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其れは御伽噺の怪物

#ダークセイヴァー #異端の神々

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#異端の神々


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 其れは古き御伽噺
 絶望へ対抗する僅かな警句

 淀暗き闇が空を覆い
 光明は一筋さえも無し
 誰しもが光を忘れ悪意に囚われし時
 其れは深緑の底より来たる

 其れは在り得ざる存在である

 其れは悍ましき巨人である
 或いは名も知らぬ守護者である
 或いは異世界より降りし使者である

 暗き祈りは異端を呼ぶ
 未知なる異端は恐怖を呼ぶ

 畏れたならば
 其れに近づくべきでは無い


「お願いだよ。うん、これはわたしからのお願い」
 大きな樹木角を携えたバイオモンスターの少女、アウル・トールフォレスト(高き森の怪物・f16860)があなた達猟兵を呼び集める。
「オブリビオン、異端の神が現れる…と、思うの。それは、みんなにとっても困ることでしょう?だからみんなにはその異端の神を殺してほしいの」
 妙に端切れの悪い言葉と、殺意の籠もった言葉。アウルは変わらず笑顔のまま話を続ける。

 送る場所はダークセイヴァー辺境の森林、ヴァンパイアすらも近づかない土地。
 その森の奥には、今は誰もいない廃村があるらしい。
「何でそこに村があるかは知らないよ?森の中は安全だと村を作ったのか、村だった場所が森に飲まれたのか…どっちでも良いや。重要なのは今はそこが敵の領域だって事」
 最初、敵はその廃村に隠れ潜んでいるらしい。彼らを見つけ出すには、探すことによって誘き出す必要があるとアウルは言う。
「何も本当に見つける必要はないの。その敵は始めは見えないし、極端に言えばいないからね。大切なのは探すって事自体なの。そうすれば向こうから勝手にやってくるし、見えるようにもなるから」
 説明は上手く出来ないが、予知で見たからそれは間違いないと付け加えて。

 けれどね、とアウルは言葉を続ける。
「村にいる間、探している間。きっと声が聞こえ続けると思うの」
 それは狂えるオブリビオンの声。狂気へと誘う呼び声。
 聞き続ければ、如何に生命体の埒外にある猟兵言えど、魂まで狂気に支配されてしまう。
「だから、あまり聞かないように気をつけてね。そうなったらわたしも、誰も助けられないから…」
 けれども、それは目標である異端の神がいる証明でもある。『探す』という行為に対しての、取っ掛かりの一つにもなるだろう。

「このくらいかな…?兎に角、まずは村の中を探して。そしたら異端の神がやってくる筈だから、それをみんな殺して。それがわたしからのお願い」
 その異端の神がいなくなれば辺り一帯は開放され、ヴァンパイアの支配下に無い土地を作ることが出来る。
 それはダークセイヴァー世界を救う上で、手助けとなる事には違いない。

「それじゃあよろしくね?」
 アウルは変わらず、笑顔のままで。
 あなた達猟兵を現地へと送り出すだろう。


赤黒い
 赤黒いです。
 物凄く久しぶりの通常依頼に非常にワクワクが止まりません。

 このシナリオは『辺境殺神戦』。辺境に住まう異端の神を殺し、人類の生存圏を広げるのが目的となります。

 第一章では冒険。森に侵食された廃村を探索して貰います。
 探すものは最初は見えませんが、確かに存在はしています。彼らを探して下さい。
 又、探索中は常に狂えるオブリビオンの声が聞こえてきます。声への対抗策、狂気に陥らない方法を講じれば、プレイングにボーナスがつきます。

 第二章は集団戦。『???』との戦いです。
 探すことで誘き出されたオブリビオンを一匹残らず殲滅しましょう。

 第三章はボス戦。『??????』との戦いです。

 それでは、よろしくお願いします。
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第1章 冒険 『ゴーストタウン』

POW   :    捜査の基本は足。手当たり次第に探す

SPD   :    不意の遭遇とならないよう、周囲を警戒する

WIZ   :    過去の資料と照らし合わせ、痕跡を探す

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「来たのか。来たんだな」

「何をしたって無駄さ」

「どうせ見つかりっこ無いよ」

「だってあいつはいないのだから」

「いない筈なんだ」
メグレス・ラットマリッジ
アドリブ可

灯りを片手に家屋を中心に探してみましょう
人の名残に思いを馳せたい……という趣味が半分
敵の居所は勿論、争った痕跡があれば敵のやり口も推測できます

墓地があればUCを使用。甦った屍は生前の行動を繰り返します。
彼らに特定の場所を避けたり、逆に集まる習慣があれば潜伏場所も割り出せるかも
寝てるところを起こすのは気が引けますが、力を貸して欲しい

怪しげな物があれば壊すのも吝かではなく
良い餌であれば大物が期待できるでしょう

声への対策は耳を塞げば何とかなる……ほど易しくはないですよね
いよいよとなれば気付けも兼ねて雷杖の轟音で己の耳を潰します
一時的に音を失うのは辛いですが、無傷で帰れるとは思ってませんしね




 空を覆う闇によって尚暗く、鬱蒼とした森林。
 その最奥。件の廃村に辿り着くには、そう時間は掛からないだろう。

 メグレス・ラットマリッジ(襤褸帽子・f07070)は手にするランタンの灯りを頼りに、目的地にへと到着する。
「ここが村の入り口ですかね…?」
 土壁を這う植物に、廃屋を突き破り伸びる木々。数年程度では作られないような自然による蹂躙の光景。
 かつて人がいたという痕跡に思いを馳せるのも束の間。

「来たのか。やっぱり来たんだな」
 廃村へと踏み入れた途端、何処からともなく声がメグレスへと語りかけてくる。
 分かってはいたが煩わしい、と顔を顰めて耳を塞ぐ、が。
「きっと、どうせ、見つからないぞ」
 それでも声は語りかけてくる。

