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美術商と影朧(作者 野根津
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「あなたは本当に素晴らしい作品ばかり見つけてきますな。この壺なんて生命力に満ち溢れておる。」
 初老の男が陶芸品の数々を称賛すると資金が許す限り買い漁った。
「この人形を包んでくれんかね。孫娘の誕生日に送りたいのよ。」
 優し気な老婆は少女の人形に豪華な梱包が施してもらうとほくほく顔でそれを持ち帰っていった。
「店主よこの彫像に加工を施す事は可能かね? 庭に置く噴水にしたいのだ。」
 スーツに身を包んだ男性は一糸纏わぬ姿で座り込む女性の彫像を撫でながら美術商に尋ね、美術商は笑顔でそれに応じた。

 サクラミラージュのとある館にて好事家達と美術商の商談が行われていた。
 美術商が独自のルートで仕入れたという美術品を好事家達は次々と買い上げてゆく。
 そして、商談を無事に終えた美術商は美術品が残り少なくなっている事に気が付いた。
「そろそろ次の美術品の仕入れを始めた方が良さそうですね。」
 美術商の男はそう呟くを館を後にした。
 数日後、帝都の各地で一般人が行方不明になるという事件が発生した。


「皆様、ドライプラメの呼びかけに応じて頂きありがとうございます。」
 不格好なロボットにその身を宿す電子妖精、ドライプラメ・マキナスアウト(自称銀河帝国随一の管理AI・f25403)はその場に集まった猟兵達に頭を下げる。

「皆様はサクラミラージュの帝都で多発する行方不明事件をご存知ですか?」
 ドライプラメ曰く、近頃帝都の至る所で行方不明事件が起きているらしい。勿論、帝都の警察が捜査を行っているのだが捜査は難航しているという。
「ドライプラメはこの事件にとある美術商が関わっている事を予知により突き止めました。」
 ドライプラメの言葉に猟兵達は首を傾げる。確かに事件の手掛かりを得たのは喜ばしい事だ。しかし、一般人相手であれば猟兵を集める必要はない。
 そんな猟兵達の様子を察してドライプラメは猟兵達を招集した理由を語り始める。

「ドライプラメがその美術商の予知に成功したのは、美術商が複数の影朧を匿っていたからなのです。」
 サクラミラージュはと人々がオブリビオンこと影朧と密接に関わりあう世界だ。虐げられた者がなるという影朧に一般人が絆され匿ってしまう事例も珍しくはない。
 美術商もその類なのかと猟兵が聞けばドライプラメは顔を顰めた。
「件の美術商は私腹を肥やす為に影朧達を利用しているようなのです……。」
 美術商が匿う影朧はその多くが元々芸術家であったらしい。美術商は作業環境と材料を提供する代わりに影朧達の作品を貰い、それを好事家達に売り捌いているという。
「問題は影朧達が材料として生きた人間を求めている事です。」
 影朧達は世界の崩壊させるというオブリビオンの本能によるものなのか人間を作品の材料として求めている。そして、美術商は私腹を満たす為に一般人を影朧達に捧げる事を躊躇していないという。

「これ以上一般人が美術品にされる前に影朧達を鎮めなければなりません。」
 ドライプラメは影朧達と接触し鎮める為の方法を語り始めた。

「まずは美術商に影朧が匿われた館に招いてもらう必要があります。」
 美術商は自身が出資しているカフェーで休んでいる一般人に声をかけて回っている。ここで美術商の誘いに乗れば幾つかの確認の後に影朧達の潜む館に招かれるという。
「美術商は館への武器類の持ち込みを禁止しているので注意してください。」
 美術商は館へ招く前に相手の所持品を確認し武器を店に置いていくように求める。それを拒めばその者を館に招く事をやめるという。
 館内に武器を持ち込むには美術商が本物の武器と判別できない物を選ぶか、何らかの方法で武器を隠すしかないだろう。

「無事に館に招かれたら、館に潜む影朧達を鎮めてください。」
 館には先駆けて美術商に招かれた一般人達が館内の美術品を見て回っている。
「影朧達は館内に潜み、隙あらば皆様を自身の作品に変えようとしてきます。」
 館内の影朧達は弱く真っ向勝負なら猟兵が負ける要素はない。しかし、影朧達は各々の方法で自身の存在を隠蔽して猟兵達に奇襲を仕掛けて来るという。

「領域内に潜む影朧達を粗方鎮める事が出来たら、最後に強力な影朧を鎮めに向かってください。」
 その影朧は館内に隠された工房で作品を作っているという。その力は館内で鎮めて回った影朧達とは比べ物にならず、侮れば瞬く間に作品にされてしまうという。

「それでは、皆様の健闘を祈ります。」
 説明を終えたドライプラメは転送装置を起動させるのであった。





第3章 ボス戦 『人体陶芸家』

POW ●あなたも「作品」になりたいのですか?
自身の肉体を【用いて、捏ね回した対象を粘土のよう】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
SPD ●どこでもろくろを出せるようになりました
自身からレベルm半径内の無機物を【触れた者を遠心力で粘土のようにする回転床】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
WIZ ●焼き固めてあげます
【念じると発生し飛んでいく炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【触れた者を粘土のように成型して焼き固める】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はネリー・マティスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 館に潜む4体の影朧達を鎮め転生させる事に成功した猟兵達は館内のとある一室を目指し突き進んでいた。
 途中、美術品にされた猟兵達を元に戻せばある者はあられもない姿を晒した羞恥に悶え、またある者は何故か残念そうな様子で立ち尽くす。
 中には怒りの余り人を殺せそうな呪詛の篭った言霊を吐く者までいたが、美術商の所業を考えれば致し方ない事だろう。
 そんな猟兵達が目指す一室、それは館内で唯一入室を禁止されていた『美術商の執務室』であった。

 バキィっ!

