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竜討つ夜半の攻城戦

#アックス&ウィザーズ

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●古城に潜む魔物たち
 廃棄されて久しい小さき古城。
 各所が破損し、生活基盤すらまま為らぬ城へ新たな主が戻ったのはここ最近。
 夜半にさまよう数多の影、それは漆黒の鎧に身を包み、闇を駆ける首無し騎士たち。
 朽ち果てはじめた古城に相応しい、悪魔の軍勢ともみえる一同は破損した見張り台、城壁などの補修をはじめ自らの拠点として作り変えていく。
 さらに、城を補修するだけにとどまらず。拠点として村々を襲い始めたのだ。
 一糸乱れぬ統率された動き、訓練された熟練の一団を思わせる彼らにとって、抵抗できる力を持たぬ村々より収奪するは濡れ紙を破るのと同義の難度。
 食い止めようとしようとした若者たちはまともな抵抗も出来ず打ち倒されれば、数多の資材が奪い取られていた。
 しかし、一同の襲撃は夜間のみ。
 ならば昼間に手を打てば、と一部の村人が城を目指せば、城の手前の渓谷にてワイバーンが襲撃、一瞬で蹴散らされる最悪の状況。
 数日の騒動の中、昼間はワイバーンが、夜間は騎士団が交互に動いていることが判明したが、それで何が変わろうか。

 ただひたすらに、夜間の襲撃に怯え。
 昼間、大空に響き渡る竜の咆哮を耳に、苦々しく地面を歩むことしか出来ないのだから。

●攻城作戦への誘い
「皆様、お集まりいただきありがとうございます。今回はアックス&ウィザーズ世界にて発生している事案についてのご案内です」
 切羽詰っている、どうしようもできない状況だが別段変わらず、クアド・ペントヘキシウム(バーチャルキャラクターの人形遣い・f09688)が猟兵達に状況説明を続けていく。
「敵戦力が駐在しているのは既に廃棄されて長い古城です。誰も管理せず、ただ朽ちていくだけの小さい城ではありましたがここにオブリビオンの一団が住み着いた、というわけです。
 また、この城に向かうルートには狭い渓谷しかありませんが、そこを通ろうとすれば城を根城にしたと思われるワイバーンが襲撃、通過が困難となっています。
 どうやら、昼間はワイバーンが飛び回って周囲を荒らし、夜になれば城に戻って、代わりに宵闇の騎士団がうろつき始める、という状況のようです」
 二種の魔物が同時に狭い城に存在、という異様な事態、しかしながら両者が敵対する事はなく、活動時間を互いに補い合う関係であるようだ。
 つまり、完全な上下関係ではなくただ単に互いを攻撃しあう意味がないというだけ。
 しかしながら、この関係性の希薄さが今回の攻撃で有効な点になることは確かである。
「ただ単に活動時間のズレから同一拠点にいますが、お互いに助け合うという意識はありません。ここがこの拠点の綻びといえるでしょう。
 そこで、この点を突いて攻略を実行します。
 昼間はワイバーンの巡回によって渓谷を越えるのが困難、夜間は各地に散らばっている宵闇の騎士団を全て見つけるのに多大な手間がかかりますので現実的ではありません。
 この両方を解決するのが、夕暮れワイバーンが引き上げると同時に渓谷を突破、騎士団が出撃を始める前、日没直後に此方から攻撃を仕掛ける作戦ですね」
 二種の魔物の活動時間、その境目とも言える逢魔時。
 この時間こそが絶好の好機となり、損害を受けず古城へ接近、そして各地へ騎士団が出撃する前に攻撃を仕掛けられるという。
「騎士団に攻撃を仕掛けた時に、ワイバーンの横槍は考えなくても良いですね。自分は寝床でゆっくり休む、圧倒的強者の余裕というやつでしょうか。
 その余裕なツラを拝む為には騎士団を殲滅し、城の奥へと進軍。連絡通路を経て本城より離れた場所にある小さな塔とそれを囲む開けた庭にまで行けば塔の上から姿を見せるでしょう。
 ワイバーンとの戦闘はそこからが本番ですので、皆さんはまず砦に潜入し今後、再利用されないように重要な見張り台などを破壊、無効化させつつ巡回中の騎士団を撃破。
 此方の動きに気付き臨戦態勢を整えてくれば破壊工作はそこそこに、騎士団の殲滅を行った後にワイバーンを目指す、という流れになりますね」
 淡々と、そしてしれっと厄介な作戦内容を説明するクアド。
 もっとも、厄介な戦いであるからこそ不安げに話せば実際戦場に挑む者の心に、不安を、恐怖を与えかねないことを思っての態度でもある。
「作戦内容はお分かりでしょうか? 準備が出来次第、皆様を現地へと転送します。
 多少厄介な戦いとはいえ、皆様が実力を発揮すれば決して不可能な戦いではないと思いますので、存分に力を振るってください」
 そこまでいって彼女は説明を打ち切り、転送の準備を開始。
 攻城、そして討竜という二つの厄介な仕事を抱えた戦いへと猟兵達を送り出すのであった。


紅葉茉莉
 こんにちは、紅葉茉莉です。
 OPをご覧頂きありがとうございます。
 今回はアックス&ウィザーズの世界での物語、城を攻め、守る兵団を打ち倒し。
 最奥に鎮座するドラゴンを討伐する、というある意味王道的な物語となっています。

 開始時の状況ですが夕刻、黄昏時ともいう逢魔時。
 闇の帳が下りる目前、城に到着しているという状況になります。

 城の構造ですが。
 東側に正門、城壁沿いに南側に向かうと小さな通用門と、入ればそこからすぐに城壁と一体型になった見張り台が存在。
 城壁沿いに北側へ向かうと途中で城壁が消滅、山と一体になった自然の防壁を利用している。
 削りだされて傾斜が急になって城壁の代わりをなしており、工夫せずに北側から行動を起こすのは困難。
 城の内部構造は単純、城壁内部に幾つか小部屋がある通路があり、中央の広場に複数個所から出ることが可能。
 広場から西側に進めば、高級将校などが暮らしたやや広い部屋や作戦会議などを行った部屋を持つ別棟が二つ。
 城の西側には連絡用通路があり、それを抜ければ開けた、既に手入れされずに荒れ始めた庭園とそれを見下ろす小さな塔。
 塔の最上部にワイバーンが寝泊りしている状況。

 となっています。
 如何なる攻め方で城の機能を奪いつつ、宵闇の騎士団との戦いにおける優位な状況を作るのか、は皆様次第。
 真正面から正々堂々と殴りあうのもよし、複数個所から同時に火を放つなどして焼き討ち、混乱を誘うのもアリでしょう。
 その点に縛りはなく、自由に作戦を実行していただければと思います。

 では、ここまで長文を読んでいただきありがとうございました。
 縁がありましたら、よろしくお願いします。
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第1章 冒険 『難攻不落の城』

POW   :    重要設備の破壊を行う

SPD   :    諜報活動により警備の隙や施設の弱点を調査

WIZ   :    罠や陽動により敵戦力を削る

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

寺内・美月
【POW?】
1,『準備砲撃『地獄雨』発動』を実行し、(軽く30分間)一個砲兵師団による砲撃の雨で城郭ごと敵の一部を吹き飛ばす。
2,『航空攻撃・空挺降下発動』を(砲撃終了後2分以内に)実行する。
 イ、航空攻撃による防護施設の完全破壊(バンカーバスターも使用)と敵の一部撃破を行う。
 ロ、空挺降下による敵部隊の分断・孤立化を行い、瓦礫等で敵の統制行動を阻害できるように障害を構築する。
3,『戦闘団召喚』を実行し、味方主力(自身と他の猟兵の方々)が突入前に攻撃もしくは包囲されないように突撃と援護を行う。


