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享楽演武

#アルダワ魔法学園 #【Q】 #戦後 #ダンジョンメーカー #挿絵

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#【Q】
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#ダンジョンメーカー
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●楽しいダンジョンメイキング
「新しい世界が見つかったとこではあるんですけどね。アルダワ魔法学園の地下に、まだ災魔がいるんですよ」
 セロ・アルコイリス(花盗人・f06061)はそう言って、青い鳥の羽の形のグリモアを右手の上に浮かべた。
 いつもどおりの笑顔はどこかほんの少し複雑ないろを浴びていたけれど、彼はそのまま話を続ける。
「まあ、みんなもう識ってるかもしれませんけど」
 そう言い置いて語ったことには。
 少し前の戦争にて、大魔王が封印されていた『ファースト・ダンジョン』に隠し階段が見付かり、その先に『最初の魔法装置』たる『ダンジョンメーカー』が発見されたと。
 そして大魔王を倒したことにより、その装置は本来の役割を取り戻したのだと。
「その本来の役割ってのが、強大な災魔を一体強制的に召喚して、その周りに『迷宮』を作っちまう、ってこと。つまりアルダワの地下迷宮はぜんぶコイツの仕業だったってわけですね」
 セロはそう笑い「だからコイツを利用しましょうってな話です」と集まってくれた猟兵達の目を見渡した。
「コイツを使えば地下迷宮のどっかに隠れてる災魔を一匹、強制的に引っ張り出せるってことですからね」
 ひとつ肯くと、セロは走り描きのようなスケッチを一枚差し出した。そこにはひとりの少女が笑っている。
「今回、おれが視た予知で喚び出せた災魔はコイツ。名前はねーです。強いて言うなら、『失敗作』って呼ばれてました。楽しいことが大好き……つーか『楽しい』って感情しか持ってねーヤツです」
 彼は首を傾げた。頬のハートのペイントが歪む。
「共に楽しく過ごせる『おともだち』をずっと探してるヤツなんですが、『おともだち』との付き合い方なんざ知んねーんで、結局壊すか壊されるかしかねーんですよ」
 肩を竦めて、――そしてセロはパッとグリモアを消した。
「さて! そういうヤツなんで、『楽しい』ダンジョンを創りゃホイホイできると思うんですよね。……けど、ただ『ダンジョン創れ』って言われても困るでしょ?」
 おれなら困りますね。彼はあっさりそう言う。
 ダンジョンは思念反応型で形成される――つまり想像するだけで創造されるということだ。
「まずは創って、そん次そん中を探索して、楽しみゃ敵が寄って来る。単純な流れですが単純だからこそ『まずは創る』の部分、難しいですよね」
 だから、と。彼は人差し指を立てて笑う。
「良ければ、『新しいユーベルコードを使うためのダンジョン』を考えてみませんか? いえ、もちろん好きなダンジョンを創ってもらっていいんです。けど、考えるだけで生み出せるなら……思い掛けねー技を使えるかもしんねーですよ」
 まあ、その技を『ちゃんとモノにしねーと』、敵にゃ通じねーでしょうけど。
 そう言って彼は実に楽しそうに口角を上げた。
「さ、良けりゃ楽しんできてください」


朱凪
 目に留めていただき、ありがとうございます。
 わくわくハテナボックス。朱凪です。

 まずはマスターページをご一読ください。

▼第1章について(冒険)
 お好きにどうぞ!
 こんなのがあると楽しいなあとか、あるいは新しいユーベルコードの方向性はこんなのがいいなぁとか、そんなのを。
 勝手ににょきにょきダンジョンが生えたり変化したりします。
 2、3章の舞台になるのは、『参加者すべての創造が混ざったダンジョン』になります。

▼第2章について(冒険)
 『00』~『99』の数字を記載していただければ、朱凪側で用意したリストに則り新しいユーベルコードを作り出します。
 ダイスを転がすのと同じような感じになりますので、思い掛けないような形になるかもしれません。アイテムとか性格とかを見てそれらしい感じで整えたいと思います。
 もちろん、『絶対こういうユーベルコードを生み出す!』という意志のプレイングも歓迎です。(その場合数字は不要です)

▼第3章について(ボス戦)
 第2章で作ったユーベルコードは、『システム的に作成された場合を除き』使えませんので普通に戦闘をどうぞ。
 あくまで2章はお遊び的な取り扱いなので、ユーベルコードの作成を強要するものでは決してありません。新しい一面探しの一助にどうぞ。

 各章において、募集の開始は『幕間追加の翌日 朝8時30分以降から』です。

 では、戦闘を楽しむプレイング、お待ちしてます。
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第1章 冒険 『ダンジョンメーカー』

POW   :    肉体や気合で突破するタイプのダンジョンを創造してみる

SPD   :    速さや技量で突破するタイプのダンジョンを創造してみる

WIZ   :    魔力や賢さで突破するタイプのダンジョンを想像してみる

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ダンジョンメイクを始めましょう!
 猟兵達が辿り着いた地下は、それは広大な、広大で、広大で、広大な――広大だとしか言い表す言葉のないほど、なにひとつない空間だった。
「これは創造のし甲斐があるってなもんだ」
 誰かが言った。
「しかし、ユーベルコードを使う環境、と言っても」
 誰かが唸った。
「練習台になる泥人形とか?」
 誰かが笑った。
「海の適応で使える技なら、海を創り出すとか?」
 誰かが困った。
「好きなものを言うだけでもいいかもね!」
 誰かはそう、手を叩いた。
 
浮世・綾華
オズ(f01136)と

どうせならオズと一緒に使える技がいいと素直に
だってオズとは仕事も遊びもたくさん行ってるし
これからも行く予定だからな
あっても困らないっしょ

最後に出てくるの
『失敗作』って呼ばれてる子なんだっけ
――楽しそうに…そっか

オズならどうしたいだろうと視線を向ければ
考えが何となく分かり頷いて

俺は『おともだち』なら
好きなものに一緒に触れたいと思うかな
花とか、美味しいものとか?
花なら蒲公英とか向日葵がいいなぁなんて想像して
花冠あげたり…食べ物ならわたあめ?
はは、すぐ溶けちゃうしネ

魔法で出来た空間?
いいな、それ

哀しいとか苦しいとかって感情じゃなくって
少しでも穏やかな気持ちで送り出せたらいいよな


オズ・ケストナー
アヤカ(f01194)と

わあ、うんうんっ
おそろいの技っ
こまらないこまらない

あの子にはね、一回あったことあるよ
とってもにこにこしてて
ずっとたのしそうにしてた

だから、たのしくあそべるのがいいなと思って
アヤカを見たら、言わなくても頷いてくれて

いいねっ
花冠ぜったいににあうよ
おいしいもの、食べたことあるかな
わたあめふわふわでびっくりしちゃうかも

きれいなものもいっしょに見たいし
手をつないであそべたらうれしい
あの子、手からあつい蒸気が出ててね
みんながあんしんしてぎゅってできないから

蒸気が出ないようにするってどうすればいいんだろう
そんなまほうの空間できるかなあ

うん、あの子がうれしくなるような
思い出つくりたいっ



●それはきっと優しくて
「わあ、ほんとうになにもないねっ、アヤカ!」
 降り立った途端、オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)はがらんとした空間に思わず歓声を上げた。
 その様子に浮世・綾華(千日紅・f01194)も微笑を浮かべて肯きつつ、
「新しい技ねぇ」
 ぽつり零す。
 新しい技、新しい技。
 考えてみたなら思い浮かぶのは幾多の冒険を共にした、隣に居る泣きたくなる温度。
「どうせならオズと一緒に使える技がいいよな」
「うんうんっ。おそろいの技、いいねっ」
 そう言うだけでぱあっと咲いた蒲公英とか向日葵みたいな笑顔に、ことことと胸の奥でなにかが動く気がするんだ。
 これからだっていろんな場所に行く予定だし、行きたいと願うから、
「あっても困らないっしょ」
「こまらないこまらないっ──あっ?」
「ん?」
 オズのキトンブルーの瞳が更にまんまるになったから、綾華も己の背後を振り返った。
 するとただのがらんどうだったそこに、たくさんのあったかい色の花が咲いていた。蒲公英と、向日葵。オズのいろ。
「想像で創造するって、マジなんだ」
「すごいすごいっ! にょきにょきってはえてきたよ!」
 ダンジョンメーカーの使い方が判ったなら、次はそれを活用したい。あったか色の花畑の中に腰を下ろして、ふたりはのんびりと思いを馳せた。
 だってこのダンジョンの最終目標は、災魔を倒すことだ。
「……最後に出てくるの、『失敗作』って呼ばれてる子なんだっけ」
 「……うん」キノコの森で出逢った少女の笑顔を思い返し、きゅう、と喉が締め付けられるような感覚にオズは困ったように笑った。一回あったことあるよ、と。
「とってもにこにこしてて、ずっとたのしそうにしてた」
「──楽しそうに……そっか」
(わあ、すごいすごい!)
 そう笑ってシャボン玉の中を楽しく遊んだ。だから思う。……もう一度。
 ちらと綾華を窺う視線に、ちょうどかち合ったオズを窺う視線。
 ぱちりと合った途端、それは笑顔に変わった。だいじょうぶ。軽く肯いて、綾華は手近な蒲公英をつんと突いた。
 その少女は『おともだち』を探していると、グリモア猟兵は言った。なら。
「俺は『おともだち』なら、好きなものに一緒に触れたいと思うかな。花冠とかどう?」
「いいねっ、花冠ぜったいににあうよ」
 そしてきっと笑ってくれる。それを思えば、考えるのも楽しい。
「あとは、美味しいものとか。わたあめとか?」
「おいしいもの、食べたことあるかな。わたあめふわふわでびっくりしちゃうかもっ」
「はは、すぐ溶けちゃうしネ」
 ふふっ、とオズも笑み返したところで、ふわ、と視界に白いものが降ってきた。ふたり同時に見上げたところで、その白いものはオズの鼻先にちょんと降り立ち、ふぅわり漂うその甘いにおい。
 こわいもの知らずの彼はもしかして、とそれを口に運ぶ。
「オズ」
 大丈夫かと思わず紅い目を見開いた綾華に構わず、オズはどんどん降って来る白を掌に乗せて綾華へと差し出した。
「アヤカっ、わたあめ降ってきちゃった!」
 見上げれば白一色だったそれは、青、ピンク、緑、黄色、いろんな色へと彩りを変えて花畑の上に降り続ける。
 突然のわたあめパーティに紅茶も欲しいななんて思ったならすぐにそれも現れて、彼らはお茶会を堪能した。
 ひとしきり笑い合ったあと、薄いティカップを両手に包んで、オズは告げる。
「……きれいなものもいっしょに見たいし、手をつないであそべたらうれしいな。あのねアヤカ。あの子、手からあつい蒸気が出ててね。みんながあんしんしてぎゅってできないから」
 そしてキトンブルーはわたあめの降りしきる高くとおい天井を見上げた。
「蒸気が出ないようにするってどうすればいいんだろう。……そんなまほうの空間できるかなあ」
 あ、でも、あの蒸気はあの子のユーベルコードなんだよね。ならだめかな。そう言って手を振ろうとした彼に、軽く綾華は首を振る。
「哀しいとか苦しいとかって感情じゃなくって、少しでも穏やかな気持ちで送り出せたらいいよな」
「……うんっ。あの子がうれしくなるような思い出つくりたいっ」
 彼の願いに、目に見えた変化はなかったけれど。
 蒸気を使う必要がなくなったときには、──きっと。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クラリッサ・マールディン
【SPD】

『おともだち』が欲しいのに、付き合い方がわからない…なんだか寂しい災魔ね
想像は小さい頃からいっぱいしてきたから得意なの
楽しそうなダンジョンを考えてみるわ

楽しい場所…パッと思い浮かぶのは遊園地、かしら
実物を見たことはないけど、夢がいっぱい詰まった場所だってことは知ってるわ
そして私のよく知る楽しい場所といえば、やっぱり生まれ育ったグリードオーシャンの海…!
この二つを組み合わせた『海洋遊園地』なダンジョンなんてどうかしら
ホラーハウスかコースターがモチーフで、海の獰猛な生物がトラップとして出現して…
そこを鮮やかに切り抜けるユーベルコードがあれば、スリルのある楽しい戦いができそうな気がするわ



●それはきっとスリリングで
 深く深い海の底。
 流れ着く外界のものは、なんにも知らないクラリッサ・マールディン(深海の毒花・f26524)にとってサプライズ・プレゼントのようで。
(外はどんなところかしら)
(これはどんなふうに動くのかしら)
 ふわふわ、ゆらゆら。
 銀色の髪を流れに漂わせて、彼女はずっと、そうして過ごしてきた。
──だから想像するのは得意よ。
 『おともだち』が欲しいのに付き合い方がわからない、寂しい災魔。そんな彼女のために楽しいダンジョンを用意してあげようと、彼女はからっぽの空間に立ち向かった。
「パッと思い浮かぶのは遊園地、かしら」
 つい最近海から出てきたばかりのクラリッサはその施設を訪れたことはない。けれど、夢がいっぱい詰まった場所だと言うことは知っている。
 行ったことがあるという烏賊の深海人は、子供みたいにいきいきとして語ってくれたものだ。うまく話すことができなくて、詳細を聞くことはできなかったけれど。
 それでもクラリッサの心も跳ねたのは憶えている。
 コースターにホラーハウス、カルーセルにバイキング!
「きゃっ……?!」
 地面が揺れたかと思うと、幾多の柱が突如高い天井目掛けて生え伸びた。そしてその柱のてっぺんとてっぺんを繋ぐみたいに、ばらばらばらばらっ、と線路が伸びていく。
 声もなく目をまんまるにして見上げるクラリッサの頭上を、ゴゥッ! とトロッコが通り過ぎた。話に聞いていた、コースターそのもの。だけど。
「……あんなに、速いの……」
 思わず声が零れる。それはもちろん、クラリッサの想像によって生み出されたものだから、なのだけれど。本物を見たことのない彼女が知るはずもない。
 だめだめ、あれだけではきっと恐いだけ。楽しくなくちゃ意味がない。
 なら、よりよく知る楽しい場所の要素を掛け合わせたら?
──楽しい場所といえば、やっぱり生まれ育ったグリードオーシャンの海……!
「『海洋遊園地』なダンジョンなんてどうかしら」
 途端、かわいげもなにもなかったコースターの装置が、グリードオーシャンの海を表すみたいな鮮やかな蒼と碧に彩られていき、ポップなタッチのヒトデや貝殻がトロッコに描かれた。
 そしてコースターの周囲は蒼い水場と化し、コースターのトロッコが急降下して水辺に近付いたそのとき、巨大なホオジロザメがトロッコ目掛けて飛び出した。ちょうどひとの乗るであろう部分でその凶悪な咢を閉じた。
 見るものによってはとんでもなく邪悪な装置ではあったけれど。
──あれを鮮やかに切り抜けるユーベルコードがあれば、スリルのある楽しい戦いができそうな気がするわ。
 クラリッサは小さく両の手を握り、鮮やかな裾のドレスを揺らしていそいそと乗り場へと向かったのだった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

リゼ・フランメ
自らの思うが間々に作り出される環境のダンジョン、ね
新しいユーベルコード、戦う技は勿論だけれど、その環境もと考えると、ただ戦うに適している場よりも
戦いながらも、美しいと思えるような
少し幻想的なものを求めてしまうかしら

本当の戦場ならば、それこそ有り得ないようなものを

例えば、無数の水晶の蝶が生み出され、飛び行くダンジョンの一室なんてどうかしら
それが砕け散れば、周囲にその水晶の宿す色彩に応じた属性を周囲に放つだなんて

無数の不規則に動き回る敵を狙うもよし
沢山の中から、ひとつずつを正確に狙うもよし

範囲攻撃や逆にピンポイントでの狙いにも利用できる筈

何より
美しい場所って素敵で、そこなら余計に頑張れるでしょう?


キトリ・フローエ
そうね、やっぱり潤いと彩りは必要だと思うの!
つまり、お花!
それから、緑!
自然あふれる環境で思いっきりのびのびと過ごしたいわ

木々が生い茂る森の中なら、小回りがききそうなユーベルコードも
作れそうじゃない?
あたしみたいな小さな子はそんなにいないでしょうから
おおきな皆の大きさに合わせて色々とイメージを膨らませつつ
少しくらい大きすぎるお花が咲いてしまったりしても
それはそれでアクセント…になるわよね?
森を広げて、果物がなる木を増やして、お花を咲かせて…
地面にはお昼寝できそうなふかふかの草のお布団を
大きな木にはブランコを
一緒の皆と相談しながら、探索も訓練も楽しく出来そうな
そんなダンジョンを作っていきたいわね



●それはきっと鮮やかで
「自らの思うが儘に作り出される環境のダンジョン、ね」
 ただ広大な空間を前に、リゼ・フランメ(断罪の焔蝶・f27058)は思案する。
 新しいユーベルコードを考えるにあたり、戦う術としてはもちろんのことではあるけれど。ただ戦うに適しているだけの場よりも、
「戦いながらも、美しいと思えるような、少し幻想的なものを求めてしまうかしら」
「そうね、やっぱり潤いと彩りは必要だと思うの! つまり、お花! それから、緑!」
 燃えるような紅い髪の流れる傍を、ひらひらとキトリ・フローエ(星導・f02354)の夜色の翅が躍る。
「木々が生い茂る森の中なら、小回りのきくユーベルコードも作れそうじゃない?」
 ひと差し指をぴんと立てて提案した途端。
「わわっ?」
 樹齢何十年もありそうな木々の森が、わさわさと彼女達の周囲を覆い尽くした。
 思わずふたりは互いに丸くした目の顔を見合わせる。
「こんなにいきなり生えるのね……」
 なにはともあれ、折角だからと歩み進めた小道の先。
 地下だと言うのにどこからか日向の明るさとぬくもりのある森は、落ち葉と下草に覆われた地面も心地良かった。
 願うだけで実現される事実に嬉しくなって、キトリはせっせとイメージを膨らませる。
「やっぱりお花は譲れないわ。ねえ、あなたはどんなお花が好き?」
 既に周囲にはたくさんの季節を無視した花々が咲き誇る。ネモフィラ、朝顔、リンドウに鈴蘭。
 フェアリーサイズではなく、みんなのおおきさに合わせようと想像したお蔭で、ちょっぴりおおき過ぎる向日葵が咲いてしまったのも、アクセント……になるわよね?
「そうね。……それならいっそ、本当の戦場ならば有り得ないようなものを」
 リゼが想像すれば、その足許にはきらきらと眩いばかりの光を放つ澄んだあかの鉱石が花開いた。
 わあっとキトリが歓声をあげて、そのおおきな花の傍に彼女サイズの同じ宝石の花を生み出したなら、その周囲は種々の彩りの宝石の花が咲き乱れた。
「ねえ、果物は? 見てみて、桃は好き? オレンジは?」
 特有の甘い香りが広がって、周囲にたくさんの果実が青々とした葉の間に覗く。不思議と香りがケンカすることもないのは、やはりこれが魔法の空間だからなのだろうか。
 きっとたわわに実ったあの果実達の味も、すばらしいものに違いない。ひと抱えもある桃を捥いでリゼに差し出したなら、彼女は少し瞬いたけれども受け取ってくれた。
 よく干された良いにおいのするふかふかの草のお布団も、大きな樹の枝に下げたブランコも。戦うというよりも確実にそこで寛ぐことを想定した『理想の間取り』は、きっと考えているうちにキトリが楽しくなってしまったのだろうと慮れて微笑ましくなる。
 ぽふりとそのお布団にダイブした彼女の傍に、彼女の半分ほどもある水晶の蝶がひらひらと舞うのが見えて「わ」彼女はぴっ、と翅を緊張させた。
 水晶の蝶は、甘い香りの森の中から飛んでくる。リゼはその蝶に触れようとして──蝶はひらりと不規則な動きでそれを避けた。
「この蝶が砕け散れば、水晶の色彩に応じた属性を周囲に放つ、だなんてどうかしら」
 赤なら炎を、黄色なら雷を、青なら水を、緑なら足を絡め取る蔓草を。
「無数の不規則に動き回る敵を狙うもよし、沢山の中から、ひとつずつを正確に狙うもよし。範囲攻撃や、逆にピンポイントでの狙いにも利用できる筈」
 そこまで告げて、リゼはキトリに振り向く。
「その属性は、きっとこの美しい森のことは傷付けないの」
 だって何より、美しい場所って素敵で、そこなら余計に頑張れるでしょう?
 ほんの少しだけ口角を上げてみせた彼女に、キトリも満面の笑みを返した。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

イネス・オルティス
ビキニアーマーの利点は要所だけを守って動きの阻害をしない事
利点を生かせるダンジョン……そうUDCアースなんかでいうところの
『アスレチック』みたいなやつとか

これは結構楽しそうじゃないかしら?