 怒りに燃える猟兵の怒号と共に放たれた蹴りが執務室のドアを無事破る。しかし、美術商がいる筈の執務室は蛻の殻であった。
 執務室へと突入した猟兵達が部屋を調べてみれば美術商と好事家の間で行われた取引の帳簿や魂の篭った装飾品の数々が見つかった。
 この情報に美術品として売り払われた一般人達や人形にされて魂の封じられた装飾品が見つかる可能性が出て来たと多くの猟兵が歓喜した。
 極一部の猟兵はこれでは新しい子をお迎えできないと落ち込んだ。それでも身元不明の者が元に戻るまでの間の身元引受人なら行けるかもしれないと気を持ち直した。 そして、執務室を捜索する猟兵達は隠し通路を見つけた。美術商は隠し通路の先にいると考えた猟兵達が突入しようとした直後それは起きた。

 ぎゃぁあああああああ!!!

 通路の奥から断末魔の悲鳴が響き渡る。その声は美術商のものであった。
 猟兵達が慌てて隠し通路を進めば頑丈な鉄の扉に閉ざされた部屋に行きついた。扉には『創作作業中につき入るべからず』と書かれたメッセージボードが立て掛けれている。
 どうやら、ここが館に潜む最後の影朧の作業場らしい。耳を澄ましてみれば部屋の中からは何かを叩きつける音が聞こえて来る。
 猟兵達が意を決して扉を開けてみればそこには一人の少女がいた。


「何度もいいましたよね? 創作作業を邪魔するなって。」
 少女は両手で不格好な塊を板の上で捏ね回している。その塊はよくよく見ると随所に人の一部が浮かび上がっておりその顔は美術商であった。
 塊が捏ね回される度に塊から複雑な色合いの液体が滴り小麦色の粘土へと変化してゆく。猟兵達は塊から滴る液体が美術商にとって重要な物である事を本能的に悟った。
 そして、塊から滴り落ちた液体は板に掘られた溝を伝い小さな器へと貯まっていた。

「次に邪魔をしたらあんたをウチの作品にすると言うた事、忘れたとは言わせまへんよ? ……おっと、もう聞こえておらんか。」
 暫くして完全に粘土と化した塊をろくろや牛へら、糸等の道具を使い形を与えてゆく。暫くして出来上がったのは水差しであった。
 少女が水差しに手を翳せば粘土の水差しは乾燥してその色を変化させてゆく。やがて、色の変化が収まれば少女は先程器に貯めていた液体を水差しへと塗り始める。

「やはり、人を素材にすると素焼きが不要な上に最適な釉薬もいっぺんに調達できて楽やね。」
 器に貯まっていた釉薬を水差しへと塗り終えた少女はその手に炎を灯すと水差しを炎で包み込んだ。
 炎の熱によって水差しに染み込んだ釉薬が溶けて水差しに彩りを与えると共に頑強な物へと変化させてゆく。同時に魂の扱いに長ける猟兵達は水差しから美術商の魂が煙の如く少しずつ虚空へと消えてゆくのを察知した。

「中々の水差しがでけたね。」
 こうして少女の手により美術商は鮮やかな青色の水差しに成り果てた。
 その水差しからは生命力が感じられるものの、それは美術品としての生命力であり美術商の魂は最早この世に存在しない事を猟兵達は悟っていた。

「さて、先程からウチの作業を覗き見しとったあんたらは新しい作品の材料でっか? ……いや、あんたらは帝都桜學府の者やね?」
 そして、少女の姿をした影朧、『人体陶芸家』は美術商であった水差しを近くの棚に陳列すると漸く猟兵達へと視線を向ける。
 その眼差しは猟兵達が自身を転生させに来た刺客である事を瞬時に見抜いた。同時に少女は猟兵達を新たな陶芸品の材料としか見ていなかった。
 それでも扉の向こうに沢山の猟兵を見て眉を顰めた。

「今日は随分とようさん来たんやね。あまり大人数で来るとウチの作品がめげるから困るんやけど。」
 少女の言葉に猟兵達が部屋を見回してみれば、部屋の至る所に陶芸作品が置かれている。その多くが本焼きまで終わった手遅れの状態だが中には乾燥の段階で止まっている物もあった。
 そして、目の前の少女は多人数で踏み込むなら助かる余地のある者達の安全は保障できないと暗に言っていた。その事実に猟兵達は顔を顰めながらも影朧に挑む順番を話し合い始めた。

「見る限り逃げるのも無理そうや。こうなったらわたしが果てるまでに少しでもようけの作品を作るまでや。取りあえず、準備のでけた人から来たってぇや。」
 そして、そんな猟兵達を少女は余裕綽々と言った様子で待ち受けるのであった。

