この先生きのこるには
●蒼き海原と悪徳の栄え
広大なグリードオーシャンの海にあるひとつの島。
そこは竹林に覆われた小さな島。
近隣の海民はその島の住人たちを「竹の子」と呼んでいた。
そして、その竹の子たちは圧政に苦しみつつあった。
「ひゃっはーーーー! 見ろよ! こいつまだタケノコなんか栽培してやがったぜーー!」
「あれほど姫様が中止を命じられたのによーーーっ!」
賊くずれの若者に、島民が引っ立てられる。
他の島民たちは為すすべもなく、これから起こるであろう悲劇を眺めるしかなかった。
「おうおうテメエ! キノコとタケノコどっちが素晴らしいか、教えてやったよなーーー!?」
「おら、黙ってないで答えろよ!」
賊から小突かれた島民が怯えた声で答えを口にだした。
「キ、キノコです……」
「だったらなんでタケノコなんか栽培してやがったーーー!」
両手を地につき謝るような姿勢で応えた島民を、しかし賊は無情にも足蹴にした。
倒れた島民の髪を掴み、無理矢理引き摺り起こすと、賊たちは周りで固唾を飲んでいる島民たちに言い放った。
「いいか貴様ら! この島ではキノコこそ至高! いいや、この世界ではキノコこそ全てなのだ!」
「キノコ! キノコ! キノコ!」
「キノコ! キノコ! キノコ!」
「キノコ! キノコ! キノコ!」
島全体に響くかのような賊たちの蛮声。
島民たちはそれをただ黙って聞くしかなかった。
「喜べ、お前にもキノコの素晴らしさを教えてやろう!」
「ひ、ひぃっ助けてくれー!」
賊たちに連れ去られる一人の民。
この島では恐怖が培養され、絶望が生まれつつあった。
●グリモアベースにて
「これが、私の見た予知でございます」
ここはグリモアベース。
ライラ・カフラマーンは居並ぶ猟兵たちに深々と頭を下げていた。
その背後に生じている霧には、さきほどの光景が幻となって現れている。
頭を上げると幻は雲散霧消していき、周りの霧と溶け込んでいった。
「あの島ではコンキスタドールが暴威を振るい、島の住民たちを苦しめています」
おそらくあの島はアックス&ウィザーズの世界から流れついてきたのであろう。
エルフやドワーフ、フェアリー達が暮らしていた。
彼らは島外から出ようとはせず、自生している竹を細工し、道具などをこしらえて島の暮らしを受け入れていた。
しかし、そんな平和な島に突如として脅威が襲いかかる。
「島に現れた少女の姿をしたコンキスタドール。彼女は自分をキノコの化身、キノ公と名乗り、島民たちにキノコを栽培することを命じたのです」
そしてそれは竹林を伐採し、跡地をキノコの山と化す命令でもあったのだ。
竹林によって生活の糧を生み出していた島民たちはこれに反発した。
だが、一般人にコンキスタドールに勝てる訳がない。
竹の子は、キノコによって蝕まれてしまったのであった。
「彼女はメガリスを所有しています。それによって他者にキノコの洗脳を与え、自分に忠誠を抱かせているのです。皆さんにはコンキスタドールとメガリスの破壊、および島民たちの救出をお願いしたいのです」
ライラが杖の先で地面を軽く叩くと、霧が変化し姿を形どる。
それは島がオブリビオンに支配される前の眺め。
細々ではあるが、小さい島ゆえに寄り添って暮らす島民たちの笑顔があった。
「このままでは島民たちはコンキスタドールによって虐殺、あるいは洗脳されてしまうででしょう。そうなる前に彼らを救ってくれるよう、皆さんにお願いするのです」
そう言ってライラは、深々とまた頭を下げたのであった。
妄想筆
こんにちは、妄想筆です。
今回はオブリビオンに支配された島を解放する依頼となります。
一章は島民たちの救出です。
キノコの胞子を練り込んだキノコ形のチョコを食わされそうになっています。
これは儀式です。
この胞子を取り入れた者はキノ公に対する忠誠心が生まれ、コンキスタドール寄りの身体に造り替えられてしまいます。
生け贄にされそうになっている島民を救ってください。
二章は集団戦です。
儀式を邪魔された手下たちが猟兵に襲って来ます。
返り討ちにするか、キノコの呪縛を解くなどで立ち向かってください。
三章はボス戦です。
キノコを操る彼女は島全体を苗床に、この世界全域を胞子に包もうと企んでいます。
コンキスタドールとメガリスを破壊し、島に平和をもたらしてください。
オープニングを読んで興味がでた方、参加してくださると嬉しいです。
よろしくお願いします。
第1章 冒険
『生贄を救い出せ』
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POW : 強引に生贄を連れ込むコンキスタドールを打ち破り、生贄を救出しよう
SPD : 儀式の妨害を行って、コンキスタドールの誕生を防ごう
WIZ : 生贄にされる人々を奮い立たせて、コンキスタドールに立ち向かおう
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
荒らされた竹林の跡。
そこに出来たキノコの林。
そこかしこに生えた色々なキノコの数々。
この世界のキノコたちがここに植えられているのではないか、そう錯覚させられるほどの異様さだ。
そしてそこへ引き摺られてきた島民と、オブリビオンの配下達。
配下は懐からキノコの形をしたチョコをつかみ出すと、味わうようにかみ砕いた。
ただのチョコでは無い。
コンキスタドールが生み出すキノコ。
その胞子をふんだんに練り込んだこのチョコは、使用者に多幸感と昂揚感、そしてコンキスタドールに対する忠誠心を覚えさせるのだ。
食すたびに、人間であることを徐々に止めさせ魔物へと近づかせていく。
そして使用者は、深まる依存症によって止めることが出来なくなるのだ。
その禁断の食べ物を、配下は島民に食わせようとしているのだ。
「喜べ、これを食べればお前は強くなる。キノコの姫君に剣を抱く戦士となるのだ!」
「キノコ! キノコ! キノコ!」
周りにいる仲間たちが囃し立てる。
彼らの目はすでに尋常ではなかった。
キノコこそ至高。
コンキスタドールに植え付けられた過った考えを信じ、自らもコンキスタドールへと変貌していくことに疑おうとはしていない。
これは儀式なのだ。
無知蒙昧なる島の住民に真実を与えるための儀式。
食べさせようとする島民の目は怯えきっている。
だが、食せば彼も悟るであろう。
キノコこそ至高、と。
耐えきれずに発狂する者も中にはいる。
だがそれはキノコを受け入れられない不穏分子だ。
これを耐えた者は仲間となり、耐えきれなかった敵は滅びる。
この儀式を続ければ、この島は生まれ変わるであろう。
「竹の子」とは呼ばれず「きの子」と。
キノコの島へと生まれ変わることが出来るのだ。
「恐れることはねえぜ! 新しい仲間を祝ってやるんだ!」
「そうだ! これは褒美だぜ!」
「キノコ! キノコ! キノコ!」
「キノコ! キノコ! キノコ!」
オブリビオンの配下達が、チョコを掴んで島民に食わせようとしていたのであった。
四王天・燦
ポカポカ陽気で幸せな日々のはずなのに。
ッ酷い!
キノコしかダメなんて。
1つに拘るな!
が……キノコ派も認める。
いがみ合わずやっていけよ。
いいものが、できるよ
儀式に正面突破。
アタシはキノコを否定しない。
「例えば、タケノコを短冊切りにしてキノコと一緒に炒めたらどうなる?佃煮も良い。ラーメンに椎茸煮とメンマのマリアージュもだ。手を取り合えば美味しさ無限大だぜ!」
飯テロトークで稲荷巫女のお説教だ
「縛っていいのは煮豚を作るときだけさ」
話を聞いてくれた(※UCの効果なだけです)キノ公軍を横目に竹の子の縄を切る。
共存共栄のためにも今は逃げてくれ
「でもオブリビオンはダメだよね」
コンキスタドールは神鳴で一刀両断だぜ
広大なグリードオーシャンの航海を終え、島へとやってきた四王天・燦。
見上げれば海にも負けない空の青。
しかし島民の顔は暗く沈んでいるようであった。
「ポカポカ陽気で幸せな日々のはずなのに……酷いな」
棒状のチョコ菓子を数本、口に咥えていただく。
この広い海原のように、美味しい物は色々とあるはず。
そう、一つに決めつける必要はないのだ。
「とりあえず、儀式とやらを阻止しないとな」
燦は惨劇の予知を防ぐために、島奥深くへと進むのであった。
儀式。
そう聞いていた。
だが燦が見たのは、縛り付けられた島民に無理矢理キノコを食べさせようとする荒くれ者たちのする姿であった。
「なんだあ、テメエは?」
現れた見知らぬ者に、賊達が尋ねてきた。
燦はそんな輩にまずは得物を抜かず、優しく語りかける。
「キノコは良いさ。だけど……タケノコを排除するのはアンタ、キノコを分かってないね」
「なに!?」
キノコを分かってない。
そう言われて賊達が身構えた。
自分たちはキノコを至高と信じている。
だのに、この闖入者は一体何を証拠にそんなことを?
オブリビオンの配下達の目が、燦に注がれる。
(……良し)
とりあえず、儀式を中断させることは成功したようだ。
彼らの目を惹くために、燦は持論を展開する。
「例えば、タケノコを短冊切りにしてキノコと一緒に炒めたらどうなる?佃煮も良い。ラーメンに椎茸煮とメンマのマリアージュもだ。手を取り合えば美味しさ無限大だぜ!」
ビシィ! と指を突きつけられた賊達の思考が、霞にかかったかのようにおぼろげになっていった。
――へい、お待ち
そんな声が聞こえたような気もした。
賊達が見たのは、熱々のラーメン。
かき混ぜれば湯気、そして箸をあげれば麺とメンマが絡んで口にへと。
ずぞぞぞぞぞ。
噛むのももどかしく、喉で味わえばストンと胃に落ち、芳醇が胃袋で混ざり合う。
終わりでは無い。
即座に椎茸煮に箸をのばす。
醤油をつけるは邪道。まずはそのままにいただく。
拉麺の塩辛さが、椎茸の咀嚼によって薄れ混ざり合い、双方を高め合うのだ。
胃袋でキノコとタケノコが寄り添うように手を重ね、同じように空を眺めていた。
「月が綺麗ですね」
「私もそう思います」
道ならぬ恋に落ちた二人が結婚。そして子を育むのか。
――チャーハンおまちど!
