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Forget-me-not

#UDCアース

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#UDCアース


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 少女が1人、ベッドに腰掛けて読書をしていた。
 美しい少女だった。いや、女性と言うべきか。どちらとも言いようがない歳の頃に見えた。開きかけの蕾の如き、若々しさと色香がないまぜになった不可思議な年代。
 艷やかな黒髪はビロードの光沢を放ち、小さいながらも人の目を惹きつけて止まない魅惑的なかんばせは憂いを帯びて、その小さい口から時折溢れる溜息は聞いた者の心を掴んだだろう。
 聞くものが居ればの話だが。
 少女が居るのは独房のようなものだった。
 魔術的な結界が敷かれており邪なるものは一歩たりとも内外に移動することを禁じている。
 外に通じる窓も無く、扉は分厚い特殊合金製。外の空気も太陽の光すら直接ここには入ってこない。
 代わりにこの部屋の中には生活をする最低限のものが揃っていた。
 浴室にトイレ、ベッド。食事を受け取るために扉に設けられた小さな窓。
 生きていくための最低限だが、少女が生きるには余りにも無機質な独房。
 ただ一つ、部屋の隅にうず高く積まれた本の山と、古いCDラジカセだけがかろうじて彼女の人間性を現しているようにも見えた。
 不意に衝撃が走る。
 地震とは違う、不規則で暴力的な揺れ。まるで金槌でもって部屋そのものを殴打しているような。
 だというのに少女の瞳には動揺はない。
「嗚呼……」
 少女がもう一度溜息を吐く。今度のそれは憂いなのか、歓喜なのか、それとも。

●グリモアベース
「要点だけ言うと防衛戦だ」
 藤堂・藤淵は猟兵達を前に言い切った。
「場所はUDCアース。敵は邪教徒の集団。コイツラがある施設を襲撃し、邪神降臨のための鍵となるモノを強奪にくるって予知があった。予知された日まで多少の猶予はある。お前らは現地に飛んでもらってこのモノを奪われんように奴らを叩いてもらいてえ」
 成る程単純な内容だ。それで、保護すべきそのモノとは。
 猟兵達の当然とも言える質問に、藤堂は少しの間悩んだようだった。出来ることなら言いたくなかったとでも言いたげに。
「女だ。いや、女の子って言ったほうがいいのかね」
 その女の子の情報が各猟兵達に回る。
 宇治田(15)
 名前はない。
 母、宇治田・薫の娘。
 宇治田薫が邪教集団により拉致、監禁された時に身ごもった子供。
 宇治田薫は当時のUDCエージェント達により救助されたが既に精神を病んでおり、また何らかの祭事に使われていた形跡が有るため同組織の特別施設に保護された。
 その後間もなく宇治田薫は彼女を出産すると同時に狂死。
 子供は邪神を宿していることが確認された。
 ただちに結界によって封印するも殺すには至らず、今も同施設の地下深くで生存。
「邪教徒どもの目的はこの女の子の確保、邪神の完全復活が目的だ。とは言え施設の守りだって馬鹿にはならん。侵入経路は1つしか無いし来るタイミングも予知でバッチリ。お前さんらは待ち構えて好きなように料理しちまえばいい」
 簡単な仕事だよと、まったく嬉しそうでもないトーンで語る。
 なにが不満なのか。
「いや、この嬢ちゃんすげー可愛いんだよ。しかも趣味は読書と音楽鑑賞、人ともほっとんど触れ合ってない純粋培養の箱入り娘だよ? っかー、もったいねえ。後十年もしたらすげえいい女になるのになあ」
 そこまで言うならどうにかしてやればいい。当然の指摘に藤堂は頭をぺちりと叩く。
「無理。邪神はおっ返したり現世に降臨してるとこをぶっ壊すことは出来るけど、混ざっちまったもんを取り除くのはどーやっても無理。カフェオレはもう二度と珈琲と牛乳に分けられねえだろ? そーいうこと」
 結界、その部屋から出たら即座とは言わずともいつかは邪神として目覚めるのだそうだ。
 とはいえ彼女以外の人間が出入りするのは自由。彼女だけがその部屋からは出られない仕組みなのだそうだ。
「お前さんらが現地にいったらちっと顔見せて話してみてやってくんね? 完全に仕事と関係ねえ事だし、やらんくてもいいんだが……この嬢ちゃん年頃の女の子らしく恋とか愛とか、そもそも会話に飢えてるっぽくてな。どうせ邪教徒が来るまで暇だろ? 小遣いも出るからさ。頼むわ」
 頷く猟兵が出たことに気を良くした藤堂は、いつもより2割増しくらい景気よくテレポートを行うのだった。


サラシナ
 拙作に目を止めていただきありがとうございます。
 一章でやることは会話、とするも基本皆さんの自由に行動していただいて構いません。施設の防衛システムを再チェックしてもいいですし、職員から情報収集したってかまいません。極論すれば空き部屋みつけて昼寝してたって構いません。

 監禁された少女に何を話すかは皆さんの自由です。基本的に彼女はどんな話でも喜んで聞きます。
 今までした冒険の話、家族の話、恋や愛の話などは特に喜ぶでしょう。
 皆さんはキャラクターになりきって、どんな話をするか考えてみてください。
 事実を淡々と述べるだけではなく、どう感じたのかどう思ったのか等を加えるとよい話になるかと思われます。

 本シナリオは一応分岐がございます。お気をつけを。
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第1章 冒険 『重要人物を守りきれ』

POW   :    肉体言語は万国共通の優れた言語です。おはなし(脅迫)しようよ。

SPD   :    話術等の技術で相手の心を揺さぶる。

WIZ   :    相手立ち居振る舞いや言葉尻から推理し、確信に迫る。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フォルター・ユングフラウ
【WIZ】

名すら与えられず、邪神の繭として過ごすだけ…か
ふん、哀れだな
穢れ無き存在であれば、我の様な者とは極力触れ合わぬ方が良かろう
顔だけ確認した後、施設確認に行こう
ああ、ついでに…我の、黒の血玉と同じ意匠の指輪を渡しておくか
使い魔を宿さぬ単なる予備だ
かける言葉が見つからぬなら、せめて形で示すとしよう

念の為、防衛システム確認と併せて施設内構造を自身の目で把握しておこう
邪教徒は我らが叩く、それは問題あるまい
では、少女はどうなる?
我らが去った後は、飼い殺しか、邪教徒に略奪され供物となるしかないのか?
職員に、この辺りの事を尋ねてみるか
我らしくは無いが、戦闘に集中する為だ…あぁそうだとも

※アドリブ歓迎



 施設の廊下をフォルター・ユングフラウがずかずかと、まるで我が城のような傲慢さで歩く。
 彼女は宇治田の部屋に入って歓談すること無くこうして長いこと歩き回っているのだ。理由は防衛システム確認と併せて施設内構造を自身の目で把握する為、ということにしている。
「名すら与えられず、邪神の繭として過ごすだけ……か。ふん、哀れだな」
 見下すような言葉に何故か力がこもらない。これはなんだろう。
 事件の内容を聞いた時から離れずにある名状しがたき感情を、ユングフラウは持て余していた。
 支配者たる彼女には馴染みのない物で始末に困る。喉の奥に引っかかった異物のような感覚。
 件の少女に、予備とは言え自らの指輪を貸し与えたのも解せない。
 我が事ながら理由のはっきりとしない行動に首をかしげるしか無い。
 ただの弱者のはずだ。これまで死ぬほど、殺し尽くすほど見てきたはずだ。あの少女はただの餌。敵を誘き寄せ残虐に屠る為の。
 極論すれば守る必要はない。あからさまに害するのは他の猟兵との軋轢になるから態々しようとは思わないが、だからといって指輪を与えたのは何故か。
 わからない。
 妙に苛立つ。と、角を曲がった所で若い男性職員と鉢合わせた。
(丁度いい)
 八つ当たり、というわけではないが気になっていたこともある。男を壁に押し付けるようにして逃げられなくすると、耳元で囁くように尋ねてやった。
「尋ねたいのだがな? あの女、宇治田といったか? アレは我らが守り、去った後はどうなる」
「どうって……」
 生唾を飲み込む男。意図しなくともユングフラウの肢体は男を惑わすように出来ている。別に誘惑などしなくても構わない状況ではあるが、情報が素直に出てくるならそれに越したことはないだろう。
「飼い殺しか?」
「飼い殺し、というか、まあ、データ取りにずっと使われるんじゃ、ねえかな。今までと同じように。主任は理論上分離は不可能だっていってるし」
 男の熱を帯びた吐息が鬱陶しい。犬のようにはあはあと。
「哀れだとは思わないのか?」
「そりゃ……かわいそうだとは思うよ。でも、だからって何ができるんだよ」
 もはや興味は失せた。つまらん、とばかりに男の尻を蹴り飛ばして追い散らすと、正に犬のごとく尻尾を撒いて去っていった。
「なんなんだ」
 苛々する。男にではなく、自分の行動に。
 こんな事を聞いた所で仕事になんの関係があるというのか。全く無いと冷静な部分が断定しているだけに、尚更始末が悪かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

八上・玖寂
僕は自分の話をするより人の話を聞く方が得意でしてね、
職員から話でも聞きに行きましょうか。
聞きたいこともありますし。

UDCの施設と職員だそうなので、特に工作などは不要ですかね。
ゆるりと行きましょう。
【言いくるめ】【誘惑】を準備しつつ
【コミュ力】【礼儀作法】で【情報収集】がてら職員とお話でも。

ごく素朴な疑問なのですが、
何故かの少女を、生まれてすぐに殺さず今の今まで監禁し続けているのでしょうね?
彼女が死ぬことで出てくる邪神なんでしょうか。
そうであるならば、難しいですね。遅かれ早かれといった気もしますが。

善処はしますよ。手段は選びませんがね。



 八上・玖寂もまた、ユングフラウ同様に宇治田との歓談は望まず職員からの情報収集を行っていた。
 ユングフラウと違うのは明確に意図し、準備をしたところか。
 ターゲットに選んだのは30代後半程の女性職員だった。喫煙所に居る所がポイントだ。
 なにせ彼も喫煙者、吸う場所を探していたのだ。
「どうも。今回此方の防衛を行う猟兵の1人なんですが、少しお話を伺っても? 少しだけでいいんですが」
 礼儀正しく、かつ慇懃無礼にならぬよう、適切な距離感で。
 100%営業用の笑みを貼り付けて女性に近寄れば、整った顔の八上に女性は気前よく時間を割いてくれた。
 一服の間の軽い雑談。人は思いの外口が軽くなる。
「あ、火ありますか? どうも。……しかしどうにも今回の仕事は不思議でしてね。どうしてあの少女は生かされているんです? 今回のことのようになるなら火種でしかないでしょう」
「ああ、まあ猟兵さん達もそうだろうしね。私達も万が一の事考えてデータの処理やらなんやら。もう三日くらい家帰れてない状態なんだよね」
「大変ですね。じゃあそれこそ何故? まさか殺してしまうと邪神が復活するとか」
「それはない、って机上の話だけどね。あんな小さな子をそうする、なんて試したくもないけれど」
 常識的な反応だ。少女に対する心象はそれほど悪くはないのか。名前をつけずにあのような劣悪な環境に監禁を続ける現状と随分ズレている。
「おかしいですね。そんな方々が、あの子に名前もつけず、1人孤立させておく理由が私には思い浮かばないのですが?」
「……助からないからよ。これも机上の話だけど。余程のブレイクスルーが置きない限り今の技術じゃ不可能よ、邪神の分離なんて。でも研究用にデータは取らなきゃいけない。生かさず、殺さず……なるだけ情が移らないようにって、これはここの暗黙の了解なんだけどね。……軽蔑してもいいわよ?」
 挑むように疲れた笑いを浮かべる女は、3日の缶詰以上の何かに追い詰められているように感じる。
「いえ……心中お察しいたします」
「わかるの?」
「ええ、これでもそれなりに修羅場は潜っているので」
「そりゃそうか。ごめんね猟兵さん。なんか愚痴っちゃって」
「いえ、此方こそ貴重はお話、ありがとうございます」
 丁度煙草の火が消えていた。随分とまずい煙草だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

嶋野・輝彦
【POW】肉体言語は万国共通の優れた言語です

警備の職員集めて気合注入&抱きこまれている職員が居ないか調べさせる
【存在感】【コミュ力】【恫喝】部屋の机蹴っ飛ばして
「猟兵が来たからって安心して舐めた警備してんじゃねぇぞゴラァ、世界の危機…いや、違うな。お姫様(宇治田の娘)守って死ねるなら男の本懐だろ気合い入れろよお前らァ!」
「警備の強化、後は抱き込まれてるバカがいないか総浚いしろ職員だけじゃねぇ出入りの業者もだ、乱暴にしてもかまわん徹底的にやれ」
この時、警備の奴らも【第六感】で視線とか雰囲気とか怪しい奴がいないかチェックを入れる
俺は年頃のお嬢さんには教育上良くない人間だからな、出来る事をするだけよ



 嶋野・輝彦は1人、ある種の確信をもって警備の職員を集めていた。防衛に必要なことといえば責任者以下、現場についている者以外の全てが食堂に集められた。
 食堂なのは単純にそこ以外に大人数を収容できる場所が無かったからだ。
 全員に声が届くように、かつ大きな存在に見えるように気をはって。
 長机を蹴り飛ばした。
「猟兵が来たからって安心して舐めた警備してんじゃねぇぞゴラァ、世界の危機……いや、違うな。お姫様守って死ねるなら男の本懐だろ気合い入れろよお前らァ!」
 実際に化物と切った張ったをする超常の存在、猟兵の罵声だ。ベテランからルーキーまで全ての警備職員が怯えるようにして背筋を真っ直ぐに伸ばした。
「警備の強化、後は抱き込まれてるバカがいないか総浚いしろ職員だけじゃねぇ出入りの業者もだ、乱暴にしてもかまわん徹底的にやれ」
 そう、内通者はまず間違いなく居る。
 少なくとも15年間何事も無かった施設が急に襲われるのだ。何か変化があったはずなのだ。なければおかしい。
 元から悪い目つきを更に凶悪にして職員を睨んでいた嶋野。その第六感に、あからさまに雰囲気がおかしい男が引っかかる。
(こんな所で運使いたくねえんだけどな)
 まさか此の場で見つかるとまで思っていなかったが、日頃の行いが良いからだろうか。
 否、それはない。自分で自分にツッコミを入れながら人混みをかき分けながらソイツの元へ。
「な、なん」
「取り敢えず寝とけ」
 腹に一発。
 ざわつく周囲を追い散らして、人気のない倉庫に男を引きずっていく。
「俺は年頃のお嬢さんには教育上良くない人間だからな、出来る事をするだけよ」
 此処から先は、とてもじゃないが真っ当な猟兵には見せられない。

 簡潔にまとめてしまえば、家族を人質にとられたのだそうだ。
 警備の中でそれなりの役職をもっていたその男は良い情報源だったのだろう。洗いざらい情報を持っていかれて、今回の事件と相成ったのだと『お話』の結果わかった。
「俺らが居るってことは向こうには?」
「し、知られてる」
 舌打ち。この場に居ないグリモア猟兵に「何が『簡単な仕事だよ』、だ」悪態をつく。
 随分とハードな仕事になりそうだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロバート・ブレイズ
【SPD】
問答の時間だ。
「貴様が守るべき娘か。騒々しい貌を視る前に私の戯言に付き合い給え。ああ。勿論、読書を続けても構わない。聞き流すだけで充分だ。私はロバート・ブレイズ。冒涜の翁とも自称して在る。世界は真に既知だらけで滑稽だが、貴様ならば未知に視えるだろう。さて。質問だ。貴様は如何なる人間で在りたい。貴様は如何なる存在で認識されたい。人間に必要なものは個々の『証明』だと思考すべき。過去の骸も『証明』を求めてさまようものだ。故に我々は『証明』を定めなければ死に絶える。改めて訊ねよう。貴様は何処で貴様の『証』を掴みたい――私はロバート・ブレイズだが、何か問題でも! 簡単。単純な『証』で好い」



「さて、では問答の時間だ」
 全員でおしかけるには部屋は小さい。1人づつ行くことになった。まず最初に部屋に入ったのはロバート・ブレイズ。
 ノック。応えの声があってから入っていく。
 これもまた事前連絡は万全だったのだろう。職員らしからぬ老年の男性が入ってきても少女、宇治田は驚くこともなくきちんと立ち上がって挨拶をするのだった。
 箱入り、人との接触がまともにないことを思えば異常な程にしっかりした子供であった。
「貴様が守るべき娘か。騒々しい貌を視る前に私の戯言に付き合い給え。ああ。勿論、読書を続けても構わない。聞き流すだけで充分だ。私はロバート・ブレイズ。冒涜の翁とも自称して在る。世界は真に既知だらけで滑稽だが、貴様ならば未知に視えるだろう」
 開幕からマイペースに長口上を始めるブレイズ。その目には同情や、憐憫と言った情は無く相手を観察するような、深くて静謐な智性の輝きがあった。
 見たことのない人種だったのか宇治田はきょとんと見上げながら、「ロバートさん」とオウム返しに名前を繰り返すだけだ。
「さて。質問だ。貴様は如何なる人間で在りたい。貴様は如何なる存在で認識されたい。人間に必要なものは個々の『証明』だと思考すべき。過去の骸も『証明』を求めてさまようものだ。故に我々は『証明』を定めなければ死に絶える。改めて訊ねよう。貴様は何処で貴様の『証』を掴みたい――私はロバート・ブレイズだが、何か問題でも! 簡単。単純な『証』で好い」
「証? 証明、ですか?」
 余りにも強すぎる個我に面食らったのだろうか。宇治田がぱちぱちと瞬きをしながらブレイズの言葉をまたもやオウム返しにする。
 ブレイズは必要なことは話したと、じっと返答を待っている。
「私は……そうですね。ブレイズさんの仰っている事をちゃんと理解できているのか不安なのですが……」
「構わん。直感で出てきたものが得てしてこういう場合は真実を突く」
「普通で居たいです。学校に行って、勉強をして、友達とお話して、家に帰ったらただいまって言ってくれる家族が、ほしいかったです。それが多分、私が望む普通の『証明』なんだと思います。何処でと言われれば『外で』。これで、大丈夫ですか?」
「……UDCとしてありたいというわけではないか」
「え?」
「いや、なんでもない。私は満足した。では、さらばだ」
 どこまでも唯我独尊。来た時と動揺に風のように去っていく老人を、宇治田は深々と頭を下げて見送った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

