15
美術商と影朧

#サクラミラージュ #状態変化

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サクラミラージュ
#状態変化


0





「あなたは本当に素晴らしい作品ばかり見つけてきますな。この壺なんて生命力に満ち溢れておる。」
 初老の男が陶芸品の数々を称賛すると資金が許す限り買い漁った。
「この人形を包んでくれんかね。孫娘の誕生日に送りたいのよ。」
 優し気な老婆は少女の人形に豪華な梱包が施してもらうとほくほく顔でそれを持ち帰っていった。
「店主よこの彫像に加工を施す事は可能かね? 庭に置く噴水にしたいのだ。」
 スーツに身を包んだ男性は一糸纏わぬ姿で座り込む女性の彫像を撫でながら美術商に尋ね、美術商は笑顔でそれに応じた。

 サクラミラージュのとある館にて好事家達と美術商の商談が行われていた。
 美術商が独自のルートで仕入れたという美術品を好事家達は次々と買い上げてゆく。
 そして、商談を無事に終えた美術商は美術品が残り少なくなっている事に気が付いた。
「そろそろ次の美術品の仕入れを始めた方が良さそうですね。」
 美術商の男はそう呟くを館を後にした。
 数日後、帝都の各地で一般人が行方不明になるという事件が発生した。


「皆様、ドライプラメの呼びかけに応じて頂きありがとうございます。」
 不格好なロボットにその身を宿す電子妖精、ドライプラメ・マキナスアウト(自称銀河帝国随一の管理AI・f25403)はその場に集まった猟兵達に頭を下げる。

「皆様はサクラミラージュの帝都で多発する行方不明事件をご存知ですか?」
 ドライプラメ曰く、近頃帝都の至る所で行方不明事件が起きているらしい。勿論、帝都の警察が捜査を行っているのだが捜査は難航しているという。
「ドライプラメはこの事件にとある美術商が関わっている事を予知により突き止めました。」
 ドライプラメの言葉に猟兵達は首を傾げる。確かに事件の手掛かりを得たのは喜ばしい事だ。しかし、一般人相手であれば猟兵を集める必要はない。
 そんな猟兵達の様子を察してドライプラメは猟兵達を招集した理由を語り始める。

「ドライプラメがその美術商の予知に成功したのは、美術商が複数の影朧を匿っていたからなのです。」
 サクラミラージュはと人々がオブリビオンこと影朧と密接に関わりあう世界だ。虐げられた者がなるという影朧に一般人が絆され匿ってしまう事例も珍しくはない。
 美術商もその類なのかと猟兵が聞けばドライプラメは顔を顰めた。
「件の美術商は私腹を肥やす為に影朧達を利用しているようなのです……。」
 美術商が匿う影朧はその多くが元々芸術家であったらしい。美術商は作業環境と材料を提供する代わりに影朧達の作品を貰い、それを好事家達に売り捌いているという。
「問題は影朧達が材料として生きた人間を求めている事です。」
 影朧達は世界の崩壊させるというオブリビオンの本能によるものなのか人間を作品の材料として求めている。そして、美術商は私腹を満たす為に一般人を影朧達に捧げる事を躊躇していないという。

「これ以上一般人が美術品にされる前に影朧達を鎮めなければなりません。」
 ドライプラメは影朧達と接触し鎮める為の方法を語り始めた。

「まずは美術商に影朧が匿われた館に招いてもらう必要があります。」
 美術商は自身が出資しているカフェーで休んでいる一般人に声をかけて回っている。ここで美術商の誘いに乗れば幾つかの確認の後に影朧達の潜む館に招かれるという。
「美術商は館への武器類の持ち込みを禁止しているので注意してください。」
 美術商は館へ招く前に相手の所持品を確認し武器を店に置いていくように求める。それを拒めばその者を館に招く事をやめるという。
 館内に武器を持ち込むには美術商が本物の武器と判別できない物を選ぶか、何らかの方法で武器を隠すしかないだろう。

「無事に館に招かれたら、館に潜む影朧達を鎮めてください。」
 館には先駆けて美術商に招かれた一般人達が館内の美術品を見て回っている。
「影朧達は館内に潜み、隙あらば皆様を自身の作品に変えようとしてきます。」
 館内の影朧達は弱く真っ向勝負なら猟兵が負ける要素はない。しかし、影朧達は各々の方法で自身の存在を隠蔽して猟兵達に奇襲を仕掛けて来るという。

「領域内に潜む影朧達を粗方鎮める事が出来たら、最後に強力な影朧を鎮めに向かってください。」
 その影朧は館内に隠された工房で作品を作っているという。その力は館内で鎮めて回った影朧達とは比べ物にならず、侮れば瞬く間に作品にされてしまうという。

「それでは、皆様の健闘を祈ります。」
 説明を終えたドライプラメは転送装置を起動させるのであった。


野根津
 皆さん、こんにちは或いはこんばんは。野根津です。
 今回はサクラミラージュにて美術商に匿われた影朧達を鎮めに向かって貰います。
 以下、補足事項です。

●1章
 美術商は刀剣や近代レベルの銃器、サクラミラージュで出回っている武器の類は本物か否か確実に見分ける程度の鑑識眼はあります。
 裏を返すとサクラミラージュでは出回らない武器に関しては鑑識眼では判断しきれないので誤魔化す事が可能です。
 美術商は武力やユーベルコヲド等で脅された場合、即座に逃げるのでご注意願います。

●2章
 館内に潜む影朧達を鎮める事が目的となります。
 間章で提示される影朧達のユーベルコヲドと館内にいる一般人からの情報を元に館内に潜む影朧達を探す事になります。
 館内に展示された美術品にされた一般人達の救助及び、美術商の拘束は影朧達に逃げられる恐れがある為に不可能となりますのでご注意願います。

●3章
 館内に潜む最後の影朧との戦闘になります。
 工房内も館内同様に美術品にされた一般人が多数陳列されています。
 陳列された美術品を壊さない様に工夫する事によりボーナスが得られます。

●備考
 2章以降は状態変化の要素があります。変化過程の描写等で盛大なキャラ崩壊等が起こる可能性がある為、それを踏まえた上で参加して頂けると幸いです。
 故意に影朧にやられるプレイングを行う場合、各章の断章で提示された条件を満たす様なプレイングを盛り込んであれば成功として扱います。

●プレイングの受付期間について
 原則として各章の断章投稿後から受け付け開始、締め切りはマスターコメントにて提示予定です。
 受付期間中に投げられたプレイングは余程の内容でない限り採用しますがスケジュールの都合で執筆が間に合わず流してしまう事があります。プレイングが流れてしまった場合は再度プレイングを投げて頂けると有り難いです。

 それでは、皆様のプレイングお待ちしております。
22




第1章 日常 『彩る泡の傍らに』

POW   :    甘味も頼む

SPD   :    軽食も頼む

WIZ   :    今日のお勧めも頼む

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 人の賑わうサクラミラージュの繁華街、その一角にその店は存在する。

『カフェー・アンブロワーズ』

 今流行りの『クリームソーダ』で有名なカフェーだ。
 店内には美術商が実際に取り扱う商品の一部が置かれ、店舗毎に置かれている物が異なるらしい。
 流行っているとはいえ、今は混みあう時間ではないようで人影はまばらであった。
 これ幸いと手早く入店を済ませた猟兵達は一番の人気商品であるクリームソーダを注文した。
 そして、クリームソーダを楽しみながら待つ猟兵の前に一人の男が現れる。

「突然失礼。私はこういう者なのですが、少しお話よろしいでしょうか?」
 カフェーで寛ぐ一般人達に声をかけて回るその男こそが件の美術商である。
 耳を澄ましてみれば美術商は懇意にしている芸術家に頼まれて美術品のモデルを探しているらしい。
 しかし、勧誘はうまくいっていない様で一般人達からは断られ続けている。
 暫くして美術商は猟兵達へと近づいて来た。猟兵達はこれから始まるであろう戦いに向けて気持ちを切り替えた。

●補足事項
 原則としてグループ参加を明記していない限り各猟兵は別々のテーブルでクリームソーダを堪能しており、美術商との対応も個別に行われます。
 猟兵達が飲むクリームソーダは様々な色と味があります。プレイングで指定して頂ければリプレイに反映されて頂きます。
 美術商に武器を見せる場合は見せる武器の名前の明記してください。明記されていない場合、ステシから核に可能な所持武器から無造作に選ぶ事になる為に判定で不利になる恐れがあるのでご注意願いします。
 プレイングの受付締め切りはマスターコメントに記載しますので、確認の程よろしくお願いします。

 それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております。
シズホ・トヒソズマ
人間を人形のようにしてしまうとはなんて恐ろしい
いやまあ束縛は好きですけど永遠ってのはよくないですし命を奪うのなら更にダメなんですよそこは分かって欲しいんですけど、え?ベルセルクドラゴンみたいになってるからその辺で?あ、はい

事前に手持ちのからくり人形や武器をUCでマスクの中の異空間に収納しておきます

スタイルのいい着用者の方に装着して身なり良く食事します
ソーダは紫色のでも頂きますかねえ、あるかわかりませんけど
会話は◆コミュ力で程よく会話してモデルになる旨を引き受けましょう
マスクについて訝しがられた時は実家を出てきたので顔を隠していると◆言いくるめると共に行方不明になっても問題無いと印象付けます




「人間を人形のようにしてしまうとはなんて恐ろしい……。」
 ドライプラメからの説明を聞いたシズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)は恐れ戦いた。
 美術商の匿っている影朧達は何れも人を彫像や人形等の物品に変える能力を持つという。更に物品にされた人々を美術商は売り捌いているというのだ。
 人を物として扱う、それは正に悪魔の所業である。ただ、重度の被虐嗜好の持ち主であるシズホは影朧と美術商の所業を嫌悪する一方で物として扱われるという事に只ならぬ興味を抱いていた。

「いやまあ束縛は好きですし、物として扱われる事に興味がないと言えば嘘になりますけれど、永遠ってのはよくないですし命を奪うのなら更にダメなんですよそこは分かって欲しいんですけど、え? ベルセルクドラゴンみたいになってるからその辺で? あ、はい。」
 影朧達の所業を止めたいという正義感と物品にされて弄ばれたいという欲望の狭間で葛藤するシズホ。そんなシズホに近くにいた猟兵は声をかけて葛藤を中断させた。
 というのもいつの間にかシズホの葛藤が口に出ており、周囲にいる一般人からの注目を集めていたからだ。もう少し止めるのが遅かったらシズホは不審人物として警察に通報されていたかもしれない。
 そして、仲間に止められて漸く落ち着いたシズホは改めてカフェーへと足を勧めるのであった。


「紫のクリームソーダと今日のお勧めをお願いしますね。」
 特に問題もなくカフェーへと入店したシズホは何となく目についた紫のクリームソーダと本日のオススメを注文した。
 程なくしてシズホの席にオムライスと紫のクリームソーダが届けられた。シズホは早速オムライスを食べ始めた。

「卵はふわとろでチキンライスも丁度良い塩梅ですね。」
 チキンライスを包み込む卵は柔らかく口に入れれば舌の上でとろけてゆく。卵に包まれたチキンライスも程よく水分が飛んでケチャップの味が染み込んでいる。
 絶品とまではいかなくても十分に美味しいオムライスだ。続けてシズホはこの店の人気メニューであるクリームソーダを飲んでみる事にした。
「さて、味の方は……まぁ、順当ですね。」
 紫色という事で変わり種の味が来る事を僅かに期待していたシズホだが残念ながら普通のグレープ味だ。それでもバニラアイスとの組み合わせは新鮮であった。
 こうして身なり良くオムライスとグレープソーダを楽しむシズホ。その食事が一段落した頃を見計らい彼女に声をかける者がいた。
 そう、美術商だ。

「突然失礼。私はこういう者なのですが、お話よろしいですか?」
 美術商はシズホに名刺を手渡すと手早く要件を告げてゆく。
 懇意にしている芸術家が新たな作品のモデルを求めているという。勿論、引き受けてくれるなら報酬も出すそうだ。
「いいですよ。詳細を聞かせてもらえないでしょうか?」
 当然、館に潜む影朧を鎮める事が目的であるシズホは美術商の提案を受け入れる。
 提案を受けたシズホに対し美術商は笑みを浮かべると店員を呼び出した。そして、シズホの頼んだ料理の代金を支払うと店の奥へとシズホを招くのであった。


「それでは、仕事の詳細を話しましょう。」
 カフェーの奥、上客専用の個室へと招かれたシズホに美術商はモデルの依頼の詳細を話し始めた。
 件の芸術家は美術商の持つユーベルコヲドを使う事によって行く事の出来る館で作業を進めているらしい。そして、仕事をするに辺りモデルもその館に招くという。
 ポーズと衣装はモデルと芸術家が直接対面して決める。その際にモデル側が望まない限りヌードモデルや淫らなポーズは決してさせないという。
 報酬は基本は現金一括払い。但し、モデルをする際に使用した衣装の中で気に入った物があれば現金の代わりのその衣装を報酬にする事も出来るという。
「ここまでは問題ありませんか?」
「ええ、問題ないですよ。」
 話を聞く限りではモデル側に有利な条件が多く、報酬も破格な割の良い仕事だ。恐らくは美術商が折角の獲物を逃がさないようにする為の策だろう。
 何故なら、美味しい報酬があろうと支払うべき相手が只の美術品になってしまえば支払う必要がないのだから。
 そして、一通り話を終えた所で美術商は真剣な顔つきでシズホに問い掛ける。

「シズホ様は武器をお持ちではありませんか?」
 美術商が言うには過去に美術商が招いた客が持ち込んでいた武器を持って暴れ、芸術家や他の客を害そうとした事があったらしい。
 その事件以来、美術商は自身の館への武器の持ち込みを固く禁じているという。
 もしも、武器を持っている様であればモデルの仕事が終わり戻って来るまで武器は店側が責任を持って預かるし、預かるのを了承できない場合はこの話はなかったことになるという。
 シズホとしては美術商の言い分は影朧の事を抜きにしても筋が通っており、断る事は難しいと悟る。
 同時にシズホは美術商の問い掛けが念の為の確認にすぎないという確信を持っていた。というのも今のシズホはピッチリスーツに財布等の小物を入れる為のバックだけだからだ。
 からくり人形を筆頭としたシズのほ武器の数々は事前にマスクの中の異空間に収納されている。それこそ本体であるマスクを外して調べられない限り美術商にバレる事もないだろう。

「見ての通り、武器になる物は持っていないです。鞄の中身も今出しますね。」
「……確かに武器の類は入っていませんね。確認させて頂きありがとうございます。」
「えっと、マスクについては何も聞かないのですか?」
「あぁ、あなたも何らかの事情で顔を隠しているのでしょう? 私の客にはそういう人が多いのですよ。」
 あまりにもあっさりと確認作業が終わりそうな事にシズホは不安になりついマスクについて聞いてしまう。それに対し美術商は苦笑するとあっさりと回答した。
 どうやら、マスク程度では何の疑いも沸かない程度には美術商は顔を隠す者を相手にしている様だ。
 シズホは全く追及を受けない事に何故か不満を抱きながらも一先ずは納得する事に下。

「それでは館へ参りましょう。わたしの手を掴んで目を瞑ってください。」
 美術商の言われるままにシズホはその手を掴むと目と瞑った。暫くしてシズホが目を開いてみればそこに美術商の姿はなく、シズホ自身も沢山の衣装が置かれた見慣れぬ部屋に一人立っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
「…デバイスだけは運ですね」
説明聞き軽機関銃囮に他武装を会う前に隠すことに
桜鋼扇は見えないよう着物の下の太腿に括りつけ
精霊呪具もチェーンつけ胸元から和服の下へ
リュックに野点兼用簡易茶器と一緒に破魔の銀盆とシンフォニックデバイス入れる

最初から機嫌良さそうに鼻唄歌いながら
アイスクリームのせティーソーダ飲みつつ美術商待ち

「そうですね、ミルクホールに追加で飾れそうな小品には興味があります。お伺いさせていただいても宜しいですか」
「美術品に当たって傷が入ったら大変です。機関銃は置いていきます」

相手の確認中に鼻唄にUC「魂の歌劇」
愛想よく振る舞いつつ相手の注意力を散漫にして隠し武装に注意が行かないようにする




「これで美術商には咎められないと思いますが……デバイスだけは運ですね。」
 御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)はシンフォニックデバイスを片手に唸る。今回の事件の元凶と言える美術商は影朧の潜む館への武器の持ち込みを禁止しているという。
 桜花の持つ武器の多くがサクラミラージュに由来しない武器であり、傍目からは武器には見えない物ばかりだ。どう足掻いても誤魔化しの利かない軽機関銃に関しても美術商の眼を誤魔化す為の囮として使う事が出来る。
 そんな中、シンフォニックデバイスだけは持ち込めるかが怪しいと桜花は考えていた。シンフォニアである桜花にとって歌声を増幅するシンフォニックデバイスは要でありそれを持ち込めのは大きな痛手だ。
 しかし、シンフォニックデバイスの見た目は取っ手のついたメガホンであり変わった形状の銃の様にも見える。用途にしても歌声を増幅するというサクラミラージュに出回る武器『拡声器』と同一であり、そこを咎められれば桜花に打つ手はないだろう。
「ここで考え込んでもどうにもなりませんね……こうなったらやれるだけ事をやるまでです。」
 意を決した桜花はシンフォニックデバイスをリュックに仕舞うとカフェーに入店するのであった。


「まさか、ティーソーダも普通に扱っていると歯思いもしませんでした。流石は帝都で人気のカフェーです。」
 無事にカフェーへと入店した桜花は鼻歌交じりにクリームソーダを堪能していた。頼んだ味はティーソーダ、紅茶をソーダ水で割った変わり種だ。
 琥珀色の炭酸の泡が漂う紅茶に白いバニラアイスが浮かんだそれを飲んでみれば炭酸の刺激と共に甘酸っぱさとほろ苦さが混ざった大人の味が舌に広がる。
 更にバニラアイスが溶けていけば紅茶の琥珀色に白い濁りが混ざり、バニラの甘さが紅茶のほろ苦さを打ち消してゆく。
 その味は事件が無事に終わったら改めて飲みに行きたいと思える程であった。
 もはや当初の目的とは関係なくカフェーでの一時を楽しむ桜花であったがそんな彼女に惹かれて美術商が声をかけてきた。

「メイド服を着ている様ですが、仕事の休憩中でしょうか?」
 どうやら、メイドの服を着ている事から美術商は桜花が仕事の休憩中ではないかと考えたらしい。それでも最終的に声をかけようと思う辺り桜花の容姿が美術品の材料として最適だと考えたのだろう。
 恰好はメイド服でも今の桜花はパーラーメイドではなく猟兵として影朧を鎮める為に赴いている。故に桜花は今日がオフである事を告げると美術商が自身に声をかけた理由を伺った。
 美術商も桜花を気兼ねなく誘えると分った為か、笑みを浮かべると要件を話し始めた。

「それは良かった。実はあなたにちょっとしたアルバイトの提案があるのです。」
「アルバイトですか? もう少し詳しく聞かせて欲しいです。」
 こうして桜花が館に潜む影朧との戦いに赴く為の前哨戦が始まった。


「確かに芸術家の中には調度品を専門に作る者もいます。桜花様は調度品に興味があるのですか?」
「そうですね、ミルクホールに追加で飾れそうな小品には興味があります。お伺いさせていただいても宜しいですか?」
 カフェーの個室へ招かれ、仕事の詳細が説明が行われた。その最中に桜花は館に住まう芸術家もとい影朧に関する質問を積極的にしていた。
 複数の影朧との戦いが確定している以上、入手できる情報は早めに入手した方が良いと桜花は考えたのだ。
「成程、モデルの仕事が無事に終わった後でよければ是非とも話をしてあげてください。彼らもきっと喜ぶことでしょう。」
「有難うございます。これでモデルの仕事もやる気が出るというものです。」
 質問の甲斐もあって桜花は美術商が5体もの影朧を匿っている事を知る事が出来た。更に芸術家達の人柄をある程度知る事が出来た事が大きかった。
 そして、モデルの仕事に関する説明が一通り終わった所で美術商は館内への武器の持ち込み禁止について事情と共に説明を始めた。
「確かに納得できる理由ですし、それを抜きにしても美術品に当たって傷が入ったら大変です。機関銃は置いていきます。」
「申し訳ありませんが、他にも武器となる物があるかもしれませんので手荷物を改めさせていただいてもよろしいですか?」
 前哨戦の本番の始まりに桜花は気を引き締めた。

「これは銃ですか? ラッパ銃の様に見えますが、それにしては銃口が広がりすぎているし……うむむ……。」
 美術商による武器の見分は順調であった。元より囮であった機関銃は兎も角として、それ以外の武器もその多くがサクラミラージュに出回っておらず見た目も武器には見えない為に咎められる事がなかった。
 強いて言えばダイモンデバイスの一種である精霊呪具はその内に宿す精霊の気から酷く怪しまれた。それでも美術商の鑑定中にさり気無く口ずさんでいた【魂の歌劇】のお陰でギリギリ誤魔化す事が出来た。
 しかし、最後に取り出したシンフォニックデバイスを美術商はその外見から銃ではないかと疑われてしまう。そして、美術商は桜花に許可を得た上でシンフォニックデバイスを丁重に調べ始めた。
「ここが引き金の様ですね。しかし、排莢や発火の為の機能はないですし……『おぉ!? 随分と変った形ですがこれは拡声器なのですね?』」
 流石というべきなのか美術商はシンフォニックギアが拡声器の一種である事を直に見抜いてしまった。それは桜花がシンフォニックデバイスを館へと持ち込む事が出来ない事が確定した瞬間であった。

「申し訳ありませんが、この拡声器も安全の為に置いていって頂けませんか?」
「…………わかりました。これも機関銃と一緒に置いていきます。」
 桜花は美術商からの求めに悩んだ。だが、ここで拒めば桜花は館へと行く事が叶わなくなってしまう。
 悩んだ末に桜花はシンフォニックデバイスを持ち込む事を諦める事により影朧の潜む館へ招かれる事に成功するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

全会原・タイガ
アドリブ/絡みOK

影朧を自分のために利用するような悪どいヤツがいるとはな。
これ以上被害者を出すわけにはいかねぇしやってやるぜ!

武器に関しちゃオレは体ひとつで闘う身だから問題は無ぇな。
芸術とかはよくわからねぇけど興味があるように振る舞っとくか。




「影朧を自分のために利用するような悪どいヤツがいるとはな。」
 全会原・タイガ(男は度胸!女でも度胸!・f23916)は神妙な顔つきで呟いた。一般人が影朧を守ろうと匿う事案は数あれど、影朧を利用する為に匿う事案は珍しい。
 今は互いに利用しあう関係が成り立っているようだがこのまま放置すれば影朧達の力が増してゆくだろう。そうなれば影朧は美術種の手に負えなくなり、最終的に目を覆わんばかりの惨劇に発展するのが目に見えていた。
 それを抜きにしても現在進行形で被害者が出続けているのだ。タイガは一刻も影朧達を止めなければならないと気を引き締めた。

「まずは美術商の野郎に接触して館に招いてもらわなきゃならないんだよな? 全く、面倒な事だぜ。」
 件の影朧達を鎮めに行くにはまず美術商の所有する館に入らなければならない。その為には美術商の持つユーベルコヲドを頼る必要があるという。
 タイガとしては美術商を懲らしめる序に脅して館に突入したいのが正直な所だ。しかし、それを実行すれば美術商は自身のユーベルコヲドを使い即座に逃げてしまうという。
「なんでよりにもよってモデルの仕事なんだよ。嫌でも女としてのオレを意識しちまうじゃねぇか……。」
 耳を澄ます限り、美術商は美術品のモデルという名目で一般人を館に招いている様だ。それはタイガにとって不本意極まりない事であった。
 タイガは見た目こそ豊満な体つきの女性だが元々男なのだ。そんなタイガにとってモデルという仕事は女性となった自身の体を強く意識せざるを得ないまさしく正気度を削る仕事に他ならない。
 タイガはクリームソーダを飲みながら只管に愚痴を溢す。そして、とうとう美術商がタイガに声をかけられた。


「随分と苛立っている様ですが、お話大丈夫でしょうか?」
 明らかにタイガが苛立っているからか美術商の声も何処か慎重だ。それでも声をかけようと思うあたり、美術商の図太さが伺える。
 タイガも美術商を殴り飛ばしたいという衝動を必死に堪えながら対話を進めていく。
「そうだな、石の塊からどうやってあんなに凄い石像を作るのか興味がないと言えば嘘になるな。」
「それならば、この仕事は是非とも受けるべきですよ。お金を貰える上に目の前であなたの石像が作られる様を見られる、まさに一石二鳥です。」
 流石は口先で食べていく商人の端くれというべきかなのか、タイガは見事なまでに美術商に言い包められかけていた。
 仮にタイガに館に招いて貰うという目的がなかったとしても館に招かれていたのではないかと思いたくなる程の見事な口車であった。

「所でタイガ様は武器の類をお持ちではありませんか?」
「武器の類なんてオレは持ってないぜ? なんなら持ち物を確認してくれよ。」
 元より肉体一つで戦ってきたタイガにとってこの質問は全く問題はない。それでも美術商に信用してもらう為にタイガは手荷物を見せてゆく。
 手荷物にしても美術商が武器と判断しそうな物はないので遠慮なく見せてゆく。

「……武器になりそうな物はないようですね。タイガ様、手荷物はお返ししますね。」
 どうやら美術商も手荷物の方に問題はないと判断してくれた様だ。タイガは館へ招かれるという第一関門を無事に突破できそうな事に内心安堵した。

「それでは、店の奥へ来て頂けますか?」
 こうしてタイガは美術商に館へと招かれる事に成功するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四王天・燦
POW

んふー、悪銭を巻き上げに行きますか♪
己が美術品と化す可能性は失念…

邪心は隠し。
サクラミラージュでの表の顔はJK燦。
二十歳だけど女子高生だよ!
武器は四王稲荷符のみ所持で、財布のお札入れに入れておく。バレても金運の御守と言うだけだ。
防具は上着に偽装。
小物は鞄の二重底に隠しておくぜ

女学生の姿で黒蜜抹茶稲荷クリゐムソヲダを食しながら、物欲しげにドールのカタログを読んでいる。
時々髪を弄ったりして魅力を誘惑でアピール

おじさん誰?
モデルって裸は嫌だよ。
そうでないならお小遣い稼ぎに良いかな、と美術商と交渉

カタログ?
今度ドール制作しようと思うんだ。
折角だし美術の勉強をさせてもらっても良い?
隙だらけを装うぜ




「んふー、悪銭を巻き上げに行きますか♪」
 四王天・燦(月夜の翼・f04448)は嬉しそうには鼻息を鳴らす。猟兵である以前に盗賊である燦にとって悪徳商人は歓迎すべき存在なのだ。
 というのも悪徳商人は大概の場合は弱者から巻き上げたお金で手に入れたお宝を沢山蓄えている。更に相手も割る物なのでどんなに盗んでも心が痛む事がないからだ。
 今も燦の頭の中は悪徳商人が館に蓄えているであろうお宝の事で一杯だ。お陰で美術商の館が影朧の巣窟であり下手すると自身が美術品という名のお宝にされかねない事を完全に失念していた。
「さてさて、お宝を盗む為にもまずは館に招いて貰うぜ!」
 燦はスキップと鼻歌を交えてカフェーへと入店した。


「んぅ~♪ やっぱりクリームソーダは黒蜜抹茶が一番ね!」
 カフェーに入店した燦は本を片手にクリームソーダを堪能していた。その服装は普段とは大きく異なっている。
 何時もの動きやすく隠密行動に適した服装ではなくサクラミラージュの一般的な女子高生が着るセーラー服を纏っているのだ。
 今の燦は女子高生に扮していた。20歳な上に身長的な意味でも少し苦しい気がするが女子高生なのだ。
「それにしても、ドールの材料って想像以上に高いなぁ……。」」
 そして、燦はクリームソーダを飲みながら近くの書店で調達したドールのカタログを読んでいた。カタログにはドールを作る為に必要な材料とその値段が列挙されている。
 だが、材料の値段は想像以上に高く、燦は無意識の内に物欲しげな表情をしながら髪を弄り始めてしまう。そんな燦の様子は美術商を誘い出すには十分であった。

「随分と悩んでいる様ですが何かありましたか?」
「……おじさん誰?」
「これは失礼。私はこういう者です。良ければ何を悩んでいるか聞かせてくれませんか?」
 突然話しかけて来た美術商に燦は内心ほくそ笑みながらも訝し気な視線を向ける。美術商も慌てる事も無く燦に名刺を手渡すと自らの身分を明かした。
 燦はドールを作りたいが材料の資金が足りない事を美術商に告げた。すると美術商は笑みを深めると燦の耳元に口を寄せて囁き始める。
「成程、確かにドールの材料は思いの外高い代物です。……そんな燦さんに耳寄りの話がありますよ。」
「耳寄りの話? 何々? 詳しく聞かせてよ。」
「それでは店の奥で話をしましょうか。」
 耳寄りな話に燦が食いつくと美術商は店員を呼び、手早く燦の頼んでいたクリームソーダの料金を肩代わりすると燦を店の奥へと招いた。


「モデルって……裸は嫌だよ。」
「ご安心をちゃんと担当する芸術家に裸は駄目である事は伝えますよ。なんならドール作りを専門とする芸術家を紹介する事も出来ますよ。」
 あくまでも女子高生として振舞う燦は不用意に裸を見せる気はない事を美術商に告げた。美術商も燦を安心させるかのようにその点で問題はない事を告げる。
 更に美術商は燦に仕事が終わった後に館内に置かれたドールを筆頭とする美術品の数々を見ていく事を提案した。燦としては館を動き回る大義名分が得られるので喜んでその提案を受け入れた。
「それならお小遣い稼ぎに良いかな。折角だし美術の勉強もさせてもらっても良い?」
「勿論構いませんよ。館内には沢山の美術品が置かれていますから是非とも見ていってください。」
 一通りの説明が終わった所で美術商は燦が武器の持ち込み防止の為に手荷物検査を求めた。
 当然、燦は武器なんて持っていないと美術商の要求を突っぱねる。しかし、美術商も引き下がらずに拒むならばこの話はなかった事にするとまで言ってきた。
 館に招いて貰えないと困る燦は渋々手荷物検査を容認した。

「見慣れないお札ですが何かのお守りでしょうか?」
 手荷物の確認が始まって暫くして、美術商は燦が財布から取り出した四王稲荷符について聞いて来た。四王稲荷符について聞かれる事を想定してしていた燦は言い淀む事無く返答する。
「あぁ、これはアタシの地元の神社で扱っている金運のお守りですよ。」
「ふむ……このようなデザインのお守りは始めてみますね。実に興味深い。」
 幸い、美術商に護符に関する知識はなかったようであっさりと騙されてくれた。だが、続けて行われた鞄の内容物確認で問題が起きる。
 美術商が鞄に仕掛けられていた二重底に気づいてしまったのだ。そして、二重底に隠された小物類が次々と取り出されてゆく。
「申し訳ありませんがこれは置いていって頂いてもよろしいでしょうか?」
 当然というべきか鍵束や電子制御装置等の盗賊の七つ道具が入ったポーチを置いていく事を求められてしまった。燦も館に招かれる事を拒まれるわけにはいかない為に美術商の求めに渋々応じた。
 こうして燦は一部の装備品を置いていく事になりながらも館へと招かれるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

音月・燈夏
影朧はともかく……いえ、あまり良くはなさそうですが、その美術商とやらは後でお仕置きが必要ですね。
まずは潜入からということですが、幸いなことに武器らしいものは何一つ持っておりませんので大丈夫でしょう。
鈴や扇まで置いていかなければならない場合は少し困りますね。念のため霊符は隠し持っておきましょうか。

お仕事の前にお楽しみのクリームソーダをいただきましょう。
クリームソーダといえばメロンソーダの印象が強いですが、せっかくなので今回は別のラムネ味にしましょうか。

美術品自体には興味がありますし、一般人達に紛れて何か気になるものがあるか探してみるのも良いですね。

アドリブ◎




「影朧は兎も角……いえ、あまり良くはなさそうですが、その美術商とやらは後でお仕置きが必要ですね。」
 音月・燈夏(麗耳の狐巫女・f16645)はカフェーの一席で客に声をかけて回る美術商を眺めながら呟いた。
 どうも今回の依頼は本来なら帝都桜學府のユーベルコヲド使いだけで対処可能な案件だったらしい。しかし、美術商が影朧達を匿った上に一般人を精力的に捧げてしまった為に猟兵が出向く事態に発展したという。
 燈夏は影朧達を鎮め終えたら美術商をお仕置きする事を決意した。


「まずは館に潜入しないといけないのよね。武器は持ち込み禁止らしいですが……。」
 燈夏は腰に身に着けた自身の武器を見る。巫女である燈夏の武器は霊験あらたかな祭具や御札の数々だ。
 近代化が進んでいる上に桜の精という影朧を鎮める専門家と言える種族が存在するサクラミラージュでは巫女は戦闘職と認識されていなかった。
 お陰で巫女の扱う祭具や御札もサクラミラージュの一般人には武器ではなくお守り程度の物として扱われていた。燈夏としては武器を持ち込む為に頭を悩ませる必要がなくなったので嬉しい限りである。
「今回は文明の発展に感謝ですね。うん、ラムネ味も美味しいです。」
 燈夏はカフェーで美術商を待つ最中の時間潰しとして注文していたクリームソーダを手にとった。クリームソーダと言えばメロンソーダの印象が強い燈夏であったが色んな味を選べるという事で今回はラムネ味注文していたのだ。
 恐らくは他の飲み物との区別する為に薄い青色に染まったラムネを飲んでみれば燈夏の口の中に仄かなレモンの風味が広がる。更に溶けたバニラアイスと一緒に呑めばまろやかな甘さが加わった。
 こうしてクリームソーダを堪能する燈夏に美術商が声をかけてきた。それに燈夏が応じれば美術商は燈夏がクリームソーダを飲み終えた後に店の奥へと燈夏を案内した。


「館内には色々な美術品が置かれている様ですが、それを見て回る事は出来ますか?」
「勿論できますよ。ただ、一部入室できない部屋もあります。それらの部屋に関しては屋敷についてから改めて教えますね。」
 個人的に美術品に興味のあった燈夏は説明が一段落着いた頃を狙い美術商に質問した。上手くいけば影朧と戦う上で有利になる手掛かりが得られるかもという打算もあった。
 燈夏の質問に美術商は笑顔で返答した。入れない部屋というのは恐らくは帳簿などの書類を保管している部屋の事だろうか?
 既に売り払われた一般人達の行方を追う手掛かりが得られるかもしれないと思った燈夏は後でこの情報を他の猟兵達と共有しようと考えた。
「武器の類は持っていないようですね。それでは館へとご案内しましょう。」
 そして、手荷物の検査も特に問題なく通過した燈夏は影朧の巣くう館への潜入を無事に成功させるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

在原・チェルノ
人を人形に変えてしまうなんて許せません!
流星忍姫チェルノ、参ります!

ただし、影朧に気付かれない様にこっそりと、ね

この世界の女学生に扮しカフェーでクリームソーダを楽しみながら件の美術商が接触してくるのを待つ
色を選べるなら髪の色と同じピンクで

美術商の誘いには食いつき気味に乗っかる
「あたし芸術には興味あるんですよ!先生ってどんな人なんです?」
可能なら芸術家についても情報を集めたい

その前に武器を持ってないかどうかのチェックだけど、サイコキャノンもスターボウ・スティンガーもこの世界の人が見ても使い道わからないから
スターライト・スティレットだけ見せる
もっとも、これも出来のいい美術品にしか見えないと思うけど




「人を人形に変えてしまうなんて許せません!」
 今回の事件に関わる影朧達の能力を聞いた在原・チェルノ(流星忍姫チェルノ・f06863)は憤慨した。
 影朧達も悲しい過去を抱えているのだろう。しかし、それが一般人を襲って良い理由にはならない。
 しかも、今回の影朧達はただ傷つけるのではなく人形や石像などの物に変えて辱めるというではないか。人々の為に戦うチェルノがそんな影朧達の所業を許せるわけがなかった。
「流星忍姫チェルノ、参ります! ……ただし、影朧に気付かれない様にこっそりと、ね。」
 チェルノは持ち前の忍術で素早く女学生に扮するとカフェーへと足を踏み入れた。


「ピーチ味と思いましたがさくらんぼ味でしたの。」
 チェルノは僅かに量の減ったピンク色のクリームソーダを眺めながら呟く。桃の濃厚な味と思いきやチェルノの舌に広がったのは甘酸っぱくも囁く様な味だ。
 更にソフトクリームが溶ければピンク色のソーダが薄い桃色となり、さくらんぼの甘酸っぱさがバニラの甘さを更に引き立てた。
 暫くしてクリームソーダを堪能するチェルノの前に美術商が近づいて来た。チェルノは目標の接近に女子高生としての振舞を続けながらも気を引き締めた。

「失礼、少しお話よろしいでしょうか?」
「大丈夫だけど、あたしに何か用があるの?」
 美術商は何度目かも分からない説明を始めた。最初とは打って変わって美術品の素材……実際には美術商に破滅を齎す死神の勧誘に成功している為か期限が良い事が丸わかりだ。
 そして、館に巣くう影朧と戦う事が目的のチェルノも美術商の話に食いついてゆく。

「あたし芸術には興味あるんですよ!先生ってどんな人なんです?」
「そうですね、私の館では5人の先生が作業をしているのですが、正直に言うと変わり者が多いですね。」
 美術商曰く、館に巣くう5体いる影朧の内2体は自身の作業場で創作活動に専念しており外に出る事がないらしい。そして、2体が作業場を複数個所要求し、気分に応じて作業場を行き来しているという。
 チェルノは予想以上の収穫に内心ほくそ笑んだ。

「申し訳ありませんがチェルノ様の手荷物を確認させて頂いてよろしいですか?」
 そして、美術商はチェルノに武器の持ち込み禁止の話を始めた。


「これは変わったデザインの懐中電灯ですね。」
 美術商はスターボウスティンガーの見分をしながら唸る。フォースセイバーの一種であるスターボウスティンガーは十全に扱う為に膨大なサイキックエナジーが必要となる武器だ。
 僅かなサイキックエナジーしか持たない一般人がスイッチを押しても安全装置が働いて仄かな光を灯す事しか出来ない。故に美術商にはスターボウスティンガーが変わったデザインの懐中電灯にしか見えなかった。
 それは同じくサイキックエナジーを必要とするサイコキャノンも同様だ。美術商がどれだけ弄っても電子音がなるばかり、美術商はサイコキャノンも女学生の間で流行している玩具と判断した。

「ガラスの手裏剣とは珍しいですね。」
 そして、チェルノが次に見せるのはスターライト・スティレット、世にも珍しいガラスで出来た手裏剣だ。
 チェルノは唯一明確に武器の形状をしているスターライト・スティレットでも問題なく持ち込めると考えていた。ガラスで出来ている為に美術商は美術品と判断するに違いないからだ。
 美術商が神経質な性格の持ち主であれば持込を断られるかもしれない。それでも既にスターボウスティンガーとサイコキャノンが持ち込めるので駄目だった時には潔く諦めるつもりであった。
「……ふむ、これは大丈夫でしょう。ただ、これほどの美術品が壊れるといけないので包ませて頂きますね。」
 果たして、スターボウ・スティンガーの持ち込みも許可された。美術商は鞄の中から梱包材を取り出すとスターボウ・スティンガーを丁重に包装した上でチェルノへと返却した。
 無事に全ての武器の持込に成功した上に影朧の有益な情報を得られたチェルノはほくほく顔で館へと招かれるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

二尾・結
オブリビオンを利用して悪事を働くなんてとんでもない悪党じゃない!今すぐにでもぶっ飛ばしてやりたい!……けど我慢して、館に招待してもらわないと。

コーラフロートと、ハンバーガーが無いから代わりにサンドイッチを食べながら美術商が声をかけてくるのを待つわ。
最初は美術商に対して不快感を隠しきれないけど、自慢のツインテールを褒められたらすぐ上機嫌になると思うわ!
「ふふん、そうでしょう!あなたなかなか見る目があるじゃない!」
気分が良いから、何か追加でお願いされても話半分で快諾するわよ!

武器は剣は諦めるけど、マントは咎められなければ持っていくわ。まぁ最悪この拳があれば大丈夫!


