : パーフェクト・ディナー
【パチパチと油のはぜる音】【香辛料の胃を刺激する香り】【鮮やかな彩り】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ : フライド・チキンorローストターキーアタック
【武器に超高温の油・衣、または水飴をまぶす】事で【熱々出来立てモード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:橡こりす
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
カグヤ・アルトニウス
○七面鳥打ち
アドリブ歓迎
とりあえず、食べる事は止めましょう…
先制攻撃に対しては【第六感】+【カウンター】のテレポートで攻撃をスレスレで透かしつつ頭上に回り込み、【念動力】+【空中戦】で即座に反転して反撃体制に入ります
そして、UCを状態異常力重視で発動、Tometamaの支援攻撃で釘付け…というか凍結させて撃墜し
高い物理防御をエクストラ・ブルーによる【鎧無視攻撃】で突破し、さらに【範囲攻撃】+【衝撃波】で暴風の様に巻き込んでいきます
あとは…UCで迎撃しつつ片付けて行けばいつの間にかいなくなっていると思いますけどね
「とりあえず、食べる事は止めましょう……」
急降下してくるケキリキターキーを『食材』ではなく『討伐するべきオブリビオン』として見つめ、カグヤ・アルトニウス(辺境の万事屋兼宇宙海賊・f04065)は精神を集中させる。
重力が更に鳥を加速させる中、動かぬカグヤはほかほかのチキンの打撃を――受けず、突如ふっとその姿を消した。
「ケコッ!!!?」
ケキリキターキーが素っ頓狂な声を上げ、チキンをぶんと空振る。消えたかと思われたカグヤはテレポートを利用して鳥の頭上、敵の死角へと回り込んでいた。
くるりと空中で身を回し、不可視の力で体勢を整える。そんなカグヤに対し、慌ててホバリングを試みるケキリキターキーの背はあまりにも無防備であった。
ケキリキターキーの視線が猟兵の姿を捉える寸前。カグヤはすかさずユーベルコードを発動し、その力を鳥の身へ向ける。
「オペレーション・モモタロウ……コード、承認されました。これより支援作戦に移行します」
「コッ――」
――ケキリキターキーが咄嗟にターキーを振りかぶるも、虚しく。
硬いうろこごと凍結弾に撃たれたケキリキターキーは息こそあるものの完全に動きを止め、そのまま荒野の地面へと真っ逆さまに落下していく。
カグヤはそれを追うように降下しつつ、すらりと長い一本の太刀を強く握った。
快晴の空に似た、透き通る青。彼の心が生んだ光剣は美しく刃を煌めかせ――凍ったケキリキターキーの丸々とした身へと、思い切り叩き込まれる。
そのままカグヤが光剣『エクストラ・ブルー』を振り抜けば、うろこの硬さなどまるで無かったかのようにケキリキターキーの胴が割れた。
その断面からほろりと一つの石が飛ぶ。この荒野にてオブリビオンの体内から出る宝石――金貨四十枚の価値があるという『竜胆石』だろう。
しかしその小さな宝石が光ると同時、カグヤは頭上に新たな敵の気配を感じ取った。
「ココッコ――ッ!」
新たな『ケキリキターキー』が、今撃破した一体の仇を取るような勢いでカグヤに牙を剥く。
「ッ!」
カグヤは先程と同じ手段で鳥の身に凍結弾を撃ち込むと、素早く光剣を握り直した。
幾ら現れようと、凍結弾の支援射撃と光剣の斬撃は確実にケキリキターキー達を骸の海へと葬っていく。生み出された凄まじい衝撃波は、次々にケキリキターキーを巻き込み――暴風の如く荒野に轟いていた。
そして――カグヤがその手を止めた頃。
彼の周囲にはきらきらと竜胆石が散らばり、大量のチキンやターキーが魅力的な香りと湯気を立てて沈黙していたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
亜儀流野・珠
突然の攻撃には突然の攻撃をぶつけてやろう!
敵を見た瞬間「フォックスファイア」だ!
炎を纏めて叩き付ける!
いきなりチキンステーキって奴だ!
奴が持ってる肉を落としたら味わってみるとしよう。
落ちなければ後の楽しみとしよう!
で、引き続き奴を炎で焼く!
鱗の隙間だけを狙うのは大変そうだからな。
丸ごと炎で包めば無理矢理焼きつつ隙間も突けるだろう!
遠いうちはそれで攻撃、近付いて来たときは
炎で視界を奪いつつ薙刀「狐の爪」で斬る!
で、焼く!
ああ、食欲が止まらん!
お前がいい匂いさせてるせいだぞ、鳥!
