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ノードランク・ノーライフ

#グリードオーシャン

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#グリードオーシャン


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「ああ、ああ、クソッタレがッ!!」
 ガシャン! ……白い壁に、血のシミめいて赤い葡萄酒が広がった。
 割れ砕けた酒瓶を踏みにじるのは、海賊服に身を包んだ真紅の女獣人である。
「ダメだ、ダメだ、ダメだ! どんな酒を呑もうとちいとも酔えやしない……ッ!!
 アンタ達、もう少しマシな酒を略奪(と)ってこれないのかい? この木偶どもが!」
 癇癪じみた怒りを受け、しかし部下らしきウォーマシンどもは微動だにしない。
 いずれも水陸両用と思しきカスタマイズをされた、鋼の略奪兵だ。
 八つ当たりの矛先にされようが、最悪破壊されようが、文句一つ言わない従順な奴隷。
 しかし今の女獣人にとっては、それすらも苛立たしく感じられる。
「この『紅のフラップテイル』様が酔える酒が、この世界の何処かにあるはずなんだ!
 いいかアンタ達、次こそまともな酒を奪ってこい! 船を何隻沈めてでもね……!」
 呪いの杯を持った手で白い壁を殴りつけ、もう片手に持った喇叭銃で天を鳴らす。
『『『任務、了解。無差別略奪行動に移ります』』』
 従順なる鋼の尖兵どもは、異議を唱えることすらなく最敬礼する。
 そうしてまた、グリードオーシャンの海が血に染まるのだ……。

●グリモアベース:ムルヘルベル・アーキロギア曰く
「……今回ワガハイが予知したのは、略奪を繰り返すコンキスタドールの拠点である。
 通称、『麝香島』……いつ何時でも、強い血の匂いが漂うからつけられた名だ」
 ムルヘルベルによれば、件の島は完全にコンキスタドールの支配下により、
 スペースシップワールド由来の堅固な遺構を利用し、強大な要塞となっているらしい。
 配備されているのは、やはりかの世界に紐づくウォーマシンの高機動部隊だ。
「彼奴らの頭目は、『紅のフラップテイル』と呼ばれ恐れられる、女の獣人である。
 大層な酒好きらしいのだが、メガリスの呪いで酩酊できなくなってしまったようでな。
 自分が酔えるほどの酒を求め数多の船や島を荒らし、いまなお荒ぶる危険な敵だ」
 その怒りと欲望のままに、略奪団は野放図なまでに勢力を拡大している。
 放っておけば、この世界にとってよからぬ影響をもたらすのは間違いない。

「幸い、グリモアによって、要塞の弱点というべき侵入経路は割り出すことが出来た。
 オヌシらには秘密裏に内部へ侵入し、島内の敵を根こそぎ殲滅してもらいたい」
 問題の侵入地点は、海水の侵食によって生まれた海底洞窟だという。
 洞窟の出口は深いジャングルになっており、ゲリラ戦にはもってこいである。
 隠密行動で敵を狩ってもよし、派手に動いて陽動に回ってもいいだろう。
「島には元スペースシップと思しき艦体が塔のように突き立っている。
『紅のフラップテイル』はその頂点……旧艦橋をねぐらとしているようだ。
 つまり海底から侵入し、敵を蹴散らしながら上に上に登っていく形となるな」
 もはや島に住民は居ないため、フレンドリーファイアを気にする必要もない。
 敵の戦力が強大であるぶん、暴れたい猟兵にとっては格好の戦場となるだろう。
「知恵者にして勝利を司る軍神に曰く、こんな言葉が残されておる。
 "家畜ですら、草地を離れるべき時を知る。だが愚者は己の腹の限度を知らない"とな」
 そう言って、賢者は持っていた本を閉じた。
「暴虐に酔いしれた愚か者に、然るべき報いを与えてやれ。オヌシらの健闘を祈る」
 それが、転移の合図となった。


唐揚げ
 シードルです。今回はわかりやすいハック&スラッシュとなります。
 鋼の部隊を蹴散らし、荒ぶる酔っぱらいの脳天をぶち抜きましょう!

●第一章の補足
 皆さんは鉄甲船『スリッド号』から海底洞窟を経由し、島の内部に潜入します。
 敵は洞窟の存在を知らないはずですが、もしかすると極少数の警備がいるかも。
 戦いは主に、洞窟内部や出口の密林地帯、あるいは旧宇宙艦の内部で行われます。
 そういった地形を活かす工夫があれば、プレイングボーナスが与えられます。
(特に隠密行動を意識する必要はありません。ご自由に考えてみてください)

●プレイングの採用と締め切りについて
 今回のシナリオは、時間と余裕のある時に適宜採用していく形になります。
 なので、受付期間などは定めず、割とファジーなタイミングで執筆します。
 もしかするとリアルタイム的に進むかもしれません、ご参加はお早めに。
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第1章 集団戦 『ウォーマシン・タイプマリン』

POW   :    襲撃は速やかに
【急速接近からの超高温ヒートカトラス 】による素早い一撃を放つ。また、【水中から船・陸上へ強襲出来る推進機構起動】等で身軽になれば、更に加速する。
SPD   :    障害は燃やし沈めて
【機敏な動きで右腕に担いだマルチランチャー】を向けた対象に、【通常炸裂弾頭か高速誘導魚雷】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    命と宝は根こそぎに
自身の【頭部(メガリス探知用センサーユニット)】が輝く間、【敵位置を常に補足し】放つ【銛型高速徹甲弾】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。

イラスト:良之助

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ぴちょん、ぴちょんと、天井から水滴が落ちる静かな海底洞窟。
 地上に続くスロープ状の通路の先は、鬱蒼と茂る密林となっていた。
 しかし油断は禁物だ。もしかすると独自に海底洞窟を発見し、
 独断で警備をしている敵がいるかもしれない。

 なによりも敵の数は多く、そして機動力と兵力も強大だ。
 二度と悪さが出来ぬよう、全火力を以て殲滅すべし!
 麝香の如く強い血の匂いが立ち込める要塞島は、いま、戦場に変わる。
 白亜の塔めいて突き立つスペースシップは、まさに伽藍の塔。
 邪悪な酩酊者を目指し、弾雨を越えて突き進め!
鳴宮・匡
どれだけ奪っても満たされない、ってのは
……多分、苦しいものなんだろうな
だからといって、それを見逃す道理もないけど

ひとまず、要塞までの道のりの制圧が必要だな
宇宙船内部が本命だろうし、手早く済ませよう

洞窟内は耳で反響音を頼りに位置を把握し
できるだけ相手の不意を突いて一撃で仕留める
あまり洞窟内に集まられても厄介だ

密林方面へ抜けてからが本番だな
やることは――いつもしていることと変わりない
木々や生い茂る葉を隠れ蓑に敵の死角から狙撃
撃つごとにこまめに位置を変え、相手に悟らせないよう留意するよ
万が一気付かれた際は、向けられた銃口を狙って相手より先に撃つ
炸裂弾や魚雷が誘爆すればそれなりのダメージも狙えるしな



 戦いにおいて、これから殺す相手のことを想うなど下も下だ。
 良心の呵責なんてものは、結局のところただのノイズに過ぎない。
 ましてや、相手がオブリビオン――過去の残骸であればなおさらだろう。
 無慈悲に容赦なく、世界の敵を徹底的に殺す。
 それが、天敵であり仇敵たる猟兵として、もっとも正しく模範的な態度である。

 ……だから、だろうか。
 戦場で生きていたあの頃では絶対にありえない、敵を想うという行為。
 いまの鳴宮・匡にとって、それはもはや自然なことですらあった。
(……どれだけ奪っても満たされない欲望、か)
 しかし彼はプロフェッショナルだ。
 戦いの――そして、殺しのプロである。
 どんな事情があろうと、
 何を思おうと、
 それこそ相手がどんな姿であろうと……指先が鈍ることはない。
("多分"、苦しいもの……なんだろうな。俺にはわからないが)
 匡はこころの中でひとりごちながら、しめやかに洞窟内部を駆け抜ける。
 自然の侵食で出来た洞窟は、のたうつ蛇の体のように入り組んでいた。
 あるいは蟻の巣か……ともあれ、正解のルートを探すだけでも素人には難しい。
 匡は人間離れした聴覚を研ぎ澄ませ、万が一の敵襲に備えながらも先を急ぐ。
 ゲリラ戦とは、地の利を得てはじめて行使できる戦術だ。
 敵地に忍び込むこの隠密作戦において、アドバンテージはあちら側にある。
 一刻も早く、狙撃に適した地形に出なければならない……。
 先を急ぐ彼の足取りに、敵への慈悲や憐憫といったものは感じられなかった。

『……動体反応を検知』
 海底洞窟の外、密林地帯。
 がさり、とかすかな木の葉の擦れる音を聞きつけ、敵がカメラアイを向けた。
 右手のマルチプルランチャーががしゃがしゃとリボルバー状に回転し、
 対ゲリラ戦に適した炸裂弾頭をセットする。……そして静寂、たっぷり10秒。
『? 敵性体の存在を確認出来ず』
『誤認の可能性あり。センサーレベルの調整が必要』
『念のため、周辺領域の索敵、ヲ、ヲヲヲヲヲヲ』
 パンッ! と火花を散らし、後衛の機体頭部が爆砕した。
 敵は、正面ではなく横! いまの物音は注意を惹くための陽動か。
 すかさず予測射撃地点に銃口を向け、敵集団は一斉に火砲を放とうとした。

 だが、もう遅い。惹きつけられた時点で、匡の目的は達成できていた。
 いまの射撃はミスではなく、二段構えの陽動だったのである。
 彼の本当の潜伏位置は、敵が予測した射撃地点の真反対――つまり、背後だ。
「酔っ払いの部下なんてやってるから、こんな簡単な罠にかかるんだろ」
 銃声はしない。代わりに響き渡るのは、誘爆した炸裂弾頭の爆ぜる衝撃音。
 右腕を撃ち抜かれた敵集団は、そのまま肩口から頭部にかけてを負傷、機能停止した。
 敵に落ち度はない――あえて言うなら、彼の目と指先が鋭すぎたのである。
「……先を急ぐか」
 匡は周辺の敵殲滅よりも、聳え立つ敵拠点――つまり旧宇宙艦への潜入を優先した。
 本当の戦いは、あそこに踏み込んでから始まるのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

セゲル・スヴェアボルグ
なるほど、隠密行動か。
つまるところ、気づかれる前に倒せばいいということだな。
よし、派手に行こうじゃないか。
捕捉されようがされなかろうが、相手自身かあの錨を凍らせちまえばいいだけの話だ。
いくら弾が早かろうが、自分から突っ込んでくるなら、待ち構えているだけでいいしな。
それに、的は一つに絞らせたほうが、他の奴らも動きやすいだろう?
動きが止まったらあとは適当にぶん殴ればいい。
まぁ、徹甲榴弾はお返しするがな。
ついでに錨の使い方の手本ってものも見せてやろう。
何?錨は船を停めるためのもので、振り回すものじゃないって

そ細けぇことはいいんだよ。



『『『…………!?』』』
 冷血無慈悲、感情というものを持たないウォーマシン部隊が、困惑した。
 それもそのはず。なにせ、明らかに敵とわかる猟兵が、真正面から出てきたのだ。
 密林の闇に隠れるわけでもなく、
 身を低くして攻撃の隙を伺うでもなく、
 その巨大な龍体を惜しげもなく晒し、胸を張って堂々と目の前に現れたのである。
 あまりにも理不尽、そして非合理的、かつ理解不能の行動であった。
『『『……攻撃、開始』』』
 敵は徹底して合理的な機械兵士であった。だからこそ反応が遅れたのだろう。
 それは、戦場においてはあまりにも致命的なコンマ秒の揺らぎ。
 ――もっとも、そんなものがなかったとしても、彼は不敵に笑っていただろうが。
「かぁっ!!」
 さながら功徳を積んだ修行僧の如き、心身を竦ませる裂帛の気合であった。
 セゲル・スヴェアボルグが大口を開いて叫べば、その声音は凍てつく息吹となる。
 ごおうっ、とブリザードめいて吹きすさぶ冷気……逃れられぬ凍結のヴェール。
 飛来した弾頭も、その先にいる鋼の兵士どもも、音より速く撫でつける零度の風。
 たちまち弾丸も鋼の兵士も、ぱきぱきと霜を這って凍りつき、動かなくなった。
「ふん! やはり、悪党なんぞに黙って従っとるウォーマシンはなっとらんな。
 俺の知る連中なら、この程度の"あくび"、気合で跳ね除けられるというのによ」
 セゲルは鼻息荒く吐き捨てて、槌めいた錨斧を振るい、凍った敵を破砕した。
 がらがらと、凍結したままの残骸が飛び散る。もはや王は一瞥すらしない。
 むしろ威風堂々と、錨を担ぎ、のしのしとふてぶてしく島を歩く。
 殺せるならやってみせろ――とでも、敵に対して挑発するかのようだった。
『敵性体発見。攻撃開始』
 BRATATATATATATA――カラン、カランカラン。
 放たれた弾丸は、セゲルの鱗を貫くことが出来ない。否、触れることすら。
 その身が纏う冷気の残滓が、さながらカーテンのように彼を守ったのである。
 セゲルは不満げに敵を睨みつけ、そしてまた龍の息吹をおみまいした。
 あとはそれだけ。砕くことすらせずに、捨て置いてずんずんと船を目指す。
 残されるのは、一瞬で全身を凍結させられ氷像と化した鋼の兵士だけだった。
「弱い、弱い、弱い! この調子じゃあ、なんとかいう頭目も期待できんなあ。
 だがまあ、好き放題やらかしたならそのツケは支払ってもらうぞ。それが海の掟だ」
 傲慢? いや、彼の場合は正しい意味で適当な自己認識と言えるだろう。
 白亜の塔めいた伽藍を目指すセゲルの足取りは、誰にも止めることは出来ない。
 ――いわんや、魂の通わぬ残骸の兵士をや。

成功 🔵​🔵​🔴​

ロク・ザイオン
(向こうは敵の位置がわかる、というのなら
ほかの者のために、敵を引き付けよう)
……力。かりるよ、ヴィクティム。
(《Assist Code『Stage Maker』》
71体の人形を喚び出す。格好はなんかこう…大きくて強そうだといい。
急にこれだけ現れれば、きっと引き寄せられるだろう。
狭い地形や密林、【地形利用】し【忍び足】での狩りは森番の得手だ。
相手が他に気を取られるのなら、尚更)

……。
(酔うために酒を求めるこころも、理解できる。
けれど、酩酊が判断力を、理性ある意志を奪うことも。
己はもう、知っている)

(血の匂い。みずみずしいいのちの匂い。
己は、それでも酔えるらしい)


ヴィクティム・ウィンターミュート
ほう、スペースシップワールドの遺物か
こいつは中々愉快なことになりそうだぜ
敵の群れもウォーマシンとありゃ、素敵な展開になる
Arseneの前にテクノロジーをぶら下げてきたこと、後悔させてやる

まずは艦のシステムにアクセス──生きているといいが
ウォーマシンの情報を引き出して、奴らの制御システムに存在する脆弱性を特定してみようか
頭部にあるメガリス探知センサーをクラッシュさせて、武装一つ一つもイカれさせてやる
そうだなぁ、放った徹甲弾が全て自分に向けられちまうなんてどうだ?
テメェを殺すのはテメェって具合に、な

そんなことが出来るのかだって?
オイオイ、電脳のトリックスターを舐めるなよ
──俺のニューロンは特別製さ


ジャガーノート・ジャック
(ザザッ)
酒好きの女獣人――何処か良く知る誰かと被るな。
だからどうという事もないが。

依頼は依頼だ、いつも通りに指定された相手を討伐するのみ。
ミッションを開始する。

(ザザッ)
ハック&スラッシュと行こう。特段逃げも隠れもしない。
唯、全てをASAPで。

バーニア起動。空中を早駆け(空中戦×ダッシュ)しつつ
此方が目視した敵、もしくは此方に気付き攻撃してきた敵は――
 クイックドロウ
"早撃ち勝負"だ。

熱線銃を用い敵を狙い撃つ。
敵の砲弾が放たれる前に撃つのが理想だが――発砲を許したとして、弾を熱線で撃ち落してから再度敵を撃つ迄。
(早業×スナイパー×二回攻撃)

――走破完了。次の戦線に移る。オーヴァ。(ザザッ)



 ロク・ザイオンは、くん、と猫めいた仕草で鼻を鳴らした。
 ……麝香(ムスク)とはジャコウジカの香嚢で生成される生薬のことを指すが、
 転じて強い匂いを発する動物の名にも冠されるほど、特有の香りを持つ。
 同じように名付けられたこの島もまた、前評判通りに強い異質な匂いが漂っていた。

 血だ。
 この島に、住民はいない――おそらくすべて殺されたのだろう。
 そして略奪の片手間に殺された冒険商人や海賊も、おそらく相当存在するはず。
 それらの屍は棄てられ焼き払われても、死臭は島全体にこびりついていた。
 ロクは目を伏せ、頭を振った。身震いのようなその仕草も、やはり猫めいている。
 裡から湧き上がる酩酊感を意志の力で制し、蕩けそうになる頭をしゃんとさせるのだ。
「――みずみずしい、いのちの匂い」
 肉食獣の喉を潤す血の芳香。それはロクにとって酒に似て酩酊をもたらす。
 けれども、彼女はもはや、己の獣性に振り回されるだけの少女ではない。
 鏡に映った己の姿を見つめ、知識を学び、ひととして歩もうとするひとりの狩人だ。
 ゆえに、まとわりつくような麝香に抗って、ロクはしめやかに密林を進む。
 敵が血肉を持たない鋼の兵士であることも、今は僥倖と言える。
 あれが心臓を持ち灼けるような血の流れる獣であったならば、あるいは――。
「……力。かりるよ、ヴィクティム」
 思考を中断し、ロクはか細い声で呟いて意識を集中させた。
 無数の人形を思い描き召喚する力……ただし、彼女自身が本来持つ力ではない。
 なんてことのない端役、すなわちヴィクティム・ウィンターミュートが教えてくれた、
 自由自在に舞台(ステージ)を作り出す、彼らしいユーベルコードだ。
 そしてロクの思念に応じ、70と1体の雄々しき巨人が、密林の闇から滲み出した。
 ずしん、ずしんと音を立てて歩むさまは、どことなく彼女の相棒である鋼の豹、
 ジャガーノート・ジャックのかつての厳しい鎧姿に似ていなくもなかった。
『侵入者を確認、攻撃開始』
 敵は姿を現した人形群にまんまと引っかかり、すぐさま銃撃で応戦する。
 人形たちの姿は厳しいが、それらに直接的な戦闘能力はない。
 だが、それでいい。ようは大きな見た目で敵の注意を惹いてくれれば十分なのだ。
 あとは草陰から木々の影を飛び渡り、焼灼の刃を以て鋼を断つのみ――。

 が、いざ攻め込もうとしたところで、ロクはなにか様子がおかしいことに気づいた。
 召喚した人形群に戦闘能力はない……はず、だ。
 しかし。突如として空から熱線が降り注ぎ、応戦中のウォーマシン部隊を爆殺した。
 たしかにあれは、相棒の得意とする戦術。だが人形に再現できるはずは――。
《――懐かしい姿(フォーム)だ。ならば今の本機との違いを見せつけてやろう》
「……あ」
 ロクは、自分が戦闘中にも関わらず緊張感のない声を出していることに気づいた。
 だが無理もない。なにせ、写し身でも模倣でもない相棒がそこに居たのだから!
《――こちらジャック。A.S.A.Pでの敵殲滅ミッションを開始する。オーヴァ》
「……ん、おーば!」
 ロクは口元が緩んでいるのを自覚していた。けれども引き締めはしなかった。
 なにせ相棒が居るのだ。しかもどうやら、援軍は彼だけではないらしい。
 BRATATATATATATA……KBAM!!
 熱線が降り注ぎ、影から影を飛び渡る狩人の刃が、鋼の兵士を瞬く間に駆逐する。
 それは彼ら"レグルス"の卓越した戦闘能力が為せる技だ。
 しかし、今回はそれだけではない。彼らには見えざる支援者がいた。
 実際にメッセージを受け取ったわけでも、事前に作戦会議をしたわけでもない。
 だが、"いる"。ふたりにはそれがはっきりとわかる。言葉など必要ないのだ。
 こうやって都合よく状況が進むのは、間違いなく"彼"のシナリオ通りなのだから。

「ハッ、派手におっ始めたじゃねえか。演出のしがいがあるぜ」
 ブウウン……と不穏に高速振動するナイフを剣豪のように振り払い、"彼"は言った。
 ヴィクティムである。彼もまた、密かに上陸を果たしていたのだ。
 そんなハッカーの周囲には、やや奇妙なウォーマシン部隊の残骸が転がっている。
 いずれもナイフで致命的箇所を貫かれてはいるが、それだけではない。
 頭部、ないし駆動部が、高速徹甲弾や炸裂弾頭によって破壊されていたのだ。
 ヴィクティムは、そうした大きな物音のする派手な火器を好んで携帯しない。
 つまり――残骸を破壊したのは、奴ら自身の搭載火器なのである。
『侵入者発見。攻撃を開始 シ しShiシシ、シシシシシシ死死死死死死』
 ――BLAMN!!
 ヴィクティムを発見したウォーマシンは、突然右腕で自らの頭部を撃ち抜いた。
「おいおい、どうやらテメェら、自己診断プログラムすら積んじゃいないようだな。
 所詮は漂着してきた機体の残骸だ。防壁だけで言うなら、お前ら旧型もいいとこだぜ」
 ヴィクティムは冗談めかした仕草で肩をすくめ、もはや動かぬくず鉄に言った。
 脳内には、すでにこの島全域とウォーマシン部隊に関するデータが蓄積されている。
 スペースシップワールドから漂着した残骸……それはつまり、
 電脳魔術士として右に出るものの居ない彼にとっては、最適の戦場ということだ。
 現実を改竄(ハック)するまでもなく、ただシステムを書き換えてやればいい。
 自分で自分を殺すという、機械にありえないアポトーシスを起こさせることも自在。
 塔のように聳え立つ艦内に侵入するための、最適なルートも導き出せていた。
「あいつらには必要ないだろうが……ま、手間は省けるほうがいい」
 ヴィクティムはデバイスを操作し、"レグルス"のふたりへデータを電送。
 そして自らもまた、漆黒の虚無の残滓を纏い、色なき風となって密林を疾走する。
 頭上からは断続的な熱線銃の砲音。ジャガーノートは張り切っているようだ。
 システムを改竄されたウォーマシン部隊では、その早撃ちに敵うはずもないが。
(いや、そもそも要らぬ世話だったかね? まあいいさ)
 ふたりの技量ならば、ちょっかいがなくとも殲滅していただろう。
 ヴィクティムは皮肉めいた笑みを口元に浮かべ、立ちはだかる敵を切り裂き、拓く。
 同じ頃の別地点――ロクもまた、燃える刃で木々を、鋼を薙ぎ払っていた。
(酒も、血も、いまは要らない。おれには、仲間がいる)
 速度と砲声が思考を洗浄してくれる。視界がクリアになっていく。
 駆け抜けるさまは星の閃光のように。その輝きは空を舞う豹にも視えていた。
《――お前たちは"前座"だ。電子の速度でご退場願おう》
 ZAP!!
 空をまっすぐと熱線が焼き焦がし、狂った鋼の残骸をまたひとつ爆散せしめた。
 前へ。雑魚相手に足を止める必要はない。意志を確認し合う必要もない。
 互いの最速かつ最優の動きが仲間の最適となり、そして最大の戦果をもたらす。
 敵にとっては、まさしく戦禍というべき圧倒的な暴威だろうが。
 彼らは猟兵――過去の残骸を猟り、滅殺する兵士。だから、それでいいのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

アルトリウス・セレスタイト
さて、潜入か
仮に哨戒があるとして、気取られず一手で殲滅すれば後は進むだけで良いな

天楼で捕獲
対象は戦域のオブリビオン及びその全行動
原理を編み「迷宮に囚われた」概念で縛る論理の牢獄に閉じ込める
対象外へは影響皆無故、遠慮なく想定される海底洞窟全域を覆う規模で展開

