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しあわせな家族

#UDCアース

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#UDCアース


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●暮れ
「ねえ、聞いた?」
 住宅街の一角で、買い物袋を手に噂話に興じていた女性の一人がそう切り出した。手袋をしていないその指先は赤く染まり、すっかり冷え切っている。彼女と一緒に話し込んでいた二人も各々指先や鼻の頭を真っ赤にして、もう随分と長くここで話し込んでいたのが窺い知れた。
 冬の陽はすぐに沈む。あたりを金色に染めながら、一日が穏やかに終わっていく。遠く、鴉が「カァ」と鳴きて羽ばたく音。最近あいつらにゴミを荒らされる、などと町内会長が愚痴っていたのが彼女らの脳裏に少しだけ浮かんで消えた。

「最近、子供の行方不明事件が多いんですって」
「怖いわねぇ」
「ほんとに」
「でもうちの子はちゃんと帰ってきましたよ」
「ええ、うちもよ」
「居なくなった時はおどろいたけれど、良かったわよね」
「どこに行っていたのかしらね」
「心配したわよねぇ」
「一年も音沙汰なくって」
「でもほら、子供は元気な方が良いっていうじゃない」
「そうよね」
「そうそう」

 ――でもゆかりったら。

 ぽつり。
 一体誰が発した言葉だっただろうか。けれど、その名が口から滑り落ちた瞬間に。
 女性達は堰を切ったように捲したてはじめた。

 ――ええあの子ったら本当にやんちゃでも可愛いのよ分かるわ帽子がいつも大きくてちょっと生意気で小さくて紺色のスカートお気に入りなのよね大好きなのはハンバーグちゃんと目玉焼きも乗せてフォークの持ち方がおかしいのよでもスパゲティも好きなのよあら可愛いわねほんと弱くていつも黙っててまるで震えているのが可愛くてだから殴っても何も言わないあの目が目が目が目が煩いでも今はどんな顔していたかしら生意気な可愛くないグズで馬鹿でノロマで吃ってばかりできっとそこが可愛い筈なの誰に似たのかしらちょっとは何か言い返しなさいよあぁでも戻ってきてくれたのよ可愛い子可愛い愛さなきゃ大丈夫私はアタシはあの子を愛して可愛い大好きよゆかり可愛い子愛しているわだって戻ってきてくれたじゃないそうよね私達何も間違ってはいないわみんな幸せよねええそうよ!

 ぺちゃくちゃくちゃ。ぺちゃくちゃくちゃ。ぺちゃくちゃくちゃ。
 彼女らの口は止まることを知らずに回り続ける。もはや互いの言葉など聞いてはいない。夕暮れの、金色の光が次第に藍に染まる。だがそんな事などどうだって良い。寒い筈なのに、じわりと滲む汗が背を滑る。けれどやはり笑い声も止まらない。止まらない。舌が乾いて、喉が引き攣れてヒビ割れて、それでも止まれない。だって。

 だって、この猛烈な違和に気が付きたくはないから。

 日が沈み、あの家に帰ればゆかりがいる。可愛い愛しい我が子が待っている。ゆかりがいる。私の家にも、皆の家にも、ゆかりがいる。それは何もおかしな事ではない。

 ゆかりが、いる。

 可愛い可愛い娘が家にいる。それは家族揃って幸福な、まるで絵に描いたような光景だ。だから今もこうして各々の幸せを口に出して再確認をしている。私の家に恐ろしいことなど何一つないのだと。そう、何もおかしな事はない筈なのに。

 ――私たちは、一体何に怯えているのだろう。

●こどもたち
「どれ程に異質な状況も、その内にて気づく事は大変難しい事のようです」
 もしくは気付きたくないのでしょう。キディ・ナシュ(未知・f00998)が猟兵達へと痛ましげにその目を伏せた。
 消えた子らが、何らかの形で別の存在になって戻ってくる。チェンジリング、取り替え子。そういった存在と違うと断定出来るのは、その全員が『ゆかりちゃん』という小さな女の子で認識されているせいだ。
「親も、兄弟も、近隣に住む方も。その事を疑問に思わないようです」
 背丈が違う。体格が違う。性別が、声が、髪が、その瞳が。例えどれ程その存在がかけ離れていようと、そこに住まう人々はそれを我が子であると認識する。そして戻ってくる以上、彼らにとっては大した事件ではないと、そう思ってしまっている。
 日常の裏側で邪神が蠢き、狂気と紙一重の世界。
 狂っているのは彼らか、それとも世界の方か。
「けれどまだ、本当のお子様がいるご家庭の一部は、正気を保っているはずです。その方達からであれば、何かお話が聞けるかもしれません」
 その他にも、学校や商業施設など子供の出入りが多いところであれば有益な情報が拾えるかもしれない。電子の海や街の本屋、図書館などの文字で行方不明者について調べるのも良いだろう。
「探したところで、居なくなった本当の子供達が戻ってくるかは分かりません。手遅れである可能性の方が、きっと高いと思われます。ですが……誰にも見つからないまま、すり替えられたままであるよりかは、きっと」

 居なくなった事すら誰にも分かってもらえない。それどころか、別の何かが自分のフリをしている。生きていた、生きている。それすらも、皆から忘れ去られてしまう。
 子らの存在そのものへの冒涜を、見逃すわけにはいかない。
「それでは皆さま、行きましょう――消えた子供たちを探す為に」


砂上
 はじめまして、こんにちは。
 砂上(さじょう)です。

 今回の舞台はUDCアース。
 まずはゆかりちゃんについての調査となります。

 子供達がどこへ消えたのか、そもそも何故居なくなったのか、ゆかりちゃんとは何なのかを調べてください。ご自由にどうぞ。一章は合わせ以外であれば個別判定となります。
 今回は怪談話風で進むので、あまり気分の良くない話になる予定です。苦手な方はお気をつけください。

 それでは素敵なプレイングをお待ちしております!
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第1章 冒険 『大都会の闇』

POW   :    情報は足で稼ぐ。根気よく現地で聞き込みを行う。

SPD   :    情報は指で稼ぐ。ネットや出版物を読み漁る。

WIZ   :    囮捜査を試みる。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●掛け違えたボタン
 まだ昼過ぎだというのに、曇った冬の空は酷く重い。乾いた空気が時折、思い出したように強く動いてアスファルトの埃を舞い上げた。何処からか飛んできた落ち葉が、カサリと音を立て、また何処へかと旅に出る。

 静かな住宅街。代わり映えのしない道。それのどこを曲がっても、まるで型取りしたかのような、似たような家々が建ち並ぶだけ。遠くから聞こえてくるのは小学校のチャイムの音か。その辺りまで出れば、本屋やゲームセンター、インターネットカフェなどの商店もあるだろう。

 何の変哲も無い。ただ、人々の活気は感じられない。
 ひっそりと、まるで息を潜めるかのように――否。まるで弱って死んでいく生き物のように、その街は冬の空気の中で横たわっていた。
【体調不良のため、暫く此方のリプレイは延期となります。詳しくはマスターページにて記載しております】
芥辺・有
取り敢えず、図書館に行って新聞でも調べてみようか。行方不明者について何か載ってるかも。
機械はあんまり得意じゃないけど、……必要であれば行方不明者やゆかりちゃんについて調べるのに使うよ。検索くらいなら、できるだろ……なんとか。

あとは、そうだな。学校帰りの学生なんかも来るかもしれない。行方不明者やゆかりちゃんについての噂を話してないか耳をそばだてようか。
近頃行方不明になった奴についてとか、いなくなる前の様子について話してないかとか。



●消えた名前
 小学一年生の■田■■■ちゃん(7歳)が行方不明になったと、通報があった。■■■ちゃんは小学校で友人らと別れた後、行方が分からなくなっている。警察は事件の可能性があるとして捜索しており――

「……これも駄目か」
 新聞のコピーが挟まったファイルを開いて、芥辺・有(ストレイキャット・f00133)は何度目かの溜息をついた。
 平日の昼間ということもあってか、人影疎らな図書館中。行方不明の記事を調べんと、該当記事を探してみたものの。そのこに記されていた行方不明児童の名は、全て黒いインクのようなもので塗りつぶされていた後だった。彼らの不鮮明な顔写真も、ともすればコピー機の調子が悪かっただけだろうとも思ったのだが――一人、二人と、その全てがまるでノイズをかけたかのように歪み、その素顔を誰一人として見せてはくれなかった。
 どれほど時間を遡ってみても、その薄ぼけた輪郭のようなものしか掴めない。

 意図的に、誰かが居なくなった子らの存在を消し去っていっている。

 成る程、入れ替わるというのならば徹底している。けれど、調べる側としては困りものだ。苦手だけれど、パソコンを使ってみるのもいいかもしれない。検索ぐらいなら頑張れる筈だ。積み上げたファイルを閉じて棚へと戻そうとした、その時だった。
 三人連れの少年達が館内へと入って来たのがちらりと視界の端に映る。ランドセルを背負った、己よりもまだ頭一つ分は下だろうという背丈の子供達。
「今日のテストの点数ちょっとやばい……怒られる」
「おれも……」
「やめろよお前ら。暗い顔してたら連れてかれんぞ」
 ――連れて行かれる?
 届いたその不穏な言葉に、本を探すふりで彼らに近づきながら、そっと耳をそばだてる。
「はー? お前あんな怪談話信じてんの?」
「……心配してやったのになんだよ」
「ごめんって、怒んなよー。でも帰って来れるじゃん」
「それにさぁ、一人じゃないなら大丈夫って話じゃないっけ」
 次第に声が大きくなり始めた子らへ、司書がお静かにと声をかける。はぁいと三つの良い返事が響いて、声は小さなものへと変わり。あとは流行りのゲームの話を楽しげに口に乗せ、マンガの置いてある棚へと彼らはその小さな足音を残して行った。

▼芥辺・有 >>> ALL
 新聞記事を調べてみたけど、一番最初に居なくなったのは一年生の女の子。後は学年も性別もバラバラ。あとごめん、名前は分らなかった。誰かが記事を塗りつぶしてた。
それから、どうも暗い顔をして一人でいると駄目みたいだって子供達が噂してたよ。まぁこの辺が完全に決め手、っていうにはまだちょっと弱そうかな。

 ああ、そうだ一番最初の家、近所づきあいで少しトラブルがあったみたい。近くに引っ越してきた宗教団体とのものらしいんだけど。でもそれ以降は特に問題には上がって無かったら、関係無いのかもしれないけどね。
(添付ファイル:該当部分の記事の写真)

成功 🔵​🔵​🔴​

八坂・操
【SPD】

愛しのわが子がチェーンジリーング♪ この子は誰と気付けば終わり☆ ゆかりちゃんが牙をむく! うんうん、いかにもホラー映画らしい展開だね♪
でも、子供が犠牲になるのはちょーっとねー。操ちゃんもあんまり感心しないなー?

という訳で、新聞記者に『変装』しつつ図書館で『情報収集』しよっか♪
行方不明なーんてキナ臭い情報なら、当時の新聞だってきっと取ってあるだろうね♪ 被害者を子供に絞って、居なくなった時間帯と場所を地図と照らし合わせれば、何か分かるかも☆
出来れば行方不明になった子供の共通点みたいなのも知りたいけど……んー、個人情報な名簿まで見るのは難しいかな? 司書さんにお願いだけしてみよー!



●最後に見たのは
「愛しのわが子がチェーンジリーング♪ この子は誰と気付けば終わり☆ ゆかりちゃんが牙をむく!」
 まるでホラー映画の予告のよう。小声でそんな事を呟きながら、八坂・操(怪異・f04936)は図書館の設備である、少しばかり古いコピー機のボタンを押した。機械が音を立て目を覚ますのを、彼女はふんふんと楽しげに鼻歌を歌いながら見守っていた。
 一見ひどく楽しそうに見えるその姿。だが、子供たちが犠牲になるのは彼女にとっても見逃せない事件。
 新聞記者に扮し、調べたのは有と同じく新聞記事。手分けの意味も込め、重点的に子供がいなくなった時間や場所を探し出したのは数十分前のこと。消されていた名前を、学生の名簿ならばと借りて見ようとしたのだが、個人情報ですので……と予想通りにやんわりと断られてしまった。
 けれど新聞記事の件からして――おそらく、そちらも誰かに消されていた可能性が高いか。

 ベロリと最後の一枚を吐き出して、コピー機は再び眠りに入る。お疲れさま♪と労り込めるようにぽんぽんと叩いたならば、天板に挟んでいた本を取り出した。それを元にあった棚へと戻し、空いていた机の上へ先ほど吐き出された紙――拡大コピーされたこの街の地図を広げ繋ぎ合わせる。
 ひとつ、ひとつ、最後に子供を見かけたという場所を書き込んでいく。全ての場所がある訳ではないけれど、絞り込めば手がかりになるはずだ。赤いペンで調べた通りの個所へ正確に丸をつけていく。

「ここもだよ」

 すっと、向かい側から小さな手が突然地図の一点を指した。言われたとおりに、きゅ、とそこにも印をつける。
 顔はまだ、上げない。
「ここも」
「ここも」
「ここも」
 小さな指先の後を、赤いペンが追いかける。十字路の角。民家の隙間。細い路地裏。
 調べた数の倍ほどの赤が地図に記される。それが、住宅街の中に集まっていると気がつくと同時に、声が止む。
 そうしてようやく、彼女は顔を上げた。
 誰もいない。
 居るはずもない。
 そこにはただ、クリーム色の壁がのっぺりと眼前に広がっている。
「だよねぇ……」
 何せ机は、壁にぴったりとくっつけるように置かれていたのだから。

▼八坂・操 >>> ALL
 新聞に落書き! 操ちゃんそういうのあんまり感心しないな~?
 そうそう、子供たちはみんな学校帰りにいなくなったみたいだね♪ だから今ぐらいの時間帯から気をつけておいた方がいいかも☆
 あと子供が居なくなったあたりを纏めておいた地図! 照れ屋で親切な子に手伝って貰っちゃった♪
 居なくなるのは住宅街に集中してるっぽい?
(添付ファイル:近隣の地図に、最終目撃場所の書き込みが加えられたもの)

 あ、その宗教団体私も調べたよ☆ 死ぬのが救いになるんだって! こわーい♪ あやしいかなって思ったけど、その本部がある建物の所から目撃証言ちょっと離れてるんだよね☆

成功 🔵​🔵​🔴​

彩瑠・姫桜
ゆかりちゃん、ここにも現れるのね
今回もゆかりちゃん自身が悪いわけではないと、私は思う…けど
少なくともこの状況を放ってはおきたくないから
真実を見届けるためにも、手伝わせてもらうわ

POW
子供の多い場所で、子供達に直接話を聞きに行くわ
行くのは公園
【コミュ力・情報収取】使用して
遊んでいる子供達に声をかけみるわ
できるなら一緒に遊んで、打ち解けてもらった上で話を聞くわね

