#ダークセイヴァー
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●相違
過去が消費され骸の海へと集積していく。
美しいものも、醜いもの、なにかもが過去になっていく。時間だけがあらゆる怨恨と傷を癒やすのだとしたら、骸の海へと流れ着く絶望は決して、これからも癒やされることのない過去の化身となることだろう。
希望があるから絶望が在る。光があるから暗闇がある。過去より伸ばされた腕は絶望の塊。
己の対極にあるものが妬ましい。何故、己はああではないのかと見上げるだけの存在。己が暗闇なのだとすれば、世界に選ばれた戦士は希望の光そのものである。
闇と夜の世界であるダークセイヴァーにおいて、希望の光は眩く輝く。
その綺羅星の如き輝きは、許してはおけぬ。
輝きがあるから、人々は絶望しない。闇に染まらない。己と同じにならない。
それは断じて許せない。何もかもが己と同じ暗闇に塗れなければならない。
呪いあれ。
この世界に遍く絶望の闇を齎さん。
●狼煙
それは呪いを撒き散らす球体であった。崩呪の遊星。そう喚ばれるオブリビオンは、地上を見下ろしながら、呪いを振りまき続けた。
そうすることが己の性質であり、義務であり、職務である。
振りまかれ続ける呪いは、地上に住まうダークセイヴァー世界に存在する人間たちの集落を尽く苛み続ける。
ただただ機械的に。己に与えられた役割を全うするまで、それは続く。
呪いあれ。呪いあれ。全ての生命に呪いあれ。
地上の人々の救いを求める声を高らかに響かせるために、無辜の人々の生命をくべる。
それは狼煙である。世界に対する狼煙。気がつけ。気が付かぬのならば、これよりもさらに薪をくべるのみ。
気づけ、気づけ。己の役割は狼煙を上げることである。
●憧憬受ける者たち
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えるのは、宝龍印・ヂュイン(バオロン・f26469)だった。
「やあ、みんな。急ぎの招集であったのに応えてくれてありがとう。感謝するよ」
ヂュインは頭を下げる。予知を受けての事件だということはわかっている。それがとても、切迫したものであるということは、急ぎの、という言葉が物語っていた。
「世界は闇と夜の世界、ダークセイヴァー。どうやら、人々が住まう集落の上空に現れたオブリビオンが呪いを振りまいて、人々を呪殺しようとしているんだ。それもとても規模の大きい呪いを使ってね」
ダークセイヴァー、それは闇と夜に覆われた異端の神々とヴァンパイアの支配におかれている世界である。
ヴァンパイアの支配下を逃れて生きる人間たちもいるが、殆どはヴァンパイアの領地の支配下において虐げられる生活を送っているのだ。
その一つの集落にどのような理由かはわからないが、崩呪の遊星シュヴェルツェと呼ばれる球体のオブリビオンが呪いを振りまいて襲っているのだという。
「急にまたどうしてそんなって思うんだけれど、彼らオブリビオンにとって人間は暇つぶしの玩具くらいの認識なのかも知れないね。気まぐれに殺す、気まぐれに潰す、それくらいのことなのかもしれない。でも……」
わかりやすいけれど、なんだか目的がありそうな事件であるとヂュインは首をひねる。グリモア猟兵の予知に引っかかって猟兵が駆けつけてくることをわざと誘っているような節があるのだ。
「オブリビオンに何の目的が在るのかわからない。でも、もしかしたら、本当の狙いは、あたしたち猟兵を引きずり出すことなのかも。有り体に言えば、罠だよね」
わかりやすいオブリビオンで猟兵を引っ張り出す。引っ張り出したら、倒せる算段がある……そういう目的あるのかもしれないのだ。
そもそもダークセイヴァーはオブリビオン支配盤石の世界である。わざわざこのように猟兵を狙い撃ちするようなことをする者が多く存在するとは想い難い。
だからといって、このまま集落の人々を見殺しにすることも出来ない。
今ならば、被害は最小限に抑えられるかもしれない。それ故に急を要する呼びかけだったのだ。
「うん、君たちの実力のことはよくわかっているから、心配はしていないんだけれど……でも、どうにもキナ臭いよね。どうか油断はしないように……この窮地を乗り越えられるってあたしは信じているから」
そう言って猟兵たちを送り出すヂュイン。その瞳に心配そうな色が僅かにあったかもしれない。
だが、己の身を案じるよりも、猟兵たちには救わねばならない生命があることを知っていることだろう。
猟兵を罠にはめようとするのであれば、相応の報いを受けてもらわねばならない。
―――かくて猟兵たちは闇と夜の世界ダークセイヴァーへと赴くのだった。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はダークセイヴァーでの事件となります。猟兵を標的にした事件のシナリオになります。全章を通して、三連戦の厳しい戦いになります。
猟兵を倒すことを目的にしたオブリビオンの暴虐を防ぎましょう。
●第一章
ボス戦です。呪いを撒き散らし、集落に住む人々を襲うオブリビオンを撃破しましょう。
予知を受けた段階で集落の上空へと出現していますので、素早くこれを排除しなければ、集落に撒き散らされた呪いによって人々の犠牲が出てしまいます。
意味不明な言語を操りますが、対話は不可能です。
●第二章
集団戦になります。第一章のオブリビオンを撃破した後、少しの休息も与えないように集落を包囲するオブリビオンとの戦いになります。
完全に包囲され、集まった猟兵を逃さないかのように連戦を強いてきます。
猟兵が目的ですが、人間となれば見境なく人々を襲うことでしょう。
●第三章
ボス戦です。集落を包囲するオブリビオンを殲滅すると現れるボスのオブリビオンになります。
一章のオブリビオンよりも遥かに強力な存在です。人々の絶望を好む存在であり、第一章、第二章で人々の犠牲が多ければ多いほどに強力となるでしょう。
意思疎通は不可能ですが、猟兵に対する羨望と嫉妬、相容れぬ存在としての憎悪を宿していることだけはわかります。
闇夜に包まれた世界、ダークセイヴァーにおける連戦連戦の厳しい戦いを強いられるシナリオになりますので、皆さんのキャラクターが苦境を乗り越え、絶望の中から希望を掴み取る物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『崩呪の遊星シュヴェルツェ』
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POW : 呪殺
【雨霰と降り注ぐ多種多様な呪い】が命中した対象に対し、高威力高命中の【収束した呪いの破壊光線】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 呪狂
レベル×5本の【滅殺・崩壊・不死殺しの呪詛が籠った呪】属性の【ホーミングする呪いの矢】を放つ。
WIZ : 呪天
【中央の主星と周囲の衛星】から【様々な呪いを籠めたどす黒い呪いの波動】を放ち、【爆発、凍結、感電、石化、衰弱などにより】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:夏目零一
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「死之宮・謡」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵たちが急行した集落の上空に現れたるは、崩呪の遊星シュヴェルツェ。
機械音のような不可思議な声が漏れ出ているが、そこに人間との対話ができそうなものがあるようには到底思えなかった。
ただただ、上空より振りまくのは呪詛。猟兵にとっても、その呪詛を浴びれば傷を追うような強力なものが、一般人である人間たちに触れればどうなるか。それは確実なる死である。
その崩呪の遊星を見上げる人々の瞳は不安と恐怖に染まっている。
今からでは避難も間に合わない。一刻も早く、この集落から引き離すか、迅速にオブリビオンを倒し、排除するしか無い。
急がなければ、犠牲者が出ることは確実である。
オブリビオンに舞台を整えられたような、気持ちの悪さが猟兵達の心に塗りたくられていく―――。
花盛・乙女
化生に語る舌はない。迅速に排除してくれる。
優先するべきは人々の保護だな。
呪詛が目に見えるならば斬って払おう。
「ジャンプ」を繰り返し空中で霧散させる事に尽力する。
目に見えないのであれば仕方ない。
大声で避難を促し敵を討つ。
誰かが呪詛を受けそうになるならば身を呈して「かばう」。
光線は「武器受け」に「激痛耐性」と「気合」でどうにかできよう。
腹立たしいのは天上に敵があることだ。
呪詛を払いつつ【雨燕】にて一閃。
それだけでは終わらせん。「2回攻撃」だ。
球体をつかむように「手をつなぐ」、「鎧砕き」と「怪力」にて地に叩きつけてくれる。
人々を見下ろす事など貴様にはさせん。
這い蹲って骸の海に還るがいい。
空に舞い浮かぶのは崩呪の遊星シュヴェルツェ。機械のような音を響かせながら、雨霰のように振りまくは呪詛。
集落の上空より放つそれは、人に当たれば即座に呪いによって死に絶えるもの。天より降り注ぐそれを防ぐ術を人々は持たず、かと言って逃げることもできずに、ただ天上を見上げることしかできなかった。
何故。
その言葉を投げかけた所で答えが返ってくるわけではない。
それはオブリビオン。過去の化身にして今を食いつぶし、未来を殺すものなれば。
呪詛が降り注ぐ。逃げ惑う人々。幼いものと年老いたもの。逃げ遅れるものたちの上へと容赦なく降り注ぐ呪詛は、集落を恐怖のどん底まで叩き落とした。
また一人幼き者が倒れ込む。その上に降り注がんと墜ちる呪詛。
その呪詛が過去の化身たるオブリビオンの恩讐によるものであるのだとしたら、それを打ち払うのは猟兵である。
花盛・乙女(羅刹女・f00399)の太刀たる黒椿が呪詛を切り払う。
その身は羅刹。黒曜石の一本角は誉高く。帯びた太刀により幼き者への呪詛を払った彼女は小脇に幼きものを抱えて飛び退る。
「化粧に語る舌はないと言ったが、かような幼き者にまで累が及ぶのであれば、疾く排除してくれる」
彼女の言葉は怒りに満ちていた。天上にありて一方的に呪詛を振りまくオブリビオン。怒りが溢れてくる。抱えた幼き者を安全な場所まで運ぶ。
ここならば大丈夫だろうと判断してのことだが、どちらにせよ、あのオブリビオンを迅速に排除しなければ何処にいても同じだ。
「この子らを頼んだ」
短く集落の者たちへと告げると乙女は駆ける。一歩進む度に、この身に宿る怒りが原動力のようになって力が湧き上がる。見上げる先には悠々と空に浮かぶ崩呪の遊星シュヴェルツェ。
大声で避難を呼びかけながら、その降り注ぐ呪詛を切り払い、打ち払う。その度に遊星から放たれる怪光線が乙女目掛けて放たれるが、それこそ好都合であった。
「私に攻撃の目が向くのであれば、他に目を向ける暇もあるまい!」
次々と雨のように降り注ぐ破壊光線をかいくぐり、乙女は飛ぶ。それは地を疾走する火食鳥の速度のまま放たれる斬撃。
呪詛を打ち払い、集落の家屋の屋根を伝って、さらに高く跳ぶ。遊星より放たれる呪詛が一層彼女を狙い、撃ち落とさんと放たれる破壊光線を太刀で受け、裂帛の気合でもって防ぎ切る。
彼女のユーベルコード、我流実戦術【雨燕】(アマツバメ)が発動する。
「動くなよ。動かなければ、痛みもないさ……だが、彼らを見下ろす貴様には、さらなる痛みを与えなければならぬ!」
剣刃一閃。
空間すらも断絶するかのような強烈な一撃は、遊星の呪詛を切り飛ばし尚、その体へと斬撃を届かせる。
だが、それだけでは地に堕とすには足らない。
「これでは終わらぬと言った―――!」
足場定まらぬ空中に置いて、さらに構えは解かれない。さらなる剣戟が空を飛ぶ。十字が遊星に刻まれ、高度が落ちる。
かの斬撃は超高速故に、見ているものは一撃を放ったようにしか見えなかったことだろう。
乙女は家屋の屋根へと着地し、さらに加速するように駆ける。
「人々を見下ろす事など貴様にはさせん!」
再び跳躍する。その手は遊星を構成する球体へと伸ばされる。それは斯様な暴虐を起こした者への怒りである。
遊星の球体を掴み、空に浮かぶそれを強引に引き寄せ、恐るべき怪力でもって地面へと叩きつける。
「貴様に空は似合わぬ。這い蹲って、骸の海へと還るがいい―――!」
呪詛を撒き散らし、無辜の人々を傷つけたという乙女の怒りの一撃を受け、空に浮かんでいた崩呪の遊星シュヴェルツェは、地に墜ちるのだった。
成功
🔵🔵🔴
春乃・結希
光を羨むだけ羨んで、自分には無いから消えてしまえばいいと…
なんて勝手な想いなんだろう
それが役割だというのなら、産まれたことを後悔して、ひとりで消えてしまえばいいのに
UC発動
暴風を纏い、『wanderer』で強化した脚力【怪力】での踏み込みにより
瞬時に最高速に達する飛翔【空中戦】
襲いくる呪詛を
『withと共に在る』限り砕けない勝利への意志【勇気】
どんな敵だろうと絶対に引かない【覚悟】で振り払い
己が強さへの信仰を込めた一撃を
旅人として生きて行くと決めた時から
骸の海に還る覚悟は出来ている
…あなたに還せるものなら還してみろ
私が、世界を歩いて集めた幾多の思い出は
絶望を払う光になる
羨望の眼差しは、光り輝くものを見上げるが故に、いつか陰るものである。それを理解する者としない者。その違いは決定的な溝を生むことだろう。
理解とは己に在るものを知ることではなく、己に無い物を知ることである。
故に、理解から最も遠い存在へと成り果てるのは、あまりにも道理であったことだろう。だが、道理から外れた存在は、もはや呪いである。
崩呪の遊星シュヴェルツェは、そういうオブリビオンである。知性はあるのかもしれない。だが、相互理解は不可能である。
その証拠に人間の集落に振り乱れるようにして放たれる呪詛は、確実に人々を蝕んでいく。悲鳴と恐怖に駆られた混乱が集落に広がっていく。
その様子を見上げながら、駆けていたのは春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)である。彼女のユーベルコードによって纏うは、暴風。
まさに彼女の心象そのもの荒れ狂う暴風であった。
「光を羨むだけ羨んで、自分には無いから消えてしまえばいいと……なんて勝手な想いなんだろう。それが役割だというのなら、生まれてきたことを後悔して、独りで消えてしまえばいいのに……!」
彼女のブーツに強化された蒸気魔導が唸りを上げる。一歩を踏み出す度に己の力が足に集まっていく。一歩の歩幅が上がっていく。
地割れすら起こすほどの踏み込みは、助走となって瞬時に最高速度へと達する。
大地を割り、飛び上がる結希の体。浮遊感によって重力を自覚すると同時に、降りかかる呪詛を彼女の大剣『with』によって払いのける。
「それができないのなら……!そんなはた迷惑な想いなんて……!」
彼女の心に去来するのは、『with』と共に在る限り砕けない勝利への意志。それは人を勇気と呼ぶのかもしれない。
雨のように降り注ぐ呪詛をマーキングにし、放たれる破壊光線。それが霰のように彼女に襲い来る。だが、それは絶対に引かぬと決めた覚悟の前には、ただの礫にも劣る。
彼女にはできている。覚悟が。
それは彼女が『with』と共に旅人として行きていくと決めた時からあるものだった。
いつかは彼女も骸の海へと還る。その覚悟はある。
だが、それは今ではない。
「私には覚悟がある。人を傷つける者を全て許さない。『with』と共に在る私は、最強なのだから!」
瞳が輝く。振りかぶった大剣『with』が彼女の言葉に応えるように増強された攻撃力とともに崩呪の遊星シュヴェルツェよりもさらに高く空へと舞い上がる。
最上段より振り下ろされた大剣が、呪詛振りまく遊星へと躊躇なく振り落とされる。
斬撃はかの遊星を叩き割るまでは行かなかったが、地に再び叩き落とす。重たい音が響く。爆心地のようにめくれ上がった大地。
「……あなたに還せるものなら、還してみろ。私が世界を歩いて集めた幾多の思い出は―――!」
さらに空より急降下するように大剣を振りかぶるのは、ありとあらゆる困難、災難を振り払う『withと共に在る者』。
その一撃は、呪詛すらも跳ね除ける。
「絶望を払う光になる―――!」
希望を灯す最大の一撃が、失墜した遊星の巨躯に罅を入れるのであった―――!
