#アリスラビリンス
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●目覚め
走った。とても長い時間走った気がする。
何故自分が走らないといけないのか、その殆どを理解していなかったけれど、どうしてか自分は走ってどこかへ向かわなければならないという思いに駆られて走っているようだった。
息が切れる。動悸が凄まじい。早く。早く。早く。早く戻らなければ!
「ああ、どうして、そんなに急いでいるのかしら、愛おしき子」
声が聞こえる。
驚くほどに優しい声。けれど、その声の裏側にある何かおぞましいものを感じてしまう。それから逃れるために走っているわけではない。それはわかっている。
気を緩めれば、あの優しい声に身を委ねたくなってしまう。
「ああ、母はこんなにもあなたのことを愛おしく想っているのに。どうして逃げるのです?」
違う。自分の母親の声はあんな声ではない。あんなに優しい声ではなかった―――!もっと、怒りをはらんだ声だった。
目の前には扉。そこへ駆け込めば自分は助かる。そんな予感。いや、確信。
だが、あの優しい声が背中から降りかかる。
「此処にとどまれば、私が愛してあげるというのに何故?優しく抱きとめてあげましょう。優しく歌を歌いましょう。優しくなでてあげましょう。なんでも優しくあなたを迎え入れましょう」
優しく。
その言葉は己にとっては麻薬のようなものである。優しくされたい。いつも叱られて叩かれてばかりだった自分。
どうしてお前は。なんでお前は。本当にお前は私の子なのか―――。
響く声。ああ、この声が己の母の声。自分をなじる声だけが力強くて、他の人の前では媚びるように猫撫で声を立てる母の声。違う!違う!違う!違わないのに!なんで、こんなことを思い出す!
心にひび割れが起こる気がした。それは決定的なひび割れ。今はヒビが入っているだけですんでいるが、どのみち砕けてしまうことを宿命付けられた罅。
戻った所で、自分の心は救われないと理解してしまった。
どうして、あんな場所に帰ろうとしていたのだろう。帰った所で待っているのは、絶望だけだ!
「ああ、なんて可愛そうな子なのでしょう。食べて母の腹に還えしてあげようと想っていたのに……」
優しい声は直ぐ側までやってきていた。けれど、もうどうでもいい。もう何も見たくない。
絶望の国へと変じた自分の国でアリスは揺蕩う。元の世界への深い絶望によってアリスは己の殻に閉じこもるようにして眠ってしまった。
それを見下ろすのは一人のオウガ。
「ああ、なんて。なんて可愛そうで可愛い子なのでしょう。私の愛し子。あなたの絶望は常に被虐者であったこと。ならば、加虐者になりましょう。そうしましょう。やり方は私が教えてあげます。とっても上手にできますよ。あなたは私の愛し子なのだから。きっとできます」
ねじれた母情がアリスの体を蝕んでいく。それは止めようがない絶望の始まり。
●歪んだ母情
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを見回して、ナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)は頭を下げる。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はアリスラビリンス。不思議の国が繋がる複合世界。オウガとアリスが織りなす美しき地獄の世界です」
ナイアルテは、微かに説明し難いものを説明するかのような、難しい表情を一瞬浮かべた。
それは自身が一番理解し難いものであったからか、言葉にするのが難しい、というようであった。
「みなさんはアリスという存在はご存知かと思われます。アリスが迷い込んだアリスラビリンスはいくつもの小さな国と呼ばれる世界の集合体です。迷い込むアリスそれぞれに「自分の国」があり、そこに存在する「自分の扉」から元の世界に戻れるようになるのです」
だが、「自分の扉」がある世界にたどり着いたにも関わらず、扉を潜る前に「元世界の記憶」を思い出し、そのせいで完全に心が折れてしまったアリスがいるのだという。
アリスが居る以上、オウガもまたアリスを追っていたのだが、この絶望してしまったアリスを食べるのをやめ、自分たちの仲間……つまりはオウガに改造しようとしているのだ。
「はい、そのオウガは絶望したアリスに歪んだ母情を抱いているようです。アリスの抱いた深い絶望、それに捻れた母情を見出したのです」
そのオウガは、アリスの元世界での昏い記憶を反映した「絶望の国」に塗り替えてアリスをオウガへと変異させようとしている。
その絶望の世界は、恐らくアリスの心象風景なのだろう。四方を檻で囲われた世界。
刻一刻と変化していく世界は、常に怒号が飛び交っている。それはできの悪い我が子を叱咤する母親の声。
それが常に響いているのだ。
「アリスは、まだ幼い少年です。そんな年若い少年には、母親の叱咤というのは厳しく思えるのかも知れません……私は、わからないことばかりではありますが、皆さんはどうでしょう?これをトラウマと呼ぶのかもしれません」
オウガを撃破した後は、トラウマ故に眠りから目覚めない少年アリスの心の障害を取り除き、目覚めさせなければならない。
「トラウマを克服し、自分の扉へと再び送り届けてください。ですが、自分の扉の前には多数のオウガが巣食っています。例えトラウマを克服していたとしても、これを取り除かなければ、元の世界へと戻ることは出来ません。これが自分の扉から元の世界に戻れる最期のチャンスなのです」
どうか、お願いいたします、とナイアルテは頭を下げる。
父母のいないナイアルテにとっては、親子の事情というものがわからない。わからないが、それだけで済ませてはならないことでもあるとわかっている。
だからこそ、彼女は猟兵たちに少年アリスのトラウマを託すのだった。
どれだけの辛い出来事があったとしても、それを乗り越えられるのが人間の強さだと猟兵は知っているだろう。
その絶望を自身で拭い去る為の手助けを、猟兵はしなければならない。いつだって正しいのは厳しく険しい道なのだと―――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はアリスラビリンスの事件になります。絶望してしまったアリスを元の世界に帰すシナリオになります。
絶望に染まってしまったアリスの心をも救い、元の世界へと帰還させてあげましょう。その先にどんな辛いことがあったとしても、猟兵達の心がそれを支えてくれると願って!
●第一章
ボス戦になります。絶望の国を作り上げたオウガとの戦いです。戦闘中、絶望しているアリスは、ただ絶望の国を漂っているだけです。
オウガはアリスを変異させようとしていますので、漂っているアリスを傷つけることはしません。
その歪んだ母情をアリスへと向けるオウガを倒してください。
●第二章
冒険です。絶望の国を漂い、眠り続けるアリス。今だ絶望の国には、少年アリスを責め立てるような母親の声が響き渡っています。
その声から逃げるように、目覚めを拒むアリスの心と身体にアプローチして、トラウマを乗り越えさせるなり、癒やすなりしてください。
●第三章
集団戦です。目覚めた少年アリスと共に「自分の扉」の前に巣食うオウガの群れを全滅させましょう。
第二章までにトラウマを克服ないし、癒せていない場合は、この章でもまだトラウマの克服と癒やしが行えます。これが最期のチャンスです。
例え、オウガを全滅させても、少年アリスの心が癒やされていない以上、元世界に返ったとしても、彼の心は常に仄暗い靄に覆われていることでしょう。
彼の絶望を救ってあげてください。
それでは、美しき地獄たるアリスラビリンスでの猟兵の活躍を綴る一片となれますように、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『『慈母を騙る災厄』アルハザード』
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POW : 『大丈夫、怖くないからお母さんに任せなさい?』
【助けたふりをして騙した子供の血肉】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【傷付けた者の魂を啜る槍】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD : 『あの子は何処に隠れてるのかしら?』
自身が装備する【探し物を串刺しにする道標の杖にして魔槍】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 『見付けた、絶対に手放さないわよ』
自身が【子供の気配】を感じると、レベル×1体の【執念深く残忍な黒い猟犬】が召喚される。執念深く残忍な黒い猟犬は子供の気配を与えた対象を追跡し、攻撃する。
イラスト:純志
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「黒玻璃・ミコ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
絶望の国漂うアリスを見下ろしながら、慈母は優しい声を降り注がせる。
「安心してお眠りなさい。ゆっくりと、微睡みの内に母の愛を受け止めるのです。そうすれば、きっと素敵なあなたに変わることでしょう」
頭を撫でる。
ああ、なんて可愛らしい、わたしの愛し子。
こんなにも可愛らしいのに、食べてしまいたくならないのが不思議でならない。自分と同じになることのほうが大切なのだ。
「すべて夢の世界へと置き去りにしておいでなさい。嫌なものは全部。嫌いだと思ったものすべて。置き去りにしてようやくあなたは―――」
“わたしと同じ”“オウガ”になる。
そうすれば、きっとわたしたちはずっと親子でいられるのだから―――。
レパイア・グラスボトル
ガキに構い過ぎても嫌われるぞ。
アンタがきちんと子離れできるなら良いけどな。
できないんだろ?オブリビオンならなおさら、な。
【対WIZ】
ガキは大人が護るのも役割だ。
呼んだ家族に最近大人組になったヤツが混じっていた。
ほら、そこの浮いてるガキを掴んで逃げ回れ。
家族愛は無理でも同じ災難の中、友情に似た何かは芽生えるかもしれない。
大人組&レパイアは犬が気を取られている間に本体を狙う。
実子含め養育する子供(育て方は棚に上げて)が沢山いる事で挑発する。
大人レイダー共も調子乗ってガキ自慢。
アンタにはガキはいないんだろ?