それにこういうのを攻略することで
薄衣甲冑覚醒(POW)・薄衣甲冑覚醒 弐(SPD)に続く
第三の薄衣甲冑覚醒(WIZ)のヒントになれば……

アドリブ・絡み・可


グァーネッツォ・リトゥルスムィス
新しいユーベルコードのアイディアを求めていたからありがたいぜ
災魔も引っ張り出して倒して一石二鳥目指すぞ!

ある程度応用が効いて、でも既に取得済みのUCと区別が出来る特色があって、
なによりPOW……肉体や気合が必要なUCが欲しいぜ
その為にもダンジョンの至る所や場面、環境に倒すべき標的をセッティングして、
全部倒すと宝物庫が開く、なんていう仕掛けはどうだろう?
倒すべき標的に似た倒しちゃいけないフェイクも用意して、
一般人や大切な物品を巻き込まない使い勝手のいいUCにしていきたいぜ

すごい欲張りセットっぷりだけどダンジョンメーカーなら大丈夫だと信じてるぜ!



●それはきっとアクティブで
「へへっ、新しいユーベルコードのアイディアを求めていたからありがたいぜ!」
 掌に拳を打ち付けて、グァーネッツォ・リトゥルスムィス(超極の肉弾戦竜・f05124)は晴れやかな笑顔をがらんどうの空間に向けた。
 ちらと向こうを覗けば森やらなにやらが拡がっていたり、ゴウゴウ言う音が響いてきたりしている。
 さて、新しいユーベルコードについては考えられる。ある程度応用が利いて、でも既に取得済のユーベルコードとは区別できると特色があって、なにより肉体や気合いが必要なそれ。
「……うーん、そうなるとどういう舞台がいいんだ?」
 つまり肉体を鍛えられるような、そういう装置が望ましいわけで。
 首を捻るグァーネッツォの傍で、イネス・オルティス(隠れ里の女戦士・f06902)は自らの信じる防具に似たそれをグァーネッツォも纏っていることを確認し──するまでもないが──、迷いのない瞳で肯いた。
「ビキニアーマーの利点は要所だけを守って動きの阻害をしない事、利点を生かせるダンジョン……そう、UDCアースなんかで言うところの『アスレチック』みたいなやつとか」
「おおっ!」
 ずずずずず……、となにもないところから突如現れたのは木々で組んだ種々の『アスレチック』。それのみならず、その遊具を支えるための広々とした針葉樹の森も生まれて、突如すがしい空気が辺りを包み込んだ。
 高いところにだけ小さな足場のある柱。そこへ辿り着くためには、縄で釣られただけの距離の空いた板きれの上を通っていかなくてはいけないし、柱からは滑車を使って滑り下りた先には小さな手掛かり足掛かりしかない垂直の壁が立っているから、滑車から手を離すタイミングも重要だ。
 そこから先は網の上を渡って次の足場を目指さなくてはならない──と、きりがない。
「すげー!」
 ぴょんぴょんと跳びはねる純粋なグァーネッツォのこれ以上ない感嘆の声に、イネスも微笑んだ。
「ええ、これは結構楽しそうじゃないかしら?」
「なあなあっ、じゃあこういうのは?」
 グァーネッツォが指差した『アスレチック』の上。柱の上の小さな足場に、木製のデッサン人形のような存在が現れた。それは自立するだけではなく、自動する。
「あいつを倒すんだ! でもほら、あの緑のやつは逆に倒しちゃいけないとかにしたら、攻撃の幅も広がるんじゃないか?」
 デッサン人形は単調な攻撃しかして来ないだろう。それでも『アスレチック』の上での戦闘行為となると侮れないものになるに違いない。
「それと、全部倒すと宝物庫が開く、なんていう仕掛けはどうだろう?」
 競い合いにしたっていいし、あるいは協力することで生まれる視野もあるだろう。ただ進むだけではなく、隠れているデッサン人形を探すという必要性も生まれる。
「そうすれば一般人や大切な物品を巻き込まない使い勝手のいいユーベルコードを考えられるかもしれないだろ?」
 グァーネッツォの提案に、なるほどとイネスも思案する。それらの試練をうまく掻い潜り、あるいは突破することで、肉体を使う薄衣甲冑覚醒、速度を有する薄衣甲冑覚醒 弐に続く、第三の知能を活かす薄衣甲冑覚醒のヒントになれば。
「やる価値はあるわ。やってみましょう」
「そうこなくっちゃな!」
 ふたりは力強く肯き合った。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

テテメア・リリメア
まあ、まあ!
皆さんと力を合わせてダンジョンを作るなんて、とっても素敵ね。
おともだちに来てもらえるように、まずはわたしたちが楽しみましょう!

そうと決まれば、わたしもお手伝いしなきゃ。
ダンジョンと言うからには、やっぱり迷宮らしさがあると良いと思うの。
森のように深い深い迷路なんてあったら、きっとわくわく出来るはずよ。
それから、森といえばやっぱりトラップも必要だわ。
わたしが住んでいる不思議の国にも、とても器用に罠を作る猟師さんがいらっしゃるの!

思い浮かべるのは、囲い罠やウサギ穴にも似た落とし穴。
ああ、トラバサミは痛いから嫌よ。
テディ、あなたも手伝ってね。
他にも何が良いか、いっしょに考えてみましょう。


千波・せら
ダンジョンを創るって楽しそうだよね。
こんなに、こーんなに広いから好き放題しても許される?

ただの迷路だと面白くないからワクワクする迷路がいいな。
例えば、あ!間違い探しみたいな迷路!

右と左に壁画があって
入る度に違う絵、絶対に同じ壁画はないんだ。
だから訪れる度に新しい壁画を見る事ができる。

右と左の絵は間違い探しみたいに少しだけ違う箇所があって
それを見事に言い当てたら先に進める。
なんてどうかな?!
すごく楽しいと思うんだ!

それで、間違い探しが終わったら次はなぞなぞ。
誰でも分かる問題が出てくるから誰でも楽しめる

最後は、守り神のカッパと戦うなんてどうかな?
うん!凄く楽しくなりそうだね!



●それはきっとワクワクで
 辿り着いたそこには、『探索』できる場所はなにひとつなかったけれど。
 千波・せら(Clione・f20106)の瞳のきらきらは、褪せることはなかった。だって探索するダンジョンを、自分で創ることができるのだから!
──こんなに、こーんなに広いから、好き放題しても許される? 許されるよね!
 やっぱりダンジョンと言えば迷路かな。そう思いながら歩き出したせらの視界に、突如青々とした森が出現した。
 目をぱちぱちしばたいた彼女の前に、ひょこりとその森から顔を出した少女が「まあ、まあ!」嬉しそうに両の指先を合わせた。
「せらちゃん!」
「あれっ、テテメア?」
 見知った顔──テテメア・リリメア(マーマレード・レディ・f25325)の姿を認めて駆け寄ったなら、木々がふわふわ柔らかな、ぬいぐるみみたいなそれであることが判る。
 これは? と澄んだ水の色の瞳が問うのに、テテメアははちみつ色の瞳でにっこり。
「森のように深い深い迷路があったら、きっとわくわく出来ると思ったの。ダンジョンと言うからには、やっぱり迷宮らしさは必要でしょう?」
「わ、同感! それにワクワクする迷路がいいな」
 ふふりと笑い合ったなら、向かい合うのはふかふかの森。
「森と言えばやっぱりトラップも必要だわ」
「例えば、……あ! 間違い探しみたいな迷路とか!」
 ぬいぐるみの木々がもそもそと動いて、細い小道を創り出す。その端々にいかにも怪しげな真っ赤なきのこ──の、ぬいぐるみ──や、鮮やかな色の蝶々──の、以下略──が出現する。
 きっとああいうものの近くには、テテメアが想像したような囲い罠や、ウサギ穴に似た落とし穴があるに違いない。
 ああ、もしかしたら本当にウサギ穴で、どこか違う場所に放り出されてしまうかも?
「わたしが住んでいる不思議の国にも、とても器用に罠を作る猟師さんがいらっしゃるの!」
「罠は迷宮探索の基礎だね!」
 楽しむのはもう少しあと。
 気を付けながら進んだ先には、大きな岩──以下略──が三叉路のうちのふたつをそれぞれ塞いでいて、岩肌には不思議な壁画が描いてある。
「あ、これ、間違い探し!」
 ずっとおんなじではつまらないから、森に入る度にきっとこの絵は変わるのだろう。
 ついついどこか違うのかと見つめてしまいかけて、いけないいけないと彼女は急いで目を逸らした。
「左右の絵の違うところを見事に言い当てたら、先に進める、なんてどうかな?! すごく楽しいと思うんだ! それで、間違い探しが終ったら次はなぞなぞ!」
 誰でも判る問題が出てくるから、誰でも楽しめるようになってたらいいな。この明るくてかわいらしいダンジョンに、難しい問題は似合わない。
 くるくると指を回して考えるせらに、テテメアも大きく肯く。
「まあ、とっても素敵! テディ、あなたも手伝ってね。他にもなにが良いか、いっしょに考えてみましょう」
 腕の中のテディベアにテテメアが伝えた途端、きらきらっとそのくまのぬいぐるみが光を放ったように思えた。「テディ?」彼女は声を掛けてみるけれど、それっきり。
 なんだったのかしら、と首を傾げていたのも少しだけ。
「最後は、守り神のカッパと戦うなんてどうかな?」
「カッパ!」
 だとしたら、辿り着く先は湖かしら。それとも沼? そこには綺麗な花が咲いているかしら? カッパはどんな攻撃をしてくると思う?
 馳せる想像が止まらない。
 それはまるで、おもちゃ箱をひっくり返す前の気分。
「『おともだち』に来てもらえるように、まずはわたしたちが楽しみましょう!」
「うん! 凄く楽しくなりそうだね!」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

スキアファール・イリャルギ
ユーベルコードを使う環境……
私としては広い空間があるだけで十分なんですけどね
ほら、私はやることが結構派手で危険なものが多いんで

とはいえ、ただ空間に撃つだけでは味気無いし効果がわかりませんか
だったら練習台としての"何か"が欲しいところですね
攻撃重視のコードなら猶更だ
でもサクッと倒せる奴よりかは
それなりに苦戦する相手の方が良いのかな……

そう、先の魔王戦争であった、己の鏡像を創り出す深淵の鏡のような――

いや、なんで自分で自分の心の傷を抉るようなこと考えるんだ(素で己にツッコむ)
自傷しまくった記憶が蘇ってきた……

……うん
敵を倒せたら、敵から受けた傷が治る仕掛けがあればいいですね……
あるんだろうか……


ユヴェン・ポシェット
楽しそうな事か。
ふと思いつくのは見た目に変化が起こる様な空間とか、かな。
地味かも知れないが「全ての色が変わる」ダンジョンとか面白いのではないだろうか。
髪の色、瞳の色、皮膚の色…種族によっては角や尾の色が普段とガラッと変わるんだ。
案外色のもつ情報や心理的効果ってのも侮れないもので、色が変わるだけで印象やその者の雰囲気は大きく変わる。
使用するUCによったら、その技の色も変わったりだとかな。
「光の加減で普段と変わった様に見える」程度のレベルを超えた変わり具合であればある程良い。

あまり深く考えず好きな様に言ってみたが…こういうのは、デタラメであればある程面白いと思うんだよな。


クロム・ハクト
・人ひとりが隠れられそうな太さの杭(柱?)を何本か立てる。

何でも出てきそうだが、自由に築き上げるというのもかえってまとまらないものだな。
いや、実際にセンスの問われるお題に絞られたらそっちの方が困ってた気もするが。
暫し考え、浮かんできたのは杭。
高さや太さにばらつきのある、ものによっては少し傾きのあるものも。
遮蔽物や的にしても、上に飛び乗って足場にするのでもいいかもしれないな。
UC→そろそろ新しい戦い方も覚えたいと思っていた所だ、丁度よい。

アドリブOK



●それはきっと不安定で
 がらんどうの空間。
 とおく向こうにいくつかの森らしき緑が出来上がっているのを臨んで、クロム・ハクト(黒と白・f16294)はなるほどと小さく呟いた。
「何でも出てきそうだが、自由に築き上げるというのもかえってまとまらないものだな」
──いや、実際にセンスの問われるお題に絞られたらそっちの方が困ってた気もするが。
 口許にちいさく握った拳を添えてクロムは誤魔化す。それはそれで、新しい見地は拓けそうではあるけれど。
「私としては広い空間があるだけで充分なんですけどね」
 ほら、私はやることが結構派手で危険なものが多いんで。
 言っておどけたように肩を竦めて見せるのはスキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)。
 クロムは知るよしもないが、彼の使うユーベルコードは広範囲に渡り影響を及ぼすものが多く、また凄絶な効果を齎すものも少なくない。
 そうなのか、と純粋に肯くクロムへ、そうなのです、とスキアファールは言うものの、
「とはいえ、ただ空間に撃つだけでは味気無いし効果がわかりませんから、練習台としての“何か”が欲しいところですね」
「練習台……なにか……」
 スキアファールの言葉に三角の耳をぴくりと揺らし、クロムは想像する。鍛錬をすると言えば。あるいは、鍛錬をするに適した場所と言えば。
「お」「!」
 突如中空から現れたのは、人間ひとりが隠れられそうな太さの巨大な杭。長さも太さもまちまちのそれが、──突如地面へ突き立った!
 轟音と土煙と共に大きく揺れた地面。そこへ様々な角度で突き刺された杭は的にも遮蔽物にも、あるいは足場にもなるだろう。
「派手にやってるな」
 笑いながら肩に鉱石輝く小型の竜を乗せたユヴェン・ポシェット(opaalikivi・f01669)がやってきたなら、「悪い、驚かせたか」とクロムは軽く頬を掻いた。
「こんなふうになるとは思わなかった」
「いや、問題ない」
「ええ、面白いですよ。あとは……」
 なにか、対象が居たら。
──サクッと倒せる奴よりかは、それなりに苦戦する相手の方が良いのかな……。
 スキアファールは考える。
 苦戦した、相手。アルダワ。そう。先の魔王戦争であった、己の鏡像を創り出す深淵の鏡のような──……、
「いや、なんで自分で自分の心の傷を抉るようなことを考えるんだ」
 やめろやめろ。額を押さえて頭を振る。
 如何に猟兵が埒外の存在であり、如何に己が怪奇人間であったとて。弾け飛んだ爪が元に戻るまでのあの痛みを忘れたわけではない。思い出すだけで痛い。
 けれど、
「なるほど。自分との戦いか」
「っ?」
 ──手遅れだった。
 ユヴェンの興味深そうな声音に急いで見上げた杭の上。見たくもない不健康そうな顔がおどけたようにひらりと手を振る。
「……うん。敵を倒せたら、敵から受けた傷が治る仕掛けがあればいいですね……」
「ああ、オブリビオンとの戦いの前に消耗し切るわけにはいかないからな。……」
 甘いお菓子は戦う際のエネルギーになる、と以前誰かが言っていたっけ。あのとき、口にしたものと言えば。
「……ケーキ、ですか?」
 ぽふん、と突如現れたいちごのショートケーキにスキアファールは瞳を瞬き、クロムは食べにくいものを選んでしまっただろうかとほんの少し耳を倒した。
 そんな様子を眺めていたユヴェンは「楽しそうな事か……」と、杭の上にいる『スキアファール』を見上げたまま声を零した。
「そうだな。地味かも知れないが『全ての色が変わる』ダンジョンとか面白いのではないだろうか。髪、瞳、皮膚……種族によっては角や尾の色が普段とガラっと変わるんだ」
「色、か」
 ぴくりと耳を立てたクロムに、ユヴェンは肯く。
「ああ。案外色のもつ情報や心理的効果ってのも侮れないもので、色が変わるだけで印象やその者の雰囲気は大きく変わる。『光の加減で普段と変わったように見える』程度のレベルを超えた変わり具合であればある程良いだろう?」
 思いついたことをそのまま並べてみれば、面白そうだと思えた。デタラメであればあるほどいい。折角の不思議ダンジョンだ、楽しまなくては損だろう。
「色の違う自分と対峙することもあるってことか」
「もしくは、色の違う方が自分、って可能性だってある」
「……混乱しそうだ」
 クロムとユヴェンがそう話し合うのに、スキアファールはただ相変わらずの猫背のまま立ち尽くしている。
「……色、……」
 その白い肌が、なおのこと白いように見えて、だからユヴェンは唇に薄く笑みを刷いて告げた。
「ああ、『全て』って言ったけど、もちろん望むならって感じでいいぜ」

 なにせ、楽しくないなら意味がないからな。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マリアドール・シュシュ
【希蕾】アドリブ◎
UCの方向性→霞架との合わせ技

楽しい事が好きなのはマリアと一緒
でも…

いえ、今は皆が幸せになる楽しいダンジョンを考えるのよ
どんなのがいいかしら
マリアは花畑…茉莉花やカスミソウが咲く綺麗な場所がいいわ!
疲れたらすぐに休めるもの
紅茶も用意しなきゃ(手叩く。ズレる主旨
…むぅ
何か言いたそうね、霞架
ぎゅっとしてくれなきゃ機嫌治さないわ

新しい力を使う相手は可愛い敵だと倒しづらいのよ
でも怖いのは楽しくないの
花畑を焼き払おうとする炎を敵に見立てましょう!

