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常夜のシュネルシュトゥルム

#グリードオーシャン

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#グリードオーシャン


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 常夜の世界ダークセイヴァーから現出した島、黒き雲に覆われ日光も届かぬ地にて不穏な空気が流れ込む。

 ──目ぇ覚めたかよ野郎共。

 ──今回の舞台が決まったらしい。

 ──クハハ……こんな陰気くせぇ島で商売かよ。

 人の手が入っていない島の北端、突如浮かび上がってきた影は船の形を取って現れた。
 船内にひしめくのは屈強な男達、一人一人が使い慣れているであろう得物を腰に着けている。
 部屋の奥、机に足を乗せ目を閉じている男が居た。暫く男達の喧騒が続く中、ゆっくりと足を上げ勢いよく机を叩く。

 ──やるこたぁ変わらねぇ、俺達は武装商船団……仕入れて捌いて金にするだけよ。
 さぁ……出張っていこうぜ。

 リーダー格の男が部屋を出る。何処へと聞かれれば破顔しながら答えるだろう。

 ──仕入れるにゃ先ずは土地を知らなきゃ、だろ?

 船を降り、目指すは何処か。かつて武装商船団と謳われたコンキスタドールが今、暗雲の土地に足を踏み入れる。

●鉄甲船
「貴方達の持つ大事な物って何かしら」
 海賊服に身を包んだ女性、芦屋・マンが集まった猟兵達を見渡し問う。
「得物、思い出深い大事なアイテム、恋人や家族に貰ったアクセサリ……色々あるわよね。彼処はグリードオーシャンに落ちてきた島」
 ダークセイヴァーの世界から落ちてきた暗雲に包まれた孤島。
「ヴォルケと呼ばれているらしいわ」
 点在していた小さな集落が合併し、大きな町となるまで発展しているダークセイヴァーという世界の枠組から外れたからこそ成せた稀有な土地である。
「先行して聞いた話なのだけれど、今夜は宴らしくて町がお祭り騒ぎらしいのよ。中でも盛り上がっているのは自身の大切な物について語り合い想いの力を結束させると言われる酒語りの時」
 灯した火は暗い雲を払うかの如く明るい光で町を照らす。収穫した作物や酒をふんだんに使った料理の数々は彼等の一年の頑張りを表してしている。広い酒場の中で己の持つ何か、それは必死な思いで手に入れた武器でも良い、オーダーメイドの丈夫な盾でも、思い出が深いアイテムでも、自身の中で大切な物を語り披露しながら酒やミルクを嗜む会。
「グリモアの使用可能範囲を広げる為にも探索が必要だし、折角だから私達も宴に参加しましょうと皆へのお誘いよ、それともう一つ」
 島へ接近する過程で見つけた巨大な船の姿。
「皆も見たかもしれないけれど私達の他に外部からの何者かが入り込んでいると見ているわ。海賊か、それともコンキスタドールなのか……それを確かめる為にも皆の力を貸して欲しいの」
 杞憂であればそれで良し、だが脅威となるならば猟兵としての本分を果たさなければならないだろう。
「積極的では無いけれど祭りの雰囲気もあって今なら外部からの客も受け入れやすくなっている筈。それじゃあ皆、よろしく頼むわね」
 鉄甲船から渡橋が降り、大地を踏む猟兵達。暗き森の中を抜け、街へと向かうのであった。


グラサンマン
 グラサンマンです、よろしくお願いします。
 グリードオーシャンの島、ヴォルケのお話となります。それでは説明をば。
「一章」
 日常です。街の宴に参加して交流を深めて貰います。ここでは皆さんのアイテム、武器でもアクセサリでも何でもいいです。思い入れのあるアイテムについて語っていただければと思います。出自やどんな物なのかみたいな。
 アイテム欄に無いものでも設定を書いて頂ければ出来る限り反映致します。
 シチュエーションは酒場の一席、同じテーブルの酔っている町人に語っているという流れなのでお気軽にどうぞ。未成年はミルクです。
 実はこの酒場にボスが居て酒呑んでますが戦闘にはなりえません。詳しくは後述へ。
「二章」
 集団戦、商船団の護衛です。動かすに当たって護衛達は一章で語った大事な物を狙ってきます。あくまで描写の範囲の中なので安心して吹っ飛ばしてください。
「三章」
 ボスです。実は酒場に居ました(描写はしません)。
 プレイングの中に一章で語ったアイテムを絡めて頂ければ振り直しのプレイングボーナスが発生致します。絡めてなくても不利になる事は無いのでご安心を。

 一章から三章まで断章更新後からの募集となります。
 途中からの参戦でもふわっとなんか書いて下されば良い感じに書いていきますので途中参加大歓迎です。それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『猟兵冒険譚』

POW   :    切った張ったの大立ち回りなエピソード

SPD   :    自身の技術や素質が活躍したエピソード

WIZ   :    機転や閃き、頭脳で身を救ったエピソード

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「良いねぇ……そうだ、そうだよ。モノには魂が宿る……俺のようなヤツが吐いて良いもんじゃねぇがな。だが……だからこそソレには価値がある、誰かが高く買う"可能性"がある」
 酒場の一角、宴の中で一人の男がグラスを傾け酒を胃に流し込む。
「例えそれが布切れや鉄くずでも良い……さぁ、聞かせてくれや、アンタらの魂が乗った一品をな」
 その声は喧騒の中で掻き消えて猟兵達が気づく事は無いだろう。
 席に着いた君達の元に届くグラス。周りには既に酔った男や女達ばかり。

 始めよう、酒語りの時間だ。
弥久・銀花
アドリブ、他の人との絡み歓迎です



魂が乗った一品ですか?
じゃあ、こんなのはどうでしょう?(【妄執の軍服ワンピース】を見せてみる)

名前も知らないのですが、歴戦の軍人が憑いてるとかで【戦闘知識】が沸いてくるんです
かなり前に古着屋で適当に買いました

割と役に立ちます、師匠の一人です




後は【邪悪な意思を持つ呪われたSFチックな拘束衣】とかもありますね

昔、スペースシップワールドの何処だったかで敵に捕らえられていた時、私に使われてた物です

複数枚有る様で、捨てても燃やしても、私の所に帰ってくるんです
何処に居てもですよ!
前に一日で3着帰って来た事がありました……

偶に油断して捕まった時には餓死しそうになったりもします


宇賀野・希月
アドリブ、絡み歓迎
語る→『化かしの羽衣』


島民の服に【変装】して参加。
一枚の布にした羽衣を取り出し、恥ずかしさを酒で流しながら語ります。

こんな旅人の話で良ければ聞いてくれ。
これは所謂魔法の布でね。素質さえあれば形を好きに変えられるんだ。

そう言って、妖力で羽衣をスーツに変えつつ、子供の頃にヒーロー修行として教わった【早着替え】術で、一瞬でスーツ姿に。
これで敵の気は引けたかな?


この格好か?俺の…バトルコスチューム、かな。故郷じゃ非戦闘員の仕事着なんだが…。
…初めて誰か助けるために戦った時、この格好だったんだよ。以来、戦う時はこれなんだ。

…やっぱり柄じゃないな、こういう話は。もう一杯酒をくれ!




「しかしこんな盛大に酒盛りなんてあるものなんだな」
 酒場を見渡し適当な席に着いた宇賀野・希月(火雷黒狐・f26799)は同じ卓に座っていた島民達へ話しかける。
「そりゃそうよ! 一年に一回、これしかねぇ祭りなんだ、やるなら派手に行かねぇとなぁ! なんだ兄ちゃん、見ねぇ顔かと思ったら旅人かぁ? 最近越してきた誰かと思ったぜ」
 宴の雰囲気に当てられているのだろう、話しかければ気さくな言葉が返ってくる。後はもう一つ。
「はは、最近流れ着いてきたんだ。先が見えるまで少しばかり世話になろうと来たら宴の雰囲気が見えたから来てみた訳さ」
 島民が着ている服と似た雰囲気の服装、所謂変装だ。自分達と似た背格好というものは存外に相手の警戒心を薄くしてくれるもの。視界情報を有利に取った策である。島民の男達も笑いながら酒の入ったジョッキを希月へ差し出しながらさぁ話そうとした時。
「あの、同席しても?」
 白髪赤眼、人狼の少女、弥久・銀花(隻眼の人狼少女剣士・f00983)が小さめのカップを持ちながら希月達へ声を掛ける。
「あぁ、良いんじゃないか。なぁ皆?」
 率先して周囲に同意を求める希月、既に酒も入っている事もあり警戒するより前に頷いていく男達。どうぞ、と席へ案内しそれに応じる銀花、咄嗟に連携し同席に成功する。

「さて、酒語りだったか……折角だし一番手を貰おうか、こんな旅人の話で良ければ聞いてくれ」
 場がある程度温まった所で希月が名乗り出れば、やんややんやと男達と銀花が拍手で応える。少し照れくさそうに語り出すのだ。
「これを見てくれ」
 取り出したのは一枚の布、一見してみれば変哲もない布にしか見えないが。
「所謂魔法の布ってやつさ。素質さえあれば形を好きに変えることができる」
 怪訝な表情を浮かべる男達にそりゃそうだよなと内心苦笑する希月は席を立つと布を前に広げ。
「見ててくれ」
 彼等はその場で唖然としながら眼前に立つ青年を見る。そこにあった筈の布が瞬く間に小綺麗な服に変わったのだから。
「な、なんだそりゃあ……」
「な、なんですかそれは……」
 何故か銀花も同じリアクションを取っているが気にせずに説明を始める。
「えーっと、スーツと言って俺の居た所では一般的な服装だったんだけど……これを……こうっ!」
 希月が一回転すると同時、その姿が島民の服からパリッとしたスーツ姿へと変わっているではないか。
 彼がヒーローズアースで手に入れた早着替えの術、いつなんどきでもヒーローとして動く為の技。
「かっちょいいじゃねぇか兄ちゃん! なんだい端からその格好で来りゃ女共の目も釘付けだったのによぉ!」
「そうだそうだー!」
 銀花の相槌はそれで果たして合っているのかはともかく、スーツ姿の青年は僅かに頬を赤らめながら。
「ははは……バトルコスチュームでもあるからな」
 バトルコスチューム? と男達が疑問符を浮かべれば。
「初めて誰か助けるために戦った時、この格好だったんだよ。以来、戦う時はこれなんだ」
 一般人として生きる筈であった彼、ヴィランの襲撃に巻き込まれ逃げている最中に目に入ってしまった子供の危機、どうしても見捨てたくは無かった青年が覚醒した時の格好。語る事はせずとも忘れる事は無い猟兵宇賀野・希月としての原点。
「あー……やっぱり柄じゃないなこういう話は! もう一杯酒をくれ!」
 囃す島民と銀花に照れ隠しか大声で酒を頼む希月であった。