※アドリブ、絡み、ぽんこつ描写歓迎




「今回の敵はどんな奴なのかしら? 出来れば同情の余地がない奴が来て欲しい所だけど……。」
 ツインテールと八重歯がトレードマークな正義の改造人間、二尾・結(通りすがりのツインテール・f21193)は何時もの様にグリモア猟兵から事件の概要を聞いていた。
 今回赴く世界であるサクラミラージュに現れるオブリビオンは影朧と呼ばれる傷つき虐げられた者達の成れの果てだ。スーパーヒーロである結としては人に仇名すとはいえ、虐げられた者達の成れの果てをぶっ飛ばす事は憚られた。
 それでも概要を聞く限りでは件の影朧は既に多数の行方不明者を出しているという。一般人に被害を出している以上、一刻も早く影朧達をぶっ飛ばす……ではなく鎮めに行かなければならない。
 神妙な顔つきで説明を聞く結であったがある時を境にその顔は段々と怒りに染まっていく。そして、説明が終わった直後に結の怒りは限界を迎えた。
 
「オブリビオンを利用して悪事を働くなんてとんでもない悪党じゃない!」
 そう、今回の事件の元凶は影朧ではなく一般人である美術商だったのだ。本来なら大した被害もなく終わったであろう事件がその美術商のせいで甚大な被害を齎している。
 結は今すぐにでもサクラミラージュに飛んで、元凶である美術商を懲らしめてやりたくなった。しかし、影朧達を鎮めるにはその美術商の協力が不可欠であるという。
「今すぐにでもぶっ飛ばしてやりたい! ……けど今は我慢して、館に招待してもらわないと。」
 どうにか怒りを抑え込んだ結は館へ招いて貰う為に美術商と接触する為にサクラミラージュへと飛んだ。


「そういえば、ハンバーガーが伝来したのって昭和に入ってからだったわね。」
 サクラミラージュに飛んだ結は無事に件のカフェーへの入店を果たした。そして、軽食を食べながら美術商を待とうとメニューを広げた所である事に気が付いた。
 そう、日本にハンバーガーが伝来したのは昭和に入ってからなのだ。文明的には大正であるサクラミラージュの帝都にはハンバーガーがまだ伝来していなかった。
 仕方なく結はハンバーガーの代わりにサンドイッチを頼み、クリームソーダは当初の予定通りにコーラフロートを注文した。
 暫くしてサンドイッチを食べ終え、コーラを飲んで一息ついた結の前に美術商が現れる。

「失礼、少しお話よろしいでしょうか?」
「……私に何か用?」
 結は今回の事件の元凶である美術商を目の前にして不快感を隠しきれていなかった。
 美術商は初対面の筈なのに何故か不快感を向けて来る結に顔を引き攣らせる。それでも自身の目的を果たす為に結の態度を和らげる為の隙を探し始めた。
「さっきから私の事をじろじろ見て、用があるならさっさと話しなさいよ!」
 当然、要件を話そうとせずにただ視線を向けて来る美術商に結の不快感と苛立ちが高まってゆく。
 そして、結の我慢が限界に達する直前になって美術商はとても丁重な手入れがされた結のツインテールに気が付いた。
「あ、あぁ! 申し訳ありません。あなたのツインテールがあまりにも美しくてつい見とれてしまいました。」
「……ふふん、そうでしょう!あなたなかなか見る目があるじゃない!」
 果たして、積もり積もった不快感と苛立ちはツインテールを褒められる事によってあっさりと消し飛んだ。ツインテールに只ならぬ拘りを持つ結にとって自身のツインテールを褒められる事は何よりも嬉しかったのだ。
 そして、どうにか結を鎮める事に成功した美術商は改めて当初の目的を話し始めた。


「ツインテールが綺麗なあなたには是非とも美術品のモデルになって欲しいのです。勿論、相応の報酬は約束しますよ。」
「そうね、私以上にツインテールの似合うモデルはいないわ! 報酬も芸術家が最高の美術品を作る事で十分よ!」
 ツインテールを攻めれば結が簡単に堕ちる事を悟った美術商は結のツインテールを徹底的に褒めちぎった。事実、結の機嫌は出会った直後の様子が嘘だったと思いたくなる程に良くなっていた。
 調子に乗った美術商は更にツインテールを褒めながら色々なお願いを追加でしてゆく。
「結様は正しく選ばれしツインテールを持つお方、それ以外の装飾は不要だと私は思うのです。」
「そうね! ツインテールさえあれば私は誰にも負けないわ!」
「そう、ツインテールさえあれば結様は完璧です。ですから、危険物は全てここに置いてきて頂けませんか?」
「確かに至高のツインテールを持つ私に武器や防具なんて不要ね!」
 あろう事か煽てられてすっかり調子に乗った結は元々置いていく予定であった『正義と蒼月の破刃剣』だけでなく『正義と勇気の防護外套』すら外してしまった。
 美術商は結の武器と防具を丁重に受け取ると個室に備え付けられたロッカーへとそれを仕舞い鍵をかけた。結が影朧達に武器と防具なしで挑む事が確定した瞬間である。

「結様、あなたのツインテールと美貌を十全に生かすにはヌードモデルが最適だと思うのですが、ご検討いただけないでしょうか?」
「勿論いいわよ! ヌードでもヌードルでもどんとこいよ!」
 余りのツインテールの褒められっぷりに有頂天となった結は自分が大変な事を快諾してしまった事に気づかぬまま、館へと招かれるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
今回の事件で影朧を匿ってる奴は絵に描いたようなド外道みたいだな、相棒。
「・・・これ以上の被害を見過ごす訳にはいきません。」
おうよ、俺達でズバッと解決してやろうぜッ!

さて、カフェーで美術商を誘い出す前に武器をどうにかしないとな。
流石に得物をそのまま持ってたら間違いなく置いてけって言われるだろうしな。
ならユーベルコード『千刃桜花』で武器を全部桜の花弁に変えてやるぜ。
これならどう見たって武器には見えねえ。
後はこれを袋にでも詰めとけば完璧だ。
頭いいな俺ッ!

後はカフェーで相棒が世間知らずっぽい感じにしてりゃ向こうからは鬼面を持った無害そうな巫女さんって絶好のカモにしか見えないって寸法よ。


【アドリブ歓迎】




『今回の事件で影朧を匿ってる奴は絵に描いたようなド外道みたいだな、相棒。』
「そのようですね。」
 グリモアベースにて次々と猟兵達がサクラミラージュへと飛ぶ最中、一人二役の様に会話をする者達がいた。ヒーローマスクの神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)とその協力者である神代・桜だ。
 おしゃべりな凶津と無口な桜は先程グリモア猟兵より説明された今回の事件の概要を確認しあう。今回の事件の元凶と言える美術商は私腹を肥やす為に平然と一般人を影朧に捧げる正しく外道といえる存在だ。
 このまま彼を放置すれば更に一般人が犠牲となり、そう遠くない未来に力を増して美術商の手から離れた影朧達が更なる悲劇を引き起こす事になるだろう。
「……これ以上の被害を見過ごす訳にはいきません。」
『おうよ、俺達でズバッと解決してやろうぜッ!』
 二人はこの事件を解決する決意をした。


『さて、件のカフェーに行く前にまずは武器をどうにかしないとな。』
「どうにかすると言っても……置いていくしかない気がします。」
 美術商は用心深いようで一般人を招くにしても影朧の脅威に成りうる武器の持ち込みを禁止しているという。
 そして、凶津達が主に使う武器は刀と薙刀に破魔矢。間違いなく禁止される上に隠す事も難しい代物ばかりだ。
 一応、式神を呼び出す為の護符や霊験あらたかな神具の数々は持ち込めると思うので全く戦えないという事はないだろう。それでも苦戦する可能性も否定できなかった。
「……諦めた方が良くないですか?」
『いいや、駄目だ! 万全を喫する為にどうにかして全ての武器を持ち込むぞ!』
 こうして二人は禁止確実な武器を持ち込む為の策を考え始めた。暫くして凶津は何かを閃いたのか、桜の手の上で飛び跳ねた。
『そうだ! 【千刃桜花】で全部桜の花弁に変えればいいんだ! これならどう見たって武器には見えねえ!』
「……大丈夫なの?」
 さも名案だと言わんばかりに凶津はいうが桜には何故かこの策が上手くいく気がしなかった。しかし、桜が止めたところで凶津が止まるわけもなく、結局策を実行する事になった。
 両手に刀と薙刀を持ち、背中に破魔矢を背負った凶津と桜はユーベルコードを行使する。そうすれば3つの武器は”触れた者を切り裂く桜の花弁”に変化してゆく。
「……いけ、千刃桜花。」『細切れになっちまいなッ! ……って、細切れにしちゃ駄目だったな。後はこれを袋に詰めとけば完璧だ。頭いいな、俺ッ!』
 凶津に促されるままに桜は無数の花弁となった武器を一走りして買ってきた丈夫な袋へ注ぎ込んでゆく。暫くして二人の前には無数の花弁によって膨らんだ袋が鎮座していた。

『よし! これで武器の問題も解決した! それを持って早くカフェーへ行くぞ!』
「……うまくいくといいけれど。」
 善は急げと言わんばかりに急かす凶津に桜は飽きれながらも袋を担ぎ上げようとした。しかし、袋の端を掴み一気に力を込めた所でそれは起こった。

ビリビリィっ!

『…………。』
「…………。」
 桜の花弁の詰まった袋に無数の穴が開き、穴から桜の花弁が零れ落ちたのだ。『千刃桜花』はその名や凶津の詠唱から伺える様に武器を『無数の桜の花弁状の刃』に変えるユーベルコードだ。
 剥き出しになった無数の刃物を袋の中に入れたまま持ち運ぼうとしたらどうなるのか。答えは無数の刃物が袋を切り裂き、袋は瞬く間に只のぼろきれになる、だ。
 仮に防刃布の袋を持ち出した所で今度は余りにも多い数が仇となりそう長くはもたない。更に言えば万が一にも美術商が袋の中に手を入れてしまったら間違いなく大惨事となり館に招く所ではなくなるだろう。

「……凶津……刀と薙刀と破魔矢は諦めようか。」
『うぐぐ! いい策だと思ったんだけどなぁ……。』
 こうして凶津による武器持込作戦は失敗に終わるのであった。


「……美味しい。」
『くそぅ、後で俺にもクリームソーダを飲ませてくれよ!』
 カフェーの一席にて桜が幸せそうにクリームソーダを堪能する一方で凶津は桜の膝の上で羨ましそうに眺めていた。
 普段なら凶津も一緒にクリームソーダを堪能する所なのだが今回は美術商との接触が控えている。もしも飲み物を飲む凶津の姿が見られれば警戒されて最悪の場合は持ち込みを禁止されてしまうだろう。
 故に凶津は桜の説得もあってクリームソーダを飲む事を泣く泣く我慢していた。そして、クリームソーダを食べ終えて心なしか満足げな桜の前に美術商が現れる。

「……私に何か用?」
「私、こういう者でして。美術品のモデルを探しているのです。」
 美術商から事情説明を受けた桜がモデルを引き受ける事を告げるとカフェーの奥の個室へと案内される。
 そして、モデルの仕事の詳細説明が始まるのだがその条件は終始モデル側に有利な内容であった。
 その後は手荷物の確認が始まるのだが刀と薙刀と破魔矢を諦めている以上、残るのは護符や祭事の道具であり当然咎められる事もなかった。
 強いて言えば仮面である凶津自身が美術商の興味を酷く惹かれて売って貰えないかと言ってきた事と位だろう。当然、桜が自身の兄同然の凶津を売るわけがなく素気無く断った。
「これは素晴らしい仮面ですね。何処で入手したのですか?」
「……実家に昔からあったんです……絶対に売りませんよ。」
そして、手荷物の確認を終えた凶津と桜は館へと招かれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
人間を美術品にして売りさばくねぇ
無辜の人々を犠牲にして
自らの欲を満たすなんて許せないな
…そういう趣味の人は?
まあ…自己責任でいいんじゃないかな

昼食のふりをしてカフェに入店
ランチやっているのかな?
折角だから美味しい物を食べたいな
食べ終わったらクリームソーダを飲んで寛いでよう

機械部品を買いに来てたように偽装して
ガトリングガンの部品をばらして混ぜておこう
弾や銃身とかわかりやすい物はないから
武器だとは思えないんじゃないかな

ワイヤーガンは護身用に持ってる事にし
殺傷力は無い事を主張するよ
持ち込み禁止と言われれば素直に預けて安心させよう
もう他の装備含め邪神の創造の力でその場で創れるから
余り困らないんだけどね




「美術品にして売りさばくねぇ。」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)はカフェーへ入店を待つ列に並びながら呟く。今回の事件は私腹を満たそうとする美術商によって引き起こされたという。
 邪神の勝手な都合で乗っ取られかけた挙句、女体化して上に様々な要因で石化する体質にされた身である晶にとって我欲で無辜の人々を犠牲にする存在を許せるわけがなかった。
 ふと、視線を店内に向けると過去の依頼で見かけた事のある猟兵がちらほらと見える。同時に今回の依頼で戦う事になるであろう影朧の特徴を思い出して苦笑した。
「まぁ……自己責任で楽しむ分にはいいか……。」
 猟兵の中には少なからず石化や凍結などの状態異常を楽しむ者達がいる事を晶は知っていた。大概の危機は真の姿を晒せばなんとかなってしまう猟兵ならでは嗜好の持ち主達だ。
 ただ、普通の人間に戻る為に状態異常を扱う敵と好んで戦っている晶も同じ穴の貉に片足を突っ込みかけている事には幸か不幸か気づいていなかった。


「まだランチはやっていますか?」
 カフェーへの入店を済ませた晶は美術商が接触してくるまでの間、食事をとりながら待つ事にした。折角なら美味しい物を食べたいと考えた晶は外れの少ないであろうランチセットとクリームソーダを注文する。
「フレンチトーストですか。これならいい感じに時間を潰せそうだね。」
 暫くして配膳されたランチはフレンチトーストとサラダのセットであった。晶は牛乳と溶き卵がたっぷり染み込んだフレンチトーストを堪能するとクリームソーダをデザート替わりに寛ぎ始める。
 そして、クリームソーダを飲み終える頃になって漸く美術商が晶の前に現れた。美術商は自己紹介を行うと自身の要件を晶に伝えた。

「美術品のモデルねぇ……。取りあえず、受けるかどうかは詳細を聞いてからだね。」
「それでは店の奥で話をしましょうか。」
 美術商と悠長に話すつもりのなかった晶は早々に詳細を聞く事を求めた。美術商としても都合が良かったのか晶の要望はあっさりと通り、カフェー奥の個室へ向かう方向で話が進んだ。

「ところでその袋の中には何が入っているのですか?」」
 個室に入って間もなくして美術商は晶が背負っていた大きな袋の中身について聞いて来た。というのもその袋からはガチャガチャと金属音がぶつかり合う音が鳴り響いていたからだ。
 晶としてはもう少し後になってから聞かれると思っていた為に少し意外に思いながらも言い淀む事無く回答してゆく。
「あぁ、これは機械の部品だよ。部品を買った帰りだったんだ。」
「成程。しかし、見た事のないの部品ばかりですね。」
 美術商が晶の許しを得て袋の中を見てみればそこには大小さまざまな歯車やモーター、それを納める為の部品が詰まっている。流石の美術商もこれらの部品が何を構成する物なのかは分からなかったのか、早々に晶へ袋を返却した。
 実の所、この袋の中身はガトリングガンの機関部だ。晶は複雑な機関部のみを実物で持ち込み、残る部品や弾丸を【複製創造】で複製した偽物を使う事によりガトリングガンを館に持ち込むつもりだったのだ。
 そして、袋の中身の確認を終えた所で美術商は依頼の詳細を説明する前に荷物の確認したい事を理由と共に晶に打ち明けた。晶としても一番の難関が無事に突破出来た余裕から快く了承した。


「これは……拳銃でしょうか。初めて見るデザインですが外国からの輸入品でしょうか?」
「拳銃っぽく見えるけれど実際には別物だよ。ちょっと見ててくれるかな。」
 順調に晶の所持品の持ち込み許可が出る中、美術商が晶の鞄から取り出したのはワイヤーガンだ。見た目はサクラミラージュで最新鋭の拳銃に似たそれはフック付きのワイヤーを発射する特殊な道具だ。
 晶が実演込みでワイヤーガンについて説明をした後でワイヤーガンを美術商に渡せば、美術商はおっかなびっくりといった様子で見分を始めた。
 暫くして見分が終わり晶にワイヤーガンを返却した美術商は申し訳なさそうにしながらワイヤーガンを置いていくように晶に求めた。

「これは護身用で殺傷力はない武器だよ。」
「……この道具はワイヤーの撃ち分けができる仕様ではありませんか?」
 美術商の指摘に晶は驚いた。確かにこのワイヤーガンには用途に応じてワイヤーを目的に応じて変更できる機能が付いているのだ。
 どうやら、見分した際に撃ち分けする機構がある事を見破られてしまったらしい。こうなると殺傷力がないという言い訳も信憑性を失ってしまう。
 故に晶はワイヤーガンの持ち込みを潔く諦める事にした。というのも晶は仮に全ての装備を持ち込み禁止にされても問題がなかったからだ。
「その気になれば全部その場で創れるんだよね……。」
 最後の最後にこれまでの晶の準備を無意味にする身も蓋もない事を呟きながら晶は館へ招かれるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ディナ・サーペント
潜入のために、モデルになればいいんだね
がんばる……ところで、モデルのギャラとか、もらえるのかな?

斧と盾は、置いてきた
誤魔化せそうにないし、隠せそうにないから、今回は素手で戦う
警戒されないのが、最優先だから、仕方ない

のんびり食事しながら、美術商を待つよ
頼んだのは、青色のクリームソーダ
海の色みたいで綺麗。けど海みたいに、しょっぱくなくて、甘い味がする
一緒に頼んだケーキも、甘くて美味しい
あっ、おかわり、お願いします

美術商が来たら、モデルになるのは承諾するよ
ただし、ギャラ有りの条件付きで
【取引】と【言いくるめ】で可能な限り、値段交渉。できれば前払いで
交渉が終わったら、そのまま美術商についていくね




「潜入のために、モデルになればいいんだね。がんばる……。」
 ディナ・サーペント(海賊を志す者・f26523)は今回の依頼でまずしなければならない事の再確認をしていた。
 影朧達は美術商の館に匿われており、館に入るには美術商に館へと招かれる必要があるという。
 その招かれる為の条件こそ、美術品のモデルになる事であった。
「そういえば、モデルのギャラとか、もらえるのかな?」
 仕事という言葉を聞いてディナはふと疑問が沸き上がった。美術商の求めでモデルをするのなら、報酬が出るのではないかという疑問だ。
 猟兵である前に海賊であり自分の船を持つ事を夢見るディナは金銭に拘る節がある。猟兵として働く際にも仕事の報酬とは別に敵の持つ金銭を略奪する事を欠かさず行う程だ。
 なので、館に侵入する上でモデルの仕事をする以上、報酬を必ずもらう事をディナは決意していた。


「武器の持ち込みも、禁止だなんて、面倒なのね。」
 カフェーの席の一角でディナは華やかなサクラミラージュの町並みを眺めながら呟く。その傍らには普段使っている斧と盾はない。
 美術商は帝都桜學府の襲撃を警戒しているのか、館への武器の持ち込みを禁止しているという。
「誤魔化せそうにないし、隠せそうにないから、今回は素手で戦う。」
 ディナが愛用している斧と盾は大きく衣類の中に隠すのは到底無理だ。更にディナには水と氷を操る事は出来ても物を隠す様な術をまだ持っていない。
 故にディナは斧と盾を置いて素手で影朧達に挑む事にした。幸いディナは人の姿になっても常人を遥かにしのぐ頑健さと怪力を誇る。
 真っ向勝負であれば影朧達に負けない自信がディナにはあった。

「美術商は、まだ来ないみたいだね。」
 ディナの視界の隅では同じく今回の依頼に参加した猟兵達が美術商に声を掛けられている。ディナの座るテーブルからはかなり離れており美術商がディナに接触するまでは時間がかかりそうであった。
 なのでディナは美術商が来るまでの時間をカフェーの料理をのんびりと食べながら待つ事にした。
「すいません、これとこれを、パンケーキは5段重ねで、お願いします。」
 ディナが注文したのはパンケーキと青のクリームソーダだ。特に甘いものに目がないディナはパンケーキを追加できる事が分かれば一度に頼める最大量を注文してゆく。
 そして配膳された5段重ねのパンケーキのまるで塔を思わせる風貌にはディナも驚き、それを偶然見た見た他の客も思わず息を飲んだ。
「これは、食べ応えが、あるね。いただきます。」
 ディナはボリューム満点なパンケーキの塔に思わず舌なめずりをした。そして、ナイフとフォークを豪快に突きたてて塔を少しづつ解体してゆく。
 メープルシロップのかかったパンケーキは先の戦争で沢山食べたケーキと比べると甘さは控えめだ。しかし、控えめな分食べやすくディナはあっと言う間に5段あったパンケーキを平らげてしまう。
 そして、口直しに海の様に深い青色のクリームソーダを飲み始めた。
「海の色みたいで綺麗。だけど海みたいに、しょっぱくなくて、リンゴの味がするのね。」
 ディナはクリームソーダの海の様な深い青色から塩気の混じった味を想像していた。しかし、いざ飲んでみれば青りんごの味が口の中に広がり目を丸くした。
 それでも青りんごの爽やかな酸味が口の中に残ったメープルシロップの甘さを洗い流してゆく。そして、口の中がリセットされたディナが次に取る行動は決まっている。
「あっ、おかわり、お願いします。」
 そう、新たなパンケーキとクリームソーダを注文するのだ。折角だからとディナは別の色のクリームソーダも試す事にした。


「……えっと、少しお話よろしいでしょうか?」
「んっ……大丈夫、だよ。」
 暫くして漸くディナのテーブルに美術商が現れたのだがその顔は引き攣っていた。というのもディナのテーブルの上が空の皿の塔が聳え立っていたからだ。
 あれからディナは何度も5段積みのパンケーキをお代わりした。お陰でカフェーの厨房が修羅場となり最終的にの材料切れによるパンケーキの販売終了で終焉を迎えた。
 だが、そんな厨房の裏事情をディナが知るわけもなく、精々パンケーキを食べ終えた直後に美術商が来てくれて丁度良かったと思う程度であった。
 そして、美術商はどうにか顔を取り繕うとディナにモデルの仕事の話を始めた。

「引き受けてもいいよ。但し、ギャラ有りが絶対条件、だよ。」
「そこは大丈夫ですよ。モデルを引き受ける皆様にはちゃんと報酬が出ます。」
「それは良かった。それじゃあ、もう少し詳しく、話をしようか。」
 早々にモデルになる事を承諾したディナは続けてギャラの交渉に移ろうとした。しかし、ここでカフェーの店員が待ったをかけた。
 ディナはまだパンケーキの支払いをしていないのだ。そして、店員の言葉と手渡された支払伝票の内容にディナの顔が青白く染まる。
 ディナはカフェーの料理の代金が自己負担である事を忘れていたのだ。しかも、伝票に記された請求額はディナには到底支払えない額になっていた。
 
「……ギャラなんだけど、前払いできない、かな?」
「仕方ないですね……私が立て替えておきましょう。」
 ディナからの懇願に美術商は苦笑した。そして、モデルを引き受けて頂けるならばと美術商はディナの飲食代を全額肩代わりした。
 こうしてディナは戦闘とは関係ない所で起きた危機をどうにか凌ぎながら美術商に館へと招いて貰うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リプリー・エイプリル
人間を素材に使うなんて
生命が宿る芸術っていうのは、そういう事じゃないよ
断じて認めるわけにはいかないね

武器は鞄の中のアトリエにしまっておく
探りが入った時のために異空間との接続を閉じて画材道具とか入れるよ
マフラーやリボンはばれないよね


話しかけられたら「芸術の修行の為都会に出てきた田舎のお嬢様」という体で芸術品を見せてほしいってとっかかりを作るよ
できるだけ付け入りやすそうに振る舞おう


クリームソーダは緑がいいな
あとカステラとワッフルとキャラメルとハットケーキそれから
い いや あくまで世間知らずの田舎者っぽさの演出だからね?
あ、すいませんカステラもう一皿おかわりー(【パフォーマンス】【存在感】)




「人間を素材に使うなんて……。」
 リプリー・エイプリル(愛の芸術の面影・f27004)は今回の影朧達の所業にその身を震わせる。
 リプリーには芸術家としての矜持がある。それは見る者を驚かせ楽しませる作品を作る事だ。
 それは今は亡き父を追いかけてのものでもある。それでもリプリーは作品の一つ一つに自身の魂を注ぎ込みながら作り上げている。
 その甲斐もあってリプリーはゴットペインターとして覚醒し、掻き上げた作品も命が宿り作り上げる際にリプリーが籠めた想いを各々の方法で叶えようとしている。
 それ故に影朧達の造り上げる作品は到底許せるものではなかった。
「生命が宿る芸術っていうのは、そういう事じゃないよ……。」 
 確かに人を素材に作り上げた作品は生命力に満ち溢れた素晴らしい作品に成り得るだろう。
 しかし、それは作品にされてしまった人の命によるものであり、芸術家の腕によるものではない。
「断じて認めるわけにはいかないね。」
 リプリーは同じ芸術家として影朧達を止めるべく行動を開始した。


「クリームソーダは緑がいいな。」
 件の美術商はカフェーで美術品のモデルを探しているらしい。判定基準は不明だが、カフェーでくつろいでいればその内接触してくるはずだ。
 なのでリプリーはその時が来るまでカフェーでの一時を堪能する事にした。手始めにクリームソーダを注文したリプリーは続けてクリームソーダと一緒に食べる料理を注文してゆく。
「カステラとワッフルとキャラメルとパンケーキとそれからそれから……。」
 目についたお菓子を片っ端から頼む様は田舎から出て来たばかりの田舎者のお嬢様だ。勿論、それは美術商の注意を引く為の演技にすぎない。
 あくまでも演技であって、最近まで箱入り娘だった為に都会のお嬢様としての振る舞いが分からないわけでは断じてないのだ。
「あ、すいませんカステラもう一皿おかわりー。」
 何はともあれリプリーはお菓子とクリームソーダを堪能しながら美術商を待った。

「こんにちは。少しお話よろしいですか?」
「ボクに何か用かな?」
 暫くして美術商はリプリーに接触してきた。美術商は事前の情報通りにリプリーに美術品のモデルの話を持ち掛けて来た。
 同時にリプリーも芸術の修業をする為に田舎から出てきた事を告げると件の芸術家達の作品を見せる事を代価にモデルとなる事を承諾した。


 カフェーの奥の個室へと案内され、モデルの依頼の詳細の説明を受けたリプリーは手荷物の確認をしていた。
「その中には画材が入っているのですか?」
「そうだね。筆とか絵具とかが入っているよ。」
 リプリーは[題名「クリエイター・バッグ」]に手を入れると画材を次々と取り出してゆく。明らかに鞄の大きさに入りきらない量の画材が取り出されているのだが今の所美術商が突っ込む様子はない。
 そして、最後は鞄をふっ繰り返して上下に振った後で鞄の中を美術商に見せる事により中に何も入っていない事を証明した。実際の所はこの鞄は異次元のアトリエにも繋がっており、リプリーの武装の殆どがアトリエに隠されている。
 しかし、美術商はリプリーが芸術家を志す者である事を考慮してくれているようで鞄を自ら手に取り調べる様な事はしなかった。同じく武器としての機能も持ちあわせているリボンとマフラーも手に取り調べたものの、直ぐに持込可能な物として返却された。
「武器の類はないようですね。確認させて頂きありがとうございます。」
「それはなによりだね。それじゃあ、芸術家のいる屋敷に連れて行ってくれるんだよね?」
「勿論でございます。それでは、私の手をお取りください。」
 美術商はリプリーに笑みと共に腕を差し出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

晶津・紫
オウカちゃん(f26920)と一緒に…

ボクもクリームソーダ注文、紫が鮮やかなグレープ味だもん
う、うん…んきゅ、えへへ、おいしいね…♪
グレープもいいお味だよ、オウカちゃん

あの人、かな…?(オウカちゃんの影に位置)
ふぇ?モ、モデル?!可愛いってそんな…(赤面)
い、行っていいなら行くよ…武器?

【レイスリッパー】は普段影も形もないから大丈夫…
※「レイス・リッパー」表記希望

これ?し、趣味のフルートだけど…ブキミ?
(刃の出てない【ジュエル・シクルート】を提示)
…怪しいなら、一曲披露すればいいのかな
大丈夫だよ、【楽器演奏】はホントに趣味だもん…

オウカちゃん、ごめんね…信じてるんだよ
(小声で応じ手をぎゅっと)


晶津・黄花
ユカ姉(f26919)と一緒に参加デス!

件のカフェーでクリームソーダを注文して飲むデス。
(黄色いレモン味)
…ん、美味しいデス♪ユカ姉のも飲ませて欲しいデス!アタシのも飲んでみるデス?

って、あの人が例の美術商デスかね。
(それとなくユカ姉庇うような位置取りつつ)
モデル、デスか。にゅふふ、アタシとユカ姉の可愛さなら仕方ないデスね。良いデスよ♪
…って、武器置いていかないとダメデスか。仕方ないデスね…(ジュエル・スレッジを置いていく)
コインズは見た目貨幣デスし、武器じゃなくお守りと主張するデスよ。

…ユカ姉、大丈夫デス。何があってもアタシが守ってあげるデス(小声で囁き手を握る)




 猟兵達によりカフェーが盛況する中、1つのテーブルを囲む少女達がいた。
「ユカ姉、クリームソーダが来たデスよ。」
「鮮やかな紫色……なんだか、飲むのがもったいないね。」
 同じアメトリン原石から生まれた姉妹のヤドリガミである晶津・紫(魔法戦士ジュエル・アメジスト・f26919)と晶津・黄花(魔法戦士ジュエル・シトリン・f26920)だ。
 今回の事件では美術商が私腹を肥やす為に数多の一般人が美術品にされて売り捌かれているという。それを聞いた二人は今回の依頼に参加する事にした。
 ヤドリガミとなる前、紫と黄花は宝石の指輪として様々な人の手を渡り歩いてきた。他者の手に渡るまでの経緯は黄花と紫とでほぼ真逆であるものの、所有者の都合に振り回される大変な日々であった。
 ヤドリガミとなるまでまともな思考を持っていたかも怪しい二人ですらそう思うのだ。無理矢理美術品にされた一般人がそんな境遇に置かれれば大変を通り越して発狂してもおかしくはないだろう。
 既に売り払われてしまった者達を助ける事は難しいかもしれない。それでもこれ以上一般人が犠牲になる前に美術商と影朧を止めなければならないと二人はサクラミラージュへと飛んだ。


「……ん、美味しいデス♪ ユカ姉のも飲ませて欲しいデス! アタシのも飲んでみるデス?」
「う、うん…んきゅ、えへへ、おいしいね……♪」
 カフェーへと二人仲良く入店を済ませた二人はクリームソーダを堪能していた。注文した味は自身の色に合わせるかのように紫はグレープ味で黄花はレモン味だ。
 そして、紫と黄花は互いのクリームソーダを代わる代わる飲んでゆく。その様はまさに仲の良い姉妹であり心なしか甘い空気すら漂っていた。

「ユカ姉、レモン味は美味しいデスね。」
「グレープもいいお味だよ、オウカちゃん。」
 仲睦まじくクリームソーダを分け合う紫と黄花。しかし、突如として二人の頭上に影が差した。
 不思議に思った二人が上を見上げてみればそこには美術商が立っていた。クリームソーダに夢中になりすぎて二人は美術商の接近に気づかなかったのだ。
 突然現れた美術商に紫は驚き咄嗟に黄花の後ろに隠れてしまう。黄花もそんな紫を庇う様に美術商の前に一ドルと美術商に問い掛けた。
「っ!? だ、誰かな?」
「アタシ達に何か用デショウカ?」
「……驚かせてしまったようですね。少しお話がしたいのですがよろしいでしょうか?」
 美術商はそんな二人に苦笑しながらも優しい口調で美術品のモデルを探している事を話始めた。

「可愛いお二人ならきっと芸術家達も喜んでくれます。是非とも美術品のモデルになってくれませんか?」
「ふぇ? モ、モデル?! 可愛いってそんな……。」
「モデル、デスか。にゅふふ、アタシとユカ姉の可愛さなら仕方ないデスね。良いデスよ♪」
 事件の元凶である美術商に紫は警戒を隠せずにいた。しかし、美術商が説明の最中に頻りに容姿を褒め称えられる内に顔を赤らめ次第に警戒を和らげてゆく。
 一方で数多くの商人の手を渡り歩いてきた黄花はそれが美術商の策である事に早々に気が付き、気を良くしながらも警戒を緩める事はなかった。
 それでも館に招いて貰う事が目的である以上、黄花も美術商に警戒している事を悟られない様に注意しながらも提案を受け入れた。
「それでは、奥の部屋で詳しくお話をしましょうか。」
 美術商は提案を受け入れた二人に仕事の詳細を話す為にカフェー奥の個室へと案内するのであった。


「さて、最後にお二人は武器に成りそうな物を持っていませんか?」
 美術商によるモデルの仕事の打ち合わせは、途中お金にうるさい黄花が報酬についてごねるというトラブルこそ起きたが無事に終わった。
 そして、美術商は申し訳なさそうに二人に武器の所持を確認してきた。事前に知らされていたとはいえ本当に美術商が聞いてきた事に二人は内心呆れた。
「いやいや、アタシ達まだ小学生デスよ? 武器何て持っているわけないデスよ。」
「お二人がそう思っていなくても実際は武器に成り得るものもそれなりにあるのですよ。決して壊したりしませんので確認だけでもさせてくれませんか?」
 黄花は中学に入る前の子供が武器何て持っているわけがないと手荷物確認を断ろうとした。しかし、美術商はもっともな理由をつけてそれを却下した。
「仕方ないデスね……。」
「……近頃の子供はこんなものを持っている物なのでしょうか?」
 これ以上食い下がれば仕事の話自体がなかった事にされかねないと考えた黄花は渋々ジュエル・スレッジを取り出すとテーブルの上へと置いた。
 美術商は何処からともなく現れた黄花の身の丈に迫る巨大ハンマーに顔を引き攣らせた。それでも直に立ち直ると他の荷物の確認を進めてゆく。
「流石にこれを武器何て言わないデスよね? これ、ワタシの家族がプレゼントしてくれた大切な物なんデスよ。」
「見た事もない貨幣ばかりですね。興味深い……。」
 黄花はジュエル・スレッジを置いていく事になった事を内心悔しく思いながらも魔術の知識のない物には只の貨幣でしかないエンハンスド・コインズの持ち込みは無事に成功した。


(レイスリッパーは普段影も形もないから大丈夫……。)
 美術商と口論を繰り広げる黄花を傍目に紫は自身の背後を漂っているであろう[レイスリッパー]を見上げた。レイスリッパーは正面からの戦いが苦手な紫を守る沢山のガラスの刃だ。
 レイスリッパーには特殊な仕掛けが施されており、専用の魔術を行使しない限り幽霊の如く影も形も存在しない。紫が自ら明かさない限り美術商にその存在がばれる事は無いのだ。
 そうこうしている内に黄花の持ち物検査が終わったのか美術商は紫に視線を向いていた。レイスリッパーを除けば特に咎められないと考えていた紫は特に抵抗することなく持ち物を美術商へと晒してゆく。
 だが、ジュエル・シクルートを見せた所で美術商は顔を顰めた。紫の器物である『呪いの指輪』の力の象徴とも言えるジュエル・シクルートから漂う不穏な気配を美術商に気取られたのだ。
「紫様、これは一体……?」
「これ? し、趣味のフルートだけど…ブキミ?」
 まさかジュエル・シクルートを咎められると思わなかった紫は慌てながらもこれは楽器であると弁解する。しかし、ジュエル・シクルートはフルートというには聊か大きく美術商は半信半疑といった様子だ。
 このままではジュエル・シクルートを置いていく事になるかもしれないと考えた紫が次に取った手は実際の演奏する事であった。
「……怪しいなら、一曲披露すればいいのかな。」
 紫はジュエル・シクルートを構えると即興ながらも本格的な演奏を始める。普段なら魔力を籠める事によって精神攻撃が可能となるのだが、流石に今回はしない。
 暫くして演奏が終われば美術商は紫に拍手をした。その眼差しからはジュエル・シクルートに対する疑いが晴れていた。
「いやはや、見事は演奏でした。確かにそれはフルートの様ですね、疑ってしまい申し訳ありませんでした。」
「……分かって貰えたなら大丈夫だよ。」
 最後の最後で危うい所はあったものの、紫も無事に館へ武器を持ち込む事に成功するのであった。


「それでは、お二人を館へと招かせて頂きます。つきましては私の手を握り目を瞑って頂けますか?」
「了解デスよ。さぁ、ユカ姉も手を握るデスよ。……ユカ姉?」
「うぅ……オウカちゃん……やっぱり怖いよ……。」
 美術商は二人を館へ招く為に手を差し出した。この手を握り、目を瞑れば館へと入る事が出来るのだろう。
 黄花は早々に美術商の手を握ったが紫はなかなか握ろうとしない。黄花が不思議そうに振り返ってみれば紫は震えながら立ち尽くしており、その顔は不安と恐怖に染まっていた。
 紫は影朧の館へと突入する直前になって初めての戦いで自身が晒した醜態を思い出してしまったのだ。
 あの時は妹のお陰で最悪の事態だけは避けられた。しかし、今回もそうなるとは限らない上に今度は黄花も危険に晒してしまうのではないかと考えてしまったのだ。
「……少し待ってて欲しいデスよ。」
 黄花はそんな紫の様子に苦笑すると美術商の腕から手を放し紫の元へと近づいてゆく。そして、小声で囁きながら紫の手を握った。
「……ユカ姉、大丈夫デス。何があってもアタシが守ってあげるデス。」
「オウカちゃん、ごめんね……信じてるんだよ。」
 紫も黄花からの励ましに勇気を振り絞り、黄花の手をぎゅっと握ると仲良く美術商の元へと歩み始めた。
「待たせてすまなかったデスね。」
「……ごめんなさい。」
「いえいえ、時間はまだありますので大丈夫ですよ。」
 紫と黄花は互いの手を握り合いながら、もう一方の手で美術商の手を握ると両目を瞑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

天星・雲雀
生きた人間を美術品の材料にするのは、今すぐやめさせたいですね。グロいし、犠牲者の方が浮かばれません。
・・・でも、手遅れで、加工済みのお人形さんが残ってたら、こっそり自分のコレクションに御迎えしたいかも・・・。
加工前なら家に返してあげます。

白昼堂々の勧誘行為は気には成りますが、極力、新たな犠牲者さんを探す美術商を意識しないように注意ししつつ、(チラチラ)
メロンソーダのアイスクリーム乗せをいただきながら、声をかけられるのを待ちます。
獲物の【媒介道具】は占い用のインスピレーションを得る為の物と言うことにして、【言いくるめ】で、エセ占いを披露しつつ。自分をモデルとして雇ったほうが良いと思い込ませます。




「生きた人間を美術品の材料にするのは、今すぐやめさせたいですね。」
 今回の事件の概要を聞いた天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)がまず思った事は影朧の凶行を止めなければならないという事であった。
 今回の件に関わる影朧達はその多くが自身の作品を認められる事のなかった芸術家だという。
 確かに影朧達の境遇には同情の余地があるのかもしれない。しかし、だからと言って生きた人間を美術品の材料にして良いわけがないのだ。
「人が材料の美術品なんてグロいし、犠牲者の方が浮かばれません。」
 グリモア猟兵からは美術品にされた者達についての詳細は聞かされていない。だが、もしも意識が残っているのであればただの物として扱われ何処とも知れぬ者に売り捌かれるなんて地獄でしかないだろう。
 助ける事が出来るのかは不明だが、可能であれば美術品にされたい犠牲者達を助けたいとも雲雀は思っていた。
「……でも、手遅れのお人形さんがいたら、こっそり自分のコレクションに御迎えしたいかも……。」
 ただ、犠牲者の中にビスクドールにされた者がいる事を知った時に僅かながらもお持ち帰りしたいと思ってしまったのは人形遣いの本能故に致し方ない事だろう。


「白昼堂々勧誘するとは肝が据わっているというべきなのでしょうか?」
 雲雀はカフェーの一角でメロン味のクリームソーダを美味しくいただきながら呆れる。
 視界を少し右に逸らせばそこには精力的に一般人や猟兵を勧誘して回る美術商の姿が見える。更に視界を左に逸らしてみればそこには帝都を巡回する警邏の姿が見えた。
 まともな精神の持ち主なら警邏が巡回するような場所で勧誘という名分を利用しているとはいえ人攫いをしようとは考えないだろう。
 或いは万が一警邏に囲まれても容易に逃げられる程に美術商の持つユーベルコヲドが強力なのかもしれない。
「これは対応に注意した方がよさそうですね……。」
 もしも雲雀が帝都桜學府の超弩級戦力として期待される猟兵であるとばれれば美術商は即座に逃げてしまうだろう。
 雲雀は改めて美術商の意識しすぎないようにクリームソーダをいただく事を再開した。

「えっと、少しお話大丈夫ですか?」
「大丈夫ですが……誰を探しているのですか?」
 暫くして美術商が雲雀に声を掛けて来たのだが、どこか様子がおかしい。他の一般人と比べて口調が妙に優しいのだ。
 更に頻りに辺りを見回しており、まるで誰かを探しているかのようであった。美術商の不可解な行動の理由は直ぐに判明した。
「今は1人みたいだけど、お父さんやお母さんは何処に行っているのかな?」
「っ!? 自分は成人しています!」
 あろう事か美術商は雲雀の事をカフェーでお留守番する子供と認識していたのだ。
 確かに雲雀は今回の作戦に参加している猟兵の中でも幼い容姿をしている。更にその服装もほぼ同じ背丈であった二人組の猟兵の様な学生服ではンク、可愛らしい着物だ。
 確かに美術商が雲雀を祝い事の帰りの子供と誤認しても可笑しくはない。それでも雲雀は99年の時を生きた立派な大人の妖狐なのだ。
「こ、これは申し訳ありませんでした。あまりにも小さく可憐でしたので勘違いをしてしまったのです。」
「そんなおべっかを使っても自分は誤魔化されませんよ! それで、自分に何の用ですか?」
 雲雀は憤慨したがここで怒りのままに攻撃すればそれこそ美術商に逃げられてしまう。
 なので雲雀はこの後行われるであろうモデルの仕事の説明の際に色々吹っ掛ける事により怒りを晴らす事にした。


「これは……見た事のない模様ですが何に使う物なんでしょうか?」
 予定通り、モデルの仕事の説明の最中に色々と有利な条件を引き摺りだした雲雀は手荷物の確認を受けていた。花札は当然の如く持込を許され、次に美術商が調べ始めたのは雲雀の獲物である媒介道具だ。
 雲雀が妖術を使う際に用いるそれは相応の知識がなければただの模様の刻まれた石にしか見えない。当然、美術商にその手の知識はなくただ首を傾げるばかりだ。

