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帝竜戦役②~信仰歌いて空より来る

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #群竜大陸

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●盲信の果て
 荒れ果てた大地に歌が降り注ぐ。
 双翼が風を切る音はさながら、パイプオルガンの調べか。
 地上を黒で覆い隠さんばかりの影を生成しているのは、右を見ても左を見ても全て同じ。
 全て同じ、かつて自らにとって世界の中心たる新龍を奉じていた我が身の果て。
 けれど違う。今は全てが満たされている。
 か弱かった体はどうだ。今や硬い鱗に包まれてどんな力にも耐えられる。
 両の眼はどこまでも先を見通して、あの方のお姿すら見つけられそうだ。
 何より、何よりも、――この姿が、まるで敬愛なるお方のようなこの姿が!
 ああ、満たされている!!

「――キュゥルルルルルルルルル……!!」

 無数の羽音と、もはや人語を発することもできなくなった、歌うような鳴き声が地を埋め尽す。
 戦場を、聖なる歌が支配していた。

●教徒討伐戦
「誰か、手が空いているなら手伝ってくれ!」

 その場にいた猟兵達に急ぎ気味で声をかけたユアの手には、既に起動状態に入ったグリモアが輝いている。
 ただならぬ雰囲気に近づいてきた面々をざっと眺め、彼女は手早く状況を話し始めた。

「アックス&ウィザーズで、オブリビオン・フォーミュラである帝竜ヴァルギリオスが動き始めた」

 群竜大陸への猟兵たちの進行とその速度に危機感を抱いたヴァルギリオスは、配下の帝竜たちを引き連れてついに世界を滅ぼすための戦いを開始した。
 当然、それを黙って見過ごすなどということはできない。

「これから行ってもらうのは皆殺しの荒野。そこにはかつて帝竜を信仰していた、神龍教派のクレリックたちが待ち構えている。……以前、他の依頼で戦った者もいるかもしれないが」

 しかし、これから向かう先にいるのはその際相手取ったものとは別物だとユアは言う。
 皆殺しの荒野にはオブリビオンをドラゴン化する風が吹いており、件のクレリックたちもその影響をしっかりと受けている。
 自らが信じ続ける存在に近づいたということで、戦意は相当に高くなっているだろう。その上、何も変わったのは外見だけではない。
 全身を硬い鱗に覆われたクレリックたちは上空に待機している。そして、敵を見つければその硬さを盾にして一気に下降。攻撃を仕掛けてくるのだ。
 竜の鱗となればその丈夫さは言わずもがな。ゆえに、普段行っている彼女たちとの戦闘とは違ったやり方が求められるだろう。

「まずは、空中から高速で迫る敵の対処を。それと、いくら鱗の中とはいえ必ず急所があるはずだ。そこを集中的に狙えば戦いやすいだろう」

 赤く輝く花弁が空間を切り裂き、荒野への道を開いた。くぐり抜ければすぐに、狂った聖歌降り注ぐ戦場に辿り着く。
 そうして伝えるべきことを終えたユアが、最後にと一つ付け足す。

「連中を倒すと、竜胆石と呼ばれる宝石が手に入るらしい。小遣い稼ぎにはいいだろう。ただ、元はドラゴンではない存在だ。少しばかり、普通と違うものが生成されるかもしれないな」

 ――それでは、武運を。
 そんな声を背に、猟兵たちは乾いた風吹きすさぶ大地へと足を踏み出した。


藍月
 はじめましての方ははじめまして。そうじゃない方、すごくお久しぶりです。藍月です。
 始まりましたね戦争。微弱ながらお手伝いさせていただこうかと思います。

 内容はOPの通り、戦場効果で竜化した神龍教派のクレリックの群れと戦ってください。
 なお、こちらのシナリオでは本来設定されているPSWの攻撃への対処より、以下のプレイングボーナスに基づいたプレイングの方が有利判定となります。

 プレイングボーナス……空中からの攻撃に対処し、硬いうろこに覆われた「急所」を攻撃する。

 集団戦なので判定は緩めです。とびきりカッコつけて群れなす敵を蹴散らしてください。
 また、シナリオの性質上スピード速めに進めていきたいと思っており。
 プレイング到着のタイミングや全体の流れを見た際、残念ながら採用を見送る場合もありますのでご了承ください。

 プレイング受け付けは断章追加後となります。
 それでは、皆様の参加をお待ちしております。
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第1章 集団戦 『神龍教派のクレリック』

POW   :    信仰心の証明
自身の【神龍教への信仰心】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD   :    神罰の吐息
【天から降り注ぐ聖属性の突風】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に神龍教徒のみに及ぼす加護が満ち溢れ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    神龍降臨の儀
無敵の【神龍】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●揺れる
 ごうごうと、風が鳴っている。
 本来であれば太陽の光を遮る木々も無いのだが、視界は暗い。
 見上げれば風を打ち付ける翼の音が、風よりも大きく響く。
 響く鳴き声は高く澄んで、まるでこの場には不釣り合いだ。

 だがしかし、それが決して平和な光景ではないことは明らか。
 猟兵たちを狙いすます狂信者の瞳は、爬虫類のようにぎょろりと動いて禍々しい。
 空気に混じる強い緊張感は今すぐにでも弾けてしまいそうで、煩いはずの戦場はいやに静かだった。

「――、くるぞ」

 誰かの、囁くような声が聞こえた次の瞬間。
 旋回し、狙いを定めた狂信者たちが雨のように降り注いだ―――!!


==========================

 敵情報:神龍教派のクレリック(竜化)
 既に人としての名残はほとんど無く、全身を薄桃色の鱗に覆った爬虫類のような顔の存在。
 背からは二対の翼が生え、額やこめかみからは赤黒い角が生えている。
 発する音は人語ではなく、まるで歌うかのような清く高い鳴き声を上げるばかり。
 急所となる部分は個体により様々だが、その部分のみ鱗の色味が濃い。


 竜胆石について
 討伐時、敵の体内から竜胆石と呼ばれる宝石を手に入れることができます。
 このシナリオ内では「魔力を帯び、様々な属性を持つ魔石」に変質しており。
 手に入れる猟兵により違ったものとなります。

==========================
プリンセラ・プリンセス
連携、アドリブ可

人格をオスカルに変更。

Loyalty to royaltyを使用。
戦旗を掲げ皇族としての【威厳】【存在感】をもって、【地形の利用】で高みに立ち、猟兵を【鼓舞】する。

「アタシはフェミニストだけど敵とあらば容赦しないわ。猟兵の皆、油断しちゃだめヨ。上空から降りてくる瞬間を狙ってワイヤーとかで拘束するのヨ。ほらほら、男は隣の女の子を守って。女の子は隙を突いて攻撃して。女の子の傷はだめだけど、男の傷は名誉よ。それはアタシが保証してあげる。今は卑小の身なれど、かつての帝国が皇継。我が名は――」

名前は言っているけど表現しないようお願いします。


シャルロット・クリスティア
灯(f00069)さん……あぁいや、今は『セクト』さんでしたか。
いずれにせよ共同戦線です。
実質初対面みたいなものですが……大丈夫、合わせてみせますよ。

あちらは制圧射撃で行くようですね。
となると相応に目立つでしょうし、少し離れた地点にいれば自然と注意も逸れるでしょう。
制圧射撃を受けていても、急所への流れ弾さえ警戒しておけば後は防御力にものを言わせて来る筈。
……逆に言えば、奴らが『被弾を嫌い重点的に庇った場所』こそが急所。リアクションから見抜くことは可能です。
支えもない空中、防御は抜けなくとも衝撃で体勢を崩すことは十分可能となれば……後は私の仕事です。
やることは単純、当てるだけ。造作もないですね。


皐月・灯
シャル嬢(f00330)と

「ドラゴン化」……サンプルの一つでも得られればと思いましたが、
流石に数が多いですね。仕方ない、殺しましょう。


さて……制空権はあちらにあるようですが、私にも対応の仕方があります。
……おや? 貴女は……成程。丁度いい。

金髪の貴女、私が彼女たちの動きを止めます。
狙撃の心得はありますね? 狙い撃ってください。
――狙うべき場所は、言わずともわかるでしょう。


どうやら楽ができそうですね。
私の役割は、《凍尽ク氷囁》での対空斉射です。
狙いは2つ。
空の彼女たちの体勢を崩して動きを止めることと、
彼女たちが体のどこを守るのかを見極めること。

後は、彼女の腕前次第。
じっくり拝見するとしましょう。



●赤き誇りと二人の射手

「――聞け!!」

 ひしめく敵の合間に見える蒼天まで届く、高らかな声と翻る戦旗が空気を打ち付けた。
 巨大な岩の上に立つ影は小さな少女のものだというのに、赤き鎧に身を包んだその姿を誰もが一度見上げる事となる。
 プリンセラ・プリンセス(Fly Baby Fly・f01272)は今は亡き帝国の生き残りだ。猟兵としてオブリビオンと戦う手段を十分持ち備えているが、今この場で彼女「達」が選んだ対抗手段は王族としての真髄。――すなわち「鼓舞」だった。

「アタシはフェミニストだけど敵とあらば容赦しないわ。猟兵の皆、油断しちゃだめヨ」

 ウインク一つを頼れる仲間に送るのを最も近くで見ていたのは、シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)と皐月・灯(喪失のヴァナルガンド・f00069)の別人格である「セクト」の二人。
 おや、と聞こえてきた声に気がついたシャルロットがセクトの方を向いて頭を下げると。普段はぶっきらぼうな少年の顔に、どこか妖しげな笑みが浮かぶ。

「サンプルの一つでも得られればと思いましたが、流石に数が多いですね」
「どうしますか」
「……金髪の貴女、狙撃の心得はありますね?」

 見据える先は空。信者たちは数に物を言わせ、なおかつ自らの丈夫な体を武器にして猟兵たちを穿とうと考えているようだ。
 しかし、それでも無敵ではない。彼女たちが信じる帝竜とて、それは同じこと。どこかに必ず突破口は存在する。

「キュルルルルル……!!」

 先陣を切るかのような一匹が空中で旋回、そして合図のような鳴き声と共に圧倒的な数の羽ばたきがいよいよ地上をめがけてぶつけられ始めた。

「ほらほら、男は隣の女の子を守って。女の子は隙を突いて攻撃して。女の子の傷はだめだけど、男の傷は名誉よ。それはアタシが保証してあげる」
「おや、それでは貴女を守る方がいませんが」
「アタシはいいのヨ」

 そう豪語するプリンセラの傍らには、身の丈ほどもある強固な盾がある。確かにこれならば敵からの猛攻を防ぐこともできるだろう。
 それに何より。王とは、そこに存在するだけで意味を持つのだから。

「ご心配なく。貴女も、我々が守ります」

 そこに在る限り、戦うものは力を得ることができる――!!

「どうやら、楽ができそうですね」

 声よりも更に冷たい空気がその場を包み、倒すべき存在を地上で迎え撃つ。
 セクトの前面に展開された魔法陣から、いくつもの凍れる楔が飛び出していく。不穏な気配に気がついた信者たちは動きを止めるが。それではあまりにも遅い。視認した時点で、氷霊の腕は既に害するものを抱きしめ、全てを凍てつかせる吐息で空を支配していくのだから。
 何体かはそれを避け、何体かは直撃を受けて凍りつく。それまで身軽だった動きも凍結の影響を受けて鈍く、歪に膨れた氷塊に翼を取られた一体が、落下しながら喉元に手を向けた。
 薄桃色の鱗の中、そこだけが血のように赤く染まった鱗の部分を、庇おうとして。

「――そこですか」

 まるで造作も無いことだと、プリンセラの鼓舞を乗せたシャルロットの弾丸が鱗ごと信者の喉を砕き、貫いた。
 何が起きたのかも分からぬまま、意識ごと命を刈り取られ落下していく異形。それほどまでに彼女の射撃は正確で、そして一切の容赦がない。
 狙えば当たる。それがシャルロット・クリスティアという狩人だ。
 地に伏せた味方に走る動揺を、再びセクトの作り出した冷たい斉射が引っ掻き回す。体勢を建て直させる暇を与えず、近づかせず。足止めと空からは見えにくい弱点の炙り出しを行う姿は、まるで指揮者のようだ。
 たとえ直撃を受けなかったとしても、本能は自然と自らの最も弱い部分を守ろうと体を動かしてしまい。そこを見抜いたシャルロットに打ち砕かれる。
 まるで羽虫のようによろけ、そのまま地上へ落ちていくいくつもの影。
 彼女たちは忘れている。もしくは、知ることもできないのだろう。地上が、一体誰の領域なのかということを。

「さすが、やりますね」
「いいえ、存外脆いものですよ」

 静かな掛け合いを耳に、プリンセラは口元の笑みを深くする。
 戦旗を翻す手は高々と。味方には力を、そして敵には威嚇を持って映るだろう。これが、この旗に集う者たちがお前達を倒すのだと、この世界までも滅ぼすことは決して許さないと。

「さあ、恐れず進め! 勝利はここに、この名が勇気あるものの栄光を保証するわ! 今は卑小の身なれど、かつての帝国が皇継。我が名は――」








 WAVE CLEAR!!