「ふぅ……楽しかったですね」
「そっちまで囃す必要あったのか……?」
 希月の言葉を華麗にスルーしながら銀花は自分の番ですね、とバッグから何かを取り出す。
「こんなのはどうでしょう」
 それは一着のワンピース、軍服の様な造りになっており、実用を考慮してか装飾も動きに邪魔にならない程度に抑えられている。
「こりゃなんだぁ、さっきの兄ちゃんのみたいに変形するんけ」
 その場の全員でまじまじと見てみるが特に変わった所は見られない。
「名前も知らないのですが、歴戦の軍人が憑いてるとかで」
 幽霊憑き、余り縁起の良い物では無いかと邪推してしまうが。
「これを着ていると戦闘知識が沸いてくるんですよ。たまにセクハラしてきますけど」
 セクハラ? 一同全員が更に疑問符を浮かべた瞬間である。銀花は気づく様子も無く次の服を取り出す。
「後は……これこれ、邪悪な意思を持つ呪われたSFチックな拘束衣です」
「邪悪な意思を持つ呪われたSFチックな拘束衣」
 なんだこれは、全員の意思が繋がった瞬間である。
「前にある所で敵に捕らえられた時に使われた物です」
「嬢ちゃん……そりゃどっかに捨てた方がええんでないか?」
「どうにかして処分したい物じゃないかそれ……?」
 こうなってくると色々心配になってくる島民と希月、しかし銀花は真顔で。
「捨てても燃やしても、私の所に帰ってくるんです……! 何処に居てもですよ……! 前に一日三着返ってきた事もありました」
「おぅ……」
 もう誰も何も言えない、手持ち無沙汰でとりあえず酒を呷る。
「ふぅ……どうでしょうウチの自慢の持ち物達は!」
「いけないでしょ」
「なんとかした方が良い」
「嬢ちゃんそもそもなんで捕まってんだ……?」
「なんで呪いのアイテムばかりなの……?」
 当然の反応であった。

 ──ほぉ……化かしの羽衣に呪いの防具、ねぇ……
 酒場の端、一人の男が静かに酒を飲んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アリス・レヴェリー
大切なもの、ね
どれもこれも大切でどのお話をすればいいか迷ってしまうけれど……ここは、【あの日の約束】のお話をしたげるわ
獅子の牙に鯨の髭、鳥の尾羽根に真鍮の歯車で造られたこのアクセサリーはね、それぞれお友達の一部を元にしているのよ。生え変わった牙に、抜けた尾羽根を髭で連ねて、わたしが目覚めた場所から持ち出した歯車をベースにお友達と作ったの
今わたしがこうしてつけているのは四分割されたうちの一つで、他の三つはそれぞれお友達が身につけているわ。全てを合わせると、ぴたっと一つの完全な形になるのよ!
いつまでも一緒にいようねって約束した証なの
……ミルクをいただくわね。さぁ、次はあなた達のお話を聞かせて?


護堂・結城
ほーほー、そういう思い入れの品がねぇ、良いじゃないか
ん、俺はどうだって?それを語るにはちょっとまだ口の滑りが足りないかな
おかわりー

思い入れの深いといえば…やっぱりこの赤と青の勾玉かねぇ
ほら氷牙、吹雪、ご挨拶しな
そう、うちのドラゴン……ランスではないな

故郷の祠に祀り上げられてたのが飛び出してきたときは驚いたもんさ
大事な仲間、悪友であり、戦友であり、俺の家族だ

ぐぇっ(いきなりUCの狐に潰され)
忘れてない、忘れてないからいきなりのしかかんなユキ
潰れる、潰れるから、やめろ親父殿
ほら、あっちの嬢ちゃんも笑ってんじゃねぇか

あー…まぁこんな感じで一緒に旅してきた大切な絆の象徴さ




「オイオイ見ねぇ嬢ちゃんが迷い込んでんぞ?」
「あぁん? どっかの旅人の連れじゃねぇのか? 騒ぎに釣られて来ちまったか?」
 ニコニコと席に着くアリス・レヴェリー(真鍮の詩・f02153)に怪訝な表情を向けながら酒を呷る島民達。
「あら、旅人なのは間違いでは無いけれど迷い子じゃないわ! わたしはアリス、酒語りに参加しにきたの」
 楽しければそれで良いという男達は、世界は広いなぁ、と思う程度で後は考えない事に決めた。これだけを付け加え。
「ほぉん……あ、歳は知らねぇが酒はやめとけよ? 俺達が疑われちまう」
 ちっせぇ男だなぁ! と野次る者達に怒鳴りつけている様子を微笑ましそうに眺めるアリスに毒気を抜かれたのか、それ以上男達も何か言う事は無くなる。
「ふふ……何を話そうかしら、沢山あり過ぎて迷うわね……」
 ウキウキしながら顎に指を当てうんうんと唸っている所は楽しい事を共有したがる純粋無垢な子供の様。
「どれもこれも大切なお話だけどここは『あの日の約束』のお話をしたげるわ。どうぞ聞いてちょうだい」
 何やら大仰な題目じゃねぇかと男達もジョッキを片手に耳を傾ける。
「これよ」
 ポシェットから取り出したのは欠けた歯車に手を加えられた紐が通ったペンダント。
「なんだぁこりゃあ、歯車か?」
「えぇ、獅子の牙に鯨の髭、鳥の尾羽根……それと真鍮の歯車で作ったの」
 牙、尾羽根を髭で連ねて歯車に通した物、切れる事の無い髭に加工した牙と羽根が彩っている。
「これはね、わたしのお友達の一部を元にしているの。わたしが目覚めた場所から持ち出した歯車をベースにね」
 自慢気に見せるそれは決して煌びやかな宝石、特別な意匠を拵えている訳でもない。
「……そのお友達とやらは今はどうしてるんだい」
 心から楽しそうに話す少女にチビチビと酒を飲みながら聞いてみれば。
「今は姿を見せていないだけで一緒に居るわ、わたしが着けているのは四分割にした中の一つ。残りの三つはそれぞれお友達が身に着けているのよ」
 ふんす、と鼻を鳴らしながら歯車部を見せて。
「全てを合わせると、ぴたっと一つの完全な形になるのよ! 何時までも一緒にいようねって約束した証なの」
 名前は無い、"あの日の約束"という証なのだ。

 黄金の獅子「ダイナ」

 空飛ぶ白鯨「ムート」

 星標の大鷲「アルテア」

 絆は何時までにも彼女と共に在り、傍に寄り添っているのだろう。
「さぁ、次はあなたのお話を聞かせて?」


「さて、何を話したものかね」
 とある卓、護堂・結城(雪見九尾・f00944)はお代わりのジョッキを受け取り豪快に呷って机に置けば心地好い酔いの気配が体内を巡るだろう。そう言いながら酒はまだまだ足りない位なのだが。
「ほーほー、そういう思い入れの品がねぇ、良いじゃないか」
 周囲の話を聞いていれば中々に面白い話が出ている。人それぞれに歴史あり、酒のツマミには良い物だ。たまに相槌を打ち、笑いながら酒を飲んでいれば島民達の視線はついに結城へと集まる。
 俺達も話したんだからお前も何かツマミを出せと言うかのような気配を当てられ苦笑すれば仕方なしと姿勢を少し正す。
「やっぱりこの赤と青の勾玉かねぇ。ほら、挨拶しな」
 挨拶……? 集まった勾玉への視線が直ぐに驚愕へと変わるだろう。
【ギャウ! ギャウギャ!】
 勾玉から飛び出すように現れたのは二体の竜。元気よく鳴きながら結城の頭上をグルグルと回り、両肩へとまる。
「りゅ、竜じゃねぇか……」
「そう、赤い方から出てきたのが吹雪、青い方のは氷牙だ」
 指で顎を撫でれば擽ったそうに目を細めて、島民達もその様子に感心したような目を向ける。
「故郷の祠で祀り上げられてたこいつらがいきなり飛び出して来た時は驚いたものさ」
「兄ちゃんにとってどんな存在なんでぇ」
 返答も大体わかっているのだろう、ニヤニヤしながら聞けば少し照れの混じった笑みを浮かべながら。
「そりゃあ……大事な仲間、悪友であり、戦友であり」
 慈しむ表情は惹き込まれる笑顔で。
「大切な家族さ」
 言い切るのだ。

「ぐぇっ!?」
 突然前のめり気味に揺れる結城に驚く島民達。
「き、狐……?」
「わ、忘れてない、忘れてないからいきなりのしかかんなユキ……!」
 白き狐は何処か不満げ顔つきのまま結城の頭からは退かない。
「潰れる、潰れるから! おま……体重かけるんじゃない……!」
 仲間外れにされたのが相当堪えた様で、中々に怒りは収まらない。己の半身は随分と嫉妬深かったみたいである。
 漸く許してくれたのか、頭からは退いて脇に座れば首に手を当てながら苦笑し。
「あー……まぁこんな感じで一緒に旅してきた大切な絆の象徴で」
 そう、彼にとってかけがえのない絆で。

