#UDCアース
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●効率の良い恐怖
ほう、と吐き出す息が凍る。世界第二位の高さを誇るカラコルム山脈の中腹で彼女は送られてくる実験データを読み解きながら、時を待っていた。
この人類未踏の高山でこうして時がすぎるのを待ってどれほどだろうか。
あまりにも長い時間が流れてしまっているような、そうでもないような。時間の感覚が徐々に麻痺して来ているのだと分析したが、状況の打開にはならない。
「もう少し愛おしい子供たちを多く連れてくるべきでしたね」
高山で得られる原始的な恐怖のデータを採取するために連れてきた「愛おしい子供たち」はすでに全員が居なくなっていた。
ろくな装備もなく彼らを外に放り出し、彼らに埋め込んだチップから送られてくるデータから恐怖の数値を引き出し続けていたのだ。
ある者は下山しようとして滑落し。ある者は進むも戻るもできなくなって凍死し。ある者は……。
「あまりにも脆弱。もう少しサンプリングできる数があればよかった……」
彼女の言葉は落胆そのものであった。そこに「愛おしい子供たち」の犠牲に対する憐憫もなければ、哀悼もなかった。
ただ残念だと言う気持ちしかないようだった。それも喪われた生命ではなく、取れるサンプルデータもなく、ただ無為に過ぎていく己の時間に対して、であったが。
「邪神完全復活まで、まだまだ時間がありますね……退屈で死んでしまいそうです」
ほう、とまたため息が出る。彼女の周囲には1つ目の獣たちが指示を待ちわびるように整列している。
彼女はそれらをみやり、投げやりに言う。
「適当に巡回でもしてきておいてください。何か見つかれば報告を。といっても、こんな場所です。何もありようがないのですが……ああ、退屈は神さえ殺す。本当のことなのかも知れません」
非情の山と呼ばれた山中にUDC、マザー『テラー』の溜息だけが吸い込まれて消えていった……。
●邪神山脈
グリモアベースへと集まってきた猟兵たちに頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)である。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件は、UDCアース。UDC、つまりは、アンディファインド・クリーチャーと呼ばれる太古の邪神とその眷属たち跋扈する世界です」
UDCアースは現代の地球そのものである。ただ違いがあるのだとすればUDCの存在であろう。太古より続く邪神と眷属たちの跳梁跋扈する闇と戦わねばならない。
今回、猟兵たちが招集されたのにはわけがある。
「はい。南極遺跡で得られた情報により、超古代に封印されたとされる強力なUDC、邪神の所在が明らかになったのです。その一つが私が予知した……」
カラコルム山脈、その一座である山中に存在するのである。
この高山に封じられた邪神の元へ向かい、封印を解いた上で撃破しなくてはならない。
「封印されているのに何故、と思われるかもしれません。寝た子を起こすような真似であると。ですが、邪神の復活は止められません。もしも、完全な状態での復活が起これば、それは即ち、世界の危機に繋がります」
そう、封印を中途半端に解くことによって、不完全な状態での復活となり、十全ではない邪神と戦うことが可能になる。
十全状態ではないということは、猟兵たちにとって勝利する可能性が、ぐんと上がるのだ。
「ですが、その山中までの道中があまりにも厳しいのです。その山は非情の山と呼ばれる人類未踏の山。猟兵である皆さんにしか踏破は難しいでしょう。それに登山している途中に邪神の眷属が現れます。これを撃退しながら、邪神の封印が隠された洞窟を探してください」
ナイアルテが言うには、邪神封印の洞窟には守護者と見られるUDCが存在しているようだった。
この守護者がいる限り、完全復活を目論む邪神を阻むことはできない。
やるべきことは3つ。
「邪神封印の洞窟の探索。守護者の撃破。封印を解いた邪神の撃破。言うは易し行うは難しではありますが、皆さんにしかお願いできないのです」
どうかお願いします、と再び頭を下げるナイアルテ。
人類未踏の山脈を踏破する難易度、襲い来る眷属、守護者たるUDC、さらには中途半端では在るが復活した邪神の撃破と、その戦いの厳しさは言うまでもないだろう。
だが、邪神が完全復活してしまえば、世界の危機なのである。
「どうか、皆さんの力で邪神完全復活の目論見を砕いてください……!」
集まった猟兵たちを送り届けるナイアルテ。彼らの身を案じることしかできない身が恨めしい。
だが、彼らならばこの難しい事件を踏破できると信じて送り出すのだった。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はUDCアースでの事件になります。超古代に封印された強力な邪神の完全復活を阻み、邪神撃破を行うシナリオになります。
封印されている邪神は言うまでもなく、守護者であるUDCもまた手強い相手になります。
●第一章
集団戦になります。目的の邪神封印の洞窟を探索しながらの登山になります。道中で襲いかかってくる邪神の眷属との戦闘です。
立ち止まって戦っていては、時間が浪費されるばかりですので、移動しながらの戦いになるでしょう。
●第二章
ボス戦です。第一章において探索していた邪神封印の洞窟の守護者であるUDCとの戦闘になります。
この守護者を撃破することによって初めて、洞窟内に入れます。完全復活までの時間が迫っていますが、守護者が撃破されていないと、封印が解除されないのでショートカットができないようになっています。
守護者の迅速は撃破が重要でしょう。
●第三章
ボス戦です。邪神山脈に封じられた邪神との戦闘です。強力な邪神ですが、完全復活前に封印を解除されたため、完全な状態ではありません。
ですが、邪神山脈の邪神は、体の大きさが通常の数倍あり、攻撃力と耐久力が上昇しているようです。
不完全な復活の状態ですら、この有様です。手強いどころではない難敵ではありますが、みなさんの活躍があれば、きっと撃破できます。
それでは、邪神完全復活を目論むUDCの野望打ち砕くシナリオとなります。どうか皆さんのキャラクターの活躍の一片となれますように、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『千里眼獣プレビジオニス』
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POW : 未来すら視る単眼
【未来の一場面を視ることで】対象の攻撃を予想し、回避する。
SPD : 千里を見通す獣
【視力強化・視野拡大・透視・目眩まし耐性】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【見失うことなく追尾し、鋭い爪】で攻撃する。
WIZ : 幻の千里眼
【すべてを見通す超視力に集中する】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。
イラスト:白狼印けい
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
カラコルム山脈。それは人類の踏破を拒む非情なる山。
春を迎えたこの時期であっても、風は強く、どんな登山家であっても恐怖を感じるであろう厳しい登山となる。
しかし、それは通常の人間であれば、の話である。
その人類未踏の山を行くのは猟兵。
彼らは世界に選ばれた戦士である。一歩踏み出す度に残雪に足を取られはするものの、進むことに支障はない。
彼らが探すは邪心封印の洞窟。一刻も早く洞窟を見つけ、邪神完全復活を阻み、不完全な状態の邪神を討たねばならない。
そんな彼らを遠くから睨めつける視線。
―――千里眼獣プレビジオニス。彼らの千里をも見通す魔眼が猟兵たちを睨めつけていた。
雪崩のように駆け下りてくる群体オブリビオン。どうやらこのコースで当たりであるようだ。
かの獣たちを迎え撃つ猟兵。目指す洞窟は近い。その確信と共に猟兵たちは雪原を駆けるのであった―――。
四軒屋・綴(サポート)
※口調
・語尾に「ッ!」がつきます(とても大事)
・敵には『貴様ッ!』
・一般人には『貴方』
・『~なのだなッ!』
・ヒーローらしいポーズや大きな身振り、手振りを多用します。
※台詞例
・「仲間の為ならえんやこらッ! だッ!!」(だんだん《!》が多くなります)
・「良い夜だな、ご令嬢"フロイライン"。」(ルビを《"○○"》の形で振ります、†ダークな雰囲気†の時に)
※行動例
・「なるほどッ! つまり壊せば良いのだなッ!」(仲間の指示には基本従います、「流石だ○○さんッ!」(サムズアップ))
・「生憎だがな、貴様達は此処が『終点』だッ!!」(大声で煽りつつ突撃します。)
被弾とか破損とか全然OKです
邪神山脈。それは太古の邪神を封じた洞窟の存在する人類未踏の地である。如何なる理由によって邪神が封じられたかは定かではない。
だが、グリモア猟兵の予知によって太古より封じられていた邪神の完全復活の予兆を捉えることができた。一度邪神が完全に復活してしまえば、世界の危機であることは間違いない。UDCアースに住まう人々の安寧のため、予定よりも速い邪神復活により、不完全な状態の邪神を倒さなければならない。
そのために猟兵たちは人類未踏と呼ばれる山脈を登り、邪神封印の洞窟を探しているのだ。
「ふぅむッ!まったくもってッ!どこにも洞窟らしいものが見当たらないのだがッ!!」
四軒屋・綴(大騒動蒸煙活劇・f08164)はグリモア猟兵の求めに応じた猟兵の一人であった。電脳魔術によって体を蒸気による構築を果たした猟兵である。
肩から飛び出た蒸気が朦々と吐き出され続けている。
こうして探索を続けているのだが、さすがは人類未踏の山脈である。ここに装備もない一般人が……いや、例え装備が十全な人間が踏破に挑んだとして、生命あるままに戻ってこれるとは考えがたいほどの難所あかりであった。
洞窟らしいものが一つも見えない。それに雪に足を取られて動きにくいのだ。
「むぅッ!如何ともし難いなッ!」
だが、彼が視界が捉えたのは洞窟ではなく、山肌からこちらに一直線にかけてくる四足歩行の獣……情報にあった邪神の眷属!