●戦場説明
 第3章の部隊は『人体陶芸家』の作業場となります。駆け回る程度なら問題なく出来る広さはあるものの、部屋の至る所に陶芸品と化した一般人が置かれています。
 無差別攻撃をしたり、不用意な攻撃を行うと室内に置かれた陶芸品が高確率で壊れてしまい元に戻れる可能性がある物も二度も戻れなくなる恐れがあります。
 陶芸品を壊す事によるペナルティはありませんが、室内に置かれた陶芸品を壊さない為の工夫を凝らす事によりプレイングボーナスが得られます。

●影朧について
 生前は陶芸家を目指し絶やす事無く努力する事によって頭角を現しかけていた少女です。但し、彼女の腕を嫉んだ他の陶芸家の策謀により彼女が亡くなるまで作品が評価される事はありませんでした。
 影朧となってからは館にいた他の影朧達と同様に人間を材料と認識しています。更に自身の作った作品が美術商を通じて沢山の人に評価されてしまった為に人間を材料にした作品を作り出す事に完全に固執しています。
 彼女の攻撃をまともに受けた場合、確実に釉薬を塗っての本焼きまで施された陶芸品にされます。
 但し、陶芸品にされても真の姿の力により戦闘終了何事もなく戻れたものとして扱います。それは陶芸品にされた後に何らかの要因で壊されてしまった場合も同様です。

●補足事項
 本章での成功条件は『ユーベルコードを使用した上で敵への攻撃か敵の攻撃の対処のどちらかを試みている事』です。
 条件を満たしていれば余程の内容でない限り故意にやられる行動をしていても成功判定となります。逆に条件を満たしていない場合は苦戦判定となる可能性がありますのでご注意願います。
 3人以上の同行参加をする場合、対策を立てない限り攻撃や移動の際に作業場内の陶芸品を壊してしまうものとします。
 
 プレイングの受付期間や進行状況はマスターコメントにて掲載予定ですので参照の程よろしくお願いします。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
神代・凶津
さ、桜さん、そろそろ落ち着いて・・。
「私は何時も通りですよ?」
・・・いや、怖えよ。目が笑ってねえもん。

穏便に宥められないか、後から来た他の猟兵の解呪を断ってまで時間を稼いで(何か妙な勘違いされた気もするが・・)策を考えたが、何も思い浮かばなかったッ!
「・・フフ、黒幕を滅しませんと。」
落ち着いて!?

美術品は結界霊符を投げ貼って保護するぜ。

「式、召喚【ヤタ】【見え猿】」
式神二体で遠距離からコンビネーション攻撃を仕掛けるぜ。
これならあの陶芸品化攻撃も届くまい。
他の攻撃も見切って避けてやるぜ。

帰りにカフェーの甘いものとかで相棒のご機嫌取らないとな・・。


【技能・結界術、式神使い、見切り】
【アドリブ歓迎】


『さ、桜さん、そろそろ落ち着いて……。』
「私は何時も通りですよ?」
『……いや、怖えよ。目が笑ってねえもん。』
 凶津は焦っていた。更衣室で桜が他の猟兵に救助されてから怒りが一向に収まらないのだ。
 凶津は先の戦いにおいて桜を囮に据えた奇襲作戦を発案した。だが、いざ実行してみれば彫刻家の奇襲を許してしまい、桜は淫らな彫像にされてしまった。
 奇襲を許した事そのものは互いの注意不足が原因なので問題にはなっていない。問題になっているのは作戦を実行するにあたり凶津が桜から離れて行動していた事だ。

「……催淫を受けて乱れる私は如何でしたか?」
『そりゃあ、普段からは想像できないくらい色っぽかったって、何言わせるんだよっ?!』
「やっぱり、あの時の私を見ていたのですね。」
 凶津は催淫により淫らになった桜が自らを慰める様を間近で見てしまったのだ。家族と言える存在に自慰に浸る姿を見られる等、恥ずかしい所の話ではないだろう。
しかも、問題はそれだけではなかった。

「……それはそうと、何故私を直に戻さなかったのですが?」
『うっ!? そ、それはだな……。』
 実は桜が彫刻に変えられて間もない頃、凶津は更衣室を訪れた猟兵に桜を元に戻す事を提案されていたのだ。しかし、凶津は仕損じた事に対して怒るであろう桜を宥める為の策を考える時間欲しさにその提案を断っていたのだ。
 そして、凶津は桜を宥める為の策が思いつかなかった。それだけならまだ良かったのだが、在ろう事か桜は不特定多数の猟兵の前で元に戻されてしまったのだ。
「私が彫刻になっている間に何をしていたのやら……。」
『だ、断じて彫刻になった桜を見回してたりは……いたたたたたっ!? 手に力を籠めないで!?』
 怒りに任せて凶津を破壊していない辺り、まだ桜は冷静なのかもしれない。そうこうしている間に凶津達は陶芸家の作業場の扉の前に立っていた。

「この件はまた後でじっくりとお話をしましょう。……フフッ、まずは黒幕を滅しませんと。」
『本当に落ち着いて!? 黒幕はもう滅されてるから!!』
 このままでは陶芸品諸とも陶芸家を攻撃しかねないと思った凶津は必死に桜を宥めに掛かる。最終的に帰りにカフェーで甘いものをご馳走する事を約束する事により漸く桜は落ち着いた。


