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狐忍大変、狸侍迷惑

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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●寛永狐狸合戦こんぽこ
「どうも、お山の狸大将さん。私達は【妖狐忍】ですコン」
 西に立つは、縦に伸びる狐耳、腰から生えたふかふかの狐尾を持つくノ一の集団。両手を合わせ、東に対峙する巨体に一礼する。
 その声、動作は二十人近くいながらも一糸乱れぬ正確さで同調し、写し身であるかのように同じ顔、同じ背丈、同じ声を持つ。その異様な光景は、彼女らが只の妖狐ではない、尋常ならざる存在であることを暗に示していた。
「ンホー、その喋り方に仕草、何処ぞの黄表紙が真似事かポン?」
 東に立ち、彼女らを愚弄するように盃の酒を煽るは【狸大将】と呼ばれた化生の侍。
 その名の通り顔や体を覆う表皮は狸そのもの。だがその体躯は長身の妖狐忍よりもさらに二回り程大きく、もはや羆(ひぐま)の域に達していた。
 その巨躯に合わせた規格外の刀を差し、特注の具足を身に付けていた姿は、単騎でありながら妖狐忍の集団に匹敵する威圧感を放っている。

 そして二種のオブリビオンが対峙するのは、山間の村の真っ只中。
 村人は月定例の俳諧大会を準備している最中であったが、突如やって来た闖入者達のせいでもはやそれどころではない。
 彼らは遠巻きにその様子を見守っては、近くの者に両者の『戦』、そして村の趨勢を不安気に語り合う。

「暗き岩戸に閉ざされ幾星霜。ようやく戦国乱世に覇を示す時が来たと思えば、房中しか能なき腐れ狐が未だ跋扈しているとは。やはり殺処分しかあり得ないポン」
「その狐に滅ぼされた敗北者がどの面下げてやってきたコン? 雑魚過ぎて捨て置いたけれど、やっぱタヌカスは生きていてはいけない存在だったコン!」
 互いが挑発に挑発を返し、罵倒合戦は熱を帯びていく。
 そこに村若衆の代表、蔵食郎(ぐらはむろう)が申し訳なさそうに間に割って入る。
「あ、あの……ぶっちゃけわしら、関係ないですよな」
「部外者は黙ってろコン!!」
「隷属種は黙ってるポン!!」
「でしたら村の中ではなくもう少し別の場所で……」
「うっさいコン!! ここで仇敵と会ったからここが合戦場だコン!」
「境界線の上に村など建てるのが悪いポン!!」
 そもそもお前らの方が部外者で、境界線とやらもそっちが勝手に引いたのではないか、などとはとても言えず、すごすごと戦いに巻き込まれぬよう立ち去っていく蔵食郎。
 父祖達が戦乱の世の中、安寧を求め苦難の果てに開拓したと言うこの村を、まさか自分達の代で手放すとは。彼は無念に涙を滲ませた。

●狐狸共に死して烹らるべし
「――とまあ、このような未来をグリモアが告げました。全くもって迷惑千万ですね」
 グリモア猟兵のメンテ・サンタバーバラ(ミセリコルデ・f00018)がそう言い終えると、右手に十字短剣型の物体を浮かべた掌を閉じた。
 それは座して待てば確定する未来。そして猟兵が防ぐべき未来だ。
「という訳で今回は【サムライエンパイア】です。今話した二種の敵性オブリビオンを全て撃破して下さい」
 続いてメンテが単刀直入に今回の作戦目的を切り出す。
 人様の村で勝手に暴れては挙句の果てに部外者だの隷属種だのと呼ぶような連中が、こちらの言に聞く耳など持たないだろう。そう、それら自身が自ら語ったように、それらは生きていてはいけない存在であり、殺処分しかあり得ない相手だ。容赦は無用である。

「敵オブリビオンの構成は【妖狐忍】級が約二十体、そして【狸大将】を自称する未確認オブリビオンが一体。皆さんには両オブリビオンが村に侵入するより早く、電撃的に撃破して頂きます。まずは西から迫る妖狐忍を殲滅し、返す刃でそのまま村を横断し、村に侵入する前の東の狸大将も撃破して下さい。二種とも交戦予定地点は村郊外の原野となりますので、村人の避難や建造物や農作物への被害は心配して頂かなくて結構です」
 周りに気に病むものが何一つない原野での戦い。猟兵・オブリビオン共にその全力を発揮出来ると同時に、身を隠す障害物の類も何一つ存在しないということでもある。
 故にこの戦いは純粋に己の力量や相手への対応力、そして数や力に差がある相手への戦い方自体を問われる事になるだろう。

「こんな所ですかね。ではこれよりまず、妖狐忍との交戦予定地点に直接転移します。即時戦闘になると思われますので、準備は万全にお願いします」
 メンテが右手の掌を開くと再びグリモアが展開され、転移の準備が行われる。猟兵による狐と狸の狩猟が始まる。


前後
●ごあいさつとか補足とか
 皆さん、初めましての方は初めまして。以前プレイングを送って下さった方は今回も御贔屓にありがとうございます。前後です。今回は【サムライエンパイア】です。

 第1章は【妖狐忍】との集団戦、第2章は【狸大将】とのボス戦となります。それぞれ別個、別場所での時間差撃破作戦となるので、もう片方の乱入の可能性は考慮しなくて結構です(乱入される程時間を掛けたらシナリオ自体が失敗となります)。
 そして第3章は日常フラグメントとして、村での俳諧大会となります。

 通しで参加して頂ける方にはいつも感謝させて頂いております。勿論、第2章からの参加や、第3章含めた特定章のみの参加でも大歓迎です。
 皆さんのプレイングに込められた期待に添えられるリプレイを返せるよう尽力しますので、どうぞよろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『妖狐忍』

POW   :    魅了の術
【全身】から【魅了の術】を放ち、【幻惑】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    小刀一閃
【小刀】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    狐火
レベル×1個の【狐火】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●狐を赤く染めよ
 サムライエンパイアに覇を唱えんと、森の中を走る黒い影、それは数にして20の【妖狐忍】級オブリビオン。
 背筋をピンと伸ばし、逆手で小刀を構えながら足だけを小刻みに動かし駆ける姿に乱れはない。動作は愚か、長い髪や尻尾をたなびかせる様すら完全に同調させる様子はもはや一心同体を通り超し、不自然で質の悪いコピー&ペーストと呼んだ方が近いだろう。
 山を下り森を抜け、原野に出た妖狐忍が捉えたのは、彼女達を待ち構えていた猟兵達。本能的に彼らを敵と認識した妖狐忍は、横五人が縦四列に並び停止する。そして小刀を向けて握ったまま両拳を突き合わせると、一斉に頭を下げる。

「どうも、小動物のジビエが精一杯な猟兵さん。私達は【妖狐忍】ですコン」
 妖狐忍にとって例えそれが今から死合う相手を前にしても、いや死合う相手であるからこそ、挨拶は大事だ。
 それは敵対者に対し己が達の風格、そして実力差を見せつける絶好の機会である。
 彼女達の胸は皆等しく豊満であり、そして挨拶とともに全く同じよう方向にプルンと揺れた。
四軒屋・綴
『アドリブ改変絡み歓迎』

ふーむ……同時上映となりの猟兵君が乱入だオラァッ!

それはともかく集団戦だなッ!ひとまずユーベルコードを発動ッ!カッコいいポーズを取りつつ防御力重視の蒸気機関車系ヒーローに変身するぞッ!

戦闘ではケムルシューターとアッツィーコウルの【一斉発射】で【援護射撃】ッ!味方と足並みを揃えつつ戦うぞッ!

……しかしながら参ったな、『魅力の術』に対抗するには……よし、怪しい動きをした奴から【ダッシュ】で距離を詰めてラリアットして発動前に【吹き飛ばし】てやろうッ!動きを止められても最低限仲間の盾にはなれる……はずッ!

『黙れ小僧ッ!』(怖い顔で)

『村の人と色んな所に謝れッ!』


ユリ・アップルヤード
「狐も狸も分かってないねぇ。いいかい。この世界で最も美しく、最も強く、そして神に愛された至高の芸術。その名は機械!!!」

Code:Genocideで機械巨人リアン、偵察ロボットコロマル、万能型ドローンルーのリミッターを解除。
リアンは大楯と鉄柱で最前線に立って、派手に暴れよう。薙ぎ払い、叩き潰し、そしてその巨体で全体の盾になってもらうよ。小細工の通用しない鋼の力を見せつけてやろう。
コロマルとルーは距離をとって戦おうとする敵に、徹底的に斉射。変なことする前に出鼻をくじくよ。

「ヒューズ、いつものように直掩よろしく!」
3機とは別に戦闘用機械兵ヒューズを私の直掩に。
寄る敵には銃剣、離れた敵には狙撃対応。


夜神・静流
●心情
悪しき妖を滅するのが私の使命。
時間も限られていることですし、早急に片付けるといたしましょう。

●行動
ダッシュ技能で一気に接近し、敵群の中に飛び込みます。できるだけ多くの敵を巻き込めるように。
そして怪力・範囲攻撃・薙ぎ払い・属性攻撃・破魔・早業・先制攻撃あたりの技能を使用し、三ノ太刀・鳴神で範囲内の敵を纏めて攻撃します。

多少の被害は無視して攻撃重視の構えで、敵の攻撃はオーラ防御・覚悟・呪詛耐性・火炎耐性・気合あたりで耐えつつ攻撃続行。
ここを素早く片付けられれば、次の狸によって村が危険に晒される可能性を減らす事が出来るでしょうし、多少の危険は覚悟の上で攻め続けます。


シン・ドレッドノート
妖狐として、村人を困らせる狐は懲らしめないといけませんね。
とにかくまずは妖狐忍を討伐しましょう。

『ノーブル・スカーレット』を足で操縦して移動しつつ、離れた所から距離を取ったまま、『スカーレット・ブラスター』を両手で持ってしっかり心臓に狙いを定め、【異次元の狙撃手】で一体ずつ確実に仕留めていきます。
「ターゲット、ロック!貴女のハート、狙い撃ちます!」

「女性はなるべく傷つけたくないのですよ、特に顔は。もったいない」
とは言え、見逃すほど甘くはありません。
一匹残らず撃ちぬくつもりで狙い撃っていきますよ。

敵は多勢、もし囲まれそうになったら【天翔ける紅彗星】で加速して離脱、形勢を立て直しますね。


緋月・透乃
狐と狸の喧嘩とは、なんだか御伽噺みたいだね。
争っているところに飛び入り参加も面白そうだけれど、今回は片方ずつなんだね。
よーし、猟兵の獣狩りといくよ!