「全く、仕方がありませんね」
 出来るだけ耳を傾けないように気を強く持ちながら、メグレスは探索へと赴く。

 声を無視して崩れかけの廃屋へと入り込むと、この場にいたであろう人々を【喚び起こす】。
 ユーベルコード【喚び起こす(テリブル)】にて喚び出されるのは意思のない屍。蘇った彼らは生前の行動を意味もなく繰り返し始める。
 死者に鞭打つ行為に気が咎めるが、それでも。
 彼らの行動、一挙手一投足に手がかりがあるとメグレスは観察する。
「彼らは普通だ。普通だったのに」
 屍の様子に怪しい点は無い。何の危機感も無いかのように、あちこちを歩き回っている。
 ふと、最初に集まった際の言葉を思い出す。
 『見えないし、極端に言えばいない。』
 まさか本当に居ないのか、と思慮に耽ろうとするが。

「なんて酷い事をするんだろう、ねぇ」

 いい加減にして欲しいと、そろそろ気が立ってきた。
 茶化す、嘲る、その声に調子を崩されていると自覚できる。まだ、自覚できている。
「この辺りが頃合いでしょうか、ね!」
 迸る雷杖を振り上げて。
 気付け一発。轟音伴う落雷を落とす。

 …耳が痛む。どころか目も眩んでいる。回復するまでに時間が少し掛かってしまう。
 だが気付けは確かに効果があったようで。声は今の所聞こえてこない。
「…無傷では済まないだろうと、思ってましたが…」
 何とかなった、とほんの少しだけ胸を撫で下ろして、メグレスは再度探索にへと戻っていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ガラガラドン・エルダーワールド
…楽しいなぁ…まるで宝探しだ…
黄金に輝くオブリビオンの魂を探そうか

【行動】
探すと言う行為自体がこの声の発動条件ならそれに従おう
おそらくそれに何らかの阻害をすれば、具現化するタイプだと仮説を立ててみようか

例えば村にある一番目立つ、または大きな家から探してみようか

何かしら声が聞こえるだろう


例えばその声に対し、
声自体に対し、
喋る事自体に対し、
永遠の死を与えることができたのなら、きっと驚いて飛び出してくるかもしれないね…

その声は狂気を植え付けるというなら、私は【恐怖を与える】力を解放しよう

とるに足らない…平等な力だ

ザ・デス




「…楽しいなぁ…まるで宝探しだ…」

 廃村を男が一人悠々と練り歩く。
 白のスーツに大層な杖、そして濃厚な死の気配を纏う白骨の不死者、ガラガラドン・エルダーワールド(死霊術師・f17378)は、辺りを物珍しそうに見渡す。
 その姿は、敵地にいると言うには些か無防備過ぎるようにも見える。
 そんな様子でもお構いなしという風に、狂える声はガラガラドンにも語りかけられ、

「――。」
「ああ…待っていたよ」

 形になる前に、言葉になる前に。真っ先にガラガラドンより声が発せられる。
 これは彼の企み。狂気を植え付ける者達へと与える、彼なりのサプライズ。
「可哀想に、君のせいで死んでしまったようだ」
 【ザ・デス】。即ち、事象・現象・行為――全てに等しく与えられる、死の恐怖。
 唐突に開放された力は、声に、言葉に、語りかけてきた者に静かな死を与えるだろう。

「…おや、どうやら臆病な子だったようだ…」
 声は消え去り、聞こえなくなる。その結果にガラガラドンは一人、頷く。
 驚かせる事が出来たのなら飛び出してくるかと予測してはみたが、成程。
「まだ、足りないと言うのかな…宜しい」
 そう言うと、ガラガラドンはまた辺りを探し始めるだろう。
 退屈はしないだろうと、期待を込めて。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴェル・ラルフ
探しても、いない
けれど、探せば現れる…?不思議なオブリビオン
異端の神って、いったいなんなんだろう…
何はともあれ、人々が暮らせる土地を作ることが目的だもの
それは僕の望むこの世界の理想の姿
やり遂げたい

まずは村の中の崩れながらも隠れられそうな廃屋を探す
村があるのならば、かつての住人の残した何かがあるかもしれないしね
【耿々天鼠】で姿を変えて建物の隙間や崩れかけの瓦礫の下へ
警戒しながら探索を行う

狂気へと誘う声が聴こえてきたならば、直ぐ様その場を離れ、周囲を警戒
この炎の獣の姿は、この身を流れる闇に親しいヒトあらざるモノの力
直ぐに影響が現れることはないと思うけれど、警戒に越したことはない

★アドリブ・連携歓迎




「探しても、いない…けれど、探せば現れる…?」
 言われた言葉を反芻しながら、ヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)もまた廃村へと足を踏み入れる。

 異端の神。未だ正体が曖昧な、不思議なオブリビオン。
 しかし相手が何であれ、オブリビオン――即ち、倒すべき敵には違いない。
 人々が恐れること無く平和に暮らせる場所が増えるのなら、それに越したことは無い。
 それこそが、彼が求める理想の世界の姿なのだから。

「やり遂げたい…いや、やり遂げてみせる」
 決意の言葉と共に、自らに流れる力を励起させる。
 【耿々天鼠(コウコウテンソ)】。ヴェルの身体が、黒炎で構成された無数の蝙蝠にへと変ずる。
 廃屋内の隅の隅まで。小さな蝙蝠は隙間を縫うように飛び交い、目を拡げていく。

「君には無理だよ、隣人くん」
 得体の知れない声が、ヴェルへと語りかけられる。
 その声は背後からひっそりと囁きかけてくるように、無数に分かれていた筈の全ての蝙蝠が、全く同じように知覚する。
「――っ!」
 反射的に、振り払うように蝙蝠は飛び乱れ、
 即座にその場、廃村から離れて、元の身体に戻るように村外の一箇所へと集まっていく。

 ヴェルはダンピール。特にあの炎の獣の姿ならば、闇に親しい素質を持つが故に耐性がある。
 それでも完璧にとは言えない。あまり言いたくもない。
 注意と警戒により狂気から逃れられたが、次も上手くいくかは分からない。

「…折れて、たまるか」
 それこそ向こうの思う壺だと、全身に力を巡らせる。
 決意を違えないように。
 ヴェルは黒炎を操り、廃村へと再び入っていく。

成功 🔵​🔵​🔴​

緋月・透乃
いないし見えないのに探すとやってきて見える?よくわからないねぇ。
まあそんな妙な奴なら戦う相手としても何か特徴あったりしそうだし、言われた通り探してみよう。

【POW】
廃村ということは、崩れた建物とかあるかもしれないし、そういったものを目標に歩き回ってみよう。
崩れかた等から何かわかるかもしれないしね。
他にも怪力を生かしてものをどかして何か隠れていないか等も探ってみよう。

声対策は発見したものや現在の状況等をいちいち大きめに声に出すこと。ここがキマイラフューチャーだったら探索実況中継でいいね!を沢山とってやるぞー、って勢いで声をだして、やつらの声に対抗するよ!