「消せはしない繋がりなのさ」


 ──友、絆……ねぇ。

 ──あぁ、あぁ悪くねぇなぁ。個では無く複数

 ──見るヤツに寄りゃそれは金銀より遥かに高い価値があるモンだ……悪くねぇ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
絶望の闇から墜ちて光を得た地。
元の世界出身としては感慨深いものがある。

(語るのは『折れた神殺しの魔剣の柄』)
…一度殺された俺は多くを喪った。
国は滅び記憶は失い。朧気に残った価値観だけで彷徨う亡霊騎士。
しかし運命は奇縁なもので、先祖が同じ鎧を身に着け本当に化けて出た。
先祖は殺戮をせずにいられない狂人となっていたが、
騎士の誇りが一抹の理性となり、戦場を求めることで己を無力な民草から遠ざけた。
斯くして、狂いてなお誇りある黒騎士は不肖の末代に巡り会い介錯され、魔剣と誇りを託して成仏した。

これがその剣。
傍から見れば最早鉄屑だが、すべて失った俺に唯一届いた『過去』だ。

あと稀に声が聞こえる。
【アドリブ歓迎】




「(絶望の闇から墜ちて光を得た、か……世界の理から外れたが故に解放を得た地)」
 ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)はカウンター席に着き周囲の喧騒に耳を傾けていた。
 先程言葉には出さなかった思いも皮肉に聞こえるかもしれないが、同時にダークセイヴァー出身の彼としては言葉にはし難い感慨の深い光景としても映っていた。
「強いな、どの様な環境に置いても明日を生きる為に動ける強さがある……」
 世界から追い出されたとしても明日はやってくる。お腹も空けば眠くもなる、未来への脈動を彼等からしっかりと感じる事ができるのだ。
「お客さん、お客さん……」
 カラン……
 氷が溶けてグラスの中で回っている、既に空となった其れを見て店主が声を掛けてくれたのだろう。
「お代わりは如何です?」
「あぁ、それでは同じものを」
 出されたグラスを手に取りながら店主がカウンター内でルパートと向かう形で座っている事に気づく。
「ははは、暫くはあいつらも酒は大丈夫みたいだし私も休憩ですわ」
 そうか、と相槌を返せば。
「お客さんも折角来たんです、私相手で宜しければ一つお話でもどうでしょ」
 喧騒を肴に飲んでいたが気を使わせてしまったらしい、だがそう言われると程よく回った酒気が欲を引っ張り出して来る。それなら、とルパートは訥々と語り始めるのだ。

「俺という存在は一度死に至り、多くを喪った」
 それはルパートとしての肉体
 それは己の道程として刻み込まれてきた筈の記憶
「国は滅んだ、と理解は出来ても記憶も無ければ己が関わったという感覚も掴めない。朧気に残った価値観だけで現世を彷徨う亡霊の様なものだ」
 いつの間にやら空になったグラスに酒が注がれ。
「しかし運命とは奇縁な物でな、先祖が同じ鎧を着けて化けて出たのだ」
 魔剣の呪いに狂い、しかして振るわれる剣は贖罪の為に。
「狂人と成り果て殺戮衝動に意思を塗り替えられていた。それでも残していた僅かな騎士としての矜持が一抹の理性となり、最期まで抗っていた」
 戦場を求める事で己を民草から遠ざける。
「消せぬ衝動ならば、せめてそれを向けるのはより強き殺戮の気を放つ者に……」
 斯くして誇り高き黒騎士は末代と巡り会い解釈されり。
「これがその剣、最早鉄屑ではあるがすべて失った俺に唯一届いた『過去』だ」
 出された剣、否、元は剣であった物と称した方が正しいであろう品を店主が見つめてみれば、確かに鉄屑と言われても否定は出来ないほどに損傷しているのが分かる。
「こんな所か」
 それは覚悟であり、騎士としての道を外れない為の誓いだ。
「大層な……いや、自戒の為の品ですかい」
 神妙な表情で頷く店主に否定も肯定もせずにグラスを呷り。

 ────汝ならば、違えぬ筈だ。

「え、い、いま……」
「あぁ、あと稀に声が聞こえる」
 戸惑う店主の姿に、置いたグラスに映るルパートは笑った様に見えた。


 ──鉄屑? まさか、俺からしたら大金叩いてでも欲しくなっちまうモンだなぁ。

 ──例え奪ってでもな。

大成功 🔵​🔵​🔵​

グレイ・ゴースト
さて、それじゃあ何からお話しようかしら?
色々あるけれどやっぱりこの子ね

(腰から下げた銀色の箱を檻ごと机に乗せ)

この子はわたくしの共犯者なの
わたくしを自由にする代わりにこの子に世界を見せる
そういう取引をしたの

“商品”が手を組んで持ち主に反旗を翻す
よくある話ね
持ち主がどうなったかって? それはナイショ
想像にお任せするわ

以降わたくしはこの子から貰った力で荒事をこなしてお金を稼いで
それを元手に商人になって船を買って今に至る、って感じね
わたくしは本来ならちょっと幽霊とお話できるだけの精霊なの
でもこの子のおかげで戦う力を得た
こんなところかしら?

(話し終わると銀色の箱がコトリと揺れる)
ふふ、照れないの




「おぉう姉ちゃん随分色っぺぇ格好してんじゃねぇか」
 酒場の中心近く、盛り上がる卓の中でグレイ・ゴースト(守銭奴船長・f26168)は微笑みながら伸びてきた手を叩く。
「あら、この手は何かしら? 報酬も無しにいけない手ね」
 口をすぼませながらいじけた顔を見せる男に流し目を見せれば周りの男達は呵呵大笑しながら野次っていく。酒が入れば彼等にとっては何でも肴になるもの、グレイもそれを理解している為、魅せる様におどけた声音で返したのだ。
「さて、酒語りね……何からお話しようかしら?」
 自在に動かせる布、シーレーン・パンヌス。
 意志ある金貨、インフィニタース・ペクーニア。
 道筋を示す指輪、ケーラ・アーヌルス。
 己が持つは一級品の宝、自慢するとなればどれも見劣りはしないが。
「色々あるけれど……やっぱりこの子ね」
 腰から下げた銀色の箱が檻ごと机に乗せられる。
「なんでぇこりゃあ……随分と厳重じゃねぇの」
 物珍しさもあってか周りの男達もまじまじと其れを見詰める。中に何が入ってるか酒をチップに即賭事が始まるのもある意味この島が平和である事を示しているのかもしれない。
「この子はわたくしの共犯者なの」
 共犯者……? と怪訝そうな顔をしているのは一人では無い。それはこんな反応にもなるかと胸中で苦笑を浮かべるグレイは優しく檻を撫でながら続きを話す。
「わたくしを自由にする代わりにこの子に世界を見せる……見世物としてしか身動きが取れなかった当時のわたくしに持ちかけてきた契約」
 共に商品として扱われていた二つの意志ある存在が手を組んだその時、魔導生命グレイ・ゴーストとソキウス・メガリスは共に歩んでいく相棒となった瞬間なのである。
「見世物、ねぇ……元の持ち主とやらはどうしたんでぇ」
 実に妖艶な笑みを浮かべながら唇を動かし。
「ナ・イ・ショ……ご想像にお任せするわ」
 確かに感じる色気に男達は何故か背筋に薄ら寒い感覚を覚える。なんとなしにこの後深くは聞いていけない気がしたのだ。
「フフッその後はこの子から貰った力で荒事なんかをこなしてお金を稼ぎ、それを元手に商人なった……で良かったかしらね」
 島から島を跨ぐ大海の商人は時には冒険、またある時は力を持って金を貯めて自身の船を購入。
「そして今に至るってわけかい」
「えぇ、わたくしは本来ならちょっと幽霊とお話できるだけの精霊なの。でもこの子のおかげで戦う力を得た……こんな所かしら?」
 話し終えて見れば男達も銀色の箱に畏敬の視線を送っている様に感じる。
 集まる注目にコトコトと揺れる箱にグレイは素の笑顔を見せて。
「ふふ、照れないの」
 確かな繋がりが彼女達から感じ取ることが出来るだろう。


 ──カカカッ! おいおいマジかよ……メガリスたぁまさかのモン見せてくれるじゃねぇか……

 ──やるこたぁ変わらねぇ、だがアイツらが目の色変えそうだなぁこりゃあ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

草野・千秋
グリードオーシャンにも色々な島が増えてきましたね
ここは今お祭り騒ぎなのですか
ええと、お酒頂けるんですね?
僕サイボーグなので酩酊はしないんですけど
好きなんです、飲みの雰囲気が
あとテンション酔いしたり

このシンフォニックデバイスについて語ります
『pulchre, bene, recte』
美しく善く正しき存在であれという願いが込められた名前です
猟兵として歌も使って戦うと決めた時
僕のユーベルコードにもある歌の女神様が
ある日現れてこれをくれました
白薔薇のモチーフ
誇り高き歌い手であるために
試しに歌でも披露してみましょうか?
歌唱、楽器演奏、【Heaven in a wild flower】を披露