妖孤ちゃん大きいおっぱいにぴっちりスーツで見てる分にはなかなかいいねー。
でも忍者なんだね。速い相手は斧を使う私にはやりにくいけれど、なんと頑張るよ。
あらかじめ【色々食べよう!】を防御力重視で使っておくよ。
戦い方自体はいつも通りの接近して攻撃、倒したらすぐに次、って感じで1体ずつ倒しておくよ。
相手が素早くて攻撃が当てにくい時は相打ちを狙っていくよ。そのための防御力重視だね。
魅了は防げる気がしないから、魅了されても防御力で解けるまで耐える方向でいくよ。


ファイン・スタッカート
オブリビオンとはいえ、本場サムライエンパイアのニンジャと手合わせできるとは素晴らしいデスネ!
猟兵でよかったデース!
色々勉強しながら成敗してやりマース!

女ニンジャは敵を惑わすために肌を出すものだと思っていマシタガ、全身タイツが正しかったのデスカ!?
ナンテコッタ!あの資料は間違っていたのデスネ!やはり資料と実物では違うのデスネー。
あの耳と尻尾も動物のふりをして敵を惑わすためのものデスネ!
(といった感じで全体的に間違った認識をしていきます)

戦い方は近づいて【疾風QS】を食らわせていきマス。至近距離ならカタナよりカラテデスヨ。
遠距離から何かされそうな時は、カイリーでけん制してから【疾風QS】デス!



●フォックスハンター・フロム・プレイ・バイ・ウエブ
「狸との合戦の前に、同時上映『となりの猟兵君』が乱入だオラァッ!」
 妖狐忍を待ち受ける猟兵達の中央に立ち、両足をハの字に広げ、両手を握りくの字に立つは四軒屋・綴(大騒動蒸煙活劇・f08164)。正義のヒーローマスクだ。
 妖狐忍の挨拶に返答するかのように、【蒸騎構築】(ジョークアップ)の掛け声をあげる。同時に蒸気機関車をモチーフにした鎧がどこからともなく現れ、そして煙を放ちながら彼を背中から包み込むと、煙の中から一回り巨大な勇者系ヒーローが現れた。

「そう、この世界で最も美しく、強く、そして神に愛された至高の芸術。その名は機械!! 多分狐も狸も分かってないけど、四軒屋さんだっけ? 終わったら村で一服しない? 話が合いそうだ!」
 突然の合体にテンションを爆上げし目をキラキラ輝かせているのはユリ・アップルヤード(パーツ屋「アップルガレージ」・f00153)。群青のツナギにゴーグルという実用本位の衣装、そして飾らぬ髪型を持ちながら、その身のこなしは生まれの良さを感じさせる。
 そして彼女もまた周りに【機械巨人「リアン」】【偵察ロボットコロマル】【万能型ドローン「ルー」】そして【戦闘用機械兵「ヒューズ」】の四機のロボットを従える機工士である。
「リアンは前衛、コロマルとルーは制圧射撃。ヒューズはいつものように直掩よろしく!」
 ユリが四機にテキパキと指示を出していく。

「もぐもぐ……狐と狸の喧嘩とは、なんだか御伽噺みたいだね」
 綴とユリ程には心を燃やすことなく、にんじんをポリポリと齧りながらその様子を見守るのは赤いポニーテールと下げ、豊満な肢体を半裸にも等しい衣装で包んだ緋月・透乃(もぐもぐ好戦娘・f02760)。
 彼女からすれば両者の乱戦に飛び入り参加というのが一番血沸き肉躍る展開ではあったが、今回は村を巻き込まないために各個撃破が要求されている。
 まあいずれにせよ獣狩りには変わりない。にんじんをあっという間に丸々一個平らげ、よーしという掛け声とともに愛用の重戦斧【緋月】を構え、戦いの準備を整える。

「オブリビオンとはいえ、本場サムライエンパイアのニンジャと手合わせできるとは素晴らしいデスネ!」
 そしてこちらはそんなことよりも目の前の敵に興味深々。
 猟兵になってよかったデース、と目を輝かせ握った両拳を顎に当てているのは、忍ぶ気ゼロのパステルカラーの【スーパーニンジャスーツ】に身を包んだファイン・スタッカート(勘違いNinja・f02107)。
「色々勉強しながら成敗してやりマース! 胸を貸してくださいデス!」
 果たして、ファインのかなり誤ったニンジャ知識が、妖狐忍の微妙に誤った忍術との化学反応でどのような結果を招くだろうか。今その答えを知るものは誰もいない。

「悪しき狐、滅するのが私の使命。時間も限られている故、早急に片づけると致しましょう」
 白の着流しに男物の黒羽織を重ね、刀を差す女武者は夜神・静流(退魔剣士の末裔・f05903)。
 飾らずとも美しさを感じさせる清潔な衣装、切り揃えられた黒い髪、そして生きる大和撫子とでも言うべき立ち振る舞いは、目の前の淫靡な妖怪変化とはまさに対極の存在と言える。だが。
「こいつ絶対私達と同類だコン! その本性を暴いてやるコン!」
 一斉に一字一句違わぬ、そして根拠のない非難を並び立てて、静流を責める妖狐忍衆。静流は冷たく受け流す。何せ、妖狐忍が語る同類とか本性やらが、静流にはトンと理解出来ないからだ。

「ええ。同じ妖狐として、村人を困らせるようなのは懲らしめないといけませんね」
 白の装束に赤い帯、そして金の飾りと狐毛で身を包んだ青年は、怪盗・紅の影ことシン・ドレッドノート(真紅の奇術師・f05130)。本人と同じトレードカラーの三色で纏めた愛機【ノーブル・スカーレット】の上に立ち、白いフレームに赤のラインが走る愛銃【スカーレット・ブラスター】を構えて妖狐忍を見据える。
「イケメンコン?」
「イケメンコン!」
「カッコイイやったあコン!」
 シンの甘いマスクに妖狐忍達は一斉に色めき立ち、互いにガヤガヤと各々の言葉でそのハンサムさを称える。彼女達の統率が崩れるもそれは一瞬。すぐに向き直り、小刀を構える。
「だが殺す。猟兵死すべし、慈悲はないコン!」
 再び一字一句違わぬ言葉で敵意を露にし、20名の妖狐忍が一斉に襲い掛かる。

 妖狐忍はVの字の陣形を取り、猟兵達に迫る。対する猟兵はユリのロボットを含めても戦力差は1対2。だがここにそれを理由に怖気づくようなものは誰一人いなかった。
 まず敵陣の先端に斬り込むのは静流と透乃、その後ろにファインとリアンが続く。そして静流は居合の構えで【ダッシュ】し、瞬時に先頭の妖狐目掛けて距離を詰める。
 敵は妖狐忍のみではない。今この瞬間も村にもう一体の狸大将なるオブリビオンが迫っている。危険を覚悟してでも素早く攻め立て、目の前の敵を迅速に殲滅すべし。【十六夜】に鞘の上から雷電が走る。
 こちらから攻め立てるつもりが、逆に【早業】の【先制攻撃】で逆に機先を取られたのは妖狐忍だ。目の前に詰め寄られた先頭は一瞬遅れて小刀を振りかざし、後続もそれを援護しようと【魅了の術】を放とうとする。だが静流の前には、そのいずれもが遅すぎた。
「我が剣は雷。薙ぎ払え――三ノ太刀・鳴神!」
 居合斬りとともに刀身から【破魔】の稲妻が放たれ、正面の妖狐忍を両断する。そして紫電一閃の奔流は後続の妖狐忍をも巻き込み、さらに三体が雷の刃に打たれ瞬時に灰と化し、残る妖狐忍も電撃の余波でダメージを負う。
「んあーっ!」
 雷撃の直撃を免れ、負傷に苦悶を漏らす妖狐忍は幸いであった。鳴神の直撃を受けたものは断末魔すら上げることも出来ずこの世から消え去ったのだから。

 一撃で全戦力の五分の一を失った妖狐忍。透乃は彼女達が態勢を立て直す前に次の攻撃を仕掛ける。雷撃で転倒した妖狐忍の一体にすかさず体と斧の全体重をかけた一撃を振り下ろす。赤いポニーテールが炎のようにたなびくと同時に、辺りが鮮血に染まる。
「んあーっ! さよならコン!」
 内臓を叩き潰され、致命傷を負った妖狐忍は爆発四散して消し飛ぶ。透乃は一瞬驚くも爆発に殺傷能力はないらしく、そのまま次の獲物に斧を振りかざす。
 だが妖狐忍も黙って数を減らすばかりではない。斬り込みを掛ける透乃達を止めようと、一斉にその全身から魅了の術を放つ。透乃の目に、ピンクの光が焼き付く。
「……妖狐ちゃん達、大きいおっぱいにぴっちりスーツ。見てる分にはなかなかいいよね……はっ!」
 性別を超えて魅了する妖術に思わず動きを止め、立ち尽くす透乃。彼女が正気を取り戻した時には、既に二体の妖狐忍が迫っていた。
「きえーっ!」
 叫び声と共に【小刀一閃】による二対の斬撃が一斉に襲い掛かる。すかさず地面を走る軌道の切り上げで迎撃し、一体を宙に舞い上げ爆散させるも、残り一対の斬撃が透乃の素肌に襲い掛かり、赤い線を走らせる。だが斬撃に成功した妖狐忍は違和感を覚える。渾身の一撃を与えたはずなのに、何故こうも傷が浅い――?
 妖狐忍の体に、透乃が返す刃で袈裟を掛けるように戦斧を斜めに振り下ろす。両断とまでは行かなかったが、腰まで深々と突き刺さった一撃は見るまでもなく致命打だ。
 彼女の守りの秘密、それは透乃が戦闘前に食べていたにんじんだ。ユーベルコード【色々食べよう!】の効果によって、摂食行為を防御力に変換していたのだ。そして透乃はそれを利用し、確実に力押しが出来る態勢を整えていた。
「さよならコン!」
 地に伏せる事すら許されず、立ち尽くしたまま爆発する妖狐忍。透乃の作戦勝ちだ。

「ナンテコッタ! あの資料は間違っていたのデスネ!?」
 前衛二人から一歩引いた立ち位置にいたファインは、彼女が参考にした文献と本場のニンジャとのギャップにカルチャーリアリティショックを受けていた。
 女ニンジャは敵を惑わすために肌を出すものだと思っていたが、正しくは闇夜に輝くテカテカの全身タイツだったのか。そして何より、彼女達が付けている耳と尻尾。恐らく動物のフリをして敵を惑わすための道具に違いない。
 ファインは誤った資料に基づき誤った学習し、そのニンジャ観をますます歪めていく。もう色々とダメなんじゃないかな。
 前衛を一網打尽にされ、ガタガタになった妖狐忍は、続いて近づくファインを迎撃しようと、九字を切りながら詠唱を始める。直感的に何かされそうと感じたファインはすかさず【レインボーカイリー】を【投擲】する。虹色の軌道を描く飛刃が吸い込まれるように妖狐忍の左胸に突き刺さり、グラリと揺れて倒れる。
「きえーっ!!」
 直後、左右から二体の妖狐忍が鬨の声を叫び、小刀を振りかざし襲い掛かる。本場ニンジャは攻撃時に叫び声をあげるのかとファインは納得しつつも、だが攻撃にカタナを選んだのは誤りだとも正確に判断する。
 至近距離なら、カタナよりカラテデスヨ、と。
「カゼの如く!」
 左側から迫る妖狐忍に【疾風QS】のカラテチョップが叩き込まれる。小刀の内側、無防備な腹部を切り裂くように手刀が振り下ろされる。同時に攻撃した右側の妖狐忍が斬り付けるも、ファインの服を切り裂いたのみであり、そしてそれは彼女の神速チョップをますます速める結果となる。
「スラッシュ! キエーッ!!」
 体を回転させながら今度は横に手刀が繰り出される。喉元を掠めただけのチョップは、だがビール瓶切りの如く首を全体を刎ね飛ばす。
「さよならコン!」
 先ほどカイリーで貫かれたものも含めた三体の妖狐忍が、断末魔とともに一斉に爆発する。
 なるほど、ニンジャは死ぬ時も挨拶するのデスネ! とますます誤った知識を加速させていく。