出口は自身に設定
『天光』で洞窟を走査しつつ敵性個体の位置と状態も随時確認
排除の後に島へ進行する


万一自身へ到達する個体があれば『討滅』を乗せた打撃で始末
攻撃分含め必要魔力は『超克』で“外”から汲み上げる


何やらこの島のオブリビオンは不自由しているそうだが
望んでやったことで今の境遇を得たのなら本望だろう

※アドリブ歓迎


須藤・莉亜
「お酒で酔えないなんて可哀想な敵さんだねぇ。流石に同情するよ、本気でね。」
それにしても良い匂いのする場所だなぁ…。ここを拠点にしたいかも。

血界形成のUCを発動し、周囲の無機物をあらゆるものに変わる血に変換。ついでに自分の大鎌も血に変換しとこうかな。
血を盾に変化させ敵さんの攻撃を防ぎ、血を鎖に変化させて敵さんを縛り、血を槍に変化させて串刺し。後は敵さんの弾丸が変換できるかも試しておこう。

ウォーマシンだしなぁ。吸血は出来そうもないか。でも一応試すのも忘れずに。

「いやー、良い匂いでだんだんテンションが上がってくるなァ。」
…おっと危ない。クールに行かないとね。


鴨嘴・ケンゴ(サポート)
戦闘をメインに活躍させて欲しいっす。
戦闘での行動は変形する偽神兵器を使って、カッコいい剣撃と銃撃、捕食による敵のデータ収集と偽神兵器の強化を行うっす(メタ的に言うとゲームのゴットイーターな感じ)
敵は絶対殺す又はデータ収集すると言う意思で戦う為に戦闘中は性格が変わったように攻撃的になります。
(口調 少年(おいら、~くん、~さん、~っす、~っすよ、~っすね、~っすか?)
敵には 野生の感覚が蘇る(オレ、アンタ、言い捨て)っす。


北条・優希斗(サポート)
『敵か』
『アンタの言う事は理う解できる。だから俺は、殺してでも、アンタを止めるよ』
『遅いな』
左手に『蒼月』、右手に『月下美人』と言う二刀流を好んで戦う剣士です。
自らの過去を夢に見ることがあり、それを自身の罪の証と考えているため、過去に拘りと敬意を持っております。その為オブリビオンに思想や理想があればそれを聞き、自分なりの回答をしてから斬ります。
又、『夕顔』と呼ばれる糸で敵の同士討ちを誘ったり『月桂樹』による騙し討ちを行なったりと絡め手も使います。
一人称は『俺』、口調は年上には『敬語』、それ以外は『男性口調』です。
見切り、残像、ダッシュ等の機動性重視の回避型の戦い方をします。



 血の匂いが強く立ち込める麝香島に、無数の銃撃音と爆発音が響き渡る。
 銃撃音は、ウォーマシン部隊が猟兵たちに迎撃しているもの。
 爆発音は……言うまでもなく、そんな奴らが見事に敗北、爆砕したものだ。
「派手にやってるなあ。それにしても、いい匂いのする場所だね、ここ」
 新たに海底洞窟を抜けた猟兵――須藤・莉亜は、すんすんと鼻を鳴らした。
 血の匂いが濃い。彼がケープのように纏う紫煙でも殺しきれぬほどに。
 実に、いい。なにせ莉亜は、狂おしいまでの吸血衝動を押し殺したダンピールなのだ。
 思わず口元がゆるく笑みを描いてしまうくらいに、心地よい場所だった。
「いっそここを拠点にするのもいいかもなー……なんて、それは無理か。
 それにしても酒で酔えないなんて可哀想な敵さんだねぇ。さすがに同情――」
 ひとりごちる莉亜の言葉を遮ったのは、ざあっ、と横合いを駆け抜けた一陣の疾風。
 その正体が、二足歩行のカモノハシというべき奇妙な風体の猟兵であることは、
 一見だらけきった莉亜の動体視力でも、やっと確認できるほどの疾さだった。
「どいたどいたどいたぁ! 当たっても恨まないでほしいっすよー!」
 件の猟兵……鴨嘴・ケンゴは身の丈を大きく超える偽神兵器"骸喰"を軽々と振るい、
 斬撃とそれに伴う銃弾の雨嵐によって暴威を撒き散らし、敵を一掃する。
 銃撃は極めてランダムであり、どうやらケンゴは敵味方の識別をしていない。
 だからこそ彼は颯爽と先陣を切り、敵の不意を打ったというわけだ。
 そして着地し顔を上げたケンゴの表情は……少年めいたものから一変していた。
「全員殺してやる、オレがなァ!」
 まるで別人のような変貌。おそらくは野生の感覚が戻ったのだろう。
 敵を残らず殺すという確定的殺意のもと振るわれる攻撃は、災害じみていた。
「……羨ましいなあ。僕はあそこまでのびのびやるわけにはいかないし」
 新しいタバコを銜え、莉亜は呟いた。そして愛用の死神めいた鎌を肩に担ぐ。
「ま、ほどほどにやるとしようか」
 気怠げな表情――されどそんな雰囲気を裏腹に、周囲の無機物がどろりと溶け崩れた。
 煮え立つ溶岩めいた紅い血液……それはたちまち鎖型に変じて迸る。
 立ちはだかるウォーマシンどもの手足を縛り、血の槍で貫く拘束具として……!

 ……同時刻、密林地帯を抜けた島中央部の運搬通路にて。
『多数の侵入者を確認。増援を要請』
『敵の目的は艦内への潜入の模様。防衛戦力の強化を』
 麝香島のあちこちに展開していたウォーマシン部隊が、続々と中央に戻ってくる。
 島のそこかしこに遺されたスペースシップの遺構――砲台やレーダー機――が稼働し、
 周辺海域と空からのさらなる侵入を防ぐため、目を光らせる。
 どうやらコンキスタドール軍は、まだ海底洞窟の存在に気づいていないようだ。
 否。正しく言えば、察知した個体は居なくもない……だが、もう存在しない。
 なぜならば、侵入してきた猟兵によって即座に抹殺されているからだ……!
「……略奪者の傀儡か。他愛もないな」
 ずるりと両断したウォーマシンの残骸を踏み越え、北条・優希斗は呟いた。
 敵の数は多い。コンキスタドールとしても、けして弱敵ではない強力な存在だ。
 しかし。数多の戦いを生き抜いてきた優希斗からすれば、容易い相手だった。
 いかに強力な火器やセンサーを備え、高い機動力を有していたとしても、
 最終的に雌雄を決するのは、信念や覚悟といった精神力だと言っていい。
 その点において、暴君の如きコンキスタドールに唯々諾々と従い、
 良心の呵責もない略奪を繰り返す人形のようなウォーマシン部隊は、がらんどうだ。
 数を揃えただけの雑兵に打ち負けるほど、優希斗の二刀は軽くも鈍らでもない……。
『侵入者を発見。攻撃開始』
「! ――新手か!」
 優希斗は振り返りざま斬撃を放つ。ガキキキッ! と、飛来した弾丸が四散した。
 そして敵が給弾する一瞬のスキを突いて、不可視なほどに細い糸を素早く投擲。
 淡い紫色の鋼糸――"夕顔"は一瞬で敵の全身に絡みつき、それ以上の自由を奪った。
「俺にその弾丸は届かない。どうせなら……味方同士で撃ち合え!」
 優希斗は両足で大地を踏みしめ、ハンマー投げめいて絡め取った敵を振り回した。
 自由を奪われたウォーマシンは、戒めから逃れようとめちゃくちゃに弾丸をばらまく。
 BRATATATATATA……四方に展開していた友軍に炸裂弾頭が命中! 同士討ちだ!
「――心なきガラクタには似合いの最期だ。悪足掻きせず受け入れろ」
 反撃しようとしたウォーマシン部隊は、しかしぴたりと身動きが取れなくなった。
 それは、密かに潜伏していたアルトリウス・セレスタイトによるものだ。
 "天楼"の術式……自壊原理を宿した不可視の迷宮術式に囚われたことによって、
 回避も迎撃も出来ないままに炸裂弾頭を全身に受け、爆炎の中に飲み込まれていく。
 アルトリウスが、そうした敵の無惨な残骸にセンチメントを抱くことはない。
 彼もまた蒼い魔的な燐光に双眸を輝かせ、残像めいた速度で密林を走る。
 敵の首魁は白亜の塔の頂上。ならば、その過程に立ちはだかるものはすべて障害だ。
 足を止める理由などなし。すべて滅殺し、無人の野を征くのみ。
「お前たちも望んで"あれ"に従ったのだろう。ならば戦いで死ぬのは本望のはずだ」
 立ちはだかるウォーマシンを魔力の打撃で滅殺し、アルトリウスは言った。
 横合いにぬうっと現れる銃口――だが射撃より疾く、優希斗の剣が奔る。
 KBAM!! 誘爆した敵機体が大きく炎を噴き出し、ウォーマシンの視界を遮った。
 炎を切り裂き走る優希斗の手の中、二刀の刃が大きく膨れ上がり巨大化する!
「このまままっすぐ駆け抜けよう。雑魚の相手をしている時間も惜しいからね」
「……同感だ。どのみち、あちらも俺たちを見逃してはくれまい」
 優希斗の言葉にアルトリウスは頷き、さらなる敵襲を察知した。
 降り注ぐ火砲。ふたりはそれを刃で、あるいは蒼い原理の輝きによって相殺し、
 爆発四散の憂き目をもたらす。一時たりとて足を止めることなく!

「――っと。あっちも騒がしくなってきたかな?」
 ぞるぞるとスライムめいてうごめく血の群れを引き連れ、莉亜は呟いた。
 あちこちから聞こえる戦闘音。そのたびに、血の匂いは強まるかのようだ。
 敵はウォーマシンであり、当然血は通っていない(念のため吸血は試したが)
 流れる血がないのに匂いが強まるというのは、ただの錯覚に過ぎないだろう。
 血への渇きと戦意高揚がもたらす、言わば疼きのようなものだ……。
「いやー、いい匂いでテンションが上がってくるなァ」
 莉亜はゆるく持ち上がる口元の笑みを抑えきることが出来ない。
 おそらくそれは、いまも目の前で敵軍を薙ぎ払うケンゴの勇ましさも影響している。
「出し惜しみしないでかかってきな! 全員捕喰してやるからよォ!」
 偽神兵器は倒した敵を喰らい、次の敵を喰らい殺すための力に変える。
 野生の本能を剥き出しにし、並み居る敵を喰らい、滅ぼし、そしてまた喰らう。
 実に――実に、羨ましい。莉亜は己の吸血衝動が疼くのを感じる。
「……おっと。いやいや、クールに行かないと」
 彼は頭を振り、血の渦の制御に集中した。
 ケンゴが前衛を張ってくれるならばそれでいい。喰らうのは彼に任せよう。
 麝香の如く血が薫るこの島では、そんな我慢もいつも以上に己を強いねばならなかった。
 ……そんな莉亜の煩悶を知らぬまま、ケンゴは縦横無尽に敵陣を駆ける。
 地で構える敵は岩ごと刃で薙ぎ払い、空の敵を無慈悲な銃撃で撃ち落とす。
 敵が弾丸を放つよりも先に、その頭部に牙じみた剣を叩きつけて、さらに次へ。
 まさに疾風。誰も勢いづくケンゴを止められはしない。
「さあ、次はどいつだ!? オレを殺せるなら殺してみなッ!!」
 またひとつ盛大な爆炎が麝香島を照らす。
 コンキスタドールに迫りつつある、滅びの凶兆を報せるかのように。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

アコニィ・リード
敵の数が多いなら……これよ!
起動走行服で武装したイルカ海兵隊出撃! ガンホー!
洞窟内をクリアリングして着実に進むわ
相手が機械なら電撃銃で攻撃よ!
センサを狂わせば私の位置をずっと補足する事も難しいでしょう?

洞窟を抜けたら皆で敵陣をかき乱すわ
わたしもオトシゴロッドから雷の全力高速詠唱!
前線を制圧してどんどん先へ進むよ……さあ!

まだまだ元気! こんな環境変化くらい全然耐えられるわ
アポヘル仕込みの持久戦――御覧に入れてあげるわよ
纏まって突撃してきたらシャークシューターの擲弾筒に
焼夷弾をセット! 邪魔なのは焼き払う!
やっぱりナパームは格別だわ……
そのままイルカ海兵隊の怒涛の突撃で制圧地域を増やしていく!


レパル・リオン
要するに、世界中で暴れる海賊怪人がいるのね!で、そいつをやっつけるのね!オッケー!

突っ込んで暴れたいけど、ガマン。疲れてボス怪人に勝てない方がよくないし。

そんな訳で洞窟はさっさと抜けるわ、とにかくダッシュで見つかっても走り抜ける感じで!
そしたらあたしを見つけたウォーマシン怪人が追ってくるわよね?そこを密林で待ち伏せするわ!

密林の木の上から【瞬打】こと高速キック!1人ずつ仕留めて、また木の上に隠れるわよ!

追っ手がいなくなったら、いよいよ宇宙戦艦に攻め込むわよー!


数宮・多喜(サポート)
『よっし、アタシに任せときな!』
一人称:アタシ
三人称:通常は「○○さん」、素が出ると「○○(呼び捨て)」

基本は宇宙カブによる機動力を生かして行動します。
誰を同乗させても構いません。
なお、屋内などのカブが同行できない場所では機動力が落ちます。

探索ではテレパスを活用して周囲を探ります。

情報収集および戦闘ではたとえ敵が相手だとしても、
『コミュ力』を活用してコンタクトを取ろうとします。
そうして相手の行動原理を理解してから、
はじめて次の行動に入ります。
行動指針は、「事件を解決する」です。

戦闘では『グラップル』による接近戦も行いますが、
基本的には電撃の『マヒ攻撃』や『衝撃波』による
『援護射撃』を行います。



「……ねえ、突っ込んだらダメ?」
「静かに。よし、この曲がり角はクリアね……あそこまで進みましょう」
「…………ねえ、やっぱり突っ込んだらダメ……?」
「気持ちはわかるけど我慢しときな。先導者がいるんだからさ、ね」
 レパル・リオンは辛抱たまらない様子でじたじたと身悶えしながらも、
 数宮・多喜の言葉に不承不承頷き、クリアリングするアコニィ・リードに従った。
 彼女らは長い長い海底洞窟を慎重に進み、コンキスタドールが巣食う『麝香島』への上陸真っ最中だ。
 すでにおわかりの通り、レパルは一気に海底洞窟を駆け抜けるつもりだった。
 そんな彼女を半ば強引に押し留め、自ら先頭を買って出たのがアコニィである。
 もしかしたら敵が潜んでいるかもしれない以上、アコニィの作戦は正しい。
 安全に敵地に潜入してこそ、目的である敵リーダーの打倒は為る、のだが……。
「……そもそもなんなんだろうね、あのやけに怖い顔したイルカの群れはさ?」
「ふっ。これぞわたしが誇る精鋭イルカ海兵隊よ! 頼りになりそうでしょう?」
 なぜかドヤ顔のアコニィのノリに、多喜はやれやれと言った様子で肩をすくめた。
 そう……アコニィとともに洞窟をクリアリングするのは、なぜかイルカたち。
 ユーベルコード"戴竜虹娘(ナイトメア・オーシャン)"によって招来された、
 地獄の訓練を生き延び殺人マシーンとなった、恐るべきイルカ・マリーンなのだ。
「こんなに数がいるならさっさと突っ込んじゃえばいいのに。まだるっこしいわ!」
「気持ちはわかるわ。けど千里の道も一歩からと言って……」
「あ! 敵よ! 敵がいるからいいわよね!? よーし、突撃よーっ!!」
「「あっ」」
 海底洞窟を発見したらしき敵――ウォーマシン兵士めがけ、突撃するレパル。
 その速度はふたりが止めるよりも圧倒的な勢いで、出会い頭にヘッドバット!
『ピ、ガガ……侵入……ガガ……』
「ええい、仕方ないわね。海兵隊、あとに続くわよ! ガンホー、ガンホー!」
『『『キルオアダーイ! ドゥオアダーイ!!』』』
「しかもこのイルカたち喋るんだね……!?」
 レパルのあとを追って一気に突き進むイルカ海兵隊……と、アコニィ。
 そこら中で電撃銃の閃光音が鳴り響き、海底洞窟は一瞬で戦場と化した。
「ま、アタシとしてもさっさとお外へ出たいところだ。重畳だけどさ!」
 そんな一行に続き、多喜も全速力で昏い洞窟を駆け抜ける……。

「一番乗りーっ!!」
『『『!!』』』
 そして海底洞窟を抜けた先、密林地帯!
 ミサイルのような勢いで飛び出したレパルに、ウォーマシン部隊は驚愕!
 レパルは躊躇せず全力ダッシュし、先頭のウォーマシン頭部に強烈な蹴り!
「よっ! ほっ!」
 そして蹴り飛ばした敵の頭を飛び石めいて蹴り渡り、さらなる蹴撃、蹴撃!
 あまりにも決断的な速度と行動に、敵は応戦する暇すらない!
「さっそく始まってるわね……イルカマリーン、全軍突撃よ!」
『『『ガンホー! ガンホー!』』』
 遅れてやってきたアコニィとイルカ海兵隊は一気に電撃銃で敵軍を蹂躙、
 連携して包囲しようとするウォーマシン部隊の足並みをかき乱す。
『侵入者を迎撃せよ。攻撃開始』
 BRATATATATATA! さらなる増援部隊が炸裂弾頭による一斉砲火を見舞う。
 周囲の木々が爆炎に呑まれて吹き飛び、さながらゲリラ戦じみた様相だ!
「おっと、機動力ならアタシの出番だ! さあさあ、退きなァ!」
 ギャリリリリリリッ!! と地面にバーンナウト痕を刻み、多喜が疾走する。
 海底洞窟のような閉鎖空間ならばともかく、開けた空間なら彼女の独壇場だ。
 愛機である宇宙カブJD-1725を駆り、空のウォーマシン部隊を撃墜する!
「それにしても数が多いわね……!」
「だったら焼き払っちゃうわ! 焼夷弾装填――総員、撃てぇっ!!」
 レパルがバックステップを踏んだ瞬間、イルカマリーンが一斉射撃。
 スポンッ、と射出された焼夷弾が……KRA-TOOOOOOOOOM!!
 ジャングルの木々を巻き込み、ウォーマシンどもを爆炎に飲み込んでいく!
「ふふっ、やっぱりナパームは格別だわ……!」
「って恍惚としてる場合じゃないよ!? ほら、今のうちだ!」
 なにやら気持ちよさそうなアコニィをタンデムさせ、多喜は一気に最加速。
 風のように駆けるレパルとともに、混乱する敵陣のど真ん中を矢のように通過する。
 そう、ここで雑魚どもを相手に足を止めている暇はない。
 彼女らの目的地は、島の中央に塔めいて突き立つ白亜のスペースシップ。
 コンキスタドールの首魁が座する、この要塞島の最上部なのだから!
「見てなさい海賊怪人、酒欲しさに略奪だなんて、これ以上はさせないわ!
 殺された人々の恨みと怒り、あたしたちが身を以て思い知らせてあげるんだから!」
「殿はイルカたちに任せるわ。どんどん進みましょう!」
「オーケー、だったらフルスロットルで駆け抜けるよッ!」
 爆炎と砲声を撒き散らしながら、三人の猟兵が要塞の最奥へと突き進む……!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ハルピュイア・フォスター(サポート)
絶望を与えるのがわたしの仕事…。
無表情で口調は事実を淡々と告げます

【暗殺】が得意
また【迷彩】【目立たない】【闇に紛れる】【地形の利用】など使用して隠密にまた撹乱しながら行動

Lost memory…敵のユーベルコードの矛盾や弱点を指摘しUC封じ込む

回避は【残像】で、怪我は厭わず積極的に行動

武器;首にマフラーの様に巻いてある武器『零刀(未完)』は基本は両手ナイフだが鞭や大鎌など距離や状況に合わせて形を変貌させ使用

他猟兵に迷惑をかける行為はしませんが、御飯やデザートは別問題…奪います。
公序良俗に反する行動は無し

後はおまかせでよろしくおねがいします



 ここは『麝香島』――コンキスタドールによって占拠された要塞島である。
 邪悪なる略奪者『紅のフラップテイル』を倒すため、多くの猟兵が馳せ参じ、
 彼奴の配下であるウォーマシン部隊との死闘に身を投じていた。
 そして新たに侵入経路の海底洞窟から現れたのは、ハルピュイア・フォスター。
 彼女は異色の双眸で密林地帯を見渡し、そして耳を澄ませた。
「……あちこちから、戦いの音が聞こえる。もう、始まってるのね」
 聞こえてくるのは砲声、そして爆音。
 先遣の猟兵たちが、島の中央部に白い塔めいて突き立つかつての宇宙艦を目指し、
 高機動ウォーマシン部隊を次々に撃墜している戦闘音だろう。
 この騒ぎは、ハルピュイアにとっては非常に好都合だ。
 なにせ彼女は暗殺者――影に忍び、淡々と敵を仕留めることをこそ得手とする。
 味方が騒ぎを起こしてくれているぶん、彼女は自由に動けるのだから。
 ハルピュイアは気配を消し、音もなく密林の闇に溶け込み、消えた。

『ポイントD-2にて新たな侵入者を確認。増援を要請する』
『要塞正門の警備を強化せよ。敵の侵入をなんとしてでも防ぐべし』
『こちらF小隊、侵入者の攻撃により部隊は壊滅。繰り返す、F小隊壊滅……』
 無慈悲にして容赦なきウォーマシン部隊は、いまや完全に追い詰められていた。
 多数の猟兵による多種多彩な攻撃に、彼奴らは一切対応出来ていない。
 地の利があるはずなのにまんまと各個撃破され、その兵力を減らしつつあった。
 ゆえに彼奴らは連携を緊密にし、戦線を立て直そうとしているのだ。
「――どれだけ機動力を持っていても、周りが見えてなければ無用の長物ね」
 だから、背後に忍び寄るハルピュイアの影に気づくことが出来ない。
 センサーが反応を検知した瞬間には、彼女の仕事はもう終わっているのだ。
 ハルピュイアは振り返り銃口を向けようとするウォーマシンに先んじ、
 風のような速度で間合いを詰めた。そしてナイフを逆手に構え、突き刺す。
 強固な装甲も、関節部を狙った鋭利な刺突の前には意味をなさない。
 動力部を貫かれたウォーマシンは二度痙攣し……煙を噴き出し、崩折れた。
「……それにしても、ひどい匂い」
 ハルピュイアはうっそりとした声で呟き、マフラーで口元を隠した。
 麝香島――この島の名の由来は、常に漂う濃い血の匂いがゆえ。
 コンキスタドールは、それだけ多くの略奪と虐殺を行ってきたのである。
 かつてこの島にも住人がいたのだろう……もはや、見る影もないが。
 その漂う匂いが、彼女の宿す吸血騒動をじくりと刺激した。
 ハルピュイアは出来るだけ匂いを意識しないようにし、さらに影から影を渡る。
 足を止めている暇はない。すぐにでもあの旧スペースシップ内部に潜入し、
 諸悪の根源であるコンキスタドールを討つべきだろう。
 これ以上略奪させないためにも……この呪われた島の支配を解き放つためにも。
「……いやな匂い」
 ハルピュイアは顔をわずかに顰め、立ちはだかるウォーマシンを一刀で伏せた。
 そして、走る。立ち込める血の匂いを振り払うように。
 聞けばこの島の主は、メガリスの呪いで酩酊できなくなったという。
 自分が酔える酒を求め、あちこちの冒険商人を襲っているのだ。
 ならば血の匂いに酔いしれる暇はない――己は吸血鬼ではないのだから。
 彼女の決意に応じるかのように、刃は鋼を切り裂き活路を拓く……。

成功 🔵​🔵​🔴​

アリエ・イヴ
アドリブ◎

酒を飲むだけが酔う方法じゃねぇだろうに
憐れなヤツだな
その渇き、満たしてやるためにも会いにいかねぇとなぁ

特に隠れる必要も感じねえし堂々と道を行く
会った敵は覇気を纏った剣で斬りつけ黙らせて
複数出てくるなら碇でまとめてなぎ払う
ああ、けど樹があるとこじゃそうもいかねえ
けどまあ、碇を飛ばすのに邪魔だっつーなら
別の形で利用すりゃいい
碇を上へ飛ばし樹に巻き付けて
移動するのに使う
鎖の長さ次第でどこへでもってな!
くるりと跳んだら
敵の懐に踏み込み切り込んで
ド派手に暴れてやるとしよう
【海の愛し子】にゃ、半端な弾はあたんねぇよ