「グリードオーシャンにも色々な島が増えて来ましたね」
 ぽつりと零した言葉にはこれまで経験した島での冒険への想いが乗せられている。
 賭博場でウサギさんのレースを応援したり、珊瑚礁の美しい海での一時も過ごした。時には沈没船のコンキスタドールなってしまった者を封じたりと楽しかった事もあれば覚悟を持って当たった依頼もある。
「お祭り騒ぎ……ええと、お酒を頂けるんですね?」
 草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)がそろそろと店主に聞いてみれば静かに微笑みながら頷いてくれる。カウンターを勧められれ助かったと言うかの様に席に着く千秋は出されたカップに注がれた赤色の水に視線を向けて。
「あ、ありがとうございます、これは……」
「葡萄の果実酒さ、上等なものは置いちゃいないが味は悪くない」
 グラスを拭きながら喧騒に耳を傾けている二人、口に含めばさっぱりとした口当たりでも確かに主張する酸味と渋味が口内に広がっていく。
「どうだい」
「美味しい、です。僕サイボーグなので酩酊はしないんですけど好きなんです、飲みの雰囲気が」
「ほう? サイボーグ……気にはなるが今夜は酒語りの時間だ、兄さんも何か語る物はないのかい?」
 促され少し思考した後、千秋は一つのアイテムをカウンターに置く。
「pulchre, bene, recte」
 白い薔薇が飾られている手入れの行き届いたシンフォニックデバイス、『radu』として音楽活動をしている時にも重用している大事な一品。
「美しく善く正しき存在であれという願いが込められていて、僕の大切な相棒でもあります」
 猟兵として、ヒーローとして、歌も使って戦うと決めたあの日。
「そう、あの日……女神様がこれを僕に渡してくれたんです」
 それは誓い。
 自らができる全てを。
 平和の為に使うと。
「あれから今、そしてこれからも……」

 ────僕は誇り高き歌い手であるために

「歌い手か……ここ数年まともなもん聴いてないな」
 店主の苦笑に千秋は。
「試しに歌でも披露してみましょうか?」
「良いのかい?」
「もちろん」
 彼の歌の一つ、【Heaven in a wild flower】は誰かの希望に呼びかける歌、聴いてもらってこそ意義がある。
 手持ちの機材を起動、簡易的ではあるが一つの舞台が出来上がる。息を吸い、目を前に向ければ何事かと此方を見る観客達。世界の理から外れ平和を得た彼等に贈る希望の唄。
「──君に名前をつけてあげよう、この世にたったひとつしか存在しない名前を」
 バラバラに騒いでいた彼等が、今……一つになる。


 ──つくづく思う

 ──他所から現れた奴等、此奴らこそが停滞していた世界を動かす。動いたなら現れる筈だ、商売の好機が

「良い声してんじゃねぇか」
 静かな笑みを浮かべた男は酒場から出る。様子見の時間は、終わったのだから────

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『武装商船団・雇われ船員』

POW   :    姑息なる武装「商品使用」
装備中のアイテム「【湾曲刀(商品)】」の効果・威力・射程を3倍に増幅する。
SPD   :    偶然なる連携「十字砲火」
【好き勝手に動く船員達が銃撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    強欲なる叫び「士気高揚」
【誰よりも強い】という願いを【船員達】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


☆────────────────☆
断章の更新は28日23時以降となります
☆────────────────☆
訂正:✕28日
   ○27日
申し訳ありません本日(27日23時以降となります)

 ──クハハ! マジで来んのかよ!

 ──テメェらの大事なモンは預かったってか? てーかなんでそん時ぶんどってこなかったんだよ!

 ──まーだ海賊じゃねぇって言ってんのかぁ? こんな身体になっちまえばもう関係無ぇだろ!?

 ──まぁ良いじゃねぇか、野郎共来たようだぜぇ? タダで通せとは言われちゃいねぇんだ、歓迎しようじゃねぇか……

「俺達のやり方でなぁ!!」

 猟兵達に届いた手紙の中に記されていたのは船の場所と誘いの言葉。
 応じなければこの島へ商談を持ちかけ稼がせてもらうと記載されているが、要は来なければ法外な金額で無理矢理売りつけて毟り取ろうというのだ。

 船上へとあがる猟兵達、見渡すはコンキスタドールの群。
 奇襲、人質、悪辣何でもあり、海の男達との戦闘が今、始まる。
弥久・銀花
アドリブ、他の人との絡み、ピンチシーン歓迎です




この私の着衣を欲しがってるんですか?
良いですよ、奪える物なら是非とも奪って見せて下さい!!

この、私を拘束している『邪悪な意思を持つ呪われたSFチックな拘束衣』を!


……
…………
………………

何か言ったらどうなんですか? 護衛が出てきたんですよ
と言うか早く奪って下さい(拘束はまだ、腕のみなので頑張って足だけで船上に上がりました)

油断しないで寝てたら何時の間にかこうなってたんです、笑わないで下さい

笑うのなら貴方も同じ目に遭わせてあげますよ

(一番むかつく敵にユーベルコードを食らわせます、同じ状態になるので相手も拘束衣を着ます、拘束衣が増えました)




『おいおいおい来やがったぜぇ』
『ゲハハハハ! だが素直に渡すなんてこたぁねぇだろ!』
『構いやしねぇさ、やるこた一つ……話に乗らねぇなら奪うのみよ!』
 見ゆるは船室扉の上、雨雲から放たれる雷が黒いシルエットを僅かに映し出す。そこに立つは猟兵の少女……

「この私の着衣を欲しがってるんですか?」
 白髪が美しく風に流れていく。
「良いですよ、奪える物なら……」
 影が薄れ、その姿が顕になる。そこには……
「是非とも奪って見せて下さい!!」
 そこには何故か拘束されている銀花の姿があった。
「さぁ、早く!」
 至って真面目な表情で。
「この、私を拘束している『邪悪な意思を持つ呪われたSFチックな拘束衣』を!」
 声はどんどん大きくなる。

「う ば っ て ! !」

『なんでこいつぁわざわざ着てきたんだ……』
『言ってやるなよ……』
『必死が過ぎる……』
 それはそうだろう、突然拘束された状態で現れて奪ってと連呼する娘を見させられるなんて船員達も思ってなかった筈だ。
『つーかどうやってここまで来たんだよ』
「腕は拘束されてるので足だけで跳んで来ました。凄いでしょう」
『なんでちょっとドヤ顔なんだよ……』
 毒気を抜かれた表情をする船員を別の船員が窘める。どんな状況下とはいえ猟兵は猟兵、油断は命取りになるのは彼等も理解しているのだろう。
「油断しないで寝てたらいつの間にかこうなっていたのです」
『(爆笑)』
「笑わないでください」
 それを慢心というのではないかという疑問はさておき拘束されたまま終始真顔で呟く姿は船員達の笑いのツボに入ったようで止むことが無い。寧ろ笑い声が大きくなっている。
「ゆるせませんね……」
 捕まりながら言うことではない。
『ガハハハハ!!捕まりながら言うことじゃねぇわな!!』
 ここでようやく銃を構える武装商船団、だが遅い、遅すぎた。
「笑うのなら……」
『笑うのならなんだってんだ』
「貴方も同じ目に……」

 ────遭 わ せ て あ げ ま す よ。

 それは一瞬の出来事。巧みな脚さばきで笑う船員の背後に接近しユーベルコードを発動する。
「せめて貴方だけでも道連れに……」
 名誉はあんまり無い撤退、自身と同じ状態にして瞬間的な移動を果たすその技は名前に反してとても強力な物。
『なっ……!』
 つまり船員にも同じ拘束衣が装着されるということだ。もがくが外れる筈も無く身動ぎするだけ。
「あ……」
 得意気に一人を行動不能にしたことを誇っていたがある事に気づいてしまう。
「拘束衣、増えてしまいました……」
 この後これがどうなったかは銀花のみが知る事である。

成功 🔵​🔵​🔴​

草野・千秋
商船団の護衛ですね、僕ら猟兵は人々を守ってこそです
上手く立ち回らねば
雇われ船員といっても相手はれっきとしたコンキスタドールです
油断はしてはならない
船の場所を聞いたからには僕らがここで叩きのめすのみですね!
変身!

勇気を出して行動、僕は歌の女神さまの期待を裏切る真似はしない
好き勝手に動く船員達は、範囲攻撃+スナイパー+一斉発射+2回攻撃
湾曲刀も厄介そうですね……持つ手を部位破壊しておきたいところです
歌唱+楽器演奏+UC【Tagetes erecta】で
敵を切り裂く音符の雨を降らせますよ
戦闘知識+第六感+視力で敵攻撃を見切ろうとし
当たれば盾受け+激痛耐性で耐える


グレイ・ゴースト
わたくしを差し置いて商談だなんて勝手が過ぎるのではなくて?
さぁ、交渉《戦闘》を始めましょう

んー……見たところ安物の湾曲刀のようだし貴方達もたかが知れるわね
まずはメガリスを餌にわたくしの周囲に集まる様に誘導
銃弾や剣戟はマキナの大鎌形態である程度は弾き、防ぐ