積もり積もった雪など物ともせずに突き進んでくる。近づくにつれて、その正体がわかる。
四足歩行の獣というのはシルエットだけだ。単眼に不気味な体毛、千里眼獣プレビジオニスと呼ばれる群体オブリビオンは、綴の姿を捉えて此処まで駆けてきているのだ。
「オブリビオンッ!手厚い歓迎であるがッ!いささか数が多くないかねッ!!」
雪で満足に身動きが獲れない綴にとって、雪上で身軽に動き回るプレビジオニスの軽快な足の運びは驚異であった。
即座に構えた黒煙連射シュートケムールから放たれる黒煙弾。その斉射は、群体であるプレビジオニスに降り注がんと打ち込まれるが、その全てを彼らは避けきってみせた。
あまりにも見事な回避運動。一切の無駄なく、雪上を駆けながら避けきってみせたのだ。
「何ッ!?一発も当たらないだとッ!俺の攻撃が当たらないとはッ!!」
それでも黒煙弾を放つが、これまた当たらない。何故だ、と思うのもつかの間、プレビジオニスの単眼が輝いている。
幻の千里眼。それはまさに全てを見通す超視力。彼らの単眼は綴の射撃を回避行動に専念することによって完璧に回避しているのだ。
恐るべき能力。だが、綴にもまた備わるユーベルコードがある。
「道理ッ!ならば、こちらもお見せするとしようッ!!」
彼のユーベルコード、踏那列車(トゥナイトレイン)が発動する。超視力を備えるプレビジオニスが綴の次なる行動を予測すべき集中する。
だが、その瞳が困惑に染まる。
なぜなら―――。
「踏・那・列・車ッ!今夜もトゥナイトだからッ!俺の一世を風靡した気がしないでもないダンスを見ろッ!!」
それは、どこかの世界の一世を風靡したかもしれないし、しなかったかもしれない謎のダンス!名状しがたいなんとも表現難しいダンス!
綴の巨躯が踊る度に、プレビジオニスは困惑する。その困惑は彼らの体を硬直させ、無防備にも立ち止まらせてしまう。
その隙を逃す綴ではない。アームズジョーク後部上面から現れた石炭型榴弾発射機構から放たれる熱と衝撃がプレビジオニスの群体を圧倒するように吹き飛ばす。
「フハハハハッ!俺のダンスに魅入ってしまったようだなッ!わかるッ!わかるぞッ!!!」
次々と放たれる赤熱放炭アッツィーコウルの熱と衝撃にプレビジオニスは散り散りになって骸の海へと還っていく。
如何なる千里眼といえど、その瞳を持つ者が困惑していたは効果も現れる前に猟兵によって片付けられてしまう。
雪山に綴の放つ熱波がテンション極まった高笑いと共に鳴り響き、プレビジオニスの群体を蹴散らすのだった―――!
成功
🔵🔵🔴
アウル・トールフォレスト
(※好きにお任せします)
じゃしん。邪神だって
分かってるよ。わたしも何度も戦っているもの
弱いうちにやれるのなら、その方が良いものね
いいよ、わたしも手伝ってあげる!
…。
…さむい。
早く温かいところに行きたいよぅ…
だから、ね
【戴冠・百獣支配】を使用
存在感で否が応でも視線を惹きつけて、誘惑と同時に恐怖も与えて、
獣の動きを制限するよ
それでもまだ近づいてきたなら、「声」も放って相手の自由を完全に封じるよ
良い子達だね。えらいえらい
けれども、ね。やっぱりあなた達は、敵だから
残念…だけど仕方ないよね
せめて出来るだけ、楽に殺してあげるから
…それにしても寒いや…
非情なる山。それは人類の踏破を拒む山脈の一角の名である。
あまりにも過酷な環境は、一種の人外魔境と化していた。邪神山脈と名付けられたのも頷けよう。
しかし、何故邪神が封印されたのかは判明していない。一度完全に復活を果たせば、世界の危機そのものである邪神を封じた何者か。考えても詮無きことではあるが、今は邪神の完全復活だけは阻止せねばならない。
雪原を一歩、また一歩と踏み出す足は重い。それに寒さの厳しさは、これが猟兵でない一般人であるのならば、相応の装備を持ってしても過酷さを極めたことだろう。
猟兵でなければ踏破することも、この場まで登ってくることも不可能であっただろう。
アウル・トールフォレスト(高き森の怪物・f16860)もまた、そのバイオモンスターである体を持って邪神山脈を踏破せんと足を進める猟兵の一人であった。
「じゃしん。邪神だって。分かってるよ。わたしも何度も戦っているもの」
彼女の答えはあっけらかんとしたものであった。グリモア猟兵の説明にそう答えたのだ。あまりにも簡単に応えるものだから、本当に理解してもらっているのだろうかと心配になる。
しかし、それは杞憂であった。彼女の次なる言葉を持って、それは正しく理解され、アウルの成すべきことを成すであろうことは確信に変わったのだ。
「弱いうちにやれるのなら、そのほうが良いものね。いいよ、わたしも手伝ってあげる!」
頼もしい言葉にグリモア猟兵の顔は明るくなったものだ。
そんなふうにして意気揚々と雪山を登り始めたのだが……。
「……さむい。早く温かいとろこに行きたいよぅ……」
震える唇から漏れ出たのは、寒さへの嘆きであった。あまりにも寒い。凍えそうだと思ったのだろう。体の震えはまだ起こっていない。彼女が猟兵でなければ、危うい場所であった。
邪神封印の洞窟を探しながら、というのも彼女の足の歩みを遅くしていた一因であった。探索しながらの登頂というものは、思った以上に疲弊を招く。
アウルの場合は疲弊とは無縁であったかもしれないが、とにかく寒いというのが、彼女の嫌うところであったのだろう。
アウルは寒さに震えながら、視線を感じる。それは洞窟を探しながらであったからこそ、気がついたものであったのかもしれない。
「見られてる……」
彼女のあどけない緑色の瞳が、雪荒ぶ山脈の岩肌を捉える。何が、と思うことはない。彼女の瞳は確かに千里眼獣プレビジオニスの群体を捉えていた。
あちらも彼女を認識している。あ、と思った瞬間に、プレビジオニスが山肌を駆け下りてくる。
それは襲撃。ひと目見ただけでわかる。アレはオブリビオンであり、こちらは猟兵。互いに敵であると正しく認識している。
四足の獣が雪を踏み飛ばしながら、次々とアウル目掛けて駆けてくる。強化された単眼の視力は、アウルに狙いをつけると何処までも追いかけてくることを予見させた。
しかし、アウルは逃げることをしない。する必要もない。逃げるのは被食者のすることだ。
「わあ。いっぱい来たね」
彼女のユーベルコード、戴冠・百獣支配(ドミネーション・ビーストキング)が発動する。彼女の言葉は、まさに百獣の王の言葉。ビクリ、と一瞬で駆け下りてきたプレビジオニスたちの足が止まる。
彼女の言葉、纏う雰囲気、視線。何よりも声が彼らにとっては異質。いや、畏敬を抱くべき王そのもの。
動かない。動けない。単眼が怯えるように歪む。だが、今はアウルは彼らの王である。ユーベルコード、戴冠・百獣支配は、まさに彼女を王たらしめるもの。
「良い子達だね。えらいえらい」
にこやかに微笑むのは、圧倒的強者の特権である。一歩を踏み出す。逃げ出そうとするのに、逃げ出すことも叶わないプレビジオニスたち。
アウルの歩みは止まらない。逃げなければ。逃げなければ。しかし、足は動かない。
「言いつけを守る子たちはとってもえらいよね。けれども、ね。やっぱりあなた達は、敵だから」
残念だけど仕方ないよね。そう呟くアウルの声は雪風にかき消される。伸びる手を単眼はただ見上げることしかできなかった。
ひしゃげる音が響く。一つ、二つ……
「せめてできるだけ、楽に殺してあげるから」
暴風のような風が吹き荒ぶ。音がかき消され、雪原に赤い滴る痕だけが残る。
瞬く間に終わる鏖殺。あれだけ襲撃を掛けてきたプレビジオニスたちの単眼は煌めくことなく、雪山の消えていった。
アウルは雪山に一人周囲を見回す。まだ洞窟は見えない。早くこの荒ぶ風を避けられる場所を探したい。
「……それにしても寒いや……」
彼女の独白は、風に溶けて消えていく。
高き森の怪物は、また一歩雪山を登る。一刻も早く、この冷たい風から逃れようとするかのように―――。
大成功
🔵🔵🔵
水鏡・怜悧
詠唱改変省略可
人格:アノン
「探すのは苦手なんだけどなー」
UDCを纏って黒い狼のような姿になる。UCの触手を足首に巻いて、圧縮空気の足場を作って空中を駆けるぜ。敵が来たらそのまま突っ込んですれ違いざまに風の刃で切り裂く。生き残ったヤツが追いかけてきたらギリギリまで引付けてから反転してカウンター。雷属性の触手を巻き付けて感電死させる。集中している奴には殺気を叩きつけて集中をそらし、氷属性の触手から礫を打ち出して倒す。
守護者ってことは、敵の出てきた方に向かえばなんかあるだろ。適当な地面に降りたら土属性の触手を地面に刺して周辺の空洞を探す。封印とかしてんなら、入口は雪か氷にでも埋まってるのかもな
邪神山脈の裾野を疾駆する、一匹の獣。
それは黒く玉虫色に輝く毛並みを持つ獣であった。不思議なことに、雪原を駆けているのに、その足は雪をかき出さずに走っていた。
故に足跡の痕跡一つも残さずに走り抜ける姿は、それを眼にしたものにとっては、某かの都市伝説を連想させたかも知れない。もしくは、伝承に伝わる獣の名か。
しかし、ここは邪神山脈。
人類未踏破の山々が連なる非情なる山の一角。
封印されし邪神が眠る洞窟の存在する人外魔境なのである。そこに人の目があろうはずもなく、その黒狼の如き姿を捉えるのものは―――。
千里眼獣プレビジオニスしかいない。単眼の瞳は煌き、山肌から見下ろす先にあるのは疾駆する黒狼のみ。あれは敵であると即座にわかる。獣の本能ではなく、オブリビオンであるが故の直感。
知識なくとも、見るだけでわかるのだ。あれは紛れもない自身達の天敵であり、滅ぼし合う関係にあるのだと。自身と同じ四足の獣であろうと関係ない。
プレビジオニスは群体オブリビオンである。続々と集まってくる同型の獣たちが、黒狼を見据え、山肌を駆け下りていった。
「探すのは苦手なんだけどなー」
黒狼……水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)の中の一人格であるアノンは間延びしたような声を上げた。
UDC「黒く玉虫色に光る液体金属」によって姿を黒狼へと変じたアノンは、雪原を駆けている。
邪神山脈に封印されている邪神の不完全な復活を狙っての探索行動であるのだが、未だに封印されているという洞窟の所在がつかめぬままであった。
足を止める。雪原に足が沈まぬのは、彼のユーベルコード、触手式魔導兵器-シンフォニア(ショクシュシキマドウヘイキ・シンフォニア)によるものであった。
ユーベルコードによって生み出された触手から圧縮空気の足場を作って雪原に足をつけぬまま、空中を走り抜けていたのだ。
こうすれば、雪による体温低下も、足を取られる心配もない。
「それに、不意打ち、強襲、色んなことに対応できるしなー」
ほら、おいでなさった。アノンの赤き瞳が捉えたのはプレビジオニスの群。一目散にこちら目掛けて駆けてくるということは、こちらを一方的に視認出来ていたということだろう。
「アレはあんまり美味しそうには見えないよなー……でも、食わず嫌いっていわれるのも癪だなー」
空中を駆けるアノンの黒狼の体。山肌より駆け下りてくるプレビジオニスの群へと突っ込んでいく。互いに目視。視線が絡みつく瞬間に圧縮空気の足場を蹴るアノン。
跳躍し、その触手から放たれる風の刃がすれ違いざまに一匹のプレビジオニスを切り裂く。
背後から、どっ、と重たいものが雪原に沈む音が聞こえる。手応えがあった。
「まずは、ひとつー……よしよし、追いかけてきてえらいなー」
後方を確認するまでもなくプレビジオニスの群れは追いかけてきている。狙い通りである。如何に単眼によって千里を見通すとは言え、所詮は獣。反射的に逃げる者を追いかけてしまうのは、どうしようもない。
彼らと自身の優劣を分け隔てているのは、そこだ。獣の反射を人の思考で扱いこなしているという一点。
その一点が、数という利点を凌駕する。
「単純でいいなー!カウンター決まりやすくって!気持ちいいー!」
背に追うプレビジオニスに急反転して向かい合った瞬間、カウンターの如き紫電纏う触手が襲いかかる。巻き付き、流し込まれる電流はプレビジオニスの回避も間に合わずに感電死させ、その獣の体から黒煙をぶすぶすと肉の焼け焦げる音と匂いを立ち上らせるのだ。
「さあ、もうひとつおまけに!」
プレビジオニスの中にはアノンの行動を予測し回避したものもいた。だが、黒狼より放たれる殺気に気を取られ、自在に動く触手に対応できない。
氷の礫が触手より打ち出され、散々に打ち貫かれて雪原に散る。これでアノンを追いかけていたプレビジオニスの群れは全てであろう。
「ふぅーむ。守護者ってことは、こいつらを放ったやつがいてー……」
ならば、プレビジオニスたちがやってきた方向に守護者がいることは明白である。ふんふん、と鼻を鳴らしてプレビジオニスたちが駆け下りてきた山肌まで駆け上がっていく。
地面に降りると、触手を地面へと突き刺す。邪神封印の洞窟だというのであれば、空洞がどこかにあるはずだ。触手が上下する度に音が地面に吸い込まれていく。
反響する音が聞こえた。そこか、とアノンは顔を上げる。
どうやらこの先に登っていくと洞窟らしいものがある。まだ当たりだとは決まっていないが、まずは指針ができた。
こうやって地下の空洞を探っていけば、自ずと当たりに行き当たる。黒狼が再び雪原の上空を駆けていく。
颯爽と、軽快に。目指す邪神の喉笛目掛けて一直線に―――。
大成功
🔵🔵🔵
城田・紗希(サポート)
基本的には考えるより行動するタイプ。
でもウィザードミサイルや斬撃の軌跡ぐらいは考える。…脳筋じゃナイデスヨ?