子供へ
檻の出口は親が鍵を持っている扉だけじゃないぞ。
檻の壁だってぶち壊したっていいんだからな。
偽りの関係は、偽りの感情を呼び寄せる。偽りの感情は歪んでいく。歪んだ感情は、即ち世界の敵である。
『慈母を騙る災厄』アルハザードの持つ母性は偽りのものである。その母性がアリスという贄を食うことに対して有効であるからこそ獲得したものであり、そこに真なる愛は存在していない。
だからこそ、母の愛を受けられぬことに絶望する少年アリスへと歪んだ母性を見出したのだ。ついぞ得られなかった母性を本物にするために、少年アリスを己の欲望のために利用するのだ。
アリスがオウガへと成れば、この親子愛は永遠である。過去の化身であったものが、ついぞ得ることの出来なかった親子という永遠を手に入れるのである。
「ああ!なんて、素晴らしいことなのでしょう!これが真実の愛!」
アルハザードは恍惚とした表情を浮かべる。もう少しで手に入る。目の前に浮かぶ少年アリスの髪へと手をのばす。
「ガキに構い過ぎても嫌われるぞ」
その声がまるで冷水のように絶望へと塗り替えられていく「自分の国」に響いた。アルハザードの冷たい瞳が、ソレを捉えた。
レパイア・グラスボトル(勝利期限切れアリス・f25718)の金髪がなびく。青い瞳は呆れたように冷ややかであった。
「アンタがきちんと子離れできるなら良いけどな。できなんだろ?オブリビオンなら、なおさら、な」
何を、とアルハザードが理解できないものを見る目でレパイアを睨みつける。それは理解不能な言葉であったのだ。子離れ。何故離れなければならない?愛おしい子の傍にいて、ずっと一緒にいるのが親の愛というものであろう。
それなのに何故、離れなければならないというのだ。
アルハザードの手にした魔杖が槍へと変化し、次々と複製され宙に舞う。
「離れる必要がないというのに、離れろというのは、親子の愛を引き裂く行為だわ……なんて酷いことを言うのでしょう。猟兵……そんなにも私達の絆を引き裂きたいというのね……!」
複製された魔槍がレパイアへと目掛けて投げ放たれる。
「バァカ!何が絆だ!そういうのは、絆じゃなくって楔っていうんだ!狼煙を上げろ!!みんな、略奪の時間だよ!!!」
レパイアのユーベルコード、レイダーズ・マーチ(リャクダツリョダン)によって呼び出された彼女のレイダーの家族たちが現れる。
一斉に駆け出したレイダーたちが、絶望の国へと塗り替えられた自分の国を漂う少年アリスを掴んで逃げ回る。
「ガキは大人が護るのも役割だ。そのガキを掴んで逃げ回れ」
少年アリスは今だ目を覚ます気配がないものの、それでもレイダーの家族たちは彼を抱えて魔槍から逃げ回り続けている。
注意が散漫になったアルハザードへとレパイアは大人になった子供たちと共に突撃する。
魔杖でレパイアの医療ノコギリを受け止めなながら、アルハザードが睨めつける。
「あの子は私のモノ……!あの子を私から奪おうなんて、なんて、なんて、なんて許しがたいのでしょう!」
「まあな!アンタにはガキはいないんだろ?それじゃあ、ワタシたちが羨ましくって仕方ないだろう!」
「―――何をッ!」
レパイアの挑発は続く。レパイアと共に戦う大人のレイダーたちもこぞって囃し立てる。それは完全なる挑発であったが、子供のこととなれば、アルハザードにとっては捨て置けぬ言葉ばかりであった。
魔槍の雨が降り注ぐも、精彩を欠く狙い。どれもこれもが容易に躱す。よほど挑発が答えているのだろう。
「まだ目が覚めてないようだけどな!檻の出口は親が鍵を持っている扉だけじゃないぞ!檻の壁だってぶち壊したって良いんだからな!」
今だ目覚めぬ少年アリスへの言葉は、届いていただろうか。
アルハザードの魔杖と医療ノコギリが火花を散らす。
「そんなことはさせない……!あの愛し子は私のモノ……!誰にも渡さないッ……!」
だが、レパイアと大人レイダーたちの妨害で引き離されていくばかりの少年アリスとアルハザードの距離。
そこまで離れてしまえば、もう遠慮はいるまい。レパイアは歯を剥いて笑う。医療ノコギリがギラつき、その刃の鋭さを誇るようにして絶望の世界に閃く。
「ぐっ、あ―――!私の愛し子―――ッ!」
「だから、アレはアンタの子じゃない。いい加減覚めちまいな」
レパイアの医療ノコギリがアルハザードの妄執を袈裟斬りに切り裂いた―――!
大成功
🔵🔵🔵
月守・咲凛
wizで戦闘、アドリブ他諸々OK
おやこは良く分からないのですけど、相手の心を傷付けて閉じ込めようとするのはおかあさんのする事ではないのです!
自分の母の顔は全く知らないので正しい親子の姿とかはわかりませんが、敵が歪んでいる事は理解します。敵の間違いであって欲しいという願いも心の底にはあります。
子供なので猟犬に襲われてしまい、ガトリングやミサイルで対処しますが背後からの攻撃に対処し切れず噛み付かれて墜落してしまいます。
そのまま猟犬の群れに食べられそうになった所で口からビームを放つ巨大(2mクラス)シマエナガの群れが襲来、猟犬の群れを蹴散らします。
(咲凛は『助けて』とは言えません)
知らないということは、ある意味で救いであるのかもしれない。知ってしまったからこそ、認識してしまうネガティブな感情があるのだから。
知らぬということを知る。無知の知。己が知らぬものを知るということは、正しき行いであろう。
己の輪郭を形作るものが知識であるというのであれば、己の輪郭の外にあるのは知らぬもの、未知である。
人は己の内側にあるものすら正しく理解できていない。故に、人の内側も外側もまた無知で溢れている。だが、この心の内に灯る暖かなものは一体なんであろうか。
生命である以上、ひとりでに発生する存在はない。知らぬことがあるからこそ、己という存在を形作るものを知る。
「おやこは良く分からないのですけど、相手の心を傷つけて閉じ込めようとするのはおかあさんのすることではないのです!」
月守・咲凛(空戦型カラーひよこ・f06652)の声が、絶望に染まりゆく「自分の国」に響き渡る。
咲凛は自分の母親の顔を知らない。正しい親子の有り様というものがわからない。だが、己の心の内にあるものが叫ぶ。目の前の慈母を気取るオブリビオン、オウガの姿は歪んでいると。
「親の愛を知らぬ子よ……かわいそうに。あなたもまた孤児。それならば、私も愛を注ぎましょう」
『慈母を騙る災厄』アルハザード』は咲凛の容姿と言葉に酷く優しい顔をした。それは歪な優しさであった。
憐憫すらあった。それが彼女の心の中にある暖かなものを傷つけるものである。他者への憐憫は、そんな歪んだものではない。
アルハザードの魔杖が輝く。召喚されるのは執念深く残忍な黒い猟犬。猟犬は咲凛を捉えると、一斉に駆け出す。
「さあ、可愛そうな孤児。私の愛を受け止めなさい。そして、ともにいきましょう?」
「違うのです!あなたは大間違いをしているのです……!」
そう、咲凛は孤独ではない。孤独であるのであれば、アルハザードの有り様に疑念を抱くはずもない。何かの間違いであって欲しい。親子の愛とは、そんなものではないはずなのだと、心の内側が叫ぶ。
猟犬が襲い来る。ガトリングやミサイルで対応するが、撃ち落としきれない。
逃げ回るように飛び回るも、数が多すぎる。
「うぅ―――!なんで!なんでわかってもらえないのです!親子の愛だっていうなら―――!」
その叫びは猟犬の顎によってかき消される。背後から噛みつかれ、墜落するようにして地面へと叩きつけられる咲凛。黒き猟犬の牙が見える。涎滴る牙。それが己の喉笛を掻き切ろうと伸びている。
痛い。その痛みは彼女のユーベルコード、怒れるシマエナガ先輩(アングリー・シマエナーガ)の引き金となる。
痛い。けれど、その言葉は飲み込む。こんな歪んだ愛情に負けられない。負けてなるものか。言葉は飲み込まれた。助けてという言葉も飲み込んだ。言えない言葉は、揺るがぬ意志となって、彼女のユーベルコードを顕現させる。
「シマエナガ先輩……!」
襲来するのは、巨大なシマエナガの群れ!その開口したくちばしから放たれるのは光線!影のような黒い猟犬たちをたちまちに打ち払い、蹴散らしていく。咲凛に重くのしかかっていた猟犬達も尽くがシマエナガの群れの放つ光線によって霧散していく。
そう、咲凛は孤独ではない。
その生まれがどのようなものであり、これまでどのような道程を歩んできたのかも関係ない。
彼女の誰かを助けなければならないという意志は、彼女自身のものだ。故に、彼女を助ける者たちは、彼女の心のうちから湧き出る。
シマエナガの愛らしい姿が消えていく。それは彼女の感じた、アルハザードに対する歪んだ親子愛への拒絶の正しさを証明するかのようだった。
大成功
🔵🔵🔵
夜神・静流(サポート)
「夜神の剣は魔を討つ刃。悪しき魔物が出たならば、何時でもこの剣を振るいましょう」