霞架は?
前に霞架が疑心暗鬼に陥った蒸気ダンジョン…(負の感情を引き出し幻覚を見せた
もう一回挑みたいわ
その空間も作りましょう
今回は負けないのよ


斬崎・霞架
【希蕾】
アドリブ◎

UCの方向性→マリアとの合わせ技

ダンジョンを利用するとは考えましたね
強力な敵やトラップ…様々かつ、比較的安全性の確保が出来る
呼び寄せるだけでは勿体ないのでは
(鍛錬メイン、災魔はオマケと言わんばかりの)

マリアさんは何と言いますか…
…いえ、楽しんでいれば現れるのならば、良いですね
(その“らしさ”と優しさに微笑み)
ふふ。不満がある訳ではないですよ
(マリアの頭を優しく撫で)

僕としては強敵の方が好ましいですが
マリアさんが楽しくないのでは、良くありませんし
炎を相手取るのも、一興ですね

蒸気で視界と思考に影響を与えるダンジョンもありましたね
同じようなダンジョンが現れたとして…今ならば、僕は…



●それはきっと幻想的で
「ダンジョンを利用するとは考えましたね」
 ふむ、と興味深げに斬崎・霞架(ブランクウィード・f08226)は周囲を見渡す。広大な地下空間に、思い思いの『世界』が出来上がっている。
「強力な敵やトラップ……様々かつ、比較的安全性の確保が出来る。……災魔を呼び寄せるだけでは勿体ないのでは」
 もっと鍛錬に活用するのも良いに違いない。試しにぽこぽこと遠くに見た木を生み出してみては、その幹に触れて頑丈さを確かめる。
 まるで揺るぎない霞架の傍で、マリアドール・シュシュ(蜜華の晶・f03102)は予知に聞いた少女へと思いを馳せる。
 『楽しい』という感情しかないのだという少女。
──楽しい事が好きなのはマリアと一緒。……でも……。
 マリアドールも、楽しいことしか憶えていない。けれどそこに、楽しさしかなかったかと言われれば、そうではないことも判っている。例えば、例えば、そう。
──前に霞架が疑心暗鬼に陥った蒸気ダンジョン……。
 あのときの苦しさと、切なさと、戸惑い。あれもマリアドールにとっては喪いたくない“揺らぎ”だった。
「いえ! 今は皆が幸せになる楽しいダンジョンを考えるのよ」
 ふるり長く波打つ銀の髪を揺らしてかぶりを振り、マリアドールは意識を前に向けた。そうしないと、件の少女にまみえることもできないのだから。
「どんなのがいいかしら」
 皆の幸せ。そのためには、まずはマリアドール自身が幸せな空間を思い描く。
 そうね、まずはお花。花畑。茉莉花やカスミソウが咲く綺麗な場所がいいわ。疲れたらすぐ休めるもの。それから……。

「マリアさんは、何と言いますか……」
 ひと通りダンジョンメーカーの性能を試したあと、霞架が振り返ればそこには緑の絨毯に白い花々の咲く花畑。その中心で、ゆったりと紅茶を楽しむマリアドール。
 その光景はあまりにも彼女“そのもの”で、そこに宿された彼女の願いを推し量ることができた。
「……いえ、楽しんでいれば現れるのならば、良いですね」
 つまり、『楽しみ』を求められて、彼女は提示されたような新しい技を考える鍛錬の場ではなく、心地良い世界を望んだのだ。その優しさと微笑ましさに緩む口角を霞架は無意識に隠した。
「……むぅ。何か言いたそうね、霞架」
「ふふ。不満がある訳ではないですよ」
 言って彼は彼女の頭を優しく撫でるけれど、彼女はぷいと横を向く。
「ぎゅっとしてくれなきゃ機嫌治さないわ」
「困りましたね」
 ちっとも困ってなさそうな声音でそう言うと、彼はそっと彼女を抱き寄せて、ぽふぽふと宥めるようにその髪を撫でた。
 彼女はそんな彼の控えめな腕を捕まえて、「新しい力を使う相手は」とそのまま会話を続けた。今のままなら、霞架に顔を覗かれることはないから。
「可愛い敵だと倒しづらいのよ」
「僕としては強敵の方が好ましいですが」
「怖いのは楽しくないの」
「マリアさんが楽しくないのでは、良くありませんね」
 まるで子供をあしらうみたい。ちょっぴり頬を膨らませて、ぐいとマリアドールは腕で彼の胸を押して霞架の顔を見上げた。
「だから、花畑を焼き払おうとする炎を敵に見立てましょう!」
 ちゃんと戦うつもりはあるんだから。
 そう言わんばかりの彼女の星舞う金色の瞳に、だから霞架も眼鏡の奥の金色の瞳を和らがせた。
「炎を相手取るのも、一興ですね」
 ただの大地を舐め広がる炎では敵にはならないだろう。だからきっと、人型の炎だ。倒す芯のある、攻撃の通る──、
「霞架は?」
 敵の姿を想像していた彼を、マリアドールの声が引き戻す。そうですね、と思案した彼の脳裏に、予知の話を聞いた際の、最後の敵の姿が思い浮かぶ。両の掌から蒸気を噴き出していた少女。
 蒸気。
「……蒸気で視界と思考に影響を与えるダンジョンもありましたね」
 「、」それは、さっきマリアドールも考えていた“揺らぎ”で。
 だから彼女は迷いなく微笑んだ。
「あったわね。もう一回挑みたいわ。今回は負けないのよ!」
 花咲くような彼女の表情に笑みを返しながら、霞架は思う。今回は負けない、か。
──……今ならば、僕は。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
f02586/リュカさん

想像が創造される――なんて胸の弾む迷宮でしょう
然れど
普段は抑え込みし心の誘惑もまた
形になるという危険との隣りあわせでもあります

リュカさんへ向け
きりりと真顔

そう――、
ずらり並ぶ書棚を眺めていたいとか
珍しき種を採取したいとか
石を採掘したいとか

――あぁ、リュカさんの想いも素敵

空へ翔ける技で海原を眺め渡すのも至福でしょうし
時を忘れて読書に耽る為には
お菓子やお握りが降って来る技も必須では無いですか

などと
めくるめく想像に夢中になっていたら
辺りは
書棚の階段やら
鉱石クラスターの花やら、混沌と

瞳を瞬いて
無言ののち
ちいさく咳払い

…創造したらお腹が減りましたね
お握りふたつ、降って来ないかしら


リュカ・エンキアンサス
綾お兄さんf01786と

作りたいユーベルコードが迷宮になる…
そうだね。俺としては、弱点をふさぐ感じで作りたいと思うから、
必ず先制攻撃してくる敵への対処とか、
銃の使えない場所ででの戦闘とか…
つまりは、先制攻撃してくる敵とか、
エリア的には海とか…

…って、待ってお兄さん。待ってお兄さん
何してるの
もう一度聞くけど、何してるの
書棚の階段とか花とか、どんな技を…
…ああ…
(なんだろう。そのちょっと便利な生活したいみたいな希望は…
先制攻撃してくる本棚とかできたら、お兄さんの所為だからね
(片っ端からツッコミを入れて疲れている

…素早く握り飯を作る技を開発しようとしても、握り飯が降ってくるわけじゃないと思うよ…多分



●それはきっと幸福で
「……って、待ってお兄さん。待ってお兄さん。何してるの」
 リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)はいつもどおりの表情で、心からの動揺を差し向けた。

「想像が創造される──なんて胸の弾む迷宮でしょう」
 そう言いながら心なしか弾む足取りの都槻・綾(糸遊・f01786)がリュカと共に地下空間へ足を踏み入れたのはついさっきのことだ。
 「然れど、」いかにも悩まし気に吐息をついてから、きりりと表情を改めて、
「普段は抑え込みし心の誘惑もまた形になるという危険との隣りあわせでもあります」
 お気を付けて、リュカさん。
 そう言っていたのは、誰だっただろう。

 リュカが新しいユーベルコードについて「お兄さんはどんな──」と振り返ったなら。
 そこにはいつの間にやら、和綴じの本が押し込められた書棚が貸本屋どころか図書館も斯くやとばかりにずらりと並んで階段を形作り、周囲には旅慣れたリュカとて滅多に目にしないような植物が生え揃い、輝く鉱石が幾多と無造作に転がっている有り様だった。
 ちなみに想像の主であるヤドリガミは書棚の前でなにやら本を開いていたが、リュカの声に肩を震わせた。
 そして何食わぬ顔で本を閉じ、こほんと咳払いをひとつ。穏やかに振り返る。
「ああ、リュカさん。新しい技の構想は浮かびましたか?」
「もう一度聞くけど、何してるの。書棚の階段とか花とか、どんな技を……」
 少年は容赦がない。
「ええ、良ければ聴かせてください」
「……」
 けれど男は大人げなかった。
 リュカは疲れたような吐息を零して「……そうだね」諦めた。
「俺としては、今の弱点をふさぐ感じで作りたいと思うから、必ず先制攻撃してくる敵への対処とか、銃の使えない場所での戦闘とか……つまりは、先制攻撃してくる敵とか」
 先制攻撃によって苦い経験でもあったのだろうか。
 そつなく戦闘をこなしているように見える彼だからこその研鑚もあるのかもしれない。綾はリュカの言葉を肯きながら受け止めていたけれど。
「エリア的には海とか……」
 ぱち。と。
 そのキーワードひとつでなにかのスイッチが入ってしまった。
「──ああ、リュカさんの想いも素敵。空へ翔ける技で海原を眺め渡すのも至福でしょうし、時を忘れて読書に耽る為にはお菓子やお握りが降って来る技も必須では無いですか」
「え、……ああ……そう、かな」
──なんだろう。そのちょっと便利な生活したいみたいな希望は……。
 少年よ。それがだめなおとなと言うものだ。
 リュカが同意を返したものだから、ダンジョンメーカーはそれに応じた。
 ごごごごと地響きを渡らせ、「「っ?!」」ごぼごぼと足許に湧き起こった水。そしてその水底を突き破って、巨大なガレオン船がふたりを甲板に乗せて打ち上がった。
 ガレオン船によって突き破られた巨大な穴にはなみなみと水が満ちている。漂う潮の香からして、あれは海水であることが判った。
 戦場を海とするならば、船の上は充分に想定しうる環境だろう。水中での戦闘を希望するならば飛び込めばいい。
 ちなみに甲板には、防水や耐荷重など知ったことかとばかりに先程地上にあった書棚がそっくりそのまま移ってきている。
「……その本棚が先制攻撃してきたら、お兄さんの所為だからね」
 次々に起こる事象に疲れた様子のリュカがそう言うと、当然の如く再び本を手に取っていた綾も困ったようにふくりと笑みを浮かべた。
「……創造したらお腹が減りましたね。お握りふたつ、降って来ないかしら」
「まだ言ってる。……素早く握り飯を作る技を開発しようとしても、握り飯が降ってくるわけじゃないと思うよ……多分」
 リュカの想定は、甘かったと言える。
 ひゅるるる、と落ちてきたそれは、ひとつはべしゃりと甲板で潰れ、ひとつは海の藻屑と化した。
「「……」」
 そして、──ひゅるるる、
「っお兄さん止めて。あれ止めて。今すぐ」
「いえ、その。止めてと言われましても」
 その後、船の上にはふたつずつのおにぎりがいつまでも断続的に降り注いだとか。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

五条・巴
七結(f00421)と

僕の好きにしたら、戻って来れなくなりそうだ
だって入ってしまったら、出してあげる気がない
七結のやりたいようにしてもやはり、ふふ
ちゃんとダンジョン作れるかな?

朝焼けと冷たくも感じる冴えた空気
まだ少し暗い、けれど月の光の要らない
そんなひと時の景色

あかい糸が道しるべ
牡丹が落ちてアネモネが笑んで桜は舞っている
視界を奪われて来た道さえも分からなくなる

行き止まりにはオシャレな机と椅子が二脚
紅茶は湯気立ち新しい
最初のティータイムをもう一度

進めば進むほど僕らの虜
月に近づいてしまったら
ふふ、ここからでるのも嫌になって居るんじゃないかな?


蘭・七結
トモエさん/f02927

わたしとトモエさんのすきが詰まった場所
わたしたちだけの迷宮、ですって
ふふ、心が踊ってしまうようね
トモエさんは、どんな“すき”を取り入れるのかしら

なゆは、黎明の時刻
朝焼けの紫色が、とてもすきなの
紫とあかの空に浮かぶまあるいお月様
そんな景色は、如何かしら?

出られない迷宮は、大変ね?
あかいろの糸を手に取って進んで往けば
歩む度に足もとが輝いてゆく
彼方、此方にとあなたの絵姿がみえる

難易度の高い問題は、すきよ
とても複雑な数式を解いてゆくよう
気がつけばほら、虜になっている
もっと奥へと往きましょうか

お月様へと近づいたなら
どんな光景を見られるのかしらね
あなたの表情を眺めるのも、たのしいわ



●それはきっと蠱惑的で
 彼方に森。其方に海。
 ならば此方には空でしょう?
 ふふと笑みを唇に象って、白いドレスの裾を泳がせ蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)は踊るように振り返った。
 その背には、まあるい冴月の浮かぶ朝焼けの空。紫とあかの黎明が広がる。
 なゆは、そんな景色がすき。
 浮かぶ雲に映された彩を受けて、彼女は問う。
「トモエさんは、どんな“すき”を取り入れるのかしら」
 彼女の問いに、親友は──五条・巴(照らす道の先へ・f02927)は雲に隠れそうな月を煽いで嘯いた。
「僕の好きにしたら、戻って来れなくなりそうだ。だって入ってしまったら、出してあげる気がない」
 君のこの“すき”は、僕も好きだな。
 陽の姿が現れる前の、冴えた空気。まだ少し薄暗くて、けれど月の光は要らない。
「わたしとトモエさんのすきが詰まった場所。わたしたちだけの迷宮、ですって」
「ちゃんと作れるかな?」
 出口のない迷宮なんて許されるかな。
 たくさんのすきを、ひとつのたのしいに紡げるかしら。
 悪戯っこが顔を見合わせるみたいに、ふたりは軽やかな足取りで踊るように進む。
 ほらと巴が指させば、ふたりの左右に桜の枝が影絵のように伸びて、みてと七結が示せば、こぼれんばかりの牡丹が溢れた。この空色の頃合いにはまだ眠っているはずのアネモネも、ここではしっかり夜更かしさん。
 そんな花々の競演に視界が奪われてしまったなら、もう来た路だって判らない。
「出られない迷宮は、大変ね?」
 そんなときは道しるべをどうぞ。
 いつからか傍をふよりと浮かぶ、一本の細くあかい糸を手繰っていけば、踏み出す一歩に足許が輝く。
 迷宮の中、いざなうように其方にも、彼方にも、あなたの姿が見える。それは絵姿? ほんとうに?
 近付いて確かめたならきっとすぐ判る。けれどそのためにはあかい糸を手放さなければいけない。
 そちらにもあかい糸があったなら? 本物かどうかは触れれば判るよ。
 其処は行き止まり? さあ君は何処から来たのだっけ?
 花々の迷宮に足を止めても、七結の笑みは消えない。
「難易度の高い問題は、すきよ。とても複雑な数式を解いてゆくよう」
 気がつけばほら、虜になっている。
 進めば進むほど──彼らの虜。
「もっと奥へと往きましょうか」

 そうして辿り着いた先には、瀟洒なテーブルと椅子がふたつ。
 すこうし花の迷宮は上り坂になっているのかな。きっとさっきよりもずっと月が近くに見えるはず。
「きっとそこには、湯気立つ紅茶が用意されているよ」
 だから座って、最初のティータイムをもう一度。
 そう告げる巴の瞳をちらと覗き込んで、七結はゆっくりと瞬きひとつ。
「お月様へと近づいたなら、どんな光景を見られるのかしらね」
「ふふ、ここからでるのも嫌になって居るんじゃないかな?」
「お月様にも近づける?」
「君が望むなら月にだって手が届くよ」
 想像するだけで楽しいのに、それがきっと実現するなんて。
 この先の路を往く足取りがなおのこと軽くなる。
「ねえトモエさん。あなたの表情を眺めるのも、たのしいわ」
 七結のうたうような声に、巴は眦を下げた。見られることは仕事のうち。当然慣れてはいるけれど、彼女の示すことばは、“それ”とはまた違うことが判るから。
「光栄だね」

──さあ、この花の迷宮で 君とどんなダンスを踊ろうか。

 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『『ダンジョンメーカー』ダンジョンの探索』

POW   :    肉体や気合でダンジョンを探索、突破する

SPD   :    速さや技量でダンジョンを探索、突破する

WIZ   :    魔力や賢さでダンジョンを探索、突破する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●そこはそんな、素敵なダンジョン!
 総勢十八名の猟兵の想像によって創造された、そのダンジョンは。

 立ち上がっても埋もれるほど背の高い向日葵と、靴の上まで伸びた長い蒲公英の一面の花畑。その上にはわたあめの雪が降っている。
 その端を、ゴゥゴゥと音を立てて高スピードのコースターが走り抜け、水の上へと走り出たところで、そのコースターを巨大なホオジロザメが襲う。
 その先には緑豊かな森が美しい花々と瑞々しい果実を香らせて、森の中には魔の属性を帯びた色とりどりの水晶の蝶が舞う。
 あるいはUDCアースで言う『アスレチック』のような遊具を舞台に、木偶を相手に宝物探しができる。
 その傍にはもふもふのぬいぐるみで出来た森が、迷宮となって惑わせる。その中では、間違い探しやなぞなぞが吹っ掛けられることだろう。
 その右には大地に突き立った幾多の杭に、自らの写し身が現れる──望めば相手か己の色合いが変わる。
 その南には疑心暗鬼を引き起こす蒸気に巻かれる、美しき花畑が広がっている。
 はたまた雄大な海に浮かぶガレオン船の甲板には、無数の書棚が積まれているて揺れている。
 その奥にはまんまるい月へと続く、幻影の手招くあかい花畑の迷宮が続いている。

「……壮観ですね。混沌というか」
 誰かが零した。
「自分が生み出したからって、別のところに行ったっていいよね」
 誰かが腕を回した。
「面白そうな内容をつまみ食いしたっていいでしょう」
 誰かが肯いた。
「早速ユーベルコードを考えようか。『きっかけ』を忘れないようにしないとね」
 誰かが苦笑した。
「さて、じゃあ楽しみに行きますか」
 誰かはそう、足を踏み出した。
 
テテメア・リリメア
【14】おまかせ

あら、あら!
とっても不思議で可笑しなダンジョンになったわね。
花畑に超特急のコースター、アスレチック、緑豊かな森とぬいぐるみの森、ガレオン船、それからそれから……えっと、とにかくたくさんよ!
これならきっと、良いきっかけも見つけられるはずだわ。

携わった場所をじっくり見るのも良いけれど……。
せっかくだから、まったく知らないところを冒険するのも楽しそうよね!
テディ、どこに行きましょうか。
木の枝が転がった方向に行ってみるのが良いかしら?
こういうのは思いつきと、ほんの少しの巡り合わせが大事よ。

新しいひらめきを見つけられたなら、
そのユーベルコードを使って迷宮を突破しちゃいましょう!


クラリッサ・マールディン
【SPD】
『93』

これが皆の想像から作られたダンジョン…!
なんて華やかで、鮮やかで、多種多様なの…!

私は思い知ってしまった
暗く静かな海の底、獰猛な生物の危険と隣り合わせ
外の世界の情報は落とし物や家族からの伝聞くらい
そんな狭い世界しか知らない私には、所詮狭い想像しかできなかったんだわ

私と違うものを見て来た皆が作り出した世界
どこに踏み込んでも新鮮な風景が待っていて…そしてきっと楽しい
水晶の蝶舞う森、ぬいぐるみの森、自分の写し身、花畑…
歩ける時間の許す限りいろんな風景が見たいわ

私の想像する危険に立ち向かう力も必要かもしれない、だけど
私の知る世界と違う遠い場所でも歩いていける力が欲しい、今はそう思うの



●満喫ダンジョン!
「あら、あら!」
 まるく開いた口許に指先を添えて、テテメア・リリメアはきらきら光るはちみつ色の瞳をまんまるにした。
 出来上がったダンジョンの、なんと不思議でおかしなこと!
「これならきっと、良いきっかけも見つけられるはずだわ」
「これが皆の想像から作られたダンジョン……! なんて華やかで、鮮やかで、多種多様なの……!」
 同じくダンジョンを見渡して、けれどクラリッサ・マールディンはあまりの衝撃に蒼い瞳を震わせた。
 鮮やかな黄色の花畑にあかく妖しい花畑、アスレチックに水晶の蝶舞う緑豊かな森に、ぬいぐるみの森に、ガレオン船──。
 他の猟兵達の、世界をひとつ創り出してしまうような規模の想像は、つよくクラリッサの胸を打った。
──私は思い知ってしまった。
 深海の底。
 そこは暗く静かで、昏い闇から音もなく水を裂いて現れる獰猛な生物と常に隣り合わせの世界だ。ゆぅらり、ゆらり、彼女は十を越える年月をそこで過ごした。
 それ以外の世界の情報はと言えば、落とし物や家族からの伝聞くらいなもの。
「そんな狭い世界しか知らない私には、所詮狭い想像しかできなかったんだわ……」
 世界、ではなく。
 深海コースターという『施設』、を創った彼女は慄くように両の頬を掌で包むけれど。テテメアはくてりと首を傾げた。
「あら、なにがいけないの? わたし、あの超特急のコースター、とても楽しそうで好きよ。きっと乗りに行くわ、だって試したことがないもの」
 彼女のほわり柔らかな笑顔には、一切の屈託はなく。
「こういうのは思いつきと、ほんの少しの巡り合わせが大事よ。さあテディ、どこに行きましょうか」
 そう言って、えいっとテテメアが放り出したのは一本の小枝。その先端が向いた方向へと「では、お先に楽しんでくるわね」と彼女はぬいぐるみの手をばいばいと振って見せて歩き出す。
 その後ろ姿を見送って、クラリッサは胸の前で小さく手を握った。
「そう、よね」
──私と違うものを見て来た皆が創り出した世界。
──どこに踏み込んでも新鮮な風景が待っていて……そしてきっと楽しい。
 時の許す限り、いろんな風景を見てみたいと思う。
 だから。クラリッサは初めて“外の世界”に触れさせてくれたメガリス・ヒストラの笛を手にする。どうか。瞼を伏せて、いつもいつも“外”を感じさせてくれた音色を紡ぐ。
──私の知る世界と違う遠い場所でも、歩いていける力が欲しい。
 パンフルートの音色は澄み渡り、彼女の願いに共鳴した。ふぅわりと浮き上がるような感覚に思わず目を開けば、幾多の淡色の薔薇の花弁が彼女を包み、彼女の身体は飛翔していた。
 驚きに思わず短い悲鳴が零れたけれど、いつも見上げていた“外”が今、眼下に広がっている。心が躍る。ドレスを靡かせて泳ぐ風の、波とは違う感触が頬に心地良い。
 ガレオン船を見下ろす空へと飛んで弾ける白波の色合いに瞳を輝かせて、ぬいぐるみの森に向かってはふかふかの蝶々と共に舞う。
「……すてき」
 歩く──とは少し、違うかもしれないけれど。どこまでだって行ける“翼”を、彼女は得た。

「ふふ、とっても速かったわね、テディ!」
 有限実行、深海コースターを堪能したあとにテテメアが辿り着いたのは、赤い糸辿る、あかい花畑の迷宮。花々の陰に佇んで見える姿はだあれ? 彼女は腕の中のテディベアをきゅ、と抱き締めた。
 こわい、とは感じなかった。
「おひとり? 淋しくはない?」
 だから彼女は、腕を伸ばしてテディの手を“誰か”に差し伸べた。テディベア──心のしるしからあたたかい光が放たれた。テテメアはぱちりと瞬いた。
「まあテディ、──もしかして……新しい、ユーベルコード?」
 テディベアは応じない。けれどぽかぽかするその光はは“誰か”の胸へと差し込んで。“誰か”がどこか楽しそうに笑う気配がした。それが判って、テテメアも微笑む。
「良ければ一緒に行きましょう」
 うたうような誘いに、“誰か”はテディの手をそっと握った。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
f02586/リュカさん

【77】

腹が減っては何とやら
掴まえたお握りを皆に配布してから
意気揚々
いざ出発!