主に聞くのは2点
ゆかりちゃんに取り替えられた子供は、どんな子だと言われているのか
その子が何をしたらゆかりちゃんに取り替えられてしまうのか

それらが子供達の噂話の中でどんな風に話されているのか等から
ゆかりちゃんについて情報を掴んでいこうと思うわ



●わるいこ
「ぬいぐるみ?」
 首を傾げた彩瑠・姫桜(冬桜・f04489)の金色の髪がさらりと流れる。
 公園で遊んでいた低学年の子らに声をかけたのは少し前。部活動のない彼らはいつもここで遊んでいるらしい。ベンチに腰掛けている老人や、もっと幼い子を連れた母親の姿といった姿もいくつか見える。どうやら地域の憩いの場なのだろう、此処だけが息を潜めた住宅街の中で、穏やかな人の気配がしていた。
 そんな場所で、賑やかな声あげ鬼ごっこを繰り広げた後。休憩がてら、それとなく『ゆかりちゃん』が居なくなる前がどうであったか尋ねてみれば、返ってきた予想外の言葉。
「ピンク色で、お耳が長いウサギさんを持ってるって」
「でも、あれウソじゃないのかなぁ」
「見てないもんね」
「でもゆかりちゃん達みんな言ってたよね」
「――ピンクのウサギさんがお友だち!」
「そういうウソをついちゃう悪い子だから、いなくなっちゃうんだって」
「2組のゆかりちゃんのお母さんが前に言ってたよね」
「でも戻ってきたゆかりちゃんが良い子だから、きっとかみさまの所で悪いのを取ってもらったんだって」
「でもわたし、いい子でずっとお父さんとお母さんと一緒の方がいい!」
「わたしも!」
「ぼくもー!」
 はしゃぐ子供達の声は賑やかだ。大人の身勝手な言葉を恐ろしいと思えど、彼らにとってみれば教訓含ませた童話と変わりは無いのかもしれない。
 以前にも姫桜は『ゆかりちゃん』と出会っている。その時同様、今回も彼女ら自身が悪いものではないと信じたい。だからこそ、この状況を打ち破った先にある真実を見届けなければ。
「そうね。私もその方がいいと思う、わ?」
 ふっと、背後から姫桜の目が覆われた。柔い手のひらの、ひんやりとした温度。軽い重みが背中にかかる。一緒に遊んでいた子ども達の誰かだろうか。こんなに冷えてしまっては風邪をひくかもしれない。遅くならないうちに帰らせた方が良いだろうか。この子達だって、狙われないとは限らないわけだし。
 そう、思った時だった。

「いいなぁ」

 高い、ちょっと舌ったらずな女の子の声が、耳元に落ちた。
 感情乗らぬその言葉が途切れると同時に、するりと指が外れる。青白く細い指先が、左右へ逃げるように消えていくのが青い瞳に確かに映った。
 立ちあがって振り返る。
 砂場。ベンチ。ブランコ。滑り台。目を凝らした所で、人影ひとつありはしない。

 どうしたの?と、子供たちの無邪気な声に、何でもないわと彼女は曖昧に笑うだけだった。

▼彩瑠・姫桜 >>> ALL
 流石に子供たちだと、宗教だとかは分らないみたい。ただ、親にはその本部に近づかないように言われてるんだって言ってたわ。
 居なくなる子は、みんな「ピンクのウサギのぬいぐるみを持ってた」って言ってたみたい。誰も見た事が無いから嘘なんじゃって話なんだけど……でも、同じ嘘なんてつくものかしら? 嘘をつきの悪い子だから居なくなる、なんて話が出てるみたいで、なんだか残酷な話よね。

 ねぇ、ところで、何かおかしなことは起きたりしてない? いえ、気のせいならいいんだけど。

成功 🔵​🔵​🔴​

オルハ・オランシュ
【roost】/【POW】

真実に気付いたら……、ううん
このままじゃ駄目だよね

皆で手分けして情報収集してみない?
1時間後にまたここで集合しよう!
私はゲームセンターっていう所に
この異様な現実から逃避したい子がいるかも

取り込み中にごめん
この辺りには似たような女の子が大勢いるんだね
でも、本当にそこにいるべきなのはあの子じゃないんでしょ?

失踪した子を知っているなら教えて
それはいつ頃で、最後に見たのはどんな状況で、どんな子だったのか
『ゆかりちゃん』の似顔絵も頼めるかな
これ以上の被害を防ぐために真相に迫りたいの

サツキと景正はどうだった?
集めた情報を共有して、一旦まとめてみよう
共通点が浮かんでこないかな……


鞍馬・景正
【roost】/【POW】

参りましょう。何が待ち受けていようと。

◆方針
学校を現地調査。
UDC組織の伝手を頼み教育実習生や業者等に扮して内部へ。

◆調査
教室の見回りや教師達からの聴取で、「ゆかり」らしき少女と違う風采の子供たちに目星を。

その上で彼らの名前や住所など調べ、その子や家族の方々へ直接話を伺いに。

私たちはこの異常事態の調査をしに来た者。
力になりたいという事を伝え、情報を聞き出します。

◆聴取
・「ゆかり」なる少女に心当たりがあるか
・この騒動以外で何か怪しい人物や団体、事件など無かったか
・その他何か気掛りな事はあるか

定刻となったらオルハ殿、サツキ殿と合流。
得た情報を共有し、整理致します。


サツキ・クルーエル
【roost】/【WIZ】

目を背けていれば続く幸せかもしれないけど…忘れられた子たちはきっと、戻りたいよね

ボクは子供たちが行方不明になった辺りを調べに行ってみるよ
人通りの少なそうな路地裏とか、子供たちが良く使う近道とか
何か痕跡が残ってるかもしれないし…いなくなった子供たちに比べたらボクはちょっと大きいかもしれないけど、もしかしたら何か起きるかも

あとは…そうだね、そういった場所に行こうとしてる子がいたら後を付けてみようかな
もしかしたらちいなくなった他の子供たちも近くにいるかもしれないし

探索は一時間ほどで切り上げて、オルハさんと景正さんと合流するよ
行方不明になった場所や条件がわかるといいけど…



●狂気

 もしも、この真実に気づいてしまったのならば――

 思いついてしまった仄暗い狂気の先。それを打ち消すようにオルハ・オランシュ(アトリア・f00497)がかぶりを振れば、ピンと立った耳がふるふると揺れる。
「ここままじゃ駄目だよね」
 顔をあげ、その翠の瞳が映す先。そこには彼女が働く、沢山のジャム瓶並ぶ何でも屋、『roost』で知り合った頼もしい友人達の姿。
「ええ。ですから、参りましょう。何が待ち受けていようと」
 鞍馬・景正(天雷无妄・f02972)が凛とした声色で是を返す。その藍の瞳は刃のように冴え冴えと、迷いなく。
 しかし彼と違い、見たくないものから目を逸らし、何も知ろうとも分かろうともしないのであれば。この街の人々は不安定な幸福に包まれながら生きていくのかもしれない。
 けれど。
「忘れられた子たちはきっと、戻りたいよね」
 その青空のような瞳をほんの少し曇らせたサツキ・クルーエル(星宵マグノリア・f01077)が零した言葉。それは、きっと今回集まっている誰しもが思う願い。三者の瞳が交わって、確りと深く頷きあう。
 とはいえ、情報を集めるのであれば三人で動くより、手分けした方が効果が高い筈だろう。
「それじゃあ、1時間後にまたここで集合しよう!」
 小学校側の商店街。その入り口に響いた声を合図に、彼らはその場を離れていく。

●痣
 開いた自動ドアから流れてきた音の多さに、オルハのその大きな耳が一度揺れたが、臆すことなく足を踏み入れた。
 そっと見回した店内。一番目をひいたのは、一心不乱に音楽ゲームのボタンを押している、小学生中学年程の細身の少年。
「取り込み中にごめん」
 楽しそうに、というには程遠く。まるで、画面の中へ逃避するかのように画面に食い入っている。
 それが、ひどく気になった。
「この辺りには似たような女の子が大勢いるんだね――でも、本当にそこにいるべきなのはあの子じゃないんでしょ?」
 最初はかけられた声に、少年は面倒くさそうに彼女へと一度だけちらりと視線を投げたのみ。けれども、続く言葉に今度は勢いよく振り返った。びくりとその痩せた体を大きくふるわせ息をのみ、その目を大きく見開いて。
 この子は明らかに何かを知っている、いや、異常に気づいている。
「失踪した子を知っているなら教えて」
 お願い、と真摯に告げられた声。緑の瞳は彼を射抜くようにして。威圧や恐怖などは無い。ただ、真っ直ぐな願いが秘められている。
 だからこそ、少年はの口は開いた。
「俺が知ってるやつは、一年前。一人ぼっちでいた事が多かったよ。こないだ戻ってきたけど……なんか視線が怖いし、気持ち悪い」
 店内のBGMにかき消されるかどうかといった小さな声。けれど、それらを一つ足りとも聞き零しなどしない。これ以上の被害者も、目の前の彼の不安も、真相を暴けばきっと取り除けるのだと、そう信じて。
「ありがとう。そうだ。『ゆかりちゃん』の似顔絵も頼めるかな」
「いいけど……あれ、あいつどんな顔してたっけ……」
 差し出されたペンとノートを受け取った少年が、考え込むようにしながらノートに線を引く。女児用の通学帽に肩口の長さの髪、子供らしい輪郭を描いたところで、その手が止まってしまう。
 そう。だからこそ、オルハはそれを見つけてしまった。
「ねぇ君、それ――」
 ペンを握る手。その袖口に隠れるように、手首に大きく広がった痣。
 ただ事ではない傷痕に驚いた彼女が、全てを言い終わるよりも早く。
 何でもない!と、青ざめた顔をした少年は、ノートを彼女に押し付けてゲームセンターの中から飛び出して行った。

 まるでその傷が、何よりも怖いのだと言わんばかりに。

●親
「ゆかりちゃんですか? ええ、大人しくて良い子で……ああ、ほら。ちょうどそこに居ますよ」
 教育関係者に扮して校内を案内されていた景正の隣を、紺色のスカートが翻っていく。振り返れば、その子は丁度階段を曲がって降りていくところだったのか、すぐに視界からは消えてしまった。
 けれど、今追いかけるべきは、そちらではない。
 赤いランドセルと黄色い学生帽が消えた先を、怯えるように見つめる一人の少女。その姿を、彼の瞳はしっかりと捉えていた。

 家庭環境の調査という名目で得た住所を頼りに、住宅街へと足を向けたのは先程のやり取りから十数分後のこと。メモ用紙に記された名前と表札を確認し、呼び鈴を鳴らして暫し。
「はい、どなた様でしょう……?」
 出てきたのは先程の少女の母親だろう。顔立ちが良く似ていた。ただ、ほんの少し顔色が良くないか。けれどもその目に理性の光は失われておらず、こちらに対して訝るような様子も見てとれる。
「私はこの異常事態――「ゆかり」なる少女について調査しに来た者です」
 ならばと、嘘偽りなく真っ正面から景正は本題を斬り込んだ。
 彼の美しい風貌と相まって、あまりに潔いそれに一瞬気圧されたように怯む母親だったが。
「どういう、事ですか」
 すぐに、警戒心を露わにしながら短く、硬い声でそう答えた。家の中に帰宅した子が居るのだろう。我が子を守らねばという親の気迫。それを受けてなお、いや、受けたからか。青年はその瞳をそらさず、その気迫に真っ向から相対する。
「危害は、何一つ加える気は御座いません。寧ろ、あれば切ってご覧にいれましょう。私は、貴女方の力になりたいのです!」
 あまりに愚直すぎる言葉を告げた、男のその表情、その目。
 嘘偽りや隠し事の色など、一切無い。というか、吐きそうにも無い。
「……分かりました」
 信じますと、彼女の体から緊張感が抜ける。どうやら言の葉の真剣勝負は、景正の白星に終わったようだ。
「ゆかりちゃん……あの、帰ってきた子たちの事ですよね? 私、どうも苦手で……いなくなる前の子のことは、ええと、確か気にかけていたはずなんですが」
 何人もいるせいで、ちょっと覚えてないですねと、苦く笑う。
「でもあの子達が帰ってきた後は、どのお家もしばらくしたら引っ越すみたいですよ。きっと、子供を二度も失うのは、怖いんだと思います」
「かもしれませんな……他にも、怪しい人物や団体、事件など、他にも何か気掛かりな事はございますか?」
「そうですねぇ」

「黄昏の信仰って、おかしな宗教団体が来てから起こってる事件だから、早く出て行って欲しいんですけど……でも、あそこの事務所に人なんているでしょうか?」


●独
 ふと、気がつけば周囲に誰もいなくなったことに気がついた。
 静かすぎる夕暮れの住宅街の中で、ぽつんと佇んだサツキの背筋に、つうっと冷たい汗が伝う。
 確かに、他の猟兵達が纏めてくれていた、子供の最終目撃場所付近を探してはいた。人通りが少ない路地や子供が通りそうな裏道。もし、この辺りで居なくなったとするのであれば。その痕跡はこの辺りにある筈だ。どんな小さなものも逃さぬようにと注意深く辺りを見ながら何度目かの角を曲がった時には――既に遅かった。周囲に人影は見当たらず。何かおかしい、と思った時には探せども探せども、人の気配はどこにも感じられなかった。それに、時計の針はまだ約束の時間よりも前なのに、どうして日暮れになっているのかも分からない。
 並ぶ家々の中にならば、誰かいるかもしれない。もしくは、普段はしまい込んでいる翼を広げ、上から見れば人がいるところへ出られるかもしれない。
 どうしよう。ほんの一瞬、そう迷った時。

 後ろから、小さな足音がした。

 ぱっと振り返れば、ふらふらと歩く小さな子供の後ろ姿。随分と細く、頼りのない姿。冬だというのにボロボロの半袖で、足元もサンダルだ。小さく震えているのが此処からでも分かる。
「待って!」
 明らかに不自然だ、罠かもしれない。

 けれどもし、行方不明の誰かなのだとしたら?

