帝竜戦役②〜略奪は空より来たりて
ざぁざぁと荒野を吹きわたる風。
それはまるで、この地で果てた者達の怨嗟のよう。
風に舞う砂礫と僅かに自生する草木のみの光景が、そう感じさせるのだろうか。
――……aa……。
風に混じって何かが聞こえた、気がした。
だが、周囲を見渡してもそこには何もない。
なにより、遮蔽物のない荒野であるからこそ、近づく者あれば分かる筈。
風の声、だったのだろうか。
――GYuA……A!
否、確かに聞こえた。
これは風の声などではない、もっと悪意に満ちた者の。
陽光を時折と隠す雲とは違う、はっきりとしたヒト型の影が数多と地に落ちる。
見上げたそこには、竜の姿混じりしゴブリンの群れ。
それが地にある獲物――猟兵達を見定めて、襲い掛からんとする姿であった。
「みなさぁん、準備はよろしいですかぁ?」
揺れる兎耳を頭に乗せて、ハーバニー・キーテセラ(時渡りの兎・f00548)は猟兵達の様子を問う。
そう、遂にと帝竜ヴァルギリオスが姿を現したのは数刻前のこと。
以前より群竜大陸へと乗り込み、その更なる奥への進路を模索していた猟兵達であったが、それに焦りを覚えたのだろう。
帝竜ヴァルギリオスはそれ以上の猟兵による侵攻を良しとはせず、かの竜の軍団を率いて打って出てきたのだ。
「私達の最終目標はぁ、ヴァルギリオスを討つことですぅ」
だが、それにはまだ幾つかの段階を踏まねばならない。
この依頼も、その一つ。
「まずはぁ、先へと進むための橋頭保の確保が優先ですねぇ」
そのために、これより向かうは皆殺しの平野。
そこには既に足を運んだことのある者も居ることだろう。
だが、敢えてと説明するのであれば、皆殺しの平野――そう呼ばれるそこには、当然のようにオブリビオンが待ち構えているが、他にはない一つの特徴があった。
それこそは、竜の属性。
本来であれば持たぬ筈の翼を、鱗を、角を、そこにあるオブリビオン達は持つのだ。。
そして、翼は本来であれば出来ぬ飛行を可能とし、鱗は普段以上の頑強さをかの者達に齎すことだろう。
それは取れる戦術の広がりを意味する。
「今回ぃ、ご案内させて頂く場所に居るのはですねぇ、ゴブリンですよぅ」
普段であれば小賢しくとも、数ばかりの雑兵に過ぎないそれ。
だが、此処にあるゴブリン達は、その小賢しさと数に加えて竜の属性を持っている。
ともなれば、それはある種の難敵とすらなり得る可能性を秘めているとも言えた。
「しかもですねぇ、そのゴブリンは変わり種……というのも違いますがぁ、多少知恵が他より働くようなのですぅ」
過去より連れ来た己の家畜――人間を盾とし、乗り物とし、時に食い物とする。
特に、ヒトを盾とされた時には、それごとと攻撃するを躊躇う者もあることだろう。
ゴブリン達はそこをこそ突くのだ。
「いつぞやの戦争の時にも取り込んだ魔女を用いる魔王も居ましたがぁ、こちらも同じようなものですねぇ」
だが、囚われのヒトはあくまでも過去の存在。
助けたとしても、助けられるものではない。
だからこそ、討つのであれば諸共と討ったところで構いはしない。
勿論、それを案じ、考慮した上で討伐を可能だというのであれば、それもまた。
「とにもかくにもぉ、ゴブリンなのに空を飛んでぇ、盾だけでなく鱗でも自分を守るあれらを討つことがぁ、今回の目的ですぅ」
空より来る脅威に対して如何に対処し、硬い鱗の奥にある命を討てるか。
それが猟兵達に課せられた使命となる。
「どのような道を歩まれるかは皆さん次第です。どうか、お気をつけて」
翳す銀の鍵が別世界への扉を開く。
そして、物語は冒頭へ。
ゆうそう
オープニングへ目を通して下さり、ありがとうございます。
ゆうそうと申します。
今度の戦争はアックス&ウィザーズですね。
場所は皆殺しの平野などという不吉な名称ですが、皆さんならそんな不吉を吹き飛ばせるものと信じています。
なお、場所は遮蔽物のない荒野。戦闘行動を妨げるものはありません。
また、ゴブリンの基本装備は剣や斧、槍といった近接武器が主となりますが、少数、弓矢や魔法といった遠距離から攻撃してくる者もあります。
プレイングボーナス……空中からの攻撃に対処し、硬いうろこに覆われた「急所」を攻撃する。
上記の通り、空より降り来る脅威に対して如何に対処し、敵を討つかが肝要になると思って頂ければ幸いです。
それでは、皆さんのプレイング、活躍を心よりお待ちしております。
第1章 集団戦
『ゴブリン収穫兵』
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POW : ヒューマンライド
自身の身長の2倍の【剣を装備した後、捕獲した人間(調教済)】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
SPD : ホステージシールド
全身を【隠す様に、捕獲した人間を固定した盾】で覆い、自身が敵から受けた【攻撃を盾で受け止め、固定した人間の負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
WIZ : 食人肉料理~生~
戦闘中に食べた【捕獲した人間の血肉】の量と質に応じて【全身の細胞が活性化し、自身の負傷が回復】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
イラスト:kamiya jun
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
オリヴィア・ローゼンタール
小鬼風情が、図に乗って……!
刀を持ったセーラー服の姿
魔法による強化や飛行が使えないのでどうにか【おびき寄せ】ないと……
刀を抜こうとするも、人間を間に差し挟まれ、躊躇する――フリをする
人質とは、姑息な……!
調子に乗って近付いてきて、剣を振り下ろしてきたら――刀を抜き放ち、受け流す(武器受け)
そして体勢を崩したところを諸共叩き斬る(怪力)
本当に斬れないと思ったか、下衆が
貴様らの一部として定義され、オブリビオン化しているのならば、もはや救うこと叶わず
今更それに拘泥するものか
飛んで逃げだす前に【閃光無窮の太刀】で一網打尽に斬り刻む
380閃に及ぶ斬撃の嵐、全身を斬れば急所にも当たるでしょう
吹き抜ける風に靡くは異世界の装い。
はたりはたりとはためくそれは、防具としてみるのなら些かの心許なさを感じさせることだろう。
だがしかし、だ。それを纏うがオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)なれば、また別の話。
放つ存在感の圧そのものが、如何な防具であろうとも鋼の如きへと変えることだろう。
それだけではない。
「小鬼風情が、図に乗って……!」
風に混じり降り来た矢を払い落すは、金剛不壊の一文字。
常より扱う聖槍に代え、振るったそれが描いた白刃の軌跡。
それは迫りくる矢を断ち切るに留まらず、その剣気を風と飛ばして上空のゴブリン達の心胆を凍えさせたのだ。
普段は優しき眼差しも、今は邪悪を前にして苛烈也。
――だが、それまでだ。
彼女の真なる姿――白き翼を背負った戦乙女が如き姿であれば、その翼で空を駆けるも出来たであろう。
しかし、今はまだその姿を解き放つに至るだけの力の蓄積がない。
故に――。
「――小賢しいことを!」
幾度も幾度もとオリヴィアは空より来る脅威に対し、後手とならざるを得ない。
勿論、時間を重ねれば力の高まりも真なる姿を解放するに足るものとだることだろう。
だが、その時間が彼女には――猟兵達にはない。
悠長に時間を重ねれば重ねるほどに、群竜大陸の奥へと座する帝竜達の態勢を整えさてしまうが故に。
だからこそ、彼女達は手元にあるカードだけで勝負をするしかない。
対応するしかないのに、対応するカードがないという事実。それがじわりと焦燥を滲ませる。
そして、焦燥は太刀筋に鈍りを生じさせ、先程まで吹き付ける程であった剣気を衰えさせていく。
それを、その弱みを、理解せぬゴブリン達ではなかった。
「GYAGYA!」
オリヴィアの勢い弱まるを己の優勢と感じ取り、剣を、斧を、槍を振りかざし、殺到せんとするのだ。
「――くっ、この! 人質までとは、姑息な!」
「GiHiHIhi!」
勿論、念には念を込めて、人間という名の肉盾を尖兵としながら。
ゴブリン達からすれば使い捨ての道具に過ぎないそれ。
そんなものに対して武器振るうを躊躇するオリヴィアの姿を、彼らは愚かと嗤う。
嗤いながら、仮にでも自分達の心胆を凍えさせた彼女をどうしてやろうかと妄想し――。
「――本当に斬れないと思ったか、下衆が」