ワズラ・ウルスラグナ
共闘、いや共生か。
厄介だが俺にしてみれば好都合だ。
城攻め、集団戦、飛竜落としと、どの戦いも楽しませて貰おう。

先ずは城攻め、やる事は火責めだな。
味方を巻き込まない様、用いるのは何時でも消せる地獄の炎だ。
怪力とブレイズフレイムを使い突破口を作りたいが、無理そうなら飛行して入ろう。
火を放つのは情報に有った要所の他、火が回りそうな木造箇所や庭園だな。流石に城壁を焼くのは手古摺りそうだ。
敵が現れても積極的には応戦しない。囮になるのは良いが。
炎は灯りとして続く夜戦の助けになれば幸いだ。片っ端から破壊し、燃やしていこう。火が足りなければ戦獄龍焔珠も使うぞ。
最低限味方の邪魔はしない様にな。


グルクトゥラ・ウォータンク
【SPD】による調査活動

攻城戦ならわしに任せろー!(バリバリとマジックテープの工具ポケットを開ける)
戦なら情報と時間は価千金、手早く情報を集めて攻撃を開始するかの。

電脳妖精を飛ばして城内構造、敵の分布について【情報収集】しつつ、ガジェットボールズによる【罠使い】と【おびき寄せ】で陽動班のサポートも行うぞい。多数の電脳妖精とガジェットボールズの操作に専念するため、自分は【トンネル掘り】で戦場から少し離れた場所に穴掘って隠れようかの。状況次第でボールズを自律行動させてガトリングガンでの【援護射撃】も考えておる。

おお、段々テンション上がってきたぞい。爆薬とか仕込みたくなってきたのう!ダメかの?


クリスティーナ・ツァルリーノ
罪なき村々の人々を虐めるなんで……懲らしめてあげないといけませんわね!
UC【召喚!ブラック☆うさぴょん!】でお友達の黒兎を召喚。敵地へと侵入させて内部の情報や巡回ルートを調べます。そして、私自身も見つからないように侵入。
巡回中の方から油断している方や人数の少ない方を狙って【魔剣・ブラックラビットソード】で強襲しますわ!
警備の薄い所を突かせていただきますの!


サラ・ノアール
丁度良い場所があったからオブリビオンが住んで
面倒な場所になった。という事でいいのよね?

廃棄されてた場所なら壊しても良し!
という事で真っ向からぶっ壊しに向かうわよー!
鎖神昇華で南側の通用門をこじ開けて施設を壊しながら進む・・・
と考えているけど理性がなくなっちゃうのよねー
危機感が無くなるわけじゃないから危なくなったら一旦逃げましょうか
他の猟兵を傷つけたいわけじゃないし。

ま、止められるものなら止めてみせなさいよ?


イデア・ファンタジア
空想現界『空の白鯨』で宙を泳いで、北側から城の中に音もなく潜入しちゃうよ。
見張り台にさえ気を付ければ、こんなの軽い軽い!
必要なら他の猟兵達にも同じように泳げるよう適用させるね。

潜入した後は『最果ての世界壁』で二つの別棟の出入り口――扉だけじゃなくて窓もね――を黒く塗り潰して塞いじゃうよ。
これで中の騎士団はすぐには出て来れないはず。
可能なら一階の壁だけでもぐるっと全部塗っとく!壁を壊して出ようとしても無駄だからね!


イデアール・モラクス
クク…アーハッハッハ!
私に城を攻略しろだと?
これはイイ、最高だ、城1つを破壊出来るなんて滾るじゃないか!

・行動
城壁、見張り台、北側の山を利用した斜面と防壁…城の防衛機構の尽くを破壊し更地に変えてやる。
「破壊と蹂躙こそ我が人生…さぁ愉しもうか!」
『高速詠唱』『全力魔法』で【隕石招来】を行使、目標を跡形も無く粉砕してやる。
1つ目標を破壊したらその上に立ち、戦闘力を上げ再び隕石招来で次を破壊…これを繰り返す事で城を城足らしめる施設、設備、機構を徹底的に破壊する。
「そらそら、丸裸にしてやるからなぁ…乙女の泣き叫ぶがいい!アーハッハッハ!」
混乱を起こし、城を崩し、全ては次なる戦いの有利を磐石とする為に。



 夕暮れ、ワイバーンが根城へ飛び去る姿を追いかけつつ猟兵達が渓谷を駆け抜ける。
 昼夜を問わずに脅威を与える古城であるが、互いを補完しあう活動時間、その境目たる綻びより突き崩すのだ。
 城壁前についた一同は早速、各々の手段にて攻城を開始する。
「攻城戦ならわしに任せろー!」
 バリバリ、と場合によってはやめて! と叫びたくなるような、マジックテープの工具ポケットを開封、様々な物品を引き出したのはグルクトゥラ・ウォータンク(サイバー×スチーム×ファンタジー・f07586)
 電脳妖精を展開、内部構造を探りつつ自身は離れた場所に穴を掘っての潜伏準備、偵察と情報収集、さらには数多のガジェットポールズの兵団を召喚すれば突入、陽動班の援護も行える状況に。
「偵察なら私にもお任せですわ。御出でなさい私のお友達♪ お手伝いしてくださいなー♪」
 同時に索敵を開始するのはクリスティーナ・ツァルリーノ(ダンピールのマジックナイト・f02905)
 キュートなもこふわ黒兎、感覚共有という点を生かし、彼女と別方向から探る事で内部構造を知るには有効な力を発揮するはずだ。
「っと、潜入組みは私以外にもいるのね。それじゃファンタジアを今ここに、その姿を描き出そう!君の名は――ディープダイバー!」
 同時に潜入準備を済ませるイデア・ファンタジア(理想も空想も描き出す・f04404)
 7つの絵筆を巧みに使い、虚空に描くは全てが水没した、水に覆われた世界そのもの。
 自分だけでなく忍び込む形をとったクリスティーナにも力を付与、空中遊泳という城郭乗り越え裏を取る、そんな力を得たままに。
 一団の中、唯一北側からの潜入を試みるイデアは砲撃、強襲行う面々よりその旨を聞き、時間を合わせ妨害工作を行う為に別行動へと移っていた。
「南方は任せてもらおう。火責めの準備はしておく」
「廃棄されてた場所ならぶっ壊しても良し! 真っ向からぶっ壊しに行くけど危ないと思ったら逃げてよね」
 ワズラ・ウルスラグナ(戦獄龍・f00245)とサラ・ノアール(明るく繋がれた鎖・f03336)が言葉を発し、南方へ移動したのはその直後。
 火責め、破壊工作と力押しで南方、通用門から攻め立てる両者は互いの技を確認しあい、相互に傷つけることがないように位置取り、タイミングを計って行動するだろう。
 そんな両者を見送って、攻撃準備を整える者が二人居た。
 寺内・美月(地獄雨の火力調整所・f02790)とイデアール・モラクス(暴虐の魔女・f04845)の二人である。
「此方の砲撃は何時でも可能、そちらはどうです?」
「クク……アーッハッハッハ。準備もなにも、破壊できると思えば既に滾って堪らんよ。そちらも愉しませてくれよな?」
 後方に砲兵師団を既に展開、一斉砲撃の準備を整えた美月が問えば、それは愚問と此方もいつでも攻撃できると魔力を高めるイデアール。
 既に日は大きく傾き、夜の帳が東の空より下りている。
 夜闇を背負い隠れ秘した砲兵見遣り、自身も闇へと同化した美月は右手を掲げ号令を。
「コード地獄雨発動、火力で敵を蹴散らせ」
 その言葉、まっていたとばかりに兵団が射角を調整、城壁目掛け内部の敵に当たろうが外れようが構わない、数で全てを蹂躙せよと一斉砲撃。
 空に響き、地面揺らせる絶え間ない砲撃は其処にいれば耳をやってしまいかねない大音量。鳴り続ければその数に応じて東側、正門を中心に城壁形成する石壁崩れ、その堅牢な守りを砕いていく。
『グギガッ、ナンダ、テキ!?』
 今までは自分達が襲い、奪うだけの存在だった騎士団。
 城壁内部にて巡回、出撃準備を整えていたある兵士は異変に気付き城壁の外へ飛び出そうと窓へと足をかけてはいたが、その試みは窓へと広がる漆黒の壁にてあえなく阻止されていた。
『デレヌ、ダト!? ナニガ……ガハッ!』
 窓からの脱出不可能、漆黒たる何か、に防がれ狼狽すれば背中に加わる鋭い痛み。
 困惑しながら鎧の前面、胸部に出来た顔にある、醜悪かつ威圧的な目を下へと向ければそこに映るは腹部より突き出し、ルーン文字が輝く刀身。
「今まで何もなかったからと、油断しすぎですわ。警備が甘すぎますわね」
 最後に聞こえた言葉は、自分たちの甘さを嘲笑う少女の声。
 兵士が見た刀身はそのまま上部へせり上がり右目ごと断ち切れば、無防備な背中からの不意打ち受けた兵士は力なく地面に倒れ、最後に立つのは真っ先に潜入果たし、警備の虚を突いたクリスティーナだけである。
「やるわね、ところで巡回してる兵士はまだいるの?」
 毛先を黒く染め上げた絵筆を回し、物陰から姿を現しクリスティーナに問いかけるはイデア。
「ここから先にはまだ、といった所ですわ。ですが、これだけ派手にやっていればすぐに来るかと思いますわね」
 先の脱出失敗はイデアが用いた絵筆の力、概念ごと空間を塗りつぶし壁を生じ、窓を潰して相手の動きを封じた搦め手。
 既に北側から空中泳いで潜入した彼女は東側の城壁の殆どにこの仕掛けを講じており、内部から脱出する事はほぼ不可能になっていたのだ。
 更に次なる一手として彼女は南側へ同じ技の展開を準備、退路を断っての砲撃にて城壁、そして城外へ打って出る兵士を砲撃にて殲滅する手筈なのだ。
「オッケー、それじゃこのまま一気に塗りつぶしちゃうよ……って、あれは?」
 絵筆を握り、次なる行動に移ろうとしたイデア、クリスティーナと向かい合い話していた彼女が見たのは、クリスティーナの後方にて激しく上下に運動し此方に何かを伝えるグルクトゥラの電脳妖精。
「あんなに動く、という事は。敵が来た、という事ですわね。ここは引き受けますので退路遮断をお願いしますわ」
 激しい動きで危険を通知、電脳妖精が放った警告に反応して二人は即座に行動開始。
 イデアが南方へ走れば、それと同時に妖精が飛ぶ方向に黒き兎が跳ねていく。
 最後に残ったクリスティアーナは物陰に潜み、次なる不意打ちに備えていた。