暗器は隠しすぎたので、UC発動時にどこから何が出てくるか、術者も把握していない。
戦闘は確実性やオーバーキルより迎撃数を優先するので、全力魔法と範囲攻撃で少し広めに撃ってから時間差で仕留める。
もしくは単体攻撃にカウンターや鎧破壊攻撃を乗せつつ、連続して使って、一撃必殺を繰り返す。
「ここから先は行かせないよ、キリッ」
……防御?なんかこう、勘で!(第六感)
耐性……は、なんか色々!(覚えてない)
UDCアースには太古より封印されてきた邪神が存在する。その邪神の眷属たちは日夜暗躍し、邪神復活に勤しんでいるのである。
邪神山脈もそうした邪神たちが封じられている山々の名である。如何なる理由によって封じられたかはわらからないが、確かにこの山脈のどこかにある洞窟の中に邪神が封印されているのだ。
一度邪神が復活してしまえば、世界の危機であることは間違いようがない事実である。UDCアースに住まう人々の安寧のため、この封印されし邪神を不完全な状態で復活させ討たねばならない。
そのために猟兵たちは人類未踏と呼ばれる山脈を登り、邪神封印の洞窟を探索しているのである。
しかし、雪荒ぶ山。それも人類未踏の山であれば、その条件がどれだけ厳しいものであるかは言うまでもない。
城田・紗希(人間の探索者・f01927)も予知を受けて、邪神山脈へと探索に赴く猟兵の一人である。
普段は学生そのものなのだが、この山脈を登る女学生というのも世界広しと言えど、そう存在しているものではないだろう。
「うーん……勢いで人類未踏破の山を登りきってやるー!って飛び出したはいいですけど、これは何ていうか、勢いあまり過ぎたっていうか……」
早速、この探索に乗り出したのを後悔しそうになった。雪荒ぶ山というのは、思った以上に厳しいものであったからだ。
雪原に足を取られて進むのも戻るのも困難。風は容赦なく吹付け、視界を奪っていく。それに用意しいた食料も徐々に少なくなってきている。
これでは凍えるのが先か、お腹が減って倒れてしまうのが先か……時間の問題のような気がしてきた。
だが、そんな彼女を見下ろす単眼の獣。そう、グリモア猟兵の予知によって齎された情報にあった千里眼獣プレビジオニスと呼ばれる群体オブリビオン。
その単眼と紗希の視線がバッチリ合ってしまった。
「う―――」
わ、と言葉にする前にプレビジオニスが群れをなして此方へと一直線に駆け下りてくる。
せっかく食べようと思っていたチョコバーを雪原に取り落してしまい、あー!?と声にならない悲鳴が響き渡る。
そして、それを見越したかのようにプレビジオニスの群れは取り落したチョコバーをかっさらっていく。
そう、プレビジオニスの単眼は千里を見通すのと同時に未来の一場面を見ることができるのだ。彼らは紗希がチョコバーを取り落とす未来を見ていた。同時に、彼女の持っていたバッグ。当然、そこにも食料が入っていることは分かっており、プレビジオニスたちの群れの襲来に慌てた彼女が、それをずり落としてしまうことまで……。
「って、だめですだめです!そっちまで持っていかれたら、私の食べ物がー!?」
紗希の声が山に木霊する。食料の詰まったバッグをプレビジオニスに掻っ攫われ、さらには周囲を包囲されてしまう。
意気消沈し、がっくり肩を落とす紗希。だが、彼女の肩は怒りで振るえていた。目元は見えないが、確かに唇はつり上がっていた。笑っていると言っても良い。
「ふ、ふ、ふっ、ふふ……おやつ泥棒はきさまかー!」
彼女のユーベルコード、食べ物の逆恨み(ワタシノオヤツヲカエセ)が発動する。それは彼女の怒りがトリガーとなっている。
膨れ上がっていく彼女の体。巨躯、と言っていいほどの姿に変化し、膂力を含め彼女の能力は大幅に強化されている。
腕が振り回されれば、雪山の強風など何するものぞ。豪腕そのものでプレビジオニスの群れが薙ぎ払われる。ごう、ごう、と腕が振り回される度に、プレビジオニスたちが霧散し、骸の海へと還っていく。
「ふーふーふー……最後はやっぱりあなたですか……!私のおやつを掠め取ろうなんて、いい度胸です!自然は弱肉強食!私のやつはしっかり返してもらいますよ!」
紗希の渾身の一振りが、最後のプレビジオニスの体を吹き飛ばす。手にはしっかりと取り返したバック。これがなければ、飢えてしまうどころの話ではない。
「ああ、よかったです。私のおやつ……!」
取り返したバックに頬ずりする紗希。邪神封印の洞窟を探すどころではなかったが、どうにか生命線のバックだけは取り返せた。
それだけでもよかったとしなければならない……!
