●錆色の島
グリードオーシャンの一角、波間に顔を出したその島は、陽の光の下、赤茶色に輝いていた。
無機質な材料から成るその構造物は、巨大で、頑丈で、輝かしき在りし日の姿を思い起こさせる。尖塔のようになったその『島』のそこかしこには、何故か錆色に輝く水晶が生えており、朽ちかけた構造物と絡み合っているかのよう。
かつては――それこそ異世界から降ってくる前は、人が住んでいたのだろう。けれど代わりに、今そこを闊歩するのは赤い羽毛の鳥達だった。
「クァー、クワワワ」
『申し訳ありません、音声を認識できませんでした』
海賊帽を被った丸っこい見た目の鳥は、どこからか返ってきた言葉に首を傾げる。
しばらく考え込むようにしながら、くけけけ、と何度か喉を鳴らし、やがて思い出したように、こう鳴いた。
「ヒラケ!」
プシュ、と小さな音を立てて、両開きの扉の、まだ稼働している側だけが、壁の中に引っ込んだ。
命令通り扉が開くのは気分が良いのか、ちょっと嬉しそうに尾羽を振りながら、コンゴウインコはその中へと入って行った。
そして――世界を超えて、朽ちかけてもなお、まだ生きている『彼』は、雑音で少しだけ乱れた声音で歌い上げる。
『ようこそ、ステーション『ハミングバード』へ』
●鳥の巣
「ああ、見えてきたねぇ」
鉄甲船の船縁に立ち、手で庇を作ったオブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)がそう声を上げる。船が向かう先にあるのは、錆色に輝く島。いくつもの世界を見て歩いた猟兵ならば、それの元がスペースシップワールドからの落下物だとすぐにわかるだろう。
落下の衝撃か、その前の宇宙で受けた傷によるものか、その構造物は全体から剥がれ落ちた――もしくは破壊を免れた一部であり、ほぼ半壊状態のものだと見て取れる。
ただ、そこかしこに生えた水晶らしきものが何なのか気にかかるが……。
「うん、念のためにもう一回言っておくけどね、あの島はオブリビオンに占領されているんだよ」
この世界ではコンキスタドールというべきだろうか、赤い羽毛の鳥型のそれらが、この島を要塞として根城にしている。
今回の任務は勿論、それの奪還だ。
「まあ、やる事はそんなに難しくないよね。乗り込んで、オブリビオンを掃討して、無事に戻る。それだけさ」
簡単そうに言ってのけるが、実際の所……この世界ではグリモア猟兵の予知も転移もうまくいかない。ある程度出たとこ勝負にはなるだろう。
「オブリビオン達は、ある程度『要塞』の仕組みを使いこなしてるって話だから、気を付けてね」
オブシダンの言及するのはSSWにあった頃の仕組みについて。自動扉程度ならまだ良いだろうが、警備システムなどが残っていると少々厄介だ。
「いやあ、ビームキャノンとかそういうのが残ってないのを祈るばかりだねぇ、あはは」
それじゃ、行ってみようか、と彼が格好つけて指差すまでもなく、船は目的の場所へと進む。
潮風に乗って、鳥の鳴き声が聞こえた気がした。
つじ
どうも、つじです。
今回の舞台はグリードオーシャン、SSWから落ちてきた島になります。
中央部がコンキスタドールの要塞と化していますので、皆さんの手で解放してあげてください。
●宇宙ステーション『ハミングバード』
島の元になったもの。SSWにありましたが、帝国に破壊された末、一部がこの世界に流れ着いたものと思われます。
中身はSSWの戦艦と大差ありません。機能も形もほぼ失われていますが、宇宙ステーションだった頃の管理AIが、かろうじてまだ生きているようです。
●第一章
鉄甲船でこの島に乗り込んだ所からスタートです。小型艇用のドックから侵入し、要塞内のコンキスタドール達を倒しながら中枢部に向かってもらいます。尖塔上になった島のてっぺんを目指せば道中でコンキスタドールを殲滅できるでしょう。
内部は宇宙ステーションだった頃の名残を残していますが、そこかしこが破損しているため、開けた場所と狭い場所が混在しています。
敵は拙いながら人語を操れます。オウムに間違えられるとガチギレするそうです。
●第二章
島の中央で、ここのコンゴウ様達が崇めているボス格のコンキスタドールとの戦闘になります。
天井の開いた広間のような場所で、巨大な鳥と戦うイメージで挑んでください。
●第三章
ボスとの戦闘に無事勝利すると、戦場となった島の中央部付近が崩壊を始めます。
何とか脱出してください。
以上になります。それでは、ご参加お待ちしています。
第1章 集団戦
『コンゴウさま』
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POW : オウムじゃねぇ。インコだ
【嘴】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : 回転尾羽斬り
【ふさっと伸びた尾羽】が命中した対象を切断する。
WIZ : 鮮烈なる絶叫
【耳を劈く叫び】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
イラスト:橡こりす
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アメリア・イアハッター
ハミングバード島……いえ、ステーション?
なんだか可愛い名前だね
戦いが終わったら、AIさんに名前の由来とか聞いてみたいな
宇宙バイク「エアハート」に跨り、ドックから侵入する
SSWの宇宙ステーションだというのなら、破損していたとしてもそれなりに広い筈
可能な限りバイクで進んでいく
敵に対しては速度を活かして先制攻撃を仕掛けていく
敵の反応が鈍ければUCを発動して追い風、すなわち敵からしたら向かい風を発生させ、動きが鈍った所にバイクから跳躍して蹴り攻撃
敵が向かってくればUCを発動してバイクから素早く飛び降りて攻撃を避け、壁や天井を蹴って反転し風と共に蹴り飛ばす
オウムとかインコとか言う前に、そもそも鳥なの…?
●先陣
世界を超えて、宇宙から海へ。奇妙な、そして最期であろう旅路を終えた宇宙ステーションに、久方ぶりに船が降り立つ。それは、在りし日に停泊していたであろう宇宙船とは、比べようもない大きさではあったけれど。
鉄甲船から飛び出したツバメが一羽、アメリア・イアハッター(想空流・f01896)の駆る宇宙バイク、エアハートは、宇宙船のドックに当たる部分から島内へ素早く飛び込んでいった。
「思った通り、いけそうね!」
目の前に伸びる『道』を見据え、アメリアが笑む。さすがはSSWの建造物、元が宇宙規模の代物というだけあり、通路にできる場所は十分に広い。これならばさして速度を落とさぬままに進んで行くことができるだろう。瓦礫と羽毛で茶と赤に塗られた床を蹴立てて、その先へ。
『ようこそ、ステーション『ハミングバード』へ』
と、そこで艦内の放送機材を使ったのか、雑音混じりの声が響く。
「ハミングバード……? 身体は大きいのに、なんだか可愛い名前ね」
角を曲がったところで、建材とは異質な水晶塊にぶつかりそうになり、咄嗟に車体を傾ける。不規則な柱や壁のように現れるそれは、恐らくあとから付け足されたものなのだろう。しかし、水晶が自然に生えてくるようなものではないはずだが――。
辺りを観察しながら走行する彼女に、再度声が届く。
『警告。当ステーション内の通行規定速度を超えています』
「うーん、こういう状況だし大目に見てくれない?」
『他乗務員とのトラブルも、ご遠慮いただきたく――』
「それもちょっと、無理かなあ」
響く声の正体に当たりを付けながらも、アメリアは申し訳なさそうにそう答え、跳んだ。
向かう先には赤い影。情報にもあった赤い鳥型のコンキスタドールが、アメリアの方をようやく発見したのか、目を丸くしている。それが何かを言う前に、逆巻く風がコンキスタドール――コンゴウ様の羽毛を前から後ろへと撫でつけた。それは自然のものとはまた別の、アメリアの巻き起こした突風だ。翼を広げるわけにもいかず、一時的に身動きの取れなくなったコンゴウ様へ、逆に突風に背を押される形でアメリアが迫る。
「ちょっと道を開けてね!」
「クェー!?」
頑丈な黒いブーツがその顔面に叩き込まれ、たまらずコンゴウ様が吹き飛んでいく。壁と天井でそれぞれ一回跳ね回ったその姿に、周りに居た別のコンゴウ様達もわいわい騒ぎ始めた。
「シンニュウシャ? 侵入者ダ!」
「ドア、閉メロ、ハヤクハヤク!」
そんな声に反応してか、アメリアの前方に、隔壁らしきものが下り始める。
しかし、遅い。宇宙バイクに着地した彼女は速度を落とさぬままに閉じかけたそれを突破し、再度跳躍する。
風に乗るその姿は矢のように。鋭い跳び蹴りが、コンゴウ様の群れをまとめて弾き飛ばした。
「アーーッ!?」
一時的に狭くなった通路を、その丸い体が跳ね回り、その内一つが偶然アメリアの腕に収まった。
「えっ」
「……」
両手で受け止める形になってしまったコンゴウ様の、つぶらな瞳と目が合う。絶対このアイパッチは飾りだと思うけれど……そもそもこの造形は何だろう。オウムとかインコとか種族の話の前に、鳥なの? という疑問がアメリアの脳裏を過るが。
「……良い帽子ね」
「ソウダロウ、カッコイイ!」
何となく口にしたそれに、海賊帽を見せびらかすような仕草でコンゴウ様が答える。海賊であるところ自分にひれ伏し、我が尾羽の餌食となるが良い。そんなセリフを最後まで並べる前に、アメリアはボールみたいなその敵を、おもむろに放って、蹴り飛ばした。
色々と疑問はあるが倒せば大体解決である。
「さ、先に進みましょ!」
おそらくこの赤い鳥はまだまだ居るだろうが、この調子で蹴散らして進めば良い。
再度宇宙バイクに跨って、彼女は奥へと進んでいった。
大成功
🔵🔵🔵
菱川・彌三八
此奴ァ前に見た鉄の建物たァ違うな
これが空を飛んでたって?へェ
話がでかすぎやしめえか
喋りやがるし勝手に動くし、只々関心する
入るにゃ多少苦心もしたが
で、中はアレか
この餅みてえな鳥ァ何処にでもいやがる
煩ェから嫌ェなんだよ…
今までの媚びた奴らよりゃ余程骨ァありそうだがヨ
此方も鳥で
狭所は壁床三方に描いた群れを其の侭奴ら迄走らせる
多少広けりゃ花の吹雪が如く周囲に広げて数叩く
ちいと圧し潰す様に、距離空ける様に
如何せん此れよ、あゝ……うるっせぇ!
余りに酷きゃ気合いの一喝
声のでかさじゃ劣る気ァしねェ
腹いせに一匹手掴みで壁に叩きつける
何、只の八つ当たりサ
工夫もしようがねえからよ、後ァ上行きゃいいんだろ?