破魔技能に特化した退魔剣士。あるいは悪い人外絶対殺す女。
妖怪や悪霊、魔物、邪神等を討つ事を得意としており、その手の依頼には積極的に参加する。
一般人や仲間、友好的な相手には礼儀正しく接するが、討つべき邪悪に対してはとことん冷徹非情で、一切の慈悲を持たない。
戦闘中は抜刀術と退魔の術を合わせた独自の剣術(ユーベルコード)を状況に合わせて使用。
逆に戦闘と退魔以外の事に関しては不得手で、機械や横文字が苦手。
シナリオ中の行動に関しては、魔を討ち、人々を護るという自分の使命を第一に考える点以外は全てお任せします。
アリスラビリンスは人肉喰らうオウガが支配する無数の不思議の国がつながってできた複合世界である。
そこにアサイラムから召喚された異世界人「アリス」は元の世界の記憶、この世界の記憶ないままに逃げ惑うばかりである。しかし、オウガとは歪んだオブリビオンである。
元世界の記憶を取り戻してしまったアリスの中には不幸にも元の世界もまた己にとって絶望足り得る世界であった者もいる。彼らは己の世界に戻る前に絶望し、その絶望を見たオウガは、歪んだ母性をアリスへと抱くのであった。
『慈母を騙る災厄』アルハザード、そのオウガは、迷い込んだ少年のアリスの母であろうとしていた。そこだけに着目すれば母性の為せる業、奇跡のような邂逅であったことだろう。
だが、それはオウガがアリスを、己の仲間に変異させるための手段でしかなかった。その歪んだ母性が導くのは、ただの破滅である。
少年アリスは未だ、絶望の国へと塗り替えられようとしている「自分の国」を眠り漂うばかりである。
「可愛い私の子。愛し子。何もかも忘れて、眠りから目覚めれば、きっと私の子に……」
猟兵の攻撃を受けつつも、諦めることはしない『慈母を騙る災厄』アルハザード。その執着は妄執と言っても間違いではない。
歪んだ母性は、歪んだ愛着を生み出し、もはや何のために、アリスを追っていたのかさえ定かではなくなってしまっていた。
「夜神の剣は魔を討つ刃。悪しき魔物が出たならば、何時でもこの剣を振るいましょう」
少年アリスと『慈母を騙る災厄』アルハザードの間に立ち塞がったのは、夜神・静流(退魔剣士の末裔・f05903)である。
黒髪の退魔剣士は赤い瞳をアルハザードへと向ける。その視線に一切の容赦はなかった。
彼女の目の前にいるオウガは、紛うことなき魔そのものである。母情も歪めば、他者に災厄を齎す魔性であることは間違いようがない。
鯉口を切る静流。足を止めるのは、彼女の居合抜刀の間合い故。
「母の悲哀……そう思えば、それもうなずける執着であるのかもしれません……ですが、あなたのそれは最早魔性そのもの。借り物であった母性が、本物になるはずもありません……故に」
斬らせて頂きます。その形の良い唇が言葉紡ぐ。その瞬間、アルハザードの魔杖が魔槍経と姿を変質させる。
しかも、大量に魔槍を複製し、念力でバラバラに浮遊させる。一斉に宙に浮かぶ魔槍が静流へと放たれる。
あまりにも大量のそれは豪雨と言っても差し支えない。だが、静流にとって、それはまさに、ただの雨でしかなかった。
「私の愛し子を拐かそうとする猟兵―――!串刺しになってっ!私とあの子の間に入り込むな―――!」
鯉口を切った刃が輝くのは一瞬であった。降り注ぐような魔槍の雨を瞬時に認識する。その全てが彼女にとって切り伏せる全てのもの。
「我が剣は雷霆――魔を射殺す刃! 三ノ秘剣・千鳥!」
抜刀と共に放たれるは、超高速の雷刃!
圧倒的速度の剣戟は雨のように降り注ぐ魔槍全てを切り落とす。その一瞬の剣戟は轟音のように鳴り響き、その尽くを失墜させる。
彼女のユーベルコド―――。
「三ノ秘剣・千鳥―――再び参ります」
静流の静かな声が、アルハザードには遅れて聞こえてきたことだろう。
瞬時に踏み込んだ静流はすでにアルハザードの背中、後方におり、刃を鞘に収めたところであった。
神速の踏み込み。瞬時の斬撃。そのどれもがアルハザードには認識できなかった。
「―――なっ……あ……?」
魔杖を切り裂き、袈裟斬りに太刀筋が切り結ばれる。何が起こったのかわからない。わからないが、斬られた―――その事実だけが、アルハザードの体に刻まれる。
神速の居合。
それが静流の持つ退魔の剣技。退魔剣士の末裔にして猟兵たる夜神・静流の本領であった―――。
成功
🔵🔵🔴
キーシクス・ジェンダート(サポート)
「助けが必要なら、私も共に行こう」
「…あぁ、いつ見てもオウガのやることは、虫唾が走る」
通常時一人称:私 二人称:キミ、呼び捨て
三人称 :彼等
戦闘時一人称:俺 二人称:貴様
魔法による遠距離戦を得意としたアリス適合者
味方には努めて穏やかに、敵には冷徹に
オウガ相手には嫌悪感を隠さずに
戦闘
UCによる範囲攻撃が主力
「高速詠唱」から「全力魔法」「属性攻撃」「衝撃波」を主に行う
物量で追い詰めつつ、必要ならトラピッチェによる「スナイパー」「呪殺弾」で敵を撃ち抜いていく
基本方針
戦闘時は積極的に攻撃に打って出る
負傷を恐れず、味方がいる場合は積極的に連携を行います
要救助者の救助は優先的に
アサイラムから召喚されたアリス。それは例外なく人肉貪るオウガによって追われる身となる。それが宿命だというのなら、それに抗うだけの力が必要であろう。
力あるものはユーベルコードで対抗することも出来る。だが、それだけの力がないものは一体どうなるのだろう。抵抗もできず、戦うことも出来ず、その肉を貪られるだけの憐れな被食者と成り果てるしかないのだろうか。
否。それは否である。そんな運命に屈してしまうのは許せない。オウガの所業が如何に正当化されようものであったとしても、過去の化身オブリビオンである以上、彼らの捕食行為は未来を食いつぶすだけの存在。
今正に『慈母を騙る災厄』アルハザード、そのオウガは、迷い込んだ少年のアリスの母であろうとしていた。
いびつに歪んだ偽りの母性。その母性を己の記憶を取り戻してしまい絶望の淵を漂う少年アリスへと向け、その少年すらもオウガとして改造しようとしている歪んだ愛。
それを目の当たりにして、キーシクス・ジェンダート(翡翠の魔人・f20914)は嫌悪感を隠さずにつぶやいた。
「…あぁ、いつ見てもオウガのやることは、虫唾が走る」
あまりにも醜悪そのものな母性。いや、それを母性と呼ぶのも虫唾が走る。母性というものが、己の子へと注がれる無償のものであるとするならば、オウガの向けた歪んだ母性は己のためだけのものだ。
己の欲望を満たすためだけに歪んだ母性を向けている。その事実に、あのオウガは気がついていない。
「猟兵……次から次に私の邪魔ばかり……!私の愛を邪魔することは許さない……!」
アルハザードの魔杖より呼びされたるは、執念深き黒き猟犬。牙を剥き、滴り落ちる涎が絶望に染まりゆく「自分の国」を汚していく。
一斉に駆け出す猟犬を苛立ち残る瞳で見返すキーシクス。トラピッチェと名付けられた魔術式を組み込んだスナイパーライフルを構える。
あれらが猟犬だというのならば、己は猟兵。構えたトラピッチェはお誂え向きである。
捉えた猟犬の眉間を次々と内貫いていく呪殺の弾丸。轟音が響く度に猟犬の数が減っていく。
「こんなものか、オウガ!偽りの母性、その醜悪な姿、俺が全て撃ち落とす……!」
キーシクスの掲げたクロムスフェアと呼ばれる剣の埋め込まれた宝石が輝く。
その手に掲げるは、膨大な魔力の奔流。それは高速詠唱から編み込まれる彼の全力の魔法である。
天に渦巻くは、エメラルドの輝きを思わせる魔力の渦。
「お前たちオウガに奪われた記憶と力……必ず取り返す、あの子達のもとに帰るために……!」
キーシクスの手より放たれる属性攻撃は、雷のように打ち込まれ猟犬たちを打ち貫き、その尽くを霧散せしめる。
その衝撃波は召喚の主であるアルハザードの体をも貫く。だが、それでオウガへの嫌悪が晴れるわけではない。すかさず構えたスナイパーライフルのスコープに捉えるのはオウガたるアルハザード。
「全て返してもらう……オウガ!」
引き金が引かれる。放たれるは呪殺弾。怨敵オウガへの嫌悪を込めた銃弾が、アルハザードの体を打ち貫く。
驚愕に見開かれた瞳、痛みに歪む顔。
そのどれもが、キーシクスたちアリスが味わってきた艱難辛苦を晴らすための一石。
己たちアリスが常に被食者であるとは限らない。圧倒的強者であるオウガに牙むくアリスもまた存在するのだと知らしめる一撃だった―――。
成功
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教楽来・鏡日
……はぁ、嫌なこと思い出した(首を引っ掻きながら)
偽物だろうがなんだろうが、僕はそもそも「母親」が嫌いです。勿論、世の中いい人もいるでしょうけど。お前が「いいひと」の部類に入るとでも?