「よーっこいしょー!」
 暗い雰囲気など何処吹く風といったように、緋月・透乃(もぐもぐ好戦娘・f02760)は大きな掛け声を上げながら廃村の探索を行っている。
 怯えた様子は一片たりとも見受けられない。むしろ楽しんでいるようにも見える。
 かと言って、声によって狂気に陥った訳でもない。

 これは彼女の対抗策。
 未知を娯楽へと転換する、キマイラフューチャーの心構え。
 己が声にて、狂気の声を届かせない。
 輝き満ちた、愉快な世界を知っている。その思い出を持つ限り、暗い闇に囚われる事は無いのだろう。

 崩れた廃屋の瓦礫を自慢の怪力にて押し退けたり、持ち上げたり…力に任せて隠されたものを暴き立てていく。
「うーん…思っていたより何もない…」
 持ち上げていた瓦礫を雑に放り投げて、緋月はううん、と首を捻る。
 探せど探せど、これまでに”らしい”痕跡は見つかっていない。
 崩れた瓦礫自体も調べたが、どれも風化、年月によって自然に壊れたような物ばかりだ。
「戦いの跡が無い…争いがあった訳じゃない…?」
 痕跡から何かしら敵の特徴でも見つけられるのでは無いだろうかと期待していたが、戦闘好きな緋月からして見れば今回の敵は些か拍子抜けなのかもしれない。

 ええい、だからどうした、と首を振って。
「今は兎に角、見つけ出すのを優先だよ!」
 気を入れ直して、緋月は再び探索に戻るのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
【POW】

んー、居るのか居ないのかよく分からない、ねえ。
探してると現れるならどこかに居てこっちを認識してると思うんだけど……
まあいいや、向こうから現れるっていうならそれでいいしね。

さて、探す事自体に大した意味は無くても、
一応探すのは真面目にやった方がいいよね。
何かが隠れたり潜んでたりしそうな場所を重点的に探してみようか。
普段から居るなら村の中に痕跡が残ってそうだけど、
誰かが探してないと現れないなら、あんまり期待できないかなあ。

呼び声?
いま探すのに忙しいから後にしてくれる?
話を聞いてほしいんだったら、顔くらい出しなよ。




「んー、居るのか居ないのかよく分からない、ねえ」
 暗い闇の中にあって尚、ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)は、いつもと変わらぬ間延びした口調で呟く。
 廃村内部は敵の領域で、探すことによって向こうから現れるというのなら、それはつまり監視されていると言う訳で…
 と、ここまで考えた辺りで、ペトはまあいいや、と思考を区切った。
「向こうから現れるっていうならそれでいいし、とりあえず動こうか」
 今は、分かっている事、するべき事だけで良しとして、ペトもまた廃村へと足を踏み入れた。

 崩れた廃屋、荒れた畑、枯れた井戸…。
 森に飲まれた施設はどれも草木に覆われ、或いは高く伸び切っており、何かが隠れ潜んでいるとしても可怪しくはない様相を呈している。
 そういった場所を重点的に、恐れること無く突っ込んでペトは探索を行う。
 とはいえ、
「やっぱり見つからないなぁ」
 普段から居れども、探さなければ見つからない、現れないと言われた相手。
 最初から痕跡の類など見つからないのでは?と予想したが、まさか本当に毛ほども見つからないとは。

「――。」
「んー?今探すのに忙しいから、後にしてくれる?」
 相変わらず、間延びした、落ち着いた口調で。
「話を聞いてほしいんだったら、早く顔くらい出しなよ」
 呑気な性格故か、或いはもっと別の、特殊な精神性故か。ペトは呼び声に聞く耳を持たず、探索を続けるだろう。


「顔を出せとは。無茶な事を言う」

成功 🔵​🔵​🔴​

メアリー・ベスレム
神様、ってどうしてそう呼ぶのかしら
いいえそもそも、神様ってなんなのかすら
メアリにはよくわからないわ
殺せ、というのなら殺すだけだけれど

【狂気耐性】はあるけれど
聞かないに越した事はないかしら
人が住んでいた過去があるのなら
流された血もある筈でしょう?
ましてや今はオブリビオンが住み着いている場所だもの
そうして流された【血の声を聴く】事で敵を探してみる
同時に血の声に【聞き耳】立てて意識を傾ける事で
狂えるオブリビオンの声から意識を逸らし聞かないようにする

もし過去に流された血がなく
まるで血の声が聞こえないのなら
使用UCを【獣の嗅覚】に変更して
嗅覚頼りに敵を探してみる




 メアリー・ベスレム(Rabid Rabbit・f24749)には神様というものがよくわからない。
 何故そう呼ばれるのか、そもそもどんな存在なのか。よくわからない。
 わからない、が。
「殺せ、というのなら殺すだけだけれど」
 それだけは分かると、彼女も廃村へとやって来た。

 入るなり、彼女は【血の声を聴く】だろう。
 村があるなら、人が居た筈だ。
 人が居たなら、何らかで流れた血がある筈だ。
 オブリビオンの巣窟になっているのなら尚更と、彼女は考えて。
 【血の声を聴く(リッスン・トゥ・ブラッドエコー)】は、流れた血に残る犠牲者の声を聴くユーベルコード。
 敵の正体を探るために、そして狂気の呼び声に意識を持っていかれない為にも、
 彼女は声に、深く耳を澄ます。