話が早ェや
●翼の群れ
鉄甲船から降りたところで、菱川・彌三八(彌栄・f12195)はその宇宙ステーションとやらの様子をしげしげと眺めていた。以前見たことのある鉄の建物とも、これは大きく違うようで。
「へェ、こいつが空を飛んでたってかい」
そいつは結構、と彌三八は苦笑まじりに頷いて見せる。しかし、いくら何でも話がでかすぎるだろう。実感の伴わない感想を漏らしながらも、彼は扉へと手を伸ばした。見た目としてはのっぺりした襖か引き戸といった風情だが、その扉は力を込めてもぴくりともせず。
「おい、開けって」
『ドアを開きます』
突如返ってきた言葉に彌三八が手を離すと、目の前で扉は勝手に開いた。
『ようこそ、ステーション『ハミングバード』へ』
「……喋りやがんのか」
はあん、と得心いったように言いながら、開いたそこから内部へと踏み込む。扉の外から見ていたのと同じに、朽ちかけた建材でできた通路が、その先に向かって伸びていた。汚れた道のあちこちには、巨大な錆色水晶が、上から無理やり色を置いたようにいくつも姿を見せている。そして――。
「アァ、誰カ来タ! 誰カ来タ!」
「我等ノアジトニ乗リ込ンデ来ルトハ、不届キナ!」
「……またコイツらかよ、何処にでもいやがるなァ」
ぎゃあぎゃあと騒ぎ出した丸いフォルムの鳥達を見て、うんざりしたように彼は言う。似たような種類のオブリビオンは既に何度か見ている。それらに比べると、海賊を気取っている分勇ましそうに見えるだろうか。
「ま、煩ェのは変わんねぇか」
やれやれと頭を横に振って、彌三八は商売道具の絵筆を手に取った。
こちらを追い返そうと襲い来る赤い鳥の群れを、迎え討つように筆先が走る。空中三方に墨が踊って、描き出されるは此方も同じ、鳥の群れ。そこから生まれた『千鳥』達は、コンゴウ様の群れへと一斉に突撃し、前列に立った数羽ごと、壁を、床を、黒く描き出していく。
「ワー、ヤラレタ!」
「ヨクモ、ヨクモ!」
仲間の仇と言わんばかりにわめき始めた彼等は、そのまま口々に雄叫びを上げ始める。耳を劈くようなそれに、彌三八は顔を顰めて。
「あゝ……うるっせぇ!」
一喝。敵の声を上書きするような大音声に次いで、襲い来た一羽を鷲掴みに、壁へと思い切り叩き付けた。苛立ちをぶつけるような一撃に、一瞬鳥たちも静まり返るが……。
「アァー! ヤッタナ手前!」
「全員デカカレー!」
「おお、ちったァ骨があるじゃねぇか」
かかってきやがれと笑う彌三八に、丸っこい鳥達は次々に襲い掛かっていった。
「はッ、このまま上を目指せば良いンだろ? 話が早ェよなぁ」
千鳥の群れと共にそれを迎撃する構えで、彌三八は一歩、目的地に向かって駆け始めた。
大成功
🔵🔵🔵
シキ・ジルモント
◆SPD
この世界には言葉を話す鳥がいると聞いている
なるほど、これが喋るオウムか
…なんだ、違うのか?ああわかった、そんなに怒るな
しかしあの尻羽、見た目に反して危険だな
怒らせてしまったものは仕方ない
相手の数と尾羽を警戒してとにかく距離をとるように走り、狭い通路にでも誘導する
狭い通路なら多方向からの同時攻撃はできないだろう
追いかけてきたものを一体ずつ確実に撃ち落とす
攻撃はユーベルコードで回避を試みる
相手が警備システムを使う様子があれば、警戒と同時に観察する
使い方を覚えることができれば、こちらもシステムを利用できる可能性がある
あのオウム…インコでも扱えるようだからな
試しに使ってみてもいいかもしれないな
●怒れる鳥達
島の中へと踏み込んで、進むことしばし。恐らくは人員の居住区画だったと目される場所で、シキは鮮やかな赤色の鳥達と対峙していた。侵入者だ、と騒ぐ丸っこいフォルムのそれらを一瞥して、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)はぽつりと呟く。
「この世界には言葉を話す鳥がいると聞いているが……なるほど、これが喋るオウムか」
その何気ない一言に、騒がしくなっていた空気が一瞬、凍り付く。
「……アァ?」
「兄チャン、今なんつった?」
「喋るオウムだと。……なんだ、違うのか?」
「全ッ然違ウ!!!」
「失礼ナ奴!」
ぎゃあぎゃあと先程よりうるさく騒ぎながら、先頭の一羽がだいぶ頑張った感じのスピードでシキへと迫る。風を切って飛んできたその丸っこい鳥は、彼の目の前でくるりと回って――。
「――おっと」
シキの欹てた耳がそれを察知し、状態を仰け反らせて躱す。宙を行き過ぎた尾羽は、その一見かわいらしい造形と見合わぬ鋭さを感じさせる。
「吐イタ唾ハ飲み込めネーゼ、兄チャン」
「真っ二つになって反省シナ!」
「わかった、わかった。そんなに怒るな」
宥めてはみるが聞く様子はない。低くドスの利いた声を上げて、次々と迫りくるコンゴウ様達から逃れるように、シキは通路を駆けだした。幸い飛ぶスピード自体はそう早くない、有利な場所まで誘導する事も十分可能だろう、が。
「閉じろ、トジロ!」
「カギもカケテ!」
シキの目の前で、次の通路へと続く扉が塞がれて、カチリと小さく音が聞こえる。ロックされた、などと確かめている暇はない。閉ざされた扉を背に振り返ったシキは、即座にハンドガンの引き金を引いた。幸い通路はほぼ直線で、シキを追ってきた群れの形は前後に長く伸びている。先頭から順に撃ち抜いていくが――。
小さく舌打ち。このままでは数の差で押し切られかねない。そこで、シキは先程の敵の動きを思い出す。
どうやらこの『島』はまだ生きており、音声に応える機能がまだ残っている。声紋認証やら何やらがあったとしても、この鳥達がそんなことまでしている可能性は低い。ならば。
「照明、点灯」
ぱっと、長らく使っていなかったせいか、とっくの昔に朽ちていたのか、一瞬だけ通路の照明がスパークした。
「ぴゃっ」
「まぶしーい!」
あるものは目をくらませ、あるものはびっくりして壁にぶつかり、鳥の群れが形を崩す。
「よし……!」
そこにさらなる銃弾を撃ち込んでやりながら、シキは群れを突破しながら別の通路へと走り込んでいった。
床から生えた錆色の水晶を踏み越えて、追ってくる鳥達を迎撃しながら、島の奥へ。
大成功
🔵🔵🔵
ジャック・スペード
これは、宇宙ステーションか
……何処か懐かしい光景だな
だが、郷愁に浸っている場合でも無いか
島の頂上目指して慎重に進んで行こう
生きてる監視カメラの類があれば
銃弾で撃ち抜いて破壊を
扉を見つけても直ぐには開かずに
扉周辺の壁に電気纏った涙淵を突き刺して
健在のシステムなどあれば狂わせたい
そしてアレがコンキスタドール
オウム――に似た彩のインコか
随分とカワイイ見た目だ
小動物は好きだ、せめて介錯は一瞬で
彼らの叫び声が聞こえる前に素早く行動
涙淵を炎纏う花弁に変えて
インコ達へ範囲攻撃しよう
取り零しはリボルバーから炎の弾丸を乱れ撃ち殲滅狙う
損傷は激痛耐性で堪え
フォローが必要な仲間が居たら
シールドを展開して庇うとしよう
●突破
扉を閉じろ、そして奴らを見張れ。コンゴウさま達はかろうじて生きている島の『機能』にそう呼び掛けて、猟兵達の動向を探っていた。
モニターの並ぶ一室、半数以上がブラックアウトしている中で、まだ映る画面に目を向けていたコンゴウさまは、漆黒のボディの彼――ジャック・スペード(J♠️・f16475)を追っていたようだが。
通路を進んでいた黒い影は、おもむろに拳銃を抜き放つと、彼の姿を捉えていた監視カメラを素早く撃ち抜いた。チェアに座ってそれを見ていたコンゴウさまは、ぴゃっと悲鳴を上げてそこから転げ落ちる。
そしてまた別室では、ジャックの行く手の扉を閉めてロックをかけ、ご満悦状態のコンゴウさま達が居たけれど。
「……クァ?」
当の扉の横でバチバチと音が鳴るのを聴いて、彼等は揃って首を傾げる。壁の中の電装部分に刀を突き立てられた――などと理解できる者など、彼等の中にはなかっただろうが。
『警告、扉の制御機能が失われました』
淡々と告げられる管理AIのアナウンスを背景に、力を失った扉が力ずくで開かれて、その向こうからジャックの巨体が姿を見せる。
きゃあ、とコンゴウさま達は悲鳴を上げて、各々にばたばた部屋を飛びまわり始めた。
――こうして宇宙船内を侵攻していく光景に、既視感を覚えながらジャックは進む。故郷の技術を色濃く感じさせる建造物を見ていると、やはり郷愁に浸りそうになってしまうところだが。
「アレが、件のコンキスタドールか?」
古い記憶にある光景、さすがにそこにはこんな連中は居なかった。オウム――によく似てはいるが、インコらしい。どちらにせよ見た目は随分とかわいらしい。
「この手の生き物は嫌いではないのだが……」
むしろ好きだが。だからこそ一瞬で終わらせてやろうと、ジャックは手にした刃を敵へと向けた。
『花送葬』、コンゴウさま達にも負けない色彩の、ゴデチアの花弁が室内に吹き荒れる。ブレードが変化したそれは、慌てふためいているコンキスタドール達を包み込み、体勢を立て直す暇も与えぬまま地へと落としていく。
「クァーッ、もう、前が見エナイ!」
「オレの帽子ドコいった?」
そんな中でも、とどめを刺される前に立ち直った者が数体。床を転がったり水晶柱の影に隠れたりしていた彼等は、それぞれに鮮烈な雄叫びを上げ始めた。
「よくもヤッタナー!」
「邪魔ァーッ!!」
聴覚センサーどころか全身を震わせるような音波攻撃。それに身を晒しながらも、構わずジャックは音の出所を順にポイントしていく。
「そこか」
反撃の弾丸は炎を纏う。大口径のリボルバーが途切れることなく銃火を噴いて、残りのコンキスタドール達を撃ち抜いていった。
大成功
🔵🔵🔵
ケビ・ピオシュ
SSWの技術はワクワクするねえ
さて鳥君達、君たちのボスの行方を教えてくれるかな?
教えて貰えると嬉しいのだけれど
ウウム、そうかい
結局上に向かうしかなさそうだねえ
道を開けてもらうよ、オウム君
ワッ!?
すまないねえ
インコ君だったかい
背より伸びる掌で、瓦礫を越えて、敵を薙いで
掌で移動も攻撃も担いながら戦うよ
小さな体の動きは遅くとも、掌での移動はまあまあ機敏さ
君達にこの島を与えてやる訳にはいかないからねぇ
しかしオシャレな帽子だね
それに私はメカニック
警備システムに杖とケーブルでハッキングしながら進もう
壊れて言う事を聞いてくれないシステムならば
仕方が無い、壊そう
古来より壊れた機械は叩けば治るものだよ
よいしょ
●帽子はオシャレ
こちらの通路は鳥だらけ。ぱたぱたと翼を振ったり、錆色の水晶塊の上に止まっていたり。とにかく上方から見下ろしてくるコンゴウさま達の様子を、ケビ・ピオシュ(テレビウムのUDCメカニック・f00041)は画面に映ったヒゲを撫でながら見上げる。
ふうむ、ふむ。丸っこいフォルムはともかく帽子はオシャレだね、と呟いて。
「さて鳥君達、君たちのボスの行方を教えてくれるかな?」
まずは紳士的に、穏便に、と声をかける。対する鳥達は、一応答える気はあるのか互いに顔を見合わせる。
「ユクエ?」
「ドコ行ったんだっけ?」
「知ラナーイ」
うん? とケビも小首を傾げる。正確な答えが返ってくる事までは期待していなかったが、とぼけられたのだろうか。
「ウウム、そうかい。とりあえず、上に向かってみるしかなさそうだねえ」
何にせよ、ここで考えていても埒が明かない。帽子を取って別れの挨拶を告げて、ケビはこの通路を抜けていくことにした。
「ありがとう、それではここを通してもらうよ、オウム君」
「アァ?」
その一言に、鳥達が揃ってケビへと首を向ける。能天気としか言いようのないその顔も、どことなく殺気だっているような。
「テメェ――」
「オレ達はオウムじゃねェ、インコだ!」
ばさりと翼を翻し、滞空していた個体が急降下。ワッと咄嗟に身を躱したケビの居た場所を、鋭い嘴が抉り取った。
「ああ、すまないねえ、インコ君だったかい」
「今更遅エーッ」
「その間違いダケハ許さねェからなーッ!」
翼を広げて全力の威嚇をしてくる鳥達から逃れつつ、ケビはその場を切り抜けるべく前へと駆け出す。直後、彼の背中から巨大な腕が伸びて――。
「アーッ!?」
襲い掛かろうとしていたコンゴウさまの一体を叩き落としながら、その手は壁を、地面を、順に掴む。
それを支えにケビの身体が浮き上がり、がれきを超えて、前へ。普段は周りがびっくりするから控えてはいるが、彼の場合、こうして移動した方が走るよりもよほど速い。
ブチキレながら襲い来る鳥達を打ち払いつつ、彼は通路の先へと駆けていく。やがて辿り着いたのは、何かの格納庫だった部屋。開かれた扉の先に滑り込んだケビは、素早く壁へとケーブルを繋ぐ。
「さあ、少し言う事を聞いてくれるかな」
コンソール部がまだ生きていることは、部屋に入る時に確認済み。メカニックでもある彼はその扉にハッキングをかけて、即座にその扉を閉めた。
ヒラケ、ヒラケと鳥達が命令を下しているが、ケビの掌握したそこには効果がない。そして。
「ああ、丁度良く物騒なものも付いているじゃないかね」
扉の脇に監視カメラ付きの機銃が。そちらにも電子の指先を伸ばし――。
海賊帽子の赤い球体を侵入者に設定。軋みを上げながら首を向けた機銃が火を噴いて、鳥達はきゃーきゃー悲鳴を上げて散り散りに飛び去って行った。
●AI
『不正なアクセスを検知しました』
突如、流れ出した無機質な音声に、ケビが画面上の眉を寄せる。
『すぐに接続をやめ、警備部に出頭してください。従わない場合、規定に基づき――』
ハッキングを感知されるとは、さすがSSWの機械と言ったところだろうか。
しかし古来より、壊れた機械は叩けば直るもの。こういう都合の悪い状態も、それで切り抜けられるかも知れない。
『――とは言え、ドローンも人員ももう居ないのですがね』
「……君」
振り上げかけた巨腕を止めて、ケビは自分の顎を撫でた。
システムメッセージを流しているその奥に、消えかけの微弱な『声』がある。
「そうかい。まだ、壊れてはいないのだね」
大成功
🔵🔵🔵
アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
蒼い海を超えるとそこは宇宙船だった
うんすごい光景だネ
AIは音声認識か
オープンセサミ
これで開くかな?
内部がいきなり壊れることはなさそうだけど
注意して行こうか
この丸いのが敵?
見た目に騙されてはダメだソヨゴ
丸いけど
冠羽があるのがオウム
無いのがインコだネ
一応コイツらはインコ
袖口からずるりと大鎌を引き摺り出して構える
気を抜かないで倒そう
丸いけど
ソヨゴがオウムと言った時の敵の反応に気づいた
オウムオウムと連呼しながら誘いをかけよう
UC発動
寄ってきた敵を触手で拘束しては斬る
敵の攻撃に対しては
インコってもっと大人しいよネ?うるさいのはオウム
と言いくるめる
中枢部はこっちだネ
行こうソヨゴ
城島・冬青
【橙翠】
アドリブ◎
朽ちた宇宙船とか文明が崩壊した未来感ありますね
気をつけて進んでいきましょう
どんな恐ろしい敵がいるかわから…か・可愛い!!
オウム君、すっごい可愛いね!
もふもふしてもいい?
オウムとインコって何が違うんだっけ…?
成る程
アヤネさんは博識ですね
可愛いけれど立ち塞がる敵なら倒すのみ
そしてついでにモフりたい
刀を抜き手近なインコを斬りつけ更にモフる
見た目が可愛いから心が痛む
嘴攻撃はダッシュと残像で回避します
ひぇ!めっちゃ早い
間に合わなかったら武器受けで直撃を防ぐ
鳥には鳥をぶつけます!