囲まれたところでわざと一太刀浴びてやられたフリ
わたくしの水の身体は斬れないし効かないけどね

油断してメガリスに近づいてきた船員の口元へ水と化した手を伸ばし窒息させる

「その子はわたくしの物よ」

その後は流体の特性を生かして攻撃を防ぎながらマキナを持つ手を鞭の様にしならせ周囲の船員を薙ぎ払いましょう

「水も滴るいい女、ってね? 存分にやられなさいな」




「雇われ船員といっても相手はれっきとしたコンキスタドールです、油断してはならない」
 千秋の腰に装着されているtonitrus transformatio、ベルトが閃光の如く輝き身を包む。
「聞いたからには……誘導に乗ったからには僕らがここで叩きのめすのみです!」
 示すは断罪、掲げるは義、魅せるは鈍色に光沢する装甲。
「変……身っ!」
 登場せしは罪を断ずるヒーロー、ダムナーティオー。
『なんだぁコイツァ……姿が変わりやがった!!』
『カカカッ! おもしれぇ! コイツ自身なのかなんらかの絡繰があんのか知らねぇが……』
 姿を変える千秋に興味を示す船員達、それが自分達に扱えるかなんてどうでも良いのだ。
『おうおうそれをちょっくら貸しちゃあくれねぇか? 悪いようにはしねぇからよぉ? 幾らだ、幾らでそれ買ったんだよ、倍にして返してやるぜぇ?』
 なぜなら彼等は其れを金貨の元、商品としてしか見ていないのだから。
「渡す訳が無いだろう。僕は歌の女神さまの期待を裏切る真似はしない……!」
 構えたordinis tabesで弾丸をばら撒く、船員達の互いに連携の取る気も無い挙動が動きを読ませない。狙いは定めつつも牽制を優先させ背後を取らせないように立ち回るのだ。
『カカカッ! このまま押し切っ……あ?』
 横殴りされたかのように吹き飛び床を転がる船員に一斉に視線が集まる、そこに立つのは軽装に船乗りマントを羽織った女性、武装商船Ora et laboraの船長グレイ・ゴーストその人であった。
「わたくしを差し置いて商談だなんて勝手が過ぎるのではなくて?」
「援軍か……!」
「ふふ……一人よりは二人、いや、三人の方が捗るでしょう」
 檻から放たれた銀の箱がコトリと揺れればグレイは困った笑みを浮かべ撫でる。
「さぁ……商売なのでしょう? 交渉《戦闘》を始めましょう」
『このアマァ……ちょっくら痛め付けてやらねぇといけねぇよなぁ!?』
 言い終わると同時、グレイの首に狙いを定めた湾曲刀の一閃が背後から振るわれる。
「危ない……!」
 千秋も周囲の船員達への対処で反応出来ず、声を出す事しかできない、がその心配は杞憂となる。
「あら、待っていてくれたのかしら。存外優しいのね」
 金属が重なり軋む音と衝撃が響くと振るった筈の湾曲刀は彼女の首を落とす事は無く回転しながら転がっていく。
 船員が戦き見ればグレイの後ろ手に構えた蒸気機関式大口径狙撃鎌、マキナ・ファルクスが弾いたのだと理解出来る。
「よし……意識が向こうに行った……!」
 一瞬でも有難い、此方へ向けられていた視線が途切れれば体勢を整えられる。リロードしながらばら蒔いていた銃撃を単体スナイプに変更。確実に一体一体仕留めていく。
「んー……随分と安物の湾曲刀、貴方達もたかが知れてるわね」
 弾き、撃ち落としながら値踏みの視線を送る。確かに数は暴力であり時には巨なる一を飲み込む事もある。
「彼等には自己が無いようにも見える」
「えぇ、金さえあれば良い、そこまでは良くても……」
 飛距離の伸びた湾曲刀が遂にグレイの身体を横に薙ぐ。ニヤリと笑う船員に同じく笑みで返せば怪訝な表情が驚きに変わる。
「そこで停滞しては意味が無いの。言うでしょう?」
 ──宝の持ち腐れって。
 水の身体である彼女を斬っても流水の如く交わり元に戻るだけ。
「貴方達が狙うのはこれでしょう?」
 銀の箱を宙へ放れば欲に勝てない者達が身体をそちらへと向ける。油断した訳では無い、彼等はそうやって生きている、宝があれば追いかけるのが当然という生き物なのだから。
「素直なのは悪い事ではないわ、でもね……」
 男は手を伸ばす、もう少し、もう少しで手が届く。
「その子はわたくしの物よ」
 グレイの手が水へと戻り船員の口を塞ぐ、十秒、二十秒、藻掻く手が必死に水を掻くが虚しく水の音だけが響くのみ。
「セット完了……聴け……! 僕の歌をっ!」
 メガリスに意識が向いていたという事はこの男からも目を逸らしていたという事。
 群青色のギターを鳴らし、船内全域へ届く歌を放つ。
「──Tagetes erecta」
 歌から発生するメロディが音符として具現化し雨のように降り注ぐ。
 悲しみと言葉を持つ旋律はその場全員の心を静かに震わせ戦意を削いでいく。
「歌に舞い、水に濡れるいい女ってね? さぁ、存分にやられなさいな」
 マキナを持つ手を水へと戻し鞭の様に薙ぐ、退けば音符の雨、進めば鎌の刃に喰われる。船員達はどうする事も出来ずにその数を減らしていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
態々船上に上げたのは貴様らのテリトリー故だろうが…愚策だったな。
亡霊騎士"団"が貴様らを沈めにきたぞ。

UC【錬成カミヤドリ】、70騎超えの複製鎧を展開。
破壊されようと問題はない、味方を銃撃から【かばう】のも兼ねて前線に突撃させ数の暴力で押し流そう。

海の男たちよ、鉄塊を身につけての水泳はお得意かな?

接敵した複製鎧は順次敵に【グラップル】、
身動きが取れなくした状態で海中へ諸共に身投げだ。
拘束された状態では浮いてはこれまい。

自身は燃える鉛の翼で飛翔、【空中戦】。
マストの上を陣取っていたり後方から味方を狙う小賢しい輩を短剣【誘導弾】【投擲】で始末して回ろう。

【共闘・アドリブ歓迎】


護堂・結城
はっはっは、出迎えご苦労
…お前ら、それなりの喧嘩の売り方したからには、覚悟しろよ

【POW】

「来たれ海竜、氷鳳、天狐」

指定UCを発動、獣装を召喚、合体だ
纏う属性は雷一つで十二分

「同じ土俵に立たないなんて卑怯だ、とか寝ぼけたこと言うなよ」

翼で空を翔け、湾曲刀の射程外から【空中戦】を仕掛ける
吹雪の勾玉を装備し【大声】で咆哮する【衝撃波】、【全力魔法・誘導弾】で【蹂躙・爆撃】

数が減ったら氷牙の斬馬刀をくわえたまま突撃し
回転切りと雷を纏った九尾による【属性攻撃・範囲攻撃・怪力・なぎ払い】で追撃

目には目を、歯には歯を、理不尽には理不尽を、だ
外道殺すべし…一人たりとも、生きて帰れると思うなよ


宇賀野・希月
アドリブ、絡み歓迎


さぁ、こちらも仕事の時間だ。
敵の狙いは当然この服だよな。わかってはいたが、流石に身ぐるみ剥がされる訳にはいかないな。

この服はお前達にはくれてやれないし、そもそもお前達に扱えるものじゃないが…。
どうしてもと言うなら代わりにこいつをくれてやる。刺激が強くて痺れる『アレ』だ。存分に楽しめ。

UCを発動し、体に雷を纏う魔術でスーツと自身を防御
さらに、落雷の妖術やヴォルトキネシスによる電撃の【範囲攻撃】で敵を一網打尽にします


アリス・レヴェリー
奪う……?わたし達から、大切なものを?

まずは正面から普通に乗り込んで、お話を聞いてあげるわ
まぁ、大体予想がつくけれど……もしもお話が通じればそれが一番いいものね
少し話を聞いてみて、やっぱりダメそうだったら甲板の端から海へと飛び降りましょう。落下している最中に【友なる白鯨、悠然の調べ】で白鯨の幻獣、ムートを召喚して騎乗。武装商船に並ぶように移動するわ

……そういえばあなた達の大切なものは、この船かしら?
わたし達の大切なものを狙ったわけだし、その逆もありよね。悪い人たちはムートの体当たりと、彼の魔法が起こした荒波で船を思いっきり揺らして海に放り出してしまいましょう




「はっはっは、出迎えご苦労……お前ら、それなりの喧嘩の売り方したからには、覚悟しろよ」
「こちらも仕事の時間だ、流石に身ぐるみ剥がされる訳にはいかない。遠慮なくいかせてもらおう」
 片や破顔した表情、片や真剣な眼で前を見る、共通しているのはその瞳には静かな闘志が宿っている所であろう。
「奪う……?わたし達から大切なものを……?」
「わかって挑発しているのであろうが狙うというならば此方も相応の抵抗はさせてもらう」
 下卑た笑みを浮かべ此方の得物を見る船員達、結城、希月、アリス、ルパートの四人が船上で対峙する。
「さて、数の上では不利だが……」
「問題無い。態々船上に上げたのは彼奴等のテリトリー故だろうが……愚策だったな。見ろ、亡霊騎士"団"が貴様らを沈めにきたぞ」
 一歩踏み出した希月の横に現出する黒き影、靄がかった其れは段々と輪郭を著しルパートと同じ姿の鎧と成る。
【錬成カミヤドリ】
 70騎を超える鎧の群。
「まるで騎士隊の一部となったみたいだなこれは……!」
 希月と並ぶ鎧達は彼を守護するかのように並走する。
『糞がァ! なんだコイツら!!』
 銃を撃つも船上を進む鎧に阻まれ猟兵達には届かない。
『刃も通らねぇ! う、うわなんだ!? 離せやゴラァ!!』
 鎧に掴まれ抱えられる船員、藻掻き兜の隙間に鉛玉を放つも中身は無いのだから意味は無く。
「海の男たちよ、鉄塊を身につけての水泳はお得意かな?」
『あ……? テメェ……まさか……おいっ! 誰かコイツをなんとかしやがれ!!』
 ルパートの意図に気付いた男は叫ぶが誰も助ける様子は見られない。
「各々が好きに動いているんだ、当然の帰結だな」
 トリニティ・エッジを手に纏い徒手空拳の形で敵の刀撃をいなしカウンターで戦闘不能へと持っていく希月、彼の言う通り船員達は連携を取る以前の動きだ。宝を手に入れようものならば横から掻っ攫う等味方とも思っていない節がある。
「酒場で見せたこの服が欲しいのだろうが、当然くれてやるわけにはいかないしそもそも俺の力を持って漸く扱える代物……お前達が持っていても仕方の無い物だ」
 妖狐としての力に反応して発揮する衣、人間……否、コンキスタドールが持っていても無用の長物である事は明らか。
「だがどうしてもというのなら代わりにこいつをくれてやろう」
 パチッパチッ……と希月の身体に雷の力が宿る。
『ナメてんじゃ……ねぇぞぉ!!!』
 鎧の隙間をすり抜け銃口を希月の額に向ける、正面と側面、偶然ではあるのだがここに船員同士の連携が発動しようとしていた。
「遅いな、雷光より速くあれ……刺激が強くて痺れる『アレ』だ、存分に楽しめ」
 地を走る雷電の音の間隔が短くなり、銃のトリガーを引こうとした直前、雷撃が船員達へと昇り駆け巡る。
「宇賀野殿っ!」
「大丈夫! 其方は!」
「問題無い、船上に居る奴等は殆ど海へと落ちた。後は護堂殿達の手番だ」