そしたらあとは蹂躙して喰らいつくすだけだ



 そこかしこで戦場じみた砲声と爆音が響き渡る麝香島。
 そのど真ん中を堂々と征く男がひとり――海賊、アリエ・イヴ。
 赤い髪を潮風になびかせ、そのふてぶてしい表情はいっそ自信満々であった。
「どうしたハニー、かかってこねえのか? ならこっちから行くぜ」
 警戒するウォーマシン部隊に対し、アリエはにやりと不敵に笑った。
 そして敵が銃弾を放つより先に、竜巻のような速度で一息に間合いを詰める。
 ごう、と烈風が吹いた――膂力に任せて振るわれたカトラスの起こした剣風だ。
 弧を描いた剣戟は一撃でウォーマシンどもを両断し、吹き飛ばす。
『……敵襲! 迎撃を開始せよ!』
「遅ぇよ」
 BRATATATATATATATA……遅れて放たれた弾丸がアリエを捉えることはない。
 彼は地を這うほどに深く身を沈め、もうひとつの得物を手にしている。
 鎖で繋がれた強靭な錨。およそ、尋常の戦闘に用いるものではない。
 そもそも、人間が錨を振り回すなどありえない話である。
 だが、猟兵とは"ありえない"を形にしたもの。常識を越えた戦闘者を差す。
 アリエの膂力と覇気を以てすれば、錨は疾風のような鋭さで敵を裂くのである。
 ゴガァッ!! と衝撃波が吹きすさび、さらに敵を四体四散させた。
 両断、ではない。四散だ。衝撃を食らった敵はバラバラに吹っ飛んだ。
「なんだよ、一撃でおしまいか? 堪え性のねえ奴らだ」
 アリエは呆れたように笑い、そのまま錨を大木まがけて擲つ。
 じゃらじゃらと鎖を鳴らし巻き付いた錨を支えに、力強く大地を蹴る。
 振り子運動の勢いで、さらに前へ。強壮な大木が重みにぎしぎしと軋んだ。
「海の果てまでどこまでも……ってな! そら、上だぁ!!」
 快哉たる声。真上から増援部隊を襲撃し、錨を手繰り寄せ叩きつけた。
 ――KRAAAAAAAASH!!
 放射状に吹き上がった土煙が目くらましとなり、敵の射撃を妨害する。
 そして噴煙から現れたのは、鮫のように笑う偉丈夫。……再びの衝撃。
「風向き良好、負ける気がしねぇなぁ! 半端な弾は当たんねぇぜ?」
 アリエは回避や防御といった、後ろ向きなことをしない。
 彼を守るのは堅固な盾でも分厚い鎧でも、魔力のヴェールでもない。
 彼が当然のように生まれ持った強運。まさしく"海の愛し子"。
 強欲なる海に愛された豪快な海賊ならば、むしろ弾のほうが避けていくのだ。
 まさしく祝福されし強運。海を征するために生まれてきたかのような……。
「総出でかかってきな――全員喰らいつくしてやるよ」
 歯を剥き出しにして笑うさまは、獲物を見つけた肉食獣のようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱酉・逢真
おやま、お気の毒。奪っても奪っても欲しいもんだけ手に入らねぇってんじゃ生きるもつらかろうぜ。ああ、コンキスタドールは過去の骸だっけか。ってこたァ、死んでまで苦しんでンのかい。生きるのが下手だねえ。毒酒なら少しは酔えるかもしれねぇな。届けにいってやっか。

洞窟の暗がりに溶けて姿を消して、内部はそのままやり過ごす。洞窟出たら《虫》たちを飛ばして、その目を借りて敵さんを複数視認。空に向かって《恙》を一射。急速な老化で金属を風化させて、密林の草に紛れて伸ばした猛毒の蔓で腐食させよう。悪ぃなぁ、あんたらがコンキスタドール同士でゴチャマンしてんならほっといたンだが。そぉいうわけだ、あばよ。



 ぶうううん……と耳障りな翅音を立てて、虫の群れが密林地帯を抜ける。
 一見すればそれは、この島に棲む昆虫のように見えなくもない。
 だが、実際は違う――それは、まさしく凶神の使徒にして配下であった。
「ひい、ふう、みい……へえ、もうだいぶ数を減らされてるだろうに。
 これだけ揃えるのに、どんだけの人間を殺したのやら……ひひっ」
 昆虫――《虫》どもから遠き密林の奥深く、朱酉・逢真が陰気に哂う。
 目であり指であり舌であり鼻である《虫》を通せば、偵察などたやすいこと。
 たかが虫一匹、ウォーマシンどもは歯牙にもかけない。
 ……それが神の遣いであり己らを見ているなどとは、露ほども思うまい。
「奪っても奪っても欲しいもんだけ手に入らねぇなんてのぁ気の毒だねぇ。
 察するに、普通の人間めいた部下じゃあ癇癪についてこれねえ、ってとこか?」
『紅のフラップテイル』ののたうち回るさまを想像し、逢真はくくっと喉を鳴らした。
 実に気の毒で――そして、愉快だ。因果応報とはまさにこのこと。
 人の死には一切の(善悪どちらであれ)感情を抱かぬ神であろうと、
 相手がコンキスタドール……つまり、過去の骸であるならば話は別らしい。
「死んでまで苦しむ生き下手な女に、ひとつ毒酒を届けにいってやろうかね」
 さてどのように攻めるのか……と思えば、逢真はおもむろに鎌を取り出した。
 死神の振るうそれは水銀めいてゆらめき、小振りな弓へと姿を変える。
 番える矢の先端からは得体の知れない毒液が滴り、明らかに剣呑だ。
「鋼だろうが機械だろうが、この世に在ンならいつかは死んで滅びるってこった。
 ――つまり、俺(かみさま)の両分だよ。さあ、せいぜい歌ってみな……」
 きりきりと弓弦が軋む。その音は、死にかけの餓鬼が漏らすうめき声めいていた。
 そして放たれた弓は、敵ではなく空をまっすぐ貫き……ぱっ、と爆ぜた。
 異変に気づいたウォーマシンが、何機か空を仰いだ。
 だが、もはやそこにはなにもない――すでに変調は起きている。
 爆ぜた矢の毒素は大気に満ちて、大地の滋養を吸い上げ即座に芽吹いた。
 蔓である……ただし、尋常の植物ではない。
 金属すらも急激に"老化"させ、一瞬で風化させてしまうほどの致命的な毒草。
 もしも被害者が生き物であれば、併せて無数の病魔を併発する。
 蛇めいてのたうつ蔓が、空に気を取られたウォーマシンどもの足元に絡みつく。
 いまさら敵は何かがおかしいことに気づいた――しかし、手遅れなのだ。
 蔓はたちまち全身を覆い、そして錆びつかせ、崩れさせる。
「悪いなぁ、あんたらがコンキスタドール同士でゴチャマンしてんならほっといたンだが」
 おっとり刀で闇から滲み出して、薄笑いを浮かべる神が言った。
「人間に手を出しちまったんなら、俺の領分だ――そぉいうわけだ、あばよ」
 言葉に応える者はいない。すべては堆積する錆の塊と成り果てた。
 びゅう、と風が吹けば、それすらも洗い流してしまう。
 ――初めから何も居なかったかのように、男も姿を消していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

化野・風音
満たされない、

知恵ある生き物の逃れ得ぬ宿命です
故にこそ、人々は欲望を燃やす
満たされないことは苦しいでしょうね

では、メイドらしく裏方を務めましょうか
密林で発見させるように姿を見せ、捕捉できそうでできない【演技】で【時間稼ぎ】

≪化野転写≫へ引きずり込み、異界へ隔離します
機械は幻に惑わないとお考えで?
それは早計、物にも【呪詛】が影響を及ぼすことなど、珍しくもありません
後は外へは逃さず【範囲攻撃】と【衝撃波】で纏めて薙ぎ払います

機械同士、お互いの位置情報を把握しているでしょう
それが破壊ではなく不自然に途絶えたならば―――
調査に訪れる敵を順次間引いて

さて。さて、さて
略奪者を嗤いに参りましょうか



 もしもウォーマシンが人間だったなら……いや、機械ですら多少の困惑を覚えた。
 なにせあちこちで砲声と爆音が鳴り響く戦場で、女がひとり歩いていたからだ。
 武具らしい武具も、魔力も感じられない。そもそも殺気や警戒心が感じられない。
 装いは南国めいた島に似つかわしくない給仕姿。あまりにも違和感が強い。
 しかし、オブリビオンは一目で理解する。
 おのれらの天敵――すなわち、猟兵の存在を即座に知ることが出来るのだ。
『侵入者を発見、応援を要請する』
 これまで幾度も猟兵たちにしてやられたことで、連中にも用心が生まれたらしい。
 明らかに無防備な女ひとりを殺すために、さらに十機の増援を要請。
 ほどなくして、近くを警備していたウォーマシン部隊が空から駆けつけた。
『目標の脅威レベル……E-。殲滅は容易と判断』
『包囲ののち滅殺する。――攻撃開始』
 過剰なほどの戦力で確実に殺す。そういう確信的殺意が感じられた。
 対する女は――迫りくる敵を小悪魔めいた表情で一瞥し、くすりと笑う。
 人の形をした、人に近い表情。だがその妖艶さ、明らかに人でなしのもの。
 BRATATATATATA……高速徹甲弾が四方から同時に飛来し、女をクズ肉に……。

 ――変えてしまうことは、なかった。
『『『!?』』』
 そこでようやく、ウォーマシンどもは周囲の以上に気づいた。
 何もかもが一変している。周囲は密林地帯ではなく無限めいた荒野である。
 寂々とした大地には枯れた人骨が転がり、錆臭い風に現れ崩れてしまう。
「ようこそ、"化野"へ」
 女はてんで見当違いの方角に立っていた。芝居めいた仕草でカーテシーをする。
 ウォーマシンどもは即座に狙いを定め砲火(ファイア)――だが。
「無駄でございますよ」
 弾丸でずたずたにされたはずの女は、また別の方角に立っていた。
「ここは現世ではなく、もはや皆様は幻の虜。もはや虫一つ殺せませぬ」
 BRATATATATATA……やはり弾丸は虚しく貫通し、別の方角に女が現れる。
 化野・風音の口元には、変わらず妖しい笑みが浮かんだまま。
「機械とて、幻に惑わされはするのでございますよ?」
 それ以上の銃声は、荒野を切り裂くような衝撃波にかき消された。

 異常を察知し、さらなる増援が密林地帯へやってくる。
 それでいい。いわばこれは蜘蛛の巣、獲物はあの鋼どもだ。
「知恵ある生き物はみな満たされることはなく、ゆえにこそ欲望を燃やすもの。
 されどはじめから満たされないことがわかりきっているのは、苦しいでしょうね」
 風音はふわりと髪をなびかせながら、白亜の塔めいた旧宇宙艦を見上げた。
 鋼どもに興味はない。こんなものは所詮、路傍の石も同然。
「さて、さて、さて。メイドらしく、ゴミをお片付けしなければなりませんね。
 それが済んだら――略奪者を嗤いに、いざ天を目指すといたしましょうか」
 女が去ったあとには、鋼の残骸すらも遺っていなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

才堂・紅葉
【改変連携歓迎】

満たされない渇き
それは海水で喉を潤すが如き話だ
敵ながら何とも難儀な話である

「まぁ同情の余地はありませんが」
それはそれこれはこれでもある

業務指針は洞窟のお掃除だ
勘の良い敵兵を始末し、猟兵達の殲滅戦の下準備を行いたい
【情報収集】で洞窟内を探索し、アルダワ【メカニック】で光学【迷彩】と「ガジェットブーツ」の消音機能、及び自前の【忍び足】を併用して迅速に洞窟内の敵兵を探る。後は経験による【戦闘知識】と【野生の勘】だ

見敵即無音【暗殺】だ
膝裏に【怪力】と【グラップル】で蹴りを入れ、下がった頭部に重力【属性攻撃】で【海老反り】の利いたサマーソルトキック

後は他猟兵の活躍に乗じて侵入を果たしたい


フェルト・フィルファーデン
……理由があるからといって、略奪の免罪符にはならないでしょうに……なんて、言っても聞かないわよね。ええ、被害が出る前になんとかしないと。

フェアリーの小さな体躯を活かして物陰に隠れ、【暗視】で洞窟内の暗闇に順応し、静かに息を潜め敵の接近を待つわ。

敵が通りがかったら発見されるより早くUCでコントロールを奪う。
ねえ、この島とあの船の出来るだけ詳細な地図と人員の配置、それとアナタの主の居場所を教えてくれるかしら?

情報を聞き出せたら他の敵機に特攻させて場を混乱させ周囲の敵を呼び寄せるわ。多少は警備も手薄になるでしょう。


危害を加えなければ、少しは同情も……いえ、そうでもないわね。お酒の何が良いのかしら?


アルナスル・アミューレンス
宇宙世界の遺物ねぇ。
あれかな、過去に棄てられる前のモノがここに来るのかなぁ?
ここは果てには何もない世界だったり。

……にしても、随分派手にずんずん進むヒトもいるんだねぇ?
隠密とは何ぞやって気もするけど、動きやすいからいっか。

抜き足差し足忍び足。
迷彩で闇に紛れるように、地形の利用もしながら進みましょうかねぇ。
どこから来てもいいように、第六感を働かせてね。

避けきれるならよし。
無理そうなら……こっちも『断絶(トラエ)』て逃がさないよ。
銃声は派手に響くけど、砲弾は明後日の方向から縦横無尽に襲いかかるよ。

そっちでわちゃわちゃして時間稼ぎ出来ている内に、ちゃっちゃと進みましょうかねぇ。



「……さすがに、もう洞窟(ここ)も発見されてしまったみたいね」
 フェルト・フィルファーデンはそう呟き、傀儡とした敵兵を解放した。
 電脳を焼かれたウォーマシンは、糸の切れた人形のようにがしゃりと崩れ落ちる。
 彼女は洞窟の暗闇に乗じ、偵察に来たウォーマシンを捕縛、尋問したのだ。
 より正確に言えばハッキングだが……ともあれ、得られた情報は三つ。
 この海底洞窟の存在はすでに知られており、じきに殲滅部隊が到着する。
 代わりに密林地帯の警備は手薄になっていて、突破は容易だということ。
 そして――常識的に考えれば、彼我の戦力差は圧倒的だということだ。
「ま、あれだけみんなして派手に騒いでればねぇ。遅かれ早かれ見つかってたよ。
 けど妙だな。普通なら、スペースシップの防備を固めそうなものだけれどねぇ」
 ガスマスクの男、アルナスル・アミューレンスは顎をさすりながら言った。
 たしかに、すでに多くの猟兵が上陸を果たしている今、殲滅は逆効果である。
 リーダーを守るつもりがあるならば、拠点に籠もって防戦に転じるのが普通だ。
「これは推測ですが」
 と前置きした上で、才堂・紅葉が述べた。
「おそらく、例のコンキスタドールがそのように指示したのでは?
 予知の内容を聞いた限り、相当に気性の荒いオブリビオンのようですから」
「……大した自信ね。侵入者は自分で迎撃するってことかしら」
 自分たちがナメられているのだとわかり、フェルトは顔を顰めた。
 そんな増上慢は、滅殺を以て叩き潰すのが正しい裁きというものだろう。が……。
「まあ、なんにしてもまずはここを突破しないとだねぇ」
 アルナスルの右腕がスライムめいて変異し、巨大な機関砲と同化した。
 閉所で扱うにはあまりにもオーバーパワーな重火器である。
「侵入経路を発見した程度でこちらを見つけられると思っているのなら、
 ひとつ報いを与えるとしましょうか。敵に同情の余地などありませんし」
 穏やかな口調と裏腹に、紅葉の全身からは強い殺気が放射されていた。
 彼女も彼女で、ナメられて黙っていられるタチではないのだ。
「本当ね……お酒の何がいいのかしら? そのために人を殺し略奪するだなんて。
 人に危害を加えていないのなら、少しぐらいは同情も……いえ、やっぱり無理ね」
「お酒は人を狂わせるからねぇ。何事もほどほどが大事だよ、ほどほどが」
 馬鹿げたサイズの機関砲を軽々と担ぎ、アルナスルは飄々と言った。
 ――外から響くいくつもの駆動音に、気楽な雰囲気は霧散する。
 ウォーマシン殲滅部隊が、海底洞窟に乗り込んできたのだ……!

 殲滅部隊の総数、実に50体以上。
 猟兵三人を相手取る戦力としては、過剰というべきだろう。
 頭部のセンサーを最大レベルで作動させ、鋼の部隊は海底洞窟に踏み込む。
 仮に前衛の兵士が全滅したとしても、後続のウォーマシンが襲撃者を銃殺する。
 部隊の壊滅など最初から考慮の外に置いた、自動機械らしい隊列だ。
『……前方から接近する動体を検知』
 最前列のウォーマシンが警告すると、後続の機体は即座に炸薬弾頭を装填。
 たとえ戦艦級の装甲を有していたとしても、滅殺可能なレベルの火力だ。
 戦闘余波で海底洞窟が崩落しようと、連中は気にしないだろう。
 ウォーマシン部隊は彫像のように静止し、接近する侵入者を迎え撃つ……だが!
『標的確認、射撃開始……!?』
 砲火が放たれることはなかった。
 なぜなら――闇から姿を現したのは、同じウォーマシン兵士だったからだ!

 KRA-TOOOOOOOOOOOOOM!!
「さあ、行きなさい! 敵はあそこよ!」
 その正体は、フェルトが電脳魔術によって支配した敵兵の成れの果てである。
 フェルトは斥候兵を再度掌握し、特攻兵器めいて突っ込ませたのだ。
 オーバーロードによって自爆するウォーマシン。敵の戦列がわずかに乱れた。
 爆発の余波で巻き上がった砂埃が煙幕めいて視界を覆う……しかし部隊、健在!
 死神の眼光めいた無数のレーザーポインターが、小柄な妖精を捉える。
 万事休すか? ……いや、何かがおかしい。そこにいるのはフェルトひとり!
「略奪者に唯々諾々と従うような木偶では、数を集めてもこの程度なのね。
 ――わたしがひとりで此処まで来たと思っているのかしら? 馬鹿なこと」
 フェルトが嘲りの笑みを浮かべた瞬間――BRRRRRRRTTTTTTT!!
 大気を揺るがす、すさまじいガトリングの放射音。そして弾雨!
「宇宙世界の遺物だからねぇ、センサーも旧式なのかなぁ?」
 などと剽げた様子で言いながら、アルナスルが無数の弾丸をバラまく。
 伏兵はそれだけではない。弾丸を逃れたウォーマシンの頭部が消し飛ぶ!
「閉所ならアドバンテージがあると思いましたか? それは逆ですよ」
 紅葉だ。彼女はガジェットブーツを使って密かに敵の至近距離に接近、
 アルナスルの不意打ちによって生まれた混乱に乗じ、白兵戦を仕掛けたのだ!
 神速の拳、そして蹴撃! くの字に折れ曲がった躯体を踏み出しにしてのサマーソルト!
 局所的な重力加速も乗せた一撃は、ウォーマシンの頭部をたやすく破壊する。
 殲滅部隊はようやく伏兵の存在に気付き、なんとか応戦しようとした。
 同じ作戦を講じたとしても、この世界の海賊ではその応撃で終わっただろう。
 しかし彼らは猟兵――数の利があろうとも、個々の超戦力こそが彼らの武器だ!
「このまま突破してしまいましょう。突破口を拓くわ!」
 フェルトは頭部を破壊されたウォーマシンをハッキング、即席の特攻兵器に仕立て上げる。
 アルナスルのガトリング砲と特攻した敵兵士の爆音が、海底洞窟にこだまする。
 反撃すら許さぬ圧倒的砲火……そして蹴打。まさしく飽和攻撃だ。
「僕らを仕留めたいなら、せめてこの三倍ぐらいはよこしてくれないとねぇ」
「足りなかったのは酒だけではなかったようですね」
 焼け焦げた大気を切り裂き、紅葉とアルナスルは疾走する。
 五十以上の殲滅部隊は、一分もかからずに壊滅してしまったのだ……!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ガーネット・グレイローズ
酒は酔うからこそ美味く、愉しいもの。酔えない葡萄酒はただ渋いだけのジュースに等しいからな。難儀なものだ、つい最近仕入れたばかりの上等のワインがあるんだが…。この女海賊に売るのは勿体ないかな。

私は宇宙出身だから、宇宙船内部で戦おう。にわとり型ドローン『メカたまこEX』で内部を〈撮影〉し、〈メカニック〉と〈世界知識〉で内部構造をある程度把握しながら進もう。敵はセンサーを駆使するのか。ならばUCでサイキックの炎を作成して操り、熱反応を誤魔化したうえで物陰に隠れつつ敵に接近する。狭い通路で炎で挟み撃ちにするように囲んだら〈念動力〉で鋼糸を高速で操り、糸鋸の要領で装甲を切断する〈鎧無視攻撃〉だ。


玉ノ井・狐狛
メガリスの呪いたァ、難儀な話じゃないか。
まじない屋としては解決して差し上げねぇとなァ。
酒はともかく、血にゃあ酔えてそうだが。

冗句はさておき、兵隊どもがうろついてるな。
アタシはあやしいモンじゃない、ひとつ通してくれよ……と話しかけても通じなさそうだし、黙って行くとするか。

しかし、ロケットやら魚雷やら、そんな物騒な代物の相手は御免こうむるね。
あらかじめ周囲の遮蔽物(木々や壁など)が多いエリア・ルートを優先的に移動しておいて、照準までのタイムラグをつくる。発射前に◈UC使用。
▻見切り▻早業▻カウンター
暴発でも誤射でもしてもらおう。

細かい爆風や破片等は▻オーラ防御。

いやはや、音のでけぇ呼び鈴だな。


矢来・夕立
潜入。ゲリラ戦。だまし討ち。
このオレの右に出る者はあんまりいません。繰り上げ一位になる方法はありますが。

この数だと奇襲より引っ掻き回してやるほうがイイかもですね。
同士討ちを狙いましょう。
【闇に紛れて】移動。足音のないよう空を行きます。
3体くらいをめどに『朽縄』を仕掛ける。
絡める場所はランチャーと徹甲弾の射出機構だけ。
発射の瞬間、絡めた式紙を使って銃口の向きを変えます。
あちらも相当速いみたいですけど…
…肩の連結部とか。ガタが来てるんじゃないですか?
金属疲労を起こしてたりして。

なんのことはなくてですね、塗装がビミョーに剥げてるやつを選びました。
今日のラッキーカラーが白だったんで。ウソですけど。


ゼイル・パックルード
海賊に呪いっていうのはつきものと聞くがね、好き勝手やって、一番の好きなものを失うとは、略奪者の因果応報かね。

洞窟内は、あんな機械的なアーマーを着てるならいるかいないかは音で判断できるだろう。
敵がいたら闇に紛れながら、壁とかを蹴って一気に近づいて斬る
洞窟内じゃ相手もそう機敏な動きはできまい

密林に入ったら、敵を探す。自然物とは違う音を聞ければ、見つけるのはやはりそう難しくないだろう。

とはいえ御宅らのボスほどじゃないが俺も欲求不満でね。一匹やそこらじゃ満足できない
刀を巨大化するUC,鬼殺しで密林の樹木ごと敵をぶった斬って敵を誘う
現れた敵から斬り壊していく。
魚雷とかもちんたら撃ってりゃ斬っていくぜ?


メテオラ・エルダーナ
悪者が巣食う要塞島!
いいですねえ、思う存分暴れられそう!うふふ!

暗くてジメっとした洞窟は全速力で抜けちゃいます!敵がいても無視無視!
密林に出てからも、出来るだけ敵の目に触れるよう、木々の間を走って跳んで引きつけましょう!
私の得意な【ダッシュ】【ジャンプ】【スライディング】の活躍所です!

もちろん考え無しに走ってるわけじゃないですよ。
いくら敵の目が良くたって、この密林で遠くまでは狙えない…となれば、私を追いかけて来るはず!
ぐるっと円を描くように走り続けて、私を追う敵が一塊になってきたところを…
必殺の【円閃剣】で一網打尽!です!