河南・光
本当に胸糞の悪くなる話ね。
あいつら一体どれだけの人の人生ぶち壊せば気が済むの?
……お姉ちゃん……

……と、感傷に浸っててもしゃーなし
とりあえず宇治田さんって人に会いに行こうかしら。
でも何話そう?
私の話なんて基本『邪神とか異端の神とかぶっ殺慈悲はない』だし……。
あんまり外への興味を引き立てるような話も避けた方がいいわよね。
恋や愛の話?私が聞きたい。

んー、年も近いし、貴女と友達になりたい事。
出入り自由みたいだし、また遊びに来る事。
後は……姉の話?
アホの子だけど才能だけで大体何でもできて、凄い豪運で。
だけどたった一回だけの酷い不運で何もかも壊れた。
……うん、一番伝えたいのは、生きててほしいって事かも。



 次にやって来たのは河南・光。
 年の頃が近く、かつ元々至極普通の生活を送っていた河南は、部屋に入るなり少女の置かれた境遇に気分を害した。
(こんなの、牢屋じゃない。こんな所に15年も?)
 何時だったかTVでみた独居房の映像が重なる。最低限のものしか無い寒々しい部屋は正にそれだ。
 胸糞が悪い。
 邪教徒の行った非道も、今の少女の境遇も、全部が全部気に入らない。あいつらは一体どれだけの人の人生を狂わせれば良いのか。
 かつて失った姉が脳裏をよぎり、束の間、河南は言葉を失った。
「あの、大丈夫ですか?」
「あ、あー、ごめん、ちょっとぼうっとしていたわ」
 宇治田に覗き込まれて漸く復帰した河南。互いに自己紹介をしつつとりあえず座って話でも、となったのだが問題が1つ。
(話すこと、ないわ)
 河南は情の深い少女であった。初対面の宇治田の心情すら慮れるが故に、話題が無かった。
 外の楽しい話なんて、こんなところに監禁されていて何時出られるかもわからない宇治田にするのは酷でしかない。
 かといって恋や恋愛と言われたって彼女には経験がない。
(私の日常……邪神とか異端の神とかぶっ殺慈悲は無い、な冒険活劇……いや、ないわ)
 彼女の普段の行いなんて18禁だ。無論過激な暴力表現の為に。
 横髪を凄い勢いでくるくる弄る河南を、宇治田は微笑みながら黙って眺めている。
「ごめん。なんかこう、改めてお話しましょって言われると緊張しちゃって」
「わかります。私もお願いしておいていざとなると何を話していいかわからなくて」
 お互いに同じ事で悩んでいたのだと、おかしくなって暫く笑いあった。
 それから、少しずつぽつりぽつりと家族の話をした。亡くした姉の事を。
「大好きだったんですね」
「ん、そうね。失くしてから本当の有り難さに気づくってのは、月並みだけど本当よね。……生きててほしかったな。ホント」
「そう、ですね」
「死んじゃったら本当になんにもならないからさ、あんたも生きなきゃだめよ」
「なんですか、突然。私そんな死んじゃいそうに見えます?」
 微笑を浮かべる宇治田に確かにそれもそうだと、また横髪をくるくる巻きながら笑い返した。
 何故突然そんな事を言ってしまったのだろうか、河南自身よくわからない。
 別れ際に宇治田と友人になり、また会う約束をして河南は部屋を後にした。
 謎の違和感を抱えたまま。

大成功 🔵​🔵​🔵​

テスアギ・ミナイ
【SPD】
あの。

……もしかしたら私は、
こうして誰かと改めて話をするのは慣れていないのかもしれません。
ならば。

しりとりをしませんか。
ご存知でしょうか、しりとり。
言葉の最後の文字を拾って、つなげていく言葉遊びです。
最後に「ん」がついたら、その回はおしまいです。

平凡なお遊びです。けれど、
話し方を知らない私でも、
単語を選ぶだけでお互いが分かる気がするのです。

私もこの間まで、狭い世界でひとり座っていました。
多くの言葉を知っていても、使ってこなかった。
どんな本を読んで、どんな世界を描いているのか、
伝え合える気がするのです。

そうしてあなたのよろこびやかなしみに触れたら、
不謹慎だとしても嬉しいと思う。



「しりとりをしませんか」
 怜悧な美貌を持ったテスアギ・ミナイの口から出たのは、見た目に反して中々に突飛な提案だった。
 互いに名乗りあった後のことである。
「しりとり、ですか?」
 首を傾げる宇治田。それはそうだろう。初対面で名乗りあった直後にやるモノとしては中々に類を見ない。とはいえミナイも別に考えなしに提案したわけではなかった。
「ご存知でしょうか、しりとり。言葉の最後の文字を拾って、つなげていく言葉遊びです。最後に『ん』がついたら、その回はおしまいです」
「あ、いえ知ってます。知ってますしりとり。ただ少し驚いてしまって。理由を聞いても、いいですか?」
「話し方を知らない私でも、単語を選ぶだけでお互いが分かる気がするのです」
 知っている言葉、口に出す言葉はその人を表すモノだからと。
 話に慣れていないながらも訥々と、理由を口にする。
「私もこの間まで、狭い世界でひとり座っていました。多くの言葉を知っていても、使ってこなかった。だから、こうして『しりとり』で言葉を使い合えば、どんな本を読んで、どんな世界を描いているのか、伝え合える気がするのです。そうしてあなたのよろこびやかなしみに触れたら、不謹慎だとしても嬉しいと思う」
 宇治田はミナイの言葉を胸に手を置いて静かに聞いていた。まるで胸の奥に聞いた言葉を染み込ませているかのように。
「……ミナイさんは、とても素敵な世界を見てきたんですね。もうその考え方が物語みたいで、胸が温かくなります」
 しましょう、しりとり。ふんわりと笑った宇治田を見て、ミナイもまた笑顔を返すのだった。

 幾ばくかの時が過ぎた。
 ミナイもそうだが宇治田も中々どうして言葉の引き出しが多く、終わりは見えなかった。
 宇治田の言葉からなんとなく感じられたのは、日常、だった。
 専門用語や童話に頻出するような単語はそれほどなく、ありきたりな言葉が多い印象を受ける。ありきたりなようで、ついつい知らないような単語が出てくるところを見ると、国語辞典なども目を通しているのかもしれない。
「終わらないですね」
「はい。流石ですね、宇治田さん」
「ミナイさんこそ。私、これでも結構本の虫なので自信あったんですけど、猟兵さんって皆そんなに博識なんですか?」
「私などは博識という程のものでは。皆は、どうでしょうね。次の方で確かめてみては?」
「あ、時間。ごめんなさい、つい楽しくて……他の方待ちくたびれて無いかしら」
「いえ、私も楽しかったので。ここは2人で共犯ということで」
 2人でもう一度笑い合ってから、ミナイは部屋を後にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メア・ソゥムヌュクスス
「こんにちわ、はじめまして。」
【優しさ】【手をつなぐ】【コミュ力】で、優しく接して会話するよー。

いろんな話をしてあげたいけど、時間がないからねー。持っている【童話集】から恋の物語をピックアップして読み聞かせてあげようかな、少年少女の恋のお話をー。

その読み聞かせの中で
「ねえ、貴女は幸せ?」と尋ねるよー

私は人が人の為を願って造られた機械だから望むなら…
「現実から逃げ出しくたなったら、いつでも言ってね?」
「貴女が望むならどんな夢でも見せてあげれるよ。甘い夢も、優しい夢も、幸せな夢も、全部」

「どうしたい?」

嗚呼、でも、願わくば、夢は胸に抱えて前を向いて現実を生きてほしい。

夢は、夢でしかないのだから



「こんにちわ、はじめまして」
 メア・ソゥムヌュクススは分厚い本を手にやってくると、握手とばかりに宇治田の手を握り、自己紹介を交わす。
 そのままスムーズに彼女の隣に座って会話を始める。
「だいぶ退屈してたでしょう。15年分いろんな話をしてあげるー……と言いたいけれど、ちょっと時間がないからねー。此の中から一番いいお話をきかせてあげるよ」
「それ、すっごく重そうですけど、辞書……じゃあないんですか?」
「これはね、私が色んな世界から蒐集してきた童話集。すごいでしょ?」
 得意顔で微笑めば、宇治田は頷き微笑み返す。
 思ったよりもいい子だった。もっと自閉気味か、無口な子の可能性も考えていたが、よくもここまで素直で感じの良い子に育ったものだ。
 人は環境が育てると言うのならこの牢獄と本の世界が、少女をここまで健やかに育てたというのだろうか。俄には信じがたい不思議な話だった。
 とはいえ、宇治田の成り立ちを考察していても始まらない。
 ソゥムヌュクススは辞書より分厚い童話集から1つの話をチョイスする。
 少年少女の恋のお話だ。キラキラと瞬くような世界の中で、少年の勇気と行動力が、少女の優しさと知恵が、様々な問題を解決していく童話らしい童話だ。優しい世界。そこには裏切りも絶望もない。
 時に喧嘩はするけれど、話し合えば皆わかりあい、許し合う。
 宇治田はソゥムヌュクススに寄り添うほど近くで、本を覗き込みながら話に聞き入っているように見える。
「ねえ、貴女は幸せ?」
「え?」
 不意打ち気味の問いに宇治田がきょとんと顔を上げた。
「現実から逃げ出しくたなったら、いつでも言ってね?」
 ソゥムヌュクススは人が人のためにと願って造られた優しい機械だから。
「貴女が望むならどんな夢でも見せてあげれるよ。甘い夢も、優しい夢も、幸せな夢も、全部」
 望みを叶えたてあげたいと、その存在の全てがそう望むのだ。
「どうしたい?」
 そう望みながらもソゥムヌュクススは、人のために造られたからこそ、夢に沈まず前を向き現実を生きてほしいとも願うのだ。前を向く為の活力を与えられるならば夢もいいだろうけれども。
 果たして、宇治田は。
「いいえ、私は今とても幸せだから。沢山の人が来てくれてそれだけでもう、十分です」
 とても綺麗な顔でそう言うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イア・エエングラ
どうにもならないことって、あるものな
扉一つならお待ちするにも迷わないねえ

僕ともお話、してくださるかしら
ご本、お好きなのかな、どんな内容のお話が好き?
最近読んだ一冊を、聞かせてはくれるかしら
どんな世界がお好みだろう、何を夢見ているかしら
僕はねえ、御伽噺くらいは、しあわせなおしまいが好きよ
膝の上で広げて、指先で文字を辿って
そうそ、僕は難しいのは読めなくて
だからいつか読みたいの

読書がお好きなら読み書きもお上手かしら
書けるようになったら、お外の話を手紙で送ろうか
そしたらお返事くださるかな
それならお勉強も楽しいとは思わない
先のお話、ほんのすこしの慰めにはならないかしら
叶わなくとも、とは口にはしないけれど



「僕ともお話、してくださるかしら」
 部屋に入ってきたクリスタリアンの男、イア・エエングラを宇治田は目を丸くして出迎えた。
 怪人めいた翁にも動じなかった宇治田だが、流石に物語の中から抜け出てきたような鉱物生命体には興味を惹かれたようだった。
「ご本、お好きなのかな、どんな内容のお話が好き?」
「怖くないのが、好きです。普通の、学校に行って肝試しとかして、友達と遊びに行くような」
 青春物、というやつだろうか。エエングラは相槌を打ちながら話を聞く。
「最近読んだ一冊を、聞かせてはくれるかしら」
 問えば、あらすじから順序立てて宇治田は語ってくれた。
 アース世界の日本の学校が舞台。内向的なクラスで孤立がちな少女と、彼女に手を差し伸べるヒーローのような少年の話。
 特に大きな事件なんて無いけれど、一緒に通っている学校で起きる小さな事件を時に機知でもって、時に人の縁で解決していくような温かみのある話だった。
(学校。憧れないわけがない)
「素敵な話ね。僕はねえ、御伽噺くらいは、しあわせなおしまいが好きよ。膝の上で広げて、指先で文字を辿って。そうそ、僕は難しいのは読めなくて。だからいつか読みたいの」
「私も幸せな話が好きです。あ、ここにも簡単なのがありますから読んでみません?」
 快諾した。偶に読めない文字が出れば横から宇治田が助け舟を出しながら、ゆっくりと読み勧めていく。
 子供向けの冒険小説のようなものだろうか。船が難破して、島に流れ着いた少年たちが救助を待つ間にサバイバルをしながら島の秘密に迫っていく、そんな話。
 流石に全てを読んでいては日が暮れるので適当な所で切り上げて、また読ませてと言って本を返した。
「そうそ、読書がお好きなら読み書きもお上手かしら。書けるようになったら、お外の話を手紙で送ろうか。そしたらお返事くださるかな」
 先のお話、ほんのすこしの慰めにはならないかと願いを込めて。
 叶わなくとも、とは口にはしないけれど。
 宇治田は是非お願いしますと、笑いながらその約束を了承したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

江戸川・律
…彼女にとっては
俺らも奴らも等しく変わらないだろうな

まず職員に確認を取ります

この部屋から出ないって
ルールの範囲なら好きにしてもいいんだよな?

ルールを確認した上で
彼女に会いに行き
しゃがんで目線を合わせながら笑顔で自己紹介

読んでる本を確認して話を合わせながら話をします

約束して良いかな?
今は君を外に出してあげれないけど、いつか必ず出す。だから今は俺らを信じて守らせて欲しいんだ…

代わりじゃないけどさ
今見せてあげれる最大限の幻影を体験させてあげるよ

参加している他の仲間の話のイメージも混ぜ、『幻影の城』の世界に一時招き入れます

俺の見せるのは
青空と優しく風の吹く草原の世界

アドリブ、連携歓迎。



 次いで部屋に入ってきた江戸川・律は、表で何かしていたのか、特に待ちくたびれた様子もなかった。
「俺は江戸川律、律って呼んでよ。よろしくね?」
 少女と目線を合わせてにこりと笑えば、少女もまた同じ様に返した。
 取材や潜入捜査に慣れた彼は会話にそれほど不自由はしなかった。ネタは無いようであるものだ。例えば積まれた本の山。
「かなり色んな種類の本を読んでるみたいだけど、どういうのが一番好き?」
「ああ、その先生は凄いよね。俺も人に勧められて読んだことあるよ。あのシーンがさ」
「ああ、それドラマ化されてるんだよ。俳優がハマリ役だったってニュース見たことある。今度レンタルで借りてこようか。ノートPC持ってくれば再生できるし」
 好きなものの話題になれば、会話というものは絶えないものだ。話し始めてしまえば後は嘘は付かずに誠実に合わせていけばいい。
 暫くそうして親睦と信頼を深めてから、江戸川は深く踏み込んだ。
 もう一度彼女に視線を合わせて嘘偽り無いという意志を瞳に込めて。
「約束して良いかな? 今は君を外に出してあげれないけど、いつか必ず出す。だから今は俺らを信じて守らせて欲しいんだ……」
「……はい。私なんかのために、皆さんに戦ってもらうのはとても申し訳なく思いますが……よろしくおねがいします」
 宇治田の微笑みは、微かに憂いの色を帯びた。
「代わりじゃないけどさ。今見せてあげれる最大限の幻影を体験させてあげるよ」
 ユーベルコード、幻影の城。
 その効果は手帳に触れた者を一種の異次元に移動させ、書かれた通りのモノを見せるというもの。
 江戸川が表でしていたことは、結界内でのコードの使用許可だった。
 どこまでも続く抜けるような青空が、宇治田の視界に広がっていた。
 視界だけではない。頬を撫でる風の感触。青々と茂った草と土の匂い。目を焼く様な太陽の光までもが、一斉に宇治田の前に。
「ぁ……これ、たい、よう?」
 直視しようとしてあまりの眩しさにくらくらした。
 こんなにも眩しいものだったのか。こんなにも暖かいものだったのか。
 本で見て想像していたものより余程強烈なそれに宇治田は圧倒され立ちすくんだ。
 いつまでも、いつまでも。やがて江戸川が次の猟兵と入れ替わるまで、無言で涙を流しながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

松本・るり遥
あー……
どうも。

松本、るり遥。
平仮名のるりに、遥か彼方。
ただの高校生。ラーメン屋……の……手伝いも、してる。
よっしく

いや、うーん
話せる事……

(おもむろに取り出すカメラロール)(青空、課外授業、家族写真、ライブ会場、花、雷鳴)
(ワイヤレスのイヤホンを、かろりと片耳渡す)
(片耳は自分につける)

全然脈絡無いんだけど
ほんと無えんだけど
こうゆう音楽好き?