 *Reward*
 プリンセラ・プリンセス
 『先導』秘めし遊色の魔石

 皐月・灯
 『観測』秘めし透明の魔石

 シャルロット・クリスティア
 『狩』秘めし深蒼の魔石

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

グウェンドリン・グレンジャー
残念ながら、私……は、神聖、から、程遠い身……だから、倒す

空、から、来る……なら、その上、取る
(腰からクランケヴァッフェの翼を生やし、飛び上がる。念動力で加速し、空中戦技能で高度を取り)

竜とは、蛇の信仰から、現れしモノ。そして、猛禽……は、蛇を、食べるモノ
(翼の黒、虚数の影から次々に発射される黒い羽根)
第六感で、弱点を推測して、そこに、飛ばした羽根、突き立てて、生命力を吸いとり、喰らう
弱点だから、生命力を吸収できる、美味しいポイント。でも、固いから、一見は、美味しくなさそう……な、気がする
その、不思議感覚ポイント……を、狙う


あっ、なんか、光り物……落ちてる。これが、竜胆石、かな?



●バレリーナの空腹

 既に開戦の騒音は鳴り。信者たちの動きは止まらなかった。あるいはそれは、止められなかったとも表現できるかもしれない。

「――?」

 まず異変に気づいた一匹が、空中で止まった。今まさに地上で待ち構える猟兵たちを仕留めようとしていたのに。それを踏みとどまらせるほどの違和感が竜と化した狂信者を襲ったからだ。
 違和感は、やがて不安に名前を変えて信者の本能に警笛を鳴らす。けれどわからない。一体何に己は不安を感じ、ともすれば怯えているのか。

「あんまり、速くは……ないね」

 その答えは遥か上空から聞こえてきた。
 自分たちが領域としているはずの空に自分たちよりも高い位置で佇む黒鳥は、眼下をどこか遠くを見ているかのような金色の瞳で見下ろした。
 グウェンドリン・グレンジャー(冷たい海・f00712)のシルエットは、本来の細身なそれに加えて腰から伸びる一対の翼を孕んでいる。
 戦争の女神の名を与えられたそれは、彼女の腰に取り付き優美な黒翼を広げ。地上からここまで、ほんの一瞬でグウェンドリンを運び上げてきた。
 念動力で加速した彼女の速度を、信者たちは捕らえきれなかった。だからこそ、違和感を感じながらも気づけなかったのだ。

「竜とは、蛇の信仰から、現れしモノ」

 そして、蛇は猛禽に喰われる。
 音もなく広がる翼から、まるで影のように黒い羽根が信者たちに一斉に降り注ぐ。
 動物が持つ柔らかさはなく、まるで研ぎ澄まされた牙のような鋭利さを秘めた羽根が次々と刺さり。信者たちは苦悶にあえぐように身を捩らせる。
 ただ刺さるだけならまだダメージも低かったのかもしれない。しかし突き立てられた羽根はその体から生命力という「食料」を吸い上げているのだ。
 グウェンドリンが敵の弱点を知るために用いるのは、二つ。野生に近い本能レベルの勘と、他の部位とは異なった「味」をした部分を狙う。シンプルな獣の考え方だ。

「どこもかしこも、硬そうだけど。……美味しい所は、違う」

 それがなんだか不思議に思えて、グウェンドリンは首をかしげる。
 しかしそれは、確実に敵の弱点が其所だという事を教えてくれる。ゆえに狙いすまして刺し直せば、それは確実な致命の一撃になり。
 一方、着々と生命力を吸い上げられている方は当然ながらたまったものではないようだ。地上から取って返し、羽根が好き刺さった体のままグウェンドリンに向かって飛翔するものが増えてきた。
 自らの爪で、牙で、愛しい方から授かったのだと思って疑いもしない姿で彼女を引き裂こうとする。
 けれど、それは。絶対的な捕食者には遠く、届かない。
 グウェンドリンの視線の先では、辿り着く前に生命力を全て吸い取られた信者が一匹、また一匹と動きを止めて地上へ堕ちていく。
 異変に気づいて集まってきた者たちも、黒き羽根の獰猛な牙に喰い付かれて同じ末路を辿っていった。
 さながら、女神の威光で焼き払われる餓鬼の如く。

「残念ながら、私……は、神聖、から、程遠い身だから……」

 できるのは、倒すことのみ。
 自身の靴先に爪の切っ先を辛うじて届かせたまま、目を見開いて落下していく信者を追うように地上に降りた彼女の足元にはいくつもの命の残骸。
 周囲を物色するように見渡したグウェンドリンは、足元に落ちていく不思議な輝きの石を拾い上げた。
 それが何なのか、詳しく調べるよりも意識を引いたのは、新たなる敵の咆哮。
 手の中のそれを手早くしまい込んだ捕食者は、次なる獲物へと向けて飛び立った。








 WAVE CLEAR!!

 *Reward*
 グウェンドリン・グレンジャー
 『光輝』秘めし金の魔石。

成功 🔵​🔵​🔴​

イリーツァ・ウーツェ
風の一つで、竜になれると?
其の夢想
真正面から、打砕いて呉れよう

行動は単純
其の身を以て、武器とするならば
此の拳を以て、破壊するだけの事

地の上にて待とう
降ってくるに合わせ、カウンターを入れる
全力で魔力を巡らせ、身体強化
加えて
渾身の怪力を伴い、UCを後押し
地に落ちれば、急所を踏潰すも容易い

竜とは暴威の化身
其れを教えてやろう



●偽物が勝る真物など無く

 轟音と共に飛び散る土塊が、散らされた花弁のように辺りへ広がった。
 よくよく見れば飛び散っているのは土だけではなく、その中に鮮血や肉片を混ぜ込んでいる。
 爆心地と言っても過言ではない。抉れた大地の中央に立つのは、イリーツァ・ウーツェ(竜・f14324)と名乗る一匹の古竜。
 赤く染まる両の眼は燃え盛り、空を睨みつける。秘められているのは闘志か怒りか、はたまたその両方なのか。少なくとも、彼が竜化した信者たちを快く思っていないのは明らかだ。

「風の一つで、竜になれると?」

 じわり。熱のような魔力がこみ上げ、イリーツァの長身を包み込む。
 普通であればそれだけで周囲を威圧するのだが、数に物を言わせて攻め込んでくる信者たちの動きは止まらない。つい先程、同胞が形もなく千切れたというのに。それでも自らの勝利を疑う様子はない。
 まるで愚直に、信仰と一体化した自分たちが負けるはずはないと言っているかのような姿は。より一層彼の目つきを鋭いものとさせた。

「其の傲慢、其の夢想。――真正面から、打砕いて呉れよう」

 この竜は空を戦場とはしない。待っていれば勝手に降ってくるのであれば、その必要も感じないからだ。
 敵がその身を武器として振るうのであれば、待ち構えるのは全てを破壊する拳のみ。
 それもまた愚直と評されるかもしれないが、イリーツァが振るうのはもっと暴虐なもの。力という、原初に近い純粋なもの。

「教えてやろう」

 飛来する信者の群れがイリーツァを包み込むように殺到する。一瞬、彼の姿は地上から消え失せ。
 次の瞬間、膨れ上がった爆発力に押し負けて弾け飛ぶ――!!
 魔力により強化された彼の体と、極限まで高められた拳の一撃をカウンターで食らった信者はその瞬間に塵と化し、周囲にいた者はおろか地上に降り立つ前の信者たちですら余波を受けて落下していく。
 いかな弱点を鱗で固めているとはいえ、全てが塵となってはそれ以前の話だ。

「竜とは暴威の化身、半端者が勝てると思わないことだ」

 更に地面をえぐり、穴と化した足場から悠然と歩み出る竜の姿。
 天を衝くねじれた角。鱗よりも鎧と表現するのが相応しい漆黒の手足。
 即死とはいかなかったものの衝撃で地に伏せ動けなくなった信者の頭部を、大いなる竜の足が踏みつけ。そのままぐしゃりと潰していく。
 青を秘めた姿はいっそ冷徹さすら感じさせるが、仮初の姿を持った信者たちに向ける殺気は更に熱を上げて。
 こぉ、と呼吸の音が空気を震わせ。イリーツァは再び空を見る。

「――来い」

 有無も言わせぬ絶対者の声。
 哀れな半端者たちは、それが死の行軍だと最期まで分からぬままに地上を目指す。








 WAVE CLEAR!!

 *Reward* 
 
 イリーツァ・ウーツェ
 『鉄槌』秘めし血色の魔石。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アウレリア・ウィスタリア
ボクも空へ舞い上がり空中戦を挑みましょう

魔銃で牽制し、鞭剣を振るい
敵の隙を探ります
隙を見つければ鞭剣で敵を拘束しましょう
相手は不利な行為を取れば戦闘能力が上昇する
けれど、ボクの鞭剣はそれを上回る

【神殺し】
その四肢も身体も、そして急所さえも
神さえ貫く棘で引き裂きましょう

ボクの鞭剣はすべてを捕える枷であり
そして神を貫く刃となる
この刃にはいくら竜の鱗でも耐えきれはしない
帝竜の鱗さえ貫いてみせましょう

さあ、このまま骸の海へと還れ

アドリブ歓迎


ソラスティベル・グラスラン
……実に満足そうですね
信仰する神から頂いたその力、それがどういう物か知っていますか?
……貴方たちは人を捨ててしまった、故に斬ります!

空を飛ぶ敵にはこちらも翼を広げ【空中戦】
一方的な有利は与えません、こちらから行きます!

包囲されないように【ダッシュ】
敵全体の動きを【見切り】、急所を探しつつ常に一対一に持ち込みます

魂の深淵より目覚めて、わたしの竜よ…!
一体ずつ『竜の見えざる巨腕』の【怪力】で敵を握りしめ固定
その隙に急所たる、鱗の無い場所に【鎧砕き】の大斧を叩き込む!

貴方たちが身を任せたそれは、神の加護なんかじゃありません!
それは『呪い』…世界を滅ぼす、呪詛でしかないのです!



●空乙女

 交差する朝焼けと夜明け前の色。
 ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)とアウレリア・ウィスタリア(憂愛ラピス・ラズリ・f00068)の姿は空に在った。

「実に満足そうですね。……信仰する神から頂いたその力、それがどういう物か知っていますか?」

 ソラスティベルの問いかけに返事はない。答える意味がないと考えているのか、そこまでの知能すら残っていないのか分からないが。彼女に返されたのは鋭い爪の一撃だった。
 けれどそれは、彼女の体を引き裂くこと無く空を切る。突風のようなスピードで飛び回る姿をとらえきれずに、信者たちはただ右往左往とするばかりだ。
 かといって、彼女ばかりに集中してしまうと今度は背後から光の弾丸に襲われる。
 
「よそ見をしていると危ないですよ」

 アウレリアの手ではヤドリギの精霊を宿した魔銃が光る。もう一方の手に握られているのは、神すら縛る鎖の名を冠した鞭剣。近づこうとすればどちらかでの牽制を受け、まともに接近することも許されない。
 集団、群れであることを一つの強みとしている信者たちには二人の動きは厄介でしかなかった。
 ソラスティベルの速度に翻弄され、彼女を狙おうとすればアウレリアの奇襲が待っている。一箇所に集まれば、それこそいい獲物だ。

「――、見えました」
「っ、そこが弱点ですね!」

 アウレリアが振るう鞭剣の切っ先が、信者の腹部を切り裂く。体に傷は入らなかったものの、破けた服の隙間から弱点の証である赤々しい鱗が見えたのを、二人は見逃さなかった。
 戦いて更なる高度へ逃げようと翼を大きくはためかせる行く手に、素早く回り込んだソラスティベルの声が響く。

「貴方たちが身を任せたそれは、神の加護なんかじゃありません!」

 周囲に展開する有象無象を偽物と呼ぶのであれば、彼女は本物の「竜」だ。その竜が、盲信者たちの身を侵すものが世界を滅ぼす呪詛だと叫ぶ。
 そんな声を、やはり聞こえていないのか理解していないのか、構わずに彼女を突破しようと信者は動こうとする。だが、空気を多く抱え込んで空を自由に動き回っていた翼も、硬い鱗で守られている体も今は動かない。
 それは見えざる竜の腕。ソラスティベルが秘める、偉大なるものの手中。もがいても一切が緩まず、目の前には竜を裁く竜が控える。
 太陽の光を反射する大斧が、風を切って振りかぶられる。

「はああああああ!!!」

 振り下ろされる破砕の一撃は、確実に鱗とそこに守られていた弱点を砕いて押し潰し。絶命の声を上げる暇もなく、力を失った体は空中に投げ出されて地上へと真っ逆さまに堕ちていく。
 それをゆっくりと確認する間もなく、ソラスティベルの背後から新たな手合が現れた。しかし、今度はそれをアウレリアの鞭剣が絡め取る。

「ボクの鞭剣はすべてを捕える枷であり、そして神を貫く刃となる」

 彼女が振るうのは神殺しの力。狂った信仰が崇める存在ですら、屠ることが可能な制裁の力。
 グレイプニルの刃が歪み、音を立てて形を変える。神殺しの棘へと姿を変え、縛り付けている信者の体にそれは次々と突き刺さった。
 丈夫な鱗も突き抜け、その奥にある本来の柔肌にまで深く食い込むことで、鱗の隙間からは血が流れ落ちる。

「さあ、このまま骸の海へと還れ」

 おやすみなさい。唇の動きはそう紡いでいるように見えた。
 アウレリアがグレイプニルを握る手を勢いよく引き戻すと、棘は鱗ごと信者の皮膚を引き裂き肉を抉り出し。ズタズタに引き裂かれた体を撓りながら地面へと叩きつけて血の雨を降らせる。
 空気が、ざわめいたように感じられた。信者たちが距離をとって対空する、ぽっかりと空いた中心点で二人は背中を守り合い戦況を確認する。
 今だ倒すべき敵は多く、殲滅には時間がかかりそうだ。

「まだまだ数が多いですね」
「けど、これくらいで負けたりはしません!」

 静かなるものと、勇気あるもの。
 二人の英雄は共に目配せをしあうと、再び敵の群れの中へと突っ込んでいった。








 WAVE CLEAR!!