 放ってはおけないとサツキは大きく声を出してその背を追う。けれど、声が聞こえていないのか子供は振り返りも立ち止まりもしない。危なっかしい足取りで、ふらり、ふらりと道を進み。彼まで後数メートル、というところで少年はその四つ角を曲がる。
 見えた顔に、大きなガーゼが貼られているのが痛々しい。虚ろな目からは生気を感じられもしない。助けなきゃ。
 曲がり角の先から、少年の方へと手が伸びた。
 彼はそれに抵抗することもなく、引き寄せられ、角の先へと消えていく。
「……うそ」
 サツキがそこに追いつくまで僅か数秒足らず。除いた先の角には誰もいない。代わりに、古びたピンクのウサギのぬいぐるみが一つ、落ちている。
 これは、先程猟兵から聞いたものだろうか。咄嗟に拾い上げて少年が消えた方へと駆ける。途中の細い路地も、塀の裏も全て。全て。全て。

 走っても、走っても、少年の姿はどこにも見当たらなかった。

 そして次第に、先程までなかった人の気配が戻ってくる。通学路を歩く子供達の声。井戸端会議をする主婦。犬の散歩をする老人。
 住宅街を抜けて、小学校の建物が見える方へ。その近くまで来たのなら。

「オルハさん! 景正さん!」
 商店街の入り口にいたキマイラの少女と、羅刹の青年の姿を見て、彼女はホッとしたように地面へとへたりこみ――そうになった所を、二人に支えられたのだった。


▼鞍馬・景正 >>> ALL
 サツキ殿が、「ピンクのうさぎのぬいぐるみ」を発見されました。
(添付ファイル:なんの変哲も無い、少し薄汚れたピンクのうさぎのぬいぐるみ)

 ですが、彼女自身が少々取り乱しておられます。オルハ殿が宥めているのですが、もし、落ち着かれないようであれば私が報告を――
 いや、自分で出来るとの事です。お任せいたしましょう。

 私の調べた範囲ではおかしな事は特には。ただ、やはり、宗教団体が怪しいのではという話を聞いて登録されている住所の所へと様子見に伺ったのですが、人が住めるような場所では無い廃墟でした。あと、ゆかりが帰ってきてから暫くすると、引っ越すご家庭が多いそうです。そうなれば次はまた、どこかの子がいなくなる。その繰り返しだそうです。

▼サツキ・クルーエル >>> ALL
 なんだか夕暮れの誰もいない場所に出て、そしたら目の前で、子供が消えちゃったんだ。
 罠なのかもしれないけど、顔に大きな怪我をしてた子だった。いなくなって、代わりにぬいぐるみだけあって。でも、助けてあげなきゃって、探したんだけど居なくて、探してたらいつのまにか二人のいる場所に戻ってきちゃってて。
 それから、このぬいぐるみ、誰かが持ってると見えなくなるみたい。わたしが一度落としたら二人にも見えたんだ。きっと何かの祭具なんだと思う。
 ずっと持ってるとなんだか気分が悪くなるから、今は地面に置いてる状態だよ。

▼オルハ・オランシュ >>> ALL
 サツキ、あんまり無理しちゃダメだよ。
 地面に置かれたぬいぐるみは私達が取り囲んでいる形。ないとは思うけど、動き出されても困るしね。それから、私もこのぬいぐるみ見てる以外のおかしなこと?は起こってないよ。
 私が話を聞いた子は、一年前に知り合いの子が居なくなったけど、この間戻ってきて、それからはなんだが気持ち悪いって言ってた。
 ただ、その話をしてくれた彼自身が、怪我をしていたのが少し心配だな……

▼オルハ・オランシュ >>> ALL
 そうそう、私達で調べた事についての共通点も話し合ったんだけどね、ゆかりちゃんの顔が見えないって事と、それからこの街に、怪我してる子が、何だか多いみたい……?

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

春霞・遙
子供は社会的立場が弱いから、病気だけじゃなく事件や事故に巻き込まれても自分を守れない。
入院もせずに家族が一緒にいられるのが一番幸せだと思う。それを、私は守りたい。

【POW】
認識の齟齬を正すことはできない前提で、噂に「聞き耳」を立てるなどしてゆかりちゃんが戻ってきたご家庭の方の話すいなくなった状況や戻ってくるまでの期間を聞きたいです。
おそらく情報が混乱していると思うのでうまく「情報収集」しましょう。
本人たちの話が聞けない場合は仕方がないので噂話に加わったことのある正気のご家庭の方に、噂の内容を伺うことになりますかね。

それと、相手がUDCであっても虐待は良くないと思うんですよ。
殴らないであげて。



●家族のカタチ
 端末に入っていた仲間達からの情報を見て、春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)が密やかに溜息をついた。嫌な予想が頭の中でぐるぐると回る。
 静かな、本当に静かな住宅街だ。けれど人の気配が無いという程ではない。ちらほらと見える住民の姿。その中から探すのは、己と同じ年頃の女性達。ゆっくりと散歩でもしている風に歩いていれば、寒風と共に声が届いた。

 ――行方不明ですって

 噂話の井戸端会議。二人の主婦が丁字路の角で、密やかに、けれどもどこか楽しむかのような口調で。頻発する出来事について、彼女達は噂話を口に乗せていく。
 曲がった先。遙はトン、と塀に凭れかかり。取り出した携帯端末を弄るフリをしながら、その会話に聞き耳を立てた。

 ――怖いわねぇ
 ――でも、きっと戻ってくるわよ
 ――あの子ったら、ほんと勝手に消えるんだから
 ――ぱっと居なくなっちゃって……すごく怖かったわ
 ――それで、まるっと一年後の夕方に家の前にぽけっと帰ってきてて
 ――何してたのか聞いても答えないんのよね
 ――仕方ないわ、あの子トロくさかったんですもの
 ――そうよねぇ、うちもよ

 それぞれが己の子の話をしているというには、何処か妙に噛み合い過ぎている。まるで同一人物の事を話しているかのようだ。だがその歪さを問いただしたところで、明確な答えなど帰ってきまい。今はずれた認識を正す事よりも、多くを拾い集め精査する方が良いだろうか。
 そう、思ってはいたのだが。

 ――もう、あの子見てるとイライラしちゃって
 ――だからつい、手が出ちゃうのよね

 子供に対する確信には触れぬままの、どこか空虚さの満ちる会話に混じったその言葉。外れなかった、けれど当たって欲しく等無かった予想の内容。
 彼女はそれを、聞き逃したくは無かった。

「虐待は良くないと思うんですよ」

 子供は弱い生き物だ。
 それは肉体的にも、社会的にも。突然事件や事故に巻き込まれたとて、彼らが己自身を守る術はとても少ない。だからこそ、それらとは無縁で家族と共に健やかに暮らせるのならば、それが一番ではないだろうか。
 その幸福を守りたいと願っているからこそ。潜んでいた角から姿を出し、遙は彼女らへ声をかけざるを得なかった。
「殴らないであげて」
 見知らぬ女の登場に、母親達がその顔を歪にゆがめた笑みのまま引き攣らせる。その動揺は、突然の出来事に驚いたからだけでは無いだろう。凛と向けられた茶色の瞳から、逃れるようにきょろきょろと眼球が忙しなく動き。違う、違うのよと震えた声で弁明が繰り返され。
 やがて。

「したくてしてた訳じゃ、ないのよ……」

 その言葉は、彼女らが目を逸らし続けた歪さの中から、悲鳴のように絞り出された。


▼春霞・遙 >>> ALL
 三人が見つけたその怪我は、虐待によるものではないでしょうか。
 子供が居なくなったご家庭では、どうやら失踪事件が起きるまで、そういった行為を繰り返していたようです。件の宗教団体が近くに来てから、子供に対し暴力を振るうようになってしまったとの事です。彼女達の言葉を全て信じるのであれば、今はもうしてはいない、との事ですが。

 そうして、ある日突然いなくなってから慌てて探して……帰ってきたのは一年後。
 夕方頃家の前にいた我が子。それが今の『ゆかりちゃん』なんだそうです。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夏目・晴夜
如何に不可解な悪夢であろうと、
目が覚めるまではそれが現実だと思い込んでしまうものですからね

【WIZ】
ゆかりちゃんを妹に持つ兄の振りをして、
ゆかりちゃんがいる親たちから何らかの情報を聞き出したく

両親は出張ばかりで、兄の私がゆかりの親代わりなのです
ある日学校から帰ってこなくて本当に不安だったのですが、
二年かけてちゃんと帰ってきてくれた時は心底安堵したものです
今日も馬鹿な頭とノロマな足を働かせて無駄に学校に通っていて幸せですよ

あなた達のゆかりちゃんは
何時どんなタイミングで一旦居なくなったのですか?
今は何処で何をしているのですか?
普段どんな会話を交わすのですか?
あなた達は、一体何に怯えているのですか?



●醒める
「両親が出張ばかりで、私がゆかりの親代わりなのです」
 『ゆかりちゃん』を妹にの兄のフリをし、別の保護者と接触していたのは夏目・晴夜(不夜狼・f00145)。そっと目を伏せ、学校から帰って来なかった失踪当日は本当に不安でしたと告げれば、大変だったのねと相手もすんなり信じたようだった。
 けれどもその労いの視線に混じるのは、同じ恐怖の渦中に、目の前の相手もいるのだという歪んだ安堵。
 それを冷静に感じ取りながらも、晴夜は会話を合わせていく。帰ってきてくれてよかった、今日も馬鹿な頭とノロマな足を働かせて学校に通っていて、家族が揃って幸せだと。そう重ねて告げるごとに目の前の女性が分かるわぁ、とニコニコ笑顔で何度も頷きを返す。途中に混ぜられた暴言も、他の猟兵達が言っていたように相手にとっては疑問にすら思わない事らしい。
「ところで、貴女の『ゆかりちゃん』は何時どんなタイミングで一旦居なくなったのですか?」
「うちの子は二年前よ。本当に、無駄な心配をかけさせて……でもちゃんと今は家にいるわ」
「それでは、普段どんな会話を交わすのですか?」
「え?」
 最初の質問と違って女性の目が泳ぐ。
「妹との会話の参考にしたいんです。親代わりとは言え私もまだ学生ですから、きっと気の回らない点などがあるかと思うので」
「ええ、ええと、そうね。なんだったかしら……そう、好きな食べ物だとか、クラスのお話、とかじゃないかしら……ごめんなさい、あまり参考にならないわね」
 煮え切らない内容に、最後は誤魔化し。明らかな嘘だ。
 おそらくは会話などしていないのだろう。今思い出したのは、いなくなる前の誰かの話かもしれない。けれど、これは無関心というわけではなさそうだ。寧ろ――
「あなたは、一体何に怯えているのですか?」
 最後に落とされた問いは、確かな一石となって不可解な悪夢にひびを入れる。
 え、と再び固まってしまった女性を紫の感情読めぬ瞳がひたりと見据えた。
「一体何に、怯えているのですか?」
 もう一度繰り返される問い。ひび割れが大きくなっていく。見ぬフリしていた筈の現実がひたりひたりと忍び寄る。
 悪夢よりも不可解で、目を背けたくなう程の、現実が。

 そうして、女性から吐き出された言葉は——


▼夏目・晴夜 >>> ALL
 虐待の事実はおそらく揺らぎのない事実のようです。
 そうして子供への意識を薄くしてしまえば、何処へ行ったかも親が把握し難いでしょう。そして帰ってきたとしても、それが我が子でないと言い切るほどの自信がなくなります。
 彼らが今怯えているのは、自分たちも何れ『ゆかりちゃん』のように不気味な何かに取って代わられてしまうのでは無いか、そういった不安からのようです。引っ越していなくなったご家庭が多いのもそれに拍車をかけているようですね。
 以上、見知らぬ主婦の方から、頑張って聞き出しました。さぁ褒めてください。

成功 🔵​🔵​🔴​

コノハ・ライゼ
見付けて、あげたいよネ

まだ正気を保っている家庭に接触したい
UDC組織から情報貰えるかな
ないなら通学路を張って子供に声掛けようか

正気ならこの状況に恐怖を覚えているかもしれない
常の言動抑え、『コミュ力』『礼儀作法』で警戒させないよう留意
出来るだけ猟兵仲間と情報交換しつつ行動

「この辺りで「いなくなった子が戻ってきた」という噂を聞いたンだけど……
妹が居なくなって探している、話を聞かせてほしいと『情報収集』
他に行方不明ないし突然死した子を知らないかな
そういった子供、家族、状況に共通点は無いだろうか
……「ゆかりちゃん」て、何?
他に何でもいい
気になる事があれば聞かせて

話聞けたら礼を言い
(アドリブ等歓迎)



●棲処
 端末に届く情報を見ていく度に、その青い瞳がほんの少し険しくなる。
「見付けて、あげたいよネ」
 ぽつりと、漏れた言葉が路地に転がった。小さな液晶から顔を上げれば、北風が紫雲に染められた髪を揺らす。眼前にある小さなアパート。UDC職員か聞いた、何軒かのまだ正気を保った家庭の一つ。そしてその中で、行方不明の最終目撃情報が多い場所に、ここが一番近い。
 階段を上る硬質な足音が否応なしに響く古い建物。夕方にはまだほんの少し早い時間帯だというのに、どの部屋からもあまり活発な人の気配は感じられない。
 ちょうど三階分登った先、覚えていた部屋番号の前に人が居た。小学校低学年ほどの少年と、どうやらその母親。貰った情報が間違っていなければ、話を聞こうと思っていた相手だ。
 向こうも音で誰かが上ってきた事は分かっていたのだろう。母親がコノハへ視線を遣り――きゅっとその綺麗な眉を顰めた。アパートの住人ではなく、見知らぬ顔だったからだろう。
 怯えさせたい訳でも怖がらせたい訳でもない。折り目正しく一度頭を下げ、へらりとした常の笑みは引っ込め真面目な顔。
「この辺りで「いなくなった子が戻ってきた」という噂を聞いたンだけど……」
 一瞬、更に相手の警戒心が強まったが、居なくなった妹を捜していると言えばほんの少しだけ迷う素振りを見せてから、小さく首を縦に振った。
「他に行方不明ないし……いなくなった子を知らないかな」
 そういった子供や家族、状況の共通点。何でもいいから知っていれば教えて欲しいと、懸命に心配する兄を演じるコノハ。
「それから……『ゆかりちゃん』って、何?」
 その名前を聞いて、最初に動いたのは少年の方だった。不安そうに母親の上着を小さな手でぎゅっと握る。その頭を、白い手が安心させるように撫で。少し待っていてもらえますかと告げて部屋の中へとその姿を消す。

 数分後、出てきた一人出てきた女性が一枚の紙をコノハへと手渡す。
「これ、うちのこのクラスにいるゆかりちゃんの連絡先です。噂話の方は、よく分からないくて……ごめんなさい」
「――いや、十分。有難うね」
 妹さん、見つかるといいわねとかけられた声を背にアパートを後にする。

 二つ折りにされたコピー用紙の中は、連絡先などではない。几帳面な文字で綴られたその情報の一行目は、下記の言葉から始まっていた。

“どうか私がこれを書いたとは、誰にも言わないでください――”
 

▼コノハ・ライゼ >>> ALL
 『ゆかりちゃん』が出てきたのを見たって人か情報くれたヨ。一番最初の行方不明者の家、今は引っ越して無人のハズなのに、日暮れに子供が入っていくのを見たらしい。それで何かおかしいなって窓から覗けば――その子の中から脱皮するみたいにバリバリゆかりちゃんが出てきてたンだって。まぁ夢でも見たのかもしれない、とはご本人も。でもその場所が操が纏めてくれた目撃情報のすぐ側っぽいから、結構怪しいと思う。
 と、そろそろ一旦みんなで集まるのはどうデショ? どう動くにしろ、顔突き合わせて一度情報の整理がしたいかな。