 始まりは、村が作られたところからだ。

 村は小さく、狭い。何より、こんな時代だ。
 波風立てば、簡単に崩れ去ってしまう。それほどに、脆い集まりだった。

 だから始まりに、取り決めを作ったんだ。
 ”世の中の上手くいかないことは、全てアイツが悪い”のだと。

 村は平和だったよ。不思議なほどに平穏に暮らせれたんだ。

 たった一人、”無条件に貶めて良い誰か”を作ることで。

「なあ、聴いているか?」

「――っ!」
 耳を傾けすぎた。彼女、メアリは大きく身体を仰け反らせる。
 まさかユーベルコードの対象となる犠牲者の声自体が、狂気の呼び声だったとは誰が想像できようか。
 幸いにも彼女の持つ狂気耐性が、呼び声による魂の侵食を防ぐ。
 だがそれでも精神への負荷は大きく、疲労という形で彼女の中に残ってしまうだろう。

 ふと、彼女は気づく。
 一つは、廃村の中にいながら、声が聞こえてこなくなっている事。
 もう一つは、目の前に誰かが立っている事。

 直感として理解出来るだろう。
 目の前にいる者こそが、今まで探し、そして呼び寄せる事の出来た敵なのだと。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『風車男』

POW   :    風車男は見つからないよ。風車男には首が無いんだ
全身を【首が無いゆえにその存在を知覚し難い状態】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    黄金虫は金持ちだ
レベル×1体の、【背中】に1と刻印された戦闘用【黄金の黄金虫】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    楽しかったあの頃に戻れないのは、風車男のせいだ
【過去も未来も掌の上で弄ぶように】対象の攻撃を予想し、回避する。

イラスト:FMI

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 其れは求められし怪異
 人々の空想より生まれ、都合の良い排気孔として利用される、無責任な男
 「責任転嫁」の感情が寄り集まって形を持ったモノ


「見つかった?いいや、風車男は見つからないよ」

「だってほら。風車男には首がない」

「だが風車男は奴らの前に立っている」

「どういう事だ?誰のせいだ?」

 呼び声と同じ声で、風車男達は狼狽えている。
 手にする風車は、何処吹く風とでも言いたげに、カラカラと回り続けている。

 何にせよ、敵は実体化し、猟兵達の手の届く範囲にへと引きずり出せた。
 ならば、後にするべき事は単純だ。
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
おや、まさか顔が無いとは思わなかったよ。
悪い事を言ったかな?
まあ、どうせ骸の海に叩き返すんだし、大した問題じゃないか。

さて、首がないから見つからないねえ。
結局は人の空想が作った、人の決めたルール。
人の理が、獣の理に通じるとは限らないよ。

【獣相変貌】で大きな狼に変身して、野生の勘を頼りに風車男を見つけたら
飛び掛かって爪と牙で倒していこうか。

自分のせいじゃない、あいつが悪いんだと嘘をつくのなら、
狼の牙からは逃れられないよ。

だって、嘘つきは狼に食い殺されるのがお約束だろう?




 確かに、話を聞いてほしければ顔を出せとは言ったが、
「おや、まさか顔が無いとは思わなかったよ」
 ようやく現れた声の主達に、ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストードはそう溢す。
 オブリビオンとはいえ悪いことを言ってしまったか、なんて思いもしたが、
 オブリビオンだし、大した問題でもないな、と切り捨てて。ペトは淡々と戦闘準備を進めていく。

「さて、さてさて。首がないから見つからないとは、おかしな事を言うもんだ」
 ペトの身体がぶるぶると震え、大きくカタチを変えていく。
 【獣相変貌(ワイルド・アウェイクニング)】。変わる姿は巨大な狼。

 風車男は人の空想より生まれしモノ。その異様の力は人相手により強く働く。
 だが目の前の相手はどうだ。さっきまではまだヒトガタであった。まだ、風車男の持つルールに当て嵌められる規模にいた。
 だが今やペトは大きくて恐ろしい狼だ。

 首がないから何だというのだ。
 お前達には、美味そうな胴体があるじゃないか。

 人より生じた理は、獣には通用せず。
 狼の牙は迷いなく風車男に突き立てられ、爪は肉を引き裂いていく。

 阿鼻叫喚。風車男達は狼狽えて、尚何故どうしてと自問を続ける。
 責任転嫁。自分のせいでない。あいつが悪い。そうして責任の所在を味方同士で押し付ける。
 嘘を重ね続ける度に、狼の牙はより正確に凄惨になっていく。
「だって、嘘つきは狼に食い殺されるのがお約束だろう?」
 ならば風車男に逃れる術はなく。絶対的な関係性を味方につけて、ペトは戦場を荒らして回る。

大成功 🔵​🔵​🔵​

緋月・透乃
うーむ、探してもそれっぽいものは何も見つからなかったのに、本当に敵のほうからでてきたねぇ。というかいつの間にか居たのかな?
ま、でてきたのなら戦うだけだね!

首は無くとも実体があるなら物理的に倒せるはず!
重戦斧【緋月】で片っ端から叩き斬っていくよ!
無敵になった奴は【ひょいっと】持ち上げて他の敵に叩きつけたり、と武器代わりに使うよ。無敵が切れてもそのまま振り回していればいつのまにか死んでるんじゃないかな?

それにしても、首無しの化け物なんて珍しくも無いのに首が無いだけで知覚しにくくなるのかなー?




 先程まで瓦礫を押し退け探索をしていた緋月・透乃。その周囲にはいつの間にか首のない男達、風車男が取り囲んでいる。
「うーむ、探してもそれっぽいものは何も見つからなかったのに、本当に敵のほうからでてきたねぇ。というかいつの間にか居たのかな?」
 不思議に思いながらも、緋月は落ち着いた様子で彼らを見渡す。
「ま、でてきたのなら戦うだけだね!」
 得意の重戦斧を手にとって、緋月は勇ましく風車男達へ斬りかかっていく!

 ドカンと振り下ろされる重戦斧。だがその一撃は大地を割るばかりで、肝心の風車男には当たらない。
 当然だ。風車男には首がない。首がない故に見えないのだ。
 ともかく、彼らはそういうモノなのだ。

「もう!首なしの怪物なんて珍しくもないのに!」
 風車男達はカラカラと笑う。その声は苛立ちを誘い、緋月は戦斧をやたら滅多に振り回す。

 当然の話をするが、
 風車男は知覚し難いというだけで、暴いた今では確かに実体化しており、尚且ユーベルコードによってその場から動けない。
 大きく長い重戦斧を振り回していれば、いずれは当たるわけで。
「そこにいるなー!」
 手応えがあった場所へと手を伸ばせば、確かに風車男の腕を掴み、そして力任せに持ち上げ振り回す!