 同刻、南方通用門。
 砲撃の轟音に紛れ、通用門が力任せにこじ開けられる。
「うあああああああっっ!」
 獣の如き咆哮響かせ、全身に鎖纏わす魔人が一人。
 それは理性をかなぐり捨てて、圧倒的な膂力を得たサラである。
 そのまま城壁内部へ侵入すれば、砲撃音に反応、通用門へと向かう兵士と鉢合わせ。
 侵入者を認めた兵士がハンマー振り上げ迎撃するも、一拍遅い。
 振り上げの時には既にサラが拳の届く間合いに近づき、そのまま手にしたチェーンを展開。
 フックを兵士のハンマーに引っ掛け、脇を駆け抜け力任せに引っぱれば兵士はよろめき、そしてそのまま得物を手放す。
 勢いままに尻餅つけば、既に反転したサラがチェーンとつないだアサルトメイスを振り上げ首を失い、闇が覗く胸部へ一撃。
 ぐしゃり、と鈍いが確かな手ごたえ。それと同時に兵士は体をぐらりと揺らし、なんとか倒れまいと腕で体を支えるがそれを許すサラではない。
「ふぅぅ、ぁあああああ!」
 咆哮、そして繰り出された蹴りからのメイスの連打。
 姿勢を崩した兵士はそのまま物言わぬ鉄屑晒せば、次なる得物を求め彼女は更に進軍する。
「先に聞いていたが、おっかないものだな。さて、俺は俺で仕事をこなすか」
 暴れ狂い、突撃していったサラを見送り不敵に笑うワズラ。
 開かれた門より堂々と侵入すれば、そのまま自身の体を切り裂き噴出す焔。
 そのまま内部に散乱する数々の物品に放火、続けて見張り台を焼き尽くそうかと歩を進めるが、それより早く城壁南側、見張り台に衝撃が走っていた。
「我招く無窮の厄災に慈悲は無く、汝に救いと希望の一切も無し……メテオストライク!」
 虚空に浮かぶ魔法陣、それを生み出し操るイデアール。
 放たれた巨大隕石が見張り台に直撃し、屋根を含めた上部4割を兵士ごと吹き飛ばした衝撃であった。
「そらそら、丸裸にしてやるからなぁ……乙女の如く泣き叫ぶがいい!アーハッハッハ!」
 ひび割れ破損した隙間、そこからワズラが様子をみれば、そこに見えるは東側、正門付近が変貌した瓦礫の山。
 その頂点に立ち、まるで悪役の如き高笑いと共に高速詠唱、続けざまに隕石を見張り台へと降らせるイデアールの姿があった。
 既に瓦礫と変化させるなら、自分はここを燃やす必要はないと判断、彼は即座に目標を詰め所へと切り替え走り出していた。

「作戦に変更なし、地上を一掃したら降下開始」
 砲撃を終え、次なる一手として上空へ地上降下、制圧を目的とした大隊の霊を召喚、航空機より次々と降り立つように指示を出す美月。
 既に正門付近は見る影もなく崩れ、敵戦力の分断へと彼は戦術を切り替える。
「もう城壁は意味がないようじゃな。それじゃ、わしもボールズを前に出すぞい」
 砲撃に加え、見張り台を破壊していた隕石と広範囲への破壊攻撃が潤沢にあったがために隠れる、罠を使っておびき寄せる必要がなくなったグルクトゥラ。
 ならば次の方針と、かれは 数多のボールズへと指示を出しボールズたちはガトリングガンを連射しながら崩れ落ちた城壁を突破し、城内へとなだれ込む。
「わっはっは、もうここまで派手に壊したんじゃ、ちょっとぐらい爆薬で吹き飛ばしても良いじゃろう?」
 爆破するかどうか、最初は少し逡巡していた彼ではあったがこうも皆が派手に破壊していれば自分が控えるのは野暮というもの。
 瓦礫が残ると面倒とばかりに、崩れた城壁の各所へ爆薬を設置し破壊、移動に必要な空白地帯を生み出していた。