「コケケケケーーーーッ!!!!」
けたたましい鳴き声を上げ、ケキリキターキーが真下に向かって羽撃く。
その標的は猟兵、亜儀流野・珠(狐の恩返し・f01686)――だったのだが。
「――いきなりチキンステーキって奴だ!!」
彼女はユーベルコード『フォックスファイア』の炎を一点に纏め、向かってきたケキリキターキーに正面から叩き込む。
――オブリビオンによる突然の攻撃は、珠の突然の攻撃によって封じられていた。
珠はそのまま炎を広げ、ケキリキターキーの丸焼きを試みる。
鳥翼に握られたチキンはじゅうじゅうと油を鳴らし、香ばしい湯気を立てて熱を帯びていった。
「ココーーーーッ!!」
ケキリキターキーはそれでもチキンを手放さない。
とはいえうろこ越しにじわじわと伝わってくる熱には耐え切れなかったらしく、ケキリキターキーは炎の中でジタバタと暴れ、慌てて珠から距離をとった。
じり、と両者の距離が一歩だけ詰まる。
吹き荒れる風が砂を巻き上げ、潤いを奪っていく――いや、それよりも。
「ああ、食欲が止まらん!」
小さな腹を押さえつつ、珠はびしっとケキリキターキーを指さして。
「お前がいい匂いさせてるせいだぞ、鳥!」
「コッ!!?」
ケキリキターキーが目を見開くと同時、珠の腹の虫が見事に鳴く。そして彼女の視線がケキリキターキーの握るチキンに向けられると――ケキリキターキーは突如、大声を上げて竜翼を広げた。
「ココココーーーーゥ!!!!」
その動きと剣幕を見るに、どうやらキレたらしい。ケキリキターキーはほかほかのチキンを思い切り振り回しながら、凄まじい速度で珠に突進を始めた。
対し、珠は素早く薙刀『狐の爪』を構える。敵の突進の勢いも利用し、彼女は正面からケキリキターキーに刃を叩き込み――
「で、焼く!」
「コォッ!?」
ジュゥゥゥゥゥッ!!! と派手に炎が上がる。ケキリキターキーは薙刀に捕らわれ身動きが取れぬまま、一瞬にして珠の炎に包まれてしまった。
その熱の中では最早うろこも無意味に等しい。
ケキリキターキーの身はみるみる煙を上げ――甲高い断末魔を上げて、骸の海へと還っていってしまった。
――ぼとり。
ケキリキターキーが握っていたチキンが虚しく落ちる。
珠は薙刀を納めるや否や、不思議な力で熱々出来立ての状態になったそれを拾い上げた。
地面に付いてしまった部分は避けつつ、香ばしい衣にかぶりつけば。
「……!!」
油をたっぷり含んだ、やや味の濃い衣。肉は鶏のそれよりも弾力があるものの、衣の油が丁度良く感じられる程度にさっぱりとしている。噛み切って口の中へ入れれば、もちもちとした食感と共に衣から塩気と油が染み出して――美味い。
珠はもぐもぐとチキンを頬張りつつ、荒野を見渡して息をつくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ソラスティベル・グラスラン
かわいいですね……そして美味しそうですね!!
群竜大陸は広く、攻略には多くの栄養が必要ということで
……んふふふふふ~!
先制攻撃は【怪力】で受け、こちらも翼を広げ【空中戦】です!
【盾受け・オーラ防御】で守りを固め突撃
敵全体の動きを【見切り】、包囲されないように注意
一対一を心掛け、敵の攻撃を【見切り・怪力】で弾きます
そうして体勢を崩したところを【ダッシュ】し接近
至近距離から急所へ一撃必殺!【鎧砕き】の大斧を叩き込んでいきます!
内側のお肉は柔らかいそうで、脂も程よくノッていそう…
ふふふ、怖がらなくてもいいじゃないですか!わたしと共に群竜大陸の奥へ進みましょうっ!