その妄想は形になることもなく、銀の閃光に塗りつぶされた。
「GAa?」
おかしい。何故、己の視界は自身の意図に反してぐるぐると回っているのか。あの首なしの身体は、いったい誰の――。
仮に訳するとすれば、そんな疑問符の浮かんだうめき声。
そして、それが自身の終わりなのだと理解するより早く、刎ね落とされた頭はサッカーボールのように蹴り飛ばされ、同類を巻き添えにして弾け飛んだ。
「所詮は三下。如何に竜の力を得ようとも、使い走りが精々に過ぎないか」
かの頭を蹴り飛ばしたは、その姿に覇気の衰えがあったなどと露とも感じさせぬ姿のオリヴィア。
そう、焦燥も、太刀筋の鈍りも、全てはゴブリン達を釣りあげるための演技にしか過ぎなかったのだ。
それをそうとも知らず、オリヴィアの領域に踏み込んだゴブリンこそが愚かと言う他にない。
今更とそれに気付いた個体も居たが、攻めに踏み切った群れの勢いを止めるには全てが遅かった。
「繚乱せよ、剣閃の嵐――!」
魅せるは閃光。花咲く銀。
オリヴィアを中心として花開いた無窮の剣閃は、迫りくるゴブリンをその刃の露として、より艶やかに咲き誇る。
その動きは一閃のそれでしかなかったというのに、放たれた斬撃の数は優に三百を超えるもの。
「もはや救うこと叶わぬ命。ならば、今更とそれに拘泥するものか」
――骸の海へと還すことこそが、その救い。
チンッと鞘へと刃が舞い戻り、銀の花は赤へと姿を変える。
その正体こそは血煙。
愚かにもオリヴィアの領域へと踏み込んだゴブリン達の末路。
「貴様らには、十分過ぎる終わりだろう」
だが、それも荒野吹き抜ける風が瞬く間にと散らしていった。
後にはもう風の音しか残っていない。
成功
🔵🔵🔴
防人・拓也
「始まったか…。前にどこかで見たようなパターンの敵だな。違いはゴブリンだというくらいか」
と言いつつ、指定UCを発動して兵たちを集結させる。
「部隊を3つに分ける。右翼をα、中央をβ、左翼をγとする。リーパー2~5はα、6~9はγ、残りは俺と一緒にβへ布陣。βの使用武器は『OB-D110 SASS』。残りは『OB-D4カービン』だ。αとγが動きを止めている間、βが急所を狙撃する。敵が集まったら、αとγがフラッシュバンを投げて、空から落とせ。行くぞ、散開!」
と指示し、配置につく。敵が来たら
「攻撃開始。死神を相手にしたことを後悔させてやれ」
と指示。苦戦している味方がいたら、援護する。
アドリブ・連携可。
「チーム・リーパー、集結だ」
開戦の銅鑼は既に鳴らされていた。それも醜悪なゴブリン達の鬨の声という形で。
ならば、向かい来る悪意に応戦するは当然というものであろう。
引き連れるは己を頭とした十の精鋭。
防人・拓也(コードネーム:リーパー・f23769)は、その輩と共に上空舞うゴブリン達と相対する。
「まるで死体に群れようとする禿鷲だな」
ぐるりぐるりと上空で弧を描き続けるゴブリン達。
それはまるで、拓也達の、猟兵達の挙動を観察するかのよう。
少しでも隙あれば、そこに喰いつかんとするための。
だが、侮るな。観察し、分析するはゴブリン達だけに許されたものではない。
拓也もまた、その視線の鋭さ、怜悧さをもってゴブリン達を見ているのだから。
「……前にどこかで見たようなパターンの敵だな」
記憶との照合。対応経験の想起。弾き出すは無数の策。
拓也が積み上げてきた戦闘経験。それがあるからこその。
「――さあ、格の差を見せつけるぞ」
誰を相手取っているのか、教えてやろうではないか。
十一の個にして一つの群が、ゴブリン達をその死神の鎌で冥府へと送らんと動き出す。
ゴブリンの眼下でヒトが蠢く。
群れなすゴブリンからすれば、たったの十。
そのままでも犠牲を出すかもしれないが、呑み込めないでもない数。
だが、そうするより早く、それがわざわざと数を分けて動き出してくれたのだ。
「GI! GIgIgi!」
馬鹿め、愚か者め、とゴブリン達は嗤いあう。そして、なら期待通りにそれぞれを貪り食ってやろう、と。
順番はどこから。勿論、端から。
端から順番に喰い荒らし、残った者達に後悔と恐怖を植え付けてやろうというのだ。
顔に醜悪な嗤みを張り付けて、ゴブリン達はその思惑成就するを最早決定事項と動き出す。
それを示すように、バサリと竜の翼が羽ばたいた。
「さあ、来たぞ。死神を相手にしたことを後悔させてやれ」
――攻撃開始。
沈着冷静。如何なる敵の動きでも動じることのない、鋼の声。
その声を引き金として、降りくるゴブリン達の正面を、横腹を銃弾の嵐が叩く。
「GaaaAAaa!」
だけれど、ゴブリン達の持つ肉を飾る盾が、生じた鱗が、それを通すを許さない。
着弾の衝撃にふらつき、速度を落とさせることは叶うが、墜とすには至らず。
「構うな。そのまま撃ち続けろ」
有効打ではない。だが、それでも続けろと拓也は言う。
何故という疑問の声はない。
彼の呼びだした精鋭なればこそ、そこには信頼がある。彼ならば、その行動に意味はあるのだ、と。
――空より来るゴブリン達の動きは止まらない。
――だが、銃弾を受け続ける先頭と後続との間が、少しずつと埋まっていく。
「万歳突撃など戦術ですらない。今だ、光と音の共演に招待してやれ」
それは合図。先頭と後続とが一塊となった瞬間を狙っての。
そして、投じられるはフラッシュバン。
光が視界を埋め尽くし、爆音が平衡感覚を蹂躙する。
空中機動を行うに、視界も平衡感覚も失えばどうなるか。
答えは簡単だ。
――墜落あるのみ。
まるで殺虫ランタンに自分から突撃し、墜ちる蟲のようにゴブリン達も。
高所からの落下はそれだけで損傷を与えるに充分で、弱った敵など狙いをつけるまでもない。
――Bang!
「a、GaGyUA?」
ふらつく身体を起き上がらせた瞬間、風穴開いたゴブリンの身体。
どこからと思う間もなく、二発目、三発目が脳天を射抜き、視界も思考も黒へと染まるのみ。
棚引く硝煙の向こうでなした己の功績。
それを感慨深くと眺めることもなく、拓也は次の獲物へ照準を合わせていく。
彼に倣って、精鋭達もまた各々で掃討を始めていく姿がスコープ越しに見えていた。
「入れ食いすぎて、撃破数を数える方が大変になりそうだ」
呟きは風に流れて消えていき、ゴブリンの群れが掃討されるのもそう遠くないことであろうことを感じさせていた。
成功
🔵🔵🔴
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
皆殺しの平野か…面白い名前だな
果たして皆殺しになるのはどちらか…奴らに思い知らせてやろう
シガールQ1210を装備、さらにデゼス・ポアを宙に浮かせる
空中からくる敵に対して制圧射撃による「面」での攻撃を行い、命中した部位への反応を見て弱点を見極める
さらにデゼス・ポアも飛び回らせ、刃で敵を攪乱する
フン、随分とデカくて趣味の悪い盾だな
少し風通しを良くしてやろうか
敵が盾を構えたらUCを発動
【スナイパー】と【鎧無視攻撃】で人質を避けて盾を貫通させ敵の弱点を狙撃する
状況に応じてデゼス・ポアの攪乱攻撃で敵の注意を引き後方から狙撃等も行う
力を得ても、所詮は小物か
そのまま荒野の風と共に消えてゆけ
遮蔽物のない空間。
上空には獲物を狙わんと飛び交う群れ。
「皆殺しの平野か……面白い名前だな」
なるほど、これは確かにその名前の通りだ。
三次元的な動きが可能な空中からすれば、地上の動きなど平面的なものでしかない。
しかも、身を守る遮蔽物もないと来れば、それは確かに一方的な殺戮も可能であったことだろう。
そう。あっただろう、だ。
「果たして、皆殺しになるのはどちらか――」
ここにあるはキリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)。
相手が如何に竜の属性を持とうとも、自身にとって不利な戦場であろうとも、その程度で折れる心など持ちえない。
むしろ――。
「――奴らに思い知らせてやろう」
静かに、鋭く、その牙を解き放つのだ。
誰がこの地の名前に囚われることとなるのか。それを証明せんとして。
空が醜悪な色で染められる。
それこそはゴブリン達の悪意。
眼下に咲く美女――キリカをその手で手折るを夢想して。
如何に手折ろうか。如何に嬲ろうか。如何に喰らおうか。
たった一人に向けられる欲望の手が数多。
「醜悪極まりないことだ」
これがダンスパーティでもあれば、まだ多少は考え――。
「――いや、やはりそれもお断りだな」
例え、シチュエーションは違えども、ゴブリン達の手を取るなど有り得ざることだろう。
僅かと眉根を顰めて、そんな欲望の手を取るはお断りだと突き出すは銃口。