成功
🔵🔵🔴
月・影勝
火急の用と聞いて景勝、参上致した
罠かもしれぬじゃと?ふむ、大いに結構
罠を仕掛けるのも罠にかかるのも儂は得意じゃからな!
さてそこの丸いの、わしの目の前では攻撃はせん方が良いぞ
無差別に人々を狙うなぞ以ての外よ
「人を呪わば穴二つ」という諺がある、他者へ向けた悪意は必ず己が身へ帰ってくるものじゃ
…と、まあ聞く訳も無さそうじゃが。
放たれた攻撃が着弾する前に【ウサギ穴】を召喚
願う穴の入り口は【矢の真ん前】と【わしの目の前】
願う穴の出口は【崩呪の遊星】の直上!
己の放った矢雨と、一緒に穴より躍り出るわしの櫂の一撃によるダメ押しじゃ!
人を呪わば穴二つ…二つどころじゃ無くなったが、なかなか的を得た言葉じゃのう?
他者の存在を呪うのだとすれば、それは如何なる理由からか。
己の存在を呪いに変えて空へと浮かび上がる崩呪の遊星シュヴェルツェ。理解不能な言語が機械音のように鳴り響く。
その姿が如何なるものであれ、他者の存在を呪うのであれば、それは猟兵の敵である。
ダークセイヴァーは闇と夜の世界。ヴァンパイア支配盤石の世界である。そんな世界においてオブリビオンが斯様に活発に活動するのはあまりにも不自然であった。
その不自然さは必ず猟兵に察知される。ならば、その行動にあまり意味は見いだせない。仮にこれが罠だとして、猟兵はこれを見逃すだろうか。
答えは否である。
「火急の用と聞いて、影勝、参上致した」
呪詛降り注ぐ人間の集落へと姿を表したのは、月・影勝(かちかち山の玉兎・f19391)である。ウサギの耳を持つ獣人のような少年。その姿は和装に身を包み、この世界において目立つ存在のように思えるが、彼が猟兵である以上、その違和感を覚えるのはオブリビオンだけである。
降り立つ集落は、呪詛の雨によって阿鼻叫喚地獄の絵図であった。
逃げ惑う人々。老いも若きも、関係なく呪詛に侵される。その光景は影勝にとって、彼の心の内に宿った炎を燃え盛らせるには十分な光景であったのかも知れない。
「罠かもしれぬと言われたが、ふむ。大いに結構である!罠を仕掛けるのも罠にかかるのも儂は得意じゃからな!」
己の身に纏った炎が彼の感情を受けて燃え盛る。それは彼の復讐者としての力の一端であった。
空に浮かぶ崩呪の遊星シュヴェルツェを見上げる。あれなるは呪詛を振りまくオブリビオン。それに向かって影勝は言い放つ。
「さて、そこの丸いの。儂の目の前では攻撃はせん方が良いぞ。無差別に人々を狙うなぞ以ての外よ」
ぴ、と手にした櫂を突きつける。それは警告でああった。だが、遊星との対話は不可能である。それは、あのオブリビオンがただ、己の役割を果たすためだけに呪詛を振りまく存在であるからだ。
「人を呪わば穴二つという諺がある。他者へ向けた悪意は必ず己が身へ帰ってくるものじゃ」
と、まあ聞くわけもなさそうじゃが、と嘆息する。元より意思疎通が可能であるとは思っていもいない。
猟兵とオブリビオンである以上、敵同士である。戦う宿命にあるのだから。だが、明確に互いが滅ぼし合う対象であるということはわかっている。
崩呪の遊星シュヴェルツェの体を構成する球体がせわしなく蠢く。
煌めくのは、球体の数々。天体を思わせるそれらが輝いた瞬間、放たれるのはあらゆる呪詛を込めらた大量の矢である。
受ければ確実に呪詛に苛まれ、呪われた傷を追うのは必死である。だが、影勝は慌てること無く、彼のユーベルコード、ようこそウサギ穴へ!を発動する。
「不思議のトンネルに飛び込めばその先には、非日常が待っておるぞ!警告はした!どんな痛い目にあっても儂は知らぬ!」
矢が放たれた瞬間に現れたのは次元と次元を繋ぐうさぎ穴!吸い込まれるように大量の矢が穴へと入り込むと、影勝は目の前のウサギ穴へと飛び込む。
そう、彼のユーベルコードは任意の場所にウサギ穴を作り出しつなげるのだ。
「もうわかったようじゃの!そう!こういうことじゃ!」
矢を吸い込んだ穴の出口は、崩呪の遊星シュヴェルツェの直上!放ったはずの呪詛を込めた矢が放った本体の上から襲い来る。
己の放った呪詛に塗れる遊星がぐらつく。だが、それだけでは押し込めるわけもない。
「人を呪わば穴二つ……!」
さらに直上より現れるのは、ダメ押しのように躍り出た影勝!手にした櫂を振り上げ、強烈な一撃を遊星へと加える。
その衝撃に矢によって損壊を受けていた球体のいくつかが割れ、砕け散る!
「……二つどころじゃなくなったが、なかなか的を得た言葉じゃのう?他者の痛みを知って、諺の意味を解するがいい!己の業、骸の海へ還ることによって贖うのじゃ」
再び振り下ろされる櫂の一撃が、さらなるダメ押しとなって放たれ、遊星を失墜させるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…ん。たとえ敵を倒し人命を護ることが出来ても、
集落が汚染されれば、此処は人の住めない土地になる…か
…お前達の思い通りにはさせないわ
骸の海に還るがいい、崩呪の遊星…!
自身の生命力を吸収して魔力を溜めUCを発動
敵の呪属性攻撃を上方に展開した大魔法陣のオーラで防御し吸収
吸収しきれない呪いは呪詛耐性と気合いで耐え周囲の汚染を防ぐ
…っ、呪いは私が防ぐ!貴方達は今の間に避難を…!
第六感を頼りに限界か好機を見切り【血の獄鳥】を発動
吸収した呪詛で限界突破した黒炎鳥に暴走魔法陣を纏わせ空中戦を行い、
敵に切り込み自爆して傷口を抉る2回攻撃のカウンターを行う
…今まで降らせた呪いも、ついでに持っていきなさい。地獄にね
闇夜に包まれた世界にまた一つ悲鳴と恐怖が混乱を引き起こす。
降り注ぐ呪詛。何が起こったのか、その集落の人々はわからなかったことだろう。自分たちが一体何をしでかしてしまったのか、理解できずに降り注ぐ呪詛から逃げ惑うことしかできない。
こんなことがあっていいのか。そう、ヴァンパイア支配盤石なダークセイヴァーにおいて、このようなことは、ほんの気まぐれのように引き起こされる。
何故?と問うことは許されない。許されとしても、その者に待つのは絶対的な死であるか、暴虐非道の拷問であろう。だから逃げ惑うしかない。やり過ごすしかない。
進んでも地獄であり、戻っても地獄である。
だが、そんな地獄の絶望の最中にあっても希望は輝く。
「……ん。たとえ敵を倒し人命を護ることが出来ても、集落が汚染されれば、此処は人の住めない土地になる……か」
舞い降りたのは、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)。銀髪が月光に煌めく姿は、人々の希望足り得るか。
見上げるのは、崩呪の遊星シュヴェルツェ。球体で構成された歪な姿。機械音のような音だけが響き渡り、かの遊星が何を思って行動を起こしたのかはわからない。
だが、あの遊星が呪詛を振りまき、この集落を滅ぼそうとしていることだけはわかった。
「……お前たちの思い通りにはさせないわ。骸の海に還るがいい、崩呪の遊星……!」
リーヴァルディは駆ける。集落の空に浮かぶ遊星の振りまく呪詛は、あまりにも無差別すぎた。ただ、それだけであるのであれば、リーヴァルディも防ぎ切ることができたかもしれない。
だが、遊星の衛星たちが輝き、波動を発する。それは様々な呪いを込めた無差別な波動であった。
瞬時に判断し、リーヴァルディは己のユーベルコードを発動させる。
吸血鬼狩りの業・降魔の型(カーライル)。彼女の姿を擬似的な魔人へと姿を変えさせる。展開した大魔法陣が頭上に広がる。
「……血 によりて生くる者、血によりて滅びぬ」
自身の頭上から降り注ぐ波動をすべて防御し、吸収しつくす。それは自身の力へと変えるのだが、あまりにも攻撃が広範囲すぎる。
かの大魔法陣の展開領域であってもカバーしきれない……!
「くっ……!このままでは……!―――!」
リーヴァルディの瞳に映ったのは、逃げ遅れた人々。家族だろうか、幼い者たちに覆いかぶさるように呪詛を防ごうとする男女。間に合わない。
リーヴァルディの理性はそう告げている。間に合わない。救えない生命もある。
だが。だが!その程度の理性が死に瀕する生命を救わぬという選択を取らせるはずもなかった。
魔法陣の外に出るリーヴァルディ。駆ける。間に合う間に合わないではない。そうしなければならないと感じたからこそ、彼女は歯を食いしばる。
彼女の背中に、腕に、脚に。呪詛が降り注ぐ。オーラ防御でも防ぎ切れない。
だが、間に合わせてみせる。その裂帛の気合と共に、今正に呪詛が降り注がんとしている家族達の頭上の魔法陣が展開する。
既の所で間に合った魔法陣による防御。そこに駆けつけ、リーヴァルディは避難を促す。
「……っ、呪いは私が防ぐ!貴方達は今の間に避難を……!」
呪詛によって背中が爆ぜる。遊星の攻撃はリーヴァルディを追い詰めていく。自身の身を盾にして人々を護る姿は、さらなる呪詛を招くように降り注ぐ。
人々をなんとか逃がす事はできたが、リーヴァルディを苛む呪詛は今だ健在。
空に浮かぶ遊星を睨めつける。
吸収された呪詛を魔法陣が増幅していく。己の限界はすでに超えた。だが、限界を超えたからと言って、自身が膝を折るわけにはいかないのだ。
なぜなら、彼女は猟兵であるからだ。
手から放たれた魔法陣より現れたるは、血の獄鳥。黒炎纏う翼は空に飛び上がり、遊星へと叩きつけられる。
その切っ先は、遊星へと突き刺さり暴走に近い形で爆ぜる。爆炎と黒炎が上がり、遊星は失墜していく。
それだけでは飽き足らない。
呪詛の雨の勢いが弱まった瞬間、リーヴァルディは大鎌を構えて飛び立つ。血の獄鳥の自爆によって開いた遊星の傷口へと大鎌の刃を突き立て、広げる。
怨嗟のような機械音が遊星から絶叫のように響き渡るも、リーヴァルディは冷ややかに見下ろすばかりである。
「……今まで降らせた呪いも、ついでに持っていきなさい。地獄にね」
再び振るわれる大鎌。その一撃は、遊星を地に堕とし、振りまいた呪詛に塗れた大地へと沈ませるのであった―――!