 あっという間に総数の半分を失った妖狐忍。このまま相手に連携させることなく、一気呵成に畳みかけるべし。
 綴は背中に背負った【装蒸甲化ジョークアームズ】を両手に接続し、左右からそれぞれ【黒煙連射ケムルシューター】【熱炭投射アッツィーコウル】を展開。両腕から黒煙をそのまま弾丸と化した小口径弾、そして赤熱した石炭の如く大口径弾の【一斉射撃】が妖狐忍の群れに放たれる。
 大量の弾幕の雨霰の前に、身を隠す場所のない妖狐忍は回避行動を強いられる。ケムルシューターに足を貫かれた一体が逃げられぬまま無数の鋭い煙によって蜂の巣となり、アッツィーコウルの弾頭がもう一体に顔面に直撃し、頭蓋を砕いて爆散させる。
 一見順調に敵を撃破しつつある綴であったが、彼には一つ懸念事項があった。先ほど透乃が受けていた魅了の術だ。そして攻撃を回避し続ける妖狐忍達が、九字を切りながら詠唱を始める。
「させんッ!」
 その重厚な鎧からは想像も出来ぬ可動域と素早さで一気に【ダッシュ】し、瞬時に妖狐忍との距離を詰める。
「わ、私はオブリビオンにしては控えめで邪悪ではない方――」
「黙れ小僧ッ! 村の人と色んな所に謝れッ!」
 無表情であるはずのマスクからキッと怒りの形相が放たれ、妖狐忍が怖気付く。偽の命乞いをして術発動までの時間稼ぎをしようとした妖狐忍に容赦なくラリアットをぶちかまし、上空へと【吹き飛ばし】た。
 妖狐忍は跳ね飛ばされた瞬間に全身の骨を砕かれ、地面に落ちるのを待たず爆発して消えた。

 妖狐忍達は困惑していた。時代遅れの狸どもを討伐するつもりが何故か猟兵と戦うことになり、しかも数で勝っていたはずなのにいつの間にか逆転されているという事態に、だ。
「みんな、そろそろケリをつけようか――【Code:Genocide】」
 ユリがリミッターの解除コードを転送すると、保有する四台のロボットが一斉に甲高い駆動音を鳴らし、出力を高める。先ほどまで一人で機械巨人リアンを抑え込み、装甲の隙間から着実にダメージを与えていた妖狐忍が急激に上がった駆動速度に翻弄され始める。
 薙ぎ払いを跳躍して躱し、一旦距離を取って仕切り直そうとするも、肩に付いた大楯のショルダータックルを受けてよろめき、すかさず振り下ろされる鉄柱に潰され爆散する。
 そしてユリのロボットを止めるため、妖狐忍二体が動く。一体はユリを直接斬り付けようと接近し、そしてもう一体はユリを魅了し四機の制御を奪おうと魅了の術を試みる。
 ロボットでなくそのマスターを狙った作戦。だがそのような小細工は、両方ともユリの予想と範疇であり、対応手段も確立済みだ。
 接近を試みた妖狐忍は直掩の戦闘用機械兵ヒューズに肩、心臓、そして最後に眉間を貫かれ、ユリを目前に小刀を振り上げたまま消し飛ぶ。魅了を狙った妖狐忍は詠唱が完了する前に不穏な動きを察した偵察ロボットコロマルと万能型ドローンルーのレートを高めた内蔵銃器に貫かれ、それを唱える代わりにさよならコンの断末魔を叫んだ。
 妖狐忍の誤算は、小細工の通用しない鋼の力に対し小細工を弄したこと。いや、彼女達にそもそも猪口才な小細工以外に何ら手段がなかった点であろう。

「ま、マズいコン……このままでは負けるコン……!?」
 残り四体までその数を減らした妖狐忍は、かつてない大敗北に青ざめていた。『生前』ですらこうまで一方的に負けたことはなかったというのに。
「女性はなるべく傷つけたくないのですよ、特に顔は。もったいない」
 シンは若い外見の顔に困った表情を浮かべ、動揺を浮かべる妖狐忍達を見やる。
「それは幸いだコン。イケメンさん、これにて手打――」
「ダメです」
 一体がそういうよりも早く【異次元の狙撃手】は紅い光弾を放ち、正確に心の臓を貫く。シンとてオブリビオンを見逃す程甘くはない。
 彼が困ったのは『生かすか殺すか』ではなく、『どう殺すか』という事であった。
「ターゲット、ロック! 貴女のハート、狙い撃ちます!」
 話が通じないと、もはや破れかぶれとなった二体の妖狐忍が小刀を構え突進する。【スナイパー】は素早く片方に照準を合わせ、閃光を撃ち放つ。照星の先に稲光が走り、一体が後方へと吹っ飛び爆発する。
「死ね! 猟兵! 死ねコーン!」
 接近を許したもう一体が特大級の死亡フラグを盾ながら小刀を振りかぶる。一太刀目はシンの体を掠めるも、追撃の二太刀目は空を切る。狙撃を行いつつも、足で巧みにノーブル・スカーレットを操縦し、瞬時に距離を離したからだ。
 そして大きく揺れるスペースバイクの上で、シンは殆ど照準を合わせることなく三射目を放つ。宣言通り、速射は吸い込まれるように妖狐忍の心臓(ハート)を狙い撃ち、そして爆発四散させた。

「あっ! 一人逃げようとしてる!」
「ニンジャは戦いに背を向けちゃダメなのデス!」
 透乃とファインの油断ならぬ瞳が、どさくさに紛れて逃亡を図る最後の一体を捉えた。例え一体言えども、ここで生かしておけば再び再起を図るどころか、次の狸との戦いで邪魔立てされるかも知れない。故に確実に仕留めるべし。
「逃がすものかッ!」
「みんな、仕上げだ!」
 綴とユリのロボットの一斉射撃がその背中を撃ち抜こうとするも、いかんせん距離が遠い。綴は鎧のために逃げる相手に追いつける程の速度を出せず、ユリのロボット達はリミッター解除後のオーバーヒートでしばらくは動けそうにない。
「シン様、私を乗せて下さい」
「若いお嬢さんでしたら、大歓迎ですよ」
 今ここに何故を言い、何故を聞く野暮なものなどいない。シンは銃を降ろしてバイクに跨り、その後ろに静流が刀を抜いて同乗する。エアロモードを起動し、【天翔ける紅彗星】と化したノーブル・スカーレットが最後の一体を追う。
「どこに逃げようと言うのだねッ! 炉・勁・列・車ッ!」
 両手に付けたジョークアームズを射出し、オールレンジ武器の如く妖狐忍を追跡しながら射撃を行う。黒煙が、石炭が、体を掠め、密着したボディスーツ毎破り裂いていく。
 そしてジョークアームズを追い越すように、赤い閃光となって原野を駆けるノーブル・スカーレット。同時に静流の刀に電撃が走る。

「お姉さん助けてコン! 何でもするか――」
 振り向き、泣き顔で命乞いする妖狐忍。だが彼女がそれを言い終える前に、シンのバイクが上空へと跳ね飛ばす。
 落下し、重篤なダメージを負いながら受け身を取った所に、静流が一閃する。妖狐忍は直撃こそ躱したものの、電撃の余波でスーツのあちこちに穴が開き始める。あられもない姿と化していることに気を留めることなく、静流に小刀を振りかぶる妖狐忍。体を裂く一撃が最期の最期で猟兵に一矢報いるも、だが静流にとってこの程度のダメージは最初から想定内であった。
 返す刃で燕返しを放ち、上空へと斬り飛ばす。そして刀の先を天に向けると、必殺の雷霆が上空の妖狐忍を打つ。
「……ぜ、全滅? 20人の妖狐忍が全滅? 三分もたたずに……コン?」
 光の中、灰と化して骸の海に消える最後の一体が、辞世の俳句を残して消し飛んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『狸大将』

POW   :    怨魂菊一文字
【かつての己を岩戸へ封じた霊刀の居合抜き】が命中した対象を切断する。
SPD   :    焔の盃
レベル×1個の【盃から燃え上がる狸火】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
WIZ   :    八百八狸大行進
レベル×5体の、小型の戦闘用【狸兵団】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は神月・瑞姫です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●狸は緑に沈め
 妖狐忍の集団を倒した猟兵であったが、戦いは終わらず、そして休みもない。村の中を横断する猟兵達の姿に困惑する村人達に、万が一のためいつでも逃げられる用意をするように呼びかけ、東へと急ぐ。
 村を抜け、畑を抜け、原野も半ばに入った頃、森からズシンズシンと音を立てて『標的』が現れる。羆サイズの侍狸、予知通りの存在だ。
「ンホー。久々の戦、先ずは狐狩りと洒落込んで、ついでに村一つ僕らの領地にしようと思ってたけど、これはこれは。猟兵じゃないですかポン」
 鎧がガシャンガシャンと、腹の脂肪をタプンタプンと揺らし、赤らめた表情で猟兵達を見やる。

「ンホッ、その傷――もしや腐れ狸を倒してくれたのかコン!? サンキューイエカスポン!」
 白々しい感謝の言葉を立て、だがほぼ同時にその巨体をもってしてなお大太刀となる業物を難なく構える。飄々とした口調は、相手を気張ることなく殺せることへの自身の顕れだろう。油断は禁物だ。
「お礼に僕ら直々に、返す刃でぶっ殺してやるだポーン!」
 【狸大将】がそう叫ぶと、森の中から彼のユーベルコード【八百八狸大行進】で呼ばれた百体近い数の狸侍が、槍や火縄銃で武装して現れる。彼らを村の中に入れれば、大惨事になることは容易の想像出来る。
 彼らを決して通してはならず、そして逃がしてもならない。猟兵達は連戦に挑む。
「……ンホッ!? 腐れ狐の生霊に引っ張られて僕の口調が一部崩壊してるポン!? 許すまじ猟兵だポーン!」
火狸・さつま
くぁり、欠伸ひとつ。
喧嘩なんぞするでないよ
仲良く鎮め