 見つけさえすれば、知覚し難いという状態は崩れ、彼らの無敵性も解除される。
 千切っては投げ、千切っては投げ――もどかしかった相手へ腹いせとばかりに、そうして緋月は風車男達を薙ぎ払っていく。

成功 🔵​🔵​🔴​

メアリー・ベスレム
あぁ、もう……
触れた狂気を払い落とすかのように
眉をしかめて、鬱陶しげに首を振り
口を防げなければ
首も刎ねられない
その耳障りな声を止めるにはどうしたらいいかしら?

多少の疲労は気にせずに
【継戦能力】にはそれなりに自信があるもの
【凍てつく牙】で冷気をまとい、高速移動で立ち回る
その虫がどんなものかなんて知らないけれど
寒ければ少しぐらい動きが鈍る筈でしょう?

小さい虫でも【野生の勘】で捉えて
【部位破壊】の正確さで仕留めてく
数が多いならまとめて氷漬けにしてあげる

一方的に求められて
使い潰され遺された
哀れでみじめなあなた達
もうあなた達を求める人はいないから
ここでお終いにしてあげる
氷の中で静かに眠りなさい




「あぁ、もう……」
 メアリー・ベスレムは嘆息を漏らす。
 狂気の残響が頭を揺らす。あまりに不愉快だ。
 眉をしかめて、鬱陶しげに首を振り、頭の中の靄を振り払う。
 疲労も感じるが、動きにきっと問題は無い。

 そうして、彼女――メアリは彼らを赤い瞳で睨みつける。
 怒り心頭。当然だ。殺さなければ。尤もだ。

 不快な輩の首を刎ねなければ。口を塞いで静かにしなければ。
 だが風車男には首がない。
 どうしようかと考えて、選んだ獲物は【凍てつく牙】。
 極低温の冷気を纏い、真白い息を一つ吐いて。
 メアリは風車男へと襲い掛かる。

 風車男は無責任な男。戦い自体も他人任せだ。
 喚び出されるのは黄金虫。ブンブンと羽音を立てて、硬い甲殻でメアリ目掛けて突撃しようとするだろう。
 だが、纏う冷気は周囲を冷やし、極寒の環境は虫も男も平等に動きを鈍らせる。
 例外はメアリだけだ。彼女だけが、その場で誰よりも何よりも早く動ける。
 分厚い肉切り包丁は風車男の肉を断ち、放つ魔氷は虫を纏めて氷漬けにしてしまう。

 嘘つきを罰する獣のように。いや違う。
 今この場なら、彼女は無慈悲な氷の女王のように。そう例えるのが良いだろう。

 一方的に求められて
 使い潰され遺された
 哀れでみじめなあなた達

 歌うように、読み聞かせるように、諭すように、嘲るように。
 メアリは彼らへ思いを告げる。

 もうあなた達を求める人はいないから
 ここでお終いにしてあげる
 氷の中で静かに眠りなさい

大成功 🔵​🔵​🔵​

メグレス・ラットマリッジ
アドリブ歓迎

結末を迎えた物語の、その後についてよく考えます
でも、受け取り手である私達が想像した彼らは、所詮偽物でしかない
彼らの本物の未来を、知ることは出来ないのです
というわけで死んでください

空想上の存在を殺すとなれば、やはり周りに死んだと思わせる事でしょうか
つまり説得力、誰もが納得するような派手で恐ろしい一撃を叩き込みます
まあ、雷を落とすだけなんですが……分かりやすくていいでしょう!

見失わないように顔ではなく風車に注目
声には肯定の言葉を返して存在を肯定します


風車男、忘れられた物語。
空想とデッドエンドを愛する者として、きっちりオチはつけさせていただきました。




 メグレス・ラットマリッジは思いを馳せる。
 結末を迎えた物語の、その後について。彼女は日頃、よく思いを馳せる。
 ああだったら、こうだったら、と考えるが、所詮はあくまで自身の想像。
 彼らが本来歩むであったであろう本物の未来を、受け取り手でしかない自分は真に知ることは出来ない。

 それで良いのかも知れない。
 真実知る必要はない。これは私の身勝手な祈りのようなものでしか無いのだから。
 ただ穏やかに、当たり前のような時間がそこに流れてさえいたならば、それだけで良かったのだと。

 だが目の前のアイツラは何だ。
 風車男。空想上の怪異。未だ居座る、忘れ去られた物語。
 男達はカラカラと笑っている。まるで自分達に否がないように。

「では殺しましょうか」
 手にする雷杖に、一層に電撃を迸らせて。
 すべき事は変わらない。ただ雷を落とすだけ。けれどもそれは、先程の自身に落とした雷の比ではない。
 それこそ、直撃すれば命を落とす――そう思えるほどの威力を持つ雷。
 空想の怪物を殺しにはそれで良い。
 さらなる衝撃で塗り潰してしまえば、納得できる恐怖で上書きすれば、彼らは容易く説得されて息絶えるだろう。

 落とすべき場所はしっかりと見えている。
 首のない男へと直接落とす必要はない。それは今もカラカラと音を立てて、無責任な男達の所在と存在を示してくれている。
 【招雷(テリブル)】は迷いなく、男達の手にある風車によって導かれ、
 光と音によって、周囲全てが白く染め上げられる。

「ああ、非道いことをするじゃないか」
「ええそうね。酷い事よ」
 わかっている。分かってはいるのだ。
 それでもと、許せないことがあるからこそ。
 メグレスは確かに、彼らへ終わりを告げるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴェル・ラルフ
奇妙な姿
見えたからには、すべき事はひとつだ

早業を生かして接近を試みる
可能ならば暗がりや戦いの粉塵に紛れて攻撃する隙を狙う

初手は投擲用のナイフによる牽制
近寄る敵の動きを見切って、愛用の如意棒[残紅]で喉元と足元とを2回攻撃し、足元をなぎ払いすることで足払い
そのまま敵に刺さった投擲用のナイフを回収して串刺し、傷口をえぐる