ってことでUCの見えないカラス君で適度な距離を保ちつつ攻撃し
確実に数を減らす
ええ、中枢部に向かって進みましょう
●インコとオウムの違い
オープンセサミ。
アヤネ・ラグランジェ(十二の結び目を解き放つ者・f00432)の声に応えて、宇宙ステーションだったその建物の扉が開く。蒼い海を超えた先にあるのがこれだというのは、グリードオーシャンの常とは言え中々不思議な光景ではある。
「朽ちた宇宙船とか文明が崩壊した未来感ありますね」
同行する城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)の言葉に、「気持ちはわかる」と頷いて。
「とりあえず、内部がいきなり壊れることはなさそうだけど……」
注意して行こうか、と声をかけ、アヤネは冬青と共に奥へと進み始める。
過ぎた年月を思わせる汚れに、転がった瓦礫が足を鈍らせる。時々見つかる錆色の水晶の近くは、崩れた天井の隙間から日が差しており、全体的に視界に不自由しないようになってはいるが。
「気をつけて進んでいきましょう」
足元だけでなく、道の先や死角にも気を配りながら、冬青が言う。
「どんな恐ろしい敵がいるかわから……」
そんな彼女の視線が、ある一点で止まった。通路の先の小部屋に見えるのは、赤い羽根の丸っこいフォルムの――。
「か、可愛い!!」
「待って、見た目に騙されてはダメだソヨゴ」
ヨウ、と片手ならぬ片羽を上げるその姿に、冬青が完全に食いついた。
「で、でもアヤネさん! こんなに丸いですよ!?」
「いや丸いのは確かだけどネ」
落ち着いて、と宥めつつ、アヤネは周囲にも気を配る。ここに一羽居るという事は、この先には恐らく何羽も控えているのでは。
そんな懸念を一緒に認識しながらも、冬青は思わずそれに声をかけた。
「オウム君、すっごい可愛いね!」
「アァ……?」
決定的なその単語に、ぎらりとコンゴウさまの眼が光る。
「もふもふしてもいい?」
「テメェ、今なんつっタ……?」
「えっ、もふもふしてもいいって――」
「ソッチじゃネェーッ!!」
ばさーっと翼を広げて飛び掛かったコンゴウさまだったが、それを予測していたアヤネが、その動きを途中で断ち切った。袖口から取り出した大鎌の柄で叩き落とした形になるだろうか、まるっこい形のコンゴウさまが、つぶれた饅頭のように地に伏せる。
「オレはオウムじゃねェ、インコだ……」
ぐったりとしてしまったコンゴウさまの遺言に、冬青が瞑目する。
「オウムとインコって何が違うんでしたっけ……?」
「良いかいソヨゴ、冠羽があるのがオウム。無いのがインコ」
「成る程、アヤネさんは博識ですね」
ではこれは、とおもむろに倒れた鳥の海賊帽を取り上げれば、つるっとした頭が現れた。
「では、この子達はインコということですね」
「そういうことだネ」
果たしてインコがこんなに丸いものなのかは、まだ議論の余地があるけれど。とにかく今はそれどころではない。気絶した一羽を名残惜し気にモフっていた冬青に向かって、別の部屋からさらなるコンゴウさま達が迫ってきていた。
「とっても可愛いけれど、立ち塞がる敵なら――」
「うん、ここで倒してしまおう」
どことなく残念そうな冬青の言葉に、アヤネが頷く。
と、決意を固めたとはいえ見た目が可愛らしいのは変わらない。少しばかり心を痛めながら、冬青は抜いた刀で迫る一羽を斬り払う。思わずモフろうと手を伸ばすが……。
「ひぇ! めっちゃ早い!?」
続く一羽が急降下してくるのに勘付き、咄嗟に刀の腹で受け流す。まだまだ続く群れの突撃に、これはダメだと冬青が逃げに徹したところで。
「一体何羽居るのかな、このオウムは?」
アヤネがあえてそう口にする。
「オイコラァ!」
「オウムじゃネェって言ったろ!!」
急激な反応を見せた数羽が狙いを変える。鋭い嘴がアヤネを狙うが。
「術式軌道――ウロボロス」
彼女の影から浮かび上がった蛇に似た触手が、それらを空中で絡め取った。
「アァ――!?」
面食らった様子の彼等は、それでもなお攻撃を試みる。武器は嘴や尾だけではない、その声もまた――。
「インコってもっと大人しいよネ? オウムはすっごくうるさいけどさ」
えっ、とそんな一言に、コンゴウさま達が言葉を詰まらせる。雄叫びを上げ損ねたそこを、アヤネの大鎌が順に切り裂いていった。
そしてこちら、冬青の方も、敵の数が減れば十分に対応は可能だ。
「さあ、カラス君と遊んでもらいましょう」
『クラーニオ・コルヴォ』、鳥には鳥を、彼女の呼び出した不可視の鳥が、その嘴で敵を突き倒す。怯んだそこに踏み込み、一閃。冬青は残りの数羽を順に落としていった。
そうして、場の一掃が確認できたところで、二人は共に得物を仕舞う。
「ソヨゴ、怪我はない?」
「少し胸が痛むくらいですよ」
互いに無事を確認して、アヤネと冬青は揃ってその部屋を後にした。
「中枢部はこっちだネ」
「ええ、行きましょうアヤネさん」
向かう先は、宇宙ステーションの残骸――その中枢部が、尖塔状に聳え立っていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と
ん、海賊船と鳥、合う(笑顔でこくんと頷き)
ふふ、コンゴウさまは大きくてもインコ
オカメインコは小さくてもオウム
鳥の不思議
宇宙船が落ちて島になるのも不思議
不思議がたくさん
とり、みらくるわーるど!
奥まで調べさせて?
まつりんと一緒に、ダッシュでコンゴウさまのもふもふに近付き【絶望の福音】
尻尾もすっとしてかっこいい
けど当たると痛いから、第六感と逃げ足も駆使して回避
ん、まつりん嘴くる!
まつりんに教えて、更なる尻尾は人形のうさみん☆でガード
うさみん☆、そのまましっぽの付け根がっちりホールド
ここだと嘴も翼も届かない
ね、落花生好き?
あげるから道案内お願いしたい
歌いながら進もう?
木元・祭莉
アンちゃん(f16565)と!
わわ、見て見てー。
さすが海賊船だね、綺麗なオウムがいるよー?
え、怒ってる!?
あ、ゴメンね、海賊船じゃなかった?(そっち)
へー、インコさんなんだー。
おいらたち、こないだインコの王様に会ったよ!
もふにあんまり手荒なコトはしたくないケド。
オブリビオンなら仕方ないね!
疾走発動!
オウムたちの間を高速で飛び、空中戦を挑むよー。
嘴を避け、死角から綾帯で巻き取って視界を奪い。
ヒットアンドアウェイで、如意な棒からの衝撃波照射。
嘴は、声と勘で急所を外して受け止め。
カウンターで、拳を打ち込む!
一羽捕まえて、道案内させるのはどうかなぁ?
おいらが素敵な歌を教えてあげるよ。どう?
……イヤ?
●赤い鳥と歌う
この世界に落ちてからどれほど経つのか、遺跡のような風体になった島を、木元・祭莉(とっとこまつさんぽ?・f16554)は物珍し気に眺めながら進んでいく。好奇心旺盛な少年にとっては、色々と興味の惹かれる場所ではある。転がる瓦礫や、錆色の水晶の柱、そして破れた天井から見える空に目を輝かせながら、順調に奥へと向かい……少しばかり狭い通路を抜けたところで、彼方を飛ぶ赤い翼の鳥達を発見した。
「わわ、見て見てアンちゃん!」
そう言って、後ろをついてきていた妹――木元・杏(食い倒れ日和・f16565)の袖を引く。尖塔のようになった箇所を、赤い鳥が飛びまわっている様子は、なかなか絵になるもので。
「さすが海賊船だね、綺麗なオウムがいるよー?」
「ん、海賊船と鳥、合う」
祭莉の指差すそれを一緒に眺めて、杏は笑顔で頷いた。
羽根を忙しくばたつかせ、空中で円を描いていた鳥達が、翼を広げて風に乗るように滑空し始める。
「すごーい、皆で列を作ってるよ」
「……? 何だか、こっちに……」
来てない? そう杏が小首を傾げた頃には、先頭の一羽が二人に向かって急降下してきていた。
「オウムって言ッタのはテメェカァーーーーーーッ!!」
「え、怒ってる!?」
咄嗟に飛び退いた二人の間をすっ飛んでいったコンゴウさまは、急旋回してもう一度祭莉を狙う。
「あ、ゴメンね、海賊船じゃなかった?」
「ソッチジャネェー! 聞けヨ話を!!」
「まつりん」
ギャアギャア喚く鳥の声を抑えるように、杏は祭莉に言う。
「コンゴウさまは大きくてもインコよ」
「へー、インコさんなんだー」
でも、オカメインコは小さくてもオウムなんだって。不思議。
そんな言葉を交わしながらも、杏の視線は鳥達の飛んできた方角、尖塔状の場所へと向いている。平然としてはいるが好奇心旺盛なのは兄と同じ、そもそも宇宙船が落ちてできた島、という時点で彼女にとっても興味深いものなので。
「あそこには何があるの?」
「クァーーー! 教えネーヨ!!」
しかし完全にぶち切れた様子のコンゴウさまは、反抗的にそう返した。見れば、二人の周囲を、怒りに満ちた鳥達が取り囲むように舞っている。
「あんまり手荒なコトはしたくないケド……」
襲ってくるなら仕方ないね、と祭莉は自らの身に白い炎を纏わせる。『風輪の疾走』、飛翔能力を得た彼は、コンゴウさま達を上回るスピードで空中戦を挑む。一方の杏もユーベルコードを発動、敵の動きの先を読んで、迫り来る敵の突撃から身を躱しにかかった。
「尻尾もすっとしてかっこいいのに……」
当たると確実に痛いだろう。回避に徹した杏が時間を稼ぎ、狙いが分散している間に、祭莉は腰帯を踊らせて突撃してきたコンゴウさまの視界を塞ぎ、なんか引っ張ると伸びる棒で打ち据えて地に落していく。
「大人しくシテロ!」
「ん、まつりん嘴くる!」
杏の警句に応えて、祭莉は一つ宙返り、死角に向けて拳を振るい、突撃してきた一羽を見事カウンターで撃退して見せた。
徐々に数を減らしていく敵を一通り眺めて、思い付いたように祭莉が口を開く。
「そうだ、一羽捕まえて、道案内させるのはどうかなぁ?」
なるほど、とそれに頷いた杏は、鋭い尾羽で攻撃してきたコンゴウさまに、自らの操るうさみん☆を差し向ける。切り裂く一撃をその身で受け止め――。
「うさみん☆、そのままホールド!」
がっちりと尾の付け根を掴み取った。
「く、くぁー!」
これでは尾でも嘴でも攻撃できない。逃れようとばたばた暴れる鳥を、うさみみメイドはのしかかるようにして押さえつけた。
「ねぇねぇ、道を教えてよ。代わりにおいらが素敵な歌を教えてあげるからさ」
「アァ? べ、別にテメェナンカに教エテもらわなくても……」
「ね、落花生好き? これもあげる」
「クァー……」
大人しくなった。餌付けと交渉で見事懐柔に成功した二人は、祭莉の頭の上に止まったコンゴウさまと共に、歌いながら奥へと進んでいくことにした。
「そういえば、おいらこの間インコの王様に会ったよ」
「コンゴウさまにも王様が居るの?」
「アァ? オレらのボスは王様よりスゲーヨ」
「ふーん、どんなのかなぁ」
楽しみだね、と二人は視線を交わして微笑んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エドガー・ブライトマン
そこかしこに見える銀色から、宇宙船の名残を感じる
私、宇宙船に乗ったことあるらしいんだ。楽しかったみたい
かつてはキミも宙を飛んでいたんだねえ
気の遠くなるほど遠い宇宙から、海と隣り合わせの島へ
どっちの方がキミの好み?なんて聞いても応えやしないよね
さてさて、コンゴウ君。ココはキミの巣じゃあないぜ
キミの帰るべきは鳥籠でも森の中でもない
ここではない海のなかさ
私の剣が届くよう、コンゴウ君らと素早く間合いを詰め
それにしてもキミは本当にまるいねえ
オウムってそんなに丸くなるものなんだ
……と、怒られる前に“Hの叡智” 防御力を重視
フフフ、怒られるタイミングみたいなの掴めてきたよ
誰かの棘でよくしばかれているからかも
●その棘よりは
朽ちかけてもなお、在りし日を思わせるその姿。降り積もった瓦礫や、錆色の水晶の合間に見える滑らかな銀色を目にして、エドガー・ブライトマン(“運命”・f21503)は高く遠い、空の彼方に思いを馳せる。彼の手記によるならば、エドガー自身も宇宙船に乗ったことがあるはずで、殊更楽しい思いをした……ということなのだが。
「かつてはキミも宙を飛んでいたんだねえ」
できればその頃に会って見たかったと、白く輝く壁を撫で――視線を、頭上へと移す。
少しばかり開けた作りのその部屋は、ステーションの各区画を繋ぐ交差点に位置していたようだが、今では赤い鳥達の、翼を広げる格好のスペースと化していた。こちらを見下ろすいくつもの黒丸……のっぺりしたコンゴウさまの眼を見返して、エドガーは彼等に言う。
「さてさて、コンゴウ君達。ココはキミの巣じゃあないぜ」
悪漢達に立ち向かう、物語の王子のように。そして、すらりと抜き放ったレイピアを、そちらへと向けた。
「オウ、他所様ノ縄張りで吠えるジャネーカ」
「キミ達だって、ここに間借りしてる身だろう?」
からかうように剣の切っ先を揺らす彼に、コンゴウさま達は互いに顔を見合わせる。
「ンン……そう言エバ……」
「エエイ、ウルセー! ヤッチマエー!!」
短絡的に結論を出して、彼等は一斉に翼を広げ……飛び立とうとしたその時には、素早く踏み込んだエドガーの間合いに捉えられていた。
流れるように放たれた突きは、咄嗟に首を竦めたコンゴウさまの頭を掠め、その上に乗っていた海賊帽だけを串刺しにする。
「く、クァー!?」
「ああ、キミにも首はあるんだね……?」
引き戻したレイピアの、半ばに突き刺さった帽子をくるくる回しながら、エドガーは再度敵に目を遣る。
……最初から思っていたことではあるが、帽子を失うと、なおのこと、こう。
「それにしてもキミは本当にまるいねえ……オウムって、そんなに丸くなるものなんだ」
「ハァ!?」
ぽつりと漏らした感想に、ぷるぷる震えていたコンゴウさまの眼が逆三角形に変わった。
「誰がオウムだコラァ!?」
「――おっと」
硬い嘴を前にしての突進。奇襲気味の一撃だが、こちらは落ち着き払ったもので。
ひとつ深呼吸を終えていたエドガーは、レイピアの細い刀身でその突撃を受け流す。『Hの叡智』、瞬き二つでさらに集中力を増した彼の剣閃が、姿勢を崩した敵を一薙ぎ。
確たる手応えに、後ろも見ぬまま彼は次の敵へと向かう。
「すまないね、何と言うか……こういうのは慣れているみたいなんだ」
彼の場合、ちょっと口を滑らせると、即座に誰かさんの棘がしばきにくる。嬉しい話ではないが、その辺りの場数がものを言った形だろうか。
さらに向かい来る鳥達を、エドガーは一体ずつ、難なく捌いていった。
剣を鞘に納めれば、その宇宙ステーションだった『遺跡』に静寂が戻る。
「……随分騒がしいところに来てしまったね」
ふと、そう口にする。遠い宇宙から、海原へ。無音の宇宙から波の音、そして鳥の声の絶えないこの場所に落ちてきた『それ』は何を思うのだろうか。
「ちなみに、どっちの方がキミの好み?」
そこまで問うて、彼は小さく笑った。そんな風に聞いたところで、応える者などいないのだから。
『賑やかなのも悪くはないのですが、もう少し静かだと助かりますね』
「……うん?」
大成功
🔵🔵🔵
九之矢・透
へええ、話にゃ聞いてたけど
他の世界のモンが島になるって不思議だなあ
【SPD】
目指す所が分かりやすいってのは助かるな!