(流すのは、殻を打破る反抗歌)
(太く短く、美しく生きろ。分厚くがなりたてる、青い愚かな叫び)

そか
うん

お前は普段どんなん聴いてんの

(へたな雑談。自分を語ることは苦手で、けれど、話してみたかった)

俺さあ
みっともねえ叫びで戦ってんの

聞く日がきたら
笑ってくれな



 少し落ち着くまで待っていてやってくれ。
 江戸川にそう言われて、きっちり10分。お気に入りの曲を聞いて時間を進めた松本・るり遥が中へ入っていった。
「あー……どうも」
 猟兵達の中で一番拙い挨拶だったかもしれない。目元をやや赤くした宇治田が、礼儀正しく挨拶をして出迎えた。
「こんにちは。はじめまして。宇治田っていいます」
「松本、るり遥。平仮名のるりに、遥か彼方。ただの高校生。ラーメン屋……の……手伝いも、してる。よっしく」
 お互いに自己紹介を済ますと恐ろしいほどに早く沈黙が訪れた。
 松本は見ての通り会話というものが苦手なタイプであったし、宇治田もいくら素直で礼儀正しくとも、自ら話しかける方ではない。
 痛いほどの沈黙が部屋に満ちる。
 魔を断つと同時に襲撃時にも備えられている部屋は防音も万全で、外の世界の音を一切中にいれない。
 要するに、2人が何かしない限り音が発生しない。
 ごそり。
 やがて何を思ったのか松本が携帯端末を取り出して、何やら操作をし始めた。
 今までの猟兵とは一味違った挙動に、宇治田が目を丸くして彼と、彼の端末を眺めている。
 その眼前に、ぬっと突き出される片側だけのワイヤレスのイヤホン。
「ん」
「?」
 意図を読みきれず宇治田が首を傾げる。
 松本はもう一度イヤホンを宇治田に勧めながら、こうするんだと言わんばかりにもう片方のそれを自らの耳につける。
 なるほどと宇治田がイヤホンを受け取り装着すれば。
「全然脈絡無いんだけど。ほんと無えんだけど。こうゆう音楽好き?」
 流すのは、殻を打破る反抗歌。太く短く、美しく生きろ。分厚くがなりたてる、青い愚かな叫び。
 およそ箱入りの文学少女と言われるモノに聞かせるには不向きな曲だろう。耳を打つ叫びはストレートで、過激にすぎる。
 だがそれを勧めるのが松本だった。自分の好きなものを素直に、あけすけに開示する。真に嘘偽りがない故に、話し下手。それが松本という男だった。
 宇治田の反応はいかに。松本が彼女の様子をうかがう。
「そか、うん」
 松本はほんの僅かに笑ったように見えた。それが答え。
 それ以上の言葉はなく、静かにその青い歌を聴くのだった。
 やがて一曲終わる頃には、自然と松本の口が開いていた。
「お前は、普段どんなん聞いてるの」
「私は……」
 挙げられる随分と古い定番のポップミュージック。スキー場で流れていそうな曲から、季節の定番の曲まで。
「クラシックとか、聞きそうなのにな」
「……実はちょっと眠くなっちゃって」
「わかる」
 拙くも、しっかりと通じ合って会話して。曲の邪魔にならないように密やかに笑い合って。
「俺さあ、みっともねえ叫びで戦ってんの。聞く日がきたら、笑ってくれな」
 それは何に向けての反抗歌なのか。笑うわけがない。是非聞かせてとねだる彼女に「いつかな」なんて約束をして松本は部屋を後にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
邪神を身に宿す少女…私の拙い冒険譚が彼女の無聊を慰められれば良いのですが

「礼儀作法」で自分が騎士を目指しているロボットだと自己紹介し、これまでの冒険譚を語ります
人々を苦しめる多くの邪悪に立ち向かったこと、すでに出てしまった犠牲に自己の無力を感じたこと、苦難から解放され救われた命を見て嬉しさを噛み締めたこと等…

私は特に人の護衛を得手としているので貴女を必ず守り抜きましょうと宇治田様の「手をつないで」握手しましょう、騎士道物語から模倣した「優しさ」を込めて

…それにしても宇治田様の「名前」が無いのはどういうことなのでしょう
職員に訳を聞くか宇治田様に尋ねましょう

私はトリテレイアです、貴女のお名前は?



 トリテレイア・ゼロナインは待ち時間の間に職員を捕まえ情報収集を行っていた。
 何故、彼女に名前はないのか。
 答えは単純明快だった。
 曰く、情を移さないため。
「いたんだよ、前に入れ込んでた奴が。必ず助けるって躍起になって研究してな。で、わかったのは無理だってことだけ。そいつは心をやられちまって別部署に飛ばされたよ。カフェオレ? 例えとしては悪くないが、もっと悪い。あの子はもう……死ぬまでこの中だろうな」
 聞かなければよかった。専門家がきっぱりと駄目だと、少なくとも今の技術ではどうやっても不可能だと言うことを知った上で少女と会って、どんな顔をすればいいのか。

「大丈夫ですよ。気にしていないので」
 宇治田の部屋で、過去の冒険譚を語り終えた後での事だ。
 まるで此方の心を見透かすような宇治田の言葉に、トリテレイアは内心驚いた。
「多分、ですけど。ここの方に何か聞かれたんじゃないですか?」
「そんなにわかりやすかったですか?」
「いえ、とっても優しかったから。だから多分、自惚れかも知れませんけど、それで心を痛めてくださったんじゃないかなと」
「……正直に告白してしまえば、はい。そうです。貴方様の名前が何故ないのか、その理由を聞いていました」
「あぁ……。それは、なんだかすいません。余計な心労を」
「余計など。……知っていらっしゃったんですか?」
「なんとなくですけど。皆さん悪い人ではないので。無理して私から距離を取ろうとしているのは、わかります。なんでそうするのか考えたら自ずと」
「お辛くは……」
 馬鹿なことを。トリテレイアはつい口走った言葉を後悔した。
 辛くないわけがない。態々聞くまでもないことを聞いて少女の心を土足で踏み荒らすような真似をした自分をトリテレイアは心底侮蔑した。
 やはり自分は本物の騎士には遠い、冷たい殺しの機械でしかないのか。
「申し訳ありません」
「……優しいんですね、トリテレイアさんは」
「え?」
「今、とても辛そうな顔をしてます。ロボットさんだと先に言われなければきっと気づけなかったと思います。とっても温かい、優しい人なんだなって」
 言葉はストンと胸に落ち、身体が自然に動いていた。
 宇治田の前に跪き、その小さな手をそっと握る。
「約束します。貴女を必ず守り抜くことを。まだ未熟なこの身ではありますが、貴女を守る騎士として認めていただけますか?」
 まるで物語のワンシーンだ。宇治田は暫くぼうっと彼を眺めてから、小さく「はい」と応えたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イルナハ・エイワズ
カフェオレを遠心分離にかけることでクリームを分離し
残りの液体のPHを調整することでたんぱく質を沈殿させることが出来ます
しかしながら、完全な分離とは言えません
UDCアースの技術ではなく、キマイラフューチャーなどの技術を使えば可能化もしれません
掛かる時間や労力、お金を考えるとカフェオレとして楽しむことをお勧めします
という内容のメールを送り付けたのちに施設内を散策します
与えられた資料と差異が無いかなどをユルとお散歩しながら確認しましょう

中途半端に分離されたカフェオレはもうカフェオレではないでしょうから、何と呼べばいいのでしょうね?
呼び名が無いのは不便ですから、名前を付けてあげた方がいいのでしょうね



件名 カフェオレの分離について
本文
 カフェオレを遠心分離にかけることでクリームを分離し、残りの液体のPHを調整することでたんぱく質を沈殿させることが出来ます。
 しかしながら、完全な分離とは言えません。
 UDCアースの技術ではなく、キマイラフューチャーなどの技術を使えば可能化もしれません。
 掛かる時間や労力、お金を考えるとカフェオレとして楽しむことをお勧めします。

件名 Re:カフェオレの分離について
本文
 なに、カフェオレのみてぇの?

件名 Re:Re:カフェオレの分離について
本文
 いいえ、ミルクティーをお願いします。

件名 Re:Re:Re:カフェオレの分離について
本文
 何を言っているんだお前は。

「暇なんですかね、あの人」
 即レスをしてくる相手に呆れながら、それに律儀に返す自分もどうかと思わなくもない。
 イルナハ・エイワズはユルと共にゆるりと施設内を散歩していた。
 与えられた資料と差異が無いか、という名目はあるが実質ただの散歩だ。
 彼女の関心は全く別の所に飛び立っていたのだから。
(中途半端に分離されたカフェオレはもうカフェオレではないでしょうから、何と呼べばいいのでしょうね?)
 例えばそう、邪神を引き剥がした彼女は本当に彼女なのか、とか。
 中途半端でなくとも、例え完全に分離ができたのだとしても、だ。生まれたときから混ざっていたそれを取り除いた時に残るのは一体何者か。中々に興味深い話であった。
(ああ、呼び名が無いのは不便ですから、名前を付けてあげた方がいいのでしょうね)
 そうは思うが足は彼女の部屋へは向かわない。どこまでもマイペースに、エイワズはユルとの散歩を楽しんだのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

忠海・雷火
カイラの方が感情豊か
彼女に任せるわ


……その前に、呼ばれたい名などはある?
それを聞いたら、初恋の話をしよう

小さい頃、真っ直ぐで、よく気の利く男子がいた
困っている人を目敏く見つけ手助けし
虐められた子を励まし、虐めっ子から庇うような
そんな彼を格好良い、素敵だと感じて
一緒に下校する程度には仲良くなった
うん。それが私の初恋

ある日彼は、見たことのない笑顔で、好きな人が出来たと私に告げた
とてもショックだった
そういう時に限って彼も気付かず、相手の何処が好きだとか、そんな話を続ける
でもその相手は確かに立派な子
凄く苦しく、嫉妬もしたけど、相応しいのは私よりその子だと思って
だから、応援してると彼に告げた
それでお終い



 忠海・雷火、いや別人格のカイラが、自己紹介もそこそこに宇治田に言ったのはある意味、今回一番クリティカルな一言だった。
「用意してきた話はあるけど……その前に、呼ばれたい名などはある?」
「え?」
 なんてこと無いといった風情の一言は、宇治田から表情を奪った。
「不便でしょ、名がないと。私はこの体の中にもうひとり別の人が住んでいるけれど、その人にだってちゃんと名はある。雷火っていうんだけど」
「名前……。急に、言われても。ちょっと思いつきません」
「そ。じゃあ考えておいて。例え誰が呼ばなくたって、私はそう呼ぶから」
 それからカイラは自身の過去を語る。
 小さな小さな恋のお話。
「小さい頃、真っ直ぐで、よく気の利く男子がいた。困っている人を目敏く見つけ手助けし。虐められた子を励まし、虐めっ子から庇うような。そんな彼を格好良い、素敵だと感じて。一緒に下校する程度には仲良くなった。うん。それが私の初恋」
「その人は、今?」
 カイラは笑う。複雑でなんと形容したら良いのかわからない、混沌とした笑み。
 ただの想い出と割り切るには、そんな普通な出来事があまりにもまばゆい。
 大切な大切な日常の残滓。
「ある日彼は、見たことのない笑顔で、好きな人が出来たと私に告げた。とてもショックだった。そういう時に限って彼も気付かず、相手の何処が好きだとか、そんな話を続ける。でもその相手は確かに立派な子。凄く苦しく、嫉妬もしたけど、相応しいのは私よりその子だと思って。だから、応援してると彼に告げた。それでお終い」
「……お終い、ですか」
「そう、お終い。ドラマじゃないもの。再会も何も無し。例え会ったとしても、ね?」
 最早初恋の彼とは交われない世界に居ることを、宇治田は察したようだった。
「……辛いですね」
「初恋は苦いというらしいけど、まあ私に関しては当たってるわね」
 それから少し、恋愛に関する話をした。
 宇治田のそれは物語の中の想像のものでしかないけれど、様々な本を読んだ彼女の話は百戦錬磨の恋愛マスターのようで、何だかおかしくなってしまい2人で小さく笑いあった。
 そして時間になる。
 別れの挨拶をして廊下へと出た彼女の袖を、宇治田が掴んでいた。
 何事かと振り返るカイラに。
「希、と」
「え?」
「私の、名前です。こいねがうと書いて、のぞみ」
「そ。希……。じゃあ希、私行くから」
「はい、カイラさん。皆さんもお気をつけて。危なくなったら、私に構わず」
「見くびらないでね。邪教徒くらいでどうにかなる私達じゃないわ。安心して待ってて。楽勝だったって、報告に来るから」
「ふふ、わかりました。いってらっしゃい。また後で」
「またね」
 扉がしまる。



 部屋はまた静かになった。もう誰も来ない。
 優しく、個性的で、素敵な猟兵達との歓談はこれでおしまい。
 残されたのは相変わらずの部屋。本とラジカセ、それと生きるのに必要最低限な設備。
 一つだけ増えたのは、あの黒髪の女性が残していった指輪が1つ。
 宇治田は。
 希と名乗りだした女は。
 胸に両手を当てて、俯く。長い黒髪がかかり表情を隠す。
「嗚呼……」
 肩が震えていた。おこりにかかったかのように、はっきりと、強く。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ロッジ・ゴーレム』

POW   :    ゴーレムパンチ
単純で重い【コンクリートの拳】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    サンドブラスター
【体中から大量の砂粒】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    ジャイアントロッジ
予め【周囲の無機物を取り込んでおく】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「誰が言ったんだ、簡単な仕事だって」
 猟兵の1人がぼやいた。
 確かに侵入経路は1つしか無く、協力者もいる。襲撃のタイミングも予知の通り。此方に有利な条件のみがあるように見えた。
 が、蓋を開けてみれば。
「圧殺するつもりか」
 圧倒的な物量。現れたのは無数の敵。
 協力者、UDCの職員による防衛線など砂上の楼閣もかくやといった勢いで溶けて消えた。通信はとうの昔に途絶えている。
 1個体なら雑魚の部類だろう。猟兵達は歯牙にもかけずに一蹴できるだろう。
 けれどもそれが10いたら、100いたら、どうだろう。
 みちみちと、通路を拡充しながら、通路そのものが化物の一部になりながら、敵の群が猟兵達を飲み込みにやって来た。
八上・玖寂
この量、奴さんは物資的に余裕のある教団のようですね。面倒なことに。
まあ、順番に片付けていくしかないですかね。

武装に『万天を断つ無明の星』を使用して、斬っていきましょう。
【傷口をえぐる】【2回攻撃】【先制攻撃】を意識しつつ、
【忍び足】【目立たない】【暗殺】で忍び寄って攻撃できればいいですね。
腕の一本でも一太刀で持っていければ僥倖。

【戦闘知識】【情報収集】で相手の弱点でも分かれば
積極的に狙っていきたいですが、さて。

彼女が死ぬことで出てくる邪神ではない、ということは
奴さんたちも早々に彼女を殺す気では来ないとは思うのですが、
いろんな状況が考えられますし、早めに決着したいですね。
少し嫌な予感がします。


嶋野・輝彦
どうにも嫌な感じだな、敵もそうだがどこがと言うか色々
今まで名無しで済ませて来たってのも変な話だよな
名付けると情が湧くから?名付ける事自体が不味い理由がある?…いや憶測で考えるのは意味がない、今更だし
目の前に集中しないと怪我じゃ済まん

●POW
【第六感】【覚悟】で攻撃を躱しつつ間合いに入って
【零距離射撃】【だまし討ち】【鎧無視攻撃】
一体づつ処理
攻撃受けたら
【激痛耐性】【覚悟】
躱し切れるもんじゃないし腹括って耐える
防衛場所は宇治田の隔離部屋の前
他の猟兵の敷いた防衛ラインを抜けた敵を一体づつ処理
敵を複数同時処理できるスキルが無いんでな
ヤバいとなったら【捨て身の一撃】も入れて
倒れた時には戦場の亡霊を使う


イルナハ・エイワズ
お姫様を迎えに来るならもう少し雰囲気を大切にしてほしかったのですが
こういうのしか用意出来なかったのですね
これは会話出来るのでしょうか?
会話出来るのならカミの名前でも尋ねてみようかと思っていたのですけど

こういう戦闘は楽でいいですね
火力を前面に集中させればいいだけですので

通路ですのでアッサルの槍で通路全体を攻撃範囲に収め攻撃します
攻撃したら、次の仲間に交代する感じで
通路全体を攻撃できる仲間とローテーションして攻撃しましょう
攻撃の切れ間を無くして押し返しましょうか

鎧無視攻撃や串刺しなど使えそうな技能は使っておきましょう

数で包囲されて全方向だったらもっと大変だったのですけどね


トリテレイア・ゼロナイン
【POW】【古城】で参加

その矛先がオブリビオンに向かう限りは、私はフォルター様(f07891)と共に戦いましょう
宇治田様へ指輪を渡したこと、どんな理由であれ私は嬉しく思います

押し寄せるゴーレム軍団を押し留め後衛型の味方を「かばう」壁役として最前線に立ちます
「武器受け」「盾受け」「怪力」で攻撃を押し留め、大盾殴打での「鎧砕き」で粉砕しましょう
フォルター様の援護で転倒した個体は即席の壁にしたり「踏みつけ」て処理

長期戦で前線に立ちづづけるのは危険ですが、無力な少女一人守れずしてなにがなにが騎士か、なにが猟兵か。損傷しても前線に立ち続けることで味方を「鼓舞」し物量を跳ね返しましょう


フォルター・ユングフラウ
【WIZ】

【古城】で参加する。
以前も共に戦ったトリテレイア(f04141)が一緒とは心強い。
互いの戦い方も把握済みだ、前衛は任せる。
今は、宇治田の事は後回しだ…この木偶共を、押し潰す。

我は、UC:ヴィーダーゲンガーを主軸にして動こう。
圧殺には、鏖殺で応えてやる。
162の死の腕を操り、ゴーレムの脚を集中的に狙うとしよう。
転倒すれば後続のゴーレムの壁となり、進行が滞る事で前衛の負担軽減にもなろう…通路の狭さが仇となったな。
吸血と生命力吸収で、軽い傷は治したいところだ。

トリテレイアの傷の様子にも注意を払おう。
傷が酷ければ、黒の小瓶に収めた傷薬をぶつけよう。
本人からも了承済みだ、遠慮無くいくぞ。


虻須・志郎
何か面白そうじゃねえか、混ぜてくれよ

物量で来るなら通路の補強も必要か?
内蔵無限紡績兵装で亀裂が入ったり崩れそうな通路を
粘糸と鋼糸で補強しようか
通路そのものが岩男になるってんなら、
鋼糸の束でバリケードを作って時間を稼ぐさ
岩男が襲い掛かってくるならいつも通り殴って喰らうだけだ