 *Reward* 
 アウレリア・ウィスタリア
 『飛躍』秘めし空色の魔石

 ソラスティベル・グラスラン
 『開放』秘めし夕日の魔石

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鹿忍・由紀
ああ、耳障りな鳴き声だなぁ
さっさと静かにしてしまおう
タチの悪い信心深さにはうんざりさせられるよ

鱗が硬くたって、柔らかいとこを狙えば良い
目、翼膜、関節へと影雨を向ける
少しずつでもダメージを蓄積させ飛びにくくさせられるように

動きが鈍れば急所を探しやすくなる
生き物ってのは無意識に急所を庇うように出来てるはずだと
動きから見当つけて濃い鱗を探し出す

急所へと影雨を一点集中
本当に硬いんだね
でも、削り取るから
絶え間無く狙い撃ち、急所を撃ち抜く
死ぬ前に良い夢見れて良かったね

手にした竜胆石を太陽の光に透かして
高く売れると良いなぁ、なんて考えながらポケットにしまいこむ

さあ、もう少し戦おうか
不似合いな歌が鳴り止むまで



●サイレント・ランブル

「キュルルルルル!! キュルルルルルル!!」
「――嗚呼」

 なんて耳障りな鳴き声なのか。
 鹿忍・由紀(余計者・f05760)は辟易と、または不機嫌さを持って敵を迎え撃った。
 甲高い声はよく耳に届き、そして嫌になるほど頭に残る。頭上の信者たちはまるで自分こそが神であるとでも言うかのように、地上に立つ由紀を見下ろしていた。そこに、自らが敗北するという可能性を考えている様子がないのは、言葉が通じずともありありと理解できる。

「あーあー、タチの悪い信心深さだとは思ってたけど」

 そこまで堕ちていたか。
 氷のように薄い青色を更に細め、これ以上見ているのも億劫だとばかりにため息を吐く由紀の影がざわめく。
 確かにその体はヒトであった時よりも強固に守られているのだろうが、だからといって柔らかい所が一切なくなってしまったわけではない。
 そう、例えば。

「ギッ、ギュルルルルルル!!」

 突如、一匹の信者が爬虫類めいた両手で顔を覆い苦しみ始める。
 よく見れば片目には刃物らしきものが突き刺さり。それは更に周囲へと波及するよう、空から雨のように降る軍勢を押し返す地上の雨となって彼女たちを襲う。
 由紀の影から次々と生成される影色のダガーが狙うのは、体ではなく眼球や翼膜、そして関節といった構造上硬さを持つのが難しい部分。
 地の利を得ていたはずの信者たちは、あるものは視界を奪われ、またあるものは飛行能力を阻害されて混乱を来す。
 
「……静かにさせたいだけなんだけどね」

 仕方がないとは言え、より煩くなってしまった空にやれやれと由紀は肩を竦める。
 やがて傷を追った信者たちは、各々が違う場所を守るように体を丸めたり手を翳したりといった行動を始めた。
 元はヒトといえど竜、竜といえどヒト。自分の急所を庇おうとする動きは、以前の少女の見た目をしていた頃の名残を感じさせる。
 しかし、それはもう過ぎたこと。
 
「よかったね。――死ぬ前にいい夢見れてさ」

 見定めた弱点へと、影雨を集中させる。
 無数の刃がたった一点を目指して殺到すれば庇いきることは難しく。逃げようにも、視界や飛行能力を損なわれてしまった身ではそれも叶わない。
 硬い鱗を絶え間なく降り注ぐ刃が砕き、やがてその奥にある柔らかい部分を抉り取り。それでも足りず最期は体を突き抜けていく。
 血を、そして悲鳴を上げて落下していく信者はすぐに硬い地面へと体を打ち付け、二度と鳴くこと無く黙り込み、二度と動く様子はない。
 物言わなくなった躯を見下ろす由紀の視界に、輝くものが映る。拾い上げてみるとそれは、薄い灰色をした半透明の石だった。
 
「お駄賃にはちょうどいいかな」

 呟き、見上げた空は一瞬の静寂を経て、再び狂乱が戻り始めている。
 残念なことに、もう暫くはあの耳障りな声を聞かされる羽目になりそうだ。
 由紀の周囲を囲むように、新しい影の刃が生成され、空を威嚇する。

「……さあ、もう少し戦おうか」

 不似合いな歌が聞こえなくなるまで。狂信の雨と黒い雨の攻防は続く。


 
 




 WAVE CLEAR!!

 *Reward*
 鹿忍・由紀
 『静寂』秘めし灰の魔石

成功 🔵​🔵​🔴​

霄・花雫
地上出迎え撃つのは苦手かなあ、【空中戦】しようか
飛び回る敵の様子を良く観察しながら、空を蹴って走り出すよ
大丈夫、【念動力】で力場作って足場にするから空の高くまで行っちゃうよ!
地上は手が足りてるだろうから、敵の弱点を狙いながら、タイミング合わせて地上に敵を誘導出来ないか試してみたいの

敵の前を飛び回って、【誘惑、挑発】で惹き付けるよ
【野生の勘、見切り、逃げ足】で避けながら敵を地上へ誘導、敵が地上を気に掛けたタイミングで色違いの鱗を狙ってみるつもり
レガリアスシューズに【全力魔法、毒使い】で大気の爆発力を溜め込んで、蹴り抜くよ!
もし当たらなくても爆発力はあるから、後続のためにも体勢を崩せたら良いな


勇者甲冑・エスセブン
竜へと挑むクエスト――うむ!立ち上がらないわけにはいくまいよ、これでも私も勇者だからね!

しかし、なるほど。空より遅いくる集団か。生憎私には今のところ飛行能力はないが……迎撃だけならやりようがある。
『荷電大剣』!電気を帯びたこの剣のならば、鱗の上から衝撃を与えることが可能だろう!
そして更に!『ワイズマン・ベータ』!飛行メカによる観測支援と牽制で、空中から襲いかかる敵への最も有効な反撃のタイミングを計る!

後は――己を信じ、勇気を持って剣を振るうだけだとも!

憧れた存在との一体化か。高揚する気持ちは痛いほどわかるが、意志の伴わないままに得た力は、伽藍に過ぎない。……ふ、誰に向けて言っているのやら。



●閃花

「えへへっ、こっちだよー!」

 空を駆け巡るのは、その場に不相応なほどに明るく天真爛漫な少女の声。
 霄・花雫(霄を凌ぐ花・f00523)の足取りはとても軽く、後を追う信者を翻弄していた。
 彼女には空を飛ぶ翼はないけれど、その代わりに空を翔ける足がある。念動力で作り出した足場を次から次へと移動する脚力は、速度よりも小回りが重視され、どこに移動するのかがまったく読めない。
 取り囲もうにも包囲網はあっさりと越えられてしまい、誘い込まれた信者たちは花雫を追いかけることに夢中になっていた。

(ここまでは気づかれてないみたいかな)

 背後からの爪撃を華麗に避けながら、花雫は心内で舌を出す。彼女の作戦はただ闇雲に敵の注意を自分に引き寄せることではなく、信者たちを空から地上へと誘導することだった。
 獲物を狙い、躍起になっている間に地上に近づいたとなれば。そこを他の猟兵に狙われる可能性は高い。自らの意思ではない形で高度を下げ続けた信者たちは、案の定自分たちが地上に近いことに気がつくと羽ばたきを緩めた。
 当然、そこも織り込み済みの花雫の作戦だ。

「残念、ここまで来たならもう逃さないよ!」

 それまで回避と逃走に終始していた花雫が振り向き、大きくその体を後ろに傾けた。
 宙返りの要領で狙う先は、誘導の間に見定めていた敵の弱点。足元を飾るリングは翼のように軽く、薄翅を浮かばせた足首が撓って顎下の赤い鱗を全力で蹴り上げる。
 つま先が触れた瞬間、溜め込まれていた大気の爆発力はたやすく鱗を打ち砕き、返す動きで花雫の蹴撃は周りにいた信者たちをも標的にとらえて動き出す。
 足場を巧みに使って回り、飛び跳ね、勢いそのままに距離を詰めて蹴り落とす。次々と撃ち落とされる同胞に怒ったのか、数で押そうと数匹の信者が一斉に花雫に飛びかかった。

「危ない!」

 だが、それを許さなかったのは花雫と信者の間に割り込む、機械質な体を持った竜の横槍だ。注意を一瞬反らしてしまった信者の顔面を蹴り飛ばした花雫が地面に降り立つと、そこには電光走る大剣を構えた勇者甲冑・エスセブン(+チック・f20435)の姿があった。

「よくやったぞワイズマン・ベータ!」
「危なかったあ……助けてくれてありがとう!」
「礼には及ばない。これでも私も勇者だからね、竜へと挑むクエストならば立ち上がらないわけにはいくまいよ」

 蒼き甲冑で身を造り、小柄な花雫と並べばよりその差が大きく感じられる巨躯の姿。かつて「勇者」という概念を体現するために生まれたエスセブンにとって、古来より英雄の証とされる竜退治は普段のオブリビオンとの戦いとは少々異なった意味合いを持っているようだ。

「よし、少し離れていてくれ。近くにいると巻き込んでしまう」

 彼が見据える先では竜の姿を模した索敵支援メカ、「ワイズマン・ベータ」が信者たちの気を引いている。
 一歩、また一歩と徐々に速度を上げて駆け込んでくるエスセブンの姿を悟られぬように行動する知恵ある機械は、彼が最も効率よく最大火力で力を振るえる瞬間を作り出すための牽制を役目としていた。
 そして、それが成されたと判断した瞬間にはするりと敵の間を抜けて離脱し。
 ――仮初の姿を得る信者たちを、勇者の一太刀が打ち付ける。

「いくぞ! エスセブン・サンダーブレェェェェェェド!!!」

 自らの中にある発電器官から高圧の電流を作り出し、纏わせた剣の薙ぎ払いが一度に大量の信者を巻き込んで白光でその場を満たす。
 どんなに丈夫な鱗でも、この直撃を受けてはひとたまりもない。弱点もそうでない部分も等しく打ち砕かれ、信者たちはそのまま遠くへ千切れながら吹き飛ばされていく。

「やった! よーし、それじゃあもっとたくさん連れてきちゃうね!」
「あまり無理はしないように! ……しかし」

 ワイズマン・ベータを伴って再び空へと駆け上がる花雫を見送り、エスセブンは思う。
 憧れ、信じた存在との一体化は確かに例えようのない喜びを生み出すのだろう。その高揚は痛いほどわかるが、それは結局伽藍の力に過ぎない。
 それは、何よりも自分がよく分かっているから。

「……ふ、誰に向けて言っているのやら」

 勇者は一人、笑うのだった。








 WAVE CLEAR!!