道のり全て制覇したなら
冒険王になれるかしら、なんて
悪戯っぽく笑って

辿り着いた高速コースター
視線の端に明朗な黄
夏の花色

流れ去る向日葵の数を数えられたら
動体視力が鍛えられそうですよ
ほら、其れこそ
先制攻撃に対抗できそうでは無いですか

肩を揺らしたところで
唐突に浴びる水飛沫
ぱっくり開いた鮫の口へ
ぽぽいとお握りをお裾分け

勢いよくコースターが森を越え
更に空へ飛び出したなら
ガレオン船が眼下に見えたりしないだろうか

ねぇ
此の冒険譚に何て題名をつけましょう

其処彼処から響く楽し気な声に
災魔もわくわくしているに違いない


リュカ・エンキアンサス
綾お兄さんf01786と

【28】
(若干疲れた顔でおにぎりを頂きつつ
…俺は一般市民でいいから、安全安心な戦闘ライフがいいけどな

先制攻撃って動体視力でどうにかなるものなの、とか
鮫っておにぎり食べるんだろうかと覗き込んだりとか
相変わらずついていくのに精いっぱいで
さすがに空を飛んだ時にはどうしようかと思ったけれども、
どうにかこうにかがレオン船に着地出来たらほっと一息つく
ああ疲れた
…きっかけ、なんだったっけ…
振り回されても動じない力が欲しいとか
いや違った
先制攻撃…そりゃしこたま色々受けたけど……
とか、ぐるぐる悩んでたら呑気な言葉に若干肩を落とす
俺は、お兄さんみたいな何事も動じない人間になりたいよ



●目指せ冒険王?
 鮮やかな黄色の花畑をさくさくと進みながら、都槻・綾はふふりと笑う。
「道のり全て制覇したなら、冒険王になれるかしら、……なんて」
「……俺は一般市民でいいから、安全安心な戦闘ライフがいいけどな」
「安全安心な戦闘ライフとは興味深いですね。動かずとも敵を倒すことのできる仕掛けは一考の価値があるかもしれません」
 糠に釘、柳に風、暖簾の腕押し。リュカ・エンキアンサスの切実な訴えは綾の好奇心に姿を眩ませてしまった。
 仕方なくなんだか見憶えのある気がする蒲公英を踏まぬように気を配りながら、背丈を軽く越す高さの向日葵に先生の姿を見失わぬようにその背を追う。
 辿り着いたのは超速のコースター。可愛らしい絵柄で貝殻やヒトデが描かれたトロッコにいそいそと乗り込む綾に、
「……身体が固定されるのは不利だな」
「固定しないとより危険だと聞きますよ」
 しぶしぶながらもリュカは席についてガードを下ろした。
 誰もいないのに自然と動き出すトロッコが、坂に差し掛かって速度を落とす。
 こと、こと、こと、こと、こと、
「リュカさん。流れ去る向日葵の数を数えられたら動体視力が鍛えられそうですよ。ほら、其れこそ先制攻撃に対抗できそうでは無いですか」
 こと、こと、こと、こと、こと、
「先制攻撃って動体視力でどうにかなるものなの。というかこの数は数えられないと思うよ、お兄さ──」
 ──ゴゥッ!!!!
「ッ!」
 判ってはいたものの、突如の急降下に身体の内側が浮き上がるような感覚がした。叩きつけられる──そう思った途端、冷水が全身に降りかぶった。
 表情はほぼ動かぬものの、心臓はさすがにやや早鐘で。
 それと同時にひとひとりならまるで問題なく呑み込んでしまえるほど大きな口を開いたホオジロザメが水中からトロッコへと乗り上がらんばかりに乗り出して、リュカは咄嗟にダガーで掠める牙の一撃を弾く。
「っほら、やっぱり不利だ」
 そんなリュカの傍らで、綾と来たらどこからか取り出したおにぎりをぽぽいとホオジロザメの口に放り込んでいる。
「え」
──鮫っておにぎり食べるんだろうか。いや、そもそも持って来てたのお兄さん。
 思わず釘づけになったリュカの前で、鮫もどうやら思いがけぬ反撃に目を白黒させた。その隙にトロッコは線路を進み、更に何度か大きく波打って速度を上げていった。
 そして、
「え、え」
 確かに乗る前に見た感じでは乗り場に帰ってくるはずの線路は空の果てで途切れており──彼らはトロッコごと空へと飛び出した!
「ほらリュカさん、固定していないとより危険でしたでしょう?」
「いや固定されてるとなお危険じゃないの、これ」
 中空でのほほんとそんなことを言う綾と共にガードを力づくで外し、なんとかかんとか着地した先は、ガレオン船の広い甲板。マストやら立ち並ぶ書棚やらにぶつからなかったのは僥倖だとしか言えない。
「……ああ疲れた」
 腹が減ってはなんとやらですよ、と。
 つるりとなんら変わらぬ──むしろ生き生きとした表情で綾が手渡したおにぎりを半ば諦めた心持で食みつつリュカはようやく息を吐く。
「さあリュカさん。新しい技のきっかけは掴めましたか?」
「……きっかけ、なんだったっけ……振り回されても動じない力が欲しいとか、……いや違った」
 先制攻撃だったっけ、と思い返したそのとき。
 ずばっ、と音を立ててリュカ目掛けて飛んできたのは──本だ。
「っ?!」
 想像が想像される場所。想定通り攻撃を仕掛けてきた書棚に、咄嗟にリュカは『散梅』を構えた。その動きは自然と空を裂くものになり、裂かれた空間から現れたのは、巨大なホオジロザメだった。
「──」
 ホオジロザメはその大きな口で本を食い荒らし──綾が切なげな顔をしたのは気にせず──消え去った。その後、リュカが同じようにダガーを振ってみても、再び鮫が現れることはなかった。
「……防御した攻撃を、一度だけ召喚できた、のか」
「素敵ではないですか。どれ、私も真似てみましょうか」
 想像する。けれど、本は傷付けたくない──。そんな綾の想いが届いたか、現れたのはホオジロザメ、の、ミニチュアだった。
「おや、まあ」
 数え切れぬほど現れたそれらにはどうやら戦闘能力はないようで、和綴じの本達を式神が如くに懐柔していく。その微笑ましい光景に綾は咲った。
「ねぇ、此の冒険譚に何て題名をつけましょう」
「……俺は、お兄さんみたいな何事にも動じない人間になりたいよ」
 ぽつり呟いた言葉にも、綾はブレない。
「ええ、災魔のためにもまだまだ楽しみましょう」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浮世・綾華
オズ(f01136)と
【70】ちょっとした合わせ・お揃いUCイメージ

たんぽっぽ?ふふ
彼の歌を耳に流しながら向日葵の中へ
全然前、見えないなぁと思っていたら声が遠くなってて

――あれ、オズ
いる?
おーずーくーーん
呼ぶ声がしたケド黄色に混じってよく見えず
大きく手をあげ

良かった
でもまた見失ったら困るなぁ
…あ、オズ
俺、シャボン玉のやつ乗りたい
あれ、楽しくて好きだよ
(それになんかすげぇオズって感じがするから
とは心の内だけで)
答えにはよっしゃと手を重ね

おー壮観だねえ
たくさんの花にふわふわ
なぁんか…うん、ちょっとだけ眠い
って、そんな場合じゃないんだケドも

アスレチック?楽しそーネ
目ぇ覚めそーだし、いっちょ遊びますか


オズ・ケストナー
綾華(f01194)と
【70】ちょっとした合わせ・お揃いUCイメージ

たんぽっぽたーんぽっぽ~
歌いながら歩く
綿毛を見つけたらしゃがんで

絵にかいた綿毛に乗って
ふわふわ空を飛んだこともあったなあと思い出す

アヤカの声が聞こえた気がして
あれ、アヤカがいない
アヤカ、ここだよーっ
ぴょんぴょん跳ねて
黒髪を探す
みつけたっ

シャボン玉っ
いいよ
笑って手を差し出す
浮かんだらきっと、またちがってみえるもの

たくさんの黄色と
たくさんのにじいろ
ぽかぽかで、あったかくて
こんなきもちになってもらえたらなあって

ねむくなっちゃった?
額に手を翳して見渡せば
アスレチックを見つけて
ねえ、アヤカ
指さす

いこうっ
もう少しだけ空をぷかぷか旅しながら



●君に願う
 風が渡れば、ざわざわと向日葵の大きな葉が音を立てて。
「たんぽっぽたーんぽっぽ~」
 即興の歌を口ずさみ、オズ・ケストナーはくるくると踊るように蒲公英の中を歩く。
「たんぽっぽ? ふふ」
 なにそれかわいい。言いそうになる口許を覆いつつ、浮世・綾華は額の前に掌でひさしを作って道なき道の先を見遣る。「あ、綿毛っ」我関さぬオズの声が後ろで聞こえる。
──全然前、見えないなぁ。
 そして数歩。
 ふと気付く。聴こえていたはずの歌声が遠い。振り返る。
「──あれ、オズ。いる?」
 居ない。
 歌声だけが届く。
「おーずーくーーん」

 しゃがみ込んで綿毛の蒲公英をふよふよ撫でていたオズはその声にはっと顔を上げた。
「あれ、アヤカがいないっ」
 急いで立ち上がるけれど、背丈を越すほどの向日葵に覆われて、友の姿は見えない。
「アヤカ、ここだよーっ」
 ぴょんぴょんと跳ねてみるけれど。

「オズー? どこ?」
「ここだよっ、アヤカー」
 オズの蒲公英色の髪は向日葵の中にあってすっかり保護色で。

 少しして、大きく手を振っていた綾華の黒髪に「みつけたっ」オズが彼の傍に駆け寄ることでようやく事なきを得たふたりは顔を合わせてふやりと笑う。
 良かったと一旦は肩の力を抜いた綾華は「でもまた見失ったら困るなぁ」と思案して。
「……あ、オズ」
「うん?」
「俺、シャボン玉のやつ乗りたい。あれ、楽しくて好きだよ」
──それになんかすげぇ“オズ”って感じがするから。
 楽しむ心と、助けたい気持ち。やさしい君にぴったりだから。……なんて、口には出さないけれど。
 なにも知らないオズは「シャボン玉っ」ぱっと表情を輝かせ、迷わず手を差し出した。
「いいよっ、浮かんだらきっと、またちがってみえるものねっ」
「よっしゃ」
 そうして重ねた掌。ぽわん、とふたりごと包み込むシャボン玉がゆっくりと空へと舞い上がる。Geh in den Himmel──キミトソラヲアルク。
 ふぅよ、ふぅよ。
 眼下に広がる種々の色合いの黄色に、傍を包むくるくる表情を変える虹色。
「おー壮観だねえ」
「うんっ、そうかん、そうかん」
 ぽかぽかで、あったかくて。
──あの子にも、こんなきもちになってもらえたらなあって。
 キトンブルーの瞳が柔く緩む。そんなオズの姿も含めて、綾華の瞼もゆるゆると下がってきてしまう。
「ふふ。アヤカ、ねむくなっちゃった?」
「なぁんか……うん、ちょっとだけ眠い……。って、そんな場合じゃないんだケドも」
 しばらくねててもいいよ、と言いかけたオズの視界の端に見付けたのは。よく見るために額に手を翳し「ねえ、アヤカ」彼が指さした先を、首を傾げて綾華も見下ろす。
「アスレチック? 楽しそーネ。目ぇ覚めそーだし、いっちょ遊びますか」
「うん、いこうっ」
 ふぅよ、ふぅよ。しばしの空の旅の、のち。
 アスレチックの上に陣取る木偶を前に、オズは「──あっ」ぱちりと瞬いた。
「おもいついたよ、アヤカっ」
 両の手をそっと合わせて、そして開く。そこから湧き上がったのは、鮮やかな黄色の花弁。蒲公英と向日葵のそれ。
 それだけではその場にふよふよと浮き続けるだけのそれらに、察した綾華が舞いの如く『夏ハ夜』で仰げばたちまち花弁は空へと舞い上がり、木偶へと鋭い斬撃となった。
「……あれ?」
 しかし木偶は動きを止めただけ。見目に傷はひとつもない。害意をぷっつりとなくして佇んでいる姿にオズは首を傾げ、綾華は胸中で安堵の息を吐く。
──ああ、それがいい。
 贈った鍵に添えた願いが、共に使うユーベルコードにも反映されるなら、それより望むことはない。
「ふふっ、アヤカらしい技になったねっ」
「……俺らしい?」
 屈託なく笑う友に今度は綾華が首を傾げれば、返る底無しの信頼を籠めた視線が雄弁に語る。与えられた優しさと友愛を、彼は温度として識っているから。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蘭・七結
トモエさん/f02927

『7』

まあるいお月様へと向かってゆく
あかい花畑の迷宮を歩んで往きましょうか

あかい花のなかに浮かぶ黄金の月
思考のなかで浮かぶ、“もしも”
このままあかいいろに囲われていたなら
あの煌々と輝くうつくしい彩さえも
鮮烈な色にーーまっかに染まるのかしら

とても蠱惑的で、魅力に満ちていて
気がついたなら惹き込まれてしまいそう

トモエさんは、まっかなお月様をどう思うかしら

まあ、それは
とても喜ばしいことね
なゆもね、今このひと時が愉しいわ

和国の空に浮かぶ満月
今年も、見映してみたいものね

長くて短いひととせの移ろい
その一片、円かな月がうつくしい日
あなたの時間を、なゆにちょうだいな

……ふふ、約束
約束だわ


五条・巴
七結(f00421)と

『18』

月をめざして進む

眼前にはあかい花畑が続く

足を進める度に近くの花々は愛らしく揺れ、
さきへ、先へと誘う

隣から紡がれる”もしも”の話。
仄暗い夜空に燦然と輝く月さえも
あかく、あかく染められたら

僕の知る暖かい月は
燃え上がるような激情を柔い円に隠して見せ、
そして薄紅の桜に身を隠してしまうんだろう

それは僕の目指すものでは無いかもしれないし、
新しく続く道となるかもしれない

どちらでもきっとその先は
七結がいるから楽しいんだろうね

うん、約束。
ふふ、次の満月に。
少しの間だけ
七結の時間を貰うね。

なんだか予告状みたいだね?
零れる笑みをそのままにまた月へ向かって足を進めよう



●火虫
 あかい、あかい花の中を、まあるいお月様へと向かって歩く。
「愛らしいものだね」
 眦を和らげ、五条・巴は迷宮を形作る一端であるあかいアネモネを指でつつく。揺れた花に目もくれず、「そうね」蘭・七結がみつめるのは空に浮かぶ、こがねの月。
「ねえトモエさん。“もしも”──」

 もしもこのままあかいいろに囲われていたなら、あの煌々と輝くうつくしい彩さえも、鮮烈な色に──まっかに染まるのかしら。

 彼女の言葉に、巴もゆるりと夜空色の瞳を空へと向けた。
──仄暗い夜空に燦然と輝く月さえもあかく、あかく染められたら。
 それはきっと、とても蠱惑的で、魅力に満ちていて。気がついたなら惹き込まれてしまいそう、と零した彼女の長春色の瞳が巴の横顔を見る。
 巴は脳裏に思い描く。こがねの温かさを喪った月は、燃え上がるような激情を柔い円に隠してみせ、そして空を覆わんとするこの薄紅の桜に身を潜めるだろう。
「……それは僕の目指すものでは無いかもしれないし、新しく続く道となるかもしれない。ただ、どちらでもきっとその先は七結がいるから楽しいんだろうね」
「まあ、それはとても喜ばしいことね。……なゆもね、今このひと時が愉しいわ」
 彼女がころころ笑った、そのとき。
 空が、翳った。
 見遣ればこがねのあかるい色が喪われて、月はあかへと色を変えていた。想像が創造をする場所。共通の認識は世界を変えて。
 誘われるように、牡丹咲く向こう側、“誰か”がゆらりと佇んだ。それはひとり、またひとりと姿を増やして、赤い糸を手繰るようにしてふたりの傍へと近付いてくる。
 赤い月の下、その顔は明瞭にはならない。
 誰か見知った顔であるような、そうでないような。
 だから七結は存分にそのあかい月の光を浴びて、褪せ色の髪を泳がせあかい花々の中へと躍り込む。
「あそびましょう、なゆと」
 それは誘惑。
 抗えぬほど強烈で鮮烈な、あかの蠱惑。
 差し伸べられた細く白い指を、“誰か”のひとりが掴もうと手を伸ばす。彼女ひとりに、影が群がる。
「横入りは褒められないね」
 くすりと喉の奥でわらって巴が構える『Edelweiss』。それは拳銃。装弾数は決まっている。なのに。
 まるで花の香が燻ゆるように、かの花が白くけぶるが如くに咲くように。白い硝煙と尽きぬ弾幕が彼女を取り囲んだ“誰か”達を射抜いていく。
「ああ──」
 危険だと、火を見るより明らかであるにも関わらず、次々と茂みの陰から現れる“誰か”達は七結ひとりから標的を外すことができない。
「和国の空に浮かぶ満月。今年も、見映してみたいものね」
 白い雲霞のさ中、なにごともないかのように七結は告げる。
「長くて短いひととせの移ろい。その一片、円かな月がうつくしい日。あなたの時間を、なゆにちょうだいな」
「うん、約束」
 終りを告げるみたいに、たったひとつの薬莢がちりんと落ちて小石に弾けた。
 熱された銃口を冷ますためくるくると相棒を回して、巴もあかの中ただひとりになった彼女の傍へと当たり前に近付いた。
「ふふ、次の満月に。少しの間だけ、七結の時間を貰うね」
「……ふふ、約束。約束だわ」
 悪戯っこのような似た者同士の笑みを浮かべて、どちらからともなく絡めた小指。
「なんだか予告状みたいだね?」
 肩を竦めておどけて見せた巴に、七結は目を細める。
 あかい月が、まだなお彼女を照らしていた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キトリ・フローエ
『16』

皆の力で作った、世界に一つだけのダンジョン
何だかとっても胸がどきどきするわ!
全部回ってみたい気持ちはもちろんあるけれど
まずはあたし達が作った森が
ちゃんとダンジョンとして動いているか確かめなくちゃ
とはいえ、どんなユーベルコードがいいかしらね?
水晶の蝶達の力も借りつつ、新しいユーベルコードを考えるわ
折角だから普段のあたしが思いつかないようなものを
思いつくことは出来るかしら?

疲れたら果物を食べて休憩ね
こっちがメインだなんてことはもちろんないのよ
それに心と体を休ませることで
何か見えてくるものもあるかもしれないわ
一息ついたらまた頑張りましょう
きっと、素敵なユーベルコードが出来上がるに違いないわ!


千波・せら
『73』

壮大な迷路の完成かな。
皆の遊び心が沢山詰め込まれてて、びっくり箱みたいな場所だね。

どんなユーベルコードを生み出そうかな。
私は探索者だから、冒険に役立つ物もいいな。
普段操るような天候と属性を合わせたような、強いユーベルコードもいいな。

悩んじゃうね。あれもこれも全部良いから、とっても悩んじゃう……!
悩みに悩んで選んだユーベルコードは、これにしよう!

これを試してみたい!