黄金虫が召喚されたら直ぐ様【残照回転脚】
合体による強化は防ぎたい

子どものときは恐ろしかったっけ、首なしの怪物のお話
今は、戦う術を身につけた
もう、君たちは怖くないよ

★アドリブ・連携歓迎




 その姿が見えた時から、
 ヴェル・ラルフの行動は早かった。

 風車男に突き刺さるナイフ。素早く放たれたそれは男の不意を穿ち、ほんの一瞬、動きを止める。
 投擲したナイフに追従するように風車男へ近づくヴェル。手にする如意棒はよく馴染み、故に正確無比に振るわれる。
 一撃、喉元。二撃、足元。
 高速で繰り出された突きは急所と弱点を的確に打つ。
 大きな衝撃を受け、体勢を崩す風車男。更にとばかりに、如意棒にて下段を薙ぎ払う。
 倒れる男。追撃は止まらず。
 馬乗りになりながら風車男に突き刺さっていたナイフを引き抜き、間髪入れずに再度突き刺す。
 深く、深く、確実に。二度と起き上がらないように、傷口を広げて。

 あっけない、とも思った。取るに足らない、とも感じた。

 子供の頃に聞いた首なしの怪物のお話は、とても恐ろしかったけれども。
 今は違う。今は、抗えるだけの戦う術を身につけている。

「もう、君達は怖くないよ」
 羽音を鳴らしてヴェル目掛けてくる黄金虫にも、焦ること無く。
 むしろ合体する事無く突っ込んでくる様子に、好機を見出して。
 黒炎を巻き上げて、【残照回転脚(ザンショウカイテンキャク)】を放つ。

 暗がりを、潜む場所を、暴き立てるかのように。
 爆風は一帯を吹き飛ばし、残炎が辺りを仄かに照らす。
 その場に立つのは、ヴェルのみだ。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『高き森の怪物』

POW   :    光輝にて闇を照らす
全身を【輝かせ、周辺地域を鬱蒼とした森林地帯】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    高きより歩み征く
【自身の巨体】を披露した指定の全対象に【得体の知れない強烈な恐怖】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
WIZ   :    大地の法則を書き換える
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。

イラスト:鴇田ケイ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アウル・トールフォレストです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵達によって、風車男達は全て倒された。
 声の主が消えたのだ。もう狂気の呼び声を気にすることも無い筈だ。
 廃村は一時的に静寂に包まれる。

 だが、長く続かない。

 地鳴りが、森の暗闇より聞こえてきた。


 其れは―――ー―ー――ーー。

 空想であった筈のモノ
 暗い祈りに導かれ、『御伽噺の怪物』という蓑を纏った、埒外よりの侵略者

 在り得ざる存在。


 現れたそれは輝きを携えていた。
 巨人とも呼べる十数メートルはあろうかという巨体。全身に刻まれているのは聖痕だろうか。
 確かに、清らかではあるだろう…一切の無駄を許さないという意味では。

 それが一歩踏み出す度に緑が萌える。
 ただでさえか細い光が、深緑によって更に覆われていく。
 当たり前の筈の様相が、全くの別物へ変わっていく。
 その様子は、目にする猟兵達へ何か異様な感覚を与えるだろう。

 声はない。声はないのだ。
 けれど怪物は叫ぶだろう。『高き森の怪物』は叫ぶだろう。
 大気をも震わせるほどに甲高い音を放って、外敵にへと敵意を顕にする。
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
どうにも妙な感じのするモノだねえ。
まあ、誰であろうと何であろうと、
敵意を向けてくるならやることは変わらないか。

さて、もともと恐怖とかは感じにくい性質だけど、
竜骨の被り物を頭に被ってさらに精神への影響を軽減しようか。

後は【飛天襲爪】で、怪物を飛び越えてしまうくらい高く飛んで、
脳天を思い切り蹴っ飛ばしてやろうか。
自分よりも上からぶっ叩かれる経験はあるかい?

どんな威容も異様も、そういうモノなんだって思えば大したことはないさ。
あたしはどんなものだって、乗り越えていけるんだからね。




 森がざわつく。
 現れた異様に、隠れ潜んでいた動物は逃げ惑い、木々さえも恐怖に支配されている。
「どうにも妙な感じのするモノだねえ」
 けれども、ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストードに変わりはない。
 しいてあげれば、感じ取った雰囲気に念の為にと、竜骨の被り物をした程度だ。
 被り物は精神への干渉を防ぐ装備。ただでさえ鈍らな心は狂気にも恐怖にも揺り動かされる事など無かったが、防壁を張ったことでより強固な守りとなる。

 竜骨の隙間より、ペトの瞳は『怪物』を見上げた。
 影のような顔。輪郭ははっきりとせず、ただ黄金のような炎の瞳が煌々と燃えている。
 敵意。強い感情がそこにある。
「アンタが誰だろうと何だろうと、あたしには分からないけどさ」
 『高き森の怪物』が、鋭い爪を備えた怪腕を大きく振り上げる。
 狙いは一人。『怪物』の瞳はペトを見下ろしている。
 怪腕は豪快に振り下ろされ、瓦礫を吹き飛ばし、地面を刳り、大きな傷跡を残す。

「敵意を向けてくるなら、やることは変わらない」
 声は『怪物』の上空から。
 遥か高く跳躍したペトが、空中で『怪物』を見下ろす。
 どれ程異様であったとしても、どれ程威容があったとしても。
 怯える事は無い。そういうモノだと――それだけのモノだと、線引すれば大したことは無い。
 いつだって自分はそうしてきた。どんなものだって乗り越えられてきた。
 だから、今回だって同じこと。

「自分よりも上からぶっ叩かれる経験はあるかい?」
 放つは蹴撃。【飛天襲爪(レイダース・リープ)】。
 大跳躍を行える程に強化された獣脚の衝撃は、『怪物』の脳天を垂直に穿ち、地面にまで沈み落とした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

緋月・透乃
おおー、でっかいのがでてきたね。村はこいつの能力で森に侵食されて滅んだってことなのかなー。貧しい村が多いダークセイバーだと案外ありがたい能力かもしれないけれど、何事も限度があるよね。それにオブリビオンなら倒すのみだね。
その凄い能力とでかさに見合った強さを見せてほしいものだね!