(アドリブ、連携歓迎です)



 ――KRA-TOOOOOOOOOM!!
 盛大な爆音に続き、ガラガラと大規模な崩落が起き、麝香島を揺らした。
「おやまァ、いまさら洞窟を潰したって遅ェだろうによ」
 密林の影を歩いていた玉ノ井・狐狛は、肩をすくめた。
 相手もようやく侵入経路に気付き、おっとり刀で崩落させたのだろう。
 もちろん彼女の言う通り無駄な足掻きだ――猟兵たちは上陸を終えている。
 崩落からほどなくして、そこら中から剣呑な足音が聞こえてきた。
「まったく、通してくれなんて頼んでも通じねえだろうしなァ……」
 どうしたものか。狐狛は気配を消し身を潜めながら沈思黙考する。
 敵は当然、あの白亜の塔めいた拠点への通路を重点警戒しているだろう。
 自分では正面突破は難しい……いや、正確に言えば『御免こうむる』といったところ。
 ロケットだの魚雷だの、そんな物騒な代物は博徒の相手ではない。
 なにか敵の目を眩ませるような騒ぎが起きれば話は別なのだが……。

 と、その時。
「たぁあああああああっ!!」
「……あぁ?」
 狐狛は、あまりの光景に我が目を疑った。
 彼女が潜む木立の目の前を、ひとりの猟兵が突っ走っていったのだ!
『侵入者を発見、迎撃開始』
 BRATATATATATATATA! 降り注ぐ無数の銃弾、致命的な高速徹甲弾だ!
 一撃でも喰らえば致命傷、いわんや一斉射撃では逃げ場が……しかし!
「そんなの、当たりませんよっ!!」
 疾走するキマイラ――メテオラ・エルダーナは魔法剣を鋭く煌めかせた。
 それは一瞬で数十メートルもの刀身に拡張し、木々ごと弾幕を一網打尽!
 ごおうっ!! と吹き荒んだ剣風が樹木をバラバラに引き裂き、砂埃を起こす。
 まるで竜巻じみた衝撃……立ちはだかるウォーマシン部隊も吹っ飛んだ!
「さあ、私はここですよーっ!!」
 魔法剣を元の大きさに戻し、メテオラは大声を出しながらさらに全力疾走。
 何もかもが突然かつ豪快に過ぎ去り、あとには狐狛だけが残された。
「……アッハッハ! こりゃあいいや、魚雷だのミサイルだのよりおっかねえ!」
 狐狛はかんらかんらと愉快そうに笑い、メテオラの後を追う。
 そして猟兵たちの起こす騒ぎは、ここだけではなかったのだ……!

 同時刻、白亜の塔正門――旧スペースシップ資材搬入口前!
「……これで終わりか? お前らは血も涙もない略奪者なんだろ?」
 何機ものウォーマシンを相手にたったひとりで戦う男がいた。
 浅黒い肌の男――ゼイル・パックルードが辿ってきたと思しき密林は、
 まるで巨大なイノシシでも無理矢理通り抜けたような無惨な有様。
 それもそのはず。彼もまたメテオラのように自らの大太刀を巨大化させ、
 木立ごと敵を薙ぎ払いながら、この正門玄関までやってきたのだから。
 人間が振るうにはあまりにも巨大すぎる大太刀"魔裂"。
 それをまるで紙細工か何かのように軽々と担ぎ、ゼイルはため息をつく。
「おたくらのボスほどじゃないが、俺も欲求不満でね。これじゃ満足出来ないな。
 ――こっちは侵入者だぜ? お前らのボスを殺しに来た、猟兵なんだよ」
 ごきごきと気怠げに首を鳴らし、金色の瞳で敵集団を睨みつける。
 ぎらつく瞳から感じられるのは……餓え、そして尽きることなき闘志。
 まるで瞳の内側でちろちろと黒炎が燃えているかのようであった。
 ……それは比喩ではない。なにせ彼は地獄の炎をその身に秘めし者。
 死闘を求めさすらう戦士にとって、この木偶どもはあまりにも不足である……。
 そして、そんなゼイルの猛烈な戦いぶりを、頭上から見下ろす者がいた。
(注意を惹いてくれているのはありがたいんですが……ね)
 そこに矢来・夕立が居ることなど、はたして誰が気づいているだろうか?
 完全に気配を消し影と化した忍びを見いだせる者など、猟兵にもそう居まい。
 事実夕立は、コンキスタドールからも猟兵からも、完全に気配を絶っていた。
 そして薙ぎ払われたジャングルを進んでみれば、この乱痴気騒ぎだ。
 このままひっそりと艦内に忍び込んでもいいが、依頼は"敵勢力の殲滅"。
『紅のフラップテイル』はこのあともちろん殺すとして、ウォーマシンも標的だ。
 夕立は、こと仕事に関してはつねに真摯に、そして実直に臨む。
 この島のコンキスタドールは、一匹たりとて生きて帰すつもりはないのである。
『全機、侵入者を抹殺せよ。砲撃開始……』
「――遅いんだよ」
 そんな夕立の眼下では、相変わらず一方的な殲滅戦が続いていた。
 整列したウォーマシンの一斉射撃。ゼイルにとっては止まったも同然だ。
 自ら間合いを詰めて刃を振るい、炸薬弾頭を一刀のもとに斬り捨ててしまう。
 剣戟の勢いを殺さずに一回転、速度を増した踏み込みとともに重ね二刀。
 ――ザァッ!! と、横薙ぎの刃がすべてを両断し、断ち切った。
「オレの出番は中でしょうかね……」
 ゼイルが中に突入する様子はない。彼はとことん敵と戦いたいのだろう。
 ならば無限めいて湧き出てくるウォーマシンの相手は彼に任せればいい。
 万が一にも破滅的暴威に巻き込まれないように注意しながら、夕立は艦内へ忍び込んだ。

「……どうやら、この艦はこの世界に落ちてきた相当年月が経過しているようだな」
 そしてスペースシップ艦内。
 ガーネット・グレイローズは遺構の調査を終え、ふむと沈思黙考した。
 すでにこのスペースシップのコアマシンは停止ないし破損していると見え、
 防衛システムの大部分は沈黙している。ハッキングの必要もない。
 ……問題は中の構造だ。もともとここはなんらかの探査用の船だったらしく、
 居住用のスペースシップに比べて設備が省かれており、内部も入り組んでいる。
 海底洞窟とはまた違うアドバンテージ……狭く複雑な地形は敵のホームだ。
 事実ガーネットは、慌ただしく艦内を見回るウォーマシンともう何度もニアミスしており、これ以上身を隠したまま中に進める自信はなかった。
「やはり敵戦力を削らねばならないか……問題はいつ仕掛けるか、だな」
 ガーネットは狭い通路を密かに覗き込み、敵戦力と配置を伺う。
 数は五……いや、さらに二機増えた。かなり用心深く警戒している。
「……あのセンサーを誤認させれば隙を作れるか? いや……」
「ぁぁぁぁぁ……」
「……ん?」
 作戦を練っていたガーネットは、そこでなにやら遠くから近づく声に気づいた。
 まさか、別働隊に見つかったか? 身構える彼女だが、しかしやってきたのは……。
「……ぁぁあああっ!! 押し通りますよっ!!」
「な……!」
 なんとやってきたのは、密林からここまで全力疾走してきたメテオラ!
 正面玄関の大立ち回りもスルーしてきたのか、ものすごい速度で飛び込んでくる!
「あ、ちょ」
「思う存分暴れちゃいますよ! てぇーい!!」
 止めようとするガーネットを素通りし、メテオラはスライディングで突入。
 BRATATATATATATA……弾丸をかろうじて避けながら、間合いを詰め一閃!
『警告。艦内に侵入者を確認。ポイントC-7に増援を……』
「……仕方ないな! こうなったらすべて焼き払うまで!!」
 ガーネットはすぐに思考を切り替え、メテオラのあとに続いた。
 掌から噴き出したサイキックエナジーの炎が、弾丸を焼灼し敵機体を直撃!
『増援を要せ せせせセセセセSSEEEEEE』
「邪魔だっ!!」
 熱でなんらかのエラーを起こしたウォーマシンを、鋼糸で高速両断。
 増援が来ないよう途中の通路を炎で塞ぎ、頂点めざしてひた走る。
「おーおー、入り口も大概だったが中もド派手なことになってまア!
 さァて、アタシも物見遊山してるワケにゃいかねえからなァ――行くかい」
 やや遅れてエントリーしたのは狐狛であった。
 彼女は直進……すると見せかけ、背後から現れた別働隊に踵を返す。
「後ろから挟み撃ちにしようってのか? まったく機械のクセにやることがセコい。
 ――その鉄砲、ちゃあんと手入れしてンのかい? そら、撃ってみなよ」
 ウォーマシン部隊は狐狛の戯言に構わず、照準を定めてトリガを引いた。
 すると――KBAM!! 銃口が暴発! よもや、このタイミングで動作不良か!?
「な? 道具の手入れは怠っちゃいけねえだろ?」
 ぎしりと笑う狐狛の表情を見れば、それは否だとわかるだろう。
 これこそが彼女のユーベルコード、"逆刃の剣の反抗期"。
 金属で出来た武具であれば、銃だろうが剣だろうが意のままに操れるのだ!
『警戒せよ。侵入者はユーベルコードにより意図的に暴発を起こせる模様』
『ヒートカトラスによる接近戦を行う。攻撃開始』
 しかしウォーマシン部隊も阿呆ではない、敵は武器を刀剣に切り替えた!
 かつ後衛がユーベルコードの効果を受けないよう、距離を取った上でマウント。
 カトラスを避ければ後衛の弾幕が叩き込まれ、後ろを警戒すれば刃が来る。
 水も漏らさぬ二段構えの連携である――ただしそこには、すでに影がいたのだ。
「――上から失礼」
 影から滲み出るようにして現れたのは、天井に足をつき逆さ状態の夕立。
 その腕先が霞むと、蛇めいた紙垂が後衛の腕部に絡みつき……勢いよく、引く!
 BRATATATATATA……KBAM!!
 狐狛を狙っていた弾丸は、突撃する前衛の背中に命中したのである!
「オット。そんなトコに人がいるとは思わなかった。驚いたよ」
「失礼しました。といっても、隠密(これ)が性分なもので」
 夕立はさらにぐいっと"朽縄"を引き、肩口から銃腕を引きちぎる。
 武装を奪われ体勢を崩したウォーマシンの頭部に、カッ! と手裏剣が突き刺さった。
「いいですね、ここ。隠れ放題潜み放題、外より働けそうです」
「おっかねえなぁ。アンタ、相当のひねくれ者と見たぜ」
 狐狛のからかい言葉に、夕立は表情を変えぬまま肩をすくめた。
「これでも知り合いの間では正直者で通ってますよ――まあ、ウソですが」
 彼の言葉と同時に、ひときわ大きな爆音が響き、船がぐらついた。
 ……正面玄関。焼け焦げ叩き斬られた無数の残骸を乗り越え、男が征く。
 ゼイルである。もはや迎撃用の戦力も尽きたと見え、彼も侵入を始めたのだ。
「……こんなもんか。呪われた海賊とやらの手下も、大したことないな」
 歩みは悠然と、欠片ほども己の敗北を疑わぬ修羅の相貌である。
 ゼイルの餓えは満たされない。かくなる上は、首魁にお相手願うとしよう。
「今までさぞかし好き勝手やってきたんだろうさ。俺も、好き勝手やらせてもらうぜ」
 肉食獣めいた金色の双眸に、底の知れない地獄の炎が揺らめいた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『紅のフラップテイル』

POW   :    ランバリオン
戦闘中に食べた【酒】の量と質に応じて【酔えない怒りで】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    Hangover!
【意識を混濁させる呪われたラム酒】が命中した対象に対し、高威力高命中の【怒りのこもったラッパ銃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    泥酔の杯
【杯から呪われたラム酒の雨】を降らせる事で、戦場全体が【泥酔している様な状態】と同じ環境に変化する。[泥酔している様な状態]に適応した者の行動成功率が上昇する。

イラスト:なかみね

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はナミル・タグイールです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 白亜の塔めいてまっすぐ突き立つ、スペースシップの遺構。
 だが猟兵たちの快進撃により、それも傾きいまにも崩れそうな有様だ。
 そして塔の頂点――旧艦橋に、猟兵たちは辿り着いた。
「……アンタらか。アタシの庭で好き放題してくれたのは」
 無数の酒に囲まれた女獣人が、ぎらついた瞳で猟兵たちを睨みつける。
「ちょうどいい。アタシもイライラが収まらなくてね……遊んでやろうじゃないか。
 いくら呑もうが酔えやしない。いくら奪おうが満たされやしない! ああ……!!」
 苛立たしげに地団太を踏み、そして喇叭銃をがちゃりと構える。
 もう片方の手には、そもそもの原因である呪いのメガリスを持ったままだ。
 こんな有様になっても杯を手放さない……あるいは手放せないのか……あたりは、
 なるほど己の欲望のために虐殺を繰り返すコンキスタドールらしい姿である。
「アンタらの血で酒を作ったら、もしかしたらアタシも酔えるかもしれないねぇ?
 ――歓迎するよ、猟兵ども。皆殺しにしてやるから、かかってきなッ!!」
 狂気の笑みを浮かべ、呪われた海賊は快哉めいて叫ぶ。
 逃げも隠れもしない……ここが死闘の場、殺戮のパーティ会場だ!
須藤・莉亜
「敵さんの血でお酒を作る…。その発想はなかったなぁ。僕も作ってみよう。」
ちょうど良い感じの材料もいるしね。

なんだかとっても良い気持ちだし、材料集めも捗りそう。

UCで吸血鬼化し、戦闘能力を強化。んでもって、黒啜で材料さんを攻撃していく。
いっぱい血を集める為に斬り刻むことにしようか。

材料さんが暴れるようなら【見切り】で動きを読み、攻撃を避けながら手足を斬る。
防御は悪魔の見えざる手に頼んどくかな。

「どれをどう混ぜたら良い感じになるのかなぁ。」
片っ端から血を混ぜて飲んでみればわかるかな?



 ――吸血鬼。
 数多のフィクションにおいて、最強とされる人外の者。
 ヒトと同じ姿をしていながら、ヒトにとっての仇敵となりえる者。
 その力と悪性を受け入れた須藤・莉亜は、いわば人の形をした災厄となる。
「ハッハハハ! 嬉しいねェ、頑丈なほうが八つ当たり出来るからさァ!」
 動脈血めいた色合いの旋風とでもいうべき、莉亜の猛攻。
 これを受け流しながら、紅のフラップテイルは鬼じみて笑った。
 互いに傷を厭わず、相手を殺すためだけに刃と弾丸を放つ。
 尋常の生命では介入することすら出来ない、厄災同士の激突であった。
「僕も嬉しいよ。なにせ――敵さんの血でお酒を作るなんて発想、なかったからね。
 さあ、もっともっと血を流してほしいな。いっぱい血がなきゃ困るでしょ?」
 "黒吸"が薙ぎ払われるたび、宇宙船の装甲はひび割れて砕け散る。
 好事家なら喉から手が出るほど欲しがるだろう銘酒が、飛び散った。
 弾丸とともに降るのは呪われたラム酒の雨。酩酊をもたらし正気を奪う病毒。
 それすらも、鬼の力を引き出した莉亜にとっては心地よい。

 対する紅のフラップテイルを突き動かしていたのは、憤怒の力だ。
 嗚呼。この呪いの雨ですら――呪いがゆえに、彼女は酩酊できない。
 その事実が怒りを呼び起こし、そしてさらなる力をもたらす。
 切り裂く痛みも、敵がいまだ存在することへの苛立ちすらも甘やかだ。
 酔おうとしても酔えない苦しみに比べれば、ずっといい。
「ハ! ハ! ハハハ!! アンタ、相当の悪食だねェ? いいじゃないか!」
 呪いの雨を浴び、あんな蕩けたような表情で刃を振るうものが、
 己にとっての天敵だと? ――たしかにそうだろう、似た者同士なのだから。
 であれば、やることはひとつだ。どっちが先に死ぬのか決めるだけ。
 斬撃が腕を斬り飛ばす。吹き飛んだそれを掴み、強引に傷口と癒着させた。
 そして、BLAM!! 喇叭銃で頭蓋を撃ち抜こうと連続射撃!
「あんまり暴れないでほしいなあ」
 右目の上から半分を吹き飛ばされながら、莉亜は凄絶に笑った。
 再びの大鎌斬撃が足を切断する。噴き出した血が頬につき、ぺろりと舐めた。
「――足りないな。もっと色々混ぜてみなきゃ」
「アタシの血は高いぜェ! こんなモンじゃ全部くれてやれないねェ!」
 狂乱する二体の悪鬼は、殺戮と苦痛に酔いしれていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レパル・リオン
もう好きにはさせないわ!
【変身】っ!

あたし達は希望!血に沈んだ島に、登る朝日!
魔法猟兵☆イェーガー・レパル、参上っ!

くっ、凄い怒りのオーラ!シンプルなパワーやスピード対決じゃ多分、勝てない…!
でも、ここには色んな能力の猟兵が集まってる!なら、あたしもあたしらしく戦うだけよ!うおーっ!

怪人の周りを渦を巻くように走る事で、銃をよけながら少しずつ近づくわ!
一瞬で間合いを詰め、拳のラッシュを叩き込んで体勢を崩す!
パイルドライバーでトドメーっ!



 戦闘の余波で砕けた酒瓶を掴み取り、残った酒をだらしなく嚥下する。
 笑みとも唸るようにも歪んだ口の端から、血のように紅い葡萄酒が零れた。
「上等な酒が台無しじゃあないかい、ハハハハ……ああ、酔えないねェ!!」
 紅のフラップテイルは激昂した。変わらず、酩酊は訪れなかったからだ。
 舌触りも喉越しも素晴らしい銘酒。それですら彼女は酔えない。
 その事実が無限に怒りをもたらす。そして、怒りが力を与える。
 炯々と輝く瞳に射竦められ、レパル・リオンはぶるりと身を震わせた。
「すごい怒りのオーラ……! けど、ここまで来た以上退きはしないわ!!
 あたし達は希望! 血に沈んだ島に登る朝日――行くわよ、変・身っ!!」
 ポーズを取ったレパルの全身が煌めき、瞬時に姿を変えた。
 たなびくマントとたてがみ、それはまさに百獣の王たる獅子の如く。
「魔法猟兵☆イェーガー・レパル、参上っ!!」
「……ハッ。そんな子供だましでアタシを殺そうってのかい? 嘗めるねェ」
「子供だましかどうか、あたしの力で証明してあげるっ!!」
 レパルが床を蹴って接近した瞬間、紅のフラップテイルは瞠目した。
 ――疾い! 実際、怒りで強化されたフラップテイル以上の速度だ!
「な……」
「はぁあああっ!!」
 SMAAAASH!! ロケットじみた速度を乗せ、強烈なパンチが顔面に命中!
 紅のフラップテイルは両足爪で地面を踏みしめ、ガリガリと吹き飛ばされた!
「この、ガキッ!!」
 ドウッ! と大気が爆ぜる。紅のフラップテイルが仕掛けた。
 通常フォームでは目視すら出来ぬほどの速度。レパルは反射的に跳躍。
 両者はピンボールめいて壁を、天井を蹴り、銃弾と拳を交錯させる!
(一撃目は食らわせられた……けど、やっぱりすごいパワーとスピード!)
 一瞬でも油断すれば、敵は容赦なくレパルの頭を吹き飛ばすだろう。
 死の恐怖が背筋を冷やし、しかしレパルは己を強いて前に出た。
 退けば負ける。敵の怒りに飲まれてはならない!
「死にな、ションベンくさいガキが……ッ!!」
 BLAMN!! ――喇叭銃の弾丸は、しかしレパルの頭に命中しなかった。
 肉薄したレパルは身を深く屈め、弾丸を避けたのである。
 そして立ち上がりながらのアッパーが、フラップテイルの顎に命中!
「がッ!!」
「もう好きにはさせないわ――アンタは! ここで! 滅びるのよッ!!」
 拳のラッシュで防御を崩し、がっちりと拘束――跳躍、落下!
 KRAAAAAAASH!! 放射状に吹き荒れた衝撃が、酒瓶を吹き飛ばす!
 彗星じみたパイルドライバーが、フラップテイルの全身に叩き込まれたのだ……!

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
……そうだな
欲しても満たされない、という時
普通はそういう風になるんだろうな

そうはなれない自分のことを“ひと”だなんて思えないけど――
いや、今は関係ないな

対策はシンプルに
一滴も食らわずこちらの攻撃を当てる、だ

通常射撃を織り交ぜつつダメージを重ねるよ
酒を投げる瞬間を見切って
相手の手元で酒をふちまけるように狙う
攻撃の手が鈍れば御の字だろう

無理な場合も酒が飛散して自分および味方に危害がない距離なら
手が離れた後だとしても必ずこちらへ届く前に撃ち落とすよ
こっちの動きさえ止められていなけりゃ
銃口の向きから狙いを絞って防御/回避する隙はある

弛まず、求め続けるのはすごい事なんだろう
……俺にはよく、わからないけど


ゼイル・パックルード
手にいれたものを略奪者の性か、オブリビオンの因果か
失うってことをプライドが許さないのはわかるがね


酒が好きなら……いつかくすねてきた、ヴァンパイアのワインを投げ渡してやるか

受け取ろうが受けとるまいが、UCで燃やすことに代わりはないがね
口に入れたら体内から燃やしてやろうと思ったが、さすがにそこまで酔っていないかな
あぁ、酔えないんだったか、そいつはすまないね

燃え上がっているうちに、刀で追い討ちをかけさせてもらう

他人に対する怒りでも強くなるのかね?俺として歓迎だが、視野が狭くなってるならがっかりだぜ?
見切りやカウンターもしやすくなる、そこに一撃入れるなんてわけない
他の猟兵に狙われる可能性もあるしな


矢来・夕立
自制の利かない大人を見ると引くっていうか…
お酒の失敗はしたくないなって思っちゃいますね。

【神業・否無】。《暗殺》。
まあでも、一度殺したくらいじゃ死なないでしょう。
コンキスタドールだし。

…お酒掛けないでくださいよ。酒臭いのってキライなんです。あと食べ物を粗末にするな。
本意でありませんけど、羽織を外して空蝉に使います。
酒臭いわ、穴あきにもなるわですけど、影と目隠しができますね。
そのスキに《闇に紛れて》退避するなり、次手を狙うなりしましょう。

略奪は楽しかったですか?そうですか。わかりますよ。
じゃ、今度は奪われる側になってみましょうか。
結構イイかもしれませんよ。嫌? 知りません。



「自制の効かない大人を見ると、ちょっと引いちゃうっていうか。
 お酒の失敗はしたくないなって思いっちゃいますね。成人的にはどうです?」
「……わかんないな。酒とかめったに飲まないし」
 矢来・夕立の言葉に、鳴宮・匡は真面目くさった様子で答えた。
 はたから見れば"真面目くさった様子"だが、実際彼は真摯に考え答えている。
 それがわかっているからこそ、夕立は手応えなさそうに肩をすくめた。
「相変わらず冗談の通じない方ですね。ま、いいですが」
 夕立としても、こんな状況で歓談などするつもりはない。なにせ鉄火場だ。
 影に溶け込むようにして忍びが姿を消した瞬間、弾丸が壁に穴を開けた。
 隣にいた匡もまた横っ飛びに喇叭銃攻撃を回避。反撃の弾丸を叩き込む!
「ハッハハハァ! ああ、ああ、イライラするねェ! だから死になッ!!」
「お前の八つ当たりで殺されてやれるほど、お人好しなつもりはないな」
 BLAMBLAMN!! 散弾銃めいてばらまかれる喇叭銃の弾丸をすべて相殺。
 着地直後の隙を転がることで殺し、匡は立ち上がりざまに疾走する。
 紅のフラップテイルは笑っていた。笑いながら怒っていた。
 満たされぬがゆえの怒り。求めるがゆえの憤怒。
 ――それは、心に虚無を抱えた匡には決して理解出来ない感覚だ。
 すぐそこに死の暗闇が迫る状況で、匡の思考は変わらず凪いでいた。