馬鹿馬鹿しい、その子はお前の子供でも、ましてやここに居ていい存在じゃない。
UC発動。鎖を「念動力」で操って動きを封じ込めましょう。そうですね、猟犬同士の足を繋いでお互いに足を引っ張ってもらおうかな。
慈母にも「一斉発射」「2回攻撃」で鎖を飛ばし、動きを止めます。あぁ、それでも抵抗するなら首に飛ばして首吊りです。攻撃が来れば近くの「敵を盾にする」ことにしますか
こども、子供と煩いなぁ
いいから、さっさとくたばれよ
価値観の相違というものがある。己の持つ価値観と、他者の持つ価値観。それは擦り合わされれば、摩擦を生み軋轢となるだろう。
大切なのは距離感であり、近づかなければ摩擦も軋轢も起こりようがないのだ。だが、往々にして悪意ある者というのは、悪意があるからこそ、この距離を詰めてくる。他者を研磨ではなく、いたずらに傷つけようとする。
それが酷く許せないと思ってしまうのは、道理であろう。
アリスラビリンスにおいて、アリスとオウガの関係もまた同様であったのかもしれない。
オウガの持つ母性は、アリスの求める母性ではない。それが偽りであるとわかるからこそ、教楽来・鏡日(徒夢の吊り輪・f16656)は苛立つ。
首をひっかく。
それは彼、教楽来・鏡日(徒夢の吊り輪・f16656)の心の内より現れた昏い過去の残滓。残滓と呼べるほどまでにいたっているかどうかはわからないが、それでも首をひっかく仕草は、彼の苛立ちを表している。
「……はぁ、嫌なこと思い出した」
ほとほと呆れ果てる。目の前のオウガの言葉。
『慈母を騙る災厄』アルハザードは、まさに鏡日の心をささくれさせるのだ。
「何を思い出すというのです。何か心に抱え込んだ傷でも……?なんて可愛そうな子なのでしょう。愛してあげましょう、愛でてあげましょう、この子をオウガに変えた後で!」
少年アリスを見つめるアルハザードの瞳は酷く濁っていた。歪んだ母性。にじみ出る狂気。
アリスを食うわけではなく、自身と同類に改造しようとする歪な性根。
そのどれもが鏡日にとっては気に入れないものばかりであった。
「偽物だろうがなんだろうが、僕はそもそも「母親」が嫌いです。勿論、世の中いい人もいるでしょうけど……」
そう、確かにいい人も居る。底抜けに善人だっている。だが、それもでも。だが、と言わなければならない。
「―――お前が『いいひと』の部類に入るとでも?」
アルハザードの表情が凍る。びしり、とヒビが入ったような表情。それは哀れみを向けた相手から帰される唾棄されるような感情を受け止めきれない表情であった。
魔杖が煌めく。それは魔力の輝きによって呼び出された黒き猟犬。何体も生み出される猟犬は、鏡日を数で圧倒しようとしているのだろう。
「そんな酷いことを言う子は―――教育してあげないといけないわ、とてもいけないことだわ―――!」
猟犬が放たれる。
だが、鏡日は慌てずに歩みを進める。呆れ果てる傲慢。オウガとは全てこんな風に歪みきった者ばかりなのか。
息を吐き出す。嘆息。
「馬鹿馬鹿しい……その子はお前の子供でも、ましてやここに居ていい存在じゃない」
鏡日とアルハザードの間に紫電が走った。それは一瞬の煌きであったかもしれない。
だが、鏡日の周囲の空間から現れた鎖が彼の念動力によって操られ、空を駆ける。
「動けるならどうぞ、できるならですが」
一瞬の内に猟犬全てが鎖に捉えられる。猟犬同士の足が鎖で繋がれ、移動しようとすれば足を取られてもがく。その様子を視界の端にすら捉えずに鏡日は歩みをすすめる。
それは酷くゆっくりとした動作に見えた。しかし、一瞬でアルハザードとの間合いを詰めるのは、再び空間から現れた無数の鎖。
彼のユーベルコード、来雷の紫鎖(スタッド・ジュピター)。空間から放たれる無数の鎖は念動力によってコントロールされ、アルハザードの四肢を捉え、動きを止める。
だが、抵抗しようとするのならば、と首にもまた鎖が巻き付き紫電が迸る。
「が、ぁ―――あっ!あ、ぐっ……私の愛し子……どうして愛することを邪魔する……あれは私の子なのに……かわいそうな私の愛し子……!」
アルハザードの言葉は酷く耳障りに鏡日の耳に届いたことだろう。
その歪んだ母性から溢れるのは、鏡日のトラウマを刺激して止まない。首をひっかく力がこもる。
苛立つ。何度も言っている。馬鹿馬鹿しい。
「こども、子供と煩いなぁ……いいから、さっさとくたばれよ」
雷鳴のような轟音が鎖から響いた。
それは歪んだ母性を焼き尽くし、その存在の一片も、この「自分の国」に残さぬような執拗な電撃であった。
骸の海へと還っていくオウガ。その一片たりとて、鏡日にとっては受け入れられない。
引っかいた首が痛む。
今日は厄日だ。嫌なことばかり思い出す……。
だが、これで少年アリスはオウガの驚異から開放される。そう思えば、首の痛みも少しは和らぐような気がした―――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『眠れるアリスと愉快な仲間たち』
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POW : アリスの心や身体に働きかけよう!
SPD : オウガについて調べてみよう!
WIZ : 愉快な仲間に色々聞いてみよう!
イラスト:爽
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『慈母を騙る災厄』アルハザードによって塗り替えられようとしていた「自分の国」は、徐々に本来の姿を取り戻し始めていた。
漂っていた少年アリスの体は、柔らかそうなベッドに横たえられる。
だが、少年は目を覚まさない。
それは、アルハザードによって塗り替えられていた絶望の国の残滓が残っているからだ。
四方は檻に囲まれ、母親のもであろう怒号が微かに響いている。それが少年アリスの絶望の理由なのかもしれない。
例え、自分の扉をくぐって元の世界に戻ったとして、彼に待つのは、この怒号である。それを恐れて目を覚まさないのかもしれない。
塗り替えられようとしていた「自分の国」の端々から顔をのぞかせている愉快な仲間たち。それはアリスを心配するようでもあり、何か協力をしてくれるかもしれない。
それとも、猟兵自身の言葉で、眠れるアリスの心と体にアプローチしてもいいだろう。
どちらにせよ、猟兵たちでなければ、アリスの抱えるトラウマは解決できないのだから―――。
月守・咲凛
愛情を歪めようとしていたオブリビオンの伝える物が、まともな物だとは思えないのです。
あなたの聞いたおかあさんの声は、あなたの覚えている言葉は、本当にこれだけなのですか?
少年の手を握って優しく問いかけてみましょう。
出来が悪いとかの言葉があるという事は、逆に何かをやって褒められた言葉もきっとある筈なのです。
やった事がぜんぶ成功する人もいませんし、やった事がぜんぶ失敗する人もいないのです。
ちゃんとした声が聞こえてきたら、私も一緒に横でその言葉を聞かせてあげるのです。
私はお姉ちゃんですから。
肉体が心の容れ物であるというのなら、肉体が変化すれば、容れ物に入っている心もまた変形するのかもしれない。
あのオウガの施したアリスへの改造、という言葉はある意味間違いではなかったようだった。少年アリスの心は未だ閉ざされている。
それはこの彼の「自分の国」が「絶望の国」というテクスチャーによって塗り替えられたままであるからだ。
母親が子を叱るそれとは違う、怒号のような声。怒りを顕にした声。そのどれもが少年アリスの心を抉るように響き渡っているのが、よくわかる。こんな風に言葉を投げかけれられるのは、きっと石を投げられるのと同じであったことだろう。
例え、自分の扉をくぐったとしても、待ち受けるのが怒号であるというのならば、いっそ戻りたくないと思っても仕方のないことだ。誰もが怒号の中へ飛び込むことができるわけではないのだから。
「この声がまともな物だとはとても思えないのです」
月守・咲凛(空戦型カラーひよこ・f06652)は漂っていた少年アリスが寝かされているベッドの傍まで駆け寄る。
周囲を見回すだけでわかる。四方を囲う檻。それは少年アリスの心象風景であり、あのオウガが歪めようとした彼の「自分の国」そのものであるのだろう。
オウガを骸の海へと還したことにより、塗り込められていた表層がところどころ剥げ落ちてきている。そこから覗くのは、元よりこの国の住人たちであったであろう愉快な仲間たち。
彼らは心配そうに咲凛と少年アリスを交互に見つめている。
大丈夫、と咲凛が微笑んだ。静かに眠る彼の手を取りながら、語りかける。
「あなたの聞いたおかあさんの声は、あなたの覚えている言葉は、本当にこれだけなのですか?」
彼女の問いかけは、驚くほどに優しく少年アリスの意識へと入り込んでいく。四方に囲まれていた檻のような心象風景が歪んだ気がした。
彼女の考える通り、この怒号めいた母親の声は、きっと愛情を歪めようとしたオブリビオン、オウガの策略なのだ。
「出来が悪いとかの言葉が在るということは、逆に何かをやって褒められた言葉もきっとある筈なのです」
そう、何かを成そうとしなければ、出来の良し悪しもでてくるわけがない。だというのなら、少年アリスが何かを為して褒められたこともきっとあるのだと咲凛は確信する。
その言葉を上手く増幅してあげれば!