武器は重戦斧【緋月】を使うよ。
でかい敵だから至近距離まで行ったほうが戦いやすそうだね。
とにかく敵へ向かってダッシュ!攻撃が来ても後退しないで飛び込み等で対応するよ!
ユベールコードには、生えてきた木を切り倒して怪力で積んで足場にして、敵の無敵が収まったら跳びかかりながら菲刃滅墜衝を叩き込むよ!




「おおーでっかいのが出てきたね」
 巨大な異様に動じることが無かったのは、緋月・透乃も同じだった。
 思考は変わらず好戦的で、故にこそか、恐怖を物ともしない。

 その時、『怪物』が光り輝く。それに喚起されるかのように、周囲一帯の緑が鬱蒼と成長を始める。
 それは防御姿勢。伸びる深緑は行く手を阻み、輝きは干渉を跳ね除ける。

「村はこいつの能力で森に侵食されて滅んだってことなのかなー」
 『怪物』の持つ緑を生やす能力に、緋月はふと村が滅んだ理由が頭に浮かぶ。
 光の乏しいダークセイヴァーであれば、案外ありがたい能力なのか?とも思ったが、
 結局滅んでいるのだから、何よりも相手はオブリビオン。
 情け容赦無く倒すのが吉だろう。

「その凄い能力とでかさに見合った強さを見せてほしいものだね!」
 阻む深緑も何のその。大戦斧を振り回し、一直線にと距離を詰めていく。
 戦闘用とはいえ斧は斧。伐採にはもってこいだ。そうして切り倒した木々を、怪力を以て持ち上げては一箇所へと投げ集めていく。
 『怪物』は未だ光り輝いている。緑は尚も上を目指し、緋月はそれは何度も切り倒す。
 だが何事にも限度はある。無制限にも思える『怪物』にもそれはある。
 輝きが次第に収まる、その兆候を、緋月は見逃さない。

 再び距離を詰める緋月。今まで集めた木々を踏み台に、イチ、ニの、サン、と飛び上がれば、
 鎧袖一触、【菲刃滅墜衝(ヒジンメッツイショウ)】。ただただ力任せに振るわれた大戦斧が、『怪物』の身体に叩き込まれる。
 甲高い大絶叫。それは最初に放たれた威嚇の声よりも大きい、痛みによる悲鳴。
 傷口を押さえながら、『怪物』は再びたたらを踏むだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メグレス・ラットマリッジ
アドリブ歓迎

手足が震えが止まらない、目の前の存在は文字通り生きる世界が違うのでしょう
しかし恐怖とは切り拓くモノ、夜に灯を、木々に鉄を。そして胸には克己心!ザクーっとやったりますよ!
……あっ、すみません、やっぱり聖なる者には近寄り難い!

身体が言う事を聞かなくなる前に出来る事はやりたいですね
数の利に任せて様子見、隙とみれば接近。捕捉されにくいよう木々を盾にします。
まずは足に斧を食らわせて移動を封じ、次は腕を落として無力化、がら空きの首を斬り落としましょう


今回は本当に疲れた
周りを見てもお前ほどの怪物はいない、もしかしたら迷い子なのかもしれませんが……
まあ墓は立ててやりますよ、恨まないでくださいね。




 『高き森の怪物』へと果敢に立ち向かっている猟兵達。
 けれども、異様に恐怖を覚える事無く戦える猟兵もいれば、そうでない者もいる。
 メグレス・ラットマリッジは後者だ。
 手足が震え、竦み上がる。
 目の前の『怪物』は、文字通りに生きる世界が違う存在。一体何処から迷い込んだというのだろう。
 このままではきっと、一歩も進めなくなる…そんな予感が、メグレスの心を支配する。

「…いいえ、何を怯んでいるの私」
 恐怖とは切り拓くモノ。絶望という窮地があるが故に、乗り越えた先に希望がある。
 夜に灯を、木々に鉄を。そして胸には克己心を。人は、また闇に折れるわけにはいかないのだ。
「……あっ、すみません、やっぱり聖なる者には近寄り難い!」
 …聖なる気配に怯みかけるも、調子は取り戻せてきた。
 身体が満足に動けなくなる前に、と。メグレスは動き出す。

 乱立する深緑は、よい隠れ場となる。異様なる生命であってもそれは変わらない。
 身を隠し、息を潜み、『怪物』の足元にまで近づけば、
 手にする黒い手斧を思い切りに叩き込む!
 斧は枯れ木のような脚首に深く食い込み、『怪物』も痛みに歩みを止める。

 結果、『怪物』に居場所が知られたとしても、問題はない。
 【絶望の副音】は『怪物』の動きを間違いなく予測し、恐怖に囚われかけていて尚、回避を容易に行う。
 振り下ろされる怪腕は空振り、メグレスは非用意に攻撃してきた仕置とばかりに、斧を手の甲にへと叩きつける。

 更に痛みに悶える『怪物』。手に突き刺さる異物を引き抜こうとする――気が逸れた瞬間に、
 がら空きの頭部を狙って、新たな手斧を投げ放つ。

 知るが良い。『怪物』よ。
 彼女こそは、恐怖(テリブル)の淑女。
 暗がりにて尚生きる《人間》だと言うことを。

「ああ、全く。今回は本当に疲れる…」
 切り落とされ、地面に落ちる樹木角。
 これ以上の戦闘はきっと十全に動けないだろう。そう判断し、溜息をついて、メグレスはその場から離脱する。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴェル・ラルフ
踏み均された地から生い茂る緑
只それだけならば、なんて尊い光景だろう
この違和感を、除けば

初手から容赦しない、地や緑に属するものならば炎は好まないだろう
早業で近づき敵の動きを見切りながら、タイミングを伺って
あの長い腕にナイフを突き立てかけ上がり【燦爛連続擊】