【POW】
立ち位置や戦況により臨機応変に対応
声を掛け合い他の仲間達と連携をとり立ち向かう

巨大斧構え勢い良く振り下ろし【先制攻撃】狙う


『ちょいと遊ぼうか』
トンッと足踏み鳴らせば
足元より出でて飛び掛かる準備万端な炎の仔狐
【燐火】にて攻撃


敵からの攻撃は【見切り】にて避けるか【オーラ防御】にて防ぐ
受けたダメージは【激痛耐性】にて凌ぎ
燐火と巨大斧で攻撃


窮地に陥り、味方共々危ない場合【捨て身の一撃】を繰り出す


シン・ドレッドノート
狸でオブリビオン?まったく容赦の必要が無い獲物ですね。
片っ端から光弾を撃ち込んで仕留めますよ。

「雑魚は任せても良さそうですね。大将を狙い撃つ!」
いつでも動けるようエンジンをかけたまま皆さんの後方に『ノーブル・スカーレット』を停め、車上から両手で『スカーレット・ブラスター』を構え、【異次元の狙撃手】の射程を活かして、長距離から狸大将を狙撃します。

「近づいたら勝てるとでも思いましたか?」
狸兵団に接近されたら、ビームシールドで受け流してカウンターの零距離射撃を撃ち込みます。

「来世では、可愛い狸娘にでも生まれ変わることですね。」
最後は皆さんの攻撃に合わせて、狸大将の額に真紅の光弾を撃ち込みますよ。


夜神・静流
間に合いましたか。ですが喜ぶのはまだ早いですね。
次はこの狸を処分いたしましょう。

「礼には及びません。死ぬのは貴方のほうです」
とはいえあの巨体に大業物、まともに受けるのは得策ではないですね。
ダッシュ・残像・スライディング・見切りあたりの技能で怨魂菊一文字を回避しつつ、巨体の死角に潜り込んで反撃する作戦でいこうと思います。
上手くいったら早業・カウンター・怪力・属性攻撃・破魔技能を使って二ノ太刀・紅で攻撃します。

「地獄で狐達と続きをやってくるといいでしょう」
「里にいた頃に兄様がよく口にしていました。『妖魔死すべし。慈悲は無い』」


ユリ・アップルヤード
「狸、狸かぁ。狸のロボットっていうのも、ちょっと意外性があって面白いかもなぁ」

まずは機械巨人リアンを前面に出して、狸侍を鉄柱でまとめて薙ぎ払い、叩き潰しつつ、敵の注意を惹きつけよう。
狸大将が狙ってきたら、そこは確実に大楯で防いでいこう。
その隙に偵察ロボットコロマルと万能型ドローンルー、戦闘用機械兵ヒューズは敵の死角へ移動。
配置に着き次第、Operation “Gulliver"を狸大将に発動。
手足の動きをコロマルとルーのトリモチ弾と拘束用ワイヤー弾で止めて、さらにヒューズのテーザーガンで電流を流し込んで痺れさせてやるよ。
動きが止まって無防備になった瞬間、脳天目掛けてリアンの鉄柱を叩きつけよう。


ファイン・スタッカート
【f02760(緋月透乃)と共闘】

色々学べて有意義なイクサデシタネ。
次は狸のサムライデスネ。
私と戦うことになるとは、なんて哀れなんでショウ。サムライがニンジャに勝った試しはないのデス。(参考資料:忍者が主役の映画や本等)
しかも猟兵とオブリビオン、これはもう負ける要素がありマセンネ!軽くやっつけてやりマスヨ!

数で押すつもりのようですが、【雷術BT】でどんどん撃ち抜いてやりマス!
透乃を狙おうとしても無駄デース!
狸兵団を大体片付けたら狸大将へ近づいて、間合いを変えながらカラテ、カイリー、【雷術BT】と様々な技で攻めてやりマス!


緋月・透乃
【f02107と共闘】

ふぅ、いいおっぱ……じゃなくてなかなか厄介な相手だったね。
次のたぬきは真っ向勝負が得意そうだね。やっぱりこういう奴のほうがいいよね!
激戦でお腹を空かせてたぬき鍋で祝勝会だね!

大将を攻撃したいところだけれど、兵団が多いね。
ファインちゃんの遠距離攻撃で崩れたところにつっこんでガンガン攻撃して引っ掻きまわすよ。
そして大将への道が開けたら、一気に接近して罷迅滅追昇だね!
一度接近したらできるだけ大将の体で銃持ち兵団の射線を遮るような位置を保ったまま、攻撃を続けたいね。
ファインちゃんも近づいてきたら挟み撃ちにできると理想的だね。


四軒屋・綴
《アドリブ改変絡み歓迎》

やれるもんならやってみろコンッ!

ハッ…ッ!これが生き霊……ッ!

ともあれチクタヌ(畜生狸)を許す訳にはいかないッ!勝負だッ!

まず序盤は『八百八狸大行進』で出てきた子狸の対処をメインに動くぞッ!本丸は味方に任せるッ!蒸気機関車型装備を両腕に装着しつつブースト【ダッシュ】ッ!【一斉発射】で蹴散らしつつ隙あらば【怪力】で殴って【吹き飛ばし】てやろうッ!

それなりに戦況が落ち着いて来たらユーベルコードを発動ッ!大袈裟に叫びながら存分に溜めるッ!……それなりに派手な大技だ、囮役にはうってつけだろう。

「腹が揺れても嬉しくないッ!」



●レッツ・フューミゲイト、テインテッド・ラクーン!

「狸、狸かぁ。狸型ロボットというのも、ちょっと意外性があって面白いかもなぁ」
 【狸大将】の丸っこい巨体に、新たなロボットの着想を浮かべるユリ。同時に鉄柱を携えたリアンを前面に出し、残るコロマル、ルー、ヒューズを散開させる。
「ンホッ、一等種族たる妖狸の素晴らしさに気付いたポン? なら今そこにいる旧い絡繰は全部不要だポンね! 僕直々にぶっ壊してやるポン!」
「……あ?」
 調子づいて地雷を踏みぬいた狸大将に、ユリが「殺すぞ」「これだから定命の者、ましてやオブリビオンは」と怒りを露に睨みつけるが、当の狸大将は意にも介さない。
 だってこいつ、タヌカスだもの――ぜんご

「間に合いましたか。ですが喜ぶのはまだ早いですね」
 傷を負いつつも速攻で狐を倒し急いで駆け付けた甲斐があった、と静流は一先ず胸を撫で下ろす。だが喜ぶのはまだ早い。それも全て、目の前の狸を返す刃で処分するためだからだ。
「ンホッ、僕と同じお侍さん! 改めて例を言うポン! お礼に僕直々に殺してやるポン!」
「いえ、例には及びません――死ぬのは貴方の方ですから」
 居合を構え、狸を討ち取る構えを取る。まだダメージは残るも、戦いに支障をきたす程ではない。鞘の中に炎が走り、全てを焼き尽くさんと舌を踊らせ、抜かれる時を今か今かと待ち侘びる。

「そういえばさっき、腐れ『狐』が何とか『コン』とか言ってたなッ! 貴様ッ、もしや中身は狐――」
 目敏くその部分を指摘したのは綴だ。狸兵団達がどよめき、二百近い視線が一斉に狸大将に向けられる。
「ンホッ、それは誤解だポン! 狐の生霊、具体的に言うと前後とかいう誤字マスターが原因だポンッ!」
 慌てて釈明を行う狸大将。そう、彼に非はないのだ――はい、ちゃんと校正してなかった私が悪いです。ごめんなさい。
「それはそうと、貴様もまた、無関係な村に迷惑を掛けるつもりかッ! ――鬼畜狸(チクタヌ)許すまじッ! 勝負だッ!」
「ンホッ、迷惑かどうかを決めるのは僕達ポンッ! 昭和のオモチャはポイーだポンッ!」
 思うに綴のモチーフはギリギリ平成だと思うがまあそれは置いといて。
「やれるものなら……やってみろコンッ! ――ハッ!? これが生霊……ッ!?」
 妖狐忍の生霊は死してなお猟兵と狸を引っ掻き回すらしい。

「ふぅ、いいおっぱ……じゃなくかった、妖狐忍はなかなか厄介な相手だったね」
 激しい戦いとそれに続く移動のせいか、あるいは未だ魅了が利いているためか、幾分か顔を紅潮させたままの透乃。
「次の狸は真っ向勝負が得意そう。やっぱりこういう奴の方がいいよね!」
「ンフフッ、僕達はコンカスと違うのだポン。正々堂々討ち死ぬがいいポン!」
 なんだかんだで気が合いかけた透乃と狸大将。だが透乃の腹の虫がぐぅ、と声を鳴らしたことでそれは脆くも崩れ去る。
「……終わったら狸鍋を突きながら祝勝会だね!」
「ンホッ!? 僕達を食べる気かポン!? 君達こそ婆汁にしてやるポン!」

「狐ニンジャとのイクサは色々学べて有意義デシタネ」
 誤った知識を身に着けまくりホクホク顔のファイン。だが目の前の完全武装の狸侍達を見て、急に顔を曇らせる。
「でもなんと哀れなんでショウ――」
「ンホホッ。腐れ狐のクソの役にも立たぬ技術など、無敵侍の僕には歯が立たないことを悟ったのだポン?」
「――資料によれば、サムライがニンジャに勝った試しはないのデス!」
「ンホッ!? 君の資料、偏り過ぎてないポン!?」
 ここに来て正論を語る狸大将。だが彼以外にファインに突っ込みを入れるものは誰一人していない。
「しかも私は猟兵、あなたはオブリビオン。私に負ける要素などありマセンネ! 軽くやっつけてやりマスヨ!」
「ンホーッ!? 君、絶対正しい忍者観教えても『それはニンジャじゃありマセーン!』て否定するタイプだポン! こりゃ死ぬしかないポン!」

「そういえば君、狸な上にオブリビオンでしたね? でしたら、まったく容赦の必要がない獲物ですね」
 その上からすかさず畳みかけるはシン。別に妖狐忍の肩を持つつもりはないが、彼の祖先である真っ当な妖狐もまた、妖怪狸との熾烈な生存争いを競った種。遺伝子レベルで刻まれた嫌悪と憎悪故に、自ら狸大将の地雷を踏み抜きに行く。
「ンホーッ! こんの腐れ狐め! やっぱりコンカスとその文化は害悪、骸の海からも消し去る必要があるポン!」
 酒で赤らめた顔を、今度は怒りで真っ赤に染める。どうやらこのタヌカス、人をやたら煽る割には自分も煽りに弱いようだ。

 言葉の応酬にヒートアップする様子を眺め、くぁりと欠伸を一つ。その主は火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)だ。
「喧嘩なんぞするでないよ」
 のんびりと無気力に、そして本当に宥める気があるのかとぶっきらぼうに止める言を放つ。人型の長身に生えるふわふわの耳と尾は妖狐のものだが、色合いは何か狸っぽい。一言で形容するなら称号通りの『タヌキツネ』だ。
「ンホーッ!! 腐れ狐の分際で美しき狸色を模すとは!! 決して許しておけないポン!!」
 さつまのどっちともつかずな姿に一人激昂する狸大将。だが当の本人はその怒気を飄々と受け流す。
「狐だか狸だか知らないが――」
 そう語るや否や、先ほどまでの無気力はどこへやら。戦人の一面を覗かせ言い放つ。
「――オブリビオン同士、仲良く鎮め」
 さつまの言葉で両者は火蓋を切り、村東の原野で戦が始まる。

