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もうなんにもしたくない

#アリスラビリンス

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#アリスラビリンス


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 もうなんにもしたくない。
 だって何したって無駄だったもの。
 だぁれも迎えに来てくれなかったもの。
 みんなみんな、いなくなった。
 帰りたいのに帰れない。
 もう、いい。もうなんにもしたくない。
 ここでずっと。
              ねむるの。


「アリスラビリンスの、世界の一つにー……絶望の国が、見つかりましたー」
 寧宮・澪がグリモアベースで猟兵達に声をかける。
 「自分の扉」がある世界に辿り着いた、けれど扉を潜る前に「元の世界の記憶」を思い出し──その記憶で心を押しつぶされ、絶望してしまったアリスがいた。
 そのアリスがオウガへと変じたことでアリスの扉は閉ざされた絶望の扉へ。不思議の国は無残な絶望の国へと変わったのだ。
 この国はどんどん新たなオウガを生み出して世界を壊してしまう。故に核となる「絶望の扉」の主であるオウガを破壊し、絶望の国を破壊せねばならない。
 他に方法はない。オウガとなったアリスを元に戻すことは不可能なのだから。
「依頼の手順としては……生きている森を踏破してー……世界の中央、絶望の扉、へと向かいます。そしたら、そこにいるオウガを倒てくださいー……。すると扉が壊れて、世界の崩壊が始まるのでー……その内部にいた、生まれるはずだったオウガ達が襲い掛かってくるのを殲滅すれば、今回の依頼、完了ですー」
 オウガに変わったアリスとの戦闘時、その心を癒やすような言葉をかけたり、思いを行動で示せれば、絶望を和らげることは可能だ。心を癒やすヒントは森が喋ってくれるかもしれない。
 絶望が和らげば国の形だって変わる。ここから生まれるはずだったオウガ達の数が少なくなるだろう。もし絶望したままなら、殲滅できないほどオウガが生まれるだろう。
「できれば、取り逃がすことなくー……けれど皆さんも無事に、帰ってきてくださいねー……」
 では、よろしくお願いします、と一言告げて。
 澪は絶望の国への扉を開くのだった。


霧野
 安寧をお願いします。
 よろしくお願いします、霧野です。

●シナリオについて
 生きている森を踏破して、オウガに変わったアリスを倒して、生まれるはずだったオウガを殲滅する。
 そんなシナリオです。

 一章:生きている森を突破してください。耳を澄ませば、かつてのアリスの絶望が聞こえてくるかもしれません。
 冒険です。
 二章:絶望の扉のそばにいるかつてのアリスを撃破してください。彼女の絶望を和らげれば、三章の集団戦の個体数が減ります。
 ボス戦です。
 三章:崩壊する国の中で、内部にいた、生まれるはずだったオウガが襲ってくるのを殲滅してください。
 集団戦です。

●複数人で参加される方へ
 どなたかとご一緒に参加される場合、プレイングに「お相手の呼び名(ID)」を。
 グループ参加を希望の場合は【グループ名】を最初に参加した章にご記入いただけると、助かります。

●アドリブ・絡みの有無について
 割とアドリブ入れることがあります。
 以下の記号を文頭に入れていただければ、絡まなかったり、アドリブ入れなかったりさせていただきます。
 ◎ アドリブ・絡み歓迎。
 △ アドリブ歓迎・絡みNG。
 × アドリブNG・絡みNG。
 〆 負傷OK。
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第1章 冒険 『生きている森』

POW   :    とにかく最短ルートを目指し、強行軍で突き進む

SPD   :    マッピングを行い、地形を把握しながら進む

WIZ   :    喋る花の話す雑多な情報を整理し、正しい順路を導き出す

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 かつては楽しげに話す花々があった。
 かつては愉快に踊るような木々があった。
 今はもうない。
 今残るのは、絶望を語る花々と、侵入者を惑わすために動く木々だ。
 耳を澄ませば絶望が。
 道を歩けば迷い路が。
 生きた森が猟兵達を喰らおうと蠢いている。

===
・耳を澄ませばかつてのアリスが思い出した絶望が聞こえてくるでしょう。その絶望に耳を澄ましてもいいですし、澄まさずとも森を抜けることは可能です。
デイヴィー・ファイアダンプ
◎〆
……。

(絶望の反対は希望だと言うけれど、この灯は希望への標というには仄暗く、むしろ彷徨える幽霊火のようなものだ)

………。

(ならば何故ここへ?)

(何も道を示すだけが灯の役割ではない、何かに寄り添うように灯るものもあるだろう)
(そしてそうであるならアリスの絶望を聞き留められるよう、森の声へ耳を傾けようか)

……。

(救えなかった未来は変わらない。だとしてもまだ終わりじゃない)

……。

(耳を済ませ、見逃すな)
(絶望という名の泣き声を終わらせるために)




 暗い、昏い森の中をデイヴィー・ファイアダンプ(灯火の惑い・f04833)は進む。
「……」
 自分自身が灯す仄昏い炎を灯りに進む。
(絶望の反対は希望だと言うけれど)
 蠢く木々は少しも定まらない。振り返れば道は消え、視線を戻しても道が変わる。その中をデイヴィーは黙々と歩く。
(この灯は希望への標というには仄暗く、むしろ彷徨える幽霊火のようなものだ)
 蒼い炎は導かない。ただそこにあるだけだ。
 デイヴィーだって、同じ。
(ならば何故ここへ?)
 どこか静謐ささえ感じる炎。決して消えない炎。
(……何も道を示すだけが灯の役割ではない、何かに寄り添うように灯るものもあるだろう)
 だから来たのだ。絶望したアリスの側で灯るために。壊れた心に寄り添うために。
 デイヴィーは耳を澄ます。
 密やかに絶望を語る花々の囁きに耳を澄ます。彼女の絶望をかけらでも聞き止めるために。
 ──寂しい。
 ──寂しい、ひとりぼっち。
 森は幼い少女の声で囁く。彼女の絶望を繰り返し、繰り返し。
「…………」
 デイヴィーの器物を握る手に少しだけ力が入る。
(救えなかった未来は変わらない)
 もうこのアリスがもとに戻ることはない。アリスに戻して救うことなどできない未来は変わらない。
(だとしてもまだ終わりじゃない)
 デイヴィーは耳を澄ます。
(耳を済ませ、見逃すな)
 泣き声をこぼさぬ様に。
(絶望という名の泣き声を終わらせるために)

 ──パパ。ママ。どこに行ったの?
 ──ここは、暗いの。寒いの。
 ────どうして、迎えに来てくれないの……?
 ──────どうして、置いていくの……?
 ──────私はいらない子なの……?

成功 🔵​🔵​🔴​

安寧・肆号

可哀想なアリス!
お家に帰れたはずなのに。絶望に呑まれてしまうなんて。
記憶は良いものばかりではないという事かしら。

耳を済ませて、静かにね。
お話し声が聞こえるなら、そっちに進むわ。

こんにちは、お花さん。
腐るのを待つばかりなんて退屈でしょう?
絶望の国の、お花さん。
お話を聞いてくれる、やさしいお人形なんて滅多にいないわよ。
さあ、お話しましょ。

あなたたちは、あなたたちのアリスは、何故望みを絶たれてしまったの?




 安寧・肆号(4番目の人形・f18025)は昏い森の中を歩きながら嘆いた。
「可哀想なアリス! お家に帰れたはずなのに。絶望に呑まれてしまうなんて」
 もう少し、絶望するのが遅ければ。誰かの励ましや慰めが届いていたら。結果は変わっていたかもしれない。家に帰れたかもしれないのだ。
 けれどアリスはオウガになってしまった。
 記憶にはうれしいこと、楽しいこともいっぱいあるだろう。けれど辛いこと、悲しいことも覚えている、覚えていてしまう。
「記憶は良いものばかりではないという事かしら」
 そんなふうに呟きながら、肆号は耳を澄ます。
 ──寂しい。
 微かに捉えた密やかな囁きの聞こえる方へと足を向ける。
 うねり、蠢き形を変える木々が行く手を阻む。道が変わる。それでも肆号は、先程から小さな囁きが聞こえる方へと歩いていく。
 そこには暗い森の中、萎れかけた花々がかろうじて咲いていた。もう少しで枯れてしまいそうだ。
「こんにちは、お花さん。腐るのを待つばかりなんて退屈でしょう?」
 絶望を囁く花々に肆号は語りかけた。
「絶望の国の、お花さん。お話を聞いてくれる、やさしいお人形なんて滅多にいないわよ」
 だから、ただ萎れて腐る前に。
「さあ、お話しましょ」
 肆号は問いかける。彼らの囁く絶望が知りたいのだと。
「あなたたちは、あなたたちのアリスは、何故望みを絶たれてしまったの?」

 ──帰れない。
 ──ここでママは待ってて、って言ってた。
 ──迎えに来るよって。
 ──来ない。
 ──暗い、寒い。
 ────ひとりぼっち。寂しい。
 ────捨てられた、の?