「城壁を焼くのは手古摺りそうだったが、焼く以前の問題だったな」
 後方、崩れ落ちる城壁を背に将校滞在用の別棟に火をかけるワズラの姿。
 隣の別棟には既にサラが飛び込むのを確認済み、恐らく理性を無くした彼女は手当たりしだい、兵士ごと内部を破壊していることだろう。
『ギィイイ、ナニガオコッテイルゥ!』
 人ならざる兵士の叫び、燃え盛る別棟から飛び出した兵士は眼前にたつワズラを認めハンマー構え相対す。
「フン、状況把握もできんとは。ちょうど良い、一緒に燃やしてやろう」
 怒気孕み、胸部に生じた顔にてにらむ兵士を前に涼しげに。
 更に相手を挑発するようにワズラが軽くあしらえば、殺してやると飛び出す兵士の姿。
 しかし、ワズラは積極的に打ち合わず、手にした鉄塊剣。常に自分と在り続け、地獄を共にす龍神の剣にて相手の打撃をいなしながら後退すれば、彼は囮としての役割を担うことと為る。
 敵を誘ったその間に、暴れ狂ったサラが別棟より離脱。ワズラに兵士が釣られたことで、本来ならばサラを逃さず別棟内部の兵士と挟撃できたはずの位置取りは崩れ去り、その間に暴れまわって過度の負担を強いられたサラは安全に後退していたのだ。
『グギギ……キサマラ、ユルサ……ガグッ!?』
「よっ……と、お待たせっ。退路はバッチリ塞いできたから、今頃瓦礫の下でもがいてるんじゃないかな?」
 怒りを露わに、得物を振り上げワズラに迫っていた兵士。
 だがしかし、それより早く空を泳いで飛来したイデアが急降下、兵士の顔面踏み付け反動生かして空中にて一回転。
 軽やかに着地を決めれば崩落前に城壁の出入り口の殆どを塞いで来たと伝えれば、なるほど敵兵の数が少ない事にも合点がいく。
 東方よりは多数の兵士を前面に押し立てつつ進軍する美月、そして同じくボールズを率いるグルクトゥラが進軍すれば、美月の指揮する兵団が二手に別れ進路を作る。
 南方には理性を取り戻したサラと崩落していた城壁から既に脱出、幾体かの兵士を血祭りに上げたクリスティーナが合流を果たしている。
 そして最後にもう一人。
 隕石が幾度も降り注ぎ、跡形もなく崩れ去った見張り台の残骸。
 その上に立ち更なる破壊をもたらそうと、今だ形残す別棟狙い魔法陣を練り上げるイデアールの姿がある。

 だがしかし、宵闇の騎士団もオブリビオン、そう簡単に殲滅される軍勢ではない。
 各所の瓦礫が幾度もうごめき、石くれ押しのけ幾つもの甲冑が姿を現していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『宵闇の騎士団』

POW   :    闇討ち
【自身以外に意識】を向けた対象に、【死角からの不意打ち】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD   :    追討ち
【周囲に潜ませていた多数の伏兵】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
WIZ   :    返討ち
いま戦っている対象に有効な【武器を持った多数の援軍】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 夜の帳は既に降り、辺りは闇へと包まれる。
 だが、篝火を焚いたが如く、古城の各所は燃え上がり猟兵と相対する宵闇の騎士団とを照らし出す。
 古城を崩壊させ、攻め入った猟兵。
 拠点を破壊され、幾人もの仲間を失いつつも瓦礫の中から這い出してきた騎士団。
 両者の戦いは、更に激しさを増していく……。
イデアール・モラクス
アッハッハ!騎士団のおでましかぁ?
ならば私も呼ばせて貰おうか、哀れにも我が胎内に欲望を放ち縛られた軍勢を!

・行動
『高速詠唱』『全力魔法』で愛欲の軍勢を召喚し、無数のしもべ達を呼び寄せる。
騎士、魔術師、神官…私が出会い、身体を重ねた数多の男達で構成されたその軍勢は騎士達が槍を構えて突撃し敵を『串刺し』に、後衛の魔術師と神官が『属性攻撃』で『全力魔法』を放って敵軍を瓦解させる。
「気張れ気張れ!戦功第一の者には褒美をやるぞ、一晩私の身体を好きに出来る権利だ!」
鼓舞しながら私も『高速詠唱』と『属性攻撃』で構築した雷撃の魔術式を『全力魔法』で放ち、敵軍を微塵に砕く。
「アッハッハ!アーハッハッハ!」


グルクトゥラ・ウォータンク
うむ、よか燃えごろじゃな。
ここからは力押しになってくるのう。数で負けてるのはどうにも落ち着かんわい。

エレクトロレギオンをメインに使用、電脳妖精を飛び乗らせた飛行ドローン達に、瓦礫から這い出してきたり慌てて出てきた準備の整っていない奴らを【先制攻撃】と【範囲攻撃】で攻撃させていくぞい。脆いドローンも使いよう、反撃させなければよい。

ガジェットボールズは【罠使い】や【援護射撃】、【おびき寄せ】で仲間が暴れやすいように支援させるぞい。折角ファーストアタックの勢いが残っとるんじゃ、相手が冷静になる前に一気呵成に攻め混むぞい。



「アッハッハ! 騎士団のおでましかぁ?
 ならば私も呼ばせて貰おうか、哀れにも我が胎内に欲望を放ち縛られた軍勢を!」
 崩落した見張り台の残骸、その上に立つイデアールの笑いが木霊せば、組んだ腕を大げさに広げ高らかに宣言を。
 さすれば瓦礫の山の下、空間歪みイビツな球形が現れればそれは徐々に人のような形をなし、同様の歪みが多量にその姿を見せていた。
「愛しき下僕達よ……あの日の代償を支払う時が来たぞ。出でよ、ルストレギオン!」
 口元三日月に歪めれば、脳裏に過ぎるはかつての逢瀬。
 瞳を閉じれば騎士、魔術師、神官、様々な男の顔が浮かんでは消え、再び瞳を開けたのならば、多量の歪みはたった今脳裏を過ぎった男たちの姿を成す。
「気張れ気張れ! 戦功第一の者には褒美をやるぞ、一晩私の身体を好きに出来る権利だ!」
「「ウォォオオオオ!」」
 生じた霊への宣言、それは勲功第一の者へ与えられるこの上なき褒賞。
 その褒賞、召喚者よりの最大の賜物が得れると聞いて霊たちの士気は天を突かんとするほど多いに高まり、全員が猛き叫びを上げて行軍を開始する。
 重装備の騎士団が槍を携え一気に突撃、されどその進軍をこちらも重武装、堅牢な鎧と生み出した長槍構えた宵闇の騎士団がガッチリと受け止め数、力の上では互角となる。
 ならばと続けざまに魔術師、神官が前線支える敵騎士団へと数多の属性持つ魔法攻撃、炎が、竜巻が、氷塊が襲い掛かるがそれでも倒しきり、自軍騎士団が前線を完全に押し上げるには至らない。
「押し切れぬようじゃの。ならば此方も援護するぞい、ボールズ、支援じゃ!」
 戦線の膠着は先制攻撃の勢いを殺ぎ、相手に立て直しの時間を与えかねないと踏んでいたグルクトゥラ。
 現状の数同士の戦いでは押し切れぬと判断、即座に進軍していたボールズの標的を騎士団同士の戦場に切り替えれば、距離をつめつつガトリングの一斉発射。
 流石に正面の槍騎士、頭上よりの魔法、さらには側面よりの銃撃には耐え切れず一人、また一人と宵闇の騎士団の数は減るがそれでも抵抗するのがオブリビオンの脅威。
 一体の宵闇の騎士が銃弾を真正面から受けつつもボールズへと接近、ガトリングの取り回しが難しい至近距離にてウォーハンマーでの打撃を加え、数機のボールズの援護を無効化させていく。
「むぅ、これ以上近寄らせてはいかんな、飛行ドローン、標的変更じゃ」
 ボールズの射撃を止める騎士、それに追従する動きを見せた他の騎士狙い、グルクトゥラは多量の小型機械兵器を召喚。
 瓦礫より這い出し始めた騎士団への攻撃に最低限の数だけ回し、残りの飛行ドローンには電脳妖精を操縦者として騎乗させ騎士団狙って銃撃開始。
 倒しきれずとも反撃さえされなければ十分と踏んだ銃撃、対抗する兵団は盾もつ援軍を召喚し鉄の壁を形成しての強引な前進を。
 だが、銃撃を避けて密集陣形、防御を高めてしまえばそれは別のリスクを背負う。
「アッハッハ! アーハッハッハ!」
 再び響いた高笑い、視線を移せば見張り台の残骸より駆け下りながら両の手首を眼前で交差させつつ魔力を練り上げるイデアール。
 組んだ手よりバチバチと火花が生ずば全力を出す準備が整ったに等しき合図か。
 そのまま両手を突き出せば、その手から放たれたのは強烈な電撃の奔流。
 密集していた兵団に回避する時間はなく、凄まじき光がその輝きを無くした後に残っていたのは、無残にも焼け焦げ、各所より炎を上げる宵闇の騎士団の残骸、そして奔流が撫でた先の瓦礫も同様に燃え上がる。
「ほむ、凄まじい火力じゃな。敵も城も、纏めてよか燃えごろじゃな」
 強烈な一撃、目を丸くしながらその結果を見届けたグルクトゥラが満足げに頷けば、自身は大型ガトリングを抱え込みつつ標的変更、炎上していた詰め所から燃えつつでてくる騎士団員を逃がさぬと発砲開始。
 束ねられた砲身が回転する駆動音、一拍おいてから全身に加わる衝撃と共に絶え間なきマズルフラッシュ、そして同数の銃弾が放たれる。
 この銃撃だけで倒せずとも、自身が、そして仲間が生み出した機械の、霊体の集団による波状攻撃で押さえ込めれば更に仲間が一気呵成に攻め立てる起点となる。
 数の力で相手が立ち直るのを阻害する、その効果を十二分に感じつつ魔術と銃火の協演が続いていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