「! ――あ? なんだいこりゃ」
 匡を狙い銃撃していた紅のフラップテイルは、目の前に投げ込まれたものに首を傾げた。
 酒瓶だ。それも血のように紅い、ルビーめいた上等な葡萄酒だった。
 己が略奪したものではない。猟兵が? この状況で、酒を?
「敵に塩でも送るって? それでもアタシを燃やすつもりかい!」
「わかってるじゃないか。そのとおりだよ」
「!!」
 紅のフラップテイルが酒瓶を掴んだ瞬間――KA-BOOOOOOM!!
 葡萄酒の酒瓶は内側から地獄の炎を噴き出し、紅のフラップテイルは炎に呑まれた。
 ゼイル・パックルードがもたらした獄炎。それはあらゆる生物を焼き尽くす。
 どれほど死闘を経ても満たされることのない修羅の炎は、女獣人の憤怒に似ていた。
「酔えない生は辛いだろう? さっさと殺してやるよ」
 ゼイルは弾丸めいた速度で間合いを詰め、銘刀で首を刈ろうとする。
 ――がぎん!! と刃を受け止めたのは、怒りに歪む獣の牙であった。
「ふぉの程度(へいど)で、あふぁしは殺ふぇない……!!」
「余計プライドが傷ついたか? そりゃ申し訳ないな」
 ゼイルは悪びれもせず、皮肉めいた笑みを浮かべたまま首をかしげた。
 ――BLAMN!! ついさっきまで彼の頭部があった場所を貫通する匡の弾丸。
 不意打ちめいたコンビネーションを受け、紅のフラップテイルは後ろにのけぞる。
 だがやはり死んでいない。ゼイルは自由を得た刀で袈裟懸けに斬り裂く。
 そしてバックステップ――その判断は正解。怒りの爪が横薙ぎに振るわれていた。
「足りない、足りない、足りないねェ!! この程度で死ねるかよッ!!」
「だったらそもそもオブリビオンになんかならなきゃいいだろうに。矛盾だな」
 怒り狂う紅のフラップテイルに対し、匡は皮肉めいて言った。
 その隣に着地したゼイルは、彼の横顔をちらりと一瞥して鮫のように笑う。
「死んでも満たされない餓えなんだろ。そう簡単にプライドは棄てられねえのさ。
 だからこそ付け入る隙がある――そういう意味じゃ、俺は歓迎するがね」
 それに、とゼイルは言葉を告げる。
「"こうやって俺らに釘付けになるから、視野狭窄になっちまう"」
「……!!」
 そこで紅のフラップテイルは気付いた。背後から突き刺さる強烈な殺気に。

 BLAMN!!
「……お酒かけないでくださいよ。酒臭いのってキライなんです」
 振り向きざまの喇叭銃。しかし弾丸が貫いたのは、空蝉めいた羽織だけだ。
 それを纏っていた当人――つまり背後に忍び寄っていた夕立は、無傷。
 羽織を変わり身として目くらましし、彼は紅のフラップテイルの真下にいた。
「あと、食べ物を粗末にするな」
「テメ――がッ!!」
 下賤な罵詈雑言など吐かせまいと、稲妻じみた速度で苦無が放たれる。
 喉元を貫かれた紅のフラップテイルは二歩、三歩と後ずさり、斃れ――ない。
「……醜いな」
 匡はすでに弾丸を放っていた。脳天が貫かれ、脳漿が飛び散った。
 だがメガリスの呪いはそれすらも回復させる。満たされぬ怒りが血を巡らせる。
 血走った目で三人を睨む女獣人。その眼差しは血と酒にまみれていた。
 立ち込める匂いは酸鼻の一語に尽き、ふたりは無表情、ひとりは嗤う。
「略奪は楽しかったですか? ――ま、表情を見れば一目瞭然ですが」
 夕立の問いかけへの答えとして、紅のフラップテイルは喉元の苦無を投げ返す。
 ぼたぼたと大量の血が溢れ、そして飛び散ったラム酒と混じり合った。
「殺してみろよ……アタシを。殺せるもんならな!!」
「いいですよ。あなたに"奪われる側"の気持ちを味わわせてあげます。
 最期になって嫌がっても知りません。けっこうイイかもしれませんしね」
 夕立はうそぶいて、逆手に苦無を握りしめた。
「こっちもまだまだ足りないんだ。せいぜいくたばるまで愉しませてくれ。
 ――酒なんかじゃ足りないのさ。お前は、俺を満たせるかね」
 獰猛な獣じみた殺意を放射し、ゼイルもまた刃をぎらつかせる。
 そして、匡は。
「……弛まず求め続ける。その方向性はともかく、すごいことなんだろうな。
 けど、お前の存在は誰にも許されない。だから、ここで無為に死んでもらうぜ」
 殺意の具現たる銃を構え、青く染まった瞳で獣を睨んだ。
 三体の死神が嗤い、睨みつける。怒れる獣は屈辱と苦痛に震えた。
 ――嗚呼。この男たちの殺意は、どんな酒よりもよほど恐ろしく心地よい。
 不死の呪いに侵された獣すら、ついには殺してみせるのだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
そうか。ではお言葉に甘えて滅んでもらおう

始源を展開
目標はオブリビオン
万象一切を砕く破壊の原理を宿す魔弾として行使
因果の原理を以て対象外へは無害とする

高速詠唱を『刻真』で無限加速
多重詠唱を『再帰』で無限循環
瞬きの間もなく天を覆う無数の魔弾に『天冥』で因果改変
過程の全てを飛ばして生成・射出・着弾を「同時」とし討滅を図る

全ての魔弾に『解放』を通じ全力の魔力を供給
自身へ届く攻撃は『絶理』『無現』で影響を否定し回避
必要魔力は『超克』で“外”から汲み上げる

喜べ
もう酔えないことを嘆く必要もないぞ


朱酉・逢真
ヒトも虫も草も《過去》も、俺からすりゃァ等しく嗤えて、心からいとしいもんさ。イライラしてんなぁ、お嬢ちゃん。心でも体でも、飢餓ってなぁつらいもんだよなぁ。けどよぅ、俺たちを皆殺しにしても意味ないぜ。だってほら、結局てめぇの飢えはそのままだろ。《それ》を持ってる間は、きっと死んだって酔えねぇぜ。

欲に素直なやつァ大好きだ。サテ、酔えないそうだが似た状態にならさせられっかもしれん。中毒症状だしな。祝福で脳の網様体と肝臓を軽ぅく麻痺らせる。大脳新皮質とアセトアルデヒドの分解を鈍化させれば、おおよそ酔いの症状だ。撃たれてもいいンで、たっぷり祝福した毒酒をぶっかけるぜ。少しは満たされてくれっかねェ?


才堂・紅葉
「そこまでして酔えないなら、もう別の道を探るべきですよ」

クソ迷惑な酔いたがりだが強い
酔えないが故に酒を無尽蔵に呑み続け、それでも酔えないが故に怒りを増す循環だ
強さが噛み合っている

円のように回りながら、自動小銃の三点バーストでダメージを稼ぎに行く
味方がいるならその攻撃を支援する【援護射撃】だ
【野生の勘】と【オーラ防御】でラッパ銃を凌ぎつつ、【気合】を入れて勝機を待つ

勝機を見出せば無拍子の【しのび足】で懐に入り、【怪力】とブーツの噴射機構の【メカニック】による蹴り上げで真上に【吹き飛ばし】
空中関節技で捉え、重力【属性攻撃】で掴んだ頭を叩き付ける落下技を狙う

「酒で酔えないなら……地に酔いなさい!!」


玉ノ井・狐狛
呪いで困ってんなら、手ェ貸してやろうか?

でも、アレだなァ。
アタシらに対して使う技が、だいたいどれもその呪いとやらに由来するみてぇだしなァ。
案外まんざらでもないんじゃねぇか?
なにせ、ヤンチャする言い訳になるもんな――「呪われて酔えないので仕方ありません」ってよ。

お怒りかい、ケダモノ海賊サン?
その怒りは、酔えねぇせいなのやら、はたまたアタシに▻挑発されたものやら――

相手の狙いを▻見切り、それに合わせて▻オーラ防御(+◈UC)。
血ィのぼってりゃわかりやすいだろうし、そもそも複雑な攻撃が得意そうなカオにも見えねぇ。

その呪い、削らせてもらうぜ。(弱体化を意図)
最初に言ったろ。手ェ貸してやろうか、ってな?


ガーネット・グレイローズ
先程から、ラム酒の匂いがプンプンするな。
あいつか、ここを仕切る海賊の頭領は。
腕っぷしはかなりのようだが、頭に血が上ってる。
こちらは冷静さを失わずにいきたいな

<第六感>を【イデア覚醒】で研ぎ澄まし、
酒攻撃に備える。<戦闘知識>で相手のリーチを
見極め、動き方を観察し、攻撃の前兆を予測しよう。
メガリスから垂れ流される<呪詛>の流れも、
敏感に読み取って回避したい。

敵が仕掛けてくるまではブラックバングルによる<衝撃波>を撃って牽制、
酒攻撃を掻い潜って懐に飛び込んだら、
妖刀アカツキと躯丸の二刀による<二回攻撃>を仕掛けよう。
視線とフットワークで<フェイント>をかけ、
手足の腱を断ち切ってやろう。



「この程度で! アタシの苛立ちが!! 殺せるかァッ!!!」
 吠える。女獣人は怒りのままに、けだものそのものの咆哮をあげる。
 降り注ぐのは蒼き魔弾。亡びの原理を宿した絶対必殺の無限加速・循環術式。
 この世に有り得るべからざるもの――オブリビオンを滅ぼすためだけに、
 アルトリウス・セレスタイトが練り上げた、極めて危険な弾雨である。
「どうした。酔えない苦しみを嘆くならば、おとなしく滅びを受け容れてみせろ」
「ハッ! 厭だね――どうしてアタシが滅んでやらなくちゃならない?
 アタシは奪う! 満たされるまで延々に……世界を滅ぼしてでもねェ!」
 魔弾を受けて四肢を滅ぼされる紅のフラップテイル。
 だが灼けた手足は、メガリスの呪いによって即座に再生される。
 これこそが彼女に課された呪いであり、業苦であり、そして祝福だ。
 尋常の精神の持ち主ならば、とうに生き地獄を儚み自死しているだろう。
 しかし。オブリビオンとはただ存在するだけで世界を滅ぼすもの。
 歪んだエゴを追い求め、以て未来を破壊する世界の癌である。
 満たされないがゆえに世界から去ろうなどという、殊勝な精神はない。
 でありながら――紅のフラップテイルは、存在することによる痛みに怒る。
 己に手向かう者に怒る。己が満たされないことに怒る。
 何もかもが狂い、そして捻じ曲がった、おぞましき過去の残骸。
 この世界であれ、オブリビオンの在りようはなんら変わらないのだ。

「クソ迷惑な酔いたがりですね……!」
 降り注ぐアルトリウスの魔弾が、猟兵を滅ぼし害することはない。
 狙った敵のみを滅殺するために練り上げられた術式は、味方を透過する。
 ゆえに魔弾の雨のなか、フレンドリーファイアを考慮する必要はなし。
 だが――才堂・紅葉は自動小銃のトリガを引きながら、吐き捨てた。
 敵は強い。怪物じみた自我、そして現世にこびりついたメガリスの呪い。
 これらは敵を無限の飢餓に叩き込み、それによって存在を維持している。
 頭部を吹き飛ばし心臓を抉り取ったとしても、根本的な存在力が尽きぬ限り、
 再生は続き敵は蘇る。そして、怒りが紅のフラップテイルを強化する。
 強い。伊達に、略奪者集団の頭目を張るだけはあるということか。
「アンタも邪魔だァ!! その頭部、ブッ散らばしなァ!!」
 紅のフラップテイルの凝視が、円を描き側面に回る紅葉を捉えた。
 そして、BLAMN!! 喇叭銃が鳴り響き、弾丸が紅葉の頭蓋を吹き飛ばそうとする!
 そこに割って入りオーラの防御陣を張ったのは、玉ノ井・狐狛であった。
「ったく、酒を楽しむのは否定しねえがよぅ、人に迷惑をかけちゃいけねェぜ?
 酒は飲んでも呑まれるな――ってな? その点、アンタはまんざらでもねえだろ?」
「……あァ? どういう意味だい、そりゃあ」
 刃じみて鋭い獣の瞳が、狐狛をぎろりと睨みつけた。
 女博徒は怯えるふうも悪びれた様子もなく、皮肉げに目を細める。
「アンタの技、どれもこれもそのメガリスの呪いとやらに由来してるしなぁ
 つまりだ――アンタ、本当は満たされない状態を心地よく感じてんじゃないか?」
「……」
「なにせ、ヤンチャする言い訳になるもんな、え?」
 狐狛はきゅうと口の端を釣り上げる。狐狸の笑みであった。
「"呪われて酔えないので仕方ありません、私は可哀想な女です"ってよ!」
「貴様ァアアアアアアッ!!」
 ――ごおうっ!!
 激憤した女獣人の殺意と憎悪が、衝撃波めいて酒瓶を吹き飛ばした。
 BLAMBLAMBLAMBLAMN!! オーラ防御を突き破るほどの連続射撃!
 さらに床を砕くほどの勢いで跳躍し、狐狛ごと紅葉を引き裂こうと襲いかかる!

 だが。
 壁を削るほどの爪撃は、しかし、何も斬り裂くことはなかった。
「……あ?」
「ハッ、そらみたことか。血ィ昇ってろくに見えちゃいねぇ」
 正面にいたはずの狐狛と紅葉は背後に。いつの間に?
 ……否、違う。"最初から見えていたものが幻だった"としたら。
「幻術かッ!!」
「いまさら気付いたところで遅いのさァ!」
 振り返り襲いかかろうとした紅のフラップテイル、だが!
 その横合いから振るわれた二刀、すなわちガーネット・グレイローズの剣を受け、
 バツ字の剣閃を胴体に受ける。傷は塞がれる、だが衝撃は大きい。
「あなたが冷静さを失わずにいれば、今の剣は避けれただろうな」
 ガーネットは侮蔑と落胆を込めて言い、さらに一歩踏み込んだ。
 ――疾い。紅のフラップテイルは、その剣戟の無慈悲さと鋭さに舌を巻いた。
 両手足を赤子めいて縮こまらせて、さらなる攻撃を防ごうとする。
 しかし。ガーネットは間合いの寸前で踏みとどまり、鋭角的ステップで急転。
 くるくると踊るように回転しながら、女獣人の側面を取っていた!
(ミスディレクションだと? この女……ッ!)
「これで二回目だ。少しは痛みで頭を冷やしたらどうだ」
 ――ざんっ!!
 並のオブリビオンであれば、胴体両断は免れ得ぬであろう二刀同時斬撃。
 しかし骨をも断ち切った剣は、紅のフラップテイルを仕留めるには至らない。
(やはり呪いの力が強い。呪詛の流れは読めている、直撃は避けられるとはいえ)
 ガーネットはそれ以上攻めることはない。敵の反撃を警戒したのだ。
 そして彼女の第六感が示した通り、カウンターの爪が床をこそげ取った。
 もしも不用意に踏み込んでいれば、両断されていたのは彼女のほうである。
 支援砲撃めいて降り注ぐ魔弾。紅のフラップテイルは雄叫びをあげ腕を振るった。
 徐々にだが、呪いの力が損なわれつつある。忌々しい。
 おそらくはあの妖狐――つまり狐狛――のユーベルコードの力だ。
 忌々しい……忌々しい? なぜだ、己を酩酊から遠ざける呪いであるのに?
 己はやはり、あのけだものの言う通り呪いを求めていると? 巫山戯るな!
「アタシはアタシだッ!! 呪いなんざいくらでも飲み干してやろうじゃないか!
 アタシがメガリスの力を頼りにしてる? 違う!! アタシにとっちゃ――」
「病も呪いも怖くねぇ、ってか? ひひひっ、そりゃまた大きく出たな」
 はたしていつからそこにいたのか。朱酉・逢真が真後ろで嗤笑した。
 振り向きざまの爪撃。切り裂かれたのは幻影、男の本体はさらに一歩後ろへ。
 人間めいていながら、まるで空間に開いた虚無のごとき赤い瞳が、
 ぞっとするような悪寒と底知れなさを具えて、獣の眼を覗き込んだ。
「そう怒り狂うなよ、"お嬢ちゃん"。別に俺ぁお前さんを馬鹿にしたいわけじゃねぇ。
 ――過去(おまえさん)も、ヒトも虫もくさも、俺からすりゃあ等しいものさ」
 神は云う。この世に在りし森羅万象は、我にとって等価値なのだと。
 同じように嘲り、同じように見下して、同じようにいとおしむ。
 それは神の視点である。ヒトと同じ地平に立ちながら異なる魂を持つ者の座。
 紅のフラップテイルは、男の持つ時の力とでもいうべきものを畏れた。
 ――そして、己が畏怖を抱いたという事実が、マグマじみた怒りを呼び起こす。
「わかってんだろう? 俺たちを皆殺しにしても意味はねぇってことを。
 だってほら――結局てめぇの餓えはそのままだ。だから決して酔えやしねぇ」
「黙れ」
「ひひっ。黙ってもいいぜ。けどお前さんの心(なか)にゃ聲は残るだろ。
 俺はそいつを言葉にしてやってるだけさ――慈悲深いのが取り柄なんでね」
 女は爪で男をかきむしろうとする。やはり男は一歩後ろに立っていた。
 まるでふたり以外の時間が、世界が静止したかのように、動きがおぼつかない。
「だからよ、そのイライラ――なんとかしてやろうじゃァねえか」
 逢真は芝居がかった調子で言って、とんとん、と己のこめかみを叩いた。
 直後、紅のフラップテイルの視界は淀み、歪み、そして意識がふらつく。
「!?」
「どうだい。キくだろ?」
 ひひひ、と凶神は嗤った。
 何をした? 紅のフラップテイルは言葉にしようとして、しかし叶わない。
 女が知るよしもない。もたらされた病魔がいかにして体を冒したのかなど。
 脳網様体と肝機能の麻痺、それによる大脳新皮質とアセトアルデヒドの分解鈍化。
 つまりは、"酩酊"である。女はあまりにもそれを忘れてしまっていた。
 しかし体が酩酊したとして、そこに酒を呷ることによる快楽はない。
 いのちを奪い、弱者を踏みにじる、征服という美酒ではない。
 ゆえに――もたらされたのは、ただただ反吐が出そうな世界の歪みだけだ。
「ああああ」
「愛してんぜ、過去よ。てめぇの餓えも、かみさまが満たしてやるさ」
 逢真が手を伸ばす。その指先が額に触れるのを、けだものは畏れた。
 あるいはそこで、紅のフラップテイルが祝福を受け容れていたならば。
 彼女はまだしも――もたらされる苦痛と虚無はさておき――死ねただろう。
 だがけだものはそれを振り払った。主観時間が現実に追いつく。
「怒りのあまりに呆けたか? ――手足、貰うぞ」
 男の姿が消え、ガーネットと紅葉が現れた。まずは双閃。
 刃は手足の腱を断ち切り、防御手段を奪う。
 紅葉の蹴撃が顎に叩き込まれる。意識が戻され、そしてまたぐらついた。
「酒で酔えないなら――地に! 酔いなさいッ!!」
 天地逆転、そして――KRAAAAAAASH!!
 激烈な衝撃が脳天から脊髄、そして全身に駆け抜け、骨が砕ける!
「がはッ!!」
 己が天に打ち上げられ、重力制御で床に叩きつけられたのだとわかったのはその直後。
 狙いすましたように蒼い魔弾が降り注ぎ、全身を灼いた。
「お前にはもう何も奪えはしない。奪わせもせん」
 超然とした面持ちで、魔弾の射手――アルトリウスは言った。
 呪いが身を再生する。だが足りぬ。もっとだ、もっと呪いをよこせ。
 酩酊が遠ざかるとしてもいい。こいつらに滅ぼされてたまるものか。
 女は求める。それが矛盾であるとわかっていても、怒りながら求め続ける。
「――どこまでもケダモノみてェだな、アンタはよ?」
 片眉を釣り上げて嗤う狐の表情は、何よりもけだものを苛立たせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

なんだい姐さん、だいぶお冠じゃねぇか。
飲みが足りないのかい?
それとも飲み過ぎて酔っているのが分からねぇか?
それもヨロシクないね。
骸の海でしっかり頭を冷やしてきな!

飲酒運転はなるべくしたくないけど、
注意を『おびき寄せ』るのには役に立つだろ。
艦橋の中を上手く『操縦』して撹乱し、
味方が攻撃できる隙を作るよ。
そうしてる内に『ダッシュ』で近間まで肉薄し、
カブで『かばう』ようにアタシに向けられた銃撃を防ぎ、
『カウンター』で【漢女の徹し】を土手っ腹にぶち込む!

酔えない酒なんて百害あって一利なしさ、
腹に溜まったもん全部ぶちまけちまいなっ!


フェルト・フィルファーデン
どうしようもないわね、これは……まあ、わかっていたことだけれど。
でも正直、もう少し冷静だと思っていたわ。本当、お酒って怖いわね……
何にせよ、これ以上好きにさせるわけにはいかないわね。


とはいえ、ちょっとこの場は敵に地の利があるわね……泥酔なんてしたことないもの。飲める歳じゃないし……

だからわたしは皆のサポートに回りましょう。
電子の蝶で敵にたくさんのお酒の幻を見せるの。蝶は生物ではないから酔いはしないしね。幻でもお酒好きなら気を引けるんじゃないかしら?まあ、幻だから飲めないけれど。酔えないのだから飲んでも飲まなくても一緒でしょう?

浴びるほど飲みたいと話に聞くけれど、本当に浴びる羽目になるなんて……


アリエ・イヴ
アドリブ◎

無抵抗の奴を殺す気も
貧しい奴らから奪う気もねえが
俺だって海賊だ
こういう祭りは…嫌いじゃねぇよ
碇をブンと振り回し『範囲攻撃』
まずは、お嬢さんにこっちを見て貰わねぇとな

酔えない酔えないとずいぶん嘆いてるようだが
そんなに酔いたいなら
酒よりもっと極上の――痺れるようなスリルと死の気配で
酔わせてやるよなぁ、ハニー?
真っすぐ見据えたまま
銃弾を『覇気』を纏わせた剣で斬り距離を詰める
情熱的な舞でも踊るように
続けざまに攻撃して

銃身を剣で払い最後の一歩を踏み込んだら
ほら、全力で噛みしめな
囁く距離で甘く低く呟いて
拳を打ち込み【一撃必殺】

どうだ、少しは満たされたか?


メテオラ・エルダーナ
ふふ、驚きました?そうでもない?
あなたの部下は、私たちがぜーんぶ倒しちゃいました!
さて、ネズミ退治は猫の領分!ここで幕を引きましょうっ!!

未成年ですからお酒はお断り!
ラム酒の雨は【オーラ防御】【属性攻撃】を組み合わせた水のバリアで中和して凌ぎます!

でも、これだけで防ぎ切れるとは思いません。
ならば「場」を上書きするまでです!
私の【虚空剣】で周りの全てを巻き込んで、
ラム酒の雨ごと虚無に飲み込んでやります!

…さて、そのラッパ銃、ユーベルコード無しで私に当てられますか?
私の魔法剣があなたを両断する前に!



 立ち込めるのは血と酒の匂い――どちらも紅のフラップテイルのものだ。
 並のオブリビオンであればすでに五、六回は滅んでいるほどのダメージを受け、
 しかし敵は健在である。……メガリスの呪いが奴を生きながらえさせている。
「攻撃すればするほど怒り狂って強くなる……どうしようもないわね、これは!」
「酔っ払いよかよっぽどタチが悪いねぇ、少しは頭を冷やしてもらいたいもんだ」
 フェルト・フィルファーデンと数宮・多喜は苦々しげに吐き捨て、
 ショットガンめいてばらまかれる喇叭銃の弾幕を回避する。
 アリエ・イヴの攻撃によってこそげた敵の顔面は、急速に再生していた。
「どうした猟兵! この程度でアタシを殺せると思ってんのかい!?」
「ハッ、思っちゃねえよ! てめぇこそどうした、かかってきな!!」
 アリエは錨を振り回して弾丸を弾き、無造作に間合いを詰める。
 ぶつかり合うのは拳と爪――衝撃が両者の拳をひしゃげ、血が飛び散った。
「さすがに部下どもとは一味違いますね、けれど敗けませんよ!」
 血に混じり降り注ぐ呪いのラム酒を、メテオラ・エルダーナのバリアが防ぐ。
 ヴェールめいて展開された水のバリアはぐるぐると渦巻き、錐状になった射出。
 紅のフラップテイルの土手っ腹を貫く。……だが、敵は止まらない!