「実は自分、占い師でしてその石は占いに使う道具なんです。折角ですからあなたの事を占ってあげましょうか?」
「興味深いですね。是非ともお願いします。」
 雲雀は詠唱をしながら媒介道具を宙に投げた。勿論、雲雀は占い師ではないので詠唱は適当だし、媒介道具を投げたのも何となくに過ぎない。
 それでも手慣れた様子で媒介道具を受け止めると続けて石をテーブルの上に無造作に転がしてゆく。そして、テーブルの上に転がった媒介道具を様々な角度から覗き込んでゆく。
「……なるほど。結果が出ましたよ。」
「おぉ、どんな結果でしたか?」
「その、少しいい辛いのですが近い内にあなたは破滅するかもしれません。」
「なんと!? 防ぐ方法はないのですか?」
 美術商は雲雀の占いの結果に驚愕し追いすがった。その態度はわざとらしく雲雀の占いを信じていない事は明らかであった。
 雲雀としても信じられない事が前提で話しているので全く問題はない。占いはあくまでも美術種の気を引く為のパフォーマンスなのだ。

「うふふ、防げるかは分かりませんが今日のあなたのラッキーアイテムに『黒い狐』。丁度あなたの目の前にいますよ。」
「はははっ! これは一本取られましたよ。私が破滅しない為にもあなたには是非ともモデルの仕事を受けて頂かないといけませんね。」
 美術商は雲雀の小粋な売り文句に大笑いすると喜んで雲雀を館へと招いた。

 こうして猟兵達は美術商の館へと招かれる事に成功するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『呪われた蝋人形の館』

POW   :    あえて被害者となり真相を突き止める。

SPD   :    現地に潜入したり遠方から観察したりして真相を突き止める。

WIZ   :    噂話を聞いたり近隣を捜査したりするなど情報収集して真相を突き止める。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


■2章
 美術商のユーベルコヲドにより館へと招かれた猟兵達。閉じていた眼を開いてみればそこは衣装の置かれた部屋であった。一先ず部屋を出てみればエントランスホールが広がっていた。
 エントランスホールには美術商に先駆けて招かれたであろう一般人達が思い思いに過ごしている。そして、部屋の至る所に美術品……影朧の餌食になった一般人の成れの果てが置かれていた。
 美術品は彫像、蝋人形、ビスクドール等の人の形を留めた物から陶芸品や家具、装飾品等の人の原型を留めていない物まで様々だ。
 猟兵達は手始めにエントランスからいける部屋を調べようとした。しかし、殆どの部屋に鍵がかかっていて入る事が出来なかった。
 仕方なく猟兵達は先駆けて館を訪れた一般人に館内について聞いて回る事にした。

●影朧について
 館内には最も強力な個体を除いて、ユーベルコヲドを1つ使える影朧が4体潜んでいます。
 影朧達は真っ向から挑む分には猟兵が負ける可能性はほぼ0です。但し、影朧達もそこは自覚しているので奇襲を狙ってきます。
 館の観測に成功したドライプラメによる予知と猟兵達の活躍により判明した情報は以下の通りです。

①彫刻家の影朧
【一定時間、視線を向けた】を向けた対象に、【催淫と絶頂や時間経過で石化する呪い】でダメージを与える。命中率が高い。
 エロスをこよなく愛しており生前は淫らな裸婦像を沢山作っていたが影朧になってからはチラリズムやはいてない等の新境地に至った様子。
 人形作りの影朧が苦手な様で、2つの作業場を移動する際には常人が入れない場所を利用しているようだ。
②人形作りの影朧
【対象を硬質化させ球体関節を形成させる抱擁】【対象を最小50cm程まで縮める頬ずり】【対象の魂を奪い人形の装飾に封じる口付け】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
 嘗ては立つ事も儘ならない境遇だったようで人形作りも一人の寂しさを紛らわす為のものであり厳密には芸術家ではない様子。
 影朧となってからは自由に動くようになった体を謳歌しようと常に館内を徘徊しており、他の影朧とも仲良く成ろうとしているがあまり上手くいっていないようだ。
③蝋人形職人の影朧
【浴びた者を一定時間後に蝋人形に変える霧】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
 厳格な性格で自然な姿の蝋人形を作る事に拘っている。自身の思想とは真逆の作品を作る彫刻家の影朧とは犬猿の仲だが人形作りの影朧を孫娘の様に思っている。
 影朧となってからの人に直接触れず、誰かの助けなしには移動も儘ならない今の体を疎ましく思っている様だ。
④家具職の影朧
【100人の小人に分裂した自分自身】を召喚する。これは【対象の大きさを自由に変える小槌】や【対象を任意の材質に変換する針】で攻撃する能力を持つ。
 寡黙だが精力的な性格で人をモチーフにした家具や小物を黙々と作り続けていた。
 二つの作業場を与えられているようなのだが、この頃は美術商や他の芸術家の手伝いが中心で自身の捜索の頻度が低下しているらしい。

●一般人からの証言
 ①更衣室で着替えようとしたら、何処からか視線を感じた為に怖くなって慌てて部屋から出た。
 ②僅かに扉の開いていた部屋を覗き込んだら倉庫であり、部屋に置かれた小さな人形が動くのを見た。
 ③芸術家との面談を行った応接間では何故か暖炉の火が焚かれていて、蒸し暑かった。
 ④応接間に向かう途中で通路を楽しそうに駆け回る少女を見た。
 ⑤一緒に来た知り合いが御手洗に行ったきり何時までたっても戻ってこない。

 以上の情報より影朧達は『通路』『便所』『倉庫』『応接間』『更衣室』の何れかに潜んでいると思われます。

●補足事項
 成功条件は鎮めたい影朧とその潜伏先を合致させる事です。
 プレイングに鎮めに向かう影朧と対象を探す場所の明記を必ずお願いします。
 但し、狙える影朧は一体のみで複数体の影朧を指定した場合はMS側で狙う影朧を決定します。
 影朧と場所の組み合わせが合致していれば余程の内容でない限り故意に影朧にやられようと成功判定となります。
 断章で猟兵達が降り立った先である衣装室には大正時代にありそうな衣類が置かれており、任意で使用可能です。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
リアン・ブリズヴェール
【ソロ希望】【アドリブ歓迎】【WIZ判定】【探す相手:家具職の影朧】【探す場所:応接間】

元より武器はもってきておらず素手で戦います。

「人を美術品に変えるなんて許しません」
と意気込みながら探します。

まずは【オルタナティブ・ダブル】でファムを召喚し、【魅了変化】で自分は4歳のバニーガールとなり、ファムは20歳前半の魔法少女姿になります。

応接間をよく観察しながら探しますけど……小さな小人を見逃したりして不意打ちを受けて2人ともサイズを変えられた上でそれぞれ別の家具にされてしまいそうです。




「無事に館に入る事が出来て良かったのです。」
「……んっ。」
 リアン・ブリズヴェール(微風の双姫・f24485)とリアンのもう一人の人格であるファムは更衣室で着替え終えた互いの姿を確認する。
 館へ潜入する際に【魅了変化】で幼女と大人の女性に変身していたリアンとファムは夫々魔法少女とバニーガールの服に着替えていた。
 本来なら室内の鏡で姿の確認をするつもりだったのだが、着換え終わった直後に視線を感じた為に慌てて部屋を出たのだ。
「それにしても人を美術品に変えるなんて許せません。」
 リアンはエントランスに置かれた美術品の数々を見た。これらの美術品は全て影朧の魔の手に掛かった人の成れの果てだという。
 その数は優に十個を優に超えている。既にそれほどの数の犠牲者が出ているという事実にリアンは怒りがこみあげて来た。
「リアン達で影朧を止めにいくのです。」
 リアンの声が通路に木霊した。


「ファム、どの影朧を鎮めに行きましょうか?」
 今の館内には5体の影朧が潜んでいるらしい。その内1体は手出しできない状態らしいので残る4体を鎮めるのが先決だ。
 影朧を転生させるには桜の精の協力が必要不可欠、なのでまずは桜の精以外の猟兵達が影朧達に挑んで消耗あるは無力化を狙い、最後に桜の精達が影朧を鎮めて転生させる方向で話がまとまっていた。。
 そして、影朧の消耗或いは無力化の役目を担うリアン達はどの影朧達の元へ向かうか相談をしていた。

「えっちなのはいやなのです……。」
 彫刻家の影朧は淫らな事を強制してくるという。蝋人形職人の影朧はリアン達の予想が正しければ鎮めるのは難しい。
 かといって人形作りの影朧はその過去からリアン達には戦い辛く、最終的にリアン達は家具職人の影朧を鎮めに向かう事にした。

「……おじゃまするのです。」
 家具職人の元へ向かう事に下リアン達が向かった先は応接間であった。
 的外れな場所を探している気がするが家具職人は他の影朧の手伝いもしているという。その話から他の影朧の領域にもいる可能性があると考えたのだ。
 そこにはあわよくば複数の影朧を一度に消耗或いは無力化を狙いたいという下心もあった。

「影朧の気配を感じるのです。ファム、手分けして探すのです。」
 当然というべきか応接間には人の姿は見えない。しかし、部屋の中に何かの気配が確かに感じられた。
 この部屋に影朧が潜んでいるという情報は正しかったようだ。早速リアムとファムへ部屋の中を探り始めた。

「ここにもいないのです……というか、暑いです! なんで暖炉を焚いているのですか?!」
 テーブルや椅子の下、収納の中などリアムとファムは部屋の隅々まで探し回る。しかし、影朧は見つからない。
 加えて部屋の中は既に夏の足音すら聞こえ始めている季節にも関わらず、暖炉が焚かれていた。お陰で部屋は非常に蒸し暑くリアンとファムはあっと言う間汗だくになってしまっていた。

「このままだと家具職人さんと戦う所じゃないのです。ファム、暖炉の火を消すから手伝って欲しいのです。」
『それは困るのぅ。帝都桜學府のお嬢さん。』
「なっ!? 何処にいるのでs……。」
 あまりの暑さに我慢しきれなくなったリアンはファムを呼び寄せると暖炉の火を消そうとした。
 しかし、それは出来なかった。年老いた男の音が響き渡ったかと思えば、リアンとファムは体を動かせなくなったからだ。


『影朧であるわしが帝都桜學府の者に好き勝手させると思っておったのかのぅ? しかし、こんな子供まで戦わせるとは帝都桜學府も堕ちたものじゃな……。』
 応接間に潜む影朧……蝋人形職人の嘆きの声が部屋に響き渡る。影朧が嘆きの声をあげる原因となったリアンとファムは純白の蝋人形になっていた。
 リアンは両手で火かき棒を持ち上げようとする姿で固まり、ファムは暖炉の火に灰を掛けようとしゃがみ込んだポーズで固まっていた。

「むぅん。」
 暫くして蝋人形職人の影朧と2体の蝋人形だけとなった部屋につなぎとベレー帽を被った芸術家の見本といった格好の男が入ってきた。それはリアン達の本来の目標である家具職人であった。

『おぉ、丁度良い所に来たな。お主に客じゃぞ。』
「むぅん?」
 応接間に蝋人形職人の声が響き渡る。男は自身への客……部屋の中を見渡し2体の蝋人形に気が付くとその身を無数の小人へと変化させた。 
無数の小人がリアンとファムの成れの果てであった蝋人形を取り囲み見分を始めた。
「「「むぅん……。むんっ!」」」
 作品のアイディアが沸いたのか小人達は懐から道具を取り出すとリアンとファムであった蝋人形に一斉に飛び掛かった。

『これは、ペンスタンドとメモスタンドかのぅ? ……お主、彫刻家に毒されておらんか?』
「むぅん!」
 暫くして一人の男に戻った家具職人は蝋人形職人の問いに対して誇らしげに頷いた。
 テーブルの上には二つの小さな家具、厳密に言えば雑貨が置かれていた。1つはペンを魔法の杖に見立てて立て掛ける事の出来る可愛いポーズを決めたリアンのペンスタンド。もう1つは大きな穴の開いたお尻を空に向けて突き出しながら両手でお尻を広げるポーズを取るファムの印鑑立てだ。
 こうして家具職人を鎮めようとして向かう場所を間違えたリアムとファムは蝋人形にされた挙句、可愛らしい家具と厭らしい家具にされてしまうのであった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

リルラ・メローメイ
アドリブOK、ソロ希望、SPD
探す場所:倉庫、探す相手:人形作りの影朧

人間を美術品にするとか超さいあくぅ……そんな奴はアタシが倒しちゃうしぃ

とりあえず奇襲が怖いし艶獣化使って翼もつ人魚になるよぉ、あとは倉庫を3体の人形を使って探すよ
とりあえず影朧を見つけたら人形を操って咎力封じを使うよぉ
でも失敗したら逆に影朧のユーベルコードを3つとも全部受けちゃうかも、そうなったら50cmの人魚の人形になっちゃうかもぉ




「人間を美術品にするとか超さいあくぅ……。」
 リルラ・メローメイ(マジカルメロウ・f06017)は率直な思いを呟いた。楽しい事を優先するリルラには変化に乏しい美術品が今一楽しい物とは言い難かった。
 人間をそんな美術品に変えてしまうという影朧達はリルラにとって最悪の存在であった。

「そんな奴はアタシが倒しちゃうしぃ。」
 故にリルラは館に潜む影朧を倒すべく通路を突き進む。その脚の向かう先は倉庫だ。
「奇襲が怖いし部屋の中を探して回るのもめんどぅなの。だから、みんながんばってねぇ~。」
 倉庫の入口へと辿り着いたリルラは少しだけ扉を開くと扉の隙間から3体のからくり人形達を送り込んだ。形達であれば人形作りの影朧の油断を誘い、逆に奇襲すら狙えるのではないかと考えたのだ。
「人形達が追い立てるまでに戦闘能力も上げておくよぉ。『へんしぃ~ん♪』」
 更にリルラ自身もその身に眠るキマイラとしての血を覚醒させる事により戦闘能力を高めてゆく。
 変身を終えたリルラの姿は豊満な体つきに羽衣を思わせる半透明な羽根が生えている。そして、下半身は人魚の尾になっていた。


「さぁて、後は出てきた所を叩けば終わりよぉ。……あれ? みんなの反応が消えた?」
 迎撃準備の整ったリルラは人形達が影朧を追い出すのを今か今かと待ち構えた。しかし、何時まで経っても影朧は出てこない上に気が付くと人形との繫がりが途絶えてしまっていた。
 不思議に思ったリルラは倉庫の扉を恐る恐る開く。そして、扉を開いた事を後悔した。

「むぅん?」
 部屋の中に人形作りの影朧はいなかった。代わりにいたのは家具職人の影朧、その分裂体である小人達だ。
 リルラの送り込んだ人形達は小人達により家具にさてしまっていた。人魚の人形は靴ベラとなり兎の人形はシューズスタンドに、少女の人形はドアストッパーにされていた。
 そして、小人達の視線がリルラへと集中する。その視線からリルラを人ではなく家具の材料としか見ていない事がありありと分った。
「お、お邪魔しましたぁ! きゃあっ!?」
 このままでは自分も玄関周りの家具にされかねないと考えたリルラは慌ててドアを閉める。しかし、リルアはドアが閉まる直前に小人達が投げつけてきた針と小槌を受けてしまう。
 するとリルラの体は針の刺さった場所から少しずつ金色に染まり始め、それに合わせる様に体も段々と縮み始めた。

「こ、このままじゃアタシも家具にされちゃうわぁ!」
 リルラは自身の体が手の平サイズの金属像に成り果てる前にエントランスホールに逃げ込もうとした。しかし、先程までは大した距離に感じられなかった通路も今のリルラには永遠に思える距離に感じられる。
 更にそんな状況を悪化させる事態が発生した。本来のリルラが戦おうと思っていた人形作りの影朧に見つかってしまったのだ。

「わぁ! そらとぶにんぎょさんだ!」
「えっ? ちょっと待って、この声ってまさか……ひぃっ!?」
 リルラは背後から聞こえて来た幼い少女の声に恐る恐る振り向いた。果たして、リルラの背後から年端もいかない少女が満面の笑顔を浮かべて駆け寄って来ているではないか。
 リルラは迫りくる少女から必死に逃げようとする。しかし、既に体の半分以上が黄金に染まり、大きさも本来の半分未満に縮んだリルラでは逃げ切れるわけがかった。

「つかまえた!」
「い、いや! アタシの体が……。」
 必死の頑張りも空しく、リルラは少女の影朧に後ろから抱きしめられてしまった。少女に抱きしめられるのと同時にリルラの体が伽藍洞な陶器へと変化してゆく。
 それは黄金に成り果てた場所にも及び、黄金となった部分も本来の色を取り戻したかと思えば直に陶器と球体関節の塊に変化してゆく。
 リルラの体はあっと言う間に人形に成り果てた。少女は懐からティアラを取り出すとリルラの無機質な額とティアラに口付けを交わしてゆく。
 そして、少女の口がティアラから離れると大きく立派な宝石がティアラに取り付けられていた。
「うふふふふ! 今日は一杯遊ぼうね!」
 少女はリルラの魂が封じ込められたティアラを人形の頭に取りつけるとスキップ混じりに通路を駆けだした。
 こうしてリルラはからくり人形達を玄関周りの家具にされ、自身も可愛らしい人形となって影朧の少女にお持ち帰りされるのであった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

龍・雨豪
龍たるもの美術品に興味はあるわ。尤も、人の形をしているものは良く解らないけれど。
それで、かくれんぼの鬼をやればいいのよね?
この中だと『家具職人』に会いに行ってみようかしら。
『倉庫』で目撃された動く人形って、分裂したコイツじゃないかと思うのよね。ま、違ったら他を当たればいいわ。

見つけられた場合は、とりあえず説得してみましょう。
「あなた真面目そうだし、普通に作品を作ったらどうかしら?最近自分の仕事が出来てないみたいだし、一回やってみなさいよ」
それでダメなら床に沈めるってことで。
その場合、出来れば分裂前に仕留めないと危ないわね。いっぱい居るの苦手なのよ……。

※アドリブや苦戦判定、やられ描写でも歓迎




「龍たるもの美術品に興味はあるわ。尤も、人の形をしているものは良く解らないけれど。」
 ドラゴニアンの龍・雨豪(虚像の龍人・f26969)はエントランスに並んだ美術品の数々を眺めた。
 諸事情により人の姿をしているが本来は龍である雨豪はお宝と称される者が好きだ。それは美術品の類も多少なりではあるが当て嵌まる。
 しかし、この館に置かれた美術品の殆どが人型或いは人をモチーフにした物ばかりであり、雨豪の食指は今一動かなかった。

「今回はかくれんぼの鬼をやればいいのよね? 私は『家具職人』に会いに行ってみようかしら。」
 雨豪は聞き込みや他の猟兵から齎された情報を元に考えた結果、家具職人の影朧の元へ向かう事にした。
 幸い、家具職人の潜伏場所の目星はついている。仮に外れていたとしても別の部屋を探すだけだ。

「それではいきましょう。」
 雨豪はエントランスホールを出ると自身の予想する家具職人の潜伏先である『倉庫』を目指し進み始めた。


「さて、ここが倉庫の様だけど本当にいるのかしら?。」
 倉庫と書かれた扉の前に立つ雨豪は部屋に入るべく扉に手を掛ける。扉に鍵はかかっておらずあっさりと開いた。
 そして、部屋の明かりを灯せば倉庫の全容が明らかになる。

「思ったよりも広い……それに美術品の手入れが行き届いているわ。」
 倉庫の中はそれなりの広さがあった。しかし、大量の美術品が置かれている為に実際に動ける範囲は狭い上に小さい者が隠れるスペースも豊富だ。
 そして、倉庫に仕舞われた物と言えば埃を被っているものだが、この倉庫に置かれた美術品は丹念に手入れがされており埃一つついていなかった。

「何かが潜んでいるのは確実みたいね。……それにしても本当に人をモチーフにした家具ばかりなのね。」
 まず目についたのは骨組みとクッション部分が女体を思わせる造形の安楽椅子と屈強な男性の四肢の様な脚を持つテーブルだ。更にテーブルの上には女体の各部位を模したティーセットや屈強な男の胴体を模したスタンドライトが置かれている。
 機能面は兎も角、外見的には雨豪はあまり使いたいとは思えない物ばかりでる。
そして、気が付くと部屋の片隅につなぎとベレー帽の男が立っており家具を見て回る雨豪を興味深いといった様子で見つめていた。

「あら? もしかしてあなたの部屋だったのかしら? ごめんなさい、扉が開いたから気になってつい入ってしまったのよ。」
「むぅん……。」
 状況的に雨豪は男に奇襲されていてもおかしくはなかった。しかし、実際には男はただ様子を見るだけで奇襲をかけて来ることはなかった。
 少なくとも今は敵意を抱かれていないと考えた雨豪は思い切って対話を試みた。
「これってあなたの作品なのかしら? 変わったデザインだけど素晴らしい出来だと思うわ。」
「むむッ!? むぅん!」
 男は何故か明確な言葉を発することなく唸り声と身振り手振りで反応を示す。それでも目の前の男が喜んでいる事やこの男が家具職人の影朧である事は確信出来た。
 探していた目標が見つかった以上次に行うのは説得だ。雨豪は倉庫の中を見渡し、家具の材料になりそうな物が置かれている事を確認して対話を再開する。

「ねぇ、ちょっと小耳にはさんだ話なんだけど、あなたこの頃自分の作品を作れていないんじゃないかしら?」
「むむっ!? むぅん……。」
「あなたは真面目そうだし普通に作品を作ったらどうかしら? 一回やってみなさいよ」
 雨豪は人を材料に使わない作品を作らせる事により家具職人を正気に戻して鎮めるつもりであった。
 しかし、この時雨豪は言葉選びを間違えた。真面目そうに見えても今の家具職人は影朧なのだ。そんな彼にとっての『普通』がなんであるのかを雨豪は失念していた。


「むむむっ! むぅん!」
「ちょっ、ちょっと私は作品の材料じゃないわよっ!?」
「むぅん? むぅん。」
 雨豪の言葉にやる気を出した影朧は懐から小槌を取り出すと部屋の片隅に置かれた材料ではなく雨豪向けて歩み寄り始めた。
 影朧となり本能的に世界を滅ぼす存在となってしまった彼にとって普通の材料とは『人間』に他ならない。
 そして、この部屋にある人間といえば雨豪であり影朧が雨豪を材料に家具作りを始めようとするのは当然の帰結であった。

「あぁもう、出来れば穏便に済ませたかったのだけど……せいっ!」
 影朧を穏便に止めるのが無理であると悟った雨豪は強引に鎮める事にした。小槌を振り上げる影朧の懐に一気に飛び込むと鳩尾へ拳を打ち込んだ。
 相手が体制を崩していない為に致命的な効果は期待できないがそれでも相応のダメージを与えられる筈であった。

 バキンッ!

「手応えが固い?」
 鳩尾へと叩き込んだ際に帰ってきた感触と音が明らかにおかしかったのだ。それはまるで瓦や陶器を叩き割った時の感触に近かった。
 攻撃を受けて壁に叩きつけられた男の姿を見て雨豪は息のを飲む。生身の様に見えた男の顔に罅割れが出来ていたのだ。
「む、むぅーん……。」
 更に拳を叩きつけた衝撃で破れた衣類の中からは粉々になった大きな球体関節が顔を覗かせていた。影朧の体はビスクドールの様な状態になっていた。
ここで雨豪は事前情報に合った人形作りの影朧と他の影朧の関係の情報を思い出した。

「あなた、まさか人形遣いの影朧に……?」
 思わず影朧に質問をしようとした雨豪であったが次の瞬間、影朧は無数の小人に変化する。その光景にただでさえ集団相手は苦手な雨豪は慌てた。
 こうなった以上、派手に立ち回らないと物量で潰されかねない。しかし、派手に動き回れば美術品を壊す恐れがった。
「ここは一時撤退よ!」
 勝ち目が薄い事を悟った雨豪は取り囲まれる前にいつの間にか閉ざされた扉を蹴破りエントランスホールに向けて駆けだした。

成功 🔵​🔵​🔴​

二尾・結
狙い:彫刻家の影朧
場所:更衣室

勢いとは言えヌードモデルなんて……まぁ更衣室に入る口実になったから結果オーライね!本当に裸になるつもりも無いし深く考えない!

更衣室でゆっくり着替えながら影朧を誘き寄せる。あのスケベな奴が一番倒す罪悪感無いし丁度いいわ。
情報から推測して天井裏やダクトに注意して、見つけたら『スーパー・ジャスティス』で強化した身体能力で捕まえるわ!
武器が無いから倒すのに時間がかかるけど……あれ、体が熱い……視線を浴び過ぎたせい?
「ヒーローはこんなのに屈しな……待って分け目に視線浴びせないで……」
「嗚呼……愚かな私を素敵な『作品』にして下さい……」

※NG無し。アドリブ、絡み、無様描写歓迎




「勢いとは言えヌードモデルなんて……。」
 更衣室へ進む傍らで結は先のカフェーでのやり取りを思い出して頭を抱えていた。 結はカフェーから館へと招いて貰う際に美術商の口車に乗せられてヌードモデルをする事になってしまったのだ。
「ま、まぁ影朧を誘う口実にはなったから結果オーライね!」
今の結はエロスを至上とする彫刻家の影朧にとって格好の獲物になっている。彫刻家の影朧はそのスケベな性格のお陰で現状鎮めに行ける影朧の中では一番倒しても罪悪感がない結にとっては丁度良い相手であった。
「本当に裸になるつもりも無いし、これ以上は深く考えない!」
 更に言えば結は勢いで同意したヌードモデルをやるつもりはなかった。その証拠として結は衣装室に置かれていた水着片手に更衣室へと向かっている。

「ここが更衣室ね……よし、いくわよ!」
 そして、更衣室に辿り着いた結は彫刻家が潜むであろう更衣室へと突入した。


「この時代の水着って全然露出がないのね……。」
 更衣室へと入室した結は改めて衣装室から持ち込んだ水着を確認する。大正時代の水着は袖口付近に縞模様のアクセントがついたシンプルなものが主で、現代の水着と異なり胴体部の露出は殆どない。
「まぁ、変に肌を晒さずに済みそうでよかったわ。」
 仲の良い友達に見られるのならば兎も角、スケベな影朧に肌を晒趣味を結は持っていないのである意味では有り難かった。

「さて、常人に通れないとなるとダクトや天井裏かしら?」
 結は水着に着替えるべく衣類を脱ぎ始める。その動きは素早く着替え終えて彫刻家が現れない事がない様にとてもゆっくりだ。
 彫刻家は理由こそ定かではないが人形作りに追われない様に常人が通れない道を使い部屋を行き来しているらしい。比較的広い住居で常人が通れない場所となると候補は限られて来る。
 それは天井裏、ダクト、排水管の3つだ。その内の排水管は更衣室内に水と扱う設備がない為に除外されてしまい候補は天井裏とダクトに絞られた。

「私もそれなりに大きくなってきているよね?」
 彫刻家を警戒しながら着替えを続ける結は下着姿になっていた。年齢相応に大きくなった胸と股間部を隠す下着は若葉を思わせる黄緑色だ。
 しかし、水着に着替える以上、下着も脱がなければならない。ブラを外そうと背中に手を回した直後、結の耳が何かが這い回る音を捉えた。

「っ!? どうやらお出ましの様ね!」
 異変に気が付いた結は黄金のオーラを身に纏った。オーラを纏った結は能力を増加させると共に飛翔する事すら可能となるのだ。
 オーラを纏った結は感覚を研ぎ澄ませ室内の潜む影朧を探る。そして、天井裏に何かの気配を察知した跳躍し天井に強烈な突きを放つ。
「捕まえた! さぁ、姿を見せて貰うわ……よ?」
 突きは木製の天井を容易く突き破り、天井裏に潜むモノを捕らえた。そして、天井から手を引き抜いた結はその手に掴んだものの姿を見て驚いた。

「……これって、蛇の玩具よね?」
 天井裏で結が捕らえたモノ、それは蛇の玩具であった。陶器製の筒と球体を組み合わせて形作られたそれは結の手の中で力なく垂れ下がり、ガラスの瞳を結へと向ける。
「変わり身の術とはしてやられたわ。」
 彫刻家にまんまと逃げられてしまったと考えた結はベンチの上に蛇の玩具を置くと一先ず着換えを再開する事にした。スケベな敵ならば1度見つかった程度では諦めないと結は考えたのだ。
 しかし、ブラを脱ぎ捨てショーツに手を掛けた直後結の体に異変が起きた。

「あれ、体が熱い……?」
 どういうわけか結は体が内側から暑く切なくなってきたのだ。それは影朧に一定時間視線を向けられた時に起きる症状そのものだ。
 結は慌てて部屋を見渡すが、視線は感じられない。そして、結が必死に影朧を探す最中も体から湧き上がる熱が高まり、胸や股間部が疼いてゆく。

「そんな、一体何処から……んぅっ!! だ、駄目よ、いま弄ったら相手の思う壺……。」
 体の疼きはさらに強まり、空気が身体を撫でるだけでも結に快感が迸り、思わず蹲ってしまう。そして、自身の手が自然と胸や股間部に向かいそうになるのをヒーローとしての矜持により必死に堪える。
「ヒーローはこんなのに屈しな……待って分け目に視線浴びせないで……」
 だが、ここにきて結は自身のツインテール、その分け目が熱を帯び始めている事に気が付いた。

「駄目、そこは本当に駄目です……。」
 悪の組織に囚われ、脳改造を受ける直前で逃れた結にとってツインテールの分け目は弱点だ。そこに干渉する攻撃を受ければ結はあっと言う間に陥落してしまう。
 そして、その弱点に相手を淫らにする視線を送り込まれた結は瞬く間に快感の虜になってしまった。

「嗚呼……もう我慢できません……ふぁあああっ!」
 快感を我慢できなくなった結は躊躇なく膨らみかけの胸を揉みしだき、股間部を指で擦り上げ始めた。弄る事によって齎される快感は凄まじく更衣室に結の可愛らしい声が響き渡る。
 そして、結の嬌声が響き渡る中で動き出す者がいた。それはベンチの上に置かれた蛇の玩具であった。
 そう、結が只の玩具と思っていたものこそが彫刻家の影朧だったのだ。彫刻家はゆっくりと自らを慰め続ける結の前に降り立つと尾の部分を激しく振るいカラカラと音を鳴らし始めた。

「んぅうっ!? 彫刻家様……そんなところにいたのですね。」
 ここにきて蛇の玩具が彫刻家である事に結は気が付いた。しかし、影朧の術中に嵌り快感の虜となった結が彫刻家の影朧に危害を加える事はないだろう。
 何故なら今の結には影朧を鎮めるよりも重要な使命があるのだから。その使命とは彫刻家の影朧の素敵な作品になるという事だ。

「嗚呼……愚かな結を素敵な『作品』にして下さい……! んぁああああっ!?」
 結の言葉を受けた彫刻家はそのガラス細工の瞳で結を凝視する。すると結の体は更に疼き、指が降れるだけでも快感に体が跳ねて厭らしい汁を垂れ流してしまう。

「あっ! あっ! 彫刻家様! 結が作品になる瞬間を見て! あぁあああ…………。」
 さらに強まる快感に限界が近い事を悟った結は蹲踞のポーズを取ると片方の指を股間部に添えてその内部を彫刻家が良く見える様に拡げてゆく。更にもう一方の手を使い股間部で自己主張をする突起を激しく弄れば結は限界を迎えて嬌声を挙げながら絶頂に達してしまった。
 そして、絶頂を迎えた結の体が瞬く間に石化してゆく。数秒後、そこには蕩けた顔で股間部を彫刻家へと突き出す彫像が鎮座していた。

成功 🔵​🔵​🔴​

音月・燈夏
うーん、流石に聞き込みだけでは把握しきれませんね。
比較的遭遇しやすそうな人形作りの影朧を探してみましょうか。
目撃されたのは通路みたいなのでそちらに向かいます。
念のため分身に行ってもらおうかと思いましたが、前回働いたから嫌だと言われてしまいました。
仕方ないので今回は私が出向いて、分身にエントランスホールに保険として残ってもらいます。

先に影朧を見つけられたら、除霊の応用の破魔で鎮めてあげましょう。
もし不意打ちされても、鎮める事を優先します。相打ちで最後まで人形にされてしまっても封印を解く要領で解除できるはずです。分身も待機していますしね。
UCの解除なので時間はかかるかもしれませんが……。

アドリブ◎




「うーん、流石に聞き込みだけでは把握しきれませんね。」
 燈夏は一般人から得られた情報を脳内で整理する一方で悩んでいた。
ドライプラメから提供された情報を交えればどの影朧が何処にいるのか目星をつける事は出来る。しかし、分かるのは居場所までで影朧がどのような形で潜伏しているかの予想がつかなかった。

「取りあえず、人形作りの影朧を探してみましょうか。この子なら潜伏方法を気にしなくても良さそうですし。」
 結局、影朧達の潜伏方法を予想する事が出来なかった燈夏は人形作りの影朧の元へ向かう事にした。情報を纏めた限り、人形作りの影朧は通路で楽しそうに駆け回っていた可能性が高い。
 楽しそうに駆け回っているとなると潜伏以前の問題だ。妖狐の優れた聴覚を持つ燈夏なら耳を澄ますだけでも容易に補足出来るだろう。

「万が一にも抱き着かれたら危ないですし、保険をかけておきましょう。」
 目標の決まった燈夏は次に行ったのは分身の召喚だ。しくじれば即座に戦闘不能に陥る相手に対して分身はとても有効だ。
 分身が目的を達成してくれればそれで良いし分身がやられたなら本体は更に安全な場所へ退避すればよい。
 危ない事は分身に任せて本体は高みの見物をする。それはとても理にかなった行動であり、決して燈夏が危ない目に合う事無く楽に仕事を終わらせたいという下心はない筈だ。

「それでは、今回もお願いしますね……えっ? 行きたくない?」
 だが、燈夏の目論みは外れた。どういうわけか分身は本体の代わりに行く事を拒否したのだ。
 確かに燈夏は事ある毎に分身を身代わりとして酷使してきた。だが、役目が終われば確りと回収はしているし、そもそも本体の身代わりとなる事は分身の在り方として間違っていない筈だ。
「あなたは私の分身なのだから、命令を聞きなさい!」
 燈夏は改めて自分の代わりに通路を駆け回る影朧と接触する様に命令した。しかし、分身は燈夏の命令に従わず、挙句の果てに強要するなら消えてやると言ってきたではないか。

「……なんでこんなことになったの?」
 まさかのストライキ宣言に燈夏は頭を抱えた。ここで分身が消えれば燈夏は保険なしに影朧に挑まなければならない。
ここで万が一の事が起きれば最悪の場合、燈夏は永遠に人形のまま戻れない可能性すらあるのだ。悩みに悩んだ末に燈夏は本体が戦い、分身が備えるという普段とは逆の在り方で影朧に望む事で妥協する事にした。


「さて、少女は何処にいるのでしょうか?」
 エントランスから通路へと出た燈夏は早速耳を澄ました。すると通路の突き当りにある曲がり角の方から少女の楽しそうな笑い声と駆ける音が聞こえて来た。
 運が良いというべきか影朧は燈夏のいる通路に接近してきている様だ。燈夏は曲がり角から影朧が出て来た瞬間に破魔の力を叩き込めるように備える事にした。

「あははははは!」
「今です!」
 曲がり角から現れた影朧は燈夏の予想以上に幼かった。下手すると10歳にも満たないのではないか。
 燈夏は余りにも幼い影朧の姿に驚き、破魔の力を込めた光の狙いが逸れてしまった。

「こんどはきつねさんだ!」
 燈夏を捕捉した少女は見た目からは想像できない速さで燈夏に向け突撃してきた。燈夏も少女を鎮めようと破魔の光を更に放とうとした。
 しかし、少女が脚に力を込めたと思った次の瞬間、燈夏は少女に抱き着かれていた。

「か、体が! 早く破魔の力で……ひゃぁっ!?」
「しっぽがもふもふだわ!」
 少女に抱き着かれた直後から燈夏の体が陶器へと変化してゆく。燈夏は相打ち覚悟で破魔の力を纏う事により少女を鎮めようとした。
しかし、少女にまだ変化の及んでいない尻尾を頬ずりされてしまい、その刺激により力が抜けて破魔の力が霧散しそのまま少女が抱えられる大きさに縮められてしまう。
 そして、再び破魔の力を纏うおうとした所で少女は燈夏の額に口づけを交わした。


「あなたでふたりめ。わたしのおへやでいっぱいにあそぼうね!」
「……ここまでは予定通りですね。」
魂を簪に封印されてしまい、完全に人形に成り果てた燈夏を抱えた影朧の少女が何処かへと駆けだしてゆく。それを燈夏の分身体は物陰に隠れながら見送っていた。
 事前の取り決めでは本体が危機に陥った直に助けに来る事になっていた。だが、分身は今の燈夏を危機に陥っているとは考えていなかった。

「人形にされてお遊戯に使われる程度なら全然危機じゃありませんよね。」
 分身体は数日前に集結した戦争において樹木化の毒に満ちた森の中に単身突撃させられた。
本体の代わりに危険地帯に赴く事そのものには同意していたし、本体も撤退時に回収してくれると言っていた為に安心して突撃したのだ。
「置いてかれたと気づいた時はとても傷ついたんですよ。」
 だが、本体は自身が樹木に成り果てた直後にグリモアベースへと帰ってしまった。本体としては自身の帰還に合わせて分身も消えると考えたのかもしれない。
 しかし、樹木と化した分身はその場に取り残されていたのだ。

「あの後は凄く恥ずかしくて怖くて熱かったんですよ……。」
 本体に置いていかれた後の分身は管を恥ずかしい場所に挿入され、快感と共に自身の中身が啜られる事に恐怖した。そして、最期は他の猟兵が起こした火災により消し炭となる事によって漸く本体の元へと戻れたのだ。
「だから、おままごとや着せ替え程度は我慢してくださいね?」
 少女に抱えられた本体を見送る分身の顔は笑顔なのに目が笑っていなかった。

「さて、あの子を見失わないうちに私も行きましょう。」
 こうして分身は齎されて情報では分からなかった人形作りの少女の部屋に向かう為に少女の追跡を始めるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ディナ・サーペント
家具職人は、沢山の小人に、分裂するんだよね
倉庫の小さな人形は、他の影朧の特徴と一致しないし、倉庫って家具とか置いてそうだし
決めた。家具職人はたぶん、倉庫にいるから、行ってみよう

家具職人がいたら、一体ずつ【海竜の眼光】で凍らせて、無力化していくよ
沢山の小人が相手なら、咆哮が楽だけど、犠牲者を巻き込みたくないから、今回は無し
……?あれ、部屋の照明が落ちた?
どうしよ、真っ暗だと、視線で小人たちを捉えられない
小人の気配が集まって、小槌や針が一斉に飛び掛かってきて、ちょっとヤバ………

暫くしてディナはホールに戻ってきました
館に招かれた人々に振舞われるケーキを乗せた、硝子で出来たケーキスタンドとして




「家具職には、沢山の小人に、分裂するんだよね。」
 ディナは新たに判明した影朧の情報を元に自身が向かおうと思う影朧の居場所の予想をたてていた。
 館に潜む影朧達は例外なく一定の領域内を動き回り、領域内に迷い込んだ者を奇襲して自身の作品に変えようするという。
「倉庫の小さな人形は、他の影朧の特徴と一致しないし、倉庫って家具とか置いてそうだし……。」
 闇雲に探し回れば猟兵であろうと奇襲を受ける事は避けられない。だが、相手の潜伏場所を見いだせれば迎撃可能である事も意味している。
 そして、奇襲を凌ぎ真っ向勝負にさえ持ち込めれば油断しない限り猟兵が負ける事はないだろ。
「決めた。家具職人はたぶん、倉庫にいるから、行ってみよう」
 鎮めに行く影朧とその潜伏先を見定めたディナは倉庫を目指しエントランスホールを出た。


「ここが倉庫、だよね?」
 途中、通路を楽しそうに駆け回る声を耳に入れながらもディナ無事に倉庫へと辿り着いた。
 中を覗き込めば思ったよりも広い空間とそれを埋め尽くす家具を筆頭とする美術品の数々がディナを出迎える。
 自分以外の気配は感じ取れないが、もしも家具職にが既に分裂しているのであれば気配が小さすぎて感じ取れなくなっている可能性は充分にあった。
「ここで待っていても、駄目そうだね。それなら思い切って、突入するよ。」
 このまま通路に立っていれば別の影朧の奇襲を受けるかもしれないと考えたディナは倉庫へと突入した。
 家具職人を誘いやすいように部屋の中心へ進めば扉が一人でに閉まり、ディナに無数の視線が向けられた。
 注意深く部屋の中を見渡せば小人らしきものの姿が一瞬見えた。ディナの予想通り、ここが家具職人の作業場だったのだ。

「集団相手なら、咆哮が楽だけど……。」
 ディナは自身に迫りくる小人に警戒をしながらも部屋に置かれた美術品の数々を見る。彫像や蝋人形は勿論の事、家具の類も例外なく人の意匠が伺える。
 予想するまでもなくこの部屋に置かれた美術品は全て影朧達の犠牲者達なのだろう。
 ここでディナが本気の咆哮を放てば間違いなく美術品の数々が壊れてしまう。そうなれば犠牲者が元に戻る可能性が完全に潰えてしまうだろう。
「一体ずつ海竜の眼光で凍らせて、無力化していくよ。……魔力は控えめに、『れいとうビーーム』。」
 少し気の抜けた詠唱と共にディナの両目から青白い光線が放たれる。光線はディナに小槌や針を撃ち込もうとしていた小人を次々と氷漬けにした。
 同時に美術品の数々も光線に晒されてゆく。しかし、ディナが出力を抑えた事が功を奏して小物は兎も角大きな家具は霜が降りる程度の被害で済んでいた。