クリスティーナ・ツァルリーノ
【トリニティ・エンハンス】でパワーをアップして敵を薙ぎ払いますわ!
自身以外に意識を向けた対象に不意打ちしようとするなら……自分の相手以外は仲間の猟兵にお任せして、目の前の相手に集中して戦えばよいのです。
相手が一人じゃないように、私達も一人ではないのですから!
さあ、私の【魔剣・ブラックラビットソード】の錆にしてあげます!何人でもかかってくるといいですわ!


サラ・ノアール
ふー。皆のフォローのおかげで暴れてる間も大きな怪我なく後退できたわ!感謝しないとね!

今度は私が援護する番よ。
ダッシュ、逃げ足、見切り
第六感で騎士団を引っ掻き回すわ。
相手もなかなかトリッキーな攻撃を仕掛けてくるみたいだけど私の天の邪鬼の鎖も死角から襲いかかる!メイスの鎧砕きとチェーンウィップのなぎ払いも使って暴れるわよー!

一緒に連携出来そうな猟兵が居たらコミュ力を駆使して合わせる感じでよろしく!


イデア・ファンタジア
『空色の空』で雷を落として攻撃するんだけど、相性がっ、悪い、わねっ……!
死角から不意を打ってくる敵に、見つけづらい伏兵。
視線が通ってないと攻撃できない『空色の空』じゃあちょっとね。
けっこうピンチかも?
……あんまり使いたくないけどしょうがないわね。
ネクロオーブ『黒のポラリス』を媒体に、リザレクト・オブリビオンで死霊を召喚するよ。
さぁ、本当の騎士ってものを見せてやりなさい。
私は下がって伏兵と弓矢なんかの遠距離攻撃を警戒しとくね。


寺内・美月
外で召喚した霊を率いる。
・先に降下した大隊に分断と撹乱を行わせつつ、自らは直卒の一個歩兵中隊を率いて突入。
・奇襲対策で常に四人一組で行動させ、一体の敵につき一組で相手をさせる。
・増援対策で此方も後方で一個連隊の霊を待機させ、増援が現れ次第前線に投入する。
・自らは『完全管制制圧射撃』にて敵の射程外から攻撃を加え、一体ずつ確実に撃破する。