 ヒトの形をした嵐のごとき猛攻。
 それは、一撃ごとに重さと速度を増して猟兵たちの命を刈ろうとする。
 多喜は必死でマシンを駆り、フェルトの人形たちが懸命に支援するなか、
 その最前線に立つアリエは心の底から笑みを浮かべ、錨を振り回していた。
 己は海賊だ。無法の中の法を貫き、この困難な海で生きるアウトロー。
 紅のフラップテイルと同じだ。だから心からこの死闘を楽しんでいた。
 しかし、アリエは無抵抗の相手を殺して愉悦することはない。
 貧しい相手から略奪し、何の意味もなく贅を貪ることもしない。
 似ているようで対極の海賊同士、喧嘩で白黒つけるのは大歓迎である。
「俺を見ろよお嬢さん(ハニー)? 他の奴に目移りしてる暇はねえぜ!!」
「寒気がするんだよブ男が! アンタじゃアタシは満たせやしない」
 ゴッ、ガッ!! と殺意がぶつかり合い、血と酒と火花を散らす。
 ふたりとも笑っていた。血まみれの顔を牙剥いた狼のように笑みに染めて、
 痛みも苦しみも厭わずに拳/爪をぶつけ合う。誰も立ち入ることの出来ない旋風。
「妬けるねぇ。アタシも混ぜちゃくれないかい!」
 ギャリリリリリッ!! と酒まみれの床にバーンナウト痕を刻み、
 多喜が敵の側面に回り込んだ。そしてサイキックエナジーを電撃放出!
「邪魔ァするな小娘ェ!!」
 紅のフラップテイルは精神電撃を裏拳で弾き、お返しに喇叭銃を叩き込んだ。
 BLAMN!! 多喜の頭蓋をスイカめいて砕くと見えた弾丸は、空中で静止。
「騎士たちよ、前へ! あの銃撃はわたしたちで防ぐわよ!」
 フェルトである。電脳魔術で弾丸を止め、同時に騎士人形を敵背後へ展開。
 少しでも攻勢に陰りが生まれれば、アリエと挟撃する腹積もりだ。
 しかしフェルト自身わかっていた――おそらく、騎士たちが付け入る隙はない。
「さてさて、どうしましょうかねえ。もどかしい状況です」
 言葉を裏腹に、水のバリアを展開するメテオラの表情は楽しげだ。
 手をこまねいているのはよろしくない……だがそれは工夫の余地があるということ。
 強敵との戦いは歯痒く苦しいだけ、敵を上回った瞬間の高揚が増すのだ。
 どう攻める。
 どうかいくぐる?
 一秒ごとに変わる状況のなか、メテオラは考え続ける!

 膠着状態のなか、最初に痺れを切らせたのは紅のフラップテイルだった。
 ふつふつと湧き上がる怒り。猟兵と、己と、メガリスへの苛立ち。
 そこに傷の苦痛ともどかしさが合わさり、もはや限界寸前でった。
 いや、沸点はとうに過ぎている。なにせ紅のフラップテイルは常に怒っている。
 求めど求めど満たされない。その苦しみ、渇き、絶望たるや!
「邪魔だ……邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だァ!!」
 酒をよこせ。酔えずとも構わない、この焼け付く喉を潤す酒を!
 大振りな爪撃でアリエと騎士人形部隊を退け、フラップテイルは酒に手を伸ばした。
 栓を抜く手間すらも厭い、がぎりと牙で瓶口を噛みちぎり飲み干す。
 火酒。葡萄酒。エール……ダメだ。やはりどんな酒でも彼女は酩酊できない。
 酒精はいたずらな娼婦めいて鼻先を通り抜けていく。嗚呼、怒りよ!
「足りない足りない足りない……もっとだ、もっと酒をよこせェ!!」
 狂乱した紅のフラップテイルは、さらなる酒を求めて手を伸ばした。
 だが――彼女が掴み取ろうとした酒は、ふわりと手の中をすり抜ける。
「あ?」
「かかったわね」
 呆然とした眼差しがフェルトを捉える。妖精の王女はにこりと微笑んでいた。
 いつのまにか周囲をはばたく電子の蝶。……電脳魔術による幻!
「このガキッ!!」
「おいおい、目をそらすなって言っただろ? ハニー」
 喇叭銃とフェルトの間に、アリエが割り込んだ。そしてニヒルに笑う。
 喉元を狙い振るわれる剣。だが紅のフラップテイルは腕を犠牲に剣を防ぐ!
「アンタらも、アタシの渇きを知ればいい!!」
「そうはいきませんよ? ここからは! 私たちの独壇場です!!」
 呪いのメガリスが酩酊の雨をもたらそうとした瞬間。
 機を伺っていたメテオラの虚空剣が、空間ごとメガリスを切り裂いた。
 虚無の魔力は酒精を突風のように振り払い、狂乱のあとの凪をもたらす。
 返す刃は両脚の腱を断ち切り、紅のフラップテイルはぐらりと体勢を崩した。
「酔えない酒んなんて百害あって一利なしさ。腹に溜まったもん全部ぶちまけちまいなっ!!」
 多喜が飛び込んでくる! 脇腹を狙った槍じみた掌底!
 内臓破裂ダメージに紅のフラップテイルは吐瀉物を撒き散らし、のたうつ。
 霞む視界を覆ったのは、色男めかして微笑むアリエの拳だった。

 ――KRAAAAAASH!!
「がは……ッ!?」
「全力で噛みしめな。どんな酒より強烈だろ?」
 拳が離れ、血に汚れた女獣人の視界にアリエの微笑が蘇る。
 ――もう片方の拳がハンマーめいて振り下ろされ、その頭蓋を叩き潰した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャガーノート・ジャック
★レグルス

(ザザッ)
掠奪者らしい掠奪者、獣らしい獣、そして倒すべき敵らしき敵だ。
――だがあまり拘っている余裕はない。相棒の機嫌が悪いらしい。

引き続き可及的速やかに行く。オーヴァ。

(ザザッ)
臭気だけで酔いそうだ。
酒の大盤振る舞いと言った処だな――。だが頂けるものは頂くとしよう。

"Absorber".
熱線銃を豹頭に変換(武器改造)。敵性存在の攻撃吸収・還元完了――。

口に含んでおいて何だが、どうにも本機には合いそうにない。法を逸脱してしまうしな。
君にも合うまい、ロク。

――故にそのまま返すとしよう。発射。
(カウンター×一斉発射×スナイパー)

――さあ、返盃ごと焼き尽くしてやれ、相棒。
(ザザッ)


ロク・ザイオン
★レグルス

(血の匂い。酒の匂い。ぐるぐるする。
好きだから、我慢していたから、
最悪だ。さいあく。
せっかく、ちゃんと、)
……"おぎょうぎよく"してたのに。

ジャック。今のおいしかった?
そう。
じゃあいい。おれもいらない。
――おまえにも、何も飲ませてやるもんか。

(泥酔し理性を手放せば、残るのは獣の性だ
真の姿を解き放ち、「轟赫」七十一を広げ酒の雨を呑み込み引火
炎の帯も延焼させたものも、おれの好きに出来る
おれと相棒の他を全て炎で包んでしまうことも
こころのままに、遊ぶのは心地よい
そう言ったよなあ!)

(なあ。
お前には。
血が、ながれているんだろ?)


化野・風音
世の中には煮ても焼いても喰えないというものがございます
私のような狐もそのひとつ

酒精は好物ですが、人前で酔った姿は見せられません
【毒耐性】にて酩酊を防ぎ、初音の扇が巻き起こす大風で吹き飛ばしてまいりましょう(【衝撃波】)

――これで対処できるほど易くはないとお考えで?
はい、私もそう思います故、これはしょせん【時間稼ぎ】
さあ、本命の到来です

海の向こう、彼岸と此岸を結ぶ大橋を渡り来るは神殺し達
「酒」は古来より魔を清めるもので、神殺し達は戦に「酔う」者たち
戦場を、斯様な形にしたことが仇となりましたね?

――私は人の欲望を肯定いたします故に
それに呑まれる結末を眺めるのもまた法悦

……では、幕引きです


アコニィ・リード
血でお酒を作るって……この人アポヘルの人より頭がアレね!

敵の攻撃――泥酔攻撃をしてくるなら
クロークから酸素を出して、酒気を吸い込まない様気を付けるわ
多少耐性はあってもお酒はちょっと……

ともかく、相手が泥酔しちゃうならその隙を狙うわ
ネイビーの迷彩で周囲に隠れて距離をとる
そしたらデバイスで自分にドーピングし限界突破
それ何って……酔い止めよ酔い止め!

落ち着いてX8を狙撃銃に組み替えて
そのまま武想界砲――[スナイパー][援護射撃][制圧射撃]
消音の魔力波動を乗せてセット完了、射撃開始!

地形を利用し見つからない様に仲間の援護に努めるわ
足場を、手元を、そして杯を……
全部台無しにしてあげるわ、この酔っ払い!


ヴィクティム・ウィンターミュート
──ほう、酒に狂った馬鹿か
悪いがドランク・パーティーには興味は無い
テメェの苛立ちもどうでもいい
俺はただ勝ちに来ただけの、なんてことの無い端役だ
ただし侮るなよ──強くは無いが、弱くも無いぜ

ラム酒をぶつけてくるってこたぁ、杯の投擲か…
あるいは液体をぶっかけてくるかだな
どちらも予備動作は非常に分かりやすい
故に、来ると分かれば…俺の方が早いわけだ
『Balmung』──スタンバイ
ラム酒をまともに受けて、エネルギーを吸収変換
続くラッパ銃の射撃へ、ガンマンの早撃ち対決のようにクロスボウで先んじる
変換された力はボルトに乗り、テメェを貫く魔弾と化す
血に酔いたいんなら、自分の血でやれよ
その方がトべるぜ?生命ごとな



 鼻から上を叩き潰された、無惨な女獣人の死骸が転がっていた。
 しかし死後硬直したミイラめいて、片手は呪いの杯を掴んだままである。
 死してなお、メガリスを手放さない……なんたる呪い、そして欲望だろうか。
 そしてメガリスは呼応するように、呪いによって彼奴を蘇らせるのだ。
「あアあ……」
 気の抜けた声をあげ、紅のフラップテイルが立ち上がった。
 床に落ちたトリコーン帽を被り、ごきごきと首を鳴らす。剣呑な眼光。
「……アンタらじゃアタシを殺せやしない。この呪いを終わらせられるものか」
 女の声音には嘲笑と、なによりも己自身の運命への諦観があった。
 オブリビオンとなってなお、メガリスの呪いは女の存在に絡みついている。
 さながら地に深く打ち込まれた楔めいて、決して拭い去ることは出来ないのだ。
 それは力であり、同時に枷であった……決して、満たされないのだから。
「だったらさっさと骸の海に還ってよ、この世界の人々に迷惑をかけないで!」
「厭ァだね。海賊が他人の言うことにほいほい従ってたまるかい」
「ああ言えばこう言う……本当に頭がアレね、あなたって!」
 アコニィ・リードはアサルトライフルを構え、嫌悪感に顔を顰めた。
 オブリビオンが説得に従ってくれるのは、サクラミラージュぐらいのものだ。
 欲望にまみれたコンキスタドールには、絶対に道理は通らない。
 グリードオーシャンにおけるオブリビオンがどんなものかを改めて痛感し、
 アコニィは吐き気をもよおした。
 ……こんなマイナスの存在は、絶対に見過ごせない。
「世の中には煮ても焼いても食えない……というものがございます」
 そんな彼女の隣で、汚れひとつないメイドがふんわりと笑った。
 穏やかな、けれども侮蔑と嘲りを込めた、苛立ちを誘う笑みであった。
「私のような狐もそのひとつ――さて、あなたはいかがでございましょう?」
「アタシを俗物だと侮るかい? 死んで償ってもらうしかないねェ……!!」
 怖気が立つほどの紅のフラップテイルの殺意ある凝視を浴びて、
 化野・風音の表情は変わらず笑みのまま……それがなおさら癪に障る。
「酒に狂った馬鹿がべらべらおべんちゃらを垂れるんじゃねぇよ、酒臭い。
 テメェの苛立ちも呪いもどうでもいい。俺はただ勝ちに来ただけなんだからな」
 ヴィクティム・ウィンターミュートは風音と同じように皮肉めいて笑った。
 憎悪すら籠もった双眸で睨まれても、ヴィクティムの飄々さは消えなかった。
「吠えるじゃないか……アンタ、一体何様のつもりだい?」
「何様? ハッ、違うな。俺はただの、なんてことのない端役でしかないぜ。
 テメェを仕留めるのは華々しい主役どもの仕事さ――ああ、ただし」
 ガンマンめいてクロスボウを抜き、紅のフラップているに突きつける。
「侮るなよ。俺は強くはないが、弱くはないぜ?」
《――僭越ながら付け加えれば、本機は彼以上の"端役"を知るまい》
 一方で、ジャガーノート・ジャックはどこまでも冷徹だった。
 声音は電子的で平易、そして赤いバイザーの下の表情は伺えない。
 その鉄のごとき揺るぎなさもまた、紅のフラップテイルの神経を逆撫でする。
《――ヴィクティムの流儀に倣うならば、お前はまさに"らしい"敵だ》
「なんだってェ……?」
《――略奪者らしい略奪者。獣らしい獣。そして倒すべき、敵らしい敵》
 ここで斃れ散るのがお前の仕事だと、ジャガーノートは言外に言ってのけた。
 お前はこの海を荒らす無法者でも、瓦礫の山の大将でもない。
 命運尽き果て、ただ無惨に死に絶える"やられ役"でしかないのだと。
「…………」
 ジャガーノートはむしろ紅のフラップテイルより、相棒のほうが気遣わしげだ。
 彼の一瞥にも応じず、ロク・ザイオンはぐるぐると獣めいて喉を唸らせていた。
「ハッ! アンタの相方こそずいぶんけだものらしいけだものだろうが、ええ?
 血が欲しい、酒に酔いしれたい、物欲しげな顔にそう書いてあるよ!!」
「……うるさい」
 ロクは侮蔑を込めた声音で、紅のフラップテイルの皮肉を一蹴した。
 頭が靄がかったようにはっきりしない。体の裡から熱がこみ上げてくる。
 ロクは酒精を好む。その薫りは、生まれ育った森の風景を蘇らせるのだ。
 最悪だ。好きだからこそ我慢していたのに。"お行儀よく"していたのに。
 これでは――もう、自分に枷を課せられない。辛抱が、つかない。
「おまえ、言ったよな――血で、酒を、作りたいと」
 たどたどしくも唸りながら、ロクは言った。
「おまえにも、血はながれているんだろう」
「……ハ、ハ! ハハハハハッ!!」
 ロクの言わんとすることを理解し、紅のフラップテイルは天を仰いだ。
 片手で顔を抑え、腹の底からおかしそうに呵々大笑する。
 ひとしきり笑いに笑って――凄絶なる憎悪の眼差しで、猟兵たちを睨んだ。
「アタシを嘗めやがって。全員まとめて、ぶっ散らばせてやるよォ!!」
 酒精がむっと濃さを増す。充満するのは殺意と敵意、そして強敵の重圧!
 五人は弾かれたように動いた――けだものの咆哮が、戦場を揺るがせた!

 呪いの杯になみなみと満たされた酒が、ごぼごぼと煮え立った。
 マグマじみたそれは杯のフチを越え、巨大な水柱めいて揺らめく。
 まるで間欠泉……あるいは、まどろみから目を覚ました大蛇のようだ。
 天井につかんばかりに立ち上がったそれは、内側から急速に膨れ上がる。
 風船のように爆ぜた呪いの酒が、雨のように降り注ぐ!
「酒精は好物ですが――人前で酔った姿は、見せられませんので」
 ぶわり、と風音の大扇がはためくと、突風が戦場に吹き荒れる。
 それは酒の雨を吹き飛ばし、さらに猟兵たちの追い風となった!
《――ずいぶん爽やかになったが、それでもすさまじい臭気だ。酔いそうだな》
 ZAP、ZAPZAP!! ジャガーノートのレーザーファンネルが火を噴く。
 紅のフラップテイルは攻撃軌道を銃口の角度から読み、四足で跳躍。
 壁を蹴って熱線を回避――そこへ、逆手に烙印刀を構えたロクが追従!
「燃えろ!!」
「ハ、けだものがアタシに敵うかい!!」
 がぎ、んっ!! 爪と刃が交錯し、両者は飛び離れる。体勢回復は敵が一手先。
 ごろごろと転がりながら喇叭銃を構え、BLAMN!! 抜き撃ちした。
 狙いはロクである。散弾銃めいて弾丸を防いだのは、アコニィの援護射撃だ。
 BRATATATATATA! 壁に銃痕を穿ち、鞭めいた弾雨が紅のフラップテイルを追う。
 ガ、ガ、ガギギギギギッ!! 敵は飛来する弾丸を爪で切り払う!
『血でお酒を作るとかのたまうだけはあるわね、なんて攻撃方法なの!
 悪いけど、むざむざ酔ってなんてやらないから。代わりに弾丸を喰らいなさい!』
 BRATATATATATA! アコニィはクロークで酒精を遮断し射撃を続ける。
 実に鬱陶しい援護射撃。敵は狙いをロクからアコニィに切り替えた。
「後衛から狙うなんざ姑息なことしてんじゃねぇよ、テメェの相手は俺だぜ?」
「チッ、小僧が……邪魔をするなァ!!」
 ヴィクティムは薄ら笑いのまま首を傾げ、薙ぎ払うような爪を避けた。
 アコニィを狙いまっすぐに跳躍したフラップテイルの眼前に飛び込んだのだ。
 ナイフと爪の交錯! 一撃ごとに火花が散り、散乱した酒が焼け焦げる!
《――やはり時間をかけるのは悪手か。ロク、可及的速やかに仕留めるぞ》
「……わかった」
 ロクは相棒の言葉に従い、あえて足を止めて尻尾を膨らませた。
 まるで紅のフラップテイルを誘うかのように、挑発的に敵を睨めつける。
 気に食わない眼だ。こちらを格下に見た、生意気な小娘の眼。
 苛立ちが募る。――敵は怒りの雄叫びをあげ、再び杯を掲げた!
「酒に呑まれて死にな、餓鬼が!!」
「――!!」
 濁流のような酒精が迫る。ロクは……避けない。ジャガーノートもだ!
 ロクは大手を拡げてそれを浴び、ジャガーノートは熱線銃を豹頭に変換。
 滂沱の毒酒を嚥下し……そして、内側から熱波が吹き荒れた。
「……ジャック。いまのおいしかった?」
《――本機が呑んだわけではないが。これは口には合わないな》
「……なら、おれもいらない。おまえにも、何も呑ませてやるもんか」
 ごうっ!! と、高熱が大量の酒に引火し、そして蒸発させた。
 ロクの姿は獣の相を強めていた。七十と一の炎髪を燃やす真の姿。
 分身すら生み出す速度で地を蹴立て、赫きけだものが女獣人へと迫る!
「こいつッ! アタシの酒で力を引き出したのか!? いや、それだけじゃない!
 アタシの酒を、焼き尽くすつもりか……ふざけやがってェエエエエエエ!!」
 BLAM! BLAMBLAMBLAMBLAMBLAM!!
 喇叭銃の乱射弾幕。だがその弾丸は、迫りくるロクを貫くことはない。
 後衛のジャガーノート――彼の豹頭から放たれた熱線の雨が相殺してしまった。
(あの機械野郎もか、アタシの力を……ッ!?)
 しかし敵の読みは間違っていた。酒の力を借りたのはもうひとり。
 ――死角から脇腹に突き刺さったクロスボウのボルトが、それを知らせた。
 遅れて鏃が内なる魔力で爆ぜ、紅のフラップテイルの胴半分を削り取った。
「血に酔いたいなら自分の血でやれよ――そのほうがトべるぜ? 生命ごとな」
「……ッ!!」
 血走った獣の瞳がヴィクティムを睨む。端役は小馬鹿にした笑みで肩をすくめる。
 "眼をそらしている暇があるのかい? 幕引きはもう目の前だぜ"。
 端役の表情はそう語っていた。その証明は、炎と光によってもたらされる。
 まずひとつ。喇叭銃ごと片腕を吹き飛ばしたのは、アコニィの魔力波動狙撃。
 狂乱の戦場の只中、敵の不意を突くべき一瞬を、彼女は待っていたのだ。
「あなたの目論見も、怒りも、何もかも台無しにしてあげるわ、この酔っ払い!」
 この、餓鬼が。紅のフラップテイルは吐き捨てようとした。
 だが、出来ぬ。喉元に、呪われたる烙印の刃が牙めいて食い込んでいたからだ。
「のこさず、灼けろ」
 地獄の底から響くような煤けた声。ロクのものである。
 酒が燃え上がる。ちろちろとゆらめく龍の舌は呪われた身を包み込んだ。
「ああああああああ!!!??」
「こころのままに、遊ぶのは、ここちよいのだろう」
 おまえは、たしかに、そう言った。
 刃が鎖骨を、肋骨を、心臓を、臓物を、そしてはらわたを引き裂く。
 血が吹き出し、それすらも炎が舐め取り、灼いていく。
「――おまえの血なんて、これっぽっちも、美味くなさそうだ」
 何もかも焼き尽くして死ね。ロクの双眸はそう語っていた。
 だが紅のフラップテイルは、苦痛の中で咳き込みながら笑った。
「ハ――ハハ、ハ。ああ、そう、かい」
 口の端が勝ち誇ったように釣り上がる。
「なら……アンタ、ら、も……道連れ、さ……」
 残りの杯が手からこぼれ落ち、そして床に当たってがちゃんと砕けた。
 ……放出された魔力が炎の勢いを増す。揺らぐ船体、響き渡る地響き!
「奪った酒も、金も、なにもかもどうでもいい……諸共に、燃えな……!!」
 呪われた女の最後っ屁。島をも犠牲とした自爆攻撃。
 猟兵どもの悔しがる顔を想像して、満足したまま女は死んだ。

 ――否。
「あ?」
 何かがおかしい。紅のフラップテイルは顔をあげた。
 周囲は燃え盛る戦場ではなく、虚無じみて見通せない暗黒に包まれていた。
 そこに女はただひとり……否。もうひとり、メイドが佇んでいる。
「なんだ、ここは。――アンタ、何をした?」
「好き放題した挙げ句に巣穴を燃やし、勝ち誇ったまま死んでいく。
 私、人の欲望を肯定する者でございますが、それは少々腑に落ちませぬ」
 風音の背後、ぼんやりと浮かび上がるのは、恐るべき武具をそなえた古霊ども。
 神をも殺す外法のものども。黄泉大橋を渡りて来る彼岸の住民。
「欲望のままに暴れ狂い、そして破滅する者に相応しい最期は"こういうもの"かと」
「……なんだ、お前ら。来るな、アタシに近づくんじゃあないッ!!」
 神殺しの霊どもは非現実的な速度で近づき、そして武具を振るった。
 刀が肉を削ぎ、槌が骨を砕き、槍が棘が杵が臓物をかき混ぜこそぎだした。
 悲鳴。醜くこれっぽっちも威厳のない、すがるような断末魔。
 過去の残骸が、満足したまま骸の海に還るなど、認められない。
 少なくとも風音は認めない――彼方と此方、二つの世を中立つ女は認めない。
「欲望に呑まれ、与えてきたぶんと同じだけの苦痛と絶望にまみれ滅ぶこと。
 噫……よいお顔でございますね。それが見たくて、私はここまで参りました」
 呪われたけだものは畏れた。底知れぬ妖狐の、法悦とした表情を。
 恐怖と苦痛、絶望にまみれた魂は彼岸へ持ち去られ、永劫の業苦を味わうだろう。
 闇は堕ちていく。炎も呪いも、化野(あだしの)には届かない――。

 ……無惨に引き裂かれた屍を見下ろし、ヴィクティムは嗤った。
「今際の際に何があったか知らねぇが、それでこそ悪党に相応しい面だな」
 満足に勝ち誇って死ぬはずのけだものの相貌は、恐怖と苦悶に歪んでいる。
 それすらも炎に呑まれ、灰に変わり崩れていった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 冒険 『危機一髪!』

POW   :    危険を承知で行動する

SPD   :    迅速に対処する

WIZ   :    冷静に状況を俯瞰する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 かくして『紅のフラップテイル』は討たれた。
 だがヤツは死に際にメガリスの力を暴走させたのだ。
 戦闘の余波で砕けた酒瓶が炎に呑まれ、白亜の塔は紅く染まる。
 島を揺らす地響き。そこかしこに生まれる地割れ、そして破滅の輪唱。
 急げ猟兵! 一刻も早く島を後にしなければ、待っているのは水底の静寂だ。
 一刻も早く麝香島を脱出し、スリッド号へと辿り着かねばならない。
 だが……おお、その行く手を阻むのは炎、地割れ、そして暴走する島の防衛装置。
 メガリスの呪いの余波で目覚めたスペースシップの兵器群である!
『侵入者を検知、攻撃開始シシシシシシシシ』
『攻撃攻撃攻撃攻撃攻撃攻撃攻撃攻撃攻撃攻撃』
『縺薙?謇九?繧キ繝√Η縺?縺ィ繝倥Μ縺ッ蠅懆誠縺吶k繧ゅ?縺ァ縺吶h縺ュ』
 立ちはだかるドロイド、乱舞するレーザー、噴射するバーニア熱!
 倒れ込む木々、噴き出す海水、落下する岩石、あるいは呪いの残滓……。
 猟兵を滅びに飲み込まんとする触肢を避け、退け、急いで島から脱出せよ!
須藤・莉亜
「遠慮なく頭吹っ飛ばしてくれちゃって…。まあ、楽しかったし良いけど。」

というか、なんか愉快な状況になってるね。とりあえず煙草に火を点けてっと。
うん、空喰らいのUCで転移し障害を避けつつ、脱出を目指すことにしようか。
最適なルートを【見切り】で探し、とっと移動していこう。

ところで、まだ無事なお酒は残ってないのかな?一本くらいは持って帰りたいよねぇ。


アルトリウス・セレスタイト
成程。悪党らしく悪足掻きか
ならば無駄に終わるのがお約束というものだ

絢爛を展開
起点は目の前の空気
秩序と拒絶の原理で戦域の空間を支配
暴走するメガリスのエネルギーに方向性を与え、島の破壊や崩落の阻止に転用
同時に猟兵や島の構造への攻撃行為を拒絶し阻む

後は支配領域を維持しつつ脱出
『天光』で作戦領域を常時確認し間に合わぬ者があれば領域内へ入るようルート選択
必要魔力は『超克』で“外”から汲み上げる

※アドリブ歓迎


レパル・リオン
ぎゃおーっ!?邪魔者がいっぱーい!!
でも負けない!生き残ってこそ、ヒーローは輝くのよ!