ここに来るまで資料は見たが、
何だい先生(ロバート)アンタもいたのか
邪神と人間を分離、ねえ
ハイブリッドの俺が言うのもアレだが、
意識のバックアップを取れば何とかなるかも
順序は逆だが、現に俺はここにいる
その代わり、正気の維持が出来ればだがな……

希か、まさか黄昏のアレじゃねえよな?
今は普通になりたいとか……本人の意識がそうなら、辛いな


江戸川・律
戦線を突破された最悪状況を考え
何時でも希と残っているUDC職員を「幻影の城」に避難させるようにする為
俺は部屋の近くに陣取ります

また、あらかじめカウンタートラップとして施設内に
「罠使い」を使用
「レプリカクラフト」で様々な仕掛け罠を多数設置しておきます

また、15歳まで見つからなかった希が急に狙われるようになった
理由を考えています

①UDC職員の中に内通者が居る場合
『ロッジ・ゴーレム』を囮にしつつ希を攫う可能性

②希の中の邪神が活性化して予想外の事態になる可能性

様々な不測の事態に備え、希とUDC職員を送る世界を変えるなど
対策を予め考えて置きます

自分の目を信じろ怪しきは疑えってね

アドリブ共闘歓迎です


忠海・雷火
数が多過ぎない?
なんて言っていても仕方ない
報告に行くからと、希に言ったのもあるし。やるしかないか

まずは先頭のゴーレム達から叩く
範囲に入るギリギリの距離から、各個体の腕や足、その装甲のない部位を指定し氷桜雪花で切り刻む
足が鈍れば行軍を遅らせられ、腕が弱れば威力を抑えられ、通常攻撃の見切りもし易くなる
そんな感じで、弱らせる事に専念する。トドメは周囲に任せた

通路を取り込もうとする個体はネクロオーブで呼べる死霊も使い優先で攻撃
道を拡げられたら、更に多くを同時に相手取る羽目になる

サンドブラスターには、氷桜雪花の花弁を全てぶつける事で被害軽減を試みる
あの技は他個体も巻き込むようだから、その意味では有り難い


ロバート・ブレイズ
「さて。猟兵のお仕事だ。老体に鞭打つ時間だ。貴様等に大いなる否を叩き憑ける。覚悟は不要だ。骸は過去の棺に還れ」
闇堕ち発動
心臓模様が身を包み、両腕が七色の流動体と化す
毒のような闇黒が全身を爛れさせ、恐怖を与える外見に
あとは暴力だ。神々を冒涜する爺の所業を視るが好い
頑丈な肉体ならば鎧を砕いて脆い部分を破壊しよう
情報収集で弱点を見抜けたならば其処に『地獄』を注ぎ込もう
他の猟兵が隙を突けるよう、派手に『魅せて』引き付ける
可能ならばそのまま蹂躙してやるのだ
「クカカカカッ――狂気を巡礼するには物足りない連中よ」
苦戦でも失敗でも爺は嗤うのみ。
脳の片隅に『希』の証明を置いて。


メア・ソゥムヌュクスス
ふふ、希ちゃんかー。本当にいい子だねー。

さて、お仕事おしごとー。
狭い通路にゴーレム相手じゃ、私の力はちょーっと厳しいかもー?
だから今回はサポートに徹しよー。

ユーベルコードで周りのみんなを回復させつつ、いつでも動ける様にしておくよー。

幾ら侵入経路が一つだからって、別のとこを壊して侵入!とかもあるかもだしーねぇ。

異変を感じたら私のよく通る声でみんなに知らせるよー。【歌唱】

あとは、希ちゃんの部屋が外部と独立してて、万が一中でなにか起きててもわかりにくいっていうのが心配だなー。
もし、していいなら、直接あの子の側に居てあげたい、かなぁ…。

わがままかな?


イア・エエングラ
あれまあ、……周りの人らも、これでは、
視線を伏せる前に、僕らはなんとかしなければね
あの子には、お部屋で待っていてねと言っておこうな
まだお話の続きを知らないもの
送ってだって、いないもの
いつものように笑って為すべきを為しましょうな

前ゆく人は前だろうから後ろから
黒糸威でもって数を減らしていこか
ひとつ、ふたつ、みっつ、
……やあたくさんだこと
残骸が詰まってしまっては、ゆくのに不便だろうから
呪詛の炎で消したりましょうな

こんなにたくさん、持ち出して
そうしてひとつ、踏み躙るのな
勝手に偶像でも崇めていらっしゃれば、良いのにねぇ
書くのは下手でも、痛いくらいはまだ得意かしら
ひとつもゆかせるわけには、いかないの


松本・るり遥
殺意を前に、『優しくない』俺が顔を出す。

興味無さげに通路を眺める。
適当な段差に乗り上がり視野の確保。狙うは、通路中頃の一帯。

『雑魚の有象無象とは詰まらない。考え無しの虫じゃあるまいに!浅はかさを露出しに来たか?後悔する脳も無いだろうにな!』
ナンセンス。言葉を鋭く放ち、視線で狙いを定め、一体一体スナイプ。関節部や、脳を狙え。中衛破壊によりその後を少しでも足止め出来れば、猟兵の疲弊を持ち直す時間も得られよう。
『無様、無様だ、笑えてくる!』

砂を撒かれたら俺は不利だ。口を抑えながらも遠く届けと声高に『独白』を溢す
なんとかできる奴はいるだろう?
『歌いも笑いも出来ないなら、世界に価値なんざどれほどある!』


河南・光
チッ、そりゃ猟兵がいるなんて情報まで漏れてるならこうなるでしょうね
敵はどれだけいるかも分からない
防衛対象は避難させる事も出来ない
加えて、向こうは使い捨ての駒なのに対して
こっちは狭い通路に全員で密集しても味方を誤射しないようにしないといけない
味方ごと撃つなんてもっての外
そしていくら数を減らしても、防衛線が彼女の部屋まで下がってしまえばもうどうなるか分からない、と
中々最悪な状況ね

でもどうしても気になるの
一旦彼女の部屋に戻って様子を見てから行くわ
この状況には気づいてるはずだから、元気づけてあげたいの
そんなに時間はかけない
早くあいつらに鉛玉を叩き込まなきゃいけないもの


テスアギ・ミナイ
宇治田さんはかわいらしい方でした。
どこにもいけない者がどこかへ行く方法は、――。
私が思いつく方法は、とても悲しい。
……ただ、いつか、一緒にパフェを食べに行きたい。
私たちはまだ「会話」をしていませんし。
叶わないなら、せめて笑顔が奪われない様にと願います。

だから、
ここを通っていただいては困るのです。

ハイカナコさんと共にゴーレムを止めます。
距離をとり、狙撃をして前線の厚みを削り、
接近戦の方の援護も出来たらと。
何体きたって同じこと。
心ない土人形の波如きに、怯む私ではありません。


河南・聖
UDCアース……。
いつも来る度に既視感を覚えるのですよね。
やっぱり、私の記憶と関係がある……?

と、そんな事より目的の施設は……
……探すまでもなかったですね。何ですかあの物量。
急いで応援に行かないと!

背後から急襲して、こちらにターゲットを変えればよし。
駄目なら駄目で背後から攻撃を続けるだけです!
【高速詠唱】【全力魔法】でフロストバート→ブレイズドラゴンの順で使用。温度差で効果アップを狙いましょう!
中にいる他の猟兵がどれだけもつか分かりません、出し惜しみ無しの全力で行きますよ!!

(他猟兵との絡み× アドリブは歓迎)




「じゃ、ちょっと行ってくるから」
「すぐ済むから、お部屋で待っていてね」
 戦いが始まる直前、河南・光とイア・エエングラは宇治田の所に顔を出していた。どうしても気になったのだ。
 不安に思っていないか。心細くはないか。友達だと言ってくれたのだ。手紙の約束をしたのだ。気にならないわけがない。
 宇治田は彼らの声にも顔をあげず、ただ震えている。
(そりゃそうか。ただの女の子が、こんな雰囲気に当てられたらね)
 地鳴りのように響く敵の進軍の音は最早ここにまで届いてきている。施設警備部との通信は途絶えて久しい。もはや激突まで一刻の猶予もない。
「絶対守るから。全部終わったらまたお話しよ。待ってて」
 駆け出そうとする河南に声がかかる。
「……あ、光、ちゃん」
「なに? 希ちゃん」
「あっ……ううん。光ちゃん、また、ね?」
 漸く顔を上げてくれた。
 くちゃくちゃに歪んだ顔で、名前の呼びあいなんてたったそれだけのことを、宇治田は酷く大切なもののように噛みしめるように口にするのだ。
「うん、また後で」
 守らなければならない。力あるものとしての矜恃が、いや、彼女の良心がそう叫ぶ。
 河南は後ろ髪惹かれる思いで部屋を後にすると、前線へと向かって駆け出した。
「エエングラさんも、お気をつけて」
「イア」
「え?」
「僕のことも名で読んでくださいな、希さん」
「……はい。イア、さん」
 ふふ、とその鉱物の表情を緩ませて、エエングラも戦場へと向かう。

 敵は、予想に違わず直ぐ現れた。
「チッ、そりゃ猟兵がいるなんて情報まで漏れてるならこうなるでしょうね」
 通路が切り崩されて広がっていく。みちみちと、その中を窮屈そうに進軍してくる敵は無数。最後尾は見えない。
「だからって、諦めてなんて、やらないから」
 宇治田を見捨てて逃げるなんてはなから考えてはいない。負けるなんて論外だ。
 元より敵は一体残らず駆逐し尽くすと決めているのだから。
「来なよ、デクノボウ。10でも100でも、全部撃ち抜いてやるから」
「ええ、ひとつもゆかせるわけには、いかないもの」
 河南が力を放てば、それは奇妙なガジェットとなって顕現する。例えるならそれは、自走する草刈り機。
 駆動音を響かせながらゴーレムに向かって疾走すると、その刃を高速で回し、敵の足をずたずたに引き裂いていく。地面すれすれを走るそれを、ゴーレムたちは踏み潰そうとやっきになるが無駄。ガジェットはさらに走り回って戦果を増やしていく。
 エエングラは常と変わらず微笑みを貼り付けたまま、優雅にそのクリスタルの指先を敵郡へと向ける。
 するとどうだろう。昏く、怖気を誘うような力が集ったかと思うと、瞬く間に槍となり敵へと放たれた。足を切られて転倒する敵を、足元のガジェットに注意を向けていた敵の頭を。正確に打ち砕いて仕留める。さらには骸に呪詛の炎を放ち消し炭にする念の入れよう。
 いや、違う。遺骸を残して邪魔な障害物になるのを防いでいたのだ。微笑みの裏に冷静な計算を潜めて、クリスタリアンの男は更に敵を討っていく。


「お姫様を迎えに来るならもう少し雰囲気を大切にしてほしかったのですが」
 若干呆れの色を言の葉に込めて呟いたのはイルナハ・エイワズ。圧倒的な敵の数を前にしても彼女の表情に怯えや決意の悲壮さはない。
 敵の数は多い。多いが、此方の有利は変わらない。いくら道を広げながら来ると言っても、それはまだ完全ではない。2体が4体に、4体が8体に、廊下の壁を吸収して広がっていくがその拡張速度は緩やかだ。
 何よりも、いくら敵の側が広くなった所で此方は元の道幅のまま。隘路のようなものだ。攻めて出るならば袋叩きにあうが、そもそも此方は防衛しきれば勝ちなのだ。態々広い方へいく必要はない。
 戦術的な有利は変わりようがなく、全方位から来るような圧とは程遠い。
「こういう戦闘は楽でいいですね。火力を前面に集中させればいいだけですので」
 猟兵が居るとわかっていながらこの単純な力押しはどうしたものか。いや、もっと他に意図があるのではないか。
 思索を弄びながらも目の前の敵から意識は外さない。
「イヴァル」
 そうして呼び出すのはアッサルの槍。狙いを外さない槍の異名を持つそれを複数展開すれば、制圧射撃を行う。
 次々と外殻を避けて敵を串刺しにしていく様は圧巻の一言。数が多いということは適当に撃っても当たるということだ。面白いように当たり、倒れていく。だが、その死骸を乗り越えて、後続が雲霞の如く迫る。
 同族が倒されたことに全く動揺をしていない。
 いくら倒されても、最後の1体でも目的を達成すればそれでいいとでも言うのか。まさに機械のような進軍。
(会話できれば、と思いましたが。これは駄目ですね)
 雄叫びもなく、悲鳴もない。意志を剥奪されたか、それとも元よりそういう生命体なのか。疑問は尽きないが今はそのような事を考察している暇はない。
 エイワズの力は確かにこういう戦闘向けの能力だが、それでも間断なく撃てるというわけではない。その隙に彼我の距離を詰めようと、ゴーレムが足を踏み出す。
 勿論その程度想定している。
「では、次はお任せします」
「わかった。……消えろ。もう戻らない、あの春のように」
 忠海・雷火。いや、カイラか。
 彼女が生み出した凍てついた桜吹雪が、アッサルの槍が途切れた穴を埋めた。
 明らかに硬そうな装甲部分を避け、露出した手足を的確に引き裂いていく。
 一撃で倒すつもりはない。広く浅く。敵の機動を奪えれば僥倖だ。こちらは1人ではなく、協力できる仲間がいるのだからそれで十分。
 前列すべての足がなます切りにされて転倒、もしくはその場にうずくまり後続の障害となる。
 それにつけても数が多い。意図通り進軍速度は遅くなったが、足を故障した同族を、まるで盾にするかのように押し出しながら迫ってくる迫力といったら。
 思うように攻撃が後続まで届かない。地形による有利は、死兵の進軍によりイーブンに持ち込まれてしまった。確実に敵を滅ぼし消し去らなければ、もしくは後続に届かせる手を使わないと効率が悪すぎる。いつかは距離を詰められて、無数のゴーレムによる殴打が猟兵達を襲うだろう。
(報告にいくと、言ったからな)
 くじける訳にはいかない。此の程度の苦境はそれこそ予想していた。
「とどめ、まかせた」
 盾にされている敵の処理は味方に任せ、一旦氷桜雪花を止める。代わりにカイラはブレスレットを握り、強く念じる。ただのブレスレットではない。小粒のネクロオーブを組み込んだれっきとした武器だ。
 彼女の求めに応じて現れた死霊が、通路を広げようとしていた敵を飲み込み苦しめる。即座に叩き潰されるが、こちらの死霊もまた敵と同様変えの効くものだ。ダメージは無い。
 放っておいたらそのうち全方位から包囲殲滅されかねない。止められるなら止めておくに越したことはない。


 言葉もなく、カイラによって機動を削がれていたゴーレムの首がとんだ。
 八上・玖寂だ。
 彼はカイラの生み出した桜吹雪に紛れて、真正面から敵に気づかれずに接近していた。一見不可能そうに見える。けれど可能である。
 意識の隙間にもぐりこむ技術、とでも言おうか。彼はそういったものを得意とする暗殺者のような男であった。
 元より真正面から殴り合っては物量で何時か競り負ける。適切なタイミングで、刈れるものだけをリスク無く討つ。
 あらかじめ発動させていた『万天を断つ無明の星』が、彼の得物を不可視とし縦横に振るわれる。
「数が多すぎると大変ですね。味方が邪魔でしょう」
 野戦で、しかも障害物もろくになければ戦況は逆転していただろう。けれども屋内戦闘、しかも此のような地形では、敵の頼りとする数はまったく活かせていない。
(物資に余裕はある組織のようですが、指揮官は馬鹿なんですかね?)
 敵そのものを盾に使って視線を切る。
 攻撃されるとみるや、股の下を潜って敵陣のただ中に潜り込む。
 一見無謀なような行動は、けれども最適解。
(こんなに詰まっていては腕を振るのも一苦労でしょうに)
 エイワズが、カイラが、足を止めた事によって敵の隊列は詰まりに詰まっていた。殆ど密着したような状態では、それこそ殴りかかるなんて不可能。隣か後ろの味方に当たるだけだろう。
「まあ、仕事が楽なことに文句はありませんが」
 不可視の刃がまた1つ、敵の首を取る。
 
 内部から撹乱されている敵に、さらなる猛威が襲いかかる。
 ロバート・ブレイズだ。
 無数の敵を前に恐れず突撃する。
 別に無謀なわけではない。例え纏めて殴られようと敵は巨体で鈍重だ。前面にしか展開していない事を考えれば精々2体が同時にかかってこれれば良い方。何を恐れることがあろうか。
「さて。猟兵のお仕事だ。老体に鞭打つ時間だ。貴様等に大いなる否を叩き憑ける。覚悟は不要だ。骸は過去の棺に還れ」
 啖呵をそのままキーコードにして、ユーベルコード、ダークネス・シャドウ発動。
 とたんに翁の全身を心臓模様が包み、両腕が七色の流動体と化す。其のさまは最早人にあらず。人外の化物めいている。
 これぞ翁の切り札の1つ。超強化された剛腕が、不規則な鞭のようにしなり敵の守りをすり抜け、槍の様にその身を突き刺す。
 鷹の目の如き観察眼が敵の弱点を看破すれば、さらに苛烈な流体の腕が敵をバラバラに引き裂いていく。流体の攻撃を避ける術を、敵は持たない。
「クカカカカッ――狂気を巡礼するには物足りない連中よ」
 圧倒的な暴力、単純な膂力でも敵を陵駕してのけるその威容。だがその代償は自身を蝕み爛れさせる猛毒だった。刻一刻と己を蝕む毒に苛まれながらも翁は嗤う。
 死の鉄槌と化した敵の腕を掻い潜り、回避不可能な砂の散弾を至近距離から浴びても、その嗤いはやむことはない。
 翁の着衣が千切れ飛び、皮と肉がえぐれる。極小の密度の濃い散弾はクレイモア地雷を凌ぐ殺傷能力を持つ。けれども止まらない。御返しとばかりに振るった腕が、敵の眼窩から侵入し頭部を内部からぐちゃぐちゃに破壊し尽くす。
 まるで死の舞踏だ。お互いの身体を削り取りながらも、それでも着実に敵の前衛、カイラの弱らせたゴーレムを潰し、引き裂き、ばらばらにして、見通しを良くしていく。
 翁は嗤う。翁は殺す。
 脳の片隅に『希』の証明を置いて。