「敵の分断は出来ていますわね。ではっ!」
 激しい銃火と、降り注ぐ魔法にて組織だった抵抗を封じられた騎士団目掛けクリスティーナが駆けていく。
 手にしたルーンソードへと炎の魔力を宿していけば、刀身が赤く燃え上がりつつ光を放ち、孤立した敵へ力任せになぎ払い。
 咄嗟に翳したウォーハンマー、柄で刀身受け止めれば甲高き金属音と共に両者の手には強い衝撃。
 一旦剣を引いて大きく振りかぶり、大上段からの振り下ろし。
 剣とハンマー、取り回しの差がここで出る。
 頭上に翳して防御を試みた騎士ではあったがほんの僅かに間に合わず。
 胸部に出来た顔の左半分、目の辺りより真下に伸びた傷が焼け爛れ、思わず後退した所へ追加の刺突。
「グガッ、ハ……」
 零れた言葉は断末魔、無念の表情を胸部の顔が浮かべれば、その口に突き刺さっていたブラックラビットソード。
 黒兎の装飾が、一瞬笑ったかのように錯覚する見事な襲撃。
「さあ、次に私の【魔剣・ブラックラビットソード】の錆にされたいのはどなたです!? 何人でもかかってくるといいですわ!」
 高らかに声を上げ次なる標的を見定めるクリスティーナ。
 しかし、騎士団も黙ってやられているわけではない。
「グギアァアアア!」
 雄叫び上げて周囲の残骸から飛び出す兵士、その数3。
 突き出された剣の刀身へ、自身の得物を打ち据え軌道を逸らし。
 振り下ろされたハンマーの打撃を真横に飛んで何とかかわすが流石にそこまで。
「ぐっ、やってくれますわね! けど!」
 突き出された槍、切っ先かわすもそのまま真横になぎ払われれば回避も防御も間に合わず。
 柄にしこたま打ち据えられて吹き飛ばされるクリスティーナであったが、その目に宿る意思は折れず。
 複数の兵士が一気に押し切ろうと飛び掛るが、決して彼女は、猟兵は一人で戦っているのではない。
「今度は私が援護する番よ!」
 クリスティーナを狙い飛び掛る騎士団、その武具の切っ先が届くより早く接敵しどてっ腹に蹴りを繰り出すサラ。
 突撃の勢いそのままに、次の騎士にメイスの殴打をお見舞いしつつ横っ飛び。
 二体の騎士の攻撃を食い止めたが故に出来た余裕、その機を逃さずクリスティーナは自身の得物で敵の攻撃をガードしながら体勢を整える。
「これで3対2ね、ちゃっちゃと同数まで減らすとしますか」
「助かりましたわ、死角を作らず注意を逸らさず、ですわね」
 言葉を掛け合う二人、戦闘スタイルはまったく違うが敵の不意打ちを防ぐという方向では一致。
 クリスティーナと背中を庇いあう様に立つサラが跳ね、構えたメイスと振りかざした騎士のハンマーが激しく衝突。
 互いに武器引き、騎士はそのまま、サラは目線を右に向ければ剣構えた騎士が袈裟懸けに振り下ろすのを打ち払い。
 3体目の騎士が別方向、クリスティーナと相対するのを確認すれば前方へダッシュ、そして騎士の脇をすり抜け方向転換。
 追いかけてきた剣戟、打撃をメイスで打ち据え二合、激しき火花を散らしつつ打ち合えば後方へのバックステップ。
「そぉおおりゃ!!」
 気合を込めてメイスより伸びた鎖を左手に持ち、力任せに振り上げる。
 地面を薙ぎつつ走るフック、その軌道を騎士は体をそらして避けていくがそう簡単に回避させるつもりは勿論無い。
「少しでも気を逸らせば襲いかかるわよ?」
 ふっと微笑み指を向ければ鎖の軌道が大きく変化。
 生きた蛇が鎌首もたげ、獲物に襲い掛かるが如くフックが急に浮き上がり、そして騎士へと叩きつけられる。
「ガッ、バカナッ!?」
 ありえぬ軌道、その一撃。
 困惑した騎士へ逃がさぬとばかりに飛び掛り胸部装甲ごと、メイスにて殴り潰せば派手に吹き飛ぶ無様な騎士。
 仲間の危機にもう一体の騎士が、攻撃の為に視線を逸らしたサラ狙い不意打ちしかけるべく飛び出すがそれより早く、別の騎士が突撃して宵闇の騎士を弾き飛ばしていた。
「ガフッ、ナニモノッ!?」
 激しく吹き飛び地面を転がるも、力任せに腕で地面を押して強引に跳ね起きた騎士。
 にらみを利かせたその先には、首持つ騎士、しかしながらこの世のものではない。
 それは命を失いつつも再び姿を見せた死霊の騎士である。
「さぁ、本当の騎士ってものを見せてやりなさい」
 騎士のマスター、それは虚空に浮かぶ漆黒のネクロオーブにてこの死霊騎士を呼び出したイデアであった。
 その指示に従い構えた剣を二振り。
 虚空を切った剣戟は鋭い風音たてれば音に反応してか、騎士を援護すべく死霊蛇竜が地面を這って姿を現し、数的優位を作り出す。
 そのまま切り込む死霊騎士、応じる宵闇の騎士との激しき剣舞。
 互いに一歩も引かず、金属音と火花を散らし打ち合うが蛇竜が拮抗破るべく宵闇の騎士へと襲い掛かれば二方向からの攻撃には対応できず。
 斬撃、噛み付きに襲われ、蛇竜にくわえ持ち上げられれば、虚空にてむなしく四肢をばたつかせる宵闇の騎士。
「やれやれ、空色の空で雷を落として攻撃する予定だったけど、流石に相性が、ね?」
 持ち上げられた騎士を見上げつつ周辺警戒を怠らないイデア。
 死角からの不意打ちに多量の伏兵、援軍と視認できねば効果が出せぬユーベルコード、相性の悪すぎる相手だったが故の策。
 しかしながら無理に得意な攻撃手段に拘らず、機転を利かせてこの場に適した戦術を取ることこそ重要な戦い方であり、仲間を助ける事となる。
 ピンチになりかねない戦術から即座に切り替えつつも闇の中を凝視すれば、うごめく不審な影を彼女は見逃さず。
「! きた、わねっ……! 数は8、一気に出してきたわよ!」
 飛び出す騎士団の総数を違わず確認、仲間へと周知しながらも自身は戦えぬ為に敵との距離をとっていく。
 出し惜しみせず一気に戦力を繰り出し、戦況の打開を図ったのだろうがそれを是とする猟兵など一人もいない。
「大隊は予定通り伏兵を警戒せよ! 直卒の部隊は俺に続け!」
 突撃させた軍団に指示を出しつつ自身は少数の霊体を付き従え美月が駆ける。
 自身が戦うことは出来ぬユーベルコードの制限、それの為に大隊を積極的に戦闘させることは出来ないが伏兵に備えての警戒要員、一定量の霊体を後方に控えさせ予備隊として位置づけ。
 更なる敵援軍が召喚された場合に備えて自身は現状の敵を各個撃破するべく行動開始。
「前方の敵に火力集中、敵の行動を封じ込め」
 直卒部隊を周囲に待機、敵援軍出現時の護衛として自身は所有する拳銃、自動小銃、狙撃銃、機関銃、追撃砲とあらゆる火器を大量複製。
 騎士一体に対しては過剰ともいえる火力を一気に放出していけば、一人、また一人と騎士たちが倒れていく。
 ならば奥の手と倒れ逝く騎士団たちが残る兵士を呼び出すも、そうなれば警戒していた予備兵力の投入だ。
「敵増援を確認、各自、予定通り突入せよ」
 自身の攻撃を中断、即座に霊体を投入する美月。
 過剰な火砲とは打って変わって、個々の所有する銃器のみだが数に任せた突撃により敵援軍は再度分断。
 残る猟兵達の攻撃も相まって呼び出された騎士は加速度的にその数を減らしていき、最後の一人を打ち倒すまでにそう時間は掛からなかった。
 ここに、古城の崩落と騎士団の壊滅は完了。しかしながら猟兵たちには最後の懸念、古城を根城とするワイバーン討伐が残っている。
 各所の残骸を手分けして確認、伏兵がもう潜んでいないことを確かめた一同は連絡通路を駆け抜け竜まつ庭園向けて歩を進めていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『ワイバーン』

POW   :    ワイバーンダイブ
【急降下からの爪の一撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【毒を帯びた尾による突き刺し】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    飛竜の知恵
【自分の眼下にいる】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    ワイバーンブラスト
【急降下】から【咆哮と共に衝撃波】を放ち、【爆風】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 荒れ果てた庭園、そしてそれを見下ろす塔。
 外壁の各所が崩れ落ち、月明かりに照らされた庭園に吹く風が小さく咲いた、名も知らぬ花揺らす。
 竜はあそこかと塔を目指して歩みを進めるが、猟兵達が到着するより早く響く咆哮、そして崩れ落ちる塔の外壁。
 目線を向ければそこに見えるは翼を大きく羽ばたかせ、眠りを妨げたことに怒りを燃やし激しき敵意を向ける竜、ワイバーン。
 巨躯からの羽ばたき、それによって生じた風圧で脆くなった塔は先端より崩れ始めるが、自身の行動にて生じた寝床の崩落ですら猟兵に対しての怒り、その燃料へと変えているのかその敵意はより一層燃え上がる。
「グルァアアアア!」
 そして響いた再度の咆哮、容赦はしないと飛び上がり塔から一気に急降下。
 猟兵と竜、決戦の火蓋はここに切って落とされたのだった。
イデアール・モラクス
クク…いよいよお出ましか!
さぁ始めよう、猟兵による竜殺しの御伽噺を!

・行動
「千を超える焔、その身で味わうがいい!」
杖に魔力を集中し『属性攻撃』『全力魔法』で威力を極限まで増したウィザードミサイル105発の『一斉発射』を『高速詠唱』で立て続けに連続発射する秘奥義《連続魔》にてワイバーンを焼き尽くす。
「避けられると思ってるのかぁ?」
回避機動を取ろうとしたとて『追尾弾』と化した炎の矢は決して逃さぬ。
「フィナーレだ、出し惜しみはせんぞ!」
更に追憶の長銃から『属性攻撃』で氷属性の魔導光線を放ち、炎と氷の共演で追い詰めてゆくぞ。
「ククク…アーハッハッハ!滅せぬモノのあるべきや!悶え、苦しみ、死んでゆけ!」