成功 🔵​🔵​🔴​

メアリー・ベスレム
◎〆
絶望なんて知らないわ
だって、諦めなかったからメアリはここにいるんだもの
帰りたい場所だって、アリスには初めからなかったもの
ええ、だから教えて? あなたの事
獣のメアリとオウガのあなた
殺すメアリと眠れるあなた
いったい何が違ったの? どうして絶望してしまったの?
聞いたところで、メアリには殺す事しかできないけれど

生きている森の声に【聞き耳】立てて
もしこの森で流された血があるなら【血の声を聴く】
前者はあの子の、後者はこの森の事を知る手掛かりになるかしら
こんなところで食べられてしまうわけにはいかないから

メアリ、オウガを殺すのは好きよ。とっても楽しいもの
だけどきっと、あなたを殺すのはちっとも楽しくないわ




 メアリー・ベスレム(Rabid Rabbit・f24749)は昏い森を辿る。
(絶望なんて知らないわ)
 メアリーはかつて同じようにアリスだった。
(だって、諦めなかったからメアリはここにいるんだもの)
 諦めずに彼女は自分の力でオウガを食い殺した。そして猟兵となった。
(帰りたい場所だって、アリスには初めからなかったもの)
 閉じ込められた牢獄。あそこに戻りたいとは思ってなんていなかった。だから忌まれていた力を振るった。
 そこに後悔はないだからメアリーには絶望を抱いたアリスの気持ちがわからない。
「ええ、だから教えて? あなたの事」
 耳を澄ます。ささやき声が聞こえる。
 ──寂しい。
「獣のメアリとオウガのあなた、殺すメアリと眠れるあなた。いったい何が違ったの? どうして絶望してしまったの?」
 同じようにアリスラビリンスに呼ばれた二人。けれど何かが違ったからこそ、結末の違う二人になったのだ。
(それを聞いたところで、メアリには殺す事しかできないけれど)
 それでも聞いてみたら、何かがわかるかもしれない。
 メアリーは生きている森のささやきに耳を澄ます。

 ──寂しい、帰りたい、帰れない。
 ──どうして置いていったの?
 ──迎えに来てくれるって言ったのに。
 ────待ってる、のに。待ってた、のに。
 ────うそつき。

 かつていたはずの愉快な仲間達の流した血の声も聴こえてくる。

 ──森の枝が道を塞ぐ。貫いてくる。
 ──アリスの茨が、迫ってくる。
 ──ああ、ああ、もう、何もしたくない。

(こんなところで食べられてしまうわけにはいかないから)
 だからメアリーは耳を澄ませて進む。道を塞ぎ、取り込もうと忍び寄る木々を避けながら。
 そして、ぽつりと呟いた。
「メアリ、オウガを殺すのは好きよ。とっても楽しいもの」
 血に飢えてアリスを食べようと、あるいは仲間にするために辛く当たるオウガを殺すのは楽しい。
 彼らは欲望に忠実に、メアリーと同じようなアリスを襲う。その彼らを殺すのは楽しい。
 だけど。
「だけどきっと、あなたを殺すのはちっとも楽しくないわ」

成功 🔵​🔵​🔴​

ロキ・バロックヒート
葉釼くん(f02117)と
◎〆
※初対面

君たちの絶望はなぁに
切り株にでも座って耳を澄ませる
急がないからここでじっくり聞いてあげる
うんうん
そっかぁ
絶望をやわこく撫でるよう
辛かったね苦しかったねって
ふふ

襲い来る森にも意に介さず聴いてたら
眼の前に人影
へぇ、助けてくれたの?ありがとう
こえを聴いてたの
怪我?あぁこれ?
だいじょうぶだよ死なないから

そういえば森を抜けなきゃいけないんだったね
君はこの子たちのこえを聴かないの?
可愛くて結構面白いよ
どんなことを云ってるか教えてあげようか?
てきとー?いいよってかいつまんで

いかにも仕事しに来ましたって感じの子だね
ねぇ名前教えてよ
俺様はロキだよって名乗ってあとをついて行く


真白・葉釼

ロキ(f25190)と
!初対面

絶望はいつもなまぬるい
人の体温によく似ている
声が耳に入る分には構わないが
目的は森を抜けることに過ぎない
枝を払い、花を踏む

斬り落とした枝の向こう側に見えた無抵抗の人影
然して考えることもなく間に割り込み、同様に枝葉を刀で払い落す
……あんた、何故ぼんやりしている
こんな場所から怪我をしていて、身体がもつのか?

聞こえるのは『絶望』だという話だったが
耳に軽く手を当て
変わった趣味だな
あまり興味はないが情報としての価値は気になる
適当に内容を取捨選択して教えてくれるか

猟兵は仕事だろう
アルバイトより割がいい
……
俺の名は、葉釼
ちらと背後を確認しながら
降り懸かるものを払い、自ら前を進む




 ロキ・バロックヒート(深淵を覗く・f25190)は切り株に座っている。彼の目の前には萎れかかった喋る花。
「君たちの絶望はなぁに」
 どこか無邪気に、とても穏やかな声でロキは語りかけ、かすかな声に耳を澄ませる。この世界の主の絶望を聞き取るために。
 どうせ急がないのだ。じっくり聞いてあげよう、と。
 ──寂しい。
 ──お腹すいた。寒い。
 ──ひとりぼっち。寂しい。
 ──どうして置いていったの。
 ──どうして、迎えに来てくれないの。
「うんうん、そっかぁ」
 ロキの声は真綿で優しく撫でるよう、柔らかな響きでその絶望を慰撫する。
「辛かったね、苦しかったね」
 くるりくるりと枝が伸びて彼に絡み、木々が辺りを塞いでいく。縛り付けて、飲み込もうとするように。
「ふふ」
 そんなことを意にも介さず、ロキはただ柔らかに微笑んで花々の絶望の声を聞いていた。

 真白・葉釼(ストレイ・f02117)は森を進む。
 草を踏み、葉を踏み、枝を踏み。その音の合間に挟まるのは、さやさやと囁かれる絶望を語る声。
(絶望はいつもなまぬるい)
 凍るほどの冷たさも焼けるほどの熱さもない。まるで人の体温のよう。
 けれど、その声は葉釼には取るに足らないもの。目的は森を抜けることに過ぎないのだから。
 囁く花を踏みつぶす。塞ぐ枝も斬り落とす。絶望の扉を目指すために、邪魔なものは総て排除する。
 また一つ枝を切り落とすと、今までよりも厚い枝の壁があった。
 邪魔だと切り裂けば、その向こうに枝に絡めとられたまま腰をおろした人が居る。抵抗する素振りもなく、ただただ枝に閉じ込められて行くだけのよう。
 然して考えることもなく木々と彼との間に割り込み、今までと同様に枝葉を刀で払い落した。
「へぇ、助けてくれたの? ありがとう」
 礼を言い、穏やかに微笑んで見上げる彼──ロキから枝を取ってやりながら、葉釼は声をかけた。
「……あんた、何故ぼんやりしている」
「うん? 彼らのこえを聴いてたの」
 ほら、と指差したのは葉釼の足元、踏みつぶされた花。
 その指先や手の甲など、肌が露出していたところが枝ですられて傷になっている。
「こんな場所から怪我をしていて、身体がもつのか?」
「怪我? あぁこれ?」
 ロキはうっすら赤の滲んた傷をなぞる。指に赤が移った。
「だいじょうぶだよ、死なないから」
「それでも消耗するだろう」
「へーきへーき」
 戯けたように笑うロキ。葉釼は何を言っていいか分からず、ただ、そうか、と呟いて。楽しげな彼の横をすり抜けて歩き出す。
「そういえば森を抜けなきゃいけないんだったね」
 忘れていたわけではないけれど、急いでもいないから、気ままに足を止めていたのだ。
 何となくロキは葉釼の後ろをついていく。
 花を踏み、木々を払って進む葉釼に興味を持ったから。
「ねえねえ、君はこの子たちのこえを聴かないの?」
「声?」
「そう、おしゃべり。可愛くて結構面白いよ」
「聞こえるのは『絶望』だという話だったが」
 立ち止まり、葉釼は耳に手を当てる。さやさやと聞こえてくるのは生温い絶望の声。
 ──寂しい、寂しい。
「ね? 可愛いでしょ?」
「……変わった趣味だな」
 こんな生温いものが可愛いなんて、と耳を澄ますのをやめて歩き出す。
「あれ、もう聞かないの?」
「ああ。森を抜けることが優先だ」
「じゃあ、どんなことを云ってるか教えてあげようか?」
 そう言われれば、葉釼も情報としての価値が気にはなる。オウガを攻略する糸口になるかもしれない、と思ったのだ。
「適当に内容を取捨選択して教えてくれるか」
「てきとー? いいよ」
 帰れない、寂しい、置いて行かれた。
 母と父を待っているけれど来ない。
 迎えに来てほしい、けれど来なかった。
 だから諦めた。
 そんな様なことを繰り返し、繰り返し、嘆き続ける幼子の声だと、ロキは言う。
「そうか」
 葉釼はそれだけ呟いて、また先を進む。
「それだけ? 感想は?」
「特には」
「ふーん。君っていかにも仕事しに来ましたって感じの子だね」
「猟兵は仕事だろう。アルバイトより割がいい」
「そういう意味じゃないんだけどなぁ」
 絡みつく枝を何度も切り捨てて真っ直ぐ世界の中央へ向かう葉釼の後を、ロキはただ着いていく。何となく見捨てにくい。
「ねぇ名前教えてよ」
「……」
 葉釼は青い目を動かして、ちらと背後を確認する。それから敢えて前を進む。放っておけばこの青年はまた足を止めて、木々に飲まれてしまいそうだから。
「俺の名は、葉釼」
「葉釼。俺様はロキだよ」
 そう名乗って笑う金の目は、どこか冷静に葉釼を観察しているのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