成功
🔵🔵🔴
宮落・ライア
演出真の姿:透き通る大剣の担い手
【星剣の担い手の継嗣】で【鎧無視攻撃・破魔・属性攻撃・呪詛耐性】習得
【希望の流星よ導け】で敵の下辺りにいる一般人を対象にして敵よりも高い位置に転移し、遊星の上に落ちる。
そして【星剣よ、運命を切り開け】を発動し遊星が放つ呪いの原動力を
断つ。
迎撃してきたのなら起動してるUCでもって薙ぎ払う。
はっ!呪いを宿した星か。奇縁だな。
奇縁ではあるが、悪縁じゃない。
希望を宿した星の担い手がそれを落とせると証明してやれるんだから。
整えられた舞台であるのなら尚更輝けるというものだろう?
観客にも、仕掛け人にも魅せ甲斐が出るって物さ!
縁というものは不思議なものである。互いの存在を意識しなくても惹かれ合うのだから。それは星の瞬きの間にある引力のようなものであったのかも知れない。
それを奇縁と呼ぶか、悪縁と呼ぶかは人それぞれであろう。
だが、一つ言えることは、猟兵とオブリビオンは常に引き合うのだろう。星剣の担い手は、闇夜の世界ダークセイヴァーに立つ。
見据えるは崩呪の遊星シュヴェルツェ。その姿は最早満身創痍である。再び空に上るその姿を、宮落・ライア(ノゾム者・f05053)は憐れだとは思わなかった。
なぜなら、己は星剣の担い手である。その剣に込められしは希望の光。闇と夜の世界であるダークセイヴァーにおいて、その星々は天に在る輝きではない。
「はっ!呪いを宿した星か。奇縁だな。奇縁では在るが、悪縁じゃない」
そう、不思議な縁によって惹かれあう猟兵とオブリビオン。それは時に悪しき縁であることもある。
だが、これは違うとライラは断言する。
「希望を宿した星の担い手がそれを落とせると証明してやれるんだから」
彼女のユーベルコードが発動する。それを見定め、遊星から放たれるのは様々な呪詛の束ねられし破壊光線。
しかし、その破壊光線がライアを捉えることはなかった。
上空より放たれたのは星の光。遊星の巨大な体が、その波動によって大地へと叩き落される。
それは不可思議な現象であった。星の光を纏うライアは、すでに遊星の遥か頭上へと舞い上がっている。
それがユーベルコードによるテレポートであると分かるものはいなかっただろう。
「これが整えられた罠。舞台であるっていうなら、尚更星は輝くさ!何処で見ているかわからないが!そういうことだろう!」
これを仕組んだオブリビオンがどのような思惑を持っているのかは、わからない。 だが、これが罠だというのなら、その尽くを打ち破って星剣の切っ先を突き立てるのみである。
遊星の遥か頭上から振り下ろされたるは星の輝。星剣の担い手の継嗣:星剣よ、運命を切り開け(ウンメイニアラガエ・アキラメルナ)。
それは物質的な破壊ではなく、悪縁や呪い、定められた死の運命を破断する一撃。
「この星の輝きは、天の星ではない!地上に遍く人々の心に宿る希望の星の輝き!受けろよ……!」
ライアの振るう星剣が崩呪の遊星シュヴェルツェの根源たる呪詛を斬り伏せる。
一瞬の星の煌きは、満天の星空よりも眩く輝く。
陽光にも似た輝きは、わずかであるが、絶望に塗れた呪詛を打ち払い浄化する。
そう、星剣の担い手は此処にあり。
かくて、地上の呪詛を取り除かんとするのである―――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『病の先触れ『ヤミイロシチョウ』』
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POW : 其は貴賎問わず等しく与えられるもの
【蝶が擬態した髑髏の爪】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : いずれ来る時に悔いること無き様
【不治の病に罹る未来を相手に予期させるため】【不吉と忌み嫌われる姿を目前に晒すことで「】【身体的苦痛」「不自由」「愛別離苦」の心象】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : 死の訪れに備えせよ
【自身や親しい存在の病や死への恐怖】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【死病を運ぶ髑髏の霊】から、高命中力の【体力を奪う毒の鱗粉や感染力の強い病原体】を飛ばす。
イラスト:マツクロ=ダイナ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
崩呪の遊星シュヴェルツェは失墜し、集落の大地へと堕ちた。
骸の海へと帰っていく球体の姿を霧散させていく。
歓声が上がる。人々の恐怖と混乱に満ちた声は、喜びの声に変わるのだった。
だが、猟兵たちににはわかっている。これはただの前哨戦であることを。
嫌な羽音が集落に響き渡る。それはこの襲撃された集落全てを包み込むほどの大量の羽音でもって、希望を塗りつぶさんとしていた。
病の先触れ『ヤミイロシチョウ』―――。
無数の蝶で構成された美しくも、病を運ぶ疫病の徒。
その群体が、圧倒的な数を伴って休む間もなく猟兵たちへと追撃をかけるのであった。
春乃・結希
あなた達の羽音を聞いているだけで、すごく嫌な気持ちになる
…もう二度と、空を舞えないようにしてあげます
敵の注意を集落の人達からこちらに引き付けるために
【勇気】と【覚悟】を共に、蝶の群れに突撃
『with』で叩き落とし、『wanderer』で踏み潰す
受ける傷は焔で補完
痛みは【激痛耐性】で無視
倒しても倒しても纏わりついてくる蝶の群れに、飲み込まれてしまうかもしれない
でも大丈夫。私は最強だから
…絶望なんて、全部全部、消えてしまえばいいのに。
UC発動
意志の力を翼に変えて
蝶を焔で焼き尽くす【焼却】
一匹だって逃がさない
みんな灰にしてあげる
ここで生きる人達は、この世界の希望の光
絶対に消させたりしない
病の先触れ『ヤミイロシチョウ』。その羽音は、闇と夜の世界であるダークセイヴァーにおいては、厄災の音である。
無数の青白い蝶たちは、その儚いながらも美しい鱗粉に疫病をまとわせて舞い踊る。群体である以上、その数は数えることも難しいほどである。
大量の疫病運ぶヤミイロシチョウは、この集落にとって致命的な打撃になることは間違いようがなかった。
集落を包囲するようにして展開しているということは、猟兵をこの場から離すつもりはないことは明白。明らかに猟兵の性質を熟知した上で、これを殲滅するつもりなのだ。
これがただの戦いなのであれば、即座に囲い込みを食い破るのが定石であろう。しかし、これはただの戦いではない。包囲された集落という人質が猟兵たちにはある。
人々を足枷にする手腕。あまりにも悪辣である。
だが、それを真っ向から受けて立つのが猟兵である。己たちが真に世界に選ばれた戦士であるというのならば、避けては通れないものがある。
「あなた達の羽音を聞いているだけで、すごく嫌な気持ちになる……」
疫病運ぶ羽音は、耳障りであったことだろう。死は万物に訪れる逃れられようもないものである。
だが、この羽音の主は、それを不当に与えようとするものである。
春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)は、その羽音が深い極まりなかった。空を飛ぶ群体を見上げ、睨みつける。
「もう二度と、空を舞えないようにしてあげます!」
オブリビオンの注意を引きつけるように駆け出す。それは集落の人々から自分へと標的を変えるためであった。
あの群体の爪は鋭い。だが、それが彼女の怯む理由にはならないのだ。彼女には勇気と覚悟がある。
だが、それ以上に彼女の傍らには大剣『with』がある。それが変わらぬ限り彼女に恐れるものなど何一つ無いのだ。
「薙ぎ払う……!こっちよ!オブリビオン!」
蝶の群れに突撃する結希に向かってヤミイロシチョウの爪が襲い来る。それは蝶が群体となって擬態した髑髏から放たれる一撃。
鋭い爪は容易に彼女の肌を貫く。彼女は怯まない。痛みに目を瞑ることはしない。
彼女の手にした大剣『with』が群体オブリビオンをなぎ払い、ブーツが飛ぶ蝶を踏みつけ潰す。
受ける傷は彼女がブレイズキャリバーの証である焔によって補完されていく。痛みなんて、今は気にしない。
彼女の大剣が翻るたびに羽音は減っていく。だが、集落からオブリビオンを離そうとすればするほどに、彼女を囲い込むヤミイロシチョウの群体の数は増えていく。
斬っても、叩き潰しても、それでもなお執拗にまとわりついてくる。
埋もれていく。
猟兵である結希の体が、ヤミイロシチョウの蒼き鱗粉によって飲み込まれていく。
それは集落の人々から見れば、絶望の光景であったことだろう。
「……絶望なんて、全部全部消えてしまえばいいのに」
ヤミイロシチョウに埋もれた中から声が聞こえる。それは絶望に塗れた声ではない。人々は目を見開いたことだろう。
眉のように埋もれたそこから発せられるのは、緋色の翼。
「でも、大丈夫。私は最強だから」
それは信念の声。暗示の声であったかもしれないが、それは彼女にとって事実以外の何者でもない。緋色の翼が燃え広がる。
彼女のユーベルコード、拒絶する焔(キョゼツスルホノオ)。その翼の焔は絶望を拒絶する焔!
意志の力は焔の翼へと変わる。
一匹たりとて逃してはやらないとばかりに燃え盛る焔は、髑髏のように群体として存在していたヤミイロシチョウたちの羽音を塗りつぶすように輝く。
「一匹だって逃さない!みんな灰にしてあげる……!」
燦然と輝く焔を人々は見ただろう。
それは絶望振り払う希望の光。その光は、闇夜に生きる人々の心を暖かく照らす希望。灯すのはそれぞれの胸の内に在る燭台。
それを人は希望と呼ぶのであれば、それに火を灯すのが結希の力。
「ここで生きる人達は、この世界の希望の光!絶対に消させたりしない……!」
彼女の意志は燃え盛る焔のように、ヤミイロシチョウの群体を尽く焼き尽くす。
それは闇夜に灯った篝火であった―――。
成功
🔵🔵🔴
月・影勝
こうも物量を投入してきたと言うことは、それだけ彼奴らが必死ということじゃろうて
故に、早々じゃが…切り札の切り時と見た
後がしんどいUCではあるが、無辜の民に累が及ぶ前に決着を付けたいからのう
【火産霊燧石】の封印を解放、出し惜しみは無しじゃ!
天を赤く染め上げ、立ち上がり曇り空を振り払えよ豪炎
逃げも隠れもせぬ故、【浄土の炎】を恐れぬならば掛かって参れ
ただし、牙を剥く命知らずは真正面より纏うた炎の壁で焼き殺し
逃げる愚か者は蝗害が如く自在に舞い動き、狙いを定め灰燼に致すがな!
貴様らが喧嘩を売った相手が、猟兵というものがどのような存在であるか
飛んで火に入る夏の虫に…骨の髄まで後悔させてやらんとな!
羽音が集落を包囲するように響き渡る。闇夜の世界、ダークセイヴァーに生きる人々にとって、その羽音は死の宣告と同じであった。
その羽音が聞こえると、誰かが病に臥す。病は病を呼び、次々と人々の命を蝕んでいく。それは病の先触れ『ヤミイロシチョウ』。
無数の羽音が集合し、人骨の髑髏のような集合体を為し、まるで人々の生命を冒涜せんがために襲来した死神のような様相であった。
それはあまりにも絶望的な数。あれに目をつけられて逃げられると思える人間は、この集落に誰もいなかった。誰もが諦めにも似た声をあげた。絶望は諦観を呼び、諦観は足を止めさせる。
膝を折るのに十分な絶望であった。
「こうも物量を投入してきたということは、それだけ彼奴らが必死ということじゃろうて」
そんな絶望の最中にあっても、その声はどこかのんびりと響いた。月・影勝(かちかち山の玉兎・f19391)の少年の姿は、その場にはあまりにも場違いであり、人々は彼が猟兵であるということもわからずに視線を向けた。
絶望と諦観に染まった瞳。それらを見返し、影勝は快活に笑う。何、心配することは何もありゃせん。そう言うように。
「故に、そうそうじゃが……切り札の切り時と見た。後がしんどい……であるが、無辜の民に累が及ぶ前に決着を付けたいからのう」
巾着袋から一対の火打ち石を取り出す。それは火産霊燧石。業火の如き焔を内包せし石。
それを手にとって微笑む。カチン!と口火を切る音が響く。それは絶望打ち払う焔の口火であった。
「さあ!出し惜しみは無しじゃ!」
影勝がヤミイロシチョウの群体を目の前にして高らかに宣言する。それは彼の覚悟と、これ以上彼の後ろにいる人々を絶望に染めぬための戦いをするという宣言であった。
何も辛いことはない。これより上がるは篝火である。闇夜の世界であるダークセイヴァーに煌々と灯してみせよう。希望と名の光を!