『想像以上に陶芸品が多いな。』
「……これが全て犠牲者の成れの果てなのですか?」
 凶津達は陶芸家の作業場を見回しながら感嘆する。作業場は思っていたよりも広くその気になれば駆け回る事も出来そうだ。
 しかし、そんな広い部屋は陶芸品に埋め尽くされていた。壁一面に陶芸品が陳列されており、それ以外の場所も陶芸品が見えない場所を探す方が難しい。
陶芸家の大人数で来られると陶芸品が壊れかねないという言葉が納得できる光景であった。

「……武器を持ち込めなくて良かったかもしれないです。」
『確かに不用意に武器を振るえばそれだけで陶芸品を壊しかねないぜ。』
 凶津達は今やただの水差しに成り果てた美術商に少しだけ感謝した。
そして、桜は作業場の状況から凶津にある提案する。凶津は桜からの提案に驚くが直に桜らしいと笑って受け入れた。

『それじゃあ、いくぜ!』
「……式、召喚【ヤタ】【見え猿】」
 凶津達はその手に霊符を構えると八咫烏と猿の式神を呼び出すと芸術家へと嗾けた。八咫烏は霊光の輝きと共に凶津達へと歩み寄ろうとする芸術家に襲い掛かかり、不可視となった猿は邪魔な八咫烏を陶芸品に変えようとする芸術家の動きを妨害する。
 そして、式神達が思惑通りに芸術家の行動を妨害する合間に凶津達は作業場の至る所に結界霊符を投げ貼って回っていた。

『桜、霊符はあと何枚残っている!』
「……5枚です。」
 桜の提案、それは作業場内の陶芸品を結界で保護して回る事であった。
 作業場の外で待機している猟兵の中には武器が万全の状態の者が数多くいる。だが、作業場内に置かれた陶芸品を壊さない様に戦おうとすればそれらの武器をまとも振るう事はまず叶わないだろう。
 そこで桜は作業場内の陶芸品を結界で保護する事により後に続く猟兵達が心置きなく武器を振るえる様にしようと考えたのだ。凶津は陶芸家が結界の札を剥がす可能性が懸念していたが作業場内の陶芸品が綺麗に手入れされていた事から陶芸家が進んで自身の作品が壊れる可能性を高める行動はとらないと桜は確信していた。

「……これが最後の霊符です。」
『よぉし! それじゃあ最後の霊符はありったけの霊力を篭めて退路を作るぜ!』
 凶津達は最後の霊符を使い、自分達や後に続く猟兵達が安全に退く為の退路を作ろうとした。しかし、それは部屋の中に響き渡る式神達の悲鳴により妨げられた。

「何度も妨害されれば、流石に行動パターンも掴めますよ。」
『まさか、ヤタ達がやられたのか?!』
 凶津達が慌てて陶芸家の方を振り返れば芸術家は青と黄色の入り混じった粘土を捏ね回しているではないか。
陶芸家は粘土を2つに分けると素早く形を整えると釉薬を塗ってゆく。そして、ヤタと見え猿であったモノが炎に包まれた。

「はい、烏と猿の箸置きの完成や。……何をしとるかと思えばウチの作品を保護してくれてたんやね。」
 陶芸家は陶芸品に成り果てた式神達を机に置こうとした所で結界符の存在に気が付いた。見慣れぬ紙に始めは警戒する陶芸家であったが、それが陶芸品を守る為の物でありゆっくりと作品を置く分には害がない事を悟るとそれを貼ったであろう凶津達に笑みを向けた。

「ウチの作品を保護してくれておおきに。お礼にジブンらをとびっきりの作品にしたる。」
 凶津達は咄嗟に最後の結界符を使い陶芸家の接近を防ぐと作業場の出口へ一目散に駆けだした。
大成功 🔵🔵🔵

龍・雨豪
故郷でも陶芸品が作られてたわね。
ものによっては正しく宝と呼べる物だったわ。艶のある表面と曲線美が良いのよね。
それはそれとして、助けられる人は勿論、手遅れなものも壊さないようにしましょ。

一騎打ちなら望むところよ。オーラでお互いを繋げば殴り飛ばしちゃうこともないしね。後はガンガン攻めるだけよ。
あっ。尻尾を陶芸品に当てちゃったから咄嗟に念動力で陶芸品を止めるわ。
壊れてないかしら?大丈夫そ――う?
しまった。余所見してる場合じゃなかったのに!
やだ。やめて、捏ねないで!

うぅ、当たり前だけど陶芸品にされたら全く動けないわね。
私自身が瓶子にされちゃうなんて、これで、終わり、なの……?

※前回同様アドリブなど歓迎



「故郷でも陶芸品が作られてたわね。」
 雨豪は作業場に所狭しと置かれている陶芸品の数々を見渡しながら呟く。
嘗て彼女が暮らしていた故郷に暮らす竜達は様々な物を宝として集めていた。そんな宝の一つとして陶芸品も少数ながらも存在した。
「艶のある表面と曲線美が良いのよね……。」
 作業場に入ってから見分するような視線を向けて来る陶芸家を警戒しながらも雨豪は陶芸品を見て回る。幾つか奇妙な作品があるものの、陶芸家の作品は兼ね雨豪の眼に敵う素晴らしい物であった。
 しかし、これらの作品は人を素材に作られている。雨豪には作品の素晴らしさが陶芸家の腕によるものと素材にされた人によるもののどちらによるものなのかは判断できなかった。