キノコとタケノコを炒め、スパイスが効いたチャーハンが賊徒の前に現れる。
夫婦と子供を引き合わせようと、荒くれ達はレンゲを手に取るのであった。
「縛っていいのは煮豚を作るときだけさ」
陶然と立ちすくむ賊達を尻目に、燦は縄を切って島民を解放する。
どうやらこちらの策はばっちりと決まったようだ。
桃源郷からは当分返ってはこれまい。
「あ、ありがとうございます」
「いいから早く逃げな」
あらかた島民達を逃がすことに成功し、いまだ帰って来れない賊徒たちを燦は振り返って仰ぎ見る。
彼らも洗脳されているだけなのだ。
悪いのはこの島を支配するコンキスタドール。
洗脳が解ければ、彼らも島民と共に手を取り合えるに違いない。
だからここは手を出さず、救出するだけにしたのだ。
「でもオブリビオンはダメだよね」
懐から抜いた短刀が稲光を帯びて輝く。
自分の行動は、闇を切っ裂く光明となれるか。
燦は不敵に笑うのであった。
成功
🔵🔵🔴
テイラー・フィードラ
麻薬ではないか。燃やせ。
己が血を代価に詠唱を高速化、凶月之杖より光を放ち即座にグレムリンを召喚。薬物を食わせようとする輩を蹴り飛ばし、手に持つ物や懐に隠し入れているチョコ紛いの麻薬を砕かせよう。
食わされそうになった民の前に出、下がるように一言。そ奴は無辜の民である、この場より逃げるようにさせよう。
さて、処罰の時間である。洗脳された存在であるならば鞘を頭に当て気絶させよう。元は先程の者と同じであろう、悪魔の解析を待て。
しかし、配下共に容赦は要らん。長剣より切り捨てようか。
そも薬を無暗に使った所で心身を荒廃させるだけ、無駄である。何よりも、薬物で忠を得ようなど烏滸がましいにも程がある。猛省せよ。
儀式の場所へと踏み入ったテイラー・フィードラ。
乱入してきた者にくいかかろうとした賊徒であったが、その顔に怯みがはいる。
テイラーはすでに憤怒の形相をしていたからだ。
問答無用と言わんばかりに足を振り上げ、蹴りでキノコを叩き落とす。
「な、なんだテメエは!」
ようやく事態を把握し、声を荒げる賊徒。
だがその目に閃光が突き刺さり、顔を押さえて苦しみだした。
光を放った杖を地に刺すテイラー。
長剣で手に傷を創ると、血滴を光玉へと振りまいた。
血溜りは膨らみ、増えて、紅いグレムリンとなった。
目くらましで今だ体勢が整わぬ賊徒たちへと襲いかかり、見つけたキノコを次々と強奪していく。
その間に島民を救出するテイラー。
「行け」
拘束を斬り払って解放し、ここから去るように言いつける。
彼らの背を守るように退路に立ち、武器を構える。
どうやら賊徒は回復したようだった。
「なんだテメエは!」
光りものを抜き放ち、荒々しくテイラーへと怒号を上げる。
しかし、テイラーは彼らよりも大きな怒りが胸に湧き上がっていた。
忠節とは強制させるものではない。
自らの徳によって感化させ、自ずと膝を低くさせるものだ。
無理矢理人々に疑心を植え付けるなどと、それは圧政に他ならない。
テイラーにはそれが腹立たしかったのだ。
「さて、処罰の時間である」
あのキノコによって植えつけられた忠義。
おそらく、此奴らもそれによって操られているのであろう。
ならば毒素を抜けば、ただの民へと戻ることが出来るはずだ。
グレムリンたちに盗ませ、その成分を調べさせている。
今しばらく経てば判明するであろう。
だがその前に、相手を止める必要があった。
長剣と鞘の二刀を構え、周りを睨めつける。
まずは軽装。らしくない輩から狙いを定めた。
峰打ちではなく鞘打ち。
しかしその勢いは相手を昏倒させるに充分な威を持ち、たやすく地に伏せる。
仲間をやられたことで他が来る。
剣で防ぎ、手首を返して相手の得物を払う。
体勢を崩した賊の後頭部へ、払った勢いをそのままに、身体を半回転させてテイラーは鞘の一撃を叩き込んだ。
あっという間に二人が地へと寝転がった。
「元が島民であれば一歩下がれ。島外よりやってきた配下ならば一歩踏み込むが良い」
冷たく言い放つテイラー。
彼の周りに、キノコを分解し粉へと変化させたグレムリンたちが飛翔していた。
悪魔の騎士。
彼らにはそう見えた。
一歩、二歩、そして三歩。
賊徒たちは知らずに後ずさりして間合いを広げた。
それを見て、テイラーは上段に構える。
「ならば良し。この場は少々眠ってもらうだけだ、許せ」
振り下ろすより早く踏み込み、手近にいた相手に鞘打ちを加える。
洗脳されただけの輩など、実践に鍛えられた戦士の敵ではないのだ。
次々と、その場にいた者達が倒れていった。
事が終わり、倒れた者達にグレムリンが群がっている。
多少時間はかかるであろうが、彼らの体内あるキノコの毒素は抜くことが出来そうだった。
起きればやがて正気に返るであろう。
酒宴の予定でもあったのか、少し積み上げられた薪に火をつけたき火を作る。
その火にあたりながら、テイラーは忌々しそうに手元のキノコを見つめていた。
「まるで麻薬ではないか」
この島に巣くうコンキスタドールが生き続ければ、やがて人々はこれのみを求めるようになり、ただの傀儡となり果ててしまうであろう。
そうなれば、それはただの生ける屍だ。
生きる理由も何もない。
「狩らねばならぬな」
吐き捨てるように言うと、テイラーはキノコを火の中へと放り投げたのであった。
成功
🔵🔵🔴
レナータ・バルダーヌ
話は聞かせてもらいました!
ここは間をとってゴボウを食べることにしましょう。
キノコもタケノコも美味しいですけど、これからはゴボウの時代ですよ!
……などと言って注意を惹いている間に、【愉快なゴボウさんフィーバー!】で呼び寄せておいた謎のゴボウ生物の亜種『愉快なゴボウさん』たちに島民の方々を【運んで】【逃げ】てもらいます。
ゴボウさんはゴボウなのでひとりで重い物は持てませんけど、たくさんいるので力を合わせれば何人かは運べると思います。
わたしの方も頃合いを見計らい逃げて囮になれば、敵の注意も分散して他の皆さんも動きやすくなるかもしれません。
或いはわたしも1人くらい抱えて、炎の翼で空に逃げてもいいですね。
島民に無理矢理キノコを食べさせようとする外道たち。
凜とした声が響き、その行為を中断させる。
「話は聞かせてもらいました!」
振り向けば四肢を包帯で覆った可憐な女性が一人。
レナータ・バルダーヌである。
彼女は柔和な態度を崩さずに、賊たちへと微笑みかける。
それに毒気を抜かれて賊たちは動きを止めた。
静止した空間に、レナータの提案がヒビを入れる。
「ここは間をとってゴボウを食べることにしましょう!」
「はあ!?」
いきなり現れて何を言ってるんだコイツは。
訝しがる賊たち。
レナータはそんな彼らに構わずマイペースで語り続け、どこに隠し持っていたのか、二本のゴボウを取り出して突きつける。
「キノコもタケノコも美味しいですけど、これからはゴボウの時代ですよ!」
満面の笑み。
年頃の男なら、そのままゴボウを受け取っていたかもしれない。
だがキノコに対する忠義。
それが彼らを激昂させた。
「てめえ、キノコを馬鹿にするのか!」
「やろう! わからせてやる!」
いきり立つ盗賊たち。
そんな彼らから、レナータは背を向けて逃げ出したのだった。
「あ! 待ちやがれ!」
キノコを馬鹿にされては許しては置けぬと、追いかける賊たち。
あとには縛られた島民が残されてしまった。
がさごそと、草むらが動く。
奴らが戻ってきたのであろうか。
いや違った。
草むらから現れたのはゴボウであった。
それも手足に顔がついて、自足でこちらへとやってくる。
「ひいっ、化け物!」
島民が驚いた声をあげた。
一人? のゴボウが片手をあげて挨拶をする。
「化け物じゃない、俺たちは紳士さ」
熟年男性のような渋い声で島民をなだめると、ゴボウたちは島民の拘束をはずそうとする。
形は奇妙な生物だが、どうやら自分たちを助けてくれるらしい。
ひとまず島民は大人しくなった。
これがレナータの作戦であった。
自らを囮に敵を引きつけ、島民達を解放する。
たとえ敵に見つかっても、数多くのゴボウが逃走を手助けすると言うわけだ。
神輿を担ぐように島民達を持ち上げると、ゴボウの群れはそこから退散しようとするのであった。
ひとつひとつの力は弱くても、みんなの力を結集すればこうやって人を救うことも出来る。
キノコやタケノコではこうはいかないだろう。
彼女がゴボウを薦めるのも無理からぬことといえた。
空を飛んでレナータがやってくる。
「ご無事ですね皆さん」
島民の無事を確認し、彼女は笑う。
彼らを安全なところまで護送できれば、あとはコンキスタドール達をたおすだけだ。
被害を気にしないだけむしろ容易な部類とも言える。
疲れを見せ始めたゴボウ達から島民を肩代わり、抱えてレナータは飛び続ける。
その先は彼らの居た島村だ。
全員無事な姿を見れば、村の人達も安心するであろう。
その光景を思い浮かべ、彼女は破顔する。
コンキスタドールを成敗したあとに、一つ加えればその情景は完璧な物となるだろう。
その思いを胸に、レナータは抱えている島民に向かって語りかけた。
「タケノコもいいですけど、ゴボウ栽培してみませんか?」
盗賊達に語りかけた言葉。あれは嘘偽りのない言葉。
レナータの心の底から訴えかけていた気持ちであったのだ。
彼女は真摯に、ゴボウを彼らに薦めていたのだ。
キノコ派、タケノコ派。
両雄相争うこの島で、ゴボウの希望が根付こうとしていた。
大成功
🔵🔵🔵
エウトティア・ナトゥア
※アドリブ・連携歓迎
キノコも竹の子もどちらも美味しいのじゃ、両方食べたらよいのにのう。
もちろんゴボウもOKじゃよ。
じゃがこの危ないキノコは駄目じゃな、こんなものは焼却するのじゃ。
【精霊石】の力を借りて、炎の精霊に願い毒キノコとチョコを焼き払うかの。
おっと、勢いあまってオブリビオンの配下も炙ったかもしれぬがまあ問題ないな。
ついでじゃ、炙った配下は【マニトゥ】に齧らせて蹴散らしておくかの。
配下達は精霊とマニトゥに任せて、レナータ殿が助けてくれた島民達を看ておくのじゃ。
依存症は放っておくと長引くでな、「ばんぶーばんぶー」と【細流の調べ】を歌い、島民達の解毒と沈静化を試みるかの。
自然と共にあれと部族で育ったエウトティア・ナトゥアに好き嫌いなどない。
「キノコも竹の子もどちらも美味しいのじゃ、両方食べたらよいのにのう」
もちろん、ゴボウもである。
大皿にまとめて宴を開けば皆で楽しめるのに、どうしてそうしないのか。
それが不思議でならない。
同じ人が居ないように、同じ食べ物が無いからこそ料理は美味しいのだ。
そして違う味覚を持つ友人達で卓を囲むからこそ、食事は美味しくなるのだ。
「じゃがこの危ないキノコは駄目じゃな」
食べ物というものは人々に活力を与えるためのものだ。
決して堕落させるためではない。
人々をオブリビオンの呪縛から解き放つため、エウトティアもまず島民達の救出に向かったのであった。
仲間たちの行動によって敵は算を乱している。
彼女が隙を突くのも容易い。
仲間が島民を救出している間に、エウトティアは彼らを惑わすキノコを焼滅することにした。
精霊石をかざすと、轟々と身体を燃やしながら炎の精霊が姿を現す。