「ンホーッ、遊びは終わりだポン!! 狸衆、猟兵どもを皆殺しにするポンッ!!」
「ンホーッ!!」
 狸大将の号令と共に、その膝程の狸兵団が槍を構え一斉に突撃する。一体一体の力は妖狐忍には遠く及ばぬものの、百体近い数ともなればその数自体が凶器となる。そして猟兵達はそれらを掻い潜りつつ、大将首を討ち取らねばならない。

 猟兵殺すべし。そう意気込んだ直後、狸大将の頬を紅い光弾が走る。咄嗟に首を捻り躱すも、頬を掠めた高熱が顔を少し焦がす。光弾の主は、【ノーブル・スカーレット】の上で【スカーレット・ブラスター】を構えるシンだ。
「狙いは正確だったんですが。まあそううまくは行かないものですね」
「……いきなり狙撃とか、恥ずかしくないポン!? ――やっぱコンカスはやる事成す事あり得ないポンッ!」
 シンのシステマチック過ぎる攻撃に狸大将は抗議の声をあげ、足元の豆狸達も同調するが、当の本人は何処吹く風。
 狸大将としては己自らシンを刈り取りに行きたいが、シンの【異次元の狙撃手】の射程は長大。刀は愚か、【焔の盃】すら届かない程の遠くだ。
「狸衆五一号から七十号、あのクソギツネの邪魔をしてくるポンッ!」
「ンホーッ! 別に倒しても構わないポン?」
「構わないポンッ!」
 命令を受けた二十匹もの火縄銃狸がシンを追い立てようと迫る。黒い弾丸が一斉に彼を襲うも、持ち前の操縦テクニックで回避しつつ、一体ずつ撃ち抜いていく。

「リアン、あいつらを叩き潰しなさい」
 蒸気機関の【機械巨人「リアン」】はマスターの命を受け、体から白い蒸気を放ちながら【リアンの鉄柱】を振り回す。高質のスクラップから作られた鉄柱が、足元に迫る豆狸の群れを地面ごと【なぎ払い】、直撃を受けた狸兵団は一様にグエーッっと断末魔をあげて吹っ飛び、あるいは轢き潰される。
 そこに迫るは狸大将。大業物の【怨魂菊一文字】を振りかざし、リアンに斬りかかる。後衛狸兵団の火縄銃を浴びながらも動じず【リアンの大楯】を前面に向け、さらに鉄柱を構える、が。
「僕の太刀筋は無敵だポン! そんなもので受けられると思うなポンッ!」
 宣言通り、霊刀の一閃は易々とそれらの守りを打ち破り、リアンに深々と切創が刻まれる。さらに追撃の蹴り飛ばしを受け、仰向けに倒れ伏せる。
「うそっ、リアン!?」
「君は僕を崇める絡繰を作るために生かしておいてやるポン――でもそのポンコツはダメだポンッ!」
 そしてトドメを刺そうと刀の切っ先を振り下ろす。だがそれがリアンを貫くことはなかった。

「ンホッ!?」
「そうはさせない」
 間に割り込んだのはさつま。【捨て身の一撃】による体当たりが狸大将の巨体をよろめかせ、同時に繰り出される巨大斧の【先制攻撃】が揺れる腹部に傷を走らせる。その一撃は浅いものの、リアンが完全に破壊される事態を防いだ功は千金に値する。
「ちょいと遊ぼうか――次は俺が相手だ」
 仰向けのリアンを背に、さつまがトンと足を踏み鳴らす。足元から現れたは青き炎の子狐、名を【燐火】と言う。出番を待ち侘びていたそれは、命じる必要もなく即座に狸大将へと飛び掛かる。青い炎が狸大将を焼き、負ったばかりの切創を溢れる皮下脂肪ごと勢いよく燃やす。
「アッツゥ!? しかもよりにもよって狐火とは! ――コンカスはどこまでも僕を怒らせたいようだポンッ!?」
 体に燃え盛る炎よりも熱く激昂する狸大将。そしてさつまの周りに次陣の狸兵団が迫る。
「そう怒んなよ。骸の海で狐さんも待ってるぜ」
 燐火を迫る狸兵団に向かわせ、さつまは大戦斧を構え狸大将との一騎討ちに馳せ参じる。燐火が狸兵団の頭上を飛び交うと、たちまち彼らは青い炎に包まれ、肉が焼け、火薬が破裂する音が辺りに響く。

 やはり足元に群がる豆狸の物量は厄介だ。あのままではさつま達が圧殺されてしまう。本丸は味方に任せ、綴は狸兵団の掃討に向かう。
「ブゥゥゥゥストダァッシュッ!!」
 両腕に【装蒸甲化ジョークアームズ】を装着しながら狸兵団の群れに【ダッシュ】しつつ、【一斉射撃】を行う。両腕から放たれる斉射が子狸を襲う。
 蒸気弾と石炭弾によって次々に仲間が撃ち抜かれていく様に、狸兵団は即座に綴の危険性を認識。攻撃対象を綴へ変更した彼らは槍持ちが足元へと滑り込み、火縄銃持ちが散開の後斉射を行う。火縄銃が鎧を掠め、そして足元に槍兵団が迫り、鎧の隙間を狙い次々に突きを放つ。
 しかし綴とて、その程度のリスクは承知の上。懐に潜り込んだ狸兵団に対し、一体ずつ両腕のジョークアームズによる【怪力】の殴打を叩き込む。千切っては投げ、千切っては投げと【吹き飛ばし】、綴は傷つきつつも兵団の数を見る間に減らしていく。

「オウノー! ニンジャに勝てないからって数で押すなんて恥ずかしいデスネ!」
 合戦でサムライが数を集めるのは、一人一人が弱いからに違いないと合点するファイン。やはりオブリビオンに静流のようなグレーターサムライぶりを期待するのは誤りだったと落胆する。
 そして数に頼るばかりの狸サムライ達にリアルニンジャは決して倒せぬ。ファインは学ぶだけでなく、学んだ知識を教えることに目覚めたのだ。
「でも兵団はまだまだ多いね。大将を討ち取りたいところだけど」
 だが数の多さはそれ自体が脅威であることには変わりない。透乃もまた、やはり狸兵団の存在が目の上のたんこぶだと感じていた。
「ファインちゃん。子狸、任せもいいかな?」
「ヨロコンデー!」
 返事を聞くと同時に重戦斧【緋月】を構える透乃。リアンのために決死の覚悟で突っ込んださつまに助太刀するため、彼女は迷うことなく駆けだす。だがその行く手を阻もうと、大将直掩の狸兵団達が槍を構え迫る。
「透乃達を狙おうとしても無駄デース! 【雷術BT】ッ、チョコっと痺れるデスヨー!」
 ファインの体が電磁を帯び、赤金のポニーテールがふわっと浮かぶ。そして頭頂からぴょこんと伸びるアホ毛から瞬時に黒い電撃が走りる。稲妻は透乃の行方を阻み、あるいは散開して彼女目掛けて火縄銃を撃つ狸を次々に打っていく。若いOLに大人気の黒い稲妻を受けた子狸は真っ黒に焦げ、あるいはショック死し、または火縄銃の誘爆で爆ぜていく。
 ファイン達の活躍で、大量に数を揃えた狸兵団はもはや数えるほどしか残っていない。僅かな残りも、戦いの中で他の猟兵やユリのロボット達によってついでとばかりに撃破されていく。

 仲間の援護を受け、勢いを止めることなく狸大将の下に辿り着いた透乃は、すかさず狸大将にショルダータックルを叩き込む。
「ンホーッ!?」
 全身全霊の一撃がさつまとの打ち合いに集中していた狸大将の横腹を直撃する。透乃よりも一回りも二回りも大きい巨体が、態勢を立て直す間もなく横へと転がる。
「いっけぇぇぇぇーーーー!!」
 突進の勢いのまま斧を地面に走らせ、土を抉るような切り上げが無防備な狸大将に叩き込まれる。【罷迅滅追昇】が完璧に入った大将は、その巨体をさらに宙へと浮かせ、深々と負った傷から多量の血を撒き散らす。

 空中でキリキリ舞いを踊る狸大将。だが落ちるまで黙って見過ごす猟兵達ではない。
「ンホッ!?」
 大将の打ち上げと同時に【ジャンプ】した一つの影があった。それは刀を携えた静流だ。頂点で追いついた彼女は、炎の【属性攻撃】を纏わせた抜刀術【二ノ太刀・紅】を放つ。でっぷりと溜まった腹の脂肪に火を付けんと、焔と化した刀身が襲い掛かる。
「熱いンホーッ!?」
 斬り付けられた軌跡に赤熱が走り、焦げた油の臭いを放ちながら狸大将の体が燃え上がる。打ち上げられた狸大将は、すかさず怨魂菊一文字で静流を切り伏せようとするも、だが彼はそうすることが出来なかった。
 それはリアンすら斬り伏せる大業物であるが故に、狸大将の体格をもってしても大地の支えがなければ振るえないのだ。反撃も消火もままならぬまま宙を舞い、ようやく地面に落下し、二度三度と跳ねた先には、既に着地していた静流が迫る。
 バウンドしながら地面を転がり、火を消す狸大将。体を横たえながら足を踏ん張り、今度こそ怨魂菊一文字の居合を繰り出す。しかし無理な姿勢で繰り出した攻撃が静流を捉えられるはずもなく、当たりさえすれば必殺の一撃であろうそれは、空気と静流の【残像】を切るのみ。
「里にいた頃、兄様達がよく口にしていました――」
 そして完全な回避を成功させた静流はすかさず【カウンター】の二ノ太刀・紅の刺突を繰り出すと、狸大将は再び無防備で直撃を受ける。そして炎を帯びた刀はそのまま狸大将の体の奥深くまで突き刺さり、体を内側から燃やし続けていく。
「――『妖魔死すべし、慈悲はない』。この続きは地獄で、狐達とやってくるといいでしょう」

 三度までも直撃を受け、深手を負った狸大将。尋常の敵なら致命傷であろう傷を受けてもなお立ち上がり、強がりだろうか太々しく笑い出す。
 そして死すべき猟兵の方だ、そう意気込んだ直後、彼の耳を紅い光弾が走る。咄嗟に首を沈めて躱すも、片耳を被った笠ごと撃ち貫き、風穴を開ける。背後から放たれた光弾の主は、つい今しがた二十匹もの豆狸を殲滅してきたシンだ。
「今度は距離を詰めてみたんですが、案外動きが機敏な事で」
「ンホーッ!! お前だけは絶対許さないポーンッ!!」
 幸いにも今度はシンも居合の間合い。今度こそ殺すと振り向きざまに怨魂菊一文字を振るう。だがその一撃は【閃光の魔盾~アトラント~】によって逸らされ、シンを傷つけるには至らなかった。そしてほぼ同時に放たれたスカーレット・ブラスターによる【カウンター】【零距離射撃】の連射が体に風穴を開ける。
「まさか、近づいたら勝てるとでも思ってたんですか?」
「……二度目はないポンっ! コンカスは死ねポーンッ!!」
 いきり立つ狸大将は射撃と同時に距離を離したシンを追おうとする。

