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【Q】過去に捧げる唄~嫉妬を冠するモノ~

#アルダワ魔法学園 #【Q】 #戦後 #ダンジョンメーカー

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●嫉妬の艶尾
 アルダワ魔法学園の地下迷宮。大魔王の復活による地下迷宮の改変により何処ともしれない場所へと移動した封印の間にボソボソとした声が響く。

『……だ、だいぶ。経ったけどっ…誰も、来ない。お、…落ち着く』
【油断すると予想外の事が起こるらしいぜ、我が契約者殿】

 ひっ、と息をのんだ黒髪の少女に揶揄うような魔導具の声が重なり怯えた様子に追いうちを掛ける様に楽しげな声が響いてゆく。

●迷宮造り
 あなた達を出迎えたで茲乃摘・七曜(魔術人形の騙り部・f00724)が、にこやかにグリモアベースの一角へと案内してゆく。
「この度は招集に応じてくださりありがとうございます。ご存知の方も多いかもしれませんが、アルダワ魔法学園の始まりの迷宮で見つかったダンジョンメイカーを利用した災魔の召喚と討伐が今回の依頼となります」
 大魔王の封印という役割から解放されたことで本来の迷宮の創造と強大な災魔を1体強制召喚という機能を利用できることになった現状を語った七曜が猟兵達にアルダワ魔法学園の旧校舎に赴きやってもらいたいことをについて話を繋げてゆく。
「先日の魔王戦争で勝利を収めたことにより、現在のアルダワ魔法学園に危機的な状況はありません。ただ、魔法学園の生徒さんでは荷が重い強力な災魔が残っているのも事実です。なので、今回もダンジョンメイカーを利用し、創造した迷宮に強大な災魔を引っ張り出し討滅してゆくのが目的となります」
「迷宮の創造に関しましては、皆さんがダンジョンメーカーで創りたいと考えた迷宮と呼び出す災魔の特徴が混ざった形となるようです。戦い突破するような迷宮を望んだ場合に対戦する相手が自身が興味をもつ何か存在であったり…、様々なトラップを回避するような迷宮を望めば突破が困難と過去に言われていた迷宮を模したり…、知識や経験をもって突破していくことを望めば過去の識者がその知識や経験を問うような感じのようです」
 強制召喚する災魔に関しては旧校舎にいる蒸気幽霊のエイルマー殿が詳しいですので認いただければと思います、と言葉を絞め頭を深く下げた七曜があなた達を見送る。

●過去の英雄と災魔
 アルダワ魔法学園の旧校舎で猟兵達を出迎えた蒸気幽霊のエイルマーが猟兵達へと深く頭を下げる。
「重ね重ねアルダワ魔法学園の為に手を貸して頂けることに感謝を。話の概要は聞いていると思うからまずは本題から。強制召喚する災魔はカウダ・インヴィディア。嫉妬の名前を冠する少女と悪魔の尻尾にも見える尻尾型の魔導具。似たような存在を知っている人もいるかもしれないけれど、魔導実験の被験者が災魔になったそんな相手になる」
 私がまだ生きていたときに封印されて現状どこにいるか不明な相手になるね。もし知りたいことがあれば、分かる範囲で出来るだけ答えるからよろしくお願いするよ、と締めくくり迷宮を創造する区画へと向けて道案内を始める。


カタリツヅル
 初めてお会いする方も、再びご覧になっていただけた方もよろしくお願いいたします。カタリツヅルと申します。ご縁ありましたら、皆さんの活躍を描かせていただければと思っております。

 舞台はアルダワ魔法学園となります。ダンジョンメイカーにより新たな迷宮を創造し、そこへ災魔を呼び込むことにより、学園迷宮に潜む災魔の討伐を行う流れとなります。似た名称の作品が拙作にありますが繋がりはありませんので気軽に参加いただければと思います。

 一章は、攻略したい迷宮を考えていただきます。ちょっとしたコンセプトは渇望。心のどこかで欲しいと思っているものや戻りたいと感じている場所が再現されることがあります。必ずしも戦いやギミック解除にこだわる必要はありませんので…皆さんの考えた何かが反映されるので自由に発想していただければと思います。
※召喚されるカウダ・インヴィディアに関する要素が盛り込まれる可能性があります。

 二章は、出来上がった迷宮の探索となります。どのような迷宮が出来上がったかは間幕で記載いたしますのでそちらを参考にしてみてください。皆さんの渇望が形を変えて立ち塞がるかもしれません。

 三章はボス戦です。迷宮の最奥で待ち受ける? カウダ・インヴィディアとの戦いとなります。特徴は間幕等で差し込んでゆきますので参考にしてください。
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第1章 冒険 『ダンジョンメーカー』

POW   :    肉体や気合で突破するタイプのダンジョンを創造してみる

SPD   :    速さや技量で突破するタイプのダンジョンを創造してみる

WIZ   :    魔力や賢さで突破するタイプのダンジョンを想像してみる

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●過去の英雄の想い出
 思い思いの場所で迷宮の創造を始めようとする猟兵達にエイルマーからの声が届く。懐かしい時間を辿るように紡がれていくのは呼び寄せる災魔の概要と印象。
「細かい話は召喚されてからするとして……、今回、召喚しようとしているのはカウダ・インヴィディア。黒い尻尾の魔導具がカウダで、少女がインヴィディアになる」
 召喚した後…迷宮を踏破しないといけないから軽く覚えておいてくれるくらいで問題ないよ、と声が響き。
「性格なんかはひとまず置いておくとして…、特徴としては渇望を表出させるというのかな? 人や物の状態を遷移させるような業を使うよ」
 今あるものを理想というとあれだけど望む形に変化させたりとか…いろいろなんだけどこの説明も必要があれば後でさせてもらうね、とエイルマーが話を繋ぎ。
「戦いに関しては好む性格ではないけど、戦闘能力自体は高い感じだね。長く話して邪魔してしまうのもあれだから…興味があるなら別途、質問してもらえればうれしい」
 最終的に出来上がった迷宮に関しては彼女たちによる影響も含めて後で説明するから迷宮作りは気軽な感じで問題ないよ、と話を締めくくったエイルマーが身を引いてゆく。
二天堂・たま(サポート)
ワタシは流血を伴わない攻撃手段が主だ。
武器:ケットシーの肉球による“負の感情浄化”や、UC:常識を覆すピヨの波動によるスタミナ奪取を多用する。

直接触れないような相手(体が火や毒で覆われている等)の場合はUC:アルダワ流錬金術を応用した攻撃が主力だ。
(火に覆われているなら水、毒液で覆われているなら砂嵐等)

しかし実際には直接的な戦闘以外の方が得意だな。
ボビンケースの糸を使った即席の罠の用意、料理や情報収集や掃除。
UC:親指チックで呼びだした相棒による偵察と、同UCによる居場所交代(テレポート)で潜入・解錠して味方の手引きとかな。

もふもふが必要ならなでても構わんぞ。UCで呼んだ相棒達(ひよこ)もな。



●ダンジョンメイク
 静かで人気のない旧校舎群の一角へと案内された猟兵達が、始まりの魔法装置にそれぞれの想像を伝えていくために行動を開始してゆく。

●ダンジョンメイカー
 無人の旧校舎群へとチリンと涼やかな音を猫鈴もといケットシー鈴から響かせる二天堂・たま(神速の料理人・f14723)が、青みがかった灰色の毛並みを揺らしながら迷宮の創造に指定された場所へと向けて進もうとし、クルリと振り返る。
「案内感謝しよう。ここで、造りたい迷宮の内容を考えれば良いのだな。それと、名を名乗っていなかったな! ワタシの名は……ケットシーだ! よろしく頼むぞ」
『……ん? あぁ、すまない。もう知っているかもしれないけれど…私はエイルマーだよ。造りたい迷宮を考えれば後はダンジョンメイカーが動作するからその認識で間違いない』
 たまが自身の名前を名乗ろうとし…名前を忘れて種族名を名乗ったことに一瞬の困惑を見せたエイルマーが、戸惑いを感じさせない口調でたまの質問に答え。依頼内容と現状をしっかりと一致させたたまが止めていた足に力を込めて進み始める。

●新たな迷宮
 涼やかな音を残しながらひよこなケットシーの料理人が頭を下げた蒸気幽霊に見送られて旧校舎の影へと消えてゆく。

●迷宮想像
 人のいない静けさが涼やかな音で破られてゆく。どこかもの寂しげな雰囲気をさせる周囲の状況に首を捻りながらも耳を細かく動かしながら周囲を警戒していたたまが、当面の危険はなさそうなことを自身の感覚で確認し迷宮の創造に意識を傾けてゆく。
「ワタシとしては、トラップやギミックを解除するタイプ……突破が困難な迷宮を模したタイプがいいかもしれないな。直接的な戦闘よりもそれ以外の方が得意だしな」
 となると…、とダンジョンメイカー伝える想像を形にしようとたまが腕を組もうとした所で、警戒をするように周囲の音を聞き取っていたたまの猫耳…もといケットシー耳が違和感を捉える。
 その違和感に足音を忍ばせ姿勢を低くくして駆けたたまが、旧校舎の影に身を潜めるように角の向こうを覗き込み、自身の歩いて来た道が袋小路へと繋がっていることを確認し息をつく。
「ふむ、これはどういうことだ? わざわざ行き止まりを作ったのか?……いや、なるほど。始まりの迷宮の上につくられた旧校舎群は防衛施設を兼ねているのだな?」
 では…折角だ、と迷宮の創造に繋がる自身の想像に地下迷宮で攻略した要素を重ねていくたまが、来た道を戻りながら思案に沈み、ポツリポツリと零れる声が旧校舎群へと溶けてゆく。

 …幻で視覚を惑わす迷宮もあったな
 ……嗅覚を頼りに探し物をしたこともな
 ………周囲を破壊するとまずい迷宮もあったか
 …………魔王戦争での呪いのかかった壁面は記憶に新しいな

 創り上げる迷宮のイメージを固めながらも危なげなく歩くたまの足元が僅かに揺れ……、何かが吸い出されるような繋がるような感覚が身体に奔り、溶けるようにその感覚が薄れていく。

●新たな迷宮
 やるべきことに区切りをつけたひよこなケットシーの料理人が報告の為に蒸気幽霊の元へと戻ってくる。

●迷宮創造
 歩みに合わせ響いていた涼やかな音色が止まる。旧校舎の一角を管理するエイルマーの元へと帰ったたまが先ほどの感じた感覚の事を確認するように報告し。
「ワタシの感覚が確かなら僅かな揺れと独特の感覚を感じた。これで良かったのか?」
『あぁ、ありがとう。それで問題ないよ。ただ、災魔を呼び寄せるにはまだ時間がかかると思う』
 エイルマーの返答に…ならば一度戻ろう、と言葉を返したたまが昏い光に転送されて旧校舎から去ってゆく。

成功 🔵​🔵​🔴​


●嫉妬の艶尾
 アルダワ魔法学園の地下迷宮。何処ともしれない封印の間に詰まったような悲鳴と足音が響く。

『……ひっ、……っっ!? な、な、なにっ!?』
【はっはっは、誰かが呼んでるようだぞ? 我が契約者殿】

 いやっ、と封印の間の隅に逃げ込んだ黒髪の少女の悲鳴が反響し、楽しげに揶揄う魔導具の声が現状を正確に伝え追いうちを掛けてゆく。
鯉澄・ふじ江(サポート)
怪奇ゾンビメイド、16歳女子
誰かのために働くのが生きがいの働き者な少女
コイバナ好き

自身が怪物寄りの存在なので
例えどんな相手でも対話を重んじ問答無用で退治はしない主義

のんびりした喋り方をするが
これはワンテンポ間をおいて冷静な判断をする為で
そうやって自身の怪物としての凶暴な衝動を抑えている
機嫌が悪くなると短文でボソボソ喋るようになる

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し
自身の怪我は厭わず他者に積極的に協力します
また、例え依頼の成功のためでも
自身の矜持に反する行動はしません
 
何でもやります、サポート採用よろしくおねがいします!