「かわいいですね……そして美味しそうですね!!」
浮かんだ欲に正直な感想を述べ、ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)は上空のケキリキターキーを見つめる。いま戦争の巻き起こっている群竜大陸は広く、攻略の為には多くの栄養が必要になるだろう。いや、きっとそうだ。
「……んふふふふふ〜!」
まんまるもっちりとした体に笑顔を浮かべるソラスティベル。
するとケキリキターキーは急降下しながら、自分達を食材として見る者への怒りを露わにしてチキンを振り回した。
「コケーーーーーーッ!!!!」
「――っと!」
ドゴッ!!! っと鈍い音を上げチキンは跳ね返される。ケキリキターキーがもう片手、ターキーをぶつけようと翼を動かすと同時、ソラスティベルも背の翼を広げて高く飛び上がった。
竜と竜――片方は半分鳥だが――が衝突し、激しい衝撃を生んで荒野に轟く。
見た目よりも弾力のあるチキンの打撃は重く、ソラスティベルは直撃を避けるように盾を構え護りの気を纏って応戦した。
そして――一瞬。
「コゥッ!?」
怒りに任せた連撃に体力を消耗したか、ケキリキターキーが体勢を崩す。ソラスティベルはそれを見逃さず大斧を構えると、強く羽撃きケキリキターキーへと接近した。
「――今こそ応えて、蒼雷の竜よ!!」
バリ、とソラスティベルは蒼の雷を斧に纏わせる。ユーベルコードの一撃は確実にケキリキターキーの胴を捉え、硬いうろこごと勢いよく両断した。
断末魔を上げ、ケキリキターキーは地に落ちていく。
すると直後、ソラスティベルは接近する何かの鳴き声に気がついた。
「ケェコッコーーーー!!!!」
新たなケキリキターキー。その剣幕は傷ついた仲間の仇討ち、といったところだろうか。
先程の一体よりも強い怒りを見せるケキリキターキーは、直線的な動きでソラスティベルにチキンをお見舞い――する寸前、未だ勢いの衰えない大斧に衝突して弾かれてしまった。
ぶにゅぅっ!! と瀕死のケキリキターキーが二体重なる。うろこを裂かれて砕かれた彼等は、すとんと近くへ降り立ったソラスティベルにびくりと身を震わせた。
「柔らかいお肉……脂も程よくノッていそう……」
「「コケェッ!!!?」」
揃って素っ頓狂な悲鳴を上げたケキリキターキーは、ぷるぷると震えて顔を青くする。彼等が落としたチキンやターキーの香りがふわりと風に乗って漂うと、ソラスティベルは笑顔を緩くしつつケキリキターキーを見つめて口を開いた。
「ふふふ、怖がらなくてもいいじゃないですか! わたしと共に群竜大陸の奥へ進みましょうっ!」
その言葉は冒険の旅に仲間を誘う勇者のそれ――とは少し違うようにも聞こえた。
皆殺しの平野に、ケキリキターキーの声がこだまする。
彼等がその姿のまま骸の海へ還れたのか否か、それは――ソラスティベル以外には、知る由もない。
大成功
🔵🔵🔵
髪塚・鍬丸
任務了解、だ。
上空からの敵の軌跡を【視力】を凝らして【見切り】、身を逸らす事で直撃を避ける。
態勢を立て直すまでの数舜を凌ぎ意識を保てばそれでいい。全力でかわし続ける。
が、全てはかわせず全身ズタボロにされる。
UCを発動させる態勢が整った瞬間に【空蝉の術】。自身の残像を残して、己のみ時間を遡る。
攻撃は見せて貰った。残像を隠れ蓑に攻撃範囲から離脱。
時間改変。ズタボロにされたのは幻影さ。
攻撃が予め読めていれば反撃も容易い。残像に気を取られた敵に【カウンター】【鎧無視攻撃】【暗殺】で、鱗の隙間を狙って刃を突き立てる。
止めを刺したら、そのまま肉を抉り取り喰らうぜ。戦はこれからだ。力を腹に溜めとかないとな。
「――任務了解、だ」
勢いよく降下してくるケキリキターキーの姿を確認し、髪塚・鍬丸(一介の猟兵・f10718)が頷く。ケキリキターキーはその凄まじい速度でも食欲をそそる香りを纏ったまま、鍬丸に向かってチキンを振り下ろした。
「コッコーーーー!!!」
ヴォン、と重い一撃が空を切る。直撃の一瞬に大きく身を逸らし、鍬丸は続くケキリキターキーの動きに目を凝らした。
集中すれば避けるのはそう難しくない、単調な動き。けたたましい鳴き声と共に繰り出されるチキンやターキーの打撃を鍬丸はひらりひらりと躱す――が、タッ、と一撃、熱い衣が彼の頬を掠めた。
「ッ……!」
ケキリキターキーがその丸い顔の中心でにやりと笑う。突如変則的になった打撃は鍬丸の腹や手足を捉え、何度も鈍い音を響かせた。
そして――ケキリキターキーが大きくターキーを振りかぶった、瞬間。
「コッコ――、――ッ!?」
ケキリキターキーはその手応えのなさに戸惑いの声を上げる。ターキーの打撃は確実に、鍬丸の頭部へと叩き込まれたはず、なのに。
いや、違う。――叩き込まれた『ように見えた』。
「そいつは影さ」
残像を囮にユーベルコード『空蝉の術』を発動した鍬丸は、数瞬前へと時間を遡る。
ズタボロにされていた筈の鍬丸の体には、傷もチキンの衣の香りすらも残っていなかった。
ケキリキターキーが残像に目を丸くする中、鍬丸は音もなく距離を取る。そして攻撃の届かない地点で体勢を整えると、彼は素早くその手に刃を握った。
丸く大きな身体を包む竜のうろこ。その隙間を的確に見切り、狙いを定める。
瞬時に接近し、刃を突き立てれば――ケキリキターキーは短い断末魔を上げ、動きを止めた。
もちっ、と厚い肉に刃が食い込む。鍬丸はそのまま大きくケキリキターキーの肉を抉り取ると、薄桃色に煌めくそれを見つめて。
「戦はこれからだ。力を腹に溜めとかないとな」
呟き、がぶりと。
ほんのりと温かい肉は深い香辛料の香りを纏い、口の中で跳ねるように歯を返す。もっちりとした食感を楽しめば同時に塩気が溢れ出し、その大きさもあってか鍬丸の腹はみるみる満たされていくようだった。
ふと、動かなくなったケキリキターキーがころりと小さな石を落とす。
鍬丸はそれを拾い上げつつ、今後の戦いに備えてもぐもぐと肉を味わうのであった。
大成功
🔵🔵🔵
小宮・あき
ぜったいおいしいやつ。
敵影が見えたタイミングで【UC】を発動しておきましょう。
周囲に73本のマスケット銃を展開します。
空中攻撃は第六感と野生の勘をフル回転で!