「おっと、お前の相手は俺だったろう――さっきの続きと行こうか」
 手元に火の仔狐を乗せ、シンと狸大将の間に割り込むはさつま。
「抜かすなポンッ! さっきは邪魔が入ったせいで倒し損ねたけど、次こそぶっ殺してやるポンッ!」
 さつまは仔狐火の燐火を狸大将目掛けて放ち、自身も斧を構え同時攻撃を仕掛ける。大太刀を抜いたままの狸大将は、その図体からは想像も出来ぬ速度で納刀する。そしてすかさず鞘に刀身を滑らし、神速の居合を放つ。
 さつまは間一髪で【見切り】、さらに【オーラ防御】で防ぐも、掠めただけでさつまの体に傷を負わせる。【激痛耐性】がなければ卒倒しててもおかしくない威力だ。だがさつまも負けじと斧の一撃を、振りかぶった直後の無防備の狸大将の体に叩き込み、さつまの斧が狸大将の体に深々と埋め込まれ、さらにその傷口に燐火が体当たりすると、その相乗効果で狸大将の巨体が大きくのけぞる。
 
 さつまを次こそ倒さんと再び納刀した狸大将は、背中に何かが刺さる痛みを感じる。
「ブルズアイデス!」
 痛みの主はファインが投げた【レインボーカイリー】。すかさず雷術BTの黒い電撃が、カイリーを照準として放たれる。
「ンホッ、何がブルズアイだポン! 忍者はそんな事言わないポン! ……散々僕を燃やしてくれたお礼だポン、今度は君達が燃え尽きる番だポンッ!」
 ここにきて一対多の不利を感じ取った狸大将は、ファインを迎撃すると同時に近づけまいと焔の盃より狸火を放つ。強烈なアルコール臭を放つ難視の炎が、ファイン目掛けて襲い掛かる
「……私も忘れちゃダメだよ!」
 ファインを足止めした直後、再び迫るは先ほど痛打を与えた透乃だ。狸大将も流石に彼女の罷迅滅追昇、そしてその起点となるタックルを警戒している。恐らく二度目を当てることは出来ないだろう。
 風圧ですら敵を斬る居合で牽制を行い、透乃が懐に潜ろうものなら一太刀に斬り伏せる算段だ。あれだけ攻撃を当ててもまだ立ち上がり、逆にこちらは掠めただけでも致命傷になりかねない。透乃も攻めあぐねる。しかし狸大将にとって予想外の事態が起こる。
「ワオ! 視えない炎だなんて、レッサーサムライなのにニンジャっぽいデス……アチチチッ!」
 ファインが炎に巻かれながらも、なおも接近しようと迫っていたのだ。どうやらファインはアルコールの炎も、狸大将の牽制策も見えてなかったらしい。ダメージを負いつつも炎を抜けたファインが、次は背後からカラテを叩き込む。カイリーの上からチョップの連続で打ち付け、さらに狸大将の体に深々と突き刺さる。
「ンホーッ!?」
 背中の猛烈な痛みに悶絶する狸大将。そこに前方から透乃が迫る。透乃とファインを同時に切り刻まんと体を一回転させながら怨魂菊一文字を放つ。だがそれは一瞬だけ遅く、居合は空を切る。代わりに自らの姓を冠す透乃の斧が狸大将の体へと叩き込まれ、前後双方からダメージを負う。

 二本の重戦斧と一本の刀、一本のカイリーが突き刺さり、狸大将の巨体言えども体に刺さった異物でバランスが取れなくなり始める。
「その醜い腹を揺らすのも終わりにして貰おうッ! ジョークアームズ、光・刃・展・開ッ! ハイパァァァァ、チャァァァァジッ!!」
 接近戦を行う四人から一歩離れた位置に座するは、大げさに両手の武器を光らせ、光る刃を展開させる綴。
「ンホーッ! チャージなどさせないポンッ!」
 綴は自分の機動力を過小評価しているに違いない、狸大将はそう考えた。怨魂菊一文字の間合いなら、二足三足で彼を両断出来ると踏み、体に武器が突き刺さったまま瞬時に距離を詰める。
「修(スゥ)・羅(ラス)……ッ!!」
「ンホホッ、最後の最後で油断したポンね!」
 綴は未だチャージの途上。狸大将が太刀を構えたまま勝利を確信し、だが綴のマスクもまた不敵に笑う。

「【Operation “Gulliver"】」
 その声を聞いた時、狸大将は違和感を感じる。刀が抜けない。足が地面から離れない。体の下を見渡す。
 腕には無数の拘束用ワイヤー。足には泥沼の如く広がるトリモチ。さっきまでそんな罠など仕掛けられてなかったはずと周りを見渡す。
「……『旧い絡繰』に絡繰られる気持ちはどうだい?」
 怒気を帯びたその声の主は、目元に影を帯びさせたユリ。そしてワイヤーとトリモチの出元は、斜め後ろの死角に展開した彼女の【偵察ロボットコロマル】と【万能型ドローン「ルー」】。
「最悪に決まってるポンッ! やっぱお前も殺アバババババッ!?」
 そして【戦闘用機械兵「ヒューズ」】の放つテイザーガンが無理やり引き千切ろうとする狸大将の抵抗を完全に阻止する。そして斜め前から迫るのは、先ほど倒したはずのリアン。ボディに深い傷を負いつつも、再び再起動し鉄柱を振りかざす。
「リアン、さっきのお返しよ」
 ユリの一言と共に、その脳天に鉄柱が叩き込まれる。狸大将が頭に被った傘が粉々となり、頭から多量の血を流す。

「……列(トレ)・車(イン)ッ――ファイアッ!」
 今度はユリとそのロボットが値千金の時間を稼いだ。その間にチャージを完了した綴が、最大火力のユーベルコード【修羅列車】を放つ。ユリやリアンが巻き添えを食らわぬよう避けた直後、両腕の大光刃が狸大将の体に深いVの字を刻み、体表に内臓に、そして狸大将の得物に致命傷を与えていく。
「グェェェェッ!? 死んだポンッ……!!」
 腹の中を絞り出すようなおぞましい声をあげ、仰向けに倒れ込む。不遜極まる狸大将も、ここに至りついに己の敗北を認めざるを得なかった。視界に広がるのは青い空。そして、そこに入り込むは金の髪と赤い瞳の妖狐。
「来世では、可愛い狸娘にでも生まれ変わることですね」
 シンの放つ真紅の光弾は、三度目の正直とばかりに、狐大将の眉間に吸い込まれていった。

 狸大将、討ち取ったり。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『ここで一句』

POW   :    とにかく思いついた案を沢山出し、いい感じに組み合わせて詠む

SPD   :    己の感覚をフル活用し、オリジナリティある俳句を生み出す

WIZ   :    意味深な言葉遣いで味わい深い一句を詠む

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●G64(4)
 妖狐忍と狸大将、村を脅かす二種のオブリビオンを討伐した人々を待っていたのは、メンテから事情を聞いた村の人々であった。
「ありがとうございます。つい目と鼻の先にそんな物の怪が迫っておっただなんて。わしらは全く気付かなんだ」
 村若衆の代表、蔵食郎が村全体を代表し猟兵達に礼をする。これで村の平和も守られた。めでたしめでたし――と思いきや。

「そうだ。お墨付き様、もう一つ頼まれてくれませんかね? 皆さんはあちこちを回られて、天下泰平を守られてるそうで。その見聞を生かして、是非うちの村の俳諧大会にも参加してくれませんかね」
 この村はその成り立ち故に、外部から人の出入りが少ないと言う。それ故、俳諧大会で詠われる句もここ最近では似通ったものばかりとの事だ。そこで、猟兵達に新たな風を吹き込んで欲しいというのだ。
 真っ当な俳句でもいい。季語のない川柳や狂歌もよし。自由律でも一向に構わない。猟兵が思った言葉を語り、それを俳諧と言い張れば全て俳諧である。

「あと俳諧大会には村特産の狐鍋と狸鍋も出るもんで、詠うのはちょっとと言う方も、是非うちの美味しい肉と野菜を食べてって下され。勿論、皆さんのお友達でしたら沢山呼んで頂いても構いませんです。あ、そうそう。メンテさんとやらが『ゆーでぃーしーあーす』の商店で買えるものでしたら出来るだけ持ってくるって言うとりましたので、何かあれば呼んで下さいとのことです」

 詠うもよし。食べるもよし。勿論詠って食べるもよし。村の中であれば自由に過ごしてよし。猟兵達は勝ち取った平和の中で、ささやかな休暇を楽しむ。
シン・ドレッドノート
無事に狐狸の群れも退治したことですし、尻尾を伸ばしてのんびりさせていただきましょう。
【料理】でUDCアース(現代日本)のおつまみを作って振る舞います。
一緒に戦った他の猟兵さん達とも、お互いの健闘を称えあって談笑できれば。

大会で読み上げる句:
「寒し日は囲炉裏をかこみ熱燗で/杯を重ねて絆深まる」
村の男達に大吟醸の瓶を見せながらウィンクしてポイントを稼ぎます。

大会の終わりが近づいてきたら、美しい村娘を【誘惑】。
他の人には聞こえないよう、囁くように
「美しき瞳に映る我が姿/貴女(きみ)の心に狐火宿る」
「いかがです?今宵一晩ご一緒に/冬の夜には人肌恋し」

あ、帰りは遅くなりますので、少し待っててくださいね。


四軒屋・綴
≪アドリブ絡み改変歓迎≫

 ふむ……狩られた獣の恨みか、はたまた妖怪変化とならぬよう古くから狩っていたのか……ともあれ美味い鍋だ、太陽も「イッケンラクチャク」と笑っているッ!

 さて、食事代代わりに一句詠まねばならないのだが……難しいな、具体的には勝手にユーベルコードが出るくらい難しい。

 そういえば今回も随分と被弾してしまったな、すっかり煤けてしまった、……ふむ、『寒空に 誇るは煤衣 皆の笑み』、と

 グワー最下賞ナンデッ!?