「先に突入してくれた人には感謝しないといけないわね。」
 陶芸家の作業場の状況に多くの猟兵達が頭を抱える中、先駆けて突入した猟兵が陶芸品を守る結界を貼ったという。結界は強力な攻撃を防ぐのは厳しいが弱い攻撃や強力な攻撃の余波なら確実に防げるという。
「助けられる人は勿論、手遅れなものも壊さないようにしましょ。」
 元より武器の類を持ち込んでいなかった雨豪だがそれでも余波を気にする必要が亡くなった事は大きい。見分を終えたのかゆっくりと近づいてくる陶芸家に雨豪は両手にオーラを纏うと構えを取った。


「あんたも素敵な作品にしたる。」
「陶芸品にされるなんて御免よ!」
 陶芸家は陶芸の粘土に変えようと見た目からは想像できない速さで駆けだした。しかし、その身のこなしは素人同然であり、達人級の武術家である雨豪からすれば隙だらけであった。
「これでも喰らいなさい!」
「うぐぅっ!?」
 当然、雨豪が素人相手に捕まるわけがなく伸ばされた手を華麗に躱すとオーラを纏った拳で陶芸家を殴りとばした。雨豪の腕に纏わりつくオーラは陶芸家の体に付着すると鎖状となり二人を繋いだ。

「これで準備は完了ね。」
 雨豪は自身と陶芸家を繋ぐ鎖を掴むと力を込めて引っ張った。すると鎖は張り詰めて陶芸品の陳列された棚に向けて吹っ飛ばされていた陶芸家を雨豪の元へと手繰り寄せてゆく。
 そして、雨豪は手繰り寄せた陶芸家を振り上げた拳を使い地面に叩きつけた。地面に叩きつけられた際に衝撃が作業場を襲ったが結界は衝撃波から陶芸品を守り切った。

「この調子でガンガンいくわよ!」
雨豪は陶芸家と繋がった鎖を使い陶芸家が陶芸品を守る結界に直接ぶつからない様に注意をしながらも次々と殴り飛ばしてゆく。
 この調子なら陶芸家を無力化させる事も出来るのではないかと雨豪は希望を抱き始めたそして、雨豪が陶芸家を手繰り寄せながら渾身の力を込めた拳を振るおうとした瞬間、尻尾が何かにぶつかり雨豪はバランスを崩し倒れてしまった。
「いたた……攻撃に夢中になりすぎたわね……。」
 前のめりに倒れた雨豪が後ろを振り返ってみれば、そこには淡い光の障壁を発生させた結界があった。雨豪は攻撃に集中するあまり結界に近づきすぎてしまい、渾身の一撃を決めようとした際に振るわれた尻尾が結界に触れてしまったのだ。
 それでも雨豪は結界のお陰で自身の尾が陶芸品を割る事がなかった事に安堵した。そして、倒れ伏して安堵する雨豪に手繰り寄せられてきた芸術家が覆いかぶさった。

「こういうのを注意一秒、怪我一生と言うんやろか?」
「しまった。倒れている場合じゃなかったのに!」
 雨豪に覆いかぶさった陶芸家は散々殴り飛ばされた鬱憤を晴らすかのように雨豪の体を揉み始めた。陶芸家の手に揉みしだかれる度に雨豪の体が粘土の如く柔らかくなり、関節は愚か骨格を無視して捻じ曲げられてゆく。
「散々どついてくれたお礼に念入りに捏ね繰り回したる。」
「やだ。やめて、捏ねないで!」
 満面の笑みで雨豪の体を捏ね繰り回す陶芸家に対し雨豪は快感とも苦痛ともいえない奇妙な感覚と共に自身の体が変貌させられる事に恐怖する。
 やがて、人としての面影が完全に失われ肌色と黒の入り混じった塊となった雨豪を陶芸家は板の上に置くと力強く捏ね繰り回してゆく。するとまだら模様の塊から肌色と黒の入り混じった釉薬が搾り取られてゆき、雨豪は小麦色の粘土に成り果てた。


「さて、ここからが本番やね。」
 陶芸家は雨豪の成れの果てである粘土をろくろの上に置くと大まかな形を整えてゆく。そして、ある程度形が整った所でろくろを力強く回し、本格的な成形を始めた。
「まずは円筒にしぃ……ここからは慎重に行きますよ……。」
 手慣れた様子で粘土を円筒に成形した陶芸家は更に指を使って成形を勧めてゆく。根元から体部に賭けては元の太さを維持したまま上部を乳房の如く膨らませてゆく。
上部が充分に膨らませた後は細長い口縁部を形成してゆく。暫くして成形作業が終わったのか陶芸家はろくろの回転を止めると成形を終えた作品に手を翳し乾燥させてゆく。

「ふふ、後は釉薬を塗って焼ったら瓶子の完成やで。」
(うぅ……当たり前だけど……全く動けないわね。)
 陶芸家が成形した物、それは瓶子と呼ばれる主に酒器として使われる壺であった。瓶子が十分に乾燥している事を確認した陶芸家は先程搾り取った釉薬を瓶子へと塗ってゆく。
 そして、満遍なく釉薬を塗り終えると陶芸家は瓶子を炎で包み込んだ。炎の熱が釉薬を溶かし、瓶子に彩りを与えると共に釉薬に溶け込んでいた雨豪の魂を虚空へと追いやってゆく。
 やがて炎が消えるとそこには黒く輝く瓶子が鎮座していた。その模様はまるで鱗の様でどことなく神聖さすら感じられる。

「それじゃあ、これからは瓶子としてキバリや。」
(瓶子に……されちゃうなんて……これで……終わり……なの……?)
 こうして陶芸家の手により黒い瓶子にされてしまった雨豪は意識が朦朧とする中で陶芸家の作品として作業場に陳列されてしまうのであった。
成功 🔵🔵🔴

二尾・結
どうせ作品にされるなら人型の方が……って何負けた時の事考えてるの!私らしくもない!

