星明りはその深淵を照らさず
仄かに光を放つ巨大な白亜の塔。
ダークセイヴァーの辺境『帰らずの森』に、その塔はあった。
塔の中は、静寂。外観と真逆の漆黒。
しかし少し進めば、魔法で生み出された光球が、まるで夜空を照らす星々のように浮かび上がる。
そんな幻想的な塔内に、不気味な生物が侵入した。
それは紫色の粘液溜まりに、大きな目玉がひとつ付いた異形。
――仮に『彼』と呼ぼう。彼は、何かを探し求めていた。
「私の……私の研究を……彼奴は奪ったのだ!」
怒れる異形。紳士的な言葉で、しかし明らかに罵りながら、ずるずると這い進む。
彼が進むのは広間。奥には扉がひとつ。
そこを目指し、ないはずの口から言葉を漏らしながらひた進む。
突如、奥の扉がゆっくりと開き、シスター服を身に纏った女性が現れた。
彼女は彼を見据え、透き通った声を放つ。
「これ以上進むことは罪。お引取りください」
彼女の言葉に、しかし彼は止まらない。
大きな目は血走り、どこか遠くを見つめながら這い進んで行く。
「……私の邪魔をする者は、誰であろうと許しはしない」
彼は独り言のようにそう呟くと、立ち塞がる障害物を排除せんと、攻撃を開始した。
●
グリモアベースの一角、いつもの場所で。
黒月は猟兵たちに告げる。
「今回もダークセイヴァーの依頼だ。内容は、魔女討伐だよ」
彼女はそう言って、後方のパネルに映像を映し出した。
「この白亜の塔に『星屑の魔女』と呼ばれるオブリビオンが住んでいる。彼女は『星屑で世界を滅ぼす』ことを目的に活動しているようだ」
黒月の説明に、猟兵たちは各々表情を変える。
顔をしかめる者、強敵に口端を上げる者――。
黒月は小さく頷いて、先を続ける。
「以前から噂はあったが、ようやく居所を予知することが出来たんだ。早速だが、討伐に向かってほしい」
そう言いながら映像を切り替えると、今度は暗闇に光が浮かぶ空間が映し出された。
誰かが夜空かと問えば、黒月は首を左右に振った。
「いや、これは塔内の映像だ……どの部屋も非常に見通しが悪いようだね」
映像を何度切り替えても、同じ星空のような場所ばかりだ。
視界を良くする対策は必須だろう。
「塔内はそこまで広くないようだが、ひとつ予知で気になったことがある」
黒月はそう言うと、パネルから猟兵たちへと視線を戻した。
「この塔内に、別の強大なオブリビオンが入り込んでいるらしいんだ。予知夢の中では、星屑の魔女の配下に攻撃を仕掛けていた」
オブリビオン同士が争うことは稀にある。
彼らの間で『同族殺し』は忌み嫌われているが、我々猟兵にとっては都合が良い。
「星屑の魔女の勢力を減らしてくれるだろうから、うまく利用してほしい。目的は不明だが、オブリビオンには変わりないからね。魔女討伐の後、討伐する必要が出るだろう」
黒月は説明しながら、グリモアを操作して転送準備を開始した。
「まぁ説得で成仏してくれるようなら、それに越したことはないんだけど……どんなオブリビオンなんだろうね?」
そう言うと同時に、グリモアが輝き出す。
転送準備が整ったようだ。
「さて、準備はいいかな? よーし、転送しちゃうぞー。健闘を祈る!」
霧雨りあ
ダークセイヴァーからこんばんは、霧雨です。
今回は魔女討伐です。
第一章はシスターたちとの集団戦となります。
目玉のオブリビオンは勝手に戦っているので、彼を利用しても良し。個別で戦っても良し。
ただし、目玉のオブリビオンは倒せないのでご注意ください。
第二章は星屑の魔女との戦闘となります。
目玉のオブリビオンは第一章同様に、オブリビオンしか狙いません。
彼を利用しながら、魔女を討伐してください。
ただし、この章でも目玉のオブリビオンを倒すことは出来ません。
第三章は目玉のオブリビオンと対峙します。
倒さねばならないのか、説得できるのか……。
猟兵のみなさまが、見極めてください。
今回、すべての章の冒頭に状況説明を入れます。プレイングの参考になりましたら幸いです。
それでは、みなさまの冒険が良きものとなりますように。
第1章 集団戦
『罪を背負いし聖女』
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POW : 抵抗してはなりません、それは罪なのです。
【直接攻撃をしない者との戦闘に疑問】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【凄惨な虐殺の記憶】から、高命中力の【戦意を抹消させる贖罪の嘆き】を飛ばす。
SPD : 私が犯した罪は許されません。
【自身が犯した罪】を披露した指定の全対象に【二度と領主には逆らいたくないという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
WIZ : あなたの罪を浄化します。
全身を【流血させ祈ると、対象を従順な奴隷】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
イラスト:向田 馨
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵たちが転送された先は、白亜の塔の入り口だった。
扉は破壊され、誰かが侵入した形跡がある――黒月が言っていた『別の強大なオブリビオン』が、既に中にいるということだろう。
辺りを警戒しながら塔内へ足を踏み入れれば、そこにはただ暗闇が広がっていた。
入り口から差し込む光を頼りに先へ進むと、周りに点々と星のような光が浮かび上がった。
しかし不思議とその光は、何も照らしていなかったのだ。
「お引き取り……ください……」
突然、声が響いた。
それも一つではない。十か、二十か――とにかく数十もの声が、猟兵たちへと注がれる。
内容はすべて同じだ。
お引き取りください――そう告げている。
誰かが明りを灯せばわかるだろう。
奥の扉から押し寄せるシスターたち……そして、その先で戦うオブリビオンの姿が。
紫の液体の中に一つだけ目玉を持ったオブリビオンは、何事か喋りながら、シスターたちと戦っていた。
さて、まずはこの混乱に乗じてシスターを倒し、魔女の部屋を目指すとしよう。
フィーナ・ステラガーデン
また同族殺しって話には聞いていたけど、今回のやつは一際味方っぽくないわね!ほんとどうやって喋ってるのよ。気合かしら!(異形の目玉を見つつ)
まあいいわ!ほっときましょ!
聖女戦ね!何よ?言いたいことがあるなら聞くわよ!
あ、お茶とかあるかしら?
その間は竜を召喚して目玉のフォローでもやらせておくわ!
(バックで目玉と竜が暴れてる中、罪をふんふんと静聴中)
何で私に自分がやっちゃったことを言うのかわかんないし
話もよくわかんないけど何か苦労したのね!
何となく逆らわない方が良い気がしてきたわ!!
って、あ。
(聖女に竜からの無慈悲な暴風が襲い掛かる)
(アレンジアドリブ連携大歓迎!)
音もなく這い回る紫の液体。
中心に浮かぶ大きな目玉は一切動かず、ただ真っ直ぐ前を見つめながら『許しはしない』と繰り返していた。
その隣には――巨大な竜。
実体があるかと思えば、僅かに透明感を持った巨躯が霊体であることを示している。
その『彼』が紅い翼を広げれば、暴風が巻き起こり、シスターたちを次々と吹き飛ばしていった。
「また同族殺しって話には聞いていたけど……今回のやつは一歳味方っぽくないわね!」
離れた場所でちょこんと正座したフィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)は、後方で暴れる目玉のオブリビオンを見やって半眼になった。
「ほんとどうやって喋ってんのよ……」
確かに、目玉のオブリビオンに口はない。しかし声は鮮明に聞こえるのだ。
『気合かしら』とフィーナは言うが、決してそういうわけではなく、魔法のようなもので意思を音に変換しているようだった。
観察に飽きたのか、フィーナは再び視線を前に戻した。
彼女の前には、正座したシスターたちが神妙な面持ちでフィーナを見つめている。
「で、なんだったかしら! ああ、何か言いたいことがあるのよね? 聞いてあげるから、順番に話せばいいと思うわ!」
お茶があればズズッと啜りながら聞くお婆ちゃんといったところか……フィーナはそう言うと、シスターたちの『懺悔』を静聴した。
後方からどかーんちゅどーんと実に騒がしいSEが聞こえて来るが、フィーナを取り巻くシスターたちの重苦しい気配のせいか、何故かそれ程気にならなかった。
「……ふーん」
一通り聞き終わったフィーナは、開口一番にそう言うと、スッと立ち上がった。
「何で私に自分がやっちゃったことを言うのかわかんないし、話もよくわかんないけど、何か苦労したのね!」
あ、よくわかんなかったんだ。
全力で聞いてくれそうだっただけに、シスターたちがしょんぼりする。
しかし、
「でも……何となく逆らわない方が良い気がしてきたわ!」
と続けたフィーナに、シスターたちは目を光らせた。
これぞ、彼女たちのユーベルコードの恐ろしさ。
懺悔を聞いた者に、主である星屑の魔女への戦意を喪失させるというものだ。
それではお引き取りください、とシスターが言い掛けた、その時だった。
突如として烈風が吹き荒れ、シスターたちを飲み込んだのだ。
「あっ」
フィーナの小さな声は、荒れ狂う風によって掻き消された。
それは紅い翼の黒竜――フィーナのユーベルコードによって召喚された竜の慈悲のない一撃。
哀れ、シスターたちは瞬く間に消し飛ばされたのだった。
「何だか悪いことをしたみたいだけど……よく考えたら悪くないわよね!? アイツらオブリビオンじゃない!」
フィーナは一瞬戦意が消えたことをすっかり忘れ、杖をぶんぶん振りながらも、シスター殲滅戦に参戦するのだった。
成功
🔵🔵🔴
シーザー・ゴールドマン
オド(オーラ防御)を活性化させ、白亜の塔内へ。
シスター達には『ソドムの終焉』により滅びを。
敵POWUCに関して
君達を滅ぼす事に私が疑問を覚えると思ったのかね?