「鉛玉とでも踊っていろ」
途切れぬ火薬の咆哮。
吐き出された弾丸は我先にと、キリカへ手を伸ばさんとするゴブリンに喰らい付く。
「――チッ」
「GaRrrrr!」
漏れる舌打ち。
確かに、キリカの弾丸は正しくゴブリン達の身を捉えてはいた。
だが、ゴブリンの身に生じていた鱗が弾丸の衝撃を幾分か削ぎ、致命傷齎すを妨げていたのだ。
とは言え、痛みを与えたことは事実。
その事実に、小賢しきゴブリン達はキリカへの認識を改める。
容易く手折れる花から、警戒すべき相手へと。
しかし、その欲望そのものは変わらない。
むしろ、痛みへの報復を想い、一層と彼女の身を蹂躙する時への期待を強めるのだ。
その思考こそが、隙なのだと理解もせず。
「ああ、それとも、刃を味わいたかったか?」
ぞぷりとゴブリンの胸に生えた錆びた刃の一つ。
何が、と思うまもなく刃が捩じられ、激痛がゴブリンの思考を染める。
ぐちゅり、ぐちゅり、ぐちゅり。
それはまるで、刃で身体の内部をかき分けるように。何かを探し当てんとするかのように。
しかし、それがゴブリンの体内に探し物を見つけるより早く、他のゴブリン達が動いていた。
剣を、斧を、槍を振りかざし、ソレ――キリカの繰るデゼス・ポアへと向けて。
だが、それらが捉えられたのは哀れな犠牲の残骸のみ。まだ僅かと息のあったゴブリンの一匹は、仲間の手によってその生を終えたのだ。
「同士討ちか? 力を得ても、所詮は小物だな」
そして、そこへ追討ちのように齎されるキリカの弾丸。
最早、ゴブリン達は恐慌を覚える他にない。
人形が暴れ回り、キリカの弾丸がそれを追うを妨げ、その隙にまた一匹一匹と刃が突き立てられるのだから。
そうなってしまえば、多少の知恵を付けようとも所詮はゴブリン。己の身を守るためにのみ、それらは力を行使するのみ。
「――フン、随分とデカくて趣味の悪い盾だな」
それはゴブリンの身を覆い隠す程の大きな盾。
されど、それはただの盾でなく、過去よりゴブリンと共に引きずり出された哀れな犠牲者。
――曰く、ヒトの盾であった。
それの影よりゴブリン達は嘲笑う。
これを翳せば、敵の攻撃はきっと止まる筈だと期待して。
今までもそうだったのだ。ならば、今回も――。
「――少し、風通しを良くしてやろうか」
盾の向こうより聞こえた声。
所詮は強がりだ。そう思ったところで、そのゴブリンの思考はもう続きを考えることが永久に出来なくなっていた。
何故なら、その脳天に風穴を開けていたから。
「安らかに逝け」
――お前達が神の御許にいけるかは知らんがな。
それこそは絶技。針の穴をすらも撃ち抜く、キリカの業。
それが盾に飾られたヒトを避け、護りとなる盾を撃ち抜き、その奥に潜むゴブリンを撃ち抜いていたのだ。
しかし、それもゴブリンが組織立って防御を重ねていれば、本来なら容易くそうとはいかなかっただろう。
だが、彼女はそれを攪乱をもって打ち崩し、自身にとって利する条件を整えていたのだ。
だからこその結果が、そこに。
「そのまま荒野の風と共に消えてゆけ」
そして、恐慌の中を更にと刃が踊り、火薬の吐息が命を吹き消す。
最早、どちらが獲物であるのかなど、誰の目から見ても明白であった。
皆殺しの荒野が、その名前に新たなる犠牲者を呑み込んでいく。
大成功
🔵🔵🔵
メアリー・ベスレム
皆殺しの平野?
素敵な名前ね!
是非ともそうしてあげましょう?
跳べても飛べないウサギのアリス
しかもあちらは飛び道具
一方的に追い立てられて
【逃げ足】ひたすら逃げ惑い
転げて怯える獲物の【演技】
あなた達も人を食べるのね
家畜のお肉もいいけれど
獲物を狩るのは愉しいでしょう?
包丁も哀れ取り落とし
揺れるお尻と無力な姿で【誘惑】してみせて
アリスのお肉に齧り付こうと降りてきたなら
あんぐり開けた口の中
【物を隠す】した臆病者の刃
喉の奥まで突き入れてあげる【部位破壊】
お味はいかが?
残る相手が飛び去る前に
【ジャンプ】【踏みつけ】で叩き落として
まぁ、とっても硬いのね
一度で駄目なら何度でも
【傷口をえぐる】ように【踏みつけ】る
皆殺し、鏖、みなごろし。
刻んで、叩いて、突き刺して。
「素敵な名前ね! 是非ともそうしてあげましょう?」
くすくすくす。
風に歌声を溶かしこみ、血染めの未来で兎は嗤う。
風に乗り、悪意の矢が追いすがる。
跳んで躱せども、飛ぶ翼などありはしない。
重力の鎖はメアリー・ベスレム(Rabid Rabbit・f24749)の身体を捉え、再びと地の上にその身を迎えるのみ。
そして、再びの矢の洗礼。
しかし、それの狙うはメアリーの手足。腱を狙い、腕を狙い、致命傷を狙うではない、それ。
「Gi、GyaHaGYAGYA!」
「ふふ、アリスで遊びたいのね?」
ゴブリン達からすれば、これは兎狩りのつもりなのだろう。
逃げろ、逃げろ、と矢はメアリーを追い立てるのだ。
矢の雨に混じって、その醜悪な嗤い声もまたメアリーの耳には届いていた。
「なら、是非とも捕まえて御覧なさい?」
出来るかどうかはあなた達次第だけれど。
跳んで、掠めて、肉厚の包丁でたたき落とし、そうは容易く捕まらぬ。
されど、僅かずつ、僅かずつだが、メアリーの身は削がれていく。
かすり傷が重なって、零れる血が増えて、動き続けるための体力は減るばかり。
ゴブリン達の身へと届かせるだけの逆転の目があればまた違ったのだろうが、それのない今、待つはじり貧の未来のみ。
そして、遂に――。
「――きゃっ!」
縺れた足が遂にと跳ぶを拒否し、メアリーの身体を大地の上に横たえる。
衝撃に、カランと転がり離れるは凶器の刃。
最早、そこに力なく横たわるは仕留められるを待つばかりの無力な兎。
「GYAGYAGYAGYA!」
晩餐の時だ。宴の時だ。
喰らうならばどこからがいい。
脚からだ。手からだ。とにかく、頭と胴は最後にしろ。
そうすれば、絶望と恐怖を肴に出来る。
そんな欲望の、悪意の視線の先で晒されるはメアリーの姿。
動き続けた身体が空気を求めて喘ぎを零し、滲んだ汗と血で衣は身体に張り付き、その艶めかしき体躯を浮かばせる。
ゴブリン達からすれば、まさしく絶好の機会。
わざわざとそれ以上傷つけ、新鮮さを落とす必要もない。
それにだ。
「Grrr、GAaaHu!」
たった一人しかないメアリーを群れ全体で分け合うなど到底無理。
ならば、先に喰らってしまおうと抜け駆けが起こることは必定。
所詮、竜の力を分け与えられようとも、ゴブリンはゴブリンでしかないのだ。
我先に、我先にと無力な兎へと向かって空よりゴブリンが舞い降りる。
生きたままに柔らかな肉を喰らえ、血を飲み干せ、恐怖を刻め、と。
「獲物を狩る愉しみ、味わえたでしょう?」
――なら、今度はメアリの番ね。
あんぐり開けた口の中、満たすは血の味、鉄の味。
されど、それは期待したメアリーの肉の味などではない。
口腔を貫き、脳髄をかき混ぜ、後頭部の向こうに顔覗かせた、血を零す刃の味そのもの。
「ふふふっ、お味はいかが?」
――家畜のお肉やアリスのお肉よりは硬いかもしれないけれど、それでもお腹を空かせたあなた達には御馳走でしょう。
たんと味わえとばかりに捻り込まれる、臆病者の起こした革命の名残り。
かつての持ち主はどうだったかは知らないが、それを現在に担うメアリーは確実に目の前のゴブリンへと復讐を届ける。
ずるりと引き抜けば、滴る赤が刃に新たな彩をこびり付かせて。
「Geu? Gya、GArrr!?」
「お待ちになって? 今迄、アリスで愉しんだのだから、今度はメアリを愉しませて頂戴よ」
反抗できぬと思っていたメアリーからの、まさかの反撃。
しかも、それはただの悪足掻きなどではなく、明確に命刈り取る兎の刃であったのだ。
そのあり得ざる――ゴブリンにとっては、だが――事柄に、群れへと齎せるは混乱そのもの。
それでも混乱の中、再びと距離取らんと翼を羽ばたかせるが、それはメアリーを前にして遅すぎた。
――跳びあがる体躯。衣艶やかにはためいて、伸びる脚がゴブリンの顔面を。
それは先程までと――否、先程よりもなおと素早く見せた跳躍。
そう。全ては演技であったのだ。
追い詰められたのも、力尽きたと思わせたのも、ゴブリンという愚かな獲物を誘き寄せるための。
「まぁ、とっても硬いのね。跳躍の足場にはぴったりだわ」
顔面を踏みにじり、蹴り落とすと共に再度跳躍。
すれ違いざまに、刻んで、叩いて、突き刺して。
足場はそこかしこに飛んでいるのだ。自身の手で多少の数が減っても構いはしない。
空駆ける。その言葉通りに翼持たぬ筈の兎が空の上を走り抜けていく。
「ここは皆殺しの平野って言うんでしょう?」
――素敵な名前ね! 是非ともそうしてあげましょう?