青い空に映える赤い羽根を探しては、
見つからない様に物陰に身を隠しながら進もう
それにしてもこのキラキラした水晶は何なんだろ?
ある程度近づいた所で木の実を一盛り置いてみようか
ウチの小鳥やリスは好きなんだけど、コイツらはどうかな?
息をひそめて様子を伺う
うまいこと引き付ける事が出来たなら、広範囲を狙って『不羈への枷』!
ふっさりした羽も、意外とゴツイ嘴も網の中へ
捕らえたなら柳で攻撃だ
それにしてもアンタ海賊っぽい帽子被ってるし、眼帯してるし
海賊っていったらさ、オウ……
イヤなんでもないですハイ
●巧妙な罠
瓦礫を一つ跳び越えて、足音を立てぬように膝を折りながら着地する。崩れかけた遺跡のようになったそこを、九之矢・透(赤鼠・f02203)は息を潜めながら進んでいく。スペースシップワールドで見たのと同じような構造物。けれどあの世界では、こうして朽ちたものを目にすることはなかったはず。
こんな風になるのか、とグリードオーシャンの不思議を体感しつつ、彼女は目指す場所――島の中央、尖塔状になった残骸の頂上を目指していた。
「目標地点が分かりやすいってのは助かるよなー」
砕けた天井の隙間からそれを見遣り、都度方向を修正。そうして進んでいくうちに、透は何羽も止まった赤い翼を発見する。
「そんなに多くはない……か?」
姿以外に、鳴き声や羽音に聞き耳を立てて、そろりそろりと死角を縫うようにして歩み――。
「この辺で良いかな……」
ポケットから取り出した一盛りの木の実をその場に置いて、もう一度近くに身を潜めた。
彼女の連れている小鳥やリスならこれで一発なのだが……。
「クァー……?」
少数で固まっていた内の一羽が、「美味しそうなものがある」と小首を傾げる。それに気付いた周りの鳥達もゆっくりと首を巡らせて。
「オヤツだ!!」
「アッ、最初に見ツケタのはオレだゾ!」
「ウルセー! 海賊が順番ナンカ守るカヨ!!」
即座にぎゃーぎゃーと喚き合いながら、彼等は木の実へと殺到した。
「う、上手くいった……?」
むしろこんなにちょろくて良いのか、と頭を悩ませつつ、透はそちらに近付き――『不羈への枷』、食餌に夢中になっている彼等に向かって投網を放った。
網は空中で大きく広がり、集団を文字通りの一網打尽にする。こうなっては武器となる嘴も尾も上手くは振るえないだろう。
「アーッ、罠ダッタ!」
「何だヨ、食わナイならオレがモラウゾ」
この期に及んで、網の下で意地汚い争いを繰り返す彼等の姿を、呆れながらも透が見下ろした。
「なんか……緊張して損したな」
「オノレーッ」
「コンナ巧妙な罠を使うナンテーッ」
まだまだ元気に喚いている彼等を改めて観察すれば、ふっさりした羽にゴツイ嘴と、その装備が強烈に存在を主張しているのがわかる。
「一応、自称とは言え海賊なんだなアンタら……」
「ソウダゾ」
「立派な海賊ダゾなめんナヨ」
「それっぽい帽子の上に眼帯までしてるもんな……でもさ、海賊っていったらオウ――」
「「「アァ?」」」
「イヤなんでもないですハイ」
触れちゃいけないやつだコレ。一斉に目を逆三角形にしたコンゴウさま達からそっと目を逸らして、透は投げナイフを取り出した。ぶちキレて大暴れされる前に、どうにか片付けてしまおう。
そんなこんなでその場の敵を掃討し、透はさらに先へと向かう。
半開きのまま動かなくなっている扉の隙間を潜り、赤茶色に輝く水晶壁を迂回する。と、そこで彼女は一つ首を傾げた。
「……それにしても、このキラキラした水晶は何なんだろ?」
手を伸ばせば、錆色の外見に似合わず滑らかな手触りが返る。柱に壁、岩のような塊、そこかしこに、そして不規則に並ぶそれらを、改めて観察する。
機械技術などに詳しくない透でも、宇宙船から水晶が生えてこないことは予想がつくのだが、それ以上の答えは出てこない。
とりあえず疑問を保留しながら先へと進み、やがて彼女は目的の場所へと辿り着いた。島の中央、尖塔状になった『遺跡』の最上部、そこは天井の崩れたドームのようになっていた。地を覆う瓦礫と、聳え立つ幾つもの赤茶色の水晶。崩れた天井からは空が見える。
ふと、そこで差していた日が翳った事に気付いて、透は帽子のつばを摘まみながら上空を見上げた。
日の光を遮る影。そしてそこから零れた錆色の光を見つけ、その眼を細めて――。
「――うわ」
悲鳴は半ばで途切れる。次の瞬間、彼女の居る場所から十歩ほど歩いたところに、天から落ちてきた巨大な水晶柱が突き立っていた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『潮騒』
|
POW : 青い鳥
【朽ち続ける苦痛を伝播させ、心身を砕く叫び】を聞いて共感した対象全てを治療する。
SPD : 不死鳥
【自壊と共に破壊を振り撒く、擦れる翼の羽音】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
WIZ : 極楽鳥
【錆びた水晶を生成し、侵食させる砕けた欠片】が命中した対象を治療し、肉体改造によって一時的に戦闘力を増強する。
イラスト:100
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ルーダス・アルゲナ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●潮騒を歌う鳥
青い鳥は幸福を。不死鳥は生命を。極楽鳥は色彩を。
全てを持ち、全てを与える、童話と言うより神話の住人に近いその鳥は、この世界でとあるメガリスを飲み込んでしまう。
それは、接触したものを、水晶に変えてしまう性質の悪い一品。この鳥も例に漏れず、その影響下に置かれることになったのだが。
侵され、歪み、変質し――やがて水晶に呑まれ朽ち果てるはずのその身は、元が不朽であるが故、永久に朽ち続ける運命を負う。
苦痛を伴い伸び続ける水晶は、きっと、その心臓と化したメガリスが失われるまで止まらない。
●見上げる視点
――島の中央、尖塔状になった『遺跡』の最上部。そこは、天井の崩れたドームのようになっていた。地を覆う瓦礫と、聳え立つ幾つもの赤茶色の水晶。崩れた天井からは空が、そして降りてくる巨大な影が見える。
先程までのコンゴウさまなど比較にもならない巨大な鳥。その身体は、錆色の水晶で覆われていた。
『飛ぶ』という行為そのものに無理があるのだろう、その全身は常に軋みを上げており、擦れ合う水晶が潮騒のような音色を奏でる。そして時にぶつかり合う水晶は砕け、剥離し、真下に破壊をもたらすのだ。
道中のそこかしこに見える水晶塊は、全てこうして上から降ってきたものなのだろう。
もしもここが街ならば? 人が住んでいたら? そう考えれば、あの鳥が居る限りこの島を解放した事にならないのは自明の理。
重そうな身体を、そして翼を休めるために降りてきたここで、仕留めなくては。
●コンゴウさまの視点
水晶塊の着弾した衝撃は、杏と祭莉の居る場所にも届いていた。轟音と細かな揺れ、破れた天井の合間から、降り立つ錆色の鳥の姿が見える。
「戻ってキタ! ボス!」
先程覚えたばかりの歌を一緒に歌っていたコンゴウさまが、羽をばさばさと動かして騒ぐ。
「あれが、王様?」
「ボスだよ、ボス!」
首を傾げる杏に鳥が答える。王様とはニュアンスが違うらしい。
言葉も考えていることもわからないけれど、あの鳥は大きく、強い。あの翼が上を通るだけで、敵船は沈み、敵の拠点は壊滅的な打撃を負う。それは破壊をもたらすかみさまのようなもの。
それゆえに、コンゴウさまはその『下』に近付く気はないらしい。
「あれ、逃げちゃうの?」
「アァ、テメェらもせいぜい気を付けナー」
落花生ごちそうさまー。みたいなことを言い残して、赤い鳥は逆方向に飛んで行ってしまった。
二人は互いに顔を見合わせて――もう一度、あの巨大な鳥の降り立つ場所へと視線を向けた。
ケビ・ピオシュ
鳥と言うには余りにトゲトゲしいものだねえ
ウムウム
ブライトマン殿/f21503の友達は
宝石は運ぶかもしれないが
水晶を落としたりしないだろうしね
そうだねえ
ム?
ははあ
なるほどねえ
投げ飛ばされるのは
いつもの事さ慣れたもの
ああでも
ブライトマン殿、できれば水晶は避けておくれ
無理ならば、そうだね、頑張ろうか
投げ飛ばされてから空中で掌を背より展開して
風に少しでも乗ることができれば十全
その翼を狙って大きく擡げた掌を叩き込もう
元より無理に飛んでいる身体だろう
少しでも飛ぶ事が難しくなってくれれば幸い
この島はまだ生きているようだからね
壊れるにしても、生きるにしても
君に拿捕されたままと言うのは少しばかり悲しいものだろう
エドガー・ブライトマン
ねえ、ケビ君(f00041)
ごらん。見上げるほどに大きな鳥だよねえ
私の友のツバメとはずいぶんと違うらしい
羽ばたきだって、鳥ならばもっと軽やかなハズだろうし
何より羽毛は落ちても水晶は落とさないよ
宝石を?
フフ、そうだね。オスカーならお安い御用さ
あんまり羽ばたかれると遺跡だって壊れてしまいそう
足場がなくなる前にかれを倒そうね
とはいえ、あの羽ばたきは厄介だし
ケビ君は少々小柄だ。かれの大きな手でも届くかどうか、
――あっそうだ
フフ、今日の私は少々頭脳派らしい
ケビ君、私の背中に乗ってくれ
“Sの御諚”で羽ばたきを一時的に封じる
後はキミの仕事さ、ケビ君
そのまま右手を背中に回して、ケビ君を掴んで放り投げる
頼んだよ
九之矢・透
アイツ、壊れながら生きてる、のか?
凄く重そうで……辛そうだ
思い込みかもしんないけどね
とは言え
あんなのゴロゴロ落されたらたまんないな
下が危険なら上から行くか
って事で【大鷲】!