不思議な事だ。
(老若男女問わず、敵と判断した者への攻撃を躊躇う事はありません)
目玉のオブリビオンはその戦力、行動原理を観察しておきます。
(邪魔もしなければ助けも、また利用もしません)
アドリブ歓迎です。
紅のコートが翻り、研ぎ澄まされた一撃がシスターの体を両断する。
彼女が崩れ落ちる前には、次の斬撃が後方のシスターに向けて放たれた。
シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)は息を乱すことなく、その光輝くオーラセイバーを振るう。
僅かに宙へと浮いた体が、暗闇の中を滑るように移動し、オブリビオンを屠っていった。
一瞬、彼の視線が紫の粘液塊、ひとつ目玉のオブリビオンへと向けられる。
彼の行動原理は、戦力は如何程か――。
微笑を象る金の瞳が、目玉のオブリビオンを観察する。
無論、自身の戦闘に隙が出来ることはない。
彼にとって、この程度の力のオブリビオンは敵ではないのだ。
目玉のオブリビオンは、向かい来るシスターたちを的確に撃ち抜いていく。
しかしそれは、シスターを倒そうという意思からではなく、ただ『憎悪や妬み』といった感情だけで、力を振るっているように見えた。
とは言え、この白亜の塔へ自らの意思で潜入したのだ。何か目的はあるのだろうが……。
「お待ち下さい」
シスターたちが、シーザーへと囁きかける。
「抵抗しない者へ、何故攻撃をするのですか?」
「非道なその行い……貴方は何も感じないのですか?」
聖女の言葉に、しかしシーザーは微笑む。
同時に、凄まじい魔力が迸った。
ユーベルコート『ソドムの終焉』――彼自身の魔力が閃光となり、四方へと伸びていく。
シーザーの周りに集った聖女たちは、無抵抗のまま閃光に体を貫かれ、瞬時に灰となった。
「――君たちを滅ぼすことに、私が疑問を覚えると思ったのかね? 不思議なことだ」
変わらぬ表情のまま呟くシーザー。
敵であれば老若男女など関係ないのだ。
終始微笑を浮かべた偉丈夫は、目玉のオブリビオンに続き、奥の間へと進んで行くのだった。
成功
🔵🔵🔴
アイビス・ライブラリアン
星屑で世界を滅ぼす、ですか
世界を滅ぼせるほどの星屑、というのが気になりますが…
ともあれ討伐させていただきましょう
各属性魔法と衝撃波で攻撃
高速詠唱と多重詠唱で範囲攻撃
手数と威力をなるべく両立します
奴隷になるのはお断りしたいので、
敵UCは実行される前にUCで対処
念動力で目玉のオブリビオンの前に誘惑するのも良い手でしょうか
…しかしこの目玉のオブリビオンは何が目的なのでしょう?
「星屑で世界を滅ぼす、ですか……」
猟兵とシスターの戦闘をオレンジの瞳に映し、アイビス・ライブラリアン(新米司書人形・f06280)はぽつりと呟いた。
まるで星空のような空間。
スペースシップワールドにいるかと錯覚する程の、この空間を作り出す魔女とは――。
「世界を滅ぼせるほどの星屑、というのが気になりますが……ともあれ討伐させていただきましょう」
背後から忍び寄るシスター集団に気付き、アイビスが振り返る。
攻撃しようと戦闘態勢を取ると、何故かシスターたちは手に持ったナイフで自身を傷付け始めた。
「一体何を……」
怪訝な表情――実際表情は変わらないが――を浮かべたアイビスは、何かに気付いて高速で詠唱した。
「雷よ」
彼女が両手を向ければ、自傷行為を繰り返すシスターたちに高圧電流が襲い掛かった。
『アアアア!!!』
前列のシスターたちが悲鳴を上げながら地に倒れる。
後方で凌いだシスターたちは、悲しげな表情を浮かべてアイビスに告げた。
「私達は貴女の罪を浄化しようとしただけです」
「祈りを聞けば、あの方にお仕えする同志となれましょう」
不穏な物言いに、アイビスが小さく嘆息する。
「稼働年数11年ですが、罪らしい罪を犯した記憶はありません」
コクンと首を傾げそう言うと、再び両手を掲げた。
「そして、奴隷になるのはお断りです」
彼女の手から放たれた不可視の力は、シスターたちの体を宙へと舞い上げた。
アイビスはそのままシスターたちを移動させ、とある場所に下ろした。
シスターたちが顔を上げると、そこには――。
「……許さぬ……研究を邪魔する者は……排除する」
目玉のオブリビオンが眼前に迫っていた。
彼は無意識に力を発動させ、半分暴走した魔力がシスターたちを襲う。
見た目からは想像出来ない力に、アイビスは目を細めた。
「彼は一体何が目的なのでしょうか……?」
呟いた声は、シスターたちの断末魔に掻き消されたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
アシェラ・ヘリオース
「相変わらずの非道だな、この世界は」
置かれた状況に一つ息を吐こう
装備はこの世界に合せた黒鎧と黒鋼のサーベル、そして盾程もある風車手裏剣だ
方針は、シスター達を見据える事
精神攻撃に気持ちが萎えるが、ここは引けない
「終わりの時は来た。お前達の永き贖罪に終りをもたらす為、我等は此処に来たのだ」
【威厳】のある宣言を行い意志を明確にしたい
戦闘方針は、風車手裏剣にフォースを注いで巨大化と回転を付与し、【戦闘知識】で戦況を見計らう。今回は敵味方の識別が重要なので単発だ
頃合いを見て【念動力】で投げ付ける【範囲攻撃】を仕掛けたい
「怯むまず行こう。躊躇えば彼女達の苦しみが長引く」
自他の士気が落ちれば【鼓舞】を飛ばす
「相変わらずの非道だな、この世界は」
暗闇に星の瞬きが灯る部屋で、アシェラ・ヘリオース(ダークフォースナイト・f13819)は嘆息と共に言葉を吐き出した。
黒い鎧に身を包み、腰には同色のサーベル。そして銀の髮に紅瞳という風貌は、まるで美しいヴァンパイアのようだった。
罪に苛まれたシスターを従え、星屑で世界を滅ぼそうという魔女。
そんな愚行を誰が赦すというのか。
アシェラは猟兵たちと共に部屋の中央へと歩みを進める。
数十のシスターを象ったオブリビオンが、彼女たちを待ち構えている。
アシェラはサーベル――名を『黒刃』――をすらりと抜くと、切っ先をシスターたちへと向けて告げた。
「終わりの時は来た。お前たちの永き贖罪に終りをもたらす為、我等は此処に来たのだ」
アシェラは宣言と同時に、風車手裏剣『黒渦』にフォースを注ぎ込む。
「黒気注入、臨界突破……さぁ、一息で決めるぞ」
そっと囁くようにユーベルコードを展開すれば、黒渦は一気に巨大化した。
彼女のフォース量は桁外れだ。黒渦から漏れ出た紅黒い光が空間にも走る。
その凄まじい力にシスターたちは怯むも、すぐに『聖女の顔』へと戻り、はっきりとした声で懺悔を始めた。
聞くにも耐え難い懺悔は、猟兵たちの精神を蝕む。
アシェラも気持ちが萎えそうになるが、引くわけにはいかなった。
「――怯むまず行こう。躊躇えば、彼女たちの苦しみが長引く」
周りの猟兵を鼓舞しながら、鋭い眼光でシスターを射抜く。
そして彼女たちの隙を見て、一気に地を蹴った。
「ふっ」
呼気鋭く、黒渦を念動力で投げつける。
戦う猟兵たちの合間を縫って飛翔した黒渦は、回転しながらシスターたちを薙いでいく。
その凄まじい切れ味に、四肢を切り刻まれるシスターたち。
花開くように鮮血が宙に舞い、悲鳴を上げる間もなく地に伏していく。
アシェラは風のように舞いながら黒渦を匠に操り、シスターの数を減らしていくのだった。
成功
🔵🔵🔴
エメラ・アーヴェスピア
星とは眺める物で世界を滅ぼす物では無いと思うのだけれど…
知っている事象と少し違うけれど同族殺し関連の予知…私は仕事をするだけよ
時間ね…さぁ、猟兵の仕事を始めましょう
狭い場所を戦場に集団で襲ってくる敵…
大型兵器は使い辛そうね…いいわ、折角だから新兵器…と言うより新しい転送方法を試しましょうか
『刹那唱うは我が銃声』、今回は連続召喚から呼んだ直後に射撃させる方法で戦いましょう
秒間73丁の浮遊型魔導蒸気銃から放たれる弾丸の嵐、戦力自体が低そうな貴方達に防ぐ術はあるかしら?
…先ほども言ったけれど、私は仕事で来ているの
貴方達の罪に興味は無いし、その程度の事で怯む程浅い戦歴はしていないわ
※アドリブ・絡み歓迎
空に浮かぶ恒星の瞬き。
届く光は人々を癒やし、時には信仰の対象となった。
「星とは眺めるもので、世界を滅ぼすものでは無いと思うのだけれど……」
呟きと共に嘆息し、エメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)は暗い広間を戦場に向け歩みを進める。
武器も持たずに歩くドールのように可愛らしい少女は、その姿から受ける印象よりも大人びて見える。
と言うのも、彼女は見た目通りの年齢ではない。幼い頃の負傷によって体を機械化した影響で、当時の姿のまま歳を重ねたのだった。
(知っている事象と少し違うけれど、同族殺し関連の予知……)
思案しながらも、隙はない。
戦況を一瞥し、小さく頷く。
「私は仕事をするだけよ」
鮮やかなエメラルドグリーンの瞳には強い意志。
エメラは腰から下げた懐中時計を見やると、囁くように告げた。
「時間ね……さぁ、猟兵の仕事を始めましょう」
広間を抜けた先で、シスターたちが表情もなく待ち構えている。
通路は暗く、そして集団戦をするには狭い。
「大型兵器は使い辛そうね……いいわ、折角だから新兵器――と言うより、新しい転送方法を試しましょうか」
氷のような微笑を浮かべ、エメラは言う。
それは、紛うことなきイェーガーの顔。
「秒間73丁の浮遊型魔導蒸気銃から放たれる弾丸の嵐、戦力自体が低そうな貴女たちに防ぐ術はあるかしら?」
エメラは告げると同時にユーベルコードを発動させた。
刹那唱うは我が銃声――召喚する兵器を限定することで、召喚速度と維持可能数を最大限まで高めたユーベルコードだ。
突如として空間に出現した魔導蒸気銃は凄まじい轟音を上げ、何事か叫ぶシスターたちの声諸共、全てを破壊し尽くした。
――後には、何も残るはずもなく。
「……先程も言ったけれど、私は仕事で来ているの。貴女たちの罪に興味は無いし、その程度のことで怯むほど、浅い戦歴はしていないわ」
エメラの声は、塵となったシスターの残骸へと降り注いだ。
大成功
🔵🔵🔵
薙沢・歌織
選択肢はPOWです。
ダークセイヴァーに来ると、背中の聖痕が疼きます…。
星屑の魔女と、目玉型の怪物…。オブリビオンの間でも抗争があるのでしょうか?