血風舞う中、兎は嗤う。
そして、命は地上に向けて落とされて、墜とされて、堕されて、それを平野がごくりと飲み干した。
大成功
🔵🔵🔵
上野・修介
※アドリブ、連携歓迎
「死者をなお辱めるのか」
『怒り』がある。
だが胸に渦巻くそれは頭を鈍らせる。
故にそれを丹念に四肢に込め、一瞬でも速く確実に潰す。
調息、脱力、戦場を観【視力+第六感+情報収集】据え、敵味方の戦力、総数と配置を確認。
UCは攻撃重視
基本的には攻撃してくるタイミングを【見切】って【カウンター】。
或いは装備のクライミングロープとタクティカルペンで即席の流星錘を作成【戦闘知識+地形の利用+ロープワーク+投擲】し、羽に絡めて叩き落とす。
攻撃時は裏当て【グラップル+戦闘知識+鎧無視攻撃】を用いて急所に通す。
『盾』を使われても迷わず叩き込む。
――人体は水。
――勁は波
「故に打撃はそこに至る」
上空羽ばたくゴブリンの影。それが連れ従える――というよりは、最早、備品のようにも扱われるもう一つの影。
それは上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)の優れた視力があればこそ、はっきりと彼の目には捉えられていた。
――粗末な盾に括りつけられ、今は盾を補強する素材に代えられたヒトの姿。
「死者をなお辱めるのか」
それはゴブリン達と同じく、過去から滲みだしてきたモノでしかないのだろう。
だけれど、だからこそ、既に亡くなった者達があのように粗末に扱われて良いものではない。
見据えるの瞳の中に燃ゆるは紅蓮。
怒り、義憤。言い方は様々あれど、修介の心焦がすは、間違いなくそれに類するものであった。
「――フゥ」
胸に宿る炎を落ち着かせるように、修介は息を整える。
余分な力みを抜き、狭まる視界を広げんとして。
そう。怒りは確かに力だ。時に、それは莫大な力を生み出すことは間違いない。
しかし、扱い方を間違えれば己をすらも焼き尽くす諸刃の剣。
自身を求道者と語ったことはないけれど、それでも、修介には修介なりの信念がある。
――他の何に負けようと、俺自身には負けらない。
規則正しき呼吸を持って燃ゆる己の心を巧みに散らし、その紅蓮を四肢へと宿す。
「怒りは己を曇らせる。だが、使いようだ」
四肢に宿った炎は指向性を与えられ、討つべき者を討つためにこそ。
「――一瞬でも速く、確実に潰す」
修介の脚が大地を蹴った。獅子の如き雄々しさを持ってして。
敵は上空。
如何に修介の牙が鋭く、盾をすら砕く矛であろうとも、その手の届く範囲は限られている。
故に、その攻撃はカウンターをこそ狙うものとなるのは必然。
「GOAAAAaaaaa!」
「言葉を忘れる程だったんだな」
降下する勢いと共に響いたは猛る声。心壊されたヒトのもの。
ゴブリンの盾としてかの身を守り、ゴブリンの剣としてかの敵を討つ。そのために、自身の命をすら捨てるよう変えられた、成れの果て。
振るうは粗末な刃。されど、錆びたそれは傷口から病を振りまくことであろう。
滅茶苦茶に振られるその軌道に、修介は動じることもなくと手を差し込み、己が身より逸らし、躱す。
その瞳に紅蓮はなかったけれど、憐憫の彩が僅かと滲んでいた。
だが、それもほんの一瞬のこと。
「GiGiGi!」
「……嗤うか」
猛りに混じるは、盾越しの醜悪な嗤い。
ヒトを盾とし、安全圏から嘲笑う悪意。
勿論、今の彼らは生命力を共有する者同士ではある。だけれど、それでもヒトにヒトをぶつければ、自身に向ける刃が鈍るという経験則に基づいての。
ヒトの、盾の影から突き出されるは槍の穂先。
剣と共に混じりくるそれは嫌がらせのように修介の隙を突かんとする。
ヒトを囮として、潜ませた己の刃を本命とする。彼らの必勝戦術。
「――侮られたものだな」
その経験則が生きるのは過去のモノであったと知るがいい。
如何に一対複数であろうとも、ヒトを囮としようとも、そんなものは修介に通用などしないのだから。
見開かれた修介の瞳。意識は加速し、迫りくる刃の速度をスローモーションのようにと捉える。
されど、その遅き世界の中でも自身の動きは十全にして、四肢の末端まで己が意思のままに。
「――人体は水」
未だ、討つべきゴブリンの姿は影の奥。
だが、構わない。修介は迫りくる刃を紙一重で過らせて、ひたりと心壊れたヒトに触れる。
「――勁は波」
イメージは水面に生じる波紋。
打ち、穿ち、表面ではなく芯にのみ響かせるそれ。
「故に、打撃はそこへと至る」
――隠れても、無駄だ。
交差の一瞬を捉え、重い、重い音が響いた。
だが、そこに衝撃の音を感じさせる光景はない。
あるのは動き止めた修介と触れられたヒト。
――否、もう一つあった。それこそが。
「GyaAaaAA!?」
盾の、囮の影に居た筈のゴブリンが吹き飛ぶ様。
裏当て。
それこそが修介の用いた技法であり、彼の牙をゴブリンへと届かせたものの正体。
たった一撃。されど、一撃。
それはヒトを抜け、ゴブリンの皮膚を抜け、その心の臓を的確に砕いたのだ。
もう、それは動かない。同じくして、生命力を共有するヒトであったものも。
「静かに眠れ……むっ」
「GraaGuu!」
哀惜の念をゆるりと捧げるには、まだ戦場は騒がしい。
「掃除にはもう少しかかりそうか」
平野に落ち着きが取り戻されるまで、まだもう暫しの時を要する。
成功
🔵🔵🔴
リュカ・エンキアンサス
空からやってくるなら、灯り木で迎撃する…かな
人間を盾にしてるらしいけど、とりあえず気にしない
趣味が悪いな、とは思うけれど
空からの攻撃に関しては、敵が飛び道具少ないのもあって
相手の武器の射程に入る前に射撃で片を付ける方向で行きたくて
肝心の鱗だけど…、こっちは数多めに撃ち込んで探っていくしかないかな
今までの戦闘知識を踏まえて相手の反応をうかがったり、最後は第六感に頼むことになりそうだけど
後は遮蔽が取れればよかったのだけれども、難しそうだし
他の猟兵の人たちと協力して、自分の安全を確保しながら撃っていきたい。必要なら援護射撃に切り替えるね
…曲がりなりにも自分が旅している世界だから
滅んでほしくはない、な
トリテレイア・ゼロナイン
…助けられない存在
そうしたケースも幾度も経験しています、問題はありません
飛翔し剣を振るう小鬼の速度をセンサーで計測●情報収集
タイミングを●見切り、●武器受け●盾受けで防御と同時●ワイヤーアンカーを複数射出し●操縦●ロープワークで捕縛し地に叩きつけ
人間から引き摺り落とし素早く●踏みつけ、動きを封じ眼球目掛け●怪力で剣で●串刺し
…生命力を共有しているのですね
遠距離攻撃は格納銃器での●スナイパー●武器落としで武装や魔術道具を破壊し近接攻撃強制
(生き延びた人間を発見し)
もう大丈夫です、どうか安心して
(アンカーを操縦し背後から先端UCでだまし討ち)
…お休みください
御伽の騎士なら、いえ、言いますまい
平野に吹き荒ぶ、不吉な風。
その大半は自然の生み出すものでもあったけれど、同時、自然ならざるモノもまた混じっていた。
「GyA! GYAGYA!」
それこそはゴブリン。竜の翼を、鱗を、角を生じさせた、異形のそれ。
それらは普段であれば地を這う者達であったけれど、今はその翼でもって、我が物顔で空を行くのだ。
だが――。
「飛行速度自体は大したものではないようですね」
不吉な風を塗りつぶす轟音。
鋼の体躯を押し上げる焔の尾は、重力の鎖からトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)を解き放つ。
飛翔、接近、斬撃。
交差の瞬間に振るわれた重い刃。それは触れるものを端から食い千切り、その刃の露とする。
それはゴブリン達からすれば、まさしく青天の霹靂であったことだろう。