 *Reward*
 霄・花雫
 『瞬撃』秘めし淡桃の魔石

 勇者甲冑・エスセブン
 『凌駕』秘めし青銅の魔石

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジュリア・ホワイト
幸せに満たされている……
信じる神の姿に変じればそうもなるか
「申し訳ないが、道を阻むなら鎮圧させてもらうよ。ああ、もう言葉が分かるかわからないけど一応言っておく。退けば追わないよ」

荒野は良い
ボクとしても好きな場所だ
なんと言っても――障害物が少ないからね!
【怒れる黒竜よ、戦場を駆けろ】で、本来の器物の姿に戻り
巨大化した射撃武装の数々で飛来するクレリック達を撃ち落としていくよ
ML106と放水銃は衝撃が大きい武器だから
これらで一瞬でも動きを止めたら、そこで弱点めがけてNo.4の狙撃を叩き込んであげよう
問題は、弱点がどこかということだけどね?

「竜か、倒すのは英雄の証なんだっけ。さて、ボクに出来るか……」



●鋼の黒竜

 「いやはや、壮観だなあ」

 あちこちから聞こえる乱戦の衝撃と音。今だ数多く空を舞う信者たちの姿を見ながら、ジュリア・ホワイト(白い蒸気と黒い鋼・f17335)はどこか呑気そうに呟いた。
 帝竜が待ち構える戦場はまだ遥かに遠く、ここを突破しなければ次に進むこともできないのだが。まだまだ敵の数は多く、そう簡単には通してくれそうにない。 
 自分たちを敬愛する帝竜を守る最初の番人とでも思っているのか、同胞が何匹倒れようとも戦意が削がれる様子はなく。だからこそジュリアはなんとも言えない顔をする。

「信じる神の姿になれば、そうもなるか。……だからって引く気はないけどね」

 喜びに満ち溢れ、傷つくことも厭わない献身はただただ今は厄介で。それでも、おかしな話だが自ら命を捨てに来る様子は面白くない。

「申し訳ないが、道を阻むなら鎮圧させてもらうよ。ああ、もう言葉が分かるかわからないけど一応言っておく。退けば追わないよ」

 その言葉を理解できているのかどうか、確かめる術はない。どちらにせよジュリアを見下ろす信者の目は、排除すべき外敵を見るそれなのだから。
 逆に、遠慮がいらないということの証でもある殺気を受けて。ジュリアの体がブレた。その場に立ち止まったままだと言うのに輪郭は覚束なく、目でその像をとらえるのが難しくなっていく。

「まあいいさ。それなら容赦はしないよ。それにしても、荒野は良い。ボクとしても好きな場所だ」

 なにせ。

「――障害物が少ないからね!」

 嬉々と叫んだ次の瞬間、ジュリアの体は眩いばかりの光に包まれてその場にいる信者たちの視界を奪う。前が見えず、対空続ける中で――急に一匹の信者が何かに吹き飛ばされた。
 光が収まり、彼女たちが見た先に先程までの少女の姿はなく。その代わり……というにはあまりにも異質な、黒く艶めく超巨大な列車型の兵器がその場で強いプレッシャーを孕んで佇んでいた。
 蒸気機関車のヤドリガミであるジュリアだが、今の姿は人を乗せて運ぶためのものではない。
 生半可な攻撃では傷もつかない装甲と、備え付けられた銃器の数々。敵を撃ち落とし戦場を制圧するという。彼女の意思を体現化したかのような勇壮たる姿。

「竜か、倒すのは英雄の証なんだっけ。さて、ボクに出来るか……」

 先制として撃ち放った放水銃の威力は凄まじく、水圧に飛ばされた信者の服と翼はボロボロになっている。その体の一部、赤く染まった鱗をジュリアは見逃さなかった。
 あまりにも大きく、それ故に武器の威力も格段の破壊力を持つが。彼女が持つものは制圧力だけではない。精密射撃に向いた「No.4」の射撃が、的確に鱗を突き抜け一匹の信者を地に堕とす。
 だがそれすらも、彼女の驚異の全てではない。鋼の黒竜は固定砲台ではなく、そして愚鈍に泳ぐものでもなかった。
 
「さあ、かかっておいで!」

 その大きさでは到底想像もつかぬ速度で、列車が荒れた平原を滑るように走り出し。誘導性能を持ったミサイルがばら撒かれた。着弾すれば周囲にいる信者もろとも大量の敵影を巻き込み、大火力で粉々に引き千切り地面を赤色に染める。
 放水銃と4連詠唱ロケットランチャー「ML106」の掃射は凄まじく、信者たちは近づくことさえできない上に直撃を受ければ弱点も含めて全てが砕け散るという事実に為す術もない。
 万一直撃を逃れても、どこまでも食らいつく暴走列車に狙い撃ちされるか。まとめて吹き飛ばされてしまうか、二択の末路を迫られるのみ。
 それはヒトの形をしたものには過剰にも見えて、ジュリアの通り抜けた後はまるで羽虫を駆除した後のような有様だった。
 されど、彼女は止まらない。

「ボクたちの目的はここじゃない! 先に進むため、全てなぎ倒して押し通らせてもらうよ!」








 WAVE CLEAR!!

 *Reward*
 ジュリア・ホワイト
 『突破』秘めし乳白の魔石

成功 🔵​🔵​🔴​

ロク・ザイオン
★イージー・ブロークンハートと

(濁った声で、問う)
イージー。
あのうたは、叫んでるのと、本当の歌と、どっち?

…難しい、のか。

(飛んでいようが、此方を引き裂く為には降りざるを得ない
【野生の勘】で攻撃を躱しながら
「轟赫」七十三条を放ち、空を舞う病葉どもを囲い込み追い落とす
その声が神の龍を呼ぼうが、炎は病葉を逃さない
きっと、)
…お前たちは救われない。
(かみさまなんかに、縋るからだ)

…今の、声は、さ。
これは、どっちかな…
…イージー。(焦げてる)(ごめん)

うん。酒、のも。
誰か、歌ってくれるといいな。
とびきり、楽しいやつ。
…悲鳴じゃないやつがいい。


イージー・ブロークンハート
★ロク・ザイオンと。
そーだなあ、人語じゃ歌には聞こえないけど、竜語なら歌かもしれんし。
本当の歌って聞かれると、難しいな。
降りてくる敵の攻撃は…ってうおあ炎!
ロクの炎の包囲網も躱したいけど竜が避けられない炎なんて避ける自信ないでアッツイこれ熱いあかん挫けそう!とっててよかった環境耐性・激痛耐性!最悪耐えます!
追い込まれ落ちてきたところを、急所狙いで一閃に断つ!
楽しく信仰フィーバーしてるとこ、ごめんな。

今の?オレそんな音感良くないからなー。
悲鳴を歌に喩える詩人もいるし、そんなこだわんなくていいと思うよ。
あ、そうだ。
人間系の歌でよければ、これ終わったら竜胆石売った金で酒場にでも行くのはどう?



●可聴範囲外

「イージー」

 イージー・ブロークンハート(硝子剣士・f24563)は隣を見た。
 共に並び立ち、空を見上げているロク・ザイオン(蒼天、一条・f01377)は此方を見ていない。見ないまま、更に言葉を続ける。

「あのうたは、叫んでるのと、本当の歌と、どっち?」

 歪んだ教義を持ち続け、遂には自分たちが信じるかみさまと同じ姿に成り果てたものの声に規則性はない。何かを歌っているのか、単に叫んでいるだけなのか。その区別がつけられないイージーは、頬を掻きながら軽く唸り声を漏らす。

「そーだなあ、人語じゃ歌には聞こえないけど、竜語なら歌かもしれんし」

 結論は出せず。判断は難しい。そう答えればいつのまにか隣を見ていたロクと視線が絡み、そしてまたすぐに途切れる。

「まあ、どちらにせよ。あの喧しい声を止めるのがオレたちの役目だ」
「……そう、だね」

 唇から漏れるのは、ざらりと濁った鈍色の声。
 自らの喉に軽く触れてから歩みだすロクの少し後ろを、イージーがついていく。
 空に控える信者たちは、地上に二人の影を見つけるとすぐさま空中で体勢を整え。まるで矢のようにまっすぐ向かってきた。
 防御もなにもない。完璧になった姿は強く、そして神と崇める帝竜の加護がきっとあると信じて疑う様子も、同じくない。
 盲信、狂信と呼ぶに相応しいそれを前にして。ロクの視線が剣呑なものとなる。

「気をつけろよ」
「だいじょうぶ」

 短い言葉を交わした刹那、左右に飛び退る二人がいた位置で土が抉れる。飛来した信者の爪は土に汚れ、とらえるべき獲物を逃したとなればまた別の一匹が迫り、連撃のような速度で襲いかかる。
 それを躱すロクの動きに合わせて、揺れ動く編み込まれた髪の先端からちりりと微かな種火の音。

「キュッ、キュルゥウウウウウウウ!!」
「……お前たちは救われない」

 息を吸い込む音は、果たして誰のものだったのか。
 夕焼け色を思わせるロクの髪から、無数の炎の帯が一斉に放たれる。まだ昼間の空を橙に染め上げて、燃える流星が集まってきていた信者たちを閉じ込めるように展開していく。

「あっおい待っあっつ! やべえこれまじ無理かもアチチチ!!」

 当然、その影響を受ける距離にいたイージーにも容赦なく熱波は押し寄せてくる。熱波だけならいいが、普通に火の手も回ってくる。
 逃げようにも逃げ場はなく、できることと言えば耐えることのみ。
 けれど彼には彼の仕事がしっかりとあり、それを全うするべく剣を抜いた。透明な、硝子で形作られた透明な刃と心臓から突き出した硝子片がロクの色に染まる。

「楽しく信仰フィーバーしてるとこ、ごめんな?」
「ギ、」

 一閃が走り、イージーの剣が信者の首を跳ね飛ばす。上げようとしていた鳴き声だかも、最初の一音を最後に途切れて消えた。
 彼の持つ魔剣は切れ味良く、そしてとても衝撃に弱い。一太刀を入れた途端に砕け散り、けれどそれは轟赫に巻かれて落下した信者たちを裂く。
 本来であれば敵味方の区別がないそれも、敵のほうが圧倒的に多いこの場では便利なものだ。
 七十三条のほうき星は一切の容赦なく狂信者を地上に堕とし、空へと戻る前に切り伏せられていく。
 這いずり、後少しで手が届くといった所で息絶え燃えていく偽りの竜を、ロクは無言で見下ろしていた。

(かみさまなんかに、縋るからだ)
「キュル……ルル……」

 彼女の嫌いなものは、彼女の嫌いなものを信じたままで逝ったのか。
 わからないけれどそれは最期に、か細く一声を響かせてから炭へと変わっていった。

「今の、声は、さ……これは、どっちかな……」

 イージー、と気配のする方を見たロクは一旦固まる。そこにいたのはよく見慣れた顔と姿の男が、程よくこんがりと焼け焦げた姿だったからだ。レア好きには好まれそうな火の通り方をしている。
 ごめんと、視線で訴えてくるロクにひらひらと手を振って。イージーは焼け死んだ信者の体を剣先で横にどかす。
 その勢いでころんと、二人の前には美しく輝く宝石が現れた。

「今の?オレそんな音感良くないからなー。悲鳴を歌に喩える詩人もいるし、そんなこだわんなくていいと思うよ」

 宝石を拾い上げ、空に翳したイージーがにっと口端を上げる。

「そうだ。人間系の歌でよければ、これ終わったらこれ売った金で酒場にでも行くのはどう?」
「……うん。酒、のも。誰か、歌ってくれるといいな」

 とびきり楽しくて、耳に優しい歌がいい。
 そのためにはもう少し働かなければいけないが、後の楽しみができた分心は軽い。
 悲鳴は未だ、空より来たりてノイズを広げる。
 二人は最初と同じように並び立つと、熱の余韻を残しながら次の戦場へと駆け抜けていった。








 WAVE CLEAR!!