成功 🔵​🔵​🔴​

天星・零
天星・暁音と連携

『(親に忘れ去られた子供がどれだけ辛いか‥暁音にとっては放って置けない事態だろうな)気をつけ‥その言葉は不要か。僕が守ればいいだけの話だ』


暁音が囮を任せてそれを影から【追跡】する
また、万が一のことがないように【第六感】も使う

またユーベルコードで、追跡してる間ウェビルに本やPCなどに有益な物がないか【情報収集】させる

可能ならば追跡をしながら自身も身を潜めつつ、決して暁音を見失わないようにしつつ可能な範囲で今まで【情報収集】能力で得た知識と、【情報収集】能力を活かして情報を探す


ウェビルの口調‥一人称、二人称、語尾、口調などは常に変化するのでお任せします

キャラ口調はステシ参照


天星・暁音
【天星零と参加】

何ともまあ、話だけ聞くと気味の悪い感じだね。
ま、一般の人の認識をズラすことなんか雑作もないのだろうけど…気分はよくないね。
いなくなった子供たちを捜して入り込んだ異物にはご退場願わないとね。
追跡者に子供たちを探させて、序に俺も囮として動こうか…
子供たちの遊び場や人気のない場所何かをふらついてみよう。
零が影から見ていてくれるから心配することもないしね。

「じゃあ零、いってくるからお願いね」


世界知識や情報収集で怪しい場所を探しつつ誘惑で誘ってみます。
もし誰かが連れさらそうになっていたならかばいます。

天星零との同時採不可ならふたりとも流してください。



▼天星・零 >>> ALL
 分かりました。僕も暁音と、それから調べた情報と一緒に皆さんと合流しますね。

▼天星・暁音 >>> ALL
 分かった。零と一緒に向かうね。
 あと、合流したら、少し試したいことがあるんだけど。

●真実の、一つ手前
 猟兵の皆が集まったのは、最初の被害者が住んでいたとされる空き家――から、少し離れた細い路地。その入り口付近に置かれた自販機の灯りが、調子悪そうに時折明滅する。北風が、いつのまにか雲を散らしていたか。目でもはっきりと見える陽は随分と傾きが、並ぶ家々で大きな影を作って日暮れが来ることを知らせていた。

「じゃあ零、いってくるからお願いね」
 天星・暁音(貫く想い・f02508)が横に立つ天星・零(多重人格の霊園の管理人・f02413)へと、軽い調子で声をかける。
 今からするのは、暁音にとっては二度目の囮作戦だ。合流するまでも同い年の子らが好みそうな公園や、遊び場を回っていたけれど特にこれといった成果は得られていない。影から見守っていた零の気配を気取られたか、もしくは。
 置いてあったそれを、暁音が拾い上げる。薄汚れてくったりとした、ピンク色のうさぎのぬいぐるみ。いなくなった子供の目印であり、今回の子供と入れ替わる『ゆかりちゃん』に関する祭具ではないか、とされているものだ。これがあれば誰かの目があったとしても、元凶である教団関係者をおびき出せるかもしれない。
 ぬいぐるみに触れている指先から広がるのは、今すぐにでもこれを投げ捨ててしまいたくなるような嫌悪感。だが、常に他者の苦しみを感じ取りながらも、それを抑え込む事に長けている暁音はそれを乗り越える。
「気をつけ……いや、その言葉は不要か」
 そんな彼の様子を見守っていた零は、かけようとした声の代わりに、任せろ言わんばかりの笑みを返した。
 親に忘れ去られた子が、どれほど悲しく辛いのか。その痛みを、暁音はよく知っていた。自身もまだ幼いというのに、子供が犠牲になる事を何よりも嫌らっていた。だからこそ、彼にとってこの事態は放っては置けないのだろうというのも、零には分かってしまう。
 軽い足取りで出発する彼の背を、皆が追う。

 小さな子を囮に使う事に難しい顔をした者もいたが、これは猟兵側にも利がある。
 一つ目は、まだ誰もその姿の全容を捉えていない教団関係者が、もし彼を迎えに出てきたのならば。先にその身柄を先に拘束できるかもしれないという点。
 二つ目は、もしそれが叶ったのならば、まだ無事な子供達を人質に取られる前に救出できるかもしれないという点。
 そして三つ目。その二つを押さえたのならば、この街で行われている、子供の取り替え儀式の阻止が叶うのではないか。
 勿論暁音が傷つく可能性も有るが、そうならない為に零も、仲間たちも全力で注意を払う。大きく遠回りをするルートを使い、各々がその先々で目を光らせ、慎重に進めた。
 どこもかしこも人の気配は、他の場所よりもずっと薄い。夕暮れに差し掛かって空に残っていた雲が黄金色に輝いていた。

 そうして、あと一つ、角を曲がれば目的の空き家に着くといった細い道半ば。その角の向こうから、不意に一人の女性が姿を現した。
 白髪が混じったボブカットに、厚手のスカート。上は飾り気のないダウンコートで、足元は適当にひっかけてきたとしか思えないサンダル。にこにこと人好きがしそうな笑顔を、シワが目立ち始めた顔に乗せた、どこにでもいそうな、普通の中年女性の姿。
 けれど彼女は迷う事なく暁音の元へと歩み寄る。そして、彼が持ったぬいぐるみを、ひどく嬉しそうに指差した。
「ああ、よかった! その子を無くしてしまったのかと思っていたのよ。君が、持ってきてくれ――」
 その言葉は、不自然に言葉が途切れる。
「あら?」
 暁音を覗き込んだ女が、笑顔のまま首をかしげた。
「あなた、まだ、生きる事を諦めていない目をしていないわね」
 ぬいぐるみを指す手とは逆側。ポケットに入れていたその手が振り上げられる。
 握り込まれているのは大ぶりのカッターナイフ。
「そんなんじゃ駄目――救済の贄になる為には、痛みと苦しみでその心を殺さなきゃ」
 けれどその刃は振り下ろすことは叶わない。
 零が使役する道化の姿をした小さな死霊、『ヴェビル』が放ったトランプが女の腕を強かに弾く。
 乾いた音を立て、カッターが地へと転がった。


●ゆかりちゃん
 くるり、くるり、くるり。
 小さな道化が踊る。

 二度目の囮作戦を開始する少し前。
 集まった猟兵達に、ウェビルが一度目の囮作戦の時に集めていた情報を告げていた。

「ワタシ、私。僕はとっても頑張った。アナタ達から聞いた話を丸っと含めて、そう、ゆかりちゃんについて調べたのです。電子の海を漂って! 古びた本を捲っていって! 一番近しいものを探して探して、よーうやく俺様は見つけた!」

「あれなるものに、生命などというものはこれっぽちもありません!」

 形だけの子供。似せられた子供。
 ただ、『一年後に帰ってくる』という話に無理やり人の子の皮を被せたもの。
 そういった噂話が、人に有ると信じ込まれ、形を成したモノ。

「おお、なんという事でしょう! つまり、あれは、あれなる怪異は!」

 ――すっぽり抜けた日常の空白を埋める、ただの現象でしかないのです。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『ゆかりちゃん』

POW   :    「ただいま」「おかあさん、おとうさん」
戦闘用の、自身と同じ強さの【母親の様な物体 】と【父親の様な物体】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
SPD   :    「どうしてそんなへんなかおでわたしをみるの?」
【炎上し始める捜索願いからの飛び火 】が命中した対象を燃やす。放たれた【無慈悲な】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ   :    「ひどいよ、ひどいよ、ひどいよ」
【嗚咽を零した後、劈く様な叫声 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●すべては救いに至る為
 嗚呼。
 女が落ちた刃を見て嘆く。
「あなた達も一番最初にゆかりちゃんになってしまった、あの家の人間のように分からないのね」
 嗚呼。
 ため息とともに零される声。女はその場に座り込んで、傷つけられた己の腕を愛おしそうに無事な手で撫でた。
「けれど、この痛みは――嗚呼。私も救われるのかしら」
 彼女の後ろから、小さな人影が顔を出す。いや、正確には顔があるだろう部分に貼り付いた、捜索願のチラシ。まるで隠れんぼでもしてたかのような気軽さで、女の背後から出てきたその子。髪が肩口で切りそろえられ、その小さな頭には黄色い学生帽。白いブラウスから伸びる白い手は細く、赤いランドセルを小さな掌が握って。紺色のスカートからのびた足には赤い靴下にスニーカー。
「その兎さんはしあわせを運んできてくれたでしょう?」
 現れた子供に気にもとめず、座り込んだままの女が言う。視線は、猟兵達ではなく祭具のぬいぐるみへ。うっとりと、まるで愛しいものでも見るかのように。


 犯人不明のまま子供が居なくなる事件に広がる不安、そこへ重ねられる訳の分からぬ宗教の勧誘。それでも日々は進んでいく。先も見えず、終着点の見えない中で広がった染みは消えず、じわじわと広がるばかり。
 そんな中、我が子が見えぬものを有ると言い出す。どうして、こんな嘘をつく子になってしまったのか。自分が悪かった?育て方が?――いいや、いいや。

 転ばない人間などいない。
 誰だって、不安定な足場の上で、その背を押されてしまったのなら。


 ――おかあさん、おとうさん。
 
 現れ続ける顔の見えぬ子らが、親を呼ぶ。
 何も聞き届けてもらえず、一人でぬいぐるみを抱いて、絶望と悲しみの中自分が消えてもいいと思った子供達が。きっと最後に言いたかったであろう言葉を、虚構がその口から無機質な声で呟く。
 その間にも、一人、二人と、女の背後から子供が――『ゆかりちゃん』が何人も現れる。
「大丈夫よ、心配しないで。あなた方も贄になればきっと分かるはず。何も心配はいらないのよ。ほら、ゆかりちゃんになった子達だって、こんなに元気」
 心配しないでと繰り返される言葉は本心からだろう。
「安心してね。子供達が終われば今度は大人も皆苦しんで、苦しんで。そしたら救済が叶うのよ。素敵ね。この街ごと、救いの糧になるの」
 楽しげに語る女が、現れた子供達をぐるりと見渡して、首を傾げた。
「あら、数が足りないわ。きっと、まだ家で諦めずにいるのね。あの家まで来たのに、往生際が悪いわ!」
 彼女はケタケタと笑ってその場にぺたりと座り込んだまま、動こうともしない。この狂った女に、何を言ったところで恐らく無駄だろう。
 ならば無事かもしれぬ子を助ける為にも、猟兵達が今すべきは――目の前にいる偽りの子供達に、どうか最期を。
コノハ・ライゼ
共感に足る記憶も無ければ
感じるのは目の前の、そこに至る狂気への嫌悪感だけ
なのにナニが、腹の奥に重く圧し掛かるの

驚きゃしないヨ、結果だけなら見えてたじゃナイ
振り払うように言い放ち【月焔】放つ

広範囲へ焔分散させ『高速詠唱』で『2回攻撃』し牽制
次第に焔の範囲と数狭め
誰かが相手取っていない個体へと標的を移していくヨ
仲間が危機なら『かばう』ように『捨て身の攻撃』

誰もがたくさん傷付いた
これ以上負わせはしない
形と成るべくあるモノは全部燃やしてあげるから、もうおかえり

狂った女には攻撃当てず端にでも転がし
逃げ出す等異変あればすぐに追跡等対処

コレは只の「現象」なんでしょ
なら今はまだ救えるかもしれない命の元へ、早く


彩瑠・姫桜
貴女がどんな風に想おうと、感じようと勝手だけど
でも、子供達を巻き込んで、苦しめるなんてもってのほかよ

贄となり、ゆかりちゃんになってしまった子供達はもう助けられない
このゆかりちゃん達にも、私は武器を向けて、骸の海に送る事しかできない
けれど、まだ、助かる子供達だって居る
なら、私は戦うわ

目の前の現実がどんなに救いようがなくとも
助けられるものだってあるって信じて


【咎力封じ】使用
【拘束ロープ】を先に、それから【手枷】【猿轡】で動きを封じてから
ドラゴンランスで【串刺し】にするわ

この子達がなるべく苦しまないように送ってあげたいから
出来る限り一撃で倒せるよう
動きを観察し【情報収集】して確実な攻撃を仕掛けるわね


夏目・晴夜
嫌ですね、偽りと言えど子供を攻撃するというのは
親を呼ぶ声も問いかける声も零れる嗚咽も、全てが聞いていて心苦しいです
なので、ちょっと黙っていてください

【謳う静寂】でゆかりちゃん達に広く雷撃を落とします
そんなへんなかお、してますか?あまり自覚はないですね
あなた達のような悲しい虚構は見た事ないと思っている自覚はありますが

偽りとはいえ子を妖刀で刺し貫くなんてあまりしたくはないのですが
「第六感」でも避けようのない時は、ひと思いに「串刺し」に

居なくなった子を救い出せる可能性が僅かでも残っているなら容赦はしませんが、
側から見たら褒められた行為には見えないかも知れませんね
私は褒められたくて猟兵になりましたのに


オルハ・オランシュ
【roost】

この子達が『ゆかりちゃん』……?
子供を模ったところで容赦はしないよ
君達は所詮偽物だもの
それに、悪い芽を摘んでおけばあの男の子を守れるかもしれない

ちらりと隣に目を向けると
素人目にもわかるくらい、一切の隙を見せない景正
怖い目に遭った後なのに気丈に立ち向かっているサツキ
頼もしい二人が一緒だから負ける気がしないよね

景正が攻撃を防いでくれたらお礼を伝えて
でも、私達からゆかりちゃんの気が逸れた好機でもある今を逃さない
サツキ、タイミングを合わせよう!
畳み掛けるように連続で攻撃を浴びせたら
景正に繋げるべく羽ばたいて、敵前から退くね

流石だよ!景正、サツキ!
この調子でどんどんいっちゃおう


サツキ・クルーエル
【roost】
伸ばした手は間に合わなかった…うぅん、大丈夫。間に合わせる
消えた子だって、まだ無事だって信じてるから
現象である『ゆかりちゃん』に罪はないのかもしれないけれど、だからこそ今は先に進まないと

戦闘ではオルハさんと同じ『ゆかりちゃん』を狙って
ほんの少し前の出来事を思うと怖くないわけではないけれど…
ふふ、頼りにしてる二人を見てるととても心強い。だから頑張らなきゃね

『ゆかりちゃん』が全体攻撃をしてきたらシンフォニック・キュアで回復を
人前で歌う経験なんて殆どないけれど…子供たちの未来のためにも、負けられないと思いを込めて
助けたい、そんな思いも行方不明になっている子供たちに届けばいいと願いながら