落ちる水晶は避けながら上がる
潮騒が聞こえた時は注意だな
胸の辺りに近付けたらダガーで水晶を「部位破壊」で剥がしていくよ
ただ単に突き立てても力じゃ無理だろうし
ヒビが入っている所、砕けかけている所を狙っていく
大鷲の風圧で水晶を吹き飛ばせないかも試してみよう
あ!下に人が居ないかはモチロン確認
剥がしながら水晶と違うモノが無いか探そう
……元はどんな鳥だったんだろうな、アンタ
もし見つかった時は触れずに、柳で射貫く
ゆっくり休めると、いいな
ジャック・スペード
朽ち続ける運命を背負った鳥か
綺麗な筈の水晶も錆色に成って
その姿は余りにも痛々しい
此処で楽にしてやる方が良いだろう
マヒの弾丸を乱れ撃ち牽制を
纏った水晶で弾かれるなら
氷の誘導弾を放ち鎧無視攻撃
仲間が攻撃する時は援護射撃を行おう
落ちて来る水晶は撃ち落とすかシールドで防御
仲間に当たりそうな時は
奉仕のこころを胸に此の身で庇う
損傷も苦痛も激痛・狂気耐性で堪えてみせる
この胸に勇気がある限り、苦痛に屈したりはしない
マヒか氷で動きを鈍らせたら
その隙に敵へと肉薄して捨て身の一撃
零距離射撃で再び氷の弾丸を放ち攻撃を
衝撃でバランスを崩した隙に
渾身の力を籠めた鋼鐵の蹄で蹴りを入れる
お前も疲れただろう、そろそろ休むと良い
●空を舞う
「ごらん、ケビ君。見上げるほどに大きな鳥だよねえ」
「そうだねえ、それに、鳥と言うには余りにトゲトゲしい」
こちらに影を差す威容、上空に在る敵の姿を見上げながら、エドガーとケビが言葉を交わす。
「鳥ならば、もっと軽やかに羽ばたくものだろうに……どうやら、私の友のツバメとはずいぶんと違うらしい」
「まあ、ブライトマン殿の友達は、水晶を落としたりはしないだろうしね」
宝石を運んだりはするかもしれないけれど。そんな風に付け加えられたケビの言葉に、エドガーは小さく笑みを浮かべた。彼の友……オスカーならば、きっとそれも『お安い御用』といったところか。
「さて、羽毛ならともかく、あんな水晶を降らされてはここもすぐに崩れてしまうね」
そうなる前に彼を倒そう、エドガーがそういう合間にも、剥離した水晶の破片が轟音と共に地を穿つ。同時に降り来る細かな――それでも人の頭ほどはあるであろう破片を、ジャックの銃弾が撃ち抜いて、錆色に光る雨へと変える。
「――朽ち続ける運命、か」
赤茶色に染まった水晶片、そしてその本体である鳥へと油断なく視線を移しながら彼は呟く。この錆色も、本来は透き通ったものであったのだろう、混ざり合い濁るその様は、余りにも痛々しいと彼は思う。そして、此処で楽にしてやるべきだと。
「とはいえ、このままでは有効打に欠けるな」
「そうだねえ」
「羽ばたくだけでも脅威であるし、ケビ君の大きな手もあそこまでは――」
ジャックの言葉に、ケビとエドガーが頷き、考え込む。とはいえ、それはそう長くはかからなかった。
「――あっ、そうだ」
「ム?」
「何か策でも?」
「フフ、今日の私は少々頭脳派らしい」
そう言って、エドガーが自信ありげな笑みを浮かべる。
「ケビ君、私の背中に乗ってくれ」
「……ははあ、なるほどねぇ」
「本気なのか……?」
二者二様の反応を示しながらも、ケビとジャックはそれに合わせることにした。
一方の空中、『大鷲』の羽を背にして一足早く舞い上がった透は、落下する水晶の隙間を縫うようにして、巨大鳥の上を取る。
近距離から見下ろすその鳥の身体は、空にあるのに不釣り合いとしか言いようがない。そもそも落下した水晶の様子からして、鳥の全身を覆うそれは、かなりの重量になっているはず。
「……辛いよな」
重くないはずがない。苦しくないはずがない。その感覚は、想像することしかできないけれど。
「何にせよ、あのゴロゴロ落ちてくやつを止めないと……」
全身を覆う水晶から、その下にあるはずの『本来の姿』に思いを馳せつつ、彼女はナイフをその手に取った。こうして上に回ってしまえば、剥がれ落ちる水晶に潰されることもない、急旋回、急降下で透は巨大鳥の背を狙う。
「くッ――」
手応えは酷く硬い。打ち込もうとした刃が水晶に弾かれるのを受けて、透は素早く別のポイントを探す。ヒビか隙間か、とにかく狙うに足る場所があるはずだ。そうこうしている内にも巨大鳥は身を捩り、逃れようとするが。
「……あ?」
その動きが、一時濁る。威容を誇る空の王に縄をかけたのは、遥か下の地上、エドガーの碧眼だった。
「少し動かないでいてくれるね? これは、威令だ」
『Sの御諚』、有無を言わさずその言葉に従わせたそこへ、ジャックの麻痺効果を込めた弾丸が水晶を叩く。鎧に阻まれるように、弾丸がその身を貫くことは出来なかったが。
「ならば、これはどうだ?」
方向性を変えた一射、氷属性の誘導弾がその水晶の合間を射抜いた。そして。
「一瞬、このまま稼いでもらえるかな、ジャック君」
「ああ」
言葉少なに答えて、ジャックが降り来る水晶塊へと再度照準を写したところで。
「後はキミの仕事さ、ケビ君」
「ああ、とはいえコースはブライトマン殿次第。できれば水晶直撃は避けておくれよ」
任せてくれと請け負って、エドガーは乗っかっていたケビの身体を掴み、助走を付けて、天高く放り投げた。
「ふぅむ、ふむ。回転も少ない。良い投擲だよブライトマン殿」
こういう扱いは果たして何度目か、もはや余裕の表情で空を舞ったケビは、空中で、頃合いを見て『腕を伸ばす』。
「頼んだよ」
「もちろん、手は尽くそう」
地上からこちらを見上げるエドガーと。声は届かぬままのやり取り。広げた巨大な掌で風を掴んで姿勢を制御、ケビは目前に迫った巨大長の身体に、その腕を突き立てた。
「すこぅし、私に変わってくれるかな?」
『クラッシュダンプ』、透の刃に変わって叩き込まれたそれは、水晶を穿ち、その身に大きな罅を伝播させる。
狙ったのは、翼。ただでさえこの身で空を飛ぶこと自体が『かなりの無理』なのだから、動きの制限も、この攻撃も、その高度に大きく影響するものだ。
「――悪いけれど、この島もまだ生きているようだからね」
手応えを感じながらも、ケビはさらにその腕に力を籠める。たとえこの鳥そのものに害意が無いのだとしても、そう。このステーションを『鳥の巣』で終わらせるのは不憫に過ぎるだろう。
「よーし……!」
こちらも新たに生まれた罅割れを狙い、透が改めて刃を突き立てる。装甲のような水晶を剥ぎ取りにかかった、そこで。
「これが――アンタの身体か?」
沈んだ刃の先、溢れる返り血からそれを悟る。朽ち行く影響か、濁ったそれに目を細めて。
「……元はどんな鳥だったんだろうな、アンタ」
翼の色も、本当の大きさも、そこからは上手く読み取れない。露になったその肉体にも、早くも水晶が生まれつつあるのを見て、彼女はもう一度刃を振るった。こんなものは、早く終わらせてやらなくては。
ただ苦痛に鳴く鳥が、急速に高度を落としていくのを感じる。
「九之矢殿……で良いかな? 余裕があればで構わないのだけどね、下に降りる時に、私も運んでもらえないだろうか」
「……え」
「着地の仕方までは、作戦に含まれていなかったようでね」
「見たかい? いやこんなに上手くいくとはね」
これも皆のおかげだと言うエドガーに頷き返して、ジャックもまた地を蹴る。先程落下してきた水晶柱のてっぺんを足場に、さらに高く跳躍。
ケビを抱えた透が翼を大きく振るって鳥の周りを飛び、気流の乱れでさらにその姿勢を崩しにかかっている。そこを突くように。
「ああ――お前も疲れただろう、そろそろ休むと良い」
放たれた鋭い蹴りが、水晶に覆われた鳥の胴を、大きく穿った。
砕けた水晶が雨と散り、錆色が広がる。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と
まつぼっくり?(見上げて)
……この音、王様(潮騒)から
落ちて来る水晶は痛々しくて
まつりん、王様が泣いてるみたい
泣かないで
あなたの本当の声を、歌を聴きたい
その為にもメガリス抜かなきゃ
まつりんと頷きあって
ん、【Shall we Dance?】
うさみみメイド人形のうさみん☆、まつりんの動きに合わせるように踊り、鳥が羽ばたくように舞って?
王様、少しずつでいいから思い出して
幸福を歌った日々を
永遠を楽しんだ生命を
あなたの本当の歌を、色彩を
王様の真下に行き、幅広の大剣にした灯る陽光からオーラ放出し、オーラで地点防御
あなたの苦しさ、全部この光と共に受け止める
ゆっくり休んで?
木元・祭莉
アンちゃん(f16565)と。
あー、コンゴウさま、行っちゃったねー。
ボス?(くるりと)
うわ。巨大まつぼっくりー!
(カタコトの動物会話で)
……イタイ?
水晶、ぽろぽろ剥がれてル?
そっか、治っちゃうから、余計にイタイ。
治らないようには、デキナイ? メガリス?
そっかー。
メガリス抜いちゃえば、痛くない。
骸の海に戻れば、しばらくのんびりできるかも?
ん、わかった。
おいらたちで、骸の海に戻してあげる!
心臓がメガリス。
辛かったら、暴れてもいいよ?
ダッシュで接近、水晶の雨の痛みを受け入れて。
痛いのには慣れてるから、大丈夫!
とん、と背中を叩いて。よく頑張ったね。
最至近距離から、灰燼拳でメガリスを打ち砕く!!
●心臓
いち早く仕掛けた猟兵達の攻撃によって、錆色の水晶で覆われた鳥は急激に高度を下げていく。姿勢を崩して壁に衝突し、建材と水晶の破片を撒き散らすその姿を見上げて。
「うわ。巨大まつぼっくりー!」
「まつぼっくり?」
落下物から身を躱しつつ、祭莉と杏が声を上げた。破砕音と地響き、破壊の嵐と共に撒き散らされる、大小入り混じった水晶の破片は、まるで零れ落ちる涙のよう。そして鳥の喉から響きわたる、ザラついた雄叫びは、言葉が通じずとも苦痛に濡れていることが分かる。
「この音……まつりん、王様が泣いてるみたい」
「泣いてる?」
杏の言葉に首を傾げて、祭莉は上空で身悶えする鳥をもう一度仰ぎ見た。
「……イタイ?」
そして、拙い動物会話を駆使して問う。答えは無くともよく見ればわかる。不死鳥としての特性を併せ持つあの鳥は、水晶の剥がれ落ちたその場所すらも即座に再生を始めていた。傷跡はまた水晶化で蝕まれ、伸び行くそれが軋んだ音を響かせる。
「治っちゃうから、余計痛いのかも。治らないようにはできないのかな?」
「わからない。でも……」
杏が口ごもる。確証はない、しかし治癒があの鳥自身の能力だとすれば、それを失わせることは難しいだろう。
「そっか、じゃあ石の方を何とかしないとね」
対象がコンキスタドールであるのなら、メガリスの影響は恐らくあるのだろう。そして体表にそれが見られない以上、それはきっと内側に。
「そうすれば、きっとまた元の声で歌えるよね?」
「うん。それに、その状態で骸の海に戻れば、しばらくのんびりできるかも?」
二人はそうして、頷き合う。見上げたそこ、赤錆た色の水晶の合間に、こちらを見下ろす鳥の目が見えた気がした。
「おいらたちで、骸の海に戻してあげよう!」
それが物憂げで、哀し気で、濡れているように見えたから、二人はすぐに行動を開始した。
まずは杏の命に従い、うさみみメイドの人形が、鳥が羽ばたくように踊り出す。
『Shall we Dance?』、祭莉に合わせるような、共に踊るようなその動きで、二人以外の全ての動きを制限する。もちろん、その中にはあの鳥も含まれる。苦痛に苛まれ、悲鳴を上げる者に、ダンスを楽しむ余裕などないだろう。それでも。
「王様、少しずつでいいから思い出して……」
杏はそう祈り、願う。その鳥の在りし日、幸福を歌い、生命を楽しみ、色彩を運んだ記憶を、取り戻してくれるように。水晶に苛まれ、しわがれた声ではなく、本来の音色で歌えるように。
動きの鈍った鳥の下に至り、二人はそれぞれに空を仰ぐ。破れた天井から降り注ぐ光の下、赤茶色に染まったその威容。
「辛かったら、暴れてもいいよ」
全部受け止めてあげるから。祭莉の言葉に、杏もまた頷く。
降り注ぐ破片を、杏が輝く大剣状のオーラで軽減し、その中を祭莉が駆けていく。水晶柱を駆け上がれば、高度の保てなくなった鳥は目前。
痛みには、慣れているから。錆色の雨の中を強引に突っ切った祭莉は、届いたそこ、鳥の胸元に手で触れる。水晶にさえも微かに伝わる熱。ああ、生きているのだと思考とは別の位置で感じながら。
「――よく頑張ったね」
拳を打ち込む。外殻のようになった水晶を打ち砕いた先に、鼓動を感じる。
「――ッ!!」
けれどそれに指を伸ばす直前で、鳥は大きく身を捩った。
「まつりん……!」
振り落とされたその身体を受け止めに、杏と人形が向かう。
対して、大きくバランスを崩した鳥は、一度地面にぶつかりその場を大きく陥没させた後、もう一度強く翼を振るった。砕かれた翼は細かな破片交じりの暴風を巻き起こし、傾いだままに、その身体を宙に運ぶ。
再生の間に合わぬ胸部から、赤熱する『心臓』を覗かせたまま、鳥はもう一度大きく嘶いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シキ・ジルモント
◆SPD
自壊を続けても朽ち果てる様子は無い
…死ぬ事ができないという事だろうか
闇雲に攻撃しても効果は薄い
あの鳥がコンキスタドールならメガリスを持つ筈だ
水晶の落下を警戒しつつ観察、位置を特定したい
自壊した水晶の隙間から目視で確認
同時に侵入者をスキャンして情報を得る、この艦の警備システムの力を借りたい
管理AIやシステムが生きているのは先の戦闘中に確認した
鳥の中にあるメガリスは明らかな異物、その位置をスキャンして確認できれば助かる
現状で可能なら、だが…頼めるか?
位置が分かったらユーベルコードでメガリスを狙い破壊を試みる
倒すべき相手ではあるが、あの鳥に悪意は感じられない
必要以上に傷付ける必要もないだろう
菱川・彌三八
其処彼処の水晶は生えてきたんじゃあねェのか
苛立ち紛れに粉々にしてやる心算だったが、なんだか毒気抜かれっちまった
剥いで砕くは変わらねえが、一丁元の姿を拝ましてもらおうか
俺に本物を、見せてくんな
一挙一動が破壊を生むたァ、大ェしたでかさだ
こと翼に巻き込まれねェよう気を付けら
さて、下に居れぬなら俺ァ上だ
鳳凰のひと鳴きで、高く、速く
お宝暴くんだろ、壊すなァ任せな
ひとつ小石を放って投げて、其れが水晶化しねえか確かめてみる
否、此れが駄目なら打ち手が減るんだがよ
マ、考えても仕方がねェや
治癒とやらに賭けてみようか
再生すんなら攻撃は散らすより纏めた方が好い
鳥なら頭か首
撃っては離れを幾度となく
生まれるより、速く
城島・冬青
【橙翠】
でっかー!
あの身体で飛べるなんてどういう仕組みなんだろう?
悲鳴…?
あぁそんな風にも聞こえますね
そう思うと不気味だなぁ
さっきのオウム…じゃなかった、インコ は可愛いかったのに
真下で戦うと落下してくる鳥の身体の一部に当たりそうなので空で戦います
UC夜歩く発動!とーう!!
空を縦横無尽に駆け巡りUCのスピードも生かしてボスを翻弄します
アヤネさんの銃弾が命中した箇所に衝撃波で追撃し
ダメージを蓄積させていきます
敵の攻撃や砕けた身体の一部はダッシュと残像で回避し直撃するのを防ぐ
それにしても
コレ、攻撃効いてるのかな??
疑問に感じるけれどアヤネさんの言葉を信じて追撃を続ける
砕いて砕いて…粉砕する!
アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
耳障りな音だネ
軋む音が悲鳴に似ている
どんな仕組みにせよ不自然な物だろうネ
だからもう飛ばなくていい
僕の持つ最大火力で葬ってやる
SilverBulletのケースをごとりと地面に下ろし
素早く組み立てる
装填数五発
電脳ゴーグルとスコープを連動させ
弱点を探る
肉眼ではわからないけど
温度密度エネルギーの流れ
フィルターをかけ直して探る
見つけたなら
狙いを定めて引鉄を引く
数値に変化があった
位置はこれであっているはず
しかし回復が早い
ソヨゴ同じ場所を狙い続けて
射撃姿勢で機会を伺う
どれだけ硬い相手だろうと次で仕留める
一撃で三連射
同じ場所に撃ち込んで弱点を砕く
ソヨゴありがとうお疲れさま
もうあの音は聞こえない
アーメン
●Ankaa
地に落ちた鳥は、もう一度翼を打ち振るい、上昇を試みる。その動きによってぶつかり、擦れ、拳大から砂粒程度の破片が舞い、錆色の風となって一帯を包んだ。苦痛のあまり吠える声は、しかし健在である頃と同じように命を運び、自らの傷をも癒し始める。
ただし、傷口を覆うのは皮膚ではなく、身体が変質し侵食する水晶だ。それはきっと、もう一度傷口を引き裂かれるような苦痛。
「……耳障りな音だネ」
両腕で口元を覆い、水晶の砂塵をやり過ごしたアヤネがそう零す。轟音や嘶きの合間に、新たに生まれる水晶が、絶えず軋んだ音色を奏でている。それがまるで、低い低い悲鳴のように、彼女には聞こえていた。
「悲鳴……? あぁ、そんな風にも聞こえますね」
耳を澄ませた冬青がそれに頷く。聞きようによっては、それはやはり不気味な響きのように思えて。
「さっきのオウム……じゃなくてインコは可愛かったんですけどね」
「まあ、あれとは明らかに別種だからネ」
その発想に少しばかり微笑みながら、アヤネは得物を仕舞ったケースをごとりと床に置く。中に入っているのは、彼女の手持ちで最大の威力を誇る武器だ。
「何にせよ、あれは明らかに不自然な物だから――」
「狙うなら、心臓か」
大型ライフルを組み立て始めたアヤネへ、同じく銃器での攻撃を期していたシキが言う。
「うん、さっきチラッと見えたからネ」
恐らくはあれがメガリスで、あの鳥に起きている現象の、いくつかの元凶になっているものなのだろう。見解の一致を見たところで、アヤネの銃が組み上がる。いかにも「わかっていましたよ」という顔で会話を聞いていた冬青と共に、敵を見上げて。
「回復が早い……」
胸部の穴は既に薄く張った水晶に包まれている。電脳ゴーグルを装着したアヤネは、早速『心臓』位置の特定に移った。
外見からではあたりをつける程度のことしか出来ないが、温度に密度、エネルギーとフィルタを変え、組み合わせていけば、恐らく……。
「あれはこの『島』にとっても異物だろう、解析できないのか」
「いや、それは僕に言われても――」
シキの言葉に、アヤネがそちらを振り返る。が、彼の話しかけていたのは、この部屋の壁の方だった。
『稼働しているセンサーの数は限られています。ご期待に沿えるかはわかりません』
濁った機械音声が返ってくる。この『島』が、『システム』が、声に応えることは道中で確認済みだ。
「可能な範囲で良い。……頼めるか?」
『既存のデータで補完した形になりますが、よろしいでしょうか』
「……あるのか、既存のデータが」
『ゲストの皆様よりは、長い付き合いですから』
はあ、話せたんだ。やけに雄弁なのは、ほぼほぼ接続の途切れた外縁部に比べて、ここが中枢に近いからかな。そんな考察を、アヤネは頭の隅へと追い遣って。
「それ、こっちにも回せるかな?」
その背に負った鳳凰が、ひと鳴きすればこの通り。高く、速く、彌三八のその身は風のように空へと舞い上がる。
「水晶が生えるのは地面じゃなく、おめぇの身体だったってことかい」
降り来る破片の合間を縫って、打ち振るわれる巨大な翼を躱し、上昇。鳥の上を取り、その背を見下ろす場所へと至る。
「なるほど、大ェしたでかさだ」
両の翼を広げた姿、天さえ覆うであろうその威容に、彌三八は笑う。大したものだ、けれど、この『錆色』では足りないと。
「どうせだ、化粧の下を拝ませてもらおうじゃねェか」
俺に本物を、見せてくんな。彼の求めに応じて、鳳凰が翼を振るう。
攻撃に移った彌三八に続いて、「とーう!」という掛け声と共に冬青が空へと駆け上がる。『夜歩く』、黒蘭の花弁をその身に纏わせながら飛翔し、そのスピードで落下物を避け、鳥の注意を引き付ける。翻弄するように跳びまわる彼女の作った隙を突いて、地上から大型ライフル――アヤネの構えたSilver Bulletが火を噴いた。
放たれた弾丸は鳥の胸部へと突き刺さり、そこで大きく爆ぜる。破砕された水晶がぼろぼろと地に落ち、その他の場所にも細かな罅が入った。
「想定通りに数値が動いてる……ソヨゴ、今の場所を狙って!」
「はーい!」
狙うべきポイントはここであっているはず、そんなアヤネの声に応えて、冬青は降り来る水晶を巧みに躱しながら鳥の下方に回り、刃からの衝撃波で追撃をかける。
「なるほど、お宝はそこってわけか?」
そして不用意な接触を警戒していた彌三八も、先程の弾丸が水晶化しなかったことから確信を得て、同じ場所へ攻撃を開始する。
「壊すなァこっちに任せな」
そう味方へと声をかけた彼と、冬青の手で攻撃が繰り返され――鳥の胸元の水晶はばらばらと崩れていく。冬青の刀に乗せた衝撃波は、それこそ強力なオブリビオンにも通用する威力を秘めているのだが。
「……コレ、効いてるのかな??」
いまいち薄い変化に、冬青が首を傾げる。痛がる様子も何も、この鳥は最初から苦痛に鳴いていたわけで。今もまた身を捩り、しわがれた叫びでその傷が癒えていく。
「大丈夫、そのまま続けて」
けれど、アヤネがそう言うなら大丈夫だろうと、手を休めぬまま冬青はさらなる一撃を見舞った。
「それじゃ、もっと深く……粉砕する!」
「あァ、この辺で打ち止めだろうよ」
再生する速度よりも早く、同時に彌三八が広がりかけた水晶部分をその手で引き剥がす。
彼が求めるのは、その鳥の『真の姿』。――見定めるなら貌か羽根か、けれど暴き立てられるのが一点だけならば、心臓の赤こそが真実ではあるまいか。
そうして辿り着き、露になったそこに。
「これで、仕留める」
下方からこの機会を待っていたアヤネの弾丸が、三度立て続けに突き刺さる。炸裂弾になっている弾頭はそこで爆ぜ、水晶を、肉を抉り飛ばし、その『心臓』を衝撃で揺さぶり、焼く。
そして大きく罅の入った心臓、メガリスに、シキの両手で構えた拳銃を向けた。
――他の猟兵達と同様、シキにも、あの巨大な鳥から悪意のようなものは感じ取れなかった。
自壊を続けてなお朽ち果てる様子はなく、ただ在るだけで破壊を振り撒きながら、終わる事ない苦痛の中を彷徨う。永遠に死に続け、死ぬことが出来ないその様に、思うところはあった。
無言のまま、赤熱する心臓を睨んで、息を止める。ブレぬよう両手で硬く握ったまま、引き金を指で握り込む。
終わらないそれに、ピリオドを打つ時が来たのだと。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 冒険
『機械遺跡を探険しよう』
|
POW : 内部に住み着いた危険生物を排除しながら進む
SPD : まだ使えそうな機械や、保存食を回収しながら進む
WIZ : まだ生きているセキュリティを解除しながら進む
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●『ハミングバード』
心臓を射抜かれた鳥は、ついにその力を失い、落下する。ぼろぼろと自壊しながら重力に引かれ、その身体はあっという間に地面にぶつかった。
破片だけでも地を穿ち、宇宙船に壁や柱を作るほど。それが全身丸ごと落ちてきたのだから、衝撃の程は容易に知れるだろう。床面を突き破り、大きくその部屋を揺らして。
「――お疲れ様」
巨大な落下物から逃れた冬青、そして共に戦った仲間達に、アヤネが声をかける。あの耳障りに感じていた軋む音も、今はもう聞こえない。
……が、静寂が訪れるにはまだ早いらしい。深く突き刺さるようにして落下した水晶塊は、この場にも致命的な打撃を与えていた。壁が、地面が振動し、大きなひび割れがそこかしこに広がる。ついには二つに引き裂かれるようにして、尖塔のようになった島の中央部が崩落し始めていた。
『危険です。速やかに退去してください』
猟兵達の元に、より一層雑音の増した音声が流れ、出口を示すように、数少ない非常灯が微かな赤光を投げかける。
猟兵と言えど、このまま崩落に巻き込まれればただでは済まないだろう。何より、万が一鉄甲船にまで影響が及べば目も当てられない。迅速に、脱出する必要があるだろう。
砕け、崩落しつつあるその場所から、猟兵達はそれぞれの場所から脱出を試み――。
『長く保留になっていましたが、朽ち行くべき時が来たのでしょう』
巨大な水晶塊と化した巨鳥の亡骸を抱くようにして、そのステーションは去り行く彼等の背に、一言告げた。
『ありがとうございました』
●脱出
ステーションが崩壊したからと言って、この島そのものが失われる訳ではない。だが崩壊に巻き込まれる前に、一時脱出する必要はあるだろう。
まだかろうじて生きている、そして死につつあるこのステーションの制御AIは、『最後のゲスト』である猟兵達に協力的な姿勢を取っている。
声をかければ、機能的にできる限りの対応はしてくれるだろう。扉を開く、隔壁を開ける、コンベアを超高速で動かす、脱出ポッドを射出する、残った非常食を提供する、などなど。ただし、既に朽ち破損し、多数の機能が失われている点にも注意が必要だ。
また、ステーション内には例のコンゴウ様の残党が少数混じっている。このまま放っておいても勝手に骸の海に還るだけだろうが、それらと遭遇する者も居るだろう。
それぞれの道で、猟兵達は崩れ行くこの場所を駆け抜ける。
シキ・ジルモント
もうあの鳥が痛みに啼く事はなくなったな…などと、考える暇も無いようだ
ステーションのダメージは甚大だ、こうなっては崩壊を止める事は不可能か
…残ってもできることは無いだろう、AIの警告に従って最短ルートで脱出を図る
制御AIには可能なら道中の誘導と、進路上にある隔壁と扉の開放を頼む
コンベアを高速で動かしてもらえば、脱出路として利用できるかもしれない
破損や崩落で通路が塞がれている場所は、全体への影響を最小限にユーベルコードで要所を破壊して道を拓き通過する
脱出前にもう一度、制御AIに声をかけてみる
聞こえるかは分からないが、世話になった礼もまだだったからな
「おかげで助かった。協力感謝する、ハミングバード」
●脱出
派手に辺りをぶち壊しながら沈んで行った水晶塊――あの鳥の亡骸を見送って、シキはその心臓を射抜いた銃を仕舞う。これで、もうあの鳥が苦痛に啼くことはないだろう。けれど、感傷に浸ったままでいるには、状況が全く落ち着かない。床は真っ二つに割れて、仲間達とは瓦礫で分断されてしまっている。そして鳥の落着と共に始まった揺れは、収まるどころか徐々に大きくなっているように感じられた。
「これは……保たない、か?」
退去するよう流れ出したアナウンスを聞いて、シキは遠目から見ていたこの島の様子を思い返す。元は宇宙ステーションだったとはいえ、状態ははっきり言って良いものではなかった。一度始まった崩落を、抑え込む機能など――。
『崩壊は避けられません。速やかに退去してください』
「……そうか」
残っても、できることはないだろう。そう悟ったシキは、その声に従う事にする。
「誘導と、進路上にある隔壁と扉の開放を頼む」
『了解しました』
後方で微かに点灯した非常灯を目印に、彼はここを脱出するため走り出した。
音声や灯、まだ生きている僅かな機能を駆使した誘導に従い、シキは島の中央から離れる方向へと進む。不安定な足場を素早く駆け、開き切らない隔壁の隙間を抜けて、半壊した壁の向こうにそれを発見する。
「あれは?」
『物資輸送用のコンベアです』
「なら、それで俺を運ぶことは?」
不可能ではないですが……という微妙な回答が引っ掛かるが、シキはとにかくそれに飛び乗った。
出来る限りの速度でやってくれという彼のリクエストに応えて、コンベアが一度ガクンと揺れ、シキは身体が思い切り引っ張られるのを感じる。
「――おい」
狭く暗い物資用の経路を高速で駆け抜けていくそこで、崩れかけの天井やら資材やらが、向かう先に突き出ているのを発見し、シキは顔を強張らせた。
制御AIは応えない。あるいは、応えられる範囲を超えてしまったか。抜き放った拳銃の引き金を引く。ほとんど同時に聞こえる二射で直撃しそうな瓦礫を弾き飛ばし、続く二射で突き出た水晶を砕く。そんなこんなで高速移動したシキは、もうどうしようもない、壁に叩き付けられる寸前でコンベアの通路から飛び出した。
幸い、大した怪我はなかったが……溜息を吐いて立ち上がり、彼は残り少ない、島の外への通路を駆けた。
「中々、酷い扱いだったが……」
一度そこで振り返り、シキは、ぽつりと言葉を投げる。
「おかげで助かった。協力感謝する、ハミングバード」
外縁部に近いこの場所では、おそらく機能停止した箇所の方が多いのだろう。生きているスピーカーが存在しないのか、声が返ってくることはなかった。それでもきっと、シキの言葉は届いていたはずだ。
シキの去ったその場所で、ハミングバードは最後に歌う。届けたい相手が、もう聞こえない所に居ると分かっていても。
『――お役に立てて何よりです。それでは、良き航海を』
大成功
🔵🔵🔵
木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と
王様(潮騒)におやすみなさい、を祈り
ん、まつりん。行こう
素早く、でもはぐれないように手を繋いで
ステーションに声を掛けてみる
わたしは杏
ね、出口までの道筋、光で照らせる?
大剣にした灯る陽光からオーラをまつりんと2人で纏って落下物から防御
障害物を叩き割り
うさみん☆とメイドさんズ、何か回収出来そう?
王様の水晶の欠片があれば拾って
これは、集音器?昔の王様の鳴く声、入ってる?
ん、赤い影…コンゴウさま?
一緒に逃げる?…いつかは骸の海に帰らなきゃいけないけど
崩壊に巻き込まれるのは怖い気がする
この島もこれから発展していくのかな
ハミングバード
きっと、鳥が集い歌う、そんな島になる
木元・祭莉
アンちゃん(f16565)と。
王様、苦しまなかったならいいケド。
さあ、逃げなきゃ!
えーあい、さん?
助けてくれるんだね、ありがと!
ダッシュとジャンプで障害物避けながら、示された道を進むよ。
え、赤いの? さっきの子かな?
えーあい、さん。俺様コンゴウさまのいるところ、わかる?
うん、ヘタな『集い花』歌ってる子。
ん、わかったありがと♪
アンちゃん、落花生ちょうだい。で、先に行ってて!
AIから教わった場所を、野性の勘で嗅ぎ付ける。
いた! また一緒に行こう?
ハイ、落花生ー♪(ちちち)
他にも仲間いる?