「その間違った芸術活動、終わりにしてもらうわよ!え、ツインテールが綺麗?ふふん、そうでしょう!」
その髪を作品に、とか聞こえたけど気にせずさぁ行くわよ!
「ああぁあ、体が、ぐにゃぐにゃにいいぃ」

何もせず一瞬で結が敗北したため、正義の心が『正義の記憶の緊急召喚』を発動。捏ねられ始めた結の粘土の中から陶芸家目掛けて剣士の少女が奇襲します
奇襲後も戦おうとはしますが、耐性は無いため敵にUCを使われればすぐに粘土にされてしまいます

※作品はビスクドールか磁器人形を希望。召喚した少女はお任せ
NG無し。アドリブ、絡み、無様描写歓迎。



「やはり帝都桜學府のヤカラは甘いねんな。」
 陶芸家の影朧は未完成の作品に釉薬を塗り焼き上げる作業をしながら次の刺客を待っていた。その様子は部屋の外に自身を鎮めに来た猟兵がいるとは思えない程に落ち着いている。
「陶芸品をシカトすればウチなんてあっと言う間に無力化できるのに。」
戦いが始まる前に行われた陶芸家の忠告は確かに陶芸品の破壊を防ぐという意味では正しい。しかし、それ以上に陶芸家にとっては自身が速やかに無力化されない為の策でもあった。

「しゃんと元に戻せるかも分からへんヤカラの為にご苦労な事やで。」
陶芸家はつい今しがた完成した作品を棚に優しく陳列すると完成していない作品を手に取った。乾燥して水分が殆ど抜けた作品からは僅かに魂の様なものが感じ取れる。
だが、感じ取れるのはそれだけであり、人としての意思がまだ残っているのか芸術家には甚だ疑問であった。作品を見回し罅割れがない事を確認した陶芸家は作品の傍らに置かれていた釉薬を塗ろうとした所で作業場の扉の開く音が鳴り響く。
「次の人が来たみたいやね。今度はどないな人かな?」
 陶芸家は手にしていた作品を作業台の上に置くと次の相手の姿を見定めるべく振り返った。


「その間違った芸術活動、終わりにしてもらうわよ!」
「度の人は随分と綺麗な髪をしとるね。これはええ作品になりそうや。」
 威勢の良い言葉と共に突入してきたのは結だ。
結は先の戦いでまんまと淫らな彫刻にされた事に対する怒りを陶芸家で晴らすつもりであった。しかし、開口一番に陶芸家から放たれたツインテールを誉める言葉にその怒りは簡単に晴れてしまう。
ツインテールを愛する結にとってツインテールを讃える言葉とは彼女の機嫌を良くして大概の事を許す状態にしてしまうある種の特効薬であった。

「え、ツインテールが綺麗? ふふん、そうでしょう! どうせ作品にされるなら人型の方が……って何負けた時の事考えてるの! 私らしくもない!」
「まさか、相手から作品のリクエストをされるとは思わへなんだわ。」
ツインテールを褒められた結は一気に期限が良くなった上に先の戦いの影響が残っているのか陶芸家に自身を使って作る作品のリクエストまでしてしまう。流石の陶芸家もそんな結の態度に呆けてしまう。
 それでも直に結が戦意を露わにすると陶芸家も結を自身の作品に変えるべく構えを取った。そして、結と陶芸家の戦いが始まるのだが、戦いは即座に終結した。

「ああぁあ、体が、ぐにゃぐにゃにいいぃ!」
「……あんたはほんまにウチを鎮めに来た帝都桜學府の人なんか?」
 自信満々に陶芸家に突撃してきた結は陶芸家の手に掴まれるとあっさりとその形を歪められた。ツインテールを褒められ気分が良くなった結は今の自分が武器は愚か防具もまともにつけていない状態である事を忘れていたのだ。
 当然、なんの対策もなしに陶芸家に掴まれた結は瞬く間に無力化され金色と乳白色の入り混じった塊へと変貌した。そして、陶芸家は塊となった結から釉薬を絞り出す為に作業台の板の上へと置いた。

「さて、次は余計な水分を絞り出さへんといけまへんね。……なぁっ!?」
「…………。」
 陶芸家が結であった塊を力強く揉めば作業台の上位に淡い黄色の釉薬が流れだす。だが、捏ねられた直後に塊が光り輝いたかと思えば銀髪のポニーテールの少女が飛び出しその手に持つ剣で塊を捏ねようとする陶芸家の腕を切り裂いた。
「あんたは何もんや?」
「…………。」
 突然の奇襲に驚いた陶芸家はポニーテールの少女に対し問い掛けるが少女は無言を貫く。何故ならこの少女は危機に陥った結を助けようと彼女に宿る『正義の心』が呼び出した過去に宿った英雄を模した防衛機構に過ぎないからだ。