この空は自分達の領域。そこに闖入者が現れようなどと。
しかも、トリテレイアはゴブリン達よりも遙かに速く、鋭くと空を往くのだ。
勿論、そこには航続距離や滞空時間の制限もあることだろうが、ゴブリン達には見えていない。
だから、ある者は怒り、ある者は妬み、一様においてその存在を許すまじとする。
それが、視界を狭めることだと理解もせず。
「個々の戦力は低く、数ばかり……とは言え、その数が厄介なのですがね」
滞空し、トリテレイアが構えるは盾。
だが、まだゴブリン達の持つ剣は遠く、弓矢や魔法の類の放たれた気配はない。
では、何に備えてというのか。
「それでは、お願いします」
「――了解」
応えて、地より伸び来る銃弾の嵐。
途切れることなく響くそれは容赦なくとゴブリン達の身を叩き、抉っていく。
そして、面を制圧するように放たれたが故に、トリテレイアもその範囲の中。
しかし、備えて翳した盾がそれを受け止め、代わりと火花を散らすのみ。
「大丈夫……そうだね」
「ええ、勿論です」
嵐吹き止み、眼下を見下ろせば、そこには星明り灯す銃持つリュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)。
淡々とした眼差しは、自身の戦果――傷付き、中には翼撃ち抜かれて墜ちるゴブリン達を見ても、高揚を宿しはしない。
ただただ、この依頼を如何に乗り越えるか、その巡る思考が輝くのみ。
だが、ゴブリン達とてその全てを討たれた訳ではない。
鱗に助けられた者、幸運にも仲間が銃撃受ける壁となった者、盾翳すを間に合った者、様々であり、その数は依然として多い。
「GI! GryuAaa!」
「Gi! GiGyua!」
ならば、逆襲の時だ。
トリテレイアとリュカ。その二人を引き裂き、腹に納めねば気もすむまいと気焔をあげる。
しかし、彼らは上空と眼下の二手。
さて、どちらから討つべきか――。
「――まあ、それを待つわけないよね」
その一瞬の逡巡を、リュカが見逃す筈もない。
空になったマガジンを手早く入れ替え、再び吐き出されるは銃弾の嵐。
弾丸が、弾丸が、弾丸が、ゴブリン達の視界を埋め尽くす。
再びと来たる痛みの時。だからこそ、ゴブリン達は逆襲よりも身を守るを選ぶのだ。
翳すは盾。だけれど、それはただの盾に非ず。
「人間を盾に? 趣味が悪いね」
その盾の前面に呼びだされ、それを補強するは肉の壁。かつてゴブリン達に捕えられた、過去からの犠牲者。
それが弾丸を受け止め、悲鳴を零し、平野に絶望を振りまいていく。
「GiHI!」
どうだ。と言わんばかりの声。
同じヒトであるのなら、それに手を止めざるを得ないだろう、という。
だが。
「――まあ、でも、関係ないんだけどね」
その自慢の盾は、リュカの前では意味はなさず、盾を叩き続ける銃弾の嵐は吹き止まない。
数多の戦場を越えてきた彼だ。時に、目の前の光景以上の地獄すらをも見たことがあるのかもしれない。
それでも尚と生き残ってきたのは、それはそれと割り切れるからこそ。
そして――。
「俺にばかり気を取られてていいのかな?」
忘れてはならない。ここにはリュカ以外のもう一人も居るのだということを。
「――助けられない存在。そうしたケースも幾度と経験しています。問題は……ありません」
問題ないと漏らす言葉。されど、そこに滲んだ苦渋の彩。それを隠すように、上空より降りくる轟音の響きが言葉を覆った。
盾翳し、銃弾の嵐の中へと跳び込むトリテレイア。
だが、此度行うのは交差の斬撃には非ず。
「その身、捕えさせて頂きます」
射出するは体の各部へと内蔵したワイヤーアンカー。
狙いは、銃撃に足止められる中で明らかに遠距離攻撃を可能とするであろう個体。
上空よりセンサーで捉え、ピックアップしておいたそれへと盾ごとに絡まるアンカー。
直接と斬撃加えずにそうしたのは、やはり僅かと逡巡があったのか。
――否。
「そのまま、地面に!」
苦い思いはあったとしも、そこに手心は加えなどしない。
スラスターの推力に物を言わせて宙を引きずり、振り回す。
絡められたそれはそれ自体が鉄球の代わりとなって、他のゴブリン達を巻き込み、叩き落とす。
そして、最後の仕上げはハンマー投げもかくやと絡めたそれを大地に向けて。
「潰れたトマトみたいだ」
素直な感想。
だが、平野の一面に巻き散らされた新鮮な赤は、そう例えてもあながちの間違いでもなし。
「とはいえ、まだ息のある者達もいるようです」
「すごいね。まだ戦う気概があるんだ」
「戦う気概というよりは、復讐の念のような気もします」
「なら、余計にここで逃がす訳にはいかないか」
復讐の念を覚えたまま逃げられては、いつか足元を掬われることになりかねない。
念のためと突撃を警戒して盾を翳すトリテレイアの背後、リュカは最後の一矢を届けるための準備を始める。
「ありがとう。あなたが影を作ってくれるから、安心して撃てるよ」
「いいえ、せめてこれぐらいは」
スコープ越し。よろりよろりと起き上がる影。その小ささは、恐らくゴブリンか。
傍には倒れ伏す大きな影もあるが、そちらはぴくりぴくりとしはするものの、立ち上がる気配はない。
ならば、どちらを撃つべきか。
「……星よ、力を、祈りを砕け」
撃ち、砕くべきは悪意の大本。
とある世界。とある場所では、流星に纏わる伝承がある。
曰く、星が流れるとヒトが死ぬ、と。
その言い伝えを再現するかのように、星の弾丸は平野を流れ、蠢く悪意の頭上に落ちた。
「……曲がりなりにも自分が旅している世界だから、滅んでほしくはない、な」
流星の担い手は、幾度も幾度もと地に星を描き出していく。
目の前の敵を掃討するまで、ずっと。
「あなたも、行くのかな?」
「ええ、もう警戒は必要ないでしょう。ですから最後に」
「……そう、気を付けて」
「ええ、ありがとうございます」
最早、残敵掃討の流れ。
ゴブリン達に復讐の意志はあれども、抵抗の力はない。
だからこそ、星の降る戦場を騎士は歩む。
「……もう、大丈夫です。どうか、安心して」
まだ息のある、過去の犠牲者達を探して。
それはきっと意味のないことなのだろう。
彼ら、彼女らもゴブリン達と同じく、過去からの影。それを助けたところで、何かが変わる訳でもない。
でも――。
「――お休みください」
その苦痛を少しでも早く和らげることには、きっと意味がある筈なのだ。
そして、その腕に抱きあげたヒトへと突き立つは慈悲の短剣。介錯のための刃。
それは苦痛と恐怖に喘ぐ犠牲者達を眠らせ、最後のひと時を緩やかに終わらせるための。
「御伽の騎士なら……いえ、今は言いますまい」
全てを、過去をすらも救わんとするのは、御伽の騎士ならぬ身にはきっと欲深き願いなのであろう。
だけれど、それでも、腕の中で眠りについたヒトの重さへ、そう思わずにはいられなかった。
また、流星が流れていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オブシダン・ソード
どうあれ、利用されてる人間は傷付けたくない
と、飛んでる…
でも空中だと『人間の盾』って重くない? 持ててる?
その辺が確認出来たら炎属性の魔術を駆使して、大雑把に火弾をばら撒いて対空砲火
羽根に穴でも開けられれば勝手に落ちてくれそうだけど
とにかく姿勢を崩してくれれば御の字
敵の遠距離攻撃は弾幕で、無理ならオーラ防御で対応
接近戦に持ち込めたら攻撃を受け流すか、躱して反撃していくよ
降下攻撃なら動きが直線的だし、地上での戦闘なら武器がでかいよ
それで小回り効く?
騎乗体勢の子には、特別に飛び蹴りを見舞ってあげよう
命を共有してるし、もう救う事はできないだろうけど
単純に、そういうの気に食わないんだよね
降りてくれる?