あれは…魔女の部下のシスター達?
私は薙沢・歌織。星屑の魔女に面会したいのです。
…お引き取りはできません。
…っ!これは…虐殺の記憶…贖罪の嘆き…!
彼女達との戦いが意味を為さないというのなら、私も彼女達とは戦わない意思を示します。この旋律に乗り、あなた達は聖歌を歌いなさい。
UC【精霊達の小夜曲】を発動、【シルフフルート】と【水神剣アーパス】による【楽器演奏・祈り・演技】による聖歌の旋律を奏で、シスター達が心奪われた間に【ダッシュ】で駆け抜けます。
薙沢・歌織(聖痕宿す魔法学園生・f26562)は、緋色の刀身を持つルーンソード『緋炎剣アメノホアカリ』を携え、光を落とさない星々に彩られた部屋に佇んでいた。
美しいサファイアブルーの瞳が一瞬だけ揺れ、そしてまた輝きを取り戻す。
(ダークセイヴァーに来ると、背中の聖痕が疼きます……)
彼女の背にある聖痕は、元は呪詛痕だった。
幼少期に災魔によって刻まれたそれは、聖者の救いの光によって聖痕へと変化したのだ。
チリチリと疼く背中から意識を逸らすように、歌織は部屋を見渡した。
そこかしこで戦う猟兵に混ざり、件の目玉型オブリビオンが這いずり回っている。
(星屑の魔女と、目玉型の怪物……オブリビオンの間でも抗争があるのでしょうか)
歌織が首を傾げていると、視界の隅に修道服を来た女性たちが向かって来ることを認め、そちらに体を向けた。
「あれは……魔女の部下のシスターたち?」
シスターはしずしずと歌織に歩み寄ると、清らかな声ではっきりと告げた。
「この先へ進むことは、罪。お引き取りください」
ずらりと並ぶシスターに、しかし歌織は一歩も引かない。
「私は薙沢・歌織。星屑の魔女に面会したいのです。……お引き取りはできません」
歌織がゆっくりと首を振ってそう返すと、シスターたちの敵意が膨れ上がった。
「それならば、私たちの懺悔を聞きなさい」
言うが早いか、シスターたちの口から漏れる言葉は――。
「……っ! これは……虐殺の記憶……贖罪の嘆き……!」
歌織の意識に『戦いは無意味』『星屑の魔女に逆らわない』といった思いが膨れ上がる。
「戦いが……意味を成さないというのなら……!」
歌織は愛剣を収めた。
シスターたちは、彼女に戦う意思がなくなったことを認め、口を閉ざす。
「私は戦いません。ですが――ご静粛に。これより奏でるは、精霊達の小夜曲……」
歌織はそう囁き、ユーベルコードを発動させた。
スピリッツ・セレナーデ――風妖精の魔力を秘めた『シルフフルート』と、水神の力を宿した『水神剣アーパス』によって奏でられる聖歌の旋律は、シスターたちを包み込む。
「ああ……主よ……」
シスターたちは旋律に囚われ、涙を流した。
(……今です!)
歌織は動かなくなったシスターたちの横を擦り抜け、奥の通路を目指して全力で走った。
無用な戦は避け、今回の目的である星屑の魔女を目指すのだ。
成功
🔵🔵🔴
ネロ・バロック
(アドリブ、連携歓迎)
噂には聞いてたけどよォ…オブリビオン同士でも喧嘩するんだなァ
ま、こっちは受け持った仕事をするだけだぜ
紫のヤツはとりあえず後回しにしてやらァ
一応懺悔ってやつを聞いてやるけどよ
領主に逆らいたくない感情?
俺がそんなモンに負けるわけねェだろが
俺を縛れるヤツなんぞこの世に存在しねェ
「お前らの懺悔は分かったけどよ。
悔い改めるんなら人様に迷惑がかからねェあの世でやんな」
そういうとシスター共は纏めてぶった斬ってやるぜ
殺意を高めて鏖殺斬りだ
殺意ってのは怒りからだけ生じるもんじゃねェ
死ぬことが救いってこともあるだろうよ
「せめて楽に逝かせてやるぜ」
ちっ、胸糞割ぃ
これだからこの世界はやんなるぜ
白亜の塔の攻略は、猟兵たちの活躍により順調に進んでいた。
立ち塞がるシスターの数も、残すところあと僅か。
「噂には聞いてたけどよォ……オブリビオン同士でも喧嘩するんだなァ」
獣のように凶暴な気配を纏った少年が、巨大な剣を肩に担いで白亜の塔へと足を踏み入れた。
彼の名は、ネロ・バロック(餓狼・f02187)。不敵な笑みを浮かべ、辺りを見渡す。
既に戦いは終盤といったところか。
「ま、こっちは受け持った仕事をするだけだぜ」
残党がこちらへ向かって来るのを眺めながら、ネロはそう言い放った。
残党――それはシスターだった。
修道服を纏ったオブリビオンに、やれやれと嘆息する。
奥で這いずり回っている目玉のオブリビオンも見えはするが、一旦後回しだ。
「貴方も暴力に訴えるのですか?」
ぞろぞろとやって来たシスターたちは、ネロを取り囲んだ。
「私たちの懺悔を聞き、悔い改めなさい」
唐突に罪の告白がはじまり、ネロはうんざりしながら適当に聞き流していると、不穏な気配が漂いはじめて眉をしかめた。
(何だ……? この感情は――サカライタクナイ……?)
ネロが顔を上げる。
――俺がそんなモンに負けるわけねェだろが。
そう、彼を縛れる者はこの世に存在しないのだ。
「お前らの懺悔は分かったけどよ。悔い改めるんなら人様に迷惑がかからねェあの世でやんな」
ぶっきらぼうにそう言い放つと、彼の殺意が膨れ上がった。
次の瞬間、無名の魔剣が閃き、ユーベルコード『鏖殺斬り』によって増幅された殺意の一撃が、シスターたちを斬り倒した。
無抵抗のシスターは、一瞬で灰へと還る。
殺意は怒りからだけ生じるものではない。死ぬことが救いということもあるだろう。
ネロはそう思うのだ。
「せめて楽に逝かせてやるぜ」
彼の思いは、消えたシスターたちに届くのだろうか――。
「ちっ、胸糞割ぃ……これだからこの世界はやんなるぜ」
ネロはそう吐き捨てると、魔女の部屋へと続く通路を進んで行くのだった。
成功
🔵🔵🔴
第2章 ボス戦
『『星屑の魔女』スターライト』
|
POW : 【指定技能:盾受け・武器受け】プチダストトレイル
【指定技能を使用しなければ防御不可の、星屑】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 【指定技能:野生の勘・第六感】スターシュート
レベル×5本の【指定技能を使用しなければ回避不可能の、星】属性の【小さな彗星】を放つ。
WIZ : 【指定技能:全力魔法・限界突破】夜空を纏う
【指定技能を使用しない敵からの攻撃の】【ダメージを激減させる効果を持つ、星屑の】【衣を纏う。また、星屑の衣の魔力強化能力】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
イラスト:棘ナツ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「アララギ・イチイ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
その部屋は、満天の星空そのものだった。
異様に広い空間の中央に、巨大な天球儀が浮かんでいる。
その下には、様々な器具が並んだ研究机。
そして、椅子に腰掛ける女性がひとり。
「――だあれ? 人の家に土足で上がりこんで暴れているのは」
夜色のローブを纏った女性は、そう言ってこちらを見やった。
先頭にいる紫の粘液に浮かんだ目玉を見て、薄く笑みを浮かべる。
「あら、誰かと思えば」
「……研究……私の研究を……許さぬ……」
彼女を見ても、目玉のオブリビオンはうわ言のように繰り返すのみ。
ただ、彼の殺気は、シスターとの戦闘時より数十倍に膨れ上がっている。
「……返せ……私の研究……英知……おお……」
突然、目玉のオブリビオンが細かく震えだした。
怒り、悲しみ、苦しみ――それのどれでもない、純粋な狂気。
「貴方の研究、大したことなかったじゃない。何の役にも立たなかったわ」
彼女はそう言って、椅子から立ち上がった。
「ああ、そちらの方々は……最近あちこちの領土を騒がしている猟兵さんね? よく来たわね。私はスターライト、星屑の支配者よ」
スターライトと名乗った彼女は、掲げた手に星々を煌めかせた。
「私の研究、つい先程完成したのよ。この世界に数多の隕石を呼び寄せ、破壊するの。ふふ、素敵でしょう?」
嬉しそうに微笑んでそう言うと、スターライトは蔑んだ目を目玉のオブリビオンへと向けた。
「ああ、そうそう。彼の名前、思い出したわ。プロビデンス・アイだったわね」
彼女の言葉に、目玉のオブリビオン――プロビデンス・アイがピクリと反応する。
「彼は世界に散らばる様々な謎を解き明かすために、研究をしていたわ。知識欲の塊みたいなものよ。でも――」
言葉を切ったスターライトの目が、すっと細くなった。
僅かな怒りが滲み出す。
「でも、私の研究を嘲笑った。この素晴らしい研究を無意味だと言ったの。許せないわよね?」
クスリと笑った彼女は、すっと宙へ浮かび上がった。
彼女の周りに星が集う。
「プロビデンス・アイ。私の星屑たちは、美しかったでしょう? 貴方の研究所の最期は、ここからでも見えたわ。綺麗に、燃え上がって――」
スターライトの言葉は、そこで途切れた。
プロビデンス・アイが衝撃波を放ったのだ。
スターライトは研究が完成したと告げた。
まずは彼女を倒さなければ、この地が危険だ。
この部屋を漂う星は、スターライトの意思で猟兵たちを狙って来る。
星屑の対処もしつつ彼女を撃破しよう。
フィーナ・ステラガーデン
あんた頭良さそうなのにバカじゃないの!