 猟兵を眼下に望み、塔の上にて羽ばたくワイバーン。
 しかしながらそれを前にて余裕を崩さぬ者がいる。
「クク……いよいよお出ましか! さぁ始めよう、猟兵による竜殺しの御伽噺を!」
 不敵に哂い一歩進みでるはイデアール。
 そんな彼女を最初の敵の見なしたか、ワイバーンは一鳴きしてから塔を蹴やりて空へと駆ければ、その勢いにて塔の先端が崩れ去る。
「千を超える焔、その身で味わうがいい!」
 杖に魔力を込めれば彼女の後ろに生み出されるは巨大なる魔方陣。
 蕩けるように魔方陣の文様が歪み始めれば、その先端は炎の矢へと姿を変えて射出されし時を今か今かと待ちわびる。それはさながら開幕の合図を待つ、数多の軍勢が構えた槍衾、その穂先の如くである。
「シャァアアアア!」
 上空高く飛び上がるワイバーンが咆哮、ならばその魔法を打ち破らんとする勢いで急降下。
 一直線に降下する攻撃を前にしてイデアールが矢を放てばワイバーンは羽ばたきにえ軌道を変更、右へ左へ体を動かし紙一重で炎の矢をかわし、数本が体をかすめ火花を散らすも気にせずそのまま急降下。
 舌打ちしながらイデアールが飛びのけば、つい先ほどまで彼女が立っていた場所をワイバーンの鋭爪が抉り取り、再びワイバーンが宙を舞う。
「全て避けられると思ってるのかぁ?」
 いまだ全弾射ち尽くさず、残弾残すイデアール。
 ワイバーンはそんな彼女の攻撃を予測、見切ったかのように悠然と空飛ぶが見切るのはなにも敵だけではない。
 再度、地上より放たれた幾本もの矢が左翼を狙って飛来、無駄だといわんばかりに右方向へと大きく軌道をかえるもそれがイデアールの罠。
 片側より集中して攻撃されれば逆方向へと逃げるのは必然、それを予測し追尾弾と化ちた矢を一拍遅らせ、回り込む様に射出していたのだ。
「グギアァアア!?」
 強靭な鱗を持った体躯ならばいざしらず、飛翔の為に軽量化され伸縮性を保たれた翼の皮膜。
 それはほかのどの部位よりも強度が低いワイバーンの武器でもあって、弱点でもある部位。
 右翼に被弾、結果として左右の翼が生み出す浮力に差異が出てバランス崩したワイバーンへ続けざまに残る矢の大盤振る舞い。
 火達磨と化して墜落するその姿へと容赦のない追撃が。
「フィナーレだ、出し惜しみはせんぞ!」
 矢を射ち尽くせば、次なる一手は氷の属性込めた魔導光線。
 塔のそばへと墜落したワイバーン目掛け、イデアールは構えた杖から光線を射出し追い討ちを仕掛けていた。
「ククク……アーハッハッハ!滅せぬモノのあるべきや!悶え、苦しみ、死んでゆけ!」
 炎と氷の狂演にてワイバーンを始末すべく笑いながら彼女は攻撃を続けていく。
「シャァアアアアア!」
 だがしかし、炎を吐けぬとはいえ竜。
 魔法攻撃だけでは自分は倒れぬと威嚇するように咆哮すれば傷ついた翼をはためかせまとわりついた炎を、氷を振り払い自身の力が健在であることを示していた。

成功 🔵​🔵​🔴​

クリスティーナ・ツァルリーノ
ふふ、竜殺しとはいいですわね、私の伝説はここから始まるのです!
強大な敵と戦う時こそ、【勇気】をもって立ち向かうのですわ!
【スカイステッパー】でドラゴンさんの真上に跳んで、上から【魔剣・ブラックラビットソード】でスパッと翼を切って差し上げます!大空は貴方だけのものでは無くてよ!


サラ・ノアール
来たわねワイバーン!
まずは急降下からの攻撃へ備えないと駄目ね。

「ダッシュ」「逃げ足」「見切り」で攻撃が定まらないように動き回るわ。
自分への攻撃、或いは他の猟兵への攻撃の隙を「カウンター」で突いて
クサリメガミで操作した鎖を翼に絡ませてから火の「属性攻撃」を帯びたファルシオンで貫く!制空権を奪うのよ!
さらに刃には毒も塗っておくわ。こういう時の為の「毒使い」ね。

私達が壊したりワイバーンが外壁を壊したりと足場は悪そうね。
チェーンウィップで「ロープワーク」を駆使した移動方法も検討しておこうかしらね・・・


グルクトゥラ・ウォータンク
さて、仕事も大詰めじゃ。出し惜しみなしで行くとするかの。

【ガジェットボールズバタリオン】、スタンドアップ。わしらの仕事はあの空飛ぶ的を味方が殴りやすいように誘導することじゃ。
各小隊は場内に散開し対空迎撃態勢に移行。配置につき次第撃ち方始め、【先制攻撃】【範囲攻撃】【援護射撃】で弾丸をひたすらばらまいてワイバーンの飛行範囲を狭め【おびき寄せ】、地上への降下軌道を見切りやすくする。軌道が分かれば、どれだけ速かろうとでかかろうと恐れるほどの事はないわい。
あとはワイバーンが逃げ出さぬように弾幕を維持すれば、味方がケリをつけて仕舞いじゃろう。

悪いが、容赦する気はないぞ。



「仕事も大詰めじゃ。出し惜しみなしで行くとするかの。
 飛ばさぬ仕事はワシに引き続き任せてもらうぞい!」
 地に落ち、しかしまた再び羽ばたくワイバーン、その飛翔を阻止すべく18の指揮官機、付き従う3機を伴った18小隊のボールズを率いグルクトゥラが指示を出す。
 ギロリと憎しみ篭った目を向けるワイバーン、されど既に布陣は完了。
 周囲に散会した小隊は数多の方角より銃弾を浴びせかけ、翼を自由に使う時間を与えない。
「オッケー、このまま接近戦に持ち込むわよ!」
「ええ、大空がこの竜だけのものではないことを教えて差し上げますわ!」
 魔術と銃火、二種の弾幕にて形成されたワイバーンへと駆けるはサラとクリスティーナ。
 互いに声を掛け合い散開、ワイバーンの注意を分散すればまずはサラが一気に距離つめ鎖を飛ばす。
「シャァアア!」
 銃弾浴びつつワイバーンが叫び、翼を広げて強靭な尻尾の振り回し。
 鎖を打ち払い、そのまま脚を振り上げて爪にて引き裂こうと攻撃するが、既に反撃予想してサラは側面駆け抜ける。
 ならばと反転、二度目は強力な顎の噛み付き。
 姿勢を低くし牙むくもバクン、と空食む間抜けな音。
 いる筈の場所にいない、何故だとワイバーンが周囲を見渡せば、虚空に舞うはサラの姿が。
「そう簡単に、捉えられると思わないでよね!」
 右手に伸びるはチェーンウィップ、鎖の先端、フック部分はワイバーンが根城としていた塔へと伸び、突起物に引っ掛けることで塔へと固定。
 跳躍、そこに加えて力任せに引っ張ることで通常では実現不可能な高さへと彼女を導きワイバーンの攻撃を空ぶらせていたのだ。
「我が神の畏れ、とくと味わいなさい」
 続けて伸びるは20の鎖。
 炎を纏ったその鎖は全方向からワイバーンへと襲い掛かり、翼を、首へと巻きつきその動きを阻害する。
「敵は一人ではないですわよ!」
 拘束に続くはクリスティーナ。
 動きを阻害、反撃もままならぬワイバーンを狙って地を蹴り跳躍。
 そのまま虚空を、まるで何か見えない足場があるかのように、そして華麗に跳ねる兎のように。
 トントン、トンッと小気味よく高度を上げればワイバーンの頭上へ至る。
 しかし束縛されても竜は竜、痛む体に鞭打って、数多の銃弾受けつつも無理矢理体躯を捻りつつ、尻尾の一撃をクリスティーナへ見舞っていく。
「キャッ、この……っ」
 落下中に受けた衝撃、体制崩し地面目掛けて落下を始めるクリスティーナであったが竜殺しの執念、伝説を始める気概の彼女はそのまま食い下がるはずもない。
「まだまだっ!」
 吹き飛びながらも左手伸ばし、ワイバーンを縛っていた炎鎖を無理矢理掴み。
「ですわっ!」
 熱さと痛みをかみ殺し、力任せに引っ張れば落下中の体は再度、上空向けて強引な方向転換。
「お嬢ちゃんたち、援護するぞい!」
 無理な体勢から空中での姿勢制御、そして再度の空中跳躍。
 無防備になるその時間、ワイバーンの反撃を封じるのはグルクトゥラ。
 ボールズたちの弾幕に紛れて自身も前進、大型蒸気ガトリングガンを空転させつつ距離を詰め、ワイバーンの下半身狙って当たろうが外れようが構わぬと弾幕形成。
 強烈な反動をドワーフの頑健な体からくる膂力で強引に押さえ込み、数多の銃弾が脚部を、尻尾を穿てば鱗が飛び散り血を流す。
「合わせていくよ、左はお願い!」
「了解ですわ、スパッと切って差し上げます!」
 弾幕にて生み出した時間、その機を逃さずサラとクリスティーナが上空にて声交わす。
 片や塔の中腹から、片や虚空を舞いながら。
 2方向から飛び掛る攻撃に、鎖の戒めにて動きを阻害され、弾幕にて悶え苦しむワイバーンに防御も回避も選択肢は残されず。
「ギィィイイイイイ!!」
 右翼の付け根、叩ききる武器ファルシオンをあえて刺突、鱗の隙間から刃先を体重、重力加速を合わせてねじ込んだサラの一撃が突き刺されば。
 左翼、翼膜広げし骨格の支点、翼爪を割りながらクリスティーナのブラックラビットソードが走り翼膜を大きく引き裂いていた。
「シャァアアア! ルァアアアア!」
 痛みに悶え、強引に鎖を振りほどいたワイバーン。
 しかしその翼は機能の多くをもぎ取られ、元々の飛行能力を発揮することは困難に。
 さらには全身に走る裂傷、銃創が消耗を物語り、それでも尚抵抗するが、その目が捉えたものはガトリングを接地、冷静に自身を狙うグルクゥトラ。
「追い討ちになって悪いが、容赦する気はないぞ」
 つとめて冷静に、淡々と言葉を紡ぎ引き金引けば放たれた銃弾がワイバーンの顔面へ。
 牙を、片目を、角を砕きその傷を増やしていけば、たまらず顔上げ宙へと逃れるワイバーン。
 低空をホバリング、満身創痍で流血するも、このままただではやられぬと、足掻き続けてやるとばかりに飛竜は最後の抵抗を始めていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