「だって、おやつは私の生命ですからね!よかったよかったー!」
そんな紗希ののほほんとした声が、いつまでも邪神山脈に木霊するのであった。
成功
🔵🔵🔴
高宮・朝燈(サポート)
『私とおかーさんが居れば、どんなオブリも大丈夫!』
妖狐のガジェッティア×電脳魔術士、7歳の女です。
普段の口調は「ちょっとだけメスガキ(私、あなた、~さん、だね、だよ、だよね、なのかな? )」、機嫌が悪いと「朝燈スーパードライ(私、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。
ユーベルコードは、レギオンガジェット>お料理の時間>その他と言った感じです。レギオンガジェットで出てくるガジェットはお任せします。大抵補助的な役割を好みますが、多少の怪我は厭いません。口調はませたメスガキですが、性格的には良い子で、基本的に犯罪的な行為はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
人類の踏破を拒む非情なる山。それが目指す邪神封印の洞窟のある山脈の一つである。春を迎えていても尚、風は強く、雪が荒ぶ。
それはどんなに屈強な登山家であっても、怯むほどの難所であった。
普通の人間であれば、近寄ることも出来ないであろう。故に邪神が封印され、その眷属たちが跋扈する人外魔境。
そこに挑むは世界に選ばれた戦士である猟兵。彼らは皆、一様に邪神が封印されている洞窟を探索していた。
邪神完全復活を目論む眷属達の目論見を砕くため、守護者であるUDCを撃破し、邪神の封印を不完全な状態で解き、邪神を討伐するのが今回の事件のあらましである。
しかし、中々邪神封印の洞窟が見当たらない。
人類未踏破の魔境である。そう簡単に見つかるとは思っていなかったが、それにしてもこんなにも山登りがキツイなんて、と嘆息するのは、高宮・朝燈(蒸気塗れの子狐・f03207)だった。
彼女はガジェットスーツ『バール先生』と呼ばれる足のついたグラスのような形の騎乗型ガジェットにまたがりながら、雪山を進んでいた。
齢にして8歳。彼女のような幼い少女が人類未踏の山脈を登るという行為事態が自殺行為そのものであったが、彼女とて猟兵である。人間の常識の外にある存在なのだ。
それにガジェットに跨っている以上、彼女に不可能などないのだ。
「それにしても、あっちこっち探しているけれど、洞窟ないよね」
キョロキョロと歩行はバール先生におまかせしながら、朝燈は周囲を探り続ける。雪風が視界を奪っているのも大きな要因であるが、それ以上に雪に埋もれて洞窟の入り口が見えなくなっている可能性のほうが高いようだった。
「バール先生、あっちにいってみようか。まだ上の方に行かないといけないのかもだし―――」
そこまで朝燈が言いかけて、気がつく。彼女の瞳が捉えたのは、山肌を駆け下りてくる一陣の群体オブリビオン。
単眼の獣は四足で駆け下り、朝燈に狙いをつけている。千里眼獣プレビジオニス、それが単眼の獣の名である。情報通り、と彼女は息巻く。
「教えてもらった情報なら、もうバール先生にインプットしてあるんだから!」
そう、千里眼獣プレビジオニスは未来の一場面を見通し、それによって回避や行動を成功させてくるのだ。
ならば、どうするか。彼らの瞳は一つであり、その単眼は朝燈を捉えている。彼女しか見ていないのだ。
彼女のユーベルコード、レギオンガジェットが発動する。それは彼女の騎乗型ガジェット、バール先生より召喚される小型の戦闘用ガジェットロボを大量に呼び出すユーベルコードである。
一斉に溢れるように駆け出すガジェットロボたち。
それまささに軍勢と呼ぶに相応しい数。わらわらと雪原を駆けていく姿にオブリビオンであるプレビジオニスたちはたたらを踏む。
「ふふー猟兵の私ばっかり見てるから、脇が甘くなっちゃうんだよね!さあ、みんなやっちゃえー!」
バール先生の上からガジェットロボたちに指示を飛ばす朝燈。彼女の号令によって、ガジェットロボたちがわらわらとプレビジオニスたちに襲いかかっていく。
いかに未来を見通す力があれども、これだけに群がられれば、どのガジェットロボの未来を見た所で隙突かれるのは道理である。
足に取り付き、体に取り付き、プレビジオニスが如何に群体であろうともガジェットロボの数に敵うわけもない。
「戦いは数だよ!なんて!さあ、バール先生、あのオブリビオンたちはガジェットロボにまかせて私達は探索続行だよー。守護者がいるっていう洞窟……あのオブリビオンが来た方向にいってみよう」
配下のオブリビオンをけしかけたということは、プレビジオニスたちが駆け下りてきた向こう側に守護者がいる可能性が高い。
ずんずんとガジェットの足音が大量のガジェットロボたちに群がられ、霧散していくプレビジオニス達の群れを後に響き渡るのであった。
成功
🔵🔵🔴
第2章 ボス戦
『マザー『テラー』』
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POW : 「アナタは研究対象外です」
全身を【「恐怖を感じてない者」からの干渉遮断状態】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD : 「アナタの思う“強さ”とは何でしょうか」
対象への質問と共に、【隣室や培養カプセルなど、あらゆる場所 】から【「愛しい子供たち」】を召喚する。満足な答えを得るまで、「愛しい子供たち」は対象を【恐怖に支配されるまま、我武者羅な動き】で攻撃する。
WIZ : 「さぁ、ワタシにアナタの“恐怖”を見せて下さい」
【発狂する程の恐怖 】を籠めた【言霊】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【恐怖心】のみを攻撃する。
イラスト:しゅろ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「斬崎・霞架」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「この子もだめ……この子も」
マザー『テラー』は投げやりに言い放って、周囲に倒れ伏している小さな子供たちの亡骸を興味が失せたと言わんばかりに転がしていた。
猟兵たちが邪神封印の洞窟を探索し、その所在を掴んでやってきた時、その光景が広がっていた。
雪山に白衣の女性。その姿だけで、この邪神山脈においてはどれだけ場違いな存在であるかわかってしまった。
あれは普通の人間ではない。UDC。つまりは邪神の眷属。邪神封印の洞窟を守る守護者!
「あら、ようやく猟兵が来ましたか。よかったです。これで退屈しそうになくて。連れてきた子供たちはみんな死んでしまったので、どうやって研究を続けようか困り果てていたんです。あの獣達では、恐怖のデータを取ることはできませんから、どうしようかなって」
にこりと微笑む姿は確かに母性を感じさせるものであったのかもしれない。だが、その笑顔はただのテクスチャーだ。貼り付けたような表情の裏にある悍ましい妄執は猟兵を前にして隠し通せるものではない。
「せっかくなので、猟兵が抱く恐怖というもののデータを取らせていただきますね。邪神復活まで後もう少し……それで私に付き合ってもらいます」
微笑みは一層強くなる。それは単純に自身の求める『恐怖』のデータが増えることへの喜びを表していた。
彼女の言葉が本当ならば、邪神の完全復活までそう長い時間をかけられない。
守護者たるUDC、マザー『テラー』を素早く倒し、一刻も早く邪神封印を不完全な状態で解かねばならない―――!
水鏡・怜悧
詠唱改変省略可
人格:ロキ
「随分と、『実験』の苦手な研究者も居たものですね」
サンプルをあっさり全滅させるとは。ましてや耐久試験ではないなどと。『死ぬほどの恐怖』というのは死ぬ瞬間に訪れるものではありませんよ?
ですが私も非道な研究に携わった身です。少しお付き合いいたしましょう。攻撃は激痛耐性と、UDCの液体金属で防ぎます
「強さとは現状維持能力です」
強敵に遭っても肉体を維持し。絶望に遭っても精神を維持し。境遇を、環境を、理想を、維持するために先へと進む
「では、こちらの手番です。といっても…貴方の恐怖に興味はありません」
好奇心を抑える必要のない状況に目を輝かせ
「貴方の中身は何ですか?」
その者にとって、実験とはデータを取るためのものである。いくつもの失敗から成功を導き出すための必要な過程であって、到達点ではない。
だが、マザー『テラー』にとってはそうではない。実験とは目的である。手段ではない。そうすることによって得られる恐怖のデータは、彼女を彼女たらしめる一因でしかない。
恐怖の果てにある成果がなんであるのかには興味がない。ただただ、データを取り続ける。効率よく恐怖を生み出し、それをデータ化する。それだけを延々と繰り返していたい。ただそれだけなのだ。
故に相容れない。どれだけ方向が同じであっても、平行線だ。交わることもなければ、その線が変わることもない。あまりにも意味のない邂逅。
オブリビオンであるUDCと猟兵である水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)……その一人格、ロキは、あまりにも相容れない存在であった。
互いが互いをそうであると認識している以上、戦いは避けられぬものではなかった。
「随分と、『実験』の苦手な研究者も居たものですね」
ロキの言葉が雪山に響く。対峙するオブリビオン、UDCマザー『テラー』の背後には邪神封印の洞窟。彼女が守護者であることは間違いなかった。
彼女を倒さないことには邪神の不完全復活もままならない。
「お恥ずかしい限りです。どうにも、効率の良い実験が苦手なもので。でも大丈夫ですよ。代わりはいっぱい居ますから」
にこりと微笑む姿は、まさに街中で見れば慈愛溢れる母親そのものであったのかも知れない。
だが、ロキにとってはそんなことどうでもよかった。あれはテクスチャーである。顔の表面に表情を貼り付けただけで、何も変わらない。感情の変化も何も。
サンプルと言いながら、あっさりと全滅させてしまう。ましてや耐久試験ではないなど。それがどれだけ無為な行為であるのか、あのUDCは理解していない。理解するつもりもない。
あれが己と同じ研究者という同列に居る事自体が、疑問そのものであった。
「でも、欲しいデータが恐怖なので、死んじゃうまでが実験ですものね。仕方ないです」
「『死ぬほどの恐怖』というのは死ぬ瞬間に訪れるものではありませんよ?」
ロキもまた非道な研究に携わった身である。人のことをとやかくいう筋合いはないのかもしれない。故に、目の前のマザー『テラー』は排斥しなければならない。
あれを取り除かねば、目的が達成できないというのであれば。
「うふふ……アナタの思う“強さ”とは何でしょうか?」
彼女の問いかけと同時に、雪山に転がっていた子供たちの死骸が動き出す。それは投薬によって無理矢理体を動かしているだけに過ぎない木偶人形と同じであった。
だが、子供の身体能力とは思えぬほどの速度でロキへと襲いかかる。
「……少し、お付き合い致しましょう」
マザー『テラー』の放つ木偶人形となった子供たちの亡骸をUDCの流体金属が押し止める。もがきながら流体金属に阻まれ、それ以上進ませない。まったくもって趣味が会わない、とロキは嘆息する。時間の無駄だ。
「強さとは現状維持能力です」
短く、簡潔に応える。それがロキの思う強さである。強敵に遭遇しても肉体を維持し、絶望に遭っても精神を維持し。境遇を、環境を、理想を。全てを維持するために先へと進む。
その力こそが強さの根源であり、そのものであるとロキは考える。だが、その考えをわざわざ口にするまでもない。
意味がない。
あれとは確実に価値観が会わない。猟兵とオブリビオンであるという以前の問題だ。
「では、こちらの手番です。といっても……貴方の恐怖に興味はありません」
だが、その体。オブリビオンという体。過去の化身であるというのなら、その体を構成しているのは一体なんなのか。
惨劇の記憶(カツテノニチジョウ)、彼のユーベルコードが発動する。
それはロキの記憶の中から呼び出された拘束具付きの手術台と医療器具。それらがマザー『テラー』の体を拘束する。
ああ、と溜息が出る。目が輝く。ああ、とても。抑えられない好奇心。
「答えなんてどうでもイイんですよ。真実かどうかの確認も出来ない…そんなことより…さァ、貴方の中身を教えてください」
獰猛な好奇心が口を開けた瞬間であった。
中身。中身。中身が気になる。どうやってその体を維持しているのか。気になる。骸の海から生まれ出る過去。その体は骸の海の何で構成され、何で動いているのか!