親に習わなかったのかしら!いい!?
世界や他人の建物に星を落とすのはいけないことなのよ!!(ずびしっ)
(過去に仲間と隕石を落としたり爆破をしてクレーターを作ったことは全力で忘れた!!)
そりゃそこの目玉も怒るわよ!まさしく大目玉というやつね!!
言っても聞かなさそうだし戦いよ!
目玉と一緒に戦ってもいいわね!別に息は合わせる気はないけれど
目玉や仲間猟兵が隙を作り出すようなら、そこにUCを叩き込むわ!
衣が邪魔するようならUCによる炎を出したまま火力を一気に上げて
【全力魔法・限界突破】衣ごと焼きつくしてやるわ!!
(アレンジアドリブ連携大歓迎!)
エメラ・アーヴェスピア
…研究で得た物が星屑を落とす「だけ」?
…なんて生産性のない…しかも他の手段も考えるなら割と出来そうな人物が多い気がするわ…
所謂井の中の蛙よね、考えれば私でも出来そうよ
まぁ、そんな無駄な思考はやめて戦闘に集中しましょう
これだけ広ければ私の兵器も使えるでしょう
防御不能?ならその自慢の星屑、真正面から迎撃、爆砕するわ
展開、『戦陣穿つは我が砲雷』、魔導蒸気グレネード砲【砲撃】開始!
それ以外にも浮遊型の銃器や猟犬で反撃させない様に立ち回るわよ
さぁ、手早く行きましょう
※アドリブ・絡み歓迎
エメラは、驚愕に目を見開いた。
宙に浮かぶ魔女を見上げ、思わず呟く。
「……研究で得た物が、星屑を落とす『だけ』?」
ゆっくりと左右に首を振り、憐れみの表情をスターライトへと向ける。
「なんて生産性のない……しかも他の手段も考えるなら、割と出来そうな人物が多い気がするわ」
所詮井の中の蛙だ、とエメラは思う。
少し考えれば、自分にだって出来そうなことだろうと。
そんな彼女の隣で、同じ背丈に同色の髮の少女――いや、二人とも少女という年齢ではないなのだが――が、目を吊り上げて仁王立ちしていた。
フィーナは、噛み付くように魔女に言い放った。
「あんた、頭良さそうなのにバカじゃないの!?」
ずいと前へ進み出て、後を続ける。
「親に習わなかったのかしら! いい!?」
すうっと息を吸い込み、一拍置いてから――。
「世界や他人の建物に星を落とすのはいけないことなのよ!!(ずびしっ)」
『……』
指を突きつけてそう叫んだ彼女に、周りの猟兵たちの視線が集まる。
「ちょ、ちょっと! なんでみんなそんな目で私を見るのよ!?」
「……だって、あなた言っていたでしょう? 以前この地で隕石を降らせ、爆破させ、クレーターを――」
「あーあーあー! 聞こえない! そんな過去はきれいさっぱり忘れたわ!」
エメラの的確な突っ込みを、フィーナはバタバタと両手を振って遮った。
グリモアベースで今回のオブリビオンが隕石の魔女と聞いて、そんな過去話をしていたのは僅か数時間前な気がするのだが……。
「とにかく! そんなことしたら、そりゃそこの目玉も怒るわよ! まさしく大目玉というやつね!!」
「ふふ、面白い娘たちねぇ」
フィーナを見下ろしながら、ようやくスターライトが口を開いた。
時折放たれるプロビデンス・アイからの攻撃を避けつつ、二人に向かって告げる。
「そうよ、星屑を落とすだけ。この地を一瞬で無に還す程の、大いなる流星の魔法」
「大いなる流星、ねぇ」
ふぅ、とエメラが溜め息をつく。
無駄な思考はやめましょうと呟いて、戦闘態勢に入った。
「そうね! 何言っても聞かなさそうだし、戦いよ!」
フィーナも頷いて、杖を構えた。
スターライトは宙に浮かぶ星屑に座ったまま、何をするでもなく微笑んで猟兵たちを見下ろしている。しかし、彼女の周りを飛び交う星屑たちが一箇所へと集い、巨大な隕石へと変貌を遂げつつあった。
まずは自慢の隕石で挨拶と言ったところだろう。
エメラはクスリと笑った。
この広い空間は、実は彼女にとって戦い易いバトルフィールドだ。
「これだけ広ければ私の兵器も使えるでしょう」
「あら、余裕ね? 私の星が、今から貴女たちを押しつぶすというのに」
スターライトの言葉に、エメラは微笑んだまま囁くように言った。
「展開、『戦陣穿つは我が砲雷』」
力ある言葉によって出現したのは、大型のグレネードキャノンだ。
彼女の眼前に浮かぶそれに、エネルギーが収束していく。
一瞬、星屑の魔女の顔が引き攣った。しかしそれも一瞬のこと。
「そんなもので、私の隕石が壊せると思って?」
再び微笑んでそう告げると、巨大な隕石がゆっくりと降下をはじめる。
エメラは小さな手をすっと掲げ、隕石を見据えて叫んだ。
「魔導蒸気グレネード砲【砲撃】開始!」
銃口から放たれた榴弾は、隕石へと吸い込まれるように一直線に飛翔する。
その重い一撃は、隕石に刺さり凄まじい爆発を引き起こした。
隕石は呆気なく砕け散り、大量の破片が爆風に乗ってスターライトへと襲い掛かる。
「くっ」
魔女は夜色の衣を纏い、星屑から身を守った。
「まさか、私の星を砕――っ!?」
悔しげに顔を歪める魔女の目が、一気に見開かれた。
破片の後方から、黒い塊が迫っていたのだ。
「あれは一体……」
黒い塊は、凄まじい熱気を放っている。
そう、それは炎。
スターライトがエメラに気を取られている隙に、フィーナがユーベルコード『喰らう灼熱の黒炎』を放ったのだ。
「油断したわね! あんたなんか黒焦げにしてやるわ!!」
黒い炎に包まれるスターライト。
しかし彼女が纏う衣が、みるみる炎を吸収していく。
「こんな炎、私に届くと思って?」
「衣が邪魔ね! それなら火力アーーーップ!」
フィーナは叫ぶと次々に火球を飛ばす。
黒い炎に合流して激しく燃え上がり、衣は徐々に灰となっていった。
遂には衣の防御を打ち破り、スターライトの白い腕が露出した。
「きゃあああ!!!」
あっと言う間に腕が焼けただれ、スターライトは苦痛の表情で後退した。
乱れた呼吸を整え、ゆっくりと息を吐き出す。
知的な瞳に怒りの炎を湛え、再び空間の星屑を自身の周りに集めた。
二人の猟兵による連携プレイは、魔女の身と心を傷つけることに成功したのだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アシェラ・ヘリオース
「そう言う縁か。救い難いな、お前達の存在は」
二人の不毛な関係性に息を吐く
フォースの収束【砲撃】で攻撃し【空中戦】で機動回避
【戦闘知識】を活かし、自然な流れで目玉と挟む位置取りを狙いたい
「ちぃっ……黒気城塞」
相手の攻勢に圧された体で「黒理力盾」を展開し【盾受け】。更に【オーラ防御】を拡大し防御UCを展開する
絶大な防御力と引き換えに足が止まる。強敵相手だとジリ貧になるのが難点だ
だが、今回は魔女に敵対する目玉がいる
硬い防御の裏で、「黒渦」を光学【迷彩】し【念動力】で操つり、【誘導弾】で背後を狙う
「抉れ、黒渦」
赤光を纏った旋刃の【鎧砕き】で防御を削り、【継続ダメージ】で更に【傷口をえぐる】を狙いたい
ネロ・バロック
※アドリブ・共闘歓迎
目玉の親父は何の研究をしてたんだァ?
興味あるけど今は目の前の魔女を撃破してからだな
親父が攻撃してる間に【目立たない】【見切り】【暗殺】で
隕石をかいくぐって近づくぜ
武器受けも使いつつ多少のダメージは覚悟するぜ。
「随分御大層な二つ名じゃねェか。倒し甲斐があるってもんだぜ」
星を降らせるってスケールデケェな
こんなアブねぇ奴を残してたらヤベェ
大物になりそうだが今のうちに狩っとくぜ
接近したら【残像】【二回攻撃】【生命力を吸収】で斬りかかるぜ
親父の攻撃と合わせればどっちかは当たるんじゃねェかな
最後は捨て身で唯我独尊斬りだァ
「お前が星を落とすってんなら、俺はその星ごとお前をぶった斬る!」
「――そう言う縁か。救い難いな、お前たちの存在は」
あまりに不毛な二対のオブリビオンの関係性に、アシェラは溜め息をついた。
夜空の星が瞬くように、この空間にも星屑が光を落としている。
アシェラの銀の髮は、その淡い輝きを映していた。
「随分と御大層な二つ名じゃねェか。倒し甲斐があるってもんだぜ」
アシェラの隣で、ネロは不敵な笑みを浮かべそう言い放つと、光を吸い込むような藍色の髮を搔き上げた。
並んで立つ二人の背丈は同じだ。同じ目線で、危険な魔女を見やる。
魔女は――嗤っていた。
「先程は油断したけれど、今度は最初から様子見などしないわよ? 星の瞬きのように儚く散って貰うわ」
スターライトはそう告げると、辺りを漂う星屑たちを動かした。
星々は彼女を守るために、そして猟兵たちを攻撃するために、この広い空間を移動していく。
「星を降らせるってスケールデケェな……こんなアブねぇ奴を残してたらヤベェ」
「ああ、目玉は後回しだ。まずは彼女を倒すことが先決だろう」
ネロの言葉にアシェラが頷く。
プロビデンス・アイは、先程から何事か呻きながら動かなくなっていた。
「……しかし、目玉の親父は何の研究をしてたんだァ?」
ネロがふと疑問を口にすると、アシェラは首を左右に振った。
「わからない。だが、魔女を倒した後で確認することは出来るかも知れない」
「まァ、それもそうか。興味あるけど、今は魔女を撃破してからだな」
ネロは再びスターライトを見やると、凶暴な笑みを浮かべた。
「大物になりそうだが、今のうちに狩っとくぜ!」
ネロが黒剣片手に飛び出すと同時に、プロビデンス・アイが動き出した。
粘性の中の目は虚空を見つめたままだが、スターライトへ向けて攻撃魔法を放っている。
(ナイスタイミングだなァ、親父!)