「御老体、後は私が」
「大儀である。だが無用」
「であれば、片側は私が」
 怪異の翁と肩を並べたのはトリテレイア・ゼロナイン。彼もまた身を削る砂礫の暴威の中に自ら身体を晒し、近接戦闘を仕掛ける。
 巨大なトリテレイアよりも尚大きいゴーレムの豪腕を、その盾で弾き反らす。
 見事な受けの技術。そして怪力か。彼もまた翁と同じく自己強化の技を己に施していた。
 オース・オブ・マシンナイツ。
 戦術的有利を捨て、敢えて敵陣に少数で斬り込む。全ては後方の仲間の為、そして銃後にいる守るべき少女の為。その英雄的行動が彼に無限の力を与えていた。
 トリテレイアの大盾が唸りをあげ、ハンマーで殴り飛ばされたかのように敵が後退する。
 それでも前進しようとした敵が、唐突につんのめって其の場に転倒。さらに後続のものがそれに躓いて進行を止める。
「通路の狭さが仇となったな」
 フォルター・ユングフラウだ。
「そら木偶共、我が162の亡者の腕とくと味わえ」
 変化はそこかしこで。ゴーレム達の足元から生えた腕が、その巨体の割りにはか細い足を掴み、潰し、抉り取っていた。堪らずさらなる転倒と、それが障害物になる連鎖が起こる。
 そしてそれだけでは終わらない。
「命乞いは受け付けておりません。疾く過去に還れ」
 トリテレイアがその頭を丁寧に盾で、足で踏み潰していく。
 前衛の壁が押し留め、そして後衛による広範囲の行動阻害をしかける。とっさの連携、ではない。数度とはいえ共に死線をくぐり抜けた間柄だからこそ相手の可能な技、効果を信頼できた。
 ユングフラウならば、トリテレイアならば、此の程度はしてのける。冷静な戦士としての判断がお互いに背中を預けるような連携を可能としていた。
 敵の骸が積み重なる。
 それこそ掩蔽壕かつバリケードにでも使えそうな障害物だ。けれど敵とて無能ではない。同族の骸が邪魔だと見るやそれを掴み上げ盾にし、もしくは猟兵たちへと投げつけてくる。
 なんたる剛力、非情な判断か。咄嗟に盾で受けたトリテレイアの腕が痺れる。亡者の腕を逃れたゴーレムがそこに接近。盾の上から構わずに殴りつける。
 足元が陥没する。
 直撃は免れたが威力を上手く逃しきれなかった。足が埋まり、機動が落ちる。そこに更に追撃の殴打。鎧がひしゃげ、トリテレイアから苦悶の声が漏れる。
 けれど彼は下がらない。どれだけ殴られ、傷つこうとも。
 敵の拳を今度こそ盾で受け流し、上体が流れたところを叩きつけるようにして殴りつけた。今度は敵が地面に埋まる番だ。さらにもう一発。大盾の容赦のない一撃に頭を潰されて、そいつは沈黙した。
 後方から飛来した小瓶がトリテレイアに当たって砕け、中の溶液を浴びせかけた。ユングフラウの癒やしの薬だ。
「助かります」
「構わん。まだいけるか?」
「一日中でも」
「どんなに良い演目も一日続けば飽きるというもの。さっさと済ますぞ」
「確かに。では、ご随意に」
 まるで女王とそれに侍る騎士のように、2人は破竹の勢いで敵前衛を掘削していく。


 こと乱戦になってしまっては、広範囲の攻撃も遠距離射撃も誤射の恐れがあってできない。
 だが、射線さえ確保できれば。
『雑魚の有象無象とは詰まらない。考え無しの虫じゃあるまいに! 浅はかさを露出しに来たか? 後悔する脳も無いだろうにな!』
 それは言葉であると同時に攻撃だ。不可視の衝撃をまともに食らった中衛の敵が頭部を爆ぜた。体表と同じ黒い液体を壁と同族にぶち撒ける。まさに脳はない。ないが、頭部はやはり弱点なのか。其の場に膝を付いてそれきり動かなくなる。
『1発で寝るんじゃない! 数だけ揃えたボンクラか!』
 がなり声そのものを銃弾に変え敵を狙撃しているのは松本・るり遥。宇治田と面会した時の彼とは似ても似つかない荒々しい言葉遣いは人違いかとすら思われたが、彼もまた松本本人なのだ。
 多重人格者。今の人格は『優しくない』彼。
 戦闘時に出てくる彼は、人として当然持つべき優しさが欠けていた。平和な社会ならば確実に不適合者の烙印を押される欠落だが、こと戦闘に置いては彼ほど頼りになるものは居ない。
 容赦もなく、慈悲もない。
 適当な物資を使って簡易的な高台として陣取り、白兵戦に興じている前線ではなくその後ろ、中衛の敵を1体1体狙撃していく。
 彼の視線はそのまま射線となる。肺は火薬、喉は銃身、舌はライフリングで口は銃口。逃れる手は、それこそ身を隠し声の届かないところへ行くことか、射手を殺すしかない。
 敵にまともな遠距離攻撃手段はない。有るのは唯一つ。極小の砂礫を超高速で周囲に発射する自爆技。やぶれかぶれか、それともそれ以外に行動パターンが存在しないのか。狙撃から生き残った敵がその自爆技を使用するも、それは周囲の味方を削るだけだ。密集しすぎたのが仇になり、松本どころか前衛の猟兵にすらその砂は届かない。
『無様、無様だ、笑えてくる!』
 松本は容赦なく、その間抜けを撃ち抜いた。

 狙撃手はもう1人。
 前衛にて猟兵を叩き潰そうとしたゴーレムの片目が撃ち抜かれた。突き立っているのは、矢。
 銃弾でも声でも魔導でもない。原始的でシンプルな矢が、味方の間を縫って恐るべき正確さで敵の目を撃ち抜いたのだ。次いで、稲光の速度で飛んだ鳥がもう片方の目玉をくり抜いて飛び去っていく。
 射手の名はテスアギ・ミナイ。鳥を喚んだのはハイカナコ。ミナイが召喚したシャーマンの霊だ。
 氷の如き美貌を持つ彼女が弓を引けば、一射ごとに前衛を脅かそうとした敵がその目を奪われ、手足を射抜かれる。
 ハイカナコは鳥を飛ばし、時には味方前衛の空白地帯へと雷を落として援護する。
 とはいえ、松本程自由自在に撃てるわけでもない。どうやっても射線は味方によって途切れる。頭上を通して敵顔面を狙おうにも巨大なウォーマシンや縦横に腕を振るう怪人の腕に当たらないとも言い切れない。
 針に糸を通すような極度の緊張の最中、ミナイは銃後の少女に思いを馳せる。
 あの可愛らしい少女と願わくば一緒にパフェを食べたり、今度こそ『お話』をしたいものだと。
 少女の未来に明るいものを見いだせなかったからこそ、せめて今の笑顔を奪わせるわけにはいかないのだと。
「だから、ここを通っていただいては困るのです」
 まだ少女とは『しりとり』しかしていないのだ。
 正確無比な矢が、また1体の敵の頭蓋を砕く。

 ゴーレムにとって遠距離攻撃とはすなわち味方を巻き込む自爆技である。しかし密集してしまい、狭い通路を前衛の猟兵が塞いでしまえば後衛の猟兵へ手出しする手段は正面からでは無いように思われた。
 そう、正面からでは、だ。
 唐突に後衛陣地の脇の壁に大きなヒビが入る。大きくたわんで、今にも崩れ去りそう。
 敵だ。回り込まれた。
 奇襲するだけの知能があったのか、それとも前が詰まったから迂回してきただけか。どちらにしろ今ここから敵になだれ込まれたら現在の戦況を覆されかねない。いくら有利に戦えているとは言え、それは前後衛の連携あればこそなのだから。
 後衛の猟兵達に冷や汗が流れた、が。
「何か面白そうじゃねえか、混ぜてくれよ」
 崩壊一歩手前の壁が急にその強度をました。腹に響くような打撃音を何度喰らっても、崩れること無く持ちこたえる。
 よくよく見れば壁に無数の糸が這っている。蜘蛛の糸のような粘糸から、鋼糸まで。それらが網になって壁を補強していたのだ。
 ユーベルコード、死紡誘伎。本来無尽蔵に編まれる糸によって敵を討つものだが、使いようによっては此のような事も朝飯前である。糸とは原始の時代から使われてきた万能ツールなのだ。
 使い手たる虻須・志郎は己の仕事に満足したのか1つ頷くと前線へと視線を飛ばす。そこには彼の知り合いたる翁が、哄笑を上げながら敵をバラバラに解体しているところだった。
「何だい、先生も居たのか。随分と楽しそうだ」
 混ざって暴れるのも一興だが。
「こっちをどうにかしないと、死ぬか」
 壁を破壊できないと見るやいなや敵は壁そのものを吸収し始めた。ひび割れた壁は見る間に消えていき、代わりに全身を装甲で固めたゴーレムが何体も、糸を引きちぎろうと腕を伸ばしていた。
「させるかよって」
 主の意に従って、糸が敵を拘束する網となって襲いかかる。
 

 他の猟兵が防衛に回る中、意図せずに遊撃手のような形を取ったのは河南・聖。
 おっとり刀で駆けつけた彼女の前にあるのは、施設を飲み込もうとする数えるのも面倒な程無数の敵。
「探すまでもないのは良かったですけど、何ですかあの物量。急いで応援に行かないと!」 
 UDCアースという世界に自身の失われた記憶を呼び起こすような雰囲気を感じるも、今はそのような暇は無いと気持ちを切り替える。
 高速詠唱。言葉を繋げ、意味を連続させ、圧縮。詠唱の意味を失わせず、かつ速度を現界まで上げて、さらには己の魔力を言の葉に全力で流し込む。
 無茶な運用だ。けれども悠長に詠唱する暇はない。
「舞って、フロストバード!」
 魔力で形成された氷の巨大鳥がゴーレムの群に飛び込めば、広範囲の敵をその氷のかいなで包む。甲高い音すら立てて複数のゴーレムが凍りつき、動きを止めた。
 まさか背後から攻撃されるとは思っていなかったのか、敵に動揺のような一拍の停滞が生まれた。好機。
 此方は1人きり。他の猟兵の援護無しで持ちこたえられるとは考えていない。叩けるうちに最大火力を叩き込む。
 すかさずもう一射。再度の高速詠唱と魔力の全力投入。脳髄が焼ききれそうなほどの負荷を無視。そして発動。
 今度のそれは鳥ではなく、竜。
 赤々とした炎の竜が、氷漬けになったゴーレムを余さずその灼熱で焦がす。マイナスからプラスへの急激な温度変化に応力が発生しその身体を崩壊へと導く。
 魔導による破壊力だけではなく物質に当然有る現象すらも計算に入れたその攻撃は、絶大な破壊力をもってゴーレムをまとめて複数体同時に崩壊させ、生命活動を奪うに至った。
「上手くいった!」
 自身の狙いが違わず的中したことに気を良くした聖。
 けれども彼女は反撃に転じた無数の敵に襲われることになった。視界を埋め尽くす豪腕。力任せの一撃なれど、数が揃えばそれは驚異となる。受け流し、回避、三発目で直撃。
「っか!?」
 肺の中の空気を全部吐き出しながら地を転がる。
(味方への圧を減らせるし計算通り。でもこれは、ちょっと、きつい!)
 彼女とて非力なだけの魔道士ではない。マジックナイト、魔導と剣を修めたハイブリッドな戦士だ。とはいえ多勢に無勢。援護もなく1人敵に囲まれて戦う程彼女は無謀ではない。
 跳ね起きると即座に反転。足を使って引き離しつつ、突出した敵を叩く戦法へと切り替えるのだった。


 情報が漏れていたならば、敵はこの建物の詳細な図面くらい手に入れているだろう。故に。
「教科書通りの奇襲」
「お疲れ様です」
 壁を突き破って宇治田の部屋の前に直接現れたゴーレムは、その瞬間待ち構えていた嶋野と江戸川の射撃の前に為す術もなく蜂の巣にされた。
「最大戦力をこそ囮にする、そこまではよくやったよ。けどそういう卑怯な手なら此方も負けてねえんだ」
「ご丁寧にしっかり罠も踏んできてくれたようで。だいぶ煤けてる」
 江戸川の言葉の通り、奇襲を見越したルートに設置された彼のお手製のトラップにより敵の身体はそこかしら欠けていたり、穴が空いていたりする。
 無論、奇襲を想定していると感づかれないように施設全体に満遍なくしかけておいたのだが、その中でも特に苛烈な罠をこのルートには仕掛けておいたのだ。
 奇襲を防がれる事は想定していなかったのか。ルーチンに齟齬がでたのか。敵が動揺しているかのようにまごついている。その間に2人はさらに追撃。
 嶋野がほぼ密着したような距離から両手に持ったアサルトウェポンで射撃。それは正確に外殻をさけて、柔らかな部分を穿つ。
 江戸川のブラスターから放たれた熱線ビームは、時に外殻を削り、弾かれながらも着実にダメージを重ねていく。
 1体、もう1体と倒れた所で、流石に敵も立ち直る。
 敵残数は8。少数による宇治田の拉致を目的とした遊撃隊といったところか。
(ちとキツイか)
 雑魚は雑魚だが、なにぶんでかいしタフだ。
 纏めて敵を薙ぎ払うようなユーベルコードを持たない嶋野と江戸川には荷が重い。
(だが、やるしかねえ)
 他の味方は揃って前線に出ている。幸いここまで敵が漏れてくることはないが、応援を頼める状況でもない。
 敵の大ぶりの一撃を転がるように避けるも、別の敵が放った大量の砂粒が散弾のごとく身体を打つ。
 舌打ち。敵はもはや破れかぶれか、それとも知能が足りないのか、味方への被害も度外視して此方を殺すことだけを考えている。
 無差別の砂粒は避けるのは難しい。
 まるで連鎖するように、別の個体、また別の個体も砂粒の無差別射撃を開始する。
「くそが!」
 数を減らさないとまずい。自爆で敵が総崩れになる頃には此方も仲良くミンチになってしまう。
 嶋野は敵の射撃の中を身体が削れていくのも構わず突撃。負傷の度合いが危険域を超えたが構わない。ゴーレムに張り付くと、零距離射撃で発砲。そいつはびくりびくりと何度か震えてからおとなしくなった。
 死骸が倒れないように片手で掴んで保持。簡易的な掩蔽物とする。
「中々良い盾だ。江戸川! こいつ使え!」
「助かります!」
 2人そろってその身体の影に隠れて射撃を開始。アサルトウェポンの魔導を含んだ銃弾と、ブラスターの熱線が少しずつだが相手を削る。
 無差別射撃が防がれていると漸くわかったのか、ゴーレムが腕を振り上げて殴りかかってくる。
「ま、そうくるわな」
 それも想定内だ。ゴーレムが簡易盾ごと2人を粉砕するより早く、現れた亡霊がその個体を蜂の巣にしていた。
 戦場の亡霊。自らが瀕死になった時だけ呼ぶことの出来る嶋野の奥の手だ。攻撃手段は嶋野と全く同じだが、戦闘力は召喚物とは思えぬほどに強く頼もしい。
 瞬く間にもう1体のゴーレムを血祭りに上げるのを横目に、嶋野と江戸川は射撃を続ける。銃弾が外殻を削り、熱線がそこを穿つ。盾がボロボロになれば別の死骸を拾い上げて盾にして、撃って、撃って、撃って。
 射撃音で耳が遠くなる頃には、どうにか2人きりで敵遊撃隊を一体残らず滅ぼすことに成功していた。


 敵の奇襲を完全に封じ、逆にこちらのそれは成功。後方からの奇襲により敵戦力は分断された。
 前衛と後衛にきちんと分かれた組織的な防衛は型にはまり、敵数に比すれば緩やかだがそれでも確実に敵を倒す事に成功していく。
 前衛を下げればエイワズとカイラの範囲攻撃が、無数の槍と凍える桜となって敵を滅多打ちにする。
 バタバタと倒れる敵の向こうに、いまだ健在な影を見れば、狙撃できる者たちの一斉射撃がさらにその数を減らす。
 声が、ライフルが、弓が、死霊の槍が猟犬の如く殺到して敵の柔らかな部分を食いちぎっていく。
 ごっそりと削れた陣の穴を、前衛たる猟兵達が押し込み蹂躙を開始した。
 亡者の腕が足を削り、騎士が踏み潰し、異形の翁が殲滅していく。糸が、不可視の剣が首を飛ばす。
 もしこれが、何方かに偏った編成だったらこうも上手くは行かなかったろう。
 範囲攻撃のみで固めれば死兵となったゴーレムは同族の骸を盾に使って押し込んだだろう。接近戦のみで戦えば物量で潰されていただろう。
 後方から奇襲をかけた猟兵が居なければもっと苦戦をしただろうし、防衛対象の前を疎かにしていればそもそも作戦自体が失敗していた。
 数が揃ったからこそ、それぞれがベストを尽くしたからこその勝利ともいえた。 


 決着はついた。無数にうごめいていたゴーレム達は全て猟兵達の前に倒れた。
 その奥に居たのはフードを目深に被った人物。男か女かもわからない不気味な風体で片手に魔術書めいたものを持ち、なにやらぶつぶつ唱えている。こいつが全ての元凶である邪教徒であろう。
「させるか!」
 猟兵達が駆けるのと邪教徒の詠唱が終わるのはほんの僅かな差。 
「我が身を捧げる! 神よ! 御身を今ここに!」
 高らかに吠える。
 邪神降臨。自らを依り代にした神降ろし。
 しまったと誰かが叫ぶよりも早く。
 猟兵達の後方から飛来した炎が邪教徒を飲み込んだ。
 絶叫。だがそれも一時。あっという間に悲鳴は沸騰して途絶え、邪教徒は真っ黒に炭化して死んだ。
「なに?」
「皆! 希ちゃんを止めて!」
 ソゥムヌュクススの声が全員に届く。