緋月・透乃
激戦の
疲れを癒す
獣鍋

ってことで狸鍋と狐鍋を食べよー!
私はサムライエンパイア出身とはいえ俳諧とか全然学んでいなかったからねー。
喧嘩とか動物追いかけたりとかのほうが楽しかったねー。

狸も狐も食べたとこないけれど、どんな味かなー?
特産ってことはきっと美味しいだろうし、遠慮なくたくさん食べよう!
ついでにお酒も欲しいね。
食べながら村人にさっきの戦いや別世界の戦いの話とかすればいいかな。
狐はえろかったとか、狸は強かったとか。
お菓子の迷宮やからくり(ゴーレム)の迷宮の話は受けがよさそうだね。
そんな感じでまったり過ごすよ。


ファイン・スタッカート
ハイクとは敵にとどめをさす時に詠ませる奴デスネ!
え、違うのデスカ!?なんということデショウ!
やはり資料と実物は違うのデスネ。勉強になりマス。
(俳諧等についてはここで正しいものを学びます。学ぶだけでちゃんと詠えるかは別です)

教えてもらった知識を生かして、狐鍋をつつきながら一句考えマス。

大タヌキ
空いた背中に
ブルズアイ

先程の戦いでの私の活躍を詠みマシタ。存分に讃えるといいデスヨ。


夜神・静流
狐鍋に狸鍋……あの妖怪達を見た後だと何ともいえない気分になりますが、折角ですし有難くいただきましょう。

それから俳諧大会でしたか……
生憎と剣や退魔の修行ばかりしてきたもので、そういった芸事には疎いのですが……折角ですので挑戦してみたいと思います。

自分の理想のような物を川柳に。
「日ノ本の 夜明けを導く 我が一刀」
……などと、未熟者の身で大層な事をと面映ゆい気分になりますが、その言葉に相応しくあれるように、今後も精進いたしましょう。

あとは生まれながらの光を使用し、自分や仲間の負傷を回復。
それと人と話をする際には礼儀作法の技能を使用します。



●ナベ・アンド・サケ・ビフォア・トーナメント
 猟兵達は村月例の俳諧大会に招待されていた。村の中でも最も大きな屋敷に村衆が一同に会し、俳句を詠み、あるいは酒に交わし、飯に舌鼓を打つ。
 今回シンが村の作物や備蓄に、UDCアースの食材や調味料を組み合わせて作った【料理】は、今まで彼らが食べたことのない新鮮な感覚の味であり好評を博した。
 特におつまみである『油揚げのチーズ炒め』『こんにゃくの甘辛煮』は酒のつまみに合うと人気だ。その中でもこんにゃくはサムライエンパイアでも手に入る上、味を付ければ狸肉に似た味が出せそうだと人々の興味を惹いている。
「猟兵の皆さんの分もありますので、思う存分食べて下さいね」
 シンがパタパタと尻尾を振りながら、村人や猟兵達に料理を装い、にっこりと笑顔を向けて渡していく。

「シン、あたしはお肉山盛りで! 勿論野菜も忘れないでね!」
「はい、山盛りですね……って、随分と大きな容器ですね。でも透乃さんならペロリと平らげそうだ」
 透乃がシンに特大のお椀を渡す。具材が山を作り、最後に汁を掛ければ、鍋の過半が空となる。
 そう、忘れてはならない本日の目玉。村特産の山の幸、そして狐や狸の肉を臭い消しの酒や香味で煮込んだ、狐と狸の鍋だ。渡された山盛りの具材を前に、透乃が翠玉の瞳を煌々と輝かせる。そして一口。透乃が目を見開く。
「……美味しい!!」
 濃い旨味、歯応えある食感もさることながら、獣特有の硬さと臭さを極限まで取り除いていたそれは、香味の煮汁と相まって、噛めば噛むほど体の中から力が湧いてくる感覚だ。野菜と共に一口、また一口と口に入れ、シンも少し盛り過ぎたかと一瞬感じた山盛りの具材が、あっという間に空になる。
「しかし、それにしても狐鍋に狸鍋――あの妖怪達と戦った後だと何とも言えない気分です」
 静流がぽつりと語る。偶然であるが故に村人に罪はないのだが、二種の獣の肉にどうしても先ほど倒したオブリビオンを重ねてしまう。
「それは言いっこなし。はい、静流の分」
 シンから回された静流の分の容器を手渡しする透乃。折角ですし有難く頂きましょうと口にする静流もまた、そんな懸念も吹き飛ぶ美味に舌鼓を打つ。

「ふむ……この村の者の祖先は訳あって山で長く過ごし、生きるために狐狸を食した。そして今の料理法は硬く獣臭の強いそれらを美味しく頂くための工夫の結果……か。あのオブリビオンはもしや、狩られた獣が恨みから妖怪変化して現れたか? はたまたオブビリオンに妖怪変化せぬよう、人々が食し供養してきたのか?」
 綴は狐狸鍋が村の特産になった経緯を聞き、物思いに耽る。この地に狐狸が多数生息している事と、あのオブリビオンがこの地で発生した事は決して無関係ではないかも知れない。そしてオブリビオンの『原型』がかつてこの地の東西をそれぞれ根城としていた可能性もある。だが全ては仮定だ。
 妖狐忍も狸大将も、必要がなかったであろうが故に過去を語らぬまま爆発四散し、全ての真実は骸の海へと消えてしまった。
「と、難しいことを考えてしまったな。ともあれ美味い鍋だ――太陽も『イッケンラクチャク』と笑っているッ! シンさん、私もお替りを所望するッ!」
「綴、まだハイク大会は始まってないデス! フライングデスネ!」
「何ッ!? 今の俳句扱いッ!?」
 『ニンジャの姉ちゃん』が俳句だと言ったらそりゃあ俳句に違いない、お手付きだと村衆が笑い出す。

「ナベモノも美味しいですが、本番はハイク大会! ハイクとは敵にトドメを刺す時に詠ませる奴デスネ!」
 狐鍋から肉と野菜を装いながら、【ニンジャ知識】でハイクについての蘊蓄を語るはニンジャの姉ちゃんことファインだ。
 一見穏やかな村人に見えるが、その実誰もが何時イクサに散っても悔いを残さぬよう、日頃から練習しているのデショウカ、とファインは思う。
「やはりあなた達もニンジャソウルの持ち主、この村全体がニンジャのドージョーなのデスネ!」
 そりゃあ辞世の句、それも絶句って奴だ、と村人が笑う。だが父祖達は即興の絶句では良い句が作れないからと予め用意していて、互いに添削して悔いの残らぬ辞世の句を作る集いを行ったという。
 そしてそれが、今も月毎に行われる俳諧大会の始まりだと意外な由来を漏らす。実はいい線を突いていたのだ。
「ナルホド! でも間違ったままの知識では恥ずかしいデス! 本場のハイクを教えて下さいデス!」
 ファインはシンのおつまみを頬張りながら、村人達から正しい俳諧の方式を学ぶ。学んだ上で、それをちゃんと詠えるかはファインの努力次第だ。

「済みません。その講座、私にもご教授願えませんでしょうか」
 ファインが村人から俳諧を基礎の基礎より学ぶ中、静流も【礼儀作法】をもってその教えを乞う。
 無論、村人は驚く。聞く所によればこの女剣士様、一太刀で化生五人を斬り捨てたという。しかも【生まれながらの光】を放つように見えるほどの完璧な作法、そのようなお方が俳諧を学びたいとは。
「剣を振るい、魔を退ける修行ばかりしてきたもので、そういった芸事には疎いのです――人々を悪しき者から守るため、がむしゃらに剣の腕を磨いて来ましたが、ふと振り返れば己の内の何と空っぽな事か」
「……悲観することはないッ! 空っぽとは即ち可能性ッ! 何だって入るという事だッ!」
 静流の生まれながらの光を浴び、体の傷を癒しながら綴が熱く語る。一瞬気落ちした静流は、その言葉に救われる思いを抱いた。
 そう、己は未熟。だが未熟であるということはまだまだ強くなれる、高みに登れる。ならば恥じることも卑下することもない。村人達も、美しく強い剣士様の役に立てればとその技法を教えることを厭う事はない。

「そうそう、狐は裸に漆を塗ったようなエロい姿でね、狸はすっごい大きな刀を振るったんだよ!」
 たらふく食べた後はお酒でしょ、と熱燗をグイっと煽る。そしてつまみを片手に、顔を紅潮させながら、戦いの土産話を語るのは透乃。蔵食郎が俳句に新風を吹き込んで欲しいと言っていたのを思い出し、酒の肴にそれらを語ることにしたのだ。
 何と破廉恥な狐じゃと顔を赤らめ、かと思えば食った狸が化けて出たかと顔を青ざめ、そのような化生が村のすぐそこまで迫っておったのかと猟兵達に視線を合わせる。
「あとこれは異国の話なんだけど、世界にはお菓子の迷宮やなぞなぞゴーレムの迷宮なんてのもあるんだよ」
 菓子で作られた迷宮か、わしなら一生そこに住んでもいいと語り、あるだわの国では絡繰が人に謎掛けをするのか、その答えは12であろうと答える。こちらも村人に好評だ。
 いつの日か、猟兵達の活躍の物語が人々に御伽噺や神話で語られる日が来るのかも知れない。

●インスタント・ハイク・トーナメント
 さて、村人や猟兵達が一通り腹を満たし、あるいは酔いが回ってきたところで、今回の本題である俳諧大会の始まりだ。村の男女がこの日のために用意した、あるいは猟兵の姿や透乃の話から即興で話を膨らませて句を詠み合う。
 おおと感嘆の声が上がる俳句、ワハハと笑いを取る狂歌、おっとそれは一年前の句そのまんまではないかと物言いが入るもの、様々な歌が披露され、やがて今回の主賓である猟兵達の番となる。

「では私から」
 猟兵達の中でまず手を上げたのはシンだ。
 〽寒し日は/囲炉裏をかこみ/熱燗で/杯を重ねて/絆深まる シン
 シンが句を読み上げると、村衆達が感嘆し、そして拍手をもってその句を称賛する。そして大吟醸の瓶を見せてウィンクした先には、村一番の美女の姿があった。
 邪悪な存在である敵性オブリビオンだが、犠牲者なく無事退治出来、結果シンは村人や他の猟兵との絆を深めることが出来た。この戦いも決して悪い事ばかりではなかったはずだ、とシンは思う。

「次鋒透乃、いくよ!」
 続いて名乗りを上げたのは透乃。サムライエンパイア出身だが、そう言えば喧嘩とか動物と追いかけっこばっかりやってて、俳諧とか全然学んでなかったなと自嘲する。
 まあ別に俳諧のルールとか気にしなくても自分が俳句と名乗ればそれは俳句ということになるらしいので、あまり気にせず、思ったことを歌にする。
 〽激戦の/疲れを癒す/獣鍋 透乃
 村人が褒めてもこれ以上何も出ないぞと笑いながら拍手する。だが美味しいもの大好きな透乃にとっては、それは偽らざる感謝の歌であった。