レガリアスシューズの性能を利用しつつ、ジャンプ、ダッシュ、スライディング。
マスケット銃5本×5本で簡易盾を作りながら、盾受けの要領で敵の進行を防いだり。
接近したタイミングで、マスケット銃によるスナイパーと零距離射撃。
もちもちの本体が弱点とは。的が大きくて助かります。
制圧射撃や範囲攻撃も駆使して、囲まれないように注意しつつ攻撃していきましょう。
金貨も気になりますが、まずは味を…。
はっ、調理器具忘れました…!
きらん、とうろこが光を返す。遥か上空から狙いを定め、ケキリキターキーは地に立つ猟兵へと一直線に降下してきていた。
その姿を視界に捉えると同時、小宮・あき(人間の聖者・f03848)はユーベルコード『愛雨霰』を発動させる。直後もっちりとした鳥へと向けられたのは、七十三本に及ぶマスケット銃であった。
「コッココ!!!?」
ケキリキターキーは突如出現した武器にぎょっと目を丸くするも、構わず更に降下の速度を上げる。
当たらなければ良い、とでも言いたげな勢いであきに迫ったケキリキターキーは、そのままほかほかのチキンを振り下ろした。
しかし、その大振りな攻撃はあきに当たらない。チキンは食欲をそそる香辛料と油の香りをぶわりと散らしながら、ただ低く空気を鳴らすのみであった。
「……ぜったいおいしいやつ」
思わずぽつりと呟きつつ、あきは体勢を整えマスケット銃を操る。
その言葉に反応してか、ケキリキターキーはむっと丸い顔を顰めてけたたましい鳴き声を上げた。
「ココココーーーーゥッ!!!!」
ぶんぶんとチキンを振り回すケキリキターキー。食材として見られることへの怒りを露わにしているようにも見える――が、その動きは荒野の風も相まって、チキンの美味しそうな香りをさらに広げていた。
弾力のあるチキンの打撃を五本の銃で防ぎつつ、あき自身は素早くケキリキターキーから距離をとる。その足に纏うレガリアスシューズが地を蹴れば、彼女はケキリキターキーの視線すらも振り切る速度で荒野を駆けた。
ケキリキターキーは慌ててあきの姿を目で捉えると、背の翼を強く羽撃き再びあきへと突進する。
凄まじい風を巻く竜が眼前へ迫る中、あきはマスケット銃を周囲へずらりと揃えた。
「――的が大きくて助かります」
そう笑みを浮かべ、もちもちの身体へと銃弾を叩き込む。至近距離からの銃撃は硬いうろこを砕き、柔らかく弱い肉をいとも容易く貫いた。
「コケッ……!!!!」
ケキリキターキーはぽろりと小さな石を吐きながら、弾かれたように後ろへ転がる。
あきはそれを軽く手で受け止めてマスケット銃を納めると、地面でぴくぴくと震えるケキリキターキーの元へと駆け寄った。
「金貨も気になりますが、まずは味を……」
そう期待を込めた笑みを浮かべるも、彼女は荷物の中にいま必要としているものが無いことに気付きはっと口元を押さえる。
「調理器具忘れました……!」
「コケコ!!?!?」
ケキリキターキーはあきの言葉にびくりと大きく震え、思わず顔を一気に青ざめさせた。
しかし最早反撃する力も、逃げる体力すらもなく――ケキリキターキーは虚しく骸の海へと還って行く。あきはそれを惜しむように見つめつつ、小さな竜胆石を握って帰路へつくのであった。
大成功
🔵🔵🔵