(流血、損壊系のグロ描写やお色気系描写もOKです)



●ダンジョンメイク
 他の猟兵達と別れ蒸気幽霊に案内された旧校舎の一角を歩く猟兵が、何かを探すように足を止め、僅かに首をかしげながら周囲を見渡す。

●ダンジョンメイカー
 桜色の可愛らしいメイド服を着た鯉澄・ふじ江(縁の下の力任せ・f22461)が、人気のない割には汚れが少ない使われている様子のない旧校舎の様子に不思議そうに言葉を零す。
「う~ん。意外に綺麗ですぅ……。人がいなくて荒れているかと思ったのですけど~。お掃除の必要はあまりなさそうですねぇ。そうなるとぉ、ちょっと困りました~」
 おそらく広い範囲を一人で管理しているであろうエイルマーと名乗った蒸気幽霊の手の届いていない場所を掃除しつつ、迷宮の内容を考えようとしていたふじ江が手持ち無沙汰になることを懸念し……そのふじ江の声が届いたのか浮かび上がるようにエイルマーが姿を顕す。
『っと、すまない。こちら側に不備があったかい?』
「いぃえ~。大丈夫ですぅ。ただ~、何かお手伝いできることってありませんかぁ?」
 わざわざ来てもらった方に雑用みたいなことを頼むのは…と恐縮するエイルマーにお気になさらずぅ、とふじ江が困っていることを聞き出し。
「なるほど~、あれがお掃除とかをしてたのですねぇ。それでわぁ、いってきます~」

●新たな迷宮
 蒸気幽霊へと頭を下げた赫眼のゾンビパーラーメイドが旧校舎管理用の蒸気機械に連れられて校舎の中へと足を踏み入れてゆく。

●迷宮想像
 蒸気と歯車の奏でる音に鼻唄が混じり響いてゆく。待機状態の蒸気機械群の置き場を越えて資材が纏められた倉庫へと辿り着いたふじ江が、掃除はされながらも大小さまざまな使用用途の不明な機材が散乱した荒れた現状に気合を入れてメイド服の裾を捲り上げる。
「これは、整理しがいがありそうですね~。それじゃぁ、始めましょうかぁ~」
 まずは少しずつでも整理をしなければ綺麗に整理する場所もない、と手近な部品をのんびりとした気合の声と共に持ち上げたふじ江に案内してきた小型の蒸気機械が置場を指し示し、長い間置きっぱなしになっていた機材がゆっくりと片付けられてゆく。

 ギシリと床を軋ませながら幾つもの歯車が噛み合った何かの腕らしき部品をふじ江が持ち上げ、永らく重量物が置かれ歪んだ床が小型の蒸気機械に精査され修理の準備が整えられる。
 ギャリリと独特の音色をさせながら重たいハンドルを回したふじ江の目の前で採光窓が開き、廻る歯車と噛み合う鎖に小型の蒸気機械が的確に油を刺し損傷部分を取り替える。
 ガキリと重たいものが沈み込む音が響き小型の蒸気機械が巧妙に隠した扉をあけ放ち、中に並べられた蒸気機械の整備用の部品をふじ江が指示された通りに運び出す。

 そうして僅か後。蒸気機械との息も合ってきたふじ江がふと本来の目的を思い出し、片付けを手伝う手を止めることなく言葉を零す。
「ん~、説明だと過去の識者がその知識や経験を問うような感じとかもありましたよねぇ。わたしぃだとぉ、パーラーメイドについて聞かれるとかぁ…自身の職業に関して質問されるのも面白いかもしれませんね~」

●新たな迷宮
 蒸気機械群と赫眼のゾンビパーラーメイドが協力し合い旧校舎群にある部屋の掃除を粛々とこなしてゆく。

●迷宮創造
 響いていた蒸気と歯車が奏でる音が収まってゆく。大まかな掃除が終わり小型の蒸気機械が最後の仕上げをしてゆくのを眺めていたふじ江が、引かれるような不思議な違和感に気が付き本来の目的が達成されたことを理解する。
「今のがダンジョンメイカーでしょうかぁ? なら、余った時間でもう少し片付けの手伝いをしていきましょ~」

成功 🔵​🔵​🔴​


●嫉妬の艶尾
 アルダワ魔法学園の地下迷宮。何処ともしれない封印の間に満ちていた静寂をバタバタと走り回る足音と石壁を叩く音が破る。

『……っ!!、…に、逃げる場所っ! ど、どこかにっ! ないっ!?』
【おいおい、封印されてんだ。諦めも必要だぞ? 我が契約者殿】

 いやいや、と首を振る黒髪の少女が封印の間に顕れた真っ黒い真球から逃げるためにグルグルと走り回り、言葉とは裏腹に少女がこけかける度にさりげなく支える魔導具の声が楽しげに響いてゆく。
ミルディア・ディスティン(サポート)
『全速全開!ともかくやってみるのにゃ!』
 人間のシャーマン×UDCメカニック、17歳の女です。
 普段の口調は「女性的(あたし、あなた、~さん、にゃ、にゃん、にゃあ、にょ?)」、
 真剣な時は「無口(あたい、あなた、呼び捨て、にゃ、にゃん、にゃあ、にょ?)」です。

 ユーベルコードはシナリオで必要としたものをどれでも使用します。
 痛いことに対する忌避感はかなり低く、また痛みに性的興奮を覚えるタイプなので、命に関わらなければ積極的に行動します。
 公序良俗は理解しており、他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
 記載の無い箇所はお任せします。よろしくおねがいします。



●ダンジョンメイク
 猟兵達を見送った蒸気幽霊の元へと駆ける音が近づき、慌てた様子で走ってきた猟兵が旧校舎群の一角へと辿り着く。

●ダンジョンメイカー
 ばっちりと可愛らしく整えた猫耳ヘアを揺らすミルディア・ディスティン(人間のシャーマン・f04581)が、話に聞いていたエイルマーらしき人物だけが佇んでいるのを確認し息を整えながら声を掛ける。
「あなたがエイルマーにゃ? あたしはミルディアにゃ。よろしくにゃ。集まる場所はここであってるにゃあ?」
『ん…。あぁ、ここで間違いないし…私がエイルマーであっている。こちらこそ、よろしくお願いするよ』
 その様子に息が整うのを待ちつつエイルマーが言葉を返し、現状の説明を追加してゆく。
「なるほどにゃ。範囲内にいればいいから纏まっている必要はないのにゃ。だったら、あたしもそこら辺を歩きながら考えてくるにゃあ」
 あぁ…気を付けて、と見送るエイルマーに、にゃ!と返事を返したミルディアが、周囲の景色から面白そうな場所がないかを探しつつ指定された場所の奥へと向けて移動してゆく。

●新たな迷宮
 猫耳ヘアのメカニックがいまだに稼働し続ける旧校舎の蒸気魔導機械群に興味を示しながら歩き進んでゆく。

●迷宮想像
 蒸気と歯車が噛み合い立てる重低音が緩やかに響いてくる。不思議と地下でも明るい旧校舎群の間を縫うように歩くミルディアが、頭上見上げ黒い双眸を眇め……周囲の旧校舎の屋上から僅かに輝く何かが散布されていることに気が付き幾度か目を瞬かせる。
「ん~、輝く鉱石でも散布してるにゃ? でも、それだと粉末が飛散するにゃ……。それにあの量だと重たいものじゃなさそうにゃあ」
 頭上に見えるものを、光ってるにゃ? 粒子状みたいにゃ。飛散物はないにゃ………、と見える特徴と感想、考察を織り交ぜながらミルディアが纏めてゆき一つの予想を立てる。
「おそらくあれは旧校舎内で使われてる蒸気魔導機械から出た蒸気だにゃ。光ってるのはたぶん屋上に別に光源が付けられてるにゃあ」
 ただ…むらなく蒸気を上空に排気してるのはすごいにゃ、と遥か以前から稼働し続ける旧校舎を支える蒸気機関に感心し、ふと本来の目的を思い出す。
「そういえば、迷宮を考えないといけないにゃ。とはいっても、魔法学園に来るのは初めてにゃ。どんな迷宮がいいのかにゃ」
 直接の戦闘よりかは技術的なもののほうが良さそうにゃ……と、ご主人様と呼ぶ存在から借り受けた護衛の騎士はいるとはいえ戦闘は得意ではないと思っているミルディアが、邪神やその眷属を発見・捕獲・収容すらせしめる超常の機械を扱うメカニックとしての知識を使えるものがよいだろうと考え次第に具体的な案へと変えてゆく。
「あと、ここの技術にも興味あるにゃ。なら、解除にいろんな種類の知識が必要なトラップ群のある迷宮とか良さそうにゃ」

●新たな迷宮
 旧校舎群を微細な振動が駆け抜け猫耳ヘアのメカニックの身体へと歯車が噛み合うような不思議な感覚が沸きあがり消えてゆく。

●迷宮創造
 短く断続的で複雑な稼働音が周囲へと響く。いつの間にか探索の起点となっている場所へと戻ってきたミルディアが、変わらず佇むエイルマーへと依頼内容の完了を告げ、今後の予定を確認する。
「迷宮のイメージをダンジョンメイカーに伝えるのは終わったと思うにゃ。これから先はどうするにゃあ?」
『まだもう少し迷宮が出来るまでは時間が必要みたいだ。この周囲を探索してもらうか一度戻ってもらってもいいかもしれない』
 エイルマーの回答に僅かに悩んだミルディアが、ご主人様の元にもどるにゃ!と結論を出し転移されてきた場所を目指して踵を返す。

成功 🔵​🔵​🔴​


●嫉妬の艶尾
 アルダワ魔法学園の地下迷宮。にわかに慌ただしくなっていた封印の間に悲しげな声が響き足音が諦めたかのように収まってゆく。

『うぅ…。…に、逃げるところない。あのへんなのも…ひ、拡がってる』
【飲み込まれてすぐ死ぬようなもんじゃねぇさ、我が契約者殿】

 それによく見ろよ、と促すように笑う魔導具の声にいやいやながら視線を侵食する黒い何かへと向けた黒髪の少女がカックリと首を傾げ恐怖に染まっていた瞳に理性がもどってくる。
ワズラ・ウルスラグナ
ふむ。嫉妬と尻尾か。
魔導具と契約者には悪いが、これも縁だ。
迷宮まで御足労願おう。

渇望の表出と言うとダンジョンメイカ―もその類だな
無論望むのは戦いのみ
それも求め得る最高の戦いだ
しかし彼女等が好戦的ではないと言うなら直接対決以外も考えねばならんか
最高の戦いには最高の敵が必要だからな

そう言うわけで創る迷宮はカウダ・インヴィディアにとっても都合の良い物が望ましい
彼女等の影響を色濃く受けた物でも良い
望むままに姿を変え続ける迷宮、なんてのは変わり種で面白いかも知れないな
そうなると出逢う事さえ難しくなりそうだが、それもまた善し

どの道突破法は後で考える
望むものは最高の戦いの為の最高の迷宮だ
さあ、戦獄を創り出せ



●ダンジョンメイク
 懐かしげに足を止めて視線をさまよわせていた猟兵が、他の猟兵達と蒸気幽霊の移動した痕跡を辿るように足を進めてゆく。

●始まりの魔法装置と渇望
 熾火のように左腕の断面から黒焔を零れ落ちさせるワズラ・ウルスラグナ(戦獄龍・f00245)が、空気を焼く音と共に燃え盛らせた戦獄で左腕を形成し幾重にも古傷が刻まれたその腕を確かめるように握りしめる。
「おぅ、また世話になる。さて、今度は嫉妬と尻尾だったな。せっかくだ、少し話を聞いてから向かっても構わないか?」
『あぁ、構わない。なにが聞きたいかな? 答えられることなら答えるよ』
 再構築されたワズラの左腕に一瞬だけ視線を移したエイルマーが、穏やかに答え…では遠慮なく聞かせてもらおう、とワズラが気になる点を指を折るように伝えてゆく。
 そうして僅か後、当面の疑問を確認したワズラが旧校舎の方向へと考えを纏めながら移動を始める。
「メランコリアの義姉…のようなものか。特徴と名前から関係があるかとは思っていたが、やはり興味深いな。なに、魔導具と契約者には悪いが、これも縁だ。望むと望まないと迷宮まで御足労願おう」

●新たな迷宮
 蒸気幽霊に見送られた戦獄龍が周囲から響く歯車や蒸気の奏でる重低音の中を牙を剥く様に笑いながら歩いてゆく。

●嫉妬あるいは渇望
 静けさを焼く様に細かな火の粉が舞い踊る。迷いなく響く石畳を削るような足音に重ねてワズラが慣れた調子で言葉を零し。
「さて、渇望の表出と言うとダンジョンメイカ―もその類だな。望むものを創り上げ引き寄せる。いや、ある種の願望器ともいえるか」
 受動的でありつつ目的がある…まさに道具ではあるがな、と少女と魔導具という組み合わせに先日の戦いを思い出し……戦獄で形成された左腕がギシリと鳴る。
「無論、俺が望むのは戦いのみ。それも求め得る最高の戦いだ。生死を賭して死力を尽くすその時間こそを渇望する」
 パチリ…パチリとワズラの戦獄から溢れた黒焔が周囲を炙るように燃え盛り始め、全身を覆う熱気に闘志を高ぶらせるワズラがそれを押さえつけるように冷静な言葉を紡ぐ。
「しかし、彼女等が好戦的ではないと言うなら直接対決以外も考えねばならんか…。最高の戦いにするには、最高の敵が必要だ。とはいえ、好戦的でないことと強者でないことは同一でないことは身をもって体感しているがな」
 さて…どうするか、と腕組みをしたワズラが互いに最高の状態で戦える迷宮を望むべく思考を重ねる。