 *Reward*
 ロク・ザイオン
 『歌唱』秘めし快晴の魔石

 イージー・ブロークンハート
 『残留』秘めし赤茶の魔石

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

霑国・永一
はぁ~~ここでも教徒なんてのは居るもんだねぇ。
ま、UDCアースの邪教連中と大差なんて無い無い。オブリビオンのも人のも宗教なんてのは総じてロクでもない。
それじゃ、頼むよ《俺》
『そういうこった!絶滅しやがれクソども!』

狂気の戦鬼を発動
常時高速移動で動き回り、突風に対しては衝撃波をぶつけ相殺、またはそのまま突破させて敵を吹き飛ばす
加護が地面に満ち溢れた場合は、その上に立つ敵を衝撃波で地面ごと吹き飛ばして恩恵を受け続けることが出来なくさせる
うろこは衝撃波を集中で連射して砕く

『ハハハハッ!こんなそよ風じゃあ涼しいだけだぜ!お礼に俺様からも五体が千切れるほどの暴風くれてやる!死ねッ!』
宝石も有難く戴くよ


ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎

…狂信者かぁ…
ある意味今一番相手したく無い手合いねぇ。
状況が状況だし、天井知らずにテンションブチ上がってるに決まってるもの。

聖属性なら退魔系はあんまり効果なさそうねぇ。
なら、アンサズ(聖言)とエオロー(結界)で○オーラ防御を展開。同じ聖属性の防壁なら多少は止められるはず。拮抗させるのは短時間で十分。隙を〇見切って●明殺で○カウンター叩き込むわぁ。
刻むルーンはカノ・シゲル・ウル。
「火力」と「エネルギー」をもって「突破」する――どれだけ鱗が硬かろうと、〇スナイパーの鎧無視攻撃でブチ貫いてやるわよぉ。

…あなたたちには悪いけど。
――アタシ、大っ嫌いなのよねぇ、ドラゴン。



●聖邪混戦

「オブリビオンのも人のも、宗教なんてロクでもないけど」

 これはまた上質なロクでもなさかもしれない。
 霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)の軽口が聞こえたのか、近くに立っていたティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)が同意を零す。

「ロクでもない上に、状況が状況だもの。天井知らずにテンションブチ上がってるに決まってるわ」

 乱れた前髪を整えるティオレンシアの姿は些か汚れており、既に何匹かの信者を相手にした後だということが目に見えてわかる。
 帝竜の復活はそれを信奉する信者たちにとって、何よりも嬉しい知らせだったはずだ。そうでなくとも竜と化した自分の姿にまず喜んでいるだろうから、嬉しくもない倍々ゲームで戦意が上がってしまっているのは想像に難くない。
 その様が、ティオレンシアの神経に障って仕方がない。

「アタシ、大っ嫌いなのよねぇ、ドラゴン」

 蕩けるような甘い声が紡ぐには物騒なセリフに、永一は楽しげに口笛の形に唇を動かす。動かすだけで、吹きはしない。
 不意に、頭上に影が差すのに気づいて彼は後ろに大きく跳ぶ。案の定、隙を狙っていた信者が幸いとばかりに腕を振りかぶって飛来してきたが、折角の奇襲も無駄に終わった。
 盗人に気配を悟られずに近寄るなど、そう簡単にできることではない。
 しかし仕掛けてきた方も図太いようで、すぐに標的を側にいたティオレンシアへと変える。

「手助けはいるかな?」
「ありがと、でも大丈夫よぉ」

 剣呑さを引っ込め、より蜂蜜のように甘くなった声と共に心内を悟られぬ笑顔を貼り付けて。向かってくる信者を見据える瞳は、ほんの僅かに赤色に光る。
 腐っても教徒。聖なるものへの耐性はそれなりに強いだろうと、ティオレンシアはそれを逆手に取って自らの身をオーラで纏った。
 聖言、そして結界の意味を持つルーンで構成された壁は同属性を持つ信者の攻撃を食い止め、鋭利な爪を彼女に届かせることはない。

「あなたたちには悪いけど。そうねぇ、ドラゴンなんかを信じたのが悪いのよ」

 阻まれてもなお食い下がろうとする信者の前で、急にオーラが霧散する。壊されたのではない。それはティオレンシアが反撃の準備を整えたという合図。
 敵が攻撃を仕掛けようとする、その一瞬こそが最大のチャンスであることを。彼女も彼女の愛銃もよく分かっているのだ。
 ギリギリで信者の爪を避け、黒曜石の名を冠したリボルバーの銃身が爬虫類めいた顔の額へと照準を合わせ、引き金が引かれる。
 弾丸に刻まれたルーンは「火力」「エネルギー」そして「突破」。どんなに強固な鱗に守られていたとしても、一点突破の銃弾を至近距離で受ければ防ぎ切ることは難しい。
 ましてやそれは、防御の尽くを突き破る力あるもの。
 鱗を砕かれ、弱点ごと頭部を撃ち貫かれた信者はそのまま後ろに倒れ込んだ。

「こりゃすごい、と。……さすがに増えてきたなあ」

 今度こそ口笛を一つ吹いて、永一は被っていたフードを下ろす。
 気がつけば騒ぎを聞きつけたのか信者の数は増えており、肩を解すように回した彼の口元には深い笑みが刻み込まれている。

「それじゃ、こっちも始めるか。頼むよ、《俺》」

 ぽつりと呟きが漏れるのと、信者の群れが襲いかかるのはほぼ同タイミング。けれどその瞬間、既に永一の姿はそこになかった。

「――ハ、そういうこった!」

 さながらそれは、突風のごとく。
 笑みはさらに深くなり、狂犬のように尖った犬歯を剥き出しにした男が立っていた。
 永一の別人格であるもう一人の男は戦場にいることが何よりの喜びだといいたげに、自らの速度にまったくついてこれなかった信者たちを嘲って笑う。

「どいつもこいつもおっせえなあ! ボヤボヤしてると、俺様に全部喰われちまうぜ?」

 挑発が伝わったのか、動きを止めていた信者たちが永一を眼下にしたまま大きく羽ばたく。生み出された聖なる突風が彼を打ち付けるために吹き荒れるが、それすらも彼にとっては驚異とはなりえない。

「そんなそよ風程度で俺様をどうこうできるわけねえだろ? そら、こいつはお返しだ!」

 永一の手が翻り、そこから放たれた衝撃波があっけなく突風を相殺する。更にそれだけに留まらず、勢いを残したままの暴虐な力は信者に直撃してその体を紙くずのよう千切っていった。
 気を取られた周りの信者が動き出すよりも速く駆け、もはや常人の目にはとらえきれない速度を手に入れた永一にとって。そこから先は少し的の多い射的ゲームのようだった。的とされた側ができることは、ただ無様に逃げ惑うか玉砕覚悟で攻撃をしかけることの二つに一つ。
 翻弄され、わけも分からぬまま五体をバラバラにされる同胞を見、距離を置こうとしたものもいるが。今度は背後からティオレンシアの銃弾を受けて物言わぬ姿にされる。

「楽しそうだけど、私にも少し残しておいてほしいわ?」
「ハハハハ! 悪ぃが約束はできないな。欲しけりゃ俺様から奪っていってくれよ」

 楽しげに穏やかに、しかして交わす会話の不穏さを不幸な信者たちはどんな気持ちで聞いていただろうか。なんとか遠ざかろうと背中を向けた瞬間、背後から心臓を撃たれて傾ぐ体は衝撃波で上空に飛ばされる。
 ばらばらと、血と肉が降りしきる中。輝きを放つ物体を目ざとく見つけた永一が手をのばす。

「そうそう、これがないとな」

 彼らにとってはこの戦場で戦う一番の目的だろう。光放つ宝石。
 今は血で濡れてしまったそれを手に入れる顔は、とても満足げなものだった。








 WAVE CLEAR!!

 *Reward*
 霑国・永一
 『傲慢』秘めし翡翠の魔石
 
 ティオレンシア・シーディア
 『報復』秘めし黄色の魔石

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

赤星・緋色
どこかの店長さんから助けを求める声が聞こえる気がする
やっぱきのせいかな!

皆殺しの平y…荒野のなんやかんやを退治すればいいんだね
空からの攻撃ならまずスモーク(グレネード)の出番かな
相手の攻撃が見えたらスモークで視界から消える方向にスカイステッパーでジャンプ
降下してきた相手の上を取ってからの技能踏みつけ攻撃
硬いなら鎧砕き当たりの技能も使えそうかな
竜の鱗っていったら逆鱗的なあれと同じで、一つだけ色とか違うのは分かりやすいね
上手く見切って突いていこ

ああ、飛ぶより跳ぶのが有利な点はね、急な方向転換もできるってこと
空中での鋭角な方向転換とかかなら負けないよ
それに空中戦なら神罰の吐息の強化も使えないしね



●トリッキー・ステップ

「どこかの店長さんから助けを求める声が聞こえる気がする!」

 やっぱ気のせいかな! と独り言にしてはボリュームの大きめな声で朗らかに笑っているのは赤星・緋色(サンプルキャラクター・f03675)。ちなみに彼が言うところの店長さんというのは、この戦場に彼を送り込んだグリモア猟兵のことである。
 この時点で気のせいということはまずないのだが、基本的に人の話をあまり聞かない言動をしている緋色としては大体通常営業だ。

「ふんふん、空からくるのは少し面倒くさいかな。まあどうとでもなるけど」

 たった一人で空を見上げるのも、まるで天気を確かめているかのように軽くて、軽い。
 そんな様子を見ていた信者たちはいいカモが来たとばかりに次から次へと滑空してくるが、どんなに不真面目そうに見えても猟兵。むしろこのタイミングを待っていたとばかりに、緋色の方は右手に持っていたスプレー缶のような形状をした物のピンを抜いた。
 足元に転がった缶からは、一気に大量の白煙が吹き出されて地上にいるはずの緋色を隠す。
 スモークグレネードを焚いた緋色の足取りはさらに軽く、煙に巻かれながらも攻撃をしようと突っ込んできた信者をスカイステッパーで回避すると。勢いそのままに飛び上がった。

「あー、こういうの。昔のゲームで見たことあるや」

 脳裏に浮かぶのは、主人公が敵を踏みつけて倒すタイプのレトロゲーム。
 可愛らしいドット絵で表現されていた光景も、実際はこうだったのかと思うと感慨深く。
 余所事に頭を向けながらも緋色の体は機敏に動き、上を取った信者の項へと靴底と体重をぶつけていく。
 運悪くそこは弱点となる色違いの鱗が光る部位で、軽そうな体重から繰り出される鎧砕きの踏みつけは硬い鱗をいともたやすく破壊してしまった。

「まずは一匹ーっとおおおお!」

 煙の中に消えていく信者を見下ろし、ひと仕事終えたとかいてもいない汗を拭う素振りをしていた緋色の上空に影。
 翼を広げ一気に距離を詰めてきた信者の足爪が彼の頭をとらえ……たかと思いきや、後少しの距離にあったはずの赤い頭は急速に引っ込んで再び白煙が狙いをあやふやにさせてしまう。

「そうそう、飛ぶより跳ぶ方が有利なこともあってね」

 消えた影を探す信者の背後から、声。
 緋色がやったのは手品でも魔法でもなく、ただスカイステッパーを解除して落下。地上に辿り着く前に再び空中を蹴って低空を移動した後、信者の背後を取る位置から空へと駆け上がっただけのこと。
 それは緋色にできて、翼を持ち空を飛ぶ信者には中々真似のできない芸当だ。

「こうやって急な方向転換とかできることなんだよねー」

 飛行能力では勝てなくとも、空中での小回りがきいた動きでは負けはしない。
 見上げてくる信者の次なる弱点部位は、右肩。素早い見切りで赤い鱗の位置を特定した緋色の足が、肩の骨ごと鱗を粉砕してまた一匹と地に沈める。

「よーし、どんどんいってみよー!」

 明るい声の割には、やっていることは的確に敵の命脈を消し去る頭脳プレーのそれ。
 見た目にも脳天気な声にもそんな気配を一切乗せないまま、新しいスモークグレネードのピンを外した緋色は、それを手近にいた信者の顔面に勢いよく投げつけた。








 WAVE CLEAR!!