●ライアーライアー
 時間は少し遡る。
 宇治田の部屋の中。閉じられた扉は音という音を遮断していたが、地を揺るがす衝撃だけはしっかりと伝わってきていた。
 派手な振動は既に終わっており、今ではもう散発的なものになっている。戦闘の帰趨は決したと思われた。勿論、猟兵達の勝利だろう。何故なら戦闘前の大量の何かが進軍してくるような揺れがピタリと止んでいるから。
「なんとかなったみたいだねー」
 のんびりと、けれどもけして気を抜くこと無くソゥムヌュクススが宇治田に話しかける。
 彼女はベッドに座り俯いたまま返事をしない。
 何かがおかしい。
 ソゥムヌュクススはじわじわと這い寄ってくるような不安を感じていた。けれどそれが何処から来るものなのか、それがわからない。
 敵は仲間達が余さず始末しているはずだ。宇治田の中の邪神だって結界の中にいれば安心だと施設の職員は太鼓判を押していた。
(本当に?)
 いいしれぬ不安が強くなる。なにかを見落としている。
「私」
「え、なにー?」
 唐突な宇治田の声に、内心驚きながらもそれをおくびにも出さずに応える。
「私、皆さんに嘘ついてました。たくさん、たくさんの嘘を」
「突然どうしたのー?」
「私、本当はこんなに話す子じゃありません。素直なんかじゃないし、笑顔だって練習して作った作り物なんです」
 その内容よりも、何故このタイミングでそんな告白をするのかが不可解だ。ソゥムヌュクススの不安が増す。
「だいじょーぶだよー。そんなの誰だって多かれ少なかれやってることだしー。でも、どうしてそうしたのぉ?」
「好かれたかったから。ソゥムヌュクススさんに、皆さんに好かれたかったから」
 可愛らしい嘘だ。ソゥムヌュクススは微笑んで宇治田の髪を撫でた。宇治田の顔は見えない。俯いた顔はあがらない。
「そんなの、皆笑って許してくれるよー。というか許す許さないなんて話じゃないよーそんなのー」
「それだけじゃないんです。もっと、もっと私は……」
 宇治田が首を振ると、立ち上がって何を思ったのか外へと歩き出した。
「希、ちゃん? 駄目よ、中に居ないとー」
 ソゥムヌュクススが宇治田の腕を掴む。やんわりと。けれどけして離すまいと力をこめて。
 しかしそれはあっさりと振りほどかれた。猟兵であるソゥムヌュクススの手を、だ。
「っ!?」
 不安はもはや明確な形となった。
 本格的に『拘束』しようとしたソゥムヌュクススの判断は誤っていた。即座に全力で『殺し』にかかれば、もしかしたら宇治田を止めることは可能だったかもしれない。だが、出来るわけがなかった。宇治田は守るべき対象であって、討つべき存在ではないのだから。
 宇治田がソゥムヌュクススを軽い挙動で突き飛ばす。人とは思えぬ力にソゥムヌュクススが後退り、ベッドに尻もちをついてしまう。
 その僅かな時間に宇治田は部屋から出ていく。あっさりと。結界などないように。
「うそ……」
 ソゥムヌュクススは信じられないと見つめる。
 否、思い返せば、宇治田は一度自ら結界の外へ出ていた。

『希、と』

 名を名乗ったあの時、宇治田は忠海の袖を握っていたのだ。扉の外に出た忠海の袖を。
 あの時、確実に腕が結界の外に出ていた。
「ごめんなさい」
 振り返ってソゥムヌュクススを見る宇治田。困ったような、泣いているような、酷く儚い笑み。
「もう1つの、嘘。私十分なんて、ちっとも思っていません」
「我が身を捧げる! 御身を今ここに!」
 邪教徒の詠唱は宇治田の放った紅蓮の炎に飲まれて絶叫へと変わった。
「皆! 希ちゃんを止めて!」

 嫌な予感がする。そう感じた者達の直感は優れていた。
 一度顔を見せた者達の不安は形は違えど的中していた。
 邪神が活性化するかもしれないと予想した江戸川はほぼ正解を引き当てていた。
 宇治田と一緒に居たほうが良いと思ったソゥムヌュクススの判断は正しかった。
 だが、致命的に間違えていた。

「宇治田さん! 中に入ってっ! ああ、くそ、手帳に手を置いて! そこなら安全だから!」
 部屋のすぐ外に居た2人がまっさきに反応した。
 事情はわからぬまでも、なんらかの異常事態を察知した江戸川が『幻影の城』を発動しようと手帳を差し出す。けれどそれは不発に終わる。
 このユーベルコードは対象が抵抗しない状態でなければ発動しないのだ。
「江戸川さんも、ごめんなさい。私は悪い子です。貴方を、信じることが出来なかった。この身体が治るなんて欠片も思えなかった。笑ってください。愚かな娘と。……それと、太陽を見せてくれて、ありがとうございました」
「そんな……そんな何もかも諦めたような」
「だって、無理ですもの」
 泣き笑いのような顔。
「こんな身体に生まれたくなかった。普通に生きて、普通に学校にいったり、友達と遊んだり、恋愛したり、お嫁さんになりたかった。でも、無理だともうずっと前にわかっていました」
「出来るよ! 無理に外にでようとしなくたって! いつか外にでれるから! それから」
 江戸川が血を吐くように叫ぶ。届いてくれと。思いとどまってくれと。けれど。
「それはいつですか?」
「それ、は……」
「10年後ですか? 20年後ですか? 私が、おばあちゃんになる前に、死ぬ前に、出来るようになりますか?」
 わからない。軽々しくすぐ出来るなどとは言えない。言えるわけがない。それは15年に及ぶ彼女の孤独に唾を吐くに等しい言葉だ。できるなら、何故いままで彼女は1人ぼっちでいなければならなかったのか。
「ずっと前にわかっていたなら、何故『今』なんだ」
 嶋野だ。射抜くように油断なく少女を見据える顔は、気持ちを切り替えた仕事人のもの。
「空が青いと識ったから。後は、そうですね。結界が弱まったから」
 違和感。それこそ、何故今なのか。猟兵達が去った後の方が脱出するなら障害もないだろうに。
「……嘘だな」
「はい、嘘です。でも、きっと本当の事を言っても、皆さんにはわからないと思います」
「諦めないでくれ! わかりあう努力を、放棄しないでくれ!」
 江戸川の叫び。
 ぼこり。
 宇治田の顔が変形した。内側からふくれあがり、目が零れ落ちそうなほどに大きくなる。
「……覚えていてほしいんです」
 声がひび割れる。
「え?」
「ずっと、ずっと、永遠に、死ぬまで。私のことを覚えていてほしいんです」
「忘れないよ! 約束したじゃないか。助けるって!」
「嘘です。きっと貴方達は忘れる。ううん、優しい人だから、沢山人を助けて、これからも助けていく人だから、きっと貴方達の中で私はその中の1人でしかなくなる。そんなのは、嫌です」
 ぼこり。
 さらに倍に。手足もまた、人ならざるものに堕ちて行く。
「……無茶苦茶だ」
「はい。無茶苦茶です。私、本当はそういう子なんです。いい子なんかじゃないんです。……誰かの特別になりたかった。愛して欲しかった。どんな手を使ってでも」
 態々猟兵達が居る中、結界の外に出て化物に堕ちようとしている現状と、ずっと覚えていて欲しいという言葉。
 猟兵達の中でそれらの事象が1つの答えを形作る。
 つまり、つまりだ。
 宇治田は、この女は、殺してくれと言っているのか。
 化物になった自分を手にかけさせることで、命を賭して、誰かの特別になろうとしているのか。
「そんなの、愛じゃないよ……」
「でも、私にはこれしか無かったんです。私の、最初で最後の我侭。……それと……」
 もはや彼女の声は人とは思えない不協和音を奏でている。
「約束、破ってしまって、ごめんなさい」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『膨らむ頭の人間』

POW   :    異形なる影の降臨
自身が戦闘で瀕死になると【おぞましい輪郭の影】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    慈悲深き邪神の御使い
いま戦っている対象に有効な【邪神の落とし子】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    侵食する狂気の炎
対象の攻撃を軽減する【邪なる炎をまとった異形】に変身しつつ、【教典から放つ炎】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 残りの変化は一瞬だった。
 宇治田の顔が膨れ上がり、美しかった顔が見る間に鬼灯のように赤く丸く、いびつに歪む。艷やかな黒髪は、まるでカツラのようにその場に落ちた。
 日光を一度も浴びなかったその白魚のような肌は黒々と禍々しく染まり、手足の形が人のそれから逸脱していく。
「きぃいいい゛い゛あ゛あああああああああああああ!」
 甲高い産声の叫びは、すでに彼女の声とは似ても似つかない。
 そこに理性は感じられない。
 美しい少女は最早居ない。あるのはただの邪悪な、化物だった。
「なん、で」
 自分たちは少女を守りに来たのではなかったのか。そのために準備して戦ったのではないのか。
 少女が化物になって襲ってくるなんて、聞いていない。
「糞ったれが!」
 わけがわからない。だが戦わねばならない。
 化物の身体は今もうごめいて、膨らんで、まるでさらなる成長をしているように、いや、実際している。
 更に禍々しいものになろうとしているのだ。
 今ここで討たなければ、自分たちだけでは対処できない事態になる。どれだけの規模の災厄となるか。
 この施設だけではない。町1つで済めば良いほうかも知れない。
 倒さなければ、否、殺さなければならない。でなければ、もっとずっとたくさんの人が死ぬ。
「希ちゃん!」
 声は、届かない。
ロバート・ブレイズ
「此れは。此れは実に『懐かしい』感覚だ。堕ちる存在を容赦なく撲り倒し、戻る兆しの無い闇黒を滅ぼす所業。久方振りに殺さねば成らない『を』演じねば! さて。自らの証を放り投げた気分は如何だ。心地酔いだろう。少しでも笑って在った己に腹が立つ。否定し、冒涜するのだよ」
魂の改竄を使用
自らの精神世界を解放し、暴走する魂の群れを放出する
他の猟兵が『やり』易いように動くを止めるのだ
必要ならば『情報収集』で弱点を見抜き、鎧砕きを叩き込む
殺気も纏おう
「地獄の棺桶が一個追加されるとは。哄笑すべき邪悪が」
殴ると同時に『自身が変貌する事への恐怖』を残っているならば『娘』の精神に伝えよう。改竄で『一時的に』浮かぶと信じて


河南・光
嫌な予感
もしかしたら貴女は、何かしらの方法によって一瞬の隙を付いて『外に出る』というのぞみを叶えた末に邪神として猟兵に討たれる……そんな想像はしていた

でも、貴女ののぞみは違ったのね
普通じゃないままでも、もしいつか、貴女が猟兵として目覚めて、もしかしたらグリモア猟兵になんてなって、共に戦える日が来たりしたらいいなと夢見てあの言葉をかけたけど……
ねぇ、こんな形以外で、貴女を救う方法は無かったのかな?

奇跡は祈らないわ
せめて、貴女ののぞみを叶えてあげる

……もし、まだ一瞬でも言葉を交わせるなら
あの部屋の好きな本とかCDのタイトルなんて聞けないかしら
いつでも思い出せるように、1つ貰っていきたいんだけど


八上・玖寂
誰にも愛されず、名前すらなく、
それでも生かされた15年間のツケ、ってところですかね。
愛着が湧く前に首でも絞めておけばよかったものを。
どうせ後悔するならば、人間のまま、死なせてやればよかったものを。
邪教徒もUDC職員も我々も、傲慢なこと極まりないじゃないですか。
……恨めば楽になれますよ。

基本的に『咎力封じ』で相手の動きを妨害するのを主体に動きますが
積極的に動く人が少ないなら『万天を断つ無明の星』を乗せた武装で攻撃主軸に。
【先制攻撃】【2回攻撃】【傷口をえぐる】【破壊工作】あたりを合わせて。

どんな手を使ってでも誰かに愛してほしかった、か。
(勿忘草を咲かせた拾い子の姿を脳裏に浮かべながら煙草を咥え)


マリス・アップルズ
友人のメア(f00334)には内緒で
メアの助けをするために参加するわ。

メアは優しい子だから。
女の子が死ねばきっと悲しむわ。

メアは優しい子だから。
悲しみながら戦うかもしれないわ。

メアは優しい子だから。
わたしはメアの覚悟を見守る事にするわ。

メアが怪我をしたら「医術」と「紅き聖餐」で治して。
そこでどんな決断をしたのだとしても。
偉かったねって。褒めてあげる。
大事な事を決めるのはとても大変な事だから。

誰か他に怪我をしてる人が居ても治してあげるわ。
きっとメアもそうして欲しいって思うかもしれないから。


江戸川・律
またか…また俺は…
タスケタイヒトヲ
スクエナイノカ?

あははっ…
俺は…
最後まで足掻くぞ!
キミとの約束を守る為
こんな現実捻じ曲げてやらぁ!!

(自分への怒りで真の姿に覚醒…その時、親父から継いだ破れた手帳に書かれていた解読出来なかった魔法陣が明るく輝き、新しいユーベルコードの知識が頭を駆け抜けます)

うぐっ、、、コレは
気絶中の対象を依代と邪神に分離?
希の意識は無い…
コレは行けるのか?
蜘蛛の糸を掴む話だけど
いや一握りの希だ、試すだけ試す!

みんな
俺に考えがあるんだ
今のままだと成功しない
弱らせて隙を作ってほしい手伝ってくれ!

(分離出来たら、希の身体は夢幻の城の時間が停止した世界に送ります)

アドリブ共闘歓迎です


嶋野・輝彦
元から嫌な予感ってのはあったんだ
病気でケーキが食えない人間の前で美味しい美味しいってのは酷よ
希が羨ましい、辛い、苦しいって言えりゃよかったんだが無理だわな、お前ら良い奴過ぎたんだよ
世の中には残酷な優しさってのはあるし
人は救われたい人間しか救えねぇ
俺達は間違えた
仕事をするぞ

ダメージ顧みず接近【捨て身の一撃】【零距離射撃】【鎧無視攻撃】で超接射で攻撃
ダメージに対しては【覚悟】【激痛耐性】で耐える、最初から腹括ってりゃ耐えられるだろ?
耐えて耐えて耐えて攻撃
倒れたら戦場の亡霊発動

何とかしたいどうにか救いたいって奴もいるんだろうな
俺は「人は救われたい人間しか救えねぇ」と言った
やりたい事があるなら早くしろ


イア・エエングラ
いつかくるだろうとは、と思えど
今でないと、思えてしまうのはおかしなものな
叶わないと思っていたのに
約束してくれたから、

猟兵の本分とはいえど
その見目が似つかなくとも
僕が狙うには逸れそうね
……面影のないほが救いかしら
来て、と呼ぶのはリザレクト・オブリビオン
この子らならば、過たず振るえるでしょう
躊躇わずに振りぬけるだろう
駄目といっても、果たしてね
他の子のお邪魔にならないようにね
そうしたのは僕だとは、逸らさずおくよ
炎が焼くのはどちらだろ

お話のように連れ出す手は、なかったのなあ
しあわせなお仕舞にも程遠い
送る宛も、なくなって
名前を呼んで、返事が欲しいのかも分からない


テスアギ・ミナイ
そう……自ら選んだのですね。
それはあなたが正直に生きたということ。
あなたの気持ちは、とても自然で当たり前の感情です。

誰かにのぞまれたい。愛されたい。
生まれたことをよろこばれたい。
それが叶わないならせめて、誰かの記憶に生き続けたい。
憎まれてでも。

私はそれをある一人に求めましたが、
あなたはこの場の誰かにそれを求めました。
誰でもいいなんて言われたら、もう私は特別になれませんね。

それでも。
自分で死ねないなら殺してあげます。
この矢ははじめての友達として最初の贈り物です。
うけとってくれますか?


友達の使い方は、あれで合っていたでしょうか。


フォルター・ユングフラウ
【WIZ】
【古城】で参加

特別になりたかった、だと?
汝が特別だからこそ、我は私物を譲り渡したのだ…!
どこにいても、我の心は汝と共にあると……!
…、結果は変えられずとも、道程は変えられる…いや、変えてみせる
汝は邪神では無い、その手をこれ以上血で汚させはせぬ
「不運な、変異しただけの少女」として、送ってやる…!

トリテレイアが希を抑えている間、UC:トーデスシュトラーフェにて背後より手中の教典を斬る
破壊出来れば、多少は攻撃力を削げるかもしれぬ
希の手を血で汚さぬと誓った以上、絶対に被弾は避けねば…転移と攻撃を繰り返し、捕まらぬ様立ち回る

…希がどういう最期を遂げようと、我はこの日を忘れはしない

※アドリブ歓迎


トリテレイア・ゼロナイン
【古城】で参加

宇治田様…いえ、希様。私は貴女にお守りすると騎士として誓いました。これ以上貴女の手を血で汚させはしません。「怪物」ではなく「変異した哀れな少女」として終わらせ、貴女が人であったという事実をお守りします

「武器受け」「盾受け」で眷属の攻撃や炎から仲間を「かばい」つつ、格納スラスターで地面を「スライディング」しながら接近し、武装を捨て「怪力」で「手をつなぎ」動きを封じます。上記の旨を言葉が通じずとも「優しさ」を込めて伝えつつ、フォルター様の攻撃のチャンスを作り上げましょう

この戦いが終わったら彼女を人として葬ってくれる方はいるのでしょうか? いてもいなくても、私は墓前に花を捧げたいのです


イルナハ・エイワズ
攻撃出来ないなら攻撃しなくてもいいのですよ?