ネロは獰猛な笑みを浮かべると、そのまま気配を殺してスターライトの後方へと駆け抜ける。
星屑は彼を目掛けて降って来るが、ネロは軽快なステップで躱した。
細かい流星は無視だ。多少の傷は無視して奔って行く。
アシェラは、ネロとプロビデンス・アイの位置を確認し、自身は宙へと舞った。
フォースを収束させ、向かい来る星屑を足場とし、時に赤晶弾で撃ち落としながら、スターライトとの距離を詰めていく。
「面白い戦い方をするわねぇ。でも、これならどうかしら?」
クスリと笑ったスターライトが、巨大な流星を生成し降下させた。
恐ろしい速度で迫る隕石に、アシェラは慌てて闇理力盾を展開する。
彼女の強大なフォースによって、素晴らしい防御力を誇る盾だが――。
「くっ」
予想を遥かに上回る隕石のパワーに、盾が軋んだ。
彼女の脚は地面にめり込み、どんどん沈んでいく。
「ちぃっ……『黒気城塞』!」
瞬時に黒気を開放し、ユーベルコードを展開。
彼女を中心とした防御力場が広がる。
同時にピタリと隕石の動きが止まった。
しかし、この技を使用している間、彼女は一歩も動くことが出来ない。
(動けなくとも、狙い通りだ)
アシェラの口端が僅かに上がる。
「あら、動けない銀髪の猟兵さんは何がおかしいのかしら? それを止めても、次の星屑が貴女に降り注ぐわよ?」
スターライトがそう問い掛けると、答えは思いがけない場所から返ってきた。
「魔女さんよォ、何か忘れてないか?」
「!?」
唐突に背後から響いたネロの声に、スターライトは慌てて後方へと星屑を飛ばす。
しかし、既に彼は攻撃体勢に入っていた。
「遅いぜ!」
闇色のオーラを纏った素早い斬撃が、幾重にも重なり繰り出される。
彼の黒剣は、異端の血を啜る呪われた剣。
切っ先が掠った程度でも、相手の生命力を奪う。
「かはっ」
星屑を盾にそれを躱そうとしたスターライトが、その一太刀を浴びて体勢を崩す。
「貰ったぜェ! お前が星を落とすってんなら、俺はその星ごとお前をぶった斬る!」
ネロが咆えた。
展開されたユーベルコード『唯我独尊斬り』による重い一撃が、スターライトへと向かい――。
「抉れ、黒渦」
ネロの攻撃と挟み込む形で、アシェラは硬い防御の裏から、赤光を纏った巨大な風車手裏剣を放った。
黒渦はフォースを纏い、高速回転しながら飛翔する。
「アアアアアア!!!」
強大な防御力を誇る魔女の衣でも、防御し切れないダメージが彼女を襲った。
脇腹を強打され、脚をズタズタに切り裂かれたスターライトが、星屑たちと共に落下し床に叩きつけられる。
「ガハッ」
涙と唾液を垂らし、スターライトは激しく咳き込んだ。
――地に落とせば、後はこちらのものだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
薙沢・歌織
選択肢はWIZです。
星屑の魔女、お邪魔します。猟兵の薙沢・歌織です。同じ魔法研究者としてあなたの暴走を止めに来ました。
戦意は戻りました。シスター達との戦闘を避けた分余力もあります。
聖痕より出でよ、真の姿の断片たる光の翼!
ミラージュオーブを介し【視力】で視界確保、【盾受け・オーラ防御】のバリア展開で星屑防御。精霊銃の【誘導弾・乱れ撃ち】とエレメンタルオーブの魔法弾で星屑迎撃しながら魔女を攻撃。魔力は【魔力溜め】で回復。
魔女がUCで衣を纏ったら、光の翼を漆黒に染め緋炎剣を掲げUC【属性攻撃・高速詠唱・全力魔法・限界突破】の【常闇の悲槍】。
破滅の導き手には、無慈悲な最期を…!
あの目玉の異形はどこへ…
シーザー・ゴールドマン
さて、まずは前座を楽しもうか。
敵POWUCに対して
ふむ、特定技能以外は防御不可という制約で威力を上げていると見るべきかな? まあ、防御する気はないので変わらんがね。
星屑を『破壊の魔力』で生成した魔力弾で攻撃、消滅させる。
※星屑を見切り、機先を制して(先制攻撃×カウンター)魔力弾乱舞。
(範囲攻撃×属性攻撃:魔力×誘導弾×『破壊の魔力』)
星屑を無効化後にオーラセイバーで斬り裂きます。
君の研究の価値に関しての論評は差し控えるが……完成したのだろう?
ならば悔いもあるまい。消えたまえ。
アイビス・ライブラリアン
研究自体は良いのですが、世界を破壊されると
本がなくなってしまいますので止めさせていただきます
いつも通り属性魔法を主に使います
星屑は土属性の魔法に範囲攻撃+高速詠唱でやり過ごしましょう
…しかし効かないですね。もしやUCですか
であれば、こちらもUCで対抗します
これで相殺ですね?
そこに密かに魔力溜めしていたものを
全力魔法にて放ちます
…ところでこの目玉のオブリビオンは
何を研究を駄目にされたのでしょうか
アドリブ歓迎
「許さないわ……」
星空から地に落ちた魔女が、ゆっくりと体を起こす。
「私にこんな仕打ちを……」
そう呟いて顔を上げれば、三人の猟兵が足を踏み入れたところだった。
先頭に立つ少女が、青い双眸をスターライトに向けて告げる。
「星屑の魔女、お邪魔します。猟兵の薙沢・歌織です」
歌織は丁寧に、しかし表情は厳しく挨拶をする。
「同じ魔法研究者として、あなたの暴走を止めに来ました」
「暴走……ですって……?」
歌織の言葉に、スターライトの唇がわなわなと震える。
宙に漂う星屑たちが、ざわりと動いた。
「星屑の大魔法でこの世界を終焉に導くこと――それのどこが暴走だと言うの?」
そう返して、ゆっくりと立ち上がるスターライト。
纏っていたローブや大きな魔女帽子は塵となって消えたが、魔力は衰えていない。
ただし、負った傷は塞がっていないようだ。ズタズタになった腕や脇腹からは、未だに血が流れ出している。
「これしきの傷、すぐに癒せるのだけれど……猟兵を侮った私への罰ね。このままでも十分よ、世界ごとお前たちを消してあげるわ」
スターライトはそう言い放つと、魔力で生成した黒い翼を広げた。
「研究自体は良いのですが、世界を破壊されると本がなくなってしまいますので止めさせていただきます」
歌織の後ろに控えるアイビスがそう告げた。
彼女の隣では、シーザーが微笑を浮かべて佇んでいる。
「君の研究の価値に関しての論評は差し控えるが……完成したのだろう?」
彼の金の瞳に何を見たのか、スターライトの僅かに開いた口は何事も返さない。
「ならば――悔いもあるまい。消えたまえ」
シーザーの言葉を合図に、歌織は剣を抜き、アイビスは魔力を高めた。
先手を打ったのはスターライトだ。
宙に浮かぶ星屑を、凄まじい勢いで猟兵たちへと降らせたのだ。
「流れ星……させません! 聖痕より出でよ、真の姿の断片たる光の翼!」
歌織はシスターたちとの戦闘を避けた分、余力が十二分にある。
叫ぶと同時に現れた輝く翼を羽ばたかせ、一気に宙へと舞い上がった。
自身の周囲を回るミラージュオーブで視界を確保しつつ、エレメンタルオーブの魔法撃で迎撃していく。
擦り抜けた星屑も、展開されたバリアに阻まれ歌織を傷つけることは出来ない。
「まだまだです!」
続けて殺到した星屑は、彼女の精霊銃フュルギア・改式の乱れ撃ちによって消えていった。
「援護します、薙沢様」
地上では、アイビスが四大元素の書を片手に魔法援護を開始した。
ダイアモンドのように輝く大地の結晶が星屑と衝突し、残滓を散らす。
シーザーは、後方から回り込んで飛来した星屑を、オーラセイバーの一閃で消し飛ばした。
意外とトリッキーな動きをする星屑も、シーザーは躱し様にカウンターの一撃を放ち、そこから振り向きもしないで魔力弾を乱舞させれば、この辺りの星屑はほとんど消滅していた。
「あらあら、楽しそうに踊ってくれるわねぇ? それなら、これはどうかしら」
スターライトは楽し気にそう言うと、更に数倍の星屑を生み出し、全方位から三人へ向けて解き放った。
今までの星屑とは比較にならない程のパワーを秘めたそれ等は、予測し辛い軌道で襲い掛かる。
「ふむ、制約つきのユーベルコードのようだね。まあ、防御する気はないので変わらんがね」
彼女の放った力の正体を見破りつつも、シーザーは涼しい顔でオドを活性化させた。
普段から纏っている彼自身の魔力が膨れ上がる。
ユーベルコード『シドンの栄華』により、異界の神の力を振るい生成された魔力弾の数は、スターライトの星屑と同数。
飛翔した魔力弾が、たちまち星屑を消滅させていく。
「なんという魔力……」
スターライトの顔が、僅かに青ざめる。
魔女が硬直した一瞬の隙に、歌織の魔弾とアイビスの魔法が放たれた。
しかし二つの力は、スターライトのドレスに触れた瞬間、残滓を散らして消滅する。
「嫌ね、野蛮な攻撃」
魔女は目を細め、二人を見やる。
「なる程、それもユーベルコードですか。であれば、こちらもユーベルコードで対抗します」
アイビスは淡々と告げると、そっと瞳を閉じる。
「相殺させて頂きます」
静かな声。
発動する不可視のユーベルコード。
パン、という乾いた音を立て、スターライトの周りに張り巡らされていた『何か』が消失した。
「!? ……嘘でしょう?」
目を見開くスターライトに、歌織が星屑を切り裂いて一気に肉薄する。
彼女の翼は、光から闇へ。
漆黒の翼を羽ばたかせ、緋炎剣アメノホアカリを掲げて叫ぶ。
「常闇の深淵より出でし暗黒の槍よ、仇なす敵を無慈悲に貫け!」
ユーベルコード『常闇の悲槍』が発動し、無数の暗黒槍がスターライトへと飛翔する。