雛菊・璃奈


救える命なら、わたしは助けたい…。
例え相手がオブリビオンであっても、人と共に生きられるのであれば、その命を救いたい…。
わたしはいつもそうやって戦って来た…。
今までも…そして、これからも…。
わたしの力(【共に歩む奇跡】)なら、オウガから人に戻す事はできなくても、再び人と共に生きる様にする事はできる…。

だから、彼女を救う事はできないなんて、わたしは諦めない…。
諦める事はしたくない…。

だから教えて…貴女の絶望と哀しみを…。
貴女の哀しみを…。
貴女を縛る絶望の枷を祓う為に…。

呪力【呪詛】を集中して身に纏い【オーラ防御】し、周囲の声を集めてアリスの絶望を自身へ…(【情報収集】)




 雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)は森を進む。
 迷わす木々に惑わされぬように、前を見て。
(救える命なら、わたしは助けたい……)
 人とともに生きられるのであれば救いたい。たとえオブリビオンであっても、共存できるものもいるのではないか、と思うのだ。
(わたしはいつもそうやって戦って来た……。今までも……そして、これからも……)
 いつだって、そう。彼女は手を差し伸べていた。たとえ全て救えなくとも。
(わたしの力なら、オウガから人に戻す事はできなくても、再び人と共に生きる様にする事はできる……)
 共に歩む奇跡の中で微睡んでもらえればいい。いつもならそれで良かった。けれど、今回はそうはいかない。
 この絶望の国を崩壊させるには扉を破壊しなくてはならない。
 そのためにはオウガとなったアリスを破壊しなければいけないのだから。共に歩むことは、決して出来ない。
 ぎゅっと手を強く握りしめる。
 連れていけないのだとわかっている。わかっているけれど。
(だから、彼女を救う事はできないなんて、わたしは諦めない……諦める事はしたくない……)
 せめてその心だけは救いたい。救えるはずだ、と璃奈は耳を澄ます。
(だから教えて……貴女の絶望と哀しみを……)
 花が囁く、かつてのアリスの絶望を聞くために。
(どうか教えて……貴女を縛る絶望の枷を祓う為に……)
 己の扱える呪の力を集中して身に纏い、囁きを、アリスの絶望を拾い集めた。
 眠るオウガの心を救うために。
 絶望したまま滅ぼさなくてもいいように。

 ──寂しい。暗い。
 ──待っているのに、パパも、ママも、いない。
 ──ここに置いていかれたの?
 ──寂しい。
 ──待ってるから、いい子にしているから。
 ────ここから出して、迎えに来て。

成功 🔵​🔵​🔴​

牧杜・詞
【恋華荘】

ぜんぶ無駄。なんにもしたくない、か。
それでなんとかなるならいいのだけど、ならないのよね。
だれが決めたのか知らないけれど、
なぜかそうなっているのだから始末が悪いわ。

絶望して、そのまま死ぬのなら止めはしないけど、
なにもせず眠り続けるというのは無理ね。

眠っているということは、生きているということ。
生きているなら、同じところにとどまるなんてできないのよ。
いつかは動かなくてはいけなくなるの。

そのとき、自分の意志で動けなければ、
同じことを繰り返すだけになるわ。

この森の『住人』だちはどう思っているのかしらね・
もう生きてはいないみたいだけれど、
それでもまだ同じことを繰り返しているのかしら?




 牧杜・詞(身魂乖離・f25693)は森を歩く。
 事前に聞いた情報を思い返しながら。
(ぜんぶ無駄。なんにもしたくない、か)
 絶望してもう何もしたくはないと、目を、心を閉したかつてのアリス。眠ることを選んだオウガ。
(それでなんとかなるならいいのだけど、ならないのよね。だれが決めたのか知らないけれど、なぜかそうなっているのだから始末が悪いわ)
 ただ何もしないでいても何も解決しない。いい方に転ばないばかりか、悪くなることだってあるのだ。
 蠢く木は道を遮るように姿を変える。詞は迷わぬようにマッピングしながら、国の中央、オウガの元を目指して歩く。
(絶望して、そのまま死ぬのなら止めはしないけど、なにもせず眠り続けるというのは無理ね)
 死ぬのであれば停滞ではない。死という終わりに向かって進んでいるのだ。
 しかし眠りは、死に似ているが同じではない。
(眠っているということは、生きているということ。生きているなら、同じところにとどまるなんてできないのよ)
 変わらない生などないのだから。
(いつかは動かなくてはいけなくなるの)
 目を閉ざし、心を閉していても。いつかは必ずやってくる。
(そのとき、自分の意志で動けなければ、同じことを繰り返すだけになるわ)
 ただ嘆いて絶望を繰り返しただ眠っているだけで世界を壊す存在へと変わり果てる。
 
「この森の『住人』たちはどう思っているのかしらね?」
 この森にいた愉快な仲間達はもう生きてはいないだろう。生物の気配のしない死んだ森だ。
 聞こえてくるのは、木々が蠢き軋む音と、絶望を囁く花の声。
(もう生きてはいないみたいだけれど、それでもまだ同じことを繰り返しているのかしら?)
 かつて健やかな生命だったときと似たように、動き、囁く。
 ──寂しい、寂しい。
 ──パパ、ママ、どこに行ったの?
 ──ここから出して、迎えに来て。
 ────待ってるから。いい子にしているから。
 ────来ないのなんで? 捨てられたの?

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『『七罪』怠惰の茨姫』

POW   :    常時発動型UC『茨の迷宮』
戦場全体に、【敵を自動攻撃し、主を防御する無限再生の茨】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
SPD   :    絶望に眠る怠惰の茨姫
【他者の気力と力を半減させる怠惰の魔力の雨】を降らせる事で、戦場全体が【敵の力を奪い、自動攻撃する呪いの茨の園】と同じ環境に変化する。[敵の力を奪い、自動攻撃する呪いの茨の園]に適応した者の行動成功率が上昇する。
WIZ   :    スリーピング・ビューティ(眠り姫の物語)
【自在に呪いの茨を操る魔女の魔力を宿す茨姫】に変身し、武器「【周囲を侵食し無限に増殖する強制睡眠の茨】」の威力増強と、【敵のUCの効果を軽減する妖精の加護】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。

イラスト:遊夜

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は雛菊・璃奈です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 パパとママは狭くて暗い箱に詰めて、置いていった。
 迎えに来るからって、言ったのに。
 寂しい。寂しい。
 いい子で待ってたのに、来ないから、箱を開けたの。
 そうしたら不思議の国にいた。
 怖い怪物から逃げて、逃げて、逃げて。
 扉を見つけて。
 ──そうしたら、思い出したの。
 扉を潜っても、どこにも帰るところなんてないの。
 だから、もういい。なにもしたくない。
 ここで、ねむるの。