鞍馬・景正
【roots】
武辺の血が滾る相手ではない。寧ろ見た目だけの存在であれ哀れすら誘う。
――しかし、斬らねばならぬ。

◆戦闘
前衛に立ち、オルハ殿とサツキ殿、及び他の猟兵たちへの攻撃は可能な限り【かばう】。

そして両親――のようにも見える使い魔が召喚されれば、その相手を引き受けましょう。

【手字種利剣】にて前後、或いは左右から挟撃された場合の型で相手仕る。
刀と脇差も抜き、二刀の構えで片割れを牽制しながら、もう一体への斬打というのを基本の動きに。

隙があれば両親及び「ゆかり」も諸共に仕留めに懸りつつ、他二人の援護を主体として最善を尽くしましょう。

あの御二人ならば、心置きなく主攻を任せられます故に。


芥辺・有
あの女も、話が通じないんじゃどうしようもないな。
……為すべき事を為そう。

子供の姿に武器を振るうのに何も思わない訳じゃないけど。
これは過去で、これは仕事だ。

攻撃は第六感で危ういと感じるものは見切り避けよう。あるいは鎖で絡め取って敵を盾にすることで防ぐよ。
それ以外の攻撃ではある程度傷つこうが構わない。

攻撃の際は蹴りにしろ、銃にしろ。手段は選ばずに手数多めの攻撃を。
傷を負っているならそれを利用しようか。範囲攻撃で視認したゆかりちゃん達に列列椿を使用するよ。


天星・零
【天星暁音】と連携

微笑み崩さずに無言で戦闘
グレイヴ・ロウで地面から牽制と同時にØで敵に接近し斬撃で殲滅

万が一のことがないよう【第六感】女性も警戒しつつ暁音を襲ったら対抗できるように

攻撃は星天の書-零-で【オーラ防御】pow技使用時は父と母は無視し本体を狙う

『ふふ‥他人の、家族の幸せを奪って救われるわけないでしょう?貴方の幸せにどれだけの人が死合わせになったと思いますか?ああ、それと‥』
『同じ目に合わせてやろうか?僕の家族にしようとしたみたいに?‥なーんて冗談ですよ。ふふ‥』

可能な、内心かなり怒っているので女性に【恐怖を与える】事で懲らしめも含めて少し脅します

勿論、周りの猟兵にはわからないように


天星・暁音
【天星零】と参加
例えそれで救済が成ったとしても、誰かを悲しませて苦しませて、それで成す救済なんて俺は認めない。
まだ諦めずに頑張ってる子がいるのなら…君たちは可哀想だと思うけど…押し通らせてもらう。
せめて安らかに眠って…
君たちの痛みも悲しみもちゃんと受け止めて忘れないから…

『まだ助けられる子がいるなら…ここで時間はかけられないね…零、気をつけてね』

武器、共苦の力で彼らの痛みを受け止めて覚えつつ、勇気と覚悟で押し通る決意をし仲間を鼓舞して祈りを込めて全力魔法、範囲攻撃、高速詠唱、なぎ払いでコードを撃ちます。
第六感、見切りで防御し零の後ろを守るように立ち回ります


八坂・操
【SPD】

「ゆっかーりちゃーん♪ あっそびーましょー♪」
大人数で遊ぶなら、まずは【メリーさんの電話】だね☆
「もしもし、メリーちゃん? ゆかりちゃん達と遊ぶんだけど一緒にどう?」
メリーちゃんと遊んで騒がしくなってきたら、操ちゃんは『忍び足』で『目立たない』よう動くよ! 後は隙だらけの背後から『だまし討ち』だ☆
「はーい、ゆかりちゃんつーかまーえた♪」

救済、ね……それは子供の未来を断つよりも大事な事なのかな? それとも自分の子じゃないなら関係ない? 逆恨みも甚だしい。
だから遊んであげる。現実味のない光景は、きっと悪夢のように見えるだろう。所詮は悪い夢。起きればきっと明日が来る。それが私の手向けの花。


春霞・遙
子供の元気っていうのは、病気でないとか弱っていないとかだけじゃない。安心して成長できること。愛されて、人と関わって、様々なことを教わって知って学べること。それを意図的に歪めて得られた救いなんて、そんなの私は認めません。
子供の姿のUDCと戦うのは心苦しいですけど、これ以上傷つく家族が増えないように、心を決めましょう。

できるだけ苦しまずに済むよう手加減せず戦います。
急所かはわかりませんが泣き声をあげる顔に拳銃で狙い撃ち。
何故と疑問を投げてくるなら【謎を喰らう触手の群れ】で問いかけごと頭部を丸呑みに。
すがってくるのなら、抱きしめてあげて、こめかみに「零距離射撃」。



●その声は
「この子達が『ゆかりちゃん』……?」
 武器を構えながらも、オルハ・オランシュ(アトリア・f00497)の落とした呟きに混じる、ほんの少しの戸惑い。並び立ったつサツキ・クルーエル(星宵マグノリア・f01077)も、つい先程己が巻き込まれた出来事を思い出したのか、その青い瞳に一瞬怯えが滲んだ。
 一呼吸程の短い時間。けれどその間に、何人かの『ゆかりちゃん』が肩を震わせ嗚咽を漏らしはじめる。

 ――どうして、どうして、どうして

 辺りに響く、痛ましい泣き声。耳を、心を揺さぶるそれは、確かな衝撃持って辺りへ広がった。咄嗟に、前にいた二人を庇うように鞍馬・景正(天雷无妄・f02972)がその身を挺す。
 繰り返される幼き叫び声。その問いかけに答える術を誰が持とうか。
 答えぬ代わりに、その音の中を紫雲が流れた。
「驚きゃしないヨ、結果だけなら見えてたじゃナイ」
 苦みの滲む、けれども冷静な声。
 空っぽの記憶には彼女達に寄り添うような何かは無く。ただ、目の前の歪みきった狂気に対する嫌悪感だけ。
 なのに、この腹の奥底へ、重く圧し掛かるものは一体何だろうか。
 その全てを、告げた言葉ごと振り払うかのように、コノハ・ライゼ(空々・f03130)が月白色した冷たき焔放った。夜明けの空にも似た眩い白。その揺れる炎が子供達の嗚咽ごと燃やして、広がって。猟兵達へにじり寄ろうとしていた『ゆかりちゃん』達の行く手を阻む。
 嫌がるように炎を避けたり飛び越えようとする彼女達へ、八坂・操(怪異・f04936)はニコニコとハイテンションに語りかけた。
「ゆっかーりちゃーん♪ あっそびーましょー♪」
 ああ、でも。大人数で遊ぶのならばあの子も呼ばなくちゃ。
 取り出したスマホが鳴らすコール音。けれどその先に繋がっているのは、果たして一体何処だろうか?
「もしもし、メリーちゃん? ゆかりちゃん達と遊ぶんだけど一緒にどう?」
 けれども『其れ』は呼び声に応え現れた。
 年の頃は『ゆかりちゃん』とさして変わらぬ少女が、炎で踊る少女達に混じる。
 水色のエプロンドレスに金色の長い髪。メリーさんと呼ばれたその怪異が右手に握り込んでいるのは、飾り気もなにもない包丁が一振り。彼女はそれを、近くにいた『ゆかりちゃん』へと躊躇いなく振り下ろした。
 甲高い悲鳴が上がる。けれど、それだけ。何かが欠けている命無きものには流す血潮はない。けれど危険だと感じる機能は備えているのか、ぱっと蜘蛛の子を散らすように走りだす『ゆかりちゃん』達。それを逃すまいとメリーさんが追いかける。

 眼前で繰り広げられる、悪夢のような鬼ごっこ。それでも狂った女は座りこんだまま動く様子がない。傷つけ合う少女達の姿を眺めていへらへらと笑ったまま、逃げ出すような素振りすら見せない。
 それを冷やかに一瞥するのは薄氷の瞳。炎を操っていたコノハが、延焼に巻き込まぬよう道の端へと女を転がした。けれどその事すら気にせず、いや気が付いていないのか、女はただ笑い続けている。
 不愉快なまでの異質さに、芥辺・有(ストレイキャット・f00133)は小さく頭を振って息を吐く。
「あの女も、話が通じないんじゃどうしようもないな」
 ならば、今は為すべきことを。
 金の瞳が切り替えるように子供達を映す。強く地を蹴れば、影色をしたブーツの踵が、まるで鳴き声を上げるかのように音を立てた。そうして、鬼ごっこから逃れていた子へと走り寄って手にした鎖で絡め取る。まるで蛇が獲物を締め上げるかのように、黒鎖が少女を取り押さえた刹那。ピリッと、首筋に嫌な気配が走る。
 だから、考えるよりも早く。捉えた『ゆかりちゃん』ごと勢いよく振り返った。
 視界の先には風もないのに揺れる紙。その捜索届は決して捲れる事はなく、その下の顔を見せはしない。代わりに、炎がそこから爆発的に吹き上がる。赤く暗い色をしたその炎は、けれど狙った通りに有を燃やす事は出来なかった。咄嗟に盾にした、鎖で捕えた『ゆかりちゃん』。無慈悲な炎は彼女へと飛び火して、仄暗く炎上させていく。
 熱さに叫ぶその子を、炎を飛ばして来た『ゆかりちゃん』へと強く蹴り飛ばし。彼女達がその身を起こすより早く、黒色の精霊銃の引き金を引く。二度、軽い音が路地に響いた。
 子供の姿をした者達へ、その武器を力持って振り下ろす事へ何も感じぬわけではない。けれど、これは子供達であったもの。彼らの、もう戻らぬ過去だ。
 そして――これは、仕事だ。
 もう、動く様子のない姿に一度目を閉じ。有は再び戦場を駆けていく。

 広がる白い炎と、鬼ごっこに興じるメリーさん。その二つにより敵が分断され、猟兵側も確固撃破へと各々が力を振るう。
 炎も刃物持つ少女も居ない方へ、『ゆかりちゃん』が逃げるようにぱっと飛び出した。けれどそこへ、一本のロープが飛んでくる。まるで生き物のように絡みついてくるそれに気を取られている間に、小さな手に枷が重たく嵌り、何かを叫ぼうとした所へ、猿轡が。
 小さな彼女の力を封じた彩瑠・姫桜(冬桜・f04489)は、ぐっと奥歯を噛み締めて、手にした武器を強く握りこむ。
「貴女がどんな風に想おうと、感じようと勝手だけど……でも、子供達を巻き込んで、苦しめるなんてもってのほかよ」
 笑っている女に、その言葉が通じないと思っていても、そう言わずにはいられない。
 何故なら、贄となり『ゆかりちゃん』へと変容してしまった子供達は。
 もう助けることが出来ぬその命。姫桜がこの子達にしてあげられるのは、骸の海へ帰してあげる事。ただ、それだけだ。
 どうか、せめて長く苦しみませんように。そんな願いを込めて、拘束具のせいで身動きが取れず、ただもがく『ゆかりちゃん』を刺し貫く一撃。伝わってくるのは、随分と軽い感触。串刺し状態になった『ゆかりちゃん』はびくりと一度体を震わせ、小さく痙攣し。やがて、だらりとその体から力が抜けていく。
 正確に、一撃で終わらせて。姫桜は動かなくなったその子を下ろして、深く息を吐く。
 ――まだ、助かる子がいるのなら。
 姫桜は顔を上げる。いかに現実が残酷で救いようがなくとも、諦めぬのならば。
 きっと助けられるものがある。そう信じて戦う彼女の青い瞳に宿るのは、強い意志。
 けれども、子供達の泣き声は未だ途切れない。なにせ、数が多いのだ。
 それを聞き続けていた夏目・晴夜(不夜狼・f00145)のがほんの少し眉間にしわを寄せた。親を求めて呼ぶ声も、理不尽さに泣き溢れる嗚咽も。その全てが、耳に届くたび、胸が苦しく締め付けられるよう。
「ちょっと、黙っていてください」
 耳を塞ぎたくなるようなそれへ投げかけるのは、ただの苦情のように聞こえるその言葉。けれども、少女の形をした者達に、人の話を聞きいれるような能力は無い。よって、結果として無視した形になった彼女らへ、言の葉に込められた力が発動する。
 迸る落雷が、『ゆかりちゃん』達へと降り注いだ。轟音が地を走り、泣き声も悲鳴も掻き消して行く。
 だが晴夜の顔は曇ったまま。偽りといえど、子供へ攻撃しなければいけないという事実は、どうにも受け入れがたい。
 けれどそこへ、タァン、と高く銃声が響く。
 それは先程の有のものではなく、春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)が『ゆかりちゃん』を撃ち抜いたもの。
 どれだけ己をすり減らしてでも、彼女は日々子供を救う事を止めぬ医者。救う側にいるからこそ、子供の形をした彼らへ攻撃する事は胸を抉られるように苦しい。
 けれど、これ以上傷つく家族が増やさせはしない。
 そう心に決めた遙は引き金を引く。この怪異が、人と同じ急所を待っているのかは分からない。だからこそ、苦しませぬようにと彼女が撃ち抜くのは、紙きれ一枚貼られた『ゆかりちゃん』のその頭部。手加減なく、ただ正確に。それは子供を大事に思うからこその慈愛。
 放たれる乾いた音が、彼女達へ終わりを渡し行く。

「まだ助けられる子がいるなら……ここで時間はかけられないね……零、気をつけてね」
 天星・暁音(貫く想い・f02508)の心配する声に、彼の前に立つ天星・零(多重人格の霊園の管理人・f02413)は分ったと頷いて、地面から十字架のようなカラクリを呼び出す。それを用いて『ゆかりちゃん』の動きを牽制しながら、そのまま片手刃ほどの刃物を虚空から呼び寄せると、素早く彼女を斬り裂いた。
 場に不釣り合いな、穏やかな微笑み。もし暁音に共苦の力がなくとも理解し得ただろう。誰よりも親しい彼が隠している、その激しい怒りを。
 けれど、暁音だって許せはしない。誰かの悲しみ、苦しみ。そしてその命を糧としての救済。もし本当に叶ったとしても。そんなものは認めては、いけないものだ。

 ――おかあさん、おとうさん

 呼ぶ声に応じて、彼女の両側に人の形をした何かが現れる。
 彼らは『ゆかりちゃん』を一度愛おしげに抱きしめてから、猟兵達へと襲いかかってきた。まるで、本物の両親が我が子を守るかのように。
 それは家族とはこうあるべきもの、といった概念に囚われた現象か。それとも、元になった子が奥底にしまい込んでいた、愛情を欲するが故の具現化か。
「君たちは可哀想だと思うけど…押し通らせてもらう」
 けれど、諦めずに頑張っている子がまだいる筈だ。彼らを助けるためにも、ここで立ち止まるわけにもいかない。
 沈痛な面持ちで暁音は手にした杖を掲げる。三日月があしらわれ、宝石がきらめく彼の身の丈以上の杖は、まるで夜空から輝くもの達が流れ落ちて形を成したよう。その先端が偽りの両親へと向けられる。同時に夕暮れ空に光が走った。それは魔法陣を描いて星の光を降らせ、その本流で歪な父と母を押し流していく。
 そしてその隙に、禁書のページを捲た零が紡いだ死霊術で『ゆかりちゃん』へと術を放つ。呼び出された影の住人は、夕暮れで長く伸びた影を自在に操り刃とし、彼女を斬り裂いた。けれど、その動きが完全に停止するまで、両親を呼ぶ声は止みはしない。
 その痛みも苦しみも、ちゃんと受け止めて進んでいくから。
 どうか安らかに眠って欲しい。そう願う暁音からほんの少し離れた場所。先ほど転がされた女性が変わらずに意味も無く笑っていた。呼び出した『ゆかりちゃん』が倒されたとて、なんの感情すら動かされぬ様子。
 刹那、研ぎ澄まされた一瞬の殺気と共が女を貫いた。
(ふふ……他人の、家族の幸せを奪って救われるわけないでしょう?貴方の幸せにどれだけの人が死合わせになったと思いますか?ああ、それと……)
 同じ目に合わせてやろうか。己の家族へしようとしたみたいに。
 その気迫に、女の笑い声が、まるでチューブを押しつぶしたかのような音を立てて喉奥で止まった。死を救済と謳えども、生き物が持つ本能的な恐怖は狂気の奥底に、どうやらまだ持っていたらしい。
 それを満足げに見届けてから、殺気を飛ばした張本人――零は『ゆかりちゃん』達へと再び意識を戻した。