ばさりばさりと羽音を立てて、小鬼数多と空を飛ぶ。
盾々携え、空を飛ぶ。
「と、飛んでる……」
情報として聞いてはいたけれど、それでもやはりその光景は衝撃でもあったのか、オブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)はフードの奥に驚愕を僅かと滲ませ、それを見ている。
だけれど、その驚愕も表に覗いていたのは僅かな時間。次の瞬間にはいつもの飄々とした雰囲気が彼を包んでいた。
驚きも勿論あったけれど、それ以上に気になることがあったから。
それは――。
「『人間の盾』って重いと思ったけれど、持ててるもんなんだね」
かの醜悪なゴブリン達の持つ盾そのもの。
人を括り、その肉でもって補強した盾。ともすれば、相対する者の戦意を削げるであろう、それ。
だが、それはその大きさ、重さに反して、ゴブリン達の飛行や行動の妨げとなる様子はない。
「やっぱりユーベルコードの類が関係しているんだろうね」
それは超常の力なればこそ。
猟兵も用いるものではあるが、それは時に自然法則もすら捻じ曲げる力。
姿覆う程の盾であろうと、妨げとなっていないのは、そういうことなのだろう。
「ま、その辺が分かれば十分かな」
掌にボウと生まれる紅の。
チロチロと燃えるそれを握りしめれば、紅は燃え上がる紅蓮となってオブシダンの拳を包む。
「――さぁて、打ち上げ花火といこうか」
紅蓮の揺らめきが風を生み、はたりはたりとローブが躍った。
それに構わず、オブシダンは天へ届けとそれを打ち上げるのみ。
そして、紅蓮は軌跡を尾と残して空の彼方。
突如として飛来したそれにゴブリン達が気付くより早く、それは群れの中央で大輪の花を空へと咲かせたのだ。
「たーまやー……って言うんだったっけ?」
弾けた紅蓮の彩り。
それを眺めるオブシダンの声はマイペースそのものであったけれど、それでも手にした魔杖剣の輝きは剣呑。
確かに、紅蓮は無数の火片となってゴブリンの多くを焼いた。
身を焼き、翼を焼き、盾は焼かず。だが、それでゴブリン達を仕留めたというには気が早い。
多くはそのまま墜落し、その身を砕けさせてはいた。だが、一部のゴブリン達は焼かれた翼に無理をさせ、二度と飛べない代償に、その身を地へと不時着させていたのだ。
「Gyua! Grrrrr!」
「しっかりとこっちを認識してくれたみたいだね」
態勢を立て直すその目に、オブシダンへの憎しみと怒りを滾らせて。
それでも、オブシダンにはどこ吹く風。その向けられる悪感情をすら柳に風と受け流す。
それが更に火に油とゴブリン達を逃げるではなく、戦いへと傾けていく。
緊張は高まり、戦意は高まり、そして――。
「GRAaaaaaaaa!!」
「それは騎兵の物真似かい? あんまり面白いものではないね」
眉を顰めるオブシダンの視界の向こう。波を打って、ゴブリン達が迫りくる。
己の脚でではない。盾としていたヒトを今は騎乗のそれへと代えて。
剣を振りかぶり、斧を振りかざし、槍を掲げ、波が来る。
だが、オブシダンは動じない。
懸念の一つでもあったゴブリン達の翼を奪えたのだ。空からの懸念がないのであれば、地上に集中すればよいだけの事、と。
「これでも剣の端くれでね。他の武器になんて負けてられないんだよ」
――それに第一、他の武器になんて負けてたらなんて言われることやら。
きっとからかわれることは間違いない。
だから、猶更にここでは負けられよう筈もなかった。
そんな思考の合間にも、波は地を駆け、もう目前。
粗末な刃の鈍い輝きが振りかざされ――。
「――少しは自分で動かないと、太るよ?」
「GOrb!?」
先頭の一匹。それの視界を埋め尽くしたはオブシダンの靴の裏。
そう。それを迎え撃ったのは飛び蹴りであり、それまでの武器で応戦するかのような流れを一切無視したまさかの肉弾戦であったのだ。
まさかの一撃に吹き飛ぶゴブリン。その勢いは後続へぶつかっても尚と失われぬ衝撃が物語るもの。
「それに、だ。車間距離はきちんと開けないとね。じゃないと、今みたいに巻き込み事故が起こるよ。……って、もう遅いか」
吹き飛ばし、強制下車させた者達には目もくれず、着地と同時にオブシダンは波の中へと踏み込んでいく。
「――言ったでしょ? これでも剣の端くれでね。……そんなでかい武器で、小回りが効くかい?」
一対多であれば自殺行為にも見えるそれであったが、ゴブリンの持つ――彼らからすれば大振りな――剣の隙間を縫って、確実なる一刀一殺。ゴブリンのみを仕留めるを為していくのだ。
騎乗されるヒトを討てばゴブリンも道連れとなる。
そのことには早期の段階でオブシダンも気付いていたし、そうすることが早いということにも気づいていた。
だが、彼はそれを選びはしなかった。何故か。
――もう救うことはできないだろうけど、それでも利用されている人間は傷付けたくない。
それが、オブシダンの想いであったからこそ。
だから、彼は紅蓮で持って盾は焼かず、その脚でもって蹴らず、刃の露とするをしなかったのだ。
また一つ、オブシダンの刃に討たれたゴブリンが命を散らす。
勿論、ゴブリン達にはゴブリン達なりに彼らの理があったのだろう。
それがヒトを蹂躙することであり、支配することであり、隷属させることでもあった。
だけれど――。
「君達の願いは、僕には関係ない。それに、単純にそういうの気に食わないんだよね」
それはオブシダンの想いと衝突するからこそ、彼によって踏みつぶされたのだ。
そして、黒に触れられた端から波が少しずつ凪いでいく。
全てがその動きを止める迄、あともう少し。
成功
🔵🔵🔴
月凪・ハルマ
◆SPD
さて……助けられないとはいっても、囚われている人を
余計に苦しめるのはちょっと嫌だな(【優しさ】)
まずは【見切り】【残像】【武器受け】等で攻撃を躱してから
一旦【迷彩】で姿を隠してゴブリンの様子を伺おう
明かな隙を見せたなら、盾を持っている方の腕に
【潜刃・禍ッ牙】を発動
上手くUCを封じられたなら、あとは手裏剣の【投擲】と
魔導蒸気式旋棍の打撃で一気に攻め立てる(【早業】【2回攻撃】)
反撃の隙も、逃げる暇も与えはしない
そして恐らく、急所は重点的に守ろうとするだろう
敵の動きをよく見ていればその場所も分かる筈だ
(【情報収集】)
急所が判明したなら、そこ目掛けて
エンジンを起動した破砕錨・天墜を叩き込む
平野に乾いた風が吹く。
ざぁざぁと流れるそれは砂煙を巻き上げ、平野を覆う。
だが、それは上空を飛ぶゴブリン達には関係のない世界。
時折、眼下の世界を眺めて獲物はないかと探しはするものの、皆殺しの平野と呼ばれる程の場所に生命の気配は遠い。
だから、その監視の目は節穴で、風と共に動いた影を見落とすのであった。
「ひい、ふう、みい……これまた、随分といるもんだ」
静かに上空を見つめる影――月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)、その姿を。
荒野に溶けるその姿は、余程じぃっと見なければ岩か枯れた樹かとも思わせるもの。
それは彼の修めた忍の――迷彩技術の賜物であり、同時、自然な立ち振る舞いが醸し出す空気であった。
――訂正しよう。例え、ゴブリン達の監視が節穴でなかったとしても、ハルマを発見することはどちらにせよ困難であったということを。
「さて……助けられないとは言っても、囚われている人を余計に苦しめるのはちょっと嫌だな」
どこか飄々と感じさせる表情に、初めて別の彩が浮かぶ。
それは眉根に寄った皺であり、考え込むようなもの。
上空を往くゴブリン達。それがただそれだけであったのなら、ハルマも難しい表情を浮かべることはなかっただろう。
だが、ゴブリン達の持つ盾――雁字搦めと捉えられ、ぐったりとした過去の犠牲者達の姿があるからこそ、彼は思案を巡らせるのだ。その心に根ざしたものへ従って。
「未だにこちらを見つけることも出来ていない……隙だらけと言えば隙だらけ、か」
――なら、やるか?
そろりと伸ばした手の中で、まるで手品か魔法かと言わんばかりに現れるは手裏剣の黒。
如何に竜の属性を得ようがゴブリン程度。ハルマであれば、その動きを捕える容易い。
現に、その数多くともハルマの目を外せた者は一匹も居ないのだから。
――それじゃ、やらせてもらおうか!