 一つ、カウダとインヴィディアが十全に力を発揮できるものが望ましい。
 一つ、それぞれの渇望が反映されやすい迷宮なら都合がいい。
 一つ、俺達猟兵も全力を出せるものだと好ましい。

 闘争の場があればそれで充分なほど渇望が満たされている、とワズラが自身に僅かに苦笑しながら首を振り。
「うむ、迷宮が出来た時点で俺の望みは果たされていそうだ。むしろ彼女等の影響を色濃く受けた物がいいかもしれんな。たとえば望むままに姿を変え続ける迷宮、なんてのは変わり種で面白いかも知れん」
 出来上がる迷宮に期待しながら腕を組んだワズラがこれまでの迷宮主は大抵、迷宮主の間に封じられていたこと思い出し唸りを零す。
「だが、どことなく。カウダがどうするかはともかくインヴィディアが、迷宮を自由に改造できるもしくは動けるとなると出逢う事さえ難しくなりそうだが、それもまた善し」
 と、エイルマーから聞いたインヴィディアとカウダの性格を思い返しつつ、ひとまず思考を切ったワズラがふと先ほどまで先んじて注意を促された権能ともいえる特性を思い返す。
「今度の権能は遷移……だったか。変化させること、移動させること。それがどう嫉妬と渇望に関わってくるのか。楽しみにさせてもらおうか」

●新たな迷宮
 旧校舎群に幾度目かの微細な振動が奔り、戦獄龍が何かが引き出されるような不思議な感覚に黄金色の隻眼を楽しげに細める。

●迷宮創造
 蒸気魔導機関の奏でる重低音に黒焔の弾ける音が載る。これから起こる闘争の気配にワズラの鍛え上げられた龍躯に刻まれた戦獄から巻き上がる熱量が高まり、期待の言葉が零れ。
「なに、どの道…突破方法は後で考える。俺が望むものは、最高の戦いの為の最高の迷宮だ」
 先ほど感じた僅かなつながりに載せるように熱の籠った言葉をワズラが、始まりの地下迷宮の何処かに封印された少女と魔導具に届けとばかりに刻み付ける。
「さぁ、戦獄を創り出せ。闘争を創り出せ。渇望を見せてくれ」



●嫉妬の艶尾
 アルダワ魔法学園の地下迷宮。封印の間の石床の大半を黒い何かが浸食し、部屋の隅で縮こまっていた黒髪の少女が何かに気が付いたかのように顔をあげる。

『……うぅ。…少し、形は違うけど……ね、願われた』
【おぅ、ちょいと違うが願われたな】

『し、嫉妬は……渇望。う、羨む…っ、からこそ…もっ、求め…進むっ…』
【はっはっはっ、そんなに欲しいのならくれてやろう】

『み、未来を、望むっ、深き…願いを、……現在に繋げるっ!』
【望むだけ? 願うだけ? 遠慮はいらない、理想の自分を羨むだけ持っていけ】

『うん、じゃぁ……私も行かないと。頼りにしてる、私のカウダ』
【心配はいらねぇよ。任せとけ、俺のインヴィディア】

 終始怯えていた雰囲気の黒髪の少女がふらりと立ち上がり、迷うことなく漆黒に呑まれ……ゆらゆらと機嫌良さそうに揺れる艶黒の尻尾が口をはさむことなく共に消えてゆく。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『『ダンジョンメーカー』ダンジョンの探索』

POW   :    肉体や気合でダンジョンを探索、突破する

SPD   :    速さや技量でダンジョンを探索、突破する

WIZ   :    魔力や賢さでダンジョンを探索、突破する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●嫉妬あるいは渇望の迷宮
 始まりの魔法装置たるダンジョンメイカーが幾つのも願いを受けてその機能を動作させる。
 地下深くに迷宮主の間が作り出され…その部屋を中心に幾本もの通路が生まれ、侵入者を拒むようにあるいは迷宮主が外に出るのを封じるように幾つもの部屋が創り出され、それぞれを繋ぐ通路がさらに形成されてゆく。

 ある部屋では複数の通路と部屋が複雑にが繋がり一つの迷宮が形作られ…
 ある部屋では四方の壁が削られるように消失し強大な空間を創り出し…
 ある部屋では対話を促すような机と椅子が顕れ守護者が腰を下ろす…

 交わり混ざった様々な想像が迷宮として表出し、不思議な薄霧が迷宮へと拡がる。広大な部屋を薄く覆うように淡く、守護者と待ち受ける部屋の詳細を隠すように色濃く、迷宮にできた迷宮を彩るように白く……幻燈のように柔らかく薄霧が迷宮を覆い隠す。

●状況確認
 迷宮の入口へと集まった猟兵達に蒸気幽霊のエイルマーが感謝と共に状況の説明を始め。
『お陰様でカウダとインヴィディアを迷宮に呼び寄せるのは成功している。迷宮は幾つかの区画に別れている階層構造でそれぞれの区画を攻略して迷宮主の間へと繋がる場所を探していくこととなるよ』
 概要の図で簡略に説明した後、猟兵達が集まる間にエイルマーが確認した状況を猟兵達に伝えていく。

【一つ目は、迷宮を象った区画】
『迷宮の中の迷宮…と言うべきかな? この区画はインヴィディア達の影響が大きい薄霧に沈んだエリアになる。トラップの類はなく、防衛用のゴーレムは徘徊しているけどそこまで強くないから問題にはならないと思う。ただ、ここは普通に進んでもいつの間にか元の場所へと戻される…だから、ユーベルコードを使って薄霧を晴らす必要がある。けれど、その時使用したユーベルコードが薄霧が晴れると共に自らに襲い掛かってくるからそれへの対処をしっかりしてもらえればと思う。薄霧を晴らす場所は細い通路や広い部屋いろいろな場所があるから自分が得意な場所でしてもらえればいいかな』

【二つ目は、ギミックを解くタイプの区画】
『こちらは幾つかのギミックが大きな部屋に仕掛けられているタイプだね。幻影で本来の扉が隠されていたり、施錠された扉を開ける脆い鍵を探したり補強したり、同じ形をした本物と偽物を何かしらの方法で区別したり、扉を開くために仕掛けられた幾つもの罠を解除していく感じだ。何かしらの問題が発生した場合は周囲の薄霧が反応して部屋の外まで戻されギミックも元通りになるよ』

【三つ目は、守護者がいるタイプの部屋】
『これに関しては、ある分野の識者が守護者となっているらしい。人によって問われる内容は違うだろうけどそれに応えることで先に進める。予測としては仕事であれば何を大切にしているかとか…なぜそれをしているのかとかになるのかな? なんらかの形で識者を納得させればいいと思うのだけど、具体的じゃなくて申し訳ない』

『それと、共通して注意…と言うほどでもないのだけど薄霧はカウダとインヴィディアに繋がりがある。なにか、秘匿したいことがあれば、留意しておいてほしいかな。あと、カウダとインヴィディアの特性は遷移。力を変化させ、別の場所に移動させる……そんな、能力になる。今回はそこまで警戒は必要としないかもしれないけど、迷宮を象った区画でユーベルコードが自身に襲い掛かってくるのはこのせいだね』

●嫉妬の艶尾
 新たに創造された迷宮主の隅で黒髪の少女が震え、艶黒の尻尾が楽しそうに揺れ……がこんと迷宮主の間の壁が変形し形を変える。

『……ひ、ぅぅ。…好きな、ように……って、言われてもっ!』
【なぁに、これから見ればいいだろうよ、我が契約者殿】

 惑う少女の声に、諭すように魔導具の声が響き……湧き出るように密度を増し始めた薄霧が迷宮主の間を満たしてゆく。
吉岡・紅葉(サポート)
サクラミラージュ出身の學徒兵で、ハイカラさんの少女。
礼儀正しく快活で、困った人を放っておけない性格。
流行にかなり敏感で勉強熱心なので、
いろいろな世界の文明にうまく順応できます。
元怪盗の師匠に武術を習い、素早さや器用さを活かした
体術や技能を得意とします。
主な武器は支給された退魔刀ですが、
事件現場に落ちていたものを改造して利用することもあります。
緑色の自転車を愛用し、よくへんな歌を口ずさみながら
走っています。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
特にサポートの必要がない場合は、構わず流してください。



●嫉妬あるいは渇望の迷宮
 新たに出来上がった迷宮の前で蒸気幽霊の説明を聞き終えた猟兵達が、それぞれに別れて迷宮の攻略を目指して散ってゆく。

●迷宮への挑戦
 染め上がるかのように僅かに赤みがかった學徒服にも見えるハイカラな服を纏った吉岡・紅葉(ハイカラさんが通り過ぎた後・f22838)が、ぽっかりと暗がりを湛える新たに出来上がった迷宮の中へを確かめるように視線を動かし。
「魔法学園の地下に新たな迷宮! いいですねぇ~、未知の経験も悪くないです。っと、失礼しました。私は吉岡・紅葉。今回の依頼で迷宮の攻略に参りました」
『丁寧にすまない。エイルマーというよ。気を付けていってもらえればと思う』
 居住まいを正し礼儀よく挨拶を行った紅葉に、同じく丁寧に言葉を返したエイルマーが頭を下げる。
 そうして、僅か後。会話を終えた紅葉が迷宮の入口を覗き込み、広さはありつつも僅かに薄暗い迷宮の様子に愛用のダルマ自転車を使うのには少し手狭だろうと判断をし、規則だたしい足音と楽しげな歌を残しながら暗がりへと消えてゆく。
「地下迷宮ですし雨は降らないんでしょうけど…、ランララ~♪ 今日もいい天気~♪」

●幻影と罠の部屋
 自作であろう独創的な歌を楽しげに歌いながら進む紅葉の名を託された自警団員の視界に大きな扉が映り込んでくる。

●ハイカラさんは止まらない
 小気味よく響く歌声に軋む音が重なり通路を満たす。迎え入れるように開き切った大扉の内側、薄霧が満たされた部屋の中に置かれた案内板のようなものに気が付いた紅葉が、歌うのをやめて僅かに目を鋭くし罠の可能性も考えながらその内容を読み込んでゆく。
「……、聞いた内容とほぼ同じですねぇ。まぁ、ならやってみるしかないでしょうよ」
 そう言った紅葉を取り巻く様に夕陽のように朱く柔らかな紅光が輝き出し、赤く陰影の刻まれた足元の様子に紅葉が足を止める。
「あからさまに怪しいですね。とはいえ、目印でもつけて何が起きるか確かめてみますか」
 何処からともなく取り出した筆記具で罠らしき部分に[×]のマークを刻んだ紅葉が、何が起きても大丈夫なように周囲を警戒しながら足を踏み込み……カチンと何かが外れる音と微かに壊れるような音が響き、薄霧が密度が増す。
 そうして、一瞬の後。薄霧の密度が薄れ紅葉の目の前に現れたのは先ほど開いたはずの大扉。紅葉が状況を把握しようと起こった出来事を素早く整理するなか、先ほどと同じように大扉が開き、見覚えのある案内板が見えてくる。
「なるほど、罠が作動すると侵入者を排除するのではなく鍵を壊すか、何かして先に進めなくするのみたいですね。迷宮としては正しい気がしますが面倒ですねぇ」
 まぁ…それならそれでやり方はあるでしょうよ、と指針を定めた紅葉が迷宮の攻略に乗り出してゆく。

 幻影の扉に重ねられるように仕掛けられた罠を暴き、意識の隙間を縫うように張り巡らされた糸を解く。
 色とりどりで麗美な装飾をされた鍵を手に入れ、巧妙に壁の中に隠された幾つかの扉を発見する。

 そうして、しばらく後。歯車が噛み合い、鋼鎖が巻き上げられる音が響き部屋の中央に幾つかの箱と……見慣れた案内板がせり上がってくる。
「ここまでくると最初までは戻されないようですね。集中力も切れてきましたし、一度休憩にしましょうか」

●幻影と罠の部屋
 念のためにと紅葉の名を託された自警団員がこれまで解いた罠の解除方法と攻略の手順を入口の案内板に残してゆく。

●迷宮攻略
 楽しげな歌が淡い薄霧へと溶けて消えてゆく。引継ぎの準備も整え当面のやるべきことを終えた紅葉が、元来た道へと足を進めながら言葉を零し。
「ひとまず、キリもいいですし此処までにしましょうか。続きが気になれば帰ってきてもいいわけですしね」
 それを合図に昏い光が沸きあがり紅葉の身体が迷宮の入口へと転送されてゆく。

成功 🔵​🔵​🔴​


●嫉妬の艶尾
 薄霧を通して迷宮の様子を感じ取る黒髪の少女が人がくるという緊張感にバタバタと駆けまわり悲鳴のような声が零れる。

『う…ぁ……っ! ど、ど…どうしようっ!?』
【お出迎えの準備しかないんじゃねぇーか?】

 それはそれで緊張する、という内容の言葉を返した黒髪の少女にゆらりと揺れた尻尾型の魔導具が協力してやるからよと楽しげに言葉を返す。
秋月・紅(サポート)
『さーて!楽しくなってきたじゃねぇか!』
 羅刹のバーバリアン×ブレイズキャリバー、23歳の女です。
 普段の口調は「サバサバ系?(アタシ、てめぇ、だ、だぜ、だな、だよな?)」、時々「真面目(アタシ、アンタ、だ、だぜ、だな、だよな?)」です。

 ユーベルコードはその時に応じて一番使えそうなのを使います。戦闘狂なので怪我は一切厭わずヒャッハーします。
戦闘以外にはあまり興味はないけどなんだかんだで最終的にはノリノリで参加します。

カッコいい物が好き。

可愛い格好とかさせられるのは苦手。恥ずかしいから。

弱い者にも優しい。
でも脳筋なのでパワーで解決しようとする。力こそパワー。

よろしくおねがいします!