「成程、その少女は囮やったか。それならこないにも弱かったのも納得や。」
「…………っ!」
 少しして陶芸家が切り裂かれた腕を摩りながら言葉を放つ。それに対し少女は怒りを露わにするわけでもなく陶芸家へ突撃し剣を振り下ろした。
 しかし、陶芸家が振り下ろされる剣を白刃取りの如く両手で受け止めてしまう。そして、少女が手を捻れば剣諸とも少女の腕を粘土の如く捻じ曲げられてしまった。
「すまん、あんたもそれほど強くなかったようや。」
「……っ!?」
ポニーテールの剣士は戦闘能力こそ元となった英雄を再現されているがその動きは極めて機械的だ。目の前に結を害する者がいればそれがどのような能力の持ち主であろうとただ攻撃する事しか出来ない。
ここで呼び出されたのが弓や銃を使う少女であればまだ善戦できたかもしれない。しかし、呼び出されたのは剣士の少女であった。
 いくら身のこなしが素人の陶芸家でも単調に剣を振り回してくるだけの相手に負けはしない。ポニーテールの少女が結の後を追うまでそう時間はかからなかった。


「さて、これは何にしたろか。確か人型がええのやんなぁ?」
 陶芸家の前に2つの粘土の塊が鎮座する。手始めに陶芸家が手にしたのはポニーテールの少女であった粘土だ。

「そうですね、あなたは如雨露にしましょ。」
 陶芸家は粘土を捏ね回し粘土の付け足しやヘラを使い粘土の形を整えてゆく。やがて出来上がったのは剣を前方に構えたポニーテールの少女をデフォルメした人形だ。
 但し、少女は一糸纏わぬ姿であり剣とそれを構える腕のお陰で見えないが、恥ずかしい部分も作り込まれている。そして、少女の頭頂部には大きな穴が空き、剣の先にも小さな穴が空いていた。

「次はジブンやけど……そうやね、貯金箱なんて良さそうや。」
 続けて陶芸家は結であった粘土を捏ね回して形を整えてゆく。やがて完成したのはやはりデフォルメされた一糸纏わぬ結の人形だ。
 結の人形は武器を持たず直立のポーズを取っている為にデフォルメされながらも作り込まれた恥ずかしい部分が丸見えになっている。そして、ツインテールの分け目には細長い穴が空いていた。

「後は釉薬を塗って……焼き上げれば完成や。」
 完成した2体の粘土の人形を陶芸家が手早く乾燥させると釉薬を塗ってゆく。但し、結達から搾り取った釉薬は髪の部分にだけ塗られ、それ以外の部分には肌色や桃色、様々な色の釉薬を塗ってゆく。
 そして、陶芸家は釉薬を塗り終えた2つの人形が炎に包まれ焼き上げた。炎が収まれば2体の人形を模した如雨露と貯金箱は艶やかながらも嘗ての色合いを取り戻していた。

「人は選びそうやけど中々の作品がでけたね。あんたらも嬉しいやろ?」
 陶芸家が2つの人形の穴を優しく撫でれば人形達は喜ぶかのように僅かに震えた。
成功 🔵🔵🔴

ディナ・サーペント
アドリブ連携OK

一般人を、巻き込まないように、戦う…さっき家具職人と戦った時と、同じだね
それじゃ、手始めにビームからいくよ
陶芸品を、壊さないように、敵だけを見据えてね
一度凍らせて、大人しくさせたら…って炎!?
危ない、後ろに飛び退いて、ギリギリ回避…
?なんで笑ってるの…足元を見ろ?
なにこれ、台座?…うわっ、なんで、いきなり回転して、誰か止め…

回転が止まって、人型の粘土になった私を、影朧が丸く捏ねて恥ずかしく無様な陶芸品に作り変えちゃうよ
本来なら悔しいはずなのに、心まで陶芸品になった私は、彼女の作品にしてもらえたのが嬉しくて…
作品になった私を、もっと沢山の人見てもらうのを、心から求めるよ



「一般人を、巻き込まないように、戦う……さっき家具職人と戦った時と、同じだね。」
 陶芸家の作業場に突入したディナは部屋の中に所狭しと並ぶ陶芸品を見回す。倉庫で家具職人と戦った時と同様に室内には嘗て人であった美術品で溢れている。
 しかも倉庫の時と違い置かれている美術品は全て壊れやすい陶芸品だ。本来ならば倉庫での戦いの時以上に慎重に動く事が求められる筈であった。
「結界を貼ってくれた人には、感謝だね。」
 部屋の陶芸品に紛れるように沢山の符が至る所に貼られている。この符は結界を発生させる札であり軽い攻撃であれば防いでくれるという。
 ディナはこの符が作り出す結界のお陰で陶芸品を気にする事無く攻撃が出来る様になったのだ。そして、ディナは視線を自身の前に突入した猟兵に酷似した陶器の人形をテーブルに置いた陶芸家へと向けた。

「海賊とはこれまた変わったヤカラが来よったな。」
「そんなこと、言っていられるのも……今の内、だよ?」
 新たな作品の構想が沸き上がる材料の出現を喜ぶ陶芸家と美術品をほぼ気にする事無く攻撃が出来る事を喜ぶディナは互いに笑みを浮かべ相対した。