●傍らの
「皆の力で作った世界に一つだけのダンジョン、何だかとっても胸がどきどきするわ!」
「皆の遊び心が沢山詰め込まれててて、びっくり箱みたいな場所だね」
 キトリ・フローエが美しい翅を忙しなく動かす傍で、千波・せらもこくこくと肯く。
 青々とした緑の中、そこかしこに咲く花々はキトリの心をふるわせた。そのびっくり箱を、全部回ってみたい気持ちはもちろんあるけれど。
「そうね。まずはあたし達が作った森が、ちゃんとダンジョンとして動いているか確かめなくちゃ」
「そうだね! じゃあ、また後で!」

 ……言って別れた道の先。
──とはいえ、どんなユーベルコードがいいかしらね?
 ひらひら舞う水晶の蝶はひたすらに美しく、こちらから攻撃を加えない限りは害を成すこともなさそうだ。
 折角だ。普段の自分が思いつかないようなものを考えることはできないだろうか。
 虹色の蝶々をつんと杖で突いてみたなら、儚く澄んだ音を立てて砕け散った。柔らかな草の上に散ったそこから、種々の花が咲く。花の属性、だったらしい。
「……花、」
 藍色の瞳が見つめたのは、『Fleur belle』。エレメンタルロッド。それは戦闘時に杖へと姿を変える、彼女の大切な同道者、ベル。
「……そうよ。ベル、あなたと一緒に戦えたなら、どれだけ心強いかしら」
 こつんと杖頭の花の結晶へと額を寄せ、祈る。杖として共にありながら、傍に寄り添い支援してくれたなら。
 伏せた瞼の向こう側、鼻をくすぐった甘い花の香り。ぱちりと瞬けば、手に杖は確かに握ったまま、見慣れた精霊がふぅわりと微笑んだ。
 召喚されたベル自身が単独で戦う力はないだろう。けれどベルの掌からはらはらと零れる青と白の花弁が、キトリの力を増強するのを感じる。
「百人力ね」
 風を切って杖を薙ぎ、キトリはさっそく試そうと水晶の蝶達の群れへと舞い込んだ。

 ……言って別れた道の先。
──どんなユーベルコードを生み出そうかな。
 むむむと左右の間違い探しとにらめっこしながら、せらは考える。
 普段操るような、天候と属性を合わせたような、強い技もいい。けれど探索者たる自身を思えば、冒険に役立つ物も捨てがたい。
「こことここっ!」
 指差す違いに、もふもふもふ……と右側のぬいぐるみの岩が動いて道が開いていく。
 その次のなぞなぞの岩の前でせらはうぅんと首を捻った。問題が難しい、ということではない。例えばこのなぞなぞは簡単だけど、とっても難しい問題が出てくるダンジョンがあったら?
──そうしたら、私は探索を諦める?
 ううん、そんなことはきっとしない。だったら。
「……うん。これを試してみたい!」
 想いを馳せるのは、親しい海。その海を渡る、風。その力を、身体に宿す。
 せらの足先から、徐々に鉱石の質感が失せていく。そこにあるのは潮の香り帯びた風。身体の一部を、海風の属性へと変質させていったなら。
 彼女は大きなぬいぐるみ岩を見上げた。
「──えいっ」
 海の風は勇猛でやさしく、残酷だ。ときには巨大な帆船とて転覆させるほどの強風へと転じたなら、せらの身体は空高く舞い上がった。
「わわわっ?」
 初めてのことに高く飛び過ぎたと焦る彼女が願えば、風の勢いは弱まり、ゆるりと簡単にぬいぐるみ岩を突破した。そして着地と同時に脚は元に戻る。
 これなら、探索にも使えるかもしれない。

「……っていうユーベルコードを考えたんだ」
「すごい! これを食べ終えたらぜひ見せて欲しいわ」
 甘い桃に、爽やかなオレンジ。小さなすももと金柑も、キトリにとっては大玉だ。せらとふたりでふかふかの草のベッドに腰掛けて舌鼓。
──こっちがメインだなんてことはもちろんないのよ。
 ごくごく真面目に、キトリはそう胸を張る。
「心と体を休ませることで、何か見えてくるものもあるかもしれないわ。ひと息ついたらまた頑張りましょう」
 きっともっともっと、素敵なユーベルコードが出来上がるに違いないわ!
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リゼ・フランメ
『63』
作り上げられた世界は、それこそ夢の万華鏡ね
思いや理想、こうあったらいい
それらが織り重なり合い、触れ合い、視線を変えれば姿形や意味合いさえ変わってしまう

混沌というのは簡単だけれど
沢山の思いのひとつ、ひとつが重なった場所
さて、私はその中で、私らしさのひとつを作り上げましょう

劫火剣エリーゼを片手に、向かうのはやはり、私の生み出した水晶の蝶
魔の属性を宿すそれらを、どれ程速く、そして鋭く、斬りながら動けるか
それこそ、絢爛優美なる剣舞の動きとして
その姿を彩る技を、生み出すべく

周囲の音に耳を澄ましながら
まずは流れる旋律に合わせて一歩踏み出し
そして足を、身体を、そして剣を流れるように舞わせましょう



●一心に、一閃に
 ふむと小さく声を零して、リゼ・フランメは森の中の高台から広がるダンジョンを一望した。
 黄色に赤の花畑、かと思えば白く霞んだ場所に、海に、森。
──作り上げられた世界は、それこそ夢の万華鏡ね。
 思いや理想、こうなったらいいなんてそれぞれの空想が織り重なり合って触れ合い、視点を変えれば姿形や意味合いまで変わってしまう。
 それをどのように使うか、というところまで十人十色となれば、その変容は留まるところを知らない。
「混沌、というのは簡単だけれど。沢山の思いのひとつ、ひとつが重なった場所。……さて、私はその中で、私らしさのひとつを作り上げましょう」
 静やかに告げて、白く優美な剣をリゼは胸の前に掲げる。『劫火剣「エリーゼ」』。向き合うのは当然、水晶の蝶だ。
 ひと呼吸。
 地を蹴った。
 繊細な切っ先が水晶を突くと同時に、弾けた光が水となり、緑となり、炎となる。それらを舞うように避け、あるいは絡め斬り、いかに疾く鋭く路を切り拓けるか。
 蝶の不規則な揺れを推測し、一切の無駄なく剣を届かせる。研ぎ澄ませる意識と聴覚。水晶の翅の擦れ合う音を旋律として、剣舞を躍る。
「、」
 不意に、気付いた。赤の蝶の軌跡。緑の蝶の硬さ。青の蝶の速度。蓄積された経験が、彼女の力となって『エリーゼ』へと伝わっていく。
 赤の水晶を突く、その瞬間。
 力の流れを、──受け止める。
 水晶の魔力は砕け散ることなく、『エリーゼ』へと纏わりその剣は暫時炎の属性を得たなら、次に狙う緑の水晶は空気を撫でるが如き柔らかさでひと薙ぎすれば砕け散る。
 攻撃を当てることができれば、敵の属性を我が物とすることができるユーベルコード。
「……今少しの洗練が必要ね」
 彼女は妥協することなく、再び意識を水晶の蝶へとひた向けた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

イネス・オルティス
『72』
自分達で創り出した迷宮を探索するというのも何だか妙な感じね
……そうね、せっかくだからアスレチックのタイムアタックみたいな事をやってみましょう
【薄衣甲冑覚醒 弐】の高速移動でダッシュ、
アスレチックをクライミング技術や怪力で強引に突破しつつ
衝撃波を放って木偶を攻撃
どれだけ短時間で突破できるか、こういうのも楽しみの一つでしょうね
まあ、タイムなんて計ってる人いないと思うけど

鍛錬にも丁度いいし、この経験が新しいユーベルコードの種になるといいわね

アドリブ・絡み・可


グァーネッツォ・リトゥルスムィス
『55』

すごく斬新なダンジョンが出来上がったな!
色々な仕掛けを遊んでみたいけど、災魔倒した後でも挑めそうだから
今はアスレチックにGO!GO!だぜ!

小さくて不安定な板切れや網の上でも空中戦のように習熟して
安定した体幹を維持しながら、
倒すべき木偶は一体一体確実に急所を突いて一撃で仕留めるぜ
時間をかけすぎれば焦りから倒しちゃいけない型への誤撃や
隠れている伏兵に気づかないまま素通りなんて起きかねないからな

へへ、ユーベルコードのアイディアを求める為でもあり
宝物庫を開けるためでもあるけれど、
こうやって戦ったりオレ自身を追い込む訓練自体も楽しくて
この行為自体がご褒美で宝物な気がするぜ!



●願わくば、望む力の得られんことを
 グァーネッツォ・リトゥルスムィスは金の瞳を常以上に輝かせて、小さな両の拳を握り締めた。
「すごく斬新なダンジョンが出来上がったな!」
 彼女の言葉に肯きつつも、イネス・オルティスは改めて組み上がった『アスレチック』をしげしげと眺めた。
「自分達で創り出した迷宮を探索するというのも何だか妙な感じね」
「確かになあ」
 それも、楽しむために、というのだから倒錯的にも思えるところではある。
 ただし組み合わさることで想定外の状況も生まれているダンジョンだ。グァーネッツォはうずうずと逸る気持ちを抑えて笑う。本当は、他の“世界”や仕掛けも楽しんでみたいけれど。
「災魔倒した後でも挑めそうだから、今はアスレチックにGO! GO! だぜ!」
「……そうね、せっかくだからタイムアタックみたいな事をやってみましょう」
「おおっ」
 告げるが速いか、イネスはビキニアーマーの神のオーラを纏い、駆けた。それは薄衣甲冑覚醒 弐。高速移動と武器を振り抜くことで衝撃波の射出を可能とするユーベルコードだ。
 身軽に組み上げられた木々の上に登った彼女は『藪払い』を無造作に振り抜いた。衝撃波が登って来るイネスを襲わんと手を伸ばしていたデッサン人形──もとい木偶を打ち飛ばす。
 迅速に路は拓かれていき、イネスは迷うことなく試練を越えていく。想定したとおり、ビキニアーマーであればこそ、激しい移動にも身体の動きを妨げることなく進むことができる。
──まさに神のご加護、ね。
 得心と共にバトルアックスを振り抜いた、その攻撃を。
 木偶の傾きが刃の向きと揃い、躱され──斧の刃はアスレチックの丸太に突き刺さったけれど。そこから溢れ出した力強いオーラともいうべき加護が、木偶の身体を捕縛した。
 捉えたならば、敵の戦闘力は半減したも同然だ。
 小気味よい音を立てて木偶を斬り伏せ、再び駆け出しながらもイネスは自らの手をしげしげと見つめる。これが望んでいた、知能あるいは魔力を用いた薄衣甲冑覚醒となり得るだろうか──。
「よぉっし! オレも行くぜ!」
 グァーネッツォも『幽冥竜槍ファントムドラゴンランス』を手に、駆け出す。木偶は倒されてもすぐに別の個体が補充されるらしく、鍛錬としてはこの上ない。
 縄に吊るされただけの不安定な板切れを、軽い足取りで飛ぶように跳び敵の懐へと躍り込み、一体一体、確実に急所を突いて仕留めていく。
「おッ、とお前はマズいな」
 飛び出してきた、苔むしたような緑色の木偶に切っ先をすんでのところで押し留めて、彼女は木偶の頭に手をついてひらりとそれを飛び越えた。
 しかし、その着地点にいた新手に思わず目が見開く。
「ぐっ……!」
 掌を出したのは、偶然。咄嗟の防御反応。しかし。
 どん、と衝撃波が生まれて、敵は吹き飛び──更にそれは無数の竜の鱗と化して木偶を吹き飛ばした先の丸太へと縫い付けた。
 先を急ぐ道行、あるいは護るべき存在のある戦場では有効かもしれない、それ。
「……へへ、」
 掌を見下ろして。それからぐっと握り込んで、イネスのあとを追うように駆けながら、グァーネッツォは笑う。
 彼女にとってはこれはユーベルコードのアイディアを求めるためであり、まだ見ぬ宝物庫を開くための戦闘であるけれど。
 こうして戦闘に身を置き自身を追い込み、成長を実感すること自体も楽しくて。
「もうこのダンジョンまるごとがご褒美で宝物な気がするぜ!」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クロム・ハクト
98
色んな世界を渡り歩くのも、縮めてみるとこんな風かもしれないな。(混沌具合に対して)

自分が関わったエリアで試す。
自然の物ではないにせよ、植物などを巻き込むかもしれないのは気が引けるしな。
ここならそういう心配はないだろ。
それに、次に進むには丁度よい相手だ。

加減や使いこなす中で、周囲への影響与えないものなら他で試したり一休みしても良いか(その時にはケーキも持っていきつつ)、などと思ったりしながら。
アドリブOK


ユヴェン・ポシェット
『55』

すげぇ、本当に混沌だな…
否、このくらいの方が楽しみ甲斐があるものだな。
海洋遊園地か… コースターのトロッコがホオジロザメに向かっていくのは楽しめそうだな。
それに自分で言ったからには、あそこにも行ってみないとな。何より気になる。
自身の写し身を全く別の色に。色白で髪の色は鮮やかな緑色、瞳はブルー…最早誰か分からないな。 

ははっ。面白い。
これをどう後略するかな。



●変わるセカイ
「すげぇ、本当に混沌だな……否、このくらいの方が楽しみ甲斐があるものだな」
 コースターのトロッコがホオジロザメに向かっていくのは楽しめそうだな。
 色違いの双眸を瞬きつつも口角を上げてユヴェン・ポシェットが告げれば、クロム・ハクトもあまり動かない表情の中でも雄弁にこがねの瞳を丸くした。
「色んな世界を渡り歩くのも、縮めてみるとこんな風かもしれないな」
「なるほど、世界の縮図か」
 面白い、と零した彼らが振り向き向き合うのは、乱雑に大地に突き刺されたいくつもの杭。
 薄く蒸気の纏うその杭の上に、根元に、“誰か”の影がある。
 クロムが相棒の熊猫人形をしゅるりと繰り、足元に動かしたなら、杭の上にいる“誰か”もなにかを繰って足元に躍らせた。
 彼は小さく息を吐く。人工的に想像で創り出されたものであろうとも植物などを巻き込むのは気が進まないから、ここならば心置きなく新しい技について試すことができる。
「……それに、次に進むには丁度良い相手だ」
「ああ、そうだな」
 相手取る“誰か”は、己の写身──ただし、彩が異なる、それ。
 武運を祈る、と互い交わし合う視線だけが告げて、彼らは戦場へと飛び込んだ。

「よぅ」
 軽い足取りで躍り上がった杭の上。油断なく数歩のステップで同じ高さまで登ってきた相手は。
 白い肌。
 芽吹いたばかりの若芽色の髪。
 紫紺と蒼穹色の双眸。
 色違いの、『ユヴェン』。
「……否、最早誰か判らないな。──ロワ」
 彼が呼ばわると美しい黄金のたてがみのライオンがその巨躯に見合わぬほどの身軽さでユヴェンの傍の杭へと降り立つ。
 すると相手の傍にも、同じくライオンが寄り添った。けれど毛並みは、艶めく黒だ。「ははっ、」思わず彼は笑った。
「面白い。これをどう後略するかな」
 繰り返す言葉は、嘘偽りない彼の本心なのだろう。それを証明するように、『ユヴェン』も楽しげに口の端を吊り上げ白い歯を見せた。

 まるで色合いがバラバラのユヴェンと異なって。
 クロムが見上げた『クロム』は、彼と正反対の彩をしていた。
 白い髪、揺れる白い尾、耳。躑躅色の双眸。
「──……」
 まるでクロムそのものから色素を差し引いたかのような姿は、熊猫の白黒まで反転している徹底ぶりだった。
  なにかが喉に詰まったような苦しさが瞬時襲った。そして、「……?」クロムは首を傾げる。まるで同じ顔が異なる色彩で現れたことに対する違和感だろうかとその疑問を打ちやって、彼は駆け出した。
「……当然、同じ技を遣うわけか」
 手の内が知れている、とでも言うべきか。敵の攻撃を防ぐことも容易い代わりに、こちらの攻撃が明確に届くこともない。
 杭の上を飛び移りながら素早く糸を繰るも、『クロム』は躑躅色の瞳で注視してその軌跡を読み切りぎりぎりのところで跳び退がる。
 ジャキッ、と伸びた黒い熊猫の爪が目を狙ってくるのを、「くっ、」クロムが身を退け反らせて避ける。……狙いは、同じか。
「仕方ない」
 同じ力量で拮抗するならば新しい技を生み出す他ないだろう。元よりそのつもりで来たのだ。
「……折角会ったんだ。お前の姿を借りようか」
 相棒を控えさせ、拷問具が敢えて彼の両の掌を裂いた。溢れ出る紅の液体が彼の意思を汲むかのように蠢いて、紅いマントのようにクロムを包む。
 そしてその帳の向こうで、ひしゃげるような音がして──塵と消えたマントの下から現れたのは、純白の毛並みに躑躅色の瞳の大狼。
 漲る力を四肢に体躯に感じられる。けれど同時に、負荷が大きいことにも。
 惑う『クロム』に、彼はくぐもった声で告げた。繰られる『熊猫』の、なんと緩やかなことだろう。
 四肢が杭を蹴った、そう感じたときにはその脚に生えた鋭い爪が『クロム』の喉を掻き切っていた。
「……いい気分はしないな」
 消えゆく写身の姿に、しゅるりと元の姿に戻った彼は小さく零し、それからひとつ息を吐く。
「……色は、俺のままでもいいか……?」

 膠着状態は、ユヴェンも同じだった。
 ロアに跨り馳違うこと幾度。繰り出す槍の穂先は回数を重ねるごとに近付き、そして薄く身を裂く。
「キリがないな」
 とんッ、とロアの脚が杭を捕らえたとき、ユヴェンは中空に手を伸ばした。なにも無かったそこに掴んだのは、虹帯びた乳白色の石。
 その形を確認すると同時にその石から放たれた鮮やかな虹色の彩光が圧を伴い『ユヴェン』を襲った。吹き飛び遠くの杭に磔になった、その刹那にはロアの鋭い爪が『彼』を裂いた。
 消えた幻に薄く笑って見せて、ユヴェンはロアを労う。振り返ればケーキを手にしたクロムが軽く手を振って、ひと休みしようと彼を誘うのだった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

斬崎・霞架
【希蕾】
アドリブ◎
『54』

僕らは南に向かいましょう
(蒸気、疑心暗鬼、人型の炎、だが炎と互いの姿が入れ替わって見え)
現れましたね
マリアさん、気を付け…ッ!?
(マリアの姿に見える炎の攻撃を受け)
…惑わされている?
炎もこちらに攻撃してくるが、おかしい
動きに見える迷いの差…マリアさんの影が、揺らめいている?

声が聞こえる
責める声、恨む声、苛む声、呪う声が

…ふふ、はは…ははははっ!
残念です。残念ですが…

――マリアさんは、疑念を抱くのが馬鹿らしくなるほど真っ直ぐで綺麗な心の方だと思い知らされているので

(攻撃を受けつつでも合わせUCの合図を出し続ける)
楽しい、とは少し違いますが
…信じていますよ、マリアさん


マリアドール・シュシュ
【希蕾】
アドリブ◎
45

楽しいダンジョンが沢山ね!
マリア達は勿論南へ行くのだわ

蒸気が囲えば霞架と手が離れ
花散る
一瞬姿見えず

霞架…?
嗚呼、そんな所へ居たのね
…!?

霞架(本当は炎)が人型の炎(本当は霞架)に攻撃される所を見て、
炎(霞架)へマヒの糸絡めた旋律を奏で
音の誘導弾を当てる

マリアだって霞架を護れるのよ
今度こそ…!