 絶望を囁く森を抜けると、茨の這う荒野が広がっていた。
 侵入者を突き刺すような茨が絡み合う中心には、茨が巻き付き、歪んで開かない絶望の扉。
 そして、傍らで眠っていたオウガ。
 彼女は目を覚ます。自身の眠りを妨げた猟兵へ、無気力な敵意を向けながら。
 たとえ、幼い少女の見た目であっても彼女はオウガ。怠惰の罪を抱いた茨姫。何も生み出さない眠りへと皆を誘う魔女の姫。
 もうアリスには戻れない。
 ここで破壊しなければ、この世界はオウガを生み出し続けて他の世界を滅ぼすのだ。

 絶望の国を破壊するために、猟兵は動き出す。

===
・オウガとの戦闘です。
 彼女を無害な存在にすることは不可能です。
 他の世界に連れて行くこともできません。
 この世界でオウガを破壊しなければ、シナリオは失敗になります。
・けれど彼女の絶望を和らげることができれば、世界の形が変わるでしょう。
 そうすればこの世界の内側に潜んだオウガの数は減ります。
 三章の集団戦で出現するオウガの個体数が減少します。
デイヴィー・ファイアダンプ
◎〆
どうにも眠っている暇はないからね。
彼女の思考に近づくためにも考えろ。そして“彼女にも考えさせろ”。

彼女の声は同じような言葉の繰り返しだ。
けれどそれはそれだけ彼女が純真だと言えるだろう。
そして純真であるからこそ約束を裏切られたという思いはそれだけ彼女に強く残る。約束を破った両親を“思い出したくない”と願うほどに。
そうであるなら最後に見た二人の表情が、ここで待っててと迎えに来ると誓ったその声が世界を元に戻す鍵になるだろう。

約束は果たされなかったとしてもキミは素直にそれを信じた。
それは素直に信じられるほどの何かがそこにあったからだろう?
さぁ、よく思い出してごらん。眠りにつくのはそれからだよ。




 ぐるりぐるりと茨が蠢く。眠り姫は茨を操る魔女の姫へと姿を変えて、茨の呪いを強めた。一度触れれば容易く眠りへと誘われるだろう。
「どうにも眠っている暇はないからね」
 迫る茨を青白い炎で焼いて避けながら、デイヴィーは茨姫の心を思う。
(彼女の思考に近づくためにも考えろ。そして“彼女にも考えさせろ”)
 亡霊の炎は考える。絶望に落ちたアリスのことを考える。
(彼女の声は同じような言葉の繰り返しだ)
 寂しい、寂しいと。自分の絶望にとらわれて繰り返す言葉ばかり。寂しいと嘆くことばかり。
(けれどそれはそれだけ彼女が純真だと言えるだろう)
 それ故に約束を裏切られたという思いが強い。約束を破った両親を“思い出したくない”と願うほどに。
(そうであるなら最後に見た二人の表情が、ここで待っててと迎えに来ると誓ったその声が世界を元に戻す鍵になるだろう)
 だからデイヴィーは語りかける。茨姫に考えさせるために。
「キミの両親との約束は果たされなかったとしてもキミは素直にそれを信じた」
 その理由を考えてごらん、と彼は語りかける。
「それは素直に信じられるほどの何かがそこにあったからだろう?」
 愛情や信頼や、そんな暖かい何かがあっただろう。
 冷たい残酷な現実だけなら、置いていかれたことに絶望しなくともいいのだから。落差があったからこそ、絶望に至ったのだろうから。
「さぁ、よく思い出してごらん。眠りにつくのはそれからだよ」
 絶望のままに何も生み出さない寂しい眠りではなく、いつか未来に繋がる優しい眠りへと落ちるために。
 迫り広がる茨の勢いが、少しだけ弱まる。
 その間隙を縫って、デイヴィーは思い出してごらんと、茨姫を力任せに殴り飛ばした。

成功 🔵​🔵​🔴​

安寧・肆号
◎〆
かわいそうだわ、かわいそう!
…でも、帰る場所はパパとママがいるところだけじゃないと思うの。
あなたの居場所だもの。
あなたが作れば、あなたが決めてしまえば良いんじゃないかしら。

なんて、もう過ぎた言葉ね。
せっかくなら、その絶望を楽しいものに変えましょ。
まぎあ・むーじかもるてぃす!

邪魔する茨は[継戦能力]を活かして骸骨さんたちにお任せ。
あんまり邪魔なものは鋏で[部位破壊]しちゃうんだから!
[毒耐性][環境耐性]で眠いのは我慢ね

迷路に迷っても、眠くなっても!
これは小さな茨姫さまへ献上する音楽よ。
音を途切れさせたら、いけないわね。




「かわいそうだわ、かわいそう!」
 かつてのアリスの絶望を知った安寧は嘆く。捨てられた と感じた彼女の絶望を思い、嘆く。
 でも、でも、とその絶望を少しだけ否定した。
「あのね、帰る場所はパパとママがいるところだけじゃないと思うの」
 ゆっくりと語る彼女の足元へと、すべてを眠らせようとする茨が迫る。
「あなたの居場所だもの。あなたが作れば、あなたが決めてしまえば良いんじゃないかしら」
 たとえ捨てられたのだとしても、新しい居場所を作れば、ここが自分の居場所だと決めてしまえば。
 父母の迎えを待たずに、自分から探しに行けば。
 帰れないと絶望することもなかったのではないか。
 幼いアリスの考えなかった新しい道にまた少し、茨の増える勢いが弱まった。
「なんて、もう過ぎた言葉ね」
 もうアリスには戻れない。かつてのアリスは救えなかった。今ここにいるオウガは破壊するしかない。
 だからこそ絶望を否定した言葉を否定して、無邪気に安寧は笑った。
「せっかくなら、その絶望を楽しいものに変えましょ。まぎあ・むーじかもるてぃす!」
 彼女の言葉にあわせて巨大な骸骨が現れる。骸骨人形を軸にして呼び出された彼らは、各々楽器を構えた骸骨の楽団だ。安寧の揮うバトンに合わせて楽しげな曲を奏でだす。
 迫りぐるりと巻き付く茨を、骸骨達は奏でる音を衝撃波に変えて剪定する。
 指揮する安寧の元に迫る茨だって、Pretty*Scissorsを大きくして剪定する。
 彼女達は眠ってはいけないのだから。
 小さな茨姫へと捧げる楽団だ、最後まで音を途切れさせてはいけないのだから。
「さあ、骸骨さん達! 最後の一音までがんばりましょう!」
 安寧は奏でる、絶望を覆すように。楽しげな童謡を。

成功 🔵​🔵​🔴​

ロキ・バロックヒート
葉釼くん(f02117)と
◎〆

あぁすごくわかる
誰からも必要とされないしどこにも行けない
諦めちゃうよね
しょうがないよ
もっと眠ってていいよ
慰めは愛でるように

そうだねぇ
ひとりじゃなかったらきっと結末は違ってた
彼女にも、なんて
君には一緒にいてくれるひとがいるの?
へぇお姉さんが
いなくなっちゃった?
俺様?俺様はね
どうだろうね?ふふ

迷路の踏破は第六感任せ
死霊の影たちを置いてくのもいいか
パンを千切って目印にするみたいにさ
鳥に食べられたら一緒に迷っちゃうね
茨は葉釼くんが大体守ってくれそう
それに甘えちゃう

迷路の先に居たオウガに【甘言】を
よくひとりでがんばったよ
とてもえらいよ
もうすぐ苦しまなくてよくなるから
おやすみ


真白・葉釼
◎〆
ロキ(f25190)と

俺にはわからない
俺も、両親の顔を思い出せないほどだということを
帰ってこなかったあの人たちのことを
同じだと言ってよいのか

…多分
彼女にも一緒に待ってくれる誰かがいれば、違ったのだろうな
数瞬黙り込み
姉がいた
今はいない
前を見たままの応答
あんたこそ、気持ちのわかるような物言いだったが
追及はせずに

《澹絶》を使い茨を、全てのものを断つ
ああ、ぬるい眠りだ
ロキの方へ向かう茨も、ある程度は
手間の掛かるヤツだな
言っておくが、パンの目印は鳥に食われる運命にあるぞ