だが、満足の行く答えは絶叫によってかき消されるようにして、得られない。
ああ、今回もダメなのかもしれない。いつだって満足の行く答えは得られない。
拘束具が破壊され、マザー『テラー』が離れる。ああ、でも知りたい。
好奇心を抑えられずに、問いかける。相容れぬキミへ。
「貴方の中身は何ですか?」
―――答えは発せられなかった。
大成功
🔵🔵🔵
ニノマエ・アラタ
それはアンタが考える「強さとは何か」と照合され、
納得することでしか「答え」にならないんじゃねェだろうか。
他人の言葉で納得できる位なら、こうして斬り結んじゃいねェと思う。
俺の動きに何を見て、答えとするかはアンタ次第だ。
群がるガキ共を憐れむことも無ェよ。
複数人を一閃で斬り倒し、手早く支配から解き放つ。
手を休めず返す刃も使いきり、操る本人へ接近しようとする。
ガキ共の滅茶苦茶な動きに惑わされず、
自分の動きを妨げられないために、どうしたらいいかを考える。
搦め手でガントレットも使い、
眼前のガキをテラーへ向かって吹っ飛ばし、
それを目くらましと盾にしてテラーを斬りに行く。
さて、こいつらの痛み、倍返しといくか。
他者との価値観の相違は、己という存在を浮き彫りにする。
輪郭を強くするということでもある。他者が存在するからこそ自身が在り、自身が存在するからこそ、他者が在り。
結局の所、己と他者との摩擦によって生を謳歌するのが人間という生き物であるのかも知れない。それ故に言葉で、態度で互いの価値を測り合うのかもしれない。
だが、猟兵とオブリビオンは違う。互いの存在は互いを滅する存在である。どうあがいても相容れぬ敵同士である。
ならば、その問いかけに意味はなく。他者の答えは「答え」にはならない。己の求める答えこそが答えであり、他者の価値は存在しない。
最初から破綻しているのだ。取り付く島もなければ、論ずるに能わず。
「アナタの思う“強さ”とは何でしょうか」
故に、マザー『テラー』の放つ質問に意味はない。答えた所で正解などなく、どちらにせよ、彼女の凶行は止まらない。
「それはアンタが考える『強さとはなにか』と照合され、納得することでしか『答え』にならないんじゃねェだろうか」
ニノマエ・アラタ(三白眼・f17341)の言葉にマザー『テラー』はニコリと微笑んだ。まったくもってそのとおりであると。
猟兵であるアラタにもとめているのは答えではないのだと。
雪原に沈んでいた愛おしい子たちが傀儡のように立ち上がってくる。最早彼らに生命はなく、ただの木偶であることは疑うところもなかった。
「他人の言葉で納得できる位なら、こうして切り結んじゃいねェと思う」
手にした妖刀、輪廻宿業の刃がマザー『テラー』の姿を映し出す。それは絶対的な拒絶であった。
先の質問に対する答えがこれである。アラタにとって、強さとはそういうものであるのだ。それは同時にマザー『テラー』の存在そのものを否定する行動であった。
「そうですね。本当にそうです。でも、私は実験者ですから、こうするのが当たり前なのです。しようがないですよね?猟兵さん?」
木偶へと堕した子供たちがアラタに襲いかかる。明らかに子供の動きではなかった。身体能力を限界まで超えている。群がるようにしてアラタに飛びかかる彼らを、一切の躊躇いもなく、一刀の元に切り捨てるアラタ。
「そうかよ―――なら」
指を鳴らす。それは彼のユーベルコード、クロックアップ・スピードの発動トリガー。瞬間、彼の動きは目にも留まらぬ超スピードを得る。
手にした妖刀が煌めく一閃すら知覚できぬほどの超高速戦闘。妖刀の輝きが雪風に荒ぶ。手早くマザー『テラー』からの支配を解き放つには、これが最速であるとアラタは判断していた。
群がる子供らを憐れむ時間すらも惜しいと彼は感じていた。手は休めない。返す刃で、さらにマザー『テラー』を守る子供らを薙ぎ払う。
許しは乞わない。謗るのであれば、謗るがいい。それが慰めになるのであれば。
そして、すでに息絶えた子供らの体は、物体である。魂が宿っていないというのであれば、アラタにとっては戦いの要因でしかない。
眼前に飛び出した子供の体をガントレットが掴む。
「悪ィ……とは言わねェよ。だがな……お前らの痛み、倍返しにはしといてやるよ!」
掴んだ子供の体をマザー『テラー』へと投げつける。
それは彼女の視界をブラインドする搦手。アラタの体は彼女の視界から瞬時にして消える。そこにいたはずのアラタの姿を探す時間すらも与えない。
ユーベルコードによって強化された超高速戦闘は、アラタの剣技を絶技へと昇華させる。
雪原にアラタの踏み込む音が遅れて聞こえてくる。
「そこ―――!」
マザー『テラー』が、それに気がついて体ごと視線を向けようとした瞬間、その反対側からアラタの冷えた声が響く。
「遅ェよ―――」
妖刀・輪廻宿業の刀身が妖しく煌めく。
約束した。もはや生命の宿らぬ木偶と化した子供らと。
彼らの味わった苦痛、恐怖、それらは己が倍返しにすると。それが勝手な一方的な約束であったのかも知れない。
だが、それでもアラタは放たねばならない。己の信念を。
一つ境遇が違えば、己もそうであったかもしれない。それは在り得たかも知れない結末であって、己の結末ではない。
故に、アラタは刃を振るう。己とは違う抗う力を持てなかった子供らのために。
その一撃は雪原に赤い血飛沫を咲かせるのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
フェリス・シー(サポート)
『フェリスちゃんにお任せなの』
フェアリーのウィザード×シンフォニア、7歳の女です。
普段の口調は語尾に「なの」ってつけて話す(自分の名前+ちゃん、相手の名前+ちゃん、)」
年齢相当で無邪気で難しいことは分かんない。
楽しそうな事は積極的に参加する
時には無邪気にハチャメチャ
いたづらしてみたり
バッタの群れで蝗害起こしてみたり、
溶解液入り水鉄砲撃ってみたり
軍人さん呼んで戦争してみたり
ユーベルコードはマジックザギャザリング由来のものが多いですが、原型とどめていない物もあり元ネタを特に気にする必要はないです。
UDCアース。それは現代地球においてUDCと称される太古から蘇った邪神とその眷属たちが跋扈する世界である。
その世界において邪神山脈とは太古の邪神を封じた洞窟の存在する人類未踏の地である。邪神封印の洞窟は守護者であるUDCによって護られ、完全復活のその時を待つばかりであった。
だが、猟兵達の働きにより、その邪神復活を不完全な形で為し、復活した邪神を討ち果たそうと猟兵たちは邪神山脈に登るのだ。しかし、道中は人類未踏の地。困難はつきまとう。
守護者によって放たれた千里眼を持つ獣プレビジオニス。彼らは猟兵達によって打ち払われたが、邪神封印の洞窟は未だ守護者であるUDCによって護られていた。
マザー『テラー』。それはUDCでありながら、研究者である。愛おしい子たちと謳う子供たちを実験に使い、雪山での恐怖のデータを集め続けていた。
それは邪神完全復活までの場繋ぎとも言うべき、彼女にとっての暇つぶし。その程度の認識で幼い子供たちの命を弄んでいたのだ。
フェリス・シー(ちっちゃなプレインズウォーカー・f00058)にとって、それは難しいことであったのかもしれない。
けれど、彼女の瞳に映るのは悪戯に弄ばれた幼い生命の亡骸たち。それはとても簡単なことであり、彼女にとって楽しそうなことではなかった。
彼女が好むものとは真逆のこと。
「どうしてそんなことしてしまうの?フェリスちゃんはとっても悲しい」
そんなフェリスの悲哀は、マザー『テラー』にとってはどうでもいいことであった。些末なことであった。だからこそ、そんな彼女に微笑みかける。
「どうしてと言われましても。邪神復活まで暇でしたから……もう少し早く猟兵の方々が来てくださっていたら、私の愛おしい子たちもいたずらに死なずにすんだのかもしれませんね」
責任転嫁も甚だしい。いつも楽しいこと、心が踊ることが大好きなフェリスにとっては、彼女の言葉は優しい雰囲気に満ちているように見えたかも知れない。
だが、決定的に違う。
彼女は自分が楽しいだけだ。フェリスと違う。自分だけではない、周囲の人間も楽しくなってほしい。
その結果、フェリスは人に迷惑を描けてしまうことはあるかもしれない。だが、それは生命を奪うほどの悪戯ではない。
だからこそ、許せない。
「さぁ、ワタシにアナタの“恐怖”を見せて下さい」
ニコリと微笑むマザー『テラー」。その微笑みとは真逆の発狂するほどの恐怖を込めた言霊はフェリスの小さな耳に届く……その前に、フェリスの放つユーベルコードによって相殺されていく。
彼女のユーベルコード、対抗呪文(カウンタースペル)。それはユーベルコードを対消滅させるユーベルコード。フェリスにとって、それは簡単なことだった。
「あなたにできることなんか、みんなフェリスちゃんが簡単に打ち消せることばかりなの」
彼女の言葉はいつもどおりではなかったかもしれない。
それはいたずらに弄ばれた生命に対する義憤であったのかもしれない。
しかし、その気持ちに偽りはなく、許せないと思った感情はマザー『テラー』のユーベルコードを打ち消す。
どれだけ恐怖が込められていようとも、彼女の心に宿る楽しいこと、嬉しいこと、暖かな気持ちは打ち消せるものではないのだ―――!
成功
🔵🔵🔴
アウル・トールフォレスト
相変わらず寒くてかなわないや…
寒さは停滞。成長と相反するもの
ここじゃわたしは上手く体を動かせない
だから手早く。お願い、エンキドゥ
服の下に隠していたエンキドゥを取り出して、【蛮戦技巧・射突裂槍】の準備
小さな子達に取り巻かれてしまう前に、よーく狙って…
放った後は、女の人の相手はエンキドゥに任せる。わたしと同じくらい力は強いし、わたしと違って空も飛べるし、エンキドゥなら大丈夫
わたしもわたしで。小さな子達の相手をはじめるよ
恐怖に支配された動きなんて、わたしはとても良く知ってるから、多分簡単だね
それにしても、ひどいことするよね。小さな命がもったいないや
…そういえば、あの女の人なにか言ってたっけ?