槍は最早守るもののない魔女の皮膚へと突き刺さり、大爆発を引き起こした。
「アアアアアア!!!」
激しい爆風に煽られ、白目を剥いて床へ激突する星屑の魔女。
「貴女自身が星屑となりましたね」
アイビスが静かに独り言ちる。
ユーベルコードを立て続けに放ったことで、スターライトの魔力はかなり消耗していた。
しかし、まだ何かを企んでいるかのような目付きで、ゆらりと起き上がる。
その皮膚は焼けただれ、見るも無残な姿だった。
「猟兵、ここまでとは……しかし私の悲願は成就され――」
スターライトが何事か言い終わるより早く、シーザーが機先を制して魔力弾を放った。
ひとつひとつは小さな光だが、そこから放たれる気配は悪魔のそれだ。
すべて違わずスターライトに着弾し、きゅぼっというコミカルな音と供に巨大なクレーターを形成した。
そこへアイビスが溜めに溜めた魔力弾を撃ち込み、更なるクレーターを形成する。
白亜の塔全体が大きく揺れ、スターライトが作り出していた星空の部屋は、ガラスが割れるように崩壊した。
そして後には、それ程広くもない白い部屋が現れたのだった。
どうやら塔は魔法によるカモフラージュで、実際は白い箱のような建物だったと言うわけだ。
「これが……この建物の正体?」
歌織が辺りを見渡して呟く。
先ほど通って来た扉の先には樹海が広がっている。
「……あ、私の……」
部屋の中央で、下半身を失った魔女が手を伸ばす。
ゆっくりと何かを掴み、引っ張るような仕草をすれば、天井が左右に開いてダークセイヴァーの空が広がった。
その分厚い雲に覆われた空から、一筋の光が降りてくる。
しかしその光は、高速で放たれた不可視のレーザーによって霧散してしまったのだ。
「な……んで……?」
魔女は震えながら、レーザーが放たれた場所を見た。
そこには、彼女を見つめるプロビデンス・アイの姿。
「星屑の大魔法を……消滅させる魔法……ですって……?」
息も絶え絶えに呟くスターライトに、プロビデンス・アイは初めて感情らしきものをぶつけた。
「……私の、研究を……奪った……魔女めぇぇぇ!!!」
彼から放たれた荒れ狂う魔力が、スターライトを穿った。
――それが、星屑の魔女の最期だった。
「目玉の異形……」
歌織が事の顛末に驚きつつ、プロビデンス・アイを見つめる。
彼に意識があるとは思えないが、それを上回る恨みが星屑の魔女を撃ったのだろう。
「あの目玉のオブリビオンは、一体何の研究を駄目にされたのでしょうか?」
アイビスはそう呟いて、ふと気配を感じ振り返った。
後方の壁には、生物のように蠢くものから無機物まで、実に様々なものが埋まっていたのだ。
「あれは……」
「彼女の研究の産物、だろうね」
シーザーが頷いて言う。
歌織も振り返って、そして険しい表情になった。
その中には『人間』も埋まっていたからだ。
スターライトが『星屑の大魔法』の研究するに当たって、実に多くの犠牲が伴ったことは言うまでもなかった。
ともあれ、まずは依頼の目的であった『世界を星屑で滅ぼそうと企む魔女の討伐』を果たした猟兵たち。
残る目玉のオブリビオン、プロビデンス・アイは果たして――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
第3章 ボス戦
『『探求卿』プロビデンス・アイ』
|
POW : 蒐集異聞業検証式“木偶の戦列”
対象のユーベルコードを防御すると、それを【完全模倣して使用する人形百体を瞬間構築し】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
SPD : 廃棄怨嗟物転用式“狂いの跨乗”
【頭蓋を砕き脳髄を啜るための大型散弾銃】で武装した【奪われた知性を取り返そうと狂い叫ぶ吸血鬼】の幽霊をレベル×5体乗せた【常時正気を削る思念波を放つ大型竜種】を召喚する。
WIZ : 異界非正規接続式“穢れの帝国”
対象への質問と共に、【自身が纏う魔導粘液を染み込ませた無機物】から【無数の口と目玉を持つ異空間の巨大城門】を召喚する。満足な答えを得るまで、無数の口と目玉を持つ異空間の巨大城門は対象を【槍の舌、石化の邪視、門より現れる謎の怪物】で攻撃する。
イラスト:とのと
👑8
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「レナ・ヴァレンタイン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
彼の研究は、誰にも理解されなかった。
いや、本人は理解されることなど望んではいなかったのだ。
この世界に散らばる無数の謎の解明。そしてあらゆる知識を求め、日夜研究を続けていた。
彼は領土を持っていなかった。
知識欲に従い、必要に応じて様々な土地へと移動していたからだ。
ただ、誰も統治していない地に研究所を造り、集めた知識はそこに保管していた。
星屑の魔女は、彼の純粋な『知りたい』という気持ちを『無駄』だと一蹴した。
プロビデンス・アイも、自身の知識欲を満たす世界を滅ぼそうと考えるスターライトの研究を『無駄』だと一蹴した。
実際のところ、魔力では上をいっていたプロビデンス・アイに一泡吹かせようと、彼の研究所を突き止め吹き飛ばしてみれば――見事に彼は狂ったのだった。
そんな事実も、最早語る者はいない。
狂ったプロビデンス・アイは恨む相手を失っても尚、研究所を破壊された憎しみの感情に突き動かされ、その怒りの矛先を猟兵たちへ向けるのだ。
アシェラ・ヘリオース
「狂っているな……恨みも憎悪も超えて、ただ哀しみだけがある」
静かに瞑目する
オブリビオンとは言え、あるいは放置しても良かったかもしれない
だが、今はもう駄目だ
「消し去るぞ……今はただ骸の海へと還れ」
真の姿を現し近衛装束を纏うと、UCで黒き風を纏って強化する
フォースを物質化した赤槍で目玉を攻撃したい
敵のUCで模倣されるが構わない。奴等の真の姿とはなんだ?
何の積み重ねも無い人形共の強化された真の姿等、100体いても物の数ではない
「爆ぜよ」
赤槍の出力を開放し、横薙ぎに纏めて【吹き飛ばす】(【範囲攻撃、砲撃】)
後は目玉に対し雀蜂めいた【空中戦】を挑み、赤槍で攻撃を行いたい【くし刺し、二回攻撃、念動力】
シーザー・ゴールドマン
【POW】
研究を奪われた、かね。
探求心旺盛なのは褒めても良いが……今の君は短絡的に過ぎるね。
奪われたのならば奪い返せばいいし、それが出来ないのであれば、一から始めれば良い。狂っている暇はないはずだよ。
とは言え、君はオブリビオンだ。まあ、消えたまえ。
スルスルと近づいて攻撃を回避しながら近づいて『バベルの消失』の一撃を。(見切り×先制攻撃)
敵POWUCに対しては
百体の人形、全てを30㎝以内に近づかせる事なく紅い波動(衝撃波×なぎ払い×範囲攻撃)で一撃で消滅させます。
(狂っているな……恨みも憎悪も超えて、ただ悲しみだけがある)
アシェラは心で呟き、瞑目した。
魔女は彼の研究所に星屑を落としたと言っていた。
狂ってしまう程に、大切な何かがあったのだろう。
(オブリビオンとは言え、或いは放置しても良かったかも知れない……)
哀れなプロビデンス・アイに、そんなことも一瞬よぎりはしたのだ。
――だが、今はもう駄目だ。
アシェラは目を開く。
そう、この殺意は星屑の魔女だけでなく、すべての生命に向けられている。
「研究を奪われた、かね」
突如右側から聞こえた声に、アシェラはそちらを見やった。
いつの間にか、彼女の隣にはシーザーが立っていた。
涼しい微笑を浮かべ、言葉を紡ぐ。
「探求心旺盛なのは褒めても良いが……今の君は短絡的に過ぎるね。奪われたのならば奪い返せばいいし、それが出来ないのであれば、一から始めれば良い。狂っている暇はないはずだよ」
彼の言葉に、アシェラは確かにと納得する。
大切な研究成果も、無限の命を持つオブリビオンであれば、幾らでもやり直せるはずなのだ。
しかし、彼は狂ってしまった。
一体何がそうさせたのか……。
「――とは言え、君はオブリビオンだ。まあ、消えたまえ」
微笑はそのままに、静かに告げるシーザー。
アシェラも同感とばかりに頷く。
「消し去るぞ……今はただ骸の海へと還れ」
二人の猟兵は、この白い部屋の硬質な床を蹴った。
アシェラの姿は、黒鎧から近衛装束へと変化した。
これが彼女の真の姿。
ユーベルコードを発動させれば、漆黒の旋風に包まれる。
顔を覆うミラージェイド越しの彼女の表情は、氷のように鋭く冷たい。
対するプロビデンス・アイは、動きを止めてじっと向かい来るアシェラを見つめた。
そして――彼が漆黒の旋風に包まれた。
(模倣した……? しかしそれが何だと言うのか)
アシェラはスピードを落とすことなく、プロビデンス・アイへと突っ込んで行く。
右手には、今にも暴走しそうな赤黒いフォースを撒き散らす破天槍。
それを凄まじい速度で横薙ぎにすれば、紅い衝撃波がプロビデンス・アイを襲った。
「……破!」
プロビデンス・アイは魔力壁を生成し、衝撃波を吸収する。
しかし防ぎ切れなかったのか、粘液の一部が消し飛んだが、彼は微動だにしなかった。
「やるな」
アシェラが跳躍し、彼の後方に着地した。
プロビデンス・アイは振り向きもせず、彼と同じ姿の人形を百体、周りに構築する。
アシェラの目が細められた。