「この調子で、小人を、封じるよ……っ!?」
 視線から放たれる光線という小回りの利く攻撃で次々と小人を凍らせてゆくディナ。そのまま全ての小人を無力化出来るかと思っていたがそうは問屋が卸さなかった。
 突如として部屋の照明が消えたのだ。照明が消えた事によりディナの視界が漆黒に染まってゆく。
「どうしよ、真っ暗だと、視線で小人たちを捉えられない。」
 いくらディナでも漆黒の闇中を動き回る小人を狙う事は難しい。状況を打開するには倉庫の扉を開けるか閉め切られた窓を開放するしかないだろう。
 しかし、今のディナの位置からではどちらを実行するにしても多少の時間がかかる。そして、ディナが迷う間にも小人の気配が集まってきていた。

「ちょっとヤバ………。」
 有利な状況から一転しての不利にディナが狼狽える中、小人達が小槌や針を片手に一斉に飛び掛かった。


「お客様、お待たせしてしまい申し訳ありません。心ばかりのお詫びをお持ちしましたので是非ともお楽しみください。」
 未だに数多くの猟兵が屯するエントランスホールに館の使用人が現れる。突然の来場者に猟兵達が訝し気な視線を送る中、それはテーブルの上に置かれた。
 それはケーキスタンドであった。青白い硝子で出来たそれは2つの連なった楕円形のお盆の上に沢山のケーキが置かれている。

 猟兵達は美術商側の考えに首を傾げながらも折角だからとケーキを頂こうとテーブルへと歩み寄る。そして、いざケーキを取ろうという段階にきて硬直した。
 その理由はケーキスタンドの取手部分にあった。取手には柔和な笑みを浮かべながら裸体を惜しげもなく晒す女性の飾りが船首像の如く取り付けられていた。
 問題はその女性の飾りが先程エントランスホールを出ていったディナに酷似していることであった。

「…………。」
 そう、ディナは家具職人の影朧に善戦するも僅かな油断が原因で敗れてしまったのだ。
そして、家具職人に敗れたディナはガラス製のケーキスタンドに成り果ててエントランスホールへと戻ってきた。

成功 🔵​🔵​🔴​

天星・雲雀
「一般人の方々も同じ場所に集められてるんですね。それに、(チラッ)やっぱり有りましたか、加工済みのお人形さん、(こちらは影朧を鎮め終わってから、警邏がお屋敷に踏み込む前に頂いて行くとしましょう。大事にします、被害者さんの御供来に成ればよいのですが。)」

「情報から鑑みて、球体関節の人形師さんは館内を徘徊する孫娘の様、とのことですから。通路を走る少女が、おそらくドール職人でしょう。
御迎えするにあたって、制作した人形師さんの人となりを知って置く事はとても重要です。それとなく、こちらから話しかければ、応じてもらえるでしょうか?」

それに、あまり手荒な真似はしたくないので、可能なら転生を勧めてみましょう。




「一般人の方々も同じ場所に集められてるんですね。」
 猟兵達が集うエントランスホールには一般人も普通に屯している。それは今回の作戦に置いて猟兵達が一般人であると偽る事により侵入している事を踏まえると当然ではあった。
 雲雀は一般人に混ざってエントランスホールに置かれた美術品の数々を見て回っていた。美術品を見て回る内に雲雀はある事に気が付いた。

「……お人形さんと陶芸品には魂がありませんね。」
 雲雀はシャーマンとしての冷帯を使役する力を応用して影朧に襲われた犠牲者の成れの果てである美術品を調べて回っていた。殆どの美術品に犠牲者の魂が確認できる中、何故か人形と陶芸品だけは魂を確認できないのだ。
 魂がない以上、何らかの方法で元の姿に戻しても後に残るのはただの死体だ。雲雀はそれらの美術品に魂がない原因を探る事にした。
「そういえば、人形師さんは魂を装飾品に封じるんでしたっけ?」
 陶芸品に魂がない理由は分からなかったものの、人形は魂が装飾品に封印されている事を思い出した雲雀は改めて人形を調べて回った。そして、人形達の中に装飾品を身に着けている物は1つとしてなかった。

「どうやら、美術商は人形と装飾品を別個で売り払っている様ですね。」
 こうなると人形にされた犠牲者が元に戻るには売り払われた装飾品と人形の両方を揃える必要がある。装飾品が館内にあるのならまだ良いのだが、既に売られた後ならば人形にされた犠牲者が元に戻る事は絶望的だろう。

(影朧を鎮め終わってから、警邏がお屋敷に踏み込む前に頂いて行くとしましょう。)
 雲雀は人形となった犠牲者達を持ち帰る事を本格的に検討し始めた。


「情報から顧みて、通路を走る少女が、おそらくドール職人でしょう。」
 雲雀は館内に置かれた人形達を持ち帰る以上、人形作りの影朧の人となりを知る必要があると考えていた。一言に球体関節人形と言ってもその素材や作りによって手入れの方法が大きく変化するからだ。
 少女が繊細な性格であれば人形も繊細な扱いが求められる可能性があるし、大雑把な性格であれば人形の扱いもそれに準ずるだろう。

「ドール職人が現れたようですね。まずは動きを止めるとしましょうか。」
 雲雀は自身に近づいてくる足音から少女が現れた事を悟る。雲雀としては影朧となる前の経歴からあまり手荒な事はしたくなかった。
 その為にもまずは少女と対話できる状態に持ち込む必要がある。雲雀は通路の曲がり角、その手前に陣取ると曲がり角から少女が現れる瞬間を狙い、少女の足を払った。

「わぁっ!」
 雲雀の目論み通り、足を払われた少女は豪快に転びそのまま動きを止めた。自身の行為に僅かな罪悪感を抱きながらも雲雀は少女を見据えた。
 少女を見た雲雀が思った事はドール職人と呼ぶにはあまりも幼いという事だ。
 ビスクドールは人形の中でも作る事が難しく、熟練の職人でも数か月かけて作る代物だ。少なくとも年端もいかない少女が作るのは極めて困難だ。
 影朧の中には生前とはかけ離れた姿で蘇る者もいるので見た目から中身を判断するのは難しい。しかし、人形作りの影朧はその事前情報から見た目通りの精神である事が容易に想像できた。
 雲雀は嫌な予感がしながらも込んだ姿勢のまま動く様子のない少女に声を掛けてゆく。
暫くして起き上がった少女は困惑しながらも雲雀との対話に応じた。

「この館にある人形はとても素晴らしいけれど、全てあなたが作ったのですか?」
「そうだよ! かげろうになってからはだきつくだけですごいにんぎょうをつくれるようになったんだ!」
 雲雀は少女の回答から館に置かれた人形が影朧としての能力に由来した物であり、少女の本来の技能とは関係がない事を悟った。こうなると人形の手入れに関しては雲雀自身が手探りで調べてゆくしかないだろう。
 雲雀は少女を転生させる為の説得に取り掛かる事にした。幸い少女は自身が影朧である事を自覚している上に雲雀の話を大人しく聞く程度には理性が残っている。
 きちんと言い聞かせれば応じる可能性が高かった。


「あなたは自分が影朧であるとわかっているのね。それじゃあ、影朧がどんな存在なのかは知っている?」
「しんじゃったけれど、かなしくてよみがえっちゃったひとだよね? せかいをほろぼしちゃうから、てんせいしなきゃいけないっておじさんがおしえてくれたんだ。」
 雲雀は少女の言葉に違和感を覚えた。おじさんというのは恐らく美術商の事だろう。だが、影朧達を利用する美術商が目の前の酷く素直な少女に転生しないといけない事を教えるだろうか?
 雲雀は湧いて出た疑問に嫌な予感を感じながらも更に説得を進めてゆく。

「そう、影朧は転生しないといけない。自分が手伝うから大人しく転生してくれませんか?」
「わたしがてんせいするのをてつだってくれるの? ありがとう!」
「今から桜の精の人を呼ぶから少し待ってて……っ!?」
 少女は雲雀の提案を受け入れた。その殊に雲雀は安堵しながらも桜の精の元へ案内しようとした瞬間にそれは起きた。
「それじゃあ、あなたもにんぎょうになってね!」
 少女は突如として雲雀に抱き着いて来たのだ。当然、少女に抱き着かれた雲雀の体が球体関節人形へと変化してゆく。
「な、なんで……?」
 雲雀は少女の突然の凶行に困惑した。転生する為に必要なのは桜の精の癒しを受ける事であって、人を人形に変える事では断じてない。
 だが、辛うじて伺う事の出来た少女の顔はこれが正しい行いであると言わんばかりに自身に満ち溢れていた。
「これでまたいっぽてんせいにちかづくわ! くろいきつねさん、ありがとう!」
 そして、少女は雲雀の額に少女は口づけを交わすと。雲雀の魂が封じられた帯飾りを人形の帯に取りつけた。

成功 🔵​🔵​🔴​

晶津・紫
今もオウカちゃん(f26920)と一緒

鎮圧対象:彫刻家
捜索場所:応接間

綺麗だけど、全部ヒト…なんだよね(ふるふる)
え、着替えるの?大正浪漫の女学生みたいで可愛いけど…
(紫系の袴を主軸とした服に着替える)

彫刻家さんは蝋人形さんが嫌って言うから
わざと暑くしたのかな、って…
何時でも【レイス・リッパー】は出せるけど
やっぱり暑いね、はふ…(ぱふぱふ)

え、カラダ自体も熱くなってる…?!

オウカちゃん、だめだよこんなところでっ…!
でも大好きな妹と汗だくの肌を重ねるのは幸せで
服の奥にチラチラ見える互いの肌は火照って…

激しすぎるよぉっ…好きっ、オウカちゃん、オウカちゃぁんっ…!
(密着と半脱ぎの服でチラリズム満点)


晶津・黄花
引き続きユカ姉と一緒デス!

鎮圧対象:彫刻家
捜索場所:応接間

…確かに凄い出来のいい美術品デスねえ。人を材料にしてるって聞くと不気味デスけど。
では探索…の前に、折角可愛い服いっぱいデスし着替えていくデス、ユカ姉♪

ユカ姉とお揃いの女学生スタイル(袴が黄色)に着替えて捜索開始デス。
配管とかの人間じゃ通れない場所が怪しいデスね。その辺警戒していくデス。
現れたら、コインズをぶつけて退治するデスよ!

…でも、ユーベルコードを受けちゃって、身体がうずうずして仕方ないデス。
ユカ姉も辛そうで…
つい、胸元や下半身裸蹴て、汗だらけの身体を重ねあって。
そのまま、ユカ姉の敏感なトコ一杯弄っちゃうデス。
ユカ姉、大好きデスっ♪




「綺麗な美術品だね。」
「確かに凄い出来のいい美術品デスねえ。」
 紫と黄花の姉妹は美術品を見て回る。美術商が自信を持って売り捌くだけあってその出来は素晴らしいの一言だ。
 しかし、美術品の出来に感心しながらも二人の表情は暗い。というのもこれらの美術品が元々何であったのかを知っているからだ。
「だけど、全部ヒト……なんだよね。」
「人を材料にしてるって聞くと途端に不気味になるデスよ。」
 そう、これらの美術品は全て人の成れの果てなのだ。特に彫像と蝋人形は元の姿をほぼそのまま変化した物なので犠牲者の心境や読み取れてしまう。
 伸びをする、しゃがみ込む等の自然なポーズで固まった蝋人形は兎も角、例外なく淫らな姿で固まっている彫像を見ると顔が自然と赤らんでしまう。

「オウカちゃん、早くみんなを助けないといけないね。」
「そうデスね。アタシ達は武器を持ち込めている分、しっかりとやるデスよ。」
 紫と黄花は互いの獲物を確認しながら頷き合う。美術商の策略によって武器なしや慣れない武器での戦いを強いられる猟兵が多い中、二人は殆どの武器の持ち込みに成功している。
 館に潜む影朧達の能力を顧みても二人の武器や戦法と相性の良い相手が多いのも幸いであった。

「問題はどの影朧を鎮めにいくかデスね。」
「……オウカちゃん、彫刻家の影朧を鎮めに行くのは、ダメかな?」
 黄花は紫からの提案に驚いた。紫が彫刻家を狙うと言い出すとは思ってもいなかったからだ。
 自分に自信を持てないが為に人見知りない一面がある紫にとって彫刻家の影朧はある意味で相性の悪い相手だ。万が一にも彫刻家の奇襲を許せば淫らな彫像にされて衆目に晒される羽目になるからだ。
 彫像にされてしまえば最低でも猟兵達に見られる確実、最悪の場合は大衆の視線に晒される事になる。そうなれば紫はあまりの恥ずかしさに再起不能になってしまうかもしれない。

「えっと、ユカねえ本当に彫刻家に挑むのデスか? 万が一にも負けたら凄く恥ずかしい目にあうデスよ?」
「……わかっているよ。そうなった姿を想像したらそれだけで悶えそうだもん。」
 黄花は彫刻家に挑む事により陥る可能性と共に紫に確認をする。しかし、紫の意思が覆る事はなかった。

「……でもね、オウカちゃんがボクを守ってくれるから大丈夫だよ。それに、彫刻家を提案したのは隠れ場所の予想が出来たなんだよ。」
「ユカ姉も行ってくれるデスネ。そんなこと言われたら、アタシはより一層頑張らなきゃいけないデスよ。」
 黄花は自身に全幅の信頼を寄せる紫に顔を赤らめ頬を掻くと彫刻家の潜伏先について問い掛ける。黄花の問い掛けに対し紫は自信満々といった様子で回答した。

「彫刻家は影朧はね、応接間に隠れていると思うんだよ。」
「……ユカ姉、隠れていると思った理由を聞かせて貰っても良いデスか?」
 黄花は紫からの回答に顔を引き攣らせかけたが何とか堪えた。そして、紫が自身の予想とは大きく異なる予想を立てた理由を聞いてみる事にした。

「彫刻家は蝋人形職人を凄く嫌っているんだよね?」
「そうデスネ。聞く限りではかなり深刻みたいデスよ。」
 紫は前提として彫刻家と蝋人形職人の不仲を挙げる。これは黄花も把握している事なので特に否定はしなかった。

「そんなに嫌いな相手なら、自分の工房に入られるのも嫌がると思うんだよ。」
「確かに互いに嫌っているなら、工房に入れるのも嫌がりそうデスね。」
 次に紫が挙げた前提にも黄花は同意した。陰湿な者ならば嫌う者の部屋にある物を弄り台無しにする可能性を否定できなかったからだ。

「だから、彫刻家は蝋人形職人が部屋に入れない様にしていてもおかしくないと思うんだよよ!」
「……んんっ?」
 ここにきて黄花は首を傾げた。事前情報では蝋人形職人は単独では動く事が出来ず、彫刻家は複数の部屋を頻繁に行き来している筈だ。
 その事実を踏まえると自身の部屋に入れない様にするのは彫刻家ではなく蝋人形職人ではないかと黄花は考えた。

「応接間は凄く暑いから、蝋人形職人は体が溶けちゃって入れないと思うんだよ!」
「えっと、ユカ姉、もしかして……いや、なんでもないデス。」
 黄花は紫の予想が根本的な所で間違えている可能性に気が付く。しかし、滅多にみられない自信満々な紫の顔を見てしまった黄花はそれを指摘する事が出来なくなっていた。

「……ユカ姉の考えは分かったデス。そこまで言うのならば彫刻家を鎮めに行くデスよ。」
「オウカちゃん、ありがとう!」
 こうして黄花と紫は応接間に彫刻家の影朧を探しに行く事にした。やる気に満ち溢れた紫に対し黄花は何処か遠い目をしていた



「では探索…の前に、折角だし可愛い服に着替えていくデス、ユカ姉♪」
「これに着替えるの? 確かに大正浪漫の女学生みたいで可愛いけど……。」
 応接間に行く事にした二人は更衣室にいた。これは紫を黄花の提案によるものだ。

「オウカちゃん、わざわざ着替えなくても良いんじゃないかな?」
「応接間で戦えば服が汗まみれになるデスよ。丁度良く衣装が用意されているのだから、利用させて貰うのデス。」
 黄花は応接間で戦えば衣類が汗でベタベタになる事、後に控えている敵の能力が分からない以上、万全の態勢で挑めるように備えるべきだと紫を説得した。
 勿論、黄花が更衣室に向かう事を提案したのは万全の態勢で挑めるように備えるだけではない。本命は更衣室に足を踏み入れた二人を彫刻家の影朧が奇襲をかけて来る事を期待しての事であった。

「……オウカちゃん、大きくなった? オ、オウカちゃんなにするのっ!?」
「そういうユカ姉は相変わらず慎ましいデスね♪」
 元々着ていた学生服を脱ぎ捨てた紫と黄花は姦しく会話を勧めながら衣装室から持ち込んだ着物へと着替えてゆく。紫が黄花の胸が豊かになっている事を指摘すれば黄花は紫に抱き着き、その慎ましい体を堪能する。
 それは仲の良い女友達の着替えに置いてよく見られる光景であった。しかし、二人は気づいていなかった。
 誰かの脱ぎ捨てた衣類の中から蛇の玩具が無機質な視線を二人に向け続けていた事を。

「にゅふふふふ、ちょっと遊び過ぎたデスよ。」
 何故か肌が艶やかな黄花が着るのは黄色の袴を基調にした着物を身に纏っている。着替えの最中で何度も紫とじゃれ合ったせいか、その顔は仄かに赤らんでいる。
「オウカちゃん、ただ着替えただけのに、ボクもう疲れたよ……。」
 対する紫も紫色の袴を基調にした着物を身に纏っているのだが、着替え中に散々黄花に抱き着かれてじゃれ付かれた為か敵と戦ったわけでもないのに既に顔は赤く、息も荒い。

「それじゃあ、改めて応接間に行くデスよ!」
「はふぅっ……あっ!? ま、待ってよオウカちゃん。」
 こうして着替えを終えた二人は応接間へと移動を始めた。この時、二人は移動の最中も体の内から熱が沸き上がり、それが何時まで経っても収まらない事をどういうわけか気にも留めなかった。


「オウカちゃん、やっぱり暑いね、はふぅ……。」
「改めて着替える事を提案して良かったデスよ? って、ユカ姉何をしているデスかっ!?」
 応接間は事前情報通り、とても暑かった。入室して5分も経たない内に紫と黄花は汗だくとなり袴も汗が染み込んで心なしか重くなった気がする。
 このまま部屋に留まれば影朧の奇襲を受ける前に熱中症で倒れかねないと考えた黄花がふと紫の方を向いて驚愕する。なんと、紫は顔を真っ赤にして着物を裸蹴始めているのだ。

「オウカちゃん、カラダがすごく熱いの……んぅっ!」
「ユカ姉正気に戻るデスよ!? うぅ……なんだかアタシも身体がウズウズしてきたですよっ?!」
 紫は熱に浮かされたかのように裸蹴た着物の隙間に手を差し入れて慎ましい胸を弄ると甘い喘ぎ声をあげる。突然の姉の痴態に黄花も慌てて止めなければと思うのだが、どういうわけか自身の体を慰める紫から目を離す事が出来ない。
 それどころか、黄花は段々と体が疼いてきている事に気が付いた。それでも疼く体を鎮めたいという衝動に耐えようとする黄花に対し紫が行動を起こす。

「うぅ……オウカちゃん……からだがせつないよう……。」
「あっ…・…。」
 半場蕩けた上目遣いで見上げるという誘惑を受けてしまった黄花の僅かに残された理性が限界を迎えた。
 黄花は紫を押し倒すと肌蹴た着物の隙間に手を入れて紫の胸を揉みしだいてゆく。誘惑した事を自覚していない紫は黄花の突然の凶行に驚き抵抗するが素の能力差も相まって逃れる事は敵わない。

「オウカちゃん、だめだよこんなところでっ……ふぁあっ!?
「にゅふふふ! 先に誘ったのはユカ姉デスよ!」
 いつの間にか自身も着物を裸蹴た黄花は紫の袴、その一方へ手を掛けると少しずつ捲り上げ始めた。黄花の狙いを悟った紫は慌てて止めようとするが胸の先を摘まみ上げられ中断させられてしまう。
 そうこうしている間に袴は限界まで捲り上げられ、紫の股間部が露わになってしまった。

「オウカちゃん、はずかしいよ……!」
「ユカ姉ったら、はいてないなんてさいしょからヤル気満々じゃないデスか!」
 果たして、袴の下から露わになった股間部には下着がつけられていなかった。その事実に紫は顔を真っ赤にして恥ずかしがるがその言葉とは裏腹に股間部は何かを期待するかのように綻びて汗とは異なる液体を滴らせていた。
「だ、だって、袴を着る時は下着を着ちゃだめなんじゃ……ふぁあ!?」
「そうデスね。袴を着る時に下着を着ていたらこうして弄る事も出来ないデスね! 大丈夫、実はアタシも袴の下ははいていないデスよ!」
 黄花は必死に言い訳をする紫に微笑むと紫の股間部を弄り、快感を送り込みながらも自身の袴も捲り上げてゆく。こうして晒された黄花の股間部も宣言通りはいておらず、紫同様に何かを期待する様に綻んで液体を滴らせていた。
 互いに袴の下をはいていなかったのは、更衣室で彫刻家の催淫を受けてしまった影響下それとも素ではかないでいたのか、それは定かではない。

「激しすぎるよぉっ……好きっ、オウカちゃん、オウカちゃぁんっ……!」
「ユカ姉、大好きデスっ♪」
 そうこうしている間に二人は曝け出された股間部を密着させ、こすり合わせてゆく。そして、股間部の敏感な突起が激しくぶつかり合うのと同時に黄花と紫は絶頂を迎えると瞬く間にその体を無機質な石へと変化させていった。
 

『……あの色狂いめ、儂に見せつける為に敢えて手加減しおったな。』
 お互いに慰め合った末に絶頂を迎えて石化した二人を監視する者がいた。それは応接間に潜む蝋人形職人の影朧だ。
 先程、現れた二人組のお陰で帝都桜學府からの刺客を察知していた蝋人形職人は当然紫と黄花達を警戒していた。しかし、突如として衣類を肌蹴て絡み合い始めた二人に驚き、少女達から自身の良く知る気配を感じ取った事から攻撃する事無くそのまま見守る事にしたのだ。

『催淫なんぞしている時点で自然の姿からは程遠いわ! 全く、後で家具職人に回収に来てもらわねばならぬな……。』
 紫と黄花は互いの体を複雑に絡み合わせた淫らな彫像となっている。
間近で見れば着物の下から曝け出された胸を揉み合う様子や擦りあわされる事により歪んだ股間部を伺う事が出来るだろう。
 そして、快感に蕩けた二人の顔は突き出された舌を絡み合わせようとしている様で大変厭らしかった。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

佐伯・晶
更衣室に彫刻家
通路に人形作り
応接間に蝋人形職人あたりかな

人形作りの影朧に遭遇したら
油断したふりをして抱擁を受けよう
人形化しても邪神の繰り糸で動けるし

友達が欲しいとか遊びたいとか
無邪気な理由なら付き合うよ
満足して転生するかもしれないし

体を動かす遊びでも
女神降臨や複製創造で衣装を創って着替えてもいいよ

僕の魂を封じると邪神が出てくるから
口付けは避けたいね
加護として影朧を人形に変えかねないし

影朧が人間への転生より
人形の永遠を望むなら別だけど

彫刻家に遭遇したら
彫像にされて回収に来た所を
邪神の施しで殴り倒すよ
痴態を晒す事になるのは癪だけど

蝋人形職に遭遇したら
人形になって油断した所を
邪神の繰り糸で攻撃しよう




「更衣室に彫刻家、通路に人形作り、応接間に蝋人形職人辺りで後は倉庫にあたりに家具職人かな。」
 猟兵達が次々と狙う影朧とその潜伏先の予想をつけてエントランスを出発する中、晶は影朧達の潜伏先を見いだす事に夢中になっていた。
 そして、全ての影朧の居場所の予想をつけ終える頃にはエントランスホールで待機している猟兵は僅かになっていた。

「これは既に無力化された影朧もいるかもしれないね。」
 エントランスからいなくなった猟兵の中には桜の精の者もいた。桜の精がエントランスを出ている以上、既に転生を終えた影朧がいても可笑しくはないだろう。
 考えた末に晶は影朧達を虱潰しに探す事にした。幸い、全ての影朧の居場所の目星はついている。
「それじゃあ、僕もそろそろいくとしよう。」
 晶は影朧を鎮めに行くべくエントランスホールを出発した。


「彫刻家と家具職人は転生済みだったか。となると次は蝋人形職人だね。」
 通路を歩く晶は溜息を吐く。先駆けて向かった更衣室と倉庫では既に桜の精によって影朧の転生が成されていた。
 ただ、影朧達も奮闘した様で猟兵達の多くが美術品にされて倉庫に集められていた。その中にはやはり晶の見知った猟兵達が多い事に苦笑していた。

「そろそろ応接間の入り口の筈だけど……んん?」
 晶は応接間を目指し歩く晶だが、途中で少女の笑い声が聞こえて来た。人形作りの影朧が現れたのだ。
 晶は応接間へと向かう足を止めて少女が現れるのを待つ。そして、少女に捕捉された晶は凄まじい勢いて抱き着かれるのであった。

「きょうはたくさんのひとがきてくれてうれしいわ!」
(様子的に少なくない猟兵と戦っているみたいだけど、全然影朧としての力は削がれていないみたいだね。)
 少女に抱き着かれた晶は瞬く間に球体関節人形にされながらも少女を観察する。
 少女からは悪意や憎悪の類は感じ取れない。しかし、その身には集団で現れる類の影朧を凌駕する力が宿っている事を晶は感じ取った。
 どうやら、現時点で彼女と遭遇した猟兵は彼女の力を削ぐ事に失敗しているらしい。猟兵であれば例えやられようと力を削ぐ位は出来る筈なのにそれが出来ていない事に疑問を感じた。

「きょうこそはてんせいできるかもしれないわ!」
(ちょっと待って! まさかこの子がこんな事をしているのって転生する為なの!?)
 晶は自身に頬ずりをする少女の発した言葉に驚愕した。晶の予想では少女は純粋に友達を求め、遊びたいが為にこんな事をしていると考えていたのだ。
 しかし、実際の理由は自身が転生する為に事に及んでいるという。確かに生前の未練を果たす行動は転生する上での前段階としては有効だ。
 それでも転生を完遂するには桜の精に癒して貰わなければならない。目の前の少女はその事に気づいていない……否、明らかにその事を教えられていないという様子だ。

「それじゃあ、しあげをしたらいっしょいにたくさんあそぼうね!」
 困惑する晶に少女の口付けが迫る。このまま口づけを受ければ晶の魂は装飾品に封印されてしまうだろう。
 しかし、晶の魂が封印されてしまえば、晶の中に封印された邪神が解き放たれてしまう。そうなれば目の前の少女は真っ先に邪神の餌食となり、下手すれば永遠に転生する事が叶わなくなるだろう。
(流石に口づけを受けるのは不味い!)
 少女の目的を知った晶はこのままだと不味いと慌てて自身の体に人形操りの魔法を行使した。すると少女の腕の中で力なく手足を投げ出していた晶が動き始めた。

「わぁ! あなた、にんぎょうになってもうごけるのね! なんでうごけるの?」
(思っているよりも喜んでいるね。もしかして、あの子にとっては人形にする事は不本意だったのかな?)
 突如として動き始めた晶に対する少女の反応は歓喜であった。晶ははしゃぎまわる少女に更に困惑しながらも返答しようとしたが声が出せなかった。
 人形繰りの魔法で動かせるのはあくまでも関節の形成されている部分だけだ。微笑の形のまま無機質な陶器の塊に成り果てた口を動かす事は出来ず、言葉を話す事は叶わない。
 仕方なく身振り手振りで会話のできない事をアピールする晶に対し、少女は少し残念そうにしたものの、それでも動ける相手と遊べる事への嬉しさからかどんな遊びをするのか悩み始めていた。

「おいかけっこ、それともかくれんぼ? いろいろありすぎてまよっちゃうわ!」
 晶としては人形にされた仲間の救出とエントランスホールで待機する仲間達への連絡の目途が立ちそうだったのでそのまま少女の部屋へと連れて行ってもらい少女の心行くまで遊びに付き合うのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

在原・チェルノ
影朧:彫刻家
場所:更衣室

状況から考えてこの組み合わせで決まりよね?
でも気になるのはもう一つの作業場
そっちの方にいる可能性もあるのよね
だから衣装室から持ち込んだ衣装(影朧の好みそうなフェティッシュなもの)に着替えるフリをして更衣室を捜索
ここにいればビンゴだし、いなければ【失せ物探し】でもう一つの作業場へのルートを探す

視線を感じても敵の油断を誘うために気づかないフリをして着替えを続ける
むしろ相手の気を惹くような仕草も織り交ぜて
も、もうちょっと大胆な方がいいかな…?
(気づかないうちに催淫の効果を受けてストリップをしながら自分の身体を慰め出す)
もっと見て、えっちなあたしを…

※NGなし・アドリブOKです




「状況から考えてこの組み合わせで決まりよね? だけど、もう一つの作業場も気になるの。」
 鎮めに行く影朧を彫刻家に定めたチェルノはその潜伏先が更衣室であると確信していた。同時に彫刻家を鎮めに赴く猟兵の姿を見ていたチェルノは彫刻家がもう一つの作業場に移動している可能性を懸念していた。
「更衣室にいないなら、その時に改めて考えれば良いの。」
 暫し考え込んだ末に一先ず更衣室を捜索する事にしたチェルノは彫刻家を誘い出すのに使えそうな衣装を探す為に衣装室へと入室した。


「それじゃあ、行きますよ!」
 衣装室で彫刻家を誘い出す為の衣類を見つけ出したチェルノは更衣室へと入室する。室内には他の猟兵の姿は見られないものの、他の猟兵の物と思われる衣装が散乱していた。
「やっぱり、それなりの数の猟兵がここを訪れているみたいなの。」
 更衣室内のロッカーを一つ一つ見て回ったチェルノは顔を顰めた。ロッカーの使用状況を見たチェルノは最低でも三人以上の猟兵が更衣室を訪れている事を確信する。
 力の弱い影朧が相手ならば三人もいれば既に無力化されていても可笑しくはないのだ。しかし、実際には彫刻家は無力化されておらず、更衣室を利用したであろう猟兵の姿も見えない。
「これは……気を引き締めてかかった方がよさそうなの。」
 チェルノは更衣室を訪れた猟兵達が全員、彫刻家の術中に嵌り淫らな美術品にされてしまった事を悟った。同時に自身も油断すればそんな猟兵隊の後を追う羽目になる事に気が付き、チェルノは身を震わせた。
 そして、チェルノは衣装室から持ち込んだ衣装へと着替えを始めた。彫刻家を誘惑する様にゆっくりと焦らす様に服を脱ぎ、持ち込んだ衣装へと着替えてゆくチェルノ。
 しかし、チェルノの思惑に反し着替えが終わるまで何者かの視線が向けられる事はなかった。

「まさか、何事もなく着替え終わるとは思わなかったの。」
 衣装室から持ち込んだ四肢を大胆に晒し胴体部に密着する構造の恐らくは曲芸師向けの衣類に着替えたチェルノはまさかの結果に唖然とする。念の為に更衣室の隅々まで調べるが彫刻家が見つかる事はなかった。
「……もう一つの作業場を探すしかなさそうなの。」
 チェルノは彫刻家の影朧のもう一つの作業場を探すべく、更衣室内を見渡しながら考えを巡らせ始めた。

「2つの作業場はそう遠くはない筈……。」
 彫刻家の影朧は2つの作業場を頻繁に行き来しているという。利便性を考えると2つの作業場はそれほど離れていない可能性が高い。
 更に人形作りの影朧との遭遇を恐れている以上、彫刻家は2つの作業場を人目につかない方法で行き来している筈だ。ふと部屋の天井を見上げたチェルノは部屋の天井の一部に不自然な穴が開いている事に気が付いた。

「……どうやら、彫刻家は天井裏利用して行き来しているようなの。」
 彫刻家が作業場を行き来する為の通路を悟ったチェルノは更に考えを巡らせる。そして、一般人からの情報の中にお手洗いに行ったきり戻ってこない者がいるという話を思い出した。
 よくよく考えれば便所は目的を果たす為に下半身を露出せざるを得ない場所だ。それはエロスを求める彫刻家の影朧にとって非常に都合の良く、更衣室と便所はそれほど離れていなかった。
「よし! 次はお手洗いを捜索するよ!」
 チェルノは便所へと急行した。


「さて、お手洗いに到着したものの……何処を探しましょうか?」
 特にトラブルもなく便所へと到着したチェルノは室内を見回す。便所内は複数人が同時に利用する事を想定しているのか公衆便所と同様の構造をしていた。
 更衣室と異なり水回りの設備も充実した便所内は影朧が隠れる場所が非常に多い。闇雲に探しても影朧を見つけ出す事は非常に困難だろう。
「……身だしなみを整えながら彫刻家が現れるのを待つの。」
 早々に室内の捜索を諦めたチェルノは更衣室の時と同様に彫刻家の方から接触してくるのを待つ事にした。丁度良く便所内に設置された化粧直し用の鏡を利用する事にしたチェルノはゆっくりと身だしなみを整え始めた。

「も、もうちょっと大胆な方がいいかな……?」
 鏡を頼りに髪の乱れを直したチェルノは続けて衣装を整え始めた。チェルノは徐に衣装の締め付けを強めてゆく。
 すると衣装の密着は更に強くなり、胸や股間部の僅かな起伏すら浮かびあがってゆく。そして、恥ずかしい場所がくっきりと浮かび上がっている自身の姿を見たチェルノは顔を赤らめ、体が段々と熱を帯びてゆくのを感じた。

「うぅ……なんで体が熱くなってきているのよ?」
 チェルノは突如として自身の身に起きた異変に困惑する。
彫刻家に挑む以上、体が淫らにされる可能性は考えていた。だが、それは相手が視線を一定時間向ける事が必須であり、チェルノは便所に入ってから視線を全く感じていない筈なのだ。
 混乱したチェルノは部屋中を見渡すが当然影朧の姿は見当たらない。この時、チェルノは自身の眼下に排水溝があり、排水溝の中から蛇の玩具がガラスの瞳をチェルノ向けていた事に気が付かなかった。

「からだがあついの……。」
 そうこうしている内に更に体の内から湧き上がる熱と疼きに耐えられなくなったチェルノは衣装を脱ぎ捨てて一糸纏わぬ姿になってしまう。しかし、チェルノの思惑に反して服を脱ぎ捨てても体の熱は下がらず、更に熱と疼きが強くなってゆく。
「もうだめ……がまんできないの!」
 段々と強まる疼きを我慢しきれなくなったチェルノはその場で体を慰め始めてしまった。自身の手が胸を揉みしだき、先端を摘まみ上げる度に甘い声をあげる。更に指を股間部に押し込めば、指はあっさりと呑込まれ締め付けられてゆく。
「もっと見て、えっちなあたしを……! んぁあああ!?」
 そして、何処かで視線を向け続けているであろう彫刻家に懇願しながらチェルノは更に激しく自身の体を慰めてしまいあっと言う間に絶頂を迎えて石化してしまった。

 カタカタ……カラン。

 暫くして石化したチェルノの足元に設置されていた排水溝の蓋を押しのけて蛇の玩具が便所内へと侵入してきた。
 玩具の蛇はカタカタと音を鳴らしながら器用にパイプを伝い洗面台の上に登るとチェルノの方へと振り返った。
 そして、蕩けた顔で舌を大きく突き出し、ガニ股で股間部を両手で弄り回すポーズの彫像となったチェルノの姿に満足げに首を動かすとそのまま天井裏へと消えてゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

四王天・燦
人形影朧・通路

お洒落な衣装を手に通路をうろつくぜ

少女がいたら声をかけるよ。
無邪気な抱擁は回避できねーわ。
なんで人を人形にするのかな?
優しく問うぜ

不自由だった体に同情はするよ

でも作った人形さんはどうしたの?
それに動けなくなった人が可哀想…動けない辛さは知ってるだろ?
商人に騙されていると伝えるぜ。
稲荷巫女のお説教で説得

命脈を断つ呪詛を籠めた符を貼…ることに躊躇している内に頬ずりを受ける。
最後にもっかいやり直そうぜと転生に導く。
口付けを受けたらもう口も動かない

悶え痙攣しながら、魂が封じられ瞳が硝子玉となる。
最期の人形遊びに満足したら遺した符で輪廻に旅立つと信じてる…
次第に自身を人形と誤認し始めながら




「まさか二重底を見破られるとは思わなかったのだぜ。」
 燦は館に招かれる事は無事に成功したが盗みに必要な道具を置いていく事になってしまった。こうなると当初の目的である美術商のお宝を盗み出す事は難しい。
「仕方ない、ちゃんと仕事をやることにするか。今回は人形作りの影朧を狙う事にするぜ。」
 燦はお宝を渋々諦めて本来の仕事である影朧達を鎮める事を優先する事にした。そして、現時点で手を出せる4体の影朧の中から人形作りの影朧を狙う事にした。
 狙う事にした理由は居場所の特定や迎撃態勢を整えるのが楽である事が主だ。実はもう一つ理由があるのだが、ここでは敢えて語らない。

「まずは恰好をどうにかするぜ。」
 人形使いの影朧は燦の予想が正しければ少女だ。少女であるからには可愛い物には目がないと考えた。
どうせなら飛びっきりのお洒落で可愛い衣装を着ようと思った燦は衣装室へと戻ると室内に置かれた衣装を漁り始めた。暫くして。衣装室から出て来た燦は普段の自分ならまず着ないような衣装を身に纏っていた。

「……ちょっと少女趣味に走り過ぎたか? いや、こういうのはとことん突き詰めた方が良いに決まっているぜ!」
大まかな外見としては白と黒を基調にした露出の少ないデザインのエプロンドレスだ。その衣装は至る所に使われたフリルにより華やかさが増しており、スカートも幾重にも重ねられたパニエによってふんわりと膨らんでいる。
それは俗にロリータ・ファッションと呼ばれる類の衣装であった。人形が大好きな少女にはこれ以上ない程に刺さる衣装だろう。

「衣装も決まったし探しに行くぜ!」
 衣装を一新し準備万端となった燦は人形作りの少女と出会うべくエントランスホールを出発した。


「わぁ! こんどはしろいきつねさんだわ!」
 通路に出て暫くして、燦の背後から可愛らしい少女の声が聞こえて来た。振り返ってみれば年端もいかない少女が凄まじい速度で駆け寄ってきているではないか。
 恐らくはあの少女が人形作りの影朧なのだろう。燦は咄嗟に回避をしようとしたが少女の顔を見た瞬間、動きが止まった。

「……何て無邪気な笑顔、これは回避できねーわ。」
 そう、少女が燦に向ける笑顔には邪な感情は全く見えない。もしも燦が避けてしまえばこの笑顔は忽ち消え失せてしまうだろう。
燦はそれを許容できず結果として少女に抱き着かれてしまった。そして、少女に抱き着かれた直後燦の懐から何かが弾ける音が響いた。

「あれ? なんであなたはにんぎょうにならないの?」
「よし! 四王稲荷符はちゃんと効果を発揮したぜ。だが、あまり長持ちしそうにないぜ。」
 燦は少女に抱き着かれてしまった時に備えて強力な結界の術式を篭めた四王稲荷符を懐に忍ばせていたのだ。
四王稲荷符は期待通りに燦が人形になる事を防いでくれた。だが、予想以上に少女の力が強いようで符は5分も経たないうちに弾け飛んでしまった。
符そのものは複数枚用意していたものの全て弾け飛んでしまうのも時間の問題だろう。全ての符が燃え尽きる前に燦は少女を説得すべく対話を始めた。

「なぁ、君はなんで人を人形にするのかな?」
 それは燦が少女を実際にみた時に一番に思った疑問だ。もしも少女が憎悪に支配されていれば自分と同じ境遇にしてやると凶行に及んでもおかしくはない。
だが、目の前の少女は明らかに憎悪に支配されていない。だからこそ少女が嘗ての自分と同じような境遇に他人を陥れるとは思えなかったのだ。

「なんでって、そうしないとみんなとあんぜんにあそべないからよ。」
「安全に遊べない? どういうことか教えてくれないかな?」
 嘗ての彼女は質の悪い流行り病を患っていたらしい。その病は伝染するものであり、感染を防ぐ為に友達は愚か家族との接触も禁止されていたという。
 少女が人を人形に変えるのも少女と遊ぶ事によりその病が伝染しない様にする為の措置だという。
「病を患っているというけれど、アタシには君がとても元気に見えるよ?」
 確かに少女の言い分は強引ではあるが理屈は通っている。だが、それは少女が病を患っている事が前提だ。
燦には目の前の少女が病に侵されている様には見えなかった。
「それはわたしがかげろうだからよ。あのひとはそういっていたわ。」
少女の言葉に燦の脳裏に恐ろしい予想が過った。燦はその否定する為に懐に忍ばせた符が弾けるのを感じながらも対話を続ける。

「そもそも、なんで君は皆と遊びたいの?」
「それはわたしがてんせいするのにひつようだからよ!」
 少女の言葉に燦は耳を疑った。少女の言葉が正しければ彼女は転生する為に人々を人形に変えて遊んでいる事になる。
影朧が転生を受け入れる事はその魂が鎮められない限りまずあり得ない事だ。燦は少女が何故転生したいのか聞いてみる事にした。

「なんで転生しようと思ったの?」
「だって、かげろうはてんせいしないとせかいをこわしちゃうんでしょ? それはとてもいけないことだわ。」
 この時、燦は目の前の少女の魂がほぼ鎮められている事を悟った。同時に転生しようと頑張る少女が、何故人を人形に変えて遊ぶという凶行に及んでいるのか理解できなかった。
 影朧が転生する方法は魂を鎮められた上で桜の精の癒しを受ける事だ。生前の未練を晴らすという行為は魂を鎮めるのには有効だが、それだけでは転生できない筈なのだ。
 燦は脳裏を過った恐ろしい予想が正しい可能性が高まった事に頭を抱え、符がまた1つ弾けるのを感じ取った。

「人形にした人達はどうしたの? まさか、人形のままほったらかしにしてはいないのでしょう?」
「そんなわけないわ! わたしとあそんでくれたひとたちは、あのひとがちゃんとおうちにのもとにかえしてくれているはずよ! にんぎょうのじょうたいだっておいしゃさんにみせればすぐになおるとあのひとはいっていたわ!」
 少女の言葉に燦は脳裏を過った予感が正しかった事を確信し戦慄した。
目の前の少女は人形にされた者達の末路、魂の封印された装飾と人形を別個にされて元に戻れなくされた上で人形を買いに来た何処とも知れぬ他人に売り払われている事を知らないのだ。

「あなたは騙されているわ! 人形にされた人達は元に戻れていないし家族の元にも帰れていないのよ!」
 残り僅かになった符の弾けとんだ事を感じながらも燦は思わず少女に真実を告げた。しかし、少女はそれを信じなかった。
「そんなわけないわ! きけんをしょうちでわたしをしずめてくれたあのひとがそんなことするわけないわ!」

 少女の叫びと共に符がまた一つ弾けた。燦の記憶が正しければ残る符は後1枚、これ以上決断を先送りにする事は出来ない。
燦は命脈を断つ呪詛を籠めた符を少女に貼り付けようと手を振り上げる。だが、符を張る事は叶わなかった。
 何故なら少女が満面の笑みで燦にお礼を言ったからだ。燦は純粋に感謝の言葉と笑みを向けて来る少女に符を張り付ける事どうしてもできなかった。
故に残されたわずかな時間を使い少女に最後の質問を投げかける。
「ねぇ、あなたを鎮めて色んなことを教えてくれたのは誰かな?」
「だれって、びじゅつしょうのおじさんだよ?」
その言葉を聞いた燦の怒りが限界に達した。そして、美術商へ呪詛を吐こうとした所で最期の符が弾けた。


「じかんがかかったけれど、これであんぜんにあそべるわ! しろいきつねさん、よろしくね!」
 少女は60cm程の人形に成り果てた燦の額に口づけを交わすといつの間にか手に持っていたブローチを人形の胸元に取りつけた。
こうして魂をブローチに封じ込められ、名実ともに球体関節人形になった燦は少女をガラス玉の瞳で只々見つめていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

テフラ・カルデラ
※絡み・アドリブ可
対象:蝋人形職人の影朧
捜索:応接室

えぇっと…影朧を探せばよいの…ですよね?
応接室へ行って、蝋人形職人の影朧を探しましょう!別に蝋人形になりたいってわけではありませんから!!