決断は一瞬。行動は即座。
吹き抜ける風へと溶け込むように、黒が解き放たれていた。
「GoB!? GYAaGa!?」
ゴブリンの身体を冷たい何かが身体を通り抜けた感触。
なんだ、と騒ぐ間もなく、それは熱さへと変わる。
それは痛みだ。それは零れ落ちる己の血の熱さだ。
見れば、己の身体に刻まれた深い傷。
突然のそれに慌てふためけば、未だ傷のない者達からは自分で傷を作ったのか間抜け、と嘲笑を向けられる。
だが、その嘲笑も長くは続かない。彼らもまた、傷刻まれたゴブリンと同様に、その身体から血を零すこととなるのだから。
そこに来て、ようやくゴブリン達は気付く。自分達が何者かに攻撃されているのだということに。
「GrrrGob!」
「GYAGYA!」
眼下の砂埃を見つめれば、飛来するは更なる黒。
認識した時には、その大きな目玉には黒――手裏剣が突き刺さり、視界はその黒に染められる。
また一匹、また一匹と大地に向かって直下降。ぐしゃりと大地に赤の彩を増やすのみ。
だが、その犠牲をもってして、ゴブリン達はようやくとその影を見つけたのだ。ハルマの影、その姿を。
「Grrrrrr!」
見つけた、見つけた、見つけた。
ならば、復讐せねばなるまい。ならば、やり返さねばなるまい。
痛みへの報復を。敵意への報復を。
仲間の死はゴブリン達にとって計算の外。自分のために、彼らはそれを誓う。
そして、飛来する黒へと抵抗するように構えたは盾。
前に突き出し、正しく壁として、彼らの捉えたハルマの姿へと突撃していく。
確かに、その手法は有効であったことだろう。盾の影に自身を隠しながら、敵との距離を詰めていくそれは。
多少、盾が傷付こうとも構わない。盾とはそういうものであり、それの零す血肉はゴブリン達を強化するのだから。
降下の勢いを利用して、数多のゴブリンがその手に持った剣をハルマの姿へ突き立てていく。
あっという間に出来上がる剣の山。それは如何な猟兵とて、死を避けえぬであろう致命傷。
ただ――。
「油断がすぎるでしょ、それは」
ゴブリン達の捉えたハルマの姿が、本物であったなら、だが。
剣が貫くは揺らり揺らめく影、朧。
ゴブリン達が盾にその全身を隠さず、突撃の最中もハルマの姿を見続けていたのなら、気付けていただろうそれ。
しまったと思っても、遅い。
上から飛来し、大地突き立つ手裏剣の黒。そして、遅れること一拍。上空で感じた冷たさと熱さが、ゴブリン達の盾持つ手へと奔った。
「Gyaaaaaaaa!?」
「逃げるも、反撃も、ご自由にどうぞ」
――どれも許さないけど。
痛みに喘ぐゴブリン達。盾を持ち直そうにも、その腕は盾と共に大地へ転がるのみ。
声の響いた上を見れば、そこには死神の――ハルマの影。
すたりと着地すれば、その手には最早手裏剣の形はなく代わりに握った大型アンカーの姿。
どうするのか。決まっている。
ガオンと響いたエンジン音は、ゴブリン達にとっての死神の足音。
――逃げ、逃げないと……。
最早、反抗の意思などなく、我先にと押し合いへし合い動きだす。
少しでもその死神の足音から遠ざかろうとして。
「ああ、うん。でも、どれも許さないって言っただろう?」
振るわれるは鉄塊。尾を引くはエンジンの輝き。
急所もへったくれもない。速度を伴った質量が、諸共にゴブリン達を砕いたのだから。
そして、ハルマによる蹂躙が始まる。
エンジンの音が鳴りやむ時こそが、目の前のゴブリン達が全滅した時と示すように。
成功
🔵🔵🔴
杜鬼・クロウ
【DK】
アドリブ◎
敵サンがぞろぞろとお出でなすった
今日こそ白黒はっきりつけるぜ
多く倒した方が酒奢ってもらう、イイな?
俺が敗けるコトなど有り得ねェがなァ!
抜かるンじゃねェぞ、望(ニィ
望と背合わせ
肩に乗せてた玄夜叉振り下ろし各々の手段で攻撃
敵を挑発し一回転して足狙う
機動力落とす
【聖獣の呼応】召喚
遠距離攻撃する敵へ威嚇する様に援護攻撃
もしくは剣で武器受け・かばう
敵が回復するより疾く攻撃繰り出す
剣技で応対しつつ急所探る
特に厚く覆われた鱗部分を集中的に部位破壊
望の死角は朱の鳥か剣で潰す
弱ェトコは見せたくねェモンなァ
俺の真似すンなよ
ハ?俺の方が多く倒してたわ
最後は望と共闘
カウンター交え剣に紅焔宿して二連撃
氷月・望
【DK】
アドリブ歓迎
勝敗決めの方法お任せ
ゴブリンがドラゴンになったとか
RPGゲームも中々にビックリな状況だねー
そっちこそ、財布の準備は出来てんだろうなァ
ハッ!杜鬼の方こそヘマなんかするんじゃねぇよ?
常にサイバーアイ『Invader』を起動
いち早く急所を見付けられる様に【情報収集】
UC:紅雨を発動
杜鬼の死角にいるヤツも含めて
【鎧砕き】【部位破壊】の力を込めた赤雷で撃ち抜く
まだ息があるなら【2回攻撃】で追撃
回復される前に、さっさと焼き切るに限るってね
鱗が上手く剥がれたら
投擲用ダガーで急所を狙ってみるか
急所の位置が判り次第、杜鬼に伝達
まっ、後で言い訳されても困るし?
いーや、俺の方が多く殺ってたケド?
空に犇めく敵の影。
ばさりばさりと空叩き、その身浮かべるは竜の翼。
されど、その翼生やすは醜悪なるゴブリンの群れ。
「雁首揃えて、敵サンがぞろぞろとお出でなすった」
「ゴブリンがドラゴンになったとか、RPGゲームも中々にビックリな状況だねー」
片や、玄夜叉風雲児。肩へ担いだ黒塗りに、浮かべる顔は不敵なる杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)。
片や、輝く朱なる瞳。炎の如くと燃ゆるそれをレンズの奥に隠した氷月・望(Villain Carminus・f16824)。
数数えるも面倒なほどのそれを前に、両雄は並び立つ。
「多く倒した方が酒を奢ってもらう。イイな?」
「そいつは構わねェよ。ただし、終わった後で杜鬼の財布が空っぽになる準備が出来てるってんならなァ」
「おーおー、言ってくれるじゃねェか。だが、そりゃあこっちの台詞だ。俺が敗けるコトなど有り得ねェからなァ!」
「吠えるだけなら、犬でも出来るってもんだ!」
空埋め尽くすゴブリン達を前にしても、そのどちらにも緊張の色はない。
むしろ、ゴブリン達より先に互いの言の葉が火花を散らす。
それは仲間割れの前兆か。いいや、違う。
「――抜かるンじゃねェぞ、望」
「――ハッ! 杜鬼の方こそヘマなんかするんじゃねぇよ?」
それは単なるウォーミングアップ。
言の葉の刃が飛ばした火花。それを心の内で焔と変えて、敵を討つ為の。
口の端歪めた互いの唯我独尊。そこに自分が倒れるという未来は微塵も描かれてなどいない。
勿論、背中合わせの、その笑みを向ける相手の、倒れるという未来も。
言葉悪くとも、そこには互いに繋がる確かな関係が横たわっていた。
「それじゃあ――」
「――開幕だ!」
動くは各々、好き勝手。
しかし、それが互いを補い合うことになるということを、彼らは最も理解するからこそ。
――動き出すと同時、カラリと賽子の転がる音が二人の耳に聞こえた気がした。
頭上をいつまでもバサバサと鬱陶しい。誰の断りを得て、飛んでいるというのだ。
侵略の瞳が空羽ばたくゴブリン達を視る。
そこには剣持つ者が居た。そこには弓引く者が居た。そこには魔術練り上げる者が居た。
だが、それらが何をしようと関係ない。
望が意思を持って視たのであれば、それは等しく同じ末路を迎えるのだから。
「そんじゃあまあ、まずは『墜ちろ』よ」
平野の空にゴロリゴロリと稲光。されど、その彩は紅。血の如き。
明らかに自然のそれとは異なる現象に、ゴブリン達の間へざわめきが起こる。
その間に盾でも翳せば、また違った結果があっただろうというのに。
――膨張。弾けて、轟音と共に紅が奔る。
降り注いだは紅の雷。
雨もかくやと降るそれは望の意思によって生じたものであり、飛行する翼を焼き切るための。
「Gya、GYAAaaaaa!?」
「そうそう。いつまでも空に居たら、喰われるだけだぜ?」
ぶすりぶすりと煙をあげて、ゴブリン達は正しく墜ちるように大地へと。
「――まあ、下に来たから喰われねぇとも限らないけどなァ」
だが、その逃げた先が安全であるとは誰も言ってはいないのだ。
それを証明するかのように、翔ぶが如しと駆け抜けた黒。
「いいアシストだと褒めてやろうじゃねェか!」
「あ゛? んな訳ねぇだろうが!」
わざわざと手の届く範囲にまで降りてきてくれたのだ。ならば、それを逃す道理もなし。
担いだ刃の長きを振るい、薙ぐは足元、草狩るように。
「I! GyuA、GrrrrAaaaa!」
「おおっと悪ィ、悪ィ。足を薙いだつもりだったが、お前らの足が短すぎて胴を薙いじまった」
口元に張り付いた嘲笑。さして悪いと思っていないことは明白。
ゴブリンがクロウの言葉を上手く解せずとも、それが自分達を嗤ったものであるということが伝わるには十二分の。
だから、ゴブリン達は怒りを露わとする。
空往く翼を奪ったことへの怒りを、それを嘲笑うかのような者への怒りを。
それがクロウの狙いでもあることも知らずして。
とはいえ、知っていたとしてもゴブリン達にその感情を、ひいてはこれから起こることを止められる筈もないのだけれど。