慰めは得意じゃない
その悲しみと絶望を斬り裂くことこそ仕事ならば
真実の眠りを、与えることしか
――……
ああ、そうだな、ひとつだけ

おやすみ




 オウガの周りには迷路が築かれていた。
 侵入者を打ち据え、無限に自身を再生する茨がぐるりと囲っている迷路。
(ああ、ぬるい眠りだ)
 守られた場所で眠れるなんて、何てぬるい。
 そこをふらふらとロキは気の向くままに迷路を歩く。何となく出口だと思う方へ、思うままに。
 身に迫る茨を気にせず進むロキに、葉釼は仕方ない、と前に立って茨を払ってやる。
「ふふ。ありがと」
「……少しは、自分を守れ」
「えー。葉釼くん守ってくれるし」
 けらけらと笑って甘える姿勢のロキに、葉釼は少しだけ、手間のかかるヤツだと思った。
 ロキは通った道筋に呼び出した死霊の影を置いていく。
「これいいと思わない? パンを千切って目印にするみたいにさ」
 童話の兄弟のように、道を示すための目印。
 はしゃぐロキだが、葉釼はその結末を知っていた。迫ってくる全ての茨を切り裂きながら指摘する。
「言っておくが、パンの目印は鳥に食われる運命にあるぞ」
「あぁそっか。鳥に食べられたら一緒に迷っちゃうね」
「……そうしたら一緒に出口を探してやる」
「うん、一緒に行こうね」
 迷路を歩む二人。
 ロキがふと口を開いた。
「俺様はね、あの嘆きすごくわかる」
 ロキはアリスの嘆きに同意する。
「誰からも必要とされないしどこにも行けない。そうなら、諦めちゃうよね」
 ちゃり、と首輪に触りながら。まるでそうだったことがあるような、そうでもないようなふざけた口ぶりで。
「しょうがないよ。もっと眠ってていいよ。って言ってあげたい」
 その慰めは幼子を愛でるように。くすくす笑いながら、ロキは呟いた。
「俺にはわからない」
 先を進む葉釼はアリスの嘆きに困惑する。
(俺も、両親の顔を思い出せないほどだということを。帰ってこなかったあの人たちのことを──同じだと言ってよいのか)
 かつてのアリスは愛されていたのだろう。
 葉釼はどうだっただろうか。葉釼の両親とアリスの両親は、同じだと言ってもいいのだろうか。
 けれど、これは言える。
「……多分。彼女にも一緒に待ってくれる誰かがいれば、違ったのだろうな」
「そうだねぇ、ひとりじゃなかったらきっと結末は違ってた」
 きっと一人じゃなければ、待つことも絶望には繋がらなかったのだろう。
 そんなことよりも、ロキは気になった部分を聞きたがる。
「ねえ、彼女にも、なんて。それなら君には一緒にいてくれるひとがいるの?」
 葉釼はほんの数瞬黙り込む。それから口を開いた。
「姉がいた。今はいない」
 葉釼は前を見たまま、ロキには顔を見せずに答える。
 ロキはそんな様子を気にもせず。
「へぇお姉さんが。いなくなっちゃった?」
 その問いに答えはない。
 話を逸らすように、葉釼からも問いかけた。
「あんたこそ、まるで気持ちのわかるような物言いだったが」
 置いて行かれて、ひとりは寂しいと。その気持ちをわかるなどと言うならば。そうだったことがあるのではないか、と葉釼は言外に問いかける。
「俺様? 俺様はね──どうだろうね? ふふ」
「そうか」
 その答えには追求せず。
 しばし沈黙のまま、茨が絡み合った迷路を辿った。

 迷路の先には歪んで開かない茨の巻きついた扉と、茨姫。その足元からは無限に茨が広がっていく。
 彼女は眠たげな顔ながらも、眠りを邪魔する侵入者を見据えた。
 そんな彼女へロキは甘く笑いかけた。観察対象を愛でるように。
「よくひとりでがんばったよ。とてもえらいよ」
 その言葉はオウガの精神を揺らがせる。
「もうすぐ苦しまなくてよくなるから。おやすみ」
 甘い狂気を含んだ言葉が広がる茨の勢いを、少しだけ弱めていく。
 葉釼は何も言わない。言えない。
(慰めは得意じゃない)
 ただ骨骸装の薄蒼い刃を彼女に向ける。
(その悲しみと絶望を斬り裂くことこそ仕事ならば、真実の眠りを、与えることしか)
 そう思いながら刃を振り上げて。
(――……ああ、そうだな、ひとつだけ)
 一言だけ、呟いた。
「おやすみ」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

メアリー・ベスレム
◎〆
きっと、あなたは幸せだったのね
なのに帰る場所を失ってしまったから
だからあなたは絶望した
初めから帰る場所なんてなかったから
だからメアリは絶望しなかった

なんて皮肉なお話かしら
それとも喜劇と呼ぶべきかしら?

【霜の牙】で冷気をまとって
雨も茨も、触れる前に凍らせてしまえばいいでしょう?
高速移動の【逃げ足】で捕まらないよう立ち回り
それでも伸びてくる茨は【咄嗟の一撃】で切り捨てて

何か伝える事があるなら【聞き耳】立てて聞いてあげる
それでも、最後は殺すから
眠るのならせめて穏やかに
悪夢も絶望もないように、おやすみなさい

あぁ、やっぱり
楽しくなんてなかったわ




 アリスの絶望を知ってメアリーは呟いた。
「きっと、あなたは幸せだったのね」
 幸せな境遇、幸せな世界。愛された時間。
「なのに帰る場所を失ってしまったから、だからあなたは絶望した」
 愛された幸せな帰る場所があったからこそ。
「初めから帰る場所なんてなかったから、だからメアリは絶望しなかった」
 愛されず幸せを知らなかったからこそ。
「なんて皮肉なお話かしら。それとも喜劇と呼ぶべきかしら?」
 持つものが絶望して、持たないものが絶望しなかった。皮肉でなければ喜劇だ。
 メアリーは命を削って冷気を纏う。
 全て凍らせて砕いてしまえば触れられない。力を奪われることもない。追いかけてくる茨は跳ねて走って避けながら凍らせて。それでも届いた茨は臆病者の刃で切り捨てて。
「ねえ」
 兎の耳を揺らしながら、オウガに近づいたメアリーはオウガに声をかけた。
「何か伝える事があるかしら」
 どんなに小さい声でも聞き逃さないように耳を澄ませる。
 もしももしも、両親に会いたいとか、帰りたいとか、言うのかもしれないと思ったから。それを聞いたところで助けることはない。
(それでも、最後は殺すから)
 それでも、聞いてあげるから。
 そんなメアリーの耳に届いたのは、小さなつぶやき。
「──ねむりたい」
 もう親を求めたアリスはいないのだ。ここにいるのは世界を怠惰で滅ぼすオウガのみ。
 眠るのならせめて穏やかに眠れるように、静かに静かに魔氷を撃ち出した。
(悪夢も絶望もないように)
 安らかな眠りを願っている。
「おやすみなさい」
 オウガを氷で閉じ込める。
 いつもなら心が踊って、喰い殺す喜びにあふれるのに。
(あぁ、やっぱり)
 最後にぽつりと、呟いた。
「楽しくなんてなかったわ」

成功 🔵​🔵​🔴​

宇迦野・兵十
◎〆
寂しいね、一人でいるってのはさ
お前さんはどうだい? こんな茨の寒空の下で寂しくないかい?

―茨を【見切り/武器受け】で捌き、捌けないものは【覚悟/激痛耐性】で受ける
 傷ついても茨姫に歩み寄り

帰るところが無いんだって?
そうかい、だからこんなところで不貞寝してるのかい

―ヘラヘラと【コミュ力】で語りかけて
 
寝るならさ、空の下の方がいいよ
こんな茨の中じゃあさ、誰もお前さんを見つけれないよ

―剣の間合い、顔を覗き込める距離で立ち止まり

空の上からきっと誰かがお前さんを探してる
だからさ、空を見上げてもうお休みよ

―もし彼女がそれを受け入れるなら、笑狐の封を解いて還し火を
【三狐新陰流・常世還】

願わくば、いい夢を




 宇迦野・兵十(きつねさん・f13898)は茨の迷路を辿る。
 道中、狐の彫られた煙管をふかしてから、どこかにいるオウガに語りかけた。
「寂しいね、一人でいるってのはさ」
 一人でいるのは大人であっても寂しい。ならば幼いかつてのアリスはもっと寂しかったのではないか。
 そう思いながら、迫る茨を見切って躱して、迷路を辿る。
「お前さんはどうだい? こんな茨の寒空の下で寂しくないかい?」
 上も下も、横も全て。世界に侵食する茨の下で眠るのは寂しすぎる。
「帰るところが無いんだって?」
 多少の茨は覚悟を決めて乗り越える。痛みがあろうと止まらなければ問題ないのだから。
「そうかい、だからこんなところで不貞寝してるのかい」
 そうして、迷路を抜けた兵十は世界の中心で朧気に立つオウガを見つけた。
 少しばかりの怪我など意にも介さず、掴みどころのないヘラヘラとした笑顔で兵十は語りかける。
 その足は迷い無くオウガへと向かっていく。
「寝るならさ、空の下の方がいいよ。こんな茨の中じゃあさ、誰もお前さんを見つけれないよ」
 迷路の中で眠っていたって見つけられない。茨あふれる世界に閉じこもっていたって、誰も見つけられない。
 お日様の昇る青い空の下で眠るほうが、きっと気持ちいい。誰かだって見つけてくれるだろう。
 顔を覗き込めるほどの距離で立ち止まる。そこは彼の剣の間合いでもあった。
「空の上からきっと誰かがお前さんを探してる」
 明確に誰とは言わない。オウガが望む者がきっと探しているだろうから。
「だからさ、空を見上げてもうお休みよ」
 少しだけ迷路の壁が解けた。
 黒い紐が解かれて赫い狐は笑う。赫い還し火がオウガに届く。
「願わくば、いい夢を」