●嫉妬あるいは渇望の迷宮
 蒸気幽霊に見送られた猟兵が薄霧に包まれた迷宮の探索を始め、視界を包むような薄霧の中から蒸気魔導機械のたてる歯車と発条が奏でる音が響いてくる。

●迷宮への挑戦
 カランコロンと下駄の立てる独特な音を響かせながら進む秋月・紅(紅の暴風雨・f01395)が、纏わりつく様な不思議な感覚をさせる薄霧から響いてくる音に岩塊のようにも見える武骨で巨大な斧を担ぐように構え。
「さーて! 楽しくなってきたじゃねぇか! 鬼が出るか蛇が出るか、こういうのも悪くねぇなっ!」
 視界を薄く濁らせる霧の向こう側から微かな風切り音と共に蒸気魔導機械の動作音が近づき、白霧を乱すように振りぬかれた機械の拳と身体を捻るように薙がれ迎え打った斧の一撃が火花を散らす。
「なんだかんだ迷宮の探索も悪くなかったがよ、やっぱりこれだよな!」
 斧を通して感じる重みににテンションを上げる紅が、楽しそうに声を零し霧の中から出現した防衛用蒸気魔導機械の武骨な姿に瞳を煌かせる。

●蒸気魔導機械と嫉妬の間
 闘争を求める紅の羅刹が振るう巨斧が人型の魔導蒸気機械を壊斬し新たな蒸気魔導機関の動作音が響いてくる。

●紅の暴風雨
 蒸気の噴き出す音が激しい衝突音を彩ってゆく。圧し潰すように振り下ろされた蒸気魔導機械の一撃を懐へと飛び込み交わした紅の踏み込みの勢いが乗る横薙ぎの一撃が蒸気魔導機械の腹部を断ち斬り激しい音が響き渡る。
「いいねぇ。まぁ、聞いてた通りにちょっと物足りなくもあるけどよ。数が増えればもっと楽しめそうだな」
 血振りをするように武骨な斧を振り払い肩に担ぎなおした紅が蒸気魔導機械が現れてきていた場所へと足を運び見えてきた大扉を迷うことなく開きその中へと入ってゆく。
 そうして、暫らく後。扉を抜け再び襲い掛かってきた防衛用蒸気魔導機械を撃退した紅が床へと刻まれた記憶にある傷跡に気が付きこれまでの戦闘を振り返るように首を捻る。
「んん…? この傷…見覚えあるな。いや、間違いなくアタシが付けた傷だな。って、あぁ、そういえば普通に進んでも抜けられないんだったか」
 戦いと探索を楽しみつい入口での説明を失念していた紅が、霧を晴らせって言われてもなぁ、と零しながら巨斧を構え、ギリリと細身ながらも鍛え上げられた筋肉が引き絞られてゆく。
「まぁ、アタシに出来るのはこれだしな。駄目だったら駄目だったで考え直せばいいだろうぜ」

 激しい踏み込みの音と共に巨斧が薙ぎ払われ、超重の質量に引かれるように鍛え上げられた身体が躍る。
 風を裂き刻まれる軌跡が滑らかに新たな軌跡へと繋がり、部屋を揺らすような再びの踏み込みが身体を跳ね上げ叩きつける一撃へと変わる

 渦巻く様に拡がる衝撃に薄霧が吹き飛ばされるように晴れてゆき……露になった巨大な部屋に佇むのは紅と同じ巨斧を持ち上げた一体の蒸気魔導機械。
 油断なく武器を構えるその姿に紅が応じるように巨斧を突きつけ周囲の空気が緊張感を孕んでゆく。

 ―――ギィィン!

 闘争心のまま先に踏み込んだのは紅。正面から全力で薙ぎ払われた紅の巨斧が蒸気魔導機械の振るう巨斧によって受け止められ甲高い音を放ち、質量を活かして圧し潰すように圧力をかけてくる蒸気魔導機械に紅が引くことなく対抗してゆく。

●蒸気魔導機械と嫉妬の間
 武骨な巨斧同士がぶつかり合い鈍く甲高い音が周囲へと響き渡り闘争を求める紅の羅刹が本懐とばかりに滾ってゆく。

●迷宮攻略
 重たいものがぶつかり合う狂騒曲に終わりが訪れる。身体を掠めるように振り落とされた巨斧の一撃を交わした紅の身体を爆発するように四散した床材が叩く。幾重にも身体に奔る衝撃と痛みにひるむことなく巨斧を振りぬいた紅の目の前で蒸気魔導機械が胴体を断たれ機能を停止する。
「……よし、勝ったぜ。次はどこに行けばいいんだろうな? まぁ、こんなのが出てくるならどこでも歓迎だけどな」

成功 🔵​🔵​🔴​


●嫉妬の艶尾
 重いものが擦れる音が薄霧の奥から響き……次第に遠ざかるその音、迷宮主の間に新たな迷宮を創るかのような変化に伴う音が不意に途切れる。

『…っっ!!? ……い、いっ、行き止まり!?』
【まぁ、……あれだ。無制限に改造出来たら閉じ込める意味がねぇーしな】

 逃げるのは諦めろと笑う尻尾型の魔導具の言葉に、諦めがついたのであろう黒髪の少女が首を振り、それでも名残り惜し気に変化の起きなくなった壁を見つめる。
源・ヨーコ(サポート)
『悪い子はお仕置きっすよー!』
人間のブレイズキャリバー × ビーストマスター
年齢 16歳 女
外見 158.4cm 金の瞳 ピンクの髪 色白の肌
特徴 胸が大きい 八重歯 ギャル ハイテンション! 運動が好き
口調 体育会系(自分、~先輩、~っす、~っすよ、~っすね、~っすか?)

悪いヤツは鉄拳制裁!
あまり難しいことは考えず、敵に向かって猪突猛進するタイプ。全ては拳で解決できると信じていて、とりあえず接近して殴るが基本戦術。
硬そうな相手にはカウンターでの一撃必殺を狙い、素早そうな相手には連撃と使い分けぐらいはする。

単独行動を好み、調査などは苦手。
基本は戦闘オンリーな感じですが、よろしくお願いします。



●嫉妬あるいは渇望の迷宮
 嫉妬を冠する迷宮の入口へと辿り着き立ち上る薄霧を視界におさめた猟兵に、その場を管理する蒸気幽霊がこれまで行ってきた説明の為にゆっくりと近づいてゆく。

●迷宮への挑戦
 魔法学園の制服の名残を感じさせるミニスカートに改造された拳法着を纏った源・ヨーコ(鉄拳制裁・f13588)が、遥か昔の先達である蒸気幽霊――エイルマーの姿に気が付き、独特の言い廻しで名乗りを上げる。
「初めましてっす! 自分、いたって不調法。前後間違いあったらごめんなさいっす。生まれも育ちもアルダワで、姓は源。名はヨーコ、人呼んで壊しのヨーコっす」
『……随分、古い作法を知っているんだね。私はエイルマーだ。こちらこそよろしくお願いするよ』
 穏やかに応じたエイルマーに、八重歯を覗かせハイテンションにヨーコが頷き、楽しそうに拳を突き出し…。
「エイルマー先輩っすね! あっ、ちなみに自分。メカを操るオツムもなければ魔力もないんで、武器はひたすらに鍛えた拳打っすよ!」
『ふむ…、それなら踏破するタイプの区画が合うかもしれないね』
 なるほど…それじゃ行ってくるっす!と薦められた場所を目指してヨーコが、エイルマーへと一度手を振り迷宮へと駆けこんでゆく。
●蒸気魔導機械と嫉妬の間
 迷宮に満ちた薄霧をかき分けるように鉄拳を掲げる女拳打師が陽気な言葉を後に残しながら駆け抜けてゆく。

●鉄拳制裁
 迷宮に反響する音が響きを変えて大扉が浮かび上がるように現れる。ピンクの髪を靡かせて軽快に足音を刻んでゆくヨーコが、黄金色の瞳に映った通路を塞ぐ大扉に駆ける勢い徐々に速めてゆく。
「暇っすー。この霧にはもう飽きたっすよ! 悪い子はどこにいるんすかー。……ん? ついに扉を発見っす! さぁ、行くっすよ~」
 とりゃーっす!と閉ざされた大扉に疾走の勢いを乗せた拳打をヨーコが叩きこみ……内側へと吹き飛ぶような勢いで開いた大扉が壁に衝突し大きな音を立てる。

 ―――ガァン!!??
     ―――――ブォン……

 手元に残る感覚に鍵は掛かっていなかったことを感じたヨーコが僅かにあちゃー、と顔色を変え……起動音と共にズンッと重く響く足音をさせた魔導蒸気機械にその表情が引き締まる。
「でっかいっすね。でも負けないっすよ! 魔導蒸気機械の守護者……相手に取って不足はないっす!」
 ズシューっと、ひと際大きく蒸気を吐き出した魔導蒸気機械がヨーコと同じく徒手空拳で構えを取り、ジリジリと緊張感で空気が重くなり薄霧が濃度を増してゆく。

 ――――ウォオオオンッ!!
 ―――ダンッ!

 魔導蒸気機械の駆動機関が唸りを上げ、それに応じるようにヨーコの踏み込んだ足が迷宮を捕らえる。ダンッ!と跳躍の音を響かせて身を躍らせたヨーコが身体を捻り打ち下ろすように放った一撃が、深く腰を落とし掬い上げるように振るわれた魔導蒸気機械の拳とぶつかり合い、重たい轟音が周囲を震わせる。

 ――ッッッッ!