「朱の鳥の加護を受けし我が命ず。閉ざされし杜より集いし霊力にてカタチを得よ。遠つ神恵み給え」
括る言霊。応えるようにクロウの瞳の朱は一層と輝きを帯び、『それ』を現世へと招く呼び水となる。
それは聖なる獣。昇る陽の如き輝きをもって、悪なる感情を誅する者。
クロウの背後へと顕現したそれは、彼を慈悲深くその翼で包み込み、そして――。
「――我が敵を切り裂かん」
主の命より再びとその翼を空へと伸ばす。
だが、それはただ開放を示すものではない。攻撃の意図あってのもの。
ばさりと舞った羽根は鋭き鏃。飛び立ち、突き刺さる破魔の矢。
ゴブリン達の怒りを打ち消し、苦痛に染め上げるものであったのだ。
平野の風を塗り潰して、染め上げるはゴブリンの絶望そのもの。
望が翼を墜とし、クロウが更にと機動力を削ぎ落す。
言葉不要の、されど、意識せぬ連携がそこにはあった。
「これは俺の勝ちで確定になりそうだな!」
「馬鹿言ってんじゃねぇよ。今のは俺が譲ってやったからだろうが、ノーカンだ、ノーカン!」
「おっと、これがなきゃァ勝てる自信がねェってか?」
「んな! ハッ、いいぜ。仕方がねぇ、譲ってやるよ。その代わり、後で言い訳すんじゃねぇぞ!」
「そっちこそな!」
侃々諤々。言の葉の刃はまた戦場とは違う火花を散らし続ける。
されど、勝利が揺らがぬ確信は変わらず二人の胸に共有されるもの。
ならば、ここからが本番だ。どちらがより多くの首級をあげるかを。
そう。負けてしまっては明日の財布の行方が知れぬからこそ。
――紅雷が奔り、黒が猛る。
「急所だなんだっつっても、造り自体は人間と変わんねぇな」
「ってことは、脳天砕いて、心臓突きさしゃァ、お陀仏か」
「その辺、やっぱりか鱗が厚くなってるみたいだが」
「弱ェトコは見せたくねェモンなァ」
「――だが、まぁ、俺らなら問題ねぇだろ?」
「ははっ、間違いねェ」
互いの死角を潰し合い、気付けばいつの間にかの背中合わせ。
それは互いをフォローしあった結果なのであろうけれど、言葉で問えば否と返ってくることだろう。
あくまでも、相手の気付かぬ敵を討つことで撃破数を稼いでいるだけなのだ、と。
そして、焦げ、刎ね飛ぶはゴブリンばかり。
そこにヒトを喰らう隙などあろう筈もなく、ただ己こそが哀れな獲物であったのだと、首刎ねられた瞬間に自覚するのみ。
「――こいつで最後!」
いつからか振るう黒刃に絡みついていた、紅雷の焔。
天より落ち来る雷を玄夜叉へと纏わせたそれ。クロウの最期の一閃。
それが稲妻の尾を余韻と残して、盾も、鱗も、その抵抗すらも許さず断ち落としたのだ。
剣戟の音は遠く、平野に静寂がようやくと戻りくる。
――だが、それもほんのひと時の事。
「おっし、お疲れ! いやー、奢りで呑む酒が楽しみだぜ」
「ハ? 俺の方が多く倒してたわ」
「いーや、俺の方が多く殺ってたケド?」
「何言ってやがる。見ただろ、最後の一匹まで俺が仕留めるところをよォ!」
「俺の方も、杜鬼が突っ込む時に道拓くついでで仕留めてんだよ!」
いーや、俺が。いや、俺が。
討つべきゴブリンがいなくなったというのに、静寂を打ち破るは変わらぬ火花。
さてはて、どちらがより多くを討ったのか。
それは――。
「ほれ、言っただろうが。俺の方だってなァ」
「ぐぬ……やっぱり最初のが、か」
「おう、御馳走さん、だ」
カラカラと上機嫌に笑うクロウと、恨めし気にそれを見つめる望の、その二人の姿がなにより雄弁に語っていた。
大成功
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テイラー・フィードラ
そうか。此奴らもあの魔王と同じか。
ならば上等。叩き切るのみ!
空中より飛来してくるのであろう?遮蔽物も無くそのような姿、盾があろうと只の的である。
飛来する存在へと杖を向け詠唱。契約文も元より既知だ、足りんと言うならば己に溜まる血も魔に喰らわせ詠唱を省略し素早く唱えん。
異次元より現れし悪魔の剛腕よ。奴の動きを止めてみせよ。
さて、これで多少飲み動きは取れんとはいえ、奴らには鱗が纏っているか。
だが、それがどうした。
フォルティ!地を蹴り付け高く跳べ!奴らの首に届くまでだ!
足りんと言うならば俺もだ、鐙を力強く踏みつけ、小鬼共まで跳ばん。そして吸血した分の血すら消費し剛力を得、急所を盾ごと剣で貫き通そうか!
ヒトをまるで物のように扱う者達。
それはまるで、幾月か前にどこかで見たような光景。
「そうか。此奴らもあの魔王と同じか」
テイラー・フィードラ(未だ戴冠されぬ者・f23928)より響く声は地鳴りのように、重く、低く。
その声にゴブリン達が異変と気づき、テイラーの姿を認める。
だが、構うものか。
気付こうが、気付くまいが、ゴブリン達の行く末は既にテイラーの中で判じられているのだから。
「――ならば上等。叩き切るのみ!」
平野を吹き抜ける風をも塗りつぶす大音声。
びりびりと物理的な圧を伴ったそれは、ゴブリン達の肌を叩いて過る。
その衝撃は、実際にはよろめく程もない軽いもの。だと言うのに、ゴブリン達が感じたのは槌で頭を殴られたかのような。
ギャアギャアと喧しかった平野に、自然の音だけが響く。
「来ぬのか? 来ぬのなら、こちらからいくぞ」
「Gi! Grrrrrr!」
その沈黙を破ったのはまたしてもテイラーで、それにようやくとゴブリン達が自我を取り戻す。
そして、彼らは怒るのだ。
たかが声だけで圧倒されたという事実に、たかが一人のヒトに足踏みしたと言う事実に。
それが憤怒の声となり、彼らの思考を塗りつぶす。
先程までの萎縮など忘れたかのように、テイラー目掛けて突撃を開始するのだ。
だが、その突撃する群れの中で一匹だけ、まだ凍ったように動けなかったモノが居た。
それこそは大音声告げるテイラーの視線と不幸にも絡み合ってしまった一匹。
それはただただ震え、竦んだ身体を立て直す事叶わず、仲間の邪魔だという怒号と共に踏み、蹴られ、大地へと抱擁させられるのであった。
「そうだ。来るがいい」
テイラーの眼前に広がるゴブリンの波。それを追い越すように、矢と炎弾。
どちらを対処するべきか。
飛来物打ち払えば、その時を乗じて波が到達するだろう。
波に意識を割きすぎれば、不意の一撃を飛来物より貰うだろう。
ならば――。
「悪魔よ! そいつらの動きを止めろ!」
その二つを同時に止めるのみ。
近付き来るモノ達を指し示すは禍の杖。
ギョロリとまるで獲物を見定めるように杖の宝石が瞬けば、テイラーより抜け落ちるナニカの感触。
「いいだろう。命でも肉でも、喰らうがいい!」
それはきっと生命力という類のものだったのだろう。
だが、悪魔を使役する代償にそれを捧げるなど、もう慣れたもの。
かつて国を失った時から、テイラーのその身は既に幾度と摩耗を繰り返しているのだから。それでも諦めぬという信念を背負って。
そして、代償は正しく悪魔へと届いた。
――彼方よりの門を開け。契約はここになされ、その願いを聞き届けん。
テイラーの前、ゴブリン達との間にぽかりと空いた黒の孔。
それはまるで見ているだけで吸い込まれ、堕ちていきそうな深淵。
気を付けよ。その深淵と目を合わせてはいけない。目を合わせたが最後――。
「お前達も、その盾に捕らわれし者達と同じく囚人となるがいい!」
形持たぬ筈の深淵が胎動し、そこより伸び来るは異形の手。
ヒトでも、ゴブリンでもないそれは、無機物有機物を問わず、触れる全てをその場に縫い留める悪魔の。
不可思議な光景であった。
ゴブリンだけでなく、飛来する矢や炎弾すらもが空中でその身を留めているのだから。
そして、この場にて動けるは唯一絶対の――。
「――フォルティ! 地を蹴り、高く跳べ!」
戦場に君臨する王、テイラー・フィードラのみ。
その主が命じたのだ。ならば、その威光に応えぬ愛馬であろう筈もない。
フォルティはその屈強さを活かし、全身の筋肉をバネと代え、深淵をも越えて彼方の空へ主を送る。
「お前達に明日などやらぬ! 我が道の礎となるが、その定めと知れ!」
刃が――否、テイラーの手がゴブリンの顔面を掴み取る。
鱗あろうとも、その全てを包んでいる訳ではない。柔らかきところは必ずある。それは例えば目や口、その柔らかき部分。彼の手は、指は、掴んだままに容赦なくとそこを抉り抜く。まるで卵を鷲掴みにでもするかのように。
――流れ出すは紅。流れ込むは生気。
テイラーの身を満たすそれに、その身は更なる力を得る。
「――着地は、気をつけてな」
だが、まだ飛行の力がある訳ではない。
故に、彼はその愛馬たるを踏み台として、更なる高みへと。
「鱗も、盾も、この刃の前には脆きものと知るがいい!」
跳躍の刃は縫い留められたゴブリンへと更に届き、阻むモノなどないかのように終わりを齎す。
そして、その度、テイラーの身には生気が満ちて、満ちて、満ちて。
強化されたその身であれば、空に縫い留められた者達を足場とするも十分に可能。
テイラーは浮かぶゴブリンを、足場として駆けるのみ。
それは最早戦いなどでなく、王の沙汰による刑の執行。その様相を見せているのであった。
――皆殺しの平野。その地に静寂が戻っていく。
成功
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