咲凛の言葉は優しく続く。
「やった事がぜんぶ成功する人はいませんし、やった事がぜんぶ失敗する人もいないのです!」
そう、成功があれば失敗がある。失敗があるからこそ成功する。その言葉は曇った空を払うように、「自分の国」に響く怒号が和らいでいく。
声が聞こえる。怒号に霞むようにだが、僅かに「失敗してもいいんだよ。次も。どんなに失敗しても、いつかできるようになるから」と怒号とは違う声が聞こえるのだ。
やっぱり!と咲凛は微笑みを強くする。
ならば、咲凛がすることは決まっている。今はまだ怒号にかき消されそうな声を自分が聞かせてあげればいいのだ。
どんな些細な切っ掛けでも人はいつか立ち直ることができる。些細なものでも支えにして立ち上がることが出来るのだ。
咲凛はそれを知っている。だから、か細い声を支えるように、その言葉を反芻するように少年アリスに向かって聞かせる。
「失敗しても良いんですよ。次も。どんなに失敗しても、いつかできるようになるのです!」
だから、とその小さな手で少年の手を握りしめる。
何も心配しなくても良い。自分の扉をくぐった先にあるのは、今響いている怒号なんかではないのだと。
きっと彼女は後にどうしてそこまでしたのかと問われることもあったかもしれない。その時、彼女はニッコリと微笑んで何事もないかのように言うのだ。
「だって私はお姉ちゃんですから!」
大成功
🔵🔵🔵
教楽来・鏡日
うっわ、…まだ残るんですか?この声
…君の気持ち、少しはわかるんです。昔話でもしましょうか、眠る少年に聞かせるつもりで。
僕の「母親」もこんな風によく怒鳴ってました。実の息子を実験台にして、訳の分からない装置やら何やら、やめてって言ってるのに何度もつけた挙句に
「この失敗作」
首を絞められながら、何度も何度も。それが苦しくて、でも我慢できない僕が悪いって。
それを、そんなことないって言ってくれた人がいました。
辛かったね、そうやって言ってくれた人がいました。
…僕の運が良かった、と言われればそれまでですが。別に、母親だけが世界じゃありませんし。助けを求めたっていいんですよ、案外お人好しは存在するものです。
反響する声は未だに、その怒声が大半を占めている。
この声の主は本当に少年アリスの母親のものなのだろうか。少年アリスをオウガへと改造しようとしたオウガ、アルハザードの策略なのかも知れなかった。
だが、この声が本当であれ、嘘であれ、浴びせかけられ続ける怒号は人の精神を歪ませていくことだけは確実であった。
どんなに鈍感であると己を信じたとしても、声は肌をひりつかせ、骨身を削るように染み込んでいく。言葉でコミュニケーションを取ろうとする生物であれば、それは円滑なコミュニケーションを目指したが故の弊害であったのかもしれない。
伝わりやすいように言葉を得たが故に、善意も素早く伝わるのと同じように悪意もまた素早く伝わる。
時に、善意よりも悪意の方が素早く、深く、聞く物の心根に染み込んでいく物である。だからこそ、言葉というのものは、その扱いに慎重さが求められるのかも知れなかった。
辟易していた。本当に辟易していた。
「うっわ……まだ残るんですか?この声」
しつこいと言ったらない。こんなにもあのオウガは少年アリスに執着していたのだろう。それは最早、妄執と言っても過言ではなかった。
骸の海へと還したというのに、未だに残滓となって少年の心を苛もうとしているのだから。
教楽来・鏡日(徒夢の吊り輪・f16656)は、少し困ったような表情を浮かべたかも知れない。こういうのは苦手なのかも知れなかった。でも、鏡日は言葉を紡がねばならないと思った。
「……君の気持ち、少しはわかるんです。昔話でもしましょうか」
眠る少年に聞かせる寝物語のように。そんな思いで訥々と語り始める。
それは静かな語り口ではあったものの、彼の心の内を現すように語られる。
「僕の『母親』もこんな風によく怒鳴ってました。実の息子を実験台にして、訳の分からない装置やら何やら、やめてっていってるのに何度も付けた挙げ句に……」
そう、言われたのだ。
『この失敗作』
首を絞められながら、何度も何度も。その記憶は脳にこびり着いているのかも知れない。だからこそ、鏡日は首をひっかく。外せない万力のようにも思えた母親の指。徐々に空気が失われていく感覚。
それを思い出す度に自身の首をかくのだ。それは最早呪詛のようなものだった。
苦しい。やめて。でも、我慢できな自分が悪いのだと。投げかけられる言葉は、嘆きでもなんでもなかった。
「それを、そんなことないって言ってくれた人がいました。辛かったね、そうやって言ってくれた人がいました」
どんな苦境にも救いはある。それが伝えたかった。
自分の経験が、自分の歩んできた道程が、誰かの何かになるかはわからなかった。どうしたって、役に立ちようもないことなのだと思っていたのかも知れない。
だが、それをひっくるめて全て、ひっくり返してくれた人達がいた。それだけが鏡日にとっての救いであったのかも知れない。
だから、彼は今も猟兵をしている。かつての自分と同じ誰かのために戦うのかも知れなかった。
「……僕の運がよかった、と言われれば……それまでですが。別に母親だけが世界じゃありませんし」
そう、このアリスラビリンスのように世界は一つじゃない。一つの世界のように見えても、複合して大きな世界になっているものだ。
だから、そんなに悲嘆しなくても良いのだと。君の世界があるのだとしたら、母親の世界もある。そんな世界が認められるのだとしたら、それぞれに持った世界があるのだと。
「助けを求めたっていいんですよ、案外お人好しは存在するものです」
そう、言葉を締めくくった鏡日。
お人好し、と言うほどに優しい人々は、厳しくも悪しき人々と同じくらい存在しているのだ。
だから、手を伸ばせばいい。
助けて欲しいと。たったそれだけで救われるものがあるのだから、と―――。
大成功
🔵🔵🔵
源・ヨーコ(サポート)
『悪い子はお仕置きっすよー!』
人間のブレイズキャリバー × ビーストマスター
年齢 16歳 女
外見 158.4cm 金の瞳 ピンクの髪 色白の肌
特徴 胸が大きい 八重歯 ギャル ハイテンション! 運動が好き
口調 体育会系(自分、~先輩、~っす、~っすよ、~っすね、~っすか?)
悪いヤツは鉄拳制裁!