 しかし未だ、夕暮れの戦場に木霊する『ゆかりちゃん』達の声は消えはしない。
 だがそれに負けじと、サツキの伸びやかな歌声が響き渡る。
 子供達の未来を願う歌。その為にも、負けられぬと皆を鼓舞する歌。
 人前で歌う経験は、彼女にとって殆ど無い。けれど子供達を助けたいと強く希う気持ちが、確かな一歩を踏み出す後押しとなる。
 どうか、まだ見つからぬ、けれども無事を願ってやまない子供達にも届きますように。
 優しい願いが込められた歌は、猟兵達の傷を内外から癒していく。
 けれど『ゆかりちゃん』達とて、それを易々見逃しはしない。あの歌を止めてと、呼び出した親に乞う。ゆらりと伸ばされた父と母形をした幾つもの手。けれどもサツキの喉へと触れようとするそれは、届く前に斬り飛ばされた。
 景正が構える刀二本。反りの浅い無銘の脇差が前方より来たる母の手を。そしてもう片方の手に握った実用刀にて背後より来たる父を袈裟がけに。剛健な打刀はその程度では輝きを失うことなく、揺れぬ瑠璃色の瞳が見据えた先を次々に斬り裂いた。
 少女二人を庇うように立ちまわる青年の背に、明るい声で礼が飛ぶ。だが、ただ守っているだけではない。信ずる友二人ならば、心置きなく主攻を任せられる。故に持てる力で最善尽くし、彼は援護に回る。
 鍛えぬいた太刀筋。けれど眼前の相手はその武辺の血が滾る相手ではない。親に縋る子、子を守る親。姿形だけを見たのならば、むしろ哀れすら誘ったか。
 ――しかし、斬らねばならぬ。
 彼らが人に害なすというのであれば。
 一切の隙も容赦も見せぬ青年の太刀筋に、怖い思いをしたばかりでも気丈に歌い続ける少女。オルハがその二人の勇士を、若草の瞳に映し、けれど自身も迷いなく己の獲物を振るう。頼もしい彼らと共にあるのならば、決して負ける気などしない。湧き上がる力を三叉の刃へ乗せ、幼き声を断ち切った。
 その気持ちは癒し手の少女も同じく。心強い二人とならば、きっと震えることなく頑張れる。届かなかったあの手を、もう一度間に合わせるために。消えた子の無事を願いながらサツキは手にした杖で、母親らしき形の物体を打ち据えた。この全てがただの現象というのであれば、『ゆかりちゃん』に罪は無いのかもしれない。
 けれど、前に進むためにも倒さなくては。
 互いに互いの背を預け、三人は持てる力で敵を薙ぐ。そうした乱戦の中、やがて邪魔をする景正から先に倒そうと敵の意識が逸れ出した。
 その好機を二人の少女は見逃さない。
 若草と青色の目を合わせ、彼女達は小さく頷きあう。
 サツキが手元から、数多の花弁が溢れ出た。精霊杖を転じさせた花吹雪に、突然視界を奪われた親子の形をした者達は、出鱈目に腕を動かし振り払わんともがくのみ。
 だから、続く刃が翻る様に気付かない。
 燃える炎の激しさを槍握る手に込めて、流れる水のしなやかさを振るう軌道の線として。そして、風舞うように軽やかに。自然の力をその身に宿したオルハが、花弁ごと断ち切る様に一閃。
 切り裂かれた子供の姿をしたものが、幼い声で苦悶に呻く。けれど容赦はしない。血も流さぬ空っぽのそれは所詮偽物にすぎないと分っているから。それに今ここで悪しき芽を全て摘めたのならば――友が見たという男の子を守ることに繋がるかもしれない。
 その希望を胸に抱き、オルハは槍を振りぬいた勢いのに任せて黒い翼を大きく羽ばたかせた。くるり、彼女が飛び退いたところへ滑り込む鋼の煌めき二筋。
 景正の刀が、偽りの家族を斬り伏せた。
「流石だよ! 景正、サツキ! この調子でどんどんいっちゃおう」
 上げた戦果へ、オルハの声が明るく響く。いつもと変わらぬ、命にあふれて皆の背を押す声。そうして三人は、次の相手へと地を蹴った。

 数は減れど、未だ騒がしく駆け回る子供達の姿。けれどどの子もみな無傷では無い。傷つき痛みを訴える子の泣き声も響く。
 その隙を逃がさぬように有が自身から流れる血を数多の杭に変え、視界に捉えた子供達を、次々に刺し貫いて最期を与えていった。
 現実味などとうに無く。まるで醒めぬ悪夢のよう。

 けれどもう、それも終わりにしてしまおう。

 救済なんて、そんなものに子供の未来を断つほどの重要性があっただろうか?
 それとも、自分の子でなければ関係がないのだろうか?
 気配を消し、飾り気のない短刀を手にした操の脳内に浮かぶ疑問。けれどいずれも、理不尽甚だしい何かだ。
 だから彼女は『ゆかりちゃん』達と遊んであげている。所詮これは悪い夢。沢山遊んで目を覚ませば、きっと正しい明日が来る筈だから。
 メリーさんとの鬼ごっこで隙だらけの『ゆかりちゃん』へ、背後から忍び寄り、その手を伸ばして。
「はーい、ゆかりちゃんつーかまーえた♪」
 おやすみ、おはよう。
 手向けの花は、その一撃に込めて。

 ――どうしてそんなへんなかおでわたしをみるの?

 問いかけと共に放たれた無慈悲な炎。それを身を捻って躱しながら、晴夜は内心首を傾げた。
 そんなへんなかおを、自分はしていただろうか。そちらの自覚はあまり無い。けれど、これほどまでに悲しい虚構は見た事が無いと思っている、そちらの自覚は正しくあった。
 それが顔に出ていたのだろうか。
 再度投げかけられる問いは炎と共に。避け切れぬと判断し、その炎ごと彼は妖刀にて『ゆかりちゃん』を刺し貫いた。居なくなった筈の子供を救い出すためならば、容赦はするべきではない。分っている。
 けれどこの瞬間、傍目に褒められたものに見えない事も、よく分っていた。褒められたくて猟兵になった筈なのに、酷く矛盾したその行い。
 手に馴染む筈の刀が、今ばかりはひどく重い。
 晴夜の気落ちしたその背へ駆け寄ろうとした子を、コノハが割り入って止めた。
 その軽いその身は、まるで本物ではないかと思える。けれど彼女は怪異だ。現に放とうとした火を、己が操る月の炎で掻き消して。
「もうおかえり」
 優しい声でそう促しながら、白い炎が『ゆかりちゃん』を包み込む。彼女達を形成すもの全て。躯の海にどうぞお帰り。
 最初に小さく分け広げた炎は、今や一つの大きな炎となりて静かに揺らめいて。小さな体を跡形もなく、弔いの白で燃やし尽くしていく。
 誰もが沢山傷ついた。だから、これ以上背負わせはしない。
 仲間へも、そして子供達へも。
 これが只の現象というのならば、感傷などに捕らわれている暇は無い。
 今は救えるかもしれない命の元へ急ぐ為にも、今はその月白色の炎が揺れる。

 ――ひどい、ひどい、おかあさん、おとうさん、どうし、

 癇癪を起したようなその言葉にもう意味は感じられず。ただ決まった言葉のみを繰り返す。そうして疑問を口に出す子を虚空より伸びた触手が飲み込めば、残る『ゆかりちゃんは』最後の一人きり。

 ――たすけて

 その声は継接ぎの偽りだ。作られた何かだ。縋る様に遙を見上げる『ゆかりちゃん』に、顔は無い。訴える情は分らない。
 けれど遙は、その子を優しく抱きしめた。
 こつりと、『ゆかりちゃん』のこめかみに銃口が当たる。
 引かれる引き金も、響く音も、ただ一度きりだった。
 そうしてようやく、辺りは静けさを取り戻す。
 子供が元気であるというのは、病気をしないだけではない。誰かに愛されて、関わって。様々な事を知り学びながら、安心して健やかに成長できる事だ。
 それを誰かが勝手に、意図的に歪めて得られる救いなど。
「――そんなの、私は認めません」
 消えゆく子供の姿から、瞳を逸らさぬまま。遙の落とした呟きは茜に溶けていく。

 偽りの子供の声は、もう聞こえない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『黄昏色の啓蒙』祈谷・希』

POW   :    苦痛を受けよ、精神を死へと返せ。救済の日は近い
自身が装備する【『黄昏の救済』への信仰を喚起させる肉輪 】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
SPD   :    黄昏を讃えよ、救済を待ち侘びよ
【紡ぐ言葉全てが、聴衆に狂気を齎す状態 】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    痛みと苦しみが、やがて来る救済の贄となる
【瞳から物体を切断する夕日色の怪光線 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は火奈本・火花です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●救済を唱えるもの

 鍵は、開いていた。

 件の家の玄関を開け、家の中へと猟兵達は足を踏み入れた。
 夕暮れ時、灯りの無い屋内は酷く暗く、埃っぽい臭いと静けさだけが満ちている。
 人が住んでいる気配は感じられない。軋む床板を踏みしめ鳴らし、長くも無い廊下を慎重に抜けた先。ほんの少し広いそこは、かつては家族が団欒過ごすリビングだったのだろうか。
 庭に面した大きな窓がある、茜色に染まるその部屋の中に彼らはいた。
 小さく、その身を折りたたみ。冷えた室内の中で子供達は蹲るように眠っている。
 その中には、ぬいぐるみと引き換えに見失った少年の姿もあった。ゆっくりと、繰り返される呼吸が、その小さな体が確りと生きている事を明白に伝えてくる。

 ――生きている。

 その事実に安堵の息を零したのは誰だっただろうか。
 先程の女は、拘束してあの場に置いてきた。もうすぐ連絡したUDC職員が引き取りに来るだろう。
 あとは、この子たちを無事に帰してあげられたのなら。

 バンッ

 突然、窓ガラスを強く叩く音が響く。
 その音につられて外を見れば、夕日を背に奇妙なシルエットをした何かがそこに居た。布を被った、女の顔をしたような何か。それが浮かぶどろりとした肉のような何かを操っては窓を叩く。

 バンッ、バンッ、バンッ

 どう控えめに見ても、こちらへ好意があるようには見えはしない。
 このまま部屋の中に入って来られてしまったなら、この場にいる子供達を巻き込むことになるかもしれない。そうしない為にも、庭へ出てそれを迎え撃つのが良いだろう。

 肉片が窓を叩くタイミングを見計らって開け放つ。
 冬の夕暮れ。どこか哀愁漂う乾いた空気の中、それと対峙する。

 ――これを倒すことが、この歪んだ街での最終仕事。
オルハ・オランシュ
【roost】
救済だなんて、都合のいい言葉を使っただけでしょ
狂ってる……
うん、絶対帰そう
この子達を待っている、家族のもとにね

共闘する猟兵と力を合わせるよ
景正、サツキとは特に連携を意識
まず【力溜め】、スカー・クレヴォで敵からも[攻撃力]を借りておこう
景正のサポートのおかげですごく動きやすい!
飛んでくる肉輪は【見切り】か、間に合わなければ【武器受け】で対処
ふたりを狙っているようなら三叉槍で斬り落としたいな

景正に背中を預けて、サツキと目配せ
それを合図に一気に敵の眼前に詰めたら
【早業】で首元を【2回攻撃】
溜めていた力を一気に放出

窓に流れ弾が当たらないように注意を払おう
あの子達に怪我を負わせたくないもの


サツキ・クルーエル
【roots】
子供達が無事で本当によかった…うん、絶対に帰そうね
これ以上、身勝手な救済の贄になんてさせないんだから

オルハさん、景正さんとは勿論、共闘する皆とも協力して
エレメンタルロッドの【Spica】を手に、一瞬でも相手の気を逸らせたらと攻撃を
オルハさんの目配せには頷きで返し、少しでも隙が出来ればと出来る限りの【高速詠唱】で【全力魔法】を打ち込むよ

万が一建物に届きそうな攻撃があればオーラ防御で防ぐように動きたいな
子供達の苦しみに比べたら、これくらい全然平気

全体攻撃にはシンフォニック・キュアで回復を
子供達には、苦しい黄昏じゃない…笑顔で居られる夜明けを迎えてもらうために祈りを込めて


鞍馬・景正
【roots】
苦しみによる救済など――それが出来るなら、嘗てのエンパイアの乱世が何故あれほどまで続いた。

あの子供達は親元に帰す。
「救い」などではなく、私達の「出来る事」として。

◆戦闘
オルハ殿、サツキ殿、及び他猟兵を引き続き【かばう】ように行動。

前面に立ち、【霰】にて敵を射抜いて、仲間たちの【援護射撃】を主軸に。
敵の攻撃は【第六感】で察知し、挙措や肉輪の軌道を【見切り】で先読み。
矢を射掛けて牽制しながら警戒を呼び掛けましょう。

オルハ殿、サツキ殿の打ち出す瞬間には呼吸を合わせ、【スナイパー】で相手の眼球など注意を奪えそうな箇所を穿てれば御の字。

終わらせましょう、オルハ殿、サツキ殿。


夏目・晴夜
生きている子がいて、助けられて良かったです。本当に
夜が来てしまう前に早く、あの忌々しい敵を片付けてしまいましょう

ご挨拶代わりに、戦闘特化の人形で敵を蹴りつけ【踏みつけ】させます
ああも気味の悪い見目の敵だと逆に助かりますね
子どもの姿の敵とは違い、何の罪悪も感じません

折を見て「死の抱擁」を発動
人形の【怪力】で敵の身体を砕かんばかりに強く抱擁させて、その攻撃を封じたく
私の人形は優しくて可愛いばかりか、とても人懐こい性格でしてね
なので、人形の身や剛腕が壊れて砕け散ってしまうまで抱き着かせ続けます