【透白色の奏】使用
狙い通りに

(…何故かしら
この炎、とても温かい気がするの)

揺らぎは大きく
気付く
”霞架”に影が無い
悲痛で苦痛な声が轟く

首を振る

霞架は、変わったのよ

目覚めた霞草は変革を
炎(霞架)に飛び込む
合わせUCの合図に気付き同時発動
本物の炎へ攻撃

ありがとう
マリアを信じてくれて

愛しさ募る



●例え其れが偽りでも
「楽しいダンジョンが沢山ね!」
 色鮮やかな世界が広がるダンジョンを見渡してマリアドール・シュシュは喜色満面だったが、足取りはひとつも揺るがない。
 隣の斬崎・霞架の顔を見上げてにっこりと笑うと手を繋いで、白く蒸気の立ち込める白い花畑へとふたりは足を進めた。
 けれど確と繋いだはずの手は蒸気の中を進むうちにいつしか離れ、マリアドールは銀の髪を揺らして周囲を見渡した。踵が花畑の白を散らした。
「霞架……?」

 覚悟はしていた。それでも疑心暗鬼を増幅するという蒸気の中、霞架は我知らず眉間を寄せた。
 蒸気の向こう、かそけく覗く炎の揺らめきに「現れましたね」彼は呟く。そして傍にいるはずのマリアドールへと振り向いた。
「マリアさん、気を付け、……ッ?!」
そこに在ったのは黄金のハープ。眩いばかりのそれと同じ色した彼女の瞳には光はなく、いつもの慈愛に満ちたいろもない。
 そして彼女は、彼を傷付けるための旋律を爪弾いた。
「ッマリアさん……っ? ……惑わされている? マリアさん、僕のことが、判りません、か……っ」
 一切の情け容赦なく放たれるユーベルコード。傍に寄ってきた炎もなんらかの音を発して寄ってくるのに、彼は咄嗟に真白の刀を振り抜いた。 

「嗚呼、そんな所へ居たのね、……?!」
 万一に備えてハープを抱えたまま、きょろり、視線を泳がせたマリアドールが見たのは、霞架へと人型の炎が刀のような形の武器を振り上げる姿。
「ダメっ!!」
 彼女は素早く麻痺の糸を絡めた旋律を爪弾いて、炎の武器の軌道を逸らしてみせた。炎の揺らぎが彼女へと意識を向けたのを知り、マリアドールはきゅっと眦に力を込めた。
「マリアだって霞架を護れるのよ。今度こそ……!」

 炎からの攻撃によって打ち弾かれた刀を見遣り、苦々しい思いで霞架は目の前に迫ったマリアドールへと視線を据えた。するとハープを弾き続けながら彼女の唇が開いた。
「あのときマリアを信じてくれなかったわね、霞架」
「っ、」
「苦しかった。痛かったわ。悲しかったし、淋しかった……」
 彼女の細い指先が彼女自身に首に添えられて、霞架は自らの首を絞められたかのような息苦しさを覚えた。  

 マリアドールがまず気付いたのは、炎への違和感。
──…何故かしら。この炎、……とても温かい気がするの。
 そして炎の前に佇む霞架はマリアドールを見た。
「マリアさん、……ではないですよね。また現れたか、偽物め……ッ!」

 その眼鏡の奥の金の瞳に再び手負いの獣のような怯えを見て取ったとき、彼女は確信と共に首を振った。揺らぐ霞架の足許には、影がなかった!
「霞架は、変わったのよ!」

「……ふふ。はは……ははははっ!」
 額を押さえるようにして高らかと空に放つのは、呆れといっそ清々しいと思える感情の綯い交ぜになった哄笑。
 「残念です。残念ですが」くつくつと喉奥に含み笑いを残しながら、霞架はマリアドールへと手を差し出す。
「──マリアさんは、疑念を抱くのが馬鹿らしくなるほど真っ直ぐで綺麗な心の方だと思い知らされているのでね」
 だからあなたは間違いなく偽物。それは疑念ではなく、確かな事実。
 けれど。
「……信じていますよ、マリアさん」

「ええ。マリアも信じているわ、霞架」
 だから。
 既に偽物と知れている『霞架/マリアドール』──人型の炎へとマリアドールは慈愛の心を持って抱き締めんと踏み込んだ。例えあなたが、偽物であろうとも。
 彼女の抱擁から逃れるべく身を捩り、たたらを踏んだ『マリアドール/霞架』の髪へと指先を差し込むようにして頬へと霞架は手を触れた。
 途端にぼろりと崩れた顔──炎に、彼は薄く笑む。
「あなたが『マリアドール』と名乗るなら、それすらも僕は信じましょう」
 消えていく炎の残滓に向けた手向けの言葉。
 炎に見えていた姿から、いつもの彼へと戻った霞架の服の裾を抓んで、マリアドールはそっと彼の傍へと寄り添った。
「……ありがとう、マリアを信じてくれて」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

スキアファール・イリャルギ
『94』

皆さん想像力豊かですね
まずは水晶の蝶が舞う森を蝶は砕かずゆっくり探索
きみもきっと、楽しめる場所だ
(傍らのひかりに呼びかけて)

訓練は杭の場で
……折角ですから鏡像だけ色が変わるのを望みますか
あぁ、この身に色を求めるのは当の昔に諦めました
憧憬は有れど私には眩しすぎる
私は色無き影の儘でいい
……あの子が色を嬉しそうに眺めてるだけで、いい

私が本当の"人間"の儘であったなら
あんな風に髪や目の色を変えて
肌ももう少し健康的だったんでしょうね
服にも拘ったのかな

――そう、目の前の"これ"はもう在り得ない可能性
だから躊躇なく殺すからな

……そういやあのケーキ、美味しそうでしたね
(まだあるのかなと周囲見渡し)



●色=光
「皆さん想像力豊かですね」
 他意なく告げてスキアファール・イリャルギが傍らに浮かぶ"ひかり"と共に見物して歩くのは、水晶の蝶が舞う森。
(きみもきっと、楽しめる場所だ)
 色とりどりのその水晶の煌めきに、こころなしか"ひかり"も嬉し気で。呼びかけたスキアファールも自然と口許を緩めて歩を進めていく。
 豊かな森の彩りを堪能した彼の足が戻ったのは、幾多の杭が大地を貫く場所。
「……折角ですから鏡像だけ色が変わるのを望みますか」
 あぁ、この身に色を求めるのは疾うの昔に諦めました。"ひかり"に語って聞かせるように──あるいは独白のように、スキアファールは呟く。
「憧憬は有れど私には眩しすぎる。私は色無き影の儘でいい」
──……あの子が色を嬉しそうに眺めてるだけで、いい。
 彼の狙いの通り、杭の上に現れたひょろ長の猫背。
 肌の血色は良く、光を縒って紡いだみたいな煌めく金の髪。 さっきの森の中で見た水晶の蝶の如き、澄んだ青い瞳のその男の身に巻かれた包帯すら生成りの親しみやすい色へと変貌を遂げていた。
「──……」
 しばしの間、スキアファールは絶句して『スキアファール』をただ眺めた。そして」かなりの時間を挟んで、長い息を吐いた。
「私が本当の“人間”の儘であったなら、あんな風に髪や目の色を変えて、あんな肌の色をしていたのかもしれませんね」
 服にも拘ったのかな。口にすればするほどそれは虚無のいろを帯びた。嘘くさい。御伽噺にも似た荒唐無稽さが纏わりついて消えない。
──そう、目の前の“これ”は、もう在り得ない可能性。
「だから躊躇なく殺すからな」
 低く姿勢を保ったまま音もなく、彼は駆けた。

 フランケンシュタイン・コンプレックスも三体目となればその危機感は相当のものなのではないだろうか。まるで他人事のように思考の片隅でスキアファールは漠然と考える。
 "ひかり"と共に霊障を散らして泳ぐ影人間の右腕が、『スキアファール』の霊障によって食い千切られた。
 ぶつん、と音がした気がした。衝撃だけが最初にあって、それから駆け巡った激痛に瞬時、呼吸を忘れる。
「っあ……ッガ……!」
 ああ、これではこちらが先日の戦争で向かい合った蒸気人形のようではないか。
 焦点を失いかけた黒い瞳の前に、"ひかり"が躍り出た。そして──彼の失った腕の傷口へとその輝きを煌々と差し込んだ。
 影は光によって生まれる。
「は、」
 痛みもなく途端に生えた元通りの腕にスキアファールは戸惑い、けれど元通り以上に漲る力を感じたから。
「──お返しだ」
 見舞うは本家本元の怪奇による桁違いの霊障。シャドウピヰプルによって色鮮やかな“怪奇”はその身を十を超える数へと引き千切られ──そしてスキアファールは自らの右手を見下ろした。
 治療と増強。その新しい力により、回復の必要はなくなったらしい。しかし。
「……そういやあのケーキ、美味しそうでしたね」
 それはそれ、これはこれ。
 信じがたい怪奇? そんなものは──日常だ。彼は何事もなかったかのようにくるりと周囲を見回した。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『失敗作』

POW   :    わたしのだいすきな『おともだち』!
無敵の【虹色の髪を持つ『おともだち』 】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD   :    あなたもわたしの『おともだち』?
【掌から噴き出す魔導蒸気 】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、掌から噴き出す魔導蒸気 から何度でも発動できる。
WIZ   :    だいすきな『おともだち』、はぐはぐ!
【掌から灼熱の魔導蒸気を噴きつつの抱擁 】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を魔導蒸気で満たし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠セロ・アルコイリスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●少女の夢
「わぁあああ……!」
 そして少女は現れた。
 猟兵達の、楽しみながら訓練するべく生み出したそのダンジョンに。
 翡翠色の瞳をきらきら輝かせて、虹を帯びた長い白髪を泳がせて。軽やかな足取りで、少女はダンジョンを歩き回る。
 掌から魔導蒸気を噴き出す彼女は、ミレナリィドール──の、成れの果て。
 棄てられ壊れたはずの過去。
 それでも彼女は、ただ笑う。
 それでも彼女は、すべてを受け容れる。
 それでも彼女は、だいすきだと薄っぺらな言葉で語る。
 迷宮を楽しみ、アトラクションを満喫して、海を渡り、月を見上げ──少女は猟兵達へと振り向いた。

「あなたもわたしの『おともだち』?」

 
クラリッサ・マールディン
少女に尋ねる
ダンジョン(私の作った世界)は、楽しかった?
頷いてくれたら…とても嬉しくなるわ

ねえ、私とも一緒に遊んでくれる?
お散歩しましょう
私、お友達とお散歩したことないの

ひとりで回ったダンジョンを再び彼女と回る
歩きにくい場所は飛ぶけど、彼女の歩調に合わせて置いて行かないように

ありがとう、遊んでくれて
彼女に近づき、親愛の情を込めてその体を抱きしめる
…手首を髪で縛り、彼女からの抱擁を封じながら
蒸気で体を焼かれるのは困るけど…髪なら、いくらでも焼いていいわ

抱きしめながら、毒の髪を彼女に絡ませる
心の奥底に罪悪感がちりつくけど、伝えたいのは感謝だけ

…ありがとう
あなたのおかげで新しい世界、いっぱい知ったわ



●yes, and…
 少女の問いに、クラリッサ・マールディンは淡く笑みを浮かべて問いを返した。
「ダンジョンは、楽しかった?」
──私の、創った世界は。
 あなたと逢うために創り上げられた世界は。
 少女は、満面の笑みを浮かべて大きく肯いた。
「うんっ、とっても楽しかった! あなたは楽しんだ?」
 純粋な子供のような回答に、クラリッサはふわふわと胸の奥が浮き上がるような心地を覚える。そして、肯く変わりに更に問う。
「私とも一緒に遊んでくれる? お散歩しましょう」
 私、お友達とお散歩したことないの。
 クラリッサの静かな言葉に、少女の翡翠色の瞳はきらきらと輝いた。求めていたものがそこにあると知った雄弁な表情。
「『おともだち』……! うんっ、するする、おさんぽする!」
 その無垢な顔に、ちくりと痛むものがあったけれど。ふたりはそのまま歩き出す。

「ねえねえ、あなたのおすすめはどこ?」
 ぬいぐるみの森の中。緩やかに歩を進めながら少女は──失敗作はひっきりなしにクラリッサに話し掛けた。そうすることしか知らないかのように。
「わたしのおすすめはね、すごくはやいのりものだよ。きばのはえたおおきなしろいのがね、がばーってくるの。あなたのった?」
「あ……、ええ。私も、乗ったわ。びっくりするくらい、速かったわね」
「あははっ、わたしかまれちゃったの! あなたもかまれた? 楽しかったね!」
「えっ、だ、だいじょうぶだったの?」
 あっけらかんと告げる失敗作の身には、目立つ傷はないけれど。戸惑い窺うクラリッサに失敗作は首を傾げた。
「だいじょうぶ? うん、だいじょうぶよ。『おともだち』だものね! ねえねえみて。さっきのきはかたかったのに、このきはもふもふなの。いろんなきがあるのね」
「……、そうね。いろんな木があるわね」
──そう。私も、知らなかった。
 ゆっくりゆっくり。クラリッサの胸の裡にはっきりと芽生えた想いは、彼女の中で確かな形を得ていく。
 そして紅い花畑を抜けてガレオン船を臨んだとき。歩いて行けないそこへ向かうため、クラリッサがパンフルートを奏でて淡色の薔薇の花びらを纏い、ふわりと浮き上がった、そのとき。
「わあ! あなたとべるの? すごい、楽しそう! ねえわたしもつれてって!」
 はぐはぐ! となんの遠慮もなく差し出された両の腕。灼熱の魔導蒸気を噴き出すそれを、ちりちりと刺激する罪悪感に目を瞑り、クラリッサは触手である髪で縛った。
 きょとんと目を丸くする失敗作を、クラリッサの方から抱き締める。
 ユーベルコードである掌を技能のみで完全に防ぐことはできず、彼女の髪のみならず、その身にも灼熱の蒸気は微かに届いたけれど。耐えられぬほどではないと、クラリッサは手を緩めない。
「……ありがとう、遊んでくれて」
 確かな形を得た“それ”の名は、純粋な──“感謝”。
「……ありがとう。あなたのおかげで新しい世界、いっぱい知ったわ」
 イソギンチャクの神経毒を持つ触手が、ゆるりと失敗作に絡みつく。
 確かに毒に侵されているのだろう。呂律の回らぬ舌で、失敗作は朗らかに笑った。
「どう、いた、し、まして、──だいすきな、『おとも』、『だち』」
 

成功 🔵​🔵​🔴​

浮世・綾華
オズ(f01136)と

友達。うん、そーだな
友達になろう
(いっときでも、本当に楽しい気持ちになってくれたらいい)
そう願うから

しーちゃん?
はいはい、そのつもり

オズに考えに、心配するのは心の内だけ
もしもの時の為に扇を背にひそませるケド
うまくいけば安堵し
やることは決まってる

Blumen für dich
君に見せたいって、オズと話してたんだ
どう?なんて感想を聞いて

生まれる虹の子がいたなら
あれ、その子も友達?
虹色の…にっちゃん?とオズをみて首を傾げる

花畑に向かいながらこっそりしーちゃんに耳打ち
蒲公英。好きなの、俺
オズみたいでしょ
あ、これ内緒な?
友達は秘密を守るもんなんだよ
悪戯に笑う

んー?
ふふ、内緒だよー!


オズ・ケストナー
アヤカ(f01194)と

そうだよっ、おともだちになろ
前はきみをなんてよべばいいかわからなかったけど
今はわかる

しーちゃんだ
ね、アヤカ
いっしょにあそぼうっ

手から出る蒸気がUCなら
すこしのあいだだけでも消すことができるかな
ミレナリオ・リフレクション

消せたなら抱擁を受け入れる
わたしよりもあったかいんだね、しーちゃんは

ふふ、きれいっ
アヤカが舞わせる花びら指して
なんの花かしってる?
むこうにね、たくさん咲いてるの
もう見てきた?
アヤカが咲かせてくれたんだよ

にっちゃんっ
アヤカの言葉に笑って

なに話してるの?
ないしょと言われたらきょとりとして笑う
できれば手をつないで生命力吸収

たのしいだけじゃないこと
いつか見つけてね



●of course!
 水晶の蝶舞う森に佇んでいた彼女の許へと辿り着いた彼らに、彼女は相も変わらぬ笑顔で問うた。
「あなたもわたしの『おともだち』?」
「友達」
 その言葉の意味を呑み下すのにほんの僅かの時間を要したみたいに、浮世・綾華は繰り返す。そこに在ったのは、躊躇ではない。
──いっときでも、本当に楽しい気持ちになってくれたらいい。
 彼の中に生まれたその想いはきっと、憐憫でもなかった。
「うん、そーだな。友達になろう」
「そうだよっ、おともだちになろ!」
「わあ! あははっ、『おともだち』、楽しい!」
 綾華の誘い文句にまっすぐ同意したオズ・ケストナーの笑顔に、白く虹帯びた長い髪を泳がせ彼女はちょんとスカートを抓んで見せた。
「わたしは失敗作、よろしくね」
 「、……わたしはオズだよ」それは二度目の初めまして。あのとき感じた胸の痛みに、けれど今なら──迷宮キノコに心を奪われていない今なら、一歩、進められる気がした。
「……前はきみをなんてよべばいいかわからなかったけど、今はわかる。しーちゃんだ」
 ね、アヤカ。振り返る得意満面の表情に「しーちゃん?」微笑ましいなあ、ってふより歪みそうになる口許を綾華は押し鎮めた。
「いっしょにあそぼうっ」
「はいはい、そのつもり」

(アヤカ。わたし、ためしてみたいことがあるんだ)
(ぅん?)
 向日葵と蒲公英の黄色を見下ろして彼は言った。
 繋いだ手を確かめるみたいに、少しばかりの力を籠めて。

 優しい彼の我侭を受け容れたから。失敗作の傍へと近付いていくオズの姿へ綾華は声を掛けない。ただその背にそぅと手に馴染む扇を広げて備えるだけ。
 ぱ、と両手を開いて見せたオズが笑えば、失敗作も察したらしい。そうだ、だって『おともだち』なんだもの!
「はぐはぐ!」
 ぴょんと飛び込んできた細い身体。その掌から、辺りが揺らぐほどの灼熱の蒸気が噴き出して──、そしてそれは、オズの掌からも。
「わあ!」
「オズ!」
「だいじょうぶ!」
 互い放つ蒸気が膨れ上がり弾け合い、相殺し合ってもうもうと周囲を覆い尽くす。咄嗟に声を掛けた綾華へ、オズのやわらかな声が応じる。
 『おともだち』をずっと探しているのに、折角逢った『おともだち』を抱き締めることもできない、さみしい手。
 それを──変えたかった。
「わたしよりもあったかいんだね、しーちゃんは」
「あははっ、ほんとだね。楽しいね! 『おともだち』ってすてきだね!」
 背に回された腕から噴き出す蒸気が正常に噴出されていたなら、即座に意識を刈り取られていただろう。確かめるみたいなその感触に、オズは眦を緩めた。
──うれしい、って。
 思ってもらえたら、感じてもらえたら、もっと素敵なのに。そうは思うけれど。
 白い“煙幕”の向こう側、どこかちぐはぐなやりとりに綾華も軽く安堵の息を零し、それから彼は舞うように扇を煽いだ。
 ふわ、と。
 幾多の花弁が舞い上がり、白い蒸気を吹き飛ばす。Blumen für dich──オヒサマイロノセカイ。
「君に見せたいって、オズと話してたんだ」
 どう? なんて訊けばオズが「きれいっ」と返し、「いや、オズじゃないって」と綾華も笑う。
 彩りを取り戻した世界に失敗作は瞳を輝かせ、オズは舞う花弁を指差した。
「ね、しーちゃん。なんの花かしってる? むこうにね、たくさん咲いてるの。もう見てきた?」
「うんっ! さっきおさんぽしてきたの! でもなんのはなかはしらない、なあに?」
「ひまわりと、たんぽぽっていうんだよっ。アヤカが咲かせてくれたんだ」
「あやかはおずの『おともだち』?」
「そうだよっ!」
 屈託なく返すオズに、あははと失敗作は楽し気に笑う。
「じゃあわたしもわたしのだいすきな『おともだち』をしょうかいするね!」
 そして生まれたのは、彼女と同じく虹色の耀きの髪を持つ『おともだち』。けれど綾華のユーベルコードによって“こちらと戦おうという意思”を喪っている彼女の『おともだち』はただ佇むばかり。
 「その子は、……虹色の……にっちゃん?」綾華がオズを窺って首を傾げれば、「にっちゃんっ」うれしそうにオズは肯く。
「じゃあ、にっちゃんも一緒に花畑、みんなで行こーぜ」
 そう誘ったなら、一も二も無く失敗作は彼の傍へと駆け寄る。その周囲には、まだお陽さま色の花弁が舞い続けているのを見て、綾華はそっと彼女へ耳打ちした。
「蒲公英。好きなの、俺。──オズみたいでしょ」
「おずみたい」
 彼の言葉に、虹色の髪の『おともだち』と共に少し後ろを歩くオズを失敗作は振り返る。その唇が動きそうになるのを、「あ、」綾華は己の口角の吊り上がった口許に人差し指を添えて止めた。
「これ内緒な? 友達は秘密を守るもんなんだよ」
「ないしょ。ひみつ。うんっ、おくちにとじこめておくのね!」
「、」
「なに話してるの?」
 綾華の紡ぎかけた言葉の先、オズがふたりの顔を覗き込む。「んー?」綾華は素知らぬ顔で失敗作を見る。
「ふふ、内緒だよー!」
「ないしょだよー!」
 ふたりから返る答えにきょとんと瞬いたのもほんの僅か。すぐに相好を崩して。
 そして黄色に包まれた花畑の中、オズは失敗作の手を取った。綾華のユーベルコードのお蔭で“蒸気を使う必要がなくなった”彼女の掌は、難なく手にすることができて。
「……たのしいだけじゃないこと、いつか見つけてね、しーちゃん」
 繋いだ箇所から静やかな祈りを籠めてその生命力を奪い取る。少女は気付くこともないまま、にっこりと微笑んだ。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

イネス・オルティス
さあどうかしらね?
ただケンカ友達ってのもいるわけだし、闘い合うトモダチもいるかもしれないわね
正直、製作者には後処理はきちんとしろってモノ申したい気分だけれど