「それでは未熟者の身でありながら、私も一句」
 続いて詠むのは静流。ファインと共に基礎の基礎から学んだ彼女が、その想いを詠む。
 〽日ノ本の/夜明けを導く/我が一刀 静流
 読んでる途中で顔を赤らめる静流。先ほど己を未熟者と語ったばかりなのにこのような大層な事を詠ってもよいのか、と面映ゆい気持ちになる。だがその決意表明に、村人のみならず猟兵達からも拍手があがる。
 少なくとも静流の一刀は、日ノ本とまでは至らずとも、この村に夜明けを導くことが出来たのだ。それを嘲笑するような者がいるはずもあるまい。
 なれば迷うことはない、と静流は誓う。その言葉が偽りにならぬよう、そしてその言葉に相応しくあれるよう、今後も精進するのみだ、と。

「さて、食事代にも一句詠まねばならないのだが……難しいな。うーむ、うーむ」
 綴は悩んだ。どのくらい悩んだかというと、機関車の煙突を模したマスクの側面から煙がもわもわと立ち込め、決して狭くない屋敷を白く染める程だ。
 無論それは有害なものではなく、むしろ【安心列車】の治療用ナノマシン群であり、逆に人体に有益なものだ。とは言え、悩み過ぎてユーベルコードが暴発するくらいにまで、彼は悩んだ。
「このユーベルコードはダメージの回復に使うもの、ダメージと言えば今回も随分と被弾して、煤けてしまったな……ふむ」
 ここでピコンと発想を閃く。なれば心の赴くままに詠むべし。
 〽寒空に/誇るは煤衣/皆の笑み 綴
 屋敷の中が白く染まり前もあまり見えない中、人々の感心の声と拍手の音が聞こえる。だが。
「煙いデス! ケムリ地獄賞デスネ!」
「グワーッケムリ地獄賞ナンデッ!?」
 ファインから返歌と共に謎の賞を受け取り、悶絶する綴。

「さて、大トリは私デス! 皆さんから教わった本場のハイク、披露する時デス!」
 静流と共にハイクの知識を身に着け、作法を学んだファイン。果たして、彼女はちゃんとハイクを詠むことが出来るだろうか?
「……オホン。先程の戦いでの私の活躍を詠みマス。では一句」
 ある意味緊張が走るのは村人よりも他の猟兵達だ。一体どんな句が出るのやら。
 〽大タヌキ/空いた背中に/ブルズアイ! ファイン
 案の定ズッコケる猟兵一同。ブルズアイって何だよ!? と。
 だが肝心の村人一同からは大笑いと拍手が沸き起こる。そう、こういうのでもいいのだと村人は笑顔で応える。
 ファインが学んだことを消化し、己の想いを形にした。それが『ブルズアイ!』の五音に凝縮されているのだ。
「スゴイデショウ! 存分に称えるといいデスヨ……」
 頭の後ろを掻きながら照れるファインは、だがまだ晴れ上がらない煙の中、ニンジャ感覚で違和感を感じる。
「……シンは何処に行ったのデショウ?」

 あの煙に毒性はないのは分かるが、視界の悪さでちょっと酔いそうだ。村一番の美女は縁側へと抜けだし、寒空の空気を吸っていた。
 少し目を閉じていると、顔のすぐ横の壁をトン、と叩く音が聞こえた。そして耳元から、壮年の男の甘い声が響く。
 〽美しき/瞳に映る/我が姿/貴女(きみ)の心に/狐火宿る シン
 彼女が目を開けると、金の髪、赤い瞳の甘いマスクの妖狐が立っていた。女と見紛うようなその正体は、言うまでもなくシンだ。美女が外の空気を吸いに行ったのを、濃い煙の中目敏く追っていったのだ。
 シンは【誘惑】を掛けながら、さらに顔を近づける。
 〽いかがです?/今宵一晩/ご一緒に/冬の夜には/人肌恋し シン
 美女の顔が真っ赤に染まり、シンの懐に抱きつく。それは合意と見ていいだろう。
「今夜は離しませんよ」
 優しく抱き返すシン。メンテさんには明日迎えに来てもらおう。彼にとって、冬の俳諧大会の終わりは、真夏のように情熱的な夜の始まりだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コノハ・ライゼ
たぬちゃん(f03797)に誘われて

おっ疲れ様ぁ~と手を振れば何だかお急ぎな様子
「そんなにお腹空いちゃった?
笑いつ、歌は詠めないケドご相伴に与る気満々

美味しいお肉に野菜と聞いたケド何だろうねぇ
狐?狸?ジビエってヤツ??
やあソレは楽しみだなぁ、料理人の血が騒ぐネ!
嬉々として器をたぬちゃんへ
複雑な顔と問いに首傾げながら
「とりあえずナンでも食ってみるのがモットーだよ?勿体ないデショ??
自分はしっかり頂いて

はあ、狸がんほーとか鳴くかよ
コンポタで駄洒落てないで野菜食べたら?
意に介さず開いた口に野菜突っ込み

美味いと分かれば作り方やコツを聞きに
尻尾膨らむたぬちゃんちらと見て
にやり意味ありげに笑ったりして


火狸・さつま
コノf03130と食い物


てくてく近寄れば手首掴み
「コノ。鍋、向こう」
狸鍋だの狐料理だのとジビエに関心示しとったし
調理される前に喰わせとかねば


しかし何故このタイミングで狸鍋
つか、狐鍋なんぞ初めて聞いたぞ
精進料理の蒟蒻鍋や油揚げ鍋の方、ではなく…?
ジビエなれば村人等には内密に
コノへこそり俺は良いと首振って
コンポ(ン)タージュ貰う
「コノ…喰う、のか?」
じっと其の横顔を複雑な表情で見つめ
コノが口に運んだ瞬間
「んほー…」
突如抑揚無く淡々と
「ん?いや、さっき遭うた狸達が、そう鳴いとったんで。つい」
コンポンタ啜りつつ
しれっと

「野菜…」
あーんと口開け貰おうと

調理法聞くコノを横目に
まさか…と尻尾ぶわり膨らませる



●レッド・フォックス・アンド・ブルー・ラクーン
 ――話は少し遡り、俳諧大会前の鍋パーティー真っ只中。
 
「おっ疲れ様ぁ~」
 そう言いながら手を振るのは、紫雲の空の髪と薄氷の瞳を持つ優男、コノハ・ライゼ(空々・f03130)。戦いの後、さつまに呼ばれてやって来た彼の悪友だ。
「コノ。鍋、向こう」
 さつまはコノことコノハの姿を見つけると、早足で歩み寄っては振る腕を掴んで引っ張るように屋敷へと誘う。さつまは前々よりコノハが狸鍋や狐鍋だののジビエに関心を示していたのを思い出し、この機会に是非とも食わせねばと彼を呼んだのだ。
「お急ぎな様子だね、そんなにお腹空いちゃった?」
 引っ張られながらその様子を笑い、折角なので同伴に与る。さつまが話していた上手い肉や野菜に狐狸のジビエ、さらにはその後に俳諧大会まで開かれると聞けば、コノハは心湧き胸躍る。山間の村の郷土料理とは如何なるものか、ワクワクで己の体を巡る調理人の血が滾るというものだ。

「しかし、何故このタイミングで狸鍋? それに狐鍋なんぞ初めて聞いたぞ」
 さつまは目の前でぐつぐつ煮える狸と狐を鍋を冠する鍋の前で困惑する。精進料理の蒟蒻鍋、あるいは油揚げ鍋……の割には両方の鍋で思い切り何かの肉が煮られ、さらにはネギやニンニクのすり身といった精進料理では肉同様にアウトな野菜も惜しみなく投入されている。これは一体?
「たぬちゃん、どうぞ~」
 コノハはニコニコしながら、たぬちゃんことさつまの分の肉と野菜を装った食器を渡すが、さつまは俺は良いと首を横に振り、その様子にコノハは首を傾げる。
 さつまは代わりに村人に内緒で用意したUDCアース産のコーンポタージュを啜る。決して上等とは言えないレトルト物だが、コーンの粒やより細かい粒子が舌を転がり、口の内を紛らわす。
「コノ……それ、喰うのか?」
「とりあえずナンでも食ってみるのがモットーだよ? 勿体ないデショ? あとたぬちゃんのそれ、『コン』『ポン』タージュって事? 面白ーい」
 コノハが肉と野菜を箸で掴み、一口で頬張り、噛み締める。彼もまたその美味に酔いしれる。こんな上手いものを何故さつまは食べないのか、コノハは勿体ないと感じる。
「んほー……」
 他の猟兵達同様にガツガツと平らげていくコノハの姿に複雑な表情を浮かべ、思わず淡々と抑揚のない声が零れ出る。
「んほー?」
「ん? ああいや、さっき遭うた狸の化生どもが、そう鳴いとったんでつい」
「はあ? 狸がんほーだなんて鳴くかよ。どこぞのマスコットじゃあるまいし」
 百匹近くもいた狸大将とその配下達が一斉に『ンホーッ!』と叫ぶ姿はさつまにとって恐るべきインパクトを与えた光景であったが、残念ながらコノハはその現場に居合わせておらず、故に彼の指摘もまた至極当然だろう。別にムキになって主張する内容でもないのでさつまもこれ以上は語らなかった。

「それはそうと、コンポンタとか駄洒落てないで野菜だけでも食べたら?」
 さっきからコーンポタージュばかり啜っているさつまを見ていられず、せめて熱々で新鮮な野菜だけでも口に放り込もうとするコノハ。さつまの口の近くでほかほかの蒸気を放つネギをぷるぷると揺らす。
「野菜……じゃあコノ、野菜だけ」
 さつまがそう言って口を開いた瞬間、すかさずネギが放り込まれる。さつまが噛み締めると、香りの強い濃厚な煮汁が口の中でジュワっと広がる。臭菜だけでは説明の付かないパワフルな旨味、やはり中で煮込まれている謎肉のそれか、と合点する。
「美味しいっしょ? そうだ、この美味しい鍋を家の居酒屋でも作りたいんだケド」
 コノハのその言に待ってましたとばかりにお節介焼きな村衆達が答える。臭みを取るためのネギ、すり下ろしたニンニク、酒に醤油。そして本命の肉はそいつが飢えてる冬のものが最上だと回答を得て、ふむふむと頷く。
「その肉と言うのは、何の」
 意を決して質問するはさつま。突然の意外な質問に村人はキョトンとし、だがすぐに大笑いして答える。狐鍋に狸鍋と言ったら、そりゃあ肉は狐と狸に決まっておろう、と。
 まさかと思って聞いたら、本当にそのまさかであった。精進料理の比喩でも何でもなく、正真正銘の獣鍋であったという衝撃。さつまはたぬき柄の尻尾をぶわっと膨らませ、狐の耳が逆立つのを感じ、そしてガチガチと歯を震わせながら体の芯が冷えるのを感じた。
 相方のコノハはと言えば、さつまが肝を冷やす様を横目で見て、意味ありげににやにやと笑うばかりであった。たらふく食べて体も温まり、さつまのあの姿から俳句の二つ三つも作れそうだと気分も上々だ。

 そんな訳で山間の村はオブリビオンの危機を乗り越え、さらに俳諧大会も大成功裡の内に終わりを告げた。心と体をリフレッシュさせた猟兵達の前には、だが次の戦いが待っているだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月22日


挿絵イラスト