成功 🔵​🔵​🔴​

雛菊・璃奈


【魔剣の媛神】封印解放…。
黒桜の呪力放出【呪詛、衝撃波、なぎ払い、早業】で茨を切り払い、呪力で侵食…。
そこに無限に顕現する終焉の魔剣を展開し、一斉斉射する事で一気に彼女までの道を切り拓くよ…。

アリスが呼ばれるのはいつも突然だからね…。
止める間もなく呼ばれてしまったからパパやママは助けられなかった…。
だから、わたし達が貴女を迎えに来たんだよ…。
ママ達はここに入る事ができないから…
この暗くて寂しい絶望の世界から救い出すよ…。
さぁ、おやすみアリス…。次に目を覚ましたら、きっと貴女の希望の世界が待ってるから…。


…貴女を助けられなくて…両親の元に帰してあげられなくて、ごめんね…(神太刀の刃を彼女へ)




 璃奈は辺りを崩壊させる九尾の妖狐に変じる。はらりはらりと散る黒桜が、茨から璃奈の身を守る。
「薙ぎ払え……」
 ぶん、と太刀を振り払えば、生じた波がはい寄る茨を切り払う。そこに呪力が侵食すれば強固な茨も脆くなる。
 脆くなった茨へと無限に顕現する魔剣を斉射して切り裂く。損なわれてもそれを埋めるように増殖していく茨のスピードにまさる勢いで、魔剣はオウガまでの道を切り開いた。
 作った道を駆け抜けながら、璃奈はオウガへ語りかける。
「アリスが呼ばれるのはいつも突然だからね……。止める間もなく呼ばれてしまったからパパやママは助けられなかった……」
 あと少しで、かつてのアリスは両親の元に戻れていたかもしれない。本当は迎えに来ていたかもしれない。きっと潜る前にかつてのアリスを止めていたはずだ。
 ただ間に合わなかっただけ、と璃奈は慰める。
「だから、わたし達が貴女を迎えに来たんだよ……。ママ達はここに入る事ができないから……」
 一般人ではここにたどり着くことすらできないから。決してあなたを捨てたわけではないと慰める。
 だからもう、嘆かなくていいから。
「この暗くて寂しい絶望の世界から救い出すよ……」
 はい寄る茨が、増え続けた茨が完全に動きを止める。強固な迷路ももう脆く崩れていく。
「さぁ、おやすみアリス……。次に目を覚ましたら、きっと貴女の希望の世界が待ってるから……」
 オウガは静かに目を閉じた。
「……貴女を助けられなくて……両親の元に帰してあげられなくて、ごめんね……」
 己の命を削りながら、振るった神太刀の刃がオウガに届いた。
 その一閃は、オウガを切り裂く。
 あとには黒い桜が涙のように散っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『星屑のわたし達』

POW   :    パ・ド・ドゥをもう一度
【ソロダンスを披露する】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。
SPD   :    我らがためのブーケ
いま戦っている対象に有効な【毒を潜ませた美しい花束】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    そして、わたし達は星になる
【星のような煌めきを纏う姿】に変身し、武器「【白銀のナイフ】」の威力増強と、【魔法のトウ・シューズ】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。

イラスト:伊間川九百

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 かつてのアリスが消えていく。
 歪んだ扉も茨が解けて、ぼろぼろと涙が溢れるように崩れていく。
 それにあわせて世界も崩壊を始めた。
 ぐらぐらと揺れて崩れる脆い世界から、飛び出してくるのは生まれるのを待っていたオウガ。
 星になれなかった、星になりたい星屑達は猟兵という星を目掛けて襲い掛かってくる。
 きっと猟兵を倒せば星になれるはずだと信じ込んで。

===
・かつてのアリスの絶望が癒やされたことで、星屑達の数は減っています。集団ではありますが、殲滅することが可能です。
ロキ・バロックヒート
葉釼くん(f02117)と
◎〆

わーぐらぐらしてる
あーあ、遊びももうお終いかぁ
違った、お仕事だったね
ふふ

えーちゃんとやれってなーに
笑って頬を抓られる
しょうがないな
愉しかったしちゃんと壊してあげるのも一興
あぁだめだめ
君たちはもうお空にのぼれないの
【先制攻撃】で【私刑】を執行

君はそんなカタチにもなれるんだ
かっこよくてきれいだね
さっきまでの優しさとうってかわって
星屑を淡々と屠る孤高の獣
ねぇもっと戦って魅せてよ

黒槍は影ある限り出でて逃がさない
怪物から逃れた星屑も堕とす

ふふ褒められちゃった
離脱?えーなんで
折角面白くなってきたのに
お仕事は程々に?
まぁいっか
葉釼くんに続いて脱出しちゃうよ

じゃあねばいばい
眠り姫


真白・葉釼
◎〆
ロキ(f25190)と

チ、足場が悪いな
ぐるり星屑たちを見回し、大まかな数を目測
…他の猟兵たちと分担すれば殺し切れる
ロキ、どうするお前
やるならちゃんとやれよ
甘ったれてふざけた言葉に、その頬を軽く抓ってやる

ロキに先手を任せ
《骨骸》――星屑を砕け
星さえ呑み込む怪物に、喰われたいヤツから掛かってこい
力のままに荒ぶる獣の如く、揺れを物ともせず
花束を踏み壊し、花弁さえも残らず引き千切る