 *Reward*
 赤星・緋色
 『翻弄』秘めし赤色の魔石

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴィクティム・ウィンターミュート
いいね、面白くなってきた
信仰者の抱く信仰ごと叩き潰すってのは実に気分が良いもんだ
上から見下ろしてんじゃないぜ
直ぐに俺と同じ…いや、俺より下にさせてやるからよ

まず第一段階
右腕の仕込みクロスボウで牽制射撃、影矢のように左腕のワイヤーアンカーを射出し、肉体に食い込ませる
ワイヤーを高速巻き取りすると…向こうが地上に引き摺り下ろされるって寸法さ
龍でも出すかい?
ンッンー、その脚本は無しだな
『Dirty Edit』
お前にウィズワームは分不相応だ
小さい蛇でも出しときなよ
さて、それでもお前はそいつが無敵だって、思えるかな?
この手合いは一度崩れると脆い
打ちひしがれてる間に弱点を見つけて、潰して終いにするよ



●冒涜者

 戦場は混乱を極めている。もっとも、主に混乱を来しているのは猟兵たちではなく信者側の方だ。
 おそらく、彼女たちには自信があったのだろう。復活した帝竜、そして自らも神と同一の姿となり。手に入れた力で神に歯向かう愚か者を滅殺すると、そういう算段ができていたはずだ。
 しかし蓋を開けてみればどうか、同胞とも言える分体は瞬く間に撃ち落とされて。圧倒的有利を得るはずだった数の暴力も、最初ほどの勢いはない。
 それでも彼女たちに撤退という文字はないし、またはそこまで考える知能も既に失われている。
 その心を支えるのは、純粋な信仰心だ。
 今、それすらも狙われているということに、気づかぬまま。

「いいね、面白くなってきた」

 口元に軽薄な笑みを浮かべて、ヴィクティム・ウィンターミュート(End of Winter・f01172)は空を見ている。
 視線の先では空を置い尽くしていたはずの群れが、今はだいぶ風穴を空けられて蠢いていた。姿形は竜か、蜥蜴に近しいものとなっているせいで表情は読めず、ただ探るように彼を見下ろしている。

「可哀想に、そんな所にいるから現実が見えてないんだろ」

 すぐに自分と同じ、いやそれよりも低みへと引きずり落としてやる。
 我ながら優しすぎると肩を竦める男の、視線だけはこの戦場に来たときから一切色を変えていない。
 獲物を捕捉し、狩りのシミュレーションを組み立てたヴィクティムにとっては。もはや信者が自分を狙って飛来してくる時間すら惜しい。

「上から見下ろしてんじゃないぜ? ま、せっかちな男は嫌われるんだが……今は許してくれよ」

 空へ向けた右腕からクロスボウが放たれ、集まっていた信者たちが散らばる。矢を受けたものはいないようだが、元よりそれは牽制用であり。哀れな犠牲者の選定用の一矢でしかない。
 クロスボウの存在を警戒していた信者の一匹を見つめ、右腕をチラつかせるヴィクティムの左手がまったく別の意思を持って動いた。

「ギュ! キュルルルル!!」
「ハハッ、いいぜ堕ちてこいよ!」

 視線を合わせたのは他所へ意識を向けさせないため。右腕に注意を引き寄せ、その間に左腕から射出されたワイヤーアンカーが信者の足に絡みつき。鱗の隙間に引っかかったアンカーが肉体に食い込ませてその自由を奪う。
 羽ばたこうと翼を広げる動きを許さず、高速で巻き取られるワイヤーは信者の体を地上へと引きずり落とし。土に汚れて這いつくばる姿を、ヴィクティムはいっそ穏やかにもとれる笑顔で出迎えた。
 腕をついて体を起こそうともがく信者はヴィクティムを睨みつけ、爬虫類の目が怪しげな光を放つ。

「おっと、竜でも出すかい?」

 己の思い描く絶対なる存在、神竜をこの場にて具現化し、使徒は高きものである自らを地上まで堕とした不敬者に捌きを下そうとする。
 けれど彼は涼しい顔のまま、夜色の指を一本立ててあざ笑う。

「ンッンー、その脚本は無しだな」

 右腕を差し出し、軽く招く仕草。
 誘われるように引きずり出されていくのは、それを思い描いていた信者の期待とはまったく異なる姿の「何か」。
 神を慕い、神を信じ、神に殉じた自らの心に常に存在していたもの。
 それをヴィクティムは容易く歪め、潰し、くしゃくしゃにして見せつける。
 今、彼女と呼ばれる存在だった異形の前には、人の一人も噛み殺せなさそうな桃色の小さな蛇がのたくるだけだ。

「可愛いもんだな。ま、お前にウィズワームは分不相応だ」

 それをしたのは、信者ではなくヴィクティムの侵食。姿を変えられた神竜は、それでも信仰の力が確固たるものであれば再び元の姿を取り戻せただろう。
 そうならなかったのは、ただの蛇より貧弱になった理想の神を、誰よりも生み出した本人が信じられなかったから。
 あまりにも想像に、理想にそれは遠かったのだろう。桃色の蛇はすぐに地面の上で溶け消え、その痕を愕然といった様子で見ていた信者の頭をヴィクティムの靴底が撫でて、押す。

「ギィ、ギギッ……!」
「消えちまったな、お前のカミサマ」

 背中に見える血色の鱗を、エクス・マキナ・ヴォイドの切っ先が的確に貫く。
 間際の痙攣を走らせ、それから動かなくなったことを確認したヴィクティムが再び空を見る。
 その光景を見ていたのだろうか、見下ろす視線が怯えを含んでいるように感じられて。

「―――」

 意思と信仰を穢すものは次なる堕落者を求めて一歩を踏み出した。








 WAVE CLEAR!!

 *Reward*
 ヴィクティム・ウィンターミュート
 『侵食』秘めし赤黒の魔石

大成功 🔵​🔵​🔵​

輝夜・星灯
元宗教家か
正直常なら折りが悪いと避けようが、此度は重畳
どうせ倒さば進めないなら、遠慮も無しに薙ぎ払える
蹂躙だ

風が武器とは面倒なものだね
不可視のものは回避手段が限られる
ならばそちらに手を割くよりも、当たった方が早いだろう?
痛みなんかどうだっていい
殺す相手を見据えられれば

自身の周囲に狙いを定め、展けし術べは〝高天原の瞬き〟
先ずはその翅堕としてやる
届く範囲へ虱潰し
降らせるのは無数の星彩
墜ちてこい、醜い人の成れの果て
此処に墓場を誂えてやる

信念を語ることも、救いを騙ることも出来ない躯
地に落ちたそれを踏みしめて
色濃く映る鱗を、その上から――突き刺す

もうお休み
お前達の神様も、すぐ其方に向かわせるから


アネット・レインフォール
▼心情
ふむ…龍を神と崇める者達か。
そうした者達もいるのだな。

古来より竜は力の象徴などに例えられるが…
こうも理性を失っては魔物と変わらないな。

心の拠り所にした理由は推測の域を出ないが
せめてもの慈悲だ、ラクに往けるよう手向けるとしよう。

▼POW
先ずは葬剣を無数の鋼糸状にして周囲に展開。
必要なら網として変化させ絡める事で更に敵の行動を阻害させる。

基本はなるべく敵が集まっている所を狙い
霽刀を手に範囲攻撃で【夢想流天】

鋼糸や網で上手く機動力を阻害できれば
急所を狙うのは容易いが、網にUCの闘気を
流し込んだ方が効率はいいかもな。

他と連携時は、時間を稼ぐ等のフォローぐらいは行おう。

連携、アドリブ歓迎



●眠りに寄せて

「ッう……!」

 上空から突風を打ち付けられ、長い銀髪が宙に舞う。
 輝夜・星灯(ひとなりの錫・f07903)が見上げるソラには、未だ狂信を歌うものたちが蔓延り青空の色を容易に見せようとしない。
 羽ばたきから生み出される風は強く、細身の体に次々と赤い線を引いていくが、彼女の足はしっかりと地面に立って倒すべき相手を。殺すべき標的を見据えている。

「いつまで、そんな所から此方を見ている……?」

 声をかけてみても、返事はない。信者たちは星灯がなぜ自分たちの攻撃を甘んじて受けているのかわからない。分からないが、このままなら程なくその体は弱りきるだろう。
 そうすれば後は地上に降り立ち、安全に屠ればいい。そんな考えがあるのか、それとも血の匂いに惹かれたのか、星灯の周りを囲むように羽音は増えていく。
 だが、それを見る彼女の表情には絶望も焦りもない。むしろ、流れとしては好都合だ。

「まあ、そう急くな。今すぐに、此処に墓場を誂えてやる」

 ざあ、と不意に風が吹き抜けた。涼しく、戦闘の熱を全て取り払ってしまうような。例えるなら雨が降る前のどこか濡れた空気。
 ついで信者たちが感じ取ったのは、何かが上から降ってくる気配。自分たちがいる空よりもずっと、ずっと遠くの星宙から何かが来る。

「――、墜ちてこい、醜い人の成れの果て」

 星灯の瞳に、先程まで視界を締めていた敵の姿はない。代わりに見えるのは、遥か天上より降り注ぐ幾筋もの光の雨。
 空を白光に染め上げ、呼び声の主を求めて地上を目指す光は。まるでそのついでとでもいうかのように信者たちを貫き地面へと強制的に叩きつける。
 回避を取ろうにも、光の矢は刹那の速さで絶え間なく。その上逃げ惑う姿を追いかけるように曲りくねる。地面に伏せたその背中へも容赦なく襲いかかって翼を焼き付け、空へ戻る手段を失われた哀れな姿が地面に転がる。
 
「……やれやれ、際限がないね」

 光が収まり、見上げればまた新手の姿。再び彼女を傷つけようという意思をもって、風孕む翼が広がり。
 ――今度は空を、地上から降る銀色の細い雨が覆い尽くした。

「防御より、攻撃を優先するのも一つの手だが」

 背後から星灯に声をかけつつ近づいてきたアネット・レインフォール(剣の異邦人・f01254)は、彼女の姿を見て軽くため息をついた。
 その一方で彼が空に巡らせた鋼糸は互いに組み合うよう形を変え、網目状を作って漁のように信者たちを抑え込む。

「見ている側の心臓には悪いな」
「不可視の風に手を割くよりも、当たった方が早いだろう?」

 効率重視と言えば聞こえがいいかもしれないが、自らの負傷を代償にする戦い方はあまり手放しで褒められたものではない。
 最初は離れた場所で戦っていたアネットがここまで移動してきたのは、凛と立ちながら傷つく姿をさすがに見過ごせなかったからだ。

「悪いが少しお節介な真似をするぞ。二人ならより効率もいいだろう」
 
 彼の手に握られているのは金を飾った黒い剣の柄。世界が歪む夕暮れの名を持つ葬剣は様々な姿を持つことができ、こうして敵を絡め取ってく鋼糸の網のその力の為せる技だ。
 制空権を侵食され、徐々に行き場をなくした信者たちが一箇所に集まっていく。無理矢理に突破しようと鋼糸に張り付き、もがく度に傷だらけになっていく姿に理性的なものは感じられなかった。

「古来より竜は力の象徴などに例えられるが、これでは魔物と変わらないな」

 それでも、元は謙遜なただの聖職者だったはずだ。祈りの対象が歪んでいたとしても、信仰そのものに嘘はなく。だからこそこうなってしまったのだから。
 アネットはできるだけ彼女たちが苦しまずに、安らかに逝けるようにと目を伏せる。
 星灯が光を喚んだときのように、冷たい空気がその場を抜ける。けれど今度のそれはどこか爽やかで、安堵を感じさせるもの。

「これが、せめてもの慈悲だ」

 夢想流天。アネットが纏う闘気は荒々しさのない、凪のように静けさを感じさせる。葬剣を伝って鋼糸の網に広がっていき、信者たちの体へと流れ込む力は。痛みや苦しみを与えること無く、存在の根源たる「生命」のみを破壊する。力を失い落ちていく竜の雨は既に意識をなくしたものが殆どだが、一部は地面に堕ちた後も生きているようで身動ぎを見せた。

「ああ、これは楽ができてしまったね。私も働くよ」
 
 星灯が冬の冷えた空色をした大太刀を抜く。
 自分が堕とし、悶える信者の背を踏みつけて。後頭部に見えた赤い鱗を貫くと足元には赤い色が広がった。
 その様子を見ていたアネットも夢想流天を込めた愛刀「霽刀」を持ち、そこら中に堕ちて散らばる信者の生き残りを見つけては静かに命脈を絶っていった。
 一度は静寂を呼び込み、けれど見上げればすぐに、次の群れが飛んでくるのが見える。

「キリがないね」
「数だけが取り柄のようなものだ。あいつらが集まる前に、君も傷の治療をしたほうがいい」
「……そうするよ」

 息を吐くように笑った星灯の足元で、信者が蠢く。

 ――もうお休み。お前達の神様も、すぐ其方に向かわせるから

 声なき囁きをかけてやり、彼女の刃はまた一人眠りに堕ちるものを導いていった。
 







 WAVE CLEAR!!

 *Reward*
 アネット・レインフォール
 『剣気』秘めし黒紫の魔石

 輝夜・星灯
 『浄化』秘めし薄藍の魔石

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と
ええ、信仰に生きる方々は否定いたしません
ですが、それを利用し、あまつさえ人を傷つける手法に出るのは、いただけませんね

もちろんです、ザッフィーロ
彼らに僕たちの信ずるところを見せて差し上げましょう

「視力」「第六感」「野生の勘」で彼らの急所の把握に努め
ザッフィーロの助言を受けつつ「空中戦」で対空敵体勢を整えます

できうる限り把握と攻撃準備に努め、防御はかれに任せ
ええ、ザッフィーロ
きみの期待に結果でこたえて差し上げましょう

そして「属性攻撃」「範囲攻撃」「鎧砕き」「部位破壊」「全力魔法」をもって
【天撃アストロフィジックス】で敵らを打ち砕きましょう


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

…狂信者、か
人が信仰に希望を見出す事は否定はせん
だが…盲目に縋り他に害を成す者を見過ごすわけにはいかんのでな
…宵、準備は良いか?