「こんなものは焼却するのじゃ」
エウトティアの号令に精霊は口から炎をまき散らし、辺りを赤く染め上げた。
たちまち火力旺盛なバーベキューが展開される。
その匂いと火の手に、賊の数人が気づいてこちらへとやってくる。
「てっめえ! 大切なキノコになんてことしやがる!」
「さてはタケノコ派だな! わからせてやる!」
怒号とともに襲いかかってくる賊達。
だが炎の消し方をどうすればいいか。
それが分からず、逆に火の手に巻かれる結果となってしまった。
そして、エウトティアへと向かってくる残りの賊。
怒りに目を曇らせた彼らは彼女だけに意識を集中しすぎ、側面から疾風のようにやってくる巨獣に気づくのが遅れてしまった。
悲鳴。そして唸り声。
炎の煙幕を利用しながら、マニトゥが次々と賊徒の群れを屠っていく。
それに怖じ気、逃げだそうとする輩たち。
だが退路は火の壁に包まれ、右往左往するしかなかった。
キノコで得た力など、しょせんは付け焼き刃。
荒々しい自然の驚異には為す術はなかったのであった。
賊達の相手を精霊とマニトゥに任せ、エウトティアは島民の介抱にあたる。
すでに仲間たちによって救出されていた人たちではあったが、中には既にキノコを食わされてしまった者も居た。
放って置けば依存症、いや悪ければコンキスタドールの仲間入りを果たしてしまうのかもしれない。
そうはさせじと、エウトティアは毒抜きを試みるのであった。
精霊石を再びかかげる。
今度は水がほとばしり、横になってぐったりしている彼らの身体にかかる。
これは儀式だ。
彼らを治療する、聖なる儀式。
そしてエウトティアは舞いながら、祝福の祝詞を彼らに聞かせるのであった。
ばんぶーばんぶー ばんぶーちょっと
ばんぶーばんぶー ばんぶしゃうと
タケノコが地より猛り立つ
わしの心を狙い撃つ
そのままわしを突き上げて 天までとどけと空高く
ばんぶーばんぶー ばんぶーちょっと
ばんぶーばんぶー ばんぶしゃうと
激しく身体を動かしながら、エウトティアが熱唱する。
それはこの島で生きる者達への歌であった。
敬意を表し、それが伝わるようにと、地面を震わせるように足踏みする。
ばんぶーばんぶー ばんぶしゃうと
タケノコちょっと狙い撃つ
愚か者たちを狙い撃つ
地を這うキノコな輩たち 島から出て行けと轟き叫ぶ
ばんぶーばんぶー! ばんぶしゃうと!
エウトティアの声に、意識を失っていた島民達が反応し始めた。
それはキノコに憑かれている顔では無い。
先祖から脈々と受け継がれていた自分たちのルーツを思い出している顔であった。
「ばんぶーばんぶー! ばんぶしゃうと!」
「ばんぶーばんぶー! ばんぶしゃうと!」
島の誇り、タケノコの熱情が蘇り、彼らは立ち上がって叫ぶ。
足踏みをして地面をならす。
いつの間にかエウトティアの周りに円陣が出来ていた。
それは巫女の神楽に熱狂する、民の姿であった。
目覚めよタケノコ ゴボウを片手に
わしは其方らの姿に恋をしてしまったのじゃな
これは如何したことか まだ彼もおらぬというのに
じゃがじゃが わしは其方らを嫌いではないぞ
さあさあ其方らタケノコ持って
キノコな輩なぞ打ち破ってしまおうか
ばんぶーばんぶー! ばんぶーしゃうと!
「Bamboo! Bamboo! Bamboo shout!」
「Bamboo! Bamboo! Bamboo shoot!」
巫女の助けを受けて、島民達に活力が蘇る。
島を悪党の隙にさせてなるものか。
その情熱は、彼らをキノコから護るのに充分な力を与えてくれた。
「Bamboo! Bamboo! Bamboo shout!」
「Bamboo! Bamboo! Bamboo shoot!」
「Bamboo! Bamboo! Bamboo shout!」
「Bamboo! Bamboo! Bamboo shoot!」
あとからやってきた仲間達は、どちらが荒くれ者だったか迷うかもしれない。
だがエウトティアは彼らを奮い立たせ、キノコから護ることに成功したのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・クロセ(サポート)
真紅の瞳。燃える炎。あふれる勇気。直情正義、元気全開、単純明快!
正しい心で悪しきを討ち、そして弱き者を救い、その盾とならん、我こそは義侠のスーパーセル!
スーパー純粋熱血、ハイパーテンプレ系ヒロイン、それがステラです。
一人称は「アタシ」ですが殆どの猟兵は先輩に相当するので話すときは「わたし、あなた」といった礼儀正しい振舞いとなります。
探索系はストレートな解決法を選び、
戦闘では正々堂々と敵の正面に立って攻撃を引き受け味方にチャンスを作る方が好みです。なお、近接戦闘派です。
ユーベルコードは状況に応じて使い分けます。
正義を大事にするので、他の猟兵の意図を阻害したり公序良俗に反する行動はしません。
「くそっ、なんなんだよアイツら」
「儀式が……キノコが……」
「このままじゃ姫様に怒られてしまう……」
島民を逃がしてしまい儀式を中断され、それを追いかけようとすれば猟兵たちによって阻まれてしまう。
そんな右往左往する賊共を見下ろして、颯爽と飛び込む少女の姿があった。
「とぅっ!」
勢いよく着地し、彼らにむかって叫ぶ。
「罪も無き人々を虐げる悪党よ! アタシが成敗してあげるわね!」
「な、なんだテメエは!」
「お前もさてはタケノコ派だな!」
怒号と動揺。
そんな中にあって可憐な少女、ステラ・クロセは毅然とした態度を崩さない。
「キノコを燃やす激情は! アタシの心、熱き血潮! 鞘から抜き放たれる切っ先は! 溢れる勇気で敵を討つ! 正義の刃で悪を斬り、刃無き人の盾とならん! 我こそは義侠のスーパーセル!」
二刀を軽やかに振り回しながらステラは淀みなく口上を放ち、最後に大きく見栄をきる。
「ステラ・クロセ、義を正しにここに推参!」
決まった、と言わんばかりのクロセの表情。
だがそれが逆に悪党達の怒りに火をつけた。
「てめえ! 訳わかんないこと言いやがって!」
「おまえもキノコにしてやろうか!」
襲いかかる賊徒達。
冷静に、ステラは左右の刀を交差し、大きく深呼吸する。
息吹。
彼女に流れる正義の血が、満ちて溢れだし、炎となる。
それはまるで地から顔を出すタケノコのように、大きく噴き上がって火柱と化す。
四方八方から襲いかかる賊達は、逆に焔に焼かれて吹っ飛ばされてしまった。
「ぐあああーーーっ!」
対するステラは微動だにせず、二刀を構えたままだ。
しょせんは悪党。正義が負ける道理無し。
動く必要すら存在しない。
だがこいつらは今まで島民を苦しめてきた。
なれば、少しお仕置きする必要があるかもしれない。
構えを解き、ステラは彼らに向かって駆けていく。
太刀を天へ、刀を地へ。
それは真っ直ぐひたすらに。
上下二刀の構えに、賊はどちらが来るか判断に迷った。
そしていくさ場ではその逡巡が命取りとなる。
振り上げと振り下ろし。
一分の迷いも無き剣撃は、寸分の遅れもなく賊を両断する。
両腕が胴体から別れ、あわれ賊は絶命する。
「やろう!」
仲間をやられ、賊が大剣を振りかぶってステラへと斬りかかった。
ステラは太刀と刀でそれを受け止め、挟み込む。
「悪党はやはり学も無いね。野郎じゃないよ、ハイパーテンプレ系ヒロインだよ!」
エックスの形に刃が灼熱したかと思うと、再び彼女の身体が炎柱となる。
その勢いに吹き飛ばされ、身を焦がしながら地へと叩きつけられる悪党。
「な、なんじゃそりゃーーーっ!」
受け身も取れず頭から叩きつけられ、彼もまた友を追ってあの世へと旅立った。
「アンタたちに容赦はしない。島の人を苦しめた罪、その身で思いしるんだね!」
焔をその身に漂わせ、ステラは残る賊徒へと刃を振るう。
島民は救出され、それを行っていた賊徒共も蹴散らされた。
猟兵達は島の平和に一歩、近づいたのであった。
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『ドロップアウト・ルーキーズ』
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POW : 初歩的な斬撃
【大剣】が命中した対象を切断する。
SPD : 未熟な第六感
【山勘で】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : 軽率な限界突破
【闘志】を一時的に増強し、全ての能力を6倍にする。ただし、レベル秒後に1分間の昏睡状態に陥る。
イラスト:ももんにょ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
島の中央にある山。
昔はそこには竹藪が生えており、島の人々の糧を生み出していた。
だが今はそれらは伐採され、代わりにキノコが植えられている。
きのこマウンテン。
島民達はそう呼んで恐れていた。
そしてその中腹に、コンキスタドールに心酔する者達が何やら作業をしていた。
いずれも若者。十代半ばである。
彼らは強大な力を持つコンキスタドールに憧れ、自分たちもその力を手に入れたいと臨んだ者達であった。
この島をま征服する。
その言葉を受け止めて彼らは島外からやってきたのだ。
そして次の計画を実行に移そうと、彼らはここである作業を行っていた。
それはチョコ作りであった。
コンキスタドールの力の源。
そのキノコの胞子を練り込んだチョコを作っていたのである。
お菓子に混ぜれば第三者にはそれが危険かどうかは区別がつかない。
なるほど、考えたものである。
すると島民達にキノコを食べさせていたのは、この作業の人手を確保するためでもあるのだろうか。
二十四時間、文字通り彼らは働いていた。
飲まず食わず、いやきのこチョコは食べている。
疲労した身体に、コンキスタドールの呪縛は効果的であった。
「この島を征服すれば、次は別の島だ」
「ああ、そうすりゃ今度はそこでもキノコを作れるな」
「俺はキノコを食い続けてこんなに強くなったぜ」
自分の身長ほどある大剣を易々と扱う彼らたち。
攻め入る時には、この力を存分に振るえるのだ。
それが彼らの征服欲を刺激する。
暴力と植えつけられた忠誠心。
ドロップアウトした若者達が、その時よ早くと虎視眈々ときのこチョコを袋詰めするのであった。
※彼らは島民ではありません。
※自分から、又は忠誠心を植えつけられて配下になっています。
※力で叩きのめすか、キノコより素晴らしい物で感化させれば大人しくなります。
テイラー・フィードラ
力を求め溺れる。悲しい事によくある話だ。
フォルティに騎乗し堂々と現れよう。此奴らの求めるものは力。様々な意味を持つが、屈強さに威風、憧れ、総じて強さである。
ならば怯え引き籠ろうなど王族としてありえん。力を魅せ付けるは今だ。
奴らが振るう大剣を前にしても恐れるな。手綱を引き転身や輩共の身の丈以上に飛び越す事はあれど逃げ出すものか。此方も長剣を抜き、大剣そのものでなく敵の腕や脚を払い動けぬようにしながらも、口は続けて動かそう。
どうした?お前達はこの程度の強さで粋がるか?