なんだロキ、お前こそ戦えるんじゃあないか
上手く取りこぼしを潰せている
褒め言葉は獣じみた唸り声の狭間

少女のかたちをしていた星たちを十分に蹂躙してから
ロキ、離脱しよう
あとは他の猟兵で足りる
凪いだ吐息と眸
怪物の残滓を軽く払って




 崩壊する世界では大地も揺れる。地が割れて裂けて中から星屑達が飛び出してきた。
「チ、足場が悪いな」
「わーぐらぐらしてる。あーあ、遊びももうお終いかぁ」
「遊びじゃない」
「違った、お仕事だったね、ふふ」
 葉釼は飛び出してきた星屑達を見回す。大まかな数を目測で数えれば、決して無数とは言えない。
(……他の猟兵たちと分担すれば殺し切れる)
 隣でへらりと笑うロキを見る。
「ロキ、どうするお前」
「どうしよっかなー」
 どこまでも飄々として掴みどころのない返答に、葉釼は隣の金色をじっと睨めつけた。
「やるならちゃんとやれよ」
「えーちゃんとやれってなーに?」
 甘ったれた言葉にぎゅむり、褐色の頬がつねられた。そのままくすくす笑うロキに葉釼はもう一度言う。
「仕事だ。ちゃんとやれよ」
「はーい」
 叱られ素直に返事をし、ロキは飛び掛って来る星屑達へ意識を向ける。
「しょうがないな。愉しかったし、ちゃんと壊してあげるのも一興かな」
 揺れる大地でも影はできる。ロキの影から黒い槍が飛び出して襲う。
「あぁだめだめ、君たちはもうお空にのぼれないの」
 槍は星屑達を突き刺して崩れる地面へと留め、そこへ葉釼が飛び込んだ。
「骨骸――星屑を砕け」
 骨の異形を身に纏い、星さえ喰らって呑み込む怪物が星屑に飛びかかる。
「喰われたいヤツから掛かってこい」
 唸るような声を発しながら、槍に捉えられた星屑を砕く。辛うじて槍を抜いて逃れた星屑を喰らう。力を抑えることも、無理に引き出すこともなく。棘を打ち出し星屑を突き刺し、骨の外装が星屑を打ち据える。
 揺れる大地も物ともせずに、毒の潜んだ花束を踏み壊し、花弁すらも残さぬように触れた星屑全てを引きちぎっていく。
「あは、君はそんなカタチにもなれるんだ。かっこよくてきれいだね」
 歪な骨を纏った怪物を柔らかな瞳で称えるロキ。
「さっきまでの優しさとうってかわって、星屑を淡々と屠る孤高の獣。ねぇもっと戦って魅せてよ」
 星屑を確実に、情など存在しないかのように落とす獣は美しいと讃えながら、ロキは葉釼の取りこぼした星屑を黒槍で貫き砕く。幾らでも湧き出る歪な黒槍は、辺りに漂う星屑を砕いて堕としていく。
「なんだロキ、お前こそ戦えるんじゃあないか。上手く取りこぼしを潰せている」
 ロキのそばに戻ったときに葉釼の発する唸り声の間、褒め言葉が零れ落ちた。
 黒槍を操り星屑を堕とす様が、高みから蹂躙するようで先程までの巫山戯た様と違った姿だったから。
「ふふ。褒められちゃった」
 ならもうちょっとやってみようか、なんて軽口を叩いた途端、黒槍の本数が増える。
 ぐるりと周囲の星屑達を破壊しようと黒槍が飛び出して串刺していき。さらに骨の獣が少女のかたちを砕いて堕とす。
 気がつけば二人の周囲には星屑の姿が無くなっていた。
「ロキ、離脱しよう。あとは他の猟兵で足りる」
 骨が解ければ現れるのは凪いだ吐息と眸。戦いの興奮も非常な冷酷さも存在しない。あるのは代償に支払った命の分だけの気だるさと、死を齎した僅かばかりの無常感。
 煌めく星屑の残滓を軽く払って、葉釼は僅かに力なく──けれどそれを悟られることなく、戦場から離脱していく。
「離脱? えーなんで」
 星屑を堕とす様に高ぶって、金の目をより艷やかに輝かせていたロキは、その言葉に手を止める。不意をつかれた形に首を傾げて鎖を鳴らす。
「折角面白くなってきたのに。お仕事は程々に?」
 残酷な神の色をした目が瞬きするごとに穏やかな色に変わっていき、槍の射出も止まる。
「まぁいっか」
 葉釼がそう言うなら、と今興味を持っている対象を追うように脱出する。
 脱出の寸前、崩壊する世界へ視線を流した。
「じゃあねばいばい。眠り姫」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

雛菊・璃奈
おやすみ、アリス…。
どうか、安らかに…。

貴女達はあの子が世界に残した絶望の残滓…わたし達も倒されるわけにも、逃すわけにもいかない…。
貴女達を星にはしてあげられないけど、せめて、貴女達も安らかな夢へと還ると良いよ…。

【unlimitedΩ】を周囲に展開…。
黒桜の呪力放出【呪詛、衝撃波、なぎ払い、早業】により、敵集団に向けて広範囲を呪力で薙ぎ払うと同時に【unlimitedΩ】の終焉の魔剣を一斉斉射…。
展開・再斉射を繰り返して一気に敵集団を殲滅…。
生き残りは凶太刀の高速化【ダッシュ、分身】で一気に切り伏せるよ…。

敵集団殲滅後は、「破魔の鈴飾り」の音色で、せめて茨姫達を天国へ導ける様誘い、願うよ…




「おやすみ、アリス……。どうか、安らかに……」
 消えるオウガと呼応するように茨が消え失せ、歪な扉も崩れて消えていく。そして世界も崩れだした。
 世界の亀裂から、飛び出してくるのは星屑達。生まれるはずだったオウガ世界の崩壊で内部から飛び出してきた。
「貴女達はあの子が世界に残した絶望の残滓……」
 眠り姫の悪い夢の僅かな残り滓。放っておけば他の世界を滅ぼしに行くだろうオウガ達。
「だから、わたし達も倒されるわけにも、逃すわけにもいかない……」
 璃奈は周囲に無数の魔剣を呼び起こす。星を求めて、星になりたがって、トウ・シューズを煌めかせて飛んでくる星屑達を迎え撃つために。
「貴女達を星にはしてあげられないけど、せめて、貴女達も安らかな夢へと還ると良いよ……」
 終焉の魔剣が辺りに浮かぶ。黒桜が舞い散り、呪力が衝撃波となって辺り一帯を薙ぎ払う。
 放たれた黒桜に触れて崩壊を始める星屑達を、衝撃波が襲って少女のかたちを砕き、さらに細かい星屑へと変えていき。
 それでも残った星屑達へ、浮かび上がった魔剣が一斉に射出されて貫いていく。
 星屑達のナイフは璃奈に届くことはない。何度も何度も呪力を広げて薙ぎ払い、魔剣を射ち出して璃奈の周りの星屑達を薙ぎ払って。
 僅かに生き残った星屑達は、崩れる大地を飛び移って素早く接近し、残像を残す勢いの凶太刀で一体一体一気に切り伏せていく。

 僅かな星屑達の煌めきが残る戦場で、破魔の鈴飾りが璃奈の髪で微かに鳴る。清らかな音色は何かを誘うように繰り返し鳴る。
 その音色が誘ってくれるなら。どうか茨姫を、星屑達を天国へと導いてくれればいいと、璃奈は願った。

成功 🔵​🔵​🔴​

安寧・肆号
まあ、まあ!
きらきら光る…こうもりさんのようね。
輝くきらめきは茨姫さまの涙かしら。

さあ、楽団はおしまい。
骸骨のおじさまたちはありがとう。
姉妹人形「振愛・弍号」、フレアと一緒に、プリンシパルを抱きしめに行くわ。

優雅なドレスに見蕩れて―花束だってうっかり受け取ってしまいそう。
あたしたちも彼女たちみたいな綺麗なお人形さんになりたいわよね?
歌は好きでも、踊りはてんでダメなのが姉妹人形の残念なところだわ。
隙をみせて[おびき寄せ]、[毒耐性][怪力]で2人で抱きつくの。
きらきら星、捕まえた!




「まあ、まあ!」
 安寧──アンネは手を組み合わせてにっこりと見とれて笑う。
「きらきら光る……こうもりさんのようね。輝くきらめきは茨姫さまの涙かしら」
 茨姫の流した涙が星屑となって、星になる夢を見ているのだろうか。
「さあ、楽団はおしまい。骸骨のおじさまたちはありがとう」
 アンネがバトンをしまうと、大きな骸骨が姿を消した。次いで現れたのは、金の髪に赤い瞳、赤いドレスの姉妹人形。可愛いものや綺麗なものが大好きな、優しい振愛・弍号──フレアだ。
 彼女と一緒に星屑達を、プリンシパルを抱きしめに行くとアンネは決めて駆け出した。
 くるりくるり、それぞれの星屑達が一人でソロダンスを踊る。もう一度パ・ド・ドゥを踊る夢を見ながら。
 ひらりふわりと美しい青と煌めく石に彩られたドレスにうっとりとアンネとフレアは見蕩れてしまう。そしてそのまま差し出された毒をはらんだ花束をうっかり受け取りそうになって。
 寸前で手を握って首を降る。
「ううん、そう、そうね! あたしたちも彼女たちみたいな綺麗なお人形さんになりたいわよね?」
 姉妹と顔を見合わせて、二人は一緒に踊りだす。
 楽しく歌うのは好きでも踊りはてんでダメな姉妹人形は隙だらけ。アンネもそれに釣られてちょっぴりぶきっちょな踊りを見せる。
 与し易いと見たか、星屑が彼女達へと近寄ってきた。すっと手にしたナイフで突き刺そうとしたところに、アンネとフレアが二人で慈愛を満ち溢れさせて飛びついた。
「きらきら星、捕まえた!」
 ぎゅうっと抱きついて抱き締めれば、星屑達はぼろぼろと崩れながら後ろへ下がっていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

メアリー・ベスレム
◎〆
ダメよ、あなた達
星の煌めきはあまりに眩しすぎるもの
あの子の眠りの妨げになってしまうから
だから殺すわ

敵の飛翔に【咄嗟の一撃】を合わせて迎撃
多少の傷は【激痛耐性】とUCの生命力吸収でなんとかなるから
敵への攻撃を再優先、【部位破壊】でできるだけ出血し易い箇所を狙っていく
こちらの致命傷だけは【野生の勘】で避けてみせる