【猟兵放送!】至る所にドローンとモニターを飛ばし、あたしの戦う姿を配信して、脱出するみんなに勇気を与えるわ!
そのかわり…みんなの勇姿をあたしに見せて!それが、あたしの勇気になる!

全ての障害を…殴り飛ばす!

うりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃーっ!

うりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃああああ!!!



 BRATATATATATATATATA……BRATATATATATATATATAT!!
 通路に現れた発狂ウォーマシン部隊による執拗な飽和射撃!
「ぎゃおーっ1? 邪魔者がいっぱー……って、あれ?」
 先頭を進むレパル・リオンは思わず目を閉じかけたが、しかし。
 飛来すると思われた弾丸は、すべて空中でぴたりと静止していた。
 片手をかざし、両目を深い蒼の燐光に輝かせるのはアルトリウス・セレスタイト

「なるほど。悪党らしい悪あがき――ならば無駄に終わるのがお約束というものだ。
 "空気"そのものを起点に空間を支配した。この支配領域内で攻撃は行わせん」
「よくわからないけど止めてくれたのね、やるじゃない!」
 レパルは快哉を上げ、身動きの出来ない発狂ウォーマシン部隊を一蹴!
「さあ活路を拓いたわよ! みんな急いで……ってちょっと!」
「え、何? 僕忙しいんだけど」
「いやいやそうじゃなくて! なんでしゃがみこんでるのよ!?」
 レパルのツッコミを受けた須藤・莉亜は、うーんと困ったように頭をかく。
 よく見ると彼の脇には、まだ無事な酒瓶がいくつも抱えられていた。
「いやあ、一本くらいは持って帰りたいなあと思ってねえ」
「そんな状況じゃないでしょー!?」
「……騒いでいるところ悪いが、新手が来たぞ」
 アルトリウスの言葉通り、通路から新たな邪魔者が現れていた。
 おそらくどこかにあるコアマシンが完全に暴走し、現在進行形で稼働している。
 それを止めている暇はない……急いで島を出なければならないのだ!
「やれやれ、まあこういう愉快な状況嫌いじゃないけどねえ」
 のんびりとした声音で言いつつ、莉亜は立ち上がりタバコに火を点けた。
 紫煙越しに発狂ウォーマシンを睨み――その姿が、霞のようにかき消える。

 ヴン、と莉亜が現れたのは、敵集団の背後。
 遅れてウォーマシン部隊の胴体が両断され爆発四散した! KA-BOOOM!!
「というわけで先行くよ~、みんなも遅れないでねぇ」
「ってあたしのほうが置いてかれてるー!? 敗けないわよっ!!」
 空間転移によるショートカットに唖然としていたレパルも我を取り戻し、
 爆炎を駆け抜け矢のように通路を駆け抜ける。アルトリウスも同様に追従。
 レパルは無数のドローンとモニターを飛ばし、猟兵たちへ映像を届けた。
「みんな、諦めないで! あたしの戦う姿を見れば、勇気が湧いてくるはずよ!」
「この状況でそう簡単に諦める猟兵は、ここまで乗り込んでいまい」
「そこはそれ、気持ちよ気持ち! みんなで無事に脱出しなきゃ、ねっ!!」
 KRAAASH!! 目の前で降りた隔壁をレパルが殴打破壊!
 爆炎による誘爆は、アルトリウスの領域支配術式によって相殺される。
 前へ。ひたすらに前へ! 邪悪なコンキスタドールの意のままに滅ぶなどありえない!
 戦いを終え勝利を勝ち取り、無事に帰還する――そこまでやって一流の猟兵だ!
「うりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃーっ!!」
「……それにしても大層な妨害戦力だ。メガリスの呪いとやらはこれほどのものか」
 立ちはだかるウォーマシンを停止、そして破壊しながら、
 アルトリウスは冷静に状況を俯瞰した。
 メガリス――それはまだ明かされていない部分も多い未知のパワーソース。
 この世界に存在するメガリスには、もっと恐ろしいものもあるかもしれない。
 かつてのサムライエンパイアのように、敵がそれを振るってきたのなら……。
「うりゃりゃりゃりゃりゃ……って、足を止めたらダメよ!? 急いで!」
「わかっている」
 アルトリウスはレパルの急かす声に思索を打ち切り、疾走を加速させた。
 思案は安全な場所に帰ってからすればいい。今はただ生き残ることを――。

「うーん、さすがに隠し倉庫みたいなのもないかなあ」
 一方空間転移でルートを無視できる莉亜は、寄り道をしていた。
 呑気なものである。それだけ彼は酒が大好きなのだ……自堕落なほどに。
「何も遺せず何もなせず、誰も殺せず滅ぶなんて、ホント哀れだよねぇ」
 吹き飛ばされた片目が疼く。莉亜は薄く笑いつつ呟いた。
 きっと骸の海で、あれはさぞかし悔しがっていることだろう。
 そう思うと――この状況に翻弄されている身としても、少しは胸がすいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

才堂・紅葉
「ったく! 最後までクソ迷惑な酔いたがりだこと!!」
罵りながら通路を疾走する

「しゃあないか……コード解放!」
明らかに間に合わない計算に、三馬鹿の笑顔が脳裏に浮かび、苦渋を呑んで制限解除
3倍だ
六尺棒の、紋章板の、ガジェットブーツの性能が跳ね上がる
正直に言うと無茶苦茶使いにくいが、【気合】と【野生の勘】に正当な【メカニック】知識、そして【怪力】で支えられた体幹の強さで捻じ伏せたい

それでも間に合わなさそうなら
「コード・ハイペリア!!」
真の姿の【封印を解き】、更に重力【属性攻撃】で加速する
自分自身も3倍になれば装備に振り回される事も無いはずだ

「……こっちだと、しっくりくるじゃない……なんか腹立つわね」


玉ノ井・狐狛
あーあー、大変なコトになってんなァ。

きっかけこそ海賊女とはいえ、結果はただの崩壊で、機械どもは暴走してるときた。
相手がいなきゃ、騙すも利用するもねぇってのによ。
困った困った。

とりあえず透視で、(まァどこも不安定だろうが)露骨にヤバい場所は避ける。
▻偵察▻見切り

さて、船まではそこそこ遠いからな、移動手段がほしい。
この大崩壊は、計算されたモノじゃあない――つまり巻き込まれて停止してる機械やら乗り物やらもあるだろ。ほかの猟兵が黙らせたヤツでもイイが。
そいつを式神化してアシにする。動かす原理が違うからな、ある程度までの故障は無視できるハズだ。

いやはやおっかねぇ。帰るまでが博奕たァ、よく言ったもんだ。


数宮・多喜
【アドリブ改変・絡み大歓迎】

あんにゃろ、とんでもない事しやがって……
こりゃ、アタシのさいごの仕事になりそうだね。
アタシとカブは艦橋に残るよ。
暴走し始めてるとは言え、ギリギリまで制御を試みるよ。
そうすりゃ皆が避難しやすくなるだろ。

カブの中に残るスペシの『世界知識』を駆使して、
艦橋のコンソールを通じて『ハッキング』を仕掛ける。
そうすりゃ短時間だけでも、兵器群の稼働を止められるだろ。
さあ、アタシは良いから皆、逃げ出しな!

島がどんどん崩れ、艦橋が崩れるまで作業を続ける。
皆、逃げきれたか?
笑い爆炎の向こうに消え……

逃げ出したみんなが何かをしんみりやってる中に
しれっと【悲劇覆す札】で転移して混じってるよ。


ガーネット・グレイローズ
メガリスの暴走か!厄介な土産を残してくれたな…。さて、どう切り抜けるか。
脱出ルートは、「メカたまこEX」に撮影させた映像で確認済みだ。あとはこれをデータ化させたマップを見ながら帰ろう。【イデア覚醒】を発動させ、刻々と変わりゆく状況に研ぎ澄ませた〈第六感〉で対処する。
大木や岩石などの障害物はクロスグレイブの熱線で焼き払い、〈焼却〉あるいは粉砕して正面突破。ドロイド軍団はスラッシュストリングを〈念動力〉で操作して斬り倒す。メガリスの呪詛に方向感覚を狂わされないよう〈呪詛〉の流れを読み取り、〈呪詛耐性〉も万全に整えておこう。



 艦橋が大きく揺れ、ギギギギ……と不穏な音を立てて大きく傾いだ。
 ピサの斜塔めいてギリギリのバランスで保たれていたこのスペースシップが、
 崩落にともなう衝撃と物理的損壊により、地面に落下しつつあるのだ。
 いかに不死身無敵の猟兵とはいえ、これだけの規模の大崩壊に巻き込まれたなら……。
 しかもこれはただの現象ではない、メガリスによって引き起こされた破壊である。
 ……はたしてどうなるか、座して試すような者もそう居なかった。
「よし、アタシはここに残るよ」
 開口一番そう言い出した、数宮・多喜には。
「……気が動転してどうにかなっちまったのかい? そンな状況じゃねェだろうに」
「そうですよ! 多喜さん、何をおっしゃってるんですか!?」
 玉ノ井・狐狛と才堂・紅葉は、当然のように彼女の正気を疑い、咎めた。
 特に紅葉にとって、多喜は姉貴分のようなかけがえのない存在である。
 そんな頼れる女性が、この局面で「残る」などと言い出したのだ、無理もない。
 ……が。
「いや、彼女の選択はもっともだ。この状況、誰かが残るのは生存確率の引き上げに繋がる」
 しばし静かに考えていたガーネット・グレイローズが言った。
「立ちはだかる障害はおそらく、主にこの船と島内の防衛設備だろう。
 つまり基幹部分のシステムはいまだ、ネットワークで結びついている」
「そう。その点アタシの宇宙カブは、もともとスペースシップワールドのモンだ。
 こいつに残されたシステムを使えば、ハッキングの真似事も出来る、ってね」
 つまり多喜は艦橋からネットワークに接続し、妨害兵器を除去するつもりなのだ。
 無論彼女は電脳魔術士でもなければ、専門家でもない。
 モザイクめいて破損したネットワークから、すべてを沈黙させることは出来ないだろう。
 それでも……先を征く猟兵にとっては、大きな助けとなるのは間違いない。
「ここで話している時間も惜しい。私たちは先に進むとしよう」
「で、でも……!」
「……やぁれやれ。敵をだまくらかすのは得意だが、説得ってのはちィと苦手だ」
 いまだ躊躇する紅葉と対照的に、狐狛はガシガシと頭を掻いた。
「この状況、ただの現象ってェやつにはおべんちゃらもブラフも効きゃしねェ。
 アタシとしちゃさっさとすたこら逃げ出したいってのが本音。先、行かせてもらうぜ」
「それでいいさ。なに、こっちだってコンキスタドールと一蓮托生するつもりじゃあない。あとから追いつくよ」
 多喜はいつもどおり勝ち気な様子で言い、ウィンクしてみせた。
「……だとさ。ほれ、行こうぜ」
 狐狛に促され、紅葉はしばし黙っていたが……やがて、顔を上げる。
「わかりました。多喜さん、船に戻ってこなかったら承知しないですよ」
「言ってくれるねぇ。じゃ、スリッド号で会おうよ!」
 そうして三人と多喜は別れ、それぞれのルートで脱出することになったのだ。

「……しかしメガリスの暴走か。やっかいな土産を遺してくれたものだ」
 通路を走りながら、ガーネットはやれやれといった様子でため息をついた。
 幸い彼女がこの道中に撮影してきた映像のおかげで、ルートは判明している。
 多喜のハッキングは順調と見え、彼女らを妨害する兵力も最低限のものだった。
「さすがに普通の島ひとつをまるごと吹き飛ばすような力があるとは思えないがね」
「つまり、もともとこういう仕掛けを遺してたってことかい。やだねェ」
 狐狛はうんざりした声で肩をすくめた。この状況、彼女としては実にやりづらい。
 そもそも彼女は言動で煙に巻き、虚と実を織り交ぜて敵を翻弄するスタイルだ。
 さきほども狐狛本人が言っていたとおり、現象や災害といった天変地異は、
 一切の人の手が介入していないがゆえに"騙しよう"がない。
 相手が意志を持つ個体ならば、人であれ紙であれ機械であれどうにでもしてみせよう。
 転がったあとのサイコロはいじくれても、転がり続ける賽の目はいじくれない。
 それが博徒の限界であり、だからこそ彼女はギャンブルを愛するのだが。
「だいたいアタシはさあ、こういう長距離移動だの短距離走が苦手なんだヨ。
 そこらにいいアシはないモンかねェ。あァ、アンタらが運んでくれてもいいぜ」
「前向きに善処したいところだが、この状況ではそうもいかんなッ!」
 ガーネットは第六感によって敵の妨害を察知し、一瞬早く熱線を放った。
 曲がり角から現れた発狂ウォーマシン部隊が胴体を貫かれ、爆散。
 爆炎を切り裂き、三人はなおも走る――そして、紅葉が俯いていた顔をあげた。
「ほんと、最期までクソ迷惑な酔いたがりだこと……!!」
 さっきまでの瀟洒な様子とは一変した言葉に、ふたりは顔を見合わせた。
 紅葉の髪色が紅く染まる。それは、彼女が真の姿を開放した証だ。
「この状況じゃ埒が明かないわ。コードを開放して一気に駆け抜ける!!」
「こりゃまたなかなか――」
 狐狛のからかうような言葉は、風となって疾駆した紅葉の風音でかき消された。
 ――ごおうっ!!
 と烈風が吹き荒れ、そして目の前の巨大隔壁が一撃破壊!
 紅葉の持つ武装と紋章の浮かび上がった装備はばちばちとスパークし、
 明らかに出力を制御しきれていないことを示していた。
「……いや、訂正。とんでもなく頼りになるねェ」
「どういたしまして……ったく、使いにくいったらないわね、これ!」
 紅葉はどこぞのマッドサイエンティストどものアホ面を脳裏に蘇らせつつ、
 重力制御術式を全力で開放し、さらに加速し活路を開く。
「こりゃアタシらはおとなしくあとに続くのが一番だね。乗るかい?」
 そして狐狛は目ざとくも、破壊されたウォーマシンに介入していた。
 ギギギギ……と鋼の獣めいた形に変わり動き出すウォーマシン……否、式神。
 すぐに崩壊するであろう、しかしこの状況では頼れる乗騎だ。
「ご相伴に与ろう。私もマラソンは得意じゃないんだ」
 ガーネットは冗談めかして鋼獣の後部に飛び乗った。
「いやはやおっかねぇ。帰るまでが博奕たァよく言ったもんだ」
 矢のごとき破壊を撒き散らす紅葉を追い、ふたりを乗せた鋼獣は疾走する!

「……さて、ここで出来るのはこんなもんかね」
 一方、艦橋。
 尽くせる限りの手を尽くし、多喜は会心の笑みを浮かべた。
「まだ逃げ切れてないやつもいるだろうけど、助けにはなるだろうさ。
 となるとアタシの問題が残るわけだが――ま、そう簡単にはいかないよねぇ」
 がしょん、がしょんと艦橋に近づくいくつもの足音。機械兵器のものか。
 爆発の衝撃は絶えず艦橋を揺らし、外の風景はどんどん傾いていた。
「悪いけど、オブリビオンの企みに相乗りするつもりはないんだよ」
 ドルン、ドルルン……多喜がまたがると、宇宙カブがエンジン音を鳴らす。
 殺到する発狂ウォーマシン部隊。艦橋に迫りつつある爆発。崩落!
「ここは押し通らせてもらうよ――妹分に怒られちまうからねぇ!」
 多喜は一気にスロットルを開き、猛然と敵の群れへと突撃した。
 爆音と噴炎がその後ろ姿を覆い隠し、そしてすべては破滅に呑まれていく――。
 KRAAAAAASH!! 轢殺破壊されたウォーマシン部隊が連鎖爆発!
 いかな多喜といえど、この状況からまっすぐに脱出とはいかないか。
 もはや彼女の命運尽きたか――否、見よ。彼女の手にありし一枚の札!
「賭けってのは一枚の鬼札(ジョーカー)で変わるもんさ。それじゃあね!」
 きっとその台詞を狐狛が聞いたら、羨ましいと苦笑したことだろう。
 "悲劇覆す札(コール・イェーガー)"――味方のもとへと空間を越えて転移する、まさしく切り札の一枚。
 執拗に迫りくる爆炎をあざ笑い、スピードに乗った多喜の姿は光に消える。
 スリッド号の甲板上、無事帰還した多喜が猟兵たちにからかわれ、あるいは妹分に叱られ苦笑するのは――また、少しあとの話である。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱酉・逢真
かわいそうに。飢えを満たせねぇまま死んだか。ああ、可愛そうに。自業自得に目を伏せたまま死んだか。それでこそ《悪党》だ。その愚かさが哀れでかわいらしいってなもんさ。だから俺はてめぇを許し、愛そう。てめぇの意向は知らん。

死体があった場所に毒酒を注いで、さて戻るとすっか。のんびりしてたら囲まれちまったィ。どいつもこいつもこえぇ顔しやがって。純粋な機械なら遠慮の必要もねえか。おぉい、【坊主】。道作ってくれや。この《宿》は弱っちいかンなぁ。部下が優秀だと助かるぜ。鳥のナリに変わって不浄の暴風に乗って脱出する。ああ、【坊主】。遊んだあとは大地や海に散った《毒》をしっかり回収するんだぜ。よォし、いい子だ。



 どぼどぼと音を立てて、毒々しい色合いの酒が艦橋の床を汚した。
 そこに墓標はない。いや屍すらも――過去の残骸は何も残さず滅びるもの。
 そこに居たのは過去のリフレインであり、マイナスの残影である。
 だとしても朱酉・逢真はそれを言祝ぐ。それが存在した意味を認める。
 たとえ世界にとって害悪でしかない、誰にも存在を望まれぬものであれど。
 ――生命としてこの世界にあるならば、神(かれ)は愛するのだ。
 常人には理解できまい。それはまさしく、神の視座なのだから。
「ああ、可哀想に――自業自得に目を伏せたまま死んだか」
 哀れむような言葉と裏腹に、口元には薄い笑みが浮かんでいた。
 憐憫を抱きながら嘲る。
 無知と無謀を肯定しながらも愚かさを揶揄する。
 矛盾である――それが、只人の視点であるのなら。
 神にとって関係はない。どちらも……否、相反したものであるからこそ、
 小さくいじましいものらの可愛みを増す。いとおしさをもよおさせる。
「それでこそ《悪党》だ。せいぜい苦痛にまみれ、せいぜい口惜しみ続けな。
 他の誰が認めまいと、俺はてめぇを許し愛すさ――てめぇの意向は知らんがね」
 神とは君臨するもの。
 人を庇護し、信奉され、されど気まぐれに災いをもたらすもの。
 男は人の身を持っていたが、人ではなかった。

 ……毒酒が地面に広がり、逢真は思い出したように立ち上がる。
 そして振り返り、男は「ふは」と気の抜けた声を漏らした。
 意志すらもなき鋼の骸が、無数に彼を取り囲んでいたからだ。
 命なく、意志もなく、ただ狂い目についたものを破壊するだけの木偶。
「どいつもこいつもこえぇ顔しやがって。こっちはひとりだぜ?」
 逢真の軽口を咎めるかのように、チュン、と弾丸が頬を掠めた。
 ……血は流れない。逢真は人間がするように傷跡をなぞる。傷跡は消える。
「おぉい、坊主。道、作ってくれや」
 まるで猛獣が使いの命令に応えるように、ごるる、と不穏な唸りが響いた。
 只人のそれではない――渦巻いたのは、不浄なる暴風雨。
 あらゆるものを腐らせ崩壊せしめ、無へと帰する悪夢の顕現である。
 降り注ぐ酸性雨が鋼を冒し、吹きすさぶ病風が狂気をもさらっていく。
 弾丸が乱舞する。ヴェールめいた分厚い風を超えることは、ない。
「おう、おう――遊びすぎるんじゃあねえぞ。役目を忘れねェようにな、坊主」
 男の姿がぐにゃりと歪み、一匹の鳥の姿となって羽ばたいた。
 崩壊してゆく島をゆうゆうと見下ろし、鳥はどこまでも羽ばたいていく。
 暴風雨はつかの間島を覆い――そして、血の麝香を洗い流した。
 さざめくように逆巻いていた海も、どことなく健やかにすら見えた。
 鳥は羽ばたく。天を目指すようにまっすぐに。
 只人の翼は陽光に灼かれ、愚かにも地面に堕ちるものだ。
 ――神はそうはならぬ。仔たる風と雨を引き連れて、どこまでも天高く伸びゆく。

 やがてその姿も見えなくなった。
 はじめから何もいなかったかのように、何もかも。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ゼイル・パックルード
ホント、ガタガタうるさいな。
主人はおろか、島も悪酔いさせる酒ってか?

暴走してるったって、数種のマシンの集まりだし、暴走している原因は同じ呪い。
そもそも読みやすい動きではあるだろうが、それぞれのマシンに一撃を当てれば、UCの効果で対処は至極容易い。

そもそも壊れていってるものだが、ギリギリまで俺の手で壊してから行くことにするかな。
それと、メガリスの呪いがどんなものかは知らないが、ちょっと興味があるな。残滓を見かけたら近づいてみるとしようか。
大元がこれだけの力を発揮するんだ、残滓に触れれば俺に何をもたらすかな?