それにしても様々な芸術品…ならぬ犠牲者がたくさんなのです…
早く元に戻したいですね…

もし襲われたら【固化塗料粘液散布】で対抗!
逆に隙を突かれて蝋人形に変えられる時は…その時です!




「えぇっと……影朧を探せばよいの……ですよね?」
 テフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)はこの館内でやるべき事の再確認をしていた。
 カフェーでは各種ポーションやセメント噴射機に巨大蛸を置いていく事になったものの、塗料の詰まったチューブと2つの杖は持ち込みに成功したので戦う事に問題ない。
 そして、探すべき影朧のリストを見てテフラは即座に狙う影朧を定めた。

「それでは、わたしは蝋人形職人の影朧を探しましょう! 別に蝋人形になりたいってわけではありませんから!!」
 向かう先の宣言をすると同時にまるで言い訳の様なに宣言をするテフラだが、一部の猟兵達からの視線は生暖かい。そう、彼が『固め』や『状態変化』と称される事象に対して重度の被虐嗜好を持つ事はそれなりに知れ渡っていた。
 とはいえ、この場に来ている猟兵の多くが同じ穴の貉なのでテフラも別に隠す必要はないのだが恐らく彼にとっては別問題なのだろう。

「蝋人形職人は……応接間にいそうです!」
 テフラは蝋固めに関しては人並外れた知識を持っている。そんな彼にとって蝋人形職人が「霧」を介して攻撃する事と応接間が異様に蒸し暑い事を結び付ける事は容易であった。
 そして、テフラは蝋人形職人と戦うべく応接間へと向かい始めるのであった。


「それにしても様々な芸術品……ならぬ犠牲者がたくさんなのです……。」
 テフラは応接間を目指し進む最中、通路の隅に飾られた美術品の数々を羨ましそうに見て回る。一定間隔で並べられた美術品は何れも一般人の成れの果てだという。
「早く元に戻したいですね……。」
 猟兵達の調査により人形と陶芸品を除く美術品は元に戻せる可能性が高い事が判明している。だが、今美術品にされた人々を元に戻す事は出来ない。
 何故なら、美術品にされた人々が元に戻れば館内はパニックに陥るだろう。そうなれば影朧達が何をするか分からない。
 故に今は影朧を鎮める事を優先するしかない。テフラは兎の長い耳を活かし人形作りの影朧の襲撃を警戒しながら通路を進んでゆく。

「……本当に暑いですね。でも、蝋人形職人の部屋はここで間違いなさそうです。」
 無事に応接間に突訳したテフラは応接間の事前情報通りに蒸し暑い。部屋の中の気配を探ってみれば確かに影朧と思わしき気配を感じ取る事が出来た。
 予想が正しかった以上、後は影朧を見つけ出して無力化するだけだ。テフラは部屋の中の捜索を始めた。

「うーん、見つからないですね。」
 捜索を開始してから暫くして、テフラは未だに影朧を見つけられずにいた。その体はすっかり汗だくとなり、衣類も汗を絞り出せそうな程に湿ってしまっていた。
「それにしても蒸し暑いです。依頼が終わったらお風呂で汗を流したいです……。んんっ?」
 テフラは額に伝った汗を拭った所で違和感に気が付いた。そう、部屋に入った時点ではあくでも暑いだけで蒸した感じはしなかったはずなのだ。
 慌てて部屋の中の匂いを嗅いでみればテフラの鼻にとても嗅ぎ覚えのある匂いが入ってきた。

「この匂いは……蝋の匂いですっ!?」
 そう、部屋の捜索に夢中になるあまりテフラは蝋人形職人が攻撃をしてきていた事に気が付かなかったのだ。慌てて部屋の中を見回してみれば暖炉の付近から蝋の霧が漂って着ていた。
「まさか、暖炉の火が影朧だったのですか!?」
『漸く気が付いた様じゃのぅ。じゃが、もう時間切れじゃ。そのまま儂の作品となるがいい。』
 テフラが影朧の正体に気が付いたところで部屋に老人の声が響き渡り、それに呼応するかのようにテフラの体に動かし辛くなってきた。恐らくは蝋人形職人が事前に設定した硬化の始まる時間に達したのだろう。
 このままではテフラは慌てふためくウサギキマイラの蝋人形にされてしまう。それだけは避けなくてはとテフラはポケットの中から塗料の入ったチューブを取り出した。

「せめて一矢報いりますよ!浴びると固まるキマフュ製特殊塗料を喰らうです!」
 テフラは動かす事も辛くなってきた体を酷使してチューブを暖炉に向けて押し出した。するとチューブの大きさからは想像できない量の塗料が噴き出し、暖炉へと降りかかった。

『ぬぉおお!? 火が、火が消えてしまう!?』
 大量の塗料はテフラの目論み通り、暖炉の火に覆いかぶさり燃え盛る炎を鎮火した。それに伴い、部屋に漂っていた蝋の霧も晴れてゆく。

「…………。」
 そして、部屋の中には塗料に塗れて火の消えた暖炉と暖炉に向けてチューブを向けた姿勢で光沢のある蝋人形に成り果てたテフラが佇むのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シズホ・トヒソズマ
『応接間』を【人形作りの影朧】狙いで探します
私も人形は自作してて、気持ちはわからなくもないので

応接間前で人目を気にしてから先に使った別UCのマスク内空間から自作からくり人形を出して中に持参。入り口近くに置き応接間を歩きます

はっ、いつの間にか抱き締められはああっ、間接が球体になって動けなく固くなってくぅ、これが人形化…!癖になりそ、あ、更に頬擦りで小さくされちゃう、あん、私の体(借り物)が好き勝手されるの、興奮しちゃいます…!

と、口付けまで通すとUCが使えないので発動
からくり人形に生命を与え
即座に影朧を拘束して貰い会話可能なら

私もこの通り人形作りが趣味で。人形作りを語らって友好でも深めませんか?




「私としては人形作りの影朧に会いたいですね。」
 現時点で鎮める事の出来る影朧達の情報を眺めていたシズホは即座に人形作りの影朧の元へ向かう事を決める。
 シズホは自身の武器として操るからくり人形達を戦争で得たデータを元に自作している。それが高じて人形を作る事が趣味の一つとなっていた。
影朧とはいえ人形を作る者にシズホが惹かれるのは自然な事であった。

「情報を纏める限りだと通路で出待ちするのがよさそうですが……んん?」
 対象を決めたら次は居場所を探さなければと情報を整理していたシズホはふと蝋人形職人の影朧の情報をみてある事に気が付いた。
「よくよく考えると館内って通路だけじゃなくて室内も対象ですよね。」
 そう、人形作りの影朧は館内を彷徨っている。館内という括りである以上室内に現れてもおかしくはないのだ。
 それは自ら移動する事の出来ないという蝋人形職人の影朧が人形作りの少女を孫娘の様に思っているという情報からも伺えた。
「よし、私は応接間で少女を待ちましょう!」
 改めて情報を吟味した末にシズホは応接間で少女を待つ事にした。下手すると応接間に潜む影朧に奇襲されかねない選択だが、シズホとしては予想が外れても問題ないと考えていた。
 何故なら、シズホは重度の被虐嗜好の持ち主であり奇襲を受けて蹂躙されるのは彼女にとって大関係な事態なのだから。


「周囲に人影はなし。それでは、中に入る前に皆を出しておきます。」
 応接間の前に辿り着いたシズホは一応周囲に人目がないか確認してから懐からマスクを取り出すと、ユーベルコヲドを行使した。
 するとマスクの中から3体の少女を模した人形が出て来たではないか。1体は巨大な腕を、1体は陰陽師の恰好を、最期の一帯は少女の人形、1体は巨大な砲台に跨っている。
 これこそがシズホの自作した12体のからくり人形、その一端である。
「それじゃあ、出番が来た時にはお願いしますね。」
 シズホは3体の人形を応接間の入り口の傍らに置くと応接間へと入室した。

「……全然熱くない?」
 応接間へと入ったシズホは部屋の中が熱くない事に首を傾げた。事前情報では応接間は暖炉に火が灯されており異様に暑いという事であった。
 しかし、応接間の中は確かに通路に比べれば暑いとはいえ異常という程でもなかったのだ。不思議に思ったシズホが部屋の中を見渡してみれば原因は直に分かった。
 暖炉は色彩豊かな塗料によって消化されており、暖炉の傍らには兎のキマイラの蝋人形が置かれていたのだ。

「どうやら蝋人形職人は先駆けて突入したこの人と相打ちになったようですね。……いいなぁ……。」
 シズホは蝋人形と化した猟兵を撫でながら呟く。その視線には相打ちになった猟兵への羨みが多分に籠められていた。
 それでもこのまま放置するのも不味いと考えたシズホは陰陽師人形用の予備の符で暖炉の塗料が剥がされない様に処置を行い、蝋人形となった猟兵を部屋の隅へと退避させた。
「部屋の中が安全なら、皆も中で待って貰った方が良さそうです。」
 部屋の中が安全になっている事が判明した為にシズホは応接間の入り口に置いてきた3体の人形達を回収すると、応接間に置かれた人形に紛れ込ませる様に配置し直した。

「さて、後は少女が来るのを待つだけです。……来てくれますよね?」
 応接間の前に置いて来た一通りの作業を終えたシズホは応接間のソファーで寛いでいた。その顔には少女との対話とその後に待ち受ける人形化への期待と自分の推理が的外れであり、少女が何時まで経っても来ないのではないかという恐れが入り混じっていた。
「おじいさん! わたしのはなしをきいてよ!」
 幸い、シズホの不安は杞憂に終わった。応接間の入り口をぶち破りながら少女が突入してきたのだ。

「おじいさん! どこにいるの? いないの?!」
 少女は酷く焦っている様でシズホの存在に気が付くことなくおじいさん……恐らくは蝋人形職人に呼びかけている。しかし、蝋人形職人は少女と会話の出来る状態ではない。
 だが、そんな蝋人形職人の状態を少女が知るわけがない。普段なら呼びかければ直に返事を返してくれる蝋人形職人の返答がない事に少女は更に焦り不安に染まってゆく。

「……私が聞くのじゃ駄目かな?」
 シズホにはそんな少女を黙ってみている事は出来なかった。


「あっ……。」
「もしかしたら、私でも解決できるかもしれないからぁっ!?」
「うわぁああん!」
 やはりというべきか、少女はシズホの存在に気が付いていなかった。そして、シズホの存在に気が付いた少女は両目に涙を滲ませるとシズホに全力で抱き着いて来た。
 少女はシズホに蝋人形職人にしようとしていた話を始める。だが、少女に抱き着かれたシズホは少女の話を聞く所ではなくなっていた。

「ああっ、間接が球体になって……動けなく固くなってくぅ……。」
 少女に抱き着かれてしまったシズホの体は瞬く間に伽藍洞な陶器と球体関節の塊へと変化してゆく。体が動かなくなるだけでは飽き足らず、五感が段々と消えてゆき、陶器に変化した部分から体伽藍洞になっていく。
常人であれば恐怖する状況だが、シズホは恐れる所か悦んでいた。重度の被虐嗜好であるシズホにとって苦痛もなくただ奪われるという状況は新鮮であった。
そんなシズホを他所に少女は泣きじゃくりながら頬ずりを始めた。

「~~~! ~~~~!」
(あ、小さくされちゃう……あん、私の体(借り物)が好き勝手されるの……興奮しちゃいます……。)
 肉体が人形に成り果て、視覚を除く五感がまともに機能しなくなったシズホは声なき声で喘ぎ悶える。……喘ぎ声に混ざって不穏な言葉も混ざっているがシズホが身体として借りるのは自身と同レベルの被虐嗜好の持ち主なので問題はない、筈だ。

「……。……!」
(はふぅ……そろそろみんなを……うごかさないと……。)
 そして、片腕で支えられる程に小さくなったシズホに少女の口付けが迫る。口づけを受ければシズホの魂は装飾品に封印され、ユーベルコードを使う事も出来なくなる。
 シズホは弄ばれる快感に悶えながらも応接間の人形に混ざって待機している人形達を動かすべく、力を振り絞って人形に仮初の命を与えるユーベルコヲドを行使した。
 だが、ここにきて予想外の事態が起きた。どういうわけかシズホの人形と共にその傍らにいた人形達にまで命が宿り動き始めたのだ。

「~~!? ~~~~?」
(うぅ、もう少しで魂を奪われる感覚も味わえると思っていましたのに……。)
 不幸にもシズホは少女が驚いた拍子にソファーに投げ出された為に口づけを受ける事は免れた。魂を奪われ封印される感覚を体験できなかった事を残念に思いながらも少女達と人形達のやり取りを見守る事にした。

(~~~? ~~~!)
(~~~。~~~~。)
(っ!! ~~~~~!)
 どうやら、少女の話とは人形にされた者達に関する事だったらしい。少女は人形達に必死な形相で人形達に何かを語り掛けている。
必死な様子の少女に対し人形達はとても悲しそうな様子で少女からの問い掛けに回答している様だ。だが、人形達の回答を聞いた少女の顔が絶望に染まってゆく。
 そして、現実を受け入れられないと言わんばかりに少女は逃げる様に応接間から出ていった。

「~~~?」
(あ、ありがとうございます。だけど、もう少し人形の気分を味わっていたいです。……そうです! 折角なので私を使って遊んで欲しいです!)

 暫くして3体の人形達がソファーに横たわるシズホの前に立った。そう、シズホの作った人形達だ。
 シズホが喋れない以上、シズホの意思が人形に伝わる事もない。だが、長年シズホと共に過ごしてきた彼女達はシズホの性癖良く理解している。
 人形達は呆れた顔でシズホを抱き上げるとシズホを使い遊び始めるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

神代・凶津
結局、武器はほとんど持ち込めなかったが何とか潜入成功だな相棒。
「・・・ですが、これからが本番です。気を引き締めないと。」

聞き込みした結果、更衣室で何処からか視線を感じたって話だから、おそらくここに視線で攻撃してくる『彫刻家の影朧』がいるはずだぜッ!

ここは逆に奇襲してやろうぜ。
相棒が俺を更衣室を見渡せる場所に置いて、適当に着替えるフリをする。
そしたら敵は相棒に視線を向けるだろうから、ただの仮面だと思われてる俺には見向きもしないだろ。
其処で、すかさず俺が影朧に炎獄砲を叩き込んでやるって寸法よ。
「・・・囮になるのは構いませんが、しくじらないでくださいよ。」
おう、任せとけって。


【アドリブ歓迎】




『結局武器と呼べるのは殆ど持ち込めなかったが何とか潜入成功だな相棒。』
 エントランスホールにて桜に抱え垂れた凶津は一息つく。武装の持ち込みに失敗他のは痛いが、それでも館に入る事が出来た事に安堵していた。
「……ですが、これからが本番です。気を引き締めないと。」
そんな凶津に対して桜は緊張の面持ちだ。というのも二人が鎮めようと考えている影朧は桜にとっては色んな意味で危険な相手だからだ。
 その影朧は対象を彫像に変える能力を持つという。それだけでも脅威だが厄介な事にこの影朧はエロスをこよなく愛その作品も例外なく淫らな姿をしているという。

「聞いた限りだと、更衣室で視線を感じたそうです。」
『視線を感じたとなると、更衣室に視線で攻撃してくる『彫刻家の影朧』がいるはずだぜッ!』
 彫刻家の影朧は視線を通じて対象に催淫や石化の呪いを吹かしてくるという。視線を向けるだけで発動するのは厄介だが幸いその効果は即時的に発揮されるわけではないらしい。
 凶津と桜は現在把握出来ている情報と二人が使える攻撃手段から影朧に対抗する手段の相談を始める。そして、凶津が再び何かを閃いたのか桜へとその内容を伝えてゆく。

『逆に奴を奇襲をしてやるんだ! 今度こそうまくいく筈だぜ!』
「……本当に大丈夫でしょうか?」
 凶津の閃いた策、それは囮作戦の類であった。
まず、凶津は室内を見渡せる場所に待機しつつ桜が囮として影朧を誘い出す。そして、影朧が桜に夢中になっている隙に凶津が影朧に奇襲攻撃を仕掛けるというのだ。
 確かに凶津の策は理にかなっている。しかし、つい先ほど自信満々に提案した策が失敗しているだけに桜は不安を隠せずにいた。
 それでも現状の手札でこれ以上の策を桜は思いつかなかった為に渋々了承する事にした。
「……囮になるのは構いませんが、しくじらないでくださいよ。」
『おう、任せとけって。』
 こうして凶津達は作戦を実行すべく更衣室へと向かうのであった。


 通路を特に問題なく突き進み更衣室に辿り着いた凶津達。しかし、いざ入室した所で更衣室の惨状に顔を引き攣らせた。
 室内には先駆けて更衣室に赴いたあろう猟兵が脱ぎ捨てた衣類が散乱し、衣類や部屋の至る所に明らかに水ではない液体で濡れていたのだ。生真面目な桜はこんな状況下で着替えようとは思えず、凶津もあまりにも影朧が潜むのに都合の良い部屋の惨状に唸り声をあげる。

『こりゃあ、思ったよりも強敵かもしれねぇな。』
「……まずは室内を片付けた方が良さそうです。」
 このまま作戦を実行するのは色んな意味で危険と判断した凶津達は手始めに更衣室を掃除する事にした。
 散乱する衣類を集めて畳、鍵のかかっていないロッカーへと中を調べる序に放り込む。続けて所々に付着した液体を用具入れに入っていたモップや雑巾を使い拭きとってゆく。

「……漸く終わりました。」
『特に怪しい物も見つからなかった。』
 途中、衣類や部屋に付着した液体から部屋で起きた情事を想像した桜が思考停止に陥るというトラブルに見舞われながらも部屋の掃除と不審物の調査は無事に終了した。
 そして、掃除を無事に終えた凶津達は漸く当初予定していた作戦を開始する。しかし、二人は掃除に集中するあまり天井裏を開けてナニかが更衣室に侵入していた事には気づいていなかった。

「……ここで大丈夫?」
『おう、ばっちり部屋を見渡せるぜ!』
 桜は通路に出てから顔に被り続けていた凶津を部屋の中心に設置されたベンチの上に置いた。こうする事によって影朧が部屋の何処から現れても凶津が対応できるように備えるつもりなのだ。
「……凶津、あまり見ないでくださいね。」
『あー、善処するぜ。』
 凶津が準備を終えた事を確認した桜は自身に課せられた『囮』の役割を果たす為に着替えるフリを始める。ゆっくりとした動きで腰の付近で結ばれた赤い帯を解き、緋袴を外すと丁寧に折りたたんでロッカーへと仕舞ってゆく。
 続けて白い帯を解いて白衣(はくえ)を脱ぎ、緋袴と同様にゆっくりと畳んでロッカーへと入れてゆく。そして白衣に下に隠れた腰巻と襦袢を脱ごうとした所で桜の身に異変が起きる。

「……っ!? か、体が熱くなってきました……。」
『なにぃっ!? 桜、視線は何処から感じるんだ!』
「そ、それが……んぅ! 視線を感じないのです……あんっ!」
「どういうことだ!?」
 突如として桜の体は強烈な熱と疼きに襲われた。それは彫刻家の影朧に一定時間視線を向けられた時に起こるものであった。
 しかし、桜は着替え始めてから見るなと言ったのに時折こちらを視線を向ける凶津以外からの視線を感じていなかった。
 まさかの事態に凶津は慌てて部屋中を見渡すが影朧は影も形も見当たらない。そうこうしている間に桜は腰巻と襦袢どころかその下の肌着まで脱ぎ捨てて下着姿となり自身を慰め始めていた。

「……まがつぅ……はやくぅ……あぁんっ!」
『視認が駄目ならそれ以外の手段で探すまでだ! あぁもう、気が散るから切ない声をあげるのはやめろ!』
 桜の状態がどんどん悪化するのに一向に影朧は見つからない。このままでは桜が淫らな美術品にされてしまうと焦る凶津はふと自分が視覚だけで影朧を探そうとしていた事に気が付いた。
 凶津は一旦資格を閉ざすとそれ以外の感覚で影朧を探り始める。途中、すっかり出来上がった桜の喘ぎに妨害されながらも凶津は自身の横たわるベンチ、その下で何かが動く音を察知した。

「くそっ! 何時の間にベンチの下に潜り込んでいやがったんだ?」
 凶津がその身を浮遊させ、ベンチの下に回り込んでみればそこには先程部屋を掃除した際には存在しなかった蛇の玩具が横たわっていた。不信に思った凶津が蛇の玩具に近づけば、なんと蛇の玩具はカタカタと音をたてながら動き出したではないか。
 凶津はこの蛇の玩具こそが彫刻家の影朧であると確信し、口から地獄の火炎を撃ち放った。
『見つけたぜ! まさか下に隠れているとはな、これでもくらえ!』
「っ!?」
 凶津の口から放たれた炎は蛇の玩具を包み込んだ。炎に焼かれた影朧の体が焼き焦げてゆく。
 しかし、見た目に反して頑丈なのか影朧は炎に包まれながらもその身を器用に縮こまると一気に天井に空いた穴へと跳躍した。そして、そのまま天井裏を伝い何処かへと逃げて行ってしまった。

『くそっ、逃がしたか。けどまぁ、奴に手痛い一撃を喰らわせる事が出来たからよしとするぜ。』
 凶津は影朧を完全に無力化出来なかった事を悔しく思いながらも、それでも深手を負わせる事は出来た筈だと割り切る事にした。
 そして、いつの間にか静かになった桜の方を見て硬直する。どうやら凶津が影朧を攻撃している間に絶頂してしまったようで桜は彫像と化していた。
 下着までも脱ぎ捨てて一糸纏わぬ姿となった桜はのけぞるような姿勢で程よい大きさの胸を揉みしだき、股間部に指を差し入れている。そして、その顔は凶津の前で淫らな行為に及ぶ事の羞恥と家族に見られる事への快感が入り混じった背徳感すら漂う様そうであった。

『……改めて見ると桜も随分と成長したんだなぁ。』
 そして、凶津は初めて出会った頃とは比べ物にならない程に育った桜の体を眺めながら現実逃避に耽るのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

赤嶺・ふたば
捜索する影朧:人形作りの影朧 捜索する場所:通路
へえ、ここがターゲットがいる館か、状況的にルームクリアリングができないのが面倒だ。
通路を隅々まで回ってみようかな。もし自分がやられてしまった時の為に意識が無くなったときに他の猟兵に自動的に通信が入るようしておこう。影朧を見つけたらマチェットで叩き切ってもれなく美少女の美術品にでも変えてやる。
(アドリブ、絡みOKです)




「へぇ、ここがターゲットがいる館か。」
 赤嶺・ふたば(銃と魔法が好きな傭兵魔術師・f15765)はメタモルマジックで貨幣に変身させていた武器を元に戻しながらエントランスホールを見回していた。西洋の建築様式をふんだんに取り入れられた館はモダンの雰囲気が漂っている。
 そして、部屋の至る所に一般人の成れの果てであった美術品が置かれていた。

「状況的にルームクリアリングは無理そうだな。……面倒だ。」
 ウィザードにして戦場傭兵であるふたばにとって屋内戦といえば安全な場所からデバイスを介した範囲攻撃や部屋に突入した瞬間にショットガンで敵を薙ぎ払う室内総統が基本だ。しかし、この室内掃討をする場合、その性質から室内に置かれている物を壊さずに撃つ事がほぼ不可能だ。
 だが今回の戦場である館はほぼ全ての部屋に美術品にされた一般人が置かれているという。下手に攻撃すれば大量の一般人が犠牲になってしまうだろう。
 
「室内にいる敵は味方に任せて自分は通路にいる奴を狙うのがよさそうだな。」
 狙う対象を定めたふたばはショットガン片手に通路へと躍り出た。


「通路にいるのは人形作りの影朧でよさそうだな。」
 ふたばは先駆けてエントランスに到着していた仲間からの情報を整理していた。情報によると通路には少女が駆け回っており現時点で攻略可能な4体の影朧のうち人形作りの影朧は少女の可能性が高いという。
「相手は少女らしいが容赦なくやらせてもらうぞ。」
 他の猟兵達が影朧となった少女に情を寄せる中ふたばは平静を保っていた。今は可憐な少女の姿をしているがふたばは嘗て傭兵として戦場を渡り歩いてきた男なのだ。
 戦場では敵であれば女子供であろうと容赦なく襲い掛かってくる。そんな地獄の中で情に流されれば待ち受けるのは自身の死だ。
 敵にやられるつもりのないふたばは相手がどれほど悲惨な境遇であったとしても襲い掛かって来るなら躊躇無く倒す覚悟が出来ていた。

「これならショットガンでも十分に戦えそうだな。」
 ふたばは警戒を怠る事無く通路を見回してゆく。通路はその用途から障害物に成りそうな物は隅に置かれている美術品位だ。
いくら広範囲を攻撃するショットガンであってもこれだけの広さがあれば美術品を誤射する事なく攻撃する事がふたばには出来た。

「……どうやら近くにはいないようだな。」
 ふたばは人形作りの影朧の足音を逃さない様に耳を澄ましながら通路を進む。もしも足音が聞こえて来たらその時点でふたばは移動をやめて、人形作りの影朧を迎撃する為の準備を始めるつもりであった。
 だが、何時まで経っても影朧は現れず、とうとう館の通路を踏破はしてしまった。

「……まさか、人形作りの影朧は既にやられたのか?」
 ふたばの額に冷や汗が流れる。人形作りの影朧がやられたのならば他の影朧を倒しにいかなければならない。
 しかし、室内で戦うからにはメインウェポンであるショットガンは使えない。かといって待ち伏せをしようにも肝心の影朧達が通路に出てこないという。

「こうなったら覚悟を決めるしかないか……。」
 通路で悩んでいても事態が改善する事はない。ふたばは覚悟を決めて室内にいる影朧と戦う事にした。
 手始めに向かうのは丁度近くに合った応接間だ。
「さぁて、楽に済むといいんだがな……。うぉおっ!?」
 そして、中に入ろうとドアノブを握った瞬間、ふたば部屋から飛び出してきた何者かに押し倒された。


「うそよ! わたしはしんじないわ!」
「お、お前はっ!?」
 応接間から飛び出してきた者、それはふたばが探していた人形作りの影朧であった。ふたばは人形作りの影朧の情報を一部読み違えていた。
 人形作りの影朧はあくまでも通路を主な活動領域としているだけであり、厳密には館の至る所を徘徊していたのだ。ふたばが通路で遭遇しなかったのも偶然にすぎなかった。

「もしほんとうだというのなら、わたしがしてきたことはむだということになっちゃうわ!」
「うあぁ……体が…・…。」
 人形作りの少女は何故か錯乱しており隙だらけだ。しかし、ふたばも影朧の隙をつく所ではなかった。
何故なら少女に抱き着かれてしまったふたばの体は現在進行形で球体関節人形に変化しているからだ。このままでは人形にされると考えたふたばは最後の力を振り絞り、衝突の際に辺りに散らばったデバイスに指令を送った。

「こうなったら……おまえも……道連れ……だ。」
「ねぇ、あなたもそうおもうでしょ! きゃあっ!?」
 ふたばからの指定を受けたデバイスはふたばと影朧の少女に向けて変身魔法を発射した。変身魔法はその力を遺憾なく発揮し、眩い光と共にふたばと少女の姿を変化させてゆく。

「「…………」」
 光が収まるとそこは互いに絡み合った状態で黄金像となったふたばと人形作りの影朧の姿が残されていた。
 そして、ふたばが黄金像に成り果てる事により意識を失うのとほぼ同時にエントランスホールではけたたましい音が鳴り響く。ふたばは自身が意識を失った時にそれを他の猟兵に知らせる為の仕掛けを施していたのだ。
 仕掛けの存在とその意味は他の猟兵にも知らせてあり、ふたばの傍らに残されたデバイスからも同様の音が鳴り響いている。
 数分後、黄金像と成り果てたふたばと影朧の元に桜の精が到着し行動不能に陥った影朧は桜の精の癒しにより転生に成功するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リプリー・エイプリル
彫刻家から変態性をひしひし感じるから優先で鎮めよう
その手のジャンルを否定はしないけどモデルを騙す時点で論外だ

そ その は はいてな…てのを考えるとトイレかもしれないし
自発的に服を脱がせる手口なら応接間の可能性もあるけど
真っ当に考えればまず居そうなのは更衣室 かな

リボンで悪意を探知しつつゴーグルで【情報収集】力も高めて【呪詛耐性】で奇襲に備えてから入室し試着を装い着替える

お前……今ボクの何を見て鼻で笑ったのかな?

指定UCを使って隠蔽を暴いて怯ませる

そして鞄から筆を射出してぶつけさらにモーメントを付けてからの【重量攻撃】




「変態性をひしひし感じる……。」
リプリーは影朧達の情報、その内の彫刻家の影朧の情報を見ながら頭を抱える。彫刻家の影朧はエロスを追求し自身の能力で対象を淫らな状態に変え、快感に悶えた状態で彫像へと変えるという。
世の中にその手の需要がある以上、リプリーがその手のジャンルを否定するつもりはない。だが、モデルの仕事として館へ赴いた一般人を美術品に変えるという行為を看過するつもりはなかった。
「モデルであるとだます時点で論外だ。」
 彫刻家を鎮める決意をしたリプリーはその潜伏先の予想を立てるべく情報の整理を始める。
「は、はいてない…てのを考えるとトイレかもしれない……だけど、自発的に服を脱がせる手口なら応接間の可能性もある。」
 リプリーは彫刻家の好む状況を想像し顔を赤らめる。そこにはひとえに自分が万が一にも奇襲を許せばその想像通りの痴態を晒しかねない事に気が付いたからだ。
 しかし、ここで躊躇していらた話が進まない。リプリーは淫らな姿の自身の想像を頭からかき消すと改めて推理を始める。
「真っ当に考えればまず居そうだと思うのは更衣室、かな。」
 既に作戦が始まってから時間がたつ今、更衣室にいない可能性があるもののそれでも操作しない理由もないのでリプリーは更衣室へ向かう事にした。


「想像通りの変態だった上に思ったよりも厄介な相手みたいだね……。」
 更衣室に到着したリプリーだが影朧は部屋の中にはいなかった。代わりに淫らな石像になった女性とその女性の周りを漂うヒーローマスクの猟兵がそこにおり、その猟兵から彫刻家の情報を得る事が出来た。
 曰く、彫刻家は蛇の玩具の見た目をしており、生身ではなく玩具の体を持つ為に視線を向けられても感じ取る事が出来ないらしい。
 そして、その猟兵は奇襲攻撃を受けてしまったものの咄嗟に依り代から脱する事により石化による無力化を回避し反撃の炎を浴びせる事により撃退に成功したという。その後、炎に包まれた影朧は天井裏から何処かへと逃げていったという。
「それにしても、あの人は何で解除を断ったのかな? ……あっ。」
 情報提供のお礼に虚飾を暴く鏡の力で石化した依り代を元に戻そうとしたリプリーだが、なぜか断られてしまった。そして、依り代が女性でありヒーローマスクの猟兵が男である事からその理由を察し顔を赤らめた。

「と、取りあえずボクは影朧を鎮める事を優先するよ!」
 更衣室を出たリプリーの向かう先は便所だ。応接間にいる可能性もあるが、更衣室から応接間まではそれなりの距離がある。しかも、通路から聞こえる笑い声から人形作りの影朧が健在である事を察したリプリーは遭遇のリスクを考えて最寄りの便所から捜索する事にしたのだ。

「さて、ここにいてくれるといいのだけど。ここで間違いはなさそうだね……。」
 リプリーは自身の周囲に豪奢な装飾の鏡を展開したうえで便所へと入室したが直に顔を顰めた。何故なら便所には淫らな彫刻に成り果てた猟兵が鎮座していたからだ。
「先程の人もだけど、ああなるのだけは避けたいね……。」
 リプリーは鏡を常に移動させながら便所内を捜索する。リプリーが展開した鏡は写り込んだ者にかけられた術を解除する力がある。
 蛇の玩具の姿が隠匿なのかは定かではないが、何らかの効果を得られる事を期待してのものであった。
 そして、リプリーのかけた保険は思わぬ形で功を奏する事になる。

「こ、これは!? やったわ! 忌々しい小娘の呪いが解けているわ!」
「っ!? 後ろから声が!」
 突如として背後から女性の喜びの声が聞こえてきたのだ。リプリーが慌てて飛びのけば床に設置された排水溝の蓋を押しのけて何かがはい出してくる。
 はい出してきたもの、それは緑色の蛇であった。事前情報と異なり玩具ではなく生身の蛇は全身で嬉しさを表しながらリプリーへと語り掛ける。

「あなたのお陰で人形作りの小娘にかけられていた呪いが解除されたわ!」
「……まさか、あなたが人形作りの影朧を避けていたのって。」
「そうよ! あの小娘に抱き着かれたせいで人形にされて喋れなくなってしまったのよ!」
 どうやら、彫刻家は彼女と仲良く成ろうとした人形作りの影朧に抱き着かれ、人形の体にされてしまった様だ。
 そして、彫刻家の言葉から彫刻家の能力が弱体化されている可能性にリプリーは気が付いた。同時に彫刻家の視線がリプリーへと向けられ、リプリーは体が熱を帯びて疼き始めるのを感じた。
 もしも【呪詛耐性】で奇襲に備えていなければ、今頃は情欲に支配されてその場で淫らな行為に及んでいたかもしれない。リプリーは冷や汗を流しながらも鞄の中から愛用の筆に手を入れた。

「さぁ、アタシを元に戻してくれたお礼にあなたを飛び切りの作品にしてあげるわ!」
「ボクを淫らな美術品にしたって大した価値は出ないよ!」
 どうやら、彫刻家は元に戻したお礼としてリプリーを美術品に変えるつもりらしい。当然リプリーはいい迷惑だとそれを断る言葉と共に筆を取り出そうとする。
 しかし、次の瞬間に放たれた彫刻家の言葉を聞いてリプリーは停止する。
「心配しないで! あなたのような貧相な体の子でもアタシの手に掛かれば誰もが欲しがる名品になれるわ!」
「…………いま、なんといいましたか?」
体が貧相な事を気にしているリプリーにとって、彫刻家の放った言葉は決して許せないものであった。彫刻家は突如として雰囲気の変わったリプリーに狼狽えて更に失言を重ねてしまう。

「な、なにって……アタシならその色々と足りていない体でも素敵な作品に出来るって……ひぃっ!?」
「そうですか、ボクは色々と足りていないのですか……。」
 突如として彫刻家の傍らの床が砕けた。いつの間にかリプリーの手には巨大な筆が握られておりそれが彫刻家の傍らに不利悪阻されていたのだ。
 そして、リプリーは彫刻家へと笑みを向ける。その視線には凄まじい殺気に満ちていた。彫刻家は自身の失言に気が付き逃亡を試みる。
 だが、それを許すリプリーではなかった。

「こ、これはまずいわ。ここは逃げるわよ!」
「逃げちゃ駄目だよ。人の体を貶す輩にはオシオキだよ。」
 そして、彫刻家の影朧は想像を絶する速さで振り下ろされた巨大で重い筆の一撃によって押しつぶされて蛇の敷物に成り果てるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
「それでは倉庫で家具職人さんとお話して参ります」
動く人形なら人形使いの人形ではなく小人だろうと判断した

「いらっしゃいますか、家具職人さん…貴方が転生すれば、家具にされた人々は元に戻りますか」
UC「桜吹雪」使用
高速・多重詠唱で桜吹雪に破魔と電撃の属性のせ全ての小人と影朧のみ切り刻む
敵の攻撃は第六感や見切りで躱す
回避できないと判断した攻撃は桜色の布手袋に仕込んであるビームシールドで盾受け

「人を素材としなくても。貴方なら素晴らしい家具を作れるでしょう?影朧能力で家具を作るのは、貴方自身の家具を作る能力や技術に対する想いを裏切る行為に思えます。転生して、貴方自身の腕のみでまた家具作りを目指しませんか」




「皆さんはどの影朧を鎮めに行きたいですか?」
 桜花は同じくこの作戦に参加している桜の精の猟兵達と相談をしていた。
 今は桜の精を除く猟兵達が影朧達を補足し消耗或いは無力化させる為に行動している。
 桜花を筆頭とする桜の精達は消耗或いは無力化された影朧を説得し転生させる事が役割であった。
 そして、今は誰がどの影朧を説得し転生させるかの話合いを勧めていた。
「それでは私は倉庫で家具職人さんとお話して参ります。」
 相談の末に桜花は家具職人の影朧を鎮めに向かう事になった。倉庫にいると桜花が考えたのは倉庫内の人形が動いているという情報からの予想だ。
 既に館内は猟兵達の戦闘により騒がしくなってきている。これ以上長引かせると一般人であった美術品が戦闘の余波で壊れる可能性や影朧が館から逃げる可能性が高くなる。
 桜花は倉庫へと向かう足を速めた。


「失礼します。誰かいらっしゃいますか?」
 無事に倉庫へと辿り着いた桜花は中を覗き込んだ直後、寒さに身を震わせた。どうやら倉庫内で猟兵が冷気に関わる技を行使した様だ。
 部屋に置かれた美術品の殆どに霜が降りており、窓際に近い美術品は窓からの日差しで温められたのか霜が溶けて水浸しになっていた。
 そんな美術品の数々に桜花は顔を顰めるが幸い壊れている家具はないようなので一安心した。
「あれは……氷を溶かそうとしているのでしょうか?」 
 桜花が窓から指す日差しの先を見てみると、そこには数十人の小人が氷漬けになった小人達を解凍しようと四苦八苦している光景が目に入った。
 そして、小人達は桜花の存在に気が付くと針や小槌を片手に桜花へと突撃してきた。

「むむっ!? むぅんっ!」
「申し訳ありませんが、少し大人しくして貰います。『ほころび届け、桜よ桜』」
 突撃してくる小人の数は桜花の想定よりも遥かに少ない。先駆けて家具職人の影朧に挑んだ猟兵達が頑張ってくれた証拠だ。
 桜花も仲間の頑張りに応えるべく高速・多重詠唱により破魔の銀盆を破魔と雷の属性を宿した桜吹雪に変えると小人達を迎撃する。
 影朧達も余裕がないのか物陰から奇襲を仕掛けてくる様子はない。桜花の桜吹雪は器用に動かして美術品を避けながら小人達を次々と無力化してゆく。
「流石に非実体の物を干渉する力はないようですね。」
 途中、自棄になった小人が投げつけてきた小槌や針を桜色の布手袋に仕込まれたビームシールドで遮りながら小人を無力化する作業は無事に終了した。


「これで全員でしょうか?」
 桜花は無力化された小人達を一先ず一か所に集める事にした。というのも分裂した影朧の意思がどのような状態になっているのか分からなかったからだ。
 小人達も電撃による痺れが功を奏して桜花へ攻撃を試みる様子はない。程なくして桜花は小人達を全て一か所に集めると改めて対話を始めた。

「影朧さん、あなたは生前から素晴らしい家具を作ってきたのですよね?」
「「「むぅん。」」」
 桜花の質問に対して小人達は一斉に唸り声を上げながら頷いた。明確に言葉にしてくれないので今一分かり辛いがどうにか対話は出来そうだ。

「影朧としての力はあなたのイメージを簡単に形に出来て便利でしょう。ですが、その力で家具を作るのはあなた自身を裏切る行為ではありませんか?」
「むむっ?」
「「「むぅん……。」」」
 続けて放たれた説得の言葉に大半の小人は唸り声と共に項垂れる。しかし、極一部の小人はただ首を傾げるだけであった。
 そこには『より素晴らしい作品が作れるようになったのに、何故裏切る行為になるのか?』という意思が伺えた。

「その力に頼り過ぎれば貴方自身の家具を作る能力や技術に対する想いが失われてしまうと私は思えます。」
「むむっ!? むぅん!」
 桜花の指摘も交えた説得に対し今度は全ての小人が強く反応を示した。桜花の指摘が正しい事に気が付いた様だ。
あと一息だと桜花は気を引き締める。

「転生して、貴方自身の腕のみでまた家具作りを目指しませんか?」
「むむむぅん!!」
 最後まで唸り声と仕草だけであったがどうやら影朧は転生する決意をしてくれたようだ。
 その事実に桜花は微笑み、頭から生えた桜の枝が満開になった。

「ありがとうございます。そういえば、貴方が転生すれば、家具にされた人々は元に戻りますか?」
 満開となった桜の花が散り、桜吹雪が吹き荒れる。桜吹雪は家具職人の分裂体である小人達を優しく包み込むとその魂を癒してゆく。
 最後の最後に投げかけられた質問に対してはある小人は頷き、またある小人は首を傾げ、今一確証が持てない。
 それでも横に振る物はいなかったので元に戻す事は不可能ではないのだろう。
「それでは、また逢う日まで……おやすみなさい。」
 そして、影朧の魂は桜吹雪と共に自然と開かれた倉庫の窓から空に向けて舞い上がり消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『人体陶芸家』

POW   :    あなたも「作品」になりたいのですか?
自身の肉体を【用いて、捏ね回した対象を粘土のよう】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
SPD   :    どこでもろくろを出せるようになりました
自身からレベルm半径内の無機物を【触れた者を遠心力で粘土のようにする回転床】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
WIZ   :    焼き固めてあげます
【念じると発生し飛んでいく炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【触れた者を粘土のように成型して焼き固める】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はネリー・マティスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 館に潜む4体の影朧達を鎮め転生させる事に成功した猟兵達は館内のとある一室を目指し突き進んでいた。
 途中、美術品にされた猟兵達を元に戻せばある者はあられもない姿を晒した羞恥に悶え、またある者は何故か残念そうな様子で立ち尽くす。
 中には怒りの余り人を殺せそうな呪詛の篭った言霊を吐く者までいたが、美術商の所業を考えれば致し方ない事だろう。
 そんな猟兵達が目指す一室、それは館内で唯一入室を禁止されていた『美術商の執務室』であった。

 バキィっ!