ユルに槍になってもらい戦闘を行います
視力による観察と戦闘知識によって敵の行動を把握し
見切りとダッシュ、残影でのヒット&アウェイで攻撃を行い
ドラゴニック・エンドを当てていきましょう

普通に生きることを希(のぞみ)
命を賭して特別になることを希(のぞむ)
感情とは理解し難いものです
そして人というものは本当に興味深いですね

戦闘後

件名 美少女
本文 邪神の画像
というメールを送りつけます

その後はユルとのお散歩で把握した内部の情報から
効率良く回り、生存者を探します
ユルの野生の感と第六感も頼りにしましょう


メア・ソゥムヌュクスス
「どうして…」

守れなかった、救えなかった。
分かってあげられなかった。

でも、落ち込んでいる場合じゃない、倒さなきゃ。
それがあの子の望みでもあるのだから…。
【微睡みの刃】

本当に…?


諦めるしか無いの?


……、私は、諦めたくない。
【UC:スリーピーシープ】
邪神と繋がるなんて、無茶だってわかってる。【呪詛耐性】【激痛耐性】
でも、あの子は邪神なんかじゃない、希ちゃんは人なんだ。

もう手遅れかもって、無駄かもって、解ってる。

それでも

「あの子に希望ある明日(ユメ)をみせてあげたいの」
眠って沈まれ、希ちゃんの邪神の力。
【UC生まれながらの光、ヒュプノスノヒトミ】

私は、人を明日へ導く聖者なのだから。

※連携大歓迎


忠海・雷火
例え、声は届かずとも
貴女が呼んでと願った名を、私は呼ぶと決めたから
最初から一人の人と向き合うつもりで、そうしたのだから
希。最後まで付き合ってあげる

刀で斬り付け、或いは他の人が与えた傷でも良い
其処から血か、血に相当する体液を飲んで血風餓犬を発動
見切れるならばそうして躱し、出来なければ炎や落とし子や影は、長舌に絡めさせ、先で突き刺し引き裂かせ対処
対処が難しければ捨て身の覚悟で、只ひたすら攻撃に集中
斬って刺して血を飲み強化を繰り返す

私は優しくない、善人でもない
私は私の為に、のぞみを受け入れよう
生命維持に鮮血を必要とする、この躰。刻印は、UDCを喰らい融合する為の魔装
文字通り、この身全てで以て喰い殺す


虻須・志郎
■アドリブ連携可

結局……こうなっちまうのか
いつもの事だと割り切れるなら、苦労はしないんだがなッ!

愚神再来、第四の蜘蛛を召喚し敵の邪神の落とし子と対峙させる
邪神様よ、たかが複製の眷属程度、どうにか出来るよな?
『妾に命令とは、命知らずもここまでくれば大したものよ』
いいから喰った分は働けよ、本体は俺がブン殴る

内臓無限紡績兵装で敵の動きを封じられる様動くぜ
粘糸を射出して敵の経典を狙ったり
悍ましい影を消すようにアムネジアフラッシュを使ったりな

攻撃手段は捨て身で近付いて生命力吸収、邪神の命を喰らってやる

残酷かい? 死にたがりをエゴで生かす方がよっぽどだろう、なぁ先生
俺達の仕事はコイツらの掃除なんだからさ


松本・るり遥
「へえ。良いじゃん」

お前が選んだ道なら。それが何より良い事だ。
臆病者は、これを後悔するだろう。自分もこれを望んだ癖に

クソダセェ罵倒でその頭撃ち抜いてやる
勇敢さへの賛歌だよ、宇治田。

『醜い、醜い、浅ましいな!殺してもらえたら特別?檻の中の空想に頭を食い潰されて気持ちがいいか!お似合いの末路だよ。俺たちは、救う数より殺す数の方が多いのにな!』

ほらお前も言いたい事があるだろ?音楽を切り替える
がなるパワーコードは
臆病者の音

何でだよ
もっと言う事考えろあの野郎
酸素を吸う
インパーフェクト、

『宇治田』
『希、』
『俺、それでも
お前のこと綺麗だと思うんだよ!!!!!!』

笑わないって言ったっけ
そんならそんで
まあいいや



 真っ先に動いたのは、動けたのは虻須・志郎だった。
 彼は宇治田本人と面識がなかったというのもあったし、虻須もまた邪神を身に宿すものであったからこそだったのかもしれない。
 彼本人は邪神に飲まれずに済んだが、だからといって誰にでも出来ることではないと確信もしていた。死にたいと願う気持ちはわからなくもない。
 割り切れはしない。けれども、それでも世界の敵は滅ぼさねばならない。それが猟兵だ。
 ユーベルコード起動。第四の蜘蛛と呼ばれる女学生風の邪神を呼び出し邪神へとけしかける。
『妾に命令とは、命知らずもここまでくれば大したものよ』
「いいから喰った分は働けよ、本体は俺がブン殴る」
「あ゛ああああああああああああああああああああ!」
 邪神が猟兵達に対抗しようと分身する。いや、それは邪神が産んだ『落とし子』だ。邪神と瓜二つのそれが、第四の蜘蛛と争い出すのを横目に虻須が駆ける。駄々っ子のように振るわれる腕は、技も何も無いというのに神速でもって虻須を捉える。ガードしたというのに、みしり、と肋が幾つかいい音を立てた。
(き、っつ)
 けれど、此方も同時に仕掛けた。
 糸だ。
 邪神の全身に絡めた糸を、一気に引ききった。
 鮮血、絶叫。
 傷つき悲鳴をあげる邪神に後方から息を飲む気配がした。誰だろうか。わからない。自分でないことだけは確かだけれど。
「残酷かい? 死にたがりをエゴで生かす方がよっぽどだろう」
 そんな誰かを虻須の言葉が冷たく一刀両断する。宇治田を人だと思うのならば尚更、死にたいというのぞみを外野がとやかくいうものではない。自分たちは自分たちの仕事をするだけ。
 少なくとも猟兵は、救世主ではない。
「俺達の仕事はコイツらの掃除なんだからさ。なあ、先生」

「然り」
 答えたのは先生と呼ばれる男、ロバート・ブレイズ。
「此れは。此れは実に『懐かしい』感覚だ。堕ちる存在を容赦なく撲り倒し、戻る兆しの無い闇黒を滅ぼす所業。久方振りに殺さねば成らない『を』演じねば! さて。自らの証を放り投げた気分は如何だ。心地酔いだろう。少しでも笑って在った己に腹が立つ。否定し、冒涜するのだよ」
 とはいえ、だ。
 ブレイズは自身の観察眼に一定の信を置いている。例え邪神に蝕まれていようとも15の、しかも隔離されて本と過ごしてきた少女の嘘を見抜けない確率は極小であると推測する。
 おそらくだが、普通に生きたいという願いも嘘ではないのだ。殺されてでも誰かの記憶の中に生き続けたいことと、普通に生きたいという願いは相反するようで彼女の中では両立していた。元より人間の意志や願いに一貫性などというものはない。無数の真実があるのが人だ。
 だからこそ見抜けなかった。そう結論付ける。
 で、あればだ。
 彼女の中で生物本来の生の望みやおぞましいものに变化する恐れもまた、存在するはずなのだ。邪神に飲み込まれきっていなければの話では有るが。
「地獄の棺桶が一個追加されるとは。哄笑すべき邪悪が」
 翁は絶叫をあげる邪神にいつのまにか接近していた。そして、殴打。その一撃は類稀なる観察眼により、邪神の芯たる部分を正確に打ち抜いた。どんな生き物にも、存在するものであれば神にすらある弱点。
 ただの打撃ではない。ユーベルコード『魂の改竄』を流し込む為のパイプでもある。
 翁の精神世界から解き放たれた、暴走する魂の群れが一時的に邪神の在り方そのものを改竄する。
「キィイイイイイイいいいいあああああああ!?」
 狙い違わず、邪神がその行動の一切を停止していた。
 魂の一部が邪神ではなくただの15の少女の物になれば、存在は不均衡を起こしてただではいられない。ましてやその一部分がその他の部分を拒絶しているならばなおさら。
 きっと少女は有り得ない頭の重さに、身体の大きさに、そしておぞましさに、地獄すら生ぬるい苦痛を味わっていることだろう。
 構うものかと翁は嗤う。死とは物語のような綺麗事ではないのだ。軽々しく死に縋り付き、生を諦めたことを後悔するがいい、と。

「攻撃出来ないなら攻撃しなくてもいいのですよ?」
 いまだ攻撃に移れない猟兵達に声をかけてイルナハ・エイワズが走る。
(普通に生きることを希(のぞみ)命を賭して特別になることを希(のぞむ)感情とは理解し難いものです。そして人というものは本当に興味深いですね)
 観察しながらもエイワズの槍捌きに一切淀みはない。
 彼女もまたやるべきことをしっかりと自覚している猟兵であった。オブリビオンは全て滅ぼす。例えそれが哀れな少女であったとしてもだ。
 それで曇る程エイワズが人の心を理解し切れていないだけかもしれないが。
 ヤドリガミはヤドリガミ。人を模した姿かたちをしていても、人ではないのだ。
 けれど、理解しがたいと。興味深いと。宇治田を観察したエイワズは、きっと彼女を忘れはしないだろう。
 それは無数にある知識の本棚の一冊、もしくは数行の記述かもしれない。けれどもけっして忘れはしない。何故なら彼女は大図書館の司書。あまたの知識を詰め込む知の暴食者。
(記録はしますよ。それが私ですから)
 餞別のように、ひとりごち。ブレイズによって束の間木偶の坊にされた邪神の腹に遠慮なくその槍を突きいれた。
 即座に力を開放。『ドラゴニック・エンド』によって召喚された竜が腹を食い破り、臓腑を撒き散らす。
 邪神にも内蔵があるのか。
 そんな場違いな感想を抱いたのも束の間、我を取り戻した邪神がおぞましい影を生み出した。ただの影ではないのは、その威圧感からして明らかだ。
 先ほどの落とし子と合わせれば2体目の敵の追加。
 数には数を。間違いではないが。
(遅い)
 呼ぶなら最初から、それこそ先のゴーレムのように最大戦力を出し惜しみ無く使ってくれば良いものを。戦力の逐次投入は悪手であるなんて戦略の基礎の基礎だろうに。まあ邪神に人の常識など通用するわけもなし。
 虻須とブレイズによってすっかり邪神の行動を学習したエイワズは、邪神の腕を掻い潜り、横から飛び出してきた影の攻撃を残像を使って避けきった。

 嫌な予感は、していたのだ。
 河南・光は独白する。
 もしかしたら貴女は、何かしらの方法によって一瞬の隙を付いて『外に出る』というのぞみを叶えた末に邪神として猟兵に討たれる……そんな想像はしていた。
 しかしその想像は外れた。何方がましかは、わかりはしないが。
(普通じゃないままでも、もしいつか、貴女が猟兵として目覚めて、もしかしたらグリモア猟兵になんてなって、共に戦える日が来たりしたらいいなと夢見てあの言葉をかけたけど……)
「ねぇ、こんな形以外で、貴女を救う方法は無かったのかな?」
 応えはない。光、と呼んでくれた少女はここにはいない。
 影がのしかかってくるのを寸でで避けた、はずだった。かすっただけだと言うのにぐずりと肉が爛れて、まるで腐ったような色を放つ。生きたまま腐るという味わったことのない痛みに、叫ぶこともなく。ただ、宇治田を見つめる。
 奇跡は祈らない。そんなものが有るのだとしたら、そもそも自分はここに立っていない。姉を失いもしなかっただろう。そんな安っぽい奇跡を祈るくらいならば、河南は鉄火をこそ捧げよう。
「せめて、貴女ののぞみを叶えてあげる」
『フルバースト』
 拳銃が、バトルライフルが、ショットガンが、マンゴーシュが、そして無数のガジェットが、見えない手に保持されて空中に浮かび、一斉にその暴力を開放した。
 火線が弾け、銀線が疾走り、駆動音が残酷に響き渡る。
 其の度に邪神の身体は踊るように跳ね、血肉を撒き散らして絶叫するのだった。

 イア・エエングラもまた、河南と同じような最悪の予感を感じてはいた。だからこそあの時、もう一度会って会話をしようなどと思ったのだから。
 けれどもそれがこれほど早く訪れるなんて思っていなかった。その自身の浅はかさに自嘲の笑みを浮かべた。
(叶わないと思っていたのに、約束してくれたから)
 期待してしまったのだ。終わりはもう少し先なのだと。
 約束を容易く破った相手に怒れば良いのか、それとも嫌いになればいいのか、それすらもわからないのだけれども。 
 武器を持つ手は、鉛よりも重い。
 ついさっきまで会話をした仲なのだ。名前を呼びあった間柄なのだ。世界の敵になったから滅ぼそう、そんな単純な話ではない。そんなシンプルに切り替えられるわけは、ないのだ。
「来て」
 短く唱えれば、死霊の騎士と竜が彼の元に侍る。
 自らの手を汚さずに死霊に任せるエエングラを、宇治田はどう思うだろう。其の手で殺してというのぞみを果たせぬことをエエングラは歯がゆく思う。
 せめて、自らの罪だと言い聞かせるように、影と邪神に襲いかかる死霊たちを見つめる。
「お話のように連れ出す手は、なかったのなあ。しあわせなお仕舞にも程遠い。送る宛も、なくなって。名前を呼んで、返事が欲しいのかも分からない」
 剣戟、絶叫、炎、数多の戦場音楽の中に、エエングラの独白は飲まれて消えていった。
 
 松本・るり遥は戦場を、否、邪神をその視界に収めて酷薄に嗤った。
 そこには相手に同情したり慮ったりするような優しさはない。戦場にそんなものは不要だから。
「へぇ、良いじゃん」
 口笛さえ吹きそうな上機嫌。自分に正直に、のぞみのままに。例え誰に非難されようと、間違っていると言われても、生き方を曲げないその姿勢は最高に反抗的だ。
 優しくない彼は口を開いた。口笛も拍手も、彼女に向けるには相応しくない。男が使うのはいつだってその銃弾――声――なのだから。
『醜い、醜い、浅ましいな! 殺してもらえたら特別? 檻の中の空想に頭を食い潰されて気持ちがいいか! お似合いの末路だよ。俺たちは、救う数より殺す数の方が多いのにな!』
 銃弾が正確にその頭を吹き飛ばす。1発、2発、もう1発おまけで3点バースト。
 視線さえ遮られなければ必中の弾丸が3度邪神の頭を揺らした。鬼灯のような頭が砕けて粉砕されて、けれども邪神はしっかりと立っている。
 流石は神などと嘯く者だ。腹から臓物を垂れ流しても、頭蓋をいくら削られても、活動に支障はないのか。
 実にいい。即落ちなんて興醒めも良いところだ。
 それに、松本達には、もっと言いたいことがあるのだから。
 パワーコードを切り替えろ。内なる自分にバトンタッチだ。
 はい、どうぞ。
 瞬間、松本の顔がニヤけ面から懊悩するようなソレへと変化した。
(なんでだよ、アイツ、ばっか、アイツ、もっと言うこと考えろよ馬鹿野郎。好き勝手1人で絶頂して後始末もなく俺に押し付けんなよ)
 優しさのない彼から、勇気のない彼へ。
 臆病者の彼は、それでも肺いっぱいに火薬を詰めて、
『宇治田』
 がなり声は明らかに先程より弱い。
『希、』
 ソレは照れすら含んで。
『俺、それでもお前のこと綺麗だと思うんだよ!!!!!!』
 格好悪い、素直な叫びを邪神へと発射した。
 果たして今度の、銃弾は。
 一欠片ほども敵に痛切を与えること無く。反撃の炎が間髪おかずに放たれた。
 松本は、笑ってそれを受け入れた。
(ああ、なんだ。希、お前約束、守りやがったんじゃん)
 嘘つき女の小さな本当。
 中々に熱かった。

 忠海・雷火が駆ける。
「希」
 炎にまかれる猟兵を視線の端に捉えながら。
「希」
 影から伸びた腕にその身を喰らわれながら。
「希!」
 例え、声は届かずとも。少女が呼んでと願った名を、口にして。
「希っ!!」 
 最後まで付き合ってあげる。
『血風餓犬』
 邪神の飛び散った血を、臓物を喰らって、今、カイラの中の化物も目を覚ます。
 刻印から溢れ出した尖った長舌状に凝る煙が。銀線となって空間を斬り裂く刀が。邪神と影を相手取って踊る。
 彼女は優しくないから。
 彼女は善人ではないから。
 いつか、宇治田の事を忘れるだろう。永遠なんて無いと、ずっと続いて欲しかった日常を失っているが故にわかるのだ。
 けれどこの呪われた身体は覚えるだろう。今日啜った宇治田の血を。今日喰らった宇治田の肉を。生命維持の為に吸収して自身の一部とするだろう。
(私は私の為に、のぞみ、貴女を受け入れる)
 宇治田と同じ様に自己中心的に、彼女を求めよう。それならばきっと、この残酷な世界でも手折られること無く生き続けるから。
 宇治田ののぞんだ永遠ではないかもしれない。けれどもこれがカイラなりの、のぞみへのこたえ。

 猟兵たちが傷ついていく。
 復活したてとは言え邪神は邪神。その力は10を超える猟兵を相手にしても一歩も引かなかった。血と臓物を代償に猟兵たちの身体を欠けさせ肉を腐らせていく。
 それでも彼らが戦い続けられたのは、きっとマリス・アップルズの癒やしのおかげだろう。
 その小さな体とは裏腹な豪奢で露出の多い服が風に舞えば、其の度に彼女の血が降り注ぎ猟兵たちを癒やしていく。
『紅き聖餐』
 アップルズのユーベルコードだ。その技は血と疲労を代償に他者を癒やす。
 けれどもアップルズは、人の為にしているわけではない。身を削り、癒やしの術を使うのも全ては友の為。友ならばそう望むだろうという妄信的な愛の為にそうするのだ。
(メア、メア、メア)
 視界にはいつも彼女を映して。
(メアは優しい子だから。女の子が死ねばきっと悲しむわ。メアは優しい子だから。悲しみながら戦うかもしれないわ。メアは優しい子だから。わたしはメアの覚悟を見守る事にするわ)
 その友は、未だ動かず。