寒さとは豊かさの対極に位置するものであるのかもしれない。
暖かさは生命を育み、来る夏に向けて生命を爆ぜさせる。逆に冬の寒さは暗黒である。生命に乏しく、成長とは無縁のものであるように思える。
故に邪神山脈は人類未踏。人外魔境である。吹き荒ぶ雪風は容易に生命を蹂躙していく。近づくことを拒否するかのような風は容赦なく体温を奪っていく。
生命は極寒の寒さの前ではいとも容易く砕け散る定めであるのかも知れない。
故に彼女、アウル・トールフォレスト(高き森の怪物・f16860)は震える。
「相変わらず寒くてかなわないや……」
彼女の声は振るえていた。
寒さにかじかむ唇は言葉を紡ぐのもやっとであった。山を登り続け、戦闘の音に誘われるようにして邪神封印の洞窟までやってきたのだ。
彼女にとって寒さとは停滞である。成長と相反し、彼女にとってはこの雪山という場所はあまりにも酷な場所であったのだろう。
自身の体が上手く動かないことを自覚していた。それはこれから訪れるであろうUDC、邪神封印の洞窟を守る守護者との戦いにおいてマイナスであることを理解していた。
「次から次に猟兵がやってきますね……まあ、大きな体。とても、とても、研究しがいのありそうな個体」
微笑むのは守護者であるマザー『テラー』。彼女の周囲の雪原には物言わぬ死骸となった子供たちの成れの果て。
傀儡のように彼女の言葉に応えるようにして立ち上がってくる。それは最早、生命を感じさせない伽藍堂の器であった。
ああ、と声が出る。寒さにかじかんで上手く動かぬ唇が嘆息する。
「お願い、エンキドゥ」
短く。本当に短くアウルは呟く。彼女の服の下に匿うように隠していたエンキドゥ―――アウルのさいしょのおともだちにして、人形兵器が現れる。
その褐色の姿をした少年は彼女の求めに応じて雪原に足を下ろす。
「貴方も子供を使うのですね?似た者同士ですね、わたしたち」
マザー『テラー』は笑う。奇しくも、彼女のユーベルコードもまた子供を使うもの。傀儡にし、恐怖によって縛り付け、死にものぐるいで敵を襲わせる。
そこに愛情の欠片もなく、愛おしい子という名はあまりにも、その言葉を汚辱していた。けれど、アウルは取り合わない。意味がない。言葉をかわす意義がない。
エンキドゥの姿が変わる。それは人形兵器である彼の特性。光り輝く槍へと姿を変ずるエンキドゥを掴むアウル。輝く姿は雪原の闇に現れたる綺羅星のごとく。
そう、意味はない。
マザー『テラー』の言葉に意味はない。似た者同士と言ったその言葉はアウルには響かない。
アウルのユーベルコード、蛮戦技巧・射突裂槍(オウガバトル・ペネトレイトランス)が発動する。
それは姿を変じたエンキドゥを放つ一撃。初めてアウルがマザー『テラー』を正面から視認した。
言葉を返す代わりに、投擲されるは光の槍。その一撃は瞬く間に雪風を切り裂いてマザー『テラー』の体をうち貫く。
「―――!?」
攻撃の動作も、殺気も、なにもない一撃。マザー『テラー』は驚愕したかもしれない。あれはなんだ、という疑問が頭の中を駆け巡る。
あれは一度も自分を見ていなかった。いや、光の槍を投擲した時は見た。だが、あれは己という存在を見ていたのではなかった。オブリビオンである、という認識すら無かったのかも知れない。
―――ただの障害物。
投擲された光の槍が再び変ずる。それは人形兵器エンキドゥの姿。腕は変形し、槍と化す。目の前の脅威よりも、マザー『テラー』は理解できぬ怪物への疑問で頭がいっぱいだった。
「うん、ひどいことするよね。小さな生命がもったいないや」
アウルはまるで小さな子供たちを相手にするように、傀儡となった子供たちの亡骸を葬り去る。腕が振るわれ、薙ぎ払われる。
その動作一つ一つはあまりにも簡単なことであった。恐怖で支配された動きなど、彼女にとっては良く知るものであった。
故に意識するまでもない。簡単なものだ。
だから、ふと思ったのだ。最後までアウルが見ることのなかったあのUDC……守護者。
「……そういえば、あの女の人何か言ってたっけ?」
しかし、その問いかけに応えるものはなかった。エンキドゥによって既に骸の海へと返されたマザー『テラー』。
その頭に浮かんだ怪物への疑念は、何一つ解決することなく消えていったのだから―――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『『七血人』狂風のエレオノーラ』
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POW : 祟り神風
【呼吸もままならぬ程の颶風】が命中した対象に対し、高威力高命中の【幾千もの鎌鼬】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 彼岸より吹く風
【建造物すらも吹き飛ばすほどの激烈な竜巻】【目に見えぬほど微細にして多量の風刃】【光が歪むほどに圧縮された無数の気体爆弾】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : 天魔・神渡し
全身を【近付くモノ総てを斬り刻む旋風】で覆い、自身が敵から受けた【負傷や悪意、自身が相手に与えた負傷や殺意】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
イラスト:テル
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「死之宮・謡」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
守護者マザー『テラー』が消滅し、守護者としての役割を全うできなくなった瞬間、邪神封印の洞窟が瓦解していく。
それは邪神復活の兆し。だが、守護者を打倒することによって邪神の完全復活は防がれた。
半端な封印解除。時間をまたずに放たれた開放は邪神にとっては不都合極まりない事実。
轟音がして邪神封印の洞窟が崩れ落ちる。しかし、突如として舞い上がった突風が瓦礫を吹き飛ばす。いや、違う。封印の洞窟より舞い上がった風。狂風そのものが、UDC……邪神の姿を形作っていく。
猟兵たちは見上げた。
その姿を、その威容を。人の姿をしていながら、その巨大さは巨人そのものであった。
手にした双剣は風が渦巻き、触れるモノ全てを切り裂く家のような鋭さと冷たさを持っていた。
「……叩き起こされたかと思えば……猟兵。わたしの完全復活は防がれたってところね」
巨躯を伸ばして、まるで寝起きのような雰囲気で邪神、『七血人』狂風のエレオノーラは眠たげな眼をこする。
それは、ただのあくびであったのかも知れない。彼女が息を吐き出すだけで、周囲の雪風は吹き飛び、万年氷雪に覆われた大地が露出する。
それほどの威力。これが完全復活していたとしたら……そう考えるだけで背筋が凍るほどのプレッシャー。
だが、完全復活を免れた今ならば、この強大な邪神に打ち勝つ勝機はある。
双剣構える巨大な邪神を前に、猟兵たちは戦いを挑む。それがどんなに苦しく困難な戦いになろうとも、やらねばならない。
それが世界に選ばれた戦士である猟兵としての、宿命なのだから。
水鏡・怜悧
詠唱改変省略可
人格:ロキ
ふむ、さすがに強大ですね。ほとんどの手段は軽く吹き飛ばされそうです
UCを発動し全身を液体金属に変えます。なるべく目立たないよう地面や物陰を這って進み、鎌鼬は地面の大きめの窪みで受けます。液体金属なので切り裂かれても元に戻りますし多少は吹き飛ばされても窪みなら底に溜まるので問題ありません
近づけたら魔銃の力を取り込み、(UC触手式魔導兵器の要領で)氷属性の触手を作り、氷の槍で攻撃します。周囲の気温を利用して大量に作り攻撃し続けます
うまく当たったら氷属性の触手を傷口に刺し体温を急速に奪うマヒ攻撃。人型であるなら体温が落ちれば動きは鈍るでしょう。風の威力も落ちると良いのですが
邪神復活はここに相成った。邪神山脈に現れたるは太古の邪神にして、『七血人』狂風のエレオノーラ。
吹きすさぶ風は圧倒的な暴風となって周囲に巻き起こっている。邪神山脈に封印されていた邪神たちは全て何の因果かわからないが、元の邪神よりも数倍の戦闘力と体躯を持つ。
もしも、これが完全復活していたとしたら、この場にいた猟兵たちだけでは手のつけようがなかったかも知れない。
だが、それでも勝機はある。不完全な復活によって、これでまだ戦闘力は削がれている状態なのだ。これを逃す手はない。だが、逆に言えば、この場から逃れる術もないということだ。
「猟兵……本当にご苦労さまね。完全復活ではないにせよ、貴方達にはこれくらいでも十分でしょう?」
見下ろすエレオノーラの巨躯。手にした双剣は暴風を生み出す力の源か。新緑思わせる双剣は輝き、さらに風を強めていく。
その名の通り、狂風。その禍々しいまでの風は、触れるもの全てを引き裂いていくことだろう。
「ふむ、さすがに強大ですね。ほとんどの手段は軽く吹き飛ばされそうです」
見上げるのは、水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)……その一人格であるロキであった。彼らにとって、その巨躯は脅威であったことだろう。
そうでなくても、邪神の力は強大であり、不完全とは言え、ここまでの力を有しているのは、計算のうちであっただろうか。
即座にロキは判断する。即断即決。迷っている暇はない。
「此(コレ)はすでに私の一部、ならば侵し、受け入れ、喰らい、…ひとつに」
彼のユーベルコード、侵蝕し融合する狂気(ワガミハスデニヒトデナク)が発動し、UDCである黒く玉虫色に光る液体金属へと変ずる。
その頭上を突風のような風が通り過ぎていく。それは戯れにエレオノーラが振るった双剣の一振りがかすめた音だった。
ぞあ、と流体金属と化してないはずの産毛が粟立つのをロキは感じたかもしれない。一瞬の判断の遅れが戦いを決定づけるのだとしたら、今がまさにその瞬間であったのかも知れない。
「あら、外した……意外と判断の早い猟兵がいたものね?」
ごう!ごう!と颶風の音が響き渡る。雪山に荒ぶ雪風など、あれに比べたら、ただのそよ風である。
流体金属と化したロキは、目立たぬように地面や物陰を這って颶風をやり過ごす。
しかし、あの攻撃は巨大化したが故の弊害であろうか、随分と大雑把な狙いだ。いや、それでも攻撃範囲が広がっているのだから、かすめればそれだけで致命に至るであろう。
岩肌のくぼみ、影、あらゆる狭い場所を這い進む流体金属。それはUDCの特性を完全に得たロキでしかできぬ行動であった。
「これならば、気づかれずに接近できる……」
そう、間近に近づかなければ、あの巨躯に対する一手を放つこともできない。
颶風の衝撃がビリビリと流体金属を波立たせる。銃型魔導兵器-オムニバス、その力を取り込んだ触手を作り出す。
岩陰から伸ばした触手は、エレオノーラの巨躯に狙いを定める。
周囲の空気と水分を取り込み、氷の槍が構成されていく。これは一種の賭けだ。
「この攻撃で相手が生物であれば―――人型であることを、上手く利用できれば」
放たれる強大な氷の槍。
それは過たずエレオノーラの体を貫いた。
しかし、瞬く間にその傷口がふさがっていく。不完全とは言え邪神。一筋縄ではいかない。
「傷は与えられる……!なら!」
傷口が完全に塞がる前に、触手を飛ばす。流体金属で出来た氷の属性を伴った触手が傷口へと侵入し、突き刺さる。
だが、それは同時にロキの所在をも知らせることになった。
「あら、そこにいたのね……こんな風に隙を狙うなんて……悪い子」
ごう、と颶風が荒ぶ。凄まじい正気に触手がちぎれはて、次なる攻撃がロキを襲おうとして、エレオノーラの動きが止まる。
そう、その傷口へと入り込んだ流体金属の触手は、彼女の内部で急速に体温を奪う楔となる。
人型である以上、巨躯であろうと体温は存在するはず。邪神であれど、人の形をとっているのであれば、それはどうりであったのだろう。氷の属性を持つ触手が内部で熱を奪う。
体の自由を奪いながら、その力を削ぐのだ。これならば、後続の猟兵達の助けにもなる。
完全に体温を奪った瞬間、エレオノーラの体内から排出すされる流体金属を回収しながら、ロキは再び流体金属の特性を利用して撹乱の徒となる。
「ちょこまかと、逃げ回って―――!」
傷つけられたエレオノーラの憤怒の声が、雪山を震撼させる。だが、ロキにとって、それはどうでもいいことだった。
あれは邪神。どれだけ姿が似ていようが、感情が人によっていようが、討ち果たすべき者。
ならば、その最初の一手、楔を打ち込めたことは大いなる戦果であったのだ!