 突き抜けた衝撃に震える迷宮へと危なげなく着地したヨーコが、さらに駆動音を高らかに鳴らす魔導蒸気機械に面白げに口元を歪め八重歯を煌かせるように構えを取り直す。
「いいっすねぇ! 燃えてきたっすよ! さぁ、恨みはないっすけど道を塞ぐなら押し通らさせてもらうっす!」

●蒸気魔導機械と嫉妬の間
 魔導蒸気機械の鋼の拳と女拳打師の鍛え上げられた鉄拳が幾度も交錯し拡がる衝撃に揺蕩う薄霧が吹き散らされるように揺らいでゆく。

●迷宮攻略
 ひと際大きく響いた轟音と共に魔導蒸気機関の稼働音が消えてゆく。圧し潰すように振り落とされた魔導蒸気機械の一撃を潜り抜け胴体へと鉄建を叩きこんだヨーコが、魔導蒸気機械の動力が止まり熱が失われていくことを感じ取り大きく息を吐く。
「よしっ、勝ったっすよ! 次はどこに行けばいいんすかね? まぁ、ちょっと休んでから考えればいいすよね!」

成功 🔵​🔵​🔴​

ワズラ・ウルスラグナ
さて、先ずは迷宮と言う望みが果たされたな
強敵との逢瀬は未だ先だが、既に戦いの内
楽しませて貰おう

望み通りならこの迷宮には二人の能力も色濃く反映されている筈だ
百聞は一見に如かず、どんなものか解り合えたなら善し
俺も出し惜しみせずに進もう

全て踏破したい、と言うのは残念だが諦めるとして
一応カウダとインヴィディアとの前哨戦として薄霧の迷宮へ進みたい
出し惜しみはしなくとも、出し切れるとも限らんからな…
取り敢えずは俺とサルヴァと戦獄を知って貰う為に『戦獄龍渾然』を用いる

二人に意識を割くのはそこまでだ
そこからはゴーレムとの戦闘に集中する
問題にならんと言われてはいたが敵は敵、本気で挑む
さあ、渇望の儘に殺し合おうか



●嫉妬あるいは渇望の迷宮
 時計の針を僅かに戻し新たな迷宮が旧校舎の一角に口を開いた直後。簡潔に必要な事のみを伝えた蒸気幽霊に獄炎の左腕を上げて応えた猟兵が迷宮へと歩みを進める。

●闘争への渇望
 戦獄を燃え盛らせ薄霧を照らし上げながら進み続けるワズラ・ウルスラグナ(戦獄龍・f00245)が、茫洋とだが確かに感じる何者かの視線に牙を剥くように口元を歪め闘争の気配に言葉を零す。
「先ずは迷宮と言う望みが果たされたな。……エイルマーから聞いた限りなかなか面白そうな区画が出来上がっているようだ。可能なら、全て踏破したいとも思うが…それは残念だが諦めることにするか」
 となると…やはりゴーレムだな、と望みを思い描いたワズラの周囲で薄霧が揺らぎズレるように周囲の雰囲気が変わる。
「……む? 強敵との逢瀬は未だ先だが、既に戦いの内ということか。ならば、楽しませて貰おう」

●蒸気魔導機械と嫉妬の間
 薄霧が満ちた静寂を突如として蒸気魔導機械の動作音が引き裂き、振り下ろされた鋼の拳と戦獄龍の燃え盛る剛腕が打ち合い迷宮が震える。

●おまえを知りたい
 燃え上がる黒焔が蒸気魔導機械を退けるように焼き尽くし周囲を照らし出す。突如として出現したゴーレムの一撃を躱しその胴体を右腕で貫いたワズラの目の前で、出現した時と同様にゴーレムが虚空へと消えてゆき……。その様子にワズラが足を止め、インヴィディアとカウダの能力を推し測るように首を捻る。
「望み通りならこの迷宮には二人の能力も色濃く反映されている筈だが…、転移系の能力か? いや、そうとは思えんな。まぁ、百聞は一見に如かず、迷宮を進むうちにどんなものか解り合えたなら善し。俺も出し惜しみせずに進むとしよう」
 パチリと戦獄の弾ける音で薄霧を揺らし、再びワズラが歩き始めてしばし後。
 熱気に炙られながらも晴れる事のない薄霧の中、カウダとインヴィディアとの前哨戦となる迷宮探索へと意識を深く向けたワズラが微かな違和感に足を止める。
「……ん? 誰かいるのか? 他の猟兵が追いついてきたには早い気がするが」
 直感に導かれるままに黄金の瞳が迷宮の一点に映し込み……、ぐにゃりと逆巻くように微かな人型を象った薄霧から二人分の声が響く。

『……ひっ、……ばれ、った!?』
【けっけっけ、よっぽど俺達が気になるらしいぜ?】

 その特徴的な掛け合いにそれが何かを理解したワズラが牙を剥くように笑いかける。
「おう、気になっているとも。……さて、折角の機会だ。出し惜しみをする気がなくとも、出し切れるとも限らんからな…取り敢えずは俺とサルヴァと戦獄を知って貰おうか」

「さぁ、戦獄よ。我が身を侵し、世界を蝕め」

●蒸気魔導機械と嫉妬の間
 燃え盛る黒焔を纏った戦獄龍の周りから薄霧が逃げるように薄れてゆき、新たな顕れた蒸気魔導機械へと吸い込まれてゆく。

●あなたが妬ましい
 甲高い音と共に噴き出された蒸気が熱気と共に渦巻いてゆく。伺うような視線の気配が消えた代わりに存在感を増してゆくゴーレムへと視線を合わせたワズラが、目の前で起きる現象に興味を抱く頭を切り替える。
「あの二人が何をしたのか気になるが、今はそれどころではないようだな。問題にならんと言われてはいたが……状況が変わったらしい」
 吸い込んだ薄霧の代わりとでもいうように噴き出され続ける蒸気がいかなる定理か凝縮され、白い焔のように激しく猛る。

―――ウォンッ!

 ゴーレムが響かせる稼働音を引き裂き蒸煙を纏った鋼拳がワズラへ迫り、猛る黒焔を噴き出すワズラの振るう龍の名を冠した武骨な巨剣がそれを迎えうち重い衝撃と共に周囲に焔と蒸気が満ちる。
 龍躯に響く衝撃にゴーレムが先ほどの個体とは全く別物であることを感じ取ったワズラの目の前で、蒸気で象られた焔がゴーレムの鋼鉄の身体を蝕むように濃度を増してゆく。

 相対する姿は黒焔の龍人と蒸焔の機兵。

 お互い引くことなく相手を叩き潰そうとする姿は巨獣の喰らい合いの如く、黒焔を散らし鋼片を飛び散らせる。
 その命を削り合うやり取りにワズラが牙を剥き新たな黒焔を沸き立たせ、応じるように蒸気機関を猛らせたゴーレムが蒸気と高熱を纏ってゆく。
「あぁ、素晴らしいな、我が敵よ。さぁ、渇望の儘に殺し合おうか」

●迷宮攻略
 迷宮を震わせていた轟音が途絶え蒸気が中空へと散ってゆく。ゴーレムの胴体を断ち潰したサルヴァを引き戻したワズラが、頽れたゴーレムが溶けるように消えていくのを見送りつつ言葉を零し。
「ふむ……、あのゴーレムが纏っていた蒸気。俺の戦獄に似ているように思えたが…さて。まぁ、構わん。あの二人に直接聞けばいいことだしな」
 薄霧の消え去った迷宮が露にした深部への道を期待を込めた足取りで進んでゆく。

成功 🔵​🔵​🔴​


●嫉妬の艶尾
 薄霧の奥から響く慌ただしい足音が、躓く軽い音と共に途絶え……ガンッという音と滑るような擦れる音が代わりに迷宮主の間を彩る。

『…つぅ……!! あ、ぁぁ!!? ……い、いっ、たっあぁぁ!?』
【クック、あの調子ならすぐにきそうだよなぁ。まぁ、あせんなよ?】

 未来の為に過去に会いに来るんだぜ?と僅かに真剣な色を覗かせた尻尾型の魔導具の言葉に、派手に転んだ黒髪の少女が服についた汚れをを払いながら立ち上がり……首肯する。そうして、黒色の瞳が迷宮主の間を塞ぐ大扉に向けられ。

『わ、…かってる。………で…も、逃げる…っかも』
【……。まぁ、なんにせよ手伝ってやるよ。我が契約者殿】


第3章 ボス戦 『『罪の影姫』カウダ・インヴィディア』

POW   :    嫉妬の艶尾(……っ!? す、少し…あっ!?)
合計でレベル㎥までの、実物を模した偽物を作る。造りは荒いが【嫉妬を感じた対象】を作った場合のみ極めて精巧になる。
SPD   :    嫉妬の艶尾(……ひっ!? うぅ…助けっ!?)
【揶揄うような尻尾を模した魔導具の声に従い】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    嫉妬の艶尾(……む、無理! お、お願いっ!)
自身の【身体の支配権】を代償に、【尻尾を模した魔導具に宿る意志】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【あらゆるものを遷移させる権能】で戦う。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠茲乃摘・七曜です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●『罪の影姫』カウダ・インヴィディア
 迷宮主の前向け探索を続ける猟兵達や新たに訪れた猟兵達にエイルマーの声が届く。これまでの迷宮攻略の感謝を伝える言葉に続き迷宮主の間の正確な位置が伝えられ迷宮主に関しての様々なことが伝えられていく。

 迷宮主の間に居るのは、カウダ・インヴィディア。嫉妬の名前を冠する少女と尻尾型の魔導具。魔導実験の被験者が災魔になったそんな相手…なのだけど呼び込んでもらうことからお願いした人には二回目の説明になるかもしれない。

 特徴としては……、ちょっと戦闘に関係ない部分だけど激しく人見知りだ。だから、インヴィディア自体は直接的な攻撃は不得手でカウダがいろいろと補助する形になるね。能力の特徴からインヴィディアと直接矛を交え可能性は低いけど、それに関してはこの後に説明させてもらおうと思う。

 まず、カウダ・インヴィディアの能力は尻尾型の魔導具を中心にあらゆるものを遷移させてゆく能力。使い方で見た目の効果は変わるけれど根幹にあるのはこれになる。
 遷移とだけいうとわかりにくいと思うから具体的にいくつか例を挙げると…炎が燃えていたとして、その熱を別の場所に移動させて目の前の温度を上げる。だたし、その代わりに炎の温度は下がる。とか、炎自体を別の場所に移すとかかな。事象自体を変化させる能力と思ってもらえれば分かりやすいかもしれない。ただ、この能力は現在だけを対象としているわけではなくて未来の可能性を現在に持ち込むような使い方もできるから留意していてほしい。とはいえ、この遷移させる能力はインヴィディアとカウダへの負担も大きいようだから二人を正面から打ち破る必要がないことは覚えていてほしいと思う。

 続けて、カウダ・インヴィディアの戦闘方法…戦い方と言っていいのかあれな部分はあるけれどこちらへの対応は主に三つになる。
 一つ目は、未来からの遷移。インヴィディアが嫉妬したもののさらに先を創り出される形になる。創られるのはほぼ確実に相対した相手の似姿……つまりインヴィディアが嫉妬したあなた自身を打ち破ることが必要になる。特に嫉妬された部分は強化される形になるから気をつけて欲しい。あと、この嫉妬の影を倒せればインヴィディア達を十分に消耗させられる。
 二つ目は、現在の遷移。と仰々しくいっても、カウダの補佐する全力で逃走するインヴィディアを追いかけるだけになる。カウダの声に従いインヴィディアが逃げるだけなのだけど迷宮主の間がインヴィディアの望むように変化する事とカウダが声に従えば攻撃等を避けられるように周囲を変化させることによって捕まえるのはほぼ不可能と思われる。ただ、全力で追いかけっこをしていれば十分にインヴィディアは消耗するから目的は果たせると思う。
 三つ目に関しては、カウダがインヴィディアの代わりに戦うことになる。個人的にはあまりお勧めできないけれどうまくいけば大きく二人を消耗させることが出来るかもしれない。戦い方としては、遷移を用いた相殺と吸収。護りを突破するのはかなり厳しいかもしれないけれど、戦いを継続するだけでも相手は消耗することになるから十分に意味はある。

 あと、カウダ……尻尾型の魔導具の本体はインヴィディアの背骨と同化しているらしい。身体の外に見える部分は端末のような部分になるようだ。

●嫉妬の艶尾
 薄霧に満ちた迷宮主の間に一瞬の静寂が満ちる。覚悟を決めた表情の嫉妬を冠する黒髪の少女が封印の役割を兼ねた大扉をその瞳に映し……クルリと踵を返す。クツクツと笑う声を上げる尻尾型の魔導具の声が響き、薄霧が揺らぐとともにどこからともなく椅子が顕れ、その椅子に腰を落ち着けた黒髪の女が瞳を閉じて呼吸を落ち着けてゆく。
トレイシー・ライト(サポート)
「……また事件、か。さて、どうしたものかな」
 あまり積極的に解決に意気込みを見せず、「なんとなく気になった」という理由で首を突っ込みに現れます。
 冷めた性格ですが、比較的真面目で正攻法を好みます。他の猟兵に迷惑をかけること、飲酒喫煙・公序良俗に反することはしません。
 戦闘においては、基本的には魔法を用いて遠隔攻撃を行います。前衛がおらず距離を詰められるなど、やむを得ない場合は、ドラゴンランス【ポレドラ】等を用いて接近戦も行います。
「たとえ事情があったとしても、あんたがオブリビオンである以上、倒さなきゃいけないんだよね」
「さて、俺の仕事は終わりだな」



●旧校舎の新造迷宮
 アルダワ魔法学園の地下深く無人の旧校舎へと転送された猟兵が、静かに佇む校舎群を抜け目的地である迷宮へと向けて歩いてゆく。

●嫉妬の迷宮
 幾度も繕った形跡のある丁寧に使われてきた雰囲気の服の上に魔法使いらしい黒いローブを纏ったトレイシー・ライト(スターシーカー・f05807)が、気怠げな雰囲気で頭上を見上げ深く息を吐き出す。
 何故か明るく遠くまで見渡せる岩の天井に空がないことに僅かながら感じる安堵の感情を表に出すことなく、進む先には迷宮が拡げる暗い入口。その入口から僅かに離れて周囲を見渡す身体を透けさせた蒸気幽霊の男――エイルマーにトレイシーが確認するように声を掛ける。

「……また事件、か。さて、どうしたものかな。聞いた限り、迷宮主の能力も結構厄介そうだよな」
『いつも、猟兵の皆さんにはお手数かけていて申し訳ないね。まだ気になることがあるかい?』