 怒りに燃える猟兵の怒号と共に放たれた蹴りが執務室のドアを無事破る。しかし、美術商がいる筈の執務室は蛻の殻であった。
 執務室へと突入した猟兵達が部屋を調べてみれば美術商と好事家の間で行われた取引の帳簿や魂の篭った装飾品の数々が見つかった。
 この情報に美術品として売り払われた一般人達や人形にされて魂の封じられた装飾品が見つかる可能性が出て来たと多くの猟兵が歓喜した。
 極一部の猟兵はこれでは新しい子をお迎えできないと落ち込んだ。それでも身元不明の者が元に戻るまでの間の身元引受人なら行けるかもしれないと気を持ち直した。 そして、執務室を捜索する猟兵達は隠し通路を見つけた。美術商は隠し通路の先にいると考えた猟兵達が突入しようとした直後それは起きた。

 ぎゃぁあああああああ!!!

 通路の奥から断末魔の悲鳴が響き渡る。その声は美術商のものであった。
 猟兵達が慌てて隠し通路を進めば頑丈な鉄の扉に閉ざされた部屋に行きついた。扉には『創作作業中につき入るべからず』と書かれたメッセージボードが立て掛けれている。
 どうやら、ここが館に潜む最後の影朧の作業場らしい。耳を澄ましてみれば部屋の中からは何かを叩きつける音が聞こえて来る。
 猟兵達が意を決して扉を開けてみればそこには一人の少女がいた。


「何度もいいましたよね? 創作作業を邪魔するなって。」
 少女は両手で不格好な塊を板の上で捏ね回している。その塊はよくよく見ると随所に人の一部が浮かび上がっておりその顔は美術商であった。
 塊が捏ね回される度に塊から複雑な色合いの液体が滴り小麦色の粘土へと変化してゆく。猟兵達は塊から滴る液体が美術商にとって重要な物である事を本能的に悟った。
 そして、塊から滴り落ちた液体は板に掘られた溝を伝い小さな器へと貯まっていた。

「次に邪魔をしたらあんたをウチの作品にすると言うた事、忘れたとは言わせまへんよ? ……おっと、もう聞こえておらんか。」
 暫くして完全に粘土と化した塊をろくろや牛へら、糸等の道具を使い形を与えてゆく。暫くして出来上がったのは水差しであった。
 少女が水差しに手を翳せば粘土の水差しは乾燥してその色を変化させてゆく。やがて、色の変化が収まれば少女は先程器に貯めていた液体を水差しへと塗り始める。

「やはり、人を素材にすると素焼きが不要な上に最適な釉薬もいっぺんに調達できて楽やね。」
 器に貯まっていた釉薬を水差しへと塗り終えた少女はその手に炎を灯すと水差しを炎で包み込んだ。
 炎の熱によって水差しに染み込んだ釉薬が溶けて水差しに彩りを与えると共に頑強な物へと変化させてゆく。同時に魂の扱いに長ける猟兵達は水差しから美術商の魂が煙の如く少しずつ虚空へと消えてゆくのを察知した。

「中々の水差しがでけたね。」
 こうして少女の手により美術商は鮮やかな青色の水差しに成り果てた。
 その水差しからは生命力が感じられるものの、それは美術品としての生命力であり美術商の魂は最早この世に存在しない事を猟兵達は悟っていた。

「さて、先程からウチの作業を覗き見しとったあんたらは新しい作品の材料でっか? ……いや、あんたらは帝都桜學府の者やね?」
 そして、少女の姿をした影朧、『人体陶芸家』は美術商であった水差しを近くの棚に陳列すると漸く猟兵達へと視線を向ける。
 その眼差しは猟兵達が自身を転生させに来た刺客である事を瞬時に見抜いた。同時に少女は猟兵達を新たな陶芸品の材料としか見ていなかった。
 それでも扉の向こうに沢山の猟兵を見て眉を顰めた。

「今日は随分とようさん来たんやね。あまり大人数で来るとウチの作品がめげるから困るんやけど。」
 少女の言葉に猟兵達が部屋を見回してみれば、部屋の至る所に陶芸作品が置かれている。その多くが本焼きまで終わった手遅れの状態だが中には乾燥の段階で止まっている物もあった。
 そして、目の前の少女は多人数で踏み込むなら助かる余地のある者達の安全は保障できないと暗に言っていた。その事実に猟兵達は顔を顰めながらも影朧に挑む順番を話し合い始めた。

「見る限り逃げるのも無理そうや。こうなったらわたしが果てるまでに少しでもようけの作品を作るまでや。取りあえず、準備のでけた人から来たってぇや。」
 そして、そんな猟兵達を少女は余裕綽々と言った様子で待ち受けるのであった。

●戦場説明
 第3章の部隊は『人体陶芸家』の作業場となります。駆け回る程度なら問題なく出来る広さはあるものの、部屋の至る所に陶芸品と化した一般人が置かれています。
 無差別攻撃をしたり、不用意な攻撃を行うと室内に置かれた陶芸品が高確率で壊れてしまい元に戻れる可能性がある物も二度も戻れなくなる恐れがあります。
 陶芸品を壊す事によるペナルティはありませんが、室内に置かれた陶芸品を壊さない為の工夫を凝らす事によりプレイングボーナスが得られます。

●影朧について
 生前は陶芸家を目指し絶やす事無く努力する事によって頭角を現しかけていた少女です。但し、彼女の腕を嫉んだ他の陶芸家の策謀により彼女が亡くなるまで作品が評価される事はありませんでした。
 影朧となってからは館にいた他の影朧達と同様に人間を材料と認識しています。更に自身の作った作品が美術商を通じて沢山の人に評価されてしまった為に人間を材料にした作品を作り出す事に完全に固執しています。
 彼女の攻撃をまともに受けた場合、確実に釉薬を塗っての本焼きまで施された陶芸品にされます。
 但し、陶芸品にされても真の姿の力により戦闘終了何事もなく戻れたものとして扱います。それは陶芸品にされた後に何らかの要因で壊されてしまった場合も同様です。

●補足事項
 本章での成功条件は『ユーベルコードを使用した上で敵への攻撃か敵の攻撃の対処のどちらかを試みている事』です。
 条件を満たしていれば余程の内容でない限り故意にやられる行動をしていても成功判定となります。逆に条件を満たしていない場合は苦戦判定となる可能性がありますのでご注意願います。
 3人以上の同行参加をする場合、対策を立てない限り攻撃や移動の際に作業場内の陶芸品を壊してしまうものとします。
 
 プレイングの受付期間や進行状況はマスターコメントにて掲載予定ですので参照の程よろしくお願いします。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
神代・凶津
さ、桜さん、そろそろ落ち着いて・・。
「私は何時も通りですよ?」
・・・いや、怖えよ。目が笑ってねえもん。

穏便に宥められないか、後から来た他の猟兵の解呪を断ってまで時間を稼いで(何か妙な勘違いされた気もするが・・)策を考えたが、何も思い浮かばなかったッ!
「・・フフ、黒幕を滅しませんと。」
落ち着いて!?

美術品は結界霊符を投げ貼って保護するぜ。

「式、召喚【ヤタ】【見え猿】」
式神二体で遠距離からコンビネーション攻撃を仕掛けるぜ。
これならあの陶芸品化攻撃も届くまい。
他の攻撃も見切って避けてやるぜ。

帰りにカフェーの甘いものとかで相棒のご機嫌取らないとな・・。


【技能・結界術、式神使い、見切り】
【アドリブ歓迎】



『さ、桜さん、そろそろ落ち着いて……。』
「私は何時も通りですよ?」
『……いや、怖えよ。目が笑ってねえもん。』
 凶津は焦っていた。更衣室で桜が他の猟兵に救助されてから怒りが一向に収まらないのだ。
 凶津は先の戦いにおいて桜を囮に据えた奇襲作戦を発案した。だが、いざ実行してみれば彫刻家の奇襲を許してしまい、桜は淫らな彫像にされてしまった。
 奇襲を許した事そのものは互いの注意不足が原因なので問題にはなっていない。問題になっているのは作戦を実行するにあたり凶津が桜から離れて行動していた事だ。

「……催淫を受けて乱れる私は如何でしたか?」
『そりゃあ、普段からは想像できないくらい色っぽかったって、何言わせるんだよっ?!』
「やっぱり、あの時の私を見ていたのですね。」
 凶津は催淫により淫らになった桜が自らを慰める様を間近で見てしまったのだ。家族と言える存在に自慰に浸る姿を見られる等、恥ずかしい所の話ではないだろう。
しかも、問題はそれだけではなかった。

「……それはそうと、何故私を直に戻さなかったのですが?」
『うっ!? そ、それはだな……。』
 実は桜が彫刻に変えられて間もない頃、凶津は更衣室を訪れた猟兵に桜を元に戻す事を提案されていたのだ。しかし、凶津は仕損じた事に対して怒るであろう桜を宥める為の策を考える時間欲しさにその提案を断っていたのだ。
 そして、凶津は桜を宥める為の策が思いつかなかった。それだけならまだ良かったのだが、在ろう事か桜は不特定多数の猟兵の前で元に戻されてしまったのだ。
「私が彫刻になっている間に何をしていたのやら……。」
『だ、断じて彫刻になった桜を見回してたりは……いたたたたたっ!? 手に力を籠めないで!?』
 怒りに任せて凶津を破壊していない辺り、まだ桜は冷静なのかもしれない。そうこうしている間に凶津達は陶芸家の作業場の扉の前に立っていた。

「この件はまた後でじっくりとお話をしましょう。……フフッ、まずは黒幕を滅しませんと。」
『本当に落ち着いて!? 黒幕はもう滅されてるから!!』
 このままでは陶芸品諸とも陶芸家を攻撃しかねないと思った凶津は必死に桜を宥めに掛かる。最終的に帰りにカフェーで甘いものをご馳走する事を約束する事により漸く桜は落ち着いた。


『想像以上に陶芸品が多いな。』
「……これが全て犠牲者の成れの果てなのですか?」
 凶津達は陶芸家の作業場を見回しながら感嘆する。作業場は思っていたよりも広くその気になれば駆け回る事も出来そうだ。
 しかし、そんな広い部屋は陶芸品に埋め尽くされていた。壁一面に陶芸品が陳列されており、それ以外の場所も陶芸品が見えない場所を探す方が難しい。
陶芸家の大人数で来られると陶芸品が壊れかねないという言葉が納得できる光景であった。

「……武器を持ち込めなくて良かったかもしれないです。」
『確かに不用意に武器を振るえばそれだけで陶芸品を壊しかねないぜ。』
 凶津達は今やただの水差しに成り果てた美術商に少しだけ感謝した。
そして、桜は作業場の状況から凶津にある提案する。凶津は桜からの提案に驚くが直に桜らしいと笑って受け入れた。

『それじゃあ、いくぜ!』
「……式、召喚【ヤタ】【見え猿】」
 凶津達はその手に霊符を構えると八咫烏と猿の式神を呼び出すと芸術家へと嗾けた。八咫烏は霊光の輝きと共に凶津達へと歩み寄ろうとする芸術家に襲い掛かかり、不可視となった猿は邪魔な八咫烏を陶芸品に変えようとする芸術家の動きを妨害する。
 そして、式神達が思惑通りに芸術家の行動を妨害する合間に凶津達は作業場の至る所に結界霊符を投げ貼って回っていた。

『桜、霊符はあと何枚残っている!』
「……5枚です。」
 桜の提案、それは作業場内の陶芸品を結界で保護して回る事であった。
 作業場の外で待機している猟兵の中には武器が万全の状態の者が数多くいる。だが、作業場内に置かれた陶芸品を壊さない様に戦おうとすればそれらの武器をまとも振るう事はまず叶わないだろう。
 そこで桜は作業場内の陶芸品を結界で保護する事により後に続く猟兵達が心置きなく武器を振るえる様にしようと考えたのだ。凶津は陶芸家が結界の札を剥がす可能性が懸念していたが作業場内の陶芸品が綺麗に手入れされていた事から陶芸家が進んで自身の作品が壊れる可能性を高める行動はとらないと桜は確信していた。

「……これが最後の霊符です。」
『よぉし! それじゃあ最後の霊符はありったけの霊力を篭めて退路を作るぜ!』
 凶津達は最後の霊符を使い、自分達や後に続く猟兵達が安全に退く為の退路を作ろうとした。しかし、それは部屋の中に響き渡る式神達の悲鳴により妨げられた。

「何度も妨害されれば、流石に行動パターンも掴めますよ。」
『まさか、ヤタ達がやられたのか?!』
 凶津達が慌てて陶芸家の方を振り返れば芸術家は青と黄色の入り混じった粘土を捏ね回しているではないか。
陶芸家は粘土を2つに分けると素早く形を整えると釉薬を塗ってゆく。そして、ヤタと見え猿であったモノが炎に包まれた。

「はい、烏と猿の箸置きの完成や。……何をしとるかと思えばウチの作品を保護してくれてたんやね。」
 陶芸家は陶芸品に成り果てた式神達を机に置こうとした所で結界符の存在に気が付いた。見慣れぬ紙に始めは警戒する陶芸家であったが、それが陶芸品を守る為の物でありゆっくりと作品を置く分には害がない事を悟るとそれを貼ったであろう凶津達に笑みを向けた。

「ウチの作品を保護してくれておおきに。お礼にジブンらをとびっきりの作品にしたる。」
 凶津達は咄嗟に最後の結界符を使い陶芸家の接近を防ぐと作業場の出口へ一目散に駆けだした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

龍・雨豪
故郷でも陶芸品が作られてたわね。
ものによっては正しく宝と呼べる物だったわ。艶のある表面と曲線美が良いのよね。
それはそれとして、助けられる人は勿論、手遅れなものも壊さないようにしましょ。

一騎打ちなら望むところよ。オーラでお互いを繋げば殴り飛ばしちゃうこともないしね。後はガンガン攻めるだけよ。
あっ。尻尾を陶芸品に当てちゃったから咄嗟に念動力で陶芸品を止めるわ。
壊れてないかしら?大丈夫そ――う?
しまった。余所見してる場合じゃなかったのに!
やだ。やめて、捏ねないで!

うぅ、当たり前だけど陶芸品にされたら全く動けないわね。
私自身が瓶子にされちゃうなんて、これで、終わり、なの……?

※前回同様アドリブなど歓迎




「故郷でも陶芸品が作られてたわね。」
 雨豪は作業場に所狭しと置かれている陶芸品の数々を見渡しながら呟く。
嘗て彼女が暮らしていた故郷に暮らす竜達は様々な物を宝として集めていた。そんな宝の一つとして陶芸品も少数ながらも存在した。
「艶のある表面と曲線美が良いのよね……。」
 作業場に入ってから見分するような視線を向けて来る陶芸家を警戒しながらも雨豪は陶芸品を見て回る。幾つか奇妙な作品があるものの、陶芸家の作品は兼ね雨豪の眼に敵う素晴らしい物であった。
 しかし、これらの作品は人を素材に作られている。雨豪には作品の素晴らしさが陶芸家の腕によるものと素材にされた人によるもののどちらによるものなのかは判断できなかった。

「先に突入してくれた人には感謝しないといけないわね。」
 陶芸家の作業場の状況に多くの猟兵達が頭を抱える中、先駆けて突入した猟兵が陶芸品を守る結界を貼ったという。結界は強力な攻撃を防ぐのは厳しいが弱い攻撃や強力な攻撃の余波なら確実に防げるという。
「助けられる人は勿論、手遅れなものも壊さないようにしましょ。」
 元より武器の類を持ち込んでいなかった雨豪だがそれでも余波を気にする必要が亡くなった事は大きい。見分を終えたのかゆっくりと近づいてくる陶芸家に雨豪は両手にオーラを纏うと構えを取った。


「あんたも素敵な作品にしたる。」
「陶芸品にされるなんて御免よ!」
 陶芸家は陶芸の粘土に変えようと見た目からは想像できない速さで駆けだした。しかし、その身のこなしは素人同然であり、達人級の武術家である雨豪からすれば隙だらけであった。
「これでも喰らいなさい!」
「うぐぅっ!?」
 当然、雨豪が素人相手に捕まるわけがなく伸ばされた手を華麗に躱すとオーラを纏った拳で陶芸家を殴りとばした。雨豪の腕に纏わりつくオーラは陶芸家の体に付着すると鎖状となり二人を繋いだ。

「これで準備は完了ね。」
 雨豪は自身と陶芸家を繋ぐ鎖を掴むと力を込めて引っ張った。すると鎖は張り詰めて陶芸品の陳列された棚に向けて吹っ飛ばされていた陶芸家を雨豪の元へと手繰り寄せてゆく。
 そして、雨豪は手繰り寄せた陶芸家を振り上げた拳を使い地面に叩きつけた。地面に叩きつけられた際に衝撃が作業場を襲ったが結界は衝撃波から陶芸品を守り切った。

「この調子でガンガンいくわよ!」
雨豪は陶芸家と繋がった鎖を使い陶芸家が陶芸品を守る結界に直接ぶつからない様に注意をしながらも次々と殴り飛ばしてゆく。
 この調子なら陶芸家を無力化させる事も出来るのではないかと雨豪は希望を抱き始めたそして、雨豪が陶芸家を手繰り寄せながら渾身の力を込めた拳を振るおうとした瞬間、尻尾が何かにぶつかり雨豪はバランスを崩し倒れてしまった。
「いたた……攻撃に夢中になりすぎたわね……。」
 前のめりに倒れた雨豪が後ろを振り返ってみれば、そこには淡い光の障壁を発生させた結界があった。雨豪は攻撃に集中するあまり結界に近づきすぎてしまい、渾身の一撃を決めようとした際に振るわれた尻尾が結界に触れてしまったのだ。
 それでも雨豪は結界のお陰で自身の尾が陶芸品を割る事がなかった事に安堵した。そして、倒れ伏して安堵する雨豪に手繰り寄せられてきた芸術家が覆いかぶさった。

「こういうのを注意一秒、怪我一生と言うんやろか?」
「しまった。倒れている場合じゃなかったのに!」
 雨豪に覆いかぶさった陶芸家は散々殴り飛ばされた鬱憤を晴らすかのように雨豪の体を揉み始めた。陶芸家の手に揉みしだかれる度に雨豪の体が粘土の如く柔らかくなり、関節は愚か骨格を無視して捻じ曲げられてゆく。
「散々どついてくれたお礼に念入りに捏ね繰り回したる。」
「やだ。やめて、捏ねないで!」
 満面の笑みで雨豪の体を捏ね繰り回す陶芸家に対し雨豪は快感とも苦痛ともいえない奇妙な感覚と共に自身の体が変貌させられる事に恐怖する。
 やがて、人としての面影が完全に失われ肌色と黒の入り混じった塊となった雨豪を陶芸家は板の上に置くと力強く捏ね繰り回してゆく。するとまだら模様の塊から肌色と黒の入り混じった釉薬が搾り取られてゆき、雨豪は小麦色の粘土に成り果てた。


「さて、ここからが本番やね。」
 陶芸家は雨豪の成れの果てである粘土をろくろの上に置くと大まかな形を整えてゆく。そして、ある程度形が整った所でろくろを力強く回し、本格的な成形を始めた。
「まずは円筒にしぃ……ここからは慎重に行きますよ……。」
 手慣れた様子で粘土を円筒に成形した陶芸家は更に指を使って成形を勧めてゆく。根元から体部に賭けては元の太さを維持したまま上部を乳房の如く膨らませてゆく。
上部が充分に膨らませた後は細長い口縁部を形成してゆく。暫くして成形作業が終わったのか陶芸家はろくろの回転を止めると成形を終えた作品に手を翳し乾燥させてゆく。

「ふふ、後は釉薬を塗って焼ったら瓶子の完成やで。」
(うぅ……当たり前だけど……全く動けないわね。)
 陶芸家が成形した物、それは瓶子と呼ばれる主に酒器として使われる壺であった。瓶子が十分に乾燥している事を確認した陶芸家は先程搾り取った釉薬を瓶子へと塗ってゆく。
 そして、満遍なく釉薬を塗り終えると陶芸家は瓶子を炎で包み込んだ。炎の熱が釉薬を溶かし、瓶子に彩りを与えると共に釉薬に溶け込んでいた雨豪の魂を虚空へと追いやってゆく。
 やがて炎が消えるとそこには黒く輝く瓶子が鎮座していた。その模様はまるで鱗の様でどことなく神聖さすら感じられる。

「それじゃあ、これからは瓶子としてキバリや。」
(瓶子に……されちゃうなんて……これで……終わり……なの……?)
 こうして陶芸家の手により黒い瓶子にされてしまった雨豪は意識が朦朧とする中で陶芸家の作品として作業場に陳列されてしまうのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

二尾・結
どうせ作品にされるなら人型の方が……って何負けた時の事考えてるの!私らしくもない!

「その間違った芸術活動、終わりにしてもらうわよ!え、ツインテールが綺麗?ふふん、そうでしょう!」
その髪を作品に、とか聞こえたけど気にせずさぁ行くわよ!
「ああぁあ、体が、ぐにゃぐにゃにいいぃ」

何もせず一瞬で結が敗北したため、正義の心が『正義の記憶の緊急召喚』を発動。捏ねられ始めた結の粘土の中から陶芸家目掛けて剣士の少女が奇襲します
奇襲後も戦おうとはしますが、耐性は無いため敵にUCを使われればすぐに粘土にされてしまいます

※作品はビスクドールか磁器人形を希望。召喚した少女はお任せ
NG無し。アドリブ、絡み、無様描写歓迎。




「やはり帝都桜學府のヤカラは甘いねんな。」
 陶芸家の影朧は未完成の作品に釉薬を塗り焼き上げる作業をしながら次の刺客を待っていた。その様子は部屋の外に自身を鎮めに来た猟兵がいるとは思えない程に落ち着いている。
「陶芸品をシカトすればウチなんてあっと言う間に無力化できるのに。」
戦いが始まる前に行われた陶芸家の忠告は確かに陶芸品の破壊を防ぐという意味では正しい。しかし、それ以上に陶芸家にとっては自身が速やかに無力化されない為の策でもあった。

「しゃんと元に戻せるかも分からへんヤカラの為にご苦労な事やで。」
陶芸家はつい今しがた完成した作品を棚に優しく陳列すると完成していない作品を手に取った。乾燥して水分が殆ど抜けた作品からは僅かに魂の様なものが感じ取れる。
だが、感じ取れるのはそれだけであり、人としての意思がまだ残っているのか芸術家には甚だ疑問であった。作品を見回し罅割れがない事を確認した陶芸家は作品の傍らに置かれていた釉薬を塗ろうとした所で作業場の扉の開く音が鳴り響く。
「次の人が来たみたいやね。今度はどないな人かな?」
 陶芸家は手にしていた作品を作業台の上に置くと次の相手の姿を見定めるべく振り返った。


「その間違った芸術活動、終わりにしてもらうわよ!」
「度の人は随分と綺麗な髪をしとるね。これはええ作品になりそうや。」
 威勢の良い言葉と共に突入してきたのは結だ。
結は先の戦いでまんまと淫らな彫刻にされた事に対する怒りを陶芸家で晴らすつもりであった。しかし、開口一番に陶芸家から放たれたツインテールを誉める言葉にその怒りは簡単に晴れてしまう。
ツインテールを愛する結にとってツインテールを讃える言葉とは彼女の機嫌を良くして大概の事を許す状態にしてしまうある種の特効薬であった。

「え、ツインテールが綺麗? ふふん、そうでしょう! どうせ作品にされるなら人型の方が……って何負けた時の事考えてるの! 私らしくもない!」
「まさか、相手から作品のリクエストをされるとは思わへなんだわ。」
ツインテールを褒められた結は一気に期限が良くなった上に先の戦いの影響が残っているのか陶芸家に自身を使って作る作品のリクエストまでしてしまう。流石の陶芸家もそんな結の態度に呆けてしまう。
 それでも直に結が戦意を露わにすると陶芸家も結を自身の作品に変えるべく構えを取った。そして、結と陶芸家の戦いが始まるのだが、戦いは即座に終結した。

「ああぁあ、体が、ぐにゃぐにゃにいいぃ!」
「……あんたはほんまにウチを鎮めに来た帝都桜學府の人なんか?」
 自信満々に陶芸家に突撃してきた結は陶芸家の手に掴まれるとあっさりとその形を歪められた。ツインテールを褒められ気分が良くなった結は今の自分が武器は愚か防具もまともにつけていない状態である事を忘れていたのだ。
 当然、なんの対策もなしに陶芸家に掴まれた結は瞬く間に無力化され金色と乳白色の入り混じった塊へと変貌した。そして、陶芸家は塊となった結から釉薬を絞り出す為に作業台の板の上へと置いた。

「さて、次は余計な水分を絞り出さへんといけまへんね。……なぁっ!?」
「…………。」
 陶芸家が結であった塊を力強く揉めば作業台の上位に淡い黄色の釉薬が流れだす。だが、捏ねられた直後に塊が光り輝いたかと思えば銀髪のポニーテールの少女が飛び出しその手に持つ剣で塊を捏ねようとする陶芸家の腕を切り裂いた。
「あんたは何もんや?」
「…………。」
 突然の奇襲に驚いた陶芸家はポニーテールの少女に対し問い掛けるが少女は無言を貫く。何故ならこの少女は危機に陥った結を助けようと彼女に宿る『正義の心』が呼び出した過去に宿った英雄を模した防衛機構に過ぎないからだ。

「成程、その少女は囮やったか。それならこないにも弱かったのも納得や。」
「…………っ!」
 少しして陶芸家が切り裂かれた腕を摩りながら言葉を放つ。それに対し少女は怒りを露わにするわけでもなく陶芸家へ突撃し剣を振り下ろした。
 しかし、陶芸家が振り下ろされる剣を白刃取りの如く両手で受け止めてしまう。そして、少女が手を捻れば剣諸とも少女の腕を粘土の如く捻じ曲げられてしまった。
「すまん、あんたもそれほど強くなかったようや。」
「……っ!?」
ポニーテールの剣士は戦闘能力こそ元となった英雄を再現されているがその動きは極めて機械的だ。目の前に結を害する者がいればそれがどのような能力の持ち主であろうとただ攻撃する事しか出来ない。
ここで呼び出されたのが弓や銃を使う少女であればまだ善戦できたかもしれない。しかし、呼び出されたのは剣士の少女であった。
 いくら身のこなしが素人の陶芸家でも単調に剣を振り回してくるだけの相手に負けはしない。ポニーテールの少女が結の後を追うまでそう時間はかからなかった。


「さて、これは何にしたろか。確か人型がええのやんなぁ?」
 陶芸家の前に2つの粘土の塊が鎮座する。手始めに陶芸家が手にしたのはポニーテールの少女であった粘土だ。

「そうですね、あなたは如雨露にしましょ。」
 陶芸家は粘土を捏ね回し粘土の付け足しやヘラを使い粘土の形を整えてゆく。やがて出来上がったのは剣を前方に構えたポニーテールの少女をデフォルメした人形だ。
 但し、少女は一糸纏わぬ姿であり剣とそれを構える腕のお陰で見えないが、恥ずかしい部分も作り込まれている。そして、少女の頭頂部には大きな穴が空き、剣の先にも小さな穴が空いていた。

「次はジブンやけど……そうやね、貯金箱なんて良さそうや。」
 続けて陶芸家は結であった粘土を捏ね回して形を整えてゆく。やがて完成したのはやはりデフォルメされた一糸纏わぬ結の人形だ。
 結の人形は武器を持たず直立のポーズを取っている為にデフォルメされながらも作り込まれた恥ずかしい部分が丸見えになっている。そして、ツインテールの分け目には細長い穴が空いていた。

「後は釉薬を塗って……焼き上げれば完成や。」
 完成した2体の粘土の人形を陶芸家が手早く乾燥させると釉薬を塗ってゆく。但し、結達から搾り取った釉薬は髪の部分にだけ塗られ、それ以外の部分には肌色や桃色、様々な色の釉薬を塗ってゆく。
 そして、陶芸家は釉薬を塗り終えた2つの人形が炎に包まれ焼き上げた。炎が収まれば2体の人形を模した如雨露と貯金箱は艶やかながらも嘗ての色合いを取り戻していた。

「人は選びそうやけど中々の作品がでけたね。あんたらも嬉しいやろ?」
 陶芸家が2つの人形の穴を優しく撫でれば人形達は喜ぶかのように僅かに震えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ディナ・サーペント
アドリブ連携OK

一般人を、巻き込まないように、戦う…さっき家具職人と戦った時と、同じだね
それじゃ、手始めにビームからいくよ
陶芸品を、壊さないように、敵だけを見据えてね
一度凍らせて、大人しくさせたら…って炎!?
危ない、後ろに飛び退いて、ギリギリ回避…
?なんで笑ってるの…足元を見ろ?
なにこれ、台座?…うわっ、なんで、いきなり回転して、誰か止め…

回転が止まって、人型の粘土になった私を、影朧が丸く捏ねて恥ずかしく無様な陶芸品に作り変えちゃうよ
本来なら悔しいはずなのに、心まで陶芸品になった私は、彼女の作品にしてもらえたのが嬉しくて…
作品になった私を、もっと沢山の人見てもらうのを、心から求めるよ




「一般人を、巻き込まないように、戦う……さっき家具職人と戦った時と、同じだね。」
 陶芸家の作業場に突入したディナは部屋の中に所狭しと並ぶ陶芸品を見回す。倉庫で家具職人と戦った時と同様に室内には嘗て人であった美術品で溢れている。
 しかも倉庫の時と違い置かれている美術品は全て壊れやすい陶芸品だ。本来ならば倉庫での戦いの時以上に慎重に動く事が求められる筈であった。
「結界を貼ってくれた人には、感謝だね。」
 部屋の陶芸品に紛れるように沢山の符が至る所に貼られている。この符は結界を発生させる札であり軽い攻撃であれば防いでくれるという。
 ディナはこの符が作り出す結界のお陰で陶芸品を気にする事無く攻撃が出来る様になったのだ。そして、ディナは視線を自身の前に突入した猟兵に酷似した陶器の人形をテーブルに置いた陶芸家へと向けた。

「海賊とはこれまた変わったヤカラが来よったな。」
「そんなこと、言っていられるのも……今の内、だよ?」
 新たな作品の構想が沸き上がる材料の出現を喜ぶ陶芸家と美術品をほぼ気にする事無く攻撃が出来る事を喜ぶディナは互いに笑みを浮かべ相対した。


「れいとうビーーーム!」
「まずは柔らかくして……冷たっ!?」
 対決の先手を取ったのはディナだ。両目から放たれた青白い光線がディナを捏ね繰り回そうと迫る陶芸家の体を凍結させてゆく。これには陶芸家も慌ててディナへの接近を中止すると光線から逃げ始める。
「そのまま、凍らせて、あげるよ。」
 だが、いくら陶芸家が逃げてもディナが視線を陶芸家へ向けるだけで光線は瞬く間に陶芸家に追いつき、その体を少しずつ凍結させてゆく。本来ならもっと早く氷漬けに出来るのだが冷凍ビームが陶芸品を守る結界を破ってしまう可能性を警戒してディナはビームの出力を大きく落としていた。

「一度凍らせて、大人しくさせたら…って炎!?」
「ジブンが凍らせるのなら、ウチは焼き固めたる!」
 一般人の安全確保の為にビームの出力を落としていた為にディナは陶芸家に反撃の機会を与えてしまう。陶芸家が逃げ回りながらも片手をディナに向ければ、手から炎が放たれたのだ。
 普段ならいざ知らず、出力が落とされた今のビームでは炎を止める事が出来ない。この炎に包まれたら不味い事になると本能的に悟ったディナは咄嗟に後ろに飛びのいた。
「簡単には、やられないよ……なんで笑ってるの?」
「なんでって、そりゃジブンの足元がお留守やからや。」
 炎をギリギリの所で回避したディナは攻撃が避けられたにも関わらず笑みを浮かべる陶芸家に首を傾げる。そして、陶芸家が笑っていた理由をディナは着地した瞬間に理解する事になる。

「なにこれ、台座? ……うわっ、なんで、いきなり回転して、誰か止め……。」
「特性のろくろ、存分に味わうとええ。」
 ディナが着地した場所、それは大きなろくろの上であった。ろくろはディナが上に乗った直後に高速回転を始めたのだ。
 突然の事態にディナは混乱し目を回してしまう。更にろくろの回転に目を回すディナの体に異変が起きる。
 回転が激しくなるにつれてディナの体が粘土の如く捻じ曲がり始めたのだ。陶芸家が生み出した特性の轆轤には遠心力で上に乗った物の硬さを奪い取る力が備わっていたのだ。

「しゃんと柔らかくなっとりますね。ジブン、大変な事になっとるで。」
「ふにゃぁ……体に力が……はいらない……。」
 やがて回転が止まるとそこには無残な姿になったディナが鎮座していた。ろくろの力で柔らかくなった体は回転によって何重にもねじ曲がっており、あたまと胸とお尻が同じ向きになってしまっている。
「さぁ、ここからが本番や。」
「や、やめて……むぎゅっ!?」
 陶芸家は柔らかくなったディナの体を両手で丸めてゆく。丹念に丸められる内にディナの体は人としての形を失い、薄い水色の塊に成り果ててしまった。
 そして、陶芸家は水色の塊を板に叩きつけると釉薬を絞り出し小麦色の粘土に変えてしまった。


「さて、何にしてあげましょうか? ……そうやね、今度は普通の飾り物にしましょか。」
 陶芸家はディナであった粘土の塊を捏ね回す手足を大の字に広げた人型を形作った。人型が出来れば足に当たる部分をまるでUの字を描く様な形に変形させ、両手は胴体に対して垂直になる様に伸ばしてゆく。
 明らかに先程作品に変えた猟兵と同じような趣向が凝らされているが、作業に夢中になっている陶芸墓それに気が付かない。

「あかん、先程のヤカラと同じような仕様にしてしもた。……まぁ、問題はないか?」
 ヘラを使い、細かい形を整えた所まできて漸く陶芸家は人型に近い造形にした事に気が付いた。ディナであった粘土の塊はその姿を錨のオブジェに姿を変えていた。
 随所に人としての面影を残したそれはストック部分が真っすぐに伸ばされた両腕であり、U時に捻じ曲げられた両脚が錨腕を成している。
 更に撫で心地の良さそうな臀部は錨冠となり起伏に富んだ女体を模したシャンクの先には角突き帽子を被ったディナの頭がアンカーリングとして取り付けられていた。
「ここまで来たらしゃんと仕上げてあげるのが筋やな。」
 陶芸家は乾燥した陶器の錨に先程絞り出した釉薬を塗ると改めて発生させた炎で包み込んだ。そして、数分も経てば小麦色だった錨は爽やかな水色に染まっていた。

「……流石は帝都桜學府のヤカラやね。こんな姿になっても意識が残っとるなんて。」
(あぁ、そんな所に、飾らないで……色んな人に、見て貰える場所に、置いて……。)
 陶芸家は先程陶器人形にした者達と同様に手の中で震えている錨に驚いた。
あらゆるものを陶芸品に変える為の力しか持たない陶芸家には両手で抱えた置物が何を思っいるのかは分からない。
 それでも、目立つ位置に置こうとすれば錨の震えが強くなる事から誰かに見られる事を望んでいる事を確信し陶芸家は苦笑した。

「そうだ、あそこならきっと満足するやろ。」
(あぁ……見られてる! 私、みんなに、見られてるよ!)
 あろうことか陶芸家は作業場のメッセージボードと入れ替えるように錨に成り果てたディナを設置してしまった。猟兵達も突如として作業場から出て来た陶芸家が取り付けた飾り物の錨に首を傾げたが、それが小刻みに震えている事から元が何であったかを悟り戦慄した。

 こうしてディナは陶芸家に敗北した猟兵の末路としてこれから陶芸家に挑もうとする猟兵達の視線に晒される事になるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

晶津・紫
オウカちゃん(f26920)と一緒

芸術の道を突き詰めたい…信条自体は好き
でも「ヒトを材料にする」のはやっぱりダメだよ
…知ってしまったら、先入観で作品を観られないもん

だから、止めてあげる…オウカちゃん、行こうっ
※【紫水晶・解放】で変身、状態異常力強化

この状況なら、長い武器は危ないし…
(シキを街で待たせたのも正解かな?)
…ならジュエル・シトリン、前にっ

※入口を塞ぎつつ【ジュエル・シクルート】を構え
※魔力と共に【精神攻撃】のレクイエムを奏でて援護
※指向性の【催眠術】であり、致死性の眠気で機動力を削ぐ

…あっ、危ない!?虚ろな刃よ…!
※POWユベコは【レイス・リッパー】を射線上に出現させて【カウンター】


晶津・黄花
引き続きユカ姉(f26919)と一緒デス。
何とか元には戻れたデスけど…結果オーライデスよユカ姉、だから気を取り直して影朧やっつけに行くデス!