「これが…有象も無象も焼滅させる浄土の炎ぞ!天を赤く染め上げ、立ち上がりくもり空を振り払えよ豪炎!逃げも隠れもせぬゆえ、浄土の焔を恐れぬならば掛かって参れ!」
影勝のユーベルコード、我往く道を開け、浄土の炎よ!(ワガユクミチヲヒラケジョウドノホノオヨ)が発動する。
それは彼の生命の焔を代償にして開放される力。その力は代償にした生命の焔の煌きを示すように高く燃え盛る。見よ!とくと見よ!これが生命の輝き。人の心に宿るべき希望の焔である。
「何も絶望することはない。何も諦めることはない。主らの生命はわしの背後にある。ならば、病の先触れなど、一歩もこれより後には進めぬよ!」
正面から爪を剥くヤミイロシチョウの群体の手を模した集団が一瞬で焔に包まれ、消失する。それは影勝が放った指を弾いた程度の攻撃。
たったそれだけでヤミイロシチョウの群体は燃え盛る。怯んだように後退するヤミイロシチョウの群体。
だが、それを逃がすほど影勝は消耗していない。一気に駆け、ヤミイロシチョウの群体が炎に包まれる。それは怨嗟の羽ばたきもできぬまに燃え盛り、逃げようとした別の群体をも巻き込んで炎が飛び火していく。
「貴様らが喧嘩を売った相手が、猟兵というものがどのような存在であるか!飛んで火に入る夏の虫に……骨の髄まで後悔させてやらんとな!」
自在に操られる浄土の炎は、まさに蝗害そのものである。
飛び散る火の粉は、まるで飛蝗のように跳ねてヤミイロシチョウを食い破らんと追いすがる。灰燼に帰すヤミイロシチョウの群体。
だが、それだけで終わるわけではない。
集落を包囲するヤミイロシチョウの尽くを焼き払わなければならない。
「ご覧そうらえ!これが浄土の炎である!これなるは希望の光!お主らが喪わぬ限り絶えることのない光と知るがよい!」
そう、まだ何も失っていない。何一つ。影勝の言葉は集落の人々の絶望と諦観に染まった瞳を拭い去る。
その瞳に映るのは、新たな希望の光。浄土の炎。彼の生命の輝きは、闇夜の人々の瞳に煌々とした新たな輝きを灯す篝火になるのだった。
成功
🔵🔵🔴
リーヴァルディ・カーライル
…っ、息つく暇もないとは、この事ね…
さっきの敵から受けた傷が…思ったより深いけど…
…泣き言を言っている場合じゃない
私が、相手よ。彼らの元には、行かせない…!
自身の生命力を吸収して強引に負傷を治癒して、
敵の精神属性攻撃を狂気耐性や気合いで耐えUCを発動
…っ、傷口は塞いだ。私はまだ、闘える…!
全身を限界突破した魔力を溜めたオーラで防御し、
空中戦を行う“血の翼”を広げ残像が生じる早業で敵陣に切り込み、
今までの戦闘知識から敵の殺気や存在感を暗視して攻撃を見切り、
大鎌を武器改造した呪詛を纏う双剣による2回攻撃で敵陣を乱れ撃つ
…生憎だけど時間が無い。何かする前に終わらせる…!
…くっ、ここまで、ね…。
髑髏の人面瘡のような様相を呈するのは、群体のオブリビオン。それは一匹一匹は取るの足らぬ蝶だが、それが意志を持って群体となれば話は別である。
かの群体オブリビオン、病の先触れ『ヤミイロシチョウ』の主が何を意図しているのか、それははっきりと像を描いてきたようにも思える。
集落を包囲するようにして展開するヤミイロシチョウの群体。それらはあきらかに猟兵たちを集落から出ないように、それでいて消耗させるように動いている。まるで捨て石である。
自身の歩む道を盤石にせしめんとするような一手ばかり打ってくる。それはあまりにも用意周到であった。
「……っ、息つく暇もないとは、この事ね……」
リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)が空に浮かぶヤミイロシチョウの群体、人骨の骸骨じみた形を取るオブリビオンを見上げ、睨めつける。
集落の人々を護るためとは言え、無理をしすぎたかもしれない。明らかに受けた傷が深い。想定以上だと言っても良い。
これもまた敵オブリビオンの首魁の思惑通りなのだとすれば……
「泣き言を言っている場合じゃない……!私が、相手よ」
大鎌を構えるリーヴァルディ。その姿はあまりにも悲壮であった。背中は受けた呪いによって傷つき、限界を超えているはずであろう体への疲労は蓄積の一歩をたどっている。
だが、ここで彼女が膝を折るわけにはいかない。彼女の背には集落の人々の生命がある。もしも、ここで彼女が戦うことをやめてしまったら……想像することは容易い。幼い生命も、老いた生命も、平等に病に侵され死に絶える。
「彼らの元には、行かせない……!私が此処で膝を折るわけにはいかないのよ……奮い立ちなさい、リーヴァルディ・カーライル……!」
己を叱咤激励する。やらなければならない。やれるやれないではないのだ。己の生命力を強引に負傷する傷へと変換して塞ぐ。背中が痛む。体の節々が悲鳴を上げている。
だが、そんなものは今は気にしてはいられない。傷口は塞がれる。彼女のユーベルコード、吸血鬼狩りの業・絶影の型(カーライル)。全魔力を圧縮、開放することによって彼女の体は活性化していく。
「……っ、傷口は塞いだ。私はまだ、闘える……!」
限界突破いした魔力は、それだけで物理的な障壁となるほどに圧縮されている。ヤミイロシチョウの爪もオーラの壁を突き破ることが出来ない。
それだけの攻撃でリーヴァルディを止められるはずがない。血翼を広げ、リーヴァルディが空を舞う。
それは闇夜の世界、ダークセイヴァーにおいて最も美しい翼であったかもしれない。
「敵の中央を叩く……!」
グリムリーパー、“過去を刻むもの”が分解変形し、その両手に収まる。それは“未来を閉ざすもの”。死者の魂を焼却してリーヴァルディの力とする魂喰いの黒剣。
カウントダウンが始まっている。
ユーベルコード、吸血鬼狩りの業・絶影の型(カーライル)。それは自身の限界を超えての戦闘行動を行う代償に、その後の戦闘不能状態を引き起こす最後の手段。
それは諸刃の剣であり、この状況に置いては致命的とも言える条件であった。
だが、それを行わねば、ヤミイロシチョウの爪から人々を守れない。限界を超えろ。己の限界は此処ではない。他者の決めた限界になど何の意味があろうか。
「私は超える……!過去も未来も、私が―――!」
肉体の限界を超えた戦闘軌道。呪詛をまとう双剣と共に舞い踊る空。ヤミイロシチョウの残骸だったものが、次々と地面へと堕ち、霧散していく。
まさに暴風そのもの。
それは常に彼女自身の限界を更新していく。骨が軋む。だが、止めない。倒れない。ひるまない。
人々を守ると決めた。この行動に己の信念が掛かっているというのなら、リーヴァルディを突き動かすのは誇りであった。
「“過去を刻むもの”……!応えなさい!私の前に立ち塞がる“過去”全てを―――!灰燼に帰さしめるために―――!」
リーヴァルディの双剣が輝く。それは呪詛の輝き。相対するもの全てに破滅を約束する輝きであった。
それはあまりにも凄絶な光景であった。彼女の周りを飛ぶヤミイロシチョウ。それら全てが骸の海へと還るまで、彼女は空を舞い続けた。
地面へと漸く降りてきた頃、彼女の意識は途切れる。それは限界を超えた代償。そのままであったのなら、彼女はヤミイロシチョウにさらなる追撃を受けていたことだろう。
だが、彼女の誇りは、集落の人々の心を勇気に変える。
助けた家族の人々が彼女を安全な場所まで匿っていた。負った傷は軽くはない。
限界を超えたその先にあったのは、絶望ではなく、希望の光灯った人々の心であった。
成功
🔵🔵🔴
インディゴ・クロワッサン
「君達はね、燃え尽きるべきだよ」
ちょっと苦戦してる様だから、助っ人として推参!
先に【呪詛/毒/環境耐性】は発動しておくよ。
「疫病だの何だのを撒き散らして…迷惑なんだよね」
UC:燃え盛る真紅の薔薇 を使って、何時もより深めに首筋を切ったら、大量の燃え盛る薔薇で蝶を【焼却】焼却ぅ!
「僕との相性は最悪だけど…仕方無いよね」
【破魔】を湛えた愛用のサムライブレイド:藍染三日月を構えつつ、鎖で繋いだダガー:Piscesも併用して、焼却出来なかった蝶を仕留めていくよ!
他使用技能
【怪力・早業・殺気・衝撃波・なぎ払い・第六感・見切り・串刺し・投擲・ロープワーク・鎧砕き・鎧無視攻撃・2回攻撃・目潰し・残像】
闇と夜の世界であるダークセイヴァーにおいて、オブリビオンであるヴァンパイアの支配は盤石である。故にわざわざ猟兵の目に止まるような行動を引き起こし、彼らの出現を狙うオブリビオンは極稀だ。
だからこそ、このように配下のオブリビオンをけしかけ、常に猟兵たちを疲弊させるように立ち回らせるのは、確実に猟兵を滅ぼしに掛かっている証拠。
人々の住まう集落を人質に取るように襲撃したのも、今尚疫病振りまく、病の先触れ『ヤミイロシチョウ』に周囲を包囲させているのも、全ては布石。捨て駒と言っても良い。
その布石は確実に猟兵たちを追い詰めていた。
しかし、その布石がどれだけ大きかろうが、世界に選ばれた戦士である猟兵たちは立ち止まることをしない。だからこそ猟兵たる資質であるのだというように。
「ちょっと苦戦しているようだから、助っ人として推参!」
圧倒的な数で集落を包囲し責め立てるオブリビオン群体。その囲いを破るように現れたのはインディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)である。
彼は青い髪を翻し、ダークセイヴァー世界へと降り立った。彼の体はすでに呪詛や毒に対する耐性を獲得していた。
周囲を見回す。耳障りな羽音が彼の耳を衝く。なんとも嫌な音だ。集落を襲い、猟兵を呼び込み、大群で囲む。それは本能的な計算のような戦法だった。
この後に控える首魁というものは、計算高いのではなく、本能で猟兵を滅ぼさんとしている。そう思える布陣だった。
「まあ、だからといって、この集落の人達を放っておくわけにもいかないしね」
ヤミイロシチョウの群体が巨大な人骨の人面瘡のような姿となっってインディゴを襲う。それは巨大な爪のような形となって振り下ろされ、大地を抉る。
様々な呪詛や病が振りまかれる。それを避け、時には耐性でもって防ぎながらインディゴは駆ける。
「ほんっ、とーに、疫病だ何だの撒き散らして……迷惑なんだよね」
彼が手にした双魚の短剣が自身の首をかき切る。それは彼のユーベルコード、燃え盛る真紅の薔薇(バーン・クリムゾンローズ)のトリガー。
溢れるように鮮血が空中に吹き出す。だが、その血液は全て地に落ちる前に真紅の薔薇の花弁へと姿を変える。
その薔薇の花弁は瞬時にヤミイロシチョウへと飛び、彼らの体を瞬時に燃やし尽くす。彼のユーベルコードと、群体であるヤミイロシチョウの相性は最高であった。
最も、オブリビオンである群体のヤミイロシチョウにとっては、最悪の相性。次々と燃えていくヤミイロシチョウは連鎖するように群体全てを灰燼に帰す。
「僕との相性は最悪だけど……仕方ないよね!はた迷惑な連中なんだから、燃やして灰にして綺麗さっぱりにしないとさぁ!」
手にし藍色を基調とした拵の三日月愛染の刀身が閃く。その刀身には破魔を湛えた三日月の魔除けが煌めく。その柄の頭に鎖で繋げられたPiscesの名を冠する短剣が滅しきれなかったヤミイロシチョウの群体を薙ぎ払う。
「まだまだいるっていうんならさ!僕が相手になるよ!どこからでも、いつでもいいよ!さあ、一緒に踊ってあげるさ!」
恐るべき怪力によって振り回される繋がった太刀と短剣は、さながら宙を縦横無尽に駆け巡る飛燕のごとくヤミイロシチョウをなぎ払っていく。
投擲され、切り裂かれるヤミイロシチョウが鱗粉を撒き散らしながら、骸の海へと還っていく。
鎖が伸びる音、太刀が空を裂く音。そのどれかが閃く度にヤミイロシチョウの群体はすり減らされていく。
「まだまだ!もっと必死でやらないとさ……この程度の囲い込みで猟兵がとれると思ったら大間違いだよ!」
闇と夜の世界に高らかに響き渡るインディゴの声。それはこの襲撃の首魁へと突き刺さることだろう。
如何に手勢を増やそうとも、如何に消耗させようとも、猟兵の首を取るには値しないと。
今までもこうして人々の希望の光を摘み取ってきたのだろう。だが、それは全てこの日を境に全て潰えるとインディゴは知らしめるように三日月を闇夜に煌めかせるのだった。
成功
🔵🔵🔴
月守・咲凛
アドリブ他諸々OK。
火力が必要みたいですね、こっち側の敵は私が引き受けます。
不安にさせる攻撃、ですか。それをさせないために私たちが居るのです!