 いや…必要なことは聞いた、と青と紫の双眸を思案するように少しの間、閉じていたトレイシーが答えて、エイルマーのことを振り返ることなく迷宮の暗がりへと消えてゆく。

●嫉妬を冠するモノ
 迷宮を最奥を目指し他の猟兵が残した痕跡を辿り進む星に手を伸ばす人狼の目の前に迷宮主の間を封じる大扉が現れる。

●無関心という名の関心
 大扉の開く重く響き渡る音が薄霧へと溶け込んでゆく。視界を遮る白霧の幕に聞いた話を思い返したトレイシーが迷宮主を探すのに手間が掛かりそうだと嘆息しかけ、部屋の中央付近で椅子から立ち上がり後ずさすように腰の引けた影――インヴィディアとカウダの姿を捉える。

「あんたたちが迷宮主だよね? てっきり部屋の中を逃げているものだと思っていたんだけど」
『……に、逃げれっ、なかったっ…』
【いやぁ、理屈は不明だけどよ。奥は行き止まりになっちまっててな?】

 今にも逃げ出そうとするインヴィディアの声と現状を楽しむようなカウダの声に状況を理解したトレイシーが、拮抗を崩さないように大扉を閉め自身の為すべきことを一人と一つたる迷宮主に伝える。

「そうか。さて、聞いた通りあまり戦闘には意欲的ではないみたいだけど……。あんたがオブリビオンである以上、倒さなきゃいけないんだよね」
『………っ! ………っっ!』
【だよな! まぁ、在り方の違いだろ? 遠慮する必要はねぇさ】

 トレイシーの言葉にインヴィディアが脱兎のごとく逃走を開始し、滑らかに抜き放たれた拳銃から響く幾重にも重なる銃声に逃げる先を誘導するカウダの声が重なる。そうして、満月の名を付けられた無骨な凶器が吐き出した薬莢の数と同じだけの火花が散り……僅か後。
 銃撃を隠れ蓑に投擲した小さな針の煌めきを薄霧越しに視認したトレイシーが、榛の木で作られたちょっとおしゃれな魔法の杖を引き抜きバヂリと空気が帯電し悲鳴を上げる。

「雷光は疾り、ただ一つへと至る」
『……ひっ…うっ!?』
【あー、こりゃ…本気で逃げねぇとやべぇな!】

 始めに奔ったのは数条の雷。迷宮主の間を明るく照らす雷光が過たず針を穿ち…周囲を白く染め上げ照らし出す。その瞬刻の白光に照らし出されたインヴィディアとカウダの姿が薄霧に影を刻みながら浮かび上がる。

「……捉えた。汝、逃れること能わず!」

●嫉妬を冠するモノ
 星に手を伸ばす人狼の放つ雷が迷宮主の間を縦横に奔りに嫉妬たる少女が揺れる尻尾に導かれるままに逃げ惑う。

●『罪の影姫』カウダ・インヴィディア
 弾けるような閃光と轟音がやみ次第に静寂が訪れる。薄霧が雷撃に散らされトレイシーの目の前に拡がるのは迷宮主の間の現状。
 床や壁…天井の至る所から障害物が生み出され混沌とした様子になった状況にインヴィディア達を追いかけるのは不可能と結論付けたトレイシーが踵を返す。

「逃げられたか…、だが深追いは危険だろう。なら、俺の仕事は終わりだな」

成功 🔵​🔵​🔴​


●嫉妬の艶尾
 不揃いな石柱が乱立する迷宮主の間が元の姿を取り戻してゆき、白雷の残滓が薄霧の中へと消えてゆく。静寂を取り戻そうとする空間に荒く吐き出される呼気が響き渡り、少し草臥れた雰囲気を漂わせる黒髪の少女がゆらゆらと楽し気に揺れる黒い尻尾に恨めし気な視線を向ける。
神樹・桜花(サポート)
性質:如何なる時も微笑を浮かべ、或いは無表情で、淡々としている。たとえ肉の身を切り裂かれようとも理性的に振る舞う。
基本的に効率を重視しているが、倫理的に問題のある行動はなるべく避ける(それ以外に選択肢が無い場合はその限りではない)。


設定したUCを状況に応じて使用する



●旧校舎の新造迷宮
 静かな時間の流れる旧校舎の一角に昏い光が立ち上り新たな猟兵が転送されてくる。そうして、僅かな時間を挟み嫋やかな足音が目的に地に向け響き始める。

●嫉妬の迷宮
 枝桜が華やかな和装に邪神を相手取る組織の職員が着用する白衣を肩から羽織った神樹・桜花(神桜の一振り・f01584)が、柔和な表情を浮かべる白皙の美貌で瞳を閉じたままに周囲を見渡す。
 瞳を閉じたままにもかかわらず、いかにしてか依頼主であり旧校舎の一角を管理する蒸気幽霊の男――エイルマーの居場所を捉えた桜花が古式ゆかしい令嬢のようなきれいな所作で頭を下げる。

「呼ばれて参りました。神樹・桜花といいます。あなたが此処の管理者であっていますか?」
『あぁ、間違いないよ。知っているかもしれないけどエイルマーと呼ばれている』

 場を凛とさせるような雅な所作を見せた桜花がエイルマーから返った言葉に頭を上げ、瞳を閉ざした嫋やかな微笑のまま桜花が僅かに首をかしげて言葉を紡ぐ。

「上層の迷宮に入ったことはありませんが…、迷宮を踏破した先に旧校舎と他の迷宮なのですね。此方の世界は初めてですがなかなかに不思議な場所のようです」
『ふむ…。今は存在しないけれど、ここは大魔王を封印するために迷宮が発生したような場所だから初見だと面白いかもしれないね』

 なるほど…そのような理由でしたか、と桜花が微笑みを得心したように変化させ……エイルマーへと別れを告げて迷宮の入口へを目指して踵を返す。

「それでは、迷宮主を退治に参りましょう」

●嫉妬を冠するモノ
 薄霧の中を進む桜に染まる太刀の現身に湛えられていた微笑みが抜け落ちるように消え去り黄金色の双眸が迷宮を映しこむ。

●無尽錬成・神桜一振
 背後で閉まる大扉が迷宮主の間の空気を僅かに揺らす。白霧に隔てられつつ腰が引けた様子で視線を合わせてくるインヴィディアに、表情を動かすことなく腰に佩いた太刀を桜花が引き抜き……、周囲に桜色の燐光が溢れ出し散りゆく桜の花弁を創り出す。

「災魔となり果てて仕舞ったのなら、一刻も早く狩るのみでしょう。是非もありません」
『……っ! てっ、抵抗は…する!』
【その曲がらなさはいいねぇ。羨ましいんじゃないか? 我が契約者殿】

 インヴィディアとカウダの返答を聞くよりも早く踏み込んだ桜花の振るった太刀が桜色の軌跡を残し中空を奔り、ガキンと重い音を響かせながら迷宮主の間から創り出されたとおぼしき石柱に遮られ動きが止まり…。

「………ッ!」

 太刀から響く衝撃に手首を返し踏み込みの力を流すように操った桜花が鋭く呼気を吐き出しながら石柱を切り飛ばす。
 そうして、太刀を振りぬいた残心の姿勢から霞の構えを取った桜花の周囲にゆらりと虚空から抜きはなられたかのように幾本もの桜色を纏った太刀が現れる。

「なるほど。周囲すべてが操れる訳ですね。……ならば私の刃、凌ぎ切れますか?」

 タンと言葉と共に身体を舞わせた桜花を追い越すように幾本もの太刀が奔り、インヴィディアとカウダへと襲い掛かってゆく。

●嫉妬を冠するモノ
 幻影の太刀が迫り出した石柱にあたり砕け桜色を散らし桜に染まる太刀の現身の操る実体の太刀が嫉妬を冠する少女へと迫る。

●『罪の影姫』カウダ・インヴィディア
 駆ける音が石壁に遮られた薄霧の向こうへと消えてゆく。砕けた幻影の太刀が舞わせる桜の花弁と切り裂かれ飛び散った石柱の破片に彩られた桜花が、桜色の太刀の軌跡をずらし逃走せしめた迷宮主を追うのをやめ言葉を零し。

「逃げられたようですね。相手に能力は十分使わせたと思いますから帰ることに致しましょう」

 僅かばかりの間、迷宮主の気配を探っていた桜花が黄金色の双眸を閉じ来た道を脳裏に思い返しながら出口へと向かい移動を始める。

成功 🔵​🔵​🔴​


●嫉妬の艶尾
 切り裂かれ倒壊した石柱が巻き戻るように迷宮主の間へと取り込まれてゆき、粗く乱れた呼吸音が聞こえてくる。身体に付着した石片や砂ぼこりを払う気力もなく、疲労困憊といった状態の少女に黒い尻尾がゆらゆらとゆれながらねぎらいの言葉を掛ける。
吉柳・祥華(サポート)
『妾の存在意義とは何ぞや?何ゆえに此処に在るのかぇ?』

旧き時代に祀られていた龍の化身で在ったが
護るべき国は民は既に無いのに何故…自身が現世の『神』として顕現したのかを思案と模索する戦巫女

物腰は柔らかく絶えず微笑を湛える優美な女性であるが
過去の出来事から人(他人)に対しては意外に辛辣…
優美に微笑を浮かべるが実は目が笑っていない

ユーベルは指定した物をどれでも使用
その辺はMSの采配に任せます(意外な使い方とか参考になるから)

基本、他の猟兵に迷惑をかける行為はしないが
必要なら悪乗りはする流れ(他の猟兵と同意と言う設定で)
まぁ…流石に依頼の成功の為と言えど公序良俗に反する行動はNG

連携アドリブ等はお任せ



●旧校舎の新造迷宮
 薄く漂う白霧を揺らめかせ纏うかのように進んでゆく猟兵が、次第に深さを増してゆく霧に迷うことなく迷宮主の間を隔てる大扉に辿り着く。

●嫉妬の迷宮
 白鱗を彷彿とさせる柄の白い着物を纏った吉柳・祥華(吉祥天龍・f17147)が、帯に袂に誂えられた祭具のような黄金色を揺らしながら目の前に聳える大扉に手を掛ける。

「なにやら奇怪な災魔のようじゃが、なにの為に存在しておるのやら。まぁ、それを言えば妾も同じよのぉ。………妾の存在意義とは何ぞや? 何ゆえに此処に在るのかぇ?」

 言葉の後ろ半分は思想に耽るかのように声を小さくさせつつ、護るべき国も民も既に無いというのにのぅと、祥華の思考が常のように現世に神として再臨した己自身の理由への模索に向きかけ……迷宮主の間から漏れ出たさらに色濃い白霧の冷たさがそれを断ち切る。

●嫉妬を冠するモノ
 龍の化身たる巫女に絶えず湛えられた微笑が嫉妬や恨みの篭る鬼女の面に隠され、するりと袂から引き抜かれた扇が優雅に軌跡を刻む。

●祀られるモノ
 渦巻く様な白霧に黄金色と鮮やかな赤が軌跡を刻む。般若の面から覗く冷徹な翡翠色の瞳が、明らかに目を泳がせ鬼面を直視しないように怯えるインヴィディアを捕らえ、パシリと開かれた扇の音に重なるように紡がれ始めようとした祥華の声に揶揄するような声が重なる。

「……日ノ」
【よぅ。そりゃ、あんた自身が器だったからじゃねぇの? なくなればそこで終わりってもんじゃねぇだろうしよ】
『……うっ、かっ…過去は、痕っ…跡を……遺し…託す……もっ…の』

 続きかけられた嫉妬を冠する少女の声に呟きを拾われていたようじゃのぅと、祥華が僅かに思考を廻し迷宮主が己の技の範囲から即座に逃げるのは不可能と判断しパチリと扇を閉じる。

「ふむ、おぬし…いや、おぬしらかぇ? なるほど、確かに妾は神じゃからのぅ。護るべき国や民が遺した何かから妾を祀る存在がどこかに出来ていても不思議ではないの」
『ひっ、人は……届か……ない、何か…を……神に……託し…遺、す』
【そういうこった、人も国も死んだ程度、なくなった程度で消えるほど往生際がいいもんじゃねぇよなぁ】

 嘲るように真摯に、嫉むように羨望する魔導具と少女の声に扇子を頤に当てた祥華が、考えを纏めるように言葉を零してゆく。

「妾が再臨しておるのは……まぁ、事実じゃ。それを今も残る信仰の残滓で妾という器が満たされたと仮定するのはなかなか新鮮ではあるの」

 そこで検証するかのように瞳を閉じた祥華が、数瞬を刻み息を吐き出し。

「ふぅむ……。逆説から組み立てた仮説ではあるが、一考には値する程度の面白さは認めるところじゃ。今の世界に何か遺っておるものがあるかもしれないというのも浪漫があるしの……ぅ?」