空を飛ぶ…か
ならば撃ち落としてしまえばよいのだろう
…宵の隕石ならば容易だろう
攻撃は俺が防ぐ故、宵。頼んだぞ

そう宵の前に立ち手にした盾を構えれば『空中浮遊』と『視力』を使い個体の濃い鱗―急所の把握に努めよう
己と宵への攻撃は『空中戦』にて『盾受け』『かば』い【生まれながらの光】で癒しながら急所の箇所を宵に伝えて行こう
ああ、いつ見ても宵の隕石は美しいな
胆石は肉を切らねば手に入らぬならば其の侭に
次の世があるかは解らぬが、己の心で歩めることを願って居よう



●背中越しの輪舞曲

「人が信仰に希望を見出す事は否定はせん。だが…盲目に縋り他に害を成す者を見過ごすわけにはいかん」

 狂信者たちの群れを視線の先にとらえ、白き司祭服に身を包んだ男は傍らに緩く細めた視線を送る先を変える。
 ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)が見つめる先では、黒衣を纏った逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)の横顔が真剣な様子で敵の数を把握しようとしていたが、地上でそれを行うのは少々難しいと諦め。そこで漸く、空よりも近い距離から自分を見下ろす存在に気がついて笑みを浮かべた。

「宵、準備は良いか?」
「もちろんです、ザッフィーロ。彼らに僕たちの信ずるところを見せて差し上げましょう」

 宵の返事に満足気に頷き、二人は地を蹴って浮遊感に身を投げる。
 地上ではなく空へ、自分たちの領域だと思いこんでいるその場所へ侵攻してきた外敵を排除しようと群がる信者たちだったが、そう簡単に攻撃を許すほどザッフィーロも甘くはない。

「敵は此方に任せろ。攻撃は俺が防ぐ故、後は頼むぞ」
「ええ、きみの期待に結果でこたえて差し上げましょう」

 守るものと打ち砕くもの、それぞれの役目を確認しあった所を割って入ろうと飛び込んでくる敵影。
 それは宵の体に触れることはなく、ザッフィーロの手元から現れる、淡い光でもって形どられた盾に阻まれ大きく弾き飛ばされた。
 宵の前に立ちはだかり、威嚇めいた銀色の眼光が周囲を見回す。

「……なるほど、そこか」

 地上よりも立ち回りが難しい空中を選んだのは、敵の弱点部位をより近くで見定めることができるためだ。
 いかな色味が違うとは言え、あまりにも離れていては見えにくく。かといって滑空攻撃をくらっていては把握もままならない。
 敵陣の真っ只中に飛び込むリスクは当然あるが、それに見合った勝算があってこそのこと。

「大丈夫ですか、ザッフィーロ」
「問題ない。そっちはどうだ」
「ええ、順調ですよ」

 互いに背中を守り合うように重ね、敵がくればザッフィーロの盾がそちらを向いて攻撃を凌ぐ。
 黒衣と白衣を翻し時に離れ、そしてまた寄り添い合う姿は空中でダンスをしているかのように優雅だが。徐々に二人を追い込むように信者たちが近づいてくる。
 さすがに二人だけで挑むには、敵のホームである空は若干厳しいものがあったようで。遂にはその内の一匹が躍り出て、宵の頭上から鋭利な爪を振り下ろした。

「クッ……」
「ザッフィーロ!」

 至近距離からの攻撃に痛みを覚悟した宵だったが、次の瞬間、敵の防御が間に合わないと悟ったザッフィーロが間に入り込み自らの右腕を掲げて爪の一撃を受け止める。そのまま信者の腹部を蹴り飛ばし、よろめいた所で大きくターンをするように体を捻った勢いが側頭部にもう一発、鋭い蹴りを叩き込んで地上に墜落させた。
 それを追うように、ぽたりと紅い雫が落ちていく。

「すみません……ありがとうございます」
「気にするな、其のための俺だからな」

 聖なる光を傷口に当て、暖かな癒やしの力が引き裂かれたザッフィーロの肌を治していく。
 回復をすることは可能だが、代償として疲労感を得るこの方法はあまり回数を重ねられない。
 けれど、空中を舞い踊りながら敵の弱点把握に努めた二人には、自分たちを取り囲む敵のどこを狙えばいいのかが頭に入っている。
 あとはその尽くを、一瞬にして砕いてやればいい。そのための準備も、宵は既に終わらせている。
 舞台はここに整った。

「お待たせしました。さあ、宵の口とまいりましょう――!」

 きらびやかな宇宙を思わせる、星色の杖が天を向く。
 真昼の空が瞬きを光らせ、降り注ぐは無数の流星。聖も邪も関係なく、ただ自らの敵となるものを貫き、打ち砕くための星の雨。
 宵が呼び寄せた天撃は、二人が見抜いた鱗の位置を的確に狙い、打ち砕くと同時に貫いていく。
 力を失いばらばらと堕ちていく様は、儚く。その瞬間だけは確かに、彼女たちが元々はヒトなのだったとザッフィーロは小さく息を吐いた。

「いつ見ても宵の隕石は美しいな。……ん?」

 降り注ぐ光を見ていた彼の目に、隕石の輝きにも負けぬ色で落ちてくる物体が見えてくる。
 空中で取ってみると、どうやらそれは宝石のようだった。
 砕かれた鱗の直ぐ側にあったのだろう、竜の秘宝を握りザッフィーロは宵の側へと戻る。
 その向こうから、次なるはばたきが押し寄せてきているのは、とっくに耳がとらえていた。

「次の世があるかは解らぬが、己の心で歩めることを願って居よう。……宵、まだいけるか」
「当然です。あなたこそ、無理は禁物ですよ」

 守る側のはずが心配されている身は、彼の想いが伝わってくるようでつい口元が緩む。
 大切なダンスパートナーを伴ったまま、二人は再び踊るように空へと身を投げた。








 WAVE CLEAR!!

 *Reward*
 逢坂・宵
 『奉呈』秘めしの銀の魔石

 ザッフィーロ・アドラツィオーネ
 『献身』秘めしの紫の魔石

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

遙々・ハルカ
ワッハハ、なんだアレ、トカゲ人間じゃ~ん
特殊メイクじゃないヤツって新鮮~
なんつーの、「より強いものに」「憧れた何かに」
行き過ぎた先がまァ~オタクらみてェな宗教だわな

つってもさァ、宗教の精神性くらい人間がいりゃ何処でもわかんのよね
折角だからそっちじゃねェ~中身、見せてもらっちゃおっかな
《しらはの汚辱》
よろしく、天使ちゃん
亡霊になった挙句に人間やめたカワイソーな奴ら
残念、人間以外じゃ勝てねェ~よ

クソ硬ェ敵どうにかするよーな派手なのは他の奴らがやってくれっから
オレは身動き出来ない内に一枚ずつちまちま剥がしていくワケよ
わかる?
ハイまたいちま~い
急所とやらはドコかな~
ア?
あはは
何言ってっかわっかんねェ~



●酔狂と知的好奇心について

「ワッハハ、なんだアレ、トカゲ人間じゃ~ん」

 草木も枯れ落ちた荒野ではあるが、岩場などの身を隠せる場所はあちこちに点在している。
 そのうちの一つに背中を預け、気づかれぬようにスマホのシャッターを押している遙々・ハルカ(DeaDmansDancE・f14669)は実に楽しそうだ。
 ズーム機能を最大限に使って収めた被写体をにまにま見つめ、彼は身を隠している大きな岩場の影を少しずつ移動して、探し始める。
 群れて行動する信者たちの中で、単独で空にいるものを、彼は探す。

「なんつーの、「より強いものに」「憧れた何かに」行き過ぎた先がまァ~あいつらみてェな宗教だわな」

 語りかける相手もいないというのに、意気揚々と喋り続けるハルカ。いや、それを聞いているのかどうかはともあれ、語りかける相手自体は存在していた。
 それは常に、彼の後ろに在って、静かに佇んでいる。
 むき出しの歯列と縫い目以外に顔のパーツはなく、羽根持つ姿は天の使いを思わせる。もっとも、その羽根に限らず体のあちこちから汚泥を垂れ流し。溶け崩れ続ける姿は天使と呼ぶにはあまりにも異常。

「つってもさァ、宗教の精神性くらい人間がいりゃ何処でもわかんのよね」

 だから、ハルカ自身は狂信者たちが変異したあの姿にあまり興味はない。
 そうこうしているうちに、彼の目はちょうどよく群れから離れた一匹を見つけてしまった。開戦時よりかなりの数を減らしている信者たちは、当初の勢いを無くしつつある。
 そんなタイミングだからこそ、狙うには丁度いい。

「よっし、あれに決めた。そんじゃよろしく、天使ちゃん」

 ハルカの命令を聞き、天使と呼ばれた飼霊は空へと頭を傾ける。そうして、空に浮かんでいる信者へと向けて、何かを高速で飛ばす。
 一瞬の間に信者に絡みついたのは、白帯のようだった。今は泥だか血だか肉だか、正体不明の汚れで見るも無残に穢されて。あっというまに拘束を完成させると、他の信者が気づく前に岩場の裏へと引きずり込んでしまう。

「キュウウウウウ!! キュルルルル!!!」
「わ~、うるせー」

 天使ちゃん、とハルカが声をかければ新しい帯が信者の口を縛る。
 それはヒトであることをやめたものには強力な拘束力を持って、使徒を気取っていた亡霊の動きを完全に押さえつける。

「クソ硬ェ敵どうにかするよーな派手なのは他の奴らがやってくれっから、オレはもっと地道にいこうかねえ」

 本来であれば翼をもいでしまうのが一番手っ取り早いのだが、さすがに竜の翼ともあれば羽根のように簡単に切除するのは難しい。
 仰向けにひっくり返し、大の字に寝転がるように拘束の仕方を変えて。どっかりと腹の上に座り込んだハルカが、サバイバルナイフで信者が着ていた服を引き裂いていく。
 曝け出された肌は全身鱗で覆われているが、腰の細さや胸元にある小さな膨らみなどはヒトの形をしていた頃の名残だろう。
 
「さてさて、弱点とやらはどっこかな~」

 鼻歌交じりでナイフを首元に当て、鱗の隙間に差し込む。そのまま反対側に押し上げるように力を込めると、硬い鱗は根本からメリメリと音を立てて捲れ上がった。
 完全に捲った所で彼が見たのは、硬くて堅牢な鱗一枚の先に隠された赤い肉。
 二足歩行を維持しているのと、顔と違い手足の関節には変形が見られないことも含めて、それはどことなくヒトを思わせた。

「うわぬるぬるしてて剥がしにくいな、このっ、このっ」

 捲れた鱗を掴んで引っ張ると、根本が肉を伴ってぶちぶちと千切れていく。
 暖かい血に濡れたそれをゴミのように横へ捨てると、後は若干作業は楽になる。なにせ、鱗が千切れた部分を取っ掛かりに指を突っ込めばナイフを使わないで済むからだ。

「グ、ギュ……ギュウ……!」
「あはは、何言ってっかわっかんねェ~」

 塞いでるんだから当然かとハルカが笑う。もっとも、口を塞がれていなかったとしても、その鳴き声の意味を知る事はできない。
 あるいは、分かった所で何も変わらない。
 コツを掴んだように鱗と、それに付随する皮膚を千切っている。受ける苦痛は相当のものなのだろう。何度も信者は体を震わせるが、拘束が緩む気配はなく。
 そして彼は、薄々気がついている。

「うーん、見つからねえな~」

 自らが座り込んでいる腹部。おそらく、弱点である部分はそこにあるのだろう。
 けれど、まだ。そこに行くには早い。

「トカゲ人間だけど心臓は人のままなのかな? ほらね、弱点どこかわからないからね、ついでにね」

 誰に言うでもない言い訳と、誰に聞かせるわけでもない鼻歌。
 探求者の手が外皮を剥がされ悶え苦しむ信者を、死という安息で救うのはもう少し先のことになりそうだ。
  







 WAVE CLEAR!!

 *Reward*
 遙々・ハルカ
 『深淵』秘めし泥色の魔石

成功 🔵​🔵​🔴​

アダムルス・アダマンティン
神龍とは、この世界の神の一柱か
己が身を擲って、人の身を変えようなどとは愚かしい
竜神が聞けば怒り狂おうものよ。神は神として、人は人としてあり続けなければならぬ
その理を超えんと願うのは傲慢であり、種への侮辱に他なるまい

すでに廃されし身。なれどこればかりは看過できぬ。
存在感を放ち、我が神威を顕す

貴様らの生み出した神は見事なものだ。しかし貴様らは神を使役し、その力を我がものの如く扱っている。そこに信仰心はすでに亡い
“汝、試すことなかれ”。神の信仰者を自称しておきながら、神の力を試さんとする貴様らには涜神者の名が相応しい

刻器、針撃

揺らいだ神龍の先。涜神者どもへと地獄の炎を放ち、急所を砕こう


兎乃・零時
アドリブ大歓迎

ふっふー、俺様も此れで強くなってるんだ
そう簡単に負け―――
ぎゃー!?突風来たー!?