これは居てはいけないモノ
恐怖の感情は幼き頃の捨てきれぬものの名残だろうか
森の奥の闇が誘うようで怖かったことを思い出す
でももう僕は自分の炎で照らせるよ
自分の中で作り出す化け物は、自分自身だと知っているから
振り払えるはずだ

己の血を炎に変える【ブレイズフレイム】
猟兵になって初めて顕現したこの力は、闇を明るくしてくれるはずなんだ

★アドリブ・連携歓迎




 生い茂る緑。荒れ果てた地より、負けること無く生まれてくる生命。
 それだけならば、どれ程尊い光景だっただろうか。
 この胸に巣食う違和感さえ無ければ、どれ程に。

 ヴェル・ラルフは駆ける。地をしっかりと踏みしめて、『怪物』へと一直線に。
 恐怖、恐れていないのかと問われれば、否。
 ヴェルは『怪物』に、恐怖を与えられている。
 暗闇に森の奥へと誘われているかのような、果のない恐怖を思い出されている。
 捨てきることの出来ない、小さな、小さな、無力であった頃の名残が後ろ髪を引いてくる。

 ああ、けれども。

 突き出される怪腕を、止まること無く飛び避けて、
 流れるようにナイフを突き立て、それを足場に怪腕を駆け上がっていく。

 ヴェルはもう、無力では無い。
 超高速の【燦爛連続撃(サンランレンゾクゲキ)】。視認できない程に素早い蹴撃、殴打の連撃を、駆け昇りながら打ち込んでいく。
 そうして怪腕を駆け登れば、先にあるのは、燃える黄金だけがある暗闇の顔。

 ヴェルはもう、知っている。
 真に恐れる怪物は、自分自身の中にあるのだと知っている。
 そうだ。この輝きは暗闇だ。目を潰して、あるべき光を奪う暗闇だ。
 盲目の恐怖…ああ、なんだ。だったら、この恐れは振り払える。

 『怪物』が目の前のヴェルを捕まえようと、もう片方の怪腕を伸ばす。
 けれども、腕は空振りに終わるだろう。
 【ブレイズフレイム】。
 ヴェルの身を引き裂いて吹き出す地獄の炎が、その場、空中からヴェルを吹き飛ばし、同時に『怪物』の顔を焼き焦がす。

 猟兵になって初めて顕現したこの力は、闇を明るくしてくれるはずなんだ。
 いつか見た茜色のように。
 炎は強く燃え、辺りを確かに照らし出していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メアリー・ベスレム
まぁ、あなたとっても大きいのね!
それにきらきら眩しくて
だから神様って呼ばれるの?
だからみんな恐れてしまうのかしら?
えぇ、だけれど
大きくて恐ろしい『御伽噺の怪物』は、あなただけじゃないわ

真の姿、人狼病が進行した半獣半人の姿を現して
【私を食べて】で大きくなれば
大きくて悪い狼(Big Bad Wolf)のできあがり!
確かにその大きさには圧倒されてしまうけど
自分も同じぐらい大きいのなら、感じる恐怖は和らぐ筈でしょう?

味方の猟兵を避けている余裕はないかしら
荒ぶる【野生の勘】の赴くままに
【ジャンプ】から【重量攻撃】飛び掛かり
敵の攻撃は【激痛耐性】【継戦能力】で気にも留めずに
爪で引き裂き、牙で食らい付く!




「まぁ、あなたとっても大きいのね!」
 メアリー・ベスレムは感嘆の声を上げる。
 神様なんてよく分からなかったが、一目見たなら成程、想像がついた。
 きらきら眩しく輝いて、辺り一面緑の宝庫。まるで奇跡のような所業。
「だから神様って呼ばれるのかしら?だからみんな恐れてしまうのかしら?」
 ああ、だけれども。
 忘れてはならない。メアリが最初に言った言葉。

 《殺せ、というなら殺すだけだけれど》

 ええ、それに。
「大きくて恐ろしい『御伽噺の怪物』は、あなただけじゃないわ」
 ぞわり、とメアリの姿が変わっていく。
 立派な耳に大きな尻尾、牙を生やして、爪は鋭く。
 半獣半人――『人狼』としての真の姿を顕にして。
 けれど足りない。まだ足りない。
 だからといって取り出すは、何処からともなく現れた、手のひらほどの小さなケーキ。

 不思議なケーキは【私を食べて(イートミー)】。御伽噺のおかしなお菓子。
 ぱくりと一口、ケーキを食べれば、メアリの目線がグンと高くなる。
 二口、更に頬張れば、目線は止まるところを知らずにグングンと伸び上がり続けて、
 三口で平らげてしまえば、ああ、何てことだ!
 『高き森の怪物』にも負け無いほどに、大きくて悪い狼(Big Bad Wolf)のできあがり!

 …『高き森の怪物』の恐怖は、相手よりも巨体であるが故に発露する。
 同じ程に大きくなれば、ましてや同じ『怪物』ならば。
 何を恐れる必要があるのだろう?

 ズン!と一歩、メアリは踏み出す。
 真の姿の影響か、昂ぶりが抑えられない。抑える必要もない。なんだ。だったら遠慮はいらない。
 ドン!と大地を震わして、巨大なメアリが跳び上がる。
 獣の欲が赴くままに、『怪物』へと、牙を、爪を、突き立てる!
 メアリが上で、『怪物』が下。『怪物』もただではやられず、長い怪腕でメアリを引き剥がそうとする。
 だがもうどうしようもない。メアリは痛みを気に留めず、ただ只管に貪り尽くす。

 ああ、これこそがメアリー・ベスレムだ。
 怪物をも食い殺す獣。開放された復讐者。

 そうして、
 頸動脈辺りをメアリが食い千切った辺りで、『怪物』はようやく動きを止め、輝きを止めた。


 怪物が塵芥となって消えていく。
 生み出されていた緑もまた、怪物の消滅と共に枯れ、辺り一帯は元の――荒れてしまってはいるが、幾ばくか木々が残り、落ち着いた雰囲気に戻った――状態になるだろう。
 手入れをする必要はあるだろうが、人が住まうに適した土地とはなっただろう。

 猟兵達は確かに、空想を追いやることが出来たのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年06月16日


挿絵イラスト