「来たれ海竜、氷鳳、天狐」
 言霊紡げば結城の周囲を浮かぶ雪見九尾が変化した獣装。胴、腕、足、頭部へ装着されその身が巨大化していく。
「よう、大好きな海で泳ぐ気分はどうだ? 外道に安息の時はないと知れ」
 身の丈三倍といった所だろうか、巨体を支える翼が揺れるだけで豪風が吹くだろう。
「揺蕩う勇魚、優しき王よ、微睡み歌う、わたしの友よ!」
 大海から顔を覗かせるは白き巨大な鯨、頭部に乗るアリスの顔は何時になく迫力の秘めた表情となっている。
「お話は……」
『うるせぇ!! 大人しく渡さねぇなら奪うだけだァ!!』
「聞いてはくれないみたいね……」
「あぁ仕方ない、欲に溺れ状況の把握も出来ない奴等め、同じ土俵に立たないなんて卑怯だ、とか寝ぼけたこと言うなよ」
 ルパートの鎧に沈みそうになりながらも必死に海面へ上がる船員達、伊達に海の男をやっていないということか。しかし吠え立てる声に力は無く、その場に留まることで精一杯なのだろう。
「随分とお疲れじゃないか。まだまだ此方の手番は終わってないぞ?」
 空から急降下する結城がくるりと回転しながら尾を海面に叩きつければ藻掻く船員達を巻き込んで波が呑み込んでいく。
『た、たすけ…………』
 それは本能、意思がある故の懇願。失われた筈の生命を惜しむ、否、一度喪ったからこそ再び還る事に恐怖を覚えるのだ。だが。
「……そういえばあなた達の大切なものは何かしら」
 アリスは何時もと変わらない声音で、其れは唄う様に。
「このお船? それとも、生命かしら?」
 奪うだけ、それは果たして。
「わたし達の大切なものを狙ったわけだし、その逆もありよね」
 自分に置き換わった時、なんて思うのだろうか。
「もう一度聞くわね、あなた達の大切なものは……」
『……ぁ……ぁ……』
「一体なんなのかしら」
 波が強くなる、白鯨ムートの唱えた魔法が海を揺らし波を起こす。
「何故こんな目に遭うのかと思ったか? 俺達を理不尽と恐れたか?」
 空を漂う結城が見下ろし言葉を放つ。
「そうだろう、だがそれは貴様達がこれ迄行ってきた暴威に市井の民が思い涙を飲んだ事……」
 目には目を、歯には歯を、理不尽には理不尽を。
「外道殺すべし……一人たりとも、生きて帰れると思うなよ」
 怒りと恐れが入り交じった瞳は、行き場の無い非業の叫びと共に流され沈んでいく。最期の最期まで、その手にメガリスを求めて……


「……これで全員か?」
 吹き飛ばした船員にトドメを刺しながら周囲を見渡す希月、ルパートも合流し背中合わせで互いを護りながら戦っていた。
「向かってきた者達は全員船から落としたがさて……」
 ルパートも希月も警戒は解いていないが、先程まで此方に向いていた多数の殺気が薄れているのを感じる。だが忘れてはならない、ここはコンキスタドール達のテリトリーには間違い無いのだから。
「いや、どうやらまだオマケが居たようだ」
 それを視界に収め、気付いた希月がルパートを突き飛ばし、己は跳び退きながら詠唱を紡ぐ。ルパートが視線を追えば銃口を向けた船員がマストの上で此方を見下ろしている所を確認。
「複数にして個……船員という群体として存在しているが故、失えば新たな個体を創り出すという訳か」
 燃える鉛の翼で飛翔し短剣を投擲、隠れた個体達を虱潰しに潰していく。

 ──頼んだぞ氷牙。

 斬馬刀へと変化させた氷牙を咥えながら結城が船上へ降り立ち、現出する船員達へ突撃する。
 その身を捻り回転させ、雷を帯びた九尾と斬馬刀を剛力を持って振るう。防御する事も叶わずに棒立ちのまま斬られていくのは。
「合わせる……っ!」
 希月が放つは先程奮った三つの術式……三力一術・雷電、結城の周囲に力場を発生させ、彼の九尾に宿る雷の力を増幅させる。
「何度復活しようが無駄な事……俺から贈る言葉は変わらないぞ」
 外道、死すべし──
 轟音鳴らし薙ぎ払う尾から視認できる稲妻が空間を迸る。
 死角に潜んだ個体はルパートに消され、余波に巻き込まれ吹き飛ばされた者は。
「ムート、お願い」
 白鯨の潮水で海へと叩き落とされる。

 宝への欲は底を尽きない、かつては大海を渡った勇敢なる戦士達もコンキスタドールと成り果てた今は無念に縋る亡者でしか無い。
 戦闘も佳境に入った頃、猟兵達の前に現れたのは────

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『武装商船団・テンペスト』

POW   :    アブソリュートクラッシュ
【全体重を乗せた大剣の一撃】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    ザッパーグロブス
【武装した商船から大量の砲弾】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    遥かなるオデッセイ
自身が戦闘で瀕死になると【かつての航海で息絶えた船員の亡霊集団】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠辛・七味です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ハハッ……ハハハハッ! やるなぁアンタ達!
 そいつ等、今や自我も欲望に喰われそうになってるとは言え手練の集まりと言われてた奴等だぜ? それを物ともせず倒しちまうとはとんでもねぇモン引き当てちまったなぁ!
 悪ぃなぁ異界の客人達よ、同じ世界の同朋よ、ただで渡せなんてバカ吹っかけちまって。改めて頼む。
 ────アンタ等の持ち物、オレに売っちゃあくれないか? 見返りはこの船に積まれている金銀細工……
 受け入れらんねぇってなら……この消えた生命をチップにして強制徴収といかせてもらおうか。

 嵐の中を生きた男……武装商船団・テンペストが猟兵達の前に立ちはだかる。
 交渉という皮を被せた刃を此方へと向けて。
弥久・銀花
アドリブ、他の人との絡み、ピンチシーン歓迎です




これでよしっ(誰かに脱がして貰った自分の拘束衣を小柄な海賊(出来れば女性)に装備させ終えて)
さあ、貴方の可愛い部下はこのざまです(銀花は下着姿です)
私の思い入れだけはある忌まわしい服と一緒に差し上げますから帰って下さい

え? 駄目なんですか?
しょうがないですね、では貴方本人も付けてあげましょう!

私のユーベルコードのオルタナティブ・エネミーを使ってボスと同じ姿でちょっと強いのを召喚して戦闘開始です

私も参戦しましょう(下着姿です、武器も持ってません)


侮られている内に【怪力】で近くに落ちてた物を投げたり、拘束されてる人をジャイアントスイングして攻撃します



「ふぅ……やっと脱げましたね」
 脱がせて貰った拘束衣はずっしりと重く、何故か銀花の手の上で微振動している。


「オイオイオイこりゃあ一体どういった嗜好してやがんだ」
 コンキスタドール、武装商船団の長であるテンペストが何処か困惑を含ませた苦笑で銀花を睥睨する。
「どういった、とは?」
 不思議そうな表情を浮かべテンペストを見返す銀花には何故と問われた疑問しか無いようだ。
「下履姿のままで恥ずかしくないんかオメェ」
 船員の一人に聞かれれば胸を張りながら得意気な顔で答えるだろう。
「貴方達はこれから倒されるんです、記憶が失くなるのならどうという事もありません。後、この服と別れられるなら少しぐらい恥ずかしくても耐えられます」
 自信に満ち溢れた答え、どことなく後半の理由が本音にも見える。テンペストは顎を擦りながら担いだ湾曲刀を構え前方に突き出すと、商船に積まれた砲台が銀花の方へ向き、大きな音を立て始める。
「先手を挫いて来たかぁ、上手いねぇ。浮ついてんじゃねぇぞ野郎共ぉ!!撃ち方始めぇ!!」
 勢い良く放たれる砲弾を持ち前の動体視力で避ける銀花、下着姿で拘束衣を脇に抱えながら砲弾を目で追っていく。
「む……」
 視界の端に映ったのは一団の中では珍しい女性の船員。素早く背後に回ってその服に手を掛ければ。
「ちょっと借りますね」
 みるみるうちに服を剥ぎ取り上から拘束衣を被せていく。
「これでよしっ」
 決してよしでは無いがお荷物であった拘束衣はこれで敵の手に渡った。
「さあ、貴方の可愛い部下はこのざまです」
 拘束衣を着た女性船員の肩に手を置きながらほくそ笑む銀花、傍から見れば此方も中々の悪党に見えなくもない。
「私の思い入れだけはある忌まわしい服と一緒に差し上げますから帰って下さい」
「いらねぇ」
「え? 私の思い入れだけはある忌まわしい服と一緒に差し上げますから帰って下さい」
「やり直そうとすんな、勝手に装着されるなんざ商品価値として扱えねぇだろうが」
 ごもっともな意見を頂いてしまったがこれではいそうですかと返されるわけにもいかない。
「駄目なんですか? しょうがないですね、では……」
 銀花の眼前で光る陣から登場するのはテンペストと瓜二つの姿をした模者。
「貴方本人も付けてあげましょう!」
 模者と並びテンペストの元へ駆ける。飛び交う砲弾を避けながら構えをとる。下着姿の銀花は武器も持っておらず徒手空拳の形だ。
「おもしれぇことしてやがるがニセモンと丸腰で何が出来んだっつー話よ!!」
 テンペストの刀撃を宙返りで外しながら脚で刀を弾く。
「っ! ……カッ! 器用な真似をっ! 」
 仰け反り見せた隙を模者が殴り掛かる。
「(漸く視界から私を外しましたね!)」
 軽口叩きながらも決して銀花から目を逸らさず警戒していた視線がここに来て外れた。
「そぉいっ!」
 転がっていた砲弾を怪力任せに放り、拘束衣で身動きの取れない船員の足を持って腰を深く降ろしながら。
「なっ……!」
「くらってください!!」
 ぐるんぐるんと回転し、勢いのまま投擲する。

 放られた船員を避けきれず巻き込まれて吹き飛ぶテンペストを見ながら。
「さようなら服……」
 涙を流し別れを惜しむ……いや、惜しんではない。
 依頼が終わった後、拘束衣は無事に銀花の部屋の机に畳まれて置かれていたらしい。

成功 🔵​🔵​🔴​

宇賀野・希月
アドリブ、絡み歓迎


いよいよ親玉の登場だな。ここで確実に仕留める。

化かしの羽衣、こいつの価値は金でも生命でも計れないが、どうしてもと言うならくれてやる。受け取れ!