とにかく、外に出なきゃだ!(頭に乗せ、残りは綾帯で引っ括り)
準備いい? 飛ぶよ!
アンちゃんの傍へ!!(しゅんっ)
●赤い鳥も歌う
盛大な破砕音と共に床を突き破り、『鳥の王様』が沈み行くのを、杏と祭莉は並んで見送った。
「……おやすみなさい」
「王様、苦しまなかったならいいケド」
最後の姿を思い出し、祈りと、そしてお別れを告げて。
「さあ、逃げなきゃ!」
「ん、まつりん。行こう」
祭莉の差し出した手を取り、杏は床の裂け目から遠ざかりながら辺りを見回す。。
「ねえ、えーあい、さん?」
「出口までの道筋、光で照らせる?」
退去を促すアナウンスに向かって問いかければ、二人の傍で、床面に残った明かりが一つ灯る。
「助けてくれるんだね、ありがと!」
弱々しい、そしてこの崩壊が続けばすぐに消えてしまうであろう僅かなそれを目印に、二人はこの場を脱出するべく走り出した。
その道中は、決して平坦なものではなかったけれど、分断された通路を祭莉の先導で跳び越えて、降ってくる瓦礫を杏の輝くオーラで頭上から逸らして、息の合った協力体勢で二人は駆けていく。
「まつりん、ストップ!」
「え? ――うわっ!」
そんな二人の進む道の先が、ある一箇所で思い切り崩落する。地面は途切れて壁は消え、天井さえも失ったそこは明るく照らされ、眼下に広がる島の様子を一望することができた。一時状況を忘れ、溜息混じりに景観を眺めてしまったそこで。
「ん、赤い影……コンゴウさま?」
「え、赤いの? さっきの子かな?」
同じように天井の崩れた場所に、杏がそれを発見したようだ。
「このままだと、崩壊に巻き込まれちゃうんだよね……」
どうせいつかは骸の海に帰すべき存在ではあるのだが。そう頭を悩ませる杏の懸念と同じことを考えたのか、祭莉は『ステーション』に問う。
「えーあい、さん。コンゴウさまのいるところ、わかる?」
多分こんな歌を歌ってると思うんだけど、と付け加えてみせると、近くのスピーカーから雑音だらけの音が零れだした。
『危険です。そちらは脱出ルートから外れます』
「大丈夫だから、教えて?」
一瞬の間をおいて、そちらへの道が提示される。当初示された道からは、すぐに離れてしまうようだが。
「まつりん……」
「アンちゃん、落花生ちょうだい。で、先に行ってて!」
やっぱりそうなるんだな、とそんな事を思う。
「それじゃアンちゃん、気を付けてねー!」
多分そっちの方が危ないんだけどなあ、と杏はそちらに手を振り返した。
「……そうだ、うさみん☆とメイドさんズ、何か回収出来そう?」
脱出のためのルートを進みながら、複製した人形達を操って、杏は道中から外れた場所を探索させる。瓦礫と化したスレーションの部品の中に、あの鳥の落とした破片、錆色の水晶は、きっといくつも見つかるだろう。
「あ、見つけたーっ!」
一方で、AIの示した場所から野生の勘で形跡を追い、祭莉は見覚えのある赤い鳥を発見していた。崩れ行く通路の間をわたわたと飛び回っていたコンゴウさまを呼んで。
「アァ!? またテメェかよ!」
「ね、また一緒に行こう?」
「イヤだよ! 何でテメェなんかと一緒に」
「ハイ、落花生ー♪」
「ヨーシ、さっさと逃げるゾ!!」
またあっさり懐柔された赤い鳥は、祭莉の頭に飛び乗った。
「デモヨー、こっからどう脱出スンダ?」
「それは任せて――捕まっててね!」
首を傾げるコンゴウさまを支えて、祭莉は双子の妹の場所を探る。離れていたって大丈夫。いつだって、どこだって、そこに駆け付けることは容易いのだから。
「飛ぶよ! アンちゃんの傍へ!!」
ユーベルコードを発動し、祭莉は崩れ行くその場から、島の外へ先行した杏の元へと転移した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
城島・冬青
【橙翠】
わわわ!
ステーションが嫌な揺れ方をしてます
長いは無用
出口はどこかな?
あ、保存食が残ってるなら回収しておきましょう
食べ物が無駄になったらモッタイナイオバケが出るんですよ!(しっかり味見)結構いけますね
じゃあ逃げましょう、アヤネさん
おや?あれはコンゴウ様
まだ残ってる個体がいるみたいですね
おーい
このままだと崩壊に巻き込まれるよ?あなた達も逃げたほうがいいんじゃない?
戦うつもりはないので彼らが脱出したいのなら同行するなり手伝ったりしたいかな
モフりたいとか考えては…います
ポッドに乗ったら一安心
これでもう大丈…は?島にぶつかる?
ぎゃー!
ポッドの扉を刀でぶった斬りアヤネさんを抱えUCで緊急脱出します
アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
AIに脱出ポッドの場所を教えてもらう
よし近そうだしそれで脱出しよう
ってソヨゴ何食べてるの?!
あーはいはい仕方ないなあ
僕も持つのを手伝うネ
移動を始めるとカウントダウンの無機質な声が鳴り響く
急がないと間に合わない走れ!
コンゴウ様が邪魔!
相手にしている暇はない
逃げるよ
え、助けたい?
仕方ないなあ
言葉がわかるなら脱出口はこっちだついて来い!と手招き
秒読みギリギリでポッドに滑り込む
AIに感情移入するのはおかしいだろうか?
案内ありがとうグッドラック!
発射!
ところでソヨゴ
このままだと海面じゃなくて島に堕ちるネ
うわ切った
ドアはノックしない派でしょ?
ソヨゴに抱きかかえられて束の間の空中散歩を楽しむよ
●呉越同舟
「わわわ! なんか嫌な揺れ方をしてますよアヤネさん!」
「うん……多分このままだと崩れるよネ」
「だ、だったら長居は無用です! 出口は――?」
きょろきょろと辺りを見回す冬青を「落ち着いて」と宥めながら、アヤネは退去するようアナウンスを行っている制御AIに問いかける。
「ね、この近くに脱出ポッドとかある?」
『射出機能のみとなりますが……』
それでも良ければ、と提示された内容に頷いて、アヤネはそちらへの道案内を頼んだ。
戦いの舞台となった尖塔の頂上を離れ、強く、弱く、断続的な振動が襲う通路を、落ちてくる破片から頭を守りながら二人は駆けていく。崩落が続いているのは音からも、そして揺れからも明らかだ。出来る限り速やかに脱出したいところだが。
「アヤネさん!」
「どうしたんだい、ソヨゴ?」
「キッチンがありますよ!」
「うん、……うん?」
非常用の保存食がまだ残っています、とAIから情報を得た瞬間に、冬青はアヤネを先導しつつそちらに角を折れていった。
「ねえソヨゴ、僕達いま、結構切羽詰まってると思うんだよネ」
「でもアヤネさん、食べ物が無駄になったらモッタイナイオバケが出るんですよ!」
何だか確信のこもった目でそう言って、冬青は早速引っ張り出した保存食の味見を始めている。
「うん、いつ作ったものかわかりませんけど、これ結構いけますね!」
「あーはいはい、仕方ないなあ……」
こうなると説得は難しい。ならばさっさと手伝うのが得策だろうと判断し、アヤネは冬青と一緒にかき集めた保存食を共に運ぶことにする。
「じゃあ逃げましょう、アヤネさん」
「うん、二人で持てばこれくらいの荷物は――」
と、その部屋を後にするはずだったタイミングで、冬青は通路の先にそれを発見した。
「おや? あれはコンゴウ様ですかね」
「ああ、まだ生き残りが居たんだネ」
でも今は相手にしている余裕はないよ、行こう。アヤネがそれだけ伝える前に。
「おーい! このままだと崩壊に巻き込まれるよ? あなた達も逃げたほうがいいんじゃないー?」
「ソヨゴ……」
こめかみを押さえたいところだが、あいにく両手は保存食の山でふさがっている。こちらに気付いたコンゴウ様達が、必死の形相でこちらに飛んでくるのを見て、冬青も「マズイことしたかな?」とアヤネの方を探り見る。
「ほ、ほらアヤネさん、タスケテーって言ってますし、襲ってくる気はなさそうですよ?」
それにモフモフです、と言い募る冬青に溜息で返して、アヤネは覚悟を決めて声を上げた。
「脱出口はこっち! 死にたくなかったらついて来て!」
「ホントかァー!?」
「ヤッター、出口だァーッ!」
保存食の山や、頭の上に赤い鳥を乗っけた冬青と共に、アヤネはようやく元のルートに戻り、案内のあった脱出ポッドへと向かっていった。
程無くそこに辿り着き、一同はばたばたと古びた球体に駆けこんでいく。用意された座席に、どうにか身体を固定して。
「ふう、これで一安心ですね」
「せ、狭い……ソヨゴ、やっぱりこの鳥達には出ていってもらった方が……」
「嫌ダーッ!」
「オレ達も連れてってクレヨー!」
「まあまあ、ここまで来たんですし……」
モフモフと幸せそうな冬青の声に応えて、脱出ポッドの蓋が閉まり、はみ出かけていた保存食とコンゴウさま達を内部に押し込む。
『それではゲストの皆様、どうぞご無事で』
流れるアナウンスに、アヤネが応じる。思えば短い付き合いではあったが、共に戦ったという事になるのだろうか。AIに感情移入する奇妙さを、何となく可笑しく思いながら。
「案内ありがとう、グッドラック!」
『ええ、良き航海を』
無機質なカウントダウンが流れ、がつんと殴りつけられたような揺れがポッドを襲う。次の瞬間には、彼女等は空を舞っていた。
「なかなか、大変な旅路でしたね」
窓の向こう、崩れ去っていく島の尖塔部分を眺めながら、しみじみと冬青が呟く。長いような、短いような、このステーションを舞台にした冒険は、こうして終わりを迎える。空と海、そして眠る鳥と、遥か宇宙から来たこの島と――。
「ところでソヨゴ、このコースだと海面じゃなくて島に堕ちるネ」
「……は? 島に?」
ぎゃー、と。冬青と鳥達の悲鳴が、この空に響き渡る。
空中高くで放物線を描いていた銀色の球体――脱出ポッドは、その途上でパカッと開いた。
斬り飛ばされたらしき扉がポッドから離れていき、開いた口から赤くて丸い鳥達が羽ばたいていく。続いて白い非常食の包みが雨と散って、最後にようやく、アヤネを抱えた冬青が飛び出していった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
菱川・彌三八
慣れねえ鉄塊は俺にゃ分が悪い
然し、やりてえ事があンだよ
お前ェ、応えてくれんだろ?
出来る限りで構わねえ、案内してくんな
道が全て十全かなんてわかりやしめえが、今は行くしかあるめえよ
時には壊し、時には踏み越え
時には、菊の紋を印し乍ら
あゝ、うるせえ鳥が後ろに居たら、戸を閉めてやっつくんな
邪魔ァされたかねえんだ
走り抜けながら、余裕はねえが聞きてえ事はある
お前ェ、名は何と云う、如何いう意味がある
…知らねえ名だが、調べてみるサ
あのでけえなァ終ぞ本当の姿を見る事は叶わなんだが、お前ェは見た事あるかい
随分と、聞こえ難くなっちまったな
印した菊は万寿菊、元来は長久を願う吉祥の文様
終われば何れ始まる
此処も屹度同じサ
●万寿菊
天が破れて地が割れて、沈み行く鳥――ついに真の姿を拝めなかったそれを見送って、彌三八は踵を返した。こことで一緒に潰れてやるわけにはいかないけれど、金属に囲まれ、金属に行く手を阻まれるこの場は、彼にとっては相性が悪い。
それでも、やりたい事があるのだと、辺りを見回して声を上げた。
「お前ェ、応えてくれんだろ?」
先程から流れている、退去を促す声に対して呼び掛ける。
「出来る限りで構わねえ、案内してくんな」
『それでは、ルートを提示します』
歪んだ扉を無理やり引き開ける濁った音が背後から聞こえて、彌三八はそちらに向かって駆け出した。
極々まばらな照明だけが照らす細く暗い道を行く。一寸先は闇とは言うが、角の向こうがどうなっているのか、崩れることはないのかと言う懸念は常に付きまとうだろう。「出来る限り」と彌三八も言ったように、あの声の主が瀕死であることも彼には何となくわかっている。
「ま、道が全て十全かなんてわかりやしめえ」
今は行くしかないだろう、とその辺りはあっさりと受け入れて、彼は通路の途中で現れた裂け目を、助走をつけて跳び越えた。
崩れ落ちる瓦礫を屈んでやり過ごし、床に突き刺さった水晶の塊を踏み越えて、走り抜けながらも、時折彌三八は足を止める。丁度その辺りで後ろから、海賊帽の赤い翼が見え隠れし始めたが。
「コイツ、生きてヤガッタカァー!」
「さっきはヨクモ仲間達をー!」
「おい、あのうるせえ鳥共まとめて閉め出せるか」
『隔壁を閉じます』
「アァーーーー待ッテーーーーーー!」
ずん、と重い音を立てて閉まった隔壁に、彌三八はおもむろに絵筆を向けた。
揺れる通路の中で生まれるしばしの静寂。それが気に食わないのか何なのか、彼は手を動かしながら問いかける。
「お前ェ、名は何と云う」
『登録名称はハミングバードです』
「ああ、此処に着いた時にも言ってやがったか。……知らねぇ名だな」
意味は、と続けて問う彼に、AIは付近のスピーカーを使って返答する。
『当ステーションはシリーズの中でも小型に当たります。ゆえに小さく、よく働く鳥の名にちなんで名づけられました』
「ははぁ……」
今、「体が小さい」っつったのかこいつは? と可笑しさに口角を上げてしまう。
「そうだ、あのでけえ鳥……お前ェからすると豆粒みてえなもんかも知れねえが、あいつがあんな風になる前の姿は見たことあるかい」
戦いの中で引き剥がす心算だったが、再生力の高さゆえにそれは叶わなかった。
『いいえ、このステーションを塒にする頃には、もう……』
「なるほど、簡単にいかねェわけだ」
思い付くままにいくつか言葉を交わして、彌三八は絵筆を収めて踵を返した。そこに描かれたのは、花弁を幾重にも重ねた鮮やかな菊の花。
『これは?』
「万寿菊。元来は長久を願う吉祥の文様よ」
くれてやる、と言い置いて、彼はまた、そう遠くない出口を目指す。
「終われば何れ始まる。此処も屹度同じサ」
『……そういうものでしょうか』
「あァ」
外縁部に近付けば近づくほど、接続は途絶え、生きている機能は少なくなっていく。
鉄甲船はすぐそこだろう。濁った雑音と、微かな揺れの中に、彌三八は別れの言葉を聞いた気がした。
大成功
🔵🔵🔵
ケビ・ピオシュ
【脱出部隊】
おや、どうもありがとう
九之矢殿の獅子に運んで貰おう
ウムウム
実に頼りになりそうなお友達だ
それにやあ『君』
手伝ってくれるかい頼んだよ
君が動かせなく成ってしまった場所はケーブル繋いで書き換え、無理やりこじ開けよう
ハッキングと少しばかり修理もできるよ
駄目ならばスペード殿にお任せさ
意外と叩くと治る事もあるから
間違えでは無いだろう
最終手段だけれどね
うーん
叩こうかな
敵襲には
皆頑張っておくれよ
私もこちらで頑張るからね
頑張っておくれ
私はライオン殿に振り落とされないだけで精一杯さ
もし落ちたら拾っておくれ
先に道は見えたかい?