あまり難しいことは考えず、敵に向かって猪突猛進するタイプ。全ては拳で解決できると信じていて、とりあえず接近して殴るが基本戦術。
硬そうな相手にはカウンターでの一撃必殺を狙い、素早そうな相手には連撃と使い分けぐらいはする。
単独行動を好み、調査などは苦手。
基本は戦闘オンリーな感じですが、よろしくお願いします。
アリスラビリンス、それは幾多もの小さな世界が重なり合って存在する複合世界である。アサイラムより召喚されしアリスと呼ばれる自分が元いた世界の記憶をなくした人間。その人肉を貪らんと襲いかかり、追いかけ回すのはオウガ。
アリスとオウガの関係者は、捕食者と被食者。だが、時としてオウガは、被食者としてのアリス以上の歪んだ感情を抱くことも在る。
『慈母を騙る災厄』アルハザード。歪んだ母性を少年アリスへと向けるオウガが、今回の首謀者である。「自分の扉」を前にして、戻るはずのなかった元世界の記憶が戻ってしまったアリスの絶望を元に、「自分の国」を「絶望の国」というテクスチャーで多い潰してしまった。
猟兵達の活躍により、アルハザードは骸の海へと還った……。だが、未だ少年アリスは目を覚まさない。
塗りつぶされた「自分の国」に響くのは母親の怒声。それはアルハザードの改造の残滓。その声は、不協和音となってアリスのトラウマを増幅し続けていたのだ。
しかし、子を思う母の言葉は時として厳しくなるのものである。そのように感じることのあった人間は少なくないだろう。
時として疎ましくも思いながら、思い返しては己のためを想っての言葉だったのだと気がつくこともあるだろう。だが、少年アリスは未だ幼い。その言葉の真意もわからぬままに、受け止めてしまったトラウマが未だしこりとなって彼の心を占めているのだ。
「悪い子はお仕置きっすよー!って……想ったんすけど、もう悪いのはやっつけた後……うーん、自分ができることってなんすかね?」
うんうん、と頭をひねるのは源・ヨーコ(鉄拳制裁・f13588)である。
未だ絶望の国というテクスチャーに覆われ、所々では在るが綻びかけている世界。ううむ、とうなりながらも自分ができることを考える。
生まれも育ちもアルダワ魔法学園という世界である。ただひたすらに拳打を鍛え、研鑽を重ねてきたのだ。
自分にはこれしかない、そう想っていたものだから、こういう展開には不慣れであるという自覚はあったのかもしれない。
目の前にはベッドの上に横たわっている少年アリス。世界に響く怒号は、きっと彼の母親の声なのかもしれない。
「しかし、こんなにハチャメチャ、無茶苦茶に怒ってばっかりいられるんすかねー?自分だったら、怒り続けるのって無理っすね!マジで!」
たしかにそうだ。怒り続けていられる人間など、そう多く存在するものではない。だからこそ、この正念の母親の怒声が不自然に感じるのだ。
どう考えても、これは少年アリスの抱えるトラウマを増幅しているような意図さえ感じる。
「でも、むずかしーことはわかんないっす!前後間違いあったら、その時はごめんなさいっすよー!」
もう難しいことはやめた! ヨーコのユーベルコード、正義執行(ジャスティス・インストール)が発動する。それは自身を強化するもの。
戦う敵のいない場合には意味をなさない……かに思えた。
だが、彼女の滾る想い―――つまりは、努力!友情!勝利!即ちそれは、この「絶望の国」というテクスチャーに包まれた「自分の世界」においては、最高のポジティブな思考である。
「そっす!何も難しいことを考えるまでもないっす!考えてもわからないことは、考えてもしかたないっす!どうしてお母さんがそんなことを言ったのか、ひどいことを言ったのか!わからないのであれば、体を動かすっす!」
その場でシャドーを始めるヨーコ。その拳は早く空を切り裂く音が周囲に響き渡る。それは眠り続ける初年の中にある靄々とした暗澹たる気持ちを切り裂くようであった。
素早く拳に足から腰、背中、肩、前腕へと伝えられる力。その伝達は単純に見えて繊細精緻である。この反復が絶大な打撃を生むのだ。
鍛錬の最中がもっとも克己するに足り得る時間であるのだ。ヨーコは確信する。
「そうだっす!起きたら、正拳突き練習しましょう!体を動かして、汗と一緒にネガティヴな感情もデトックスしちゃいましょうっす!きっと心も体も軽くなるっすよ!」
ヨーコの明るい声が「自分の国」に響き渡る。
それは春の爽やかささえ感じさせる清涼な風だった―――。
成功
🔵🔵🔴
レパイア・グラスボトル
親に怒られるのは怖いってのは…子をしたこと無いからよくわからないけどな。
ま、親ってのは子が心配であれこれ言っちまうってのはわかる。
これでも子持ちだしな。
とにかく、だ。
ここはアンタの世界、つまりは親のいない秘密基地なんだろ?
なら、飾るのも壊すのもアンタ次第ってわけだ。
アンタが本当に欲しい物を作ってみな?
目覚めて帰って、結局変わらないかもしれないけどね。
楽しい夢の間だけでも笑うといい。
【WIZ】
患者に語りつつ、ゆかいな仲間に手術。
強化して不愉快なテクスチャを壊させる。
このガキ起こして遊びたいんだろ?なら道具は貸してやるからさっさと遊び場にするんだよ。
賑やかに騒々しく楽しく。不愉快な音を消す様に。
幼子にとって親とは自分の世界そのものである。
世界とは自身を取り巻く環境であるというのなら、自分の世界を構成する身近な存在というものは恐らく母親であろう。
千差万別はあれど、ほとんどの人間においてはそうだ。だとするのであれば、今少年アリスの「自分の国」という自分だけの世界において大いなるウェイトを占めているのが、母親の言葉であろう。
この世界に響き渡る声は、あまりにも感情的である。怒声とい言っても良い。その怒号が響き渡り続けるのは、まさに石を投げ続けられるのと同じことであろう。
疲弊した精神は、摩耗していく。
「親に怒られるのは怖いってのは……子の立場っていうのをしたことがないからよくわからないけどな」
レパイア・グラスボトル(勝利期限切れアリス・f25718)はフラスコチャイルドである。そのために親という存在は理解していても、自身が子であった、ということに対しては無自覚なのであったのかもしれない。
医療特化である、ということを差し引いても、彼女自身にもわからぬことは多いのだ。
「ま、親ってのは子が心配であれこれ言っちまうってのは、わかる。これでも子持ちだしな」
そう言ってからから軽快に笑う。見下ろすのは眠り続ける少年アリス。
彼の心は未だトラウマに絡め取られているのだろう。それはあのオウガ、『慈母を騙る災厄』アルハザードの改造の名残であったのかも知れない。
骸の海へと彼女が還った後でも尚、こうして影響を残していくほどであるから、間違いではないだろう。
だからこそ、猟兵である彼女たちが少年アリスのトラウマをほぐしていかなければならない。
「とにかく、だ。ここはアンタの世界、つまりは親のいない秘密基地なんだろう?なら、飾るも壊すもアンタ次第ってわけだ……」
眠る少年アリスに語りかけるレパイアは歯を向いて笑う。それは何やら悪い企みを思いついた時のおませな少年のような笑顔であった。
秘密基地、という言葉の響きに何か感じ入るものもあるのかもしれない。何をしてもいい。咎めることはない。
それは真っ白なキャンバスを与えられたような自由感があった。
「アンタが本当に欲しい物を作ってみな?さあ、アンタたちも手伝いな!」
その言葉に世界の綻びのあちこちから顔を出していた愉快な仲間たちがビクっと反応する。え、なになに、とよたよた歩いてくる者さえいる。
「よしよし。いいぞ。アンタたちも、このガキ起こして遊びたいんだろ?なら道具は貸してやるから、さっさと遊び場にするんだよ」
レパイアのユーベルコード、ギタギタ血まみれ外科手術が発動する。彼女の構える医療ノコギリが剣呑な鈍い輝きを放つ。
愉快な仲間たちは出てきたことをちょっと後悔した。だが、彼女の医療ノコギリがあたった愉快な仲間たちは、とてもサイケデリックな風貌に変わる。
有り体に言ってしまえば、とってもヒャッハー!な見た目に変わったのだ。それは強化した、と言ってもいいのかもしれない。次々と変わっていく愉快な仲間たち。
「さあ!この『自分の国』を覆ってしまっている不愉快なテクスチャーを壊してしまいな!こんなもんがあるから、アリスは眠りこけてるんだからな!アンタたちでぶっ壊してしまえばいいんだよ!」
そう、少年アリスのトラウマは、これまで猟兵たちによって快方に向かっている。ならば、ダメ押しだ。あのアルハザードが施した改造。「自分の国」という世界を覆った「絶望の国」というテクスチャーを尽く引き剥がして壊してしまえばいい。
この怒声は、ソレ以上に不愉快だった。
「だったら、ぶち壊してしまえばいい!母親の怒声はたまーに聞くから、ビビっとガキ共に効くんだよ!いくぞ、おまえたちー!」
ヒャッハー!レパイアの号令と共に愉快な仲間たちがテクスチャーを破壊していく。それは次第に怒声をかき消すほどの愉快な歓声に変わっていく。
賑やかに騒々しく愉しく。不愉快な音はかき消す。
それがレパイアに出来る一番の援護だった。自身のトラウマは自身で克服する。それが強い子を育てるということだ。
彼女らしい対処だった。だからこそ、目覚めたアリスはきっと、騒々しくも楽しい様子となった「自分の国」を見て、愉快に笑ってくれることだろう。
そう、確信できた―――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 集団戦
『夢喰いクラゲ』
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POW : おやすみなさい
いま戦っている対象に有効な【暗闇と、心地よい明かり】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
SPD : 良い夢を
【頭部から眠りを誘う香り】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : 気持ちよく眠って
【両手】から【気持ちいい振動】を放ち、【マッサージ】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:透人
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵達の言葉は、夢の中にあった少年アリスの心にしかと届いた。
目覚めたアリスは、何が起こっていたのか、少しわからずに混乱していたようだったが、猟兵達の声を聞いて安心したような笑顔を見せた。
かくて「絶望の国」のテクスチャーは瓦解し、「自分の扉」は再び現れた。
だが、その「自分の扉」の前に大挙として鎮座しているのは、群体オブリビオン、夢喰いクラゲ!
その姿は幻想的な不思議なものであった。
夢の間を揺蕩うような発光みせるクラゲは、こんな状況でなければ、美しさすら感じたかも知れない。
「自分の扉」をアリスがくぐるには、あの群体オブリビオンを全て排除しなければならない。
残すはアリスを扉まで送り届けるのみ!