まだであろう、この程度でないだろう。お前達の憧れは最果てにあっただろうが!その手で掴まんとするならばこの支配から抜け出し、我に続け!
救出すべき人々は既に救出した。
ここにいるのは敵だけ。
そんな戦場に、あえて堂々と白馬に跨がって姿を現したのは武人、テイラー・フィードラであった。
彼らをたたき伏せるのはたやすい。
だが、彼らもまたキノコに囚われてしまった者達であると気づいたテイラーは、説き伏せる道を選んだのであった。
侵入者に気づき、次々と大剣を抜きはなって迎え撃とうとする若者達。
なるほど膂力は常人以上のようだった。
しかしこれまで数々の修羅場を踏んできたテイラーは、構えや踏み込みが未熟であると容易に看破出来た。
馬から下りることすらせずに彼らを相手取る。
唸りをあげる大剣。
しかしそれは騎士を捕らえることは出来ず、むなしく空を斬った。
体勢を崩し、愚かにも背を向ける若者に、テイラーは長剣でしたたかに手首を叩いた。
「わぁっ!」
掴みが緩み、得物を落とすルーキー。
己の武器が重しとなって、その場に押さえつけられてしまった。
手綱をかって集団に向き直り、テイラーは馬上から相手を挑発する。
「どうした? お前達はこの程度の強さで粋がるか?」
その言葉に駆り立てられ、一人の青年が躍りかかる。
「野郎!」
上段に構えた踏み込み斬り。
だがそれは初歩というよりは稚拙。
同じく白馬が前へと突っ込み、未熟なルーキーは攻めを守りに転じる暇も取れず、体格差にはじき飛ばされる。
肺の息が無理矢理吐き出され、ガクガクとあわれに地面で悶えるのだ。
一歩、馬が前へと歩む。
三歩、若者達が後ずさった。
互いに武器を構えながらも、次に踏み込む者など現れない。
視線だけがテイラーの身に降り注がれていた。
「死を恐れる、それは身の程を知るということである。お前達にはまだ理性が残っている。だが、まだであろう」
自分を見つめる彼らにむかって、テイラーは説く。
貴様らはこの程度の人物なのかと。
「なぜお前達はこの島に来た? このような辺鄙な場所で一生を使われるためか? 違うであろう! その両手に持った剣はなんのためにある!」
長剣を突きつける武人の声に、若者達は立ちすくむ。
なんのため。
そういえば、何のためであったろうか。
疲労とキノコによってぼんやりとしていた彼らの思考に、テイラーの声が響く。
一人の青年が弱々しく答えた。
「お、俺は……強くなりたいと……」
「馬鹿め!」
稲妻のような声にピシャリと撃たれ、身を竦ませる。
テイラーはそんな青年にむかって更に説く。
「そのような愚考を操られ、お前達は手下へと成り下がるのだ。見よ、無様な自分の姿を。それが戦士の姿というものか? ようく見ろ! 今のお前達の姿を!」
互いに目をかわす若者達。
そういえばこの作業に籠もりきりで、身なりにも気を遣ってはいない。
痩せて、ボロをまとった賊がいるばかりだ。
「そのように窶した姿が貴様のいう強さか!? 馬鹿め! お前達の憧れは最果てにあっただろうが! 強くなりたいのならば、なぜ他人に委ねられようとする! 恥を
知るが良い!」
テイラーの激情。
それが彼らの心に染みこみ、キノコの束縛を薄め解き放っていく。
と同時に、疲れ荒んだ心に、勇敢たる不屈の心の火種が生まれていく。
「で、でも俺たち……今まで悪いことを……」
「ならば善を成せ!」
テイラーが叫ぶ。
「お前達がこれまでしてきた愚行。それ以上のことを大成してみせよ! さすれば島の人々も見直すであろう! いや、我が認めさせよう!」
演説が熱に入り、長剣を高々と掲げるテイラー。
「この支配から抜け出し、我に続け! 今こそ正道へと立ち返り、キノコではなくタケノコをこの島に取り戻すのだ!」
やがて若者達は武器を捨て始める。
膝を屈して、礼を取った。
テイラーの説得に彼らは応じ、キノコと袂を分かつことを決めたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
エウトティア・ナトゥア
※アドリブ・連携歓迎
うーむ、行き先も解らぬまま盗んだ駿馬で走り出すお年頃なのかのう?
じゃが若気の至りと言うにはちとおいたが過ぎるの。
わし(の狼達)がその腐った性根をたたき直してやるわい。
【秘伝の篠笛】を吹き鳴らし狼の群れを呼び出して、【騎乗】した【巨狼マニトゥ】を先頭に敵を蹴散らすのじゃ。
さあ、狼達よ、狼の狩り【集団戦術】を見せてやれ、ガジガジ齧ってお仕置きじゃ!
(『軽率な限界突破』に対して)
む、最後の力を振り絞ってきたのかのう、迂闊じゃな、破れかぶれで状況を打破できぬぞ?
【浄化の風】で能力の増強とコンキスタドールの呪縛を吹き払ってやるのじゃ。
呪縛の効果がなくなれば、疲弊した身体は動くまい。
作業をしていた男がなにかに気づいた。
それは笛の音。どこからかこの作業所へと聞こえてくる。
「おい、何か聞こえてこないか?」
「ああん? ……そうだな、なんだ?」
訝しがる青年達。もしや侵入者か。
作業を中断し、武器を構える配下たち。
その作業所へと、エウトティア・ナトゥアがマニトゥにまたがってやってきた。
彼らを飛び越えるように奥へと。
しかし、青年達はその姿を追うことは出来なかった。
笛の音が通り過ぎたあとから、けたたましい狼の群れがやってきたからである。
「な、なんだ!? 狼!?」
「なんでこんな大勢!?」
反撃しようにも、数はあちらの方があきらかに多い。
腕や脚を咬まれては、思った力は出せなかった。
武器を捨てて逃げる者。素手で抵抗する者。無理矢理大剣を振り回そうとする者。
そのように乱れた陣形では、統率の取れた狼たちの波状攻撃を防ぐことは難しかった。
算を乱す彼らを眺めるエウトティア。
彼女に彼らを殺す考えはない。
若気の至り、突っ走ってしまう失敗というのは誰彼いうこともなくあるものだ。
しかしだからと言って、彼らがこの島で行ってきたことを水に流せるわけでも無い。
しでかした行いにはそれなりの報いがあるものだ。
だからエウトティアは、彼らを少々痛めつけてやることにしたのだった。
「さあ、狼達よ、狼の狩りを見せてやれ、ガジガジ齧ってお仕置きじゃ!」
エウトティアのかけ声に、狼たちはヤル気を出して更に若者達を追いつめる。
人の足では獣の脚にかなうはずもなく、武器を披露する隙も無く地に組み伏せられていくのであった。
「やろう! このまま終わってたまるか!」
どうやらそれなりに気骨のある男はいたようだ。
操っている者を倒せば何とかなるはずと、大剣を振りかぶってエウトティアへとやってくる。
闘志溢れる必死の形相。
狼に咬まれるのも構わず、火事場の力を振り絞り若者はせめて一太刀と、襲いかかってくるのであった。
「む、最後の力を振り絞ってきたのかのう」
しかしエウトティアはその形相に驚くわけでもなく、犬笛から長杖へと持ち替え微笑する。
「されど迂闊じゃな、破れかぶれで状況を打破できぬぞ?」
彼が上段へと武器を構えるように、彼女もまた杖を頭上たかくへと掲げるのだ。
それで受け止めるつもりであろうか。
否。
「遍く精霊よ、風に宿り力を示せ!」
エウトティアが祈ると、彼女を中心として旋風が起こる。
それは攻めたててきたルーキーを静止するように受け止め、逆に押し戻のであった。
「わわわ!?」
風に捕まれたように宙に浮かび上がると、彼は体勢を整えることも出来ずに地面へと叩きつけられる。
「……きゅう」
身動きできずに、そのまま失神する若者。
疾風の余波を浴びた者達も、萎えて大剣をゴトン、ゴトンと落とし始める。
エウトティアが祈りを捧げた聖なる風は、彼らから悪しきコンキスタドールの力を拭い去っていった。
それは常人を超えた力を失ったということ。
そしてそれはすなわち、彼らを無力化したということ。
「人の身でもう一度、やり直すのじゃな」
一人も殺さずに、狼に制圧された彼らを見ながら、エウトティアはしみじみと呟くのであった。
成功
🔵🔵🔴
四王天・燦
「給料未払いで寝る間もないブラック企業だ。征服を餌にやりがい搾取されてんだよ」
「お前らのボスは腹の中は真っ黒だぜ。この淫獣がプリントされたスナックの中にチョコが詰まったお菓子と同じだ」
「労基と保健所も怒ってる」
「薬効や巨大化や残機アップがキノコの限界さ」
「筍は竹になる。戦闘機さえ撃ち落とす竹の強さを知って改心しな」
「燦ちゃんホームランwith竹!」
「フォックスファイア――いま竹の中に凝縮して75発全て込めた。ぶっ飛べきのこマウンテン!ぽいっとな♪」
「選べ。筍を選んで竹のようにまっすぐ生きるか、茸を選んで社会に寄生する屑となるか、合法阿片を作って一儲けするか」
「知ってた。筍は春しか採れないって」
前途ある若者を無理矢理働かせるコンキスタドール。
おそらくまともな報酬は払われてはいないのだろう。
彼らも被害者の部分がありそうだ。
ならば会話の余地はあるかもしれない。
四王天・燦は、あえて彼らの前に堂々と姿を現した。
「止めな、アンタ達。給料未払いで寝る間もないブラック企業だ。征服を餌にやりがい搾取されてんだよ。労基と保健所も怒ってるぜ」
突然の登場に悪し様な言いよう。
当然彼らは聞き入れる訳もなく、侵入者に対して武器を取った。
「てめえ! 姫様を馬鹿にするのか!」
「何者だテメエ!」
怒号行き交う作業所。
疲労と植えつけられた忠誠心で、彼らは聞く耳を持ってはくれない。
ここは少々痛めつけて、大人しくさせる必要があるようだった。
怒りのせいか、彼らは倍以上の強さがあらわれているようだ。
だが燦は背をむけない。
キノコの連中にタケノコを叩き込むために。
「お前らのボスは腹の中は真っ黒だぜ。この淫獣がプリントされたスナックの中にチョコが詰まったお菓子と同じだ」
ピンクの包装紙に包まれたチョコ菓子を、相手に突きつける燦。
そのイラストには「ボクと契約して不法労働者になってよ☆」の一文が書かれていた。
「舐めやがって!」
「甘いね!」
相手の攻撃をすんでで躱し、逆に懐に入り込んで当て身の一撃。
もんどりうって倒れた相手を尻目に、次の相手を見据えた。
「サクサクいくぜ!」
よくも仲間をと、新手が襲いかかってくるのが見えた。
大剣を木の葉のように軽々と扱ってくる。
しかしそれは鍛錬の賜物ではなく、与えられた付け焼き刃でしかない。
「アンタがいくら全力を出そうとも、薬効や巨大化や残機アップがキノコの限界さ」
オブリビオン相手に戦ってきた燦にとって、それはあまりに遅すぎる。
隙だらけの攻撃に、逆撃で相手を空高く吹っ飛ばしたのだった。
「燦ちゃんホームランwith竹!」
その手に握られていた得物は竹。
青々と育ちしなる、長竹であった。
「てめえ! タケノコ派だったのか!」
「キノコをぶっ潰しにきたってわけか! 許せねえ!」
青筋と血管が彼らの顔に浮かびあがった。
どうやら更に怒らせてしまったらしい。
だがこれが燦の作戦なのだ。
怒りに我を忘れた力任せの攻撃など、動作が単純になるばかりだ。
逆に避けやすいというもの。