君の島は、精々平和に賑やかして貰える様にするさ
ありがとう、ハミングバード殿
エドガー・ブライトマン
【脱出部隊】
足元がぐらぐらと揺れる
なるほど、これは……――マズいね!
さあ諸君、行こうか。おうちに帰るまでが旅だろう
こういう時、私には頼りになる友がいるんだぜ
来てくれ、オスカー
そう、オスカーというんだよ
よろしくねトオル君
キミのライオンもなかなか――ああそうだ、逃げるんだった
オスカーを飛び立たせて視界を共有
良い脱出経路を探るよ
小回りが利くから、隅々まで見えるハズさ
ああっこの先に大きな瓦礫が!
ジャック君が頑張ってる時は後ろで応援してる
がんばれー!かっこいいぞー!
ケビ君は機械を触れるなんてすごいねえ
こういうのって叩けばいいものだとおもっていたよ
おやすみハミングバード君
キミの宇宙の話、聞いてみたかったな
九之矢・透
【脱出部隊】
この揺れはヤバいな
早いトコ逃げないと
ライオン召喚
ケビサン良けりゃ乗ってくれ
声の協力で出口を目指す
ハミングバード?サン?
ありがとう
…アンタともう少し話しときゃ良かったな
機械って叩くのもアリなんだ
斜め45度の素振りをしながら後ろで眺める
力仕事の時はジャックサン頼む!
おー!スゴイ
アタシ機械も力も強くないからな
思わず拍手
敵襲には柳で
急いでんだ
通してもらうぞ
ツバメ?オスカーっていうのか、カッコイイ!
宜しく頼むぜ
ふふふ、だろ?ライオンも結構……あ、そうだった
オマエも匂いで方向が分かったら教えてくれ
ネジの一本でもあれば懐へ
アンタの事忘れない
じきにホンモノの鳥が歌う島になるよ、きっと
おつかれさまだ
ジャック・スペード
【脱出部隊】
崩壊が始まったか
脱出を急ごう
ライオンの走りっぷりは見事で
ツバメのオスカーはとても賢い
頼もしい、良い子たちだ
道案内も頼りにしている
俺もあんたらの役に立てるといいが……
せめて敵や飛来物から仲間を守ろう
盾くらいは務めてみせるさ
滅多に貰えない声援に、片手あげて応えつつ
敵には弾丸を乱れ打ち
邪魔をしないで貰おうか
路を塞ぐ瓦礫には蹴りを入れて壊そう
ケビのお陰でスムーズに進めそうだ
叩いて直すのも有りじゃないか
どう尽力しても開かない扉は任せてくれ
怪力で無理やりこじ開けよう
手荒な真似をして悪いな、AI
ヒトの為、よく務めを果たしたな
アンタに敬意を表そう、ハミングバード
いつか此処が、本物の楽園になると良い
●脱出部隊
水晶を纏う鳥は、その心臓を射抜かれ地に落ちた。大質量を伴う落下の衝撃で、この島の中央部――宇宙ステーション『ハミングバード』の残骸は、ついに崩壊を始めた。尖塔状になった部分は大きく引き裂かれ、猟兵達の足元にも次々と裂け目が広がっていく。鳥の遺骸、巨大な水晶塊が瓦礫の中に沈むにつれて、揺れは収まるどころか大きくなるばかり。
「なるほど、これは……マズいね!」
「崩れ始めたか、脱出を急いだ方が良いだろうな」
エドガーの言葉にジャックが頷く。オブリビオンの討伐を果たしても、無事帰れなくては意味がない。共に戦っていたケビもまた、それには同意して。
「うむ、うむ。それでは速やかに外を目指そう」
駆け出そうとしたその足が、しかしすぐさま空を切る。その時には、ぶらんとぶら下がった彼の首根っこを、黄金のライオンが咥えていた。
「えぇっと……ケビサン、乗って行くかい?」
そのライオンの主である透が、少し気まずげに問う。
「どうもありがとう。頼りになりそうなお友達だね」
「ちょっと待っててくれ、すぐにこっちに乗せ直すから……」
「ああ、構わないよ。運ばれるのは慣れているからね」
出口に向けて駆け出しながら、そんなやりとりを見ていたエドガーも、そのライオンの様子にうんうんと頷く。そして、こちらも忘れてはいけないとばかりに合図を送った。
「そうそう、実は私にも、こういう時に頼りになる友がいるんだ」
彼の呼び声に応えて、一羽の鳥が、壁の裂け目から滑り込んでくる。
「へえ……ツバメ?」
「ああ、オスカーと言うんだよ。よろしくねトオル君」
「オスカーって言うのか、カッコイイなぁ!」
そうだろうそうだろう、君のライオンもなかなかだよ、と互いの相棒自慢が始まりそうなそこを、「道はこっちで合っているのか」とジャックが軌道修正する。先程このステーションの制御AIが示した先はこちらだけれど、そのナビが完璧である保証はない。
「そうだったね……それじゃ先行してくれ、オスカー!」
「オマエも、匂いで方向が分かったら教えてくれよ」
ぽんぽんとライオンの背を叩く透の横を、エドガーのツバメが滑るように飛んで、通路の先へと消えていく。素早く、そして小回りの利くオスカーの眼にした光景は、ユーベルコードで視覚を共有したエドガーにも見えている。制御AIでは認識できていなかった問題にも、これなら早期に対応することが出来るだろう。
「……なるほど」
斥候を担う賢いツバメに、主を乗せて疾駆するライオン。頼もしい、良い子達が揃っているものだと感心しながら、ジャックはその後に続き、揺れる通路を駆けて行った。
扉に隔壁、制御AIの指先が届く範囲のものは開いてもらいつつ、彼等は進んでいく。ここまでは大きな問題は起きなかったが、そこで、オスカーの眼を通して先を見据えていたエドガーの眉根が寄る。
「おや、ブライトマン殿、何か見えたかい?」
「ああ、どうやらこの先の『開く壁』が動いていないみたいだね」
開く壁、つまりは隔壁のことかと思い至り、ジャックが口を開いた。
「接続が途切れているのかも知れんな」
「ウム、では私が見てみよう」
程無く辿り着いた場所で、ライオンから降りたケビが隔壁脇のコンソールに向かう、背伸びして、手を伸ばせばぎりぎり届くか。ハッキングか修理、そのどちらかで対応できないかと、ケーブルをそこに繋ぎ、状況を確認していく。
「機械を触れるなんて、ケビ君はすごいねえ」
「ああ、アタシも機械弄りとか全然……」
手際の良い仕事を後ろで見ながら、そういう世界出身のエドガーと透が感心した様子で言葉を交わす。
「こういうのって叩けばいいものだとおもっていたよ」
「まあ……叩いて直すのも有りじゃないか」
必要だったら呼んでくれと伝えつつ、手持無沙汰なジャックもそれに参加する。
「へえ、叩くのもアリなんだ」
こう? と素振りを始めた透に、二人は斜め45度のレクチャーを始めた。すると背中でそれを聞いていたケビが、作業をしながら注釈を一つ。
「まあ、それも間違えでは無いだろう。最終手段だけれどね」
「穏便に済むのならそれに越したことはないな」
今回は特に、このステーションそのものとも言えるAIが見ている状況でもあるし。頷くジャックの言葉に、ケビは考え込むように、顎に手を遣って。
「てい」
叩いた。
背中から伸ばした巨腕による一撃で、息を吹き返した隔壁が軋みながら開く。と。
「アァッ、テメェ等こんなトコロに!」
赤い鳥、コンゴウさまの残党数羽と目が合う。
「コウナッタラ道連れにー!」
ケビは速やかに隔壁を閉じた。
「……というわけで私は隔壁を操作するから、後は頼んだよ諸君」
「ああ、役に立てそうで何よりだ」
大口径の拳銃とブレードを手に、ジャックはもう一度開く予定の隔壁の前へと進み出た。投刃と剣をそれぞれ構えた透とエドガーもその後ろを固め――。
「急いでるからなー、さっさと通してもらおう」
突破には、さして時間はかからないだろう。
立ち塞がるというか、偶然行き当たったコンゴウさまを蹴散らして、一同は崩落していく通路をさらに進んでいく。
「がんばれー! かっこいいぞー!」
「おー! すごい力!」
声援に応えつつジャックが瓦礫を押し退けて、ライオンから落ちそうになったケビを危ういところで捕まえたりして、やがて彼等は船のある場所まで辿り着いた。
「ハミングバード、サン?」
脱出する直前で、透はこれまで通ってきた道のり、崩れ行くステーションを振り返る。
「案内してくれてありがとう。……アンタともう少し話しときゃ良かったな」
「ああ、キミの宇宙の話、聞いてみたかったな」
エドガーもまた、そう告げる。声は届いているのだろうか、もはやここまで来ては、返ってくるのはほとんど聞き取れない雑音程度だ。
「ヒトの為、よく務めを果たしたな。アンタに敬意を表そう」
いつか此処が、本物の楽園になると良い。そんな風にジャックは願う。ケビもまた、同様に。
「君の島は、精々平和に賑やかして貰える様にするさ」
だから、そう。
「ありがとう、ハミングバード殿」
「それから、おやすみ」
形見分け程度にはなるだろうか、ネジを一本拾い上げた透と、エドガーもそちらへ手を振って――猟兵達は、宇宙ステーション『ハミングバード』を後にした。
耳を澄ませても聞き取れないほどの、雑音に小さく波が乗る。
『おやすみなさい、お元気で』
●解放
尖塔状に突き出ていた島の中央部が崩れ去り、その余波でそこかしこの機械部分が崩壊していく。此処を根城としていたオブリビオンは討たれ、同時にSSWから降ってきた宇宙ステーション『ハミングバード』は機能を停止した。
これはこの島の終わりで、新たなはじまり。新たな住人を迎えるこの島は、果たしてどのような姿になっていくのだろうか。
未来に思いを馳せた者達を乗せて、鉄甲船はまた海を行く。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アメリア・イアハッター
道に迷っちゃったけど、凄く揺れてきたし、これはクライマックス間近ってやつね!
さぁオブリビオン覚悟しなさい!
鳥さんと戦うのを楽しみにしてたんだから…え?もう終わった?
え?早く脱出しないとやばい?
えー!?
急いで踵を返し、宇宙バイクに乗り全速力で脱出へ
もし困ってる人がいれば後ろに乗せたり、道中積極的に協力し進む
地面がなかったり上から脱出可能な場所があればUCを発動し、バイクごと飛ぶ
また宇宙バイクや航宙機等の射出機があるかAIに聞いて探し、動くようならそれで勢いよく外へ吹っ飛ばしてもらう
コンゴウ様がいたら、邪魔するならば轢き逃げし、逃走中であれば中心部へ行けば安全だよと唆し、諸共潰れてもらう
ごめんね!
●それと最後に迷子が一名
宇宙バイクでステーション内を駆け抜けながら、アメリアは確信を得たように笑みを浮かべる。
「ちょっと道に迷っちゃったけど……この音、この揺れ、クライマックスは目前ね!」
上り坂になった通路を駆け上がり、天井の抜けたホールのようなその場所に、颯爽と飛び出していく。そう、空中戦こそ彼女の真骨頂、この開けた場所での鳥との戦い、きっと熱く燃える激戦になることは違いないはず。正直そう見積もってはいたのだが。
『戦闘は既に終了しました』
「えっ」
『なお、当ステーションは間もなく崩壊します。速やかに退去してください』
「ええーっ!?」
言われてみれば床面は既に真っ二つに割れ、この尖塔部分自体が崩落しかかっているのがわかる。
急いでバイクをターンさせ、アメリアはやってきたのと同じくらいの勢いで再度走り始めた。遅れてきた分もうかなり崩壊は進んでいる。ほぼほぼ床が消えて、瓦礫がガンガン降ってくる通路を、風の魔力を駆使したエアハートは、三次元的な軌道で滑らかに通り抜けていく。
ええと、それで、どうしようかしら。ちょっと考えて、アメリアは声を張り上げた。
「アナウンスの人! 聞こえてる!?」
『こちらハミングバード制御プログラムです。前方に注意してください』
「あ」
どん、という衝撃が車体を揺らす。慌てて振り向くと、赤い羽毛の束が舞っているのが微かに見えた。
「なんか轢いちゃった?」
『問題ありません』
「そっか!」
ごめんね、と言い置いてすぐに前へと向き直る。
『どちらに向かわれますか?』
これにも少し、考える。元の道を辿ろうにもこの様子では難しいし、そもそも正確に辿っても時間がかかりすぎてしまうだろう。
「じゃあ、発射台! 艦載機の出口とか射出機って残ってない!?」
『無事なものが一基ありますが、生身での使用は推奨しません』
「大丈夫よ! カタパルトって何となく馴染みがあるから!」
わかるようなわからんような会話の末に、道案内を受けてアメリアは目的の場所に走り込む。
崩壊寸前ながら、高く空を向いた射出機の中を、宇宙バイクは止まることなく疾走。青く広がる空へと迫る。
『あなたがこのステーションを出る最後の船になるでしょう。――良き航海を』
ハチドリの働く止り木から、ツバメが一羽、飛び立っていった。
大成功
🔵🔵🔵