一般人の人たちの前に出て、キャノン砲とミサイルを一定距離で爆発させて敵との視線を切ります。
これで動けますか?私たちの後ろに回ってください、あなたたちは傷付けさせません!
一般人の人に微笑みかけて、少しでも安心して貰いましょう。動ける人は動けない人を助けてあげて欲しいのです。
ちょうちょの群れならガトリングより爆発の方が効果的そうですし、爆風で毒がこちら側に飛んでこない位置を狙って、群れを押し返す形で派手に撃ちまくります。
人骨の人面瘡を模した、病の先触れ『ヤミイロシチョウ』の群体が嗤うように空を舞う。
闇夜の世界であるダークセイヴァーにおいて、その姿は不気味なものであり、理不尽の象徴であった。闇夜に響く羽音は、どうしようもなく恐怖と不安を煽り、人心の隙間に入り込む。
その羽音にダークセイヴァーに住まう人々の心は散々に擦り切れさせられていた。疲弊しきった心は絶望を生み、絶望は諦観を呼び起こす。
それは人々の歩みを止めるのは十分すぎるほどの羽音であった。
だが、それでも人々の希望の光は潰えない。なぜなら、人々の危機あるところには世界に選ばれた戦士である猟兵の姿があるのだから!
月守・咲凛(空戦型カラーひよこ・f06652)は闇夜の世界ダークセイヴァーに舞い降りる。見た目は幼い少女そのものであるが、背に負う姿勢制御用スラスターと数々の武装を携えた姿は、まさに機械の天使であったかもしれない。
人々が見上げる様子を見下ろし咲凛は少しでも彼らの不安が拭えるように微笑んだ。
「こっち側の敵は私が引き受けます。皆さんはできるだけ安全な場所に……!」
見据える先にあるのは、群体オブリビオン、ヤミイロシチョウ。人骨さながらに密集し、群体としての形を保つその姿は見るものに言いようのない不安を植え付ける。
それが彼らの攻撃の手段だとわかった瞬間、ためらわずに咲凛の武装が火を噴く。
キャノン砲、ミサイル、数々の火器が一斉に放たれ、爆風を引き起こす。それは一定の距離を保ちながら炸裂される。
「不安にさせる攻撃、ですか。それをさせないために私達が居るのです!」
咲凛は常に集落の人々とヤミイロシチョウの間に割り込みながら攻撃を続ける。それはヤミイロシチョウの攻撃が不安を煽り、こちらのユーベルコードを封じようとしていることがわかっているからだ。
だが、からくりがわかっているのならば、その攻撃を防ぐことなど造作もない。
「これで動けますか?私達の後ろに回ってください。絶対にあなたたちは傷つけさせません!」
その小さな背中に守れられる集落の人々。小さな体以上の安心が彼らに与えられる。爆炎と爆風が吹き荒ぶ中、ヤミイロシチョウの群体が次々と炎を受けて燃え落ちていく。
咲凛の微笑みは人々の心の不安と恐怖を拭い去るには十分なものであった。
「動ける人は動けない人を!助けることが出来る人は、助けてあげてください!ここから一歩も私の後ろにはいかせませんから!」
その言葉に彼女のユーベルコードが応える。コード・アクセラレーター。彼女の武装に予めプリセットされていた攻撃データの蓄積が此処に真価を発揮する。
それは武装による超高速連続攻撃を可能とするのだ。一斉に装甲が弾け、銃口が火を噴く。火線が宙に引かれ、闇夜の空を爆炎が照らす。
「まだまだおかわりはありますよ!武装ユニット全開放、撃ちます!」
さらに放たれる膨大な火力。圧倒的な面での制圧射撃は、ヤミイロシチョウをその場に釘付けにし、一匹たりとて逃さぬように攻撃が行き着く暇もなく打ち込まれていく。
煌々と爆炎に照らされる集落。
それは圧倒的な力であった。群体としてのヤミイロシチョウの性質を確実に封じ込める攻撃。それは徐々に周囲を包囲していた群体オブリビオンの群れを押し返す。
「この人達の希望は、一欠片も、もう!奪わせたりなんかしないのです!」
咲凛の叫びが空に木霊する。その度にヤミイロシチョウの群体は燃え尽き、骸の海へと還っていく。
絶望は砲火轟く集落に置いて、吹き飛ばされる。硝煙と爆煙が風に拭い去られれば、その後に来るのは希望であろう。
一刻も早く、少しでも集落の人々の不安と恐怖を消してあげたい。
その一心で咲凛は攻撃の手を緩めない。彼らの心から、それらが消え去るまで―――!
成功
🔵🔵🔴
宮落・ライア
はっ…呪いの星に死を自称する病か。
はっはっは酷いなこの村。
泣きっ面に蜂だな。
で、お前のその形…顔だな?頭だな?
ははは、よっしやったろ。
とりあえずまずは髑髏の爪?
うーん別に威力があるようには見えないけれど…
とりあえず怪力で大剣薙ぎ払って衝撃波で散らせば問題ないかな。
蝶であるなら風の流れには逆らえぬであろ?
散らしたらダッシュで接近。
オブリビオンだから関係なかったりする?
ま、ダメだったら捨て身で突っ込んで接近しよう。
UCの範囲まで接近できたら【唯潰】で掴む。
群体を強制的に一個の頭部として形を固定させ、
叩きつけ力ずくでダメージを通す。
闇と夜の世界に羽音が響き渡る。それは不快な羽音であった。
病の先触れ『ヤミイロシチョウ』―――ダークセイヴァーの世界において、この群体オブリビオンほど理不尽な者もいなかったことだろう。
羽音と共に現れては、疫病を振りまく。振り払うことも、逃げることも能わず、相対した時点で非力なる人間は死を待つしかない。
ダークセイヴァーにおいて、死はもはや身近なものであった。一歩踏み外せば、奈落の底まで堕ちていくような、一瞬の気の緩みも許されない世界。
そんな世界であっても人々は生きていく。生きていかねばならない。
だからこそ、宮落・ライア(ノゾム者・f05053)は思う。あまりにも理不尽であると。
「はっ……呪いの星に、死を自称する病か。はっはっは酷いなこの村。泣きっ面に蜂だな」
そうあまりにも理不尽すぎる仕打ち。誰を恨めばいいのかすらもわからなくなることだろう。こうして人心は乱れていく。こうして人の心は傷ついていく。
それがどうにも許せないと思ってしまう。
ただ、己たち猟兵を、この場に釘付けにするために。ただ、己たち猟兵を消耗させるためだけに。
このオブリビオンの首魁は、あらゆる悪辣なる手腕を持って猟兵たちを付け狙うのだ。これほどの悪逆無道たる非道を許してはおけない。
相対する病の先触れ『ヤミイロシチョウ』は、人骨の頭蓋を模した人面瘡のような群体。それを睨めつけるのは、収まらぬ怒り故。
「で、お前のその形……顔だな?頭だな?ははは、よっし、やったろ!」
見上げるライアの頭上から振り下ろされるのは、群体となったヤミイロシチョウから放たれる爪のような一撃。
それを避けるでもなく正面から大剣でなぎ払って衝撃波を起こし、散り散りにする。耳障りな羽音が潰れる音がした。
そのまま駆け、距離を詰める。空を飛ぶ敵である以上、距離を取られて、飛来されると面倒である。
恐るべき戦闘勘の冴えどころを見せ、大剣を振るう。当たらなくとも衝撃波でもって薙ぎ払えば、空を舞う蝶の群体である以上影響を受けないわけがない。
乱れた隊列は、その群体である姿を維持するのも難しくなる。
「群れるってことは、一つ一つが大したことないやつだからだよな!そうだよな!そうじゃなきゃ、弱い奴らばっかり狙ったりしないものな!」
ライアのユーベルコード、力業『唯潰』(チカラワザ・タダツブスノミ)が発動する。それは有効距離が短い代わりに絶大な力を発揮するユーベルコード。
彼女の手は、今や有象無象関係なく、彼女が「頭部」と認識したもの全てを掴み取る掌である。
「技術やなんだメンドクサイ!気合いで叩き潰せばいい!」
それが複数の蝶による複合体である頭だとしても関係がない。彼女が「頭部」と認識した以上、それが群体オブリビオン、ヤミイロシチョウの「頭部」なのである。
ミシ、と鳴るはずのない音が響く。
それは頭蓋が割れる音にも似ていたかもしれない。怒りに任せた地面への叩きつけ。
大地が割れ、ひしゃげるヤミイロシチョウの群体の頭蓋。それは圧倒的な膂力を持って打ち込まれる弱者を代弁するかのような一撃。
頭部を潰された群体は、本当にそれが頭であったかのように次々と機能を失うように霧散していく。
「こんな回りくどいことばっかりして……そろそろ姿を見せたらどうだ!」
ライアは闇夜の空に吠える。
それはこの惨状をつぶさに観察しているであろうオブリビオンの首魁に向けての咆哮であった。
腸が煮えくり返るという表現すら生ぬるい。猟兵を呼び寄せるために払った無辜の人々の生命の代償は、払わさなければならない。
ライアは大剣を掲げ、高らかに吼え続けるのであった―――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『絶望の集合体』
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POW : 人の手により生み出され広がる絶望
【振り下ろされる腕】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に絶望の感情を植え付ける瘴気を蔓延させる】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD : 粘りつく身体はぬぐい切れない凄惨な過去
いま戦っている対象に有効な【泥のような身体から産み出される泥人形】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : 過去はその瞳で何を見たのか
【虚ろな瞳を向け、目が合うこと】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【幾千という絶望な死を疑似体験させること】で攻撃する。
イラスト:井渡
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「フィーナ・ステラガーデン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「己は集合体である。絶望の集合体。骸の海にて集合されし、遍く絶望の化身」
集落の遥か上空から舞い降りたるのは、不定形の怪物。
絶望の集合体。そう呼ばれるオブリビオン。それこそが、この襲撃の首魁。
呪詛により集落を崩壊させ、病を以て人々を痛めつけた。その絶望、悲嘆、その全てが、絶望の集合体の力となって変換されていく。
見る見る間に、その不定形の姿が膨らんでいく。
そう、絶望集まる最中である、この集落こそが首魁オブリビオンである『絶望の集合体』の餌である。
だが、絶望の集合体が狙ったほどの絶望は集まっていない。
なぜならば、猟兵の多くは人々を護るために戦っていた。ある者は己の身を顧みずに。ある者は己の限界を超えて。
オブリビオンの狙いが、もっと効果を発揮していたのであれば、対処のしようがない絶望の集合体へと変貌を遂げていたであろう。
今、目の前にある「絶望の集合体」は討ち果たせない相手ではない。
猟兵の戦いは常に効率的であるとは言えない。時には無駄そのものに見えることもあるかもしれない。
猟兵たちは知っている。
無駄なものなんて一つもないことを。回り回って、その無駄と嘲笑ったものこそが、オブリビオンの足元を掬うのである。
今、最後の戦いが始まろうとしていた―――!
アルタ・ユーザック
「あれに接近戦は危険な気がする・・・」
『氷雪嵐』で切り裂く・・・?それとも『幻死痛の連撃』でダメージを与える・・・?
「・・・?あれは・・・眼?」
こっちを向い・・・た・・・っ!?