UCで呼んでいた「紙兎パル」

そのパルに空中からの攻撃は【拠点防御・オーラ防御】で防いで貰う
俺様自身も【激痛耐性・気合】で耐えるぜ!

硬い鱗に覆われてるってんなら
まずは光【属性攻撃】の魔力砲で相手を包み込む感じの大きさでぶっぱなす!
その隙に、パルには上手い事【学習力】して相手の反応を見て貰い
急所を見つけたら、その一点を射抜く様に【串刺し】ように
俺様は光【属性攻撃・魔力溜め・限界突破・全力魔法】な一点集中型の極大光線《オーバーレイ》を「極光の古文書」を魔法陣代わりにしてぶっぱなす…!

パルも援護頼むぜ…!



●くだされるもの、くだすもの

「ぎゃー!?」

 兎乃・零時(そして少年は断崖を駆けあがる・f00283)の上げた悲鳴が戦場に響く。かけずり回る彼の背後には、信者の群れが親ガモに続く子ガモの勢いで彼の後を追ってきていた。ほのぼの感がゼロを振り切ってマイナスに食い込むくらいの光景だ。
 まだまだ未熟な魔法使いも、多くの戦闘を経験してきて着実に力をつけてきている。その自負は決して驕りではなく、けれども悲しいかな青の反射光を纏う宝石の髪は帽子の縁から覗く分だけでも目立っていたらしい。

「光り物に寄ってくるのはカラスとかじゃないのかよー!」

 零時を追い回す信者の飛翔はただ飛ぶためのものではなく、羽ばたきが生み出す聖なる突風を次から次へと小さな背中にぶつけようとしている。
 乱打のような風圧は凄まじいものとなっているけれど、今の所逃げる零時は直撃を免れているようだった。
 その代わり、時々地面の出っ張りに足を取られてはすっ転び。すぐに立ち上がっては涙が形を取る前にぐっと堪えて、また走り出す。

「うう、いてえ……けど、やられっぱなしな俺様じゃないぜ! パル!」

 呼び声に応えて、彼を狙う信者の視界にひらりと白い紙片が割って入る。
 長い耳と丸い目をした式神、「パル」と名付けられた紙兎は空中を自由に泳いで突風を零時の代わりに受け止め。彼に攻撃が届くのを防ぎながらも注意深く観察を続けている。
 地上では確認することが難しい弱点も、同じ空からであれば見つけやすい。
 当然目障りな式神にも信者たちの敵意は向くが、それを許すほど零時も呑気ではない。
 自分への注意が逸れたと見るや、光を込めた魔力砲を空へぶっ放し。明るさで視界を覆った後には、直撃を受けた信者が全身を焦がして濁った悲鳴を上げる。

「よっし、あとはパルがあいつらの弱点を見つけてくれれば……って、うわわわ!」

 手応えを感じつつ、後ろにばかり気を向けていた零時はふと前を見る。そこには大きな岩が、彼の進行方向を塞ぐように鎮座して道を塞いでいた。
 右に避けようにも左に避けようにも距離がある。いっそこのまま魔力砲で吹き飛ばしてしまうのが一番早いか。

「――嘆かわしいものだ」
「えええええええ!?」

 結果、岩のほうが先に吹き飛んだ。
 破片と言うには大きすぎる岩が此方に向かってきて思わず零時は立ち止まるが、それがぶつかる前に伸びてきた太い腕が彼の首根っこを掴んでひょいと引き寄せる。

「神は神として、人は人としてあり続けなければならぬ」

 その理を破り、ヒトの身を神と同じものへと変じさせるというのがどれほどの愚行なのか。よく知る男は土煙をもう一方の腕で振り払う。
 アダムルス・アダマンティン(Ⅰの“原初”・f16418)は神である。今はその力を殆ど失っているが、内に秘めた精神性には何の陰りもない。
 ゆえに、彼から見た信者の姿には信仰をもはや感じられないと憤る。
 岩を砕いて現れたアダムルスを新たなる脅威と認めた信者が、自らが思い描く神の形をその場に描く。
 硬質な鱗、全てを射抜く眼光。咆哮は空気を痺れさせ、いかにも「神」としての特徴を持った姿に零時が驚いて肩を跳ねさせるが。その頭を帽子ごとアダムルスの巨大な手が宥めるように軽く叩く。

「貴様らの生み出した神は見事なものだ。しかし貴様らは神を使役し、その力を我がものの如く扱っている。そこに信仰心はすでに亡い」
(あっちも怖いけどこのおっちゃんも普通にこえー……)

 自らが信じ、心身を捧げると誓ったはずの神を武器として扱う様がよほど気に入らないのか。覇気にも似た威圧を受けて偶像の新龍がたじろぐ。正確には、それを生み出した信者当人が圧倒されているのだが。真っ向から信仰心を否定されて逆上する程度の知能はあるはずだと言うのに、アダムルスの神威はそれを許さない。
 緊張感がその場を支配し……けれど刻はすぐに動き出した。
 アダムルスに気を取られている間に観察を終えたパルが、高速で信者たちの体の一部を突くように飛び回り、二人に弱点の場所を知らせていく。

「サンキューパル! おっちゃん、あいつらの弱点が見えたぜ!」
「承知した。狙う場所がわかれば、あとは造作もない」

 零時が、その身から溢れそうな魔力を白光を纏いながら溜め込む。
 アダムルスが持つ獄炎の大鎚も、火力を上げて場の空気を煮え立たせる。
 異常を察知した信者たちはざわめくが、すでに彼女たちの運命は決していた。

「ゆくぞ、涜神者。――刻器、針撃……!」

 アダムルスの声は地を這うように低く、振り上げた大槌を地面に叩きつける。
 足元を揺らす衝撃はそのままひび割れを信者たちの下まで走らせ、赤く燃える隙間から飛び出した赤黒い火炎はまず偶像の竜を取り巻いて燃え上がらせた。
 彼の威圧に押されていた以上、信心とは名ばかりの想像から生み出された神へ対する疑念はいやでも植え付けられてしまい。揺れる心象を焼き払った炎はパルが指し示した弱点を燃やしていく。

「俺様も行くぜ! ありったけ、残さず喰らえ!!」

 零時が取り出したのは一冊の本だ。美しい装丁で身を飾り、今は仄かに輝く古い魔導書。それは空へと放り投げることで空中に固定化され、零時の魔力と同じ色を放つと急速に魔力圧を上昇。
 弾けてしまいそうなキャパシティを内包した途端、信者たちに向けてまばゆく輝く光の直線を撃ち放つ。
 尽くを照らし、瞬かせ、次の瞬間には触れたものを形残さず躯の海へと還す。原初への光。
 零時渾身の極大魔砲は弱点もろとも敵を消し去り、直撃を免れたものもアダムルスの炎を受けるかパルの串刺し光線で鱗を砕かれた。

「やったぜ! ……ってうわ、まだ結構いるなあ」
「案ずるな。数は確実に減っている。じきに、この戦いも終わりが来るだろう」

 アダムルスの言う通り、空には青空が取り戻されつつある。
 一面を埋めるようだった狂信者も、今はかなり数を減らし。あの鳴き声なのか歌なのかも分からない甲高い響きは徐々に鳴りを潜めていく。
 もう一息、もう一息でお前達は負ける。
 声なき宣言を上げるよう、神の右手は雲ひとつ無い青空に地獄を掲げ上げた。








 WAVE CLEAR!!

 *Reward*
 兎乃・零時
 『向上』秘めし新緑の魔石

 アダムルス・アダマンティン
 『審判』秘めし雷光色の魔石

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キッテン・ニコラウス
ふん、全っ然美しくないわね
それっぽい力と姿を得ただけではしゃぐなんてバッカみたい
そんな小物が、私の征く道を阻めると思ってるなら、思い上がりも甚だしいわ

そっちから降りてくるなら好都合、それだけ勢い良く私に向かって来てるってことだもの
つまり、私が放つ【アイス・ランス・ショット】との相対速度が増すってわけ
さらに硬い鱗をブチ抜けるように、普段以上に氷を凝縮して高硬度にしてやるわ
探せば鱗が薄い弱点なんかもあるんでしょうけど……性に合わないわ
相手の一番硬いところを完璧にブチ抜いてこそ完全勝利!
そして私は完全勝利しか求めない!!

さぁ、まとめてかかってきなさい!!全部いっぺんに倒した方が時短なんだから!!



●勝利の女神は自らのために

 大地を、盲信に狂った使徒の名残が埋め尽くす。
 空より来て、自らの傲慢と神たる竜を称える歌を響かせ、歯向かう脆弱な存在を圧殺せしめようとしていた姿はなくなりつつあり。信者たちは残党同士が寄り集まって新しい群れを構築し直している。
 それすらも、猟兵たちの猛攻を受けてすぐに瓦解。再構成を繰り返すことで規模は徐々に縮小の一途を辿っていた。

「ふん、全っ然美しくないわね」

 そしてここにも、信者たちを滅殺するために少女が立つ。
 キッテン・ニコラウス(天上天下唯我独尊・f02704)は夜空色の右目と、覆い隠す金髪の間から炎をくゆらせる左目の両方で敵を睨みつけ、きっぱりと言い捨てる。
 歓喜を持って受け入れただろう姿を一刀両断された群れは彼女の罵倒を理解しているのかどうか、少なくともそこに友好的な反応はない。

「それっぽい力と姿を得ただけではしゃぐなんてバッカみたい。そんな小物が、私の征く道を阻めると思ってるなら思い上がりも甚だしいわ」

 キッテンの口から出てくる言葉は刃のように鋭いが、その実痛烈なほどに正論だ。
 ヒトであろうとそうでなかろうとも、ある程度知性あるものがそこまで言い訳の聞かない現実を言い渡されればどうなるか。
 絶望に打ちひしがれるか、怒り狂ってその発言主を攻撃するか。
 だから彼女は、元はヒトだったクレリックたちは、まとまった数がいることを確認して空を旋回。目標を地上へと定める。

「そうやって馬鹿の一つ覚えしかできないんだからいっそ可哀想ね。けど、都合はいいわ」

 わざわざ自分が出向いていかずとも、向こうから倒されに来てくれる。むしろそれくらいの手間は察して来てもらわなければと、肉食獣の尾を揺らし腰に手を当てて立つキッテンの姿は堂々として。それは戦いに赴く戦士の顔と同時に、勝利を寿ぐ勇ましい女神の様相も呈していた。
 ピンと張った弓のように真っ直ぐで、穢されることがない。
 それも気に入らなかったのかもしれないが、ともあれ信者たちはその体をまるで弾丸とするかのように高速で飛来する。
 
「さあ、それじゃあ始めましょうか」

 右手の人差し指を立て、唇に添えるキッテン。
 艶めく口元が何か言葉を紡ぐ形に動いた刹那、そこには極寒の冷気を放つ氷の矢が無数に生成されていた。
 丁寧に、自分を狙ってくる敵の軌道上に召喚した氷槍は場所を選ばない。
 全てが破砕の意思を持ち、すぐには止まれない速度を保ったままの信者たちに向けて地上より打ち出される。
 槍の速度に自らの速度が乗り、着弾の衝撃は凄まじく。強固な鱗であったとしても、運動エネルギーを極限まで溜め込んだ槍の先端を防ぐのは難しい。

「本当は、鱗を弱いところを探せばいいんでしょうけど」

 そんなことは、性に合わない。
 弱点なんて甘っちょろいことはなしに、あの硬いだけの鱗を突き抜け、破壊してぶち抜けることこそがキッテンのやり方。
 それが可能だという、実力に裏打ちされた確固たる自負の前では狂信も霞んでしまう。

「正面からぶち抜いてこその完全勝利。私が欲しいのはそれだけよ!!」

 力ある声につられて。追加の氷槍が彼女の前を埋め尽くす。
 乱打のように放たれ、信者たちは彼女に指の一本すら届かせることができず、バラバラに散らばった破片は全て氷の塊となって降り注いだ。
 冷気の溜まる足元を振り払うように歩けば、白い空気に彩られた炎の女が美しく笑う。
 打ち払った第一陣は既に沈黙。二陣の姿も、彼女の目の届く範囲。
 味方の死に様を見ただろうに、統一された動きはそのまま。あるいは、殉教とでもいうつもりなのか。
 一切を鼻で笑い、キッテンは尽きかけの戦力へ向けて指を招く。

「さぁ、まとめてかかってきなさい!! 全部いっぺんに倒した方が時短なんだから!!」

 勝利は確かに、直ぐ側に。
 荒々しい女神の導きは、信仰を破り、砕き、そして全てを無へと帰していくのだった。

 濁り一つ無い青空まで、あと少し。
 







  *Reward*
 キッテン・ニコラウス
 『高貴』秘めし琥珀の魔石


 
 【ALL Subjugation】

 【STAGE CLEAR!!】

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月05日


挿絵イラスト