ポールアームのように竹竿を操り、のろい動きにしなやか動きを合わせ、未熟なルーキーをすくい払う。
「戦闘機さえ撃ち落とす竹の強さを知って改心しな」
竹筒にありったけの符をこめる燦。
とどめとばかりに、敵陣にむかってそれを投擲した。
「フォックスファイア――いま竹の中に凝縮して75発全て込めた。ぶっ飛べきのこマウンテン!ぽいっとな♪」
その言葉に偽りなく、破裂した竹から炎が四散し、辺りを火に包む。
それは作業所にあったキノコや作業台を火達磨とも化すのだった。
「ああ! キノコが!」
「火だ! 火を消すんだ!」
「いやでも敵が……」
消化が先か敵を倒すのが先か。
経験の少ない若者に、土壇場の行動を選択するのは難しい。
慌てふためく敵の集団を、燦は一人一人確実に叩きのめしていくのであった。
火が消沈した、作業所であった場所。
そこは既に消し炭となり、もはや悪しきチョコを作ることは出来なかった。
ふん縛った敵たちにむかって燦は説く。
「選べ。筍を選んで竹のようにまっすぐ生きるか、茸を選んで社会に寄生する屑となるか、合法阿片を作って一儲けするか」
うなだれるルーキー達。すぐに首を縦にはふれないだろう。
だが彼らには更生する余地がある。
土に埋もれてはいても、いつかタケノコは顔を出し、まっすぐと育っていくのだから。
作業所から外を眺めると、ここからは山の木々がよく見えた。
高原の小枝にも若芽がついているのがわかる。
「知ってた。筍は春しか採れないって」
燦は景色を眺めながら、満足そうに頷くのであった。
成功
🔵🔵🔴
レナータ・バルダーヌ
わかってはいましたけど、本当にキノコだらけですね……。
チョコの材料の方はどうやって調達しているのでしょう?
輸入でしょうか?
ところで、山に登ったり食べ物のお話をしたりでお腹が空きましたね?
こんなこともあろうかとお弁当を作ってきたので、突然ですけど一旦お昼にしましょう。
一緒に【愉快なゴボウさんディナー!】です!
ちなみにお弁当の中身は『ゴボウの五目炊きこみおむすび』なので、キノコとタケノコも入ってますよ!
もし敵が問答無用で攻撃を仕掛けてきても、片手で食べられるので戦いながらでも大丈夫だと思います。
ちょっとお行儀はよくないかもしれませんけど。
あ、たくさんあるので宜しければキノコの皆さんもいかがですか?
山道を歩きながらレナータ・バルダーヌは周りを確かめていた。
きのこマウンテンという名を冠するだけあって、どこもかしこもキノコだらけだ。
こんな広大な土地なのに、タケノコもゴボウもありはしない。
「わかってはいましたけど、本当にキノコだらけですね……」
素直に感心しつつ、レナータはふとした疑問を抱いた。
ここから見下ろせば村も眺めることができるが、辺りを眺めましてもキノコばかりで、カカオの木は見当たらない。
彼らはチョコをどうやって調達していたのであろうか。
「はてさて輸入でしょうか?」
このグリードオーシャンの世界なら、海を渡ることが出来ればチョコの島はすぐにでも見つかりそうだ。
ゴボウも自生していれば嬉しいが、今はこの島で暗躍するコンキスタドールを懲らしめるのが先だ。
色々考えながら歩いていたレナータの足が、ピタリと止まった。
「そういえば、お腹が空きましたねー」
お腹を押さえるレナータ。
ここまで来るのにどうやら予想以上の体力を消耗していたようだ。
しかし案ずることは無い。
こんなこともあろうかと、彼女は準備をしてきていたのだ。
適当な場所に腰掛け、包みを開く。
中から可愛らしいおむすびが姿を現した。
腹が減っては戦が出来ぬ。
一流の猟兵は何事にも備えて弁当を携帯しているものだ。
それはレナータも例外では無い。
海苔で包んだおむすびは、調味料で日焼けした健康的な顔を魅せてくれる。
白米では無い。味も考えた炊き込みご飯だ。
キノコとタケノコ。
それが炊き込みご飯のベッドで仲良く手を繋ぎ、はやく召し上がれと良い匂いでレナータを誘う。
ではいただきます、と口をあけようとしたとき、ガサゴソと音がする。
顔を出したのはゴボウ、ゴボウ人間たちである。
島民達を救出したあと、レナータと合流するために彼はここまでやってきたのだ。
食事は一人より大勢がよろしい。
新たに卓を囲み直して食べようとすると、再び何者かの気配がする。
またゴボウであろうか。
否。
姿を現したのは大剣を携えた若者達。
コンキスタドールの配下たちであった。
「な、なんだあテメエら!?」
敵のど真ん中で食事をする奇異な連中に、そのような言葉をかけるのは当然だ。
レナータは彼らに向かった名乗る。
「もごごももぐも、もまーもむごう、ごっくん、です!」
口に入れていたおむすびを即座に平らげるレナータ。
しかし悲しいかな、言いたいことは彼らに伝わなかったようだ。
「ふざけやがって!」
「怪しい奴らめ! 叩きのめしてやる!」
ブンブンと武器を振り回す若者達から距離を取るレナータとゴボウ。
「困りましたね、話し合いに応じてくれないようです」
困惑の表情では無く、笑顔を浮かべるレナータ。
気が立っている彼らをなだめようと、レナータは手を差し伸べた。
「おむすび食べませんか? 美味しいですよ?」
「ふざけんな!」
横薙ぎの攻撃を羽毛のようにふわりとかわし、剣先につま先をのせて体重をかける。
バランスを崩して倒れるルーキー。
ご飯を食べてゴボウエネルギーを補給したレナータにとって、そんな攻撃は止まっている丸太に過ぎなかった。
ゴボウ人間たちも同じである。
片手でおむすびを食べながら、水筒でお茶を飲む余裕すらある。
重厚な武器を振り回し続けるのは、常人にとっては無理がある。
かたやゴボウたちはおむすびしか持っていない。
回避に徹すれば、やがて体力の開きが顕著になっていく。
疲れが見え始め、肩で息をし始める。
レナータ達は涼しい顔だ。
これが猟兵と、ドーピングで誤魔化してきた一般人の違いである。
ここで打ち倒すのはたやすい。
だがレナータはそうはしなかった。
彼女が敵に差し出したのは剣では無く、おむすび。
「たくさんあるので宜しければキノコの皆さんもいかがですか?」
この島にゴボウの奇跡を。
彼女が島民を助けるときに思っていたことに、嘘偽りはなかった。
ゴボウの前に人は平等なのだ。
青年が手を伸ばす。
具にキノコが入っていたことが、忌避しないことに繋がったのかもしれない。
疲れ切った身体に五目飯。
ゴボウとキノコとタケノコの甘みが彼を癒やすのだった。
「変わってんな、アンタ」
「ええ、言われますね」
毒気を抜かれた青年が、その場にへたり込む。
同じように疲れ切ったルーキーズに、ゴボウ達がおむすびをすすめていた。
もはやここに、コンキスタドールの配下達はいない。
ともにゴボウさんディナーを愉しむ、島の仲間たちであるからだ。
大成功
🔵🔵🔵
緋祀・細架(サポート)
人間の學徒兵×陰陽師、18歳の女です。
普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、だね、だよ、~かい)」です
サクラミラージュ出身、古い陰陽師の家系の出で帝都桜學府の學徒兵です
冷静な性格で、何事にも動じず
戦闘時も堅実に敵を追い詰めていきます
・戦闘
符を用いた陰陽術を得意とし
場合によっては刀も使います
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
コンキスタドールの配下がひしめく山の作業所。
モダンな衣装をひるがえし、緋祀・細架は様子を伺う。
見たところ、ここがきのこチョコを製造する本拠のようだった。
ならばここを叩き潰せば島民達を苦しめることは無くなるし、なにより敵の戦力を削ぐことにもなる。
多勢に無勢のこの状況ではあるが、緋祀は努めて冷静であった。
どうすれば敵の一味を打尽に出来るか。
物陰から様子をうかがいながら、緋祀は静かにその時を待つ。
「おい、何か臭わないか」
「ああ、何か焦げ臭いな」
作業をしていた数人が異臭に気づいた。
その場所をと、見てみれば火種がくすぶっているではないか。
「お、おいまずいぞ!」
「はやく消さないと!」
このままでは火事になる。
そう思った若者達は水汲場へと急ごうとする。
慌てる背中を、無防備に緋祀へとさらしながら。
「単純ね」
火符のあとは風符を手に持ち、それを敵方へと投げつける。
相手は次々と昏倒し、したたかに頭を打ちつけた。
警備の目が薄れたところで、緋祀は作業所の中へと侵入を開始する。
「なんだ……」
侵入に気づいた青年の一人が、彼女を見て声を上げようとした。
なんだテメエは、そう言いたかったのであろう。
だが閃光の突進は、破城槌のような勢いでそいつをはじき飛ばした。
吹っ飛ばされた先で、何人かが巻き添えを食らって下敷きになった。
奇襲は成功。
体勢整わぬ敵陣に対し、緋祀は戦闘を開始する。
指で挟んだ霊符が燃えて火の粉になり、彼女の周りにちらつく。
やがてそれは螺旋の焔となって緋祀を護り、抜いた退魔の刀に宿りその威を増していった。
未だ反撃の整わぬ一人を斬り伏せる。
その傷口から炎が広がり、緋祀の横顔を紅く染めていった。
「よくも仲間を!」
憤る荒くれ者。
その両腕には緋祀の身長と同じくらいの、大きな剣が握られていた。
力任せに振るわれるその一撃をまともに受ければ、細身の刀など易々とへし折ってくるに違いない。
緋祀にはそんな考えはない。
受ける愚などするはずがない。
刀を持ってはいない左腕がだらんと下がる。
モダン服から伸びたるは緋帯。
それを鞭のように操って、彼の足下目がけて絡ませる。
大きく避けると同時に帯をぐいと引張れば、大剣を持った腕と持ってかれた足が左右へと喧嘩をしはじめ、男は体勢を崩す羽目になる。
隙だらけのその格好。緋祀はそんな彼を見逃すはずもなく。
猛進した彼女の姿から、骸が弧を描いて離れていった。
彼女にとって肩慣らし程度にもならない前戯。
それは火種が大きくなるのには十分な時間であった。
もうもうと立ちのぼる黒煙が煙幕となり、緋祀の狩りを手助けする。
いかに力を強めようとも、緊張した状態であればそれを万全に発揮することは難しい。
緋祀は、ただ斬るだけ。
この場をどうしていいか分からないルーキーたちは、右往左往の醜態の中、一人また一人と彼女に斬られていくのであった。
成功
🔵🔵🔴
第3章 ボス戦
『不浄なるキノコの波動に飲まれた少女』
|
POW : どうせみんなきのこになる
【視認困難な胞子】を降らせる事で、戦場全体が【キノコが次々と生えてくるきのこ農園】と同じ環境に変化する。[キノコが次々と生えてくるきのこ農園]に適応した者の行動成功率が上昇する。
SPD : 今はきのこが食べる時代です
命中した【視認困難なきのこ】の【胞子】が【対象から養分を吸いとり成長するキノコ】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
WIZ : 胞子を落とした責任、とってくださいね?