大成功
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火土金水・明
「この世界を邪神に壊される訳にはいきません。」「不完全な状態で復活したのであれば、こちらにも勝ち目はあります。」
【WIZ】で攻撃です。
攻撃方法は、【先制攻撃】で【高速詠唱】し【破魔】を付け【フェイント】を絡めた【全力魔法】の【サンダーボルト】で『『七血人』狂風のエレオノーラ』を【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】【見切り】【地形の利用】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでも、ダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。
邪神山脈が震える。それは邪神復活による余波か。衝撃と疾風が山脈を駆け巡り、あちらこちらで雪崩が起こり、崩落していく。
颶風はあまりの強さに万年氷雪であった岩肌を露出させるほどである。UDCアースにおいて太古の邪神とはまさに、正真正銘世界を滅ぼしうる邪神なのである。
ここ邪神山脈において封印されていた邪神は、他の邪神とはさらなる強大さを持つ。その巨躯、通常の数倍。さらには戦闘力までもが数倍に跳ね上がっている。
これが完全復活していたというのなら、どれほどの力を持つというのだろうか。おぞけも走るような邪神の強大さは猟兵達の背筋を凍らせたことだろう。
緑風思わせる髪を振り乱しながら、邪神にして『七血人』狂風のエレオノーラが咆哮する。
それは眷属たるUDCの守護者をも突破し、己の封印を完全に解かれる前に不完全な形で顕現せしめた猟兵たちへの怒り。
さらには目覚めたばかりの己に攻撃を加え、痛手を追わせた猟兵への憎悪。何年、何十年、何百年……どれほどの月日が彼女をこの地に封印していたのかはわからない。
この長い年月の鬱憤を晴らそうとしていることだけはわかる。
「この世界を邪神に壊される訳にはいきません」
火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)は、邪神山脈の一つに舞い降りる。雪風荒ぶ大地に黒衣がはためく。
その対峙する邪神の体が渦巻く旋風に包まれていく。それは近づくもの全てを切り裂く旋風。邪神の体に圧倒的な力がみなぎっていくのを明は感じていた。
これをこのまま放置していていいものではない。
「は―――ァ!よくも……私の復活した体に傷を……猟兵ィィィッ!!」
怒りに震えるエレオノーラの体が緑色に輝くオーラに包まれる。ギ、と視線が明へと向く。手にした双剣が振りかぶられ、暴風のような剣撃が中に浮かぶ彼女へと襲う。
だが、その斬撃が明に届くことはなかった。
「残念、それは残像です……しかし、不完全な状態で復活したというのに、凄まじい力ですね……ですが、こちらにもまだ勝ち目はあります」
明の言霊が高速で詠唱を始める。それは謳うような、美麗な声となって周囲に響いたことだろう。掲げた指先に集まっていく破魔の力。
電光が雪風荒ぶ邪神山脈に迸る。周囲を明滅させるほどの魔力は明の全力魔法前のフェントである。
ただの目くらましと言っていい。
だが、それは攻撃を予測させぬためのもの。指先に集まった雷光が弾ける。瞬間、曇天に覆われていた空が明るく地上を照らす。
「受けよ、天からの贈り物!」
彼女のユーベルコード、サンダーボルトが発動する。炸裂する雷光の光。天上より放たれたる光は、魔力の奔流となってエレオノーラの体をうち貫く。
だが、一度で終わるわけがない。高速詠唱は二撃目への布石。
さらなるサンダーボルトがエレオノーラの体を強かに焦がしていく。周囲の万年氷雪は、サンダーボルトの迸る雷光によって昇華し、蒸気へと化していく。
「さあ、私の全力はこれまでです……少しでもダメージを蓄積できていればよいのですが……!」
彼女の全力を持ってしても、邪神エレオノーラの巨躯は健在。
いや、健在であると言っても確実にダメージは蓄積されている。回復するであろう体の皮膚の再生が徐々に遅くなってきている。
明のサンダーボルトによって、その巨躯に確実な崩壊の兆しが刻み込まれたのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
アウル・トールフォレスト
わあ、おっきい!
人を見上げるなんていつぶりだろう…
わたしも負けてられないね!…なんて言いたいけど、寒いから大きくなれないや…
だからやっぱり、いっしょにお願いね。エンキドゥ
エンキドゥには地中に潜って、風の影響を受けないように隠れてもらう
その間、わたしは敵の注意を引きつける!オーラ防御に属性攻撃…敵と同じ風属性の防壁を全身に纏いながら、攻撃を受けるよ
耐え続けて、敵が油断をした瞬間に【蛮戦技巧・地縛錨鎖】
地面の下から飛び出してもらって、敵の動きと力を封じるよ!
後はこっちのもの。わたしもとっておきを見せてあげなきゃ
大地からマナを引き摺り出して、光の槍――『龍脈』を形成
今までの分のお返しをするよ!
わあ。
最初の言葉は、それだった。見上げた先にあるのは己よりもさらに巨躯の邪神。それはアウル・トールフォレスト(高き森の怪物・f16860)にとっては久方ぶりの光景であった。
己よりも巨大な何か。それを見上げるという事自体が、一体いつぶりであったであろうか。思い出せないくらい遠き過去に、そんなことがあったかもしれない。ただそれだけを頼りに、彼女の感情は揺れ動いたのだ。
高き森の怪物。その名の彼女が見上げる巨躯、邪神の名は『七血人』狂風のエレオノーラ。
邪神山脈に封じられし邪神の全ては、他の邪心たちと比べて姿、大きさ、戦闘能力はそれ以外に封じられている邪神と比べて数段に跳ね上がっている。
この巨躯もまた、そのせいであった。
渦巻く風は近づく全てを切り裂く鎌鼬そのもの。容易には近づけないと本能でアウルは気がついていた。
「本当に人を見上げるなんていつぶりだろう……私も負けてられないね!……なんて言いたけど、寒いから大きくなれないや」
アウルは邪神を見上げたまま小さくしょげてしまった。寒さとは停滞。彼女にとっては寒さは大敵であったのかもしれない。植物が育つように、この極寒の環境では育つものも育つまい。
故にアウルにとっては、この現状は不利そのもの。
「猟兵が私の邪魔をする。それはとても腹立たしいこと……速やかに消し飛ばしてあげる……!」
エレオノーラの双剣が振り上げられる。颶風が跳ね上がり、その強大な剣の剣撃は遠く離れたアウルにすら到達する。
それを避け、アウルは雪原を駆ける。やはり、寒さの影響のせいで体が上手く動かない。
「やっぱり、いつもみたいには無理……だから、一緒にお願いね。エンキドゥ」
彼女のさいしょのともだち、人形兵器エンキドゥを大地に下ろす。エンキドゥは彼女の指示に従って、速やかに地中へと潜っていく。
後はこちらに注意を惹きつけるだけだ。
「こっちこっちー!そんなに大きくなっても、剣が立派でも当たらないと意味がないよー!」
アウルの天真爛漫さは、あまりにもエレオノーラの神経を逆なでしてしまったようだった。だが、それはある意味で狙い通りである。
彼女の身に纏う属性が変わる。それはエレオノーラと同じ風。それをオーラとして纏い、エレオノーラから受ける攻撃を受け止めるのだ。
風は相殺される。だが、エレオノーラの邪神としての力は凄まじい。一瞬で風のオーラが剥がされる。
耐える。耐える。耐える。ただ、それだけがアウルの心のなかにある唯一の算段であった。
耐え続けなければならない。そうすることによって、勝機を見出す。それは圧倒的な力を持つ邪神の慢心、油断を誘うため。
「受け続けるだけで、私に勝てると―――!」
大振り!アウルの瞳が閃く。その一瞬がエレオノーラの油断。恐るべき戦闘勘によってアウルの意識と同調していた地中のエンキドゥが動く。
彼女のユーベルコード、蛮戦技巧・地縛錨鎖(オウガバトル・バインドアンカー)が発動する。
それは地中より放たれたるエンキドゥが変じた光の鎖。それは過たずにエレオノーラの四肢を拘束する。
耐え続けたアウルの腕は傷だらけであった。だが、それに値する価値はあったのだ。
「エンキドゥ!そのまま!」
エレオノーラの抵抗が強まる。光の鎖であっても、軋む音が聞こえてくるほどだ。己の寿命を削っても、それでもなお邪神を食い止める。
だが、それはアウルにとって最大の一手であった。
「わたしもとっておきを見せてあげなきゃ」
アウルの手が岩肌に触れる。それは彼女の手を介して行われる大地のマナへの干渉。彼女の手が触れるマナは引きずり出され、凝縮されていく。
実体を持たぬはずのマナは光の槍へと姿を変えていく。それは彼女が大地のマナより作り上げる『龍脈』。
無理矢理に引きずり出された大地のマナは、アウルの手の中で形を整えられる。
大きく振りかぶる。
驚愕に見開かれたエレオノーラの体へと投擲されるは、龍の如きマナの奔流。
雪風荒ぶ山脈を大いなる光が塗りつぶす。
「今までの分のお返しをするよ!」
轟音を立てて、光の槍がエレオノーラの体を吹き飛ばす。完全に吹き飛ばすには至らなかったが、その一撃は大きく邪神の体を損なうには十分な威力であった。
光の鎖が解けるようにして消えていく。
姿を変じたエンキドゥがアウルの体を抱えて離脱していく。ああ、とアウルは大きく損なわれた邪神の姿を見て、些か残念そうな表情を浮かべていた。
「わたしよりおおきなひと、後で背くらべしてみたかったなぁ……」
大成功
🔵🔵🔵
ニノマエ・アラタ
そうか、ならば。
風を引き裂け、九十六式。歌い踊り乱れて撃ち抜け。
瓦解した洞窟の一部はもちろん、大地にそびえる岩石、
敵の剣すらも跳弾を当てるために使う。
巨人のごとき女なら、目立たぬ地上の猟兵をどう捕まえる。
その足元。視界に入らなければただの暴風でしかない。
悟られないように、風に捕まらぬように。
風に翻弄され遮蔽物となるものの後ろに隠れ、走り。
時には地面に伏せ必殺の射撃を行う。
頭部、心臓。
急所となるであろう部位を数多の跳弾にて穿つ。
敵が倒れるまで、しつこく喰らいついてやるぜ。
眠たいところを起こして悪かったな、
とっとと骸の海へ沈んでくれ!