人形も漆黒の旋風を纏っていたからだ。
「……何の積み重ねも無い人形共の強化された真の姿など、百体いても物の数ではない」
アシェラはそう告げると、再び地を蹴った。
彼女を包む旋風は吹き荒れ、まるで嵐のようだ。
「爆ぜよ」
冷たい一言に合わせ、破天槍を横に薙ぐ。
その静かな動作で破天槍の出力は開放された。
強烈な一撃は、一瞬で百の人形たちを吹き飛ばした。
「なかなかやるね」
アシェラに入れ替わるように、シーザーが進み出る。
プロビデンス・アイは、くるりとシーザーを向くと、その強大な魔力を弾丸のようにして撃ち出した。
本人に意識はないようだが、猟兵を強敵だと認識したのであろう。
突然その姿が床へと沈み、次の瞬間、アシェラとシーザーから離れた場所に出現する。
「……散れ」
彼の言葉でシーザーへと向かっていた魔弾は四つに分散し、読み難い軌道で飛翔した。
しかし、シーザーはプロビデンス・アイ目指して真っ直ぐに進むのみ。
向かい来る魔弾は最低限の動きで躱し、時にオーラセイバーで切り裂きながら、凄まじい速度で肉薄する。
プロビデンス・アイを目前に、ユーベルコード『バベルの消失』を発動させた。
「消えたまえ」
激しい魔力の奔流が、ゼロ距離で叩き込まれる。
目玉は吹き飛び、粘液の表面にさざ波が走った。
しかしシーザーが何かを察して後方へ下がると、一瞬前までいた場所を、粘液から噴き出した黒紫のガスが薙いだ。
ガスはそのまま質量を増し、再び百の人形を形成する。
気付けば目玉も復活していたが、そのサイズが小さくなっているところを見ると――かなりのダメージを負ったようだ。
「しぶといね」
シーザーはそう言いながらも微笑を浮かべたまま、紅いオーラを纏った。
オドを活性化させ、それを腕に集中させる。
百の人形は、彼と同じ紅いオーラを纏っている。
各々の液体がボコボコと泡立ち、魔力が溢れ返っていた。
どうやらシーザーの能力を模倣したようだが――。
「私の魔力には程遠いね」
そう一言告げた後、彼は腕を横に薙いだ。
紅い波動が広がり、人形に触れた途端、その身は蒸発して赤い霧へと姿を変えた。
一瞬で、百の人形は消え去ったのだった。
「さて、次はお前だ」
アシェラがそう告げ、飛翔する。
立て続けのユーベルコードで一時動きを止めたプロビデンス・アイに、まるで雀蜂の如く、宙から何度も破天槍を突き立てる。
貫かれた目玉は消失し、粘液も散り散りになったプロビデンス・アイ。
その後再生はしたものの、やはりサイズが一回り小さくなっていた。
確実にダメージが蓄積していることを、如実に伝えていたのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
フィーナ・ステラガーデン
さあってお仕事もおしまいね!帰ろうかしら!
って私達何もしてないわよ!八つ当たりしてんじゃないわよ!
真の姿にて対応
きっかけはお任せで性格変化は前回同様ドS気味に血に酔っている
血液の翼で飛びまわりつつ大量の霊を乗せた大型竜種と目玉に対し
【空中戦、属性攻撃】による血液の弾丸を浴びせ削る
数や思念波に煩わしくなれば
血液の翼を広げ、翼から血液を撒き散らしたのち
【高速詠唱】UCにて聖者、星屑の魔女、仲間、自ら撒いた血液から無数の槍を作り出し竜種と目玉を串刺しにする
竜種から血液が溢れれば【多重詠唱】にてUCを再度試行。竜種の血液により串刺しにする。
(アレンジアドリブ連携大歓迎!台詞など完全お任せ)
アイビス・ライブラリアン
どのような研究をされているか存じませんが…
それを無にされたのは無念だと思います
しかし、それならばまた研究をしたらよいのでは?
改めて調べると新しい発見があるかもしれませんよ?
さて、それはさておき倒されるわけにはいきません
敵UCにはUCで対抗
質問はご自身で調べてもらいましょう
「その質問はこちらの本棚、2段目を左から順に見ていただくと答えが得られるかと」
私で答えられることがあれば答えます
各攻撃は違う本棚や高速詠唱、範囲攻撃、属性魔法、念動力で対処します
…しかし、もし研究結果が残っているのであれば
本に纏めて持ち帰りたかったものです
アドリブ歓迎
「さあってお仕事もおしまいね! 帰ろうかしら!」
すっきり顔で踵を返すフィーナ。
目的のオブリビオンは倒したのだ。
ご飯かお風呂か寝るか……とにかく、帰るのだと。
「ステラガーデン樣、まだ終わってはいませんよ」
それを呼び止めるアイビス。
そして、彼女たちに向けられる凄まじい殺意。
ついでに赤いビームが飛んできて、危うくフィーナに直撃するところだった。
「って、私たち何もしてないわよ!? 八つ当たりしてんじゃないわよ!」
そう叫んで、ビームの主、プロビデンス・アイを睨み付けるフィーナ。
少しだけ前髪が焦げたかも知れない。
「どのような研究をされているかは存じませんが……それを無にされたのは無念だと思います」
「ちょっとアイビス、なに勝手に会話はじめてんのよ!?」
プロビデンス・アイに反撃しようと構えたフィーナが、突然語りはじめたアイビスに突っ込む。
しかしアイビスは彼女には答えず、プロビデンス・アイへと言葉を向けた。
「しかし、それならばまた研究をしたら良いのでは?」
当たり前のようにそう告げても、プロビデンス・アイは何事も云わない。
ただ、じっとアイビスを見つめている。
「改めて調べると、新しい発見があるかも知れませんよ?」
何か思うことがあるのか、珍しくアイビスが饒舌だ。
しかし、その後ろで『もういいから燃やしちゃいましょ!』とか騒いでいるフィーナはいつも通りだった。
「……あれを、壊された……もう戻りはしない……」
突然、プロビデンス・アイが呟く。
「同じものは……作ることは……出来ない!!」
目を見開いて叫ぶと、魔力が膨れ上がった。
二人に殺意の籠もった風が吹き付ける。
「……さて、倒されるわけにはいきませんね」
アイビスは諦めたように溜め息をつくと、詠唱をはじめた。
「って、結局攻撃するんじゃない!!」
フィーナの叫びも虚しく、両者戦闘体勢へと移行するのだった。
ずるり、とプロビデンス・アイが動いた。
粘液に小波が走り、そこから何かが迫り上がって来る。
「あれは――」
アイビスが数歩下がる。
彼女の前に出現したのは、無数の目と口を持つ巨大な城門だった。
『――汝、我が構成を識るか』
何の前触れもなく、城門が質問を投げかける。
「構成、ですか……そうですね」
律儀に答える素振りを見せたアイビスは、何かを思いついたのか、突然ユーベルコード『知識の迷宮』を展開した。
彼女を中心に広がる図書館。
「質問はご自身で調べては如何でしょうか?」
アイビスはそう告げると、城門に向かって丁寧にお辞儀をした。
しかし城門は、同じ質問を繰り返しながら、舌を槍に変えて攻撃して来る。
それを本棚でブロックしながら、アイビスは本日二度目の溜め息をついた。
「困った利用者樣です。それでは――」
アイビスは再度丁寧にお辞儀をすると、
「その質問はこちらの本棚、2段目を左から順に見ていただくと答えが得られるかと」
「ちょっとアイビス! 遊んでるでしょ!?」
後ろで見ていたフィーナがさすがに突っ込むが、アイビスは至って真面目のようだった。
僅かに首を傾げ、
「おかしいですね……これで答えになるかと思ったのですが」
と呟きながら、巨大な火炎柱を城門に見舞い、瞬時に消し飛ばした。
「最初から燃やせば良かったのよ! 次は私よ!」
まだ納得のいかない顔のアイビスを横に避けて、フィーナがプロビデンス・アイの前に立つ。
彼はフィーナを見つめていたが、その彼が唐突に歪んだ――ように見えた。
しかし、実際に歪んだのは彼とフィーナの間の空間。プロビデンス・アイがユーベルコードを展開したのだ。
「……来たれ」
彼の声に応え出現したのは、巨大な竜だ。
あまりの質量に、部屋の壁も屋根も吹き飛んでしまった。
竜の上には、酷い声で叫ぶ吸血鬼の亡霊たち。
その数は――軽く百を超えている。
「さすがにシャレにならないわね……」
フィーナがそう呟くと、竜が咆哮した。
その声は激しい思念波となって、フィーナたちを襲う。
一瞬、意識を失いかけたフィーナの首筋に、吸血鬼の一人が噛み付いた。
カクンと首が折れ、うなだれるフィーナ。
全身の力が抜けて――プツリ、と何かが切れた。
「……んふふふ……アハハハハハハ!!!」
顔を上げ、瞳に狂気を宿し、歪んだ口で高らかに嘲笑する。
「そんなに血がほしいなら、くれてやるわ!」
まるで別人のような形相でそう告げると、まだ首筋に噛み付いたままの吸血鬼に腕を突き立てた。
そのまま体内へ自身の血を注ぎ込めば、吸血鬼は血の霧となって霧散する。
その霧を吸い込み、フィーナの瞳が紅く揺れた。
「……ふふ、はははははは!!!」
フィーナは背中から血の翼を広げると、狂ったように嗤いながら空へと舞い上がった。
それを合図に、竜から吸血鬼たちが溢れ出る。
フィーナは上空から吸血鬼たちを見下ろし、自身の血液で作り出した弾丸を放った。
口を歪め、愉しげに血弾を降らせる姿は、悪魔のそれだ。
「ステラガーデン樣……大丈夫でしょうか」
地上で心配そうに見ていたアイビスだが、敵味方関係なく襲い掛かる血の雨を魔力の傘で凌ぎつつ、向かい来る吸血鬼たちを衝撃波で屠っていく。
「とは言え、まずはこれを何とかすべきですね」