【突如現れた謎の宇宙船】から、【きのこ】の術を操る悪魔「【完全武装したユゴスより来るもの】」を召喚する。ただし命令に従わせるには、強さに応じた交渉が必要。
イラスト:ゆりちかお
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ウルフシャ・オーゲツ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
きのこマウンテン最奥部。
じめじめと湿気の多い場所で、少女はうっとりときのこの世界に身を預けていた。
配下たちに姫とあがめられている存在。
この少女こそがコンキスタドール。
身を預けているのは巨大なきのこ。
これこそが少女を変貌させたメガリスであった。
少女は不健康そうな顔色になりながら、夢見心地の気分で周りに生えているきのこを囓っている。
もうずっと、きのこしか食用していない。
しかし身体中にみなぎる活力。
疲労など感じることもなく、睡眠をとる必要も無い。
それは、きのこがあれば他にはなにの要らないという証明であった。
少女ときのこを中心に、少しずつキノコの領域が広がっていく。
それはこの山を蝕み島全体へと広がっていくであろう。
島を苗床に、きのこは別の島へと旅立つ。
それを繰り返し、島々を菌糸のように繋いできのこの世界を広げる。
それがコンキスタドールの野望であった。
だがこの大業、一人でやるには大事だ。
だから仲間を、手下を、きのこの同士を増やさなければならない。
配下達はうまくやっているであろうか。
理想郷を脳内に抱き、少女はうっとりときのこを夢見ている。
コンキスタドール『不浄なるキノコの波動に飲まれた少女』が、きのこを伴って現れた。
レナータ・バルダーヌ
どちらかというとあのキノコ自体が元凶みたいですね。
お話が通じる雰囲気ではなさそうですし、燃やすしかないでしょうか?
な、謎の宇宙船……から、エビのバイオモンスターさん……?
こんにちは。
何やらキノコの方がエビさんと交渉しているような……。
意外と話し合いできそうな気がしてきたので、エビさんだけでもお引取りいただけないか試してみましょう。(念話も大丈夫です)
失敗しても時間稼ぎにはなると思います。
なんだか物々しい出で立ちですけど、共存の道を模索したいので今日のところは……。
(愉快なゴボウさん)「侵略的なやり方はよくないと思うぜ」
そういえば先程のおむすびが少し残っていましたね。
よろしければお土産にどうぞ。
エウトティア・ナトゥア
※アドリブ・連携歓迎
あの大きなきのこに寄りかかって毒きのこっぽい物を齧っている者が今回の首魁かの?
本人はあまり動く気がなさそうじゃが、謎の宇宙船から出てきた悪魔は強そうじゃのう。
じゃが従わせるには交渉と命令が必要なようじゃな。
まずは【精霊石】の力を借りて、【静寂】の【濃霧】で辺りを包み込み周囲の視界と音を封じて、キノ公と悪魔の連携を崩すとするかの。
声が通じない状況では交渉も命令もできまい、今のうちに【巨狼マニトゥ】に【騎乗】し濃霧の中を【目立たない】ように移動して、敵の気配や臭いを【追跡】して奇襲するとするかの。
視界の悪い状況でのマニトゥの牙とわしの弓矢の連携攻撃じゃ。一気に畳み掛けるぞ!
テイラー・フィードラ
栄養価値がどれ程かは知らんが、依存性や麻薬の如き症状がある時点で焼き払わねばならんな。
先程の戦闘より剣を落としタケノコを取り戻すと誓った者共に指示を与え、鬱陶しい湿気事吹き飛ばす大火を放たせ茸を焼却していこうか。
相手からの妨害も想定済みである。が、茸の術とは面妖であるな。それで己が意思を取り戻した兵共がまた洗脳されるのは拒絶させて貰おうか。
凶月之杖を地へと強く打ち鳴らし、呪言詠唱。
これより来たるは其の魔と似た存在、しかして名を語らぬ強き者。
宣告。俺を代価に奴の動きを止めろ。
召喚されし悪魔を、同じ悪魔が封じるとは滑稽であるな。だが、仕留めさせて貰おうか。
馬上より長剣を抜き、動かぬ輩を切り伏せん!
四王天・燦
哀しい戦いだ。キノ公も信念があった…結局は正義同士のぶつかり合い―キノタケの運命だね。で、戦いだ。キノ公の攻撃の正体がつかめない!しかも宇宙船まで来る。宇宙船だよ?これは収穫だったんだ!奴らはアタシ達を家畜と見ていたのさ。そこで気づいた。
キ
ノ
公
キ
ノ
ハ
ム
お分かり頂けただろうか?竹の子を縛ったのはハムにする為。連中の正体は畜産業界の回し者…攻撃が見切れた!恐れが眼を曇らせてたんだ。あとは陸式で劫火の筍を見舞ってキノコ駆除さ。この先生きのこるにはと宇宙船が大キノコと共に逃げたときはカウントダウンを貼り付けたよ。地上からでも成層圏で爆発するのが見えたぜ。感謝しろようやく死ねたんだ
四王天・燦の自慢話より
きのこマウンテンへとむかう一行。
そこには猟兵のみならず、先の戦いで加わった若者達もいた。
キノコの呪縛より解き離れた彼らは、行軍に加わった。
魔性の地を焼き払うのに協力したいとのことであった。
その言葉を猟兵達は信じる。
元はといえば、人々を惑わすメガリスが遠因なのだ。
それを潰せば彼らも前途ある道を歩めるに違いない。
コンキスタドールは自分たちに任せて貰い、彼らに後の始末を手伝って貰う手はずとなった。
彼らの案内もあり、猟兵達は敵の本拠へと近づいていく。
山中深くへと踏み入った猟兵達は、うっそうと苔むす森の中へと進んでいく。
どこもかしこもキノコだらけ、草木全てがキノコなのではないかと見紛うくらいだ。
そしてその奥に目的の人物をついに発見した。
「あの大きなきのこに寄りかかって毒きのこっぽい物を齧っている者が今回の首魁かの?」
エウトティア・ナトゥアが警戒を解かずに少女を指す。
見た目は自分と同じくらいの少女。
しかしオブリビオン、コンキスタドールに外見は当てにならない。
少女がよりそうキノコからは、不可思議な力を感じることができた。
「どちらかというとあのキノコ自体が元凶みたいですね」
レナータ・バルダーヌが彼女の様子をうかがってそう言った。
レナータの言葉は的を射ている。
あの巨大なキノコこそがメガリス。
この地を変質させた、呪われた秘宝であった。
「アタシたちの任務はメガリスの破壊だったね」
四王天・燦はすでに懐から得物を抜いていた。
コンキスタドールの破壊には言及していない。
あの少女もひょっとしたら操られているだけではないのか、燦はそう言いたそうであった。
「どちらにせよ、依存性や麻薬の如き症状がある時点でこの地は焼き払わねばならんな」
テイラー・フィードラも長剣を抜いていた。
彼の後ろには付きしたがう若者達。
大勢はいるが、コンキスタドールと戦わせる気はない。
あくまで彼らは補助の役割だ。
危険な任務、敵との対決は猟兵の役割だ。
猟兵達が近づいても、少女はさしたる動きを見せない。
容易にその間合いまで近づくことが出来てしまった。
ようやく、少女の瞳が動き猟兵たちを捕らえた。
「だれ……あなたたち……」
茫洋と、しかし有無を言わせぬ声。
少女は瞬時に理解した、この者達は敵だと。
決して相容れぬ存在なのだということを。
コイツラの身体からはタケノコの気配がした。
それは少女にとって不快な臭い。
それはそれは華につく、嫌な臭いだった。
だから、この世から消し去ってしまおう。
「あなたたちも……キノコになりなさい……」
ぎゅっと、キノコにを抱きしめる少女。
少女の頭上から、光が差し込んできたのであった。
それは次元の裂け目であった。
裂け目から巨大な船がやってくる。
それは遠目から見れば金属製のような、硬質で出来た船であった。
裂けた割れ目から、小雪がちらつき地へと落ちてくる。
否。
それは胞子であった。
そして甲板から何者かが次々と飛来してくる。
胞子と異形生物。
猟兵達はキノコによる幻覚を見ているのであろうか。
否。
これは間違いもない現実。
「な、謎の宇宙船……から、エビのバイオモンスターさん……?」
レナータの困惑したような顔。
なるほど、エビのようにも見えなくもない。
一見すると薄赤色の甲殻類のような見た目である。
羽と鉤爪と触覚、どの生物かと言われても名状しがたいが、レナートの形容が一番近かった。
宇宙船を見上げる少女が叫ぶ。
「キノコドコノコココノホウシ!」
それを聞いた謎生物達が吠える。
「ミ・ゴ! エリンギマイタケブナシメジ!」
少女が抱く巨大キノコが光る。
するとそこら中に生えていたキノコが浮き上がり、宇宙船へと収束していった。
まるで収穫されるように。
そして金切り声を上げながら謎生物、ユゴスより来るものが猟兵達に襲いかかってきたのであった。
「奴ら、やるようだぜ!」
「キノコの腐臭に蠅が寄せられたようだな」
燦とテイラーが臨戦の態勢を取る。
この航海世界で山登りとしゃれ込んだあとに、空飛ぶ船の歓迎とは。
二人の顔に笑みが浮かんだ。
「なにやら、謎の宇宙船から出てきた悪魔は強そうじゃのう」
新たな敵の出現に、エウトティアは精霊石を握りしめた。
ここに乗り込む前は数では勝っていたが、今は相手方の方が勝っている。
もちろん個々の力では、マニトゥと仲間達は劣ってはいないとエウトティアは考えている。
が、と彼女は周りを確認する。