 再び瞳を開いた先には渦巻く……白霧。……空白。……逃走。
 般若の面から覗く瞳が細く眇められ、自然な所作で取り出され振るわれる扇が無数の桜の花びらを周囲に散らす。

「日ノ本の~           
        久遠の如し~    
   揺蕩う桜~   
 夢幻へと~    誘い死~」

●嫉妬を冠するモノ
 鋭利な輝きを魅せる桜華が薄霧を切り裂き、龍の化身たる巫女の舞にあわせるように周囲を舞い廻り艶やかに散ってゆく。

●『罪の影姫』カウダ・インヴィディア
 白霧を彩り舞う桜色が透けながら迷宮の床へと降ってゆく。桜華と共に優雅に舞踊を舞っていた祥華が、その動きをとめ般若の面を取り外す。
 如何なる手段か己の知覚範囲から逃げ切ったインヴィディアとカウダに変らぬ嫋やかな微笑を魅せる祥華が、あきれとも称賛ともつかない声を零す。

「これはやられたのぅ。聞いていた通りとはいえ逃げることに関して少々思い切りが良すぎじゃな。まぁ、よかろ。依頼は果たせているじゃろうしの」

成功 🔵​🔵​🔴​


●嫉妬の艶尾
 白霧が吹き散らかされるように大きく迷宮主の間の形が変わり、幾重にも折りたたまれるかののように構築されていた壁が崩れるように溶けてゆく。身に迫った華刃を思い出し身を震わせる黒髪の少女に艶やかな尻尾が揶揄うように労わりの言葉を掛ける。
クレア・フォースフェンサー
その若さで亡くなった……そんな少女の心と身体とともに世界の敵として生み出されるとは、何とも不憫なことじゃな
わしにできるのは、痛みなく骸の海に還してやるか、一か八か、おぬしをオブリビオンたらしめている核を斬ってみることくらいかのう

ところで、おぬしはこれからどうしたいのじゃ?
それによっては、この場にわしなど不要かもしれぬ

おぬしには事象を遷移させる力があると聞く
ならば、おぬし自身をオブリビオンとなる前の存在に遷移させることもできそうじゃのう

それと、嫉妬したものと同等以上の存在も生み出せるとの話じゃ
かつての自分に嫉妬するならば、自らの身体をそのように作り変えることはできぬのかのう?



●旧校舎の新造迷宮
 薄霧に沈む迷宮の中を時折考え込むようなしぐさを見せながら進む猟兵が、白霧の回廊を通り抜け迷宮主の間を封じる大扉を備えた部屋へと辿り着く。

●少女への憐情
 黒鉄の輝きを魅せる留め金で軍服のようにも見える白の上着を羽織るように纏ったクレア・フォースフェンサー(UDCエージェント・f09175)が、管理者たる蒸気幽霊から聞いた迷宮主の生い立ちを思い起こしながら言葉を零す。

「ふむ、若い身空でなくなったうえに世界の敵として生み出されるとはなんとも不憫なことじゃな。まぁ、魔導具の被験体の件が強要された訳ではないというのはせめてもの救いかも知れぬがの」

 さて…いきなり襲い掛かってくる手合いではないようじゃしな、と一瞬視線を落とした光剣の柄に手を掛けることなくクレアが迷宮主の間の中へと足を進めてゆく。

●嫉妬を冠するモノ
 怪異を断ち貫く作られし人型の軍靴が迷宮主の間の床を踏み鳴らし、黄金色の瞳におどおどした様子の嫉妬を冠する少女と魔導具の姿が映り込む。

●過去への嫉妬あるいは死者への……
 高く鋭く響く足音が白霧に呑まれるように溶けてゆく。警戒する様に重心が後ろに下がった……正確に言えば、明らかに腰の引けた黒髪の少女――インヴィディアを安心させるように武器を持たない両手を振って見せたクレアが近づきすぎないように足を止め、声を掛ける。

「まずは話さんかの? おぬし…、おぬしらもそう戦いを好む手合いではなかろう」
『……うっ、……な、な…に?』
【つっても、閉じ込められてる身だからなぁ? はっはっ、冗談だ。我が契約者殿に従うぜ?】

 わざとらしく闘争をほのめかす艶やかな尻尾――カウダが、インヴィディアの微かな動きに言葉を取り消し、クレアの態度に逃げの姿勢をやめたインヴィディアが姿勢を正す。

「まず、わしにできるのは痛みなく骸の海に還してやるか……、待て。いきなり襲い掛かりはせぬから、あからさまに逃げようとせんでくれぬか?」
【わりぃな。どうにも人見知りでなぁ。斬られるにしてもいきなり近づかれるってのを想像するだけで腰が引けるんだわ。まぁ、足止めしといてやるから好きにしゃべるといいぜ】
『………っっ!! や……えっ!?』

 するりと音もなくカウダの外部端末たる艶尾が蠢き、インヴィディアの足首を拘束しながら迷宮の床へと突き刺さり、少女の悲鳴が上がる。その様子に困惑するように瞳を瞬かせたクレアが、気を取り直して言葉の続きを語りだす。

「なんじゃったかの。…そう、あとわしができるのは一か八か、おぬしを災魔たらしめている核を斬ってみることくらいじゃ。して、改めて聞くのじゃがおぬしらはこれからどうしたいのじゃ?」
【特にねぇなぁ。我が契約者殿を揶揄えればそれでいいしな。斬られるのは御免だがよ】
『………な…ぃ? ……あ、そっ…うい、…えば』

 足首の拘束を解こうと悪戦苦闘するインヴィディアが、似たような境遇にあった義姉妹の現状を僅かに心配する言葉を小さな声で薄く微笑みながら詰まり気味に零し。その様子にならば…こういうことはできんかの、とクレアが新たな提案を示す。

「なるほどの。では、おぬしらには事象を遷移させる力があると聞く。その能力でおぬしらをオブリビオンとなる前の存在に遷移させれば自由になることもできるのではないかの?」
『……それ、は……む、無理。死因は……、拒絶…反応……だったし……』
【足りない部分を補足すると、あんたの提案は的を射ているんだが……だからこそ無理なんだよ。死者蘇生は人間の叶わぬ夢ってやつだな】

 過去を嗤うようにカウダが語るのは死者との再会を目指し創られた己の在り様とそこに辿り着かなかった失敗作という事実。まぁ…俺自身に取っちゃどうでもいいけどな、と嘲い言葉を締めくくる。
 特徴的な二人の語り口にも慣れてきたクレアが、言葉足らずな部分や含みを持たせたままの言葉の意味を推し測り…、インヴィディアを見つめて語りかける。

「では生き返るのは無理としてもかつての自分に嫉妬するならば、被験体になる前の身体に自らを戻すことはできぬのかのう?」
『……ん。い、今の……。今の私も死ぬ前の私も幸せだし、楽しい。被験体になったことは自分の意思で、私はもう私達』
【………】

 息を整えこれまでとは比べ物にならない程、流麗にインヴィディアが語り…対照的にカウダが黙り込む。過去の自身に嫉妬することはないというその姿に、クレアがやれやれ、と息を吐き出す。

「この場にわしは不要のようじゃのう。無理に戦うつもりもない故、このまま帰るとするかの」
『……あ、…なら……おっ…送る』
【酔ったら文句は、我が契約者殿に言ってくれよ?】

 聞こえた言葉に疑問符を浮かべたクレアの視界がぐにゃりと溶け、不思議な浮遊感がその身を包み込む。

●嫉妬を冠するモノ
 揺らぎ歪むように怪異を断ち貫く作られし人型の姿が虚空に飲み込まれるように消えてゆき、それを送る嫉妬を冠する少女の手と艶やかな尻尾が微かに振られる。

●『罪の影姫』カウダ・インヴィディア
 ザリッと軍靴が砂を踏み緩やかに流れる風が頬を撫でる。心配そうな様子で近づいてくる蒸気幽霊の姿を認めたクレアが自身の状況を把握し肩に張っていた力を抜く。
「どうやってか、地上まで送られたようじゃな。……骸の海に還るときも幸せであることを願っておこうかのぅ」

成功 🔵​🔵​🔴​


●嫉妬の艶尾
 虚空に呑まれるように渦巻いていた白霧が巻き戻りながら周囲へと拡散してゆき、猟兵が去った迷宮主の間に黒髪の少女と艶やかな尻尾の声が響く。

『あっ、……挨、拶っ…忘れ…てた。あと……だ、…大丈、…夫…かっ……な?』
【まぁ、場所程度しかいじってねぇしな。問題ねぇだろうよ】
『な、な…ら……よか……った』
【それよりも、次を心配すべきだと思うがなぁ】

 魔導具の意地悪く揶揄うような言葉に、今の状況を思い出したかのように黒髪の少女が慌てだし……ドタバタとした騒音が迷宮主の間で巻き起こり、程なくして溶けて消えてゆく。
ワズラ・ウルスラグナ
嫉妬は善い。
他者の価値を見出し羨めるのは才覚の一種だ。
己の不足を自覚する事もな。

まずは対話だ
怯えさせん様に留意を
可能なら語らいたい
彼我の事と、俺の左腕を捧げた敵の事とかを

求めるのは最高の戦、即ち最大級の嫉妬だ
何を妬み、何を羨む
俺はその嫉妬が満たされることを望む
故に、その可能性が未来にあるのなら、その顕現を此処に願う
俺はそれに嫉妬し、それを討ち果たし、俺こそが嫉妬の対象だと証明したい
理想も嫉妬も強い程に、我が戦獄は迸る
嫌が応にも、俺を羨んで貰うぞ、我が敵よ

嫉妬の名を冠しながら幸せだと言い切り
偏移の力を持つも死後も変わらず二人でいる
俺はカウダとインヴィディアが、心底羨ましい
微笑ましく思うくらいにな



●旧校舎の新造迷宮
 周囲を照らしていた黒い焔を衰えさせ隻腕の龍躯を白霧に晒した猟兵が、僅かな思案ののち迷宮主の間を封じる大扉を押し開きその中へと消えてゆく。

●嫉妬との対峙
 予想に違わず溶け込むように身を引こうとするインヴィディアとカウダを視界に収めたワズラ・ウルスラグナ(戦獄龍・f00245)が、なるべく刺激をしない様にと声を発する。

「……、他者の価値を見出し羨めるのは才覚の一種だ。己の不足を自覚することもな」
「つまりは、だ。嫉妬は善い。加えていえば憂鬱もな」

 まずは対話を試みようとしたワズラの言葉の隙をついて逃げようとしていたインヴィディアの動きが止まる。滑らかに動いていた艶尾が何かに気が付きピクリと固まり、響きかけていた声が呵々大笑の響きへと変わる。

【おいおい、マジかよ! いい感じに狂ってるな! なぁ? 我が契約者殿】
『……さ、流石に……それ…っは、……し、失礼…』

 笑い震えるカウダを咎めるように窘めたインヴィディアが、僅かに脅えが抜けた瞳でワズラの砕けた左腕を見つめ真意を問うように言葉を零す。

『……で、あ…貴方の…用っ、事は…なに?』
【久しぶりに笑って、気分がいいから聞いてやるぜ?】
「ならば、メランコリアとコルの事から話すとしよう」

 それと…お前達のことがぜひとも聞きたい、と迷宮主の間の床に腰を下ろしたワズラが出逢った過去に想いを馳せながら口を開く。

●過去に生きたモノ
 遊戯盤での勝負、語らい……そして、命を懸けた死闘と終わり。戦獄龍が憂鬱の少女との出来事を語り、嫉妬の少女が生きていた過去を懐かしむようにポツリポツリとそれに応え…艶尾の魔導具が楽し気に揺れる。

●誰がための嫉妬、何がための羨望
 薄霧を揺らす声が途絶え静寂が辺りを白く包み込む。その雰囲気に語らいの時間が終わったことを感じ取ったワズラが、嫉妬を冠するにはあまりにも満たされた様子のインヴィディアとカウダを心の底から羨ましく感じつつ、ここに来た目的であり自身の望みでもある言葉を紡ぐ。

「俺が求めるのは最高の戦、即ち最大級の嫉妬だ。俺はその嫉妬が満たされることを望む」
「故に、その可能性が未来にあるのなら、その顕現を此処に願う。俺はそれに嫉妬し、それを討ち果たし、俺こそが嫉妬の対象だと証明したい」
『そ…っの、心…の在り方…は、…確…かに妬ま……しい。……任せ…たよ、私のカウダ』
【おぅ、任された。遠慮はいらない好きなだけ渇望に溺れるといい。だよなぁ、俺のインヴィディア】