そうデス、芸術にも越えちゃいけない一線はあるデス。
だからここで止めるデス!
行くデス、ユカ姉!
黄水晶・解放で魔法戦士に変身デス!(攻撃力重視)

今回スレッジがないので拳で戦うデス。アメジスト、援護よろしくデス!
影朧の手に捕まらないよう、攻撃は必死に回避デス。【野生の勘】も駆使デス。
避けながら、コインズを懐からこぼれた風を装って少しずつ床にバラ撒いてくデス。
一通りバラ撒いた後、敵が隙を見せたところで全部纏めて【念動力】で叩き込みにいくデス!(【だまし討ち】)




「何とか元には戻れたデス……。」
「……ごめんね、オウカちゃん。」
 彫刻家の影朧を鎮めようとした紫と黄花の姉妹。しかし、捜索先を見誤った為に影朧の奇襲を受けてしまい二人は彫刻にされてしまった。
 その結果は影朧の潜伏先を自信満々に黄花に語っていた紫を失意の底に突き落とすには十分であった。

「アタシ達も元に戻れたし、影朧達も無事に転生をしているのだから結果オーライデスよユカ姉、だから気を取り直して最後の影朧やっつけに行くデス!」
「……そうだね、いつまでも落ち込んでいたらダメだよね。オウカちゃん、ボク頑張るよ!」
 放っておけば何処までも沈んでいきそうな紫を黄花が必死に慰めながら二人は最後の影朧、陶芸家の作業場の扉の前に立つ。扉には陶器で出来た錨が吊り下げられている。
 この随所に人の意匠の浮かび上がったその錨は陶芸家に挑むも返り討ちにあった猟兵の成れの果てであるという。二人は陶芸家に敗れた場合に辿る事になる末路を想像し身を震わせた。

「オウカちゃん……ボク達、本当に勝てるのかな?」 
「大丈夫デスよユカ姉。アタシ達が力を合わせば必ず勝てるデスよ!」
 紫が不安げに黄花を見上げれば黄花は笑顔で紫の抱えている不安を晴らしてゆく。事実、同じ原石から生まれた姉妹である紫と黄花は言葉を交わす事なく連携を取る事が出来る。
 前衛と後衛で役割分担も明確な二人が万全の状態で挑めば自分達よりも遥かに強い敵が相手でも戦える程のポテンシャルは秘めているのだ。

「それじゃあ、いくデスよ!」
 黄花の掛け声と共に二人は陶芸家の作業場へと突入した。


「おぉう……これは凄いのデス。」
 先陣を切った黄花は部屋中に置かれた陶芸品に感嘆の声をあげる。嘗ては富を呼ぶ指輪として様々な商人の手を渡り歩いてきた黄花には人並み以上の鑑識眼が育まれている。
 そんな黄花から見ても陶芸品が素晴らしい物であるという確信が持てた。一見すると不格好に見える物も少し見方を変えれば途端に魅力が沸き上がって来るのだ。
「これは生半可な想いでは作り出せないデスよ……。きっと、作品1つ1つに情熱が注ぎ込まれているですよ。」
「嬉しい事を言ってくれるね。確かにウチは作品を作る時には毎回全力を注いでるよ。」
 黄花の呟きを聞いて二人を品定めしていた陶芸家が喜びの声をあげる。陶芸家の言動に偽りは感じられず、作品一つ一つに情熱を注ぎ込んでいるのは事実の様だ。
 始めのうちはただ黄花と陶芸家の語り合いを見守っていた紫だが、勇気を振り絞ると会話に加わった。

「……芸術の道を突き詰めたい……信条自体は好きだよ。」
「ジブンも分ってくれますか。芸術家の道に終わりはなくただ精進あるのみや。」
 紫の言葉に陶芸家は更に機嫌が良くなってゆく。しかし、それに対する紫の顔は悲痛なものになっている。
 確かに紫は芸術家の在り方を応援してあげたいとも思っている。しかし、それを邪魔する要素が陶芸家の作品にはあった。
「やっぱり、ヒトを材料にするのはダメだよ。……だって、知ってしまったら、先入観で作品を観られないもん。」
 そう、この作業場に置かれた陶芸品は全て人間を材料に創り出された悍ましい逸品なのだ。美術品に対する鑑識眼を持ち合わせた黄花は人が材料である事を差し引いても陶芸品を素晴らしい物として見る事が出来た。
 しかし、不吉な指輪として様々な人の手を渡り歩いてきた紫には鑑別眼が養われていない。故に紫には工房内の陶芸品が元は人であるという事実が前面に来る為に悍ましい代物のであるという認識しか抱けずにいた。

「ジブンは素晴らしい作品を作れる素材を使うのがあかんというの?」
「そうだよ。いくら素晴らしくてもその陰で悲しむ人が生まれる作品なんて、ボクには認める事が出来ないんだよ。……アメジスト・ジュエル・リリース……ッ!」
「その点はアタシも同意デスよ。芸術にも越えちゃいけない一線はあるデス。……だからここで止めるデス! シトリン・ジュエル・リリース!」
 二人の言葉を聞いた陶芸家は先程とは一転して悲しみに染まってゆく。そして、これ以上語り合う事はないと判断したのか臨戦態勢入った。
 紫と黄花も自信の器物である指輪を構えると詠唱を始める。そして、詠唱が進むと共に二人は光に包まれ、魔法戦士『ジュエル・フラワーズ』としての姿を露わにした。

「……ジブンらとは分かり合えると思ったやけど残念や。せめてもの情けとしてジブンらは二人で一つの作品にしたる。」
「そんなのごめんだよ!」
「行くデス、ユカ姉!」
 こうして二人のジュエル・フラワーズと陶芸家の戦いが始まった。


「この状況で長い武器を振るうのは危ないんだよ。ジュエル・シトリン、ボクが援護するから前にっ!」
「分かったデスよ。アメジスト、援護よろしくデスっ!」
 アメジストは部屋の状況からレイス・リッパーを用いての攻勢は悪手だと判断した。攻撃が駄目なら援護に専念すべきだと考えたアメジストは自身の状態異常力を向上させるとジュエル・シクルートを構えた。
 対するシトリンはジュエル・スレッジを置いてきている為に陶芸品を壊す可能性を心配する必要がないものの、明らかに火力が不足していると考えた。故に攻撃力を向上させるとアメジストの求めに応じて陶芸家へと突撃した。

「まずはジブンから無力化させてもらうよ。」
「捕まったらアウトというのは存外きついデスよっ!?」
 こうして始まった陶芸家とシトリンの戦いではあるものの、その流れはシトリンの防戦一方であった。というのも陶芸家の手に掴まれたらそこを基点に全身を捏ね繰り回され粘土にされてしまうからだ。
 そうなれば抵抗など出来るわけがなくただ陶芸品にされるのを待つ事しか出来なくなる。そして、シトリンがやられてしまえば勢いそのままにアメジストも後を追う様に粘土にされてしまうだろう。
「ちょこまかと、いい加減捕まりなさい!」
「嫌デスよ!」
 とはいえシトリンもただ逃げているわけではない。陶芸家の手を避ける度にシトリンは作業場の床にエンハンスド・コインズをばら撒いていた。
 それは陶芸家に一撃を与える為の準備であり、コインズの存在が陶芸家にばれるわけにはいかない。故にシトリンはギリギリの所で回避を続けてゆく。

「~~♪」
「な、なんや、急に眠くなってきたな……。」
 シトリンが陶芸家の攻撃を避け続ける中、アメジストはジュエル・シクルートを使い鎮魂歌を奏でていた。シクルートを通じて奏でられる音色にはアメジストの人を破滅に導いて来た魔力が籠められている。
 音色を何の対策もなしに聞いてしまった陶芸家は段々と眠気に襲われてゆく。眠気が強くなればシトリンを責める手の動きも緩やかになってゆく。
 未だにコインをばら撒き終えていないシトリンはコインズをばら撒きながらも陶芸家を叩き体力を奪ってゆく。
 
「ぐぅっ!? まずは音楽を奏でとるあんたを止めた方が良さそうやね。」
「っ!? ユカ姉、そっちに行ったですよ!」
 流石の陶芸家もアメジストの演奏する音楽が不調の原因である事を悟り、それを止める為に動き始める。当然、シトリンもアメジストの方へ向かわせない様に動くがいかんせん掴まれたらアウトなので強気に出る事が出来ない。
 そして、一瞬の隙を突かれてシトリンは陶芸家の突破を許してしまう。凄まじい勢いで突撃してくる陶芸家にあわやアメジストは粘土にされてしまうのかと思われたがそうはならなかった。
「さぁ、丹念に捏ねてあげましょう! ……いたっ!?」
「虚ろな刃よ……!」
 アメジストを捏ね繰り回そうと伸ばされた手の射線上に突如として血を噴き出したのだ。そう、アメジストはこの館に突入してから常に透明なガラスの刃、レイス・リッパーを侍らせていたのだ。
 館内での戦いではそれを展開する前にやられてしまったので活躍する事はなかったが、陶芸家との決戦では陶芸家の手と重なる瞬間に出現する事により見事その役目を果たした。
 そして、レイス・リッパーに手を貫かれた事による隙をシトリンは見逃さない。床一面に散らばったコインズに念動力で動かし陶芸家へと殺到させたのだ。

「これでもくらうデスよ!」
「ぐあぁっ!?」
 大量のコインズは四方八方から陶芸家を打ち据えてゆく。そのあまりの勢いに土埃が舞い上がり部屋を土煙で包み込んでしまった。
「やったんだよ!」
「ユカ姉、この状況でその言葉はまずいデスよっ!?」
 その激しい攻撃にアメジストは期待を込めた言葉を吐きシトリンがその言葉が抱える危険性を指摘する。そして、シトリンの懸念は現実のものになった。

「地味にしんどいからあまりやりたくなかったんですけどね……。」
「そんな……全然きいてないんだよっ!?」
 ジュエル・フラワーズの二人は土煙が晴れた先にいた陶芸家の姿に驚愕した。どういうわけか陶芸家の体には傷一つついていないのだ。
 衣類の状態からして攻撃そのものは間違いなく命中している。それでも破れた衣類の隙間やレイス・リッパーに貫かれたはずの手は何もなかったかのように綺麗な状態であった。

「ちょっとウチの体を捏ねて傷を埋めただけですわ。」
「自分にも使用可能だったのデスかっ?! って、よく見るとエンハンスド・コインズが捏ねられているデスよっ!?」
「れ、レイス・リッパーも大変な事になっているんだよ!」
 陶芸家はあらゆるものを粘土の如く捏ね回す力を応用して自身の体を粘土の如く捏ね回す事により傷を塞いでいたのだ。
 そして、よくよく見れば陶芸家の手には大きな水晶玉の様な物が握られている。それは陶芸家に一撃を与えたレイス・リッパーとコインズの成れの果てであった。
「ガラス製品を作るのは始めてですが、存外新鮮ですわ。」
 陶芸家は手早く粘土を成型すると炎で焼き上げてゆく。こうして出来上がったのは金糸で彩られたガラスの皿であった。

「これでジブンらの守る物はなくなりましたね。ほんならジブンらは何になりたいか聞かせてくれへんか?」 
皿を近くのテーブルに置いた陶芸家は笑顔でジュエル・フラワーズに問い掛けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

テフラ・カルデラ
※絡み・アドリブ可
WIZ

ぐぬぬ…被害者がいるとなると戦うのも難しいのです…
どうにかして被害を出さずに攻撃するには…
…ここはわたしが囮となって、【全てを凍てつかせる小さな妖精】さん達に陶芸家本体を攻撃…もとい凍らせてしまいましょう!

とりあえず目立つようにして、陶芸品がない場所までおびき寄せたいですね…
後は野となれ山となれ!もしやられてしまってもそうでなくても妖精さん達が陶芸家を美しい氷像にしてくれるでしょう…
ボクがタダで芸術品にはなりませんですぅ!おあいこに陶芸家ちゃんも氷像と言う名の芸術品になるのですぅ!


赤嶺・ふたば
これ、さっきより面倒な状況だな・・・これではビーンバック弾すら使えん。
二つの方法を試してみよう。一つは変身魔法を込めたデバイスを直接ぶつけて無力化する方法。もう一つは攻撃をわざと食らったふりをするか身を隠すかで不意打ちで攻撃する方法。これならショットガンや攻撃範囲の狭い魔法なら普通に攻撃できる。もちろん変身魔法での無力化も行う。
あと、余り期待は出来ないが自分や仲間の猟兵が陶芸品に変えられた時に魔法で元に戻せるかどうかも試してみよう。姿は戻せなくても動けるようになったり出来るかもしれない
(アドリブ、絡みOKです)




 テフラとふたばの二人が合流を果たしたのは館での戦いが終わり美術品にされた猟兵達の救助作業の最中の事だ。普段から共に依頼に赴く事の多かった二人はそのまま一緒に陶芸家に挑む事にした。
 そして、最後の影朧が待ち受ける部屋の状況を聞いた二人は頭を抱えていた。

「これ、さっきより面倒な状況だな……これではビーンバック弾すら使えん。」
 作業場の中には一般人の成れの果てである陶芸品で溢れかえっているという。そんな部屋で派手に暴れまわれば部屋に置かれた陶芸品に目を覆わんばかりの被害が出る事になるだろう。
 ふたばの使う武器は射程は短いものの広域を一度に攻撃できる事が売りのショットガンだ。だが、影朧の潜む作業場でショットガンを撃とうものなら確実に陶芸品が壊れてしまうだろう。
 対策としては無数の鉛粒が詰まった布袋を発射するビーンバック弾を使うという手が浮かんだものの、陶芸家に避けられたらやはり陶芸品が壊れるだろう。
 こうなると残る手段は限界まで接近してのゼロ距離射撃を試みる事。だが、触れた者を粘土の如く捏ね繰り回し自由に成型できる陶芸家に対して行うにはリスクが高すぎた。

「ぐぬぬ……被害者がいるとなると戦うのも難しいのです……。結界符が万全の状態であれば話も違ったのですが……。」
 テフラの持つユーベルコードの多くが自分自身も巻き込まれかねない程に攻撃範囲の広い仕様になっている。そんな技を脆い陶芸品に満ち溢れた部屋で使えば陶芸品が壊れる可能性が非常に高い。
 そんなテフラの様な状況に陥った猟兵の為に他の猟兵が作業場に結界符を設置していた。しかし、先程作業場に突入した猟兵達が言うには結界符は限界寸前であり、直撃は愚か余波も防げるか怪しい状態になっていたという。
 お陰でテフラとふたばの二人は当初の想定通りに陶芸品を壊さない様に戦う方法で悩む羽目になっていた。暫くして頭を抱えたまま動かずにいたふたばは同じように悩むテフラに徐に声を掛けた。
 
「……テフラさん、一つ頼みたい事があります。」
「んんっ? なんでしょうか?」
 ふたばはテフラに自身の考え付いた策について話をする。策の内容を聞いたテフラはその内容を聞き快諾した。
 改めて作戦の打ち合わせを済ませるとテフラは単身は陶芸家の待ち受ける作業場へと突入した。


「これ以上の狼藉は許しませんよ!」
「……今度は兎なんか。うーん、何を作りましょうか。」
 威勢よく部屋に突入してきたテフラに対し陶芸家は落ち着いた様子で品定めしている。恐らくは部屋中に置かれた自身の作品のお陰で相手が激しく攻めてこない事が分かっているのだろう。
 事実、テフラは陶芸家を激しく責め立てる事は出来ない。だが、そんな状況下でも陶芸家を打倒する為の策をテフラはふたばと相談して考えてきていた。
「取りあえず、無力化しよな。」
「そう簡単にはやられませんよ!」
 陶芸家は軽く伸びをすると見た目からは想像できない速さで駆けだした。対するテフラも捕まらない様に部屋を駆けだしてゆく。
 幸い、陶芸家は足は速いが身のこなしは素人と大差がない。お陰でテフラはキマイラとしての身体能力の高さを活かし陶芸家の手をギリギリの所で躱せている。
 だが、テフラはふたばと共に立てた策を成功させる為に陶芸品を守る結界に触れないように動く必要があった。そこに陶芸家の作業場という相手側の地の利が合わさればテフラが逃げ場のない場所に追い込まれるのも必然であった。

「これで鬼ごっこはおしまい。そうや、あんたはティーポットにしたる。」
「ティーポットとはこれまた魅力的……じゃなくて、ボクはタダでやられはしませんよ! 『妖精さん……頼みましたよ♪』」
 陶芸家の言葉に一瞬魅了されるがどうにかそれを振り払ったテフラは沢山の妖精を召喚した。妖精は可愛らしい見た目に反して凄まじい冷気を帯びており、妖精を傍に侍らせたテフラの髪やうさ耳が凍り付き始めている。
 これには陶芸家も警戒したのかテフラへと歩み寄る足を止める。それでも妖精達は格好の悪戯相手である陶芸家に向けて一斉に飛び掛かった。

「……出来ればあまりやりたくなかったのやけど、みんな纏めて焼き固めたる。」
「なっ!? 妖精さん、逃げるですぅ!」
 妖精達が陶芸家に触れると思われたその時、陶芸家の周囲を凄まじい勢いで炎が吹き荒れたのだ。テフラは慌てて妖精達に回避を促すが勢いのついた妖精達は止まり切れず次々と炎へと突っ込んでゆく。
 炎に包まれてしまった妖精は悲鳴と共に姿を変貌させながら緩やかに床に向けて堕ちてゆく。そして、妖精達から炎が退けばあとには青を基調に雪の結晶の模様があしらわれたシンプルなティーカップとソーサーだけが残されていた。

「炎だけで陶芸品を作ると凝った造形や模様を作れへんのよねぇ。」
「そ、そんな……妖精さん達が……。」
 どこか残念そうな様子の陶芸家に対しテフラは妖精達が瞬く間に陶芸品にされてしまった事に戦慄する。そして、その動揺が大きな隙となりテフラは陶芸家の接近を許してしまった。
 テフラが接近された事に気づいた時には手遅れであり陶芸家はテフラの体を粘土の様に捏ね始めていた。こうなってしまえばテフラが抗う事は不可能だ。
 こうして陶芸家に捕まってしまったテフラはあっという間にカーキ色の塊にされてしまった。


「妖精達がシンプルになった分、あんたは凝った作りにさせてもらいますわ」
(あぁ……こねくりまわされちゃってますぅ……。)
 陶芸家はテフラであった塊から手早く釉薬を搾り取り小麦色の粘土に変えると形を整えてゆく。そして、形を整え終えれば複数種の釉薬を塗ってゆき炎で焼き上げてゆく。
 こうして出来上がったのは人参を両手で抱えた可愛らしい兎の人形だ。一見するとティーポットに見えないデザインがだよく見れば人形は首が外れる構造で両手に抱えた人参に穴が空いていた。

「これなら未使用時は置物として使えて一石二鳥やで。」
「……確かに素晴らしい作品だな。」
「っ!?」
 出来上がった作品を近くの棚に置こうとした陶芸家の背後から突如として声がかかる。陶芸家が慌てて振り返ってみればそこには銃を構えるふたばの姿があった。
 ふたばがテフラに提案した策とは囮作戦だったのだ。その内容はテフラがその身をもって陶芸家の注意を惹いている間にふたばが陶芸家に忍び寄り、強力な一撃を決めるというシンプルなものだ。
 傭兵として潜入作戦の経験があったふたばは注意さえ惹いて貰えれば陶芸家に気づかれる事無く忍び寄る自信があった。更にテフラであればその重度の被虐嗜好を以てして囮という危険な役目を喜んで引き受けた上で完遂してくれるという確信があってのだ。

「その素晴らしい作品を自分が頂こう。『これは自分の研究成果だ。楽しんでくれ』」
「しまっ……っ!?」
 テフラの身を挺した活躍により無事に陶芸家の懐に飛び込む事に成功したふたばはショットガンの引き金を引いた。同時にショットガンの銃口か変身魔法のエンチャントが籠められた散弾が陶芸家に直撃した。
 散弾を受けて吹っ飛ばされた陶芸家はその過程でその身を大きな縫ぐるみに変化させながら陶芸品を守る結界にぶつかる。そして、結界は縫ぐるみとなった陶芸家を弾き返すと砕けてゆき結界を発生させていた符もはじけ飛んだ。

「さて、奴が縫ぐるみになっている間にテフラを戻せるか試すとしよう。」
 ふたばは陶芸家が吹っ飛ばされた際に宙に投げ出されたテフラであったティーポットを受け止めた。そして、自身の魔法でテフラを元に戻す事が出来ないか試し始めるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

四王天・燦
美術商の爺…まだ魂が戻れたかもしれんが肝心の治癒と破魔の符が残ってない。
法の下、獄門台に送る気だったが死ねば仏だ。
合掌、南無三

さてアタシの番だ。
努力を捨て、人を素材にすれば楽だと宣っておいて転生が叶うと思うなや。
この言葉を受け止めたなら転生もあるかもね。
慈悲はここまで

部屋にダッシュで入る。
複雑怪奇なステップでフェイントを入れ、ろくろを出す場所を絞らせない。
残像も発生させ更に攪乱する。
距離が充分詰まればジャンプで飛び掛かるぜ。
蹴りと見せかけだまし討ち…必殺の手刀―村正で斬る!
体勢立て直されなきゃ二回攻撃。
喉笛掻っ捌く

奇策は一度しか使えないしさっさと身を引くよ。
乱闘になって陶器を壊したくないからね




「美術商の爺め、自分が美術品にされちゃあ意味がないだろ……。」
 燦は陶芸家の手に掛かり青い水差しにされてしまった美術商に対し思いを馳せる。
館内での戦いにおいて美術商が影朧の少女に対し行っていた所業を知った燦は激怒し美術商を必ず獄門台へと送るつもりであった。だが、その美術商は自身が騙してきた一般人と同様に美術品に成り果ててしまった。

「まだ爺の魂は戻せたかもしれなかったのだぜ。」
 燦は虚空へと消えゆく美術商の魂を現世に留める方法を知っていた。もしも燦がその策を実行出来ていれば美術商を救う事も不可能ではなかったのだ。
「治癒と破魔の符が残ってなかったんだぜ……。」
 だが、燦は先の館での戦いでその策を実行するのに必要な符を使い切っていた。もしも燦と相対した影朧の少女が情を抱く余地のない者であればそうはならなかっただろう。
 だが、影朧の少女に対し燦が情を抱く様になった原因は他ならぬ美術商が影朧に行った説得だ。そういう意味では美術商の因果応報とも言えた。

「獄門台に送る気だったが死ねば仏だ。……南無三」
 燦は美術商が無事に転生する事を願い合掌をした。


「さて、次はアタシの番か。」
 燦は作業場から飛び出してきた二人組の猟兵達を見送りながら閉ざされた作業場の扉を見据える。その表情はとても険しく、陶芸家を良く思っていない事が明らかだ。
「……努力を捨てた奴が転生出来ると思っているのか?」
 元々芸術家ではない影朧の少女と異なり芸術家が転生を目指して凶行に及んでいるかは分からない。だが、もしも転生を目指し凶行に及んでいるのであればふざけるなというのが燦の本音であった。

「とはいえ、無策で突っ込むわけにはいかないんだぜ……。」
 燦は先程出て来た猟兵達から聞いた部屋の状況を元に頭を捻る。先に突入した猟兵が設置した結界符はもはや限界であり軽い衝撃を1回防ぐだけでも壊れる状態だという。
 結界がまともに機能していない以上、遠距離攻撃を行い避けられてしまえば部屋に置かれた陶芸品が確実に壊れるだろう。かといって、接近戦を試みるのも陶芸家の能力を考えるとリスクが高い。
「こうなったら奇策で行くしかないぜ。」
 幸い、陶芸家は能力頼りのタイプであり素の身体能力はそれほど高くないらしい。それならば機動力を生かした奇襲をかければ1撃食らわせるくらいならば出来る筈だと燦は考えた。

「いちかばちかの大勝負、見事決めてみせるぜ!」
 燦は周囲の猟兵達に頼み込むと真の姿の一端である6尾を展開しクラウチングスタートの体勢を取った。ある猟兵が作業場の扉に手を掛けると別の猟兵が燦から受けとっていたコインを宙へと打ち上げる。
 そして、コインが地面についた瞬間に作業場の扉が開かれ燦は全速力で陶芸家の作業場へと駆けだした。


「な、何事や?!」
 陶芸家は何の前触れもなく突撃してきた燦に慌てふためいた。まさか、陶芸品を気にする事無く全速力で突入してくる者がいるとは思ってもみなかったのだ。
 慌てる陶芸家に対し冷静な燦は陶芸品と結界符の大まかな配置を見いだすと速度はそのままに陶芸家へと突撃した。突撃してくる燦を捉えようと陶芸家は手を伸ばすが、伸ばされた手は空を切った。

「早すぎる!」
「陶芸家よ! お前が陶芸品を作るのは転生をする為なのか?!」
 伸ばされた手を素早いステップで躱した燦は陶芸家に問い掛ける。それは燦が陶芸家に対する説得の方向性を定める上で必要なものであった。

「転生? 転生なんてしたら新しい作品を作れんようになるやないか!」
 どうやら、陶芸家が凶行に及ぶのは自身が転生する為ではなかったらしい。燦は着地先に出現したろくろを6つに増えた尾を最寄りの結界に叩きつける事により結界の破壊を代償にろくろを回避した。
「なら何故人を材料にするのだ! 努力を捨てて作った作品が評価されるとでも思っているのか?!」
 転生目的の凶行でない事が分かった燦は陶芸家としてのプライドを責め立ててゆく。その言葉に対し陶芸家も思う所があるのか動揺しながらも反論する。

「ウ、ウチは見る人を喜ばせる作品を作りたいんや! 普通に作った作品は誰も喜ばへんと美術商は言っとった!」
 陶芸家の言葉に燦は顔を顰めた。どうやら芸術家達が人を材料にした美術品に固辞する様になったのも美術商が原因だったらしい。
 恐らくは人を材料にした美術品が凄まじい値がついた為に美術商は芸術家達が人を元にした作品に固辞様に誘導したのだろう。燦は美術商に合掌した事を少しだけ後悔した。
 結界という使い捨ての足場と天井を利用した立体軌道に陶芸家が目を回し始めたのを見計らい陶芸家に背後から飛び掛かった。
 そして、燦の必殺の手刀『村正』が陶芸家の背を切り裂いた。素手で肉を切り裂いた感触を不快に思いながらも燦は陶芸家が抱えている矛盾を容赦なく指摘する。

「人を喜ばせる作品を作る為に悲しむ人を生みだしたら意味がないだろ……。」
「そ、それはっ……!」
 確かに人を材料に作り上げた作品は見る者を喜ばせる作品になるのだろう。だが、作品が作られる事により材料にされた者に関わる多くの者が悲しむ事になるだろう。
更に言えば作品を見る人が人を材料にして作られた事を知れば余程の破綻者でない限り喜びよりも嫌悪や恐怖の感情が強くなるだろう。

「アタシからは以上だ。精々、人を材料にした作品作りに励め。」
 燦は明らかに葛藤している陶芸家を横目に作業場の状況を確認する。燦が派手に動いたお陰で結界符はひとつ残らずはじけ飛んでいた。
 こうなると先程陶芸家を撹乱した立体軌道を行うのは不可能だ。それを抜きにしても何度も通用すると思えるほど燦は楽天家ではない。
 これ以上やれることはないと判断した燦は陶芸家が立ち直る前に早々に作業場を後にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

音月・燈夏
はぁ。結局分身は助けに来ませんでしたね。
UCが解除されて助けに来れなかったのでしょうか。それなら保険にはなりませんよね……。

先程の作業を見る限り接近戦は危険ですね。距離を取って、陶芸品を壊さない為に精神への攻撃にしましょう。
浄化の霊力にUCを付加して攻撃します。時間がかかるので、その間に飛んできた炎はオーラ防御で凌ぎますが、周囲の陶芸品の事を考えると下手に逸らせないのが辛いですね。

これは唯の炎じゃない?!
触れただけで炎に包まれるなんて!
ま、まだ悔い改めてくれませんか?
ああ、このままじゃ……。

『あらあら、今度は梅瓶ですか。奇麗な曲線の形状も鮮やかな絵も素敵だと思いますよ?』

アドリブ◎ 『』は分身




「はぁ。結局分身は助けに来ませんでしたね。」
 影朧の遊び相手として人形にされながらも無事に元に戻る事の出来た燈夏は溜息を溢す。
 事前の相談では分身体が危機に陥ったら燈夏を救助する手筈となっていた。しかし、燈夏が人形にされた時に分身体が救助に現れる事はなかった。
「助けに来れないなら保険になりませんよね……。」
 お陰で燈夏は少女の部屋に連れ込まれた後に尻尾を堪能されたり、衣類を全て剥ぎ取られ代わりに可愛らしいドレスを着せられたりしたのだ。

「そういえば、あの少女の技ってユーベルコードを封じる効果がありましたね。」
 ふと、燈夏は人形作りの影朧の技は完遂すると対象のユーベルコードを封じる効果がある事を思い出した。燈夏は自身のユーベルコードが封じられた為に分身体も消えてしまったのではないかと予想を立てた。
「未だに分身体が出てこない辺り、本当に消えてしまったのかもしれませんね。」
 事実、燈夏が復帰した後も分身体が現れない。それは燈夏の予想を確信に変えるのに十分すぎた。

「これは運が良かったと考えた方が良さそうね。」
 燈夏は分身体の思わぬ弱点の発覚に冷や汗を流す。
今回は相手が純粋に遊ぶ事が目的であった為に尻尾をモフられたり、着せ替えをされる程度で済んだ。だが、相手が甚振る事を楽しむ様な類であれば燈夏は目も当てられない状態になっていた恐れもあったのだ。
「これからは保険としての運用は慎重に考えた方が良さそうね……。」
 溜息を吐く燈夏に作業場へと突入する順番が回ってきた。


「陶芸家に迷いが生じているのは本当だったようです。」
 燈夏は先に突入した猟兵から陶芸家が人を材料にした作品を作る事を完全に受け入れてはいないという情報を得ていた。燈夏は半信半疑であったものの、作業場内の陶芸家の様子を見てそれが正しい情報である事を理解した。
「まさか、私の入室に気づかないなんて……。」
 燈夏が作業場に入った時、陶芸家は作業台に備え付けられた椅子に座りながら頭を抱えながら何かを呟き続けている。その瞳は虚ろであり燈夏の姿が見えているのかも怪しい状態であった。

「絶好のチャンスですが下手に攻撃するわけにもいかないのですよね。」
 燈夏は陶芸家を刺激しない様に気を付けながら作業台の上を観察する。作業台の上は陶芸品を作る為に必要な空間はあけられているがその空間以外は陶芸品で埋め尽くされていた。
 ここで燈夏が陶芸家を物理的な攻撃をすれば作業台の上の陶芸品が巻き添えをくらって壊れる恐れがあった。
「ここは精神への攻撃にしましょう。」
 燈夏はその身に浄化の霊力を練り上げると陶芸家の呟きに耳を澄ませる。呟きの内容はやはりというべきか人を材料にして陶芸品を作る事への葛藤であった。
 燈夏はこれは幸いと言わんばかりに浄化の霊力を練り上げると陶芸家の呟きに合わせ言霊を吹き込んだ。

「『心のどこかでは分かっているのでしょう?』人を材料にするのは行けない事であると。」
「!?」
 燈夏の口から紡がれた言霊は陶芸家の心へと突き刺さり、朧気であった悔恨の念を明確な物へと変えた。そして、悔恨の念は陶芸家を精神的に追い詰めてゆく。
 燈夏は陶芸家が悔恨の念を耐えられなくなりそのまま抵抗する意思を無くす事を期待していた。だが、ここにきて陶芸家は予想外の行動に出た。

「あぁもう! こういう時は作品を作るに限ります!」
「何をしているのですかっ!?」
陶芸家は突然立ち上がったかと思えば周囲にある未完成の陶芸品に完成させる作業を始めたのだ。それは陶芸家の本能が悔恨の念から齎される過大なストレスを晴らそうと引き起こした行動であった。
 当然そんな行動に出るとは思っていなかった燈夏は陶芸家に見つかる事も厭わずに陶芸品を完成させる作業を止めようとする。だが、その行動は今の陶芸家に対しては悪手であった。

「ジブンもウチに陶芸家をやめろっちゅうのか!?」
「そんな事は言っていませんよっ!? 落ち着いてください!」
 陶芸家は燈夏の言葉を曲解し激昂した。燈夏は先程までとは一転して敵意を見せる陶芸家を必死に諫めようとしたがそれは叶わず、陶芸家はその手から炎を放った。
 炎は燈夏でも難なく避けられる速さだが燈夏が避ければ室内に置かれた陶芸品に当たり陶芸品を壊す恐れがあった。故に燈夏には炎を甘んじて受ける以外の選択はなく、せめてもの抵抗として全力のオーラ防御を纏うと炎をその身で受け止めた。

「これは唯の炎じゃない?!」
 陶芸家の放った炎はただの炎ではなかった。オーラ防御に触れたかと思えば生物の如く蠢き燈夏の体を包み込み始めたのだ。
 燈夏は周囲の陶芸品に注意しながらも腕を振るい消火を試みる。だが、炎は消えずかき消そうとして振るわれた腕に付着するとそこから全身を一気に包み込んでしまった。
「触れただけで全身が包み込まれるなんて! ぐぅっ!?」
 全身を炎に包み込まれてしまった燈夏は体が炎に締め付けるオーラ防御が軋むのを感じた。燈夏は必死に炎から逃れようと藻掻くが炎から逃れるよりも前にオーラ防御が限界を迎えた。


「体が!? あぁ、このままじゃ……。」
 オーラ防御を破った炎が燈夏に容赦なく襲い掛かる。炎は燈夏に灼熱感を与えるが不思議な事にその体を焦がす事はなかった。
 炎は燈夏の体を焦がす代わりに粘土の如く捻じ曲げ始めたのだ。その力は凄まじく、燈夏の碌に抵抗する事も叶わない。
「お願いです……悔い改めて……くれませんか?」
炎により瞬く間に球体に成型されてしまった燈夏は最後の力を振り絞り陶芸家の説得の言葉を掛ける。だが、陶芸家は燈夏の声に反応する事はなかった。
 そして、燈夏の意識は強烈な圧迫感と共に途絶えた。

『……そろそろ頃合いですね。』
 燈夏が炎に包まれてから暫くして作業場内で動き始める者がいた。それは本体が消えたと思っていた燈夏の分身体だ。
 分身体は人形にされた本体が元に戻る寸前に不可視化の妖術でその身を隠し、本体の行動をずっと監視していたのだ。
『さて、本体はどんな陶芸品にされたのでしょうか?』
 作業に没頭する陶芸家を刺激しない様に注意しながら分身体は先程まで本体が炎に包まれていた場所を注目した。

『あらあら、今度は梅瓶ですか。』
陶芸家の放った炎に包まれてしまった燈夏は梅瓶と呼ばれる壺に成り果てていた。丸く肩を張ったそれは薄い桃色であり、表面には桜が描かれている。
『奇麗な曲線の形状も鮮やかな絵も素敵だと思いますよ?』
 分身体はテーブルの上に置かれた本体であった花瓶を優しく撫でた。

成功 🔵​🔵​🔴​

全会原・タイガ
アドリブ/絡み/無様描写OK

この陶芸品、全部人が変えられちまったモノだってのか……

下手に動きまわって壊しちゃいけねぇ。
奴に触れられるのも嫌だし奴が陶芸品のそばを離れた時を狙って【王羅捺苦瑠】を放ってやる!

……って、奴が放った炎にオーラが包まれてそのままこっちに炎が……!?
か、からだが、こねられ……あああっ!

そのまま為す術もなく炎に全身を捏ねくりまわされ、魅惑的なボディラインを再現したかのような凹凸のある壺にされてしまって……




「おぉう、ここまで来ると壮観だな。」
 陶芸家の作業場へと突入したタイガはは室内に所狭しと並べられた陶芸品に感心する。美術品に関しては素人なタイガでも素晴らしい作品である事が良く分かった。
「……この陶芸品、全部人が変えられちまったモノだってのか。」
 だが、これらの陶芸品は全て人を捏ね繰り回す事によって作り出された物だという。しかも、釉薬を塗った上での本焼きまで済まされた物に関しては元に戻る事も叶わないというではないか。
 館内に潜んでいた影朧とは比べ物にならない程に凶悪な陶芸家にタイガは戦慄する。

「新たな材料が来たね! さぁ、次は何を作ろうかな?」
「どうみても安定しているよなぁ……。」
 タイガは室内の中心に佇む陶芸家に視線を向ける。陶芸家はタイガの事を笑顔で見つめており、これから行う作業に備えてか柔軟運動までしている。
 自分の前に突入した猟兵の話では人を材料にする事への葛藤を精神攻撃により増幅され弱っているとの事だった。しかし、タイガには陶芸家が精神的に弱っている様には到底見えなかった。
「アンタ、人を材料にする事を受け入れ切れてないんじゃなかったのか?」
「確かに少し前まではそうやった。けれど、良く考えてみればウチは影朧やったから人を材料にしても問題ない事に気が付いたのですわ。」
「……完全にふっきれてるじゃねぇか。」
 影朧の言葉にタイガは頭を抱えた。どうやら陶芸家は精神攻撃による多大なストレスが原因で完全に吹っ切れてしまったらしい。
 こうなった以上、言葉で説得して鎮める事は困難だろう。タイガは物理的に陶芸家を鎮めるべく拳を構えた。


「下手に動き回ると不味い事になりそうだ。」
 タイガは改めて作業場の中を見渡す。作業場の中は陶芸品に溢れており、場所によっては手を振り回すだけでも陶芸品にぶつかりかねない状態だ。
 更に言えばタイガは手足以外にも色々ぶつかりそうな部分が多いので尚更注意が必要であった。
「陶芸品を壊しちゃいけねぇし、奴に触れられて陶芸品にされるのも嫌だからここは遠距離から叩くのが無難だな。」
 タイガは右腕にオーラを纏うと力を貯め込むような構えを取り陶芸家が自身を陶芸品に変えようと接近してくるのを今か今かと待ち続けた。
 しかし、陶芸家は一向に接近する気配を見せず顎に手を当てて何か考え事をしていた。その姿は隙だらけなのだが、これが接近を誘う為の振りである可能性を警戒しタイガは攻め込む事はなかった。

「そうやね、今回は炎の練習も兼ねましょう。」
「練習だと? やれるもんならやってみな!」
 どうやら、陶芸家はタイガを何にするのか決めたらしい。いよいよ陶芸家が攻勢に出ると考えたタイガは陶芸家が動き出したら即座に攻撃出来るように気を引き締める。
 だが、陶芸家はその場から動く事はなく腕をタイガに向けて翳した。タイガが陶芸家の意図を読めず首を傾げた次の瞬間、タイガに向けて炎が放たれた。

「そういえばアンタは炎も扱えたんだったな!」
 タイガは突如として放たれた炎に驚くが直に立ち直り拳に貯めていたオーラを発射した。それは陶芸家から放たれた炎をオーラで十分にかき消せると判断してのものであった。
 だが、炎とオーラがぶつかる瞬間にタイガは驚愕する事になる。なんと、炎は蛇の如く大口を開けてオーラを包み込んだかと思えばオーラの起点であるタイガに向けて突き進み始めたのだ。
「オレのオーラが包まれてそのままこっちに炎が……!?」
 オーラを伝って迫りくる炎をタイガは逃れようとした。しかし、タイガの周囲には無数の陶芸品が置かれていた為にそれは叶わなかった。
 そして、タイガの体が炎に包まれた。炎はタイガの体を関節を無視して捻じ曲げ変形させてゆく。

「か、からだが、こねられ……あああっ!」
 必死に炎から逃れようと藻掻けば、その動きすら自身の体を歪める一因になってしまう。そして、タイガは全身を捏ね繰り回されてあっと言う間に赤茶色の塊に成り果てた。


「さて、ここからが本番やね。」
 陶芸家は炎に包まれたタイガであった塊の前に立つと炎に手を翳し意識を集中させた。
 すると炎に包まれた塊が変形を始めたではないか。塊は細長い棒状に変形すると螺旋を描く様にして積みあがってゆく。
「くびれを意識して……。」
 時に膨らみ、時にくびれながらも粘土は渦巻き、やがて2つの大きな膨らみをもつ円筒状になった。
「次は模様を思い浮かべながらじっくりと焼き上げる……!」
 炎の中に浮ぶ円筒を前に陶芸家は目を瞑ると更に意識を集中させてゆく。すると炎の勢いが増し、円筒は内部に染み込んだナニかが蒸発させて吹きあげながら焼き上げらてゆく。
 円筒が焼き上げられる間、陶芸家は燃え盛る炎と円筒から吹き上げるナニかに熱せられ汗に塗れてゆく。それでも決して壺への集中を乱す事はなかった。

「これで完成や!」
 暫くして陶芸家は炎を消すと炎に包まれていた物を優しく受け止めた。炎から解放されたタイガは1つの炎の様な赤色の壺に成り果てていた。
 燃え盛る炎が描かれたソレには2つの大きな膨らみがあり、豊満な胸とお尻を持つ女性の様にも見えた。
「ウチはまだまだ努力が足りなんだのやね。少し集中するだけでもこないにも出来がちゃうなんて。」
 陶芸家はタイガであった壺を手にしながらも作業場に置かれた陶芸品を見回してゆく。その顔が一部の陶芸品に向けられる度に顔が歪んでゆく。
 それは今まで炎を用いて作り上げてしまった作品達への申し訳なさと炎だけでの陶芸品作りに対する努力を行った自身への怒りによるものであった。
「何時までも気ぃ落としていてはいけまへんね。まだまだ作品の材料は来るのやから……。」
 タイガであった壺を棚へと陳列した陶芸家は次なる材料が突入してくるまでの僅かな間を精神統一に費やし始めるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

佐伯・晶
余程遊び相手に飢えてたのかなぁ
とりあえず影朧は無事転生できて良かったよ
巻き込まれた人達はいい迷惑だろうから
前に人形にされた人達を見つけて元に戻せるといいんだけど

ガトリングガンを使う訳にもいかないし
創っておいたワイヤーガンで拘束を狙ったり
マヒ攻撃で行動阻害を試みたりして無力化を図るよ

遠距から攻撃してくるなら
神気で攻撃の時間を停めて防御
これは僕なりのオーラ防御だよ

こちらに触れる為に接近してきたところに
魔法陣を当てよう

魔法陣が命中したら凍結魔法で攻撃
もしくは時間を停めてる間に
元に戻せ無さそうな陶芸品から使い魔を創って
影朧を陶器の像に変えるのでも良いかな
自分が作品になってみるってのは貴重な体験だろうし




「余程遊び相手に飢えてたのかなぁ……。とりあえず、影朧達が無事に転生できて良かったよ。」
 少女の影朧を鎮めようとしたものの人形にされてしまった晶は救助に来た猟兵から館内での戦いの顛末を聞いていた。
 結果として館内に潜んでいた影朧達は無事に転生する事に成功した。特に人形作りの少女は真っ先に転生が済んだという。

「本人は申し訳なく思っていたみたいだけど、巻き込まれた人達はいい迷惑だよね。」
 話によると少女は元より転生する事が目的であり一般人を人形にしていたのも自身が患う伝染病を遊び相手に感染させない様にする為の処置であったという。
 突っ込み所は多々あるが、それもこれも影朧の少女を我欲の為に利用しようとした美術商が原因だ。その美術商にしても因果応報と言える形で破滅を迎えたので晶はこれ以上追及しようとは思わなかった。
「後は先駆けて人形にされた人達を見つけて元に戻せるといいんだけど。」
 晶は自分達が館を訪れるより人形にされて売り払われてしまった人たちに思いを馳せる。幸い美術商は取引帳簿が残されていたので人形に人達とその魂が封じられた装飾品を見つける事は可能だろう。