目につくは武器を構えたルーキーズ。
彼らもヤル気だ。
それは見上げた根性ではあるが、奴らを相手取るには少々分が悪い。
「オブリビオンずれを相手取るのはわしらの役目よ。手柄を譲るいわれなど無しでな」
せっかく正道へと立ち返る機会を与えたのだ。
いきなり死んでしまっては三流映画もいいとこだ。
エウトティアは彼らをまもるために、策を打つ。
「風よ、唸りを、囁きを止めておくれ。等しく沈黙を、我らを隠す霧と為らんことことを」
石を握りしめるエウトティアを中心に、霧が発生する。
それはたちまち辺りに広がり、戦場を覆い尽くした。
濃霧の先から戸惑いの気配を感じる。
多勢に無勢。
しかし、この状況では集団による連携は難しくなる。
「なればこそ、わしらの武が勝るというものじゃ」
弓を引き絞って霧中にむかって矢を放つ。
それは見事命中し、何かが倒れた気配を感じさせた。
自然に生きてきたエウトティアにとって、このような現象など目隠しにもならない。
無論、それはマニトゥも同じ。
「ゆくぞマニトゥ!」
巨狼の背に乗って、エウトティアは霧中に駆けだしていった。
霧中にてテイラーは易々と敵を屠った。
甲殻の鎧は、彼の膂力を防げるほどの厚みを備えてはなかったようだ。
眼前に、また別の敵が姿を現す。
鉤爪の一撃。
テイラーは剣を左から右に薙ぎ払って防ぐ。
手首ごと斬り落とし、返す刃で敵の素首を斬り飛ばす。
他愛なし。
そう気持ちが緩んだ時であった。
ユゴスが絶命すると、身体が崩れ去り胞子となって散らばった。
地面からキノコが生え、毒々しい絨毯を敷く。
「これは!?」
驚くテイラー。効果はすぐに思い知らされることになる。
「キノコ! キノコ! キノコ!」
「キノコ! キノコ! キノコ!」
「なん……だと?」
振り返ればルーキーズの様子がおかしい。
それは先に見た光景。
あの作業所で見た、常軌を逸した姿だ。
まさか。
「あの胞子の大元は……これだったのか?」
キノコチョコに含まれていた胞子。
その原産地がまさか彼方より来たる物であったとは。
からくりが判明したわけではあるが、まずは彼らを助けるのが先決だ。
効果は以前にも見た。
再び依存させるわけにはいかない。
なにより、ルーキーズを連れてくるのを了承したのはテイラー自身。
自らの誇りにかけて、彼らを見捨てることなど選びはしない。
「再び民を……失わせるか!」
杖をひっさげて地面に突き刺す。
自らに従う者達を護るとあの時誓った。
たとえ、この身がどうなろうとも。
「これより来たるは其の魔と似た存在、しかして名を語らぬ強き者。宣告! 俺を代価に奴らの動きを止めろ!」
テイラーが吠えると、杖から赤黒い触手が生えて彼を突き刺した。
傷口から血が滴り落ちるとそれは地を黒く染め、黒い手が次々と伸び敵に向かって延びていく。
霧の死角によって敵は避けることも出来ず、捕縛されている。
その隙に、テイラーは正気を保っている若者達にむかって叫んだ。
「仲間を抱えて一旦離れろ! 奴らを減らしたら合図する、そうしたら付近一帯に火をつけるんだ。胞子とキノコを焼き払うぞ」
「は、はい!」
肩に友を抱えて撤退するルーキーズ。
これで共倒れの危険は避けられた。
「あとは、奴らを蹴散らすだけだな」
剣を抜いて、悪魔の手の伸びる先へとテイラーは駆けだした。
濃霧の中、レナータは思考を巡らしていた。
五里霧中のなか、彼女の心は澄みきっていたのである。
少女はあの謎生物と会話していた。
ならば、自分たちにも交渉の余地があるのではないか。
そう、レナータは考えたのである。
「意外と話し合いできそうな気がしてきたので、エビさんだけでもお引取りいただけないか試してみましょう」
戦いのなかにあって、会話を試みる。
それは常人には出来ない発想だった。
もちろん手土産も無しに彼らが引き下がってくれるとは思えない。
しかし、こんなこともあろうかと品は用意してある。
「そう、ゴボウさんならきっと可能です」
改心したコンキスタドールの配下達。
同じ配下であるならば、きっと。
「おっと、嬢ちゃんだけに重荷は背負わせないぜ」
肩を叩かれ振り返る。
そこには心強い愉快なゴボウの仲間達。
レナータは友を見つけて微笑んだ。
「そうですね。キノコもタケノコも美味しいですけど、これからはゴボウの時代ですもんね!」
仲間とともにうなずき合い、片翼の天使は和平のために夢中を駆けていった。
敵の数はいまだ多い。すぐに遭遇することが出来た。
レナータを発見したユゴスは鉤爪をカチカチと鳴らして応戦しようとする。
しかしレナータは、剣でなくゴボウを持ってむかえうつ。
「こんにちは! わたしレナータと言います! まあまあ一つ、ゴボウでもどうです?」
「ミ=ゴ?」
「ミ=ゴさんというんですか? なんだか物々しい出で立ちですね、カッコイイ!
私たち、貴方たちと戦う気はありませんので、お引き取り願う訳にはいきませんか?」
ユゴスは困惑した。
ユゴスは異星人である。星々を駆り、植民星を増やしてきた。
そして敵意に関しては人一倍敏感であった。
邪知暴虐たる殺意を受けたことはそれこそ、星の数ほどある。
しかしこうやって胸襟を開いて迎えられたのは初めてであった。
「侵略的なやり方はよくないと思うぜ」
かのモノの後ろで細身の何かが喋っている。
言っていることは分からなかったが、敵意を持たれていないのは確かなようだ。
敵を倒せと少女は言った。その代償として我々はキノコを頂く。
しかし、この者達ははたして敵なのか?
ユゴスから来たモノの精神に、不可解な荒波が起こった。
それは、人間の感情でいう処の動揺、畏れであった。
「そういえば先程のおむすびが少し残っていましたね」
鉤爪に、三角の柔らかいモノを渡される。
相手は同じモノを口に入れ嚥下した。
食え、と言うことか。
ユゴスは同じように口に入れ、三角を腹に納めた。
それはキノコとは違った色。音。存在。
その存在が全身に満ち渡り、戦意をくじく。
「まだまだありますよ、よろしければお土産にどうぞ」
多くの三角を渡されるユゴス。
彼は確信した。この者達は敵ではないと。
ならば取るべき道は一つ。
「イア! イア! アジシメジ! アジシメジ!」
彼のかけ声に合わせて、ユゴス達が集まってくる。
レナータ達を狩りの標的とするのか?
否。断じて否。
彼らはレナータと円を組み、食事会を開いたのであった。
腹が減っては戦が出来ぬというが、まさか戦中にて行うとは。
これもレナータの人格によるものであろうか。
ともあれ、レナータの方へと来たユゴスは幸運であった。
結果的に、猟兵に倒されることはなかったのだから。
混乱。混戦。
そのさなか、燦の脳に閃光が走った。
「なんてこった……そういうことだったのか……」
「どういうことです?」
愕然とする燦にルーキーズが尋ねる。
「アタシたちは完全な思い違いをしていたのさ」
不審がる彼らに、燦が熱弁を始める。
自分たちはキノコが真の敵だと思っていた。
しかしそれは間違いだった。
あの彼方より飛来した敵、ユゴスより来るものが真の敵だったのだ。
「な、なんだってー!」
驚きの声をあげるルーキーズ。
もしかしたら燦は胞子を吸い込んで仲間とおなじくおかしくなってしまったのであろうか。
否。
彼女は大真面目だ。
真剣な面持ちで持論を展開していくのであった。
これを見て欲しい、と燦は示す。
キ キ
ノ ノ
公 ハ
ム
「お分かり頂けただろうか?」
水を向ける声に、さっぱりわからないと困惑を浮かべるルーキーズ。
そんな若者たちを尻目に燦は続ける。
「竹の子を縛ったのはハムにする為。連中の正体は畜産業界の回し者……、あの宇宙船は収穫だったんだ! 奴らはアタシ達を家畜と見ていたのさ! これで確信した、人類は滅亡する!」
「な、なんだってー!」
さらに驚きの声をあげるルーキーズ。
驚愕を露わに、どうすればいいのかと詰め寄った。
燦が悔しさを滲ませながら答えを口にする。
「アタシにだって……分からないことはある。だけど、これはすでにキノコだとかタケノコだとかの問題では無いのさ。この島を護る! そうだろ?」
覚悟を決めろ、と発破をかける燦の声にルーキーズ達は見つめ合い頷いた。
思えば、無軌道に生きていた。
強さを求め、人を傷つけてきた。
だがどこかしら満たされない日々。それをキノコで埋めてきた。
この島にやってきた猟兵達は、見ず知らずの人のためにはるばるここまでやってきた。
己のためにしか行動してこなかった若者達に、それは新鮮に映ったのであった。
ここに来たのは、困難から逃げるためか?
違う。
強くなるために。
彼らのように、猟兵のように強くなりたいと思ったからだ。
ならばするべきことは一つ。
彼らの眼に、恐れはもうない。
次々と武器を取り、やろうとしていたことの続きを、戦いを始めようとするのであった。
濃霧の中では姿は見えぬ。
だが、悪しき臭いはプンプンする。
「丸わかりじゃな」
その方向へと、矢を放つエウトティア。
それを合図にマニトゥがその方向へと駆ける。
霧の先にはユゴスの物。
その身に深々と矢が刺さり、のけぞっている。
体勢を整える前に巨狼がのしかかり、牙と爪を深々と突き立てた。
これでまた一匹。
次の得物はどこじゃと、辺りに神経を尖らすエウトティア。
「む?