ならば、ここから先は猟兵たちの領分!邪魔するくらげを討ち果たし、少年アリスを無事に母親の元へ帰すのだ!
月守・咲凛
PDで戦闘、アドリブ他諸々OK。
さあ、後はおそうじですね。
お手伝いしてくれるなら援護しますよ?
せっかくならアリス君本人にも自分を助けるために何かをさせてあげたいですけど、安全第一なのです。
アジサイユニットを周囲に結界のように飛ばして、くらげが近付けないように配置、アリス君が何か頑張るようなら盾として周囲を守らせます。
自分の位置は彼が前に出るようなら背中を守る感じに、後衛で何かするとかまだ戦えないようなら前に出て後ろに庇います。
頃合いを見てユーベルコード開放、一気に道を拓きます。
選択UCは、描写したいユーベルコードとかあったら【ただ1つの願い】以外は自由に使って頂いても問題ありません。
複合世界であるアリスラビリンス、その一つの世界である「自分の国」には「自分の扉」がある。
それはアサイラムより召喚されたアリスの元の世界へと繋がる扉である。そこをくぐり抜ければアリスは元の世界へと戻っていくことができる。
アサイラムより召喚された時点で通常のアリスは元世界の記憶を失っているのだが、今回のアリスは違う。「自分の扉」をくぐる前に元世界の記憶を取り戻してしまったが故に、トラウマを突かれ絶望してしまった。
だが、猟兵達の活躍と尽力によって少年アリスはトラウマを克服し、オウガの魔の手から逃れることができたのだ。
月守・咲凛(空戦型カラーひよこ・f06652)を見た少年アリスの第一声は「お姉ちゃん」であった。次いで、夢の中で沢山声をかけてくれてありがとう、と屈託のない笑顔を向けられて、咲凛は満更でもない顔をする。
だってお姉ちゃんですから!と誇らしげでもあった。
「あれがあなたの『自分の扉』ですね。オウガがたくさんいますが、問題ないのですよ。後はお掃除するだけですから!」
オウガの群体を見て怯える少年アリスの肩を優しく撫でる。
確かに見た目はクラゲそのものな、夢喰いクラゲ。だが、それらが恐ろしいオブリビオンという過去の化身、オウガであることを少年アリスは身を持って知っているのだ。
トラウマを克服したとしても、未だ恐怖に身が竦むのはしようがないことであったのかもしれない。
「大丈夫ですよ。私達がいますから、危ないことはないのです。それにお手伝いしてくれるのなら、早く帰れると思いますし……しっかり私も援護します!」
そう言って咲凛は少年アリスを促す。
アリスである以上、確かにユーベルコードは使えるだろう。しかし、それは猟兵たちと比べるべくもないものである。
それでも咲凛が促すのは、今後のためでもあるのだ。無理をするのはいけないと思う。だが、これからの彼の人生を考えた時、脅威に立ち向かったという記憶は彼にとって基調な財産になることだろう。
「で、でも……ううん、僕がんばるよ……!」
咲凛の言葉に意を決したようにうなずく少年アリス。
「勇気ある子なのです。危ないって想ったら、私の後ろに来るのですよ?いいですね?」
せっかくアリス本人もやる気になっているのだ。自分たち猟兵が彼を助けるのではない、自分が自分を助けるために何かをさせてあげたいのだ。
咲凛とアリスの周囲に宙に浮かぶはブレードガーディアンユニット【アジサイ】。それは円盤状の遠隔操作によって宙を舞う武装ユニット群である。攻防一体になっているが故に、アリスを護るにはうってつけの武装であった。
「じゃあ、一緒にがんばりましょう!いきますよ!」
少年アリスがユーベルコードを放つ。それは未だ力が弱いようではあるが、群体の一体程は相手取れる程度の力であるようだった。
それならば、とアジサイユニットと共にアリスの健闘を見守りながら咲凛は、彼の背中を護るように位置取って戦う。
夢喰いクラゲの攻撃は、アジサイユニットが防ぎ、彼らの頭部から香る眠りを誘う、高威力の攻撃は咲凛の指示によってアリスを庇うようにして防ぐ。
「いい調子ですよ。一生懸命戦うって、こういうことなのです。生きるって戦うことですから!こうやって立ち向かっていくのが大切なことなのです」
咲凛の背負う武装ユニットの砲門が開く。
彼女のユーベルコード、コード・アクセラレーターの発動の瞬間であった。
「今日、アリス君が立ち向かったのは、自分自身なのです!弱いと、怖いと思った自分を超えていくための!戦い!私はその道を開きます。だから、一緒に行きましょう!」
予めセットされていた攻撃プログラムが始動する。
それは一度始まってしまえば、止めようのない超高速連続攻撃!砲門から放たれる圧倒的な物量の火線。それは一気に群体オブリビオンである夢喰いクラゲの包囲を突き破って、薙ぎ払う。
さあ、いきましょう!と咲凛は少年アリスと共に群体オブリビオンの包囲を打ち破っていく。
安全第一、なんて思っていたが、やはり男の子だと思ったかもしれない。
戦う瞳は、もうトラウマに負けていた頃の少年のものではなかった。それを嬉しくも寂しくも思ってしまうのは、一時でも彼を守ろうと決めた姉としての感情だったのかもしれない。
それでも、咲凛は思う。
こうやって戦ったこと、それが元世界に戻ったアリスの力になるのだと―――。
大成功
🔵🔵🔵
教楽来・鏡日
キーシクス(f20914)と共闘
目も覚めたようですし、あとは帰るだけですね。ご心配なく、最後までお付き合いしますよ。
出し惜しみは無しです、UCを発動してキーシクスの攻撃と共にクラゲの群れに突っ込み。眠らされる前に直接「念動力」「衝撃波」をぶつけて片っ端から蹴散らします。えぇ、容赦はしません。全て「暗殺」です。
はいはい!体力の見極めはしてるし、正気削ってるあんたに言われたくないんですけど!…うぇ、やっぱちょっとふらふらするような。気のせいですね!
終わればアリスを見送り
あんたも一回戻ったらどうですか。そんなんだから大事な息子に家出されるんですよ。バーカ、ヘタレ親父。
キーシクス・ジェンダート
鏡日(f16656)と共に
そうか、あの子はもう大丈夫なんだな。なら後は、無事に帰れるように見送るだけだ。
数には数を、大丈夫だ。ちゃんと当てるべき相手にだけ当てる。
「高速詠唱」「一斉発射」で素早くUCを展開、鏡日の死角に寄る敵を優先して刃を飛ばし。アリスを守るように彼のそばに立ち、寄って来る敵はトラピッチェを持ち「スナイパー」「呪殺弾」で狙撃していく
無理はするな、自分の命を削っているんだろ!
アリスが戻る前にそっと「祈り」を込めて
キミが戻った先の道、どうかキミに手を差し伸べてくれる人がいることを願う
……うん、そうだね。
私が壊れる前に、取り戻したいが…うぅ。やっぱりキミ、私には厳しくないか!?