【薄衣甲冑覚醒】を攻撃力重視で使用
さあ、友達ならたまにはケンカするものよ、おもいっきり行くから覚悟しなさい。
ビキニアーマーの戦い方は、先手必勝やられる前にやれ
素早い動きで攻撃を仕掛け、敵の攻撃は武器でいなすか見切って避ける
私、けっこう怪力なのよ? 耐えられるかしら

正直、サクラミラージュの様に生まれ変われるといいのだけれど……と、ちょっとだけ思うわ



●not, but
 虹色の髪に蒲公英の花冠を乗せた少女は問うた。
「あなたもわたしの『おともだち』?」
 だからイネス・オルティスは軽く肩を竦めて見せた。さあどうかしらね? と。
 そして彼女は腰を落とした。
「ただ、ケンカ友達てのもいるわけだし、闘い合うトモダチもいるかもしれないわね」
「けんかともだち? ふふっ、楽しそう! なにをするの?」
 あくまでふわふわと現実感のない様相で失敗作が跳ねてイネスの顔を覗き込む。
 イネスはその瞳と視線をひたと合わせ「──さあ、」槍を握り締める手に力を籠めた。
「友達ならたまにはケンカするものよ。……おもいっきり行くから覚悟しなさい」
 彼女の身に宿るのはビキニアーマーの精霊への信頼と信仰、そしてそれを纏う勇者達への畏敬だ。その思いは身を震わせ、彼女自身を強化する。
──ビキニアーマーの戦い方は、“先手必勝”“やられる前にやれ”。
 どうしても被覆部分が少ないが故の戦法ではあるが、同時にそれだけ身軽であるということだ。
 ト、と。
 地を蹴ると同時に肉迫した翡翠色の瞳。繰り出す穂先は過たず。
「私、けっこう怪力なのよ? 耐えられるかしら」
 問いが届く頃には、失敗作の身体は刃に貫かれ吹き飛んで──そして丸太で作られた『アスレチック』の柱にぶつかって止まった。
 脇腹に大きく開いた風穴から、もうもうと蒸気が上がるのが見える。
 その華奢な身体が手足を放り出している姿は確かに人形そのもので、イネスは苦々しい気持ちで小さく息を吐く。
──製作者には後処理はきちんとしろってモノ申したい気分だけれど。
 『失敗作』とレッテルだけ貼り、棄てられ壊れたのだという『過去』。骸の海に取り込まれ繰り返す歪な“生”。そこに意思はあれども、イネスがなにより誇りとする信仰も、そのために必要である意志も存在しない。
「あはははっ!」
 きしきしと音を立てて失敗作がゆらりと立ち上がり、風穴を開けたまま変わらぬ楽し気な笑みをイネスへと向けた。
「あなたのちから、すごいね! けんかともだち、楽しいね! じゃあわたしのばん!」
 むむむ、と彼女が創造したのは虹色の髪を持つ『おともだち』。そして『それ』は彼女の意思を──『けんかともだちを攻撃する』という『遊び』を──繰り出した。
 『それ』は彼女と同じく楽し気な笑みを顔に張り付けたまま握り締めた拳を振り抜く。
「ッ!」
 すんでのところで躱したはずの殴打は彼女の腕を掠り、擦過による熱傷を生む。なにせ『それ』の性能は『無敵』だ。イネスは再び苦味を歯の奥に感じる。
「気は抜けないわね……」
 けれど戦士の一族たる彼女は怯まない。
 強敵との交戦に全身を集中する。
──正直、
 ちらと見遣るのは、脇腹に風穴を開けたまま楽し気に“追いかけっこ”を見物する少女。
──サクラミラージュの様に生まれ変われるといいのだけれど、とは……ちょっとだけ、思うけど。
 ほんの微か脳裏を過る感傷とて、身のこなしを鈍らせるほど甘くはない。
 『無敵』の隙をひたすら見極めて、彼女は槍を繰り出した。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

グァーネッツォ・リトゥルスムィス
猟兵のオレでは災魔のおともだちにはなれない……
でも鍛錬の場を、楽しい一時の機会を作ってくれたから
全身全霊でオレの、オレ達の成果を見せるぜ!

オレがやられない様最低限急所や関節等をやられない様多少のケガを承知で
災魔自身にも虹色の友達にも白兵戦を仕掛けるぜ

劣勢を装いながらアスレチック地域まで誘導させて
不安定な足場から転落する……振りをして
アスレチックのロープを駆使して彼女らの背後に回り
オレの新UC『竜封掌打』を黒竜を召喚しながら放つぜ!

少女自身は白髪、無敵の友達は虹色髪
素敵な色だが黒色がいないのは納得できないぜ
黒竜も色んな竜種も友達のオレが、オレ達が
学園もこの楽しいダンジョンも守り抜いてやるぜ!



●can’t
 楽し気に笑い続ける少女は、くるりとグァーネッツォ・リトゥルスムィスを見つめた。他の猟兵の攻撃によって空いた脇腹の風穴からはもう蒸気も上がっておらず、少女は──失敗作は初めてみたときとなんら変わらない笑顔で問う。
「あなたもわたしの『おともだち』?」
「、」
 ぐ、とグァーネッツォは拳を握った。いつも快活な彼女の表情が沈んだ。
「猟兵のオレでは災魔のおともだちにはなれない……」
 オブリビオンは倒す。オブリビオンは過去。過ぎた存在。過去を排出し続けなければ、新たな未来が生産できず時間が停止してしまう。イレギュラーで『今』に滲み出した過去であるオブリビオンの排除は、猟兵の使命だ。
 眉根を寄せて己の拳を見下ろすグァーネッツォに、失敗作はけれど変わらぬ笑顔で言葉を待つ。だから「でも、」彼女は言った。
「お前は鍛錬の場を、楽しい一時の機会を作ってくれたから。……だから全身全霊でオレの、オレ達の成果を見せるぜ!」
「わあ! じゃああなたもわたしのけんかともだちだね!」
 ぱんと両手を打ち合わせて、失敗作は嬉しそうに『おともだち』を喚んだ。グァーネッツォは鋭く繰り出される拳を斧の柄で受け流す。肉弾戦は願ったり叶ったりだ。
 敢えて踏み込み、致命傷にだけはならないよう『おともだち』の攻撃をいなし、バックステップで距離を取る。
 『おともだち』は『無敵』なのだ。ならば召喚主である失敗作を狙うのが望ましいが、『おともだち』には当然、隙はない。
 だから。
 擦過に皮膚は裂け、避け切れぬ殴打に痣をつくりながらも、彼女は『アスレチック』の上へと逃げ込んだ。──否。おびき寄せた。
「おッ、と……!」
 追い詰められた、高い柱の上。狭い足場。瞬息の間隙に突き出された拳を避ける、その勢いを殺し切れず、彼女はそこから転落した。
 ──ように、見せて。
 眼下のロープの網に飛び込み、それを足掛かりに彼女は跳んだ。
「わっ」
 『おともだち』を柱の上に惹き付けておいて、目をまんまるにした失敗作だけを狙う。グァーネッツォは握った拳をまっすぐに開いた。
「竜よ、力を貸してくれ!」
 力強い掌打が少女の薄い身体を捉え、吹き飛ばすと同時。召喚した黒竜の鱗が鍛錬通りに失敗作の身体を叩き付け縫い留める。竜封掌打。彼女が新しく獲得した技。バーバリアンたる彼女と竜のコンビネーションだ。
 さらりと揺れた失敗作の白い髪。そこに浮かぶ虹と、同じ色合いの髪の『おともだち』。
「素敵な色だが、黒色がいないのは納得できないぜ」
 それは彼女の協力者の色──言わば、『おともだち』の色だったから。
 縫い留められたままの失敗作が、翡翠色の瞳を瞬いた。そして、笑う。
「『おともだち』のいろがあると楽しいね! くろいろ、つぎはかんがえてみるっ!」
「いいや、悪いけど次は要らないぜ。黒竜も色んな竜種も友達のオレが、オレ達が──、学園もこの楽しいダンジョンも守り抜いてやるぜ!」
 そしてグァーネッツォは斧を手に更に距離を詰めた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

リゼ・フランメ
うち捨てられた、孤独なる人形の成れの果て、なのかしら
『おともだち』を大事にするより
大事にされたいと思っているのかしら

喜ぶ姿、笑う顔
どれも、薄くて浅い子供の……決して満たされないものを感じるの

「貴女の進む道に、罪ばかりがある。そんな気がするの」
決して無視してはいけないのだと
彼女の友達を、求めるばかりの罪の道を止めなければと

UCを発動、全力で飛翔
縦横無尽に空を舞うように動き、羽根で本人と創造体を焼き

「そのお友達は、貴女を庇うのかしら? 守るなら、その痛みは何故?」

言葉で揺らがせ、疑念を覚えさせた瞬間、本体へと強襲
破魔の火を宿した劫火剣で
飛翔速度を乗せ、その身と罪を焼却する一閃

「涙さえ灼きましょう」



●no comment
 『おともだち』を喚ぶ少女の姿は、かなり傷付き欠けていたけれど。こともなげに笑うその表情は、だからこそ歪で。
「あなたもわたしの『おともだち』?」
 少女──失敗作の問いを、リゼ・フランメは黙殺した。彼女の笑みも、仕種も、声も。
──どれも、薄くて浅い子供の……決してみたされないものを感じるの。
 欠けた肌を見遣れば、聞き及ぶまでもなく見目どおりの人間ではないことは察することができた。
──うち捨てられた、孤独なる人形の成れの果て、なのかしら。
 問いを無にされても失敗作が気分を害したという様子はもちろんなく。
「ねえ、みてみて。わたしのだいすきな『おともだち』!」
 リゼ自身に頓着する様子もなく。
 彼女は『おともだち』をけしかける。少女と同じく薄っぺらい笑みを貼り付けた虹の色持つ無敵の人形達は防御も回避も捨てた動きでリゼへと迫る。
「っ、」
 咄嗟の早業で純白の剣でその拳を打ち払っても、『おともだち』の肌には傷ひとつ付かない。その姿に、リゼのルビーの瞳が微かに曇った。
──『おともだち』を大事にするより、大事にされたいと思っているのかしら。
 だとしたら、そんな『友情』の在り方は、異常だ。
 だいすきと嘯きながらも、そこに友愛の欠片も見受けられない。
「……貴女の進む道に、罪ばかりがある。そんな気がするの」
 決して無視してはいけないのだと、そう強く胸に灯る決意。
──彼女の友達を、求めるばかりの罪の道を止めなければ。
 けれど失敗作はにこにこと楽し気に笑い、ステップを踏むように『おともだち』を喚び繰る。
「つみがあるのはいけないの? わたしはなんにももってないから、もてるのならなんでももつわ。それはいけないの?」
「望ましくは、ないわね」
 相容れることのない問答。リゼはただ小さく零すと、すべてを置き去りに高く全力で空を飛んだ。彼女の背には純白の翼。彼女の身は天使のそれへと変貌し、追いつかれることのない速度で戦場の空を舞いながら羽根を撒く。
 その羽根は触れた途端に、炎と化して。
「わあっ! すごいね、きれいきれいっ! あははっ、あっつい!」
「……」
 『おともだち』は、彼女を庇うだろうか。庇うのならば、彼女の胸に痛むものはないだろうか。リゼはそう問うつもりだった。そうすることで、『無敵』への疑念を生じさせる予定だった。
 けれど『楽』の感情しかないということは、彼女の想像を遥かに超えていたのだ。
「……痛みは、感じないの?」
 『おともだち』は当然のように失敗作を庇うことはなく──誰かを慮る、そんな思考回路が彼女には存在しない故に庇うという行為を命令することもできない──、そして失敗作自身も攻撃を避けることすらしなかった。
 そう、彼女は『すべてを受け容れる』。
「いたいよ? ふふふっ楽しいね! 『おともだち』からもらったいたみ、楽しい! あなたがくれたほのおのはね、きれい!」
 彼女には、『不快』の感情すら、ないのだ。
 リゼは喉を圧されるような感覚に小さく浅く息を吸った。
 この歪は、やはり止めなくてはいけない。そう思うから。そう祈るから。

「──涙さえ灼きましょう」

 そんなものが存在しないことなど、知っていたけれど。
 彼女は破魔の力を纏いし劫火の剣を振り抜いた。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

クロム・ハクト
きっと『おともだち』っていうのはいつも都合よく思ったとおりには
動いてくれないんじゃないか。
(逆に想像以上に通じている事もあるかもしれないが)

虹色の髪を持つ『おともだち』 がこちらを模していたら、
先程のやりづらさ思い出し少し苦笑しつつ。
そうでなくても無敵でやりづらさ感じ、糸で拘束しやり過ごし。

忌憚なくぶつけ合うのが『おともだち』っていうなら叶えてやるさ。
(新UCを使用)
調整した新UC使用追えて感覚確かめるように手を開け閉じ。
おともだち、か。

アドリブOK



●if you wont
 杭の立ち並ぶ場所へ辿り着いた少女の碧いスカートはあちこちが灼け焦げ、裂けていたけれど。
 少女は、失敗作は鮮やかな笑顔をクロム・ハクトへと向けた。
「あなたもわたしの『おともだち』?」
 その返答に窮して、クロムは耳を心もち下げた。青色硝子のイヤーカフが揺れる。彼女の傍には『おともだち』が佇んでいた。その姿は虹の色彩の髪をしていたものの、どことなくクロム自身に似ているような気がするのは、場所の所為だろうか。
 つい先程の戦闘で感じたやりづらさが脳裏を掠めて、クロムは苦笑する。
 彼女はその『おともだち』を戦闘に利用するのだという。それが『楽しい』のだと信じて、彼ら彼女らを送り出すのだと。
「……きっと『おともだち』っていうのは、いつも都合よく思ったとおりには動いてくれないんじゃないか」
 彼の手許に居る熊猫をちらと見下ろす。確かに戦いには共に赴く。けれどこのからくり人形は『友達』ではない。『相棒』だ。
──まあ、逆に想像以上に通じていることもあるかもしれないが。
 自分では気付かないことを指摘してくれるような間柄であるかもしれないし、ひと言に表すことができる関係ではないのは間違いないだろう。
 例えば、『友達』ではなくとも。
 信頼して背中を預けることができる『仲間』が居ることだって、幸せの形のひとつであるだろう。あるいは──『かぞく』でも。
 記憶のない彼に本物のそれの顔を思い出すことはできないけれど。夜の世界の教会に顔を見せる面々のことが僅か過り、クロムはそれを胸に仕舞った。
「そうかも。さっきからいろんな『おともだち』にあったけど、わたしのおもったとおりになる『おともだち』はいないの。でもねっ、それが楽しいの!」
 にっこり笑う少女の無垢さに、クロムは据わりの悪い心地になる。彼は咎人殺し。オブリビオンを狩ることが使命だ。記憶にはないが、おそらく幼い頃から、ずっと。
 同い年か、少し年上程度の見目の少女は明らかにクロムよりも精神が幼い。そんな違和に、そして無敵の『おともだち』から迅速に繰り出される拳に、糸を操る指先が鈍る。
 いくつかの攻撃を捌き、それでも受け切れず衝撃を受け流すことでいなし──ようやく開いた距離に、彼は細く息を吐いた。
「忌憚なくぶつけ合うのが『おともだち』っていうなら、叶えてやるさ」
 擦過により避けた皮膚から彼の血液が蠢いた。瞬く間にそれは帳と化し、彼を覆う。その向こうで少女の感嘆の声が聞こえた気がしたが、構っていられない。
 みしみしと身体が変化していく感覚は、まだ慣れるはずもない、新しい技。──紅き月の昏き夜を裂くもの。帳が開くと同時、飛び出した獣は金色の瞳と黒の毛並みの狼。
 その鋭い爪が、驚きに翡翠の瞳を零れんばかりに見開いている少女を裂いた。
 玩具のように転がっていく少女を油断なく見据えながら、彼は変化を解く。足ではなく手になった五指を握り込み、開いて──そして倒れ伏す少女に構うことなくこちらに再び向かってくる『おともだち』へ、半身引いて迎え撃つ。
「……おともだち、か」
 ぽつり零したその声は、誰に届くこともなく融けて消えた。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

五条・巴
七結と(f00421)

美しい月に、眼科に広がる赤い花々の中

僕らの世界に現れた可憐な子
楽しげに笑んでいる君の姿勢はどこか自分と似ている気がした

おともだち
そう君が思うなら、
おともだちなんだと思うよ
僕は拒まない

でも
僕と君とが、七結と君とが友達になろうとも
僕と七結のような友達にはなれないんだろうね

そうだな、君が望むおともだちがどんな姿かは分からないけれど、君の理想に真似てあげる、見せてあげる
"引力"
此方へおいで。遊ぼうか
七結と、僕と

君の望むおともだちに、なれたかな?


蘭・七結
トモエさん/f02927

あかい世界に現れた少女のかたち
ご機嫌よう、可憐なひと
あなたはこの迷宮の住人?
それとも、あなたも誘われたひとかしら

おともだち
そのひと言に宿る感情
ひとの持つ感情はむつかしくて
まだ、すべては分からないけれど
あなたが望むなら、そうなのかしらね

トモエさんは何を思うのでしょう
……ええ、そうね
わたしたちは、拒まない

ずうと、おともだちを探していたのね
ならばなゆと
わたしたちと遊びましょうか
埋まらない胸の空白
からっぽなあなたの胸の奥は
わたしのあかで、染めてしまうわ

あなたは何故、
おともだちを探すのでしょうね
あなたの紡ぐだいすきには
どんな彩がうつるのかしら



●OK, but
 未だあかい月の下。
 あかく咲いたアネモネと牡丹。
 示し引かれたあかい糸。
 その中に、軽い足取りで訪れた少女の姿は、腕も足もひび割れていたけれど。
「ご機嫌よう、可憐なひと。あなたはこの迷宮の住人?」
 それとも、あなたも誘われたひとかしら。蘭・七結は普段と変わらぬ口振りで問い、隣に寄り添う五条・巴も普段と変わらぬ立ち居姿で虹の色彩を持つ髪の少女を見つめた。
 楽しい、楽しい、とそればかり謡い朗らかに笑う少女の姿勢が、どこか己に似ている気がしたから。
 彼女は『それ』しかないらしい。
──なら、僕は?
 薄く笑みを唇に刷いてそんなことを夢想してみたならば、より一層その感傷は強くなる気がした。だからと言って、──なにひとつ問題はないのだけれど。
「ごきげんよう、あなたたちもわたしの『おともだち』?」
「おともだち」
 それは想定通りの問い掛けではあったけれど、改めて耳にすると七結は小首を傾げた。なにせ、そのひと言に宿る感情は多岐に渡り過ぎていて、彼女にとってその感情をすべて掬うことは、あまりにむつかしくて。
 さらり。褪せ色の髪が流れ、七結は揺蕩うような瞳で言葉を紡いだ。
「あなたが望むなら、そうなのかしらね」
 隣人はなにを思うのだろうと視線を遣れば、そこにはいつもと変わらぬ笑顔があった。七結と居るときとは違う──魅せるための顔。
「うん。そう君が思うなら、おともだちなんだと思うよ。僕は拒まない」
 けれど、容れもしない。言外にそう告げているのが明白な、けれど明言をしない『ヤサシサ』の滲む台詞。七結も首肯する。
「……ええ、そうね。わたしたちは、拒まない」
「わあ、『おともだち』! あははっ、楽しい!」
 文字通りに楽し気に手を叩く少女に、「……でも」巴は変わらぬ笑顔を浮かべたまま、聞こえぬようにぽつりと落とす。
「僕と君とが、七結と君とが友達になろうとも、僕と七結のような友達にはなれないんだろうね」
 いじわるね、と囁く七結に、そうかな、なんて嘯いて。
 踊り出しそうな少女──失敗作の顔を、改めて七結が覗き込む。
「ずうと、おともだちを探していたのね。ならばなゆと、わたしたちと遊びましょうか」
「うんっ、あそぼ! なにする?」
「そうね。塗り絵、なんて如何?」
 問いと共に、ぱらりと周囲に広がったのはまたしてもあかいあかい、牡丹一華。ただ風に舞うだけだったその花弁が、瞬きの間に花嵐と化して少女を襲う。まな紅の華颰。
──からっぽで真っ白なあなたの胸の奥を。
「わたしのあかで、染めてしまうわ」
「わあ! すごいすごい! きれいだね! わたしの『おともだち』も、あかくなる?」
 花弁に容赦なく裂かれていく肌から、けれどあかが流れ落ちることはなく。
 失敗作が虹色の髪を持つ『おともだち』を喚んだなら、無敵のそれは花嵐の中を楽し気に笑いながら七結へと距離を詰めた。
「おっと。……そうだな。君が望むおともだちはそういう姿なのかもしれないけれど。見ていてごらん。君の理想に真似てあげる。──見せてあげる」
 此方へおいで。遊ぼうか。
「七結と、僕と」
 そう告げた途端、『おともだち』の進路が切り替わる。それは『ずっとこの人を見ていたい感情を与える』彼のユーベルコード。引力──クオ・ヴァディス。
 感情を、与える。
「……」
 ふらりと失敗作の足も、巴へと惹きつけられた。
 驚いたような翡翠の眼には、『楽しみ』以外の興味が初めて浮かんで。
「君の望むおともだちに、なれたかな?」
 和らげた巴の瞳の視界を、しかし「はぐはぐ!」白が埋め尽くした。ちりと肌に感じた熱。「っ、」すんでのところでそれを躱せば、その白──灼熱の蒸気を切り裂いて『おともだち』の指先が巴の頸を、
「それはだめ」
 七結がふわと彼の手を引いて入れ替わる。爪に裂かれる痛みは彼女の肩に届いたけれど。眉が顰められたのはほんの一瞬。
「……欲しくなってしまったのね」
 わかるわ、トモエさんは魅力的だもの。そう笑って、彼女は再び人形達へと向き直る。
「あなたは何故、おともだちを探すのでしょうね」
「なぜ? だってだいすきな『おともだち』といっしょにいるのは、楽しいもの!」
 失敗作と銘打たれた少女は、そう言って蒸気を放ち続ける両の掌を広げた。そう、とちいさく七結が零し、それから隣を見れば。巴も軽く肩を竦める。
「あなたの紡ぐだいすきには、どんな彩がうつるのかしら」
 やはりそれは、──しろいのかしら。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

スキアファール・イリャルギ
……さっきはありがとう
(傍らのひかりに、頭を下げて)

"おともだち"?
私をおともだち判定してもいいことないですよ
私は"影人間"――
怪奇を撒き散らす迷惑な存在なんですから
……って言っても無駄か

あぁ、すみませんが離れてください
悪意が無かろうが、躰を触られるのダメなんです心的外傷のせいで
伸ばされた腕を霊障で弾き【Whammy】発動
……彼女はこれすらも"楽しい"と感じるんでしょうか
こんなにも熱くて苦しくて、痛くて辛いのに――
或る意味、羨ましい

……私に怪異を埋め込んだ奴らにとっては
私と彼女、本当の"失敗作"はどっちだ――?