そう言いつつ、タイミングをみて羽衣のコート部分を【念動力】で飛ばし、敵の顔面に巻き付け【目潰し】
その隙にUCを発動し、ありったけの炎を敵にぶつける


…そういえば、初めて戦った時もこんな泥臭い戦法だったな。
だが今戦ってる敵はオブリビオン。あの時のヴィランよりも遥かに強大だ。
それでも、いや、だからこそ俺のやることは変わらない。
ーーー『今』出せる最大火力で、弱かった自分ごと『過去』を焼き払う!


グレイ・ゴースト
ええ、いいわよ。売ってあげる
でも残念ね、貴方の船に積んでいる財宝じゃ量が足りないみたい
一昨日来てくださるかしら?

まずは銃形態のマキナとペクーニアで牽制ね
わたくしの出番はもう少し先、今は他の方の援護をしましょう

わたくしも商人で船長だからわかるのよ
貴方が最期に頼るものが、ね

最期は貴方も自分が最も信頼する部下に頼るのでしょう?
相手のUCに合わせこちらも発動

それでは我が商船をお見せしましょう
貴方の船員とわたくしの船員、どちらが上か勝負よ!

得物は
船員たちにはカトラスとマスケット銃を
わたくしは大鎌形態のマキナを

「いくわよ、皆。さぁ、お金儲けの時間です」


この賭けはわたくしの勝ちみたいね
賞金は戴いていくわ


ルパート・ブラックスミス
戯言を言う。
これらを宝と見るだけの眼を持つならば解らないわけもあるまい。
いくら財を積まれようと手放すつもりも…そして貴様を生かして返す気も、こちらには無い。

こちらに意識を向くよう【挑発】を兼ねて
折れた魔剣を【指定UC】で再形成し正面堂々斬りかかる。

それと、たった一席で総てを語ったと思われるのは心外だ。
まだ相棒の紹介もできていないと言うのに。

敵の一撃はタイミングを【見切り】、
予め放っていたニクス(爆槍フェニックス)を【誘導弾】として呼び寄せ【武器落とし】。
体勢の崩れた一撃を避け【カウンター】、斬り捨てる。

死線の中で尚、商いの体裁を崩そうとしないその傲慢(プライド)に。
粛清宣告。
【アドリブ歓迎】


護堂・結城
まったくもって論外よな…徴収とか回りくどい言い方で誤魔化すな
ただの略奪だろ

【POW】

「あってないもんをチップに持ち出すとは片腹痛い。消えた命なら潔く地獄に落ちろ」

指定UCを発動、斬撃を受けるふりして液体の体を通過させ、蛇の毒牙で侵食毒を打ち込む【怪力・カウンター】キック
【念動力】で月の尾を操り、氷牙の小太刀と共に【早業】で連続切り
強く当てなくてもいい、本命は傷から毒をぶち込むことだ
【毒使い・医療・戦闘知識】を利用して急所や毒が回りやすい場所を狙うぞ

「売る気がないから大事なんだろうがよ」

道を踏み外した欲望に身を任せる、というのなら
海の外道は、狐さんの外道の技をもって殺すとしよう

外道…殺すべし!


草野・千秋
あのコンキスタドールはお前の配下か……
交渉とはあくまで形だけ、僕はそれを宣戦布告と認めた
嵐の中を生き抜いてきた気概は認める
だけどみなさんの大切なものも僕のものも奪わせはしない
どんな財宝や金を積まれても誇りまでは奪わせない
pulchre, bene, recte
僕は正しき存在でありたい、歌の女神の期待を裏切る真似はしない
これまでも今もこれからも誇り高き歌い手であるために

勇気をもってすべての行動を
歌唱、楽器演奏、UC【Vivere est militare!】で味方の戦闘力を底上げ
みなさんに力が付いたようなら自分も攻勢に回り
怪力、2回攻撃で蹴る殴る


アリス・レヴェリー
そう、あなたがリーダーなのね。お願いはお断りだけど……欲しがったものの本当の形を見ることもないのは可愛そうだから、見せてあげる。

『刻命の懐中時計』の結界を多重展開して、大剣の攻撃が届かないようにした後【褪せぬ約束】を発動。胸にブローチのように提がった完全な形の『あの日の約束』を見せることで気を惹いて、尻尾の牽制で手の大剣を弾いてからテンペストを鷲掴みにして船のマストに叩きつけて、輝く【星】のブレスをお見舞いするわ。

これがわたし達の約束の証よ。
わたしにとって、あなたがチップじゃ交換どころか、交渉の席についてあげるだけの価値もないわ。せめてあなた自身の宝物を持ってくるくらいはしなさいな。



「カカカッ!! やられてんじゃねぇよテンペストォ!」
「オイオイオイ下着姿の女に殺られたってかぁ? 嵐の名が泣くぜオイ」
 吹き飛び船板が割れ埃が舞い散る。野次を飛ばす船員達は心配する所か笑いながら囃し立てるだけ。あくまで彼等は金で雇われた荒くれ、テンペストに忠誠がある訳でも無い。
「賭けるか?」
「何をだよ」
「決まってんだろぉ? テンペストが生きてんのか死んでんのかだっつーの」
「オイオイオイ勝負になんねぇ賭けなんざ酒で潰れたオヤジぐらいしか乗ってこねぇよ」
 しかし、しかしだ。
 金だけが縁とした彼等がここで逃げない理由はなんだろうか、愚かであり、欲にしか従わないが決して馬鹿では無い。
 そう、彼等は信頼はしなくても信用はするのだ。

 ────残念だったなァ

 テンペストという男、嵐の名を冠するコンキスタドールはタダでは消えないという事を。

「その賭け、成立ならずだ」


 向かってくる弾丸を払いながら希月は嗤うテンペストを睨み。
「いよいよ親玉か、ここで確実に仕留めなければな」
「全く持って論外よな、徴収? 回りくどい言葉で誤魔化すな。ただの略奪だろうが」
 吐き捨てながら希月に視線を送り、希月も肯定の視線を返す。その場で速攻を仕掛けたのは二人の妖狐、船員達には目もくれずただ真っ直ぐにテンペストの元へと駆け抜ける。希月が足を踏み込み気の纏った拳を喉元向けて振り抜く。阻まれても良い、読ませる、対応させざるを得ない状況を作り出す為の拳撃だ。
「あぁそうだ、部下共が失礼をかましたそうだな、詫びるとしよう」
 大剣でいなされるも希月は間髪入れずに二発目を打ち込み、此方もいなされる。
「よく言う、端から商談なぞする気も無かっただろうさ。彼奴らをけしかけたのもお前だろう」
 二発目に合わせ希月の姿に隠れるようにして背後に回った結城が刀に変化させた氷牙を刀とテンペストの間、首の付け根に刃を差し込もうとするが此方も大剣に阻まれ弾かれる。
「カカカッ!! いやぁ本当さ、俺は本当に商談のつもりでいたんだぜェ? だが単に面合わせただけじゃお前らは渡す気にならねぇだろ?」
「戯言を言う、これらを宝と見るだけの眼を持つならば解らないわけもあるまい」
 船員を抑え、天に何かを放りながらルパートが訥々と述べる、その笑み、手法、最初から彼奴は話し合いで終わらせるつもりなんて無かった。
「交渉とはあくまで形だけ、僕はそれを宣戦布告と認めた。だけどみなさんの大切なものも僕のものも奪わせはしない。ヒーロー、ダムナーティオーとして!」
 二人の妖狐の元へ敵を寄せない為に単身で船員達の相手を務める千秋、嵐の男が奪う者とするならばこの男は護る者。決して交わる事の無い対となる存在。
「言うじゃねぇかオイ! 会話をしようぜ異界の客人達よォ! 金銀は渡すっつーんだ、こりゃ略奪じゃあない、立派な商売……ただの買い付けだろ? それの為にチップまで出したのにヒデェ客だぜ!」
 大剣で結城、脚で希月の拳撃を蹴り返す。千秋、ルパートの援護があって攻めあぐねているのはテンペストの対応範囲が広く、下手に攻めてカウンターを貰わない為である。
「あってないもんをチップに持ち出すとは片腹痛い」
 どうあれ初動は潰す事には成功したのだ。付近には味方二人、試す価値はあると見た結城は。
「消えた命なら潔く地獄に落ちろ」
 撃滅へのスイッチを入れる。
「……チッ!」
 首元がチリつく感覚、結城の剣撃が返って来ずそのまま何かを斬る感触を得るも手応えは感じられない。案の定見れば白髪の妖狐が数メートル離れた所で宙返りしながら着地していた。何故退いたと思考する隙を潰すのは希月、付かず離れずの攻防は何かを狙っているようにも見えるが情報が少ないからか、テンペストは攻めあぐねていた。
「どうした、随分と慎重じゃないか」
 希月の挑発に応えるかの様に大剣を構える、が。
「……っ!」
「欲のままに生きる事を是とするならば」
 数瞬、目を離していた間に距離を詰めていた結城に気付くことが出来なかった。
「道を踏み外した欲望に身を任せる、というのならば」
 希月か、結城か、対応に迷いが出る。致命的な迷いが。
「外道には、外道の技をもって殺すとしよう」
 大剣を持つテンペストの指には小さく咬まれた痕、高揚感で痛覚が鈍くなっていたのかここに来てそれに気付く。星喰蛇奏、侵食する水の蛇の毒が巡り朦朧とする意識の中、結城の下段蹴りを寸で受け止める。
「商談と言ったな、成果無しじゃ面子も保てないだろう」
 希月が上着……化かしの羽衣を脱いで天に掲げ。
「化かしの羽衣、こいつの価値は金でも生命でも計れないが、どうしてもと言うならくれてやる。受け取れ!」
 念動力で真っ直ぐにテンペストへと飛ばす。商品を切払うか、商売人としての思考と結城の毒が決定的な隙となった。
 頭ごと羽衣に包まれ視界が塞がれる。取ろうとしても念動力によって更に締め付けられるのだ。
「(あぁ……)」
 初めてヴィランと相対したあの時、初めて戦った時もこの様な泥臭い戦法だった。
「(殴って、弾かれても殴り続けて……)」
 無理矢理こじ開けた隙を喰い破る一撃、あの時もそうだった……そして今回も。
 弱いあの時とは違う、姉と比べられていた自分とは違うのだ。ヴィランよりも遥かに強大な嵐。
「(それでも、いや、だからこそ)」
 三力一術の一つ、炎の具現を拳に宿し。
「俺のやる事は、変わら……ないっ!」

 ────『今』出せる最大火力で、弱かった自分ごと『過去』を焼き払うっっ!!!