 グルリと渦巻いた白霧が暗く染まり迷宮主の間が高温に炙られてゆく。そうして僅か後、対峙するのは黒く燃え盛る二人の龍人。

「心配無用だ。理想も嫉妬も強い程に、我が戦獄は迸る。嫌が応にも、俺を羨んで貰うぞ、我が敵よ」

 応じるように渇望の顕現が牙を向き、インヴィディアとカウダが視線を寄越すなか合図もなく二つの影が交わり熱波で迷宮主の間が震える。

●戦獄龍気焔
 昂揚を魅せつけるかの如く爆炎が衝撃を撒き散らす。振るわれる剛剣が纏った黒焔を散らし打ち合い、鏡写しのような攻撃的な笑みが互いの表情を彩る。別たれた己と対峙できるなど期待しない訳がない。楽しくない訳がない。

 ――あぁ、かつて裂かれた右目が滾る。
 ――あぁ、かつて砕かれた左腕が猛る。

 対峙する黒焔の龍人の咆哮がその身に滾る意思をこれ以上ないほどに見せつけ、雷状に変化した戦獄の焔が周囲を焼き…、己の知る己の知らない技が己自身の護りを越えて龍躯を穿つ。

 ――あぁ、この龍躯を突き破る一撃が好ましい
 ――あぁ、この右腕に返る骨砕き肉潰す反動が素晴らしい

 言葉もなく重なる思考に攻撃が言葉を交わすように加速し…。喰いあうように退くことなく剛撃がぶつかり合い、零れる命すらも弾けさせて戦獄が互いを焼く。

〔「オォォォ!」〕

 多くの戦いを経験した未来の己が自身よりも強いならば砕けばよい。
 多くの可能性を内包した過去の己が自身に届きうるならば砕けばよい。

 本能と理性が意志によって焼き払われ…、過去も現在も未来も変わらず望むのは最高の戦い。戦い果てる以上に望むものなどないと響く咆哮が、重なり合い願いを響き渡らせる。

●未来に求めるモノ
 己の在り方を証明せんと猛る戦獄龍の一撃と望みを満たした渇望の龍人の一撃が、喰らい合うかの如くお互いを鍛え上げるかのようにその身を穿ちぬいてゆく。

●『罪の影姫』カウダ・インヴィディア
 砕けた龍鱗が黒焔へとほどけつつ迷宮主の間に散ってゆく。白霧から生み出された嫉妬の影が解けて溶けさり、満身創痍のワズラが血のように戦獄を零しながら観戦していた二人へと声を掛ける。

「……、越えたぞ。我が敵よ。さぁ、嫉妬の名を冠しながら幸せだと言い切り…、偏移の力を持つも死後も変わらず二人でいる。お前達を嫉妬させたい」

 語る以上の多くが籠められた言葉にインヴィディアとカウダの感嘆の声が応じる。

『……少し…、貴…方が、分かっ…た気は、する。ねぇ、私のカウダ?』
【面白いものを見せてもらった礼にいいことを教えてやろう。なぁ、俺のインヴィディア】

 それは僅かな前、言葉を交わした時にははぐらかされた問いの答え。

【コルのやつも含めて俺達は目的をもって作られたが……、それよりも満たすべきは使用者の幸せなんだよ】
『…私は、羨んでた、自由を。嫉んでいた、友好を。足りないものに嫉妬して……でも、満たされた』

 その言葉の意味を推し測ろうとしたワズラの龍躯がぐらりと傾ぎ、床へと倒れ込もうとする僅かな時間にその身が揺らぎ迷宮主の間に静寂が訪れる。

成功 🔵​🔵​🔴​


●嫉妬の艶尾
 隻腕の龍人が虚空に呑まれるように消えてゆき、猟兵が去った空白に白霧が満ち始めてゆく。そうして、元の静寂を取り戻した迷宮主の間で黒髪の少女と艶やかな尻尾の声が響く。

『…久し…ぶりに、…昔を…おっ、思い出した……。カウダに…会う…っ前の……事』
【そーかよ。まぁ、あそこまで自分の願いに生きてるのは珍しいかもなぁ】
『……ん? カウダ……なんか……あった? ちょっと…、変な感じ』
【いいや? だが…まぁ、次の機会があんなら俺達として相手してやろうってな?】

 魔導具の言葉に、ビクッと黒髪の少女が反応し……その様子に含み笑うような声に揶揄われたと気が付いた少女がほっと息を吐くも迫る戦いの気配に瞳に力を込める。
アレクシア・アークライト
演技……じゃないわよね
生前に関係なく、オブリビオンは世界に対する悪意を持って生まれるって聞いていたけど、貴方達は違うみたい
それとも、これからそうなっていくのかしら?

もっとも、貴方達が何を考えているのかなんて関係ない
貴方達は存在するだけでこの世界を破壊に導く、ウイルスのような存在
抗体である私達は、ただ骸の海に還すだけよ

――貴方達も私達もウイルスや抗体のように意思なんて持っていなければ、互いに楽だったかもしれないわね

さて、私自身が相手なら最初から本気で行くわ
力場を全開にして全てを叩き潰す

向こうの私は御主人様を守りながら戦わなくちゃいけない
でもこっちは、周りのことなんて気にせずに力が出せるわよ



●旧校舎の新造迷宮
 幾分か薄れた白霧に満たされた迷宮の最下層に転送された猟兵が、飾り気のない外壁に視線を彷徨わせながら慎重に進み迷宮主の間へと繋がる大部屋へと辿り着く。

●世界を害する悪意
 薄霧の先に部屋の端を覗かせる最奥の部屋へと身を進めたアレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)が、聞いていた話とは違い落ち着いた雰囲気を見せるインヴィディアとカウダに僅かな疑問を抱きながらも声を掛ける。

「はじめまして、インヴィディアとカウダ。………さて、貴女達のそれって演技……じゃないわよね?」
『……な、なん……のっ、こと? わ、私は……私』
【んん? 特に何かを演じてるつもりはねぇなぁ】

 猟兵からの言葉に気負いなく答える二つの声にアレクシアがやはり敵意や悪意の類を感じないと、己の中にある知識を確かめるように問いかける。

「生前に関係なく、オブリビオンは世界に対する悪意を持って生まれるって聞いていたけど、貴女達は違うみたい。それとも、これからそうなっていくのかしら?」
『……あ……なる、ほど。そうっ…いう意味……なら、悪意は……決められてる』

 詰まりながらも返された言葉にアレクシアが疑問符を浮かべ、問いかけるような視線にインヴィディアが視線を逸らし、揶揄うような言葉が後を継ぐ。

【簡単に言っちまえば俺らが個人に向ける悪意はなくとも、世界から向けられる悪意はあるってことだ】
「……言葉遊びかしら? まぁ、もっとも、貴女達が何を考えているのかなんて関係ない。貴女達はウイルスのような存在。抗体である私達は、ただ骸の海に還すだけよ」

 その言葉にかくりとインヴィディアの首が傾げられ、くつくつと笑っているかのようにカウダが揺れる。

『……う…ん、正解。私達は…今を……楽しん、…でいる』
【分かってんじゃねーか。過去たる俺らが本来ならば未来が訪れるべき現在を占拠している】
『……それは、たぶん……世界に、…とっての…痛み……で、私達の幸せ』
【踏みにじられた世界は叫ぶわけだ、そこに悪意のある敵がいるぞってな?】

 答え合わせをするかのように恥じることなく世界に対する悪であると、それでいて臆面なく幸せをかたってのけたその姿に、アレクシアが溜息を零すかのように言葉を返す。

「あぁ、そういうこと。誰にとっての悪意か視点の違いってことね。こう言っては何だけど――貴方達も私達もウイルスや抗体のように意思なんて持っていなければ、互いに楽だったかもしれないわね」
『し、死んだ…私が言うの…も、…なんだけど……それは、きっと寂しい』
【おう、生者が今を捨てちまうなんてもったいないぜ?】

●過去と現在と…………
 交わされていた言葉が途絶え積層力場の超能力者と嫉妬の少女との間に沈黙が訪れ……、面白げに揺れた艶尾の魔導具に合わせて渦巻いた薄霧が人の形を造り始め、嫉妬の影が色を付けてゆく。

●制限解除
 空気が帯電するかのように緊張感を増してゆく。創り出された自身の似姿にアレクシアがその身に纏う力場の開放し、一重二重……幾重にも空間を歪めるように波紋が広がる。

「さて、私自身が相手なら最初から本気で行くわ」
〔ふぅん? 力場を全開にして全てを叩き潰すのかしら?〕

 その揺らぎに応じるようにアレクシアの似姿からも波紋が広がり、軋むように迷宮主の間が震える。
 音もなく強大な念動力がぶつかり合った反動で爆発したかのように空気が吹きすさび……アレクシアが笑いかける。

「さて、貴女はご主人様を守りながら戦わなくちゃいけない。でも、周りのことなんて気にせずに力が出せるわよ」
〔……っ! 何考えてるのよ。あいつらの権……っ!!〕

 焦る様子の嫉妬の似姿に構うことなくアレクシアから全周囲に暴風を伴った衝撃波が放たれ……、力場で攻撃を凌いだ嫉妬の似姿が背後からの何かに吹き飛ばされる。
 その様子に驚き、目を見開いたアレクシアへと嫉妬の似姿に痛打を与えた暴風を伴った衝撃波が襲い掛かる。

 そうして、暴風が蹂躙した一瞬の静寂の後。跳ね起きた嫉妬の似姿が叫ぶ。

〔……無差別に攻撃したら、こうなることくらいわかるでしょう!?〕
【いやいや、効率的ではあるぞ? そろそろ消滅しかけだからなぁ】
『……ごっ、め…ん。……狙い、を定……める、余裕……ない』

 あー……転移の権能で自衛をする余裕はあるのね、と頭を振りながら起き上がったアレクシアが、怒り心頭という様子の嫉妬の似姿を視界におさめつつ嘆息しながらも声を響かせる。

「まぁ、いいわ。私の目的は貴方達を骸の海に帰すこと。貴女にも存分に付き合ってもらうわ」

●猟兵と災魔と…………
 積層力場の超能力者の振るう全力の異能が迷宮主の間を軋ませ、身に迫る脅威を逸らし影絵の超能力者が反撃を加える。その様子を嫉妬の少女と艶尾の魔導具が猛威を凌ぎ被害を拡大させながら観戦する。

●『罪の影姫』カウダ・インヴィディア
 ドサリと倒れる音が戦いの終わりを告げ霧が晴れてゆく。嫉妬と呼ばれる存在が居を構えるにはいささか質素で何もない迷宮主の間が露になり……、満身創痍で床に伏すアレクシアをボロボロの姿になった嫉妬の似姿が見下ろす。

〔……おめでとう、貴女の勝ちね。聞こえてるかは知らないけれど〕
【だなぁ、もう搾りかす程度しか残ってねぇ。さて、勝者には凱旋してもらうか。………なぁ、我が契約者殿?】
『う……ん。……為すべ…、きことっ……に、拘れる……のは、羨ま……しい。…つ、ぶれて……欲しく、は…ない』

 その言葉と共にアレクシアの身体が揺らぎ薄れ消えてゆき、限界を迎えたのか迷宮主の間に幾つもの罅が刻まれはじめ微細な振動と共に崩落が始まってゆく。

成功 🔵​🔵​🔴​


●??????
 積層力場の超能力者を二対の瞳が見送り……、崩壊の音が次第に大きくなってゆく。
 その不穏を煽る音の中、やや形を崩した己の半身を身体を抱き込むように座り込んだインヴィディアが、アレクシアの影を見上げカウダが僅かに済まなそうに声を掛ける。

【最期に付き合わせて悪いな。骸の海に還った後、どうなるかは知らないが良い未来を願っておくぜ】
『うん、良い未来を。……ある…意、味…、貴女に、とっては……私達は悪……かも』
〔気にすることかしら? 必要な時だけ起きて使われるのはオリジナルも同じようだし構わないわ〕

 それに……目的は果たされたけど戦いには勝ったしね、とアレクシアの影が笑い晴れやかに伸びをし、インヴィディアへと向き直る。

〔まぁ、でも悪いと思うなら。消えるまでは付き合ってもらおうかしらね?〕
『……ん、……こちら……こそ。ねぇ? 私のアレクシア』
【じゃぁ、最期までよろしく頼むぜ? 俺のクビティタス】

●終幕
 沈み込むように崩落を起こした嫉妬と渇望の迷宮に封印が施される。最奥を起点に崩れ落ちた迷宮は完全に潰れ、侵入を禁止することを決めたアルダワ魔法学園の意向に従い、旧校舎の一角に静寂が訪れる。

最終結果:成功

完成日:2021年02月07日


挿絵イラスト