目覚めた少年アリスの瞳は晴れやかだと思ったかも知れない。
アリスラビリンスにアサイラムより召喚された時、アリスたちは元世界の記憶を失う。それは辛い記憶であったり、思い出したくない記憶であったりもしたのかもしれない。そういう人間こそがアサイラムから呼び出されるのかもしれない。
だが、時にはそうでない者たちもいる。少年アリスの記憶は「自分の扉」の前で戻り、絶望からオウガに付け入られることとなったが、猟兵達の尽力によって無事目覚めることができた。
彼らの言葉は、少年の心に何某か去来するものがあったのかもしれない。それは勇気であったり、慰撫であったのかもしれない。
どちらにせよ、それを喜ぶのもまた猟兵である。
「目が覚めたようですし、後は帰るだけですね。ご心配なく、最後までお付き合いしますよ」
そんな言葉を受けて少年アリスは頷きを返す。ありがとう、と小さく。けれど、確かに声は届いた。
少年は「絶望の国」振り払って、「自分の国」にある「自分の扉」へと駆けていく。その後姿は、少年であったアリスが一つ大人へと近づいたかのような、そんな想いを教楽来・鏡日(徒夢の吊り輪・f16656)は得たかもしれない。
「そうか、あの子はもう大丈夫なんだな。後は無事に帰れるように見送るだけだ」
キーシクス・ジェンダート(翡翠の魔人・f20914)もまた、その背中を見送る一人であった。
その先にあるのは「自分の扉」。それをくぐり抜ければ、その先にあるのは元世界である。それは少年アリスだけがくぐり抜けることのできる扉である。
だが、その「自分の扉」の前には群体オブリビオン、夢喰いクラゲが大挙として座している。
見るものが見れば、それは美しい光景であったのかも知れない。だが、今は少年アリスの道を邪魔する障害でしかない。
「なら、しっかり送り届けないといけませんね。出し惜しみはなしです……!」
鏡日のユーベルコードが指を鳴らすことで発動する―――クロックアップ・スピード。それは彼のスピードと反応速度を爆発的に引き上げる。
残像を残すかのように、瞬時に夢喰いクラゲたちの群れの中央へと突っ込む。
「数には数を……大丈夫だ。ちゃんと当てるべき相手にだけ当てる」
空中に浮かぶは、ユーベルコードにより生み出された翠色の刃。マラーチェ・イムベル、キーシクスのユーベルコードが、彼の力を映し出すかのように翡翠に輝く。
それらは一斉に放たれ、鏡日の死角に回り込もうとする夢喰いクラゲのっの体を貫き、散り散りに霧散させていく。
霧散していく夢喰いクラゲの破片は、まさに宝石の雨のようであった。それがオブリビオンでなければ、どんなに美しいものであったことだろう。
キーシクスは少年アリスと共に、その宝石の雨のような道を駆ける。鏡日が露払いのように道行く障害となるオブリビオンを蹴散らし、打ち漏らしたものをキーシクスのトラピッチェの呪殺弾が討ち果たしていく。
それはお互いの役割を理解し、効果的に戦闘を行う手慣れた行為のように思えた。
「無理をするな、自分の生命を削っているんだろう!」
キーシクスは鏡日の体を気遣う。
それは彼のユーベルコードが使えば使うほどに寿命を削っていくものだと知っているからだ。自分よりも年若い青年のことを気遣うのは年上として当然のことだとキーシクスは思っているからこその、老婆心であったのかもしれない。
だが、鏡日の返す言葉は、まさに鏡のようにキーシクスへと返される。
「はいはい!体力の見極めはしているし、正気削ってるあんたには言われたくないんですけど!」
キーシクスもまた同様であったのだ。それを見透かされて、少し落ち込みそうになる。そんなに年若い彼に気を使われるようになってしまったのかな、と。
けれど、それが反面嬉しくも思ってしまう自分がいる。
「うぇ……やっぱちょっとふらふらするような……気のせいですね!」
ほら、言わんこっちゃない。そう言いかけて、強がる鏡日の姿を好ましく思ってしまう。無理はいけないよ、とは言わない。
それは彼の強がりを無にするのと同じだからだ。だから、頷いて、彼の負担を減らすように翡翠の刃を放つ力を込める。
周辺のオブリビオンはだいぶ片付いたようである。自分たちの護衛はここまでだ。
鏡日は少年アリスの背中を押す。言葉少なではあるけれど、彼の想いは少年のこれからが明るいことを願っていた。
キーシクスの祈りはささやかな願いでもあった。
「キミが戻った先の道、どうかキミに手を差し伸べてくれる人が居ることを願う……」
少年アリスは一度だけ彼らを振り返って手を降った。きっともう出逢うことはないのかもしれない。そんな別れの予感。だが、猟兵である彼らにとって、それが最も誇らしい。
もう二度と猟兵の手が必要とされないのであれば、それに越したことはない。猟兵が戦いに挑む以上、それは即ち世界の危機であるからだ。
これからの彼の道行きにそんな危機が訪れないのであれば、これに勝る喜びもないだろう。
「……あんたも一回戻ったらどうですか」
「……うん、そうだね。私が壊れる前に取り戻したいが……」
少年アリスを見送る二人。
その瞳は晴れやかなものだった。一仕事を終えた心地よさもあったのだろう。つい、軽口を叩いてしまう。
それにそんな殊勝な物言いは似合わないとばかりに鏡日はキーシクスの背を叩く。
「そんなんだから大事な息子に家出されるんですよ。ばーか、へたれ親父」
「うぅ……やっぱりキミ、私には厳しくないか!?」
なんでそんな厳しいことばっかり言うんだ!とキーシクスは憤慨する。それは年上と年下の青年の会話ではなかったようにも思えたかも知れない。
もっと近しい友人のような、そんな他愛のない会話。
自分の扉へと駆けていく少年アリス、彼にもいつかこんなふうに笑い逢える仲間ができればいい。
そんな風に明るい未来を思い描いたっていい。そう思えるだけの爽快感が二人の仲には訪れたのかもしれないのだから―――。
大成功
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レパイア・グラスボトル
寝てたガキは起きたみたいだな。
あとは眠気を飛ばして帰るだけだな。
ワタシが手を引いて逃げても良いけれど、この世界だと色々ワタシは期限切れっぽいんだよな。何故か解らないけれど。
だから、代わりを呼ぶとするか。
【WIZ】
呼び出した子供達と少年アリスを扉に向けて走らせる。【集団行動】
子供達は攻撃はせず、逃げに終始。
ただし、悪戯、挑発程度の干渉をするガキはいる。
レパイアは逃げる子供達の最後尾にて追ってくるクラゲを撃ち落す。
2章で改造した愉快な仲間達も同行希望。
少年アリスの手をつなぐのはレパイアによく似た幼い少女(不健康そうではない。まだ少女らしい口調)
子供同士、再会の約束をするかもしれない。
夢の中だけど。
寝る子は育つ。親の手によるものなんて、ほんの僅かなものであったのかもしれない。確かに親がなければ子も生まれることはないだろ。
自らの足で立って、前を向く。たったそれだけ子というものは驚くほどに成長していく。ほったらかしに、なんていうのかもしれないが、生きている以上、成長というのは、その生命の道程である。
それがどのようになっていくのかを見やるのもまた親である身の楽しみの一つであったのかもしれない。
少年アリスは駆けていく。一度は絶望に堕したかもしれない。けれど、一度のつまづきで全てを失うには、彼の人生はまだ始まったばかりだ。
何もかも失う必要はない。だからこそ、レパイア・グラスボトル(勝利期限切れアリス・f25718)は思うのだ。
ワタシはこの世界だと期限切れなのだと。なぜだか解らないが、そうだという確信があった。だからといって、今目の前を駆けていく少年アリスの道行を邪魔するオブリビオンを排除しない理由にはならない。
「寝てたガキは起きて、眠気を飛ばして帰るだけ……だな。ワタシが手を引いて逃げてもいいけれど、あのガキには逃げるなんていうのは似合わないよな」
だから、代わりを呼ぶ。
レパイアはユーベルコード、レイダーズ・チルドレン(ソレハオロカナミライニノコスモノタチ)によって、彼女の子供たちが呼び出される。
蜘蛛の子を散らすようにレパイアの子供たちは、一斉に駆け出す。それは徒競走のような様相で、少年アリスと共に並走するのだ。
「まったく、ガキっていうのは、本当に底なし元気だな」
呆れたように笑って送り出すレパイアもまた、彼らの殿を務めるように駆け出す。そんなレパイアの後続から一斉に駆け出してきたのは、レパイアの改造が施されていた愉快な仲間たち。
未だにファンキーな姿は抜けきっていないようだが、彼らの想いもまたレパイアと同じであったのかもしれない。
「自分の扉」へと走る少年アリスたちを逃さないというように追従する夢喰いクラゲたち。それをレパイアと愉快な仲間たちは撃ち落としていく。
「おいおい!さっさと走らないか!アンタたち!」
子供たちは走りながら、器用にもオブリビオンであるクラゲたちを挑発したり、悪戯を仕掛けたりと、はしゃぎっぱなしである。
こんなのではいつまでたっても、「自分の扉」へとたどり着けやしない。
あちこちで愉快な仲間たちのファンキーな行動が目立つ。もうこれは悪目立ちだとか、悪ノリだとかという範疇を超えているな、とレパイアは痛む頭を抱え……なかった。
むしろ、これは好都合である。
「ノリの良い連中っていうのはキライじゃない。やっちまうぞ、オマエたち!」
一斉にレパイアと愉快な仲間たちは、今までの護衛という立ち位置を変えて夢喰いクラゲたちに襲いかかる。それは略奪そのものであり、殲滅そのものであった。
どちらにせよ、群体オブリビオンを全滅させなければ、自分の扉をくぐることもままならないのだから、これでいいのだ。
そんなレパイアの視界の端に少年アリスの手をつないで駆ける子供の姿が見えた。
それはレパイアを幼くしたような少女だった。不健康そうではない、けれど、レパイア自身が幻視してしまうほどには、似ている少女。
互いに何かを約束するかのように笑いあいながら駆けていく。
それをどのような想いでレパイアが見ていたのかはわからない。けれど、彼らの道行を邪魔する者、それは許さない。
レパイアたちがオブリビオンを全て倒し終えた時、すでに少年アリスは扉をくぐった後だった。
少年と手をつないでいた少女の後ろに立つレパイア。
「まったく……すんなり帰ってしまいやがって。もうちょっと、こう、別れの挨拶くらいあってもな……」
まあ、これでいい。
無事に戻っていったのだし、所詮これは夢の中の話だ。少女がレパイアに振り返る。ん?と少女を見下ろすレパイアに向かって彼女は格別の笑顔を向けた。
なんだなんだ?とかがんで視線を合わせると、少女は言ったのだ。
「またね!って言ってたよ!ねぇ、またねって!またねってことは、また逢えるってことでしょう?」
それは儚くも、果たされる確約もない約束。
けれど、幼い少年少女たちの心にしかと結ばれた約束。微笑ましい―――いつかの誰かとの約束なのだった。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2020年04月20日
宿敵
『『慈母を騙る災厄』アルハザード』
を撃破!
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