まるで流れ星みたい
メアリはこうして地に這って、血に塗れているのに
願いを叶えたいあなた達の方が流れ星のようだなんて
こっちも皮肉なお話ね

返り血を浴びて身体が温まって来たら
【ジャンプ】でこちらから打って出る
神話の獣は星や月をも【捕食】するらしいから
メアリにだってそれぐらいできるわ、きっとね




「ダメよ、あなた達」
 メアリーは跳ねる。崩れる大地から飛び出す星屑を追いかけて、揺らぐ大地を蹴って跳ねる。
「あなた達の望む星の煌めきはあまりに眩しすぎるもの」
 優しい星の光ならば良かったのに、星屑達が望むのは真夏の太陽のような、シリウスのような眩しい輝き。静かに眠る茨姫には眩しすぎる。
「あの子の眠りの妨げになってしまうから。だから殺すわ」
 メアリーはくらりとしそうなほど濃い血の匂いを纏う。香りだけでも体が軽くなる気がした。
 星屑の一体が煌めく星の輝きを纏って飛翔したタイミングに合わせ、咄嗟に肉切り包丁を突き出せば、きらりと星屑が砕けて揺らぐ。
 返す刃で大きな血管のある体の中心を狙って行けば、ばしゃり、ばしゃりとメアリーの全身を赤が染めていった。
 多少ナイフで傷つけられても赤に染まれば癒えていくのだから、痛みだって無視してみせる。
 致命傷だけ勘をいかして避けていき、ただひたすらに星屑達が飛んで来るのにあわせて、刃を大きな血管を狙って突き立てた。
(まるで流れ星みたい)
 煌めきながら、空から地上のメアリーへ向かって飛んでくる星屑達を見て、メアリーは思う。
「メアリはこうして地に這って、血に塗れているのに。願いを叶えたいあなた達の方が流れ星のようだなんて、こっちも皮肉なお話ね」
 地にあって星に願いをかけたい星屑こそが流れ星だなんて、なんて皮肉。
 真っ赤に染まって温まった体で飛翔する星屑へと、崩れる大地を蹴って打って出る。
(神話の獣は星や月をも捕食するらしいから、メアリにだってそれぐらいできるわ、きっとね)
 兎のヴェールを翻し、獣が跳ねる。
 星屑の首を噛み千切り、赤と星が地に落ちた。

成功 🔵​🔵​🔴​

宇迦野・兵十
◎〆
お前さん達は、どんな星になりたいんだい?
星ってのがどんなものなのか、僕にはとんと解らないけどさ
その星はきっとこんな所で輝く星じゃないんだろうね

―【三類業】で攻撃を重視、鈍刀を片手にオウガの群れへ
 星屑みたいな綺麗な動きでも、人の形の動きであればよく見たものだ
 動きを【見切り】攻撃を【早業/武器受け/残像】で捌いて
 一人一人【早技/暗殺】で斬り捨てて

これは夢だよ
茨の中で泣いていた娘が見た悪い夢
目が覚めたら忘れる夢

だからさ、お前さん達も星屑のままおやすみ
その憧れた星の夢を見たままに




「お前さん達は、どんな星になりたいんだい?」
 兵十はトン、と肩に乗せた刀を揺らしながら、くるくると一人で踊る星屑達へと問いかける。
 空に輝く星ではないのだろう。ならばどんな形になりたいのか。兵十には思い当たらない。
「星ってのがどんなものなのか、僕にはとんと解らないけどさ。その星はきっとこんな所で輝く星じゃないんだろうね」
 だからこの世界を飛び出して求めるのだろうか。けれどそれを許すわけにはいかない。
 無造作な立ち姿からすっと鈍刀・眠狸を抜き放ち。肩にかけた着物を翻し、兵十は攻めを重視した構えで、オウガの群れへと飛び込んでいく。
 煌めく星屑達の美しいステップも、仕草も、人の姿で動くのであれば、今までも良く見たもの。ならばそこから生まれる行動を見切ることだって容易い。
 舞い踊る星屑達の中へ飛び込んでいった兵十へと、辺りにから次々に突き出されるナイフ。それを彼女達の仕草や動きから見切り、時には武器を揺らめかせて捌いて、返す刀で斬り捨てる。
 きらりと刃が閃くたびに、きらりと星屑が切られて消える。まるで涙のように煌めきながら消えていく。
「これは夢だよ。茨の中で泣いていた娘が見た悪い夢、目が覚めたら忘れる夢」
 小さな娘は泣いていた。悪い夢を見て泣いていた。けれど夢は目覚めれば終わるのだ。目覚めればまた明日が来る。夢は姿を薄くして消えていく。
 その夢の残滓である星屑達も目が醒めれば消えてしまうものであるのならば。
「だからさ、お前さん達も星屑のままおやすみ」
 その憧れた星の夢を見たままに、安らかにおやすみと。
 艶やかな着物を翻らせて、兵十は星屑を斬り捨てていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

牧杜・詞
ちょっと考え事をしてしまったわね。
戦いの最中にわたしらしくもない。緩んでるわ。

それにしても壊れたアリス、とでもいえばいいのかしら?
オウガにもなりきれていないのなら、
まだいまのまま殺してあげるのがいいのかもしれないわね。
【識の境界】を使って【鉄和泉】で【切り込】んで殺してあげる。

次に生まれ変わったら……なんて気休めは言わないわ。

星になれなかったのは残念なことだとは思うけれど、
何をしても、あなたにもう続きはないわ。
終わってしまった生なら、しっかり終わりなさい。

そのお手伝いなら、してあげるわ。




(ちょっと考え事をしてしまったわね。戦いの最中にわたしらしくもない。緩んでるわ)
 進む道を塞いでいた茨が崩れていき、世界が揺れる様にオウガが打倒せれたことを知る詞。
 絶望を抱いたアリスのことを考えて足を止めてしまった事実を反省しつつ、自分らしさを取り戻そうと頭を振って。
 そして生まれるはずだったオウガ、星を求める星屑達が砕けた世界の狭間から飛び出してくるのに、鉄和泉を構え直す。
 星屑達の見た目は少女の姿。煌めくバレエの衣装のようなドレスを纏い、花束を携えてやってくる。
 すっと魅力的な香りを纏い、差し出された花束を受け取ることなく、詞は衝動を開放して星屑の一体を斬り捨てる。
(それにしても、見た目は壊れたアリス、とでもいえばいいのかしら?)
 くるり、刃を返してまた別の星屑を斬り捨てる。さらにもう一体。衝動に合わせてもう一体。
(もしもオウガにもなりきれていなかったのなら、まだいまのまま殺してあげるのがいいのかもしれないわね)
 生まれるはずだったオウガが世界の崩壊で内側から飛び出してくるからには、もうオウガなのだろう。だからそうとは言えないかもしれない。
 どちらにしても詞は殺人鬼そのものになったのだ。その衝動から星屑達を逃すわけにはいかない。
「次に生まれ変わったら……なんて気休めは言わないわ」
 オウガが生まれ変われるとは言えないから。
「星になれなかったのは残念なことだとは思うけれど、何をしても、あなたにもう続きはないわ。終わってしまった生なら、しっかり終わりなさい」
 また一体、星屑を殺人衝動のままに斬り捨てながら詞は言う。
「そのお手伝いなら、してあげるわ」

成功 🔵​🔵​🔴​

デイヴィー・ファイアダンプ
◎〆
眠りゆく世界に星が瞬くのも悪くないだろう。

けれども他人を蹴落としてまで高みを目指すような輝きは、そんな夜に相応しくないからね。
だから星屑は星屑らしく皆の願いが叶うように、“どうぞ流れ星にでもなってくれたまえ”。

それじゃ、おやすみ。




「眠りゆく世界に星が瞬くのも悪くないだろう」
 崩れる世界の中で、デイヴィーが呟く。
 けれどその星達は猟兵を星と見なして襲い掛かってくる星屑達だ。
(他人を蹴落としてまで高みを目指すような輝きは、そんな夜に相応しくないからね)
 それは優しく眠りを見守る夜にはふさわしくない。
 優しく見守る星でなければ、いけないのだから。
 青い炎を揺らめかせ、デイヴィーは星屑達を見渡す。
「だから星屑は星屑らしく皆の願いが叶うように、“どうぞ流れ星にでもなってくれたまえ”」
 デイヴィーが呪詛を紡ぐ。青い炎が辺りに広がり、一瞬で消える。
 デイヴィーに魅力的な香りの毒の花束を差し出そうとしていた星屑達が動きを止める。
 崩壊する世界だからか風が急に吹き荒れて、星屑達に花束の香りが届く。思わず自分に引き寄せて花束を近くで嗅いで、その毒に蝕まれていく。
 崩れる世界の中、星屑達は自身の毒に蝕まれて息絶える不幸に見舞われて、流れ星のように散っていく。
 幽霊の火はその光景を見て、静かに別れの言葉をつぶやいて。
「それじゃ、おやすみ」

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年05月07日
宿敵 『『七罪』怠惰の茨姫』 を撃破!


挿絵イラスト