「あ・・・あ・・・ああああぁぁぁぁぁ!!」
【疑似体験の死の内容はお任せ。疑似体験による絶望の感情から『それは防衛本能の様に』発動。敵に吸血すべき血がない場合は、噛みつき・引っ掻きなどの通常の龍の攻撃方法で敵を自動攻撃。幾千もの死なので、ある程度の時間攻撃を喰らう代わりに、敵にも長時間の攻撃】
「ぅ・・・ぁぁ・・・。」
た・・・たか・・・わ・・・・・・なきゃ・・・・・・・
暗き闇に沈むのが絶望だというのであれば、『絶望の集合体』は最も深き絶望の底からの来訪者であろう。
希望とは対極の位置に存在する、最も遠き者。それが骸の海にて沈む過去の化身の正体である。
人々が絶望を抱くのと同じようにまた、人々の胸に去来するのは希望の光。
それはつまり、この闇と夜の世界であるダークセイヴァーにおいては、猟兵の存在に他ならない。
まばゆいほどの光。見上げる絶望の集合体は何を思っただろうか。目も眩むほどの存在は、憧憬となり、いつしか憎悪の対象と成り果てた。当然の帰結であったのかもしれない。
見よ、己の禍々しきも昏き姿を。見よ、己の業の深さは底の見通せぬ深淵である。
「お前たちが希望の光であるというのなら、己は許せない。己は何故こんなにも醜く汚らしいのか。己だけに押し付けられた醜悪極まりないものは何故に」
一方的な憎悪。相互理解など最も遠き場所に在る者。その果のない憎悪は、今まさに猟兵たちへと降り注ぐ。
「あれには接近戦は危険な気がする……」
戦場に駆けつけたアルタ・ユーザック(クール系隠密魔刀士・f26092)が見たものは、まさに巨大な不定形。常に形を変え、膨れ上がっていく何者か。
その姿を、全貌を見渡すことなど不可能であったのかも知れない。だが、それでもここであのオブリビオンを押し止めなければ、この集落は勿論のこと、猟兵たちもどうなるかわからない。
手にしたルーン文字の刻まれた刀身を持つ氷桜丸が震える。それは、目の前のオブリビオンへの有効打を考え、それでも纏まらぬ思考に与える根源的な恐怖であったかもしれない。
それを振り払い、見なかったことにしても、自身の持つユーベルコードによる有効打を模索する思考は止まらない。
「氷雪嵐……切り裂く……それとも、幻死痛の連撃でダメージを与える……?」
接近しては取り込まれてしまうかも知れない。あの巨体はそれだけでも脅威なのだ。だが、斬撃が効かぬ相手ではあるまい。鯉口を切る。刀身が抜き放たれようとして、瞬時に体がこわばる。
絶望の集合体が、アルタを視認した。認識した。怨敵。憎悪の瞳。わかってしまう。あれは、心底、猟兵という存在を憎んでいる!
「……?あれは……眼?」
こっちを、向いた。と認識した瞬間、アルタの脳内に流れ込んでくる幾千ものイメージ。それは彼女の精神を、魂を、彼女うという存在そのものを徹底的に否定するイメージ。
「あ……あ……ああああぁぁぁぁぁ!!」
絶叫が戦場に響き渡る。それはあまりにも凄絶なイメージ。幾千という絶望な死を疑似体験させる絶望の集合体のユーベルコードは、アルタの心を散々に痛めつける。
圧死、轢死、慙死。ありとあらゆる死に際の幻視がアルタを襲う。
目を覆っても、耳を塞いでも、ありとあらゆる行為が無に帰す。何も出来ない。何もすることも出来ずに、流れ込んでくる疑似体験そのものがアルタに死を予感させた。
覚悟なんてできているわけがなかった。いや、死は身近であったかのかもしれない。だが、彼女の脳に叩き込まれた死は、幾千。それは常人が発狂するには、あまりにも十分すぎるものであった。
一人の猟兵が膝を折る。地面にぶつかる膝の痛みも知覚できない。それほどの幻視。有り余るほどの狂乱の死。如何な猟兵とは言え、逃れることのできぬ死。どうにもならないほどの幾千もの死は、容易に精神を破壊せしめんとする。
だが、それは防衛本能の様に(カウンター・オブ・ネガティブ・エモーション)。
アルタの体より溢れ出るのは、龍。圧倒的な数の龍が彼女の体より具現化する。それは、彼女の身に秘めたものであるのかはわからない。
一斉に具現化された龍が絶望の集合体へと襲いかかる。顎を開き、食い破り、自動的でありながら、本能的にオブリビオンの所在を掴んでは食いちぎるように攻撃を加えていく。
「ぅ……ぁぁ……」
うわ言のように漏れ出るアルタの声。
彼女は幾千もの死のイメージから逃れようと、助けを求めなかった。絶望の先に手を伸ばさなかった。それは彼女が猟兵であるが故。
例え膝を折ったとしても、その精神が幾度折られようとも。
それでも、彼女の心にたった一つ残ったのは、戦う意志。
「た……たか……わ……なきゃ……」
折れた膝は、立ち上がるために。折れた心は再び錬磨される。青い瞳は再び輝く。それは絶望の集合体がどれだけのイメージを叩き込もうと折れぬもの。
そして知るがいい。
「戦わなきゃ……!」
人は、猟兵は、何度でも折れて立ち上がってくるのだと―――!
圧倒的な数の龍が絶望の集合体に群がる。それはその巨躯を引き裂かんと牙と顎を剥く。そして、人々は見ただろう。一度は膝を折った彼女―――アルタ・ユーザックが再び立ち上がる姿を。
そこに人々は絶望ではない希望の光を見出すのだ。
成功
🔵🔵🔴
月守・咲凛
SPDで戦闘、アドリブ他諸々OK。
泥人形を呼び出す攻撃で呼び出されるのは、私の護るべき人々……でしょうか?
子供や女性、戦えない人達を模した泥人形を出されても、浮かぶのは護りたい想いではなく怒りなのです。
まちがえませんから!私、動いていれば人に見えるとかそんなことありませんから!
泥人形には早々に退場願おうとしますけど、とは言っても子供の姿をしている相手を攻撃するのを躊躇ってしまい、怒りがプシューとしぼんで周りを囲まれてしまいます。
でもその群れが他の人を襲おうとしているのを見て一気に吹っ切り、火線砲を連結させてビームで一気になぎ払います。
憧憬とは、常に見上げるものである。遠きものは眩く輝き、その輝きが強ければ強いほどに焦がれる想いは強くなっていく。
だが強い想いはいつしか反転するものである。焦がれた想いは憎悪に。輝き強き光によって落ちる影は、暗く深いものとなるのが道理であろう。
猟兵という強気輝きに照らされる過去の化身たるオブリビオンに落ちる影の暗さは如何ほどのものであったであろうか。それを見上げる憧憬の追跡者たる「絶望の集合体」の燃え盛る憎悪は、幾度世界を焼き尽くしても尚収まらぬものであったのかもしれない。
絶望は贄であり、餌である。それが多ければ多いほどに「絶望の集合体」と呼ばれるオブリビオンの体は膨れ上がっていく。
もしも、この戦いに参加した猟兵たちが襲撃を受けた集落の人々を救おうと動かなければ、手のつけようのないほどの災害を引き起こしていたであろうことだけは、はっきりとわかった。
それほどの脅威を未然に防いだのは、猟兵達の働きに他ならない。
ある者は傷つき、ある者は限界を超える。その一歩一歩の着実な歩みが、この戦いの推移を決めた。
絶望の集合体、その粘りつく身体はぬぐい切れない凄惨な過去の集積である。その泥のような身体から産み出される泥人形たちは、月守・咲凛(空戦型カラーひよこ・f06652)にとってあまりにも残酷な姿をしていた。
「あ、あれは……戦えない人、たちばかり……」
咲凛は絶句する。その泥人形達の姿は、彼女が護らなければと思う人々の姿ばかりであった。絶望の集合体は、確実に咲凛の刃を向けることに躊躇いを生むものばかりを繰り出してきていた。
猟兵の、咲凛の急所を熟知した攻撃。一瞬の躊躇い。二の句を告げられなくなる震える口。
それを、きゅっと結んで咲凛は武装ユニットを展開する。彼女の胸に去来するのは、もはや躊躇いではなかった。悲しみでもなかった。
あるのは怒り。
「間違えませんから!私、動いていれば人に見えるとかそんなことありませんから!」
怒りは沸点を容易に超える。それは彼女の守るべきはずであった人々を模した泥人形たちに向けられる。
こんな攻撃で自分を陥れようとした、絶望の集合体への怒りが彼女の体を突き動かすのだ。空を舞うフライトユニットのスラスターが火を噴く。
「こんな泥人形には、早々に退場してもらうのです!」
飛翔し、手にした近接攻撃用ビーム兵装、ムラサメを構える。振りかぶって、泥人形を撃滅せんと振り下ろした刃は、途中で止まってしまった。
目の間には泥人形の顔が悲哀に包まれている。その表情を見て、尚刃を振り下ろすことができるほど、咲凛の心は刃のように強靭そのものではなかった。
それが欠点であると、絶望の集合体が嘲笑ったようなッキがした。
あれほどまでに煮えたぎっていた怒りは咲凛の体がしぼんだ空気のように失われていく。躊躇いは、即座に彼女の窮地へと変わる。
彼女の周囲を取り囲む泥人形の数々。そのどれもが幼い子供のもの。
「あ……あ……そんな、どうして。どうしてこんなことばっかりするんです!」
刃が振るえない。それが、どんなに泥で出来た紛い物であっても、幼い子供の姿をするものに咲凛は攻撃を振るえない。
兵装を握りしめていた手が震える。それは恐怖ではない。ただの躊躇い。どうしても決心できない。
違う、これは違うのだと頭で理解していても、心が拒んでいる。
しかし、一つの悲鳴が彼女を引き戻す。
それは生み出された泥人形たちが集落の非難していた人々をも襲い始めたのだ。
その悲鳴が咲凛の心を突き動かす。助けて。その言葉は、彼女は言えない。だからこそ、その言葉を叫ぶ誰かのために己の力はあるのだと、心を凌駕する。
「助けてと言えない誰かの為に私は!戦うと決めたのですから!」
彼女のユーベルコード、コード・イーグルアイが発動する。赤い瞳が煌き、闇夜の世界を火線が切り拓く。
薙ぎ払うようにして咲凛の武装、ハナシグレとシュンリン、火線砲を連結させ、大型ライフルへと姿を変えた兵装でもって泥人形の群れを討ち果たす。
その中には子供の姿をしていたものもあった。
もう彼女はためらわない。赤い瞳が煌々と輝く。それは躊躇いを超えた決意の瞳。
「今を生きている人のために!私は征くのです!邪魔をしないでください……!」
咲凛の小さな体に装着された兵装の数々が砲門を開く。
赤き瞳は、集落に点在する泥人形の群れを全て捉えていた。飛行ユニットのスラスターが彼女の体を上空へと舞い上がらせる。
見えている。全て!
彼女の視線に誘導されるように、あらゆる武装の火器が吐き出されるようにして斉射される。
一瞬の爆炎が集落を明るく照らす。
それは昏き闇のごとき体の絶望の集合体すらもかき消さんとするほどの輝き。
人の心を照らし出す輝きは、一人の少女の覚悟を持って放たれたのだった。
成功
🔵🔵🔴
春乃・結希
どうして憧れを目指さずに、憎んでしまったの?