疑問符を浮かべるエウトティア。
マニトゥも気づいたのか、鼻を鳴らす。
濃霧の中に、火が猛る気配を感じる。
そして何かが焼ける臭い。
それはおそらく、キノコの匂いであった。
「どうやら火をつけたようじゃな」
元々焼き払うために手勢を連れてきた。
この混乱に乗じ、火をつける手立ては悪くは無い。
だが自分たちはともかく、下手をすれば味方が火勢に巻かれてしまう危険がある。
すでにマニトゥと自分の手の数以上に敵を倒していた。
ならば奇襲は充分に効果が出ているはずだ。
一旦状況を確認するために、エウトティアはこの霧を解除することにした。
戦場の情勢が、誰の目にも明らかになる。
テイラーは黒き手々によって動けなくなっている敵たちを、勇敢に騎乗しながら斬り伏せていた。
燦はルーキーズと力を合わせキノコと胞子を焼き払っていた。
レナータは……あろうことか敵集団と食事会を開いていた、懐柔したのであろうか。
そして霧が晴れて、一番激怒しているのはキノコの少女であった。
敵を倒すために召喚したのに、なぜ一緒になっているのか。
敵に傷をつけることもなく、なぜ一方的にやられているのか。
そして大切に育てたキノコ農園に、なぜ火をつけるのか。
絶望と怒りで少女の心は染まり、黒く染まっていく。
「いらない、こんな世界いらない」
キノコを抱えたまま少女が浮かび上がり、飛翔する。
行く先は空、上空に浮かぶ宇宙船へと。
そしてその甲板に、キノコを叩きつけた。
これもメガリスの力なのであろうか。
巨大な宇宙船は、姿を変化させていき、それはそれは巨大なキノコとなった。
ゆっくりと、島の方へと落下してくるのだ。
「このまま押しつぶしてあげるわ」
少女の怒り。
このままでは島がなくなり、巨大なキノコが海に生えることであろう。
そうなれば島民ともどもこの島にいる生物は全滅だ。
この先、生き残るには。
「やらせはせんぞ!」
杖を更に深々と突き立て、テイラーが叫ぶ。
「奴の動きを止めろ!」
全身から血を吹き出し、絶叫するテイラー。
杖は望みを叶え、多くの黒き手を生やして上空へと伸びる。
だがキノコはあまりにも大きい。
動きを止めるには足りなかった。
「御狐・燦の狐火をもって此処に劫火の煉獄を顕現せん。舞えよ炎、天変地異を巻き起こせ!」
燦が叫ぶ。
山を多いつくすかのような火球が、キノコにむかって放たれた。
炎に包まれ焦がれるキノコ。
だが巨大な質量を焼くには、少々時間がかかるようであった。
精霊石を握り潰さんばかりに、エウトティアは島にいる精霊たちに乞うた。
炎上大キノコに濃霧が発生する。
あれは膜だ。
火勢を更に加速させ、速度を落とすための、霧のヴェールであった。
猟兵達が全力を振り絞る中、彼らも動き出す。
レナータとゴボウ人間達は、空に現れた偽太陽を眺めていた。
「これは困りましたね」
空を跳ぶことは出来るが、あのように巨大な物を止めるにはどうすればよいか。
レナータが考えあぐねていると、前へ進み出る者がいた。
それはユゴスより来たもの。
一緒に食事をした者たちであった。
彼らは名残惜しそうに振り向くと、キノコを差し出す。
ゴボウ人間たちがもつゴボウと、先端が触れあった。
キノコとゴボウが触れあった場所が光る。
「ミゴ」
何を言っているか分からない。
しかしそれに哀しみがあることを、ゴボウ人間たちははっきりと感じた。
ユゴスより来たものは空へと飛ぶ。
大きなキノコへと。
宇宙船だったものへと。
一匹、二匹。
キノコへと取りついていくユゴスより来たもの。
飛んで火に入る夏の虫。
彼らは一体何をしようとしているのか。
自らが燃えるにもかかわらず、彼らは次々に、張りつくことを止めない。
やがて猟兵たちにも、何をしようとしているのかが理解出来た。
島へと振ってくる巨大なキノコ。
それがだんだんと軌道を変え、真下では無く斜めへと落ちていく。
大海原へと、巨大なキノコは落下していくのであった。
炎上するキノコが海中へと沈んでいく。
そして水柱を生み、海水を巻き上げ遠いこの島にまで雨をもたらした。
悪しきメガリスは、深い海の底へと消えた。
おそらく少女も生きてはいまい。
島を護り、メガリスも人の手に渡らぬ場所へと。
猟兵達は、勝ったのである。
●それから~
海中へと沈んだメガリス。
猟兵達はしばし島に滞在していたが、特に不穏な気配もなく、事態は収拾できたようだった。
胞子に冒されていた者達も平静を取り戻し、島民達はもとの生活を取り戻そうとしていた。
エウトティアは島民達の持てなしをうけながら、島の自然を眺めていた。
コンキスタドールの支配から解き離れた島民達の表情は明るい。
強制された労働ではなく、日々の糧を得るための働き。
それは島で暮らす人々にとって当然の権利だ。
誰もそれを侵すことなどあってはならない。
今日も昼飯の相伴に預かり、エウトティアは舌鼓を打つ。
島の果実と、タケノコとゴボウの炊き込み飯。
島民達が丹精こめた食材である。
「うむ、見事じゃ。かの少女も好き嫌いなどなければ良かったのにのう」
何が一番旨いのかとは些細なこと。
人々とともに語らって愉しむ。
そこにキノコタケノコの貴賤無し。
自然の恵みは、全てにおいて尊い。
エウトティアは雄大な景色を眺めながら、食事を愉しむのであった。
島村から離れた処。
そこに新たな集落が作られつつあった。
コンキスタドールの元配下たちだった若者が、そこを住処にしようと頑張っていた。
島民達にしがらみがないとは言えない。
だからこそ彼らはこうやって、離れた場所で暮らすことを決めたのだ。
剣を鋤に変えて耕作する彼らの前にテイラーが姿を現した。
水と飯。
それを見てルーキーズたちは小休止を取る。
彼らと円を囲みながら、テイラーも食事を取る。
彼らをここに残しておくことは残念だが、テイラーには船も土地も何もない。
まだまだ流浪の身である。
彼らを召し上げるには器量が不足していた。
「すまんな」
誰に愚痴るでもなくこぼしたテイラーの言葉を、青年が耳ざとく聴いた。
「テイラーさんが気にすることないですよ。俺らここで頑張っていきますから」
「そうそう。ここの作物が実ったら、島の人達にも謝りにいきますよ」
無邪気な彼らの笑顔。これが若さというものか。
そこには不安という感情は見受けられない。
未来にむかっての希望があった。
でが、自分の行く末とは。
己の手をじっと見るテイラー。
「とりえあず、問題をひとつ解決だな」
そう呟き、握り飯を頬張るのであった。
「哀しい戦いだった。キノ公も信念があった……結局は正義同士のぶつかり合い―キノタケの運命だね」
しみじみと杯をあおり、燦がため息をつく。
ここは島の酒場。
顛末をせがむ島の人達に、酒の肴と彼女はきのこマウンテンの出来事を語っていたのであった。
話す内に熱がこもりすぎたのか、ところどころ脚色も多くなる。
しかしそれは、島民にとってはどうでもいい話だ。
なにしろ小さい島に起こった大事件。
結末は面白ければそれで良し。
島民たちの反応を見ながら、抑揚を変えて燦は語る。
続きを聞かせろと、肴が彼女の前に並ぶ。
「劫火の筍を見舞ってキノコ駆除さ。連中恐れを成したのか逃げやがった。しかしそこはアタシ、宇宙船が大キノコと共に逃げたときはカウントダウンを貼り付けたよ。狙い通り。地上からでも成層圏で爆発するのが見えたぜ。あいつらきっと感謝しているだろうさ、ようやく死ねたんだからね」
ごくり、と飲み干して燦が片手を上げる。
乾杯と、島民達が音頭をとった。
コンキスタドールの脅威は去った。
島民達が地面から顔をだすタケノコのように飛び跳ね狂喜するのも無理は無い。
依頼をおさめた燦も今日だけは、その乱痴気騒ぎに加わっても正当な報酬と言えよう。
卓を囲む人々が酔い潰れ、静かになったなかで燦は呟く。
「まあ、本音はこいつが一番好きなんだけどね」
にやりと笑い、棒状のチョコ菓子を数本、口直しにいただくのであった。
「ゴーボ! ゴーボ! ゴーボ!」
「ゴーボ! ゴーボ! ゴーボ!」
篝火のなかで、信者達が仰ぎひれ伏す。
彼らが頭を下げていたのは片翼の女神像。
そしてそれをとりまく細身ゴボウの天使達である。
甲殻の法衣に身を包んだ神官が、信徒にむかって語る。
「この地に降った災い。それを女神様は救ってくださった!」
その声に、信者達は答える。
「ゴーボ! ゴーボ! ゴーボ!」
「ゴーボ! ゴーボ! ゴーボ!」
歓声に包まれながら、神官は続ける。
「私は見た! 空に浮かぶ異形の船を! 私は見た! 飛来する異形の生物を! そして私は見た! 女神が異形の大群を押し返し、キノコもろとも海中へと封印するのを!」
「ゴーボ! ゴーボ! ゴーボ!」
「ゴーボ! ゴーボ! ゴーボ!」
開場が熱気に包まれる。
彼らは「God operation blaze orbit niverse」
轟炎たる世界構築への神の計画、Gobou。
通称ゴボウ教団であった。
彼らが提唱するのは、作物であるゴボウ。
それがこの世界を平和へと導くことであるとの教義であった。
彼らにかかれば荒れ地はすぐに開墾され、山は切り崩されて畑となり、谷は埋められて田と化した。
大げさなネーミングであるが、実際は働く耕作者たちである。
不作にあえぐ他の島々を巡り、耕作地を生み出して腹を満たす。
島に降り立った女神の奇跡を、他の島々でも起こすために、彼らは今日もゴボウを植えるのだ。
この教団設立に、とある猟兵は関わってはいない。
なぜなら彼女がしたことは、とある島にゴボウをもたらしたこと。
皆々でゴボウを食べましょう、そう薦めたことだけだからだ。
そして教団が設立されたのは、数十年もあとのことであるからだ。
しかし教団が掲げる経典には、こうやって締めくくられていた。
みよ 女神は やがて来る
我らを摘み取りに 必ず来る
それまでにゴボウを植えよ 増やせよ 地に満ちさせよ
女神は始まりであり 終わりである
最初であり 最後である
大成功
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