フィーナを案じつつも、アイビスはオブリビオンを減らすことに専念した。
彼女は長い詠唱に入ったのだ。
「キャハハハハ!!! ああ、愉しい、愉しいわ!! ……でも、そろそろアンタたちには飽きたわ」
嗤っていたフィーナの目が、冷めたように細められた。
大きく広げられた翼から、血が撒き散らされる。
高速で詠唱し、ユーベルコードを展開。それは、流れた血を槍に変える恐ろしい技。
自身の血。
星屑の魔女の血。
この戦場で流れたすべての血――それらが、無数の槍となる。
解き放たれた槍は、誰に向かうでもなく降り注いだ。
貫かれた吸血鬼たちから溢れた血は、再びフィーナのユーベルコードの糧となる。
「生成と破壊を繰り返す、血の魔女――といったところでしょうか」
巨大な防御壁の中で上空を見つめるアイビスの目に映るフィーナは、彼女の知る人ではなかった。
アイビスはゆっくりと首を左右に振ると、溜めていた魔力を解放させた。
フィーナが降らせる血の槍に、凄まじい魔力が付与される。
破壊の雨は、竜と吸血鬼を消滅させ、プロビデンス・アイに大ダメージを与えることに成功したのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エメラ・アーヴェスピア
こんな世界で知りたいというだけで走った研究者…
いえ、ここで語っても、もう遅いわね…私は猟兵、撃滅させてもらうわ
城門…?異世界接続術式…何処につなげているのよコレ…
質問に答えなければ攻撃され続けるのならば、それを利用させてもらいましょうか
『我を護るは不壊の城壁』、全ての攻撃にそれぞれ防壁を呼び出して防ぎつつ、それに対して反撃をさせてもらうわ
…異空間にある魔導蒸気兵器庫から防壁を呼び出す…実はこのUC、やっている事はそちらの術式とあまり変わらないのよね
他にも幾つか気になる技術…科学者だった時に、話を聞いてみたかったわ…
※アドリブ・絡み歓迎
薙沢・歌織
敵UCの城門へは【呪詛耐性】で邪視対抗。地霊盾で攻撃を防ぎ、雷迅刀やエレメンタルオーブの魔法で迎撃しながら問答に答えます。
行き場のない復讐心に囚われた、目玉のオブリビオン…。私も魔法の研究者です。時にただ一人で研究に没頭し、成果を独占したくなることがあるのも身を以て知っています。
ですが…優れた研究はいつか後世に伝えられ、受け継がれていくもの。あなたの生前の研究も、先人達の知識の積み重ねがあって成り立っていたもののはずです。
【祈り】を込め、雷迅刀でUC【破魔迅雷斬】を発動。
…骸の海へあなたを還します。海の中で知った知識は、誰かに奪われることはないでしょう。残された研究成果は、私の手で守りますよ。
プロビデンス・アイは、自身の質量を半分失っていた。
しかし、辺りに撒き散らされ続けるその残滓が、彼の魔力の強大さを物語っていた。
「行き場のない復讐心に囚われた、目玉のオブリビオン……。私も魔法の研究者です。時にただ一人で研究に没頭し、成果を独占したくなることがあるのも身を以て知っています」
歌織は、彼の底知れぬ魔力を肌に感じながらも、言わずにはいられなかった。
彼女の瞳に宿る意思は固い。
真っ直ぐにプロビデンス・アイを見つめ、言葉を重ねる。
「ですが……優れた研究はいつか後世に伝えられ、受け継がれていくもの。あなたの生前の研究も、先人達の知識の積み重ねがあって成り立っていたもののはずです」
しかしプロビデンス・アイは、ブツブツと何事か呟きながら、殺意を絶やすことはなかった。
「こんな世界で『知りたい』というだけで走った研究者……いえ、ここで語っても、もう遅いわね……」
歌織の隣で、エメラは首を横に振った。
彼に届く言葉は、最早何もないのだ。
「私は猟兵、撃滅させて貰うわ」
彼はオブリビオン。
救う手立ては、倒すことのみ。
歌織がルーンソードで斬り掛かり、エメラが浮遊型魔導蒸気ガトリングガンで援護する。
ここまでの戦いで、猟兵たちは互いをよく識っていた。
息のあった連携プレイで、プロビデンス・アイの体力を確実に削っていく。
「はあああ!」
一旦後方へ跳躍した歌織が、再度斬り掛かろうとした、その時。
突如、彼女の前に巨大な城門が出現した。
歌織はぶつかりそうになりながらも、何とか踏み留まる。
「ユーベルコード!?」
そう叫んだ歌織の隣に、エメラが歩み寄る。
「これは城門……? 異世界接続術式……って、何処に繋げているのよコレ……」
正体を見破りつつも、怪訝な表情をするエメラ。
城門には目と口が幾つも付いている。
『――此処に満ちる気は、誰のものぞ?』
突然、一つの口から声が響いた。
「世界に満ちる気……? 一体何のことを言っているのかしら」
エメラが首を傾げると、すべての目から紅い光線が放たれた。
「危ない!」
歌織がエメラを庇いつつ、機械仕掛けの地霊盾で防ぐ。
城門はひとしきり乱射すると静かになり、再び口が開かれた。
『――此処に満ちる気は、誰のものぞ?』
告げられる言葉は同じだ。
二人は顔を見合わせた。
「なる程……質問に答えないと、攻撃を繰り返すようね」
エメラがそう呟いて、目を細める。
歌織は頷いて、
「そういうことであれば、答えるしかないですね」
と言って、すっと前に出た。
「ここに満ちる気……それは、ここに居る皆のものです」
歌織の答えに、城門は口を閉ざす。
『――月の構成物を答えよ』
今後は全く別の質問が飛んで来る。
更に城門の裏からは、プロビデンス・アイの魔法攻撃が始まった。
飛来する雷を地霊盾で防ぎながら、歌織は城門へと斬撃を放つ。
しかし城門は恐ろしく堅く、思ったようにダメージが通らない。
「これではやられてしまうわね」
エメラは吐息と共に言葉を吐き出すと、更に攻撃しようとする歌織を手で制した。
ゆっくりと手を広げ、ユーベルコードを展開する。
同時に、城門から紅い光線が乱射された。
しかし光線が二人へ到達するよりも早く、巨大な魔導蒸気防壁が出現し、光線を防いだ。
「残念。お返しよ」
エメラがそう告げると、魔導蒸気防壁に内蔵された魔導蒸気砲が起動し、反撃の砲撃を見舞う。
激しい轟音と共に城門は砕け散り、破片は床に落ちる前に黒い霧となって霧散した。
「……異空間にある魔導蒸気兵器庫から防壁を呼び出す……実はこのユーベルコード、やっている事はそちらの術式とあまり変わらないのよね」
消滅した城門の向こう側に控えるプロビデンス・アイに向かって、エメラが語る。
似たユーベルコードを操れるからこそ、仕組みを理解し、素早い対処が可能だったのだ。
プロビデンス・アイから際限なく溢れていた殺意は、徐々に消えつつある。
そろそろ魔力も底を突くのだろう。
「多くの成果を得て尚、狂ってしまう程の何かが、あの研究所にあったのですか? あなたは、何故……」
歌織が目を伏せる。
――声は、届かないのだ。
歌織の手に力が籠もった。右手に握る雷迅刀サクイカヅチの、純白の刀身が淡い光を放つ。
「……骸の海へあなたを還します。海の中で知った知識は、誰かに奪われることはないでしょう」
決意の瞳。
歌織が地を蹴った。
プロビデンス・アイは動かない。
彼の瞳は、何も映していなかった。
「見せます、負念のみを断つ薙沢の刃を! 破魔迅雷斬!」
放たれた破魔の霊力を籠めた一太刀は、プロビデンス・アイの中に渦巻く『負念』のみを斬り裂いた。
「オオ……オオオ……!」
プロビデンス・アイが全身を硬直させ、そして、ゆっくりと溶けるように地面に広がっていく。
紫の粘液は地面に染み込むように溶け、最後に残ったのは目玉だけだった。
「負の感情のみで動いていたあなたは、それを失ってしまえば消えてしまうわ」
エメラは告げる。
プロビデンス・アイは、死んでいたも同然だった。
研究所にあった『大切な何か』を失った時点で、彼の心は死に、その恨みだけで動いていたのだ。
恨みという負の感情を断たれれば――待つものは『消滅』だ。
「残された研究成果は、私の手で守りますよ」
歌織が静かにそう言うと、プロビデンス・アイはゆっくりと崩壊をはじめた。
ぶすぶすと黒い煙を上げながら、目玉の端から霧になっていく。
「……私の、研究は……この世界の……異端の神々を……」
消えかかったプロビデンス・アイから、最期の言葉が紡ぎ出される。
「……分離する……奴等を……」
最早意味を成さない言葉は、消えるその瞬間まで続いた。
執念――そんな言葉を二人は連想した。
「他にも幾つか気になる技術……科学者だった時に、話を聞いてみたかったわ……」
プロビデンス・アイが消え去った場所を見つめたまま、エメラは呟いた。
「そうですね……同じ研究者として、彼の研究がどのような成果をもたらしたのか気になります」
歌織も頷いてそう言うと、彼の研究所があったという方角を見やった。
「星屑の魔女が燃やしたと言った研究所……跡地には、まだ何か残っているかも知れませんね」
彼が最期まで譫言のように呟いていたものは――もしかしたら、まだ遺っているのかも知れない。
●
謎を孕んだまま、しかしダークセイヴァーの一つの依頼は達成された。
星屑の魔女の滅びの未来は消え、彼女によって狂わされたオブリビオンの暴走は止めることが出来たのだ。
猟兵たちは心にわだかまりを残したまま、この世界を後にした。
成功
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