…もう、あなたを助けることも出来ない
あなたの焦がれた希望の力で
この世界から消してあげる
withを抱きしめ、呪縛にも似た自己暗示に深く深く潜っていく
絶対に負けない
あなたの思い通りになんてさせない
『with』ーー私のそばに居てね
真の姿解放
心にあるのは絶対的自信と勝利への意思のみ
【怪力】で振るう『with』はより強く
背負う焔は激しく燃える【焼却】
最強である私が絶望に陥るなんて有り得ない【勇気】
相手がどんな姿だろうと関係ない
『with』と私が勝てればそれでいい【覚悟】
…絶対に潰す
UC発動
絶望の物語はここで終わります
あなたの次の物語が
希望で満ちていますように
その光景はあまりにも毒であった。骸の海にて集積せし絶望の化身である己にとっては、それは身を焦がすほどの憧憬。
何がそこまで己の身を焦がすほどの憎悪となったのか、理解は出来なかった。理解が出来ないからと言って、それを憎まぬ理由など何一つ無かった。
あれらにあって、己にないもの。たったそれだけが憎悪の理由。
憎い。憎らしい。何故己はああではないのか。それに手を伸ばすことも出来ない。できるのは憎むことだけ。
その絶望は、骸の海に集った絶望を次々と結びつけ、「絶望の化身」たらしめる姿へと変えていった。
そう絶望の対極が希望であるというのなら、猟兵とは即ち世界の希望そのものであった。あんなに眩く、煌めく姿。対して己の姿はどうだ。昏く醜い絶望だけが覆う姿。どう足掻いたとて、あの希望の光のように誰もが求める姿にはなれようはずもない。
ならば―――己のすべてを持って猟兵全てを否定しなければならない。
「どうして憧れを目指さずに、憎んでしまったの?」
その言葉は刃のように絶望の集合体の薄皮に刺さったようだった。何故。昏き染まりきった絶望の集合体の中にあったであろう原初の感情は、それに応える術はない。
不確定に膨らんでいく姿は、絶望を贄として形を維持しているだけに過ぎない。
春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)は対峙して、そのことを理解していた。あれはきっと、もっと大きな姿となって自分たちと対峙することになったはずだったのだ。
だが、結希も含め猟兵達の行動は、オブリビオンにとって全て裏目に出た。彼女たちが為したことは、絶望の集合体にとっては誤算そのものであったが、結希たちにとっては当たり前のことであったのかもしれない。
「……もう、あなたを助けることも出来ない。あなたの焦がれた希望の力で、この世界から消してあげる」
結希は漆黒の大剣『with』を抱きしめる。『彼』と共に歩む。その呪縛にも似た自己暗示の中へと深く深く潜っていく。
彼女の瞳はふせられ、その自己暗示をさらに強固にしていく。どれだけ絶望を振りまこうと、どれだけ体を痛めつけようと、絶対に負けない。
絶望で全てを思い通りにさせようとするのであれば、結希は絶望の集合体の思惑通りにはさせない。
小さく彼女の唇が言葉を紡いだ。それは願いであり、覚醒の言葉であった。
「『with』―――私のそばに居てね」
漆黒の大剣は、その姿を反転させる。青白い大剣。それを抱くは、赤き瞳と緋色の翼を持つ者。
闇夜の世界に置いて、その白く輝く髪は風になびく度に一層際立つ。それが結希の真なる姿。開放された炎が周囲に渦巻く。緋色の翼が羽撃く。たったそれだけで放たれた泥人形たちが消し飛んだ。
ざわつく絶望の集合体の体表。結希の真なる姿は、それらにとって最も受け入れがたい姿をしていた。まばゆい白。その色だけは、どんなに己が焦がれようとも手に入れられぬ色。嫉妬。羨望。憧憬。それらが絶望に取り込まれて、渦巻いていく。
再び泥人形たちが溢れ出る。
「そばにいる……わかるよ、『with』……」
いこう、と結希の緋色の翼が泥人形たちを再び滅却する。その心にあるのは、絶対的自信と勝利への意志。
手にした白亜の大剣が振るわれる。勇気と覚悟が彼女の原動力になっていく。その膂力は今や、普段の彼女のそれを遥かに凌駕するもの。
「最強である私が絶望に陥るなんてあり得ない。相手がどんな姿だろうと関係ない。『with』と私が勝てればそれでいい……」
焔に包まれた足が大地を踏み割る。凄まじい轟音が響き渡り、彼女の体が跳ねたのだと遅れて理解できる。
圧倒的な加速。構えた大剣が輝く。それは彼女の最も信頼する、最も愛情を注ぐものへの想い故。
ユーベルコード、Close with Tales(クローズウィズテイルズ)。それは終焉を告げる剣戟。
放たれる斬撃は物理法則を超越した、予測不能の剣戟。輝きは一瞬、されど斬撃は九つ。
絶望の集合体の巨躯を瞬間的に九つに分かつ斬撃は、圧倒的な絶技。絶望の集合体の修復が間に合わないほどの連撃は、その体を大きく傾けさせる。
結希にはわかっていた。もう見えていた。
「絶望の物語はここで終わります」
それは予告ではなかった。ただの宣告であった。ただの手向けであったのかもしれない。
「あなたの次の物語が希望で満ちていますように」
その言葉は、絶望には届かない。だが、次なる物語には届いたであろう。
なぜなら、絶望はすでに『with』と共に打ち払ったのだから―――。
成功
🔵🔵🔴
インディゴ・クロワッサン
【SPD】
「…?」
ぼとぼとと産み落とされる、執事やメイドの姿をしている泥人形に心当たりが無くて、疑問に思いながら首を傾げたりする程度の隙は生まれても、致命的な隙にはならず、愛用の黒剣での【力溜め/衝撃波/なぎ払い/範囲攻撃】で泥人形に対処。
「まぁ、僕に有効な姿なんだろーけど…」
覚えてないもん、仕方ないね!
さー戦うぞーって自分を【鼓舞】したら、二対四翼の真の姿になるよ
背後の村人達が怯えちゃってたら…ごめーんね☆
UC:悪しき鬼は羅刹の如く を発動したら、厄介な瞳を【目潰し】だー!
(所で僕って希望なのかなぁ…?)
使用技能
【怪力/呪詛耐性/狂気耐性/第六感/鎧砕き/空中戦/見切り/踏みつけ/激痛耐性】
希望無くば、絶望もまた無い。だとすれば、闇もまた光無く存在することもできないであろう。そこにあるのは虚無であり、闇と光もまた関係のない虚のようなものであろう。
骸の海において絶望の集合体とは、絶望を集積したものである。ただ絶望をだけを糧として存在し、絶望だけを求める。だが、それが真実だというのであれば、希望を憎む気持ちは生まれることはなかったであろう。
永遠に骸の海より出ることのないオブリビオンであっただろう。実際にはそうではなかった。
己と対極に位置するであろう猟兵の存在に心奪われた。それはその猟兵たちがどんな立ち振舞をしようとも、猟兵であると認識した途端に憎悪へと変わる。まさに自動機械の如き感情。
「己が在るが故に猟兵もまた在り。猟兵が在るが故に己在りき」
意味があるようで意味のない言葉。互いが猟兵とオブリビオンである以上、相容れぬ存在。
ぼたぼたと絶望の集合体から生み出されるは、泥人形。それは執事やメイドといった貴族に仕える者たちの姿であった。
それが何を意味するのか、対峙するインディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)には理解が及ばなかった。
心当たりがない。これが、インディゴ自身に対する有効な手段であると判断したからこそ、絶望の集合体は泥人形を生み出したのだろう。
「……?」
しかし、それでもインディゴの頭に浮かぶのは疑問だけだった。オブリビオンの攻撃に警戒するのは当然のことではある。それが己にどう有効であるのか、そこまで考えに至ると理解できないものの前には体は止まってしまう。
それを隙と呼ぶのであれば、泥人形たちは見逃さず群がるようにしてインディゴへと襲いかかる。
「まあ、僕に有効な姿なんだろーけど……」
手にした黒剣を振るう。力をため、薙ぎ払うように広範囲で振るわれる剣撃の衝撃波は泥人形達の脆弱な体を打ち払うには十分だった。
隙、と言っても彼にとっては致命的なものでなかった。
崩れていくメイドや執事の表情が陰る。曇る。悲嘆にくれているような、悲哀に歪んでいるような……それを見てインディゴの心にさざ波が立つかと言われたら、否であった。
「覚えてないもん、仕方ないね!」
考えても、考えても、記憶の底から湧き出るものがない以上、何を考えても詮無きことであった。
気を取り直すように、己を鼓舞する。覚えていなものを責めるように言われてもこっちが困る。そういうかのように、現すは真なる姿。
二対四翼のコウモリの翼が広がれば、その羽撃きにあわせるように黒き蝙蝠が舞う。それは闇夜の世界であるダークセイヴァーに置いては、恐怖の対象のそれ。
集落の人々の目がなければよかった、とインディゴは思ったかもしれない。この姿を見せて、彼らが思うかべるのは、この世界の支配者たるオブリビオン、ヴァンパイアそのものであるから。
それを見て怯えるのは仕方のないことではあったけれど、申し訳ないと思う気持ちにもまた嘘はないのだ。
「さー戦うぞ!だいぶ弱ってきてはいるみたいだけど、気力は十分だよねー」
先の猟兵達の攻撃によって、絶望の集合体の体も不定形であった形を、更に歪め初めている。
インディゴのユーベルコード、悪しき鬼は羅刹の如く(マハト・ヴァンピーア)が発動する。
それは彼の黒剣による斬撃全てが、致命的な攻撃へと変ずるユーベルコード。
青白くも細い腕が振り下ろされる。如何に細い腕とは言え、あの巨躯である。振り下ろされれば、猟兵と言えど無事では済まない。
「狙いが甘いよね!体が崩れてきているからって、無理して動かすからさー!」
その大ぶりの腕を避け、インディゴは駆ける。振り下ろされた腕を駆け上がり、その厄介なユーベルコードを発動する瞳を破砕せんと黒剣を振りかぶる。
瞳と目が合った。
だが、意味はない。数千の死の体験がなんだというのだ。その程度で己の身が受けてきた狂気が拭えるわけもなければ、塗りつぶすことなど値せず。
勢いよく踏み出した足が、絶望の集合体の腕を踏み砕く!
「その面倒くさそうな、瞳、潰しちゃうからね!」
手にした黒剣を振りかぶり、怪力に任せるままに振り下ろした。瞳がひび割れ、その機能を封じるように破砕する。
苦悶に嘆くような絶叫が響き渡る。大勢を崩して倒れていく巨躯から離れ、空に舞うインディゴの姿は、まさにヴァンパイアのように見えただろう
この姿を果たして、人々は希望とみなすことができるだろうか。そんな杞憂をインディゴは抱えていた。
だが、彼の戦いはそうは映らなかったかもしれない。それは杞憂であると誰も言ってはくれない。
その言葉を彼に伝えるには、彼の体は空高く舞い上がっていた。孤高であるが故に、届かぬ言葉がある。
彼自身が己の姿に希望を見いだせなくても、それを見上げる人々の瞳に映るものは、違ったものであったのかも知れない。
今はまだ、その言葉が届くには時間がかかるかもしれないだけだ―――。
大成功
🔵🔵🔵
月・影勝
うへぇ…全身が鉛になったみたいじゃ…
しかし、機奴めは正々堂々真正面から迎え撃つ、撃たねばならぬ
絶望は強いが脆い。一抹の希望さえあれば…人々は希望の方に縋り付くのじゃろうて!
それにな、今見上げて戦っておる猟兵や民衆の前で、情け無い様なぞ見せられぬじゃろう?
最も…負ける気なぞ微塵もせんがな
命や愛が重いは聞いたことはあるが
絶望が重いという言葉はついぞ耳にしたことがない!
つまり、絶望ばかりで塗り固められた貴様の腕なぞ!微塵も重い筈がないッ!
腕を受け止めることに成功したなら、そのまま…全身全霊の一本背負いじゃーっ!
……まあ、成功したか確認する体力は無さそうじゃけど…
も、もう…マジ無理…後は頼んだぞよ…
己の限界を決めるものはなんであるか。己の力の範囲は四角い箱である。己はその四角い箱の中に入っている。
ならば、その箱の四方を決めるのは己自身である。他の誰にも己の限界は測れない。決めさせてはならないものである。
それ故に猟兵は常に限界を広げていく。自身の体が如何に重く、疲労がのしかかろうとも。どれけ傷を負い、苦痛にあえごうとも。己の決めた限界を常に超えていくのだ。
それこそが猟兵たる所以。限界は過去に。可能性は未来に。手を伸ばす限り、その手は何処までも伸びていく。
絶望の集合体と呼ばれる不定形のオブリビオンが両手を上げる。それは己の思惑通りにことが運ばなかったことに対する憤りか。
否。それは猟兵の姿に対して。己の姿とは真逆の光り輝く希望の如き綺羅星。それに手を伸ばしつつも、届かぬゆえに憧憬は憎悪へと成り果てたが故の怨嗟の咆哮。
その手は届かぬ星を掴まんとして、振り下ろされる。
「うえへぇ……全身が鉛になったみたいじゃ……」
限界を超え、己の生命をも燃やして戦う月・影勝(かちかち山の玉兎・f19391)の体はすでに限界を超えていたのかも知れない。
それでも尚、絶望の集合体の前に立ち塞がる小さな体。それを忌々しいものをみるような潰れた絶望の集合体の瞳が見下ろす。
その瞳に既に力なく、だが、それが猟兵への憎悪を曇らせる理由にはならないといわんばかりに不定形の体が震える。憎悪、憎悪に震える姿は、一層醜悪さを増しているようにさえ思えたかも知れない。
故に、影勝は正々堂々真正面から迎え撃つ、撃たねばならないと、その気概を新たにする。
踏みしめる足が震える。疲労に依る体へのダメージの蓄積は如何ともし難い。
「絶望は強いが脆い。市松の希望さえあれば……人々は希望の方に縋り付くのじゃろうて!」
声を張る。それは絶望の集合体からすれば、虚勢に他ならなかったことだろう。影勝の後ろには、集落の人々がいる。その瞳のどれもが絶望に濡れていはなかった
影勝の言葉通りだった。誰も彼もが絶望に打ちひしがれていなかった。影勝の持つ篝火のような輝きが、その瞳に灯っていた。
それが希望の光だというのであれば、まさに影勝の姿こそが飛び火したもの!
「それにな、今見上げて戦っておる猟兵や民衆の前で、情けない様なぞ見せられぬじゃろう?」
絶望の集合体の振り上げられた腕が頂点に達する。あれを振り下ろされれば、己も大地も無事では済まない。何より、背後に居る集落の人々のことを考えれば、振り下ろさせるわけにもいかない。
影勝は駆ける。周囲を見回す。人々の所在、猟兵、ありとあらゆるものを認識する。限界は等に超えた。だが、限界だと誰が決めたのだ。
「最も……負ける気なぞ微塵もせんがな!生命や愛が重いとは聞いたことはあるが、絶望が重いという言葉はついぞ耳にしたことがない!」
絶望の集合体の意識を惹きつける。その言葉は、絶望の集合体全てに対する否定。その腕は重いものではないと。その一撃で倒れるわけがないと。
「つまり、絶望ばかりで塗り固められた貴様の腕なぞ!微塵も重いはずがないッ!」
影勝に狙いを定めた絶望の集合体の腕が振り下ろされる。
見える。わかる。腕の軌道が変わった。無理にこちらを狙おうとしたせいで、態勢が崩れている。
重い、重い一撃。それはきっと地形を変え、絶望の感情を植え付ける瘴気を蔓延させるほどの一撃であろう。
だが、影勝にはわかっている。己にはできる。己の限界は己が決めるのだと!