いや、やめようか
彼女から一定の距離をとり乍ら
呪瘡包帯で捕縛し霊障を放ち続けます



●better not to…
 右の腕を伸ばして、手を開いて、閉じて。何度確認しても以前と全く遜色ないそれに、スキアファール・イリャルギはふむと小さく声を零して。
 傍をふわふわと泳ぐ"ひかり"へと丁寧に頭を下げた。
「……さっきはありがとう」
 癒してくれて。
 与えてくれて。
 "ひかり"はただ燈るだけだけれど、応じてくれたような気もして。
 そして辿り着いたのは機械人形の少女の許。まるであの子みたいな虹の色を髪に宿した無垢な害悪。
「あなたもわたしの『おともだち』?」
 その問いに、スキアファールはただ静かに眉根を寄せた。
「“おともだち”? ……いえ、私をおともだち判定してもいいことないですよ」
 私は“影人間”──怪奇を撒き散らす迷惑な存在なんですから。
 そう伝える。
 けれど。
 少女は、失敗作は首をくてりと傾げて、そして笑う。
「『おともだち』は楽しいの。だからめいわくでもいいんだよ。だって『おともだち』だもの!」
「……言っても無駄か。あぁ、すみませんが離れてください」
 はぐはぐ! 情け容赦ない距離の詰め方で両の手を広げ抱き締めんとしてくる失敗作の腕を、彼から放たれた人型の影──霊障が弾いた。
 バランスを崩した失敗作の掌から放たれた灼熱の魔導蒸気で周囲が満たされるが、スキアファールにとっては触れられることの方が重大だ。
「悪意が無かろうが、躰を触られるのダメなんです心的外傷のせいで」
「だめ? 『おともだち』なのに?」
「だから、……あぁもう」
 それならどうぞと発動するのは彼のユーベルコード。Whammy。視界の万華鏡化と、聴覚過敏とミソフォニアを与え、絶え間無い劫火と激痛、影への融解による攻撃を付与し続ける、それは呪い。
「あっ、わああ! すごいよ、きらきらする! あれ、ねえ、あれ? いる? わあ、すごい! いたいよ! ねえ、きこえない、いる? どこ?」
 少女の翡翠の目からは焦点が喪われ、目の前にいるはずの彼を探して蒸気が溢れるままの掌を泳がせる。燃え上がるくろい炎が彼女を舐めるけれど、彼女はただ──わらう。
 その光景に、スキアファールの白い頬が更に白くなった。
「……彼女はこれすらも“楽しい”と感じるんでしょうか。こんなにも熱くて苦しくて、痛くて辛いのに──」
 失敗作とて、痛みは感じる。けれどそこに、『不快』を知ることができない。故に彼女は激痛に苛まれながらも鮮やかな視界を楽しみ、酷い音に襲われ初めて押し付けられる“不安”の感情も『おともだち』への固執にすり替わっているらしい。
「……或る意味、羨ましい」
 決して、この歪に成りたいとは思わないけれど。
 思わないと、思ってしまう、その時点で。『人間』へ擬態し続ける、その時点で。
「……私に怪異を埋め込んだ奴らにとっては、」
 私と彼女、本当の“失敗作”はどっちだ──?
 昏く沈みかけた視界に、飛び込んだのは眩い"ひかり"。強制的に瞳に光が差し込んで、スキアファールは思わず瞬いた。
「……いや、そうだな。……やめようか」
 また救けられたと。ありがとうと。ことり、置くように言葉を落として。
 彼は少しだけ、顔を上げた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

キトリ・フローエ
あなたとは前にも逢ったことがあるけれど
今、目の前にいる『あなた』に逢うのは初めて
だから、はじめましてから始めましょう

そうよ、あたしはキトリ
『おともだち』になりましょう!
星追いの花乙女でベルも一緒に、心ゆくまで遊んであげたいの
…灼熱の魔導蒸気はきっととっても熱いでしょうから
こっそりとオーラ防御を展開させて
――追いかけっこをしましょう!
水晶の蝶舞う森の中を、付かず離れずの距離を保ちながら飛んでいくわ

…さいごにはお別れだけど、少しでも楽しんでもらえるように
だって、ここはあなたのために創った世界だもの
たとえ全てが骸の海に還ってしまうのだとしても
せめて今だけは、楽しい思い出をたくさん持っていってほしいわ


千波・せら
先に落とし穴とか、爆弾とか仕掛けておこうかな。

初めまして、私はせら。千波せらだよ。
お友達じゃないんだ。
でもね、お友達になりたい。

私たちの創ったダンジョンはどうかな?
すごく、すごーく、楽しいでしょ?
私もね、さっき歩いてみて思ったんだ。
本当に楽しい!

このダンジョンは何度訪れても新しい発見に満ちているから
だから君も何度も何度も楽しむ事が出来ると思う。

さっき考えたユーベルコードはまだきちんと扱えないから
今は別の事をするんだ。

ね、遊ぼう!
仕掛けておいた場所に誘導をして落とし穴におとしちゃえ!
引っかかった!

ほら、楽しいでしょ?
もっと楽しもう!


ユヴェン・ポシェット
壊すか壊されるしかない、か。
純粋な奴程 相手にし辛いな。

…さあな。アンタの友達かどうかなんて俺にはわからない。
だが そうだな…折角会ったんだ
遊ぼうぜ。疲れ切って動けなくなるくらい、全力でな。

UC「クリスタライズ」を使用。
姿を消したり、現したりしながら
彼女から逃げたり追ったり。
いわば、追いかけっこ、というやつだな。
この場所を全力で駆け、追いかけ軽い一撃を交互に与え合う。楽しい事が好きなら少しでも楽しめる方法を選んでも良いだろう?
まあ、遊ぶという言葉にしては少々荒々しいかもしれないが。

アンタがのるなら、俺も身体を張ってアンタと向き合おう。
…楽しむことができる者を、俺は失敗作だなんて思わないけどな



●yes, let’s!
「壊すか壊されるしかない、か。純粋な奴程、相手にし辛いな」
 いくつかの、準備を終えて。
 水晶の蝶舞う森で、彼らは──ユヴェン・ポシェットとキトリ・フローエ、千波・せらは顔を見合わせて肯き合った。
 特にキトリは別の迷宮で失敗作と一度逢っている。あのときはあなたの問いに、いいえと答えた。だけど。きゅ、と唇を引き結び、彼女は道の先を見た。
 もはや他の猟兵達の攻撃で、脚の動きは悪くなってしまっているけれど。それでも笑顔を絶やさず、少女は、失敗作は彼女達を見つけて駆け寄ってきた。
「みつけた! あなたたちもわたしの『おともだち』?」
 せらと視線を交わしたキトリは肯く。それは返答のつもりではなくて、自らに言い聞かせるみたいに。
──今、目の前にいる『あなた』に逢うのは初めて。
 だから、はじめましてから始めましょう。
「そうよ、あたしはキトリ。『おともだち』になりましょう!」
「初めまして、私はせら。千波せらだよ。お友達じゃないんだ。……でもね、お友達になりたい。そう思うよ」
 少女達の言葉を受けて、次はあなたと言わんばかりの視線がユヴェンへと注がれる。そのまっすぐなそれと、拒絶されるなんて露とも考えていない表情にほんの僅か、ユヴェンは困ったように口角を吊り上げた。「……さあな」。
「アンタの友達かどうかなんて俺にはわからない。だが……折角会ったんだ。遊ぼうぜ」
 疲れ切って動けなくなるくらい、全力でな。
「アンタがのるなら、俺も身体を張ってアンタと向き合おう」
「うん、遊ぼう!」
「ええ、追いかけっこをしましょう!」
「わあ、楽しい! やるやる! だいすき!」
 相変わらずの、薄っぺらい愛の言葉。
 けれどそれが彼女の唯一知っている、『おともだち』に対する正しい対処法だ。
 例え抱き締めようと伸ばした掌から、灼熱の蒸気を放ち続けていようとも。くるりと身を躱してもなお、周囲を灼く熱が立ち込めようとも。
「行きましょう、ベル!」
 こっそり杖を握り締め、花のオーラを喚び起こしその熱をなんとか少しでも逃がしながら、そして呼ぶ。星追いの花乙女──ベル・フルール。キトリの大切な相棒が鮮やかな青と白の花弁を散らして彼女に寄り添う。
 失敗作を誘導するみたいに付かず離れずの距離を飛ぶ“ふたり”に、離れた場所からせらが手を振って、ご案内。
「私たちの創ったダンジョンはどうかな? すごく、すごーく、楽しいでしょ?」
「うんっ、楽しい! みんなはいろんな楽しいものをしってるんだね!」
 きらきら輝く翡翠色の瞳に、せらは微笑む。きゅう、と胸の奥が締め付けられるような心地もあったけれど、今は本心から、笑った。
「私もね、さっき歩いてみて思ったんだ。──本当に楽しい!」
 だから君にも、伝わるといいな。
 ……さいごの、贈り物。
「このダンジョンは何度訪れても新しい発見に満ちているから、だから君も何度も何度も楽しむ事が出来ると思う」
「なんどもなんども? わああ、すてき! ──っ? え?」
 感動のさ中、突如なにもないところから与えられた衝撃に失敗作はきょとんと目を丸くした。すると、彼女の前にすぅ、と現れるのはユヴェン。クリスタライズ。
「ええ! すごい! 楽しい! あなたはみえなくなっちゃうの?」
「ああ。キトリも言ったろ。追いかけっこ、というやつだ。捕まえてみるんだな」
 言うなり、またすぅ、と消えていく姿に、失敗作は無邪気にえいえいと腕を伸ばして彼を抱き締め捕まえんとする。時折掠める蒸気や外れても満ちていく蒸気に、少しずつ体力は削られはするものの。
 敵から見えないという利点はやはり大きい。それにせらやキトリという仲間が共に彼女の注意を惹いてくれるお蔭で、物音に気を配り過ぎる必要もなく死角から軽い一撃を見舞うことができる。
──楽しい事が好きなら、少しでも楽しめる方法を選んでも良いだろう?
 そんな彼の想いは、願いは、三人にとって共通だった。
「ほらほらっ、こっちだよ!」
 せらが呼んで、木々の蔭へと姿を消す。その方向を指して、キトリも笑う。
「ねえ見て、あっちですって」
「まってきとり、いまいく──きゃあっ?」
「あはは、引っかかった!」
 誘導した先には、落とし穴! もちろん、ただの落とし穴ではない。どん、と破砕音が縦に尽き抜ける、爆弾つきだ。
──まあ、遊ぶという言葉にしては少々荒々しいかもしれないが。
 ユヴェンもそう、思ってはいるけれども。彼らは猟兵。ただ遊ぶだけではないのだ。
 災魔を討伐する。その目的は、決して見失わない。それでも。
──……さいごには、おわかれだけど、少しでも楽しんでもらえるように。
 だって。
「ここはあなたのために創った世界だもの。たとえ全てが骸の海に還ってしまうのだとしても、せめて今だけは。……楽しい思い出をたくさん持っていってほしいわ」
 夢中になって遊ぶ失敗作は、その言葉を聞いてはいない。キトリ自身、聴かせるつもりもない。傍らのベルの顔に、ちいさく笑って見せて。キトリは翅を震わせた。
 幸か不幸か。
 猟兵達は埒外の存在であり。失敗作は、猟兵達からの攻撃もすべて楽しんでしまうことができるが故に、この贈り物は成り立った。
「ほら、楽しいでしょ? もっと楽しもう!」
 せらの言葉に、爆発によって浅くなった落とし穴から這い出た失敗作も満面の笑み。
 蒸気を放つ掌でその穴の縁を撫でたなら。コピーするのは仕掛け罠を創った、レプリカクラフト。
「わたしもおとしあなつくっちゃうから! どかん!ってするんだから!」
「っと、危ねえ!」
「きゃっ」
 せらのように見極めて作られた罠ではないからこそ、失敗作は自らも構わずそこここで罠を踏み抜く。色の少ない花火のように方々で火柱が上がるのに、危うくユヴェンも、空を飛んでいて安全圏かと思っていたキトリさえも巻き込まれそうになる。
 そんなやりとりすら、楽しんで、楽しんで、楽しんで。
 ぼろぼろになってなお笑う少女の姿は、確かに『埒外』ではあったけれど。
「……楽しむことができる者を、俺は失敗作だなんて思わないけどな」
 その顔は、どこにでも居そうな、しあわせそうな少女の表情に、見えたから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

都槻・綾
f02586/リュカさん

おや
私はリュカさんとお友達だと思っていましたが
なんて
碌でもないとは思われて居ないのなら
重畳ですかね

少年へ悪戯な笑み浮かべ
虹髪の少女に眼差しを向ける


楽しい迷宮でしたか

棄てられて壊れても戻って来た彼女と
棄てられても壊れることさえ出来ずに在り続ける己と

現し世に打たれた楔は
共に「楽しさ」故に
似た者同士なのかもしれず

やはり私も
「禄なものでない」のかもしれません

穏やかに笑んだまま零した言葉は幾多の銃声に紛れて
ただただ最後まで
彼女に「楽しい」を届けられたらいいと思う

詠う花筐
花弁の幻想に
リュカさんの銃撃音が響けば
クラッカーみたいに晴れ晴れ華やかな雰囲気

去り逝く少女が
寂しくないと良いな


リュカ・エンキアンサス
綾お兄さんf01786と

友達なんて、自分から言うやつは碌なもんじゃないって、俺を育ててくれた人が言ってた
…お兄さんが自分から、友達だからとか、私たち友達ですよね、って言いだしたら多分俺は縁を切るけど
言わないと思うよ
少なくともまだ俺は、お兄さんが碌でもないとは思ってないし
(困ったことをいうひとだなあ、って顔をして

楽しんでいるところ悪いけれど…碌なものに興味はないんだ
手早く片付けよう

そういうわけで、銃弾を叩き込む
えーっと、所かまわず撃っても……お兄さんが、何とかしてくれるはずだから(丸投げた
こっちは素早く倒すことに専念しようか

悪いけど、俺にとってお友達は絵本の中の青い鳥みたいなものなんだ
ごめんね



●don’t think so
「友達だ、なんて。自分から言うやつは碌なもんじゃないって、俺を育ててくれたひとが言ってた」
 普段どおりの流れるようなルーティン。きゅるりと灯り木のハンドルを回して、銃弾を装填して、スコープを覗き込む。
 そんなリュカ・エンキアンサスの姿に「育ててくださった方、ですか」都槻・綾はさわさわと好奇心をくすぐられつつも、「おや、」ふと気付く。
「私はリュカさんとお友達だと思っていましたが、なんて」
 その台詞に、リュカは眉を寄せた。それ以外はなんら変わらぬ表情。けれど露骨に眉を寄せるという表現で雄弁に語るそのカオが、彼らの距離の近さを物語っていた。
 近くなければ、彼は眉ひとつ動かしはしない。
「……お兄さんが自分から、友達だから、とか、私たち友達ですよね、って言いだしたら多分俺は縁を切るけど」
 言わないと思うよ。そう言い切るそこにあるのは、確かに信用だった。否。仮にも先生と呼ばわるのであれば、それは信頼と言えるのではないだろうか。
「少なくともまだ俺は、お兄さんが碌でもないとは思ってないし」
「『まだ』、ですか。気を付けないといけませんね。しかし『まだ』思われていないのなら重畳ですかね」
 ふむふむとどこか試すように言うものだから、そういうところなんだけどなあ、と思いはするがリュカも特に口にも出さない。
 最終的に選んだのは、海。けれどガレオン船の上ではない。揺れるからねと誠に現実的なリュカの意見で選んだ舞台は「潮の音で銃声が紛れたら儲けもの」という理由だった。
「ああ、楽しかった! あっ、まだあそんでくれるひとがいる! ねえねえ、あなたたちもわたしの『おともだち』?」
 そこへ現れたのは、もはや腕は吹き飛び、片足の先も喪っている少女人形だった。
 それでも揺るがぬ笑顔は、違和感でしかない。碌なものではない。
「碌でもないものに興味はないんだ。手早く片付けよう」
 まかせたよと蒼い目が告げたなら、綾はふぅわりと微笑んで波打ち際を歩き出す。
 少女との距離は、声を張らずとも潮騒に消されぬ程度。
「ね。……楽しい迷宮でしたか」
「うん! とっても楽しかったよ! 『おともだち』も楽しかったって!」
 少女の、失敗作の傍らには、ふらつく彼女を支えることもなくにこやかに笑い続ける虹色の髪の姿があって、「おやおや」綾は思わず零す。
──棄てられて壊れても戻って来た彼女と、棄てられても壊れることさえ出来ずに在り続ける己と。
 比するものではないと理解はしつつも、湧き上がる好奇心は己が性<しょう>が彼女と等しく『楽しさ』にあるから故と知っている。
「──やはり私も、『禄なものでない』のかもしれません」
 ざざあ、と波音。呟く声音消した、反響する銃声を綾が捉えたときには、失敗作の肩は頭は一部を派手に弾け散らした。
 止むことのない潮騒に乗って数多の銃弾がてんでめちゃくちゃに──とは言えど誤差の範囲で──降り注ぐのに、綾はちいさく笑って霊符を放った。
 あおい紫君子蘭の花弁が舞い上がり、『おともだち』ごと失敗作を裂いていく。
 ただただ最後まで、彼女に『楽しい』を届けられたらいいと思う。そんな綾のささやかな願いが届いたのだろうか。
 失敗作はきれい、きれいとその銃弾飛び交う花嵐を楽しんで。
 楽しんで。
 そして、崩れ落ちた。
 くるくるくるくる、舞い上がる千切れた紫君子蘭の花弁は、見ようによっては鳥のようで。ああ、と肩から銃を降ろしたリュカは呟く。
「そうだな。悪いけど、俺にとってお友達は絵本の中の青い鳥みたいなものなんだ」
 ごめんね。
 ちっとも悪いなんて思っていない声は、平坦なまま。それでも伝えるべく音にしたそのリュカの言葉に、綾はそっと瞼を伏せた。

 彼女のための迷宮は、そうして役割を終えた。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年07月20日
宿敵 『失敗作』 を撃破!


挿絵イラスト