寺内・美月
・当初〖航空攻撃・空挺降下発動〗にて敵の上空から二回目の航空攻撃を行い地上にたたき落とす(空挺降下は実行しない)。
・次に〖対機甲戦闘射撃〗にて墜落した敵に打撃を与えて飛行や回避行動を阻害する。
・最後に〖準備砲撃『地獄雨』発動〗を実行してとどめを刺す。


九・祇園
飛竜も竜よ。
ああして無残な姿を晒させず、さぱっと消してやるが王の仕事よな。

ふんぞり帰った仁王立ちで、我輩登場である。
敵のピンチに現れるとか、ちょっぴりハイエナ気分。
でも我輩気にしない。王だから!

四つん這いになって両手足をアンカー代わりに、
尻尾を相手に向けて先端を大きく開口。
冥途の土産よ、せめて派手に散らせてやろう。
地対空ミサイルANUBIS!!
全弾発射である!!

あ、しまった。
我輩、竜肉食べたことないである!
消し飛んでしまったであるか?
せめて、ちょっとくらい残ってないであるか?



「シャァアアアア!」
 ワイバーンが咆哮、高度も速度も失うが敵意をむき出しにして猟兵目掛け飛翔する。
「作戦に変更なし、再度の爆撃を開始せよ」
 強引な突撃、それを見越して進路を想定、召喚した輸送機、航空団に爆撃を命令した美月。
 しかし予測しての爆撃、相手の移動速度低下と爆薬落下の時間、其々のズレは大きく移動する相手を狙っての落下地点設定は困難。
 爆煙掻き分け強引な飛行を続ければ、眼前にはこの爆撃を支持した美月。
「チッ、爆撃中止。レーザー照射中、完了次第対機甲戦闘射撃を開始せよ」
 舌打ちしつつ抜刀、迫り来る爪の一撃を刀でいなし自身は側面へと飛びのけば、ワイバーンの尾が地面をえぐり毒液を撒き散らす。
 直後、互いに反転。
 ワイバーンが今だ健在な両脚に力をこめ、その膂力を持って引き裂こうと突進するがそれより早く砲撃命令が飛んでいた。
「対機甲戦闘射撃!」
 迫り来る豪爪に怯みもせず、直立不動で命令を下す美月。
 それと同時に闇の中から数多のミサイルが飛来、爪が届く直前にワイバーンへと突き刺さり数多の爆発を巻き起こせば、たまらず後退。
 無理に上空へ飛び上がれば、痛みを押しての行動か、血液と鱗を撒き散らし回避運動でミサイルをやり過ごし、回避不能な一撃はあえて強度の高い背部で受け止めるワイバーン。
「コード地獄雨発動、火力で敵を蹴散らせ」
 続けざまに更なる砲撃命令を。
 次なる砲撃はミサイルではなく数多の砲弾、されどその数は圧倒的。
 面制圧を目的とした大火力は如何に空中制御にて被弾を減らし、また受ける場所を限定しても防ぎきるは困難。
 数多の砲弾がワイバーンを飲み込み、爆風、爆煙が戦場を包み込む。
 しばしの静寂の後、煙が引けばそこには飛行能力を失い、全身の鱗が無残にはがれ流血しつ、荒い息遣いでなお立つワイバーンの姿があった。
「なんとも哀れな。飛竜も竜よ。ああして無残な姿を晒させず、さぱっと消してやるが王の仕事よな」
 同刻、戦場にたどり着いた新たな影一つ。
 何者だと視線を移せばそこに立つのは両手を組んで威風堂々、夜風に巨大な尾をなびかせながら仁王立ちする九・祇園(🏰・f03792)
 敵が絶体絶命のピンチに登場、ハイエナ気分とは彼女の弁。
 されど彼女は気にしない。なにせ王ですから。
「グルルルル……シャアアアア!」
 見下されたと思ったかワイバーンが強烈な敵意を祇園に示す。
「よいよい、全てぶつけてくるが良い。我輩が貴様の最後、彩ってやろうぞ」
 組んだ腕解き指をクイッと動かし此方へ来るよう挑発する祇園。
 飛べずとも構わぬ、せめてこいつだけはと思ったか、激しい咆哮と共にワイバーンが地を駆け一気に距離を詰めゆく。
「冥途の土産よ、せめて派手に散らせてやろう」
 走るワイバーンを迎え撃つ祇園、両手を広げ大の字に見える姿勢を。
 そのまま上半身を前屈、四つん這いへと体勢変更。
 四肢にて地面をしっかり捉え、それはさながらアンカーの如き役割を。
 同時に巨大な尾を相手へ向ければ先端から尾が開き、中に見えるは数多の弾頭。
「地対空ミサイルANUBIS!! 全弾発射である!!」
 叫ぶや否や、尾の中へと仕込まれていたミサイルが絶え間なく発射され、白き糸引きワイバーンへと殺到。
 翼を、角を、牙を、爪を、体躯を、何もかもを飲み込む100万発のミサイルという過剰な火力。
 単発威力が低くとも絶え間なく浴びせかければそれは瀕死の竜を始末するには十分すぎる火力を成し、撃ち尽くした祇園が立ち上がり前方見れば。
 そこには全て消し去られ、えぐれた地面が残るだけとなっていた。
「あ、しまった。我輩、竜肉食べたことないである!」
 直後、響いた間の抜けた声。
 やりすぎた、竜肉食そうと思っていたが消し飛ばしてしまったと額を押さえる祇園の姿。
 ちょっとでも残っていれば、などという淡い希望も吹き飛ばす、完全なオーバーキルであった。

 暫しの静寂、そして雲が流れ月明かりが庭園を、塔を、崩壊した古城を照らし出す。
 数多の砲撃や銃弾、魔術によって崩れ去った城壁に、放たれた炎にて燃え続ける住居跡。
 先端部が大きく崩れ、内部の崩落が加速した塔に加え、荒れ果てた上に至る所がえぐられ見る影も無くなった庭園跡。
 城としての機能を完全に破壊されたこの古城、再利用など望むべくもなく。
 脅威となるオブリビオンの駆逐、古城の機能破壊という二つの役割を果たした猟兵たちはその地を後にするのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月04日


挿絵イラスト