「れいとうビーーーム!」
「まずは柔らかくして……冷たっ!?」
 対決の先手を取ったのはディナだ。両目から放たれた青白い光線がディナを捏ね繰り回そうと迫る陶芸家の体を凍結させてゆく。これには陶芸家も慌ててディナへの接近を中止すると光線から逃げ始める。
「そのまま、凍らせて、あげるよ。」
 だが、いくら陶芸家が逃げてもディナが視線を陶芸家へ向けるだけで光線は瞬く間に陶芸家に追いつき、その体を少しずつ凍結させてゆく。本来ならもっと早く氷漬けに出来るのだが冷凍ビームが陶芸品を守る結界を破ってしまう可能性を警戒してディナはビームの出力を大きく落としていた。

「一度凍らせて、大人しくさせたら…って炎!?」
「ジブンが凍らせるのなら、ウチは焼き固めたる!」
 一般人の安全確保の為にビームの出力を落としていた為にディナは陶芸家に反撃の機会を与えてしまう。陶芸家が逃げ回りながらも片手をディナに向ければ、手から炎が放たれたのだ。
 普段ならいざ知らず、出力が落とされた今のビームでは炎を止める事が出来ない。この炎に包まれたら不味い事になると本能的に悟ったディナは咄嗟に後ろに飛びのいた。
「簡単には、やられないよ……なんで笑ってるの?」
「なんでって、そりゃジブンの足元がお留守やからや。」
 炎をギリギリの所で回避したディナは攻撃が避けられたにも関わらず笑みを浮かべる陶芸家に首を傾げる。そして、陶芸家が笑っていた理由をディナは着地した瞬間に理解する事になる。

「なにこれ、台座? ……うわっ、なんで、いきなり回転して、誰か止め……。」
「特性のろくろ、存分に味わうとええ。」
 ディナが着地した場所、それは大きなろくろの上であった。ろくろはディナが上に乗った直後に高速回転を始めたのだ。
 突然の事態にディナは混乱し目を回してしまう。更にろくろの回転に目を回すディナの体に異変が起きる。
 回転が激しくなるにつれてディナの体が粘土の如く捻じ曲がり始めたのだ。陶芸家が生み出した特性の轆轤には遠心力で上に乗った物の硬さを奪い取る力が備わっていたのだ。

「しゃんと柔らかくなっとりますね。ジブン、大変な事になっとるで。」
「ふにゃぁ……体に力が……はいらない……。」
 やがて回転が止まるとそこには無残な姿になったディナが鎮座していた。ろくろの力で柔らかくなった体は回転によって何重にもねじ曲がっており、あたまと胸とお尻が同じ向きになってしまっている。
「さぁ、ここからが本番や。」
「や、やめて……むぎゅっ!?」
 陶芸家は柔らかくなったディナの体を両手で丸めてゆく。丹念に丸められる内にディナの体は人としての形を失い、薄い水色の塊に成り果ててしまった。
 そして、陶芸家は水色の塊を板に叩きつけると釉薬を絞り出し小麦色の粘土に変えてしまった。


「さて、何にしてあげましょうか? ……そうやね、今度は普通の飾り物にしましょか。」
 陶芸家はディナであった粘土の塊を捏ね回す手足を大の字に広げた人型を形作った。人型が出来れば足に当たる部分をまるでUの字を描く様な形に変形させ、両手は胴体に対して垂直になる様に伸ばしてゆく。
 明らかに先程作品に変えた猟兵と同じような趣向が凝らされているが、作業に夢中になっている陶芸墓それに気が付かない。

「あかん、先程のヤカラと同じような仕様にしてしもた。……まぁ、問題はないか?」
 ヘラを使い、細かい形を整えた所まできて漸く陶芸家は人型に近い造形にした事に気が付いた。ディナであった粘土の塊はその姿を錨のオブジェに姿を変えていた。
 随所に人としての面影を残したそれはストック部分が真っすぐに伸ばされた両腕であり、U時に捻じ曲げられた両脚が錨腕を成している。
 更に撫で心地の良さそうな臀部は錨冠となり起伏に富んだ女体を模したシャンクの先には角突き帽子を被ったディナの頭がアンカーリングとして取り付けられていた。
「ここまで来たらしゃんと仕上げてあげるのが筋やな。」
 陶芸家は乾燥した陶器の錨に先程絞り出した釉薬を塗ると改めて発生させた炎で包み込んだ。そして、数分も経てば小麦色だった錨は爽やかな水色に染まっていた。

「……流石は帝都桜學府のヤカラやね。こんな姿になっても意識が残っとるなんて。」
(あぁ、そんな所に、飾らないで……色んな人に、見て貰える場所に、置いて……。)
 陶芸家は先程陶器人形にした者達と同様に手の中で震えている錨に驚いた。
あらゆるものを陶芸品に変える為の力しか持たない陶芸家には両手で抱えた置物が何を思っいるのかは分からない。
 それでも、目立つ位置に置こうとすれば錨の震えが強くなる事から誰かに見られる事を望んでいる事を確信し陶芸家は苦笑した。

「そうだ、あそこならきっと満足するやろ。」
(あぁ……見られてる! 私、みんなに、見られてるよ!)
 あろうことか陶芸家は作業場のメッセージボードと入れ替えるように錨に成り果てたディナを設置してしまった。猟兵達も突如として作業場から出て来た陶芸家が取り付けた飾り物の錨に首を傾げたが、それが小刻みに震えている事から元が何であったかを悟り戦慄した。

 こうしてディナは陶芸家に敗北した猟兵の末路としてこれから陶芸家に挑もうとする猟兵達の視線に晒される事になるのであった。
成功 🔵🔵🔴