「取りあえず、今は陶芸家を無力化するのが先決だね。」
 晶は銃片手に陶芸家の作業場へと足を踏み入れた。


「どう攻めたものかな。こんな状況じゃあガトリングガンは使うわけにもいかないよね。」
 作業場へと突入した晶は改めて作業場を確認する。作業場は壁一面に陶芸品の陳列された棚が設置されており、それ以外の場所も沢山の陶芸品が置かれている。
 射線に入った物を無差別に薙ぎ払うガトリングガンを使おうものなら目も当てられない大惨事となるだろう。故に晶は部屋に入る前にガトリングガンは置いてきていた。
「次の材料は……どうやら武器を持っとる様やね。」
 しかし、陶芸家は奇襲を仕掛けてきた者を除き初めて武器と分かる代物を持ち込んできた晶に対して警戒を見せていた。そして、晶と陶芸家は膠着状態へと移行した。

「このままじゃ埒が明かないね。こちらから行かせて貰うよ。」
「そんな見え見えの攻撃に当たる程ウチは鈍くないですわ!」
 膠着状態が続く中、先に痺れを切らしたのは晶であった。晶は銃を陶芸家に向けると発砲する。対する陶芸家は晶の構えた銃口の向きを頼りに射線から素早く逃れた。
 しかし、晶の持つ銃はフック付きワイヤーを飛ばすワイヤーガンだ。それは普通の銃弾が発射されると思っていた陶芸家の意表を突くには十分であった。
「なんやその銃は!?」
「ワイヤーガンと言う物だよ。移動、拘束、攻撃と色々使えて便利なんだよね。」
 ワイヤーガンから発射されたワイヤーが陶芸家の横を通過した瞬間、晶はワイヤーのロック機構を起動させると銃を横に振るった。するとワイヤーは鞭の如く撓り陶芸家に横からぶつかった。
 陶芸家にぶつかったワイヤーは陶芸家の体に巻き付き動きを封じてゆく。運の良い事にワイヤーは腕にも絡みついておりワイヤーを握られて軟化させられて直に脱出される可能性は低そうであった。

「うぐぐ、動けまへんね。……動けないならジブンを焼き固めたる!」
「生憎とその攻撃も対策済みだよ。」
 動きを封じられた陶芸家は晶に向けて炎を放った。炎に包まれてしまえば晶は瞬く間に体を捏ね繰り回されて陶芸品にされてしまうだろう。
「流石に時を止められたらどうにもできないみたいだね。」
「そ、そんなっ!?」
 晶は先駆けて突入した猟兵から陶芸家の放つ炎が生物の如く動かせる事を聞いていた。晶は炎の時を神気で止める事により動きを封じたのだ。

「それじゃあ、少しの間黙っていてもらうよ。」
 そして、晶は攻撃手段を失った陶芸家に凍結呪文を浴びせた。


「さて、復帰される前にやる事はやらないとね。」
 晶は凍り付いた陶芸家を一瞥すると自身に宿る邪神の神気を開放してゆく。すると作業場に置かれた陶芸品の一部が陶芸家と似た服を着た人形へと変化し始めた。
人形達は陶芸品を壊さない様に気を付けながら晶の元へと集合してゆく。晶は人形が自身の元へ全て集合するの確認すると改めて作業場を見渡した。

「思ったよりも未完成の陶芸品が多いみたいだね……んんっ? もしかして何か作りたいのかな?」
 晶は作業場に置かれた陶芸品の内、人形にならなかった物……まだ元に戻る事が可能な陶芸品の数を確認していた。その数は晶の想像以上に多く、陶芸家が復帰するまでに全て運ぶのは難しそうであった。
 ふと晶は足元に屯する人形達が何かを期待するような視線を向けている事に気が付いた。そして、人形達の服装から何を求めているのか悟った晶は人形達へと指示を飛ばす。

「それじゃあ、あそこに置かれている材料を使って作品を作っていいよ。」
 晶の許しを得た人形達は晶の指定した材料……凍結した陶芸家の元へと殺到した。どうも人形達は陶芸家と似たような能力を持つようで陶芸家は瞬く間に捏ね繰り回して青い塊へと変えてゆく。
 そして、塊から釉薬を搾り取った人形達は協力して粘土の塊を成形してゆく。そして、成形が終われば釉薬を塗り、炎を使い一気に焼き上げた。

「自分が作品になってみるってのは貴重な体験じゃないかな。」
 晶の前には数分前まで陶芸家であった青い陶器人形が鎮座している。それは土偶と呼ばれる物に酷似していた。
 まるで衣類を思わせる文様を描きながらも随所に何故か厭らしさを感じる突起や割れ目のついたその土偶の顔は陶芸家の特徴を見事なまでに捉えていた。

「これなら未完成の作品を全て運ぶ事も出来そうだね……なんで僕に近づいてくるのかな?」
 改めて陶芸品を運ぼうと思った所で晶は人形達がにじり寄ってきている事に気が付いた。そして、晶が問い掛けようとした瞬間、人形達が一斉に晶へと飛び掛かってきた。
「うわぁっ! なにを……あぁっ!? 捏ねな……むぐぅ!?」
 晶に組み付いた人形達はその手を使い晶の体を捏ね繰り回してゆく。当然、晶は人形達へ止まる様に命令を出そうとするがいつの間にか頭の横まで到達した人形に口を捏ね繰り回されてしまい喋れなくされてしまった。
(うぅ……まさか、服装だけでなく思考まで陶芸家そっくりだなんて……ダメだ……意識が遠のいて……。)
 晶は人形達の瞳に陶芸家と似た怪しい輝きが宿っている事に気が付いた。そう、陶芸家が作り出された作品から生まれた人形達は陶芸家と同様に人を材料にして作品を作ろうとする本能を持ち合わせていたのだ。
 そして、自分達に仮初の命を与えた晶からの許しを得た人形達は揚々と作業場に置かれた材料、陶芸家と晶を使い作品を作り始めたのだ。

 数分後、晶は何処か厭らしく感じる黄色の土偶に成り果てて陶芸家の隣に鎮座していた。
 そして、晶が陶芸品にされて意識が失った事により力の供給が途絶えた人形達も次々と元の陶芸品へと戻っていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リプリー・エイプリル
恨みはらさでおくべきか ブツブツ
はー この感情は取りあえず隅に置こう

長物を使うと陶芸品を壊しそうだ 筆はしまって籠手に持ち変える
人を材料にしたものだからというのもそうだけど 芸術品は【優しさ】を持って扱うのが敬意だよね
手段をはき違えていようときっと魂を込めて作っているのは事実だろうし
周囲に被害が出ない芸術品は……これくらいか
ボクは器用な方じゃないしサポート重視で動く
近づかれた場合のみ護身の近接戦を試みる
【耐性】【オーラ防御】【武器受け】で自衛しつつ仲間を【かばう】事を意識
籠手に攻撃を受けたら籠手を 最悪腕ごとパージして逃れる
油断の隙をついて指定UCを不意に取りだし 【騙し討ち】を試みるよ


在原・チェルノ
影朧たちを操って人々を美術品に変え、
何よりあたしにあんな恥ずかしい思いをさせた罪は重いわよ!
流星忍姫チェルノ、参ります!

でもこの状況って人質取られてるのと変わらないのよね
だから少しでも他の猟兵が戦いやすいように状況を整える
サイコキャノンの【目潰し】で影朧の目を眩ませた隙に【念動力】で陶芸品を部屋の隅に移動させて動き回れるだけのスペースを確保
もちろん時間はかかるしその間に影朧の攻撃が来ないとも限らないけど、それも計算のうち
捏ねようとしたところを【カウンター】の【サイキックブラスト】で感電させちゃうんだから!

…まぁ、失敗したらあたしも無様なオブジェにされちゃいそうだけど

※NGなし・アドリブOKです




「うぅ、あんな恥ずかしい姿を晒す事になるなんて……。」
 陶芸家の作業場への突入の順番を待つ猟兵達が屯する通路でチェルノは通路の隅で顔を真っ赤にして蹲っていた。
 チェルノは先の館内の戦いにおいて淫らな美術品にされてしまった。更に彫像から元に戻った直後に絶頂をする姿を治療を行った猟兵に晒してしまったのだ。
「なんでそれもこれもあんな変態を匿っていた変態がわるいのよ!」
 運よくチェルノの痴態を見た猟兵は女性であり人数も1人だけであった。それでも嬌声と達する姿を姿を間近で観察された事はチェルノの心に傷をつけるには十分であった。

「恨みはらさでおくべきか……ブツブツ。」
 羞恥に悶えるチェルノの隣では彫像にされたチェルノを助けた猟兵であるリプリーが座り込み、怨嗟の呟きと共に床に落書きをしていた。
 リプリーは館内での戦いにおいて美術品にされる事無く彫刻家の影朧の無力化に成功していた。しかし、リプリーは彫刻家との戦いの最中に行われた口論でその心を深く傷つけられていた。
 彫刻家自身はリプリーの彫刻としての付加価値の一つとしてそれを挙げたにすぎない。だが、事故を原因とするサイボーク化により今後の成長が極めて怪しい状態のチェルノにとって貧相な体はこれ以上ない程のコンプレックスであった。

「はー……この感情は取りあえず隅に置こう。チェルノさんもそろそろ気分を切り替えていきましょうよ。」
「……そうね……まだあたし達にはやるべき事が残っているのよね?」
 暫くして怨嗟の呟きを一通り吐き終えたリプリーは立ち上がると未だに悶えているチェルノの肩を揺すった。するとチェルノも一瞬体を震わせたものの、のろのろと立ち上がった。
 そして、リプリーが怨嗟の呟きをしながらも最低限取集していた陶芸家の能力と陶芸家が待ち受ける作業場の情報を元に二人は相談を始めた。

「この状況って人質取られてるのと変わらないの……。」
「少し前までは陶芸品を守る結界があったみたいだけど、それも壊れたちゃったみたいだね。」
 やはりというべきか問題になるのは作業場内に置かれた大量の陶芸品にされた一般人の存在だ。陶芸品の多くが元に戻る事が叶わない事が予想されているものの、だからといって壊していい理由にはならないのだ。
 お陰でリプリーは武器である大筆を振るう事が叶わず、チェルノも派手に動き回るのは厳しい状況だ。最終的に二人は陶芸家を無力化するには火力が足りないという結論に達した。
「ここはあたし達が後に続く猟兵が戦いやすいように場を整えるのが良さそうね。……流星忍姫チェルノ、参ります!」
「それじゃあ、ボクはチェルノさんのサポートに回るよ。」
 こうして行動方針を決めた二人は陶芸家の作業場へと突入した。


「……陶芸家がいない? どこに行ったんだろう。」
「おかしいの。この部屋の出入り口は1つだけの筈よ。」
 入室直後に陶芸家の奇襲を受ける事も視野に入れて陶芸家の作業場へと突入した二人だが、不思議な事に作業場の中はもぬけの殻であった。
 見渡す限りでは作業場内に人が隠れる事が出来そうな場所はなく、換気口等も人が入るのは到底無理な大きさであった。
 更に作業場の床一面に陶芸品が散らばっていた。最初は戦闘の余波で落ちた物と考えた二人であったが不思議な事に陶芸品には傷一つついていなかった。
「なんで陶芸品が床に散らばっているんだろう?」
「陶芸家の姿が見えないのは正直不気味なの。だけど、あたし達の目的を達成する上では好都合なの。」
 結局、陶芸家を見つける事が出来なかった二人は当初の目的である猟兵達が動き回るスペースを確保すべく、陶芸品の移動を始めた。

「むむむっ……! リプリーちゃんは床に落ちている陶芸品をお願いします。」
「わかりました。……芸術品を壊さない様に優しく敬意を持って扱わないとね。」
 チェルノが念動力を使い陶芸品の乗せられた台をゆっくりと移動させてゆく。リプリーも床に散らばっている陶芸品を拾い上げては近くの台へと置いてゆく。
 リプリーは陶芸品を回収をする傍らで陶芸品の見分をしていた。
「手段を履き違えているけれど、『魂』を込めて作っているんだね……あれ?」
 拾い上げた陶芸品は何れも素晴らしい出来であり、何よりも陶芸家の魂が籠もっていた。もしも、この陶芸品が人を材料にしている事を知らなかったらリプリーは素直に称賛していただろう。
 そして、陶芸品を拾い続けるうちに不自然な陶芸品がある事に気が付いた。その陶芸品は土偶に酷似した2体の陶器人形なのだがどういうわけかこの人形からは芸術家としての魂が籠もっていないのだ。
 リプリーは黄色い土偶を拾い上げると見分を始める。衣類を模した模様が刻まれている筈なのに何故か厭らしく見えるそれはやはり芸術家としての魂が籠もっていなかった。

「なんでこの陶器人形は手抜きになっているだろう? 取りあえず、もう片方も調べて……うわぁっ!?」
「リプリーさん!?」
 陶器人形の出来に納得のできないリプリーはもう一つの青い陶器人形を調べようと手に取ろうとした。だが、青い陶器人形を掴んだ瞬間、陶器人形から炎が湧き出しリプリーの手を包み込んだのだ。
 咄嗟に腕を振るう事により炎を掻き消そうとしたリプリーだがどういうわけか炎は消えない。更に手を包み込んだ炎は生物の様にリプリーの腕を駆けあがって来たではないか。
 明らかに異常な挙動をとる炎に危機感を抱いたリプリーは自身の腕をパージする事により炎から逃れた。果たして、リプリーの抱いた危機感は正しかった。
「ボクの腕が捏ね繰り回されているんだよ……。」
「あぁっ!? 陶器人形も変形しているの!」
 炎に完全に包まれたリプリーの腕が粘土の如く変形を始めたのだ。同時に炎を噴き出していた青い陶器人形も一緒に変形を始めてゆく。
 暫くして炎が消えればそこには灰色のパレットを手にする陶芸家の姿があった。どういうわけか陶芸家は黄色の陶器人形になっていたのだ。

「……まさか、自分自身も陶芸品になるなんて!」
「いやぁ、貴重な体験になったね。あの子はお礼代わりに後で隅々までお手入れしてあげないと。」
「リプリーちゃん、眼を瞑って!」
 まさかの事実にリプリーが唖然とする中、チェルノのサイコキャノンの光が作業場を包み込んだ。


「うあぁ! 目がぁ!?」
「リプリーちゃん! 今の内に撤退するの!」
「わ、わかったんだよ!」
 幸か不幸か陶芸家が出現した時点で当初の目的である陶芸品の移動はほぼ完了していた。目的を達している上にリプリーが片腕を陶芸品にされてしまった今、長居は無用と判断したチェルノは咄嗟にサイコキャノンを使い陶芸家の目潰しをしたのだ。
 そして、目潰しに成功したチェルノはリプリーの手を取り作業場の出口へと移動を始める。
 そして、二人が作業場の扉を開こうとした次の瞬間、二人の頭上に炎が降り注いできた。チェルノは咄嗟にリプリーを突き飛ばす事により炎の範囲外に出す事に成功したがその代償として自身は炎に包み込まれてしまった。

「いや……からだが……あぁあああ!?」
「チェルノさん!?」
 炎はチェルノの体を容赦なく捏ね繰り回し変形させてゆく。暫くしてチェルノ体の変形が止まれば炎は勢いを増し、チェルノは蒸気の様なモノを拭き上げながら焼き上げられてゆく。
 そして、炎がチェルノから離れればそこには1つの陶芸品が鎮座していた。チェルノは先程まで陶芸家が変化していた土偶を思わせる造形の陶器人形に成り果てていたのだ。

「ふふ、如何ですか? 先程までわたしが変化していた者とは段違いのできしょう?」
「あぁ……チェルノさん……。」
 陶芸家が変化していた土偶と同仕様のそれはチェルノの豊満な体つきを見事なまでに再現しており、胸の先や股間部が繊細に作り込まれていた。
 更に体に刻まれた模様も巧妙であり、見る者により古代の衣装を着こなす人の様にも厭らしい部分を強調する様に縄で縛られた人の様にも見えた。それは正しく匠の技でありチェルノであった陶器人形からは陶芸家の魂を感じる事が出来た。

「さて、あなたも直に仲間に加えてあげましょう。一緒にいた人達との対比になってとても素晴らしい作品になりますよ。」
「っ!? あなたもボクの事を貧相だと……駄目だボク、ここで怒りに身を任せたら相手の思う壺だ。」
 陶芸家から放たれた言葉にリプリーは一瞬血が頭に登り陶芸家を打ちのめしたいという衝動に駆られる。だが、ここで怒りに身を任せればリプリーはチェルノの二の舞となってしまうだろう。
 ギリギリの所で踏みとどまったリプリーは陶芸家に突撃する代わりに懐から?マークが絡み合った造形のオブジェを陶芸家に投げつけた。

「あなたは確かに素晴らしい芸術家だよ。だけど、ボクはあなたの作品になるつもりはないよ!」
「あなたもご同輩でしたか。うん、なかなか独創的で良い即品だと……まぶしっ!?」
 掲げられたオブジェからリプリーを自身と同じ芸術家と判断した陶芸家はオブジェを受け取ると間近で観察しようとした瞬間、オブジェは陶芸家の顔面に光を放った。
 リプリーは陶芸家の眼が再び眩んだ事を確認するとチェルノであった陶器人形を拾いあげ作業場を後にした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シズホ・トヒソズマ
棗さん(f02014)と

そうですか、彼女は転生しましたか…
まあ転生したならばどこかの人形店で会えるかもしれませんしね
気を取り直して行きましょう!

1章で使っていたマスク内空間内に実は隠れて貰っていた棗さんを出し共に行動

回転床で粘土にされつつ、UCで摩擦抵抗を失くす粘液を周囲や真下に発射

周囲に放った物で陶芸品をコーティングし衝撃から守ります
真下の物に2人でスリップする事で回転床から抜け
遠心力でそのまま敵目がけて突っ込みます

棗さんのUCで3人一緒になり独楽状態に

最後は棗さんと粘土化し合わさり陶芸品にされます
陶芸品デザインはお任せします
あぁん、棗さんと合わさって芸術にされちゃうぅ!でもそれもありぃ!


宝海院・棗
シズホちゃん(f04564)と

「轆轤と聞いたら私も好きだよー」

相手のSPD技で高速回転(自身も一緒に回転することで回転を加速)を楽しみつつ、シズホちゃんが美術品を壊さないように保護する工夫を終えたところで行動開始!

粘液の滑りを利用してのW体当たりから自分もUCを使用!3人揃ってぐちゃぐちゃがんじがらめ(螺旋状に捻りあったり結び合ったり)で密着しながらこれまた超光速回転!一切動かずその場で轆轤のように加工されて1個のマーブル独楽に!

最終的には私とシズホちゃんの2人で超光速回転しながら粘土化して混ざってマーブル模様(クリアペールブルーと紫?)になり轆轤加工

※終始ポジティブ&可能な限りのエロ描写希望




「そうですか、彼女は転生しましたか……。」
 シズホは館内の戦いにおいて人形遣いの影朧と対峙するも人形にされてしまった。だが、魂を封印されずに済んだ事を良い事に人形として扱われる事を堪能していた。
 暫くして元の姿に戻ったシズホは改めて仮初の命を与えられた人形達と少女の会話の詳細や応接間から出ていった後に少女がどうなったかなどの情報を聞いていた。
「転生したならばどこかの人形店で会えるかもしれませんね。」
 美術商に騙されて転生する為に人々を人形に変えていたという事実にシズホは心を痛めた。だが、最終的に少女が無事に転生する事が出来た事を聞いてシズホは安堵した。
 勿論、少女を騙した美術商に対して思う所があった。だが、肝心の美術商が既に水差しにされるという因果応報にして自業自得な結末を迎えていた為にシズホは美術商の事は忘れる事にした。
 そして、今回の依頼に連れて来た人形達が偶然仮初の命を与えられた人形達と共に美術品の回収へ向かうのを見送ると作業場の扉へと向かい合った。

「それでは、気を取り直して最後の影朧を鎮めに行きましょう! そういえば……棗さん、そろそろ出てきても大丈夫ですよ。」
「はいはーい! 呼ばれて飛び出て棗ちゃんだよ♪」
 作業場の扉に立ったシズホが懐に入れていたマスクを取り出しすとマスクに向けて呼びかけた。周囲の猟兵達がシズホの行動に首を傾げる中、マスクの中から宝海院・棗(もち・ぷに・とろり。・f02014)が飛び出して来た。
 実はシズホは今回の依頼に棗と共に参加していた。だが、美術商の持ち物検査対策としてマスクへと装備品を収納している最中、どういうわけか棗がマスクの中で隠れていたいと言い出したのだ。
 シズホが転移先の世界で協力者を確保する際に使用するその空間は中に入った者がどんなに清楚な者であろうと重度の被虐嗜好になって出て来る。棗はシズホのマスクに吸い込まれた者がどのような過程を経て重度の被虐嗜好になるのかが酷く気になったのだ。
 自身の扱う空間の性質を良く知るシズホは棗のお願いを断ろうとした。しかし、棗のあまりにも強い押しに負けてしまい最低限必要な確認をした上でマスクの中の空間に入れる事を了承した。

「棗さん、何かおかしい感じはしませんか?」
「大丈夫だよ! シズホちゃんは心配性だね♪ そんなことよりも私に現状を教えて欲しいんだよ!」
「それならよいのですが……。まずは部屋の中にある陶芸品は絶対に壊さないでくださいね。」
 一通り観察してシズホの様子に特に異常がない事を確認したシズホは作業場の状況と陶芸家の影朧について棗に話し始めた。この時、シズホは棗が身に纏うレオタードが僅かな起伏も浮き上がらせるほどにピッチリと張り付く物にすり替わっていた事に気が付いていなかった。


「うわぁ~本当に陶芸品だらけだね♪」
「……棗さん、くれぐれも壊さない様にしてくださいね? だけど、陶芸品が全て部屋の隅に置かれているのは好都合です。」
 シズホに聞いた話通りに陶芸品に溢れた作業場に棗がはしゃぐなか、シズホは陶芸品が部屋の隅へと移動させられている事に笑みを浮かべていた。
 というのも今の陶芸品の配置がシズホの目的を達成する上で都合が良かったからだ。作業場の状況確認を終えたシズホは一角で陶芸品の整理をする陶芸家へと向き合った。

「性懲りもなく来たか。さて、あなた達は何にしてあげましょうか。」
「そんな事を言っていられるのは今のうちです! 棗さん、いきますよ!」
「わかったよ♪」
 ゆっくりと近づいてくる陶芸家に対しシズホは両手に糸を展開してゆき棗もその身を無色透明に変化させてゆく。流石の陶芸家も明らかに奇襲を狙う布陣を警戒したのか歩みを止めた。
 動きを止めた陶芸家に対しシズホはドーム状に展開した糸に篭る事により炎が飛んできても対処できるように備えてゆく。だが、籠城の態勢に入ったシズホに対し陶芸家は怪しい笑みを浮かべた。
 次の瞬間シズホの世界が高速で回転を始めた。

「色々対策を考えたみたいやけど、ろくろの事は知らんかったみたいやね?」
「あわわわっ……目が回るぅううううう!?」
 いつの間にかシズホの足元に巨大なろくろが出現していたのだ。シズホを上に乗せたろくろは陶芸家の笑みを合図に高速で回転を始めた。
 当然ながら足元にろくろが出現している事に気づいていなかったシズホはろくろの回転に巻き込まれてしまう。ドーム状に展開されていた糸はシズホを中心に巻き取られてゆき、シズホの動きを更に封じてゆく。
「そのまま素敵な形の粘土になるまで回したる。」
「あぅうううう!」
 時間がたつにつれてシズホの体が螺旋状にねじ曲がってゆく。陶芸家の生み出した特性のろくろの回転に巻き込まれた者は段々と柔らかな粘土の様になってゆくのだ。
 このままではシズホは体の捻じれた粘土人形にされてしまうだろう。しかし、シズホの狙いはこのろくろによる攻撃にあった。

「……目が回るけどぉお……これを待ってたのよぉおおお!」
「うわあぁああ!? ウチの作品に変な液体が!」
 ろくろの速度が最高潮に達しシズホの体の変形が本格化した直後、シズホの体から黒い液体が散布され始めたのだ。
 高速回転により勢いのついた液体は部屋の隅に置かれていた陶芸品へと降り注ぎ黒く染めてゆく。陶芸家は自身の作品に付着した液体を拭きとろうとするがつるつると滑ってしまい落とす事が出来ない。
 それならばとろくろを止めようとすればろくろに付着した液体が原因で回転は止まらない。陶芸家がろくろの異常に慌てふためく中、シズホも別な意味で慌てていた。

「なんで……棗さんまで……巻き込まれているんですかぁ!?」
「それは……私が轆轤でぐるぐる回るのが……好きだからだよー!」
 いつの間にかろくろの上にシズホだけでなく棗までもが乗っていたのだ。当初はシズホが陶芸品の保護を行い、陶芸家が棗を撹乱し時間を稼ぐという計画であった。
 だが、攪乱をするはずの棗が一緒にろくろの上で回っているのだからシズホが慌てるのも無理はないだろう。
「それにぃ……私も一緒に回った方が……早く終わるしキモチいいと……思うんだよね♪」
「ちょっとまって……棗さん、一体何を……うわぁあああ!?」
 棗がさらりと溢した言葉にシズホが青褪めた。棗はしっかりとマスクの異空間の影響を受けていたのだ。
 今の棗はどんな危険な攻撃でも進んで受けに行く重度の被虐嗜好の持ち主と化している。そんな棗が無様な陶芸品にされてしまうろくろに乗る事を我慢できるわけがなかった。
「あぁん……このままじゃ棗さんと合わさって……芸術にされちゃうぅ……でもそれもありぃ!」
「はぅう……きっと怒った陶芸家さんにぃ……凄く厭らしい陶芸品にぃ……されちゃうんだよぉ!」
 棗はろくろの回転でねじ曲がった胸と両手からリボンを展開するとろくろの回転を更に早めてゆく。ろくろの回転が早まったことにより二人の体の変形は早まりあっと言う間にマーブル模様の球体へと変化してゆく。
 そして、回転速度が最高潮に達した瞬間、シズホと棗であった塊はろくろから抜け落ちて陶芸家へと突撃した。


「ちょっ!? こっちにくるな! ぬわぁぁあああ!?」
 突如地して突撃してきたマーブル模様の塊に陶芸家は成す術もなく轢かれた。そして、マーブル模様の塊は独楽の様な形その場で高速回転しマーブル模様の液体を撒き散らし始めた。
 独楽から撒き散らされた液体は先程とは比べ物にならない勢いで陶芸品へと降り注いでゆく。そして、独楽が回転を止める頃には作業部屋の殆どがマーブル模様に染まっていた。

「うぅ……酷い目に遭ったわ……うぎゃぁあああ!? わたしの作品がぁああ!?」
 暫くしてマーブル模様の独楽の中から這い出してきた陶芸家は絶叫した。自分の作品はおろか作業場全体がマーブル模様に染め上げられているのだから当然の反応だろう。
 陶芸家は必死に作品にこびり付いた液体を取ろうと奮闘するがやはりつるつると滑ってしまい取る事は叶わなかった。

「あはははは……よくもわたしの作品を台無しにしてくれましたね……! いいでしょう、あなた達は望み通り厭らしい作品にしたる!」
 自身の作品が台無しにされた事実に唖然とする陶芸家であったがそれは直ぐに怒りへと変化する。怒りの矛先は当然この状況を作り出したシズホと棗だ。
 陶芸家は二人であった塊を両手で持ち上げると新たに生み出した轆轤の上へと叩きつけて全力で捏ね繰り回す事に酔い釉薬を絞り出し、粘土の塊へと変えてゆく。

「まずは大まかな形を整えて……。」
 陶芸家はろくろを回転させると粘土の形を整えてゆく。程なくして出来上がったのは瓢箪に近い形ながらも広い口を持つ壺だ。
 続けて陶芸家は表面を滑らかに整える為の牛ヘラ……ではなく先がギザギザになった細工用のヘラだ。陶芸家は壺の形状を歪めない様に注意しながら壺の内側に波打つヒダを刻み込んでゆく。
「内側が終われば次は外側の装飾や。」
 内側の細工を終えた陶芸家は予め取り分けておいた粘土とヘラを使い装飾を施してゆく。下側の膨らみ部分に4つの鏡餅の様な形の飾りを貼り付け、括れの部分に臍を思わせる窪みを掘り込んでゆく。
 更にぽっかりと拡がった口の部分の2か所を少しだけ尖らせるとその部分を中心に装飾を施してゆく。そして、尖った部分の先端と括れの臍を思わせる凹みの付近を繋ぐように細長い取手を取り付けた。

「後は釉薬を塗って焼き上げれば完成や。」
 壺としての造形を終えた陶芸家は壺にマーブル模様の釉薬を塗ると炎で包み込み焼き上げた。こうして完成したのはペールブルーと紫が複雑に入り混じった壺だ。
 一見何の変哲もない瓢箪型の壺だがその手の知識がある物が手に取ればとても卑猥な物である事が直に分かる造形をしていた。外部には根元まで膨らんだ乳首を模した飾りや臍を思わせる造形が施され、口や内部構造に注目すれば厭らしく拡がった秘所を模している事が見て取れるだろう。
 挙句の果てに取手部分が細長く引き伸ばされた股間部の敏感な突起を模している。結論としてその壺は女性の恥ずかしい部分をモチーフにした極めて厭らしい壺であった。

「望み通り厭らしい美術品になった感想はどないや? ふふっ嬉しいみたいやな。」
 こうして陶芸家により厭らしい壺にされてしまったシズホと棗は取っ手部分を優しく撫でられてぶるりと小刻みに震えた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

天星・雲雀
「美術商の悪事は、これで終わり。まだ助かる可能性の有る人を救出するために。陶芸家さん、あなたを撃ちます!」

【行動】UC獅子の座流星弾を使います。

「オトモ!陶芸家さんのみを攻撃、部屋の物には触れないように。炎が飛んできたら、火力で押し返して、火力勝負ならこっちが上です!あと、極力陶器から離れた位置取りで戦って!」(躱した際の流れ弾で、陶器が壊れたり焼かれたりしたら困るので)

「魂行方不明の、お人形は、自分が預かります。魂入りの装飾品が発見されたら。猟兵の天星雲雀まで御一報ください。丁重な状態管理をしつつ御待ちしております」
(元の生活に帰っていくのが一番ですからね。待ってる人も居るでしょうし)


御園・桜花
「貴女自身が貴女を裏切り貶める…お可哀想に」

目を合わせ会話できるなら特に部屋に入らずUC「桜吹雪」使用
陶芸家のみ切り刻む
敵の攻撃は第六感や見切りで躱す

「貴女は今、何のために作品を作っているのでしょう。高額な品で虚栄心を満たすためでしょうか」

「命を使えば誰でも同じ魂の籠った品を作れます。でもそれに必要なのは、魂を込める能力だけ。機械で何万と作る大量製作品と何が違いましょう。寧ろ魂も込めず作れる大量製作品の方がまだ価値があります。全ての製作を他者の魂に頼り手を抜いた…生前の貴女の、努力も技術も想いも、全て裏切っているではありませんか」

「創作にかける想いがあるなら…願って下さい、転生を」
鎮魂歌で送る




「ぜぇぜぇ……どうにか床の汚れを落とす事ができたわ。」
 陶芸家は刺客達により汚された作業場を清掃していた。作業場を汚すマーブル模様の液体は妙に滑り不用意に踏めばそれだけで転倒しかねない危険物だったのだ。
 部屋中がそんな液体に塗れた状況では戦うどころではないと陶芸家は液体の除去を始めた。幸い、液体は炎による急速乾燥とろくろの高速回転を組み合わせる事により除去が可能であった。
「やけど、この方法では作品についた液体を落とせまへん。」
 陶芸家は能力の酷使による疲労と引き換えに作業場の床から液体を除去する事には成功した。しかし、脆く高熱に弱い陶芸品にこの方法は使えず、液体を取る事は叶わなかった。
 見る者が感銘を受けて喜ぶ作品を作る事を目的とする陶芸家にとってそれは何よりも堪えた。或いはこれまでで一番のダメージと言えるかもしれない。

「少し見ない間に随分と随分と様変わりしましたね……。」
 目も当てられぬ状態となった作品に陶芸家が項垂れる中、雲雀が作業場へと入室した。


「美術商の悪事は、これで終わり。」
 雲雀はマーブル模様になった美術商であった水差しへと視線を向ける。水差しからは魂が欠片も感じられず正真正銘只の陶芸品に成り果てていた。
 それは部屋に置かれた陶芸品の多くに共通する事だが、一部の陶芸品からは微弱ながらも魂を感じ取る事が出来た。
 やがて、雲雀の入室に気が付いたのか陶芸家ははのろのろと立ち上がると構えと取った。
「まだ助かる可能性の有る人を救出するために。陶芸家さん、あなたを討ちます!」
 雲雀は陶芸家への宣言と共に鬼灯を思わせる橙と青の2つの亡霊ラムプを翳した。するとラムプの中から赤と青の2つの狐火『オトモ』が飛び出し雲雀の周囲を飛び回り始めた。

「オトモ! 部屋の物には触れないように陶芸家さんのみを攻撃して。あと、炎が飛んできたら、火力で押し返し極力陶器から離れた位置取りで戦って!」
「わざわざ向かって来るなんてジブンらから作品にして……熱っ!?」
 雲雀の指示を受けた2体のオトモ達はある時に陶芸家の頭上、またある時は陶芸家の背後へと素早く移動しながら陶芸家へと突撃する。
 陶芸家は突撃してくるオトモ達をその手で掴み自身の作品に変えようとする。しかし、実体を持たない狐火であるオトモ達を掴む事は叶わず逆にその手を焼いた。

 それならばと陶芸家は雲雀を陶芸品に変えようと炎を放った。するとオトモ達が雲雀と陶芸家の炎の間に割り込み激しく燃え上がってゆく。
「火力勝負ならこっちが上です!」
「そんな、ウチの炎が食べられた!? こ、来んとって! うわぁああああ!!」
 実態を持たない存在同士である為か陶芸家の炎とオトモ達は互いに鬩ぎ合う。しかし、陶芸家の放つ炎が1つであるのに対しオトモ達は2体だ。
 次第に陶芸家の炎は抑え込まれてゆきオトモ達に飲み込まれて消滅した。そして、炎を呑み込んだ2体のオトモ達は勢いそのままに陶芸家を包み込み陶芸家の絶叫が作業場に響き渡った。

「うぅ……。」
「完全に焼き尽くすつもりだったのですが。」
 暫くしてオトモ達が離れればそこには全身に火傷を負った陶芸家が横たわっている。生きている方が不思議な有様だが陶芸家は辛うじて生きていた。
 しかし、今の陶芸家では戦う事は愚か立ち上がる事すら儘ならないだろう。雲雀は陶芸家は無力化されたと判断した。
「ここまで行けばもはや抵抗はできないでしょう。後はよろしくお願いします。」
「承りました。後は私に任せてください。」
 雲雀は陶芸家を一瞥すると作業場を後に下。そして、雲雀と入れ替る様に桜花が作業場へと入室した。


「貴女自身が貴女を裏切り貶める……お可哀想に……。」
 桜花は全身が焼き焦げた状態で横たわる陶芸家へと悲痛な面持ちを向ける。作業場には無数の陶芸品が置かれているがそれはそのまま陶芸家が生前を貶める行為を重ねた回数に等しかった。
 当の陶芸家は既に既に満身創痍であり、陶芸家を無力化する為に桜吹雪を振るう必要はないと判断した桜花は桜吹雪を銀盆へと戻してゆく。
「……桜の精なんか……とうとう年貢の……納め時やね……。」
 まともに動けないながらも桜吹雪を展開させていた桜花を見た陶芸家は途切れ途切れに言葉を紡いでゆく。その言葉は諦観に満ちており、戦意や逃げる意思は感じられなかった。

「陶芸家さん、貴女は何のために作品を作っていたのでしょうか。高額な品で虚栄心を満たすためですか?」
 桜花は陶芸家へと問い掛ける。その眼差しは陶芸家が転生するに値するか見定めるようであった。
 対する陶芸家は少しの沈黙の後にぽつりと返答する。
「……ウチはただ……人が喜ぶ作品を作りたかっただけや……。」
 身を震わせる陶芸家を傍目に桜花は改めて陶芸品を観察する。陶芸品はマーブル模様の液体により人の命によって齎されていた陶芸品としての生命力を筆頭とする要素が覆い隠されていた。
 だが、それらの要素が覆い隠された事により作品に篭められた陶芸家自身の魂と想いの片鱗を桜花は感じ取った。それは人の魂が齎す要素を抜きにしても陶芸品が素晴らしいと思える程に強く純粋であった。
 そして、陶芸家の作った作品の嘘偽りのない良さを知った為に桜花は陶芸家が人の命を使い作品を作る事への無意味さが更に強まった。故に桜花は命を使い作品を作る事の愚かしさを説いてゆく。

「確かに命を使えば多くの人が喜ぶ素晴らしい作品を作れるでしょう。ですが、それは魂を篭める能力さえあれば誰でもできる事です。」
「……それは……。」
「条件さえ整えば誰でも作れる作品なんて機械で何万と作れる大量製作品となんら変わりはありません。寧ろ、魂も込めず作れる大量製作品の方が悲しむ者を出さない分まだ価値があります。」
「……………。」
「それに私にはあなたは人の命を使わなくても十分に素晴らしい作品を作れている様に見えます。何故あなたは人の命を使う事に拘るようになったのですか?」
 それは普通は影朧としての本能によるものと断定され敢えて確認までもない事だ。しかし、館内を駆け回っていた影朧の少女が凶行に及んでいた理由を知る桜花には確認せずにはいられなかった。

「……人を使わんと作った作品を喜ぶ者はいんかったと……美術商はそう言っとった……。」
 陶芸家は確かに転生する事は望んではいなかった。だが、積極的に人の命を使った作品を作ろうという意志もなかったのだ。
 しかし、私腹を肥やす事を優先した美術商により陶芸家は積極的に人を襲う様に誘導されていた。その事実に桜花は怒りを抱いたが、同時に陶芸家を転生へ導く為の道筋を見つける事にも成功していた。

「陶芸家さん、あなたは騙されています。」
「……なんやて?」
 桜花は美術商が陶芸家と同様に匿われていた影朧達に行っていた所業を話した。初めは桜花の言葉を疑っていた陶芸家も転生を望む影朧を凶行に及ばせる様に誘導した話を聞いた時には顔を顰めていた。
 更に桜花は畳みかけるように転生を望む影朧の凶行に巻き込まれた者達の末路を語ってゆく。そして、陶芸家は自分が人を使った作品を作る様に仕向けられていた事に気が付いた。

「あはははは……とんだ道化やな……笑い話にもならんわ。」
「……あなたも生前の努力も技術も想いも、全て裏切る行為だと思っていたのですね。」
 乾いた笑い声をあげる陶芸家の心は完全に折れていた。だが、それも仕方のない事だろう。
 何故なら陶芸家は元より人が喜ぶ作品を作れていたにも関わらず、自身を裏切り貶める行為に及んでいたのだから。
 そんな陶芸家の姿を見た桜花はこれ以上精神的に痛めつける必要はないと判断し、陶芸家を転生させるべく最後の問い掛けをした。

「あなたに創作にかける想いがあるなら……願って下さい、転生を……。」
「……今更転生なんて叶うのか……? まぁええ……もしも転生したウチと会う事があれば……その時はよろしゅう頼むわ……。」
 桜花は影朧を癒し転生へと導く桜の花吹雪を発生させると鎮魂歌と共に陶芸家へと向かわせてゆく。花吹雪となり陶芸家を包み込むとその姿を覆い隠してゆく。
 やがて桜吹雪が散るとそこに陶芸家の姿はなく、幾つかの桜の花弁が作業場の天井を突き抜け虚空へと消えていった。


 猟兵達の活躍により美術商に匿われていた影朧達は鎮められ桜吹雪と共に空へと還っていった。一番の大仕事を終えた猟兵達は合流してきた帝都桜學府の使者と共に後始末を開始する。
 ある猟兵は館内に散らばった美術品をエントランスへと集めてゆき、ある猟兵は美術商が何か隠していないかと執務室を荒らしてゆく。
「それでは、治療を開始します。」
 そして、桜花を筆頭とする治療用のユーベルコードを持つ者達は手分けをして美術品にされた者達を元に戻して回っていた。
 桜花は美術品を桜吹雪で包み込んでゆく。暫くして桜吹雪が晴れればそこには美術品の代わりに一般人が横たわっていた。
 美術品にされた者達が無事に戻れた事に桜花は微笑むと次の美術品を元に戻す為に桜吹雪を振るってゆく

「身元や魂が行方不明の、お人形は、自分が預かります。」
 多くの美術品が元の姿を取り戻す中、陶芸品や装飾品の存在しない人形等、元に戻れずにいる美術品も存在した。
 それらの美術品に関しては帝都桜學府が回収し元に戻す為の方法が見つかるか美術品にされた者の家族が名乗り出るまで丁重に保管する方向で話が進んでいた。しかし、回収予定の美術品の内、人形に対して雲雀が待ったをかけていた。
 雲雀は元に戻れずにいる人形の内、捜索願の出ていない者達の身元を引き受ける事を願い出たのだ。
「見ての通り、人形の扱いには一日の長があります。折角なら最高の状態でいられる方の元で待つ方がこの人達も安心できるでしょう?」
 人形遣いとしての様々な技術を披露しながら雲雀は帝都桜學府からの使者を説得してゆく。そして、見事人形達の身元引受人となる事に成功した。
「魂入りの装飾品や人形達の家族が見つかりましたら、猟兵の天星雲雀まで御一報ください。丁重な状態管理をしつつ御待ちしております。」
 雲雀は沢山の人形を抱きかかえると笑顔で帰路についた。

 こうして美術商と匿われた影朧達をめぐる戦いは終わりを迎えるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月17日


挿絵イラスト