ま、こんな程度の場所で死ぬ気はないから適当なタイミングで退くがとするかな。



 藪をつつけば蛇が出る。
 では呪詛をつつくと何が出る? ――答えは、残骸だ。
「へえ、こりゃ面白いな」
 ゼイル・パックルードは赤黒く臓物めいて脈打つ呪詛溜まりを前に笑った。
 彼の殺意に自動的な反応を示した呪詛溜まりから生まれたものは、嗚呼。
 くろぐろとした思念を遺したもの――すなわち、あの女海賊の姿かたちをした、
 しかしあれとは異なる、クオリアとエゴを持たぬ"残骸"であった。
『死ね』
『逃しやしない』
『みんな滅びちまえ』
「まったく、死んでまでガタガタうるさい奴。悪酔いは勘弁してほしいね」
 ゼイルは言いつつも刀を肩に担ぎ、餓えた獣じみた笑みを隠しもしない。
 メガリスの呪い――なるほど、術者と深く結びつくとこんなことも起こすのか。
 実に、いい。巻き込まれたこちらとしては"殺し足りない"ところなのだ。
「こんな程度の場所で死ぬ気はない。が、これぐらいじゃ遊び足りないのさ。
 ……少しは俺を酔わせてみせてくれよ。お前、酒をかっくらってたんだろう?」
『死ね!!』
 獣じみた仕草で女の残骸が飛びかかる。ゼイルはそれを縦に両断する。
「果実ってのは、いい土と水で育てばそれだけ美味くなる。
 養分を吸い上げるわけだからな……なら、酒を飲んでたお前はどうだ?」
『逃すものか』
 二体目。横に両断。
「――たっぷり美味を溜め込んでなきゃ嘘になるだろう。違うかね」
 殺し、奪い、侵し、踏みにじってきた悪(もの)であるならば。
 命を養分にまるまると太った、醜悪なコンキスタドールであるならば。
 この程度では済むまい。この程度では済んではならない。
 もたらすべきだ。美味(スリル)を。ひりつくような甘露(たたかい)を!
「来いよ。その慚愧も全部灼き尽くしてやる――まあ、いいとこで切り上げるがね」
 三体目の残骸を斬り捨て、ゼイルは呪詛塊に地獄の炎を食指めいて伸ばした。
 たとえメガリスの呪いすべてが彼を絡め取ったとして、ゼイルは死ぬまい。
 呪われることも、ましてや永遠に満たされなくなることもない。

 メガリスの呪いごときでは、彼の抱える餓えと渇きを制御できはしない。
 呪いなどなくとも、彼はずっと前から渇き、裡なる焔に灼かれ続けているのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

化野・風音
さて……最期まで足掻いてくださいますね?
その執念は認めて……と言って差し上げたいところですが
……随分と、詰まらないことを、してくださいます
それがあなたの最後の望み、ということであれば
お付き合いいたしましょう

――私のやり方で、ですが

巻き起こすは天狗風
飯縄を纏って宙を舞ってしまえば、荒れた地形を文字通り飛び越えることすら造作なく
私を喰らいつくそうとすることごとくを、風へ巻き込み、逆に喰らい、外法の風は勢いを増して

倒れる木々、降り注ぐ岩石
意志持たぬ絡繰りたち

全て、全て宙へ巻き上げ、こちらを狙う敵達へ降らせて行きましょう
天狗の石降り、とくとお楽しみあれ?



 ごうごうと風が吹く。
 自然の風ではない――自然の風は室内に嵐など起こさないからだ。
 化野・風音が従えるは、飯縄大権現の御力が如き天狗の颶風であった。
 大天狗は天地に通じ、風を自在に起こし大地すらも揺らすという。
 はたしてその御業をかるがると操るこの女、その本性いかばかりか。
 人ではない。だが獣でもあるまい。
 魔か。魔ならば理解は出来る。だがそれでも足るまい。
 神か。神は斯様に悪を嗤わぬし、生き血を啜るように味わいもすまい。
 ならば何か。人でも獣でも、魔でも神でもならぬその身は。
 ――人の言葉で定めようはずもなし。あえて定義するならば、それは。
「化野(あだしの)の流儀にて、あなたの最期のお望み、お付き合いしましょう」
 この世でもあの世でも非ぬ、「いつかのどこか」と言わざるを得まい。

 鋼が迫る。
 それは救いを求め蜘蛛糸にすがるような亡者の群れにも、
 生者を捕らえ三途の川に縛り付ける獄卒の鬼どものようでもあった。
 あるいは肥沃を求め、野を越え河を渡り空を埋め尽くす蝗の群れか。
 破滅という名の巨(おお)きなるものが、道連れを求めてうめいていた。
 逃しはせぬ。誰ひとりとて。ことごとく燃え、灼かれ、滅びよ。
 海へと呑まれて沈み、無窮なる闇にてただ孤独と苦痛に震えるがよい。
 神ともつかぬ巨大な何かが、触肢を伸ばして厳かに言い放つが如き災厄。
 迫りくるそれらを颶風で吹き飛ばし……いやさ、逆に喰らい、外法は勢いを増す。
 風が、鋼を食っている。
 切り裂き、引き裂き、バラバラに散らして飲み込むさまはまさに巨獣。
 木々も、岩石も、天地万物にいたることごとくを、自然ならぬ風は飲み干す。
 竜巻のようである。遠目から見ればそれは天を呑まんとする大蛇めいていたろう。
 中心に立つはただひとりの女。
 台風の目の如き凪の中、宙(そら)を仰ぎて妖狐は笑った。
「残念――何もかも、ご破談でございますね?」
 いっとう愉快そうで心地よさ気な、妖しく恐ろしい笑みと声音であったという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
真の姿を解放
影が模る銃器を手に、知覚しうる限りの障害を排除し
他の猟兵の脱出を援護

より危険なもの、あるいはより早く到達するものから順に排除
兵器群が相手なら殺傷力を重視
岩石や木々の対応には広範囲を破壊できるものを選択するなど
対峙する障害に応じて細かく形状を変更

何にも煩わされることない水底の静寂
それは、いつか何よりも求めたものだ

……だけど、それに焦がれる気持ちはもう浮かばない
自身の命を肯定できず、大切な人を死なせた罪を拭えないままであっても
この痛みに満ちた生を二度と諦めないと決めているから

何より、こんな間の抜けた死に方じゃさすがに怒られるだろうしな

全員の脱出を確認したら長居は無用だ
こちらも脱出するよ


矢来・夕立
映画のクライマックスみたいでちょっとワクワクしてきました。
お約束を実体験できるってそうないですよ。
【紙技・炎迅】。とりあえず地面があるうちはバイクで行きます。
障害物には片っ端から式紙をぶつけて破壊していきましょう。
道がない。
そんなこともあろうかとモーターボートも折ってあります。
飛ばなきゃだめなら…やったことないですけど、紙飛行機でもワンチャンあるでしょう。
安全性はともかく、“飛べない”ってことはないと思います。
要はスリッド号まで逃げきるのが目的ですからね。
やってみて本物の飛行機になったら笑いますけど。

…イイ経験でしたけれど、二回目はいらないタイプのお約束でした。


ジャガーノート・ジャック
★レグルス

(ザザッ)
とんだ置き土産を用意してくれたものだ。

周辺状況を各種センサーで確認しつつ、あとは経験則を活用し最適な逃走経路を探査・走破しにいく。
(学習力×見切り×ダッシュ)


ネズミがどうかしたか?
ドリー?……
(記憶に霞が掛かったように曖昧だ。
うまくその語彙とそれに携わるものを思い出せない【記憶障害⇒"色男"の記憶】。)

(が)
――意味する所は概ね理解した。
(相棒の言わんとする事なら、誰より理解できる。)
 ジャック
"戦場制圧"は本機の得意とする所だ。

電脳介入兵装具現(状態異常特化)。
辛うじて生き残ったAIとコンタクトを取る。

――聞こえるか。君の力を少し貸してくれ。(コミュ力)
(ザザッ)


ロク・ザイオン
★レグルス

(沢山の、機械の声。
これはかつて宇宙の船だった、そう聞いた)

(【野生の勘】で迫りくる危機を察知し
崩れる【地形も利用】して最短で船へと【ダッシュ】
邪魔するものは「烙禍」で脆い炭に変え蹴り砕き
ああ、まるで船から逃げ出すネズミみたいだ)
……ねずみ。
(走りながら、ジャックに問う)
ジャック。
この島の、船と話して、少しの間でも止められないか。
…この船にも"ドリー"は、いるんじゃないか?
(船の声。"えーあい"と、呼ばれていたもの。
キミなら、それに干渉できるのではないか?)

……。
(うまく行ったのなら、その隙に一気に翔け抜けよう
今はそれどころではない、けれど
キミは一体、どうしたんだ?)


フェルト・フィルファーデン
もう、最後まで気が抜けないわね!?島民とかいないのが幸いだけれど……
でもこのままじゃ猟兵でも大惨事よ!早く逃げないと……!

ひとまずこの船に【ハッキング】して最短ルートを確認。ルート状の開けれる扉は開けてその道を突き進むわ!
壊れてて開かない扉は炎の壁で焼き切って騎士人形でタックルしてこじ開けましょう!
襲いかかる敵は炎の壁で防いで押し除けて極力無視よ無視!全部相手にしていられないもの!
念のため、逃げ遅れている人がいないか確認しつつ(万が一いたら騎士人形で抱えて)急いで脱出!こういう時、飛べてよかったと心から思うわ……

結局何も残らなかったわね……これから、木や草花や、生き物が暮らせればいいけれど……


アコニィ・リード
え……何なのこの壊れたロボット
ヘリコプター、ですって……?
何か言ってるみたいだけど、この世界は飛べないわよね
だったら泳げばいいんでしょ!

と、とにかく逃げなきゃ
漆黒の原初の海を表出して攻撃を受けつつ
ロッドから反撃の氷結弾で潰してくわ
感電したら嫌だし、溶けて水気が増えればレーザーも減衰するでしょ

って、海水が――!
こんな事もあろうかと鍛えた技を発揮する
無酸素高速多重詠唱で割れ目を凍らせて道を作り
突風を吹かせて障害物を吹き飛ばすわ
泳ぐのだってへっちゃらよ! この黒い海が守ってくれるし
ダメージだって力に変えられるんだから

冷静に進路を探って、仲間の退路を確保して
やるのよアコニィ、こんな呪いに負けるもんか!


ヴィクティム・ウィンターミュート
ちっ…最後っ屁ってやつかよ
面倒な真似をしやがるな
まぁいいさ、敵地からの逃走はランナーやってりゃ何百回と経験するものだ
簡単に超えてやるぜ、この程度はな

とにもかくにも降りかかるランダムな障害がうざってぇ
とにかく味方を守り、逃走経路を整えてやらなきゃいかん
『Alcatraz』──難攻不落がここに在る
まずはミサイルやレーザー等の直接的な危害を防壁で防ぐ
そして途絶えてる道を疑似的に補修し、経路を確保
あるいはショートカットを作ってやることでより逃走しやすくする

主役が撤退中にフラットラインなんざ、映えない舞台にも程がある
誰もドロップアウトなんかさせねえさ
走れ、何も気にしなくていい
こういうのは、俺の役目だよ


メテオラ・エルダーナ
私たちの完全勝利!それに見てください、この状況!
崩れ行く敵の根城からの脱出だなんて、悪者倒したーって感じしません?
私たちの「劇的な脱出」の始まりです!

…でも、やる事は行きと同じ。
先陣切って駆け抜けて、私の【円閃剣】で道を切り開くのみ!
出来るだけ多くの脅威を巻き込んで、前方の安全を確保です!
攻撃が激しいときは…一歩引いて他の味方に任せましょう!

もし近くに危なそうな味方がいたら、
迷わず【絶界剣】で別の味方までテレポートさせます!
…ホントは敵に使う技なので、出来るだけ痛くないように、チクッと。



 白亜の塔が――かつてスペースシップであったものが揺らぐ。
 あちこちから爆炎が噴き出し、呪詛が飲み込み、外の景色は傾ぐ。
 海が近づく……このまま座していれば、待っているのはまったき破滅だ。
「映画のクライマックスみたいでちょっとワクワクしてきましたね、これ」
「……一応聞くけどそれ、本気で言ってるのか?」
 相変わらず無表情のまま、本気ともつかぬことを言う矢来・夕立に対し、
 鳴宮・匡は真面目くさって問うた――彼は彼でこれが平時の態度なのだが。
「もちろんですよ。なにせ映画のお約束を体験できる機会はそうないでしょう。
 まあ映画だとこういう状況は屋上を目指すものですが……逆にフラグですよね」
「ごめん、そのへんの話はよくわからないな」
「だろうと思いました」
 かたや、嘘か冗談かわからぬことをわかった上でのたまう少年と、
 かたや、人間的な機微に未だ疎く、それらしい会話を模倣するのが精一杯の男。
 傍から見ていると、それはどこか人間を真似する機械の会話めいてもいる。
「おいおい、軽口叩いてる場合か? スロット・アンド・ランだぜチューマ」
 そんなふたりの背中をどやし、ヴィクティム・ウィンターミュートが言った。
 彼も彼で、こうした破滅的状況からのエスケープには慣れているのか、
 大した動揺は見られない。然り、極限的状況では焦りが生死を分けるものだ。
《――やつもとんだ置き土産を用意してくれたものだ》
「……くだらない」
 ジャガーノート・ジャックの言葉に、ロク・ザイオンはうっそりと呟く。
 酒と狂気と血を撒き散らし、自業自得でくたばったけだものに対する憐憫は皆無。
 もはやそれは灰と消えた。ならば森番が省みるものなどここにはないのだ。
 彼女の怒りは、この島という"森"を滅ぼさんとするその狂気への侮蔑であった。
「なに、爆発する施設からの脱出なんざ、ランナーやってれば日常茶飯事だ。
 お前らの脱出路は俺がナビゲートしてやるよ。残ってるのはこれで全員だな?」
 ヴィクティムが振り返ると、そこにいた三人の少女がこくりと頷いた。
「ええ、急ぎましょう! ……今回は島民がいないのが不幸中の幸いよね。
 この状況で救助しながら脱出だなんて、さすがのわたしでも難しいもの」
 フェルト・フィルファーデンが言えば、アコニィ・リードはまったくだと頷く。
「せめて飛んで逃げれたらいいんだけれどね、この世界ではそれも難しいし」
「まあまあ、いいじゃないですか! 戦いは私たちの完全勝利、ですよ!
 しかも崩れ行く敵の根城からの脱出だなんて、悪者倒したーって感じしません?」
《――それは無事脱出してから言うべきことだな》
「わかってますよぉ。"劇的な脱出"を決めませんとね!」
 ジャガーノートの突っ込みに、メテオラ・エルダーナは肩をすくめた。
 こんな状況で遊び心を忘れないのも、歴戦の猟兵たる胆力の所以というべきか。
「最短ルートはこちらでも確認済みよ。障害も多いでしょうけれど……」
「……関係ない。ぜんぶ、灼きつくす」
 フェルトの少しだけ不安げな声に、ロクは少し食い気味に言った。
 彼女なりの気遣い……だろうか。自信の証左でもあるようだが。
「俺は殿を務めるよ。銃器(これ)なら後ろからでも障害を排除できる」
「えっ、でも徒歩なんでしょう? もし逃げ遅れたら――」
「その心配はありません」
 匡の提案を心配したアコニィに対し、夕立が言葉を挟む。
 彼の手には、折り紙で折られた式"紙"が一枚。カードの切り札めいて握られていた。
「オレの乗り物は持ち運び自由なんで。遅れそうならオレがピックアップしますよ」
「よし、決まりだな。――雑魚の最後っ屁なんざ、軽く超えてやろうぜ」
 ヴィクティムが笑い、フィンガースナップをした。
 パチン、という軽やかな音が、脱出ミッション開始を告げる!

 ――KRA-TOOOOOOM!!
 ひときわ盛大な爆音が鳴り響き、スペースシップが大きく揺れた。
 おそらく機関部が誘爆したのだろう……もはや猶予はない。
『攻撃攻撃攻撃攻撃攻撃攻撃攻撃攻撃攻撃攻撃』
『侵入者を排除 侵 nI HaIIIIIIIjjjjjjjjJjjJJJJJJjjjjjjjii』
「ええいもう、ポンコツが邪魔くさいですねっ!! どいて!!」
 立ちはだかる発狂ウォーマシン部隊を、メテオラの円閃剣が一刀両断!
 バチバチとスパークする残骸を蹴り飛ばし、後続が進むべき道を作る。
 だが――BRATATATATATATA!! さらなる増援が大量の火砲攻撃を見舞った!
 それを防ぐのは、フェルトが展開した炎の壁とヴィクティムの無敵障壁。
 弾丸は焼灼されあるいは四方八方に散り、生まれた空白を鋼兵と森番が埋める。
 星のような残像を伴い駆けるジャガーノートとロク――熱線、そして斬撃!
《――クリア。この先は十字路だ。本機とロクで左右を警戒する》
「わかった。おれは、右だ」
「さっきから敵の妨害が執拗……! まだまだ襲撃は来そうだね」
 先行し直線経路の安全を確保するレグルス――ジャガーノートとロクのコンビ――を見送り、アコニィは苦々しげに呟いた。
 予想していたよりも妨害頻度が高い。あまりよくない傾向である。
「もともと準備してたんだろうよ、万が一自分が殺されても仇を逃さないようにな」
「……理解出来ないな。死んだあとの備えをする理由なんて」
「悪党らしくて俺はいいと思うぜ? ――匡、支援砲撃用意だ。この先を一気に突っ切る」
 ヴィクティムと匡は卓越したコンビネーションで、脱出経路を切り開く。
 妨害が執拗かつランダムとはいえ、フェルトとヴィクティムの電脳魔術と、
 ジャガーノートと匡が持つ経験に基づいた感知能、そしてロクの野生の勘。
 それらがあれば、ある程度敵の攻撃を先読みすることは容易い。
 問題は足を止める余裕がないことと、相手は死を恐れないことの二つである。
 もともとオブリビオンは、おしなべて自身の消滅を厭わないものだが、
 完全に発狂したウォーマシンやそもそも意志のない障害物に、
 恐怖心や自己防衛意識を狙った威嚇・攻撃は通用しない。それがネックだ。
 かといって最大出力で何もかもを吹っ飛ばせば誘爆の危険がある。
 彼らはいずれもタフで不死身めいた生命力を持つ猟兵たちだが、
 メガリスの呪詛が伴った崩壊を生き延びられるとは、誰も思っていなかった。
 三秒のカウント――新手が直線先に出現! 同時に匡が予測射撃を叩き込む!
 BRATATATATATATA……KBAM! KBAM!! 爆発するウォーマシン、だが数が多い!
 メテオラの斬撃をすり抜ける敵機――の脳天を、バイクの前輪が叩き潰した。
 ギャルギャルギャルギャル……! 悪魔の咆哮じみたエグゾースト音。
 後衛からフルスロットルで飛び出した、夕立によるライドファイトだ。
 速度を乗せた前輪轢殺攻撃でウォーマシンを叩き潰した夕立はそのまま着地、
 バーンナウト痕を刻みながら高速スピンし、道を塞ごうとする敵を吹き飛ばす!
「こういう運び屋(カゼ)めいた仕事、本当は苦手なんですが」
 ギャルルルルル……KRAAAACK!! 前方通路の床が爆発により崩壊した!
「全員そのまま走れ! 床は俺が作る、匡とジャック、ロクは背後を警戒しろ!」
 ヴィクティムは叫び、同時に無敵障壁を補修材めいて床に展開した。
 かりそめの地面を猟兵たちは一目散に駆け抜ける。再度の爆炎、天井が崩壊。
「こういうとき、自分がフェアリーでよかったって心から思うわね!」
 フェルトはランダムな爆風をきりきり舞に飛翔回避、スピードを早める。
 まるで曲芸師めいて付き従う騎士人形たちが、倒壊する瓦礫を斬撃破壊。
 後ろを振り返る余裕もない遁走劇。全員がついてきていると信じるしかない!
「まるでネズミみたいになったみたいね、わたしたち!」
「――ねずみ」
 アコニィが苛立ち混じりにこぼした愚痴に、ロクの耳がぴくりと震えた。
 並走する相棒の顔を見やる。ジャガーノートはまっすぐに前を見ている。
「ジャック」
《――どうした、ロク》
「この島の、船と話して、少しの間でも止められないか」
《――話す?》
「……この島にも"ドリー"は、いるんじゃないか?」
 ドリー。それはふたりにとって縁深い、あるスペースシップのAI名だ。
 ふたりが相棒として活躍する下地ともなった、思い出の眠る船。
 ……だが、ジャガーノートの反応はおぼつかない。
 人間で言えば、明後日の方を見つめて何かを思い出そうとするような仕草。
《――ネズミがどうかしたか? ドリーとは?》
「……?」
 ジャガーノートの判然としない答えに、今度はロクが顔を顰めた。
 忘れているはずはない。なにせあれは、かの世界での初めての戦いだった。
 陽気な"色男"とともにあの銀河帝国攻略戦を生き延び、そして……。
「ジャック?」
《――すまない、ロク。君の言わんとしていることが……》
「おいお前ら、後ろ来てるぞ!」
「!!」
 ヴィクティムの警告がロクの意識を現実に引き戻した。背後からの挟撃!
 ――BRATATATATA! KA-BOOOOM!!
 すんでのところで割り込んだのは、殿を務めていた匡の弾丸だ。
「急げよ。後ろは俺が見てる」
「ピックアップはこちらでします。お構いなく」
 アイドリング状態で匡を待つ夕立と、レグルスのふたりはすれ違った。
 ――相棒の違和感を確かめている余裕はない。ロクは意識を引き締め、走る。
 出口が近い。外の光が、一同をまばゆく照らし出した――。

 だが、しかし。
「って、外にもウォーマシンが!? しかも海水まで……!」
「――わたしの騎士たちよ! 行って!」
 然り。アコニィが見たのは、出口周辺に展開した大量のウォーマシン部隊。
 まるで猟兵を待ち構えていたかのような、執拗な防御布陣!
 彼女が氷結弾を展開し放出したのと同時に、フェルトの騎士人形が前に出る。
 BRATATATATATA……横列射撃を騎士人形の大盾が防御、氷結弾が敵陣に着弾!
 氷のエナジーが花開くように爆裂し、発狂ウォーマシンを硬化させた!
「はいはい邪魔ですよ! お見送りは嬉しいですけどねっ!!」
 SLASH!! メテオラが一群から飛び出し、巨大化刀身での横薙ぎ斬撃で敵を排除。
 ……だが島のあちこちからは間欠泉めいて海水が噴き出し、
 そこかしこからマグマも流出、土砂崩れが絶えず地鳴りを起こしていた。
 南国めいた木々が折り重なり、スリッド号へのルートを塞いでいる!
 どうすべきだ。障害を排除して進むか? 新たなルートを策定するか?
 コンマ秒に満たないヴィクティムの高速思考、切り裂いたのは聞き慣れた銃声。
 背後を振り返る。夕立とタンデムする形で脱出した匡の姿。
「障害物(あれ)、吹き飛ばせますか? 爆発物は手持ちにないもので」
「わかってる」
 匡の手の中、アサルトライフルは黒いタールじみた影に"戻り"、再変形。
 構築されたのは携行ロケット砲――噴煙が尾を引き……KRA-TOOOOM!!
「急げ急げ! 主役が撤退中にフラットラインなんざ映えない舞台にも程があるぞ!」
 飛び散る残骸、衝撃でさらに倒壊する木々はヴィクティムが障壁で防御。
 アーチ門めいた障壁の真下を、急かされた一同はきりきり舞いで駆け抜けた。
 爆発で削れた地面の下から露出していたのは、いくつものスペースシップの壁面。
 ……この島はどうやら、いくつもの船が折り重なって出来ているらしい。
「ジャック!」
《――聞こえるか、AIよ。聞こえるなら、君の力を少し貸してくれ》
 ジャガーノートはロクの声に頷き、地中の宇宙船残骸へコンタクトを試みた。
 ノイズ混じりで自壊しかかっていたが、旧きAIがその声に応える。
 ……地中から錆びて滅びかけたスペースシップが隆起現象めいて持ち上がり、
 降り注ぐ災害、あるいは崩れかかる島の崩落から猟兵たちを守るのだ。
 しかし裂け目から大量の深海水が噴き上がり、一同の行く手を阻もうと……!
「こんなこともあろうかと鍛えた技、披露するときが来たわね!
 ――どんな障害でも凍りつかせてみせるわ。こんな呪いに負けるもんか!」
 アコニィは多重詠唱によって魔力を増幅、そして氷結弾を複合生成。
 極低温の弾丸はたちまち海水を凍りつかせ、裂け目を物理的に"塞いだ"。
 ぎちぎちと軋むそれを、ヴィクティムの無敵障壁が補修し押し固める。
「ワーオ、これは劇的ですねえ!」
「なかなか画になる構図だと思いますよ。二度目は御免被りますが」
 メテオラの言葉に夕立は真顔で冗談めかし、一気にスロットルを開いた。
 矢のように飛び出したバイクを先頭に、猟兵たちはスリッド号を目指す――!
「……被害はなし、だな。残った甲斐があった」
「映画だとたいてい、逃げ遅れて死ぬパターンですけどね、あれは」
 夕立のマシンにタンデムしていた匡は、その言葉に肩をすくめ、
「――こんな間抜けな死に方はしたくないな」
 と答える。
 夕暮れが、崩壊する島を染めあげていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年04月28日


挿絵イラスト