人形に限界が訪れたら、妖刀で敵を人形ごと【串刺し】に
許してください、後で必ず元の姿に綺麗に直してみせますから


コノハ・ライゼ
窓から見えそうな子供に上着を投げ掛け敵前へ
これ以上、見ない方が良いデショ

先ずは窓辺から庭へ、出来るだけ離れた位置へ押し出すように
『高速詠唱』にて【彩雨】を放ち
すぐさま『2回攻撃』にて広範囲に壁の如く氷を降らし反撃への盾とする
怪光線には氷を密集させる事で光線の反射を試みるヨ
ある程度の距離あるいは室内の安全が確保できそうであれば
「氷泪」で喰らい付き、その上で『2回攻撃』で『だまし討ち』狙い
自身と反対側へ『傷口をえぐる』ように氷の集中攻撃と行こうか

ただ刈り取るだけでなく幾重にも傷を刻む
……胸糞悪いネ
喰らう、価値もない

間に合わなかった命もこれで
無かった事には、ならないよね(どうかそうであって欲しいと


彩瑠・姫桜
…救済、ね
(腹立たしげに眉根寄せ)
言いたい事はたくさんあるけど
言葉よりも殴った方がわかりやすいかしら

開け放った窓から敵が入って来ないように
「schwarz」を黒猫形態で向かわせ
牽制兼ねた先制攻撃を仕掛けるわ
敵の視界を邪魔できるように顔に飛びかかってもらうわ
部屋への侵入を抑えられれば上出来かしら

戦闘は、常に全体状況把握を意識
敵の動きを観察し【情報収集】
敵の動きを阻害できるように
【第六感】で弱点の当たりをつけ【串刺し】にし【傷口をえぐる】わ
近距離で踏む込めたら【双竜演舞・串刺しの技】を使用するわ

戦闘中も子供達の部屋は常に気にかけるわ
何かあれば部屋への侵入を防ぎ【かばう】事ができるように立ち回るわね


芥辺・有
……お出ましか。

先制攻撃で銃を二発。出来れば目を狙って撃ち込むよ。
撃ち込むと同時に接近して。奴の目の前に厳つ霊を喚び出す。……巻き付いて毒牙でも食らわせてやるといい。
私は後ろや死角に回って攻撃をしよう。
フェイントから刺し穿つように杭を振るい、懐に潜り込んだなら捨て身の一撃で蹴り飛ばす。手段は選ばないよ。

第六感の告げる危なそうな攻撃はしっかり避けられるように、ある程度危険のない攻撃は無視しよう。
浮かび上がる項のノーティカルスターは呪詛に耐える。……くだらない言葉に耳を貸す必要もないだろ。


天星・零
【天星暁音】と参加

『大丈夫、心配しなくていいですよ。』


【オルタナティブ・ダブル】で別人格の夕夜と共に戦う

零‥(A)マフェットスレッド、(B)星天の書-零-
夕夜‥(C)Punishment Blaster
共通‥(D)Ø、(E)グレイヴ・ロウ

万が一に備え【第六感】、合間合間に【フェイント】

零は【毒使い】の技能を生かしつつ猛毒のついたAで攻撃したり、張り巡らせ動きを制限
Eを使い敵を打ち上げたりする
Bで味方や自身に飛んでくる攻撃を【オーラ防御】


夕夜は自身の後方からCを撃ちつつ同時に自身は接近してDで近接


暁音が子供達を庇いそうならできるだけ攻撃を受けないようにするためにBで【オーラ防御】


天星・暁音
【天星零】と参加

…また随分と禍々しいね
まあ邪神関係なんて基本はそんなものか…
させない。ここから先は絶対通さない。
これ以上、子供達を傷付けさせる訳にはいかないんだ。
君の齎す救済なんて俺は認めない。
だから…君を永遠の闇へと放逐する。
とはいえ俺が優先するのは何時だって決まってる。
皆の援護を…俺は俺のやり方で護るだけ…

「零、気をつけて、援護は任せてくれていいから」

味方を鼓舞し癒しながら適時、糸や銃による攻撃でスナイパー、誘導弾等で援護射撃し誘惑や誘き寄せで他の子供たちから意識をこちらに向けさせます。

万一子供たちが巻き込まれそうなら庇います。


八坂・操
【WIZ】

黄昏秘密倶楽部の教義は『苦痛の末の死こそ救済』だっけ? 虐待児童を集めるだけで、その前提条件は楽にクリア出来るね☆ あったまいー♪

……ふざけるな。子に過ぎたる宝なし。未だ取り返せる、やり直しがきく幼子に自らの業を押し付ける。それはただの勝手だ。
生み出た怪異は疾く消えた。死すべき子供は救われる。さて、教義を全う出来たのは?
懼れよ、教義に。畏れよ、神に。恐れよ、敵に。
教義が全う出来ぬであろう事実は、狂信者であるアンタに確かな『恐怖を与える』だろう。
「自らの【怪異】に潰れて消えろ」
苦痛を伴い息絶えた所で、その先に救済があるとは限らない。今際の際に湧き出た疑念は、楔となって救いを阻むだろう。


春霞・遙
ああ、そうですか。親に虐待させて、子供を傷つけさせて、生きてさえいたくないと思わせて、連れ去ると。
あなたたちがそうしなくても苦しんでいる子達は沢山いるんだ。彼らもまた救われて欲しいけど、それが苦痛や死が前提だなんて私は信じません。

子供たちの安否を気にかけつつ、戦闘するみなさんを「援護射撃」と【生まれながらの光】で補助します。万が一建物内に飛び火するようなら身を呈してでも「かばう」。
光線を【光】で打ち消せるかは疑問ですけど、黄昏を照らし目くらまし。

許されるならUCや記憶消去銃などで虐待された傷も、記憶も、その事実自体も消してあげたい。叶わないのなら、せめて苦しい日々が繰り返されないよう祈ります。


紫藤・蛍
首だけの女に肉の輪…
うーん、控えめに言っても意味ワカラン気持ち悪さだなぁ。とのんきに感想

倒しちゃえば関係ないっか。
楽天的な答えを導き出したと同時に
足技の格闘術+サイキック『ファイアブラッド』にて戦闘

無差別攻撃には身につけている小物(時計など)を高速で投げつけ囮とする

救済の言葉を聞かせる割には、無差別攻撃なんて頭悪そうなことするんだね〜
へぇー、と半ば感心したように

無差別攻撃を【目潰し】で妨害します

蛍ちゃんも救済のお言葉を頂こうかな?
ママがね、晩御飯を作るというの。
そんな蛍ちゃんへの救済のお言葉を下さい。

言語を話すことから知能ありと仮定して【疑問】を感じるようなら成功
【謎を喰らう触手の群れ】を発動



●偽りを打ち砕きて

 逢魔時。禍が出てくるならばこれ以上とない時間。
 暮れる夕日の黄昏に、その白衣装は染めぬかれていた。裂けてとろけ、薄っすら笑み浮かぶ口からは、救済告げる文言ばかりを紡ぎ出る。
 その異形は、緩慢な動作で開け放たれた窓へと近づいていく。

「……お出ましか」
 その異形を撃退すべくと、鳴り響く開幕の合図は二度の銃声。芥辺・有(ストレイキャット・f00133)が狙ったそれは寸分違わず異形の赤い瞳へと命中した。引き金引いた勢いのまま距離を詰めて見上げれば、どろりと赤い液体を涙のように流している異形の顔が見える。けれども、痛みを感じた風もなく、肌が溶けた口元は変わらず弓なりに笑みを浮かべている。
「動くなよ」
 ならばと有が呼び出したのは大きな体躯の白蛇の霊。雷纏し尾を地へと打ち鳴らして敵の身を圧し折らんばかりに巻きつき締め上げる。大きな顎を開けば、毒持つ牙が夕暮れの中鋭く光り、そのまま敵の身へ突き立てた。その衝撃に、異形の体ががくりと揺れる。
 だがそのまま大人しくやられるほど、異形とて優しくはない。血涙流す両目がカチカチと光ったかと思えば、そこから放たれた光線が白蛇の身を焼き切った。さぁ、次狙うはその術者、などと思ったのかどうか。けれど、ゆるく首を巡らせた異形の目に有の姿は映らない。
 ただ、視界の端に夜が見えた。
 一足先に滴り落ちたような黒いその杭は、敵の視界から逃れるように背後へ回り込んでいた有がその手に握りこんでいたもの。刺し穿たんと振るわれたそれから逃れようと異形が動く。だが、遅い。
 深く、深く。白い衣服を貫いて。けれどもこのまま抱擁などする気も、さらさら無い。影色のブーツで全力で蹴り抜いてサヨウナラ。
「……救済、ね」
 聞こえた言葉に、彩瑠・姫桜(冬桜・f04489)は腹立たしげにキュッと眉を寄せる。
 身勝手なそれへ、言いたい事はたくさんあった。けれど、この怒りを伝えるのならば言葉よりも、きっと殴った方が分かりやすいだろう。このように、狂いて言葉の通じぬ相手ならば。
「schwarz!」
 彼女の側から、一匹の黒猫が異形へ向かって飛びかかる。否、それは姫桜の愛槍たる黒竜だ。異形の顔に爪を立て、尻尾で打ち据え攻撃の邪魔をしその意識を逸らす。
 部屋の中へと続く窓から、そして、その中にいる子供達から。
 窓へと近づく足を止めたその姿を青い瞳が見据える。纏わりつく黒竜を浮かぶ肉片で叩き落とそうとする動作の一挙一動を、逃すまいと。
 そして見つけた一筋。研ぎ澄ました本能が告げる、かの者を貫くための場所。
 厚い布に覆われた胴の低い位置へと、真白い竜槍を繰り出す。だが寸での所でそれは浅く突くだけに終わってしまう。けれど、もう一歩。ぐっと力を込めて踏み込みながら、姫桜は黒竜の名を呼ぶ。今度はこの手に帰っておいでと、強く。応じるように一声鳴いた黒竜は、彼女の手元に吸い込まれるようにその真の姿を表した。黒い槍。彼女が既に手にした白との一対。
 そして、最後の一歩踏み込むは、一撃穿つ為に。
 至近距離から再び繰り出される竜槍。今度は白黒二振り。目にも留まらぬ速度にて振るわれるそれは、舞い踊る二匹の竜がその顎で異形の咎ごと食らわんとするかのよう。
 そして今度こそ、異形の布を切り裂きて。その胴を大きく薙いだ。
 穿たれ、裂かれた異形が、その血で白い衣装に染みを作る。

 彼女らが敵を抑えていたその数秒。窓から一番近く、外から見えていた子供へとコノハ・ライゼ(空々・f03130)は身に纏っていた上着を投げ掛けた。もし戦闘中目覚めたとて、これ以上彼らが残酷な光景を見ないようにと。
 それと同時に唱えられる術は素早く、されど正確性を持って形を成す。凍える氷の気配持つ、無数の水晶の針が横殴りの雨のように異形への腹へと降り注いだ。それは定まらぬ色彩で煌めき、暮れの空気の中を飛ぶ勢いのまま突き刺さり、敵を窓辺から大きくの押し退ける。針が刺さった箇所を凍て付かせ、軋んだ音を立て始めた。
 異形が体勢を整えるより早く、コノハは次の攻撃へと即座に移っていく。広範囲に、まるで壁のように氷を築き上げた――その直後。

――痛みと苦しみが、やがて来る救済の贄となる。

 狂った啓蒙を告げる異形から、周囲へ無差別に放たれる悪意持った夕焼けの光。けれど、それは何も切り刻む事は出来ずに、冷ややかな壁に阻まれる。いや、それどころか氷はその光を反射し、異形へとその力を返した。
 黄昏の光が、それを信仰の名にするものを照らし貫く。凍る腹に焼けるような一撃。
 窓辺からも大きく離れ、蠢くように全身を大きく震わせ始めた異形へと、コノハは走り寄る。そうして、敵を見た。薄氷の右目の奥、深く刻まれたその刻印で。
 雷纏う氷牙が異形に喰らいつく。けれど、本命は。
 異形の体に衝撃が走る。それはコノハがいるのとは逆側から。傷口ごとえぐるように氷が刺さり、割れ砕け、そこへ新たに刺さって抉るの繰り返し。
 ただ刈り取るだけではない。刻まれる傷が幾重にもなるように。
「……胸糞悪いね」
 歪な啓蒙など、喰らう価値はない。
 だがどれだけ切り刻まれようと、苦痛は祝福であると告げる歪な救済の声は止まず。接敵する彼を弾き飛ばそうと薄気味悪い肉輪が飛来する。
 しかして、それは銃声に阻まれた。
「ああ、そうですか。親に虐待させて、子供を傷つけさせて、生きてさえいたくないと思わせて、連れ去ると」
 援護射撃の手を緩めることなく、春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)が低く告げる。零れる怒りはとめどなく、けれども誰よりも窓に近い場所で攻撃をするのは、子供達が心配だったから。
 傷つく仲間がいれば、放つ聖なる光が次々に癒して治しゆく。どれほどまでに疲労を重ねようとも構いはしない。子らを助ける為に、いつだって遙は奔走している。
 それは今回だって何一つ変わりはしない。仲間を支え、援護しあれを倒してしまえたなら。それが子供達を救う事に繋がるのだから。
 それは異形の赤い瞳から放たれようとする黄昏色を、癒しの光が照らし眩ませた。照準ずれた夕日の光線は、虚しく地面を抉る音だけに終わる。
「あなたたちがそうしなくても、苦しんでいる子達は沢山いるんだ」
 そんな彼らも救われて欲しい。だからこそ、そんなものが救いであって良い筈が無い。
「苦痛や死が前提だなんて私は信じません」
 健やかに、元気で、愛されて。そして笑顔になって救われて欲しい。
 再び銃を構える遙が、冷静に、けれども滲む怒りを隠すことなくその引き金を引いた。
「夜が来てしまう前に早く、あの忌々しい敵を片付けてしまいましょう」
 夏目・晴夜(不夜狼・f00145)の手首、赤い紐で結ばれた灯火が揺れる。
 生きている子がいて、助けられて。それが本当に良かった。だからこそ、最後に残った怪異は確り消し去らなくてはならない。もう二度と繰り返さぬためにも。
 繰り糸繋ぐ指輪に念じれば、愛らしい白柴から戦闘用の人形へと操る先が切り替わる。それは兎のマスク被った、大男。背丈は晴夜をゆうに超え、威圧感を伴って立ち現れる。
 人形は、まずは挨拶代りとその大きな足で異形を蹴りつけた。地にぶつかって跳ねたそれを、二撃目で容赦なく踏み抜く。
 手加減などは一切無い。むしろ気味の悪い敵であれば、何の罪悪も湧きもしない。先程の戦闘と打って変わって彼はその攻撃の手を緩める事なく、彼は淡々と人形を繰る。
 異形はそれでもその大きな顔の表情変えず、ドロドロとした肉輪を宙に浮かべていた。
「意味ワカラン気持ち悪さだなぁ」
 紫藤・蛍(蛍火・f12120)はそんな敵の外見へ暢気な感想をぽつりと零す。
 けれど、それも倒してしまえば関係はない。ひどく楽天的な答えを導き出しながら彼女は跳ぶ。そのまま大きく身を捻り、異形の顔面へと大きく回し蹴りを放つ。それは流れる血潮を炎と変えて纏い、小柄な体から放ったと思えない一撃を見舞った。