「元から嫌な予感ってのはあったんだ」
「嶋野、さん?」
 未だ呆けている猟兵に、独り言のように嶋野・輝彦が呟く。
「病気でケーキが食えない人間の前で美味しい美味しいってのは酷よ。希が羨ましい、辛い、苦しいって言えりゃよかったんだが無理だわな、お前ら良い奴過ぎたんだよ。世の中には残酷な優しさってのはあるし、人は救われたい人間しか救えねぇ」
「っ……」
「俺達は間違えた。仕事をするぞ」
 応えは、無い。構わず嶋野は疾走る。
 不真面目だろうが不良だろうがやるべきこと、やらなければならないこと、それだけは履き違えない。
 無数に増えていく落とし子と、影、そのただ中に飛び込んでいく。
 即座に影の腕が嶋野を捉える。肉が爛れて骨が犯される。脳髄を貫く痛み。
 だからどうした。
 そんなもの、先のゴーレム戦で嫌というほど味わった。あの時はたった2人だった。けれども今は、他にいくらでも猟兵はいるし、後方から回復をしてくれる者も居る。
(ごちゃごちゃとまあ、よくも増えるもんだ)
 無数の影と生み出した落とし子に囲まれて、邪神にたどり着くことさえ一苦労。
 だが、構わない。
「一匹ずつ始末してけば、いずれ本丸につけるってもんだ」
 影に片腕を蝕まれながらも、落とし子の身体に銃口を押し付け発砲。リコイルとマズルフラッシュが傷ついた身体に痛いほど響く。薬莢が床を跳ね回る。
 1マガジン使い切って、倒れたそれは元からそうであったかのように薄れて消えた。
「ちっ! 本体でもねえくせにえらくタフだな」
 片腕の感覚が無くなると同時に此方も『戦場の亡霊』を召喚。影にその力をありったけぶつけて霧散させた。
「おい!」
 後方で、未だ立ち直れていない者達に叫ぶ。それだけで爛れて変色した腕が気絶しそうなほどの痛みを訴える。けれども。
「俺は『人は救われたい人間しか救えねぇ』と言った。やりたい事があるなら早くしろ」
 痛みよりなによりも、うじうじしている味方の方が気になってしまうのだ。

「どうして…」
 ソゥムヌュクススは呆然とおぞましい邪神を、いや、宇治田を眺めるしか無かった。
(守れなかった、救えなかった。分かってあげられなかった)
 倒さなければならない。アレは世界の敵だ。皆も割り切ってそうしているし、何より宇治田自身の望みなのだから。
 武器を構える。けれど。
(本当に……?)
 本当に、諦めるしか無いのか。疑念がソゥムヌュクススを縛る。
「やりたい事があるなら早くしろ」
 嶋野の声が背中を押した。
(……私は、諦めたくない)
『スリーピーシープ』
 邪神の周りで爆発した睡眠ガスが強制的に対象を昏睡させ、さらには術者たるソゥムヌュクススとの間に夢とのリンクを形成させた。
 直後、ソゥムヌュクススのドールの脳に、邪神の精神、夢が叩きつけられる。
 それは世界を呪う願い。破壊とか殺戮とかそんな明確な悪意ではない。もっとぐちゃぐちゃな、名状し難いおぞましい祈り。存在そのものを狂わせ崩壊させるような呪詛に、けれどもソゥムヌュクススは寸での所で耐えた。耐えてその奥にある宇治田の精神を探った。
 翁、ブレイズが行った改竄がまだ有効ならば、もしかしたら。
 呪いの海の中で一匹の小魚を探すような挑戦は、神の気まぐれか悪魔の微笑みか、どちらにしろ成功はした。後少し遅かったら彼女は精神を完全に汚染されて廃人と化していたかもしれない。
「希ちゃん!」
 宇治田は邪神の呪いの世界で、小さくなって震えていた。痛ましい其の姿にソゥムヌュクススは彼女を抱きしめて励ましの言葉を吐く。
「ごめんね希ちゃん。ごめん。分かってあげられなくて。もう大丈夫だから。大丈夫だから、こんなことやめよう? きっとどうにかするから」
「……どうにかって、どうするの?」
「っ! ……それ、は」
「誰も、どうにもできなかった。助けてあげるっていった職員の人は居なくなった。お母さんは私を産んで狂って死んだ。15年ずっとどうにかなんて、ならなかったんだよ、ソゥムヌュクススさん。どうにもならないの。適当なこと、言わないで!」
 半端な希望は苦痛でしか無く、諦観の中に居たほうがむしろ優しい。
 強い不信と拒絶。世界への絶望と諦め。
 それが衝撃波となってソゥムヌュクススを弾き飛ばした。
 覚醒。
 夢のリンクが切れたのだ。
 想いだけでは通じない世界がある。願いだけでは届かない現実がある。結局の所どちらののぞみが強いのか、ただそれだけとも言えた。
 ソゥムヌュクススは己の無力さに歯噛みして、邪神を睨みつけるしかなかった。

「またか……また俺は……」
 江戸川は戦線にも加われず、ただ俯いて己の無力に腹を立てていた。こんなはずではなかった。もう二度とこんなことを起こすつもりはなかったのに、と。
 自身への怒りが、何かのスイッチを押した。
「あははっ……俺は……最後まで足掻くぞ! キミとの約束を守る為。こんな現実捻じ曲げてやらぁ!!」
 江戸川の手帳が不意に輝く。見れば今まで解読できなかった魔法陣からその光が漏れている事に気がついた。
 頭を駆け巡る新しい知識。無理やり詰め込まれる膨大な術式に思考が焼け焦げ、脳がまるで痛覚でも有るかのように痛む。
「うぐっ……コレは?」
 それはありえないような技。けれど、試す価値はあるように思われた。
「みんな! 俺に考えがあるんだ。今のままだと成功しない。弱らせて隙を作ってほしい手伝ってくれ!」
 何をするつもりかはわからない。悠長に手段を問いただす暇も無い。
 猟兵たちは彼の言葉に従って走り出す。

 影と落とし子の間をすり抜けて、まっ先に本体にたどり着いたのは八上・玖寂。
 その顔は常と変わらぬものだが、心中はむしろ諦観と憐憫すら含んでいる。
(何をするつもりかは知りませんが)
 死なせてやればいいのに、と思う。
(誰にも愛されず、名前すらなく、それでも生かされた15年間のツケ、ってところですかね。愛着が湧く前に首でも絞めておけばよかったものを。どうせ後悔するならば、人間のまま、死なせてやればよかったものを。邪教徒もUDC職員も我々も、傲慢なこと極まりないじゃないですか)
「……恨めば楽になれますよ」
 邪神に、否、宇治田にかける声はいつもの真の無い物とは違って、優しげにすら聞こえた。通じるわけは無いとわかっていても、言わずにはいられなかったのか。それともそれがキーコードにふさわしかったのか。
『咎力封じ』
 放たれるユーベルコードは凶悪に、無慈悲に邪神を縛る。力はほぼ同時に2回邪神を襲い、その口と行動を一時的に封じることに成功する。
 だからといって既に現界している影や落とし子が無力化されることはなく。
 八上に向かって落とし子がその腕を伸ばした。

「させません」
 その腕を盾で防いだのは巨大な甲冑の騎士、トリテレイアだ。その巨体を一体どうやって一瞬で運んだのか。
 秘密はその内部機構にある。スラスターだ。騎士らしくないそのマシンならではの機構は、重く大きな彼を敵陣真っ只中に送り届けるのに大きな貢献をしていた。
 トリテレイアは落とし子の腕を打ち払うだけ打ち払って、邪神本体へと肉薄する。
「宇治田様……いえ、希様。私は貴女にお守りすると騎士として誓いました。これ以上貴女の手を血で汚させはしません」
 邪神は何人もの猟兵を血で染めた。邪教徒などは一瞬でその生命を奪われた。これ以上、これ以上は許してはならないのだとトリテレイアは強く踏み込み、邪神の手を取った。
「『怪物』ではなく『変異した哀れな少女』として終わらせ、貴女が人であったという事実をお守りします」
 例え宇治田が、そんなことに気を払っていなかったのだとしてもだ。騎士として、彼女自身からも彼女の名誉を守ろう。
 これは騎士の誓いだ。破ることは許されない。ハリボテで、偽物の騎士なれど、誓ったからには本物にならなければならない。
 邪神が暴れ、トリテレイアの手から離れようともがく。トリテレイアの背後から影が、落とし子が迫り、彼の身体を次々に殴打、蝕んでいく。
 敵陣のなか、守るべき少女のために背を晒す。
 騎士らしい英雄的行動にトリテレイアの異能が再度発動する。爆発的に力と強度が増すが、だからといって痛みが消えるわけではない。
 苦鳴を噛み殺し、痛みに耐え、それでもけっして掴んだ手は離さない。離せばきっと、彼は二度と騎士を名乗れない。

 もがく邪神のその後ろに、突然フォルター・ユングフラウが姿を現し、邪神の持つ教典を一刀のもとに斬り裂いた。
 ユーベルコード『トーデスシュトラーフェ』による空間転移だ。
 一瞬トリテレイアと彼女の視線が交錯した。
 全てはこの一瞬のための連携。耐久に優れたトリテレイアで押さえ込み、転移ができるユングフラウによって敵の武器を断つ。無論これだけで敵が無力化するわけではなないが、無意味ということもない。
 暴れる邪神の背に、もう一度斬りつける。
 血が噴き出して、絶叫があがる。
 ユングフラウが何よりも愉悦を感じ、好んだ瞬間だというのに。愉快ではない。まったくもって不愉快だ。
「特別になりたかった、だと? 汝が特別だからこそ、我は私物を譲り渡したのだ……! どこにいても、我の心は汝と共にあると……!」
 それでは満足できなかったのかと、ぐちゃぐちゃとした感情がユングフラウを埋め尽くした。
 これはなんだろうかと彼女の中の酷く冷静な部分が自己分析を始める。悲哀か、それとも怒りか。裏切られたと、もしかしたら感じているのかもしれない。裏切り者は殺さなければ。だというのに何故、自分は宇治田をこれ以上ほうっておくわけにはいかないという焦燥感を感じているのか。
「……、結果は変えられずとも、道程は変えられる……いや、変えてみせる。汝は邪神では無い、その手をこれ以上血で汚させはせぬ。『不運な、変異しただけの少女』として、送ってやる……!」
 まるで騎士と鏡合わせのような誓いを立てて、邪悪なはずの女帝はその鎌を振り下ろした。
 
 舞台は整った。幾重にも拘束をかけられて、軽くない傷を無数に負い、最早邪神は虫の息と言っても良いだろう。
 江戸川が力をみなぎらせる。
 今こそ、最後の賭け。
「最後の最後まで諦めんな!!」
 江戸川の手帳が、魔法陣が、再度輝きを増し『一握りの奇跡』が発動する。
 その効果は依代になった人間の身体と邪神を分離するという、奇跡じみたものだ。
 邪神にその魔法陣から放たれた光が当たる。
 果たして。
 江戸川が、猟兵たちが見つめる中、邪神は……。
 邪神は、変化しなかった。
 元の姿のまま、宇治田は分離されず、傷ついた身体を揺らす。
 奇跡は、おきなかった。
「なんでだ!」
 江戸川の叫びが木霊する。
「ああああああああああああああああ!」
 邪神が再度雄叫びをあげながら猟兵達の拘束を跳ね除けようともがいた。

 その一部始終を見つめて、テスアギ・ミナイは静かにかぶりを振った。
 それが彼女の、宇治田の答えなのだろうと受け取ったからだ。最早猟兵達と宇治田が交わることはない。
(それはあなたが正直に生きたということ。あなたの気持ちは、とても自然で当たり前の感情です。誰かにのぞまれたい。愛されたい。生まれたことをよろこばれたい。それが叶わないならせめて、誰かの記憶に生き続けたい。憎まれてでも)
 構える弓に迷いはない。つがえる矢に葛藤はない。宇治田と同じ様に、ミナイもまた、決めたからだ。
(私はそれをある一人に求めましたが、あなたはこの場の誰かにそれを求めました。誰でもいいなんて言われたら、もう私は特別になれませんね)
 ミナイの中では特別とは1人に捧げるもの。誰でも良いと言う宇治田とは相容れない。ミナイでは宇治田の特別にはなれないし、なるつもりもない。生まれ、環境、様々な要因はあるだろうがそれでも、2人の道は分たれたのだ。
(自分で死ねないなら殺してあげます。それがせめてもの手向け)
「この矢ははじめての友達として最初の贈り物です。うけとってくれますか?」
 静かに放たれた一本の矢が、人であれば心臓がある位置を正確に撃ち抜いた。
 雄叫びもなく、劇的な何かもなく、いっそ優しげに、化物は糸が切れたように其の場に崩れ落ちた。
 まず周りにいた落とし子と影が、その姿を薄れさせていき、まるで元からそんなものは居なかったとでも言うように雲散霧消した。
 次いで、邪神本体がぼろぼろとその身を崩壊させていく。
 その様はこれ以上無いほどの滅びを想起させた。
「友達の使い方は、あれで合っていたでしょうか」
 呟く言葉に応えはない。

 暫く経つとそこには、元の人の姿に戻った宇治田が身体を横たえている。否。元通りではなかった。
 その目は落ち窪み、肌は老婆のようにくすみ皺だらけになり、元は桜色だった唇は荒れ地の様にひび割れていた。猟兵たちが与えた傷も、損傷した部位も消えること無く彼女の身体に刻み込まれている。痛ましいを通り越して無残極まりない姿だ。
「ぁ……」
「希ちゃん!」
 けれど意識はあった。江戸川が最期の望みをかけて手帳を『夢幻の城』を使用しようとする。
 その手を嶋野が止め、首を振る。
 宇治田が最早助からないのは誰の目にも明らかだったから。
 必死にソゥムヌュクススが『生まれながらの光』による治療を始めるも、宇治田に生気が戻ることはない。底の抜けたコップに水をいくら注いでも無意味なのと同じ様に。
 猟兵は神ではない。死という不可逆な事象を巻き戻すことはできない。
 それでも、諦められるわけがない。助けると約束したのだ。
 今なら宇治田も抵抗はできまいと江戸川は『夢幻の城』を使用しようとして、不意に自分が彼女の意志を障害だと捉えている事に気がついた。

『世の中には残酷な優しさってのはあるし、人は救われたい人間しか救えねぇ』
『残酷かい? 死にたがりをエゴで生かす方がよっぽどだろう』

 嶋野の、虻須の言葉がリフレインした。
 自由に生きられなかった彼女から、決定的な死すらも取り上げ、止まった箱庭の中で生きてもいない死んでもいない、そんな状態を強制し続けるのか。それは今まで彼女が味わってきた地獄と、何が違うというのか。
 江戸川の手から手帳が滑り落ちる。
 最早、すべて終わった後なのだと気がついたのだ。
 それからは淡々と事が進んだ。
 治療をし続けたソゥムヌュクススが遂には限界に達する。疲労により崩れ落ちようとしたところをアップルズに支えられる。
 河南が宇治田の横に跪く。一言何かを話しかけ、耳を口元に寄せ、頷いた。
 再度這うようにして近づいたソゥムヌュクススが力を使う。今度のそれは治療のものではない。
『ヒュプノスノヒトミ』
 せめて最期は優しい夢を、と。
 それが通じたのかどうかはわからない。
 苛烈な望みを抱えた少女は、まるで眠るように酷く静かに事切れたのだった。
 
●勿忘草の詩
 事後処理はなかなかに面倒だった。施設はほぼ壊滅、外に出るのも一苦労という有様だったからだ。
 道を作った後はエイワズを筆頭に生存者の救助が行われた。警備に当たったものはほぼ助からなかったが、それでも幾人か救助出来たのはひとえにエイワズとユルの感働きのおかげだっただろう。当人は特にそれを誇るでもなく、知人宛にメール攻撃を仕掛けていた。
『件名:美少女』
 本文には隙をみて撮った邪神の画像を添付した。あの女好きの知人にはこれ以上無い嫌がらせだろうと笑う。

 戸籍すらない宇治田・希の死は縁者にすら知られること無く、猟兵と生き残った一部の職員だけでひっそりと行われた。
 小高い丘の上。まるで幻影の中でみたような太陽と風を浴びられる場所に小さな墓を作った。
 幾人かの猟兵は、すぐには帰らず墓前に各人の作法に則り祈りを捧げていった。
 河南もまた、他の猟兵同樣にそこを訪れた。手には一冊の本。死の間際に宇治田から言付かった遺品だ。たわんで膨らんだ本の小口が、如何に何度も読み返した本なのかを物語っていた。彼女が一番好きだった本であり、彼女が確かにこの世界に居たという証でもあった。
(忘れないから)
 普通に憧れ、諦め、最後にはエゴイスティックに愛を求めた、そんな少女が居たことを、きっとずっと覚えていよう。せめてそのくらいののぞみは、聞いてやってもいいと思うのだ。
 
 トリテレイアは一番遅れて墓前へとやってきた。ユングフラウがその姿を認め、次いでその手に握られ花を見て苦笑した。
「つくづくマメな男だな、汝は」
「入れ込みすぎ、とは言わないのですね」
「まあ、な……」
 歯切れが悪いユングフラウに首を傾げながら、トリテレイアは持ってきた花を墓前に捧げようとして置いてあるそれに気がついた。
 黒い指輪。
 ユングフラウがつけているのとまったく同じ意匠の物だ。たしかスペアを宇治田に貸していたとは聞いていたのだが。
「よろしいのですか?」
「構わん。必要になれば取りに来る」
 ユングフラウなりの『忘れない』という意思表明なのだろう。トリテレイアは悟られぬよう内心で微笑んだ。
 ユングフラウ自身はけして認めたがらないであろう人がましい優しさが、宇治田にも届けば良いと願ってトリテレイアは静かに祈るのだった。

(どんな手を使ってでも誰かに愛してほしかった、か)
 1人離れて墓を見ていた八上の脳裏に浮かんだのは、同じような願いを花として顕現させた少女だった。
 想いも無く、願いもない、空っぽのはずの感性に、けれども宇治田は音を響かせた。そんな気がする。
 八上の吐いた紫煙が天へと続く階段のように、細く長くのぼって行った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年01月28日


挿絵イラスト