 炎熱の弾丸と化した希月の拳がテンペストの腹を打ち抜く。指の甲に感じる骨が砕ける音、腹と拳が離れ、緩んだ羽衣を掴み羽織る希月の正面、吹き飛んだテンペストが縁に激突しそのまま頭を垂れる。
「はぁ……はぁ……」
 全力を出した消耗は大きく、肩で息をするが休んでもいられない。何故なら……
「船が消えない、か……」
 コンキスタドールであるテンペストと共に現れたであろう船に変化が無い以上、まだ油断は出来ない。


 希月の背後、口元から赤い雫を垂らしながらその首を狙い大剣を力任せに振るうテンペスト。
「ムートおねがい!」
 小さきミレナリィドール、アリスの友である獅子のムートが咆哮あげながら二人の間に入り刃を弾き飛ばす。
「カ……カカ……カッ!! やるじゃねぇか……こんな致命を貰ったのは何時ぶりかね」
 喋る事もきつい筈だが嵐の男の軽口は止まらない。
「随分と余裕だな」
 千秋が警戒しながら構えを取ると、そちらを見てニヤリと嗤うのだ。
「痩せ我慢だよ、分かれや」
「そこまでするものなの? そこまでしてわたし達の大事なものを?」
 それは生命より大事なものなの? とアリスの問いには無言で笑みを返すのみ、獰猛で、狡猾な商人の笑み。
「さぁ……商談は、まだ終わってねぇよ」
「ええ、いいわよ。売ってあげる。わたくしも、貴方も商人なのですから、商売で話をつけるべきね。でも……」
 息を整え、己の痛みを誤魔化すコンキスタドールに応えるのは同じく商船団を率いる女傑、グレイ・ゴースト。意志ある金貨のペクーニアを浮かべ、マキナ・ファルクスを背に構えながら不敵な笑みを返す。
「残念、貴方の船に積んでいる財宝じゃ量が足りないみたい。これじゃあ等価にもならないわ、一昨日来てくださるかしら?」
 指で金貨のマークを作りながら挑発する。元より売るつもりなぞ無いが。
「そうね、等価にも……あなたにあげるものも無いの、だからお願いもお断りなんだけど」
 時計の針が進む音が聴こえる。この騒乱の中でも確かに聴こえるのだ。
 カチ……
 本能か、死までの経験を持つテンペストの脳がアリスを止めろと警報を鳴らす。大剣構え痛みを殺し一直線に駆ける、だがそれを許す道理も無く。
「行かせると思うか」
「ふふ……」
 千秋の拳が、グレイの大鎌が道を塞ぐ。
「野郎共ぉ!! アレを止めろぉ!!!!」
 血反吐零し叫ぶが。
「阿呆が」
「そう言われて通しはせん」
 結城とルパート、両名が船員達を相手取り端へと押し込んでいる。
 カチ……
 包んだ多重結界に銃弾は通らず、胸元を浮かぶブローチが一つ、また一つ繋がっていく。
「あなたが欲した物の本当の形……見せてあげる」
 黄金の獅子が、白き鯨が、星の大鷲が輝きアリスの影と言葉が重なる。

『『『『どこまでも、共に』』』』

 光から天に昇る、褪せぬ約束は一体の白き竜と成りて。
「草野さん! 乗って!」
 落ちていた湾曲刀が千秋を狙い投擲されるもアリスに叩き落とされる。千秋を手に乗せ再び空を舞えば砲台を此方に向けようと船員が動く。
「いけるかしら」
「任せてください。準備は出来ています」
 撃たせはしない、竜の息吹は星屑の銀河。星のブレスが砲台近くに居た船員達を地の底に還していく。仲間というステージの上で歌うは高揚の歌。
「Vivere est militare!」
 口にするのは曲名、手渡してくれた女神の期待に応え、正しき存在でありたい。これまでも、これからも誇り高き歌い手である為に。メロディが流れ、千秋の声が戦場に響く。
「生きて、抗い、戦うんだ、沈黙したままでは空に羽ばたく自由は得られない!」
 それは前を向く勇気、誰しもが持つ力の顕現。その場の猟兵全員が熱意に気を昂らせ気力を高める。
「まだ、まだ……っ!」
 ルパートや結城は勿論、力を使い果たした希月もまた立ち上がる。
 ブレスをギリギリで避けてきたテンペストをアリスが鷲掴みにして甲板に叩きつけ、跳ねた身体を飛び降りた千秋が全力を込めた脚で蹴り飛ばす。
「はぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!!!」
 受け止めた鋼の大剣が折れ、船板が割れる。船底に向かって墜ちるテンペスト。抵抗する間もなく食らった一撃は間違い無く彼の体力を根こそぎ奪ったのだろう。
「船が……」
 この船もテンペストの一部として顕現された物、消えかかっているという事はテンペストの消滅が近付いているという事だ。
「……まだ立つのね」
「えぇ、立つでしょうとも。彼はまだこの商談を降りたと言ってないのですもの」
 元の姿に戻ったアリスの視線の先、血が流れ落ち、足はあらぬ方向に捻じ曲がっている。
 グレイの確信めいた笑みは当たっている。まだ終わってないのだ、彼にとっての商談【戦闘】は。
「売る気がないから大事なんだろうがよ。どうしてそこまでする」
「…………だからこそ、それには価値がある……金になる、宝となる……」
 言葉も絶え絶えに嗤う姿は既に死に体、このまま放っておいても消える運命は逃れられないだろう。
 あれだけ居た船員達は猟兵達によって消し去られている。このコンキスタドールも直ぐにその後を追う事になる。


「貴様を生かして返す気は無い。討滅の瞬間まで気を抜かん」
 ルパートはテンペストの目に未だ諦念が無いと見ていた。肯定するかの様にその場で天を仰ぎながら笑う嵐の男はその姿、群青のマントの端から消えながらも好戦的な瞳を猟兵達へと向ける。既に彼を護る者も居ない、ならば呼び出すしか無いだろう。
「指し示せ」
 ──俺達の遥か永き旅路を!!
 其れはこれまで相手取った船員達と同じ顔つきでありながら異なる存在。
「わたくしも商人で船長だからわかるのよ、貴方が最期に頼るものが、ね」
 生者であった時、彼と共に商船団に乗り込み冒険した者達の亡霊が召喚される。
「最期は貴方も自分が最も信頼する部下に頼るのでしょう? 良いでしょう! それでは我が商船をお見せします」
 グレイの背後、壊れた船に横付けされる形で顕れるはOra et labora、強欲の海を奔る武装商船。
「貴方の船員とわたくしの船員、どちらが上か勝負よ!」
 鬨の声が空間を揺らす。

「いくわよ皆。さぁ、お金儲けの時間です」

 その言葉で最後の火蓋が切って落とされた。千秋の歌が味方を鼓舞し、アリスの多重結界が砲撃を弾く。その隙を希月が雷の力で纏めて薙ぎ払う。
 朽ちかけの大剣を手にテンペストは駆ける。グレイの首を求め、ただ駆ける。
「どうでしょう我が商船、我が船員は」
 既に軽口を吐き出す事も叶わない男は笑いながら商売敵の首を刈ろうと振るうが。
「……この賭けはわたくしの勝ちみたいね。賞金は戴いていくわ」
 グレイの喉元を剣が通る事は無かった。後一歩踏み出せば、という所で結城が懐に踏み込み片腕を、斬り飛ばす。
「どんな時でも俺のやる事は変わらん。外道、死すべし」
 そしてグレイの前方、テンペストの眼前に現れる甲冑の騎士、ルパートが商船から放たれた砲弾を再誕せし神殺し魔剣で刻む。
「たった一席で総てを語ったと思われるのは心外だな」
 一言、含みを込めた言葉を零して呼ぶのだ、彼の相棒を。生前の記憶無き己と共にここまで歩んできた友を。
「来い、ニクス」
 爆槍フェニックス、宙を飛ぶ青きヨタカが槍と成り背後からテンペストの胴を貫く。
「死線の中で尚消えぬその傲慢、斬らせてもらう」
 一閃。
 魔剣に斬られた断面から黒き光の残滓が流れ、テンペストの身体が崩れて消える。

 村への襲撃は未然に止める事ができた。猟兵達も宿屋へ戻り小休止をとることだろう。
 宴は終わり、深く沈んだ夜の明けを待つばかり。
 酒場の主人は洗ったグラスを拭きながら聞いた話を肴に一人、グラスを濡らすのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年05月06日


挿絵イラスト