 ――黄昏を讃えよ、救済を待ち侘びよ。

 だが敵とてただ蹴られ続ける事はない。
 理性を放棄し、ただ狂った救済を周囲へと齎しながら、ただ動くものを狙って黄昏の光線と舞う肉輪を踊らせる。救済という言葉を聞かせる割には、その行動は人に何かを教えるというには、一周回って関心出来るほどに、程遠い。
 耳障りな言葉が猟兵達の耳奥を掻き乱す。
 だがその声の前に有が立ち塞がった。
 彼女の項に刻まれたノーティカルスターが浮かび上がって、その呪詛を耐え、喰らい尽くす。
「くだらない言葉に耳を貸す必要もないだろ」
 己が名と共に生きるその縁は、歪な甘言に負ける程弱くは無い。
 残っていた光と肉輪へ、身に纏っていたアクセサリーや小物を投げて敵の攻撃を逸らす蛍が、ふと思いついたように小首を傾げてみせた。
「蛍ちゃんも救済のお言葉を頂こうかな?」
 言うや否や纏う炎で散らす火の粉で敵の視線を奪って近づいて、赤い涙流すその目を覗き込んだ。
 赤と青の視線がパチリと交わる。
「ママがね、晩御飯を作るというの。そんな蛍ちゃんへの救済のお言葉を下さい」
 狂気には狂気を。意味を為さぬ問いかけに、異形は返事を返さない。変えぬ表情からは何一つだって読み取れない。
 だが。
 呼び出された絡みつく紫の触手のかたまりは呼び出され。伸ばされた触手が異形を抱いた疑問ごと喰らいつく。

 随分と禍々しい。いや、邪神などというのは基本そんなものかもしれない。
 けれど、これ以上子供達を傷つけさせてなるものか。天星・暁音(貫く想い・f02508)が、夕暮れの輝きの中でも負けぬほどに、その金の瞳に闘志を燃やす。
 あれが齎す救済など、認めはしない。
「零、気をつけて、援護は任せてくれていいから」
「大丈夫、心配しなくていいですよ」
 意思の固い言葉を、天星・零(多重人格の霊園の管理人・f02413)が確りと受け止めそう返し、もう一人の自分を呼び出した。銀の髪、シルバーとマリンブルーの瞳は零と全て対照的な彼。夕夜と呼ばれる零の別人格。
 まずは毒持つ鉤爪を手に、零が異形へと立ち向かう。上から下へ、大きく振るわれた爪は、何も裂くこと叶わない。けれども、纏う布をはためかせた異形が回避した先。そこを熱量をもった光線が貫いた。
 夕夜が虚空より呼び出した四つの砲撃ユニットが放つは、刑罰の名を冠する一撃。施された骸骨の意匠が咎人を嗤うかのように揺れ、無慈悲に射出される熱線。それと共に駆けた夕夜は、己が背丈ほどある刃で飛び交う肉輪を斬り落とした。地にて蠢くそれは、しかして宙へ戻る事は出来ない。零が手にした鉤爪から伸びたワイヤーがその動きを阻み、次いで地より飛び出した十字架のからくりで突き上げ潰す。
 異形を、永遠の闇へ。幸せに生られる人々の前から放逐する為に、少年達はその力を惜しまない。
 複数に分かれ飛び交う肉片のうち、屋内を狙おうとしたものを暁音が操る二丁の拳銃が撃ち落とす。星と闇、魔力で精製される弾丸は彼の体力が続く限りは無限の代物。小さな体に重く圧し掛かる疲労感を、気力で跳ね除け引き金を引く。
 ここから先には絶対に通さない。その強い思いは、彼の家族に伝わり響く。
 あの子が子供らを守るのなら、零と夕夜はその暁音を守る。
 二人はオーラ纏いて幼い家族に飛んできた肉輪をその身に受けた。完全に防ぎきれぬ幾つかに裂かれた肌が、ぱっと赤いものを散らす。
 それに一瞬怯み、声を上げそうになるのを唇噛んで堪える。ただ悲しむだけなど、後悔だけなどしやしない。覆す為の力は、すでにこの身に持っているのだから。
「祈りを此処に、妙なる光よ。命の新星を持ちて、立ち向かう者達に闇祓う祝福の抱擁を……傷ついた翼に再び力を!」
 暁音が朗々と告げ、祝福をと願われた光が彼の家族を優しく抱きしめ癒す。
 例え強き力で敵へ攻撃与えずとも、仲間を癒し護る事も正しき一手。だからそれを優先する。彼には彼なりのやり方で、戦い抜く。
 そうして傷癒えた零と夕夜の二人が呼び出す二足歩行の黒猫の霊。それは命を救わて、命を繋ぐ恩返しの術を操るもの。黒猫が撃ち出す魔弾は生へ願いを糧とし、だからこそ正しく苦痛と死を否定し異形を吹き飛ばした。

 守りたい。
 それは幼き彼らが、そして仲間達が、皆抱く願い。

 鞍馬・景正(天雷无妄・f02972)が使い慣れたその剛弓から連続で放たれる矢の後を、魔法の風が追いかける。
「これ以上身勝手な救済の贄になんてさせはしない」
 サツキ・クルーエル(星宵マグノリア・f01077)は蒼穹の宝玉抱く精霊杖を、力強く握りしめて魔力を繰る。吹きつける風が異形を捉えてその注意を引き、飛ぶ矢はたばしる霰の如くかの者の身へと突き刺さる。

――苦痛を受けよ、精神を死へと返せ。救済の日は近い。

 邪魔するなと、彼らへ飛び向かう肉輪。それを三叉の銀が走って切り捨てた。
「救済だなんて、都合のいい言葉を使っただけでしょ」
 ぴんと立てた耳に届く異形の教え。狂気に彩られたそれを否定しながら、オルハ・オランシュ(アトリア・f00497)は敵の影へと三叉槍を突き立てた。穂先へ宿した魔力が相手の力を吸い上げ、彼女自身の力へと変えていく。
 それに本能的な危機を感じたか。異形が肉輪を彼女へと叩きつけようと振るう。けれども、今度は飛来する弓がそれを許さず弾いて落とした。
 吸い込んだ力を溜めたまま、オルハは一度敵から距離を取る様に難無く下がる。頼もしい友とならば、歪な戦場であっても駆ける足も振るう腕もこんなにだって動きやすい。
 痛みも苦しみも、それを救済として齎すならば何一つだって認めはしない。放たれる矢が、振るわれる槍が、そして仲間の傷癒さんと響き渡るサツキの歌声が異形の教えを打ち消していく。
 夕暮れに響く彼女の歌声は、苦しみに満ちた黄昏ではなく、子供達が笑顔で迎えられる夜明けの光を希いて仲間へ活力を与えていった。
 きっと、人を救うというならば――こんな暖かな祈りであるのでは無いだろうか。
 苦しみによる救済が出来るといならば、島国の乱世が何故あれほどまでに続く事になったのだろうか。その火は消えず、苦しみの声も絶えていない。
 未だ平穏訪れぬ故郷の地を思いて、景正はただ真っ直ぐに弓を引く。
「あの子供達は親元へ返す」
 だからそれは思い描く救いなどではなく、彼ら猟兵達が確かに出来る事として。
 彼に背を預け、視線を合わせる少女達も、同じ思いを胸に頷きあう。
 ――絶対に、帰そう。
 この子達が待っている、家族のもとに。
「終わらせましょう、オルハ殿、サツキ殿」
 二度鳴る弦音が凄風となり、冬の空気を切り裂いた。放たれた二本の矢は涙流す瞳を射抜き完全に破壊する。
 その瞬きする程の間に、サツキは詠唱を終えていた。春の、明るい星の名を冠するその杖を向け、その持てる全力を乗せて放つ。嵐は強く異形を飲み込み、その暴れる風が動きを封じる。
 けれど、それは友の背を押す追い風ともなった。
 軽い足音鳴らし、オルハが異形の前へと踊り出る。息を吐き、若草の瞳を見開いて、目にも留まらぬ速さで三叉槍を繰り出した。
 首を穿つ一撃。潰れたそこへ、重ねてもう一度。留めていた力をその一点へ向けて全て放つ。
 瞬間。爆ぜたようにその喉に風穴が開く。
 ごぼりとその穴から、口から異形は血を吐く。
 その痛ましいとも言える姿の背後から、ぬぅ、と厳つい腕が伸びた。
 晴夜操る人形がその怪力で、まるで別れを惜しむように抱締める。ミシミシと、異形の体が軋む音が周囲にも明確に聞こえただろうか。
「私の人形は優しくて可愛いばかりか、とても人懐こい性格でしてね」
 だからこそ、その身や腕が砕け散るまで離さない。壊れていく音は二つ分。人形の中の絡繰が、異形の中の肉が、骨が砕かれゆく。
 それでも先に限界が来たのは人形の方だった。豪腕が、異形を抱き締め続けることができぬほど破損して、その両手をだらりと下ろしかけた。
 けれどまだ離しはしない。異形の背後から、衝撃が一つ。
「許してくださいニッキーくん。後で必ず元の姿に綺麗に直してみせますから」
 晴夜申し訳無さげに己が人形へと謝罪する。けれどその手に握った妖刀は、人形ごと異形を貫き刺していた。

 完全に破壊された両目は何も映さず、潰れた喉は声も出ず。砕かれきった体は地へと崩れ落ちる。

 いいや。
 いいや。
 この痛みが救いとなるのだ。この教えは間違ってなどいない。そう、いない筈だ。
 だからこれは救い。その中で、死ねるはず。
 ああ、なんと幸せな事だろう。

「黄昏秘密倶楽部の教義は『苦痛の末の死こそ救済』だっけ?」
 うすら笑いを浮かべ満足げに殉じようとする異形へ、八坂・操(怪異・f04936)がいつも通りのハイテンションで明るく話しかけた。
「虐待児童を集めるだけで、その前提条件は楽にクリア出来るね☆ あったまいー♪」
 けれど、そこで彼女が纏う空気が一変する。
「……ふざけるな」
 表情が抜け落ち、見開いた目で異形を見つめる姿は亡霊じみて。けれど彼女が発する怒りは確かに人のものだった。
 子に過ぎたる宝なし。未来ある幼子達へ、自らの業を押しつけるのは、救いでは無い。
 そんなものは、ただの勝手だ。
 今、怪異は全て消えんとし、死すべき子供達は猟兵達に救われる。
「――さて、教義を全う出来たのは?」
 懼れよ、教義に。畏れよ、神に。恐れよ、敵に。
 淡々と重ねらる言葉に、どこからともなく異形へ何かの視線が突き刺さる――何かが、こちらをみている。
 悪霊が、人形が、人影が。違う、見える筈はない。けれどあれは、ちがう、私じゃない、何かの音が、呼吸音が。
 脳裏に赤い血が垂れる。これは、誰の。
 私は間違ってなどいない。いない。いない。

 ――なのになぜ、死への恐怖が背を這い上がる?

「自らの【怪異】に潰れて消えろ」
 怨みは、ここに。
 そして恐怖は形を成す。操から飛び出した、黒い人型が異形へ覆いかぶさる。空気を揺さぶる悲鳴が、辺りに木霊した。
 成し遂げらなかった教義と、それに反する疑念。
 歪んだ教えにすら救われず、異形は苦痛の中で消えていった。


●悪夢のおわり

 黄昏が終わり、辺りに暗闇が訪れる。

 その中で感じた人影に、子供が薄く目をあけた。怯えと諦念が混じるその色に、遙が大丈夫だと言うように微笑み返す。
 全て消し去ることが、果たして良い事か悪いことかは簡単に分る事ではない。
 けれど、これは抱えなくていい痛みだ。
 癒しの光と、記憶を消し去る銃の光が子供達を包み込む。その優しさに、寝顔を安らかなものに変えていく子供ら。
 どうかこれからは、幸せな日々を。
 その様子を見て安心したと笑み浮かべるコノハの顔は、それでもどこか少し翳ったままだ。
「間に合わなかった命もこれで、無かった事には、ならないよね」
 そうあって欲しい。そう願った彼の言葉と同時に。
 部屋に備え付けてあったクローゼットが、軋んだ音を立て不意に開いた。誰かが触れた様子はない。けれど、そこから落ちてきたものを見て彼は目を見開く。
 ランドセル、教科書、ノート、靴、体操着、通学帽。
 猟兵達が慌てて暗い屋内から探し当てた懐中電灯でそれを照らして確認すれば、それは。
 居なくなった子供達の、名前がちゃんと残ったままの、子供達本人の遺品だった。

 ――ありがとう。

 キィ、とクローゼットの扉が鳴る音に、子供達の声が混じって聞こえた気がした。


●しあわせな家族
 連絡を受けたUDC職員達の動きは早かった。
 邪教に仕えた女の身柄を拘束。近くに落ちたあった祭具のぬいぐるみも無事に押収され、すぐに解体されるそうだ。今回のことに関係した宗教団体も、そこに属するもの達も、今頃教団員達が取り押さえに向かっているとのことだ。
 三日もしないうちにバラしてやりますよ、と職員達も気合を入れていた様子だったので、任せてしまっても大丈夫だろう。
 ――そして。
 邪神の一端に触れた可能性がある街の人々への記憶消去と、その心のケアも大至急に行われるとの事。けれど、すぐに全てが解決するわけではない。
 現場になった家の前で、我が子をの遺品を抱えて嗚咽を漏らす親の姿もある。
 失くしたものは戻らない。
 起きた事は無かったことにはならない。
 埋める事の出来ない痛みと喪失感は、日常の積み重ねで覆って癒す他ないのだから。
 けれど、消えない痛みも悲しみも、誰かが確かに其処に居た証。
 どれほど苦い記憶であろうと、本当に大切に思っていたのなら。

 我が子の手の温もりを、もう二度と忘れたりなど、しないだろう。






 親元へ帰れる子達が、迎えに来た親元へと明るい声を上げて走っていく。平穏な日々へ、より早く戻りたいと言わんばかりに。
 きっと、これからは幸せな家族でいられる筈。
 再び歩み出す家族を猟兵達は見守った。

「おかあさん、おとうさん!」

 一人の幼い少女が両親を呼ぶ。
 肩口で揃えたまっすぐの黒髪が、被った黄色い通学帽の下で揺れていた。白いブラウスはこの季節には寒そうだ。まだその体には、少しばかり大きな赤いなランドセルを背負い、小さな足音を響かせている。
 ひらりと、紺一色の膝丈のスカートが風に翻った

「ゆかり!」

 母が、涙交じりに子の名を呼ぶ。
 もう手放さない。大事な、大事な子供の名を、繰り返し繰り返し呼び続ける。
 それに応えるように、少女は嬉しげにまた父と母を呼んだ。

 両親の元へと駆け寄る、その小さな背は振り返る事はない。
 だからその顔は――最後まで、見えることはなかった。

「――ただいま!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月28日


挿絵イラスト