「おぬしの一手、しかと受け止めたぞ!」
彼のユーベルコードが発動する。それは瞳の輝きを増す人々に取って、刹那の攻防。振り下ろされた絶望の腕。それを受け止める小さな猟兵の体。あわや潰され果てたと思った瞬間、絶望の集合体の体が跳ね上がる。
それはまるで想像の出来ないような光景であった。
小さな体が、巨躯の体を宙に舞い上げたのだから。
「軽い!軽い!この程度の重みで儂を潰そう―――などッ!」
腕を受け止め、一本背負いの要領で絶望の集合体の巨躯を跳ね上げる影勝。
体のあちこちから悲鳴が上がるのを無視した。それは今すべきことではない。全身全霊を込めた一本背負いが放たれ、そのまま巨躯が大地へと叩きつけられる。
轟音が響き、地面が軋む。
だが、影勝はその音を遠く聞いていた。
聞こえない。確かな手応えは感じた。けれど、その音も何もかも確認する気力がわかない。限界のその先を見た気がした。
それはきっと、影勝にとって一つの為し得た偉業。誰かを守る。誰かを助ける。それが猟兵としての務めなのだとすれば、影勝は確かにそれ以上のことをした。
轟音は聞こえなかった。
けれど、彼の耳には瞳に光をともした人々の歓声が確かに聞こえていたのだから―――。
大成功
🔵🔵🔵
宮落・ライア
ははは、絶望? そんなもので足が竦んで進めなくなる様ならこんな場所には立ってないんだよ。
で、私に有効な泥人形? ははっ。
ボクの戦ってきた敵? それともボクがこんな風になった過去の登場人物?
今まで戦ってきた敵かい? 戦争の幹部だって乗り越えてきた。
ボクをこんな風にした研究者共? 何度だって殺し足りないね?
それとも私の両親? あは、それこそ殺意しかない。
お前はボクにトラウマがある事を望んでいるのか?
絶望の体現者が希望的観測に縋るとはね?
(一般人ぽいのが出ても磨り潰します)
絶望のなんやら感やらとか纏めて踏み潰して蹂躙して近づいて
叩いて叩いて掻き混ぜて掃き散らしてミンチにする。
人の足を止めるのは絶望ではないと、いつかの誰かが言っていた気がする。
暴力も、絶望も、何もかもが人の歩みを止めるには値しないと。生きる道程において、もっとも宿敵であるというものが存在するのであれば、それは人の心の内側から発露する諦観であろう。
人は誰しもが心の中にそれがいる。息を潜め、限りなく小さく存在している。決して消えることのない感情だ。大きくもなれば、小さくもなる。
その諦観を克己してこそ、人は暴力も絶望も乗り越えていく。人生という旅を踏破することができる。
故に、宮落・ライア(ノゾム者・f05053)は歩みを止めない。絶望の集合体と呼ばれるオブリビオンを前にしても怯むことはない。
「ははは、絶望?そんなもので足が竦んで進めなくなるようなら、こんな場所には立ってないんだよ」
彼女の足は止まらない。彼女の足を止めるには絶望はあまりにも矮小な存在であったのかも知れない。彼女の歩みを止めることは誰にも出来はしない。もしも、彼女の歩みが止まるのだとしたら、それは彼女自身によってしか、それを成すことはできないだろう。
ぼたぼたと零れ落ちるようにして生み出される泥人形たち。それはオブリビオン、絶望の集合体から生み出されたライアへの攻撃だった。
彼女が戦ってきた数々の敵。彼女の過去に一因する者たち。
だからそれがなんだというのだ。
そんなものが自身の足を止める理由にはならないことをライアは知っていた。手にした武器が薙ぎ払う。
泥の人形は尽くが薙ぎ払われ、新たな泥人形が来ても同じことであった。
「今まで戦ってきた敵かい?戦争の患部だって乗り越えてきた。ボクをこんなふうにした研究者共?何度だって殺したりないね?」
姿を模したからなんだというのだ。あまりにも無意味。次々と現れる泥人形の数々が彼女の今まで歩んできた道程の凄絶さを物語っていたことだろう。
歩む。ただそれだけでいい。己の手にした武器は、自動的な機械の如くなぎ払っていく。
「それとも私の両親?あは、それこそ殺意しか無い。お前はボクにトラウマがあることを望んでいるのか?」
見上げる絶望の集合体。その不定形な姿は今や、さらに歪なものへと変わっている。修復の追いつかない体。潰された瞳、ひしゃげた腕。
それは幾多もの猟兵が与えてきた癒えぬ傷。そのどれもが物語っている。絶望程度で歩みを止めた者が一人もいないことを。
ライアのユーベルコード、侵食加速:自己証明(シンショクカソク・ジコショウメイ)が暗澹たる感情によってさざ波を生む。それは彼女の体を超強化していくのだ。
泥人形の攻撃など、ライアには最早何一つ届かないだろう。
彼女の心の内をかき回すことも不可能なのだ。何もかも彼女の全てに傷をつけることなどできようはずもなかった。
「絶望の体現者が希望的観測に縋るとはね?」
ライアはありとあらゆる泥人形を踏み潰し、踏破する。蹂躙といってもよかっただろう。
まとめて全て踏み潰し、手にした武器で叩き潰す。影も形もなくなるほどにミンチとおなじになるまで執拗に。
「絶望やらなんやらなんて、いいながら、結局はオブリビオン―――!叩けば、そのうち消えるだろう!」
その巨躯にライアが飛びかかる。超強化された身体能力は軽々と、絶望の集合体の巨躯、その頭上まで跳躍を為し得る。振りかぶった武器の重量でもって、振り下ろされたる一撃は、その脳天を叩き割る。
ひしゃげる音を心地よく聞きながらライアは、何度も何度も叩きつける。
何かがひしゃげる。何かを確認しようもない。
一般人のような姿の泥人形を今更出した所で遅い。なにかも関係なく、ライアは武器を叩きつけ続けるのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…………ん。ありがとう。もう大丈夫よ
貴方達はこのまま、此処に隠れていて
大丈夫。すぐに終わらせるから
先の戦闘で戦闘不能になり匿われていた所で自動的にUC発動
真の姿の吸血鬼化になり戦場に舞い戻るわ
このまま放っておいても他の猟兵が仕留めて消えるでしょうけど…
それでは“私”が世話になったお礼が出来ないもの
…覚悟は良い?私はあの娘ほど優しくないわよ?
吸血鬼化して限界突破した怪力の踏み込みから
残像すら生じない早業で敵の懐に切り込み
敵の攻撃は全身を覆う魔力を溜めたオーラで防御
傷口を抉る呪詛を纏った大鎌を連続でなぎ払い敵を乱れ撃つ
…どうしたの?もう終わり?
絶望の化身を僭称するなら、相応の力を見せてほしいものね
絶望のその先に憧憬があるのだとしたら、絶望の集合体の抱える憎悪は猟兵という存在そのものに向けられたものであろう。
己の醜悪さとは真逆の存在。暗闇の中に沈む己が在るのだとしたら、猟兵の姿はまばゆい星であった。手を伸ばした所で、対極に位置する自身の腕が届くはずもない。
振り上げた腕はひしゃげた。太陽に手を伸ばすのと同じようなものであったのかも知れない。
しかし、それでも絶望の集合体の憎悪は陰りを見せない。なぜなら、それこそが己の存在意義。猟兵という星を憎まねば、己という存在自体が意味を見いだせない。
骸の海で集積した絶望は、こんなものでないはずだ。だが、それも尽くが猟兵という存在によって打倒されてきた。
己と彼ら、一体何がどう違うというのか―――!
「……ん。ありがとう。もう大丈夫よ。貴方達はこのまま、ここに隠れていて」
リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)の意識が混濁する。いや、違う。抑圧されていた吸血衝動が生じた人格が表層へと現れたのだ。
それは享楽的で傲慢。だが、その言葉の端々に何かそれ以外のものが見え隠れするような気がした。
先の戦闘で戦闘不能の状態にまで陥っていたリーヴァルディを保護していたのは、彼女が助けた集落の人々であった。
絶望の集合体との戦いは苛烈を極め、倒れ込んでいた彼女を巻き込まれないように運んできていたのだった。
しかし、彼女の体が戦闘不能になるのと同時に彼女のユーベルコード、限定解放・血の封印(リミテッド・リーヴァルディ)が発動する。
それは自動的に真の姿を開放し、封印された吸血鬼の人格を宿す。
「大丈夫。すぐに終わらせるから」
リーヴァルディは妖艶に微笑みを向ける。人々は、変わり果てた彼女の姿に息を呑む。それは美しさからか、それとも本能的にわかってしまった吸血鬼としての真の姿からか。
だが、彼女が自分たちに危害をくわえるものではないことはわかる。吸血鬼の姿をしている。けれど、彼女が自分たちを身を挺して護ってくれたことだけは変えようのない事実であり、吸血鬼の真の姿を上回る真実であった。
リーヴァルディの体がふわりと浮かび上がったかと思った瞬間、一瞬でその場を離脱し、空を駆ける。
彼女が目にした絶望の集合体は、もはや数多の猟兵達の攻撃によって崩壊寸前であった。
腕はひしゃげ、不定形の体は歪に歪み、瞳は破砕し失われている。もはや、骸の海へと還るのは時間の問題であったかもしれない。何より、絶望を贄として生きる絶望の集合体にとって、今やこの集落は絶望という餌を取り入れることすら叶わない希望に満ちている場所となっていたからだ。
「このまま放っておいても他の猟兵が仕留めて消えるでしょうけど……それでは“私”が世話になったお礼ができないもの」
そう、ここまで用意周到に猟兵を狙い撃ちにした戦法の数々は正しかった。正しく機能し、猟兵を集落に惹きつけ、釘付けにし、消耗させてきた。
だが、そのどれもが正しいが故に猟兵という存在の本質を理解していなかった。猟兵は限界を超える。常に己を凌駕していく存在だということを彼らは失念していたのだ。
「……覚悟は良い?私はあの娘ほど優しくないわよ?」
吸血鬼化し、限界突破したリーヴァルディの膂力。踏み出す一歩は最早残像すら残さぬ速度。
瞬きの一瞬において、すでに間合いの内側にリーヴァルディは踏み込んでいた。手にした大鎌がひらめき、不定形の絶望の集合体の体を切り裂く。
振り下ろされた腕がリーヴァルディへと襲いかかる。避けられぬ攻撃ではなかった。彼女の速度を持ってすれば、回避など造作もなかったことだろう。
だが、かの一撃は地形を変え、絶望の感情を植え付ける瘴気を蔓延させる攻撃。この集落の大地へのダメージだけは避けたかったのだろう。
全身を覆う強固な魔力が、リーヴァルディの体から放たれ、巨腕の一撃を受け止める。受け止めたリーヴァルディの足が大地を割り、沈み込む。だが、それだけだ。
「……どうしたの?もう終わり?」
彼女の形の良い唇が哂った途端、その腕は大鎌によって切り刻まれる。傷口を抉るように走る斬撃は呪詛を纏い、その身を侵食していく。
大鎌の斬撃はそのまま、二の腕まで達し、肩口を切り裂く。リーヴァルディはすでに絶望の集合体の眼前に吸血鬼の翼を広げて、その存在を誇示していた。
「絶望の化身を僭称するなら、相応の力を見せてほしいものね」
その姿、力、全てが絶望の化身に能わず。そういうかのように彼女は嗤う。
彼女は見ただろう。絶望の淵に立たされても尚、互いに肩を貸す人々の姿を。途方も無いほどの暴力を前にしても尚、互いを庇った人々の姿を。
そして、己よりも優れた猟兵をも救う、絶望の集合体が餌にして弱者と哂った彼らの姿を。
彼女はもう知っている。
この闇夜の世界ダークセイヴァーを救うのは、猟兵ではない。この世界に生きる彼ら一人ひとりが希望の光であることを。
故に、彼女は哂うのだ。絶望の化身の身一つで薙ぎ払えるほどの希望の光は存在しないのだと。
「さようなら。希望に焦がれた絶望―――」
強大な魔力を纏った大鎌の一撃が、絶望の集合体の首を刈り取る。それはたった一撃で絶望の集合体の体をなぎ払い、骸の海へと還していく。
リーヴァルディは闇夜に揺蕩う。心地の良い疲労。次に目覚める時は、きっと―――。
―――光を生きる楔の腕の中だろう。
大成功
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