復活を夢見る必要もない。
……悪夢はもう、ここで終わりだからな。
邪神山脈は不完全ながら復活を果たした邪神によって、崩落し振るえていた。
それは邪神の咆哮であった。幾多もの猟兵の攻撃を受け、その身に宿る再生の力も失われ始めている。大きく欠損した体は傾き始め、それでも手にした剣は風を巻き起こす。
あれだけの傷を負って尚、それでも戦う力を残している。その力はあまりにも強大であると強く印象付けられた。
しかし、それでも終わりがないわけではない。たった一度の攻撃で倒れないのであれば、倒れるまで叩くまでである。
『七血人』狂風のエレオノーラの巨躯から迸るように旋風が巻き起こり、その身に受けた傷故に猟兵に対する憎悪をふくらませる。
急速に再生していく巨躯。だが、再生の速度が明らかに遅くなっているのをニノマエ・アラタ(三白眼・f17341)は見逃してはいなかった。
「そうか、ならば―――」
その体が崩壊した邪神山脈の雪原を駆け抜ける。手にしたのは九六式軽機関銃。片手で扱えるサイズである機関銃の引き金を引く。
だが、その銃口はランダムに向けられる。狙いをつけていない。そんな乱雑な銃撃で邪神に当たるはずもない。
その銃弾は放たれると、瓦解した洞窟の一部、大地にそびえる岩石、エレオノーラの剣、あらゆるものに跳弾し、確実にエレオノーラの体へと打ち込まれていく。
「―――!?なんだ、その攻撃は―――!」
風……ではない。念動力でもない。ならば、あの攻撃は一体なんなのか。銃口は此方を狙わない。だというのに、因果を調律したかのような弾丸の収束。
またアラタの引き金が引かれる。
銃弾が跳躍し、カオスを体現したかのようなランダムな跳弾がエレオノーラを襲う。
bounce around(バウンスアラウンド)―――それが跳弾の正体。アラタのユーベルコードである。あらゆる角度から放った銃弾が跳弾し、彼の敵を穿つ。
「巨人の如き女なら!目立たぬ地上の猟兵をどう捕まえる!」
アラタは駆け抜ける。その足元をくぐり抜け、崩落した洞窟の岩石、あらゆる遮蔽物を使って、エレオノーラの放つ旋風を避け続ける。
彼の動きは迅速であった。射撃するポイントを捨てる見極めが異常に早い。銃弾が放たれたと思った瞬間にも旋風は即座に対応してくる。
だが、それではもう遅い。アラタはすでに別の場所へと移動を続け、必殺の位置を探る。
「急所……人体であれば、頭部、心臓だろうな……」
しかし、相手は邪神である。それが急所である可能性はないわけではないが、同じ人間の形をしているからといって油断はならない。
それがわかっているから、アラタは探る。少しでも可能性を上げる。
「しつ、こい―――!」
エレオノーラの双剣が再び放たれる。旋風は暴風となって辺り一帯を巻き上げる。アラタもまたその風に翻弄され、巨躯からすれべ矮小たるその体を視認されてしまう。
だが、それはアラタにとっては絶好のチャンスであった。そう、彼は探していた。確実に頭部、心臓を打ち貫けるポイントを。その場所は正に舞い上げられた空中。猶予はない。躊躇いなど不要。
「風を引き裂け、九十六式。歌い踊り乱れて撃ち抜け―――」
彼の機関銃のトリガーが引かれる。ありとあらゆる場所に銃弾が跳躍し、跳ねる。それはまさに銃弾の嵐。無造作に撃ち放ったであろうはずの銃弾は、彼が思い描いた通りの場所―――頭部と心臓部へと収束される。
「眠たいところを起こして悪かったな……!とっとと骸の海へ沈んでくれ!復活を夢見る必要もない!」
収束された銃弾が頭部と心臓を打ち貫く。それは一斉に放たれた銃弾が跳弾によって貫いた邪神の体内で衝突し、衝撃を拡散するように爆ぜた。
吹き飛ぶように邪神の体が傾き、邪心山脈に倒れ伏す。まだ、終わりではない。
だが、それでもアラタの銃弾は確かに急所であろう頭部と心臓を破壊せしめたのだ。
「……悪夢はもう、ここで終わりだからな」
雪原に沈みゆく巨躯を空から見下ろしながら、アラタは邪神への引導、その一歩を確実に刻むのだった。
大成功
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クレア・フォースフェンサー
不完全な状態であの威容とはの。
完全な状態であったらと考えると末恐ろしいことじゃ。
しかしかつての何者かは、その状態のあやつをもこの地に封じたのであろう。
ならば、十二分に勝機はあると見るべきかもしれぬな。
あの巨躯は、逆に的が大きくなったとも言うことができよう。
108個の光珠を展開し、敵を中心に吹き荒れる颶風の流れを見切り、光弓をもってその四肢を貫いてゆこう。
敵の動きが鈍ったならば、【能力破壊】の力を込めた光剣でその魂を貫こうぞ。
完全復活を狙っていたということは、この地で力を蓄えていた……つまり、この世界より力を奪い取っていたということであろう。
その力、全てを返してから、骸の海に還ってもらうぞ。
それはあまりにも巨躯。見上げる、という表現が生易しいほどの威容。邪神山脈に封じられし邪神が復活する時、それらは通常の邪神とは一線を画する巨躯と戦闘能力を得る。
その情報を事前に知らなければ、その威容に恐怖したかもしれない。だが、その邪神もまた不完全な状態で復活を余儀なくされ、幾多もの猟兵の攻撃に晒され、再生することも叶わぬくなった体を邪神山脈から起き上がる。
頭部は破壊され、心臓部を打ち貫かれている。だが、旋風が体を包み込むと、その体は再生されていく。時間が明らかに掛かっている。
あともう一手。その一手をつなぐものが、新たに邪神山脈へと転移してくる。
クレア・フォースフェンサー(UDC執行者・f09175)。金の瞳と髪を持つUDC執行者。対オブリビオン用のユーベルコードを搭載された人造人間が舞い降りたのだ。はためく金髪は雪風の中で遭っても尚輝く。
「不完全な状態であの威容とはの。完全な状態であったらと考えると末恐ろしいことじゃ」
クレアが舞い降りたのは、まさに猟兵達の攻撃を受け、消耗しきっている邪神の正面。見上げる姿はあまりにも強大である。
その姿は見る者に本能的な恐怖を齎す。不完全な復活であっても、なおこの強大さ。しかし、猟兵は臆さない。この強大さを前にしても戦うことをやめない。
恐怖に打ち勝つのではない。恐怖を乗り越えるのだ。
この邪神をかつて封じた何者かは、完全な状態な邪神をこの地に封じたのだ。ならば、猟兵である自分たちが出来ぬ道理はない。
「十二分に勝機はあると見るべきかもしれぬな……先の猟兵達の攻撃も蓄積しているようである……ならば!」
クレアの手が広がり振るわれる。一瞬の内に生み出される光珠。その数およそ108!生み出された光珠が即座に展開し、もはや獣の咆哮じみた声を上げる邪神、『七血人』狂風のエレオノーラが放つ颶風の流れを読み取る。
108の光珠は即座に颶風に対応する。クレアの体が雪原を駆け抜ける。颶風にさえ当たらなければ、その後に襲い来る鎌鼬もまた無力化することができる。
光珠は、そのための布石である。揺らめく大気の流れ、風を読み切ればまた、攻撃の機先を制することができる。
「その四肢、頂く!穿け!」
掌より生み出された光弓を引き絞り放たれたる光矢が、エレオノーラの四肢を深く穿つ。これまでの攻撃によって瞬時に再生できない。それどころか、幾多の猟兵の攻撃によってもろくなっている。
確信する。如何なる強大な敵であろうと、討ち果たすことができる。疑念が生まれる余地もない。
膝をつく邪神。その動きは完全に鈍っていた。操り、吹き荒ぶ風も問題にはならない。双剣は地に落ち、完全なる無防備。今しかない。
「アンチ・コード」
クレアの玲瓏なる言葉が紡がれる。それは、彼女のユーベルコード、能力無効(アンチ・コード)により紡がれた力。
絶対無敵を誇るユーベルコードすら無効化する光剣を手に、邪神の巨躯へと飛びかかる。高く飛び上がり、手にした光剣を逆手に持ち変える。
「この地で力蓄えていたようであるが……!それはこの世界より力を奪い取っていたということであろう!その力、全てを還してから、骸の海に還ってもらうぞ」
邪神の咆哮が聞こえた。
だが、クレアにとってそれは意味のない咆哮であった。蓄えた力。それは嘗てUDCアースの大地にあった力であろう。骸は骸に。大地の力は大地へ。
それが力の循環たる正しき姿。
彼女の光剣は概念すら一刀両断し、一矢貫通せしめる。ならば、その光剣は、邪神の魂尽くを貫く。
得た力の全ての鎖を断ち切り、在るべき姿に戻すのだ。
光剣が邪神エレノーラの魂を貫く。圧倒的な力の奔流が彼女の体を衝撃波とともに吹き飛ばす。まるで爆心地にいたかのような暴風が吹き荒れ、クレアが大地へと危なげなく着地した時、全ての決着がついたことを悟ったであろう。
見上げる曇天は、真っ二つに切り裂かれ、その先に在る青空をクレアや戦いに参加した猟兵たちにのぞかせていた。
それは在るべき力が大地へと還った証。
UDCアースに巣食う邪神の一柱を打倒せしめた揺るぎない事実であった―――!
大成功
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